1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:16:20.06 ID:GCKtuy6h0
瞳を閉じれば、今宵も目に映る彼の者の姿
幾夜逢えぬとも、私の想いは変わらぬどころか募るばかり…
───逢いたい
『逢いたくて逢いたくて震える』
そのような面妖な状況に、今まさに私が直面しています
あの声、笑顔、愛らしいきゃらくたあ
気付けばいつも目で追っていました
友情なのか愛情なのか、それすらもわかりません
今はただ、逢いたい。逢って声を聞きたい……
貴音「響……早く帰ってきてください……」
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:19:53.17 ID:GCKtuy6h0
プルルルル…
プロデューサーからの着信が、私を現実に引き戻す
内容は明日の仕事内容の再確認と、当方の事情による時間のずれ
貴音「はい、問題ありません」
そう言って電話を切り、再び夜空を見上げると…月は雲に隠れて見えなくなっていました
貴音「はぁ……」
溜め息は幸せを遠ざけると伝えられていますが、それすらもどうでもよくなるほどに気が滅入ってしまいました
少し早いですが、今宵は床に就くことにしましょう
──────────────────
貴音「海外ろけ…ですか?」
響「うん!動物ワールドの企画で、ブラジルまで珍獣を探しに行くことになったんだ!」
貴音「そうなのですか…。して、帰りはいつ頃に?」
響「貴音~…まだ行ってないのに帰りの予定を聞くなんて気が早いぞ?」
貴音「長期間の海外となると少し心配なのです。響のような華奢な身体では、特に…」
響「うっ…なんだか自分まで怖くなってきたかも…。でもなんくるないさー!自分、カンペキだからね!」
貴音「そうですか…。それで帰りは…」
響「そんなに気になるの!?一応予定だと10日間だけど、ちょっと多めに考えてスケジュールを取ってあるから…長くて二週間ぐらいかな?」
貴音「なんと……!」
響「それで場所なんだけど、結構深いところまで行くみたいでさー
電波が入らなくて連絡できないかもしれないけど、全然平気だから心配しないでね!」
貴音「ああっ…!」
──────────────────
貴音「…朝…ですか……」
またあの日のことを思い出してしまいました。おかげで眠れたのは一時間程度でしょうか…
たった二週間…それすら待てぬ自分が情けなくてたまりません
貴音「あれからまだ一週間なのですね……」
離れて始めてわかる事実。私は…響に依存していたようです
彼女の性格、仕草、よく変わる豊かな表情は、いつしか、使命感だけで生きてきた私の心の拠り所となっていました
長い髪を垂らした無防備な後ろ姿…願わくば抱きしめてしまいたい
しかし今は、ただ逢えぬ日々が私を締め付ける………はっ!?
貴音「もう時間が…急ぎましょう!」
ガチャッ
貴音「おはようございます」
亜美「おっはよー!あれ?どうしたのお姫ちん?なんか今日はいつもより遅くない?」
真美「顔もなんだかおやつムードっぽいよー?」
はて…おつやむーど、と言いたいのでしょうか。おやつであれば底なしに入るのですが
貴音「おはようございます、亜美、真美。少し考え事をしていただけですので、問題はありませんよ」ニコッ
真美「んー…気のせいかな?なんか悩んでそうなふいんきだったんだけど」
亜美「ま、悩んでも仕方ないっしょ!そんな悩みなんて吹っ飛ばしちゃおうよ!」
貴音「ふふっ…ありがとうございます。それでは私、プロデューサーと打ち合わせがありますので…」
P「おはよう、貴音」
貴音「おはようございます、あなた様」
P「おはよう貴音。さっそくで悪いんだけど……ん?」
貴音「はて…私の顔に何か?」
P「いや…ちょっと元気が無いような気がしてさ。大丈夫か?」
…それほどまでに疲れて見えるのでしょうか……
貴音「言わずもがな、です。今朝もお茶碗五杯のご飯を平らげてきました」
P「…やっぱり調子が悪いんじゃないか?いつもは七杯は食べるだろ」
貴音「ただの気まぐれです。あなた様、人には秘密の一つや百個…」
P「はいはい、何度も聞いたよ…。とりあえず、今日の仕事は大丈夫そうだな?」
貴音「はい。何一つ問題ありません」
P「で、今日のことなんだが、共演のアイドルがインフルエンザでダウンしたらしい」
貴音「なんと…それは安静にしなければいけませんね」
P「それで貴音の持ち時間を増やそうってことなんだけどな…出来そうか?」
病欠の方には申し訳ありませんが、これは好機…
より高みを目指すため、この機会を使わせていただきましょう
貴音「はい。やらせていただきます。皆様方に四条貴音をもっと知って頂きましょう」
P「やってくれるか!よし、じゃあ早速スタジオ入りだ!打ち合わせをしないとな!」
その日の仕事は、結論から言えば成功と言えたかもしれません
ですが私はどこか上の空で、そのことをプロデューサーに指摘されてしまいました
それほどまでに私は…響のことを……
明日は休日ですが、今日は早めに床に就くことにしましょう
──────────────────
高木殿に声を掛けて頂き、なし崩し的に上京し、アイドル事務所に入社することになった日のこと
私は765プロの最寄りの駅に着いたものの、情けないことに迷ってしまいました…
貴音「なんと面妖な…これが東京なのですね……」
ふらふらと歩いていた私は、駅の場所も見失い、途方に暮れていました
しかし、その時…
少女「ねぇ、そこの人!」
貴音「せめて携帯電話があれば…。使いこなせずとも持っておくべきでしたか……」
少女「おーい!聞こえてるー?そこの背の高い白髪の人ー!」
貴音「な…なんと無礼なっ!私の髪は白髪などではありません!!」
少女「あ、やっと振り向いてくれた!」ニカッ
彼女は、眩しくなるようなその笑顔を初対面の私に向けていました
少女「ねぇ、道に迷ったんでしょ?実は自分もでさー!あはははは!」
貴音「あなたはいきなり何なのですか…。初対面の相手に尋ねることがそれですか?」
響「ああ、ごめんごめん!自分、我那覇響!沖縄出身!アイドルになるために上京してきたんだ!
はい!これで自己紹介したから、自分たちはもう知り合いだよね?次はキミの番だぞ!」
貴音「…四条貴音と申します。それ以外は秘密です」
響「なっ…秘密ってなんなの!?うぎゃーっ!自分はいろいろ話したのにーーーっ!!」
貴音「我那覇響…このような往来で大きな声を出しては迷惑です。用がないのなら私は去りますが…」
響「ああっ!?ご、ごめんなさい!えっと、自分、道に迷っちゃったから道を聞きたかったんだけど…
あれ?よく考えたら迷ってる人に道を聞いても…んー?」
…それを私に聞かれても…という状況でありました
貴音「生憎ですが、私も先程上京したところ故…。恥ずかしながら私も道に迷っているのです」
響「えっ、やっぱりそうなの!?うーん…どうしよう……765プロ…どこにあるんだろ…」
…今、なんと?
貴音「我那覇響、もしやあなたの目的の場所は、765プロダクションという芸能事務所では?」
響「あ、うん!そうだぞ!自分、そこの社長にスカウトされて、アイドルになるために来たんだ!
もしかしてどこにあるのか知ってる?」
なんと奇遇な…!このような運命の悪戯があるものなのですね…
貴音「いえ…ですが、私もあなたと同じなのです。765プロにて、アイドルになるために上京を」
響「えぇぇっ!?…確かにすっごい美人だし、女優とか言われてもおかしくはないけど……へぇ~……」
…まっすぐに顔を見つめられて容姿を褒められるというのは、まことにくすぐったいものなのですね…
貴音「ならばこれも何かの縁。共に参りませんか?」
響「うん!ってそれはいいんだけど、電話番号を聞いた紙を失くしちゃって……」
貴音「それならば私が持っています。ですが、公衆電話が見つからないのです……」
響「えっ?」
貴音「はて?どうかしましたか?」
響「…携帯、持ってないの…?」
貴音「そ、それは……私、機械がどうも苦手で……」
響「あははは!顔赤いぞ!」
貴音「くっ……」
まさか初対面の者に狼狽した顔を見られるとは…穴掘って埋まりたいとはこのことでしょうか……
響「ごめんごめん!ところで携帯なら自分が持ってるぞー?紙貸してよ!」
貴音「あっ…はい、そうですね。お任せします」
響「事務員の人が迎えに着てくれるってさ!良かったね!」
貴音「はぁ…一時はどうなることかと思いましたが、万事解決ですね」
響「ぷっ…あははは!なんかおかしいね!」
貴音「はて…何がおかしいのでしょうか?」
響「いやー、一人だと大変なことでも、二人ならこんなに簡単に話が進むんだって思ったらさ!」
貴音「言われてみれば…確かに……ふふっ…ふふふふっ…♪」
響「ねっ?あはははは!」
プルルル…
響「あ、もしもし!」
一人では出来ないこと、仲間となら出来ることですね…
貴音「ふふっ…早くも仲間が出来てしまいました」
響「ねぇ!そこの角まで車で来てくれてるってさ!」
貴音「では、行きましょうか。……あの…」
響「んー?」
貴音「これからよろしくお願いします。『響』」
響「うんっ!こっちこそよろしくね!『貴音』!」
──────────────────
目が覚めると、まだ夜も明けていない時刻でした
…あの頃の夢…。もう何年も連れ添った親友のようなつもりでしたが、まだ一年と少しなのですね…
夢ならば響に逢えるのに…心から逢いたいと願っても、今は届かない…
心から伝えたい。響のことがとても大切だと
……愛していると、伝えたい…
私の気持ちが友愛ではなく、恋愛の方向に向かい始めたのは、いつの頃からかわかりません
それに気付いたのはたった今。私は遅過ぎたのでしょうか…
月を見上げると、響がそこにいるような気さえします
しかし恥ずかしがり屋の響は、まるで月影に囚われたかのようにその姿を見せてくれません
今宵、新月の闇に潜むように、私はひっそりと枕を濡らしました
朝目が覚めると、そこに響が……いるはずもありません
響が発つ頃には満開であった薄紅色の桜の花も、ほぼ散ってしまいました
寂しくて、寂しくて、響の声が聞きたくて…
思わず携帯電話を手に取るも、やはり電波が届かないとの音声が…
朝露に濡れた窓を開け、ふと虚空に手を伸ばしてみます
ですが、当然ながら響のぬくもりを感じることは出来ません
貴音「…少々、感傷的になり過ぎているやも知れません」
今日は休日。気分転換に出かけることに致しましょう
貴音「よもや、全マシマシ三杯で腹八分目になろうとは…」
憂鬱な気分のまま食べる二十郎は、いつもの七割ほどの美味しさしか感じませんでした
その後も一人で散策を続け、服の衝動買いなどをしてしまいました
いめーじが湧かないという方もおられるでしょうが、私とて一人の女。おしゃれぐらいは楽しみたいのです
貴音「しかし、このみにすかあとは…やはり丈が短過ぎるのでは…」
ちょっとした冒険。響はどのような反応を返してくれるでしょうか?
その後も一人で街を散策し、夕暮れ刻に差し掛かった頃…
千早「『mingos』の新作ブラ『N・A・H』…これさえあれば私も……」
貴音「あの…もし?」
千早「はい?って四条さん!?」
らんじぇりいしょっぷで、千早と遭遇しました
らんじぇりいしょっぷで買い物を済ませ、そのまま立ち話をするのも目立ってしまうので、近くの喫茶店に入ることにしました
千早「あの…どうかこのことは秘密に……」
貴音「わかっています。千早がばすとあっぷぶらを見つめていたなどと、決して……」
千早「声に出して言わないで!!その…あのメーカーは前からお気に入りで…
あ、私はブラックコーヒーをお願いします」
貴音「では、私はごーじゃすせれぶぷりんぱふぇを…」
千早「相変わらずの食欲ね…。ところで四条さん、最近は何か悩みがあるようだったけれど…」
貴音「…やはり、わかってしまいますか?」
千早「ええ、まあ。私もよく一人で背負い込むことがあるから」
貴音「私と千早は似た者同士なのでしょうか。打ち明けましょう。実は…響のことなのです」
千早「我那覇さん?」
貴音「ええ。短い期間なのですが、顔も見れず声も聞けず…心配で心配で仕方がないのです……」
千早「そう…。我那覇さん、電波が届かない場所でのロケだったかしら」
貴音「はい」
千早「私が海外レコーディングに行った時は、毎日春香と連絡を取り合っていたけれど…
今回は場所が場所だから、そうもいかないのね…」
貴音「我ながら情けない話だと思います。響は今頃頑張っているというのに……」
千早「…四条さん。もしかしてあなたは……」
貴音「……お察しの通りです。私は…響のことを好いてしまいました
いえ、愛しているといっても過言ではありません」
千早「ふふっ…こんなところでも似た者同士なのね」
貴音「………?」
千早「私は…春香が好き。聡明な四条さんなら、理由は説明しなくても大体わかってくれると思う」
貴音「はい。痛いほどによくわかります。不安な時、差し伸べてくれた手が誰よりも暖かかった。そうでしょう?」
千早「…ええ。女なのに女の子が好きなんて、おかしいわよね」
貴音「はい。受け入れてくれないやもしれません。しかし、伝えることで楽になるのであれば…」
千早「………そう…よね……」
貴音「ありがとうございます、千早。待ち続ける身は辛いものですが
話を聞いてもらえたことで少し楽になりました」
千早「いいえ、こちらこそ。お互い頑張りましょう!」
千早と別れる頃には、もう夕飯刻になっていました
…やはりお腹が空いてきます。私もそろそろ夕飯の支度をしなくては…
そう思いながら歩いていると、ふと小さな公園が目に入りました
公園で月見など…良いかもしれませんね
ぶらんこに乗り月を見上げると、そこには響の姿がありました
いえ、これは所詮、夢幻…。それでも今の私には、大変な励みになるものです
───ならばせめて、今だけは、この夢を、現として
夢と現の狭間に揺れる恋心は、ただ白く
朧が霞み、夢と現の区別もつかぬままに
ですが、それでも……
貴音「それでも私は、現実の響に逢いたい…。触れていたいのです…!
響……うぅぅ……ひ……ひび…きぃ…!」
花のように咲き誇る、響の笑顔
『あははは!貴音、それ違うぞー!』
鳥のように羽ばたくような、響の舞
『ねーねー、貴音ー!自分のダンス、カンペキでしょっ?』
風のように舞い上がる、すてーじの上の響
『おーい、貴音ーっ!』
今宵のような良き月の夜に…逢いに来てほしいのです…!
『ねー、貴音ってば!聞いてるー?』
貴音「ああ…月だけではなく、とうとう目の前にも響の虚構を作り出してしまいました…」
『キョコウってなんなの?自分はここにいるぞ!』
貴音「…え?」
響「久しぶり、貴音!ううん、ただいま…かな?」
今はまだ八日目…このようなことが、あるはずが…
ですが、目の前の響の姿はあまりにも鮮明で…
貴音「本当に、響……なのですか?」
響「他の誰に見えるさー?珍獣が早く見つかっちゃったから、予定を繰り上げて帰ってきたんだ!」
夢ではなく…現の…本物の響…!!
貴音「ああっ…!響!お帰りなさい!私はずっと、響に逢いたかったのです!!」
たまらずに響を抱き締める
この間隔…たった八日ぶりだというのに、ずいぶんと懐かしい感覚に捉われてしまいました
響「ちょっ、ちょっと貴音ー!胸!胸に顔を押し付けないでーっ!!」
響「あははは!貴音はホントに心配性だなー!」
貴音「響はいけずです…。響は皆と離れて、心細くなかったのですか?」
響「なんくるないさー!自分はカンペキだから、寂しがったりしなかったぞ!」
響は強いのですね…。それに比べて私の心の弱さときたら……
響「…なんて言ったらウソになっちゃうかな。でもさ、自分の中にみんながいたから」
貴音「どういうこと…でしょうか?」
響「心の中で、みんなが自分を励ましてくれたから!あんまり寂しくなかったよ!」
貴音「……やはり、あなたは強い子です。響…」ナデナデ
響「も、もー…そんなことされたら照れちゃうぞ…」
響「……でね…」
突然響が俯き気味になってしまいました。何かあるのでしょうか?
響「その中でも貴音は…一番近くに感じてたから」
………っ!!
響「自分がこっちに来てからはじめての…一番大事な、大好きな友達だから…
…なーんて…ちょっと照れちゃうね…あはは……」
貴音「…ありがとうございます、響。私はあなたのことを思いながらも、心に留めておくことができずにいました
しかし、これからは少しの時間であれば、離れても大丈夫になりそうです」
響「うんっ!自分たちは離れても一緒さー!」
貴音「ふふっ…ふふふふふっ…♪」
響「あははははっ♪」
響「ねぇ貴音。今日はなんか月が綺麗だね!」
貴音「少し意外でした。響は新月の美しさがわかるのですか?」
響「まあ、ちょっとだけだけどね!三日月とかも綺麗だけど、新月は…なんていうか、貴音っぽい?」
貴音「なるほど…それは私が綺麗で好きだと、そう解釈してもよろしいのですね?」
響「うぎゃーっ!なんでそうなるのさ!?」
貴音「…響。夏目漱石の逸話を知っていますか?」
響「え?どんなの?」
貴音「夏目漱石が教師をしていた時『I Love You』の意味を訳せという問題を生徒に投げ掛けました
生徒は直訳で意味を伝えたのですが、漱石は『月が綺麗ですねと言えば、それで意味は伝わるはず』だと。そういう話です」
響「…えっ?さ、さっき自分は貴音に……ええぇぇぇっ!?」
貴音「響の情愛…確かに頂戴致しました」
響「ちょっ、ちょっと待って!自分はそういうつもりじゃ…!」
貴音「『私、死んでもかまいません』」
響「…貴音、自分を怒らせたいの?死んでもいいなんて、冗談でも言うなっ!!」
貴音「…今のは、先程と同じような逸話から引用したものです。
こちらは夏目漱石ではなく、二葉亭四迷の言葉ですが」
響「へ?…どういうこと?」
困惑している顔も、愛らしいものですね…
貴音「響の夏目漱石式のあい・らぶ・ゆーに、私は二葉亭四迷式のあい・らぶ・ゆーを返した…ということです」
響「……それってその…つまり……」
貴音「我那覇響、私はあなたをお慕い申しております。もちろん、友としての響も大好きです
しかし、私はあなたに恋心を抱いてしまった……愛しています、響」
とうとう打ち明けてしまいました。もはや拒絶されようとも、悔いはありません
貴音「……この季節はまだ冷えますね。私はお暇致します。響も風邪を引かぬよう…」
響「待って!!」
貴音「響、あまり長居をすると風邪を引きますよ?」
響「…そんなの卑怯だ…貴音だけ一方的に言い逃げなんて、そんなの卑怯だよ…
自分の答え、まだ言ってないよね?お願いだから、ここで聞いてよ」
貴音「…はい」
もとより拒絶される覚悟は出来ています
この想いを打ち砕いてもらおうではありませんか
響「自分、そういうの経験ないから…まだよくわかんない」
やはり…そうでしたか……
響「でも!貴音のことが大好きだってのはホントだから!だから…」
貴音「…………」
響「だからこれから…貴音をもっと好きになる努力、していいかな?」
貴音「……今、なんと…?」
響「だ、だからぁ…これから改めてよろしくってことだぞ!」
貴音「」プシュー
響「た、貴音?生きてる?貴音ーっ!」
貴音「ああっ…響っ!!」ダキッ
響「きゃあっ!?ちょ、ちょっと貴音ぇ!」
貴音「この想いが届くなどと…夢にも思いませんでした。私は今、すごく幸せです…」
響「た、貴音…苦…し…」
貴音「はっ!?も、申し訳ありません!つい…」
響「ふぅ…貴音の胸に押し潰されるかと思ったさー……」
貴音「ところで響。私たちはもう両想いなのです。その…せ、接吻のひとつでも……」
響「………ごめん。そういうのはまだ…」
貴音「そう…ですか……」
響「自分、貴音とそういうことが出来るように、これからもっと頑張るから…。だから……あのね…」
チュッ
貴音「っ!?」
響「…とりあえずほっぺだけ。今はこれで許してくれるかな?」
貴音「…はい…。私、ふにゃふにゃになってしまいそうです……」
響「もーっ!しっかりしてよね!貴音がしゃんとしてくれないと、自分が調子狂うぞ!」
まるで夢のような出来事。しかしこれは、紛れも無い現実なのですね
先程抱きしめた響のぬくもりが、私に現実を教えてくれました
貴音「ふふっ…嬉しいことが一度に起き過ぎて、まるで魔法のようですね」
響「魔法?魔法ってどんな魔法さー?」
貴音「そうですね…しいて言うのであれば……
月夜の悪戯の魔法、でしょうか」
了
誰もいないっすねぇ~。>>28さんが気付いちゃったんですけど、BREAKERZのステマスレなんっすよぉ~
良い曲なんで、みんな聴いてくださうぃっしゅ☆
ttp://www.youtube.com/watch?v=pn5tnyuHW3g
元スレ
プルルルル…
プロデューサーからの着信が、私を現実に引き戻す
内容は明日の仕事内容の再確認と、当方の事情による時間のずれ
貴音「はい、問題ありません」
そう言って電話を切り、再び夜空を見上げると…月は雲に隠れて見えなくなっていました
貴音「はぁ……」
溜め息は幸せを遠ざけると伝えられていますが、それすらもどうでもよくなるほどに気が滅入ってしまいました
少し早いですが、今宵は床に就くことにしましょう
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:23:01.45 ID:GCKtuy6h0
──────────────────
貴音「海外ろけ…ですか?」
響「うん!動物ワールドの企画で、ブラジルまで珍獣を探しに行くことになったんだ!」
貴音「そうなのですか…。して、帰りはいつ頃に?」
響「貴音~…まだ行ってないのに帰りの予定を聞くなんて気が早いぞ?」
貴音「長期間の海外となると少し心配なのです。響のような華奢な身体では、特に…」
響「うっ…なんだか自分まで怖くなってきたかも…。でもなんくるないさー!自分、カンペキだからね!」
貴音「そうですか…。それで帰りは…」
響「そんなに気になるの!?一応予定だと10日間だけど、ちょっと多めに考えてスケジュールを取ってあるから…長くて二週間ぐらいかな?」
貴音「なんと……!」
響「それで場所なんだけど、結構深いところまで行くみたいでさー
電波が入らなくて連絡できないかもしれないけど、全然平気だから心配しないでね!」
貴音「ああっ…!」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:26:03.46 ID:GCKtuy6h0
──────────────────
貴音「…朝…ですか……」
またあの日のことを思い出してしまいました。おかげで眠れたのは一時間程度でしょうか…
たった二週間…それすら待てぬ自分が情けなくてたまりません
貴音「あれからまだ一週間なのですね……」
離れて始めてわかる事実。私は…響に依存していたようです
彼女の性格、仕草、よく変わる豊かな表情は、いつしか、使命感だけで生きてきた私の心の拠り所となっていました
長い髪を垂らした無防備な後ろ姿…願わくば抱きしめてしまいたい
しかし今は、ただ逢えぬ日々が私を締め付ける………はっ!?
貴音「もう時間が…急ぎましょう!」
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:30:46.83 ID:GCKtuy6h0
ガチャッ
貴音「おはようございます」
亜美「おっはよー!あれ?どうしたのお姫ちん?なんか今日はいつもより遅くない?」
真美「顔もなんだかおやつムードっぽいよー?」
はて…おつやむーど、と言いたいのでしょうか。おやつであれば底なしに入るのですが
貴音「おはようございます、亜美、真美。少し考え事をしていただけですので、問題はありませんよ」ニコッ
真美「んー…気のせいかな?なんか悩んでそうなふいんきだったんだけど」
亜美「ま、悩んでも仕方ないっしょ!そんな悩みなんて吹っ飛ばしちゃおうよ!」
貴音「ふふっ…ありがとうございます。それでは私、プロデューサーと打ち合わせがありますので…」
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:34:15.58 ID:GCKtuy6h0
P「おはよう、貴音」
貴音「おはようございます、あなた様」
P「おはよう貴音。さっそくで悪いんだけど……ん?」
貴音「はて…私の顔に何か?」
P「いや…ちょっと元気が無いような気がしてさ。大丈夫か?」
…それほどまでに疲れて見えるのでしょうか……
貴音「言わずもがな、です。今朝もお茶碗五杯のご飯を平らげてきました」
P「…やっぱり調子が悪いんじゃないか?いつもは七杯は食べるだろ」
貴音「ただの気まぐれです。あなた様、人には秘密の一つや百個…」
P「はいはい、何度も聞いたよ…。とりあえず、今日の仕事は大丈夫そうだな?」
貴音「はい。何一つ問題ありません」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:37:55.38 ID:GCKtuy6h0
P「で、今日のことなんだが、共演のアイドルがインフルエンザでダウンしたらしい」
貴音「なんと…それは安静にしなければいけませんね」
P「それで貴音の持ち時間を増やそうってことなんだけどな…出来そうか?」
病欠の方には申し訳ありませんが、これは好機…
より高みを目指すため、この機会を使わせていただきましょう
貴音「はい。やらせていただきます。皆様方に四条貴音をもっと知って頂きましょう」
P「やってくれるか!よし、じゃあ早速スタジオ入りだ!打ち合わせをしないとな!」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:39:53.81 ID:GCKtuy6h0
その日の仕事は、結論から言えば成功と言えたかもしれません
ですが私はどこか上の空で、そのことをプロデューサーに指摘されてしまいました
それほどまでに私は…響のことを……
明日は休日ですが、今日は早めに床に就くことにしましょう
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:43:44.24 ID:GCKtuy6h0
──────────────────
高木殿に声を掛けて頂き、なし崩し的に上京し、アイドル事務所に入社することになった日のこと
私は765プロの最寄りの駅に着いたものの、情けないことに迷ってしまいました…
貴音「なんと面妖な…これが東京なのですね……」
ふらふらと歩いていた私は、駅の場所も見失い、途方に暮れていました
しかし、その時…
少女「ねぇ、そこの人!」
貴音「せめて携帯電話があれば…。使いこなせずとも持っておくべきでしたか……」
少女「おーい!聞こえてるー?そこの背の高い白髪の人ー!」
貴音「な…なんと無礼なっ!私の髪は白髪などではありません!!」
少女「あ、やっと振り向いてくれた!」ニカッ
彼女は、眩しくなるようなその笑顔を初対面の私に向けていました
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:49:36.27 ID:GCKtuy6h0
少女「ねぇ、道に迷ったんでしょ?実は自分もでさー!あはははは!」
貴音「あなたはいきなり何なのですか…。初対面の相手に尋ねることがそれですか?」
響「ああ、ごめんごめん!自分、我那覇響!沖縄出身!アイドルになるために上京してきたんだ!
はい!これで自己紹介したから、自分たちはもう知り合いだよね?次はキミの番だぞ!」
貴音「…四条貴音と申します。それ以外は秘密です」
響「なっ…秘密ってなんなの!?うぎゃーっ!自分はいろいろ話したのにーーーっ!!」
貴音「我那覇響…このような往来で大きな声を出しては迷惑です。用がないのなら私は去りますが…」
響「ああっ!?ご、ごめんなさい!えっと、自分、道に迷っちゃったから道を聞きたかったんだけど…
あれ?よく考えたら迷ってる人に道を聞いても…んー?」
…それを私に聞かれても…という状況でありました
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:53:59.46 ID:GCKtuy6h0
貴音「生憎ですが、私も先程上京したところ故…。恥ずかしながら私も道に迷っているのです」
響「えっ、やっぱりそうなの!?うーん…どうしよう……765プロ…どこにあるんだろ…」
…今、なんと?
貴音「我那覇響、もしやあなたの目的の場所は、765プロダクションという芸能事務所では?」
響「あ、うん!そうだぞ!自分、そこの社長にスカウトされて、アイドルになるために来たんだ!
もしかしてどこにあるのか知ってる?」
なんと奇遇な…!このような運命の悪戯があるものなのですね…
貴音「いえ…ですが、私もあなたと同じなのです。765プロにて、アイドルになるために上京を」
響「えぇぇっ!?…確かにすっごい美人だし、女優とか言われてもおかしくはないけど……へぇ~……」
…まっすぐに顔を見つめられて容姿を褒められるというのは、まことにくすぐったいものなのですね…
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 00:57:08.04 ID:GCKtuy6h0
貴音「ならばこれも何かの縁。共に参りませんか?」
響「うん!ってそれはいいんだけど、電話番号を聞いた紙を失くしちゃって……」
貴音「それならば私が持っています。ですが、公衆電話が見つからないのです……」
響「えっ?」
貴音「はて?どうかしましたか?」
響「…携帯、持ってないの…?」
貴音「そ、それは……私、機械がどうも苦手で……」
響「あははは!顔赤いぞ!」
貴音「くっ……」
まさか初対面の者に狼狽した顔を見られるとは…穴掘って埋まりたいとはこのことでしょうか……
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:01:13.45 ID:GCKtuy6h0
響「ごめんごめん!ところで携帯なら自分が持ってるぞー?紙貸してよ!」
貴音「あっ…はい、そうですね。お任せします」
響「事務員の人が迎えに着てくれるってさ!良かったね!」
貴音「はぁ…一時はどうなることかと思いましたが、万事解決ですね」
響「ぷっ…あははは!なんかおかしいね!」
貴音「はて…何がおかしいのでしょうか?」
響「いやー、一人だと大変なことでも、二人ならこんなに簡単に話が進むんだって思ったらさ!」
貴音「言われてみれば…確かに……ふふっ…ふふふふっ…♪」
響「ねっ?あはははは!」
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:04:12.88 ID:GCKtuy6h0
プルルル…
響「あ、もしもし!」
一人では出来ないこと、仲間となら出来ることですね…
貴音「ふふっ…早くも仲間が出来てしまいました」
響「ねぇ!そこの角まで車で来てくれてるってさ!」
貴音「では、行きましょうか。……あの…」
響「んー?」
貴音「これからよろしくお願いします。『響』」
響「うんっ!こっちこそよろしくね!『貴音』!」
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:07:59.71 ID:GCKtuy6h0
──────────────────
目が覚めると、まだ夜も明けていない時刻でした
…あの頃の夢…。もう何年も連れ添った親友のようなつもりでしたが、まだ一年と少しなのですね…
夢ならば響に逢えるのに…心から逢いたいと願っても、今は届かない…
心から伝えたい。響のことがとても大切だと
……愛していると、伝えたい…
私の気持ちが友愛ではなく、恋愛の方向に向かい始めたのは、いつの頃からかわかりません
それに気付いたのはたった今。私は遅過ぎたのでしょうか…
月を見上げると、響がそこにいるような気さえします
しかし恥ずかしがり屋の響は、まるで月影に囚われたかのようにその姿を見せてくれません
今宵、新月の闇に潜むように、私はひっそりと枕を濡らしました
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:11:51.38 ID:GCKtuy6h0
朝目が覚めると、そこに響が……いるはずもありません
響が発つ頃には満開であった薄紅色の桜の花も、ほぼ散ってしまいました
寂しくて、寂しくて、響の声が聞きたくて…
思わず携帯電話を手に取るも、やはり電波が届かないとの音声が…
朝露に濡れた窓を開け、ふと虚空に手を伸ばしてみます
ですが、当然ながら響のぬくもりを感じることは出来ません
貴音「…少々、感傷的になり過ぎているやも知れません」
今日は休日。気分転換に出かけることに致しましょう
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:16:00.76 ID:GCKtuy6h0
貴音「よもや、全マシマシ三杯で腹八分目になろうとは…」
憂鬱な気分のまま食べる二十郎は、いつもの七割ほどの美味しさしか感じませんでした
その後も一人で散策を続け、服の衝動買いなどをしてしまいました
いめーじが湧かないという方もおられるでしょうが、私とて一人の女。おしゃれぐらいは楽しみたいのです
貴音「しかし、このみにすかあとは…やはり丈が短過ぎるのでは…」
ちょっとした冒険。響はどのような反応を返してくれるでしょうか?
その後も一人で街を散策し、夕暮れ刻に差し掛かった頃…
千早「『mingos』の新作ブラ『N・A・H』…これさえあれば私も……」
貴音「あの…もし?」
千早「はい?って四条さん!?」
らんじぇりいしょっぷで、千早と遭遇しました
34: >>32 今で多分半分ぐらい 2012/05/09(水) 01:22:26.40 ID:GCKtuy6h0
らんじぇりいしょっぷで買い物を済ませ、そのまま立ち話をするのも目立ってしまうので、近くの喫茶店に入ることにしました
千早「あの…どうかこのことは秘密に……」
貴音「わかっています。千早がばすとあっぷぶらを見つめていたなどと、決して……」
千早「声に出して言わないで!!その…あのメーカーは前からお気に入りで…
あ、私はブラックコーヒーをお願いします」
貴音「では、私はごーじゃすせれぶぷりんぱふぇを…」
千早「相変わらずの食欲ね…。ところで四条さん、最近は何か悩みがあるようだったけれど…」
貴音「…やはり、わかってしまいますか?」
千早「ええ、まあ。私もよく一人で背負い込むことがあるから」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:26:38.13 ID:GCKtuy6h0
貴音「私と千早は似た者同士なのでしょうか。打ち明けましょう。実は…響のことなのです」
千早「我那覇さん?」
貴音「ええ。短い期間なのですが、顔も見れず声も聞けず…心配で心配で仕方がないのです……」
千早「そう…。我那覇さん、電波が届かない場所でのロケだったかしら」
貴音「はい」
千早「私が海外レコーディングに行った時は、毎日春香と連絡を取り合っていたけれど…
今回は場所が場所だから、そうもいかないのね…」
貴音「我ながら情けない話だと思います。響は今頃頑張っているというのに……」
38: >>37 とっぷしーくれっとです 2012/05/09(水) 01:31:45.96 ID:GCKtuy6h0
千早「…四条さん。もしかしてあなたは……」
貴音「……お察しの通りです。私は…響のことを好いてしまいました
いえ、愛しているといっても過言ではありません」
千早「ふふっ…こんなところでも似た者同士なのね」
貴音「………?」
千早「私は…春香が好き。聡明な四条さんなら、理由は説明しなくても大体わかってくれると思う」
貴音「はい。痛いほどによくわかります。不安な時、差し伸べてくれた手が誰よりも暖かかった。そうでしょう?」
千早「…ええ。女なのに女の子が好きなんて、おかしいわよね」
貴音「はい。受け入れてくれないやもしれません。しかし、伝えることで楽になるのであれば…」
千早「………そう…よね……」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:35:44.32 ID:GCKtuy6h0
貴音「ありがとうございます、千早。待ち続ける身は辛いものですが
話を聞いてもらえたことで少し楽になりました」
千早「いいえ、こちらこそ。お互い頑張りましょう!」
千早と別れる頃には、もう夕飯刻になっていました
…やはりお腹が空いてきます。私もそろそろ夕飯の支度をしなくては…
そう思いながら歩いていると、ふと小さな公園が目に入りました
公園で月見など…良いかもしれませんね
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:40:22.73 ID:GCKtuy6h0
ぶらんこに乗り月を見上げると、そこには響の姿がありました
いえ、これは所詮、夢幻…。それでも今の私には、大変な励みになるものです
───ならばせめて、今だけは、この夢を、現として
夢と現の狭間に揺れる恋心は、ただ白く
朧が霞み、夢と現の区別もつかぬままに
ですが、それでも……
貴音「それでも私は、現実の響に逢いたい…。触れていたいのです…!
響……うぅぅ……ひ……ひび…きぃ…!」
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:44:17.74 ID:GCKtuy6h0
花のように咲き誇る、響の笑顔
『あははは!貴音、それ違うぞー!』
鳥のように羽ばたくような、響の舞
『ねーねー、貴音ー!自分のダンス、カンペキでしょっ?』
風のように舞い上がる、すてーじの上の響
『おーい、貴音ーっ!』
今宵のような良き月の夜に…逢いに来てほしいのです…!
『ねー、貴音ってば!聞いてるー?』
貴音「ああ…月だけではなく、とうとう目の前にも響の虚構を作り出してしまいました…」
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:48:07.29 ID:GCKtuy6h0
『キョコウってなんなの?自分はここにいるぞ!』
貴音「…え?」
響「久しぶり、貴音!ううん、ただいま…かな?」
今はまだ八日目…このようなことが、あるはずが…
ですが、目の前の響の姿はあまりにも鮮明で…
貴音「本当に、響……なのですか?」
響「他の誰に見えるさー?珍獣が早く見つかっちゃったから、予定を繰り上げて帰ってきたんだ!」
夢ではなく…現の…本物の響…!!
貴音「ああっ…!響!お帰りなさい!私はずっと、響に逢いたかったのです!!」
たまらずに響を抱き締める
この間隔…たった八日ぶりだというのに、ずいぶんと懐かしい感覚に捉われてしまいました
響「ちょっ、ちょっと貴音ー!胸!胸に顔を押し付けないでーっ!!」
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:52:49.88 ID:GCKtuy6h0
響「あははは!貴音はホントに心配性だなー!」
貴音「響はいけずです…。響は皆と離れて、心細くなかったのですか?」
響「なんくるないさー!自分はカンペキだから、寂しがったりしなかったぞ!」
響は強いのですね…。それに比べて私の心の弱さときたら……
響「…なんて言ったらウソになっちゃうかな。でもさ、自分の中にみんながいたから」
貴音「どういうこと…でしょうか?」
響「心の中で、みんなが自分を励ましてくれたから!あんまり寂しくなかったよ!」
貴音「……やはり、あなたは強い子です。響…」ナデナデ
響「も、もー…そんなことされたら照れちゃうぞ…」
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 01:57:03.22 ID:GCKtuy6h0
響「……でね…」
突然響が俯き気味になってしまいました。何かあるのでしょうか?
響「その中でも貴音は…一番近くに感じてたから」
………っ!!
響「自分がこっちに来てからはじめての…一番大事な、大好きな友達だから…
…なーんて…ちょっと照れちゃうね…あはは……」
貴音「…ありがとうございます、響。私はあなたのことを思いながらも、心に留めておくことができずにいました
しかし、これからは少しの時間であれば、離れても大丈夫になりそうです」
響「うんっ!自分たちは離れても一緒さー!」
貴音「ふふっ…ふふふふふっ…♪」
響「あははははっ♪」
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 02:00:56.04 ID:GCKtuy6h0
響「ねぇ貴音。今日はなんか月が綺麗だね!」
貴音「少し意外でした。響は新月の美しさがわかるのですか?」
響「まあ、ちょっとだけだけどね!三日月とかも綺麗だけど、新月は…なんていうか、貴音っぽい?」
貴音「なるほど…それは私が綺麗で好きだと、そう解釈してもよろしいのですね?」
響「うぎゃーっ!なんでそうなるのさ!?」
貴音「…響。夏目漱石の逸話を知っていますか?」
響「え?どんなの?」
貴音「夏目漱石が教師をしていた時『I Love You』の意味を訳せという問題を生徒に投げ掛けました
生徒は直訳で意味を伝えたのですが、漱石は『月が綺麗ですねと言えば、それで意味は伝わるはず』だと。そういう話です」
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 02:04:55.05 ID:GCKtuy6h0
響「…えっ?さ、さっき自分は貴音に……ええぇぇぇっ!?」
貴音「響の情愛…確かに頂戴致しました」
響「ちょっ、ちょっと待って!自分はそういうつもりじゃ…!」
貴音「『私、死んでもかまいません』」
響「…貴音、自分を怒らせたいの?死んでもいいなんて、冗談でも言うなっ!!」
貴音「…今のは、先程と同じような逸話から引用したものです。
こちらは夏目漱石ではなく、二葉亭四迷の言葉ですが」
響「へ?…どういうこと?」
困惑している顔も、愛らしいものですね…
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 02:08:05.70 ID:GCKtuy6h0
貴音「響の夏目漱石式のあい・らぶ・ゆーに、私は二葉亭四迷式のあい・らぶ・ゆーを返した…ということです」
響「……それってその…つまり……」
貴音「我那覇響、私はあなたをお慕い申しております。もちろん、友としての響も大好きです
しかし、私はあなたに恋心を抱いてしまった……愛しています、響」
とうとう打ち明けてしまいました。もはや拒絶されようとも、悔いはありません
貴音「……この季節はまだ冷えますね。私はお暇致します。響も風邪を引かぬよう…」
響「待って!!」
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 02:10:38.66 ID:GCKtuy6h0
貴音「響、あまり長居をすると風邪を引きますよ?」
響「…そんなの卑怯だ…貴音だけ一方的に言い逃げなんて、そんなの卑怯だよ…
自分の答え、まだ言ってないよね?お願いだから、ここで聞いてよ」
貴音「…はい」
もとより拒絶される覚悟は出来ています
この想いを打ち砕いてもらおうではありませんか
響「自分、そういうの経験ないから…まだよくわかんない」
やはり…そうでしたか……
響「でも!貴音のことが大好きだってのはホントだから!だから…」
貴音「…………」
響「だからこれから…貴音をもっと好きになる努力、していいかな?」
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 02:14:18.62 ID:GCKtuy6h0
貴音「……今、なんと…?」
響「だ、だからぁ…これから改めてよろしくってことだぞ!」
貴音「」プシュー
響「た、貴音?生きてる?貴音ーっ!」
貴音「ああっ…響っ!!」ダキッ
響「きゃあっ!?ちょ、ちょっと貴音ぇ!」
貴音「この想いが届くなどと…夢にも思いませんでした。私は今、すごく幸せです…」
響「た、貴音…苦…し…」
貴音「はっ!?も、申し訳ありません!つい…」
響「ふぅ…貴音の胸に押し潰されるかと思ったさー……」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 02:16:57.21 ID:GCKtuy6h0
貴音「ところで響。私たちはもう両想いなのです。その…せ、接吻のひとつでも……」
響「………ごめん。そういうのはまだ…」
貴音「そう…ですか……」
響「自分、貴音とそういうことが出来るように、これからもっと頑張るから…。だから……あのね…」
チュッ
貴音「っ!?」
響「…とりあえずほっぺだけ。今はこれで許してくれるかな?」
貴音「…はい…。私、ふにゃふにゃになってしまいそうです……」
響「もーっ!しっかりしてよね!貴音がしゃんとしてくれないと、自分が調子狂うぞ!」
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 02:21:22.37 ID:GCKtuy6h0
まるで夢のような出来事。しかしこれは、紛れも無い現実なのですね
先程抱きしめた響のぬくもりが、私に現実を教えてくれました
貴音「ふふっ…嬉しいことが一度に起き過ぎて、まるで魔法のようですね」
響「魔法?魔法ってどんな魔法さー?」
貴音「そうですね…しいて言うのであれば……
月夜の悪戯の魔法、でしょうか」
了
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/09(水) 02:26:31.99 ID:GCKtuy6h0
誰もいないっすねぇ~。>>28さんが気付いちゃったんですけど、BREAKERZのステマスレなんっすよぉ~
良い曲なんで、みんな聴いてくださうぃっしゅ☆
ttp://www.youtube.com/watch?v=pn5tnyuHW3g
貴音「月夜の悪戯の魔法」