1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:06:20.81 ID:u2RBXQ/20
…した。
…まえが…した。
…お前が、…した。
…お前が、殺した。
「っ!!!」
シーン
「…はぁっ!…はぁっ!!」
悪夢から覚め、トイレに駆け込み、戻す。
毎夜続いたその動作。
慣れてしまったらトイレのドアを開けて寝る習慣が付いた。
そんなもの、何の役にも立たないというのに。
そんなこと、何の意味も持たないというのに。
全て、どうでもいい。
「……プロデューサー。」
4: 大体4,5分間隔で投下しますの 2012/05/24(木) 01:10:23.13 ID:u2RBXQ/20
一人、呟く言葉は誰にも届かない。
私は、ひとり。
765プロ所属アイドル如月千早、電撃引退?!
原因は担当プロデューサーの事故死?
そんなニュースが飛び交い、冷めた後。
彼女はメディアから忘れ去られていく。
2度、事故死に関わった少女、如月千早。
彼女と親密な関係のものには不幸が訪れる。
曰く、近付いたものにトゲを刺す、茨姫。
小鳥「おはようございます。社長」
社長「ん?あぁ、おはよう音無君」
小鳥「…」
社長「…」
社長「…ここも、随分、寂れてしまったね」
小鳥「…皆、移籍してしまいましたからね」
社長「彼女たちは強い」
社長「新しい場所でもきっとやっていけるさ」
社長が頭を掻き、笑った。
社長「やはり、この事務所は畳むべきかな」
小鳥「そんなこと無いですよ」
小鳥「ここは大切な場所ですから」
社長「そう、だな。しかし音無くん、君も雇ってくれる場所を探して…」
小鳥「社長」
小鳥「新しいアイドルが入ったときに事務員が居ないと困るでしょう?」
社長「…」
社長「ありがとう。」
社長「…君も、彼に好意を持っていたかね?」
小鳥「とても大切な人でしたよ」
パタン
伏せた写真にはもう居ない『彼』の姿が映っていた。
社長「ところで、如月君はまだ…?」
小鳥「えぇ、ずっと塞ぎこんでるみたいです」
社長「…そうか」
社長(どうしたものか…)
「「「スリルのない愛なんて、興味あるわけ無いじゃない~♪」」」
…
スタッフ「はい、OKでーす!」
貴音「お疲れさまでした」
響「お疲れさまだぞー!」
美希「おつかれさまなの」
監督「いやー星井くんは随分と成長したじゃないか」ジロジロ
監督「…どうだい?今夜、一杯」
美希「…ミキ、おじさん趣味は無いの」
スタスタ
監督「な、なんだと!こら、待て小娘!!」
新P「す、すみません!あとで言っておきますんで」ダッ
監督「…チッ」
スタスタ
美希「…」
新P「駄目じゃないか、星井さん。あんなこと言っちゃ」
美希「…にぃ…」
新P「え?」
美希「別に何でもないの!ミキ、一人で帰るから!」ダッ
新P「あ、ちょっと!」
貴音「もし、」スッ
貴音「申し訳ないのですが、そっとしてあげてください」
響「自分たちだってまだ思い出すことがあるからなー…」
新P「はぁ…?そうですか…?」
貴音(あなた様…)
千早「…」
―電源が切れるように眠り、今日もその夢を見た。
ブロロロロ
P「千早は今日、音楽番組の収録がある。それが終わったら雑誌のインタビューだな」
千早「はい」
P「ふぅ…」
千早「あの、プロデューサー。少し疲れて見えます…」
P「お、そうか?まぁ無理してるとこあるからなぁ」フゥ
千早「私が言えることじゃないですが、ちゃんと休んでくださいね」
P「ありがとな、千早」
P「でもな、皆アイドルとして輝いてる。それが嬉しいんだ、俺は」
P「千早も笑うようになったしな」
千早「プ、プロデューサー!」
P「はは」
バタン
P「んじゃ、昼頃迎えにくるから」
千早「分かりました。何かあれば連絡します」
P「おう、行ってこい千早!」
千早「はいっ」ニコッ
ブロロロロ
―その後の展開を、私は知っている。
爆発音、悲鳴、救急車の音、血だらけのプロデューサー。
病室、泣き崩れる春香、声が出せない、歌も歌えない私。
最後に送り出してくれた貴方は、もう居ない。
―そして。
夢の中で私を責める私。
千早「っ…!」
目覚めたら、私は泣いていた。何度見ただろう。
今頃になって気付いた。…愛していたんだ。あの人を。
千早「眠り姫は王子のキスで目覚める、か」
そんなお伽話を思い出し、自嘲した。
…喉が乾く。水を飲もう。
ー…
千早「?」
今、何か聞こえた気がした。
ニャー…
千早「ドアの方かしら…」
バタン
千早「あ…」
千早「猫、か…」
猫「ニャー」
千早「おいで」
猫「ニャー」
弱々しく鳴くその猫は、確かに生きていた。
千早「あ、足…」
千早「ケガしてるんだ…」
千早「包帯巻いてあげるね」
猫を抱え、家に連れ込む。
猫「」ペロ
その猫に、頬を舐められた。
千早「え?ありがとね」
涙を拭いてくれた、そんな気がして。
猫「ニャー」
「元気を出して」、そう言われた気がして。
ほんの少し私は笑った。
プルルル
律子「…」
ピッ
律子「うーん、やっぱ無理か」
律子(千早…出ないわね…)
亜美「りっちゃーん!」
真美「りっちゃん、りっちゃーん!」
律子「おっと。…亜美、真美!あずささんは見つかった?」
伊織「駄目ね、あずさったらどこほっつき歩いてるのかしら…」
亜美「兄ちゃんなら見つけられるのに…」
真美「…」
伊織「…」
律子「…」
亜美「あっ…ゴメン」
律子「もー!収録押してるのに!!」
真美「真美が出てあげてもいいよー」
律子「あんたは別の仕事よ!!」ビシッ
真美「あだっ?!ぶーぶー!怒るとシワが増えるよ!」
律子「なっ!…ふぅ、とりあえずもう一度あずささんを探しましょうか」
伊織「えぇ!分かったわ!」
亜美・真美「あいあいさー!」
テクテク
あずさ「あらあら、ここは何処かしら~」
あずさ(折角、運命の人かと思ったのに)
あずさ(私の心を持っていくなんて)
あずさ「罪な人ですね~本当」
テクテク
千早「猫って、何を食べるのかしら…」
千早「春香に…いや、駄目だ…いまさら電話なんて…」
ピッピッ
千早「着信…?秋月律子…?」
何だろう。
千早「…」
千早「もしもし」
千早「えぇ…はい…」
千早「えっ?」
千早「…」
千早「私はもう歌手はやりません、それだけです」
千早「…失礼します」
私は、何をしているんだろうか。
彼との約束を果たせないままで。
猫「ニャー」
千早「お腹すいたよね、ちょっと待っててね」
猫「ニャー」
千早「いい子」ヨシヨシ
ガチャ
バタン
長介「ありがとな!真兄ちゃん!雪歩姉ちゃん!」
雪歩「お邪魔しましたぁ…」
真「またね!あと僕は女だよ!」
テクテク
やよい「ありがとうございます、真さん、雪歩さん…」
真「気にしないでよ、僕たちも今日はオフだったしね」
雪歩「私なんかで力になれたら嬉しいですぅ…」
やよい「最近、帰ってくる時間が遅くなってしまって」
真「プロ…マネージャーには家の都合を話したの?」
やよい「それが、ちょっと厳しい人でして言い出しづらいかなって…」
真「そうなのか…一度話してみるべきだと思うよ」
やよい「…そうですね!そうしてみます!」
雪歩「あっ」
真「どうしたの、雪歩?」
雪歩「あれ、千早ちゃんじゃないかな?」
真「本当だ!」
真「おーい、ちはやー!!」
千早「!」ダッ
真「あ、あれ?」
雪歩「行っちゃいましたぁ…」
やよい「どうしたんでしょうか…」
千早「はぁっ!はぁっ!」
恐い。皆と話すのはとても恐い。
責められそうで。お前のせいだ、と言われそうで。
千早「…本屋で読んだことを思い出そう」
千早「とりあえず、子猫用のドライフードをふやかして、だっけ」
千早「牛乳も必要だし…」
ーそうだな。お前らの面倒を見るのはとても楽しいよ
いつかのプロデューサーの言葉を思い出した。
千早「…そうね、私も同じ気持ちだわ」
千早「…あそこのスーパーでいいかしら」
イラッシャイマセー
ガチャ
バタン
千早「ただいま」
猫「ニャー」
千早「今ご飯用意するからね」
猫「ニャー」スリスリ
千早「あっ…」
その仕草は私を慰めてくれるようだった。
千早「猫は人間の気持ちが分かる、だったかしら?」
千早「信用してしまいそうね」
ドサッ
千早「…ふぅっ」
千早「おやすみ、えーと…」
千早「そうだ。まだ、名前を付けてなかったわね」
何にしようかしら。
千早「…プロデューサー」
猫「ニャー」
千早「え?それでいいの?」
猫「ニャーニャー」
千早「ふふ、不思議な子ね」
千早「おやすみ、プロデューサー」
―今日はいつもと違う夢だった。
これはあの人との大切な思い出。
P「千早」
千早「プロデューサー…」
P「こんなところに居たのか。何悩んでるんだ?」
千早「私はこれでいいのか?と思いまして」
P「ふーむ」
千早「自分に自信が無くなったといえばいいでしょうか…」
P「うーん」
P「…正直言うと、初めてお前の歌を聴いた時」
P「この子はとても綺麗な歌声だな、と思った」
千早「はぁ…」
P「なんていうかな、心に響いたんだ」
P「本当に歌が好きなんだな、と感じた」
P「だから、お前は歌え」
P「誰かの心を揺さぶるために」
P「お前自身が歩いていくために」
P「この先、何があっても」
P「歌い続けると約束してくれ」
P「きっとそれで大丈夫だと思う」
千早「…分かりました」
千早「でも今のプロデューサー、今のセリフ」
千早「とても恥ずかしいですよ?」
P「なっ!ちーはーやー。俺はお前を励まそうとだなぁ…」
千早「ふふっ、はははっ」
P「ぷっ、ははっ」
千早「あっ…」
千早「…あんな夢を見るなんてね」
千早「あれ、あの子…」
千早「居ない…?」
部屋の隅でうずくまっている猫を見つけた。
千早「どうしたの?」
猫「ニャ…ニャー…」
千早「…苦しいの?」
猫「…」
明らかに元気が無い。
―茨姫。私は、また不幸にしたのだろうか。
人ではなく、猫までも。
千早「いえ、まだ間に合うわ」
千早「だって、生きてるもの」
守らなきゃ。私が。
千早「…はぁっ!…はぁっ!!」
全力で走る。息が切れる。体が限界を訴えてる。
ずっと活動してなかった体にムチを打って走ってるのだ。
当然だと思う。
こんなことならダンスレッスンをもっと…
ガッ
千早「あっ!」
バタッ
千早「うぅっ…痛ッ…!」
転んだ拍子にすりむいたのだろう。
立ち上がろうとしても、
膝の力が抜けていく。
こんなところで立ち止まっちゃいけないのに。
千早「助けて…誰か…」
千早「…プロ……サ…」
??「あれ?」
春香「千早、ちゃん?」
千早「はる、か…?」
春香「久しぶり!もう、心配したんだからね!」
千早「そんなことより…」スッ
春香「うわ、どうしたのその猫?!は、はやく!早く病院に!!」
千早「え、えぇ…」
春香「とりあえず律子さん呼ぶから!送ってもらおうよ!!」
千早「ありがとう、春香…」
バタン
春香「ちょっ、千早ちゃん!千早ちゃんったら!!」
千早「んぅ…?」
律子「目が覚めたかしら?」
春香「千早ちゃん!」
千早「律子…?春香…?」
千早「あの子は?!あの子はどうなったの?!」
律子「お、落ち着いてよ。ちょっと弱ってたけどもう大丈夫だそうよ」
春香「足の手当てもしてくれるって」
千早「良かった…」
春香「…」
千早「…」
律子「あー…私は仕事あるからもう行くわね」
律子「そうだ、千早。あの話、まだ待ってるから」
千早「…ありがとう、律子」
律子「くすっ。どういたしまして」
千早「…怒ってる?」
春香「…何が?」
千早「…私が居なくってからの色々なこと」
春香「え?別に怒ってないよ?」
春香「千早ちゃんが連絡取れなくなっちゃったときは怒ったけど」
春香「今日、顔を見れてホッとしちゃった」
千早「っ!私は!皆のプロデューサーを!!」
春香「…千早ちゃんが無事で良かったと思うよ」
春香「だって私の大切な友達だし仲間だもん」ニコッ
千早「あ…」
春香「うん。多分、皆同じ気持ちだと思うな」
千早「ごめんね」
千早「…ありがとう」
春香「千早ちゃん」
千早「どうしたの?」
春香「歌は嫌いになっちゃった?」
千早「…いえ。そんなことないわ」
千早「私が持っていたもので」
千早「彼が示してくれたものだもの」
春香「そっか」
春香「私ね、思ったの」
春香「プロデューサーさんが天国に行って、私はいっぱい泣いた」
春香「出来るなら代わってあげたいなんて馬鹿なことも思った」
春香「でもね、そんなこと出来ないんだよね」
春香「過去は変わらない」
春香「だけど、私たちは生きている。皆、一生懸命にね」
春香「やっぱり、歌うべきだよ。千早ちゃんが歌を好きなら」
千早「えぇ…」
千早「私ね、信じられなかった」
千早「プロデューサーが死ぬなんて」
千早「だから、全部自分のせいにして逃げてたんだと思う」
千早「全てから」
千早「仲間である、あなた達からも」
春香「…」
千早「春香」
春香「うん」
千早「私ね、」
千早「頑張って向きあおうと思うの」
春香「千早ちゃん…」
千早「それで、私…」
…
律子「本当に行くのね?」
千早「はい」
千早「英語は得意ですし、向こうならもっと自分を伸ばせそうなので」
律子「ふぅ、分かったわ。私はあなたを応援します」
千早「ありがとう、律子」
社長「困ったらすぐに連絡したまえ」
社長「ははっ!!お金ならいくらでもあるからな!!」
千早「ありがとうございます、社長」
小鳥「向こうにはBL文化とかあるのかしら」
小鳥「とにかく、頑張ってね、千早ちゃん!」
千早「はぁ…?まぁ、ありがとうございます、音無さん」
千早「それと、出発する前に一つやっておきたいことがありまして…」
社長「ふむ、まぁそのくらいなら構わんだろう」
千早「ありがとうございます」
社長「で、いつやるのかね?」
千早「多分、出発する直前に」
…
千早「…」
765プロの前での単独ライブ、観客はゼロ。
申し訳ないけど社長達には1人にしてもらった。
けど、確かにここには2人居る。
千早「すぅっ…」
私はここに立っているし、彼も…
多分、時間に遅れるなんて珍しいと笑うだろう。
ちょっと遅れたけど、
彼の死を受け止めよう。
◆眠り姫◆
作詞:森由里子 作曲・編曲:椎名豪
私は眠り姫。
「ずっと眠っていられたら」
苦しくて、辛くて、切なくて、悲しいこの世界で。
ずっと眠っていられたら良かったこの世界で。
「ふたり過ごした遠い日々」
ちゃんと一人でやっていけるよ、と言うために。
もう心配しなくて平気だよ、と言うために。
「あれは 儚い夢」
全部、心に刻んで、忘れないように、
この歌を唄おう。
「眠り姫」
今、目覚めよう。
~♪
「ん?何だこの歌」
「とても綺麗な声だね」
「うん、感情が伝わってくるっていうか」
「どっかで聴いたことあるんだがな」
「あぁ、俺もだ。なんだっけこれ」
「千早さん…?そっか…」
「応援しておりますよ、千早」
「頑張ってね、千早ちゃん」
「ニャー」
千早「はぁっ」
これでもう心残りはない。
千早「さよなら、プロデューサー」クスッ
千早「さよなら…」
涙を拭って765プロを後にした。
私の道は後には戻れないから。
「行ってこい、千早」
千早「!」
千早「はいっ!」
あの空見上げて。
END
見てくれた人ありがとうございました
眠り姫はいい曲だから聴いて欲しいかなって
元スレ
一人、呟く言葉は誰にも届かない。
私は、ひとり。
765プロ所属アイドル如月千早、電撃引退?!
原因は担当プロデューサーの事故死?
そんなニュースが飛び交い、冷めた後。
彼女はメディアから忘れ去られていく。
2度、事故死に関わった少女、如月千早。
彼女と親密な関係のものには不幸が訪れる。
曰く、近付いたものにトゲを刺す、茨姫。
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:14:38.24 ID:u2RBXQ/20
小鳥「おはようございます。社長」
社長「ん?あぁ、おはよう音無君」
小鳥「…」
社長「…」
社長「…ここも、随分、寂れてしまったね」
小鳥「…皆、移籍してしまいましたからね」
社長「彼女たちは強い」
社長「新しい場所でもきっとやっていけるさ」
社長が頭を掻き、笑った。
社長「やはり、この事務所は畳むべきかな」
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:18:56.11 ID:u2RBXQ/20
小鳥「そんなこと無いですよ」
小鳥「ここは大切な場所ですから」
社長「そう、だな。しかし音無くん、君も雇ってくれる場所を探して…」
小鳥「社長」
小鳥「新しいアイドルが入ったときに事務員が居ないと困るでしょう?」
社長「…」
社長「ありがとう。」
社長「…君も、彼に好意を持っていたかね?」
小鳥「とても大切な人でしたよ」
パタン
伏せた写真にはもう居ない『彼』の姿が映っていた。
社長「ところで、如月君はまだ…?」
小鳥「えぇ、ずっと塞ぎこんでるみたいです」
社長「…そうか」
社長(どうしたものか…)
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:22:24.15 ID:u2RBXQ/20
「「「スリルのない愛なんて、興味あるわけ無いじゃない~♪」」」
…
スタッフ「はい、OKでーす!」
貴音「お疲れさまでした」
響「お疲れさまだぞー!」
美希「おつかれさまなの」
監督「いやー星井くんは随分と成長したじゃないか」ジロジロ
監督「…どうだい?今夜、一杯」
美希「…ミキ、おじさん趣味は無いの」
スタスタ
監督「な、なんだと!こら、待て小娘!!」
新P「す、すみません!あとで言っておきますんで」ダッ
監督「…チッ」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:26:50.27 ID:u2RBXQ/20
スタスタ
美希「…」
新P「駄目じゃないか、星井さん。あんなこと言っちゃ」
美希「…にぃ…」
新P「え?」
美希「別に何でもないの!ミキ、一人で帰るから!」ダッ
新P「あ、ちょっと!」
貴音「もし、」スッ
貴音「申し訳ないのですが、そっとしてあげてください」
響「自分たちだってまだ思い出すことがあるからなー…」
新P「はぁ…?そうですか…?」
貴音(あなた様…)
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:31:04.05 ID:u2RBXQ/20
千早「…」
―電源が切れるように眠り、今日もその夢を見た。
ブロロロロ
P「千早は今日、音楽番組の収録がある。それが終わったら雑誌のインタビューだな」
千早「はい」
P「ふぅ…」
千早「あの、プロデューサー。少し疲れて見えます…」
P「お、そうか?まぁ無理してるとこあるからなぁ」フゥ
千早「私が言えることじゃないですが、ちゃんと休んでくださいね」
P「ありがとな、千早」
P「でもな、皆アイドルとして輝いてる。それが嬉しいんだ、俺は」
P「千早も笑うようになったしな」
千早「プ、プロデューサー!」
P「はは」
バタン
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:35:20.88 ID:u2RBXQ/20
P「んじゃ、昼頃迎えにくるから」
千早「分かりました。何かあれば連絡します」
P「おう、行ってこい千早!」
千早「はいっ」ニコッ
ブロロロロ
―その後の展開を、私は知っている。
爆発音、悲鳴、救急車の音、血だらけのプロデューサー。
病室、泣き崩れる春香、声が出せない、歌も歌えない私。
最後に送り出してくれた貴方は、もう居ない。
―そして。
夢の中で私を責める私。
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:39:42.02 ID:u2RBXQ/20
千早「っ…!」
目覚めたら、私は泣いていた。何度見ただろう。
今頃になって気付いた。…愛していたんだ。あの人を。
千早「眠り姫は王子のキスで目覚める、か」
そんなお伽話を思い出し、自嘲した。
…喉が乾く。水を飲もう。
ー…
千早「?」
今、何か聞こえた気がした。
ニャー…
千早「ドアの方かしら…」
バタン
千早「あ…」
千早「猫、か…」
猫「ニャー」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:44:15.54 ID:u2RBXQ/20
千早「おいで」
猫「ニャー」
弱々しく鳴くその猫は、確かに生きていた。
千早「あ、足…」
千早「ケガしてるんだ…」
千早「包帯巻いてあげるね」
猫を抱え、家に連れ込む。
猫「」ペロ
その猫に、頬を舐められた。
千早「え?ありがとね」
涙を拭いてくれた、そんな気がして。
猫「ニャー」
「元気を出して」、そう言われた気がして。
ほんの少し私は笑った。
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:48:19.24 ID:u2RBXQ/20
プルルル
律子「…」
ピッ
律子「うーん、やっぱ無理か」
律子(千早…出ないわね…)
亜美「りっちゃーん!」
真美「りっちゃん、りっちゃーん!」
律子「おっと。…亜美、真美!あずささんは見つかった?」
伊織「駄目ね、あずさったらどこほっつき歩いてるのかしら…」
亜美「兄ちゃんなら見つけられるのに…」
真美「…」
伊織「…」
律子「…」
亜美「あっ…ゴメン」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:52:35.50 ID:u2RBXQ/20
律子「もー!収録押してるのに!!」
真美「真美が出てあげてもいいよー」
律子「あんたは別の仕事よ!!」ビシッ
真美「あだっ?!ぶーぶー!怒るとシワが増えるよ!」
律子「なっ!…ふぅ、とりあえずもう一度あずささんを探しましょうか」
伊織「えぇ!分かったわ!」
亜美・真美「あいあいさー!」
テクテク
あずさ「あらあら、ここは何処かしら~」
あずさ(折角、運命の人かと思ったのに)
あずさ(私の心を持っていくなんて)
あずさ「罪な人ですね~本当」
テクテク
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:56:58.57 ID:u2RBXQ/20
千早「猫って、何を食べるのかしら…」
千早「春香に…いや、駄目だ…いまさら電話なんて…」
ピッピッ
千早「着信…?秋月律子…?」
何だろう。
千早「…」
千早「もしもし」
千早「えぇ…はい…」
千早「えっ?」
千早「…」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:58:59.03 ID:u2RBXQ/20
千早「私はもう歌手はやりません、それだけです」
千早「…失礼します」
私は、何をしているんだろうか。
彼との約束を果たせないままで。
猫「ニャー」
千早「お腹すいたよね、ちょっと待っててね」
猫「ニャー」
千早「いい子」ヨシヨシ
ガチャ
バタン
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 01:59:52.01 ID:u2RBXQ/20
長介「ありがとな!真兄ちゃん!雪歩姉ちゃん!」
雪歩「お邪魔しましたぁ…」
真「またね!あと僕は女だよ!」
テクテク
やよい「ありがとうございます、真さん、雪歩さん…」
真「気にしないでよ、僕たちも今日はオフだったしね」
雪歩「私なんかで力になれたら嬉しいですぅ…」
やよい「最近、帰ってくる時間が遅くなってしまって」
真「プロ…マネージャーには家の都合を話したの?」
やよい「それが、ちょっと厳しい人でして言い出しづらいかなって…」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:03:25.38 ID:u2RBXQ/20
真「そうなのか…一度話してみるべきだと思うよ」
やよい「…そうですね!そうしてみます!」
雪歩「あっ」
真「どうしたの、雪歩?」
雪歩「あれ、千早ちゃんじゃないかな?」
真「本当だ!」
真「おーい、ちはやー!!」
千早「!」ダッ
真「あ、あれ?」
雪歩「行っちゃいましたぁ…」
やよい「どうしたんでしょうか…」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:07:06.39 ID:u2RBXQ/20
千早「はぁっ!はぁっ!」
恐い。皆と話すのはとても恐い。
責められそうで。お前のせいだ、と言われそうで。
千早「…本屋で読んだことを思い出そう」
千早「とりあえず、子猫用のドライフードをふやかして、だっけ」
千早「牛乳も必要だし…」
ーそうだな。お前らの面倒を見るのはとても楽しいよ
いつかのプロデューサーの言葉を思い出した。
千早「…そうね、私も同じ気持ちだわ」
千早「…あそこのスーパーでいいかしら」
イラッシャイマセー
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:12:00.15 ID:u2RBXQ/20
ガチャ
バタン
千早「ただいま」
猫「ニャー」
千早「今ご飯用意するからね」
猫「ニャー」スリスリ
千早「あっ…」
その仕草は私を慰めてくれるようだった。
千早「猫は人間の気持ちが分かる、だったかしら?」
千早「信用してしまいそうね」
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:16:32.29 ID:u2RBXQ/20
ドサッ
千早「…ふぅっ」
千早「おやすみ、えーと…」
千早「そうだ。まだ、名前を付けてなかったわね」
何にしようかしら。
千早「…プロデューサー」
猫「ニャー」
千早「え?それでいいの?」
猫「ニャーニャー」
千早「ふふ、不思議な子ね」
千早「おやすみ、プロデューサー」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:21:01.65 ID:u2RBXQ/20
―今日はいつもと違う夢だった。
これはあの人との大切な思い出。
P「千早」
千早「プロデューサー…」
P「こんなところに居たのか。何悩んでるんだ?」
千早「私はこれでいいのか?と思いまして」
P「ふーむ」
千早「自分に自信が無くなったといえばいいでしょうか…」
P「うーん」
P「…正直言うと、初めてお前の歌を聴いた時」
P「この子はとても綺麗な歌声だな、と思った」
千早「はぁ…」
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:26:18.98 ID:u2RBXQ/20
P「なんていうかな、心に響いたんだ」
P「本当に歌が好きなんだな、と感じた」
P「だから、お前は歌え」
P「誰かの心を揺さぶるために」
P「お前自身が歩いていくために」
P「この先、何があっても」
P「歌い続けると約束してくれ」
P「きっとそれで大丈夫だと思う」
千早「…分かりました」
千早「でも今のプロデューサー、今のセリフ」
千早「とても恥ずかしいですよ?」
P「なっ!ちーはーやー。俺はお前を励まそうとだなぁ…」
千早「ふふっ、はははっ」
P「ぷっ、ははっ」
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:30:45.41 ID:u2RBXQ/20
千早「あっ…」
千早「…あんな夢を見るなんてね」
千早「あれ、あの子…」
千早「居ない…?」
部屋の隅でうずくまっている猫を見つけた。
千早「どうしたの?」
猫「ニャ…ニャー…」
千早「…苦しいの?」
猫「…」
明らかに元気が無い。
―茨姫。私は、また不幸にしたのだろうか。
人ではなく、猫までも。
千早「いえ、まだ間に合うわ」
千早「だって、生きてるもの」
守らなきゃ。私が。
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:35:00.19 ID:u2RBXQ/20
千早「…はぁっ!…はぁっ!!」
全力で走る。息が切れる。体が限界を訴えてる。
ずっと活動してなかった体にムチを打って走ってるのだ。
当然だと思う。
こんなことならダンスレッスンをもっと…
ガッ
千早「あっ!」
バタッ
千早「うぅっ…痛ッ…!」
転んだ拍子にすりむいたのだろう。
立ち上がろうとしても、
膝の力が抜けていく。
こんなところで立ち止まっちゃいけないのに。
千早「助けて…誰か…」
千早「…プロ……サ…」
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:40:29.08 ID:u2RBXQ/20
??「あれ?」
春香「千早、ちゃん?」
千早「はる、か…?」
春香「久しぶり!もう、心配したんだからね!」
千早「そんなことより…」スッ
春香「うわ、どうしたのその猫?!は、はやく!早く病院に!!」
千早「え、えぇ…」
春香「とりあえず律子さん呼ぶから!送ってもらおうよ!!」
千早「ありがとう、春香…」
バタン
春香「ちょっ、千早ちゃん!千早ちゃんったら!!」
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:44:41.67 ID:u2RBXQ/20
千早「んぅ…?」
律子「目が覚めたかしら?」
春香「千早ちゃん!」
千早「律子…?春香…?」
千早「あの子は?!あの子はどうなったの?!」
律子「お、落ち着いてよ。ちょっと弱ってたけどもう大丈夫だそうよ」
春香「足の手当てもしてくれるって」
千早「良かった…」
春香「…」
千早「…」
律子「あー…私は仕事あるからもう行くわね」
律子「そうだ、千早。あの話、まだ待ってるから」
千早「…ありがとう、律子」
律子「くすっ。どういたしまして」
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:48:41.52 ID:u2RBXQ/20
千早「…怒ってる?」
春香「…何が?」
千早「…私が居なくってからの色々なこと」
春香「え?別に怒ってないよ?」
春香「千早ちゃんが連絡取れなくなっちゃったときは怒ったけど」
春香「今日、顔を見れてホッとしちゃった」
千早「っ!私は!皆のプロデューサーを!!」
春香「…千早ちゃんが無事で良かったと思うよ」
春香「だって私の大切な友達だし仲間だもん」ニコッ
千早「あ…」
春香「うん。多分、皆同じ気持ちだと思うな」
千早「ごめんね」
千早「…ありがとう」
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:51:45.54 ID:u2RBXQ/20
春香「千早ちゃん」
千早「どうしたの?」
春香「歌は嫌いになっちゃった?」
千早「…いえ。そんなことないわ」
千早「私が持っていたもので」
千早「彼が示してくれたものだもの」
春香「そっか」
春香「私ね、思ったの」
春香「プロデューサーさんが天国に行って、私はいっぱい泣いた」
春香「出来るなら代わってあげたいなんて馬鹿なことも思った」
春香「でもね、そんなこと出来ないんだよね」
春香「過去は変わらない」
春香「だけど、私たちは生きている。皆、一生懸命にね」
春香「やっぱり、歌うべきだよ。千早ちゃんが歌を好きなら」
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:55:00.16 ID:u2RBXQ/20
千早「えぇ…」
千早「私ね、信じられなかった」
千早「プロデューサーが死ぬなんて」
千早「だから、全部自分のせいにして逃げてたんだと思う」
千早「全てから」
千早「仲間である、あなた達からも」
春香「…」
千早「春香」
春香「うん」
千早「私ね、」
千早「頑張って向きあおうと思うの」
春香「千早ちゃん…」
千早「それで、私…」
…
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:57:29.45 ID:u2RBXQ/20
律子「本当に行くのね?」
千早「はい」
千早「英語は得意ですし、向こうならもっと自分を伸ばせそうなので」
律子「ふぅ、分かったわ。私はあなたを応援します」
千早「ありがとう、律子」
社長「困ったらすぐに連絡したまえ」
社長「ははっ!!お金ならいくらでもあるからな!!」
千早「ありがとうございます、社長」
小鳥「向こうにはBL文化とかあるのかしら」
小鳥「とにかく、頑張ってね、千早ちゃん!」
千早「はぁ…?まぁ、ありがとうございます、音無さん」
千早「それと、出発する前に一つやっておきたいことがありまして…」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 02:59:37.93 ID:u2RBXQ/20
社長「ふむ、まぁそのくらいなら構わんだろう」
千早「ありがとうございます」
社長「で、いつやるのかね?」
千早「多分、出発する直前に」
…
千早「…」
765プロの前での単独ライブ、観客はゼロ。
申し訳ないけど社長達には1人にしてもらった。
けど、確かにここには2人居る。
千早「すぅっ…」
私はここに立っているし、彼も…
多分、時間に遅れるなんて珍しいと笑うだろう。
ちょっと遅れたけど、
彼の死を受け止めよう。
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 03:02:17.34 ID:u2RBXQ/20
◆眠り姫◆
作詞:森由里子 作曲・編曲:椎名豪
私は眠り姫。
「ずっと眠っていられたら」
苦しくて、辛くて、切なくて、悲しいこの世界で。
ずっと眠っていられたら良かったこの世界で。
「ふたり過ごした遠い日々」
ちゃんと一人でやっていけるよ、と言うために。
もう心配しなくて平気だよ、と言うために。
「あれは 儚い夢」
全部、心に刻んで、忘れないように、
この歌を唄おう。
「眠り姫」
今、目覚めよう。
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 03:05:30.18 ID:u2RBXQ/20
~♪
「ん?何だこの歌」
「とても綺麗な声だね」
「うん、感情が伝わってくるっていうか」
「どっかで聴いたことあるんだがな」
「あぁ、俺もだ。なんだっけこれ」
「千早さん…?そっか…」
「応援しておりますよ、千早」
「頑張ってね、千早ちゃん」
「ニャー」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 03:07:20.78 ID:u2RBXQ/20
千早「はぁっ」
これでもう心残りはない。
千早「さよなら、プロデューサー」クスッ
千早「さよなら…」
涙を拭って765プロを後にした。
私の道は後には戻れないから。
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 03:08:20.35 ID:u2RBXQ/20
「行ってこい、千早」
千早「!」
千早「はいっ!」
あの空見上げて。
END
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/24(木) 03:09:37.54 ID:u2RBXQ/20
見てくれた人ありがとうございました
眠り姫はいい曲だから聴いて欲しいかなって
千早「眠り姫、今私は」