1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 10:54:07.54 ID:42R4nhMT0
高木「ふぅ……。如月君、一体どうなってしまうのやら……」
高木「今はP君やほかのアイドルたちが一生懸命如月君に呼びかけを続けているらしいが、果たして……」
高木「うん?おや、あれは……」
千種『このスケッチブックを云々……』
春香『お母さんが直接渡したほうが云々……』
高木(あそこにいるのは……たしか如月君の母親の、千種さんだったな)
高木(しかし、こうしてみると、本当に如月君とそっくりだねぇ……んん?)
高木「ティンときた!!」ティン
3: アニマス20話ぐらいの話ね 2012/05/13(日) 10:59:47.64 ID:42R4nhMT0
高木「すみません」
春香「あ、社長。どうしたんですかこんなところで……」
千種「あなたは……。いつも、娘がお世話になっております」
高木「やっぱり、千種さんでしたか」
高木「ちょっと、お願いがあるんですが……」
千種「……私に、ですか?」
春香「社長、一体何を……」
高木「如月君の代わりに、アイドルとしてデビューしてください!!」ドゲザー
千種「!?」
春香(えぇぇぇぇぇぇええええ!!?)
千種「冗談は、よしてください。私に、娘の代わりなど務まりません」
高木「そこをなんとか!そこをなんとかお願いします!ほら!この通りです!!」
高木(ほら!天海くんも!ほら!)チラッ
春香(え!?私もですか!?)
高木(来月、地方の撮影、P君と二人きり…どうかね?)チラッ
春香「私からも、お願いします!」ドゲザー
千種「そんな、天海さんまで……」
高木「お願いします!」ドゲザー
春香「お願いします!」ドゲザー
千種「二人とも、こんなところで土下座なんてやめてください……!」
765プロ事務所
千種「……」
P「……で、半ば無理やり連れ込んだんですか、社長」
高木「はっはっは。土下座は日本人の本質にして最終奥義だからね!」
P「春香もいっしょになってなにやってるんだよ……」
春香「いやぁ……ついつられちゃって……」
春香(さっきの話、ちゃんと通しておいてくださいね、社長)
高木(分かっているよ、天海君)
P「ん?二人とも、なにを話してるんです?」
春香「なんでも!なんでもないですよ!!」
千種「……」
千種(話だけでも、というから、つい付いてきてしまったけど……)
千種(これが、あの子のアイドルとしての拠点、765プロなのね……)
小鳥「お飲物をお持ちしました」コトッ
千種「あ、すみません」
小鳥「いえいえ、お気になさらずに」
やよい「小鳥さん、あのひとはだれですかぁ?」
小鳥「千早ちゃんのお母さんよ、やよいちゃん」
やよい「千早さんにそっくりですね!」
千種「あ……」
千種(あのやよいって子、かわいいわね)
やよい「はじめまして、如月……ちだねさん?」
千種「ふふ、千種って書いて、ちぐさって読むのよ、やよいちゃん」
やよい「はわっ!どうもすみません……」ショボン
千種「やよいちゃんは、かわいいわねぇ」
その他一同(母子だ……)
P「で、どうするんですか。千種さんまで巻き込んでおいてからに」
高木「今は、とにかく話をするしかない」
P「話?一体何を……?」
高木「まぁ、私に任せておきたまえ。はっはっは」
P(心配だ……)
高木「千種さん、お待たせしました。どうぞこちらへ」
千種「あ、はい」
高木(君、一応ついてきてくれ)チョイチョイ
P(ええ!僕もですか!?)
千種(いったいどうなるのかしら……)
社長室
高木「ささ、どうぞ。こちらにかけてください」
千種「では、失礼します……」
P「……」
千種「それで、話とは一体……」
高木「ええ、あなたもご存じの通り、今如月君……おっと、あなたも如月でしたね。千早君は、とんでもない窮地に立たされています」
千種「……!」
高木「ゴシップ記事によってあることないことが噂され、世間では千早君の人気は急落、メディアの露出もできない状態です」
千種「……」
高木「そこで、先ほども言った通り、あなたにはアイドルとして活動していただきたい」
高木「千早君の影武者としてね」
千種「!?」
P「社長!一体何を言い出すんですか!」
高木「少し静かにしてくれたまえ、君」
P「……失礼しました」
千種「私が……千早の影武者に?」
高木「はい」
千種「……?」
高木「……」
P「……」
高木「……」
千種「……あの」
P「社長?どうしたんですか急に黙り込んで」
高木(あれ?)
高木「君、ちょっと耳をかしてくれ」
P「ええ」
高木(おかしい……私の目論見では、ここで千種さんの母親魂が炸裂してOKをもらえるはずだったんだが……)ボソッ
P(そんなわけあるはずないじゃないですか!長いこと冷え込んだ家庭環境だったっていうのに)ボソッ
高木(へんだな……。この私がティンと来たのだから、上手くいくはずだったのだが……)
P(……社長、もしかして話ってこれだけじゃないですよね……?)
高木(……てへっ)
P「てへっじゃねえよ!」
千種「」ビクッ
P「あ、すみません。千種さん」
P(話はまかせろって言うから、ちょっと期待してたっていうのに)
P(もうヤダ、この社長)
高木「うぉっほん!では、詳しい話は千早君の担当Pであるこの人から……」
P「丸投げしてんじゃねぇよ!」
高木「君ぃ!社長に向かってその口のきき方はなんだね!?」
P「なんだねじゃないですよ!本当にどうするんですかこの状況!」
千種「あのぅ……」
高木「はい、何でしょう?」
千種「これ以上話がないのなら、私は帰らせてもらいます」
高木「!!ちょ!ちょっと待ってください!!」
高木(君!早くなんとかしないと千種さんが帰ってしまう!引き留めるんだ!!)ボソッ
P(もういいじゃないですか、これ以上話はないんでしょう?)ボソッ
高木(ここで上手く丸めこむことができたなら、今月から給料は2倍に、いや、3倍にしよう!)ボソッ
P(!!……いや、それにしても……)ボソッ
高木(きっと如月君の復活への糸口にもつながるはずだ。なんとか頼むよ…)ボソッ
P(……まぁ、出来ないこともないですが……)ボソッ
高木(なら、よろしく頼む)ティン
P(もうやだこの社長)
P「待ってください千種さん!お願いです」ドゲザー
千種「……!」
P「ほんの少し、千早が復帰するまでのわずかな間でもいいんです!メディアに出て、如月千早は健在だということを誇示していただければ!!」
千種「でも、私はこんな年ですし、それにいまさら娘のことなど……」
P「いまさらなんてことはありません!いえ、きっとこれはチャンスなんです!あなたが、千種さんと千早の、親子のきずなを取り戻す、絶好のチャンスなんですよ!!」
千種「!!」
P「長いこと冷え込んだ家庭環境で育った千早は、母親の愛に飢えているんです!今こそ、千種さんの力が必要なんですよ!」
P「もちろん、我々も全力でバックアップします!ですからどうか……」
千種「……できません」
P「なぜですか!?」
千種「あの子には……私は、母親らしいことなどしてやれませんでした。そんな私が」
P「千種さん!千早は、あなたの大切な、娘じゃないですか……!」
P「亡くなられた弟さんのために、一生懸命に歌ってきた娘さんを、ここでまた見捨てるんですか!!」
千種「……」
千種「…失礼します」
P「千種さん!!」
バンッ!
春香「話はきかせてもらいました!」
やよい「もらいましたぁ!」
千種「!!」
春香「わたしからもお願いします!!どうか千早ちゃんを助けてください!!」ドゲザー
やよい「お願いします!千早さん、このままじゃかわいそうです!!」ドゲザー
千種(やよいちゃん、土下座もかわいい……じゃないわ!)
千種「お願い、やよいちゃん。土下座なんてしないで」
春香(あ、私はどうでもいいんだ……)
P「お願いします!」ドゲザー
高木「お願いします!」ドゲザー
春香「お願いします!」ドゲザー
やよい「お願いします!」ドゲザー
千種「……お願い、やめて!」
小鳥(なにこのカオス空間)
千種「……わかりました」
一同「!!」
千種「もし、本当に、わたしなんかが娘の助けになるのなら……引き受けます」
P「ありがとうございます!」
高木「どうだね君!私の思った通りだろう!」
春香(ここでうまくやらないと、さっきの社長との約束がご破算になっちゃうもんげ!)
やよい「ありがとうございますちだ…千種さん!」
千種(千早は……こんなところで活躍して大丈夫なのかしら?)
商店街
千種(さっきは、早く話を切り上げたかったのと、やよいちゃんの健気さに心を打たれて、つい引き受けるなんて言ってしまったけど…)
千種「影武者なんて、私に務まるはずなんてないわ……」
千種(千早、あなたはどうしてるの?私にはどうしてほしいの?)
千種「私は……いったい……」
765プロ
高木「ふう。これで一安心だな!」
P「何が一安心ですか!千種さんおもいっきり困惑してたじゃないですか!」
春香「でも、一応引き受けるって言ってくれましたし」
やよい「そうです!きっとちだねさんは助けてくれます!」
小鳥「やよいちゃん、ちぐささんね」
やよい「あ!また間違えちゃいました」ショボン
P「はっはっは、やよいはかわいいなぁ……じゃない!こうしちゃいられない!春香!」
春香「はい!」
P「春香は引き続き、千早の懐柔作戦にあたってくれ。作戦名は『アマノイワト、ヒラク』だ」
春香「はい!分かりました!」
高木「君、その作戦名はダサい。なんとかならんのかね」
P「誰のせいでこうなったと思ってるんだよ!」
翌日
P「律子、話は聞いているな」
律子「ええ、一応は……」
律子(なんで私まで巻き込まれてるのよ)
律子「でも、なんでいきなりレッスンスタジオなんかに?千種さんって、ただ影武者として動いてもらうだけでしょう?」
P「それはそうだがな。見た目はスタイリストさんになんとかしてもらうが、もし歌唱力が千早と大きく差があれば、あっというまにボロが出る」
P「影武者作戦がばれてしまえば、かえって千早のイメージダウンにつながってしまう」
P「だから、一応レッスンはうけてもらう。なに、保険だよ保険」
律子「はぁ……」
P「それにしても、遅いなぁ千種さん」
律子(来るわけないわ、きっと。昨日の話を聞く限りではね)
千種「……おくれて、すみません」
P「来てくれた!」
律子(そんな!本当に来るなんて……!)
P「早速ですが、千種さんには、歌のレッスンを受けてもらいます。こちらへ」
千種「はい……」
律子(まぁ、確かに見た目は千早そっくりね。でも、歌唱力はどうかしら?)
千種「……」
先生「本日は、よろしくお願いします」
千種「こちらこそ、お願いします」
P「じゃあ、先生。さっそくレッスンを始めましょう」
先生「ええ、わかりました……」
先生(これが……歌姫如月千早のお母さん……。どうしたものかしら)
P「まずは千早の持ち歌、青い鳥から行きましょう。千種さん、曲のほうは……」
千種「ええ、なんとか。いけると思います」
P「よかった。レッスンスタートと行きましょう!」
律子「……」
千種「♪泣くことならたやすいけれど……」
律子「!!」
律子(驚いたわ……千早にも引けを取らない、素人とは思えない歌唱力……)
P「……」
律子「プロデューサー?」
P(千早の歌唱力は、母親譲りだったか。少しタイプは違うが……)
P(千早のような透き通る高音はない代わりに、加齢による心地よい揺らぎと、温かみのある少し太めの声……)
律子「プロデューサー!」
P「ん?どうした律子」
律子「正直驚きました。蒼い鳥をここまで歌いきることができるなんて」
P「……まだだ。まだ足りないな」
律子「?」
P(それなりに歌唱力はあるが、まだまだ声が硬い。どうにかしてやわらげねば)
千種「終わりました」
先生「……」
P「千種さん、あなたの歌唱力を、みさせてもらいました。十分合格点に達していると思います。ですが…先生?」
先生「まだ喉が開ききっていないようですね」
P「ええ、もう何曲か歌って、喉をならしてみましょうか」
千種「わかりました。……何を歌えばいいでしょう?」
P「何か……お気に入りの曲はありませんか」
千種「お気に入り、ですか……」
千種(お気に入り、お気に入り……。そうね。あの曲にしようかしら)
P「オリビアを聴きながら、ですか。先生、いけそうですか?」
先生「ええ、大丈夫ですよ」
P「なら、お願いします」
先生「♪~~」
千種「♪お気に入りの歌、一人聴いてみるの」
P「!!」
律子「!!」
P「これは、驚いた……!」
律子「ですね」
P(やはり、いきなり千早の歌を歌わせるより、好きな歌を歌ってもらうほうがよかったか)
休憩中
千種「ふう……」
千種(あの歌を歌うのは、もう何年ぶりかしらね……懐かしいわ)
律子「千種さん、これどうぞ」スッ
千種「ありがとう、ございます。……えっと、秋月さん?」
律子「律子で結構ですよ。それにしても、歌がお上手なんですね」
千種「そうですか?もう歌を歌うなんて、何年もしていなかったことなので……」
律子「そうですか……。でも、千早の持ち歌は、ちゃんと歌えるんですね」
千種「!!」
律子「ひとつ、お伺いしてもよろしいですか?」
千種「ええ、構いませんが。何でしょう?」
律子「今日は、どうして来る気になったんですか?別に断ったとしても、だれも責める人などいないのに」
千種「……」
律子「あ!気を悪くしたならすみません!ただ、どうしても気になったもので」
千種「優が……」
律子「はい?」
千種「昨日、夢の中に出てきたんです。亡くなった息子の優が……」
律子「……」
千種(そう、夢に出てきたのは、息子の優、そして、それを相手に、楽しげに歌う千早)
千種(あの頃、まだ私たちの家庭が平和だったころの、幸せな思い出)
千種(すると、優がこちらに駆け寄ってくる。とても悲しそうな顔をして)
優(お母さん!おねぇちゃんを助けてあげて!僕、またおねぇちゃんの歌が聴きたいよ!)
優(お願い……お母さん……!)
千種「……くっ」
律子「大丈夫ですか?」
千種「ええ、大丈夫。ちょっと昔のことを、思い出してしまいまして……」
律子「……そう、ですか」
P「千種さん、いいですか?もうそろそろ、レッスンを再開したいと思います」
千種「はい」
レッスン終了
千種「本日は、ありがとうございました」
P「お疲れ様でした。千種さん、この話を引き受けてくれて、ありがとうございます」
千種「いえ、構いませんよ。流れとはいえ、私が決めたことなんですから」
P(こうしてみると、千種さんは綺麗な人だ)
P(千早も、将来はこんな感じになるんだろうか?)
千種「プロデューサーさん?私の顔に、なにか?」
P「い、いえ!何でもありません……それでは、また」
千種「ええ」
数日後
P「千早のほうは、どうなんだ、春香」
春香「今日も、あまり取り合ってはくれませんでした。でも、あのスケッチブックも新曲も、一応渡せましたし」
P「そうか……なら後は、千早自身に任せるしかないな」
P「千種さん、いいですか?」
千種「ええ」
P「これから、765プロ定例ライブの宣伝のために、ラジオ出演することは伝えてありましたよね」
千種「はい……なんでも、公開収録だとかで」
P「そうです。まぁ、無理にしゃべることはありません。ただ、その姿をみんなの前に見せてください」
千種「ですが……」
P「なんです?」
千種「なんでわたし、ツインテールになんかされたんでしょう?」
P「それは……」
高木「私の、独断により決定した!」
P(ひっこんでろよ社長……)
高木「あえて、普段の格好とは違う格好にすることによって、違和感を少しでも軽減することが目的だ。けっして、私の趣味ではない」
P「……」
千種「でも、私もいい年ですし、この格好はちょっと……」
やよい「そんなことありません。ちだ…千種さんとっても似合ってますよ!」
千種「そう、かしら」
春香「そうですよ!千早ちゃんもきっとよろこんでくれます」
P「さ、さぁ!早いこと収録にいきますか!」
P(千種さんの決意が揺らぐ前に、なんとか済ませなければ……)
収録現場
聴衆「おい、あれ、如月千早じゃないか?」
聴衆「あ!ほんとだ!ちーちゃんついんて!!」
聴衆「なんか雰囲気変わったな。スキャンダルのあとのせいかもしれないけど」
千種「///」
千種(は……恥ずかしい……。ただでさえこれだけの人前に出ているのに……)
P(よし!ファンも上手いことだませているな!)
P「それじゃあ収録、お願いします。春香、やよい、たのんだぞ!」
春香「はい!任せてください!」
やよい「うっうー!がんばりますよー!」
千種「やよいちゃん、おばさんのフォローお願いね……」
やよい「わかりましたちだねさん!」
千種「ふふ、やよいちゃんかわいいわぁ」
春香(あ、私やっぱりスルーなんだ……)
収録後
千種「///」
P「千種さん?大丈夫ですか」
千種「とても……恥ずかしかったです……///」
P(羞恥に震える熟女……これはたまらん……)
P「…じゃなかった!みんなお疲れさま!」
春香「お疲れ様です!ほんと、すごく疲れましたよ!」
やよい「ほんとですぅ……みんなでちだ…千種さんを質問攻めにしてましたよね」
P「なんにせよ、これで当初の目的は果たしたわけだ。如月千早は健在だってな」
P「よし、それじゃあ事務所に戻ろうか。さぁ、みんな車に乗った乗った」
ジー
?「畜生……。どうして如月千早が復帰してるんだ……!」
765プロ定例ライブ当日
真「プロデューサー。千早は……」
P「今は、千早を信じるしかない」
春香「ねえ!いつもみたいに円陣組もうよ!ほら、千種さんも……」
千種「……」
真(なあ、雪歩。どうして千種さんまでここにいるんだ?)
雪歩(私にもわかんないよ……)
響(しかも、ちゃんとステージ衣装まで着てる……)
貴音(面妖な……)
美希(千早さんのお母さん……ふるえてるよ……)
千種(この年でミニスカートだなんて……恥ずかしい……)
春香「765プロー……」
タッタッタッタ
真「!……ちょっとまって!」
千早「はぁっ…はぁっ…すみません、遅くなりまし……た……?」
千種「……千早……」
一同「……千早……!!」
P「千早……よく来てくれたな!」
千早「プロデューサー。なんで、あの人がここに……」
春香「千早ちゃん、これはね……」
P「その話はあとだ……千早、いけそうか」
千早「分かりません……でも……わたしせめて……春香」
春香「千早ちゃん…」
あずさ「さあ、手を」
春香「それじゃあいくよ、765プロー……ファイトー!!」
一同「おー!」
千種「……」
千種(よかった……千早……。これで私は……)
千早「春香……私、春香にひどいことを……」
春香「うわぁぁ!そういうのなし!なし!」
春香「それに私も、千早ちゃんのお母さんのことは、内緒にしてたし……」
千早「……わたしも驚いたわ。まさか、私の影武者をやっていたなんて」
春香「びっくりするよね。社長が急に言い出して……」
千早「……でも、私ももう一度歌いたいと思ったの。みんなの作ってくれた歌詞と、優の絵をみたとき」
千早「もう一度、やってみようと思えたの」
春香「……うん」
千早「ありがとう……」
P「千早、もうそろそろ出番だぞ。準備はいいか」
千早「はい!」
伊織「いってらっしゃい」
千早「ええ……」
ワアアアアアアアア
観客「おお!!」
観客「えぇ!!」
観客「千早ちゃんだ!!」
観客「大丈夫なのか……?」
千早「………」
♪チャラチャンチャンチャンチャン(伴奏)
P「……」
律子「……」ゴクリ
真「……」
美希「……」
あずさ「……」
伊織「……」
亜美「……」
春香「……」ギュッ
千種「……千早……!」
千早「すぅー……」
千早(!)
(キキーッ!)
千早(優……)
千早「はぁっ…!くっ……うぁ……」
ザワザワザワ
律子「千早……あの子、やっぱり……」
律子「すみません、一度、中断を……」
千種「…千早!」
春香「行きましょう、千種さん!」
律子「は、春香!それに千種さんも!ちょっと!!」
P「まってくれ!このまま……続けさせてください!!」
P(仕方ない……千種さんまで飛び出して行ってしまったが)
千早「………」
千早(やっぱりもう…私には……)
春香「♪ねぇ…いっまー……」
千種「♪見つめているよ…離れてても……」
観客「おい!あれ!!」
観客「千早ちゃんが……二人!?」
観客「おいおい、どうなってんだよ!」
観客「でも、後から出てきたほうの千早ちゃん、なんかエロいな……」
観客「ああ、まるで未亡人の醸し出す言いようのないエロス……」
観客「双子か…?」
真・美希「♪もう涙を拭って微笑って」
雪歩・やよい「♪一人じゃない どんな時だって」
伊織・あずさ・亜美「♪夢見ることは生きること」
貴音・響・真美「♪悲しみを超える力」
千早「……みんな!?」
一同「♪歩こう 果てない道」
千種「千早」
千早「!?」
千種「あなたには、見えるかしら。あそこで、あなたの歌を待ち望んでいる、優の姿が」
千早「……」
千種「きっと、悲しんでいるわ。あなたのうたが聴けなくて。小さいころのあなただって」
千種「千早、あなたならきっとできるわ」
千早「優……!」
優(お姉ちゃん、歌って!)
ロリ千早(ほらっ)
千早「………すぅー……」
テンテンテン(伴奏)
千早「♪歩こう 果てない道 歌おう 天を超えて」
千種「!!」
P・律子「やった!」
一同「!!」
千早「♪想いが届くように 約束しよう 前を向くこと Thank you for smile」
ウワアアアアアアアアア!!!
ライブ終了後
千種「………」
千種(これで、よかったのよね、優、千早)
千種(もう、私は必要ないわね。これで……)
千早「あの……!」
千種「!!」
千種「千早……」
千早「……今日は、ありがとう」
千種「………」
千早「私が、ふがいないばっかりに、春香や、みんなにも心配かけてしまって……」
千早「そして……あなたにも。お母さん」
千種「!!」
千種「ごめん、なさいね……。わたし、悪い母親で……」
千早「ううん、もういいの。私、もう大丈夫だから」
千早「うぅぅ……」
千種「千早…!」
千早「お母さん!」ダキッ
千種「千早、よく頑張ったわね、本当に、つらかったのよね……」ホロリ
千早「う…グスッ……ふあぁ……」
P「あ、千早、千種さ……!!」
P(今は、邪魔をしないほうがいいか……)
プルルルルルル
P「おっと、誰からだ……社長?」
P「はい、もしもし……えぇ!?」
765プロ 事務所
善沢「本当に、いいんだね。千早ちゃんも、そしてお母さんも」
千種「ええ」
千早「プロデューサーと話し合って決めたことですから……!」
善沢「それじゃあ、取材を始めるよ。つらいかもしれないけど、頑張ってくれ」
千早・千種「はい」
同時刻、社長室
P「どうやら、始まったようです」
高木「ああ。しかし、如月君や千種さんも、よく取材を受ける気になってくれたね」
P「ええ、これから、今までどおりに活動していくためには、必要ですから」
P「話題になっているんですよ。もう一人の如月千早の正体はいったい誰なのかって」
高木「まぁ、そのことを見越して、この前の話を持ちかけたんだがね」
P「本当に驚きましたよ。まさか、千種さんを影武者としてではなく、765プロの歌手としてデビューさせようだなんて」
高木「はっはっは。私の勘が言っているのだよ。千種さんには、才能があるとね」ティン
P(この人本当に勘だけは鋭いんだよなぁ。やってることはめちゃくちゃなのに)
ライブ終了後のこと
千種『………』
千早『……』
P『もう、落ち着きましたか』
千早・千種『!!』
P『千早も、千種さんも、今日は本当にお疲れ様でした』
P『これで、もう千早も、完全に復活したのですが……』
千早・千種『?』
P『実は、千種さんに少しお話が……』
千種『何でしょう?』
千種『私が、歌手デビュー!?』
千早『えっ?』
P『社長からの連絡で、ぜひ、千種さんに765プロで活躍していただきたいと』
千種『そんな……私は』
千早『それも、悪くないわね』
千種『千早……!?』
千早『私のふりして、本当はちょっと楽しかったんじゃない?』
千種『そんなことは……私は、恥ずかしくて恥ずかしくてとても……』
千早『そう?それにしても似合ってるわよ。そのミニスカートの衣装』
千種『!!』
千早『ふふ、いいじゃない。私たち親子の仲直りのしるしに、ね。きっと優も喜ぶわ』
千種『もう……優の名前を出されたら、私にはもう逆らえないじゃない……』
千早『ふふふふ…』
社長室
コンコン
善沢「取材、終わりました」
P「二人とも、大丈夫でしたか」
善沢「ああ。なんとか、取材を乗り切ってくれたよ」
高木「そうか……。善沢君も、大変だったろう」
善沢「なぁに。これが俺の仕事だよ。なんてことないさ」
善沢「それに、あんなゴシップを放ってはおけんよ」
P「あの記事を書いたのは確か……」
善沢「ああ、最近961プロで雇われていた、渋沢だ」
高木「なに?あの渋沢君が……一体どうして」
善沢「私にもわからんが……。きっと、やつなりの事情があるんだろう」
千種「千早……。大丈夫?」
千早「うん。お母さんこそ、離婚してそんなにたっていないのに、こんなにつらい取材に巻き込んでしまって……」
千種「いいのよ。私は、千早の母親なんだから。私が、守ってあげなければいけなかったのよね」
千早「お母さん……」
千種「ふふ、なぁに、千早」
千早「!……なんでもない。ただちょっと呼んでみただけよ」
千種「あら、すっかり甘えん坊さんねぇ」
千早「もう!」
小鳥(親子のきずなって、いいわぁ……。私もあんなふうにできるようになるのかしら……)
千種「ちょっと、社長さんにあいさつしてくるわね。これから打ち合わせもあるし」
千早「うん。わかった」
千種「失礼しま……」
高木『あの渋沢君が…一体どうして』
善沢『私にもわからんが……。きっと奴なりの事情があるんだろう』
千種(何か込み入った話でもしているのかしら……今は邪魔しないほうがよさそうね)スッ
善沢『私と渋沢は、かつて同期入社したライバル同士だったんだ』
千種「!!」
千種(渋沢……あのゴシップ記事を書いた記者ね…!)
千種「失礼します」コンコン
高木「ああ、はいりたまえ」
千種「あの、失礼だとは思いますが……」
P「あ、打ち合わせの話ですか?それでしたら……」
千種「いえ、そうじゃないんです」
P「?」
千種「善沢さん、もしよかったら……渋沢という方のこと、もっと詳しく教えていただけませんか……?」
善沢「!!」
善沢「いや、この話はちょっと……」
千種「お願いします。娘を苦しめた張本人について、詳しく知りたいんです」
善沢「………本当に、いいんですか」
高木「?」
30分後
千早「お母さん、遅いわね」
小鳥「千早ちゃん、お母さんのことが心配?」
千早「別に私は…そんなんじゃありません」
小鳥「照れなくてもいいのに。甘えたいときには、精一杯甘えちゃえばいいのよ」
千早「音無さんまで……わたしって、そんなに甘えん坊に見えますか?」
小鳥「そんなことないわ。とってもかわいらしい女の子だなぁって」
千早「かわっ///」
小鳥「私にも、こんなふうにかわいらしかった時期があったのかしらねぇ……」
さらに30分後
千種「失礼します」ガチャ
千早「……お母さん、大丈夫?顔色悪いわよ?」
千種「ええ、私は、大丈夫だから……」
千種(あんな話……絶対千早には伝えられないわ……)
千種「さ、今日はもう帰りましょうか。どこかに食べに行こうかしらねぇ」
千早「あ、それなら、行きたいところが一か所あるんだけれど」
千種「行きたいところ?」
千早「うん。四条さんに勧められてたラーメン屋さん。私まだ一回も行けてなくて……」
千種「じゃあ、そこにしようかしらね」
しばらく後
P「千種さんがデビューシングルを出して、今日はランキングの発表日か。緊張する」
春香「どうなってるんでしょうね、プロデューサーさん」
P「俺にもわからん……。一応、売り込みは全力を尽くしたつもりだが……はたしてどうなるものか」
美希「千早さんのお母さんなら、きっと大丈夫だよ。だって、あの千早さんのお母さんだよ?」
千早「美希は楽天的でいいわね……」
美希「私は千早さんを尊敬してるの。だから、きっと大丈夫だって信じられるよ」
千早「美希……」
P「それじゃあ、早速ランキングを確認しようか」
P「すごいな…こりゃぁ」
春香「うわぁ……」
千早「?」
美希「ハニー。美希にもよく見せてよ」
P「デビューシングルが……初登場3位だ!」
千早「!!」
美希「すごいね!やっぱり千早さんのお母さんはすごいの!」
春香「千種さんが今ここにいたら、今頃どうなってたのかなぁ?」
千早「間違いなく、倒れてたでしょうね」
P「しかし、こう言っちゃなんだが、遅咲きの歌手がこのランキング……奇跡だよ」
P「やっぱり、オリジナル曲じゃなくてカバー曲にしたのが正解だったのかなぁ」
千早「お母さんは、その歌が大好きでしたから……」
P「ああ、確かにいっていたな。『オリビアを聴きながら』がお気に入りだって」
千早「私も、小さいころからお母さんの鼻歌を聴いては居たんですけど、こうしてみると……」
高木「鼻歌ですませなくてよかっただろう!」
P「あ、社長。お疲れ様です。社長の勘、あたりましたね」
高木「そうだろう。私の勘は、君たちの活躍ですでに実証済みだからね」
春香「社長ってすごいですねぇ」
春香(ところで社長、あの話、ちゃんと覚えてますか?)ボソッ
高木(うん?あの話とは?)ボソッ
春香(ほら、プロデューサーさんと二人っきりで撮影に行けるっていう、あの話ですよ)ボソッ
高木(ああ、あの話か。すまないねぇ。千種さんの営業のために、P君の予定に入れてしまってね。その話はなしだ)ボソッ
春香「そんなぁ……」ショボン
P(千種さんのデビューシングルは、その曲の知名度も手伝って、最終的にランキング1位にまで上り詰めた)
P(千早もアイドルジャムでの活躍により、世間に流れていた千早の暗いうわさは、徐々に消えていった)
P「まあ、善沢さんの書いた記事のおかげもあるんだが」
P(そういえば、千種さんはあの善沢さんの話を聞いてから、一体どう思っているのだろう)
P「特に変わったところは感じられないが、少し心配だな」
千種「はい?どうしたんです?」
P「いえ!なんでもありませんよ!」
千種「それなら、いいのですが……」
P「それより千種さん。それに千早も、これから、だいじょうぶですか」
千種「ええ、私は大丈夫です」
千早「私も大丈夫です」
P「なら、行きますよ。初の親子ライブ、張り切っていきましょう!」
ライブ終了後
P「いやぁ、今日のライブ、無事終了しましたね」
千早「まさか、私もこうしてお母さんと一緒にライブをやれるなんて思いもしませんでした」
千種「ふふ、いっしょにデュエット出来る日が来るなんてねぇ」
千早「ふふふふ」
P(千種さんも千早も、こんなに柔らかい笑顔を浮かべているなんて。出会ったころは想像もできなかったな)
P「それじゃあ、打ち上げまでまだ時間はありますから、少し待っていてください。いろいろと準備がありますので」
千早「わかりました、プロデューサー」
千種「ええ」
ジー
?「見つけたぞ……如月親子だな…へへ」
千種「!?」
千早「お母さん?どうしたの?」
千種「ううん、何でもないわ……千早、ちょっとここで待っていてちょうだい」
千早「うん、別にいいけど……」
千種「絶対にここから動かないで。お願いね」
千早「?」
ライブ会場裏
千種「……おかしいわね。さっきは変な視線を感じたのだけど……」
千種(気のせい……だったのかしら)
?「おい!お前!如月千早だな?」
千種「!!」クルッ
?「っと……。よく見たら違うな。母親のほうか」
千種「……あなたは……!」
?「お前ら親子のせいで俺の計画はめちゃくちゃだ!どうしてくれる!?」ガバッ
千種「くっ」グラリ
千種「くっ……!この……。離しなさい!」グッ
?「はっ!お前らのせいだ!お前らのせいで……!」グググッ
千種「あなた…渋沢って記者でしょう?」
渋沢「!!」
千種「やっぱり……。ずっと気になっていたのよ……」
渋沢「なに!?一体何の話だ!?」
P「いやあ、おまたせ……って、あれ?千早だけか?」
千早「ええ、お母さんならさっきどこかへ……」
P「そうか……。ちょっと探してくる。千早も来るか?」
千早「ええ。そうですね。私も、付いていきます」
P「よし、行こう」
P(なんだか嫌な予感がする……まずいな)
千種「ぐっ」グググ
渋沢「このぉ……」グググ
P「!!千種さん!」
渋沢「!!」
千早「お母さん!?このっ!」ダッ
渋沢「ぐおおっ」ドサッ
P「千早!そのままだ!今取り押さえる!!」
渋沢「畜生!お前らは……!お前らはいつも俺の邪魔をしやがって…!!」
P「千早!人を呼んで来い!このまま警察へ……」
千種「待って!」
P・千早「!?」
P「千種さん、こいつはあなたを……」
千種「いいんです。私は、ずっと渋沢さんと話をしたいと思ってました」
P「!!」
千早「お母さん……」
渋沢「俺に一体、何の話があるんだよ!?」
千種「……あなたが追っていた、大物政治家の話です」
渋沢「!?おまえ、どこでその話を!!」
P「いいんですか?千種さん。ここには千早が……」
千種「千早、ごめんなさいね。今まで黙っていて」
千早「お母さん…?一体何を……」
千種「これから、優が死んだときの話をしなければならないわ……」
千種「あなたの書いた記事。私も読ませてもらいました」
渋沢「……それがなんだよ」
千種「優が死んだ事故の詳細、それに家庭崩壊までの流れ……妙にリアルに書かれていました」
渋沢「……」
千早「………」
千種「あなたは、事故現場にいた。そうですね」
渋沢「……!!どうしてそれを知ってるんだ」
千種「善沢さんから聞いたんです」
渋沢「善沢め……余計なことを……」
千早「お母さん、一体どういうことなの!?」
千種「本当にごめんなさいね、千早。すこし、話を聞いてほしいの……」
千早「……」
P「………」
善沢『かつて、俺と渋沢は、互いに出版社で活動していた、ライバルのような存在だった』
善沢『俺も渋沢も、でかいスクープを追ってやっきになっていたよ……』
善沢『そんななか、ある大物政治家の汚職事件が世間をにぎわせるようになった』
善沢『正義感が人一倍強かった渋沢が、そのスクープをすっぱ抜いたんだよ』
千種『……そんな人が、なぜゴシップ記事の記者なんかに……』
善沢『干されたんだ。その政治家のスクープのせいでな』
善沢『奴は……渋沢はただ正義感が強すぎるのが欠点でなぁ。それからも、ひたすらその政治家のスクープを追い続けていた』
善沢『おかしな話だろう?真実を伝えるのが我々報道の仕事だと思っていたのに、そうじゃなかったんだ』
善沢『都合のいい情報を都合のいいように流す。それが、出版業界の常識になっていたんだよ』
善沢『いよいよ渋沢が邪魔になってきたその大物政治家は、ついに渋沢を消そうとし始めた』
善沢『脅迫文、怪文章を奴のもとだけでなく、家族や親せきにまで送りつけ、ついには奴の家は放火で燃え落ちてしまった』
善沢『幸い、その時点でまだ死人は誰も出ていなかった。だが、その脅迫に耐えかねて、渋沢家は完全に家庭崩壊の状態に追いやられてしまった』
高木『そんな……話が』
P『……』
千種『……』
善沢『そんなある日、運命の日が訪れた。そう。あの優君が交通事故に巻き込まれた、あの日だよ』
善沢『あの車は、大物政治家が渋沢を始末するために手配した車だった』
善沢『交通事故に見せかけて渋沢を始末しようとしたとき、そこに運悪く優君が居合わせた』
善沢『本当に、不幸な事故だったと思う。当の目的だった渋沢は逃げ延び、そして優君は亡くなってしまったんだ……』
千早「そんな…そんな話って……」グラリ
P「千早……!」
渋沢「………」
千種「あなたは……どうして、そんな目にあいながら、千早のゴシップ記事を書いたんですか?」
千種「私たちと同じ、家庭崩壊の目にあいながら、どうしてあんなひどい記事を……」
渋沢「金が、必要だったんだ……」
P「そんなことで……」
渋沢「そんなことだと!?何も事情を知らないお前が、何を言う!!」
渋沢「別れた女房から、手紙がきたんだよ……」
P「手紙?」
渋沢「俺の一人息子がな、病気になったんだとよ。その治療費が、どうしても払えないって言うんだ」
渋沢「途方にくれていた俺に、黒井社長が話を持ちかけてきたんだ。『765プロのゴシップを書け。金は好きなだけ払う』ってな」
渋沢「俺は必死になって書きあげてやったさ。黒井社長が満足するように」
千種「それで……あんな記事を……」
渋沢「それが!それがだよ!貴様ら親子のせいで、俺の書いた記事はパァになっちまった」
渋沢「黒井社長にも見捨てられ、もらえるはずだったギャラはびた一文手に入れられなかったぜ!」
渋沢「だから、お前ら親子を脅してなんとか金を手に入れようとしてたんだ……!」
P「たとえそうだとしても……お前がやったことは…」
千種「いくら、必要なんですか……」
渋沢「なに!?」
千種「今、私はこうして芸能界で活躍したおかげで、多少なりともお金を持っています」
千早「お母さん……」
千種「いくら……必要なんですか……」
渋沢「1000万円だよ…1000万円!」
千種「分かりました」
渋沢「!?」
千種「それでよければ……私が全額出しましょう」
渋沢「なんでだ……なんでそこまでする!?」
千種「あなたの家庭は……まだやり直すことができます。このことをきっかけにして」
渋沢「……そうか」
千種「ええ、私たち親子がやり直すことができたんです。きっとあなたもそうできるんじゃないでしょうか」
渋沢「すまねぇ。すまねぇな……」
P(なにこの状況……)
P(結局、千種さんは自分のギャラをすべて渋沢にわたしてしまった)
千種「いいんです。これで、渋沢家が、また一つになれるのなら……」
P(そう言って、千種さんは気にしていないようだった)
P(しかし、千早はどうやら混乱しているらしい。無理もない。優君の死に、そんな事実が隠されていたなんて)
P(でも、きっと大丈夫だろう。今の千早には、765プロのみんなも、千種さんもそばにいるのだから)
P「それじゃあ千種さん、行きましょうか」
千種「はい、プロデューサーさん」
P(いまも、千種さんは細々と歌手活動を続けている。遅咲きの歌手だが、担当になった以上、きっちり責任を持たなければな)
P「それじゃあ社長、行ってきます」
高木「うん、頑張ってきたまえ」
バタン
高木「ふう。みんながしごとに出ていると、静かだなぁ。そうは思わんかね、音無君」
小鳥「そうですねぇ。ちょっとさみしくはありますけど、しかたないですよね」
高木「はっは、そうだなぁ」
コンコン
高木「うん?誰か来客かね?」
?「あのう……」
小鳥「はい、どちらさまでしょう……」
春香の母「わたくし、天海春香の母ですが……あの子、忘れ物をしてしまったようで……」
高木「あなたは……」ティン
高木「ティンと来た!お母さん!765プロでアイドルやりませんか!?」
おわれ
疲れた。ほんとはBBA48見たいのが書きたかったのに。あと、なんかずっと支援してくれてた人ありがとう
元スレ
高木「すみません」
春香「あ、社長。どうしたんですかこんなところで……」
千種「あなたは……。いつも、娘がお世話になっております」
高木「やっぱり、千種さんでしたか」
高木「ちょっと、お願いがあるんですが……」
千種「……私に、ですか?」
春香「社長、一体何を……」
高木「如月君の代わりに、アイドルとしてデビューしてください!!」ドゲザー
千種「!?」
春香(えぇぇぇぇぇぇええええ!!?)
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:05:41.96 ID:42R4nhMT0
千種「冗談は、よしてください。私に、娘の代わりなど務まりません」
高木「そこをなんとか!そこをなんとかお願いします!ほら!この通りです!!」
高木(ほら!天海くんも!ほら!)チラッ
春香(え!?私もですか!?)
高木(来月、地方の撮影、P君と二人きり…どうかね?)チラッ
春香「私からも、お願いします!」ドゲザー
千種「そんな、天海さんまで……」
高木「お願いします!」ドゲザー
春香「お願いします!」ドゲザー
千種「二人とも、こんなところで土下座なんてやめてください……!」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:10:47.04 ID:42R4nhMT0
765プロ事務所
千種「……」
P「……で、半ば無理やり連れ込んだんですか、社長」
高木「はっはっは。土下座は日本人の本質にして最終奥義だからね!」
P「春香もいっしょになってなにやってるんだよ……」
春香「いやぁ……ついつられちゃって……」
春香(さっきの話、ちゃんと通しておいてくださいね、社長)
高木(分かっているよ、天海君)
P「ん?二人とも、なにを話してるんです?」
春香「なんでも!なんでもないですよ!!」
千種「……」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:16:51.85 ID:42R4nhMT0
千種(話だけでも、というから、つい付いてきてしまったけど……)
千種(これが、あの子のアイドルとしての拠点、765プロなのね……)
小鳥「お飲物をお持ちしました」コトッ
千種「あ、すみません」
小鳥「いえいえ、お気になさらずに」
やよい「小鳥さん、あのひとはだれですかぁ?」
小鳥「千早ちゃんのお母さんよ、やよいちゃん」
やよい「千早さんにそっくりですね!」
千種「あ……」
千種(あのやよいって子、かわいいわね)
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:21:21.51 ID:42R4nhMT0
やよい「はじめまして、如月……ちだねさん?」
千種「ふふ、千種って書いて、ちぐさって読むのよ、やよいちゃん」
やよい「はわっ!どうもすみません……」ショボン
千種「やよいちゃんは、かわいいわねぇ」
その他一同(母子だ……)
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:25:20.22 ID:42R4nhMT0
P「で、どうするんですか。千種さんまで巻き込んでおいてからに」
高木「今は、とにかく話をするしかない」
P「話?一体何を……?」
高木「まぁ、私に任せておきたまえ。はっはっは」
P(心配だ……)
高木「千種さん、お待たせしました。どうぞこちらへ」
千種「あ、はい」
高木(君、一応ついてきてくれ)チョイチョイ
P(ええ!僕もですか!?)
千種(いったいどうなるのかしら……)
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:35:03.41 ID:42R4nhMT0
社長室
高木「ささ、どうぞ。こちらにかけてください」
千種「では、失礼します……」
P「……」
千種「それで、話とは一体……」
高木「ええ、あなたもご存じの通り、今如月君……おっと、あなたも如月でしたね。千早君は、とんでもない窮地に立たされています」
千種「……!」
高木「ゴシップ記事によってあることないことが噂され、世間では千早君の人気は急落、メディアの露出もできない状態です」
千種「……」
高木「そこで、先ほども言った通り、あなたにはアイドルとして活動していただきたい」
高木「千早君の影武者としてね」
千種「!?」
P「社長!一体何を言い出すんですか!」
高木「少し静かにしてくれたまえ、君」
P「……失礼しました」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:38:36.58 ID:42R4nhMT0
千種「私が……千早の影武者に?」
高木「はい」
千種「……?」
高木「……」
P「……」
高木「……」
千種「……あの」
P「社長?どうしたんですか急に黙り込んで」
高木(あれ?)
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:43:08.76 ID:42R4nhMT0
高木「君、ちょっと耳をかしてくれ」
P「ええ」
高木(おかしい……私の目論見では、ここで千種さんの母親魂が炸裂してOKをもらえるはずだったんだが……)ボソッ
P(そんなわけあるはずないじゃないですか!長いこと冷え込んだ家庭環境だったっていうのに)ボソッ
高木(へんだな……。この私がティンと来たのだから、上手くいくはずだったのだが……)
P(……社長、もしかして話ってこれだけじゃないですよね……?)
高木(……てへっ)
P「てへっじゃねえよ!」
千種「」ビクッ
P「あ、すみません。千種さん」
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:47:56.68 ID:42R4nhMT0
P(話はまかせろって言うから、ちょっと期待してたっていうのに)
P(もうヤダ、この社長)
高木「うぉっほん!では、詳しい話は千早君の担当Pであるこの人から……」
P「丸投げしてんじゃねぇよ!」
高木「君ぃ!社長に向かってその口のきき方はなんだね!?」
P「なんだねじゃないですよ!本当にどうするんですかこの状況!」
千種「あのぅ……」
高木「はい、何でしょう?」
千種「これ以上話がないのなら、私は帰らせてもらいます」
高木「!!ちょ!ちょっと待ってください!!」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 11:53:54.17 ID:42R4nhMT0
高木(君!早くなんとかしないと千種さんが帰ってしまう!引き留めるんだ!!)ボソッ
P(もういいじゃないですか、これ以上話はないんでしょう?)ボソッ
高木(ここで上手く丸めこむことができたなら、今月から給料は2倍に、いや、3倍にしよう!)ボソッ
P(!!……いや、それにしても……)ボソッ
高木(きっと如月君の復活への糸口にもつながるはずだ。なんとか頼むよ…)ボソッ
P(……まぁ、出来ないこともないですが……)ボソッ
高木(なら、よろしく頼む)ティン
P(もうやだこの社長)
P「待ってください千種さん!お願いです」ドゲザー
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:02:24.02 ID:42R4nhMT0
千種「……!」
P「ほんの少し、千早が復帰するまでのわずかな間でもいいんです!メディアに出て、如月千早は健在だということを誇示していただければ!!」
千種「でも、私はこんな年ですし、それにいまさら娘のことなど……」
P「いまさらなんてことはありません!いえ、きっとこれはチャンスなんです!あなたが、千種さんと千早の、親子のきずなを取り戻す、絶好のチャンスなんですよ!!」
千種「!!」
P「長いこと冷え込んだ家庭環境で育った千早は、母親の愛に飢えているんです!今こそ、千種さんの力が必要なんですよ!」
P「もちろん、我々も全力でバックアップします!ですからどうか……」
千種「……できません」
P「なぜですか!?」
千種「あの子には……私は、母親らしいことなどしてやれませんでした。そんな私が」
P「千種さん!千早は、あなたの大切な、娘じゃないですか……!」
P「亡くなられた弟さんのために、一生懸命に歌ってきた娘さんを、ここでまた見捨てるんですか!!」
千種「……」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:09:51.43 ID:42R4nhMT0
千種「…失礼します」
P「千種さん!!」
バンッ!
春香「話はきかせてもらいました!」
やよい「もらいましたぁ!」
千種「!!」
春香「わたしからもお願いします!!どうか千早ちゃんを助けてください!!」ドゲザー
やよい「お願いします!千早さん、このままじゃかわいそうです!!」ドゲザー
千種(やよいちゃん、土下座もかわいい……じゃないわ!)
千種「お願い、やよいちゃん。土下座なんてしないで」
春香(あ、私はどうでもいいんだ……)
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:11:59.33 ID:42R4nhMT0
P「お願いします!」ドゲザー
高木「お願いします!」ドゲザー
春香「お願いします!」ドゲザー
やよい「お願いします!」ドゲザー
千種「……お願い、やめて!」
小鳥(なにこのカオス空間)
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:15:30.94 ID:42R4nhMT0
千種「……わかりました」
一同「!!」
千種「もし、本当に、わたしなんかが娘の助けになるのなら……引き受けます」
P「ありがとうございます!」
高木「どうだね君!私の思った通りだろう!」
春香(ここでうまくやらないと、さっきの社長との約束がご破算になっちゃうもんげ!)
やよい「ありがとうございますちだ…千種さん!」
千種(千早は……こんなところで活躍して大丈夫なのかしら?)
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:18:16.66 ID:42R4nhMT0
商店街
千種(さっきは、早く話を切り上げたかったのと、やよいちゃんの健気さに心を打たれて、つい引き受けるなんて言ってしまったけど…)
千種「影武者なんて、私に務まるはずなんてないわ……」
千種(千早、あなたはどうしてるの?私にはどうしてほしいの?)
千種「私は……いったい……」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:23:48.23 ID:42R4nhMT0
765プロ
高木「ふう。これで一安心だな!」
P「何が一安心ですか!千種さんおもいっきり困惑してたじゃないですか!」
春香「でも、一応引き受けるって言ってくれましたし」
やよい「そうです!きっとちだねさんは助けてくれます!」
小鳥「やよいちゃん、ちぐささんね」
やよい「あ!また間違えちゃいました」ショボン
P「はっはっは、やよいはかわいいなぁ……じゃない!こうしちゃいられない!春香!」
春香「はい!」
P「春香は引き続き、千早の懐柔作戦にあたってくれ。作戦名は『アマノイワト、ヒラク』だ」
春香「はい!分かりました!」
高木「君、その作戦名はダサい。なんとかならんのかね」
P「誰のせいでこうなったと思ってるんだよ!」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:29:07.90 ID:42R4nhMT0
翌日
P「律子、話は聞いているな」
律子「ええ、一応は……」
律子(なんで私まで巻き込まれてるのよ)
律子「でも、なんでいきなりレッスンスタジオなんかに?千種さんって、ただ影武者として動いてもらうだけでしょう?」
P「それはそうだがな。見た目はスタイリストさんになんとかしてもらうが、もし歌唱力が千早と大きく差があれば、あっというまにボロが出る」
P「影武者作戦がばれてしまえば、かえって千早のイメージダウンにつながってしまう」
P「だから、一応レッスンはうけてもらう。なに、保険だよ保険」
律子「はぁ……」
P「それにしても、遅いなぁ千種さん」
律子(来るわけないわ、きっと。昨日の話を聞く限りではね)
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:39:34.05 ID:42R4nhMT0
千種「……おくれて、すみません」
P「来てくれた!」
律子(そんな!本当に来るなんて……!)
P「早速ですが、千種さんには、歌のレッスンを受けてもらいます。こちらへ」
千種「はい……」
律子(まぁ、確かに見た目は千早そっくりね。でも、歌唱力はどうかしら?)
千種「……」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:43:39.03 ID:42R4nhMT0
先生「本日は、よろしくお願いします」
千種「こちらこそ、お願いします」
P「じゃあ、先生。さっそくレッスンを始めましょう」
先生「ええ、わかりました……」
先生(これが……歌姫如月千早のお母さん……。どうしたものかしら)
P「まずは千早の持ち歌、青い鳥から行きましょう。千種さん、曲のほうは……」
千種「ええ、なんとか。いけると思います」
P「よかった。レッスンスタートと行きましょう!」
律子「……」
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:50:21.13 ID:42R4nhMT0
千種「♪泣くことならたやすいけれど……」
律子「!!」
律子(驚いたわ……千早にも引けを取らない、素人とは思えない歌唱力……)
P「……」
律子「プロデューサー?」
P(千早の歌唱力は、母親譲りだったか。少しタイプは違うが……)
P(千早のような透き通る高音はない代わりに、加齢による心地よい揺らぎと、温かみのある少し太めの声……)
律子「プロデューサー!」
P「ん?どうした律子」
律子「正直驚きました。蒼い鳥をここまで歌いきることができるなんて」
P「……まだだ。まだ足りないな」
律子「?」
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 12:55:21.63 ID:42R4nhMT0
P(それなりに歌唱力はあるが、まだまだ声が硬い。どうにかしてやわらげねば)
千種「終わりました」
先生「……」
P「千種さん、あなたの歌唱力を、みさせてもらいました。十分合格点に達していると思います。ですが…先生?」
先生「まだ喉が開ききっていないようですね」
P「ええ、もう何曲か歌って、喉をならしてみましょうか」
千種「わかりました。……何を歌えばいいでしょう?」
P「何か……お気に入りの曲はありませんか」
千種「お気に入り、ですか……」
千種(お気に入り、お気に入り……。そうね。あの曲にしようかしら)
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:00:41.32 ID:42R4nhMT0
P「オリビアを聴きながら、ですか。先生、いけそうですか?」
先生「ええ、大丈夫ですよ」
P「なら、お願いします」
先生「♪~~」
千種「♪お気に入りの歌、一人聴いてみるの」
P「!!」
律子「!!」
P「これは、驚いた……!」
律子「ですね」
P(やはり、いきなり千早の歌を歌わせるより、好きな歌を歌ってもらうほうがよかったか)
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:07:28.04 ID:42R4nhMT0
休憩中
千種「ふう……」
千種(あの歌を歌うのは、もう何年ぶりかしらね……懐かしいわ)
律子「千種さん、これどうぞ」スッ
千種「ありがとう、ございます。……えっと、秋月さん?」
律子「律子で結構ですよ。それにしても、歌がお上手なんですね」
千種「そうですか?もう歌を歌うなんて、何年もしていなかったことなので……」
律子「そうですか……。でも、千早の持ち歌は、ちゃんと歌えるんですね」
千種「!!」
律子「ひとつ、お伺いしてもよろしいですか?」
千種「ええ、構いませんが。何でしょう?」
律子「今日は、どうして来る気になったんですか?別に断ったとしても、だれも責める人などいないのに」
千種「……」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:09:26.35 ID:42R4nhMT0
律子「あ!気を悪くしたならすみません!ただ、どうしても気になったもので」
千種「優が……」
律子「はい?」
千種「昨日、夢の中に出てきたんです。亡くなった息子の優が……」
律子「……」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:14:06.42 ID:42R4nhMT0
千種(そう、夢に出てきたのは、息子の優、そして、それを相手に、楽しげに歌う千早)
千種(あの頃、まだ私たちの家庭が平和だったころの、幸せな思い出)
千種(すると、優がこちらに駆け寄ってくる。とても悲しそうな顔をして)
優(お母さん!おねぇちゃんを助けてあげて!僕、またおねぇちゃんの歌が聴きたいよ!)
優(お願い……お母さん……!)
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:16:51.77 ID:42R4nhMT0
千種「……くっ」
律子「大丈夫ですか?」
千種「ええ、大丈夫。ちょっと昔のことを、思い出してしまいまして……」
律子「……そう、ですか」
P「千種さん、いいですか?もうそろそろ、レッスンを再開したいと思います」
千種「はい」
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:22:07.63 ID:42R4nhMT0
レッスン終了
千種「本日は、ありがとうございました」
P「お疲れ様でした。千種さん、この話を引き受けてくれて、ありがとうございます」
千種「いえ、構いませんよ。流れとはいえ、私が決めたことなんですから」
P(こうしてみると、千種さんは綺麗な人だ)
P(千早も、将来はこんな感じになるんだろうか?)
千種「プロデューサーさん?私の顔に、なにか?」
P「い、いえ!何でもありません……それでは、また」
千種「ええ」
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:28:20.75 ID:42R4nhMT0
数日後
P「千早のほうは、どうなんだ、春香」
春香「今日も、あまり取り合ってはくれませんでした。でも、あのスケッチブックも新曲も、一応渡せましたし」
P「そうか……なら後は、千早自身に任せるしかないな」
P「千種さん、いいですか?」
千種「ええ」
P「これから、765プロ定例ライブの宣伝のために、ラジオ出演することは伝えてありましたよね」
千種「はい……なんでも、公開収録だとかで」
P「そうです。まぁ、無理にしゃべることはありません。ただ、その姿をみんなの前に見せてください」
千種「ですが……」
P「なんです?」
千種「なんでわたし、ツインテールになんかされたんでしょう?」
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:37:38.98 ID:42R4nhMT0
P「それは……」
高木「私の、独断により決定した!」
P(ひっこんでろよ社長……)
高木「あえて、普段の格好とは違う格好にすることによって、違和感を少しでも軽減することが目的だ。けっして、私の趣味ではない」
P「……」
千種「でも、私もいい年ですし、この格好はちょっと……」
やよい「そんなことありません。ちだ…千種さんとっても似合ってますよ!」
千種「そう、かしら」
春香「そうですよ!千早ちゃんもきっとよろこんでくれます」
P「さ、さぁ!早いこと収録にいきますか!」
P(千種さんの決意が揺らぐ前に、なんとか済ませなければ……)
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:44:21.49 ID:42R4nhMT0
収録現場
聴衆「おい、あれ、如月千早じゃないか?」
聴衆「あ!ほんとだ!ちーちゃんついんて!!」
聴衆「なんか雰囲気変わったな。スキャンダルのあとのせいかもしれないけど」
千種「///」
千種(は……恥ずかしい……。ただでさえこれだけの人前に出ているのに……)
P(よし!ファンも上手いことだませているな!)
P「それじゃあ収録、お願いします。春香、やよい、たのんだぞ!」
春香「はい!任せてください!」
やよい「うっうー!がんばりますよー!」
千種「やよいちゃん、おばさんのフォローお願いね……」
やよい「わかりましたちだねさん!」
千種「ふふ、やよいちゃんかわいいわぁ」
春香(あ、私やっぱりスルーなんだ……)
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:52:10.74 ID:42R4nhMT0
収録後
千種「///」
P「千種さん?大丈夫ですか」
千種「とても……恥ずかしかったです……///」
P(羞恥に震える熟女……これはたまらん……)
P「…じゃなかった!みんなお疲れさま!」
春香「お疲れ様です!ほんと、すごく疲れましたよ!」
やよい「ほんとですぅ……みんなでちだ…千種さんを質問攻めにしてましたよね」
P「なんにせよ、これで当初の目的は果たしたわけだ。如月千早は健在だってな」
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 13:54:44.89 ID:42R4nhMT0
P「よし、それじゃあ事務所に戻ろうか。さぁ、みんな車に乗った乗った」
ジー
?「畜生……。どうして如月千早が復帰してるんだ……!」
53: 先に行き詰ってきた 2012/05/13(日) 14:02:59.75 ID:42R4nhMT0
765プロ定例ライブ当日
真「プロデューサー。千早は……」
P「今は、千早を信じるしかない」
春香「ねえ!いつもみたいに円陣組もうよ!ほら、千種さんも……」
千種「……」
真(なあ、雪歩。どうして千種さんまでここにいるんだ?)
雪歩(私にもわかんないよ……)
響(しかも、ちゃんとステージ衣装まで着てる……)
貴音(面妖な……)
美希(千早さんのお母さん……ふるえてるよ……)
千種(この年でミニスカートだなんて……恥ずかしい……)
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:08:52.17 ID:42R4nhMT0
春香「765プロー……」
タッタッタッタ
真「!……ちょっとまって!」
千早「はぁっ…はぁっ…すみません、遅くなりまし……た……?」
千種「……千早……」
一同「……千早……!!」
P「千早……よく来てくれたな!」
千早「プロデューサー。なんで、あの人がここに……」
春香「千早ちゃん、これはね……」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:13:14.81 ID:42R4nhMT0
P「その話はあとだ……千早、いけそうか」
千早「分かりません……でも……わたしせめて……春香」
春香「千早ちゃん…」
あずさ「さあ、手を」
春香「それじゃあいくよ、765プロー……ファイトー!!」
一同「おー!」
千種「……」
千種(よかった……千早……。これで私は……)
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:19:52.11 ID:42R4nhMT0
千早「春香……私、春香にひどいことを……」
春香「うわぁぁ!そういうのなし!なし!」
春香「それに私も、千早ちゃんのお母さんのことは、内緒にしてたし……」
千早「……わたしも驚いたわ。まさか、私の影武者をやっていたなんて」
春香「びっくりするよね。社長が急に言い出して……」
千早「……でも、私ももう一度歌いたいと思ったの。みんなの作ってくれた歌詞と、優の絵をみたとき」
千早「もう一度、やってみようと思えたの」
春香「……うん」
千早「ありがとう……」
P「千早、もうそろそろ出番だぞ。準備はいいか」
千早「はい!」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:23:42.86 ID:42R4nhMT0
伊織「いってらっしゃい」
千早「ええ……」
ワアアアアアアアア
観客「おお!!」
観客「えぇ!!」
観客「千早ちゃんだ!!」
観客「大丈夫なのか……?」
千早「………」
♪チャラチャンチャンチャンチャン(伴奏)
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:26:37.55 ID:42R4nhMT0
P「……」
律子「……」ゴクリ
真「……」
美希「……」
あずさ「……」
伊織「……」
亜美「……」
春香「……」ギュッ
千種「……千早……!」
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:30:14.64 ID:42R4nhMT0
千早「すぅー……」
千早(!)
(キキーッ!)
千早(優……)
千早「はぁっ…!くっ……うぁ……」
ザワザワザワ
律子「千早……あの子、やっぱり……」
律子「すみません、一度、中断を……」
千種「…千早!」
春香「行きましょう、千種さん!」
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:32:15.79 ID:42R4nhMT0
律子「は、春香!それに千種さんも!ちょっと!!」
P「まってくれ!このまま……続けさせてください!!」
P(仕方ない……千種さんまで飛び出して行ってしまったが)
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:35:29.20 ID:42R4nhMT0
千早「………」
千早(やっぱりもう…私には……)
春香「♪ねぇ…いっまー……」
千種「♪見つめているよ…離れてても……」
観客「おい!あれ!!」
観客「千早ちゃんが……二人!?」
観客「おいおい、どうなってんだよ!」
観客「でも、後から出てきたほうの千早ちゃん、なんかエロいな……」
観客「ああ、まるで未亡人の醸し出す言いようのないエロス……」
観客「双子か…?」
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:40:45.74 ID:42R4nhMT0
真・美希「♪もう涙を拭って微笑って」
雪歩・やよい「♪一人じゃない どんな時だって」
伊織・あずさ・亜美「♪夢見ることは生きること」
貴音・響・真美「♪悲しみを超える力」
千早「……みんな!?」
一同「♪歩こう 果てない道」
70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:46:23.42 ID:42R4nhMT0
千種「千早」
千早「!?」
千種「あなたには、見えるかしら。あそこで、あなたの歌を待ち望んでいる、優の姿が」
千早「……」
千種「きっと、悲しんでいるわ。あなたのうたが聴けなくて。小さいころのあなただって」
千種「千早、あなたならきっとできるわ」
千早「優……!」
優(お姉ちゃん、歌って!)
ロリ千早(ほらっ)
千早「………すぅー……」
テンテンテン(伴奏)
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:50:11.61 ID:42R4nhMT0
千早「♪歩こう 果てない道 歌おう 天を超えて」
千種「!!」
P・律子「やった!」
一同「!!」
千早「♪想いが届くように 約束しよう 前を向くこと Thank you for smile」
ウワアアアアアアアアア!!!
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 14:57:32.98 ID:42R4nhMT0
ライブ終了後
千種「………」
千種(これで、よかったのよね、優、千早)
千種(もう、私は必要ないわね。これで……)
千早「あの……!」
千種「!!」
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:01:43.19 ID:42R4nhMT0
千種「千早……」
千早「……今日は、ありがとう」
千種「………」
千早「私が、ふがいないばっかりに、春香や、みんなにも心配かけてしまって……」
千早「そして……あなたにも。お母さん」
千種「!!」
千種「ごめん、なさいね……。わたし、悪い母親で……」
千早「ううん、もういいの。私、もう大丈夫だから」
千早「うぅぅ……」
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:05:35.36 ID:42R4nhMT0
千種「千早…!」
千早「お母さん!」ダキッ
千種「千早、よく頑張ったわね、本当に、つらかったのよね……」ホロリ
千早「う…グスッ……ふあぁ……」
P「あ、千早、千種さ……!!」
P(今は、邪魔をしないほうがいいか……)
プルルルルルル
P「おっと、誰からだ……社長?」
P「はい、もしもし……えぇ!?」
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:09:02.20 ID:42R4nhMT0
765プロ 事務所
善沢「本当に、いいんだね。千早ちゃんも、そしてお母さんも」
千種「ええ」
千早「プロデューサーと話し合って決めたことですから……!」
善沢「それじゃあ、取材を始めるよ。つらいかもしれないけど、頑張ってくれ」
千早・千種「はい」
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:14:13.38 ID:42R4nhMT0
同時刻、社長室
P「どうやら、始まったようです」
高木「ああ。しかし、如月君や千種さんも、よく取材を受ける気になってくれたね」
P「ええ、これから、今までどおりに活動していくためには、必要ですから」
P「話題になっているんですよ。もう一人の如月千早の正体はいったい誰なのかって」
高木「まぁ、そのことを見越して、この前の話を持ちかけたんだがね」
P「本当に驚きましたよ。まさか、千種さんを影武者としてではなく、765プロの歌手としてデビューさせようだなんて」
高木「はっはっは。私の勘が言っているのだよ。千種さんには、才能があるとね」ティン
P(この人本当に勘だけは鋭いんだよなぁ。やってることはめちゃくちゃなのに)
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:21:50.00 ID:42R4nhMT0
ライブ終了後のこと
千種『………』
千早『……』
P『もう、落ち着きましたか』
千早・千種『!!』
P『千早も、千種さんも、今日は本当にお疲れ様でした』
P『これで、もう千早も、完全に復活したのですが……』
千早・千種『?』
P『実は、千種さんに少しお話が……』
千種『何でしょう?』
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:26:50.85 ID:42R4nhMT0
千種『私が、歌手デビュー!?』
千早『えっ?』
P『社長からの連絡で、ぜひ、千種さんに765プロで活躍していただきたいと』
千種『そんな……私は』
千早『それも、悪くないわね』
千種『千早……!?』
千早『私のふりして、本当はちょっと楽しかったんじゃない?』
千種『そんなことは……私は、恥ずかしくて恥ずかしくてとても……』
千早『そう?それにしても似合ってるわよ。そのミニスカートの衣装』
千種『!!』
千早『ふふ、いいじゃない。私たち親子の仲直りのしるしに、ね。きっと優も喜ぶわ』
千種『もう……優の名前を出されたら、私にはもう逆らえないじゃない……』
千早『ふふふふ…』
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:36:09.90 ID:42R4nhMT0
社長室
コンコン
善沢「取材、終わりました」
P「二人とも、大丈夫でしたか」
善沢「ああ。なんとか、取材を乗り切ってくれたよ」
高木「そうか……。善沢君も、大変だったろう」
善沢「なぁに。これが俺の仕事だよ。なんてことないさ」
善沢「それに、あんなゴシップを放ってはおけんよ」
P「あの記事を書いたのは確か……」
善沢「ああ、最近961プロで雇われていた、渋沢だ」
高木「なに?あの渋沢君が……一体どうして」
善沢「私にもわからんが……。きっと、やつなりの事情があるんだろう」
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:42:34.76 ID:42R4nhMT0
千種「千早……。大丈夫?」
千早「うん。お母さんこそ、離婚してそんなにたっていないのに、こんなにつらい取材に巻き込んでしまって……」
千種「いいのよ。私は、千早の母親なんだから。私が、守ってあげなければいけなかったのよね」
千早「お母さん……」
千種「ふふ、なぁに、千早」
千早「!……なんでもない。ただちょっと呼んでみただけよ」
千種「あら、すっかり甘えん坊さんねぇ」
千早「もう!」
小鳥(親子のきずなって、いいわぁ……。私もあんなふうにできるようになるのかしら……)
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:50:35.85 ID:42R4nhMT0
千種「ちょっと、社長さんにあいさつしてくるわね。これから打ち合わせもあるし」
千早「うん。わかった」
千種「失礼しま……」
高木『あの渋沢君が…一体どうして』
善沢『私にもわからんが……。きっと奴なりの事情があるんだろう』
千種(何か込み入った話でもしているのかしら……今は邪魔しないほうがよさそうね)スッ
善沢『私と渋沢は、かつて同期入社したライバル同士だったんだ』
千種「!!」
千種(渋沢……あのゴシップ記事を書いた記者ね…!)
90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 15:56:51.17 ID:42R4nhMT0
千種「失礼します」コンコン
高木「ああ、はいりたまえ」
千種「あの、失礼だとは思いますが……」
P「あ、打ち合わせの話ですか?それでしたら……」
千種「いえ、そうじゃないんです」
P「?」
千種「善沢さん、もしよかったら……渋沢という方のこと、もっと詳しく教えていただけませんか……?」
善沢「!!」
善沢「いや、この話はちょっと……」
千種「お願いします。娘を苦しめた張本人について、詳しく知りたいんです」
善沢「………本当に、いいんですか」
高木「?」
91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:00:55.07 ID:42R4nhMT0
30分後
千早「お母さん、遅いわね」
小鳥「千早ちゃん、お母さんのことが心配?」
千早「別に私は…そんなんじゃありません」
小鳥「照れなくてもいいのに。甘えたいときには、精一杯甘えちゃえばいいのよ」
千早「音無さんまで……わたしって、そんなに甘えん坊に見えますか?」
小鳥「そんなことないわ。とってもかわいらしい女の子だなぁって」
千早「かわっ///」
小鳥「私にも、こんなふうにかわいらしかった時期があったのかしらねぇ……」
92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:05:37.45 ID:42R4nhMT0
さらに30分後
千種「失礼します」ガチャ
千早「……お母さん、大丈夫?顔色悪いわよ?」
千種「ええ、私は、大丈夫だから……」
千種(あんな話……絶対千早には伝えられないわ……)
千種「さ、今日はもう帰りましょうか。どこかに食べに行こうかしらねぇ」
千早「あ、それなら、行きたいところが一か所あるんだけれど」
千種「行きたいところ?」
千早「うん。四条さんに勧められてたラーメン屋さん。私まだ一回も行けてなくて……」
千種「じゃあ、そこにしようかしらね」
93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:11:38.53 ID:42R4nhMT0
しばらく後
P「千種さんがデビューシングルを出して、今日はランキングの発表日か。緊張する」
春香「どうなってるんでしょうね、プロデューサーさん」
P「俺にもわからん……。一応、売り込みは全力を尽くしたつもりだが……はたしてどうなるものか」
美希「千早さんのお母さんなら、きっと大丈夫だよ。だって、あの千早さんのお母さんだよ?」
千早「美希は楽天的でいいわね……」
美希「私は千早さんを尊敬してるの。だから、きっと大丈夫だって信じられるよ」
千早「美希……」
P「それじゃあ、早速ランキングを確認しようか」
95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:17:22.26 ID:42R4nhMT0
P「すごいな…こりゃぁ」
春香「うわぁ……」
千早「?」
美希「ハニー。美希にもよく見せてよ」
P「デビューシングルが……初登場3位だ!」
千早「!!」
美希「すごいね!やっぱり千早さんのお母さんはすごいの!」
春香「千種さんが今ここにいたら、今頃どうなってたのかなぁ?」
千早「間違いなく、倒れてたでしょうね」
P「しかし、こう言っちゃなんだが、遅咲きの歌手がこのランキング……奇跡だよ」
P「やっぱり、オリジナル曲じゃなくてカバー曲にしたのが正解だったのかなぁ」
千早「お母さんは、その歌が大好きでしたから……」
96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:23:46.65 ID:42R4nhMT0
P「ああ、確かにいっていたな。『オリビアを聴きながら』がお気に入りだって」
千早「私も、小さいころからお母さんの鼻歌を聴いては居たんですけど、こうしてみると……」
高木「鼻歌ですませなくてよかっただろう!」
P「あ、社長。お疲れ様です。社長の勘、あたりましたね」
高木「そうだろう。私の勘は、君たちの活躍ですでに実証済みだからね」
春香「社長ってすごいですねぇ」
春香(ところで社長、あの話、ちゃんと覚えてますか?)ボソッ
高木(うん?あの話とは?)ボソッ
春香(ほら、プロデューサーさんと二人っきりで撮影に行けるっていう、あの話ですよ)ボソッ
高木(ああ、あの話か。すまないねぇ。千種さんの営業のために、P君の予定に入れてしまってね。その話はなしだ)ボソッ
春香「そんなぁ……」ショボン
98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:31:08.22 ID:42R4nhMT0
P(千種さんのデビューシングルは、その曲の知名度も手伝って、最終的にランキング1位にまで上り詰めた)
P(千早もアイドルジャムでの活躍により、世間に流れていた千早の暗いうわさは、徐々に消えていった)
P「まあ、善沢さんの書いた記事のおかげもあるんだが」
P(そういえば、千種さんはあの善沢さんの話を聞いてから、一体どう思っているのだろう)
P「特に変わったところは感じられないが、少し心配だな」
千種「はい?どうしたんです?」
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:42:12.47 ID:42R4nhMT0
P「いえ!なんでもありませんよ!」
千種「それなら、いいのですが……」
P「それより千種さん。それに千早も、これから、だいじょうぶですか」
千種「ええ、私は大丈夫です」
千早「私も大丈夫です」
P「なら、行きますよ。初の親子ライブ、張り切っていきましょう!」
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:49:12.32 ID:42R4nhMT0
ライブ終了後
P「いやぁ、今日のライブ、無事終了しましたね」
千早「まさか、私もこうしてお母さんと一緒にライブをやれるなんて思いもしませんでした」
千種「ふふ、いっしょにデュエット出来る日が来るなんてねぇ」
千早「ふふふふ」
P(千種さんも千早も、こんなに柔らかい笑顔を浮かべているなんて。出会ったころは想像もできなかったな)
P「それじゃあ、打ち上げまでまだ時間はありますから、少し待っていてください。いろいろと準備がありますので」
千早「わかりました、プロデューサー」
千種「ええ」
ジー
?「見つけたぞ……如月親子だな…へへ」
104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:54:09.40 ID:42R4nhMT0
千種「!?」
千早「お母さん?どうしたの?」
千種「ううん、何でもないわ……千早、ちょっとここで待っていてちょうだい」
千早「うん、別にいいけど……」
千種「絶対にここから動かないで。お願いね」
千早「?」
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 16:58:54.18 ID:42R4nhMT0
ライブ会場裏
千種「……おかしいわね。さっきは変な視線を感じたのだけど……」
千種(気のせい……だったのかしら)
?「おい!お前!如月千早だな?」
千種「!!」クルッ
?「っと……。よく見たら違うな。母親のほうか」
千種「……あなたは……!」
?「お前ら親子のせいで俺の計画はめちゃくちゃだ!どうしてくれる!?」ガバッ
千種「くっ」グラリ
109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:06:32.08 ID:42R4nhMT0
千種「くっ……!この……。離しなさい!」グッ
?「はっ!お前らのせいだ!お前らのせいで……!」グググッ
千種「あなた…渋沢って記者でしょう?」
渋沢「!!」
千種「やっぱり……。ずっと気になっていたのよ……」
渋沢「なに!?一体何の話だ!?」
110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:10:35.54 ID:42R4nhMT0
P「いやあ、おまたせ……って、あれ?千早だけか?」
千早「ええ、お母さんならさっきどこかへ……」
P「そうか……。ちょっと探してくる。千早も来るか?」
千早「ええ。そうですね。私も、付いていきます」
P「よし、行こう」
P(なんだか嫌な予感がする……まずいな)
112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:17:28.68 ID:42R4nhMT0
千種「ぐっ」グググ
渋沢「このぉ……」グググ
P「!!千種さん!」
渋沢「!!」
千早「お母さん!?このっ!」ダッ
渋沢「ぐおおっ」ドサッ
P「千早!そのままだ!今取り押さえる!!」
渋沢「畜生!お前らは……!お前らはいつも俺の邪魔をしやがって…!!」
P「千早!人を呼んで来い!このまま警察へ……」
千種「待って!」
P・千早「!?」
113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:26:28.94 ID:42R4nhMT0
P「千種さん、こいつはあなたを……」
千種「いいんです。私は、ずっと渋沢さんと話をしたいと思ってました」
P「!!」
千早「お母さん……」
渋沢「俺に一体、何の話があるんだよ!?」
千種「……あなたが追っていた、大物政治家の話です」
渋沢「!?おまえ、どこでその話を!!」
P「いいんですか?千種さん。ここには千早が……」
千種「千早、ごめんなさいね。今まで黙っていて」
千早「お母さん…?一体何を……」
千種「これから、優が死んだときの話をしなければならないわ……」
114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:33:27.37 ID:42R4nhMT0
千種「あなたの書いた記事。私も読ませてもらいました」
渋沢「……それがなんだよ」
千種「優が死んだ事故の詳細、それに家庭崩壊までの流れ……妙にリアルに書かれていました」
渋沢「……」
千早「………」
千種「あなたは、事故現場にいた。そうですね」
渋沢「……!!どうしてそれを知ってるんだ」
千種「善沢さんから聞いたんです」
渋沢「善沢め……余計なことを……」
115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:35:38.34 ID:42R4nhMT0
千早「お母さん、一体どういうことなの!?」
千種「本当にごめんなさいね、千早。すこし、話を聞いてほしいの……」
千早「……」
P「………」
118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:42:42.67 ID:42R4nhMT0
善沢『かつて、俺と渋沢は、互いに出版社で活動していた、ライバルのような存在だった』
善沢『俺も渋沢も、でかいスクープを追ってやっきになっていたよ……』
善沢『そんななか、ある大物政治家の汚職事件が世間をにぎわせるようになった』
善沢『正義感が人一倍強かった渋沢が、そのスクープをすっぱ抜いたんだよ』
千種『……そんな人が、なぜゴシップ記事の記者なんかに……』
119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:48:48.54 ID:42R4nhMT0
善沢『干されたんだ。その政治家のスクープのせいでな』
善沢『奴は……渋沢はただ正義感が強すぎるのが欠点でなぁ。それからも、ひたすらその政治家のスクープを追い続けていた』
善沢『おかしな話だろう?真実を伝えるのが我々報道の仕事だと思っていたのに、そうじゃなかったんだ』
善沢『都合のいい情報を都合のいいように流す。それが、出版業界の常識になっていたんだよ』
120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 17:53:25.94 ID:42R4nhMT0
善沢『いよいよ渋沢が邪魔になってきたその大物政治家は、ついに渋沢を消そうとし始めた』
善沢『脅迫文、怪文章を奴のもとだけでなく、家族や親せきにまで送りつけ、ついには奴の家は放火で燃え落ちてしまった』
善沢『幸い、その時点でまだ死人は誰も出ていなかった。だが、その脅迫に耐えかねて、渋沢家は完全に家庭崩壊の状態に追いやられてしまった』
高木『そんな……話が』
P『……』
千種『……』
122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:03:57.89 ID:42R4nhMT0
善沢『そんなある日、運命の日が訪れた。そう。あの優君が交通事故に巻き込まれた、あの日だよ』
善沢『あの車は、大物政治家が渋沢を始末するために手配した車だった』
善沢『交通事故に見せかけて渋沢を始末しようとしたとき、そこに運悪く優君が居合わせた』
善沢『本当に、不幸な事故だったと思う。当の目的だった渋沢は逃げ延び、そして優君は亡くなってしまったんだ……』
123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:09:48.03 ID:42R4nhMT0
千早「そんな…そんな話って……」グラリ
P「千早……!」
渋沢「………」
千種「あなたは……どうして、そんな目にあいながら、千早のゴシップ記事を書いたんですか?」
千種「私たちと同じ、家庭崩壊の目にあいながら、どうしてあんなひどい記事を……」
渋沢「金が、必要だったんだ……」
P「そんなことで……」
渋沢「そんなことだと!?何も事情を知らないお前が、何を言う!!」
渋沢「別れた女房から、手紙がきたんだよ……」
125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:18:02.10 ID:42R4nhMT0
P「手紙?」
渋沢「俺の一人息子がな、病気になったんだとよ。その治療費が、どうしても払えないって言うんだ」
渋沢「途方にくれていた俺に、黒井社長が話を持ちかけてきたんだ。『765プロのゴシップを書け。金は好きなだけ払う』ってな」
渋沢「俺は必死になって書きあげてやったさ。黒井社長が満足するように」
千種「それで……あんな記事を……」
渋沢「それが!それがだよ!貴様ら親子のせいで、俺の書いた記事はパァになっちまった」
渋沢「黒井社長にも見捨てられ、もらえるはずだったギャラはびた一文手に入れられなかったぜ!」
渋沢「だから、お前ら親子を脅してなんとか金を手に入れようとしてたんだ……!」
126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:22:49.95 ID:42R4nhMT0
P「たとえそうだとしても……お前がやったことは…」
千種「いくら、必要なんですか……」
渋沢「なに!?」
千種「今、私はこうして芸能界で活躍したおかげで、多少なりともお金を持っています」
千早「お母さん……」
千種「いくら……必要なんですか……」
渋沢「1000万円だよ…1000万円!」
千種「分かりました」
渋沢「!?」
128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:29:44.21 ID:42R4nhMT0
千種「それでよければ……私が全額出しましょう」
渋沢「なんでだ……なんでそこまでする!?」
千種「あなたの家庭は……まだやり直すことができます。このことをきっかけにして」
渋沢「……そうか」
千種「ええ、私たち親子がやり直すことができたんです。きっとあなたもそうできるんじゃないでしょうか」
渋沢「すまねぇ。すまねぇな……」
P(なにこの状況……)
129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:37:27.73 ID:42R4nhMT0
P(結局、千種さんは自分のギャラをすべて渋沢にわたしてしまった)
千種「いいんです。これで、渋沢家が、また一つになれるのなら……」
P(そう言って、千種さんは気にしていないようだった)
P(しかし、千早はどうやら混乱しているらしい。無理もない。優君の死に、そんな事実が隠されていたなんて)
P(でも、きっと大丈夫だろう。今の千早には、765プロのみんなも、千種さんもそばにいるのだから)
132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:47:54.29 ID:42R4nhMT0
P「それじゃあ千種さん、行きましょうか」
千種「はい、プロデューサーさん」
P(いまも、千種さんは細々と歌手活動を続けている。遅咲きの歌手だが、担当になった以上、きっちり責任を持たなければな)
P「それじゃあ社長、行ってきます」
高木「うん、頑張ってきたまえ」
バタン
高木「ふう。みんながしごとに出ていると、静かだなぁ。そうは思わんかね、音無君」
小鳥「そうですねぇ。ちょっとさみしくはありますけど、しかたないですよね」
高木「はっは、そうだなぁ」
コンコン
高木「うん?誰か来客かね?」
133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:50:49.00 ID:42R4nhMT0
?「あのう……」
小鳥「はい、どちらさまでしょう……」
春香の母「わたくし、天海春香の母ですが……あの子、忘れ物をしてしまったようで……」
高木「あなたは……」ティン
高木「ティンと来た!お母さん!765プロでアイドルやりませんか!?」
おわれ
135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/05/13(日) 18:54:25.85 ID:42R4nhMT0
疲れた。ほんとはBBA48見たいのが書きたかったのに。あと、なんかずっと支援してくれてた人ありがとう
高木「ティンときた!」千種「はい?」
涼「愛ちゃんが…ガチ凹みしてる…」
絵里「静か….これはここからの叫びかも」