1: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:20:16.95 ID:RUCxoJfV.net

のぞまき
希視点
地の文あり



2: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:20:46.30 ID:RUCxoJfV.net

私は今電車に乗り、ある場所へと向かっている。

ガタン、ゴトンと電車が揺れ動いて規則的な音を立てながら、まっすぐ道なりに進んでいく。

その音を聴きながら、この電車はあなたと私の関係を終点へと向かわせる電車だと思いながら、夏の暑い日差しを一身に受ける車窓を目を細めながら眺めた。

そして変わりゆく景色をぼんやりと見つめながら、私はここ数日前の事に思いを馳せた……。



3: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:22:05.73 ID:RUCxoJfV.net

ーー1週間前、数年ぶりに高校時代の後輩から私に連絡が来た……。

夜、家事を終わらせ雑誌を読みながら一息ついていた時、私のスマホが音を立てた。

誰からだろうと思い私はスマホを手に取り、ディスプレイに表示されている名前を見てみると……高校時代の後輩ーー西木野真姫からだった。

私はその名前を見た瞬間にあの日の事を思い出し、胸が締めつけられ、苦しくなった。

私はあなたからのいきなりの電話に戸惑い、しばらく思案した後、躊躇いつつもその電話に出ることにした。

電話に出るとあなたは何事もなかったかのように久しぶりねと話しかけてきた。

私はそれに出来るだけ素っ気なく久しぶり、と返事をし何の用かと尋ねた。

まあ、あなたからの要件なんてあの日のことしかないんだろうけれど、と思いながら……。



4: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:23:12.97 ID:RUCxoJfV.net

真姫「希に聞いてほしい事があって電話したの。あの事……というかあなたと私の関係なんだけどね」

ほら、やっぱり……。

あなたはまた私にあの言葉を言うんでしょう?

だから私はあなたにまたあの言葉を言わなければならない……。

真姫「……もうこの関係を終わりにしましょう」

希「えっ⁉」



5: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:24:46.33 ID:RUCxoJfV.net

私は思ってもいなかった返事に動揺を隠せず思わず声をあげてしまった。

あなたはそれを気にする事なく私に次の言葉を投げかける。

真姫「実は私ね、好きな人がいるの。でね、今度その人告白しようって思ってるの」

遅かれ早かれいずれはこうなる事は分かっていたはず……。

けれど真姫ちゃんに好きな人が出来たと、そう聞いただけで私は目の前が真っ暗になり、心は張り裂けそうなくらいにズキズキと痛み涙が出そうになった。

でもこれは臆病な私が招いた自業自得な結果なのだから……と、思い何とか耐えた。

真姫「だから終わりにしましょう、希?」

希「……うん、そうやな。もういい加減終わりにした方がええもんね、この関係」



6: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:25:37.93 ID:RUCxoJfV.net

この関係を終わらせて私とは違う別の人との未来へと歩もうとするあなたに嫌だ、置いていかないで…なんて身勝手な事をいいそうになるのを済んでのところで飲み込んだ。

だって私の事でもうこれ以上あなたをいつまでも縛りつけているわけにはいかないもの…。

だから精一杯感情を抑えて、何とか振り絞って私はそう言葉を紡いだ。

真姫「それからお願いがあるんだけど、あの場所に来てくれないかしら?そこで私その人に告白しようって思ってるの」

真姫「だからちゃんとあなたと私の関係をちゃんと終わらせて、その日に告白しようって……」



7: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:26:15.31 ID:RUCxoJfV.net

あの場所ーーあなたと私の関係が始まった場所の事を言ってるのだとすぐに分かった。

本音を言うと行きたくはないけれど行かないとあなたに迷惑がかかるだろうし、ちゃんとこの関係を終わらせないと……。

だから私はうん……と、そう返事をした。

真姫「ありがとう。それと日時は……一週間後でどうかしら?それから時間はあの時と同じ時刻で……」

希「一週間後……うん、いいよ」

真姫「じゃあ一週間後にあの場所でまた会いましょう。またね、希」

そういってあなたは電話を切り、スマホからはピピピと単調な機械音が流れる。

私はその音を聴きながらしばらく呆然とした後、止めどなく涙が溢れてきた。

私はやや自暴自棄になりスマホをその辺に放り投げ、ベッドに横になり、顔をクッションに押し付けながら泣きじゃくった……。

そして私の頭には走馬灯の様にあの日の色褪せない記憶がグルグルと駆け巡っていた。私のあなたとの関係が始まった日のことが……。



8: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:29:56.72 ID:RUCxoJfV.net

ーー私とあなたの関係が始まったのは、数年前の今と同じ暑い夏の日……音ノ木坂を卒業して大学に入り、初めての夏休みを迎えた時の事だ。

私はあなたから今と同じ様にある場所……μ'sの夏合宿で使ったあの別荘の近くにある海へと話があると呼び出された。

あなたから話があるなんて珍しい事だから一体どんな話だろうと私は疑問に思いながらも、大好きなあなたに久しぶりに会えることに喜びを感じ、二つ返事で行くと返事をした。

待ち合わせの時刻に海に着くと…髪を掻きあげながら沈みゆく太陽を眺めているあなたが居た。

その光景はまるでそこだけ切り取られた美しい一枚の絵画のようで、今でも私の脳裏に焼きついて離れない……。



11: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:33:42.09 ID:RUCxoJfV.net

そんなあなたに見惚れていると私に気づいたあなたから声をかけられ、2人して再会の言葉を交わした。

それから私たちは近況の報告を話しながら砂浜を歩いていた。

私は、ここに来るのは2回目ね……なんて思いながら、こうしてあなたの少し前を話しながら歩いているとまるで去年の夏合宿みたいだと一人懐かしんでいた。

ここに来ると色々と思い出し、つい物思いに浸ってしまっていた私に背後からーー希ーーと、名前を呼ばれハッとなり振り向くと……真剣な目をして私を見つめているあなたが居た。

希「どうしたん、真姫ちゃん?」

真姫「あなたに話があるって言ったわよね?そのことなんだけど……」

希「うん、言ってたな……。それでどんな話なん?」

真姫「μ'sでここに来た時、あなたが私に言った事覚えてるわよね?」



14: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:34:25.33 ID:RUCxoJfV.net

もちろんだ。

瞳を閉じれば今でも鮮明にその光景を思い出せる。だってあなたとの大切な思い出の一つなのだから……。

〝本当はみんなと仲良くしたいのに、中々素直になれない〟

〝ほっとけないのよ…、よく知ってるからあなたに似たタイプ〟

〝まあたまには無茶してみるのもいいと思うよ、合宿やし〟

ここで私はそういってみんなと仲良くなりたいのに中々素直になれないあなたの背中を押した。



16: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:36:02.54 ID:RUCxoJfV.net

希「……うん、覚えてるよ」

真姫「今更だけどその事でちゃんとお礼を言いたくて……あ、ありがとう、希」

希「お礼なんて……」

希「別にいいんよ。ウチが勝手にしただけなんやから」

真姫「……希」

希「それにウチは真姫ちゃんがみんなと仲良くなってくれただけで嬉しいしな!」

真姫「私ここで希に背中を押してもらえてみんなと仲良くなれて本当に良かったって心から思ってるわ」

真姫「……それから私ね、あなたに実はもう一つ伝えたい事があってここに呼び出したの」



19: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:55:50.96 ID:pYXmBDOT.net

もう一つ伝えたい事って何だろうと思いながらあなたの瞳を見てみると……先ほどとは違って熱の籠もったアメジストの瞳が私を見つめていた。

私はその吸い込まれそうな瞳にドキリとしながらもどうしたのかと尋ねた。

真姫「実は私ね…あの日からあなたの事がずっと気になって仕方なかったの。それでこのモヤモヤとした気持ちってなんなんだろうってずっと思っていたわ」

真姫「でもあなたが卒業して遠くへ行ってやっとこの気持ちに気づいたの。これは恋なんだって…。私を影ながら支えてくれたあなたの……希の事が好きなんだって」

真姫「だから……、だから私と付き合ってほしいの!」



20: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:56:33.33 ID:pYXmBDOT.net

私の事が好き……あなたも私と同じようにそう思っていてくれて心から嬉しかった。けれど……

「真姫ちゃん、それはダメや……」

……と返事をし、私は大好きなあなたの告白を拒絶した。臆病な私なんかと一緒に居たらあなたに迷惑がかかる。

それに何より私はあなたに相応しくない、そう思ったから……。

……けれどあなたは一度断っただけで諦めるような性格をしていなかった。



21: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:57:09.62 ID:pYXmBDOT.net

真姫「何で駄目なの?」

希「何でって、それは…」

真姫「それは…何?」

希「そ、それは…」

頭にいい断り方が思いつかず、動揺してていつもの様に飄々とあなたの言葉を躱す事が出来ない。

真姫「ねぇ、何でよ?私が女だから?それとも……私が嫌いだから?」

希「違う!」

真姫「じゃあちゃんと理由を言ってよ!」

そういったあなたはまた真剣な瞳で私を見つめ、真っ直ぐな言葉をぶつける。

私はあなたのその瞳と真っ直ぐな言葉に弱く、いつもの様に嘘をつくなんて出来ない……。



23: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:58:47.92 ID:pYXmBDOT.net

希「……ウチもホントは真姫ちゃんの事好きなんよ」

真姫「えっ⁉じゃあ何で…」

希「それはウチなんかと居ったら真姫ちゃんが不幸になる。それにウチなんか真姫ちゃんと釣り合わんやろうし、相応しくないからや…」

真姫「何よ、それ!」

希「そのまんまの意味や。だからウチらは付き合わん方がええんよ。だから……」

真姫「だからどうしても駄目だって言いたいのね」

希「……うん」

真姫「……そう。分かったわ、希」

やっと分かってくれたのかと思い、ホッとしたのも束の間の事だった……。



24: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 17:59:53.35 ID:pYXmBDOT.net

真姫「……私、絶対にあなたの事諦めないから!」

そういってあなたは私の左手を取り、甲にキスをして去っていった……。

私はどうする事も出来ずに夕日が指す浜辺に立ち尽くし、立ち去るあなたの背中を呆然と見送るしかなかった。

そして左手の甲を見ると……そこにはまるで薔薇の様な赤い痕が残っていた。

ーーこれがあなたと私の関係の始まりだった。



25: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:00:42.83 ID:pYXmBDOT.net

私はもうすぐ目的の場所に着く頃だと思いながら車窓から目を離し、あの日の様にの左手の甲を見る。

そこにあった唇の痕はもうとっくの昔に消えてしまっているけれど、あなたが残した心の痕はいつまでも消えずにこの胸に消えない痛みとして残っていた。

やがて電車が止まり、目的の場所に着き、私は一人海岸沿いの道を重い足取りで歩いていた。

海へと着くとサラサラとした真っ白な砂浜、独特の磯の香り、もうすぐ日が暮れそうな空、と懐かしい景色が広がっている。

そして辺りを見渡すと数年前と同じ様に海を眺めて、白い薔薇の花束を携えたあなたが居た。



27: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:01:30.65 ID:pYXmBDOT.net

数年ぶりに見たあなたは数年前と違い髪が伸び、背も少し高くなっていた。

その姿はあなたが前へ前へと進んでいる事を表している様で、全然前に進めずいつまで経っても臆病で赤子の様にぐずついてる私にはやっぱりあなたは相応しくないとさらに強調している様で、心がズキズキと張り裂けそうになった……。

そうやってまたぼんやりとあなたの姿を眺めていると私に気づき話しかけてきた。

真姫「希、来てくれたのね!」

希「……うん。久しぶりやな、真姫ちゃん」

真姫「ええ、久しぶりね」

真姫「……ねえ希、終わりにする前にちょっと私の好きな人の事聞いてほしいんだけどいいかしら?」



28: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:02:10.12 ID:pYXmBDOT.net

あなたはズタボロの私の心に追い討ちをかける様にそういった。

けれどこれはいつまでもあなたと向き合わず逃げ続けていた私への罰なのかもしれない。

だから私はせめてもの罪滅ぼしとしてあなたの話を黙って聞くことにした。

希「…うん、ええよ」

真姫「ありがとう。……私ね、最初にその人にあった時、印象が最悪だったの。

真姫「だって急に変なことしてくるし、妙に関わってくるし、何考えてるか分かんないし、本音を隠す人だったし……大変だったわ」

そうやって好きな人の事を話すあなたの顔は本当に嬉しそうに頬を赤らめていた。

だからあなたの心にはもう私は居ないんだと思ってもう諦めていたその時……。



29: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:02:41.58 ID:pYXmBDOT.net

真姫「でもね、それが全部私のためや誰かのためなんだって知った時、私はその人の事を深く尊敬したわ。だって私には影ながら誰かを見守る何て出来ないもの……」

真姫「だから段々とその人の事が気になるようになって気がついたら好きになっていたの。でね、私この気持ちが抑えられなくなっちゃってその人にここで告白したんだけど見事にフラれちゃったわ。自分には私は相応しくないって……」

自嘲気味にそういった彼女の言葉に重くなっていた私の心は段々と軽くなっていく。

あなたの言ってる事に期待で胸が膨らんでいく。



30: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:03:19.52 ID:pYXmBDOT.net

そしてあなたの瞳を見るとあの時と同じような熱い視線を感じた……。

真姫「……ねえ、希。白い薔薇の花言葉って知ってる?」

真姫「白いバラの花言葉にはねーー〝深い尊敬〟〝私はあなたに相応しい〟〝相思相愛〟ーーって言う意味があるのよ。この花言葉ってまるで誰かと誰かの関係みたいじゃない?」

希「そ、それって、もしかして……」

真姫「ええ、そうよ。……ねえ希、私今でもあなたのことが好き!あなた以外考えられないくらいに……」

真姫「それに相応しいとか相応しくないって、あなたが決めることじゃなくて私が決めることよ!だからあなたと付き合うまで何度でも言うわ!私と付き合って、希!」



31: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:07:24.71 ID:pYXmBDOT.net

そういってあなたは私に白い薔薇の花束を差し出す。

希「……でも真姫ちゃん、好きな人がおるんやないん?」

真姫「それは嘘よ。こうでも言わないとあなた来てくれないでしょ?それに私好きな人がいるって言っただけで好きな人が出来たとは言ってないし」

希「ずるいなぁ~、真姫ちゃんは……」

真姫「ずるいのはあなたの方でしょ?ずっと私のこと好きなくせに逃げてたんだから」

希「うっ!それは……」

真姫「……まあ、いいわ。で、二回目の私の告白への返事は?」



32: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:08:21.25 ID:pYXmBDOT.net

そんなことを言われてもう断れるわけがない。だから私は……

希「ウチ、真姫ちゃんが誰かに取られると思ったらずっと胸が苦しかった。ホンマはウチとずっと一緒に居て欲しかった……」

希「だから……、だから真姫ちゃん、ウチと付き合ってください!」

そういって私はあなたの持っていた白い薔薇の花束を受け取る。

真姫「ええ…!希、愛してるわ!」

希「ウチも……私も真姫ちゃんのこと愛してる!」

そういって私たちは今までの分を取り戻すかのように力強く抱きしめ合い、それから見つめ合う……。



33: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:08:45.41 ID:pYXmBDOT.net

太陽が徐々に徐々に沈んでいき、辺りを赤色に染め上げていく。

ーーあなたも、私も、青い海も、白い薔薇の花束も、何もかも全てが赤色に……。

夕日に照らされた白い薔薇はまるで赤い薔薇を彷彿とさせ、あの日あなたに付けられた手の甲のキスマークみたいだと私は思った。

そして私たちは瞳をゆっくりと閉ざしていき、自然と顔を近づけていく……。

ーー世界が赤(あなた)色に染まる時に…私たちはキスをした。



34: 名無しで叶える物語 2019/12/11(水) 18:10:13.54 ID:pYXmBDOT.net

これで終わりです
最後までお読み頂きありがとうございます
私の投稿は荒れるみたいなのでしばらく投稿するか考えます


元スレ
希「世界があなた色に染まる時に……」