2: 代行ありがとう 2012/09/14(金) 18:50:58.45 ID:8F3co1Vu0
涼「ゴホッ、ゴホ……ッ、うう、風邪ひいちゃった……」
涼「愛ちゃんにまたバレそうだったとはいえ、海に飛び込んだりするんじゃなかったよ~」
涼「僕のストーカーに、僕自身が間違えられるなんて……」
涼「レッスンは休んじゃったし、しっかり治さないと……」
プルルルル
涼「あ、電話だ。もしもし? あ、まなみさんですか?」
涼「え……愛ちゃんと絵理ちゃんが僕の家に来る!?」
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 18:52:36.43 ID:8F3co1Vu0
まなみ『そうなんです! 涼さんが風邪だって伝えたら、愛ちゃんがそれならお見舞いに行くって!』
涼「ゲホゴホッ! ええ~そんな~! それで僕の家の住所を教えちゃったんですか~!?」
まなみ『すごい勢いだったから……』
涼「今日は、お父さんもお母さんも結婚記念の旅行からまだ帰ってなくて一人なんですよ!?
僕一人で応対してたら、男だってことばれちゃいますよ~!」
まなみ『あらー、それは大変ですねぇ……』
涼「まなみさ~ん……!」
まなみ『と、とりあえず、涼さんから断りのメールを入れるとか』
涼「ああ、そうですね! なら早くしなきゃ……失礼します!」
涼(うう~お見舞いに来てくれるのはうれしいけど、この状況はまずいよ……)
涼「ゴホゴホッ、お見舞いはいいって伝えなきゃ――ってメール?」
From:愛ちゃん
Sub:お見舞いでーす!
本文:
涼さん大丈夫ですか!?
今、絵理さんと私の元気を分けに行きますからね!!
それまで耐えててください必ず助けに行きます!!!!!
風邪なんて私のチョップでイチコロです!!!!!!!!!
涼「あ、愛ちゃん、一体何と戦ってるの~!? すごいやる気……」ゴホゴホ
涼「うう~申し訳ないけど、断らなきゃ」ゴホゴホ
涼「愛ちゃん、落ち込みやすいから、やんわりとした文面にしないと……」
えーっと、風邪移したらいけないから、いやもう元気になったから……?」
涼(ああ、頭が回らない……)
ピロリン♪
涼「ってまたメールだ」
From:絵理ちゃん
Sub:大丈夫?
本文:
今、そっちに向かっています。
ネットで調べたら風邪には生姜とかフルーツとかがいいみたい。
他にもなにか欲しいものあったら言って欲しい?
涼さんがいないと寂しい。
PS.愛ちゃんの声は頭に響くので、メールにするよう言いました。
涼「絵理ちゃんまで……断りにくくなっちゃったよ~」
涼「でも僕のアイドル人生を終わらせるわけには…………ここは」
To:愛ちゃん,絵理ちゃん
Sub:平気だよ
本文:
心配かけてごめんね。
私は大丈夫です。もう良くなってきました。
二人の気持ちはすっごく嬉しいです。
でも移しちゃいけないから、今日はお見舞いに来ない方がいいです。
また元気になったら、いっぱいお話しようね!
涼「ゲホゴホッ、よし、送信。そっけなくなっちゃったけど、頭が痛くてこれ以上考えられない……」
涼「横になってないと……」
涼(心苦しいけどしょうがないよね……。ごめんね愛ちゃん絵理ちゃん)
涼(でも、こんなサッカーボールとか男物の制服とかある部屋を見せたら、もうごまかせないもんね)
プルルルル
涼「ゴホ、あ、また電話……はい、もしもし」
絵理『もしもし、涼さん?』
涼「え、絵理ちゃん!? (しまったー! 名前表示確認しなかった~!)」
絵理『うん。メール見たけど本当に平気?』
涼「う、うん! そりゃあもう! ホントにもうビンビンって感じ!」
絵理『でも涼さん……すごく声がしゃがれてる? 男の人みたい……』
涼「!?」
涼(やばい~! 男だってことばれちゃう! 喉が痛いけど、健康な女の子の声を出さなきゃ!)
涼「あ、あ~えーと、ちょっとボイストレーニングやってただけだから気にしないで!(こ、これきつい……!)」
絵理『あ、いつもの声……でも無理してる?』
涼「そ、そんなことないよ~!(がんばれ、がんばるんだ僕! 今まで培った演技力をこの一瞬に注ぎこめー!)」
絵理『そう……でもやっぱり心配。顔を見に行くぐらいなら』
涼「や、私は全然平気だから! アイドルを目指してる女の子に風邪移すわけにもいかないし!」
涼(うっ、セキ込みそう。でも、セキなんか聞かれたらまた……)
絵理『涼さん? ……あっ』
涼「クフッ、クッ……とにかく絵理ちゃん――(よーし耐えたぞ!)」
愛『 涼 さ ー ん ! ! 本 当 に 大 丈 夫 で す か ー ! ? 』
涼「ぎゃおおお……ゲホッ、ゴホッ、ガホッ、ゲホッ ガホホホオオッ!!!」
愛『あー! すごい咳です! やっぱり治ってないじゃないですかー!』
涼「ゴホゲホッ、あ、愛ちゃん!?」
愛『なんで平気だなんていうんですかー! 風邪は万病の元なんですよー! 1万個も病気にかかっちゃ死んじゃいます!』
涼「ええと、その(あ、頭が、頭がすごく痛い……っ!)」
涼「あのね、愛ちゃん! とにかくお見舞いはいいの!」
愛『無理しちゃダメです! 風邪退治に行きますよー!』
涼「だから……ゴホッ」
愛『すぐに行きますからね! 待ってて下さい!』
涼(も、もう――!)
涼「――いいって言ってるでしょ!!」
愛『ひゃっ!?』
涼「あっ……」
愛『りょ、涼さん……』
涼(最低だ僕……。せっかく親切にしてくれてるのに怒鳴るなんて)
涼「あの、ごめん……」
『――愛ちゃん代わって?』
涼「あ」
絵理『涼さん。私達に来てほしくない? もしそうだったらはっきり言って欲しい?』
涼「ゴホ、そ、そんなことないんだけど」
絵理『……涼さん、いつも私達を避けてる気がする』
涼「え」
絵理『私達に良くしてくれるのに、こっちから何かしようとすると拒まれて……ちょっと辛い』
涼「う…………」
絵理『私、舞台で固まっちゃった時あった。涼さんはそこでフォロー入れてくれたのに私まだお礼出来てない?』
涼「あ、あんなの仲間だったら当たり前だよ。私だって特訓にも付き合ってもらったし」
絵理『うん。仲間だったら当たり前。だったらお見舞いに行くのも当たり前?』
涼「…………ケホ」
絵理『私達のこと嫌い?』
涼「それは絶対にないよ」
絵理『私達がお見舞いに来ると嫌?』
涼「そんなことないよ!」
涼(――あ)
絵理「じゃあ、涼さん遠慮してるの? 遠慮なんか……それこそしなくていい」
涼「――ん……ごめんなさい」
絵理『え?』
涼「絵理ちゃん、ごめんね嘘ついて。ゲホ、実は全然治ってないんだ。お見舞いに来てくれたらすごく嬉しい。それが私のホントの気持ち」
絵理『涼さん……うん気にしないで。それくらいかわいい嘘?』
涼「う、うん。ありがとう(実はもっと大きなかわいくない嘘もついてるんだ……ごめん絵理ちゃん)」
絵理『私も意地悪な質問した。ごめんなさい』
涼「うん……あの、愛ちゃんに代わってくれる?」
絵理『……うん、わかった』
愛『涼さーん……』
涼「愛ちゃん、ごめんね。さっき怒鳴っちゃって」
愛『――! 全然いーですっ! 涼さんは頭がモーローだったんです!』
涼「うん……。私もね、愛ちゃんが来てくれたらとっても嬉しいんだ」
愛『はい! 来なくていいって言ったのはモーロー効果ですねっ!?』
涼「うん、モーロー効果だね……」
愛『やっぱりお大事にしなきゃダメですよー! お見舞い、やっぱり必要ですね!』
涼(あはは、もうこれ断れないや……)
涼『うん、待ってるね……――』
「――――で、後どれくらいで着くかな」
ドタバタ
涼(急げー!! 男の子の成分を僕の部屋の中から消すんだー!)
涼「ぎゃおお……ゲホッエホッ!! う~、整理してたとは言え、やっぱりそう隠しきれるものじゃないよ~」
涼(二人には買い物を頼んだけど、せいぜい後20分位しか時間が無い~!!)
涼(こうなったら、この部屋は鍵かけて入らせないようにして、リビングと寝室だけで応対するしか……)
涼「ううっ、身体の節々が痛い~。でも移動しなきゃ」フラフラ
ズルッ!
涼「あいたたっ! 服に滑っちゃった……あっ、765プロTシャツ」
涼「そうだ……! 律子姉ちゃん、律子姉ちゃんにヘルプを!」
プルルルルルプルルルルル
涼(お願い律子姉ちゃん……助けて)
ピッ!
律子『もしもし涼? 何か用?』
涼「あっ、律子姉ちゃん! 助けてよ~!」
律子『なによ、藪から棒に』
涼「大変なんだよ。同期の子達に僕が男だってバレるかも知れないんだよ~!」
律子『ふ~ん、というかあんたまだバレてなかったんだ』
涼「そうだよ! でもこれから家で二人に会わなきゃいけなくて、ピンチなんだよ」
律子『切羽詰まってるみたいねえ。で、私はあんたを助けるためにどうすればいいの?』
涼「え!? えと……とりあえず家に来て、バレそうになったらフォローお願い」
律子『あら、涼、ということはあんた男だってばれるようなもん持ってるのね』
涼「へ? あ、当たり前でしょ!」
律子『ふーん、例えば?』
涼「え?」
律子『そういうのはやっぱりベッドの下とかに隠してるの?』
涼「な、なに言ってるんだよ!」
律子『ふふっ、私はなにも言ってないわよ。あなた、一体どんな本……おっと、どんな持ち物を隠してるのかしら?』
涼「う、ううううう~」
律子『ほらほら、律子お姉ちゃんに言ってごらんなさい? じゃなきゃ手伝わないわよー』
涼「ええええ!」
律子『どうしたの? ほら、早く』
涼「(ぎゃおおおん! なんでこんなことにぃー! ……でももう時間が! しょうがない!)」
律子『どうしたのー? 言えないような物なの?』
涼「――ってない」
律子『んー?』
涼「持ってないんだよ!! そういう本は一冊も!!
恥ずかしくって、男らしくないって思って買えなくって……友達から借りようにも、僕あんな扱いだし……!!
事務所に入ってからはそんなの買う余裕もなくなっちゃったし!」
律子『り、涼……?』
涼「でも、律子姉ちゃんの写真集は持ってる! 僕、実は発売日にそれは買った!
お父さんとお母さんにも内緒で! 持ってるのはそれだけだよ!」
律子『あ、あんたあの4500部しか発行されなかった写真集を……っ!』
涼「そうだよ文句ある……ガホッゲホッ、エッホッ! これでいいでしょ!? お願いだから助けてよ律子姉ちゃん~!」
律子『あぁー、なんというか、ごめんなさいね涼。私、実は今メンバーとロケに来てて、あなたの家に行くことなんて無理なのよ』
涼「え」
律子『休憩時間の息抜きにちょっとからかうだけのつもりだったんだけど、悪かったわ』
涼「え」
律子『それじゃ私そろそろ休憩時間終わるから……写真集の件の追及はまた今度にしてあげる。
がんばるのよ、男の子。とりあえずお姉ちゃんは味方よ』ガチャ
ツーツーツーツー――――
涼「」
涼(そ、そんな……。あんなに弱みを晒してまで……僕は一体何を……)
涼「うっ――ゲホガホゲホッ!!」
涼(あ、風邪ひいてて家に一人って伝えてれば、律子姉ちゃん僕を助けてくれたのかな――
あれ? なんか視界がぼやけて――)
ピンポーン!
涼「!!」
愛『涼さーん! お見舞いに来ましたよー! 鍵開けてくださーい!』
涼(ぎゃおおおおん!? ついにきたー!?
ど、どうしよう!? 隠し通せる自信がすごい勢いで無くなってきちゃったよー!)
涼「とりあえずインターホンで応対しないと…………あ、愛ちゃん、絵理ちゃん来てくれたんだ」
絵理『うん。身体によさそうなものいっぱい買ってきた?』
愛『ごはん山盛り太郎おかゆばーじょんだって作れます!』
涼「あ、あのせっかくここまで来てもらって悪いんだけど、やっぱり――」
愛『――! 涼さん、やっぱり私達のお見舞い嫌だったんですか?』シュン
絵理『そんなのって……ない?』シュン
涼「ああっ! シュンとしないで! ちょっと今見せられない顔してるから、少し待ってて欲しいだけなの!」
愛『な、なるほどー風邪ひいてるのにViのことを忘れないなんて流石涼さんです!』
絵理『常住座臥アイドル?』
涼(神様……なんでもしますから、どうか今日という日を無事に乗り越えさせてください……)
涼(男物のパジャマからレッスン用の体操着に着替えて、胸パッド入れて、自室に鍵かけて、リビングに布団敷いて、男だってばれそうな写真とか隠して、眼鏡外して……)
涼「い、いらっしゃい」
愛「おはようございます!」
絵理「プライベートだから……こんにちは?」
涼「どうぞあがって……っ」
愛「はい!」
絵理「あれ? 靴が少ない……ご両親は外出中?」
涼「そうなの。旅行に行っちゃってて」
愛「涼さん一人ぼっちじゃないですかーっ! でももう大丈夫ですよ! あたし達が来ました!」
絵理「この男物の靴は?」
涼(……あ! 僕の私用の靴! 絵理ちゃん目敏すぎるよ~っ!)
涼「さ、触らないで! この靴はおまじないなの!」
絵理「おまじない……?」
涼「う、うん。男物の靴を玄関に10年間置いておけば……、えっと、その、バストが大きくなるの!」
愛「バストアップですか!?」
絵理「初耳?」
涼「風水パワーが男の人の靴に溜まって、女性的な部分だけのオーラが家に入るの! アイドルの人たちみんなやってるんだから!」
愛「そうなんですかっ! あたしもやってみます!」
絵理「私は……いい?」
涼(ごまかせたみたい……)
涼「じゃ、じゃああがって」
愛「はい、お邪魔しまーす!」
――
――――
トントントン
グツグツ・・・
愛「しょうがすりおろすよーっ!!」シャカシャカ
絵理「大丈夫……レシピ通りに作れば……きっと大丈夫……」
涼「…………」
涼(ようやく二人を家にあげることができた)
涼(正直……もう死にそう……)
涼(でも、気を抜いちゃだめだ……)
愛「涼さんのおうちってきれいですねー」
絵理「うん、ご両親いっしょに旅行中なんて、仲良しでうらやましい?」
涼「あはは……(でも、やっぱりありがたいや。愛ちゃんと絵理ちゃん、本当にいい子達だよね)」
愛「涼さーん! あいえり特製雑炊できましたー!」
絵理「我ながら……上出来?」
涼「ありがとう、愛ちゃん、絵理ちゃん。とってもおいしそう」
絵理「ふぅー、ふぅー……はい、涼さん、あーん?」
涼「食べさせてくれるの? ありがとう」パクッ
涼「ムグ、ムグ。うん、とってもおいしいよ」
絵理「良かった……適量のところがちょっと不安だった?」
涼「いい味だよ。ゴホ、これならすぐに元気になるよ」ジワッ
涼(……あれ、涙が。すっごく胸の奥がきゅんとなって……寂しさがあったかくなってく……)
愛「あたしも食べさせます! フー――ッ!!! フー――ッ!!!」
涼(そうか僕、不安で、寂しくて――――心細かったんだ)
愛「どうぞ涼さん!」ズイッ
ジュッ
涼「あっつううううぅううぅっ!?」
愛「あっ、ほっぺに! 涼さんごめんなさい!」
絵理「ハズレゾーンをタッチ……バッドコミュニケーション?」
愛「氷持ってきます! あとお水も!」ドタタタ
涼「あ、愛ちゃん、大丈夫だからっ」
愛「持ってきましたーっ! ダーッシュッ!」
涼「そんな急がなくても……」
涼(その時僕は見たのです。愛ちゃんの背後に765プロ正統派アイドル、天海春香さんの姿を)
愛「あっ!」
ドンガラガッシャーン!
涼「ひゃああっ」バッシャーン
絵理「涼さん……びしょぬれ?」
愛「ああっ! 涼さんごめんなさい~!!」
涼「き、気にしないで……くしゅん!」
愛「うーっ……さっきからあたし、ダメダメですー……穴掘って埋まった方が」
涼「雪歩さんみたいなこと言わないで! くしゅん!」
絵理「涼さん、早く着がえないと」
愛「あたし、手伝います!」
涼(え、えええ! まずいよ~!)
涼「ひ、一人で大丈夫だから! 二人は拭き掃除お願い!」
ガチャ、バタン
涼「着がえ、着替え! 普通のTシャツでいいや……」
涼(ああ……身体がすごくだるい……)クラッ
涼(再び床に伏せる僕)
愛「涼さーん……ごめんなさーい……」
涼「ん、いいのいいの。拭き掃除ありがとね」
絵理「冷えピタ使う?」
涼「うん……ありがと……」
絵理「はい……」ペタ
涼(冷えピタといっしょに、おでこにちょっと触れた絵理ちゃんの細い指。
その指も……冷たくて、僕の顔の温度が更に上がったような気がした)
絵理「…………」
涼「…………(このまま眠れそう)」
絵理「…………」
涼「…………」ウトウト
愛「涼 さ ん っ ! 子 守 唄 歌 い ま し ょ う か ! ?」
涼&絵理「!?」
絵理「愛ちゃん……涼さんはもう寝るとこ? 静粛に?」
愛「あっ、ごめんなさい!」
涼「愛ちゃん……」
愛「うう、あたしもっと役に立ちたくて……空回っちゃってますね……」
涼「き、気にしてないから」
愛「あ、あたし、やっぱり……涼さんの言うこと聞いて来ない方が良かったのかなぁ……」
涼(ああ、また落ち込んじゃって……)
涼「愛ちゃん……歌って?」
愛「え?」
涼「二人が来てくれて私嬉しいよ。愛ちゃんの子守唄聞きたいな――――好きだから」
愛&絵理「え」
涼「私愛ちゃんの歌好きだよ」
絵理「ああ、そういう」
愛「ま、任せて下さい!」
愛「え、えーとでも、そういえばあたしの子守唄って……や、やっぱりあれしか……い、いきますねっ」
愛「――――っ♪」
涼「……あ」
涼(愛ちゃんは歌いはじめた。
歌う前は頭をぶんぶん振ったりして、迷ってるみたいだったけれど
やがて意を決したように歌ったその歌は、予想外に物静かに始まって
僕にやさしく降り積もっていった。
懐かしい、どこかで聞いた歌のような気がしたけど
ぐらぐらになった僕の頭じゃ、それを探り当てることはできなくて
……でもただ、ここにこの歌を歌ってくれる愛ちゃんがいて、見守ってくれている絵理ちゃんがいて、
その声と眼差しを受けている僕が居て。
――――それが多分、もう全部でよかったのでした)
涼「すぅすぅ」
絵理「涼さん。寝ちゃった?」
愛「あっ、そうみたいですねっ」
絵理「とってもきれいな歌だった……」
愛「えへへ……あたし、実はこの歌好きなのかどうかわからないんです。
でも、あたしにとっての子守唄って言えば、やっぱりこれしかないって思いまして」
絵理「愛ちゃん」
愛「あ、あはははは! なんか恥ずかしいです! 初めて人に聞かせちゃいましたっ! あはは……」
絵理「愛ちゃん……なんかとってもかわいい?」
愛「え、絵理さん~!? からかわないで下さいよ~っ!」
絵理「本当のこと?」
愛「あ、あうう」
――
――――
涼(ん……ちょっと寝ちゃってた?)
愛「早く治るといいですねっ」
絵理「うん」
涼(あ、二人ともまだいてくれてるんだ)
愛「涼さんのアルバムとか見てみたいですねー!」
絵理「愛ちゃん……勝手に見ちゃダメ?」
涼(ひゃああああ、愛ちゃんがまた恐ろしいことをしようとしてる~!!)
愛「頼んで見せてもらいましょーっ!いつの日か今度はお見舞いじゃなく遊びに来た時に!」
涼(……え)
絵理「うん、それがいい?」
愛「仲間だったら、いつでも頼めますもんねっ」
涼(…………)
涼(最初は男だってばれるかもって思ったけど心配し過ぎだったみたい)
涼(愛ちゃんも絵理ちゃんもやっぱりとってもいい子だ)
涼「やっぱり、来てもらってよかった……」
絵理「あっ、目が覚めた?」
愛「飲み物持ってきましょうかっ!?」
涼「うん、お願い。あとお薬持ってきてくれるかな。そこの救急箱の中にあるから」
愛「はいっ!」
絵理「涼さんちょっとすっきりした顔してる。汗たくさんかいてすっきり?」
涼「そ、そう?(かいたのは冷や汗かな……)」
愛「お薬と水ですっ!」
涼「ありがと、愛ちゃん。えーっと一回何錠だっけ……眼鏡は……」
愛「へっ、眼鏡?」
涼「うん」
絵理「これのこと?」
涼「ああ、そ」
愛「涼さん眼鏡かけてませんでしたよね?」
涼「あっ! そ、そうだった! あはは、寝ぼけてるみたいだね私!」
絵理「じゃ、このテーブルの上にあった眼鏡は? また男物っぽいけど……」
涼「あ、あれれ~!? 誰か置いていっちゃったのかな~?
(しまった~急いでて危ない所に置いちゃった~! なんてミスを~!)」
愛「誰かって誰です?」
涼「え、えっ~~~~~っと、それは~~~~~」
涼(ぎゃおおおおおおんっ!? な、なんでこんなことに~~~っ!?)
愛「じーっ」
絵理「じーっ?」
涼(こ、ここは、なんとしてもうまくごまかさなきゃ~~っ!!!)
涼「それは、多分――――」
――
――――
律子「――まったく、涼ったら風邪をひいてたならちゃんとそう言いなさいよね。
知ってれば多分からかったりしなかったのに。私が鬼畜眼鏡みたいじゃないのよ」
律子「涼ー! いるー?」
ガチャ
涼「あ、律子姉ちゃん……!」
律子「一昨日は悪かったわね。あなた、風邪をひいてたんならちゃんと伝えてよ」
涼「ああ、ごめん。あの時は焦っちゃってて」
律子「まあいいわ。それで風邪は治ったみたいね?」
涼「うん、なぜか昨日まではすごく悪化してたんだけど、なんとか……」
律子「悪化したって、何やったのよ? 安静にしてなきゃダメでしょ!」
涼「僕だって安静にしてるつもりだったんだけど、一昨日の疲れがでちゃったんだよ~っ!」
律子「一昨日……ああ。それでどうだったの? 同期の子達には隠しきれた?」
涼「それなんだけど――――律子姉ちゃん。予備の眼鏡あったら貸してくれない?」
律子「なんで? あなた眼鏡今かけてるじゃない。予備?」
涼「この眼鏡で行くわけにはいかなくて……」
――
――――
キーンコーンカーンコーン
涼「校門に行けば、前みたいに……ううっやっぱり自分のじゃないと視界が……」
愛「あーっ! とうとう見つけましたーっ! あなた涼さんのストーカーさんですねっ!
前は逃げられましたけど今度はそうはいきませんっ!」
涼「ひゃああ! 見つけるの早い~っ!」
愛「あたし怒ってますっ! ストーカーしたことも! 涼さんの家に忍び込んだこともっ!」
涼「あ、あれはー……」
愛「あっ、眼鏡変わってる! やっぱり置いてあったのはあなたの眼鏡だったんですね!
もはやもんどーむようですっ! チョーップっ!!!」ズビシィッ!
涼「痛あっ!」
――・――・――・――
回想
涼「それは、多分――――」
愛「誰のなんです?」
涼(ど、どうすれば~っ!! こうなったら!)
涼「す、ストーカーさんのかもっ!」
絵理「ストー……カー……?」
愛「あーっ! 涼さんのストーカーさんですかーっ!
あたし昨日海に飛び込まれて逃げられちゃったんですよーっ!」
涼「そ、そう! きっとその後私の家に忍び込んできたんだねっ!」
愛「えええ~っ!」
絵理「こ、こわい……」
涼「きっとこの眼鏡はその時に置き忘れて行っちゃったものだよ!
ううん、知らないけど絶対そう!」
愛「涼さん眼鏡かけませんもんね。ごめんなさいっ、あたしが捕まえてれば!」
涼「あ、愛ちゃんは悪くないよ!」
絵理「でも、もしそうなら、住居不法侵入。警察に行くべき? 物証もあるし……」
涼「だ、ダメだよ! 私達アイドルなんだし! 大ごとにしちゃ」
絵理「それもそうだけど……」
愛「あたし、あたしに任せて下さいっ! 絶対退治しますから!」
涼「あ、ありがとう愛ちゃん」
愛「チョップの練習するよーっ!」ビュン!ビュン!
絵理「愛ちゃんの腕が……見えない……!?」
涼(うわああぁ、お手柔らかに…………)
――・――・――・――
涼(って言ったけど……)
愛「うにににににににににー―――――っ!!!」バシベシバシベシバシベシ!!
涼「いたっ、たたっ、うわわああっ! ご、ごめんなさい! 許して~っ!」
愛「ふーっ、ふーっ! 反省しましたか!?」
涼「は、はい!」
愛「これに懲りたらもうストーカーはやめて下さいね!」
涼「はい~っ!」
愛「よしじゃっ、涼さんの所に行きましょう!」
涼「えっ」
愛「お友達が言ってましたっ! ジダンってことにすれば、イシャリョーで涼さんにおカネで謝れるそーですっ!」
涼「い、慰謝料!? それはまずいよ!」
愛「まずいことやったのはそっちですっ」
涼「ま、待って! 理由を話しますから~っ!」
愛「理由ってなんです?」
涼「それは……」
涼「実は、僕たち生き別れの姉弟なんです。名前は涼太郎っていいます」
愛「ええ!」
涼「ほら、顔だって似てるでしょ」
愛「あっ、本当! よく見れば似てますね!」
涼「アイドル活動してる姉を一目見たくて……それで……」
愛「涼さんのおうちに侵入したのは?」
涼「あれは、えっと、お父さんとお母さんが家に招いてくれただけなんです。
その時眼鏡忘れちゃって……」
愛「そーだったんですか……」
涼(よかった。納得してくれた)
愛「それならなおさら涼さんに会っていったらどうですか? きっと喜びます!」
涼「ええ、それはまずいんです!」
愛「え?」
涼「こ、これから犬に餌をあげに行かなきゃならないんでっ! 失礼しますっ!」
愛「あっ、ちょっと!」
涼(はやく女装して、アイドルにならないと!)
― トランスフォオオオオオオム!! ―
涼(ふうう~……、これでひとまずは安心……
アイドルって大変だと思ってたけど、こんなことがあるなんて考えなかったよ)
涼「3日空けただけなのに事務所に来るの久しぶりな気がするなあ」
絵理「涼さん……こんにちは……あれ? おはようございます?」
涼「あ、絵理ちゃん」
絵理「風邪治ったみたい。良かった」
涼「絵理ちゃんと愛ちゃんがお見舞いに来てくれたおかげだよ。ホントにありがとね」
絵理「えへへ……どういたしまして? でもストーカー問題は未解決」
涼「そ、それも心配しなくてもいいような気がするよ」
絵理「ふぅん?」
愛「涼さーんっ! 絵理さーんっ! おはよーございまーっす!」
絵理「愛ちゃん……いつも元気」
涼「びくっ」
愛「どしたんですか? 涼さん震えてますよっ。まだ風邪治ってないんですかー?」
涼「ううん。もう体はばっちりだよ! 愛ちゃんにはお世話になっちゃったね」ニコッ
愛「よかったです! 涼さんが元気だとあたしもうれしいです!
絵理「私も?」
涼(二人とも……)
愛「聞いてください涼さん、ストーカーさんのことなんですけど、実はですねー……!」
涼(そのまま、僕達は事務所に向かって歩き始めた。
今回の件で二人ともっと仲よくなれた気がするけど、僕はやっぱり『大きな秘密』を抱えたままで
騙してるような、不誠実なような、そんな心苦しさは拭えなかった。
でも、いつかきっと二人にも明かしたいと思う。
『男の僕』になった時、二人が果たしてこれまで通り付き合ってくれるかどうかの疑問には
ちょっと答えが見えたような気がするから)
涼「今日も元気に、アイドルライフ」
完
投下終了
ちょっと早いけど涼ちん誕生日おめでとう!
元スレ
まなみ『そうなんです! 涼さんが風邪だって伝えたら、愛ちゃんがそれならお見舞いに行くって!』
涼「ゲホゴホッ! ええ~そんな~! それで僕の家の住所を教えちゃったんですか~!?」
まなみ『すごい勢いだったから……』
涼「今日は、お父さんもお母さんも結婚記念の旅行からまだ帰ってなくて一人なんですよ!?
僕一人で応対してたら、男だってことばれちゃいますよ~!」
まなみ『あらー、それは大変ですねぇ……』
涼「まなみさ~ん……!」
まなみ『と、とりあえず、涼さんから断りのメールを入れるとか』
涼「ああ、そうですね! なら早くしなきゃ……失礼します!」
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 18:54:12.17 ID:8F3co1Vu0
涼(うう~お見舞いに来てくれるのはうれしいけど、この状況はまずいよ……)
涼「ゴホゴホッ、お見舞いはいいって伝えなきゃ――ってメール?」
From:愛ちゃん
Sub:お見舞いでーす!
本文:
涼さん大丈夫ですか!?
今、絵理さんと私の元気を分けに行きますからね!!
それまで耐えててください必ず助けに行きます!!!!!
風邪なんて私のチョップでイチコロです!!!!!!!!!
涼「あ、愛ちゃん、一体何と戦ってるの~!? すごいやる気……」ゴホゴホ
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 18:56:21.93 ID:8F3co1Vu0
涼「うう~申し訳ないけど、断らなきゃ」ゴホゴホ
涼「愛ちゃん、落ち込みやすいから、やんわりとした文面にしないと……」
えーっと、風邪移したらいけないから、いやもう元気になったから……?」
涼(ああ、頭が回らない……)
ピロリン♪
涼「ってまたメールだ」
From:絵理ちゃん
Sub:大丈夫?
本文:
今、そっちに向かっています。
ネットで調べたら風邪には生姜とかフルーツとかがいいみたい。
他にもなにか欲しいものあったら言って欲しい?
涼さんがいないと寂しい。
PS.愛ちゃんの声は頭に響くので、メールにするよう言いました。
涼「絵理ちゃんまで……断りにくくなっちゃったよ~」
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 18:58:32.47 ID:8F3co1Vu0
涼「でも僕のアイドル人生を終わらせるわけには…………ここは」
To:愛ちゃん,絵理ちゃん
Sub:平気だよ
本文:
心配かけてごめんね。
私は大丈夫です。もう良くなってきました。
二人の気持ちはすっごく嬉しいです。
でも移しちゃいけないから、今日はお見舞いに来ない方がいいです。
また元気になったら、いっぱいお話しようね!
涼「ゲホゴホッ、よし、送信。そっけなくなっちゃったけど、頭が痛くてこれ以上考えられない……」
涼「横になってないと……」
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:00:23.45 ID:8F3co1Vu0
涼(心苦しいけどしょうがないよね……。ごめんね愛ちゃん絵理ちゃん)
涼(でも、こんなサッカーボールとか男物の制服とかある部屋を見せたら、もうごまかせないもんね)
プルルルル
涼「ゴホ、あ、また電話……はい、もしもし」
絵理『もしもし、涼さん?』
涼「え、絵理ちゃん!? (しまったー! 名前表示確認しなかった~!)」
絵理『うん。メール見たけど本当に平気?』
涼「う、うん! そりゃあもう! ホントにもうビンビンって感じ!」
絵理『でも涼さん……すごく声がしゃがれてる? 男の人みたい……』
涼「!?」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:02:07.74 ID:8F3co1Vu0
涼(やばい~! 男だってことばれちゃう! 喉が痛いけど、健康な女の子の声を出さなきゃ!)
涼「あ、あ~えーと、ちょっとボイストレーニングやってただけだから気にしないで!(こ、これきつい……!)」
絵理『あ、いつもの声……でも無理してる?』
涼「そ、そんなことないよ~!(がんばれ、がんばるんだ僕! 今まで培った演技力をこの一瞬に注ぎこめー!)」
絵理『そう……でもやっぱり心配。顔を見に行くぐらいなら』
涼「や、私は全然平気だから! アイドルを目指してる女の子に風邪移すわけにもいかないし!」
涼(うっ、セキ込みそう。でも、セキなんか聞かれたらまた……)
絵理『涼さん? ……あっ』
涼「クフッ、クッ……とにかく絵理ちゃん――(よーし耐えたぞ!)」
愛『 涼 さ ー ん ! ! 本 当 に 大 丈 夫 で す か ー ! ? 』
涼「ぎゃおおお……ゲホッ、ゴホッ、ガホッ、ゲホッ ガホホホオオッ!!!」
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:05:02.12 ID:8F3co1Vu0
愛『あー! すごい咳です! やっぱり治ってないじゃないですかー!』
涼「ゴホゲホッ、あ、愛ちゃん!?」
愛『なんで平気だなんていうんですかー! 風邪は万病の元なんですよー! 1万個も病気にかかっちゃ死んじゃいます!』
涼「ええと、その(あ、頭が、頭がすごく痛い……っ!)」
涼「あのね、愛ちゃん! とにかくお見舞いはいいの!」
愛『無理しちゃダメです! 風邪退治に行きますよー!』
涼「だから……ゴホッ」
愛『すぐに行きますからね! 待ってて下さい!』
涼(も、もう――!)
涼「――いいって言ってるでしょ!!」
愛『ひゃっ!?』
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:07:12.23 ID:8F3co1Vu0
涼「あっ……」
愛『りょ、涼さん……』
涼(最低だ僕……。せっかく親切にしてくれてるのに怒鳴るなんて)
涼「あの、ごめん……」
『――愛ちゃん代わって?』
涼「あ」
絵理『涼さん。私達に来てほしくない? もしそうだったらはっきり言って欲しい?』
涼「ゴホ、そ、そんなことないんだけど」
絵理『……涼さん、いつも私達を避けてる気がする』
涼「え」
絵理『私達に良くしてくれるのに、こっちから何かしようとすると拒まれて……ちょっと辛い』
涼「う…………」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:11:22.05 ID:8F3co1Vu0
絵理『私、舞台で固まっちゃった時あった。涼さんはそこでフォロー入れてくれたのに私まだお礼出来てない?』
涼「あ、あんなの仲間だったら当たり前だよ。私だって特訓にも付き合ってもらったし」
絵理『うん。仲間だったら当たり前。だったらお見舞いに行くのも当たり前?』
涼「…………ケホ」
絵理『私達のこと嫌い?』
涼「それは絶対にないよ」
絵理『私達がお見舞いに来ると嫌?』
涼「そんなことないよ!」
涼(――あ)
絵理「じゃあ、涼さん遠慮してるの? 遠慮なんか……それこそしなくていい」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:12:36.98 ID:8F3co1Vu0
涼「――ん……ごめんなさい」
絵理『え?』
涼「絵理ちゃん、ごめんね嘘ついて。ゲホ、実は全然治ってないんだ。お見舞いに来てくれたらすごく嬉しい。それが私のホントの気持ち」
絵理『涼さん……うん気にしないで。それくらいかわいい嘘?』
涼「う、うん。ありがとう(実はもっと大きなかわいくない嘘もついてるんだ……ごめん絵理ちゃん)」
絵理『私も意地悪な質問した。ごめんなさい』
涼「うん……あの、愛ちゃんに代わってくれる?」
絵理『……うん、わかった』
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:14:08.18 ID:8F3co1Vu0
愛『涼さーん……』
涼「愛ちゃん、ごめんね。さっき怒鳴っちゃって」
愛『――! 全然いーですっ! 涼さんは頭がモーローだったんです!』
涼「うん……。私もね、愛ちゃんが来てくれたらとっても嬉しいんだ」
愛『はい! 来なくていいって言ったのはモーロー効果ですねっ!?』
涼「うん、モーロー効果だね……」
愛『やっぱりお大事にしなきゃダメですよー! お見舞い、やっぱり必要ですね!』
涼(あはは、もうこれ断れないや……)
涼『うん、待ってるね……――』
「――――で、後どれくらいで着くかな」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:16:21.45 ID:8F3co1Vu0
ドタバタ
涼(急げー!! 男の子の成分を僕の部屋の中から消すんだー!)
涼「ぎゃおお……ゲホッエホッ!! う~、整理してたとは言え、やっぱりそう隠しきれるものじゃないよ~」
涼(二人には買い物を頼んだけど、せいぜい後20分位しか時間が無い~!!)
涼(こうなったら、この部屋は鍵かけて入らせないようにして、リビングと寝室だけで応対するしか……)
涼「ううっ、身体の節々が痛い~。でも移動しなきゃ」フラフラ
ズルッ!
涼「あいたたっ! 服に滑っちゃった……あっ、765プロTシャツ」
涼「そうだ……! 律子姉ちゃん、律子姉ちゃんにヘルプを!」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:18:10.88 ID:8F3co1Vu0
プルルルルルプルルルルル
涼(お願い律子姉ちゃん……助けて)
ピッ!
律子『もしもし涼? 何か用?』
涼「あっ、律子姉ちゃん! 助けてよ~!」
律子『なによ、藪から棒に』
涼「大変なんだよ。同期の子達に僕が男だってバレるかも知れないんだよ~!」
律子『ふ~ん、というかあんたまだバレてなかったんだ』
涼「そうだよ! でもこれから家で二人に会わなきゃいけなくて、ピンチなんだよ」
律子『切羽詰まってるみたいねえ。で、私はあんたを助けるためにどうすればいいの?』
涼「え!? えと……とりあえず家に来て、バレそうになったらフォローお願い」
律子『あら、涼、ということはあんた男だってばれるようなもん持ってるのね』
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:20:07.52 ID:8F3co1Vu0
涼「へ? あ、当たり前でしょ!」
律子『ふーん、例えば?』
涼「え?」
律子『そういうのはやっぱりベッドの下とかに隠してるの?』
涼「な、なに言ってるんだよ!」
律子『ふふっ、私はなにも言ってないわよ。あなた、一体どんな本……おっと、どんな持ち物を隠してるのかしら?』
涼「う、ううううう~」
律子『ほらほら、律子お姉ちゃんに言ってごらんなさい? じゃなきゃ手伝わないわよー』
涼「ええええ!」
律子『どうしたの? ほら、早く』
涼「(ぎゃおおおん! なんでこんなことにぃー! ……でももう時間が! しょうがない!)」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:22:24.81 ID:8F3co1Vu0
律子『どうしたのー? 言えないような物なの?』
涼「――ってない」
律子『んー?』
涼「持ってないんだよ!! そういう本は一冊も!!
恥ずかしくって、男らしくないって思って買えなくって……友達から借りようにも、僕あんな扱いだし……!!
事務所に入ってからはそんなの買う余裕もなくなっちゃったし!」
律子『り、涼……?』
涼「でも、律子姉ちゃんの写真集は持ってる! 僕、実は発売日にそれは買った!
お父さんとお母さんにも内緒で! 持ってるのはそれだけだよ!」
律子『あ、あんたあの4500部しか発行されなかった写真集を……っ!』
涼「そうだよ文句ある……ガホッゲホッ、エッホッ! これでいいでしょ!? お願いだから助けてよ律子姉ちゃん~!」
律子『あぁー、なんというか、ごめんなさいね涼。私、実は今メンバーとロケに来てて、あなたの家に行くことなんて無理なのよ』
涼「え」
律子『休憩時間の息抜きにちょっとからかうだけのつもりだったんだけど、悪かったわ』
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:25:17.97 ID:8F3co1Vu0
涼「え」
律子『それじゃ私そろそろ休憩時間終わるから……写真集の件の追及はまた今度にしてあげる。
がんばるのよ、男の子。とりあえずお姉ちゃんは味方よ』ガチャ
ツーツーツーツー――――
涼「」
涼(そ、そんな……。あんなに弱みを晒してまで……僕は一体何を……)
涼「うっ――ゲホガホゲホッ!!」
涼(あ、風邪ひいてて家に一人って伝えてれば、律子姉ちゃん僕を助けてくれたのかな――
あれ? なんか視界がぼやけて――)
ピンポーン!
涼「!!」
愛『涼さーん! お見舞いに来ましたよー! 鍵開けてくださーい!』
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:27:16.51 ID:8F3co1Vu0
涼(ぎゃおおおおん!? ついにきたー!?
ど、どうしよう!? 隠し通せる自信がすごい勢いで無くなってきちゃったよー!)
涼「とりあえずインターホンで応対しないと…………あ、愛ちゃん、絵理ちゃん来てくれたんだ」
絵理『うん。身体によさそうなものいっぱい買ってきた?』
愛『ごはん山盛り太郎おかゆばーじょんだって作れます!』
涼「あ、あのせっかくここまで来てもらって悪いんだけど、やっぱり――」
愛『――! 涼さん、やっぱり私達のお見舞い嫌だったんですか?』シュン
絵理『そんなのって……ない?』シュン
涼「ああっ! シュンとしないで! ちょっと今見せられない顔してるから、少し待ってて欲しいだけなの!」
愛『な、なるほどー風邪ひいてるのにViのことを忘れないなんて流石涼さんです!』
絵理『常住座臥アイドル?』
涼(神様……なんでもしますから、どうか今日という日を無事に乗り越えさせてください……)
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:33:34.55 ID:8F3co1Vu0
涼(男物のパジャマからレッスン用の体操着に着替えて、胸パッド入れて、自室に鍵かけて、リビングに布団敷いて、男だってばれそうな写真とか隠して、眼鏡外して……)
涼「い、いらっしゃい」
愛「おはようございます!」
絵理「プライベートだから……こんにちは?」
涼「どうぞあがって……っ」
愛「はい!」
絵理「あれ? 靴が少ない……ご両親は外出中?」
涼「そうなの。旅行に行っちゃってて」
愛「涼さん一人ぼっちじゃないですかーっ! でももう大丈夫ですよ! あたし達が来ました!」
絵理「この男物の靴は?」
涼(……あ! 僕の私用の靴! 絵理ちゃん目敏すぎるよ~っ!)
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:39:39.97 ID:8F3co1Vu0
涼「さ、触らないで! この靴はおまじないなの!」
絵理「おまじない……?」
涼「う、うん。男物の靴を玄関に10年間置いておけば……、えっと、その、バストが大きくなるの!」
愛「バストアップですか!?」
絵理「初耳?」
涼「風水パワーが男の人の靴に溜まって、女性的な部分だけのオーラが家に入るの! アイドルの人たちみんなやってるんだから!」
愛「そうなんですかっ! あたしもやってみます!」
絵理「私は……いい?」
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:43:09.90 ID:8F3co1Vu0
涼(ごまかせたみたい……)
涼「じゃ、じゃああがって」
愛「はい、お邪魔しまーす!」
――
――――
トントントン
グツグツ・・・
愛「しょうがすりおろすよーっ!!」シャカシャカ
絵理「大丈夫……レシピ通りに作れば……きっと大丈夫……」
涼「…………」
涼(ようやく二人を家にあげることができた)
涼(正直……もう死にそう……)
涼(でも、気を抜いちゃだめだ……)
愛「涼さんのおうちってきれいですねー」
絵理「うん、ご両親いっしょに旅行中なんて、仲良しでうらやましい?」
涼「あはは……(でも、やっぱりありがたいや。愛ちゃんと絵理ちゃん、本当にいい子達だよね)」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:44:44.91 ID:8F3co1Vu0
愛「涼さーん! あいえり特製雑炊できましたー!」
絵理「我ながら……上出来?」
涼「ありがとう、愛ちゃん、絵理ちゃん。とってもおいしそう」
絵理「ふぅー、ふぅー……はい、涼さん、あーん?」
涼「食べさせてくれるの? ありがとう」パクッ
涼「ムグ、ムグ。うん、とってもおいしいよ」
絵理「良かった……適量のところがちょっと不安だった?」
涼「いい味だよ。ゴホ、これならすぐに元気になるよ」ジワッ
涼(……あれ、涙が。すっごく胸の奥がきゅんとなって……寂しさがあったかくなってく……)
愛「あたしも食べさせます! フー――ッ!!! フー――ッ!!!」
涼(そうか僕、不安で、寂しくて――――心細かったんだ)
愛「どうぞ涼さん!」ズイッ
ジュッ
涼「あっつううううぅううぅっ!?」
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:47:16.05 ID:8F3co1Vu0
愛「あっ、ほっぺに! 涼さんごめんなさい!」
絵理「ハズレゾーンをタッチ……バッドコミュニケーション?」
愛「氷持ってきます! あとお水も!」ドタタタ
涼「あ、愛ちゃん、大丈夫だからっ」
愛「持ってきましたーっ! ダーッシュッ!」
涼「そんな急がなくても……」
涼(その時僕は見たのです。愛ちゃんの背後に765プロ正統派アイドル、天海春香さんの姿を)
愛「あっ!」
ドンガラガッシャーン!
涼「ひゃああっ」バッシャーン
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:49:17.88 ID:8F3co1Vu0
絵理「涼さん……びしょぬれ?」
愛「ああっ! 涼さんごめんなさい~!!」
涼「き、気にしないで……くしゅん!」
愛「うーっ……さっきからあたし、ダメダメですー……穴掘って埋まった方が」
涼「雪歩さんみたいなこと言わないで! くしゅん!」
絵理「涼さん、早く着がえないと」
愛「あたし、手伝います!」
涼(え、えええ! まずいよ~!)
涼「ひ、一人で大丈夫だから! 二人は拭き掃除お願い!」
ガチャ、バタン
涼「着がえ、着替え! 普通のTシャツでいいや……」
涼(ああ……身体がすごくだるい……)クラッ
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:51:11.47 ID:8F3co1Vu0
涼(再び床に伏せる僕)
愛「涼さーん……ごめんなさーい……」
涼「ん、いいのいいの。拭き掃除ありがとね」
絵理「冷えピタ使う?」
涼「うん……ありがと……」
絵理「はい……」ペタ
涼(冷えピタといっしょに、おでこにちょっと触れた絵理ちゃんの細い指。
その指も……冷たくて、僕の顔の温度が更に上がったような気がした)
絵理「…………」
涼「…………(このまま眠れそう)」
絵理「…………」
涼「…………」ウトウト
愛「涼 さ ん っ ! 子 守 唄 歌 い ま し ょ う か ! ?」
涼&絵理「!?」
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:53:25.84 ID:8F3co1Vu0
絵理「愛ちゃん……涼さんはもう寝るとこ? 静粛に?」
愛「あっ、ごめんなさい!」
涼「愛ちゃん……」
愛「うう、あたしもっと役に立ちたくて……空回っちゃってますね……」
涼「き、気にしてないから」
愛「あ、あたし、やっぱり……涼さんの言うこと聞いて来ない方が良かったのかなぁ……」
涼(ああ、また落ち込んじゃって……)
涼「愛ちゃん……歌って?」
愛「え?」
涼「二人が来てくれて私嬉しいよ。愛ちゃんの子守唄聞きたいな――――好きだから」
愛&絵理「え」
涼「私愛ちゃんの歌好きだよ」
絵理「ああ、そういう」
愛「ま、任せて下さい!」
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 19:55:53.75 ID:8F3co1Vu0
愛「え、えーとでも、そういえばあたしの子守唄って……や、やっぱりあれしか……い、いきますねっ」
愛「――――っ♪」
涼「……あ」
涼(愛ちゃんは歌いはじめた。
歌う前は頭をぶんぶん振ったりして、迷ってるみたいだったけれど
やがて意を決したように歌ったその歌は、予想外に物静かに始まって
僕にやさしく降り積もっていった。
懐かしい、どこかで聞いた歌のような気がしたけど
ぐらぐらになった僕の頭じゃ、それを探り当てることはできなくて
……でもただ、ここにこの歌を歌ってくれる愛ちゃんがいて、見守ってくれている絵理ちゃんがいて、
その声と眼差しを受けている僕が居て。
――――それが多分、もう全部でよかったのでした)
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:19:23.23 ID:8F3co1Vu0
涼「すぅすぅ」
絵理「涼さん。寝ちゃった?」
愛「あっ、そうみたいですねっ」
絵理「とってもきれいな歌だった……」
愛「えへへ……あたし、実はこの歌好きなのかどうかわからないんです。
でも、あたしにとっての子守唄って言えば、やっぱりこれしかないって思いまして」
絵理「愛ちゃん」
愛「あ、あはははは! なんか恥ずかしいです! 初めて人に聞かせちゃいましたっ! あはは……」
絵理「愛ちゃん……なんかとってもかわいい?」
愛「え、絵理さん~!? からかわないで下さいよ~っ!」
絵理「本当のこと?」
愛「あ、あうう」
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:22:45.61 ID:8F3co1Vu0
――
――――
涼(ん……ちょっと寝ちゃってた?)
愛「早く治るといいですねっ」
絵理「うん」
涼(あ、二人ともまだいてくれてるんだ)
愛「涼さんのアルバムとか見てみたいですねー!」
絵理「愛ちゃん……勝手に見ちゃダメ?」
涼(ひゃああああ、愛ちゃんがまた恐ろしいことをしようとしてる~!!)
愛「頼んで見せてもらいましょーっ!いつの日か今度はお見舞いじゃなく遊びに来た時に!」
涼(……え)
絵理「うん、それがいい?」
愛「仲間だったら、いつでも頼めますもんねっ」
涼(…………)
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:25:28.52 ID:8F3co1Vu0
涼(最初は男だってばれるかもって思ったけど心配し過ぎだったみたい)
涼(愛ちゃんも絵理ちゃんもやっぱりとってもいい子だ)
涼「やっぱり、来てもらってよかった……」
絵理「あっ、目が覚めた?」
愛「飲み物持ってきましょうかっ!?」
涼「うん、お願い。あとお薬持ってきてくれるかな。そこの救急箱の中にあるから」
愛「はいっ!」
絵理「涼さんちょっとすっきりした顔してる。汗たくさんかいてすっきり?」
涼「そ、そう?(かいたのは冷や汗かな……)」
愛「お薬と水ですっ!」
涼「ありがと、愛ちゃん。えーっと一回何錠だっけ……眼鏡は……」
愛「へっ、眼鏡?」
涼「うん」
絵理「これのこと?」
69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:28:10.91 ID:8F3co1Vu0
涼「ああ、そ」
愛「涼さん眼鏡かけてませんでしたよね?」
涼「あっ! そ、そうだった! あはは、寝ぼけてるみたいだね私!」
絵理「じゃ、このテーブルの上にあった眼鏡は? また男物っぽいけど……」
涼「あ、あれれ~!? 誰か置いていっちゃったのかな~?
(しまった~急いでて危ない所に置いちゃった~! なんてミスを~!)」
愛「誰かって誰です?」
涼「え、えっ~~~~~っと、それは~~~~~」
涼(ぎゃおおおおおおんっ!? な、なんでこんなことに~~~っ!?)
愛「じーっ」
絵理「じーっ?」
涼(こ、ここは、なんとしてもうまくごまかさなきゃ~~っ!!!)
涼「それは、多分――――」
70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:32:05.47 ID:8F3co1Vu0
――
――――
律子「――まったく、涼ったら風邪をひいてたならちゃんとそう言いなさいよね。
知ってれば多分からかったりしなかったのに。私が鬼畜眼鏡みたいじゃないのよ」
律子「涼ー! いるー?」
ガチャ
涼「あ、律子姉ちゃん……!」
律子「一昨日は悪かったわね。あなた、風邪をひいてたんならちゃんと伝えてよ」
涼「ああ、ごめん。あの時は焦っちゃってて」
律子「まあいいわ。それで風邪は治ったみたいね?」
涼「うん、なぜか昨日まではすごく悪化してたんだけど、なんとか……」
律子「悪化したって、何やったのよ? 安静にしてなきゃダメでしょ!」
涼「僕だって安静にしてるつもりだったんだけど、一昨日の疲れがでちゃったんだよ~っ!」
律子「一昨日……ああ。それでどうだったの? 同期の子達には隠しきれた?」
涼「それなんだけど――――律子姉ちゃん。予備の眼鏡あったら貸してくれない?」
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:35:35.22 ID:8F3co1Vu0
律子「なんで? あなた眼鏡今かけてるじゃない。予備?」
涼「この眼鏡で行くわけにはいかなくて……」
――
――――
キーンコーンカーンコーン
涼「校門に行けば、前みたいに……ううっやっぱり自分のじゃないと視界が……」
愛「あーっ! とうとう見つけましたーっ! あなた涼さんのストーカーさんですねっ!
前は逃げられましたけど今度はそうはいきませんっ!」
涼「ひゃああ! 見つけるの早い~っ!」
愛「あたし怒ってますっ! ストーカーしたことも! 涼さんの家に忍び込んだこともっ!」
涼「あ、あれはー……」
愛「あっ、眼鏡変わってる! やっぱり置いてあったのはあなたの眼鏡だったんですね!
もはやもんどーむようですっ! チョーップっ!!!」ズビシィッ!
涼「痛あっ!」
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:38:46.92 ID:8F3co1Vu0
――・――・――・――
回想
涼「それは、多分――――」
愛「誰のなんです?」
涼(ど、どうすれば~っ!! こうなったら!)
涼「す、ストーカーさんのかもっ!」
絵理「ストー……カー……?」
愛「あーっ! 涼さんのストーカーさんですかーっ!
あたし昨日海に飛び込まれて逃げられちゃったんですよーっ!」
涼「そ、そう! きっとその後私の家に忍び込んできたんだねっ!」
愛「えええ~っ!」
絵理「こ、こわい……」
涼「きっとこの眼鏡はその時に置き忘れて行っちゃったものだよ!
ううん、知らないけど絶対そう!」
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:42:04.43 ID:8F3co1Vu0
愛「涼さん眼鏡かけませんもんね。ごめんなさいっ、あたしが捕まえてれば!」
涼「あ、愛ちゃんは悪くないよ!」
絵理「でも、もしそうなら、住居不法侵入。警察に行くべき? 物証もあるし……」
涼「だ、ダメだよ! 私達アイドルなんだし! 大ごとにしちゃ」
絵理「それもそうだけど……」
愛「あたし、あたしに任せて下さいっ! 絶対退治しますから!」
涼「あ、ありがとう愛ちゃん」
愛「チョップの練習するよーっ!」ビュン!ビュン!
絵理「愛ちゃんの腕が……見えない……!?」
涼(うわああぁ、お手柔らかに…………)
――・――・――・――
涼(って言ったけど……)
愛「うにににににににににー―――――っ!!!」バシベシバシベシバシベシ!!
涼「いたっ、たたっ、うわわああっ! ご、ごめんなさい! 許して~っ!」
76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:46:20.93 ID:8F3co1Vu0
愛「ふーっ、ふーっ! 反省しましたか!?」
涼「は、はい!」
愛「これに懲りたらもうストーカーはやめて下さいね!」
涼「はい~っ!」
愛「よしじゃっ、涼さんの所に行きましょう!」
涼「えっ」
愛「お友達が言ってましたっ! ジダンってことにすれば、イシャリョーで涼さんにおカネで謝れるそーですっ!」
涼「い、慰謝料!? それはまずいよ!」
愛「まずいことやったのはそっちですっ」
涼「ま、待って! 理由を話しますから~っ!」
愛「理由ってなんです?」
涼「それは……」
78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:49:19.23 ID:8F3co1Vu0
涼「実は、僕たち生き別れの姉弟なんです。名前は涼太郎っていいます」
愛「ええ!」
涼「ほら、顔だって似てるでしょ」
愛「あっ、本当! よく見れば似てますね!」
涼「アイドル活動してる姉を一目見たくて……それで……」
愛「涼さんのおうちに侵入したのは?」
涼「あれは、えっと、お父さんとお母さんが家に招いてくれただけなんです。
その時眼鏡忘れちゃって……」
愛「そーだったんですか……」
涼(よかった。納得してくれた)
愛「それならなおさら涼さんに会っていったらどうですか? きっと喜びます!」
涼「ええ、それはまずいんです!」
愛「え?」
涼「こ、これから犬に餌をあげに行かなきゃならないんでっ! 失礼しますっ!」
愛「あっ、ちょっと!」
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:51:57.10 ID:8F3co1Vu0
涼(はやく女装して、アイドルにならないと!)
― トランスフォオオオオオオム!! ―
涼(ふうう~……、これでひとまずは安心……
アイドルって大変だと思ってたけど、こんなことがあるなんて考えなかったよ)
涼「3日空けただけなのに事務所に来るの久しぶりな気がするなあ」
絵理「涼さん……こんにちは……あれ? おはようございます?」
涼「あ、絵理ちゃん」
絵理「風邪治ったみたい。良かった」
涼「絵理ちゃんと愛ちゃんがお見舞いに来てくれたおかげだよ。ホントにありがとね」
絵理「えへへ……どういたしまして? でもストーカー問題は未解決」
涼「そ、それも心配しなくてもいいような気がするよ」
絵理「ふぅん?」
愛「涼さーんっ! 絵理さーんっ! おはよーございまーっす!」
絵理「愛ちゃん……いつも元気」
涼「びくっ」
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 20:56:39.82 ID:8F3co1Vu0
愛「どしたんですか? 涼さん震えてますよっ。まだ風邪治ってないんですかー?」
涼「ううん。もう体はばっちりだよ! 愛ちゃんにはお世話になっちゃったね」ニコッ
愛「よかったです! 涼さんが元気だとあたしもうれしいです!
絵理「私も?」
涼(二人とも……)
愛「聞いてください涼さん、ストーカーさんのことなんですけど、実はですねー……!」
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:01:16.94 ID:8F3co1Vu0
涼(そのまま、僕達は事務所に向かって歩き始めた。
今回の件で二人ともっと仲よくなれた気がするけど、僕はやっぱり『大きな秘密』を抱えたままで
騙してるような、不誠実なような、そんな心苦しさは拭えなかった。
でも、いつかきっと二人にも明かしたいと思う。
『男の僕』になった時、二人が果たしてこれまで通り付き合ってくれるかどうかの疑問には
ちょっと答えが見えたような気がするから)
涼「今日も元気に、アイドルライフ」
完
89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/14(金) 21:07:51.04 ID:8F3co1Vu0
投下終了
ちょっと早いけど涼ちん誕生日おめでとう!
涼「愛ちゃん達がお見舞いに来る?」