1: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 10:43:00.39 ID:HMPrgqZu.net
希「そっ、かぁ。何か予定あるん?」
にこ「まぁそんなとこ。今すぐ出かけるし」
希「…ならしゃあないね」シュン
にこ「そうね。悪いけど」
にこ「あっ、忘れてた。ちょーだい?」
希「えっと…1万円でいい?」
にこ「うん。ごめん、ありがと」ニコ
希「ううん。いってらっしゃい」ニコ
5: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 10:49:31.25 ID:HMPrgqZu.net
ガチャッバタンッ
希「……忙しいんかなぁ」
希「…部屋の掃除でもしよか」
希(っていってもアパートやから広くないしすぐ終わっちゃいそうや)
希(まぁ何もしないよりは…)スクッ
ウィーン←掃除機
希「あ、こんなとこに名刺落ちてる」
希「松山芸能事務所…にこっちのかな。机の上にまとめとこう」
希「ここに散らかってる服は着てあるやつなんかな…うーん」
希「一応洗濯しといて、さっき回したのは今から畳むとして」
ゴトンッ
希「あっ!」
希「やばい、落としてもたぁ…割れてへんよね、大丈夫やん…な」ヒョイッ
希「うん…よかったぁ…」ホッ
希(この写真立てだけは、ずっと埃を被らずに隅に飾ってある。毎日手入れしてるもん)
希(何たってうちとにこっちの、高校時代の写真…やもんね)ニコ
prrrrrrr
希「っ」ビク
希「にこっちかな…?いや」ピッ
希『もしもし。どうしたん?』
絵里『はぁい、元気?久しぶりに電話したくなったの』
希『元気よ。でもこれ、お金かかっちゃうんやない?大丈夫?』
絵里『国際電話じゃないから。さっき日本に着いたのよ』
希『あ、帰ってきてるんやね。知らんかっ』
絵里『ねぇ、あなた本当に元気なの?』
希『…何ゆうてんの?元気や~って言うたよ』ニコ
絵里『そう…』
絵里『じゃあ今から会わない?』
希『えっ』
絵里『あら、にこがいるの?』
希『あ、いや…にこっちは出かけてるけど』
絵里『ならいいじゃない。ね?』
希『…でも…その、ちょっと風邪気味かなーって』
絵里『私はついさっき元気だって聞いたけど』
希『……』
絵里『決まりね。12時過ぎに、原宿駅前で待ち合わせましょ』
~駅前~
希(結局断りきれずにきてしもた)
希「えりち、まだかなぁ…」ボー
希(このワンピース、今日のデートに着ていこうと思ってた服なんやけど…な)
「ねー、見て。あの人かっこいい」
「外人さんかな?スタイルやばいよねー」
希「も、もしかして」
絵里「っは、はぁ…ごめんなさい。ちょっと遅れちゃったわね」
希(走ってたせいでめっちゃ目立ってるし…)
絵里「希?」
希「あ、いや!なんでもないよ」
絵里「それにしてもそのワンピース、可愛いわね。ピンクと紫の組み合わせもイケてるわ」
希「え?…そう、かな」
絵里「でもそういう系の服、あんまり持ってないんじゃなかった?」
希「そうなんやけど。これは…にこっちがうちに選んでくれたものやから//」
絵里「ふぅん…やっぱりね」
希(やっぱり?)
絵里「いいわ、長居するのもあれだし。お昼にしましょ」
「いらっしゃいませ。お客様、御予約はお済みでしょうか?」
絵里「絢瀬よ。店長に取り合ってくれればわかるわ」
「失礼致しました。絢瀬様、お席にご案内致します」
希「なんか、ここって」
絵里「人気店でね。本当は予約がないと入れないのよ」
希「へぇ…すごいなぁ…」
「こちら窓際の席にどうぞ」
絵里「どうも。ありがとう」
絵里「はい、これメニューね」
希(なんか…やっぱりここ高級なお店やん)
希(コーヒー1つで800円って、ファミレスならセット頼めてまうよ)
絵里「あぁ、お金のことなら気にしないで。私の奢りだから」
希「え!?いやいや」
絵里「勝手に連れ出したんだからいいのよ」
希「…同い年やのに悪いわぁ」
希(って言っても、今のうちの財布じゃコーヒーぐらいしか頼む余裕なかったんやけど)
ーーーーー
カチャ…カチャ
希「仕事はお休みなん?」
絵里「えぇ。溜まってた有給をとれって言われてね。日本に帰ろうと思ったの」
希「大手企業やと大変そうやね」
絵里「ほんとよ。でもやりがいはあるわ」
絵里「…で、希は?」
希「うん?」
絵里「仕事は何やってるの?」
希「事務の仕事よ。最初はパソコンとか苦労したけど…なんとかやっていけてる」
絵里「ところでまだ一緒に住んでいるの?」
希「…なにが?」
絵里「にこよ」
希「あ、うん」
絵里「確かにこは芸能関係の仕事をしているのよね?」
希「芸能関係っていうか…アイドル?」
絵里「…いや、私達もう27よ?」
希「そやけど、それがどしたん?」
絵里「ならにこも27でしょ?アイドルをまだやってるの?」
希「え、何言ってるんよ」
絵里「…ん?」
希「にこっちはずーっとアイドルやん?」
絵里「……」
絵里「…怒らないで聞いて欲しいんだけどね」
希「…なに?」
絵里「あなた達、一緒にいない方がいいと思うわ」
希「!!」
絵里「一緒にいないっていうのは、別に交友を辞めろとかそういうのじゃなくて」
希「…こと言うんよ」
希「なんでそんな酷いこと言うんよっ!!」
絵里「あ、いや…そのっ」
希「そんなこと言うために電話したん!?うちと会ったってこと?」
絵里「待って、落ち着いて。私はあなたの為を思って…」
希「もういい。ご馳走様でした」ガタッ
絵里「あっ!ちょっと希…!!」
タタタッ
絵里「…行ってしまったわね」
prrrrrr
絵里『…あぁ、海未。今ちょっといいかしら?』
絵里『そう。無理だったわ』
絵里『いや、だからね……うん、そうなんだけど』
絵里『…とりあえずよ。力になれなくて申し訳ないわ』ピッ
絵里(…随分と変わってしまったわね。私がロシアにいる間、あの2人に何があったの?)
希「っは…ふはっ…」タッタッ
希(あかん…あのまま飛び出してきてしもた)
希(心臓がドクドクする…こんな運動したの久しぶりやからかな)
希「帰ろう…」
ーーーーー
~希アパート1室~
グツグツ
希「んー。もうちょい味噌いれた方がええかな」
希「こっちのお肉は…にこっち辛いのダメやし、唐辛子使わずにうちのだけ最後に一味混ぜたらええわ」
希「皿に取り分けて…っと」
希「…できた。うんうん、美味しそうやわぁ」
希「今7時やけどいつ帰ってくるんやろう?」
希「lineも既読つかへんし…」ウーン
希(…冷めてまうよなぁ。お肉とか)
希(でも1人で食べるの可哀想やし待ってよ)
希(テレビでも見てれば時間潰せるし♪)
ーーーーー
希(ってもう9時…早いわぁ)
希「電話してみよ…」ピッ
prrrrrr
prrrrrr
prrrrrr
prrrrrr
prrrrrr
prrrrrr
希「………」
prrrrrr
prrrrrr
prrrrrr
ピッ
希「でーへんし…はぁ」
希「しゃーないわぁ先に食べちゃお」
希「……」モグモグ
希「……」モグモグ
希(作った時は美味しそうって思ったけど…なんか美味しくないなぁ)
ーーーーー
希「お風呂も入ったし、洗濯したし」
希「11時か…明日仕事やからもう寝ようかな。眠たい」
ゴソゴソ
希「…すぅ…すぅ」
ガチャッ ガチャガチャ
希「んぅ…むにゃ」
ギィ…
希「…ん」パチッ
希「にこっち…?」
希「にこっちや!おかえり」ニコ
にこ「ん…ぅ、希」
希「どしたん?大丈夫?」
にこ「ちょっとあの…あれ…水」
希「お水やね!待ってて」タタタッ
にこ「あ゛ー…気持ち悪…」
希「はいっ、持ってきたよ?」ヒョイ
にこ「んぐっ…んぐっ」
希「顔赤いけどまた飲んできたん?」
にこ「っん、のね…ちょっとだけ」
希「ほどほどにしときっていってるのに。もぅ」
にこ「これも仕事なの!ぁんなのよっ!」
希「…そっか、お疲れ様やね」
にこ「眠い。のーぞーみー…」
希「今日はもう寝るの?パジャマ出してくるわ」
にこ「うん…」
希「あっ。そや…ご飯、は?」
にこ「いらない」
~朝~
ピピピピピ
希「んっ…」パチ
希「体がだるい…けど仕事いかな」
希「…」チラ
にこ「…っくぅ…くぅ」
希「ふふっ。この寝顔見れたら頑張れる気がする」
希「昨日の残りを机の上に置いといて…チンしたら勝手に食べるよね」
希「あーメイクしな。忙し忙し」ドタバタ
~職場.昼休み~
上司「東條さーん、今日の帰り飲み会あるんだけど。来ない?」
希「あ~…うちは遠慮しときます」
上司「またそれかぁ。たまには行こうよ。別に変な感じじゃないし」
希「うーん…いや、でも」
女社員A「いいじゃない希ちゃん!私達も行くし気軽に行かない?」
希「えっと……」
女社員B「そんな遅くならないし!ね?」
希「じゃあ…はい」
希(まぁたまには…すぐ帰れるみたいやし)
~飲み会~
女社員A「ねぇねぇ、希ちゃんって彼氏とかいるの?」
女社員B「いそうー。って結婚してたり?」
希「あはは、そんなのいいひんよ~」
上司「えー以外だな。すぐに出来そうだけど」
女社員A「あ、手出しちゃダメですよ?奥さんに言っちゃいますから~」
上司「おいおい勘弁してくれよ…怖いんだからさ」
希(なんか…こういうの楽しいなぁ)ニコ
女社員A「ほら、もっと飲んで飲んで~」
希「すいません、〇〇〇のアパートまでお願いします!急ぎめで」
タクシー運転手「あぁはい。わかりました」
希(あぁ…こんなに遅くなってもた)
希(はやく…はやく)
~希アパート1室~
ガチャギィ
希「にこっ…あれ?真っ暗や…」
希(もしかして寝てるんかな…それともいない?)
ギシッ
ギシッ
希「にこっちー…?」
にこ「希ぃ…」
希「あっ、そこにいたんかぁ…」ホッ
希(部屋の窓際で座り込んで毛布にくるまってる。これはわからんわ)
希「電気つけるよ?」パチ
にこ「なにしてたのよ、遅かったじゃない…」
希「ごめん。会社のみんなに飲み会に誘われて。連絡してなかった?」
にこ「それは知ってる。なんで遅かったのって聞いてるの」
希「それは…長引いちゃって」
にこ「…じゃあにこより会社の奴らと遊ぶほうがいいんだ」
希「そんなこと…!!うちは」
にこ「ずっと寂しかったのに!なんでよっ!なんでにこが寂しい時に傍にいてくれないのっ」
希「だからそれはっ…うちはにこっちが一番やって、知ってるやろ?」ギュッ
にこ「っ、触んないで!!」ドンッ
希「いっつぅ…」ドサッ
希「痛いやろ…もうっ……」
希「あっ…」
希(今まで後ろ向いてたにこっちがこっち向いた時に、目に入ったのは涙が乾いたほっぺた)
希(そしてうちはそのままフリーズしてしもた)
にこ「なんか言いなさいよっ!こんのっ…」
希「…ごめんね」
にこ「え…」
希「寂しくさせてごめん。うちはにこっちのことが一番好きやのに、ね」ギュッ
にこ「…ぅ…希…」
にこ「…っふぁ…うぅっ…」ポロポロ
希「怒ったり泣いたり、忙しいなぁ…」ナデナデ
にこ「希…ごめん。痛かったでしょ」
希「大丈夫よ、うちが放っておいたせいで」
にこ「…ごめんね。ごめん、ごめんなさい…」
希「にこっち?」
にこ「ごめん…ごめん…許して。にこを捨てないで」
希(にこっちが…うちのことをこんなにも求めてくれてる)
希「捨てるなんて…そんなこと。うちとにこっちは」
ずーーっといっしょ。やろ?
にこ「っん…ぅ…希ぃ」
希「にこっ、ち…///ひゃぁ、ん」
にこ「きもちい?」
希「ぅん…っ///」
にこ「よかったぁ…」
希「にこっちばっかりずるい、うちにも…させて?」
にこ「…///」コクン
希「ふふっ。幸せやなぁ」
希(こうして肌で抱き合うのも久しぶり…やね)
ーーーーー
にこ「…んぅ」パチ
にこ(頭いたい…だるい)
にこ「のぞみぃ」スカッ
にこ「あれ…あ、そっかぁ」
にこ「仕事か…」
にこ(今何時なんだろ)ボー
にこ(ってかケータイどこ置いたっけ)
prrrrrr
にこ「…ッチ。誰よ」
にこ「よ、っと…」スクッ
着信:星空凛
にこ(は?)
prrrrrr
にこ「なに、なんなの。あの子からの電話なんてここ最近かかってきたことないのに」
prrrrrr
にこ「まぁいいや。ふわぁ…」
prrrrrr
にこ「…」イライラ
prrrrrr
パシッ
凛『あっ、にこちゃん?』
にこ『……なんの用?』
凛『出るのおっそいよー。切っちゃうとこだった』
にこ『んじゃ切るわね』
凛『ちょちょちょっと!待って!』
にこ『だからなに』
凛『今日はお仕事ない?無かったら久しぶりに会いたいなって思って』
にこ『無理。忙しい』
凛『えー…もう1時だよ?今日の半分過ぎたんだよー?ほんとはお休みでしょ?』
にこ『え?あぁ…』チラ
凛『実はかよちんも来るんだ!ねっ、ちょっとだけ遊ぼう?』
にこ『…夕方まで』
凛『んー?』
にこ『夕方までだから』
凛『やった!じゃあ詳しくはlineに送っとく!またねっ』
ピッ
にこ「あーなんで言っちゃったんだろ」ゴロン
にこ「昼から仕事とか適当に繕えたのに」
にこ「まぁ…あの子らとは特に仲良かったし。顔ぐらいは出してあげても…別に」
にこ(…机の上。なんか置いてある)
[これ朝ごはんです。お昼の分も含めて多めに作ってあるよ。温めて食べてね。いってきます。by希]
ーーーーー
~広場~
凛「あのー……もしかして、ってあ!にこちゃんだ」
にこ「っ、ちょっと大きい声出さないでよ」ビク
凛「むぐ…ごめん。おっきいサングラスに帽子被ってるからわかんなかったよ」
にこ「あったりまえでしょ。ファンにバレたらどーすんの」
凛「……そうだね」
花陽「凛ちゃんと…にこちゃん?」
凛「わっ、かよちん!!久しぶり~♪>ω</」
にこ「…花陽。久しぶり」
花陽「2人とも会いたかったよぉ…みんな色々忙しくて予定がね」
凛「そうなんだよね~。真姫ちゃんも誘ったんだけど、お医者さんは忙しいみたいにゃ」
凛「あぅ…にゃって言っちゃった」
花陽「あはは♪私は久しぶりに聞けて嬉しいけどなぁ」
にこ「…もうやめたの?」
凛「うん!いつまでも子どもじゃないし…凛だって、もう大人だもんね」
にこ「……」
花陽「凛ちゃんは今もインストラクターしてるの?」
凛「うん!体動かすの好きだから楽しいよ!」
花陽「すごいなぁ…私なんてあんまり上手くいってないよ」ハァ
凛「おコメの品種改良してるんだっけ?あのね、凛なんかが軽く言っていいかもわかんないけど…」ウゥン
凛「かよちんは頑張り屋さんだからきっと出来るよ。大丈夫!」
花陽「…ありがとう。凛ちゃん」ニコ
にこ「ねぇ。時間は待ってくれないわよ」
凛「あ、そうだね…行こっか」チラ
花陽「だね…」チラ
にこ(…ん?)
ーーーーー
凛「ここを真っ直ぐ歩くとねー、先が商店街になってるの」
花陽「商店街といえば美味しい食べ物…///ぴゃぁ…」ゴクッ
にこ(足痛い…なんでこの子らこんな歩けるの)
にこ(暇つぶしにケータイでも見よ…あっ。lineきてる)
希<きょうのごはんはなにがええ?
にこ(ご飯。か)
にこ(な、ん、で、も、い、い…)カタカタ
にこ(1時32分にlineが来てる。お昼は1時までじゃなかったっけ。忙しくてズレてるのかな)
にこ(…ってあれ)ピタ
にこ(急に静かに…っひ!?)ビクッ
凛「……」
花陽「……」
にこ(な、なんで黙ってこっち見て…んの、よ)
にこ(さっきまで色々喋ってたでしょうが…!)
花陽「ねぇ…にこちゃん」
にこ「……」ゴクッ
花陽「アイドルはいつ諦めるの?」
にこ「…は」
ひゅっ、喉から空気が漏れた。
花陽「言葉通りだよ。もう一度言おうか?」
花陽「いつまで夢を見続けるつもりなの?」
にこ「…っ」ギリッ
にこ「なっ、なにも知らないアンタに、そんな風に言われてる筋合いはないわっ!」
花陽「ふぅん…」
にこ(なに、なんなのよ…!!)ドクンドクン
にこ(見下したような目でにこを射抜いて、2人でお互いに顔を見合わせてる)
凛「にこちゃん……まさか、まだ。無理しなくていいんだよ?」
にこ(顔に張り付いたような、薄ら笑いを浮かべて…)
にこ「っさい!うるさいっ!!」
にこ「…ぅ、あぐ…うるさいって……のよ」フラ
にこ(叫んだら眩暈が…こんなのに構ってやる時間なんて)
凛「ねぇ、にこちゃ」
にこ「触んなっ!!」パシッ
花陽「……」
にこ「もう連絡してくんじゃ…ない、わよ!」
タタタッ
にこ(もっと…)
にこ(もっと、走らなきゃ)
にこ(もう誰にもあんな目で見られないところへ)
にこ「ぜぇ…ぜぇ…」ヒュゥ
『今回新発売の商品!国民的アイドルのゆりちゃんにも使っていただいております!』
『ご購入の際にはある特典も!ぜひお急ぎ下さい~♪』
にこ「…騒がしいCM」ボソ
にこ「ゆりって確か…鈴木有里、だったっけ。後から入ってきた」
にこ「あんな汚い女でも国民的アイドルになれるなんて腐った世の中ね、ほんと……」
ーーーーー
~希アパート1室~
希「ただいま~…」ガチャ
希(電気ついてるし。今日はいるみたいやね)ホッ
スタスタ
希「あ、いい匂い」
希(キッチンには作りかけの料理がそのままになってる。まだ湯気がたってるし、さっきまで作ってたんかな)
希「…いた。どしたん?ソファに座ったりして」
にこ「…………」イライラ
希(あ。今日はご機嫌ななめの日かぁ…)
希「料理、作ってくれたんやね。ありがとう」ニコ
にこ「…知らない」
希「残り、うちやっとくね」
トントントン
希(これ切ったら鍋に入れて…)
希(にこっちなにしてるんやろ)チラ
にこ「………」ボー
希(部屋の隅の方見ながら…自分の指舐めてるんかな?)
希(お腹空いてるんかも。何か先に)
希「はい、ココアよ。熱いから気を付けてな?」ゴトッ
にこ「……」
希(さてと。中火にして沸騰させへん程度まで熱してから)
希(お味噌を箸で)
ガッシャーーンッ!!
希「え…!?」
にこ「っう…うわぁぁぁんっ!!」
希「にこっち!?どうしたんっ」
希(グラスが床で割れて絨毯に黒いシミが…これって、落とした?)
希(けど絨毯の上やし落とすぐらいじゃ…まさか)
希(叩きつけた?)
希「にこっち…怒らへんから、大丈夫よ」
にこ「…っひぐ…ぁぁんっ…うぅ」
希「…あぁどうしよう」
希(あ…舌の先が赤くなってる)
希「にこっち、火傷してもうたんやね?びっくりしたね…大丈夫?」ナデナデ
にこ「…っうぅぅ…っひ…っく」
希「あかん、泣きすぎて上手く呼吸できてない…あのね、ゆっくり吸ってから」
ピンポーン
希「…え。こんな時間に」
ピンポーン
希「にこっち、待っとってね…ごめんな」
希(電気漏れてると思うし。時間的にも居留守は使えへんよね)
希(でも防犯のために、チェーンロックして開けよう)
希「はーい…どなたですか」ガチャ
「夜分にごめんなさい。私よ」
希「ま…真姫、ちゃん…?」
真姫「仕事帰りにちょっとね。当直ないし、今夜は暇だから」
希「…それで、なにかようあるん?」
真姫「あら…随分と用心深いのね。私達、昔のメンバーじゃなかった?」クス
希「いや…そう、やけど」
真姫「用と言っても。そうね」
真姫「貴方とにこちゃんが一緒に暮らしてるって聞いたから、よければ上がらせてもらおうと思ったの」
希「っ…それ、もしかして…えりちから聞い、たん?」
真姫「エリー?まだロシアにいるんじゃないの?」
希「あ…その」
真姫「とにかく、よければ少しお話したいんだけどね」
希「ごめんなぁ。にこっちがちょっと調子悪くて」
真姫「…へぇ。調子悪いのね、可哀想に」ニコ
真姫「なら私が診てあげるわよ。一応医師免許持ってるし」
希「いやっ、だから…!」
真姫「それとも見られたくない何かがあるの?」
希「………」
真姫「ふふっ。お邪魔させてもらうわね」
希「…ちょっとだけ待っとって」
希「廊下に広がってる荷物、どけてしまうから」
真姫「えぇ。お構いなく」
バタンッ
希「…にこっち」
にこ「っぅ……」
希「真姫ちゃんが来たんよ。うちらとおしゃべりしたいんやって」
にこ「真姫、ちゃん…?」
希「うん。ちょっとしたら帰ると思うけど」
希「泣いてたら真姫ちゃん心配しちゃうから、頑張れる?」
にこ「…うん」
真姫「お邪魔します」
希「飲み物はなにがええ?口に合いそうな高いヤツはないけど…」
真姫「コーヒーをお願いできるかしら。ブラックで構わないわ、ありがとう」
希「ううん」ゴトゴト
真姫「…にこちゃん。久しぶりね」
にこ「えぇ…そう、ね」
真姫「顔が赤いわね。泣いてたの?」
にこ「ちょっと…火傷して」
真姫「…口みせて?どれくらい酷いか見てあげる」
にこ「…うん」アーン
真姫「……ちょっと首、触るわよ」ピト
にこ「あ、うん」
希「おまたせ~」
真姫「あぁ。わざわざありがとう」
希「ううん…お客さんやし、ね」
真姫「2人とも変わってなくて安心したわ」
希「外見はちょっとは変わってると思うけど…ほら、最後にあったの3.4年前とかやし」
真姫「じゃあ言い方を変えるわね。大人っぽくなった」
希「あはは、真姫ちゃんの方が随分と大人に見えるけど」
真姫「病院でコキ使われててね…時期院長だから仕方ないけど、考えるだけで溜息が出るわ」
真姫「なのに凛や花陽はしつこく遊びに誘ってくるのよね…」ハァ
にこ「っ…!」
希「2人とも真姫ちゃんと遊びたいんよ。あんなに仲良かったんやもん」
にこ「……っは…」
希「…にこっち?」ヒソ
真姫「にしてもエリーも薄情ね。帰ってきたなら連絡ぐらいくれてもいいのに」
希「あ、うん…そやね」
真姫「知ってるのは希だけじゃない?昨日はたまたま穂乃果と会って話したけど、そんなこと言ってなかったし」
希「あはは…ほら、うちとえりちって仲ええから」
にこ「…希、だけに?」
真姫「にこちゃんもエリーには会った?」
にこ「…いや、知らない」
真姫「そう…まぁ。彼女らしいわね。ことりもフランスに行ったきり帰ってこないし」
真姫「さてと…これ以上は悪いから帰るわね」
希「あ…うん。えっと、帰りは歩きなん?」
真姫「ご心配ありがとう。タクシーを待たせてあるわ」
真姫「じゃあ、ね?にこちゃん」
にこ「えぇ…また」
~玄関~
真姫「また会えたら会いましょ。楽しかったわ」
希「あ、うん。また来てなぁ」ニコ
真姫「…あと。希だけに話しておこうと思ったんだけど、ね」
真姫「エリーには気を付けて。何か企んでるのは確かよ」
希「…企ん、でるって」
真姫「私も詳しくは知らないわ。けど、ロシアに行く前に彼女と少し話したことがあるの」
真姫「高校時代は希が好きだった…ってね」
希「えっ…!?いや、それはないんやないかな…」
真姫「あら、どうして?」
希「なんかそういう素振りも無かったし…えぇと、そもそも今更うちのこと」
真姫「わからないわよ。そんなのは」
真姫「だからこうして一応ね。わざわざロシアからお戻りになって、希に連絡をよこしたみたいだから」
希「まぁ…うん。ありがとう?なんかな」
真姫「どういたしまして。困ったことがあれば連絡して。力になるわ」
希「ふぅ…なんか疲れてしもたなぁ」バタンッ
にこ「ねぇ、希」
希「うん?どうかした…?」
にこ「絵里は帰ってきてるのよね」
希「そうみたいやね」
にこ「会ったの?」
希「えっ?」
にこ「絵里と会ったのかって聞いてんだけど」
希「……それは」
希「会ってへんよ。連絡だけもらっただけ」
にこ「そう。良かった」ニコ
希「うん…」
~芸能事務所~
にこ「おはようございます…」ガチャ
後輩1「あっ、矢澤さんおはようございますぅ」
後輩2「今日は。お仕事なんですね?」クス
後輩1「ちょっとやめなよ…っくく」ヒソ
後輩2「だって久しぶりに見たし~」ボソ
にこ「…ッチ」
マネージャー「矢澤。何してる?」
にこ「いや…別に」
ガチャ バタン
マネージャー「この前のオーディションの件だけど」
にこ「っ!結果は!?」ガタッ
マネージャー「いや、だめだ。やっぱCMの選考は厳しいね」
にこ「…そう、ですか」ストン
マネージャー「まぁ…気を落とさないで。今回決まったのはあの人気女優だし、競争率が高かったってことで」
にこ「あ、はい…」ニコ
マネージャー「今日は撮影が午後から入ってる。車で移動だから、少し事務所で時間潰しててくれ」
にこ「わかりました」
マネージャー「じゃあ、他の子もいるし失礼するよ」
ガチャバタンッ
にこ「はぁ」クタ
にこ「これでいくつ目、なのかな」
にこ(っうぐ…)ズキ
にこ(あぁまたこの頭痛。勘弁してよ)
にこ(このまま座ってても…外の空気でも吸って気分転換しましょ)
にこ(そういえば、いい景色が見えるベランダがあるのよね)
ーーーーー
にこ「すぅ……はぁ」
にこ(にしてもあっついわね…屋根はあるから焼けないけど。なんでこんな晴れてんのよ)
「…だから、もう無理だって」
にこ「ん?」
「いつまでやらせる気だ?先見えないだろ」
にこ(少し下のベランダに誰かいる?あれは)
にこ(にこの、マネージャー…と誰だろう。上司っぽいけど)
「まぁそれは本人が一番よくわかってるんじゃないですかね…」
「矢澤な。でもあいつまだ諦めてないだろ、この前のオーディションも受けたらしいし」
にこ「……!」
「あ、はい。結果はあれでしたけど」
「だってお前、27の売れないアイドルなんて使うスポンサーいねぇよ。よっぽど物好きか…ロリコンか、な」
「まぁ…確かにそうですよね。シフトチェンジした方が稼げるとは思います」
「1つ前のシングルの売上はたった6000千枚。しかも、コアなファンに何百枚も買わせてもこれだぞ」
「ソロももう厳しいですね。このまま下がり続けるのは目に見えてますし、今でさえ赤字ギリギリで…」
「とにかく社長にも言っとけよ。今まで断ってたそっち系の仕事も増やせ」
「はい。ありがとうございます」
にこ(馬鹿みたい、ね)
にこ(あのマネージャーともデビューからずっと一緒にやってきたのに…)
にこ「希…にこはどうすればいいの」
ーーーーー
ブーン…キキィ
マネージャー「着いた。ほら、挨拶しにいくぞ」
にこ(…はぁ)
マネージャー「本日はよろしくお願いします。〇〇プロダクションの矢澤です」
にこ「…よろしくお願いします」ペコ
男「あーはい。よろしく」
男「それで、早速だけど…向こうで着替えてきてくれる?」
にこ「はい」
~更衣室~
女スタッフ「これです。バスローブが中にあるので、羽織って出てきて下さいね」
にこ(…え、ちょっと)
にこ「っ、マネージャー呼んで!」
女スタッフ「は…?あ、はい」
ーーーーー
マネージャー「どうかした?サイズ合ってる筈だけど」
にこ「こんな過激な水着っ、着れるないでしょ!こんなの聞いてないわよ!」
マネージャー「あーいや…普通じゃない?」
にこ「こういう仕事は断ってって言ったわよね!アイドルは清純さが売りなのにっ」
マネージャー「…っち」
マネージャー「あのなぁ、仕事選べる立場じゃないだろ」
にこ「…!」
マネージャー「こうしてまだ置いてやってるだけでも有り難く思って欲しいんだけどな」
マネージャー「次のシングルで売上が落ちたら解雇だ。これはもう社長とも話がついてる」
にこ「そ、んなの…勝手に」
マネージャー「売上を伸ばしたかったら金を落とす層に媚びろ。意味わかるよな?」
にこ「……」ギリ
マネージャー「拒否するなら恐らく今すぐ解雇になる。1度とった仕事を放り出す事務所って泥塗られるのは後免だ」
マネージャー「何せうちは有里をはじめアイドル、女優、タレントと有名人を多くかかえてんだから」
にこ「…汚いわね。呆れるほどに」
マネージャー「芸能界なんて蹴落とし合いの泥試合だよ。お前も、馴染めばこんな事にはならなかったのにな。残念だよ」
にこ「番組とるために気持ち悪いおっさんに抱かれろって?死んだ方がマシって何度も言ったでしょ」
マネージャー「…まぁいい。選べ」
マネージャー「今すぐここで一般の人間に戻るか、この華やかな世界で仕事を続けるか」
マネージャー「アイドル矢澤にことして…な」
ーーーーー
ガッ
英玲奈「おい。客人だ」
ツバサ「あの、ノックしてって言ったわよね?…はぁ。今日は打ち合わせないはずなんだけど」
あんじゅ「会ったほうがいいと思うわよぉ。それに、私自身もこの再会にとても興味があるの」
ツバサ「…いいわ。通して」
ガチャッ
ことり「お久しぶりです♪」
ツバサ「へぇ、これは随分と懐かしい友人だわ」
ことり「今朝フランスから帰ってきたんです。時差があって辛いけど…」ムゥ
ツバサ「お仕事は…服飾系のことをされているのよね?あんじゅが前に話していた気がするわ」
ことり「はい。ブランド店で勉強しながら自分でも色々商品を販売したりして」
あんじゅ「ことりちゃん、フランスでも結構有名人なのよ?」
英玲奈「そうか、素晴らしいな。南ことり、己の夢に向かって努力するその姿は美しい」
ツバサ「…それで、ご挨拶はこれぐらいにして」ニコ
ツバサ「私達を訪ねた理由は?何か裏がありそうだけれど」
ことり「裏だなんて、そんな…。私はただ、ツバサさん達ならにこちゃんについて何か知ってるかなぁって」
あんじゅ「にこちゃん、ね」
英玲奈「彼女ならまだ芸能界にいるぞ。我々とほぼ同時期に活動を始めたのだったな?」
ツバサ「えぇ。そうね」
ツバサ「ただ、最初はグループで活動していたわよ。元μ'sメンバーもいるグループ、世間の注目度も高かったように思えるわ」
あんじゅ「昔の経歴が凄い子を寄せ集めたみたいだったから…気の強くて難しい子が多かったのね、中盤で内輪揉めしたみたいよ?」
ことり「それで、そのグループはなくなったんですね?」
英玲奈「あぁ。女優に転身したり個人で独立したりとな。矢澤にこもそこでソロデビューしたのでは無かったか?」
ことり「ふぅん…あ、ところで皆さんはいつからこの事務所を立ち上げたんですかぁ?」ニコッ
ツバサ「2年ほど前ね。A-RISEもその辺りで活動を終了したのよ」
ツバサ「私達はこの3人で駆け抜けたことに後悔は無かった。だから今は個人で仕事をとるのと同時に…」
ツバサ「私が社長、英玲奈とあんじゅにはその補佐をして貰っているわ。けどまぁ…弱小事務所と呼んで」
ことり「そんなそんな。アイドル活動の経験ある人がプロデュースしてくれるなんて最高の環境だと思います」
ことり「だから服の発注なら是非私にっ♪連絡先はここです~♡」スッ
英玲奈「け、結局営業だったのではないか…」
あんじゅ「オシャレな名刺ね~」
ツバサ「…ねぇ、矢澤さんとは帰るまでに会うの?」
ことり「どうして、ですか?」ニコ
ツバサ「あまり現場では会えないから、少し心配でね。まだ活動を続けてることは知ってるけれど」
ツバサ「あそこの事務所は大手だけど、あまりいい噂は聞かないし」
ことり「…優しいんですね。はい、伝えておきます」
あんじゅ「あら。これから会うの~?」
ことり「はい、きっと。穂乃果ちゃんが‘同窓会’を開いてくれるみたいなので」ニコ
ーーーーー
希「はぁ…疲れた」
希(今日はにこっち帰ってこれへんみたいやし、ご飯は作らずに惣菜とかでええかな)
希(…会えへんの寂しいわぁ)
穂乃果「あー、希ちゃんだ!」
希「え!あ…」
海未「奇遇ですね、まさかこんなところで会えるとは」
希「穂乃果ちゃんに…海未ちゃん」
穂乃果「砂糖が足りなくなっちゃって、スーパーに買いに行ってたの」
穂乃果「重いから海未ちゃんも手伝ってくれて…ほら、うちの常連さんだから!」
海未「要するにたまたま店へ行ったところを捕まったのです」
希「そ、そうなんや」
穂乃果「lineとかで連絡しても良かったんだけど…はい、これ!」
希「封筒…?」
穂乃果「同窓会のお誘いでーすっ!μ's同窓会!」
希「みゅーずの、同窓会…?」
穂乃果「良かったら希ちゃんにも来て欲しい…っていうか来てね!なかなか皆で会えないし」エヘヘ
希「…うん。そやね」
海未「にこにもお伝え下さい。よろしくお願いしますね」
希「……」
穂乃果「そうだ!ねぇ希ちゃん、明日お仕事ある?」
希「いや、土日は基本仕事ないけど…」
穂乃果「じゃあさ、一緒に海未ちゃん家でお泊まりしようよ!」
希「えっお泊まり!?」
穂乃果「海未ちゃんいいかなぁ?」
海未「私は一向に構いませんよ」
穂乃果「やった!決まり!」
希「いやいや、あの…ちょっと」
穂乃果「えーお泊まりしない?ご飯は向こうで一緒に作るし、寝間着も貸してくれるって!」
希「うちは…」
希(でもにこっち、帰ってこんし…なぁ)
希(1人で過ごすとまた…色々考えてしまいそうなのもあるけど)
海未「そうですか、ならこのまま向かいましょう」ニコ
希「えっ?」
穂乃果「しゅっぱーつ!」
希(勝手に返事してもた…?)
穂乃果「ほらほらはやくー!」グイッ
ーーーーー
~園田家屋敷~
希「いただきます…」
穂乃果「うーん…海未ちゃんの作る餃子は格別だなぁ」モグモグ
海未「他の料理も一応、色々練習しているんです」
希「……」パクッ
希(lineも動きなし。さっき電話してもでんかったし…いま何してるんやろう)
海未「希?食事中にそのようなものを触ってはお行儀が悪いですよ」
希「あっ…そうやね」
穂乃果「そうだ!ここに置いとくと私がタレ飛ばしちゃうかもしれないし寝室に置いておいたらどうかな?」
海未「なるほど、聡明な判断ですね。穂乃果がこぼさなければいい話なのですが」
穂乃果「そっ、そこは触れちゃだめだよ~」
希(既読ないけどlineには海未ちゃん家で泊まるって書いたから大丈夫…かな)
海未「私が置きにいきますよ。まだ部屋が何処かわからないでしょうし」スッ
希「………」
海未「…えぇと。どうかしましたか?」
希「…ううん、ありがと」パッ
海未「どうぞ会話を続けて下さい」ガチャ
穂乃果「うーん、そうだ。もうすぐことりちゃんも来るはずだから!9時過ぎかな?」
希「ことりちゃん、フランスから帰ってきてたんやね」
穂乃果「うん。なんたって同窓会だからね」
穂乃果「やっぱり全員揃わないと!」
希「全員…そういうもんなんかな」
穂乃果「そういうものだと思うけど…9人で私たちはμ'sだから」
希「そう、やったね」ニコ
穂乃果「うん!」
ーーーーー
~寝室~
希(あれからすぐことりちゃんがきて、うちらは他愛もない話をした)
希(うちがお風呂に入って出てきた後は3人が何やら熱心に話してるみたいやったけど)
希(聞こえてきた内容は、他の幼馴染たちの近況報告や各々の生活の話)
希(ちょっぴり羨ましかった。うちには幼い頃からの友達なんて…いいひんから)
希(…でも、うちには大切に想ってくれる人がいる)
希(あれからきた返信は一言。おやすみって)
希(たったそれだけでも頬が緩んじゃうくらい嬉しくて、今まで感じてた不安や体の重さが吹っ飛んだ)
希(こんな寂しい夜でもお互いを思ってる時間は同じ。こんな素敵なことってないよ)
希(ほんとは電話したいけど、にこっちも疲れてるやろうから…やめとこう)
希(なんたってアイドルなんやからね。よく寝て最高の笑顔で笑って欲しい)
希(にこっちは…うちの…)
希(…ぅん)スゥ
ーーーーー
海未「…っはぁ。いけません、少し寝過ごしてしまいました」
海未「6時ですか…ひとまず顔を洗いに行きましょう」
ジュー
海未「…ん?」
ヒョイッ
海未「希?何をしているのですか?」
希「あぁ海未ちゃん。おはようさん」
希「見ての通り、朝ごはん作ってるんよ。でも、気づいたら食材は色々使っちゃってて…ごめんなぁ」
海未「随分と起きるのが早いんですね…すみません。わざわざ作っていただいて。構いませんよ、ありがとうございます」
希「ううん。いつものことやから」ジュー
海未(…なにか、朝から凄まじい量を作っているように見えるのですが)
海未(野菜炒めにステーキ、唐揚げにクリームスープに…)
海未「こんなに食べられるでしょうか…」
ーーーーー
~希アパート1室~
にこ「ただいま…」ガチャ
希「あ、にこっち!おかえり」
にこ「…」ハァ
希「先にご飯食べる?それともお風呂?」
にこ「ちょっと休憩させて」
希「あ、うん。上着もらうよ」
希「今日もお仕事お疲れ様やね」
にこ「…ありがとう」
希「ステージでキラキラ輝いてるにこっちの姿、早く見たいわぁ。この前の曲のイベントいつやっけ?」
にこ「3日後、だけど…」
希「じゃあ張り切っていかななぁ。なんたってずっと前から楽しみにしてたんやもん」
にこ「……希」
希「あ、そういえば。穂乃果ちゃんから言われたことなんやけど…」
にこ「…穂乃果?なに」ピク
希「同窓会をするから参加して欲し」
にこ「嫌よ」
希「えっと…なんで?」
希(にこっちがメンバーを避ける理由はないはずなんやけど…気分的なことなんかな)
にこ「嫌ったら嫌。希も行かなくていい」
希(嫌、なんかぁ)
ーーー
穂乃果「9人で私たちはμ'sだからね!」
海未「希とにこに会うのを、楽しみにしていますね」
ことり「またフランスに行くから会えなくなっちゃうし…ね?」
ーーー
希「…でも、ちょっとだけでも」
にこ「はぁ?」
希「にこっちが、その…用事とかで行けへんのなら」
希「うちだけでも少しだけ行こうかな。もう行くって言っちゃったし…」
にこ「なに?にこの言うこと聞けないの?」
希「…っ、ちゃうよ。そんなつもり」
にこ「希はアイツらかにこ、どっちをとるのよ!」
希「そんなの、にこっちに決まってるやん…!うちがどれだけ想っとるか…知ってるやろ」ポタ
にこ「…ぁ、その…泣くことないじゃない」
にこ「悪かったわよ…」
希「泣いて、ないもんっ」
にこ「…わかったわよ。行けばいいんでしょ」
ーーーーー
希(そしてーー。同窓会当日)
希(前日がイベントやったにこっちは、まだ体の疲れがとれてないみたいで)
希(朝起きた時からちょっと調子が悪そうやった)
希(でもホットミルクは飲んでたし、大丈夫なんやろう)
にこ「……足いたい」
希「大丈夫?タクシー拾おっか」
にこ「いい。もったいないでしょ」
希(少し歩いて、何とか招待状に書いてあったお店へ到着。雰囲気のいい大人なバーって感じやった)
希(ホールみたいな、少し大きい部屋を貸切にしてあるみたいで。名前を店員さんに言ったらそこへ通された)
希(カウンターとテーブル席。ダーツなんかもあったりして。お洒落やなぁ…誰が選んだんやろう)
希「…にこっち、たぶんもうすぐ」
にこ「そう」
カランカラン…ガチャ。
希(少し時間を開けて次々に入ってくる懐かしいメンバーたち。最初は凛ちゃん、花陽ちゃん)
希(次に穂乃果ちゃんに海未ちゃんにことりちゃん。ここはうちらに手を振ったり会釈してから、お店の奥の方へ行ってしもた)
希「幹事やと色々やることあるんかなぁ…」
希(そんな時、うちらに近寄ってきた2人組。それを見てにこっちが何故かうちの服をギュッと握る)
希「凛ちゃん、花陽ちゃん。ほんま久しぶりやね」
凛「うん。希ちゃん来てくれたんだっ」
花陽「こんばんは、またこうやって会えて嬉しいな」ニコ
凛「にこちゃんも…この前振りだね!」
にこ「……」フイッ
凛「ぅ…」
希(あれ、どうしたんやろう)
花陽「凛ちゃん。もうやめた方が」ヒソ
凛「…わかったよ」
希「凛ちゃんと花陽ちゃん、最近にこっちと会っとったん?」
凛「えっと、うん。すぐ別れちゃったけどね」ニコ
希「その時になんかあった…?」
花陽「いや…何もないよ」
カラン♪
凛「あっ、絵里ちゃんだー!おかえり!」
希「…!」
絵里「凛、ありがとう。やっぱり日本はいいわね。離れるのがまた名残惜しくなって…ふふっ」
花陽「そんな事言わないでいれるだけここにいてね?絵里ちゃん」
絵里「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
絵里「…先に着いてたのね。今日は楽しみましょう?にこ、希」
希「ぅ、ん」
希(いやいや、うちは怒ってるはずやんか!なんでこんな…えりちが思った以上に明るかったのもあるけど)チラ
絵里「どうしたの?」ニコ
希「あ、いや、その。なんでもないよ」
ガチャッ
穂乃果「お、みんな揃ったかな??」
凛「真姫ちゃんが遅刻だよー!」
真姫「私ならいるわ。全く、遅刻なんて凛じゃないんだから」クルクル
凛「真姫ちゃん…良かった、その調子は昔と変わってないにゃ~」
真姫「っ//どういう意味よ!凛だって今のそうじゃない!」
花陽「まぁまぁ。2人とも…ふふっ」
海未「そこの出入口でばったり真姫とお会いしたんです」
ことり「7.8.9…みんな揃ってるみたいだね。こんばんは♪」
穂乃果「それではっ。乾杯しよっか!」
花陽「あ、日本酒はあるかなぁ?」
ことり「大丈夫だよ♪その他にも色んなお酒を集めてあるし」
絵里「それはハラショーね。私はことりが持ってきてくれたワインをいただこうかしら」
凛「凛はあんまり飲めないからスクリュードライバー!」
希「にこっちはお酒飲む?」
にこ「…弱いカクテルでいい」
希「わかった。持ってくるね」
穂乃果「ごほんっ。じゃあいくよ?」
穂乃果「みんなの再会を祝して!乾杯ーっ!」
ーーーーー
海未「お酒は足りていますか?」
希「大丈夫よ。ほら、あんまり飲んで帰れんくなったら困るしなぁ~」
海未「ふふっ。そうですね」
希「海未ちゃんは飲んでないみたいやけど?」
海未「…バレましたか。これノンアルコールなんです」
海未「未だお酒が苦手で…後は穂乃果とことりが酔っ払って手をつけられなくなるので、そのお世話の準備です」
希「あはは。大変やねぇ」
海未「そういえば。にこが1人で向こうに座っていますが」
希「うるさくて頭痛くなっちゃうから、カウンターの方で少し1人にさせてって」
希「ここから見れるところにいるからいいんよ」
海未「え、あ…そうですね」
穂乃果「ねぇねぇ!これ見てよー!」ドサッ
穂乃果「お店の常連さんから貰ったんだけど、なんかすごく昔の占いの本なんだって!」
希「占い…?わっ、すごいなぁ」
穂乃果「だよね!希ちゃん喜ぶと想ってもってきたの」
ペラペラ
海未「古いからか、文字がボヤけてしまっていますね…」
穂乃果「もしかして逆さに読むんじゃないかな?」
希「でもこれとか、今のタロットカードの元になってるかも」
穂乃果「そうなの!?どれどれ!」
にこ(なに夢中になってんのよ、あいつ)
にこ「ふん…」ゴク
絵里「気に入らない?」
にこ「…っ!」ビク
にこ(いつの間に隣に…よりよって。最悪だわ)
にこ「別に。好きに話せばいいんじゃない」
絵里「あら、私はてっきりこの同窓会が気に入らないのかと思って聞いたんだけれど」
にこ「へ…っ」
絵里「どう?久しぶりに2人で飲まない?」
にこ「………」
絵里「そんな嫌な顔されると流石に傷ついちゃうわね」
絵里「ただでさえ何故か避けられているっていうのに」
にこ「はん、気にしすぎよ」
絵里「…あの服には小さめのネックレスを足せばより美しくなると思うのよね」
にこ「…」ハァ
にこ(絡み酒ってのは面倒ね。…適当に切り上げて)
絵里「ピンクと紫のワンピースよ。にこがあげたんでしょう?」
にこ「なっ…」
絵里「あれ、違ったの?」
にこ「……なんでアンタが知ってんの」
絵里「なぜって希が教えてくれたからよ」
にこ「は、何処で?ずっとロシアにいたんでしょ」
絵里「私がロシアから帰ってきた日、一緒にいたから」
ガタッッ
にこ「適当なこと言ってんじゃないわよ」グイッ
絵里「…この服、まぁまぁ高かったりするんだけど。引っ張らないでくれる?」
にこ「はっ。希が…希が、にこに嘘つくわけないでしょうが」
絵里「会ったのは事実よ。希が言わなかったとしても、それは変わらないわ」
にこ「……」ヒュッ
にこ(のぞみ…は確かに、にこの前で)
にこ(絵里からは連絡がきただけで…会ってないって)
にこ(本当に会ったとして、なんでにこに嘘つく必要が)
にこ(なんで‘隠す必要があった’の?)
にこ「っははは…」
絵里「…だからね、…は……為に…」
にこ「希が私に隠れて何をしてたのかは知らないし、もう知りたくもないわ」
にこ「ただアンタが片方にちょっかい出すような最低な人間だって。昔から薄々感じてはいたけどやっと本性を見せたわけね」
絵里「…何を言ってるのかよくわからないんだけど。私には関係のないことよ」
にこ(んな態度とったって、今更、、白々しいっての!!)
にこ(あぁ…目の前がぐるぐる回ってる。ズキズキ、ズキズキ。遅れてやってきた頭痛)
絵里「そもそもね。希が好きなのはアイドルとして輝いていた頃のあなたなのよ」
絵里「誰からも愛されるアイドルになりたかったようだけど、ソロデビューしてからの現状が全てなの」
絵里「期待を寄せたファンは消え、今まで持て囃してくれた人間がクルりと手のひらを返す」
絵里「それが所詮あなたの実力であり限界。いつまでもしがみついたって、何も変わらない」
絵里「だから…いずれ希も気づくでしょうね。あなたと」
にこ「やめて……違う、そんなことっ」
絵里「希を縛り付けるのはやめなさい。それが彼女のためであり、あなた自身にとっても楽になれるチャンスよ」
絵里「だってもう拘らなくていいんだから。彼女の中で理想のアイドルを追い求める必要もない」
絵里「はっきりいって希が可哀想よ。それとも捨てられてからじゃないとわからない?」
絵里「けどね、安心して。私が責任を持って彼女を…」
にこ「あぁぁぁぁぁっっ!!」
ーーーーー
パリィンッ
穂乃果「わわっ!」
海未「…っ!?なにが起こって」
希「にこっち!!!あかんっ!」
希(多分この異変に気づいてたのはうちが最初やったと思う)
希(カウンターのほうが変に静かやと感じて、目を向けたらにこっちとえりちが隣合わせで座ってる)
希(…でも、明らかに空気がおかしくて。にこっちの表情は見えへんけどえりちは眉をひそめて難しい顔をしてた)
希(にこっちをあんまり放っておくのもあれやなって思って…もう少ししたら話を切り上げて声を掛けにいこう)
希(そう思っとったすぐ後の出来事)
絵里「っぐ…にこ、落ち着いて…っ!」
にこ「うるさい!!黙れぇっ!」
希(えりちの髪と顔には水滴。床に飛び散るグラスを見る限り、にこっちが手に持ってたものをかけたんやろか)
希(そして怯んだ隙に、えりちが椅子から落ちる勢いで飛びかかった)
真姫「海未、凛っ!!にこちゃんを押さえて!」
海未「…え…っは、はい!」
凛「……ぁ、わかった!!」
希(あっ…。うちが止めにいかなあかんはずやのに足が動かんかった)
花陽「ど、どうしたら…うぅっ」ポロポロ
ことり「花陽ちゃん…大丈夫だよ。きっと大丈夫」ギュッ
真姫「腕を捻ったりしないで!胸を圧迫してもだめ、体全体を押さえるのよ!」
凛「にこちゃっ、暴れちゃだめだよ!」
海未「凛!足の方を持って下さい!」
絵里「…はぁっ」
穂乃果「絵里ちゃん。大丈夫?」
絵里「えぇ。なんとかね…」
真姫「希!なにしてるのよ!」
希「あっ…うんっ」タタッ
希「にこっち。どうしたん、何かあった?」ニコ
にこ「…来ないで」
希「えっ」
にこ「にこは嘘なんてついたことないのにっ!!なんでよぉっ」
希「なに言ってるんよ…ふふ、うちだってにこっちのこと、こんなに」
にこ「…っひく…うぁぁぁんっ!」
希(どういうこと、なん)
真姫「…にこちゃん。あなたは悪くないわ」
希(え…?)
真姫「だから泣いちゃだめよ。ね?」
希(真姫ちゃんに何がわかるん…?うちやって、今の状況が飲み込めてないのに)
穂乃果「みんな怖い顔しちゃだめだよ…折角の同窓会なんだから」
穂乃果「とりあえずお開きにしよう。また絶対に続き、やろうね」
~希アパート前~
バタンッ
アリガトウゴサイマシター
にこ「ちょっと、引っ張んないで!!」
希「そんなことゆうてもこんな夜にどこ行くんよ!」
にこ「何処だっていいでしょうが!」
希「落ち着いて。お願いやから…ここやと人の目もあるから、にこっちは特に困るやろ?」
にこ「…っ」ピク
希「一旦部屋の中入ろう?そこで全部話すから」
ーーーーー
希「…やから、うちはえりちとただご飯を食べに行っただけで。にこっちが思っとるような関係やないよ」
にこ「はっ。どうだかね、口でなら何とでも言えるじゃない」
希「にこっち…なんでわかってくれへんの」
にこ「嘘ついたのが何よりの証拠よ!やましいことがあったんでしょ」
希「違う、違うんよ…うちは」
希(真姫ちゃんから言われたあの噂。それを意識する余り、うちは変に隠そうとしてしまったんやと思う)
希(けどそれを今言ってしまったら…余計ににこっちの敵意が、えりちに向いてしまうんやないやろうか)
希(けど…それでもっ。うちにとっては、にこっちに嫌われるほうが何倍も辛い)
希(ずるいのはわかってる。…でもうちはそんな強い人間じゃないから)
希「あの、ね。真姫ちゃんから言われたん。えりちが昔うちのことを好きだったってこと」
希「だからその、ホントは言えば良かったんやけど…動揺しちゃって。にこっちに相談するべきやったね。ごめんね…」
にこ「…そう」
希「うちが好きなのはにこっちだけなの。だから何処にもいかんといて…そんなん、耐えられそうにない、し」ウルウル
希「1人ぼっちの世界なんてきっと生きていけないと思う。愛してくれる人がいる喜びを知ったから…っ」
希「うちが悪いのに…涙が…。卑怯やね、にこっちの気持ちも考えんと勝手に…ぐずっ」
にこ「もういい」
希「へっ」
にこ「私もあんな事いって悪かったわ。勘違い、だったのよね」
希「にこっち…」ポロポロ
にこ「もう1人では生きていけないのは一緒よ…にこには希しかいない。希だけを見ていたいの」
にこ「だから離れていかないで。そんな悲しいこと、しちゃやだ」
希「…うん」ギュゥゥ
希「ずっとこうしてたい」
にこ「そうね。もう誰にも邪魔されたくないわ」
にこ「希、大好きよ」
ーーーーー
~部屋.キッチン~
希(ーーそれから数日が経った今。にこっちは前よりも更に優しくなった)
希(仕事に出かける時や帰った後、少し前は機嫌が悪くなったりしたことがあったけど)
希(でも今のにこっちはいつだって笑顔を絶やさない。きっと毎日が充実してるんやと思う)
希(あと、μ'sのメンバーとは連絡をとらへんようになった。けどあんまり気にはならへん)
希(だってうちにはにこっちがいるからね。他にも色々な約束事を2人で決めて、家から出ることは少なくなったけど別に平気)
ピピッ ピピッ
希(あぁ…そろそろにこっちは起きるのかな?毎日かけてある7時のアラームが鳴ってる)
希(確か今日は、お昼ぐらいに出かけるって言ってた。早めに起こしたほうがいいんやろうか)
希「にこっちー?まだねむたい?」スタスタ
希「もう…ぐっすりやなぁ。昨日は一緒ぐらいに寝たはずやのに」
希「…ふわぁ。見てたら眠たくなってきた」
希「朝ごはん置いといて、うちも二度寝しようかな」ポフッ
ーーーーー
にこ「…ぅあ」パチ
にこ(やけに暑いと思ったら、希がにこにくっついて寝てたのね)
にこ「あーあ…寝汗気持ち悪い」パタパタ
ピロン♪
にこ「ん。誰だろ」
にこ「…………」ポチ
にこ(この前の服、どこにあったっけ)
ーーーーー
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
にこ「待ち合わせよ」
「失礼致しました。どうぞ」
にこ「仕事じゃないんだ」
真姫「非番なの。けど呼び出しがきたらめでたく休日出勤よ」
にこ「…ふぅん。大変ね」
真姫「この仕事を選んだんだから仕方ないわ」
にこ「で、何の用。あんまり付き合う時間ないんだけど」
真姫「その割には会いにきてくれるのね。私にだけ」
にこ「……」ハァ
真姫「皆とは連絡をとる気はないの?」
にこ「それを伝えるために呼んだわけ?」
真姫「いえ…ごめんなさい。気を悪くしないで」
真姫「本題に入るわね。近々、あるオーディションがあるの」
真姫「大きい会社のところだから、合格すればメディアへの露出も増えるわ。事務所から聞かされてない?」
にこ「いや…知らないんだけど」
真姫「なら他の人に回してるのかもね。このオーディション、受けられる人が限られてるみたいで」
にこ「…っ、へぇ」
真姫「その会社の上層部とパパが知り合いなのよ。だから、にこちゃんもこのオーディションを受けられるように計らってあげるわ」
にこ「ねぇ…なんでそこまでしてくれるの?」
真姫「そうでもしないと会ってくれないんでしょう?もう一つは…私もファンの1人だから、とでも言っておくわ」ピラッ
にこ「…ありがと」
真姫「あとこれも。前に渡したのは残ってる?」
にこ「ううん」
prrrrrr
真姫「…電話。もう帰るのね?」
にこ「えぇ。じゃあ」
真姫「また会いましょう。にこちゃん」
ーーーーー
にこ「ただいまー…」ガチャ
希「あ、おかえり。お疲れ様やね」
にこ「ちょっとパソコン触るわ」
希「わかった」
にこ(場所…日時、ちゃんと公式のと合ってる。真姫ちゃんの話は本当だったみたいね…)カチカチ
にこ(このオーディションに受かれば…やり直せるかもしれない。事務所の奴らも知らないから、見返すことだってできる)
希「そういえば、次のシングルはいつでるん?」
にこ「えっ…あぁ。そうね…」フイ
希「楽しみやなぁ。可愛い曲もいいけど、ラブソングなんかも聞きたいな」ニコ
にこ「うん…」
にこ(次のシングルで売上が下がったら…にこは)
にこ(今は新しいファンを少しでも獲得するしかないの。だって、古参は今回の売上がどうこうってのは知らないから)
にこ(事務所さえも解雇されたら、もう芸能界で仕事をするのは難しくなる。新しい事務所がにこを雇ってくれるとは限らない…)
にこ「このオーディションで…」ブツブツ
希「にこっち…?」
ーーーーー
女社員1「希ちゃん。あのね、今週末の会議終わったあとに飲み会を計画してて!」
女社員2「一緒にどうかな?あ、遅くまではかからない予定だよ」
希「ごめんなさい。いけなさそうやわぁ」
女社員1「そうなの…残念だけど、仕方ないね」
希「えっと…お疲れ様。お先に失礼させてもらうね」
女社員2「はぁい、お疲れ様!また明日!」
スタスタ
女社員2「最近希ちゃん、付き合い悪いね…」
女社員1「前よりも更に断られるようになったのは確かだけど…何かプライベートであったのかなぁ」
女社員2「あー。もしかして彼氏がいるとか!もしくは結婚秒読み!」
女社員1「…有り得る」
女社員2「んでんで、すっごく束縛する彼氏とか!だって飲み会すら来なくなっちゃったんだもん」
女社員1「希ちゃんって、お世話好きっていうか…そういうところあるから。心配だよね」
女社員2「今度聞いてみる?さりげなーく」
女社員1「あんた好きだよねー。そういうの」
希(6時、かぁ。少しでも早く帰りたいのに)
希(仕事に行くとにこっちに会えへんもんね…)
希「……嫌やなぁ」ボソ
希(あ、でも今週末はにこっちと少し遠くにお出かけするって決めてるんやもんね)
希(ふふっ…平日もあと少しやし頑張って乗り切ろう)
ーーーーー
マネージャー「おい、矢澤。このサイン色紙3枚書いておけよ」
にこ「…何のやつ?」
マネージャー「雑誌の特典だよ。グラビアの」
にこ「わかりました」
マネージャー「なんか、ぼーっとしてるけど何かあったのか?」
にこ「え…別に。そんなこと」
マネージャー「そうか」
にこ(危ない…。変に感づかれるところだった)
にこ(あのオーディションの結果発表は今日。でも事務所は通してないから、通知は直接にこに来ることになってる)
にこ(これに全てかかってるんだから……お願いします、神様)
にこ(どうか合格していますように…。希にいい結果を伝えて仕事が順調だってことを示さなきゃいけないの)
にこ(だって、にこは…スーパーアイドルなんだから)
ピロン♪
にこ「…!」ハッ
ーーーーー
看護士「西木野先生、お疲れ様です。今日はこのままおかえりですか?」
真姫「ご苦労様」スタスタ
看護士「えっと、すみません…。お急ぎでしたか」
真姫「えぇ。こちらこそごめんなさい」
ガチャ
真姫(…とりあえず1度にこちゃんに連絡をした方がいいわよね)
prrrrrr
真姫(…っ、驚いたわ。向こうからかかってくるなんて)
真姫『にこちゃん?あなた今どこに』
にこ『真姫ちゃん、本当にありがとう…!』
真姫『…?どうしたの』
にこ『あのオーディションね、合格してたわ!遂にやったのよ!』
真姫『え…』
にこ『これできっと売上も伸びるし、ファンだって数え切れないほど増えるし、事務所の奴らだって』
真姫『ちょ、ちょっと待って』
にこ『なに?』
真姫『いますぐ会える?私のマンションの前にきて。場所は知ってるでしょう』
にこ『いや、このあと希と一緒にちょっと遠くに出かけるつもりなんだけど』
真姫『いいから!私の言う事聞けないの?』
にこ『むっ…わかったわよ…』
~マンション1室~
真姫「入って」ガチャ
にこ「…なんなのよ。あんまり真姫ちゃんと話してる時間はないの」
真姫「希を待たせてるから?」
にこ「そうよ」
真姫「……」
にこ「だから、」
真姫「とりあえず座って。今アイスコーヒーいれるわ、にこちゃんはカフェオレでいいんでしょ?」
にこ「いい、けど…」
コトン
真姫「それで。合格…したのよね?」
にこ「えぇ、そうなの。電話でも言ったけど」ゴソゴソ
にこ「ほら!見て。事務所には通知されてないから、あいつらきっと驚くわ」パッ
真姫「…ほんと、ね」
にこ「でしょっ!真姫ちゃんのおかげよ」
にこ「希の喜ぶ顔が簡単に想像できるわ。ふふっ」
真姫「………」
にこ「ん…つめたい」ゴクッ
真姫「…ねぇ」
にこ「なに?」
真姫「少し、深呼吸してみましょう」
にこ「は?」
真姫「いいから」
にこ「うん…?すぅ、はぁっ」
prrrrrr
真姫「っ」ビク
にこ「あ…!希だ」ニコ
パシッ
ガチャンッ!!
にこ「なっ…なに人のケータイ放ってくれてんのよ!!」
真姫「出ないで」
にこ「はぁ!?ふざけたこと言ってんじゃ…」ガタッ
にこ「つぅっ…」フラ
にこ「あ…くっ…」ドサッ
にこ(いきなり目の前が…真っ暗に、なって)
にこ(最後に見たのは、こっちを見る真姫ちゃんの…)
にこ(笑った顔だった)
ーーーーー
prrrrrr
希「…何回かけてもでーへん」
希「いつもはこんなことないのに」
カタッ
希「ぅん…?これは」
希「うちとにこっちの写真立て。なんで急に落ちたんやろう」
希「あ…表面にヒビが」
希「どうしよう…」ゴシゴシ
~夜~
prrrrrr
希「にこっち…にこっち」グスッ
希「何かあったんやろか。にこっちのお母さんに電話しても知らないって言うし」
希「うちはどうしたら……」
希「こんな風に待ってても何も変わらへん…探しにいこう、かな」
ピロン♪
希「lineじゃなくてメール…?誰やろう」
差出人:にこ
ごめん、少し距離を置きたいの。
身内や仕事先にも連絡はしたから安心して。
家には戻らない。またね。
希「……うそ」ポツ
希「え?なんで…?」
希「お出かけ楽しみやねって…今朝話したやん」
希「こんなの……嫌や」
希「嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や」
希「にこっちがこんなことっ、するわけない!うちを放って何処かへ行くわけない!!」
希「違う…違う。絶対に認めへん!!」
希「きっと一時的に何かの拍子で…こんなこと送っちゃったんやね。はは…もう。仕方ないなぁ」フラ
希「にこっちにはやっぱりうちがいなきゃダメやね…ふふっ」ガチャ
希「すぐに見つけて、うちのこと思い出させてあげるからね…」ニコ
~深夜.街中~
希「あれぇ…おかしいなぁ」
希「何処にもいいひんやん。なんで?」
希「にこっちと一緒に行ったところ、何度も探したよ?」
希「お気に入りのお店、よく通った広場、景色の綺麗な高台…」
希「ぐるぐるぐるぐる。街灯ぐらいしか明かりが無くなって、もう真っ暗や」
希「にこっち…夜って、こんなにも冷たくて。寂しいんやね」
希「財布もケータイも…上着だって忘れてきちゃった。あほやね、うち」
希「少しでも早く探せばにこっちが近くにいると思ったん。でも、届かなかったみたい」
希「そんなにうちに会いたくないの…?ほんまに行ってしまったん?」
希「またあの笑顔を見せてよ…。子どもみたいって言ったら怒るくせに、若いって言われたら喜ぶんよね」ニコ
希「意地張って重い荷物持ってくれたり、少し背伸びしてキスしてくれたり…うちの指輪に触れて微笑んでくれる貴方が」
希「ほんまに…大好きやった…」ウルウル
希「だから、離れんといてって…言われた時、すごい嬉しかったんよ…?」
希「なんで…なんでよぉっ…!にこっち…」ポロポロ
希「うちを1人にせんといてよ…っ」
ーーー
にこ「もう1人では生きていけないのは一緒よ…にこには希しかいない。希だけを見ていたいの」
ーーー
希「あ。そっか……」
希「…うちがいなくなったら。にこっちは帰ってきてくれるのかなぁ」
希「うちが生きてなかったら。にこっちもきっと…」
希「またうちのことだけを見てくれるんやね」ニコ
希「なんだ、簡単なことやん」
希「にこっちが見て見ぬ振りをできるような酷い人やないってこと。知っとるんよ」
希「だって、あんなにも優しいんやから…。あぁ。うちってずるいなぁ」
希「でもしょうがないよ。にこっちが勝手にうちを捨てたんやから…悪く思わんといてね」
ヒュゥ…
希「この橋も懐かしいなぁ。よく高校生の時に通ったっけ」
希「ここの夕焼けが綺麗だって…誰かが教えてくれて。はっきり思い出せないけど」
希「感動するぐらい、ほんまに綺麗やった。今も変わらへんのかな…」
希「けど真っ暗で何も見えへんね。あはは」
希「よいしょっ 」
ザッ
希「にこっち、うちのことを好きでいてくれてありがとう」
希「また来世でも一緒がいいな…」
希「さようなら」
ガシッ
希「…へっ」
グイッッ
希「いっ…!つう…」ドサッ
希(勢いよく腕を引っ張られて体重が橋の方へと傾く。地面にぶつかった衝撃は、抱きとめられた事によって緩和されたみたいやった)
絵里「何してるのよっ、希!!」
希「えりち!?な、んでここに」
絵里「それは…こっちの、台詞よ。そんな事をしたって…」ゼェ
絵里「誰が得をするっていうの…?冷静になりなさい」
希「…放っておいてや!!もううちには生きてる意味なんてないん、にこっちがいない世界なんてっ」
絵里「あなたの人生は、あなただけのモノなの。他人に左右されるべきじゃない」
希「えりちに何がわかるんよ!そもそもえりちのせいで、にこっちから嫌われかけたんやから!!」
希「勝手に決めつけんといて!何も知らんくせに…。えりちがうちのことをどう思ってるんかは知らんけど、うちは大嫌いやっ!!」
絵里「……そう」
希「あっ…」
希(今しっかりと見ると、えりちは肩で大きく息をしていた。額には汗で張り付いた髪の毛)
希(もしかして…うちをずっと探してた?街の時計は日付が変わったのを教えてくれているのに)
希「…にこっちが、いなくなった」
絵里「知ってるわ。私のところにもメールが来たから」
希「え…。えりちのところにも?」
絵里「とにかく、もう帰りましょう。体が冷えてしまう」
希「帰るって…何処に帰ればいいんよ。あの部屋は、にこっちとの思い出でいっぱいなん」
絵里「じゃあ私の泊まってる……うぅん」
希「…なに?」
絵里「何でもないわ」
タタタッ
海未「希っ!良かった…」ハァハァ
希「海未ちゃん…?」
海未「お部屋を訪ねても返事がなくて、電話も繋がらなかったので慌てて探し回っていたんですっ」
希「海未ちゃんも…、ごめん、なさい」
海未「それにしてもよくここだとわかりましたね、絵里」
絵里「…ただの勘よ。それより、泊めてあげて欲しいの」
海未「希をですか?」
絵里「辛いでしょう。色々と」
海未「私は…構いませんが」チラ
希「でも…その、悪いし」
絵里「ならあの部屋に帰るしかないわよ?」
希「………」
海未「もう夜も遅いです。泊まるかどうかは別にして、とりあえず私の屋敷へと向かいましょう」
ーーーーー
にこ「ぁぅ……」ズキッ
にこ「あれ…ここは…ぅくっ」
にこ(口を動かすと顎が固まったみたいに痛いわね…喉もカラカラだし、何時間寝てたのかしら)
にこ(薄緑の天井…白い壁)
にこ(にこが寝かされているのはおそらくベッドみたいなものだと思う)
にこ「ん…確か。にこはあのメールを見て」
カツカツカツ
真姫「起きたのね」
にこ「っ、真姫ちゃ…」ギシッ
真姫「立てないわよ。拘束してあるから」
にこ「えっ…!?」
真姫「あまり暴れないで。跡が残ることになりかねないから」
にこ「ここは…何処なのよ!何が目的でこんなことっ」
真姫「そうね。ここは…私の部屋とでも言っておきましょうか」
真姫「だから安心して。私以外の人間は来ないわ」
にこ「どういう意味よ…それ」
真姫「…また来るから、今は大人しく寝てなさい。まだ眠たいんでしょ?」
にこ「そうだ…!にこのっ、オーディション!」
にこ「あれの手続きが3日後までなのっ、ねぇ!真姫ちゃん!」
真姫「必要ないわ」
にこ「はっ…」
真姫「なに?」
にこ「あれは…にこの全てなのよ?これからの希望と、夢が詰まったものなの」
にこ「それをあんたは溝に捨てろっていうの!?ねえっ、答えなさいよ!」
真姫「…必要ないと言っているの。もうアイドルは、芸能界での仕事はやめなさい」
にこ「な…に言って」
真姫「大丈夫よ。私がいるから。もう気を張り詰めることも、頑張ることもしなくていいの」
にこ「……っ」
真姫「にしても、このまま放置すると何をするかわからないわね」
真姫「強制的に眠ってもらうわ。少し痛いけど我慢して」
にこ(嫌…そんなの、嫌だ)
にこ(やっと努力が叶ったと思ったのに…やっと夢を掴めたって)
にこ(希が求めるアイドルに…なれると…思っ…た…のに)
~園田家屋敷~
海未「煎茶です。お口に合うかわかりませんが」コトン
希「あの、えっと」
海未「絵里なら帰ってしまいましたよ。何やら用事があるみたいで」
希「そう、なんや…。うち、えりちに酷いこと言ってもうて…まだそのままで」
海未「次に会った時に直接言ってあげて下さい。私から伝えるより、きっとそちらの方がいいです」
海未「それで、希。もう気持ちは落ち着きましたか?」
希「まだ…信じられへんっていうか。信じたくない自分はいるんよ」
海未「そうですね…無理もありません」
海未「しかし私にはどうも、にこは希を置いていったわけではないと思います」
希「えっ…?なんで、そんなこと言えるん」
海未「あんなにも希のことを好きで、一緒にいたのなら。余計にそう思いますね」
希「……慰めなんていいんよ。もう」
海未「色々あるのでしょう、彼女にも。きっと少し疲れてしまったんですね」
海未「だから…今一度、希も自分自身を見つめてみてはいかがですか」
希「……」
海未「温かいお風呂が沸いています。服は私ので申し訳ありませんが、脱衣場に置いておきますね」
希「…ありがとう」
ーーーーー
にこ(今がいつで…何時かもわからない)
にこ(ただずっと天井を眺めて…)
にこ(時間がゆっくりと流れるのを感じる)
にこ(もう…あのオーディションの期限なんてとっくに過ぎてるのかな)
にこ(最初は悔しくて悔しくて、涙を流すしかなかった。真姫ちゃんに対しての憎しみを彼女に直接ぶつける事しか出来なくて)
にこ(けど今はもう…。真姫ちゃんが持ってくる薬のせいかなぁ…何も考えられない。何も考えたくない)
にこ(ただ…目が覚めて考えるのは。希のこと)
にこ(外の世界がどうなってるのかわからないから。まだ希はにこを探してるんじゃないかって)
にこ(そう思うと…胸が苦しい。もしかしてにこのことを忘れちゃったり、なんて)
にこ(考えれば考えるほどわかんなくなっちゃった…なぁ)
ギィィ…
真姫「偉いわね。今度は針抜かなかったの?」
にこ「…頭、痛い」
真姫「吐きそうなら無理せず出した方がいいわ、たまに副作用でそうなっちゃうのよ」
カチャカチャ
ストン
にこ「え…いいの?」
真姫「ただしこれからも大人しくしてる事。ほら、残りも解くから腕あげなさい」
にこ「うん…」
真姫「残さず食べるのよ。スプーンはここにあるから」
にこ「ごはん…?」
真姫「えぇ。久しぶりの食事になっちゃったわね」
真姫「お粥にしてあるから噛めなくても平気よ。味付けは薄いから美味しくはないと思う」
にこ「…真姫ちゃんは何が、したいの」
真姫「……大したことじゃないわ」
真姫「ねぇ、にこちゃん聞かせて。何故あなたはアイドルに拘るの?」
にこ「そんなの…私の、夢だからよ…」
真姫「本当にそれだけ?」
にこ「あとは希が、期待してくれるから。それに答えたい」
真姫「そっちが大きいみたいね。今の答え方を見てる様子だと」
にこ「…何が言いたいの」
真姫「誰かのために何かを成し遂げる、あの人を喜ばせるために励む。こんな素晴らしい考え方はないと思うわ」
真姫「ただし何もかも順風満帆にいくならね。上手くいかない場合は…地獄を見ることになる」
にこ「そんなの…わからないじゃない。地獄を見るかどうかはその人次第よ」
真姫「いい?にこちゃん。私達は知ってるの、自分のためだけに生きるのは凄く楽なことだって」
真姫「それでも誰かのために生きようとする人が多くいる。その中には、失敗は許されないと自分をいつの間にか追い込んでしまう人がいて」
真姫「追い込んで追い込んで…もうそれ以上下がれなくなった時。心が崩れてしまうの」
真姫「心当たりはない?」
にこ「…ないわよ。私はそんな弱い人間じゃない」
にこ「こんなことで負けないって、負けてたまるかって…決めたの。自分の心に」
真姫「嘘。にこちゃんの精神は実際に悲鳴をあげていたはずよ」
にこ「っ、何で…何が理由で!真姫ちゃんに何がわかるっていうの」
真姫「……」フゥ
真姫「幻覚、幻聴、被害妄想、食欲の低下、慢性的な頭痛…あげればキリがないわ」
真姫「はっきり言わせてもらうけどね。にこちゃんは、統合失調症の可能性がとても高いの」
にこ「はっ…な、なによ…それっ!」
にこ「なんとか症って、にこは病気なんかじゃないわ!」
真姫「病気…そうね。簡単に言い換えるなら」
真姫「にこちゃんは疲れているのよ。身体も心も、参ってしまってる。その警告が症状となって何度も出ているの」
にこ「だから…、いい加減なこと言わないでっ!」
真姫「落ち着いて。興奮するのは良くないわ。にこちゃんが辛くなるから」
パッ
真姫「これを見て。ゆっくりと画面へと目を通すのよ。何も考えずに、ね」
にこ「…なによ。あのオーディションの…メールじゃない」
真姫「それはわかるのね?じゃあ今から画面をスクロールするわ」
スッ
にこ「えっ……ふ…不合格、って」
にこ「な…んで?確かに…にこは合格したはず、なのに」
にこ「こんなのっ、嘘よ!!」
真姫「…本当に合格、したかったのよね。あんなに喜んでいたんだもの。私にも伝わったわ」
真姫「にこちゃん…。だからね、あなたは現実を受け止めることが出来なくなっていたのよ」
真姫「もう後がない、もう失敗できない。そんな強い気持ちが。この幻覚を引き起こしたの」
にこ「…っ、じゃあ…にこは…」グスッ
にこ「最後まで…っ、ダメ、だった…のねポロポロ」
ギュッ
真姫「自分を責めないで、そんな事ないわ。にこちゃんは、疲れていたんだから…そう思うの。いい?」
にこ「っふ…うわぁぁ…」
真姫「今日はもう寝ましょう。眠れるまで私も一緒にいてあげるから」
にこ「…真姫ちゃん…っ、にこは…」
真姫「いい。何も考えないで」
真姫「今は疲れてしまった体を休ませてあげるのよ」
にこ「……うん」
ーーーーー
ガラッ
真姫「……」ハァ
真姫(怖かった…。にこちゃんに、全てを伝えるのが)
真姫(まるで最後の追い討ちをかけるようで)
穂乃果「真姫ちゃん、お疲れ様」
真姫「あぁ穂乃果…。また来てくれたの」
穂乃果「あはは…呑気に家でじっとしていられなくってさ」
真姫「優しいのね」
穂乃果「心配してるのは穂乃果だけじゃないよ…皆、同じ気持ちなんだ」
穂乃果「凛ちゃんと花陽ちゃんも本当は来たかったみたいだけど。辛いんだって、言ってた」
穂乃果「にこちゃんが苦しんでる姿を見るのを…あの2人は、実際にああゆう事があったから仕方ないのもあるし」
真姫「一刻も早く、助けてあげなくちゃいけなかったのに…」
真姫「それが悔しいの。にこちゃんの現状を知っていても見て見ぬ振りをしてしまっていた自分が」
穂乃果「真姫ちゃんのせいじゃないよ。にこちゃんの仕事があんまり上手くいってない事は、穂乃果だってわかってた」
穂乃果「けど…何もしてあげられないんだよ。仕事に誇りを持ってるみたいだから、変に干渉されるのも嫌がると思う」
真姫「…でも本当は希が、最初に気づくべきだった」
穂乃果「それは…」
真姫「半分はあの人が追い詰めたも同じよ。お互いに依存しているみたいだから」
穂乃果「真姫ちゃん。やめよう」
真姫「…そうね。ごめんなさい、言い過ぎたわ」
穂乃果「…そんなこと言ったって真姫ちゃんは希ちゃんに優しいんだ。知ってるよ?」
穂乃果「特に、今回にこちゃんをここに連れてきたのがそれを物語ってるね」
真姫「保護しようと思っていたのは前から。統合失調症だと疑うのには時間はかかるし、なにより私は専門じゃない」
真姫「外と連絡を遮断するにこちゃんと、繋がりを持つのには苦労したわ。栄養剤を渡さなきゃいけなかったし」
真姫「そもそも、今回こういう風になったのはタイミングが合っただけよ」
穂乃果「…違うよ。だって真姫ちゃんは、あの日にこちゃんが希ちゃんの元に行くのを辞めさせたでしょ」
穂乃果「合格したって喜ぶにこちゃんに、希ちゃんはこう言うんだ。そんな事はこのメールに書いてないって」
穂乃果「その後は…想像するだけで恐ろしいよ。どう転ぶかわからない」
真姫「……はぁ。そうよ、その通り」
真姫「穂乃果って、昔からそうね。何も考えて無さそうで誰よりもわかってたりする」
穂乃果「えー。もう、酷いなぁ真姫ちゃん…だって私は、μ'sのリーダーなんだから」
真姫「…そうだったわね」ニコ
穂乃果「後のこと、何か考えはあるの?」
真姫「私は…もうにこちゃんに芸能界で仕事をさせるべきじゃないと思う」
真姫「もう一つは。希と離れさせるべきだってこと」
~園田家屋敷~
海未「寒くはないですか?」
希「ううん…」
海未「何かあったら私を起こして下さいね。近くの部屋にいますから」
希「ありがと…うなぁ」
海未「ふふっ。もう眠ってしまいそうですね」
海未「おやすみなさい。希」
希「うん……」スゥ
ガラッ…パタン
海未「…あなたも不器用ですね。絵里」
絵里「…なに」
海未「いえ。何でもありません」ニコ
絵里「仕事があるから寝れないの。日本でもすることになるなんて思わなかったわ」
海未「それは絵里が休みを伸ばしたからじゃないですか?」
絵里「…何で海未が知ってるのよ」
海未「私が教えて欲しいのですが。希やにこが心配で残ったのでしょう?」
絵里「他の皆だって同じでしょ…私もそうよ」
海未「そうでしたね。ところで、こんな寒い縁側で座っていなくてもいいのでは?」
絵里「…つ、月を見てるのよ。ほら。今夜は満月だから」
海未「…本当に不器用ですね」
絵里「だから何が言いたいの」
海未「希がそんなにも気になりますか?」
絵里「…目を離した隙に何かあっても嫌でしょう」
海未「……そうですね」
海未「絵里はどう思うのですか」
絵里「にこ達について?」
海未「はい」
絵里「…2人が相手を絶対的に必要として、それがお互いの足枷になっているとしたら」
絵里「もう一緒にいるべきではないと思う」
海未「…今回の件は、本当に難しいと思います」
海未「私達に全てを決める権利があるとは思っていません。しかし…あの2人が変わらなければ、意味がないのです」
海未「でも、あの様子ではそのような兆しは見えない。どうすればいいんでしょうね…」
絵里「それでも変われない、と決めつけるのは良くないわ」
海未「…そうですね」
海未「私は早朝から稽古を教えねばなりませんので、そろそろ失礼します」
海未「絵里も早く寝て下さいね?」
絵里「えぇ。ありがとう」
ーーーーー
海未「…希は以前のように、突発的な行動をとるような事はなくなりました」
真姫「ありがとう。少しずつ落ち着きは取り戻してはいるのね?」
海未「はい。ですが…彼女は彼女なりに色々思うことがあるのだと…私は」
真姫「わかってる。そう思う海未の気持ちも、希の気持ちも」
海未「すみません…。私では、これが精一杯で」
真姫「海未はずっと希のことを見ててくれたじゃない。とても感謝してるわ」
真姫「ところで…ことりを最近見ないんだけど、彼女はフランスに戻ったの?」
海未「いえ。ことりはまだ日本にいます。会ってはいませんが、連絡は取り合っていますから」
真姫「そう。私も同窓会の時から会っていないから。気になって」
ガチャッ
凛「こんにちは~…」
花陽「…あっ。海未ちゃんもいたんだね」
真姫「凛、花陽。来てくれたのね」
穂乃果「私もいるよ~。休憩室でばったり会ったんだ」
真姫「いつも悪いわね、穂乃果」
凛「にこちゃんにもう近づかない方がいいかなって思ってたから…でも心配で」
花陽「あのベッドに座ってるのがにこちゃんなの?」
真姫「そうよ。いつまでも寝ているのが辛くなっちゃったみたい」
海未「真姫。にこは…芸能界に復帰することはできないのでしょうか」
真姫「えっ?」
海未「絶対に、無理だと。そもそもにこはもう、普通の生活は送ることができないんですか?」
穂乃果「海未ちゃん、何言って…」
凛「それは凛も考えるんだ。にこちゃんは確かに昔みたいに笑えないみたいだった」
凛「けど、凛達が無理やり辞めさせるのは違うんじゃないかって…真姫ちゃんからすればいい加減なこと言ってるって思うだろうけど」
真姫「っ、当たり前よ!あの世界でどれだけにこちゃんが苦しんだと思って」
花陽「…今のにこちゃんなら、厳しいと思う。あんな辛そうなにこちゃんを見るのは私だって耐えられない」
花陽「けど…どんな形でも歌を歌い続けるのがにこちゃんの夢なんだよ。それは私達が誰よりも知ってるはずなんじゃないかな」
穂乃果「海未ちゃんも、凛ちゃんも…花陽ちゃんも。本気で言ってるの?」
海未「だって…今からにこは何を目標に、何を生き甲斐にして長い日々を過ごすのでしょう」
海未「本人が、まだやりたいと望むなら。これが絶対的な条件になりますが…最後まで支えてあげるべきではないのでしょうか」
凛「今の海未ちゃんの意見に、凛もかよちんも同意するよ。そもそも…昨日で結論は一応ついたんだ」
花陽「にこちゃんは活動休止期間、なんだよね。それなら」
真姫「認めない。あんなボロボロの体で何が出来るっていうのよ」
花陽「…ごめん。にこちゃんに少しだけ、今から会わせて欲しいの」
凛「同窓会以来会ってないから。凛達を見て辛くなっちゃうならすぐ下がるよ」
真姫「……無理よ」
凛「お願い!あんな風に誤解されたままじゃ息苦しいんだ…だから」
花陽「真姫ちゃん…」
真姫「……」
ガチャッ
にこ「あっ。真姫ちゃん…」
真姫「にこちゃん、今日はね。あなたもよく知ってる人が遊びにきてるの」
にこ「よく知ってる人?」
凛「にこちゃんっ」
花陽「この前はごめんね…私達のこと、わかるかな」
にこ「……」
真姫「…やっぱり、」
花陽「にこちゃんっ!!!」タッ
真姫「花陽!?」
ギュッ
凛「ずるいよ!凛だって!」
凛「にこちゃんにこちゃんにーこちゃん!」ギュゥ
真姫「凛!花陽!今すぐ離れなさいっ」
にこ「……ふふっ」
真姫「えっ…」
凛「あー!にこちゃん今、笑ったにゃ」
花陽「にこちゃん!久しぶりだねっ」
にこ「…そう、ね」
花陽「また、凛ちゃんと私と…次は真姫ちゃんも一緒に遊んでくれる?」
にこ「うん…あのね、にこ」
にこ「ラーメンがいい」
花陽「…!」
凛「…わぁ、ほんと?やったね!」
真姫「あ…あり得ない」
真姫「統合失調症の患者が、こんなにも早く落ち着きを取り戻して…妄想に囚われないなんて」
グイッ
真姫「っ、海未?」
海未「勝手に失礼しますね。先程にこが発した言葉は、あの日に花陽が聞いた内容の返事なんです」
真姫「はぁ?どういうこと、なの」
ーーー
凛「ここを真っ直ぐ歩くとねー、先が商店街になってるの」
花陽「商店街といえば美味しい食べ物…///ぴゃぁ…」ゴクッ
凛「ねぇ、かよちんは何が食べたいの?」
花陽「私は出来れば和食がいいけど…ゴハンがあるところなら何処でも嬉しいかなぁ」ニコ
凛「あははっ。かよちんは本当にご飯好きだね♪」
花陽「あ、そうだ。にこちゃんは何処が…」クルッ
にこ「……」ポチポチ
凛「…にこちゃん?」
にこ「……」
花陽「あれ…?どうしたんだろう」
凛「うぅん…」
にこ「…っ!?」ビク
花陽「あっ、やっと気づいてくれた」ニコ
花陽「ねぇにこちゃん。お昼ご飯は…何がいいかなぁ?」
ーーー
真姫「じゃあにこちゃんは花陽の言葉がそのまま聞こえていたっていうの!?」
海未「私には詳しくわかりませんが…その、真姫が言う妄想というものがあったとしても」
海未「にこの頭の中には確かに正しい記憶があって、思い出す事ができた。これは大きいのではないでしょうか」
真姫「……」
ーーーーー
~園田家.屋敷~
絵里「希。今いいかしら」
希「あっえりち。いい、けど」
絵里「少し…お話したいの。これからのことについて」
希「……ごめん。放っておい」
絵里「にこが今どこにいるのか。私は知ってるのよ」
希「えっ」ハッ
絵里「それを聞きたいのなら。いいわね?」
希「……」コクン
絵里「にこは西木野総合病院にいるわ。あの日、過労で倒れちゃったみたいでね。たまたま居合わせた真姫が助けてくれたのよ」
希「倒れたって…!?」
絵里「大丈夫。今は徐々に回復しているとは聞いているわ」
希「ほんま…?うち、今すぐ会いに」
絵里「駄目よ。指定の人以外とは面会できないの。にこが望んでもね」
希「……そんな」
絵里「落ち着いて。話を続けるわね」
絵里「あの子は周りに頼ることをあまりしないから。希の前だって、きっとそうだったと思う」
絵里「にこが情緒不安定なのはわかっていた?ほら、急に怒ったり泣いたりとか」
希「…多分うちがにこっちを怒らせたり泣かせちゃったりするようなことを」
絵里「違うわ。希はそうやって、にこの顔色だけを伺って生活してきたの?」
希「ちゃうよ…!にこっちはうちのことを必要としてくれてたん、だから」
絵里「でしょう?なら、にこ自身に何か問題があったはずなのよ」
絵里「そして、それを加速させてしまった原因は。お互いにお互いを必要とする関係があったからなの」
希「…依存、ってこと?」
絵里「この場合は共依存ね。自分の存在意義を生み出す、お互いに相手を必要不可欠なものと認識する…そういう繋がり」
絵里「これはあまり良くないことなの。深くのめり込めば込むほど周りが見えなくなるから」
希「…じゃあうちの、せいなんやね。うちがにこっちと一緒にいたからっ」
絵里「それは違うわ!」
希「へ…」
絵里「あ、えっと…」
絵里(何を根拠に私は…海未の前ではああ言ったのに)
希「さっきの話やと、うちらの関係がって…えりち言うたやんか」
絵里「…私は、希とにこが一緒にいることを否定したいんじゃないの。ただお互いが幸せになれるような関係でいて欲しい。それだけよ」
希「えりち…」
絵里「この関係を治すにはね、暫く離れる必要があるみたいなの。どれだけかかるかわからない。寂しいかもしれないけれど…それがあなた達のため」
絵里「それをわかって欲しい。変わらなきゃいけないのよ、希」
ーーーーー
真姫「…わからないわ。医学書だけじゃ説明出来ないこともあるのね」
ことり「にこちゃんについて…かな?」
真姫「えぇ。何人か精神科の知り合いにも診てもらったけれど、一概に統合失調症とは言えないんじゃないかって」
真姫「日常的に幻聴や妄想があったわけではないみたいなの。過度のストレスや体調の悪化によって引き起こされたものみたいね」
ことり「…病院のパンフレットに書いてあるのはそれとは少し違うね。妄想っていっても沢山あるみたい」
真姫「統合失調症の症状としては、周りが自分を攻撃する。という妄想が主なのよ」
真姫「それも何回も何回もね。街を歩く人から襲われる、という迫害妄想や追跡妄想。他人の咳払いが自分への警告として聞こえる関係妄想…など」
真姫「それによって、患者の殆どが引きこもりがちになるの。だから周囲からは社会性がない、怠けているなんて思われてしまう」
ことり「そっか…にこちゃんは自分からオーディションを受けに行ったり、芸能界に拘ったりする行動はあったもんね」
真姫「凛や花陽、エリーの言葉が自分を追い詰めていると勘違いしたのは心の問題でしょうね。実際に、その日のにこちゃんは最初から不機嫌な様子だったみたい」
ことり「…今の様子はどうなのかな?」
真姫「あれから1ヵ月ほど経ったけど…落ち着いているわ。穂乃果は自営業だから、よく病院に来てくれるのよ。彼女に対しても、攻撃的な態度をとることは無くなった」
ことり「少しずつ良くなってるんだぁ…。良かった」
真姫「けど…依存相手には会わせるべきじゃない。精神科の彼はそう言ったの」
ことり「厳しいけど共依存を治すにはきっとそれが一番なんだね…離れちゃえば嫌でも気持ちは薄れていくから」
ことり「それにしても…真姫ちゃんは優しいね。目の下にクマができてる。遅くまで色々なことをしてたのかな」
真姫「…病気だと認めたくなかったから。仮に統合失調症だと精神科の診断が下れば、恐らくにこちゃんは強制入院することになる」
真姫「朝から夜まで監視カメラのついた部屋に1人だけ。病院を出れたって、一生薬を飲み続けなければいけない…それでも再発する患者は多いの」
真姫「私は…そんな彼女を見たくない」
ことり「私もね、同じ気持ちだよ?」ニコ
真姫「ことりだって人のこと言えないわよ。最近姿を見せなかったのは?裏で何コソコソしてるのよ」
ことり「あはは…ちょっとね。ツバサさん達と色々お話してたっていうか」
ことり「説得の方が正しいのかな?」
真姫「全く。あなたも海未も、凛も花陽も…本当に好きなのね。あの人のこと」
ガラッ
ツバサ「失礼します」
真姫「…こんにちは」
ことり「ツバサさんありがとうございます」 ニコ
ツバサ「お待たせして申し訳ないわ」
ことり「大丈夫です♪真姫ちゃん、にこちゃんに会わせもらってもいい…かな?」
真姫「今更否定しないわよ…。穂乃果だって、それで一応は納得したんだから」
ーーーーー
真姫「…で、海未もいたのね」
海未「来れる時には必ず来るようにしてるんです」
真姫「希は大丈夫なの?」
海未「絵里がいますから。彼女がいれば希も安心するでしょう」
海未「…ちなみに絵里から伝言を預かっているのですが」
真姫「…なに」
海未「でたらめを言われても困る、希が警戒しちゃってるじゃないの…と」
真姫「ああ…あれは悪かったわね。エリーが高校時代に希が好きだったって話でしょ?」
真姫「確かに適当に言ったわよ。あの時はにこちゃんに近づくために、まずは希に歩み寄りたかったから」
海未「…恐ろしいですね」
真姫「なんとでもいいなさいよ…」
ツバサ「準備が済んだわ。矢澤さんと面会させてくれる?」
真姫「鍵は空いてます。私の他に何人かも立ち会わせてもらっても」
ツバサ「大丈夫よ」
ツバサ「それより念の為聞いておくけど…あそこの事務所は結局、矢澤さんを解雇したのよね?」
真姫「…あとはにこちゃんが書類にサインするだけ、ですけど。拒否は出来ないと思います」
ツバサ「そう、ありがとう」
~病室~
ことり「にこちゃん。久しぶりだねっ」
にこ「そうね」ニコ
ツバサ「想像していたよりも元気そうで良かったわ」
にこ「あ…ツバサさん」
ツバサ「挨拶はこれぐらいにさせてもらって…単刀直入に言うわね」
ツバサ「まだアイドルを続けるつもりはない?」
にこ「……え」
ツバサ「これはスカウトだと思ってくれていいわ。私の事務所から、ね」
穂乃果「にこちゃん、無理をする必要はないんだよ。何か違うことを始めたって私達は応援するだけだからね」
にこ「いや…でも私は、歌とかダンスがうまいわけでもなくて…人気だって」
ツバサ「いくらだって伸びしろはあると思っているの。ただ、CDリリースだけに拘るんじゃなく違う方面にも手を伸ばすことにはなる」
ツバサ「あなたがあんまり好まないバラエティ番組やドラマ・映画への出演ね。アイドルと離れてしまうけど、こういう活動を徐々に広げないとやっぱり難しいの」
にこ「…オーディションだって、何回も落ちてるのに。私には」
ツバサ「それは少し前のあなたでしょ?さっき南さんに向けたような笑顔があれば絶対に無理、とは言えないんじゃないかしら」
ツバサ「…矢澤さんにその気があるのなら、私達は推させてもらうわ。どう?」
にこ「……えぇと」
海未「いくらだって考える時間はあります。にこ自身が決める必要があるのですから」
真姫「それにまだ休養が必要よ。もし…万が一、芸能界に復帰するって言うなら通院は必ずしてもらう」
真姫「あと前にも話したけど…実家に住むこと。色々制限があるのはにこちゃんのためなの」
にこ「………」
ーーーーー
prrrrrr…
希『もしもし…?』
にこ『希?にこよ。久しぶりね』
希『にこっち…!?えっ、電話し』
にこ『ちゃんと許可貰ったわよ、可愛い主治医さまから。今側にいるし長くは話せないけど』
希『そう…なんや』
にこ『希。お互いに謝ったりってのはナシね』
希『うん…。今は空港なん?』
にこ『えぇ。他の皆は見送りに来てくれてる』
希『そっか…。もう行くんや』
にこ『それ以上ダメよ』
にこ『お互いに頑張りましょう。それだけ…だから』
希『…そやね』
にこ『絵里と海未もそっちにいる、のよね』
希『いるよ。残ってくれてる』
にこ『ちゃんと言う事聞くのよ』
希『うん…』
にこ『……』
にこ『じゃあね。ありがとう』
希『ううん。…さようなら』
ピッ…ツーツー
絵里「泣いてるの?」
希「泣いて…ないっ。もう決めたんやから」
海未「頑張りましょう。少しずつでいいんです、前に進めれば。それで」
絵里「…今だけ1人にさせてあげましょう」ヒソ
海未「…」コクン
ガラッ
絵里「それにしても…少しだけ心配ね」
海未「にこのことですか?それなら大丈夫でしょう。ことりがついていますから…向こうにも日本人はいるみたいですし」
絵里「フランスでことりの仕事を手伝う傍ら、服飾を勉強するって聞いた時は本当に驚いたわ」
海未「ことり自身の案なんです。にこは、芸能界に復帰することを選びませんでしたから」
絵里「…私は復帰するんだろうと思ったわ。だから以外だった。けど、同じような仕事につけば希のことも思い出してしまうでしょうね」
海未「そうですね。ツバサさんは残念がっていました」
海未「にこは…自ら新しい道を選んだんです。だから日本からにはなりますが、応援してあげましょう」
絵里「そうね。でも、外国に住むのは大変じゃないのかしら」
海未「真姫が言うには、全く違う環境というのも場合によっては良いそうです。ここにいる限り、今までの辛い経験を思い出させるものは存在しますから」
海未「そしてフランスの他にも、ヨーロッパの国を訪れるつもりだとことりは言っていました。色々な景色を見せてあげたいと…」
絵里「とてもいい旅になると思うわ。いつ帰ってくるかはわからないんでしょう?」
海未「はい。どうなるかはわかりませんが、一生向こうで永住する可能性もあるみたいですね」
絵里「へぇ…すごいわね。私なんて日本に帰ってきたっていうのに」
海未「それにしても、まさか辞表を郵送で送るとは…流石ですね」
絵里「まぁね。速達で送りつけてやったんだから、感謝して欲しいぐらいだわ」
海未「まぁ絵里なら引く手あまたでしょうし…私は特に心配していません」
絵里「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。真姫にもそう言われたけどね」
海未「…そういえば。真姫からの伝言を伝えるのを忘れていました」
海未「あれは希とにこに近づくためにした、適当な発言で悪かった。と」
絵里「…大体ね、昔に好きだったから今も好きっていう考えが良くないわ。困っちゃうわね」
海未「では違うんですね」
絵里「さぁて、どうかしら?」
海未「何ですか…それ」
絵里「ふふっ♪妬いてるの?」
海未「なっ…//違いますよ、もうっ」
絵里「……ふぅ。今日はいい天気ね」
海未「そうですね…」ニコ
ーーーーー
真姫「ーーで。希と絵里と海未は結局、一緒に住んでるのね」
穂乃果「ルームシェアだよ!近くのマンションに住んでるみたいだもん」
花陽「それって海未ちゃんも?」
凛「うん。でも近いとこだし、たまにお屋敷の方で寝るーって言ってた!」
花陽「確か絵里ちゃんは日本の大きな会社に入ったみたいだし、希ちゃんも変わらずに頑張ってるんだよね」
穂乃果「あっそういえば、ことりちゃんからメールがきたんだ!」
凛「えぇ!?早く見せてよ~!」グイ
穂乃果「写真つきだよ!ちょ、ちょっと凛ちゃん引っ張らないで~っ」
花陽「…希ちゃんとはこの前も会ったんだよね?」
真姫「そうよ。希には2人がいるからそういう面では大丈夫だけど…」
真姫「正直、私はにこちゃんよりも希の方がある意味重症だと思っていたから。ゆっくりカウンセリングしていく必要があるわ」
花陽「そっか…。でも平気だね」
真姫「…?」
花陽「だって私達はμ'sなんだから。誰かが転んだり、道を踏み外しそうになった時には皆で助け合える…そんな素敵な仲間」
花陽「きっとまた、同じテーブルを囲んで話せる日が来るよ」ニコ
真姫「…そうね。間違いないわ」
ーー
ーーー
ーーーーー
希「んー…寒い寒い」ゴソゴソ
絵里「おはよう。今日は雪が降るみたいよ?」
希「そうなの?って、うわぁ…ちょっと積もってるやん」
絵里「あ、ほんとね。電車も遅れてるみたいだし連絡いれてくるわ」
希「じゃあその間にお味噌汁あっためよっと…」
ピロン♪
希「あれ…誰からのlineやろ」
穂乃果<みんなおはよー!雪だね!初雪!
穂乃果<画像
希「ふふっ。穂乃果ちゃんは元気やなぁ」
凛<さむそうでふとんからでれない…
希「凛ちゃんはまだお布団の中みたいやね」
凛<かよちんがはやく起きてっておこるよ~>ω<。
希「あははっ、怒ってる花陽ちゃん見てみたいな」
絵里「希、何を見てるの?」
希「あのね。穂乃果ちゃんからline始まって…ほらっ、見て?」
絵里「ほんとね。今から電話します…って、海未に言われて凛が慌ててるわ」ニコ
希「あ、真姫ちゃんも起きたみたいやね。お休みの日やから起こされて不機嫌そうやわぁ」ニコ
穂乃果<そういえば皆さん!
穂乃果<今月末に同窓会の続きをしたいんだけど、いつ空いてますかー( ˆ ˆ )/
希「えっ…?」
絵里「同窓会…前にしたのは3年前くらいだったかしら」
希「同窓会って、あぁ…そっか。また7人で集まってご飯食べるんやね」ニコ
ピロン♪
穂乃果<9人でするよ!続き、だからねっ
ーーーーー
凛「あ、絵里ちゃんに希ちゃんー!」フリフリ
花陽「こっちだよ~!」
絵里「ふぅ、駅から少し歩くのね。ここ」
希「運動になるから食べすぎても大丈夫かな?」ニコ
穂乃果「あ、だよね!よーし!」
海未「またダイエットに泣くことになりますよ?」
穂乃果「それは…うぐぅ」
真姫「はぁ…いい年して店の前で騒がないでよ」
凛「真姫ちゃーん!やっと揃ったねっ」
花陽「あとは…少しだけ待ってればきっと」ニコ
海未「連絡はきましたか?」
穂乃果「もーすぐってさっき言ってたよ?」
凛「じゃあしりとりしよっか!かよちん、真姫ちゃん」
真姫「なんでしりとりなのよ!」
凛「じゃあ西木野の、の!はい!5、4…」
真姫「ヴェェ…の…農業!」
絵里「…希」
希「えっ、あ…どうしたん?」
絵里「緊張してるの?」ニコ
希「…ちょっとだけ」
ことり「っふぅ…やっと着いた。みんな久しぶり♪」
穂乃果「あっ!!」
海未「ことり、本当にお久しぶりですね…!」
希「ことりちゃ…」
トントン
希「…!」ピク
絵里「あら、遅いじゃない?」ニコ
「迷ったの!この辺り道が複雑すぎるのよ…」
希「…っ、」クルッ
にこ「希。久しぶりね」
希「にこ…っち……」ポロポロ
ギュッッ
にこ「っと…。もう、思いっきりきたわね」
希「あのねっ…うち頑張ってるよ」
にこ「うん…」
希「もう前みたいに…弱いうちやない、んよ」
にこ「…ねぇ。こっち向いて」
希「どうし…、んむっ」
チュッ
にこ「ただいま、希」ニコ
希「おかえり…にこっち」ニコ
真姫「…さぁ先に入ってるわよ!これ予約してるんでしょ?」
穂乃果「え…あぁ!そうだった!」
ことり「今日は朝までコースだもんね♪」
凛「にこちゃん、元気そうで良かったね」
花陽「ふふっ。そうだね」
海未「絵里…行きましょう。私のお酌をして頂きたいので」
絵里「へぇ。珍しい…今日は飲むのね?」
海未「せっかくの同窓会なので。少しだけ」
絵里「…そうね。きっと今夜は素晴らしいものになるわ」ニコ
色々書いた中で結局これにしました
保守レス感謝、おわり
元スレ
ガチャッバタンッ
希「……忙しいんかなぁ」
希「…部屋の掃除でもしよか」
希(っていってもアパートやから広くないしすぐ終わっちゃいそうや)
希(まぁ何もしないよりは…)スクッ
ウィーン←掃除機
希「あ、こんなとこに名刺落ちてる」
希「松山芸能事務所…にこっちのかな。机の上にまとめとこう」
7: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 10:55:32.97 ID:HMPrgqZu.net
希「ここに散らかってる服は着てあるやつなんかな…うーん」
希「一応洗濯しといて、さっき回したのは今から畳むとして」
ゴトンッ
希「あっ!」
希「やばい、落としてもたぁ…割れてへんよね、大丈夫やん…な」ヒョイッ
希「うん…よかったぁ…」ホッ
希(この写真立てだけは、ずっと埃を被らずに隅に飾ってある。毎日手入れしてるもん)
希(何たってうちとにこっちの、高校時代の写真…やもんね)ニコ
8: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:02:44.08 ID:HMPrgqZu.net
prrrrrrr
希「っ」ビク
希「にこっちかな…?いや」ピッ
希『もしもし。どうしたん?』
絵里『はぁい、元気?久しぶりに電話したくなったの』
希『元気よ。でもこれ、お金かかっちゃうんやない?大丈夫?』
絵里『国際電話じゃないから。さっき日本に着いたのよ』
希『あ、帰ってきてるんやね。知らんかっ』
絵里『ねぇ、あなた本当に元気なの?』
希『…何ゆうてんの?元気や~って言うたよ』ニコ
絵里『そう…』
9: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:07:50.39 ID:HMPrgqZu.net
絵里『じゃあ今から会わない?』
希『えっ』
絵里『あら、にこがいるの?』
希『あ、いや…にこっちは出かけてるけど』
絵里『ならいいじゃない。ね?』
希『…でも…その、ちょっと風邪気味かなーって』
絵里『私はついさっき元気だって聞いたけど』
希『……』
絵里『決まりね。12時過ぎに、原宿駅前で待ち合わせましょ』
12: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:13:24.81 ID:HMPrgqZu.net
~駅前~
希(結局断りきれずにきてしもた)
希「えりち、まだかなぁ…」ボー
希(このワンピース、今日のデートに着ていこうと思ってた服なんやけど…な)
「ねー、見て。あの人かっこいい」
「外人さんかな?スタイルやばいよねー」
希「も、もしかして」
絵里「っは、はぁ…ごめんなさい。ちょっと遅れちゃったわね」
希(走ってたせいでめっちゃ目立ってるし…)
絵里「希?」
希「あ、いや!なんでもないよ」
13: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:17:58.27 ID:HMPrgqZu.net
絵里「それにしてもそのワンピース、可愛いわね。ピンクと紫の組み合わせもイケてるわ」
希「え?…そう、かな」
絵里「でもそういう系の服、あんまり持ってないんじゃなかった?」
希「そうなんやけど。これは…にこっちがうちに選んでくれたものやから//」
絵里「ふぅん…やっぱりね」
希(やっぱり?)
絵里「いいわ、長居するのもあれだし。お昼にしましょ」
14: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:22:26.00 ID:HMPrgqZu.net
「いらっしゃいませ。お客様、御予約はお済みでしょうか?」
絵里「絢瀬よ。店長に取り合ってくれればわかるわ」
「失礼致しました。絢瀬様、お席にご案内致します」
希「なんか、ここって」
絵里「人気店でね。本当は予約がないと入れないのよ」
希「へぇ…すごいなぁ…」
「こちら窓際の席にどうぞ」
絵里「どうも。ありがとう」
15: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:26:30.61 ID:HMPrgqZu.net
絵里「はい、これメニューね」
希(なんか…やっぱりここ高級なお店やん)
希(コーヒー1つで800円って、ファミレスならセット頼めてまうよ)
絵里「あぁ、お金のことなら気にしないで。私の奢りだから」
希「え!?いやいや」
絵里「勝手に連れ出したんだからいいのよ」
希「…同い年やのに悪いわぁ」
希(って言っても、今のうちの財布じゃコーヒーぐらいしか頼む余裕なかったんやけど)
17: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:32:10.23 ID:HMPrgqZu.net
ーーーーー
カチャ…カチャ
希「仕事はお休みなん?」
絵里「えぇ。溜まってた有給をとれって言われてね。日本に帰ろうと思ったの」
希「大手企業やと大変そうやね」
絵里「ほんとよ。でもやりがいはあるわ」
絵里「…で、希は?」
希「うん?」
絵里「仕事は何やってるの?」
希「事務の仕事よ。最初はパソコンとか苦労したけど…なんとかやっていけてる」
絵里「ところでまだ一緒に住んでいるの?」
希「…なにが?」
絵里「にこよ」
18: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:36:52.35 ID:HMPrgqZu.net
希「あ、うん」
絵里「確かにこは芸能関係の仕事をしているのよね?」
希「芸能関係っていうか…アイドル?」
絵里「…いや、私達もう27よ?」
希「そやけど、それがどしたん?」
絵里「ならにこも27でしょ?アイドルをまだやってるの?」
希「え、何言ってるんよ」
絵里「…ん?」
希「にこっちはずーっとアイドルやん?」
絵里「……」
23: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:42:48.17 ID:HMPrgqZu.net
絵里「…怒らないで聞いて欲しいんだけどね」
希「…なに?」
絵里「あなた達、一緒にいない方がいいと思うわ」
希「!!」
絵里「一緒にいないっていうのは、別に交友を辞めろとかそういうのじゃなくて」
希「…こと言うんよ」
希「なんでそんな酷いこと言うんよっ!!」
絵里「あ、いや…そのっ」
希「そんなこと言うために電話したん!?うちと会ったってこと?」
絵里「待って、落ち着いて。私はあなたの為を思って…」
希「もういい。ご馳走様でした」ガタッ
絵里「あっ!ちょっと希…!!」
タタタッ
絵里「…行ってしまったわね」
24: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:47:31.40 ID:HMPrgqZu.net
prrrrrr
絵里『…あぁ、海未。今ちょっといいかしら?』
絵里『そう。無理だったわ』
絵里『いや、だからね……うん、そうなんだけど』
絵里『…とりあえずよ。力になれなくて申し訳ないわ』ピッ
絵里(…随分と変わってしまったわね。私がロシアにいる間、あの2人に何があったの?)
30: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:54:05.57 ID:HMPrgqZu.net
希「っは…ふはっ…」タッタッ
希(あかん…あのまま飛び出してきてしもた)
希(心臓がドクドクする…こんな運動したの久しぶりやからかな)
希「帰ろう…」
ーーーーー
~希アパート1室~
グツグツ
希「んー。もうちょい味噌いれた方がええかな」
希「こっちのお肉は…にこっち辛いのダメやし、唐辛子使わずにうちのだけ最後に一味混ぜたらええわ」
希「皿に取り分けて…っと」
31: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 11:59:09.52 ID:HMPrgqZu.net
希「…できた。うんうん、美味しそうやわぁ」
希「今7時やけどいつ帰ってくるんやろう?」
希「lineも既読つかへんし…」ウーン
希(…冷めてまうよなぁ。お肉とか)
希(でも1人で食べるの可哀想やし待ってよ)
希(テレビでも見てれば時間潰せるし♪)
ーーーーー
希(ってもう9時…早いわぁ)
希「電話してみよ…」ピッ
prrrrrr
prrrrrr
prrrrrr
32: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:00:25.74 ID:HMPrgqZu.net
prrrrrr
prrrrrr
prrrrrr
希「………」
prrrrrr
prrrrrr
prrrrrr
ピッ
35: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:04:13.87 ID:HMPrgqZu.net
希「でーへんし…はぁ」
希「しゃーないわぁ先に食べちゃお」
希「……」モグモグ
希「……」モグモグ
希(作った時は美味しそうって思ったけど…なんか美味しくないなぁ)
ーーーーー
希「お風呂も入ったし、洗濯したし」
希「11時か…明日仕事やからもう寝ようかな。眠たい」
ゴソゴソ
36: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:07:45.11 ID:HMPrgqZu.net
希「…すぅ…すぅ」
ガチャッ ガチャガチャ
希「んぅ…むにゃ」
ギィ…
希「…ん」パチッ
希「にこっち…?」
37: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:11:26.87 ID:HMPrgqZu.net
希「にこっちや!おかえり」ニコ
にこ「ん…ぅ、希」
希「どしたん?大丈夫?」
にこ「ちょっとあの…あれ…水」
希「お水やね!待ってて」タタタッ
にこ「あ゛ー…気持ち悪…」
希「はいっ、持ってきたよ?」ヒョイ
にこ「んぐっ…んぐっ」
38: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:15:57.53 ID:HMPrgqZu.net
希「顔赤いけどまた飲んできたん?」
にこ「っん、のね…ちょっとだけ」
希「ほどほどにしときっていってるのに。もぅ」
にこ「これも仕事なの!ぁんなのよっ!」
希「…そっか、お疲れ様やね」
にこ「眠い。のーぞーみー…」
希「今日はもう寝るの?パジャマ出してくるわ」
にこ「うん…」
希「あっ。そや…ご飯、は?」
にこ「いらない」
41: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:21:24.82 ID:HMPrgqZu.net
~朝~
ピピピピピ
希「んっ…」パチ
希「体がだるい…けど仕事いかな」
希「…」チラ
にこ「…っくぅ…くぅ」
希「ふふっ。この寝顔見れたら頑張れる気がする」
希「昨日の残りを机の上に置いといて…チンしたら勝手に食べるよね」
希「あーメイクしな。忙し忙し」ドタバタ
42: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:27:06.44 ID:HMPrgqZu.net
~職場.昼休み~
上司「東條さーん、今日の帰り飲み会あるんだけど。来ない?」
希「あ~…うちは遠慮しときます」
上司「またそれかぁ。たまには行こうよ。別に変な感じじゃないし」
希「うーん…いや、でも」
女社員A「いいじゃない希ちゃん!私達も行くし気軽に行かない?」
希「えっと……」
女社員B「そんな遅くならないし!ね?」
希「じゃあ…はい」
希(まぁたまには…すぐ帰れるみたいやし)
43: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:30:39.48 ID:HMPrgqZu.net
~飲み会~
女社員A「ねぇねぇ、希ちゃんって彼氏とかいるの?」
女社員B「いそうー。って結婚してたり?」
希「あはは、そんなのいいひんよ~」
上司「えー以外だな。すぐに出来そうだけど」
女社員A「あ、手出しちゃダメですよ?奥さんに言っちゃいますから~」
上司「おいおい勘弁してくれよ…怖いんだからさ」
希(なんか…こういうの楽しいなぁ)ニコ
女社員A「ほら、もっと飲んで飲んで~」
44: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:33:58.09 ID:HMPrgqZu.net
希「すいません、〇〇〇のアパートまでお願いします!急ぎめで」
タクシー運転手「あぁはい。わかりました」
希(あぁ…こんなに遅くなってもた)
希(はやく…はやく)
~希アパート1室~
ガチャギィ
希「にこっ…あれ?真っ暗や…」
希(もしかして寝てるんかな…それともいない?)
48: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:38:34.39 ID:HMPrgqZu.net
ギシッ
ギシッ
希「にこっちー…?」
にこ「希ぃ…」
希「あっ、そこにいたんかぁ…」ホッ
希(部屋の窓際で座り込んで毛布にくるまってる。これはわからんわ)
希「電気つけるよ?」パチ
にこ「なにしてたのよ、遅かったじゃない…」
希「ごめん。会社のみんなに飲み会に誘われて。連絡してなかった?」
にこ「それは知ってる。なんで遅かったのって聞いてるの」
希「それは…長引いちゃって」
50: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:46:35.58 ID:HMPrgqZu.net
にこ「…じゃあにこより会社の奴らと遊ぶほうがいいんだ」
希「そんなこと…!!うちは」
にこ「ずっと寂しかったのに!なんでよっ!なんでにこが寂しい時に傍にいてくれないのっ」
希「だからそれはっ…うちはにこっちが一番やって、知ってるやろ?」ギュッ
にこ「っ、触んないで!!」ドンッ
希「いっつぅ…」ドサッ
56: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:53:31.67 ID:HMPrgqZu.net
希「痛いやろ…もうっ……」
希「あっ…」
希(今まで後ろ向いてたにこっちがこっち向いた時に、目に入ったのは涙が乾いたほっぺた)
希(そしてうちはそのままフリーズしてしもた)
にこ「なんか言いなさいよっ!こんのっ…」
希「…ごめんね」
にこ「え…」
希「寂しくさせてごめん。うちはにこっちのことが一番好きやのに、ね」ギュッ
にこ「…ぅ…希…」
59: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 12:59:15.11 ID:HMPrgqZu.net
にこ「…っふぁ…うぅっ…」ポロポロ
希「怒ったり泣いたり、忙しいなぁ…」ナデナデ
にこ「希…ごめん。痛かったでしょ」
希「大丈夫よ、うちが放っておいたせいで」
にこ「…ごめんね。ごめん、ごめんなさい…」
希「にこっち?」
にこ「ごめん…ごめん…許して。にこを捨てないで」
希(にこっちが…うちのことをこんなにも求めてくれてる)
希「捨てるなんて…そんなこと。うちとにこっちは」
ずーーっといっしょ。やろ?
78: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:32:58.40 ID:HMPrgqZu.net
にこ「っん…ぅ…希ぃ」
希「にこっ、ち…///ひゃぁ、ん」
にこ「きもちい?」
希「ぅん…っ///」
にこ「よかったぁ…」
希「にこっちばっかりずるい、うちにも…させて?」
にこ「…///」コクン
希「ふふっ。幸せやなぁ」
希(こうして肌で抱き合うのも久しぶり…やね)
80: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:37:24.23 ID:HMPrgqZu.net
ーーーーー
にこ「…んぅ」パチ
にこ(頭いたい…だるい)
にこ「のぞみぃ」スカッ
にこ「あれ…あ、そっかぁ」
にこ「仕事か…」
にこ(今何時なんだろ)ボー
にこ(ってかケータイどこ置いたっけ)
81: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:40:45.58 ID:HMPrgqZu.net
prrrrrr
にこ「…ッチ。誰よ」
にこ「よ、っと…」スクッ
着信:星空凛
にこ(は?)
prrrrrr
にこ「なに、なんなの。あの子からの電話なんてここ最近かかってきたことないのに」
83: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:42:16.06 ID:HMPrgqZu.net
prrrrrr
にこ「まぁいいや。ふわぁ…」
prrrrrr
にこ「…」イライラ
prrrrrr
パシッ
凛『あっ、にこちゃん?』
にこ『……なんの用?』
84: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:44:52.50 ID:HMPrgqZu.net
凛『出るのおっそいよー。切っちゃうとこだった』
にこ『んじゃ切るわね』
凛『ちょちょちょっと!待って!』
にこ『だからなに』
凛『今日はお仕事ない?無かったら久しぶりに会いたいなって思って』
にこ『無理。忙しい』
凛『えー…もう1時だよ?今日の半分過ぎたんだよー?ほんとはお休みでしょ?』
にこ『え?あぁ…』チラ
85: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:46:40.94 ID:HMPrgqZu.net
凛『実はかよちんも来るんだ!ねっ、ちょっとだけ遊ぼう?』
にこ『…夕方まで』
凛『んー?』
にこ『夕方までだから』
凛『やった!じゃあ詳しくはlineに送っとく!またねっ』
ピッ
86: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:48:37.03 ID:HMPrgqZu.net
にこ「あーなんで言っちゃったんだろ」ゴロン
にこ「昼から仕事とか適当に繕えたのに」
にこ「まぁ…あの子らとは特に仲良かったし。顔ぐらいは出してあげても…別に」
にこ(…机の上。なんか置いてある)
[これ朝ごはんです。お昼の分も含めて多めに作ってあるよ。温めて食べてね。いってきます。by希]
87: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:50:20.02 ID:HMPrgqZu.net
ーーーーー
~広場~
凛「あのー……もしかして、ってあ!にこちゃんだ」
にこ「っ、ちょっと大きい声出さないでよ」ビク
凛「むぐ…ごめん。おっきいサングラスに帽子被ってるからわかんなかったよ」
にこ「あったりまえでしょ。ファンにバレたらどーすんの」
凛「……そうだね」
88: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:51:38.93 ID:HMPrgqZu.net
花陽「凛ちゃんと…にこちゃん?」
凛「わっ、かよちん!!久しぶり~♪>ω</」
にこ「…花陽。久しぶり」
花陽「2人とも会いたかったよぉ…みんな色々忙しくて予定がね」
凛「そうなんだよね~。真姫ちゃんも誘ったんだけど、お医者さんは忙しいみたいにゃ」
凛「あぅ…にゃって言っちゃった」
花陽「あはは♪私は久しぶりに聞けて嬉しいけどなぁ」
89: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:53:14.41 ID:HMPrgqZu.net
にこ「…もうやめたの?」
凛「うん!いつまでも子どもじゃないし…凛だって、もう大人だもんね」
にこ「……」
花陽「凛ちゃんは今もインストラクターしてるの?」
凛「うん!体動かすの好きだから楽しいよ!」
花陽「すごいなぁ…私なんてあんまり上手くいってないよ」ハァ
90: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:55:47.44 ID:HMPrgqZu.net
凛「おコメの品種改良してるんだっけ?あのね、凛なんかが軽く言っていいかもわかんないけど…」ウゥン
凛「かよちんは頑張り屋さんだからきっと出来るよ。大丈夫!」
花陽「…ありがとう。凛ちゃん」ニコ
にこ「ねぇ。時間は待ってくれないわよ」
凛「あ、そうだね…行こっか」チラ
花陽「だね…」チラ
にこ(…ん?)
91: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 22:57:10.55 ID:HMPrgqZu.net
ーーーーー
凛「ここを真っ直ぐ歩くとねー、先が商店街になってるの」
花陽「商店街といえば美味しい食べ物…///ぴゃぁ…」ゴクッ
にこ(足痛い…なんでこの子らこんな歩けるの)
にこ(暇つぶしにケータイでも見よ…あっ。lineきてる)
希<きょうのごはんはなにがええ?
92: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:00:52.90 ID:HMPrgqZu.net
にこ(ご飯。か)
にこ(な、ん、で、も、い、い…)カタカタ
にこ(1時32分にlineが来てる。お昼は1時までじゃなかったっけ。忙しくてズレてるのかな)
にこ(…ってあれ)ピタ
にこ(急に静かに…っひ!?)ビクッ
凛「……」
花陽「……」
にこ(な、なんで黙ってこっち見て…んの、よ)
にこ(さっきまで色々喋ってたでしょうが…!)
93: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:04:15.64 ID:HMPrgqZu.net
花陽「ねぇ…にこちゃん」
にこ「……」ゴクッ
花陽「アイドルはいつ諦めるの?」
にこ「…は」
ひゅっ、喉から空気が漏れた。
花陽「言葉通りだよ。もう一度言おうか?」
花陽「いつまで夢を見続けるつもりなの?」
にこ「…っ」ギリッ
95: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:08:01.83 ID:HMPrgqZu.net
にこ「なっ、なにも知らないアンタに、そんな風に言われてる筋合いはないわっ!」
花陽「ふぅん…」
にこ(なに、なんなのよ…!!)ドクンドクン
にこ(見下したような目でにこを射抜いて、2人でお互いに顔を見合わせてる)
凛「にこちゃん……まさか、まだ。無理しなくていいんだよ?」
にこ(顔に張り付いたような、薄ら笑いを浮かべて…)
にこ「っさい!うるさいっ!!」
97: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:10:34.55 ID:HMPrgqZu.net
にこ「…ぅ、あぐ…うるさいって……のよ」フラ
にこ(叫んだら眩暈が…こんなのに構ってやる時間なんて)
凛「ねぇ、にこちゃ」
にこ「触んなっ!!」パシッ
花陽「……」
にこ「もう連絡してくんじゃ…ない、わよ!」
タタタッ
98: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:13:31.05 ID:HMPrgqZu.net
にこ(もっと…)
にこ(もっと、走らなきゃ)
にこ(もう誰にもあんな目で見られないところへ)
にこ「ぜぇ…ぜぇ…」ヒュゥ
『今回新発売の商品!国民的アイドルのゆりちゃんにも使っていただいております!』
『ご購入の際にはある特典も!ぜひお急ぎ下さい~♪』
にこ「…騒がしいCM」ボソ
にこ「ゆりって確か…鈴木有里、だったっけ。後から入ってきた」
にこ「あんな汚い女でも国民的アイドルになれるなんて腐った世の中ね、ほんと……」
99: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:15:43.16 ID:HMPrgqZu.net
ーーーーー
~希アパート1室~
希「ただいま~…」ガチャ
希(電気ついてるし。今日はいるみたいやね)ホッ
スタスタ
希「あ、いい匂い」
希(キッチンには作りかけの料理がそのままになってる。まだ湯気がたってるし、さっきまで作ってたんかな)
100: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:19:11.02 ID:HMPrgqZu.net
希「…いた。どしたん?ソファに座ったりして」
にこ「…………」イライラ
希(あ。今日はご機嫌ななめの日かぁ…)
希「料理、作ってくれたんやね。ありがとう」ニコ
にこ「…知らない」
希「残り、うちやっとくね」
トントントン
希(これ切ったら鍋に入れて…)
希(にこっちなにしてるんやろ)チラ
101: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:22:12.73 ID:HMPrgqZu.net
にこ「………」ボー
希(部屋の隅の方見ながら…自分の指舐めてるんかな?)
希(お腹空いてるんかも。何か先に)
希「はい、ココアよ。熱いから気を付けてな?」ゴトッ
にこ「……」
希(さてと。中火にして沸騰させへん程度まで熱してから)
希(お味噌を箸で)
ガッシャーーンッ!!
104: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:28:11.69 ID:HMPrgqZu.net
希「え…!?」
にこ「っう…うわぁぁぁんっ!!」
希「にこっち!?どうしたんっ」
希(グラスが床で割れて絨毯に黒いシミが…これって、落とした?)
希(けど絨毯の上やし落とすぐらいじゃ…まさか)
希(叩きつけた?)
希「にこっち…怒らへんから、大丈夫よ」
にこ「…っひぐ…ぁぁんっ…うぅ」
希「…あぁどうしよう」
107: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:33:28.66 ID:HMPrgqZu.net
希(あ…舌の先が赤くなってる)
希「にこっち、火傷してもうたんやね?びっくりしたね…大丈夫?」ナデナデ
にこ「…っうぅぅ…っひ…っく」
希「あかん、泣きすぎて上手く呼吸できてない…あのね、ゆっくり吸ってから」
ピンポーン
希「…え。こんな時間に」
ピンポーン
110: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:37:19.53 ID:HMPrgqZu.net
希「にこっち、待っとってね…ごめんな」
希(電気漏れてると思うし。時間的にも居留守は使えへんよね)
希(でも防犯のために、チェーンロックして開けよう)
希「はーい…どなたですか」ガチャ
「夜分にごめんなさい。私よ」
希「ま…真姫、ちゃん…?」
113: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:42:16.20 ID:HMPrgqZu.net
真姫「仕事帰りにちょっとね。当直ないし、今夜は暇だから」
希「…それで、なにかようあるん?」
真姫「あら…随分と用心深いのね。私達、昔のメンバーじゃなかった?」クス
希「いや…そう、やけど」
真姫「用と言っても。そうね」
真姫「貴方とにこちゃんが一緒に暮らしてるって聞いたから、よければ上がらせてもらおうと思ったの」
希「っ…それ、もしかして…えりちから聞い、たん?」
真姫「エリー?まだロシアにいるんじゃないの?」
希「あ…その」
115: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:46:37.51 ID:HMPrgqZu.net
真姫「とにかく、よければ少しお話したいんだけどね」
希「ごめんなぁ。にこっちがちょっと調子悪くて」
真姫「…へぇ。調子悪いのね、可哀想に」ニコ
真姫「なら私が診てあげるわよ。一応医師免許持ってるし」
希「いやっ、だから…!」
真姫「それとも見られたくない何かがあるの?」
希「………」
真姫「ふふっ。お邪魔させてもらうわね」
119: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:51:16.13 ID:HMPrgqZu.net
希「…ちょっとだけ待っとって」
希「廊下に広がってる荷物、どけてしまうから」
真姫「えぇ。お構いなく」
バタンッ
希「…にこっち」
にこ「っぅ……」
希「真姫ちゃんが来たんよ。うちらとおしゃべりしたいんやって」
にこ「真姫、ちゃん…?」
希「うん。ちょっとしたら帰ると思うけど」
希「泣いてたら真姫ちゃん心配しちゃうから、頑張れる?」
にこ「…うん」
122: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/01(日) 23:58:12.19 ID:HMPrgqZu.net
真姫「お邪魔します」
希「飲み物はなにがええ?口に合いそうな高いヤツはないけど…」
真姫「コーヒーをお願いできるかしら。ブラックで構わないわ、ありがとう」
希「ううん」ゴトゴト
真姫「…にこちゃん。久しぶりね」
にこ「えぇ…そう、ね」
真姫「顔が赤いわね。泣いてたの?」
にこ「ちょっと…火傷して」
真姫「…口みせて?どれくらい酷いか見てあげる」
にこ「…うん」アーン
124: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 00:04:09.68 ID:4mOSzPNv.net
真姫「……ちょっと首、触るわよ」ピト
にこ「あ、うん」
希「おまたせ~」
真姫「あぁ。わざわざありがとう」
希「ううん…お客さんやし、ね」
真姫「2人とも変わってなくて安心したわ」
希「外見はちょっとは変わってると思うけど…ほら、最後にあったの3.4年前とかやし」
真姫「じゃあ言い方を変えるわね。大人っぽくなった」
希「あはは、真姫ちゃんの方が随分と大人に見えるけど」
真姫「病院でコキ使われててね…時期院長だから仕方ないけど、考えるだけで溜息が出るわ」
125: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 00:11:36.84 ID:4mOSzPNv.net
真姫「なのに凛や花陽はしつこく遊びに誘ってくるのよね…」ハァ
にこ「っ…!」
希「2人とも真姫ちゃんと遊びたいんよ。あんなに仲良かったんやもん」
にこ「……っは…」
希「…にこっち?」ヒソ
真姫「にしてもエリーも薄情ね。帰ってきたなら連絡ぐらいくれてもいいのに」
希「あ、うん…そやね」
真姫「知ってるのは希だけじゃない?昨日はたまたま穂乃果と会って話したけど、そんなこと言ってなかったし」
希「あはは…ほら、うちとえりちって仲ええから」
にこ「…希、だけに?」
真姫「にこちゃんもエリーには会った?」
126: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 00:18:22.63 ID:4mOSzPNv.net
にこ「…いや、知らない」
真姫「そう…まぁ。彼女らしいわね。ことりもフランスに行ったきり帰ってこないし」
真姫「さてと…これ以上は悪いから帰るわね」
希「あ…うん。えっと、帰りは歩きなん?」
真姫「ご心配ありがとう。タクシーを待たせてあるわ」
真姫「じゃあ、ね?にこちゃん」
にこ「えぇ…また」
~玄関~
真姫「また会えたら会いましょ。楽しかったわ」
希「あ、うん。また来てなぁ」ニコ
真姫「…あと。希だけに話しておこうと思ったんだけど、ね」
真姫「エリーには気を付けて。何か企んでるのは確かよ」
129: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 00:23:43.64 ID:4mOSzPNv.net
希「…企ん、でるって」
真姫「私も詳しくは知らないわ。けど、ロシアに行く前に彼女と少し話したことがあるの」
真姫「高校時代は希が好きだった…ってね」
希「えっ…!?いや、それはないんやないかな…」
真姫「あら、どうして?」
希「なんかそういう素振りも無かったし…えぇと、そもそも今更うちのこと」
真姫「わからないわよ。そんなのは」
真姫「だからこうして一応ね。わざわざロシアからお戻りになって、希に連絡をよこしたみたいだから」
希「まぁ…うん。ありがとう?なんかな」
真姫「どういたしまして。困ったことがあれば連絡して。力になるわ」
130: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 00:29:52.19 ID:4mOSzPNv.net
希「ふぅ…なんか疲れてしもたなぁ」バタンッ
にこ「ねぇ、希」
希「うん?どうかした…?」
にこ「絵里は帰ってきてるのよね」
希「そうみたいやね」
にこ「会ったの?」
希「えっ?」
にこ「絵里と会ったのかって聞いてんだけど」
希「……それは」
希「会ってへんよ。連絡だけもらっただけ」
にこ「そう。良かった」ニコ
希「うん…」
163: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 23:53:18.13 ID:4mOSzPNv.net
~芸能事務所~
にこ「おはようございます…」ガチャ
後輩1「あっ、矢澤さんおはようございますぅ」
後輩2「今日は。お仕事なんですね?」クス
後輩1「ちょっとやめなよ…っくく」ヒソ
後輩2「だって久しぶりに見たし~」ボソ
にこ「…ッチ」
マネージャー「矢澤。何してる?」
にこ「いや…別に」
164: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 23:55:13.48 ID:4mOSzPNv.net
ガチャ バタン
マネージャー「この前のオーディションの件だけど」
にこ「っ!結果は!?」ガタッ
マネージャー「いや、だめだ。やっぱCMの選考は厳しいね」
にこ「…そう、ですか」ストン
マネージャー「まぁ…気を落とさないで。今回決まったのはあの人気女優だし、競争率が高かったってことで」
にこ「あ、はい…」ニコ
マネージャー「今日は撮影が午後から入ってる。車で移動だから、少し事務所で時間潰しててくれ」
にこ「わかりました」
166: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 23:56:41.27 ID:4mOSzPNv.net
マネージャー「じゃあ、他の子もいるし失礼するよ」
ガチャバタンッ
にこ「はぁ」クタ
にこ「これでいくつ目、なのかな」
にこ(っうぐ…)ズキ
にこ(あぁまたこの頭痛。勘弁してよ)
にこ(このまま座ってても…外の空気でも吸って気分転換しましょ)
にこ(そういえば、いい景色が見えるベランダがあるのよね)
167: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/02(月) 23:58:22.43 ID:4mOSzPNv.net
ーーーーー
にこ「すぅ……はぁ」
にこ(にしてもあっついわね…屋根はあるから焼けないけど。なんでこんな晴れてんのよ)
「…だから、もう無理だって」
にこ「ん?」
「いつまでやらせる気だ?先見えないだろ」
にこ(少し下のベランダに誰かいる?あれは)
にこ(にこの、マネージャー…と誰だろう。上司っぽいけど)
168: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:03:12.53 ID:RB0zUSyj.net
「まぁそれは本人が一番よくわかってるんじゃないですかね…」
「矢澤な。でもあいつまだ諦めてないだろ、この前のオーディションも受けたらしいし」
にこ「……!」
「あ、はい。結果はあれでしたけど」
「だってお前、27の売れないアイドルなんて使うスポンサーいねぇよ。よっぽど物好きか…ロリコンか、な」
「まぁ…確かにそうですよね。シフトチェンジした方が稼げるとは思います」
「1つ前のシングルの売上はたった6000千枚。しかも、コアなファンに何百枚も買わせてもこれだぞ」
170: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:04:40.93 ID:RB0zUSyj.net
「ソロももう厳しいですね。このまま下がり続けるのは目に見えてますし、今でさえ赤字ギリギリで…」
「とにかく社長にも言っとけよ。今まで断ってたそっち系の仕事も増やせ」
「はい。ありがとうございます」
にこ(馬鹿みたい、ね)
にこ(あのマネージャーともデビューからずっと一緒にやってきたのに…)
にこ「希…にこはどうすればいいの」
171: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:06:47.39 ID:RB0zUSyj.net
ーーーーー
ブーン…キキィ
マネージャー「着いた。ほら、挨拶しにいくぞ」
にこ(…はぁ)
マネージャー「本日はよろしくお願いします。〇〇プロダクションの矢澤です」
にこ「…よろしくお願いします」ペコ
男「あーはい。よろしく」
男「それで、早速だけど…向こうで着替えてきてくれる?」
にこ「はい」
172: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:08:05.39 ID:RB0zUSyj.net
~更衣室~
女スタッフ「これです。バスローブが中にあるので、羽織って出てきて下さいね」
にこ(…え、ちょっと)
にこ「っ、マネージャー呼んで!」
女スタッフ「は…?あ、はい」
ーーーーー
マネージャー「どうかした?サイズ合ってる筈だけど」
にこ「こんな過激な水着っ、着れるないでしょ!こんなの聞いてないわよ!」
マネージャー「あーいや…普通じゃない?」
173: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:09:33.96 ID:RB0zUSyj.net
にこ「こういう仕事は断ってって言ったわよね!アイドルは清純さが売りなのにっ」
マネージャー「…っち」
マネージャー「あのなぁ、仕事選べる立場じゃないだろ」
にこ「…!」
マネージャー「こうしてまだ置いてやってるだけでも有り難く思って欲しいんだけどな」
マネージャー「次のシングルで売上が落ちたら解雇だ。これはもう社長とも話がついてる」
にこ「そ、んなの…勝手に」
マネージャー「売上を伸ばしたかったら金を落とす層に媚びろ。意味わかるよな?」
174: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:12:03.05 ID:RB0zUSyj.net
にこ「……」ギリ
マネージャー「拒否するなら恐らく今すぐ解雇になる。1度とった仕事を放り出す事務所って泥塗られるのは後免だ」
マネージャー「何せうちは有里をはじめアイドル、女優、タレントと有名人を多くかかえてんだから」
にこ「…汚いわね。呆れるほどに」
マネージャー「芸能界なんて蹴落とし合いの泥試合だよ。お前も、馴染めばこんな事にはならなかったのにな。残念だよ」
にこ「番組とるために気持ち悪いおっさんに抱かれろって?死んだ方がマシって何度も言ったでしょ」
マネージャー「…まぁいい。選べ」
マネージャー「今すぐここで一般の人間に戻るか、この華やかな世界で仕事を続けるか」
マネージャー「アイドル矢澤にことして…な」
176: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:14:02.27 ID:RB0zUSyj.net
ーーーーー
ガッ
英玲奈「おい。客人だ」
ツバサ「あの、ノックしてって言ったわよね?…はぁ。今日は打ち合わせないはずなんだけど」
あんじゅ「会ったほうがいいと思うわよぉ。それに、私自身もこの再会にとても興味があるの」
ツバサ「…いいわ。通して」
ガチャッ
ことり「お久しぶりです♪」
ツバサ「へぇ、これは随分と懐かしい友人だわ」
ことり「今朝フランスから帰ってきたんです。時差があって辛いけど…」ムゥ
177: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:16:23.55 ID:RB0zUSyj.net
ツバサ「お仕事は…服飾系のことをされているのよね?あんじゅが前に話していた気がするわ」
ことり「はい。ブランド店で勉強しながら自分でも色々商品を販売したりして」
あんじゅ「ことりちゃん、フランスでも結構有名人なのよ?」
英玲奈「そうか、素晴らしいな。南ことり、己の夢に向かって努力するその姿は美しい」
ツバサ「…それで、ご挨拶はこれぐらいにして」ニコ
ツバサ「私達を訪ねた理由は?何か裏がありそうだけれど」
ことり「裏だなんて、そんな…。私はただ、ツバサさん達ならにこちゃんについて何か知ってるかなぁって」
179: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:18:17.61 ID:RB0zUSyj.net
あんじゅ「にこちゃん、ね」
英玲奈「彼女ならまだ芸能界にいるぞ。我々とほぼ同時期に活動を始めたのだったな?」
ツバサ「えぇ。そうね」
ツバサ「ただ、最初はグループで活動していたわよ。元μ'sメンバーもいるグループ、世間の注目度も高かったように思えるわ」
あんじゅ「昔の経歴が凄い子を寄せ集めたみたいだったから…気の強くて難しい子が多かったのね、中盤で内輪揉めしたみたいよ?」
ことり「それで、そのグループはなくなったんですね?」
英玲奈「あぁ。女優に転身したり個人で独立したりとな。矢澤にこもそこでソロデビューしたのでは無かったか?」
ことり「ふぅん…あ、ところで皆さんはいつからこの事務所を立ち上げたんですかぁ?」ニコッ
180: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:20:33.05 ID:RB0zUSyj.net
ツバサ「2年ほど前ね。A-RISEもその辺りで活動を終了したのよ」
ツバサ「私達はこの3人で駆け抜けたことに後悔は無かった。だから今は個人で仕事をとるのと同時に…」
ツバサ「私が社長、英玲奈とあんじゅにはその補佐をして貰っているわ。けどまぁ…弱小事務所と呼んで」
ことり「そんなそんな。アイドル活動の経験ある人がプロデュースしてくれるなんて最高の環境だと思います」
ことり「だから服の発注なら是非私にっ♪連絡先はここです~♡」スッ
英玲奈「け、結局営業だったのではないか…」
あんじゅ「オシャレな名刺ね~」
181: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:23:19.30 ID:RB0zUSyj.net
ツバサ「…ねぇ、矢澤さんとは帰るまでに会うの?」
ことり「どうして、ですか?」ニコ
ツバサ「あまり現場では会えないから、少し心配でね。まだ活動を続けてることは知ってるけれど」
ツバサ「あそこの事務所は大手だけど、あまりいい噂は聞かないし」
ことり「…優しいんですね。はい、伝えておきます」
あんじゅ「あら。これから会うの~?」
ことり「はい、きっと。穂乃果ちゃんが‘同窓会’を開いてくれるみたいなので」ニコ
182: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:25:22.95 ID:RB0zUSyj.net
ーーーーー
希「はぁ…疲れた」
希(今日はにこっち帰ってこれへんみたいやし、ご飯は作らずに惣菜とかでええかな)
希(…会えへんの寂しいわぁ)
穂乃果「あー、希ちゃんだ!」
希「え!あ…」
海未「奇遇ですね、まさかこんなところで会えるとは」
希「穂乃果ちゃんに…海未ちゃん」
183: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:26:51.59 ID:RB0zUSyj.net
穂乃果「砂糖が足りなくなっちゃって、スーパーに買いに行ってたの」
穂乃果「重いから海未ちゃんも手伝ってくれて…ほら、うちの常連さんだから!」
海未「要するにたまたま店へ行ったところを捕まったのです」
希「そ、そうなんや」
穂乃果「lineとかで連絡しても良かったんだけど…はい、これ!」
希「封筒…?」
穂乃果「同窓会のお誘いでーすっ!μ's同窓会!」
希「みゅーずの、同窓会…?」
184: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:28:14.75 ID:RB0zUSyj.net
穂乃果「良かったら希ちゃんにも来て欲しい…っていうか来てね!なかなか皆で会えないし」エヘヘ
希「…うん。そやね」
海未「にこにもお伝え下さい。よろしくお願いしますね」
希「……」
穂乃果「そうだ!ねぇ希ちゃん、明日お仕事ある?」
希「いや、土日は基本仕事ないけど…」
穂乃果「じゃあさ、一緒に海未ちゃん家でお泊まりしようよ!」
希「えっお泊まり!?」
穂乃果「海未ちゃんいいかなぁ?」
海未「私は一向に構いませんよ」
穂乃果「やった!決まり!」
185: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:29:31.49 ID:RB0zUSyj.net
希「いやいや、あの…ちょっと」
穂乃果「えーお泊まりしない?ご飯は向こうで一緒に作るし、寝間着も貸してくれるって!」
希「うちは…」
希(でもにこっち、帰ってこんし…なぁ)
希(1人で過ごすとまた…色々考えてしまいそうなのもあるけど)
海未「そうですか、ならこのまま向かいましょう」ニコ
希「えっ?」
穂乃果「しゅっぱーつ!」
希(勝手に返事してもた…?)
穂乃果「ほらほらはやくー!」グイッ
186: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:30:42.48 ID:RB0zUSyj.net
ーーーーー
~園田家屋敷~
希「いただきます…」
穂乃果「うーん…海未ちゃんの作る餃子は格別だなぁ」モグモグ
海未「他の料理も一応、色々練習しているんです」
希「……」パクッ
希(lineも動きなし。さっき電話してもでんかったし…いま何してるんやろう)
海未「希?食事中にそのようなものを触ってはお行儀が悪いですよ」
希「あっ…そうやね」
187: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:31:47.83 ID:RB0zUSyj.net
穂乃果「そうだ!ここに置いとくと私がタレ飛ばしちゃうかもしれないし寝室に置いておいたらどうかな?」
海未「なるほど、聡明な判断ですね。穂乃果がこぼさなければいい話なのですが」
穂乃果「そっ、そこは触れちゃだめだよ~」
希(既読ないけどlineには海未ちゃん家で泊まるって書いたから大丈夫…かな)
海未「私が置きにいきますよ。まだ部屋が何処かわからないでしょうし」スッ
希「………」
海未「…えぇと。どうかしましたか?」
希「…ううん、ありがと」パッ
海未「どうぞ会話を続けて下さい」ガチャ
189: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:33:06.32 ID:RB0zUSyj.net
穂乃果「うーん、そうだ。もうすぐことりちゃんも来るはずだから!9時過ぎかな?」
希「ことりちゃん、フランスから帰ってきてたんやね」
穂乃果「うん。なんたって同窓会だからね」
穂乃果「やっぱり全員揃わないと!」
希「全員…そういうもんなんかな」
穂乃果「そういうものだと思うけど…9人で私たちはμ'sだから」
希「そう、やったね」ニコ
穂乃果「うん!」
190: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:34:22.77 ID:RB0zUSyj.net
ーーーーー
~寝室~
希(あれからすぐことりちゃんがきて、うちらは他愛もない話をした)
希(うちがお風呂に入って出てきた後は3人が何やら熱心に話してるみたいやったけど)
希(聞こえてきた内容は、他の幼馴染たちの近況報告や各々の生活の話)
希(ちょっぴり羨ましかった。うちには幼い頃からの友達なんて…いいひんから)
希(…でも、うちには大切に想ってくれる人がいる)
191: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:36:24.35 ID:RB0zUSyj.net
希(あれからきた返信は一言。おやすみって)
希(たったそれだけでも頬が緩んじゃうくらい嬉しくて、今まで感じてた不安や体の重さが吹っ飛んだ)
希(こんな寂しい夜でもお互いを思ってる時間は同じ。こんな素敵なことってないよ)
希(ほんとは電話したいけど、にこっちも疲れてるやろうから…やめとこう)
希(なんたってアイドルなんやからね。よく寝て最高の笑顔で笑って欲しい)
希(にこっちは…うちの…)
希(…ぅん)スゥ
192: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:37:35.72 ID:RB0zUSyj.net
ーーーーー
海未「…っはぁ。いけません、少し寝過ごしてしまいました」
海未「6時ですか…ひとまず顔を洗いに行きましょう」
ジュー
海未「…ん?」
ヒョイッ
海未「希?何をしているのですか?」
希「あぁ海未ちゃん。おはようさん」
希「見ての通り、朝ごはん作ってるんよ。でも、気づいたら食材は色々使っちゃってて…ごめんなぁ」
194: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:38:32.15 ID:RB0zUSyj.net
海未「随分と起きるのが早いんですね…すみません。わざわざ作っていただいて。構いませんよ、ありがとうございます」
希「ううん。いつものことやから」ジュー
海未(…なにか、朝から凄まじい量を作っているように見えるのですが)
海未(野菜炒めにステーキ、唐揚げにクリームスープに…)
海未「こんなに食べられるでしょうか…」
195: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:39:38.06 ID:RB0zUSyj.net
ーーーーー
~希アパート1室~
にこ「ただいま…」ガチャ
希「あ、にこっち!おかえり」
にこ「…」ハァ
希「先にご飯食べる?それともお風呂?」
にこ「ちょっと休憩させて」
希「あ、うん。上着もらうよ」
希「今日もお仕事お疲れ様やね」
にこ「…ありがとう」
196: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:40:51.01 ID:RB0zUSyj.net
希「ステージでキラキラ輝いてるにこっちの姿、早く見たいわぁ。この前の曲のイベントいつやっけ?」
にこ「3日後、だけど…」
希「じゃあ張り切っていかななぁ。なんたってずっと前から楽しみにしてたんやもん」
にこ「……希」
希「あ、そういえば。穂乃果ちゃんから言われたことなんやけど…」
にこ「…穂乃果?なに」ピク
希「同窓会をするから参加して欲し」
にこ「嫌よ」
197: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:42:36.43 ID:RB0zUSyj.net
希「えっと…なんで?」
希(にこっちがメンバーを避ける理由はないはずなんやけど…気分的なことなんかな)
にこ「嫌ったら嫌。希も行かなくていい」
希(嫌、なんかぁ)
ーーー
穂乃果「9人で私たちはμ'sだからね!」
海未「希とにこに会うのを、楽しみにしていますね」
ことり「またフランスに行くから会えなくなっちゃうし…ね?」
ーーー
希「…でも、ちょっとだけでも」
198: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:45:51.76 ID:RB0zUSyj.net
にこ「はぁ?」
希「にこっちが、その…用事とかで行けへんのなら」
希「うちだけでも少しだけ行こうかな。もう行くって言っちゃったし…」
にこ「なに?にこの言うこと聞けないの?」
希「…っ、ちゃうよ。そんなつもり」
にこ「希はアイツらかにこ、どっちをとるのよ!」
希「そんなの、にこっちに決まってるやん…!うちがどれだけ想っとるか…知ってるやろ」ポタ
にこ「…ぁ、その…泣くことないじゃない」
にこ「悪かったわよ…」
希「泣いて、ないもんっ」
にこ「…わかったわよ。行けばいいんでしょ」
199: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 00:48:06.21 ID:RB0zUSyj.net
ーーーーー
希(そしてーー。同窓会当日)
希(前日がイベントやったにこっちは、まだ体の疲れがとれてないみたいで)
希(朝起きた時からちょっと調子が悪そうやった)
希(でもホットミルクは飲んでたし、大丈夫なんやろう)
にこ「……足いたい」
希「大丈夫?タクシー拾おっか」
にこ「いい。もったいないでしょ」
希(少し歩いて、何とか招待状に書いてあったお店へ到着。雰囲気のいい大人なバーって感じやった)
221: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 23:42:33.95 ID:RB0zUSyj.net
希(ホールみたいな、少し大きい部屋を貸切にしてあるみたいで。名前を店員さんに言ったらそこへ通された)
希(カウンターとテーブル席。ダーツなんかもあったりして。お洒落やなぁ…誰が選んだんやろう)
希「…にこっち、たぶんもうすぐ」
にこ「そう」
カランカラン…ガチャ。
希(少し時間を開けて次々に入ってくる懐かしいメンバーたち。最初は凛ちゃん、花陽ちゃん)
希(次に穂乃果ちゃんに海未ちゃんにことりちゃん。ここはうちらに手を振ったり会釈してから、お店の奥の方へ行ってしもた)
希「幹事やと色々やることあるんかなぁ…」
222: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 23:46:22.62 ID:RB0zUSyj.net
希(そんな時、うちらに近寄ってきた2人組。それを見てにこっちが何故かうちの服をギュッと握る)
希「凛ちゃん、花陽ちゃん。ほんま久しぶりやね」
凛「うん。希ちゃん来てくれたんだっ」
花陽「こんばんは、またこうやって会えて嬉しいな」ニコ
凛「にこちゃんも…この前振りだね!」
にこ「……」フイッ
凛「ぅ…」
希(あれ、どうしたんやろう)
224: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 23:50:17.56 ID:RB0zUSyj.net
花陽「凛ちゃん。もうやめた方が」ヒソ
凛「…わかったよ」
希「凛ちゃんと花陽ちゃん、最近にこっちと会っとったん?」
凛「えっと、うん。すぐ別れちゃったけどね」ニコ
希「その時になんかあった…?」
花陽「いや…何もないよ」
カラン♪
凛「あっ、絵里ちゃんだー!おかえり!」
希「…!」
225: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 23:54:35.95 ID:RB0zUSyj.net
絵里「凛、ありがとう。やっぱり日本はいいわね。離れるのがまた名残惜しくなって…ふふっ」
花陽「そんな事言わないでいれるだけここにいてね?絵里ちゃん」
絵里「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
絵里「…先に着いてたのね。今日は楽しみましょう?にこ、希」
希「ぅ、ん」
希(いやいや、うちは怒ってるはずやんか!なんでこんな…えりちが思った以上に明るかったのもあるけど)チラ
絵里「どうしたの?」ニコ
希「あ、いや、その。なんでもないよ」
227: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 23:56:31.69 ID:RB0zUSyj.net
ガチャッ
穂乃果「お、みんな揃ったかな??」
凛「真姫ちゃんが遅刻だよー!」
真姫「私ならいるわ。全く、遅刻なんて凛じゃないんだから」クルクル
凛「真姫ちゃん…良かった、その調子は昔と変わってないにゃ~」
真姫「っ//どういう意味よ!凛だって今のそうじゃない!」
花陽「まぁまぁ。2人とも…ふふっ」
海未「そこの出入口でばったり真姫とお会いしたんです」
ことり「7.8.9…みんな揃ってるみたいだね。こんばんは♪」
228: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/03(火) 23:57:48.84 ID:RB0zUSyj.net
穂乃果「それではっ。乾杯しよっか!」
花陽「あ、日本酒はあるかなぁ?」
ことり「大丈夫だよ♪その他にも色んなお酒を集めてあるし」
絵里「それはハラショーね。私はことりが持ってきてくれたワインをいただこうかしら」
凛「凛はあんまり飲めないからスクリュードライバー!」
希「にこっちはお酒飲む?」
にこ「…弱いカクテルでいい」
希「わかった。持ってくるね」
穂乃果「ごほんっ。じゃあいくよ?」
穂乃果「みんなの再会を祝して!乾杯ーっ!」
229: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:00:33.47 ID:4B1UPSSe.net
ーーーーー
海未「お酒は足りていますか?」
希「大丈夫よ。ほら、あんまり飲んで帰れんくなったら困るしなぁ~」
海未「ふふっ。そうですね」
希「海未ちゃんは飲んでないみたいやけど?」
海未「…バレましたか。これノンアルコールなんです」
海未「未だお酒が苦手で…後は穂乃果とことりが酔っ払って手をつけられなくなるので、そのお世話の準備です」
希「あはは。大変やねぇ」
230: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:01:57.49 ID:4B1UPSSe.net
海未「そういえば。にこが1人で向こうに座っていますが」
希「うるさくて頭痛くなっちゃうから、カウンターの方で少し1人にさせてって」
希「ここから見れるところにいるからいいんよ」
海未「え、あ…そうですね」
穂乃果「ねぇねぇ!これ見てよー!」ドサッ
穂乃果「お店の常連さんから貰ったんだけど、なんかすごく昔の占いの本なんだって!」
希「占い…?わっ、すごいなぁ」
穂乃果「だよね!希ちゃん喜ぶと想ってもってきたの」
231: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:03:46.92 ID:4B1UPSSe.net
ペラペラ
海未「古いからか、文字がボヤけてしまっていますね…」
穂乃果「もしかして逆さに読むんじゃないかな?」
希「でもこれとか、今のタロットカードの元になってるかも」
穂乃果「そうなの!?どれどれ!」
にこ(なに夢中になってんのよ、あいつ)
にこ「ふん…」ゴク
絵里「気に入らない?」
232: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:06:55.01 ID:4B1UPSSe.net
にこ「…っ!」ビク
にこ(いつの間に隣に…よりよって。最悪だわ)
にこ「別に。好きに話せばいいんじゃない」
絵里「あら、私はてっきりこの同窓会が気に入らないのかと思って聞いたんだけれど」
にこ「へ…っ」
絵里「どう?久しぶりに2人で飲まない?」
にこ「………」
絵里「そんな嫌な顔されると流石に傷ついちゃうわね」
絵里「ただでさえ何故か避けられているっていうのに」
233: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:09:30.88 ID:4B1UPSSe.net
にこ「はん、気にしすぎよ」
絵里「…あの服には小さめのネックレスを足せばより美しくなると思うのよね」
にこ「…」ハァ
にこ(絡み酒ってのは面倒ね。…適当に切り上げて)
絵里「ピンクと紫のワンピースよ。にこがあげたんでしょう?」
にこ「なっ…」
絵里「あれ、違ったの?」
にこ「……なんでアンタが知ってんの」
絵里「なぜって希が教えてくれたからよ」
234: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:12:49.79 ID:4B1UPSSe.net
にこ「は、何処で?ずっとロシアにいたんでしょ」
絵里「私がロシアから帰ってきた日、一緒にいたから」
ガタッッ
にこ「適当なこと言ってんじゃないわよ」グイッ
絵里「…この服、まぁまぁ高かったりするんだけど。引っ張らないでくれる?」
にこ「はっ。希が…希が、にこに嘘つくわけないでしょうが」
絵里「会ったのは事実よ。希が言わなかったとしても、それは変わらないわ」
にこ「……」ヒュッ
にこ(のぞみ…は確かに、にこの前で)
にこ(絵里からは連絡がきただけで…会ってないって)
にこ(本当に会ったとして、なんでにこに嘘つく必要が)
にこ(なんで‘隠す必要があった’の?)
235: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:15:41.08 ID:4B1UPSSe.net
にこ「っははは…」
絵里「…だからね、…は……為に…」
にこ「希が私に隠れて何をしてたのかは知らないし、もう知りたくもないわ」
にこ「ただアンタが片方にちょっかい出すような最低な人間だって。昔から薄々感じてはいたけどやっと本性を見せたわけね」
絵里「…何を言ってるのかよくわからないんだけど。私には関係のないことよ」
にこ(んな態度とったって、今更、、白々しいっての!!)
にこ(あぁ…目の前がぐるぐる回ってる。ズキズキ、ズキズキ。遅れてやってきた頭痛)
237: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:18:02.58 ID:4B1UPSSe.net
絵里「そもそもね。希が好きなのはアイドルとして輝いていた頃のあなたなのよ」
絵里「誰からも愛されるアイドルになりたかったようだけど、ソロデビューしてからの現状が全てなの」
絵里「期待を寄せたファンは消え、今まで持て囃してくれた人間がクルりと手のひらを返す」
絵里「それが所詮あなたの実力であり限界。いつまでもしがみついたって、何も変わらない」
絵里「だから…いずれ希も気づくでしょうね。あなたと」
にこ「やめて……違う、そんなことっ」
238: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:19:13.32 ID:4B1UPSSe.net
絵里「希を縛り付けるのはやめなさい。それが彼女のためであり、あなた自身にとっても楽になれるチャンスよ」
絵里「だってもう拘らなくていいんだから。彼女の中で理想のアイドルを追い求める必要もない」
絵里「はっきりいって希が可哀想よ。それとも捨てられてからじゃないとわからない?」
絵里「けどね、安心して。私が責任を持って彼女を…」
にこ「あぁぁぁぁぁっっ!!」
239: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:20:51.38 ID:4B1UPSSe.net
ーーーーー
パリィンッ
穂乃果「わわっ!」
海未「…っ!?なにが起こって」
希「にこっち!!!あかんっ!」
希(多分この異変に気づいてたのはうちが最初やったと思う)
希(カウンターのほうが変に静かやと感じて、目を向けたらにこっちとえりちが隣合わせで座ってる)
希(…でも、明らかに空気がおかしくて。にこっちの表情は見えへんけどえりちは眉をひそめて難しい顔をしてた)
240: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:22:52.02 ID:4B1UPSSe.net
希(にこっちをあんまり放っておくのもあれやなって思って…もう少ししたら話を切り上げて声を掛けにいこう)
希(そう思っとったすぐ後の出来事)
絵里「っぐ…にこ、落ち着いて…っ!」
にこ「うるさい!!黙れぇっ!」
希(えりちの髪と顔には水滴。床に飛び散るグラスを見る限り、にこっちが手に持ってたものをかけたんやろか)
希(そして怯んだ隙に、えりちが椅子から落ちる勢いで飛びかかった)
242: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:25:03.66 ID:4B1UPSSe.net
真姫「海未、凛っ!!にこちゃんを押さえて!」
海未「…え…っは、はい!」
凛「……ぁ、わかった!!」
希(あっ…。うちが止めにいかなあかんはずやのに足が動かんかった)
花陽「ど、どうしたら…うぅっ」ポロポロ
ことり「花陽ちゃん…大丈夫だよ。きっと大丈夫」ギュッ
真姫「腕を捻ったりしないで!胸を圧迫してもだめ、体全体を押さえるのよ!」
凛「にこちゃっ、暴れちゃだめだよ!」
海未「凛!足の方を持って下さい!」
246: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:27:40.13 ID:4B1UPSSe.net
絵里「…はぁっ」
穂乃果「絵里ちゃん。大丈夫?」
絵里「えぇ。なんとかね…」
真姫「希!なにしてるのよ!」
希「あっ…うんっ」タタッ
希「にこっち。どうしたん、何かあった?」ニコ
にこ「…来ないで」
希「えっ」
にこ「にこは嘘なんてついたことないのにっ!!なんでよぉっ」
希「なに言ってるんよ…ふふ、うちだってにこっちのこと、こんなに」
253: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/04(水) 00:30:27.92 ID:4B1UPSSe.net
にこ「…っひく…うぁぁぁんっ!」
希(どういうこと、なん)
真姫「…にこちゃん。あなたは悪くないわ」
希(え…?)
真姫「だから泣いちゃだめよ。ね?」
希(真姫ちゃんに何がわかるん…?うちやって、今の状況が飲み込めてないのに)
穂乃果「みんな怖い顔しちゃだめだよ…折角の同窓会なんだから」
穂乃果「とりあえずお開きにしよう。また絶対に続き、やろうね」
296: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:31:52.16 ID:uAcbrZaa.net
~希アパート前~
バタンッ
アリガトウゴサイマシター
にこ「ちょっと、引っ張んないで!!」
希「そんなことゆうてもこんな夜にどこ行くんよ!」
にこ「何処だっていいでしょうが!」
希「落ち着いて。お願いやから…ここやと人の目もあるから、にこっちは特に困るやろ?」
にこ「…っ」ピク
希「一旦部屋の中入ろう?そこで全部話すから」
297: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:33:35.46 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
希「…やから、うちはえりちとただご飯を食べに行っただけで。にこっちが思っとるような関係やないよ」
にこ「はっ。どうだかね、口でなら何とでも言えるじゃない」
希「にこっち…なんでわかってくれへんの」
にこ「嘘ついたのが何よりの証拠よ!やましいことがあったんでしょ」
希「違う、違うんよ…うちは」
希(真姫ちゃんから言われたあの噂。それを意識する余り、うちは変に隠そうとしてしまったんやと思う)
希(けどそれを今言ってしまったら…余計ににこっちの敵意が、えりちに向いてしまうんやないやろうか)
希(けど…それでもっ。うちにとっては、にこっちに嫌われるほうが何倍も辛い)
希(ずるいのはわかってる。…でもうちはそんな強い人間じゃないから)
298: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:35:40.08 ID:uAcbrZaa.net
希「あの、ね。真姫ちゃんから言われたん。えりちが昔うちのことを好きだったってこと」
希「だからその、ホントは言えば良かったんやけど…動揺しちゃって。にこっちに相談するべきやったね。ごめんね…」
にこ「…そう」
希「うちが好きなのはにこっちだけなの。だから何処にもいかんといて…そんなん、耐えられそうにない、し」ウルウル
希「1人ぼっちの世界なんてきっと生きていけないと思う。愛してくれる人がいる喜びを知ったから…っ」
希「うちが悪いのに…涙が…。卑怯やね、にこっちの気持ちも考えんと勝手に…ぐずっ」
にこ「もういい」
希「へっ」
299: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:36:41.08 ID:uAcbrZaa.net
にこ「私もあんな事いって悪かったわ。勘違い、だったのよね」
希「にこっち…」ポロポロ
にこ「もう1人では生きていけないのは一緒よ…にこには希しかいない。希だけを見ていたいの」
にこ「だから離れていかないで。そんな悲しいこと、しちゃやだ」
希「…うん」ギュゥゥ
希「ずっとこうしてたい」
にこ「そうね。もう誰にも邪魔されたくないわ」
にこ「希、大好きよ」
300: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:38:48.79 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
~部屋.キッチン~
希(ーーそれから数日が経った今。にこっちは前よりも更に優しくなった)
希(仕事に出かける時や帰った後、少し前は機嫌が悪くなったりしたことがあったけど)
希(でも今のにこっちはいつだって笑顔を絶やさない。きっと毎日が充実してるんやと思う)
希(あと、μ'sのメンバーとは連絡をとらへんようになった。けどあんまり気にはならへん)
希(だってうちにはにこっちがいるからね。他にも色々な約束事を2人で決めて、家から出ることは少なくなったけど別に平気)
301: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:39:59.53 ID:uAcbrZaa.net
ピピッ ピピッ
希(あぁ…そろそろにこっちは起きるのかな?毎日かけてある7時のアラームが鳴ってる)
希(確か今日は、お昼ぐらいに出かけるって言ってた。早めに起こしたほうがいいんやろうか)
希「にこっちー?まだねむたい?」スタスタ
希「もう…ぐっすりやなぁ。昨日は一緒ぐらいに寝たはずやのに」
希「…ふわぁ。見てたら眠たくなってきた」
希「朝ごはん置いといて、うちも二度寝しようかな」ポフッ
302: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:40:51.65 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
にこ「…ぅあ」パチ
にこ(やけに暑いと思ったら、希がにこにくっついて寝てたのね)
にこ「あーあ…寝汗気持ち悪い」パタパタ
ピロン♪
にこ「ん。誰だろ」
にこ「…………」ポチ
にこ(この前の服、どこにあったっけ)
303: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:43:02.43 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
にこ「待ち合わせよ」
「失礼致しました。どうぞ」
にこ「仕事じゃないんだ」
真姫「非番なの。けど呼び出しがきたらめでたく休日出勤よ」
にこ「…ふぅん。大変ね」
真姫「この仕事を選んだんだから仕方ないわ」
にこ「で、何の用。あんまり付き合う時間ないんだけど」
真姫「その割には会いにきてくれるのね。私にだけ」
にこ「……」ハァ
真姫「皆とは連絡をとる気はないの?」
にこ「それを伝えるために呼んだわけ?」
真姫「いえ…ごめんなさい。気を悪くしないで」
304: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:44:58.42 ID:uAcbrZaa.net
真姫「本題に入るわね。近々、あるオーディションがあるの」
真姫「大きい会社のところだから、合格すればメディアへの露出も増えるわ。事務所から聞かされてない?」
にこ「いや…知らないんだけど」
真姫「なら他の人に回してるのかもね。このオーディション、受けられる人が限られてるみたいで」
にこ「…っ、へぇ」
真姫「その会社の上層部とパパが知り合いなのよ。だから、にこちゃんもこのオーディションを受けられるように計らってあげるわ」
にこ「ねぇ…なんでそこまでしてくれるの?」
真姫「そうでもしないと会ってくれないんでしょう?もう一つは…私もファンの1人だから、とでも言っておくわ」ピラッ
にこ「…ありがと」
真姫「あとこれも。前に渡したのは残ってる?」
にこ「ううん」
prrrrrr
真姫「…電話。もう帰るのね?」
にこ「えぇ。じゃあ」
真姫「また会いましょう。にこちゃん」
305: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:45:59.89 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
にこ「ただいまー…」ガチャ
希「あ、おかえり。お疲れ様やね」
にこ「ちょっとパソコン触るわ」
希「わかった」
にこ(場所…日時、ちゃんと公式のと合ってる。真姫ちゃんの話は本当だったみたいね…)カチカチ
にこ(このオーディションに受かれば…やり直せるかもしれない。事務所の奴らも知らないから、見返すことだってできる)
希「そういえば、次のシングルはいつでるん?」
306: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:47:05.40 ID:uAcbrZaa.net
にこ「えっ…あぁ。そうね…」フイ
希「楽しみやなぁ。可愛い曲もいいけど、ラブソングなんかも聞きたいな」ニコ
にこ「うん…」
にこ(次のシングルで売上が下がったら…にこは)
にこ(今は新しいファンを少しでも獲得するしかないの。だって、古参は今回の売上がどうこうってのは知らないから)
にこ(事務所さえも解雇されたら、もう芸能界で仕事をするのは難しくなる。新しい事務所がにこを雇ってくれるとは限らない…)
にこ「このオーディションで…」ブツブツ
希「にこっち…?」
307: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:49:21.81 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
女社員1「希ちゃん。あのね、今週末の会議終わったあとに飲み会を計画してて!」
女社員2「一緒にどうかな?あ、遅くまではかからない予定だよ」
希「ごめんなさい。いけなさそうやわぁ」
女社員1「そうなの…残念だけど、仕方ないね」
希「えっと…お疲れ様。お先に失礼させてもらうね」
女社員2「はぁい、お疲れ様!また明日!」
スタスタ
女社員2「最近希ちゃん、付き合い悪いね…」
女社員1「前よりも更に断られるようになったのは確かだけど…何かプライベートであったのかなぁ」
308: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:50:58.91 ID:uAcbrZaa.net
女社員2「あー。もしかして彼氏がいるとか!もしくは結婚秒読み!」
女社員1「…有り得る」
女社員2「んでんで、すっごく束縛する彼氏とか!だって飲み会すら来なくなっちゃったんだもん」
女社員1「希ちゃんって、お世話好きっていうか…そういうところあるから。心配だよね」
女社員2「今度聞いてみる?さりげなーく」
女社員1「あんた好きだよねー。そういうの」
希(6時、かぁ。少しでも早く帰りたいのに)
希(仕事に行くとにこっちに会えへんもんね…)
希「……嫌やなぁ」ボソ
希(あ、でも今週末はにこっちと少し遠くにお出かけするって決めてるんやもんね)
希(ふふっ…平日もあと少しやし頑張って乗り切ろう)
309: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:53:09.19 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
マネージャー「おい、矢澤。このサイン色紙3枚書いておけよ」
にこ「…何のやつ?」
マネージャー「雑誌の特典だよ。グラビアの」
にこ「わかりました」
マネージャー「なんか、ぼーっとしてるけど何かあったのか?」
にこ「え…別に。そんなこと」
マネージャー「そうか」
にこ(危ない…。変に感づかれるところだった)
にこ(あのオーディションの結果発表は今日。でも事務所は通してないから、通知は直接にこに来ることになってる)
にこ(これに全てかかってるんだから……お願いします、神様)
にこ(どうか合格していますように…。希にいい結果を伝えて仕事が順調だってことを示さなきゃいけないの)
にこ(だって、にこは…スーパーアイドルなんだから)
ピロン♪
にこ「…!」ハッ
310: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:54:09.13 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
看護士「西木野先生、お疲れ様です。今日はこのままおかえりですか?」
真姫「ご苦労様」スタスタ
看護士「えっと、すみません…。お急ぎでしたか」
真姫「えぇ。こちらこそごめんなさい」
ガチャ
真姫(…とりあえず1度にこちゃんに連絡をした方がいいわよね)
prrrrrr
真姫(…っ、驚いたわ。向こうからかかってくるなんて)
311: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:55:08.23 ID:uAcbrZaa.net
真姫『にこちゃん?あなた今どこに』
にこ『真姫ちゃん、本当にありがとう…!』
真姫『…?どうしたの』
にこ『あのオーディションね、合格してたわ!遂にやったのよ!』
真姫『え…』
にこ『これできっと売上も伸びるし、ファンだって数え切れないほど増えるし、事務所の奴らだって』
真姫『ちょ、ちょっと待って』
にこ『なに?』
真姫『いますぐ会える?私のマンションの前にきて。場所は知ってるでしょう』
にこ『いや、このあと希と一緒にちょっと遠くに出かけるつもりなんだけど』
真姫『いいから!私の言う事聞けないの?』
にこ『むっ…わかったわよ…』
312: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:56:26.42 ID:uAcbrZaa.net
~マンション1室~
真姫「入って」ガチャ
にこ「…なんなのよ。あんまり真姫ちゃんと話してる時間はないの」
真姫「希を待たせてるから?」
にこ「そうよ」
真姫「……」
にこ「だから、」
真姫「とりあえず座って。今アイスコーヒーいれるわ、にこちゃんはカフェオレでいいんでしょ?」
にこ「いい、けど…」
コトン
313: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:58:16.19 ID:uAcbrZaa.net
真姫「それで。合格…したのよね?」
にこ「えぇ、そうなの。電話でも言ったけど」ゴソゴソ
にこ「ほら!見て。事務所には通知されてないから、あいつらきっと驚くわ」パッ
真姫「…ほんと、ね」
にこ「でしょっ!真姫ちゃんのおかげよ」
にこ「希の喜ぶ顔が簡単に想像できるわ。ふふっ」
真姫「………」
にこ「ん…つめたい」ゴクッ
真姫「…ねぇ」
にこ「なに?」
真姫「少し、深呼吸してみましょう」
にこ「は?」
真姫「いいから」
にこ「うん…?すぅ、はぁっ」
315: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 05:59:31.35 ID:uAcbrZaa.net
prrrrrr
真姫「っ」ビク
にこ「あ…!希だ」ニコ
パシッ
ガチャンッ!!
にこ「なっ…なに人のケータイ放ってくれてんのよ!!」
真姫「出ないで」
にこ「はぁ!?ふざけたこと言ってんじゃ…」ガタッ
にこ「つぅっ…」フラ
にこ「あ…くっ…」ドサッ
にこ(いきなり目の前が…真っ暗に、なって)
にこ(最後に見たのは、こっちを見る真姫ちゃんの…)
にこ(笑った顔だった)
316: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:00:35.91 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
prrrrrr
希「…何回かけてもでーへん」
希「いつもはこんなことないのに」
カタッ
希「ぅん…?これは」
希「うちとにこっちの写真立て。なんで急に落ちたんやろう」
希「あ…表面にヒビが」
希「どうしよう…」ゴシゴシ
317: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:01:45.19 ID:uAcbrZaa.net
~夜~
prrrrrr
希「にこっち…にこっち」グスッ
希「何かあったんやろか。にこっちのお母さんに電話しても知らないって言うし」
希「うちはどうしたら……」
希「こんな風に待ってても何も変わらへん…探しにいこう、かな」
ピロン♪
希「lineじゃなくてメール…?誰やろう」
差出人:にこ
ごめん、少し距離を置きたいの。
身内や仕事先にも連絡はしたから安心して。
家には戻らない。またね。
318: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:03:12.12 ID:uAcbrZaa.net
希「……うそ」ポツ
希「え?なんで…?」
希「お出かけ楽しみやねって…今朝話したやん」
希「こんなの……嫌や」
希「嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や嫌や」
希「にこっちがこんなことっ、するわけない!うちを放って何処かへ行くわけない!!」
希「違う…違う。絶対に認めへん!!」
希「きっと一時的に何かの拍子で…こんなこと送っちゃったんやね。はは…もう。仕方ないなぁ」フラ
希「にこっちにはやっぱりうちがいなきゃダメやね…ふふっ」ガチャ
希「すぐに見つけて、うちのこと思い出させてあげるからね…」ニコ
319: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:05:00.95 ID:uAcbrZaa.net
~深夜.街中~
希「あれぇ…おかしいなぁ」
希「何処にもいいひんやん。なんで?」
希「にこっちと一緒に行ったところ、何度も探したよ?」
希「お気に入りのお店、よく通った広場、景色の綺麗な高台…」
希「ぐるぐるぐるぐる。街灯ぐらいしか明かりが無くなって、もう真っ暗や」
希「にこっち…夜って、こんなにも冷たくて。寂しいんやね」
希「財布もケータイも…上着だって忘れてきちゃった。あほやね、うち」
希「少しでも早く探せばにこっちが近くにいると思ったん。でも、届かなかったみたい」
320: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:06:41.96 ID:uAcbrZaa.net
希「そんなにうちに会いたくないの…?ほんまに行ってしまったん?」
希「またあの笑顔を見せてよ…。子どもみたいって言ったら怒るくせに、若いって言われたら喜ぶんよね」ニコ
希「意地張って重い荷物持ってくれたり、少し背伸びしてキスしてくれたり…うちの指輪に触れて微笑んでくれる貴方が」
希「ほんまに…大好きやった…」ウルウル
希「だから、離れんといてって…言われた時、すごい嬉しかったんよ…?」
希「なんで…なんでよぉっ…!にこっち…」ポロポロ
希「うちを1人にせんといてよ…っ」
ーーー
にこ「もう1人では生きていけないのは一緒よ…にこには希しかいない。希だけを見ていたいの」
ーーー
希「あ。そっか……」
321: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:07:53.24 ID:uAcbrZaa.net
希「…うちがいなくなったら。にこっちは帰ってきてくれるのかなぁ」
希「うちが生きてなかったら。にこっちもきっと…」
希「またうちのことだけを見てくれるんやね」ニコ
希「なんだ、簡単なことやん」
希「にこっちが見て見ぬ振りをできるような酷い人やないってこと。知っとるんよ」
希「だって、あんなにも優しいんやから…。あぁ。うちってずるいなぁ」
希「でもしょうがないよ。にこっちが勝手にうちを捨てたんやから…悪く思わんといてね」
ヒュゥ…
322: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:09:39.33 ID:uAcbrZaa.net
希「この橋も懐かしいなぁ。よく高校生の時に通ったっけ」
希「ここの夕焼けが綺麗だって…誰かが教えてくれて。はっきり思い出せないけど」
希「感動するぐらい、ほんまに綺麗やった。今も変わらへんのかな…」
希「けど真っ暗で何も見えへんね。あはは」
希「よいしょっ 」
ザッ
希「にこっち、うちのことを好きでいてくれてありがとう」
希「また来世でも一緒がいいな…」
希「さようなら」
ガシッ
324: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:11:09.93 ID:uAcbrZaa.net
希「…へっ」
グイッッ
希「いっ…!つう…」ドサッ
希(勢いよく腕を引っ張られて体重が橋の方へと傾く。地面にぶつかった衝撃は、抱きとめられた事によって緩和されたみたいやった)
絵里「何してるのよっ、希!!」
希「えりち!?な、んでここに」
絵里「それは…こっちの、台詞よ。そんな事をしたって…」ゼェ
絵里「誰が得をするっていうの…?冷静になりなさい」
希「…放っておいてや!!もううちには生きてる意味なんてないん、にこっちがいない世界なんてっ」
326: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:12:43.58 ID:uAcbrZaa.net
絵里「あなたの人生は、あなただけのモノなの。他人に左右されるべきじゃない」
希「えりちに何がわかるんよ!そもそもえりちのせいで、にこっちから嫌われかけたんやから!!」
希「勝手に決めつけんといて!何も知らんくせに…。えりちがうちのことをどう思ってるんかは知らんけど、うちは大嫌いやっ!!」
絵里「……そう」
希「あっ…」
希(今しっかりと見ると、えりちは肩で大きく息をしていた。額には汗で張り付いた髪の毛)
希(もしかして…うちをずっと探してた?街の時計は日付が変わったのを教えてくれているのに)
327: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:13:50.74 ID:uAcbrZaa.net
希「…にこっちが、いなくなった」
絵里「知ってるわ。私のところにもメールが来たから」
希「え…。えりちのところにも?」
絵里「とにかく、もう帰りましょう。体が冷えてしまう」
希「帰るって…何処に帰ればいいんよ。あの部屋は、にこっちとの思い出でいっぱいなん」
絵里「じゃあ私の泊まってる……うぅん」
希「…なに?」
絵里「何でもないわ」
タタタッ
海未「希っ!良かった…」ハァハァ
328: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:15:21.78 ID:uAcbrZaa.net
希「海未ちゃん…?」
海未「お部屋を訪ねても返事がなくて、電話も繋がらなかったので慌てて探し回っていたんですっ」
希「海未ちゃんも…、ごめん、なさい」
海未「それにしてもよくここだとわかりましたね、絵里」
絵里「…ただの勘よ。それより、泊めてあげて欲しいの」
海未「希をですか?」
絵里「辛いでしょう。色々と」
海未「私は…構いませんが」チラ
希「でも…その、悪いし」
絵里「ならあの部屋に帰るしかないわよ?」
希「………」
海未「もう夜も遅いです。泊まるかどうかは別にして、とりあえず私の屋敷へと向かいましょう」
329: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:16:57.94 ID:uAcbrZaa.net
ーーーーー
にこ「ぁぅ……」ズキッ
にこ「あれ…ここは…ぅくっ」
にこ(口を動かすと顎が固まったみたいに痛いわね…喉もカラカラだし、何時間寝てたのかしら)
にこ(薄緑の天井…白い壁)
にこ(にこが寝かされているのはおそらくベッドみたいなものだと思う)
にこ「ん…確か。にこはあのメールを見て」
カツカツカツ
真姫「起きたのね」
330: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:19:02.02 ID:uAcbrZaa.net
にこ「っ、真姫ちゃ…」ギシッ
真姫「立てないわよ。拘束してあるから」
にこ「えっ…!?」
真姫「あまり暴れないで。跡が残ることになりかねないから」
にこ「ここは…何処なのよ!何が目的でこんなことっ」
真姫「そうね。ここは…私の部屋とでも言っておきましょうか」
真姫「だから安心して。私以外の人間は来ないわ」
にこ「どういう意味よ…それ」
真姫「…また来るから、今は大人しく寝てなさい。まだ眠たいんでしょ?」
にこ「そうだ…!にこのっ、オーディション!」
331: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:20:20.48 ID:uAcbrZaa.net
にこ「あれの手続きが3日後までなのっ、ねぇ!真姫ちゃん!」
真姫「必要ないわ」
にこ「はっ…」
真姫「なに?」
にこ「あれは…にこの全てなのよ?これからの希望と、夢が詰まったものなの」
にこ「それをあんたは溝に捨てろっていうの!?ねえっ、答えなさいよ!」
真姫「…必要ないと言っているの。もうアイドルは、芸能界での仕事はやめなさい」
にこ「な…に言って」
真姫「大丈夫よ。私がいるから。もう気を張り詰めることも、頑張ることもしなくていいの」
332: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/05(木) 06:21:20.15 ID:uAcbrZaa.net
にこ「……っ」
真姫「にしても、このまま放置すると何をするかわからないわね」
真姫「強制的に眠ってもらうわ。少し痛いけど我慢して」
にこ(嫌…そんなの、嫌だ)
にこ(やっと努力が叶ったと思ったのに…やっと夢を掴めたって)
にこ(希が求めるアイドルに…なれると…思っ…た…のに)
374: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:00:33.97 ID:l9cV6Ulc.net
~園田家屋敷~
海未「煎茶です。お口に合うかわかりませんが」コトン
希「あの、えっと」
海未「絵里なら帰ってしまいましたよ。何やら用事があるみたいで」
希「そう、なんや…。うち、えりちに酷いこと言ってもうて…まだそのままで」
海未「次に会った時に直接言ってあげて下さい。私から伝えるより、きっとそちらの方がいいです」
海未「それで、希。もう気持ちは落ち着きましたか?」
希「まだ…信じられへんっていうか。信じたくない自分はいるんよ」
海未「そうですね…無理もありません」
376: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:04:06.28 ID:l9cV6Ulc.net
海未「しかし私にはどうも、にこは希を置いていったわけではないと思います」
希「えっ…?なんで、そんなこと言えるん」
海未「あんなにも希のことを好きで、一緒にいたのなら。余計にそう思いますね」
希「……慰めなんていいんよ。もう」
海未「色々あるのでしょう、彼女にも。きっと少し疲れてしまったんですね」
海未「だから…今一度、希も自分自身を見つめてみてはいかがですか」
希「……」
海未「温かいお風呂が沸いています。服は私ので申し訳ありませんが、脱衣場に置いておきますね」
希「…ありがとう」
379: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:07:52.56 ID:l9cV6Ulc.net
ーーーーー
にこ(今がいつで…何時かもわからない)
にこ(ただずっと天井を眺めて…)
にこ(時間がゆっくりと流れるのを感じる)
にこ(もう…あのオーディションの期限なんてとっくに過ぎてるのかな)
にこ(最初は悔しくて悔しくて、涙を流すしかなかった。真姫ちゃんに対しての憎しみを彼女に直接ぶつける事しか出来なくて)
にこ(けど今はもう…。真姫ちゃんが持ってくる薬のせいかなぁ…何も考えられない。何も考えたくない)
にこ(ただ…目が覚めて考えるのは。希のこと)
380: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:10:30.49 ID:l9cV6Ulc.net
にこ(外の世界がどうなってるのかわからないから。まだ希はにこを探してるんじゃないかって)
にこ(そう思うと…胸が苦しい。もしかしてにこのことを忘れちゃったり、なんて)
にこ(考えれば考えるほどわかんなくなっちゃった…なぁ)
ギィィ…
真姫「偉いわね。今度は針抜かなかったの?」
にこ「…頭、痛い」
真姫「吐きそうなら無理せず出した方がいいわ、たまに副作用でそうなっちゃうのよ」
カチャカチャ
ストン
にこ「え…いいの?」
真姫「ただしこれからも大人しくしてる事。ほら、残りも解くから腕あげなさい」
にこ「うん…」
384: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:15:22.91 ID:l9cV6Ulc.net
真姫「残さず食べるのよ。スプーンはここにあるから」
にこ「ごはん…?」
真姫「えぇ。久しぶりの食事になっちゃったわね」
真姫「お粥にしてあるから噛めなくても平気よ。味付けは薄いから美味しくはないと思う」
にこ「…真姫ちゃんは何が、したいの」
真姫「……大したことじゃないわ」
真姫「ねぇ、にこちゃん聞かせて。何故あなたはアイドルに拘るの?」
にこ「そんなの…私の、夢だからよ…」
真姫「本当にそれだけ?」
にこ「あとは希が、期待してくれるから。それに答えたい」
真姫「そっちが大きいみたいね。今の答え方を見てる様子だと」
385: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:17:50.43 ID:l9cV6Ulc.net
にこ「…何が言いたいの」
真姫「誰かのために何かを成し遂げる、あの人を喜ばせるために励む。こんな素晴らしい考え方はないと思うわ」
真姫「ただし何もかも順風満帆にいくならね。上手くいかない場合は…地獄を見ることになる」
にこ「そんなの…わからないじゃない。地獄を見るかどうかはその人次第よ」
真姫「いい?にこちゃん。私達は知ってるの、自分のためだけに生きるのは凄く楽なことだって」
真姫「それでも誰かのために生きようとする人が多くいる。その中には、失敗は許されないと自分をいつの間にか追い込んでしまう人がいて」
真姫「追い込んで追い込んで…もうそれ以上下がれなくなった時。心が崩れてしまうの」
386: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:21:28.09 ID:l9cV6Ulc.net
真姫「心当たりはない?」
にこ「…ないわよ。私はそんな弱い人間じゃない」
にこ「こんなことで負けないって、負けてたまるかって…決めたの。自分の心に」
真姫「嘘。にこちゃんの精神は実際に悲鳴をあげていたはずよ」
にこ「っ、何で…何が理由で!真姫ちゃんに何がわかるっていうの」
真姫「……」フゥ
真姫「幻覚、幻聴、被害妄想、食欲の低下、慢性的な頭痛…あげればキリがないわ」
真姫「はっきり言わせてもらうけどね。にこちゃんは、統合失調症の可能性がとても高いの」
389: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:22:43.33 ID:l9cV6Ulc.net
にこ「はっ…な、なによ…それっ!」
にこ「なんとか症って、にこは病気なんかじゃないわ!」
真姫「病気…そうね。簡単に言い換えるなら」
真姫「にこちゃんは疲れているのよ。身体も心も、参ってしまってる。その警告が症状となって何度も出ているの」
にこ「だから…、いい加減なこと言わないでっ!」
真姫「落ち着いて。興奮するのは良くないわ。にこちゃんが辛くなるから」
パッ
真姫「これを見て。ゆっくりと画面へと目を通すのよ。何も考えずに、ね」
391: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:25:31.64 ID:l9cV6Ulc.net
にこ「…なによ。あのオーディションの…メールじゃない」
真姫「それはわかるのね?じゃあ今から画面をスクロールするわ」
スッ
にこ「えっ……ふ…不合格、って」
にこ「な…んで?確かに…にこは合格したはず、なのに」
にこ「こんなのっ、嘘よ!!」
真姫「…本当に合格、したかったのよね。あんなに喜んでいたんだもの。私にも伝わったわ」
真姫「にこちゃん…。だからね、あなたは現実を受け止めることが出来なくなっていたのよ」
真姫「もう後がない、もう失敗できない。そんな強い気持ちが。この幻覚を引き起こしたの」
397: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:28:14.88 ID:l9cV6Ulc.net
にこ「…っ、じゃあ…にこは…」グスッ
にこ「最後まで…っ、ダメ、だった…のねポロポロ」
ギュッ
真姫「自分を責めないで、そんな事ないわ。にこちゃんは、疲れていたんだから…そう思うの。いい?」
にこ「っふ…うわぁぁ…」
真姫「今日はもう寝ましょう。眠れるまで私も一緒にいてあげるから」
にこ「…真姫ちゃん…っ、にこは…」
真姫「いい。何も考えないで」
真姫「今は疲れてしまった体を休ませてあげるのよ」
にこ「……うん」
400: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:30:48.72 ID:l9cV6Ulc.net
ーーーーー
ガラッ
真姫「……」ハァ
真姫(怖かった…。にこちゃんに、全てを伝えるのが)
真姫(まるで最後の追い討ちをかけるようで)
穂乃果「真姫ちゃん、お疲れ様」
真姫「あぁ穂乃果…。また来てくれたの」
穂乃果「あはは…呑気に家でじっとしていられなくってさ」
真姫「優しいのね」
穂乃果「心配してるのは穂乃果だけじゃないよ…皆、同じ気持ちなんだ」
402: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:35:09.36 ID:l9cV6Ulc.net
穂乃果「凛ちゃんと花陽ちゃんも本当は来たかったみたいだけど。辛いんだって、言ってた」
穂乃果「にこちゃんが苦しんでる姿を見るのを…あの2人は、実際にああゆう事があったから仕方ないのもあるし」
真姫「一刻も早く、助けてあげなくちゃいけなかったのに…」
真姫「それが悔しいの。にこちゃんの現状を知っていても見て見ぬ振りをしてしまっていた自分が」
穂乃果「真姫ちゃんのせいじゃないよ。にこちゃんの仕事があんまり上手くいってない事は、穂乃果だってわかってた」
穂乃果「けど…何もしてあげられないんだよ。仕事に誇りを持ってるみたいだから、変に干渉されるのも嫌がると思う」
真姫「…でも本当は希が、最初に気づくべきだった」
穂乃果「それは…」
403: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:36:40.47 ID:l9cV6Ulc.net
真姫「半分はあの人が追い詰めたも同じよ。お互いに依存しているみたいだから」
穂乃果「真姫ちゃん。やめよう」
真姫「…そうね。ごめんなさい、言い過ぎたわ」
穂乃果「…そんなこと言ったって真姫ちゃんは希ちゃんに優しいんだ。知ってるよ?」
穂乃果「特に、今回にこちゃんをここに連れてきたのがそれを物語ってるね」
真姫「保護しようと思っていたのは前から。統合失調症だと疑うのには時間はかかるし、なにより私は専門じゃない」
真姫「外と連絡を遮断するにこちゃんと、繋がりを持つのには苦労したわ。栄養剤を渡さなきゃいけなかったし」
真姫「そもそも、今回こういう風になったのはタイミングが合っただけよ」
405: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:38:08.05 ID:l9cV6Ulc.net
穂乃果「…違うよ。だって真姫ちゃんは、あの日にこちゃんが希ちゃんの元に行くのを辞めさせたでしょ」
穂乃果「合格したって喜ぶにこちゃんに、希ちゃんはこう言うんだ。そんな事はこのメールに書いてないって」
穂乃果「その後は…想像するだけで恐ろしいよ。どう転ぶかわからない」
真姫「……はぁ。そうよ、その通り」
真姫「穂乃果って、昔からそうね。何も考えて無さそうで誰よりもわかってたりする」
穂乃果「えー。もう、酷いなぁ真姫ちゃん…だって私は、μ'sのリーダーなんだから」
真姫「…そうだったわね」ニコ
穂乃果「後のこと、何か考えはあるの?」
真姫「私は…もうにこちゃんに芸能界で仕事をさせるべきじゃないと思う」
真姫「もう一つは。希と離れさせるべきだってこと」
406: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:40:01.94 ID:l9cV6Ulc.net
~園田家屋敷~
海未「寒くはないですか?」
希「ううん…」
海未「何かあったら私を起こして下さいね。近くの部屋にいますから」
希「ありがと…うなぁ」
海未「ふふっ。もう眠ってしまいそうですね」
海未「おやすみなさい。希」
希「うん……」スゥ
ガラッ…パタン
海未「…あなたも不器用ですね。絵里」
408: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:42:43.74 ID:l9cV6Ulc.net
絵里「…なに」
海未「いえ。何でもありません」ニコ
絵里「仕事があるから寝れないの。日本でもすることになるなんて思わなかったわ」
海未「それは絵里が休みを伸ばしたからじゃないですか?」
絵里「…何で海未が知ってるのよ」
海未「私が教えて欲しいのですが。希やにこが心配で残ったのでしょう?」
絵里「他の皆だって同じでしょ…私もそうよ」
海未「そうでしたね。ところで、こんな寒い縁側で座っていなくてもいいのでは?」
絵里「…つ、月を見てるのよ。ほら。今夜は満月だから」
411: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:48:48.33 ID:l9cV6Ulc.net
海未「…本当に不器用ですね」
絵里「だから何が言いたいの」
海未「希がそんなにも気になりますか?」
絵里「…目を離した隙に何かあっても嫌でしょう」
海未「……そうですね」
海未「絵里はどう思うのですか」
絵里「にこ達について?」
海未「はい」
絵里「…2人が相手を絶対的に必要として、それがお互いの足枷になっているとしたら」
絵里「もう一緒にいるべきではないと思う」
413: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/06(金) 00:52:19.06 ID:l9cV6Ulc.net
海未「…今回の件は、本当に難しいと思います」
海未「私達に全てを決める権利があるとは思っていません。しかし…あの2人が変わらなければ、意味がないのです」
海未「でも、あの様子ではそのような兆しは見えない。どうすればいいんでしょうね…」
絵里「それでも変われない、と決めつけるのは良くないわ」
海未「…そうですね」
海未「私は早朝から稽古を教えねばなりませんので、そろそろ失礼します」
海未「絵里も早く寝て下さいね?」
絵里「えぇ。ありがとう」
489: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 02:59:29.50 ID:JNCbqyCH.net
ーーーーー
海未「…希は以前のように、突発的な行動をとるような事はなくなりました」
真姫「ありがとう。少しずつ落ち着きは取り戻してはいるのね?」
海未「はい。ですが…彼女は彼女なりに色々思うことがあるのだと…私は」
真姫「わかってる。そう思う海未の気持ちも、希の気持ちも」
海未「すみません…。私では、これが精一杯で」
真姫「海未はずっと希のことを見ててくれたじゃない。とても感謝してるわ」
真姫「ところで…ことりを最近見ないんだけど、彼女はフランスに戻ったの?」
海未「いえ。ことりはまだ日本にいます。会ってはいませんが、連絡は取り合っていますから」
真姫「そう。私も同窓会の時から会っていないから。気になって」
490: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:01:35.86 ID:JNCbqyCH.net
ガチャッ
凛「こんにちは~…」
花陽「…あっ。海未ちゃんもいたんだね」
真姫「凛、花陽。来てくれたのね」
穂乃果「私もいるよ~。休憩室でばったり会ったんだ」
真姫「いつも悪いわね、穂乃果」
凛「にこちゃんにもう近づかない方がいいかなって思ってたから…でも心配で」
花陽「あのベッドに座ってるのがにこちゃんなの?」
真姫「そうよ。いつまでも寝ているのが辛くなっちゃったみたい」
491: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:05:10.22 ID:JNCbqyCH.net
海未「真姫。にこは…芸能界に復帰することはできないのでしょうか」
真姫「えっ?」
海未「絶対に、無理だと。そもそもにこはもう、普通の生活は送ることができないんですか?」
穂乃果「海未ちゃん、何言って…」
凛「それは凛も考えるんだ。にこちゃんは確かに昔みたいに笑えないみたいだった」
凛「けど、凛達が無理やり辞めさせるのは違うんじゃないかって…真姫ちゃんからすればいい加減なこと言ってるって思うだろうけど」
真姫「っ、当たり前よ!あの世界でどれだけにこちゃんが苦しんだと思って」
花陽「…今のにこちゃんなら、厳しいと思う。あんな辛そうなにこちゃんを見るのは私だって耐えられない」
花陽「けど…どんな形でも歌を歌い続けるのがにこちゃんの夢なんだよ。それは私達が誰よりも知ってるはずなんじゃないかな」
492: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:07:40.02 ID:JNCbqyCH.net
穂乃果「海未ちゃんも、凛ちゃんも…花陽ちゃんも。本気で言ってるの?」
海未「だって…今からにこは何を目標に、何を生き甲斐にして長い日々を過ごすのでしょう」
海未「本人が、まだやりたいと望むなら。これが絶対的な条件になりますが…最後まで支えてあげるべきではないのでしょうか」
凛「今の海未ちゃんの意見に、凛もかよちんも同意するよ。そもそも…昨日で結論は一応ついたんだ」
花陽「にこちゃんは活動休止期間、なんだよね。それなら」
真姫「認めない。あんなボロボロの体で何が出来るっていうのよ」
花陽「…ごめん。にこちゃんに少しだけ、今から会わせて欲しいの」
凛「同窓会以来会ってないから。凛達を見て辛くなっちゃうならすぐ下がるよ」
真姫「……無理よ」
493: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:08:44.56 ID:JNCbqyCH.net
凛「お願い!あんな風に誤解されたままじゃ息苦しいんだ…だから」
花陽「真姫ちゃん…」
真姫「……」
ガチャッ
にこ「あっ。真姫ちゃん…」
真姫「にこちゃん、今日はね。あなたもよく知ってる人が遊びにきてるの」
にこ「よく知ってる人?」
凛「にこちゃんっ」
花陽「この前はごめんね…私達のこと、わかるかな」
にこ「……」
真姫「…やっぱり、」
494: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:10:38.64 ID:JNCbqyCH.net
花陽「にこちゃんっ!!!」タッ
真姫「花陽!?」
ギュッ
凛「ずるいよ!凛だって!」
凛「にこちゃんにこちゃんにーこちゃん!」ギュゥ
真姫「凛!花陽!今すぐ離れなさいっ」
にこ「……ふふっ」
真姫「えっ…」
凛「あー!にこちゃん今、笑ったにゃ」
花陽「にこちゃん!久しぶりだねっ」
にこ「…そう、ね」
495: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:12:46.88 ID:JNCbqyCH.net
花陽「また、凛ちゃんと私と…次は真姫ちゃんも一緒に遊んでくれる?」
にこ「うん…あのね、にこ」
にこ「ラーメンがいい」
花陽「…!」
凛「…わぁ、ほんと?やったね!」
真姫「あ…あり得ない」
真姫「統合失調症の患者が、こんなにも早く落ち着きを取り戻して…妄想に囚われないなんて」
グイッ
真姫「っ、海未?」
海未「勝手に失礼しますね。先程にこが発した言葉は、あの日に花陽が聞いた内容の返事なんです」
真姫「はぁ?どういうこと、なの」
ーーー
凛「ここを真っ直ぐ歩くとねー、先が商店街になってるの」
花陽「商店街といえば美味しい食べ物…///ぴゃぁ…」ゴクッ
496: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:14:23.42 ID:JNCbqyCH.net
凛「ねぇ、かよちんは何が食べたいの?」
花陽「私は出来れば和食がいいけど…ゴハンがあるところなら何処でも嬉しいかなぁ」ニコ
凛「あははっ。かよちんは本当にご飯好きだね♪」
花陽「あ、そうだ。にこちゃんは何処が…」クルッ
にこ「……」ポチポチ
凛「…にこちゃん?」
にこ「……」
花陽「あれ…?どうしたんだろう」
凛「うぅん…」
にこ「…っ!?」ビク
花陽「あっ、やっと気づいてくれた」ニコ
花陽「ねぇにこちゃん。お昼ご飯は…何がいいかなぁ?」
ーーー
真姫「じゃあにこちゃんは花陽の言葉がそのまま聞こえていたっていうの!?」
海未「私には詳しくわかりませんが…その、真姫が言う妄想というものがあったとしても」
海未「にこの頭の中には確かに正しい記憶があって、思い出す事ができた。これは大きいのではないでしょうか」
真姫「……」
497: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:15:49.61 ID:JNCbqyCH.net
ーーーーー
~園田家.屋敷~
絵里「希。今いいかしら」
希「あっえりち。いい、けど」
絵里「少し…お話したいの。これからのことについて」
希「……ごめん。放っておい」
絵里「にこが今どこにいるのか。私は知ってるのよ」
希「えっ」ハッ
絵里「それを聞きたいのなら。いいわね?」
希「……」コクン
絵里「にこは西木野総合病院にいるわ。あの日、過労で倒れちゃったみたいでね。たまたま居合わせた真姫が助けてくれたのよ」
希「倒れたって…!?」
絵里「大丈夫。今は徐々に回復しているとは聞いているわ」
499: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:16:53.56 ID:JNCbqyCH.net
希「ほんま…?うち、今すぐ会いに」
絵里「駄目よ。指定の人以外とは面会できないの。にこが望んでもね」
希「……そんな」
絵里「落ち着いて。話を続けるわね」
絵里「あの子は周りに頼ることをあまりしないから。希の前だって、きっとそうだったと思う」
絵里「にこが情緒不安定なのはわかっていた?ほら、急に怒ったり泣いたりとか」
希「…多分うちがにこっちを怒らせたり泣かせちゃったりするようなことを」
絵里「違うわ。希はそうやって、にこの顔色だけを伺って生活してきたの?」
希「ちゃうよ…!にこっちはうちのことを必要としてくれてたん、だから」
501: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:18:41.90 ID:JNCbqyCH.net
絵里「でしょう?なら、にこ自身に何か問題があったはずなのよ」
絵里「そして、それを加速させてしまった原因は。お互いにお互いを必要とする関係があったからなの」
希「…依存、ってこと?」
絵里「この場合は共依存ね。自分の存在意義を生み出す、お互いに相手を必要不可欠なものと認識する…そういう繋がり」
絵里「これはあまり良くないことなの。深くのめり込めば込むほど周りが見えなくなるから」
希「…じゃあうちの、せいなんやね。うちがにこっちと一緒にいたからっ」
502: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:19:37.56 ID:JNCbqyCH.net
絵里「それは違うわ!」
希「へ…」
絵里「あ、えっと…」
絵里(何を根拠に私は…海未の前ではああ言ったのに)
希「さっきの話やと、うちらの関係がって…えりち言うたやんか」
絵里「…私は、希とにこが一緒にいることを否定したいんじゃないの。ただお互いが幸せになれるような関係でいて欲しい。それだけよ」
希「えりち…」
絵里「この関係を治すにはね、暫く離れる必要があるみたいなの。どれだけかかるかわからない。寂しいかもしれないけれど…それがあなた達のため」
絵里「それをわかって欲しい。変わらなきゃいけないのよ、希」
503: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:21:03.10 ID:JNCbqyCH.net
ーーーーー
真姫「…わからないわ。医学書だけじゃ説明出来ないこともあるのね」
ことり「にこちゃんについて…かな?」
真姫「えぇ。何人か精神科の知り合いにも診てもらったけれど、一概に統合失調症とは言えないんじゃないかって」
真姫「日常的に幻聴や妄想があったわけではないみたいなの。過度のストレスや体調の悪化によって引き起こされたものみたいね」
ことり「…病院のパンフレットに書いてあるのはそれとは少し違うね。妄想っていっても沢山あるみたい」
真姫「統合失調症の症状としては、周りが自分を攻撃する。という妄想が主なのよ」
真姫「それも何回も何回もね。街を歩く人から襲われる、という迫害妄想や追跡妄想。他人の咳払いが自分への警告として聞こえる関係妄想…など」
真姫「それによって、患者の殆どが引きこもりがちになるの。だから周囲からは社会性がない、怠けているなんて思われてしまう」
504: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:22:55.26 ID:JNCbqyCH.net
ことり「そっか…にこちゃんは自分からオーディションを受けに行ったり、芸能界に拘ったりする行動はあったもんね」
真姫「凛や花陽、エリーの言葉が自分を追い詰めていると勘違いしたのは心の問題でしょうね。実際に、その日のにこちゃんは最初から不機嫌な様子だったみたい」
ことり「…今の様子はどうなのかな?」
真姫「あれから1ヵ月ほど経ったけど…落ち着いているわ。穂乃果は自営業だから、よく病院に来てくれるのよ。彼女に対しても、攻撃的な態度をとることは無くなった」
ことり「少しずつ良くなってるんだぁ…。良かった」
真姫「けど…依存相手には会わせるべきじゃない。精神科の彼はそう言ったの」
ことり「厳しいけど共依存を治すにはきっとそれが一番なんだね…離れちゃえば嫌でも気持ちは薄れていくから」
ことり「それにしても…真姫ちゃんは優しいね。目の下にクマができてる。遅くまで色々なことをしてたのかな」
505: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:24:40.03 ID:JNCbqyCH.net
真姫「…病気だと認めたくなかったから。仮に統合失調症だと精神科の診断が下れば、恐らくにこちゃんは強制入院することになる」
真姫「朝から夜まで監視カメラのついた部屋に1人だけ。病院を出れたって、一生薬を飲み続けなければいけない…それでも再発する患者は多いの」
真姫「私は…そんな彼女を見たくない」
ことり「私もね、同じ気持ちだよ?」ニコ
真姫「ことりだって人のこと言えないわよ。最近姿を見せなかったのは?裏で何コソコソしてるのよ」
ことり「あはは…ちょっとね。ツバサさん達と色々お話してたっていうか」
ことり「説得の方が正しいのかな?」
真姫「全く。あなたも海未も、凛も花陽も…本当に好きなのね。あの人のこと」
506: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:25:44.46 ID:JNCbqyCH.net
ガラッ
ツバサ「失礼します」
真姫「…こんにちは」
ことり「ツバサさんありがとうございます」 ニコ
ツバサ「お待たせして申し訳ないわ」
ことり「大丈夫です♪真姫ちゃん、にこちゃんに会わせもらってもいい…かな?」
真姫「今更否定しないわよ…。穂乃果だって、それで一応は納得したんだから」
507: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:26:49.02 ID:JNCbqyCH.net
ーーーーー
真姫「…で、海未もいたのね」
海未「来れる時には必ず来るようにしてるんです」
真姫「希は大丈夫なの?」
海未「絵里がいますから。彼女がいれば希も安心するでしょう」
海未「…ちなみに絵里から伝言を預かっているのですが」
真姫「…なに」
海未「でたらめを言われても困る、希が警戒しちゃってるじゃないの…と」
真姫「ああ…あれは悪かったわね。エリーが高校時代に希が好きだったって話でしょ?」
508: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:27:47.79 ID:JNCbqyCH.net
真姫「確かに適当に言ったわよ。あの時はにこちゃんに近づくために、まずは希に歩み寄りたかったから」
海未「…恐ろしいですね」
真姫「なんとでもいいなさいよ…」
ツバサ「準備が済んだわ。矢澤さんと面会させてくれる?」
真姫「鍵は空いてます。私の他に何人かも立ち会わせてもらっても」
ツバサ「大丈夫よ」
ツバサ「それより念の為聞いておくけど…あそこの事務所は結局、矢澤さんを解雇したのよね?」
真姫「…あとはにこちゃんが書類にサインするだけ、ですけど。拒否は出来ないと思います」
ツバサ「そう、ありがとう」
509: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:29:26.34 ID:JNCbqyCH.net
~病室~
ことり「にこちゃん。久しぶりだねっ」
にこ「そうね」ニコ
ツバサ「想像していたよりも元気そうで良かったわ」
にこ「あ…ツバサさん」
ツバサ「挨拶はこれぐらいにさせてもらって…単刀直入に言うわね」
ツバサ「まだアイドルを続けるつもりはない?」
にこ「……え」
ツバサ「これはスカウトだと思ってくれていいわ。私の事務所から、ね」
穂乃果「にこちゃん、無理をする必要はないんだよ。何か違うことを始めたって私達は応援するだけだからね」
にこ「いや…でも私は、歌とかダンスがうまいわけでもなくて…人気だって」
510: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:30:39.27 ID:JNCbqyCH.net
ツバサ「いくらだって伸びしろはあると思っているの。ただ、CDリリースだけに拘るんじゃなく違う方面にも手を伸ばすことにはなる」
ツバサ「あなたがあんまり好まないバラエティ番組やドラマ・映画への出演ね。アイドルと離れてしまうけど、こういう活動を徐々に広げないとやっぱり難しいの」
にこ「…オーディションだって、何回も落ちてるのに。私には」
ツバサ「それは少し前のあなたでしょ?さっき南さんに向けたような笑顔があれば絶対に無理、とは言えないんじゃないかしら」
ツバサ「…矢澤さんにその気があるのなら、私達は推させてもらうわ。どう?」
にこ「……えぇと」
海未「いくらだって考える時間はあります。にこ自身が決める必要があるのですから」
真姫「それにまだ休養が必要よ。もし…万が一、芸能界に復帰するって言うなら通院は必ずしてもらう」
真姫「あと前にも話したけど…実家に住むこと。色々制限があるのはにこちゃんのためなの」
にこ「………」
511: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:32:06.35 ID:JNCbqyCH.net
ーーーーー
prrrrrr…
希『もしもし…?』
にこ『希?にこよ。久しぶりね』
希『にこっち…!?えっ、電話し』
にこ『ちゃんと許可貰ったわよ、可愛い主治医さまから。今側にいるし長くは話せないけど』
希『そう…なんや』
にこ『希。お互いに謝ったりってのはナシね』
希『うん…。今は空港なん?』
にこ『えぇ。他の皆は見送りに来てくれてる』
希『そっか…。もう行くんや』
にこ『それ以上ダメよ』
512: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:33:13.97 ID:JNCbqyCH.net
にこ『お互いに頑張りましょう。それだけ…だから』
希『…そやね』
にこ『絵里と海未もそっちにいる、のよね』
希『いるよ。残ってくれてる』
にこ『ちゃんと言う事聞くのよ』
希『うん…』
にこ『……』
にこ『じゃあね。ありがとう』
希『ううん。…さようなら』
ピッ…ツーツー
絵里「泣いてるの?」
希「泣いて…ないっ。もう決めたんやから」
海未「頑張りましょう。少しずつでいいんです、前に進めれば。それで」
513: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:35:11.47 ID:JNCbqyCH.net
絵里「…今だけ1人にさせてあげましょう」ヒソ
海未「…」コクン
ガラッ
絵里「それにしても…少しだけ心配ね」
海未「にこのことですか?それなら大丈夫でしょう。ことりがついていますから…向こうにも日本人はいるみたいですし」
絵里「フランスでことりの仕事を手伝う傍ら、服飾を勉強するって聞いた時は本当に驚いたわ」
海未「ことり自身の案なんです。にこは、芸能界に復帰することを選びませんでしたから」
絵里「…私は復帰するんだろうと思ったわ。だから以外だった。けど、同じような仕事につけば希のことも思い出してしまうでしょうね」
海未「そうですね。ツバサさんは残念がっていました」
海未「にこは…自ら新しい道を選んだんです。だから日本からにはなりますが、応援してあげましょう」
515: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:38:51.03 ID:JNCbqyCH.net
絵里「そうね。でも、外国に住むのは大変じゃないのかしら」
海未「真姫が言うには、全く違う環境というのも場合によっては良いそうです。ここにいる限り、今までの辛い経験を思い出させるものは存在しますから」
海未「そしてフランスの他にも、ヨーロッパの国を訪れるつもりだとことりは言っていました。色々な景色を見せてあげたいと…」
絵里「とてもいい旅になると思うわ。いつ帰ってくるかはわからないんでしょう?」
海未「はい。どうなるかはわかりませんが、一生向こうで永住する可能性もあるみたいですね」
絵里「へぇ…すごいわね。私なんて日本に帰ってきたっていうのに」
海未「それにしても、まさか辞表を郵送で送るとは…流石ですね」
絵里「まぁね。速達で送りつけてやったんだから、感謝して欲しいぐらいだわ」
海未「まぁ絵里なら引く手あまたでしょうし…私は特に心配していません」
517: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:39:58.20 ID:JNCbqyCH.net
絵里「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。真姫にもそう言われたけどね」
海未「…そういえば。真姫からの伝言を伝えるのを忘れていました」
海未「あれは希とにこに近づくためにした、適当な発言で悪かった。と」
絵里「…大体ね、昔に好きだったから今も好きっていう考えが良くないわ。困っちゃうわね」
海未「では違うんですね」
絵里「さぁて、どうかしら?」
海未「何ですか…それ」
絵里「ふふっ♪妬いてるの?」
海未「なっ…//違いますよ、もうっ」
絵里「……ふぅ。今日はいい天気ね」
海未「そうですね…」ニコ
518: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:40:55.85 ID:JNCbqyCH.net
ーーーーー
真姫「ーーで。希と絵里と海未は結局、一緒に住んでるのね」
穂乃果「ルームシェアだよ!近くのマンションに住んでるみたいだもん」
花陽「それって海未ちゃんも?」
凛「うん。でも近いとこだし、たまにお屋敷の方で寝るーって言ってた!」
花陽「確か絵里ちゃんは日本の大きな会社に入ったみたいだし、希ちゃんも変わらずに頑張ってるんだよね」
穂乃果「あっそういえば、ことりちゃんからメールがきたんだ!」
凛「えぇ!?早く見せてよ~!」グイ
穂乃果「写真つきだよ!ちょ、ちょっと凛ちゃん引っ張らないで~っ」
519: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:41:47.02 ID:JNCbqyCH.net
花陽「…希ちゃんとはこの前も会ったんだよね?」
真姫「そうよ。希には2人がいるからそういう面では大丈夫だけど…」
真姫「正直、私はにこちゃんよりも希の方がある意味重症だと思っていたから。ゆっくりカウンセリングしていく必要があるわ」
花陽「そっか…。でも平気だね」
真姫「…?」
花陽「だって私達はμ'sなんだから。誰かが転んだり、道を踏み外しそうになった時には皆で助け合える…そんな素敵な仲間」
花陽「きっとまた、同じテーブルを囲んで話せる日が来るよ」ニコ
真姫「…そうね。間違いないわ」
521: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:44:01.93 ID:JNCbqyCH.net
ーー
ーーー
ーーーーー
希「んー…寒い寒い」ゴソゴソ
絵里「おはよう。今日は雪が降るみたいよ?」
希「そうなの?って、うわぁ…ちょっと積もってるやん」
絵里「あ、ほんとね。電車も遅れてるみたいだし連絡いれてくるわ」
希「じゃあその間にお味噌汁あっためよっと…」
ピロン♪
希「あれ…誰からのlineやろ」
穂乃果<みんなおはよー!雪だね!初雪!
穂乃果<画像
希「ふふっ。穂乃果ちゃんは元気やなぁ」
522: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:47:04.55 ID:JNCbqyCH.net
凛<さむそうでふとんからでれない…
希「凛ちゃんはまだお布団の中みたいやね」
凛<かよちんがはやく起きてっておこるよ~>ω<。
希「あははっ、怒ってる花陽ちゃん見てみたいな」
絵里「希、何を見てるの?」
希「あのね。穂乃果ちゃんからline始まって…ほらっ、見て?」
絵里「ほんとね。今から電話します…って、海未に言われて凛が慌ててるわ」ニコ
希「あ、真姫ちゃんも起きたみたいやね。お休みの日やから起こされて不機嫌そうやわぁ」ニコ
523: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:47:50.10 ID:JNCbqyCH.net
穂乃果<そういえば皆さん!
穂乃果<今月末に同窓会の続きをしたいんだけど、いつ空いてますかー( ˆ ˆ )/
希「えっ…?」
絵里「同窓会…前にしたのは3年前くらいだったかしら」
希「同窓会って、あぁ…そっか。また7人で集まってご飯食べるんやね」ニコ
ピロン♪
穂乃果<9人でするよ!続き、だからねっ
524: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:48:35.38 ID:JNCbqyCH.net
ーーーーー
凛「あ、絵里ちゃんに希ちゃんー!」フリフリ
花陽「こっちだよ~!」
絵里「ふぅ、駅から少し歩くのね。ここ」
希「運動になるから食べすぎても大丈夫かな?」ニコ
穂乃果「あ、だよね!よーし!」
海未「またダイエットに泣くことになりますよ?」
穂乃果「それは…うぐぅ」
真姫「はぁ…いい年して店の前で騒がないでよ」
凛「真姫ちゃーん!やっと揃ったねっ」
花陽「あとは…少しだけ待ってればきっと」ニコ
525: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:49:35.32 ID:JNCbqyCH.net
海未「連絡はきましたか?」
穂乃果「もーすぐってさっき言ってたよ?」
凛「じゃあしりとりしよっか!かよちん、真姫ちゃん」
真姫「なんでしりとりなのよ!」
凛「じゃあ西木野の、の!はい!5、4…」
真姫「ヴェェ…の…農業!」
絵里「…希」
希「えっ、あ…どうしたん?」
絵里「緊張してるの?」ニコ
希「…ちょっとだけ」
526: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:50:41.69 ID:JNCbqyCH.net
ことり「っふぅ…やっと着いた。みんな久しぶり♪」
穂乃果「あっ!!」
海未「ことり、本当にお久しぶりですね…!」
希「ことりちゃ…」
トントン
希「…!」ピク
絵里「あら、遅いじゃない?」ニコ
「迷ったの!この辺り道が複雑すぎるのよ…」
527: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:51:44.12 ID:JNCbqyCH.net
希「…っ、」クルッ
にこ「希。久しぶりね」
希「にこ…っち……」ポロポロ
ギュッッ
にこ「っと…。もう、思いっきりきたわね」
希「あのねっ…うち頑張ってるよ」
にこ「うん…」
希「もう前みたいに…弱いうちやない、んよ」
にこ「…ねぇ。こっち向いて」
希「どうし…、んむっ」
チュッ
にこ「ただいま、希」ニコ
希「おかえり…にこっち」ニコ
528: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:52:18.53 ID:JNCbqyCH.net
真姫「…さぁ先に入ってるわよ!これ予約してるんでしょ?」
穂乃果「え…あぁ!そうだった!」
ことり「今日は朝までコースだもんね♪」
凛「にこちゃん、元気そうで良かったね」
花陽「ふふっ。そうだね」
海未「絵里…行きましょう。私のお酌をして頂きたいので」
絵里「へぇ。珍しい…今日は飲むのね?」
海未「せっかくの同窓会なので。少しだけ」
絵里「…そうね。きっと今夜は素晴らしいものになるわ」ニコ
529: 名無しで叶える物語(鮒寿司)@\(^o^)/ 2016/05/09(月) 03:54:51.41 ID:JNCbqyCH.net
色々書いた中で結局これにしました
保守レス感謝、おわり
希「日曜日やし一緒にどっかいかへん?」にこ「あー。無理」