1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:02:49.80 ID:MOdSeJ0s0

――おしゃれなカフェ――

北条加蓮「ねー、藍子」

高森藍子「何ですか? 加蓮ちゃん」

加蓮「加蓮ちゃんって何だと思う?」

藍子「……?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1580720569




2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:03:31.00 ID:MOdSeJ0s0


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:04:00.14 ID:MOdSeJ0s0

藍子「よく分かりませんけれど……。加蓮ちゃんの、イメージ? とかを答えればいいんですよね?」

藍子「それなら、そうですね――」

加蓮「あ、待って。ちょっとタンマ。こう……いっぱい言ってくれそうにしてるのは嬉しいんだけどさ」

藍子「はい」

加蓮「一言限定。ひとくち紹介的な? ビシッと決める感じでお願いっ」

藍子「な、なるほど。それはちょっぴり難しい注文ですね……」

加蓮「加蓮ちゃんについて語るのは、また今度、別の機会にね?」

藍子「分かりました。でも、どこで語ればいいでしょうか……。う~ん……。LIVEのMCパートとか? それとも、ラジオかな?」

藍子「ラジオでお時間、頂けるかなぁ……。前に加蓮ちゃんのお話をしようとした時は、すっごく時間がかかってしまって、みなさんにご迷惑をおかけしてしまいました」

藍子「あの時みたいにならないよう、スタッフさんと頑張ってお話してみなきゃっ」

加蓮「……そっちを真剣に考えるんじゃなくて。私が聞きたいのは、藍子から見た加蓮ちゃんのイメージってヤツなんだけど?」

藍子「そういえばそうでしたねっ」

加蓮「それとラジオのそういうコーナーなら止めはしないけど、LIVE中はやめときなさい。合同LIVEならまだしも。他のアイドルの話じゃなくて、藍子の話を聞きに来てくれてる人達なんだからね?」

藍子「あっ……」

加蓮「ま、それも藍子ちゃんらしいって言われるだろーけど。そういうところは、ね?」

藍子「は~いっ。ごめんなさい、加蓮ちゃん」



4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:04:29.97 ID:MOdSeJ0s0

藍子「加蓮ちゃんを一言で、ですか……。加蓮ちゃんを一言で――」

加蓮「……アイドル、っていうのも禁止で」

藍子「……わがままっ」プクー

加蓮「言おうとしてた?」

藍子「言おうとしていましたよ。だって、やっぱり最初に思いつくのがそれですから」

加蓮「今日はわがままモードの加蓮ちゃんだもん」

藍子「……。何かあったんですか?」

加蓮「……やっぱ分かる?」

藍子「はい。なんとなく」

加蓮「そか」



5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:05:00.03 ID:MOdSeJ0s0

藍子「……、」

加蓮「まだー?」

藍子「……加蓮ちゃんを、一言で。ですよね。……アイドル以外だと、なかなか思いつきませんね」

加蓮「あと5分以内に答えないと罰ゲーム」

藍子「ええっ。そ、それでは……。今を歩いている人、でどうでしょうか?」

加蓮「……歩いている人?」

藍子「私、加蓮ちゃんってよく走っているように見えるんです」

加蓮「……?? いや走ってないけど……。そんなみんなみたいにドタバタしてたら、すぐバテちゃうし」

藍子「ううん。そういうことではなくて」

加蓮「たとえ話?」

藍子「そうです。たとえのお話。加蓮ちゃんは、いつもどこか目標に向かって走り続けていて、追いつくのが少し大変で――」

藍子「ううん、でも、待ってって言ったら、加蓮ちゃんはいつも待ってくれますよねっ」

藍子「そうして、誰かと足並みを揃えてあげることもあるけれど――そうではない時は、いつもどこかに走り続けているのかな? って。私には、そんな感じに見えます」

加蓮「ふうん……。走り続けてる、か……」

藍子「……違いましたか?」

加蓮「ふふっ。違うも何も。藍子が見ている私なんでしょ? それに違うって言うのも、ちょっと変じゃない?」



6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:05:30.30 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「ただ、走り続けてるって話なら……私の中だと、それって私より凛とかのイメージかなぁ、って思っちゃって」

藍子「凛ちゃん?」

加蓮「アイドルの最先端を走ってる感じ。それこそ追いつくのが大変でさー……。隣に並んだつもりでいても、すぐに追い抜かれて、いつも背中を追ってばっかり」

加蓮「ふふっ。これでも色々成長したつもりだけど、なんだか悔しいなぁ」

藍子「くすっ」

加蓮「って。藍子から見て私が走ってるなら、一言は"歩いている人"じゃなくて"走ってる人"にならない?」

藍子「今のお話は、前までの加蓮ちゃんですよ。今の加蓮ちゃんは、歩いているなぁ、って」

加蓮「何それー。お前最近サボってるなって言いたいの? だから凛に追いつけないと?」

藍子「違いますよ~。行きたい場所を見つけて、そこを目指しているのは、昔の加蓮ちゃんも今の加蓮ちゃんも同じだと思います。けれど……」

藍子「最近の加蓮ちゃんは、無理しないで、自分のペースで歩いているな、って♪」

加蓮「ふぅん……?」

藍子「だから、見ていてハラハラしなくなっちゃいました。それに、隣に並ぼうと思ったら、並べそうとも思って……だから、前より距離が近く感じて――」

藍子「あっ、でも、ちょっと目を離してしまうと、やっぱり加蓮ちゃんはすぐに走って行っちゃうんです」

加蓮「あははっ。何そのやんちゃな子ー」

藍子「くすっ♪」



7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:06:00.32 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「なんか好きかも。走ってるんじゃなくて、歩いてる自分」

藍子「そうですか? それなら、よかった」

加蓮「加蓮ちゃんのことが好きな加蓮ちゃん。うんっ。違和感やばいね!」

藍子「あはは……。まあまあ。じゃあ、変に感じなくなるまでもっと好きになっちゃいましょう!」

加蓮「それはさすがにちょっと……。その分はほら、藍子が私のこと好きになって?」

藍子「わ……」

加蓮「…………今のナシで」

藍子「分かりました。加蓮ちゃんの分まで、加蓮ちゃんのこと、もっと好きになりますね」

加蓮「ナシでって言ったよね!?」

藍子「えへ♪」



8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:06:30.27 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「で」

藍子「それで」

加蓮「藍子の例えで言うとさ。なんか加蓮ちゃんが迷子になってるっぽくて」

藍子「迷子」

加蓮「オーディションにさー。落ちた」

藍子「……、」

加蓮「バレンタインのCMの。オーディション。落ちたの」

藍子「……、そうなんですね」

加蓮「ん」

藍子「……」

加蓮「……」



9: ※第13話 2020/02/03(月) 18:07:00.36 ID:MOdSeJ0s0

藍子「……、どうして落ちちゃったんですか?」

加蓮「うっわ冷た。藍子、いつからそんな冷たい子になっちゃったの? 普通ここはまずドンマイとか励ますとこからじゃないの!?」

藍子「き、聞いてほしそうな顔をしているのは加蓮ちゃんじゃないですか! またそういうことを!」

加蓮「ホント藍子のそれズルだよ! 人の顔見てすぐ見抜いて! ちょっとくらいこう、間違えなさいよ!」

藍子「間違えたら落ち込むの加蓮ちゃんでしょ!」

加蓮「そうだけど!?」

藍子「開き直らないでくださいっ」

加蓮「言っとくけどね!? 藍子みたいに泣きそうになったりとかしてないんだからね!?」

藍子「それいつのお話ですか~っ!」

加蓮「ぐぬぬ……」

藍子「む~……」



10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:08:01.50 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「……ハァ」

加蓮「らしくないんだってさ」

藍子「らしくない……?」

加蓮「加蓮ちゃんらしくない、って言われたの。そのオーディションはさ。甘酸っぱいのとかじゃなくて、クールなバレンタインって感じにしたかったみたいで」

加蓮「私もモバP(以下「P」)さんからそういうのは聞いてたから、そういう風に魅せたんだけど」

加蓮「らしくない、って。クールさが足りない。鋭い感じが全然ない、って」

加蓮「……期待していた、正直本命は君だった、もうちょっとイメージ通りにやってくれると思ってた、って。……失望されちゃった」

藍子「……、」

加蓮「最初は監督さんが勝手なこと言ってるだけだって思ったんだけど、後からPさんと話したら、Pさんも似たことを言うの。今の加蓮は少し変わった、だって」

加蓮「Pさんは、それを褒めてくれたんだけど……」

加蓮「監督さんだって、テキトーに言ったんじゃなくて、多分マジで失望したんだろうなって……。そんな目をしてたなって」

加蓮「分かるから……ちょっと、ね。落ち込んでる……のとは違ってて、腹が立つって訳でもなくて、……そう、迷子」



11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:08:30.63 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「……でも、勝手な話と言えば勝手な話だよね。勝手に私のイメージとか造っちゃって。現実が違ったからって、自分で失望して。それを人に向けて、傷つけるなんて……」

藍子「…………」

加蓮「ま、今回ばかりは私が悪いんだけどね。アイドルが期待に応えられなかったんだし」ハァ

藍子「……加蓮ちゃん」

加蓮「そーいうお話。だからさ。加蓮ちゃんって何だと思う? って聞いたの。藍子なら、迷子の加蓮ちゃんの手を引いてくれるかな? なんて」

加蓮「そしたら藍子が、予想以上にいいこと言ってくれるし?」

加蓮「誰がそこまで望んだかってのっ。傷を舐めてくれるだけでいいのに、ご丁寧に治療までしちゃって」

藍子「……もうっ。そこは素直に、ありがとう、って言ってくださいよ」

加蓮「そこで素直にならないのが加蓮ちゃんらしさだと加蓮ちゃんは思うなー」

藍子「だから、開き直らないでくださいっ」



12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:09:00.45 ID:MOdSeJ0s0

藍子「そう考えると……それってなんだか、難しいお話ですよね」

藍子「加蓮ちゃん、ここのところ色々あって……ほら、前よりずっと丸くなって。すっごく優しい笑顔を魅せるようになって」

藍子「私は、それってすごくいいことだなって思っていました」

藍子「みんなが……きっとPさんも、それにファンのみなさんも、アイドルのみんなも、加蓮ちゃんのことを前よりも好きになる気持ちも分かるなぁ、なんてっ」

藍子「でも、それって見方を変えると、前の加蓮ちゃんとは違う人になっちゃったようにも見えるんですね」

加蓮「ん」

藍子「その監督さんは、きっと……。以前の加蓮ちゃんに、心を惹かれていたのかもしれません」

加蓮「……そーいうことだろうね」

藍子「それでも私は、やっぱり、加蓮ちゃんが変わっていくこと、成長していくことって、とてもいいことだと思いますよ?」



13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:09:31.22 ID:MOdSeJ0s0

藍子「……でも」

加蓮「ん。言ってみて?」

藍子「でも私、監督さんの気持ちも少しだけ分かってしまいます」

藍子「確かに……。最近の加蓮ちゃんは、昔の加蓮ちゃんと比べて、クールな部分や、良い意味で冷たいような――大人みたいな格好良さが、あまりありませんよね。隣にいる女の子、って感じがします。前よりも、ずっと」

藍子「今まで、それが悪いことだなんて全然思わなかったけれど――」

藍子「もしも……例えば数ヶ月前の私が、今の加蓮ちゃんとお話したら」

藍子「……ほんの、ほんの少しですよ?」

藍子「変だな、って思ってしまうかも」

藍子「あはは……。ごめんなさいっ。私の方こそ、勝手なお話をしてしまって」

加蓮「いいよ。藍子の言ってることも分かる。……分かるから、私の目を見て? その程度のことで傷ついたりしないから」

藍子「ん……」

加蓮「ふふっ。あ、ちょっぴり残念。今の藍子にならにらめっこで勝ってたかもしれないのにっ。余計なこと言っちゃったじゃん!」

藍子「……。……もう。何ですか、それ~」



14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:10:00.14 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「ま、それこそ1回のオーディションに落ちたくらいで傷ついたりする加蓮ちゃんじゃないし? 悔しいけど、悔しいってだけだもん。大丈夫大丈夫」

藍子「…………本当はさっきまで泣きそうな顔してたのに」ボソ

加蓮「あァ!?」

藍子「ひゃ。え、ええっと……。……さっきまで泣きそうな顔してたのに~っ!」

加蓮「誰が堂々と言えって言ったのよ!!」

藍子「ひゃ~っ」

加蓮「馬鹿じゃないの!? なんなの、なんで私を怒らせたいの!?」

藍子「ま、まあまあ。まあまあ。落ち着きましょ? 落ち着いて、そう、難しいお話の後には、甘いものでも飲んでリラックスしましょうっ」

加蓮「ぜー、ぜー……。ったく!」

藍子「ほっ……。すみませ~ん」

加蓮「……どうしよ藍子。店員さんの顔を見たら、今ものすっごく店員さんのコーヒーが飲みたくなっちゃった」

藍子「えっ? では、それなら――あっ、待ってください店員さん。今すぐ厨房に行きたくなるくらい嬉しかったのは分かりますけど私の注文も聞いてください~っ」



15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:10:30.04 ID:MOdSeJ0s0

……。

…………。

(結局、2人そろってコーヒーを注文しました)

加蓮「合わせなくてよかったよ?」

藍子「だって、私だって急にコーヒーをもらいたくなったからっ」

加蓮「そっか」

藍子「ずず……」

加蓮「んー……」

藍子「ふうっ……♪」

加蓮「んーっ」ノビ

加蓮「……なんかすっごく頭がすっきりしちゃった」

藍子「よかったですね、加蓮ちゃん」



16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:11:00.39 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「なのに藍子に丸め込まれたって感じがするんだけど?」

藍子「そんなことしていませんよ~?」

加蓮「しかも、これを機に他のこともいっぱい愚痴ってやろうって思ってたのに。そーいう気分じゃなくなったー」

藍子「えぇ……」

加蓮「藍子。私の代わりに何か愚痴ってよ。何かないの? 不満に思ってることとか」

藍子「……加蓮ちゃんが理不尽なことを言ってくることが、今一番の不満です」

加蓮「…………」スッ

藍子「こっち見てください」



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:11:30.25 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「ずず……。ふー。ごちそうさまでした」パン

藍子「私も。ごちそうさまでした!」

加蓮「……改めて考えると、今日の私ってちょっと面倒くさかった?」

藍子「そうかもしれませんね♪」

加蓮「あ、これもっと面倒くさいこと言ってもいいっぽい」

藍子「どうしてそうなるんですか。……加蓮ちゃんが言いたがっていることなら聞きますけれど、家に帰った後で、言わなければよかった、なんて思っても知りませんよ?」

加蓮「え、何。なんでこの子、私がたまーに枕に顔埋めてぶつぶつ言ってるってことを的確に見抜いてくんの?」

藍子「加蓮ちゃんのことですから♪」

加蓮「えー……」



18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:12:00.13 ID:MOdSeJ0s0

藍子「私も、ときどき考えてしまいます。加蓮ちゃんにこれを言ってよかったのかな、ってこと……」

藍子「あの時の加蓮ちゃんは平気そうにしていたけれど、実は落ち込んでたりしてなかったかな? なんて」

加蓮「藍子にしては珍しいね」

藍子「私だって、色々考えるんですよ? それに加蓮ちゃん、電話したら怒っちゃうし……」

加蓮「電話で話すと会いたくなるからヤダ」

藍子「あはは……」

加蓮「ま、安心しなさい。そういう方面で藍子に感情を隠すことなんて無いし」

藍子「よかった。……くすっ♪」



19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:12:30.33 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「む。何。分かってて言ったの?」

藍子「違いますよ。……ね、加蓮ちゃん。今の言葉、ぜんぶそのまま、加蓮ちゃんにお返ししちゃいますっ」

加蓮「……?」

加蓮「……」

加蓮「……あぁ、そういうこと」

藍子「そういうことっ」

加蓮「なんか今日の藍子、ものすごく手強いね」

藍子「加蓮ちゃんが落ち込んでしまっているからかもしれませんね」

加蓮「何それー」

藍子「そういうことっ」

加蓮「……ハマったの?」

藍子「ちょっぴりだけ?」



20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:13:00.87 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「でもさ……。落ち込んでることとか、何かに失敗したことって、本当は理由にしちゃダメなんだよね」

加蓮「それこそ私の勝手な事情だもん。藍子からしたら、そんなの知るかー! って話だよ」

藍子「う~ん……。そうかもしれませんけれど、でも、そこまで自分に厳しくなくてもいいと思いますよ?」

藍子「落ち込んでいることや、失敗したことを理由にする日があってもいいじゃないですか」

藍子「それで、また前を向くことができるならっ」

藍子「その日、その時、ほんの一瞬だけ、加蓮ちゃんの好きではない加蓮ちゃんになってしまってもいいのかもしれません」

藍子「……それでも、受け止めますから。……ねっ?」

加蓮「……、」

加蓮「……ん」

藍子「はいっ。……あ、店員さん」

加蓮「……遅いよー? って藍子が言ってた」

藍子「言ってないですっ、って、本当に言っていませんから! そんなに謝ろうとしないでください……! もうっ、加蓮ちゃん!」

加蓮「たははっ」



21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:13:32.74 ID:MOdSeJ0s0


□ ■ □ ■ □


加蓮「逆に、よかったって思うこともあるんだ」

藍子「よかったこと……。オーディションのお話の続きですか?」

加蓮「うん。落ちてよかった――なんて言ったら、お仕事を持ってきてくれたPさんに失礼か……。これ、Pさんには内緒ね?」

藍子「もちろんっ。それに、オーディションに合格できなかったのは、残念かもしれませんけれど……」

藍子「それで加蓮ちゃんが、何か分かったり、成長できたのなら、Pさんだってきっと喜んでくれますよ」

加蓮「そうかな」

藍子「成功することだけが成功ではありません。失敗も重ねて、一歩ずつ前に進むことが大事――」

藍子「なんて、これは受け売りですけれど……」

加蓮「失敗も重ねて、か」

藍子「もしかして、加蓮ちゃんには、分かっているお話でしたか?」

加蓮「……かもね?」

藍子「そうですよね。ごめんなさいっ」



22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:14:00.36 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「でもさー、こういうことって、言われるべき時に言われないと分かんないでしょ」

加蓮「それこそオーディションで監督さんに失望されちゃった時にも、そうやって気付けたことがあるんだから」

藍子「ふんふん」

加蓮「成長……。できてるのかな?」

加蓮「ううん。変わることはできてるって自覚してる」

加蓮「でも、その先の道って、やっぱりまだ見えてこない」

加蓮「未来にいる自分が、ファンの望む私かどうか」

加蓮「北条加蓮というアイドルとして求められてるものか……。ちょっぴり不安かもね」

藍子「……加蓮ちゃん」

加蓮「なんてっ。ま、もしも求められてないなら求めさせてやるっ。あの監督さんだって、今の私こそが北条加蓮だ! って。言い切ってやるんだから」

加蓮「今の私を好きになれって、全世界に言ってやるもんっ」

藍子「わあっ……。かっこいいっ」



23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:14:30.19 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「藍子もそれくらい言ってやりなさいよー?」

藍子「私には、少し難しいかも……。でも、それくらいの気持ちになることが大事ですよねっ」

加蓮「そーそー」

藍子「加蓮ちゃん。さっきの、加蓮ちゃんからの質問」

加蓮「ん?」

藍子「今の加蓮ちゃんがどう見えるか、っていう質問です。さっきは……加蓮ちゃんは駄目って言いましたけれど、やっぱりこう言わせてください」

藍子「加蓮ちゃんを一言で表すのなら、アイドルですっ」

藍子「加蓮ちゃん。自分の未来にいる自分を考えて、不安になったことが……加蓮ちゃん自身のことじゃなくて、アイドルとしてどう見られるか、ファンがどう思ってくれるかなんですよね?」

藍子「それって、心からアイドルだから言えることだと思うんです」



24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:15:00.35 ID:MOdSeJ0s0

藍子「だから加蓮ちゃんが駄目って言っても、私は加蓮ちゃんのこと、一言で言うなら"アイドル"だと思いますよ」

加蓮「へぇー……。そっか。ふふっ。それじゃダメって言っても?」

藍子「駄目って言ってもっ」

加蓮「そっか」

藍子「それこそ、加蓮ちゃんに……ええと、み、認めてもらいます。それこそが、私の知っている加蓮ちゃんなんです、って!」

加蓮「ふふっ。変なの」

藍子「……うぅ。分かってますもん」

加蓮「拗ねちゃった」

藍子「む~」

加蓮「あはははっ! ……ほら、その質問はもう終わった話なんだし、今から意地の張り合いをしよう、なんて顔しなくていいんだよ?」

藍子「そ、それもそうでしたね。なんだか、今から加蓮ちゃんと戦わないといけない気持ちになってしまっていました……」



25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:15:31.10 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「肩に力入れすぎー」

藍子「ゆっくり深呼吸……。すぅ~、はぁ~……。加蓮ちゃんも、一緒にっ」

加蓮「私も? しょうがないなー。すぅー、はぁー」

藍子「すぅ~、はぁ~」

加蓮「すぅー――あ、店員さん。店員さんも一緒にやる? ほら、藍子ちゃん式リラックス法。息を吸ってー、吐いてー。吸ってー」

加蓮「……あ、逃げた。あの店員さん、このままだとゆるふわ空間に呑まれてダメになるって悟って逃げた」

藍子「そ、そんな言い方しなくてもいいじゃないですか」

加蓮「ふふっ。……って、あれ? 店員さん、また来た」

藍子「ふんふん――ええっ!? 表札をCloseにする覚悟はできた、って――ええええ!? まだお昼です! 他にもまだお客さんが来るんですよ。閉めちゃ駄目ですっ!」

加蓮「あはははははっ!!」

藍子「加蓮ちゃんも、笑っていないで説得して~っ!」



26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:16:00.31 ID:MOdSeJ0s0

……。

…………。

藍子「ふぅ~……。よかった……」

加蓮「お疲れー」

藍子「もう。加蓮ちゃん?」

加蓮「やっぱ藍子には勝てないかぁ。ゆるふわ空間に何度も招待して、せっかくなら店長さんも巻き込まれてみる? って誘ってみたのにさ」

藍子「もう!」

加蓮「まあまあ。あの店員さんのカフェにかける情熱とかが改めて分かったってことでっ」

藍子「もぉ~……」

加蓮「色々言ったけど、加蓮ちゃんのお話はこれにておしまい。今日はホントにこの話をするつもりで来たから、他にネタとかはないんだよね」

加蓮「藍子は何かある? 話したいこととか、愚痴とか。他のみんなに言えないことでもいいよー?」

藍子「そうですね~……。今は、あんまりないかな?」

加蓮「そっか」



27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:16:30.47 ID:MOdSeJ0s0

藍子「加蓮ちゃんにお話したいことなら、あの日に色々お話しちゃいました」

加蓮「オーディションの前の日だよね。あの時はありがと、遅くまで付き合ってくれて」

藍子「ううん。……加蓮ちゃん、あんなに気合を入れてたのに。オーディション、残念でしたね……」

加蓮「いいっていいって。話したらもうなんか、終わったことって感じがしてきちゃった」

藍子「終わったこと」

加蓮「なかったこと、までとは言わないけどね」

藍子「よかった」

加蓮「あと、あれは気合を入れてたとかじゃなくてちょっと緊張してただけだからね?」

加蓮「しかも私はちょっと藍子と話せればよかっただけなのに。気付けば1時間も喋っててさー」

藍子「ごめんなさいっ。学校のことや、マフラーのこと、お話していたら楽しくなってきちゃって……」

加蓮「Pさん苦笑いしてたよねー。早く帰れ、って言えばいいのに。苦笑いしてばっかりで何も言ってこないし、怒りもしないで私達を家まで送ってってくれるし」



28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:17:03.38 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「あーあ。Pさん、相変わらず藍子には甘いんだから。私にはいっぱい口出しするのにさぁ」

藍子「……あの、加蓮ちゃん」

加蓮「なに?」

藍子「それ……。あの時のPさん、私にではなくて、加蓮ちゃんに……その、ほんの少しだけだと思いますっ。……加蓮ちゃんに、ほんの少しだけ、あきれちゃっていたみたいですよ?」

加蓮「……うん?」

藍子「ほら、あの時、Pさんが送っていってくれるってなって、加蓮ちゃんが荷物を取りにいったじゃないですか」

藍子「その、ほんの少しの間……加蓮ちゃんがいない間に、Pさんが言っていました」

藍子「あんなにレッスンをした後なのに元気だなぁ……って」

加蓮「…………あー」

藍子「すぐに、隣に私にいることに気づいて、やばいって顔をしちゃっていましたよ」

加蓮「なるほどねー」

加蓮「なるほどー」

加蓮「……なるほどねぇ」

藍子「あはは……。加蓮ちゃん。あんまり、いじわるはしないであげてくださいね?」

加蓮「大丈夫大丈夫。ちょっとコーヒーに大量の砂糖を入れるだけだから」

藍子「やめてあげてください!」



29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:17:30.58 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「ってかそれ。Pさんがやばいって顔したのって、私に聞かれたくなかったからで……さらに言えば、その時に藍子が側にいて、藍子が私に言いふらすかもって思ったからじゃない?」

藍子「へっ?」

加蓮「それ、私に言ってよかったの?」

藍子「…………あっ」

加蓮「じゃあ、一緒に砂糖を入れに行こっか」

藍子「し、しません。それはしませんっ。あ、あの、えっと……」

藍子「……聞かなかったことに――」

加蓮「一緒に砂糖を入れてあげたら、そうしてあげる」

藍子「そうまでしてPさんのコーヒーを甘くしたいんですか!?」

加蓮「あはははっ! ……っと、あれ? 電話だ」

加蓮「ちょっとごめんね、藍子」スクッ

藍子「はい、どうぞ」



30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:18:00.55 ID:MOdSeJ0s0

<もしもしー? あ、Pさん。どうしたの?
<ふんふん……


藍子(……うぅ、どうしよう。ついお話してしまいました。これがばれたら、Pさんと加蓮ちゃんが喧嘩をしてしまうかもしれません)

藍子(でも、だからといってPさんのコーヒーに砂糖を大量に入れるなんて……!)

藍子(そんなことをしたら、Pさんが! ……あれっ? Pさんがどうなってしまうんでしょう)


<……えっ!? それホント!?


藍子(?)チラ

藍子(……と、とにかく、なんだかものすごく良くないことになってしまいそうな予感がします)

藍子(そうならないためには――今の加蓮ちゃんを止められるのは、私だけっ!)

藍子(なんとしてでも、加蓮ちゃんを説得しなければなりません。でもどうしましょう?)

藍子(う~ん……)



31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/02/03(月) 18:18:54.56 ID:MOdSeJ0s0

加蓮「ただいまっ! ね、聞いてよ藍子っ」

藍子「写真――あ、はい。おかえりなさい、加蓮ちゃん。なんだかとってもご機嫌ですね」

加蓮「それが、落ちたオーディションの監督さんから連絡があって、私に他の仕事でやってほしいことがあるんだって!」

藍子「!」

加蓮「まだちらっとしか聞いてないんだけど、Pさんによると今の私っぽい役を回してもらえたって言ってたの!」

藍子「加蓮ちゃん……。よかったですねっ」

加蓮「ふふっ。ちょっと燃えてきちゃったかも……!」

藍子「事務所に行って、ミーティングにしますか?」

加蓮「んー……。ううん。とりあえずざっくりとしたイメージだけ聞いてるし、ここでしない? アイディア色々作って、Pさんに教えてびっくりさせちゃおうよっ」

藍子「……くすっ♪ では、そうしましょうかっ」

加蓮「うんうんっ」


<それで、どんな役なんですか?
<Pさんによるとね、春をイメージした――


【おしまい】


元スレ
SS速報VIP:北条加蓮「藍子と」高森藍子「くもりのち晴れのカフェで」