前作
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
白菊ほたると不思議体験その2
【モバマス】響子「混ぜる」ほたる「混ざる」
○2月3日夕刻/女子寮・泰葉ルーム
岡崎泰葉(読書中)「ふむふむ……わあ(ぱらぱら)」
泰葉「えっ、こうなっちゃうの。意外というかなんというか……」
関裕美「大変、大変だよ泰葉ちゃん!(ドアバターン)」
泰葉「わっ、どうしたのいきなり。ノックぐらいしてよ(わたわた)」
裕美「あれっ、今クッションの下に隠した本……」
泰葉「そ、そういうのの詮索はやめておこうよ。というか何か大変だったんじゃないの」
裕美「あ、そうだった! どうしよう、泰葉ちゃん。どうしよう」
泰葉「落ち着いて。ちゃんと話してくれなきゃ助言もできないよ」
裕美「そ、そうだよね。うん、落ち着く……あ、あのね」
泰葉「うん」
裕美「ほたるちゃんが、ほたるちゃんが消えちゃったの!」
泰葉「失踪!? 早くPさんに連絡しないと」
2: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:43:36 ID:fzw
裕美「あの、失踪と言えばそうだけど、違うの。違うの泰葉ちゃん」
泰葉「何が違うの」
裕美「だから。ほたるちゃんが消えたの」
泰葉「それは聞いた」
裕美「ほたるちゃんが節分の福豆を食らって消し飛んだの!!」
泰葉「待って待って。さすがにちょっと話が飲み込めない」
裕美「だから、消し飛んだの。こう、豆を食らってシュバシュバーって」
泰葉「本当にそれ、豆だったの?」
裕美「豆だよ。茄子さんが買ってきて、芳乃ちゃんが清めてくれた奴なんだけど」
泰葉「なんでそんな幸運の固まりみたいな物をほたるちゃんに叩き込もうと考えたの。ショック療法?」
裕美「叩き込んでないもん。事故だったの!」
泰葉「事故?」
裕美「うん、あのね……」
○回想/裕美ルーム
ほたる「わあっ、今年は私も一緒に『鬼は外』ってしていいんですか?」
裕美「うん。去年はいろいろあったもんね。今年もいいこといっぱいあるように、一緒に鬼は外したいなって」
ほたる「鬼は外ってするの、久しぶりです」
裕美「えっ、節分ってしなかったの」
ほたる「ふるさとでは毎年やってたんですが」
裕美「うん」
ほたる「東京に出てきてからはどの事務所でも鬼役ばっかりで」
裕美「その人たちに豆をぶつけてあげたい……」
ほたる「す、過ぎたことですから、過ぎたことですから」
裕美「うー」
ほたる「それより、一緒に豆まきしたいです」
裕美「そうだね。悪いことが寄ってこないよう、力一杯鬼は外しよう!」
ほたる「はい!」
裕美「せーの、鬼はー外!(ぽーい)」
ほたる「お、鬼はー外、えい!」つ===○
===○茄子「(ガチャ)こんばんは。もう豆まき始めて……」
裕美「あっ」
○===(カキーン)茄子「えっ」
ほたる「えっ」○===
ドカーン!!
茄子&裕美「ほ、ほたるちゃーん!?」
○回想終わり/再び泰葉ルーム
裕美「というわけでちょうど茄子さんが開けた扉に豆がカウンターされてほたるちゃんを直撃して」
泰葉「そんなことってある?」
裕美「あったんだもん!」
泰葉「それにしても、そっかー」
裕美「ど、どうしたの」
泰葉「裕美ちゃんとほたるちゃんが豆まきに誘ってくれなかったと知って、私は今ちょっと拗ねています」
裕美「ご、ごめんなさい」
泰葉「つーん」
裕美「だ、だって一緒に豆まきしようなんて、子供っぽいかなって思って……」
泰葉「つーん」
裕美「うう、泰葉ちゃーん」
泰葉「冗談冗談……それで、茄子さんは?」
裕美「自分のカウンターでほたるちゃんが消し飛んだのを見て卒倒しちゃって」
泰葉「oh……」
裕美「ねえ泰葉ちゃん、どうしよう。ほたるちゃんどこ行っちゃったのかな。もう会えないのかな(ぐすん)」
泰葉「うーん、心配ないと思う」
裕美「えっ、だってあんな風に吹き飛んで……」
泰葉「だって、節分の豆って鬼を殺したりするものじゃないもん。ただ追い出すだけのものだもん」
裕美「えっ、じゃあ今ほたるちゃんはどこに」
泰葉「たぶん普通に寮の表にいると思う」
裕美「あんな消え方したのに!?」
泰葉「そういうものなんだよ。古い民話でも、豆に当たった鬼は普通に痛がっておうちの外に逃げ出すんだよ」
裕美「もっとオカルトな感じかとおもってた」
泰葉「追い出されたはいいけど鬼も二月じゃ寒いから入れてもらえる家を探してウロウロして」
裕美「切ない」
泰葉「それで豆まきもできないぐらい貧乏なおじいさんとおばあさんの家に上がり込んでね」
裕美「おじいさんとおばあさんがピンチ!」
泰葉「ところがおじいさんたちは貧乏だから薪もなくて家の中も寒い」
裕美「その話はつらい人しか出てこないの?」
泰葉「そして寒い中枯れ枝を集めて囲炉裏に火を起こして暖を取らせてくれたおじいさんたちの親切に鬼は大感激」
裕美「よかった!」
泰葉「そのお礼に、おじいさんとおばあさんが死んだ後、地獄でその鬼たちが助けてくれるんだよ」
裕美「えっ、そんな親切なおじいさんたちが何故地獄に」
泰葉「貧乏で三途の川の渡し賃がなかったから」
裕美「貧乏ってそんなに悪いこと!?」
泰葉「でも、おじいさんたちが助けた鬼って実は閻魔大王の家来で地獄の刑罰担当だったから。おじいさんたちがつらい思いをしないよう助けてくれるんだよ」
裕美「ねえ、泰葉ちゃん」
泰葉「なあに」
裕美「そんなに偉い鬼が、なんで普通に豆で追い払われて寒い思いをしていたの?」
泰葉「ある立場で弱い人が、どこでも同じように弱い立場にいるとは限らないってことだよね」
裕美「成る程……でもおじいさんたちは結局地獄で暮らさなきゃいけないんだね」
泰葉「まあ最後はいろいろあって若返って生き返るんだけど」
裕美「いろいろありすぎじゃない?」
泰葉「とにかくそういうわけで、豆に追い出された者は普通に表に放り出されているはずなんだよ」
裕美「なるほどー……ねえ泰葉ちゃん」
泰葉「なあに?」
裕美「その話って、さっきクッションの下に隠した昔話の絵本に書いてあったの?」
泰葉「見られてた!?」
裕美「うん、ばっちり」
泰葉「うう、ちょっと格好つけようと思ったのに……」
裕美「いいじゃない。泰葉ちゃんの絵本好きはもう皆知ってるんだから」
泰葉「いいじゃない。私の絵本の話はどうでも。それよりほたるちゃんだよ」
裕美「あ、そう、そうだよね」
泰葉「ちょっと表に行ってみようか」
裕美「本当に居るといいんだけど……」
○10分後/女子寮前
ほたる「ううう、心細かったです(ズビー)」
裕美「本当に居た……!」
泰葉「今のズビーはガルズビのズビーじゃなくて鼻水の音だね。アイドルがしちゃいけない顔になりつつある……」
ほたる「よくわからないうちに何故か表に放り出されるし、何故か中には入れないし、スマホは例によって故障してるし、ぐすん」
裕美「入れないの? なんで」
ほたる「よく解らないけど、入ろうとすると見えない壁があるみたいに弾かれてしまうんです」
泰葉「そういえば鬼も一度追い出された家には戻れないし、そういうことなのかな」
ほたる「私、もう女子寮に戻れないんでしょうか」
泰葉「うーん。昔話だと、豆まきをしてなければ入れるんだよね」
裕美「あっ、それならもしかして、まだ豆まきをしてない部屋からなら入れるのかな」
泰葉「あ、それはいいアイデアかも」
裕美「でも、うーん……」
ほたる「裕美ちゃん、どうしたんてすか」
裕美「なんか、やだなって」
泰葉「嫌?」
裕美「だってそれじゃ、豆まきを避けて入るんじゃ、ほたるちゃんが本当に悪いものとか鬼みたいだもの」
泰葉「ああ、なるほど」
裕美「ほたるちゃんは私たちの大事な友達で、すてきな女の子だもん。一緒にいて嬉しい子なんだもん。鬼みたいに扱いたくないよ」
ほたる「裕美ちゃん……(ズビー)」
泰葉「しまらないなあ。まあ、表は寒いし、早く中に入ろうか」
ほたる「でも、どうやって」
泰葉「私がいろいろな民話を調べたところによると」
裕美「絵本で読んだの?」
泰葉「あんまりいじるなら助けてあげません」
裕美「ごめんなさい」
泰葉「よろしい……入れなくなった場所に追い出されたものが入るには、中の人にいいよって言ってもらえば良いんだよ」
裕美「それだけ? じゃあ、私たちが出迎えてあげればいいの?」
泰葉「だいたいそうなんだよね。中に居る人がいいよって言わないと、どんな強いものでも入ってこられないの。あと……ね、まだ豆ある?」
ほたる「はい、持ってます」
裕美「私も一応」
泰葉「じゃあ、一緒に『福は内』しようよ」
ほたる「福は内、ですか」
泰葉「友達で仲間だもん。来てくれるなら福だよ。私と裕美ちゃんが福は内ってやるから、ほたるちゃんがこっちに来て。それで」
ほたる「入ったら、いいんでかすか?」
裕美「うん。そしたら、どうぞお入りくださいって言うね」
泰葉「そういうこと」
ほたる「……」
裕美「ほたるちゃん?」
ほたる「ううん、なんでもないです。ただ……うれしいなって」
泰葉「はい、感動のシーンはあと。ほたるちゃんまた鼻水たれそうになってるから早くしよう」
ほたる「泰葉ちゃんたら、もう!」
泰葉「ほらほたるちゃん、始めるよ……福は内!」
裕美「ふくはーうち!! ほたるちゃん、入ってきてください!」
泰葉「福は内! 早く早く!」
ほたる「……もう一度ここに入っても、いいですか?」
泰葉「もちろんだよ。だって」
裕美「ほたるちゃんは絶対出て行ってほしくない、私たちの福だもの」
ほたる「……はい!」
○後日/泰葉ルーム
千鶴「そう。私抜きでそんなことしてたんだ」
泰葉「千鶴ちゃんお仕事で外だったじゃない」
千鶴「一声かけてくれたってよかったのに(ぷくー)」
裕美「急なことだったから、その」
千鶴「つーんだ」
泰葉「これは千鶴ちゃんにも『福は内』しないとダメかな」
千鶴「なんです『福は内』って」
泰葉「つまりこうだよ。裕美ちゃん、ほたるちゃん、やれ!」
裕美「千鶴ちゃん大好き!(ぎゅー)」
ほたる「いつだって大好きです!(ぎゅーっ)」
千鶴「ああっ、こんなのずるいけど嬉しい……!」
泰葉「ずるくていいじゃない。友達を外にやっちゃうよりは、ずっと」
ほたる「……はい!」
(おしまい)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
元スレ
裕美「あの、失踪と言えばそうだけど、違うの。違うの泰葉ちゃん」
泰葉「何が違うの」
裕美「だから。ほたるちゃんが消えたの」
泰葉「それは聞いた」
裕美「ほたるちゃんが節分の福豆を食らって消し飛んだの!!」
泰葉「待って待って。さすがにちょっと話が飲み込めない」
裕美「だから、消し飛んだの。こう、豆を食らってシュバシュバーって」
泰葉「本当にそれ、豆だったの?」
裕美「豆だよ。茄子さんが買ってきて、芳乃ちゃんが清めてくれた奴なんだけど」
泰葉「なんでそんな幸運の固まりみたいな物をほたるちゃんに叩き込もうと考えたの。ショック療法?」
裕美「叩き込んでないもん。事故だったの!」
泰葉「事故?」
裕美「うん、あのね……」
3: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:44:10 ID:fzw
○回想/裕美ルーム
ほたる「わあっ、今年は私も一緒に『鬼は外』ってしていいんですか?」
裕美「うん。去年はいろいろあったもんね。今年もいいこといっぱいあるように、一緒に鬼は外したいなって」
ほたる「鬼は外ってするの、久しぶりです」
裕美「えっ、節分ってしなかったの」
ほたる「ふるさとでは毎年やってたんですが」
裕美「うん」
ほたる「東京に出てきてからはどの事務所でも鬼役ばっかりで」
裕美「その人たちに豆をぶつけてあげたい……」
ほたる「す、過ぎたことですから、過ぎたことですから」
裕美「うー」
ほたる「それより、一緒に豆まきしたいです」
裕美「そうだね。悪いことが寄ってこないよう、力一杯鬼は外しよう!」
ほたる「はい!」
4: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:44:27 ID:fzw
裕美「せーの、鬼はー外!(ぽーい)」
ほたる「お、鬼はー外、えい!」つ===○
===○茄子「(ガチャ)こんばんは。もう豆まき始めて……」
裕美「あっ」
○===(カキーン)茄子「えっ」
ほたる「えっ」○===
ドカーン!!
茄子&裕美「ほ、ほたるちゃーん!?」
5: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:44:52 ID:fzw
○回想終わり/再び泰葉ルーム
裕美「というわけでちょうど茄子さんが開けた扉に豆がカウンターされてほたるちゃんを直撃して」
泰葉「そんなことってある?」
裕美「あったんだもん!」
泰葉「それにしても、そっかー」
裕美「ど、どうしたの」
泰葉「裕美ちゃんとほたるちゃんが豆まきに誘ってくれなかったと知って、私は今ちょっと拗ねています」
裕美「ご、ごめんなさい」
泰葉「つーん」
裕美「だ、だって一緒に豆まきしようなんて、子供っぽいかなって思って……」
泰葉「つーん」
裕美「うう、泰葉ちゃーん」
泰葉「冗談冗談……それで、茄子さんは?」
裕美「自分のカウンターでほたるちゃんが消し飛んだのを見て卒倒しちゃって」
泰葉「oh……」
6: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:45:15 ID:fzw
裕美「ねえ泰葉ちゃん、どうしよう。ほたるちゃんどこ行っちゃったのかな。もう会えないのかな(ぐすん)」
泰葉「うーん、心配ないと思う」
裕美「えっ、だってあんな風に吹き飛んで……」
泰葉「だって、節分の豆って鬼を殺したりするものじゃないもん。ただ追い出すだけのものだもん」
裕美「えっ、じゃあ今ほたるちゃんはどこに」
泰葉「たぶん普通に寮の表にいると思う」
裕美「あんな消え方したのに!?」
泰葉「そういうものなんだよ。古い民話でも、豆に当たった鬼は普通に痛がっておうちの外に逃げ出すんだよ」
裕美「もっとオカルトな感じかとおもってた」
泰葉「追い出されたはいいけど鬼も二月じゃ寒いから入れてもらえる家を探してウロウロして」
裕美「切ない」
泰葉「それで豆まきもできないぐらい貧乏なおじいさんとおばあさんの家に上がり込んでね」
裕美「おじいさんとおばあさんがピンチ!」
泰葉「ところがおじいさんたちは貧乏だから薪もなくて家の中も寒い」
裕美「その話はつらい人しか出てこないの?」
泰葉「そして寒い中枯れ枝を集めて囲炉裏に火を起こして暖を取らせてくれたおじいさんたちの親切に鬼は大感激」
裕美「よかった!」
7: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:45:49 ID:fzw
泰葉「そのお礼に、おじいさんとおばあさんが死んだ後、地獄でその鬼たちが助けてくれるんだよ」
裕美「えっ、そんな親切なおじいさんたちが何故地獄に」
泰葉「貧乏で三途の川の渡し賃がなかったから」
裕美「貧乏ってそんなに悪いこと!?」
泰葉「でも、おじいさんたちが助けた鬼って実は閻魔大王の家来で地獄の刑罰担当だったから。おじいさんたちがつらい思いをしないよう助けてくれるんだよ」
裕美「ねえ、泰葉ちゃん」
泰葉「なあに」
裕美「そんなに偉い鬼が、なんで普通に豆で追い払われて寒い思いをしていたの?」
泰葉「ある立場で弱い人が、どこでも同じように弱い立場にいるとは限らないってことだよね」
裕美「成る程……でもおじいさんたちは結局地獄で暮らさなきゃいけないんだね」
泰葉「まあ最後はいろいろあって若返って生き返るんだけど」
裕美「いろいろありすぎじゃない?」
泰葉「とにかくそういうわけで、豆に追い出された者は普通に表に放り出されているはずなんだよ」
8: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:46:04 ID:fzw
裕美「なるほどー……ねえ泰葉ちゃん」
泰葉「なあに?」
裕美「その話って、さっきクッションの下に隠した昔話の絵本に書いてあったの?」
泰葉「見られてた!?」
裕美「うん、ばっちり」
泰葉「うう、ちょっと格好つけようと思ったのに……」
裕美「いいじゃない。泰葉ちゃんの絵本好きはもう皆知ってるんだから」
泰葉「いいじゃない。私の絵本の話はどうでも。それよりほたるちゃんだよ」
裕美「あ、そう、そうだよね」
泰葉「ちょっと表に行ってみようか」
裕美「本当に居るといいんだけど……」
9: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:46:47 ID:fzw
○10分後/女子寮前
ほたる「ううう、心細かったです(ズビー)」
裕美「本当に居た……!」
泰葉「今のズビーはガルズビのズビーじゃなくて鼻水の音だね。アイドルがしちゃいけない顔になりつつある……」
ほたる「よくわからないうちに何故か表に放り出されるし、何故か中には入れないし、スマホは例によって故障してるし、ぐすん」
裕美「入れないの? なんで」
ほたる「よく解らないけど、入ろうとすると見えない壁があるみたいに弾かれてしまうんです」
泰葉「そういえば鬼も一度追い出された家には戻れないし、そういうことなのかな」
ほたる「私、もう女子寮に戻れないんでしょうか」
泰葉「うーん。昔話だと、豆まきをしてなければ入れるんだよね」
裕美「あっ、それならもしかして、まだ豆まきをしてない部屋からなら入れるのかな」
泰葉「あ、それはいいアイデアかも」
裕美「でも、うーん……」
ほたる「裕美ちゃん、どうしたんてすか」
裕美「なんか、やだなって」
泰葉「嫌?」
10: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:47:11 ID:fzw
裕美「だってそれじゃ、豆まきを避けて入るんじゃ、ほたるちゃんが本当に悪いものとか鬼みたいだもの」
泰葉「ああ、なるほど」
裕美「ほたるちゃんは私たちの大事な友達で、すてきな女の子だもん。一緒にいて嬉しい子なんだもん。鬼みたいに扱いたくないよ」
ほたる「裕美ちゃん……(ズビー)」
泰葉「しまらないなあ。まあ、表は寒いし、早く中に入ろうか」
ほたる「でも、どうやって」
泰葉「私がいろいろな民話を調べたところによると」
裕美「絵本で読んだの?」
泰葉「あんまりいじるなら助けてあげません」
裕美「ごめんなさい」
泰葉「よろしい……入れなくなった場所に追い出されたものが入るには、中の人にいいよって言ってもらえば良いんだよ」
裕美「それだけ? じゃあ、私たちが出迎えてあげればいいの?」
泰葉「だいたいそうなんだよね。中に居る人がいいよって言わないと、どんな強いものでも入ってこられないの。あと……ね、まだ豆ある?」
ほたる「はい、持ってます」
裕美「私も一応」
泰葉「じゃあ、一緒に『福は内』しようよ」
ほたる「福は内、ですか」
11: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:47:27 ID:fzw
泰葉「友達で仲間だもん。来てくれるなら福だよ。私と裕美ちゃんが福は内ってやるから、ほたるちゃんがこっちに来て。それで」
ほたる「入ったら、いいんでかすか?」
裕美「うん。そしたら、どうぞお入りくださいって言うね」
泰葉「そういうこと」
ほたる「……」
裕美「ほたるちゃん?」
ほたる「ううん、なんでもないです。ただ……うれしいなって」
泰葉「はい、感動のシーンはあと。ほたるちゃんまた鼻水たれそうになってるから早くしよう」
ほたる「泰葉ちゃんたら、もう!」
泰葉「ほらほたるちゃん、始めるよ……福は内!」
裕美「ふくはーうち!! ほたるちゃん、入ってきてください!」
泰葉「福は内! 早く早く!」
ほたる「……もう一度ここに入っても、いいですか?」
泰葉「もちろんだよ。だって」
裕美「ほたるちゃんは絶対出て行ってほしくない、私たちの福だもの」
ほたる「……はい!」
12: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:47:47 ID:fzw
○後日/泰葉ルーム
千鶴「そう。私抜きでそんなことしてたんだ」
泰葉「千鶴ちゃんお仕事で外だったじゃない」
千鶴「一声かけてくれたってよかったのに(ぷくー)」
裕美「急なことだったから、その」
千鶴「つーんだ」
泰葉「これは千鶴ちゃんにも『福は内』しないとダメかな」
千鶴「なんです『福は内』って」
泰葉「つまりこうだよ。裕美ちゃん、ほたるちゃん、やれ!」
裕美「千鶴ちゃん大好き!(ぎゅー)」
ほたる「いつだって大好きです!(ぎゅーっ)」
千鶴「ああっ、こんなのずるいけど嬉しい……!」
泰葉「ずるくていいじゃない。友達を外にやっちゃうよりは、ずっと」
ほたる「……はい!」
(おしまい)
13: ◆cgcCmk1QIM 20/02/03(月)18:48:01 ID:fzw
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
白菊ほたる「えっ、今年は私も『鬼は外』ってしていいんですか」