1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:17:10.60 ID:5WDhDwg60

京子が綾乃と付き合い始めた。
私はショックを受けた。
確かに京子と私は唯の幼馴染でそれ以上それ以下でもない。
でも、私はその幼馴染に仄かな恋心を抱いていた。
恋人同士として愛し合える関係を望んでいた。

だけど告白できなかった。いや、しなかった。
京子が私を唯の幼馴染としてしか見ていない事はもう分かっていたから。

綾乃には別に何の恨みもない。むしろ、幸せになってほしい。
必死の告白が実ってやっと結ばれたのだから。
そして私の知らないような京子をたくさん見てほしい。


それでも。
京子が私から離れていった事は変えようもない事実で。
京子が埋まっていた穴が開き、私の心は空っぽになった。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:18:34.40 ID:5WDhDwg60

数日後、ちなつちゃんに告白された。
私は即、OKした。

ちなつちゃんの好意には前々から気付いていた。
私はそこまで鈍感じゃない。

私は愛に飢えていた。
京子が抜けた空っぽの心を満たしてくれる、本当の愛を。
愛をくれる人は誰でもよかった。
自分を恋人として愛してくれる人、それがたまたまちなつちゃんだった。それだけの事だった。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:19:24.07 ID:5WDhDwg60

ちなつちゃんと付き合い始めた私は、病的に彼女を求めた。
京子と綾乃から逃げるように。

初体験を済ませた後も、何度も何度もえっちを繰り返した。
家で、学校で、誰もいない部室で、喘いで、達して、愛を確かめ合った。
授業をさぼってラブホにも行った。
ごらく部の事なんてどうでもよくなっていた。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:20:21.73 ID:5WDhDwg60

最初の頃は喜んでいたちなつちゃんも次第に嫌そうな顔をし始めた。
それでも私は彼女と体を重ねた。
そして彼女もそれを受け入れた。
いや、受け入れざるを得なかった。

私はちなつちゃんの好意を利用して一方的に言う事を聞かせていた。
それはもはや「恋人」という名の主従関係。

えっちもただ乱暴に、一方的に私が愛を求めるだけのものへと変わっていった。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:22:34.15 ID:5WDhDwg60

京子達からも心配するようなメールが来た。
でも私はそれからも逃げた。
ちなつちゃんにも返信しないように念を押した。
姉のともこさんや両親にも「心配しないで」と伝えてほしいと頼んだ。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:24:04.25 ID:5WDhDwg60

学校に来なくなってから一カ月たったある日、一通の電話があった。
親からだった。

「大至急学校に来い」と、怒気を含んだ、しかしそれでいながら心配するような声で。


悩みはしたものの、これ以上は逃げられないという事で、ちなつちゃんを連れて学校に行くことにした。


私とちなつちゃんは生徒指導室に呼び出された。
どうやら、ラブホに行っていたのがバレたらしい。

ちなつちゃんは涙を流して、必死に謝っていた。
でも、私は言い訳すら言えなかった。
ただただ無言で俯きながら、先生の説教を受け止めていた。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:26:05.98 ID:5WDhDwg60

一カ月の停学処分。
重いような軽いような。
ちなつちゃんを連れて職員室から出たその時だった。

「結衣…」

京子がいた。綾乃も一緒だった。

「一体どうしちゃったんだよ…結衣…」

「船見さん…」

久しぶりに見た京子は私の見た事が無い、辛そうな表情をしていた。
綾乃も心配そうな表情をしていた。彼女もここしばらくは気が気でなかったのだろう。
私を心配してくれたのか。少し嬉しかった。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:27:50.70 ID:5WDhDwg60

それでも私は逃げた。
何かを言おうとしていたちなつちゃんの手を強引に引っ張って。


「結衣!?」

「追いかけましょう!」

京子と綾乃が追いかけてくる。
無抵抗のちなつちゃんがいるとはいえ、私は学年一の俊足だ。簡単には追いつかれまいという自信があった。
必死に逃げた。少し前までは愛おしく思っていたはずの私の一番の親友と、その恋人から。
二人は途中で諦めたのか、校舎を出る頃にはもう追ってくる気配はなかった。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:30:03.22 ID:5WDhDwg60

息も切れてきた頃、私達は家に着いた。
ちなつちゃんを落ち着かせてから語りかける。

「停学処分…だってさ。」

「…」

ちなつちゃんは答えない。


「これから一か月は誰にも邪魔されず、えっちができるよ。よかったね…ふふ。」

「良くないです…」

「どうして?ちなつちゃんは私の事、嫌いなの?」

「…嫌いです。」

「嘘でしょ?」

私はそう言ってちなつちゃんを床に押し倒そうとした。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:30:50.86 ID:5WDhDwg60

「止めてください!」

バシッ!

平手打ちをされた。
バランスを崩して床に倒れこむ。

私は驚いた。
私に心酔していたと言っても過言ではないあのちなつちゃんが私のことをはっきりと拒絶したのだ。
「恋人」という名の主従関係を使えば何でも言う事を聞かせられると思い込んでいたから。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:34:07.27 ID:5WDhDwg60

ちなつちゃんは私を見降ろしたまま睨みつけ、話し始める。
床に寝そべったまま黙ってそれを聞く私。

「今の結衣先輩は嫌いです。」

「あの時結衣先輩に告白されて、デートして、えっちして…」

「最初はすっごく嬉しかったんです。大好きな人とやっと恋人同士になれたって。」

それは分かっている。綾乃も同じだから。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:38:02.26 ID:5WDhDwg60

「でも、今の結衣先輩はひたすらに愛ばかりを求めてその他の事から逃げてばかりじゃないですか。」

「私が好きだったのは、ツッコミを入れながらも京子先輩、あかりちゃん、そして私…ごらく部のみんなを温かく見守っていた頃の優しくてカッコいい結衣先輩です。」

「それもそうか…」

「何度も言いますが、今のあなたは嫌いです。」

「…」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:41:24.34 ID:5WDhDwg60

「考えてみれば、今じゃなくてあの時から結衣先輩はおかしかったんですよね…」

「結局私は京子先輩の抜けた穴を補えなかった。」

「告白なんてしなければ、こんな事にはならなかったのかな…」

「いっその事、出会いさえしなければ好きにも嫌いにもならなかったは…ずな…の…に……」

ちなつちゃん…?
泣いている…?



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:42:48.53 ID:5WDhDwg60

「それだけは嫌だ!想像したくない!!」

「私も嫌です。でも、今のこの状況はそれ以上に嫌です。」

「好きだった人が、自分と付き合い始めてどんどん堕落していって、そして嫌いな人になっちゃうなんて…」

「もう最悪ですよ。」

ああ、私以上にちなつちゃんも辛かったんだな。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:45:06.62 ID:5WDhDwg60

「ねえ、ちなつちゃん。私、どうすればいいのかな…?」

「よく分かりません。とりあえず、京子先輩やあかりちゃん、ご両親やクラスのみんなにも謝って、それでちゃんと前を向かないといけないんじゃないですか?」

「…」

「でも、安心しました。」

「…?」

「結衣先輩が堕ちていくのを自ら止めようって思ってくれて。」


ちなつちゃんが座ってまたこちらを見つめた。
今度は優しい表情で。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:46:17.91 ID:5WDhDwg60

「私、迷ってたんです。これからこの人とどう向き合っていくかって。」

「このまま結衣先輩を見捨てる事も出来たんですけど、でもそれじゃあ先輩のやってる事とそのまんま同じで、嫌いなものから逃げる事になっちゃう。」

「だから、そんなのやっぱり良くないなって。」

「ちなつちゃん…」

「でも、きっかけが足りなかった。堕ちるのを止めようとしないさっきまでの結衣先輩に今と同じ事を言ってもきっと聞き入れてくれなかっただろうから。」

「それで結衣先輩が呼び出されて、停学食らって、挙句の果てに私を押し倒そうとした瞬間にこう思いました。この人を救えるのは今しかないって。」

「ごめんなさい。痛かったですよね?」

「大丈夫…私の方こそごめん…」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:48:46.54 ID:5WDhDwg60

「それに、結衣先輩は私にとってのかけがえのない人ですから。」

「今更別れて赤の他人になるなんてできっこないです。」

「…私は…」

「例え今は嫌いでも、いつかまた好きになるまで傍にいさせてください。」

「そして、付き合い始める前以上に好きになって、そしたらまたずっと一生傍にいてもいいですか?」

…長い沈黙が支配する。


そして私は一つの答えを出した。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:50:20.63 ID:5WDhDwg60

「わかった。」

「私も約束する。ちなつちゃんと一生、いやたとえ死んだとしても、生まれ変わったとしても、永遠に一緒にいるって。」

「…」

「だめかな…?」

「もちろんいいですよ、結衣先輩。私で良ければこれからもよろしくお願いしますね。」

「……!」

「ちょっと頼りないですけど、何があっても私は結衣先輩の味方ですから。」

「ちなつちゃん…ちなつちゃん…!」

私はちなつちゃんの胸に顔をうずめた。
そして目一杯泣いた。
ちなつちゃんは何も言わず私を抱きしめてくれた。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:52:06.53 ID:5WDhDwg60

そして、停学期間の一カ月。
親には当然叱られたけど、ちなつちゃんもフォローしてくれた。私が反省してくれたということも伝わったら、泊まっていってほしいと夕食を作ってくれた。
もちろんちなつちゃんも一緒に。

お赤飯が出た。
二人とも私達の門出を祝ってくれているんだ。
私はまた泣いてしまった。

自分で言うのもなんだが、本当にいい親を持ったと思った。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:54:18.05 ID:5WDhDwg60

京子や綾乃達、もちろんあかりにもメールで謝った。
今はまだ直接会うことはできないけど、停学が解けたらちゃんとごらく部にも顔を出すと伝えた。
思えばみんなには随分と迷惑をかけて、心配させたものだ。
でももう逃げない。
謝って償って、ちゃんと前を向こう。

この時分かったが、私達を目撃して通報したのは京子だった。
電話で話をしたときに分かった。
本人曰く、「ミラクるんの地域限定品の販売イベントに綾乃と行った帰りに最近来ていない結衣とちなつちゃんを見かけたから驚いた。」「ちなつちゃんには悪いけど、こうするしか方法はなかった」と。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:55:49.24 ID:5WDhDwg60

私は京子に感謝してもしきれなかった。
もしも京子が行動を起こさなかったら、私もちなつちゃんもどんどん堕ちていって取り返しのつかない事になっていただろう。
「一生の親友としてこれからもよろしく」と言ったら「今度久しぶりに結衣んちに泊めてよ。あとラムレーズンも一生の親友としてこれからもよろしく」と帰ってきた。

思わず笑ってしまった。
以前と変わらないいつもの京子と久しぶりに話が出来た喜びもあったのだろう。
もう吹っ切れた。京子とは「親友」という関係がちょうどいいと実感した。


事情を知ったちなつちゃんも京子に感謝した。

「そんじゃ、結衣の事よろしく頼むよ。ああ見えて結構寂しがり屋だからさ。」

「知ってます。だから私がずっとそばにいないと。」

言い返せない。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:57:57.26 ID:5WDhDwg60

ちなつちゃんとはいっぱいいっぱいデートした。
「ほとぼりが冷めるまではえっち禁止」と言う事でその分、デートに時間を費やした。
京子には、冷やかされたり綾乃と一緒にWデートしたり。
ゲームは極力自重し、ちなつちゃんと一緒に勉強した。
私は綾乃や千歳、ちなつちゃんはあかりや古谷さんからノートを借りたりして遅れを取り戻そうと頑張った。

京子や大室さんのは…言っちゃ悪いけれど参考になりそうもなかった。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 01:59:32.69 ID:5WDhDwg60

そして停学が解け、私達はまた学校に通い始めた。
私もちなつちゃんもクラスのみんなは温かく迎えてくれた。
おそらく友達が何かのフォローをしてくれたのだろう。


ごらく部にも当然顔を出した。
京子はちなつちゃんとスキンシップを取ろうとし、ちなつちゃんは嫌がって私に抱きつく。
あかりはそんな私達をにこにこと見守っている。相変わらずの存在感のなさを嘆いていた。
綾乃もたまに来る。いわゆる通い妻という奴か。これまでと違うところと言えば、フルネームではなく「京子」と呼んでいた事だった。
学校でイチャつくのは自重しているらしい。綾乃曰く「公私の区別はつけないと」と。
大した用もないのにわざわざ茶道部室に来ている時点で説得力皆無だが。

とにかく、これでいつもの日常が帰ってきた。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 02:00:58.89 ID:5WDhDwg60

その日の夜、私達はえっちも解禁した。
ただ乱暴に私が愛を求めるだけのそれから、またお互いに愛を確かめ合うようなものに戻った。
今まであげていなかった始めてを相手に捧げた。
これまでの関係に別れを告げて、新しい関係を築くために。


達した後のちなつちゃんは心の底から幸せそうだった。
私も思わずほほ笑んだ。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 02:02:48.60 ID:5WDhDwg60

・・・・・・

六年後、私達は同じ大学で同棲生活を始めた。
京子と綾乃も絶賛同棲中のようだ。
ちなつちゃん…いやちなつは一生を共にするパートナーだ。

中学を卒業した後の事、ちなつは私にこう言った。
「結衣『先輩』に心酔するのはもうやめにしたい。これからは主従関係みたいなのではなく、お互いに気兼ねなく本音をぶつけ合える対等の立場でいたいから、『先輩』ともつけないし、敬語も使わないようにしたい」
と。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 02:04:33.58 ID:5WDhDwg60

「いいよ、ちなつ。」

「わかった。これからもよろしくね、結衣。」

「船見結衣」と「吉川ちなつ」はこの時初めて対等になった。

余談だが、日々もみ続けた成果だろうか、成長期に入ったのだろうか、彼女の胸はついに私をも超えてしまった。
身長すら抜かされて、今ではどっちが後輩かすらもわからないぐらいだ。

日々彼女の体を見てきたはずなのに、「いつの間にかこうなってた」としか言いようがない。
気付かないうちにずいぶんと成長したものだ。


ちなみにあかりはお姉さんのようなスタイルの良い美人さんに、大室さんは…まあお察しください。



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 02:07:02.35 ID:5WDhDwg60

朝、産まれたままの姿で自室のベッドにて

「ねぇ、結衣。」

「何?ちなつ。」

「昨日は激しかったわね。」

「ちなつの方こそ。私はいつも通りだったとは思うんだけど…」

「そうかしら?」

ニヤリと笑みを浮かべる。
こういう所は昔から変わっていない。
でも、あの頃とは違い下の毛も立派に生えそろった、豊満な肉体からは大人の色気が出ていた。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 02:08:53.42 ID:5WDhDwg60

「ところで今日、何の日か覚えてる?」

「もちろん。忘れもしないよ。」

「私が結衣を嫌いって言って…」

「私が思いっきり泣いて、前を向こうって思いなおしたあの日でしょ?」

「そう、大正解。」

「せっかくの記念日だから、夕飯は豪華なものにしようか。」

「もちろん。」

「でも今は眠いからもう少しだけ寝かせて…?」

「はいはい。せっかくの休日だしね。」

「ありがとう。大好きだよ、ちなつ。」

「私も大好きよ、結衣。」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/22(土) 02:10:33.01 ID:5WDhDwg60

「おやすみ。」

「おやすみなさい。」

私はベッドに横になり、眠りに落ちていった。


まどろみの中で私はある夢を見た。
私とちなつが二人の間に出来た可愛い子供を抱きかかえながら、今と変わらず笑いあっている夢を。


おしまい


元スレ
結衣「あの日の事」ちなつ「これからの事」