前作
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
白菊ほたると不思議体験その2
【モバマス】響子「混ぜる」ほたる「混ざる」
○5月某日/都内某所ライブハウス・地下アイドルの現場
ステージ上の辻野あかり『みなさーん!! 今日は来てくれてありがとうございまーす!!』
観客席の夢見りあむ「ひゅー! あかりちゃーん!!」
観客席の砂塚あきら「りあむさん、そろそろ来ますよ!」
りあむ「あ、ほんとだ! ゲットしないと!な!」
辻野あかり『それじゃいきますよー、それーっ♪』
あきら「#反対側」
辻野あかり『今度は逆の方向に……それーっ♪』
りあむ「うわあん届かないー!!(ぴょんぴょん)」
あきら「えいっ……やった、取った!!」
りあむ「くそう、低身長高バストのこの身体が憎いー(ぴょんぴょん)」
あきら「何故そこで自慢を混ぜるんですか……ほら、りあむさんの分」
りあむ「あきらちゃんありがとう! はー、尊み。天使か?」
あきら「そういうのいいから(///)」
辻野あかり『みなさんナイスキャッチです♪ ゲットしたひともそうじゃないひとも、私とそいつらを見たら山形りんごのことを思い出してほしいんごっ♪』
りあむ「まあぼくら今晩寮で会うけど!な!(フンス)」
あきら「迂闊なこと口走らないでくださいよ!?」
2: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:20:54 ID:l07
○20分後/同ライブハウスロビー
りあむ「はー、よかった……」
あきら「来てみて良かったデスね……今日はりんごろうさんもちゃんとゲットできたし」
りあむ「ねえねえ、楽屋裏に顔出してみよっか。芸能人っぽくない?」
あきら「またすぐ次のライブだから、移動まで時間ないみたい。じゃまになっちゃうかも」
りあむ「なんだよう、余裕ないなあ」
あかり「あかりチャンも自分も、今地下のステージにとにかくたくさん出て回ってるから」
りあむ「このごろみんな総選挙で忙しいもんなー。あきらちゃんも今日久々のオフっしょ」
あきら「ええ、まあ」
りあむ「Pサマ遠慮なしに仕事入れてくるんだもん。馬車馬か? いやむしろぼくは牛。草生やして惰眠をむさぼる。ドナドナ」
あきら「牛にしては貫禄が足りない」
りあむ「牛にすらなれないのかー。やむ……」
あきら「あかりチャンのライブ見に来たんだからあかりチャンの話しましょうよ、あかりチャンの」
りあむ「ああうん。やっぱあかりちゃんのステージ、イイ。来てよかった。ストレスふきとんだ!」
あきら「なんだか応援してあげたい気持ちになりマスよね。総選挙で競い合う最中ではあるわけだけど」
りあむ「なんだよあかりちゃん大好きかよ。でも解るなあ。がんばれあかりんご! 山形りんごをたべるんご!」
あきら「へへー……そしてそんなりあむさんにインタビュー。今日のあかりチャンのステージで一番注目したのはどんなところデスか?」
りあむ「そうだなー、歌もダンスも笑顔もよかったんだけど」
あきら「うんうん」
りあむ「一番はやっぱ金の事かな!!」
あきら「最低だ!?」
りあむ「えっ、あれっ」
あきら「あかりチャンが、同期が、友達が目の前で頑張ってたのにいきなり金の話か。ダンスとか歌とかパフォーマンスとかふっとばして金の話か」
りあむ「ち、ちがうちがうちがう!?」
あきら「何が違うんデスか。やっぱ地下のステージには金がかかってないなとかそういうことじゃないんですか」
りあむ「ぼくがそれをどうこう言うわけないじゃん!? 自慢じゃないけど地下オタ歴ながいんだぞ!? 現在進行形で推しいっぱいいるぞ!? 語るか!? 語っていいのか!?」
あきら「言われてみればその通り」
りあむ「解ったらスマホから指を離して? ぼくの垢をブロックしないで?」
あきら「あ、すみません……でも、ならどんな意味で言ったんデスか」
りあむ「いや、だからあかりちゃんの金はどこから出てるのかと」
あきら「ブロックします」
りあむ「うわあん話を聞いてよう!」
あきら「ええい縋りつかないでください鬱陶しい……聞きマスけどあれですね? 本当にステージにかかった金の話とか、総選挙3位の上から目線とかじゃないんでしょうね」
りあむ「ぼくに上から目線してる余裕なんかあるわけないじゃん!?」
あきら「えっ」
りあむ「3位になってからのぼくの初仕事なんだと思う? 水着だぞ? 南の島で、ビキニ! アイドルの最終兵器を、初手から! オタク水着大好きだよな? でもぜんっぜん注目されない! ビビリのぼくが人前に水着晒したってのにまわりに居るのはみんな現地の人で言葉わかんない! 」
あきら(ぽかーん)
りあむ「言葉が解る観光客に注目されるのは他の子ばっか! 仕方ないな? ぼくだってりあむちゃんより肇ちゃんとか志保ちゃんの水着が見たい! チキンだからなかなか寄っていけなかったけど!!」
あきら「どうどう、りあむさん、どうどう」
りあむ「逆にそりゃそうだよなーって思ったよ。選挙ってパーンと注目度上がるけど、それまで積み上げてきたものの差ってあるじゃん。1回3位になっただけのヤツより前から頑張ってアイドルしてる子たちのほうがそりゃ知名度あるわ。みんな見たいわ。むしろ安心したわ」
あきら「……ネットでバズったお菓子より、定番のお菓子のほうが結局売れてる、みたいな話デスかね」
りあむ「そんなかんじかもしれないしそうでないかもしれない!」
あきら「#雑」
りあむ「まあ、期待や注目は集まったけどそれでりあむちゃんの尊みが跳ね上がるわけじゃないし? そのくせお仕事はちゃんと増えたし、もう1年間つま先立ちでアップアップよ。人生イージーモードたららったってどこがじゃいPサマちくしょうでもアイドルたのしい」
あきら「悪態つくのかうれしがるのかどっちか1方にしたらどうデスか」
りあむ「初手で投入したアイドル最終兵器なんてきっともう忘れ去られてるし! 今頃どうせみんな公演の瞳子さんが凄かったとかあずきちゃんのモダン和装が可愛かったとか、そっちの話題で夢中だよ」
あきら「あー。自分和服って解らないけど、桃井サンのあれはカッコいいと思った」
りあむ「だよねー!? あれはあずきちゃんの集大成で新境地でな? デニムの着物をあんなふうに着こなすのかーって」
あきら「本題の続きを話しましょうよ」
りあむ「あきらちゃんが振ったくせに乗ってくれない。やむ……まあ、そういうわけで。 もはや最終兵器も失ったぼくに上から目線でかます余裕があるわけないじゃん?」
あきら「確かに。忙しそうなのに、レッスン頑張ってましたもんねえ」
りあむ「練習しないといつまでもつま先立ちでたらららっただし、どんどん水かさ増していくからなー。ぼくもしにたくないからなー」
あきら「……余裕がどうとか言ってごめんなさい」
りあむ「あきらちゃんが素直!? これはついにデレ期が!?」
あきら「来てませんから」
りあむ「うええん……と、とにかくそういうわけで。そういう意図がないことは解っていただけましたでしょうか」
あきら「そこは解ったけど、でもはっきり金って言ったじゃないデスか。違うなら結局なんの話」
りあむ「説明したら、聞いてくれる?」
あきら「もちろん」
りあむ「はー。ぼくのスレ燃やすやつらもこうやって聞いてくれればなー」
あきら「無理でしょ。というか今の発言もネットでしてたら炎上間違いなし」
りあむ「だよねー……まあね、つまりね。ライブ最高なんだけどりんごろうさんが気になる」
あきら「#意味不明」
りあむ「あかりちゃんとあきらちゃん、今すごいたくさん地下のステージ回ってるじゃん?」
あきら「ハイ。Pサンの方針で、地道に場数踏んだほうがいいって」
りあむ「あのまじめっこのあかりちゃんがステージに遅刻するぐらいスケジュール詰めてさ」
あきら「確かにあのときは本当危なかったデス……自分もけっこうな数ステージこなしてるけど、あかりは更に多いみたいで」
りあむ「自分の出演予定はないのにいっしょに現場まで走ってあげたあきらちゃん尊い」
あきら「そういうの忘れてください(///)」
りあむ「えーっ、りあむちゃん大活躍の巻だったのに? むしろ克明に記憶したい。今のあきらちゃんの可愛いテレ顔も」
あきら「勢いでステージ上がったくせに何お手柄にしてるんデスか」
りあむ「そうだったわー。素で記憶改竄してたわー」
あきら「ほら続き、続き」
りあむ「そんで、そのステージであかりちゃんはりんごろうさん投げるわけじゃん?」
あきら「投げても良心が痛まないデザインで良かったって言ってましたね」
りあむ「まじかよりんごろうさんの扱いひどすぎない?」
あきら「普段からこいつ呼ばわりデスもんね」
りあむ「とにかく、あかりちゃんは毎ステージりんごろうさんを投げる」
あきら「ハイ」
りあむ「でもあれ、事務所が権利持ってるキャラじゃなくね?」
あきら「あっ」
りあむ「確かあれ、あかりちゃんの地元のりんご農家協会か何かのゆるキャラだよね」
あきら「デビュー前に物産展で着ぐるみ着せられてたとか言ってましたねそう言えば」
りあむ「つまり、りんごろうさんが有名になって売れても別に事務所は儲からない」
あきら「たしかに」
りあむ「じゃあ、あの毎回投げてるりんごろうさんの代金ってどこから出てるんだろうなーと」
あきら「それは……どこからだろ」
りあむ「事務所が出してくれてんのかな。あかりちゃんがりんごろう投げるたび、事務所が農家協会にいくらか払ってるのか? まじかよ事務所太っ腹だな?」
あきら「確かに気になる」
りあむ「でしょー? 」
あきら「でもこの内容が『やっぱ金の事かな!!』に短縮されるりあむサンは炎上しても仕方ないと思った」
りあむ「グウの音も出ない!!」
あきら「……でも本当、どうなってんだろ」
りあむ「今夜は寮の夕食で会うじゃん? そこで聞いてみる?」
○数時間後・夕食時/レッスンルーム
辻野あかり(以下あかりんご)「それは簡単、りんごろうさんは私が卸値でりんご農家協会から買ってるんご!」
りあむ「寮で夕食食べてるはずの時間なのになんでレッスンルームに居るのかとか色々気になるけど、そうだったのかー」
あきら「それ、自腹ってこと? あれ全部?」
あかりんご「ほら、卸値だからこんなにお安い」
りあむ「わあ本当これなら安心ってそんなわけあるかー!?」
あかりんご「わああ!?」
あきら「りあむサン!?」
りあむ「ぼくらのギャラ、そんな高くないじゃん? そこから寮費とか生活費とかレッスン費とか出してるのに、さらにそこからあれだけの数のぬいぐるみを買ってるの? ばかなのか?」
あきら「りあむサン、言葉きつい」
あかりんご「……」
りあむ「仕事増えてるし、レッスンも増やしてるし。あかりんごこの頃ちょっとやせてるよね?」
あきら「……それは実は自分も思ってた」
あかりんご「……」
りあむ「だいたい、ぼくと違ってめっちゃ真面目なあかりんごが肝心のライブに遅刻しそうになっちゃうほど仕事入れるPサマもどうかと思うんだよ。生活費切り詰めて、ライブするほどあかりんごの持ち出しが増えるとかおかしいよ!ね!?」
あかりんご「でもそれは、『今』必要な事なんです」
りあむ「 」
あきら「あかりチャン」
あかりんご「私って今、動画が流行って注目が集まってるでしょう?」
あきら「見たことある、あの可愛いの」
りあむ「愛が伝わってくるよねー。あれはいいものだ」
あかりんご「商売ってタイミングだから。注目が集まってる今、ここで動かなきゃいけないと思うんご」
りあむ「それでライブ増やしてたの? 自分の持ち出し増えるの解ってて?」
あかりんご「プロデューサーさんに無理言って増やしてもらいました」
あきら「でも、それであかりチャンが無理したら」
あかりんご「……山形りんご宣伝したいとか、りんごろうさん売り込みたいとか。そういうのは私が始めた事だから。勝手を通したいなら、無理を背負い込むのは覚悟しなきゃいけないと思ってる」
りあむ(相変わらず覚悟決まってるなあ……)
あかりんご「流行りって、風みたいなものだもん。明日風向きが同じと限らない。望んでるときに吹いてくれる物でもない。だから風が吹いてくれてるうちに、がんばらなきゃ」
りあむ「まあ、確かにオタク飽きっぽいからなー」
あきら「りあむサンの裏切り者!」
りあむ「怒られた!?」
あきら「でもやりすぎは良くない。あかりチャン、ごはんもまだ食べてないでしょ」
あかりんご「やー、それ言われると弱っちゃうんご」
あきら「いや、笑ってないで」
あかりんご「もうちょっとだけレッスンしたら食べるし、ちゃんと休むから……あの、あきらちゃんもりあむさんも、待っててくれる?」
りあむ「いいけど」
あかりんご「あきらちゃん」
あきら「……」
あきら「……」
あきら「……うん……」
○15分後/女子寮・砂塚あきら私室
りあむ「はー。あきらちゃんはお部屋もスタイリッシュなー。部屋まで美形かよ。記念写真とっていい?」
あきら「そういうの気持ち悪いデス」
りあむ「あきらちゃんてぼくとあかりちゃんで当たりが違いすぎない?か?」
あきら「だって普段の行いが全然違うから」
りあむ「剃刀のような正論がぼくのこころを切り裂くよう!!」
あきら「……りあむサンはどう思ってるんですか」
りあむ「お部屋の飾り付けの話?」
あきら「あかりチャンの話に決まってるじゃないデスか」
りあむ「正直最初はそんなんアリかー、休めよあかりんごって思ったけど」
あきら「うん」
りあむ「でも、言ってることはそうだったじゃん?」
あきら「……デス、ね」
りあむ「オタク、手首にモーター内蔵のサイボーグだからなー。昨日まで神とか言ってたの、ちょっと気に入らないことあったら晒し上げとか当たり前だしなー」
あきら「ヒドい言いようだけど、解る」
りあむ「だから動画とかで『あれっ、あかりんごってかわいいじゃん? りんごろう謎すぎるな?』とかみんな興味持ってくれてるとき逃すなーってのは、そうだよね」
あきら「……総選挙の投票締め切りも近いし、もし自分が同じ立場なら絶対活かそうとすると思いマス」
りあむ「だいたいぼくら3人の中であかりんごが1番フィジカル強いし、本当にキツそうだったらPサマ止めるはずだしな?」
あきら「……そう、ですヨネ」
りあむ「Pサマにもの申してみる? 竹のさきっぽにこう、書状をつけてさー」
あきら「なにそれわかんないデス……しませんよ。したいけど」
りあむ「そっか」
あきら「……あかりチャンが頑張りすぎなのは、心配だけど」
りあむ「うんうん?」
あきら「でも、りんご売り込みたいのって、あかりチャンがやりたいことだから。総選挙とか置いといて、そのチャンスが来たなら、がんばりたいの解るから」
りあむ「……」
あきら「自分だって、そういうチャンスが来たら、きっと同じように頑張りたいって思うだろうから。だから、心配だけどじゃまできないっていうか」
りあむ「ユウジョウなー。あきあか尊いかよ……」
あきら「茶化さないでくださいよ……まあ、自分はそんな感じデス」
りあむ「まあ今総選挙真っ最中だもんな。休めったって休んでるアイドルいないもんなー」
あきら「自分も、明日は昼から地方周りデス」
りあむ「ぼくも明日はよくわかんない有名人? とコラボイベントだよ!」
あきら「絶対本人の前でよく知らないとか言っちゃダメですからね」
りあむ「肝に銘じた! ……だからな?」
あきら「はい?」
りあむ「なんかやるなら、22日じゃね?」
あきら「選挙の発表日の翌日?」
りあむ「金曜だろ? 選挙期間中忙しかったから土日はオフじゃん?」
あきら「あかりチャンは多分、レッスンか何か入れそうな気がする」
りあむ「だからな?(ひそひそ)」
あきら「ふむふむ」
りあむ「でも十代のおなかは……(ひそひそ)」
あきら「……えーっ。それ、いいんですか」
りあむ「知らない! でもオフだし! オフは勝手にするもんだし!」
あきら「車。車誰が出すんデスか」
りあむ「ぼく免許あるぞ?」
あきら「嘘だあ」
りあむ「信用なさすぎていっそすがすがしいなぼく!? ほら免許!!」
あきら「うわ、本当だ」
りあむ「信じてくれた?」
あきら「この世にりあむさんを卒業させてくれる自動車学校があったんですね……」
りあむ「まあ、路上でめっちゃくちゃ怒鳴られたけどな」
あきら「目に浮かぶようデス……けど、いいんデスか。怒られませんか」
りあむ「ぼく毎日怒られてるぞ?」
あきら「#胸張るな……なら、つきあいマス」
りあむ「じゃ作戦会議な。餃子はぼくが焼くからー」
あきら「ウチワかなんかで匂いをまいたほうがうまく行くかも」
りあむ「あ、いいな? 絵面おもしろいしそれ採用」
あかりんご「おまたせー!(ドアガチャー) 3人でごはん行くんご!」
りあむ「あ、今大事な話してるから」
あきら「あかりチャンは表で待っててね」
あかりんご「なしてやー!?」
○5月22日・放課後/某高校校門周囲
あかりんご「はー、終わった終わった」
あかりんご「えーとまず、今日は事務所まで走って、それから総選挙でお世話になったところに挨拶に回って。明日からのレッスンの予定押さえて……あれっ」
あかりんご(くんくん)
あかりんご「どこからかいい香りがする……! 具体的にはこう、りあむさんが焼いた餃子みたいな食欲をかきたてる香りがするんご……!!」
あかりんご(グウウウウ)
あかりんご「そういえばおなかすいてたんご……ああ、足が勝手に……」
(ふらふらと歩き出すあかりんご)
(いい香り漂う路地裏に引き込まれていくあかりんご)
あかりんご「このでっかい黒塗りのワゴン車からめっちゃ匂いがしてるんご……!」
あきら(うちわ装備)「いらっしゃい、あかりチャン」
あかりんご「どうしてあきらちゃんがワゴン車の後部座席でうちわパタパタしてるの?」
あきら(うちわ装備)「それはもちろんあかりチャンの鼻にこの匂いを届ける為デス」
あかりんご「すっごいシュールな絵面してるんご」
あきら「気にしないで匂いに集中してほしいデス」
あかりんご「集中したら腹が鳴るんご……このごろ私燃費悪くて」
あきら「レッスン頑張ってるから。力ついてきた証デス」
りあむ「わははあありちゃん、ビストロ夢見にようこそ!」
あかりんご「あっ、りあむさん!!」
りあむ「そのとおり。今日はシェフ夢見だぞ?(そうび:コック帽)」
あかりんご「なんでりあむさんがコック帽かぶってワゴン車の後部座席で餃子焼いてるの?」
りあむ「いいからいいから。おいしいぞー。焼きたてだぞー。白米も炊き立てだぞー」
あきら「自分もめっちゃおなかすいてるから。ほらあかりチャン早く(うちわぱたぱた)」
あかりんご「ああっ、なんかいやな予感がするけど足が勝手に……!(ふらふらとワゴン車に乗り込んでゆくあかりんご)」
(扉を閉めて静かに発進する黒塗りのでっかいワゴン車)
(後に残されて唖然とする通行人)
○15分後/ワゴン車車内
あかりんごin後部座席「(もぐもぐもぐ)……ふあー、やっぱりりあむさんの餃子はおいしいんご……!!」
あかりin後部座席「(もぐもぐ)うん、ホント、美味しい」
あかりんご「おひるごはん軽めだったしもう5限の途中からお腹減って減って。りあむさんの餃子が恋しくてならなかったんご。まさか餃子のほうから来てくれるなんて」
あきら「ここのところ忙しくてりあむさんとこにも来てなかったもんね、あかりチャンは(とか言いつつこっそりあかりのスマホをマナーモードにする)」
あかりんご「あはっ、それ言われると弱いんご……それにしても、いつの間にか移動しながらのごはんにもすっかり慣れちゃったなあ。ふつうにごはん食べられちゃうもん」
あきら「そこらはもうすっかり芸能人て感じデスよね自分ら……ほらあかりチャン、おかわりよそったげようか?」
あかりんご「お願い! じつはまだお腹空いてて……ってあれっ」
(窓の外を流れてゆく高速道路の景色)
あかりんご「なんかいつの間にか高速に乗ってるんご!? なしてやー!?」
あきら「しまった、もう気づかれた」
運転席のりあむ「大丈夫、もう高速乗っちゃったもん」
あかりんご「えっ、なにこれりあむさんこれどうなってるんですか」
りあむ「総選挙も終わって、ぼくら明日明後日オフじゃん?」
あかりんご「はい。レッスンしてお世話になった関係先にご挨拶して、りんごろうさんの売り込みに回る予定だけど」
あきら「#オフとは」
りあむ「なるほどー。あかりちゃんはそうする予定だったのかー」
あかりんご「はい」
りあむ「ぼくらはな? そんなあかりちゃんをどっか遠くに連れてく予定だったの!!」
あかりんご「遠くってどこ!?」
りあむ「わかんない!」
あかりんご「なにそれ!!」
あきら「いい節目だし新潟山形行ってもらうのはどうかってリクエストしてマス」
あかりんご「あきらちゃんまで!? えっ、困る。私まだいろいろやんなきゃいけない事が」
りあむ「絶対そう言うと思ったからお腹空いてる時狙って餃子で誘い込んだのさ!!(ドヤ顔)」
あかりんご「たしかについふらふらと乗り込んでしまったんご! いやこれ拉致んご! 東京にもどってー!?」
りあむ「あーあーあーきこえなーい」
あかりんご「すごくわざとらしく聞こえないふりされたー!?」
あきら「りあむサンと2人で、相談したんデス」
あかりんご「あきらちゃん」
あきら「あかりチャンは、総選挙が終わった後も、絶対休まないと思ったから」
りあむ「だから無理矢理にでもちょっと仕事から引き離ちゃおうってな?」
あかりんご「でも、今大事な時だからって、頑張りどころだからって私言ったのに。なんでこんなこと」
りあむ「オタクはなー、自分の金で推しに焼き肉食ってほしいと思ってる生き物なんだぞ?」
あかりんご「りあむさん」
りあむ「投げ銭できる手段があれば即したいと思ってるもんなんだぞ。推しがぼくらの金で贅沢してくれるなんて最高じゃん?」
あかりんご「そ、そうなんですか」
りあむ「ぼくはそうだよ!」
あきら「個人のことを全体に広げて語るのってどうなんですかね」
りあむ「いいんだよう。オタクは主語が大きい生き物なんだから……なのにさ? お金出して推しのライブ行ったら推しが痩せるってどうよ」
あかりんご「それは」
りあむ「困っちゃうじゃんそれ。アイドルの同期としては頑張る理屈わかるけど、ぼくあかりんご推しだから! 頑張る推しは尊いけど推しが頑張るのみてはらはらすんのはやだ!」
あかりんご「りあむさん」
りあむ「まあ全国のやむくんやみちゃんは、りあむだらしないもうちょっと痩せろもっと働けって言うかも知れないけどな?」
あきら「ああ、それ絶対言われそうデスネ」
りあむ「なんかすっごい癒しがほしくなってきた……ぼくをあまやかしてくれるひとはいないか! りあむは城壁で三回叫んだ。だれもこなかった。やむ」
あかりんご「……」
あきら「……あかりチャンは」
あかりんご「あきらちゃん」
あきら「あかりチャンはやりたいことの為に頑張ってる。自分もそれはそうだけど。チャンスがあったら、自分もきっと同じことするのかもしれないけど」
あかりんご「……」
あきら「そうやって、腰を据えて頑張るの、いつも凄いって思ってるけど。そういうところ大好きだけど……でも。自分のお金まで使ってるって知って。それでもあかりチャンは平気平気って……なんか、ちょっと」
あかりんご「あきらちゃん」
あきら「確かにあの動画は凄いチャンスで、望んでも得られないものなんだけど……でもなんか、立ち止まらずにずっと走って、どんどん勢いつけてったら、あかりチャンがいつか転んだとき大怪我するんじゃないかって」
あかりんご「……うん」
あきら「なんか、ちょっと、怖かった。少し立ち止まって、休んで欲しいって、思って」
りあむ「あきらちゃんいい子すぎるだろ。嘘? ぼくの同期天使過ぎ!?」
あきら「ち、茶化すとはっ倒しますよ」
りあむ「ひいん……まあそれにな? なんかあかりちゃんらしくなかったじゃん?」
あかりんご「そ、そうかな?」
りあむ「だってあかりちゃんてがめついからな!!」
あきら「言い方ァ!!」
りあむ「りんごろうさん使って儲けたいとか言ってるのに、りんごろうさん投げる数増えて痩せるとこまで行くってなんか違うじゃん。普段はちゃんと損益の勘定して投げてたろ?」
あきら「山形りんごを宣伝したいって、あかりチャンのやりたい事だから」
あかりんご「……それも、あるけど」
りあむ「あるけど?(ピロリン)」
あきら「あるけど?」
あかりんご「……だって、3人で歌えるかもって思ったから」
あきら「えっ」
りあむ「 」
あかりんご「私たち、一緒にデビューして、ずっと一緒にやりたいねって言ってるけど。事務所はなかなかユニット組ませてくれないし」
りあむ「いつまでも名前募集中だしなー(ピロリン)」
あきら「自分らが、組ませてくださいってゲリラでやってるだけですもんね」
あかりんご「りあむさんは3位になってからテレビのお仕事増えて、私たちと仕事離れちゃったし」
りあむ「いじられ役だけどなー(ピロリン)」
「あきらちゃんはファッションのお仕事とかコラボとか、配信とかいろいろやって凄いなって……でも、私はずっとレッスンしてライブして……」
あきら「あかりチャン……」
あかりんご「なんかひょっとしてこのまま3人ともだんだん仕事がバラバラになって、一緒に歌うなんてできなくなるのかなって思ったの。そしたらあの動画が流行って。すごい可愛くて。みんな私のこと知ってくれて。うれしくて」
りあむ「わかる。わかる(ピロリン)」
あかりんご「もしかして今頑張って総選挙10位以内とか狙えたら、3人で歌えるかもって思っちゃったんご。そしたら止まらなくなって……」
あきら「そんなこと、思ってたんデスか」
あかりんご「ごめんね」
りあむ「びえやあああああん(ピロリン)」
あきら「うわ、汚い泣き声」
りあむ「あかりちゃんいじらしい……! ぼくうれしい!! ずっとあかりちゃん推しで行く!! 円盤5枚ずつ買う!!(ピロリン)(ピロリン)(ピロリン)」
あきら「感動してるとこ悪いけど、なんかメッチャ着信来てますよ。なんで運転中なのにマナーモードにしとかなかったんですか」
りあむ「あっごめん忘れてた今切るねギャアーァ全部Pサマからだァ!!」
あきら「うわ、めっちゃ来てる」
りあむ「あかりちゃんつれだした件かな。なぜばれたし!!」
あきら「自分、思ったんデスけど」
りあむ「なに!?」
あきら「学校の近くに黒塗りのでっかいワゴン車で乗り付けて女の子誘い込んで走り出すとか、ふつうに事案なのでは」
りあむ「そういえばそうだ!!なんでそれ最初に言ってくれないかなー!?」
あきら「今更だけどもうちょっと手頃な車はなかったんですか」
りあむ「しかたないだろ!? ぼく車持ってないんだもん!!」
あきら「あ、そういえば普段車乗ってるのなんて見たことない。じゃあこの車は」
りあむ「海外に行ってる父の車」
あきら「人の車の中で餃子焼いたんデスか!?」
りあむ「あきらちゃんもおもしろいって乗り気だったじゃーん!!」
あきら「それは確かにそうでしたけど」
あかりんご「り、りあむさん、大丈夫?」
りあむ「へいきたぶん。ち、ちょっと次のSAで停まるね? ごめんね?」
あきら「りあむさん顔面蒼白」
りあむ「怒られたらあきらちゃんもぼくを庇ってよね!? ぜったいだよ!?」
○夕暮れ時/某SA駐車場
あかりんご(ぼーっ)
あきら「あかりチャン」
あかりんご「……あきらちゃん」
あきら「風強いデスよ。建物の中にいなくて大丈夫?」
あかりんご「うん。もうちょっと山見てたいから」
あきら「山?」
あかりんご「うん。山……実家ね、山がずーっと見えたんご」
あきら「ああ、りんご農家だもんね」
あかりんご「それでかなあ。じーっと遠くの景色を見てると、なんだかホッとする」
あきら「……ちょっと解るかも。頭がリセットされる感じっていうか」
あかりんご「……あの、ごめんね」
あきら「えっ」
あかりんご「心配かけちゃって」
あきら「心配もそうだけど」
あかりんご「うん」
あきら「ひとりで走ってくあかりチャンを見るのが、不安だったんだと思う。なんか、離れてっちゃいそうで……」
あかりんご「あはっ、私と同じ」
あきら「今度は、2人一緒に走りたい。ダメ?」
あかりんご「ダメじゃない」
あきら「一緒に走って、たまに立ち止まって、まわりちをちゃんと見て。そんなふうに進めたらいいなって思う。ダメ?」
あかりんご「ううん、ダメじゃない」
あきら「……よかった」
あかりんご「あはっ。頑張って、来年こそは3人で歌うんご!!」
あきら「今更だけど、選挙お疲れさま。躍進だった」
あかりんご「10位圏内は無理だったけどね。歌もおあずけ」
あきら「いいよ。あかりならきっと取れる」
あかりんご「うん。あきらちゃんも」
あきら「しっかり休んで、それから2人でりあむサンに追いつこう」
あかりんご「うん!……ところで」
あきら「ハイ?」
あかりんご「りあむさん、全然車から出てこないんご。大丈夫かな」
あきら「相当怒られてるのかなあ……」
あかりんご「もしかしたら電話にでるのが怖くてまだお話できてないとか」
あきら「あり得る」
○同時刻/ワゴン車内
ようやく覚悟を決めたりあむ「(ピッ)も、もしもしPサマ?」
りあむ「いやちがうんだよほんとうだよあれは拉致とかじゃなくてえっ? 拉致ってどういうことかって? えっ拉致の件じゃないの!? かたるにおちたなぼく!?」
りあむ「はい……はい……いやそうじゃなくて! そうだけどな!? ぼくらのほらそのー、ユウジョウとか、そういう感じの? ぼくが言うと嘘っぽいってなんだ!! 事務所の廊下で駄々こねてやるぞ! いいのか! そうなったらぼかぁちょっとめんどくさいぞ!?」
りあむ「……はい。はい。わかってまーす。だいたいあかりちゃんを諫めなかったPサマも同罪じゃん? なに? だからさ、そういうの求めてないって。ちゃんとわかりやすく正解お出ししろよう! 」
りあむ「だいたいなんなのさ拉致の件でなかったら。はい?ボイスオーディション? あー。あれエントリーしてたんだ2人とも」
りあむ「うん! Pサマに捕まったらまずいから2人のスマホマナーモードにしといた!! ……え?」
りあむ「マジ? 2人そろって? マジ?」
りあむ「……」
りあむ「あかりちゃあああああああん!? あきらちゃあああああーーん!?」
◇
◇
りあむ「うああああああああああ」
あきら「うわなんかすごい勢いで走ってきた」
あかりんご「なに? なにがあったんご!?」
りあむ「ぶぇいやああああああ(がっき)」
あきら「うわあ抱きつかれた! 鼻水! そのほか諸々!!」
あかりんご「りあむさん凄い顔してる」
りあむ「びゃうあうあうあうあう、ぶだりどもおおおお」
あきら「泣き声が汚い」
あかりんご「どうしたんですか、一体」
りあむ「2人とも、ボイスオーディション受かってたっでえええ」
あきら「!」
あかりんご「!!」
りあむ「ぶっっちぎりのワンツーだったって! CDでるって!! よがっだああああ!! ずびううあうあうあう」
あきら「りあむさん、泣きすぎ」
あかりんご「りあむさん、どうどう」
りあむ「だっでえ゛え゛え゛え゛え゛。だっでえ゛え゛え゛え゛え゛」
あきら「……あかりチャン(手を差し出す)」
あかりんご「うん(手を握る)」
りあむ(ひどい顔で泣いている)
あかりんご「りあむさん、東京に戻ろう。りあむさんちに行くんご」
りあむ「へあっ?」
あきら「りあむサンの餃子が食べたいです」
りあむ「えっ、さっきも食べたじゃん」
あかりんご「私たちが躍進したら餃子でお祝いしてくれるって言ってたじゃないですか」
あきら「そうそう」
りあむ「言ったけど。言ったけど」
あかりんご「焼いてくれないんご?」
りあむ「ううん、焼くよ!! もういくらでも、ひとばんじゅうな! 2人とも作るの手伝ってな?」
あきら「ごはんも炊きましょうね」
あかりんご「そうそう」
りあむ「まかせとけ!! ぼく、車回してくる!!」
あかり(あきらちゃんと手を握り会ったまま、私たちは2人でもう一度山を眺めました)
あかり(遠くにあって、でも、確かに見えるもの。さっきまでホッとするようだった景色をみて、今度は力がわいてくるような気がしました)
あかり(掴めなかったと思ったチャンスが巡ってきて、うれしくて。でも、もしかしたらこの先の道は、あの山ぐらい遠いのかもしれません)
あかり(だけど、私は、私たちはそれを怖いと思いませんでした。今度は2人で、3人で。焦らずに進んでいけると信じられたから)
あかり(その夜私たち3人は、一晩中餃子を食べて大騒ぎしました)
あかり(それはほかのどんなことよりも、私の心を元気にしてくれる時間だったのです……)
(おしまい)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
元スレ
○20分後/同ライブハウスロビー
りあむ「はー、よかった……」
あきら「来てみて良かったデスね……今日はりんごろうさんもちゃんとゲットできたし」
りあむ「ねえねえ、楽屋裏に顔出してみよっか。芸能人っぽくない?」
あきら「またすぐ次のライブだから、移動まで時間ないみたい。じゃまになっちゃうかも」
りあむ「なんだよう、余裕ないなあ」
あかり「あかりチャンも自分も、今地下のステージにとにかくたくさん出て回ってるから」
りあむ「このごろみんな総選挙で忙しいもんなー。あきらちゃんも今日久々のオフっしょ」
あきら「ええ、まあ」
りあむ「Pサマ遠慮なしに仕事入れてくるんだもん。馬車馬か? いやむしろぼくは牛。草生やして惰眠をむさぼる。ドナドナ」
あきら「牛にしては貫禄が足りない」
りあむ「牛にすらなれないのかー。やむ……」
あきら「あかりチャンのライブ見に来たんだからあかりチャンの話しましょうよ、あかりチャンの」
りあむ「ああうん。やっぱあかりちゃんのステージ、イイ。来てよかった。ストレスふきとんだ!」
あきら「なんだか応援してあげたい気持ちになりマスよね。総選挙で競い合う最中ではあるわけだけど」
りあむ「なんだよあかりちゃん大好きかよ。でも解るなあ。がんばれあかりんご! 山形りんごをたべるんご!」
あきら「へへー……そしてそんなりあむさんにインタビュー。今日のあかりチャンのステージで一番注目したのはどんなところデスか?」
りあむ「そうだなー、歌もダンスも笑顔もよかったんだけど」
あきら「うんうん」
りあむ「一番はやっぱ金の事かな!!」
あきら「最低だ!?」
3: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:21:21 ID:l07
りあむ「えっ、あれっ」
あきら「あかりチャンが、同期が、友達が目の前で頑張ってたのにいきなり金の話か。ダンスとか歌とかパフォーマンスとかふっとばして金の話か」
りあむ「ち、ちがうちがうちがう!?」
あきら「何が違うんデスか。やっぱ地下のステージには金がかかってないなとかそういうことじゃないんですか」
りあむ「ぼくがそれをどうこう言うわけないじゃん!? 自慢じゃないけど地下オタ歴ながいんだぞ!? 現在進行形で推しいっぱいいるぞ!? 語るか!? 語っていいのか!?」
あきら「言われてみればその通り」
りあむ「解ったらスマホから指を離して? ぼくの垢をブロックしないで?」
あきら「あ、すみません……でも、ならどんな意味で言ったんデスか」
りあむ「いや、だからあかりちゃんの金はどこから出てるのかと」
あきら「ブロックします」
りあむ「うわあん話を聞いてよう!」
あきら「ええい縋りつかないでください鬱陶しい……聞きマスけどあれですね? 本当にステージにかかった金の話とか、総選挙3位の上から目線とかじゃないんでしょうね」
りあむ「ぼくに上から目線してる余裕なんかあるわけないじゃん!?」
あきら「えっ」
4: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:24:14 ID:l07
りあむ「3位になってからのぼくの初仕事なんだと思う? 水着だぞ? 南の島で、ビキニ! アイドルの最終兵器を、初手から! オタク水着大好きだよな? でもぜんっぜん注目されない! ビビリのぼくが人前に水着晒したってのにまわりに居るのはみんな現地の人で言葉わかんない! 」
あきら(ぽかーん)
りあむ「言葉が解る観光客に注目されるのは他の子ばっか! 仕方ないな? ぼくだってりあむちゃんより肇ちゃんとか志保ちゃんの水着が見たい! チキンだからなかなか寄っていけなかったけど!!」
あきら「どうどう、りあむさん、どうどう」
りあむ「逆にそりゃそうだよなーって思ったよ。選挙ってパーンと注目度上がるけど、それまで積み上げてきたものの差ってあるじゃん。1回3位になっただけのヤツより前から頑張ってアイドルしてる子たちのほうがそりゃ知名度あるわ。みんな見たいわ。むしろ安心したわ」
5: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:24:48 ID:l07
あきら「……ネットでバズったお菓子より、定番のお菓子のほうが結局売れてる、みたいな話デスかね」
りあむ「そんなかんじかもしれないしそうでないかもしれない!」
あきら「#雑」
りあむ「まあ、期待や注目は集まったけどそれでりあむちゃんの尊みが跳ね上がるわけじゃないし? そのくせお仕事はちゃんと増えたし、もう1年間つま先立ちでアップアップよ。人生イージーモードたららったってどこがじゃいPサマちくしょうでもアイドルたのしい」
あきら「悪態つくのかうれしがるのかどっちか1方にしたらどうデスか」
りあむ「初手で投入したアイドル最終兵器なんてきっともう忘れ去られてるし! 今頃どうせみんな公演の瞳子さんが凄かったとかあずきちゃんのモダン和装が可愛かったとか、そっちの話題で夢中だよ」
あきら「あー。自分和服って解らないけど、桃井サンのあれはカッコいいと思った」
りあむ「だよねー!? あれはあずきちゃんの集大成で新境地でな? デニムの着物をあんなふうに着こなすのかーって」
あきら「本題の続きを話しましょうよ」
りあむ「あきらちゃんが振ったくせに乗ってくれない。やむ……まあ、そういうわけで。 もはや最終兵器も失ったぼくに上から目線でかます余裕があるわけないじゃん?」
あきら「確かに。忙しそうなのに、レッスン頑張ってましたもんねえ」
りあむ「練習しないといつまでもつま先立ちでたらららっただし、どんどん水かさ増していくからなー。ぼくもしにたくないからなー」
あきら「……余裕がどうとか言ってごめんなさい」
りあむ「あきらちゃんが素直!? これはついにデレ期が!?」
あきら「来てませんから」
6: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:25:52 ID:l07
りあむ「うええん……と、とにかくそういうわけで。そういう意図がないことは解っていただけましたでしょうか」
あきら「そこは解ったけど、でもはっきり金って言ったじゃないデスか。違うなら結局なんの話」
りあむ「説明したら、聞いてくれる?」
あきら「もちろん」
りあむ「はー。ぼくのスレ燃やすやつらもこうやって聞いてくれればなー」
あきら「無理でしょ。というか今の発言もネットでしてたら炎上間違いなし」
りあむ「だよねー……まあね、つまりね。ライブ最高なんだけどりんごろうさんが気になる」
あきら「#意味不明」
りあむ「あかりちゃんとあきらちゃん、今すごいたくさん地下のステージ回ってるじゃん?」
あきら「ハイ。Pサンの方針で、地道に場数踏んだほうがいいって」
りあむ「あのまじめっこのあかりちゃんがステージに遅刻するぐらいスケジュール詰めてさ」
あきら「確かにあのときは本当危なかったデス……自分もけっこうな数ステージこなしてるけど、あかりは更に多いみたいで」
りあむ「自分の出演予定はないのにいっしょに現場まで走ってあげたあきらちゃん尊い」
あきら「そういうの忘れてください(///)」
りあむ「えーっ、りあむちゃん大活躍の巻だったのに? むしろ克明に記憶したい。今のあきらちゃんの可愛いテレ顔も」
あきら「勢いでステージ上がったくせに何お手柄にしてるんデスか」
りあむ「そうだったわー。素で記憶改竄してたわー」
あきら「ほら続き、続き」
7: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:26:20 ID:l07
りあむ「そんで、そのステージであかりちゃんはりんごろうさん投げるわけじゃん?」
あきら「投げても良心が痛まないデザインで良かったって言ってましたね」
りあむ「まじかよりんごろうさんの扱いひどすぎない?」
あきら「普段からこいつ呼ばわりデスもんね」
りあむ「とにかく、あかりちゃんは毎ステージりんごろうさんを投げる」
あきら「ハイ」
りあむ「でもあれ、事務所が権利持ってるキャラじゃなくね?」
あきら「あっ」
りあむ「確かあれ、あかりちゃんの地元のりんご農家協会か何かのゆるキャラだよね」
あきら「デビュー前に物産展で着ぐるみ着せられてたとか言ってましたねそう言えば」
りあむ「つまり、りんごろうさんが有名になって売れても別に事務所は儲からない」
あきら「たしかに」
りあむ「じゃあ、あの毎回投げてるりんごろうさんの代金ってどこから出てるんだろうなーと」
あきら「それは……どこからだろ」
りあむ「事務所が出してくれてんのかな。あかりちゃんがりんごろう投げるたび、事務所が農家協会にいくらか払ってるのか? まじかよ事務所太っ腹だな?」
あきら「確かに気になる」
りあむ「でしょー? 」
あきら「でもこの内容が『やっぱ金の事かな!!』に短縮されるりあむサンは炎上しても仕方ないと思った」
りあむ「グウの音も出ない!!」
あきら「……でも本当、どうなってんだろ」
りあむ「今夜は寮の夕食で会うじゃん? そこで聞いてみる?」
8: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:26:48 ID:l07
○数時間後・夕食時/レッスンルーム
辻野あかり(以下あかりんご)「それは簡単、りんごろうさんは私が卸値でりんご農家協会から買ってるんご!」
りあむ「寮で夕食食べてるはずの時間なのになんでレッスンルームに居るのかとか色々気になるけど、そうだったのかー」
あきら「それ、自腹ってこと? あれ全部?」
あかりんご「ほら、卸値だからこんなにお安い」
りあむ「わあ本当これなら安心ってそんなわけあるかー!?」
あかりんご「わああ!?」
あきら「りあむサン!?」
りあむ「ぼくらのギャラ、そんな高くないじゃん? そこから寮費とか生活費とかレッスン費とか出してるのに、さらにそこからあれだけの数のぬいぐるみを買ってるの? ばかなのか?」
あきら「りあむサン、言葉きつい」
あかりんご「……」
りあむ「仕事増えてるし、レッスンも増やしてるし。あかりんごこの頃ちょっとやせてるよね?」
あきら「……それは実は自分も思ってた」
あかりんご「……」
りあむ「だいたい、ぼくと違ってめっちゃ真面目なあかりんごが肝心のライブに遅刻しそうになっちゃうほど仕事入れるPサマもどうかと思うんだよ。生活費切り詰めて、ライブするほどあかりんごの持ち出しが増えるとかおかしいよ!ね!?」
あかりんご「でもそれは、『今』必要な事なんです」
りあむ「 」
9: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:27:39 ID:l07
あきら「あかりチャン」
あかりんご「私って今、動画が流行って注目が集まってるでしょう?」
あきら「見たことある、あの可愛いの」
りあむ「愛が伝わってくるよねー。あれはいいものだ」
あかりんご「商売ってタイミングだから。注目が集まってる今、ここで動かなきゃいけないと思うんご」
りあむ「それでライブ増やしてたの? 自分の持ち出し増えるの解ってて?」
あかりんご「プロデューサーさんに無理言って増やしてもらいました」
あきら「でも、それであかりチャンが無理したら」
あかりんご「……山形りんご宣伝したいとか、りんごろうさん売り込みたいとか。そういうのは私が始めた事だから。勝手を通したいなら、無理を背負い込むのは覚悟しなきゃいけないと思ってる」
りあむ(相変わらず覚悟決まってるなあ……)
あかりんご「流行りって、風みたいなものだもん。明日風向きが同じと限らない。望んでるときに吹いてくれる物でもない。だから風が吹いてくれてるうちに、がんばらなきゃ」
りあむ「まあ、確かにオタク飽きっぽいからなー」
あきら「りあむサンの裏切り者!」
りあむ「怒られた!?」
あきら「でもやりすぎは良くない。あかりチャン、ごはんもまだ食べてないでしょ」
あかりんご「やー、それ言われると弱っちゃうんご」
あきら「いや、笑ってないで」
あかりんご「もうちょっとだけレッスンしたら食べるし、ちゃんと休むから……あの、あきらちゃんもりあむさんも、待っててくれる?」
りあむ「いいけど」
あかりんご「あきらちゃん」
あきら「……」
あきら「……」
あきら「……うん……」
10: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:27:57 ID:l07
○15分後/女子寮・砂塚あきら私室
りあむ「はー。あきらちゃんはお部屋もスタイリッシュなー。部屋まで美形かよ。記念写真とっていい?」
あきら「そういうの気持ち悪いデス」
りあむ「あきらちゃんてぼくとあかりちゃんで当たりが違いすぎない?か?」
あきら「だって普段の行いが全然違うから」
りあむ「剃刀のような正論がぼくのこころを切り裂くよう!!」
あきら「……りあむサンはどう思ってるんですか」
りあむ「お部屋の飾り付けの話?」
あきら「あかりチャンの話に決まってるじゃないデスか」
りあむ「正直最初はそんなんアリかー、休めよあかりんごって思ったけど」
あきら「うん」
りあむ「でも、言ってることはそうだったじゃん?」
あきら「……デス、ね」
りあむ「オタク、手首にモーター内蔵のサイボーグだからなー。昨日まで神とか言ってたの、ちょっと気に入らないことあったら晒し上げとか当たり前だしなー」
あきら「ヒドい言いようだけど、解る」
りあむ「だから動画とかで『あれっ、あかりんごってかわいいじゃん? りんごろう謎すぎるな?』とかみんな興味持ってくれてるとき逃すなーってのは、そうだよね」
あきら「……総選挙の投票締め切りも近いし、もし自分が同じ立場なら絶対活かそうとすると思いマス」
りあむ「だいたいぼくら3人の中であかりんごが1番フィジカル強いし、本当にキツそうだったらPサマ止めるはずだしな?」
あきら「……そう、ですヨネ」
11: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:28:23 ID:l07
りあむ「Pサマにもの申してみる? 竹のさきっぽにこう、書状をつけてさー」
あきら「なにそれわかんないデス……しませんよ。したいけど」
りあむ「そっか」
あきら「……あかりチャンが頑張りすぎなのは、心配だけど」
りあむ「うんうん?」
あきら「でも、りんご売り込みたいのって、あかりチャンがやりたいことだから。総選挙とか置いといて、そのチャンスが来たなら、がんばりたいの解るから」
りあむ「……」
あきら「自分だって、そういうチャンスが来たら、きっと同じように頑張りたいって思うだろうから。だから、心配だけどじゃまできないっていうか」
りあむ「ユウジョウなー。あきあか尊いかよ……」
あきら「茶化さないでくださいよ……まあ、自分はそんな感じデス」
りあむ「まあ今総選挙真っ最中だもんな。休めったって休んでるアイドルいないもんなー」
あきら「自分も、明日は昼から地方周りデス」
りあむ「ぼくも明日はよくわかんない有名人? とコラボイベントだよ!」
あきら「絶対本人の前でよく知らないとか言っちゃダメですからね」
りあむ「肝に銘じた! ……だからな?」
あきら「はい?」
12: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:29:24 ID:l07
りあむ「なんかやるなら、22日じゃね?」
あきら「選挙の発表日の翌日?」
りあむ「金曜だろ? 選挙期間中忙しかったから土日はオフじゃん?」
あきら「あかりチャンは多分、レッスンか何か入れそうな気がする」
りあむ「だからな?(ひそひそ)」
あきら「ふむふむ」
りあむ「でも十代のおなかは……(ひそひそ)」
あきら「……えーっ。それ、いいんですか」
りあむ「知らない! でもオフだし! オフは勝手にするもんだし!」
あきら「車。車誰が出すんデスか」
りあむ「ぼく免許あるぞ?」
あきら「嘘だあ」
13: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:29:38 ID:l07
りあむ「信用なさすぎていっそすがすがしいなぼく!? ほら免許!!」
あきら「うわ、本当だ」
りあむ「信じてくれた?」
あきら「この世にりあむさんを卒業させてくれる自動車学校があったんですね……」
りあむ「まあ、路上でめっちゃくちゃ怒鳴られたけどな」
あきら「目に浮かぶようデス……けど、いいんデスか。怒られませんか」
りあむ「ぼく毎日怒られてるぞ?」
あきら「#胸張るな……なら、つきあいマス」
りあむ「じゃ作戦会議な。餃子はぼくが焼くからー」
あきら「ウチワかなんかで匂いをまいたほうがうまく行くかも」
りあむ「あ、いいな? 絵面おもしろいしそれ採用」
あかりんご「おまたせー!(ドアガチャー) 3人でごはん行くんご!」
りあむ「あ、今大事な話してるから」
あきら「あかりチャンは表で待っててね」
あかりんご「なしてやー!?」
14: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:30:28 ID:l07
○5月22日・放課後/某高校校門周囲
あかりんご「はー、終わった終わった」
あかりんご「えーとまず、今日は事務所まで走って、それから総選挙でお世話になったところに挨拶に回って。明日からのレッスンの予定押さえて……あれっ」
あかりんご(くんくん)
あかりんご「どこからかいい香りがする……! 具体的にはこう、りあむさんが焼いた餃子みたいな食欲をかきたてる香りがするんご……!!」
あかりんご(グウウウウ)
あかりんご「そういえばおなかすいてたんご……ああ、足が勝手に……」
(ふらふらと歩き出すあかりんご)
(いい香り漂う路地裏に引き込まれていくあかりんご)
あかりんご「このでっかい黒塗りのワゴン車からめっちゃ匂いがしてるんご……!」
あきら(うちわ装備)「いらっしゃい、あかりチャン」
あかりんご「どうしてあきらちゃんがワゴン車の後部座席でうちわパタパタしてるの?」
あきら(うちわ装備)「それはもちろんあかりチャンの鼻にこの匂いを届ける為デス」
あかりんご「すっごいシュールな絵面してるんご」
あきら「気にしないで匂いに集中してほしいデス」
15: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:30:47 ID:l07
あかりんご「集中したら腹が鳴るんご……このごろ私燃費悪くて」
あきら「レッスン頑張ってるから。力ついてきた証デス」
りあむ「わははあありちゃん、ビストロ夢見にようこそ!」
あかりんご「あっ、りあむさん!!」
りあむ「そのとおり。今日はシェフ夢見だぞ?(そうび:コック帽)」
あかりんご「なんでりあむさんがコック帽かぶってワゴン車の後部座席で餃子焼いてるの?」
りあむ「いいからいいから。おいしいぞー。焼きたてだぞー。白米も炊き立てだぞー」
あきら「自分もめっちゃおなかすいてるから。ほらあかりチャン早く(うちわぱたぱた)」
あかりんご「ああっ、なんかいやな予感がするけど足が勝手に……!(ふらふらとワゴン車に乗り込んでゆくあかりんご)」
(扉を閉めて静かに発進する黒塗りのでっかいワゴン車)
(後に残されて唖然とする通行人)
16: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:31:30 ID:l07
○15分後/ワゴン車車内
あかりんごin後部座席「(もぐもぐもぐ)……ふあー、やっぱりりあむさんの餃子はおいしいんご……!!」
あかりin後部座席「(もぐもぐ)うん、ホント、美味しい」
あかりんご「おひるごはん軽めだったしもう5限の途中からお腹減って減って。りあむさんの餃子が恋しくてならなかったんご。まさか餃子のほうから来てくれるなんて」
あきら「ここのところ忙しくてりあむさんとこにも来てなかったもんね、あかりチャンは(とか言いつつこっそりあかりのスマホをマナーモードにする)」
あかりんご「あはっ、それ言われると弱いんご……それにしても、いつの間にか移動しながらのごはんにもすっかり慣れちゃったなあ。ふつうにごはん食べられちゃうもん」
あきら「そこらはもうすっかり芸能人て感じデスよね自分ら……ほらあかりチャン、おかわりよそったげようか?」
あかりんご「お願い! じつはまだお腹空いてて……ってあれっ」
(窓の外を流れてゆく高速道路の景色)
あかりんご「なんかいつの間にか高速に乗ってるんご!? なしてやー!?」
17: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:31:57 ID:l07
あきら「しまった、もう気づかれた」
運転席のりあむ「大丈夫、もう高速乗っちゃったもん」
あかりんご「えっ、なにこれりあむさんこれどうなってるんですか」
りあむ「総選挙も終わって、ぼくら明日明後日オフじゃん?」
あかりんご「はい。レッスンしてお世話になった関係先にご挨拶して、りんごろうさんの売り込みに回る予定だけど」
あきら「#オフとは」
りあむ「なるほどー。あかりちゃんはそうする予定だったのかー」
あかりんご「はい」
りあむ「ぼくらはな? そんなあかりちゃんをどっか遠くに連れてく予定だったの!!」
あかりんご「遠くってどこ!?」
りあむ「わかんない!」
あかりんご「なにそれ!!」
18: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:32:24 ID:l07
あきら「いい節目だし新潟山形行ってもらうのはどうかってリクエストしてマス」
あかりんご「あきらちゃんまで!? えっ、困る。私まだいろいろやんなきゃいけない事が」
りあむ「絶対そう言うと思ったからお腹空いてる時狙って餃子で誘い込んだのさ!!(ドヤ顔)」
あかりんご「たしかについふらふらと乗り込んでしまったんご! いやこれ拉致んご! 東京にもどってー!?」
りあむ「あーあーあーきこえなーい」
あかりんご「すごくわざとらしく聞こえないふりされたー!?」
あきら「りあむサンと2人で、相談したんデス」
あかりんご「あきらちゃん」
あきら「あかりチャンは、総選挙が終わった後も、絶対休まないと思ったから」
りあむ「だから無理矢理にでもちょっと仕事から引き離ちゃおうってな?」
あかりんご「でも、今大事な時だからって、頑張りどころだからって私言ったのに。なんでこんなこと」
りあむ「オタクはなー、自分の金で推しに焼き肉食ってほしいと思ってる生き物なんだぞ?」
あかりんご「りあむさん」
りあむ「投げ銭できる手段があれば即したいと思ってるもんなんだぞ。推しがぼくらの金で贅沢してくれるなんて最高じゃん?」
あかりんご「そ、そうなんですか」
りあむ「ぼくはそうだよ!」
あきら「個人のことを全体に広げて語るのってどうなんですかね」
19: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:33:13 ID:l07
りあむ「いいんだよう。オタクは主語が大きい生き物なんだから……なのにさ? お金出して推しのライブ行ったら推しが痩せるってどうよ」
あかりんご「それは」
りあむ「困っちゃうじゃんそれ。アイドルの同期としては頑張る理屈わかるけど、ぼくあかりんご推しだから! 頑張る推しは尊いけど推しが頑張るのみてはらはらすんのはやだ!」
あかりんご「りあむさん」
りあむ「まあ全国のやむくんやみちゃんは、りあむだらしないもうちょっと痩せろもっと働けって言うかも知れないけどな?」
あきら「ああ、それ絶対言われそうデスネ」
りあむ「なんかすっごい癒しがほしくなってきた……ぼくをあまやかしてくれるひとはいないか! りあむは城壁で三回叫んだ。だれもこなかった。やむ」
あかりんご「……」
あきら「……あかりチャンは」
あかりんご「あきらちゃん」
あきら「あかりチャンはやりたいことの為に頑張ってる。自分もそれはそうだけど。チャンスがあったら、自分もきっと同じことするのかもしれないけど」
あかりんご「……」
あきら「そうやって、腰を据えて頑張るの、いつも凄いって思ってるけど。そういうところ大好きだけど……でも。自分のお金まで使ってるって知って。それでもあかりチャンは平気平気って……なんか、ちょっと」
あかりんご「あきらちゃん」
あきら「確かにあの動画は凄いチャンスで、望んでも得られないものなんだけど……でもなんか、立ち止まらずにずっと走って、どんどん勢いつけてったら、あかりチャンがいつか転んだとき大怪我するんじゃないかって」
あかりんご「……うん」
あきら「なんか、ちょっと、怖かった。少し立ち止まって、休んで欲しいって、思って」
りあむ「あきらちゃんいい子すぎるだろ。嘘? ぼくの同期天使過ぎ!?」
あきら「ち、茶化すとはっ倒しますよ」
20: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:33:57 ID:l07
りあむ「ひいん……まあそれにな? なんかあかりちゃんらしくなかったじゃん?」
あかりんご「そ、そうかな?」
りあむ「だってあかりちゃんてがめついからな!!」
あきら「言い方ァ!!」
りあむ「りんごろうさん使って儲けたいとか言ってるのに、りんごろうさん投げる数増えて痩せるとこまで行くってなんか違うじゃん。普段はちゃんと損益の勘定して投げてたろ?」
あきら「山形りんごを宣伝したいって、あかりチャンのやりたい事だから」
あかりんご「……それも、あるけど」
りあむ「あるけど?(ピロリン)」
あきら「あるけど?」
あかりんご「……だって、3人で歌えるかもって思ったから」
あきら「えっ」
りあむ「 」
あかりんご「私たち、一緒にデビューして、ずっと一緒にやりたいねって言ってるけど。事務所はなかなかユニット組ませてくれないし」
りあむ「いつまでも名前募集中だしなー(ピロリン)」
あきら「自分らが、組ませてくださいってゲリラでやってるだけですもんね」
あかりんご「りあむさんは3位になってからテレビのお仕事増えて、私たちと仕事離れちゃったし」
りあむ「いじられ役だけどなー(ピロリン)」
「あきらちゃんはファッションのお仕事とかコラボとか、配信とかいろいろやって凄いなって……でも、私はずっとレッスンしてライブして……」
あきら「あかりチャン……」
あかりんご「なんかひょっとしてこのまま3人ともだんだん仕事がバラバラになって、一緒に歌うなんてできなくなるのかなって思ったの。そしたらあの動画が流行って。すごい可愛くて。みんな私のこと知ってくれて。うれしくて」
りあむ「わかる。わかる(ピロリン)」
あかりんご「もしかして今頑張って総選挙10位以内とか狙えたら、3人で歌えるかもって思っちゃったんご。そしたら止まらなくなって……」
21: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:34:56 ID:l07
あきら「そんなこと、思ってたんデスか」
あかりんご「ごめんね」
りあむ「びえやあああああん(ピロリン)」
あきら「うわ、汚い泣き声」
りあむ「あかりちゃんいじらしい……! ぼくうれしい!! ずっとあかりちゃん推しで行く!! 円盤5枚ずつ買う!!(ピロリン)(ピロリン)(ピロリン)」
あきら「感動してるとこ悪いけど、なんかメッチャ着信来てますよ。なんで運転中なのにマナーモードにしとかなかったんですか」
りあむ「あっごめん忘れてた今切るねギャアーァ全部Pサマからだァ!!」
あきら「うわ、めっちゃ来てる」
りあむ「あかりちゃんつれだした件かな。なぜばれたし!!」
あきら「自分、思ったんデスけど」
りあむ「なに!?」
あきら「学校の近くに黒塗りのでっかいワゴン車で乗り付けて女の子誘い込んで走り出すとか、ふつうに事案なのでは」
22: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:35:12 ID:l07
りあむ「そういえばそうだ!!なんでそれ最初に言ってくれないかなー!?」
あきら「今更だけどもうちょっと手頃な車はなかったんですか」
りあむ「しかたないだろ!? ぼく車持ってないんだもん!!」
あきら「あ、そういえば普段車乗ってるのなんて見たことない。じゃあこの車は」
りあむ「海外に行ってる父の車」
あきら「人の車の中で餃子焼いたんデスか!?」
りあむ「あきらちゃんもおもしろいって乗り気だったじゃーん!!」
あきら「それは確かにそうでしたけど」
あかりんご「り、りあむさん、大丈夫?」
りあむ「へいきたぶん。ち、ちょっと次のSAで停まるね? ごめんね?」
あきら「りあむさん顔面蒼白」
りあむ「怒られたらあきらちゃんもぼくを庇ってよね!? ぜったいだよ!?」
23: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:35:45 ID:l07
○夕暮れ時/某SA駐車場
あかりんご(ぼーっ)
あきら「あかりチャン」
あかりんご「……あきらちゃん」
あきら「風強いデスよ。建物の中にいなくて大丈夫?」
あかりんご「うん。もうちょっと山見てたいから」
あきら「山?」
あかりんご「うん。山……実家ね、山がずーっと見えたんご」
あきら「ああ、りんご農家だもんね」
あかりんご「それでかなあ。じーっと遠くの景色を見てると、なんだかホッとする」
あきら「……ちょっと解るかも。頭がリセットされる感じっていうか」
あかりんご「……あの、ごめんね」
あきら「えっ」
あかりんご「心配かけちゃって」
あきら「心配もそうだけど」
あかりんご「うん」
あきら「ひとりで走ってくあかりチャンを見るのが、不安だったんだと思う。なんか、離れてっちゃいそうで……」
あかりんご「あはっ、私と同じ」
24: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:36:00 ID:l07
あきら「今度は、2人一緒に走りたい。ダメ?」
あかりんご「ダメじゃない」
あきら「一緒に走って、たまに立ち止まって、まわりちをちゃんと見て。そんなふうに進めたらいいなって思う。ダメ?」
あかりんご「ううん、ダメじゃない」
あきら「……よかった」
あかりんご「あはっ。頑張って、来年こそは3人で歌うんご!!」
あきら「今更だけど、選挙お疲れさま。躍進だった」
あかりんご「10位圏内は無理だったけどね。歌もおあずけ」
あきら「いいよ。あかりならきっと取れる」
あかりんご「うん。あきらちゃんも」
あきら「しっかり休んで、それから2人でりあむサンに追いつこう」
あかりんご「うん!……ところで」
あきら「ハイ?」
あかりんご「りあむさん、全然車から出てこないんご。大丈夫かな」
あきら「相当怒られてるのかなあ……」
あかりんご「もしかしたら電話にでるのが怖くてまだお話できてないとか」
あきら「あり得る」
25: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:36:16 ID:l07
○同時刻/ワゴン車内
ようやく覚悟を決めたりあむ「(ピッ)も、もしもしPサマ?」
りあむ「いやちがうんだよほんとうだよあれは拉致とかじゃなくてえっ? 拉致ってどういうことかって? えっ拉致の件じゃないの!? かたるにおちたなぼく!?」
りあむ「はい……はい……いやそうじゃなくて! そうだけどな!? ぼくらのほらそのー、ユウジョウとか、そういう感じの? ぼくが言うと嘘っぽいってなんだ!! 事務所の廊下で駄々こねてやるぞ! いいのか! そうなったらぼかぁちょっとめんどくさいぞ!?」
りあむ「……はい。はい。わかってまーす。だいたいあかりちゃんを諫めなかったPサマも同罪じゃん? なに? だからさ、そういうの求めてないって。ちゃんとわかりやすく正解お出ししろよう! 」
りあむ「だいたいなんなのさ拉致の件でなかったら。はい?ボイスオーディション? あー。あれエントリーしてたんだ2人とも」
りあむ「うん! Pサマに捕まったらまずいから2人のスマホマナーモードにしといた!! ……え?」
りあむ「マジ? 2人そろって? マジ?」
りあむ「……」
りあむ「あかりちゃあああああああん!? あきらちゃあああああーーん!?」
◇
26: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:36:39 ID:l07
◇
りあむ「うああああああああああ」
あきら「うわなんかすごい勢いで走ってきた」
あかりんご「なに? なにがあったんご!?」
りあむ「ぶぇいやああああああ(がっき)」
あきら「うわあ抱きつかれた! 鼻水! そのほか諸々!!」
あかりんご「りあむさん凄い顔してる」
りあむ「びゃうあうあうあうあう、ぶだりどもおおおお」
あきら「泣き声が汚い」
あかりんご「どうしたんですか、一体」
りあむ「2人とも、ボイスオーディション受かってたっでえええ」
あきら「!」
あかりんご「!!」
りあむ「ぶっっちぎりのワンツーだったって! CDでるって!! よがっだああああ!! ずびううあうあうあう」
あきら「りあむさん、泣きすぎ」
あかりんご「りあむさん、どうどう」
りあむ「だっでえ゛え゛え゛え゛え゛。だっでえ゛え゛え゛え゛え゛」
27: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:37:17 ID:l07
あきら「……あかりチャン(手を差し出す)」
あかりんご「うん(手を握る)」
りあむ(ひどい顔で泣いている)
あかりんご「りあむさん、東京に戻ろう。りあむさんちに行くんご」
りあむ「へあっ?」
あきら「りあむサンの餃子が食べたいです」
りあむ「えっ、さっきも食べたじゃん」
あかりんご「私たちが躍進したら餃子でお祝いしてくれるって言ってたじゃないですか」
あきら「そうそう」
りあむ「言ったけど。言ったけど」
あかりんご「焼いてくれないんご?」
りあむ「ううん、焼くよ!! もういくらでも、ひとばんじゅうな! 2人とも作るの手伝ってな?」
あきら「ごはんも炊きましょうね」
あかりんご「そうそう」
りあむ「まかせとけ!! ぼく、車回してくる!!」
28: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:37:45 ID:l07
あかり(あきらちゃんと手を握り会ったまま、私たちは2人でもう一度山を眺めました)
あかり(遠くにあって、でも、確かに見えるもの。さっきまでホッとするようだった景色をみて、今度は力がわいてくるような気がしました)
あかり(掴めなかったと思ったチャンスが巡ってきて、うれしくて。でも、もしかしたらこの先の道は、あの山ぐらい遠いのかもしれません)
あかり(だけど、私は、私たちはそれを怖いと思いませんでした。今度は2人で、3人で。焦らずに進んでいけると信じられたから)
あかり(その夜私たち3人は、一晩中餃子を食べて大騒ぎしました)
あかり(それはほかのどんなことよりも、私の心を元気にしてくれる時間だったのです……)
(おしまい)
29: ◆cgcCmk1QIM 20/05/24(日)08:38:29 ID:l07
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
辻野あかり「餃子にさらわれて」