1: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:48:20.41 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「ねぇねぇそういえばね!私気になる人見つけたんだ!」




海未「ぶふぅっ!?」


お昼休み。あ、そういえば、と私が話を始めると海未ちゃんが飲んでいたお茶を盛大に吹き出す。

あれ、そんなに驚く事かなぁ?


ことり「ほ、穂乃果ちゃん…それって…?」


穂乃果「あ、うん。話の通りなんだけど、前天気がいい日に中庭でパンを食べてる時にね、校舎の外れにある部屋に入っていくのを見つけたんだ」


穂乃果「私は校舎の中にいるその人の事を外から遠目に見ただけだったからあんまり詳しくは分からないんだけど、とっても可愛かったんだよ!」


お茶を吹き出してから先程までゲホゲホと噎せていた海未ちゃんが、少し焦ったような顔で話に合流する。


海未「と…ということは穂乃果はその人に恋をしたという事ですか?」


穂乃果「恋……うーん、お互い女の子だし恋とはちょっと違う気もするんだけど、仲良くなりたいな~って!」



2: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:48:55.11 ID:23Zn3BTf.net

海未「そ、そうなんですか…それでその人は誰なんです?」


穂乃果「それがよくわからないんだよね。見かけたのはその1回だけだったし、なにより遠かったからリボンが赤色だった事しか…」


ことり「リボンが赤色…って言うことは2年生だね、2年生の教室を見に行ってみたらどうかな?」


海未「その入っていった部屋を見に行った方が早いのではないでしょうか?もしかしたらどこかの部室かも知れませんし。」


穂乃果「その手があったか!じゃあ早速今日の放課後行ってみる!2人も一緒に行こうよ!」


海未「すみません、今日は部活動がありまして…」


ことり「ことりも今日はちょっと、バ…いや、用事があって…」


穂乃果「えーまた!?最近全然海未ちゃんとことりちゃんと帰れてないよ~…」



3: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:49:47.99 ID:23Zn3BTf.net

高校に入って、海未ちゃんは部活で忙しくって一緒に帰れない事が多くなっちゃった。


それでも私とことりちゃんは部活をやっていないから、海未ちゃんがいなくて残念ではあったけど2人でお話ししながら帰っていたんだ。


それなのに、この頃はことりちゃんまで用事があるらしくていっつも帰りは1人。…寂しいよ………


海未「すみません穂乃果。ですが大会も近いので、あまり貴女に構ってあげられる時間がないんです。」


ことり「ごめんね。ことりもどうしても外せない用事なの…」


穂乃果「わかったよ…じゃあ、放課後は一人で探してみるね…」


私は肩を落としてそう答える。


…折角だから昔よくやった探検みたいに、海未ちゃんとことりちゃんと三人で行きたかったのにな…


なんだか今日のパンはいつもより少し味気のないような気がした。



4: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:51:19.75 ID:23Zn3BTf.net

……




穂乃果「えーっと…この辺だったかな…?」


そして放課後。
2年生の教室はまばらにまだ人が残っていて、だけどあの先輩の姿は見当たらなかった。


だから海未ちゃんにも言われた通り、この前見かけた時に入っていった部屋がどこか探してみることにしたんだ。


穂乃果「あっ、これかな…ん?アイドル研究部…?」


そこら辺の教室や部屋の扉を見ていると1つ気になるドアがあった。


引き戸の扉が多い中、その一角は開き戸が幾つかあって。


そのドアは向こう側にカーテンでもされているのか他と比べても暗く、でも薄らと何かの灯りを放っているみたいだった。


穂乃果「ゴクリ…なんだか緊張してきたよ…」


穂乃果「…えいっ」コンコン



5: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:52:10.09 ID:23Zn3BTf.net

意を決してドアをノックしてみても誰かが出てくる気配はない。


あれ~、おかしいな…昼休みに入っていく位だから放課後にもきっといると思ってたのに…


あの時入っていったのはたまたまだった…?それとも、昼休みの時だけ周りを気にせず静かに食べられるこの部屋に来てるのかな。



穂乃果「うーん…」コンコンコンコンッ


次は少し多めに叩いてみる。

すると、中で少しは人影が動くのが見えた気がしたんだけど…

それでも全く反応はない。



穂乃果「あれ~…気付いてないのかな…?」ドンドンドン



「だぁあうっさいわね!用があるなら勝手に入ってこいって言ってるでしょ希!」


「……ってあれ?アンタ誰よ」



6: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:52:48.36 ID:23Zn3BTf.net

ドアを強めに叩いている途中でやっと中から人が出てくる。

嬉しい事にそれは私のお目当ての先輩で、私は言葉も忘れて見とれてしまう。


…やっぱり、凄い可愛い。目はくりくりしていて大きくて、二つに縛った髪の毛は同じ女の子として憧れちゃうくらいに綺麗で。
小柄で線の細く、可憐という言葉が良く似合う女の子らしい女の子。




そう言えば、と我に返ると私の事を違う人と勘違いしてたみたいだった。

まあそうだよね、いきなりこんな名前も知らない後輩がくるとは誰も思わないもんね。

ぽけー、とそう考えていると先輩が口を開く。


「なに、一年生?入学して結構経ってるはずだけど、まだ校舎で迷ってるのかしら?」


「それとも入部希望?悪いんだけどね、もう誰もこの部活に入れるつもりはないの…私の代ですっぱりやめに…」


穂乃果「あ、あの!」



7: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:53:45.07 ID:23Zn3BTf.net

「……なによ?」


そういえば。私はこの先輩を探す事しか考えていなくて、見つけた後に何を話そうなんて考えてもいなかった。

私がえーっと…あはは、と狼狽えていると先輩は痺れを切らしたかのように話を続ける。


「用がないんならとっとと帰んなさい、私もよく分からない奴に付き合ってる暇ないんだけど?」


穂乃果「ご、ごめんなさい…実は私、先輩の事を色々と知りたくて来たんです!」


「…はぁ……?」





穂乃果「この前見かけた時にすっごい可愛い人だなぁって思って、ずっと探してて…」


「何それ…アンタ変わってるわね…」


穂乃果「えへへ、よく言われます…でもね、今日勇気を出して来てみてよかった!先輩のことが少し知れたから!」


「…ふん、名前すら知らないのによくそんな事言えるわね」


穂乃果「あ、そっか!自己紹介まだだった…私は高坂穂乃果です!この春から音ノ木坂に通ってます。先輩は?」


「…………矢澤にこ」



8: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:54:43.94 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「にこ先輩か…名前も可愛いんですね!」


にこ「まあ名前を褒められて悪い気はしないわ、ありがと」


穂乃果「あっ!私今日お饅頭持ってきてたんだ、にこ先輩お近付きの印にこれどうぞ!」


にこ「あ、あぁ…ありがと。有難く貰っとくわ」


穂乃果「そういえば、最初穂乃果と間違えた希っていう人は誰の事なんですか?」


にこ「東條希、生徒会の役員よ。なにか事あるごとに部室に来られて迷惑してるのよ」


穂乃果「へぇ…その希先輩って人とにこ先輩は仲が良いんだ…」


にこ「ちょっと、あんた話きいてた?」


穂乃果「えへへ、だって話してる時にこ先輩楽しそうだったから…」


にこ「…そんなことないわ、腐れ縁みたいなものよ。」



9: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:56:08.51 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「あ、ごめんなさい…私いっつも相手の話を聞かずに話を進めちゃってよく海未ちゃんにも怒られるんです…またやっちゃいましたよね…」


にこ「…別にいいわ。…その海未って子は友達?大事にしなさい、自分に悪い所対して怒ってくれる人は本当に自分の事を想ってくれてる人よ。」




そう言ったにこ先輩の表情は、少し寂しそうに見えた。
過去に何かあったのかな…もしかしたらここに1人でいるっていうのにも理由があるのかも。


寂しげなにこ先輩の事を見ていると、自分でも何でか分からないんだけど、この人の事をもっと知りたいって…そう思ったんだ。


穂乃果「はい、海未ちゃんは大切な幼馴染です。あ、あとことりちゃんっていう子も幼馴染で…でも最近2人とも忙しくて一緒に帰れてないんだぁ…」


にこ「…そ。まぁやる事も一緒に帰る人もいないってんなら中入りなさいよ」


穂乃果「やった、ありがとうございます!」


にこ「別に。私もここ勝手に使ってるようなもんだしね」


穂乃果「アイドル研究部に他の部員はいないんですか?」



10: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:57:00.84 ID:23Zn3BTf.net

何気なく聞いたその言葉ににこ先輩の顔が曇る。


にこ「…いないわ。私一人だけ」


穂乃果「へぇ~…それならにこ先輩はホントにアイドルが好きなんですね?」


にこ「はぁ?それとこれと何処が結び付くってのよ」


穂乃果「だって穂乃果一人だと絶対活動続けられないですし!にこ先輩は凄いなぁ…」




にこ「……アンタはポジティブに考えすぎよ。私なんて……」


最後に何かを言いかけた後ハッとした顔をしてにこ先輩の話が止まる。

聞き直していいのか迷うな…また余計な事を言ってしまったら折角知り合えた先輩に嫌われちゃうかも知れない。


にこ「……何にも無いわ、忘れて」


会話も無いまま席に座るとにこ先輩が薄暗かった部室の電気をつけてくれる。


にこ「あんたにとっては特に面白いものも無いと思うけど、好きにみていっていいわよ」


部室を見回してみると、パソコンが1台と棚にはアイドルのDVDなのかな?が沢山並べられていた。
あ、それと壁にはポスターも!


凄いなぁ、これって全部にこ先輩のやつなのかな?

これだけグッズを集めるなんて凄い時間がかかってるんだろうな…

昔からアイドルが好きなのかな。



11: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:57:53.95 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「普段はにこ先輩どんな活動をしてるんですか?」



にこ「活動…っていっても何にもしてないわ。最近したことなんて……インターネットでスクールアイドルを見てその批評をするだけ。」


穂乃果「スクールアイドル??」


にこ「なに、アンタスクールアイドルも知らないの!?」


穂乃果「あ、すいません…私あんまり最近の事には詳しくなくて…」


にこ「いい?スクールアイドルって言うのは…」


何かスイッチを押してしまったみたいで、にこ先輩の口から弾丸のようにスクールアイドルの説明が飛び出す。

それにしても、やっぱりアイドルが好きなんだろうなって思うな。

こうやってアイドルの事を話してる時、急ににこ先輩の目が輝くんだ。



12: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:58:31.05 ID:23Zn3BTf.net

にこ「……という訳よ!って穂乃果!話聞いてるの!?」





穂乃果「あ、名前で……」


にこ「…ぁっ、いや…!!」


私の事を名前を呼んでくれたことが嬉しくて反応してしまうと、顔を真っ赤にしてしどろもどろになってしまうにこ先輩。

今まであんまり感情を表に出してくれなかったにこ先輩の照れた顔が見れたってことは、少しは心を開いてもらえたのかな。


にこ「ゴホン!な、なによ…名前で呼んじゃいけなかったわけ?」



穂乃果「逆です!名前で呼んでもらえて嬉しくて!」


にの「…あっそ」


穂乃果「それにしても勿体無いなぁ…こんなに詳しいのにアイドルにならないなんて!にこ先輩こんなに可愛いのに…」


ピシリッ。そんな音が聞こえて来たと勘違いするくらい空気が凍る。



13: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 03:59:47.21 ID:23Zn3BTf.net

私のせいでにこ先輩の顔を曇らせてしまった。


にこ「……。」


穂乃果「ご、ごめんなさい!また私余計な事を…!」


にこ「別に、気にしてないから」


そう言ってはいるもののにこ先輩の顔は複雑そうな表情を浮かべていた。

ダメだ、いっつもこうなんだ私は…勝手に突っ走って深く考えない発言が人を傷つけてしまう。



…勝手だけど、にこ先輩にはこんな悲しい顔をしていて欲しくないって思ったんだ。



穂乃果「にこ先輩!あの…私ににこ先輩の事、沢山教えて下さい!先輩にもっと怒って欲しいし、笑顔になって欲しいんです」


にこ「なっ…何よ急に?」


穂乃果「自分でも分かりません!えへへ、でもにこ先輩のファンになっちゃったんだと思います」


にこ「……ホントに変な子ね。……はぁ…じゃあ仕方ないから今までの私の事、話してあげるわよ」



14: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 04:00:34.88 ID:23Zn3BTf.net

やれやれ…とでも言いそうな勢いのにこ先輩が口を開く。
気まぐれなのかも知れないけど、会ったばかりの私に話をしてくれるのがすっごく嬉しかった。


にこ先輩から聞いた話は先輩が1年生の頃から始まった。


当時からアイドルが大好きで憧れていた先輩は他にメンバーを集めてこのアイドル研究部を作ったらしかったんだ。


でも簡単には行かなくて。他の人達は妥協を許さないにこ先輩に着いていくことが出来なくて、一人また一人と辞めていってしまった。


辞めていった他の部員の人は、にこ先輩の事を周りに悪く言って回って。


それからは今の様に一人で部室に通う毎日になってしまったんだそう。


穂乃果「………。」


にこ「って感じ。別に面白くもないでしょ…………ってうわ!なんて顔してんのよあんた!」


穂乃果「……だって、だって悔しいです」


にこ「何がよ……」


穂乃果「にこ先輩は何も悪い事してないのに…こんな……!」


気が付いたら涙が出てきた。
どうしても元部員の人達に怒りが湧いてきて、先輩の気持ちを思うと悲しくなってしまって、先輩の前でブサイクな顔をしてるのも忘れて泣いてしまう。


にこ「もう……分かったから泣きやみなさいよ…」


穂乃果「ご、ごべんなざい……」


にこ「ったく…しょうがないわね……ちょっと見てなさい」



15: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 04:01:53.47 ID:23Zn3BTf.net

そう言って後ろを向くにこ先輩。
一体何をするつもりなんだろう?と眺めていると、一瞬肩を落としたにこ先輩がくるりと身体をこちらに向ける。


にこ「にっこにっこにー!」


穂乃果「……ほぇ?」


にこ「あなたのハートににこにこに~、笑顔を届ける矢澤にこにこ~!にこにーって覚えてラブにこ♡」


息を飲んだ。
振り向いたにこ先輩は今までとは全然違う雰囲気で、声色から表情までがすべて『アイドル』だった。


零れた涙はいつの間にやら何処かに行ってしまい、心の中から溢れ出したのはその真逆の感情。

気が付いたら私は笑顔を浮かべて拍手をしていた。


穂乃果「……凄い」


にこ「なによ、なんか文句ある?」


穂乃果「違います、凄い……凄いよ!にこ先輩凄い!涙がどっか行っちゃいました!」


にこ「は、はぁ…?なんか予想外な……」


穂乃果「いやぁ~、やっぱり私にこ先輩のファンになっちゃいました!またここに来てもいいですか?」


にこ「だぁあ!くっつくな!もう、勝手にしなさい、大体ここに居るから」


穂乃果「やった!私絶対また来ますから!」


にこ「分かったわよ!分かったから、手ぇ離しなさい!痛いから」



16: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 04:02:34.26 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「…あっ…………」


ハッと気が付き手を離す。
ダメだ、勝手に舞い上がっちゃってにこ先輩の手を握っちゃってたけど冷静になって考えると凄い恥ずかしい。

顔が熱い、もしかしたら今私変な顔しちゃってないかな…


にこ「…ホント、変な子。こっちがびっくりするくらい喜んだかと思ったら今度は急に照れだして……」


穂乃果「あはは、お恥ずかしい限りです……」


にこ「ま、アンタ見てると退屈しなくていいわ。今日は帰るけど、また来なさい」


穂乃果「えへへ…はい、約束です!」


私が小指を差し出すと、そっぽを向きながらもそれに応じてくれるにこ先輩。
今日はここに来れてよかったな。


こうして、少し素直じゃなくてとっても可愛い矢澤にこ先輩の事がちょっぴり分かった一日でした。



17: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 04:04:02.94 ID:23Zn3BTf.net

……



穂乃果「…でね!また来てもいいって言ってくれたの!」


海未「はぁ、またですか……もう今週だけで何回目ですか、そのにこ先輩という方の話は……」


あれから、放課後は毎日にこ先輩の所に遊びに行った。

いつも素っ気なく「…今日も来たのね」と言うにこ先輩だったけど、少し嬉しそうだったのは私の気のせいじゃないといいな。

これまた毎日の様に二人ににこ先輩の話をしていると、またか…といった様子で海未ちゃんが呆れていた。


ことり「本当に好きなんだねぇ、穂乃果ちゃん」


穂乃果「えっ!?あっ…うん……」


『好き』という言葉になんだか動揺しちゃって言葉が詰まる。

少し経ってからことりちゃんの言った好きが友達としてのそれだということに気が付いて頭をぶんぶんと振った。



18: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 04:04:47.61 ID:23Zn3BTf.net

海未「なんですか急に、そんなに何度も話すんですから仲が良いという事なんでしょう?」


穂乃果「あはは…そうなんだけどさ」


ことり「でも凄いなぁ、穂乃果ちゃん。部活やってないのに先輩の友達まで作っちゃうなんて」


穂乃果「あっ、そうだよね!友達……。うん、にこ先輩とお友達になれて良かったなぁ…」


海未「今日も行ってくるのですか?」


穂乃果「うん!」


ことり「そっかぁ、じゃあ今日はことりが1人で帰らなきゃだね…」


穂乃果「あっ…!ごめんねことりちゃん……」


ことり「ううん!大丈夫だよ!」


海未「私の大会が終わったら久々に三人で出かけましょうか?」


穂乃果「あ、いいね!最近は中々遊びに行けなかったから楽しみだね!」


ことり「うん!」


三人でお出かけなんていつ以来かな…少なくとも最近は海未ちゃんの部活が忙しくて行けてなかったから、凄く楽しみだな。

キーンコーンカーンコーン、と聞き慣れたチャイムの音が鳴り、せっせとお弁当箱を片付け席に戻る。

午後の授業が終わればまたにこ先輩に会える!と思ったらいつもより勉強も頑張れるような気がした。



19: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 04:06:27 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「こんにちは~!」


にこ「あぁ、穂乃果。いっつも元気ねアンタ」


穂乃果「はい、元気だけが取り柄ですから!」


いつの間にか穂乃果、と自然に名前で呼んでくれるようになった事に嬉しさを覚えて声にも力が入る。


にこ「…そ。…なんだかアンタ見てると元気貰えるわ」


にこり、と本人の名前のように微笑んでくれるにこ先輩。
この数日間で少しは心を開いて貰えたのかこうやって私に笑顔を向けてくれる事が増えてきた。

その度に私はなんだか心がぽかぽかと暖かくなって自然と笑顔が増える。


穂乃果「あ、そういえばにこ先輩!」


にこ「ん?なによ」


穂乃果「今度私のお友達を連れて来てもいいですか?」


にこ「よく名前を聞く海未って子?それともことり?」


穂乃果「ことりちゃんです!私がにこ先輩の所にお邪魔するようになってからことりちゃん一人で帰る事が増えちゃって……」


にこ「……ん~、そうね。……ま、アンタの友達なら別にいっか」



20: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 04:07:08 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「ホントですか?!ありがとうございます!」


にこ「別に、アンタがいたらうるさいのが一人増えても変わらないからね」


穂乃果「む~、ちょっと酷い……あっ、そうだ!今日はにこ先輩のオススメのアイドルを見せてもらう約束でしたよね?」


にこ「あぁ、そうだったわね…ちょっと待ってて、確かに上の段ボールの中に…」


穂乃果「あ、私が取りますよ!」


そう言って私が棚の上にある段ボールを取ろうと手を伸ばすと、

運悪く手を滑らせて頭上から段ボールごと降ってくる。


にこ「危ないっ!」


ぶつかる!と思って目を瞑っても私の頭にそれがぶつかる事はなくて、パッと目を開くとにこ先輩が懸命に背伸びして押さえてくれていた。


穂乃果「ぁ……!」ドキッ



21: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 04:07:44 ID:23Zn3BTf.net

にこ「…ったく、危なっかしいんだから……ほら、アンタも支えて。一緒に降ろすわよ」


穂乃果「は、はい……」ドキドキ


後ろからDVDの入った段ボールを支えてくれているにこ先輩が密着していて、私の心臓は後ろのにこ先輩に伝わってしまうんじゃないかってくらいにバクバクと高鳴っていた。


にこ「気をつけなさいよね、DVDはまた買えばいいけどアンタの顔に傷が出来ちゃったらどうするのよ」


穂乃果「は、はい…すみません」


にこ「ってどうかしたの?なんか顔赤くない?」


穂乃果「やっ……!ごめんなさい、びっくりして……!」


にこ「まぁ、何事も無くてよかったわ。さ、これから私のオススメを見せてあげるんだから、気持ち切り替えなさいよね」


そう言ってディスクをパソコンにセットするにこ先輩。

折角の先輩のオススメは横で少し興奮気味に話すにこ先輩に奪われた私の目にはほとんど映らなかった。



24: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 04:19:19 ID:23Zn3BTf.net

雪穂「お姉ちゃん?」


穂乃果「……。」ポケー


雪穂「お姉ちゃ~ん!」


穂乃果「うわぁ!何雪穂、急に大声出して!」


雪穂「お姉ちゃんが声掛けても反応しなかったんじゃん!…何かあったの?」


穂乃果「へ?いや、別に……あ、そう言えば何の用事?」


雪穂「お母さんがご飯出来たよ~って。私も行くから早く降りてきてね」


穂乃果「あ、うん…すぐ行く」


家に帰ってきても今日の事を思い出しちゃって落ち着かない。

にこ先輩の大切にしてるDVDを落としてしまいそうになったのに、怒りもせずに私の心配までしてくれて……本当に優しいな…

先輩と知り合えてからもう一週間。最近は毎日が楽しくて仕方が無かった。
明日はことりちゃんも連れていこうかな。





ほのママ「穂乃果ー!もう先食べちゃうわよー!」


穂乃果「あっ…はぁーい!すぐ行くー!」



25: 名無しで叶える物語 2020/05/21(木) 04:26:10.11 ID:23Zn3BTf.net

やべ、ことりちゃんがバイト始めたの2年になってからだった。ifという事で設定面の矛盾はスルーでお願いします



44: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 17:14:46 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「こんにちは~!」


ことり「お、お邪魔しま~す…」



あれから数日。今日はことりちゃんも用事が無いっていう事だったので約束通りにこ先輩に許可を取って一緒に部室へ向かう。


でも着いてみると当の先輩はまだ来ていないみたいで、仕方ないからことりちゃんと一緒に部室を色々と回って見てみる事にしたんだ。


ことり「ふぇ~、凄いね!これ全部一人で…!」


穂乃果「うんうん、だよね!凄いでしょ~!」







にこ「なーに自分の事のように言ってんのよ」



45: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 17:15:33 ID:23Zn3BTf.net

なんてことりちゃんに自慢気に話す私に、いつの間にかやってきたにこ先輩がつっこむ。

ぱぁぁ、と顔を輝かせて振り向くとそこにはにこ先輩ともう一人誰かが居た。


穂乃果「あれ…にこ先輩この人は……」


にこ「ん、あぁ、そう言えばコイツも居たんだった…」


「コイツ呼ばわりなんて酷いなぁ…あんなに愛し合った仲やのに……」


っ!?今、この先輩なんて言った…?
もしも今のが聞き間違いじゃ無かったら、この人はにこ先輩と……!?


穂乃果「あ、あの!」


「ん?なにかな?」


穂乃果「い、今のって本当なんですか…?」


にこ「んなわけないでしょ」コツン


穂乃果「ぁいたっ!…もう、酷いですよにこ先ぱぁい…」


にこ「ほら、希がややこしい事言うから……初めて来た穂乃果の友達なんて困惑しちゃってるじゃないの」


忘れてた、とばかりに振り向くと目を回してオロオロとにこ先輩と希先輩?の方を交互に見ることりちゃん。
わぁ!大丈夫!?と声を掛けるとどうにもダメそうな声で、大丈夫…ナンデモナイノヨナンデモ……とこれまたダメそうな台詞が返ってきた。



46: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 17:16:20 ID:23Zn3BTf.net

にこ「コイツは東條 希。生徒会の役員で来期からは副会長やるんだっけ?…まぁそんな感じのやつよ」



そっか、この人が前に話に出てきた希先輩…。
やっぱりにこ先輩とは凄い気兼ねない感じがして仲が良いんだなって感じるな。
…ちょっとずるい。


希「よろしくね、今紹介に預かった通りやから、気軽にのぞみんって呼んでね」


穂乃果「の、のぞみん…先輩?」


にこ「バカ、真に受けないの。…で、そっちは確か……ことりだったかしら?」


ことり「あ、はい…南ことりって言います!よろしくお願いします!」


にこ「ん、よろしく。ごめんね希が来たせいで」


ことり「あはは…私先輩の知り合いが居なかったので、とっても嬉しいです」


にこ「それなら良かったわ。希、こっちが穂乃果よ」


希「あ、キミが穂乃果ちゃんかぁ。最近にこっちからよく聞く名前やね」


穂乃果「にこ先輩が…?」


にこ「…っさいわね……別に良いでしょ」



47: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 17:16:53 ID:23Zn3BTf.net

ちらりと横目に確認すると、顔を赤らめてぷい、とそっぽを向くにこ先輩。
…私の居ない所で話をしてくれてるんだ……と嬉しい気持ちでいっぱいになると希先輩がふむふむ…なるほどね、と何かを納得したように頷く。


希「ま、二人ともにこっちと仲良くしてあげてね。こう見えて寂しがり屋さんやから…」


にこ「余計なこと言ってんじゃないわよ。…アンタはそろそろ生徒会に行く時間でしょ?ほら、行った行った」


希「んも~、いけずやなぁ……じゃ、そういう事やから二人もまたね?」


ことり「あ…はい!」


穂乃果「またよろしくお願いします!」


手をひらひらと振って部室を出ていく希先輩。
…なんか飄々としていて掴みづらい人だけどいい人何だろうなぁって思った。


にこ「はぁ…全く。特に用事も無いくせに度々部室までついてきて迷惑なものよ」


この前と同じように、憎まれ口を言う割には何処か嬉しそうなにこ先輩。
…やっぱり希先輩とは仲が良いんだなって、少し嫉妬しちゃうな。



48: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 17:17:39 ID:23Zn3BTf.net

にこ「あ、そう言えば。今日はことりが来るって聞いていたから、少しでもアイドルに興味をもって貰おうと思ってこれ持ってきたのよ」


そう言ってにこ先輩が鞄から取り出したのは、ふりふりとした可愛らしい衣装だった。
アイドルをやっていた時に作ったものなのかな?と考えていると横で大人しくしていたことりちゃんの目が突然輝く。


ことり「うわぁ~!凄い!かわいぃ~♪」


にこ「えっ…」


ことり「凄い!これ全部にこ先輩が作ったんですか?」


にこ「あ……そ、そうよ。基本的には一人で作ったやつね」


ことり「ふわぁ~……これをにこ先輩が着たら…絶対すっごい可愛いよぉ……」


にこ「あ、ありがと……。…穂乃果っ、ことりどうしたの急に」


穂乃果「あ、ことりちゃん裁縫とかが得意で、よく服を作ったりとかしてるんです。だからにこ先輩が作った衣装をみてテンションが上がっちゃったんだと思います」


にこ「なるほど……喜んで貰えたんならよかったわ」


ことり「あはぁ、幸せぇ………っは!ご、ごめんなさい私……!」


にこ「いいのよ、自分の作った衣装を見てこれだけ喜んでくれるなんて嬉しいしね」


ことり「ホントに凄いです…ここの刺繍とか、フリルも可愛いし…!」


にこ「へぇ、分かってくれるのね…ただ時間があればもっとこうすれば良かったなって………」


ことり「ふむふむ…それならここを……」



49: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 17:18:30 ID:23Zn3BTf.net

穂乃果「…あれぇ……?」


思わぬ伏兵登場……?何だか私の事そっちのけで衣装談議に花を咲かせる二人。
…別に寂しくなんかないもん。お邪魔な穂乃果はそっちで座ってるからいいですよ~……



にこ「……ってあら?穂乃果?」


ことり「あっ……ごめんね穂乃果ちゃん、ことり夢中になっちゃって……」


穂乃果「……別にいいもん」


にこ「あちゃ~、完璧に拗ねちゃってるじゃないの」


穂乃果「……拗ねてないです!」


にこ「完璧にそうじゃないの……ん~、どうしよ…」


ことり「あ、にこ先輩…それなら……ゴニョゴニョ」


にこ「えぇ?そんなんで機嫌が治るわけ……」


ことり「幼なじみの勘です、きっと合ってると思います」


にこ「…まぁいいか、信じるわよ」


ことりちゃんがにこ先輩の耳元で何かを話すと先輩がこちらに向かってとことこと歩いてくる。
……ふんだ、またそうやって内緒話して…拗ねてなんか無いんだもん。


にこ「……穂乃果」


穂乃果「……なんですか?ことりちゃんと衣装の話を……」



50: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 17:19:03 ID:23Zn3BTf.net

にこ「ごめんね」ポンポン


穂乃果「ぇ……。」


にこ先輩から頭をぽんぽん、とされて、そのまま撫でられる。
うわぁ……そんなの卑怯だよ、そんなことされたら……にやにやしちゃうよ。抑えられないよ……

そのまま私を覗き込むように顔を近付けるにこ先輩。


にこ「構ってあげられなくてごめんね、この衣装、穂乃果にも見て貰いたくて持ってきたんだけど…どう?」


穂乃果「す、すっごい可愛い!……です…………」


にこ「そ、ありがとう……穂乃果にそう言って貰えると嬉しいわ」ニコリ


穂乃果「は、はい……」ドキドキ


ことり「上手くいってよかったぁ……」ボソッ


にこ「幼なじみって凄いわね……」ボソッ


ことり「って言うよりはにこ先輩の力が……」


にこ「?」


ことり「無自覚って怖いなぁ……」



私の思考がドキドキで止まっている間にそんな会話が繰り広げられていたのには気付かなかった。



51: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/21(Thu) 17:19:24 ID:23Zn3BTf.net

にこ「じゃ、そろそろ時間も遅いし帰りましょ」


穂乃果「そうですね!ここに居ると時間を忘れちゃうなぁ」


にこ「ことりも、またいつでも来なさい」


ことり「はい、ありがとうございます!」


皆で片付けをして、帰る支度をする。
にこ先輩は自分の作った衣装を愛おしそうに一撫でして、またしまった。

その儚げな表情に目を奪われた私は、なんだか先輩が遠くに行ってしまうような気がして。


穂乃果「……先輩!」


にこ「?」


穂乃果「また、明日も来ますから……」


そう言うと先輩は寂しそうに笑いながら


にこ「…そ、待ってるわね」


と少し掠れた声でそう言った。



59: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/22(金) 02:36:07 ID:DcgJ/daP.net

にこ『えーーっと…これは一体どういう……』


ことり『えっと……ちょっとこれには訳が…』


…………
……



穂乃果「って事があったんだぁ~」


ことり「楽しかったねぇ~!」


海未「はぁ…今度はことりもですか……」


あの日からことりちゃんに用事がない日は一緒に、用事がある日は私一人で毎日にこ先輩の所に通った。

いつものようにお昼休みに海未ちゃんに前日あった出来事を話していると最近は、またですか…に加えて通い妻ですか貴女は……という台詞が増えた。


ことりちゃんと二人ではしゃいでいると、海未ちゃんが話し始める。



60: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/22(金) 02:39:21 ID:DcgJ/daP.net

海未「……大丈夫なのですか?」


穂乃果「へ?どういう事?」


海未「そのにこ先輩という方ですよ。気になって調べてみたんです、そうしたらあまり良い噂を聞かなくて…」


穂乃果「大丈夫だよ、それはにこ先輩を裏切った元部員の人が勝手に……」


海未「それは片方の言い分を聞いただけですよね?……弓道部の先輩に聞いたら事実練習を強要したという事があったみたいですし……」


穂乃果「……なに、海未ちゃんはにこ先輩の事を疑ってるの?」


自分でも驚くくらい冷たい声が出た。
…でも仕方ないよね、にこ先輩の事を悪く言われたんだもん。


ことり「ちょっと、二人とも……」


穂乃果「ごめんことりちゃん、今は海未ちゃんと話してるから。少し待ってて」


ことり「あぅ……」


海未「大体穂乃果はいつもそうなんです、人を疑うという事をしないから…だから私が……」


穂乃果「疑うって…海未ちゃんはにこ先輩の事を知らないからそんな事言えるんだよ!」


海未「確かに私はその方の事を知りません、でも…!」




にこ「穂乃果~、アンタ昨日部室に忘れ物して……」


穂乃果「なんで……」


にこ「た……から、持ってきたんだけど……?」


穂乃果「なんで海未ちゃんはいつもそうなの!?」


海未「私は貴女の事を思って……!」


……
…………



61: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/22(金) 02:40:01 ID:DcgJ/daP.net

にこ「…なるほどね、そんな事が」


ことり「海未ちゃんも悪気があって言った訳じゃ……」


にこ「分かってる。悪いのは私、ね」


ことりちゃんが事情を説明すると、にこ先輩が複雑そうな表情を浮かべる。
にこ先輩にそんな顔をさせてしまうなんて…私、そんなつもりじゃなかったのに……


穂乃果「そんな!にこ先輩はなにも……!」


にこ「海未、って言ったわね」


海未「…はい。穂乃果とことりの幼なじみの園田海未、と申します」


にこ「貴女が心配するのも当然よね、こんな悪い噂ばかりの先輩の所に幼なじみが入り浸ってるんだから」


海未「あっ…いえ、私もあまり分かっていないのに言ってしまって……」


にこ「いいの。……穂乃果、ことり」





にこ「少しの間、部室に顔出すのはやめなさい」


そ、そんな……。にこ先輩は何も悪くないのに、どうして……


にこ「ほら、これ忘れ物。確かに届けたから。……じゃあね」


そう手短に言うとくるりと振り向いて去っていってしまうにこ先輩。
折角初めて先輩が教室まで来てくれたのに残ったのは絶望、という味わったことも無かった気持ちだけだった。



62: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/22(金) 02:40:34 ID:DcgJ/daP.net

私が次の日も行こうとしたら、ことりちゃんに止められた。
にこ先輩は少しの間って言ってた、だからにこ先輩から許可を貰えるまではやめようって。
数日経って海未ちゃんが私の事を心配してくれて言ってくれた事は理解したけど、それでも改めて話をしようとは思わなくて。

毎日が楽しく無くなっていったんだ。



そして1週間が経った。その日は海未ちゃんとことりちゃんとは一言も話さずに、一人で帰ろうと思って下駄箱の方に向かっている途中だった。


にこ「~~っ!」


穂乃果「っ!」バッ


にこ先輩の姿を見つけて思わず隠れる。
そう、と様子を伺うと先輩は誰か数人と話してるみたいだった。

遠目から見てもいい雰囲気で話してるようには見えなくて、気付かれないように声が聞こえる所まで近づいていく。



63: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/22(金) 02:41:13 ID:DcgJ/daP.net

にこ「ごめんなさい、私が貴女達にしたことを考えると許して欲しいなんて言えないけど…皆に嫌な噂を流すのはやめて欲しいの」


元部員A「はぁ?何言ってんの今更。別に嘘ついてる訳じゃ無いからそんなこと言われる筋合いなくない?」


にこ「でも…!噂の中には私がしていない事も……」


元部員B「なに?それを私達が言ったっていう証拠でもあんの?」


にこ「そういう訳じゃ……ないけど」


元部員A「ありもしない噂流されるなんてアンタが他の人からも嫌われてるからなんじゃないの~?」


元部員B「あはは、言えてる!にこにこにーだっけ?あんな馬鹿みたいな事してるから皆から嫌われるんじゃない?」


にこ「……。」


お腹の中が燃え上がるように熱い。ふと横目に教室のドアの窓ガラスを見て気付く。
……私、怒ってるんだ。今まで本気で怒ったことなんて無かったけど、にこ先輩にあんな顔をさせてヘラヘラと笑っているこの人達を見てどうしようもなく怒っている。
多分元部員の人なんだと思うけど、なんの権利があってにこ先輩の事を悪く言えるって言うんだろう。



64: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/22(金) 02:41:48 ID:DcgJ/daP.net

視線を先輩達に戻した時だった。


元部員B「おい、何とかいえば?」ドンッ


にこ「あっ……痛っ……!」バタリ






穂乃果「うあぁぁあ!!!」


我慢の限界だった。何も悪い事をしていないのに、それでも謝ったのに…この人達はにこ先輩を突き飛ばした。


にこ「穂乃果っ!?」


穂乃果「ふー…!ふー……!!」


元部員A「は、はぁ?何コイツいきなり」


元部員B「矢澤の仲間?…ぷっ、後輩に守られるなんてバカみたい」


穂乃果「にこ先輩の事をバカにするな!…中途半端ににこ先輩を期待させて、結局着いて来れなくて逃げ出した貴女達が…!」


穂乃果「にこ先輩を、バカにするなぁ!!」


元部員A「チッ…なんだよコイツ…もうやっちゃう?」


元部員B「そうね、歳下のくせにウチらの事バカにしたんだから覚悟しろよ」


にこ「待って!私ならどれだけ叩いてもいい、でも穂乃果の事は…!」


元部員A「はぁ?何勘違いしてんの?二人ともに決まってんでしょ」


元部員B「まずはお前からだよ矢澤!」


…片方がにこ先輩に向かって腕を振り上げた時だった。



65: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/22(金) 02:42:57 ID:DcgJ/daP.net

「待ちなさい」



小さく呟いただけなのに、その場にいた全員が動きを止める。ハッとする程よく通る透き通った声。聞き覚えのある声のはずなのにその姿を見るまでは気が付くことが出来なかった。

だって私は海未ちゃんのそんな感情の篭っていない冷たくて迫力のある声を、聞いた事が無かったから。


穂乃果「う、海未ちゃん……」


海未「……。」


元部員A「な、なによアンタ」


海未「…すみません、にこ先輩。不躾ながら貴女の事を調べさせて貰いました。」

海未「希先輩という方から聞きました。貴女の噂についてのその真相を」


元部員B「無視してんじゃねーよ!」


海未「そして、私は勘違いをしていました。貴女は何も悪い事をしていないのにも関わらず私の言った一言を気にして誠意を見せる為にこのような逃げ出した者達に謝る程気高い人なのに」


海未「もう一度謝らせて下さい。……貴女は、こんな人達よりもずっと強い。…どうか先の非礼をお許しください」


元部員A「チッ……!もうコイツも纏めて」


海未「纏めて、なんですって?」ギロッ


長年一緒に居た幼なじみの、初めて見る恐ろしい顔。
直接向けられたものじゃ無かったのに足が震えてくる。


元部員B「ヒッ…!……もういこ、馬鹿らしい」


元部員A「そ、そうね…言われなくてもお前の事なんてもう二度と話したりしないから!」


海未「…小物ですね」


小走りで去っていく二人の背中に向けて侮蔑の一言。
恐ろしい表情から一転、申し訳なさそうにこちらを見つめる海未ちゃん。


海未「穂乃果、貴女にも謝らせて下さい。……貴女の信じた人は貴女の思った通り、素晴らしい人でした」


海未ちゃんはとても綺麗な姿勢で私達に向かって頭を深く下げた。



66: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/22(金) 02:56:59 ID:DcgJ/daP.net

海未「本当に、申し訳御座いません…」


にこ「いや、頭あげなさいよ。私は元から何も気にしてないし……」


海未「それでも、私の軽はずみな発言で貴女を傷付けてしまいました」


にこ「…いいのよ。あの子達に恨まれるような事をしたのは事実なんだから。寧ろ私はお礼を言わないといけないわ。…助けてくれてありがとう、あのままだとアイドルの命である顔を殴られる所だったわ」


海未「…そう言っていただけてありがとうございます。何かお役に立てることがあったらなんでも言って下さい、これがお詫びと言ってはなんですが尽力します」


にこ「ありがと。……穂乃果もね」


穂乃果「えっ…?」


にこ「相手は二人で、怖かったでしょう?…それなのに怒ってくれて嬉しかったわ」


穂乃果「あの時はにこ先輩が乱暴されて、頭が真っ白になっちゃって……」


にこ「…ふふっ、貴女らしいわね。二人とも、本当にありがとう」


穂乃果「あのっ!」


にこ「…なに?」


穂乃果「これからも、部室に遊びに行ってもいいですか?」


にこ「…ええ、断る理由なんてもう無いわよ」



こうして、私にとって辛い1週間が終わって。
これからまたにこ先輩に前と同じように会えるんだと思ったらほっとして肩の力がすっかり抜けてしまった。

海未ちゃんにも今までの事を謝って、元通りの日常が。
それがこんなに嬉しい事だなんて、思ってなかったな。



67: 名無しで叶える物語 2020/05/22(金) 03:41:39.78 ID:DcgJ/daP.net

それから1ヶ月が経った。
心配を掛けてしまったことりちゃんに海未ちゃんと謝って。


大会を無事に終えた海未ちゃんとことりちゃんと一緒に出かけたり、三人でにこ先輩のいる部室に遊びに行ったりと沢山の事があった。


にこ先輩と二人になれる事は少なかったけど、私の大好きな幼なじみの2人と、私の大好きな先輩が仲良くなってくれるのがとても嬉しかった。

…たまに衣装の事で盛り上がることりちゃんとにこ先輩に嫉妬しちゃったりはしたけど。


夏休みも目前に迫った金曜日。
今日は海未ちゃんとことりちゃんが用事で久々ににこ先輩と二人きりになれる日だった。


穂乃果「こんにちは~!」ガチャッ


にこ「今日も来たわね、でもごめん。今日は私早く帰らないと」


穂乃果「そ、そんな……!今日はにこ先輩と久しぶりに二人きりなのに……」


にこ「…ちょっと、変な言い方しないで。……今日はマ…お母さんが居ないから、妹達の面倒みないといけないのよ」


穂乃果「へぇ…にこ先輩って妹さんいたんですね!」


にこ「ええ、まだ小さいから誰かが家に居ないといけないの。…だからごめんね」


にこ先輩の妹さんか……きっと先輩に似て可愛いんだろうなぁ……。
いいなぁ、にこ先輩のお家かぁ……



68: 名無しで叶える物語 2020/05/22(金) 03:42:07.99 ID:DcgJ/daP.net

穂乃果「いいなぁ…」


にこ「はぁ?」


穂乃果「にこ先輩のお家、いいなぁ…行ってみたいなぁ……」チラッ


にこ「いいなって何よ…別に珍しくもない普通の家よ」


穂乃果「…だって今日はにこ先輩と二人きりだったんですもん……」


にこ「だからぁ!変な言い方するのはやめなさいって!」


顔を赤らめて困ったようにそう言うにこ先輩。
…そういう所も可愛いんだよね、つい困らせるような事を言っちゃうのは私の悪い癖。


穂乃果「な~んて……ごめんなさい、迷惑……」


にこ「じゃ、来る?」


穂乃果「へっ……?」


にこ「私の家。…来たいんなら来る?」


……どうしよう。今顔がニヤけてるのが自分でも分かる。
だってにこ先輩のお家だよ?そんなの嬉しく無いわけ無いよ!


穂乃果「いく!行きます!!」


にこ「お、おぉう……別にいいけど、グイグイ来るわね…」


穂乃果「それじゃあ早速行きましょう!今行きましょう!」


にこ「ちょぉっ……!分かったから、引っ張るのはやめなさい!」



69: 名無しで叶える物語 2020/05/22(金) 03:43:13.08 ID:DcgJ/daP.net

途中にこ先輩が買い物に寄りたいとの事だったのでスーパーに寄って帰る。

二人で一つずつ買い物袋を持ちながら言葉もなく先輩の家までの道を歩いていて、無言でも気まずくならない関係って何だかいいなって思った。


にこ「悪いわね、袋持って貰っちゃって」


穂乃果「全然!お家にお邪魔するんだから、これくらい何ともないです!」


ふと、思った事をあまり考えずに口に出す。








穂乃果「それにしてもアレですよねぇ、こうやって買い物袋を持って二人で歩いてると……」






にこ「……それ以上言ったら叩くわよ」


ムスッとした顔で、でもその頬は夕焼けのせいじゃなくほんのり赤くて。
そんなにこ先輩の一言で今自分が何を言おうとしたのか考えて、私も恥ずかしくなる。


…だって、こうやって二人で歩いてるのが夫婦みたいですね、なんて。
何でそんなこと言おうとしちゃったの私!?

もう、バカバカ……なんて考えていると。

あれ?でもその後の言葉に気付いて怒ってきたって言うことは、にこ先輩も……?なんて思って。


…お家に着くまでにこ先輩の顔を直視することは出来なかった。



78: 名無しで叶える物語 2020/05/23(土) 23:37:54.21 ID:VqF+qPqt.net

穂乃果「お邪魔しま~……す…………!?」


こころ「お姉様、おかえりなさい!」


ここあ「お姉ちゃんおかえり!」


こたろう「…おかえり~~」


ガチャリと音を立てて開くドアを越えてにこ先輩の家に入ると玄関で待っていたのはちっちゃなにこ先輩と、にこ先輩と、にこ先輩!?


にこ「なに?どうしたのよ、急に立ち止まって」


穂乃果「…ってうわぁ!!デカいにこ先輩!?」



79: 名無しで叶える物語 2020/05/23(土) 23:38:32.07 ID:VqF+qPqt.net

にこ「いや、さっきまでその私と一緒に居たんでしょうが」


穂乃果「あっ……そっか、えへへ……」


にこ「この子達は私の妹と弟よ。ほら、皆自己紹介しなさい」


こころ「私は矢澤こころです、お姉様のお友達の方ですか?」


ここあ「私ここあ!よろしくね~」


こたろう「…こたろ~~」


穂乃果「うん、こころちゃんここあちゃんこたろうくん、だね!私は高坂穂乃果、にこ先輩のお友達だよ~」


3人揃ってぺこり、と頭を下げて挨拶をしてくれる。
まだ小さいのに皆礼儀正しくて可愛いなぁ、きっとにこ先輩の教育の賜物?なのかな。



にこ「穂乃果~?アンタなんか食べれない物とかある?」


穂乃果「え?どうしてですか?」


にこ「買い物にも付き合ってくれたから、軽くご飯でも出すわよ」


穂乃果「いいんですか!?やったぁ…にこ先輩の手料理……」


にこ「うるさい。で、嫌いな食べ物あるの?」



80: 名無しで叶える物語 2020/05/23(土) 23:39:30.50 ID:VqF+qPqt.net

にこ先輩の手料理にテンションが上がってしまう私だったけど、こつん、と頭を小突かれる。
う~ん…嫌いな食べ物か……。


穂乃果「えーっと……」


にこ「穂乃果の事だから、ピーマンとか食べれなさそう」


言い淀む私にくす、と笑いかけながら冗談っぽく言うにこ先輩。
……子供っぽいって思われちゃうから言いたくなかったんだけど…


穂乃果「……。」


にこ「あ、図星でしょ?」


穂乃果「……だって苦いんだもん」


にこ「そこが美味しいんじゃない。…見てなさい、私が克服させてあげる」


そう言うと台所の方へ向かって歩いていく。
…もしかしなくても、ピーマン出てくるのかな……。



81: 名無しで叶える物語 2020/05/23(土) 23:40:08.80 ID:VqF+qPqt.net

…………

……



こころ「穂乃果さんはお姉様と学校が同じなんですね?」


ここあ「同じ服着てるけどリボンの色がちが~う」


穂乃果「そうだよ~、リボンの色が違うのはね、私がにこ先輩より歳下だからなんだ!」


ここあ「こうはい、だ!初めて見た!」


穂乃果「そうそう、後輩だぞ~!」


にこ先輩からチビたちの面倒見ててね、と頼まれて皆とお話する。

がお~、と怪獣みたいなポーズを取ると皆んながきゃ~って反応してくれる。

素直で可愛いなぁ、雪穂にもこんな時代があったのに…と妹の成長を感じる。



82: 名無しで叶える物語 2020/05/23(土) 23:41:16.08 ID:VqF+qPqt.net

穂乃果「あれ、こたろうくんは絵を描いてるの?」


こたろう「うん、にこに~とほのか~~」


穂乃果「おぉ、上手だね~!」


そこには可愛らしく笑顔で手を繋ぐにこ先輩と私の姿。

何だか小さい子の絵って微笑ましくて可愛いよね、思わず笑顔になっちゃうな。


ここあ「穂乃果ちゃん面白い!お姉ちゃんが初めてお家に友達連れてきてくれて嬉しいな!」


こころ「そうですね、お姉様は普段からアイドルとして忙しいですから…穂乃果さんみたいなお友達が居てくれて……」


にこ「……こころ!ご飯出来たから運ぶの手伝って~」


こころ「あっ、はい!今行きます!」


料理が出来たみたいで、にこ先輩に呼ばれるこころちゃん。

それにしても、今言ってたアイドルって……。


にこ「ありがとうね、穂乃果。料理してる横に来られると危ないから、皆の面倒見てくれて助かったわ」


穂乃果「いえ、皆いい子だから私も楽しかったです!」


にこ「ありがと。…じゃ、ご飯食べるから皆手洗って来なさ~い!」


さっきのこころちゃんの言葉に少し思うところはあったけど、私からは何も聞かなかった。



85: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/24(日) 15:33:23 ID:92EnJ9DW.net

こたろう「はんばーぐー」パクッ


こころあ「美味しい!」モグモグ


穂乃果「…………。」


にこ「ほら、早く食べなさいよ。見た目からは分からないでしょ?」


穂乃果「そ、そうですけど……」


にこ先輩が出してくれたのはハンバーグ。普通なら大喜びするんだけど…中にピーマンが入ってるからちょっと食べるのが怖いな。


にこ「大丈夫、私を信じなさい」


穂乃果「……ええぃ!」パクッ


目をぎゅっと瞑り一思いに口に運ぶ。
…これは……。


穂乃果「……。」モグモグ


にこ「…どう?」



86: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/24(日) 15:33:59 ID:92EnJ9DW.net

穂乃果「……。」ゴクン


にこ「……やっぱりダメだった?」


穂乃果「……美味しい」


にこ「へ?」


穂乃果「美味しい!私初めてピーマン美味しいって思いました!いつもはどんな料理に入ってても風味が嫌なのに……」


にこ「あ、当たり前よ!なんてったってこのにこにーが作ってるんだからね!」


ピーマンは苦味を抑えるために茹でてから小さく切ってるから苦手でも食べられるって思ったのよ……と得意そうにそう言ったにこ先輩の表情は安心からか緩んでいて。
私の為を考えて作ってくれたこの料理がどれだけ嬉しいのか分かってないんだろうなぁ、なんて。


穂乃果「これだったら毎日食べたいくらいです!」パクパク


にこ「ふふっ、気に入ってくれて良かったわ」


穂乃果「……。」モグモグ


…幸せだなぁ、もしにこ先輩がお嫁さんになったらきっといいお嫁さんになるんだろうな、なんて思って先輩の方を見ると、丁度ご飯を食べ始めた先輩と目が合う。

にこりと笑いかけるとぷいっ、とそっぽを向いて黙ってしまった。



87: 名無しで叶える物語(光) 2020/05/24(日) 15:34:56 ID:92EnJ9DW.net

ご飯を食べ終えて少しした所でにこ先輩のお母さんが帰ってきた。
先輩があれ、今日は帰って来れないんじゃ……と首を傾げる。

予定が変わってね。と頭を撫でるお母さんに先輩が嬉しそうな顔を向けては私の存在を思い出して子ども扱いしないで!と怒っていた。


そうして妹ちゃん達の面倒をにこ先輩のお母さんに任せ、私はにこ先輩のお部屋にお邪魔する。

お部屋はにこ先輩のイメージにぴったりの可愛らしいものだった。


移動してから少しの間ただたわいの無い話を続けていた私達だったけど、少々の沈黙を置いてにこ先輩が口を開く。



89: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 18:12:48.12 ID:yEaLCLYW.net

にこ「ね、穂乃果?」


穂乃果「なんですか?」


にこ「私ね、今まで家に誰かを連れてきた事ないの。……なんでか分かる?」


穂乃果「……さっきの」


にこ「そ。……あの子達はね、一年生の頃にアイドルを始めるって言ってしまった時から私がまだアイドル続けてると思ってるのよ」


にこ「……実際はもう違うのにね」


先輩が時折見せるこの悲しい顔。
憧れのアイドルとして活動する事が無くなってしまったからなのかな、なんて思って寂しくなる。
先輩はもう違うなんて言ったけど、私はアイドルとしてのにこ先輩に笑顔を貰ったのに。

……にこ先輩だって、きっと諦めたくないって思ってるはずなのに。



90: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 18:12:58.45 ID:yEaLCLYW.net

穂乃果「…違いません!だって私、にこ先輩のファンなんですから……」


にこ「穂乃果……」


穂乃果「にこ先輩が今はアイドルとして活動していなくても、それでも私は先輩のファンです!」


にこ「……ありがと。穂乃果はそう言ってくれるけどね、私は自分が情けないの」


にこ「この間も貴女と海未に助けられて。今までもそう、今まで私が家に誰も呼ばなかったのは妹達の前で強がる私を見られたくなかっただけ」


穂乃果「……でも、先輩は私を誘ってくれました」


にこ「…何でかしらね。穂乃果になら……貴女になら全部話してみてもいいかなって、そう思ったのよ」


その言葉は嬉しかったけど、にこ先輩の表情に素直には喜べなかった。
挫折を経験してしまったせいからか、なにか思う所があるのかもしれない。
それでもやっぱり、にこ先輩には笑顔でいて欲しかった。


穂乃果「先輩」


にこ「……どうしたの?」


穂乃果「今日、泊まっていってもいいですか?」


にこ「…突然ね。どうしたのよ急に……」


穂乃果「…なんだか今日はにこ先輩と一緒に居たいんです」


にこ「……ママに聞いてくるから、待ってて」



いつもの思い付きで行動しちゃったけど、先輩は嫌とは言わなかった。
…部室で話した時とは違ってお母さんの名前を言い直さなかったのは、心を許してくれたからなのかな。



91: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 18:13:39.04 ID:yEaLCLYW.net

それから、にこ先輩のお母さんは快く受け入れてくれて。

私は家に服とかのお泊まり用具を取りに帰り、お家にお邪魔するんだからとお母さんが持たせてくれたお饅頭をにこ先輩のお母さんに渡した。

こころちゃん達は喜んで食べてくれて、その笑顔をみてまた持ってこようと思った。


にこ先輩がさっきは帰ると思って小さいのだったから、とさっきと同じようにハンバーグを作ってくれていた。付け合せまで用意しておいてくれてお腹いっぱいになるまでご馳走してくれた。


そしてまたにこ先輩の部屋へ。私は家でお風呂に入ってから来たけどにこ先輩は私に料理を作ってくれていたから、ちょっと待っててね、とお風呂に入りに行って。
私はにこ先輩のお部屋に一人、特にする事もなく内装を見る。

可愛らしい先輩の部屋を見回してみる。



92: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 18:14:21.77 ID:yEaLCLYW.net

ふと、ベッドに目線を移すと、布団の上ににこ先輩が忘れていったカーディガンが放られていた。






何の気なしにそれを手に取ると、まだ少し温もりの残ったそのカーディガンになんだか気分が高まる。







……思わず持った手をゆっくりと近づけ、自分の顔を覆うようにしてしまった。







すぅ、と空気を鼻から取り込むと、にこ先輩のいい香りが胸いっぱいに広がる。







頭がくらっとするようなその甘い香りに夢中になっていると。





ガラリ、と部屋の引き戸が開かれた。



93: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 18:15:22.58 ID:yEaLCLYW.net

にこ「ごめん、ちょっと忘れ物……。」


穂乃果「……っ!」バッ


にこ「…?何してるの?」


穂乃果「ぁ、いやっ、これは……!!」


にこ「……。」


見られた!にこ先輩のカーディガンの匂いを嗅いでる所、完全に見られてしまった…!


絶対に引かれちゃうよね…きっと誰だって自分の服の匂いを嗅がれるなんて嫌だもん。


どうしよう……。


……どうしよう…!


焦れば焦るほど何も言葉が思い付かなくて。
それでも先輩に嫌われたくないっていう気持ちだけが頭の中にあって、目元には涙が滲んでしまう。

なにか、何か言わないと……!


にこ「あっ!それ…忘れ物届けに来ようとしてくれてたのね、ありがと」


穂乃果「えっ…?…あっ…………。」


にこ「そうでしょ?」


穂乃果「は、はい…」


にこ「さっき脱いだのを忘れちゃうなんて私もドジね…じゃ、改めてお風呂行ってきちゃうから待っててね」


穂乃果「分かりました…」


どうして…?にこ先輩からは私がカーディガンに顔を埋めていたのが絶対に見えたはずなのに。


それなのにあんな……許して貰えたの?


結局私はにこ先輩が戻ってくるまで、一歩も動く事が出来なかった。



94: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 18:15:52.78 ID:yEaLCLYW.net

……心臓が大きく音を立てているのを感じる。
さっきの穂乃果はなんだか、いつもとは違う雰囲気を纏っていた。


自分でもどうしてあんなにスラスラと言葉が出てきたのか分からない。
だって自分もそれなりに動揺していたんだから。



でも何故か、彼女の行動をあやふやにしておかなければいけないような気がした。



お風呂を上がっても考えは纏まらなかった。




部屋に戻ると穂乃果はさっきまでと全く同じ状態で立っていて、それから口数も減ってしまっていた。



98: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 21:50:35.38 ID:yEaLCLYW.net

にこ「さ、布団持ってくるからちょっと待っててね」


穂乃果「はい…ありがとうございます」


にこ「…意外ね、アンタなら一緒に寝ましょうとか言ってきそうなもんだけど」


穂乃果「い、言いませんよ…そんなこと」


にこ「そう?」

にこ先輩はいつもと同じ様に接してくれるけど、その優しさが今は辛い。
かと言って拒絶されたら多分私泣いちゃうけど…

今の私に一緒のベッドで寝ましょうなんて言えるわけないよね……
にこ「………折角お泊まりなんだもの、私は一緒に寝たいなって思ったんだけど」


穂乃果「……!?」


にこ「ま、アンタがそう言うんなら布団持ってくるわね」


穂乃果「ま、待って……」


ダメだと思いつつも素敵な提案に抗えなくて、にこ先輩を引き止める。

…気持ち程度の遠慮から、にこ先輩の服の裾ををきゅっと掴んで。


にこ「?」

穂乃果「…………。」


にこ「……なぁに?言ってくれなきゃ分からないわよ」

穂乃果「い、いじわる……」


にこ先輩が意地の悪い顔をしながらこちらを上目遣いで覗き込む。
そしてこれまた意地の悪い質問。


にこ「ほら、何が言いたいのか言ってみなさい」


穂乃果「……私も。私も一緒がいい、です」


にこ「はい、よく出来ました」ナデナデ


私が口を尖らせてそう言うと、先輩は子供をあやすみたいに私の頭を撫でる。
……ずるいよ、にこ先輩。



100: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 23:10:07.07 ID:yEaLCLYW.net

にこ「…ちょっと、そんなに狭くないでしょ?もうちょっと詰めなさいよ」


穂乃果「…いやです、さっきイジワルされたお返しです」


にこ「………はぁ。もう、好きにしなさい」


やれやれといった様子でため息を吐くにこ先輩。
…本当に優しいな。


部屋の電気を切って一緒のベッドに潜り込む。

夏も本格的に始まり、密着していると少し暑くて。
でも先輩の温もりを感じる事が出来て嬉しかった。


こうやってくっついていると、お風呂上がりの先輩からいい香りがしてドキドキが止まらない。


やっぱり、最初に対面した時にも思った通り髪の毛綺麗だな……下ろしていると余計に艶っぽくて羨ましい。



101: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 23:11:02.98 ID:yEaLCLYW.net

穂乃果「……。」サワッ


にこ「わっ……なんで急に髪の毛触るのよ」


穂乃果「あ、ごめんなさい…嫌でした?」


にこ「……別に、嫌じゃないけど」


穂乃果「凄いさらさらで、触りたくなっちゃって」


にこ「…あっそ。……穂乃果だって、髪の毛綺麗じゃないの」


穂乃果「ひゃっ……!」


急に首元の髪の毛を触られて驚く。


にこ「ふふっ…首、弱いんだ?」


穂乃果「なっ……!」


自分の首を指指し悪戯っぽく笑うにこ先輩。



102: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 23:12:09.09 ID:yEaLCLYW.net

むっ……ちょっと悔しい。

アンタに復讐する手段を手に入れたわね…と悪い笑みを浮かべる先輩に。

……今度は私が復讐しなきゃね。


穂乃果「仕返しですっ!」コチョコチョ


にこ「ぅひっ!?…い~い度胸じゃない……!」


私がくすぐった事をきっかけに二人でくすぐり合戦が始まる。
しまった、これはくすぐったがりの私に不利な勝負だよ……


にこ「ほれほれ、負けないわよっ!」


穂乃果「ぎゃっ!にこ先輩脇は卑怯ですよ!」


にこ「勝負に卑怯もクソもないのよ!」


穂乃果「ぅひゃ…!ちょ、にこせんぱ……!もうギブっ……!」


結局勝負は途中から一方的になる。くすぐりを耐える為にぎゅっと力を入れて縮こまった私の隙間を狙うみたいにして攻めてくる先輩に私はもう為す術もなかった。


にこ「ほ~ら、勝負を仕掛けてきたことを謝ったら許してあげるわよ!」


穂乃果「~~っ!!」


笑って声も出せない私ににこ先輩がそう告げる。



103: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 23:13:20.42 ID:yEaLCLYW.net

……脇をくすぐられ、謝ろうと思って止めてた息を吸い込んだ時だった。






むにっ






穂乃果「…んぁ……!!」



にこ「へっ……?」



穂乃果「~っ!!」バッ


くすぐられて敏感になっている時に誤って先輩の手が私の胸に当たり、丁度息を吸い込むタイミングで口元が緩んでしまっていた事もあって嬌声を上げてしまう。


口元を両手で押さえるけれど、もう手遅れだった。



104: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 23:14:04.57 ID:yEaLCLYW.net

にこ「ちょ、ちょっと……!なんて声出して……」


穂乃果「はぁ…はぁ……にこ先輩が悪いんじゃないですかぁ……」トロン


にこ「っ!?」ドキッ


穂乃果「は…ふぅ……やっと息が落ち着いた……。も~、酷いですよ!」


にこ「えっ、あっ……!ご、ごめん……」


穂乃果「…明日パフェ食べたいです」


にこ「……意外としたたかね」


先輩がクスッと笑った事を始まりに二人で笑い合う。
すっっごく恥ずかしかったけど、明日も先輩と一緒に居られる予定が立てられたからいっか。


それに、ほんのちょっと。

…その、気持ちよかったし……。


にこ「じゃあ、明日も予定出来たんだから早く寝るわよ」


穂乃果「はい!……おやすみなさい、にこ先輩」


にこ「……おやすみ」


そういうとにこ先輩はこちらに背を向けてしまって。
…寝顔を見てみたかったけど仕方ないかな、と思って目を瞑る。

明日は初めて先輩とお出かけ、楽しみだな…なんて考えてる途中で睡魔に意識を手放した。



105: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 23:15:05.07 ID:yEaLCLYW.net

にこ「……。」モンモン


どうしよ、寝れない。
寝ようと思って目を瞑ると何故かさっきの穂乃果の顔が頭に浮かんできて。


穂乃果『にこ先輩が…悪いんじゃないですかぁ……』トロン


あの一瞬の表情に、ドキリと反応してしまった自分が分からない。
穂乃果は後輩だし、同性だし、そんな感情持つことありえないのに。


心臓は一定のリズム以上で動いていて、心に浮かぶのは普段元気一杯な穂乃果にあんな顔をさせた事への罪悪感。


……それと、決して少なくない嗜虐心だった。



106: 名無しで叶える物語 2020/05/24(日) 23:15:32.53 ID:yEaLCLYW.net

ぶんぶんと頭を軽く振り、その思考を頭から追い出す。


そして何を思ったか右手に残った柔らかい感触と自分のそれを比較してみる。


にこ「……っ!?」ビクンッ


……なんで。
そんな感覚になったことも無いのに…

身体が反応してしまう程の快感に驚いて、気付かれてないかと穂乃果の様子を確認してみる。


穂乃果「すー……すー……」


規則正しい寝息を立てて眠る後輩の子供のようなあどけない可愛い寝顔。

……忘れよう、今の気持ちはもう忘れてもう眠るの。

明日には元通りになってるはずだから。



110: 名無しで叶える物語 2020/05/25(月) 02:55:21.63 ID:3QM6s39Z.net

穂乃果「んん~♡美味しぃ~!」


にこ「アンタホントに美味しそうにたべるわね……」


翌日、ケーキ屋さんで約束通りにこ先輩にパフェを奢ってもらう。
いちごが沢山入っていて生クリームたっぷりでも飽きることなく食べられる。



穂乃果「だって、美味しいんですもん!にこ先輩は食べないんですか?」


にこ「…私はいいわ。なんか胸焼けがあって一杯なんでとてもじゃないけど食べられそうにないから……」


穂乃果「勿体ない……大丈夫ですか?体調悪かったりしませんか?」


にこ「ちょっと寝不足なだけ、大丈夫よ」


穂乃果「寝不足?どうして?」


にこ「……ちょっとね」


そう言われてみたらにこ先輩の綺麗な紅い目の下にはうっすらと隈ができている気がする。
…もしかして寝ている間に私いびきとかかいてた!?



111: 名無しで叶える物語 2020/05/25(月) 02:56:01.41 ID:3QM6s39Z.net

穂乃果「あの…全部は食べられなくても、1口ならどうですか?」


にこ「ん?あぁ、そうね…1口なら食べれそうだけど」


穂乃果「それなら!すごく美味しいから食べてみて下さい!」


にこ「…そうね、じゃあ一口貰うわ」


もしかしたら私のせいかも…と思ってせめてもの償いで一口食べて貰おうとすると、にこ先輩はそう言って手を差し出してくる。


穂乃果「?」


にこ「いや、スプーン……」


穂乃果「あ、そうですよね。…はい!」


にこ「…何してんのよ」


穂乃果「え?スプーンがないと食べられないから……」


にこ「いや、それは分かってるのよ。にこが言いたいのはなんでアンタがスプーンをこっちに向けてるのかって事」


穂乃果「だってそうしないとあ~んって出来ないじゃないですか」


にこ「自分で食べるからいいってのよ!」


穂乃果「ふっふっふ…そんな事言っていいんですか?先輩は今私に逆らえないはずですよ?」



112: 名無しで叶える物語 2020/05/25(月) 02:56:47.97 ID:3QM6s39Z.net

にこ「ぅぐっ…アンタ、ろくな死に方しないわよ」


穂乃果「いいですよ~だ!はい、あ~ん」


にこ「~っ、んっ!」パクッ


顔を真っ赤にして私の差し出したスプーンを咥えるにこ先輩。
少しの間もぐもぐとした後に…美味しい、と呟くにこ先輩に微笑ましい気持ちになる。

…あれ、口元にクリームついちゃってる。可愛いなぁ……


穂乃果「せんぱい、口にクリームついてますよ?」


にこ「嘘?……どこ?」


穂乃果「あ、逆です逆!」グイッ


にこ「あっ……!」


穂乃果「…はい、取れました!……ってあれ?どうしたんですか?」


にこ「…な、なにもないわよ」ドキドキ


私が口元に付いたクリームを手で拭うと、にこ先輩の様子がおかしくなる。
…どうしたんだろ、起きてから先輩ちょっとヘンな気がするな。



113: 名無しで叶える物語 2020/05/25(月) 02:57:51.57 ID:3QM6s39Z.net

穂乃果「あ、そういえばケーキ見てて思い出したんですけど、にこ先輩って誕生日はいつなんですか?」


にこ「ん?あぁ、22日よ」


穂乃果「え?」


にこ「だから、今月の22日」



へ~…にこ先輩の誕生日って7月22日だったんだ。


ん?22日?今月の……?



穂乃果「って、えぇーー!?もうすぐじゃないですか!なんで言ってくれなかったんですか!」


にこ「いや、言ったって仕方ないでしょ」


穂乃果「こうしちゃいられません!行きましょう!」


にこ「はぁ!?行くってどこに!」


穂乃果「プレゼントを買いにですよ!ほら、早く早く!」


にこ「ぐえっ、襟を引っ張るんじゃないわよ!」


残ったパフェをむぐむぐと口に放り込み、にこ先輩を急かす。
途中にこ先輩が気を遣わなくていいから!とか何とか言ってたけど、それは無視しておいた。



114: 名無しで叶える物語 2020/05/25(月) 03:12:45.54 ID:3QM6s39Z.net

そのままにこ先輩の腕を無理やり引いて連れてきたのは少し前にことりちゃんから教えてもらった隠れ家的なハンドメイドの雑貨屋さんだった。
やっぱりことりちゃんはセンスいいなぁ、初めて来たけどどの小物もすごい可愛い!



穂乃果「う~ん、どれがいいかなぁ…どれもいいなぁ……」


にこ「いや、まずは何も言わずに連れてきたここはどこなのよ?」


穂乃果「雑貨屋さんです!ことりちゃんが教えてくれたんですけど、すっごい可愛いものが多いんですよ?」


にこ「はぁ……もうすぐ誕生日だからって、プレゼントなんて要らないわよ」


穂乃果「ダメです!」


にこ「なんでよ……」


穂乃果「にこ先輩の生まれた日ですよ?大切じゃないですか……あっ!これ可愛い!」


にこ「話を聞きなさいってば……ってこれ、リボン?」


穂乃果「はい!これ、にこ先輩はどう思いますか?」


にこ「……可愛いわよ、でも…………」


穂乃果「じゃ、即決です!私このリボンに一目惚れしちゃいました!」


ちょっ…待ちなさい!と私を引き止めようとするにこ先輩をするりと避けて、会計に向かう。



115: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/25(月) 03:14:25 ID:3QM6s39Z.net

可愛くラッピングして貰うと先輩にはい!と渡した。


にこ「…ホントにいいの?」


穂乃果「?…当たり前じゃないですか!」


にこ「……ありがと。大切にする」


少し不安そうに聞くにこ先輩に当たり前だって伝えると私の渡した袋を大事そうに胸に抱えるにこ先輩。
その表情はどこか可憐で儚げな印象を受けて、思わず胸がきゅぅ、となる。


にこ「…着けてみてもいい?」


穂乃果「もちろん!」


そう言うと綺麗にラッピングされた包みからリボンを取り出すにこ先輩。

そのまま元々着けていたリボンをするりと外し手ぐしで整えるとプレゼントした方のリボンにつけかえる。


その所作がなんだかこのお店の雰囲気と窓から差し込む陽射しを浴びている事もあって、とても幻想的で見惚れてしまう。


きゅっと結び直したそれは先輩が着けているものよりも少し淡くピンクに少しオレンジを混ぜたようなリボンで、言葉では表せない程に美しかった。



にこ「本当にありがとう……今度は私からお返ししたいから、穂乃果の誕生日も教えて頂戴」


穂乃果「え、私ですか?8月の3日です!」



116: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/25(月) 03:14:58 ID:3QM6s39Z.net

それから五秒間の沈黙の後。







にこ「……はぁあ!?アンタももうすぐじゃない!!」



穂乃果「へっ…?あ、確かにそうですね」


にこ「忘れてたんかぁい!…どうしよ、今余裕あったかしら……」


そう言うとお財布を確認するにこ先輩。
…先輩がお返ししてくれるって言うんなら私は……。


穂乃果「私、それが欲しいです」



117: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/25(月) 03:15:36 ID:3QM6s39Z.net

にこ「へっ…?」


穂乃果「にこ先輩の今まで着けてたリボン。それがいいです」


にこ「いや、これ結構使ってるやつだし……」


穂乃果「……それでも、それがいいんです」


にこ「…そこまで言うんなら、あげるけど……」


先輩は真剣な私に根負けした様子で答える。


先輩の使っていたリボン。
それは私にとっては特別で、どんなものよりも嬉しい物だった。


穂乃果「…えへへ、似合いますか?」


にこ「ええ、私の次くらいにはね」


ぷいっ、とそっぽを向いてそう答えるにこ先輩。
先輩が照れた時の癖みたいなもので、そういったちょっとした仕草を分かるようになってきた事も凄く嬉しかった。



122: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 08:00:40 ID:nSGqX3Lw.net

2日後、月曜になってまた学校が始まる。
朝いつものように海未ちゃんやことりちゃんとの待ち合わせに行くと。


海未「あら?穂乃果、髪留めを変えたのですか?」


穂乃果「うん!…どう、かな?」


ことり「すっごい可愛い!穂乃果ちゃんにとってもよく似合ってるよ」


海未「そうですね、綺麗な赤色をしているからかいつもとはまた違う雰囲気があってとても良くお似合いですよ。…それにしてもなにやら見覚えがあるような…?」


ことり「確かに、ことりもそう思ってたんだぁ……」


穂乃果「え?あはは…気のせいだよ!」


海未「そうですかね……まぁ、いいでしょう」


なんてやり取りがあって。何となくにこ先輩から貰ったって言うことは隠してしまう。


…なんか二人だけの秘密、とかいいなぁ……なんて思って。



123: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 08:01:51 ID:nSGqX3Lw.net

ことり「あ、あれにこ先輩じゃないかな?」


ことりちゃんが指差した方を見てみると、確かに学校への道を歩く生徒達の中に一人で歩くにこ先輩の姿があった。


穂乃果「おはようございます、にこ先輩!」


にこ「ん、あぁ、アンタ達ね。おはよ」


海未「おはようございます。先輩はいつもこの時間なんですか?」


にこ「いや、今日はちょっといつもより遅いかも。…ことり?どうかした?」


三人揃って駆け寄って挨拶をすると、朝も早いからか少し鈍い反応と共に挨拶を返してくれる。


そのまま雑談をしていると、ことりちゃんが一人なにやら考え事をしていて。


にこ先輩がそれに気づいて声を掛けた。


ことり「あ、いや……にこ先輩、リボン変えたんですか?」


にこ「あぁ、これはね……」


穂乃果「本当だね!…すっごい似合ってます!」


にこ「……?」


にこ先輩からしてみたらなんか白々しい私に疑問を覚えたようで、ぽかん、とした表情を浮かべ首を傾げていた。

先程隠してしまった手前もあって海未ちゃんやことりちゃんにはバレないように人差し指を口元に当ててウィンクをする。

先輩はよく分かって無いながらもま、いいか…といった感じで私の似合ってるという言葉に対してありがと、と言ってくれた。



124: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 08:02:43 ID:nSGqX3Lw.net

海未「へぇ、珍しい事もあるんですね。実は穂乃果も今日から……」


にこ「え、あっ……ホントね。……アンタも、良く似合ってるわ」


この前と同じ様にそっぽを向いて答えるにこ先輩。
自分のリボンだっていうことを隠して褒めるのってやっぱり恥ずかしいみたいで、先輩にはイジワルな事しちゃったかも…


海未「ふふっ、今日はなんだかいい事がありそうですね」


ことり「…………。」


素直に信用してくれてるからこその海未ちゃんの言葉にちょっと罪悪感。


その間もことりちゃんはどこか複雑そうな顔を浮かべていた。



125: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 08:04:40 ID:nSGqX3Lw.net

…………

……


水曜日。結局穂乃果がなんでリボンの事を二人に内緒にしていたのか聞くこともなく、夏休みまであと数日と迫った中いつものように授業を淡々とこなし放課後を迎える。

今日もきっと穂乃果が部室に来るだろうから、と部室で待っていると、ことりは用事があるみたいで海未と二人で部室に顔を出した。

だけど生憎今日は私の追いかけているアイドルの新グッズが発売する日で、二人に面と向かって謝る。

少し残念そうに口を尖らせる穂乃果を海未が窘め、二人が帰った事を確認すると戸締りをして私はすっかり常連となってしまったアイドルショップに向かった。



126: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 08:05:12 ID:nSGqX3Lw.net

到着すると、すぐさまそのグッズを探し急いできたこともあってなんとかギリギリ最後の一つを手に入れる事が出来た。
そのままなにか掘り出し物でも無いかなとショップを見て回る。

すると店先から聞きなれた声。


「すみません!あの、ここに写真が…」


にこ「……?」


何事だろうと思って近づいてみる。


「私の生写真があるって聞いて…。あれはダメなんです!今すぐ無くしてください!」


可愛らしくてほわほわとしたその声。
私が知る中でそんな声をした人物は一人しかいなかった。


にこ「……ことり?」



127: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 08:06:01 ID:nSGqX3Lw.net

ことり「ひゃぁっ!?」


にこ「…何してるの?」


ことり「あ……あっ……」


背を向けて固まることり。その姿をようやく視認すると、メイド服を着て頭にはフリルが付いていた。


ことり「コトリ?ホワット?ドーナタディスカ?」


両目にガチャガチャのカプセルを被せてカタコトの日本語を話すことり。

……いや、動揺したにしても酷すぎるでしょ…

つかつかと近寄りその肩を掴む。


にこ「いや、誤魔化せる訳ないでしょ…」


ことり「あぅ…ごめんなさい……」


ことりは目に当てたカプセルをすっ、と降ろし観念したかのように肩を落とした。



128: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 08:06:37 ID:nSGqX3Lw.net

にこ「……なるほどね」


ことりに連れられやってきたのはメイド喫茶。


話を聞いてみると、

たまたま一人で歩いているところをスカウトされたこと、

学校もバイトを禁止している訳では無かったので可愛い制服にも興味があって始めたこと、

海未や穂乃果には言っていないこと、思った以上に人気が出てしまい有名になってしまったことをぽつりぽつりと聞かせてくれた。


今回は前に開かれたイベントで写真撮影が禁止だったのに何故か生写真が出回ってしまいアイドルショップに流れてきてしまったらしい。


それにしてもミナリンスキーって……私でもカリスマメイドとして名前を聞いた事があったわ。


……なんならオークションでサインをせり落とそうとまで考えて居たのに、まさか正体がことりだったなんてね。



129: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 08:10:36.06 ID:nSGqX3Lw.net

にこ「話は大体分かったわ、でもそれならどうして二人に内緒にしてたの?」


ことり「…それは……。」


にこ「……言いづらいんだったら無理には聞かないわ。…でもね、頼りないかもしれないけど私は一応先輩だから…ことりの力になれるんなら話くらいは聞くわよ」


ことり「……実は」


そう前置きをしてからことりが答える。


バイトを始めたのは制服に興味があったことも勿論あるけど、それ以上に海未や穂乃果に対する引け目のようなものを感じていたから。

…要するに、自分に自信が持てなかったから、ね。


ことり「私には穂乃果ちゃんや海未ちゃんと違って、何も無いから……」


にこ「…はぁ、バカね……」


ことり「ごめんなさい、にこ先輩にも内緒にしてて……」


にこ「そうじゃないわ、何も無いって言ったことに対してよ」


ことり「えっ……?」


にこ「ことりには人を気遣える優しさがあるじゃない。服飾に対する熱意もあるしね」


ことり「そんな…みんなと比べたら私は……」


にこ「バカ、そういう所よ。貴女に足りないのは自信だけ。」


ことり「……にこ先輩」


にこ「知り合って日が浅い私でもことりのいい所なんて沢山言えるわ。……それに、女の私から見ても凄い可愛いし」


ことり「あぅう…………///」


私がそう言い終える頃には、ことりは顔を真っ赤にして俯いてしまって。
その表情もまた可愛くて。それも含めてまたことりの良い所を挙げていく。



130: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 08:11:34.54 ID:nSGqX3Lw.net

にこ「…とまあ、それだけことりには魅力があると思ってるんだけど、まだ足りない?」


ことり「……もう、十分ですぅ…………///」


にこ「そ、ならいいわ。アンタがどう思ってるか知らないけどね、海未や穂乃果もきっと私と同じ様に思ってるわよ。……だから、隠したりなんかせずに素直に言ってみてもいいんじゃない?」


ことり「……はい。…やっぱり、にこ先輩は凄いなぁ」


にこ「はぁ?何よ突然……」


ことり「私達の事、よく見てくれてるなぁって……先輩は頼りないなんて言ってましたけど、穂乃果ちゃんも海未ちゃんも…勿論ことりも、にこ先輩の事頼りにしてます」


にこ「…ありがと。じゃ、私はそろそろ帰ろうかしらね」


ことり「……待ってください!」


なんだか恥ずかしくなって早い所退散しようかと席を立つ。
すると、ことりから呼び止められた。



131: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 08:13:20.71 ID:nSGqX3Lw.net

ことり「…本当に、ありがとうございました。……にこ先輩のお陰で自分に自信が持てそうな気がします!」


にこ「それなら良かった。…もう自分に何も無いなんてバカなこと考えるんじゃないわよ?」


ことり「……はい!」


にこ「…ん、いい返事ね」ニコリ


ことり「あっ……」ドキッ


にこ「じゃ、私は行くから。またね」


そう言って背を向けて歩き出す。今日はグッズを買ってささっと帰るつもりが、意外な出来事が起こっちゃったわね。

…ま、可愛い後輩の事がもっと良く知れたからよしとしましょうか。


そんな事を考えながらお店を出て、家路へと急いだ。

私が出ていった後も、扉をじぃっ、と眺めていることりには気が付かなかった。








ことり「……にこ先輩…///」ドキドキ



132: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 08:15:33.63 ID:nSGqX3Lw.net

…………

……



それから。

ことりちゃんからバイトの事を打ち明けられ、私には何も無いと思ってた、なんて言うことりちゃんに、海未ちゃんと一緒になって怒って。


でも、話が終わる頃には三人一緒になって笑いあった。


にこ先輩にその事を伝えると、優しい笑顔を浮かべて……良かったわね、と喜んでくれた。


そして、毎日があっという間に過ぎ去って行き、とうとう夏休みに入る。


毎年なら待ち望んでいた夏休みだったけど、先輩と毎日会うことが出来なくなるからちょっと残念。


夏休みになって同じく休みに入ったこころちゃん達のお世話をする必要があるにこ先輩の負担になってしまわないように、私からはあまり連絡をする事は無かった。



133: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 08:16:35.55 ID:nSGqX3Lw.net

だけど、先輩の誕生日には勿論メッセージを送った。

日付が変わる30分前から文章を考える。

最近会えてなくて寂しいって携帯に打ち込みかけて、直ぐに消す。大好きな気持ちを言葉にしようと思ったらなんだか自分の目から見てもこれはまずい、という長文が出来てしまった為これも削除。

結局送ったメッセージはなんだか無難で、他人が考えたもののようで。

それでもにこ先輩は丁寧に、自分の言葉で返信を返してくれた。


__________________
__________________


ありがと。

私って夏休みの間な事もあって、誕生日を友達に祝って貰える事あんまり無かったのよ。


だから、すごい嬉しいわ。


いつもは素直じゃないにこだけど、今日くらいは言わせて。


穂乃果に出会えて良かった、いつもありがとね。


P.S、プレゼント、大事にするわね


__________________
__________________


メッセージアプリに既読がついた後、結構な時間が経ってから送られてきたにこ先輩からの返信。


…きっと、早い段階でこの文章は完成していて。


いざ送るっていうタイミングになって本当にこれでいいのか不安になって送信ボタンを前に奮闘していたんだろうなぁ、なんて考えて愛しさが込み上げてくる。


先輩からのメッセージはスクリーンショットに残して、お気に入りのフォルダに入れる。


にこ先輩に喜びの気持ちを込めて返信をすると、その日は携帯電話を胸に抱いたまま眠った。



137: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 13:37:09.17 ID:nSGqX3Lw.net

穂乃果「わぁ~!二人ともありがとう!」


海未「いえ、私達がお祝いしたいだけですから。誕生日おめでとうございます穂乃果」


ことり「うん!いくつになっても誕生日はやっぱり特別だもんね」


今日は私の誕生日。海未ちゃんとことりちゃんがお家にきてプレゼントを渡してくれる。

海未ちゃんからのプレゼントは万年筆でことりちゃんからはおしゃれなワンピースだった。

毎年送りあってるから選ぶのも大変な筈なのに嬉しいな。


ことり「そういえば、にこ先輩はお誕生日いつなんだろ?」


海未「ふむ、そういえば聞いた事ありませんでしたね」


ふと思い出したようにことりちゃんがにこ先輩の誕生日について話し出す。
あ、そっか。海未ちゃんもことりちゃんもにこ先輩の誕生日は知らなかったっけ。


穂乃果「あ、にこ先輩は先月の22日だったよ」


ことり「へっ?…穂乃果ちゃん知ってたの?」



138: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 13:38:12.17 ID:nSGqX3Lw.net

穂乃果「うん!この前聞いたんだ~」


海未「それなら私達にも教えてくれれば良かったじゃありませんか!」


うっ…確かに……。自分が祝うことに夢中で忘れちゃってたよ。


穂乃果「あはは、ごめんね……すっかり忘れちゃってた…」


ことり「ひどいよ~、ことりだってにこ先輩のお誕生日祝いたかったのに……」


海未「そうですよ、せっかく1年に1回しか無い記念日なのに……。穂乃果はなにかプレゼントしたんですか?」


穂乃果「えっ!?あ、にこ先輩がプレゼントはいいって……」


海未「そうですか…でも確かに先輩らしいかもしれません」


穂乃果「で、でしょ~?私は渡したかったんだけど……」


ことり「……。」


内心ごめんね、と思いつつも何とか誤魔化す。
…1回嘘ついちゃうと大変だね……。


海未「とにかく、私達も早めににこ先輩にお祝いのメッセージを送るとしましょうか」


ことり「……そうだね。」


穂乃果「…ことりちゃん?どうかした?」


ことり「う、ううん、何でもないよ!」


なにやら考え事をしている様子だったのでことりちゃんに声をかけてみる。ハッ、として声を上げたことりちゃんはあまり鋭くない私の目から見ても動揺しているように見えた。


海未「さ、それでは穂乃果も折角の誕生日で家族との時間があるでしょうし私たちはそろそろお暇しましょうか?」


ことり「そうだね、穂乃果ちゃんまたね」


穂乃果「あっ、うん!また今度ね!」


そう言って二人は帰っていく。
…やっぱりことりちゃんの様子が気になるけど、どうする事も出来ないし仕方ないよね。



139: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 13:39:39 ID:nSGqX3Lw.net

…………

……



…穂乃果の誕生日。
私の誕生日も祝ってくれたし、私もメッセージ送らないと…なんて思っていると海未からメッセージが届いた。


内容は私の誕生日の事で、ことりと一緒に穂乃果のプレゼントを渡しに行った時に聞いた事と遅れてしまってすみませんでした、と律儀な海未らしく丁寧な文章で伝えてくれる。


それじゃあことりも祝ってくれるのかな、なんて思って少しの間待ってみてもメッセージを受信することは無かった。


代わりに携帯電話がバイブレーションと共に通話を知らせる。相手は予想通りことりからだった。


トン、と通話ボタンをタップしそのまま耳に携帯を当てるといつもの可愛らしい声でことりが話を始める。


ことり『あっ…にこ先輩。今時間大丈夫でしたか?』


にこ「うん、別に忙しくもなかったし全然大丈夫よ」


ことり『よかった、それじゃあいきなりなんですけど……』


ことり『遅れちゃいましたけどお誕生日おめでとうございます!』


海未に続いてことりも少し過ぎた誕生日を祝ってくれる。
なんか穂乃果の誕生日に自分の誕生日を祝われるのも変な感じだけど、素直に嬉しい。



140: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 13:40:35.91 ID:nSGqX3Lw.net

にこ「わざわざ電話までくれてありがとね、海未もメッセージくれて…良い後輩に恵まれたわ」


ことり『そんな、とんでもないです!…それでなんですけど……』


にこ「?」


ことり『穂乃果ちゃんからなにかプレゼントとかって貰いました?ことりもにこ先輩にプレゼント贈りたいんですけど、被っちゃっても嫌なので……』


………?

今穂乃果に会ってきたんだったら聞いてこれば良かったのに。
でもそう言ってくれたのに答えないのも変な話よね…


にこ「そんなに気を遣ってくれなくっていいのに……そうね、穂乃果からはリボンを貰ったわ。恥ずかしかったのか二人には内緒にしてたみたいだけど……」


ことり『そう、ですか……。わかりました、ことりも近い内ににこ先輩にお渡し出来るように準備しておきますね!』


にこ「ホントにいいの?…ごめんね、穂乃果のプレゼントもあったばかりなのに……」


ことり『にこ先輩にはいつもお世話になってますから!』


ホントにいい子ね……申し訳無いけどお言葉に甘えようかしら。
その代わりに私もことりや海未の誕生日祝わないとね。


にこ「ありがと。それじゃあことりの誕生日も教えて?私も祝いたいから…」


ことり『あ、ことりは9月12日で海未ちゃんは3月15日です!』


私の質問の意図を察してくれたのか海未の誕生日まで教えてくれることり。
海未はまだ大分先になっちゃうけど、ことりの誕生日は近いわね。


にこ「ことりはもうすぐね。…こういうの本人に聞くのはどうかと思うけど、欲しいものとかある?」



141: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 13:41:06.98 ID:nSGqX3Lw.net

ことり『それじゃあにこ先輩の前まで使ってたリボン、ことりにくれませんか?』



142: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 13:41:39.29 ID:nSGqX3Lw.net

驚いた。…だって穂乃果と全く同じ事言うんだもん。
なんか私だけ毎回お下がりをプレゼントにするのすっごい忍びないんだけど……


にこ「え?いやでも……」


ことり『…まだひとつ余ってますよね?穂乃果ちゃんは片方結びだから……』


にこ「それはそうだけど…」


というかことり、気付いてたのね。穂乃果が着けてるのが私のリボンだって事。
…私のリボンブランドとか無いしそんなに良いものでも無いんだけど……なんでこんなに欲しがられるのかしら。


ことり『ことりはあのリボンが欲しいんです!お願いします!』


にこ「いや、そこまで言うんなら別にいいんだけどさ……じゃあ夏休み明けたら渡すから、ことりもその時に渡してもらっていいかしら?」


ことり『はい!………楽しみにしてますね?』


なんだか可愛いことりの声なのに、ゾクッと背筋が凍るような感覚がした。



143: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 13:42:32.96 ID:nSGqX3Lw.net

…………

……


…にこ先輩、忙しいのかな……。
夕飯と誕生日のケーキを食べ終わって部屋に戻って来たんだけど、先輩からのメッセージは未だに届かなかった。

にこ先輩も忙しいだろうから別に送ってくれなくても全然いいんだけど、それでもやっぱり寂しいな。


ピコンッ


穂乃果「うわぁ!?」バッ


なんて考えているとにこ先輩からのメッセージ。
突然の振動に携帯を放ってしまう。慌てて拾いに行って内容を確認すると、今大丈夫?と短いものだった。

大丈夫です!と返事をすると直ぐに電話が掛かってきた。


にこ先輩の声は夏休みに入ってから初めて聞くのでちょっと緊張。
えいっ、と通話ボタンを押すと通話が繋がる。


穂乃果「も、もしもし!」


にこ『うわっ、声でかいわよ!』


穂乃果「あぁっ…す、すみません」


にこ『…あ、そういえば突然電話してごめんね』


穂乃果「いえ、全然大丈夫です!何の用事でした?」


にこ『誕生日。メッセージ送ろうと思ったんだけど、なんて言ったらいいのかなって考えたらなかなか納得いかなくて。だから電話しちゃったわ』



144: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 13:43:53.47 ID:nSGqX3Lw.net

穂乃果「あはは、私はにこ先輩の声を聴けただけで十分ですよ?」


にこ『なっ…!私はそういう訳にはいかないの!』


ふふっ、きっと今にこ先輩電話口で顔を赤らめて慌ててる。
幸せだな、こうやって声を聞いてお話出来るの。


にこ『とにかく!…誕生日おめでと、前にも言ったけど…穂乃果に出会えて良かった、わよ…?』


それだけ伝えると『……じゃあねっ』と言って切られてしまう。

にこ先輩からのお祝いはどんどん声量が下がっていって途中から聞こえるか聞こえないか位の大きさで、しかも最後は疑問形。

それでも、いつも素直じゃないにこ先輩が勇気を出して口に出してくれた事がとっても嬉しかった。



145: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/26(火) 14:14:29 ID:nSGqX3Lw.net

ブーッブーッ


穂乃果「ぬぉわっ!」ブンッ


ひとしきり余韻に浸っていると、また携帯が振動してさっきよりも遠くに放…いや、もうこれは投げるって言ってもいいレベルだよね……。


やっぱり慌てて拾いに行くと画面が割れてないかまず確認。幸い綺麗なままの画面にホッ、と胸を撫で下ろすとそこにはさっき電話したばかりの相手からの通話を知らせる文字。


穂乃果「もしもし~、どうしたんですかにこ先輩?」


にこ『……さっきまでの事は一旦忘れなさい、いいわね?』


穂乃果「さっきまでのって……私に出会えて……」


にこ『わ!わーっ!……怒るわよ?』


穂乃果「ふふっ、分かりましたよ……。それで、どうしたんです?」


にこ『いや、ちょっとね…うーんと、なんて言うんだろ……』


珍しく歯切れの悪いにこ先輩。
そのまま2、3秒うーん、と唸ってからまた話を続ける。


にこ『…なんかね、なんかおかしいなって思ったのよ……』


穂乃果「へっ?何がですか?」


にこ『いや、アンタの事だから夏休みの間にこ先輩に会えなくて寂しいですよ~!なんて言うと思ったんだけど、それどころか無駄な連絡寄越すこともないし…』



146: 名無しで叶える物語 2020/05/26(火) 14:21:59.97 ID:kv915wg5.net

穂乃果「……あはは、なんですかそれ~」


確かに、にこ先輩の言う通りだった。
実際にこ先輩に会えなくて寂しいのは確かだし、声を聞きたいって思ってた事も確かで。


…でも先輩がお家の事で忙しいのも知っていたから負担をかける訳にもいかなくて。


にこ先輩が感じた違和感はきっとそのせい。



にこ『…なんかちょっと寂しいな、なんてね』


穂乃果「…えっ…………?」


にこ『やっぱり毎日会ってた訳だから、急に会えなくなると寂しいものよね…私だけかも知れないけどさ』


穂乃果「私も寂しいですよ…」


にこ『…よかった。家の事で忙しいのは確かだけど、こうやって電話したりなら出来るから……』


穂乃果「…寂しくなったら掛けてもいいですか?」パァァ


にこ『……ん。私も、たまに掛けるから』


にこ先輩も私に会えなくて寂しいって思ってくれていたなんて、思ってもみなかったから…なんだか心が暖かくなって。

お別れして電話を切った後なんだか胸が切なくなって胸に手を当ててみると、いつもより少し早いリズムを刻む心臓が心地よく動いていた。


…………

……




それから、週に1回くらいはどちらからともなくにこ先輩と電話でお話して。


海未ちゃんとことりちゃんと遊んだり、一緒に宿題に手をつけたりと夏休みが過ぎていった。


そしてはじめて待ち遠しいと感じた二学期が始まる。



157: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:14:32.22 ID:GwcHWQ9c.net

二学期が始まって1週間と少し。
やっと先輩に会えた事が嬉しくて毎日部室に通った。


海未ちゃんは部活があってたまにしか来られないけど、ことりちゃんはバイトを辞めてたまに助っ人として行くだけにしたらしくって毎日一緒だった。


二人きりじゃないのは少し残念だけど、三人でお話するのもやっぱり楽しくて。


また楽しい毎日を過ごすことが出来てたんだ。


そして今日はことりちゃんの誕生日。


休日と被っちゃったから海未ちゃんと一緒にことりちゃんのお家にプレゼントを届けに行くことになって、喜ぶことりちゃんの姿を想像して自然と足が早まる。


穂乃果「着いた~!えへへ、ことりちゃん喜んでくれるかなぁ?」


海未「ええ、私達が選んだものですからきっと喜んでくれますよ」


お家に到着すると真っ先に呼び鈴を鳴らす。
するとパタパタと奥から歩いてくる音が聞こえて、ガチャリと音を立てて開いた扉からは予想通りの人物が現れた。



158: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:14:59.21 ID:GwcHWQ9c.net

ことり「いらっしゃ~い、来てくれたんだね二人とも!」


にこ「あ、穂乃果に海未じゃない。同じタイミングで来るなんて偶然ね」


穂乃果「え…………。」


…ことりちゃんの後ろからひょっこりと頭を出したのはにこ先輩で。
私は言葉を失ってしまう。


ただにこ先輩が居ただけなら、そこまで驚く事でも無かったのかも知れない。


……でも扉を開けて出てきたことりちゃんの頭を結んでいるのは、私の着けている物と全く一緒のリボン……つまり、にこ先輩の着けていたリボンで。


にこ先輩の頭には私のあげたリボンは着いていなくて、その代わりに羽根の装飾が施された可愛らしい帽子が私に強く存在を主張するかのように着けられていた。



159: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:15:34.90 ID:GwcHWQ9c.net

海未「おや、ことりの着けている髪留めって……」


穂乃果「どうして……。」


ことり「あ、これ?にこ先輩が着けていたのがどうしても欲しくって、誕生日プレゼントに貰ったんだ~」


穂乃果「そ、そうなんだ……。」


にこ「全く、穂乃果といいことりといいよく分からないわよね…」


海未「…………なるほど、そうだったのですね」


穂乃果「に、にこ先輩………その、帽子って…」


にこ「ことりが誕生日プレゼントにってくれたのよ。にこはこんなものしかあげてないのに貰うのは申し訳無かったんだけど…」


ことり「もう、そんな事は言いっ子無しです!……ことりはこれが欲しかったんですから……」


穂乃果「ぅ…あっ……。」


ショックだった。先輩のリボンを私だけの物にする為にことりちゃんと海未ちゃんには内緒にしていたのに……


わざわざそれを選んで貰ったってことは、ことりちゃんも…そういうことだよね…。


それに、にこ先輩が今選んで着けているのは私が贈ったリボンではなく……ことりちゃんの帽子だったから。


穂乃果「……っ!!」ダッ


海未「えっ…穂乃果!?」


私は耐えきれなくって、プレゼントを渡す事も忘れてその場から逃げた。



160: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:17:43.47 ID:GwcHWQ9c.net

にこ「どうしたのよ、急に……。何かあったのかしら…」


海未「ええ…。つい先程までは元気だったんですけど……」


ことり「どうしたのかな…心配だね……。」


海未「とりあえず、プレゼントもお渡しする事が出来たので今日は帰りますね……」


にこ「にこも、そろそろ家に帰らないと…」


ことり「そっかぁ…二人とも、ありがとうございます!また学校で。」












ことり「………ふふっ♪」



162: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:20:21.71 ID:GwcHWQ9c.net

家に帰って部屋に閉じこもると、堪えきれないほど込み上げてくる涙。
我慢する事も出来ずに、声を上げて泣いた。


どうしてことりちゃんは気付いたのかな、なんでにこ先輩は家の中にいたんだろう、それに私のあげたリボンじゃなくてあの帽子を……なんて考えても答えの出ない事が頭に浮かんでは消えていく。


雪穂が晩御飯の為に呼びに来たけど何も喉を通る気がしなくて、今日はご飯要らないや、と伝えまた部屋に籠った。


海未ちゃんやにこ先輩からは心配の言葉が送られて来たけど、返信する気にはなれなかった。


…ことりちゃんからは、何も送られては来なかった。


そして頭の中が纏まらないまま月曜日が始まる。



163: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:21:04.19 ID:GwcHWQ9c.net

海未ちゃんに今日は一人で行くから、と連絡を入れてギリギリに学校に向かう。学校に着くと真っ先に自分の席に座り人を寄せ付けないように机に突っ伏した。


そのまま誰とも話すこと無く放課後を迎えた。海未ちゃんもことりちゃんも話し掛けて来ることは無かった。


部室に行くかどうか少し迷ったけど、にこ先輩に会いたい気持ちよりも気まずさが勝ってしまう。


海未「穂乃果。」


荷物を纏めて帰ろうか、という時に海未ちゃんが声を掛けてきた。…なに?と上がらないテンションのまま気だるげに答える。


海未「今日は帰るんですか?…もし、何も無いのであれば……私と一緒に行きませんか?」


穂乃果「……。」


……確か今日は海未ちゃんも部活があったはずだった。
私は何も言えず沈黙を貫く。


海未「にこ先輩も心配していましたよ。…この前の事なら、皆気にしてませんから……」


そうして海未ちゃんの気持ちを無駄にする訳にもいかず、重い足を引きずるようにして部室に行く事にした。



164: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:21:54.85 ID:GwcHWQ9c.net

ことり「~~。」


にこ「~~~。」


部室の扉の前まで向かうとことりちゃんが先に来ているみたいで、にこ先輩と何か話している声が聞こえた。
…嫌だな、そこは私の居場所だったはずなのに。


海未「こんにちは、お邪魔します」


穂乃果「…………。」


にこ「あ、海未。…穂乃果」


私の姿をみると少し気まずそうな顔をするにこ先輩。
衣装を着ている所をみると、ことりちゃんと話が盛り上がって居たんだろうな。
…やっぱりこの前の帽子を着けていて、余計に帰りたくなってくる。


ことり「穂乃果ちゃん…にこ先輩、心配してたよ?何かあったなら言わなきゃ……」


穂乃果「っ!……ことりちゃんには、関係ない」


ことり「…ホントに関係ないのかなぁ……?」


穂乃果「……何が言いたいの…!大体ことりちゃんが……!!」


にこ「ちょっ…ちょっと二人とも……!」


にこ先輩が私達の間に入って止めようとするけど、回り始めた口はもう止まらない。



165: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:22:45.50 ID:GwcHWQ9c.net

穂乃果「…なんで言ってくれなかったの」


ことり「なんの話かな?」


穂乃果「とぼけないで!…にこ先輩へのプレゼントとか、リボンを貰った事だよ」


ことり「えぇ~?だって、穂乃果ちゃんも言ってくれなかったよね?」


穂乃果「それは………」


ことり「自分が隠し事をしておいてことりには隠すななんておかしくないかな?」


穂乃果「でも、ことりちゃんは私の気持ちを……」


ことり「知ってたよ。でも、だからって早い者勝ちでは無いよね?」


にこ「ちょっと、なんかよく分かんないけどケンカは辞めなさい!」


穂乃果「にこ先輩も!!」


にこ「っ!?」ビクッ


穂乃果「酷いよ…私もにこ先輩に似合うと思ってリボンを選んだのに……。」


にこ「ち、違うわ!これはことりがこの衣装には帽子が映えるからって……!…ほら、見て!ここにリボンもちゃんと持ってきて……」



166: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:24:53.90 ID:GwcHWQ9c.net

近くに畳んであった制服の中からリボンを取り出して、私に見せるように手のひらを差し出す。
…この間の事が頭にチラついて、素直に受け取る事は出来なくて。


穂乃果「気を遣ってくれなくてもいいんです。そりゃそうだよね…ことりちゃんは女の子らしくて可愛いし……私なんて適わないよ……」


にこ「皆大事な友達よ、穂乃果がなんで悩んでるのか分からないけど…私にとっては穂乃果もことりも海未も皆大切なの」


ことり「嬉しい!ことりはそれで十分です。……穂乃果ちゃんとは違って」


穂乃果「何なの…!?さっきからことりちゃんは……!」


ことり「図々しいんじゃないかな、ちょっと先に知り合った位で一番になろうだなんて」


穂乃果「このっ……!!」


にこ「止めて!やめてよ……!!」


私が堪えきれずにことりちゃんに掴みかかろうとすると、にこ先輩が悲痛な声を上げた。
その声でなんとか思いとどまったけど、気持ちは整理する事が出来なくて。どこか飄々と余裕を見せることりちゃんに堰を切られた感情をぶつける。



167: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:26:27.24 ID:GwcHWQ9c.net

穂乃果「大体ことりちゃんはいつもそう!私の真似でいつも後から大事な物を……!!」


ことり「なっ…!そんな事ないもん!」


穂乃果「あるよ!!昔からそうだったじゃない!」


ことり「今は昔の事は関係ないでしょ!?」


にこ「うぅ……もう辞めて……!」


私の言葉に感情を現すことりちゃんと言い合いを続ける。

へたりこんで耳を塞ぐにこ先輩の姿は冷静さを欠いた私の目には映らなかった。





ガンッ!







「……いい加減にしなさいっ!!!!」



168: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:30:03.03 ID:GwcHWQ9c.net

穂乃果「っ!?」ビクッ


突然の大声に驚いて恐る恐る声の方向へ振り向くと、これまで沈黙を貫いていた海未ちゃんが机を強く叩き怒りの表情を顕にして私達二人を見据えていた。


海未「何事かと思って様子を見ていたら……貴女達は何を考えているんですか!?」


海未「周りを気にせずに自分の言いたい事ばかり言って…私たちはもう子供じゃないんですから」


海未「ほら、見てみてくださいよ。」


そう言って海未ちゃんはにこ先輩の隣に歩み寄り、手のひらを指すようにして私たちに主張する。


海未「…貴女達はにこ先輩にこんな表情をさせたかったんですか!?これで満足なんですか!!」



169: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:30:48.86 ID:GwcHWQ9c.net

ことり「えっ……?」 穂乃果「……あっ……」


ようやくにこ先輩に目を向ける。先程から目と耳を塞いでへたりこむ先輩の目には涙が流れていた。
ズキン、と胸が痛む。一番笑顔でいて欲しい相手にこんな顔させて……私、最低だよ。


海未「…立てますか?」


にこ「…グスッ…あ、ありがとう……ごめんなさい」


海未ちゃんがにこ先輩に寄り添って手を差し出す。
手を取って先輩が立ち上がった事を確認すると、海未ちゃんはまた口を開いた。


海未「貴女方がにこ先輩の事を大切に思っているのは知っています。…ですが、先輩の気持ちを考えたことはありますか?」


海未「自分のせいで幼なじみの二人が仲違いをしている、そう思った時に優しいにこ先輩は気にしてしまう、とは考えなかったんですか?」


穂乃果「……。」

ことり「…………。」


海未「大体。大切な言葉を伝えずに、その人の事をそっちのけで言い合いだなんて…おこがましいにも程がありますよ」



170: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:31:37.13 ID:GwcHWQ9c.net

穂乃果「…ごめんなさい、にこ先輩。ごめん、海未ちゃん……ことりちゃん」


ことり「ううん、ことりも…にこ先輩や穂乃果ちゃんの気持ちを考えて無かった。……ごめんなさい」


にこ「…二人が喧嘩をやめてくれるんなら、私はそれでいいの。…ごめんなさい、いきなり泣いちゃったりして」


海未「そんな、にこ先輩は何も悪くなんて……」


穂乃果「うん、先輩は何も悪くないです。…ねぇ、ことりちゃん」


ことり「…そうだね、私も同じ事を言おうとしてたよ」


穂乃果「にこ先輩、私達の気持ちを……聞いてくれますか?」


にこ「……?」



171: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:32:32.65 ID:GwcHWQ9c.net

やっぱり幼なじみだね、同じタイミングで同じ事を考えてた。


……にこ先輩に、伝えよう…私たちの気持ち。


おかしいって思われるかもしれないし、上手く言葉に出来ないかもしれない。


それでも…嘘はつけないから。





穂乃果「私は……。」ことり「私は……。」






にこ先輩の事が好きです。




二人の声が重なった。



172: 名無しで叶える物語(もんじゃ) 2020/05/28(Thu) 12:33:22 ID:GwcHWQ9c.net

にこ「ぇ…えっ……??」


私達が言葉を伝えると、予想もしていなかったのか頭が追いつかないといった様子でおろおろと私達二人を交互に見つめるにこ先輩。


穂乃果「気づいて無かったんですね…結構アピールしてたと思ってたんだけど……」


にこ「そ、そんなの気付けるわけないじゃない!……いつから?」


穂乃果「気付いたのはいつだったか覚えてないけど、多分初めて見た時から……だと思います」


ことり「ことりは、秋葉原で会ってお話したあの時から……」


にこ「そ、そう……。に、にこはどうすれば……」


穂乃果「私達は女の子同士ですから、受け入れて貰えるとも思ってません。…でも、もしにこ先輩が受け入れてくれるとしたら……きっと嬉しくて泣いちゃうと思います」


ことり「うん…今すぐ選んで欲しいなんて言いません。でも、断るとしても受け入れてくれるとしても、いつかにこ先輩の気持ちが決まったらその時には…」


にこ「…分かったわ。私には恋愛経験もないし、今はまだ自分の気持ちは分からない。でも、きっといつか必ず答えを出すから……」



173: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:39:00.18 ID:GwcHWQ9c.net

穂乃果「…ありがとうございます。もしにこ先輩さえ嫌じゃ無ければ、これからも仲良くして下さい」


にこ「…当たり前よ。さっきも言ったけど…貴女達が大切だって事には変わらないんだから」


これまでの困惑した表情から一転して、真剣な顔でそう言うにこ先輩。
正直距離を置かれても仕方の無いことだって思っていたから、その言葉に心底安心する。


…こういう状況でも私達の事を想って言葉を選んで伝えてくれるにこ先輩は本当に優しい人だなって思って。


今まで人を好きになった事なんて無かったのに。

……やっぱり、私どうしようもなく先輩の事が好きみたい。



174: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:40:21.91 ID:GwcHWQ9c.net

海未「さ、話も纏まったようですし、まずは仲直りです」


パン、と手を叩いて海未ちゃんが口を開く。
私とことりちゃんはお互いに謝りあって、海未ちゃんの言葉通りに仲直りをした。


ことり「そういえば海未ちゃん…今日って部活動は……」


海未「しーっ。サボるのなんて初めてなんですから、内緒にしておいて下さいね?」


私の大切な幼なじみはお茶目にウィンクを浮かべ、指を口元に添えてあっけらかんとそう言った。


…ホントに、海未ちゃんには適わないなぁ。

口には出さなかったけど、ことりちゃんと目を合わせると同じ事を考えてるんだろうなと思って笑みが零れた。



175: 名無しで叶える物語 2020/05/28(木) 12:43:38.15 ID:GwcHWQ9c.net

仲直りをした後もことりちゃんとは少し気まずさが残ってしまって。

そんな中でもにこ先輩はこんな私達にも以前のように接してくれて、その時だけはことりちゃんとの気まずさも忘れてまた毎日のように部室にお邪魔をして皆で楽しくお話をする事が出来たんだ。


そしてそのおかげもあって徐々に時間が解決してくれて、
一週間が経つ頃には元の私たちに戻ることが出来た。


さぁ、これにて一件落着、とはならなくて。


…………

……



穂乃果「……。」ことり「……?」


にこ「…どういう事?」





絵里「聞こえなかったかしら?アイドル研究部には、この部室から出ていってもらいます」


希「ごめんなぁ、にこっち……ウチも反対したんやけど……」


一難去ってまた一難、とはよく言ったものだよね。


問題は立て続けに起こっていくのだった。



181: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:26:38.67 ID:p/t1fM4e.net

穂乃果とことりから告白?をされてから一週間程が経って。
内心少し動揺はあったけど、私がそれを見せたら二人も不安になってしまうからなるべく普段通りにすることを心掛けた。

この間数日間ずっと考えていた。
…私は二人の事をどう思ってるんだろうって。


ことりは私から見ても美少女で、守りたくなるような可愛さを持っている子。
あの一件を経て、意外と芯が強くて頑固な所もある一面を知ることが出来た。


穂乃果はいつも元気で一緒に居て楽しい気持ちにさせてくれる、そんな魅力を持っている子。
でも、実は一番乙女なのは存外穂乃果なのかもしれない。
それは思い返してみると様々な場面で見受ける事が出来た。


私は二人にも言ったように恋愛経験がない。

そのせいか自分の気持ちもわからなくて。
…でも、前に穂乃果を見てヘンな気分になった事もまた確かで。

私が自分の気持ちを知るのもそう遠くない未来なのかもしれない、なんて思った。


そして、すっかり元の関係に戻ることが出来た穂乃果とことりと、いつものように三人で部室で話に花を咲かせている時だった。



182: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:27:28.91 ID:p/t1fM4e.net

絵里「失礼するわ。」


希「お邪魔するよ~」


ガチャリと音を立てた扉とそこから入ってくる二つの人影。
その片方は私もよく知る人物、希。
もう片方は存在は知ってるけど、話した事もない生徒会長……絢瀬絵里だった。


絵里「悪いけどこっちも時間に余裕があるわけじゃないから、早速本題に入らせてもらうわね」





絵里「…貴女達にはここから出て行って貰います」


にこ「……は?」


ぴしり、と時が止まったような静寂。

穂乃果は絵里の方を険しい顔で見つめ、ことりはまだ状況を理解出来ていないのか視線を希と絵里へ交互に移していた。

数秒の後にやっとの思いで声を出す。


にこ「……どういう事?」


絵里「聞こえなかったかしら?アイドル研究部には、この部室から出ていってもらいます」


希「ごめんなぁ、にこっち……ウチも反対したんやけど……」


同じ様な事を繰り返して言う絵里。
やっと口を開いた希は、酷く申し訳なさそうにこちらを見ながら頭を下げた。



183: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:38:24.13 ID:p/t1fM4e.net

…………

……


突然現れた希先輩と生徒会長に戸惑う。
…だけど、私にはこの先輩が私の居場所を壊そうとしている事だけが分かって、非難するような視線を飛ばす。


絵里「…なにか文句があるんなら聞くけど?」


冷たい目でこちらを見つめ返す生徒会長。
文句なんてあるに決まってるよ、急に顔を出したかと思ったらこんな事を言ってきて。


穂乃果「なんですか、それ。」


絵里「この前、生徒会の会議でこの学校に必要のない部活が多く存在している事が問題視されてね」


絵里「…確かに部の発足時には人数が集まっていた様だけど、今や部員は矢澤さん一人のこの部活。学校に必要無いわよね」


まるで当たり前の事を言うかのように平然と言ってのける生徒会長に、頭がカーッと熱くなる感覚がした。



184: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:39:06.34 ID:p/t1fM4e.net

穂乃果「…何も知らないくせに…っ!」


ことり「穂乃果ちゃん!……それって、もう決定なんですか?」


絵里「ええ……決定事こ…」


希「いや、条件はあるけどそんな今すぐにでも廃部にするってつもりでも無いから、とりあえずは安心していいよ」


絵里「希……!」


希「どこの部活にも平等にチャンスがあるべき、やん?…えりちの個人的な考えで強行するのはウチも納得がいかないんよ」


絵里「……。」


突如割って入った希先輩に非難の声を上げる会長。
…希先輩はもしかしたらこちら側に肩入れしてくれているのかもしれない。



185: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:41:15.86 ID:p/t1fM4e.net

にこ「……その条件って」


希「うん、部活発足に必要な人数…つまり5人やね。それを、今月中に集めてもらう」


穂乃果「そんな!今月中って…後10日位しか無いんですよ!」


絵里「それも出来ないんなら、やっぱり学校には必要ないって事よ。…今まで残しておいてあげただけでも有難く思って欲しいわね」


最後の一言に悪意を感じて、また嫌な感情が浮かんでくるけどなんとか抑える。
そして、心を落ち着けるように胸を一撫でしてから口を開いた。


穂乃果「…………分かりました。」


にこ「穂乃果?」


穂乃果「絶対に集めてみせます。…私達の居場所は無くさせないですから」


絵里「……そ。じゃあ、伝えたからね。」


さら、と髪を揺らしながら踵を返して部室から出ていく生徒会長と、じゃあね、と挨拶をした後に去っていく希先輩。
…希先輩は頑張ってね。と言うかのように私に目線を向けていった。



186: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:42:58.47 ID:p/t1fM4e.net

にこ「…なんであんな啖呵を……。」


穂乃果「考えてもみてください、確かに日数は問題かもしれないですけど…希先輩は私達にかなり分のいい条件を残していってくれたんです」


ことり「うん、そうだね。これなら何とかなるかもしれない」


にこ「って言ったって、後10日で4人なんて……」


穂乃果「あと2人ですよ」


にこ「……。」


穂乃果「私は、私達は…ここが好きなんです。絶対に失くしたくない。だから……」


ことり「にこ先輩、私達をアイドル研究部に入れてください!」









にこ「……だめよ、それは認められない」



187: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:43:39.63 ID:p/t1fM4e.net

予想もしていなかった答えに一瞬言葉が詰まる。
にこ先輩だってここを失くしたく無いはずなのに……。



穂乃果「どうして!?」


にこ「ここは仲良しクラブとして作った訳じゃない。……気持ちは嬉しいけど、私は本気だったの。…それが出来なくなった今、ここは無くすべきなの」


そっか、にこ先輩は私達が先輩の為にここに入ろうとしてるって思っているんだ。
…それなら、尚更だよ。


穂乃果「だとしたら……それこそ、やりましょう。」


にこ「…どういう事?」


穂乃果「私は、にこ先輩を通してアイドルに憧れたんです。…だから、一緒にやりましょう」


私はにこ先輩と初めて出会ったあの日。先輩に惹かれる思いと共に、泣き顔さえも笑顔に変えてしまうアイドルという存在への憧れを抱いたんだ。
だからこの場所を、諦められないよ。


ことり「私もです。…もしことりが向いていないって判断されたなら、衣装係としてでもいいです。だから……」


私達の気持ちを伝えても眉間に寄った皺を直すことなく険しい顔を浮かべるにこ先輩。
やがて少し考えた後に、言いづらそうにして口を開いた。


にこ「仮に、貴女達が本気でそう言ってくれてるとして。……アイドルに恋愛はタブーよ、それでもいいの?」


穂乃果「っ……!」



188: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:44:19.62 ID:p/t1fM4e.net

にこ先輩が口にしたのは、私達の持つ先輩への想いを一度捨てなきゃいけないっていう事だった。

にこ先輩に憧れてアイドルにも興味を持ったっていうことは本当、それは間違いないって自信を持って言えるよ。
だけど正直、先輩への思いを隠してそれを始める勇気が出なくて言い出すことが出来ていなかった事も事実だった。


ことり「私はそれでもいいです。…ここが無くなってしまう事の方が、よっぽど辛いから……」


穂乃果「……!?」


……真剣な目だった。凄いよことりちゃん、私は少し考えてしまってすぐには答えを出す事が出来なかったのに…。

そんな幼なじみの目を見て、私もようやく覚悟が決まった。


穂乃果「私も、それでいいです。だから…お願いします!」


ことり「お願いします!」


じっ、と私たちを見つめるにこ先輩。
力の入った肩をストン、と下ろすと参ったといった様子で口を開いた。


にこ「はぁ…分かったわ。そこまで言ってくれるんなら、二人の入部を認める。…ただし、着いて来れないなんて言ったらすぐに辞めてもらうわ。ことりも、衣装係だけなんてことは許さないわよ」


ことり「はいっ……!」


穂乃果「ありがとうございます!」



189: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 00:44:57.66 ID:p/t1fM4e.net

にこ「……お礼を言うのはこっちの方。本当はね、貴女達に入って貰えたらってずっと思ってたの」


穂乃果「へ……?」


にこ「ことりは声も可愛いし衣装を作る事も出来る。穂乃果は周りを笑顔にする才能を持ってる。二人ともアイドルに必要な物を持ってるって、ずっと考えてたのよ」



にこ先輩に認めて貰えた事が嬉しくて、ことりちゃんと手を取り合って喜ぶ。
まだ喜んでる場合じゃないわよ!なんてにこ先輩は言ってたけど、口元は嬉しそうに緩んでいた。

これで、あと二人……。


にこ「あと二人か……この時期だしなかなか厳しいかも知れないわね」


ことり「そうですね…後10日しかないですし……」


穂乃果「……それなら、一人私にあてがあるんです。」



193: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:43:28.73 ID:p/t1fM4e.net

にこ「……って。アンタの言ってたアテって……」


海未「……?」


にこ「海未の事じゃないの!!」


翌日、放課後に部活前の海未ちゃんを無理やり連れていくとにこ先輩からつっこまれる。
それは私の知り合いなんて少ないんだもん、そりゃそうだよ。


海未「で、私は何故急に連れてこられたんですか?」


ことり「あ、えっと……」


ことりちゃんが丁寧に昨日起こったことを海未ちゃんに伝えてくれる。
海未ちゃんは終始無言でそれを聞き終えた後、微妙な表情を浮かべて口を開いた。



194: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:44:10.58 ID:p/t1fM4e.net

海未「あの、穂乃果……?もしかしてですけど…」


穂乃果「うん!海未ちゃんも入ってくれるよね?」


海未「無理です。無理に決まってます」


食い気味に拒否されちゃった。
え~、絶対にいい案だと思ったんだけど……


にこ「…海未は部活もあるし、それにアイドルに興味なんて……。」


穂乃果「ううん、そんな事ないです!海未ちゃんは可愛い物に憧れがあると思うし、それにポエ……」


海未「穂乃果ァ!!何を言おうとしているんですか貴女はぁ……!」


ことり「あ、そっか!海未ちゃんのポ…詩はもしかしたら作詞に活きるかも……」


穂乃果「そう!それだよことりちゃん!」


にこ「へぇ…作詞……。確かに、スクールアイドルをやるなら作詞作曲は欠かせないわよね」


海未ちゃんが顔を真っ赤にして叫ぶと。
ことりちゃんは私の意図を察してくれたらしく、海未ちゃんが作詞をする事が出来るって気付いてくれて。
にこ先輩はアイドルを評価しているときのようにギランと目を輝かせて真面目に考えていた。



196: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:44:50.05 ID:p/t1fM4e.net

海未「……なんの事か分かりませんね。大体私は…」


穂乃果「と言うと思って中学生の頃のノートを……」


海未「ちょ、まっ……!なぜ貴女がそれを持っているのです!!」


穂乃果「え?だって海未ちゃんがウチに捨てて行ったんじゃん」


海未「くぅっ……!あの頃の私を的にしたい気分です……!!」


にこ「いや、死ぬでしょそれ。殴りたいくらいにしときなさいよ」


私がノートをカバンから取り出すと、まるで音速なんじゃないかって錯覚するくらい早く私が気付かないうちにノートをひったくる。

持っている理由を説明したら海未ちゃんにしては珍しくよく分からない事を言い出してにこ先輩につっこまれていた。



197: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:45:19.91 ID:p/t1fM4e.net

ことり「あはは…。でも、ことりも海未ちゃんと一緒なら嬉しいなぁ……」


海未「……やっぱり、無理ですよ。私なんて…」


穂乃果「海未ちゃんっ!海未ちゃんは可愛い衣装に全く興味が無いって、そう自信持って言える?」


海未「…興味は無くはないです。ですが、私なんかが……」






にこ「私なんかって…。海未、アンタそんだけ可愛いのに何が不満なのよ?」


海未「えっ……?」


海未ちゃんが自信無さげに顔を伏せるとにこ先輩がサラッと言ってのける。


にこ「ほら、勿論顔もだけど髪の毛もこんなに綺麗。」


ことほの「むむっ…」


そして海未ちゃんの髪の毛をサラりと撫でた。
…それに納得のいかない表情を浮かべるのは私とことりちゃんで。

にこ先輩は無自覚でこういう所があるからなぁ……少し妬けちゃう。



198: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:46:02.01 ID:p/t1fM4e.net

海未「そ、そんな…恥ずかしいです……」


にこ「…正直興味が無いならにこも無理に誘ったりはしないけど、少しでもやる気があるんなら挑戦してみてもいいんじゃないの?」



海未「それは…そうですが。」


にこ「穂乃果やことりにここまで協力して貰えたんだから、私だって躊躇してる場合じゃない。だから言わせて貰うけど、海未…アンタはアイドル向いてるわよ」


にこ「弓道で本番の強さは鍛えられてるはずだし、この中で一番体力もある。それに加えて作詞も出来るなんて、即戦力じゃない」


にこ「部活動もあるから無理にとは言わない。…でも、少しでも興味があるんなら……やってみない?」


穂乃果「そうだよ!それに海未ちゃん、にこ先輩には一つ借りがあるよね……?」


海未「借りって……はっ…!?」



199: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:46:22.71 ID:p/t1fM4e.net

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海未『何かお役に立てる事があれば、なんでも言ってください。これがお詫びと言ってはなんですが、尽力します』


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200: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:48:54.90 ID:p/t1fM4e.net

海未「まさか……。あの時の事を持ち出すつもりですか!」


ことり「あのこと?」


穂乃果「ねぇ、海未ちゃん。…武士に二言はないんだって、私テレビで見たよ」


私がそう言うと、海未ちゃんはわなわなと震えて。
…そして、力なく肩を落とした。


海未「~っ!……はぁ、分かりました。確かにそう言いましたし、興味がある事も確かです。協力しましょう」


こうして、私達の大切な幼なじみ。海未ちゃんが仲間に加わってくれた。



201: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:51:11.40 ID:p/t1fM4e.net

ことり「やったぁ!ありがとう海未ちゃん!」


海未「ただし!それならば朝練は必ず行います。確かにまだ存続が決まった訳ではありませんが、まずは体力作りからです」


穂乃果「えぇ~!?朝練……」


にこ「確かに、にこも活動を辞めてからはあまり本格的に動いてなかったからそれはいいわね。」


海未「私を入れたからには何事にも全力で取り組んで貰います。…いいですね?」


ことり「ぴぃっ!!」


穂乃果「わ~ん、海未ちゃんの鬼~!!」


仁王立ちでこれからの練習メニューについてあれこれと説明をしだす海未ちゃん。

なんとなく、それらしいというか…でもこれで私達も頑張る事ができるね。



202: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:52:12.75 ID:p/t1fM4e.net

海未「そういえば、足りないのはあとひとりなんですよね?」


にこ「え?あぁ、そうだけど……」


海未「それなら一人だけ、可能性がありそうな人を知っていますよ」


そして、ひとしきり顔を輝かせて私たちの体力強化プラン(鬼)を語った後に、ふと海未ちゃんがそう言った。

えぇ!?とみんなで驚いた後ににこ先輩は私の方を半目で見つめながら、


にこ「……って、なんか似たような展開ね」


とぼやく。


海未「はい?なにか問題がありましたか?」


にこ「いや、こっちの話……気にしないで」


こうして、海未ちゃんはこれから弓道部の方に行くので。と、心当たりの方はまた明日という事になった。



203: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:54:33.30 ID:p/t1fM4e.net

…………

……

穂乃果「ただいま~。」


ほのママ「おかえり。雪穂に友達来てるから、ついでにお菓子持ってって貰える?」


穂乃果「うん、いいよ。これ持っていけばいいの?」


ほのママ「そう、お願いね。」


帰宅するやいなやお母さんから雪穂の部屋にお饅頭などのお菓子を持っていくように頼まれる。
部屋に戻る予定だったし断る理由も無いのでそれを受け入れて、階段を上った。


穂乃果「雪穂~、お母さんがお菓子持ってけって。入っていい?」


雪穂「いいよ~。」


雪穂の返答を待って部屋に入る。ありがと、と言ってお菓子の入ったお盆を受け取る雪穂の後ろには綺麗な金色の髪の毛を携えたあどけない美少女がいて。


亜里沙「あ、コンニチハ……雪穂のお姉ちゃん、ですよね?」


穂乃果「うん、そうだよ!私は高坂穂乃果。雪穂と仲良くしてくれてありがとね。」


子供扱いしないでよ~、と不満そうに言う雪穂を余所に、雪穂の友達が続けて口を開いた。






亜里沙「__私は絢瀬亜里沙って言います!よろしくお願いします、穂乃果さん」



204: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:55:17.19 ID:p/t1fM4e.net

…?
……絢瀬、なにか聞き覚えのある名前のような。

そう思った私は思考を巡らせる。金髪…絢瀬……。そう考えた所で、記憶の浅い所から思い当たる節があって。


穂乃果「まさか…生徒会長の妹さん……?」


亜里沙「……?お姉ちゃんですか?オトノキザカの生徒会長をしているって確か言ってたような…」


ドンピシャだった。これって何かの偶然……いや、もしかしたら生徒会長の事をなにか知ることが出来るかもしれない。


穂乃果「ねぇ、お姉さんの事について…少し教えて貰えないかな?」


私はちょ、何いきなり!と驚く雪穂を押し退けるように部屋に入り、亜里沙ちゃんの近くに腰掛けた。



205: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 22:56:08.59 ID:p/t1fM4e.net

穂乃果「……なるほど」


亜里沙ちゃんから聞いた話と、私の知る生徒会長……絵里先輩は大きくかけ離れていた。

彼女が言うにはとても優しくていつも笑顔を浮かべて居るいいお姉ちゃんらしいんだけど、私は絵里先輩の笑顔なんて見た事が無かった。


そして亜里沙ちゃんはスクールアイドルが好きでよく見るらしく、絵里先輩にも勧めた事があるらしいんだけど…その時だけは冷たい表情で、私はいいわ…と突き放されたらしくて。


私がどうしてなのかな、と呟くと。
絵里先輩が昔バレエをやっていて、そのせいでスクールアイドルの踊りが幼稚に見えるのかも知れません…と亜里沙ちゃんは寂しそうにそう答えた。


私は亜里沙ちゃんにお礼を言い、雪穂に邪魔してごめん、と謝って部屋を出ていく。


……もしかしたら、アイドル研究部をなくそうとしているのもそれが原因なのかもしれない。

兎にも角にも、絵里先輩の事を少しは知る事が出来た。
これが先輩がここまでして部を潰そうとしていることへの解決の糸口になればいいんだけど……。



207: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:43:56.55 ID:p/t1fM4e.net

翌日。

海未ちゃんの言う通りに朝練の為に集まると、初っ端からこれ?!ってほどきつい練習をする事になって。

これ明日絶対に筋肉痛だよ……とぼやきながら学校へ行く。

朝早く起きたせいか、いつもより授業中意識が飛ぶ時間が多くて海未ちゃんに早速怒られた。


そして放課後。今日は部活も無いから、と海未ちゃんも揃って三人で部室に向かう。


にこ先輩はいつものように先に来てパソコンを弄っていた。


にこ「来たわね、それじゃ早速昨日の続きだけど……。」


海未「あ、はい。そうですね、どこから説明すればいいか……」


海未「あれは、にこ先輩が元部員の方とお話していた日なので…確か……6月くらいでしたか。」



208: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:46:48.60 ID:p/t1fM4e.net

…………

……


希『キミかな?にこっちの事を調べてるっていうのは』


海未『えっ…?あ、はい。実は……』


希『ふむ、なるほどね。結論から言うと、その噂はほとんどが嘘っぱちやよ』


海未『そうなのですね…。…それで、貴方は……?』

希『あぁ、自己紹介がまだやったね。ウチは東條希。生徒会と超常現象研究会……って言ってもこっちはウチ一人の部活やけど……っと、話が逸れたね。』


希『まぁ、そんな感じの事をしてる2年生。…キミは?』


海未『私は園田海未と申します。幼なじみが矢澤先輩と親密になったのですが、悪い噂も聞く先輩なので不安になって……』


希『…そう。それやったら大丈夫やと思うよ。にこっちは凄い優しい子やから……』


海未『そう、でしたか……それは悪い事を言ってしまいましたね……』



209: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:48:10.81 ID:p/t1fM4e.net

……

…………


海未「と、まぁその時に希先輩とはこんなやり取りをしたんです。」


にこ「あぁ、確かに前に希から話を聞いたって言ってたわね」


穂乃果「元部員の人を海未ちゃんが追っ払ってくれた時だよね、あの時は怖かったなぁ……」


ことり「そんな事があったんだね…」


にこ「相手も二人だったし、私はあまり戦力にならないものね」


穂乃果「いや、海未ちゃんが。」


海未「いや、私なんですか……。」



海未「……って、そんな事はどうでもいいんです!大事なのは……」



210: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:48:57.36 ID:p/t1fM4e.net

にこ「…超常現象研究会ってとこ?」


海未「その通りです。希先輩はあの時、部員は一人しか居ないって言ってました、という事は今回の件でここと同じく廃部になる候補に上がっている事でしょう」


穂乃果「なるほど……だから統合しましょうって事?」


海未「ええ、そういう事です。」


ことり「でも、簡単に許してくれるかな……相手は生徒会長側なんだよね?」


穂乃果「うーんどうだろう…希先輩は意外と協力的だと思うんだけど……」


にこ「それに、アイドルとして活動する気があるのかどうかにも疑問があるわ」


海未「そうでしたね、確かにそこも重要でした。…申し訳ありません」


穂乃果「う~ん…でもとにかく、やれる事は全部やっておこうよ!」


ことり「確かに、もう期限は残されて無いから…聞くだけ聞いてみてもいいんじゃないかな?」


にこ「……そうね、確かに二人の言う通りだわ。折角メンバーを集めても、潰れちゃったら意味無いんだから」


にこ「それに……。」


穂乃果「それに?」


にこ「…いや、なんでもないわ。」


そう言ってぷい、と顔を背けるにこ先輩。
…どうして今なのかは分からないけど、先輩のその仕草って…………。



211: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:50:12.12 ID:p/t1fM4e.net

…………

……


穂乃果「ここ…神社?」


海未「はい、神田明神ですね。穂乃果も来た事があるでしょう?」


穂乃果「そりゃあ地元だからね。…でも、どうしてここに?」


ことり「まさか、今更神頼みとか…」


にこ「バカ、そんな事の為にわざわざ連れて来ないわよ」


ことり「いてっ。えへへぇ…もう、酷いですよぉ……。」


穂乃果「…なんかことりちゃん、喜んでない?」


にこ先輩にコツン、と小突かれたことりちゃんはどこか嬉しそうに文句を言っていて。
…なんか私よりも違う次元にいってしまった親友の姿にちょっと戸惑う。



212: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:50:38.14 ID:p/t1fM4e.net

にこ「ほら、あれ見てみなさい」


希「……。」


にこ先輩に促されて視線を向けると、巫女服を来た人が神社の境内を竹箒で掃いている姿があった。
わぁ、綺麗な人……。なんて呟いてよく目を凝らしてみると、なんだかその人に見覚えのある様な気がして。


穂乃果「ってあれ、希先輩……?」


にこ「そうよ、希はあそこでバイトしてるの」


海未「なるほど、なんだか…らしい、って感じがしますね」


ことり「うん、凄い似合ってるというか…雰囲気が……」


にこ「ここなら生徒会長も居ないだろうし、丁度いいかなと思ってね」


そう言うと希先輩に向かって歩みを進めるにこ先輩。
ある程度近づくと希先輩もこちらに気がついたようで、少し驚いたような顔を浮かべていた。



213: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:51:37.97 ID:p/t1fM4e.net

希「にこっち……。そっか、その様子やとなかなか順調みたいやね」


にこ「ええ、お陰様でね。」


希「…それで、わざわざここまでウチを訪ねてきたのはどうして?」


にこ「単刀直入に言うわ。希、アイドル研究部に入って」


希「…はは、随分とまた急やね?それはどうして?」


にこ「……勿論、部を存続させる為…お互いにね。」


希「あぁ、なるほど…でもそれだとにこっちの思ってるような部活は作れないんと違う?」


にこ「だから無理にとは言わない。……だけど、部の事は関係なしに入って欲しいって思ってる」


希「へぇ……それはまたどうして?」


にこ「それは……だぁあ、もう!まどろっこしい!…やりたいのよ、私が…アンタと!」



214: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:52:31.59 ID:p/t1fM4e.net

希「えっ……?」


にこ「クラスでも孤立していた私に、ウザったい位に話し掛けてくれて…少なからず感謝してるの!…言わせないでよ恥ずかしい」


希「…ぷふっ、なにそれ?…にこっちはホントに可愛いなぁ」


ことほの「むむむっ……!」


希先輩がにこ先輩を、まるで子供をあやす様に撫でる。
空気を呼んで口を挟まずにいた私達だったけど、思わず頬を膨らませてしまった。

希先輩はそれに気がついたようで、にひひ、と悪い顔を浮かべると。








にこ先輩のほっぺたに軽く口を落とした。



215: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:53:47.68 ID:p/t1fM4e.net

ことほの「!!?」


にこ「んなっ……!?」


希「あはは、嬉しいこと言ってくれるやんにこっち。ウチ嬉しくて涙が出そうや……」


そのままにこ先輩をハグする希先輩。

にこ先輩に見えないように、こちらにふふんっ、という勝ち誇った顔を浮かべる。


ことほの「ぐぬぬぬっ……」


なんだろう、もしかしたらこの先輩とは仲良くなれないかもしれないよ。
隣に居たことりちゃんを見ると今まで見た事も無いくらいに眉間に皺を寄せて、膨らみ過ぎて飛んでいっちゃうんじゃないかってくらいほっぺたを膨らませていて。


海未「…なにやってるんですか、貴女達は」


そして、その一部始終を見ていた海未ちゃんは心底呆れた顔をしていた。



216: 名無しで叶える物語 2020/05/29(金) 23:54:39.21 ID:p/t1fM4e.net

希「あっはっはっ!ごめん、からかい過ぎたね?」


ことほの「……。」ジーーッ


にこ「なんの事…ってうわっ!アンタ達なんて顔してんのよ、アイドルとしてあるまじき姿よ!」


ある程度私たちの反応を見た希先輩が、満足といった様子でにこ先輩から身体を離す。
何事かとこちらを振り返ったにこ先輩は私たちを見て驚いていて、それでも希先輩を睨む事を辞めない私たちにデコピンをお見舞いしてきた。


穂乃果「あいたぁ!」


ことり「っぴいっ!…うへへぇ……♡」


海未「……。」


…あぁ、もうことりちゃんはダメだ、手遅れだよ。

海未ちゃんに助けを求めるように目線を向けると、諦めの表情で首を左右に振った。



221: 名無しで叶える物語 2020/05/31(日) 10:07:31.96 ID:FH+6r2yJ.net

にこ「で、どうなのよ。」


希「ん?あ~、そうやね……いいよ。」


ことり「ホントですか!」


希「うん、元々皆で何か一生懸命になるっていうのに興味あったしね。」


思っていたよりも呆気なく、希先輩はアイドル研究部との統合を受け入れてくれて。

そして、その事によって正式に部活の存続が決まった。


海未「よかった、これで部活としての存続が決まったのですね」


にこ「ええ、そうね…ありがとう。」


希「いーや、お礼を言われるような事じゃないやん?」


にこ「ううん、私にとってはお礼を言ったって足りないわ。これで、やっと……。」


にこ先輩が感慨深そうに手を握って実感を噛み締める。
…そうだよね、先輩からしたら一年生の頃からの悲願なんだ。
だからこそ、やるからにはより高みを目指さないといけない。



222: 名無しで叶える物語 2020/05/31(日) 10:08:06.97 ID:FH+6r2yJ.net

穂乃果「……。」


にこ「穂乃果、どうかしたの?…アンタならもっと喜ぶかと思ったんだけど……」


私が考え込んでいると、その様子に気が付いたにこ先輩から声を掛けられる。
私は昨日から考えていることをぽつりと口に出した。


穂乃果「あ、はい……。ねぇ、皆。一つだけ聞いてもらってもいいかな。」


ことり「?」


海未「…どうしたんですか?」


穂乃果「絵里先輩の事なんだけど……」


にこ「生徒会長?別にメンバーを集めることさえ出来ればもう関係無いんだから……」


穂乃果「そうじゃなくって。……なんとか味方になってもらう事は出来ないかな?」



皆が目を見開いて驚いたようにこちらを見つめる。




……希先輩だけは少し嬉しそうな表情を浮かべているように見えた。



223: 名無しで叶える物語 2020/05/31(日) 10:09:08.56 ID:FH+6r2yJ.net

…………

……




にこ「なるほどね、正直まだ信じられないけど…」


海未「雪穂の友達が生徒会長の妹だったなんて、世間は狭いというか…」


ことり「すごい偶然だよね」


希「確かに、えりちが昔バレエをやってたのは間違い無いんよ。ここに動画もあるしね。」


そう言って希先輩が携帯で動画を再生して見せてくれる。
動画の中の幼い絵里先輩は、私たちに見せた事も無いような笑顔で楽しそうに踊りを舞っていた。
ひとしきり動画を見た後に、皆でその技術の高さに言葉を失う。
その沈黙を打ち破ったのは、にこ先輩だった。


にこ「で、穂乃果は妹さんの話を聞いてなんで仲間にしようだなんて思った訳?」


穂乃果「うん…なんだか、絵里先輩がここまでアイドル研究部を嫌うのにはなにか理由がある様な気がして……。」



224: 名無しで叶える物語 2020/05/31(日) 10:10:33.72 ID:FH+6r2yJ.net

穂乃果「ほら、亜里沙ちゃんの言う通りなら絵里先輩は踊るのが好きだからバレエをやっていたって事ですよね?それも大会で上位に入るくらいに。…それなら、どうにかならないかなって思って……」


海未「…確かに、殆どが未経験者な私達にとってダンスの基礎知識を持った会長が味方になってくれれば心強いですが……」


ことり「そんなに簡単にいくかなぁ…」


穂乃果「正直、難しいとは思うよ。だけど…私達が本気で活動していくなら絵里先輩の協力は必要だと思うんだ。」


希「…うん、そういう事ならウチは協力を惜しまんよ。えりちも、きっと救いの手を求めてるんじゃないかなって思うん」


にこ「ま、穂乃果の言う事も正しいわね。部活が存続する事は決まったんだし、頼みにいくだけ行ってみましょ」


希「それなら…ウチに提案があるんやけど……。」



226: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:22:57.89 ID:SFi5743j.net

…………

……



それから、数日が経ち。今日は絵里先輩との約束の日。

授業が終わった放課後、早速私達とにこ先輩の4人で生徒会室に向かう。

こんこん、と扉をノックすると、


「……どうぞ。」


絵里先輩のものであろう返事が返ってきて、私たちは扉を開け室内に入る。



227: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:23:33.23 ID:SFi5743j.net

絵里「…来たわね。」


にこ「そりゃあね、何も言わずに部活を廃部にされるなんてのも本意じゃないし」


絵里「…見たところ4人しか居ないみたいだけど、期限を伸ばしてくれなんてことは聞かないわよ。」


にこ「いや、部員ならちゃんと5人集まったわ。」


絵里「それならちゃんと連れてきなさい、この場に連れて来れないような部員なんて……。」


にこ「何言ってんのよ、そこにいるじゃない。」


そう言ってにこ先輩が指さしたのは、絵里先輩の隣に座っている希先輩。



228: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:23:58.19 ID:SFi5743j.net

絵里「……!?…どういう事、希?」


希「どういう事も何も…ウチは超常現象研究会を、にこっちはアイドル研究部を存続する事が出来るんやから、何も変な事はないやん?」


絵里「……そう、残念だわ希。」


いつものように飄々とそう言う希先輩。
その言葉を聞いて絵里先輩は悲しそうな表情を浮かべていた。


にこ「ま、これで認めてくれるわよね?」


絵里「…はい、これで承認したわ。せいぜい頑張る事ね、無駄な事だとは思うけど」


にこ「このっ……!」


穂乃果「にこ先輩!」


憎まれ口を叩いて書類を承認する絵里先輩。
そんな絵里先輩の言葉に感情的になるにこ先輩を抑えて、今まで沈黙を貫いていた私は口を開く。



229: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:24:40.54 ID:SFi5743j.net

穂乃果「……あの、絵里先輩。」


絵里「…なにかしら。私も暇じゃないから、用事があるんなら手短にして頂戴」


穂乃果「あの、どうして絵里先輩がここまでアイドル研究部を嫌うのか教えて貰えませんか?」


絵里「…理由なんてないわ。気に入らないだけ」


穂乃果「……先輩は、バレエをやっていたんですよね。」


絵里「っ!…希?」


穂乃果「いえ、たまたま妹が亜里沙ちゃんと仲が良くて、話を聞かせて貰いました」


絵里「…なるほどね。はぁ…あの子には初めて会った人にはもう少し警戒心を持つように言わないと……」


希先輩へ非難の目を向ける絵里先輩の誤解を解く。
絵里先輩はやれやれ、というように右手を額に当てて首を振った。


穂乃果「踊るのが好きだったんじゃないんですか?」


絵里「…貴女には関係無いわ」


穂乃果「…バレエを辞めてしまった事となにか関係があるんですよね?」


絵里「……だから貴女には関係無いって言ってるでしょう!!それ以外に用がないなら早く出ていきなさい!!」




……ここまでは希先輩の予定通り。
希先輩が入る事を知らなかった絵里先輩はその事実に驚き、動揺する。
そこで私がバレエの事を話す事でまずは絵里先輩を感情的にさせる事がこの作戦の第一段階だった。

…ここからは、本格的に私の出番。



230: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:26:06.94 ID:SFi5743j.net

穂乃果「嫌です、出ていきません」


絵里「何を言ってるの?馬鹿言ってないで早く……」


穂乃果「動画の中の絵里先輩はとても楽しそうで、踊るのが大好きっていう顔をしていました。」


絵里「…貴女に何がわかるっていうの!!」


先程よりも更に大きな声。
感情をぶつけるような悲痛な叫びだった。

数秒間息を整えた後、絵里先輩が静かに口を開く。



231: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:27:27.02 ID:SFi5743j.net

絵里「…私は挫折したの。……もう関係無い」


穂乃果「……。」


絵里「……確かに貴女の言う通り楽しかったわよ、踊るのが好きだったから」


穂乃果「ならどうして……」


絵里「最初は楽しいってだけで続けられた。でも、上に行けば行くほど周りの期待や順位を気にするようになって。」


絵里「……それからは何も楽しくなんて無くなって、大好きだった踊ることすら辛くなっていったのよ」


穂乃果「それじゃあアイドルを嫌うのは……」


絵里「私がアレだけ頑張ってきて…最後には心からの笑顔を浮かべる事が出来なくなったのに。」


絵里「それなのに、大して技術も高くない彼女達が心底楽しそうに歌って踊っている。」


穂乃果「…そんな事は……。」


彼女はこれまでの悪感情を吐き出すかのようにアイドルに対しての悪口を言う。
絵里先輩は絶対に間違った事を言ってる、それなのにアイドルについてそこまで詳しくない私には何も言い返せなかった。



絵里「…くだらない、どうせ遊び感覚で……。」


……そして、彼女が遂に言ってはいけない事を口にする。




バンッ




絵里「っ!!」穂乃果「……!?」


にこ「……それ以上言ったら許さない!!!」



絵里先輩の言葉を途中で遮るようにしてにこ先輩が机を強く叩き、叫ぶ。
バッ、と声の方へ振り返ると、先輩は色が変わるほど拳を握りこんで、表情には心からの怒りを浮かべていて。

その小さな身体からは信じられないくらいの威圧に、私も絵里先輩も言葉を失った。



232: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:28:20.27 ID:SFi5743j.net

にこ「…アイドルの事をまるで分かってない。確かに、貴女のバレエの技術は素直に凄いって思ったわ。……でもねぇ!!」


にこ「アイドルのダンスはバレエとは全く別物、そんなの貴女位の経験者なら分かるはずでしょ!?」


絵里「それは……。」



にこ「何も知らない貴女から見たら、アイドルは何も考えずに楽しそうに踊ってる様に見えたでしょうね…。でも、私は知ってる。…怪我をしていたって、なにか辛い事があったって、それを隠して心からの笑顔を見せる。それがアイドルなの!!」


感情を顕にして言葉を紡ぐにこ先輩。
ふぅ、と一度息をつき、改めて冷静になった所でまた言葉を繋いだ。


にこ「……アイドルはね、笑顔になる仕事じゃない。笑顔にさせる仕事なの。それがどういう事か分かる?」


にこ「お客さんに偽物の笑顔だって思われたら本当の意味で笑顔にさせる事なんて出来ない、だから自分にどれだけ辛い事があったっていつだって心からの笑顔を浮かべて歌い踊るのよ」


にこ「確かに一度は途中で活動を諦めた私だけど……そんなアイドルが私は大好き。だからそれ以上私の大好きなものを馬鹿にするって言うなら、私は絶対に許さない。」


絵里「…ぁ……。」


にこ先輩の真剣な眼差しが、その言葉が。
この場にいる全員の心に突き刺さる。

自信を持って自分の大好きを語るその言葉は、私達の比にならない位に覚悟が籠っていて。

私は本気で、本気のその姿に憧れた。



233: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:28:53.00 ID:SFi5743j.net

絵里「……。」


にこ「今私が話した事すら偽物だって思うんなら、それなら貴女の事なんてもうどうだっていい。…でも、踊る事が好きで、その楽しさに本気で焦がれたんなら……きっと向いてる。……アイドル研究部はいつでも貴女を待ってるわ」


それだけ言って生徒会室を後にするにこ先輩。
私達の中で1番小さいはずのその背中は、誰よりも大きなものに見えた。

カッコイイなぁ、結局最後には一人で持って行っちゃうんだから。





……一週間後。

晴れて部活動として認められたアイドル研究部の部室には、私達5人に加えて……もう1人、絵里先輩の姿があった。



234: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:29:40.74 ID:SFi5743j.net

…………

……

それから、音ノ木坂のスクールアイドルとしての活動を始めた私達。


初めの1ヶ月間は主として海未ちゃん指導のもと体力作りとして走る事と、絵里先輩の考えたメニューによって体幹や柔軟性を上げる練習をする事となった。


ある程度体力が着いてきたら次は、それに加えてにこ先輩と絵里先輩が考えを擦り合わせて作ったダンスのステップの練習。


今までスポーツに打ち込んだ経験もなく、ダンスも未経験者だった私にとって練習は辛いものだったけど、皆と一緒に頑張る事が楽しくて。

私は、少しまた少しと成長を実感する事が出来るようになっていった。


__そして、季節は巡る。



235: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:30:24.20 ID:SFi5743j.net

ことり「花陽ちゃ~ん!少し今度の衣装の事で相談してもいいかな?」


花陽「あっ…ことりちゃん。うん、いいよ!」




海未「凛!また私の水筒に悪戯しましたね!今日という今日は許しません!」


凛「わわっ、海未ちゃん怖いにゃ~!助けて希ちゃん!」ダキッ


希「ふふっ、もう…またぁ?」




真姫「穂乃果。…新しい曲出来たんだけど、練習後に聞いてくれる?」


穂乃果「あ、うん。勿論だよ!」


真姫「…そう、ありがとう。じゃあ私は先に屋上行くから。」


新年度になって新入部員として入ってくれた花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん。

花陽ちゃんは新歓ライブを見に来てくれて、それから凛ちゃんに付き添って貰って入部届を渡してくれて、

凛ちゃんはそんな花陽ちゃんについてきた所をにこちゃんがその可愛らしい語尾からアイドルとしての素質を見込んで勧誘して、

真姫ちゃんはたまたま私が音楽室を通った時にピアノを弾いていて、それがすごく素敵だったから半ば強引に誘って。

そして現在私たちは、希ちゃんが9柱の歌の女神から名前を付けた『μ's』として、4月になり急に理事長から【廃校】の知らせを受け、それを阻止する為に活動している。



あと……希ちゃんの凄いのが、μ'sって名前を付けたのはまだ私達が一年生の頃なんだ。………今考えても謎だよね。



236: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:31:01.48 ID:SFi5743j.net

絵里「皆、大分慣れてきたみたいね」


にこ「ええ、そうね。…最初に絵里が先輩禁止なんて言った時には驚いたけど、結果的には良かったわね」


そう……絵里先輩や希先輩、そしてにこ先輩の事をちゃん付けで呼びだしたのは新入生の皆が入って少しした後だった。

その頃には私達二年生も先輩呼びが定着していた訳で、なんだったら先輩禁止に一番戸惑ったのは花陽ちゃん達よりも私達だった。


それも何とか落ち着いて。今はラブライブ出場を目指して頑張っている所。


そして…………。



237: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:31:38.62 ID:SFi5743j.net

にこ「穂乃果、皆もう屋上行ったわよ?」


穂乃果「あ、にこちゃん……。」


にこ「どうしたのよ、何かあった?」


……あれから、先輩とは何もなかった。
絵里ちゃんが先輩禁止を掲げてくれたのは実は結構助かってたんだ。

先輩の事を『にこちゃん』って呼ぶ事で自分の気持ちが抑えられるような気がして。


穂乃果「あ、いえ……じゃなくて、ううん。大丈夫だよ」


心配をかけさせないように笑って平気な顔を作る。
にこ先輩への気持ちを隠す事がこんなに辛い事だなんて思ってなかったよ。
…でも、頑張らなきゃ。


にこ「…ったく、アンタがそういう顔する時って大体嘘ついてる時でしょうが」


穂乃果「ぁっ……。」


ぎゅっ、と抱きしめられる。
ダメだよにこ先輩、今はそれ逆効果……


にこ「……高校卒業まで。…それまで待ってて」ボソッ


穂乃果「えっ…?それって……。」


にこ「さぁね!ほら、早く屋上行くわよ!」


穂乃果「あ、待ってよ~!」


にこ先輩から告げられた言葉。
その意味はしっかりとは分からなかったけど、その言葉だけでこれからも頑張っていけそうな気がした。



238: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:33:36.94 ID:SFi5743j.net

言葉もなく屋上までの道程を二人で歩く。
でも全然気まずいなんて事はなくて、心地のいい安心感に包まれていた。

ふと、にこ先輩がぽつりと言葉を零す。


にこ「ねぇ、穂乃果。」


穂乃果「どうしたの、急に?」


にこ「ありがと。」


穂乃果「……うん。」


それが何に対するお礼だったのかは分からなかった。
だけど、きっと色々な思いが込められたその言葉に、自然と受け入れる言葉が口から出てくる。



239: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:34:35.59 ID:SFi5743j.net

穂乃果「えへへ………。に~こせんぱい♪」


にこ「んなっ……!!……先輩禁止でしょ。」


名前を呼んで抱き着く私。
やっぱり、なんだかこの方がしっくりくるなぁ。


先輩はぷい、と顔を背け、口を尖らせてそう言う。
……その仕草が、紅く染まったその頬が愛おしい。


穂乃果「たまにはいいじゃないですか~、ねっ?」


にこ「……それやられると、弱いのよ。」



……そっか、にこ先輩も同じだったんだね。


私と同じ、先輩禁止に助けられてた。


腕で顔を隠すようにして俯くにこ先輩。その顔は先程よりも目に見えて真っ赤だった。



240: 名無しで叶える物語 2020/06/01(月) 00:35:04.97 ID:SFi5743j.net

にこ「も、もう!アンタも一応乙女なんだから、少しは恥じらい持ちなさい!」


穂乃果「えへへ、私はにこ先輩になら全てを捧げる準備出来てますから…。」


にこ「……ばか、私が卒業まで待てなくなるじゃない……」ボソッ


穂乃果「……何か言いました?」


にこ「なんでもないわよ!」


パッとにこ先輩の身体を離すと、先輩は手で胸を押さえるようにしてそう言った。



あ~あ、ダメだなぁ。抑えよう抑えようと思ってたのに、ちょっと出来そうにないや。


もう、にこ先輩が悪いんですからね?


穂乃果「ねぇ、にこ先輩。」


にこ「…なによ。」


ホントはダメだって分かってるけど、今日だけ。


今だけは許してください。


私……私は、先輩の事……。





穂乃果「……だいすきっ。」



252: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 15:55:56.23 ID:FL7uXKYS.net

にこ「…やり抜いた、わね……。」


卒業式が終わって、最後のライブ。
史上最短の活動期間でラブライブを優勝した事、全国のスクールアイドルを集めてイベントを興した事、そのどれもが私たちを色んな意味で有名にするには十分な要素で。


そんな私達の解散をもって終わった最後のライブは、まだその後数日しか経っていないのにも関わらず伝説のライブとまで言われるようになった。


ただ、そんな私達でも後は波が落ち着いていくかのように徐々に忘れられていく。


人がまばらとはいえ普通の公園のベンチに私が座っていても誰も気が付くことはなかった。


…アイドルってのはそういうもの。


ひとたび髪の毛を解けば普通の女の子に戻ってしまう、酷な言い方をすれば本当の私なんてファンの皆からしたらただの知らない女の子。


本気の好意を抱くファンも居るけど、私からしてみればそんなものさえ私を売り込む術であるかのように感じられた。



253: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 15:56:22.80 ID:FL7uXKYS.net

ことり「にこちゃん、お待たせ……。」


可愛らしくてどこか安心させてくれるこの声。
偶像としての私じゃなくて本当の私を好きになってくれた数少ない中の一人。
…南ことりに、私は呼び出された。


にこ「いいえ、今さっき来たところだから。」


ことり「そっか…それなら良かった。…隣、いいかな?」


ことりをジェスチャーで隣に招き座らせる。
ベンチから一直線の所にある砂場には小さい子連れの親子が楽しそうに遊んでいる姿があった。



254: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 15:56:49.88 ID:FL7uXKYS.net

ことり「…色々あったよねぇ。それこそ私達が一年生の頃なんかはラブライブで優勝して海外でライブすることになるなんて思ってもみなかったよ。」


にこ「そうね。活動後最初のラブライブでは当時の一年生のレベルに合わせる事になって優勝を逃したけれど、あの子達もその後も諦めずによく頑張ってくれたわ」


ことり「そうだね、今や花陽ちゃんが部長で真姫ちゃんが副部長、凛ちゃんはリーダーなんだもんね。」


にこ「……貴女は良かったの?留学の話があったんでしょう?」


私が三年生だった頃…九月くらいだったかしら。
ことりのその服飾の才能が見初められて留学の話を貰ったと聞いた。
でもことりはそれを早々に断り、何事も無かったかのように私達との活動を続けていたのだ。



255: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:04:04.05 ID:FL7uXKYS.net

ことり「勿体ない事をしたって周りから言われる事もあったよ。…でもね、にこちゃんと居れる最後の1年間に勝るものなんて私には思い当たらなかった。」


にこ「……そっか。」


ことり「うん、そうだよ。その選択をしたお陰で結果的に私達はラブライブでも優勝して、スクールアイドルの発展に貢献する事が出来たと思ってるんだ。」


にこ「ええ、その通りね。ことりが居なかったらそれは実現しなかった。」


ことり「えへへ、そうかなぁ…にこちゃんから言われたら嬉しいね。」


眉を下げ、少し赤く染めた頬を指でかくようにして照れ笑いを浮かべることり。

一つ一つの所作が恋する乙女のように感じられるのは、そんな彼女の気持ちを1年と数ヶ月前に聞いた事があるからなのか。
まあ私達、私はもう違うけれど…高校生にとって長いこの期間の間に気持ちは薄れていった可能性も……いや、無いかな。



256: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:04:31.51 ID:FL7uXKYS.net

ことり「私ね。…来年高校を卒業したら、その時は本当に留学しようと思うんだ。」


にこ「…そう。」


ことり「前に話を貰った所からね、まだ私にその気があるなら来ないかって。…まだ海未ちゃんや穂乃果ちゃんには言ってないんだけどね。」


幼なじみである二人にまだ言ってないという事は、私に一番に伝えてくれたという事。
…それが意味する事がなんなのか、私にはよく分かっていた。



257: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:06:06.03 ID:FL7uXKYS.net

ことり「ね、にこちゃん。……いや、にこ先輩。沢山時間が経ってしまったけど、あの時の続き…してもいいかな?」


にこ「……ええ、約束だものね。」


ことり「私はね、にこ先輩。秋葉原で偶然出会ったあの時の事、今でも昨日の事のように思い出せるんだ。

どうしても自分に自信が持てなかった私に、力強い言葉で魅力を伝えてくれた先輩の言葉。…今でも全部覚えてる。

留学を辞めようと思ったのも、今回留学を決める事が出来たのもにこ先輩の影響で。…私の人生に影響するような人はもうこれから先現れないと思う。」


すっ、と視線を私に重ねる。
額に汗を浮かべたことりは私の目をしっかりと見つめ、覚悟を決めたようにその言葉を紡いだ。







ことり「にこ先輩。ことりは……私は、貴女の事を心の底から愛しています。」



258: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:06:45.36 ID:FL7uXKYS.net

数秒の沈黙。ことりはその間も私から一切目を逸らすことは無く、私の言葉を待っていた。
どうやって伝えるのが一番いいのか、少しの間頭の中を整理して私は口を開いた。


にこ「……私ね、ことりと穂乃果から気持ちを伝えて貰ったあの日からずぅっと考えてたの。自分の気持ちだとか、これから先どうなっていくのかを。


二人の言葉はね、本当に嬉しかった。これは心の底からそう言えるわ。だけどね、答えを出してしまったらもう片方を傷付けてしまう、だから本当に迷ったわ。


ことりはいつでも真っ直ぐに私の事を見ていてくれたわね。そんな貴女の言葉にドキドキしたり、時には悲しんだり。……本当に色々あった。」



そう、本当に色々あった……。確かに表立って二人が私にアピールしてくれることは少なかったかも知れない。
だけど、その言葉や仕草から伝わる気持ちはいつだって感じていた。



259: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:07:23.12 ID:FL7uXKYS.net

にこ「ねぇ、ことり。私ね、気が付いたの。私が貴女に抱くこの感情は、確かに恋と呼んで差し支え無いものだと思う。」


にこ「……だけどね、私にはどちらか一人を選ぶ義務があって。」


ことり「……うん。」


にこ「私がご飯を食べた時だったり、寝る前だったり……いつも最初に思い浮かべるのは、穂乃果の顔だった。」


にこ「……だからごめんなさい、貴女の気持ちには応えられない。これまで長い間、私は貴女の傷が深くなってしまう事を分かっていて、それでも優柔不断な態度を取ってしまった。…貴女の事が好きな事もまた、事実だったから。」


ことり「……本当はね、仕草を見ていて分かってたんだ。にこ先輩の気持ちは穂乃果ちゃんの所にあるって。……だけどそっかぁ、私の事も好きでいてくれたんだぁ……。」


ぽろぽろと涙を零し始めることり。今にも声を上げそうな彼女だったけど、なんとか笑顔を浮かべてこちらに向き直る。



260: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:07:58.28 ID:FL7uXKYS.net

ことり「うれ、しいなぁ……本当に、嬉しいよ……。にこ…先輩……。うぅ…ぅ…!ダメ、泣いちゃ……だめなのに…ぃ……。」


にこ「…っ……。」


私がことりに負わせた傷の深さは計り知れなかった。
それなのに、私を困らせまいと不格好な笑顔を浮かべる彼女にどうしようもなく胸が痛んだ。


抱き締めようと手を出しかけ、私にはそんな資格は無いと引っ込める。


ことりはとうとう両手で顔を覆い隠し、肩を震わせて泣き出してしまった。



261: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:11:16.71 ID:FL7uXKYS.net

ことり「…こ、ことりは、きっと生涯貴女の事を諦められない。…だから留学の話を貰ったのは、きっと……きっと救いだったんだね……。」


にこ「…ことり……っ」


じわりと私の目にも涙が滲む。だけど私が泣いてしまったら、ことりが私を気遣ってくれた意味が無くなってしまうから……腿を抓って必死にそれを堪えた。


ことり「…ごめんね、泣いちゃって……。絶対に泣かないって決めてたのに、いざって時に泣いちゃうんだから……ことりは弱い女です……。」


にこ「そんな事…!」


辛さを押し殺して、私の為に無理して笑顔を作った彼女が弱いなんて誰が言えようか。


彼女の強さにはスクールアイドルとして活動していた時にも何度も救われていた。


最後の最後にこんな時ですらも優柔不断な私を非難せずに謝ってくれることりの強さが、余計に辛い。



262: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:14:04.59 ID:FL7uXKYS.net

ことり「ううん、私は弱いよ。……最後に一つ、お願いをしてもいいですか?」


にこ「ええ、勿論よ…。」


ことり「……キス、してくれないかな。」


にこ「えっ…?」


ことり「そうしてくれたら、明日からもまたいつも通り頑張っていけそうな気がするから…。だから、お願い。」


にこ「でも……。」


ことり「ずるいお願いだって事は分かってるんだ。…だけどね、この気持ちが一生報われないのだとしたら、せめて一生忘れられない思い出が欲しいの……。」



263: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:14:35.85 ID:FL7uXKYS.net

不意に、穂乃果の顔が頭に浮かぶ。
きっとここでしてしまったらあの子を悲しませてしまうかもしれない。


だけど、私の弱さでことりを縛り付けたから……。





ちゅっ……。


ことり「ぁ……。」


だから、ほっぺたで許してね。


にこ「…これが私の精一杯よ……。」


そう言うとぷい、と顔を背ける。
…流石に恥ずかしくてことりの顔、確認出来ないわね。



264: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:15:01.03 ID:FL7uXKYS.net

ことり「……嬉しい。」


にこ「そ。それはよかっ……」


ことり「だけど、ことりはズルい女です。」


にこ「……?」


ことり「やっぱり、諦められない。…だから、穂乃果ちゃんが安心した所でにこ先輩をぱくっ!です♪」


にこ「…は…はは……。あんたホントに強かね……。」


ことり「にこ先輩も、油断してるとことりのおやつにしちゃいますよ♡」


にこ「ふふっ、それは怖いわね…」


先程までの雰囲気と一転、二人で笑い合う。
ホントにこの子は……マイペースというか……。
そういう所も可愛い所の一つなんだろうけどね。



265: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:15:17.97 ID:FL7uXKYS.net

ことり「それじゃあ、そろそろにこ先輩は穂乃果ちゃんの所へいかなきゃ!」


にこ「え、今から!?」


ことり「勿論です!さあ、こうしちゃいられません!」


にこ「わっ、と。もう、分かったわよ……じゃあ、行ってくるからね。」


ことり「はい!行ってらっしゃい♪」


そう言って私を急かすようにトントンと背中を押すことりに従うように公園を後にして穂むらへの道程を歩き出す。
ことりの方へ振り向くことは無かった。



266: 名無しで叶える物語 2020/06/03(水) 16:17:49.84 ID:FL7uXKYS.net

ことり「……行っちゃった、ね。」


ことり「頑張った、ことり頑張ったよね……?」ジワッ


ことり「すき……。好き…!」ツーッ


ことり「うぅ…にこ、先輩……!」ポロポロ


ことり「諦めたく、ないよぉ……!!」



277: 名無しで叶える物語(光) 2020/06/05(金) 05:26:03 ID:/8NEYADK.net

にこ「……いざとなると緊張するわね」


ことりと別れ、そのままの足で穂むらの店先まで到着する。……しかし、したはいいけどその先が踏み出せない。

いざ穂乃果に気持ちを伝えると考えると、先延ばしにし過ぎせいで悪い事まで考えてしまって……頭が真っ白になっていって。……ことりは本当に強いのね、と再確認させられた。


と、そんな事を考えていた時だった。







穂乃果「はーい、分かったってば!じゃあいってきま~す……?あれ、にこちゃん?」



278: 名無しで叶える物語(光) 2020/06/05(金) 05:26:37 ID:/8NEYADK.net

私のここに来た目的の、穂乃果が家から出てくる。
扉の前に立ちほうけてる私をの目を、少し間の抜けた表情でしっかりと見つめる穂乃果。



にこ「……っ、穂乃果……。ちょっと時間貰えない?」


穂乃果「……?いいけど……どうしたの、そんな真剣な顔して……」


私は不思議そうにこちらを見る穂乃果に対して、意を決して口を開いた。


にこ「……大分昔に置いてきた言葉を、伝えなくちゃと思ってね」


穂乃果「……そっか、そうだよね。」


私の言葉で話の先を察した穂乃果は、先程までと一転して覚悟を決めたようにこちらを見つめ返す。


私の心臓は穂乃果まで聞こえてしまうんじゃないかと錯覚する程大きな音を立てていた。



279: 名無しで叶える物語(光) 2020/06/05(金) 05:27:17 ID:/8NEYADK.net

穂乃果「さ、ここなら誰にも聞かれる心配無いと思うから……。……早速話を聞かせてもらってもいいかな?」


案内されたのは穂乃果の部屋。思えば私は穂乃果の部屋まで案内されたのは初めての事で、目新しさからきょろきょろと辺りを見渡す。


にこ「……これって」


穂乃果「わぁあっ!ちょ、ちょっとタイム!」


様々な想い出を飾るコルクボードにはμ'sの皆で撮った写真。
……それと、いつか秋葉原で見た私のブロマイドがそこに飾られていた。

あわあわとして隠すように私とコルクボードの間に立つ穂乃果。それを見て少し安心した私は一番の目的である話題を切り出す。







にこ「……ねぇ穂乃果。私の気持ちなんだけど……聞いてくれるかしら?」



280: 名無しで叶える物語(光) 2020/06/05(金) 05:28:21 ID:/8NEYADK.net

穂乃果「……うん。いや……はい。どんな事でも、聞く覚悟は出来てます」


にこ「……まずは遅くなってしまった事を謝らせて。ごめんなさい、私ずっと答えを先延ばしにしてた。」


穂乃果「そんな……こうやって言いに来てくれただけでも、私は嬉しいから……」


にこ「ううん。きっと私一人だったら今日ここまで来れなかった」


穂乃果「……?」


にこ「……さっきね、ことりと話してきたの。もう一度今の気持ちを真っ直ぐに伝えてくれた」


穂乃果「……!」


にこ「改めて考えてみたの。私も、ことりに対して恋愛感情を持っていた。」


穂乃果「それじゃあ……」


にこ「……断ったわ」


穂乃果「どうして……?」


にこ「……ことりを想う以上に貴女の事が好きな事に気が付いたのよ。」



281: 名無しで叶える物語(光) 2020/06/05(金) 05:30:14 ID:/8NEYADK.net

穂乃果「ぁ……」


私の言葉に口を詰まらせる穂乃果。



にこ「……随分遅くなってしまったけれど、今度は私から言わせて。優柔不断で、自分の気持ちにも鈍感な情けない私だけど……やっとわかったの」


私は握った手を胸に当て、しみじみと思い返すかのように語り始める。








にこ「真っ直ぐで、夢中になると周りが見えない位にほっとけなくて……でも周りさえも自分の力で変えてしまって。」







にこ「無邪気で、いつだって屈託のない笑顔で私に笑いかけてくれて……実は誰よりも乙女な、そんな穂乃果が……」







にこ「そんな貴女の事が……私は世界で一番大好きです。私を、貴女の特別にして下さい。」



282: 名無しで叶える物語(光) 2020/06/05(金) 05:32:13 ID:/8NEYADK.net

穂乃果「ぅ……うぅ……!にこ、先輩……!」


私が思いの丈を伝えると、穂乃果は口元を両手で覆ってくぐもった声で泣き出した。


穂乃果「私、怖かった。気持ちを伝えた時に、優しいにこ先輩はああ言ってくれたけど……本当は同性からの告白なんて受け入れて貰えるはずないんじゃないかって。」



穂乃果「でも、それで躊躇っていたらことりちゃんに負けちゃうからアピールはしたくって……。例え受け入れて貰えた所でこんな私の事なんかよりも、きっとことりちゃんのことを好きになるんじゃないかって……ずっと怖かったんだよぉ……。」


ぐすっ……ひっく……としゃくりあげてしまう穂乃果。


こちらを不安そうに見つめる瞳が、初めてアイドル研究部に訪ねて来た時の姿と重なって。


そして気付く。







……ああ、私はきっと、初めて……一目見た時から貴女を……。



283: 名無しで叶える物語(光) 2020/06/05(金) 05:33:29 ID:/8NEYADK.net

にこ「好きよ、穂乃果。……愛してる」



言葉と共に抱き締める。未だにふるふると震えるその身体は、私よりも小さな少女のようで。



どきり、と胸が高鳴る。



穂乃果「……にこ先輩…………。」



潤んだ目でこちらを上目に見据える彼女。
どちらからともなくその距離を縮めていく。




ドクン、ドクン……。




私のものなのか、穂乃果のものなのか、それとも両方の心音が重なっているのか。



それすらも分からないまま確かに近付く私達の顔……唇。



284: 名無しで叶える物語(光) 2020/06/05(金) 05:34:11 ID:/8NEYADK.net

そっと目を閉じる私達。






はっ、と小さく息を漏らして口を軽く開く。






ドクンッ。







……一際大きく脈打った心臓の音を合図に、二人の唇が重なり合った。



285: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 05:43:09.88 ID:/8NEYADK.net

穂乃果「えへへ……私、初めてだったんですよ?」


にこ「私もよ。これから先も、貴女だけ……」


言った後に自分が気恥しいことを言っている事に気が付いてぷいっ、と顔を背ける。






穂乃果「……今はダメ。」


にこ「なっ……んむっ……!!」


ぐいっ、と私の顔を両手で掴んで無理やり自分の方に向かせる穂乃果。
そのままもう一度口付けを交わしてきた。



286: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 05:45:07.52 ID:/8NEYADK.net

にこ「ちょっ……!ほの……ンチュッ……はぁ……っ……!」


先程よりもうんと深く交わり、舌を絡め合う。


穂乃果は満足して口を離すと二人の舌と舌の間に薄銀色の橋が架かり扇情的に消えていく。
私は、艶やかに……真っ直ぐとこちらを見つめる穂乃果の瞳に耐えきれず目を逸らした。


穂乃果「……また…………。」


にこ「んんっ……!?あぁ……んっ……やめ……っ!」


お仕置き、とでも言いたそうに私を咎めるとまた私を掴んで力強く口付ける。


穂乃果の身体は先程までの弱々しさを覗かせるものでなかった。


体格差をもって押さえ付けられた私はなされるがままに口内を犯される。



287: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 05:50:06.33 ID:/8NEYADK.net

にこ「ダメ……っ!ダメなの……これ以上は……!」


隙をついてバッ、と距離を離す。
これ以上されたら自分がどうにかなってしまいそうで、自分が今何をしているのかを考える事も出来ずに私は穂乃果から顔を背けた。


穂乃果「……もう一回。」


無理やり、だけど……心はどこかそれを望んでいて。
彼女は回数を重ねる度に私の好い所を探り当てて攻め立てる。


ゆっくり……ほんのりと、穂乃果に染められていく私の身体と心。

私が着けているリボンの様に、私の色が穂乃果の色と混ざっていく。



288: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 05:51:37.09 ID:/8NEYADK.net

ようやく穂乃果から目を離さずにいられるようになった時、私は虚ろな目で身体を不規則にビクつかせていた。


穂乃果「……ようやくちゃんと見てくれたね?」


にこ「はぁ……はぁ……っ。だ、だって……」


穂乃果「わかるよ、にこ先輩は恥ずかしがり屋さんだもんね?……でも、私だって今くらいは目を離してほしくないんだもん」


にこ「……もう嫌でも離せなくなったわよ……」


穂乃果「あはは、ごめんね?無理やりにして……嫌だった?」


にこ「……イヤ。……じゃない」


自分でも顔が真っ赤なのが分かる。
今度は目を逸らしたりしなかった。



289: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 05:52:39.97 ID:/8NEYADK.net

穂乃果「……にこ先輩。穂乃果、なんかヘンになっちゃったかも……っ」



にこ「……?」


穂乃果「ここ。おへその下の辺りがね、凄く熱くって……」


にこ「……なるほどね。それはこれからゆっくりと知っていきましょう。……今日は流石に、私の心臓破裂しちゃいそうというか……」


穂乃果「うん……?なんかよく分からないけどそうだね……?」


むしろよくここまで保ってくれたと褒めたたえてあげたいくらい。
ライブの前よりも、ステージに上がる瞬間よりも高く大きく脈を刻んだ心臓は今にもその活動を停止してしまうんじゃないかと錯覚する。


知識も経験も無くて天然で今の事をやってのけた穂乃果。

……これはまた一筋縄ではいかないかもしれないわね、私……。



290: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 05:53:59.23 ID:/8NEYADK.net

安心して気が抜けると同時に、ふと思い出した事を穂乃果に聞いてみる。


にこ「あれ、そういえば……私が来る前に穂乃果どこかへ出掛けようとしてたんじゃないの?」


穂乃果「…………?」


にこ「ほら、確かいってきますって……」


穂乃果「……あ゛っっ!!!」


穂乃果「そういえば、今日海未ちゃんに生徒会長としての入学式のスピーチを一緒に考えて貰うんだった!!」



291: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 06:07:46.14 ID:/8NEYADK.net

にこ「じゃあ、ホントにそろそろ私は行くわね。今日はありがと……いや、これからよろしくね」


穂乃果「うんっ!こちらこそ!」


そうして私は背を向けて穂乃果の部屋を後にする。


穂乃果「……にこ先輩っ!」


階段に差し掛かった辺りで呼び止められる。
何かと思って振り向くと。



292: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 06:13:02.35 ID:/8NEYADK.net

そこには満面の笑みを浮かべた穂乃果。


私と視線を交わすと彼女は少し不格好なウィンクを一つ。


そして音を発する事は無く口を数回動かして、最後に手遊びの要領で一つのマークを形作った。




『だ』



『い』



『す』



『き』



『♡』


穂乃果「えへへ……♪」


照れくさそうに頬をかく彼女が愛おしい。
願わくばこのまま、一生彼女と人生を歩みたいなと思った。


たとえどれほどのしょうがいが待ち受けていようと、穂乃果となら乗り越えていけるって。


……そう、信じてるから。







~ おしまい ~



293: 名無しで叶える物語 2020/06/05(金) 06:17:32.56 ID:/8NEYADK.net

予定していた終わり方では無いですし、多分あれ?って思う所もどっかにあると思いますがこれにて終了です。

一応現行で残っているスレもありますが、お次の新作は違うにこカプでお会いしましょう。

なにか指摘とかご質問あればここが残ってる限りはお答えするので今後の為にも是非よろしくお願いします。


元スレ
穂乃果「に~こせんぱい♪」にこ「んなっ……!!」