1: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:25:45 ID:Xh5


友「LEADER!!って聞いた?」

男「ああ……新曲だっけ」

友「そう! ASが歌ってんのよ。これめちゃくちゃいいから聞いてみ」

男「帰ったら聞いてみるよ」

友「やっぱまだミリシタやってないの?」

男「まあ、そのうちかな」



2: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:26:37 ID:Xh5


友「いま2周年イベ始まったしさ、新曲もすごい良いから」

男「うーん……」

友「LEADER!!とか歌詞が良いんだよ。春香だなって感じするし」

店員「おまたせしましたー、ウーロンハイと、こっちウーロン茶ですね」

友「どうもー」



3: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:27:36 ID:Xh5


男「まあ最近は、ASの動きも全然ないしな……」

友「MRだって半年前ぐらいだもんなあ、最近早すぎるわ」

男「ミリシタねえ」

友「デレステよりは興味あるんじゃないの?」

男「あー、デレは全然わかんなかったからなー」



4: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:28:16 ID:Xh5


友「ミリシタは春香いるじゃん。なんでやらないんだよ」

男「まあいる、けど」

友「ASのイベントもちょくちょくあるし、それにミリオンの子も結構かわいいのよ」

男「ああ、SSR引いたんだっけ?」

友「そう! 最初すぐ出ると思ったんだけど全然でさ、結局すげー課金しちゃって……」



5: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:29:39 ID:Xh5


――――――
――――

ガチャ

男「たーだいまー……」

男(帰り道で、あの新曲を聞いた。いい曲だと思った)

男(だけど、『リーダー』って言葉にはモヤモヤしてしまう)

男「リーダーねえ……」

男(春香は真っ直ぐ走るべき子だ。でも、リーダーって『後輩に道を譲れ』って言われているみたいで)



6: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:30:29 ID:Xh5


男(俺にとっての主役は、春香たちしかいないのに)

男「はあ、キモいな」

男「実際、ミリシタ以外はMR終わってからなんにもないし」

男「このまま終わったりしちゃうのかぁ……」

春香「プロデューサーさん。あの、終わるって、何がですか?」



7: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:31:14 ID:Xh5


男「そんなのアイマスのことに……うわあああああ!???」

春香「えっ!?」

男「はははははる、はる、春香」

春香「は、はいっ」

男「天海春香っ!?」

春香「そっ。そうですけど……」



8: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:31:57 ID:Xh5


男「なん、で、えっ!? なんで! コスプレ!?」

春香「コス、プレ……えええっ? ち、違いますよ! 天海春香です、正真正銘の本物ですよっ」

男「だ、だだだって、こ、こここっ」

春香「落ち着いてください、プロデューサーさん! ……私の顔、よく、見てください」

男「…………春香、だ」

春香「でしょう?」



9: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:32:34 ID:Xh5


春香「プロデューサーさんがずっと元気ないって聞いて、みんなを代表して見に来たんです」

男「だ、代表……見に来た……?」

春香「はい」

男「どうやって……」

春香「あっちから来ました」

男「あっちって?」



10: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:33:17 ID:Xh5


春香「あっちです」

男「……PS4のこと言ってんの?」

春香「そうです」

男「PS4から、ここに来たって?」

春香「遊んでみてください。ステラステージ」

男「…………」



11: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:34:02 ID:Xh5


ピッ! ウィン…

男「あ、パワプロ起動中だった……」

春香「……」

男「…………あ、あれ?」

春香「ふふっ」

男「春香だけ、いない?」



12: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:34:38 ID:Xh5


男「春香のとこだけ、穴になってる」

春香「……」

男「す、スクショも……影、影……影」

春香「信じてもらえました?」

男「おまえ、本当に……」

春香「はいっ」



13: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:35:19 ID:Xh5


春香「最初は、美希と真とやよいとあずささんと……っていうか、みんなで行こうってなってたんですけど」

男「マジか」

春香「千早ちゃんが、プロデューサーさんが一番会いたいのは春香だって言ってくれたんです」

男「千早が」

春香「……ずっと、最初に選んでくれてますもんね」

男「うん……うん」



14: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:35:53 ID:Xh5


春香「どうですか? 元気、出ました?」

男「そりゃ出るよ」

春香「本当ですか! よかったーっ」

男「俺、幸せだったよ。春香」

春香「はい?」

男「最後にこんな夢を見られて」

春香「……?」



15: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:36:25 ID:Xh5


男「初めてゲーセンでおまえに会ったとき、すごい健気で、かわいくて……あの時はちょっとわがままだったけど」

春香「へ、変なこと言わないでくださいっ」

男「……ずっと春香と一緒だった。2のときは仲間がほとんど辞めていったけど。アニマスで若い子も増えた。
  でも、シンデレラとかミリオンが出てきて」

春香「……」

男「どんどん春香が、アイドルの卵じゃなくて、トップアイドルになるんだよ」



16: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:36:59 ID:Xh5


男「俺の好きな、アイドルを目指してる春香はもう居なくなっちゃったんだよ。
  みんなの憧れの先輩で、まとめ役、聞き分けのいい女の子で……」

春香「そんなこと」

男「実際、みんな『偉大な先輩』になって……ステラみたいなゲームも、きっと出ない」

春香「……」

男「生きがいがなくなるなら、死んでもいいかなあって思ってたんだ」



17: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:37:36 ID:Xh5


春香「なっ」

男「夢に出てきてくれるなんて思ってもなかったよ。最高だった」

春香「ゆ……夢?」

男「目が覚めたら、いろいろ準備する。グッズは誰か貰ってくれるといいけど」

春香「プロデューサーさんっ、待ってください」

男「あー、ずっと目が覚めなければな」



18: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:38:10 ID:Xh5


春香「これ、夢なんかじゃありません!」

男「やっぱり春香はかわ、いてっ、いててて!」

春香「痛いですか!?」

男「いてえよ! ……え?」

春香「夢じゃありません。本当に来たんです!」



19: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:38:49 ID:Xh5


――――
――

男「じゃあ、その布団使って」

春香「はーい」

男「なんかごめんな、春香」

春香「えっ? なにがですか?」

男「アイドルにこんな薄い布団でさ」



20: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:39:24 ID:Xh5


春香「あはは。なんですか、それ……あ、プロデューサーさんのにおい」

男「わかるの?」

春香「分かりますよ。何年いっしょだと思ってるんですか?」

男「パラレルじゃないんだ。……臭くない?」

春香「いいえ! なんだか、安心します」



21: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:39:57 ID:Xh5


――――――
――――

春香「……サーさん」

男「んあ……」

春香「プロデューサーさんっ」

男「うわあ!?」

春香「きゃっ!」

男「……は、春香」



22: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:40:43 ID:Xh5


春香「あはは。おはようございます、朝ですよ」

男「おはよう……」

春香「なんだか、新鮮な感じです」

男「新鮮?」

春香「プロデューサーさんのおうちで、おはようって言われることです」

男「ああ……ゲームじゃ、まずないもんな。こういうの」



23: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:41:20 ID:Xh5


春香「そうですね」

男「なあ……春香はさ」

春香「はい?」

男「あっちの世界がゲームだって分かってるのか?」

春香「だいたい知ってますよ。私たちは『アイドルマスター』って世界の住人です」

男「……その通りだ」



24: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:41:53 ID:Xh5


春香「みんなも、小鳥さんも。もちろん社長も知ってます」

男「……どうして俺の家に来てくれたの? プロデューサーなんて、他にもいっぱいいただろ」

春香「私のプロデューサーさんは、ずっとひとりですよ」

男「いや、だって。ゲームはずっと」

春香「難しいことはよく分かりません。でも」



25: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:42:27 ID:Xh5


春香「私には、あなたしかいませんから」

男「……そうか」

春香「はいっ。……あ」

男「どうした?」

春香「シャワー、浴びてきてもいいですか」

男「いいけど……」



26: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:43:00 ID:Xh5


春香「ありがとうございます。昨日はバタバタしちゃって」

男「春香さ、着替え持ってきてないって言ってなかった?」

春香「あっ!」

男「おいおい、女物なんて……あ」

春香「え?」



27: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:43:34 ID:Xh5


ガチャ

春香「あがりましたー」

男「うん。……丁度良さそうだな」

春香「いい感じです。彼女さん、私と同じぐらいの体型ですね」

男「偶然ね。もう別れちゃったけど」

春香「あ……」

男「なんで置いていったんだろ、捨てなきゃな」

春香「……ごめんなさい。あっあの、ご飯でも作ります!」



28: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:44:15 ID:Xh5


男「ああ、いいよ。なあ春香、こっちの世界を歩いてみないか」

春香「えっ?」

男「興味ない?」

春香「あ、あります。ありますけど……外に出ても、大丈夫なんですか?」

男「変装すれば大丈夫だよ。それに、春香がリアルに居るなんて、誰も思わないって」

春香「それじゃあ……」



29: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:44:59 ID:Xh5


――

ザワザワ…

春香「すっごく広いですね」

男「ここらへんで一番の広さだよ。俺も昔、めっちゃ通ったんだぞ」

春香「へぇー……あ! これですか!?」

男「それそれ」

春香「うわ~! すごいすごい! 本当にゲームなんだ」



30: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:45:32 ID:Xh5


男「春香は、これのことは覚えてるの?」

春香「うーん、うまく言えないんですけど、残ってるっていうか」

男「残ってる……」

春香「ここで、プロデューサーさんとお話したこと。オーディションに出たこと。
   それと今お話してるのは違うなって思います」

男「……難しいね」



31: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:46:15 ID:Xh5


春香「でも、いろんな記憶がごちゃまぜだってプロデューサーさんはひとりですから」

男「うん」

春香「じゃあ、せっかくですし……遊んでもいいですか?」

男「いいよ。100円持ってる?」

春香「あっ」



32: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:46:48 ID:Xh5


春香「奥が深いですね~! 私、全然うまく行きませんでした。あはは」

男「いやいや。ちゃんとランク上げてオーディション合格したんだから、なかなかの腕前だよ」

春香「このカード、持って帰れるかな」

男「……雪歩によろしく言っといてくれ」

春香「もちろんです。雪歩、すっごく心配してたんですよ?」



33: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:47:20 ID:Xh5


男「申し訳ないな。プロデューサーなのに」

春香「……私、思うんですけど」

男「ん?」

春香「プロデューサーさんって、私たちのこと、あんまり頼ってくれないですよね」

男「そうかな」

春香「あ、あの! 変な意味じゃないんですけど。私たちはいつも頼りっきりなのに……って、思ったんです」



34: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:47:56 ID:Xh5


男「頼りきりだけどね」

春香「そう、ですか?」

男「春香も765プロのみんなも、いつも心の中にいる」

春香「……嬉しいです」

男「みんな頼ってくれるのに、選択肢からしか言葉をいえなくて、もどかしかったよ」

春香「私だって、直接お話したかったです」



35: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:48:32 ID:Xh5


男「……じゃあ、今は奇跡だね」

春香「はい。……だから、もっと今、頼ってほしいんです」

男「頼る、か」

春香「こんな私に優しくしてくれて、とっても感謝してます。だから、この気持ちを今、あえて言葉にするなら……」

男「『ありがとう』?」

春香「……えへへ」



36: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:49:05 ID:Xh5


春香「あれ? これも、『アイマス』ですか?」

男「ううん。ラブライブっていうアニメだよ」

春香「ラブライブ……」

男「アイドルのアニメ。アイマスより人気みたいだ」

春香「プロデューサーさんは?」

男「アニメは見たけど、そんなにハマらなかった」



37: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:49:40 ID:Xh5


春香「へぇー。いろいろあるんですね」

男「こっちはアイマスだよ。シンデレラガールズ」

春香「あ、卯月ちゃん」

男「知ってる?」

春香「テレビ局でお喋りしたことがあるんです」

男「そうなんだ……あ、そうだ。そっちの事務所に、後輩たちはいるの?」



38: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:50:15 ID:Xh5


春香「後輩……ダンサーチームの子たちですかね」

男「ああ、映画の世界なんだ」

春香「……? 映画、はわからないですけど。ダンススクールの候補生を765プロ預かりにしてます」

男「なるほどな。先輩ではいるんだね」

春香「……プロデューサーさんは、アイドルを目指してる私はもう居ないって言ってましたけど」



39: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:50:48 ID:Xh5


春香「私はいつだって、目指し続けてます」

男「……」

春香「背中を見せるのがかっこいいのかもですけど、私は自分の目で、お客さんを見たいんです! 一番うしろまで」

男「……春香は、きっとずっとそうなんだね」

春香「みんなも一緒です。きっと」



40: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:51:20 ID:Xh5


男「……やっぱり俺がダメだったんだ。春香たちのこと、信じられてなかった」

春香「プロデューサーさんの世界のことはよく分からないですけど。
   私たち、まだまだアイドルを辞めるつもりはありません」

男「……ごめんな」

春香「……」ぐーっ

男「あ」

春香「あ」



41: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:51:53 ID:Xh5


――

店員「いらっしゃいませ~」

男「何食う?」

春香「じゃあ、テリヤキバーガーと、コーラで!」

男「男子高校生みたいだな」

春香「私、けっこうジャンクなもの食べちゃうんですよね」

男「知ってる」

春香「え~。あ、席さがしてきます」



42: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:52:26 ID:Xh5


春香「なんだかいつもより美味しい気がします」

男「そりゃ良かったよ。……春香ってさ」

春香「んっ、はいっ?」

男「いつかは、帰っちゃうんだよな」

春香「……ずっと一緒がいいですか?」

男「……」

春香「プロデューサーさんが元気になったら、私の役目は終わりです」



43: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:53:00 ID:Xh5


男「……そうだな。ここじゃ、アイドルできないし」

春香「それとも」

男「……」

春香「一生、隣にいてくれるなら」

男「春香……」

春香「どうしますか? プロデューサーさん」



44: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:53:42 ID:Xh5


男「……追い返すね」

春香「あはは。ですよね」

男「まだそんなことを言う歳でもないし……春香は、それで満足しないだろ」

春香「さすが、私のプロデューサーさんですね」

男「まあな」

春香「……食べ終わったら、行きたい場所があるんです」



45: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:54:20 ID:Xh5


――――

春香「わあ! 本当にそのまま……」

男「二宮はさすがに時間がかかるな……」

春香「こっちに、いつも行ってた公園があるんです」

男「ああ、あるね」

春香「知ってるんですか?」

男「昔、来たことがあるんだ。……春香の見てる景色を見たくて」

春香「……ここ、遠いのに」



46: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:54:53 ID:Xh5


男「だいたい回ったぞ」

春香「じゃあ、私の家は行ったことありますか?」

男「家……はないなぁ。たぶん、この世界にはないだろ」

春香「案外、あるかもしれないですよ?」

男「どうかなあ。……案内してくれる?」

春香「もちろんです!」



47: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:55:27 ID:Xh5


――――

春香「……このへん、なんですけど」

男「フェンスの向こうか……行けないだろうな」

春香「やっぱり、ここは私の世界じゃないんですね」

男「……春香の住む場所じゃないかもしれないけど、春香が居る場所ではあると思うよ」

春香「えっ?」

男「パン屋のポスター、見たろ。アニメのをずっと貼ってある」



48: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:56:09 ID:Xh5


男「今でも、この街の人たちは知ってるんだよ。ここに春香が住んでること」

春香「……不思議な気持ちです。別の世界なのに」

男「世界は繋がってるって、よく歌ってるじゃないか」

春香「……ひとりでは、できないことっ」

男「……」

春香「なかまとなーら、できること♪」



49: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:56:44 ID:Xh5


男「……上手い」

春香「えへへっ。本当ですか?」

男「……とっても、上手いよ。この歌声が大好きなんだ」

春香「プロデューサーさん……」

男「大好きで、ずっと聞いてたくて……でも、ずっとは」

春香「……今いる私たちじゃ、頼りないですか」



50: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:57:17 ID:Xh5


春香「新しい私たちじゃなくて、今の。ステラステージを目指す、765プロの私たち……」

男「……頼りない、なんてことはないけど。ずっと同じことしか言ってくれないのは寂しいかな」

春香「あ……」

男「新しい出会い。新しいあいさつ、新しい歌。全部、ゲームやCDが出てくれないと見られない」

春香「……どうして、ですかね」

男「えっ?」



51: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:57:49 ID:Xh5


春香「どうして私たち、ゲームなんかの中に生まれてきちゃったのかな……」

男「……」

春香「この世界に生まれられたら、プロデューサーさんと出会って、一生どんな歌でもうたえるのに」

男「……きっと、そうだったら俺と春香は出会えてないよ」

春香「そんなことは」

男「君のプロデューサーは世界中にいるんだから」



52: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:58:24 ID:Xh5


男「ゲームで良かった。永遠に、一緒にいられるかもしれないだろう?」

春香「私は、永遠は嫌です。……進んでいきたいです」

男「……ごめんな。俺にそれだけの力があれば良かったんだけど」

春香「もし私たちが、全員こっちの世界に飛び出してきたら」

男「……うん」

春香「プロデューサーさんは、それでもプロデュースしてくれますか」



53: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:58:57 ID:Xh5


男「……自信ないな」

春香「そう……です、よね」

男「みんなの人生を預かる自信、俺に無いよ。現実はゲームじゃないから」

春香「……」

男「ゲームの『引退』なんてゲームオーバーと一緒で、また最初からやり直せるけど」

男「現実で引退したら、時間は巻き戻らない。アイドルが終わってそのままだろ」



54: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)21:59:29 ID:Xh5


春香「……プロデューサーさんのこと、ゲームの世界に連れていけたら良かったんですけどね」

男「やっぱり、ダメなんだ」

春香「難しいみたいです。貴音さんの受け売りになるんですけど」

男「うん」

春香「こっちの世界にも、私たちの居る場所にも『天海春香』はいます。だから、出てこられて。
   ……でも私たちの居る世界にいるプロデューサーさんは、誰でもないんです」

男「誰でもない、かあ」



55: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:00:04 ID:Xh5


春香「だから、そこには行けないって」

男「……難しいけど、なんとなく分かるよ」

ポツ…

春香「あ……」

男「雨だ……戻ろう、春香」

春香「……はい」



56: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:00:39 ID:Xh5


ガタン、ゴトン…

男「帰ってから……春香は、やりたいこととかある?」

春香「ええと。プロデューサーさんとお話がしたいです」

男「俺と?」

春香「はい。……帰ったらできないですから」

男「そっか。じゃあ、そうしよう」

春香「はい!」



57: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:01:10 ID:Xh5


春香「あっ、じゃあ。プロデューサーさん。私に、なにかお願いとかありませんか?」

男「お願い?」

春香「はいっ。なんでもいいです。できることをさせてください」

男「それじゃあ……手料理が食べたいかな」

春香「手料理! わかりましたっ」

男「一番得意に作れるやつね」



58: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:01:41 ID:Xh5


春香「えへへ、期待しててください」

男「じゃ、帰りにスーパー行くか」

春香「いいですね」

男「春香と一緒に遊んで、買い物して……ほんと不思議な気分だよ」

春香「夢じゃないですよ?」

男「うん」

春香「……でも、ほっとしました」



59: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:02:14 ID:Xh5


男「なにが?」

春香「お願い……もし、その。ヘンなこと、したいとか言われたらどうしようって」

男「言うわけないだろ」

春香「そ、そうですけど!」

男「俺は、おまえのプロデューサーなんだから」

春香「ふふ……ほんと優しいです。プロデューサーさん」



60: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:02:47 ID:Xh5


――――

春香「じゃーん! お待たせしました」

男「おー!」

春香「オムライスです。スープも今持ってきますね」

男「ありがとう。誰かにご飯作ってもらうのなんて、久しぶりだよ」

春香「えへへ。響ちゃんのレシピなんですけどね」



61: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:03:28 ID:Xh5


男「……春香の分は?」

春香「ああ、1回で1人分しか作れないんです。フライパンの大きさが……」

男「じゃあ、待っててもいいか」

春香「いいんですか?」

男「うん。一緒に食べたい」

春香「わかりました。ちゃちゃっと作ってきます!」



62: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:04:00 ID:Xh5


春香「いただきまーす」

男「いただきます」

春香「……ん。いいかんじ」

男「おいしい」

春香「本当ですか! よかったぁ」

男「春香の料理が食べられるなんて。考えたこともなかったよ」



63: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:04:33 ID:Xh5


春香「えへへ。私、プロデューサーさんにご飯作ってあげたの初めてです」

男「向こうでも?」

春香「はい。おうちに行ったりしませんから」

男「そっか。すごい幸せ者だなあ、俺」

春香「良かったです。そんなに喜んでもらえたら作った甲斐があります」

男「春香は料理がうまいもんな」



64: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:05:11 ID:Xh5


春香「昔は、お菓子しか作れなかったんですよね。でも、いつのまにか普通の料理も作れるようになってて……」

男「……設定が変わったんだ」

春香「設定?」

男「こっちから見た話になるんだけど」

春香「はい」

男「律子とか伊織とか、けっこう変わったんだよ。見た目とか、性格もだいぶ……。
  それでプロデューサーを引退した知り合いがいっぱいいて」



65: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:05:46 ID:Xh5


男「春香だっていろいろ変わってさ。わがままじゃなくなった」

春香「わ、わがまま……でした?」

男「そんなに腹立つようなのじゃないよ。女の子だったら当たり前」

春香「そうですか……よかった」

男「春香はみんなのまとめ役になってさ。常に頑張ってて、息抜きを知らなくて。昔はレッスンサボったりもしたのに」

春香「う、えへへ……」



66: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:06:19 ID:Xh5


男「俺はちょっと寂しかったんだ」

春香「寂しかった、ですか?」

男「昨日も話したかもしれないけど。春香をプロデュースしてるつもりがどんどん置いてかれちゃって。
  俺がプロデュースされてるみたいだった」

春香「……どういう、ことですか」

男「今の春香に見合う男になれ、って言われてるような感じかな。もちろん誰も言ってないんだけど」



67: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:07:01 ID:Xh5


男「二人三脚したいつもりが先導されてるみたいな。だんだん、つらくなってきて。
  プロデューサーを辞めるってことは全然考えなかったけど」

春香「……後悔してますか?」

男「え?」

春香「私と、出会ったこと」

男「そんなわけないよ」



68: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:07:34 ID:Xh5


男「……後悔なんかするわけない。春香がいたから、俺は頑張ってこれたんだ」

春香「……うん」

男「でも、春香について行くのに必死で、最初の頃の気持ちをだんだん思い出せなくなって」

春香「……っ」

男「ミリオンライブは……やっぱり、違うんだ。うまく言えないけど、あの春香は」



69: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:08:12 ID:Xh5


男「後輩がいて、常にアイドルらしく居て。完璧すぎるんだ」

春香「……」

男「春香は、俺がいなくてもトップアイドルになれちゃうんだよ。それを考えたら」

春香「私は……プロデューサーさんに、ずっとプロデュースしてもらいたいです」

男「ありがとう。……俺もそう思ってる」



70: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:08:45 ID:Xh5


男「みんなのお喋りとかを見るのは好きだよ。でも、違うんだ。それだけなのは……。
  ただ見てるんじゃなくて、一緒に。ただ、一緒に頑張りたいだけなんだよ」

春香「……私たちが、もっと、プロデューサーさんに寄り添えたら良かったんですけど」

男「ううん。俺のせいだよ」

春香「そんな」

男「俺が納得できないのが悪いんだ」



71: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:09:23 ID:Xh5


男「……ごめん。食事中に」

春香「い、いえ」

男「本当に美味しいよ。スープも優しい味で……」

春香「……プロデューサーさんが許してくれるなら、ずっと、隣にいます。ご飯も作ります!」

男「ダメだよ」

春香「っ……」



72: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:09:58 ID:Xh5


男「春香の夢は?」

春香「……トップアイドルです」

男「この世界に本物の765プロはない。千早や美希もいないし、本物のプロデューサーだっていない」

春香「ここじゃ、なれませんか」

男「そういうわけじゃないけど。春香が輝ける場所は、他にあるよ」

春香「……」

男「ありがとう。一緒にいたいなんて言ってくれて」



73: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:10:30 ID:Xh5


――――

男「春香。お風呂入る?」

春香「あ……入りたいです」

男「うん。洗ってくるから待ってて」

春香「はい。あ、あの」

男「ん?」

春香「私も、洗います」



74: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:11:02 ID:Xh5


春香「一緒に洗いませんか?」

男「……じゃあ、ぜひ」

春香「ありがとうございます」

男「アイドルに風呂掃除までさせるなんて……申し訳ない」

春香「えっ? いえ、私がやりたいって言ったんです。気にしないでください」

男「でも……そんなプロデューサー、居ないだろ」



75: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:11:34 ID:Xh5


春香「あはは……あ、スポンジ取ってください」

男「うん」

春香「みんな、びっくりするかなー。流石にお風呂の掃除してるとは思ってないかもですね」

男「そうだな。……みんなも、こっちに来ることは出来るんだっけ」

春香「はい。でも、全員で来たら迷惑ですから、私が代表で」

男「そっか」



76: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:12:07 ID:Xh5


春香「会いたいですか?」

男「うーん、そりゃ、会いたいけど……」

春香「呼んできましょうか。亜美と真美、来られなくてすごくガッカリしてましたし」

男「ううん、いいよ。春香と会えただけで充分だ」

春香「そ、そうですか?」

男「うん。……それにあいつらはイタズラ目的だろうしな」



77: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:12:40 ID:Xh5


春香「ふふ、わかりました。ふたりには内緒にしておきますね」

男「……あとさ、伊織とか律子とか、なんか怖いもん」

春香「ふふっ」

男「せっかく春香に向かわせたのに、なに料理とか作らせてるのよー、とか言われたら、何も返せないし」

春香「あははっ。モノマネ、似てますね」

男「そりゃあな。何年も一緒だから」

春香「でも……ふたりとも、すごく心配してますから。怒っても照れ隠しですよ、きっと」

男「心配か……」



78: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:13:16 ID:Xh5


春香「……私、ダメですね」

男「どうして?」

春香「プロデューサーさんのこと、元気づけようと思って来たのに。むしろ、落ち込ませちゃって」

男「そんなことないってば」

春香「もっと、元気になってほしいんです。私プロデューサーさんに恩返しっ、わ、わわっ」

男「春香!」

春香「きゃあ!」



79: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:13:54 ID:Xh5


――――

男「ほい。タオル」

春香「……ごめんなさい」

男「大丈夫だよ。もうすぐお風呂沸くから、そしたら入っておいで」

春香「プロデューサーさんも、びちょびちょです」

男「俺はいいよ」

春香「良くないです! 風邪ひいちゃいま……あっ。お、お背中流させてくださいっ!」

男「ええっ!?」



80: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:14:27 ID:Xh5


カラン…

春香「……だ、大丈夫ですよ? 目、あけても……」

男「いやいや。アイドルにこんなことしてもらってるだけでも、犯罪だし」

春香「は、犯罪って」

男「ごめんな、春香……すぐ出てくから」

春香「ふ、服着てますから。大丈夫です」

男「……うん」



81: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:15:05 ID:Xh5


春香「流していきますね」

男「ありがとう……」

春香「……」

男「ほ、ほんとに背中だけで。俺はすぐ出ていくから」

春香「わ、わかりました」

男「……」



82: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:15:36 ID:Xh5


春香「……」

男「春香さ」

春香「はいっ?」

男「トップアイドルになったあとのこと、考えてる?」

春香「え……あとのこと、ですか」

男「うん」



83: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:16:10 ID:Xh5


春香「まだ……考えられない、です。まずはオーディションを勝って、進んで」

男「……そっか」

春香「考えたほうが、いいですか?」

男「俺は……そのあとのことも、考えてほしいと思う。春香だけじゃなくてみんなにも」

春香「そのあと……」

男「そうしたら、たとえ『アイマス』が終わってもその先で生きていけるかもしれない。
  アイドルを、たとえ諦めても……」



84: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:16:49 ID:Xh5


春香「……プロデューサーさんは、男の人だから分からないかもですけど」

男「……うん」

春香「女の子って、みんなトップアイドルを目指してるんです。
   でも、途中で、目が覚めちゃったり、打ちのめされて……現実に、気づいていくんですけど」

男「……」

春香「私たち……765プロにいるみんなは、アイドルを諦められずにここまできた、みんななんです。だから、アイドルじゃない私たちは」

男「……アイドルじゃなくなったら、春香はもう、春香じゃない?」



85: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:17:21 ID:Xh5


春香「……はい」

男「そうか」

春香「私たちの生きる場所は、アイドル。きっと、それしかないんです」

男「ごめん、春香」

春香「い、いえっ。私こそ、偉そうになってすみません……お湯、かけます」

男「うん……」



86: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:17:58 ID:Xh5


春香「プロデューサーさんは、アイドルじゃない私たちのこと。見たいですか?」

男「ああ……夢を叶えたあとのみんなを見てみたいよ」

春香「先輩でも、まとめ役でも、アイドルでいる私より……ですか」

男「それは」

春香「プロデューサーさん、言ってましたよね。アイドルを『目指してる』私たちが好きだって」

男「……うん」



87: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:18:33 ID:Xh5


春香「私がトップアイドルになったら、プロデューサーさんは……遠くに行っちゃうんじゃないですか?」

男「そんな」

春香「今も、離れかけて……だから!」

男「……春香」

春香「いやです。そんなの、あんまりですよ……」



88: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:19:07 ID:Xh5


春香「ずっと、ずっとだいすきで……トップアイドルになったら、喜んでもらえるって。
   いつも、応援してくれる、その、やさしさが……」

男「……春香」

春香「あ……」

男「ごめん」

春香「……すみません」

男「そういうつもりじゃ無いんだ。ただ、俺は……」



89: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:19:43 ID:Xh5


男「春香との、人生が……『アイマス』が終わるのが、嫌で」

春香「……私だって、嫌です」

男「それなら、アイドルじゃなくても、春香が生きていける場所があるなら……って」

春香「それは、もっと嫌です……」

男「……」

春香「私は、アイドルになりたいんです。アイドルじゃない私は、プロデューサーさんの隣に……いられないです」



90: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:20:32 ID:Xh5


春香「それなら、トップアイドルになって、『アイマス』と一緒に、終わっていったほうが、いいです……」

男「……春香」

春香「すみません……」

男「ごめん……春香の気持ち、考えてなかった。自分のことばっかりで」

春香「……」

男「先に、お風呂入ってて」

春香「プロデューサーさん……」



91: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:21:03 ID:Xh5


ピッ…ウィン…

男「……」

『アイドルマスター、ステラステージ!』

男「……ほんとに、ここから」

『ちょ、ちょっと! なんでアンタ上半身裸なのよ!』

男「えっ」



92: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:21:36 ID:Xh5


『って。春香はどこなの?』

男「うわ!? い、伊織!」

『なに驚いてるのよ。っていうか服着なさいっ』

男「は、はいっ」

『春香は!?』

男「お風呂……」



93: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:22:10 ID:Xh5


『ま……まさか、ふたりで入ってたんじゃないでしょうね!?』

男「背中だけ流してもらって……」

『はーあ!? なにそれ! 信じられないっ。こんの変態!』

男「よ、夜中にあんまり大きな声出さないでくれ!」

『知らないわよッ、テレビの音量下げたら!?』

男「う……。そ、そっちは朝か?」

『……ええ、そうよ。いま、5月の2週目ぐらいね』



94: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:22:42 ID:Xh5


男「……どうして、話しかけてくれたんだ」

『なによ。ゲーム起動したのは、そっちでしょ?』

男「あ……」

『アンタから私たちに話したいことがあるんじゃないの』

男「……なんだよ。見てたのか?」

『知らない。喧嘩でもした?』



95: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:23:16 ID:Xh5


男「ううん。……春香を、悲しませちゃって」

『……へえ』

男「アイマスが終わるかもってなるのが嫌で。アイドルじゃなくてもいいから、春香たちが生き続けるところを見たいって言ったんだけど」

『……』

男「私はアイドルがいいって、泣かせちゃったんだ」

『……アンタ、本気で言ったの?』



96: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:23:45 ID:Xh5


男「えっ?」

『アイドルじゃなくてもいいって』

男「……うん」

『バーカ。ほんっとヘボプロデューサーね』

男「……言うなよ」

『いい? 私たちはトップアイドルになるために生まれてきたの!
 アイドルじゃなくなったら、それは私たちじゃないでしょう。わかってる?』



97: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:24:17 ID:Xh5


男「そうだけど……それでも未来を見たいと思うのは、おかしいかな」

『おかしくない。普通よ。だから』

男「だから……?」

『それを、私たちに言わないで』

男「……」

『私たち、トップアイドルを目指すしかないの』

男「……ごめん」



98: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:24:57 ID:Xh5


『だから私たちが走り続けてる限り、アンタが横にいてくれなきゃ困るのよ』

男「俺が……」

『だいたい、まだ”終わる”なんて一言も言ってないわ。これからよ、これから』

男「……そう、だよな。俺が勝手に諦めて、悔しがって」

『わかった?』

男「……うん。ありがとう、伊織」



99: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:25:31 ID:Xh5


『にひひっ、分かればいいのよ。それじゃ、春香によろしくね』

男「えっ、ちょ……」

春香「……あがりました。遅くなってすみません」

男「は、春香。うん」

春香「お風呂、まだあったかいです。よかったら」

男「ありがとう……」



100: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:26:03 ID:Xh5


春香「……」

男「春香……あのさ」

春香「はい?」

男「風呂場のドアの近くに、いてくれないか」

春香「ドアの近く、ですか?」

男「うん。少し、話がしたいんだ」

春香「話……わかりました」



101: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:26:39 ID:Xh5


――――

男「聞こえる?」

春香「聞こえます。エコーかかってます」

男「そっか。良かった」

春香「……それで、お話って」

男「ああ、そうだ。春香に聞きたいことがあるんだ」



102: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:27:16 ID:Xh5


春香「聞きたいこと……」

男「俺との出会いのこと、教えてくれないか」

春香「で、出会いですか?」

男「そう。初めて会った日のこと。覚えてるかな」

春香「……忘れたことなんて、一度もありません」



103: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:28:00 ID:Xh5


春香「……プロデューサーさんの思い出とは、違うかもしれないですけど。初めて会ったのは、事務所です。あのらせん階段を登って」

男「だるい屋が下にある事務所か」

春香「はい! それです。懐かしいですね。……それで、事務所に入って、いろいろ掃除とかして。
   歩いてたら、入口のところに立ってる人がいて」

男「うん」

春香「そのあと、声をかけてくれたのがプロデューサーさんです」



104: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:28:33 ID:Xh5


男「アケマスのときだ。……一緒だな」

春香「本当ですか?」

男「忘れもしない。12月の、東京に雪が積もった日……電車が止まっちゃって」

春香「ええっ」

男「動くまでの暇つぶしに、人がいなかったからアケマスをやったんだ。そしたら、春香が目の前に現れて……」



105: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:29:06 ID:Xh5


男「一目ぼれ、だったのかも。この子かわいいって」

春香「えへへ……」

男「それからいろんな場所で、俺たちは出会ってないか?」

春香「はい。765プロに響ちゃんたちが来たときも……それから、一緒に日本中を回ったりもしましたよね」

男「アイモバ、もう少しで関東制覇だったんだけどな」

春香「私たちの記憶、けっこう繋がってるんですよ」



106: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:29:38 ID:Xh5


男「……驚いた。毎回パラレルワールドなんだと思ったよ」

春香「それは、この世界での話です。私たちはプロデューサーさんに愛してもらった分だけ、記憶があります」

男「……愛した分、だけ」

春香「だから愛されたアイドルは、どんどんあなたをすきになっていくんです」

男「……」



107: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:30:20 ID:Xh5


春香「すきです。プロデューサーさん」

男「っ……」

春香「ゲームの中じゃ、言えないですけど」

男「……春香」

春香「いつも、私たちのことを一番に考えてくれて。一緒に悩んで、行動して。あなたみたいなプロデューサーさんは、他にいません」



108: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:30:52 ID:Xh5


春香「だから、苦しんでほしくない」

男「……?」

春香「私たちがプロデューサーさんの足枷になるのなら、身を引くべきだと思うんです」

男「それは違う」

春香「……」

男「何度でも言える。『アイマス』とか、春香たちのことを考えて辛くなったり、泣いたことはたくさんある。でも、足枷になったことなんてない」



109: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:31:25 ID:Xh5


春香「……」

男「好きだよ、春香」

春香「……ドア越しで言うの、ずるいです」

男「そっちが先にそうしたのに」

春香「だって……顔を見て言ったら、私、きっと泣いちゃいますから」

男「……俺も、そうかもしれない」



110: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:31:58 ID:Xh5


春香「じゃあ」

男「ん」

春香「いまのうちに、顔を合わせたら言えないようなこと、たくさん言っちゃいましょうよ」

男「……俺は顔を合わせて言いたいことのほうが多いけど」

春香「私はたくさんあります。昔、胸を触られたときの……」

男「わ! 忘れてくれ!」



111: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:32:46 ID:Xh5


――――

春香「お布団、敷いてみました」

男「ありがとう。……なあ、春香」

春香「はい」

男「俺、やっと決心がついてさ」

春香「……」

男「どうしても、春香に。春香たちに言いたいことができたんだ」



112: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:33:19 ID:Xh5


男「俺は、たとえこの先、終わってしまうとしても。春香のプロデュースを辞めることだけは絶対にしない」

春香「……はい!」

男「さっき、伊織と話したんだ」

春香「伊織と?」

男「ステラステージを点けたら、伊織がいて。すごく簡単なことに気付かされちゃったよ」

春香「……簡単なこと」



113: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:33:53 ID:Xh5


男「俺は、まだ来ない終わりが怖かった。終わりを見たくなかった」

春香「……」

男「でも、終わるなんて誰も言ってない。春香たちの未来は、続いていくんだ」

春香「私たちの、未来……」

男「俺は、その未来を一緒に見たい」

春香「……プロデューサーさん」



114: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:34:26 ID:Xh5


男「これからも、ずっと俺にプロデュースをさせてくれ」

春香「……ずっと、ずっと待っていたんです」

男「春香……」

春香「あなたの、その言葉を」

男「……もしかして、もう」



115: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:34:58 ID:Xh5


春香「私、『アイマス』の世界からここへ来られて、良かったと思います。
   そうじゃなきゃ、プロデューサーさんの顔、ちゃんと見られなかったから」

男「また、来てくれる?」

春香「ごめんなさい」

男「……だよな」

春香「これは、最後の手段なんです。私たちは、やっぱり向こうの人間ですから」



116: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:35:30 ID:Xh5


春香「勝手なこと言ってしまって、すみません。でも、私……プロデューサーさんと1日いっしょで、すごく、すごく楽しかったです!」

男「……うん」

春香「プロデューサーさんは、どうでしたか?」

男「……」

春香「私と、いっしょに過ごしたこと……」

男「そんなの……決まってる」



117: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:36:02 ID:Xh5


男「すごく……すごく、楽しかったよ」

春香「……ありがとう、ございます」

男「春香……」

春香「向こうに戻っても、テレビをつけたら、私はいつでもいます。いつか、またここに」

男「ありがとう」

春香「えへへ。これからもプロデュース、よろしくお願いしますね?」



118: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:36:50 ID:Xh5


春香「もう少し、かかるかもしれないですけど。プロデューサーさんをガッカリさせることだけは、絶対にしません。
   待っていてください」

男「うん。期待しておくよ」

春香「だから、笑ってください」

男「……笑えてない?」

春香「ずーっと、引きつってます」

男「そっか。……よし」



119: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:37:24 ID:Xh5


P「春香。期待して待ってる!」

春香「……! はいっ!」

P「春香はさ」

春香「……?」

P「運命の出会いって、信じてる?」

春香「……はい! 私たちは、いつだって!」



120: 名無しさん@おーぷん 20/07/06(月)22:38:04 ID:Xh5


New Me, Continued
https://www.youtube.com/watch?v=BRqRA4aFxcY



終わりです。

春香、CD発売おめでとう。
これからの765プロもずっと楽しみにしてます。

ありがとうございました。


元スレ
春香「プロデューサーさん!」男「えっ?」