松尾千鶴「ほたるちゃんが蛹になった」

白菊ほたる「どきどき呑み会」片桐早苗「……」

ほたると菜々のふたりぐらし・ふゆ

白菊ほたる「あなたが」高森藍子「この世界から」

ほたる「みんなが私の口にお菓子を投げ込んできます」

【モバマス】あの歌が聞こえる

夢見りあむ「タレのレシピは酢1、ラー油2、醤油7」

【モバマス】ほたる・デラックス

高森藍子「あいこでしょ」

白菊ほたる「クチクラをみなぎらせたいです」

砂塚あきら「餃子、ネバーエンド」

高森藍子「時間の果てで待っていて」

【モバマス】母「娘が怖い!!」 ほたる「落ち着いて、お母さん落ち着いて!」

【モバマス】 颯「久川埋蔵金だよ、なー!」 凪「ほほう」

岡崎泰葉「ハッピーバースデー、ほたるちゃん」

【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし・つゆなつ

【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし・あけくれ

白菊ほたる「霧の中にて」










1: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:38:26 ID:rOM

【某月某日・某芸能事務所地下倉庫】

松尾千鶴「し、失礼しまーす(ドアガチャー)」

千鶴「……誰もいない」

千鶴「おかしいな。この手紙には確かに、大事な話があるからこの時間に待ってるって」

千鶴「というかこの手紙、差出人の名前が書いてないけど一体誰が私を……ハッ!?」

千鶴「よく考えると差出人も解らない手紙でノコノコ来ちゃった私ってかなり迂闊なのでは!?」

千鶴「わあん、なんだか今更怖くなってきた! でももしちゃんとした用事だったらすっぽかすのも悪いしどうしよう! 不安!」

???「ふふふ、予想以上の本音垂れ流しっぷりだね、松尾さん」

千鶴「ハッ、誰!?」



2: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:39:03 ID:rOM

???「私です」

千鶴「ああっ、貴女は先日うちの事務所に来たばかりの岡崎泰葉さん!?」

岡崎泰葉「そう。松尾さんを呼び出したのは私」

千鶴「というかお手紙では『待ってる』って話だったのに、何故私の後からここに入ってくるの」

泰葉「いやあ待ちかまえる予定だったんだけど挨拶回りが長引いちゃって(ポリポリ)」

千鶴「あー、移籍してきたばかりはそのへん忙しいですよね」

泰葉「松尾さんも私と同じ移籍組なんだよね、たしか」

千鶴「わっ、ご存じなんですか」

泰葉「そりゃあ呼び出す相手のことはきちんと調べるよ」

千鶴「でも、事務所に来たばかりだけどその芸歴と貫禄ですでに岡崎先輩とあだ名される岡崎さんが一体何故私を」

泰葉「うわあやっぱりそういうあだ名なのかあ」



3: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:39:31 ID:rOM

千鶴「ハッ!? いえあの」

泰葉「いいのいいの。その正直力を見込んで呼んだんだから」

千鶴「正直力って初めて聞きました」

泰葉「私も初めて言ったなあ……というわけで改めて、松尾さんを見込んでお願いがあります」

千鶴「私に? でも岡崎さんと今まで話したこともないし、見込まれる理由がわからない」

泰葉「まあまあ細かいこと言わないで。これ分けてあげるから」

千鶴「こ、これは私たち九州出身者のソウルフード、ハウス食品のうまかラーメンうまかっちゃん!」

泰葉「説明どうも。しかも5袋パックだよ」

千鶴「一体どこからうまかっちゃんを」

泰葉「ふふふ。毎月おかあさんが実家から送ってくれるんだよ」

千鶴「アットホームなエピソードだ」

泰葉「まあ岡崎家のエピソードは置いといて、これでどうかな?」



4: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:40:07 ID:rOM



千鶴「うまかっちゃんの頼みとあれば断れませんね」

泰葉「頼んでるの私なんだけどまあいいや。それで頼みというのはね」

千鶴「は、はい」

泰葉「と、友達になってほしいの!」

千鶴「へっ」

泰葉「何この一世一代の告白に対してその間が抜けたお答えは」

千鶴「す、すみません、でも」

泰葉「でも?」

千鶴「友達になってって言ってくれるのは嬉しいけど、岡崎さんはたしかもうユニット活動も決まってるし」

泰葉「リトルチェリーブロッサムね」

千鶴「そっちの子たちとすぐ仲良くなれるだろうし、そもそもいろんな子が岡崎さんに声かけてたはずだし、いくらでも仲良くなれそうな子が居るでしょう」

泰葉「それは否定しない」



5: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:40:30 ID:rOM


千鶴「それなのにわざわざ全然絡みのない私をこんなとこに呼び出して友達になってって言い出す理由がよくわからなくて」

泰葉「――だめ?」

千鶴「だめじゃないですけど。個人的にあのお手紙の好感度高かったし」

泰葉「自分で出しておいて何だけど、あの差出人もない手紙で何故好感度が?」

千鶴「だって封筒も便せんもくまさんでかわいかったし」

泰葉「しまった、そういえばそうだった」

千鶴「封のシールも動物のやつで可愛かったです。まさかクールな岡崎さんが差出人とは夢にも」

泰葉「ま、まあ封筒の事はいったん置いといて、松尾さんなら信頼できるから、かな」

千鶴「だから嬉しいけど何故そんなに信頼してもらえるのか解らないんですって」

泰葉「……えーとね」

千鶴「なんでそんな遠い目をするんですか」



6: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:40:56 ID:rOM


泰葉「実は私、事務所の他のアイドルの子たちがまだいまいち信用できなくて」

千鶴「なんか爆弾発言が来た!?」

泰葉「私、ずっと子役だったじゃない」

千鶴「はい。『動物名探偵ヤスハちゃん』いつも見てました!」

泰葉「ありがと……でね。役者って、すごいんだよ」

千鶴「はあ」

泰葉「いつでも笑えるしどんなときでも泣けるし、汗を止めるのも涙を出すのも自由自在」

千鶴「岡崎さんも出来るんですか」

泰葉「出来るよ。ちょっと今ここで涙流してみようか?」

千鶴「い、いえ結構です」

泰葉「……まあ、それでね。私、好かれるために笑うなんて、当たり前に出来るんだよ。そういうこと出来る子、沢山知ってるんだよ」

千鶴「……」



7: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:41:35 ID:rOM

泰葉「アイドルに転向して、この事務所に来て。私、早く事務所に馴染もうとしてニコニコしてた。みんなニコニコ迎えてくれた。だけど――」

千鶴「――だけど?」

泰葉「ふと、怖くなっちゃったの。この笑顔がみんなあの子たちみたいに、私みたいに、作り笑顔だったらどうしよう、って」

千鶴「……」

泰葉「好かれるために腹を隠して笑うなんて、誰でもするもの。アイドルだって弱肉強食の世界。もしかしたら皆、私のコネとかをアテにして笑ってるだけなんじゃないか、私だって今作り笑いをしてるのに、って……」

千鶴「思った以上にヘビーな話だった……」

泰葉「まあ、考えすぎだとは自分でも思うんだけどね。一度そう思ったらなんだか、頭から怖さが離れてくれなくて」

千鶴「……気持ち、すこし、解ります」

泰葉「そこで松尾さんなんですよ」

千鶴「どうしてそこで松尾さんなんですか」

泰葉「それは松尾さんのレッスンを見たからです」

千鶴「えっ」



8: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:41:57 ID:rOM



泰葉「そう、マストレさんにしごかれて必死でついていこうとしている松尾さんを」

千鶴「なんだか恥ずかしい……」

泰葉「マストレさんに『なんだそのザマは昨日の課題はきちんとやってきたのか』と問われてよせばいいのに『課題? しまった学校の宿題が多くてすっかり忘れてた……ハッ!?』とか言っちゃう松尾さんを!」

千鶴「見られたくないところも見られてるう!!」

泰葉「こっぴどくマストレさんに怒られる松尾さんを見て私は思ったね。ああこの子は自分に不利な本音でも隠せないタイプなんだって」

千鶴「わあんたぶんほめられてるのにちっとも嬉しくなーい!」

泰葉「その後も松尾さんのことをなんとなく目で追っててね。いろいろやらかすのを見る度にああこれは間違いないと」

千鶴「いまやらかすって言いましたよね!?」



9: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:42:17 ID:rOM


泰葉「それになんとなく、私に立場が似ているなあって」

千鶴「えっ」

泰葉「私と同じ移籍組で、まだ事務所に来て間がなくて」

千鶴「確かに、私がこの事務所に来たのは岡崎さんのちょっと前の事でした」

泰葉「そして事務所に友達がいない」

千鶴「なんでそんなこと知ってるんですか!! いや確かにそうだけどお!!」

泰葉「時々ポロッと『ああ友達ほしいなあ、どうしたらみんなと打ち解けられるかなあ』って言ってたから」

千鶴「私の馬鹿!?」

泰葉「でもでも、それが嬉しかったんだよ」

千鶴「えっ」

泰葉「松尾さんはきっと、偽れないから。腹の底で舌を出して、顔で笑うなんて出来ないから……信用できるんじゃないか、って」

千鶴「誉められてるのかなあ」

泰葉「もの凄く誉めてるから!!」

千鶴「本当ですかあ?」



10: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:42:39 ID:rOM



泰葉「本当本当。だから……あのね。改めて、友達になってほしいんだ」

千鶴「……」

泰葉「松尾さんなら、私、疑わなくていいから。作り笑いする必要がないから」

千鶴「……」

泰葉「……自分の事情ばっかりだよね。ごめん。でも、どうかな」

千鶴「……『岡崎さん』と友達、なんて変ですよ」

泰葉「……そっか」

千鶴「友達なら『泰葉ちゃん』ですよね」

泰葉「! 松尾さ……千鶴ちゃん……!」

千鶴「えへへ、私も友達ほしかったし……それに」

泰葉「それに?」

千鶴「本音が出ちゃう癖で、嫌な思いもいっぱいしたから。これがいいって言ってもらえるなんて、初めてで。嬉しくて」

泰葉「……うん」

千鶴「だから、私も泰葉ちゃんと友達になりたいです」

泰葉「……ありがとう」

千鶴「えへへ」



11: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:42:54 ID:rOM


泰葉「私、千鶴ちゃんとなら、本音で色々話せる気がするの。偽らなくていい気がするの」

千鶴「はい」

泰葉「千鶴ちゃんと仲良くなって。2人で本音で話して……そしていつか、2人して他の子たちとも仲良くなっていけたら素敵だと思わない?」

千鶴「思います。ふふ、私たち2人の大作戦ですね」

泰葉「うん。秘密の大作戦ね」

千鶴「こんなの他に話せないですものね」

(ガタッ!!)

泰葉「倉庫の奥から物音が!?」

千鶴「だ、誰っ!?」



12: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:43:24 ID:rOM


白菊ほたる「す、すみません、他の人を植木鉢に巻き込まないよう倉庫のすみっこで台本を読んでいた白菊ほたるです……」

泰葉「そんな理由ってある!?」

千鶴「泰葉ちゃん。白菊さんはすごい不幸体質でちょくちょく植木鉢に降られているんだよ」

泰葉「そんな話ってある!?」

ほたる「みんなはじめはそう言うけど、3日もすれば信じてくれますふふふ」

泰葉「なんという自信」

ほたる「ごめんなさい、おふたりのお話は聞かせていただきました」

千鶴「うう、恥ずかしい」

泰葉「誰も居ないと思ってたのに」

ほたる「おふたりの気持ち、私も少し、解るんです」

千鶴「……」

泰葉「白菊さん」



13: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:43:38 ID:rOM


ほたる「周りが怖くて。打ち解けられなくて……私もそうだったから」

千鶴「……そっか」

ほたる「だから、その。私もおふたりの、お友達にしていただけませんか?」

千鶴「えっ」

泰葉「いいの?」

ほたる「はい。いいんです……ううん、そうなりたいんです」

千鶴「ありがとう白菊さん」

ほたる「ほたる、でお願いします」

泰葉「じゃあ、この話は私たち3人の秘密、だね」

ほたる「……ごめんなさい、それは無理だと思います」

泰葉「えっ」



14: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:43:57 ID:rOM


ほたる「事務所に来たばかりのおふたりは知らなかったみたいですが、この倉庫は日陰を求めるキノコアイドル星さんやPさんから隠れようと逃げてきた森久保さんや仮眠するためにやってくるPさんたちの溜まり場だからです」

ニュッと出た星輝子「や、やあ……」

ニュッと出た森久保乃々「ごめんなさい、き、聞いてしまったんですけど」

ニュッと出たP「なるほどなんとなくぎこちないと思ったらそういうことだったのかというか見つけたぞ森久保ォ!」

森久保「ひい! なんでいるんですかああ!!」

ほたる「これでは秘密は無理と言うものです」

千鶴「うわあ」

泰葉「これは明日には事務所中の人が知ってそうな気がする」



15: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:44:24 ID:rOM



ほたる「……私は、まだ13歳で、こんなだけど。おふたりに教えてあげられることが、ふたつだけあります」

千鶴「……」

泰葉「……」

ほたる「この事務所の人たちは、私みたいに次から次に厄介を引き起こす子を、笑って受け入れてくれました。だから……泰葉さんの心配は、きっと杞憂なんです」

泰葉「……うん」

ほたる「あと、いつ頭上から隕石が降ってきて死ぬかもしれないんですからお友達がほしいとか、アイドルになりたいとか……やりたいことは、すぐにやったほうがいいと思います」

千鶴「言ってることはめちゃくちゃなのに、なんだろうこの説得力」

泰葉「なんだかものすごい人生経験を感じる」

ほたる「……というわけで、よかったら。これから寮でみんなとお話をしませんか」

千鶴「えっ」

泰葉「突然で、邪魔にならないかな」

ほたる「そんなことないと思いますよ。だって寮の皆でおふたりの歓迎会をいつにしようかって相談していたんですから」

千鶴「……は」

泰葉「……あはは」



16: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:44:35 ID:rOM




泰葉(私と千鶴ちゃんは、顔を見合わせて笑いました)

泰葉(悩んでいたこと、秘密にしていたこと。遠慮していたこと。そんないろんなものが突然吹き飛ぶと、人は笑うしかないのです)

泰葉(ほたるちゃんと一緒に寮を訪れて、いろいろな人と話して。私は自分の中のおそれが、すっかり消えてゆくのを感じました)

泰葉(そう、きっと、私が本当にこの新しい事務所に落ち着いたのは、今日この日のことだったのです)

泰葉(そして千鶴ちゃんの本音がダダ漏れになる癖も事務所中に広まり、千鶴ちゃんは滅茶苦茶恥ずかしい思いをしたりいろんな人に可愛がられたりすることになるのですが、それはまた別の話です……)

千鶴「うわーん、いい話っぽかったのにい!!」

(おしまい)



17: ◆cgcCmk1QIM 20/07/18(土)23:47:37 ID:rOM

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


元スレ
【モバマス】千鶴と泰葉のひみつ会議