1: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 06:12:47.99 ID:tiYrJF33.net
ザワザワザワ……
絵里「…………」
絵里「ダメね」
絵里「ほとんどの数値が下を示しているわ」
絵里「もうゾーンも抜けたし」
絵里「迷いなくヤメね。これは」
スタッ
絵里「…まだ昼の13時……」
絵里「もう少し徘徊して、粘ってみましょう。もしかしたら良さげなのを拾えるかもしれないし」
2: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 06:21:27.99 ID:tiYrJF33.net
午後4時
絵里「ふっふっふ。もらったわね。あのあと奇跡的にすぐ見つけたこの台、何もかもが良いわ」
絵里「さっきのやつを含めるとプラマイ0くらいまでは取り返したわ。さあ、勝負はこれからよ」
店内放送「それでは皆さん、お待たせしました。予告にあったとおり、特別ゲスト様がご来店していただきましたので、ご紹介いたします!」
絵里「…特別ゲスト?なるほど、だから今日は一段と混んでるのね。ほとんど空き台ないし」
絵里「…まあ、どうせしょうもないライターか売れないアイドルでしょ。私には関係ないわ」
♪トードーケーマホオォーエガオノマホウ……
絵里「……ん?何かしら。聞いたことあるような曲のような気が…」
にこ「にっこにっこにー!どうも皆さん、こんにちはー!皆のアイドル、矢澤にこでーす!」
絵里「!?!?」
にこ「皆さん、調子はどうですかあー?にこはー、あんまりこういうの詳しくないけどー、せっかくなら皆笑顔になってほしいからー、頑張ってねー。にこっ!」
絵里「………な、なんでよりによってにこがここに?っていうかまだアイドルやってたんだ…」
バッ
店内ポスター「人気アイドル、矢澤にこさん、午後4時頃来店!」
絵里「いつの間にこんなポスターが……いや、私が台に夢中になりすぎて気付かなかっただけかしら」
絵里「…とにかく、こんなところにいるなんてバレたら、面子が丸つぶれね…」
絵里「幸いなことに、キャップ、マスク、サングラスの三大変装グッズは持ってきてるから、これでなんとかなるわよね」
絵里「せっかくつかんだこの台…手放すわけにはいかないもの」
GOGO「ペカッ」
絵里「おっ」
にこ「……」
午後11時
絵里「……ふふふ。勝ったわ。やっぱりあの台は正解だったようね」
絵里「それに、他の台も結構良いやつがたくさんあったわ。やっぱりアイドル来店イベントは少しは力入れてるのかしら」
絵里「……まあ、それがにこだったときはかなりびっくりしたけど」
絵里「でもどうやらバレなかったようね。私のすぐ後ろ通った時も、何事もなく通りすぎたし」
絵里「っと、いけない。明日は駅前の店の強い日だったわ。早く帰って明日に備えないと」
その頃、絵里の家
prrrrr
亜里沙「こんな時間に電話…?お姉ちゃんなら私の携帯に直接かけてくるはずだし、誰だろ」
ガチャ
亜里沙「もしもし」
「……失礼ですが、絢瀬さんのお宅ですか?」
亜里沙「そうですが」
「…あなた、もしかして、音ノ木坂のアイドル研の…」
亜里沙「……あの、バレてますよ?にこさんですよね」
にこ「あっれー?なんでバレたんだろ…結構上手い芝居だと思ったのに」
亜里沙「そりゃ、週1ペースでにこさんの声聞いてますから。騙すならもう少し声色変えないとだめですよ。初代部長」
にこ「…さすが、三代目部長なだけあるわね」
にこ「で、どうなの?今年は」
亜里沙「何がですか?」
にこ「決まってるじゃない。アイドル研の活動よ。ラブライブとかあるでしょ?」
亜里沙「それ、ついこの間話したばかりじゃないですか」
にこ「あら、そうだったかしら」
亜里沙「今年は新入部員が25人いて、グループも沢山できそうだから、部内での競争も激しくなるって」
にこ「そういえばそうね…花陽の代で、結構人気獲得したらしいから、現在は部員50人になったんですって?」
亜里沙「はい。もう大変で大変で…」
にこ「……最初は、私ひとりだったのにね」
亜里沙「…で、何の用です?こんな時間に電話いただくなんて、何か別の理由があると思うんですけど」
にこ「……どうやら、KKEの遺伝子は妹に受け継がれたみたいね」
亜里沙「はい?」
にこ「…絵里はいる?」
亜里沙「お姉ちゃんですか?お姉ちゃんでしたらまだ帰っていませんけど」
にこ「…そう」
亜里沙「ここ最近は、大学で調べものがあるからって、いつも帰るのは12時くらいになりますね」
亜里沙「というか、にこさんなら、お姉ちゃんに用があるなら、直接連絡した方が早いんじゃ……」
にこ「ありがと亜里沙ちゃん。大所帯の部長大変だと思うけど頑張ってね」
ガチャ。ツーツー……
亜里沙「……?」
1時間後
絵里「ただいま…」
亜里沙「お帰りなさい」
絵里「あら、亜里沙、起きてたの?明日も朝練あるんじゃないの?」
亜里沙「うん。だけど、ちょっとお姉ちゃんに言伝てが」
絵里「?」
亜里沙「にこさんから直接家に電話がかかってきて…お姉ちゃんいるかって。いないって言ったらすぐ切れちゃったけど」
絵里「え!?!?」
亜里沙「変だよね。にこさんならお姉ちゃんの連絡先知ってるはずだから、直接かけたらいいのに…」
絵里(……まさか)
亜里沙「お姉ちゃん。にこさんから連絡とかきてないの?」
絵里「あ、ああ……き、きてないわ。今日はもう遅いし、明日折り返してみるわよ。それじゃ亜里沙、お休み」
亜里沙「あっ…お、おやすみなさい」
絵里(にことは一年以上連絡を取り合ってない…よく、音ノ木坂のアイドル研に顔だしてるみたいだから、亜里沙から話は聞くけど)
絵里(そんなにこが私を尋ねて私の家に直接電話をかけてくるなんて……)
絵里(…来店イベントは要注意ね)
次の日
絵里「ざっと150人くらいはいるかしら……まあ、それだけの信頼度を誇る店だもの。当然よね」
絵里「それに土曜日だから、いつにも増して多いわ…これは抽選勝負ね」
「おい、お客様にそんな口のききたかはだめといっただろ!」
「ひえっ!ご、ごめんなさい…主任」
絵里「……新人のアルバイト店員かしら。どうやら言葉使いがだめで怒られてるみたいね」
客「まあまあ主任さん、そんな怒らなくても」
客「そうだよ。今日初仕事なんでしょ?そんくらい大目に見てあげなよー」
「えへへ…そうだよね。私頑張ります!みんなもファイトだよ!」
主任「こら!お客様に向かってタメ口はだめだと言ったろ!高坂!」
絵里「……ん?」
絵里「!!」
絵里(あ、あのオレンジの髪……それに、客すら味方につける圧倒的なカリスマ性…)
絵里(ま、間違いないわ。穂乃果じゃない!)
絵里(きょ、今日からここでアルバイト!?なんてタイミングの悪い…)
絵里(ど、どうしようかしら……)
店員「それでは入場抽選を初めてまーす!」
絵里(ほ…どうやら抽選は別の店員がやるみたいね)
絵里(もし番号が悪かったら、潔く退きましょ。いつバレるかわからないし)
絵里(1番……ハラショーね…色んな意味で)
絵里(1番なんて、一番目立つ位置じゃない。でも、今日は確固たる狙い台があるの。この位置ならそれを確実に取れる)
絵里(……大丈夫よ。こんなこともあろうかと、変装グッズは今日も持ってきてる)
絵里(いくらなんでも、この好条件で撤退は有り得ないわ)
絵里(幸い、穂乃果は今日が初日みたいだし、周りを見る余裕はないわよ)
穂乃果「……」
午後9時
絵里「……」
絵里「ハラショーだわ」
絵里「昼頃まではモミモミ状態だったけど」
絵里「超番長ボーナスから一気に爆発して7000枚」
絵里「看破要素はそこまで採取できなかったけど」
絵里「少なくとも中間以上はありそうだったわ」
絵里「とはいえ時間も時間だし、今日はここで上がりね」
絵里「そういえば穂乃果は……」キョロキョロ
絵里「もう上がったみたいね。当たり前か。新人が通しで働くわけないわよね」
絵里「さて、帰りましょうか」
コンビニ
ピッ、ピッ
店員「以上、5点で1029円のお買い上げに…」
絵里「あっ、すみません、これと、あとセブンスタ……」
店員「?」
絵里「あ、いえ、何でもないです…」
絵里(さすがに家ではまずいわ。亜里沙もいるのに)
絵里「ただいま…」
亜里沙「あっ、お姉ちゃん、お帰りなさい」
絵里「ただいま亜里沙」
亜里沙「お姉ちゃん、明日も大学なの?」
絵里「えっ?あ、え、ええ。3年生になると色々忙しくてね…」
亜里沙「そっか……毎日だね」
亜里沙「もしかして、来週も?」
絵里「え?…おそらくそうなると思うけど…」
絵里「どうかしたの?」
亜里沙「あっ、いや、なんでもないよ。お風呂沸いてるから、入ってきなよ」
絵里「?……わかったわ」
亜里沙「……」
別の家
穂乃果「た、だ、い、まあー……」
雪穂「お姉ちゃん……死んでるね…」
穂乃果「うん……ゆっきー、私はもうだめ……棺桶には、パンを一緒に…」
雪穂「ハイハイ、バカなこと言ってないで、お風呂沸いてるから入ってきなよ」
穂乃果「連れてってー…」
雪穂「…こりゃそうとうきてるな…だから言ったでしょ。パチンコ屋のバイトはきついって」
穂乃果「想定以上だったよ……海未ちゃんのスパルタ練習がなつかしい…」
雪穂「……そうだお姉ちゃん。ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど」
穂乃果「……なんざんす?」
雪穂「ざんす?……実はね、来週、新入生歓迎会があるんだけど」
穂乃果「なるほど。そこでライブをやるから見に来ないか、と」
雪穂「なっ……!なんでわかったの!?」
穂乃果「ゆっきーの考えてることくらいわかるよー。姉妹でしょ」
雪穂「お姉ちゃん……」
穂乃果「しかしゆっきーももう高校3年生か。時がたつのも早いねえ」
穂乃果「しかもまさかアイドル研の副部長になるなんてさすがにびっくりだよ…」
雪穂「私だってびっくりだよ。もっと頭いい人とかアイドル的な人はいるのに」
穂乃果「私ですらなれなかったのに…」
雪穂「いやいや、あなたそのかわり生徒会長やってたじゃないですか」
穂乃果「……そりゃそうだけど」
雪穂「っていっても、副部長なんてやることほとんどないけどね。ほとんどは部長が全部片付けちゃうから」
穂乃果「そっか…まあ部長はあの亜里沙ちゃんだからね。なんたってあのKKEの遺伝子を継いだ……」
穂乃果「……」
雪穂「お姉ちゃん?どうしたの?」
穂乃果「え?ああ、いや、なんでもないよ。ライブはいつなの?」
雪穂「次の金曜日だよ。まあ新歓ライブで一般入場があるなんて時点でおかしいけど」
穂乃果「それだけ音ノ木坂が全国区になったってことだよ。今年は3クラスできたんでしょ?」
雪穂「まあね……亜里沙なんて、今じゃちょっとした有名人だし、ふらっと出歩くこともできないんじゃないかな」
絵里の家
絵里「ふう……いい湯だったわ」
絵里「亜里沙は…寝たみたいね。ん?」
絵里「何かしらこの紙…」
ベラッ
絵里「新入生歓迎会ライブ?そっか、そういえばそんな時期よね……へえ、一般入場もあるんだ」
絵里「日時は……来週の金曜日か……」
絵里「……特に強いイベントはなかったはず……」
翌朝
絵里「おはよう…」
亜里沙「あっお姉ちゃん、おはよう。ご飯できてるよ」
絵里「ありがとう。亜里沙は今日も朝練?」
亜里沙「うん」
絵里「日曜日なのに頑張るわね……」
亜里沙「うん……」
亜里沙「……」
亜里沙「あのね、お姉ちゃ」
絵里「新歓ライブ、見に行ってあげるわよ」
亜里沙「えっ?な、なんでそれを?」
絵里「プリント置き忘れたまま寝たでしょ昨日」
亜里沙「…あっ」
絵里「……まあ、妹の晴れ舞台だしね」
亜里沙「で、でもお姉ちゃん、大学は…」
絵里「へっ?」
絵里「あ、ああ、確かに忙しいけど、そのくらいなんとかなるわよ」
亜里沙「お姉ちゃん……ありがとう!絶対見に来てね!」
亜里沙「にこさんも絶対に来るって言ってたし」
絵里「え……」
亜里沙「そういえばお姉ちゃん、にこさんと連絡とったの?」
絵里「あ、う、うん。なんか、にこも学校が忙しいのかなんなのか、なかなか連絡が取れなくてね。ま、そのうちなんとかなるわよ」
亜里沙「……え」
絵里「…ごちそうさま!じゃあ亜里沙、頑張ってね!私は行くから」
ドタドタバタン!
亜里沙「……にこさん、学校なんて行ってないはずだけど…」
午前9時30分
絵里「…ミステイクだわ」
絵里「まさか今日、時差オープンだなんて…」
絵里「…とはいえ、今日は他にめぼしい店もないし……」
絵里「…仕方ないわ。近くの喫茶店で時間を潰しましょう」
ウィーン……
「いらっしゃいませー」
絵里「カプチーノとハニートーストをお願いします」
「かしこまりました。それではお席でお待ちください」
絵里「…ふう。私はまだまだね。事前の下調べができてないわ。この前のにこの件もそうだけど、時差オープンすら見逃してるなんてね」
「お待たせしましたー」
絵里「ああ、ありが…」
絵里「!!!!」
絵里「…こ、こっ、こっことり?」
ことり「絵里ちゃん!久しぶりだね!」
絵里「あなた…なんでここに!?服飾の勉強で海外行くんじゃなかったの?」
ことり「それいつの話してるの?私は今、このすぐ向こうにあるドレスメーカーの専門学校に行ってるんだ」
絵里「そ、そうなの?って、今日は学校は?」
ことり「絵里ちゃん大丈夫?今日は日曜日だよ?」
絵里「ふぇっ!?」
ことり「日曜日はいっつも朝からバイトしてるんだ。絵里ちゃんこそ、日曜日の朝にこんなところで何してるの?」
絵里「え、えーっと……」
ことり「!」
ことり「ま、まさか…絵里ちゃん…」
絵里「な、なに…?」
ことり「も、もしかして……」
絵里「……」
ことり「…デ、デート、とか…?」
絵里「へ?」
ことり「待ち合わせ中…かな?」
絵里「…違うわよ」
ことり「違うの?」
絵里「断じて違うわ」
ことり「……そっかあ、なんか安心したよ」
絵里「なんで安心するのよ」
絵里(…なんか腑に落ちないけど、悟られてはいないみたいね)
ウィーン
ことり「ありがとうございましたあ!絵里ちゃん、またきてねー」
絵里「またね」
スタスタ
絵里「ふう…なんとかウィンドウショッピングという理由で誤魔化せたわ…本当は抽選時間まで費やしたかったけど、それはさすがに不自然すぎるしね」
絵里「……そういえば、タバコ切らしてたわ。あそこのローソンで買っていきましょ」
ウィーン
絵里「……あら、新しい解析値が載った雑誌出てたのね。時間も潰せるし、ちょっと読んでいきましょ」
絵里「……なるほど……リセットなら穢れが多く溜まってる可能性があるのね。結構狙い目かも」
絵里「さて、そろそろいきましょうか。缶コーヒーと…」
「いらっしゃいませ絵里」
絵里「これと、あとセブンス……」
絵里(ん?)
絵里「!!!!」
絵里「う、う、う…海未!?な、なんでここに!?」
海未「バイトですが」
絵里「う、海未がコンビニでバイト?な、なんか意外、というか…」
海未「…と言われましても。私はローソンのイメージガールを務めたこともありますし」
絵里「…そ、それもそうね…」
絵里(まずい……立ち読みしてたの見られてたかしら)
海未「ところで、何かお買い求めですか?セブン、なんとか、と言ってましたが」
絵里「うえっ!?」
絵里「あ、あれよ、セブンス……」
絵里「セブンスウェルよ!」
海未「…は?」
絵里(しまった!墓穴掘ったわ!)
海未「それでは、絵里も頑張って下さい。私も、自らの道を精進しますので」
絵里「え、ええ。それじゃあね」
ウィーン
絵里「ふう……セブンスウェルは新種のラブライブレードってことでなんとか誤魔化したけど…苦しい言い訳だったかしら」
絵里「結局タバコ買えなかったし……taspo作らなきゃ…」
絵里「あ、でもあれ確か郵送よね。亜里沙にバレちゃうわ」
絵里「……もうなんなのよ一体!イレギュラーが多すぎよ最近!」
絵里「…まさか、今からいく店も、誰かがバイトしてるとかいうオチはないわよね…」
「こらー!挨拶はもっと元気よくやれ!」
「はいい……だ、誰か助けてえーーー」
絵里「……店変えよう」
夜
絵里「……イレギュラーばかりだけど、戦績はいいのよね。多分設定はなかっただろうけど、まさかの大連続から40匹も連続で討伐できるとは…」
絵里「今月はかなり調子がいいわ」
絵里「たまにはそんな自分にご褒美あげちゃおうかしら」
絵里「さっきから美味しそうな匂いが漂ってきてるし…」
絵里「このラーメン屋で祝勝会といきますか」
絵里「……待ちなさい絵里。少し考えるのよ」
絵里「…虫の知らせが働いてるわ。ここは入っちゃいけない、と」
絵里「あそこ…厨房らしき場所の窓が空いてるわ。中の様子を…」
「こらー!何度言わせるんだ!語尾ににゃーをつけるな!」
「うわー!ごめんなさいにゃー!」
絵里「……亜里沙ご飯作ってくれてるかしら」トボトボ
木曜日の夜
絵里「…ふう。なんとか打ちきったわ」
絵里「1000枚ちょいだけど、まあこの機種の機械割を考えたらこんなものよね」
絵里「REGも6を振り切ってるし……これで7連勝」
絵里「こんなに調子よくていいのかしら」
絵里「……明日は、亜里沙のステージがあるから、仕方ないけど休みね」
絵里「さて、閉店だし帰りましょうか…」
絵里「…しかしこの店、中々いいラインナップね。サミタでしかやったことない機種とかあるし、バラエティが豊富ね」
絵里「ん?」
絵里「こっ、これは……!」
絵里「バラエティの新鬼武者が1100ハマリ、初代のモンスターハンターは1150ハマリ、バシリスク2が950ハマリ……」
絵里「……打ち変えるのかどうかはわからないけど……」
絵里「でもバシリスク2は確か変更しても天井はリセットされなかったはず…」
絵里「……」
絵里「亜里沙、明日何時からかしら。多分夕方よね」
翌日
絵里「…来てしまった…」
絵里「でも問題ないわ。亜里沙のステージは午後4時30分から。それまでに撤収すれば何の問題もない」
絵里「まあその前に、取れるかどうかだけどね」
絵里「抽選結果は3番…やったわ!20人くらいしかいないけど」
絵里「でも打ち変えられてたら駄目なのよね。まあそれでもすぐに結果はわかるし」
絵里「さあ、行くわよ!」
開店
絵里「バシリスク2はやっぱり取られたわ。でも新鬼武者が取れたし、実際ホールで打つのは初めてだけど、サミタでは何度も打ってるし大丈夫よね」
絵里「さて、やりましょう。宵越し考えたら300はハマってほしいところだけど」
30分後
絵里「やったわ!共通ベルからいきなりART!これは天井じゃなきゃできない芸当よ!つまり宵越し!」
絵里「隣のモンスターハンターもいきなり通常時から500乗せてたし…間違いないわ」
絵里「さあ!ガンガン出すわよ!」
午後1時
絵里「またボーナス…ハマった分の収束が来てるわね。とりあえず2000枚突破、と」
午後2時
絵里「ARTが16連目……エンディング確定ね。どこまで続くかしら」
午後3時
絵里「REGか……って、!!」
絵里「こっ、これは、フリーズ!」
絵里「…来たわ。見えてきたわ。人生初の万枚が」
午後4時
絵里「イエーイ!スイカから200乗せよ!もうとどまることを知らないわ!」
午後4時30分
絵里「……」
絵里「……」
絵里「やったわ!7000枚突破!まだ終わる気配もないわ!このまま行くわよ!」
音ノ木坂学院
にこ「……まさかとは思ったけどね…絵里。あんたは本当にバカよ」
午後10時
絵里「…終わったわ」
絵里「15000枚……こんなに流すのに時間がかかるのも初めて。なんかすごい優越感ね」
絵里「さて帰りましょうか。亜里沙になにかお土産でも……」
にこ「そんなのいらないわよ」
絵里「!!」
絵里「に、にこ…ひ、久しぶりね」
絵里「なんでこんなところに…?」
にこ「さあ。何でかしらね。自分の胸に聞いてみたら?」
絵里「え?」
にこ「ついでに今日が何の日だったかをね…覚えてたら、だけど」
絵里「今日……?」
にこ「……なんで」
絵里「え、に、にこ?」
にこ「なんであんたこんなになっちゃったのよ!ここにあるものは、そんなに大切なものなの!?あんたの家族よりも大切なものだったの!?」
絵里「家族……?」
絵里「…あ」
絵里(今日は亜里沙の…)
絵里「……わ、私は…」
にこ「今日だけじゃないわよ。あんた、大学なんて全然行ってないんでしょ?それともなに?ここがあなたの大学?」
絵里「……うう」
にこ「一つだけ確かなことがあるわ。あんたは今日、大事なものを失った。それはあんたが今日掴んだそのお金なんかじゃ取り戻すことなんてできないのよ!」
絵里「…あ、亜里沙……私……」
数時間前
亜里沙「皆さん、ありがとうございました。新入生の皆さん、楽しく、ハラショーな学校生活を送って下さい」
観客「ワー!」パチパチパチ
ことり「…みんなすごいね。まさかここまでの完成度だなんて」
海未「ええ。私も鳥肌が立ちました」
穂乃果「うう…ゆっきーが失敗しなくてよかったよー」
真姫「雪穂ちゃんなら穂乃果が心配するまでもないわよ。まあ、ドジなところは受け継いでるみたいだけど」
凛「それにしてもお客さんいっぱいいるねー」
花陽「それにしてもみんなすごいよ。特に亜里沙ちゃんは、あんなに堂々としてて、さすが部長って感じだね」
にこ「………」
凛「希ちゃんと絵里ちゃんは来なかったね…」
海未「まあ、希は京都の大学に行ってますから、そう簡単にこれるような場所じゃありませんからね」
ことり「平日だしね」
真姫「…絵里は?」
にこ「…さあね」
控え室
2年生部員「部長」
亜里沙「……」
2年生部員「部長?」
亜里沙「えっ?あっ、ど、どうしたの?」
2年生部員「こっちのセリフなんですけど…大丈夫ですか?なんか魂が抜けたような感じが…」
亜里沙「は……」
3年生部員「そりゃこの大舞台でセンター務めたあとだもの。多少呆けても仕方ないでしょ」
2年生部員「…それもそうですね」
亜里沙「ごめんごめん。じゃあみんな!お疲れ様。このあと部室に戻って、1年生も含めミーティングよ」
部員「はーい!」
雪穂「…亜里沙」
亜里沙「…雪穂ちゃん」
亜里沙「穂乃果さん見にきてくれてたね。どう映ったかなあ。やっぱりまだまだかな?」
雪穂「亜里沙……」
亜里沙「海未さんもことりさんも真姫さんも凛さんも花陽部長も、にこさんも見にきてくれてたし、よかったあ…」
雪穂「……」
亜里沙「希さんは、まあ仕方ないよね。簡単にこれる場所じゃないし」
雪穂「亜里沙、この話やめよう?」
亜里沙「用事があるなら仕方ないよね……」
亜里沙「…うん、きっとお姉ちゃんも、大学を抜けられない予定が入ったんだよ…」
亜里沙「だから、仕方ないよね……」
雪穂「亜里沙…」
亜里沙「ゆ…きほ……ちゃん……うわああああ!」
ドアの外
にこ「……バカ絵里…」ワナワナ
現在
にこ「とにかく洗いざらい全て話して謝ることね。もちろんそれで許してもらえるかどうかはわからないけど」
絵里「…ねえ、私、どうしたら…」
にこ「自分で蒔いた種でしょ?自分でなんとかしなさい」
にこ「…まあ、失われた信頼を取り戻すことほど、難しいことはないだろうけど」
絵里「……そうね。全て私が悪い…」
絵里「ありがとうにこ。それじゃ!」ダッ
にこ「……これで解決するかしら」
絵里の家
絵里「亜里沙…いる?」
「……」
ガチャ
亜里沙「お姉ちゃん…」
絵里「あ、亜里沙…」
亜里沙「お帰りなさい。今日も忙しかったんでしょ?」
絵里「亜里沙……」
絵里(目が真っ赤……)
絵里「あの、亜里沙…その……ごめんね、今日、行けなくて…」
亜里沙「……」
亜里沙「ううん。お姉ちゃん、忙しかったんでしょ?仕方ないよ」
絵里「亜里沙……」
にこ『洗いざらい全て話して謝ることね』
絵里「……」
絵里「……亜里沙」
亜里沙「?」
絵里「その…」
絵里「あの…」
絵里「……」
絵里「ごめんね。大学をどうしても離れられなくて…連絡一つくらい入れるべきだったわよね」
亜里沙「……」
絵里「今度は必ず行くからね」
亜里沙「……うん」
次の日
亜里沙「ふあああ……。さてと、朝ごはんを…」
絵里「あら亜里沙。おはよう」
亜里沙「お、お姉ちゃん?なにやってるの?」
絵里「なにって、朝ごはん作ってるのよ?」
亜里沙「えっ…お姉ちゃん、料理なんてできたっけ?」
絵里「バカにして。確かにいつも亜里沙が作ってくれるから料理できないように見えるけど」
絵里「昔、希とにこに料理を教えてもらったことがあってね。あの二人は料理が上手だから」
亜里沙「そうなんだ…」
絵里「はい、出来たわよ」
亜里沙「ありが………っ」
亜里沙「…なにこれ?」
絵里「なにって、もやし炒めと、スピリチュアルスープよ」
亜里沙「……スピリチュアルスープ?」
絵里「知ってるでしょ?」
亜里沙「…知らないけど」
絵里「嘘でしょ?希はこれがグローバルスタンダードだって、世界共通のスープだって言ってたわよ」
亜里沙「は、はは…たぶん私は住む世界が違うのかな」
絵里「バカにしてえ。亜里沙だって、昔はおしるこをジュースだと思ってたくせに」
亜里沙「そ、それは、若気の至りというか…」
絵里「ふふっ」
亜里沙「ははっ」
絵里(そして亜里沙は学校へ行った…)
絵里「毎日朝練か…本当に頑張ってるのね」
絵里「その思いを裏切った私……最低な姉ね」
絵里「決めたわ!私は今日から大学生に戻る!」
絵里「未来輝くキャンパスライフを送るのよ!タバコもやめるわ!」
絵里「さあ、そうと決まったら行くわよ!」
絵里「…はあ、土曜日は何もないんだった。私ってば何してるんだろ」
絵里「このまま帰るのもあれね…なんかもったいないわ」
絵里「はっ!」
絵里「いけないいけない。その考えがすでに破滅につながるのよ」
絵里「……」
絵里「…ん?」
絵里「新台入れ替え……あ、あれすごい打ちたかったやつ……」
絵里「……」
絵里「……」
絵里「…抽選だけ。3台だけみたいだし、どうせ当たらないわよ」
絵里「すでに50人くらいいるしね」
絵里「当たっちゃった……」
絵里「…」ソワソワ
絵里「…少しだけ。一回当たったらやめる。だから一回だけよ」
ポスター「本日昼12時、アイドル来店!」
絵里「……!」
絵里「た、たった50枚…?しょぼ……」
絵里「でも、隣はすごい爆発してるわね…」
絵里「……」
絵里「…私も!」
午後0時
絵里「…?なんか急に人が増えたわね。何かあるのかしら」
絵里「まさかまたにこが現れるなんてことはないわよね…」
絵里「まさか。先週別の店で現れたばかりなのに、そんなことあるわけ……」
「にっこにっこにー!」
絵里「!?!?」
絵里「最悪だわ…今最も会いたくない人が…」
絵里「さすがにまずいわ。早く逃げないと…」
絵里「あっ…当たった…」
絵里「ちょ、ちょっと!何こんな時に爆乗せしてるのよ!」
絵里「あーあ…500Gか……これは最低でも1時間くらいは続くわね」
絵里「……」
絵里「いや、さすがに無理よ」
絵里「昨日の今日でこんなところ見られたら、本当に全て失うわ」
絵里「もったいないけど、捨てましょ」
絵里「……料理の本でも買って帰ろう」
にこ「……」
絵里「はあ…せっかくこれからって時に……」
絵里「おかげさまで負けちゃったじゃない」
絵里「……まだ昼なのに、負けて帰るのも癪ね…」
絵里「なんて考えてたら申し合わせたように目の前に大型ホールが」
絵里「どうせいい台なんて落ちてないでしょうけど、見るだけならただだし、こういうのが収支に関わってくるのよね」
スタスタ
絵里「さすがに大型店だけあって客が多いわね」
絵里「これじゃあ空き台を探すのすら一苦労だわ」
絵里「でも意外とシステムわかってない人がおいしいゲーム数で落としていく場合があるから侮れないのよね」
絵里「あら、これ…」
絵里「このシンデレラブレイド2、プリシラステージで辞めてるわね」
絵里「これはラッキーね。さっそくやりましょ。だめでも1周期でやめればいいだけだし」
絵里「……この主人公の声、どこかで聞いたことあるような気が……」
絵里「…気のせいかしら」
午後9時
絵里「だーーっ!」
絵里「いろいろ打ち散らかして60本も逝かれたわ!」
絵里「最悪も最悪。今日はダメな日ね」
絵里「さすがに時間も時間だし、帰るわ」
絵里(そういえば……)
絵里(昨日あんなことがあったのに、また行ってしまったわね…しかも負けとか)
絵里(…私ってば、本当に人間のクズだわ…みんなを裏切って……)
絵里(決めたわ!引退よ!引退!もう辞めるわ!)
prrrr
絵里「ん?電話…?」
絵里「え……希?」
絵里「希は確か京都のはず…何かしら」
絵里「もしもし?」
希「おっ、絵里ち、久しぶりやん」
絵里「ほんとにね」
絵里「どうしたの?こんな時間に」
希「いやあ、実は今東京に来てるんよ」
絵里「あら?そうなの?」
希「それでな、明日は自由に動けそうやから、絵里ちがもし暇やったら一杯どうかな、って」
絵里「あら、いいわねそれ。明日なら予定もないし、大丈夫よ」
希「やった!じゃあ、せやな…カラオケ経由で飲みとかでもええ?」
絵里「あら、希、私とカラオケ勝負?いい度胸ね。受けてたつわよ」
希「勝負とは言ってへんけど…じゃあ明日、昼過ぎの15時に渋谷駅に集合でええ?」
絵里「わかったわ」
希「それじゃあ明日なー」
絵里「ええ。おやすみなさい」
プツッ
希「……それじゃあにこっちにも聞いてみよか」
翌日
亜里沙「お姉ちゃん、なんかご機嫌じゃない?」
絵里「あら、そう見える?」
亜里沙「そりゃあ18年も妹やってるし」
絵里「実は今日、希つ遊ぶ約束したの」
亜里沙「え?希さん、こっちに来てるんですか?」
絵里「そうなのよ。理由は知らないけどね」
亜里沙「ハラショー……私も会いたいけど、今日は施設を借りてトレーニングする日だし…」
絵里「まあ、ちょっと今日は遅くなるかもしれないわ。だから私のことは気にしないで眠たかったら寝ていいからね」
亜里沙「うんわかった」
午前10時
絵里「10時か……」
絵里「希との待ち合わせ時間まであと5時間」
絵里「こういう時って時間が長く感じるのよね」
絵里「……」
絵里「……」
絵里「………」ウズウズ
絵里「……暇潰しに外へ行きましょ」
絵里「また来てしまったわ…」
絵里「でも大丈夫。まだ打ってるわけじゃない。打たなければいいのよ。ただ見るだけ」
絵里「見るだけでも意外と楽しいのよね。パチスロは」
客「あのお…」
絵里「え?私?」
客「もしよかったら…この台打ちませんか?」
絵里「え?」
客「実は急に会社から呼び出しがかかってすぐ行かなきゃいけなくなって…」
絵里「い、いいんですか、これ…」
客「ええ。クレジット分もあげます」
絵里「あ、ありがとうございます」
絵里「ちょっとなにこれ…まだ開店から30分しか経ってないのに残り1000Gあるんだけど…」
絵里「きっとハーデスかペルセポネで逆回転させまくったのね」
絵里「棚ぼたとはこのことだわ。さあ、さっそくやるわよ!」
午後1時
絵里「…終わったわ。細かい上乗せはあったけどジャッジメントのストックもなしで3500枚…まあこんなとこよね。どうせ投資はしてないんだし」
絵里「32Gだけ回してやめましょ…」
プチュン
絵里「!?」
【GOD】【GOD】【GOD】
絵里「あらら…引いちゃったわね」
絵里「約束の時間まであと2時間…ここから渋谷駅なら20分あれば着くわ」
絵里「それにさっきみたいに大した上乗せもなければ1時間かからずに終わるから、問題ないわね」
30分後
絵里「ふう…とくに何もなくジャッジメントを2つ消化」
絵里「ハーデスきたときはちょっと焦ったけど100だったし」
絵里「今からならたとえ300あっても時間は大丈夫ね」
絵里「さて、3回目のジャッジメントは…………ケルベロスか…」
絵里「普段ならあの足が見えた瞬間に苛立つけれど、今は大歓迎よ。いつも通りの仕事お願いね」
+550G
絵里「どうしてこうなった……」orz
絵里「30G近く継続するなんて…なんでこんな時に大仕事しちゃうのよこの地獄の番犬は」
絵里「…いえ、まだよ。ぶんまわせば時間は間に合うわ。とにかく今はただ手を動かすだけ…」
1時間後
絵里「終わりかしら…」
絵里「あの後普通のケルベロスが一回きて60乗せたけどそれだけ」
絵里「怖いくらい何もなかったわね」
絵里「もう終了後30回して特に煽りもなし」
絵里「このリプレイを回して終了ね。時間もジャスト。なんか有効に時間を使えた気分……」
ビシビシッ!
絵里「?」
↑↑↑
ウイーン
絵里「……ハ、ハラショー…」
午後3時 渋谷駅
希「え?遅れる?」
絵里「ごめん!たぶん30分後には行けるから、ちょっと待っててくれない!」
希「なんかあったん?」
絵里「うん、ちょっと……とにかくごめん!」
プツッ
希「……」
にこ「悪い予感が的中したわね…」
希「?」
希「どういうことや?」
にこ「…おそらくだけど、絵里は30分待っても来ないわよ」
希「なんで?」
にこ「……病気だから」
希「は?」
にこ「大丈夫。これ以上何かあったら困るから、手は打ってあるわ」
にこ「絵里はどうせこないから、二人で行きましょ」
希「ちょ、にこっち?話がよく理解できないんやけど…」
にこ「…このあとしっかり話してあげるわよ。絵里の身に、今一体何が起こってるのかを……」
午後4時
絵里「やっと終わった…」
絵里「とにかく今は急がなきゃ」
絵里「30分後も30分過ぎてるし」タッ
「にこちゃんの言ったとおりね」
絵里「!?」
絵里「えっ……な、なんであなたがここに!?」
絵里「真姫!?」
真姫「さあ、なんでかしらね。自分の胸に聞いてみたら?」
絵里「うっ」グサッ
絵里「…で、でもごめんなさい。今ちょっと急いでて」
真姫「希ならにこちゃんと二人で遊びに行ったわよ」
絵里「え……」
真姫「希は優しいわよ。理由も言わずに一方的に遅れるって言い放ったあなたを、まったく疑いもしなかったんだから」
絵里「ちょ…な、なにを言ってるの?どういうこと?」
真姫「まあここで話していてもしかたないし、要件を言うわね」
真姫「あなた、今からうちの病院に来なさい」
絵里「は?びょ、病院?」
真姫「ええ。これはお願いじゃない。命令よ」
絵里「な、なんで私が病院に?」
真姫「自覚がないのが一番厄介なのよ。あなたみたいなギャンブル依存症人間はね」
絵里「え…わ、私が…」
絵里「私がギャンブル依存症?」
にこ「……というわけなのよ」
希「…そんな……知らない間に、絵里ちがそんなことになってたなんて…」
にこ「でね。真姫に聞いたんだけど、ギャンブル依存症はれっきとした病気なんだって」
にこ「放っておいても治らない……さらには、自分一人の力で治すのは困難」
にこ「たとえばギャンブルで大敗して、もうこんなことは辞める、って決意しても、次の日にはもうまたギャンブルに手を出してしまう…」
にこ「唯一救いがあるとすれば、絵里がまだ勝ってる、ってことね。でもそんなラッキーも長くは続かない…」
にこ「そして気づいた時にはお金も、友達も、信頼も、何もかも失ってしまう…」
にこ「昔はそれで自殺する人も多かったらしいわよ」
希「にこっち……詳しいなあ」
にこ「そりゃあ最近結構調べたもの」
希「絵里ちのために?」
にこ「え……そ、そんなんじゃないわよ!…そ、その…きょ、教養よ教養!パチンコ屋での営業も多いから、知っておいても損はないでしょ!」
希「……わかりやすいなあ」
数時間後
にこ「そるぇでさー、こころったらなんて言ったと思うー?」
にこ「そんなの自分でなんとかしるぉだってさあー」
にこ「こるぇが反抗期ってやつなのかしらねえー…ヒック」
希「にこっち…カクテル3杯でべろんべろんやん…」
prrrr
にこ「あるぁ、電話ね」
にこ「真姫からだわ。何の用かしら。ヒック」
にこ「むおーしむおーし。みんなのアイドル、矢澤にこにこどぇーす!」
にこ「真姫ったらどーしたのお?もしかしてにこにーの声が聞きたくなったんでしょー?ヒック」
にこ「またまたあー、そんな恥ずかしがらなくてむぉー、いいんだからあー」
希「にこっち、代わって。今のにこっちじゃ会話にならんわ」
真姫「希?たしかにこちゃんと一緒だったはずだけど…」
希「…認めたくないかもしれんけど今のがにこっちや」
真姫「……そう。なんか軽くショックだわ」
希「ところで絵里ちは?」
真姫「あ、うん。精神科の先生に見てもらったんだけど…」
真姫「…なんていうか、言いづらいことなんだけど」
希「構へんよ」
真姫「…もし、すぐに治したいなら、入院をお勧めするって」
希「入院!?」
真姫「診察の結果がなかなか思わしくなくてね……少なくとも野放しにしておいたらまず間違いなく破滅の道を歩むそうよ」
希「……それはあかんな…」
希「でも入院となったら、それはそれで問題があるやん」
真姫「…そうね。絵里は両親は海外だし、もし絵里が入院したら、亜里沙の面倒は一体誰が…」
希「絵里ち本人はなんて言ってるん?」
真姫「そりゃあ入院は嫌だって。まあ気持ちわからなくもないわよ。高校三年生の妹を一人になんてできないわよ」
希「そうやなあ……」
真姫「さすがにそれを考えると、入院を強制なんてできないわね…」
希「うーん……」
希「でもこのままやと破滅なんやろ?ウチは絵里ちの破滅した姿なんて見たくないよ」
真姫「私だってそうよ。いや、みんなそう。少なくともμ'sのメンバーはね」
希「……」
希「…よしわかった。ウチにいい考えがある」
真姫「え?」
絵里の家
ピンポーン
亜里沙「?お客さん?こんな時間に?」
亜里沙「…それともお姉ちゃん鍵なくして入れないのかな?」
亜里沙「はーい」
ガチャ
亜里沙「!!」
希「やあ亜里沙ちゃん。久々やね」
亜里沙「の、希さん!?な、なぜここに?」
亜里沙「お姉ちゃんなら、まだ帰ってなくて…」
希「うん、そのお姉ちゃんのことなんやけどな……」
亜里沙「ギャンブル依存症?」
希「うん。ギャンブルなしでは生きられない体になってしまってるんや」
希「……亜里沙ちゃんに言おうかどうか迷ったけど、やっぱり絵里ちに一番近い人に言わないわけにはいかんしな」
亜里沙「そうですか……わざわざありがとうございます」
希「ってなわけで、亜里沙ちゃんには悪いけど、絵里ちには入院してもらうことにしたから」
亜里沙「えっ……にゅ、入院ですか!?」
希「うん。もちろん入院しないっていう選択肢もあったけど、それやったら治らない可能性も高いんや」
希「だったら多少強引でも今のうちに手を打つべきやと思って」
希「何より……破滅した絵里ちの姿、見たくないやろ?」
亜里沙「それは……」
希「…絵里ちはな、ウチの人生の中でも、一番付き合い長い友達なんや。親友ってやつかな」
希「あの時、絵里ちに出会ったから今のウチがいる…μ'sという、世界一のグループの一員になれた…」
希「ウチは返しても返しきれないくらい、いろんなものを絵里ちからもらったんや」
希「だから、絵里ちが道を踏み外そうとしてるなら、どんなことをしても止める」
希「ウチにできることなら、なんだってするよ」
希「友達やからな」
亜里沙「希さん…」
希「というわけで、今日からしばらく、ここで暮らすから。よろしくな」
亜里沙「おふぅ!?」
亜里沙「の、希さん…大学は?」
希「少しくらいなら休んだって問題ないよ。結構今まで真面目に通ってたから」
希「まあ、長引きそうなら休学もありかな」
亜里沙「さ、さすがにそれは、ご迷惑をおかけしすぎるかと…」
希「言ったやろ。ウチにできることならなんでもするって」
希「ウチに言わせれば絵里ちが破滅するほうがよっぽど迷惑やん」
希「まあ亜里沙ちゃんなら一人で生活もできるとは思うけど、一応未成年やしな」
希「それに、アイドル研の活動もあるやろ?部長」
亜里沙「希さん……ありがとうございます」
希「こう見えても独り暮らし歴長いから、こういうスキルは身についてるで。なんでも頼ってな」
亜里沙「はい!」
亜里沙「じゃあ早速聞きたいことがあるんですが」
希「おっ、なんや?」
亜里沙「スピリチュアルスープのレシピを」
希「……亜里沙ちゃん、それはあかんやつや」
亜里沙「お姉ちゃん…おなかすいたよ…」
絵里「そうね…もう5日も、もやししか食べてないし」
絵里「でも大丈夫。今日は生活保護費の受給日だから、久々においしいものが食べられるわ」
亜里沙「ほんと?わーい!」
絵里「じゃあ銀行いってくるから」
絵里「…ふう。このお金でまたまともな食事にありつけるわね」
絵里「……待って。これが増えれば、さらにいいものが食べられるし、生活も多少潤うわね…」
絵里「………勝負に行くしかないわね」
絵里「待ってなさい亜里沙。今夜はステーキを食べさせてあげるわ」
亜里沙「……またもやし?」
絵里「うん…やっぱり節約しないと…」
亜里沙「嘘だ!お姉ちゃん、お金使い込んだんでしょ!」
絵里「えっ、そ、そんなこと…」
亜里沙「またパチスロで負けたの!?なんで行くの?家は食べるだけで精一杯なのに!」
亜里沙「この前だって、私のバイト代全部スって、なに考えてるの!?」
亜里沙「もう嫌!こんなお姉ちゃんと暮らしたくない!」
亜里沙「お姉ちゃんなんかいなければ良かった!」
絵里「……!」
絵里「はっ!」ガバッ
絵里「…ゆ、夢……」
絵里「はあ…最悪な夢ね」
絵里「でもあんなことあり得ないわよ。私が亜里沙をそっちのけにするなんて……」
絵里「…朝の5時か。今日は私が朝ごはんを作ってあげましょ」
ガバッ
絵里「……そっか。ここ病院だった」
絵里「…まったく真姫ったら、私を強制的に入院させるなんて、どうかしてるわよ」
絵里「たしかにギャンブルはしてたけど…あくまで趣味よ趣味。息抜き程度よ。依存なんてしてないわよ」
絵里「……はあ、亜里沙、大丈夫かしら」
絵里「まあ希が見てくれてるらしいから大丈夫だとは思うけど、それじゃあ希に迷惑だし」
絵里「亜里沙、私がいなくて泣いてないかしら……」
絵里「…とりあえず喫煙所は…」
絵里「あるわけないか。病院だし」
絵里「……帰りたい」
ガチャ
真姫「気分はどうかしら?」
絵里「真姫……良くはないわね」
真姫「…あなたがそんな弱音を吐くなんて、すでに結構追い詰められてるようね」
絵里「ねえ、やっぱりおかしいわよこれ!私はギャンブルに依存してなんかいないし、仮にそうだとしても、それで入院ってさすがにやり過ぎじゃない!?」
真姫「別に」
絵里「別にって…あなたねえ。知ってるでしょ。私には一緒にくらしている妹もいるのよ?いくら真姫だからって、これは横暴よ」
真姫「……大学にも一切行かないで、亜里沙の公演もすっぽかした人間が何言ってるの」
真姫「ここ最近、絵里が朝イチから店に並んでたとか、それ系の雑誌を立ち読みしてたとかいう目撃情報もあるのよ」
絵里「……でも、でも」
真姫「でもも何もない!!」
絵里「!」ビクッ
真姫「……本当に大切なものを失いたくなかったら、しばらくおとなしくしてなさい」
真姫「それじゃあ私は学校があるから」
バタン
絵里「………なによ」
ガチャ
希「あ、亜里沙ちゃん」
亜里沙「希さん、おはようございます」
希「朝早いなあ。朝練?」
亜里沙「はい」
希「噂には聞いてたけど、毎日やってるんやって?」
亜里沙「ええ。まずは5月にある春期大会。その次はもうラブライブの予選が始まりますから」
希「すごいなあ。ウチらでさえ、そんな毎日朝練はしてなかったわ」
亜里沙「……悔いは残したくないので」
希「…そやな。去年からラブライブは完全に年二回制に固定。毎年8月と3月の二回。三年生は8月の大会が終わったら引退やしな」
亜里沙「…去年の夏の大会は、花陽さんたちがいてくれたおかげで優勝できました。でも、皆さんが引退して、私が部長になった3月の大会は…」
希「…たしか、代表決定戦で負けたんやっけ」
亜里沙「はい…創部一年目のスクールアイドルに」
亜里沙「私がまだ未熟だったんです……私は、μ'sに憧れてスクールアイドルを始めました。だけど、憧れから抜け出せないで、私の中でμ'sを追い越そうとしなかった」
亜里沙「あの時は悔しくて…情けなくて…部長を、部活を辞めようと思いました」
亜里沙「だけど、みんなが私を支えてくれて……お姉ちゃんも、今のアイドル研の部長はあなたなんだから、って言ってくれて…」
亜里沙「だから決めたんです。やれることは全部やろうと」
亜里沙「私の中にある永遠の憧れ、μ'sを追い越そうと」
希「……にこっちが言ってたで。亜里沙ちゃんは、過去最高の部長や、って」
亜里沙「…まだ三代目ですけどね」
亜里沙「はい、希さん。朝ごはんです」
希「わお、これはすごいなあ。ウチより上手いわ」
亜里沙「ほぼ毎日作ってたら、なんかいつの間にか身に付いていて…」
希「絵里ちに教えてやってな。このままやと絵里ちの貰い手いなくなるから」
亜里沙「それは困りますね」
ハハハ……
ピンポーン
亜里沙「?誰かきたみたいですね」
希「こんな朝から?誰やろ」
亜里沙「はーい」ガチャ
亜里沙「!」
雪穂「やっほー亜里沙。たまにはこっちから迎えにきたよ」
亜里沙「ゆき……ん?」
穂乃果「亜里沙ちゃんおはよう」
海未「おはようございます」
亜里沙「えっ…皆さんどうしたのですか?」
穂乃果「いやー、やっぱりアイドル研のその後が気になって。ゆっきーに聞いても要領を得ないからさ」
雪穂「何言ってるのお姉ちゃん。亜里沙が心配だから私も行くって、超珍しく早起きしてたじゃん」
海未「…まあ、そういうことです。別段、特別な用事があるというわけではありません」
亜里沙「皆さん……」
希「あら、雪穂ちゃん。それに穂乃果ちゃんに海未ちゃんも」
穂乃果「あっ、希ちゃん。久しぶり!」
海未「本当ですね。元気にしていましたか」
希「まあな。毎日自分にスピリチュアルパワー注入しとるから」
雪穂「な、なんですかそれ…」
希「さ、亜里沙ちゃん。お迎えが来たみたいやし、いっといで」
亜里沙「…でも、後片付けが…」
希「そんなんウチがやっとくから。みんな待たせるわけにはいかんやん」
亜里沙「希さん…ありがとうございます」
穂乃果「じゃあ希ちゃん、またねー」
亜里沙「…なんか、すみません皆さん。姉の件で心配かけたみたいで」
穂乃果「そんなことないよ」
海未「…まあ、心配だからきたと言ってしまった手前、心配していない、というのは嘘になりますね」
穂乃果「ちょっと海未ちゃん!」
海未「でも亜里沙。私たちは絵里が大切な仲間だから、心配しているのです。大切な仲間が道に迷っているなら、何をしてでも止める」
海未「それが仲間です」
雪穂「さすが海未先輩、お姉ちゃんからはそんな流暢な言葉は出てこないよー」
穂乃果「ちょっとゆっきー!ゆっきーに言われたくないよ!」
海未「もちろん亜里沙も私たちにとっては大切な人間です」
海未「心配されるというのは愛されている証拠。何も恥じることはありません」
亜里沙「…はい。ありがとうございます」
穂乃果「……なんか私、モブ化してない?」
雪穂「それが嫌なら言葉の引き出しを増やすことね」
午前10時
絵里「……」
絵里「ひまーちか…」
絵里「とくに検査とかがあるわけじゃない……他のみんなは学校だし、誰もこないわよね」
ガチャ
にこ「悪かったわね。学校行ってなくて」
絵里「にこ…仕事は?」
にこ「午後から事務所で打ち合わせがあるわ」
絵里「そう……」
にこ「……憔悴してるわね」
絵里「…やることがないって、案外苦痛ね」
にこ「そりゃあ、世間的には、今頃パチンコ屋がオープンする時間だしね」
絵里「ちょっと、にこまで私を依存症扱いするの?」
にこ「??……もしかして、自覚ないの?」
絵里「……みんな同じこと言うのね」
絵里「みんな私を依存症だのなんだのって、バイ菌扱い……そんなに私のことが嫌いなの?」
にこ「……」
絵里「嫌いなら嫌いって言ってよ!こんな牢獄みたいな場所に私を追いやって、みんなで楽しんでるんでしょ!」
にこ「……ええ、嫌いよ」
絵里「!」
にこ「自暴自棄になってるあんたはね。昔、自分のことをKKEとか言ってた絵里はどこへ行ったの?」
絵里「…あんなもの、ただの若気の至りよ」
にこ「……はい、これ」
ポン
絵里「…なにこれ。DVD?」
にこ「この前の新歓ライブの映像よ。花陽が撮ってくれてたから、コピーさせてもらったの」
にこ「…まあ、なぜか某動画サイトですでにアップされてるけどね。しかも3本も」
絵里「……」
にこ「出来はまあまあよ。さすがに私たちの後輩なだけあるわ」
にこ「でもやっぱりまだ亜里沙に迷いがあるわね」
にこ「まあ、その原因は言わなくてもわかってるだろうけど…」
絵里「……あとで一人で見ていいかしら」
にこ「その方がいいかもね」
にこ「さて、私はもう行くわね。私も人のこと気にしてばかりいられる現状じゃないし」
にこ「早く私もこうやって動画にアップされるような存在になれるよう頑張るわ」
絵里「……あの」
にこ「…私たちは、μ'sのメンバーはあなたを決して見捨てないから」
バタン
絵里「……」
午後5時
某パチンコ屋
花陽「さてさて、今日もバイト頑張るぞ、と」
花陽「いらっしゃいませー!」
主任「おっ、いいじゃないか。声が出てきたな」
花陽「あ、ありがとうございます」
主任「その調子で頼むぞ…」
ポン
主任「ん?」
客「おいなんだよこの店。クソも出ないじゃねーか。ぼったくってんじゃねえぞ!」
主任「お、お客様?」
花陽「……!」
客「しかもなんで俺の隣だけいっつも出るんだよ!これで3日連続だぞ!」
客「遠隔か!?遠隔してんのかこら!」
主任「お客様、当店は遠隔操作による出玉調整などは一切行っておりません」
客「嘘つけ!もうここ1週間で30万もやられてんだよ!このぼったくり店が!金返せよ!」
花陽「さ…30万?」
客「んん?なんだてめえ」
客「今笑ったな?」
花陽「えっ…そ、そんな、笑ってません…」
客「バカにしてんのか?こっちは客だぞ?」
客「てめえらは俺たちのおかげで飯が食えてんだぞ。わかってんのかおお!?」
花陽「ひ、ひいっ!」
主任「お客様、やめてください」
客「うるせえ金返せよ!もう今月の家賃まで使っちまってんだよ!どうしてくれるんだよ!」
ツカツカ
店長「主任。小泉さんを休憩室に連れていって。あとはこっちで対応するから」
主任「あ、はい。わかりました」
花陽「……」
店長「すみませんが、事務所の方へ来てください」
客「ああ?もしかしてあれか?出禁かあ?」
店長「いいから早く」
花陽「……」
主任「さ、小泉さん。こっちへ」
主任「大丈夫か小泉さん。いきなり怖い場面に遭遇させてしまってすまないね」
花陽「いえ……あの、さっきの人は…」
主任「ああ。君も見たことあるだろ。1ヶ月くらい前から来るようになって、それからほぼ毎日きている常連客さ」
主任「ま、もう二度と来ることはないだろうけど」
花陽「出禁、ですか…」
主任「まあそうなるな。厳しいところだと営業妨害で警察に突き出されるだろ」
花陽「……1週間で30万も使ってるって、本当ですか?」
主任「さすがにそこの真偽はわからないけど、十分あり得るよ。ああいうギャンブル依存症の人間はね」
花陽「えっ…あの人が、ギャンブル依存症?」
主任「典型的なギャンブル依存症だね。例えば君は、何か欲しいものがあったとして、家賃すら後回しにしてそれを買うかい?」
花陽「さ、さすがにそんなことは…」
主任「それができないのがギャンブル依存症なんだ。生活費や光熱費さえも使ってしまう人間もいる。下手したらギャンブルのためだけに借金するやつだっているんだよ」
花陽「そんな…なんでそんなに?」
主任「麻薬みたいなものさ。きっかけはいろいろあるが、一番多いのは、いわゆるビギナーズラック」
主任「初めてギャンブルに足を踏み入れる人間は得てして不安がある。そんな時に、思いもよらない大勝をしてしまうと、そこからギャンブルにのめり込んでしまう人は多い」
主任「たった数時間でお金が大量に増えるんだ。こんな快感はないからね」
主任「そしてその快感が忘れられず、いつの間にかギャンブルが生活を支配してしまう」
主任「当然友達はいなくなる。金も、よほどのことがない限りは、減っていく」
主任「ちなみに系列店では、昔、自殺者が出たよ。店のトイレで首を吊ってね」
花陽「!!」
主任「その頃はパチスロは4号機といわれ、今よりもかなり過激な機種ばかりあったんだ。ま、それを問題視した警察が規制をかけ、今の5号機になったんだけど」
主任「減りはしたがなくなりはしない。いつの時代も、ギャンブルに命をかける人はいるんだよ」
花陽「……そうなんですか」
花陽「……絵里ちゃん」
午後10時 某ラーメン屋
凛「はい!1080円でございます!」
凛「はい、こちらお釣りです!」
凛「ありがとうございます!またお待ちしてまーす!」
凛「ふう…」
先輩「凛ちゃん、ラーメン屋の店員が板についてきたね」
凛「先輩。ありがとうにゃ」
先輩「そろそろ厨房デビューかな?」
凛「厨房!?やったー!」
先輩「あ、いや、まだ決まったわけじゃないけど」
店主「二人とも、ちょっと来てくれ」
凛「おや、噂をすれば、さっそくラーメン作りの修行かな?」
先輩「違うと思うけど…」
店主「あのカウンターの端の客……もう一時間半もいすわっている」
凛「そうですね…よっぽどラーメンの香りが好きなのかにゃ?」
店主「そうじゃない。見ろ、格好を」
先輩「確かに、清潔感があるとは言えませんね」
凛「でも、それがどうかしたんですか?」
店主「…俺の、ラーメン業としての長年の勘が言ってる…」
店主「あいつは…食い逃げする隙を探してる」
凛「ふえっ!?」
凛「な、なんでそんなことがわかるんですか?」
店主「あの目付き…さっきから従業員の動向を気にしている」
店主「特に何をするでもない、食事はとっくに終えてる」
店主「多分最初から食い逃げ狙いだな」
凛「最初から?なんてひどいやつだにゃ!ちょっと注意しないと」
店主「やめろ。まだ決まったわけじゃないし、こういうのは現行犯じゃないと逆にこっちが罪になる可能性がある」
凛「じゃあどうすれば……」
先輩「誘発するんですね」
店主「そうだ。フロアから一時的に従業員を全員撤退させる。そこで奴は多分逃げる」
店主「そこで、あらかじめ外に一人待機させておき、待ち構える……」
ガタン!!
凛「あっ!逃げた!」
店主「なに?まだ作戦会議中なのに!」
店主「待てっ!」ダッ
客「」ガタガタッ!
店主「くっ、椅子を障害物かわりに…あいつめ、シミュレーションしていやがったな!」
凛「まかせるにゃ!」ダッ
店主「お、おい!」
シャッ!
店主「な、なに?椅子を飛び越えた!?」
先輩「でも奴はすでに外に!」
凛「待つにゃー!」ダダダダ
ガシッ
凛「捕まえた!」
客「な、なんて速さだ……くそっ」
午後11時30分
凛「結局あのあと営業にならなかったにゃ」
先輩「そうだね……警察が出入りしたり、ものものしい雰囲気になっちゃったし」
凛「そもそもなんであの客は食い逃げしたのかな?」
先輩「お金がなかったんだってさ」
凛「ふえっ?」
先輩「オーナーも言ってたじゃん。初めから食い逃げ目的だって。所持金が数十円くらいしかなかったんだってさ」
凛「ば…ばかな……なんでそれでラーメンを食べにきたの?」
先輩「まああたしもちらっと立ち聞きした程度なんだけど、あの客ギャンブル依存症なんだって」
凛「えっ…ギャ、ギャンブル依存症?」
先輩「うん。それで負けすぎてお金なかったんじゃないかな?」
凛「い、いや、でもそれじゃあラーメンなんて食べにくるわけが……」
先輩「……そんなもんだよ」
凛「へ?」
先輩「私の知り合いに同じような人がいて……同じように食い逃げしたことがあるって人がいるんだ」
先輩「なんかね、金が無さすぎて、もう全てがどうでもよくなったんだって」
先輩「だからせっかくなら食べたいものを食べることにしようって。捕まったら捕まったで仕方ない」
先輩「拘置所や刑務所の方がまともに生活できるから…ってね」
凛「……なんて悲しい考えだにゃ…」
先輩「さっきの客も、そんな感じなんじゃないかな。まあ逃げる気満々って感じだったけど」
先輩「ああいうのはもう病院に行くしかないよ。自力ではどうしようもないから」
先輩「周りの人間を裏切って、失望させて、迷惑かけて……本当に最低の人種だよ…」ギリッ
凛「先輩……」
凛「あれがギャンブル依存症か……」
絵里「ねえ亜里沙、お金貸してくれない?」
亜里沙「…朝イチの挨拶がそれ?昨日も貸したばかりじゃん」
絵里「いや、昨日はちょっとついてなくてさ…抽選番号が悪くて」
絵里「今日は大丈夫よ。なんたって熱い日だから。昨日の分も含め返すわよ」
亜里沙「……はい」ポン
絵里「サンキュー亜里沙。じゃあ期待して待っててね」
亜里沙「……」
翌朝
絵里「ねえ亜里沙、まだお金ある?」
絵里「ん?」
テーブルの上の紙「さようなら。もうあなたとは暮らしていけません」
絵里「えっ……」
絵里「嘘……」
絵里「あ、亜里沙……」
絵里「いやああああああ!」
絵里「はっ!」ガバッ
絵里「…ま、また夢……」
絵里「……何て夢なのよ」
ガチャ
花陽「失礼します…」
凛「入るにゃー」
絵里「花陽?それに凛…」
凛「絵里ちゃん久しぶりだね」
絵里「なんであなたたちが…?」
絵里「…そう。にこの仕業ね。ってことは他の人にもみんな知らされてるわけか…」
絵里「…当然亜里沙にも」
花陽「絵里ちゃん、元気?」
絵里「……これが元気に見える?」
凛「絵里ちゃん、なんか刺々しいにゃ。いつもの絵里ちゃんじゃないよ」
絵里「…いつもの私ってなに?」
絵里「みんなで私を気づかってるふりして、どうせ心の中じゃバカにしてるんでしょ」
花陽「絵里ちゃん?」
絵里「ここにいる時点で以前の私なんてもう死んでるのよ」
絵里「どうせみんなは私のことを、ギャンブル依存症の汚れ物だって見下してるんでしょ」
凛「ちょ…そんなんじゃ」
絵里「……こんな場所に閉じ込められて…これじゃあまるで刑務所に入ってる囚人よ」
病院の外
花陽「絵里ちゃん…すごいナーバスだったね」
凛「うん……なんか基本的には病室から出るのも許可必要らしいから、ストレス溜まるんだろうね」
花陽「絵里ちゃん…ものすごく辛いだろうな」
凛「うん…でも、凛たちがここで弱気になったらだめだよ。絵里ちゃんにはやっぱりあんな風になってほしくない」
花陽「そうだね。だから、私たちがなんとか協力しなきゃ」
凛「とりあえず今日の様子を一応真姫ちゃんに報告するにゃ」
絵里「……はあ。私も堕ちるとこまで堕ちたわね。花陽と凛に当たるなんて」
絵里「……μ'sの頃の私はもういない…」
prrrr
絵里「電話…?あら、穂乃果からだわ」
絵里「もしもし?」
穂乃果「絵里ちゃーん!聞いて聞いて!今度の休みにね、希ちゃんがこっちに来るから、その時にμ'sのみんなで遊ぼうって考えてるんだ」
絵里「へえ、希が。それはいいわね」
穂乃果「うん。日曜日なんだけど他のみんなもこれるって。絵里ちゃんはどう?」
絵里「日曜日……」
絵里(今度の日曜日は確か駅前の店がすごい熱い日だったはず……)
絵里「うーん、ちょっと現時点ではわからないわ。当日になってみないと」
穂乃果「そっか…わかった。じゃあ当日連絡ちょうだい。みんな会いたがってるから」
当日
絵里「ごめんなさいやっぱり今日は無理だわ。大学の方がどうしても手を放せなくて」
絵里(本当は今打ってる台が高設定確定演出が出たから、なんて言えるわけないわ)
穂乃果「…絵里ちゃん、私たちよりも、そっちの方が大事なんだ」
絵里「えっ」
穂乃果「知ってるよ。絵里ちゃん今パチスロ打ってるんでしょ」
絵里「そっ、それは……」
穂乃果「絵里ちゃんにとってはμ'sはもう過去のものなんだね」
穂乃果「残念だよ」
絵里「ち、違うのよ、ちょっと待っ」
穂乃果「さよなら」
プツッ
絵里「……いやああああああ!」
絵里「はっ!」ガバッ
絵里「……なんで最近こんな夢ばかり見るのかしら」
音ノ木坂 放課後
亜里沙「じゃあグループ分けも決まったので、今日から本格的にグループとしての練習を開始します」
亜里沙「ただし、7つもグループがあるので、今から言う場所で練習して下さい」
亜里沙「Aグループは屋上、B,Cグループは第二部室、D,Eグループは講堂、Fグループは本部室、Gグループは体育館裏です」
亜里沙「かなり場所が限られています。天候が悪い日などは、体育館を借りられるか交渉してみますが、それも無理な日は基礎トレーニングになります」
亜里沙「あと…基本的にメンバーチェンジはこの後はありません。春期大会は全チームが出れますが、ラブライブの予選は学校から1つのチームしか出られません」
亜里沙「よって、ラブライブ予選の前に学内選抜選考会を行います」
亜里沙「そこで選ばれた一チームだけが、ラブライブへの挑戦権を得られます」
亜里沙「敗退した他のチームは残念ながら出られません」
亜里沙「つまり、3年生は、その選考に漏れた時点で……」
亜里沙「引退です」
帰路
雪穂「いやー、しかし7つもグループができるなんてね。音ノ木坂アイドル研もずいぶん大所帯になったねえ」
亜里沙「そうだね」
雪穂「でも残酷だよね。ラブライブには学校から1チームしかチャレンジできないなんてさ」
雪穂「もちろんルールだから仕方ないけど、学校内で負けたら引退かあ」
雪穂「花陽部長が言ってた、アイドルは残酷な格差社会だって、今すごい痛感してるよ」
亜里沙「まあ、それは別にアイドル研に限ったことじゃないし。学校の部活ってそういうもんでしょ」
雪穂「かーっ。亜里沙はリアリストだねえ」
雪穂「じゃあもちろん気づいてるんでしょ?」
雪穂「今回のチーム分けで私と亜里沙は別グループになった……」
雪穂「つまり、私と亜里沙、少なくともどちらかは6月には引退が決まる、って」
雪穂「私と亜里沙が戦って、負けた方はスクールアイドルが終わるんだよ」
亜里沙「……うん。わかってる」
雪穂「…私たちの代は、今は8人いるけど、最初は私と亜里沙の二人だけだったよね」
雪穂「どんなときも、亜里沙が一緒だったから頑張れた」
雪穂「それが最後に、その親友と戦うことになるなんてね」
雪穂「まあもちろん、二人とも負ける可能性だってあるけどね」
亜里沙「………」
雪穂「…亜里沙?」
雪穂「……あーりーさー?」
雪穂「それっ!」ワシワシ
亜里沙「きゃっ!」
亜里沙「ゆ、雪穂ちゃん?」
雪穂「亜里沙?あんまり考えすぎるのはよくないよ?」
雪穂「……大丈夫だよ。亜里沙のお姉ちゃんはなんたってあの絵里さんなんだから」
亜里沙「えっ…なんで…」
雪穂「中学からの付き合いだからね。亜里沙が何を考えてるのかくらいわかるよ」
雪穂「絵里さんは絶対帰ってくるよ。あのμ'sのメンバーなんだから」
亜里沙「……ありがとう」
穂乃果「あるぇー?二人とも、今帰り?」
海未「こんなところで会うとは奇遇ですね」
ことり「雪穂ちゃんに亜里沙ちゃん、久しぶりだね」
亜里沙「皆さん…」
雪穂「お姉ちゃんたちこそ、三人そろうなんて久しぶりなんじゃない?」
穂乃果「今日はみんなバイト休みだったし、まあいろいろと話し合ったりしようって集まったんだよ」
雪穂「話し合い?」
海未「穂乃果!」
穂乃果「あ……」
亜里沙「……」
亜里沙「なんか……すみません。姉のことで皆さんにご心配おかけして…」
海未「亜里沙。そういうのはなしと言ったはずですよ」
穂乃果「そうだよ。そんなこと言ったら私だって昔絵里ちゃんに迷惑ばっかりかけてたし」
海未「いきなり部を辞めるとか言い出しますしね」
穂乃果「うっ…」
ことり「私だって、留学するとかしないとかで散々惑わせちゃったし」
海未「私は……私は……」
海未「……まあ多分いろいろと迷惑かけてるでしょう」
穂乃果「ねえ、それよりさ、今日はチーム編成の日だったんでしょ?どんな感じだったの?」
雪穂「ああ、チームなら結局7チームできたよ」
海未「なっ…7!?」
ことり「お、多いね…」
雪穂「うん。春期大会は全チーム出られるからいいんだけど」
穂乃果「春期大会…なんか部活っぽい響きだね」
海未「まあ一応部活ですから」
ことり「私たちのころはスクールアイドルの大会って言ったらラブライブしかなかったし」
雪穂「でもそのラブライブには、1チームしか出られなくて」
穂乃果「えっ…そうなの?」
亜里沙「大会方式は基本的には変わってませんよ。地区予選があって、代表決定戦があって、最後に全国大会」
雪穂「でもお姉ちゃんたちは3月までやってたけど、去年からはやっぱり試験とかある人もいるから、って、3年生は夏のラブライブで最後になることが決まったんだ…って、お姉ちゃんには言ったか」
海未「まあ普通はそうですよね。卒業ギリギリまでやっていた私たちが異常なだけです」
ことり「それで、本命のチームは?やっぱり亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんがいるチーム?」
雪穂「……それが」
亜里沙「私と雪穂ちゃんは別チームになりました」
穂乃果「えっ…な、なんで?」
亜里沙「……まあ本音を言えば、私も最後は雪穂と一緒のグループでやりたかったですけど」
亜里沙「チームのバランスを考え、また、来年以降のことも考えて、この編成になりました」
ことり「……亜里沙ちゃん、そんなことまで考えてたの?」
海未「…素晴らしい。ハラショーとしか言いようがありませんね」
穂乃果「うん。私だったら絶対片寄った編成にする自信あるし」
穂乃果「さすが、アイドル研史上最高の部長と言われるだけあるね」
海未「そうですね。どこかのポテト泥棒とは違いますね」
ことり「海未ちゃん……ちょっとdis入ってるよ」
雪穂「んじゃあ私たちはここで」
穂乃果「じゃあねみんな」
亜里沙「私も家が向こうなのでここで失礼します」
海未「ご機嫌よう」
ことり「またね」
ことり「ラブライブに出られるのは1チームかあ…なかなか厳しいね」
海未「まあいたずらに参加チームだけ増やしたら、売名目的の人間や学校が増えますからね」
ことり「しかもあの二人は別チームか……」
海未「そうですね…」
ことり「でも…さっきの様子だと……」
海未「…ことりも気づいてましたか」
海未「もちろん他のチームがどうなのかわからないので一概には言えませんが」
海未「もし二人のチームが直接戦ったら」
海未「今なら雪穂のチームが勝ちますね」
ことり「うん…私もそう思う」
ことり「亜里沙ちゃん…迷ってるというか、悩んでるというか」
海未「亜里沙が悔いなくスクールアイドルを全うするには、やはり今、欠けてしまっているピースがあるようですね」
ことり「……絵里ちゃんか」
指摘がいくつかあった点
依存性ではなく依存症
亜里沙は雪穂をちゃん付けで呼ばない
希の関西弁が変
これらは全てミスです。すみません。
依存症は直しますが、他は今から変えるのも微妙なので、そのままでいきます
そしてさらに一週間が過ぎた
看護師「絢瀬絵里さん」
絵里「……はい」
看護師(うーん…ずいぶんやつれたわね)
看護師「おめでとうございます。今日で退院です」
絵里「…え」
看護師「今まで色々なカウンセリングをしましたが、今のあなたに必要なのは周りの人たちの支え。ここではそれを十分に受けることはできません」
看護師「それに、家にいる妹さんをいつまでも放っておくわけにもいかないでしょ?」
絵里「……そうですか。そうですね」
看護師「それでは2時間後に退院の手続きをしますので、準備をお願いします」
絵里「…はい」
絵里「……なんか、うれしいとか、悲しいとか、全く感じないわ。強いて言うなら、どうでもいい」
絵里「毎日のように見る悪夢。あれがいつ現実に起こるかと思うと…私は……」
絵里「ありがとうございました」
看護師「お大事に」
絵里「はあ……とりあえず帰ろ。着替えなきゃ」
絵里「昼過ぎの15時か…亜里沙は学校ね」
絵里「ん?」
希「絵里ち、やっと退院できたんやな」
にこ「ま、とりあえずは一安心ね」
絵里「二人とも……」
絵里「え?このまま音ノ木坂に行く?」
にこ「そうよ」
希「ウチも行くの久々やし、なんか緊張するなあ」
絵里「ちょっといきなりどういう展開よ?大体私はもう関係者じゃ…」
にこ「問題ないわよ。私だってただの卒業生だけど毎週きてるしフリーパスよ」
絵里「それはセキュリティに問題が…」
絵里「というかなんで?理由は?」
希「理由かあ……行きたいから?」
絵里「なにそれ…」
希「それとも絵里ちは行きたくない理由でもあるん?」
絵里「えっ……」
にこ「まあ本来なら絵里を出迎えるのは私たちじゃない方がよかったんだけど、時間的に仕方ないし」
希「だから、一番絵里ちのことを待っている人に早く顔をみせてやらんとね」
絵里「……」
音ノ木坂
絵里「ちょ…本当に勝手に入って大丈夫なの?」
にこ「大丈夫よ。大体あんた生徒会長までやって名前残してるんだから、びびってんじゃないわよ」
希「懐かしいなあ。中は全然変わってないな」
にこ「まあさすがにまだ建て替えとか検討できる予算はないでしょ」
にこ「ま、今は放課後だし、部室に行けば会えるかもね」
絵里「…いいのかしら。こんな非常識なこと」
部室
ガラッ
部員「!?」ムシャムシャ
部員「!?」モグモグ
にこ「あら、あなたたち……」
部員「あっ、にこにー先輩…」
にこ「?まだ部活始まってないの?」
部員「あ、いえ、その……」
にこ「?おかしいわね。時間的にはもうとっくに練習始まっててもおかしくないのに……ってか6人しかいないじゃない」
絵里「なるほど……そういうことね」
希「?どういうこと?」
絵里「見たところ、他のメンバーの着替えた形跡もある」
絵里「つまり、おそらくだけど、グループ別か何かで練習する時間のようね」
絵里「だけど彼女たちはお菓子を食べたりしてくつろいで、私たちが現れたらたじろいだ…」
絵里「要するに、サボりね」
にこ「うえっ!?」
部員「あ、いや、それは…」
にこ「なるほど…たしかにそうね」
にこ「あんたたち、亜里沙がいないからって、好き勝手やってるんでしょ?」
部員「す、すみません…」
希「うーん。まあ、部員が増えたらやっぱりこういうことも起こってしまうんやろな」
にこ「…あんたたち個人がどうなろうと私たちには関係ないけど、そんなあんたたちのためにたくさん頑張ってる人もいるのよ?」
部員「す、すみません…」
にこ「まったく…この件は亜里沙には黙っておいてあげるから、わかったら気合い入れなさい。じゃなきゃラブライブなんて出れないわよ」
絵里「ねえ…どこに向かってるの?」
希「どこって…屋上に決まってるやん」
にこ「亜里沙は屋上だって言ってたでしょ」
絵里「や、やっぱり悪いわよ練習中に……あとにしない?」
希「絵里ち、そういうとこチキンやなあ」
にこ「別にただの見学よ?今は学校の生徒だって自由に見学できるのよ」
絵里「だから、私たちは生徒じゃ……」
にこ「もううるさいわね。さっきの部室見たでしょ?ああいうのに気づけないくらい亜里沙は今周りが見えてないの。どういうことかわかる!?」
絵里「??」
希「絵里ちが顔見せてあげたら、安心するで。なんやかんや気丈に振る舞っても、心の中は心配してるんや」
にこ「そうよ。強いて言うなら、あんたが約束をすっぽかしたあの日からね」
希「だから、今、その破り捨てた約束を拾いにいこう?」
にこ「絵里がやっぱり必要なのよ。あの子には」
絵里「……」
屋上前のドア
「それじゃあ10分休憩ー!」
絵里「!」
ガチャ
バコン
絵里「痛っ!」
亜里沙「あっ!ご、ごめんなさい、誰かいるなんて気づかなくて……って……」
亜里沙「……お姉ちゃん?」
絵里「あ……亜里沙…」
亜里沙「え…ど、どうしてここに?」
絵里「あ、いや…それは…」
にこ「ついさっき退院したのよ」
希「何よりも先に亜里沙ちゃんに会いたいからって、家に帰りもせずにここに飛んできたんや」
絵里「ちょっ…希…」
亜里沙「…お、お姉ちゃん」
絵里「…ご、ごめんね、練習中に。やっぱり迷惑だったかしら…」
亜里沙「……」
亜里沙「……」ポロッ
絵里「あ、亜里沙!?」
亜里沙「はっ!?ご、ごめんなさい、つい」グイッ
亜里沙「わ、私のほうこそ……ごめんなさい」
絵里「え?な、なんで亜里沙が謝るの?」
亜里沙「私が、お姉ちゃんの異変に気づけてれば……こんなことには…ならなかったのに」
絵里「あ、亜里沙…」
亜里沙「ごめんなさい」
絵里(な、なんでよ…なんで、私が悪いのに、亜里沙に謝らせてるのよ……)
絵里「亜里沙」
亜里沙「え?」
ギュッ
亜里沙「お、お姉ちゃん!?!?」
絵里「ごめんね。私が全部悪いのよ。色んなものを全て背負わせて、私は一時期の快楽に逃げてた…」
絵里「だけど、もう大丈夫。みんなが、μ'sの仲間が、私を救ってくれたから…」
絵里「だから、もう迷わないわ。これからは、あなたの一番のファンとして、応援していくから」
絵里「何か悩みがあったら、全部お姉ちゃんに相談して?私もそうするから」
絵里「だって私たちは、世界で一人しかいない姉妹なんだから」
亜里沙「お姉ちゃん……」ウルウル
希「一件落着かな?」
にこ「まあ、なんとかなったみたいね」
夜。音ノ木坂校門
絵里「まさか練習終わりまでいることになるとはね…」
にこ「まあいいじゃない。久々でしょ?学校生活なんて」
希「そろそろ来るかな」
亜里沙「お姉ちゃーん!お待たせ!」
にこ「あら、意外と早いわね」
亜里沙「あ、はい。今日の仕事は雪穂ちゃんがやってくれる、っていうんで、今日だけは甘えてきました」
希「じゃあ役者はそろったし、ウチらはおいとましよか」
にこ「そうね」
絵里「は?いなくなるの?二人とも。なんのために待ってたの?」
希「なんのためにって…絵里ちがまたどっか行かないか見張ってた、ってとこかな」
にこ「どうせなら姉妹水入らずの方がいいでしょ」
絵里「……」
亜里沙「希さん、着替えは…」
絵里「あ、よく見たら、それ、私の服!」
希「明日にでも着替えにいくよ。今日はちょっと行くとこあるしな」
にこ「というわけだから。じゃあね。絵里、亜里沙」
帰り道
亜里沙「それでね、希さんがね、………なの!」
絵里「あら、それはおかしいわね。笑っちゃうわ」
亜里沙「うん!あははは…」
絵里(…久しく亜里沙とこんな他愛もない会話もしてなかったな……)
絵里(他愛もない会話がこんなにいいものだったなんてね…)
絵里(ん?ずいぶん大きな建物ね……こんなところにあったかしらこんなの)
絵里(…よく考えたらこの通学路も高校の時以来使ってないのよね…変わってても仕方ないか)
絵里(これも時代の流れか……)
絵里(さて、この建物はどんな時代を表しているのかしら)チラッ
【今週金曜日!14:00グランドオープン!】
絵里「」ドクン……
絵里(こ、これは……)
絵里(金曜日といえば……明日…)
次の日
絵里(朝、亜里沙を見送り、その後、希が家にやって来た)
絵里(ほとんど荷物は無いに等しく、滞在中は私のものを使っていたらしい)
絵里(そして京都に帰るという希を見送りに駅まで行った)
絵里「ごめんね希。本当なら遊ぶ約束だったのに」
希「困ったときはお互い様やで。今度ウチがなんかあったら助けてや」
希「そうそう。穂乃果ちゃんたちにもお礼言っときな。亜里沙ちゃんの世話みたいなことしてくれたから」
絵里「穂乃果たちが……そう。わかったわ」
希「そんじゃ、またね、絵里ち」
絵里「ええ、希も、元気でね」
絵里(……私は変わったのか)
絵里(変われたのかしら…)
絵里(もちろん変わったわよ。何が大事か、昨日確認したじゃない。忘れるなんてあるはずないわ)
絵里(なのに……)
絵里(なのになぜ私はここに来ているんだろう……)
絵里「今日グランドオープンの全国チェーン……」
絵里「グランドオープンは絶対に見逃せないイベント……」
絵里「下調べした結果、12時に抽選、1時に入場、2時に稼働開始…事前の整理券配布などはなし…」
絵里「パチンコが500台、パチスロが500台、計1000台」
絵里「今は11時55分…間もなく抽選開始……見たところ、1000人は軽く越えてるわね。金曜日の昼なのに」
絵里「……はあ。軍資金はあるのよね…」
絵里「……まあ、グランドオープンなんてそんないつもあるわけじゃないし、いいか。退院祝いよ。どうせ誰との約束もないし、時間を気にすることもないしね」
絵里「680番か……」
絵里「かなり微妙ね。人気機種は確実に無理ね」
絵里「番号がよかったらバジリスク絆やろうかと思ったけど…まあ無理ね」
絵里「というかパチスロ座れるかしら」
絵里「開店待ちの客はパチスロ率が圧倒的に高いのよね…でもグランドオープンだし、わからないわよね」
絵里「この際なんでもいいから座るしかないわ。この店はバラエティーが豊富らしいから、何かしら空いてるでしょ。ジャグラーでもいいし」
「ん?」
絵里「ん?」
「…おや?たしか、君は」
絵里「!」
絵里「あ、あなたは…なぜここに!?」
絵里「アライズの統堂英玲奈!」
英玲奈「絢瀬、絵里。だったか。μ'sの」
絵里「な、なんであなたがここに?」
英玲奈「なんで?そんなこと理由は1つしかないだろう」
絵里「まさか…打ちに?」
英玲奈「当たり前だ。私の格好が店員に見えるか?」
絵里「あ、あのアライズのメンバーがパチンコ屋に……」
英玲奈「そういう君も、しっかり抽選を受けてるじゃないか。君もグランドオープン狙いか?」
絵里「え?あ、いや、その、私は……」
英玲奈「??」
絵里「あの……なぜあなたがこんな場所に…っていうか、ギャンブルを…」
英玲奈「そうだな……まあ、仕事だ」
絵里「仕事??」
英玲奈「今私はこれで生計を立てている。いわゆるプロだ。ま、世間的に見たらただの無職なんだがな」
絵里「あ、あなたが、パチプロ?」
英玲奈「スロプロだ。パチンコは打たない」
絵里「そうなの…私と一緒ね」
英玲奈「君もスロプロやっているのか?」
絵里「い、いや、私はプロじゃ……」
英玲奈「趣味か。まあそれが無難だろうな。この世界で食べていくのは想像以上に難しい」
店員「それでは整列して下さーい!」
英玲奈「おっと、行かなければ。運よく22番というかなり早い番号を引いたからな」
絵里「22!?はやっ」
英玲奈「ま、健闘を祈る。それでは」
絵里「……アライズがスロプロ…なんかショックね」
絵里「…私も、みんなにそんな風に思われてたのかな……」
入場
絵里「ダメね。シマ設置されてる機種は全滅。アラジンにビンゴ、絆、番長……ジャグラーもハナハナも空いてないわ…さすがに予定外ね」
絵里「バラエティーもほとんど埋まってる……さすがにグランドオープン…」
絵里「あっ!空き台発見!」
絵里「もう機種を選んでる暇はないわ!確保よ!」
絵里「ふう…なんとか座れたわ…だけどこれ、打ったことないのよね」
絵里「鉄のラインバレルか……というか見たことすらないわ。なんなのこれ」
絵里「ふうん…ARTか……まあどっちにしろもう移動なんてできないし、運を天に任せるしかないわ」
絵里「稼働開始まであと20分か……セブンスターでも買ってこよ」
1時間後
絵里「ARTなんかつまんないわね……40Gしかないし、ボーナスは妙に思いし……ん?」
ピュルリピュルリ
絵里「何か引いたかしら……セブンラッシュ?」
絵里「7を狙え…なるほど。こういう特化ゾーンね。まあありきたりよね」
絵里「なんか30回も揃っちゃったわ…こんなに揃うものなのかしら。わからないのが歯がゆいわね」
絵里「でも15回越えたあたりから隣のおじさんがすごい見てきたわ……まあまあなのかしらね」
絵里「ん?今度は何?」
絵里「オーバードライブ?今度はなんなのよ…まったく、説明書くらいおいときなさいよ…」
午後8時
英玲奈「調子いいようだな」
絵里「あら、英玲奈。ええ。なんかよくわからないけど、7000枚オーバーしてるわ」
英玲奈「ラインバレルか…珍しいものを打ってるな。まああの番号では仕方ないか」
絵里「あなたはどうなの?」
英玲奈「私はついさっきやめた。爆発してしまってあまり看破要素はとれなかったが、下っぽいからな」
絵里「そう…まあ私なんて看破要素すらわからないまま打ってるんだけどね」
英玲奈「だがやはり全国チェーンのグランドオープンなだけあるな。バラエティーも結構出ている」
英玲奈「まあ、明日、明後日までなら通う価値はありそうだ」
絵里「そうね…たしかにこんな激熱イベント、見逃すなんて有り得ないわ」
英玲奈「ふふふ。どうやらまた明日も会えそうだな。ではお先に上がらせてもらうよ」
絵里「ええ。お疲れ様」
絵里「ふう…まだ続くのね。あ、タバコがもうない…でも時間もったいないし、我慢するしかないわね」
次の日
絵里「今日は12時オープン。入場抽選は相変わらずオーバーフローしているけど116番。今日はバラエティーの住人にならなくてすみそうね」
英玲奈「やはり来ていたか」
絵里「英玲奈。おはよう」
英玲奈「昨日はどうだった?」
絵里「9時くらいまで続いて、約8000枚ね。時間も時間だったから、すぐやめたけど」
英玲奈「ヒキが強いな。今日はシマ設置機種に座れそうだな」
絵里「ええ。あなたは?」
英玲奈「725番だ。下手したら見に回るかもしれないな」
絵里「あら……まあ座れてもバラエティーね」
英玲奈「まあたまにはいいか。バラエティーに座る価値があるのなんて、グランドオープンの時期くらいだからな」
絵里「それもそうね」
英玲奈「それでは健闘を祈る」
絵里「ええ」
絵里「ふふ。当たり前だけど、昨日よりかなりいい場所に座れたわ」
絵里「10台設置のSLOT魔法少女まどかマギカの角をとれたわ」
絵里「英玲奈はどうしたのかしら…まだ稼働開始まで時間あるし、見に行ってみましょう」
英玲奈「やはり予想どおりバラエティーの住人になってしまったよ」
絵里「…天空のシンフォニア?なにこれ。聞いたことすらないわね」
英玲奈「私も2回くらいしか触ったことがない。結構レアな機種だからな」
絵里「ふうん……」
英玲奈「まあ君は有無を言わさずまずぶんまわす方がいい。昨日は、角は例外なく出ていたからな」
英玲奈「広告規制以降、角台にちからを入れる店は多い。ましてやグランドオープン。条件は揃っている」
絵里「そうね。やってやるわ!」
午後7時
絵里「無理よ!もうギブ!」
絵里「せっかく穢れから発動したEPボーナスからのARTもきっちり50で終了」
絵里「そもそもARTの初当たり4回ってのが終わってるわね」
絵里「まあ、そのうち2回が通常時からだったから粘ったけど、もう70本も突っ込んで何の見返りもないなんて…」
英玲奈「なんだ?辞めるのか?」
絵里「英玲奈…ええ、もう気持ちの限界よ」
英玲奈「ただし設定はありそうだがな。まだ時間はあるぞ」
絵里「無理よ。出る気がしないわ」
英玲奈「そうか……」
絵里「あなたはどうなの?」
英玲奈「私は今は難民状態だ。今日はバラエティーは全体的に下げっぽいからな。早々に見切りつけたよ」
絵里「へえ…さすが英玲奈ね。判断が早いわ」
英玲奈「もし本当に辞めるならこの台もらうがいいのか?」
絵里「いいけど……この台やる気ないわよ」
英玲奈「やる気なんかどうでもいいんだ。今のご時世、高設定を確信して打てる機会などそんなにないからな」
絵里「そう…チャレンジャーね」
英玲奈「君の方がよっぽどチャレンジャーだと思うがな…」
絵里「はあ……70Kマイナス…このまま終わるわけにはいかないわよね」
絵里「なんとか少しでも取り返さないと……」
絵里「よし、ここはこの前爆発したこのハーデスで勝負よ!」
絵里「ゲーム数は450と完全に狙いどころじゃないけどそんなの関係ないわ。引くもの引けばいいんだから」
英玲奈「絵里のやつ…完全に現状を見失ってるな……」
絵里「1450…ちょうど1000ハマったわね…恐ろしいほどなにも起きなかったわ」
絵里「気づけば投資は10万越え…洒落にならないわね」
絵里「でも…もう少しで天井だし、やるしかないじゃない」
ドスーーン!
絵里「あら?槍演出?何か引いたかしら…」
絵里「なにこれ…ただの下段黄7じゃない。なによ…」
絵里「あ……黄7が4連してる……」
閉店後
英玲奈「絵里……どうだった、と聞くのも愚問なようだな……」
絵里「」orz
絵里「あなたは…?」
英玲奈「まあ今日はプラマイ0だな。朝イチで掴めなかった割には、結果は悪くない」
絵里「ポジティブね…私は11万負け…こんなに負けたの初めてよ」
英玲奈「まあ展開に恵まれなかったのは残念だが、最後のハーデスはかなり余計だったな。打つ根拠など何もなかったように見えたが」
絵里「…そうね…つい熱くなっちゃって…負けを取り返そうと…」
英玲奈「そうか…」
英玲奈(典型的なギャンブル依存症の症状だな)
絵里「はあ…まあ、明日もあるし、明日がんばろう」
翌日
絵里「やったわ!入場抽選5番よ!なんでも選び放題よ!」
英玲奈「よかったな。これで運を使い果たしてなければいいが」
絵里「英玲奈は?」
英玲奈「私は924番だ……まあ、しばらくは様子見に回るよ」
絵里「あらら…その番号はさすがに無理ね。パチンコのバラエティーしか空いてないわね」
英玲奈「そうだな。私の分も頑張ってくれ」
開店
絵里「ふう…サラリーマン番長の角台はすでに抑えられて取れなかったけど、得意機種の北斗の拳転生の章の角を取れたわ」
絵里「思えば初めて打ったのがこの台だったのよね……ふふ。あの時の10万勝ちの感触はまだ忘れられないわ」
絵里「さあ、やるわよ!」
一方その頃
にこ「ふあああ…あら、もうお昼……ちょっと寝すぎたかしら」
にこ「昨日は会社の飲み会に付き合わされて…あら、なんで私家にいるのかしら…記憶が……」
にこ「ん?」
にこ「着信あり……真姫から?なんの用かしら」
真姫「おはよう。その後の様子はどう?」
にこ「??その後の様子?なんのこと?」
真姫「なんのって…絵里のことに決まってるじゃない」
にこ「絵里?絵里なら有意義な生活を送ってるでしょ。病気も治ったんだし……」
真姫「……退院の日から絵里には会ってないの?」
にこ「会ってないわよ。私はこうみえても仕事あるし、希は帰っちゃったしね」
にこ「絵里がどうかしたの?」
真姫「まあ……何があった、ってわけじゃないんだけど、気になって」
にこ「?」
真姫「もしかして、絵里が完治したと思ってる?」
にこ「え?だって病院で…」
真姫「ギャンブル依存症っていうのはそんな簡単なものじゃないのよ。入院させたのはあくまで一時的な措置に過ぎないわ」
真姫「人によっては一生付き合っていくことにもなるし」
にこ「はあ?なんでそれを言わないのよ?」
真姫「調べたって言ってたから…知ってるものだとばかり…」
にこ「……だ、だ、大丈夫よ。絵里なら大丈夫。もう道を踏み外すことはないわ……だ、だ、だって、あの日亜里沙と会った時の様子は……ねえ」
真姫「ねえ、って言われても」
にこ「……」
街中
海未「ふう……いきなり休日にバイトに出てくれなどと言われるなんて、こちらにも予定というものが…」
海未「まあ予定なんて寝るくらいしか今日はありませんでしたが」
海未「しかしいきなり急病人が出たのなら仕方ありませんね…」
海未「ささ、急がなければ……」
海未「ん?」
海未「あれは……たしか……」タッタッタッ
海未「す、すみません!」
「ん?」
海未「やはり……あなた、元アライズの統堂英玲奈さんですね?」
英玲奈「おや、たしか、園田海未、だったか?」
海未「ええ。お久しぶりです」
英玲奈「久しぶりだな。日曜日の昼に、こんなところを歩いているとは、もしやデートか?」
海未「は!?!?で、でで、デート!?な、なな、何を…そんなわけないでしょう!?」
英玲奈「ただ聞いただけなのに慌てすぎだ……」
海未「私はこれからバイトです!そういうあなたこそ一体何を!」
英玲奈「私か?私は店巡りだ」
海未「店巡り?」
英玲奈「ああ。番号が悪かったから他にいい台があるか近隣の店を様子見がてら巡っていたんだ」
海未「???言ってる意味がよくわからないのですが……」
英玲奈「ん?ああ、そうか。すまない。てっきりμ'sのメンバーはみんな詳しいのかと勘違いしていたよ」
海未「はあ……?」
午後3時
絵里「はあ…なんなのこれ」
絵里「3連続で単発…もうすでに50本飛んでる……」
絵里「…ちょっと様子見に回ってみようかしら」
絵里「うーん……昨日一昨日に比べたら出てないわね」
絵里「グランドオープン3日目なのに…もう回収始めてるのかしら」
絵里「ちょっと英玲奈にアドバイスでももらいましょうか」
絵里「あら?英玲奈…いないわね。どこ行ったのかしら」
英玲奈「私を探していたか?」
絵里「あ、英玲奈。一体どこに……」
絵里「……」
絵里「……穂乃果?なんでここに?」
穂乃果「絵里ちゃん……残念だよ」
絵里「えっ……」
英玲奈「外で他店を見て回っていたら偶然園田海未に会ってな。君がここにいると言ったら、血相変えて」
穂乃果「海未ちゃんはバイトだから代わりに今日何もなかった私が英玲奈さんに連れてきてもらったの」
穂乃果「実際この目で見るまでは嘘だと信じたかったけどね……」
穂乃果「絵里ちゃん……やっぱり治ってなかったんだね」
絵里「…現行犯だし、もう言い訳はしないわ」
絵里「なんでかしらね。店にいると落ち着く気がするの」
絵里「ここが私の居場所というか……気づいたらここにいるというか…」
絵里「例えば昨日は大敗したわ。負けた分、次の日は必ず取り返したい」
絵里「勝ったときは、その勝ち分をさらに上乗せしたい」
絵里「そういうことばかり考えてしまう」
絵里「いけない、ってことはわかってるの。妹は大事な時期だし、面倒を見る立場の私がこんなんじゃ……」
絵里「でも……短時間であんなにお金が増える感覚が……その期待を持てるフラグを引いた瞬間が……」
絵里「どうしても頭から離れないのよ」
絵里「……ねえ教えて穂乃果…」
絵里「私……どうしたらここから抜け出せるの?入院までしたのに、また私はここに戻ってきた……」
絵里「今日も今はすごく負けてる…それを取り返そうとして、このあと、明日、明後日と、また私はここに誘われる……」
穂乃果「絵里ちゃん……」
「強制的に治すことならできなくはないわ」
絵里「??」
穂乃果「真姫ちゃん?」
真姫「あら穂乃果。穂乃果もきてたのね」
絵里「真姫…強制的に治す方法って?」
真姫「まあ簡単に言うと絵里の自由を奪う。入院もその一種だったんだけど、さすがに何回も入院させるわけにもいかないし」
真姫「それで、少しずつ忘れさせるのよ…あなたから、快楽の記憶をね」
絵里「そんなこと、可能なの?」
真姫「それは…あなた次第よ」
絵里「私次第……」
真姫「最終的にはあなたの意思が全てを決める」
真姫「自由を奪うことは、きっと今の絵里ならそうとう辛い生活になるかもね。病院でも毎日悪夢にうなされてたみたいだし」
穂乃果「私たちは、絵里ちゃんを救いたい」
穂乃果「だけど、絵里ちゃん自身が抜け出そうとしなければ、きっと抜け出せない」
穂乃果「だけど……双方が手を伸ばせば、きっと未来は変えられる」
穂乃果「あの時みたいにね」
絵里「穂乃果…」
絵里「私は……あの時、穂乃果が差し伸べてくれた手を掴んだから、μ'sになった」
絵里「私自身を変えられた…学校の廃校も救うことができた……」
穂乃果「だから、絵里ちゃん。行こう。亜里沙ちゃんも、きっと待ってるよ」スッ
絵里「……手……」
絵里「……私は」
絵里「………」
数日後……
某店
英玲奈「最近絵里を見ないな……結局足を洗ったのだろうか」
穂乃果「あっ、英玲奈さん、こんにちは」
英玲奈「穂乃果か…仕事は慣れたか?」
穂乃果「いやははは…まだまだです。よくコイン補充でぶちまけちゃうんで…」
英玲奈「そうか。気が短いやつならおこるかもしれないな。ま、気にせずゆっくりなれることだな」
穂乃果「はい。がんばります」
英玲奈「ところで……」
穂乃果「?」
英玲奈「いや、なんでもない」
英玲奈(足を洗ったならそれでいいだろう。彼女はギャンブルは向いていない。普通の日常で生きていくのが一番だからな)
英玲奈「ん……隣、やめるのか」
英玲奈「沖ドキ1ゲーム止め…?システムわかってないのか?」
英玲奈「しかし私もAT中…移るわけにはいかない」
スッ
英玲奈(…やはりすぐ座られたか…まあそれはそうだが)
英玲奈「ん?」
「久しぶりね。英玲奈」
英玲奈「…………!」
英玲奈「絢瀬絵里……足を洗ったんじゃないのか?」
絵里「??私そんなこと言ったかしら?」
英玲奈「いや……聞いてはいないが…てっきり…」
英玲奈「だってこの前……」
絵里「そうね。みんなが、私を引き戻そうと、手を差し伸べてくれたわ」
絵里「でも気づいたの。私はきっとここから離れられない。そしてまたみんなに迷惑をかけてしまう」
絵里「まあ、もうすでに迷惑をかけてたんだけど」
絵里「だから私は…手を掴まなかった……」
絵里「私は、私自身の道を歩くの」
英玲奈「…それでよかったのか?」
絵里「さあ。わからないわ」
絵里「とにかく、μ'sの絢瀬絵里は、あの日、死んだの。ここにいるのは、ただのギャンブル依存症の絢瀬絵里」
絵里「求めているのは、期待値だけよ」
穂乃果「……絵里ちゃん」
とある日、音ノ木坂
ガチャ
花陽「失礼します……」
部員「あ、花陽部長!」
部員「お久しぶりです」
花陽「ちょ、ちょっとやめてよその呼び方。私はもう部長じゃないんだから」
部員「まあまあ。いいじゃないですか。この呼び方が馴染んでるんだし」
部員「ところで今日は何の用で?」
花陽「うん。来週、ついにラブライブの全国大会だからね。様子を見に…あっ、差し入れを持ってきたよ」
花陽「ババーン!」
部員「ぜ、全部おにぎり……」
部員「しかもでかい…」
花陽「一応一人2個で計算して、100個作ってきたよ」
部員「………これ、どうやって持ってきたんですか?」
花陽「そういえば、亜里沙ちゃんは…?」
部員「部長なら、屋上ですよ」
部員「本番に向けての最終確認じゃないですか」
花陽「…そっか」
部員「私たちはここで去年のラブライブを見て予習中です」
部員「まあ予習したから何があるってこともないですけど」
花陽「…いや、そういうのも大事だと思うよ。やっぱり、みんなが一丸にならないと、ラブライブで優勝するのは無理だからね」
部員「……さすが、去年優勝に導いた部長が言うと説得力がありますね」
花陽「もう!そんなこと言って持ち上げてもおにぎりはもうないよ!」
部員「いや、いりませんから……」
校舎内
花陽「屋上は……」
花陽「…邪魔しない方がいいよね」
穂乃果「あれっ?花陽ちゃん?」
花陽「えっ?」
穂乃果「花陽ちゃん、なんでここに?」
花陽「穂乃果ちゃん……」
穂乃果「なーんてね。理由なんてわかってるよ」
花陽「穂乃果ちゃん…」
穂乃果「見ていかないの?練習」
花陽「う、うん…邪魔かな、って…」
穂乃果「そんなこと……」
花陽「…亜里沙ちゃんの気持ち考えたら、前部長の私が顔を出すのはまずいかな、って」
穂乃果「うーん、考えすぎだよ。亜里沙ちゃんはそんな弱い子じゃないし」
花陽「…そうかな」
亜里沙「あれ?」
花陽「!!」
穂乃果「あ、亜里沙ちゃん」
亜里沙「穂乃果さんに花陽部長…お疲れ様です」
花陽「お、おつかれ…!?」
亜里沙「雪穂ちゃんなら上にいますよ。今は最後の確認作業してます」
穂乃果「あ、うん」
花陽「あ、あの……」
亜里沙「はい?」
花陽「……亜里沙ちゃん。最後まで、頑張ってね!」
亜里沙「……もちろんです」
亜里沙「私自身がステージに上がることはないですけど、部長として、最後までできることはやるつもりです」
亜里沙「雪穂ちゃんたちには、やっぱり最高のステージにしてもらいたいですから」
数日後
ピンポーン
穂乃果「はいはーい」
ガチャ
穂乃果「あ、亜里沙ちゃん」
亜里沙「おはようございます」
穂乃果「ちょっと待っててね。ゆっきーまだ支度できてなくて」
雪穂「ちょっとお姉ちゃーん!私のポーチどこー?」
穂乃果「…まあこんな感じです。誰に似たんだか…」
亜里沙「ははは…」
雪穂「んじゃあぼちぼち行ってきまーす」
穂乃果「なーんか気のない出陣だなあ。今日全国大会なんだよ?」
雪穂「わかってるよ。こういうのは気負いすぎるとよくないのよ」
穂乃果「そうかなあ…」
亜里沙「雪穂ちゃん。靴。サンダルになってるよ?」
雪穂「えっ?あっ!」
穂乃果「…本当に大丈夫?」
雪穂「まったく。お姉ちゃんのドジが移ったんだよ」
穂乃果「……」
穂乃果「まあいいや。ゆっきー。ファイトだよ!私も必ず見に行くからね!」
雪穂「はいはーい…」
雪穂「まったく……お姉ちゃんも、あんなに気負わなくても…出るのは私なのに」
亜里沙「でもやっぱり見にきてくれるってのは嬉しいよね」
雪穂「うーん。まあ、あれでも優勝経験者だからね」
雪穂「一応姉だし」
亜里沙「……」
雪穂「…あ、ごめん」
亜里沙「あ、いや、こっちこそごめん。気にしないで」
雪穂「……」
亜里沙「……」
亜里沙「ねえ」
雪穂「ん?」
亜里沙「雪穂ちゃんは…ずっと、ずっと私の友達でいてくれる?」
雪穂「は?な、なに?いきなり」
亜里沙「雪穂ちゃんは、どこにも行かないよね!?いきなり私の前からいなくなったりしないよね!?」
雪穂「あ、亜里沙……」
雪穂「…当たり前でしょ。私は亜里沙を裏切ることは絶対にしないわ」
雪穂「亜里沙の助けがなかったら、ここまでこれなかったし」
雪穂「約束するから」
亜里沙「雪穂ちゃん…」
雪穂「ほらほら。だからこんな湿っぽい話はヤメヤメ。最後までたよりにしてるからね。部長」バン
亜里沙「……うん!」
会場
にこ「ラブライブにエントリーした初年は夏辞退、冬は優勝…」
花陽「その次の年は夏3位、冬は5位」
真姫「その次の年は夏、優勝……」
海未「そして冬は代表決定戦敗退……」
穂乃果「さてさて、今年はどうなるんだろ?」
ことり「それはもちろん優勝だよ!」
凛「でも初めてじゃないかな?音ノ木坂から出るのが3人のアイドルグループなんて」
希「3人といえば、アライズを思い出すなあ」
海未「3人だから余計に個々が目立ちますね」
ことり「とくにグループリーダーの雪穂ちゃんは一番目立つよね…」
穂乃果「うう……さすがに緊張する…」
にこ「あんたが緊張してどうするのよ」
花陽「仕方ないよ。やっぱり自分の姉妹が出場するっていうのは、本人以上に緊張するものだよ」
希「そやね。姉妹か…」
穂乃果「……」
にこ「あー、なんかちょっと私も緊張してきたわ。ちょっとトイレ行ってくる」
穂乃果「人にあんなこと言っといて…」
にこ「し、仕方ないでしょ?私は部の創設者なんだから、言わば全員が妹みたいなもんよ」
真姫「いいから早く行ってきなさいよ」
ジャー(水を流す音)
にこ「ふう……」
トントン
にこ「ん?」
にこ「え?」
にこ(帽子にサングラスにマスク…怪しすぎるわこの人…なんでこんなやつが会場入れたのよ。警備は何やってんの)
にこ(…ん?こういう風貌の人、どこかで見たような……)
にこ「ま、まさか……あなた……」
スッ(サングラスを外す怪しい人物)
絵里「…久しぶりね」
にこ「え…絵里…こんなとこで何やってんのよ」
にこ(ぐうっ!タバコの匂いが強烈!)
絵里「何って…もちろんラブライブを見にきたのよ」
にこ「……よく私たちの前に顔が出せたわね」
絵里「……それは重々承知しているわ」
にこ「あんた今どこに住んでるのよ。学校も辞めたそうじゃない。何か仕事はしてるの?」
絵里「……」
にこ「なんで黙るのよ」
絵里「ねえにこ。あなたにしか頼めない、重要なお願いがあるの」
にこ「?私にしか頼めない?」
絵里「ええ……」
にこ「何よ?」
絵里「……」
絵里「…お願い」
絵里「お金貸して!」
にこ「………はあ!?」
絵里「もちろんこんなお願いするなんて馬鹿げてるってことはわかってるわ」
絵里「だけど、今は体裁を気にしてる場合じゃないの……」
絵里「お願い!必ず返すから!!」
にこ「…ふうん。だから、唯一学生じゃない私に頼んでる、ってわけか」
絵里「ええ…」
にこ「……あんたならわかってるはずよ。私は家がそんなに裕福じゃない。稼いでるお金も、ほとんどを家に入れてる。妹たちもこれから進学でお金がかかる」
にこ「私は家族のために働いてるのよ。まだまだ芽の出ないアイドル崩れみたいなものだけど、それでも私が稼いだお金は私が汗水流して必死で稼いだお金なの」
にこ「あんたみたいな、ギャンブルに目がくらんだヤニまみれの人たちも相手にしてね」
にこ「断りたいと思った理不尽な仕事も何個もあったわ。でも、私を応援してくれる人たちのため、家族のために、必死にくらいついていったの」
にこ「そうやって手にしたのが給料なの。そうやってしないと手に入れられないのが給料。お金なのよ」
にこ「それを……全てを捨てて裏切ったあんたに貸すって?虫がよすぎるんじゃない?」
絵里「……おっしゃる通りでございます」
にこ「……一つ聞くけど、どうやって返すつもり?」
絵里「……」
にこ「どうせ仕事なんてしてないんでしょ」
絵里「……ハイエナ」
にこ「は?」
絵里「必ず勝てる方法があるの。天井狙い、って言って、天井っていうのは、救済措置で、そこに到達したら……」
にこ「あー、もういいわ。なんとなくわかったから」
にこ「……一応、退院後あんたをほっといた私にも責任はあるわけだし」
絵里「……じゃあ」
にこ「とりあえず少し考えるわ。ラブライブが終わるまで」
にこ「だから、あんたもラブライブを見ていきなさい。私たちの近くじゃなくていいから」
にこ「ま、亜里沙は出ないけどね」
にこ「あんたがいたら結果は違ったかも……なんてのは、雪穂たちに失礼だから言わないけど」
にこ「終わったらまたこのトイレに来るから」
絵里「……わかったわ」
演目は次々と消化されていく……
司会「さあ、続いては、東京代表、音ノ木坂学院のスクールアイドルです!」
穂乃果「き、きたっ!」
海未「さ、さすがに私も緊張してきましたね…」
ことり「だ、大丈夫だよ。だって雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの妹なんだから、本番に強いタイプだよ」
真姫「…穂乃果って本番に強いタイプなの?」
凛「本番前に頑張りすぎるところはあったけどね」
希「凛ちゃん…それはタブーやで」
花陽「まあ、強いというか、強心臓なところはあったよね」
にこ「…さあ、あなたたちの全てを見せなさい。私たちに。この会場にいる全ての人にね」
舞台裏
雪穂「あー、やっと出番かあ。待ちくたびれたわ」
部員「雪穂…あんた、本当に緊張とかしないのね」
部員「そういうところだけは尊敬するわ」
雪穂「だけって何よだけって」
亜里沙「ゆ、ゆゆ、雪穂ちゃん、ががが頑張って!緊張しない、ようにぬぇっ!」
雪穂「…緊張してるのは亜里沙でしょ」
雪穂「まあ、任せなさい。私たちがみんなの分、しっかりやってきてあげるから!」
ステージ開始
絵里「……私も昔、ここに立ってたのよね」
絵里「…なんか、遠い昔に感じるわ」
絵里「……私の青春」
ステージ終了
舞台裏
亜里沙「お疲れ様!みんな!すごいよかったよ」
雪穂「やれることは全てやりきったよ。50人分ね」
亜里沙「へ?」
雪穂「?当たり前でしょ。私たちアイドル研は50人。一人欠けても成立しない」
雪穂「見た目は3人だったかもしれないけど、魂はしっかり50人分あったから」
雪穂「ラストステージとしては満足ってところね」
亜里沙「…雪穂ちゃん」
雪穂「さ、あとは結果待ちね。黙って待ちましょ」
結果発表
真姫「トップ10が発表される形式で、とりあえず5位まで発表されたけど、まだ呼ばれてないわね」
希「そりゃそうやろ。優勝チームで呼ばれるんやから」
凛「いやいや、もしかしたら圏外の可能性も…」
にこ「あんた、少し空気読むこと覚えたら?」
海未「……はあ、はあ、なんか呼吸が…」
ことり「海未ちゃん…あがり症は相変わらずだね」
真姫「今は海未があがる場面じゃないでしょ」
花陽「さあ、4位以上の発表だよ!」
穂乃果「……ゆっきー」
司会「第4位は……近畿代表、OSK女学院スクールアイドルです!」
穂乃果「4位じゃない…」
司会「第3位は……関東代表、桜高校スクールアイドル!」
穂乃果「ドキドキ…」
司会「第2位は……東京代表、音ノ木坂学院スクールアイドルです!」
一同「えっ……」
絵里「2位………」
雪穂「あっはっはー!2位だったかあー。やっぱり全国大会は凄いなあ。あんなに頑張っても優勝できないなんて」
雪穂「………はは」
雪穂「……みんな、ごめんね」
部員「なんで雪穂が謝るのよ」
部員「そうよ。私たちは間違いなく最高のステージを披露した。優勝チームがそれを上回った。それだけだよ」
雪穂「みんな……」
亜里沙「雪穂ちゃん……」
雪穂「亜里沙…」
亜里沙「…お疲れ様」
雪穂「……ありがと」
雪穂「優勝はできなかったけど」
雪穂「このアイドル研はやっぱり最高だね」
亜里沙「……うん!」
希「…終わったね」
凛「そうだね」
真姫「2位でも十分素晴らしいわよ」
花陽「そうだね。みんなすごかったよ」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん…泣かないで…」
穂乃果「うえーん……ゆっきーが…ゆっきーが…」
海未「嬉しくて泣いてるのか、悲しくて泣いてるのか、よくわかりませんね」
希「…あれ?にこっちは?」
トイレ前
絵里「雪穂たち、すごかったわね。あれがアイドルっていうものだったのね」
にこ「そうよ。あんたみたいな汚れきった心にも、響くものがあったでしょ?」
絵里「……」
にこ「さて、話の本題に入りましょうか」
絵里「……」
にこ「貸してもいいわよ」
絵里「えっ!」
にこ「ただし、条件があるわ」
絵里「じょ、条件?」
にこ「ええ」
にこ「お金は亜里沙に渡すわ。あんたは亜里沙から借りなさい」
絵里「……え?」
にこ「亜里沙経由でお金を貸す。それが条件よ」
絵里「そ…そんな……」
にこ「この条件が飲めないなら貸せないわね」
絵里「……」
絵里「…わかったわ」
翌日
亜里沙「にこさん。こんな朝早くから、どうしたんですか?」
にこ「昨日はお疲れ様。優勝できなかったのは残念だけど、よかったわよ」
亜里沙「あ、ありがとうございます」
亜里沙「でもにこさんの代は優勝してますから、並ぶことはできなかったですけど…」
にこ「うーん、とは言っても、私は部長らしいことなんてなんもしてなかったしね」
にこ「で、そんな翌日にすごい申し訳ないんだけど、これ」スッ
亜里沙「?封筒?」
亜里沙「えっ…お金?なんで…?」
にこ「そのお金、亜里沙に預かってほしいの」
にこ「もしかしたら、誰かが受け取りにくるかもしれないから」
亜里沙「??」
にこ「ごめんね。勝手だけど、お願いするわ。まあ、それだけよ」
亜里沙「ちょ、ちょっと!」
にこ「じゃあね亜里沙」
亜里沙「……行っちゃった」
亜里沙「誰かが受け取りにくるって……」
亜里沙「…まさかね」
絵里「…はあ。にこもひどいわね。亜里沙経由なんて、つまり亜里沙から借りれと言ってるようなものじゃない」
絵里「…さすがに、妹から借りるのは…」
絵里「とはいえ残金は3万円…これじゃあ来月の家賃も払えないわ…」
絵里「…やっぱり借りるのは最終手段。これで行くしかない」
絵里「ただ47枚貸しはさすがにリスクが高いから、今日は94枚貸しがある店に行きましょ」
絵里「なにこの店…ガラガラじゃない…」
絵里「とはいえ94枚貸しはここしかないし…188枚貸しはさすがにリターンが少なすぎる……」
絵里「でも……」
絵里「この店、最新台が化物語じゃない。もう一年以上前の機種なのに……」
絵里「さすがにダメだわここは。いくらリスクが低いからって、負けたら本末転倒だもの」
絵里「…はあ。こんなときに英玲奈がいたらアドバイスもらうんだけど」
絵里「英玲奈は先月まさかのパチスロライターに転身…」
絵里「……いいえ。泣き言は言ってられないわ。自分で選んだ道だもの。やるしかないわよ」
翌日
真姫の家
真姫「はあ…眠いわ」
真姫「最近研究室にこもりっぱなしだし……体も痛い…」
真姫「おかしいわね。高校時代はダンスで鍛えてたはずなのに」
真姫「年かしら……」
真姫「まあいいわ。学校行かなきゃ…」ガチャ
真姫「!」
真姫「……何の用?」
絵里「真姫……お願いが…」
真姫「バカにつける薬はないっていうけど、本当みたいね」
絵里「……」
真姫「ねえ、家に帰ればいいじゃない。今からでもやり直せば」
絵里「無理よ。私はもう亜里沙の姉でいる資格はない」
絵里「亜里沙は私とは違う……もう私と関わって嫌な思いをさせたくない」
真姫「…それって、逆に私なら嫌な思いをさせてもいいって聞こえるんだけど」
絵里「…返す言葉もないわ」
真姫「…はあ。呆れたわ」
真姫「いい?最終通告よ。家に帰りなさい。亜里沙にとっては、こんなあなただって、世界でただ一人の姉なのよ?」
真姫「一緒にやり直すの。私たちも可能な限り協力するから」
絵里「…あの日、穂乃果が差し伸べてくれた手を握らなかった時点で、私にはその権利も資格もない」
絵里「邪魔したわね…」スタスタ
真姫「え、絵里!?待ちなさい!」
真姫「……なんなのよ!もう!死にたいのかしら…」
絵里「もう誰も頼れない……」
絵里「私に残されたのは、この9千円だけ…」
絵里「……ははは。これが私の成れの果て。もう未来なんてない」
絵里「……私、なんのために生きてるんだろう」
絵里「はあ…店にきたはいいけど」
絵里「9千円じゃね…捨てるようなものだし」
絵里「……絶望とはこのことか…」
絵里「やっぱり真姫のいうとおり、家に帰ったほうが……」
絵里「ん?」
絵里「あら、あの人、トイレかしら」
絵里「台の上に財布置きっぱなしだけど…」
絵里「高級ブランド財布…いかにもお金持ってます、っていう雰囲気かもし出してるわ…」
絵里「……」
絵里「……」
絵里「…とうとう、人間を辞める時がきたようね……」
数日後
某店(穂乃果のバイト先)
穂乃果「おはようございます!」
先輩「おう高坂。今日も元気がいいな」
穂乃果「いやー、それほどでも」
先輩「一応確認事項があるから、掲示板確認しておいてくれ」
穂乃果「あ、はい」
穂乃果「なになに…」ジーッ
穂乃果「近隣店舗で財布の置き引きが多発……客には貴重品のきちんとした管理を徹底させるように…」
穂乃果「置き引きかあ……最低な人間って、やっぱりいるんだよね。いつの時代も」
穂乃果「あ、証拠のカメラ映像もプリントされてる…」
穂乃果「これが犯人か…でもこの犯人、金髪だし、目立つなあ。すぐ捕まる……」
穂乃果「……」
穂乃果「こ、これって……」
某店
絵里「…」スパー
絵里「……クソ台ね」
絵里「初めて打ったけど、この蒼穹のファフナーとかいうやつ、演出がさっぱり意味わからないわ」
絵里「とくにこの左上の役物……いらないでしょこれ。パチンコでいいでしょ」
絵里「はあ…また一文無しか……しかたない。補給しましょ」
絵里「意外といるのよね…財布放置して席立つ人。天井狙いなんかよりよっぽど楽だわ」
外
凛「ふああ、今日も眠い講義だったにゃ……」
凛「今日はバイトもないし、こういう日はさっさと帰って寝るに限る……」
凛「んにゃ?あのパチンコ屋の前にパトカーが止まってるにゃ…なんかあったのかにゃ?」
凛「あっ!誰か連行されてる!なんかやったのかな!?連行されてる現場なんて初めて……」
凛「……」
凛「…あの金髪」
凛「絵里ちゃん!?」
凛「絵里ちゃん!どうしたの?一体何が!」
警官「なんだ?あんたは。邪魔だよ」
絵里「……」
絵里(凛……)
凛「なんで連れていかれるの!?何か悪いことでもしたの!?」
絵里「……」
凛「ねえ答えてよ絵里ちゃん!ねえったら!」
警官「…知り合いか?」
絵里「……さあ。わかりません。私は友達なんていませんから」
凛「絵里ちゃん……」
バタン
ブロロロ…
凛「…大変なことになったにゃ」
翌日
警察署
亜里沙「絢瀬亜里沙です」
警官「はい。絢瀬絵里さんの身元引き受け人ですね。こちらへ」
亜里沙「はい……」
警官「容疑は窃盗罪。前科はないので、今回は起訴しません」
警官「よろしいですか?」
亜里沙「すみません。姉がご迷惑を……」
警官「ところで…仲悪いんですか?」
亜里沙「え?」
警官「いえ、身元引き受け人が必要なので、家族を教えてくれと言っても、頑なに拒み続けて…」
警官「おい、野暮なこと聞くなよ」
警官「あ、すみません」
亜里沙「いえ……」
亜里沙「ありがとうございました」
警官「お気をつけて」
絵里「……」
亜里沙「……帰ろっか」
絵里「…どこへ?」
亜里沙「どこへって…うちだよ」
絵里「私にはもう帰る場所なんてないわよ」
絵里「全てなくした…人も、金も」
絵里「釈放されたところで、なにもないのよ」
亜里沙「……そんなこと」
絵里「やめてよ!これ以上私に期待しないで!」
亜里沙「!」
絵里「わかったでしょ?私はこんな落ちこぼれの人間なのよ!昔から周りの人たちは私に期待するけど、結局期待には答えられなかった……裏切り続けていた」
絵里「だから、もう私に期待しないで…あなたが思うほど、私はできた人間じゃないの」
絵里「何より…亜里沙。あなたを裏切るのが一番辛い……」
絵里「それなら、いっそ死んだほうが……」
パシン
絵里「………!」
亜里沙「…何よそれ。意味わかんないよ」
亜里沙「期待とか裏切るとか、どうでもいいんだよ私には!」
亜里沙「だって……だって、お姉ちゃんは、世界でただ一人の私のお姉ちゃんなの!」
亜里沙「それに死んだりなんかしたら、それこそ最低の裏切りだよ!二度と言わないで!」
絵里「……亜里沙」
テクテク
絵里「亜里沙…帰るんじゃなかったの?道が違うみたいだけど…」
亜里沙「うん。ちょっと寄り道を」
絵里「寄り道?」
亜里沙「ついたよ」
絵里「ここは……神田明神の階段…」
亜里沙「お姉ちゃんたちも、昔はここでよく練習してたでしょ」
絵里「…懐かしいわね」
絵里「確かによくここに集まってこの階段を走ってたわ」
絵里「海未ったら、とんでもないスパルタで、とても完走できないような無理難題を出すんだもの」
絵里「でもやっていくうちにだんだん走れるようになって…真姫なんか最初は1往復するのが精一杯だったのに、なんだかんだ最終的にはみんな完走してたわ」
亜里沙「私も、毎日のようにこの階段を昇った…最初は毎日吐きそうになったりしてた」
亜里沙「だけど、お姉ちゃんたちに追い付きたい、憧れのμ'sに追い付きたい、追い抜きたい。その一心で、3年間。ここを走り続けた…」
絵里「…伝統みたいでいいわね。音ノ木坂スクールアイドルの」
亜里沙「ねえお姉ちゃん。競争しようよ」
絵里「はあ?」
亜里沙「お姉ちゃんが勝ったら、全部許してあげる」
絵里「む…無理に決まってるじゃない!ついこの間まで現役だった亜里沙に勝つなんて。私は全然運動なんてしてないし」
亜里沙「もちろんハンデをあげるから」
絵里「ハンデ?」
亜里沙「お姉ちゃんは、15段上からスタートしていいよ」
絵里「15段……」
亜里沙「さらに」
絵里「?」
亜里沙「私は階段の20メートル後ろからスタートする。これならお姉ちゃんでもいい勝負になるんじゃない?」
絵里「」ピクッ
絵里「亜里沙…いくらなんでも私をなめすぎじゃないかしら。運動神経はそこそこあるのよ?」
亜里沙「そう?私はこれでも勝てる自信あるけど」
絵里「……言ったわね」
絵里「見てなさい…かつてKKEと呼ばれたこの私を見くびったツケ…目にもの見せてあげるわ」
「よーいドン!」
絵里「てやっ!」ダッ
亜里沙「はっ!」ダッ
絵里(あれ…今のスタートの合図、亜里沙の声じゃなかったような……?)
階段上
絵里「はあ、はあ、はあ……」
絵里「ば…ばかな……あれだけのハンデをもらって…負けるなんて…」
絵里「…しかもたったこれだけの距離で、こんなに息が……上がるなんて…」
絵里「…だめ。スタミナが……よく考えたら、最近ほとんど何も食べてないから…」
「はい。これあげる」
絵里「あ、ああ、ありがとう……」
絵里「!!」
絵里「穂乃果!?なんでここに!?」
穂乃果「お腹減ってるんでしょ?早く食べなよ」
絵里「え?え、ええ…」
絵里「これ…私がよく買ってたお饅頭…」
穂乃果「以前はよく買ってくれてたよね。絵里ちゃんはそれが好きなんでしょ?」
絵里「穂乃果……」
パクッ
絵里「……」
絵里「……美味しい」
絵里「…なんで」
絵里「……なんでこんなに美味しいのよ…」
絵里「お饅頭って、こんなに美味しいものだったなんて……」
亜里沙「お姉ちゃん…」
花陽「はい。特製おにぎりだよ」
絵里「花陽……」
凛「うちの店長特製の味噌ラーメンだにゃ!…といってもカップ麺だけど」
絵里「凛……」
海未「ローソンブランドのデザートスイーツです。こう見えてかなり好評なんですよ」
絵里「海未……」
ことり「はい。飲み物も必要でしょ。スポーツドリンクだよ」
絵里「ことり……」
にこ「ほら。にこにー特製の手作り弁当。特別に作ったんだから」
絵里「にこ……」
真姫「…ちょっと被ってるけど、お弁当よ。専属シェフのお手製」
絵里「……真姫」
絵里「な、なんでみんなここに……?」
亜里沙「お姉ちゃん……気づいてるでしょ?」
亜里沙「やっぱりみんなは、誰もお姉ちゃんのことを見捨てたりしない」
亜里沙「共に戦った仲間だから……仲間が苦しい時は助ける」
亜里沙「当然じゃない」
絵里「仲間……でも、私は、みんなを裏切って……たかって……あげくのはてに、犯罪まで……」
絵里「こんな私でも、まだ、仲間と……呼んでくれるの?」
海未「…どうやら絵里は、私たちを見くびっているようですね」
ことり「私たちはμ'sだよ?」
真姫「μ'sは一人でも欠けたら成立しない」
凛「むしろ勝手に仲間から抜けるなんて、逆に許されないよ」
花陽「うん。私たちには、絵里ちゃんが必要なんだよ」
にこ「μ'sの活動は終わったかもしれないけど、その魂は確かに私たちの中に生きているわ」
穂乃果「そしてそれは、ずっと消えない……どんなことがあってもね」
絵里「……みんな」
希「じゃあウチからはこれをみんなにプレゼントや」
絵里「希!?あなたまで……」
絵里「これは……絵馬?」
希「懐かしいやろ?これも」
絵里「……ええ」
穂乃果「よし、じゃあ、またあの時みたいに、みんなで願いを書こう!」
雪穂「……いいね、仲間って」
亜里沙「雪穂ちゃん…」
雪穂「まあ、私には亜里沙がいるし、別に羨ましいとかないけど…」
亜里沙「……ふふっ」
雪穂「それはそうと、亜里沙ちょっと大人気ないよ。全力疾走だったでしょさっきの」
亜里沙「そりゃそうだよ。私は勝負ごとには手を抜かないから」
雪穂「…ま、亜里沙らしいか」
亜里沙「まあ私も、まさか雪穂ちゃんがスタートの合図をするのは予想外だったから、それでちょっとスタート遅れたけどね」
雪穂「いやー一度やって見たかったんだよね。スターターってやつ。夢が一個叶ったよ」
亜里沙「なによその夢」
雪穂「ははは」
亜里沙「あはは」
絵里(私は…全てなくしたかと思っていた)
絵里(でも、私の大切な仲間は、誰一人私を見限ってはいなかった)
絵里(それに気づけず、墜ちていった日々……)
絵里(こんな私さえも、支えてくれる仲間が、家族がいる)
絵里(これって、素晴らしい。ハラショーなことよね)
絵里(私は、最高の仲間に恵まれた)
絵里(だから、もう迷わない)
絵里(もう二度と、誰かを悲しませることはしない)
絵里(ギャンブル依存症は、完治が難しい病気なのかもしれないけど、不可能でもない)
絵里(いや、きっと乗り越えられる。この仲間と一緒なら…)
絵馬「この仲間たちと、いつまでもずっと一緒に生きていたい。絢瀬絵里」
翌年、春
亜里沙「お、お姉ちゃん…ど、どうかな…この格好」
絵里「…ハラショーよ。今、間違いなく世界一美しいわ」
亜里沙「そんな…ウェディングドレスじゃないんだよ?大袈裟すぎるよ」
絵里「……しかし驚きだわ。我が妹が、まさかWSD大学の政経学部に通うことになるなんてね。しかも現役合格」
亜里沙「まあ…一応、夢も見つけたし」
絵里「亜里沙なら、アイドル方面でもやっていけると思ったんだけど…」
亜里沙「まあ、アイドルも確かに捨てがたかったけど、やっぱり私、変えたいから」
絵里「……そう」
亜里沙「政治家を目指して、ギャンブルに溺れる人たちが少しでもいなくなるような国をつくる。それが今の私の夢」
絵里「…あなたならきっとできるわ。なんたって、私の妹なんだから」
亜里沙「あっ!いけない!遅れちゃう!」
絵里「えっ?あっ、私も!」
亜里沙「じゃあお姉ちゃん、先に出るから!」
絵里「行ってらっしゃい亜里沙。頑張るのよ」
バタン
絵里「……さて、私もバイトに出かけなきゃ」
絵里「朝から昼過ぎまで海未のコンビニ、それが終わったら、夕方から夜までことりの喫茶店」
絵里「週末は凛のラーメン屋で通し勤務……」
絵里「4月一杯は休みなし、か…」
絵里「ま、仕方ないわね。日中仕事漬けなら、ギャンブル行く暇もないだろうって、亜里沙に荒療治かけられてるし」
絵里「しかも給料が振り込まれる口座は全て亜里沙が管理。現金は一切所持禁止。買い物や食事は全て電子マネー」
絵里「ガチガチに縛られた生活だけど……やっぱり清々しいわね」
絵里「っと、いけない。遅刻なんてしたら怒られちゃうわ」ドタドタ
バタン
……
絵里「急がないと……」タッタッタッ
「………」
英玲奈「絢瀬絵里。なんとか自分の暮らしを持ち直したようだな」
英玲奈「それでいい。君はそっち側の人間だ」
英玲奈「このまま周りの人間のサポートがあれば、きっといつか、ギャンブル依存症を克服できる」
英玲奈「……あいつみたいな末路にだけはならないだろう」
英玲奈「一応本編はこれで終わりだ」
英玲奈「だが、番外編とでも言えばいいのだろうか。話はもう少しだけ続く」
英玲奈「よければ、もう少し、お付き合い願いたい」
時は遡り、とある日……
英玲奈「私としたことが寝坊とは……昨日の下見が台無しだ」
英玲奈「奇跡的にまだ手付かずかもしれないが、ライバルが多い店だからな……」
ウィーン
英玲奈「…やはり座られているか。まあここは前日回転数の少ない台を露骨に上げてくる分かりやすい店だからな。寝坊した私が悪い」
英玲奈「一応挙動だけでも見ておくか。データカウンターにスランプグラフが表示されているから、それを見て……」
英玲奈「……うーむ。マイナスか。だが、初当たりは良さげだな。単に引き弱か……」
「ちょっとあなた?さっきから人の台をじろじろ見て、気持ち悪いんだけどやめてくれないかしら?」
英玲奈「あ、ああ、すまない……」
英玲奈「ん?」
「あ」
英玲奈「な……なんで君がここに……」
英玲奈「優木あんじゅ」
あんじゅ「な、なんでフルネームなのよ…英玲奈」
英玲奈「まさか、君にこんな場所で会うとはな…」
あんじゅ「くすっ。ほんとよね。一世を風靡したあのスクールアイドルが、まさかこんなこの世の果てみたいな場所で出会うとはね」
英玲奈「……言葉の割には、嬉しそうだな……」
あんじゅ「そりゃあ青春を一緒に過ごした仲間とまた出会えたんだもの。嬉しいに決まってるじゃない」
英玲奈「…ここにはよく来るのか?」
あんじゅ「そうねえ。まあ来るっちゃあ来るけど、近隣の3、4店舗をローテーションみたいな感じかな?」
英玲奈「そうか……」
あんじゅ「ねえ、もしかしてこの台打ちたかった?」
英玲奈「え?」
あんじゅ「だってさっきじろじろ見てたし」
英玲奈「あ、ああ…」
あんじゅ「あげよっか?なんか出ないし」
英玲奈「へ?」
あんじゅ「私こう見えてあまり気の長い方じゃないから、もう飽きちゃった。まあ悪い台じゃなさそうだし、もしよかったらあげるわ」
英玲奈「…い、いいのか?赤の他人なら喜んでもらうところだが、これはかなり上の期待ができる台だぞ?」
あんじゅ「いいよ別に。だって上だからって出るとは限らないし」
英玲奈「それはそうだが…」
あんじゅ「まあいらないならいいけど。どっちにしろ私はこれは辞めるわ。アラジン打ちたくなっちゃったし」
英玲奈「…そうか」
あんじゅ「それじゃあね」
英玲奈「……」
英玲奈「…このサラリーマン番長の履歴、青ボーナスが続いてるな…前回の頂も青……まさか、ブルーレジェンド中じゃないのか?」
閉店
英玲奈「…ふう。なんとか波をつかんだな…5000枚取りきれず、か。BB70Gは確認出来なかったが、まあ上なのは間違いなさそうだ。やはりこの店は食える」
英玲奈「あんじゅは……」
英玲奈「さすがにもういないか……アラジンは全台爆死してるな…まさかこれ打ってたのか…」
英玲奈「……まあ余計なお世話か。人には人の打ち方があるからな。しかしあんじゅはあんな朝から打っていたとは、仕事はしていないのか?打ち方からしてこれで稼いでいるとは思えないし……」
英玲奈「まあいい。帰ってデータ確認しよう。明日は駅前の旧イベント日だからな」
翌日
英玲奈「100人くらいはいるか……まあいい。昨日は寝坊してしまったが、今日は間に合っ……」
あんじゅ「あらー、英玲奈。今日はこっちの店?」
英玲奈「あんじゅ?まさか打ちにきたのか?」
あんじゅ「もちろん。ローテーション的には今日はこの店だしね」
英玲奈「ローテーション……」
あんじゅ「それより見てよ。入場抽選1番だよ。超ラッキー」
英玲奈「ほう。それは強運だな。狙いは絞ってるのか?」
あんじゅ「もちろん。新台のブラックラグーンに行くわ」
英玲奈「なに……?言っちゃ悪いが、この店は、新台は1週間は完全に回収だぞ?おととい入ったばかりの新台を打つのか?」
あんじゅ「問題ないわよ。どうせ今の台なんてヒキでどうにでもなるし、設定なんていちいち気にしてたら楽しめないし」
英玲奈「……そうか」
あんじゅ「それに昨日は7万も負けちゃったから、それをまくらなきゃ」
英玲奈「7万……」
あんじゅ「ま、お互い頑張りましょう」
英玲奈「……」
1時間後
あんじゅ「英玲奈…お金貸してくれない?」
英玲奈「?」
英玲奈「…まだ1時間しかたってないぞ。もう尽きたのか?」
あんじゅ「うん。2万しか持ってきてなくて」
英玲奈「2万だけで新台打ちにきたのか……」
あんじゅ「お願い。爆発させて返すからさあ」
英玲奈「……ちょっと待て」
あんじゅ「?」
英玲奈「貸すのはいいが……条件がある」
あんじゅ「え?まさか、倍にして返せ、とか?」
英玲奈「そうじゃない。あんじゅの今の立ち回りははっきりいって勝てる立ち回りとは言えない。そんな立ち回りでは結局負けるのがオチだ」
英玲奈「パチスロは確かに運の要素が大きいが……その運を生かす立ち回りをしなければ、勝てるものも勝てない」
英玲奈「だから……私の指示に従ってもらう。これが金を貸す条件だ」
あんじゅ「えー?」
英玲奈「できないなら、残念ながら貸せないな」
あんじゅ「…わかったわよ。従うわ」
英玲奈「……今の段階で辛うじて打てるのはこれか」
あんじゅ「…なにこれ。蒼天の拳?」
英玲奈「今日300G回って当たりなし。昨日は270G回って閉店している。この店は上げ下げ以外の変更はしないから、あと200くらい回せば天井だ」
あんじゅ「え、でも、変更してる可能性だって…」
英玲奈「ここはバラエティーコーナー。この店はバラエティーははっきりいって撤去待ちの数あわせみたいなもので、回収専用だ。もちろん変更などしない」
あんじゅ「よくそんなことわかるね」
英玲奈「パチスロはデータと情報の戦いだ。2年以上この店に通っているから、そこらへんは間違いない。今日店長が変わったとかいうなら話は別だが、そんな様子もないしな」
あんじゅ「うーん、でも、なんかつまらなそう。いかつい男ばかり出てくるやつでしょ?私あんまり好きじゃないなあ」
あんじゅ「あっ、これは?ほら、なんか可愛い女の子一杯出てくるような台だよ?」
英玲奈「マジカルハロウィン4か。ダメだな。昨日100Gヤメで今日はまだ回っていない。完全に打ってはいけない台だ」
あんじゅ「えー……」
英玲奈「すでに設定が狙えそうな台はあらかた抑えられている。こういう時はゾーンや天井を狙うのが鉄則だ」
英玲奈「もちろんそんな台などなかなか落ちているものではない。そういう時はひたすら待つ。待ってダメなら打たない」
英玲奈「収支を少しでもプラスに持っていきたいなら、無駄打ちはしない」
英玲奈「打つことより、打たないことの方が重要なんだ。負けてる人間の大多数は、無駄打ちで負債を抱えている」
英玲奈「もちろん自分の金で打つのなら自由だが、私の金を使う以上、これは守ってもらうぞ」
あんじゅ「……わかったよ。これを打つよ」
英玲奈「そもそもこの台ですら見つけられたのがラッキーだからな」
あんじゅ「はーい」
1時間後
英玲奈「うーむ……旧イベントの2分の1で上の機種はこれで間違いなさそうなんだが……どうやら2分の1を外したようだな」
英玲奈「ヤメよう」
英玲奈「さて、あんじゅの様子は……」テクテク
英玲奈「………おい。なぜ隣の台を打っている?」
あんじゅ「あっ、英玲奈。見てみて。すごい上乗せして、ほら、残り250Gも!」
英玲奈「…なぜ隣の台を打っている、と聞いているんだ」
あんじゅ「いや、そっちも打ったよ?あのあとすぐ当たってさ、すぐ終わっちゃって」
英玲奈「それはよくある話だが……無駄打ちをするなと言っただろう?」
あんじゅ「別にいいじゃん出てるんだし。英玲奈に借りたお金も確実に返せるしさ」
英玲奈「……あんじゅ。さっきのお金は返さなくていい」
あんじゅ「え?」
英玲奈「そのかわり二度と私にせびるな。言うことが聞けないなら助けることはできない」
あんじゅ「英玲奈……なによ。自分が調子悪いからって八つ当たり?カッコ悪いよ?」
英玲奈「……」
あんじゅ「じゃあありがたくお金は貰うね。英玲奈ももう少し楽しんで打てばいいのに」
英玲奈「…さらばだ」
午後7時
英玲奈「結局あの後打つ台は見当たらず……まあいい。出てる台は出てる。やはりこの店は信頼できる」
英玲奈「さて、他店の様子でも見に行くか…」
ウィーン
英玲奈「ん?あれは…あんじゅ。さすがにもうヤメたか?」
英玲奈「…いや、違うな。電話をしているようだ」
あんじゅ「ごめーん店長。急用できたから今日は休むね」
あんじゅ「…仕方ないじゃん。予定外の出来事が」
あんじゅ「…え?当日欠勤が多すぎるからクビ?」
あんじゅ「……ふん。わかったわよ。どうせそんな店未来はないし、望みどおりやめてあげるわ」
あんじゅ「あっ、英玲奈……」
あんじゅ「……」
英玲奈「……仕事の電話じゃなかったのか?」
あんじゅ「……辞めてやったわ。手が離せない状態なのに店長ったら理解してくれないんだもの」
英玲奈「いや…それは向こうが正しいと思うが…」
あんじゅ「だってあんなに出てる台をやめるわけにはいかないし。どうせ仕事なんてまたすぐ見つかるわよ」
英玲奈「あんじゅ……いつからそんな適当な人間に」
あんじゅ「何?説教?英玲奈まで?あんただってスロプロなんかやって、世間的には底辺の存在じゃない。そんな人間に説教される筋合いはないわ」
英玲奈「あんじゅ……」
あんじゅ「んじゃあ私はあの台の続き打つから、じゃあね」
英玲奈「……」
1ヶ月後
英玲奈「朝の10時か……」
英玲奈「普段なら寝坊だが今日は何せグランドオープン店があるからな。12時に間に合えば問題ない」
英玲奈「さて、シャワーを……ん?」
Prrrr
英玲奈「電話?こんな時間に一体誰が……」
英玲奈「!!…ツバサ!?」
英玲奈「もしもし?」
ツバサ「もしもし?綺羅ツバサですが、統堂英玲奈さんのお電話でしょうか?」
英玲奈「…そうだ。久しぶりだな」
ツバサ「おはよう。久しぶりね、英玲奈」
英玲奈「珍しいなツバサから電話をかけてくるとは。一体どうしたんだ?」
ツバサ「いえ、実はちょっと聞きたいことがあって」
英玲奈「なんだ?」
ツバサ「あんじゅのことなんだけど…」
英玲奈「!!」
ツバサ「最近あんじゅと会ったりとかした?」
英玲奈「…1ヶ月前、街で偶然会ったが…」
ツバサ「そう……その時の様子とかはどうだった?」
英玲奈「様子と言われても……別に少し言葉をかわした程度だからな…何かあったのか?」
ツバサ「いえ…最近、あんじゅからしきりに、お金を貸してほしいと連絡がくるようになって……」
英玲奈「なん……だと?」
ツバサ「英玲奈の方にも言ってないかしら、と思って、気になったの…」
英玲奈「…そうか…あんじゅが」
ツバサ「あんじゅ、大丈夫かしら。一応生活できる分は貸したんだけど…」
英玲奈「なに!?貸したのか!?」
ツバサ「え?ええ」
英玲奈「……ちなみにいくら貸したんだ?」
ツバサ「2回貸して、計10万よ」
英玲奈「…………そうか」
ツバサ「今は別々の道だけど、青春を共にした仲だもの。簡単に放っておくことはできないわ」
英玲奈「そうだな……仲間だもんな」
Prrrr……
英玲奈「…くそ、出ないか、あんじゅのやつ」
英玲奈「…まさかツバサにまでせびるとは……これはまずいな。あんじゅのやつ」
英玲奈「おそらく…完全なギャンブル依存症だ。誰かが止めないと……」
英玲奈「…私が止めなければ……」
英玲奈「だが、ギャンブルで生計を立てている私が言って説得力があるだろうか?」
英玲奈「……考えても仕方ない。出ないのなら探すしかない。都合よくグランドオープン店がある。ギャンブラーなら放っておかないだろう」
英玲奈「私も行く予定だったし、とりあえず行くしかないか」
開店前
英玲奈「…こう人が多くては、仮にあんじゅがいたとしてもわからない。そもそもいるのか?」
英玲奈「……ん?あれは……」
絵里「アライズの統堂英玲奈!」
英玲奈「絢瀬、絵里。だったか。μ'sの」
絵里「な、なんであなたがここに?」
英玲奈「なんで?そんなこと理由は1つしかないだろう」
絵里「まさか…打ちに?」
英玲奈「当たり前だ。私の格好が店員に見えるか?」
絵里「あ、あのアライズのメンバーがパチンコ屋に……」
英玲奈「そういう君も、しっかり抽選を受けてるじゃないか。君もグランドオープン狙いか?」
絵里「え?あ、いや、その、私は……」
英玲奈「??」
絵里「あの……なぜあなたがこんな場所に…っていうか、ギャンブルを…」
英玲奈「そうだな……まあ、仕事だ」
絵里「仕事??」
英玲奈「今私はこれで生計を立てている。いわゆるプロだ。ま、世間的に見たらただの無職なんだがな」
絵里「あ、あなたが、パチプロ?」
英玲奈「スロプロだ。パチンコは打たない」
絵里「そうなの…私と一緒ね」
英玲奈「君もスロプロやっているのか?」
絵里「い、いや、私はプロじゃ……」
英玲奈「趣味か。まあそれが無難だろうな。この世界で食べていくのは想像以上に難しい」
英玲奈(まさかこんなところでμ'sのメンバーに会うとはな……まさか彼女も…)
英玲奈(まさか……というか今はそれどころではない。あんじゅのことが先決だ)
開店
英玲奈(台をキープした後一通り店内を見て回ったが、あんじゅはいない…)
英玲奈(…しかしあんじゅがどこにいるかわからない以上、出現する可能性のあるこの店から動かない方が良さそうだな)
英玲奈(……もちろん、しっかり仕事はする)
英玲奈(とはいえ、この満席状態だ。この台がだめだったら撤退しかないがな)
それから数日後……
英玲奈「結局あんじゅとは出会えないままでいる…今朝電話してみたら、繋がらなくなってしまっていた…」
英玲奈「あんじゅ…どこにいるんだ。なぜ電話が繋がらないんだ……」
英玲奈「ツバサも色んなコネを使って探しているようだが、手がかりはなし…」
英玲奈「あの店で待っていても来そうにない。他店を巡って探してみよう」
街中
英玲奈「はあ……なかなか見つからない」
英玲奈「当たり前か…そう簡単に見つかったら苦労はしない」
英玲奈「だが、苦労してでも見つけなければ、手遅れになる」
英玲奈「そんなことは…絶対にさせない」
英玲奈「……しかし、まさかあんじゅ以外にも依存症の人間がいるとは…絢瀬絵里」
英玲奈「連絡先は聞いておいたから、何かあったら対応はできる」
英玲奈「幸い彼女は勝っているようだし、すぐに悲惨な状態にはならないだろう」
英玲奈「……ん?」
「ん?」
海未「やはり……あなた、元アライズの統堂英玲奈さんですね?」
英玲奈「おや、たしか、園田海未、だったか?」
海未「ええ。お久しぶりです」
英玲奈「久しぶりだな。日曜日の昼に、こんなところを歩いているとは、もしやデートか?」
海未「は!?!?で、でで、デート!?な、なな、何を…そんなわけないでしょう!?」
英玲奈「ただ聞いただけなのに慌てすぎだ……」
海未「私はこれからバイトです!そういうあなたこそ一体何を!」
英玲奈「私か?私は店巡りだ」
海未「店巡り?」
英玲奈「ああ。番号が悪かったから他にいい台があるか近隣の店を様子見がてら巡っていたんだ」
海未「???言ってる意味がよくわからないのですが……」
英玲奈「ん?ああ、そうか。すまない。てっきりμ'sのメンバーはみんな詳しいのかと勘違いしていたよ」
海未「はあ……?」
海未「すみませんが、μ'sがみんな詳しいとは、どういう意味ですか?」
英玲奈「最近向こうの大型パチンコ店がオープンしただろう?そこで絢瀬絵里に出会ってな」
海未「……えっ」
英玲奈「まあみんな詳しいというのは私の早とちりだ。許してくれ」
海未「…どこですか」
英玲奈「ん?」
海未「そのパチンコ店はどこにあるんですか!?」
英玲奈「な、なんだいきなり……」
海未「お願いです!私をそこに案内して下さい!」
英玲奈「なに?まさか君も…」
海未「違います!絵里です!絵里を助け出さなければ!」
英玲奈「助け出す…?」
海未「絵里は……私たちの大切な仲間です…ついこの前まで入院していたはずですが…やはり行ってしまったのですね」
海未「絵里はギャンブル依存症なんです。このままでは破滅してしまいます!絵里には大事な妹もいるんです!仲間として、見過ごすことなどできません!」
英玲奈「……海未」
英玲奈「……わかった」
英玲奈「しかし君はバイトはどうするんだ?無断欠勤はさすがにまずいと思うが」
海未「はっ…!そういえばバイトが……」
海未「……」
海未「しばしお待ちを。私に考えがあります」
英玲奈「?」
ゴソゴソ
海未「もしもし穂乃果ですか?はい、今は家ですか?はい、突然ですが今から指定する場所に来てください。理由はあとで説明します」
海未「…すみませんが借りたDVDを見るのは後にして下さい。こちらは緊急を要する用事ですので……はい……はい、お願いします」
英玲奈「…?電話か?」
海未「今からここに穂乃果がきます。おそらく私より適任です」
海未「申し訳ないですが、英玲奈さんは、穂乃果を絵里のところへ連れていってあげてください」
英玲奈「…人使いがあらいな」
海未「申し訳ありません。しかし、絵里のためですので」
英玲奈「その後、私は合流した高坂穂乃果を絢瀬絵里の元へ送り届けた…」
英玲奈「おそらく、μ'sのメンバーも、絢瀬絵里をギャンブル依存症から救うために尽力しているのだろう」
英玲奈「結末は見届けなかったが、絵里にはこんなにも思ってくれる仲間がいる」
英玲奈「きっといつか…長い道のりでも、そこから抜け出すことはできるだろう」
英玲奈「しかしこちらは…」
英玲奈「肝心のあんじゅは居場所すらわからない」
英玲奈「電話も繋がらない。諦めるしかないのか……」
英玲奈「ん?」
「はあはあはあ、あ、あんた…」
英玲奈「君は…」
英玲奈「μ'sの矢澤にこ?」
にこ「アライズじゃない。はあ、はあ、こんな場所で会うなんて……」
英玲奈「…というか、なぜそんなに息を切らせているんだ?」
にこ「走って、来たからよ、はあ、はあ、車もないしね」
英玲奈「そんなに急いでどこに行くんだ。というか、やたらとμ'sのメンバーに会う日だな今日は」
にこ「?誰かに会ったの?」
説明中
にこ「そう……穂乃果が行ったなら、まあ大丈夫かしら」
英玲奈「随分と信頼あるんだな、君らのリーダーは」
にこ「伊達にリーダーやってたわけじゃないからね。絵里をμ'sに引き入れたのも穂乃果だし」
にこ「それじゃあ私が急いで行くこともないわね」
英玲奈「そうか…君も絵里の元へ」
にこ「まあ、元は私の認識不足が招いた事態だし……」
英玲奈「……幸せ者だな。絵里は」
にこ「そういえば、私もさっきアライズのメンバーに会ったわよ。いや、会ったというよりは、見たと言うべきか…」
英玲奈「……なに?」
にこ「向こうの商店街で……確か、優木あんじゅ、だったかしら」
英玲奈「なん……だと?」
にこ「私も急いでたから、話しかけはしなかったんだけど…なんか、すごい思い詰めたような顔してトボトボ歩いてたわよ」
英玲奈「……」
商店街
英玲奈「はあ、はあ、はあ、あんじゅ、一体どこに……」
ツバサ「英玲奈!」
英玲奈「ツバサ…久しぶり…と、今は感傷に浸っている場合ではないな」
ツバサ「ええ、早くあんじゅを」
ツバサ「ん?」
英玲奈「どうした?」
ツバサ「あれ……あそこにいるの、あんじゅじゃない?」
英玲奈「なに?」ジーッ
英玲奈「…見つけた!だが…」
ツバサ「…誰かと話しているようね」
英玲奈「男か…?知り合いか?」
ツバサ「とにかく、見つけたわ!早く行きましょ!」
英玲奈「あ、ああ!」
英玲奈「あんじゅ!」
あんじゅ「……!」
あんじゅ「あら…二人そろって、まさかのアライズ大集合ね」
ツバサ「…探したわよ」
あんじゅ「ツバサ…お金の徴収かしら?ならもう少し……」
ツバサ「そんなことはどうでもいいのよ!あなた…やつれた顔して…」
英玲奈「……くっ。こんなになるまで気づけなかったなんて…」
あんじゅ「大丈夫よ心配いらないわ。ちょうどお金の宛ができたところだし」
英玲奈「なに?」
あんじゅ「この人の話を聞いてるとね、凄いのよ。1回仕事しただけで、ウン10万も稼げるんだって」
ツバサ「は……1回の仕事でウン10万?」
英玲奈「そんな美味しい仕事あるわけ……」
英玲奈「…おい、まさか」
ツバサ「あんじゅ。それだけはやめなさい。絶対にダメよ」
あんじゅ「なによ二人して。私の気持ちなんてわからないでしょ?私気付いたの。この世で一番大切なものは命。その次は…お金だって」
英玲奈「おい!あんじゅ!」
あんじゅ「お金なんかより大切なものがある?そんなもの、お金に余裕がある人のきれいごとよ。友情も愛情も、ある程度の財産があって初めて成立するの」
あんじゅ「たとえばお金がないホームレスの人を好きになれる?友達になれる?無理でしょ?」
あんじゅ「お金がなければ、生きることすら難しいの……ねえ、あなたたち、公園で寝たことはある?」
ツバサ「……」
あんじゅ「ないわよね。ない人にはわからないわよ。きれいごとだけでは、生きていけない」
あんじゅ「もちろんこの生き方をして後悔してるわ……アライズで天下を極めたあの私が、完全なる堕落の人生…けど、どんなに後悔しても時間は巻き戻らないし、魔法なんて使えない」
あんじゅ「だから、私は、もうこの道を選ぶしかないの。だって、死ぬわけじゃないし、大金も手に入る」
あんじゅ「…さよならね」
男「話は済んだかい?あんじゅちゃん」
あんじゅ「ええ。行きましょ。新たな人生のステージへ」
英玲奈「待て!あんじゅ!」ガシッ
あんじゅ「離してよ!」バッ
英玲奈「まだ遅くない!そんな道を選ばなくても、やり直せる!」
英玲奈「私たちはアライズだ!最強のアイドルグループだっただろう!?」
ツバサ「私が…私たちが、あなたをきっと救ってみせるから!だからお願い!行かないで!」
英玲奈「あんじゅ!」
あんじゅ「……英玲奈、ツバサ…」
あんじゅ「…ふふ。あなたたちと一緒に生きれてよかったわ。きっと忘れない」
あんじゅ「……じゃあね」
ツバサ「!」
英玲奈「!」
バタン…ブロロロ……
英玲奈(最後に見せたあんじゅの悲しい瞳に、思わずたじろぎ、私たちはあんじゅを止めることができなかった)
英玲奈(そして……その後、優木あんじゅの行方を知る者は、誰もいない…)
20年後……
とあるテレビ局
絵里「おはようございます」
女キャスター「おはようございます。絢瀬さん」
ディレクター「今日はよろしくお願いします」
絵里「はい」
ディレクター「これが今日の進行スケジュールとゲスト一覧、相談内容です」
絵里「ありがとうございます」ペラ…
絵里「ん?…」
絵里「この名前……見覚えが…」
女キャスター「さあ、始まりました。年末特番『あの人に会いたい』。過去に生き別れた家族や、無慈悲に引き裂かれた恋人などを、番組が勢力をあげて探す番組です」
女キャスター「今日私と一緒に、番組の進行、そして相談者の人生を見つめて下さるのは、エッセイストの絢瀬絵里さんです」
絵里「よろしくお願いします」
女キャスター「それでは早速1人目の相談者の登場です。どうぞ!」
スタスタ
女キャスター「雑誌出版社のライターをやっている、統堂英玲奈さんです!」
絵里「……英玲奈」
女キャスター「統堂さん、よろしくお願いします」
英玲奈「お願いします」
女キャスター「統堂さんの会いたい人とは……こちらです」
スクリーン「20年前、ギャンブル依存症で行き場を失い、行方不明になった友人に会いたい!」
絵里「……ギャンブル依存症…」
女キャスター「そういえば絢瀬さんは、ギャンブル依存症に関するエッセイを多数出版されてましたね」
絵里「え?ええ…」
女キャスター「具体的にギャンブル依存症とはどういうものなんですか?」
絵里「そうですね……簡単に言うと、生活の中で、物事の優先順位の最上位にギャンブルがある状況ですね…」
絵里「ギャンブルのことが少しでも頭をよぎると誘惑に負けてしまう。大勝したときの快感が忘れられない」
絵里「人によってレベルはありますが…重度なら、生活費すらギャンブルにつぎ込み、借金などをしてまたギャンブル、と、首が回らなくなってしまうこともあります」
女キャスター「そうですか……統堂さんは、このご友人とはどのようなご関係で?」
英玲奈「高校の友人です。人生で最も濃密な瞬間を共に過ごした、かけがえのない仲間です」
女キャスター「では再現VTRをご覧下さい。どうぞ」
VTR鑑賞中
絵里(英玲奈の高校時代の友人……VTRでは友人Yと紹介されてるけど…まさか……)
絵里(私も以前はギャンブル依存症だった……みんなが協力してくれて、亜里沙が政治家になって頑張ってくれてるおかげで、大分規制が厳しくなって、私は引退できたけど……)
絵里(一歩間違えたら私もこうなってたのね……)
VTR終了
女キャスター「さて、ご友人Yさんですが、番組スタッフが勢力を挙げて探しました」
女キャスター「統堂さんの会いたいという願いが届いていれば、あちらのカーテンの奥から、Yさんが現れます」
女キャスター「それではカーテンの方……お願いします!」
英玲奈(あんじゅ…頼む)
絵里「……」
シャーッ
ガラーン……
英玲奈「……」
女キャスター「…スタッフが全力でYさんを探した結果…」
女キャスター「Yさんを発見することはできませんでした」
女キャスター「統堂さんの証言を元に、探偵などにも依頼しましたが、足跡は掴めず…」
英玲奈「…そん……な……」
女キャスター「エッセイストの絢瀬さん…残酷な結末ですが…何か意見はありますか?」
絵里「…今も、減少したとはいえ、ギャンブル依存症の人は沢山います」
絵里「その全ての方に、このようなことになる可能性があるのです」
絵里「ギャンブル依存症は心の病。簡単に治る病気ではありません」
絵里「しかし、周りの方たちの支援、協力、そして本人の意思があれば、きっと回復できます」
絵里「…今回はとても残念な結果ですが、私は、全世界から、ギャンブル依存症の患者がいなくなることを、心からねがっています」
【SS】絵里「私がギャンブル依存症?」
END
長編になりましたが、読んで下さった方ありがとうございました。
絵里ファンの方、そしてアライズが好きな方にはかなり心苦しい展開だったと思います。すみません。
一応、おまけエピソードがこの後ちょっとあります。これは本編とはあまり関係ありません。
私の拙い文章力や構成力で不便をおかけしたかと思いますが、本当にありがとうございました。
EXTRA EPISODE
亜里沙「私がアイドル研究部の部長?」
※本編とはあまり関係ありません
司会「優勝は…音ノ木坂学院アイドル研究部です!」
真姫「嘘……!」
凛「や、やったあ!2年ぶりの日本一にゃ!」
花陽「……私たちが、優勝?」
亜里沙「…ハラショー。さすが先輩たちだね」
雪穂「うん。三年生3人と二年生5人、一年生1人の9人編成ってところがμ'sっぽいなあ」
亜里沙「…やっぱり敵わないなあ。μ'sには」
雪穂「…本音を言えば、私だってあの舞台に立ちたかったけど」
雪穂「でも全員が納得して決めたグループ分けだし、まあやっぱり元μ'sのメンバーがいるあのグループは凄かったよ」
亜里沙「…あの3人が引退したら、どうなるんだろ」
雪穂「え?」
亜里沙「だってμ'sのメンバーはこれで全員いなくなっちゃうんだよ?μ'sの功績で部員は増えたけど、私たちにはあの3人やお姉ちゃんたちみたいな凄いことできないよ……」
雪穂「亜里沙……」
司会「おめでとうございます!2年ぶりの日本一ですね!」
花陽「あ、ありがとうございます!」
司会「あの伝説と呼ばれたμ'sを受け継ぐ皆さんのステージ……素晴らしかったです」
真姫「…まあ、当然ですよ。私たちはいつも上を目指して練習してきましたから、μ'sも良かったけれど、あの時よりもさらに良くなったんじゃないかと思ってます」
司会「三年生にとっては最後の大会…いい花道になりましたね」
凛「はい!最高でーす!」
司会「チームには二年生や一年生もいます…来年以降も、期待していいですか?」
花陽「はい。私たちはこれで引退ですが、音ノ木坂のアイドルはこれからも輝き続けます。必ず。素晴らしい後輩がいるので、それは自信を持って言えます」
司会「しかし、全国的に有名になってから、小泉さんは二年間も部長を務めたということですが、色々苦労されたのでは?」
花陽「そうですね…最初は、先輩もいるのに私が部長なんて、って思っていましたが、案外、苦労はしませんでした」
花陽「後輩も、みんな確固たる決意を持って練習についてきてくれましたし、私はただその先頭を歩いていただけにすぎません」
花陽「凛ちゃんと真姫ちゃんもしっかりサポートしてくれたから、苦労よりも、楽しかったです」
凛「かよちん……」
真姫「花陽……」
司会「そういえば、音ノ木坂の新部長は部長の指名制だということですが、次の部長はもう決めているのですか?」
真姫「指名制……?いつからそんな制度が?」
凛「というか引き継ぎ自体まだ1回しかやってないけど」
花陽「そうですね……もう決めてます」
ザワッ
雪穂「へえー…花陽部長、もう次の部長決めてるんだって」
亜里沙「あの5人の中の誰かかなあ。あるいは私たちのグループリーダーの雪穂ちゃんかもね」
雪穂「私が部長?無理無理。花陽部長みたいにまとめる力もないし、頭も良くないし」
雪穂「なんかよくわかんないままグループリーダーになっちゃったけど、うちの血筋はリーダーにはなれるけど部長は無理だよ」
亜里沙「でも穂乃果さんは生徒会長やってたじゃない」
雪穂「それ言ったら亜里沙のお姉ちゃんだってそうでしょ?」
亜里沙「あっ…そうか」
雪穂「案外亜里沙部長なんてあるかもよ」
亜里沙「それこそ有り得ないよ。私なんて……」
雪穂「……そのマイナス思考さえなくなれば、最適だと思うんだけどな……」
花陽「じゃあせっかくなんで……この場で次期部長を発表します!」
真姫「えっ!?ちょ、花陽!?」
凛「かよちん、思いきったことするにゃ」
花陽「明日から、音ノ木坂学院のアイドル研究部部長は……」
花陽「絢瀬亜里沙です!」
雪穂「…亜里沙!亜里沙!」
亜里沙「…なに?」
雪穂「なにって、聞いてなかったの?次期部長亜里沙だって!」
亜里沙「え?何言ってるの?冗談は…」
雪穂「……本当に聞いてなかったんだ」
亜里沙「え?本当?冗談じゃなくて」
雪穂「花陽部長が冗談言うわけないでしょ。ましてやネットで生中継されてるんだから」
雪穂「…というわけだから、頑張ってね。新部長」
亜里沙「……」
亜里沙「…わ、私が……」
亜里沙「私がアイドル研究部の部長?」
翌日
亜里沙「あ、あの……どうして私が部長に?」
花陽「なんでって…適任だと思ったからだよ」
凛「そうだにゃ。亜里沙ちゃんなら立派な部長になれるよ」
真姫「同意ね。まあ花陽があのステージで発表したのはびっくりしたけど」
凛「うん。まさかヤフーニュースに載るとはね」
真姫「μ'sが優勝したときもヤフーニュースにはならなかったけどね」
雪穂「まあおかげで今日登校中に声かけられたりしてましたよ。亜里沙は。教室では話題の的でしたし」
花陽「ご、ごめんね亜里沙ちゃん……」
亜里沙「いえ、それは……」
花陽「でも理由は凛ちゃんや真姫ちゃんが言ったとおりだよ?亜里沙ちゃんは視野が広くてみんなを見ていて気を配れる。向上心もあって機転も効くし頭もいい」
花陽「それに……何より、アイドルに一生懸命なこと。だから亜里沙ちゃんが部長だよ」
亜里沙「…で、でも、私は、歌もあまりうまくないし、不器用で衣装もつくれない、ダンスだって上手くないし……雪穂ちゃんの方が、カリスマ性もあって、適任なんじゃ…」
真姫「あ、そうだ。雪穂。あなた、副部長ね」
雪穂「ぶえっ!?」
真姫「亜里沙にはないものをあなたは持ってる……亜里沙の唯一の悪い点は、すぐにネガティブになること。雪穂なら、それをサポートしてあげられるでしょ」
凛「うんうん。なんていうか、限界を打ち破れる力を持ってる気がするよ」
真姫「そこらへんはやっぱり穂乃果の妹ね……まあ、危なっかしくて部長には向いてないけど」
雪穂「げ、限界を破る力?わ、私が?」
花陽「とにかく私たちは引退。だけど、アイドル研究部の魂はいつまでも胸にあり続ける」
花陽「だから……亜里沙ちゃん。アイドル研究部は任せたよ」
亜里沙「……私が…」
花陽「あまり気負いすぎないようにね」
亜里沙「はい……」
亜里沙「しかし、不器用な私は気負いすぎて、空回りすることが多く、その結果。新チームで挑んだ春のラブライブは本戦に出場することすらできずに敗退してしまった」
亜里沙「辞退した初代μ'sの時代を除けば……初めてラブライブへの出場を逃した」
ガチャ
絵里「ただいまあ……」
絵里「!?く、暗っ!な、なんで…?あ、亜里沙あ…いないのお?」ビクビク
パチッ
絵里「ふう。…って、亜里沙!?電気もつけないで、何やってるの?座りこんで……」
亜里沙「……」
絵里「…亜里沙?」
亜里沙「お姉ちゃん……私、やっぱり部長なんて無理だよ」
絵里「亜里沙……どうしたの?」
亜里沙「私、アイドル研究部の歴史を汚しちゃった…」
亜里沙「ラブライブに出ることができなくなっちゃった…」
絵里「……そっか、今日は結果発表の日」
絵里(私はそんなことすら忘れていた……)
絵里「亜里沙」
亜里沙「私には無理だったのやっぱり!お姉ちゃんみたいに完璧人間じゃないし、花陽さんみたいにみんなをまとめる力もない。ないないない、なんにもない。アイドルとしての魅力も。やっぱり雪穂ちゃんが部長やった方が…」
絵里「亜里沙。聞きなさい」
絵里「完璧な人間なんて1人もいないのよ。亜里沙は私が完璧だなんていうけど、実際はそんなことなんてない」
絵里「私は昔……つまらない意地で、アイドル研究部を壊そうとしてたわ。今思えば本当にバカなことだけど、その時はそれが正しいことだと思い込んでた」
絵里「その時、そのことに気付けたのは、仲間がいたから。あんな私を、それでも受け入れてくれた仲間がいたから、私は救われたの」
絵里「完璧どころか、欠落だらけだったあの頃の私の、その部分をみんなが埋めてくれたから、だからμ'sという最高のグループができた」
絵里「人は誰しも完璧じゃない…むしろ、だからこそ、前を、上を向けるのよ。より良い明日に向かってね」
亜里沙「お姉ちゃん……」
絵里「亜里沙。別に部長だからって、完璧になる必要なんてないのよ。あなたは完璧を求めすぎてるのかもしれない」
絵里「μ'sを目指して……μ'sに並びたい。その一心で亜里沙が頑張ってきたことは私も知ってるわ」
絵里「でも、μ'sを目指す必要なんてないのよ?アイドルの形はそれこそグループの数だけある」
絵里「亜里沙は、亜里沙にしかできない、μ'sとは違う素晴らしいアイドルを目指せばいいじゃない」
絵里「亜里沙なら、いや、亜里沙たちなら、それができるはずよ。きっとそれは、μ'sをも越える、素晴らしいグループをね」
亜里沙「μ'sを…越える?」
絵里「そう。一つ言わせてもらうなら、亜里沙の中でμ'sは憧れ」
絵里「でも、憧れは憧れ止まりにしかならない。憧れの対象は決して越えられない」
絵里「だから、憧れの、さらに上を目指すのよ。限界点を定めずにね」
亜里沙「…わ、私に、そんなこと…」
絵里「私、じゃなくて、私たち、よ。みんなでやるの。そうすれば、できないこともできるようになる」
絵里「亜里沙はそのみんなの手を繋ぐ役。そう考えたら気が楽じゃない?」
絵里「今回は残念な結果だけど、時には負けないと見えないこともある。負けることは、勝つことより大きな意味をもたらすことだってあるんだから」
亜里沙「……」
絵里「…って、なんか偉そうに言ってみたけど、どうかしら。少しは気が晴れた?」
亜里沙「…うん。今考えたら、なんか悔しくて」
絵里「えっ?」
亜里沙「うん。悔しいよ。負けて。みんなも泣いてた」
亜里沙「あの景色はきっと忘れない……だから」
亜里沙「私は、もうみんなを泣かせたくない。泣くなら嬉し涙がいいもん」
亜里沙「決めたよ!私は、いや、私たちは勝つ!夏のラブライブは、絶対勝って、みんなで笑いながら泣くの!μ's以上の声援を受けてね」
絵里「ふふふ……さすが私の妹ね」
亜里沙「だから、お姉ちゃんも見にきてね!ラブライブには絶対出るから!」
絵里「えっ?あ、ああ、わかったわ。必ず行くわよ」
亜里沙「うん!約束だよ!」
絵里「……ええ」
絵里「…ねえ亜里沙。私からも一つ、約束してほしいことがあるんだけど」
亜里沙「え?なに?」
絵里「…部屋を真っ暗にしたままにするのはやめてくれないかしら。その…なんていうか……」
亜里沙「あ、ごめん。お姉ちゃん暗い場所大嫌いだもんね」
絵里「え!?い、いや、まあ、うん……とにかくお願いね……ふふふ」
亜里沙「……完璧な人間なんていない、か」
絵里「そう……完璧な人間なんていないのよ…」
絵里「…まるで、今の私の状況を正当化してるみたいね」
絵里「本当ならこんな偉そうなこと言える立場じゃないんだけど」
絵里「亜里沙…あなたならきっとできるわ。みんなを引っ張っていく存在に」
絵里「いつの間にか1人になってしまった私と同じ道を歩んではだめよ…」
EXTRA EPISODE END
本当の完結です。
思ったよりもコメントが多く、嬉しかった反面、文章力や構成力に欠けて、うまく書けなかった場面もあり、色々学んだSSでした。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。
元スレ
午後4時
絵里「ふっふっふ。もらったわね。あのあと奇跡的にすぐ見つけたこの台、何もかもが良いわ」
絵里「さっきのやつを含めるとプラマイ0くらいまでは取り返したわ。さあ、勝負はこれからよ」
店内放送「それでは皆さん、お待たせしました。予告にあったとおり、特別ゲスト様がご来店していただきましたので、ご紹介いたします!」
絵里「…特別ゲスト?なるほど、だから今日は一段と混んでるのね。ほとんど空き台ないし」
絵里「…まあ、どうせしょうもないライターか売れないアイドルでしょ。私には関係ないわ」
♪トードーケーマホオォーエガオノマホウ……
絵里「……ん?何かしら。聞いたことあるような曲のような気が…」
3: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 06:22:41.39 ID:tiYrJF33.net
にこ「にっこにっこにー!どうも皆さん、こんにちはー!皆のアイドル、矢澤にこでーす!」
絵里「!?!?」
にこ「皆さん、調子はどうですかあー?にこはー、あんまりこういうの詳しくないけどー、せっかくなら皆笑顔になってほしいからー、頑張ってねー。にこっ!」
絵里「………な、なんでよりによってにこがここに?っていうかまだアイドルやってたんだ…」
バッ
店内ポスター「人気アイドル、矢澤にこさん、午後4時頃来店!」
絵里「いつの間にこんなポスターが……いや、私が台に夢中になりすぎて気付かなかっただけかしら」
絵里「…とにかく、こんなところにいるなんてバレたら、面子が丸つぶれね…」
絵里「幸いなことに、キャップ、マスク、サングラスの三大変装グッズは持ってきてるから、これでなんとかなるわよね」
絵里「せっかくつかんだこの台…手放すわけにはいかないもの」
GOGO「ペカッ」
絵里「おっ」
にこ「……」
4: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 06:23:59.24 ID:tiYrJF33.net
午後11時
絵里「……ふふふ。勝ったわ。やっぱりあの台は正解だったようね」
絵里「それに、他の台も結構良いやつがたくさんあったわ。やっぱりアイドル来店イベントは少しは力入れてるのかしら」
絵里「……まあ、それがにこだったときはかなりびっくりしたけど」
絵里「でもどうやらバレなかったようね。私のすぐ後ろ通った時も、何事もなく通りすぎたし」
絵里「っと、いけない。明日は駅前の店の強い日だったわ。早く帰って明日に備えないと」
その頃、絵里の家
prrrrr
亜里沙「こんな時間に電話…?お姉ちゃんなら私の携帯に直接かけてくるはずだし、誰だろ」
ガチャ
亜里沙「もしもし」
「……失礼ですが、絢瀬さんのお宅ですか?」
亜里沙「そうですが」
「…あなた、もしかして、音ノ木坂のアイドル研の…」
亜里沙「……あの、バレてますよ?にこさんですよね」
にこ「あっれー?なんでバレたんだろ…結構上手い芝居だと思ったのに」
亜里沙「そりゃ、週1ペースでにこさんの声聞いてますから。騙すならもう少し声色変えないとだめですよ。初代部長」
にこ「…さすが、三代目部長なだけあるわね」
6: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 06:36:56.82 ID:tiYrJF33.net
にこ「で、どうなの?今年は」
亜里沙「何がですか?」
にこ「決まってるじゃない。アイドル研の活動よ。ラブライブとかあるでしょ?」
亜里沙「それ、ついこの間話したばかりじゃないですか」
にこ「あら、そうだったかしら」
亜里沙「今年は新入部員が25人いて、グループも沢山できそうだから、部内での競争も激しくなるって」
にこ「そういえばそうね…花陽の代で、結構人気獲得したらしいから、現在は部員50人になったんですって?」
亜里沙「はい。もう大変で大変で…」
にこ「……最初は、私ひとりだったのにね」
亜里沙「…で、何の用です?こんな時間に電話いただくなんて、何か別の理由があると思うんですけど」
にこ「……どうやら、KKEの遺伝子は妹に受け継がれたみたいね」
亜里沙「はい?」
にこ「…絵里はいる?」
亜里沙「お姉ちゃんですか?お姉ちゃんでしたらまだ帰っていませんけど」
にこ「…そう」
亜里沙「ここ最近は、大学で調べものがあるからって、いつも帰るのは12時くらいになりますね」
7: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 06:38:35.49 ID:tiYrJF33.net
亜里沙「というか、にこさんなら、お姉ちゃんに用があるなら、直接連絡した方が早いんじゃ……」
にこ「ありがと亜里沙ちゃん。大所帯の部長大変だと思うけど頑張ってね」
ガチャ。ツーツー……
亜里沙「……?」
1時間後
絵里「ただいま…」
亜里沙「お帰りなさい」
絵里「あら、亜里沙、起きてたの?明日も朝練あるんじゃないの?」
亜里沙「うん。だけど、ちょっとお姉ちゃんに言伝てが」
絵里「?」
亜里沙「にこさんから直接家に電話がかかってきて…お姉ちゃんいるかって。いないって言ったらすぐ切れちゃったけど」
絵里「え!?!?」
亜里沙「変だよね。にこさんならお姉ちゃんの連絡先知ってるはずだから、直接かけたらいいのに…」
絵里(……まさか)
亜里沙「お姉ちゃん。にこさんから連絡とかきてないの?」
絵里「あ、ああ……き、きてないわ。今日はもう遅いし、明日折り返してみるわよ。それじゃ亜里沙、お休み」
亜里沙「あっ…お、おやすみなさい」
絵里(にことは一年以上連絡を取り合ってない…よく、音ノ木坂のアイドル研に顔だしてるみたいだから、亜里沙から話は聞くけど)
絵里(そんなにこが私を尋ねて私の家に直接電話をかけてくるなんて……)
絵里(…来店イベントは要注意ね)
8: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 07:00:33.01 ID:tiYrJF33.net
次の日
絵里「ざっと150人くらいはいるかしら……まあ、それだけの信頼度を誇る店だもの。当然よね」
絵里「それに土曜日だから、いつにも増して多いわ…これは抽選勝負ね」
「おい、お客様にそんな口のききたかはだめといっただろ!」
「ひえっ!ご、ごめんなさい…主任」
絵里「……新人のアルバイト店員かしら。どうやら言葉使いがだめで怒られてるみたいね」
客「まあまあ主任さん、そんな怒らなくても」
客「そうだよ。今日初仕事なんでしょ?そんくらい大目に見てあげなよー」
「えへへ…そうだよね。私頑張ります!みんなもファイトだよ!」
主任「こら!お客様に向かってタメ口はだめだと言ったろ!高坂!」
絵里「……ん?」
9: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 07:01:16.37 ID:tiYrJF33.net
絵里「!!」
絵里(あ、あのオレンジの髪……それに、客すら味方につける圧倒的なカリスマ性…)
絵里(ま、間違いないわ。穂乃果じゃない!)
絵里(きょ、今日からここでアルバイト!?なんてタイミングの悪い…)
絵里(ど、どうしようかしら……)
店員「それでは入場抽選を初めてまーす!」
絵里(ほ…どうやら抽選は別の店員がやるみたいね)
絵里(もし番号が悪かったら、潔く退きましょ。いつバレるかわからないし)
絵里(1番……ハラショーね…色んな意味で)
10: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 07:02:08.16 ID:tiYrJF33.net
絵里(1番なんて、一番目立つ位置じゃない。でも、今日は確固たる狙い台があるの。この位置ならそれを確実に取れる)
絵里(……大丈夫よ。こんなこともあろうかと、変装グッズは今日も持ってきてる)
絵里(いくらなんでも、この好条件で撤退は有り得ないわ)
絵里(幸い、穂乃果は今日が初日みたいだし、周りを見る余裕はないわよ)
穂乃果「……」
12: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 07:04:23.52 ID:tiYrJF33.net
午後9時
絵里「……」
絵里「ハラショーだわ」
絵里「昼頃まではモミモミ状態だったけど」
絵里「超番長ボーナスから一気に爆発して7000枚」
絵里「看破要素はそこまで採取できなかったけど」
絵里「少なくとも中間以上はありそうだったわ」
絵里「とはいえ時間も時間だし、今日はここで上がりね」
絵里「そういえば穂乃果は……」キョロキョロ
絵里「もう上がったみたいね。当たり前か。新人が通しで働くわけないわよね」
絵里「さて、帰りましょうか」
13: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 07:05:16.64 ID:tiYrJF33.net
コンビニ
ピッ、ピッ
店員「以上、5点で1029円のお買い上げに…」
絵里「あっ、すみません、これと、あとセブンスタ……」
店員「?」
絵里「あ、いえ、何でもないです…」
絵里(さすがに家ではまずいわ。亜里沙もいるのに)
絵里「ただいま…」
亜里沙「あっ、お姉ちゃん、お帰りなさい」
絵里「ただいま亜里沙」
亜里沙「お姉ちゃん、明日も大学なの?」
絵里「えっ?あ、え、ええ。3年生になると色々忙しくてね…」
亜里沙「そっか……毎日だね」
亜里沙「もしかして、来週も?」
絵里「え?…おそらくそうなると思うけど…」
絵里「どうかしたの?」
亜里沙「あっ、いや、なんでもないよ。お風呂沸いてるから、入ってきなよ」
絵里「?……わかったわ」
亜里沙「……」
22: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:51:10.23 ID:tiYrJF33.net
別の家
穂乃果「た、だ、い、まあー……」
雪穂「お姉ちゃん……死んでるね…」
穂乃果「うん……ゆっきー、私はもうだめ……棺桶には、パンを一緒に…」
雪穂「ハイハイ、バカなこと言ってないで、お風呂沸いてるから入ってきなよ」
穂乃果「連れてってー…」
雪穂「…こりゃそうとうきてるな…だから言ったでしょ。パチンコ屋のバイトはきついって」
穂乃果「想定以上だったよ……海未ちゃんのスパルタ練習がなつかしい…」
雪穂「……そうだお姉ちゃん。ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど」
穂乃果「……なんざんす?」
雪穂「ざんす?……実はね、来週、新入生歓迎会があるんだけど」
穂乃果「なるほど。そこでライブをやるから見に来ないか、と」
雪穂「なっ……!なんでわかったの!?」
穂乃果「ゆっきーの考えてることくらいわかるよー。姉妹でしょ」
雪穂「お姉ちゃん……」
23: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:51:56.92 ID:tiYrJF33.net
穂乃果「しかしゆっきーももう高校3年生か。時がたつのも早いねえ」
穂乃果「しかもまさかアイドル研の副部長になるなんてさすがにびっくりだよ…」
雪穂「私だってびっくりだよ。もっと頭いい人とかアイドル的な人はいるのに」
穂乃果「私ですらなれなかったのに…」
雪穂「いやいや、あなたそのかわり生徒会長やってたじゃないですか」
穂乃果「……そりゃそうだけど」
雪穂「っていっても、副部長なんてやることほとんどないけどね。ほとんどは部長が全部片付けちゃうから」
穂乃果「そっか…まあ部長はあの亜里沙ちゃんだからね。なんたってあのKKEの遺伝子を継いだ……」
穂乃果「……」
雪穂「お姉ちゃん?どうしたの?」
穂乃果「え?ああ、いや、なんでもないよ。ライブはいつなの?」
雪穂「次の金曜日だよ。まあ新歓ライブで一般入場があるなんて時点でおかしいけど」
穂乃果「それだけ音ノ木坂が全国区になったってことだよ。今年は3クラスできたんでしょ?」
雪穂「まあね……亜里沙なんて、今じゃちょっとした有名人だし、ふらっと出歩くこともできないんじゃないかな」
24: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:53:44.15 ID:tiYrJF33.net
絵里の家
絵里「ふう……いい湯だったわ」
絵里「亜里沙は…寝たみたいね。ん?」
絵里「何かしらこの紙…」
ベラッ
絵里「新入生歓迎会ライブ?そっか、そういえばそんな時期よね……へえ、一般入場もあるんだ」
絵里「日時は……来週の金曜日か……」
絵里「……特に強いイベントはなかったはず……」
翌朝
絵里「おはよう…」
亜里沙「あっお姉ちゃん、おはよう。ご飯できてるよ」
絵里「ありがとう。亜里沙は今日も朝練?」
亜里沙「うん」
絵里「日曜日なのに頑張るわね……」
亜里沙「うん……」
亜里沙「……」
亜里沙「あのね、お姉ちゃ」
絵里「新歓ライブ、見に行ってあげるわよ」
亜里沙「えっ?な、なんでそれを?」
絵里「プリント置き忘れたまま寝たでしょ昨日」
亜里沙「…あっ」
絵里「……まあ、妹の晴れ舞台だしね」
亜里沙「で、でもお姉ちゃん、大学は…」
絵里「へっ?」
絵里「あ、ああ、確かに忙しいけど、そのくらいなんとかなるわよ」
亜里沙「お姉ちゃん……ありがとう!絶対見に来てね!」
25: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 10:54:34.58 ID:tiYrJF33.net
亜里沙「にこさんも絶対に来るって言ってたし」
絵里「え……」
亜里沙「そういえばお姉ちゃん、にこさんと連絡とったの?」
絵里「あ、う、うん。なんか、にこも学校が忙しいのかなんなのか、なかなか連絡が取れなくてね。ま、そのうちなんとかなるわよ」
亜里沙「……え」
絵里「…ごちそうさま!じゃあ亜里沙、頑張ってね!私は行くから」
ドタドタバタン!
亜里沙「……にこさん、学校なんて行ってないはずだけど…」
午前9時30分
絵里「…ミステイクだわ」
絵里「まさか今日、時差オープンだなんて…」
絵里「…とはいえ、今日は他にめぼしい店もないし……」
絵里「…仕方ないわ。近くの喫茶店で時間を潰しましょう」
26: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 11:05:49.25 ID:tiYrJF33.net
ウィーン……
「いらっしゃいませー」
絵里「カプチーノとハニートーストをお願いします」
「かしこまりました。それではお席でお待ちください」
絵里「…ふう。私はまだまだね。事前の下調べができてないわ。この前のにこの件もそうだけど、時差オープンすら見逃してるなんてね」
「お待たせしましたー」
絵里「ああ、ありが…」
絵里「!!!!」
絵里「…こ、こっ、こっことり?」
ことり「絵里ちゃん!久しぶりだね!」
絵里「あなた…なんでここに!?服飾の勉強で海外行くんじゃなかったの?」
ことり「それいつの話してるの?私は今、このすぐ向こうにあるドレスメーカーの専門学校に行ってるんだ」
絵里「そ、そうなの?って、今日は学校は?」
ことり「絵里ちゃん大丈夫?今日は日曜日だよ?」
絵里「ふぇっ!?」
ことり「日曜日はいっつも朝からバイトしてるんだ。絵里ちゃんこそ、日曜日の朝にこんなところで何してるの?」
絵里「え、えーっと……」
27: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 11:12:02.28 ID:tiYrJF33.net
ことり「!」
ことり「ま、まさか…絵里ちゃん…」
絵里「な、なに…?」
ことり「も、もしかして……」
絵里「……」
ことり「…デ、デート、とか…?」
絵里「へ?」
ことり「待ち合わせ中…かな?」
絵里「…違うわよ」
ことり「違うの?」
絵里「断じて違うわ」
ことり「……そっかあ、なんか安心したよ」
絵里「なんで安心するのよ」
絵里(…なんか腑に落ちないけど、悟られてはいないみたいね)
ウィーン
ことり「ありがとうございましたあ!絵里ちゃん、またきてねー」
絵里「またね」
スタスタ
絵里「ふう…なんとかウィンドウショッピングという理由で誤魔化せたわ…本当は抽選時間まで費やしたかったけど、それはさすがに不自然すぎるしね」
絵里「……そういえば、タバコ切らしてたわ。あそこのローソンで買っていきましょ」
30: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 11:23:44.95 ID:tiYrJF33.net
ウィーン
絵里「……あら、新しい解析値が載った雑誌出てたのね。時間も潰せるし、ちょっと読んでいきましょ」
絵里「……なるほど……リセットなら穢れが多く溜まってる可能性があるのね。結構狙い目かも」
絵里「さて、そろそろいきましょうか。缶コーヒーと…」
「いらっしゃいませ絵里」
絵里「これと、あとセブンス……」
絵里(ん?)
絵里「!!!!」
絵里「う、う、う…海未!?な、なんでここに!?」
海未「バイトですが」
絵里「う、海未がコンビニでバイト?な、なんか意外、というか…」
海未「…と言われましても。私はローソンのイメージガールを務めたこともありますし」
絵里「…そ、それもそうね…」
絵里(まずい……立ち読みしてたの見られてたかしら)
海未「ところで、何かお買い求めですか?セブン、なんとか、と言ってましたが」
絵里「うえっ!?」
絵里「あ、あれよ、セブンス……」
絵里「セブンスウェルよ!」
海未「…は?」
絵里(しまった!墓穴掘ったわ!)
32: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 11:33:24.04 ID:tiYrJF33.net
海未「それでは、絵里も頑張って下さい。私も、自らの道を精進しますので」
絵里「え、ええ。それじゃあね」
ウィーン
絵里「ふう……セブンスウェルは新種のラブライブレードってことでなんとか誤魔化したけど…苦しい言い訳だったかしら」
絵里「結局タバコ買えなかったし……taspo作らなきゃ…」
絵里「あ、でもあれ確か郵送よね。亜里沙にバレちゃうわ」
絵里「……もうなんなのよ一体!イレギュラーが多すぎよ最近!」
絵里「…まさか、今からいく店も、誰かがバイトしてるとかいうオチはないわよね…」
「こらー!挨拶はもっと元気よくやれ!」
「はいい……だ、誰か助けてえーーー」
絵里「……店変えよう」
35: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 11:40:20.38 ID:tiYrJF33.net
夜
絵里「……イレギュラーばかりだけど、戦績はいいのよね。多分設定はなかっただろうけど、まさかの大連続から40匹も連続で討伐できるとは…」
絵里「今月はかなり調子がいいわ」
絵里「たまにはそんな自分にご褒美あげちゃおうかしら」
絵里「さっきから美味しそうな匂いが漂ってきてるし…」
絵里「このラーメン屋で祝勝会といきますか」
絵里「……待ちなさい絵里。少し考えるのよ」
絵里「…虫の知らせが働いてるわ。ここは入っちゃいけない、と」
絵里「あそこ…厨房らしき場所の窓が空いてるわ。中の様子を…」
「こらー!何度言わせるんだ!語尾ににゃーをつけるな!」
「うわー!ごめんなさいにゃー!」
絵里「……亜里沙ご飯作ってくれてるかしら」トボトボ
36: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 11:51:30.16 ID:tiYrJF33.net
木曜日の夜
絵里「…ふう。なんとか打ちきったわ」
絵里「1000枚ちょいだけど、まあこの機種の機械割を考えたらこんなものよね」
絵里「REGも6を振り切ってるし……これで7連勝」
絵里「こんなに調子よくていいのかしら」
絵里「……明日は、亜里沙のステージがあるから、仕方ないけど休みね」
絵里「さて、閉店だし帰りましょうか…」
絵里「…しかしこの店、中々いいラインナップね。サミタでしかやったことない機種とかあるし、バラエティが豊富ね」
絵里「ん?」
絵里「こっ、これは……!」
絵里「バラエティの新鬼武者が1100ハマリ、初代のモンスターハンターは1150ハマリ、バシリスク2が950ハマリ……」
絵里「……打ち変えるのかどうかはわからないけど……」
絵里「でもバシリスク2は確か変更しても天井はリセットされなかったはず…」
絵里「……」
絵里「亜里沙、明日何時からかしら。多分夕方よね」
37: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 11:57:50.80 ID:tiYrJF33.net
翌日
絵里「…来てしまった…」
絵里「でも問題ないわ。亜里沙のステージは午後4時30分から。それまでに撤収すれば何の問題もない」
絵里「まあその前に、取れるかどうかだけどね」
絵里「抽選結果は3番…やったわ!20人くらいしかいないけど」
絵里「でも打ち変えられてたら駄目なのよね。まあそれでもすぐに結果はわかるし」
絵里「さあ、行くわよ!」
開店
絵里「バシリスク2はやっぱり取られたわ。でも新鬼武者が取れたし、実際ホールで打つのは初めてだけど、サミタでは何度も打ってるし大丈夫よね」
絵里「さて、やりましょう。宵越し考えたら300はハマってほしいところだけど」
38: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 12:08:39.11 ID:tiYrJF33.net
30分後
絵里「やったわ!共通ベルからいきなりART!これは天井じゃなきゃできない芸当よ!つまり宵越し!」
絵里「隣のモンスターハンターもいきなり通常時から500乗せてたし…間違いないわ」
絵里「さあ!ガンガン出すわよ!」
午後1時
絵里「またボーナス…ハマった分の収束が来てるわね。とりあえず2000枚突破、と」
午後2時
絵里「ARTが16連目……エンディング確定ね。どこまで続くかしら」
午後3時
絵里「REGか……って、!!」
絵里「こっ、これは、フリーズ!」
絵里「…来たわ。見えてきたわ。人生初の万枚が」
午後4時
絵里「イエーイ!スイカから200乗せよ!もうとどまることを知らないわ!」
午後4時30分
絵里「……」
絵里「……」
絵里「やったわ!7000枚突破!まだ終わる気配もないわ!このまま行くわよ!」
音ノ木坂学院
にこ「……まさかとは思ったけどね…絵里。あんたは本当にバカよ」
42: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 12:20:46.17 ID:tiYrJF33.net
午後10時
絵里「…終わったわ」
絵里「15000枚……こんなに流すのに時間がかかるのも初めて。なんかすごい優越感ね」
絵里「さて帰りましょうか。亜里沙になにかお土産でも……」
にこ「そんなのいらないわよ」
絵里「!!」
絵里「に、にこ…ひ、久しぶりね」
絵里「なんでこんなところに…?」
にこ「さあ。何でかしらね。自分の胸に聞いてみたら?」
絵里「え?」
にこ「ついでに今日が何の日だったかをね…覚えてたら、だけど」
絵里「今日……?」
にこ「……なんで」
絵里「え、に、にこ?」
にこ「なんであんたこんなになっちゃったのよ!ここにあるものは、そんなに大切なものなの!?あんたの家族よりも大切なものだったの!?」
絵里「家族……?」
絵里「…あ」
絵里(今日は亜里沙の…)
絵里「……わ、私は…」
にこ「今日だけじゃないわよ。あんた、大学なんて全然行ってないんでしょ?それともなに?ここがあなたの大学?」
絵里「……うう」
にこ「一つだけ確かなことがあるわ。あんたは今日、大事なものを失った。それはあんたが今日掴んだそのお金なんかじゃ取り戻すことなんてできないのよ!」
絵里「…あ、亜里沙……私……」
55: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 16:21:52.55 ID:tiYrJF33.net
数時間前
亜里沙「皆さん、ありがとうございました。新入生の皆さん、楽しく、ハラショーな学校生活を送って下さい」
観客「ワー!」パチパチパチ
ことり「…みんなすごいね。まさかここまでの完成度だなんて」
海未「ええ。私も鳥肌が立ちました」
穂乃果「うう…ゆっきーが失敗しなくてよかったよー」
真姫「雪穂ちゃんなら穂乃果が心配するまでもないわよ。まあ、ドジなところは受け継いでるみたいだけど」
凛「それにしてもお客さんいっぱいいるねー」
花陽「それにしてもみんなすごいよ。特に亜里沙ちゃんは、あんなに堂々としてて、さすが部長って感じだね」
にこ「………」
凛「希ちゃんと絵里ちゃんは来なかったね…」
海未「まあ、希は京都の大学に行ってますから、そう簡単にこれるような場所じゃありませんからね」
ことり「平日だしね」
真姫「…絵里は?」
にこ「…さあね」
56: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 16:30:43.97 ID:tiYrJF33.net
控え室
2年生部員「部長」
亜里沙「……」
2年生部員「部長?」
亜里沙「えっ?あっ、ど、どうしたの?」
2年生部員「こっちのセリフなんですけど…大丈夫ですか?なんか魂が抜けたような感じが…」
亜里沙「は……」
3年生部員「そりゃこの大舞台でセンター務めたあとだもの。多少呆けても仕方ないでしょ」
2年生部員「…それもそうですね」
亜里沙「ごめんごめん。じゃあみんな!お疲れ様。このあと部室に戻って、1年生も含めミーティングよ」
部員「はーい!」
雪穂「…亜里沙」
亜里沙「…雪穂ちゃん」
亜里沙「穂乃果さん見にきてくれてたね。どう映ったかなあ。やっぱりまだまだかな?」
雪穂「亜里沙……」
亜里沙「海未さんもことりさんも真姫さんも凛さんも花陽部長も、にこさんも見にきてくれてたし、よかったあ…」
雪穂「……」
亜里沙「希さんは、まあ仕方ないよね。簡単にこれる場所じゃないし」
雪穂「亜里沙、この話やめよう?」
57: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 16:38:09.25 ID:tiYrJF33.net
亜里沙「用事があるなら仕方ないよね……」
亜里沙「…うん、きっとお姉ちゃんも、大学を抜けられない予定が入ったんだよ…」
亜里沙「だから、仕方ないよね……」
雪穂「亜里沙…」
亜里沙「ゆ…きほ……ちゃん……うわああああ!」
ドアの外
にこ「……バカ絵里…」ワナワナ
現在
にこ「とにかく洗いざらい全て話して謝ることね。もちろんそれで許してもらえるかどうかはわからないけど」
絵里「…ねえ、私、どうしたら…」
にこ「自分で蒔いた種でしょ?自分でなんとかしなさい」
にこ「…まあ、失われた信頼を取り戻すことほど、難しいことはないだろうけど」
絵里「……そうね。全て私が悪い…」
絵里「ありがとうにこ。それじゃ!」ダッ
にこ「……これで解決するかしら」
59: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 16:46:05.91 ID:tiYrJF33.net
絵里の家
絵里「亜里沙…いる?」
「……」
ガチャ
亜里沙「お姉ちゃん…」
絵里「あ、亜里沙…」
亜里沙「お帰りなさい。今日も忙しかったんでしょ?」
絵里「亜里沙……」
絵里(目が真っ赤……)
絵里「あの、亜里沙…その……ごめんね、今日、行けなくて…」
亜里沙「……」
亜里沙「ううん。お姉ちゃん、忙しかったんでしょ?仕方ないよ」
絵里「亜里沙……」
にこ『洗いざらい全て話して謝ることね』
絵里「……」
絵里「……亜里沙」
亜里沙「?」
絵里「その…」
絵里「あの…」
絵里「……」
絵里「ごめんね。大学をどうしても離れられなくて…連絡一つくらい入れるべきだったわよね」
亜里沙「……」
絵里「今度は必ず行くからね」
亜里沙「……うん」
60: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 16:57:58.17 ID:tiYrJF33.net
次の日
亜里沙「ふあああ……。さてと、朝ごはんを…」
絵里「あら亜里沙。おはよう」
亜里沙「お、お姉ちゃん?なにやってるの?」
絵里「なにって、朝ごはん作ってるのよ?」
亜里沙「えっ…お姉ちゃん、料理なんてできたっけ?」
絵里「バカにして。確かにいつも亜里沙が作ってくれるから料理できないように見えるけど」
絵里「昔、希とにこに料理を教えてもらったことがあってね。あの二人は料理が上手だから」
亜里沙「そうなんだ…」
絵里「はい、出来たわよ」
亜里沙「ありが………っ」
亜里沙「…なにこれ?」
絵里「なにって、もやし炒めと、スピリチュアルスープよ」
亜里沙「……スピリチュアルスープ?」
絵里「知ってるでしょ?」
亜里沙「…知らないけど」
63: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 17:15:27.65 ID:tiYrJF33.net
絵里「嘘でしょ?希はこれがグローバルスタンダードだって、世界共通のスープだって言ってたわよ」
亜里沙「は、はは…たぶん私は住む世界が違うのかな」
絵里「バカにしてえ。亜里沙だって、昔はおしるこをジュースだと思ってたくせに」
亜里沙「そ、それは、若気の至りというか…」
絵里「ふふっ」
亜里沙「ははっ」
絵里(そして亜里沙は学校へ行った…)
絵里「毎日朝練か…本当に頑張ってるのね」
絵里「その思いを裏切った私……最低な姉ね」
絵里「決めたわ!私は今日から大学生に戻る!」
絵里「未来輝くキャンパスライフを送るのよ!タバコもやめるわ!」
絵里「さあ、そうと決まったら行くわよ!」
64: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/17(火) 17:22:58.19 ID:tiYrJF33.net
絵里「…はあ、土曜日は何もないんだった。私ってば何してるんだろ」
絵里「このまま帰るのもあれね…なんかもったいないわ」
絵里「はっ!」
絵里「いけないいけない。その考えがすでに破滅につながるのよ」
絵里「……」
絵里「…ん?」
絵里「新台入れ替え……あ、あれすごい打ちたかったやつ……」
絵里「……」
絵里「……」
絵里「…抽選だけ。3台だけみたいだし、どうせ当たらないわよ」
絵里「すでに50人くらいいるしね」
絵里「当たっちゃった……」
絵里「…」ソワソワ
絵里「…少しだけ。一回当たったらやめる。だから一回だけよ」
ポスター「本日昼12時、アイドル来店!」
87: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 18:04:43.92 ID:a+4/DlkW.net
絵里「……!」
絵里「た、たった50枚…?しょぼ……」
絵里「でも、隣はすごい爆発してるわね…」
絵里「……」
絵里「…私も!」
午後0時
絵里「…?なんか急に人が増えたわね。何かあるのかしら」
絵里「まさかまたにこが現れるなんてことはないわよね…」
絵里「まさか。先週別の店で現れたばかりなのに、そんなことあるわけ……」
「にっこにっこにー!」
絵里「!?!?」
絵里「最悪だわ…今最も会いたくない人が…」
絵里「さすがにまずいわ。早く逃げないと…」
絵里「あっ…当たった…」
88: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 18:05:24.58 ID:a+4/DlkW.net
絵里「ちょ、ちょっと!何こんな時に爆乗せしてるのよ!」
絵里「あーあ…500Gか……これは最低でも1時間くらいは続くわね」
絵里「……」
絵里「いや、さすがに無理よ」
絵里「昨日の今日でこんなところ見られたら、本当に全て失うわ」
絵里「もったいないけど、捨てましょ」
絵里「……料理の本でも買って帰ろう」
にこ「……」
93: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 19:29:57.88 ID:a+4/DlkW.net
絵里「はあ…せっかくこれからって時に……」
絵里「おかげさまで負けちゃったじゃない」
絵里「……まだ昼なのに、負けて帰るのも癪ね…」
絵里「なんて考えてたら申し合わせたように目の前に大型ホールが」
絵里「どうせいい台なんて落ちてないでしょうけど、見るだけならただだし、こういうのが収支に関わってくるのよね」
スタスタ
絵里「さすがに大型店だけあって客が多いわね」
絵里「これじゃあ空き台を探すのすら一苦労だわ」
絵里「でも意外とシステムわかってない人がおいしいゲーム数で落としていく場合があるから侮れないのよね」
94: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/18(水) 19:35:28.12 ID:a+4/DlkW.net
絵里「あら、これ…」
絵里「このシンデレラブレイド2、プリシラステージで辞めてるわね」
絵里「これはラッキーね。さっそくやりましょ。だめでも1周期でやめればいいだけだし」
絵里「……この主人公の声、どこかで聞いたことあるような気が……」
絵里「…気のせいかしら」
午後9時
絵里「だーーっ!」
絵里「いろいろ打ち散らかして60本も逝かれたわ!」
絵里「最悪も最悪。今日はダメな日ね」
絵里「さすがに時間も時間だし、帰るわ」
110: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 07:23:14.94 ID:4qeSw9Og.net
絵里(そういえば……)
絵里(昨日あんなことがあったのに、また行ってしまったわね…しかも負けとか)
絵里(…私ってば、本当に人間のクズだわ…みんなを裏切って……)
絵里(決めたわ!引退よ!引退!もう辞めるわ!)
prrrr
絵里「ん?電話…?」
絵里「え……希?」
絵里「希は確か京都のはず…何かしら」
絵里「もしもし?」
希「おっ、絵里ち、久しぶりやん」
絵里「ほんとにね」
絵里「どうしたの?こんな時間に」
希「いやあ、実は今東京に来てるんよ」
絵里「あら?そうなの?」
希「それでな、明日は自由に動けそうやから、絵里ちがもし暇やったら一杯どうかな、って」
絵里「あら、いいわねそれ。明日なら予定もないし、大丈夫よ」
希「やった!じゃあ、せやな…カラオケ経由で飲みとかでもええ?」
絵里「あら、希、私とカラオケ勝負?いい度胸ね。受けてたつわよ」
希「勝負とは言ってへんけど…じゃあ明日、昼過ぎの15時に渋谷駅に集合でええ?」
絵里「わかったわ」
111: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 07:30:27.41 ID:4qeSw9Og.net
希「それじゃあ明日なー」
絵里「ええ。おやすみなさい」
プツッ
希「……それじゃあにこっちにも聞いてみよか」
翌日
亜里沙「お姉ちゃん、なんかご機嫌じゃない?」
絵里「あら、そう見える?」
亜里沙「そりゃあ18年も妹やってるし」
絵里「実は今日、希つ遊ぶ約束したの」
亜里沙「え?希さん、こっちに来てるんですか?」
絵里「そうなのよ。理由は知らないけどね」
亜里沙「ハラショー……私も会いたいけど、今日は施設を借りてトレーニングする日だし…」
絵里「まあ、ちょっと今日は遅くなるかもしれないわ。だから私のことは気にしないで眠たかったら寝ていいからね」
亜里沙「うんわかった」
113: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 07:42:34.03 ID:4qeSw9Og.net
午前10時
絵里「10時か……」
絵里「希との待ち合わせ時間まであと5時間」
絵里「こういう時って時間が長く感じるのよね」
絵里「……」
絵里「……」
絵里「………」ウズウズ
絵里「……暇潰しに外へ行きましょ」
絵里「また来てしまったわ…」
絵里「でも大丈夫。まだ打ってるわけじゃない。打たなければいいのよ。ただ見るだけ」
絵里「見るだけでも意外と楽しいのよね。パチスロは」
客「あのお…」
絵里「え?私?」
客「もしよかったら…この台打ちませんか?」
絵里「え?」
115: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 08:08:42.17 ID:4qeSw9Og.net
客「実は急に会社から呼び出しがかかってすぐ行かなきゃいけなくなって…」
絵里「い、いいんですか、これ…」
客「ええ。クレジット分もあげます」
絵里「あ、ありがとうございます」
絵里「ちょっとなにこれ…まだ開店から30分しか経ってないのに残り1000Gあるんだけど…」
絵里「きっとハーデスかペルセポネで逆回転させまくったのね」
絵里「棚ぼたとはこのことだわ。さあ、さっそくやるわよ!」
午後1時
絵里「…終わったわ。細かい上乗せはあったけどジャッジメントのストックもなしで3500枚…まあこんなとこよね。どうせ投資はしてないんだし」
絵里「32Gだけ回してやめましょ…」
プチュン
絵里「!?」
125: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:27:03.52 ID:4qeSw9Og.net
【GOD】【GOD】【GOD】
絵里「あらら…引いちゃったわね」
絵里「約束の時間まであと2時間…ここから渋谷駅なら20分あれば着くわ」
絵里「それにさっきみたいに大した上乗せもなければ1時間かからずに終わるから、問題ないわね」
30分後
絵里「ふう…とくに何もなくジャッジメントを2つ消化」
絵里「ハーデスきたときはちょっと焦ったけど100だったし」
絵里「今からならたとえ300あっても時間は大丈夫ね」
絵里「さて、3回目のジャッジメントは…………ケルベロスか…」
絵里「普段ならあの足が見えた瞬間に苛立つけれど、今は大歓迎よ。いつも通りの仕事お願いね」
126: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:34:56.93 ID:4qeSw9Og.net
+550G
絵里「どうしてこうなった……」orz
絵里「30G近く継続するなんて…なんでこんな時に大仕事しちゃうのよこの地獄の番犬は」
絵里「…いえ、まだよ。ぶんまわせば時間は間に合うわ。とにかく今はただ手を動かすだけ…」
1時間後
絵里「終わりかしら…」
絵里「あの後普通のケルベロスが一回きて60乗せたけどそれだけ」
絵里「怖いくらい何もなかったわね」
絵里「もう終了後30回して特に煽りもなし」
絵里「このリプレイを回して終了ね。時間もジャスト。なんか有効に時間を使えた気分……」
ビシビシッ!
絵里「?」
↑↑↑
ウイーン
絵里「……ハ、ハラショー…」
130: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:42:33.88 ID:4qeSw9Og.net
午後3時 渋谷駅
希「え?遅れる?」
絵里「ごめん!たぶん30分後には行けるから、ちょっと待っててくれない!」
希「なんかあったん?」
絵里「うん、ちょっと……とにかくごめん!」
プツッ
希「……」
にこ「悪い予感が的中したわね…」
希「?」
希「どういうことや?」
にこ「…おそらくだけど、絵里は30分待っても来ないわよ」
希「なんで?」
にこ「……病気だから」
希「は?」
にこ「大丈夫。これ以上何かあったら困るから、手は打ってあるわ」
にこ「絵里はどうせこないから、二人で行きましょ」
希「ちょ、にこっち?話がよく理解できないんやけど…」
にこ「…このあとしっかり話してあげるわよ。絵里の身に、今一体何が起こってるのかを……」
134: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 18:53:44.01 ID:4qeSw9Og.net
午後4時
絵里「やっと終わった…」
絵里「とにかく今は急がなきゃ」
絵里「30分後も30分過ぎてるし」タッ
「にこちゃんの言ったとおりね」
絵里「!?」
絵里「えっ……な、なんであなたがここに!?」
138: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 19:05:24.47 ID:4qeSw9Og.net
絵里「真姫!?」
真姫「さあ、なんでかしらね。自分の胸に聞いてみたら?」
絵里「うっ」グサッ
絵里「…で、でもごめんなさい。今ちょっと急いでて」
真姫「希ならにこちゃんと二人で遊びに行ったわよ」
絵里「え……」
真姫「希は優しいわよ。理由も言わずに一方的に遅れるって言い放ったあなたを、まったく疑いもしなかったんだから」
絵里「ちょ…な、なにを言ってるの?どういうこと?」
真姫「まあここで話していてもしかたないし、要件を言うわね」
真姫「あなた、今からうちの病院に来なさい」
絵里「は?びょ、病院?」
真姫「ええ。これはお願いじゃない。命令よ」
絵里「な、なんで私が病院に?」
真姫「自覚がないのが一番厄介なのよ。あなたみたいなギャンブル依存症人間はね」
絵里「え…わ、私が…」
絵里「私がギャンブル依存症?」
143: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 19:17:52.59 ID:4qeSw9Og.net
にこ「……というわけなのよ」
希「…そんな……知らない間に、絵里ちがそんなことになってたなんて…」
にこ「でね。真姫に聞いたんだけど、ギャンブル依存症はれっきとした病気なんだって」
にこ「放っておいても治らない……さらには、自分一人の力で治すのは困難」
にこ「たとえばギャンブルで大敗して、もうこんなことは辞める、って決意しても、次の日にはもうまたギャンブルに手を出してしまう…」
にこ「唯一救いがあるとすれば、絵里がまだ勝ってる、ってことね。でもそんなラッキーも長くは続かない…」
にこ「そして気づいた時にはお金も、友達も、信頼も、何もかも失ってしまう…」
にこ「昔はそれで自殺する人も多かったらしいわよ」
希「にこっち……詳しいなあ」
にこ「そりゃあ最近結構調べたもの」
希「絵里ちのために?」
にこ「え……そ、そんなんじゃないわよ!…そ、その…きょ、教養よ教養!パチンコ屋での営業も多いから、知っておいても損はないでしょ!」
希「……わかりやすいなあ」
146: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/19(木) 19:32:43.24 ID:4qeSw9Og.net
数時間後
にこ「そるぇでさー、こころったらなんて言ったと思うー?」
にこ「そんなの自分でなんとかしるぉだってさあー」
にこ「こるぇが反抗期ってやつなのかしらねえー…ヒック」
希「にこっち…カクテル3杯でべろんべろんやん…」
prrrr
にこ「あるぁ、電話ね」
にこ「真姫からだわ。何の用かしら。ヒック」
にこ「むおーしむおーし。みんなのアイドル、矢澤にこにこどぇーす!」
にこ「真姫ったらどーしたのお?もしかしてにこにーの声が聞きたくなったんでしょー?ヒック」
にこ「またまたあー、そんな恥ずかしがらなくてむぉー、いいんだからあー」
希「にこっち、代わって。今のにこっちじゃ会話にならんわ」
169: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 07:18:09.94 ID:IkLaPGPD.net
真姫「希?たしかにこちゃんと一緒だったはずだけど…」
希「…認めたくないかもしれんけど今のがにこっちや」
真姫「……そう。なんか軽くショックだわ」
希「ところで絵里ちは?」
真姫「あ、うん。精神科の先生に見てもらったんだけど…」
真姫「…なんていうか、言いづらいことなんだけど」
希「構へんよ」
真姫「…もし、すぐに治したいなら、入院をお勧めするって」
希「入院!?」
真姫「診察の結果がなかなか思わしくなくてね……少なくとも野放しにしておいたらまず間違いなく破滅の道を歩むそうよ」
希「……それはあかんな…」
希「でも入院となったら、それはそれで問題があるやん」
真姫「…そうね。絵里は両親は海外だし、もし絵里が入院したら、亜里沙の面倒は一体誰が…」
170: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 07:24:39.59 ID:IkLaPGPD.net
希「絵里ち本人はなんて言ってるん?」
真姫「そりゃあ入院は嫌だって。まあ気持ちわからなくもないわよ。高校三年生の妹を一人になんてできないわよ」
希「そうやなあ……」
真姫「さすがにそれを考えると、入院を強制なんてできないわね…」
希「うーん……」
希「でもこのままやと破滅なんやろ?ウチは絵里ちの破滅した姿なんて見たくないよ」
真姫「私だってそうよ。いや、みんなそう。少なくともμ'sのメンバーはね」
希「……」
希「…よしわかった。ウチにいい考えがある」
真姫「え?」
171: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 07:31:02.99 ID:IkLaPGPD.net
絵里の家
ピンポーン
亜里沙「?お客さん?こんな時間に?」
亜里沙「…それともお姉ちゃん鍵なくして入れないのかな?」
亜里沙「はーい」
ガチャ
亜里沙「!!」
希「やあ亜里沙ちゃん。久々やね」
亜里沙「の、希さん!?な、なぜここに?」
亜里沙「お姉ちゃんなら、まだ帰ってなくて…」
希「うん、そのお姉ちゃんのことなんやけどな……」
亜里沙「ギャンブル依存症?」
希「うん。ギャンブルなしでは生きられない体になってしまってるんや」
希「……亜里沙ちゃんに言おうかどうか迷ったけど、やっぱり絵里ちに一番近い人に言わないわけにはいかんしな」
亜里沙「そうですか……わざわざありがとうございます」
172: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 07:40:21.85 ID:IkLaPGPD.net
希「ってなわけで、亜里沙ちゃんには悪いけど、絵里ちには入院してもらうことにしたから」
亜里沙「えっ……にゅ、入院ですか!?」
希「うん。もちろん入院しないっていう選択肢もあったけど、それやったら治らない可能性も高いんや」
希「だったら多少強引でも今のうちに手を打つべきやと思って」
希「何より……破滅した絵里ちの姿、見たくないやろ?」
亜里沙「それは……」
希「…絵里ちはな、ウチの人生の中でも、一番付き合い長い友達なんや。親友ってやつかな」
希「あの時、絵里ちに出会ったから今のウチがいる…μ'sという、世界一のグループの一員になれた…」
希「ウチは返しても返しきれないくらい、いろんなものを絵里ちからもらったんや」
希「だから、絵里ちが道を踏み外そうとしてるなら、どんなことをしても止める」
希「ウチにできることなら、なんだってするよ」
希「友達やからな」
亜里沙「希さん…」
希「というわけで、今日からしばらく、ここで暮らすから。よろしくな」
亜里沙「おふぅ!?」
173: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 07:51:07.34 ID:IkLaPGPD.net
亜里沙「の、希さん…大学は?」
希「少しくらいなら休んだって問題ないよ。結構今まで真面目に通ってたから」
希「まあ、長引きそうなら休学もありかな」
亜里沙「さ、さすがにそれは、ご迷惑をおかけしすぎるかと…」
希「言ったやろ。ウチにできることならなんでもするって」
希「ウチに言わせれば絵里ちが破滅するほうがよっぽど迷惑やん」
希「まあ亜里沙ちゃんなら一人で生活もできるとは思うけど、一応未成年やしな」
希「それに、アイドル研の活動もあるやろ?部長」
亜里沙「希さん……ありがとうございます」
希「こう見えても独り暮らし歴長いから、こういうスキルは身についてるで。なんでも頼ってな」
亜里沙「はい!」
亜里沙「じゃあ早速聞きたいことがあるんですが」
希「おっ、なんや?」
亜里沙「スピリチュアルスープのレシピを」
希「……亜里沙ちゃん、それはあかんやつや」
174: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 08:29:51.06 ID:IkLaPGPD.net
亜里沙「お姉ちゃん…おなかすいたよ…」
絵里「そうね…もう5日も、もやししか食べてないし」
絵里「でも大丈夫。今日は生活保護費の受給日だから、久々においしいものが食べられるわ」
亜里沙「ほんと?わーい!」
絵里「じゃあ銀行いってくるから」
絵里「…ふう。このお金でまたまともな食事にありつけるわね」
絵里「……待って。これが増えれば、さらにいいものが食べられるし、生活も多少潤うわね…」
絵里「………勝負に行くしかないわね」
絵里「待ってなさい亜里沙。今夜はステーキを食べさせてあげるわ」
亜里沙「……またもやし?」
絵里「うん…やっぱり節約しないと…」
亜里沙「嘘だ!お姉ちゃん、お金使い込んだんでしょ!」
絵里「えっ、そ、そんなこと…」
亜里沙「またパチスロで負けたの!?なんで行くの?家は食べるだけで精一杯なのに!」
亜里沙「この前だって、私のバイト代全部スって、なに考えてるの!?」
亜里沙「もう嫌!こんなお姉ちゃんと暮らしたくない!」
亜里沙「お姉ちゃんなんかいなければ良かった!」
絵里「……!」
絵里「はっ!」ガバッ
絵里「…ゆ、夢……」
194: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 16:56:15.86 ID:IkLaPGPD.net
絵里「はあ…最悪な夢ね」
絵里「でもあんなことあり得ないわよ。私が亜里沙をそっちのけにするなんて……」
絵里「…朝の5時か。今日は私が朝ごはんを作ってあげましょ」
ガバッ
絵里「……そっか。ここ病院だった」
絵里「…まったく真姫ったら、私を強制的に入院させるなんて、どうかしてるわよ」
絵里「たしかにギャンブルはしてたけど…あくまで趣味よ趣味。息抜き程度よ。依存なんてしてないわよ」
絵里「……はあ、亜里沙、大丈夫かしら」
絵里「まあ希が見てくれてるらしいから大丈夫だとは思うけど、それじゃあ希に迷惑だし」
絵里「亜里沙、私がいなくて泣いてないかしら……」
絵里「…とりあえず喫煙所は…」
絵里「あるわけないか。病院だし」
絵里「……帰りたい」
195: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 17:39:23.74 ID:IkLaPGPD.net
ガチャ
真姫「気分はどうかしら?」
絵里「真姫……良くはないわね」
真姫「…あなたがそんな弱音を吐くなんて、すでに結構追い詰められてるようね」
絵里「ねえ、やっぱりおかしいわよこれ!私はギャンブルに依存してなんかいないし、仮にそうだとしても、それで入院ってさすがにやり過ぎじゃない!?」
真姫「別に」
絵里「別にって…あなたねえ。知ってるでしょ。私には一緒にくらしている妹もいるのよ?いくら真姫だからって、これは横暴よ」
真姫「……大学にも一切行かないで、亜里沙の公演もすっぽかした人間が何言ってるの」
真姫「ここ最近、絵里が朝イチから店に並んでたとか、それ系の雑誌を立ち読みしてたとかいう目撃情報もあるのよ」
絵里「……でも、でも」
真姫「でもも何もない!!」
絵里「!」ビクッ
真姫「……本当に大切なものを失いたくなかったら、しばらくおとなしくしてなさい」
真姫「それじゃあ私は学校があるから」
バタン
絵里「………なによ」
196: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 17:49:45.56 ID:IkLaPGPD.net
ガチャ
希「あ、亜里沙ちゃん」
亜里沙「希さん、おはようございます」
希「朝早いなあ。朝練?」
亜里沙「はい」
希「噂には聞いてたけど、毎日やってるんやって?」
亜里沙「ええ。まずは5月にある春期大会。その次はもうラブライブの予選が始まりますから」
希「すごいなあ。ウチらでさえ、そんな毎日朝練はしてなかったわ」
亜里沙「……悔いは残したくないので」
希「…そやな。去年からラブライブは完全に年二回制に固定。毎年8月と3月の二回。三年生は8月の大会が終わったら引退やしな」
亜里沙「…去年の夏の大会は、花陽さんたちがいてくれたおかげで優勝できました。でも、皆さんが引退して、私が部長になった3月の大会は…」
希「…たしか、代表決定戦で負けたんやっけ」
亜里沙「はい…創部一年目のスクールアイドルに」
197: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 17:57:15.91 ID:IkLaPGPD.net
亜里沙「私がまだ未熟だったんです……私は、μ'sに憧れてスクールアイドルを始めました。だけど、憧れから抜け出せないで、私の中でμ'sを追い越そうとしなかった」
亜里沙「あの時は悔しくて…情けなくて…部長を、部活を辞めようと思いました」
亜里沙「だけど、みんなが私を支えてくれて……お姉ちゃんも、今のアイドル研の部長はあなたなんだから、って言ってくれて…」
亜里沙「だから決めたんです。やれることは全部やろうと」
亜里沙「私の中にある永遠の憧れ、μ'sを追い越そうと」
希「……にこっちが言ってたで。亜里沙ちゃんは、過去最高の部長や、って」
亜里沙「…まだ三代目ですけどね」
199: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 18:09:43.32 ID:IkLaPGPD.net
亜里沙「はい、希さん。朝ごはんです」
希「わお、これはすごいなあ。ウチより上手いわ」
亜里沙「ほぼ毎日作ってたら、なんかいつの間にか身に付いていて…」
希「絵里ちに教えてやってな。このままやと絵里ちの貰い手いなくなるから」
亜里沙「それは困りますね」
ハハハ……
ピンポーン
亜里沙「?誰かきたみたいですね」
希「こんな朝から?誰やろ」
亜里沙「はーい」ガチャ
亜里沙「!」
雪穂「やっほー亜里沙。たまにはこっちから迎えにきたよ」
亜里沙「ゆき……ん?」
穂乃果「亜里沙ちゃんおはよう」
海未「おはようございます」
亜里沙「えっ…皆さんどうしたのですか?」
穂乃果「いやー、やっぱりアイドル研のその後が気になって。ゆっきーに聞いても要領を得ないからさ」
雪穂「何言ってるのお姉ちゃん。亜里沙が心配だから私も行くって、超珍しく早起きしてたじゃん」
海未「…まあ、そういうことです。別段、特別な用事があるというわけではありません」
亜里沙「皆さん……」
200: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 18:31:57.96 ID:IkLaPGPD.net
希「あら、雪穂ちゃん。それに穂乃果ちゃんに海未ちゃんも」
穂乃果「あっ、希ちゃん。久しぶり!」
海未「本当ですね。元気にしていましたか」
希「まあな。毎日自分にスピリチュアルパワー注入しとるから」
雪穂「な、なんですかそれ…」
希「さ、亜里沙ちゃん。お迎えが来たみたいやし、いっといで」
亜里沙「…でも、後片付けが…」
希「そんなんウチがやっとくから。みんな待たせるわけにはいかんやん」
亜里沙「希さん…ありがとうございます」
穂乃果「じゃあ希ちゃん、またねー」
亜里沙「…なんか、すみません皆さん。姉の件で心配かけたみたいで」
穂乃果「そんなことないよ」
海未「…まあ、心配だからきたと言ってしまった手前、心配していない、というのは嘘になりますね」
穂乃果「ちょっと海未ちゃん!」
海未「でも亜里沙。私たちは絵里が大切な仲間だから、心配しているのです。大切な仲間が道に迷っているなら、何をしてでも止める」
海未「それが仲間です」
雪穂「さすが海未先輩、お姉ちゃんからはそんな流暢な言葉は出てこないよー」
穂乃果「ちょっとゆっきー!ゆっきーに言われたくないよ!」
201: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 18:43:16.28 ID:IkLaPGPD.net
海未「もちろん亜里沙も私たちにとっては大切な人間です」
海未「心配されるというのは愛されている証拠。何も恥じることはありません」
亜里沙「…はい。ありがとうございます」
穂乃果「……なんか私、モブ化してない?」
雪穂「それが嫌なら言葉の引き出しを増やすことね」
午前10時
絵里「……」
絵里「ひまーちか…」
絵里「とくに検査とかがあるわけじゃない……他のみんなは学校だし、誰もこないわよね」
ガチャ
にこ「悪かったわね。学校行ってなくて」
絵里「にこ…仕事は?」
にこ「午後から事務所で打ち合わせがあるわ」
絵里「そう……」
にこ「……憔悴してるわね」
絵里「…やることがないって、案外苦痛ね」
にこ「そりゃあ、世間的には、今頃パチンコ屋がオープンする時間だしね」
絵里「ちょっと、にこまで私を依存症扱いするの?」
にこ「??……もしかして、自覚ないの?」
絵里「……みんな同じこと言うのね」
絵里「みんな私を依存症だのなんだのって、バイ菌扱い……そんなに私のことが嫌いなの?」
にこ「……」
絵里「嫌いなら嫌いって言ってよ!こんな牢獄みたいな場所に私を追いやって、みんなで楽しんでるんでしょ!」
にこ「……ええ、嫌いよ」
絵里「!」
204: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 19:15:52.62 ID:IkLaPGPD.net
にこ「自暴自棄になってるあんたはね。昔、自分のことをKKEとか言ってた絵里はどこへ行ったの?」
絵里「…あんなもの、ただの若気の至りよ」
にこ「……はい、これ」
ポン
絵里「…なにこれ。DVD?」
にこ「この前の新歓ライブの映像よ。花陽が撮ってくれてたから、コピーさせてもらったの」
にこ「…まあ、なぜか某動画サイトですでにアップされてるけどね。しかも3本も」
絵里「……」
にこ「出来はまあまあよ。さすがに私たちの後輩なだけあるわ」
にこ「でもやっぱりまだ亜里沙に迷いがあるわね」
にこ「まあ、その原因は言わなくてもわかってるだろうけど…」
絵里「……あとで一人で見ていいかしら」
にこ「その方がいいかもね」
205: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 19:23:41.90 ID:IkLaPGPD.net
にこ「さて、私はもう行くわね。私も人のこと気にしてばかりいられる現状じゃないし」
にこ「早く私もこうやって動画にアップされるような存在になれるよう頑張るわ」
絵里「……あの」
にこ「…私たちは、μ'sのメンバーはあなたを決して見捨てないから」
バタン
絵里「……」
午後5時
某パチンコ屋
花陽「さてさて、今日もバイト頑張るぞ、と」
花陽「いらっしゃいませー!」
主任「おっ、いいじゃないか。声が出てきたな」
花陽「あ、ありがとうございます」
主任「その調子で頼むぞ…」
ポン
主任「ん?」
客「おいなんだよこの店。クソも出ないじゃねーか。ぼったくってんじゃねえぞ!」
主任「お、お客様?」
花陽「……!」
207: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/20(金) 19:32:28.38 ID:IkLaPGPD.net
客「しかもなんで俺の隣だけいっつも出るんだよ!これで3日連続だぞ!」
客「遠隔か!?遠隔してんのかこら!」
主任「お客様、当店は遠隔操作による出玉調整などは一切行っておりません」
客「嘘つけ!もうここ1週間で30万もやられてんだよ!このぼったくり店が!金返せよ!」
花陽「さ…30万?」
客「んん?なんだてめえ」
客「今笑ったな?」
花陽「えっ…そ、そんな、笑ってません…」
客「バカにしてんのか?こっちは客だぞ?」
客「てめえらは俺たちのおかげで飯が食えてんだぞ。わかってんのかおお!?」
花陽「ひ、ひいっ!」
主任「お客様、やめてください」
客「うるせえ金返せよ!もう今月の家賃まで使っちまってんだよ!どうしてくれるんだよ!」
ツカツカ
店長「主任。小泉さんを休憩室に連れていって。あとはこっちで対応するから」
主任「あ、はい。わかりました」
花陽「……」
店長「すみませんが、事務所の方へ来てください」
客「ああ?もしかしてあれか?出禁かあ?」
店長「いいから早く」
花陽「……」
主任「さ、小泉さん。こっちへ」
220: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 07:14:29.62 ID:cV5qj3To.net
主任「大丈夫か小泉さん。いきなり怖い場面に遭遇させてしまってすまないね」
花陽「いえ……あの、さっきの人は…」
主任「ああ。君も見たことあるだろ。1ヶ月くらい前から来るようになって、それからほぼ毎日きている常連客さ」
主任「ま、もう二度と来ることはないだろうけど」
花陽「出禁、ですか…」
主任「まあそうなるな。厳しいところだと営業妨害で警察に突き出されるだろ」
花陽「……1週間で30万も使ってるって、本当ですか?」
主任「さすがにそこの真偽はわからないけど、十分あり得るよ。ああいうギャンブル依存症の人間はね」
花陽「えっ…あの人が、ギャンブル依存症?」
主任「典型的なギャンブル依存症だね。例えば君は、何か欲しいものがあったとして、家賃すら後回しにしてそれを買うかい?」
花陽「さ、さすがにそんなことは…」
主任「それができないのがギャンブル依存症なんだ。生活費や光熱費さえも使ってしまう人間もいる。下手したらギャンブルのためだけに借金するやつだっているんだよ」
221: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 07:29:01.92 ID:cV5qj3To.net
花陽「そんな…なんでそんなに?」
主任「麻薬みたいなものさ。きっかけはいろいろあるが、一番多いのは、いわゆるビギナーズラック」
主任「初めてギャンブルに足を踏み入れる人間は得てして不安がある。そんな時に、思いもよらない大勝をしてしまうと、そこからギャンブルにのめり込んでしまう人は多い」
主任「たった数時間でお金が大量に増えるんだ。こんな快感はないからね」
主任「そしてその快感が忘れられず、いつの間にかギャンブルが生活を支配してしまう」
主任「当然友達はいなくなる。金も、よほどのことがない限りは、減っていく」
主任「ちなみに系列店では、昔、自殺者が出たよ。店のトイレで首を吊ってね」
花陽「!!」
主任「その頃はパチスロは4号機といわれ、今よりもかなり過激な機種ばかりあったんだ。ま、それを問題視した警察が規制をかけ、今の5号機になったんだけど」
主任「減りはしたがなくなりはしない。いつの時代も、ギャンブルに命をかける人はいるんだよ」
花陽「……そうなんですか」
花陽「……絵里ちゃん」
251: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/21(土) 16:07:32.59 ID:cV5qj3To.net
午後10時 某ラーメン屋
凛「はい!1080円でございます!」
凛「はい、こちらお釣りです!」
凛「ありがとうございます!またお待ちしてまーす!」
凛「ふう…」
先輩「凛ちゃん、ラーメン屋の店員が板についてきたね」
凛「先輩。ありがとうにゃ」
先輩「そろそろ厨房デビューかな?」
凛「厨房!?やったー!」
先輩「あ、いや、まだ決まったわけじゃないけど」
店主「二人とも、ちょっと来てくれ」
凛「おや、噂をすれば、さっそくラーメン作りの修行かな?」
先輩「違うと思うけど…」
店主「あのカウンターの端の客……もう一時間半もいすわっている」
凛「そうですね…よっぽどラーメンの香りが好きなのかにゃ?」
店主「そうじゃない。見ろ、格好を」
先輩「確かに、清潔感があるとは言えませんね」
凛「でも、それがどうかしたんですか?」
店主「…俺の、ラーメン業としての長年の勘が言ってる…」
店主「あいつは…食い逃げする隙を探してる」
凛「ふえっ!?」
280: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 21:53:45.60 ID:9sU7PDsR.net
凛「な、なんでそんなことがわかるんですか?」
店主「あの目付き…さっきから従業員の動向を気にしている」
店主「特に何をするでもない、食事はとっくに終えてる」
店主「多分最初から食い逃げ狙いだな」
凛「最初から?なんてひどいやつだにゃ!ちょっと注意しないと」
店主「やめろ。まだ決まったわけじゃないし、こういうのは現行犯じゃないと逆にこっちが罪になる可能性がある」
凛「じゃあどうすれば……」
先輩「誘発するんですね」
店主「そうだ。フロアから一時的に従業員を全員撤退させる。そこで奴は多分逃げる」
店主「そこで、あらかじめ外に一人待機させておき、待ち構える……」
ガタン!!
凛「あっ!逃げた!」
店主「なに?まだ作戦会議中なのに!」
281: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 21:55:42.79 ID:9sU7PDsR.net
店主「待てっ!」ダッ
客「」ガタガタッ!
店主「くっ、椅子を障害物かわりに…あいつめ、シミュレーションしていやがったな!」
凛「まかせるにゃ!」ダッ
店主「お、おい!」
シャッ!
店主「な、なに?椅子を飛び越えた!?」
先輩「でも奴はすでに外に!」
凛「待つにゃー!」ダダダダ
ガシッ
凛「捕まえた!」
客「な、なんて速さだ……くそっ」
午後11時30分
凛「結局あのあと営業にならなかったにゃ」
先輩「そうだね……警察が出入りしたり、ものものしい雰囲気になっちゃったし」
凛「そもそもなんであの客は食い逃げしたのかな?」
先輩「お金がなかったんだってさ」
凛「ふえっ?」
先輩「オーナーも言ってたじゃん。初めから食い逃げ目的だって。所持金が数十円くらいしかなかったんだってさ」
凛「ば…ばかな……なんでそれでラーメンを食べにきたの?」
282: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 22:09:54.42 ID:9sU7PDsR.net
先輩「まああたしもちらっと立ち聞きした程度なんだけど、あの客ギャンブル依存症なんだって」
凛「えっ…ギャ、ギャンブル依存症?」
先輩「うん。それで負けすぎてお金なかったんじゃないかな?」
凛「い、いや、でもそれじゃあラーメンなんて食べにくるわけが……」
先輩「……そんなもんだよ」
凛「へ?」
先輩「私の知り合いに同じような人がいて……同じように食い逃げしたことがあるって人がいるんだ」
先輩「なんかね、金が無さすぎて、もう全てがどうでもよくなったんだって」
先輩「だからせっかくなら食べたいものを食べることにしようって。捕まったら捕まったで仕方ない」
先輩「拘置所や刑務所の方がまともに生活できるから…ってね」
凛「……なんて悲しい考えだにゃ…」
先輩「さっきの客も、そんな感じなんじゃないかな。まあ逃げる気満々って感じだったけど」
先輩「ああいうのはもう病院に行くしかないよ。自力ではどうしようもないから」
先輩「周りの人間を裏切って、失望させて、迷惑かけて……本当に最低の人種だよ…」ギリッ
凛「先輩……」
凛「あれがギャンブル依存症か……」
285: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 22:16:58.46 ID:9sU7PDsR.net
絵里「ねえ亜里沙、お金貸してくれない?」
亜里沙「…朝イチの挨拶がそれ?昨日も貸したばかりじゃん」
絵里「いや、昨日はちょっとついてなくてさ…抽選番号が悪くて」
絵里「今日は大丈夫よ。なんたって熱い日だから。昨日の分も含め返すわよ」
亜里沙「……はい」ポン
絵里「サンキュー亜里沙。じゃあ期待して待っててね」
亜里沙「……」
翌朝
絵里「ねえ亜里沙、まだお金ある?」
絵里「ん?」
テーブルの上の紙「さようなら。もうあなたとは暮らしていけません」
絵里「えっ……」
絵里「嘘……」
絵里「あ、亜里沙……」
絵里「いやああああああ!」
絵里「はっ!」ガバッ
絵里「…ま、また夢……」
絵里「……何て夢なのよ」
287: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/22(日) 22:32:08.85 ID:9sU7PDsR.net
ガチャ
花陽「失礼します…」
凛「入るにゃー」
絵里「花陽?それに凛…」
凛「絵里ちゃん久しぶりだね」
絵里「なんであなたたちが…?」
絵里「…そう。にこの仕業ね。ってことは他の人にもみんな知らされてるわけか…」
絵里「…当然亜里沙にも」
花陽「絵里ちゃん、元気?」
絵里「……これが元気に見える?」
凛「絵里ちゃん、なんか刺々しいにゃ。いつもの絵里ちゃんじゃないよ」
絵里「…いつもの私ってなに?」
絵里「みんなで私を気づかってるふりして、どうせ心の中じゃバカにしてるんでしょ」
花陽「絵里ちゃん?」
絵里「ここにいる時点で以前の私なんてもう死んでるのよ」
絵里「どうせみんなは私のことを、ギャンブル依存症の汚れ物だって見下してるんでしょ」
凛「ちょ…そんなんじゃ」
絵里「……こんな場所に閉じ込められて…これじゃあまるで刑務所に入ってる囚人よ」
293: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 02:10:17.49 ID:HuQxZx76.net
病院の外
花陽「絵里ちゃん…すごいナーバスだったね」
凛「うん……なんか基本的には病室から出るのも許可必要らしいから、ストレス溜まるんだろうね」
花陽「絵里ちゃん…ものすごく辛いだろうな」
凛「うん…でも、凛たちがここで弱気になったらだめだよ。絵里ちゃんにはやっぱりあんな風になってほしくない」
花陽「そうだね。だから、私たちがなんとか協力しなきゃ」
凛「とりあえず今日の様子を一応真姫ちゃんに報告するにゃ」
絵里「……はあ。私も堕ちるとこまで堕ちたわね。花陽と凛に当たるなんて」
絵里「……μ'sの頃の私はもういない…」
296: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 02:25:23.45 ID:HuQxZx76.net
prrrr
絵里「電話…?あら、穂乃果からだわ」
絵里「もしもし?」
穂乃果「絵里ちゃーん!聞いて聞いて!今度の休みにね、希ちゃんがこっちに来るから、その時にμ'sのみんなで遊ぼうって考えてるんだ」
絵里「へえ、希が。それはいいわね」
穂乃果「うん。日曜日なんだけど他のみんなもこれるって。絵里ちゃんはどう?」
絵里「日曜日……」
絵里(今度の日曜日は確か駅前の店がすごい熱い日だったはず……)
絵里「うーん、ちょっと現時点ではわからないわ。当日になってみないと」
穂乃果「そっか…わかった。じゃあ当日連絡ちょうだい。みんな会いたがってるから」
当日
絵里「ごめんなさいやっぱり今日は無理だわ。大学の方がどうしても手を放せなくて」
絵里(本当は今打ってる台が高設定確定演出が出たから、なんて言えるわけないわ)
穂乃果「…絵里ちゃん、私たちよりも、そっちの方が大事なんだ」
絵里「えっ」
穂乃果「知ってるよ。絵里ちゃん今パチスロ打ってるんでしょ」
絵里「そっ、それは……」
穂乃果「絵里ちゃんにとってはμ'sはもう過去のものなんだね」
穂乃果「残念だよ」
絵里「ち、違うのよ、ちょっと待っ」
穂乃果「さよなら」
プツッ
絵里「……いやああああああ!」
絵里「はっ!」ガバッ
絵里「……なんで最近こんな夢ばかり見るのかしら」
297: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 02:43:55.36 ID:HuQxZx76.net
音ノ木坂 放課後
亜里沙「じゃあグループ分けも決まったので、今日から本格的にグループとしての練習を開始します」
亜里沙「ただし、7つもグループがあるので、今から言う場所で練習して下さい」
亜里沙「Aグループは屋上、B,Cグループは第二部室、D,Eグループは講堂、Fグループは本部室、Gグループは体育館裏です」
亜里沙「かなり場所が限られています。天候が悪い日などは、体育館を借りられるか交渉してみますが、それも無理な日は基礎トレーニングになります」
亜里沙「あと…基本的にメンバーチェンジはこの後はありません。春期大会は全チームが出れますが、ラブライブの予選は学校から1つのチームしか出られません」
亜里沙「よって、ラブライブ予選の前に学内選抜選考会を行います」
亜里沙「そこで選ばれた一チームだけが、ラブライブへの挑戦権を得られます」
亜里沙「敗退した他のチームは残念ながら出られません」
亜里沙「つまり、3年生は、その選考に漏れた時点で……」
亜里沙「引退です」
298: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 02:58:53.93 ID:HuQxZx76.net
帰路
雪穂「いやー、しかし7つもグループができるなんてね。音ノ木坂アイドル研もずいぶん大所帯になったねえ」
亜里沙「そうだね」
雪穂「でも残酷だよね。ラブライブには学校から1チームしかチャレンジできないなんてさ」
雪穂「もちろんルールだから仕方ないけど、学校内で負けたら引退かあ」
雪穂「花陽部長が言ってた、アイドルは残酷な格差社会だって、今すごい痛感してるよ」
亜里沙「まあ、それは別にアイドル研に限ったことじゃないし。学校の部活ってそういうもんでしょ」
雪穂「かーっ。亜里沙はリアリストだねえ」
雪穂「じゃあもちろん気づいてるんでしょ?」
雪穂「今回のチーム分けで私と亜里沙は別グループになった……」
雪穂「つまり、私と亜里沙、少なくともどちらかは6月には引退が決まる、って」
雪穂「私と亜里沙が戦って、負けた方はスクールアイドルが終わるんだよ」
亜里沙「……うん。わかってる」
雪穂「…私たちの代は、今は8人いるけど、最初は私と亜里沙の二人だけだったよね」
雪穂「どんなときも、亜里沙が一緒だったから頑張れた」
雪穂「それが最後に、その親友と戦うことになるなんてね」
雪穂「まあもちろん、二人とも負ける可能性だってあるけどね」
亜里沙「………」
雪穂「…亜里沙?」
300: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 05:41:13.07 ID:HuQxZx76.net
雪穂「……あーりーさー?」
雪穂「それっ!」ワシワシ
亜里沙「きゃっ!」
亜里沙「ゆ、雪穂ちゃん?」
雪穂「亜里沙?あんまり考えすぎるのはよくないよ?」
雪穂「……大丈夫だよ。亜里沙のお姉ちゃんはなんたってあの絵里さんなんだから」
亜里沙「えっ…なんで…」
雪穂「中学からの付き合いだからね。亜里沙が何を考えてるのかくらいわかるよ」
雪穂「絵里さんは絶対帰ってくるよ。あのμ'sのメンバーなんだから」
亜里沙「……ありがとう」
穂乃果「あるぇー?二人とも、今帰り?」
海未「こんなところで会うとは奇遇ですね」
ことり「雪穂ちゃんに亜里沙ちゃん、久しぶりだね」
亜里沙「皆さん…」
雪穂「お姉ちゃんたちこそ、三人そろうなんて久しぶりなんじゃない?」
穂乃果「今日はみんなバイト休みだったし、まあいろいろと話し合ったりしようって集まったんだよ」
雪穂「話し合い?」
海未「穂乃果!」
穂乃果「あ……」
亜里沙「……」
301: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 06:20:15.42 ID:HuQxZx76.net
亜里沙「なんか……すみません。姉のことで皆さんにご心配おかけして…」
海未「亜里沙。そういうのはなしと言ったはずですよ」
穂乃果「そうだよ。そんなこと言ったら私だって昔絵里ちゃんに迷惑ばっかりかけてたし」
海未「いきなり部を辞めるとか言い出しますしね」
穂乃果「うっ…」
ことり「私だって、留学するとかしないとかで散々惑わせちゃったし」
海未「私は……私は……」
海未「……まあ多分いろいろと迷惑かけてるでしょう」
穂乃果「ねえ、それよりさ、今日はチーム編成の日だったんでしょ?どんな感じだったの?」
雪穂「ああ、チームなら結局7チームできたよ」
海未「なっ…7!?」
ことり「お、多いね…」
雪穂「うん。春期大会は全チーム出られるからいいんだけど」
穂乃果「春期大会…なんか部活っぽい響きだね」
海未「まあ一応部活ですから」
ことり「私たちのころはスクールアイドルの大会って言ったらラブライブしかなかったし」
302: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 06:30:24.46 ID:HuQxZx76.net
雪穂「でもそのラブライブには、1チームしか出られなくて」
穂乃果「えっ…そうなの?」
亜里沙「大会方式は基本的には変わってませんよ。地区予選があって、代表決定戦があって、最後に全国大会」
雪穂「でもお姉ちゃんたちは3月までやってたけど、去年からはやっぱり試験とかある人もいるから、って、3年生は夏のラブライブで最後になることが決まったんだ…って、お姉ちゃんには言ったか」
海未「まあ普通はそうですよね。卒業ギリギリまでやっていた私たちが異常なだけです」
ことり「それで、本命のチームは?やっぱり亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんがいるチーム?」
雪穂「……それが」
亜里沙「私と雪穂ちゃんは別チームになりました」
穂乃果「えっ…な、なんで?」
亜里沙「……まあ本音を言えば、私も最後は雪穂と一緒のグループでやりたかったですけど」
亜里沙「チームのバランスを考え、また、来年以降のことも考えて、この編成になりました」
ことり「……亜里沙ちゃん、そんなことまで考えてたの?」
海未「…素晴らしい。ハラショーとしか言いようがありませんね」
穂乃果「うん。私だったら絶対片寄った編成にする自信あるし」
穂乃果「さすが、アイドル研史上最高の部長と言われるだけあるね」
海未「そうですね。どこかのポテト泥棒とは違いますね」
ことり「海未ちゃん……ちょっとdis入ってるよ」
303: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 06:37:48.11 ID:HuQxZx76.net
雪穂「んじゃあ私たちはここで」
穂乃果「じゃあねみんな」
亜里沙「私も家が向こうなのでここで失礼します」
海未「ご機嫌よう」
ことり「またね」
ことり「ラブライブに出られるのは1チームかあ…なかなか厳しいね」
海未「まあいたずらに参加チームだけ増やしたら、売名目的の人間や学校が増えますからね」
ことり「しかもあの二人は別チームか……」
海未「そうですね…」
ことり「でも…さっきの様子だと……」
海未「…ことりも気づいてましたか」
海未「もちろん他のチームがどうなのかわからないので一概には言えませんが」
海未「もし二人のチームが直接戦ったら」
海未「今なら雪穂のチームが勝ちますね」
ことり「うん…私もそう思う」
ことり「亜里沙ちゃん…迷ってるというか、悩んでるというか」
海未「亜里沙が悔いなくスクールアイドルを全うするには、やはり今、欠けてしまっているピースがあるようですね」
ことり「……絵里ちゃんか」
313: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 16:43:53.50 ID:HuQxZx76.net
指摘がいくつかあった点
依存性ではなく依存症
亜里沙は雪穂をちゃん付けで呼ばない
希の関西弁が変
これらは全てミスです。すみません。
依存症は直しますが、他は今から変えるのも微妙なので、そのままでいきます
314: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/23(月) 16:52:25.86 ID:HuQxZx76.net
そしてさらに一週間が過ぎた
看護師「絢瀬絵里さん」
絵里「……はい」
看護師(うーん…ずいぶんやつれたわね)
看護師「おめでとうございます。今日で退院です」
絵里「…え」
看護師「今まで色々なカウンセリングをしましたが、今のあなたに必要なのは周りの人たちの支え。ここではそれを十分に受けることはできません」
看護師「それに、家にいる妹さんをいつまでも放っておくわけにもいかないでしょ?」
絵里「……そうですか。そうですね」
看護師「それでは2時間後に退院の手続きをしますので、準備をお願いします」
絵里「…はい」
絵里「……なんか、うれしいとか、悲しいとか、全く感じないわ。強いて言うなら、どうでもいい」
絵里「毎日のように見る悪夢。あれがいつ現実に起こるかと思うと…私は……」
326: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 06:19:03.24 ID:1+KwWEVJ.net
絵里「ありがとうございました」
看護師「お大事に」
絵里「はあ……とりあえず帰ろ。着替えなきゃ」
絵里「昼過ぎの15時か…亜里沙は学校ね」
絵里「ん?」
希「絵里ち、やっと退院できたんやな」
にこ「ま、とりあえずは一安心ね」
絵里「二人とも……」
絵里「え?このまま音ノ木坂に行く?」
にこ「そうよ」
希「ウチも行くの久々やし、なんか緊張するなあ」
絵里「ちょっといきなりどういう展開よ?大体私はもう関係者じゃ…」
にこ「問題ないわよ。私だってただの卒業生だけど毎週きてるしフリーパスよ」
絵里「それはセキュリティに問題が…」
絵里「というかなんで?理由は?」
希「理由かあ……行きたいから?」
絵里「なにそれ…」
希「それとも絵里ちは行きたくない理由でもあるん?」
絵里「えっ……」
にこ「まあ本来なら絵里を出迎えるのは私たちじゃない方がよかったんだけど、時間的に仕方ないし」
希「だから、一番絵里ちのことを待っている人に早く顔をみせてやらんとね」
絵里「……」
327: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/25(水) 06:27:35.25 ID:1+KwWEVJ.net
音ノ木坂
絵里「ちょ…本当に勝手に入って大丈夫なの?」
にこ「大丈夫よ。大体あんた生徒会長までやって名前残してるんだから、びびってんじゃないわよ」
希「懐かしいなあ。中は全然変わってないな」
にこ「まあさすがにまだ建て替えとか検討できる予算はないでしょ」
にこ「ま、今は放課後だし、部室に行けば会えるかもね」
絵里「…いいのかしら。こんな非常識なこと」
部室
ガラッ
部員「!?」ムシャムシャ
部員「!?」モグモグ
にこ「あら、あなたたち……」
部員「あっ、にこにー先輩…」
にこ「?まだ部活始まってないの?」
部員「あ、いえ、その……」
にこ「?おかしいわね。時間的にはもうとっくに練習始まっててもおかしくないのに……ってか6人しかいないじゃない」
絵里「なるほど……そういうことね」
希「?どういうこと?」
343: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 06:17:45.79 ID:CTYYUBvW.net
絵里「見たところ、他のメンバーの着替えた形跡もある」
絵里「つまり、おそらくだけど、グループ別か何かで練習する時間のようね」
絵里「だけど彼女たちはお菓子を食べたりしてくつろいで、私たちが現れたらたじろいだ…」
絵里「要するに、サボりね」
にこ「うえっ!?」
部員「あ、いや、それは…」
にこ「なるほど…たしかにそうね」
にこ「あんたたち、亜里沙がいないからって、好き勝手やってるんでしょ?」
部員「す、すみません…」
希「うーん。まあ、部員が増えたらやっぱりこういうことも起こってしまうんやろな」
にこ「…あんたたち個人がどうなろうと私たちには関係ないけど、そんなあんたたちのためにたくさん頑張ってる人もいるのよ?」
部員「す、すみません…」
にこ「まったく…この件は亜里沙には黙っておいてあげるから、わかったら気合い入れなさい。じゃなきゃラブライブなんて出れないわよ」
344: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 06:25:34.79 ID:CTYYUBvW.net
絵里「ねえ…どこに向かってるの?」
希「どこって…屋上に決まってるやん」
にこ「亜里沙は屋上だって言ってたでしょ」
絵里「や、やっぱり悪いわよ練習中に……あとにしない?」
希「絵里ち、そういうとこチキンやなあ」
にこ「別にただの見学よ?今は学校の生徒だって自由に見学できるのよ」
絵里「だから、私たちは生徒じゃ……」
にこ「もううるさいわね。さっきの部室見たでしょ?ああいうのに気づけないくらい亜里沙は今周りが見えてないの。どういうことかわかる!?」
絵里「??」
希「絵里ちが顔見せてあげたら、安心するで。なんやかんや気丈に振る舞っても、心の中は心配してるんや」
にこ「そうよ。強いて言うなら、あんたが約束をすっぽかしたあの日からね」
希「だから、今、その破り捨てた約束を拾いにいこう?」
にこ「絵里がやっぱり必要なのよ。あの子には」
絵里「……」
屋上前のドア
「それじゃあ10分休憩ー!」
絵里「!」
345: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 06:31:25.31 ID:CTYYUBvW.net
ガチャ
バコン
絵里「痛っ!」
亜里沙「あっ!ご、ごめんなさい、誰かいるなんて気づかなくて……って……」
亜里沙「……お姉ちゃん?」
絵里「あ……亜里沙…」
亜里沙「え…ど、どうしてここに?」
絵里「あ、いや…それは…」
にこ「ついさっき退院したのよ」
希「何よりも先に亜里沙ちゃんに会いたいからって、家に帰りもせずにここに飛んできたんや」
絵里「ちょっ…希…」
亜里沙「…お、お姉ちゃん」
絵里「…ご、ごめんね、練習中に。やっぱり迷惑だったかしら…」
亜里沙「……」
亜里沙「……」ポロッ
絵里「あ、亜里沙!?」
亜里沙「はっ!?ご、ごめんなさい、つい」グイッ
亜里沙「わ、私のほうこそ……ごめんなさい」
絵里「え?な、なんで亜里沙が謝るの?」
346: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 06:39:09.52 ID:CTYYUBvW.net
亜里沙「私が、お姉ちゃんの異変に気づけてれば……こんなことには…ならなかったのに」
絵里「あ、亜里沙…」
亜里沙「ごめんなさい」
絵里(な、なんでよ…なんで、私が悪いのに、亜里沙に謝らせてるのよ……)
絵里「亜里沙」
亜里沙「え?」
ギュッ
亜里沙「お、お姉ちゃん!?!?」
絵里「ごめんね。私が全部悪いのよ。色んなものを全て背負わせて、私は一時期の快楽に逃げてた…」
絵里「だけど、もう大丈夫。みんなが、μ'sの仲間が、私を救ってくれたから…」
絵里「だから、もう迷わないわ。これからは、あなたの一番のファンとして、応援していくから」
絵里「何か悩みがあったら、全部お姉ちゃんに相談して?私もそうするから」
絵里「だって私たちは、世界で一人しかいない姉妹なんだから」
亜里沙「お姉ちゃん……」ウルウル
希「一件落着かな?」
にこ「まあ、なんとかなったみたいね」
361: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 19:13:50.20 ID:CTYYUBvW.net
夜。音ノ木坂校門
絵里「まさか練習終わりまでいることになるとはね…」
にこ「まあいいじゃない。久々でしょ?学校生活なんて」
希「そろそろ来るかな」
亜里沙「お姉ちゃーん!お待たせ!」
にこ「あら、意外と早いわね」
亜里沙「あ、はい。今日の仕事は雪穂ちゃんがやってくれる、っていうんで、今日だけは甘えてきました」
希「じゃあ役者はそろったし、ウチらはおいとましよか」
にこ「そうね」
絵里「は?いなくなるの?二人とも。なんのために待ってたの?」
希「なんのためにって…絵里ちがまたどっか行かないか見張ってた、ってとこかな」
にこ「どうせなら姉妹水入らずの方がいいでしょ」
絵里「……」
亜里沙「希さん、着替えは…」
絵里「あ、よく見たら、それ、私の服!」
希「明日にでも着替えにいくよ。今日はちょっと行くとこあるしな」
にこ「というわけだから。じゃあね。絵里、亜里沙」
362: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 19:20:36.34 ID:CTYYUBvW.net
帰り道
亜里沙「それでね、希さんがね、………なの!」
絵里「あら、それはおかしいわね。笑っちゃうわ」
亜里沙「うん!あははは…」
絵里(…久しく亜里沙とこんな他愛もない会話もしてなかったな……)
絵里(他愛もない会話がこんなにいいものだったなんてね…)
絵里(ん?ずいぶん大きな建物ね……こんなところにあったかしらこんなの)
絵里(…よく考えたらこの通学路も高校の時以来使ってないのよね…変わってても仕方ないか)
絵里(これも時代の流れか……)
絵里(さて、この建物はどんな時代を表しているのかしら)チラッ
【今週金曜日!14:00グランドオープン!】
絵里「」ドクン……
絵里(こ、これは……)
絵里(金曜日といえば……明日…)
376: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:10:25.83 ID:CTYYUBvW.net
次の日
絵里(朝、亜里沙を見送り、その後、希が家にやって来た)
絵里(ほとんど荷物は無いに等しく、滞在中は私のものを使っていたらしい)
絵里(そして京都に帰るという希を見送りに駅まで行った)
絵里「ごめんね希。本当なら遊ぶ約束だったのに」
希「困ったときはお互い様やで。今度ウチがなんかあったら助けてや」
希「そうそう。穂乃果ちゃんたちにもお礼言っときな。亜里沙ちゃんの世話みたいなことしてくれたから」
絵里「穂乃果たちが……そう。わかったわ」
希「そんじゃ、またね、絵里ち」
絵里「ええ、希も、元気でね」
379: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:18:05.47 ID:CTYYUBvW.net
絵里(……私は変わったのか)
絵里(変われたのかしら…)
絵里(もちろん変わったわよ。何が大事か、昨日確認したじゃない。忘れるなんてあるはずないわ)
絵里(なのに……)
絵里(なのになぜ私はここに来ているんだろう……)
絵里「今日グランドオープンの全国チェーン……」
絵里「グランドオープンは絶対に見逃せないイベント……」
絵里「下調べした結果、12時に抽選、1時に入場、2時に稼働開始…事前の整理券配布などはなし…」
絵里「パチンコが500台、パチスロが500台、計1000台」
絵里「今は11時55分…間もなく抽選開始……見たところ、1000人は軽く越えてるわね。金曜日の昼なのに」
絵里「……はあ。軍資金はあるのよね…」
絵里「……まあ、グランドオープンなんてそんないつもあるわけじゃないし、いいか。退院祝いよ。どうせ誰との約束もないし、時間を気にすることもないしね」
383: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:26:15.00 ID:CTYYUBvW.net
絵里「680番か……」
絵里「かなり微妙ね。人気機種は確実に無理ね」
絵里「番号がよかったらバジリスク絆やろうかと思ったけど…まあ無理ね」
絵里「というかパチスロ座れるかしら」
絵里「開店待ちの客はパチスロ率が圧倒的に高いのよね…でもグランドオープンだし、わからないわよね」
絵里「この際なんでもいいから座るしかないわ。この店はバラエティーが豊富らしいから、何かしら空いてるでしょ。ジャグラーでもいいし」
「ん?」
絵里「ん?」
「…おや?たしか、君は」
絵里「!」
絵里「あ、あなたは…なぜここに!?」
384: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:36:53.02 ID:CTYYUBvW.net
絵里「アライズの統堂英玲奈!」
英玲奈「絢瀬、絵里。だったか。μ'sの」
絵里「な、なんであなたがここに?」
英玲奈「なんで?そんなこと理由は1つしかないだろう」
絵里「まさか…打ちに?」
英玲奈「当たり前だ。私の格好が店員に見えるか?」
絵里「あ、あのアライズのメンバーがパチンコ屋に……」
英玲奈「そういう君も、しっかり抽選を受けてるじゃないか。君もグランドオープン狙いか?」
絵里「え?あ、いや、その、私は……」
英玲奈「??」
絵里「あの……なぜあなたがこんな場所に…っていうか、ギャンブルを…」
英玲奈「そうだな……まあ、仕事だ」
絵里「仕事??」
英玲奈「今私はこれで生計を立てている。いわゆるプロだ。ま、世間的に見たらただの無職なんだがな」
絵里「あ、あなたが、パチプロ?」
英玲奈「スロプロだ。パチンコは打たない」
絵里「そうなの…私と一緒ね」
英玲奈「君もスロプロやっているのか?」
絵里「い、いや、私はプロじゃ……」
英玲奈「趣味か。まあそれが無難だろうな。この世界で食べていくのは想像以上に難しい」
386: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:45:00.95 ID:CTYYUBvW.net
店員「それでは整列して下さーい!」
英玲奈「おっと、行かなければ。運よく22番というかなり早い番号を引いたからな」
絵里「22!?はやっ」
英玲奈「ま、健闘を祈る。それでは」
絵里「……アライズがスロプロ…なんかショックね」
絵里「…私も、みんなにそんな風に思われてたのかな……」
入場
絵里「ダメね。シマ設置されてる機種は全滅。アラジンにビンゴ、絆、番長……ジャグラーもハナハナも空いてないわ…さすがに予定外ね」
絵里「バラエティーもほとんど埋まってる……さすがにグランドオープン…」
絵里「あっ!空き台発見!」
絵里「もう機種を選んでる暇はないわ!確保よ!」
絵里「ふう…なんとか座れたわ…だけどこれ、打ったことないのよね」
絵里「鉄のラインバレルか……というか見たことすらないわ。なんなのこれ」
390: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/26(木) 22:54:50.79 ID:CTYYUBvW.net
絵里「ふうん…ARTか……まあどっちにしろもう移動なんてできないし、運を天に任せるしかないわ」
絵里「稼働開始まであと20分か……セブンスターでも買ってこよ」
1時間後
絵里「ARTなんかつまんないわね……40Gしかないし、ボーナスは妙に思いし……ん?」
ピュルリピュルリ
絵里「何か引いたかしら……セブンラッシュ?」
絵里「7を狙え…なるほど。こういう特化ゾーンね。まあありきたりよね」
絵里「なんか30回も揃っちゃったわ…こんなに揃うものなのかしら。わからないのが歯がゆいわね」
絵里「でも15回越えたあたりから隣のおじさんがすごい見てきたわ……まあまあなのかしらね」
絵里「ん?今度は何?」
絵里「オーバードライブ?今度はなんなのよ…まったく、説明書くらいおいときなさいよ…」
404: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/27(金) 06:35:39.06 ID:poL95muv.net
午後8時
英玲奈「調子いいようだな」
絵里「あら、英玲奈。ええ。なんかよくわからないけど、7000枚オーバーしてるわ」
英玲奈「ラインバレルか…珍しいものを打ってるな。まああの番号では仕方ないか」
絵里「あなたはどうなの?」
英玲奈「私はついさっきやめた。爆発してしまってあまり看破要素はとれなかったが、下っぽいからな」
絵里「そう…まあ私なんて看破要素すらわからないまま打ってるんだけどね」
英玲奈「だがやはり全国チェーンのグランドオープンなだけあるな。バラエティーも結構出ている」
英玲奈「まあ、明日、明後日までなら通う価値はありそうだ」
絵里「そうね…たしかにこんな激熱イベント、見逃すなんて有り得ないわ」
英玲奈「ふふふ。どうやらまた明日も会えそうだな。ではお先に上がらせてもらうよ」
絵里「ええ。お疲れ様」
絵里「ふう…まだ続くのね。あ、タバコがもうない…でも時間もったいないし、我慢するしかないわね」
406: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/27(金) 06:38:23.34 ID:poL95muv.net
次の日
絵里「今日は12時オープン。入場抽選は相変わらずオーバーフローしているけど116番。今日はバラエティーの住人にならなくてすみそうね」
英玲奈「やはり来ていたか」
絵里「英玲奈。おはよう」
英玲奈「昨日はどうだった?」
絵里「9時くらいまで続いて、約8000枚ね。時間も時間だったから、すぐやめたけど」
英玲奈「ヒキが強いな。今日はシマ設置機種に座れそうだな」
絵里「ええ。あなたは?」
英玲奈「725番だ。下手したら見に回るかもしれないな」
絵里「あら……まあ座れてもバラエティーね」
英玲奈「まあたまにはいいか。バラエティーに座る価値があるのなんて、グランドオープンの時期くらいだからな」
絵里「それもそうね」
英玲奈「それでは健闘を祈る」
絵里「ええ」
407: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/27(金) 06:38:56.93 ID:poL95muv.net
絵里「ふふ。当たり前だけど、昨日よりかなりいい場所に座れたわ」
絵里「10台設置のSLOT魔法少女まどかマギカの角をとれたわ」
絵里「英玲奈はどうしたのかしら…まだ稼働開始まで時間あるし、見に行ってみましょう」
英玲奈「やはり予想どおりバラエティーの住人になってしまったよ」
絵里「…天空のシンフォニア?なにこれ。聞いたことすらないわね」
英玲奈「私も2回くらいしか触ったことがない。結構レアな機種だからな」
絵里「ふうん……」
英玲奈「まあ君は有無を言わさずまずぶんまわす方がいい。昨日は、角は例外なく出ていたからな」
英玲奈「広告規制以降、角台にちからを入れる店は多い。ましてやグランドオープン。条件は揃っている」
絵里「そうね。やってやるわ!」
467: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 20:51:29.78 ID:SgfVeV+6.net
午後7時
絵里「無理よ!もうギブ!」
絵里「せっかく穢れから発動したEPボーナスからのARTもきっちり50で終了」
絵里「そもそもARTの初当たり4回ってのが終わってるわね」
絵里「まあ、そのうち2回が通常時からだったから粘ったけど、もう70本も突っ込んで何の見返りもないなんて…」
英玲奈「なんだ?辞めるのか?」
絵里「英玲奈…ええ、もう気持ちの限界よ」
英玲奈「ただし設定はありそうだがな。まだ時間はあるぞ」
絵里「無理よ。出る気がしないわ」
英玲奈「そうか……」
絵里「あなたはどうなの?」
英玲奈「私は今は難民状態だ。今日はバラエティーは全体的に下げっぽいからな。早々に見切りつけたよ」
絵里「へえ…さすが英玲奈ね。判断が早いわ」
英玲奈「もし本当に辞めるならこの台もらうがいいのか?」
絵里「いいけど……この台やる気ないわよ」
英玲奈「やる気なんかどうでもいいんだ。今のご時世、高設定を確信して打てる機会などそんなにないからな」
絵里「そう…チャレンジャーね」
英玲奈「君の方がよっぽどチャレンジャーだと思うがな…」
468: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 21:00:00.03 ID:SgfVeV+6.net
絵里「はあ……70Kマイナス…このまま終わるわけにはいかないわよね」
絵里「なんとか少しでも取り返さないと……」
絵里「よし、ここはこの前爆発したこのハーデスで勝負よ!」
絵里「ゲーム数は450と完全に狙いどころじゃないけどそんなの関係ないわ。引くもの引けばいいんだから」
英玲奈「絵里のやつ…完全に現状を見失ってるな……」
絵里「1450…ちょうど1000ハマったわね…恐ろしいほどなにも起きなかったわ」
絵里「気づけば投資は10万越え…洒落にならないわね」
絵里「でも…もう少しで天井だし、やるしかないじゃない」
ドスーーン!
絵里「あら?槍演出?何か引いたかしら…」
絵里「なにこれ…ただの下段黄7じゃない。なによ…」
絵里「あ……黄7が4連してる……」
469: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 21:10:20.98 ID:SgfVeV+6.net
閉店後
英玲奈「絵里……どうだった、と聞くのも愚問なようだな……」
絵里「」orz
絵里「あなたは…?」
英玲奈「まあ今日はプラマイ0だな。朝イチで掴めなかった割には、結果は悪くない」
絵里「ポジティブね…私は11万負け…こんなに負けたの初めてよ」
英玲奈「まあ展開に恵まれなかったのは残念だが、最後のハーデスはかなり余計だったな。打つ根拠など何もなかったように見えたが」
絵里「…そうね…つい熱くなっちゃって…負けを取り返そうと…」
英玲奈「そうか…」
英玲奈(典型的なギャンブル依存症の症状だな)
絵里「はあ…まあ、明日もあるし、明日がんばろう」
翌日
絵里「やったわ!入場抽選5番よ!なんでも選び放題よ!」
英玲奈「よかったな。これで運を使い果たしてなければいいが」
絵里「英玲奈は?」
英玲奈「私は924番だ……まあ、しばらくは様子見に回るよ」
絵里「あらら…その番号はさすがに無理ね。パチンコのバラエティーしか空いてないわね」
英玲奈「そうだな。私の分も頑張ってくれ」
474: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 21:25:18.30 ID:SgfVeV+6.net
開店
絵里「ふう…サラリーマン番長の角台はすでに抑えられて取れなかったけど、得意機種の北斗の拳転生の章の角を取れたわ」
絵里「思えば初めて打ったのがこの台だったのよね……ふふ。あの時の10万勝ちの感触はまだ忘れられないわ」
絵里「さあ、やるわよ!」
一方その頃
にこ「ふあああ…あら、もうお昼……ちょっと寝すぎたかしら」
にこ「昨日は会社の飲み会に付き合わされて…あら、なんで私家にいるのかしら…記憶が……」
にこ「ん?」
にこ「着信あり……真姫から?なんの用かしら」
真姫「おはよう。その後の様子はどう?」
にこ「??その後の様子?なんのこと?」
真姫「なんのって…絵里のことに決まってるじゃない」
にこ「絵里?絵里なら有意義な生活を送ってるでしょ。病気も治ったんだし……」
真姫「……退院の日から絵里には会ってないの?」
にこ「会ってないわよ。私はこうみえても仕事あるし、希は帰っちゃったしね」
にこ「絵里がどうかしたの?」
真姫「まあ……何があった、ってわけじゃないんだけど、気になって」
にこ「?」
真姫「もしかして、絵里が完治したと思ってる?」
476: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 21:42:53.41 ID:SgfVeV+6.net
にこ「え?だって病院で…」
真姫「ギャンブル依存症っていうのはそんな簡単なものじゃないのよ。入院させたのはあくまで一時的な措置に過ぎないわ」
真姫「人によっては一生付き合っていくことにもなるし」
にこ「はあ?なんでそれを言わないのよ?」
真姫「調べたって言ってたから…知ってるものだとばかり…」
にこ「……だ、だ、大丈夫よ。絵里なら大丈夫。もう道を踏み外すことはないわ……だ、だ、だって、あの日亜里沙と会った時の様子は……ねえ」
真姫「ねえ、って言われても」
にこ「……」
街中
海未「ふう……いきなり休日にバイトに出てくれなどと言われるなんて、こちらにも予定というものが…」
海未「まあ予定なんて寝るくらいしか今日はありませんでしたが」
海未「しかしいきなり急病人が出たのなら仕方ありませんね…」
海未「ささ、急がなければ……」
海未「ん?」
477: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 21:56:29.15 ID:SgfVeV+6.net
海未「あれは……たしか……」タッタッタッ
海未「す、すみません!」
「ん?」
海未「やはり……あなた、元アライズの統堂英玲奈さんですね?」
英玲奈「おや、たしか、園田海未、だったか?」
海未「ええ。お久しぶりです」
英玲奈「久しぶりだな。日曜日の昼に、こんなところを歩いているとは、もしやデートか?」
海未「は!?!?で、でで、デート!?な、なな、何を…そんなわけないでしょう!?」
英玲奈「ただ聞いただけなのに慌てすぎだ……」
海未「私はこれからバイトです!そういうあなたこそ一体何を!」
英玲奈「私か?私は店巡りだ」
海未「店巡り?」
英玲奈「ああ。番号が悪かったから他にいい台があるか近隣の店を様子見がてら巡っていたんだ」
海未「???言ってる意味がよくわからないのですが……」
英玲奈「ん?ああ、そうか。すまない。てっきりμ'sのメンバーはみんな詳しいのかと勘違いしていたよ」
海未「はあ……?」
478: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 22:07:55.08 ID:SgfVeV+6.net
午後3時
絵里「はあ…なんなのこれ」
絵里「3連続で単発…もうすでに50本飛んでる……」
絵里「…ちょっと様子見に回ってみようかしら」
絵里「うーん……昨日一昨日に比べたら出てないわね」
絵里「グランドオープン3日目なのに…もう回収始めてるのかしら」
絵里「ちょっと英玲奈にアドバイスでももらいましょうか」
絵里「あら?英玲奈…いないわね。どこ行ったのかしら」
英玲奈「私を探していたか?」
絵里「あ、英玲奈。一体どこに……」
絵里「……」
絵里「……穂乃果?なんでここに?」
穂乃果「絵里ちゃん……残念だよ」
絵里「えっ……」
英玲奈「外で他店を見て回っていたら偶然園田海未に会ってな。君がここにいると言ったら、血相変えて」
穂乃果「海未ちゃんはバイトだから代わりに今日何もなかった私が英玲奈さんに連れてきてもらったの」
穂乃果「実際この目で見るまでは嘘だと信じたかったけどね……」
480: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 22:23:16.80 ID:SgfVeV+6.net
穂乃果「絵里ちゃん……やっぱり治ってなかったんだね」
絵里「…現行犯だし、もう言い訳はしないわ」
絵里「なんでかしらね。店にいると落ち着く気がするの」
絵里「ここが私の居場所というか……気づいたらここにいるというか…」
絵里「例えば昨日は大敗したわ。負けた分、次の日は必ず取り返したい」
絵里「勝ったときは、その勝ち分をさらに上乗せしたい」
絵里「そういうことばかり考えてしまう」
絵里「いけない、ってことはわかってるの。妹は大事な時期だし、面倒を見る立場の私がこんなんじゃ……」
絵里「でも……短時間であんなにお金が増える感覚が……その期待を持てるフラグを引いた瞬間が……」
絵里「どうしても頭から離れないのよ」
絵里「……ねえ教えて穂乃果…」
絵里「私……どうしたらここから抜け出せるの?入院までしたのに、また私はここに戻ってきた……」
絵里「今日も今はすごく負けてる…それを取り返そうとして、このあと、明日、明後日と、また私はここに誘われる……」
穂乃果「絵里ちゃん……」
481: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 22:32:30.12 ID:SgfVeV+6.net
「強制的に治すことならできなくはないわ」
絵里「??」
穂乃果「真姫ちゃん?」
真姫「あら穂乃果。穂乃果もきてたのね」
絵里「真姫…強制的に治す方法って?」
真姫「まあ簡単に言うと絵里の自由を奪う。入院もその一種だったんだけど、さすがに何回も入院させるわけにもいかないし」
真姫「それで、少しずつ忘れさせるのよ…あなたから、快楽の記憶をね」
絵里「そんなこと、可能なの?」
真姫「それは…あなた次第よ」
絵里「私次第……」
真姫「最終的にはあなたの意思が全てを決める」
真姫「自由を奪うことは、きっと今の絵里ならそうとう辛い生活になるかもね。病院でも毎日悪夢にうなされてたみたいだし」
穂乃果「私たちは、絵里ちゃんを救いたい」
穂乃果「だけど、絵里ちゃん自身が抜け出そうとしなければ、きっと抜け出せない」
穂乃果「だけど……双方が手を伸ばせば、きっと未来は変えられる」
穂乃果「あの時みたいにね」
絵里「穂乃果…」
482: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 22:37:34.34 ID:SgfVeV+6.net
絵里「私は……あの時、穂乃果が差し伸べてくれた手を掴んだから、μ'sになった」
絵里「私自身を変えられた…学校の廃校も救うことができた……」
穂乃果「だから、絵里ちゃん。行こう。亜里沙ちゃんも、きっと待ってるよ」スッ
絵里「……手……」
絵里「……私は」
絵里「………」
487: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 23:00:34.48 ID:SgfVeV+6.net
数日後……
某店
英玲奈「最近絵里を見ないな……結局足を洗ったのだろうか」
穂乃果「あっ、英玲奈さん、こんにちは」
英玲奈「穂乃果か…仕事は慣れたか?」
穂乃果「いやははは…まだまだです。よくコイン補充でぶちまけちゃうんで…」
英玲奈「そうか。気が短いやつならおこるかもしれないな。ま、気にせずゆっくりなれることだな」
穂乃果「はい。がんばります」
英玲奈「ところで……」
穂乃果「?」
英玲奈「いや、なんでもない」
英玲奈(足を洗ったならそれでいいだろう。彼女はギャンブルは向いていない。普通の日常で生きていくのが一番だからな)
英玲奈「ん……隣、やめるのか」
英玲奈「沖ドキ1ゲーム止め…?システムわかってないのか?」
英玲奈「しかし私もAT中…移るわけにはいかない」
スッ
英玲奈(…やはりすぐ座られたか…まあそれはそうだが)
英玲奈「ん?」
「久しぶりね。英玲奈」
英玲奈「…………!」
488: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 23:08:43.60 ID:SgfVeV+6.net
英玲奈「絢瀬絵里……足を洗ったんじゃないのか?」
絵里「??私そんなこと言ったかしら?」
英玲奈「いや……聞いてはいないが…てっきり…」
英玲奈「だってこの前……」
絵里「そうね。みんなが、私を引き戻そうと、手を差し伸べてくれたわ」
絵里「でも気づいたの。私はきっとここから離れられない。そしてまたみんなに迷惑をかけてしまう」
絵里「まあ、もうすでに迷惑をかけてたんだけど」
絵里「だから私は…手を掴まなかった……」
絵里「私は、私自身の道を歩くの」
英玲奈「…それでよかったのか?」
絵里「さあ。わからないわ」
絵里「とにかく、μ'sの絢瀬絵里は、あの日、死んだの。ここにいるのは、ただのギャンブル依存症の絢瀬絵里」
絵里「求めているのは、期待値だけよ」
穂乃果「……絵里ちゃん」
493: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 23:28:23.37 ID:SgfVeV+6.net
とある日、音ノ木坂
ガチャ
花陽「失礼します……」
部員「あ、花陽部長!」
部員「お久しぶりです」
花陽「ちょ、ちょっとやめてよその呼び方。私はもう部長じゃないんだから」
部員「まあまあ。いいじゃないですか。この呼び方が馴染んでるんだし」
部員「ところで今日は何の用で?」
花陽「うん。来週、ついにラブライブの全国大会だからね。様子を見に…あっ、差し入れを持ってきたよ」
花陽「ババーン!」
部員「ぜ、全部おにぎり……」
部員「しかもでかい…」
花陽「一応一人2個で計算して、100個作ってきたよ」
部員「………これ、どうやって持ってきたんですか?」
496: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 23:34:20.84 ID:SgfVeV+6.net
花陽「そういえば、亜里沙ちゃんは…?」
部員「部長なら、屋上ですよ」
部員「本番に向けての最終確認じゃないですか」
花陽「…そっか」
部員「私たちはここで去年のラブライブを見て予習中です」
部員「まあ予習したから何があるってこともないですけど」
花陽「…いや、そういうのも大事だと思うよ。やっぱり、みんなが一丸にならないと、ラブライブで優勝するのは無理だからね」
部員「……さすが、去年優勝に導いた部長が言うと説得力がありますね」
花陽「もう!そんなこと言って持ち上げてもおにぎりはもうないよ!」
部員「いや、いりませんから……」
498: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 23:49:53.45 ID:SgfVeV+6.net
校舎内
花陽「屋上は……」
花陽「…邪魔しない方がいいよね」
穂乃果「あれっ?花陽ちゃん?」
花陽「えっ?」
穂乃果「花陽ちゃん、なんでここに?」
花陽「穂乃果ちゃん……」
穂乃果「なーんてね。理由なんてわかってるよ」
花陽「穂乃果ちゃん…」
穂乃果「見ていかないの?練習」
花陽「う、うん…邪魔かな、って…」
穂乃果「そんなこと……」
花陽「…亜里沙ちゃんの気持ち考えたら、前部長の私が顔を出すのはまずいかな、って」
穂乃果「うーん、考えすぎだよ。亜里沙ちゃんはそんな弱い子じゃないし」
花陽「…そうかな」
亜里沙「あれ?」
花陽「!!」
穂乃果「あ、亜里沙ちゃん」
亜里沙「穂乃果さんに花陽部長…お疲れ様です」
花陽「お、おつかれ…!?」
亜里沙「雪穂ちゃんなら上にいますよ。今は最後の確認作業してます」
穂乃果「あ、うん」
花陽「あ、あの……」
亜里沙「はい?」
花陽「……亜里沙ちゃん。最後まで、頑張ってね!」
亜里沙「……もちろんです」
亜里沙「私自身がステージに上がることはないですけど、部長として、最後までできることはやるつもりです」
亜里沙「雪穂ちゃんたちには、やっぱり最高のステージにしてもらいたいですから」
499: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/29(日) 23:59:12.42 ID:SgfVeV+6.net
数日後
ピンポーン
穂乃果「はいはーい」
ガチャ
穂乃果「あ、亜里沙ちゃん」
亜里沙「おはようございます」
穂乃果「ちょっと待っててね。ゆっきーまだ支度できてなくて」
雪穂「ちょっとお姉ちゃーん!私のポーチどこー?」
穂乃果「…まあこんな感じです。誰に似たんだか…」
亜里沙「ははは…」
雪穂「んじゃあぼちぼち行ってきまーす」
穂乃果「なーんか気のない出陣だなあ。今日全国大会なんだよ?」
雪穂「わかってるよ。こういうのは気負いすぎるとよくないのよ」
穂乃果「そうかなあ…」
亜里沙「雪穂ちゃん。靴。サンダルになってるよ?」
雪穂「えっ?あっ!」
穂乃果「…本当に大丈夫?」
雪穂「まったく。お姉ちゃんのドジが移ったんだよ」
穂乃果「……」
穂乃果「まあいいや。ゆっきー。ファイトだよ!私も必ず見に行くからね!」
雪穂「はいはーい…」
506: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 00:11:03.43 ID:kISIuxay.net
雪穂「まったく……お姉ちゃんも、あんなに気負わなくても…出るのは私なのに」
亜里沙「でもやっぱり見にきてくれるってのは嬉しいよね」
雪穂「うーん。まあ、あれでも優勝経験者だからね」
雪穂「一応姉だし」
亜里沙「……」
雪穂「…あ、ごめん」
亜里沙「あ、いや、こっちこそごめん。気にしないで」
雪穂「……」
亜里沙「……」
亜里沙「ねえ」
雪穂「ん?」
亜里沙「雪穂ちゃんは…ずっと、ずっと私の友達でいてくれる?」
雪穂「は?な、なに?いきなり」
亜里沙「雪穂ちゃんは、どこにも行かないよね!?いきなり私の前からいなくなったりしないよね!?」
雪穂「あ、亜里沙……」
511: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 00:17:39.53 ID:kISIuxay.net
雪穂「…当たり前でしょ。私は亜里沙を裏切ることは絶対にしないわ」
雪穂「亜里沙の助けがなかったら、ここまでこれなかったし」
雪穂「約束するから」
亜里沙「雪穂ちゃん…」
雪穂「ほらほら。だからこんな湿っぽい話はヤメヤメ。最後までたよりにしてるからね。部長」バン
亜里沙「……うん!」
512: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 00:29:55.39 ID:kISIuxay.net
会場
にこ「ラブライブにエントリーした初年は夏辞退、冬は優勝…」
花陽「その次の年は夏3位、冬は5位」
真姫「その次の年は夏、優勝……」
海未「そして冬は代表決定戦敗退……」
穂乃果「さてさて、今年はどうなるんだろ?」
ことり「それはもちろん優勝だよ!」
凛「でも初めてじゃないかな?音ノ木坂から出るのが3人のアイドルグループなんて」
希「3人といえば、アライズを思い出すなあ」
海未「3人だから余計に個々が目立ちますね」
ことり「とくにグループリーダーの雪穂ちゃんは一番目立つよね…」
穂乃果「うう……さすがに緊張する…」
にこ「あんたが緊張してどうするのよ」
花陽「仕方ないよ。やっぱり自分の姉妹が出場するっていうのは、本人以上に緊張するものだよ」
希「そやね。姉妹か…」
穂乃果「……」
にこ「あー、なんかちょっと私も緊張してきたわ。ちょっとトイレ行ってくる」
穂乃果「人にあんなこと言っといて…」
にこ「し、仕方ないでしょ?私は部の創設者なんだから、言わば全員が妹みたいなもんよ」
真姫「いいから早く行ってきなさいよ」
513: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 00:36:14.71 ID:kISIuxay.net
ジャー(水を流す音)
にこ「ふう……」
トントン
にこ「ん?」
にこ「え?」
にこ(帽子にサングラスにマスク…怪しすぎるわこの人…なんでこんなやつが会場入れたのよ。警備は何やってんの)
にこ(…ん?こういう風貌の人、どこかで見たような……)
にこ「ま、まさか……あなた……」
スッ(サングラスを外す怪しい人物)
絵里「…久しぶりね」
にこ「え…絵里…こんなとこで何やってんのよ」
にこ(ぐうっ!タバコの匂いが強烈!)
絵里「何って…もちろんラブライブを見にきたのよ」
にこ「……よく私たちの前に顔が出せたわね」
515: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 00:43:31.40 ID:kISIuxay.net
絵里「……それは重々承知しているわ」
にこ「あんた今どこに住んでるのよ。学校も辞めたそうじゃない。何か仕事はしてるの?」
絵里「……」
にこ「なんで黙るのよ」
絵里「ねえにこ。あなたにしか頼めない、重要なお願いがあるの」
にこ「?私にしか頼めない?」
絵里「ええ……」
にこ「何よ?」
絵里「……」
絵里「…お願い」
絵里「お金貸して!」
にこ「………はあ!?」
519: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 00:56:44.74 ID:kISIuxay.net
絵里「もちろんこんなお願いするなんて馬鹿げてるってことはわかってるわ」
絵里「だけど、今は体裁を気にしてる場合じゃないの……」
絵里「お願い!必ず返すから!!」
にこ「…ふうん。だから、唯一学生じゃない私に頼んでる、ってわけか」
絵里「ええ…」
にこ「……あんたならわかってるはずよ。私は家がそんなに裕福じゃない。稼いでるお金も、ほとんどを家に入れてる。妹たちもこれから進学でお金がかかる」
にこ「私は家族のために働いてるのよ。まだまだ芽の出ないアイドル崩れみたいなものだけど、それでも私が稼いだお金は私が汗水流して必死で稼いだお金なの」
にこ「あんたみたいな、ギャンブルに目がくらんだヤニまみれの人たちも相手にしてね」
にこ「断りたいと思った理不尽な仕事も何個もあったわ。でも、私を応援してくれる人たちのため、家族のために、必死にくらいついていったの」
にこ「そうやって手にしたのが給料なの。そうやってしないと手に入れられないのが給料。お金なのよ」
にこ「それを……全てを捨てて裏切ったあんたに貸すって?虫がよすぎるんじゃない?」
絵里「……おっしゃる通りでございます」
520: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 01:07:03.53 ID:kISIuxay.net
にこ「……一つ聞くけど、どうやって返すつもり?」
絵里「……」
にこ「どうせ仕事なんてしてないんでしょ」
絵里「……ハイエナ」
にこ「は?」
絵里「必ず勝てる方法があるの。天井狙い、って言って、天井っていうのは、救済措置で、そこに到達したら……」
にこ「あー、もういいわ。なんとなくわかったから」
にこ「……一応、退院後あんたをほっといた私にも責任はあるわけだし」
絵里「……じゃあ」
にこ「とりあえず少し考えるわ。ラブライブが終わるまで」
にこ「だから、あんたもラブライブを見ていきなさい。私たちの近くじゃなくていいから」
にこ「ま、亜里沙は出ないけどね」
にこ「あんたがいたら結果は違ったかも……なんてのは、雪穂たちに失礼だから言わないけど」
にこ「終わったらまたこのトイレに来るから」
絵里「……わかったわ」
522: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 01:19:15.15 ID:kISIuxay.net
演目は次々と消化されていく……
司会「さあ、続いては、東京代表、音ノ木坂学院のスクールアイドルです!」
穂乃果「き、きたっ!」
海未「さ、さすがに私も緊張してきましたね…」
ことり「だ、大丈夫だよ。だって雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの妹なんだから、本番に強いタイプだよ」
真姫「…穂乃果って本番に強いタイプなの?」
凛「本番前に頑張りすぎるところはあったけどね」
希「凛ちゃん…それはタブーやで」
花陽「まあ、強いというか、強心臓なところはあったよね」
にこ「…さあ、あなたたちの全てを見せなさい。私たちに。この会場にいる全ての人にね」
舞台裏
雪穂「あー、やっと出番かあ。待ちくたびれたわ」
部員「雪穂…あんた、本当に緊張とかしないのね」
部員「そういうところだけは尊敬するわ」
雪穂「だけって何よだけって」
523: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 01:29:20.45 ID:kISIuxay.net
亜里沙「ゆ、ゆゆ、雪穂ちゃん、ががが頑張って!緊張しない、ようにぬぇっ!」
雪穂「…緊張してるのは亜里沙でしょ」
雪穂「まあ、任せなさい。私たちがみんなの分、しっかりやってきてあげるから!」
ステージ開始
絵里「……私も昔、ここに立ってたのよね」
絵里「…なんか、遠い昔に感じるわ」
絵里「……私の青春」
ステージ終了
舞台裏
亜里沙「お疲れ様!みんな!すごいよかったよ」
雪穂「やれることは全てやりきったよ。50人分ね」
亜里沙「へ?」
雪穂「?当たり前でしょ。私たちアイドル研は50人。一人欠けても成立しない」
雪穂「見た目は3人だったかもしれないけど、魂はしっかり50人分あったから」
雪穂「ラストステージとしては満足ってところね」
亜里沙「…雪穂ちゃん」
雪穂「さ、あとは結果待ちね。黙って待ちましょ」
524: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 01:40:17.60 ID:kISIuxay.net
結果発表
真姫「トップ10が発表される形式で、とりあえず5位まで発表されたけど、まだ呼ばれてないわね」
希「そりゃそうやろ。優勝チームで呼ばれるんやから」
凛「いやいや、もしかしたら圏外の可能性も…」
にこ「あんた、少し空気読むこと覚えたら?」
海未「……はあ、はあ、なんか呼吸が…」
ことり「海未ちゃん…あがり症は相変わらずだね」
真姫「今は海未があがる場面じゃないでしょ」
花陽「さあ、4位以上の発表だよ!」
穂乃果「……ゆっきー」
司会「第4位は……近畿代表、OSK女学院スクールアイドルです!」
穂乃果「4位じゃない…」
司会「第3位は……関東代表、桜高校スクールアイドル!」
穂乃果「ドキドキ…」
司会「第2位は……東京代表、音ノ木坂学院スクールアイドルです!」
一同「えっ……」
絵里「2位………」
525: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 01:56:47.38 ID:kISIuxay.net
雪穂「あっはっはー!2位だったかあー。やっぱり全国大会は凄いなあ。あんなに頑張っても優勝できないなんて」
雪穂「………はは」
雪穂「……みんな、ごめんね」
部員「なんで雪穂が謝るのよ」
部員「そうよ。私たちは間違いなく最高のステージを披露した。優勝チームがそれを上回った。それだけだよ」
雪穂「みんな……」
亜里沙「雪穂ちゃん……」
雪穂「亜里沙…」
亜里沙「…お疲れ様」
雪穂「……ありがと」
雪穂「優勝はできなかったけど」
雪穂「このアイドル研はやっぱり最高だね」
亜里沙「……うん!」
希「…終わったね」
凛「そうだね」
真姫「2位でも十分素晴らしいわよ」
花陽「そうだね。みんなすごかったよ」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん…泣かないで…」
穂乃果「うえーん……ゆっきーが…ゆっきーが…」
海未「嬉しくて泣いてるのか、悲しくて泣いてるのか、よくわかりませんね」
希「…あれ?にこっちは?」
526: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 02:04:12.13 ID:kISIuxay.net
トイレ前
絵里「雪穂たち、すごかったわね。あれがアイドルっていうものだったのね」
にこ「そうよ。あんたみたいな汚れきった心にも、響くものがあったでしょ?」
絵里「……」
にこ「さて、話の本題に入りましょうか」
絵里「……」
にこ「貸してもいいわよ」
絵里「えっ!」
にこ「ただし、条件があるわ」
絵里「じょ、条件?」
にこ「ええ」
にこ「お金は亜里沙に渡すわ。あんたは亜里沙から借りなさい」
絵里「……え?」
にこ「亜里沙経由でお金を貸す。それが条件よ」
絵里「そ…そんな……」
にこ「この条件が飲めないなら貸せないわね」
絵里「……」
絵里「…わかったわ」
527: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 02:16:20.38 ID:kISIuxay.net
翌日
亜里沙「にこさん。こんな朝早くから、どうしたんですか?」
にこ「昨日はお疲れ様。優勝できなかったのは残念だけど、よかったわよ」
亜里沙「あ、ありがとうございます」
亜里沙「でもにこさんの代は優勝してますから、並ぶことはできなかったですけど…」
にこ「うーん、とは言っても、私は部長らしいことなんてなんもしてなかったしね」
にこ「で、そんな翌日にすごい申し訳ないんだけど、これ」スッ
亜里沙「?封筒?」
亜里沙「えっ…お金?なんで…?」
にこ「そのお金、亜里沙に預かってほしいの」
にこ「もしかしたら、誰かが受け取りにくるかもしれないから」
亜里沙「??」
にこ「ごめんね。勝手だけど、お願いするわ。まあ、それだけよ」
亜里沙「ちょ、ちょっと!」
にこ「じゃあね亜里沙」
亜里沙「……行っちゃった」
亜里沙「誰かが受け取りにくるって……」
亜里沙「…まさかね」
529: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 03:27:04.04 ID:kISIuxay.net
絵里「…はあ。にこもひどいわね。亜里沙経由なんて、つまり亜里沙から借りれと言ってるようなものじゃない」
絵里「…さすがに、妹から借りるのは…」
絵里「とはいえ残金は3万円…これじゃあ来月の家賃も払えないわ…」
絵里「…やっぱり借りるのは最終手段。これで行くしかない」
絵里「ただ47枚貸しはさすがにリスクが高いから、今日は94枚貸しがある店に行きましょ」
絵里「なにこの店…ガラガラじゃない…」
絵里「とはいえ94枚貸しはここしかないし…188枚貸しはさすがにリターンが少なすぎる……」
絵里「でも……」
絵里「この店、最新台が化物語じゃない。もう一年以上前の機種なのに……」
絵里「さすがにダメだわここは。いくらリスクが低いからって、負けたら本末転倒だもの」
絵里「…はあ。こんなときに英玲奈がいたらアドバイスもらうんだけど」
絵里「英玲奈は先月まさかのパチスロライターに転身…」
絵里「……いいえ。泣き言は言ってられないわ。自分で選んだ道だもの。やるしかないわよ」
530: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 03:39:49.02 ID:kISIuxay.net
翌日
真姫の家
真姫「はあ…眠いわ」
真姫「最近研究室にこもりっぱなしだし……体も痛い…」
真姫「おかしいわね。高校時代はダンスで鍛えてたはずなのに」
真姫「年かしら……」
真姫「まあいいわ。学校行かなきゃ…」ガチャ
真姫「!」
真姫「……何の用?」
絵里「真姫……お願いが…」
真姫「バカにつける薬はないっていうけど、本当みたいね」
絵里「……」
真姫「ねえ、家に帰ればいいじゃない。今からでもやり直せば」
絵里「無理よ。私はもう亜里沙の姉でいる資格はない」
絵里「亜里沙は私とは違う……もう私と関わって嫌な思いをさせたくない」
真姫「…それって、逆に私なら嫌な思いをさせてもいいって聞こえるんだけど」
絵里「…返す言葉もないわ」
真姫「…はあ。呆れたわ」
532: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 03:47:32.30 ID:kISIuxay.net
真姫「いい?最終通告よ。家に帰りなさい。亜里沙にとっては、こんなあなただって、世界でただ一人の姉なのよ?」
真姫「一緒にやり直すの。私たちも可能な限り協力するから」
絵里「…あの日、穂乃果が差し伸べてくれた手を握らなかった時点で、私にはその権利も資格もない」
絵里「邪魔したわね…」スタスタ
真姫「え、絵里!?待ちなさい!」
真姫「……なんなのよ!もう!死にたいのかしら…」
絵里「もう誰も頼れない……」
絵里「私に残されたのは、この9千円だけ…」
絵里「……ははは。これが私の成れの果て。もう未来なんてない」
絵里「……私、なんのために生きてるんだろう」
535: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 03:57:41.08 ID:kISIuxay.net
絵里「はあ…店にきたはいいけど」
絵里「9千円じゃね…捨てるようなものだし」
絵里「……絶望とはこのことか…」
絵里「やっぱり真姫のいうとおり、家に帰ったほうが……」
絵里「ん?」
絵里「あら、あの人、トイレかしら」
絵里「台の上に財布置きっぱなしだけど…」
絵里「高級ブランド財布…いかにもお金持ってます、っていう雰囲気かもし出してるわ…」
絵里「……」
絵里「……」
絵里「…とうとう、人間を辞める時がきたようね……」
537: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 04:10:40.08 ID:kISIuxay.net
数日後
某店(穂乃果のバイト先)
穂乃果「おはようございます!」
先輩「おう高坂。今日も元気がいいな」
穂乃果「いやー、それほどでも」
先輩「一応確認事項があるから、掲示板確認しておいてくれ」
穂乃果「あ、はい」
穂乃果「なになに…」ジーッ
穂乃果「近隣店舗で財布の置き引きが多発……客には貴重品のきちんとした管理を徹底させるように…」
穂乃果「置き引きかあ……最低な人間って、やっぱりいるんだよね。いつの時代も」
穂乃果「あ、証拠のカメラ映像もプリントされてる…」
穂乃果「これが犯人か…でもこの犯人、金髪だし、目立つなあ。すぐ捕まる……」
穂乃果「……」
穂乃果「こ、これって……」
538: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 04:23:24.81 ID:kISIuxay.net
某店
絵里「…」スパー
絵里「……クソ台ね」
絵里「初めて打ったけど、この蒼穹のファフナーとかいうやつ、演出がさっぱり意味わからないわ」
絵里「とくにこの左上の役物……いらないでしょこれ。パチンコでいいでしょ」
絵里「はあ…また一文無しか……しかたない。補給しましょ」
絵里「意外といるのよね…財布放置して席立つ人。天井狙いなんかよりよっぽど楽だわ」
外
凛「ふああ、今日も眠い講義だったにゃ……」
凛「今日はバイトもないし、こういう日はさっさと帰って寝るに限る……」
凛「んにゃ?あのパチンコ屋の前にパトカーが止まってるにゃ…なんかあったのかにゃ?」
凛「あっ!誰か連行されてる!なんかやったのかな!?連行されてる現場なんて初めて……」
凛「……」
凛「…あの金髪」
凛「絵里ちゃん!?」
543: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 06:06:37.32 ID:kISIuxay.net
凛「絵里ちゃん!どうしたの?一体何が!」
警官「なんだ?あんたは。邪魔だよ」
絵里「……」
絵里(凛……)
凛「なんで連れていかれるの!?何か悪いことでもしたの!?」
絵里「……」
凛「ねえ答えてよ絵里ちゃん!ねえったら!」
警官「…知り合いか?」
絵里「……さあ。わかりません。私は友達なんていませんから」
凛「絵里ちゃん……」
バタン
ブロロロ…
凛「…大変なことになったにゃ」
翌日
警察署
亜里沙「絢瀬亜里沙です」
警官「はい。絢瀬絵里さんの身元引き受け人ですね。こちらへ」
亜里沙「はい……」
警官「容疑は窃盗罪。前科はないので、今回は起訴しません」
警官「よろしいですか?」
亜里沙「すみません。姉がご迷惑を……」
警官「ところで…仲悪いんですか?」
亜里沙「え?」
警官「いえ、身元引き受け人が必要なので、家族を教えてくれと言っても、頑なに拒み続けて…」
警官「おい、野暮なこと聞くなよ」
警官「あ、すみません」
亜里沙「いえ……」
545: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 06:21:08.01 ID:kISIuxay.net
亜里沙「ありがとうございました」
警官「お気をつけて」
絵里「……」
亜里沙「……帰ろっか」
絵里「…どこへ?」
亜里沙「どこへって…うちだよ」
絵里「私にはもう帰る場所なんてないわよ」
絵里「全てなくした…人も、金も」
絵里「釈放されたところで、なにもないのよ」
亜里沙「……そんなこと」
絵里「やめてよ!これ以上私に期待しないで!」
亜里沙「!」
絵里「わかったでしょ?私はこんな落ちこぼれの人間なのよ!昔から周りの人たちは私に期待するけど、結局期待には答えられなかった……裏切り続けていた」
絵里「だから、もう私に期待しないで…あなたが思うほど、私はできた人間じゃないの」
絵里「何より…亜里沙。あなたを裏切るのが一番辛い……」
絵里「それなら、いっそ死んだほうが……」
パシン
絵里「………!」
亜里沙「…何よそれ。意味わかんないよ」
亜里沙「期待とか裏切るとか、どうでもいいんだよ私には!」
亜里沙「だって……だって、お姉ちゃんは、世界でただ一人の私のお姉ちゃんなの!」
亜里沙「それに死んだりなんかしたら、それこそ最低の裏切りだよ!二度と言わないで!」
絵里「……亜里沙」
588: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 15:38:32.44 ID:kISIuxay.net
テクテク
絵里「亜里沙…帰るんじゃなかったの?道が違うみたいだけど…」
亜里沙「うん。ちょっと寄り道を」
絵里「寄り道?」
亜里沙「ついたよ」
絵里「ここは……神田明神の階段…」
亜里沙「お姉ちゃんたちも、昔はここでよく練習してたでしょ」
絵里「…懐かしいわね」
絵里「確かによくここに集まってこの階段を走ってたわ」
絵里「海未ったら、とんでもないスパルタで、とても完走できないような無理難題を出すんだもの」
絵里「でもやっていくうちにだんだん走れるようになって…真姫なんか最初は1往復するのが精一杯だったのに、なんだかんだ最終的にはみんな完走してたわ」
亜里沙「私も、毎日のようにこの階段を昇った…最初は毎日吐きそうになったりしてた」
亜里沙「だけど、お姉ちゃんたちに追い付きたい、憧れのμ'sに追い付きたい、追い抜きたい。その一心で、3年間。ここを走り続けた…」
絵里「…伝統みたいでいいわね。音ノ木坂スクールアイドルの」
亜里沙「ねえお姉ちゃん。競争しようよ」
絵里「はあ?」
亜里沙「お姉ちゃんが勝ったら、全部許してあげる」
絵里「む…無理に決まってるじゃない!ついこの間まで現役だった亜里沙に勝つなんて。私は全然運動なんてしてないし」
591: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 15:46:25.83 ID:kISIuxay.net
亜里沙「もちろんハンデをあげるから」
絵里「ハンデ?」
亜里沙「お姉ちゃんは、15段上からスタートしていいよ」
絵里「15段……」
亜里沙「さらに」
絵里「?」
亜里沙「私は階段の20メートル後ろからスタートする。これならお姉ちゃんでもいい勝負になるんじゃない?」
絵里「」ピクッ
絵里「亜里沙…いくらなんでも私をなめすぎじゃないかしら。運動神経はそこそこあるのよ?」
亜里沙「そう?私はこれでも勝てる自信あるけど」
絵里「……言ったわね」
絵里「見てなさい…かつてKKEと呼ばれたこの私を見くびったツケ…目にもの見せてあげるわ」
「よーいドン!」
絵里「てやっ!」ダッ
亜里沙「はっ!」ダッ
絵里(あれ…今のスタートの合図、亜里沙の声じゃなかったような……?)
593: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 15:55:13.10 ID:kISIuxay.net
階段上
絵里「はあ、はあ、はあ……」
絵里「ば…ばかな……あれだけのハンデをもらって…負けるなんて…」
絵里「…しかもたったこれだけの距離で、こんなに息が……上がるなんて…」
絵里「…だめ。スタミナが……よく考えたら、最近ほとんど何も食べてないから…」
「はい。これあげる」
絵里「あ、ああ、ありがとう……」
絵里「!!」
絵里「穂乃果!?なんでここに!?」
穂乃果「お腹減ってるんでしょ?早く食べなよ」
絵里「え?え、ええ…」
絵里「これ…私がよく買ってたお饅頭…」
穂乃果「以前はよく買ってくれてたよね。絵里ちゃんはそれが好きなんでしょ?」
絵里「穂乃果……」
パクッ
絵里「……」
絵里「……美味しい」
絵里「…なんで」
絵里「……なんでこんなに美味しいのよ…」
絵里「お饅頭って、こんなに美味しいものだったなんて……」
亜里沙「お姉ちゃん…」
594: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 16:04:02.74 ID:kISIuxay.net
花陽「はい。特製おにぎりだよ」
絵里「花陽……」
凛「うちの店長特製の味噌ラーメンだにゃ!…といってもカップ麺だけど」
絵里「凛……」
海未「ローソンブランドのデザートスイーツです。こう見えてかなり好評なんですよ」
絵里「海未……」
ことり「はい。飲み物も必要でしょ。スポーツドリンクだよ」
絵里「ことり……」
にこ「ほら。にこにー特製の手作り弁当。特別に作ったんだから」
絵里「にこ……」
真姫「…ちょっと被ってるけど、お弁当よ。専属シェフのお手製」
絵里「……真姫」
絵里「な、なんでみんなここに……?」
596: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 16:12:16.23 ID:kISIuxay.net
亜里沙「お姉ちゃん……気づいてるでしょ?」
亜里沙「やっぱりみんなは、誰もお姉ちゃんのことを見捨てたりしない」
亜里沙「共に戦った仲間だから……仲間が苦しい時は助ける」
亜里沙「当然じゃない」
絵里「仲間……でも、私は、みんなを裏切って……たかって……あげくのはてに、犯罪まで……」
絵里「こんな私でも、まだ、仲間と……呼んでくれるの?」
海未「…どうやら絵里は、私たちを見くびっているようですね」
ことり「私たちはμ'sだよ?」
真姫「μ'sは一人でも欠けたら成立しない」
凛「むしろ勝手に仲間から抜けるなんて、逆に許されないよ」
花陽「うん。私たちには、絵里ちゃんが必要なんだよ」
にこ「μ'sの活動は終わったかもしれないけど、その魂は確かに私たちの中に生きているわ」
穂乃果「そしてそれは、ずっと消えない……どんなことがあってもね」
絵里「……みんな」
598: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 16:19:23.81 ID:kISIuxay.net
希「じゃあウチからはこれをみんなにプレゼントや」
絵里「希!?あなたまで……」
絵里「これは……絵馬?」
希「懐かしいやろ?これも」
絵里「……ええ」
穂乃果「よし、じゃあ、またあの時みたいに、みんなで願いを書こう!」
雪穂「……いいね、仲間って」
亜里沙「雪穂ちゃん…」
雪穂「まあ、私には亜里沙がいるし、別に羨ましいとかないけど…」
亜里沙「……ふふっ」
雪穂「それはそうと、亜里沙ちょっと大人気ないよ。全力疾走だったでしょさっきの」
亜里沙「そりゃそうだよ。私は勝負ごとには手を抜かないから」
雪穂「…ま、亜里沙らしいか」
亜里沙「まあ私も、まさか雪穂ちゃんがスタートの合図をするのは予想外だったから、それでちょっとスタート遅れたけどね」
雪穂「いやー一度やって見たかったんだよね。スターターってやつ。夢が一個叶ったよ」
亜里沙「なによその夢」
雪穂「ははは」
亜里沙「あはは」
600: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 16:25:15.95 ID:kISIuxay.net
絵里(私は…全てなくしたかと思っていた)
絵里(でも、私の大切な仲間は、誰一人私を見限ってはいなかった)
絵里(それに気づけず、墜ちていった日々……)
絵里(こんな私さえも、支えてくれる仲間が、家族がいる)
絵里(これって、素晴らしい。ハラショーなことよね)
絵里(私は、最高の仲間に恵まれた)
絵里(だから、もう迷わない)
絵里(もう二度と、誰かを悲しませることはしない)
絵里(ギャンブル依存症は、完治が難しい病気なのかもしれないけど、不可能でもない)
絵里(いや、きっと乗り越えられる。この仲間と一緒なら…)
絵馬「この仲間たちと、いつまでもずっと一緒に生きていたい。絢瀬絵里」
603: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 16:33:41.27 ID:kISIuxay.net
翌年、春
亜里沙「お、お姉ちゃん…ど、どうかな…この格好」
絵里「…ハラショーよ。今、間違いなく世界一美しいわ」
亜里沙「そんな…ウェディングドレスじゃないんだよ?大袈裟すぎるよ」
絵里「……しかし驚きだわ。我が妹が、まさかWSD大学の政経学部に通うことになるなんてね。しかも現役合格」
亜里沙「まあ…一応、夢も見つけたし」
絵里「亜里沙なら、アイドル方面でもやっていけると思ったんだけど…」
亜里沙「まあ、アイドルも確かに捨てがたかったけど、やっぱり私、変えたいから」
絵里「……そう」
亜里沙「政治家を目指して、ギャンブルに溺れる人たちが少しでもいなくなるような国をつくる。それが今の私の夢」
絵里「…あなたならきっとできるわ。なんたって、私の妹なんだから」
604: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 16:41:14.40 ID:kISIuxay.net
亜里沙「あっ!いけない!遅れちゃう!」
絵里「えっ?あっ、私も!」
亜里沙「じゃあお姉ちゃん、先に出るから!」
絵里「行ってらっしゃい亜里沙。頑張るのよ」
バタン
絵里「……さて、私もバイトに出かけなきゃ」
絵里「朝から昼過ぎまで海未のコンビニ、それが終わったら、夕方から夜までことりの喫茶店」
絵里「週末は凛のラーメン屋で通し勤務……」
絵里「4月一杯は休みなし、か…」
絵里「ま、仕方ないわね。日中仕事漬けなら、ギャンブル行く暇もないだろうって、亜里沙に荒療治かけられてるし」
絵里「しかも給料が振り込まれる口座は全て亜里沙が管理。現金は一切所持禁止。買い物や食事は全て電子マネー」
絵里「ガチガチに縛られた生活だけど……やっぱり清々しいわね」
絵里「っと、いけない。遅刻なんてしたら怒られちゃうわ」ドタドタ
バタン
……
605: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 16:45:05.63 ID:kISIuxay.net
絵里「急がないと……」タッタッタッ
「………」
英玲奈「絢瀬絵里。なんとか自分の暮らしを持ち直したようだな」
英玲奈「それでいい。君はそっち側の人間だ」
英玲奈「このまま周りの人間のサポートがあれば、きっといつか、ギャンブル依存症を克服できる」
英玲奈「……あいつみたいな末路にだけはならないだろう」
606: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 16:47:36.23 ID:kISIuxay.net
英玲奈「一応本編はこれで終わりだ」
英玲奈「だが、番外編とでも言えばいいのだろうか。話はもう少しだけ続く」
英玲奈「よければ、もう少し、お付き合い願いたい」
610: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/03/30(月) 17:00:47.92 ID:kISIuxay.net
時は遡り、とある日……
英玲奈「私としたことが寝坊とは……昨日の下見が台無しだ」
英玲奈「奇跡的にまだ手付かずかもしれないが、ライバルが多い店だからな……」
ウィーン
英玲奈「…やはり座られているか。まあここは前日回転数の少ない台を露骨に上げてくる分かりやすい店だからな。寝坊した私が悪い」
英玲奈「一応挙動だけでも見ておくか。データカウンターにスランプグラフが表示されているから、それを見て……」
英玲奈「……うーむ。マイナスか。だが、初当たりは良さげだな。単に引き弱か……」
「ちょっとあなた?さっきから人の台をじろじろ見て、気持ち悪いんだけどやめてくれないかしら?」
英玲奈「あ、ああ、すまない……」
英玲奈「ん?」
「あ」
英玲奈「な……なんで君がここに……」
663: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 07:43:50.13 ID:qqf65RYY.net
英玲奈「優木あんじゅ」
あんじゅ「な、なんでフルネームなのよ…英玲奈」
英玲奈「まさか、君にこんな場所で会うとはな…」
あんじゅ「くすっ。ほんとよね。一世を風靡したあのスクールアイドルが、まさかこんなこの世の果てみたいな場所で出会うとはね」
英玲奈「……言葉の割には、嬉しそうだな……」
あんじゅ「そりゃあ青春を一緒に過ごした仲間とまた出会えたんだもの。嬉しいに決まってるじゃない」
英玲奈「…ここにはよく来るのか?」
あんじゅ「そうねえ。まあ来るっちゃあ来るけど、近隣の3、4店舗をローテーションみたいな感じかな?」
英玲奈「そうか……」
あんじゅ「ねえ、もしかしてこの台打ちたかった?」
英玲奈「え?」
あんじゅ「だってさっきじろじろ見てたし」
英玲奈「あ、ああ…」
あんじゅ「あげよっか?なんか出ないし」
英玲奈「へ?」
666: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 09:35:15.84 ID:qqf65RYY.net
あんじゅ「私こう見えてあまり気の長い方じゃないから、もう飽きちゃった。まあ悪い台じゃなさそうだし、もしよかったらあげるわ」
英玲奈「…い、いいのか?赤の他人なら喜んでもらうところだが、これはかなり上の期待ができる台だぞ?」
あんじゅ「いいよ別に。だって上だからって出るとは限らないし」
英玲奈「それはそうだが…」
あんじゅ「まあいらないならいいけど。どっちにしろ私はこれは辞めるわ。アラジン打ちたくなっちゃったし」
英玲奈「…そうか」
あんじゅ「それじゃあね」
英玲奈「……」
英玲奈「…このサラリーマン番長の履歴、青ボーナスが続いてるな…前回の頂も青……まさか、ブルーレジェンド中じゃないのか?」
667: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 09:47:36.15 ID:qqf65RYY.net
閉店
英玲奈「…ふう。なんとか波をつかんだな…5000枚取りきれず、か。BB70Gは確認出来なかったが、まあ上なのは間違いなさそうだ。やはりこの店は食える」
英玲奈「あんじゅは……」
英玲奈「さすがにもういないか……アラジンは全台爆死してるな…まさかこれ打ってたのか…」
英玲奈「……まあ余計なお世話か。人には人の打ち方があるからな。しかしあんじゅはあんな朝から打っていたとは、仕事はしていないのか?打ち方からしてこれで稼いでいるとは思えないし……」
英玲奈「まあいい。帰ってデータ確認しよう。明日は駅前の旧イベント日だからな」
668: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 09:56:30.44 ID:qqf65RYY.net
翌日
英玲奈「100人くらいはいるか……まあいい。昨日は寝坊してしまったが、今日は間に合っ……」
あんじゅ「あらー、英玲奈。今日はこっちの店?」
英玲奈「あんじゅ?まさか打ちにきたのか?」
あんじゅ「もちろん。ローテーション的には今日はこの店だしね」
英玲奈「ローテーション……」
あんじゅ「それより見てよ。入場抽選1番だよ。超ラッキー」
英玲奈「ほう。それは強運だな。狙いは絞ってるのか?」
あんじゅ「もちろん。新台のブラックラグーンに行くわ」
英玲奈「なに……?言っちゃ悪いが、この店は、新台は1週間は完全に回収だぞ?おととい入ったばかりの新台を打つのか?」
あんじゅ「問題ないわよ。どうせ今の台なんてヒキでどうにでもなるし、設定なんていちいち気にしてたら楽しめないし」
英玲奈「……そうか」
あんじゅ「それに昨日は7万も負けちゃったから、それをまくらなきゃ」
英玲奈「7万……」
あんじゅ「ま、お互い頑張りましょう」
英玲奈「……」
669: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 10:05:12.50 ID:qqf65RYY.net
1時間後
あんじゅ「英玲奈…お金貸してくれない?」
英玲奈「?」
英玲奈「…まだ1時間しかたってないぞ。もう尽きたのか?」
あんじゅ「うん。2万しか持ってきてなくて」
英玲奈「2万だけで新台打ちにきたのか……」
あんじゅ「お願い。爆発させて返すからさあ」
英玲奈「……ちょっと待て」
あんじゅ「?」
英玲奈「貸すのはいいが……条件がある」
あんじゅ「え?まさか、倍にして返せ、とか?」
英玲奈「そうじゃない。あんじゅの今の立ち回りははっきりいって勝てる立ち回りとは言えない。そんな立ち回りでは結局負けるのがオチだ」
英玲奈「パチスロは確かに運の要素が大きいが……その運を生かす立ち回りをしなければ、勝てるものも勝てない」
英玲奈「だから……私の指示に従ってもらう。これが金を貸す条件だ」
あんじゅ「えー?」
英玲奈「できないなら、残念ながら貸せないな」
あんじゅ「…わかったわよ。従うわ」
671: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 10:19:06.93 ID:qqf65RYY.net
英玲奈「……今の段階で辛うじて打てるのはこれか」
あんじゅ「…なにこれ。蒼天の拳?」
英玲奈「今日300G回って当たりなし。昨日は270G回って閉店している。この店は上げ下げ以外の変更はしないから、あと200くらい回せば天井だ」
あんじゅ「え、でも、変更してる可能性だって…」
英玲奈「ここはバラエティーコーナー。この店はバラエティーははっきりいって撤去待ちの数あわせみたいなもので、回収専用だ。もちろん変更などしない」
あんじゅ「よくそんなことわかるね」
英玲奈「パチスロはデータと情報の戦いだ。2年以上この店に通っているから、そこらへんは間違いない。今日店長が変わったとかいうなら話は別だが、そんな様子もないしな」
あんじゅ「うーん、でも、なんかつまらなそう。いかつい男ばかり出てくるやつでしょ?私あんまり好きじゃないなあ」
あんじゅ「あっ、これは?ほら、なんか可愛い女の子一杯出てくるような台だよ?」
英玲奈「マジカルハロウィン4か。ダメだな。昨日100Gヤメで今日はまだ回っていない。完全に打ってはいけない台だ」
あんじゅ「えー……」
673: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 10:27:37.98 ID:qqf65RYY.net
英玲奈「すでに設定が狙えそうな台はあらかた抑えられている。こういう時はゾーンや天井を狙うのが鉄則だ」
英玲奈「もちろんそんな台などなかなか落ちているものではない。そういう時はひたすら待つ。待ってダメなら打たない」
英玲奈「収支を少しでもプラスに持っていきたいなら、無駄打ちはしない」
英玲奈「打つことより、打たないことの方が重要なんだ。負けてる人間の大多数は、無駄打ちで負債を抱えている」
英玲奈「もちろん自分の金で打つのなら自由だが、私の金を使う以上、これは守ってもらうぞ」
あんじゅ「……わかったよ。これを打つよ」
英玲奈「そもそもこの台ですら見つけられたのがラッキーだからな」
あんじゅ「はーい」
682: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 17:28:46.77 ID:qqf65RYY.net
1時間後
英玲奈「うーむ……旧イベントの2分の1で上の機種はこれで間違いなさそうなんだが……どうやら2分の1を外したようだな」
英玲奈「ヤメよう」
英玲奈「さて、あんじゅの様子は……」テクテク
英玲奈「………おい。なぜ隣の台を打っている?」
あんじゅ「あっ、英玲奈。見てみて。すごい上乗せして、ほら、残り250Gも!」
英玲奈「…なぜ隣の台を打っている、と聞いているんだ」
あんじゅ「いや、そっちも打ったよ?あのあとすぐ当たってさ、すぐ終わっちゃって」
英玲奈「それはよくある話だが……無駄打ちをするなと言っただろう?」
あんじゅ「別にいいじゃん出てるんだし。英玲奈に借りたお金も確実に返せるしさ」
英玲奈「……あんじゅ。さっきのお金は返さなくていい」
あんじゅ「え?」
英玲奈「そのかわり二度と私にせびるな。言うことが聞けないなら助けることはできない」
あんじゅ「英玲奈……なによ。自分が調子悪いからって八つ当たり?カッコ悪いよ?」
英玲奈「……」
あんじゅ「じゃあありがたくお金は貰うね。英玲奈ももう少し楽しんで打てばいいのに」
英玲奈「…さらばだ」
684: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 17:42:46.90 ID:qqf65RYY.net
午後7時
英玲奈「結局あの後打つ台は見当たらず……まあいい。出てる台は出てる。やはりこの店は信頼できる」
英玲奈「さて、他店の様子でも見に行くか…」
ウィーン
英玲奈「ん?あれは…あんじゅ。さすがにもうヤメたか?」
英玲奈「…いや、違うな。電話をしているようだ」
あんじゅ「ごめーん店長。急用できたから今日は休むね」
あんじゅ「…仕方ないじゃん。予定外の出来事が」
あんじゅ「…え?当日欠勤が多すぎるからクビ?」
あんじゅ「……ふん。わかったわよ。どうせそんな店未来はないし、望みどおりやめてあげるわ」
あんじゅ「あっ、英玲奈……」
あんじゅ「……」
英玲奈「……仕事の電話じゃなかったのか?」
あんじゅ「……辞めてやったわ。手が離せない状態なのに店長ったら理解してくれないんだもの」
英玲奈「いや…それは向こうが正しいと思うが…」
あんじゅ「だってあんなに出てる台をやめるわけにはいかないし。どうせ仕事なんてまたすぐ見つかるわよ」
英玲奈「あんじゅ……いつからそんな適当な人間に」
あんじゅ「何?説教?英玲奈まで?あんただってスロプロなんかやって、世間的には底辺の存在じゃない。そんな人間に説教される筋合いはないわ」
英玲奈「あんじゅ……」
あんじゅ「んじゃあ私はあの台の続き打つから、じゃあね」
英玲奈「……」
688: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 19:20:43.74 ID:qqf65RYY.net
1ヶ月後
英玲奈「朝の10時か……」
英玲奈「普段なら寝坊だが今日は何せグランドオープン店があるからな。12時に間に合えば問題ない」
英玲奈「さて、シャワーを……ん?」
Prrrr
英玲奈「電話?こんな時間に一体誰が……」
英玲奈「!!…ツバサ!?」
英玲奈「もしもし?」
ツバサ「もしもし?綺羅ツバサですが、統堂英玲奈さんのお電話でしょうか?」
英玲奈「…そうだ。久しぶりだな」
ツバサ「おはよう。久しぶりね、英玲奈」
英玲奈「珍しいなツバサから電話をかけてくるとは。一体どうしたんだ?」
ツバサ「いえ、実はちょっと聞きたいことがあって」
英玲奈「なんだ?」
ツバサ「あんじゅのことなんだけど…」
英玲奈「!!」
ツバサ「最近あんじゅと会ったりとかした?」
英玲奈「…1ヶ月前、街で偶然会ったが…」
ツバサ「そう……その時の様子とかはどうだった?」
690: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 19:28:06.61 ID:qqf65RYY.net
英玲奈「様子と言われても……別に少し言葉をかわした程度だからな…何かあったのか?」
ツバサ「いえ…最近、あんじゅからしきりに、お金を貸してほしいと連絡がくるようになって……」
英玲奈「なん……だと?」
ツバサ「英玲奈の方にも言ってないかしら、と思って、気になったの…」
英玲奈「…そうか…あんじゅが」
ツバサ「あんじゅ、大丈夫かしら。一応生活できる分は貸したんだけど…」
英玲奈「なに!?貸したのか!?」
ツバサ「え?ええ」
英玲奈「……ちなみにいくら貸したんだ?」
ツバサ「2回貸して、計10万よ」
英玲奈「…………そうか」
ツバサ「今は別々の道だけど、青春を共にした仲だもの。簡単に放っておくことはできないわ」
英玲奈「そうだな……仲間だもんな」
692: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/03(金) 19:35:23.21 ID:qqf65RYY.net
Prrrr……
英玲奈「…くそ、出ないか、あんじゅのやつ」
英玲奈「…まさかツバサにまでせびるとは……これはまずいな。あんじゅのやつ」
英玲奈「おそらく…完全なギャンブル依存症だ。誰かが止めないと……」
英玲奈「…私が止めなければ……」
英玲奈「だが、ギャンブルで生計を立てている私が言って説得力があるだろうか?」
英玲奈「……考えても仕方ない。出ないのなら探すしかない。都合よくグランドオープン店がある。ギャンブラーなら放っておかないだろう」
英玲奈「私も行く予定だったし、とりあえず行くしかないか」
開店前
英玲奈「…こう人が多くては、仮にあんじゅがいたとしてもわからない。そもそもいるのか?」
英玲奈「……ん?あれは……」
700: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 04:41:22.01 ID:4qNlgtVF.net
絵里「アライズの統堂英玲奈!」
英玲奈「絢瀬、絵里。だったか。μ'sの」
絵里「な、なんであなたがここに?」
英玲奈「なんで?そんなこと理由は1つしかないだろう」
絵里「まさか…打ちに?」
英玲奈「当たり前だ。私の格好が店員に見えるか?」
絵里「あ、あのアライズのメンバーがパチンコ屋に……」
英玲奈「そういう君も、しっかり抽選を受けてるじゃないか。君もグランドオープン狙いか?」
絵里「え?あ、いや、その、私は……」
英玲奈「??」
絵里「あの……なぜあなたがこんな場所に…っていうか、ギャンブルを…」
英玲奈「そうだな……まあ、仕事だ」
絵里「仕事??」
英玲奈「今私はこれで生計を立てている。いわゆるプロだ。ま、世間的に見たらただの無職なんだがな」
絵里「あ、あなたが、パチプロ?」
英玲奈「スロプロだ。パチンコは打たない」
絵里「そうなの…私と一緒ね」
英玲奈「君もスロプロやっているのか?」
絵里「い、いや、私はプロじゃ……」
英玲奈「趣味か。まあそれが無難だろうな。この世界で食べていくのは想像以上に難しい」
701: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 04:46:40.19 ID:4qNlgtVF.net
英玲奈(まさかこんなところでμ'sのメンバーに会うとはな……まさか彼女も…)
英玲奈(まさか……というか今はそれどころではない。あんじゅのことが先決だ)
開店
英玲奈(台をキープした後一通り店内を見て回ったが、あんじゅはいない…)
英玲奈(…しかしあんじゅがどこにいるかわからない以上、出現する可能性のあるこの店から動かない方が良さそうだな)
英玲奈(……もちろん、しっかり仕事はする)
英玲奈(とはいえ、この満席状態だ。この台がだめだったら撤退しかないがな)
702: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 04:57:51.55 ID:4qNlgtVF.net
それから数日後……
英玲奈「結局あんじゅとは出会えないままでいる…今朝電話してみたら、繋がらなくなってしまっていた…」
英玲奈「あんじゅ…どこにいるんだ。なぜ電話が繋がらないんだ……」
英玲奈「ツバサも色んなコネを使って探しているようだが、手がかりはなし…」
英玲奈「あの店で待っていても来そうにない。他店を巡って探してみよう」
街中
英玲奈「はあ……なかなか見つからない」
英玲奈「当たり前か…そう簡単に見つかったら苦労はしない」
英玲奈「だが、苦労してでも見つけなければ、手遅れになる」
英玲奈「そんなことは…絶対にさせない」
英玲奈「……しかし、まさかあんじゅ以外にも依存症の人間がいるとは…絢瀬絵里」
英玲奈「連絡先は聞いておいたから、何かあったら対応はできる」
英玲奈「幸い彼女は勝っているようだし、すぐに悲惨な状態にはならないだろう」
英玲奈「……ん?」
704: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 05:23:42.06 ID:4qNlgtVF.net
「ん?」
海未「やはり……あなた、元アライズの統堂英玲奈さんですね?」
英玲奈「おや、たしか、園田海未、だったか?」
海未「ええ。お久しぶりです」
英玲奈「久しぶりだな。日曜日の昼に、こんなところを歩いているとは、もしやデートか?」
海未「は!?!?で、でで、デート!?な、なな、何を…そんなわけないでしょう!?」
英玲奈「ただ聞いただけなのに慌てすぎだ……」
海未「私はこれからバイトです!そういうあなたこそ一体何を!」
英玲奈「私か?私は店巡りだ」
海未「店巡り?」
英玲奈「ああ。番号が悪かったから他にいい台があるか近隣の店を様子見がてら巡っていたんだ」
海未「???言ってる意味がよくわからないのですが……」
英玲奈「ん?ああ、そうか。すまない。てっきりμ'sのメンバーはみんな詳しいのかと勘違いしていたよ」
海未「はあ……?」
705: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 05:31:42.31 ID:4qNlgtVF.net
海未「すみませんが、μ'sがみんな詳しいとは、どういう意味ですか?」
英玲奈「最近向こうの大型パチンコ店がオープンしただろう?そこで絢瀬絵里に出会ってな」
海未「……えっ」
英玲奈「まあみんな詳しいというのは私の早とちりだ。許してくれ」
海未「…どこですか」
英玲奈「ん?」
海未「そのパチンコ店はどこにあるんですか!?」
英玲奈「な、なんだいきなり……」
海未「お願いです!私をそこに案内して下さい!」
英玲奈「なに?まさか君も…」
海未「違います!絵里です!絵里を助け出さなければ!」
英玲奈「助け出す…?」
海未「絵里は……私たちの大切な仲間です…ついこの前まで入院していたはずですが…やはり行ってしまったのですね」
海未「絵里はギャンブル依存症なんです。このままでは破滅してしまいます!絵里には大事な妹もいるんです!仲間として、見過ごすことなどできません!」
英玲奈「……海未」
707: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 08:51:43.65 ID:4qNlgtVF.net
英玲奈「……わかった」
英玲奈「しかし君はバイトはどうするんだ?無断欠勤はさすがにまずいと思うが」
海未「はっ…!そういえばバイトが……」
海未「……」
海未「しばしお待ちを。私に考えがあります」
英玲奈「?」
ゴソゴソ
海未「もしもし穂乃果ですか?はい、今は家ですか?はい、突然ですが今から指定する場所に来てください。理由はあとで説明します」
海未「…すみませんが借りたDVDを見るのは後にして下さい。こちらは緊急を要する用事ですので……はい……はい、お願いします」
英玲奈「…?電話か?」
海未「今からここに穂乃果がきます。おそらく私より適任です」
海未「申し訳ないですが、英玲奈さんは、穂乃果を絵里のところへ連れていってあげてください」
英玲奈「…人使いがあらいな」
海未「申し訳ありません。しかし、絵里のためですので」
708: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 08:59:20.89 ID:4qNlgtVF.net
英玲奈「その後、私は合流した高坂穂乃果を絢瀬絵里の元へ送り届けた…」
英玲奈「おそらく、μ'sのメンバーも、絢瀬絵里をギャンブル依存症から救うために尽力しているのだろう」
英玲奈「結末は見届けなかったが、絵里にはこんなにも思ってくれる仲間がいる」
英玲奈「きっといつか…長い道のりでも、そこから抜け出すことはできるだろう」
英玲奈「しかしこちらは…」
英玲奈「肝心のあんじゅは居場所すらわからない」
英玲奈「電話も繋がらない。諦めるしかないのか……」
英玲奈「ん?」
「はあはあはあ、あ、あんた…」
英玲奈「君は…」
英玲奈「μ'sの矢澤にこ?」
にこ「アライズじゃない。はあ、はあ、こんな場所で会うなんて……」
英玲奈「…というか、なぜそんなに息を切らせているんだ?」
709: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 09:13:17.07 ID:4qNlgtVF.net
にこ「走って、来たからよ、はあ、はあ、車もないしね」
英玲奈「そんなに急いでどこに行くんだ。というか、やたらとμ'sのメンバーに会う日だな今日は」
にこ「?誰かに会ったの?」
説明中
にこ「そう……穂乃果が行ったなら、まあ大丈夫かしら」
英玲奈「随分と信頼あるんだな、君らのリーダーは」
にこ「伊達にリーダーやってたわけじゃないからね。絵里をμ'sに引き入れたのも穂乃果だし」
にこ「それじゃあ私が急いで行くこともないわね」
英玲奈「そうか…君も絵里の元へ」
にこ「まあ、元は私の認識不足が招いた事態だし……」
英玲奈「……幸せ者だな。絵里は」
にこ「そういえば、私もさっきアライズのメンバーに会ったわよ。いや、会ったというよりは、見たと言うべきか…」
英玲奈「……なに?」
710: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 09:31:36.78 ID:4qNlgtVF.net
にこ「向こうの商店街で……確か、優木あんじゅ、だったかしら」
英玲奈「なん……だと?」
にこ「私も急いでたから、話しかけはしなかったんだけど…なんか、すごい思い詰めたような顔してトボトボ歩いてたわよ」
英玲奈「……」
商店街
英玲奈「はあ、はあ、はあ、あんじゅ、一体どこに……」
ツバサ「英玲奈!」
英玲奈「ツバサ…久しぶり…と、今は感傷に浸っている場合ではないな」
ツバサ「ええ、早くあんじゅを」
ツバサ「ん?」
英玲奈「どうした?」
ツバサ「あれ……あそこにいるの、あんじゅじゃない?」
英玲奈「なに?」ジーッ
英玲奈「…見つけた!だが…」
ツバサ「…誰かと話しているようね」
英玲奈「男か…?知り合いか?」
ツバサ「とにかく、見つけたわ!早く行きましょ!」
英玲奈「あ、ああ!」
711: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 09:39:54.49 ID:4qNlgtVF.net
英玲奈「あんじゅ!」
あんじゅ「……!」
あんじゅ「あら…二人そろって、まさかのアライズ大集合ね」
ツバサ「…探したわよ」
あんじゅ「ツバサ…お金の徴収かしら?ならもう少し……」
ツバサ「そんなことはどうでもいいのよ!あなた…やつれた顔して…」
英玲奈「……くっ。こんなになるまで気づけなかったなんて…」
あんじゅ「大丈夫よ心配いらないわ。ちょうどお金の宛ができたところだし」
英玲奈「なに?」
あんじゅ「この人の話を聞いてるとね、凄いのよ。1回仕事しただけで、ウン10万も稼げるんだって」
ツバサ「は……1回の仕事でウン10万?」
英玲奈「そんな美味しい仕事あるわけ……」
英玲奈「…おい、まさか」
ツバサ「あんじゅ。それだけはやめなさい。絶対にダメよ」
あんじゅ「なによ二人して。私の気持ちなんてわからないでしょ?私気付いたの。この世で一番大切なものは命。その次は…お金だって」
英玲奈「おい!あんじゅ!」
712: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 09:47:25.17 ID:4qNlgtVF.net
あんじゅ「お金なんかより大切なものがある?そんなもの、お金に余裕がある人のきれいごとよ。友情も愛情も、ある程度の財産があって初めて成立するの」
あんじゅ「たとえばお金がないホームレスの人を好きになれる?友達になれる?無理でしょ?」
あんじゅ「お金がなければ、生きることすら難しいの……ねえ、あなたたち、公園で寝たことはある?」
ツバサ「……」
あんじゅ「ないわよね。ない人にはわからないわよ。きれいごとだけでは、生きていけない」
あんじゅ「もちろんこの生き方をして後悔してるわ……アライズで天下を極めたあの私が、完全なる堕落の人生…けど、どんなに後悔しても時間は巻き戻らないし、魔法なんて使えない」
あんじゅ「だから、私は、もうこの道を選ぶしかないの。だって、死ぬわけじゃないし、大金も手に入る」
あんじゅ「…さよならね」
713: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 09:56:50.14 ID:4qNlgtVF.net
男「話は済んだかい?あんじゅちゃん」
あんじゅ「ええ。行きましょ。新たな人生のステージへ」
英玲奈「待て!あんじゅ!」ガシッ
あんじゅ「離してよ!」バッ
英玲奈「まだ遅くない!そんな道を選ばなくても、やり直せる!」
英玲奈「私たちはアライズだ!最強のアイドルグループだっただろう!?」
ツバサ「私が…私たちが、あなたをきっと救ってみせるから!だからお願い!行かないで!」
英玲奈「あんじゅ!」
あんじゅ「……英玲奈、ツバサ…」
あんじゅ「…ふふ。あなたたちと一緒に生きれてよかったわ。きっと忘れない」
あんじゅ「……じゃあね」
ツバサ「!」
英玲奈「!」
バタン…ブロロロ……
英玲奈(最後に見せたあんじゅの悲しい瞳に、思わずたじろぎ、私たちはあんじゅを止めることができなかった)
英玲奈(そして……その後、優木あんじゅの行方を知る者は、誰もいない…)
715: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 10:02:40.01 ID:4qNlgtVF.net
20年後……
とあるテレビ局
絵里「おはようございます」
女キャスター「おはようございます。絢瀬さん」
ディレクター「今日はよろしくお願いします」
絵里「はい」
ディレクター「これが今日の進行スケジュールとゲスト一覧、相談内容です」
絵里「ありがとうございます」ペラ…
絵里「ん?…」
絵里「この名前……見覚えが…」
716: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 10:11:32.04 ID:4qNlgtVF.net
女キャスター「さあ、始まりました。年末特番『あの人に会いたい』。過去に生き別れた家族や、無慈悲に引き裂かれた恋人などを、番組が勢力をあげて探す番組です」
女キャスター「今日私と一緒に、番組の進行、そして相談者の人生を見つめて下さるのは、エッセイストの絢瀬絵里さんです」
絵里「よろしくお願いします」
女キャスター「それでは早速1人目の相談者の登場です。どうぞ!」
スタスタ
女キャスター「雑誌出版社のライターをやっている、統堂英玲奈さんです!」
絵里「……英玲奈」
女キャスター「統堂さん、よろしくお願いします」
英玲奈「お願いします」
女キャスター「統堂さんの会いたい人とは……こちらです」
スクリーン「20年前、ギャンブル依存症で行き場を失い、行方不明になった友人に会いたい!」
絵里「……ギャンブル依存症…」
717: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 10:21:05.35 ID:4qNlgtVF.net
女キャスター「そういえば絢瀬さんは、ギャンブル依存症に関するエッセイを多数出版されてましたね」
絵里「え?ええ…」
女キャスター「具体的にギャンブル依存症とはどういうものなんですか?」
絵里「そうですね……簡単に言うと、生活の中で、物事の優先順位の最上位にギャンブルがある状況ですね…」
絵里「ギャンブルのことが少しでも頭をよぎると誘惑に負けてしまう。大勝したときの快感が忘れられない」
絵里「人によってレベルはありますが…重度なら、生活費すらギャンブルにつぎ込み、借金などをしてまたギャンブル、と、首が回らなくなってしまうこともあります」
女キャスター「そうですか……統堂さんは、このご友人とはどのようなご関係で?」
英玲奈「高校の友人です。人生で最も濃密な瞬間を共に過ごした、かけがえのない仲間です」
719: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 10:26:13.82 ID:4qNlgtVF.net
女キャスター「では再現VTRをご覧下さい。どうぞ」
VTR鑑賞中
絵里(英玲奈の高校時代の友人……VTRでは友人Yと紹介されてるけど…まさか……)
絵里(私も以前はギャンブル依存症だった……みんなが協力してくれて、亜里沙が政治家になって頑張ってくれてるおかげで、大分規制が厳しくなって、私は引退できたけど……)
絵里(一歩間違えたら私もこうなってたのね……)
721: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 10:32:30.76 ID:4qNlgtVF.net
VTR終了
女キャスター「さて、ご友人Yさんですが、番組スタッフが勢力を挙げて探しました」
女キャスター「統堂さんの会いたいという願いが届いていれば、あちらのカーテンの奥から、Yさんが現れます」
女キャスター「それではカーテンの方……お願いします!」
英玲奈(あんじゅ…頼む)
絵里「……」
シャーッ
ガラーン……
英玲奈「……」
女キャスター「…スタッフが全力でYさんを探した結果…」
女キャスター「Yさんを発見することはできませんでした」
女キャスター「統堂さんの証言を元に、探偵などにも依頼しましたが、足跡は掴めず…」
英玲奈「…そん……な……」
722: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 10:40:56.45 ID:4qNlgtVF.net
女キャスター「エッセイストの絢瀬さん…残酷な結末ですが…何か意見はありますか?」
絵里「…今も、減少したとはいえ、ギャンブル依存症の人は沢山います」
絵里「その全ての方に、このようなことになる可能性があるのです」
絵里「ギャンブル依存症は心の病。簡単に治る病気ではありません」
絵里「しかし、周りの方たちの支援、協力、そして本人の意思があれば、きっと回復できます」
絵里「…今回はとても残念な結果ですが、私は、全世界から、ギャンブル依存症の患者がいなくなることを、心からねがっています」
【SS】絵里「私がギャンブル依存症?」
END
724: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 10:46:15.79 ID:4qNlgtVF.net
長編になりましたが、読んで下さった方ありがとうございました。
絵里ファンの方、そしてアライズが好きな方にはかなり心苦しい展開だったと思います。すみません。
一応、おまけエピソードがこの後ちょっとあります。これは本編とはあまり関係ありません。
私の拙い文章力や構成力で不便をおかけしたかと思いますが、本当にありがとうございました。
756: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 21:46:03.18 ID:4qNlgtVF.net
EXTRA EPISODE
亜里沙「私がアイドル研究部の部長?」
※本編とはあまり関係ありません
司会「優勝は…音ノ木坂学院アイドル研究部です!」
真姫「嘘……!」
凛「や、やったあ!2年ぶりの日本一にゃ!」
花陽「……私たちが、優勝?」
亜里沙「…ハラショー。さすが先輩たちだね」
雪穂「うん。三年生3人と二年生5人、一年生1人の9人編成ってところがμ'sっぽいなあ」
亜里沙「…やっぱり敵わないなあ。μ'sには」
雪穂「…本音を言えば、私だってあの舞台に立ちたかったけど」
雪穂「でも全員が納得して決めたグループ分けだし、まあやっぱり元μ'sのメンバーがいるあのグループは凄かったよ」
亜里沙「…あの3人が引退したら、どうなるんだろ」
雪穂「え?」
亜里沙「だってμ'sのメンバーはこれで全員いなくなっちゃうんだよ?μ'sの功績で部員は増えたけど、私たちにはあの3人やお姉ちゃんたちみたいな凄いことできないよ……」
雪穂「亜里沙……」
758: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 21:47:43.63 ID:4qNlgtVF.net
司会「おめでとうございます!2年ぶりの日本一ですね!」
花陽「あ、ありがとうございます!」
司会「あの伝説と呼ばれたμ'sを受け継ぐ皆さんのステージ……素晴らしかったです」
真姫「…まあ、当然ですよ。私たちはいつも上を目指して練習してきましたから、μ'sも良かったけれど、あの時よりもさらに良くなったんじゃないかと思ってます」
司会「三年生にとっては最後の大会…いい花道になりましたね」
凛「はい!最高でーす!」
司会「チームには二年生や一年生もいます…来年以降も、期待していいですか?」
花陽「はい。私たちはこれで引退ですが、音ノ木坂のアイドルはこれからも輝き続けます。必ず。素晴らしい後輩がいるので、それは自信を持って言えます」
司会「しかし、全国的に有名になってから、小泉さんは二年間も部長を務めたということですが、色々苦労されたのでは?」
花陽「そうですね…最初は、先輩もいるのに私が部長なんて、って思っていましたが、案外、苦労はしませんでした」
花陽「後輩も、みんな確固たる決意を持って練習についてきてくれましたし、私はただその先頭を歩いていただけにすぎません」
花陽「凛ちゃんと真姫ちゃんもしっかりサポートしてくれたから、苦労よりも、楽しかったです」
凛「かよちん……」
真姫「花陽……」
759: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 21:48:27.38 ID:4qNlgtVF.net
司会「そういえば、音ノ木坂の新部長は部長の指名制だということですが、次の部長はもう決めているのですか?」
真姫「指名制……?いつからそんな制度が?」
凛「というか引き継ぎ自体まだ1回しかやってないけど」
花陽「そうですね……もう決めてます」
ザワッ
雪穂「へえー…花陽部長、もう次の部長決めてるんだって」
亜里沙「あの5人の中の誰かかなあ。あるいは私たちのグループリーダーの雪穂ちゃんかもね」
雪穂「私が部長?無理無理。花陽部長みたいにまとめる力もないし、頭も良くないし」
雪穂「なんかよくわかんないままグループリーダーになっちゃったけど、うちの血筋はリーダーにはなれるけど部長は無理だよ」
亜里沙「でも穂乃果さんは生徒会長やってたじゃない」
雪穂「それ言ったら亜里沙のお姉ちゃんだってそうでしょ?」
亜里沙「あっ…そうか」
雪穂「案外亜里沙部長なんてあるかもよ」
亜里沙「それこそ有り得ないよ。私なんて……」
雪穂「……そのマイナス思考さえなくなれば、最適だと思うんだけどな……」
760: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 21:50:22.09 ID:4qNlgtVF.net
花陽「じゃあせっかくなんで……この場で次期部長を発表します!」
真姫「えっ!?ちょ、花陽!?」
凛「かよちん、思いきったことするにゃ」
花陽「明日から、音ノ木坂学院のアイドル研究部部長は……」
花陽「絢瀬亜里沙です!」
雪穂「…亜里沙!亜里沙!」
亜里沙「…なに?」
雪穂「なにって、聞いてなかったの?次期部長亜里沙だって!」
亜里沙「え?何言ってるの?冗談は…」
雪穂「……本当に聞いてなかったんだ」
亜里沙「え?本当?冗談じゃなくて」
雪穂「花陽部長が冗談言うわけないでしょ。ましてやネットで生中継されてるんだから」
雪穂「…というわけだから、頑張ってね。新部長」
亜里沙「……」
亜里沙「…わ、私が……」
亜里沙「私がアイドル研究部の部長?」
762: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/05(日) 21:51:12.74 ID:4qNlgtVF.net
翌日
亜里沙「あ、あの……どうして私が部長に?」
花陽「なんでって…適任だと思ったからだよ」
凛「そうだにゃ。亜里沙ちゃんなら立派な部長になれるよ」
真姫「同意ね。まあ花陽があのステージで発表したのはびっくりしたけど」
凛「うん。まさかヤフーニュースに載るとはね」
真姫「μ'sが優勝したときもヤフーニュースにはならなかったけどね」
雪穂「まあおかげで今日登校中に声かけられたりしてましたよ。亜里沙は。教室では話題の的でしたし」
花陽「ご、ごめんね亜里沙ちゃん……」
亜里沙「いえ、それは……」
花陽「でも理由は凛ちゃんや真姫ちゃんが言ったとおりだよ?亜里沙ちゃんは視野が広くてみんなを見ていて気を配れる。向上心もあって機転も効くし頭もいい」
花陽「それに……何より、アイドルに一生懸命なこと。だから亜里沙ちゃんが部長だよ」
亜里沙「…で、でも、私は、歌もあまりうまくないし、不器用で衣装もつくれない、ダンスだって上手くないし……雪穂ちゃんの方が、カリスマ性もあって、適任なんじゃ…」
真姫「あ、そうだ。雪穂。あなた、副部長ね」
雪穂「ぶえっ!?」
773: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/06(月) 05:37:26.87 ID:pjNVYL/S.net
真姫「亜里沙にはないものをあなたは持ってる……亜里沙の唯一の悪い点は、すぐにネガティブになること。雪穂なら、それをサポートしてあげられるでしょ」
凛「うんうん。なんていうか、限界を打ち破れる力を持ってる気がするよ」
真姫「そこらへんはやっぱり穂乃果の妹ね……まあ、危なっかしくて部長には向いてないけど」
雪穂「げ、限界を破る力?わ、私が?」
花陽「とにかく私たちは引退。だけど、アイドル研究部の魂はいつまでも胸にあり続ける」
花陽「だから……亜里沙ちゃん。アイドル研究部は任せたよ」
亜里沙「……私が…」
花陽「あまり気負いすぎないようにね」
亜里沙「はい……」
774: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/06(月) 05:38:04.26 ID:pjNVYL/S.net
亜里沙「しかし、不器用な私は気負いすぎて、空回りすることが多く、その結果。新チームで挑んだ春のラブライブは本戦に出場することすらできずに敗退してしまった」
亜里沙「辞退した初代μ'sの時代を除けば……初めてラブライブへの出場を逃した」
ガチャ
絵里「ただいまあ……」
絵里「!?く、暗っ!な、なんで…?あ、亜里沙あ…いないのお?」ビクビク
パチッ
絵里「ふう。…って、亜里沙!?電気もつけないで、何やってるの?座りこんで……」
亜里沙「……」
絵里「…亜里沙?」
亜里沙「お姉ちゃん……私、やっぱり部長なんて無理だよ」
775: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/06(月) 05:38:38.97 ID:pjNVYL/S.net
絵里「亜里沙……どうしたの?」
亜里沙「私、アイドル研究部の歴史を汚しちゃった…」
亜里沙「ラブライブに出ることができなくなっちゃった…」
絵里「……そっか、今日は結果発表の日」
絵里(私はそんなことすら忘れていた……)
絵里「亜里沙」
亜里沙「私には無理だったのやっぱり!お姉ちゃんみたいに完璧人間じゃないし、花陽さんみたいにみんなをまとめる力もない。ないないない、なんにもない。アイドルとしての魅力も。やっぱり雪穂ちゃんが部長やった方が…」
絵里「亜里沙。聞きなさい」
絵里「完璧な人間なんて1人もいないのよ。亜里沙は私が完璧だなんていうけど、実際はそんなことなんてない」
絵里「私は昔……つまらない意地で、アイドル研究部を壊そうとしてたわ。今思えば本当にバカなことだけど、その時はそれが正しいことだと思い込んでた」
絵里「その時、そのことに気付けたのは、仲間がいたから。あんな私を、それでも受け入れてくれた仲間がいたから、私は救われたの」
絵里「完璧どころか、欠落だらけだったあの頃の私の、その部分をみんなが埋めてくれたから、だからμ'sという最高のグループができた」
絵里「人は誰しも完璧じゃない…むしろ、だからこそ、前を、上を向けるのよ。より良い明日に向かってね」
亜里沙「お姉ちゃん……」
776: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/06(月) 05:39:16.05 ID:pjNVYL/S.net
絵里「亜里沙。別に部長だからって、完璧になる必要なんてないのよ。あなたは完璧を求めすぎてるのかもしれない」
絵里「μ'sを目指して……μ'sに並びたい。その一心で亜里沙が頑張ってきたことは私も知ってるわ」
絵里「でも、μ'sを目指す必要なんてないのよ?アイドルの形はそれこそグループの数だけある」
絵里「亜里沙は、亜里沙にしかできない、μ'sとは違う素晴らしいアイドルを目指せばいいじゃない」
絵里「亜里沙なら、いや、亜里沙たちなら、それができるはずよ。きっとそれは、μ'sをも越える、素晴らしいグループをね」
亜里沙「μ'sを…越える?」
絵里「そう。一つ言わせてもらうなら、亜里沙の中でμ'sは憧れ」
絵里「でも、憧れは憧れ止まりにしかならない。憧れの対象は決して越えられない」
絵里「だから、憧れの、さらに上を目指すのよ。限界点を定めずにね」
亜里沙「…わ、私に、そんなこと…」
絵里「私、じゃなくて、私たち、よ。みんなでやるの。そうすれば、できないこともできるようになる」
絵里「亜里沙はそのみんなの手を繋ぐ役。そう考えたら気が楽じゃない?」
絵里「今回は残念な結果だけど、時には負けないと見えないこともある。負けることは、勝つことより大きな意味をもたらすことだってあるんだから」
777: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/06(月) 05:39:55.25 ID:pjNVYL/S.net
亜里沙「……」
絵里「…って、なんか偉そうに言ってみたけど、どうかしら。少しは気が晴れた?」
亜里沙「…うん。今考えたら、なんか悔しくて」
絵里「えっ?」
亜里沙「うん。悔しいよ。負けて。みんなも泣いてた」
亜里沙「あの景色はきっと忘れない……だから」
亜里沙「私は、もうみんなを泣かせたくない。泣くなら嬉し涙がいいもん」
亜里沙「決めたよ!私は、いや、私たちは勝つ!夏のラブライブは、絶対勝って、みんなで笑いながら泣くの!μ's以上の声援を受けてね」
絵里「ふふふ……さすが私の妹ね」
亜里沙「だから、お姉ちゃんも見にきてね!ラブライブには絶対出るから!」
絵里「えっ?あ、ああ、わかったわ。必ず行くわよ」
亜里沙「うん!約束だよ!」
絵里「……ええ」
絵里「…ねえ亜里沙。私からも一つ、約束してほしいことがあるんだけど」
亜里沙「え?なに?」
絵里「…部屋を真っ暗にしたままにするのはやめてくれないかしら。その…なんていうか……」
亜里沙「あ、ごめん。お姉ちゃん暗い場所大嫌いだもんね」
絵里「え!?い、いや、まあ、うん……とにかくお願いね……ふふふ」
亜里沙「……完璧な人間なんていない、か」
779: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/06(月) 19:11:49.22 ID:pjNVYL/S.net
絵里「そう……完璧な人間なんていないのよ…」
絵里「…まるで、今の私の状況を正当化してるみたいね」
絵里「本当ならこんな偉そうなこと言える立場じゃないんだけど」
絵里「亜里沙…あなたならきっとできるわ。みんなを引っ張っていく存在に」
絵里「いつの間にか1人になってしまった私と同じ道を歩んではだめよ…」
EXTRA EPISODE END
780: 名無しで叶える物語(内モンゴル自治区)@\(^o^)/ 2015/04/06(月) 19:19:06.76 ID:pjNVYL/S.net
本当の完結です。
思ったよりもコメントが多く、嬉しかった反面、文章力や構成力に欠けて、うまく書けなかった場面もあり、色々学んだSSでした。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。
【SS】絵里「私がギャンブル依存性?」