1: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:07:05.78 ID:5SQMnCgE0

SS9作目です。

物語の大枠は決まっていますが、途中で登場して物語に絡むキャラを安価とコンマで決めていこうと思います。

まずは物語のベースとなる序章を投下していきます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1589897225




2: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:08:51.99 ID:5SQMnCgE0

ーーー数年前 王都闘技場ーーー

姫騎士「せいっ!!」

「ぐぉ…!」ガキン



シュッ(木剣を突き付ける)



姫騎士「……」キッ

「…降参だ」



シーン...



審判「し、勝者、姫騎士!」



「「「うぉおおおおお!」」」

「すげー!」

「あんな華奢な子が…」



姫騎士「……!」パアァ

姫騎士「やりました…やりましたお父様!」

姫騎士(これでまたお父様が喜んでくれる!)








4: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:10:05.98 ID:5SQMnCgE0

ーーーーーーー

勇者「ぐがー…すぴー…」

「起きなさい。起きなさい、私の可愛い勇者」

勇者「ぐごー……」

「……」



ドスッ



勇者「ぐべっ!?」

勇者「!……!?」

「おはよう、勇者」

勇者「母さん…?おはよう…」

勇者母「もう朝ですよ。今日はあなたの16歳の誕生日。村長さんから大事な使命を授かる日だったでしょう。この日のためにあなたを勇敢な男の子として育ててきたつもりです」

勇者「へ、へぇ…。そういや今日だったか」

勇者母「さ、行きなさい。村長さんが待ってます」

勇者「うん…」

勇者「…母さんあのさ、さっき」

勇者母「ん?」ニコッ

勇者「なんでもないですはい」








5: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:10:48.49 ID:5SQMnCgE0

ーーー村長の家ーーー

村長「よくぞ来た勇者よ!そなたがこうして現れる日を首を長くして待っておったぞ!」

勇者「しょっちゅう来てっけど」

村長「さて、そなたを今日ここに呼んだのは他でもない」

村長「…この村を救ってもらうためじゃ」

勇者「……」

村長「魔王が討ち倒されて数百年。世界は平和になり、人々を困らせる因子は取り除かれたものと思われた」

勇者(なんか始まった)

村長「しかぁし!それは違ったのじゃ!魔王が滅びようと所詮この世は弱肉強食!故に力の弱い我が村はどんどんその規模を縮小し、財政にも不安が募る一方じゃ…」

村長「すなわち」

村長「もう金が無くなりつつあるのじゃ!ついでにわしの髪もな!」

勇者(髪はもう諦めろって)




6: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:11:17.02 ID:5SQMnCgE0


村長「そこで勇者よ、お主の出番じゃ!」

村長「毎年王都で開催される闘技大会。そこで優勝すれば莫大な賞金が手に入る。そして大会への参加可能年齢は16から……何が言いたいか分かるな?」

勇者「分かりたくないっす」

村長「そうじゃ!類稀なる戦闘センスを持つお主に優勝してきて欲しいのじゃよ!そうすればわしの髪――この村も大いに救われる!おまけに知名度も上がって良いこと尽くめじゃ」

村長「お主は村の希望なのじゃ!」

勇者「えー…めんどい」

村長「お主、闘技が好きじゃろう?闘技大会では数多の強者共と会い見えることが出来るのじゃぞ」

勇者「好きだけど、俺っちそういうの興味ないんだよね」

勇者「ってことで用件終わり?もう帰っていい?」

村長「まぁ待て待て。…これは聞いた話じゃが、今年の優勝特典にはなんと美女が含まれているとか」

村長(嘘じゃが)

勇者「!」

勇者「…体型は?」

村長「ベリーグラマラス」

勇者「なるほど村を救う使命ね。うん、ま、そこまでお願いされちゃ断るわけにもいかんよね」

村長(ちょろいの)

村長「分かってくれたようじゃな」

村長「勇者よ、必ずや優勝して参れ」

勇者「へいへーい」








7: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:11:58.38 ID:5SQMnCgE0

ーーー勇者の家ーーー

勇者「しっかし闘技大会ねー。それが目的でずっと闘技の稽古つけられてたんかいな」

勇者「単に楽しくて続けてただけだったけど、美女の引き換え券になってくれるなんて、俺っちってばツイてる♪」

勇者母「勇者、村長さんからの使命は何だったのです?」

勇者「王都の闘技大会で優勝してくることだって」

勇者母「まぁ…!あの舞踊祭の!」

勇者「ぶようさい?」

勇者母「良かったですね。今のあなたなら難なく優勝出来ると母は信じてます」

勇者「母さんもそう思う?」

勇者母「えぇ。何と言っても私の息子ですからね」

勇者「だよねー。ぶっちゃけ俺っち強過ぎるからさ、闘技で俺っちに勝てる奴なんてこの世界にゃいないっしょ!」

勇者母「凱旋を楽しみにしていますよ」ニコニコ

勇者母「それでいつ出発するのですか?」

勇者「明日。大会の日まで余裕あるけど、さっさと行って敵情視察でもしておきたいからさ」

勇者(王都のかわい子ちゃんの視察も……むふふ)




8: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:13:54.67 ID:5SQMnCgE0




ガチャ!



魔法使い「勇者居る!?」

勇者母「あら魔法使いちゃん、こんにちは」

魔法使い「あ、どうもこんにちは」

勇者「なんだよいきなり家に押し入ってくるとか。さすが乱暴女」

魔法使い「誰が乱暴ですって!?」

勇者母「勇者、女の子に向かってその言葉は失礼です」

勇者「事実だしなぁ」

魔法使い「それより聞いたわよ。あんた王都に行くそうじゃない」

勇者「おう。この村の希望となりて、哀れな仔羊たちに救済の手を差し伸べんとするわけよ」

魔法使い「闘技大会に出るだけでしょ」

魔法使い「…いいわ、私も付いてってあげる」

勇者「え、いいです」

魔法使い「は?」

勇者「凄まないでくれません?」

勇者(昔から何かと口うるさいんだよなこいつ。付いてこられなんかしたら女の子視察なんて絶対出来ない!)

勇者「そもそもなんで一緒に行きたいんだよ」

魔法使い「な、そ、そりゃ…あんた一人で行かせたらちゃんと辿り着けるか分かんないし?魔法のことからっきしなあんたにアドバイスしてやれる人も必要でしょ?」

勇者「なるほどなぁ!オーケー分かった」

魔法使い「まったく…」

勇者「俺一人で行くわ」

魔法使い「何ですってぇ!」




9: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:14:28.70 ID:5SQMnCgE0


勇者「行き先王都だぜ?迷う要素ねーし、魔法のアドバイスなんか無くても負けないからへーきへーき」

魔法使い「魔法使えないくせにでかい口叩くじゃない」

魔法使い「私はこれでも村で一番魔法に長けてるのよ?」

勇者「こんな村でトップを誇られましても」プッ

魔法使い「」カチン

魔法使い「"小火球"」ボッ

勇者「バカッ、家ん中で火の魔法なんか使うなって!」サッ

ジュウゥ...

勇者「…ふぅ、だーから連れてきたくないんだよなー」チラッ

魔法使い「あ……ごめん……」

勇者(しめしめ、これで上手い具合にこいつを諦めさせられそうだ)

勇者母「大丈夫ですよ魔法使いちゃん」

魔法使い「え…?」

勇者母「勇者、私は魔法使いちゃんの意見に賛成です」

勇者「母さん!?」

勇者母「あなたはもっと多くの戦術を知るべきです」

魔法使い「おばさん…!」

勇者「いや、でもさぁ」

勇者母「あなたが本当に魔法使いちゃんの助けを必要としないと言うのならば、闘技でそれを示してみなさい」

魔法使い「……へ?」

勇者母「勇者と魔法使いちゃんで闘技を行い、勝った者の意見を優先させるのです」

勇者「闘技?こいつと?」

勇者母「はい」ニコニコ

魔法使い「……え」



魔法使い「えええええええええ!?」








10: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:15:05.36 ID:5SQMnCgE0

ーーー翌日 村の模擬闘技場所ーーー

勇者「はーぁ、なんでこうなったのやら」

勇者「本当なら今頃ハーレム(予定)旅の始まりを噛み締めてるはずだったのに」

子供A「あ!勇者の兄ちゃんだ!」

子供B「にぃちゃん、おうとってとこ行くんだよね!いいなー!」

勇者「ようチビ共。俺っちが居なくなっても元気にしてるんだぞー?」

子供A「任せろ!」

子供B「みてみて!にぃちゃんが教えてくれたやつ!」

子供B「かぶとわり!」ヘニョ

勇者「なはは!俺っちに並ぶにゃあまだまだ遠いな!」

子供A「でもなんでこんなとこいるの?またおけいこ?」

勇者「んにゃ、今日は稽古じゃなくて」



ザッザッザッ



魔法使い「……」

勇者母「……」ニコニコ

子供A「魔法使いの姉ちゃん!」

勇者「よう。逃げずに来るとはねぇ。まさか本当に俺っちに勝つつもりでいらっしゃる?」

魔法使い「当然でしょ」

勇者「これだからしつこい奴は」

魔法使い「……」グッ

勇者「どうせ母さんに何か仕込まれたんだろうけど、1日でどうにかなるほど俺っち弱くないぜ?」

勇者母「ふふ、やってみなければ分かりませんよ。ね、魔法使いちゃん」

魔法使い「……」...ザッザッ

魔法使い「私、絶対あんたと一緒に行くから」

勇者「やれやれ…」




11: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:15:42.69 ID:5SQMnCgE0


タッタッタッ

村長「ふぅ…ひぃ…間に合ったかの」ゼェゼェ

勇者「じいさんも言ってやってくれよ!俺の武者修行に同行者はいらねーって!」

村長「むむ?わしはただの観客として来ただけじゃよ」

村長(あわよくば魔法使いが共に行ってくれれば、勇者の監視役に出来るからの)

勇者「役に立たんハゲだ」

村長「お主言ってはならぬことを…!」

勇者「はぁ……ルールは分かってんだろーな?」

魔法使い「えぇ」

勇者「ふーん。じゃ、最初のテストな。闘技のルール一通り言ってみ」

魔法使い「…1対1の対人格闘戦。選手はそれぞれ剣術、体術、魔法の使用が許可されていて、持つことが許されるのは剣術に使うための指定の木剣だけ。闘技を行うのは15メートル四方の区画で、それより外に出るか、降参と言うか、気絶してしまったら負け。もちろん相手を殺すのは厳禁」

勇者「ま、基本はな」

勇者「それだけじゃないっしょ、母さん?」

勇者母「そうですね。今回、勇者と魔法使いちゃんの実力差を考慮して特別ルールを設けます」

勇者母「通常、1回勝負の闘技ですが、5回勝負とします。魔法使いちゃんが1度でも勝利を収めるか、5回すべて勇者が勝利したら終了。魔法使いちゃんの勝利条件に"勇者に僅かでも攻撃を当てること"を追加します」

村長(妥当じゃな。魔法しか扱えぬ魔法使いと縦横無尽に動き回ることの出来る勇者では、まともな勝負にならんからの)




12: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:16:16.29 ID:5SQMnCgE0


勇者「ほーん」

勇者「いや、いいよ。木剣も使わないでやるよ。あと"勇者は魔法使いに怪我させた時点で負けとする"ってのも追加で」

魔法使い「な!馬鹿にしてるの!?」

勇者「こうでもしなきゃ危ないぜ?」

魔法使い「っ…」

村長(大した自信じゃのう。あやつの天狗っ鼻、いつか折れてしまわぬか心配じゃわい)

子供A「なになに!兄ちゃんたち闘技すんの!」

勇者「おーう!兄ちゃんが圧勝する姿目に焼き付けとけよー?」

子供B「けいこ以外の闘技、はじめて見る!」

勇者「で、審判は」

勇者母「私ですよ。公平に行いますからね」ニコニコ

勇者「…いやうん、いいけどさ」

勇者「じゃ、ぼちぼち始めっか」

勇者母「はい」ニコニコ

勇者母「えーと最初は……なんでしたでしょうか…?」

村長「……」

村長「」ゴニョゴニョ

勇者母「!」ポムッ

勇者母「コホン…両者前へ!」



ザッザッ...



勇者「なぁやるだけ無駄だぞ?」

魔法使い「うっさい」




13: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:17:08.47 ID:5SQMnCgE0




ーーーーー

「魔法使いよーまた泣いてんのかー?」

「めそめそしてんな!おれっちがいてやっから!」

「おっきくなったらおれっちがお前のこと――」

ーーーーー



魔法使い「……なんで覚えてないのよ、馬鹿」ボソッ

勇者「ん?」



勇者母「始め!」



勇者「……」

魔法使い「……」ジリ..ジリ..

勇者「………」

魔法使い「……」ジリ...

勇者「どしたよ。魔法撃たないんか?」

魔法使い「…撃ったら当たってくれんの?」

勇者「ご冗談」

魔法使い「ふんっ」

勇者(魔法使いの得意魔法は火だったよな。よく目にすんのは火球系の魔法だけど、範囲魔法…火炎系だったか?上位の魔法も使えるんだろうな多分)

勇者(ま、関係ねーか。魔法にゃ必ず予備動作がある。かわすのなんてわけないわな)

魔法使い「……」




14: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:17:54.82 ID:5SQMnCgE0


勇者(何企んでるのか知らんけど)

勇者「来ないならこっちから行くぜ?」

ダッ

魔法使い(来る…!)

魔法使い(避ける時のコツは)

勇者「」タタタッ

魔法使い(ギリギリまで引き付けて)

勇者「」タタタタッ

魔法使い(体を逸ら――)

シュンッ

魔法使い(消えた!?)

魔法使い「嘘、どこに…!」



――ヒョイ



魔法使い「……?」

勇者母「あらあら」

子供A「あ、オイラ知ってる!あれお姫さまだっこってやつだー!」

勇者「お前軽いんだなー。意外」

魔法使い「……な、なななな…!」

魔法使い「何してんのよあんた!どさくさに紛れて…この馬鹿!変態っ!」

勇者「はいはい少し静かにね~」タッタッタッ

魔法使い「ひゃん!ちょ、どこ触ってんの!?」

勇者「はいはい少し揺れるからね~」タッタッタッ

魔法使い「早く下ろして…!下ろしなさい!」ジタバタ

勇者「この辺でいっか」

ストッ

魔法使い「あ…」

魔法使い「…な、なによいきなりセクハラでもする気なの?」

勇者母「えっとね、魔法使いちゃん」

魔法使い「何ですか!」

勇者母「場外です」

魔法使い「……………」

魔法使い(しまったあああ!)








15: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:18:20.23 ID:5SQMnCgE0

ーーー2戦目ーーー

勇者母「両者前へ!」

ザッ

魔法使い(こいつうぅ…とんだ恥をかかせてくれたわね…)

魔法使い(次は絶対にぎゃふんと言わせてやる!)

勇者母「始め!」

勇者「飛ばしてくぜぃ!」ビュン

魔法使い(速っ!?)

魔法使い「"火球"!」ボウッ

勇者「よっと」サッ

スタタタッ

ヒョイ

魔法使い(また――!)

勇者「次はどちらへ運びましょうか、お姫様?」ニヤニヤ

魔法使い「……~~!!」

子供B「おねぇちゃん顔まっかー!」








16: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:19:00.72 ID:5SQMnCgE0

ーーー4戦目ーーー

勇者母「始め!」

魔法使い「ぶちのめす…絶対にぃ…!」

勇者「ちょこっとからかっただけじゃんなー」

村長(これで3戦連続、お姫様抱っこ場外とな)

村長(勇者のやつおちょくって遊びよってからに。後でどうなってもわしゃ知らんからの)

村長(じゃがここまででもう勝負の行方は決まったようなもんじゃな。元々肉弾戦が出来ぬ魔法使いは勇者の接近を防がなければ敗北は必死じゃ。あの子の魔法じゃと、あやつに当てるどころか牽制にすらなっとらん)

村長(あの子も分かっとるのじゃろう。現にまだ1回しか魔法を使っておらん)

村長(勝機があるとするならそれは――)

勇者(――不意打ち以外にない)

魔法使い「」ガルル

勇者「……」

勇者(俺が隙を見せた瞬間の一撃にでも賭けてんだろうな)

勇者(でもまぁ残念。たとえ背中を見せたところで、魔法の"詠唱"が終わるまでには絶対かわせる)

勇者(魔法使いにゃ悪いけど、俺っちの夢色冒険譚の邪魔はさせんぜ)グフフ

魔法使い「……」



ーーーーー

勇者母「いいですか魔法使いちゃん。勇者は勝負事に関してはまだまだ未熟」

勇者母「あの子は勝ちが目前に迫るほど、大きな隙を見せるようになるでしょう」

勇者母「その時にこそ、ぶちかましてあげなさいな」ニコッ

ーーーーー



魔法使い(確かに…相手を前にしてキモい笑みを浮かべるくらいには隙があるわね)

魔法使い(けど、まだ。今じゃない)




17: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:19:33.81 ID:5SQMnCgE0


勇者「魔法使い」

魔法使い「!なに?」

勇者「やっぱ俺っちさっさと王都行きたいかんよ、そろそろ巻きでいかせてもらうなー」

魔法使い「え?」

勇者「」ダッ!

魔法使い(くっ…相変わらず速過ぎて動きが見えない…!)

魔法使い(こっちにかわせばいい!?)ササッ



ガシッ

ブンッ!



魔法使い(へ…私飛んで――)

ドサー

魔法使い「ぎにゃ!」

魔法使い(…なにが起きたのよ…)クラクラ

勇者母「魔法使いちゃん、場外です」

勇者「綺麗な着地だね~」

勇者「飛び過ぎないよう調整して投げたはずだから怪我はしてないだろ?」

子供A「お姉ちゃんが一瞬、鳥さんになってた…!」

子供B「すげー…おもしろそー」

魔法使い「ほぇ…何?私、投げられたの…?」

村長「あー、なんじゃ、魔法使いよ」

村長「女子が投げられるというのも喜ばしい体験ではあるまい。ここは一つ、勝負を降りるという手も――」



魔法使い「絶対いや!」






18: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:20:01.56 ID:5SQMnCgE0


勇者「……」

勇者母「……」ニコニコ

魔法使い「嫌よそんなの。あいつには絶対ついて行くの!」

魔法使い(勝手に約束して、勝手に忘れて、ずっと待たせた挙句にこれだなんて許さないわ)

魔法使い(責任取ってもらうんだから)

村長「そ、そうかい。無茶はせんようにの…」

魔法使い「まだ1回残ってるでしょ」

魔法使い「最終戦、やるわよ」

勇者「……巻きだかんな」








19: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:20:31.43 ID:5SQMnCgE0

ーーー5戦目ーーー

勇者母「両者前へ」

ザッ...

魔法使い「……」

勇者「いつになく頑固だな」

魔法使い「………」

勇者「そこまで粘るもんか?お前そんなに旅行好きだったっけ」

魔法使い「別に」

勇者「……」



勇者母「始め!」



勇者「お前が何考えてようが知らんけど」

勇者「これでしまいよ」ダッ

魔法使い(来た、あいつの特攻…!)

魔法使い(体術であいつを出し抜こうだなんて所詮素人の付け焼き刃じゃ無理だった)

魔法使い(どうせかわせないなら…!)

魔法使い「これにすべてを賭けるわ!」

魔法使い「"火炎"!」

ブワァ!

村長(たまげたの…ここまで広範囲の火炎が使えるのか。魔法使いも勇者同様、才能に恵まれておるのかもしれぬな)

村長(じゃがそれでも)

勇者「わお、あったかそうな火だこと」

ピョン ピョンッ

スタッ

勇者「暖を取るにゃ、ちと過剰よな」ヘッ

村長(あやつの化け物じみた体捌きを封じるには至らん)




20: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:21:49.30 ID:5SQMnCgE0




タタタタッ!

ガシッ



魔法使い「っ!」

勇者「なかなかいい線いってるんじゃない?」

勇者「相手が俺っちだったのが不運だ、な!」ブォン!

魔法使い(くうっ…)

子供A「また飛んだー!」

村長「勝負あったの」

勇者母「……」ニコニコ

魔法使い(改めて投げられてみると超怖いわね…。浮遊魔法が使えたら、こんな感じなのかしら)

魔法使い(このまま地面に落ちれば終わり…)

魔法使い(――にしてたまるもんですか!)

勇者「…ふぁーあ…ねみ…」

魔法使い(そこ!)

勇者母「…ふふ」

魔法使い(小さい頃の私は泣き虫で、何かあるたびに泣いてた。何をするにもコバンザメのようにあんたの後ろについていってたわ)

魔法使い(でもいつしかそんな弱虫は捨て去った)

魔法使い「……」スッ

魔法使い(なんでか分かる?私がこんなに諦めの悪い女になったのは)



ーーーーー

「いいかげん泣きやめって。魔法の一つ失敗したくらいなんだってんだい」

「付き合うよ。できるまでやんだろ?」

「がむしゃらな魔法使い見てんの好きだかんよ」

ーーーーー



魔法使い(どこかの馬鹿の言葉を、馬鹿みたいに信じ続けてるからよ!!)




21: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:22:26.52 ID:5SQMnCgE0






魔法使い("小火球"!)ボッ





村長「魔法じゃと!」

勇者「…?」

勇者「はっ――!?」





――ドサ...








22: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:23:10.12 ID:5SQMnCgE0


魔法使い「うぅ…」

魔法使い(あれだけ飛ばされたのに痛くはないのね…)

村長「……」ゴクリ

子供A・B「「……」」マジマジ

魔法使い「…場外、かしら」

勇者母「いいえ」

勇者母「見てみなさい、勇者の腕」

魔法使い「…!」

勇者「…無詠唱魔法まで使えんのは、さすがに予想外だった」

勇者「お前の火、熱いわ。火傷しちまったじゃんか」

魔法使い「じゃあ…!」

勇者母「はい」ニコッ

勇者母「勝者、魔法使いちゃん」

魔法使い「……や……」



魔法使い「やったぁ!!」








23: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:23:49.05 ID:5SQMnCgE0

ーーーーーーー

勇者「じゃー行ってくっから」

村長「うむ。道中気を付けての」

勇者母「強くなって帰ってくるのですよ」ニコニコ

魔法使い「真面目に鍛錬してるかしっかり見張っておくから安心してくださいね!」

勇者母「あら心強い♪」

勇者「はぁ…」

「おう勇者!死体になって帰ってくんじゃねぇぞー!」

「お前が居なくなったらこの村も静かになるなぁ」

「かわいいねーちゃん居たら紹介してくれ!」

子供A「兄ちゃんオイラおうとのおいしいおみやげ!」

子供B「ぼくにもぼくにも!」

ワーワー

村長(誰一人勇者の優勝を鼓舞する者がおらんのは、こやつの人徳が為せる技じゃのう)

勇者「あーうっさい。わーったから」

勇者「お前ら!!」

シーン

勇者「…伝説を作ってきてやるよ!」

「「「………」」」

ワアァ!

「いつものお前で安心だぜ!」

「やったれやったれ!」



.........








24: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:24:15.69 ID:5SQMnCgE0

ーーー旅立ちの道ーーー

魔法使い「あーやっと静かになったわ…」テクテク

魔法使い「村のお祭りでもあそこまで騒がしくなんないわよ」

勇者「みんな俺っちが居なくなって寂しいんだな~。分かるぜその気持ち」テクテク

魔法使い「自惚れもここまで来ると清々しいわね」

勇者「案外お前に行って欲しくないやつもいたんでねーの?」

魔法使い「…知らないわ。どうせ旅が終われば帰ってくるんだからいいのよ」

勇者「そだな」

勇者(…にしても)

勇者「無詠唱魔法か」チラッ

魔法使い「なに?」

勇者「いつから使えるようになってたんよ」

魔法使い「昨日。徹夜で特訓してもらったの。あんたのお母さんにね」

勇者「マジ?あれって宮廷魔術師クラスのエリートが使うようなやつだろ?」

魔法使い「自在に使えるわけじゃないわよ。まだ小さい火球しか出せないし、連続使用も無理。相当神経使うのよアレ」

勇者「へー」

魔法使い「ねぇあんたのお母さん何者なの?」

勇者「母さんは母さんだろ」

魔法使い「あんたに訊いても無駄ね…」

勇者「魔法詳しくねーけどさ、それが本当ならお前相当な才能あるんじゃね」

魔法使い「そ、そうかしら」

魔法使い(……♪)




25: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:24:44.70 ID:5SQMnCgE0


魔法使い「ねぇ勇者、私疲れた。少しおぶってよ」

勇者「はい?」

魔法使い「だってあんだけ激しく吹っ飛ばされたのよ?くたくたになるに決まってるじゃない」

勇者「えぇ…俺っちの方が激しく動いてたけども…」

魔法使い「つべこべ言わない」

勇者「へーへー。…ほれ」

魔法使い「ん」

(おぶさる)

勇者「しっかり捕まっててくれよー。落とすからなー」

魔法使い「焼くわよ」



テクテクテク



勇者「……」テクテク

魔法使い「……」

魔法使い(…背中、大きいな…)

勇者「……」テクテク



ーーーーー

魔法使い「……なんで覚えてないのよ、馬鹿」ボソッ

ーーーーー



勇者「…覚えてるよ」ボソッ

魔法使い「え?何て言ったの?」

勇者「なーんも」








26: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:26:01.18 ID:5SQMnCgE0

序章は以上です。
登場キャラは安価で4つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって決定させます。

安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5~100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。



27: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/19(火) 23:26:57.29 ID:5SQMnCgE0

一人目のキャラ決めを行います。
候補 >>27~>>30



29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/19(火) 23:32:47.65 ID:s07UGRHm0

キャラ名: ルーナ
ヒーラー 白髪でオシャレなローブを纏ってる E:ダイアロッド
性別:男
年齢:16
得意戦型:魔法
備考・希望:威勢の良い啖呵をよく切る 前衛を盾として扱う後衛 ドクズの鑑



30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/19(火) 23:59:58.82 ID:gmdQ6aKQO

キャラ名:グローバ(役柄や容姿など:小柄だが筋肉質な体つきをしたスキンヘッドのじいさん。)
性別:男
年齢:65
得意戦型:体術
備考・希望:
幼女相手でもセクハラする絵に書いたようなエロジジイ。
各地を観光しながら旅をする楽隠居。
体術以外に回復と強化の魔法に優れるが使用目的もエロのため。(しかしR板じゃないし出番はないだろう)
実は家督を息子に譲り現役を退いた貴族で、本名はグロスハルト・バーランドというが気楽な隠居生活のために隠している。



31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/20(水) 00:00:40.74 ID:NQc/B4Tb0

キャラ名: ハンニバル
自称(策士)剣士  軽装の中世騎士のような格好 
性別:男
年齢:28
得意戦型:剣術
備考・希望:性格は常識的な大人 ド真面目のせいでからかわれやすいポジション 当時の歴戦に詳しく語りだすと熱弁を振るう傾向がある やたらと現場の指揮を執りたがる



32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/20(水) 00:03:48.82 ID:QnbML3ac0

キャラ名:リアンノン (精霊術師 白髪おかっぱな小柄な容姿)
性別:女
年齢:17
得意戦型:魔法
備考・希望:気弱で引っ込み思案な少女だが才能は高く火・水・風・土の精霊と共に戦う





33: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/20(水) 00:07:00.03 ID:2oMJSPdx0

候補が出そろったため、>>34のコンマで決定します。

00~24:ルーナ
25~49:グローバ
50~74:ハンニバル
75~99:リアンノン



34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/20(水) 00:09:28.78 ID:OGTWwmlDO

はい



35: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/20(水) 00:13:33.21 ID:2oMJSPdx0

コンマ78で登場キャラ一人目は

キャラ名:リアンノン (精霊術師 白髪おかっぱな小柄な容姿)
性別:女
年齢:17
得意戦型:魔法
備考・希望:気弱で引っ込み思案な少女だが才能は高く火・水・風・土の精霊と共に戦う

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。



37: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/20(水) 00:22:24.61 ID:2oMJSPdx0

余談となりますが、勇者と魔法使いのキャラシートはこんな感じです。

キャラ名:勇者(お調子者)
性別:男
年齢:16
得意戦型:剣術・体術
備考:自分が世界最強と信じて疑わない自信過剰家。小さい頃から闘技の稽古をつけてもらっていた。魔法が全く使えないが、ずば抜けた身体能力と剣捌きで相手を翻弄する。

キャラ名:魔法使い(火属性の魔法使い 勇者よりやや小さく、胸は無い)
性別:女
年齢:16
得意戦型:魔法
備考:勇者の幼馴染み。昔は泣き虫だったが、勇者の言葉のおかげで今の勝気な性格に変わることが出来た。闘技の経験は乏しく、まともにやったのは勇者戦が初めて。勇者には特別な感情を持っている。



39: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:14:27.41 ID:rrE0Pxi10

2章投下していきます



40: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:14:54.93 ID:rrE0Pxi10

ーーー道中ーーー

勇者「……」テクテク

魔法使い「……」テクテク

勇者「………だー!疲れた足痛ぇ」

魔法使い「辛抱なさい。もうすぐ町に着くから」

勇者「さっきもそんなん言ってなかったか?つーか魔法使いは平気そうだな…」

魔法使い「私は魔力で足の負担を和らげてるもの」

勇者「ずりーぞ!俺っちにもやれよ!」

魔法使い「あんたは体強いんだからいらないでしょ」

勇者「こいつ……初日におぶってやった恩を忘れやがって」

勇者「もういいかんよー、今日はこの辺で野宿にしようぜ」

魔法使い「嫌。今日こそふかふかのベッドで寝るんだから」

勇者「芝生も十分ふかふかだろ」

魔法使い「全っ然違いますぅ!私はあんたと違って繊細なのよ」

魔法使い「…体だってちゃんと洗いたいし…」

勇者「別に臭くねーから平気だって」

魔法使い「~~!!」

魔法使い「そういうことじゃないの!つか独り言に返事すんな!聞くな!」

勇者「理不尽過ぎる…」

魔法使い「あ、ほら見えてきたわよ」

勇者「んー?…マジじゃん!」

勇者「あれが今日の俺らの寝床になる町か」

魔法使い「えぇ。王都まではまだ遠いけど」

魔法使い「初めての土地に来ると旅って感じがしてくるわね」

勇者「…やっぱ旅行、好きだろ?」








41: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:15:22.62 ID:rrE0Pxi10

ーーー宿屋 勇者の部屋ーーー

勇者「あ゙ー」ゴロン

勇者「たった2日ぶりのはずなのにもう懐かしいわ。この布団の感触とか」

勇者「悔しいけどあいつの言ってたこと分かっちまうぜ…」

勇者「部屋も2つとれてよかったし。1部屋とかぜってー了承しないだろうかんな」

勇者「このまま夕食まで少し寝るとすっか」

勇者「……」

勇者「」スー..スー..

勇者「」スー..スー..

勇者「……」

勇者(………)

ムクリ

勇者「……うーむ」








42: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:15:49.64 ID:rrE0Pxi10

ーーー魔法使いの部屋ーーー

魔法使い「ふー気持ち良かった」ホカホカ

魔法使い「やっぱり湯浴みは毎日しなきゃ落ち着かないわね」

魔法使い「それにしても大きい姿見ね、これ」

魔法使い「……………」

魔法使い「」ブンブン

魔法使い「私はまだまだ成長期だし…!」

魔法使い(でもあいつの好みって)

魔法使い「……はぁ。世の中って不平等ねー…」

魔法使い「……」チラリ



(窓からのぞく町の景色)



魔法使い「………」








43: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:16:15.54 ID:rrE0Pxi10

ーーー廊下ーーー

勇者・魔法使い「「あ」」バッタリ

魔法使い「…寝るんじゃなかったの?」

勇者「あー、眠気ね、さっきまではくどいくらいあったんだけどね。それでちょっとお前に用があって」

魔法使い「なに?…まさか覗き?」

勇者「ちげーよ」

勇者「その、なんだ、辺境にあるっつっても町だけあってそこそこ綺麗だよな」

魔法使い「…!」

魔法使い「…なるほど」

魔法使い「どうやら考えることは同じようね」

勇者「なに?じゃあお前も…」

魔法使い「そう」

魔法使い「やるしかないわ」







ーーー商店区ーーー

魔法使い「旅といえば観光!」

勇者「よ!」

魔法使い「さぁ心行くまで見て回るわよ!」

勇者「さっすが付き合い長いだけあって分かってらっしゃる!」

魔法使い「だって見てみなさいよあのお洒落なお店!あっちのカラフルな雑貨屋!そしてこの大きい通り!」

魔法使い「その全てが私達を呼んでるのよ……堪能し尽くせとね」

男「俺っちにも聞こえんぜ!」

周囲(うわぁ…あの二人絶対田舎者だ)




44: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:16:59.36 ID:rrE0Pxi10


魔法使い「ねね、私向こうの雑貨店エリアを制覇しにいくわ!あんたは?」

勇者「え?付いてこいって言わんの?」

魔法使い「アクセサリーなんか興味ないでしょ?どうせ断るじゃない」

魔法使い(私がお洒落しようとしてるとこ見たら絶対おちょくってくるだろうし)

勇者「へへ、まーね」

勇者「美味そうな食いもん巡りでもしてくるわ」

魔法使い「決まりね。なら後で合流。私雑貨店エリアのどっかにいるから見つけて声かけて」

勇者「俺っちが探すんかい」

魔法使い「ご自慢の脚力があるじゃないの」

勇者「あいあい。火吹き芸とかやっててくれりゃ即行見っけるよ」

魔法使い「今すぐあんたの顔面にかましてもいいけど?」








45: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:17:38.11 ID:rrE0Pxi10

ーーー雑貨店ーーー

魔法使い「わぁ…すごいわね」

魔法使い(緑に赤に水色にピンク)

魔法使い(髪留め、首飾り、腕輪……あれは耳に着けるものかしら)

魔法使い(色とりどりで見たことのないものがたくさんある…!町ではこういうのが流行ってるのね)

魔法使い「んー…これとか……こっちもなかなか……」

魔法使い(この首飾りとか、ちょっと大人っぽく見えないかな?)

魔法使い(これで少しはあいつも)

魔法使い「………」

魔法使い(無意識にあいつのこと考えるの、悪い癖だわ。今は純粋に、この新鮮な買い物を楽しむのよ!)

魔法使い(…後で服屋にも寄ろうっと)

魔法使い「…!」

魔法使い(あ、この髪飾りかわいい)ソッ...



チョン



魔法使い「…!」

少女「あ」

魔法使い(しまった。指、触っちゃったわね…この子も欲しかったのかしら)

少女「…その…ごめんなさい」

魔法使い「や、いいのよ。こちらこそ周りよく見てなくて」

魔法使い(それにしてもこの子)

魔法使い(切り揃えられた白い髪、整った輪郭にシンプルで大人しい服装……まるでお人形さんみたい)

魔法使い(でも一番気になるのはそこじゃないのよね)




46: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:18:05.52 ID:rrE0Pxi10


魔法使い「……」ジー...

少女「……えっと…すみません、何かありますか…?」

魔法使い「!何でもないの。ごめんね不躾に見ちゃって」

少女「……」

魔法使い「これ欲しかったのよね?はい、どうぞ」

魔法使い「とっても似合うと思うわよ」ニコッ

少女「…いえ、それはお姉さんにお譲りします」

魔法使い「遠慮しなくていいのよ。私このお店の中全然見れてないから、買うものを決めるのはまだ先なの」

少女「お心遣いだけ、いただきます。ありがとうございます」ペコリ



タッタッタッ



魔法使い「ちょっと、待っ――」

魔法使い「…行っちゃった」

魔法使い「うぅ、悪いことしたわね…罪悪感…」

魔法使い「……あら?」



(地面に落ちた財布)



魔法使い「これ…あの子の…」








47: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:18:44.61 ID:rrE0Pxi10

ーーーーーーー

魔法使い「うーん、いないわ。どこに行っちゃったのかしら」

魔法使い(あの子の髪、目立つからすぐ見つけられると思ったんだけどな)

魔法使い(この辺りは人通りも少ないし、もし親御さんと買い物に来てるんだとしたらさっきの大通り沿いを探した方がいいのかもしれないわね)

勇者「やーっと見つけたわ。お前雑貨店の方にいるんじゃなかったんか?」

魔法使い「勇者…ごめんなさい少し事情があって……って」

勇者「ん?」

(脇に抱える大量の食べ物)

魔法使い「あんた買い過ぎじゃないそれ?」

勇者「いやぁ全部美味かったからさ、お前の分も買っておいてやったんだぜ?へっへ」

魔法使い「そりゃどうも。食べ切れる自信皆無だけど」

勇者「俺っちも手伝ってやるって」

魔法使い「自分が食べたいだけじゃないの…」

魔法使い「それよりあんた、白い髪の女の子見なかった?これ。その子が落としていったのよ」

勇者「財布か?質素なデザインだな。柄もなんもない。お前の好みとは真逆だ」

魔法使い「う、うるさい」

勇者「白い髪なら向こうで見たぜ?」

魔法使い「本当!案内して!」



.........








48: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:19:20.61 ID:rrE0Pxi10

ーーーーーーー

魔法使い「この辺?」

勇者「そ。一人で歩いてたんよ」

魔法使い「大人の人しかいないわよ」

勇者「俺っちに言われてもなぁ。移動したんだろ」

魔法使い「…まぁ、その子が歩いてった方に向かうしかないわね」

勇者「あれじゃね?」

魔法使い「?どれ?」

勇者「あそこ。なんか野朗共に囲まれてる」



大男「おうおうおう。俺にぶつかっておいてごめんで済むと思っとんのか?おぉん?」

子分A「そうだそうだ!この方をどなたと心得る!?」

少女「ごめんなさい……わざとじゃないんです」

子分B「わざとでなくともそれなりの誠意ってやつは必要だよなぁ?」

少女「誠意、ですか」

子分B「分からんなら教えてやろう!君がしでかしたことへの代償をねぇ!」

少女「でも私…」

大男「まぁおめぇら落ち着けや。嬢ちゃん、俺もそこまで鬼じゃあねぇ。だが嬢ちゃんの売った喧嘩だ、勝負のチャンスをくれてやる」

大男「見たところ魔術師だろ?闘技くれぇやったことあるよな?」

少女「あります……けど争いごとは苦手で……」

大男「んじゃあ不戦敗だ。慰謝料払ってもらおうか。言っとくが安くねぇぜ?」

少女「そんな…」



勇者「ひっでー因縁の付け方だな。大方金目当てだろうが。あの子良いとこのお嬢様っぽいし」

魔法使い「……」

勇者「助けに行かんの?」

魔法使い「え!」

勇者「お前こういうの絶対許さないやつじゃん」

魔法使い「そう、ね」



少女「……分かりました。それで納得いただけるなら」

大男「成立だな」ニヤ

大男「場所、移そうや」



勇者「行っちまうみたいだぜ」

魔法使い「追いかけましょう」








49: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:19:48.22 ID:rrE0Pxi10

ーーー町の自由闘技場ーーー

勇者「ほー、町ともなるとこんな場所まであるんな。村のは手書きのヘッタクソなフィールドだったもんなー」

魔法使い「自分でそれっぽいの作ればいいじゃない」

勇者「作ろうと思ったことはあった」

魔法使い「実行に移しなさいよ」

魔法使い「あの子は…」

大男「うし、子分A!おめぇ審判やれ」

子分A「了解っす!」

少女「………」

魔法使い「あっちのフィールドみたいね」

勇者「闘技始めようとしてっけど」

魔法使い「…勇者、あの闘技ちょっと観戦してもいい?」

勇者「んえ?」

魔法使い「勿論あの子が理不尽な目に遭いそうになったら助けるわ」

勇者「お前がそれでいいなら俺っちも構わんよ」

魔法使い(どうしても気になるのよね)



子分B「親分、死なせたら反則負けっすからねー!」

大男「がはは!分かっとるわい」

子分A「そいじゃ始めまっせ」

子分A「両者前へ!」

少女「……」

大男「……」ニヤニヤ

子分A「始め!」



勇者「始まったな」チラリ

魔法使い「……」






50: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:20:45.61 ID:rrE0Pxi10


大男「嬢ちゃんよぉ、そう緊張すんなや。なにも取って食おうってんじゃねぇんだ」

少女「……」

大男「俺に幼女をいたぶる趣味はねぇ」

少女「」ピクッ

大男「こんな成りでも紳士だからよ、勝負はフェアにしてやる。先に嬢ちゃんの魔法拝ませてくれや」

子分B「さすが親分!お優しい!」

大男「当然のことをしてるまでよ!」ガハハ



魔法使い「何がしたいのよあの男は」

勇者「大方、自分には何も通じませんよーって見せびらかしたいんだろ。そんで相手を萎縮させて悦に入るんさ」

勇者「はっ、雑魚ほど見栄を張りたがるわな」

魔法使い「…あんたが言うとムカつくわね」



大男「ほれほれ、いつでもいいぜ?」

大男(くく…数え切れねぇほど闘技で荒稼ぎしてきた俺だ。魔法の使い手にも幾度となく勝利してきた。言わば歴戦の猛者よ)

大男(対して、場数も踏んでなさそうな嬢ちゃんときた。女子供に仕掛けるなんて普段はしねぇが…あの容姿に、人慣れしてない雰囲気。どこかの貴族の箱入り娘に違えねぇ)

大男(悪いな嬢ちゃん。あんたに恨みはねぇが、一山当てさせてくれや)

少女「…そうですか」

大男「お、くるか?嬢ちゃんがどんなかわいい魔法見してくれんのか楽しみだなぁ」

少女「………」



少女「"召喚"」






51: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:22:19.05 ID:rrE0Pxi10


魔法使い「!」

勇者「召喚?」



...ゴゴゴゴ

大男「あ…?」

大男(なんだ?急に周りが温かく――)

ブワァ!

大男「うぉあちぃ!」

子分A「ぎゃ!目が…!」

大男(くっそ、なんだってんだ!空間加熱魔法か!?聞いたことねぇぞ…!)



炎精「……」ゴゴゴ



大男「………ほ?」



勇者「なんだありゃ。火のおっさん生み出したぞ」

魔法使い「やっぱり…」

魔法使い「あれは精霊よ」

勇者「精霊?」

魔法使い「私も噂程度にしか聞いたことがなかったわ。精霊と交信する魔力を持っていて、彼らの力を借りることが出来る、この世に100人といない…」

魔法使い「彼女、精霊術師なのよ…!」






52: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:22:48.84 ID:rrE0Pxi10


子分B「ひぇ…」

大男(お、俺は夢でもみてるのか…?こんなわけわかんねぇ魔法…)

炎精「……」ギロッ

大男「っ…」

大男(ちくしょうが…!威圧感だけで足がすくみやがる…)

大男(…ん?そ、そうか!)

大男「は、ははっ。驚いたよ嬢ちゃん!こいつぁ幻覚魔法の類だな?見た目だけじゃねぇ、温感まで錯覚させるなんざなかなか面白ぇ魔法だ」

子分B「な、なるほどっす!見掛け倒しってことか!こすい魔法使いやがるぜ」

少女「……、…、…」

炎精「……スゥー……」



ゴウゥ!



勇者「おぅ…!」

魔法使い「きゃっ!?」



ボオオォ...



魔法使い「……すご」

勇者「お前もあんくらい出来たら俺っちと張り合えるかもなー」

魔法使い「無理よ。私の火炎なんかあれと比べたら遊びだわ…」



大男「はひ……」チリチリ...

少女「…ごめんなさい、髪を焼くつもりはありませんでした」

少女「まだ……やりますか?」

大男「………ひ」

大男「ひぇえええええ!」タタタッ!

子分A「ま、待ってくださいよ親分!」

子分B「置いてかないでぇ!」



タッタッタッ...






53: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:23:49.34 ID:rrE0Pxi10


少女「……ふぅ」

勇者「勝者、精霊使いの女の子ちゃーん」

少女「!」

魔法使い「こそこそ見物しててごめんね」

少女「あ、お姉さん…」

魔法使い「さっきぶり」ニコッ

魔法使い「これ落としてたわよ?」

少女「お財布…?あっ」

ガサゴソ ペタペタ

少女「…ほんとだ。無い」

(受け取る)

少女「ありがとうございます。わざわざ届けに来てくれたんですか…?」

魔法使い「それもあるんだけど…あなたから滲む魔力が気になっちゃって」

魔法使い「驚いたわ。精霊術師に会えるなんて夢にも思ってなかったもの!」

炎精「……」ゴゴゴ

勇者「おーすげー、これ抱き着いたら燃やされんのかね」

少女「…、……。」

炎精「……」

スッ...

勇者「あ、消えた」

魔法使い「今のは精霊に話しかけたのよね!?交信手段が人語じゃないのは知ってたけど、テレパシーみたいなもの?私達には聞こえないんだ」

少女「…お詳しいんですね」

魔法使い「あぁ…ごめんなさい私ったら」

魔法使い「私は魔法使い。こっちの能天気なのが勇者ね」

勇者「おっす」

少女「……リアンノン、といいます」(以下、リア)

魔法使い「リアンノン…神話に出てくる女神様と同じ名前だわ…!」

勇者「よくそんなん知ってんなー」

魔法使い「あんたと違って勉強してるのよ」

魔法使い「天は二物を与えることもあるのね!こんなに神秘的な容姿といい、精霊術といい……名は体を表すとはよく言ったものねぇ」

リア「…神様、ですか…」




54: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:24:21.57 ID:rrE0Pxi10


リア(……)

リア「……あの、実は私家出をしてきたんです」

魔法使い「え」

リア「魔法使いさんの言う通り、精霊術もこの白い髪もとても珍しいもののようで……それで、精霊達と交流が出来ると分かったその時から、村は私を御神体として扱うようになったんです」

リア「今の暮らしはとても息苦しくて……」

リア「私は普通の生活がしたいのに、誰も聞き入れてくれないので」

勇者「飛び出してきたと」

リア「…はい」

魔法使い「そうだったの……悪いことしたわね、そうとは知らずに…」

勇者「ふーん。でもさ、この近くに村なんてあったっけか?俺らが来た時にゃ見かけなかったよな?」

リア「風の精霊さんに運んでもらったんです」

勇者「なにそれ羨ま」

魔法使い「なんでこの町に?」

リア「…一度、お買い物というのをしてみたくて…」

リア「よく言うじゃないですか…?女の子は時間をかけて楽しくお買い物するって…!」

魔法使い(だから雑貨店にいたのね)



...グー



リア「………//」

魔法使い「ふふっ、先にお食事する場所探した方がよかったかもしれないわね」

勇者「ほい、食うか?」スッ

リア「え…悪いです、そんな」

魔法使い「遠慮しなくていいわよ。それ私の分らしいけど、どうせ食べ切れないからリアンノンちゃんも一緒に食べましょ?」

リア「でも……」ゴク...

リア「……じ、じゃあいただきます」



.........








55: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:24:51.48 ID:rrE0Pxi10


魔法使い「どう?美味しい?」

リア「はい…!ムグムグ…とっても!」

魔法使い「そんなに急がなくても食べ物は逃げてかないわよ」フフッ

勇者「こっちも食ってみ?俺っちの一推し!」

リア「」パクッ

リア「ん~~♪」

勇者「おーいい反応すんね~。リアの餌付け係立候補してみっかな」

リア「リ、リア…?」

魔法使い「馴れ馴れしいわよ、あんた」

勇者「いいじゃん。リアンノンって長くて呼びづれーのよ」

魔法使い「あのねぇ…。こいつの言うことは気にしないでね。大抵頭を通って出てきた言葉じゃないから」

勇者「きみさっきからちょいちょい失礼じゃない?」

リア「……いいですよリアで」

リア「いえ、リアがいいです」

勇者「ふっ」ドヤ

魔法使い「…なによ」

リア「魔法使いさんも…」

魔法使い「え?えーと……リア、ちゃん」

リア「はい…♪」

魔法使い(勇者のにやけ顔は癇に障るけど、リアちゃんが嬉しそうにしてるならいっか)




56: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:25:19.56 ID:rrE0Pxi10


勇者「ところでよ、リアの家出ってどっか行き先決めてるんか?」

リア「……特には……」

魔法使い「突然飛び出してきたんだからそんなもんでしょ。ましてリアちゃんくらいの年齢の子ならね」

魔法使い「親御さんも心配してるでしょうけど…」

リア「家にはお手紙を置いてきたので大丈夫だと思います」

リア「それに……両親も私のことは"娘"として見てませんから……」

勇者「……」チラッ

魔法使い「……」メソラシ

リア「…あ、すみません。やな空気にさせちゃいましたね…。今のは気にしないでください」

魔法使い(…そういえばこの子、最初に会った時からずっとどことなく悲し気な顔をしてるのよね)

リア「ですが一つだけ言わせてください」

魔法使い「は、はい!なんでしょう…?」

リア「………私、17ですっ」

勇者・魔法使い「「……」」

勇者・魔法使い「「!?」」








57: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:26:08.68 ID:rrE0Pxi10

ーーー商店区ーーー

魔法使い「ごめんねリアちゃん。まさかお姉さんだなんて思わなくて」テクテク

リア「…仕方ないです。自分でも分かってますから」テクテク

勇者(どっからどう見ても年上にゃ思えんわな。見た目、村のチビ共とおんなじくらいだし)

勇者「そんであの精霊魔法かぁ」

勇者「分かるぜ、"持ってる"やつの悩みってのが付き纏ってくるよなー」

リア「は、はい…?」

勇者「なぁ、試しに俺っちと闘技してくんない?あの火のおっさんと直でやり合うのちょー楽しそう」

リア「……すみません、争いごとは……」

魔法使い「やめなさい。さっきの連中とやってることが変わんないわよ」

勇者「ちぇーつまんねーの」

勇者「次これ食う?」

リア「あ、いただきます」

リア「……」モムモム

魔法使い(…ごめんリアちゃん、ちっちゃな子供にしか見えない)

勇者「で、魔法使いさんよ。お前らの買い物付き合うのは全然いいんだけどさ、その後どうするんよ?」

魔法使い「この後?」

勇者「リア家出中じゃん」

魔法使い「……あ」

魔法使い「さすがに泊まる場所くらいは確保してるわよね…?」

リア「……………」

魔法使い「えぇ…?」

リア「ち、違うんです。宿を訪ねはしたんですよ…!」

リア「ただ、お子様一人では泊められないって……」

魔法使い(容赦ないわね、世間)




58: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:26:35.44 ID:rrE0Pxi10


魔法使い「だったら私達の宿に来なさいな」

リア「…!」

魔法使い「私と勇者が一緒にいればリアちゃんにも部屋使わせてくれるはずよ」

リア「そんな、悪いです…!」

魔法使い「どこが?正当にサービスを受けられるようになるだけよ」ニコッ

リア「それはとてもありがたいですが…」

勇者「おいおーい、もしや宿泊費まで面倒みるつもりかね?」

魔法使い「そうよ。…と言いたいとこだけど」

リア「お金を出していただくなんて、絶対ダメですからね…!」

魔法使い「そうくると思ってたわ」フフッ

魔法使い「場所を提供してもらうだけって考えたら、どう?」

リア「………」

勇者「行こうぜ行こうぜ。さっき食べた飯代っつーことで精霊魔法もっと見してくれよ!見せんのならいいっしょ?」

リア「……はい。それなら」

勇者「やりぃ!そうと決まればとっとと観光済ましちまおうぜぃ!」

タッタッタッ

魔法使い「先に行ったら置いてくわよー!」

魔法使い「ほんと、少しは落ち着いてられないのかしら」

リア(……いいな)








59: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:27:57.23 ID:rrE0Pxi10

ーーー宿屋裏 空き地ーーー

リア「………」

勇者「」ワクワク

リア「……"召喚"」

...コポ、コポ

ザパァ!

水精「……」ポタポタ...

勇者「おぉ…!これが水の精霊か!」

リア「そうです」

勇者(全身水だからすっけすけだけど、いい体付きした姉ちゃんじゃん)ヌフ

勇者「なーなー!なんかやってみてくれよ!」

リア「……、…?」

水精「……」

水精「」スッ



...ザーー!



勇者「お、おぉ?」

勇者(俺っちの周りを取り囲むように大雨が降ってきた!)



ザー...



勇者「ほほぉ、局所的に雨を降らす技か。水不足にゃもってこいかもなー」

勇者「もっとすげー技ないんか?こう、一撃必殺みたいな!」

リア「いえ…そういうのは……」

勇者「えー、せっかく精霊なんて呼び出せんのにそれじゃあ観賞用にしかなんないぜー?」




60: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:28:36.60 ID:rrE0Pxi10




ーーーーー

司祭「いいですかなリアンノン様。あなた様はそこにいるだけでよいのです。それだけでこの村の益となる」

司祭「何をする必要もありませぬ。それがあなた様の役割――」

ーーーーー


リア(……)

勇者「もっと自信持てって」

リア「え…?」

勇者「その歳でこんな芸当が出来んなんて将来有望だろ、多分。鍛えればそんじょそこらの奴くれー瞬殺になんじゃね?」

勇者「ま、俺っちがいる限り最強は無理だろーけどな!なはは!」

魔法使い「二人ともこんなとこにいたの?そろそろ食事の時間になるわよ!」








61: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:29:03.94 ID:rrE0Pxi10

ーーー魔法使いの部屋ーーー

魔法使い「リアちゃんそっち狭くない?」

リア「平気ですよ」

魔法使い「ならいいけど……タイミング悪かったわね、帰ってきたら満室になってるなんて」

魔法使い「同室は許してくれたけどベッドは一つだし……いざとなったら私床で寝てもいいからね?」

リア「必要ありません、そんなの…!」

リア「それに、私は……一人よりも一緒の方が……」

魔法使い「……」

ナデナデ

リア「……ふぇ?」

魔法使い「リアちゃんはいい子ねー。そうやって人のことをちゃんと気遣うことが出来る」

リア「な、なんですか……こんな子供みたいに…!」

魔法使い「馬鹿になんてしてないわ。尊敬してるのよ」

リア「尊敬…?」

魔法使い「えぇ」

魔法使い(とっさに頭を撫でてしまったなんて言えない)

魔法使い「でもね、もっとわがままも言っていいのよ?」

魔法使い「今日初めて会ったばっかりだけど、私も勇者もリアちゃんと仲良くなりたいと思ってる」

リア「……」

リア「…魔法使いさんにはあるんですか?わがまま…」

魔法使い「私?そうね…」

魔法使い「あわよくば、もっとリアちゃんから精霊術のことが聞けたらなって。これでも魔術師の端くれですからね」

リア「それじゃあその、少しだけ、いいですか…?」

魔法使い「もちろん」

リア「…魔法使いさんと、勇者さんのお話が聞きたいです」








62: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:29:48.85 ID:rrE0Pxi10

ーーーーーーー

勇者「いやーびっくりしたぜ。魔法使いがこっちの部屋に侵入してくるんだもんな。俺っちには絶対来んなって言っておいて」

魔法使い「呼びに行っただけしょ!?リアちゃんがあんたの話も聞きたいって言うから仕方なく!」

勇者「でかい声だすと他の客に迷惑だぞー」ニヤニヤ

魔法使い「こいつ…」

リア「あの…やっぱり困りますよね…私……」

魔法使い「いいのよ、リアちゃんはこれっぽっちも悪くないから!」

勇者「そそ。俺っちの武勇伝が聞きたいんならたんまり話してやんぜ。さっき昼寝しといたから全然眠くないしなー」

魔法使い「変な時間に寝たら昼夜逆転するわよ?」

勇者「だいじょーぶ、夜寝る時間昼まで伸ばせば解決よ」

魔法使い「どこが大丈夫なのよ…」

勇者「さってどこから話そうかねー。そだ!俺っちがちょうど闘技始めた頃のとこから!」



.........








63: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:30:44.57 ID:rrE0Pxi10


勇者「そしたら奴らもムキになっちまってよ。みんなして引くに引けない空気の出来上がり」

リア「まあ…真剣な場面なのに、なんだかちょっと可笑しいですね…ふふ」

魔法使い(リアちゃん楽しそう)

魔法使い(なんだかんだ、勇者を呼んだのは正解だったわね。こいつ自分の自慢話をするのは大好きだし)

勇者「そんで全員で襲いかかってくるもんだからよ、思い知らせてやったのよ」

勇者「俺っちのこの」



ギュン!



魔法使い「あぶなっ」サッ

勇者「華麗な回し蹴りで!」

魔法使い「なんで目の前でやんのよ!ぶつける気!?」

勇者「当てねーって。ビビりだなー」

勇者「ま、そんなこんなで分かってくれたらしくってさ。今じゃ奴らみんな俺っちの舎弟ってわけ」

勇者「この経験から俺っちは、納得いかねーことがあっても簡単に屈しちゃいけねーっつー教訓を学んだわけな」ウンウン

リア「!」

魔法使い「力づくで言うこと聞かせただけじゃないの」

リア(簡単に、屈しちゃ…)

魔法使い「真に受けないでね、リアちゃん。こいつ小さい頃は俗に言う悪ガキそのものだったんだから」

勇者「よく言うぜ。その悪ガキにいつもぴったり付いてきてたくせに」

魔法使い「うっ」

リア「お二人は昔から知り合いだったんですね」

勇者「おう。聞いて驚け、魔法使いなんて昔は――」

魔法使い「勇者」ギロ

魔法使い(喋ったら殺す)

勇者(って目してやがる。おっかねー)




64: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:31:12.72 ID:rrE0Pxi10


リア「勇者さん…?」

勇者「あー…と、何するにしても俺っちと一緒だったもんよ。その頃は今と違ってもっと可愛げあったんだがなぁ」

魔法使い「悪かったわね…今はかわいくなくて!」

勇者「別に今がかわいくないなんて言ってねーけど」

魔法使い「…!?あ…う…//」

リア(…そっか。魔法使いさん、勇者さんのことが……ふふ)

リア「あの、お二人はどうして旅をしてるのですか?」

勇者「優勝するため!」

リア「?」

魔法使い「王都に行くのよ。近々闘技大会があるの。それに出るのが目的よ」

リア「わぁ……お二人とも強いんですね…!」

魔法使い「出場するのは勇者だけよ。私はただの付き添い」

勇者「今年は他の選手がかわいそうだよなー。全員俺っちにボロ負けしちゃうもんね」

魔法使い「はいはいそうね」

魔法使い「そういえば訊いてなかったけど大会の日っていつなのよ?場合によってはあんまりのんびりしてられないわ」

勇者「日程?んー、確か……1ヶ月後だったかな」

魔法使い「全然余裕じゃないの!ここから王都ってせいぜい10日もかからないわよ?こんな早く村を出ることなかったじゃない」

勇者「まぁまぁ。そんときゃ王都の観光でもすりゃいいっしょ」

魔法使い「半月近くも見て回るものがあるのかしらね…」

リア「王都……きっととても広いのでしょうね」

魔法使い「そうね。ここ数年で大きく発展してきたとは聞いたわ」

リア「世界って、まるで生きてるみたいですね。こんなに大きくて、流動的で……知らないことだらけです……!」

魔法使い(……)




65: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:31:43.43 ID:rrE0Pxi10


魔法使い「…リアちゃんはさ、もう村には戻らないの?」

リア「………」

魔法使い「あ!責めてるわけじゃないのよ!ただ、リアちゃんのこの先のことを考えるとね…その…」

リア「…分かってますよ」

リア「一人で生きていけるとは私も思ってませんから…」

リア「村は、好きではないですが、地獄でもないので、お金がなくなって限界がきたら帰ります」

魔法使い(…また、悲しい顔にさせちゃった。この話には触れない方がよかったかな)

魔法使い(でもこの子が本当の意味で笑うためには…)

リア「それより、続き聞かせてくれませんか…?次は魔法使いさんのお話が聞きたいです」

魔法使い「…うん、いいわよ。けど眠くなったらちゃんと寝ること」

リア「…魔法使いさんより年上ですよ、私…」ムー

勇者「俺っちの武勇伝もまだまだあんぜー?」



.........








66: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:32:21.62 ID:rrE0Pxi10

ーーー翌朝ーーー

魔法使い「……ん……」

魔法使い(朝…?)

勇者「ぐー…むにゃ…」

魔法使い「………!?」

魔法使い(近い近い近い!)

魔法使い(なにっ!?なんで勇者が――!)

リア「スー…スー…」

魔法使い(…昨日あのまま寝ちゃったんだ)

魔法使い(ゆ、油断したわ。まさかこいつの隣で眠りこけるなんて…)



ドンドンドン!



リア「」ビクッ

勇者「んぁ…?」

魔法使い「なに?」

魔法使い(やけに荒っぽいノック)



宿の主人「ちょっと困りますよあなた!勝手にお客さんの部屋に…!」

「そこにいらっしゃるのですなリアンノン様!」



リア「あ…」

魔法使い「え、リアちゃん…?」

勇者「なんだぁ?朝っぱらから騒がしい奴だな…」



宿の主人「これ以上は営業妨害で突き出しますよ!」

「ええい、そんなつまらん規則で我々は縛れぬぞ!」



バタン!



「やはりこちらでしたか!ささ、愚かな真似はやめにして、村へ帰りますぞ。民もあなた様を待っています」

リア「……司祭様……」








67: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:33:04.17 ID:rrE0Pxi10

ーーー宿屋 談話室ーーー

リア「………」

司祭「………」

村人たち「「「……」」」

魔法使い(空気が重過ぎる……この人たちがリアちゃんの言ってた村の…)

勇者「こんな大勢で押しかけてくれちゃってまぁ…」

司祭「リアンノン様」

リア「……」

司祭「我々と帰りましょう」

リア「……帰りたくありません」

司祭「何をおっしゃるのです。あなた様の身はあなた様お一人のものではないのですぞ。我が村の守り神として、いてもらわなければ…」

リア「…私は…普通の人間です…」

司祭「なっ」

リア「この髪も、精霊さんたちとお話が出来るのも、単なる偶然に過ぎません。私もみなさんと同じ、人なんです…!」

司祭「この期に及んで何たることを…!」

「リアンノン様どうか怒りをお鎮めください!」

「我らはいつもあなた様を信仰しております!」

「どうか…どうかお慈悲を…!」

魔法使い(何よこれ……こんな、大の大人が何人も女の子一人に赦しを乞うて、崇めてる…)

リア「……」

魔法使い(普通じゃないわ、こんなの)

魔法使い「あの、待ってください。リアちゃんの言ってることをちゃんと考えてあげて欲しいです」

司祭「何だね君は」

魔法使い「リアちゃんの友人です」

リア「…!」




68: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:34:02.97 ID:rrE0Pxi10


魔法使い「彼女は確かに、数少ない精霊術の使い手で、髪色も珍しいものとは思います」

魔法使い「ですがそれだけです」

魔法使い「珍しい要素が複数重なるだけで無条件で神になるんですか?そしたらこの世は神様だらけですよ」

司祭「何を言うておるか。リアンノン様の存在は単なる珍しさとは次元が違う」

司祭「リアンノン様のご両親もその神性を認めておる。そうであろう?」

リア母「…はい。司祭様」

リア父「おっしゃる、通りです」

魔法使い「なんで……あなたたちリアちゃんの親なんでしょう!?自分の子供がこんな意味の分からない扱いを受けてるのにそれでいいの!?」

司祭「娘、静かにせよ。これは我々の問題だ。余所者が無遠慮に首を突っ込むのはやめてもらおうか」

司祭「さぁリアンノン様、行きますぞ。もうわがままの時間は終わりです」グイッ

リア「や…!」

魔法使い「ちょ、やめなさいよ!そんな無理矢理…!」

「やめるのはお前の方だ!」

「我らからリアンノン様を奪おうとする不届き者め!」

ワーワー!

魔法使い(何なのこの人たち…!自分たちの行為が女の子の自由を奪うことだって理解してないの!?)

魔法使い(こんなに大勢の人がいるのに誰一人異を唱えないなんて。このままじゃリアちゃんはまた…)




69: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:34:34.66 ID:rrE0Pxi10




勇者「あーあー。さすがにうるさ過ぎんだけどー」



魔法使い(!…勇者?)

司祭「お主、この娘のお仲間だな?部外者には早々に立ち去って欲しいものだ」ジロ

勇者「いやー?部外者じゃねーっすよ?俺っち、リアの餌付け係やらせてもらってるんで」

司祭「何だと…!?貴様リアンノン様に何を――」

勇者「どうどう。頭に血上らせると血管切れるぜ、じいさん」

勇者「リアは村に帰りたくない。じいさんたちはリアを連れ帰りたい」

勇者「でも双方譲らないんだろ?んな平行線の話し合いいくらやったって無意味っしょ」

勇者「だったら!勝負ごとで決めれば文句は出まい!」

司祭「勝負?」

魔法使い「…勇者、あんた」

勇者「この世界の勝負っつったら一つ!闘技しかあるめぇ!」

魔法使い「はぁぁ?あんたどこまで脳筋なのよ!」

勇者「一番平等な決め方じゃん。魔法使いだって闘技で俺に付いてきたろ?」

魔法使い「そうだけど…あれとは事情が…」

魔法使い「大体リアちゃんがそういうの苦手なのあんたも知ってんでしょ!」

勇者「じゃあ、やめとくか、リア?」

リア「……私は……」

リア(争いごとは嫌、だけど)

リア(このまま何も変えられないのは、もっと嫌)

リア「…やります」

魔法使い「リアちゃん…」

勇者「…さ、どうするじいさん?リアはこう言ってっけど」

司祭「おのれ余所者の分際で…!」

魔法使い(そうよね、リアちゃんがその気でも、彼女を神様扱いしてるこの人たちが闘技なんて引き受けられるはず――)

司祭「…私が勝てば、大人しく戻っていただきますからな」

魔法使い「え…」

魔法使い(引き受けるの?)








70: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:35:40.66 ID:rrE0Pxi10

ーーー町の自由闘技場ーーー

「リアンノン様と司祭様が闘うなど…」

「しかしリアンノン様の神聖な魔法を拝見出来る貴重な機会…!」

「司祭様が収めてくださるようお祈りせねば…」

ザワザワ

魔法使い「…なんでこんなことになったのかしら」

勇者「傍から見たらひでぇ集団いじめだよなーこれ」ハハ

魔法使い「あんたのせいでしょーが!」ビシッ

勇者「あいてっ」

魔法使い「…どうすんのよ。これに負けたらリアちゃんは…」

勇者「んー?大丈夫っしょ。リア、強いし」

魔法使い「そうとは限らないわよ。あの司祭…魔力の流れに乱れがない。相当の使い手よ。いくらリアちゃんが精霊術を使えても簡単に勝たせてくれるかは分からないわ」

勇者「魔力ねぇ」



司祭「…リアンノン様。これから行う数々の無礼をお許しください。これも村の、ひいてはあなた様自身のためなのです」

リア「……」グッ...



審判「両者前へ!」

リア父・母「「……」」

審判「始め!」






71: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:36:08.16 ID:rrE0Pxi10


司祭「一息に終わりにしましょうぞ!」

司祭「"封魔"!」ブシュー



魔法使い「なんてこと…!封魔の魔法だなんて!」

勇者「まずいのか?」

魔法使い「魔術師の天敵よ。あの魔法にかかったら一切魔法が使えなくなる。高位魔術の一つなの」

勇者「でも時間経過で解けんだろ」

魔法使い「魔法しか使えない人はあれにかかった時点で致命的でしょ!」



シュゥゥ...

リア「……」

司祭「さすがですな、リアンノン様」



勇者「効いてないみたいだぜ?」

魔法使い「魔力の壁ね…あの子本当にすごいわ」

勇者「魔力って防御も出来んだな。そんな便利なら常にしときゃいいんじゃねーのって思うけど」

魔法使い「防御は攻撃以上に魔力の制御が難しいのよ。防御しながら全力の魔法は撃てないの」



司祭「"誘眠"」ポワァ

リア「……」サッ

スー...(霧散する魔法)

司祭「"加重"」

リア「っ…」ググッ...

リア「」バッ

司祭「私の魔法をこれほど防ぐとはなかなか」

司祭「ですが防戦一方では勝てませぬぞ」

リア「………」

リア「"召喚"!」



「おぉ…!リアンノン様の精霊術…!」

勇者「ついにきたな」

魔法使い「……」






72: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:37:01.94 ID:rrE0Pxi10


...グラグラグラ

ドゴーン!

土精「……」ヌゥ



「じ、地面から…!?」

「土の精霊様じゃ…!」

勇者「あれ?火のおっさんじゃないのな。火炎ブレスでじいさん丸焼きに出来そうなのに」

魔法使い「死なせてるじゃないそれ」



司祭「ふむ。お次はどうするつもりですかな?」

リア「……、……、…。」

土精「」ヌン...

ガァン!

司祭「む…!」

ドドドドド!

司祭「」ササッ



勇者「ひぇー、地面を盛り上げてんぜ」

魔法使い(司祭を直接攻撃するわけじゃないのね。あれじゃあまるで避けてくださいと言わんばかりの…)

魔法使い「…!そういうこと」






73: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:38:14.37 ID:rrE0Pxi10


ドドドド!

司祭「」ズザッ

司祭「私を場外に追いやる作戦ですか」

リア「……」

司祭「心優しいお方です」

司祭「…しかし、こと闘技においてその優しさは命取りになりますぞ」

司祭「"閃光"」カッ!



勇者「眩しっ」

魔法使い「っ…!」



リア「ぅ…」

司祭「"呪縛"」

リア「!」

土精「グォ…」

司祭「精霊に牙を向けるのは畏れ多いですが…"破砕"」

リア「"解呪"!」

ドシャン!

司祭「ほう…片腕しかもっていけませんでしたか」

リア「……、…」

...ゴロゴロ

ズシン ボコッ






74: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:38:43.00 ID:rrE0Pxi10


勇者「おー、再生してるよあいつの腕」

魔法使い「今の解呪させてなかったら木っ端微塵だったわね…」

勇者「どうせ復活出来んだろ?問題ないっしょ」

魔法使い「復活も再生も出来るけど、それは術者の魔力があってこそよ」

魔法使い「あの司祭、やっぱり手練れね。精霊を縛るほどの魔法を放つなんて…」

勇者「長期戦は不利ってことか」

魔法使い「そうね。リアちゃんの魔力が尽きる前に決着をつけないと」

魔法使い(それはあの子もよく分かってるはず…)



司祭「手加減しませぬぞ」

リア「……」



.........








75: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:40:03.26 ID:rrE0Pxi10


土精「」ズズズ

ガコン!

司祭「」ヒョイ

司祭「"超加重"」

土精「グ…」ズン...

リア「"解呪"」

土精「……」ムン

ドゴン!

司祭「ふぬっ」スサッ



勇者「身軽なじいさんだなー」

魔法使い「そうね。リアちゃんさっきから場外に押し出そうとしてるみたいだけど、あれだけ動かれたら難しいわ…」

勇者「そうかー?とっくに狙い切り替えてると思うぜ?」

魔法使い「え?」



リア「はぁ…はぁ…」

司祭「リアンノン様。お気付きになられましたかな?我ら先程から同じことの繰り返しばかりしております」

司祭「私にはまだ余力がありますが、あなた様はそろそろ限界と見受けられる」

司祭「降参していただけませぬか」

リア(…どうしよう…)

リア(怪我させないように場外へ…なんて考えはとっくに捨てた。もう全力で司祭様の動きを止めようとしてるのに…)

リア(無理、なのかな……私はずっとあの村で神様の役目をし続けるしか……)




76: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:40:35.69 ID:rrE0Pxi10




ーーーーー

勇者「納得いかねーことがあっても簡単に屈しちゃいけねーっつー教訓を学んだわけな」ウンウン

ーーーーー



リア(……ううん)

リア「はぁ、はぁ…」フルフル

司祭「強情ですな…」

リア(私は私)

リア(村の神様で、言いなりな少女はもう…いないの!)

司祭「では再び行かせてもらいますぞ」



魔法使い「リアちゃん…!」

勇者「……」



リア「はぁ…は……」

リア「……」ギュ...





リア「"召喚"!」








77: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:41:11.86 ID:rrE0Pxi10


...ゴゴゴゴ

司祭「!」



魔法使い(ここで召喚!?)

勇者「お、この熱気は」



ブワァ!

炎精「……」ゴゴゴ

土精「……」ヌゥ

司祭「…驚きましたな」



魔法使い(同時召喚なんて、あの子なんて無茶をするのよ…!)

魔法使い(ただでさえ魔力の消費が激しい精霊術なのに、それをこんなに…)



リア「……私だって、お買い物がしたいんです」

司祭「む?」

リア「…普通の、女の子だから…!」

リア「…、……、…!」

炎精「スゥー…」

土精「」ヌン

司祭「これはいささか…!」



ゴウゥ!ドバァン!






78: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:42:02.57 ID:rrE0Pxi10


勇者「あっつ!あの時の比じゃねーなこりゃ…!」

魔法使い(こ、これが精霊たちの力…?なんて破壊力なの)

「し、司祭様!」

「まさか今のでお命が…!」



リア「はぁ…はぁ…殺してはいません…」

リア「審判さん……はぁ……土埃が晴れたら、判定を…」

審判「は、はい」



魔法使い「決まったわね。さすがにあの衝撃をいなすのは無理だわ」

勇者「…どうだろうねー」

魔法使い「またそうやって張り合う。あんたなら防げるって言うの?」

勇者「いや俺っちだったらあんな直撃コースに留まんないからさ」

勇者「でもあのじいさん魔法に長けてんだろ?ならもしかすると――」




79: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:42:29.87 ID:rrE0Pxi10






司祭「"封魔"」





ブシュー

リア「きゃっ…!」

土精「……」グラ...

炎精「……」シュゥゥ...



魔法使い「そんな…」

勇者「消えちまったな、精霊ペア」

リア母「リアン…」



司祭「お見事ですな。今のはひやっとしましたが…全魔力を防御に回す。あなた様もなさっていたことです」

司祭「精霊を2体使役するのはさぞ魔力を使うのでしょう」

司祭「おかげで、私の魔法が届きましたからな」

リア「……」

司祭「……」

(リアに近付く)

司祭「さて、もうよろしいでしょう、リアンノン様」

リア「……」






80: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:42:56.99 ID:rrE0Pxi10


魔法使い(待って…待ってよ…)



ーーーーー

リア「…一度、お買い物というのをしてみたくて…」

リア「はい…♪」

リア「世界って、まるで生きてるみたいですね。こんなに大きくて、流動的で……知らないことだらけです……!」

ーーーーー



魔法使い(これで終わりなの…?あの子の、リアちゃんの人生はこの先ずっとあの村の人たちの中で…)

魔法使い(所詮私たちは場をかき乱すだけの邪魔者にしかなれなかったの…?)

魔法使い(……そんなのダメよ!)

魔法使い「……」ザッ

ガシッ

魔法使い「!何するの勇者、離して!」

勇者「まぁ待てよ」

魔法使い「ダメなの!このままじゃリアちゃんは――!」

勇者「ちげーって。黙って最後まで見てな」

魔法使い「な、んで」

勇者「いいから」






81: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:43:28.23 ID:rrE0Pxi10


リア「……」

司祭「降参、と。あなた様の口からお聞かせ願えますかな」

リア「……」

司祭「それだけで平和な日常が返ってくるのです。災いは起こらず、民は怯えず」

司祭「リアンノン様」

リア「………」

リア(………)

リア「……司祭様……」

司祭「はい」

リア「………」

リア「ごめんなさい」

司祭「ん?」

リア「」バッ



ゴスッ!



司祭「ぶべらっ!?」



全員「!?」



ドサッ

司祭「」ピク..ピク..

リア「…諦めたくないんです」

リア「勇者さんたちが、それを教えてくれましたから」

審判「…気絶している」

審判「勝者、リアンノン!」






82: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:43:58.15 ID:rrE0Pxi10


「司祭様ー!」ドタドタ

「なんというご褒美!」

「脳震盪を起こしてるやもしれませぬ…!」

魔法使い「……」ポカン

勇者「なはは!軟弱なじいさんだなー!あんな蹴りで沈むんかい!」

勇者(ま、でも)



リア母「リアン!」ヒシッ

リア父「無事かい!?痛むところは!?」

リア「ママ、パパ…?」



勇者「綺麗な回し蹴りだったぜ」








83: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:44:45.29 ID:rrE0Pxi10

ーーーーーーー

リア母「私たちの村は魔王が滅びるよりも以前から、こうして御神体を祭り上げ、人々の心を落ち着けてきたのです」

リア「……」

勇者「ふーん。魔王なんてとっくに死んでんじゃん」

リア父「はい。ですが民衆に根付いた慣習と、心の拠り所となる存在は大きく…」

司祭「…現在まで受け継がれてきた、というわけです」テクテク

リア「あ…」

リア父「司祭様!横になられていなくてよろしいのですか?」

司祭「えぇ、心配には及びません。彼女のおかげで私の目も覚めましたから」

司祭「リアンノン様。いえリアン嬢、これまでの我らの行い、謝罪させていただきたい」

司祭「どのような言葉をかけようと、あなたに失わせた時間が戻ってこないことは承知しています。我ら村の衆で話し合いを行いました。どのような意向でも叶えて差し上げる所存です」

リア「……」

魔法使い「ほら、リアちゃん」

リア「!」

リア「えっと……痣とか、できてないですか…?思い切り蹴ってしまったので…」

司祭「…本当に、お優しい方だ。お気になさらず、手前で治療しましたゆえ」

魔法使い(結局この人は、聖属性、闇属性の魔術師だったのね)

リア「でしたら……あの……」

リア「もう一度、村で暮らしたいな……今度はみんなと一緒に、普通の女の子として……」

司祭「なんと…」

リア母「リアン…!ごめんなさい!今度はあなたを一人にはしないわ…!」

リア父「こんな愚かな親を許してくれ…!」

リア「もう、やめてよ……苦しいわ……」フフッ

魔法使い「よかったわね」

リア「はいっ」




84: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:45:32.48 ID:rrE0Pxi10


司祭「お二人もありがとうございました。あなた方がいなければ我らは一生、愚行を続けるところでした」

勇者「原始時代に逆行してたところから戻ってきたわけだ」

魔法使い「言い方」

司祭「いえ、まさしくその通りです。我らはこれより人としての第一歩を踏み出していくわけですな」

司祭「あなた方は王都に行かれるそうですね。旅の武運をお祈りしております」

リア母「私たちからもお礼を言わせてください」

リア父・母「「ありがとうございます」」ペコリ

リア「」ペコ

勇者「また変なことされそうになったらさ!さっきの蹴り、喰らわしてやれな!」

リア「あれは…!もうしない…と思います……」

魔法使い「格好よかったわよ」

魔法使い「そうそう、リアちゃん手出して」

リア「?これでいいですか…?」

魔法使い「はいどうぞ」スッ



(髪飾り)



リア「あ、これ…」

魔法使い「そ。昨日リアちゃんが見てたやつ。あの後買っちゃったのよね。リアちゃんにあげるわ」

リア「でも――」

魔法使い「でもは無し。私たちが出会った記念にさ」

魔法使い「大切にしてくれればそれでいいから」

魔法使い「ね?」

リア「………」



リア「はい!」ニコッ








85: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:45:59.38 ID:rrE0Pxi10

ーーーーーーー

大男「ぐぬぬ…」

子分A「親分…なんだかあの村の連中、仲直りしちゃったみたいっすよ?」

大男「分かっとるわい!」

子分B「ひっ」

大男「くそぅ…あんなガキにやられっぱなしなんざ腹の虫が収まらねぇ…!」

大男「よしおめぇら、投石だ!」

子分A「と、投石っすか…?」

大男「そうだ!石ぶつけて怪我させんのよ!」

子分B「親分、やめときましょうよ!アレの怒りを買っちゃいますって…!」

大男「あぁ!?俺の言うことに従えねぇってのかぁ!?」



勇者「だってあんた威厳のかけらもねーし」



三人「!?」

勇者「しっかし石投げはないんじゃないかー?お笑いにもならんぜ」

大男「誰だてめぇ」

勇者「あんたらだったんだね、リアのこと村にチクったの」

大男「誰だか訊いてんだろうが!」

勇者「へへっ、誰だと思う?」

勇者「正義のみ、か、た♪」

大男「」カチン

大男「随分舐めた野郎だなおい…」

勇者「お、やっちゃうやっちゃう?」

勇者「いいぜほら、カモン」

大男「ぶっ潰す!!」ダッ



.........








86: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:47:06.99 ID:rrE0Pxi10


(10秒後)

三人「」ボロ...

勇者「なーんだ暇つぶしにもなんねーのな」

勇者「ま、これに懲りたらリアにちょっかい出すのやめとけよー」

勇者「じゃ、俺っち夕飯だから!」



タッタッタッ...



子分A「うぅ……」

子分B「お、親分……」

大男「……職、変えるか……」








87: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:47:55.77 ID:rrE0Pxi10

ーーー翌日 町の入り口前ーーー

勇者「なー、速いよ魔法使いー」ノロノロ

魔法使い「あんたがわざとらしく遅くしてるんでしょ…!」テクテク

勇者「だって眠くてさー…」

魔法使い「だから睡眠時間ずらすなって言ったじゃない」

勇者「うーん…」

勇者「あ、ちょうどいい芝生が見える」

魔法使い「ダメよ」ガシッ

魔法使い「ほ、ほら肩くらい貸してあげるからその間に目覚ましなさいな」

勇者「なんだ?いつになく優しいなー魔法使いちゃんさー」

魔法使い「っ…!!う、うるさい!変な呼び方すんな!道に捨ててくわよ!」

勇者「いつものお前だ」



リア「勇者さん!魔法使いさん!」テッテッテッ



魔法使い「リアちゃん!」

勇者「ん?眠過ぎて夢見てるんか?」

魔法使い「現実よ」

リア「よかった、間に合った…」

魔法使い「どうしたの?そんな急いで」

リア「あの……お二人の旅、私も連れて行ってもらえませんかっ?」

魔法使い「!」

リア「ママとパパにわがまま言って、出てきたんです」

リア「私ももっと色んなものを見てみたくて。…その、お二人と…」

リア「…だ、だめでしょうか…?」




88: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:48:27.47 ID:rrE0Pxi10


魔法使い「…勇者」

勇者「おう?」

魔法使い「何か異論は?」

勇者「なーし」

リア「…!」パアァ

魔法使い「その代わり、無理は許さないからね?体調悪いと思ったらきちんと言うこと!」

リア「分かってますよ…♪」

魔法使い(表情豊かになったわね。ふふ)

勇者「そーだ!リアの風の精霊に運んでってもらおうぜ!」

勇者「いやーグッドタイミングだな、リア!俺っちのヒーローだ!」

魔法使い「調子いいんだから」

勇者「んなこと言って魔法使いもちょっと、運ばれてみたいっしょ?」

魔法使い「…ま、まぁ」

勇者「ってわけで、リアよろしく!」

リア「はい」

リア「"召喚"」



...サァァ

ビュオッ!



風精「……」フワフワ

魔法使い「…綺麗ね…」

魔法使い(美しい女性の姿……精霊ってみんな神秘的な造形をしてるのね)




89: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:49:24.98 ID:rrE0Pxi10


勇者「魔法使いよりはあるな」

魔法使い「?」

魔法使い(……………!!!)

魔法使い「なにが??」ニコッ

魔法使い「ねぇ勇者なにが???」

勇者「よし!頼んだぜ!」

リア「……、……。」

風精「」サッ...



フワァ!



魔法使い「わっ…!」

勇者「お、おおおぉ!」

勇者「すっげー!飛んでるみてーだなー!」

リア「それでは、移動しますよ」

ヒュォォ!

魔法使い「ちょ、ちょっと速くない!?きゃー!」

勇者「やっほーー!おもしれーなこれ!」

勇者「次の目的地へ進軍だ!」








90: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/25(月) 22:52:58.81 ID:rrE0Pxi10

2章は以上となります。

二人目のキャラ決めを行います。
一人目同様、安価で4つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5~100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>91~94



91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/26(火) 05:45:58.89 ID:XADYfuMQ0

キャラ名:ノック(武闘家 黒髪ツンツンで背が高く筋肉質)
性別:男
年齢:17
得意戦型:体術
備考・希望:・明るい性格で時々熱血漢なところがある。
・身体能力が高く、戦闘時はボクシングのようなスタイルをとっている。パンチの威力が高く(一撃で岩を砕くくらいの威力)、スピードも速い(高速で何百発パンチが出せる)。さらに動体視力が高く素早い相手でも目でとらえることができる。



93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/26(火) 12:04:27.42 ID:+yoY7QOgO

キャラ名:グローバ(役柄や容姿など:小柄だが筋肉質な体つきをしたスキンヘッドのじいさん。)
性別:男
年齢:65
得意戦型:体術
備考・希望:
幼女相手でもセクハラする絵に書いたようなエロジジイ。
各地を観光しながら旅をする楽隠居。
体術以外に回復と強化の魔法に優れるが使用目的もエロのため。(しかしR板じゃないし出番はないだろう)
実は家督を息子に譲り現役を退いた位の高い貴族で、本名はグロスハルト・バーランドというが気楽な隠居生活のために隠している。

もう一度チャレンジ



94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/26(火) 15:40:37.09 ID:haPh64u6O

キャラ名:アッシュ (戦士 細身で黒髪。執事服を着て、両手両足に防具をつけている。)
性別:男
年齢:20
得意戦術:剣術と魔法
備え・希望:礼儀正しく誰にでも敬語で話す。昔、ある屋敷の執事をしていたことがあり手先が器用で料理が得意。大剣を武器にし、素早く相手を切ることができる。風、雷の魔法が使えてそれを大剣に纏わせて攻撃する戦法もとれる。実はかなりの怪力でもある。

※質問だけど勇者と魔法使いは名前決めたりしないの?



96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/27(水) 01:08:27.29 ID:XJN8yvLa0

キャラ名:ベルガ(シーフ 金髪で口元が隠れている。背が高く、腰には大きめのポーチがある)
性別:男
年齢:17
得意戦術:剣術 体術
備考・希望:幼い頃に住んでいた村が賊に襲われ村が壊滅した過去がある。クールな性格。2つの短剣を逆手に持ち二刀流で戦う。さらにかなり素早く動くことができ、その速さを活かした体術も得意。ポーチの中には色んな罠が入っていて戦闘中に素早く罠を仕掛けることができる。(逆に設置している罠を解除する事も可能)



97: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/27(水) 01:20:22.57 ID:OGqkDeUe0

候補が出そろったため、>>98のコンマで決定します。

00~24:ノック
25~49:グローバ
50~74:アッシュ
75~99:ベルガ



98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/05/27(水) 07:20:13.61 ID:s/kFhZ+DO

はい



99: ◆YBa9bwlj/c 2020/05/27(水) 07:31:05.49 ID:OGqkDeUe0

コンマ61で登場キャラ二人目は

キャラ名:アッシュ (戦士 細身で黒髪。執事服を着て、両手両足に防具をつけている。)
性別:男
年齢:20
得意戦術:剣術と魔法
備え・希望:礼儀正しく誰にでも敬語で話す。昔、ある屋敷の執事をしていたことがあり手先が器用で料理が得意。大剣を武器にし、素早く相手を切ることができる。風、雷の魔法が使えてそれを大剣に纏わせて攻撃する戦法もとれる。実はかなりの怪力でもある。

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。



100: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:33:42.14 ID:NJTpmtGB0

こんな時間ですが3章投下していきます。



101: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:34:26.65 ID:NJTpmtGB0

ーーー勇者の家ーーー

勇者母「…あら?」

(勇者の使っていた木剣)

勇者母「まあ困りましたね。あの子、忘れ物をしていくなんて」

勇者母「……ふふっ」

勇者母「届けてあげましょう」








102: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:34:54.99 ID:NJTpmtGB0

ーーー寂れた集落 宿屋ーーー

無愛想な店主「はいよ。料金丁度だな」

店主「梅の間はそっちの廊下真っ直ぐ行って、突き当たり右だよ」

勇者「へーい」

魔法使い「……」

リア「…い、行きましょう?魔法使いさん」







ーーー梅の間ーーー

勇者「おー結構広いなー」

勇者「これがタタミってやつだな!こっちはショウジか!こういう部屋初めて来たけど、なんだ、オモムキがあっていいなぁ」

魔法使い「……慣れない言葉で解説どうも」

魔法使い「ねぇ。この部屋の雰囲気は私も嫌いじゃないわよ。人数制限で1部屋しか借りられないのもこの際いい」

魔法使い「…なんでこんなボロっちいのよ!?」

リア「お店の人に聞こえちゃいますよ…!」

魔法使い「むしろ聞かせていいんじゃないかしらね。壁も天井も傷だらけ。所々穴まで空いてるしそっちの床だって!」

魔法使い「これでお金取るっての…?」

勇者「なら野宿にすっか?この辺森くらいしかねーけど」

魔法使い「………」

リア「…ここに泊まるの、今日だけなんですよね?だったら色んな経験が出来て嬉しい…と、考えられませんか…?」

魔法使い「リアちゃん……前向き過ぎる…」

魔法使い(少なくとも嬉しい経験にはならないけども…)

魔法使い「分かったわ。一晩だけなら我慢する。寝具があればそれでいいわよ」








103: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:35:27.50 ID:NJTpmtGB0

ーーー夕食後ーーー

三人「……」

魔法使い「…前言、撤回しようかしら」

勇者「これは俺っちも擁護出来ないわ」

魔法使い「ここまで微妙な食事を出せるのって最早狙ってやってるんじゃないの」

リア「…きっと、あれがここの味付けなんですよ」

魔法使い「自分の心に正直になっていいのよ?」

リア「……うーん……おいしくはないです……」

魔法使い「よく言えました」ナデナデ

魔法使い「もういいわ。さっさと寝て、早く出ましょうこんなとこ」

勇者「異議なし」

リア「……」コクリ

勇者「ま、王都までのつなぎよ。ある意味修行と思えばいいんじゃねーか?」ニシッ

魔法使い「何の修行よ…」

魔法使い「というか村を出てからあんたが鍛錬してるの見たことがないわね」

勇者「ちゃんとやってんぜ?心ん中で。昨日はどういうポーズで優勝杯受け取ろうか考えてた」

魔法使い「真面目にやりなさいよ…弱くなるわよ?」

勇者「平気平気。どんな奴が相手でもちょちょっと片付けてやっから。問題なのはいかに格好良く勝つか!」

魔法使い「……リアちゃん、ちょっと風の精霊に頼んでこいつを吹き飛ばしてもらえない?」

リア「…!?」

勇者「魔法使いちゃんよーリア困らせてやんな?」ヘラヘラ

魔法使い「……」

魔法使い「はぁ、いつか痛い目みても知らないわよ」

リア「あの、勇者さんてどれくらいお強いんでしょうか…?」

勇者「そりゃもう世界で一番」

魔法使い「自称ね」

リア「…??」

魔法使い「…実際、こいつの動きが意味分かんないのは認めるけどさ」

勇者「ふふん」

リア「わぁ……ちょっと、見てみたいかもです」

勇者「おういいぜ!なんなら今――」

魔法使い「室内で暴れるのはやめなさい」

勇者「…明日な!」








104: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:35:59.52 ID:NJTpmtGB0

ーーー翌朝ーーー

魔法使い「勇者起きて」

勇者「……なんだよ。あと少し……」

魔法使い「起きてったら!」ビシッ

勇者「おぅっ!?な、なんだ!」

勇者「……そうかリアに俺っちの神速をお披露目する時間か!」

魔法使い「それは後よ」

リア「大変なんです、勇者さん」

リア「私たちさっき起きたばっかりなんですけど……」

リア「…みんなの荷物がなくなっていて…」

勇者「へ?寝相悪い魔法使いが蹴飛ばしたんじゃないの?」

魔法使い「言うに事欠いてあんたね…」

魔法使い「部屋の中全部見たのよ。どこにもなかった」

勇者「荷物って何が入ってんだっけ」

魔法使い「地図に保存食に器具諸々……でも一番はお金よ」

勇者「ふむ」

勇者「………」

勇者「やばいじゃん」

魔法使い「だからそう言ってるのよ!」








105: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:36:28.64 ID:NJTpmtGB0

ーーー宿屋 カウンターーーー

店主「荷物?知らないな。届いてもない」



ーーー集落 中央広場ーーー

住民「悪いけど、心当たりはないね。あんたらが来てたことすら初耳だよ」



ーーー長の家ーーー

長「そうですかそのようなことが…。ここの長としてお詫び申し上げます」

長「ですが、私もあなた方の持ち物については…」



.........







ーーー中央広場ーーー

魔法使い「…おかしい。誰に聞いても知らないなんて」

勇者「動物にでも持ってかれたんかね」

魔法使い「だとしたら頭の良い動物ね。誰にも気付かれず荷物だけをピンポイントで持ってくなんて」

リア「…魔法使いさん、もしかして…」

魔法使い「そうね」

魔法使い「ここの人たちの誰かが盗った、としか思えないわ」

勇者「部外者が盗みに入ったとか」

魔法使い「言っちゃ悪いけどこんな場所にわざわざ…?」

勇者「リア、時の精霊とか呼べないん?昨日の夜のこと教えてくれるような」

リア「いないですよ…時の精霊さんなんて…」

三人「うーん…」




106: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:37:14.41 ID:NJTpmtGB0




執事服の男「もし、そこのお嬢さん」



三人「!」

男「貴女が伝説の勇者様でございますか?」

リア「……わ、私…?」

男「はい」

勇者「わはは!すげーな、神様の次は伝説の勇者かい!」

リア「違います…!普通の人間ですから…!」

魔法使い(こんな男この集落にいたかしら?給仕の者が着る服、だったっけ)

魔法使い(…いえ、この奇妙な出で立ち、一度見たら忘れないわ)

魔法使い「あなた、誰なんですか?」

男「これは失礼致しました。私、アッシュと申します」

アッシュ「突然声をかけてしまった無礼、お許しください」ペコリ

魔法使い「…ここの住人じゃないですよね。何をしてたんです?」

勇者「やたらお堅い服着てんね」

アッシュ「これは一種の職業病です。と言いましても、今は職なしですが」

勇者「それ、籠手か?つーことは騎士?」

魔法使い「執事でしょ」

アッシュ「その通りでございます」

アッシュ「以前はある名家に仕えておりました。しかし私では力不足であると言い渡され、任を解かれてしまったのです」

アッシュ「以来、こうして新たな主人を探し流浪の日々を送っているのです」




107: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:37:47.35 ID:NJTpmtGB0


魔法使い「……怪しいわ」

魔法使い「こんな何もないような所に元執事って肩書きだけでも変よ。リアちゃんにおかしなこと訊いて近づいてきた…」

魔法使い「あなた、荷物泥棒じゃないでしょうね?」

アッシュ「そのようなことは一切しておりません」

アッシュ「私、新たな主人として伝説の勇者様を探し求めているのです」

勇者「魔王を倒して平和を取り戻したーってやつ?」

リア「…私も知ってます。小さい頃絵本で読み聞かせてもらいました…!」

魔法使い「……」ホッコリ

魔法使い「けどそんなのもう何百年も前の話よ」

アッシュ「私がまだ執事だった頃、噂を聞いたのです」

アッシュ「曰く、魔王を討ち滅ぼした伝説の勇者はその時より老いず、今も生きている。曰く、かの勇者は女性であると」

勇者「ほーん」

魔法使い「…初耳ね」

アッシュ「噂を知るほとんどの者が信じておりませんでしたが、どうせ次にお仕えするならば比類なき強者と謳われる英雄様にと思った次第です」



ーーーーー

「貴方では彼女を救えません」

ーーーーー



アッシュ(……)




108: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:38:57.40 ID:NJTpmtGB0


魔法使い「それで片端から女の子に声をかけてるのね?」

アッシュ「滅相もありません。お嬢さんを呼び止めたのは彼女から特別な魔力を感じたからですよ」

アッシュ「精霊術をお使いになられますね?」

リア「!」

魔法使い「…よく分かったわね」

アッシュ「精霊術師と顔を合わせる機会もあったものですから」

アッシュ「かの勇者様はあらゆる魔法を使いこなすと言います。もしや、と思いこうしてお尋ねしたのです」

勇者「その伝説になったっつー奴がどんだけ強かったか知らねーけどさ、今じゃ俺っちが人類最強だぜ!」

アッシュ「!…はは。なかなか面白い発言をなさる方ですね」

魔法使い「……」ジー

アッシュ「まだ信じてもらえませんか」

アッシュ「それではこうしましょう。先程荷物泥棒とおっしゃっていましたね、盗まれたのは貴方方のものでしょう」

アッシュ「荷物がなくなった、その場所へ案内していただけませんか?」

魔法使い「どうする気?」

アッシュ「真相を突き止めてご覧に入れましょう」








109: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:39:25.98 ID:NJTpmtGB0

ーーー宿屋 梅の間ーーー

アッシュ「こちらですか」

魔法使い「えぇ。私たちが寝る時、荷物はそこの隅に置いてあったわ」

アッシュ「……」

リア「…?あの、どうかしましたか…?」

アッシュ「いえ」

アッシュ(いけませんね。このような部屋を見ると反射的に整えたくなってしまいます)

アッシュ「どなたも触ってはいないのですよね?」

魔法使い「そうよ」

リア「はい…」

勇者「はっきり覚えてないんだよなー」

魔法使い「あんた真っ先に寝てたから関係ないわよ」

アッシュ「なるほど…」

アッシュ「………!」

スッ(何かを拾い上げる)

アッシュ(青い糸…)

魔法使い「なんか見つけたの?」

アッシュ「少し、ここの主人と話がしたいですね」








110: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:39:55.86 ID:NJTpmtGB0

ーーー宿屋 カウンターーーー

店主「ん、兄ちゃん達用は済んだかい。なら早いとこ出てってくれないかね。商売の邪魔だよ」

魔法使い(なんなのこの人昨日から…!客商売してんでしょうに!)

アッシュ「申し訳ありません。しかしご主人の妨害をするつもりはないのです」

アッシュ「この者達の所有物が紛失したことはご存知ですか?」

店主「あぁ。今朝騒いでいたからね、気の毒に」

店主「ま、うちは寝床を提供してるだけだ。失せ物は自分らで探すんだな」

魔法使い「言わせてもらいますけどね――」

スッ

アッシュ「…任せてください」ボソッ

アッシュ「ご主人つかぬことを伺いますが、青いスカーフをした人物に心当たりはありませんか」

店主「……知らねぇな」

アッシュ「そうですか、残念ですね…」



アッシュ「嘘をつかれてしまうとは」



店主「!…お前さん、出鱈目はよくないな」

アッシュ「はてさて、出鱈目はどちらでしょう?」

勇者「なぁ、スカーフってなんだ?」

アッシュ「首に巻く装飾用の布のことですよ。最近王都で流行りだしたものです。特に女性に人気がありましてね、そちらのお二人も似合うかもしれませんね」

魔法使い「見たことがないからなんとも言えないわね…」

リア「スカーフ……どんなのなんだろう…」ウズウズ

アッシュ「…とまあ、王都の外ではまだほとんど馴染みがないものでして」

アッシュ「中でも青のスカーフはとある盗賊団が好んで着ける代物なのです」

店主「っ…」

アッシュ「さてご主人、改めてお訊きします」

アッシュ「何故このような地に居ながら、青いスカーフのことを知っていたのか…」

アッシュ「説明していただけますね?」ニコッ








111: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:40:22.32 ID:NJTpmtGB0

ーーー外れの森ーーー

盗賊「はっ。寝てる旅人の荷物かっぱらうなんざつまんねぇ仕事だぜ」

盗賊「昔みたいになぁ、もっとハラハラする盗みを働きてぇよなぁ…。これじゃコソ泥だ」

盗賊「楽なのはいいけどよぉ…」



ガサ



盗賊「!」

アッシュ「ここに居ることは分かっていますよ。大人しく出てくることです、荷物泥棒さん」

盗賊「……」

盗賊(なんだ…?なんでここがバレた?こんな知らなきゃ来ねぇような森ん中…)

盗賊(…さては吐きやがったな村の連中…!)








112: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:40:49.39 ID:NJTpmtGB0


勇者「出てこねーな」

魔法使い「本当にこんな所にいるのかしら…」

アッシュ「あのご主人の様子からして嘘は言っていないでしょう」

アッシュ「…出てきていただけないのならやむを得ませんね」

アッシュ「"突風"」

ビュオッ

魔法使い「!」

リア「きゃっ…!」

勇者「おっと」グイ

リア「あ、ありがとうございます…」

盗賊「くっそ、魔術師かよ…!」サッ

アッシュ「止まれ!」

盗賊「」ヒュッヒュッ

魔法使い(ナイフ!?)

魔法使い「危ない!」

魔法使い(間に合え、"小火――)



カァン!



アッシュ「……」

勇者「おぉ?」

魔法使い(大きな剣…)

盗賊「ちっ!」

リア「逃げていきます…!」

アッシュ「"通雷"」

バチッ!

盗賊「ぐぁ!?」

ドサッ...

アッシュ「これでよいでしょう」

魔法使い(風に、雷…)

勇者「……」

アッシュ「では参りましょうか」

魔法使い「どこへ…?」

アッシュ「この方を連れて長の元へ行くのですよ」








113: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:41:29.76 ID:NJTpmtGB0

ーーー長の家ーーー

長「そ、そのような者、我々の知るところでは…」

盗賊「ざけんなよおめぇ、オレら売って自分だけ助かろうって腹か!?」

アッシュ「こうおっしゃってますが?」

長「ぬぅ…」



魔法使い「彼、驚くほど手際がいいわね」

勇者「あぁ…」

魔法使い「しっかし村と盗賊がグルだったなんてね。とんでもない話もあったものよ」

魔法使い「リアちゃんどう?私物でなくなってるものはない?」

リア「……はい」ガサゴソ

リア「平気です。私の大切なものは、いつも身につけてますから…」

(頭の髪飾り)

魔法使い「それ、私があげたやつ…?」

リア「…♪」

魔法使い「リアちゃん!」ギュー

勇者「あいつ、でかい木剣振り回してたな」

魔法使い「そうね。魔法にも心得があるみたいだし」

魔法使い「自分のこと執事だって言ってたけど、只者じゃないわよね…」






114: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:41:57.22 ID:NJTpmtGB0


アッシュ「皆様お待たせ致しました。盗まれた物に不足はありませんか?」

魔法使い「問題ないわ」

アッシュ「こちらも話が付きましたよ。この盗人は私が王都まで送り届けます。村の処遇については、王都の治安維持所にお任せしましょう」

魔法使い「あら、じゃあ私たちと同じね」

アッシュ「と申しますと?」

魔法使い「私たちも王都に行く途中なのよ。こいつ、勇者が闘技大会に出るから」

アッシュ(…!)

魔法使い「名乗るのが遅れたわね。私は魔法使い、この子はリアちゃんよ」

リア「リアンノン…ですが、みなさんリアと呼んでくれます…」

アッシュ「そう、でしたか。闘技大会に」

アッシュ「では勇者様も優勝を目指しておいでで?」

勇者「あたぼうよ」

アッシュ(……)

勇者「どうかしたんか?」

アッシュ「いえ」

アッシュ「であれば道中、貴方方にお供させていただいてもよろしいですか?私一人ではこやつの面倒を見るのも一手間でして」

盗賊「……」ムスッ

魔法使い「私は構わないわよ。アッシュさんの出生にも興味があるし」

アッシュ「これは…口説かれてしまいましたかね」ハハ

リア「…魔法使いさんに同じです…」

勇者「……」

勇者「ま、いいんじゃねーの。けどそいつの世話係はあんただかんな?」

アッシュ「心得ていますよ」ニコッ

勇者「うし、こんな村さっさと出ちまおうぜ」








115: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:42:25.59 ID:NJTpmtGB0

ーーーーーーー

五人「……」ザッザッ

魔法使い「大分大所帯になっちゃったわね」

勇者「そうだなー」

アッシュ「ご安心ください。貴方方の邪魔は決して致しませんので」

リア「わ、私も…」

魔法使い「いいのいいの。そういう堅苦しいのは無しにして。ムズムズしちゃうから」

盗賊(隙をついて絶対逃げ出してやる)

アッシュ「言っておきますが」

盗賊「」ビクッ

アッシュ「私から逃げようなどと思わぬように。変な気を起こせば半身麻痺の状態で王都の門をくぐることになりますよ」ニコッ

盗賊「……ケッ」

勇者「なー、んなことよりさ、リアの力使って移動しちゃダメなん?」

リア「…出来なくはないですが…でも…」チラッ

盗賊「あ?」

リア「」ササッ(魔法使いの影に隠れる)

魔法使い「あんた、焼かれたいの?」

盗賊「……」

アッシュ「彼が何をするか分からない以上、申し訳ないですが徒歩でお願いします」

魔法使い「…いいじゃないの。人間には足があるのよ?地に足つけて歩きましょ」

勇者「自分が怖いからって」

魔法使い「ん??」ニコッ

勇者「へーへー」




116: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:42:54.44 ID:NJTpmtGB0


アッシュ「仲がよろしいのですね、お二人は」

魔法使い「ど、どこが!?」

リア「…ふふ」

魔法使い「リーアーちゃん?」

リア「!…」ワタワタ

勇者「せめて飯にしようぜー」

勇者「昨日からまともなもん食ってねーし。今何が残ってたっけ?」

魔法使い「保存食。…干し肉くらい?」

勇者「うげー…」

アッシュ「食にお困りですか」

魔法使い「え?」

アッシュ「……」ニコニコ



.........








117: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:43:21.98 ID:NJTpmtGB0


魔法使い「」パクッ

魔法使い「…!美味しい!!」

リア「~~!」

勇者「」ガツガツ

アッシュ「お口に合ったようで何よりですね」

盗賊「……」

アッシュ「貴方も如何です?」

盗賊「おめぇの施しなんか受けねぇ」

アッシュ「それはそれは」ハム

盗賊「……」ゴクリ

魔法使い「すごいわね…普通あんな食材からここまでの料理が出てくる…?」

アッシュ「調理は執事の嗜みですよ」



ーーーーー

「アッシュの作る食事は美味だな。私は好きだぞ」

ーーーーー



魔法使い「…弟子入りしようかしら」

魔法使い「そうよ勇者、この人よ!」

勇者「?」

魔法使い「王都までの間、アッシュさんに稽古つけてもらえばいいじゃない!」

魔法使い「料理は上手い、頼りになるしあの身のこなしも、きっと相当の実力者よ」

アッシュ「とんでもない、私など…」

勇者「はんっ、不要だっての。どこの誰がきたとこで圧勝よ。これ以上強くなったら勝負にならなくてつまんねーぜ」

アッシュ「……」




118: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:43:52.35 ID:NJTpmtGB0


魔法使い「どうしたらそこまで自信家になれんのかしらね」

勇者「事実だかんなー」

アッシュ「時に勇者様」

アッシュ「王都の闘技大会にて、ここ数年優勝を独占している方をご存知でしょうか?」

勇者「んーにゃ?俺っち王都行くのも初めてだし」

アッシュ「その方は姫騎士様と言います」

アッシュ「類稀なる剣の才を持ち、その斬撃は風より疾く、剣を用いた防御には網目ほどの隙もない」

アッシュ「多くの猛者が集う闘技大会で文字通り剣一本で勝ち上がってきた――」

アッシュ「――本物」

アッシュ「彼女の強さがどれほどのものか、その助言くらいはして差し上げられますよ」

魔法使い「ほら。あの村にずっといた私たちなんて井の中の蛙よ。あんたのお母さんも言ってたじゃない、色んな戦術を知るべきだって」

勇者「しつこいな!誰も助けてくれなんて頼んでねーじゃん」

アッシュ「……」



ーーーーー

「貴方では彼女を救えません」

「今日限りでお付きを辞めていただきます」

ーーーーー



勇者(俺っちが興味あんのは優勝賞品の…美女ちゃんだけだもんね)ニヤニヤ

魔法使い「いい加減にしなさいよ。油断して私から一撃もらったのはどこの誰だった?」

勇者「あんなん気ぃ付けりゃ済むことだろ」

魔法使い「負けて泣きを見てからじゃ遅いのよ」

勇者「気張ってりゃ不意なんか突かれんから心配ご無用」

魔法使い「あーもう!こういう時に意地になるんだから!」

リア「あ、あの、喧嘩は…」




119: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:44:19.99 ID:NJTpmtGB0


アッシュ(強さ、ですか)

アッシュ(あるいは私があの方を凌ぐ強さを持っていれば…)

魔法使い「じゃあいいわ、こうしましょう。あんたお得意の闘技で決着をつけるのよ」

勇者「はぁ?お前じゃ負けんぜ。今度は特別ルールは無しだ」

魔法使い「私じゃないわ。勇者とアッシュさんにやってもらうの」

魔法使い「アッシュさんが勝ったら大人しく稽古をつけてもらいなさい!」

勇者「俺が勝ったら?」

魔法使い「……あんたに口うるさく言うのをやめる」

勇者「誰が得すんだよその勝負」ヘッ

勇者「勝手に赤の他人まで巻き込んでよー」

魔法使い「う……」

魔法使い「…ごめんなさい、アッシュさん。でもあいつの慢心癖を叩き直してやりたいんです」

魔法使い「このままだとあいつは、今に胡座をかき続けた挙句そのうち手酷い痛手を受ける…そんな気がして…」

魔法使い「お願い出来ないかしら…?」

アッシュ「………」

アッシュ「良いですよ」ニコッ

魔法使い「ありがとうっ!」

アッシュ「私もそれほど豪語する勇者様のお力、気になって参りましたので」

勇者「えー…断っておくれよ。疲れるだけだって」

アッシュ「それは分かりませんよ」

アッシュ「これでも名家の使用人として仕えていた身。退屈はさせないでしょう」

勇者「……まぁ丁度いいか。リア、俺っちの華麗な動き見せてやんぜ」








120: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:44:52.01 ID:NJTpmtGB0

ーーーーーーー

勇者「お前が審判って、本当に大丈夫なんだろうな?」

魔法使い「失礼ね!判定くらい出来るわよ」

勇者「この石並べてんのが場外の線だかんな?間違えるなよー?」

魔法使い「分かってますー!」

魔法使い「…ったく」

リア「……」ニコニコ

魔法使い「なに?リアちゃん」

リア「いいえ」

リア(仲良いなぁ)

リア「魔法使いさん、アッシュさんて勇者さんより強いんですか?」

魔法使い「さぁ…。私としてはそうであって欲しいけどね。あいつの傲りも少しは治るでしょ」

アッシュ「……」トン、トン

バッ(木剣を薙ぐ)

魔法使い「…大きい剣ね」

リア「はい」

魔法使い「闘技に使える規格としては最大のサイズなんじゃないかしらね。勇者の持ってる標準型がおもちゃに見えてくるわ…」

魔法使い「それをあんなに軽く振れるってことは」

リア「…アッシュさん、かなり力持ち…?」

勇者「アッくんよー」

勇者「そんなデカブツ持ってたら簡単に懐入られて終了だぜ?」

アッシュ「ふふ、そうですね。肝に銘じておきます」

魔法使い(…読めないわね、あの人の感情)

魔法使い(勇者の方はこれでもかってくらい主張してくるのに、アッシュさんはさっきと全然変わらない)

魔法使い(闘技の前って多かれ少なかれ雰囲気が変わるものと思ってたけど、案外そうでもないのかしら)




121: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:45:19.45 ID:NJTpmtGB0


魔法使い「始めるわよ」

勇者「いつでもどーぞ」

アッシュ「準備出来ています」

魔法使い「…両者前へ!」



ーーーーー

「また勝つことが出来たよ。アッシュのおかげだ」

「次は何を教えてくれる?」

ーーーーー



アッシュ(……)

魔法使い「始めっ!」

勇者「」スタタタッ!

勇者(執事だかなんだか知らんけど、速攻決めさせてもらうぜ!)

勇者「そらよ!」



ガィン!



勇者(止められた…!)

アッシュ「見事な肉薄ですね」

アッシュ「しかし」ググ...

勇者「う、ぉ…!」

パッ(距離を取る)

勇者(…すげー怪力だなこいつ)






122: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:45:46.67 ID:NJTpmtGB0


リア「わ、速いですね勇者さん…!目で追うのがやっとです」

魔法使い「あいつの身体能力は異常よ。ジャンプ力なんか動物並みだもの」

魔法使い(けどその勇者の初撃をアッシュさんは軽く防いだ)

魔法使い「これはもしかしたら、もしかするわね」

盗賊(in 石の檻)「……」



勇者(数秒で片付く相手じゃねーな)

アッシュ「お次は私の番、でよろしいですかな?」

...タッタッタッ

勇者(おいおいジョギングかよこの遅さ。おまけに)

アッシュ「」ズオッ

勇者(動きは真っ直ぐ、太刀筋も大味。こんなんちょちょっとかわしてカウンターで――)

バシン!

勇者「!?」

勇者(弾かれた!?マジかよ!?)

アッシュ「まだまだ行きますよ!」ブン!

勇者「くっ…!」

ガン! ガン、バシッ!

サッ

ガィン!

勇者(なんて馬鹿力だ。いなしきれねー…!大して速くもないのにリズム狂わされてうまく立て直せん)

勇者(木剣が立てる音じゃねーぜこんなん…!)

アッシュ「どうしました?貴方のお力はこの程度なのですか?」

勇者「へっ、ゴリラ野郎め…!」






123: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:46:13.35 ID:NJTpmtGB0


リア「なんだかすごい気迫ですね…」

魔法使い「あの勇者が防戦一方なんてね」

盗賊「な、なんだこいつら…」

魔法使い「あんた闘技見るのは初めて?」

盗賊「初めてじゃねぇがよ…この国はあんな化けもんじみた奴がゴロゴロいんのかよ…」

魔法使い「国がどうだかは知らないけど、あの二人を並と捉えない方がいいわよ」



ガン!

勇者(っ、腕が攣りそうだ。だが動き自体は見える)

アッシュ「」ブォン

勇者(右上段斬り)

ガキッ

アッシュ「ふ!」

勇者(左上段斬り)

勇者(に見せかけたフェイントだろ?だったら――)

サッ

アッシュ「!」

勇者「っらぁ!」

ゴスッ

アッシュ「っ」

勇者「おー、肩殴ったのは間違いだったかね。筋肉の感触しかしねー」

勇者「どうよ。俺っち、剣だけの男じゃねーんだなこれが」

アッシュ「…目が良いようですね」

勇者「こっからはこっちのペースでいかせてもらうかんな?」

ダッ






124: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:46:49.22 ID:NJTpmtGB0


リア「……」ジー

魔法使い「あっという間に形勢が逆転したわね…」

魔法使い(アッシュさんの反応速度も凄まじいけど、勇者のそれは一回り上)

魔法使い(力押しをさせない立ち回りが有効だなんて、分かったとしてもそうそう簡単には出来ないわよ普通)



勇者「」シュン

アッシュ「…!」サッ

ビュオッ

アッシュ(避けられない!)

ガスッ

アッシュ「っ…」

アッシュ(これは想像以上ですね…!)

アッシュ(執事を辞めてからも自己研鑽を欠かしたことはなかったのですが)

アッシュ(凡人の努力ではどうにも出来ない壁…この方には間違いなく才能がある)



ーーーーー

「聞いてくれアッシュ!私には才能があるらしい!」

「今日から君が、娘の稽古を付けてやってくれ。儂ではもう限界だ」

「えへへ、よろしく頼む!」ニコッ

ーーーーー



アッシュ(…羨ましい限りですね)フッ

勇者「笑っていられるたぁ余裕だな!」

アッシュ「!」

勇者「そろそろ重たいのいくぜ」スサッ

アッシュ(――ですが)

アッシュ(努力が才能を超える瞬間も存在するのです…!)

アッシュ「"旋風"!」

ゴワァ!

勇者「っ!」

アッシュ「はっ!」ブォン!

勇者「やべ…!」

ガキン!

勇者「~~!いってぇ!」






125: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:47:23.97 ID:NJTpmtGB0


魔法使い「大丈夫リアちゃん!?飛ばされなかった?」

リア「な、なんとか…。嵐みたいな風でした…」

魔法使い「森で見せてくれた突風の上位魔法、旋風ね」

魔法使い「あれだけ剣を扱える上に魔法のレベルも高い」

魔法使い「彼、どれだけの鍛錬をしてきたのかしら」



勇者「…くはは、おもしれーな。剣と魔法で戦うなんざ曲芸でもすんのかって思ってたけど、ものは使いようなんだな」

アッシュ「私の魔法なんて本職に比べてしまえばチープな代物ですよ」

アッシュ(そう。剣の伸び代に限界を感じた凡人が、無駄と知りつつ手を出した付け焼き刃)

勇者「まぁ相手が悪かったね。俺っちの周り、何故か魔法を使うやつには事欠かないかんよ。戦い方はバッチリよ」

アッシュ「ふふ、では試させていただきましょうか!」

アッシュ「"通雷"!」

バチッ

勇者「よっと」ヒョイ

アッシュ「"風刃"」

勇者「ほい」サッ

アッシュ「"電閃"」

勇者「!」ヒラッ

勇者「あぶねーあぶねー」

勇者「飛び道具だけじゃ俺っちは仕留められ――!」

アッシュ「」ブン

勇者「おぅ…!」サッ

勇者(間一髪…!魔法に気取られてる間に近づいてきやがった!)

アッシュ「よそ見は危険ですよ」

勇者「言われなくて、も!」スッ..

アッシュ(足払い…!)

勇者「」ズオッ!

アッシュ(蹴り上げ!?狙いは剣ですか!)

ガッ!

アッシュ「ぐっ…」

勇者「はたき落とすつもりだったんだけど、さすがに耐えるねー」

アッシュ「握力には自信がありますからね」

勇者「へん、マジ筋肉お化けだな」






126: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:47:54.07 ID:NJTpmtGB0


盗賊「……」アングリ

リア「接近戦が強い人の闘技って、こんなに目が回るんですね…」

魔法使い「しかもアッシュさんが放つ魔法も速いものばっかり」

リア「はい…驚きです」

魔法使い「精霊術の方がよっぽど驚きよ?」

盗賊(この檻も精霊術とかいうやつだったな)

盗賊(……こいつらもしかしてやばい奴らなんじゃ…?)

リア「でも、見てて楽しいです。闘技を楽しく感じるなんてあり得ないと思ってました」

魔法使い「そうね…」



勇者「」ダッ

アッシュ「"旋風"!」タッタッ



魔法使い「あの二人が楽しそうだしね」


.........








127: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:48:25.43 ID:NJTpmtGB0


アッシュ「は…は…」

勇者「ふー…」

勇者「大分息が上がってるようですなー旦那?」

アッシュ「そちらは、まだまだお元気そうですね」

勇者「明日筋肉痛になりそうだけどな」ヘヘッ

勇者「アッくんの癖も分かってきたし、そろそろ決着といこうかね」

勇者「俺っちみたいに動けるわけでもないのに、おっそろしい怪力と大した反射神経、それと魔法でよくここまで戦えるもんだ」

勇者「敬意を表して全力で決めてやんぜ」ジリ...

アッシュ(全力…きっとまともに構えてるだけでは呆気なくやられてしまうでしょう)

アッシュ(驚くべきことに、彼はこの闘技の中で絶えず強さを増している。そして全力の特攻となればこれはもう未知数)

アッシュ(……疲弊が激しいのであまり使いたくはありませんでしたが……)

アッシュ(やりますか)

勇者「行くぜ!」

ダァン!(地を蹴る)

アッシュ(相手がこの方でなければ、恐らく私はここで投了していた。自分自身の勝ち負けなど気にかけもしなかった)

アッシュ(しかし、才能の塊のような貴方と戦っていると…思い出すのですよ)



ーーーーー

「アッシュは教え方が上手いからすぐに飲み込めるんだ!」

ーーーーー



アッシュ(かつて私の主人であり弟子であった、あの方を)

アッシュ「……」スッ

...ヒュオオ






128: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:48:51.96 ID:NJTpmtGB0


魔法使い「風の魔法?今の勇者にはもう当たらないんじゃ…」



アッシュ(剣の才能は無く、体術が得意ということもない。せめてもの足掻きとして身につけた魔法は、従来の戦い方を向上させるものではなかった)

アッシュ(なればこそ、自身の弱点を補えるよう私が無理矢理編み出したのです)

アッシュ(それが)



魔法使い「違う…魔力が剣に集まってる…?」



シュタッ

勇者(ここなら大剣の死角)

勇者(もらった!)

アッシュ「――はあ!!」ギュオッ

ゴパァアア!

勇者「!?」

グルグルグルッ

ドスン...






129: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:49:18.54 ID:NJTpmtGB0


リア「勇者さんが吹き飛ばされちゃいました…!」

魔法使い「何よあれ…」

魔法使い(風の魔力を剣に纏わせてから薙ぎ払った。そういうことよね…?)

魔法使い(あの量の魔力なんて相当"重い"はずなのに)

魔法使い「…なんてめちゃくちゃな戦い方をするのよ」



勇者「いてて…ぺっ、ぺっ」

勇者「油断したわ、まだそんな技が使えたんか」

アッシュ「いやはや今のを受けてまだ立てるのですか。場外を狙うべきでしたね」

勇者「伊達に最強名乗ってないからな!」

アッシュ「…心底、頼もしい方です」

アッシュ「今のは魔法剣とでも呼びましょうか」

アッシュ「奥の手は最後まで取っておくものですよ」ニコッ

勇者「それがあんたの奥義ってわけだ」



リア「魔法を、体の力で飛ばしたんですか…?」

魔法使い「えぇ。そうすることで濃密な魔力を爆発的に放出させた……あんなの巨大な岩を投げるようなものだわ。普通なら腕を動かすことさえままならないはずよ」






130: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:49:56.58 ID:NJTpmtGB0


勇者「あんた、なかなか強いね」

アッシュ「貴方こそ」

アッシュ(とはいえ、先の戦いで消耗した上に今の攻撃に残る力の半分程をつぎ込んでしまいました)

アッシュ「……うん」

アッシュ「勇者様、最後の勝負といきませんか?」

勇者「んー?」

アッシュ「今から私が魔法剣による一撃を繰り出します」

アッシュ「勇者様がこれに耐えきることが出来れば、私は降参致しましょう」

勇者「魔法剣?俺っち今さっきのやつ耐えちゃったぜ?」

アッシュ「より強力なものです」

アッシュ「今の私が出せる全力。いずれにしろこれが通用しなければ私は負けたも同然ですから」

勇者「……」

勇者「やってやろうじゃん」ニッ



魔法使い「次で決まるみたいね」

リア「……」ドキドキ

盗賊「……」ビクビク






131: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:50:36.47 ID:NJTpmtGB0


アッシュ「いざ」スッ

...バチ、バチバチ

勇者(なるほどね、雷か)

アッシュ「……」グ...

アッシュ(才能を持つ者よ)

アッシュ(凡人の足掻きとは、どこまで通じるものか)

アッシュ(この私に教えてください!)



ビュオッ――



ズガァン!

バチバチバチバチ!



リア「やっ…!」

魔法使い(ち、直視できない…!)






132: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:51:03.00 ID:NJTpmtGB0


勇者(来た来た来た…!)

サッ

勇者(速ぇくせに)

クルッ

勇者(なんて濃さだ)

ヒョイ

勇者(脳が焼けそうなくらい集中してんのが分かる)

スサッ!

勇者(だがまずいな)

シュン

勇者(このままじゃいずれ俺の方に来た雷撃に当たる)

タタタッ

勇者(その前になんとか)

――バチバチッ!

勇者(――!)

勇者「」バッ



ドゴォォン



...パラパラ






133: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:51:28.28 ID:NJTpmtGB0


魔法使い「!……どうなったの…?」

リア「……あ」



アッシュ「……」

アッシュ「ふ」

勇者「……へへ」

アッシュ「お見事です、勇者様」

アッシュ「確かに捉えたと思ったのですがね」

(焼け焦げた勇者の木剣)

アッシュ「まさか剣を避雷針代わりに使うとは予想外でした」

アッシュ「私の負けです」



魔法使い「……」

リア「わー……」

盗賊「……」

魔法使い(…!)

魔法使い「勝者、勇者!」








134: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:51:55.21 ID:NJTpmtGB0

ーーー道中ーーー

勇者「ふぃー。よかったよかった。無事勝利を収めたから稽古は無しだ」

勇者「これで鍛えろ鍛えろってしつこい声も無くなるな!」

魔法使い「ぐぬぬ…」

アッシュ「私が至らないばかりに、すみません魔法使い様」

魔法使い「アッシュさんはこれっぽっちも悪くないわよ!私と勇者が意地張ってただけだから」

リア「勇者さん勇者さん!私ずっとびっくりしっぱなしで…!ママに読み聞かせてもらった伝説の勇者様みたいでした…!」

勇者「そうだろー!多分そいつより俺っちの方が強ぇんじゃねーかな!わはは!」

魔法使い「はぁ、もう勝手に言ってなさい」

アッシュ「…その通り今でも十分にお強いです」

勇者「当然」

アッシュ「ですが勇者様。貴方はまだまだ強くなれますよ」

アッシュ「貴方がそれを望むなら…」

勇者「いーっていーって。言ったろ?これ以上強くなっても仕方ねーって」

アッシュ「そうですか」

盗賊(…せめてこいつらに連行されたくない。怖い)

勇者「それよりアッくん。きみの夕食、楽しみにしているからね?」

アッシュ「ふ。お任せあれ」

アッシュ(久方振りの王都への帰還。もしかしたらこれは私に与えられた必然なのかもしれません)

アッシュ(勇者様であれば、あの方を――)








135: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 04:58:14.16 ID:NJTpmtGB0

ーーーーーーー

姫騎士「」ビュン!

ズバッ

「くっ!」

侍女「勝負あり。これにて10人続けての3秒試合、達成です」

王「やっておるな、姫騎士よ」

姫騎士「お父様、来ていたのですか」

王「愛娘の様子を見に来るのも大事な勤めだからな」

王「ふむ…この調子であれば訓練の内容を引き上げてもよいかもしれぬな」

侍女「かしこまりました」

王「次の闘技大会も期待しておる」

王「必ず優勝するのだぞ」

姫騎士「勿論です、お父様」

侍女「……」








136: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 05:00:07.61 ID:NJTpmtGB0

3章は以上となります。

戦闘描写は難しいですね…。



137: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 05:02:54.87 ID:NJTpmtGB0

三人目のキャラ決めを行います。
前回同様、安価で4つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5~100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



※三人目は勇者たちに同行はしませんが、物語上重要な立ち位置となります。強キャラであると嬉しかったりします。

あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>138~>>141



138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/04(木) 07:17:12.23 ID:wRsV+sO5O

キャラ名:グローバ(役柄や容姿など:小柄だが筋肉質な体つきをしたスキンヘッドのじいさん。)
性別:男
年齢:65
得意戦型:体術
備考・希望:
幼女相手でもセクハラする絵に書いたようなエロジジイ。
各地を観光しながら旅をする楽隠居。
体術以外に回復と強化の魔法に優れるが使用目的もエロのため。(しかしR板じゃないし出番はないだろう)
実は家督を息子に譲り現役を退いた位の高い貴族で、本名はグロスハルト・バーランドというが気楽な隠居生活のために隠している。



139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/04(木) 10:30:21.39 ID:PJ5gLEhj0

キャラ名:ディーター(役柄や容姿など:格闘家、背が高く筋骨隆々で仮面で顔が見えない)
性別:男
年齢:30
得意戦型:体術・魔法(土)
備考・希望:
修行で様々な場所を転々とする山岳民族の格闘家
口はすこぶる悪いが竹を割ったような性格の好青年
仮面を付けているのは後ろめたい理由はなくただ単に地元の風習なだけ
洗練された格闘術と地面を操る魔法で闘う実力派



140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/04(木) 11:36:47.47 ID:jecW2vhiO

キャラ名:マオ
元魔王 銀髪ロング幼女
性別:女
年齢:9
得意戦型:魔術
備考・希望:転生した魔王 転生前から弱くなってるけど人間と比べたら強い
やたらとやかましくトラブルメーカー
人間に倒されたがとくに恨みの感情はない



141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/04(木) 17:03:48.15 ID:4vzedyrs0

キャラ名:タイタス(役柄や容姿など 白髭を蓄えた老人・片方の腕は無くなっている)
性別:男
年齢:自称80
得意戦型:剣術
備考・希望:数百年前に魔王を倒した際の勇者一行のメンバーの一人 最後の決戦の時に不死の呪いをかけられた(不老の呪いは掛けられなかったため老人の姿になっている)




142: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 17:35:27.83 ID:VFinfM5d0

候補が出そろったため、>>143のコンマで決定します。

00~24:グローバ
25~49:ディーター
50~74:マオ
75~99:タイタス



143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/04(木) 17:42:53.00 ID:jecW2vhiO





144: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/04(木) 17:50:03.42 ID:VFinfM5d0

コンマ00で登場キャラ三人目は

キャラ名:グローバ(役柄や容姿など:小柄だが筋肉質な体つきをしたスキンヘッドのじいさん。)
性別:男
年齢:65
得意戦型:体術
備考・希望:
幼女相手でもセクハラする絵に書いたようなエロジジイ。
各地を観光しながら旅をする楽隠居。
体術以外に回復と強化の魔法に優れるが使用目的もエロのため。(しかしR板じゃないし出番はないだろう)
実は家督を息子に譲り現役を退いた位の高い貴族で、本名はグロスハルト・バーランドというが気楽な隠居生活のために隠している。

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。

キャラ募集を安価でやると面白いキャラのアイデアがいっぱい出てくるなーと感動してます。



145: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:16:08.32 ID:fTPqAKyp0

4章投下していきます。



146: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:16:59.61 ID:fTPqAKyp0

ーーー娯楽街ーーー

勇者「おー!すっげ、どこもかしこもキラキラしてんなー!」

魔法使い「ここは国内でも屈指の遊技場らしいわよ。夜中でも電気を点けてるから暗くならないとか。別名眠らない町」

リア「……!」キラキラ

アッシュ「以前よりも施設が増えてますね。悪事の温床になってなければいいのですが」チラッ

盗賊「な、なんでオレを見んだよ」

魔法使い「アッシュさんは来たことがあるんだ?」

アッシュ「えぇ。遊技に勤しんでいたのではないですけどね」

魔法使い(昔仕えてた人の付き添い?)

アッシュ「ともかく、ここまで来れば王都も近いですよ」

魔法使い「そうなの?まだ徒歩で2日はかかりそうな距離じゃなかったかしら」

アッシュ「この町からは王都への往来を盛んにするための輸送馬車が通ってるんですよ。それを使えば半日もかかりません」

魔法使い「ならさっさと向かっちゃいましょ。今行けば深夜になる前には着くでしょ」

勇者「何言ってんだ、遊ぶぜ。こんな楽しそうな場所見過ごす理由がねーよなぁ」

魔法使い「却下よ」

勇者「なんでだよ。こんなん絶対おもしれーじゃん。これも一つの観光だって」

魔法使い「アッシュさんも言ってたでしょ、どんな悪事が潜んでるか分かんないわ」

勇者「王都のお膝元だろ?そうそうねーっしょ」

魔法使い「それはまぁ…」

魔法使い(…苦手なのよ、こういうところ)




147: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:17:30.03 ID:fTPqAKyp0


魔法使い「…り、リアちゃんだって嫌よね?こんな不健全な」

リア「」キラキラ

魔法使い(あ、ものすごい乗り気)

勇者「しゃーない。魔法使いは行きたくないみたいだし、リア、俺らだけで行くか」

リア「行きたいです!…けど」

魔法使い「分かった分かったわよ。私も付いてくわ」

魔法使い「言っとくけど私は遊ばないからね?勇者だけじゃ心配だから行くだけで…」

アッシュ「では私はこの者と今日の宿を探して参りますよ」

盗賊「は?宿探しだ?」

アッシュ「何か不服でも?」ニコッ

盗賊「ねぇっす…」

勇者「よーし!レッツゴーついてこいリア!」タッタッタッ

リア「はいっ」テテテッ

魔法使い「あ!待ちなさいよ!」タッタッタッ








148: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:18:02.93 ID:fTPqAKyp0

ーーースロットエリアーーー

勇者「これが世に聞く金量産マシンか!」

リア「ぐるぐる回ってます…!」

魔法使い「どこの世よ。金食いマシンの間違いでしょ」

勇者「絵柄揃えてやるだけで金が出てくんだろ?負ける要素がねーぜ」

魔法使い「簡単に勝てるならみんなやってるわよ」

勇者「ま、見てろって」チャリン

グルグルグル

勇者「……」ジー

勇者「てい、よ、はっ」ビシ、ビシ、ビシッ

スロット『チェリー チェリー チェリー』

勇者「どんなもんよ」ドヤ

リア「すごいです勇者さん!」パチパチ

勇者「俺っちの動体視力舐めてもらっちゃあ困るぜぃ」

魔法使い「…ひどい有効活用を見たわ」

リア「あれ見てください。数字の7を揃えるのが一番いいらしいですよ…!」

勇者「7だな?任しとけ」チャリン

グルグルグル

勇者(7は一列に一つしかないから難易度たけーってことか)

勇者(俺っちにゃ関係ねーけどな!)

勇者「ふっ、はっ」ビシ、ビシ

勇者「とりゃ!」ビシッ

ヒョイッ

スロット『7 7 BAR』

勇者「あ!?今こいつ明らかに押した後にずれやがった!」

リア「私にも見えました…誰かの魔法でしょうか…?」

勇者「どこのどいつだ!俺っちの当たりを邪魔したんは!?」

魔法使い「あんたたちねぇ…」








149: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:18:52.78 ID:fTPqAKyp0

ーーーテーブルゲームエリアーーー

客「それだ!そのカードだよ、表にしてくれ」

女ディーラー「…ふふ、勘がいいですねお客さん」

スッ...

客「なぁにぃ!?」

女ディーラー「また私の勝ちです」ニコッ

ガヤガヤ



勇者「あいつら何してるんだ?」

魔法使い「カードを使った賭けゲームね。テーブルごとにやってるゲームは違うみたいだけど」

勇者「店員を倒せばいいんか。機械よりは楽そうじゃん」

リア「スロットさんはずるばっかりでしたもんね…」

魔法使い(そういう仕組みなんでしょうに)

勇者「そっちの席空いてるみたいだぜ」



.........





ディーラー「ではルール説明に入ります」

ディーラー「今私の手元にあるのは1から13までの数字が4種類の絵柄ごとに書かれた計52枚のカードです。このゲームで使用するのはここからランダムに選ばれた26枚。それを私と対戦者で13枚ずつ手札とします」

ディーラー「ゲームが始まったら1枚ずつ交互に手札の中からカードを裏向きにして置いていきます。最初は1のカードを、その後は2、3と順番に置いていく必要があります。また、自分が何の数字を出したか声に出してください」

ディーラー「相手の出した数字が嘘だと思えばダウトと宣言してください。当たれば勝利となります。ダウト宣言をしてもはずれれば相手の勝利です。置くカードがない時、パスは3回まで可能です」

ディーラー「ご理解出来ましたか?」

勇者「つまり、相手の嘘を見破ればいいんだよな?」

魔法使い「出せるカードがない場合どうするかが大事なんじゃない?」

勇者「うーむ…いまいちピンとこない」

勇者「リア!先鋒は任せた!」

リア「はい」

リア「………え!?」








150: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:19:29.03 ID:fTPqAKyp0


(vs リア)

ディーラー「先手は私ですね。では、1」スッ

リア「えっと…2、です」スッ

ディーラー「3」

リア「4です」

勇者「なんだ簡単じゃんか」

魔法使い「…そうかしら」

勇者「カード運がよけりゃ勝ちだろ?」

魔法使い「運だけじゃないわよ」

魔法使い「特にリアちゃんみたいな子にとっては…」

ディーラー「7」

リア(あ…どうしよう、8がない)

リア(パスしようかな…でも3回しか出来ないんだよね…)

リア「……8」スッ

ディーラー「ダウトです」

リア「!?」

勇者「あー」

魔法使い(素直過ぎるものね)








151: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:19:57.50 ID:fTPqAKyp0


(vs 勇者)

勇者「安心しな、リアの仇はとってやんよ」

リア「うぅ…お願いします」

魔法使い「このゲーム心理戦よ?脳筋のあんたに出来るの?」

勇者「相手の攻撃を先読みすんのは俺っちの得意技よ!」

魔法使い「それは闘技の話でしょ…」

ディーラー「では再び先手はこちらから」

ディーラー「……パスです」

勇者(初っ端からパスとはツイてんぜ。これで俺っちの方が有利に――)

勇者「お…?」

勇者(と思ったらこっちにも1がねー!パスすっか?でもなー)

勇者(ん?待てよ、二人とも1を持ってないんだとしたら、ここでパスをし続ければ順番的に俺っちが…)

勇者(よっし!先手じゃなくてよかったぜ!)

勇者「パース」

ディーラー「む……1」スッ

勇者「ダウトォ!」

勇者「なはは!早まったねぇ!このままパス合戦したら負けが確定するからって――」ペラ

置かれたカード『1』

ディーラー「こちらの勝ちですね」ニコニコ

勇者「なんでだよ!?」

魔法使い「言わんこっちゃない」








152: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:20:24.94 ID:fTPqAKyp0

ーーーーーーー

勇者「いやーおもしれーなここ!人が集まんのも分かるぜ!」

リア「はい!どれもみんな新鮮でした…!」

リア「…けど、お店の人たちが儲かる理由も、分かった気がします…」

魔法使い「そういう商売だからね」

魔法使い「勇者、そろそろ終わりにしないとお金が危ないんじゃないの?」

勇者「んー、あとこんだけ残ってる」

魔法使い「少なっ!使い過ぎよバカ!どうすんのよこれじゃあと半月以上なんてとても…」

勇者「そう慌てなさんな。眉間にシワが寄ってんよ?」

魔法使い「誰のせいだと思ってるのよ…!」

勇者「どうどう。俺っちが考え無しに浪費してるだけだと思ったか?」

勇者「ほれ」ユビサシ



案内板『闘技場エリア』



魔法使い「……あ」

勇者「へへっ、一儲けといきましょーか」








153: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:21:11.62 ID:fTPqAKyp0

ーーー町中ーーー

アッシュ「んー」テクテク

盗賊「……」テクテク

アッシュ「こちらの宿など、いかがでしょうかね?」

盗賊「…いいんじゃねぇの」

アッシュ「困りますね、真面目に見ていただかないと。野盗に狙われやすい場所だったらどうするのです」

盗賊「オレなんぞに訊かずともお前だけで決められんだろーが」

アッシュ「餅は餅屋に。盗みのことなら盗み屋に、です」ニコッ

盗賊「……オレらの仲間は、こんなあからさまな場所に潜んではねぇよ。よそは知らねぇけどな」

アッシュ「嘘…ではないようですね」

盗賊「つけるかよ、嘘なんて」

盗賊(冗談抜きで半殺しにされそうだかんな…)

アッシュ「それではいい機会なのでお訊きしますが」

アッシュ「何故貴方はあの村の盗人をやっていたのですか?」

盗賊「んなの、金で雇われたからだよ」

アッシュ「失敬、言葉不足でしたね」

アッシュ「あそこの村は規模も小さく、かつて目立った事件は起きていませんでした。それが何故盗賊などを雇い旅人を狙っていたのでしょう?」




154: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:21:37.89 ID:fTPqAKyp0


盗賊「はんっ、そんなのが分かんねぇってか。さすが名家に仕えてたボンボン様は違うな」

アッシュ「どういう意味です?」

盗賊「文句はおたくらの王様に言ってくれ」

盗賊「知ってんだろ?ここ数年王が闘技の大会に傾倒してんの。そこで自分の娘を優勝させて金をたんまり貰ってるらしいけどよ、オレたち下々の人間にゃほとんど恩恵がねぇときてやがる」

盗賊「おかげで国はどんどんでかくなってくが貧民も増えてくばかり。そりゃオレみたいな連中も出てくるってもんよ」

アッシュ「……」

盗賊「馬鹿みてぇに私腹を肥やしてるだけなら革命でもなんでも起こせるんだがな」

アッシュ「…そうですか」

アッシュ「今日はこの宿にしましょう」

盗賊「けっ、都合の悪いことは聞こえねぇフリかい」

アッシュ「聞こえていますよ、バッチリとね」

アッシュ「今の発言、捉えようによっては国家転覆の策謀とみなされ得るのですが…私が聞いたことにしてしまってよいのですか?」

盗賊「お前っ……」

アッシュ「都合が悪いのはどちらですかね」フフッ

アッシュ「それでは私は彼らを迎えに行って参りますので、貴方はリア様が作った石檻に入っていてくださいな」








155: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:22:26.26 ID:fTPqAKyp0

ーーー闘技場エリアーーー

勇者「」ビュンッ!

「ひっ…!参りました!」

審判「勝者、勇者殿!」

勇者「いぇーい!」

勇者「じゃ、賭け金はありがたく頂戴していくぜー」

「くそぅ…」

勇者「よっと」ピョン

タッタッタッ

勇者「ほい、また増やしてきたぜ」ジャラ

魔法使い「あ、うん」

魔法使い(…明らかにこの町に着いた時より増えてる)

リア「勇者さんこれで10連勝です…!」

勇者「むっはっは!ちょろいもんだなーまったく」

勇者「どいつもこいつもへぼっちいくせにそこそこの額で挑戦者求むとか言ってんの。100年鍛えてから出直してこいってんだ」

勇者「まあそのおかげでこんなおいしい思いが出来んだから感謝しとかねーとな!」

勇者「魔法使いさんもこれだけあれば満足っすよね~?」

魔法使い「…これ、出禁とかにならないかしら…?」

勇者「なるわけねーって。正当に戦って正当に報酬貰ってるだけだぜ」

魔法使い「なんか手放しには喜べないけど…」

魔法使い「ご苦労様」フゥ

勇者「おう」ピース




156: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:22:52.63 ID:fTPqAKyp0




「おい聞いたか?向こうに鬼のように強ぇおっさんがいるんだとよ」

「しかも女が負けるとエロいことされるんだってな…!」



勇者「」ピクッ



「俺らも見に行くか!」

「それしかねぇな!」

タッタッタッ...



勇者「……ゴホン」

勇者「うし、次は少し場所を変えるとしよう。ここいらの連中じゃ退屈だしな」

魔法使い「?いいけど、まだ戦ってない相手ならここにも残ってるわよ?」

勇者「強敵が俺っちを呼んでるんさ」

魔法使い「そう…?」








157: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:23:18.26 ID:fTPqAKyp0

ーーー闘技場エリア 人集りーーー

ザワザワ

「賭け金の額おかしいだろ…」

ガヤガヤ

「次はあの女が挑むらしい」

魔法使い「すごい人混みね…有名人でもいるのかしら」

リア「ここだけで私の村よりも多い気がします…」

勇者(人の頭ばっかでよく見えん)

勇者「すんませーん、通してください、通してくださーい」グイグイ

「おい、割り込むなよ」

勇者「へへ、まぁそう目くじら立てずに」

スルスル

勇者(よし!一番前)



スキンヘッドの男「こいつはまた、えらい別嬪さんが出てきたなぁ」

妖艶な女「ここいらでふざけた真似してるおじいさんが居るって聞いてきたんだけど……へぇ、なかなかどうして」

スキンヘッド「俺のような美丈夫で驚いたかい?」

女「んふ…」






158: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:23:48.27 ID:fTPqAKyp0


「あの爺さん、男の挑戦者に対してはとんでもない賭け金ふっかけんのに女に対しては金を賭けさせないんだ」

「通りで。なら女は挑み放題ってことか?」

「いや、負けるとスキンシップを要求される」

「ひゅー、とんだセクハラじじいだぜ」

「実力は本物ときてるからタチが悪い。まだ爺さんに勝った奴はいないんだとよ」

「そんで、俺たちの"タチ"は良くなるってわけだ」

「「ギャハハ!」」

魔法使い「な、なんなのこいつら…」

リア「魔法使いさん、あの人たちは何を言ってるんでしょう?」

魔法使い「気にしなくていいのよ。というかリアちゃんは聞いちゃダメ」

魔法使い「ちょっと勇者、こんなとこ早く離れるわよ!」

勇者「そう急くな。せめてあの試合だけでも」ニヘヘ

魔法使い(こいつ…火球でもぶつけてやろうか)






159: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:24:17.99 ID:fTPqAKyp0


女「おじいさん、歳はいくつ?」

スキンヘッド「65。だが、まだまだ若いもんにも負けないぜ?」

女「そう。この辺じゃ見ない顔ね」

スキンヘッド「がははっ!観光が趣味でなぁ。俺もあんたみたいな美人に出会ったら絶対忘れねえよ!」

女「元気がいいのねぇ」

スキンヘッド「俺はグローバってんだ。姉ちゃん、あんたの名は?」(以降、グローバ)

女「あたしに勝てたら教えてあげる」ニィ

グローバ「んひひ、そうかいそうかい。んなら早速やろうじゃねえの」

グローバ「おう、掛け声!」

審判「はっ」

審判「両者前へ。……始め!」

グローバ「俺のモットーはレディーファーストだ。お先にどうぞ」

女「紳士なのね。そういうの嫌いじゃないわぁ」

女「"分身"」

スゥ...

分身「……」



「幻惑魔法だ」

「幻惑っつーことは片方は触れない偽物ってことか」

魔法使い(…普通ならそうね)

魔法使い(でも多分あれは)






160: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:24:45.22 ID:fTPqAKyp0


女「この子を単なる幻覚と思わないでちょうだい?ちゃあんとあなたを懲らしめることが出来る良い子なんだから」

グローバ「ほほお、一人で二人分楽しめるんだな?最高じやねえか」

女「…んふふ」

ババッ



「動いた!」

「挟み撃ちにする気か!?」

「あれじゃ避けらんねぇぜ」

勇者「どうかねー」

勇者(上手い初動だけど、俺っちには丸分かりよ。あれは挟み撃ちなんかじゃない)

勇者(はてさて、爺さんにそれが見破れるんかな?)



分身「……」スタタッ!

グローバ「まずは分身ちゃんのお相手かい?」

分身「」シュッ

ガシィ!



「おぉ…あの正拳突きを受け止めたぜ」

「すげぇ音がしたな」

勇者(そんなのは想定済みだろうよ)






161: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:25:13.35 ID:fTPqAKyp0


グローバ「ん~、めんこい手だなぁ!なら本物はさぞや――」

女「」ダッ

グローバ「お…!」



「あの娘正面にいるぞ!?」

勇者(ま、普通の奴にゃそう見えるわな。あれも幻惑魔法?とかの一種かね)

勇者(本当の狙いは挟撃なんじゃなく、分身を死角にした不意打ち。視線の動きをよく見てりゃ分かんぜ)



女「お覚悟を!」スッ――

グローバ「……」ニヤリ

ビュオッ

グローバ「」サッ

女(…!)

グローバ「そぉら!」ギュン

ピタッ

女「……」

グローバ「……」

(眼前で寸止めにした拳)

女「……んふ、お強いのね」

グローバ「弱い雄はモテねえだろ?」

女「降参するわ、審判」

審判「勝者、グローバ殿!」






162: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:25:42.38 ID:fTPqAKyp0


ドヨドヨ...

「たまげたなぁ、なんだ今の動き」

「還暦迎えた爺さんとは思えねぇ」

リア「魔法ってあんな風に使うことも出来るんですね…」

魔法使い「あの人が使ったのは本来目眩しくらいしか役に立たないはずだけど、魔法は使い手次第ね」

勇者(…へぇー)



グローバ「さーてさて!熱い勝負の後はお待ちかねのお楽しみタイムといこうじゃないか」

女「せっかちねぇ…痛いのは禁止よ?」

グローバ「大丈夫!何も考えずに身を委ねてくれ」

グローバ「良くしてやっからよ」ニヤ

サワ...

女「」ピクッ

女「……んっ……」

グローバ「へへ」

女「はぁ……っ…」



「「「おおぉ…」」」

勇者「おほぉ…!」

魔法使い「……」(リアの目を覆い隠す)

リア「??何が起きてるんです?」






163: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:26:11.86 ID:fTPqAKyp0


女「あっ…!」ビクン

グローバ「おっと…ここまでだな」

グローバ「どうだったよ、俺のワザは」ニカッ

女「はぁ…はぁ……んふふ、癖になりそう…」

グローバ「わっはっは、そうだろう?俺の相手をした女性は皆そう言うんだよ!」

グローバ「なぁどうだい、暇してんなら今夜…」

女「ごめんなさいねぇ。あたしこれでも一途な女だから」

グローバ「あちゃー振られちまったか!残念だなあ、こーんな美人と過ごせる夜なんざなかなかないってのに」

女「口もお上手」

女「それと、約束だったわねぇ。あたしの名前は…」

(そっと耳打ち)

グローバ「ほぉ、よく似合っとる名だ」

女「あんまりおイタをしちゃだめよ?グローバおじ様」

女「また何処かで会いましょう」

女「"花吹雪"」

ブワァァ...!



「花びら…!?」

「み、見えねぇ」



ヒラ...






164: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:27:00.43 ID:fTPqAKyp0


「…あ、居ねぇぜ」

「にしてもよ、――」

「あぁ!色気が半端でなく――」

ザワザワ

勇者「俺っちも名前くらい聞きたかったなぁ…」

魔法使い(…なによ、鼻の下伸ばしちゃって)

魔法使い「もう終わったんだからさっさと移動するわよ。あとリアちゃんに謝って」

リア「謝る…んですか?一体なんで…?」

勇者「リアもいずれ知るんだからいい社会勉強になったろ」

勇者「それにあんな面白そうな爺さんを無視はできねーよなぁ?」

魔法使い「は?ちょっ、冗談でしょ!?」



グローバ「んん?」

グローバ(これはこれは。かなりの上玉が、しかも二人!今日はツイてるなあ)

グローバ「ぬへへ」ザッザッ



魔法使い「断固却下!こんな下品な空間から早くおさらばしたいのよ!」

勇者「あの大金が手に入んだぜ?もうひと月遊んで暮らせんじゃんか」

魔法使い「お金は十分あるんだからあんな人を相手する必要ないじゃないの」

グローバ「やあお嬢さん方」

魔法使い「!」

勇者「お」




165: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:27:48.26 ID:fTPqAKyp0


グローバ「おじさんと闘技しないかね?」

魔法使い「…お断りします」

グローバ「そう言わんと、物は試しにさあ」

グローバ「金を倍にしてやろう!」

魔法使い「お金の問題じゃありませんから」

グローバ「ん?がはは!そうかさてはスキンシップがネックだな?」

グローバ「あい分かった!ならお嬢さん二人には試合後のスキンシップは無しだ。ただ闘技をするだけ!」

魔法使い「……どうせ闘技中にセクハラしてくる気ですよね?」

グローバ「ノンノン。そんな気は毛頭ないぜ。仮にぶつかっちまったとしてもそいつは事故だよ、事故」ニカッ

魔法使い「……」

グローバ「そっちの嬢ちゃんはどうかな?お手合わせしてくれるかなあ?」

リア「え…」

魔法使い「ぜっったい駄目です!」

グローバ「へへ、やっぱり先にお嬢さんを――」

勇者「はいはいはい!俺っちがやる!」

グローバ「あぁん?なんだ小僧に用はないぞ」

勇者「そう寂しいこと言うなよー。賭ける金ならここにある」ジャラ...

勇者「これで男でも相手してくれんだよな?」

魔法使い「また勝手にお金使って…!」

グローバ「粋がるだけあってそれなりのもんは持ってるってかい。さっきの姉ちゃんが化けてるんだってなら喜んでやってやんだがなあ」

勇者「いいんかなー?俺っちってば、今年の闘技大会優勝候補者なんだぜ?」

勇者「滅多にお目にかかれない本物の強さってのを味わえんのに」

グローバ「ほーぉ?」




166: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:28:32.24 ID:fTPqAKyp0


グローバ(闘技大会ね。そういやあれが毎年優勝しとるっつーのがその大会だって話だったな)

グローバ(ふぅむ)

グローバ「お前さん、どっちの彼氏だい?」

勇者「へ?」

魔法使い「!?」

グローバ「恋人の勇姿を存分に見せてやんだろ?」

勇者「そんなんじゃねーの。この二人はただの連れよ」

リア「勇者さん…!」

魔法使い「……」

グローバ「なんだ勿体ねえなあ。若いうちは遊んでなんぼ、恋してなんぼだぞ?」

勇者「遊びならいつもやってんぜ?闘技ってぇ遊びな!」

グローバ「…フッ、位置に着こうじゃねえの」ザッザッザッ

勇者「そうこなくっちゃ」タッタッタッ

魔法使い「結局こうなる…」

リア「大丈夫ですよ、勇者さんですもん」

魔法使い「…セクハラ目的で闘技しようとするよりはいいけどさ…」

アッシュ「こちらにいっしゃいましたか」

魔法使い「あら。探しに来てくれたの?」

アッシュ「えぇ。本日の宿を見繕うことが出来たのでお迎えにと」

アッシュ「勇者様は、まだ闘技をなさるようですね」

魔法使い「ごめんねこれだけ待ってちょうだい」






167: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:28:59.30 ID:fTPqAKyp0


勇者「楽しくやろーぜ爺さん」

グローバ「小僧、お前さんがいくつなのかなんてのはまるで興味はねえが、俺はその3、4倍は長く生きてる」

グローバ「年季の違いってやつを教えてやるよ」

勇者「張り切っちゃってんね~」



「今度は男が挑戦するみたいだな」

「おぅ!つまんねぇ試合見せんじゃねぇぞ!」

アッシュ「む?」

アッシュ(あの御仁、どこかで見た覚えがあるような)



審判「両者前へ!」

勇者「うっし」カタマワシ

グローバ「……」ザッザッ

審判「始め!」

勇者「レディーじゃねーけど先制はいただくぜ!」ダッ!



「速いっ…!」

魔法使い(見慣れた反応ね)

アッシュ「………」






168: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:29:25.76 ID:fTPqAKyp0


スタタタッ

グローバ「……」フッ

グローバ「"硬化"」

勇者「」ブンッ

バキッ!

勇者「…!」

グローバ「どうした?随分と優しい蹴りだな」

勇者「っら!」

ドン

グローバ「痒いねえ」



「爺さん微動だにしてないな」

「あの筋肉だし、凄まじく頑丈な体なんだろ」

アッシュ(いえ、彼が施したのは肉体強化の魔法)

アッシュ(あの相貌に魔法の使い方……やはり……)



勇者「変な小細工しやがって」

勇者(だったら顔面にぶち当てるまでよ)

グローバ「焦んなや小僧。俺にも攻撃さしてくれよ」

...ドシ、ドシ

勇者「…ぷはっ!爺さんあんたイノシシかよ!」

勇者「いいぜー、待ってやる」クク






169: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:29:56.85 ID:fTPqAKyp0


アッシュ「いけない!」

アッシュ「勇者様、気を緩めてはなりません!」



グローバ「…"敏捷"」ボソッ

バシュンッ

勇者「なっ!」

グローバ「ほれっ」

勇者「っ」スッ

グローバ「いい動体視力してるな!」シュッ

勇者「く…」サッ

グローバ「だがそれだけよ!」

ドゴッ

勇者「がっ…!?」

ヨロ..ヨロ..

勇者「」ドサッ






170: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:30:27.84 ID:fTPqAKyp0


リア「……え……」

魔法使い「は…?」

魔法使い(嘘でしょ?どうせあいつのことだからやられたフリでもしてんのよ…ね?)



グローバ「おーいどうした?そのまま地面とキスしてたら終わっちゃうぞ?」

勇者「……ぐ……この……」

グローバ「だからといって立たれんのも面倒なんでな」

グローバ「ママのところへお帰り」ゲシッ!

ゴロン、ゴロゴロ...

勇者「ぅ……」

審判「場外」

審判「勝者、グローバ殿!」



魔法使い「勇者!」タッタッタッ

リア「勇者さんっ」テテテッ

「なーんだあっさり負けたな」

「喧嘩売る相手間違えたんだろうよ」






171: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:31:52.59 ID:fTPqAKyp0


グローバ「お前さんの直球な戦い方、師は悪くないみたいだがなあ。そんなんで大会優勝だの宣ってたとは笑止千万」

グローバ「本番で恥かかなくてよかったな!がはは!」

勇者「……」

魔法使い「立てる?勇者」

グローバ「嬢ちゃんらも出んのかね、闘技の大会」

魔法使い「…私たちは出ません」

グローバ「なんでえ出てくれよお。俺も寄り道ついでにちょっかい出してやろうと思ってんだ」

グローバ「大舞台で気持ち良く戦おうじゃねえの」

魔法使い「………」

グローバ「賭け金はありがたく貰ってくぜ。俺はそろそろ腹が減ったからな!」

グローバ「アディオス、お嬢さん方」

アッシュ「…グロスハルト卿」

グローバ「!」

アッシュ「やはりそうでしたか。その頭で判りにくかったですが、貴方はバーランド家の当主、グロスハルト・バーランド様ですね?」

グローバ「その面、姫んとこの執事か」

アッシュ「はい。覚えていていただいたようで何よりです」

グローバ「その名前はもう返上したのさ。バーランドは愚息に渡した。俺は何の変哲もないジジイだぜ」

アッシュ「…豪快な口調になられましたね」

グローバ「貴族なんてよお、あんな息苦しいもん死ぬまで続けられるかってんだい」




172: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:32:25.98 ID:fTPqAKyp0


グローバ「おめえも執事の仕事はどうした?暇でも貰ったか?」

アッシュ「辞めましたよ」

グローバ「おぉ?わはは!なんだあれだけおめえにべったりだったのになあ!何があった?リビドーに耐え切れなくなったか?」

アッシュ「……何もありませんよ」

グローバ「へっ、そうかい」

グローバ「なぁまさかおめえよ、このポンコツをぶつけようってんじゃねえだろうな?」

勇者「……」

グローバ「やめとけ。焼け石に水だ」

アッシュ「どうでしょうね」ニコッ

グローバ「相変わらず食えない男だなあ」

グローバ「藁に縋るのは勝手だが、こうやって現実も見せてやらねえとかわいそうだぜ」

勇者「………」

アッシュ「………」

グローバ「まああんま悲観すんなや。お前さんはまだ若え」

グローバ「もっと男を磨くこった。がははは!」ザッザッザッ...

「終わりらしいぜ」

「別の試合見に行くかー」

魔法使い「……勇者」

勇者「……」

魔法使い「行こう?」

勇者「……」








173: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:43:40.80 ID:fTPqAKyp0

ーーー翌日 輸送馬車内ーーー

アッシュ「あの方は本名グロスハルト・バーランドという、東国を代表する貴族の当主だったのです」

アッシュ「当時は髪も整えて、立派な髭を蓄えていたのです。ご隠居なされていたとは驚きました」

魔法使い「あんな節操の欠片もない人が貴族…」

アッシュ「私の知るバーランド卿はとても厳めしい方でしたが、あれが本来の彼の気質なのでしょう」

アッシュ「しかし、あの並外れた身体強化魔法だけは変わっていませんね。なればこそ、数多居る貴族の中で頂点に君臨していたのですから」

魔法使い「隠居おじいさんといい、あいつと戦ってた女といい、世の中広いわね。とんでもないのがわんさか居る」

魔法使い「闇雲に突っ込んでいくだけが闘技じゃないってことね。ちゃんと相手の戦術を見切らないと」

勇者「……」

魔法使い「…聞いてる?勇者」

勇者「んー…?」

魔法使い「あいつも大会に出るんだって。今度は対策していかないと同じ轍を踏むわよ?」

勇者「んー…」

魔法使い「もう、優勝しに行くんでしょ!」

勇者「うん…」

魔法使い「……」

魔法使い(なによ…いつもなら自信満々に言い返してくるくせに…)

リア「…勇者さん…」

盗賊(空気が重ぇ…)

アッシュ「………」








174: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:44:11.90 ID:fTPqAKyp0

ーーーーーーー

勇者母「あら困りましたね」

勇者母「ここはどこなのでしょう?」

(どこかの森の中)

勇者母「真っ直ぐに進んでいたつもりだったのですけど…」

小鳥「」バサバサ

勇者母「まあ小鳥さん!いいところに来てくれました」

勇者母「勇者という少年がどちらに向かったかご存知でしょうか?」

小鳥「チュン、チュンチュン」

勇者母「えぇ、はい」

勇者母「そうなの。ありがとう、可愛い小鳥さん」ニコッ

小鳥「チュン♪」


勇者母「待っててくださいね勇者。あなたの忘れ物はしっかり届けてあげますからね」

勇者母「~♪」テクテク








175: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:46:44.89 ID:fTPqAKyp0

4章は以上となります。

次回5章から舞台は王都に移ります。
この物語は6章で完結する予定です。









元スレ
SS速報VIP:【一部キャラ安価コンマ】村長「勇者よ、必ずや優勝して参れ」勇者「へいへーい」