176: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/09(火) 22:47:20.99 ID:fTPqAKyp0

四人目のキャラ決めを行います。
前回同様、安価で4つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5~100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>177~>>180



177: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/09(火) 23:12:49.58 ID:3QQq6vN+O

キャラ名:リリ 踊り子(黒髪褐色肌のグラマラスな体型で露出が多めな衣装)
性別:女
年齢:30
得意戦型:剣術と体術
備考・希望:人を揶揄うのが好き 我流の舞のような剣術で対戦相手を惑わせる 妖精と人間のハーフ 衣装でなかなか見えない部分に人を魅了する黒子があるらしい



178: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 01:32:05.71 ID:p1KI8D9s0

名前:ツバキ (剣士 茶髪ポニーテール、着物のような服を着て、日本刀の形をした木剣を腰にさしている。巨乳。)
性別:女
年齢:25
得意戦術:剣術・体術
備考・希望:遥か東にある国の出身。明るい性格だが少し天然なところがある。武士のような口調で一人称は「拙者」、相手の名前を呼ぶ時は「(名前)殿」と呼んでいる。剣術は家から代々続く流派を使い相手を高速で切ることできる。体術は合気道や柔道、空手を得意とし、身体能力も高い。



179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 07:39:48.50 ID:gQ/NqdCE0

キャラ名:テイシロ 神官 (白髪の短髪で白いローブを着た少年)
性別:男
年齢:12
得意戦型:魔法
備考・希望:天外孤独の身であり自分の出生について知るために旅をしている 扱う魔法は光や雷系





180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 07:48:21.16 ID:TV7CYEvDO

キャラ名 メリー 吟遊詩人 (青髪のロングストレートの華奢な美女で竪琴を持っている)
性別女
年齢 24
得意戦術 魔法と体術
尾行・希望 特製の竪琴を奏でながら歌うことで魔翌力を消費せずに、様々な魔法を使うことができる(歌の種類によって魔法の効果が違う)
性格はおっとりして物静かだが、性格と容姿に反して身体能力も高い



181: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/10(水) 08:29:34.55 ID:CjYIfkGDO

候補が出揃ったため、>>182のコンマで決定します。

00~24:リリ
25~49:ツバキ
50~74:テイシロ
75~99:メリー

>>175 誤字ってますね。正しくは
「この物語6章で完結する予定です。」
です。





182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/10(水) 08:34:40.65 ID:gQ/NqdCE0





184: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/10(水) 08:52:28.04 ID:CjYIfkGDO

コンマ65で登場キャラ四人目は

キャラ名:テイシロ 神官 (白髪の短髪で白いローブを着た少年)
性別:男
年齢:12
得意戦型:魔法
備考・希望:天外孤独の身であり自分の出生について知るために旅をしている 扱う魔法は光や雷系

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。




187: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:19:21.51 ID:GZ1lpObE0

5章前半投下します。



188: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:20:01.37 ID:GZ1lpObE0

ーーー王都城 中庭ーーー

侍女「……」トットットッ

侍女「……」トッ...

姫騎士「はっ」ビュン

姫騎士「せあっ!」ビュオッ

姫騎士「まだまだ甘いな…」

侍女「…姫騎士様」

姫騎士「!侍女か」

姫騎士「どうした、私に何か伝言か?」

侍女「いえ、偶々通りかかったので」

侍女「…自主訓練ですか?」

姫騎士「あぁ。こうして体を動かしていないと鈍ってしまいそうでな」

侍女(日々あれだけの時間を鍛錬に費やしているのだから、鈍るなんてことあるはずがないのに)

姫騎士「侍女。今ここには二人しかいないんだ、畏まらなくていいんだぞ?」

侍女「そういうわけにはいきません。私は貴女のお付きですので」

姫騎士「ははっ、真面目だな侍女は」

侍女(……)

姫騎士「そうだ、せっかく来たんだ付き合ってくれないか?」

侍女「はい。剣のお相手をすればよろしいですか?」

姫騎士「そうではない」

姫騎士「少し外へな」

侍女「…いつもの場所ですか」

姫騎士「うむ」








189: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:20:36.39 ID:GZ1lpObE0

ーーー王都ーーー

リア「ここが王都……」

リア「驚きです、道が土じゃないですよ魔法使いさん…!」

魔法使い「そうねー。これ敷き詰めてあるのはレンガかしら」

アッシュ「似ていますが、少々異なります。これは石畳と呼ばれるもので、職人が一つ一つ切り出した石をこのように秩序立てて並べ、固めるのです。レンガが使用されるのは家屋の屋根などですね」

魔法使い「雨が降っても泥濘まなくていいわね」

盗賊(石畳も見たことねぇって、こいつらどんな田舎に住んでたんだ)

アッシュ「さすがに闘技場の地面は土ですがね。これはどこの国でも共通のはずです」

魔法使い「石の上でやれって言われても勝手が違うものね」

勇者「……」

魔法使い「ほら勇者、大会も村で稽古してた環境とそう変わらないみたいよ」

勇者「ん」

魔法使い(気のない返事…)

魔法使い「…もうっ、シャキッと歩く!さっきから見てて危なっかしいわ」

勇者「別に、どう歩こうが勝手だろ」

魔法使い「こっちが嫌なのよ。目の前でちんたら歩かれる方の身にもなって」

勇者「そんなん知らん」

魔法使い「あんたね…!」

リア「勇者さん、前っ」




190: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:21:19.01 ID:GZ1lpObE0




ドン



勇者「」ドサッ

姫騎士「すまない。余所見をしていた」

姫騎士「立てるか?」スッ

「ん?ありゃ姫騎士様でねーか?」

「おぉ本当だ!我らが英雄姫騎士様じゃ!」

勇者「……」スクッ

「なんじゃあの男、姫騎士様の手を無視しおった」

「礼儀知らずなやつめ」

姫騎士「怪我をしていないなら、良かった」

姫騎士「ん?」

アッシュ「……」

姫騎士「アッシュ?アッシュじゃないか?」

アッシュ「はい。お久しぶりです」

姫騎士「どこへ行っていたんだ!急に辞めて出て行くものだから心配したんだぞ。王都を離れていたらしいではないか」

アッシュ「少し旅に出ておりました。そういう気分だったのです」

姫騎士「旅か。アッシュにはいつも苦労をかけていたからな。すまなかった」

アッシュ「謝らないでください。貴女様のせいではございませんから」

姫騎士「だが、元気そうで安心したよ」




191: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:21:44.74 ID:GZ1lpObE0


姫騎士「しばらくここに留まるのか?」

アッシュ「そのつもりです」

姫騎士「なら丁度いい。今度の闘技大会是非見に来てくれ。アッシュから教わった技をいつも磨いてきたんだ」

姫騎士「優勝を勝ち取る私の姿を君に見せたい」

アッシュ「…楽しみにしております」ニコッ

侍女「……」

アッシュ(……)

侍女「行きましょう姫騎士様」

姫騎士「いいのか?侍女もアッシュと積もる話があるのでは――」

侍女「次の訓練まであまりお時間がありません」

姫騎士「そうか、急がないとな」

姫騎士「私はもう行く。機会があれば腰を落ち着けて話そう」

アッシュ「はい」

侍女「」ペコリ



スタスタスタ...






192: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:22:15.91 ID:GZ1lpObE0


魔法使い「……ねぇアッシュさん、今の人って」

アッシュ「分かってしまいますよね、さすがに」

アッシュ「そうです。あのお方が、私が元仕えていたお人、姫騎士様です」

アッシュ「国王様が大切になされている一人娘であると同時に」

アッシュ「――この国最強の騎士でもある」

魔法使い「そうだったのね、あの人が…」

リア「だから王都の事情に詳しかったのですね」

魔法使い「けどあの人アッシュさんのこと探していたみたいよ?私たちが初めて会った時、執事を辞めさせられたって言ってなかった?」

アッシュ「えぇ」

アッシュ「私を辞めさせたのは彼女ではありませんから」

魔法使い(…感じる。この人の中で燻っているなにか)

魔法使い(きっとアッシュさんもアッシュさんなりに目的があってここに居るんだ)

アッシュ「ひとまず移動しましょう。ここでボーッとしていては目立ってしまいます」

魔法使い「そう、ね」








193: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:22:59.26 ID:GZ1lpObE0

ーーー受付所ーーー

ガヤガヤ

受付嬢「はーい!皆さん押さないで下さい!順番に!順番にですよ!」

「おいてめぇ今割り込みしただろ?」

「おや、気付かなかったよ。気配が弱小過ぎて」

「んだと!?」

受付嬢「そこ!問題を起こしたら出場資格剥奪ですからね!」

ザワザワ

勇者母「あらあら」

勇者母「人がたくさん……これじゃ勇者がどこに居るのか見えませんね」

勇者母「でも!」

勇者母「大会の受付場所で待ってればいずれ会えますよね」ニコニコ

「なぁあんた、受付済ませるなら早くしておくれ」

「そうだよ後がつかえてんだ!」

勇者母「まあごめんなさいね」

「そんなのええから早よう」グイ

勇者母「あら?」

グイグイグイ

勇者母「あらあらあら…」








194: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:23:59.85 ID:GZ1lpObE0

ーーー宿 勇者の部屋ーーー

勇者「……」ボー

勇者「………」

勇者「」ゴロ...

勇者「……」ボー



ーーーーー

グローバ「藁に縋るのは勝手だが、こうやって現実も見せてやらねえとかわいそうだぜ」

ーーーーー



勇者(はっ、これが現実ってか)



コンコン



魔法使い「入っていい?」

勇者「入りたきゃ入れば」

ガチャ

魔法使い「ごめん寝てたかしら」

勇者「眠くない」

勇者「で、みんなそろってどうしたよ?ここ部屋広いけど四人で寝るのはさすがにキツくねーんか?」

アッシュ「私とリア様は付き添いですよ」

リア「……」

勇者「?」




195: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:24:30.22 ID:GZ1lpObE0


魔法使い「勇者、大会のエントリーに行くわよ」

勇者「おう、そのうちな」

魔法使い「そのうちっていつよ」

勇者「そのうちはそのうち」

魔法使い「それで結局出ない気なんだ」

勇者「んなこと言ってねーし」

魔法使い「だったら今から行くの!遅かれ早かれ受付はしてこないといけないんだから」

勇者「……明日な」

魔法使い(……)ギリ...

魔法使い「いい加減にしなさいよ」

魔法使い「いつまでそうやってうじうじしてるつもり?あのセクハラじいさんに負けてからずっとそうじゃない!私たちに見せびらかすみたいに落ち込んでさ!」

魔法使い「同情すればいいのかしら?よしよし、あんなの気にしなくていいですよーって?」

アッシュ「魔法使い様、少し抑えた方が…」

魔法使い「一回負けたからってなに!?あんたの言う最強はたかがそれっぽっちで終わるものなの!?」

勇者「っ」




196: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:25:02.74 ID:GZ1lpObE0


勇者「…言ってくれんじゃん」

勇者「一回でも負けたらそれもう最強じゃないっしょ。それに俺っち気付いたんよ」

勇者「上には上がいる」

勇者「グローバ爺さんが教えてくれた。俺っち一つ賢くなったんだぜ。身の丈を知ったっての?」

魔法使い「…なに、それ」

勇者「出来もしねー優勝とかほざいてるよかよっぽど利口だろー」

魔法使い「じゃあ…あんた何のためにここまで来たの…?」

勇者「んー、記念?」

勇者「参加賞くらい持ち帰ってやんねーとなー。なはは」

魔法使い(……なんなの。なんなのよ)

魔法使い(私は、そんな言葉あんたの口から――)

魔法使い「もういい!」ダッ

タッタッタッ

リア「あ…」

勇者「……」

アッシュ「……」

アッシュ「今の言葉、本心でございますか?」

勇者「モチのロンよ。これが大人になるってこったろ?ちゃんと現実を見れてる」

勇者「最強だのなんだのが許されんのはケツの青いガキか、世界のてっぺん取ってるやつだけさ」








197: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:25:37.20 ID:GZ1lpObE0

ーーー夜 魔法使いの部屋ーーー

魔法使い「……」

魔法使い(…眠れない。早く寝て忘れちゃいたいのに)

魔法使い「………」



ーーーーー

勇者「一回でも負けたらそれもう最強じゃないっしょ」

勇者「出来もしねー優勝とかほざいてるよかよっぽど利口だろー」

ーーーーー



魔法使い「………バカ」

魔法使い(違うでしょ…)



ーーーーー

幼勇者「いいかげん泣きやめって。魔法の一つ失敗したくらいなんだってんだい」

ーーーーー



魔法使い(私がずっと追いかけて来たのは、ずっと見てきたあんたは……)

魔法使い「…嫌いよ…」



「魔法使いさん、起きてますか?」



魔法使い「…リアちゃん?」

リア「はい。ちょっとお話したくて、来ちゃいました」

魔法使い「……ふふ、いいわよ入ってきて」

カチャリ

リア「お言葉に甘えますね」エヘヘ








198: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:26:28.73 ID:GZ1lpObE0

ーーー宿 屋根ーーー

勇者「……」

勇者「空はでけーなー」

勇者「このまま俺っちのこと、吸い込んでくれねーかなー…」



ーーーーー

魔法使い「一回負けたからってなに!?あんたの言う最強はたかがそれっぽっちで終わるものなの!?」

ーーーーー



勇者「………」

勇者(みっともねぇ)

アッシュ「ここにおられましたか」

勇者「……」チラッ

アッシュ「危ないですよ、屋根の上など。落ちたら大怪我です」

勇者「それ鏡見て言ってみ」

アッシュ「隣、失礼致します」

スッ...

アッシュ「綺麗な空ですね」

勇者「………」

アッシュ「勇者様、闘技大会での優勝、本当に諦めてしまわれたのですか?」

勇者「諦めるも何も、最初から無理難題だって判明したしな」

勇者「俺っち、グローバのおっさんに手も足も出なかった。なのにそれより強ぇのがまだいるんよな?」

勇者「小さな村の間抜けが一匹、大口叩いてたってだけよ」

アッシュ「前にも言いましたが、貴方はまだ強くなれます」

勇者「大会まであと二週間ちょいしかないのに?」

勇者「たった二週間じゃ小手先のみみっちい技身につけるくらいしか出来ねーぜ」

アッシュ「では魔法使い様をあのままにしておくのですね」

勇者「……なんでそこで魔法使いなんだよ」

アッシュ「これでも長年女性の傍に付き添ってきたものですから、その手の機微には敏感なのです」ニコッ

勇者「…関係ねーよ、別に」








199: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:26:59.31 ID:GZ1lpObE0


魔法使い「今日は何の話をしよっか?魔法のことはいっぱいお話してきたものね。思い切ってお互いのちょっと恥ずかしい失敗談とかいってみる?」

リア「えっとですね、今日はあの……恋の話……とか…」

魔法使い「え?なーに?」

リア「…魔法使いさんて、勇者さんのこと好きですよね?」

魔法使い「!?」

魔法使い「そ…えぇ!?ななな何言ってるのかしら!?そんなことあるわけ…!」

リア「見てたら分かりますよ。魔法使いさん真っ直ぐですもん」

魔法使い「うぐっ」

魔法使い「……うん、好きよ」

魔法使い「けどもう違うの。私が好きだったあいつはどっかに行っちゃった」

リア「好きな勇者さん…?」

魔法使い「そ」

リア「それって、いつも明るくて、楽しそうで、前向きな勇者さん?」

魔法使い「大分美化されてるわね」フフッ

魔法使い「…まぁそんな感じかな」

二人「……」

リア「お二人は確か…同じ村の幼馴染みさんなんでしたよね。魔法使いさんはいつから勇者さんのこと、好きだったんですか?」

魔法使い「ま、まだこの話続ける…?」

リア「……」ジッ

魔法使い「…いつからだろうね」

魔法使い「気が付いたら、いつもあいつのことを追いかけてた」

魔法使い「ちっちゃい頃の私ってね、すごく泣き虫だったの。魔法を一度失敗したくらいでえんえん泣いてたわ」








200: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:27:30.94 ID:GZ1lpObE0


勇者「――で、その度に俺っちが慰めてやってたんよ。なーんかほっとけなくってさー」

アッシュ「意外ですね。今の魔法使い様の凛々しさからはとても…」

勇者「本当になー。口うるさくて暴力まで振るってくるし。リアくらいおしとやかでいりゃあまだかわいいんだがね」

アッシュ(私には、そう変わった理由も、なんとなく勇者様にあるような気がしますよ)

勇者「…でも、一つ言えんのは」



ーーーーー

幼勇者「めそめそしてんな!おれっちがいてやっから!」

幼勇者「おっきくなったらおれっちがお前のこと」

幼勇者「一生守ってやっからよ!」

ーーーーー








201: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:27:57.49 ID:GZ1lpObE0


魔法使い「そんな子供の時の言葉、ずっと忘れられなくてさ」

魔法使い「馬鹿みたいよね、あいつはもうそんなのとっくに頭に残ってないのに」

リア「…待ってるんですね、勇者さんのこと」

魔法使い「……」

魔法使い「あいつね、闘技大会に出るからって一人で村を出て行こうとしたのよ。我慢ならなくてあいつを闘技で負かして無理矢理付いてきてやったわ」

リア「え、勝ったんですか…!?」

魔法使い「もちろんハンデ有りでね」

魔法使い「でも、あんな勇者見せられることになるなら、大会自体に反対した方が良かったわ…」

魔法使い「別に私は、あいつが世界で一番強くなくたって……私の中で一番でいてくれれば……」








202: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:28:23.07 ID:GZ1lpObE0


アッシュ「迎えに行ってあげないのですか?覚えていらっしゃるのなら尚の事」

勇者「冗談っ。俺っちもっとグラマラスな女の人の方が好みだし、あんなべったり付いてきて文句ばっか言うようなやつなんざ」

アッシュ「そこまで想っていただけるとはなんとも素敵な方です」

勇者「へ、代わってやろうかい?」

アッシュ「私は勇者様にはなれませんよ」ニコッ

勇者「……」

勇者「…今更遅いんよ」

勇者「弱っちい勇者くんじゃああいつは見てくんねーさ。今頃失望してんだろ」

勇者「最強じゃなきゃ意味ねーんだ」

勇者(……え?なんで?)

勇者(最強……なんで最強じゃないとダメなんだっけ)



ーーーーー

「――だれにも――、――さいきょう――だい――!」

ーーーーー



勇者(なんだ、今の…?)








203: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:29:00.22 ID:GZ1lpObE0

ーーー翌朝 食堂ーーー

魔法使い「……」パク、パク

勇者「」カチャカチャ

アッシュ「……」スッ

リア「……」モムモム

魔法使い「ごちそうさま」

魔法使い「私、外散歩してくる」

スタスタ...

リア「わ、私も行きます…!」テッテッテッ

勇者「……」カチャ...

勇者「俺っちも腹いっぱいだわ。残りはアッくんに任した」ガタッ

(部屋に戻っていく勇者)

アッシュ「朝食は重要ですが、この量は些か…」

アッシュ「貴方も要りますか?こちらの料理などはまだどなたも手を付けていませんよ」

盗賊「……欲しけりゃ仲間の居場所を吐けってんだろ?」

アッシュ「無論です」ニコッ

盗賊「無理な相談だぜ。同胞を裏切る行為は絶対しねぇ」

アッシュ「そうですか。ともすればこれが最後の晩餐になったかもしれませんのに」

盗賊「…あん?」








204: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:29:28.63 ID:GZ1lpObE0

ーーー王都 大通りーーー

リア「ふわぁ…!改めて見てみると、どの建物も全部大きいんですね…!」テクテク

魔法使い「そうねぇ。前寄った町にもお店とかはいっぱいあったけど、ここまで立派に構えてはなかったものね」テクテク

魔法使い「…リアちゃん、無理して私と出てくることなかったのよ?」

リア「無理なんかしてませんよ。魔法使いさんと一緒にいるの好きですから」ニコリ

リア「どっちかと言えば、魔法使いさんの方が無理してるんじゃないですか…?」

魔法使い「……」

魔法使い「いいのいいの。もう気にしないことにしたからあんなやつ」

魔法使い「私たちは私たちでせっかくの王都を目一杯楽しんじゃいましょ」

リア「……はい」

リア(気にしてないなら、そんな寂しそうに笑ったりしないですよ…)

魔法使い「リアちゃん見て!」

リア「?」

魔法使い「あれ、王都の大聖堂よ!」

魔法使い「ここに来てからもやもやすることばっかりだったし、一度吐き出してすっきりさせとこっか」








205: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:29:59.33 ID:GZ1lpObE0

ーーー大聖堂ーーー

魔法使い「王都一の教会って聞いてたけど、あんまり人はいないのね」

リア「そうですね……もしかしたら世の中が平和なおかげかもしれませんね」



「すぴー……zzZ」

「だめよダーリン、こんなところでキスなんて…」

「大丈夫少しくらい罰は当たらないさ」



魔法使い「…平和以前の問題な気が…」

リア「あはは…」

白髪の少年「……」(手を祈り合わせる)

魔法使い「あの子のお祈りが終わったら私たちね」

少年「主よ、どうかお願いいたします。この声が届いているのならば、どうか僕についてお教えください」

少年「僕は一体どこから来たのか、どこへ向かうべきなのか……」

少年「それだけで、いいのです…」

魔法使い(随分熱心なお願い事ね。お祈りって声に出すものだっけ…?)

少年「……行くか」スクッ

少年「…っ!!」

リア「…?」

少年「あ……あぁ…!」

タッタッタッ

ガシッ!

リア「えっ!?」

少年「きみは僕の兄妹か!?僕を探しに来てくれたのかっ!?」ユサユサ

リア「ひあぁ…」

魔法使い「ちょっと何してるの!?手離して!落ち着きなさい!」



.........








206: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:31:21.03 ID:GZ1lpObE0


少年「僕はテイシロ…って、名乗ってる」(以降、テイシロ)

魔法使い「名乗ってる?」

テイシロ「……」

魔法使い「…そのテイシロくんが、なんでリアちゃんに掴みかかったりしたのかしら?リアちゃんの知り合い?」

リア「いえ…初めてお会いします…」

テイシロ「掴みかかったんじゃ…!さっきは衝動的に動いてしまっただけで!」

魔法使い「……あのね、いくら子供でも女の子にひどいことは絶対にやっちゃいけないの。分かるでしょ?」

テイシロ「そんなつもりはないんだって…!」

テイシロ「…家族かと思ったんだよ」

リア「家族…ですか?」

テイシロ「うん…」

テイシロ「僕、孤児院で育てられたんだ。西国の」

テイシロ「物心ついたときから周りには僕を育ててくれた神父様と、僕と同じような子供ばかり……両親の顔どころか自分の本当の名前さえ知らない」

テイシロ「だから、自分の生まれがどうしても知りたくて飛び出してきた」

魔法使い「飛び出してきたって…一人で?」

テイシロ「僕はもう12だ。それなりの分別はつくし、常識だってある。変な輩が来ても魔法で退治出来る!」

魔法使い「そう言っても、危険なことに変わりはないわよ。こんな幼い子を一人で……大丈夫なの?その孤児院…」

テイシロ「神父様を悪くいうな!」ダン

リア「」ビクッ

テイシロ「あ…ごめん」




207: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:32:05.13 ID:GZ1lpObE0


テイシロ「身寄りのない子を何人も育ててくれて、僕らにとっては親も同然の人なんだ。何かあっても平気なようにって神官としての魔法も教えてくれた」

テイシロ「…でもお優しい神父様だからこそ、僕が旅に出るのには反対した。真実は時に、君たちを傷つけるからって」

テイシロ「神父様には手紙だけ置いて、黙って出てきたんだ」

リア(……)

テイシロ「それでこの国の王都まで来たのはよかったんだけど、広いしまともに取り合ってもらえないしで困っててさ」

テイシロ「唯一の手がかりと言えばこの白い髪だけ。情けないけど、神様に頼めば道を示してくれるかもなんて、ここでお祈りしてたら」

魔法使い「リアちゃんが来たってことね」

テイシロ「うん」

リア(…この子、ずっと孤独の中で生きてきたんだ)

リア(少し前までの私と同じ…)

テイシロ「けどごめんなさい。全然関係なかった」

テイシロ「僕のことなんかこれっぽっちも知らないみたいだ」

テイシロ「迷惑かけた。それじゃ」

魔法使い「待――」

リア「待って!」

テイシロ「!」

リア「私にも、協力させて」

リア「私もあなたのご両親を探すの、手伝います」

テイシロ「え…いやいいよ、同情してもらいたくて話をしたわけじゃ…」

リア「強がらないで」

テイシロ「つ、強がってなんか…!」

ギュ(手を握る)




208: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:33:22.97 ID:GZ1lpObE0


リア「…それでも、だよ」

リア「さっき途方に暮れたって言ってたばかりでしょう?」

リア「それに、一人よりは絶対に良いよ」ニコッ

テイシロ「」ドキッ

魔法使い(強くなったわね、リアちゃん)

リア「魔法使いさん、お願いです。この子の――」

魔法使い「いいわよ。私も同じこと言おうとしてたから」

リア「ありがとうございますっ」

テイシロ「…そ、それじゃ、よろしく…えっと…」

リア「リアンノン。でも長いからみんなリアって呼んでくれるの」

魔法使い「魔法使いよ」

テイシロ「魔法使いさんに…リア」

リア「うん♪」

リア「私もシローって呼ぶね」エヘヘ

テイシロ「っ…お、おう…」

魔法使い(ふふっ)

リア「でも、闇雲に動き回るだけじゃ意味ないですよね……資料館みたいなものがあれば、情報収集が出来るんですけど…」

魔法使い「んー……ん!」

魔法使い「アッシュさんなら何か知ってるかもしれないわ。彼、色んなお国事情を見てきたでしょうから」








209: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:34:41.96 ID:GZ1lpObE0

ーーー宿ーーー

魔法使い「戻ったわよ……あら?」

リア「アッシュさん、いませんね…」

テイシロ「……」キョロ、キョロ

魔法使い「……」

テクテク

魔法使い「」コンコン



勇者「あー?なんだよー?」ガチャ



魔法使い「アッシュさんは?」

勇者「なんか盗賊引き渡しに行くっつって出かけてった」

魔法使い「あぁ、治安維持所に行ったのね」

リア「どうしましょう…私たちも向かいましょうか…?」

魔法使い「すぐに帰ってくるはずよ。ここで待ってましょ」

魔法使い「シローくんもそれでいい?」

テイシロ「!うん、平気」

勇者「……」

バタン

テイシロ「…今の人」

魔法使い「あー、あれは勇者っていうんだけど、いないものと思っていいわよ」

テイシロ「……」

テイシロ(生気がまるで感じられない人だった。何があったんだろう…?)



.........








210: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:35:15.60 ID:GZ1lpObE0


アッシュ「なるほど、テイシロ様のご両親を…」

魔法使い「そうなの。アッシュさん聞いたことないかしら?どんなに小さなことでもいいのよ」

アッシュ「……申し訳ありません。残念ながら私にはそのようなお噂を聞いた記憶はないですね…」

テイシロ「…そうだよな。そう都合よく見つけられるなんて…」

リア「……」

アッシュ「いいえ。諦めるのはまだ早いですよ」

リア「!あるんですね…!なにか糸口になるものが…!」

アッシュ「私にはありませんが、王都に住んでいらっしゃる賢者様なら、ご存知かもしれません」

テイシロ「賢者…」

アッシュ「はい。ご案内致しましょう」








211: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:36:44.99 ID:GZ1lpObE0

5章前半はここまでです。



212: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 06:38:03.42 ID:GZ1lpObE0

賢者のキャラ決め安価を行います。
前回同様、安価で4つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5~100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>213~>>216



213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/14(日) 08:36:18.35 ID:stPt1+Lu0

キャラ名:賢者 レラ 茶髪の髪をしたかなりのナイスバディの女性であるが普段は酒を飲んで常に酔っ払っている
性別:女
年齢:33
得意戦型:剣術 魔法
備考・希望:かつては貴族の血筋の天才少女として名をはせていたが、今はなんだかんだで勘当状態であり、王都で占い師としてひっそり生きている




214: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/14(日) 13:49:55.67 ID:BZEfVpoU0

キャラ名:名前ガルヴァ・容姿小柄で禿げ頭な老人 
性別:男
年齢:90
得意戦型:魔法 体術
備考・希望:飄々とした気のいい老人
戦闘スタイルは魔法使いで戦う通常モードと魔翌力のほとんどを身体強化に充てるマッチョモードを使い分けて戦う




215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/14(日) 14:15:31.71 ID:Q5+4V5U30

キャラ名:ルーファ 賢者(金髪で右目が髪で隠れている。ローブを着ている。結構な美人。)
性別:女
年齢:35
得意戦術:魔法 剣術
備考・希望:クールな性格。聞き上手で色んな人の悩みなどを聞いてきている。様々な魔法が使うことができ戦闘では魔法を中心に戦う。長めの木剣を所持しており魔法だけではなく剣術も得意でかなりの腕前である。幼い頃に両親が事故で亡くなり施設で暮らしていた過去がある。



216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/14(日) 14:50:43.43 ID:lsb1jqGDO

キャラ名:シュナ・賢者・黒いブカブカのローブを着た幼児体型の女性。前髪で目が隠れている
性別:女
年齢:???歳(自称永遠の10代)
もし年齢をはっきり決めなければ駄目なら35歳で
得意戦型:魔法 体術
備考 希望 天然ボケで捉えどころのない部分もあるが基本的には物静かで大人しい性格
体術は柔術やコマンドサンボなどのような間接技中心



217: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 15:06:19.76 ID:GZ1lpObE0

候補が出揃ったため、>>218のコンマで決定します。

00~24:レラ
25~49:ガルヴァ
50~74:ルーファ
75~99:シュナ

>>216 年齢をはっきりなどの制約は特にないので大丈夫ですよ



218: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/14(日) 15:08:32.14 ID:kpQWqz9/0





219: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/14(日) 15:11:04.34 ID:GZ1lpObE0

コンマ14で賢者は

キャラ名:賢者 レラ 茶髪の髪をしたかなりのナイスバディの女性であるが普段は酒を飲んで常に酔っ払っている
性別:女
年齢:33
得意戦型:剣術 魔法
備考・希望:かつては貴族の血筋の天才少女として名をはせていたが、今はなんだかんだで勘当状態であり、王都で占い師としてひっそり生きている

に決定です。
次回の投下はまた後日となります。



221: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:45:53.38 ID:d2dAFaLW0

5章後半投下していきます。



222: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:46:52.36 ID:d2dAFaLW0

ーーー王都 裏路地ーーー

ザッザッザッ

リア「ほ、本当にこのような場所に賢者様がいらっしゃるのでしょうか…?」

アッシュ「最後に訪れたのは2年ほど前ですが、その間に居住を変えたという話は聞いておりません」

魔法使い「アッシュさん旅に出ていたんじゃなかったの?」

アッシュ「賢者様は様々な意味で有名人ですから、お噂くらいは耳に入ってきますよ」

勇者「……アッくん、本当なんだろーな?例の賢者、めっちゃ美人のナイスバディって」ボソッ

アッシュ「ここにきて嘘は吐きませんよ」ボソッ

勇者「っし」

魔法使い「なによ?」

勇者「なんでもー」

リア「…あっ…!」ツルッ

テイシロ「っ!」グイ

テイシロ「気を付けてな。ここ足元急だから」

リア「うん…ありがと」ニコリ

テイシロ「…し、心配だからこのまま手つないで――」

アッシュ「見えましたよ、あれです」



(占い処 八卦)

掛け札『臨時休業中』



魔法使い「占い…?」

アッシュ「今は占い師として暮らしているのですよ」

トントン

全員「………」

リア「…留守にされてるのでしょうか」

アッシュ「いいえ、この札を掛けている時は大抵」

トントントン

ガチャ キィ...

テイシロ「ドアが勝手に…」




223: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:47:32.87 ID:d2dAFaLW0




「入っておいで」



アッシュ「失礼致します」

ゾロゾロ

妙齢の女性「これはまた、賑やかそうな子達じゃないの」

勇者(おぉ…で、でけー!)

アッシュ「突然の訪問をお許しください、レラ様」

妙齢の女性(以降、レラ)「アシュ坊は変わらないねぇ。以前と一言一句同じ挨拶だ。あの子のお付き辞めて、今度はその子らの執事になったってわけかい?」グビッ

アッシュ「また明るいうちから酒など…お体に悪いですよ」

レラ「くはは、余計なお世話よ」ヒック

魔法使い(この人が賢者。…イメージと全然違うけど…)

魔法使い(この小屋の中を見る限り、間違いないんでしょうね)

アッシュ「今の私は執事ではなく、ただの夢追人です」

レラ「ふ~ん…ご苦労なこったい」

レラ「んで、あたしに何の用だい。表の札は見たろ?占い稼業はお休みだよ」

リア「…あの!賢者様、お願いがあってここに来ました…!」

リア「シローの…テイシロさんのご両親について、教えていただけませんか…!」ペコッ

テイシロ(リア…)

テイシロ「お願いします!」ペコリ

レラ「そう来たか」チラッ

勇者(?今こっち見た?)




224: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:48:49.86 ID:d2dAFaLW0


レラ「……」グビッ

レラ「偶にいるのよ。ここを何でも屋か何かと勘違いしてる輩がさ。あたしは神様じゃないんだ、この世の全てを把握なんてしちゃあいない」

リア「……」

アッシュ「レラ様でも分からないとなりますと、これはもうテイシロ様の孤児院から手がかりを見つけ出す他ないかもしれませんね」

レラ「はやるなよアシュ坊。誰も分からないとは言ってないよ?」

テイシロ「え…!」

レラ「見えるのさ、あたしには。その水晶玉にバッチリとねぇ」

(机上に鎮座する水晶玉)

魔法使い「…何が映ってるんです?」

レラ「知りたいかい?教えてやってもいいけど、ただじゃ面白くない」ククッ

レラ「そうだね、そのテイ坊とやらがあたしと闘技をして勝ったら、教えてやろう」

リア「…何故ですかっ。彼は生まれてからずっと、自分のことを何も知らずに生きてきたのです…!」

リア「せっかく届きかけたのに、その道を塞ぐようなこと…!」

レラ「欲しければ勝ち取るんだよ」

レラ「何もしないで答えが寄ってくるほど、世界は甘くないよ」

リア「そんな…」

テイシロ「…僕、やるよ」

テイシロ「賢者様はチャンスをくれた。断る理由はない」

テイシロ「それにもしかしたら、賢者様が精通してるのは知識だけで、闘技はからっきしかもしれないしさ」

レラ「くふ…よく言った。手加減はしてやるさね」

レラ「じゃ、場所整えるから脇に退いててくれ」

テイシロ「え?は、はい」




225: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:49:16.09 ID:d2dAFaLW0


レラ「"拡張"」

グイン!

勇者たち「!?」

リア「一瞬で…」

テイシロ「部屋が…」

魔法使い(広くなった…)

魔法使い(元々この小屋、外から見た大きさと中の広さが違ってた。この人が使用している魔法、信じられないけど――)

レラ「"生成"」

ズズズ...

勇者「あ、これ闘技場か」

魔法使い(空間操作魔法)

魔法使い(すごいなんてもんじゃない。こんなの現代に扱える人が残ってるなんて…)

レラ「興味あるかい?使えると何かと便利よ」

レラ「あんたなら、修行を積めばあるいは」

魔法使い「私…ですか?」

レラ「」グビ、グビ

レラ「ヒック、火魔法が得意で胸の控えめな女の子1名、募集しておこうか」クスッ

魔法使い「っ!?」

勇者「ぷっ」

魔法使い「」ジロッ

レラ「アシュ坊、審判頼めるかい?」

アッシュ「畏まりました」



.........








226: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:49:49.35 ID:d2dAFaLW0


テイシロ「……」

レラ「そう硬くなりなさんな。勝てるものも勝てなくなっちゃうよ?」

(宙に浮く木剣)



勇者「剣、浮かしながら戦う気かね」

アッシュ「完全に遊んでますね、あれは。レラ様は魔法の腕は言うまでもありませんが、元々剣術にも長けているのですよ」

アッシュ(私もかつてはレラ様のようにと)

魔法使い「いくら何でも無茶よ。あの人の魔法は文字通り次元が違う」

勇者「あぁ確かに、異次元だよな」

(レラのふくよかな胸)

魔法使い「…なんであんたまで来たの?」

勇者「駄目か?俺っちも賢者さんつーの見ときたかったのよ」

勇者(優勝賞品の美女が手に入んないんだ。尚更王都のお色気さんたちを見逃す手はない!)

魔法使い「余計な茶々いれんじゃないわよ」

勇者「うぃーす」

リア「……」

リア(シロー…)ギュ...






227: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:50:55.71 ID:d2dAFaLW0


レラ「ぼちぼち始めようかねぇ」

テイシロ「…っ」

アッシュ「それでは、両者前へ」

テイシロ(気圧されるな…僕には神父様から教わった魔法がある…!)

テイシロ(子供だからって甘く見てると)

アッシュ「始め!」

テイシロ(足元をすくわれるんだ!)

テイシロ「"通雷"!」

レラ「"通雷"」

バチンッ!

テイシロ「は…?」



魔法使い「打ち消した…全く同じ威力の同じ魔法で…」

勇者「そんな驚くことなん?」

アッシュ「魔法の強さには個人差がありますからね。寸分の狂いもなく打ち合わせることは普通出来ません」



レラ「やるねぇテイ坊。綺麗な花火じゃないか」

テイシロ「くっ…」

テイシロ「"射光"!」

レラ「"集光"」

ピカッ!

シュルルル...

レラ「これだけあれば夜は電気要らずで過ごせそうね」ククッ



魔法使い「集光なんて魔法あったかしら?」

アッシュ「適当に名前を口にしてるだけです。あれくらいの芸当であれば詠唱などせずに為せるはず」

リア「……」






228: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:51:26.28 ID:d2dAFaLW0


テイシロ(今のはほとんど全力だったのに)

テイシロ(駄目だ…単純な魔法じゃ絶対に勝てない)

テイシロ(けどまだ終わりじゃない)

テイシロ「…"光速"」

シュンッ

レラ「!」

テイシロ「喰らえっ!」

スカッ

レラ「」スー...

テイシロ(透過した…!?)

ポンポン(木剣に肩を叩かれる)

レラ「くふふっ。あたし実は幽霊だからさ、物理攻撃は効かないのよ」



勇者「え、マジで」

アッシュ「ジョークですよ。生身の人間です」

リア(光速は確か、魔力で作った道の上を瞬間的に移動する魔法…)

リア(じゃあ賢者様が行った瞬間移動は何…?)

魔法使い「厳しいわね…。大の大人が赤ちゃんの相手をしてるようなものよ」



レラ「さて、お次は何を見せてくれるのかな?」

テイシロ「ちきしょう…」

テイシロ(だったら、全部の魔力使い切るつもりでやってやる!)



.........








229: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:51:59.45 ID:d2dAFaLW0


テイシロ「"落雷"!」

パキン

レラ「ふぅ、酔いも覚めてきそうね」

テイシロ「はぁ…はぁ…」

テイシロ(これも駄目)

レラ「どうしたの?あれからあたしを一歩も動かせてないよ」

テイシロ(こっちは常に全力で打ってるのに、詠唱も無しに全て無効化される)

テイシロ(光速を仕掛けようにもその度にあの木剣が進路上に先置きされてて突っ込めない)

テイシロ(僕が何をしようとしているか、全て読まれてる…)

レラ「まさかこれで終いなんて言わないよねぇ。こんなんじゃ君、いつまで経っても親のことなんか分かりゃしないよ」

レラ「それともその程度の覚悟だったってことかい?」

テイシロ「……」

レラ「まぁいいさね。知らない方が幸せなことだってある。今の生活が苦痛じゃないんなら元に戻ってあげた方が、いいんじゃないかな」

テイシロ「っ」



ーーーーー

神父「テイシロ、お前は私達の家族だ」

神父「何も遠慮することはない。これからも共に暮らし、共に泣き、共に笑おう」

ーーーーー



テイシロ(そう言って手を差し伸べてくれた神父様を置いて、僕はここに来たんだ)

テイシロ(真実を知ったその上で、神父様たちと一緒に生きたいと言うために!)




230: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:53:40.84 ID:d2dAFaLW0


テイシロ「僕は…絶対に諦めない!」

レラ「じゃあ、どうする?」

テイシロ(効くか効かないかとか、疲れる疲れないだとかもういい)

テイシロ(全身全霊ありったけを込める!)

テイシロ「僕の本気の本気の本気だっ!」

レラ「……」ニッ

テイシロ・レラ「「"光子"!」」

ブワァア!

――ズシャンッ!



魔法使い「うっ…すごい余波ね…」

アッシュ「あれだけのエネルギーがぶつかっていますからね…!」

勇者(…あいつ)



テイシロ「うぉおおお!」ゴォォ!



勇者(なんであんなに必死になってんだ。どうせ負けるって分かってる試合だろうに)

勇者(ガキだからか?死ぬ気になれば何とでもなると思ってんのか…?)

勇者(んな無駄な労力使ってまで勝ち取る必要があるもんなのかよ)



ーーーーー

「――だれにも負けない、さいきょうの――」

ーーーーー



勇者(……?)






231: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:54:20.25 ID:d2dAFaLW0


レラ「くははは!いいじゃない!子供にしては大した魔力だよ」

テイシロ「おおおおぉ…ゲホッ…!」



リア「あ…!」

リア(あんなに急速に魔力を放出して、とても苦しいはずなのに…)

リア(やめて、って言ってあげたい。私もあなたの旅に付き合うよって)

リア(でも――あなた自身が、あなたの目がまだ戦っているから)

リア「負けないで、シロー…!」



テイシロ(…!)

テイシロ「ぉ……らぁああああああ!!!」

ゴウッ!

レラ(んっ!?)

レラ「この子は…!」ジリ

アッシュ「!」

レラ「"封魔"」

ブシュー

テイシロ「わ…」フラ

トサッ...

レラ「ドクターストップ」

レラ「勝ち取れとは言ったさ。でもね、命を落としちゃ本末転倒だよ」

テイシロ「」グッタリ




232: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:54:51.23 ID:d2dAFaLW0


テイシロ「」グッタリ

アッシュ「レラ様」

レラ「分かってる。今回は無効試合としておくよ。あたしはここで待ってるから、いつでも――」

アッシュ「そうではなく、足元が」

レラ「ん?」チラッ

アッシュ「場外、ですね」ニコッ

レラ「……」

レラ「なんだい、あたしの負けか」ククッ

リア「シロー!」テテテッ

リア「ねぇ…!聞こえるっ?私が誰だか分かる…!?」

テイシロ「……リア……」

リア「よかった…」ギュ



.........








233: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:55:40.57 ID:d2dAFaLW0


レラ「」スッ

――ヒラ(宙空に現れる紙)

テイシロ「っと、と」パシッ

テイシロ「…地図?」

レラ「王都の一画さね」

レラ「印の付いた家がある。そこが、さっき水晶に映ってた場所だよ」グビッ

レラ「ぷはっ、運動後の酒は格別だねぇ!」

テイシロ「ここに行けば、僕の生まれが…」

レラ「今から行くもよし。一晩寝てから行くもよし。…行かないという選択肢もある」

レラ「後はテイ坊のしたいようにしな」

テイシロ「行きます」

レラ「ふっ」

ポスッ

レラ「まったく、無茶な坊やだよ。自分の身を省みずに魔力を酷使しようだなんて」

レラ「まさに捨て身ってやつかい!」ワシャワシャ

テイシロ「おぅ…おぉ…」ナデラレ

レラ「まぁ、心意気は伝わったよ」

レラ「あんた立派な男になれる」

テイシロ「…うん!」

リア「賢者様、ありがとうございます」

レラ「お礼を言われるようなことはしてないさ」

レラ「労いならテイ坊にかけておやり?その方が嬉しかろうよ」

リア「ふふ、そうですね」

リア「頑張ったね、シロー」ナデナデ

テイシロ「っ…ね、労いってこれかよ」

リア「嫌だった?」

テイシロ「嫌じゃないけど、同い年にいい子いい子って、なんかさ…」

リア「………シロー?」

リア「私ね、多分あなたより5つくらい歳上だと思うなぁ」ニコニコ

テイシロ「…え!?!?」




234: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:56:08.58 ID:d2dAFaLW0


アッシュ「レラ様、私からもお礼を言わせてください」

レラ「よしてくれよ。お人好しばかりかいあんた達は」

レラ「用が済んだならお帰り。あたしは敗北の慰め酒をやらなくちゃならないんだからさ」グビッ

魔法使い「…いつか、その…」

魔法使い「魔法、教わりに来てもいいですか?」

レラ「…くふっ」

レラ「気が向いた時に来なよ」ニッ

勇者「……」

アッシュ「今度上質の酒を持って参ります。ではこれにて」

ゾロゾロゾロ

レラ「待った」

レラ「そこの、一番後ろのだけちょいと残りな」

勇者「…え」

勇者「俺っち!?」








235: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:57:22.33 ID:d2dAFaLW0


レラ「んく、んく…」グビ、グビ...

勇者(こんなお姉さんに呼び止められるなんて、俺っちってもしかしてスーパーウルトラツイてる?)

勇者(何してくれるんかな。まさか、まさかまさかの…!?)

勇者「うへへ…」

レラ「酒、飲むかい?」

勇者「いえっ、お酒よりも既に貴女の美しさに酔ってますので」キリッ

レラ「くっは!あたしを口説く気かい!」

レラ「安くないよ?遊びならやめとくれ」

勇者「遊びなんてとんでもない!」

レラ「ま、それはいいさね」

勇者(流された…)

レラ「あんたを呼び止めたのは、簡単なことさ。悩みがあるんだろう?」

勇者「へ……大会のこと?」

勇者「それなら平気だぜ。もうとっくに解決したかんよ」

レラ「――どうしても思い出せないことがある」

勇者「!!」

レラ「差し詰めそんなところだろうね」

勇者「………」



ーーーーー

「――さいきょうの――」

ーーーーー



勇者(……)

レラ「特別サービスだよ。水晶玉をよーく見ておきな」

勇者「え…?」

勇者(水晶玉?綺麗だけどただそれだけ…)

勇者(!…なにか、映ってる…?)




236: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:57:51.72 ID:d2dAFaLW0




ーーーーー

幼魔法使い「グスン…ヒック…」

幼勇者「魔法使いよーまた泣いてんのかー?」

幼魔法使い「だってぇ…かんたんな魔法もできなくて…」

幼勇者「めそめそしてんな!おれっちがいてやっから!」

幼魔法使い「…こんなだめなわたしでも、いてくれるの…?」

幼勇者「あたぼうよ!心配すな、おっきくなったらおれっちがお前のこと一生守ってやっからよ!」

幼魔法使い「…えへっ…うん…!」

幼魔法使い「勇者わたしね、いっつも楽しそうに闘技をしてる勇者がすき」

幼魔法使い「だれにも負けない、さいきょうの勇者がね、だいすき!」

幼勇者「へへっ、任しとけ!」

幼勇者「おれっちこそ、未来えーごーさいきょうの男だかんな!」

ーーーーー






237: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:58:21.45 ID:d2dAFaLW0


勇者「………あ」

勇者(さいきょう………最、強………)

勇者「………そっか………」

レラ「……」グビッ

勇者(……………)

勇者「」ダッ!

ガチャッ バタン!

レラ「…ドアはもう少し静かに閉めて欲しかったかな」

レラ「若いって、いいねぇ」

レラ「……くふ」

レラ「頑張れ、英雄の息子よ」

グビッ...








238: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:58:51.07 ID:d2dAFaLW0

ーーーーーーー

タッタッタッ!

リア「あ、戻ってきましたよ…!」

勇者「」タッタッ...

勇者「ふぅ…ふぅ…」

魔法使い「賢者様何ておっしゃってたの?というかなんであんたそんなに急いでんのよ」

勇者「アッシュ!いやアッシュ先生!」

アッシュ「…!」

勇者「お願いだ!大会までの残り時間目一杯、俺っちに稽古をつけてくれ!」

勇者「俺っち、勝ちたい!勝って勝ってそんで――」

勇者「最強になりてーんだ!」

魔法使い「勇者…?」

テイシロ(さっきまでとは、別人みたいな顔付きになってる)

アッシュ「小手先の技しか身につかないかもしれませんよ?」

勇者「それでもいい!強くなんならなんでもするさ!」

アッシュ「……分かりました」

アッシュ「生半可な修行では優勝など到底無理です。弱音吐いて逃げ出さないようにしてくださいね」ニコッ








239: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/18(木) 23:59:26.83 ID:d2dAFaLW0

ーーー翌日 宿近く 無人の野原ーーー

勇者「……」(ジッと黙祷)

勇者「……」

アッシュ「エントリー済ませて参りましたよ」ザッザッ

アッシュ「どうですか?少しずつ分かるようになってきましたか?」

勇者「…アッシュ先生、確か俺っちに稽古をつけてくれるんだよな」

アッシュ「えぇ」

勇者「これは、なんなんでしょうか」

アッシュ「礼儀を知る修行です。これも歴としたお稽古ですよ」

アッシュ「勇者様は少々お相手に対する敬意を忘れがちですからね」

勇者「んなこと言われたって、敬意なんてどう意識しろってんだ…」

アッシュ「だからこその修行です。これを機に他者を敬う気持ちを覚えましょう」ニコッ

アッシュ「礼儀を知ることで、より相手が鮮明に見えてくるのですよ」

勇者「…頑張ります」

魔法使い「ここにいたのね」

魔法使い「アッシュさん、私たち賢者様が教えてくれた場所に行ってくるわ」

アッシュ「テイシロ様の、ですね?」

魔法使い「そう」

アッシュ「どうぞお気を付けて。我々はここにおりますので何かあればいらしてください」

勇者「……」ジッ

魔法使い「……」

魔法使い「ん、分かった」








240: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:00:19.59 ID:74TzIOeD0

ーーー王都 郊外ーーー

魔法使い「地図だとこの辺のはずよね」テクテク

リア「似たお家が多いので注意しないといけませんね…」テクテク

テイシロ「……」

リア「シロー?」

テイシロ「あ、ごめん」タッタッ

魔法使い「……怖い?」

テイシロ「…怖くない」

テイシロ「って言ったら嘘だけど、それで怖気付いちゃうくらいならここまで来てないよ」

魔法使い「もっともね」

リア「魔法使いさん、ここじゃないですか?」

(一戸の民家)

魔法使い「間違いなさそうね。周りもこの地図通り」

テイシロ「……」

コンコン

魔法使い「ごめんください」

テイシロ「………」

リア「大丈夫」

テイシロ「うん…」




241: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:00:56.79 ID:74TzIOeD0




カチャ...



初老の女性「…どちら様?」

魔法使い「いきなりごめんなさい。どうしてもお聞きしたいことがあって来ました」

魔法使い「テイシロ、という男の子を知ってますか?」

初老の女性「テイシロ?いいえ、知らないわ」

魔法使い「この子が貰った名前です」

魔法使い「この子、小さい頃からずっと孤児院で育ってきたらしいんです。自分を産んでくれたお母さんの名前も知らずに。それでご両親のことを探して旅をしている最中なんです」

初老の女性「孤児院…?」

テイシロ「……っ」

初老の女性「!」

初老の女性「あなた、もう少しお顔を上げてくれるかしら…?」

テイシロ「ん」

初老の女性「……その孤児院には、恰幅のいい神父さんが居て、花の綺麗な丘があった?」

テイシロ「!…はい」

初老の女性「そう、やっぱり…」

初老の女性「ここじゃなんだから、上がっておゆきなさい」








242: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:01:38.83 ID:74TzIOeD0

ーーーーーーー

勇者「……」ジッ

アッシュ「……」

勇者「……」ジッ...

アッシュ「……」

勇者「………んあー!」

アッシュ「勇者様」

勇者「これ本当に意味あるんか!?座って考え事してるだけじゃ!?」

アッシュ「強くなりたいのでしょう?」

勇者「そうだけど…!」

アッシュ「とはいえ、無理強いはしません」

アッシュ「勇者様が無駄と感じられるのでしたら、体術か剣術の鍛錬に移ってもよろしいですよ」

勇者「……」

勇者「いや、やる」

勇者「俺っちが強くなるために必要なんだよな?だったらやる」

アッシュ「…ふふ、合格です。では体術の鍛錬から行いましょうか」

勇者「はい?」

アッシュ「試すような真似をしてしまい申し訳ありません」

アッシュ「今、貴方は私を信じ、託してくれましたね。自らだけでなく相手も思考に組み込む。それが礼儀の原点と言えるでしょう」

アッシュ「そのお気持ち、お忘れなきよう」ニコッ

勇者(こ、こんなんでよかったのか…?)

アッシュ「さぁ何してるのです?早く始めますよ。時間は極めて少ないのですから」

勇者「…おう!」








243: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:02:53.42 ID:74TzIOeD0

ーーーーーーー

初老の女性「粗茶くらいしか出せなくてごめんね」

魔法使い「いえ」

初老の女性「よっこいしょ。…どこから話したものかしらね」

テイシロ「……」

初老の女性「結論から言うと、あなたの父親は生きているし、母親はどこに居るかも分からないの」

リア「お父様は生きているんですね…!」

初老の女性「けど、あなたのことは知らない」

テイシロ「え…」

初老の女性「10年以上前のことよ」

初老の女性「あなたの母親はとある貴族の男性と恋をしたの。平民の女が貴族の殿方と許可無く交際することは禁じられてる上に、相手は婚約も決まっている身でね。それでも二人は強く惹かれ合って、何度も逢瀬を重ねたんだって」

初老の女性「でも、貴族様の行動を怪しんだ婚約者に見つかってしまい一転、彼女は追われる身となった。そうして逃げる折、私のところに転がり込んで来たのよ」

魔法使い「お知り合いだったんですよね?」

初老の女性「そうね。昔からの付き合いだった。けど私が事情を知ったのはその時が初めてで……あれだけ泣きじゃくって謝る姿を見るのも初めてだったわ」

リア「ご友人も危険に晒してしまうから…」

初老の女性「それもあったかもしれないねぇ」

初老の女性「彼女は、自分が抱えた赤ちゃんに謝っていたのよ」

テイシロ「――っ」

魔法使い「それが…」

初老の女性「……」コクリ

初老の女性「聞けば一人でお産をしたっていうじゃないの。誰にも知られるわけにいかないからって」

初老の女性「そして彼女はこう言った」




244: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:03:32.07 ID:74TzIOeD0




ーーーーー

「お願い…!この子を西国の孤児院へ預けて欲しいの…!私といるとこの先絶対に幸せにはなれないから…」

「ごめん、ごめんね…!身勝手な母でごめんねっ…!」

ーーーーー



初老の女性「その際、誰の子かを一切伏せて…とね」

初老の女性「だからあなたのことを知っているのは、あなたの母親と私だけ。父である貴族様も知らない」

テイシロ「……」

初老の女性「その綺麗な白い髪は、母方譲りなのよ」

初老の女性「彼女が今どこに居るのか、逃げ続けているのかそれとも……あれから連絡はないわ」

リア「…貴族様にお会いするのは…」

初老の女性「やめた方がいい。ただじゃ済まないよ」

魔法使い「ですよね…」

初老の女性「あなたはあなたで、幸せになる道を見つけてあげなさいな」

テイシロ「……はい」

初老の女性「それにしても、今はそうすると…12歳!」

初老の女性「とっても大きくなったわねぇ」ニコ...








245: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:04:37.24 ID:74TzIOeD0

ーーー帰り道ーーー

テイシロ「……」

リア「……」ソワ...

魔法使い「……」

リア(シロー…)

リア(ちゃんと事実を知ることが出来たのに、分かったのはシローがひとりぼっちになっちゃうってことだけ…)

リア「……」グッ..,

テイシロ「よし、決めたっ」

魔法使い・リア「「!」」

テイシロ「僕、大きくなって、誰かを守れるくらい強くなったら母さんを探しに行く」

テイシロ「大切な人を守れるんだぞって、母さんを安心させに行くんだ!」

魔法使い「きっと喜んでくれるわよ」

テイシロ「僕になんて名付けようとしたのかも聞きたいしな」ヘヘッ

テイシロ「魔法使いさん、リア、ここまでしてくれて本当にありがとう。自分の生まれを知れたこと、僕後悔してないから」

リア「…うん!どういたしまして」

テイシロ「神父様が心配してるだろうから、明日には帰ろうと思う」

テイシロ「だからさ、その……」

テイシロ「…リア!」

リア「ん?」

(着ていたローブを脱ぐ)

テイシロ「これ!預かっててくれ!」

テイシロ「僕が強くなって……守れるようになったら、取りに来るから」

リア「え、え…?でも、これ神父さんからもらったものじゃないの…?」

テイシロ「い、いいんだ!僕なりの決意だから!」

魔法使い(まあ…大胆ね。これ、ほとんど告白じゃないの)フフ

リア「……分かった」

リア「待ってるね」ニコリ








246: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:05:03.14 ID:74TzIOeD0

ーーー宿ーーー

魔法使い「もう真っ暗…思ったより遠かったのね」

...グゥ

テイシロ「……//」

リア「お腹、空いちゃったね」

テイシロ「うぅ…」

魔法使い「ふふっ、夕食にしましょうか」

魔法使い(アッシュさんと勇者がまだいないけど)

魔法使い(……)

魔法使い(稽古、なのよね)








247: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:05:30.46 ID:74TzIOeD0

ーーー特訓2日目 大会まであと13日ーーー

勇者「」ヒュッ、ビュオ

アッシュ「まだまだ遅いです!余計な場所に目を向けない!」

アッシュ「速く速く!」

勇者「せあっ!!」ギュン!

アッシュ「そうです!」

...ザッザッ

テイシロ「…す、すごい」

勇者「」ダダンッ

テイシロ(僕もあれくらい強くなれるかな)

テイシロ「あのさ、取り込み中に悪い。僕これから西国に帰るよ」

アッシュ「お一人で平気ですか?」

テイシロ「うん。賢者様のこと、感謝してる」

アッシュ「はいお元気で。またどこかでお会いしましょう」ニコッ

アッシュ「ほらまた!目線が泳いでますよ!」








248: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:06:10.82 ID:74TzIOeD0

ーーー特訓4日目 大会まであと11日ーーー

アッシュ「――よし、いいでしょう。5分間の休憩にします」

勇者「ゼェ……ゼェ……」

勇者「5分…ゼェ…せめて、10で……!」

アッシュ「なりません」

アッシュ「休憩後はまた剣術です。勇者様の強みである体術と剣。どちらも満遍なく伸ばしていきましょう」

勇者「ひーっ…りょーかい…」

勇者「こりゃ…ハァ、ぜってー優勝して…美女ちゃんに癒してもらわんと…!」

アッシュ「おや、当てがあるのですか?」

勇者「賞品だよ賞品、大会のさ」

アッシュ「そのようなものはありませんが」

勇者「………なぬぃっ!?」



.........








249: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:07:12.58 ID:74TzIOeD0

ーーー特訓9日目 大会まであと6日ーーー

レラ「や。来ちゃった」

アッシュ「レラ様。貴女様が外へ出られるとは些か珍しいですね」

レラ「人を引き籠もり扱いしないで頂戴な」

レラ「んー?」

勇者「」ヒュッヒュッ!

ズアッ!

レラ「ほぉ。意外と様になってるじゃないか」

アッシュ「やはり驚異的なのです、彼の伸びは。たった数日でここまでものにしてしまうのですから」

レラ「……」ニィ



ザッザッザッ



レラ「元気そうね、坊や」

勇者「あっ、賢者のお姉さん!」

レラ「えらい量の汗だ。ちゃんと風呂は入りなよ?」

勇者「水浴びときゃ平気さ。ちっと汗くさい方が男っぽかったりしねーか?」ハハッ

レラ「くふ、嫌いじゃないさね」

レラ「なぁあたしと手合わせしてみないかい?」

勇者「お姉さんと?」

アッシュ「いいかもしれませんね。レラ様は私よりも剣の腕は上。姫騎士様と戦うことを考えれば願ってもない申し出です」

勇者「だけどよ、俺っちあんな魔法使われたら対処できっかどうか…」

レラ「魔法は使わない。正々堂々剣だけの交わし合いさ」

レラ「アシュ坊、それ借りるよ」

アッシュ「どうぞ」(木剣を渡す)




250: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:07:41.62 ID:74TzIOeD0


勇者「ま、マジすか」

レラ「どれどれ」ザッ

タユン

勇者(やべ、集中できっかな…)チラ

レラ「よそ見してたら伸しちまうよ?」スッ

勇者「!」

ガン!

勇者(重っ!今の動きからこの衝撃っ!?)

勇者(俺っちだって…!)

勇者「」ヒュッ

レラ「ほれ」ガンッ

勇者「ふっ!」ヒュンッ

レラ「ここ」ガンッ

勇者(もらった!)

ギュン――

レラ「」クルン

勇者(!?)

バシィ!

勇者「ぎゃっ!」

レラ「はい一本」

アッシュ「剣も変わらず、衰えていませんね」

勇者「っつー…なんだよ今の」

レラ「なかなか華麗だったろう」

勇者「どんな腕の使い方してんだ…」

勇者(…けど、見えない動きじゃなかった)

勇者「お姉さんもっかい頼む!」

レラ「くふっ、次は受け止めてくれよ?」



.........








251: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:08:20.17 ID:74TzIOeD0


ザンッ!

勇者「ぐはっ」

ドサッ

勇者「うぅ…ちくしょー…」

レラ「そろそろ一息入れようかね」

勇者「問題ねー!俺っちまだまだやれんさ!」

レラ「あたしが休みたいのよ」

レラ「ねぇ、水持ってきて頂戴」

アッシュ「はい、ただいま」

タッタッタッ...

勇者「水ぅ…助かる…!」

勇者「でもさ、お姉さんなら魔法で水くらい出せんじゃないの?」

レラ「!」

レラ「くくっ、鋭いね」

レラ「坊やお伽噺は好きかい?」

勇者「おとぎ話?」

レラ「そうさ」

レラ「昔々、とある国に一人のお姫様がいました」

レラ「小さな国のお姫様は王様にとても愛されて育ち、お姫様もまた、そんな王様のことが大好きでした」

レラ「ある日王様はお姫様の"力"に気付きました。その"力"は人々の胸を打ち、国に幸福をもたらす特別なもの」

レラ「そうしてお姫様の"力"で、国はみるみるうちに大きくなっていきました」

レラ「今日も王様はお姫様を頼りに、お姫様は大好きな王様の求めに応えるため"力"を使い続けます」

レラ「めでたしめでたし」




252: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:08:52.90 ID:74TzIOeD0


勇者「え、終わり?」

レラ「終わり」

勇者「なんてーか…雑っ」

勇者「まさかお姉さんのことだったり」

レラ「それこそまさかだよ」

勇者「ふーん…」

勇者「なんか楽しくなさそうだな、そのお姫様」

レラ「……」

勇者「あー、まぁ、本人たちが幸せならそれでいいんかなー」

レラ「フッ、そうさね」

勇者「お姉さんは大会出ないん?」

レラ「あたしは出ないよ」

勇者(軽く優勝しちゃいそうなのになぁ)

勇者(ぶっちゃけ勝てる気がしない。…今はまだ)

レラ「出たくても出れないしね」

勇者「?」

アッシュ「お待たせ致しました」

勇者「おっ!サンキュ先生!」

勇者「んく、んくっ」

アッシュ「飲み過ぎてお腹を重くしないように」

レラ「じゃ、それ飲んだら再開だ」








253: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:09:25.27 ID:74TzIOeD0

ーーー夕方ーーー

魔法使い「アッシュさんお疲れ様。これ、差し入れ持ってきたの」

アッシュ「これはこれは。わざわざありがとうございます」

勇者「ぐー……すー……」

魔法使い「寝てる…」

アッシュ「仮眠中なのです。今日は特に激しいメニューでしたから」

勇者「ぐがー……」

魔法使い「何も土の上で寝ることないのにね」

魔法使い「どうなんですか、勇者は。強くなってます?」

アッシュ「驚くべき速度で成長しています。1教えれば3か4程を出来るようになるのです」

アッシュ「大会の優勝もいよいよ現実味を帯びて参りましたよ」

魔法使い「…そうなんだ」

勇者「むにゃむにゃ……」

魔法使い「………」








254: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:09:52.71 ID:74TzIOeD0

ーーー特訓14日目 大会前日ーーー

勇者「」スササッ

クルッ ブォン!

アッシュ「お見事です」

勇者「ふ~。お姉さんの技、使ってみると結構おもしれーなー」

アッシュ「技に頼り過ぎないようにするのですよ」

勇者「オーケーオーケー。心得てるぜ先生」

アッシュ「よいでしょう」

アッシュ「さて、これにてお稽古は終了に致します。もう前日ですからね、怪我や疲れを残さないよう過ごすのが最後の鍛錬です」

勇者「…いいんか?俺っち、これで勝てる?」

アッシュ「勝てます」

アッシュ「と言いたいところですが、それは貴方次第ですね」

アッシュ「勝つと思えば勝てるかもしれません。負けると思えば負けてしまうでしょう」

勇者「………」

勇者「負けるわけないっしょ!俺っち、最強なんだかんさ!」

アッシュ「では、勝つしかありませんね」

勇者「だからもうちっとだけ自主練してく」

アッシュ「無理は禁物ですよ」

勇者「うぃっす」

アッシュ(…久々に、あそこへ行ってみましょうか)








255: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:10:34.67 ID:74TzIOeD0

ーーー小さな池のほとりーーー

アッシュ「……」

アッシュ(変わってしまいましたね、ここは)

アッシュ(あの頃はもっと広く見えたものです)

アッシュ「…いえ、変わったのは私の方ですか」フッ



...ザッザッ



侍女「……」

アッシュ「…!」

アッシュ「懐かしいですね。貴女とここに居ると、昔を思い出しますよ」

侍女「…何故戻ってきたのです?」

侍女「言ったはずです。貴方では姫騎士様を救えないと」

アッシュ「旅先で捕らえた盗人を届けにきただけですよ」

侍女「受付所で貴方の姿を見たという者がいます」

アッシュ「そのついでに、英雄を育てていました」

侍女「英雄…?」

アッシュ「えぇ。最強の、ね」

侍女「……っ」

侍女「それが姫騎士様を救うと?」

アッシュ「さて。彼はただ、勝ちたいだけのようですから」

アッシュ「結果として救われる者なら、いるかもしれませんがね」ニコッ




256: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:11:11.02 ID:74TzIOeD0


侍女「貴方は……そこまで愚かだったのですか」

侍女「生半可な手出しでは傷を負うだけです。その者も、姫騎士様も」

侍女「手を引きなさい」

アッシュ「引きませんよ」

侍女「……」

アッシュ「……」

侍女「…姫騎士様は、この国の英雄です」

侍女「かつて小さく発言権もなかったこの国を、闘技の実力だけでここまで押し上げたお方」

侍女「民衆と、何より国王様の多大なご期待を背負って日々必勝の闘技に明け暮れる…」

侍女「…何故、こうなってしまったのですか…」

アッシュ「……」

侍女「彼女に剣の才能があったから…?彼女が国王様のことを誰より好いているから…?」

侍女「今の姫騎士様は国によって作り上げられた偶像であるというのに、当のご自身が、それを受け入れ続けている…」

侍女「私はもうあのお姿を見ているのが辛い……この手で助け出すことが出来ないのが、悔しい…!」グッ...

アッシュ「………」




257: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:11:52.00 ID:74TzIOeD0


アッシュ「子供の頃、この池の周りで三人、よく遊んでいました」



ーーーーー

「姫ちゃん!向こうにきれいなお花があったよ!」

「ほんとか!アッシュー!見に行くぞー!」

「今行くー」

ーーーーー



アッシュ「姫騎士様は誰より、花が好きでしたね」

アッシュ「そしてそれを知る国民は一人もいないのでしょう」

侍女「……」

アッシュ「催事で娯楽街へ繰り出した時は、密かに遊技場を見学に行く計画も立てましたね。結局頓挫してしまいましたが」フフ

侍女「………」

アッシュ「私は彼を信じています。彼の強さを知っています」

アッシュ「明日の優勝者はきっと、前大会と違う方になる」








258: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:12:42.75 ID:74TzIOeD0

ーーー夜 宿 アッシュの部屋ーーー

アッシュ(正直なところを言えば、確率はまだ五分よりも低い)

アッシュ(ですが私に出来ることはやりました)

アッシュ(後は任せましたよ)

アッシュ(勇者様)








259: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:13:10.80 ID:74TzIOeD0

ーーー魔法使いの部屋ーーー

魔法使い「そっか、明日なんだ」

魔法使い(勇者のあのやる気。多分賢者様と二人で居た時に何かがあった)

魔法使い(気になるけど、結局今日まで訊けなかったわ…)

魔法使い「…明日教えてくれるかしら」



ーーーーー

勇者「最強になりてーんだ!」

ーーーーー



魔法使い「……ふふ」








260: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:13:39.01 ID:74TzIOeD0

ーーー勇者の部屋ーーー

勇者「もう寝なきゃなんねー時間か」

勇者(剣と体術…あとちょっとでなんか掴めそうなんだよなー)

勇者(先生に体調管理も強さのうちって言われちったかんな…)

勇者「…ま、何とかなんさ!」



ーーーーー

幼魔法使い「さいきょうの勇者がね、だいすき!」

ーーーーー



勇者(ぜってー勝って、ぜってー見せつけてやる)

勇者「へへっ、待ってろよ最強」








261: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:14:06.36 ID:74TzIOeD0

ーーー城 侍女の寝室ーーー

侍女「………」

侍女「………」

侍女「………」

侍女(……また戻ってきてよ……)

侍女(姫ちゃん……)








262: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:15:47.96 ID:74TzIOeD0

ーーー姫騎士の寝室ーーー

姫騎士「む?」

(萎れかけの生け花)

姫騎士「しまった、水を替えていなかったか」

スッ...ザー

キュ、キュ

チャプン

姫騎士「これでいい」

姫騎士「明日になる前に気付けてよかった。優勝者褒賞まで帰れないからな」

姫騎士(………)

姫騎士「そう、いつもと同じだ」

姫騎士「勝てばいい」

姫騎士(お父様の望むように)

姫騎士「ただ、勝てばいい」








263: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:22:03.60 ID:74TzIOeD0

5章はここまでとなります。

言及されなかったレラの過去はどこかで触れたい…と思ってはいます(出来なかったらごめんなさい)。




264: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 00:23:57.83 ID:74TzIOeD0

6章では闘技大会が行われます。
そこで、大会に登場する一部のキャラを四人ほど、安価とコンマで決めたいと思います。
安価で6つの候補を出してもらい、その候補からコンマによって四人決定させます。
安価は以下の形式でお願いします。



キャラ名:(役柄や容姿など)
性別:(男か女)
年齢:(5~100の間)
得意戦型:(剣術、体術、魔法のうちのいずれか。複数可)
備考・希望:(そのキャラの過去や、こうしてほしいなどがあれば)



※それぞれのキャラに大きく尺を割けないため、サクッと扱われる可能性もありますがご了承ください。

あまりにも無茶あるいは意味が読み取れないもの、また、連投は再安価とします。
候補 >>265~>>270



265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 07:33:00.20 ID:jov3uy5i0

キャラ名アニキンドリス(美術家) スキンヘッドで筋肉ムキムキの男 褌一丁で戦う
性別男
年齢30
得意戦型体術
備考・希望:実はそれなりに名の通った戦う芸術家 作品のインスピレーションを求めるために戦う



266: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 09:23:27.14 ID:OfilA1NB0

キャラ名:ミント (格闘家 ピンク髪にポニーテール、モデル体型でへそが出ている服を着ていて革手袋をはめている)
性別:女
年齢:19
得意戦術:体型と魔法
備考・希望:明るい性格。貴族の娘で貴族の生活が嫌になり家を出て旅をしている。。火、水、土、光、闇の魔法が使えて身体能力も高い。手や足に魔法を纏って戦うことができる。実はアッシュの隠れファンでもある。



267: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 11:11:34.90 ID:n8DK9ZVDO

名前 ナタリー(魔法剣士
緑色のショートの髪をしている)
性別 女性
年齢 20
得意戦型 魔法と剣術
備考・希望 炎の魔翌力を宿した剣と氷の魔翌力を宿した剣の二刀流で戦う
性格はおっとりのんびりやだが、戦いのときは若干ハイテンション



268: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 12:07:13.05 ID:KD+oaXa5O

キャラ名:ダグ・ミグ 細身なノッポ。モブっぽい
性別:男
年齢:39
得意:拳法(普段はナイフ投擲で遠距離型と相手に誤認させ、近距離なら弱いと思い込んだ相手に強力な打撃を与える)
備考:普段は武器屋のオヤジだが正体は盗賊団首領。武器屋に訪れた相手の強さや交遊関係を探り、勝ち目が薄いと感じると相手の身内や恋人を手下に拐わせ人質にする卑劣漢。拐った相手が女なら最初に自分が強姦し、後は手下に与え徹底的に輪姦させる外道。
※自分が負けたらお前の女はこうなるぞ
と脅す感じで



269: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 15:59:16.21 ID:8SdmmTF9O

キャラ名:ラッキー 剣士(アフロ。褐色肌。サングラスをかけている)
性別:男
年齢:28
得意戦術:剣術
備考・希望:陽気な性格ですごい強運の持っている。大会にも何度も出場しており運だけで勝ち進んだこともある。他の人から「幸運のラッキー」と呼ばれている。剣術も我流だがかなり強い。



270: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 17:47:43.06 ID:mnwhRXK7O

キャラ名:ジンガ(鋭い目付きをした悪人面、長身の細マッチョ。ボサボサの黒髪、褐色の肌など。ごろつき風の男。)
性別:男
年齢:35
得意戦型:剣術と魔法
備考・希望:
幻術を得意とする身のこなしが軽い魔法戦士。装備は数打ちの長剣や投げナイフ、急所を守る程度の防具、ボロボロのマントなど。
みすぼらしい姿をしたごろつきのように装っているが、その正体は他国からの間者であり強者達の情報を集め場合によっては引き抜く任務を帯びている者の一人である。
闘技大会では使わないが、本来は猛毒や暗器などを用い手段を選ばず戦う。



271: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 18:11:48.83 ID:3/V/rXVU0

候補6人が出そろったので、まず二人を>>272と>>273のコンマで決めます。
被った場合はその一人をまずは採用します。

00~15:アニキンドリス
16~31:ミント
32~47:ナタリー
48~63:ダグ・ミグ
64~79:ラッキー
80~96:ジンガ
97~99:再安価



272: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 18:13:59.46 ID:12dtkJgU0





273: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 18:16:37.63 ID:n8DK9ZVDO

はい



274: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 18:27:53.85 ID:aF6kzQvyO

コンマ46と63で、

名前 ナタリー(魔法剣士
緑色のショートの髪をしている)
性別 女性
年齢 20
得意戦型 魔法と剣術
備考・希望 炎の魔翌力を宿した剣と氷の魔翌力を宿した剣の二刀流で戦う
性格はおっとりのんびりやだが、戦いのときは若干ハイテンション

キャラ名:ダグ・ミグ 細身なノッポ。モブっぽい
性別:男
年齢:39
得意:拳法(普段はナイフ投擲で遠距離型と相手に誤認させ、近距離なら弱いと思い込んだ相手に強力な打撃を与える)
備考:普段は武器屋のオヤジだが正体は盗賊団首領。武器屋に訪れた相手の強さや交遊関係を探り、勝ち目が薄いと感じると相手の身内や恋人を手下に拐わせ人質にする卑劣漢。拐った相手が女なら最初に自分が強姦し、後は手下に与え徹底的に輪姦させる外道。
※自分が負けたらお前の女はこうなるぞ
と脅す感じで

の2名は決定です。




275: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 18:30:39.47 ID:aF6kzQvyO

残りの二人を>>276と>>277のコンマで決めます。
被った場合はその一人をまずは採用します。

00~24:アニキンドリス
25~49:ミント
50~74:ラッキー
75~99:ジンガ



276: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 18:39:31.28 ID:Oi91mQV5O

はい



277: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/06/19(金) 18:39:53.90 ID:1C9O9znpO





278: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/19(金) 18:48:27.86 ID:aF6kzQvyO

コンマ28と90で、

キャラ名:ミント (格闘家 ピンク髪にポニーテール、モデル体型でへそが出ている服を着ていて革手袋をはめている) ?性別:女 ?年齢:19 ?得意戦術:体型と魔法 ?備考・希望:明るい性格。貴族の娘で貴族の生活が嫌になり家を出て旅をしている。。火、水、土、光、闇の魔法が使えて身体能力も高い。手や足に魔法を纏って戦うことができる。実はアッシュの隠れファンでもある。

キャラ名:ジンガ(鋭い目付きをした悪人面、長身の細マッチョ。ボサボサの黒髪、褐色の肌など。ごろつき風の男。) ?性別:男 ?年齢:35 ?得意戦型:剣術と魔法 ?備考・希望: ?幻術を得意とする身のこなしが軽い魔法戦士。装備は数打ちの長剣や投げナイフ、急所を守る程度の防具、ボロボロのマントなど。 ?みすぼらしい姿をしたごろつきのように装っているが、その正体は他国からの間者であり強者達の情報を集め場合によっては引き抜く任務を帯びている者の一人である。 ?闘技大会では使わないが、本来は猛毒や暗器などを用い手段を選ばず戦う。

が決定です。



280: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 05:52:01.83 ID:qKbALpwl0

6章1/3、投下します。



281: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 05:57:07.82 ID:qKbALpwl0

ーーー翌朝 闘技大会会場ーーー

アッシュ「ここ王都で開催される闘技大会には予選と本選がございます」

アッシュ「午前はまず予選です。予選は32あるブロックの中でそれぞれ総当たり戦を行い、最も戦績の良い者のみが本選へ進むことが出来ます」

アッシュ「午後に入れば本選です。予選で選び抜かれた32名が勝ち抜き形式で戦うことになります。つまり本選で5回勝利すれば優勝というわけですね」

アッシュ「あちらに大きな闘技場が二つ見えますが、第1から16ブロックの方々は左、17から32ブロックの方々は右の会場で本選を進めていくのです。決勝はどちらかで行われるので、観客が集中し、いつもパンクしてしまうのですがね」

アッシュ「ちなみに予選の方はあちらこちらに用意された屋内の闘技場で行いますよ」

勇者「へぇー。で、俺っちはどこなん?」

アッシュ「勇者様は第9ブロックですので、そちらから行くと近いですね」

魔法使い「こんなにたくさん出場者がいるのね…」ミマワシ

魔法使い「これで総当たり戦なんかやってたら終わらないんじゃないの?」

アッシュ「いえ、ブロック内で1位の方が確定した時点でそのブロックの予選は終わりですからね。最初の数試合で勝利数の多い者を優先的に戦わせていくので、全勝してしまえば手早く簡単に本選へ行けますよ」

リア「でも…それって休みなく戦うってことですよね…?すごく疲れそうです…」

アッシュ「えぇ。今大会は一つのブロックに少なくとも20人は居ますから、それだけの連戦となれば普通は疲労困憊となってもおかしくありません」

勇者「へーきだよ。体調は万全だし、即行決めればいいだけっしょ!」

アッシュ「…おっしゃる通りです」フフッ

アッシュ「今の勇者様ならそう難しいことでもないでしょう」

魔法使い(………)

魔法使い「…あのさ、勇者――」



アナウンス『間もなく予選を開始します。出場者は各自自分のブロックの会場で待機していてください』






282: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 05:59:19.87 ID:qKbALpwl0


勇者「おー。お呼び出しってか?」

勇者「うし、じゃあ俺っち行ってくるわ」

アッシュ「出場者以外は闘技が始まってからでないと入れないので、私達は後ほど向かいますね」

勇者「そん頃にゃ終わってっかもなー!なはは!」

タッタッタッ...

リア「勇者さん、元気になってよかったです」

アッシュ「彼の中で何か思うことがあったのでしょう」

魔法使い「……」

リア「勇者さんがああなったの…賢者様に呼ばれてた後でしたよね?アッシュさん、何があったか聞いてます?」

魔法使い「!」

アッシュ「いいえ。恐らく質問したとしても我々には教えてくれないでしょう」

アッシュ(一人を除いては)

リア「そうなんですか…?」

魔法使い「………」



桃色ポニテ「あー!アッシュ様!?」






283: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 05:59:53.92 ID:qKbALpwl0


アッシュ「?」

桃色ポニテ「やっぱりアッシュ様だ!こんなとこで会えるなんて感激ですー!」ズイッ

アッシュ「あ、貴女は…?」

桃色ポニテ「私ミントって言います!今年で19になるピチピチの女の子です!今はしがない旅の格闘家をやらせてもらってまーす♪」(以降、ミント)

魔法使い(なにこのあざとさ全開オーラは)

アッシュ「そうでしたか」ニコッ

魔法使い(そしてさすがの社交辞令ね…)

ミント「アッシュ様が執事を辞めてこの国を出られたと聞いて、私すごく落ち込んでたんです…3日も寝込んじゃいましたよぉ…」ウルウル

ミント「でもでも、こうしてここで会えたのって私たちきっと運命みたいなものがあるんですね!」

アッシュ「そ、そうかもしれませんね…」

ミント「アッシュ様も大会に出られるんですか?」

アッシュ「私は観戦だけですよ」

ミント「なんだ残念です…せっかくアッシュ様の凛々しいお姿が見れると思ったのに」

ミント「じゃあじゃあ、私が頑張るところ見ててくださいね!15ブロックでやってますので!」

ミント「あ、いけない!もう行かなきゃ!」

ミント「アッシュ様また後でー!」

ピューン

魔法使い「……嵐のような人だったわね」

リア「踊り子さんみたいな格好してました…」

アッシュ「えぇ」

魔法使い「初対面なのよね?」

アッシュ「記憶の限りでは。彼女は私をご存知のようでしたが」

アッシュ「旅の格闘家ですか…聞いたことないですね」

リア「アッシュさん、魔法使いさん、そろそろ予選が始まるみたいですよ…!」

アッシュ「行きましょうか」








284: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:00:57.26 ID:qKbALpwl0

ーーー予選会場ーーー

勇者「」ヒュン

「ぐ…」

勇者「よっ」

ガキン!

「うあ…!」

勇者「」ビシッ

勇者「まだ続ける?」

「…降参します」

審判「勝者、勇者!」

勇者「ありがとーございました!ってな」ヘヘッ



アッシュ「言うことなしですね。教えたこともしっかりと実践出来ているようです」

魔法使い「えーと、これであいつは9勝目?」

アッシュ「10戦10勝、今のところ無敗です」

アッシュ「ここで負けてしまうようでは困りますけどね」



審判「次の闘技も続けてもらって構いませんか?」

勇者「いいっすよ!ウェルカムウェルカム」

審判「それでは38試合目、――」



魔法使い「……」ジー

リア「…勇者さん、かっこいいですね」

魔法使い「そうね」



侍女「………」



.........








285: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:02:06.53 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

姫騎士「はっ!」ビュンッ

バキッ

「ひっ!?ま、参りましたぁ!」

審判「勝者、姫騎士!」

オオオォ…!



「相手の木剣折っちまったぜ」

「はぇーなー、これで第1ブロックの予選終わりだろ?他はまだまだやってんのに」

「ばっか当然でしょ。なんたって姫騎士様がいらっしゃるんだから」

「剣を振る姿、いつ見ても神々しいですな…!」



姫騎士「対戦感謝する。いい闘技だった」



第1ブロック本選進出者 姫騎士








286: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:02:41.38 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

「ぐぁ…!」ズサ...

審判「場外!」

審判「勝者、ジンガ!」

ジンガ「……」



「なんだあの男…」

「おっかねぇ顔してんな。あの格好も…どっかの賊かなんかか?」

「賞金目当てに律儀に予選から参加してるって?賊の野郎が?そりゃ傑作だ!ははは!」



ジンガ「……」ジロッ



「馬鹿っ、聞こえるって…!」

「むぐぐ…」



ジンガ「……ふん」

ジンガ(強者共が集まると聞いて来てみたが、見かけるのは雑魚ばかり。めぼしい奴は居ないな。所詮は元弱小国家か)

ジンガ(やはり、国の英雄と謳われる彼女しか…)



第2ブロック本選進出者 ジンガ








287: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:03:13.58 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

審判「勝者、勇者!」

勇者「しゃあ!これで全勝!」



リア「やった!」

アッシュ「全ての試合を最短で終わらせる…まさに最善手と言えますね。本選では特に体力勝者になることが多いですから」

魔法使い「…あいつ、あんなに真面目に闘技出来たのね」

アッシュ「礼儀を知りましたからね」

魔法使い「礼儀?」

「ねーあの人すっごく強くなかった?」

「うん、私も見てた!格好良かったわねぇ…どこの人なのかしら」

魔法使い(……)

魔法使い「もう勇者のブロックでは試合ないのよね?だったらさっさとあいつ連れ戻しに行きましょ」スタスタ

リア「は、速いです魔法使いさん…!」テテテッ



第9ブロック本選進出者 勇者








288: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:03:47.03 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

ピキピキ

ボオォ!

緑色ショート「ねぇ逃げ回ってたら終わらないよぉ?氷漬けか丸焼きどっちがお好みかな?あはは!」

「や、やべぇよこの女…!」タタタッ

「審判、降参!降参だ!早くあの女を止めてくれ!」

審判「勝者、ナタリー!」

審判「さぁ勝負はつきました。もう攻撃してはなりませんよ」

緑色ショート(以降、ナタリー)「えー、おしまい?」

ナタリー「そうですかぁ」

ナタリー「…もう帰る時間ー?」ポケー

審判「いえいえ、あなたには午後の本選がありますから」



第10ブロック本選進出者 ナタリー








289: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:05:09.88 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーーー

グローバ「ふぬっ!」

「ぐぼぉ!?」

「あ……ぁ……」

ドサッ

審判「…気絶」

審判「勝者、グローバ!」



「おい見たか?あのおっさんの闘技。女相手にしてる時、異様に体触りまくってたぜ」

「見てた見てた。羨ま…じゃなくて反則になったりしないのかね?」

「はー、俺もあれだけ強かったら合法的にお触りできんのかなー」



グローバ「悪いな若造。落とすつもりはなかったんだが勢い余っちまったぜ」

グローバ「男に興味ねえもんだからよ!がはは!」



第14ブロック本選進出者 グローバ








290: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:05:47.36 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

ミント「"火球"」ボッ

「っ」サッ

ミント「"引潮"」ザー!

「わっ!」ヨロ...

ミント「"魔手"!」グォー

ガシッ

「しまった!」

ミント「さ、捕まえたよー!これでとどめといっちゃいましょー!」

「…ここで終わるわけには!」

ブチッ!

ミント「すっごい馬鹿力!?」

ミント「でも逃さないから!"閃光"」カッ

「くぅ…!」

ミント「」スタタッ

ミント「最後は、土の力で吹っ飛んじゃえ!」

ドスン!

「ぐふ…」

審判「場外」

審判「勝者、ミント!」

ミント「名付けて大地のパンチ!えっへへー」



「派手な戦い方だなぁ」

「あの服を見るに、元々曲芸士なのではないか?」

「でも実力はあるみたいだ」



ミント(アッシュ様見ててくれたかな~♪)



第15ブロック本選進出者 ミント








291: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:06:18.71 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

「く…そぉ……」ガクッ

審判「…うむ、気絶だな」

審判「勝者、ダグ!」

ダグ「へへぇ、どうもどうも」



「ほぉ、あれ武器屋の主人だよねぇ?あの人あんなに強かったんだ」

「びっくりです……木剣をあんな風に使うの初めて見ましたよ」

「いいぞー武器屋!そのまま優勝したら俺の年収分買い物してってやらー!」



ダグ「どうぞご贔屓に!うちの武器を使えばこのような芸当は朝飯前になりますぞ!」



「よく言った!」

「今度あんたんとこに発注かけようかねぇ」



ダグ「……」ニヤ



第25ブロック本選進出者 ダグ








292: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:07:01.14 ID:qKbALpwl0

ーーー正午 本選会場前ーーー

ガヤガヤ

勇者「人しかいねー。どいつもこいつも考えることは同じかよ」

魔法使い「勇者、まだ本選始まるまで時間あるんだからお昼の後でもいいんじゃない…?」

勇者「いーや、今見ておきてーの。どんな奴とあたるか分かればもしかしたら対策できっかもしんないじゃん。魔法使いも前に言ってたことだぜ」

魔法使い「そうだけど」

アッシュ「しかしこの人集りでは少々手間ですね」

ドン

リア「あっ…!」グラ

魔法使い「危ないっ」ガシッ

リア「ご、ごめんなさい…」

魔法使い「大丈夫?」

リア「はい…」

魔法使い「もう、ぶつかったなら謝っていきなさいよね」

ミント「アッシュ様発見!」

ミント「ねね、私の戦うところ見てくれましたっ?みんな綺麗に倒しちゃうとこ!」ズズイ

アッシュ「い、いえ…私はこの者の付き添いで来ただけですので…」

ミント「ん!?」

勇者「へ?」

ミント「んーー…」ジー...

ミント「あんた名前は?」

勇者「勇者」

ミント「勇者くん!絶対あんたに勝ってアッシュ様の視線独り占めにしてやるから!」

勇者「おう…?」




293: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:08:20.61 ID:qKbALpwl0


ミント「それでそれでアッシュ様はここで何をしていたんですか?」

アッシュ「本選の対戦表を見に来たのですが、ご覧の通り立ち往生を余儀なくされていましてね」

ミント「そういうことでしたら私に任せてください♪」

魔法使い「ちょっと、まさか力尽くでどかす気じゃ…」

ミント「そんな野蛮なことしませんー」

ミント「…ね、そこのお兄さん?」

「あん?」

ミント「私、どうしてもそこ通りたくって…」

ミント「すこーしだけ、道開けてくれませんかぁ?」ギュ

「し、しょうがねぇな…ほれ」

ミント「ありがと♪」

ミント「行きましょ、アッシュ様」

アッシュ「…はい」

(人をかき分け前へ)

アッシュ「ありました。勇者様見えますか?」

勇者「どれどれ…」

魔法使い(第1ブロック、姫騎士。この国の人に言わせれば当然なんでしょうね)

魔法使い(で、勇者は……)

魔法使い「……え」

アッシュ「順当に行けば準決勝で姫騎士様とあたりますね。ですがその前に」

魔法使い「…14ブロック、グローバ…」

アッシュ「準々でバーランド卿ですか」




294: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:08:53.57 ID:qKbALpwl0


勇者「………」

魔法使い「勇者…」

勇者「任せろって!」

勇者「あんだけ先生に稽古つけてもらったんだ。この間の俺っちとは一味も二味も違うってこと、思い知らせてやんぜ」

勇者「他にやば強い奴はいないんか?」

アッシュ「はい。後は知らない名前ばかりですね」

勇者「ならその二人蹴散らせば優勝ってことか!目標がクリアになってよかったわ」

勇者「腹減ったし昼にしようぜぃ。俺っちトイレ寄ってくっから先行っててくれ」

テクテクテク...

リア「…この前のことがあったので心配でしたけど、立ち直ってくれたんですね、勇者さん」

アッシュ「バーランド卿も大会に出場するとおっしゃってましたからね。覚悟を決めたのでしょう」

魔法使い「………」

ミント「ねーそのグローバって人強いんですか?私と2回戦でぶつかるんですけど!」

アッシュ「えぇ、強いですよ。準優勝候補と言っても差し支えありません」

ミント「えっ、そんなに!?」

ミント「…アッシュ様!絶対応援しててくださいね!」








295: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:09:22.51 ID:qKbALpwl0


勇者「……」テクテク

勇者「……」テク...

勇者「………」

勇者「はぁぁぁ……」

勇者「くっそ……マジかぁ…」

勇者「あー……」

勇者「勘弁してほしいぜー……へへ…」








296: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:10:38.20 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

侍女「姫騎士様、バーランド卿がいらしているようです」

姫騎士「なに?彼は退役したと聞いたが」

侍女「グローバという名で出場されています」

姫騎士「ふむ……14ブロック。この者だな」

姫騎士「私との闘技は4戦目か」

侍女「如何いたします?現役を退いたとはいえ他国の公爵様がこの大会に参加されるのは…」

姫騎士「構わないさ。それしきのことお父様も気にはしないだろう」

姫騎士「相手が誰であろうと勝つだけだ」








297: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:12:06.56 ID:qKbALpwl0






アナウンス『間もなく本選を開始します。本選出場者第1から16ブロックの方、及び17から32ブロックの方はそれぞれの会場へ向かってください」








298: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:14:06.65 ID:qKbALpwl0

ーーー本選左会場ーーー

「まだ始まんねーの?」

「あとちょいだよ」

ガヤガヤ

「席空いててラッキー!こっち姫騎士様が出場するからな、何人立ち見が出ることか」

「わしも30歳若ければ健闘したんじゃがのぅ」

「ちょっとそこの頭邪魔!しゃがんでくれない?」

ワイワイ

リア「ひろーい…」

魔法使い「大きいとは思ってたけどここまでなんてね…私たちの村が収まっちゃうくらいあるじゃない」

アッシュ「他国からの人々も多く呼べるようにと、国王様が増築に増築を重ねたのです」

アッシュ「今や国のどの建物より大きいですよ」

アッシュ(何とも皮肉なものです)

勇者「……」

アナウンス『皆様、大変お待たせ致しました。ただいまより闘技大会本選を開始致します』

アナウンス『第1戦第一試合。姫騎士、ジンガ』



姫騎士「……」トットットッ

ジンガ「……」ザッザッザッ



ウオオオオ!

「待ってました!」

「姫騎士様ー!」

「このためだけに生きとるわい…!」

魔法使い「すごいわね…」

リア「お相手さん、ちょっと気の毒です…」

アッシュ「しかと見ててください、勇者様。あの方を超えなければこの国における最強は名乗れません」

勇者「あぁ」






299: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:15:45.44 ID:qKbALpwl0


ジンガ「お初にお目にかかる、ジンガと申す者だ。この辺境国で最も強いと言われる貴女と戦えること、誇りに思う」

姫騎士「ふっ。光栄なことだな。では辺境の代表として恥じない闘技を見せねばなるまい」

審判「両者前へ!」

姫騎士・ジンガ「「……」」ザッ...

審判「始めっ!」

ジンガ「」ダッ

ジンガ(その強さの所以たる剣の腕、見せてもらおうか)

バッ、バッ

ジンガ「……」グワッ

ガッ!

姫騎士「……」

ジンガ(ほう)



「さすが姫騎士様じゃ。初手も難なく防ぎおる」

「つーかあいつフライングしてなかったか?」

「あんな粗悪な成りしてんだ、中身も相応なんだろうよ」






300: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:16:47.34 ID:qKbALpwl0


姫騎士「……」スッ

ジンガ(来るか)

姫騎士「」シッ――

ジンガ「…!」

ガンッ、ガッ

ズバッ!

ジンガ「ぐっ!?」

ジンガ(この動きは…!)

ダンッ

ビュオッ

ジンガ(視界に捉えきれぬっ)

姫騎士「」ヒュッ

ジンガ(刺突か!)

ガィン!

ジンガ「」バッ(距離を取る)

姫騎士「……」

姫騎士「醜態を晒してすまない」

姫騎士「今ので終わらせるつもりだった」

ジンガ「……なるほど」



アッシュ「あれが姫騎士様の剣技です」

アッシュ「彼女にとって剣とは、文字通り身体の一部なのです」

アッシュ「剣戟が及ぶ範囲は広く、正面に居ながらにして視界の外から斬ることが出来る。それでいて正確無比な一撃」

勇者「……」






301: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:17:30.62 ID:qKbALpwl0


ジンガ(噂は本物のようだな)

ジンガ(…使う予定はなかったが、仕方ない)

ジンガ「"幻視"」



「な、なんだ!?会場が…!?」

魔法使い(幻術…しかもこれほど大規模の)



ジンガ「」スサッ

ジンガ(視覚を脅かすこの術とて、素人ならいざ知らずこやつのような猛者には1秒で状況を把握されるだろう)

ジンガ(――だが、その1秒でいい)

ジンガ(それが戦闘では命取りとなる)

サッ、サッ!

ジンガ(これにて、終演)



――スタッ



姫騎士「」ス...

ジンガ(な、に…!?)

ギュオッ!

ジンガ「!!」ガンッ

ガン!ガンッ、ギィン!

姫騎士「もう休憩は無しだ」

ジンガ「く…!」






302: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:18:01.61 ID:qKbALpwl0


魔法使い「なんで…真っ直ぐ走ってったわよ、あの幻惑魔法の中で」

魔法使い「魔法を無効化してる?」

アッシュ「いえ、そうではありませんが」

アッシュ「姫騎士様に甘い小細工は通じないのです」

勇者「あれが小細工なんかい…」

アッシュ「ジンガという御仁、彼も相当な手練れとみえます」

アッシュ「しかし保ってあと1分というところでしょう」



.........








303: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:19:54.32 ID:qKbALpwl0


姫騎士「はっ!」

ガキン!

ジンガ「―っ」

...カランカラン

姫騎士「まだ続けた方がよいか?」

ジンガ「……ふっ」

ジンガ「彼我の実力差が見えぬ程、愚者ではないつもりだ」

ジンガ「降参する」

審判「勝者、姫騎士!」

ワアアァ!



リア「剣、弾いちゃいましたね」

魔法使い「これが王都の闘技……」

アッシュ「えぇ」

アッシュ(本国における闘技とはそれ即ち姫騎士様と同義)

アッシュ(才能に愛された者が、努力によってその才を惜しみなく引き出した果て。凡人には決して手の届くはずもない領域…)




304: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:20:22.13 ID:qKbALpwl0


アッシュ「勇者様、如何でしたか?彼女に数段劣る私では助言など出来ませんが、貴方なら何かしら活路を見出せたのではありませんか?」

勇者「…アッシュ先生」

勇者「俺っちがそんなに頭の良いこと出来ると思う?」

魔法使い「あんたねぇ…」

勇者「へーきよへーよ。敵が強いほど、勝負は燃えんじゃん」スクッ

魔法使い「どこ行くの?」

勇者「準備運動。俺っちも試合あるし」

タッタッタッ...



姫騎士「いい闘技だった」

ジンガ「同意しよう」

ジンガ「貴女が何故この国の英雄と呼ばれるか、しかと理解することが出来た」

ジンガ(このような辺境には勿体ない、素晴らしい逸材だ。是非我が国へ欲しい)

ジンガ(であればどう手を打っていくべきか。一度本国へ戻るとしよう)

姫騎士「……」トットットッ(背を向け去って行く)

ジンガ「…いずれ、ルール無用の場での手合わせも願いたいものだ」








305: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:21:41.39 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

侍女「お疲れ様です」

姫騎士「あぁ」

侍女「次の闘技までお休みなされますか?」

姫騎士「いや、バーランド卿の試合が見たい」

姫騎士「彼の闘技を目にしたことはあるが、万に一つも油断を残したくないんだ」

姫騎士「慢心は敗北を呼ぶ」

侍女「…はい」








306: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:22:38.28 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

アナウンス『第1戦第五試合。勇者、ナタリー』

勇者「いぇい。どーもどーも!」

ナタリー「ふあ…」ノビー



「見ろよあのねーちゃん、剣二本持ちだぜ」

「二刀流ってやつ?初めて見るな」

魔法使い「剣を二本使うって、単純に考えれば一本で戦うよりも手数を多く出来そうよね」

アッシュ「それがそうでもないのですよ。二つの剣を同時に扱うということは、本来不要なはずのもう片方の腕の振り方を考える必要がありますし、重心を集中させることも難しくなってしまいます」

アッシュ「余程身体の制御に卓越していない限り一刀を振る方が効率的なのです」

リア「じゃああの人、とっても強いのでしょうか…?」

アッシュ「問題はないかと。二刀で名を馳せた方を私は知りません」

「あの娘っ子かわいいなぁ。どうにか仲良くなれんもんかいなぁ」

「やめとけやめとけ。おめぇ予選見てないんか?あいつ闘技してる時別人のようになんだ。嬉々として相手をいたぶるのよ」

リア「……」

魔法使い「……」

アッシュ「…大丈夫です。きっと」



審判「両者前へ!」

勇者「よろしくな、いい試合にしようぜ~」

ナタリー「よろしくー」

審判「始め!」

勇者「」タタッ

ナタリー「…あは!」

ボッ



アッシュ「あれは…」






307: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:24:21.16 ID:qKbALpwl0


ナタリー「」ブン!

ボオォ...!

勇者「うぉっと?」サッ

ナタリー「えい♪」

ピシィッ

勇者「!」ヒョイ

勇者(火と氷?剣を振って飛ばしてくるって、こいつは…)



リア「アッシュさんがやっていたことと、そっくりです」

アッシュ「そうですね。魔法剣…私のものは不完全ですが、彼女は上手く魔力を流動化しています」

魔法使い「あれなら無理に力を込める必要もないわね」

魔法使い「綺麗に収束されてる分、アッシュさんのような威力はないけれど」

アッシュ「しかし私以外に魔法剣を使う方がいるのですね」

ミント「知らないんですか?最近流行ってるんです!」

アッシュ「!…ミント様」

ミント「来ちゃいました♪」

ミント「流行の発端はアッシュ様なんですよー?」

ミント「アッシュ様の戦うお姿を見て、魔力を宿して攻撃するっていうスタイルが広まってきてるんです」

アッシュ「私が?人前で披露した覚えはないのですが…」

ミント「私が広めちゃいました」エヘ

アッシュ「……」

ミント「私も使えるんですよ!こう、拳に込めて」

ミント「ドカンと!」

アッシュ「…ふぅ、闘技の世界も日進月歩ですか」






308: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:25:15.38 ID:qKbALpwl0


勇者「」サッ、サッ

ナタリー「おにーさんすばしっこいねぇ」

勇者「だろー?俺っちもそう思う!」

ナタリー「面白いなぁー」ブォン

ピシピシピシ

勇者(つっても避けてばっかじゃ終わんねーから)

勇者「」ビュン

タタタッ

ナタリー「っ!」ブォッ

勇者「よっ!」バッ

ナタリー「わ…」

勇者(よし、この距離ならもう――)

ナタリー「…にひ」

勇者「!!」

勇者(上かっ!?)

ナタリー「"氷柱"」



バキィン!



パラパラパラ...

ナタリー「わぁ…」

ナタリー「すごいねー、壊せちゃうんだぁ」

勇者「へっへ。魔法は見慣れてっかんよ」




309: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:25:58.27 ID:qKbALpwl0


勇者「今の会場を涼しくしようとしてくれたんよな?粋なサービスだぜ」

ナタリー「……」

ナタリー「あはは♪」

ナタリー「ねーもっともっと遊ぼう?疲れて疲れて疲れ果てちゃうまでいっぱい!」

勇者「おーう!」

勇者「…って言いたいとこなんだが、わりぃ、俺っちちょーっと急いでんだ」

ナタリー「えー?楽しくないー?」

勇者「もち楽しいぜ」

勇者「けど、これ以上待たせんのも酷だかんさ」

ナタリー「?」

勇者「つーわけで」

勇者「勇者くん、突撃します」シュンッ

ナタリー「!速いんだぁ…!」

ボオオォ!

勇者「」サッ

スタタタッ!

ナタリー「"包炎"!」

勇者「遅い遅い!」ダンッ

ナタリー「いいよぉ!あっつあつの火炎で受け止めたげるから!」

ナタリー「その剣、炭にしちゃう!」ブワァ




310: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:27:11.64 ID:qKbALpwl0


勇者「」バッ



――クルン



ナタリー(あ…)

バシッ ガスッ!

勇者「……」...スタ

カラン、カラカラ...(転がる二本の木剣)

ナタリー「あれまぁ」

勇者「どうよ」

勇者「俺っちにも剣はたき落とすくらい出来んだぜ」

ナタリー「……♪」

ナタリー「審判さーん。私の負けー」

勇者「え?」

審判「勝者、勇者!」



「やるなあの男」

「最後の剣の動き、見えたか?」

「1回転?いや、なんだろうな」

アッシュ「まずは1勝ですね」

魔法使い「今の初めて見たわ。あれも特訓の成果?」

アッシュ「レラ様直伝の技です。この短期間で習得出来るのはさすがという他ないですね」

ミント「むむ……勇者くんめ、なかなか……」






311: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:27:40.34 ID:qKbALpwl0


勇者「よかったんか?俺っちてっきり」

ナタリー「うん、いいの」

ナタリー「その代わりぃ、今度たくさん遊んでねー」

勇者「お安い御用よ」b

ナタリー「…えへー」



姫騎士「侍女、あの勇者という男」

侍女「はい。先日通りで行き会った者です」

姫騎士「アッシュと共に居た奴だな」

侍女「……」



ーーーーー

アッシュ「そのついでに、英雄を育てていました」

ーーーーー



侍女(……)








312: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:28:09.26 ID:qKbALpwl0

ーーー本選2回戦ーーー

審判「勝者、姫騎士!」

姫騎士「ありがとう、いい闘技だった」



姫騎士 本選3回戦進出







ーーーーーーー

審判「勝者、勇者!」

勇者「ふー。体、あったまってきたかな」



「今度は剣使わずに勝っちまった」

「全身武器みてぇな戦い方だ。こいつはもしかしたらもしかするかもな」

「まぁ姫騎士様には敵わんさ」



勇者 本選3回戦進出








313: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:28:59.60 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

勇者「よっ」

リア「勇者さん!おかえりなさい」

アッシュ「体術も好調のようですね」

勇者「先生のおかげだよ。剣も体も、今までで最高に気持ちよく動かせる」

魔法使い「…勇者」

勇者「うん?」

魔法使い「あ、いえなんでもない…」

勇者「で、俺っちの次のお相手さんは」

アッシュ「今まさに、ですよ」



ミント「"光弓"!」ヒュヒュッ

グローバ「うりゃ、ほっ」パシ、パシッ

ミント「~!」

ミント「"加重"!」

グローバ「ん?」グ...

ミント(よしっ)

ミント「"落石"」

...ゴゴゴ

ミント「潰れちゃえ!」

ゴォォ!

グローバ「"剛腕"」

ズンッ!






314: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:29:47.85 ID:qKbALpwl0


「い、岩が…」

「おっさん生きてんのか…?」

勇者「へっ」



グローバ「むぅん!」ブンッ

ガァン!

ミント「うっそ…」

ミント「おじいちゃん元気良すぎっ」

グローバ「がはは!元気だけが取り柄なもんでなあ!」

グローバ「"敏捷"!」

ビュンッ!

ミント(来る…!)

グローバ「」ダダダッ

ミント(速いけど、むしろ好機!)

ミント(私の"魔法拳"お見舞いしてやる!)タッ

スタタッ

ミント「いっけぇ!」グワッ!

――ガシッ

ミント「…!?」

グローバ「…へへぇ」

サワサワ

ミント「ひっ」

グローバ「やわっこいねえ。やっぱこれよこれ!ゴツい岩なんざ触ったことでなーんも面白くねえ!」

ミント「は、離してっ!」ブンッ

グローバ「おっと」

パッ




315: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:31:39.35 ID:qKbALpwl0


ミント「このぉ…さっきからベタベタしてくると思ったら…!」

ミント「変態っ!」

グローバ「人聞きが悪いなあ。戦いの最中に偶然触れ合っちまっただけだぜ?偶然」

ミント「何が偶然よ!うぅ…アッシュ様が見てるのに…」

グローバ「嬢ちゃん、貴族だろ?」

ミント「」ギクッ

ミント「…しし知りませんが?」

グローバ「隠さんでいいがな。嬢ちゃんの気持ちも分かる」

グローバ「貴族なんていつんなってもつまらんしな。どこで何するにしたって義務だの家柄がついて回る」

ミント「そう!そうなの!」

ミント「おじいちゃん、あなたももしかして…」

グローバ「と、言っとった知り合いが居たなあ。そいつが女なんだが、いいケツしてたもんで全然話入ってこんかったわい!」

ミント「……」

ミント「ない。これが貴族はさすがに」

グローバ「嬢ちゃんも肌のハリは負けとらんだろう!わはは!」

ミント「っっ」ゾワゾワ

ミント「絶対はっ倒してやるんだから!」



.........








316: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:32:28.07 ID:qKbALpwl0


ツン

ミント「や…!」ブンッ

グローバ「」ヒョイ

グローバ「ん~、お次はどこがいいかねえ」

ミント「う…もうやだぁ…」ナミダメ



「……」ゴクリ

「なんつーか、美少女の泣き顔って……悪くないな」



グローバ「よおし」ニヤリ

ミント「…!!?」

ミント「こ、降参しますー!審判さん、もう終わり!」

審判「勝者、グローバ!」

グローバ「おん?なんでえ、これからがいいトコだってのによお」



魔法使い「……アッシュさん、あとであの人元気づけてあげて」

アッシュ「そうですね…一言くらいかけましょうか」

勇者(ま、こうなっちまうよな)



侍女「品の無い戦いです」

姫騎士「しかし勝ちは勝ちだ」

姫騎士「案ずるな、私には指一本触れさせはしない」








317: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:32:56.09 ID:qKbALpwl0

ーーー本選右会場ーーー

ダグ「」ヒュ、ヒュヒュッ

...ピタ、ピタピタ

ダグ「…どうなってやがる」

勇者母「……」ニコニコ



「こりゃまた、マジックショーでも見せられてる気分だ」

「場所が場所ならそうなってるやろ。武器屋のやつ、小せぇ木剣大量に持って何すんのかと思ったら投擲たぁな」

「武器の使い方を俺達に見せてくれてんだろうぜ」

「だが一本も届かないんじゃあなぁ」



ダグ(投げナイフの効かねぇ相手なら山程見てきたが、宙で止める奴は初めてだ)

ダグ(ここらじゃ見ない顔の女と思っていたが、ただ者じゃねぇ)

勇者母「あなた、勇者という男の子を見ませんでしたか?この舞踊祭に出ているはずなんですけど…」

ダグ「大会にかね?はは、それなら反対側の会場でやってんだろうさ。さっき名前を見かけたからね」

勇者母「あら、見落としていたのでしょうか」

勇者母「早く渡してあげたいのですが…きっとあの子も――」

ダグ(金持ち貴族か、あわよくば賞金か。戯れで出場してみたが、こいつはとんだ掘り出しもんかもな)

ダグ(飛び道具が通用しねぇなら)

ダグ「」バッ!

ダグ(直接叩くまで!)



.........








318: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:33:38.47 ID:qKbALpwl0


審判「勝者、勇者母!」

オオオォ...!



「やべぇな、あの女」

「武器屋の近接戦もすごかったが…」

「あれは本当に女…いや人間か…?」



ダグ「いやぁ参った参った。とてもお強い!」

ダグ「どちらの出身の方ですかな?」

勇者母「しがない小さな村ですよ」

ダグ「ほぉ」

ダグ「うちは王都で武器屋やってるもんでね、よかったら寄ってっておくれ。武器はあなたをもっと強くしますぞ!」

勇者母「覚えておきます」ニコッ

勇者母「もうすぐで勇者に会えるのですね♪」

ダグ(この女、いつか必ず…)








319: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:34:39.70 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

姫騎士「気になるな」

侍女「先程の相手ですか?お望みとあらば素行調査を致しますが」

姫騎士「いや、勇者だ」

侍女「…!」

姫騎士「奴の戦い方は剣術と体術。剣の腕など私から言わせれば青二才だが…」

姫騎士「まだ何かある」

侍女「何か、ですか」

姫騎士「うむ」

姫騎士「奴の出番は次だったな」

侍女「はい。バーランド卿との闘技です」

姫騎士「席を移そう。ここでは少し見えづらい」








320: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:35:50.96 ID:qKbALpwl0

ーーーーーーー

「よしいけー!」

「ぶちのめせー!」

「俺はセクハラ爺さんに賭けてんだ!負けんなよー!」

ワーワー!

リア「声が…耳に響きます…」

アッシュ「本選も準々決勝ですからね。先の姫騎士様の試合もあります、こちらの会場を観に来る人の方が多いのでしょう」

ミント「……」ギュ

アッシュ「…ミント様、そろそろ離していただいても…」

ミント「もうちょっと」

リア「でも、勇者さんのお相手……」

魔法使い(……勇者……)



グローバ「なんだここまで来れたのか小僧!」

勇者「白々しいおっさんだぜ。見てた癖に」

グローバ「すまんなあ、俺は美人しか目に映らんのよ」

審判「両者前へ!」

グローバ「しかしいいのかい?またこの前みてえに一発で沈むさまを連れの嬢ちゃんに見られちゃうぞ?」

勇者「…へ、いい試合にしよーぜ」

グローバ「フッ。腹、括ったってことかい」

審判「始め!」

グローバ「手加減は無しだ」

グローバ「"硬化"、"敏捷"、"剛腕"」

グローバ「」ドゴッ

勇者「」ダッ




321: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:39:19.10 ID:qKbALpwl0


グローバ(向かってくるか。悪くねえ判断だが)

グローバ「歯食いしばっとけよ!」ズドドド!

勇者「……」タタタッ

グローバ(お粗末!)

グローバ「」ズオッ

勇者「」スッ



ドゴォン!



グローバ「…ほお」



「地面が抉れた…」

「とんでもねぇなあのジジイ」

アッシュ「バーランド卿の身体強化魔法は硬化、敏捷、剛腕の3つ。これだけですが、大砲よりも速く瞬発し、鋼の如き四肢から繰り出される重たい一撃はまさに必殺」

アッシュ「魔法の使えない勇者様にとっては元々相性の悪い相手なのです」

ミント「…魔法、使っても倒せなかった」

アッシュ「あくまでも打つ手が増えるというだけですので…」






322: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:39:51.68 ID:qKbALpwl0


グローバ「ふんぬっ」ブォッ

勇者「」サッ

勇者(よしっ、見える)

グローバ「おお!」グンッ!

勇者「」ヒラッ

勇者(焦るな、奴の次の動きは――)

グローバ「」グ...

勇者(右!)

グローバ「どう!」

勇者「」スサッ

グローバ「やるじゃねえの小僧!ならこれでどうよ!」

ドドドドッ!(猛烈な連続攻撃)

勇者「っ」サササッ、ササッ



リア「腕が増えたみたいです…?」

アッシュ「二本ですよ。霞むほどの動きでそう見えますが」

アッシュ「当たれば勝敗が決してしまうでしょうね」

魔法使い「……っ」



勇者(……)

ドドドドッ

勇者(………)

グローバ「」ズ――(腕を思いきり引く)

勇者(ここだっ!)



――バシィン!



魔法使い「あ…!」






323: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:40:28.92 ID:qKbALpwl0


グローバ「おっ!?」

勇者「ちっ」

サッ、サッ(距離を取る)

グローバ(剣を、当てられたか?)

グローバ(この小僧に?)

勇者「…おっそろしく硬ぇ脇だな」

グローバ「男は硬くてなんぼだろお」

勇者「硬過ぎても嫌われるんじゃねーの?」ケッ

グローバ(こいつは本当にあの時の小僧か?)

勇者「やーっぱ中途半端な攻撃じゃ、でけーイノシシを退治すんのは無理か」

グローバ「!」

グローバ「ぬはは、少しは出来るようになったみたいだなあ?」

勇者「おっさんのおかげさ」

勇者「感謝してんだぜ、あんたのおかげで俺っちはもっと強くなれた」

勇者「"現実"ってのを思い出せたんだ」ニッ

グローバ「……」

グローバ「面白くなってきたな!えぇ?小僧?」

勇者「そう…だな!」ダッ!



.........








324: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:40:57.55 ID:qKbALpwl0


グローバ「むん!」

勇者「っ」サッ

勇者「おらっ!」

ガンッ



「いいぞ!いけいけ!」

「爺さんさっさと決めちまえ!」



グローバ(こっちの隙間を縫って的確に剣を叩き込んできやがる)

グローバ(一回でも俺の拳を当てられれば終わりなんだが…)

勇者「」ヒョイ

グローバ(すんでのところで回避。さっきからこればっかだ)

グローバ(だがそれは小僧とて同じ)

バシッ

勇者「っ!」

グローバ(俺の体にいくら木剣をぶつけたところで無意味。こいつが有効打を喰らわすとしたら、顔面しかねえ)

グローバ(それを狙ってきたところを…叩く!)






325: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:42:25.90 ID:qKbALpwl0


魔法使い「…見てるのが怖いわ」

魔法使い「このまま長引いたら、またあの時みたいに…」

アッシュ「疲労で少しでも動きが鈍くなってしまったら、危険ですね」

アッシュ「ですが今は、彼を信じましょう」

ミント「うー、勇者くんは恨めしいけど…あのおじいちゃんが勝つのはもっと嫌…」



勇者「」グワッ

グローバ(大振り…!)

グローバ(いよいよか!)

ガキンッ

勇者「くぅ…!」

グローバ(体狙い?効かねえことなんぞとっくに分かっとるだろうに)

グローバ(何を企んどる?)

勇者「ほんとにどこもかしこもカチカチだな!」

グローバ「俺をおちょくってんのか!」ブォン!

勇者「滅相もない!」

勇者「確かめてたんだ、よ!」

シュッ!



「投げ付けた!?」

「あの距離でか!」






326: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:43:05.18 ID:qKbALpwl0


グローバ(これが狙いか!)

グローバ(顔面への投剣。なるほど腕を振りきった後じゃ防御も避けることも出来ねえ)

グローバ(――けどなあ)

ゴツンッ

グローバ「がはは!俺は石頭なんだ!」

グローバ(額に向かって投げたのはナンセンス!)

グローバ(これでこいつはその体だけで戦うしかなくなったわけだ)

グローバ「早まったな小僧!体術は俺の土俵――」



スッ



グローバ「!!」

グローバ(いつの間に…!)

グローバ(顔はやらせん!)

勇者「」グ――

グローバ(いや…また体か!?)





ズドンッ!





...ドス、ドシン








327: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:44:00.92 ID:qKbALpwl0


リア「…!」

アッシュ「ふふ」



グローバ「ぐ…小僧…」

審判「…場外!勝者、勇者!」

ワーー!



リア「やりました…!」

アッシュ「フェイントからの見事な掌底。バーランド卿をあそこまで吹き飛ばしたのは勇者様が初めてではないでしょうか」

ミント「すっご…」



グローバ「いやあ驚いた」

グローバ「小僧、お前さん強くなったな」

勇者「言ったろ?俺っち優勝候補者だって」

グローバ「ただのイキったガキじゃなかったっつーことか!わはは!」

グローバ「しかし残念だ。せっかく姫の豊満なボディを堪能しようと思ってたんだがなあ」

勇者「豊満…確かに」

グローバ「お?お前さんも分かるかい。いい目してるぜ」

グローバ「ま、俺の代わりに楽しんできてくれや。姫との手合わせをよ」ニカッ

勇者「言われなくても」ヘッ




328: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:44:32.09 ID:qKbALpwl0


勇者(……)

勇者「」クルッ

勇者「スゥー…」

勇者「よく聞けお前ら!」

勇者「最強は、この俺っちだ!!!」

ウォオオオオ!



「愉快なやつよのう」

「はっはっは!いいぜ、あんたに賭けたろうじゃねぇの!」

魔法使い「――」

魔法使い「」タッタッタッ

リア「あ、魔法使いさん」

アッシュ「行かせてあげましょう」

リア「…はい」フフッ






329: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:47:58.56 ID:qKbALpwl0


姫騎士「………」

姫騎士(……)

侍女「……」

王「ここにおったか」

姫騎士「お父様。何故こちらへ?」

王「それは儂の言葉だ。お前が客席の前まで来るとはな」

王「あの男、それ程の使い手か?」

姫騎士「……」

姫騎士「心配には及びません。見かけない者が勝ち進んでいたもので、観察していただけです」

姫騎士「私の敵ではありません」

王「そうか。お前がそう言うのなら安心だ」

王「分かっておるな姫騎士よ。お前はこの国の光、希望なのだ。負けることは許されぬ」

王「国の為、儂の為に、勝て」

姫騎士「お任せ下さい」

姫騎士「私の愛するお父様」








330: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:48:39.52 ID:qKbALpwl0

ーーー選手入場路内ーーー

勇者「……はー」

勇者「やったんだな、俺」



ーーーーー

グローバ「なぁまさかおめえよ、このポンコツをぶつけようってんじゃねえだろうな?」

ーーーーー



勇者「……へへ、そのポンコツはここまで強くなりましたとさ」



...タッタッタッ

勇者「…!」

魔法使い「はぁ…はぁ…」

勇者「魔法使い?どうしたんだよ」

魔法使い「あんたを、探しにきたのよ」ハァ..ハァ..

勇者「あー戻ってこなかったからか?俺っち次の試合に備えてちょっち休憩してたんだ」

魔法使い「………」

勇者「なんか、怒ってらっしゃる?」

魔法使い「……おめでと」

勇者「んぇ?」

魔法使い「あのおじいさんに、勝ってくれたから」

勇者「…おう、サンキュ」

魔法使い「またみっともなく負けでもしたらどうしてくれようかと思ったわ」

勇者「蒸し返すなって。ありゃ生まれて初めて負けたもんだかんよ、ちっとびっくりしただけさ」

魔法使い「この前までめそめそいじけてたものね」

勇者「負けっぱなしは気に喰わねーし、一念発起してやったのよ、俺」

勇者「前よりずっと強くなってんだろ?」

魔法使い「……やっぱり……あんたは……」

勇者「今度はなんだよ?」




331: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:49:22.37 ID:qKbALpwl0




ツー...



勇者「…!?」

魔法使い「ぅ……グス…」ポロ、ポロ

勇者「え、お前…」

魔法使い「バカ……バカ…!」

魔法使い「もう、戻ってこないかと思ったんだから…」ポロポロ

勇者「…泣き虫魔法使いちゃんは戻ってきちまったみたいだな?」

魔法使い「うるさい…!」

勇者「ほら、泣くなって。俺っちはここにいんだから」

魔法使い「だってぇ……」ポロポロ

魔法使い「本当に、消えちゃったと思ったんだもん…!」

魔法使い「いつもいつも私を引っ張って……どんな時も楽しそうで……」



魔法使い「私の大好きなあんたが…!」






332: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:50:08.62 ID:qKbALpwl0


勇者「……」

魔法使い「……………!!??」

魔法使い「わ、私何言って…!」

魔法使い「忘れて!今のはその…とにかく忘れてっ!」

勇者(……)

勇者「俺、行くわ」

トットットッ

魔法使い「っ…」

魔法使い(そう、だよね)

魔法使い(こいつにとっての私なんか……)

トッ...

勇者「……」

勇者「待ってるやつがいるんよ」

魔法使い「…え?」

勇者「子供ん頃からずーっと、最強の俺っちを待ってるやつがさ」

勇者「早く行ってやんねーとまた泣き出しちまう」

魔法使い(――!)

魔法使い「…覚えて、たの…?」

勇者「勝ってくる」

勇者「勝って戻ってくるからさ」

勇者「もう少しだけ、待っててくれ」

魔法使い「………うん」

魔法使い「絶対、勝ってよ」

勇者「へへっ」








333: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:50:48.88 ID:qKbALpwl0






アナウンス『ただいまより第4戦を行います。選手は入場してください』

アナウンス『準決勝。姫騎士、勇者』








334: ◆YBa9bwlj/c 2020/06/28(日) 06:52:11.04 ID:qKbALpwl0

今回はここまでです。
次回、姫騎士戦です。



336: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:35:35.34 ID:ElQ0xIuM0

6章2/3、投下します。



337: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:36:05.33 ID:ElQ0xIuM0

ーーーーーーー

「姫騎士様ー!我らがついておりますぞー!」

「勇者ー!男を見せろよこの!」

タッタッタッ

魔法使い「間に合った?」ハァ..ハァ..

リア「魔法使いさん!よかったです、今始まるところですよ」

ミント「……」ジー

魔法使い「あれ、アッシュさんは?」

ミント「昔の友人に会ってくるとかでどっか行っちゃった」

ミント「そして私はアッシュ様からこの子のお守りという大事な使命を任されたのです!」フンス

魔法使い「…そう」



姫騎士「……」

勇者(うひゃーおっかねー)

勇者(美人でグラマラスときてんのに、すげー威圧感だぜ…)

姫騎士「緊張しているのか?」

勇者「ん?いやー間近で見るとこーんな綺麗な人なんだなって」

姫騎士「面白い男だ。賛辞と受け取っておこう」






338: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:36:37.78 ID:ElQ0xIuM0


侍女「………」

...コツコツ

アッシュ「元気がありませんね」

侍女「何をしにきたのですか?」

アッシュ「観戦ですよ。お一人でいるよりは寂しくないでしょう?」

侍女「…不要な気遣いです」

アッシュ「そう仰らずに」ニコッ



姫騎士「君の闘技見せてもらったよ。大層な演出家だな、最強殿」

勇者「なはは、どーも」

姫騎士「さぞ、強いのだろうな」

勇者「期待してくれていいぜ。勝っても負けても退屈はさせないかんよ」

姫騎士「楽しみだ」

審判「両者前へ!」

ザッ...

姫騎士(……)

審判「始め!」




339: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:37:08.05 ID:ElQ0xIuM0


ダッ

勇者(相手の力量が測りきれてねーうちは様子見に回んのも大事だって、先生も言ってた気がすっけど…そんなん俺っちの性に合わねー)

勇者(先手必勝っ!)

勇者「」ブォン!

姫騎士「……」

カン、カンカンッ

カァン!

勇者(びくともしねー…)

勇者(なら!)

ガンッ、ガンッ、ガィン!

勇者「とりゃ!」ビュン

姫騎士「」スッ

ガツン!

勇者「なっ」



「剣の横腹を殴った…」

「よく見えますね、さすが姫騎士様」

アッシュ「……」






340: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:38:11.20 ID:ElQ0xIuM0


勇者(俺っちの剣なんか素手で十分ってかい)

勇者(そんならこっちだって…!)

勇者「」グンッ

姫騎士「」バシッ

勇者(左!裏拳!回し蹴り!)

ガッ、ガッ

ビシッ!

勇者(剣先を蹴っても止められるんか!?)

勇者(…転ばしてやる!)

勇者「」バッ

――ヒラッ

勇者「!」

姫騎士「」バッ

勇者「おわっ!」

ドタン!



リア「勇者さんの技が効かない…」

魔法使い「それどころか足払いを返してきたわね…」



アッシュ(自分の得物である剣を防御だけに使う)

侍女「…煽りつけていますね」

アッシュ「えぇ」






341: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:39:00.43 ID:ElQ0xIuM0


姫騎士「……」

勇者(こいつ…偉そうに見下してきやがって…)

勇者「よっこらせっと」

勇者「あーあ、こんなに土汚れ付いちまって」パンパン

姫騎士「………」

勇者「あんた、剣が得意なんだろ?別に俺っちに合わせてくれなくてもいいんだぜ」

姫騎士「あぁ」

姫騎士「言われずともそのつもりだ」

シュンッ

姫騎士「」シッ――

勇者「っ!」

ガァン!

バシッ、ガッ

ズバッ!

勇者(くっ…!)

勇者(どんなリーチしてんだよ目が追いつかねー…!)

姫騎士「」ダン

勇者(左か!?)

ガキッ!

勇者(正面!)

ガン!

姫騎士「」ビュオッ

勇者(右上――違ぇ!)

ビシィッ!

勇者「つっ…!」

サッ、サッ(距離を取る)

勇者「いってー…」

姫騎士「……」

勇者(追撃してこない、か)

勇者(舐められてんなー)






342: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:39:40.02 ID:ElQ0xIuM0


侍女「あれが、貴方の言う英雄ですか?聞いて呆れますね。姫騎士様に打ち勝つどころか一撃入れることすらままならないではないですか」

アッシュ「確かに、このままでは難しいでしょうね」

侍女「まさか手加減していると?」

アッシュ「いえ、彼に手心を加える余裕はないでしょう」

侍女「……」



勇者(…やっべぇ)

勇者(思ってた何倍も強ぇ。本当に勝てんのかよ、こんな怪物に)



ーーーーー

魔法使い「絶対、勝ってよ」

ーーーーー



勇者(………)

勇者「……へへ」

勇者(いけねーいけねー。怯むなよ俺)

勇者(負けると思ったら負けんだ)

姫騎士「楽しいのか?」

勇者「まぁね。あんたは?」

姫騎士「…愚問だな」

姫騎士「闘技とは、勝敗を明確にするためのものに過ぎない」

勇者「勝ったら嬉しくない?負けたら悔しいけどさ」

姫騎士「勝利の中にあるのは次の勝利だけだ」

勇者「ひゅー、王者の言うことは違うねぇ」

勇者「でも、勝つのは俺っちだかんなっ!」ダッ

姫騎士「」ダッ



.........








343: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:40:19.69 ID:ElQ0xIuM0




ーーーーー

王「これは驚いた…」

王「姫騎士よ、お前には剣の才能がある」

ーーーーー



ーーーーー

王「よくぞ優勝してくれた!これで諸国達も我が国を無視することは出来なくなるだろう」

王「お前は最高の娘だ。愛しておるぞ」

ーーーーー



姫騎士「」ビュンッ

バシンッ

勇者「ぐっ…」






344: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:41:14.40 ID:ElQ0xIuM0




ーーーーー

王「よいか、最早お前の勝利はお前だけのものではない。儂と、この国をも背負っておるのだ」

王「愛しい我が娘よ、お前の強さは誰にも破られてはならん。お前が負けることは国の落ち目に繋がる」

王「敗北に未来はない」

王「勝つのだ、姫騎士」

王「勝って勝って勝ち続けるのだ!」

ーーーーー



姫騎士「」スッ

ビシッ

勇者「っ」




345: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:41:42.17 ID:ElQ0xIuM0


姫騎士(そうだ)

ガン!

姫騎士(私は勝たなければならない)

ガキッ

勇者「ぬぉ!」

姫騎士(例え公爵の当主が相手であろうと)

ガンッ!

姫騎士(昔馴染みの執事が離れていこうと)

バンッ

勇者「ぐぅ…!」

姫騎士(無心に)

ヒュッ

勇者「」サッ

姫騎士(ただひたすらに…)

勇者「そらっ!」バッ

クルッ――

姫騎士(勝利を望めっ!)



バキィン!



勇者「――っ」

勇者(マジ、かよ…!?)






346: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:43:22.17 ID:ElQ0xIuM0


ミント「あれま」

リア「剣が……」

ミント「お姫ちゃん、色んな人の剣折ってるよねー」

ミント「同じ木剣使ってるはずなのになんでそんなこと出来んだろう?」

「ありゃ心も折れるわな」

「勇者っちゅーのも頑張っとったが、姫騎士様相手じゃ歯も立たん」

「よく保った方だ」

魔法使い「………」






347: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:43:50.67 ID:ElQ0xIuM0


勇者(ちくしょー…お姉さんの剣技も通じないときたか)

勇者(体術でどう攻めていく…?)

姫騎士「審判殿、この者に新しい剣を用意してくれないか」

勇者「…は?」

審判「それは…」

姫騎士「どうした?ルールに抵触してはいまい?」

審判「ですが」

姫騎士「早く」

審判「は、はい」



ザワザワ...

「どういうこと?」

「相手に情けをかけてらっしゃるとか…?」

「今まで見たことないわ…」

侍女「姫騎士様自身が、試合の継続を望んだ」

アッシュ「それ以外に考えられませんね」

アッシュ「…彼女はこの闘技の中で何かを見つけようとしている」

侍女「何を」

アッシュ「分かりませんが……今の強引な申入れは、さながら子供のわがままのようです」






348: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:44:17.54 ID:ElQ0xIuM0


審判「こちらです」

勇者「……」

(剣を受け取る)

姫騎士「再開しようか」

勇者「…は、優しいお姫様だこと」

勇者「そうやっていつまでも余裕ぶってると、足元すくっちゃうからな?」



.........








349: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:45:26.14 ID:ElQ0xIuM0


ガンッ!

カン、カァン

ズバン!



「辛ぇだろうな、あんだけやられてよ」

「降参すりゃええのに」

アッシュ(無論、勇者様にとって辛い戦いであることに間違いはないでしょう)

アッシュ(相手を軽んじることなく全力で立ち向かっての、この力量差ですから)

侍女「……」グ...

アッシュ(しかしそれ以上に)

アッシュ(この会場で今、誰よりも辛いのは…)






350: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:46:19.55 ID:ElQ0xIuM0


勇者(くっそ…!)ブンッ

ガン

勇者(どこから攻めても剣だけで防がれる)

ガツッ

勇者(蹴りも殴りも平気で止める)

姫騎士「」ズオッ

勇者「っ!」ギィン!

勇者(癖とか弱点ねーのかよ…!)

勇者(こんなん続けたとこで全身痣だらけにされるだけだ)

姫騎士「」スサッ

ズバッ

勇者(体力も…)

勇者「…っ」

勇者「このっ!」ビュンッ

姫騎士「」ヒラッ

勇者「!?」

勇者(やばい、カウンターが…)

ブォンッ

ガァン!

勇者(っぶねー、何とか合わせた)

勇者(返す刀だ!)ダン

――ヨロ

勇者「あっ」

勇者(しまっ――)

姫騎士「」シッ



ドゴッ!



勇者「がっ…!?」

ドサッ...






351: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:47:01.66 ID:ElQ0xIuM0


魔法使い「!…」

リア「あぁ…!」

ミント「うわ、痛そう…」



勇者「げほっ…げほっ!」

姫騎士「……」

勇者「っはぁ……はぁ……」

姫騎士「……」

姫騎士「どうした、最強」

勇者「ゔぅ、え゙ほっ…」

姫騎士「何を暢気に寝ている」

勇者「は……は……」

姫騎士「…っ」

姫騎士「最強なんだろう!?誰にも負けないのだろうっ!?」

姫騎士「絶対に勝つことこそ"最強"の至上命題!」

姫騎士「その程度の力で最強を騙るな!不愉快極まりない!!」






352: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:47:40.01 ID:ElQ0xIuM0


「どうしたんじゃ姫騎士様…?」

「すごい剣幕…」

アッシュ「自らの勝利が何を意味するのか、あの方は誰よりも知っているのです」

アッシュ「彼女にかけられた期待とプレッシャー。それが彼女を必勝へ追い込む…」

アッシュ「恐らく姫騎士様にとっての勝利は、甘美な快でも栄誉な誇りでもない」

アッシュ「ただただそこにある空気に同じ。呼吸して肺を満たすもの」

侍女「だから、許せないのでしょうね」

侍女「自由にこの場所で舞い、戦うあの男が」

アッシュ(…最強とはその実、横に並ぶ者のいない孤独な存在なのです)

アッシュ(そう……私では駄目だった…)






353: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:48:06.76 ID:ElQ0xIuM0


姫騎士「……」

勇者「」

審判「……」

姫騎士(……)

審判「…きぜ――」

ノソ...

姫騎士「…!」

勇者「だーれが、その程度の力だって?」

勇者「俺っちまだ負けてねーし」ヘヘ...



「立つのかよ」

「すげぇ根性だな」



勇者「こいよ最強」

姫騎士「……」

勇者「そんなに言うならさ、手本を見せてくれよ」

勇者「あんたの言う"最強"ってやつを」

姫騎士「…いいだろう」

姫騎士「身を以って教えてやる」



.........








354: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:48:33.55 ID:ElQ0xIuM0


バシッ、バシィン!

ズバッ

勇者「」ヒュン

ガッ

勇者「……」ブンッ

パシッ

姫騎士「」シッ

ダァン!

勇者「ぐぁ…」



ミント「ひ、酷いわね。あそこまで一方的に…」

ミント「下手したらこれ、勇者くん死んじゃうんじゃ…?」

リア「そんなこと…。だって闘技ですよっ…!」

ミント「でもさっきから動きもおかしいじゃない。剣持ち替えようとしたり手と足同時に出したり」

魔法使い「大丈夫よ。あいつは死なないから」

魔法使い「負けもしない」

ミント「えぇ…?」






355: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:49:35.11 ID:ElQ0xIuM0


勇者(袈裟斬り)

姫騎士「……」サッ

勇者(膝蹴り)

ガツン

姫騎士「」ヒュッ

ザンッ

勇者「っ」

勇者(もう一丁斬り上げ)



ーーーーー

アッシュ「――さて、今日はこの辺りで体術鍛錬へ切り替えます」

勇者「また?せっかくいい感じに剣の体になってきたのに」

アッシュ「勇者様、あまり長く剣の鍛錬を続けてると、稀に体術の動きをしますよね」

勇者「そうなん?全然意識してないんだけど…」

アッシュ「我慢は身体に毒です。無意識下でも体術を鍛えたいと思っているならそうしてあげるのが最も伸びが良いですから」

アッシュ「貴方の場合、逆も然りなので体術と剣術をバランスよく切り替えていくのがベストでしょう」

勇者「なんじゃそりゃ」

ーーーーー



勇者(肘打ち――)

ガシッ

勇者「…!」

姫騎士「いつまでこの茶番を続ける気だ?」

姫騎士「お前の望む最強とは何か、存分に分かっただろう」

勇者「…ケチケチしてんなって。もうちょい見してよ」

姫騎士「断る。遊びに付き合うのはここまでだ」

パッ...

姫騎士「」ビュオッ!

ゴスッ






356: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:51:51.49 ID:ElQ0xIuM0


「頭ときたぜ…」

「なんで奴は倒れない?」

「ゾンビなんじゃねぇか?ははっ」

リア「勇者さん…」

ミント「もう見てらんない…」

魔法使い「……」



勇者「」フラ...

姫騎士「しぶとさだけは認めてやろう」

姫騎士「…終わりだ」スッ

姫騎士(こやつもこれまで下してきた有象無象と同じ)

姫騎士(私はただ)

ブワァッ!

姫騎士(勝ち上がるのみっ!)





――バスッ








357: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:52:27.12 ID:ElQ0xIuM0


侍女「……!」

アッシュ「……」



リア「っ…」(目を瞑る)

ミント「え…」

魔法使い「……」



姫騎士(……む)

勇者「…いひっ」



魔法使い「もう」

魔法使い「遅いじゃない、まったく」フフ

ミント(足裏で受け止めたの…?いつの間に)






358: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:53:02.73 ID:ElQ0xIuM0


勇者「ようやく分かったぜ」

勇者「剣と体は別々のもんじゃねーのさ」

勇者「そういうこったろ?お姫様」

姫騎士「…何がだ?」

勇者「つまり」

勇者「――反撃開始ってこと」ザッ!

姫騎士「……」ガンッ

――ヌッ

姫騎士「っ!」ガッ

勇者「」グルン

ガツッ、ガィン!

姫騎士「く…!?」



「んん?剣で姫騎士様を押しとる」

「バッカ見えないか?手、足、胴全部使ってる!」

「人間の動きかよあれ!?」



勇者「まだまだ!」

姫騎士「…っ」






359: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:53:42.22 ID:ElQ0xIuM0


侍女「あの男は何をしたの…?」

アッシュ「…そういうことでしたか」

アッシュ「勇者様は闇雲に戦っていたのではありません。剣術と体術の連携…言うなれば融和点を探っていたのです」

アッシュ「合点がいきました。きっとあれが――」

アッシュ「彼の才能」



勇者(上段、足掛け、胴斬り!)

カンッ、スサッ――ガキッ!

勇者(回し蹴りからの)ゴッ

勇者「」ピョン

姫騎士「っ」

ガン、ガンッガン!

勇者「前転宙返りー!」スタッ

勇者「からの切り返しっ!」ダッ

姫騎士「ちょこざいなっ」

ガァン! ドスッ

ダダッ、バシッグルッ

勇者「へへっ!ちゃんとついてきてくれよ!」

勇者「もっともっとあげてくぜーっ!」

姫騎士「この…!」



リア「すごい……速過ぎてくらくらしてきました……」

ミント「おっどろいた。剣と体、お互いの攻撃の隙間を補い合ってる…」

ミント「そりゃあ攻撃速度は格段に上がるけども、あんな芸当出来ないって普通!」






360: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:54:53.21 ID:ElQ0xIuM0


勇者「よっ」サッ

姫騎士「っ!」ガッ

勇者「ははっ!」シュッ

姫騎士「」バスッ

姫騎士(なぜ…)

勇者「こっち!」

姫騎士(なぜ笑える)

勇者「ほら遅え!」

姫騎士(楽しいのか?闘技(これ)が?)

勇者「ボーッとしてっとおいてくぞ!」

姫騎士(…そんなわけはない)

勇者「それっ!」

姫騎士(そんなわけがないんだ!)

姫騎士「はあっ!!」シッ――



ガキィッ――






361: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:55:20.35 ID:ElQ0xIuM0




カラン、カラ...



姫騎士(……剣が……)

勇者「……」

勇者「拾っていいぜ。さっきのお礼だよ」

勇者「剣持ってないあんた倒したところで最強は名乗れないっしょ?」



オオオオォ!

「おうおう格好付けやがってよー!」

「てめぇってやつは男の中の男だ!」



姫騎士「……ふっ、調子に乗るなよ」








362: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:56:59.72 ID:ElQ0xIuM0

ーーーーーーー



カンッ、ガガッ、ズバッ!



「いいぞ勇者!そこだ!」

「守るのは危険ですぞ姫騎士様!」

ワーワー!



勇者「うらっ!」

ヒュッビュオッ

姫騎士「ふっ!」

スッ、ガンッ

姫騎士(速い)

ガッ――

姫騎士(一瞬でも気を抜けばやられる)

スサッ――

姫騎士(全力で迎え撃つ)

ダン――

姫騎士(全力で捌ききる)

シュッ――

姫騎士(この感覚はなんだ…?)






363: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:57:46.11 ID:ElQ0xIuM0




ーーーーー

王「どうだ?初めて剣を握ってみた感想は」

王「おぉ、上手だな。まだ小さいのに父さんより強いやもしれんな、はは」

王「ん?そうかそうか楽しいか!」

王「父さんもとても楽しいぞ――」

ーーーーー



勇者「せいっ!」

姫騎士「」シュバッ

ガァン!

勇者「うおぅ!?」

姫騎士「ここは君だけの闘技場ではないのだよ!」

勇者「分かってらぁ!」バッ

ガンガン、ガンッ

勇者「今はあんたも居るもんな!」

姫騎士「そういうことだ!」ダッ!

姫騎士(…ふふっ)






364: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:58:18.21 ID:ElQ0xIuM0


侍女「!…ねぇ、今…」

アッシュ「貴女にも見えましたか」

侍女「姫騎士様、笑って……」



ーーーーー

幼姫騎士「えい!」

幼侍女「きゃっ…あーあ、また負けちゃったー」

幼姫騎士「ふふん、わたしにはアッシュがついてるからな!」

幼侍女「姫ちゃん強いー」

幼侍女「あ、そういえばね、王様が新しいお花買ってきたんだって!」

幼姫騎士「お父様が!?今すぐ見に行くぞ!」

幼侍女「見境なーい」アハハ

幼侍女「お花、いちばん好きだよね~」

幼姫騎士「何を言う。花も好きだがお前たちと遊ぶのも、楽しくて大好きだぞ」ニッ

ーーーーー



侍女「…姫ちゃん…!」






365: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:59:04.05 ID:ElQ0xIuM0


勇者「」シュンッ!

姫騎士「うぐ…!」

姫騎士(読み切れない…!)

姫騎士(かつて経験したことのない速度の中に身を置いている)

姫騎士(奴は当然のように加速していく)

ビシュ、ビシュッ

バババッ!

姫騎士(徐々に端へ追い詰められていることなどとうに分かっている)

姫騎士(しかし避けるという選択は無い。あり得ない)

姫騎士(何故ならこやつを負かせば私は)

姫騎士(私は――!)

姫騎士「はあああぁっ!!」

勇者「うおおおぉっ!!」



ガンガンカンッドスッ

ゴツッ、ザザッガィン!

サッ!ガキッガガガッ






366: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 02:59:33.18 ID:ElQ0xIuM0


勇者「」グルンッ!

姫騎士「っ――」



ゴッ!



姫騎士(回し蹴り…!)



――ドサッ...



審判「………」





審判「場外。勝者、勇者!」








367: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 03:00:21.71 ID:ElQ0xIuM0




「「「おおおおおおおおぉぉ!!」」」



リア「やりました!やりましたよ魔法使いさん!勇者さんが…!」

魔法使い「うん、そうね。やってくれたわね…!」

ミント「この試合、夢に出てきそう」



侍女「あれが英雄……」

アッシュ「上出来です、勇者様」

アッシュ「…ありがとうございます」



姫騎士「……………」

姫騎士(……私は負けたのか)

姫騎士「………」

姫騎士(そう、か)

勇者「地べたで寝てると肩こるぜ」

姫騎士「……」

勇者「聞こえないんか?あの大合唱」






368: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 03:01:52.63 ID:ElQ0xIuM0


「姫騎士様!最高の試合でしたぞ!」

「今日ここにいられたこと、神に感謝致します!」

「あなたは紛うことなき国の英雄だっ!」

「「「姫騎士!姫騎士!姫騎士!」」」



姫騎士「…何故…」

勇者「勝ったのは俺っちなのによー。このアウェー感だもんな」ヘッ

勇者「さすがお姫様は人気者だ」

姫騎士「……」

姫騎士(敗北は死。…そう言い聞かせてきた)

姫騎士(国の為に、お父様の為に)

姫騎士(でも……)

姫騎士(私は、間違っていたのかもしれない)

勇者「な?楽しかったろ?」

姫騎士「………」

姫騎士「そうだな」フッ

(顔のそばに咲く一輪の花)

姫騎士(あぁ…綺麗だ……)








369: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/02(木) 03:05:07.92 ID:ElQ0xIuM0

姫騎士戦、ここまでです。
こういう戦闘描写を上手に表現するには地の文の方がいいんでしょうね…

次回の投稿で完結となります。



373: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 03:58:29.46 ID:mygcD0E70

今更ながら、姫騎士と侍女のキャラカードを置いておきます。

キャラ名:姫騎士(小国の英雄 綺麗なスタイルに茶髪のロング)
性別:女
年齢:18
得意戦型:剣術
備考:小さい頃父である国王に剣の才能を見出され、開催した闘技大会で優勝を果たして以来、常に勝つことを望まれるようになった。圧倒的な剣の腕前で何者をも寄せ付けない。アッシュ、侍女とは幼馴染み。

キャラ名:侍女(姫騎士のお付き 落ち着いた物腰の女性)
性別:女
年齢:18
得意戦型:剣術
備考:姫騎士の傍で様々な身の回りの世話をしている。中でも剣の鍛錬には熱心に付き合うが、これは姫騎士を今の状況から救い出してあげたいという気持ちの裏返し。生半可な力のアッシュでは姫騎士の現状を変えることが出来ないと考え、アッシュに執事を辞めさせた。姫騎士ほどではないが、剣術に長ける。




375: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:12:57.19 ID:mygcD0E70

ーーーーーーー

勇者「よ、無敵の男参上」

リア「勇者さん!」テッテッテッ

リア「とっっても素敵な闘技でした!楽しくてわくわくして…!私、勇者さんたちの旅についてきて本当によかったです!」

勇者「俺っちの勇姿ちゃんと目に焼き付けたかー?」

アッシュ「勇者様、貴方には感謝してもしきれません」

勇者「なーに言ってんだ先生。礼言うのはこっちだよ。先生のおかげで俺っちはここまで来れたんだ」

アッシュ「私はもう先生ではないですよ」ニコッ

勇者「サンキューな、アッくん」

ミント「……」ジー

ミント(自由に楽しそうに試合してた。あんな風に戦えたらもっと面白いのかな)

魔法使い「ん」(手を上げる)

勇者「?、あぁ」

パン(ハイタッチ)

勇者「言った通りだろ?」

勇者「約束は守る」ピース

魔法使い「…いっぱい待ったんだから」




376: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:13:33.49 ID:mygcD0E70


「お、最強野郎じゃねぇか。いかす試合だったぞ!」

「決勝も面白いもん期待してるからなー!」

勇者「へへっ」

グローバ「よう」

勇者「グローバのおっさん!」

グローバ「ケチくせえじゃねえか、あんな隠し玉持ってたなんてよ」

勇者「奥の手は最後まで温存って、先生の教えさ」

グローバ「その割には随分めっためたにされてたがな、がはは!」

グローバ「んでよ、姫の体はどうだった?」

勇者「ん?んー…」

勇者「…剣の感触しか残ってねー」

グローバ「かー!何のために戦ってたんだい小僧」

グローバ「まあいい。直接確かめる楽しみが増したぜ」

グローバ「小僧、体貸しな」

勇者「えっ。おっさんまさかそっちのケが…!?」

グローバ「なわけねえだろ?ほれ」

ポワァ...

魔法使い「治癒魔法…?」

ミント「に、似合わな過ぎる」

勇者「おぉ、楽んなってく…」

グローバ「俺からの餞別だ。決勝の相手もそれなりに強えらしいが、またまた女だとよ」

グローバ「精力復活させとかんとなあ!わはは!」








377: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:15:16.66 ID:mygcD0E70

ーーーーーーー

姫騎士「……」トットッ

姫騎士「……!」トッ...

侍女「……」

姫騎士「こんなところで待っていたのか?」

侍女「はい」

タッタッタッ

――ヒシ

侍女「…おかえり……姫ちゃん…」ギュー

姫騎士「……ただいま」

姫騎士(懐かしい呼び名だ)

姫騎士「私は、負けてしまったよ」

侍女「だから何だと言うんですっ…。それで何を失いましたか?」

侍女「あの敗北は、失ったものより戻ってきたものの方が大きいのですから…!」

姫騎士「…辛い思いをさせてしまったな。すまない」

侍女「」ギュ...





378: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:15:42.30 ID:mygcD0E70




..カツ..カツ



姫騎士(…!)

王「……」

姫騎士「…お父様…」

姫騎士「優勝に届かず申し訳ありません。言い訳のしようもなく私の力不足が招いた失態です」

姫騎士「どのような処罰もお受け致します」

王「………」

王「よい」

姫騎士「…?」

王「よいのだ、姫騎士」

姫騎士「え…」

王「思えば、我が国は十分に豊かとなった」

スッ(背を向ける)

姫騎士(……)

王「…お前の部屋の花、枯れかけていたのでな。新しい株を増やしておいた」

王「好みに合うか、分からぬが」

姫騎士「!」

姫騎士「……うん、ありがとう」








379: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:16:26.15 ID:mygcD0E70

ーーーーーーー

ザワザワ

ドヨドヨ

「押すなって、見えねぇだろ」

「押してねーよ」

ゾロゾロ...

ミント「人が多過ぎるぅ…暑苦しいよー」

アッシュ「例年の風物詩ですね。別会場の方々が決勝を見に集まってくるのです」

ミント「ね、アッシュ様。勇者くんのあの戦い方、私にも出来るかな」

アッシュ「どうでしょう。二週間の特訓を経たとはいえ、彼の才能と地力があってこそのものでしょうから」

ミント「特訓!?アッシュ様直々に!?」

ミント「それってお願いすれば私にもやっていただけるのでしょうか…!」キラキラ

アッシュ「そ、そうですね……今は少々時期が…」

アッシュ「!、そうです!魔法使い様にどうしてもお聞きしておきたいことがあったのです」

魔法使い「ん?」

アッシュ「元々勇者様の戦術は高い水準にありました。バーランド卿も仰っていましたが、とても優秀な師に教わっていたのだと思います。彼に稽古をつけていたのはどのような方なのですか?」

アナウンス『ただいまより、第5戦を行います。選手は入場してください』

魔法使い「そうね、あいつに闘技を教えてたのは――」

アナウンス『決勝戦。勇者、――』



魔法使い「あいつの母親なの」
アナウンス『勇者母』



魔法使い「優しいんだけど少し底知れないところがあってね……って」

魔法使い「えっ!?!?」

アッシュ「どうされました?」






380: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:17:57.84 ID:mygcD0E70


勇者「なんで、母さんが…!?」

勇者母「あら、やっと会えましたね勇者♪」

勇者母「これ忘れていってましたよ」

(勇者の木剣)

勇者「え、あ、うん」



魔法使い「えー……」

リア「魔法使いさん?…もしかしてあの女の人…」

魔法使い「うん…あの人が勇者のお母さん」

アッシュ「それはそれは」



審判「両者前へ!」

審判「始め!」

勇者母「優勝に手をかけていたのですね。あなたのことですから少しだけ心配していたのですけど、やっぱりあなたは自慢の息子です」

勇者「…だろ?」

勇者「そうだろそうだろう!ちゃんと修行してたかんな!俺っち前よりずっと強くなったんだぜ!」

勇者母「そうですか!ではでは勇者の成長を母に見せてくださいな」ニコニコ

勇者母「審判さん、危ないので離れていてください」

審判「はい…?」

勇者母「まずは他の皆さんを巻き込まないように…」

勇者母「"結界"」



フォン






381: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:18:50.64 ID:mygcD0E70


「うわぁ!?」

「なんだなんだ?こりゃガラスか?」

魔法使い「な、なっ…」

リア「見たことない魔法です……けど」

アッシュ「えぇ、私にも分かります。この魔力の強さは、ともすればレラ様より…」

ミント「鳥肌立ってきた…」



勇者母「さぁ、初めは準備運動ですよ。これから唱える魔法、しっかりと避けきってください」

...ゴゴゴ

勇者「え…母さんちょっと待って」

ビキ..バチッ..

勇者「魔法よく分かんねーけどさ、やばいやつじゃないのこれ…?」

勇者母「いきますよ勇者!」

勇者「ちょちょちょ、話聞いて――」

勇者母「"天雷"」



ピシャッ――



ズガァン!

バキバキバキ!バチンッ!

ゴロゴロ――ドゴォンッ!






382: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:19:41.72 ID:mygcD0E70


「きゃあっ!?」

「ひぃぃぃ!」

魔法使い「何よこのでたらめな魔法…!?」

リア「ひぅ」(魔法使いに抱きつく)

アッシュ「こちらには来ないようになっているのでしょうが…」

アッシュ(本能的に防御反応をとってしまいますね…!)



バチ...

ピリ、ピリピリ...

勇者母「もうよいですね」

フォン(結界を解く)

勇者母「さて勇者、次はあなたの得意な剣を」

勇者「」チーン

勇者母「……あら?」




383: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:21:22.15 ID:mygcD0E70


審判「し、勝者、勇者母…」

勇者母「やだ、つい…」

勇者母「少々張り切ってしまいました。お恥ずかしい…」



観客「「「………」」」

「あの女、鬼強え剣士じゃなかったんか…」

「俺が見た時はバリバリの格闘技で相手ぶちのめしてたぜ…?」

「あやつ何者じゃ…」

魔法使い「本当、何なのかしらね…」アハ..アハハ..

アッシュ「………」

ミント「か、神様の天罰…?」



勇者母(そういえばこの魔法、魔王ちゃんに使って以来でした。出力間違えないようにしないといけませんね)








384: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:22:34.37 ID:mygcD0E70

ーーー夕方 宿ーーー

「「「いただきます」」」

魔法使い「ん~!おいしいわ!やっぱりアッシュさんの料理は最高ね!」

勇者母「感動です!世界広しと言いますがこれほど素敵な食事は初めてです」

勇者「……たく、意味分からん……どうして母さんが…あの反則魔法…」ブツブツ

リア「あ、あの勇者さん、こっちのもおいしいので…」

アッシュ「姫騎士様に勝利しただけでも誉れ高い戦果ですよ」

勇者「くぅぅ…!」

勇者母「そうですよ勇者。舞踊祭なら美しく舞えるように練習すればいいのです」

魔法使い「…わ、私はあんたがちゃんと迎えに来てくれただけで、その…」

勇者「前も言ってたけどさ、そのぶようさいって何?」

勇者母「舞踊祭は舞踊祭ですよ?皆さんの芸術点を競うお祭りでしょう」

アッシュ「闘技大会のことですか?」

勇者母「そうとも呼ばれてるみたいですね」ニコニコ

アッシュ「闘技大会は芸術を極めるお祭りではありませんよ。己の力、戦術を駆使して戦い、強い者を決定する催しです」

勇者母「まあそうなの?皆さん飛んだり跳ねたりしていましたからてっきり技の美しさを披露する場とばかり…」

魔法使い(いやいや見てればどういうものかくらい理解出来るでしょうよ)




385: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:23:05.05 ID:mygcD0E70


アッシュ「…つかぬことを伺いますが、レラ様をご存知ですか?」

勇者母「レラ…あら、もしかしてレラちゃんのことでしょうか?懐かしいですね」

アッシュ(……ふむ)

魔法使い「そういえばアッシュさん、ミント…だったっけ?アッシュさんに張り付いてた人はどうしたの?」

アッシュ「彼女なら帰っていきましたよ」

魔法使い「意外ね。あの様子だとどこまでもついてきそうな感じだったのに」

アッシュ「えぇ、まぁ…」



ーーーーー

アッシュ「ミント様、貴族のご令嬢ともあろう方が、あまりご両親を困らせてはいけませんよ」

ミント「え゙!ど、どうしてそれを…」

アッシュ「昔、催事で貴女を見かけたことを思い出しました」

アッシュ(バーランド卿が教えてくれたのですが)

ミント「嬉しいのに素直に喜べないっ…!」

アッシュ「貴女の行動次第で、御家の風格は変わってしまうのですから。然るべき生活を送られている方の方が、私は好きですよ」

ミント「本当ですか!」

ミント「…私、帰りますっ!」

ーーーーー



アッシュ「少しお話ししたら、分かってくれました」

魔法使い「へぇ」




386: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:24:32.63 ID:mygcD0E70


魔法使い「あ、リアちゃんほっぺにソース付いてる」フキフキ

リア「あうあう…」

魔法使い「お行儀よく食べなくちゃダメよ?」

リア「……魔法使いさん、以前から言おうと思ってましたけど……私のこと子供扱いしてますよね?」

魔法使い「え?…いやぁそんなことは…」

リア「むーっ。私の方がお姉さんなのに…!」



ガチャッ!



村長「聞いたぞ勇者!強者を退け優勝をもぎ取ったそうじゃの!」

魔法使い「村長さん!わざわざここまで来たの?」

村長「わざわざここまで来たんじゃ。賞金をもら――祝いの言葉をかけるためにの」キリッ

勇者「…俺っちは優勝してねー」

村長「なんじゃと?」

勇者「優勝したのは母さんな」

勇者母「……」ニコッ

村長「なんとそうであったか…!」

村長「あっぱれじゃ!親子共々村の復興に力を貸してくれていたとは!」

勇者「つーかじじいてめー騙してたろ!?優勝しても美女なんかついてこねーじゃんか!」

村長「優勝すれば女子の一人くらいお主に惚れる者が現れるじゃろうて。まるっきり嘘ではないぞ」

勇者「このハゲ…」

魔法使い「…勇者、あんたそんなことのために戦ってたの?」

勇者「い、いや大会始まる前にはそんなもんないって知ってたから」

アッシュ「あの特訓中の発言、そういうことでしたか」

リア「勇者さん…」ジト...




387: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:25:07.26 ID:mygcD0E70


村長「こちらの方々は?」

魔法使い「旅の途中で知り合ったの。リアちゃんにアッシュさん、どちらも大切な人よ」

リア「えへへ」

アッシュ「そう言って頂けると嬉しいですね」

村長「旅は道連れ世は情け。うむ、良きかな良きかな」

勇者「ま、そいつは同意だぜ」

魔法使い「けど、二人はこれからどうするの?」

魔法使い「私たちは明日、自分の村に帰るつもりだけど」

リア「私も村に帰ります。ママとパパが待ってますので。勇者さんたちとお知り合いになれて、旅をすることができて幸せでした!」

魔法使い「私もよ」フフッ

アッシュ「私は…もう一度、あのお城の執事を願い出てみようかと考えています」

魔法使い「!…アッシュさんなら、出来ると思う」

アッシュ「ありがとうございます」ニコ

勇者「もーらい」ヒョイ、パク

魔法使い「あ!何すんのよそれ私の!」

勇者「ずっとお喋りしてたかんさ、もう腹いっぱいなのかと」

魔法使い「最後の一個だったのに……あんたの寄越しなさい!」

勇者「うわあぶなっ!身乗り出すやつがあるかって!」

勇者母「二人ともお食事の席では静かにしないといけませんよ」

ワーワー



.........








388: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:26:13.84 ID:mygcD0E70

ーーー夜ーーー

ジャー

勇者「ちと飲み過ぎたな、トイレが近ぇ…」

勇者(…過ぎちまえばあっという間だったな、闘技大会)

勇者(明日から帰り旅か)

勇者(なんか…物足りねーんよなぁ)

ガチャリ(トイレから出る)

勇者「ん?」

魔法使い「あ」

勇者「わりぃ、待たせちまったか。ほら用足していいぜ」

魔法使い「違うわよ。というかデリカシーがないっ」

勇者「トイレじゃねーの?」

魔法使い「……」

魔法使い「勇者もさ、私たちが小さい頃、私に言ってくれたこと覚えてるのよね…?」

勇者「まぁ…忘れちゃいないさ」

魔法使い「そ、そう」

魔法使い(……)ドキドキ

魔法使い「…ねぇ!村に帰ったら……えと……私と……」

魔法使い「け、けけ、けっこ――」

村長「おや、お主たちも小便かの?わしはあまり飲み食いせんかったのじゃが、いかんせん歳じゃからのう」ホッホ

村長「すまんが先に入らせてもらうぞ」

ガチャ パタリ

勇者「じいさんさっきも入ってたよな。頻尿か」

魔法使い「………」

勇者「で、なんよ?」

魔法使い「…なんでもない。おやすみ」

勇者「?おう」

テクテク...

魔法使い(明日…明日言う)

魔法使い(絶対!)








389: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:27:55.44 ID:mygcD0E70

ーーー翌早朝ーーー

...モゾ

勇者「……」

勇者「…うし」

ガサゴソ



.........





勇者「これで必要なもんはあらかた揃ったろ」

(大荷物)

勇者「…一人で運ぶの結構キツそう」

勇者「馬車とか買えねーかなー。はぁ…賞金が俺っちの手にあれば…」

勇者「いや違う。優勝出来なかったんだからこうして旅立つんさ」

勇者「何かが物足りねーと思ってた。優勝出来なかったのもそうだけど、そもそもナイスバディなかわい子ちゃんと甘い時間過ごすって目標完全に失念してたんよな」

勇者「…魔法使いに関しては…うん、母さんに勝てなかったわけだしまだ最強とは言えないから……1年くらい修行してからまた迎えに行けばいい」ウンウン

勇者「ということで、俺っちは新たなる旅へ繰り出すぜぃ」

勇者「みなさんお元気で~」ボソッ

...カチャ

勇者(さーて、最初は東の大国にでも行ってみようかね。噂じゃ美人の里があるとかないとか…!)

勇者(うへへ)




390: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:29:43.39 ID:mygcD0E70




ナタリー「あれー?おにーさんどっか行くのー?」



勇者「いっ!?」

ナタリー「……」ポワー

勇者「な、なんだおどかすなよ」

ナタリー「ねーねー、たくさん遊んでくれるって約束したよねぇー。今から遊ぼ♪」

勇者「えーっと…今度な今度」

ナタリー「いつー?」

勇者「明日とか!」

ナタリー「くんくん……嘘ついてるにおいがするなぁー」

勇者(犬かよ!いやエスパーか?)

勇者「嘘じゃないって。男に二言はない!」

ナタリー「んー、ほんとかなぁー」

勇者(くそぅ…出鼻を挫かれるとはこのことか)

勇者(あんまもたもたしてるとあいつらより早起きした意味が…)

勇者母「あら勇者!言われなくても早く起きられるようになっていたのですね。感激です」

勇者「か、母さん…!」

村長「なんじゃい朝から騒々しいのぅ」

リア「どうかしたんですか…?」

アッシュ「皆様お早いですね」

勇者(やべぇやべぇ、この流れはどう考えても…)

勇者「あ…」




391: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:31:15.41 ID:mygcD0E70




魔法使い「……」ニコニコ



勇者(…ですよね)

魔法使い「どこ行くの、勇者?」ニコニコ

勇者「ちょいと散歩に…」

魔法使い「そーんな大荷物で~?」

勇者「これは重量トレーニングも兼ねて…」

魔法使い「勇者、今正直に言えば許すわよ?」ニコニコ

勇者「……………」

勇者「…散歩ですー!」ダッ

魔法使い「待ちなさい!!」ダッ

ナタリー「あはー、追いかけっこだー」ピョン

村長「散歩とな。どれ、わしも始めてみるかの。あわよくば髪にも効果があるかもしれぬ」テクテク

勇者母「朝食までには戻るのですよー!」

アッシュ「彼らといると退屈しませんね」

リア「ふふっ、本当に仲良しさんですよね」






392: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:31:41.50 ID:mygcD0E70


魔法使い「このぉ!また一人でどっか行こうとしてたでしょ!」タッタッ

勇者「ただの武者修行だって!」タッタッ

魔法使い「嘘!どれだけあんたのこと見てきたと思ってんの!?」

魔法使い「止まんないと焼くわよ!」

勇者「止まったら?」

魔法使い「燃やす!」

勇者「変わってねー!」

勇者(ほんの出来心だってのに!魔法使いのやつ――)





勇者(最凶過ぎんだろ!?)





ー続く?ー




393: ◆YBa9bwlj/c 2020/07/05(日) 04:39:35.93 ID:mygcD0E70

これにて完結となります。
この物語の大枠は松本大洋の「ピンポン」に強く影響を受けています。
気が向いたら続くかもしれません。

ここまで読んでくださった方、安価に参加してくれた方、ありがとうございました。



398: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2020/07/06(月) 11:07:05.61 ID:Yat77mhDO

完結お疲れ様です



元スレ
SS速報VIP:【一部キャラ安価コンマ】村長「勇者よ、必ずや優勝して参れ」勇者「へいへーい」