1: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:32:52.96 ID:0/74+aLR.net
海未「んん…………」
海未(………………あれ)
海未(…………ここはどこでしょうか)
海未(普通の家の一室のようですが)
海未(私のほかには誰もいません)
海未「…………」
海未(窓に板が打ち付けてあります。光が入らないように、でしょうか…………)
海未(部屋の中は明るいですが、これは照明によるものですか)
2: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:36:09.47 ID:0/74+aLR.net
海未(扉は一つ。ただ、変なチェーンがついています)
海未(中からも何かしらの鍵がないと、開けられない仕組みでしょうか?)
海未(ただ、今はそれも外れているようですが…………)
海未(…………なぜ、こんなところに?)
海未(確か今日は……学校に行こうと、いつものように待ち合わせをして―――)
―バタン
ことり「あっ、海未ちゃん!目が覚めたの?」
海未「こ、ことり!」
ことり「うん、ことりですよー?」
海未「ああ……よかったです。一人こんなところに連れられたのかと思いました」
ことり「大丈夫。海未ちゃん一人じゃないよ」
海未「そうですか。ことりのほかには誰がいるんです?」
ことり「穂乃果ちゃんと、花陽ちゃん」
海未「穂乃果と花陽も…………とにかくここから出ましょう」
ことり「…………」
海未「二人はどこにいるんですか?」
ことり「むこうの部屋にいるよ」
海未「わかりました。呼んできましょう」
穂乃果「ああ!海未ちゃん起きてる!」
花陽「おはよう、海未ちゃん!」
海未「……ちょうどよかった。今呼びに行こうと思ってたんですよ」
穂乃果「穂乃果たちもね、ちょうどこっちに来ようと思ってたんだ」
海未「そうだったんですか。さあ、こっから出ましょう」
ことり「その必要はないよ、海未ちゃん」
海未「何を言ってるんです。誰かに連れられてきたんですよ?今のうちに逃げて―――」
花陽「変だと思わないかな?」
海未「な、何がです?」
穂乃果「誰かに連れられたんだったら、普通そんな簡単に逃がしてくれないよね?」
海未「それは……そうかもしれません」
海未「しかし、やはり何か行動しないと!きっと逃げる方法はあるはずです!」
穂乃果「はぁ……………」
ことり「海未ちゃんって鈍感なところがあるよね」
穂乃果「でも、そんな海未ちゃんも好きだよ」
海未「え?何ですかいきなり」
ことり「まだ気づかないの?」
海未「…………?」
穂乃果「あのね、ここに海未ちゃんを連れてきたのは―――」
花陽「―――花陽たちなんですよ?」
海未「ど、どういうことですか?」
ことり「どういうことって、こういうことだよ」
海未「答えになってません!」
穂乃果「海未ちゃんは、穂乃果たちとここで、ずうっと一緒に暮らすの」
海未「はい……?ここで暮らす?」
ことり「そうだよ。一緒にぷあぷあ、しよ?」
海未「待ってください!え?ええ?」
花陽「落ち着いて海未ちゃん。簡単なことなの」
穂乃果「四人で死ぬまでここで暮らす。それだけだよ?」
海未(な、なんですかこれは!悪夢でしょうか……)
海未(早く目を覚ますんです、園田海未!)
ことり「これは、夢なんかじゃないんだよ」
穂乃果「受け入れようね、海未ちゃん」
花陽「大丈夫だよ。怖くなんてないの」
海未「…………一ついいでしょうか」
ことり「なあに?」
海未「なんでこんなことをするんですか?」
穂乃果「海未ちゃんが大好きだからだよ」
ことり「ずっと昔から大好きだったのに、海未ちゃん気づかないんだもん」
海未「好きというなら、私だって二人のこと好きですよ」
穂乃果「ほら、これだもん」
ことり「うん。やっぱりこうして正解だよね」
海未「なにがですか!」
ことり「海未ちゃんのは友達として―――でしょ?」
穂乃果「穂乃果たちは違うよ。一人の女の子として海未ちゃんが好きなの」
海未「なっ…………」
ことり「だから好きな人と一緒にいたくなる。それって普通だよね」
海未「…………なんとなくはわかりましたよ」
穂乃果「本当?海未ちゃん、こういうのなかなか分かってくれなさそう」
海未「…………大丈夫です。二人の気持ちはわかりました)
海未「しかし、花陽はどうなんですか?」
ことり「花陽ちゃん?花陽ちゃんもね、海未ちゃんのこと好きだったんだよ」
海未「そんなそぶりは…………」
穂乃果「そんなそぶりって……穂乃果たちにすら気づかないのに、それ言うの?」
花陽「海未ちゃんは鈍感さんだもんね?」
海未「………………」
穂乃果「かっこいい海未ちゃんに憧れて……一緒に練習して近くで触れ合って……」
穂乃果「そりゃ好きになっちゃうよね」
海未「でっ、でも、私より凛や真姫の方が仲よさそうにしていましたよ?」
ことり「……だから鈍感って言われるんだよ?」
海未「………………」
穂乃果「でも、今回は海未ちゃんが正解。始めは海未ちゃん以外の人が好きだったの」
海未「それなら……」
ことり「だからね……花陽ちゃんには、海未ちゃん一筋になってもらっちゃいました♪」
海未「…………どういう意味ですか?」
穂乃果「えっとね、ちょっと色々と花陽ちゃんにしてみたんだ」
穂乃果「そしたら、凛ちゃんや真姫ちゃん、にこちゃんたちのこともぜーんぶ忘れて」
穂乃果「もう、穂乃果とことりちゃん。そして海未ちゃんしか覚えてないよ」
海未「な!花陽になにしたんです!?」
ことり「それは…………ヒ・ミ・ツです♪」
海未「……っ」
穂乃果「心配しなくても、花陽ちゃんは今、とっても幸せなんだって」
花陽「そうです!海未ちゃんと一緒に暮らせるなんて!」
穂乃果「ね?」
海未「………………」
海未「……私にも同じことするんですか」
ことり「しないよ?海未ちゃんには自分から言ってもらいたいもん」
海未「何を言わせる気です」
ことり「ずっとあなたたちと一緒に暮らしたいです、って」
海未「…………言うわけないじゃないですかっ!」
花陽「だから、これから言わせるの」
穂乃果「必ず最後には言ってくれるよ」
ことり「待ってるからね、海未ちゃん」
海未(言うわけない…………早くここから出してください!)
――――――――
――――
花陽「ふー……ふー……はい、あーん」
海未「あー…………」
花陽「どうかな?おいしいですか?」
海未「うん……おいしいですよ」
花陽「えへへ、嬉しいな!頑張って作ったんだもん」
海未「ありがとうございます……」
花陽「ふー……はいもう一口、あーん」
海未「花陽」
花陽「なにかな、海未ちゃん?」
海未「自分で食べたいのですが」
花陽「それはダメかなあ?」
海未「なんでですか…………」
海未「何か勘違いしてるようですが」
海未「私の方が力がありますし―――」
海未「あなた一人なら、どうにでもできるんですよ?
花陽「そうかもしれないね」
海未「箸を渡してください
花陽「で、でも、あーんって………」
海未「渡してください」
花陽「…………はい」
海未「ありがとうございます。それじゃあいただきますね」
花陽「…………うん。ぜーんぶ食べてね?」
海未「ごちそうさまでした。美味しかったですよ」
花陽「お粗末さまでした」
海未「さて…………」
海未「……花陽、私をこの部屋から出してください」
花陽「…………ええぇ!?そ、それはちょっと、できないかな……」
海未「それなら、力づくで行くまでですが」
花陽「…………わ、わかりました。出してもいいよ」
花陽「でも、この部屋から出ても意味がないと思うけど……」
海未「……なんでもいいです。とにかく出しなさい」
花陽「……今、扉のチェーン外すね。ええと、この錠にカギを―――」カチン
花陽「チェーンを引っ張って…………」カチャン
花陽「はい、開けたよ」
海未「ありがとうございます」
海未(結構あっさりあけてくれましたね……)
海未(まあいいです)
―ガチャ
海未(部屋の外はリビングでしょうか、やはり普通の家といった感じ)
海未(キッチンも見えます。先ほどの料理はここで作ったんですね)
海未(玄関はどっちでしょうか…………)
海未「花陽、この建物の出口はどっちで―――」
穂乃果「海未ちゃん、なにしてるのかな?」
ことり「部屋から出たらダメだよ」
海未「あっ…………いえ、ちょっとお手洗いに行きくなりまして……」
穂乃果「…………ふーん、そっか。じゃあ穂乃果が連れっててあげるね」
海未「ええ、お願いします……」
ことり「……………………」
花陽「だから言ったのに……いくら海未ちゃんでも、三人相手は無理だよね?」ボソッ
海未(そうでした……よく考えれば当然のことです…………)
海未「あ、あの穂乃果…………」
穂乃果「ん?どうしたの?」
海未「ええと、非常に恥ずかしいというか…………」
穂乃果「なにが?」
海未「なんで一緒にお手洗いに入ってるんですか」
穂乃果「気にしないでいいよ」
海未「気にしますよ!ずっと見られて―――できるものもできません!」
穂乃果「海未ちゃんってホント、恥ずかしがり屋だもんね」
海未「いやいやいや!これは関係ないでしょう!?」
穂乃果「大丈夫見てるだけだから」
海未「見られるのが困るのですが」
穂乃果「見てないと海未ちゃん、また逃げようとするでしょ」
海未「…………しませんよ」
穂乃果「えー?本当かなあ」
海未「本当ですから、出てください」
穂乃果「わかったよ。扉の前で待ってるからね」
海未「はい」
海未「ふぅ…………」
海未(別に、もよおしてはいなかったのですが…………)
海未(ちょっと安心したからでしょうか―――)
――がちゃがちゃっ
穂乃果「海未ちゃーん!終わったんでしょ?」
海未「なっ!ず、ずっと聞いてたんですか!?」
穂乃果「そりゃ扉越しでもばっちり聞こえるもん」
海未「……………………」
穂乃果「穂乃果が拭いてあげるよ?」
海未「結構です!」
――――――――
――――
海未「………………」
海未(…………なるほど)
ことり「………………」ジー
海未「………………」
海未(そういうことだったんですね)
ことり「………………
ことり「う、海未ちゃん。本を読んでるところ悪いけど、そろそろお風呂入らないかな?」
海未「……ん、ああ、お風呂ですか。入りますよ」
ことり「じゃあことりと一緒に入ろうね」
海未「一人で入らせてください」
ことり「四人で入りたいの?」
海未「…………ことり、二人で入りましょう」
ことり「ここがお風呂です!」
海未「普通ですね」
ことり「もっとすごいのがよかった?」
海未「別にいいです……」
ことり「……さあ海未ちゃん、ばんざーいってして?」
海未「…………脱げますから!一人で脱げますから!」
ことり「ええぇ?でも……」
海未「いいですから!ことりも自分の服を脱いでください」
ことり「もう、海未ちゃんの恥ずかしがり!」
海未「だから、恥ずかしいとかじゃあないでしょう!」
ことり「はーい、お背中お流ししますね♪」
海未「結構です」
ことり「そういわないで。背中だけだよ?」
海未「自分で洗えますから」
ことり「海未ちゃん、おねがあい♪」
海未「…………わかりましたよ。背中だけです」
ことり「うん!」
ことり「どうですかー?気持ちいですかー?」
海未「………………あの、ことり」
ことり「なになに?かゆいところ、ございましたか?」
海未「いや……その……スポンジを使ってください」
ことり「素手の方が気持ちいいよ?」
海未「そういう問題じゃないです」
ことり「どういう問題なの?」
海未「さっきから洗い方がおかしくないですか?」
ことり「おかしくないと思うけど……」
海未「………………もういいです。背中は十分きれいでしょう?」
ことり「じゃあ前の方も―――」
海未「しなくていいですって!」
ことり「やっぱり、二人だと狭いね」
海未「……私、出ますね」
ことり「ああ!やっぱり狭くないよ!」
海未「この際広さはどうでもいいです」
ことり「もうちょっとだけ温もろう?」
海未「……ダメです。あがります」
ことり「えー…………」
花陽「海未ちゃん、そろそろ寝よう?」
海未「……確かに眠くなってきました。どこで寝ればいいんですか?」
花陽「ここに敷き布団持ってくるの。ちょっと待っててね」
海未「はい」
花陽「あっ、そうそう。海未ちゃんは枕、大丈夫?」
海未「大丈夫というのは?」
花陽「あの……自分の枕じゃないと眠れない、とか言うのはないかなって」
海未「ああ……大丈夫ですよ。枕無しでも寝られますし」
花陽「よかったぁ。眠れないですって言われたら、どうしようかと思ったよぉ」
海未「ふふ、心配してくれてありがとうございます」
花陽「よいしょ……これで、横に四つ並べて―――全員分敷けたね」
ことり「どうしようかな……海未ちゃんの隣の布団は二つ……」
花陽「一人は海未ちゃんから離れちゃう」
穂乃果「じゃあ穂乃果は、海未ちゃんの布団で寝る!」
花陽「それなら、わ、私も!」
ことり「ずるい!ことりも!」
海未「………………暑苦しいです」
花陽「電気消すね。おやすみ海未ちゃん」
海未「え、ちょっと待ってください!このまま寝るんですか!?」
穂乃果「海未ちゃん、寝るよ」
ことり「おやすみ」
――――――――
――――
穂乃果「海未ちゃん、ごはんだよ」
海未「今度は穂乃果ですか」
穂乃果「うん。たくさん作ったから食べてね」
海未「…………はい」
穂乃果「あー!その顔!不安そうにしないでよ、おいしくできてるんだよ!」
海未「わ、わかってますよ」
穂乃果「もうっ!ほら海未ちゃん、あーん」
海未「あー……」ゴクン
穂乃果「ね?おいしいでしょ?」
海未「本当です。おいしいです」
穂乃果「頑張って勉強したんだから!」
――――――――
――――
花陽「海未ちゃん、買い物行くんだけど何か欲しい物とかある?」
海未「そうですね……じゃあ、この本の続きと、甘いお菓子お願いします」
花陽「ちょっと待ってね…………よし、本の名前は覚えたよ」
海未「巻数も覚えてくださいね」
花陽「はいっ。―――あ、あの……甘いお菓子ってどういうのかな?」
海未「できれば和菓子がいいです」
花陽「和菓子……わかったよ。じゃあ行ってくるね」
海未「ええ、気を付けてくださいね」
花陽「うん」
海未(最初の様子から、とんでもないことをされるのかと思いましたが……)
海未(この部屋にいる限り、特になにもされません)
海未(痛いことや苦しいこともさせられず―――)
海未(無理やり襲われることもないですし……)
海未(何がしたいのかよくわかりません)
海未(部屋では三人のうち、誰か一人が必ずいるのですが―――)
海未(話をするか、じっと見つめてくるかで)
海未(なにもされないのが不思議です…………)
海未(生活は毎日―――と言うんでしょうか?)
海未(日光や時計が見れないので、時間の感覚が怪しいですが……)
海未(まあ毎日、大体一緒です。三度の食事、風呂、就寝)
海未(この三つは、三人にタイミングを決められています)
海未(それ以外はかなり自由です)
海未(携帯やパソコンこそ使わせてもらえないですが、本や勉強はさせてもらえます)
海未(トレーニングをしても何も言われないですし)
海未(………………)
海未(しかし、一つだけ。奇妙なことをさせられます)
海未(三食のうち決まって一回。食べ終わってからのこと)
海未(私は目隠しをさせられ、ある部屋に連れて行かれるんです)
海未(その部屋に着くと私は椅子に座らせられて―――)
海未(手足に拘束具をつけられるんです)
海未(何も見えずまったく動けない)
海未(この生活において、一番怖い時間です)
――――――――
――――
ことり「じゃあ海未ちゃん、これをつけてね」
海未「なんですか、これは」
ことり「目隠しだよ。ちゃんとつけてほしいの」
海未「は、はい…………」
ことり「どうかな。痛いとか、そういうのある?」
海未「いえ」
ことり「大丈夫そうかな。じゃあことりが海未ちゃんを案内するねっ」
ことり「はい、そこに椅子があるから―――そうそう、そのまま座って」
ことり「腕を後ろに、背もたれの方に回して―――ちょっと冷たいかもしれないけど」カシャン
海未「……っ!なんですかこれは!」
花陽「足はこのバンドでぎゅーっと…………」
穂乃果「こっち足もイスの脚と―――できた」
海未「…………なんのつもりですか」
ことり「怖がらなくても大丈夫だよ。酷いことはしないから」
海未「椅子に張り付けるので、十分酷いと思いますが」
花陽「すぐに外すよ。がまんしてね……?」
海未「………………」
海未(何をされるんでしょうか…………)
海未(今まで特に変わったことをされていない分、非常に怖いです……)
海未(暴力でも振るわれるんでしょうか……それとも、変なものを注射されたり……)
穂乃果「じゃあ始めようかな」
海未「ひっ…………」
穂乃果「怖がらないで。リラックスしてね」
ことり「いくよ…………」
「海未ちゃん♪」
「海未ちゃん♪」
「海未ちゃん♪」
「だあいすきだよ海未ちゃん♡」
「だあいすきだよ海未ちゃん♡」
「だあいすきだよ海未ちゃん♡」
海未(な、なんですかこれ…………)
海未(三人が耳元でささやいてきます…………)
「凛々しい海未ちゃんが好き」
「悔しがる海未ちゃんが好き」
「嬉しそうな海未ちゃんが好き」
海未(なんか好き好き言われると、くすぐったくなってきますね……)
穂乃果「お疲れさま。もう終わりだよ」
花陽「すぐに外すからね」
ことり「でも、目隠しはまだとっちゃダメ」
海未「…………はい」
海未(あれから、ひたすら三人にささやかれました)
海未(ちょっと恥ずかしかったりしましたが、特に変わったことはないです)
海未(何を思ってやったのか……ただただ不気味です)
―――――――――――――
――――――――
――――
海未(もう十回以上行われましたが、さっぱりです)
海未(催眠術か何かなんでしょうか……?全然効いてませんよ?)
海未(………………)
海未(だんだんこの生活に慣れてきました)
海未(しかし、私には私の生活があります。やはり抜け出さないと)
海未(あの部屋からは、扉からしか出られません)
海未(板が邪魔で窓からは無理でした。外せそうな工具も買ってきてもらえません)
海未(抜け出すタイミングは、買い物の時でしょうか…………)
海未(三人のうち、誰かがたまに買い物に行きます)
海未(この時にもう二人のうち、片方でもどうにかできれば―――)
―――――――――――――
――――――――
――――
ことり「はい、最後の一口だよ。あーん」
海未「…………」ゴクン
ことり「全部食べてくれたね。嬉しいな♪」
海未「私も嬉しいです。毎日手料理を作ってくれて」
ことり「ホント?えへへ♪」
海未「ええ。三人とも料理が上手で」
ことり「練習したんだもん」
ことり「―――あ、そうだ海未ちゃん」
海未「なんでしょうか」
ことり「この後穂乃果ちゃんがね、買い物行くみたいなんだけど」
海未「ああ、欲しいものですか?」
ことり「うん」
海未「そうですね…………新しいノートと消しゴムが欲しいです」
ことり「ノートと消しゴムだね。わかった。じゃあ伝えておくね」
海未「お願いします」
―ガチャ
花陽「海未ちゃん」
海未「今度は花陽が部屋にいてくれるんですか」
花陽「うん。あ、そうだ、この後穂乃果ちゃんが、お買い物にいくんだけど―――」
海未「欲しい物ですか?
花陽「うん」
海未「今さっき、ことりにも聞かれました。ちゃんと伝えておきましたよ」
花陽「そうなんだ。それなら……うん、それならいいんだけど」
海未「さて、なにしましょうか」
花陽「この前買ってきた本は、全部読んだの?」
海未「まだ途中です。―――そうですね、本でも読みましょうか」
海未「………………ふぅ」
海未(途中といっても、もう30ページくらいしか残ってませんでした)
海未(すぐに読み終わってしまって…………)
花陽「…………すー……すー……」
海未(花陽、寝てますね……)
海未(チャンスかもしれません)
海未「………………花陽」
花陽「…………………ん、あっ、海未ちゃん、なあに?」
海未(簡単に起きちゃいましたか…………)
海未「眠そうですね…………一緒にひと眠りしませんか?」
花陽「え?あ、うん。ちょうど花陽も眠かったんです……」
花陽「布団持ってくる?」
海未「いえ、暖かいですしこのままでいいでしょう」
花陽「そうだね。もう眠くて動きたくないもん」
海未(布団運んでるところをことりに見られたら、ばれそうですし)
海未「ほら、横に来てください」
花陽「うん…………おじゃまします」
海未「もっとくっついてもいいですよ?」
花陽「えへへ、じゃあ甘えちゃいます」ギュー
海未「……おやすみなさい花陽」ナデナデ
花陽「おやすみ、海未ちゃん…………」
花陽「……んん……すー……すー……」
海未「………………」
海未(悪いですが、カギはいただきますよ……)ゴソゴソ
海未(ポケットに―――ありました。そーっととれば…………)
花陽「……うーん…………」ゴロン
海未「………………」
海未(もうちょっと…………よし!)
海未(…………うまくいきました)
海未(あとはチェーンを…………)
―カチャン
海未(……扉は開きました。できるだけことりに見つからないように……)
海未(ことりは……あれ、いませんね)
海未(お手洗いに行ってるんでしょうか。好都合です)
海未(この大部屋には扉が三つ。一つは元の部屋)
海未(残りはあの目隠しの部屋と、玄関への廊下……でしょう)
海未(どっちでしょうか…………)
海未(…………悩んでも仕方がありません。向って右、右の扉!)
海未「…………やった!」
海未(玄関が見えました。まっすぐの廊下!)
海未(ことりも気づいていないみたいです……このまま玄関の扉まで)
海未(―――よし)
海未(あとは、静かに扉を開けて…………)
―ガ―――チャン
穂乃果「………………どこに行くの」
――――――――
――――
海未(玄関の戸を開けると、穂乃果が立っていました)
海未(ひるんだ私は、後ろからことりと花陽に押さえつけられ―――)
海未(…………どうやら、初めからお見通しだったみたいです)
海未(今は元の部屋に戻され、おしおき宣告を受けました)
海未(何をされるのかわかりませんが…………)
海未(とにかく怖いです…………)
―ガチャ
ことり「………………」
海未「あっ―――こ、ことり」
ことり「………………」コトン
海未「……え、な、なんですか……?」
ことり「………………」
海未(結局なにもされませんでした……)
海未(持ってきたのは、お盆に乗ったごはん)
海未(いつもと一緒です。ただ、手紙がついていますね……)
『一人で食べてもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(…………おしおきなんでしょうか?箸もついてますし……)
海未「…………いただきます」
海未(ごはんも普通でした。おいしかったです)
―ガチャ
花陽「………………」
海未「今度は花陽ですか……」
花陽「………………」バサ
海未「バスタオルに着替え…………」
花陽「………………」
海未(やはりなにもされません……)
海未(風呂に入れということでしょうか)
海未(いつもと一緒です。また、手紙がついていますね……)
『一人でお風呂に入ってもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(…………まさか感電させてきたりしませんよね?)
海未「…………入って来ましょう」
海未(普通に風呂でした。久々に一人で入れたので、ちょっと長風呂ギミです……)
―ガチャ
穂乃果「………………」
海未「そして、穂乃果ですか……」
穂乃果「………………」バフ
海未「……布団ですね」
穂乃果「………………」
海未(………………)
海未(寝ろってことですね)
海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)
『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)
海未「……おやすみなさい」海未(………………)
海未(寝ろってことですね)
海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)
『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)
海未「……おやすみなさい」
海未(………………)
海未(寝ろってことですね)
海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)
『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)
海未「……おやすみなさい」
海未「ううん―――朝ですか」
海未(と言っても分かりませんが)
穂乃果「………………」
海未「……あ、あれ、みんな起きてたんですね」
花陽「………………」
海未(って……私、二人に仰向けのまま、押さえつけられてます……)
海未「あの……離してもらえませんか」
ことり「………………」
海未「な、なんですか、そのクスリは!」
ことり「………………」グイッ
海未「んんんー!」
海未(ことり、私に無理やり飲ませようと―――)
ことり「………………」グッ
海未(鼻をつままれて―――息が……!)
海未「んんん……ぷは…………んぐっ!」
――――――――
――――
海未「はぁ…………はぁ…………」
海未「…………うぐぅ…………」
海未(あのクスリを飲まされてから、少し経って)
海未(始めは頭がくらくらして、悪寒がする程度でしたが……)
海未(全身が震えだして止まらなくなり―――)
海未(しまいには、少しでも動くと身体中に、痛みが走るようになりました)
海未(今では呼吸するだけで…………)
海未(…………苦しいです)
海未(………………助けてください。穂乃果、ことり、花陽……)
海未「はぁ……ん…………」
海未(あれから三人は全く姿を現しません)
海未(私は呼吸の痛みに耐えながら、ずっと同じ姿勢)
海未(どうにもしようがありません。治まるまで耐えるしか―――)
海未(でもそれって、いつまででしょうか……)
海未(……………………)
海未(…………)
海未(……)
穂乃果「う、海未ちゃん!」
花陽「海未ちゃん、大丈夫?」
ことり「海未ちゃんっ!」
海未「んん……こと……り?……いっ!……」
ことり「喋っちゃだめだよ!ほらこれ飲んで!」
穂乃果「飲ませてあげる。頑張って口あけてね」
海未「んあ…………」
海未「…………」ゴクン
花陽「もうちょっとしたら、落ち着くと思うから……」
ことり「じっとしててね」
穂乃果「どう?落ち着いた?」
海未「……ええ」
ことり「いいですか?また抜け出そうとしたら―――」
花陽「また苦しい思いをするんだよ?」
海未「…………わかりました」
穂乃果「よし!じゃあ、ごはん食べようよ。今日は穂乃果が作ったの!」
海未「…………食べます」
穂乃果「いっぱい食べていいからね。足りなかったら穂乃果の分も……」
海未「……そ、そんなには」
―――――――――――――
――――――――
――――
海未(おしおきのあと、再び今まで通りの生活が始まりました)
海未(あいも変わらず、ごはん、お風呂、就寝はむこうの手に委ねられています)
海未(しかし、やっぱりそれ以外は特に制限はありません)
海未(最近では作詞もするようになりました)
海未(ただし、私のソロか、Printempsのものだけですが)
海未(一度他の曲を作ろうとしたら、穂乃果に止められました)
海未(そうそう、曲と言えば小型の音楽プレイヤーをもらいました)
海未(曲を入れるのは穂乃果たちなので…………とても曲に偏りがありますが……)
花陽「海未ちゃんの肌ってきれいだよね」
海未「そうでしょうか?」
花陽「うん!すべすべで…………」
海未「あ、あの、洗ってくれるんですよね?」
花陽「そ、そうだけど」
海未「背中を見つめられても困るんですが……」
花陽「ああ!ごめんなさい…………すぐに洗いますっ」
海未「いえ、別にそんな急いで洗わなくても……」
海未(…………ちなみに素手で洗われます。もう慣れました)
穂乃果「海未ちゃんあーんして?」
海未「あー…………」
穂乃果「どうかな?今日は中華にしてみたんだけど」
海未「中華は私も得意ですが、私のよりおいしいです」
穂乃果「よかった。おいしくないって言われたら、どうしようかって……」
海未「別にそこまで味にうるさくないですが…………」
穂乃果「でも、海未ちゃんが食べてくれるんだもん」
穂乃果「絶対おいしいもの食べてもらいたいよ」
海未「…………いつもありがとうございます」
ことり「………………」
海未「あの、そろそろこれ、やめませんか?」
ことり「気にしないでね?」
海未「だから気にしますよ……」
ことり「大丈夫、汚いとか思わないよ」
海未「だからそういうのじゃないって!いつも言ってるじゃないですかぁ!
ことり「ね?早くしよう?」
海未「恥ずかしくて出ませんよ!」
ことり「慣れてください!」
海未「慣れません!早くお手洗いから出てってください!」
ことり「今日はどうやって寝る?」
穂乃果「そうだね……今日は穂乃果が海未ちゃんの布団!」
花陽「昨日も穂乃果ちゃんだったよぉ!」
ことり「じゃあ今日はことり♪」
海未「…………昨日もなんだかんだ言って、三人とも私の布団でしたよね」
穂乃果「そうだっけ?」
花陽「そ、それじゃあ今日も!」
ことり「四人で一つの布団!」
海未「やめてください。暑苦しすぎて寝れません」
「スキスキ♪」
「ぷわぷわ♪」
「スキスキ♪」
海未(言葉に加えて、度々歌を聞かされます)
海未(もう何度も何度も…………)
「ぷわぷわ♪」
「スキスキ♪」
「ぷわぷわ♪」
海未(強烈です……こっちもぷわぷわしてきます……)
海未「………………」
海未(ぷわぷわ…………)
海未(なんだか…………ふふ……)
―――――――――――――
――――――――
――――
海未(どれだけの月日が経ったでしょうか。数十日は経ってます)
海未(まだ少し寒いな。そう感じる日も少なくなって)
海未(暑さで、うだり。寒さで凍える)
海未(この部屋の中で、そんな経験をしなくてはいけないのでしょうか)
海未(…………いつまでここに、閉じ込められていればいいのです?)
海未(……………………)
――――――――
――――
海未「よし……数学は大方終わりですね」
海未「次は英語をやりましょうか」
ことり「あ、海未ちゃん。ちょっと聞いてほしいことがあるの」
海未「ん?どうしましたか?」
ことり「あのね、ちょっと私たち用事があって……」
海未「用事ですか」
ことり「うん」
ことり「それでね、今日のごはんまではいるんだけど―――」
ことり「お風呂や寝るのは一人になっちゃうの。いい?」
海未「ええ、大丈夫ですが」
ことり「ごめんね、海未ちゃん……」
海未「しょうがないですよ、用事があるんですから」
ことり「……あ、絶対に外には出ないでね?」
海未「わかっています」
花陽「ごめんね海未ちゃん。ちょっと早いけど、ごはんだよ」
海未「ありがとうございます」
花陽「時間がないから……一人で食べてもらえると、その……助かります」
海未「わかりました。箸……もありますね。大丈夫です」
花陽「じゃあね海未ちゃん。ちゃんとここにいてね?」
海未「ええ。いってらっしゃい、花陽」
海未「…………本当に行ったんでしょうか」
海未(私を信用してくれた、ということなのですか……?)
海未(それとも―――)
海未「……まずはごはんですね」
海未「いただきます」
海未(本当に誰も部屋に来ません…………)
海未(一人じゃ部屋から出られないんですから)
海未(風呂に入れないじゃないですか!)
―ガチャ
穂乃果「………………」
海未「あれ?穂乃果はいるんですか?」
穂乃果「………………」バサ
海未「バスタオルと着替えですね。今から入りますか?」
穂乃果「………………」
海未(……何も言わずに出て行ってしまいました)
海未(用事があるのは二人だけ。ということでしょうか?)
海未「………………」
海未(……タオルの上に、前のように手紙が)
『ごめんね、お風呂は一人で入ってね。布団は入浴中に準備するよ』
海未(…………穂乃果はここにいるみたいですね)
海未(風呂には何事もなく入れました)
海未(部屋の戸は、穂乃果が開けておいてくれたみたいです)
海未(さて、どうしましょうか…………)
海未(今が脱出のチャンスに見えますが―――)
海未(うかつに出ようとすれば、また…………)
海未(…………)
海未(今回のことりと花陽の言葉は露骨でした)
海未(まるで、今がチャンスだといわんばかりの)
海未(きっとこれは罠ですね……)
海未(とりあえず、勉強の続きでもしましょう)
海未(ええと……英語です。英語)
――――――――
――――
海未(特に動きはありません…………)
海未(そろそろ眠くなってきましたし、もう寝ましょうか……)
海未(電気を消して―――)
海未「おやすみなさい……」
海未(一人だと少し寒いです……)
――――――――
――――
未「ううん…………ん、朝ですか」
海未(と言っても、真っ暗でわかりませんが)
海未「…………うう、なんか寒いですね」
海未「体も震える寒さです…………」
海未「……お手洗いに行きますか」
海未「リビングに誰もいません……」
海未(……穂乃果はどこに行ったんでしょうか)
海未(お手洗いや、風呂にはいなかったですし……)
海未(もう一つの部屋ですかね)
海未「………………」
海未(カギがかかって―――いない)
海未(開けた部屋の中は、ごく普通の部屋。私の座っていたであろう椅子もありました)
海未(しかし、部屋の中にも穂乃果はいませんでした)
海未(ことりも花陽も帰ってきてませんし……)
海未(…………)
海未「ちょっとだけ。ちょっとだけ外の様子を……」
海未(玄関の戸は、普通のつまみで開け閉めするカギのみです)
海未(特殊なカギもいらないみたいで―――)
海未「つまみを…………うう、寒さで手が震えて……」
―カチャン
海未「ふう、やっとカギが開きましたね…………」
海未(ここまで、誰にも止められていません…………)
海未(あとは開けるだけ…………)
海未(…………扉の向こうは―――)
海未(至極普通の住宅街です)
海未(映画や小説で、閉じ込められたと思っていたら、実は保護されてた)
海未(そういうのもありますが。違いました)
海未「それはそうですよね……」
海未(どうやら、今は夜中か早朝でしょう)
海未(真っ暗ですし、とても静かです)
海未(それにしても寒い。もう春ですし、暖かいはずですが)
海未(やはり日が出ていないからでしょうか。相当冷えます……)
海未(……春といえば。そういえばPrintempsも春という意味でしたね……)
海未(三人はいないみたいです……)
海未(外に出てなお、とめに来ないということは―――)
海未(本当にどこかに出かけたようですね…………)
海未(見慣れない風景です。うちからは遠いのでしょうか……?)
海未(まずは……人がいるところに行きましょう)
海未(交番か何かがあればいいのですが)
海未「どっちに向いましょうか…………」
海未「あっちか……こっ……え……ぅ……」
海未「………な……う……ぁ……」
海未(…………なんで……なんで)
海未(……体が痛い。前にも経験した、あの痛みです)
海未(あのクスリは飲まされていないはずなのに…………)
海未「……あがぁ…………ぁ……」
海未(…………痛い)
海未(痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
海未(……………………)
海未「……かは……っぁ…………」
海未(も……う……無……理……)
海未(……誰…………か……助…………け……)
――――――――
――――
穂乃果「海未ちゃん!」
花陽「海未ちゃん!」
ことり「海未ちゃんっ!」
海未「………………ん……」
ことり「あっ!気づいたみたいだよ」
花陽「よかった!海未ちゃん?聞こえる?」
海未「……あ……花陽?」
花陽「そうだよ?ちゃんと聞こえてるね?」
海未「は……い……」
穂乃果「海未ちゃん!」
ことり「海未ちゃぁん!」
花陽「海未ちゃん!」
海未「…………大丈夫です。聞こえてます」
穂乃果「海未ちゃん!」
ことり「大丈夫?動ける?」
花陽「痛くない?」
海未「ええ、もう平気です」
ことり「よかったぁ……」
海未「この部屋まで運んだんですか?」
花陽「そうだよ。外で倒れてるから運んできたの」
穂乃果「できるだけそーっと、運んだけど……変なところない?」
海未「特には……」
ことり「ホントに良かった……ケガでもあったら大変だもん」
花陽「そうだよね……」
穂乃果「ところで、海未ちゃん。何で外にいたの?」
ことり「絶対に外に出ないように言ったよね?」
花陽「なんで。何で出ちゃったの?」
海未「……それは……その…………」
ことり「………………」
穂乃果「……やっぱり外に出たいの?」
海未「………………」
ことり「ずっといたんだよ」
海未「…………どこにですか」
穂乃果「海未ちゃんの近くに。見てたんだ」
ことり「私たちが居なくなったら、海未ちゃんはどうするかなって」
花陽「海未ちゃんの気持ちを確かめたかったの。いないふりしてね」
穂乃果「海未ちゃんが部屋にいたままなら。それならよかったんだけど」
花陽「外に出ちゃったってことは―――」
「「「私たちと暮らしたくないってことだよね?」」」
海未「…………そうなりますね」
ことり「いいよ。それなら、家から出してあげちゃいます」
海未「本当ですか?」
ことり「うん」
海未「ではさっそく―――」
穂乃果「待って!」
花陽「話は最後まで聞いてください」
海未「……わかりました。しかし、何を聞いてもここから出る。それは変わりません」
ことり「ふーん…………」
穂乃果「じゃあ話すね。まずは―――この前のおしおきはどうだった?
海未「……思い出したくもないです。苦しかったですよ。全身が痛くて」
花陽「だよね。苦しかったよね?」
海未「ええ…………」
ことり「それじゃあ、いまさっきのはどうだった?」
海未「………………」
花陽「言いたくないくらい、辛かったみたい」
穂乃果「そうだよね。だって、あんなに…………」
花陽「ねえ、海未ちゃん。あれはどうして起こると思う?」
海未「どうしてって、あなたたちがクスリを飲ませたじゃないですか!」
ことり「ホントにクスリのせいだと思う?」
海未「…………違うんですか?」
穂乃果「だって、海未ちゃんさ。今日クスリ飲んでないよね?」
海未「そ、それは―――私が寝ている間に飲ませた。そうでしょう?」
ことり「痛みが治まったのは?」
海未「それも、私が気を失っている間に飲ませて…………」
穂乃果「…………海未ちゃん面白いね」クスクス
海未「……何がです」
花陽「海未ちゃんに飲んでもらったクスリは―――これです!」
海未「……胃薬?」
花陽「そう、胃薬です!市販のやつだよ」
穂乃果「海未ちゃんは胃薬飲むと、体が震えて激痛が走るのかあ」
ことり「たいへんだねっ♪」
海未「………………」
海未「それなら、あの痛みはどうして……」
穂乃果「どうしてだろうね?よーく考えてみて」
花陽「いつもと何か違ったこと、ないかな?」
海未「…………手紙……ですか?」
ことり「そうだね。両方とも手紙があったよね」
海未「…………紙に何か塗られてた?」
穂乃果「……もう!ホントに鈍感!」
花陽「私たち、あの時も昨日も……海未ちゃんに声を聞かせなかったよね?」
海未「…………ええ。まったく喋りませんでしたね」
穂乃果「だからなんだ」
海未「………………意味が分かりませんが」
ことり「実はね―――海未ちゃんはPrintemps中毒なの」
海未「Printemps中毒…………」
花陽「そうです。定期的に私たちの声を聴かないと、禁断症状が出ちゃうの」
穂乃果「最初は寒気がするとか、身体が震えるくらいだけ」
ことり「だけど…………声を聴かずにいると、症状はひどくなって」
花陽「やがて、死ぬような痛みが全身を襲っちゃう」
海未「そ……そんなバカなことがありますか!」
穂乃果「あるんだよ。身をもって経験したよね?」
海未「で、ですが―――」
海未「ただ声を聴いているだけです。それで中毒だなんて!」
花陽「……ごはん、おいしかったかな?」
海未「おいしかったですが」
ことり「苦労したんだよ?どうやったらばれずに食べてもらえるか」
穂乃果「でもよかったよ。海未ちゃん、全然気づいてないんだもん!」
花陽「ちょっとずつクスリを入れてたのにね」
海未「…………う、ウソですよね?」
ことり「ホントです♪」
花陽「クスリの効果は、服用した後に受けた刺激の中毒にしちゃうの」
海未「……刺激」
穂乃果「そう、刺激。もう何の事だかわかるよね?」
海未「あの目隠しの…………」
ことり「そうですっ!あれで、音の刺激だけを受けてもらいました!」
穂乃果「いろいろ考えたんだよ。刺激で一番何がいいか」
花陽「触ったり、見てもらったり…………」
穂乃果「それでね。声を聴いてもらうのが一番いい、ってことになったんだ」
海未「そ、そんな…………そんなこと…………」
穂乃果「なんならもう一度苦しんでみる?いいよ、協力してあげる」
海未「……………………いやです」
花陽「……心配しないで」
ことり「大丈夫だよ。そんなことしない」
穂乃果「もっと簡単に確かめられるもん」
花陽「私たちの声を聴き続けると、どうなった?」
海未「聴き続けると…………?」
穂乃果「たとえば歌とかを聞いてて―――」
海未「…………あ……ああ…………」
海未(…………あの、視界を奪われ声を聞かされた時)
海未(最初は何にも感じませんでした。しかし―――)
ことり「心当たり、あるみたいだね」
花陽「目隠しして声を聴いている海未ちゃん。最初は口は一文字だったけど―――」
穂乃果「だんだん繰り返すたびに緩んできて」
ことり「最近では、だらしなくあけっぱなし。えへへ、気に入ってくれたんだね♪」
穂乃果「気持ちよくなってきちゃう。そうだよね?」
海未「……あ……ぁ…………」ポロポロ
穂乃果「…………どうする?試しに耳にささやいてあげよっか?」
花陽「試す必要もなさそうだよ」
ことり「録音された音源で、何とかしよう。そんなこと考えないでね?」
花陽「海未ちゃんは私たちの声、聴き過ぎちゃったの」
穂乃果「生じゃないと満足できない身体なんだよ」
ことり「海未ちゃんはね……もう私たちなしじゃ、生きていけないの」
海未「…………い………ゃ……」
穂乃果「怖がらないで。大丈夫だよ」ナデナデ
花陽「ずっと一緒にいるからね」
ことり「もう苦しくなることはないよ?」
ことり「これからも、もっともっと声を聞かせてあげる」
花陽「そうすればね―――今は身体だけだけど……」
穂乃果「最後には心も。心も私たちなしでは、ダメになっちゃうんだから」
ことり「楽しみだね、海未ちゃん?」
海未「…………ぅ……ぁ」
海未(…………どうしてこうなってしまったんでしょうか)
海未(私はこれからもあの部屋に死ぬまで―――)
海未(…………そんなの)
海未(そんな悲しい、辛いこと……耐えられません)
海未(でも――――――)
海未(こんな感情すら、三人の声で壊されてしまうのかも…………)
海未(…………あの声を、歌を聴いている時に私は)
海未(今までに感じたことのない幸福感を)
海未(確かに、感じてしまっていたのですから―――)
穂乃果「どうかな?話を聞いて考えは変わった?」
花陽「最後にもう一度、海未ちゃんに聞くよ」
海未「………………」
ことり「選ばせてあげる」
花陽「私たちと一緒に、ここであまーい生活をずぅーとするか―――」
穂乃果「それとも。ここから出て、地獄のような苦しみを味わいながら生きるか」
ことり「どっちがいいかな?」
ことり「海未ちゃん。選んでいいよ?」
海未「…………ヒグッ……わ……わたし……は……」
穂乃果「海未ちゃんは?」
海未「……ぅ……ずっと……あなた……たちと……」
花陽「私たちと?」
海未「………いっしょに…………暮らし……たいです……」
ことり「…………えへへ♪信じてたよ海未ちゃん!」
穂乃果「やっと言ってくれた!穂乃果嬉しいよ!」
花陽「これでずっと海未ちゃんと一緒♪」
ことり「ことりの夢、かなっちゃいました!」
穂乃果「―――これからもずーと一緒!よろしくね、海未ちゃん!」
海未「………………」
「………………はい」
おわり
元スレ
海未(扉は一つ。ただ、変なチェーンがついています)
海未(中からも何かしらの鍵がないと、開けられない仕組みでしょうか?)
海未(ただ、今はそれも外れているようですが…………)
海未(…………なぜ、こんなところに?)
海未(確か今日は……学校に行こうと、いつものように待ち合わせをして―――)
―バタン
ことり「あっ、海未ちゃん!目が覚めたの?」
海未「こ、ことり!」
3: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:38:22.37 ID:0/74+aLR.net
ことり「うん、ことりですよー?」
海未「ああ……よかったです。一人こんなところに連れられたのかと思いました」
ことり「大丈夫。海未ちゃん一人じゃないよ」
海未「そうですか。ことりのほかには誰がいるんです?」
ことり「穂乃果ちゃんと、花陽ちゃん」
海未「穂乃果と花陽も…………とにかくここから出ましょう」
ことり「…………」
海未「二人はどこにいるんですか?」
ことり「むこうの部屋にいるよ」
海未「わかりました。呼んできましょう」
4: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:42:08.18 ID:0/74+aLR.net
穂乃果「ああ!海未ちゃん起きてる!」
花陽「おはよう、海未ちゃん!」
海未「……ちょうどよかった。今呼びに行こうと思ってたんですよ」
穂乃果「穂乃果たちもね、ちょうどこっちに来ようと思ってたんだ」
海未「そうだったんですか。さあ、こっから出ましょう」
ことり「その必要はないよ、海未ちゃん」
海未「何を言ってるんです。誰かに連れられてきたんですよ?今のうちに逃げて―――」
花陽「変だと思わないかな?」
海未「な、何がです?」
穂乃果「誰かに連れられたんだったら、普通そんな簡単に逃がしてくれないよね?」
海未「それは……そうかもしれません」
5: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:45:34.59 ID:0/74+aLR.net
海未「しかし、やはり何か行動しないと!きっと逃げる方法はあるはずです!」
穂乃果「はぁ……………」
ことり「海未ちゃんって鈍感なところがあるよね」
穂乃果「でも、そんな海未ちゃんも好きだよ」
海未「え?何ですかいきなり」
ことり「まだ気づかないの?」
海未「…………?」
穂乃果「あのね、ここに海未ちゃんを連れてきたのは―――」
花陽「―――花陽たちなんですよ?」
6: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:48:02.29 ID:0/74+aLR.net
海未「ど、どういうことですか?」
ことり「どういうことって、こういうことだよ」
海未「答えになってません!」
穂乃果「海未ちゃんは、穂乃果たちとここで、ずうっと一緒に暮らすの」
海未「はい……?ここで暮らす?」
ことり「そうだよ。一緒にぷあぷあ、しよ?」
海未「待ってください!え?ええ?」
花陽「落ち着いて海未ちゃん。簡単なことなの」
穂乃果「四人で死ぬまでここで暮らす。それだけだよ?」
7: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:51:45.62 ID:0/74+aLR.net
海未(な、なんですかこれは!悪夢でしょうか……)
海未(早く目を覚ますんです、園田海未!)
ことり「これは、夢なんかじゃないんだよ」
穂乃果「受け入れようね、海未ちゃん」
花陽「大丈夫だよ。怖くなんてないの」
海未「…………一ついいでしょうか」
ことり「なあに?」
海未「なんでこんなことをするんですか?」
8: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:54:04.30 ID:0/74+aLR.net
穂乃果「海未ちゃんが大好きだからだよ」
ことり「ずっと昔から大好きだったのに、海未ちゃん気づかないんだもん」
海未「好きというなら、私だって二人のこと好きですよ」
穂乃果「ほら、これだもん」
ことり「うん。やっぱりこうして正解だよね」
海未「なにがですか!」
ことり「海未ちゃんのは友達として―――でしょ?」
穂乃果「穂乃果たちは違うよ。一人の女の子として海未ちゃんが好きなの」
海未「なっ…………」
10: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:56:54.39 ID:0/74+aLR.net
ことり「だから好きな人と一緒にいたくなる。それって普通だよね」
海未「…………なんとなくはわかりましたよ」
穂乃果「本当?海未ちゃん、こういうのなかなか分かってくれなさそう」
海未「…………大丈夫です。二人の気持ちはわかりました)
海未「しかし、花陽はどうなんですか?」
ことり「花陽ちゃん?花陽ちゃんもね、海未ちゃんのこと好きだったんだよ」
海未「そんなそぶりは…………」
穂乃果「そんなそぶりって……穂乃果たちにすら気づかないのに、それ言うの?」
花陽「海未ちゃんは鈍感さんだもんね?」
海未「………………」
11: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 22:59:18.81 ID:0/74+aLR.net
穂乃果「かっこいい海未ちゃんに憧れて……一緒に練習して近くで触れ合って……」
穂乃果「そりゃ好きになっちゃうよね」
海未「でっ、でも、私より凛や真姫の方が仲よさそうにしていましたよ?」
ことり「……だから鈍感って言われるんだよ?」
海未「………………」
穂乃果「でも、今回は海未ちゃんが正解。始めは海未ちゃん以外の人が好きだったの」
海未「それなら……」
ことり「だからね……花陽ちゃんには、海未ちゃん一筋になってもらっちゃいました♪」
12: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:02:07.68 ID:0/74+aLR.net
海未「…………どういう意味ですか?」
穂乃果「えっとね、ちょっと色々と花陽ちゃんにしてみたんだ」
穂乃果「そしたら、凛ちゃんや真姫ちゃん、にこちゃんたちのこともぜーんぶ忘れて」
穂乃果「もう、穂乃果とことりちゃん。そして海未ちゃんしか覚えてないよ」
海未「な!花陽になにしたんです!?」
ことり「それは…………ヒ・ミ・ツです♪」
海未「……っ」
穂乃果「心配しなくても、花陽ちゃんは今、とっても幸せなんだって」
花陽「そうです!海未ちゃんと一緒に暮らせるなんて!」
穂乃果「ね?」
海未「………………」
13: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:05:35.67 ID:0/74+aLR.net
海未「……私にも同じことするんですか」
ことり「しないよ?海未ちゃんには自分から言ってもらいたいもん」
海未「何を言わせる気です」
ことり「ずっとあなたたちと一緒に暮らしたいです、って」
海未「…………言うわけないじゃないですかっ!」
花陽「だから、これから言わせるの」
穂乃果「必ず最後には言ってくれるよ」
ことり「待ってるからね、海未ちゃん」
海未(言うわけない…………早くここから出してください!)
14: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:08:57.20 ID:0/74+aLR.net
――――――――
――――
花陽「ふー……ふー……はい、あーん」
海未「あー…………」
花陽「どうかな?おいしいですか?」
海未「うん……おいしいですよ」
花陽「えへへ、嬉しいな!頑張って作ったんだもん」
海未「ありがとうございます……」
花陽「ふー……はいもう一口、あーん」
海未「花陽」
花陽「なにかな、海未ちゃん?」
海未「自分で食べたいのですが」
花陽「それはダメかなあ?」
海未「なんでですか…………」
15: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:18:07.36 ID:0/74+aLR.net
海未「何か勘違いしてるようですが」
海未「私の方が力がありますし―――」
海未「あなた一人なら、どうにでもできるんですよ?
花陽「そうかもしれないね」
海未「箸を渡してください
花陽「で、でも、あーんって………」
海未「渡してください」
花陽「…………はい」
海未「ありがとうございます。それじゃあいただきますね」
花陽「…………うん。ぜーんぶ食べてね?」
16: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:21:36.75 ID:0/74+aLR.net
海未「ごちそうさまでした。美味しかったですよ」
花陽「お粗末さまでした」
海未「さて…………」
海未「……花陽、私をこの部屋から出してください」
花陽「…………ええぇ!?そ、それはちょっと、できないかな……」
海未「それなら、力づくで行くまでですが」
花陽「…………わ、わかりました。出してもいいよ」
花陽「でも、この部屋から出ても意味がないと思うけど……」
海未「……なんでもいいです。とにかく出しなさい」
花陽「……今、扉のチェーン外すね。ええと、この錠にカギを―――」カチン
花陽「チェーンを引っ張って…………」カチャン
花陽「はい、開けたよ」
海未「ありがとうございます」
17: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:24:54.00 ID:0/74+aLR.net
海未(結構あっさりあけてくれましたね……)
海未(まあいいです)
―ガチャ
海未(部屋の外はリビングでしょうか、やはり普通の家といった感じ)
海未(キッチンも見えます。先ほどの料理はここで作ったんですね)
海未(玄関はどっちでしょうか…………)
18: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:27:26.82 ID:0/74+aLR.net
海未「花陽、この建物の出口はどっちで―――」
穂乃果「海未ちゃん、なにしてるのかな?」
ことり「部屋から出たらダメだよ」
海未「あっ…………いえ、ちょっとお手洗いに行きくなりまして……」
穂乃果「…………ふーん、そっか。じゃあ穂乃果が連れっててあげるね」
海未「ええ、お願いします……」
ことり「……………………」
花陽「だから言ったのに……いくら海未ちゃんでも、三人相手は無理だよね?」ボソッ
海未(そうでした……よく考えれば当然のことです…………)
19: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:29:01.93 ID:0/74+aLR.net
海未「あ、あの穂乃果…………」
穂乃果「ん?どうしたの?」
海未「ええと、非常に恥ずかしいというか…………」
穂乃果「なにが?」
海未「なんで一緒にお手洗いに入ってるんですか」
穂乃果「気にしないでいいよ」
海未「気にしますよ!ずっと見られて―――できるものもできません!」
穂乃果「海未ちゃんってホント、恥ずかしがり屋だもんね」
海未「いやいやいや!これは関係ないでしょう!?」
20: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:30:30.89 ID:0/74+aLR.net
穂乃果「大丈夫見てるだけだから」
海未「見られるのが困るのですが」
穂乃果「見てないと海未ちゃん、また逃げようとするでしょ」
海未「…………しませんよ」
穂乃果「えー?本当かなあ」
海未「本当ですから、出てください」
穂乃果「わかったよ。扉の前で待ってるからね」
海未「はい」
21: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:32:59.20 ID:0/74+aLR.net
海未「ふぅ…………」
海未(別に、もよおしてはいなかったのですが…………)
海未(ちょっと安心したからでしょうか―――)
――がちゃがちゃっ
穂乃果「海未ちゃーん!終わったんでしょ?」
海未「なっ!ず、ずっと聞いてたんですか!?」
穂乃果「そりゃ扉越しでもばっちり聞こえるもん」
海未「……………………」
穂乃果「穂乃果が拭いてあげるよ?」
海未「結構です!」
22: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:35:41.30 ID:0/74+aLR.net
――――――――
――――
海未「………………」
海未(…………なるほど)
ことり「………………」ジー
海未「………………」
海未(そういうことだったんですね)
ことり「………………
ことり「う、海未ちゃん。本を読んでるところ悪いけど、そろそろお風呂入らないかな?」
海未「……ん、ああ、お風呂ですか。入りますよ」
ことり「じゃあことりと一緒に入ろうね」
海未「一人で入らせてください」
ことり「四人で入りたいの?」
海未「…………ことり、二人で入りましょう」
23: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:39:21.15 ID:0/74+aLR.net
ことり「ここがお風呂です!」
海未「普通ですね」
ことり「もっとすごいのがよかった?」
海未「別にいいです……」
ことり「……さあ海未ちゃん、ばんざーいってして?」
海未「…………脱げますから!一人で脱げますから!」
ことり「ええぇ?でも……」
海未「いいですから!ことりも自分の服を脱いでください」
ことり「もう、海未ちゃんの恥ずかしがり!」
海未「だから、恥ずかしいとかじゃあないでしょう!」
24: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:41:24.79 ID:0/74+aLR.net
ことり「はーい、お背中お流ししますね♪」
海未「結構です」
ことり「そういわないで。背中だけだよ?」
海未「自分で洗えますから」
ことり「海未ちゃん、おねがあい♪」
海未「…………わかりましたよ。背中だけです」
ことり「うん!」
25: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:45:04.97 ID:0/74+aLR.net
ことり「どうですかー?気持ちいですかー?」
海未「………………あの、ことり」
ことり「なになに?かゆいところ、ございましたか?」
海未「いや……その……スポンジを使ってください」
ことり「素手の方が気持ちいいよ?」
海未「そういう問題じゃないです」
ことり「どういう問題なの?」
26: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:47:09.42 ID:0/74+aLR.net
海未「さっきから洗い方がおかしくないですか?」
ことり「おかしくないと思うけど……」
海未「………………もういいです。背中は十分きれいでしょう?」
ことり「じゃあ前の方も―――」
海未「しなくていいですって!」
27: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:49:03.28 ID:0/74+aLR.net
ことり「やっぱり、二人だと狭いね」
海未「……私、出ますね」
ことり「ああ!やっぱり狭くないよ!」
海未「この際広さはどうでもいいです」
ことり「もうちょっとだけ温もろう?」
海未「……ダメです。あがります」
ことり「えー…………」
28: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:50:43.81 ID:0/74+aLR.net
花陽「海未ちゃん、そろそろ寝よう?」
海未「……確かに眠くなってきました。どこで寝ればいいんですか?」
花陽「ここに敷き布団持ってくるの。ちょっと待っててね」
海未「はい」
花陽「あっ、そうそう。海未ちゃんは枕、大丈夫?」
海未「大丈夫というのは?」
花陽「あの……自分の枕じゃないと眠れない、とか言うのはないかなって」
海未「ああ……大丈夫ですよ。枕無しでも寝られますし」
花陽「よかったぁ。眠れないですって言われたら、どうしようかと思ったよぉ」
海未「ふふ、心配してくれてありがとうございます」
29: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:54:05.76 ID:0/74+aLR.net
花陽「よいしょ……これで、横に四つ並べて―――全員分敷けたね」
ことり「どうしようかな……海未ちゃんの隣の布団は二つ……」
花陽「一人は海未ちゃんから離れちゃう」
穂乃果「じゃあ穂乃果は、海未ちゃんの布団で寝る!」
花陽「それなら、わ、私も!」
ことり「ずるい!ことりも!」
海未「………………暑苦しいです」
花陽「電気消すね。おやすみ海未ちゃん」
海未「え、ちょっと待ってください!このまま寝るんですか!?」
穂乃果「海未ちゃん、寝るよ」
ことり「おやすみ」
30: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:56:01.35 ID:0/74+aLR.net
――――――――
――――
穂乃果「海未ちゃん、ごはんだよ」
海未「今度は穂乃果ですか」
穂乃果「うん。たくさん作ったから食べてね」
海未「…………はい」
穂乃果「あー!その顔!不安そうにしないでよ、おいしくできてるんだよ!」
海未「わ、わかってますよ」
穂乃果「もうっ!ほら海未ちゃん、あーん」
海未「あー……」ゴクン
穂乃果「ね?おいしいでしょ?」
海未「本当です。おいしいです」
穂乃果「頑張って勉強したんだから!」
31: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/27(月) 23:59:44.35 ID:0/74+aLR.net
――――――――
――――
花陽「海未ちゃん、買い物行くんだけど何か欲しい物とかある?」
海未「そうですね……じゃあ、この本の続きと、甘いお菓子お願いします」
花陽「ちょっと待ってね…………よし、本の名前は覚えたよ」
海未「巻数も覚えてくださいね」
花陽「はいっ。―――あ、あの……甘いお菓子ってどういうのかな?」
海未「できれば和菓子がいいです」
花陽「和菓子……わかったよ。じゃあ行ってくるね」
海未「ええ、気を付けてくださいね」
花陽「うん」
32: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/28(火) 00:04:19.74 ID:64YcF8A6.net
海未(最初の様子から、とんでもないことをされるのかと思いましたが……)
海未(この部屋にいる限り、特になにもされません)
海未(痛いことや苦しいこともさせられず―――)
海未(無理やり襲われることもないですし……)
海未(何がしたいのかよくわかりません)
34: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/28(火) 00:06:32.44 ID:64YcF8A6.net
海未(部屋では三人のうち、誰か一人が必ずいるのですが―――)
海未(話をするか、じっと見つめてくるかで)
海未(なにもされないのが不思議です…………)
35: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/28(火) 00:09:00.72 ID:64YcF8A6.net
海未(生活は毎日―――と言うんでしょうか?)
海未(日光や時計が見れないので、時間の感覚が怪しいですが……)
海未(まあ毎日、大体一緒です。三度の食事、風呂、就寝)
海未(この三つは、三人にタイミングを決められています)
36: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/28(火) 00:13:16.44 ID:64YcF8A6.net
海未(それ以外はかなり自由です)
海未(携帯やパソコンこそ使わせてもらえないですが、本や勉強はさせてもらえます)
海未(トレーニングをしても何も言われないですし)
海未(………………)
37: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/28(火) 00:16:06.88 ID:64YcF8A6.net
海未(しかし、一つだけ。奇妙なことをさせられます)
海未(三食のうち決まって一回。食べ終わってからのこと)
海未(私は目隠しをさせられ、ある部屋に連れて行かれるんです)
海未(その部屋に着くと私は椅子に座らせられて―――)
海未(手足に拘束具をつけられるんです)
海未(何も見えずまったく動けない)
海未(この生活において、一番怖い時間です)
45: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:24:48.43 ID:OiOunWSD.net
――――――――
――――
ことり「じゃあ海未ちゃん、これをつけてね」
海未「なんですか、これは」
ことり「目隠しだよ。ちゃんとつけてほしいの」
海未「は、はい…………」
ことり「どうかな。痛いとか、そういうのある?」
海未「いえ」
ことり「大丈夫そうかな。じゃあことりが海未ちゃんを案内するねっ」
46: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:26:44.83 ID:OiOunWSD.net
ことり「はい、そこに椅子があるから―――そうそう、そのまま座って」
ことり「腕を後ろに、背もたれの方に回して―――ちょっと冷たいかもしれないけど」カシャン
海未「……っ!なんですかこれは!」
花陽「足はこのバンドでぎゅーっと…………」
穂乃果「こっち足もイスの脚と―――できた」
海未「…………なんのつもりですか」
ことり「怖がらなくても大丈夫だよ。酷いことはしないから」
海未「椅子に張り付けるので、十分酷いと思いますが」
花陽「すぐに外すよ。がまんしてね……?」
海未「………………」
47: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:28:49.14 ID:OiOunWSD.net
海未(何をされるんでしょうか…………)
海未(今まで特に変わったことをされていない分、非常に怖いです……)
海未(暴力でも振るわれるんでしょうか……それとも、変なものを注射されたり……)
穂乃果「じゃあ始めようかな」
海未「ひっ…………」
穂乃果「怖がらないで。リラックスしてね」
ことり「いくよ…………」
48: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:30:17.58 ID:OiOunWSD.net
「海未ちゃん♪」
「海未ちゃん♪」
「海未ちゃん♪」
「だあいすきだよ海未ちゃん♡」
「だあいすきだよ海未ちゃん♡」
「だあいすきだよ海未ちゃん♡」
49: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:33:08.11 ID:OiOunWSD.net
海未(な、なんですかこれ…………)
海未(三人が耳元でささやいてきます…………)
「凛々しい海未ちゃんが好き」
「悔しがる海未ちゃんが好き」
「嬉しそうな海未ちゃんが好き」
海未(なんか好き好き言われると、くすぐったくなってきますね……)
50: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:34:25.13 ID:OiOunWSD.net
穂乃果「お疲れさま。もう終わりだよ」
花陽「すぐに外すからね」
ことり「でも、目隠しはまだとっちゃダメ」
海未「…………はい」
海未(あれから、ひたすら三人にささやかれました)
海未(ちょっと恥ずかしかったりしましたが、特に変わったことはないです)
海未(何を思ってやったのか……ただただ不気味です)
51: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:40:30.15 ID:OiOunWSD.net
―――――――――――――
――――――――
――――
海未(もう十回以上行われましたが、さっぱりです)
海未(催眠術か何かなんでしょうか……?全然効いてませんよ?)
海未(………………)
52: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:42:35.77 ID:OiOunWSD.net
海未(だんだんこの生活に慣れてきました)
海未(しかし、私には私の生活があります。やはり抜け出さないと)
海未(あの部屋からは、扉からしか出られません)
海未(板が邪魔で窓からは無理でした。外せそうな工具も買ってきてもらえません)
海未(抜け出すタイミングは、買い物の時でしょうか…………)
海未(三人のうち、誰かがたまに買い物に行きます)
海未(この時にもう二人のうち、片方でもどうにかできれば―――)
53: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:45:22.85 ID:OiOunWSD.net
―――――――――――――
――――――――
――――
ことり「はい、最後の一口だよ。あーん」
海未「…………」ゴクン
ことり「全部食べてくれたね。嬉しいな♪」
海未「私も嬉しいです。毎日手料理を作ってくれて」
ことり「ホント?えへへ♪」
海未「ええ。三人とも料理が上手で」
ことり「練習したんだもん」
54: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:48:18.84 ID:OiOunWSD.net
ことり「―――あ、そうだ海未ちゃん」
海未「なんでしょうか」
ことり「この後穂乃果ちゃんがね、買い物行くみたいなんだけど」
海未「ああ、欲しいものですか?」
ことり「うん」
海未「そうですね…………新しいノートと消しゴムが欲しいです」
ことり「ノートと消しゴムだね。わかった。じゃあ伝えておくね」
海未「お願いします」
55: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:50:21.58 ID:OiOunWSD.net
―ガチャ
花陽「海未ちゃん」
海未「今度は花陽が部屋にいてくれるんですか」
花陽「うん。あ、そうだ、この後穂乃果ちゃんが、お買い物にいくんだけど―――」
海未「欲しい物ですか?
花陽「うん」
海未「今さっき、ことりにも聞かれました。ちゃんと伝えておきましたよ」
花陽「そうなんだ。それなら……うん、それならいいんだけど」
海未「さて、なにしましょうか」
花陽「この前買ってきた本は、全部読んだの?」
海未「まだ途中です。―――そうですね、本でも読みましょうか」
56: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:53:46.29 ID:OiOunWSD.net
海未「………………ふぅ」
海未(途中といっても、もう30ページくらいしか残ってませんでした)
海未(すぐに読み終わってしまって…………)
花陽「…………すー……すー……」
海未(花陽、寝てますね……)
海未(チャンスかもしれません)
海未「………………花陽」
花陽「…………………ん、あっ、海未ちゃん、なあに?」
海未(簡単に起きちゃいましたか…………)
海未「眠そうですね…………一緒にひと眠りしませんか?」
花陽「え?あ、うん。ちょうど花陽も眠かったんです……」
57: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:55:20.91 ID:OiOunWSD.net
花陽「布団持ってくる?」
海未「いえ、暖かいですしこのままでいいでしょう」
花陽「そうだね。もう眠くて動きたくないもん」
海未(布団運んでるところをことりに見られたら、ばれそうですし)
海未「ほら、横に来てください」
花陽「うん…………おじゃまします」
海未「もっとくっついてもいいですよ?」
花陽「えへへ、じゃあ甘えちゃいます」ギュー
海未「……おやすみなさい花陽」ナデナデ
花陽「おやすみ、海未ちゃん…………」
58: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 22:59:33.59 ID:OiOunWSD.net
花陽「……んん……すー……すー……」
海未「………………」
海未(悪いですが、カギはいただきますよ……)ゴソゴソ
海未(ポケットに―――ありました。そーっととれば…………)
花陽「……うーん…………」ゴロン
海未「………………」
海未(もうちょっと…………よし!)
海未(…………うまくいきました)
海未(あとはチェーンを…………)
―カチャン
59: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:02:01.69 ID:OiOunWSD.net
海未(……扉は開きました。できるだけことりに見つからないように……)
海未(ことりは……あれ、いませんね)
海未(お手洗いに行ってるんでしょうか。好都合です)
海未(この大部屋には扉が三つ。一つは元の部屋)
海未(残りはあの目隠しの部屋と、玄関への廊下……でしょう)
海未(どっちでしょうか…………)
海未(…………悩んでも仕方がありません。向って右、右の扉!)
60: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:05:11.03 ID:OiOunWSD.net
海未「…………やった!」
海未(玄関が見えました。まっすぐの廊下!)
海未(ことりも気づいていないみたいです……このまま玄関の扉まで)
海未(―――よし)
海未(あとは、静かに扉を開けて…………)
―ガ―――チャン
穂乃果「………………どこに行くの」
61: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:08:43.91 ID:OiOunWSD.net
――――――――
――――
海未(玄関の戸を開けると、穂乃果が立っていました)
海未(ひるんだ私は、後ろからことりと花陽に押さえつけられ―――)
海未(…………どうやら、初めからお見通しだったみたいです)
海未(今は元の部屋に戻され、おしおき宣告を受けました)
海未(何をされるのかわかりませんが…………)
海未(とにかく怖いです…………)
62: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:11:18.46 ID:OiOunWSD.net
―ガチャ
ことり「………………」
海未「あっ―――こ、ことり」
ことり「………………」コトン
海未「……え、な、なんですか……?」
ことり「………………」
63: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:13:14.63 ID:OiOunWSD.net
海未(結局なにもされませんでした……)
海未(持ってきたのは、お盆に乗ったごはん)
海未(いつもと一緒です。ただ、手紙がついていますね……)
『一人で食べてもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(…………おしおきなんでしょうか?箸もついてますし……)
海未「…………いただきます」
64: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:16:44.03 ID:OiOunWSD.net
海未(ごはんも普通でした。おいしかったです)
―ガチャ
花陽「………………」
海未「今度は花陽ですか……」
花陽「………………」バサ
海未「バスタオルに着替え…………」
花陽「………………」
65: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:18:45.04 ID:OiOunWSD.net
海未(やはりなにもされません……)
海未(風呂に入れということでしょうか)
海未(いつもと一緒です。また、手紙がついていますね……)
『一人でお風呂に入ってもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(…………まさか感電させてきたりしませんよね?)
海未「…………入って来ましょう」
66: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:22:49.04 ID:OiOunWSD.net
海未(普通に風呂でした。久々に一人で入れたので、ちょっと長風呂ギミです……)
―ガチャ
穂乃果「………………」
海未「そして、穂乃果ですか……」
穂乃果「………………」バフ
海未「……布団ですね」
穂乃果「………………」
67: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:25:13.53 ID:OiOunWSD.net
海未(………………)
海未(寝ろってことですね)
海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)
『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)
海未「……おやすみなさい」海未(………………)
海未(寝ろってことですね)
海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)
『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)
海未「……おやすみなさい」
68: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:25:45.82 ID:OiOunWSD.net
海未(………………)
海未(寝ろってことですね)
海未(いつもと一緒です。やっぱり、手紙がついていますね……)
『一人で寝てもらいます。これは海未ちゃんへのおしおきです』
海未(寝込みを襲われる―――だったら、もうすでに襲われてますね)
海未「……おやすみなさい」
69: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:30:04.32 ID:OiOunWSD.net
海未「ううん―――朝ですか」
海未(と言っても分かりませんが)
穂乃果「………………」
海未「……あ、あれ、みんな起きてたんですね」
花陽「………………」
海未(って……私、二人に仰向けのまま、押さえつけられてます……)
海未「あの……離してもらえませんか」
70: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:32:19.08 ID:OiOunWSD.net
ことり「………………」
海未「な、なんですか、そのクスリは!」
ことり「………………」グイッ
海未「んんんー!」
海未(ことり、私に無理やり飲ませようと―――)
ことり「………………」グッ
海未(鼻をつままれて―――息が……!)
海未「んんん……ぷは…………んぐっ!」
71: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:36:44.89 ID:OiOunWSD.net
――――――――
――――
海未「はぁ…………はぁ…………」
海未「…………うぐぅ…………」
海未(あのクスリを飲まされてから、少し経って)
海未(始めは頭がくらくらして、悪寒がする程度でしたが……)
海未(全身が震えだして止まらなくなり―――)
海未(しまいには、少しでも動くと身体中に、痛みが走るようになりました)
海未(今では呼吸するだけで…………)
海未(…………苦しいです)
海未(………………助けてください。穂乃果、ことり、花陽……)
72: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:39:57.88 ID:OiOunWSD.net
海未「はぁ……ん…………」
海未(あれから三人は全く姿を現しません)
海未(私は呼吸の痛みに耐えながら、ずっと同じ姿勢)
海未(どうにもしようがありません。治まるまで耐えるしか―――)
海未(でもそれって、いつまででしょうか……)
海未(……………………)
海未(…………)
海未(……)
73: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:42:50.76 ID:OiOunWSD.net
穂乃果「う、海未ちゃん!」
花陽「海未ちゃん、大丈夫?」
ことり「海未ちゃんっ!」
海未「んん……こと……り?……いっ!……」
ことり「喋っちゃだめだよ!ほらこれ飲んで!」
穂乃果「飲ませてあげる。頑張って口あけてね」
海未「んあ…………」
海未「…………」ゴクン
花陽「もうちょっとしたら、落ち着くと思うから……」
ことり「じっとしててね」
74: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:44:33.86 ID:OiOunWSD.net
穂乃果「どう?落ち着いた?」
海未「……ええ」
ことり「いいですか?また抜け出そうとしたら―――」
花陽「また苦しい思いをするんだよ?」
海未「…………わかりました」
穂乃果「よし!じゃあ、ごはん食べようよ。今日は穂乃果が作ったの!」
海未「…………食べます」
穂乃果「いっぱい食べていいからね。足りなかったら穂乃果の分も……」
海未「……そ、そんなには」
75: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/29(水) 23:45:15.20 ID:OiOunWSD.net
―――――――――――――
――――――――
――――
海未(おしおきのあと、再び今まで通りの生活が始まりました)
海未(あいも変わらず、ごはん、お風呂、就寝はむこうの手に委ねられています)
海未(しかし、やっぱりそれ以外は特に制限はありません)
82: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:34:35.41 ID:zE+HL2ce.net
海未(最近では作詞もするようになりました)
海未(ただし、私のソロか、Printempsのものだけですが)
海未(一度他の曲を作ろうとしたら、穂乃果に止められました)
海未(そうそう、曲と言えば小型の音楽プレイヤーをもらいました)
海未(曲を入れるのは穂乃果たちなので…………とても曲に偏りがありますが……)
83: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:36:28.61 ID:zE+HL2ce.net
花陽「海未ちゃんの肌ってきれいだよね」
海未「そうでしょうか?」
花陽「うん!すべすべで…………」
海未「あ、あの、洗ってくれるんですよね?」
花陽「そ、そうだけど」
海未「背中を見つめられても困るんですが……」
花陽「ああ!ごめんなさい…………すぐに洗いますっ」
海未「いえ、別にそんな急いで洗わなくても……」
海未(…………ちなみに素手で洗われます。もう慣れました)
84: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:39:00.59 ID:zE+HL2ce.net
穂乃果「海未ちゃんあーんして?」
海未「あー…………」
穂乃果「どうかな?今日は中華にしてみたんだけど」
海未「中華は私も得意ですが、私のよりおいしいです」
穂乃果「よかった。おいしくないって言われたら、どうしようかって……」
海未「別にそこまで味にうるさくないですが…………」
穂乃果「でも、海未ちゃんが食べてくれるんだもん」
穂乃果「絶対おいしいもの食べてもらいたいよ」
海未「…………いつもありがとうございます」
85: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:40:54.54 ID:zE+HL2ce.net
ことり「………………」
海未「あの、そろそろこれ、やめませんか?」
ことり「気にしないでね?」
海未「だから気にしますよ……」
ことり「大丈夫、汚いとか思わないよ」
海未「だからそういうのじゃないって!いつも言ってるじゃないですかぁ!
ことり「ね?早くしよう?」
海未「恥ずかしくて出ませんよ!」
ことり「慣れてください!」
海未「慣れません!早くお手洗いから出てってください!」
86: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:43:45.78 ID:zE+HL2ce.net
ことり「今日はどうやって寝る?」
穂乃果「そうだね……今日は穂乃果が海未ちゃんの布団!」
花陽「昨日も穂乃果ちゃんだったよぉ!」
ことり「じゃあ今日はことり♪」
海未「…………昨日もなんだかんだ言って、三人とも私の布団でしたよね」
穂乃果「そうだっけ?」
花陽「そ、それじゃあ今日も!」
ことり「四人で一つの布団!」
海未「やめてください。暑苦しすぎて寝れません」
87: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:45:33.91 ID:zE+HL2ce.net
「スキスキ♪」
「ぷわぷわ♪」
「スキスキ♪」
海未(言葉に加えて、度々歌を聞かされます)
海未(もう何度も何度も…………)
「ぷわぷわ♪」
「スキスキ♪」
「ぷわぷわ♪」
海未(強烈です……こっちもぷわぷわしてきます……)
海未「………………」
海未(ぷわぷわ…………)
海未(なんだか…………ふふ……)
88: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:49:01.52 ID:zE+HL2ce.net
―――――――――――――
――――――――
――――
海未(どれだけの月日が経ったでしょうか。数十日は経ってます)
海未(まだ少し寒いな。そう感じる日も少なくなって)
海未(暑さで、うだり。寒さで凍える)
海未(この部屋の中で、そんな経験をしなくてはいけないのでしょうか)
海未(…………いつまでここに、閉じ込められていればいいのです?)
海未(……………………)
89: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:50:53.97 ID:zE+HL2ce.net
――――――――
――――
海未「よし……数学は大方終わりですね」
海未「次は英語をやりましょうか」
ことり「あ、海未ちゃん。ちょっと聞いてほしいことがあるの」
海未「ん?どうしましたか?」
ことり「あのね、ちょっと私たち用事があって……」
海未「用事ですか」
ことり「うん」
90: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:52:16.01 ID:zE+HL2ce.net
ことり「それでね、今日のごはんまではいるんだけど―――」
ことり「お風呂や寝るのは一人になっちゃうの。いい?」
海未「ええ、大丈夫ですが」
ことり「ごめんね、海未ちゃん……」
海未「しょうがないですよ、用事があるんですから」
ことり「……あ、絶対に外には出ないでね?」
海未「わかっています」
91: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:54:37.51 ID:zE+HL2ce.net
花陽「ごめんね海未ちゃん。ちょっと早いけど、ごはんだよ」
海未「ありがとうございます」
花陽「時間がないから……一人で食べてもらえると、その……助かります」
海未「わかりました。箸……もありますね。大丈夫です」
花陽「じゃあね海未ちゃん。ちゃんとここにいてね?」
海未「ええ。いってらっしゃい、花陽」
92: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 22:58:50.77 ID:zE+HL2ce.net
海未「…………本当に行ったんでしょうか」
海未(私を信用してくれた、ということなのですか……?)
海未(それとも―――)
海未「……まずはごはんですね」
海未「いただきます」
93: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:00:37.00 ID:zE+HL2ce.net
海未(本当に誰も部屋に来ません…………)
海未(一人じゃ部屋から出られないんですから)
海未(風呂に入れないじゃないですか!)
―ガチャ
穂乃果「………………」
海未「あれ?穂乃果はいるんですか?」
穂乃果「………………」バサ
海未「バスタオルと着替えですね。今から入りますか?」
穂乃果「………………」
94: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:02:44.36 ID:zE+HL2ce.net
海未(……何も言わずに出て行ってしまいました)
海未(用事があるのは二人だけ。ということでしょうか?)
海未「………………」
海未(……タオルの上に、前のように手紙が)
『ごめんね、お風呂は一人で入ってね。布団は入浴中に準備するよ』
海未(…………穂乃果はここにいるみたいですね)
95: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:04:31.32 ID:zE+HL2ce.net
海未(風呂には何事もなく入れました)
海未(部屋の戸は、穂乃果が開けておいてくれたみたいです)
海未(さて、どうしましょうか…………)
海未(今が脱出のチャンスに見えますが―――)
海未(うかつに出ようとすれば、また…………)
海未(…………)
96: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:07:54.86 ID:zE+HL2ce.net
海未(今回のことりと花陽の言葉は露骨でした)
海未(まるで、今がチャンスだといわんばかりの)
海未(きっとこれは罠ですね……)
海未(とりあえず、勉強の続きでもしましょう)
海未(ええと……英語です。英語)
97: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:10:17.20 ID:zE+HL2ce.net
――――――――
――――
海未(特に動きはありません…………)
海未(そろそろ眠くなってきましたし、もう寝ましょうか……)
海未(電気を消して―――)
海未「おやすみなさい……」
海未(一人だと少し寒いです……)
98: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:12:17.98 ID:zE+HL2ce.net
――――――――
――――
未「ううん…………ん、朝ですか」
海未(と言っても、真っ暗でわかりませんが)
海未「…………うう、なんか寒いですね」
海未「体も震える寒さです…………」
海未「……お手洗いに行きますか」
99: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:14:26.75 ID:zE+HL2ce.net
海未「リビングに誰もいません……」
海未(……穂乃果はどこに行ったんでしょうか)
海未(お手洗いや、風呂にはいなかったですし……)
海未(もう一つの部屋ですかね)
海未「………………」
海未(カギがかかって―――いない)
100: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:18:23.13 ID:zE+HL2ce.net
海未(開けた部屋の中は、ごく普通の部屋。私の座っていたであろう椅子もありました)
海未(しかし、部屋の中にも穂乃果はいませんでした)
海未(ことりも花陽も帰ってきてませんし……)
海未(…………)
海未「ちょっとだけ。ちょっとだけ外の様子を……」
101: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:23:05.92 ID:zE+HL2ce.net
海未(玄関の戸は、普通のつまみで開け閉めするカギのみです)
海未(特殊なカギもいらないみたいで―――)
海未「つまみを…………うう、寒さで手が震えて……」
―カチャン
海未「ふう、やっとカギが開きましたね…………」
海未(ここまで、誰にも止められていません…………)
海未(あとは開けるだけ…………)
102: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:26:11.01 ID:zE+HL2ce.net
海未(…………扉の向こうは―――)
海未(至極普通の住宅街です)
海未(映画や小説で、閉じ込められたと思っていたら、実は保護されてた)
海未(そういうのもありますが。違いました)
海未「それはそうですよね……」
海未(どうやら、今は夜中か早朝でしょう)
海未(真っ暗ですし、とても静かです)
103: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:30:39.61 ID:zE+HL2ce.net
海未(それにしても寒い。もう春ですし、暖かいはずですが)
海未(やはり日が出ていないからでしょうか。相当冷えます……)
海未(……春といえば。そういえばPrintempsも春という意味でしたね……)
海未(三人はいないみたいです……)
海未(外に出てなお、とめに来ないということは―――)
海未(本当にどこかに出かけたようですね…………)
104: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:36:51.81 ID:zE+HL2ce.net
海未(見慣れない風景です。うちからは遠いのでしょうか……?)
海未(まずは……人がいるところに行きましょう)
海未(交番か何かがあればいいのですが)
海未「どっちに向いましょうか…………」
海未「あっちか……こっ……え……ぅ……」
海未「………な……う……ぁ……」
海未(…………なんで……なんで)
105: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:39:12.68 ID:zE+HL2ce.net
海未(……体が痛い。前にも経験した、あの痛みです)
海未(あのクスリは飲まされていないはずなのに…………)
海未「……あがぁ…………ぁ……」
海未(…………痛い)
海未(痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
海未(……………………)
106: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:42:12.59 ID:zE+HL2ce.net
海未「……かは……っぁ…………」
海未(も……う……無……理……)
海未(……誰…………か……助…………け……)
――――――――
――――
107: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:45:09.57 ID:zE+HL2ce.net
穂乃果「海未ちゃん!」
花陽「海未ちゃん!」
ことり「海未ちゃんっ!」
海未「………………ん……」
ことり「あっ!気づいたみたいだよ」
花陽「よかった!海未ちゃん?聞こえる?」
海未「……あ……花陽?」
花陽「そうだよ?ちゃんと聞こえてるね?」
海未「は……い……」
108: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:46:44.38 ID:zE+HL2ce.net
穂乃果「海未ちゃん!」
ことり「海未ちゃぁん!」
花陽「海未ちゃん!」
海未「…………大丈夫です。聞こえてます」
穂乃果「海未ちゃん!」
ことり「大丈夫?動ける?」
花陽「痛くない?」
海未「ええ、もう平気です」
ことり「よかったぁ……」
109: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:50:16.12 ID:zE+HL2ce.net
海未「この部屋まで運んだんですか?」
花陽「そうだよ。外で倒れてるから運んできたの」
穂乃果「できるだけそーっと、運んだけど……変なところない?」
海未「特には……」
ことり「ホントに良かった……ケガでもあったら大変だもん」
花陽「そうだよね……」
110: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:53:44.04 ID:zE+HL2ce.net
穂乃果「ところで、海未ちゃん。何で外にいたの?」
ことり「絶対に外に出ないように言ったよね?」
花陽「なんで。何で出ちゃったの?」
海未「……それは……その…………」
ことり「………………」
穂乃果「……やっぱり外に出たいの?」
海未「………………」
112: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:56:39.67 ID:zE+HL2ce.net
ことり「ずっといたんだよ」
海未「…………どこにですか」
穂乃果「海未ちゃんの近くに。見てたんだ」
ことり「私たちが居なくなったら、海未ちゃんはどうするかなって」
花陽「海未ちゃんの気持ちを確かめたかったの。いないふりしてね」
穂乃果「海未ちゃんが部屋にいたままなら。それならよかったんだけど」
花陽「外に出ちゃったってことは―――」
「「「私たちと暮らしたくないってことだよね?」」」
113: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/04/30(木) 23:59:00.01 ID:zE+HL2ce.net
海未「…………そうなりますね」
ことり「いいよ。それなら、家から出してあげちゃいます」
海未「本当ですか?」
ことり「うん」
海未「ではさっそく―――」
穂乃果「待って!」
花陽「話は最後まで聞いてください」
海未「……わかりました。しかし、何を聞いてもここから出る。それは変わりません」
ことり「ふーん…………」
114: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:00:45.93 ID:cS0Q79Si.net
穂乃果「じゃあ話すね。まずは―――この前のおしおきはどうだった?
海未「……思い出したくもないです。苦しかったですよ。全身が痛くて」
花陽「だよね。苦しかったよね?」
海未「ええ…………」
ことり「それじゃあ、いまさっきのはどうだった?」
海未「………………」
花陽「言いたくないくらい、辛かったみたい」
穂乃果「そうだよね。だって、あんなに…………」
115: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:02:35.03 ID:cS0Q79Si.net
花陽「ねえ、海未ちゃん。あれはどうして起こると思う?」
海未「どうしてって、あなたたちがクスリを飲ませたじゃないですか!」
ことり「ホントにクスリのせいだと思う?」
海未「…………違うんですか?」
穂乃果「だって、海未ちゃんさ。今日クスリ飲んでないよね?」
海未「そ、それは―――私が寝ている間に飲ませた。そうでしょう?」
ことり「痛みが治まったのは?」
海未「それも、私が気を失っている間に飲ませて…………」
116: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:04:44.29 ID:cS0Q79Si.net
穂乃果「…………海未ちゃん面白いね」クスクス
海未「……何がです」
花陽「海未ちゃんに飲んでもらったクスリは―――これです!」
海未「……胃薬?」
花陽「そう、胃薬です!市販のやつだよ」
穂乃果「海未ちゃんは胃薬飲むと、体が震えて激痛が走るのかあ」
ことり「たいへんだねっ♪」
海未「………………」
117: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:06:31.05 ID:cS0Q79Si.net
海未「それなら、あの痛みはどうして……」
穂乃果「どうしてだろうね?よーく考えてみて」
花陽「いつもと何か違ったこと、ないかな?」
海未「…………手紙……ですか?」
ことり「そうだね。両方とも手紙があったよね」
118: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:08:24.14 ID:cS0Q79Si.net
海未「…………紙に何か塗られてた?」
穂乃果「……もう!ホントに鈍感!」
花陽「私たち、あの時も昨日も……海未ちゃんに声を聞かせなかったよね?」
海未「…………ええ。まったく喋りませんでしたね」
穂乃果「だからなんだ」
海未「………………意味が分かりませんが」
ことり「実はね―――海未ちゃんはPrintemps中毒なの」
119: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:10:40.47 ID:cS0Q79Si.net
海未「Printemps中毒…………」
花陽「そうです。定期的に私たちの声を聴かないと、禁断症状が出ちゃうの」
穂乃果「最初は寒気がするとか、身体が震えるくらいだけ」
ことり「だけど…………声を聴かずにいると、症状はひどくなって」
花陽「やがて、死ぬような痛みが全身を襲っちゃう」
海未「そ……そんなバカなことがありますか!」
穂乃果「あるんだよ。身をもって経験したよね?」
海未「で、ですが―――」
120: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:14:27.23 ID:cS0Q79Si.net
海未「ただ声を聴いているだけです。それで中毒だなんて!」
花陽「……ごはん、おいしかったかな?」
海未「おいしかったですが」
ことり「苦労したんだよ?どうやったらばれずに食べてもらえるか」
穂乃果「でもよかったよ。海未ちゃん、全然気づいてないんだもん!」
花陽「ちょっとずつクスリを入れてたのにね」
海未「…………う、ウソですよね?」
ことり「ホントです♪」
121: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:16:47.70 ID:cS0Q79Si.net
花陽「クスリの効果は、服用した後に受けた刺激の中毒にしちゃうの」
海未「……刺激」
穂乃果「そう、刺激。もう何の事だかわかるよね?」
海未「あの目隠しの…………」
ことり「そうですっ!あれで、音の刺激だけを受けてもらいました!」
穂乃果「いろいろ考えたんだよ。刺激で一番何がいいか」
花陽「触ったり、見てもらったり…………」
穂乃果「それでね。声を聴いてもらうのが一番いい、ってことになったんだ」
122: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:19:04.92 ID:cS0Q79Si.net
海未「そ、そんな…………そんなこと…………」
穂乃果「なんならもう一度苦しんでみる?いいよ、協力してあげる」
海未「……………………いやです」
花陽「……心配しないで」
ことり「大丈夫だよ。そんなことしない」
穂乃果「もっと簡単に確かめられるもん」
123: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:20:51.89 ID:cS0Q79Si.net
花陽「私たちの声を聴き続けると、どうなった?」
海未「聴き続けると…………?」
穂乃果「たとえば歌とかを聞いてて―――」
海未「…………あ……ああ…………」
海未(…………あの、視界を奪われ声を聞かされた時)
海未(最初は何にも感じませんでした。しかし―――)
124: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:23:08.92 ID:cS0Q79Si.net
ことり「心当たり、あるみたいだね」
花陽「目隠しして声を聴いている海未ちゃん。最初は口は一文字だったけど―――」
穂乃果「だんだん繰り返すたびに緩んできて」
ことり「最近では、だらしなくあけっぱなし。えへへ、気に入ってくれたんだね♪」
穂乃果「気持ちよくなってきちゃう。そうだよね?」
海未「……あ……ぁ…………」ポロポロ
穂乃果「…………どうする?試しに耳にささやいてあげよっか?」
花陽「試す必要もなさそうだよ」
125: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:25:49.07 ID:cS0Q79Si.net
ことり「録音された音源で、何とかしよう。そんなこと考えないでね?」
花陽「海未ちゃんは私たちの声、聴き過ぎちゃったの」
穂乃果「生じゃないと満足できない身体なんだよ」
ことり「海未ちゃんはね……もう私たちなしじゃ、生きていけないの」
海未「…………い………ゃ……」
穂乃果「怖がらないで。大丈夫だよ」ナデナデ
花陽「ずっと一緒にいるからね」
ことり「もう苦しくなることはないよ?」
126: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:27:59.51 ID:cS0Q79Si.net
ことり「これからも、もっともっと声を聞かせてあげる」
花陽「そうすればね―――今は身体だけだけど……」
穂乃果「最後には心も。心も私たちなしでは、ダメになっちゃうんだから」
ことり「楽しみだね、海未ちゃん?」
海未「…………ぅ……ぁ」
127: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:29:24.68 ID:cS0Q79Si.net
海未(…………どうしてこうなってしまったんでしょうか)
海未(私はこれからもあの部屋に死ぬまで―――)
海未(…………そんなの)
海未(そんな悲しい、辛いこと……耐えられません)
海未(でも――――――)
海未(こんな感情すら、三人の声で壊されてしまうのかも…………)
海未(…………あの声を、歌を聴いている時に私は)
海未(今までに感じたことのない幸福感を)
海未(確かに、感じてしまっていたのですから―――)
128: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:31:10.28 ID:cS0Q79Si.net
穂乃果「どうかな?話を聞いて考えは変わった?」
花陽「最後にもう一度、海未ちゃんに聞くよ」
海未「………………」
ことり「選ばせてあげる」
花陽「私たちと一緒に、ここであまーい生活をずぅーとするか―――」
穂乃果「それとも。ここから出て、地獄のような苦しみを味わいながら生きるか」
ことり「どっちがいいかな?」
129: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:33:37.47 ID:cS0Q79Si.net
ことり「海未ちゃん。選んでいいよ?」
海未「…………ヒグッ……わ……わたし……は……」
穂乃果「海未ちゃんは?」
海未「……ぅ……ずっと……あなた……たちと……」
花陽「私たちと?」
海未「………いっしょに…………暮らし……たいです……」
130: 名無しで叶える物語(もんじゃ)@\(^o^)/ 2015/05/01(金) 00:35:08.05 ID:cS0Q79Si.net
ことり「…………えへへ♪信じてたよ海未ちゃん!」
穂乃果「やっと言ってくれた!穂乃果嬉しいよ!」
花陽「これでずっと海未ちゃんと一緒♪」
ことり「ことりの夢、かなっちゃいました!」
穂乃果「―――これからもずーと一緒!よろしくね、海未ちゃん!」
海未「………………」
「………………はい」
おわり
海未「春にとらわれて」