過去作
曜「メゾン・ド・モルゲンレーテ・日の出?」鞠莉「ひどいメドレーね」
鞠莉「そのメガネって度、入ってるやつ?」曜「うん、伊達じゃないよ」
曜「巷に雨の降るごとく」
曜「鞠莉ちゃんお味噌汁理論」
鞠莉「So Close, Yet So Far」
曜「メゾン・ド・モルゲンレーテ・日の出?」鞠莉「ひどいメドレーね」
鞠莉「そのメガネって度、入ってるやつ?」曜「うん、伊達じゃないよ」
曜「巷に雨の降るごとく」
曜「鞠莉ちゃんお味噌汁理論」
鞠莉「So Close, Yet So Far」
【ようまり】鞠莉「コーヒーに付き合ってほしい?」曜「うん!」
曜「鞠莉ちゃん家にお泊まり」
鞠莉「曜ってさ」曜「うん」
ぶっちゃけトーク記念ようまり。
2: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:41:51.89 ID:D5aeLELQ.net
静真高校の3年生として新たなスタートを切り、あっという間に数ヶ月が経ったある夏の日。
暑い中での練習が終わって、部室で帰り支度をしているときだった。
曜「ごめん、千歌ちゃん。今日はちょっと行くところがあって」
一緒に帰ろうと誘ってくれた千歌ちゃんに、私は手を合わせてごめんなさいで答えた。
千歌「そうなんだ。何か用事?」
曜「んー、ちょっとね」
千歌「えー、気になる。どこ行くの?何するの?」
曖昧な答え方をしてしまったせいだろう。私の行先に興味を示した千歌ちゃんが、ぐいぐいと顔を覗き込んでくる。
千歌「ねえねえ、教えて、教えてってばー。ねー、よーちゃーん」
曜「あはは、ええっと…」
梨子「だめよ、千歌ちゃん。あんまりしつこく聞いたりしたら」
私が困り笑顔をしていたら、梨子ちゃんがフォローに入ってくれた。
注意される形になった千歌ちゃんは、不満げに頬を膨らませ、口を尖らせている。
千歌「だってー、曜ちゃんが隠し事するんだもん」
梨子「わがまま言っちゃいけません。曜ちゃんには曜ちゃんの事情があるんだから」
千歌「ううっ、はーい…」
千歌ちゃんはしょんぼりと俯いた。そんなつもりじゃなかったんだけど、ごめんね、千歌ちゃん、梨子ちゃん。
梨子「よろしい。それで曜ちゃん、急がなくて大丈夫なの?」
曜「うん、約束の時間まではもう少しあるから――」
千歌「約束?」
パッと顔を上げた千歌ちゃんは、好奇心でいっぱいの目に戻っていた。
私は自分の失言に気付いたけれど、もう遅かった。
千歌「いま約束って言ったね。私たちにも言えない、秘密の約束…もしかして曜ちゃん…これからデートとか!」
曜「で、デートぉ!?」
つい大きな声で返してしまった。これもよくなかった。千歌ちゃんの眼光が強さを増していく。
千歌「ほら、その反応!まさか曜ちゃん、本当に…!」
曜「いや、いやいや、違うって。違くはないけど、そうじゃないっていうか…」
不意を突かれて動揺した私は、自分でボロを出し続けていることに気付かない。千歌ちゃんの追求は続く。
千歌「そうやって誤魔化そうとするころが怪しい。実に怪しい」
曜「ご、誤魔化すだなんて、そんなこと」
千歌「本当かなぁ。じーっ」
曜「う、ううっ…」
じとーっとした視線の圧に耐えかねて目を逸らすと、苦笑する梨子ちゃんと目が合った。
気のせいかな、梨子ちゃんも私の表情を窺っているように見えたけど…
千歌「この慌てぶり…まさかとは思ったけど、曜ちゃんに意中の人がいるという噂は、本当だったのでは…!?」
曜「う、うええっ!?」
なにそれ、全然知らない話だよ!?
梨子ちゃん、ヘルプ――ねえ、どうして目を合わせてくれないの!?
月「なにやら楽しそうな話をしているねぇ」
梨子「あ、月ちゃん」
ちょうどその時、生徒会の仕事を終えた月ちゃんが教室に入ってきた。
普段ならさておき、このタイミングでの合流は、私にとって良くないことになりそうな――率直に言って、悪い予感がする。
千歌「聞いてよ月ちゃん、曜ちゃんったらこれから私たちに内緒で秘密のデートなんだって!」
曜「だから、違うってばー!」
月「へえ。さすが曜ちゃん、相変わらずのモテモテだなぁ」
月ちゃんのにこやかなスマイルには、明らかにイタズラの色が含まれている。
やっぱりか…不吉な予感は的中した。
曜「なんでもないんだって。本当にただの、ちょっとした用事で…」
月「ちょっとした用事なら、そんなに必死に隠さなくてもよさそうなものだけどなぁ」
千歌「そーだそーだ!」
これはまずい、いくらなんでも分が悪い。
焦る私をそっちのけにして、話はあらぬ方向へとどんどん盛り上がっていく。
月「人気者の曜ちゃんが逢う約束をするお相手って、一体どんな人なのかなぁ?」
千歌「ねー、気になるよねー」
曜「どうしてそうなるの!っていうか、月ちゃんには言われたくないよ!」
月「本当、曜ちゃんは罪な人だねぇ」
千歌「罪な曜ちゃん…ギルティ曜ちゃん!ギラン!」
千歌ちゃんがギルキスお得意の目元で横ピースを決めると、月ちゃんも背中合わせで「ギラン!」と応じてみせた。
どういうわけか、謎にコンビネーションがいい。
曜「だーかーらー!」
梨子「はいはい。二人ともそこまでよ」
エキサイトするやりとりを見かねてか、梨子ちゃんがついに助け舟を出してくれた。
梨子「千歌ちゃんも月ちゃんも…ダメじゃない。よってたかって曜ちゃんを困らせて」
月「別に困らせるつもりなんて。ただの確認だよ、確認。ねー、千歌ちゃん」
千歌「ねー、月ちゃん」
梨子「現に困ってるでしょ。もう、すぐに悪ノリするんだから。もう大丈夫よ、曜ちゃん」
曜「梨子ちゃん…!」
ああ…梨子ちゃんが女神様に見える。
ありがとう梨子ちゃん、頼りになるのはやっぱり梨子ちゃんだよ!
梨子「気になる気持ちもわかるけど、あんまりプライベートなことを詮索したら可哀想よ。恋する話題はいつだってデリケートなんだから」
そうそう、こういう話題はデリケートで…ん?
梨子「曜ちゃんは恥ずかしがり屋さんなんだし、本人から話があるまで、私たちは優しく見守ってあげないと」
んん?
千歌「そっか、そうだね」
月「曜ちゃんの大事なロマンスを、私たちが邪魔しちゃいけないよね。応援してあげなきゃ」
待って、ちょっと待って。さっきからどうも風向きがおかしいぞ?
千歌「ごめんね、曜ちゃん」
月「僕たちが前のめりすぎたよ」
曜「うん、それはそうなんだけど、私が言いたいのはそういうことじゃ――」
梨子「そうよ、二人とも。人の恋路を邪魔していると、馬に蹴られて酷い目に遭っちゃうんだから」
曜「り、梨子ちゃん!?」
本当に待って、さっきから一体何を言ってるの!?
梨子「ね、曜ちゃん」
慌てふためく私に対し、女神様はにっこりと微笑み返した。千歌ちゃんと月ちゃんがその傍に並んで、同じような顔をしてこっちを見ている。
千歌「頑張って、曜ちゃん!」
月「ヨーソローだよ、曜ちゃん!」
曜「この笑顔…さては3人とも、共犯者だなーっ!?」
……………………………………
曜「まったく。千歌ちゃんや月ちゃんはともかく、梨子ちゃんまで乗ってくるなんて」
まだ暑さが残る帰り道、さっきの出来事を思い返して思わず独り言が溢れた。あれはどこまでが本気で、どこまでが冗談だったのか。
見事なまでの連携攻撃にとことんいじり倒された私は、妙に温かい視線を背中に受けながら、教室を後にした。
あんな調子だと、明日はなんて言われるかわかったものじゃない。
今日は先に帰った善子ちゃんたち2年生を巻き込んで、多勢に無勢の集中砲火が待ち構えていることだろう。
曜「まあ、その時はその時、だよね」
声に出して頭を切り替え、前を向き直す。
街は夕暮れに染まり始めていて、私は去年の出来事の思い出した。
ちょうど1年前、胸の奥から湧き上がるモヤモヤと寂しさを抱えたまま、私は一人俯いて帰り道を歩いていた。
『これでよかったんだよね』なんて、自分に言い聞かせながら。
鞠莉『うりょっ!オーウ!これは果南にも劣らぬいつざ――い?』
あのとき、鞠莉ちゃんが追いかけてくれなかったら。
鞠莉『ぶっちゃけトーク!する場ですよ、ここは』
一人で悩む私に気付いて、寄り添ってくれることがなかったら。
私は、私たちは、全く違う未来を進んでいたのかもしれない。
そして今、急遽日本に帰ってきた鞠莉ちゃんに逢うため、私は待ち合わせ場所へと歩みを進めている。
目的地は、向かう先にそびえる大きな水門。
鞠莉『なら、本音でぶつかった方がいいよ』
私が初めて、押さえ込んだ心の悩みを打ち明けた場所。
そして。
鞠莉『ちゃんと本音で話してるよ?…うん、本当はね――』
鞠莉ちゃんもまた、秘めていた気持ちを私に打ち明けてくれた場所。
曜「なんて声をかけようかな。どんな話をしようかな」
鞠莉ちゃんが連絡をくれた昨日から、頭の中はそればっかり。
久々の再会を前にして、はやる気持ちを抑えろという方が無理な話だ。
きっと周囲からは浮ついて見えたのだろう。
そりゃ、みんなにも「何かあるな」って勘付かれちゃうよね。
でも、いいんだ。
曜「だって、鞠莉ちゃんと逢えるんだから!」
自然と頬がほころぶのもそのままに、弾む心に急かされるながら、私は夕暮れの水門を目指して歩き続けた。
……………………………………
曜「あ…!」
制服を整えながらエレベーターを降り、展望室に入った私の目に飛び込んできたのは、去年の今日を再現したような光景だった。
待ち人は――鞠莉ちゃんは長椅子に座って、夕陽が沈みゆく海の色を優しく見つめている。
曜「鞠莉ちゃん!」
夕陽に輝くブロンド髪がさらりと揺れ、鞠莉ちゃんがこちらを振り向いた。
お互いの視線が交わって、鞠莉ちゃんはぱあっと笑顔を咲かせて椅子から立ちあがった。
鞠莉「曜!」
逢ったらなんて言おうかな、だっけ?
そんなの、もちろん決まっている。
曜「おかえり、鞠莉ちゃん!」
嬉しさに胸が大きく高鳴るのを感じながら、私は鞠莉ちゃんのもとへと駆け出した。
終わり
全弾撃ち尽くしました。
9月10日は友情ヨーソロー初回放送日ということで、ぶっちゃけトーク4周年記念ようまりでした。
↓は前に書いたものです。よろしければ併せてお願いします。
鞠莉「背中に気持ちをなぞらせて」
ありがとうございました。
元スレ
静真高校の3年生として新たなスタートを切り、あっという間に数ヶ月が経ったある夏の日。
暑い中での練習が終わって、部室で帰り支度をしているときだった。
曜「ごめん、千歌ちゃん。今日はちょっと行くところがあって」
一緒に帰ろうと誘ってくれた千歌ちゃんに、私は手を合わせてごめんなさいで答えた。
3: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:42:17.83 ID:D5aeLELQ.net
千歌「そうなんだ。何か用事?」
曜「んー、ちょっとね」
千歌「えー、気になる。どこ行くの?何するの?」
曖昧な答え方をしてしまったせいだろう。私の行先に興味を示した千歌ちゃんが、ぐいぐいと顔を覗き込んでくる。
千歌「ねえねえ、教えて、教えてってばー。ねー、よーちゃーん」
曜「あはは、ええっと…」
5: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:42:45.36 ID:D5aeLELQ.net
梨子「だめよ、千歌ちゃん。あんまりしつこく聞いたりしたら」
私が困り笑顔をしていたら、梨子ちゃんがフォローに入ってくれた。
注意される形になった千歌ちゃんは、不満げに頬を膨らませ、口を尖らせている。
千歌「だってー、曜ちゃんが隠し事するんだもん」
梨子「わがまま言っちゃいけません。曜ちゃんには曜ちゃんの事情があるんだから」
千歌「ううっ、はーい…」
6: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:43:27.86 ID:D5aeLELQ.net
千歌ちゃんはしょんぼりと俯いた。そんなつもりじゃなかったんだけど、ごめんね、千歌ちゃん、梨子ちゃん。
梨子「よろしい。それで曜ちゃん、急がなくて大丈夫なの?」
曜「うん、約束の時間まではもう少しあるから――」
千歌「約束?」
パッと顔を上げた千歌ちゃんは、好奇心でいっぱいの目に戻っていた。
私は自分の失言に気付いたけれど、もう遅かった。
7: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:44:02.44 ID:D5aeLELQ.net
千歌「いま約束って言ったね。私たちにも言えない、秘密の約束…もしかして曜ちゃん…これからデートとか!」
曜「で、デートぉ!?」
つい大きな声で返してしまった。これもよくなかった。千歌ちゃんの眼光が強さを増していく。
千歌「ほら、その反応!まさか曜ちゃん、本当に…!」
曜「いや、いやいや、違うって。違くはないけど、そうじゃないっていうか…」
8: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:45:47.50 ID:D5aeLELQ.net
不意を突かれて動揺した私は、自分でボロを出し続けていることに気付かない。千歌ちゃんの追求は続く。
千歌「そうやって誤魔化そうとするころが怪しい。実に怪しい」
曜「ご、誤魔化すだなんて、そんなこと」
千歌「本当かなぁ。じーっ」
曜「う、ううっ…」
じとーっとした視線の圧に耐えかねて目を逸らすと、苦笑する梨子ちゃんと目が合った。
気のせいかな、梨子ちゃんも私の表情を窺っているように見えたけど…
9: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:46:55.49 ID:D5aeLELQ.net
千歌「この慌てぶり…まさかとは思ったけど、曜ちゃんに意中の人がいるという噂は、本当だったのでは…!?」
曜「う、うええっ!?」
なにそれ、全然知らない話だよ!?
梨子ちゃん、ヘルプ――ねえ、どうして目を合わせてくれないの!?
月「なにやら楽しそうな話をしているねぇ」
10: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:47:33.22 ID:D5aeLELQ.net
梨子「あ、月ちゃん」
ちょうどその時、生徒会の仕事を終えた月ちゃんが教室に入ってきた。
普段ならさておき、このタイミングでの合流は、私にとって良くないことになりそうな――率直に言って、悪い予感がする。
千歌「聞いてよ月ちゃん、曜ちゃんったらこれから私たちに内緒で秘密のデートなんだって!」
11: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:48:35.56 ID:D5aeLELQ.net
曜「だから、違うってばー!」
月「へえ。さすが曜ちゃん、相変わらずのモテモテだなぁ」
月ちゃんのにこやかなスマイルには、明らかにイタズラの色が含まれている。
やっぱりか…不吉な予感は的中した。
曜「なんでもないんだって。本当にただの、ちょっとした用事で…」
月「ちょっとした用事なら、そんなに必死に隠さなくてもよさそうなものだけどなぁ」
千歌「そーだそーだ!」
12: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:49:11.34 ID:D5aeLELQ.net
これはまずい、いくらなんでも分が悪い。
焦る私をそっちのけにして、話はあらぬ方向へとどんどん盛り上がっていく。
月「人気者の曜ちゃんが逢う約束をするお相手って、一体どんな人なのかなぁ?」
千歌「ねー、気になるよねー」
曜「どうしてそうなるの!っていうか、月ちゃんには言われたくないよ!」
13: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:49:27.67 ID:D5aeLELQ.net
月「本当、曜ちゃんは罪な人だねぇ」
千歌「罪な曜ちゃん…ギルティ曜ちゃん!ギラン!」
千歌ちゃんがギルキスお得意の目元で横ピースを決めると、月ちゃんも背中合わせで「ギラン!」と応じてみせた。
どういうわけか、謎にコンビネーションがいい。
曜「だーかーらー!」
14: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:50:01.29 ID:D5aeLELQ.net
梨子「はいはい。二人ともそこまでよ」
エキサイトするやりとりを見かねてか、梨子ちゃんがついに助け舟を出してくれた。
梨子「千歌ちゃんも月ちゃんも…ダメじゃない。よってたかって曜ちゃんを困らせて」
月「別に困らせるつもりなんて。ただの確認だよ、確認。ねー、千歌ちゃん」
千歌「ねー、月ちゃん」
梨子「現に困ってるでしょ。もう、すぐに悪ノリするんだから。もう大丈夫よ、曜ちゃん」
15: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:50:36.33 ID:D5aeLELQ.net
曜「梨子ちゃん…!」
ああ…梨子ちゃんが女神様に見える。
ありがとう梨子ちゃん、頼りになるのはやっぱり梨子ちゃんだよ!
梨子「気になる気持ちもわかるけど、あんまりプライベートなことを詮索したら可哀想よ。恋する話題はいつだってデリケートなんだから」
そうそう、こういう話題はデリケートで…ん?
梨子「曜ちゃんは恥ずかしがり屋さんなんだし、本人から話があるまで、私たちは優しく見守ってあげないと」
んん?
16: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:51:05.96 ID:D5aeLELQ.net
千歌「そっか、そうだね」
月「曜ちゃんの大事なロマンスを、私たちが邪魔しちゃいけないよね。応援してあげなきゃ」
待って、ちょっと待って。さっきからどうも風向きがおかしいぞ?
千歌「ごめんね、曜ちゃん」
月「僕たちが前のめりすぎたよ」
曜「うん、それはそうなんだけど、私が言いたいのはそういうことじゃ――」
17: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:53:16.44 ID:D5aeLELQ.net
梨子「そうよ、二人とも。人の恋路を邪魔していると、馬に蹴られて酷い目に遭っちゃうんだから」
曜「り、梨子ちゃん!?」
本当に待って、さっきから一体何を言ってるの!?
梨子「ね、曜ちゃん」
慌てふためく私に対し、女神様はにっこりと微笑み返した。千歌ちゃんと月ちゃんがその傍に並んで、同じような顔をしてこっちを見ている。
千歌「頑張って、曜ちゃん!」
月「ヨーソローだよ、曜ちゃん!」
曜「この笑顔…さては3人とも、共犯者だなーっ!?」
18: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:54:11.82 ID:D5aeLELQ.net
……………………………………
曜「まったく。千歌ちゃんや月ちゃんはともかく、梨子ちゃんまで乗ってくるなんて」
まだ暑さが残る帰り道、さっきの出来事を思い返して思わず独り言が溢れた。あれはどこまでが本気で、どこまでが冗談だったのか。
見事なまでの連携攻撃にとことんいじり倒された私は、妙に温かい視線を背中に受けながら、教室を後にした。
あんな調子だと、明日はなんて言われるかわかったものじゃない。
今日は先に帰った善子ちゃんたち2年生を巻き込んで、多勢に無勢の集中砲火が待ち構えていることだろう。
19: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:54:40.92 ID:D5aeLELQ.net
曜「まあ、その時はその時、だよね」
声に出して頭を切り替え、前を向き直す。
街は夕暮れに染まり始めていて、私は去年の出来事の思い出した。
ちょうど1年前、胸の奥から湧き上がるモヤモヤと寂しさを抱えたまま、私は一人俯いて帰り道を歩いていた。
『これでよかったんだよね』なんて、自分に言い聞かせながら。
鞠莉『うりょっ!オーウ!これは果南にも劣らぬいつざ――い?』
あのとき、鞠莉ちゃんが追いかけてくれなかったら。
20: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:55:30.54 ID:D5aeLELQ.net
鞠莉『ぶっちゃけトーク!する場ですよ、ここは』
一人で悩む私に気付いて、寄り添ってくれることがなかったら。
私は、私たちは、全く違う未来を進んでいたのかもしれない。
そして今、急遽日本に帰ってきた鞠莉ちゃんに逢うため、私は待ち合わせ場所へと歩みを進めている。
目的地は、向かう先にそびえる大きな水門。
鞠莉『なら、本音でぶつかった方がいいよ』
私が初めて、押さえ込んだ心の悩みを打ち明けた場所。
そして。
鞠莉『ちゃんと本音で話してるよ?…うん、本当はね――』
鞠莉ちゃんもまた、秘めていた気持ちを私に打ち明けてくれた場所。
21: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:55:56.53 ID:D5aeLELQ.net
曜「なんて声をかけようかな。どんな話をしようかな」
鞠莉ちゃんが連絡をくれた昨日から、頭の中はそればっかり。
久々の再会を前にして、はやる気持ちを抑えろという方が無理な話だ。
きっと周囲からは浮ついて見えたのだろう。
そりゃ、みんなにも「何かあるな」って勘付かれちゃうよね。
でも、いいんだ。
曜「だって、鞠莉ちゃんと逢えるんだから!」
自然と頬がほころぶのもそのままに、弾む心に急かされるながら、私は夕暮れの水門を目指して歩き続けた。
22: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:57:42.40 ID:D5aeLELQ.net
……………………………………
曜「あ…!」
制服を整えながらエレベーターを降り、展望室に入った私の目に飛び込んできたのは、去年の今日を再現したような光景だった。
待ち人は――鞠莉ちゃんは長椅子に座って、夕陽が沈みゆく海の色を優しく見つめている。
曜「鞠莉ちゃん!」
夕陽に輝くブロンド髪がさらりと揺れ、鞠莉ちゃんがこちらを振り向いた。
お互いの視線が交わって、鞠莉ちゃんはぱあっと笑顔を咲かせて椅子から立ちあがった。
23: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:58:07.15 ID:D5aeLELQ.net
鞠莉「曜!」
逢ったらなんて言おうかな、だっけ?
そんなの、もちろん決まっている。
曜「おかえり、鞠莉ちゃん!」
嬉しさに胸が大きく高鳴るのを感じながら、私は鞠莉ちゃんのもとへと駆け出した。
終わり
24: 名無しで叶える物語 2020/09/10(木) 22:59:02.60 ID:D5aeLELQ.net
全弾撃ち尽くしました。
9月10日は友情ヨーソロー初回放送日ということで、ぶっちゃけトーク4周年記念ようまりでした。
↓は前に書いたものです。よろしければ併せてお願いします。
鞠莉「背中に気持ちをなぞらせて」
ありがとうございました。
曜「夕陽のたもとに微笑んで」