1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:11:18.77 ID:OM/s7Bp60
魅音「うっそだーwwwレナも嘘下手になったねえwww」
レナ「あはは、あははははは……」
魅音「あはは、あははははは……」
レナ「魅ぃちゃん、茶化さないでよね」
魅音「……ほんとなの?」
レナ「そうだよ」
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:13:27.25 ID:OM/s7Bp60
魅音「だって……嘘……そんなのって……」
レナ「魅ぃちゃん、辛いのはわかるけど現実を見て」
魅音「や……、うぁ……」
レナ「……ごめん」
魅音「うわあああん!! うわああああ!!」
沙都子「……魅音さん? いかがなさいました?」
レナ「……沙都子ちゃん、少し放っといてあげて?」
沙都子「え、ええ……」
梨花「沙都子」
沙都子「何でございますの?」
梨花「……ちょっと、言いたいことがありますです。来てほしいのです」
沙都子「ええ……」
――――――――――――――
しばらくして、隣の部屋から大きな泣き声が聞こえてきた。
沙都子ちゃんのものだ。
泣いた理由は、おそらく魅ぃちゃんと同じものだろう。
私が見下ろす魅ぃちゃんは、いつもの様子からは想像もできないくらい悲しそうな顔をしていた。
それもそうだ。魅ぃちゃんだって女の子だし、なんだかんだいって私たちの中で一番繊細かもしれないのだから。
私たち、つまり……
私、魅ぃちゃん、沙都子ちゃん、梨花ちゃん。
圭一くんと仲の良かった4人。
魅音「う……うえぇ……」
レナ「……金曜日だから、葬儀」
そう言って私は、まだ泣きじゃくる魅ぃちゃんを背にした。
――――金曜日
圭一くんが、亡くなった。
死因は交通事故。
疑いようもなく、運が悪かったとしか言えなかった。
隣に座る喪服姿の魅ぃちゃんは涙を堪えているし、
後ろに居る梨花ちゃんは伏し目がちだ。
沙都子ちゃんは少し前から隣の部屋に居る。
ここに居ると泣いてしまいそうだからと言って、自分から行った。
圭一くんの妹の世話をしているらしい。
線香を上げる順番が来たようで、魅ぃちゃんとは逆隣に居る富竹さんにつっ突かれた。
立ちあがって、圭一くんの眼前に歩く。
圭一くん。
雛見沢に吹いてきた、新しい風。
私たちに笑顔をくれた、面白い男の子。
私たちに安らぎをくれた、とてもとても優しい人。
その存在が無くなったことを、私たちは今、噛みしめていた……
――葬式終了、前原家の庭
レナ「……魅ぃちゃん、落ちついた?」
魅ぃちゃんは答えなかった。
自分の足下を見ている目は赤く充血し、顔色はひどく悪い。
涙は出ていないが、それはたぶん枯れただけなのだろう。
少しでも何かあれば、弾けてしまいそうな危うさだった。
梨花「……遅れてごめんなさいなのです」
小さな声に振り向くと、梨花ちゃんが経っていた。
あれから2年が立ち、梨花ちゃんの背も幾分伸びたけれど、まだまだ大きいとは言えなかった。
レナ「ううん、大丈夫。沙都子ちゃんは?」
圭一に妹いたっけ?
>>16
2年後設定です
梨花「……みぃ、もうすぐ来ると思いますです」
レナ「そう、じゃあもうちょっと待たなきゃね」
返事は無い。
しばらく、沈黙が支配した。
それが何分かなのか、あるいは数秒しか経ってなかったのかはわからない。
でも、私にはそれが何時間も続く苦痛に思えた。
そして、沙都子ちゃんが来る。
前原邸の扉をあけたその手は、可愛そうなほど白く、弱々しかった。
沙都子「ほほ、皆さんおまたせしましたわね、もう大丈夫なんですのよ」
その顔は笑顔だったが、心からの笑いでないことは明白だった。
目元にはクマが出来ているし、可愛らしい八重歯もただの珍しさしか感じさせない。
でも、無理しなくていいなんていうことは無かった。
誰もがこの安定した雰囲気を保とうと頑張っているのだ。
私がそれをブチ壊しにすることはできない。
レナ「それじゃあ、行こうか」
―――竜宮家
父「それじゃあ、何かあったら言ってね」
レナ「うん、ありがと」
障子が閉められると、沙都子ちゃんが口を開いた。
沙都子「圭一さん、どんなお気持ちだったんでしょう」
梨花「沙都子……?」
ぽとり、ぽとりと、雫を落とすように話しだす。
それは何も表現だけの話ではなく、実際に彼女の目元から雫は落ちていた。
沙都子ちゃんの涙は居間のちゃぶ台を濡らし、小さなシミを作っていく。
沙都子「魅音さんと同じ高校に入って、レナさんとも仲良くして……
一番楽しい時期だったでしょうに」
梨花「沙都子、圭一はみんなが悲しくすることなんて望んでいないのです」
沙都子「ほんとに、毎日が楽しくて……」
いつの間にか、沙都子ちゃんの話は圭一くんから沙都子ちゃんへと移っていた。
沙都子「にーにーも目を覚まして、リハビリが終わったら圭一さんとも会わせようと……」
沙都子「……もう少しで、全部元通りに……!!」
そこで言葉は途切れる。
沙都子ちゃんが泣き崩れたから。
梨花「沙都子、泣いちゃダメなのです」
意を決して、私は口を開いた。
レナ「……沙都子ちゃん
見せたいものがあるの」
皆が私を見つめる中、私は部屋のたんすを漁る。
数秒もしないうちに薄っぺらい紙が出てきた。
レナ「これ」
魅音「レナ……それ何……?」
レナ「手紙。圭一くんの」
全員が、驚きを表す。
何故そんなものがあるのか。
いや、別に手紙そのものが不思議なワケじゃない。
問題は、私がそれを沙都子ちゃんに見せたがったこと。
考えられるのは、圭一くんから沙都子ちゃんへの手紙。
でも、それを私が持っていることが不自然なのだ。
梨花「……レナ……」
梨花ちゃんが私を見る。
梨花ちゃんを一瞥して、私は手紙に目を移した。
レナ「――レナへ」
―――
――
―
まず最初に、これは部活メンバー全員への手紙だ。
俺は沙都子と梨花ちゃんになかなか会えないから、お前からこれを渡してほしい。
恥ずかしいワケじゃないぞ! 会えないからだ!
レナ「一枚目はこれで終わり」
私は紙をめくって、次の手紙を取り出す。
宛名は、魅ぃちゃんへだった。
――魅音へ。
まず、お前にお礼を言っておきたい。
転校してすぐの俺に声をかけてくれて、友達になってくれた。
言いにくいけど、凄く助かった。ありがとう。
……最近、お前元気ないよな。
何か心配事があるなら言えよ。俺達は仲間だろ?
仲間が元気がないところなんて、ほんのちょっとだって見たくないんだからさ。
圭一。
まさかこのときの圭一くんは、自分が魅ぃちゃんの元気をなくす原因だなんて思ってもなかったろうけど。
これだから鈍感は、と思ってしまう。
そして、3枚目。
――梨花ちゃんへ。
2年前はいろいろ迷惑かけたな。
俺達が今をこうして生きていられるのは、梨花ちゃんのお陰だ。
その意味で、俺は梨花ちゃんに凄く感謝してるんだ。
俺達仲間の潤滑油になってくれた、梨花ちゃん。
君がいなければ、たぶん俺達はこんなに仲良くなんてなれなかっただろう。
だから、梨花ちゃん。
ありがとう。
圭一。
梨花ちゃんは、こみあげてくるものを堪えているようだった。
そして、4枚目、沙都子ちゃん宛ての手紙。
――沙都子へ。
お前生意気だよなあ、っていきなりこんな書き出しでスマン。
お前の事だから、読みながら頬をふくらましているんだろうな。
子供なお前だけど、俺はお前を大事に思ってるんだぜ?
お前はわかってないだろうけど。
俺達の原動力だ。きっと。
たぶんお前は、俺達の元気になってくれてたんだろう。
だから、お前はいつまでも元気でいてほしいんだ。
大切なものを、失ったとしても。
圭一。
レナ「―――圭一。以上だよ」
沙都子「圭一……さん……?」
レナ「……もう遅いよ。二人は帰った方がいいんじゃないかな」
梨花「……沙都子、帰りましょうです」
沙都子ちゃんはまだ納得いかない様子だったが、梨花ちゃんにひかれて出て行った。
魅音「圭ちゃん……」
レナ「魅ぃちゃん、圭一くん、好きだったんだよね?
結局その気持ちは伝わらなかったけど、圭一くんは確かに魅ぃちゃんを大事に思ってたよ」
その言葉をきっかけに、魅ぃちゃんは泣いた。
かれていたと思っていた涙が、一気にあふれたみたいだ。
レナ「魅ぃちゃん、泊まってく?」
涙でくしゃくしゃになっている顔が、小さくうなずくのがわかった。
――夜
魅音「ねえレナ、そういえばレナへの手紙はどんな内容だったの?」
すっかり元気を取り戻した魅ぃちゃんが、興味津津と言った顔で聞いてきた。
話せるわけないし、話す気も無かったのであしらうことにする。
レナ「えへへ、秘密~」
魅音「えーっ! なにそれ! 教えてよぉ~」
レナ「だめだよぉ~」
何気ない会話を交わしているうちに、その夜は終わった。
――朝
魅ぃちゃんを送りだして、部屋に一人。
昨日言われたことで読みたくなったので、もう一度圭一くんからの手紙を読みなおしてみることにする。
かさり、と言った音がして、文章が飛び込んできた。
――レナへ。
最初に言っておく、俺の命はもう長くない。
病気だ。詳しいことは知らないけど、ガンの一種らしい。
だから、今のうちにお前に手紙を託しておく。
俺が死んだら、皆に手紙を渡してくれ。
それと、俺の死因が病気ってことは言わないで欲しい。
あいつら、どうせ何で気付けなかったんだ、なんて言うだろうから。
辛い役目だろうとは思うが、よろしく頼む。
さて、レナにもいろいろ世話になったよな。
弁当は作ってもらったし、戦った時は背中を預けあった中。
俺達、仲間だったよな?
レナが居て、良かった。
仲間が居て、良かった。
だから、言いたいんだ。
生まれてきてくれて、ありがとう。
圭一。
手紙を閉じて、階下へ向かう。
早くいかないと学校に遅れてしまう。
下に降りて気づいた。
レナ「あ……今日学校休みだったんだ……」
了
元スレ
魅音「だって……嘘……そんなのって……」
レナ「魅ぃちゃん、辛いのはわかるけど現実を見て」
魅音「や……、うぁ……」
レナ「……ごめん」
魅音「うわあああん!! うわああああ!!」
沙都子「……魅音さん? いかがなさいました?」
レナ「……沙都子ちゃん、少し放っといてあげて?」
沙都子「え、ええ……」
梨花「沙都子」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:15:06.55 ID:OM/s7Bp60
沙都子「何でございますの?」
梨花「……ちょっと、言いたいことがありますです。来てほしいのです」
沙都子「ええ……」
――――――――――――――
しばらくして、隣の部屋から大きな泣き声が聞こえてきた。
沙都子ちゃんのものだ。
泣いた理由は、おそらく魅ぃちゃんと同じものだろう。
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:17:23.25 ID:OM/s7Bp60
私が見下ろす魅ぃちゃんは、いつもの様子からは想像もできないくらい悲しそうな顔をしていた。
それもそうだ。魅ぃちゃんだって女の子だし、なんだかんだいって私たちの中で一番繊細かもしれないのだから。
私たち、つまり……
私、魅ぃちゃん、沙都子ちゃん、梨花ちゃん。
圭一くんと仲の良かった4人。
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:20:16.07 ID:OM/s7Bp60
魅音「う……うえぇ……」
レナ「……金曜日だから、葬儀」
そう言って私は、まだ泣きじゃくる魅ぃちゃんを背にした。
――――金曜日
圭一くんが、亡くなった。
死因は交通事故。
疑いようもなく、運が悪かったとしか言えなかった。
隣に座る喪服姿の魅ぃちゃんは涙を堪えているし、
後ろに居る梨花ちゃんは伏し目がちだ。
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:23:08.27 ID:OM/s7Bp60
沙都子ちゃんは少し前から隣の部屋に居る。
ここに居ると泣いてしまいそうだからと言って、自分から行った。
圭一くんの妹の世話をしているらしい。
線香を上げる順番が来たようで、魅ぃちゃんとは逆隣に居る富竹さんにつっ突かれた。
立ちあがって、圭一くんの眼前に歩く。
圭一くん。
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:24:37.79 ID:OM/s7Bp60
雛見沢に吹いてきた、新しい風。
私たちに笑顔をくれた、面白い男の子。
私たちに安らぎをくれた、とてもとても優しい人。
その存在が無くなったことを、私たちは今、噛みしめていた……
――葬式終了、前原家の庭
レナ「……魅ぃちゃん、落ちついた?」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:27:13.09 ID:OM/s7Bp60
魅ぃちゃんは答えなかった。
自分の足下を見ている目は赤く充血し、顔色はひどく悪い。
涙は出ていないが、それはたぶん枯れただけなのだろう。
少しでも何かあれば、弾けてしまいそうな危うさだった。
梨花「……遅れてごめんなさいなのです」
小さな声に振り向くと、梨花ちゃんが経っていた。
あれから2年が立ち、梨花ちゃんの背も幾分伸びたけれど、まだまだ大きいとは言えなかった。
レナ「ううん、大丈夫。沙都子ちゃんは?」
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:26:41.17 ID:G6vs2ucAO
圭一に妹いたっけ?
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:30:07.95 ID:OM/s7Bp60
>>16
2年後設定です
梨花「……みぃ、もうすぐ来ると思いますです」
レナ「そう、じゃあもうちょっと待たなきゃね」
返事は無い。
しばらく、沈黙が支配した。
それが何分かなのか、あるいは数秒しか経ってなかったのかはわからない。
でも、私にはそれが何時間も続く苦痛に思えた。
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:33:04.04 ID:OM/s7Bp60
そして、沙都子ちゃんが来る。
前原邸の扉をあけたその手は、可愛そうなほど白く、弱々しかった。
沙都子「ほほ、皆さんおまたせしましたわね、もう大丈夫なんですのよ」
その顔は笑顔だったが、心からの笑いでないことは明白だった。
目元にはクマが出来ているし、可愛らしい八重歯もただの珍しさしか感じさせない。
でも、無理しなくていいなんていうことは無かった。
誰もがこの安定した雰囲気を保とうと頑張っているのだ。
私がそれをブチ壊しにすることはできない。
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:35:30.28 ID:OM/s7Bp60
レナ「それじゃあ、行こうか」
―――竜宮家
父「それじゃあ、何かあったら言ってね」
レナ「うん、ありがと」
障子が閉められると、沙都子ちゃんが口を開いた。
沙都子「圭一さん、どんなお気持ちだったんでしょう」
梨花「沙都子……?」
ぽとり、ぽとりと、雫を落とすように話しだす。
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:38:53.98 ID:OM/s7Bp60
それは何も表現だけの話ではなく、実際に彼女の目元から雫は落ちていた。
沙都子ちゃんの涙は居間のちゃぶ台を濡らし、小さなシミを作っていく。
沙都子「魅音さんと同じ高校に入って、レナさんとも仲良くして……
一番楽しい時期だったでしょうに」
梨花「沙都子、圭一はみんなが悲しくすることなんて望んでいないのです」
沙都子「ほんとに、毎日が楽しくて……」
いつの間にか、沙都子ちゃんの話は圭一くんから沙都子ちゃんへと移っていた。
沙都子「にーにーも目を覚まして、リハビリが終わったら圭一さんとも会わせようと……」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:56:31.67 ID:OM/s7Bp60
沙都子「……もう少しで、全部元通りに……!!」
そこで言葉は途切れる。
沙都子ちゃんが泣き崩れたから。
梨花「沙都子、泣いちゃダメなのです」
意を決して、私は口を開いた。
レナ「……沙都子ちゃん
見せたいものがあるの」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 18:58:09.46 ID:OM/s7Bp60
皆が私を見つめる中、私は部屋のたんすを漁る。
数秒もしないうちに薄っぺらい紙が出てきた。
レナ「これ」
魅音「レナ……それ何……?」
レナ「手紙。圭一くんの」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:00:11.85 ID:OM/s7Bp60
全員が、驚きを表す。
何故そんなものがあるのか。
いや、別に手紙そのものが不思議なワケじゃない。
問題は、私がそれを沙都子ちゃんに見せたがったこと。
考えられるのは、圭一くんから沙都子ちゃんへの手紙。
でも、それを私が持っていることが不自然なのだ。
梨花「……レナ……」
梨花ちゃんが私を見る。
梨花ちゃんを一瞥して、私は手紙に目を移した。
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:01:58.08 ID:OM/s7Bp60
レナ「――レナへ」
―――
――
―
まず最初に、これは部活メンバー全員への手紙だ。
俺は沙都子と梨花ちゃんになかなか会えないから、お前からこれを渡してほしい。
恥ずかしいワケじゃないぞ! 会えないからだ!
レナ「一枚目はこれで終わり」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:06:22.38 ID:OM/s7Bp60
私は紙をめくって、次の手紙を取り出す。
宛名は、魅ぃちゃんへだった。
――魅音へ。
まず、お前にお礼を言っておきたい。
転校してすぐの俺に声をかけてくれて、友達になってくれた。
言いにくいけど、凄く助かった。ありがとう。
……最近、お前元気ないよな。
何か心配事があるなら言えよ。俺達は仲間だろ?
仲間が元気がないところなんて、ほんのちょっとだって見たくないんだからさ。
圭一。
まさかこのときの圭一くんは、自分が魅ぃちゃんの元気をなくす原因だなんて思ってもなかったろうけど。
これだから鈍感は、と思ってしまう。
そして、3枚目。
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:08:59.60 ID:OM/s7Bp60
――梨花ちゃんへ。
2年前はいろいろ迷惑かけたな。
俺達が今をこうして生きていられるのは、梨花ちゃんのお陰だ。
その意味で、俺は梨花ちゃんに凄く感謝してるんだ。
俺達仲間の潤滑油になってくれた、梨花ちゃん。
君がいなければ、たぶん俺達はこんなに仲良くなんてなれなかっただろう。
だから、梨花ちゃん。
ありがとう。
圭一。
梨花ちゃんは、こみあげてくるものを堪えているようだった。
そして、4枚目、沙都子ちゃん宛ての手紙。
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:12:41.63 ID:OM/s7Bp60
――沙都子へ。
お前生意気だよなあ、っていきなりこんな書き出しでスマン。
お前の事だから、読みながら頬をふくらましているんだろうな。
子供なお前だけど、俺はお前を大事に思ってるんだぜ?
お前はわかってないだろうけど。
俺達の原動力だ。きっと。
たぶんお前は、俺達の元気になってくれてたんだろう。
だから、お前はいつまでも元気でいてほしいんだ。
大切なものを、失ったとしても。
圭一。
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:15:34.85 ID:OM/s7Bp60
レナ「―――圭一。以上だよ」
沙都子「圭一……さん……?」
レナ「……もう遅いよ。二人は帰った方がいいんじゃないかな」
梨花「……沙都子、帰りましょうです」
沙都子ちゃんはまだ納得いかない様子だったが、梨花ちゃんにひかれて出て行った。
魅音「圭ちゃん……」
レナ「魅ぃちゃん、圭一くん、好きだったんだよね?
結局その気持ちは伝わらなかったけど、圭一くんは確かに魅ぃちゃんを大事に思ってたよ」
その言葉をきっかけに、魅ぃちゃんは泣いた。
かれていたと思っていた涙が、一気にあふれたみたいだ。
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:17:29.86 ID:OM/s7Bp60
レナ「魅ぃちゃん、泊まってく?」
涙でくしゃくしゃになっている顔が、小さくうなずくのがわかった。
――夜
魅音「ねえレナ、そういえばレナへの手紙はどんな内容だったの?」
すっかり元気を取り戻した魅ぃちゃんが、興味津津と言った顔で聞いてきた。
話せるわけないし、話す気も無かったのであしらうことにする。
レナ「えへへ、秘密~」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:18:56.46 ID:OM/s7Bp60
魅音「えーっ! なにそれ! 教えてよぉ~」
レナ「だめだよぉ~」
何気ない会話を交わしているうちに、その夜は終わった。
――朝
魅ぃちゃんを送りだして、部屋に一人。
昨日言われたことで読みたくなったので、もう一度圭一くんからの手紙を読みなおしてみることにする。
かさり、と言った音がして、文章が飛び込んできた。
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/09/12(土) 19:24:28.83 ID:OM/s7Bp60
――レナへ。
最初に言っておく、俺の命はもう長くない。
病気だ。詳しいことは知らないけど、ガンの一種らしい。
だから、今のうちにお前に手紙を託しておく。
俺が死んだら、皆に手紙を渡してくれ。
それと、俺の死因が病気ってことは言わないで欲しい。
あいつら、どうせ何で気付けなかったんだ、なんて言うだろうから。
辛い役目だろうとは思うが、よろしく頼む。
さて、レナにもいろいろ世話になったよな。
弁当は作ってもらったし、戦った時は背中を預けあった中。
俺達、仲間だったよな?
レナが居て、良かった。
仲間が居て、良かった。
だから、言いたいんだ。
生まれてきてくれて、ありがとう。
圭一。
手紙を閉じて、階下へ向かう。
早くいかないと学校に遅れてしまう。
下に降りて気づいた。
レナ「あ……今日学校休みだったんだ……」
了
魅音「うっそだーwww」