代行ありがとうございます
憩「魔王が残したもの」の続きです。
魔王城
咲「……大会ですか?」
憩「せやせや。要望であってん。最強は誰かってさ」
咲「そんなの憩さんに決まってるじゃないですか」
憩「いやいや、ウチは弱いよ。それで、咲ちゃん出てみないかな?」
咲「私だけですか?」
憩「当然、お連れも参加やで」
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:15:13.83 ID:xVupovZL0
照「ここのお菓子はおいしい」
淡「楽しそうじゃん」
玄「淡ちゃんにリベンジだね」
穏乃「私は宮永さんかぁ」
怜「私は賢者やから裏方でな」
憩「後は咲ちゃん次第やで?」
咲「そうですか。それで、私達はどうやって召喚したんですか?魔方陣が無かったですけど」
憩「ウチの優秀な研究者さんが召喚し続ける装置を開発してん」
咲「分かりました。やりますよ」
淡「そういや、一位の賞品は?」
憩「望むものをあげるで。やる気出るやろ?」
照「私が勝つから今からお菓子の詰め合わせを用意していて」
憩「やる気なんや照さん。死人は出さんとってな?勿論、存在を消すのもダメやからな」
咲「そこまでしませんよ」
憩「ほな、各自明日まで自由な」
――――――
魔王城相談室
煌「お久しぶりです」
咲「はい。この前はすぐに帰ったから顔を出せなかったので」
煌「いいですよ」
咲「町、すごく発展してますね。花田さんの意見を採用して本当によかったです」
煌「ありがとうございます。そう言えばお妃様はどちらへ?」
咲「あー、多分厨房だと思います。また、つまみ食いしに」
煌「変わってなくて安心しましたよ」
咲「こんな短期間で変わりませんよ」
煌「それもそうですね」
咲「花田さんは憩さんが魔王でどうですか?」
煌「すばらですよ。町も発展しましたし」
咲「ほんと素晴らしいです。でも、武器屋はあるんですね」
煌「ええ。様々な人が来ていますから」
咲「そうですね。それと、今は平和ですね」
煌「先代が敵意を消しましたから。暫くは平和ですよ」
咲「役に立ててるなら嬉しいです」
――――――
厨房
淡「いただきます」
洋榎「なに勝手に食べとんねん」
淡「いいじゃん。沢山あるんだからさ」
絹恵「淡ちゃん、一言言ってくれたらあげるで」
淡「じゃあ一個頂戴」
絹恵「よくできたな。はい、唐揚げ」
淡「うん。美味しい」
絹恵「そういや淡ちゃんは最近どうなん?」
淡「最近?」
絹恵「咲ちゃんや咲ちゃん」
淡「サキーだね。向こうじゃ離れてるから少し寂しいかな。けど、毎日連絡してくれるよ」
絹恵「咲ちゃんマメやなぁ」
洋榎「内政は適当やったけどな」
淡「あれはすばらが細かいことはやってくれたからだよ」
絹恵「たしかに花田さんは優秀やからなぁ」
洋榎「ま、今の魔王も大概やけどな」
絹恵「お姉ちゃんはもっと適当やけど」
洋榎「なんやと?絹の晩御飯なしやな」
絹恵「お姉ちゃん、それは止めてや」
淡「じゃあその分私がもらうね」
絹恵「淡ちゃん、冗談やからな?」
淡「分かってるよ。それじゃあね」
――――――
憩「照さん、どないですか?」
照「いいところになった。私の理想がある」
憩「やったのは咲ちゃんやけどな」
照「そう。咲はすごいなぁ」
憩「そら、照さんの妹なんやから」
照「ありがとう」
憩「それに、今の政治の根本は照さんにあるねんで?」
照「私は何もしていない」
憩「そんなことあらへんわ。結界の守る人の人選だって照さんやろ?」
照「そうだけど」
憩「あの人ら他の大陸でえらい人気やで」
照「そうなんだ」
憩「けど、竹井さんはあれやな。タラシやな」
照「今何人目?」
憩「両手じゃ数えられへんよ」
照「そろそろ加速するから気をつけて」
憩「そうするわ。ほな、ウチは明日の準備しに行くな」
――――――
魔王の城浴室
淡「ねぇサキー」
咲「どうしたの?」
淡「私と当たったらどうする?」
咲「そうだね、どうしよう。淡ちゃんはどうしてほしい?」
淡「そだね、本気で戦って欲しいかな」
咲「分かってると思うけど、私が本気で戦ったら淡ちゃん消えちゃうよ?」
淡「……それだけ縛って本気で戦ってね」
咲「言われなくてもそのつもりだよ」
淡「楽しみだね。先に髪洗ってあげるよ」
咲「うん。お願い」
――――――
翌日
咏「それじゃあ大会を始めるよ」
煌「解説は私、魔王様の側近こと花田 煌と魔法の国の王様の三尋木 咏様でお送りします」
咏「すばらちゃん、ほんとに私でいいのかい?」
煌「ええ。大丈夫ですよ。それでは選手入場です」
咏「沢山いるねぃ」
煌「国を挙げての祭りですからね。ざっと200人ほどいるんじゃないですか?」
咏「それはまたすごい数だね。それで、一回戦はこの町中全部を使ってのバトルロワイアルだっけ?」
煌「はい。魔法で作られた映写機で町中のバトルは城の大画面で映し出されます」
咏「私の国より技術あるんじゃない?知らんけどさ」
煌「ウチにはすばらな技術者がいますから。なんて言っている間に始まりましたね」
咏「皆散っていったね。これも技術かい?」
煌「ええ。ちなみに一回戦で残る人数って何人でしたか?」
咏「確か五人じゃなかったけ?知らんけど」
煌「また、狭い道ですね」
咏「そっちの方が面白いけどね」
――――――
咲
咲(相手を消したらいけないんだっけ?なら、私の気配を0にしよう)
――――――
淡
淡「あはは、皆弱いね。どうせサキーと戦うのは後だし、ウォーミングアップしないと」
――――――
煌「大星選手、五人抜きすばらです」
咏「始まって数秒しかたってないのに」
煌「素早さは一番高いですからね」
咏「けど、本当にすごいのはこの二人だね」
煌「松実さんと宮永さんですか。確かにあれはすごいですね」
咏「魔法で自動迎激システムを作ってるね。感知魔法と攻撃魔法を同時に展開して。知らんけど」
煌「それってすごいことなのですか?」
咏「一級の魔法使いでも難しいんじゃないかな。お妃ちゃんが近接の天才ならあの二人は魔法の天才だね」
煌「先代の知り合いは超人ばかりですね」
咏「それでもやっぱり最強は元魔王ちゃんだね。何でもかんでも0に出来るのは群を抜いてるよ」
煌「当の本人は座って本を読んでますけどね」
咏「気配を0にしてるんじゃね?」
煌「羨ましい魔法ですね」
咏「でも、あの子はプラマイ0が無くても強い。銃器の扱いにあれだけ長けてりゃ近づけないし」
煌「……勝ち目ないですね」
咏「いや、そうでもないぜ?けど、勝てるとしたらお姉ちゃんとお妃ちゃんだけだと思うけどねぃ。懐まで入れたらの話だけど」
煌「ほんとにもうセコいですね。話してる間にどんどん数が減っていってます」
咏「もう半分かぁ。ほとんど、あの3人が駆逐してるけど」
煌「その半分がお妃様ですけど」
咏「すごいねぃ。けど、私が注目しているのはあの子なんだけどね」
煌「高鴨さんですか」
咏「そそ。あの子の魔法も自動だけど、魔法使いちゃんとは違うんだよな」
煌「と言いますと?」
咏「守るための魔法って言ったらいいのかな?他の選手とは少し違うんだよね。知らんけど」
――――――
穏乃
穏乃(魔法は無効化出来るけど、物理はしんどいなぁ)
穏乃「また来たよ……よし、頑張ろう!」
――――――
照
照(お菓子……あっ、ポケットに飴入れてたんだ)
――――――
玄
玄(ドラゴン使えたら楽なんだけど、淡ちゃん達以外だと死んじゃうし……)
――――――
憩「来たでー。私も混ぜてや」
咏「魔王ちゃんも参加したら?」
憩「ウチが参加しても死ぬだけですよ」
煌「魔王としてどうなんですかその発言」
憩「ええねん。ホンマのことやから。それに一応魔王としての実力はあるで?」
咏「そういや、魔王ちゃん世界の裏側を消したんだって?」
憩「そこの場所の時間を0に戻して無かったことにしましたけど。おかけで、恐竜も見れました」
煌「時間を戻しすぎましたから魔王様。すばらくない」
憩「まぁ、ちゃんと戻したんやからええやん」
煌「それはそうですが」
咏「スケールが違うねぃ」
憩「魔王ですから。それはそうと早すぎひん?」
煌「後、20人ほど脱落で一回戦は終わりですね」
憩「残れんのって五人やったっけ?」
咏「なら、決まりじゃね?」
煌「そうですね」
憩「一応この会話実況されてんねんで?決めるの早すぎひん?」
咏「でも、この話してる間に決まったぜ?」
憩「早すぎですよ。えっと、穏乃ちゃんに玄ちゃん。宮永さんと淡ちゃん。あと、咲ちゃんか……煌さん、咲ちゃんと淡ちゃんの撃破数どうなってんの?」
煌「確かに二人とも目を見張る数字ですね」
咏「元魔王ちゃんが0でお妃ちゃんが脱落者の7割……二人とも化け物だね」
煌「それでは、次へ移行しましょう」
憩「予定より早いけどせやね」
咏「次?本当に知らんけど」
煌「トーナメントですよ。先代が決勝までシードで」
宮永 照
お菓子の精
Odds:2.8倍
宮永 咲
元魔王
Odds:1.1倍
大星 淡
剣豪100年目
Odds:9.8倍
松実 玄
大魔導師
Odds:5.9倍
高鴨 穏乃
大穴
Odds:198.9倍
咲「賭けれるんだ。淡ちゃんに賭けよう。皆誰に賭けるんだろう?」
――――――
憩「ほな、トーナメントの一回戦始めるでー。最初は照さんと穏乃ちゃんや」
照「それじゃあ行ってくるね」
咲「頑張ってねお姉ちゃん」
淡「私と当たるまで負けないでね」
穏乃「……緊張してきた」
咲「穏乃ちゃん、死ぬ気でやらないと勝てないからね。お姉ちゃん、淡ちゃんと園城寺さんと二対一でも勝ったことあるから」
穏乃「あれ?玄さんは?」
玄「お姉ちゃんにやられちゃったんだよ」
穏乃「納得です。それじゃあ、行ってきます」
憩「ルールはどちらかの意識が飛ぶか降参するまでやけど、絶対に殺したらあんで?」
照「分かってる」
穏乃「本気でやっても殺せません」
憩「ほな、始めや」
――――――
煌「始まりましたね」
咏「面白いカードだね」
煌「と言いますと?」
咏「魔法を無効化する相手にどう立ち向かうか。知らんけど」
煌「ちなみにオッズは誰が決めたんですか?」
咏「知らんし。多分魔王ちゃんじゃね?」
煌「先代が低すぎますよ」
咏「そりゃあれだけ出来るんだ。妥当だと思うけど?」
煌「そうですか。ちなみに誰に賭けたんですか?」
咏「お姉ちゃんだけど。一番安定してるし」
煌「なるほど。向こうでは始まりましたね」
咏「ほんとだ。わくわくするねぃ」
――――――
照「よろしく」
穏乃「よろしくお願いします」
社交辞令を交わした刹那、辺りの空気が不自然に動く。
風が照の右手に集まるまで時間はかからなかった。
照「挨拶代わり」
照は確信していた。
見えない刃が穏乃を切り刻むことを。そして、外れる。
穏乃「あっ、終わりですか?なら、次は私からですね」
――――――
咏「相性がもろに出てる戦いだね。知らんけど」
煌「そうですね。魔法が効かないんですから」
咏「それと、あの振った拳から出る風圧も厄介だね。お姉ちゃんはそれより強い風で消し飛ばしてるみたいだけど」
煌「レベルが高い試合ですね。すばらです。それに見えないものまで解説していただけることもすばらです」
咏「ま、勝負は多分決まってるけど」
――――――
照(鎌鼬を地面に向けて……)
鎌鼬で地面を切り取り、巨大な塊を風で持ち上げる照。
穏乃(あれはヤバい……)
穏乃めがけて放たれた岩の塊だが、紙一重でバックステップで穏乃は避ける。
だが、着地した所で――照に手を捕まれる。
照「私の勝ち」
穏乃「いやぁ、負けました。次は負けませんよ!」
――穏乃の足元には落とし穴。その底には風の刃で切り取られた岩が無数の針状に敷き詰められていた。
穏乃「でも、ここの穴はどうやったんですか?」
照「私は風を操れる。少し遠くの地面くらい容易い」
――――――
咏「いい試合だったね」
煌「宮永さんの作戦勝ちですね。すばらです」
咏「真っ正面からやったら負けてたと分かった時点であそこまでするあの機転はすごいよ」
煌「そうですね。さすが元魔王です。次の試合が始まりましたよ」
咏「お妃ちゃんと魔法使いちゃんか。多分、ここも巻き込まれるよ。知らんけど」
煌「それでは我々も避難しておきましょう」
――――――
淡「クロ、スナイパーは使わないの?」
玄「あれが当たったら淡ちゃん死んじゃうから」
淡「気遣いありがとう。それじゃあいくよ?」
淡が刀を抜き、足に力を入れ、踏み込もうとしたそのとき、玄の魔法が完成した。
淡「ヤバっ」
急な方向転換、右にずれたおかけで直撃は避けた淡だが左腕に軽い火傷を負う。
淡「……危なかったよ」
一瞬前の淡の背後。背景は山だったが、消えた。正確には溶けた。
玄「やっぱ避けてくれるよね。けど、足元お留守だよ?」
淡「へ?」
淡の足元が裂け、亀裂を起こす。
不自然な足元に淡のバランスが崩れたところに氷の柱が降り注ぐ。
淡「甘いなぁクロ」
氷の柱全てが淡を避けて地面に突き刺さる。遅れて、空に煌めく氷の欠片。
全て斬った淡だが、目の前に炎の帯。玄が一瞬で召喚したドラゴンが放ったものだ。
玄(……死んでないよね?)
淡「……危なかった。絶対安全圏を重ねがけしなかったら焼死体だった」
玄の背後に現れた淡。刀は血を浴びている。
玄「……ドラゴンさん。お疲れさまです」
死にこそしないが重傷なドラゴンを還し、玄は魔法を展開する。
玄「今度は感知式の魔法とセットだよ。当たるまで消えないからね」
小さな火の玉が5つ、淡に向かって飛んでいった。
淡(これはこれは……楽しいな)
玄の魔法で崩れる足場。突き刺さる氷柱。辺りを溶かし尽くす熱線。それでも、淡は笑った。
突き刺さった氷柱を熱線が溶かす前に足場にし、玄が立つ場所まで走る。限界を越えたスピードは避けることを許さない。
淡「私の勝ちだね」
玄の首元に突きつけられた刀。
玄「また、負けちゃった。淡ちゃんはやっぱ強いね」
――――――
咏「魔法使いちゃん遠慮ないなぁ」
煌「実況席消し飛びましたね」
咏「元魔王ちゃんの魔法で元通りになったけどね」
憩「いや、ホンマにすごいわ二人とも。勝てる気せぇへんわ」
洋榎「魔王、ちょっと」
憩「ん?どないしたん?少し外すなぁ」
煌「了解しました」
咏「準決、始まったよ」
――――――
照「強くなったね」
淡「そこそこね。じゃあ、やるよ?」
鞘から抜かれる刀から火花が散り、刃が照に向かう。
照「似たようなことあったよね?」
淡が出せる最速の居合いの刃を阻む風の壁。
淡の脳裏に過去の光景が浮かぶ。
見えない刃。斬れない風の盾。倒れる自分。
淡「負け、ないっ」
少しずつ動く刀。
風の壁を斬った淡は喜ぶことを後回しにし、回避に意識を集中する。
淡「危なかったぁテルもクロもこぞって私を殺そうとするんだから」
淡のいた場所に深くつけられた地面の傷。当たればスプラッター映画のワンシーンになっていただろう。
照「やっぱり強くなったね。次、いくよ」
淡「っつ、重たっ」
鎌鼬を刀で受け止めた淡は吹き飛ばされる。
住宅街を突き抜け、料理中の奥様のキッチンで止まった。
淡「いててて。あっ、ごめんね」
立ち上がり、照の場所まで走る淡。その早さは人間のそれを遥かに越えていた。
照「早い。けど、それだけ」
だが、照は淡の走る先々に鎌鼬を放ち、確実に自分の元へ誘導する。
最後に一番威力のある一撃を淡に食わせるために。
淡「これで終わりだよ!」
照「淡、私が全力じゃないの分かってる?」
淡「なら、私が手を抜いてるの分かってる?」
刃を照に向け、笑う淡に照は言い放った。
照「降参する」
淡「へ?」
照「それなら勝てない。淡の勝ち」
照(お菓子残念だけど、いいや)
――――――
煌「意外な結末でしたね」
咏「お姉ちゃん勝てたのに気を使ったよ。知らんけど」
煌「どう言うことですか?」
咏「お妃ちゃんが元魔王ちゃんと戦いたいって知ってたからわざと降参したように見えたけど」
煌「そうですか。すばらです」
咏「決勝は盛り上がるだろうね。知らんけど」
――――――
洋榎「これ、観測されたデータやねんけど」
憩「……これは」
洋榎「行ってくるんか?」
憩「せやな。少しお出掛けしてくるわ」
――――――
咲「頑張ったね淡ちゃん」
淡「不完全燃焼だけどね」
咲「あはは」
淡「そうだ、私の顔に傷つけたら責任とって結婚してよ?」
咲「安心して。元からそのつもりだから」
淡「うん。安心した」
咲「それじゃあ始めよう」
咲が使ったのはM1911。
放たれた銃弾は咲の魔法で運動エネルギーを残して淡の目の前に現れる。
淡「おっと」
刀の腹で銃弾を弾き返した淡は不敵な笑みを浮かべる。
淡「早速顔じゃん。どれだけ私と結婚したいの?」
咲「殺してでも一緒にいたいくらいかな」
淡「冗談だよね?」
咲「冗談だよ。じゃあ、今度はこれなんかどうかな?」
咲は背中に担いでいたMK3A1を抜き、淡に向けてトリガーを引く。
けたたましい音と共に打ち出された弾丸の面に淡は絶対安全圏で対応する。
咲「あれ?それって弱い相手の攻撃をむこうじゃなかったかな?」
淡「銃弾は固定ダメージじゃん。だから出来るんだよ」
咲「そっか。そういえばさっきこんなもの買ったんだよ」
淡「……何それ?」
咲「RPG-7だよ。0の地点を撃つ前にして実質弾数は無限だけどね」
淡「その割りにはいつもリロードするよね」
咲「気分だよ。淡ちゃん、当たっても死なないでね?」
飛ぶRPG。地面に接触し炸裂する。
炸裂する少し前に咲は銃身の時間を0にし、弾を出現させる。
繰り返す。
――――――
咏「ありゃ化け物だね。知らんけど」
煌「本当は優しい人なんですよ」
咏「知ってるけどさ、あれを見たらねぇ?」
煌「そうですね。ミニガンも使えるって噂もありますし。さすがに言葉を失います」
咏「解説できないよこれは」
――――――
咲「そろそろかな?」
トリガーから指を離し、砂煙を0にする。
淡「あわわ。服が汚れちゃった」
無傷で立っている淡に咲は戦慄した。
咲「淡ちゃん、やっぱり凄いよ。やっぱり私ならこれだよね」
淡「うん。サキーはMP5が似合うよ」
咲の魔法でリロードすら必要ないMP5。
無限の弾丸が淡に向けて放たれる。
淡「危ないなぁ。さすがに全部は絶対安全圏で避けきれないよ」
絶対安全圏を保険にかけながらも淡は走る。
そして、自分のリーチ内にたどり着く。
淡「これで、終わりだよ!」
振り下ろされる刀。
淡は寸止めするつもりだったが咲がMP5で刀を受け止めた。
淡「私が刀を離したらどうする?」
咲「私がこれを離したらどうするかな?」
千日手だった。
淡が離せば咲が勝ち、咲が離せば淡が勝つ。
その状況に淡は笑った。
淡「じゃあ、私の勝ちだね」
淡は力を込める。それに応じて咲も同じだけ力を込めた。
淡(それでいいんだよ)
淡が両手を離し、刀が飛ぶ。
バランスを崩した咲を淡は受け止め、足払いをかける。
咲「わっ」
咲の視界が一面の空に変わる――はずだったが、寸でのところで淡に受け止められた。
そして、咲は唇を奪われる。
淡「私の勝ちだよ」
咲「うん。私の負けだね」
――――――
憩「これは酷いなぁ」
憩の頭上には隕石の群れ。
憩「けど、なんとかなるなぁ」
憩は魔法で雷を作り、隕石に降らせた。
憩「ほな、帰ろうか」
粉々に砕け散る隕石が地上に落ちる頃には魔王は自分の城に戻っていた。
――――――
魔王の城
憩「ほな、優勝した淡ちゃんにはご褒美やな。何が欲しい?」
淡「欲しいもの……お菓子沢山欲しいかな?皆で食べようよ」
憩「そんなんでいいん?」
淡「準決、ほんとは私は負けてたから。優勝したのはテルだと思うよ」
照「淡……淡になら咲を任せられる」
憩「ええ子やなぁ。分かったで。魔王権限でお菓子を集めてくるわ」
淡「ありがとね」
――――――
煌「すばらな戦いでしたね」
咏「楽しかったよ。教官ちゃんも裏方ありがとねぃ」
怜「ほんまにハードやったんですから。ま、最後にええもの見れたんでいいですよ」
煌「あの二人は人の目を気にしませんね」
咏「いいんじゃね?仲いいんだし。教官ちゃんも私とするかい?」
怜「遠慮しときます」
咏「つれないねぇ。なら、すばらちゃんはどう?」
煌「私も遠慮しておきます」
――――――
憩「ほな、またね咲ちゃん」
咲「はい。また遊びに呼んでください」
憩「任せてや。今度はウチも混ざるで」
咲「楽しみにしてますよ」
淡「サキー、行くよ!」
咲「それでは失礼します」
憩「ほなね」
――――――
淡「そういやサキー」
咲「どうしたの?」
淡「RPGのとき飛んできた石で頬が切れたんだけど」
咲「うん。責任とるよ」
淡「それとさサキーのもう1つの魔法って何なの?」
咲「嶺上開花?」
淡「それそれ」
咲「生物が生きられないどれだけ高い山でも花を咲かせる魔法だよ」
照「あっ」
咲「お姉ちゃん、どうしたの?」
照「向こうにお菓子忘れた」
――――――
憩「これは忘れ物?」
煌「わざとでしょう。皆様優しいですから」
憩「せやね。じゃあ城の皆で二次会しようか」
カン
沢山の支援本当にありがとうございます。
これで終わりです
それと、地の文はもう書きたくない
元スレ
照「ここのお菓子はおいしい」
淡「楽しそうじゃん」
玄「淡ちゃんにリベンジだね」
穏乃「私は宮永さんかぁ」
怜「私は賢者やから裏方でな」
憩「後は咲ちゃん次第やで?」
咲「そうですか。それで、私達はどうやって召喚したんですか?魔方陣が無かったですけど」
憩「ウチの優秀な研究者さんが召喚し続ける装置を開発してん」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:20:22.48 ID:xVupovZL0
咲「分かりました。やりますよ」
淡「そういや、一位の賞品は?」
憩「望むものをあげるで。やる気出るやろ?」
照「私が勝つから今からお菓子の詰め合わせを用意していて」
憩「やる気なんや照さん。死人は出さんとってな?勿論、存在を消すのもダメやからな」
咲「そこまでしませんよ」
憩「ほな、各自明日まで自由な」
――――――
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:25:10.26 ID:xVupovZL0
魔王城相談室
煌「お久しぶりです」
咲「はい。この前はすぐに帰ったから顔を出せなかったので」
煌「いいですよ」
咲「町、すごく発展してますね。花田さんの意見を採用して本当によかったです」
煌「ありがとうございます。そう言えばお妃様はどちらへ?」
咲「あー、多分厨房だと思います。また、つまみ食いしに」
煌「変わってなくて安心しましたよ」
咲「こんな短期間で変わりませんよ」
煌「それもそうですね」
咲「花田さんは憩さんが魔王でどうですか?」
煌「すばらですよ。町も発展しましたし」
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:30:23.97 ID:xVupovZL0
咲「ほんと素晴らしいです。でも、武器屋はあるんですね」
煌「ええ。様々な人が来ていますから」
咲「そうですね。それと、今は平和ですね」
煌「先代が敵意を消しましたから。暫くは平和ですよ」
咲「役に立ててるなら嬉しいです」
――――――
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:36:59.73 ID:xVupovZL0
厨房
淡「いただきます」
洋榎「なに勝手に食べとんねん」
淡「いいじゃん。沢山あるんだからさ」
絹恵「淡ちゃん、一言言ってくれたらあげるで」
淡「じゃあ一個頂戴」
絹恵「よくできたな。はい、唐揚げ」
淡「うん。美味しい」
絹恵「そういや淡ちゃんは最近どうなん?」
淡「最近?」
絹恵「咲ちゃんや咲ちゃん」
淡「サキーだね。向こうじゃ離れてるから少し寂しいかな。けど、毎日連絡してくれるよ」
絹恵「咲ちゃんマメやなぁ」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:40:40.04 ID:xVupovZL0
洋榎「内政は適当やったけどな」
淡「あれはすばらが細かいことはやってくれたからだよ」
絹恵「たしかに花田さんは優秀やからなぁ」
洋榎「ま、今の魔王も大概やけどな」
絹恵「お姉ちゃんはもっと適当やけど」
洋榎「なんやと?絹の晩御飯なしやな」
絹恵「お姉ちゃん、それは止めてや」
淡「じゃあその分私がもらうね」
絹恵「淡ちゃん、冗談やからな?」
淡「分かってるよ。それじゃあね」
――――――
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:46:35.63 ID:xVupovZL0
憩「照さん、どないですか?」
照「いいところになった。私の理想がある」
憩「やったのは咲ちゃんやけどな」
照「そう。咲はすごいなぁ」
憩「そら、照さんの妹なんやから」
照「ありがとう」
憩「それに、今の政治の根本は照さんにあるねんで?」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:50:58.32 ID:xVupovZL0
照「私は何もしていない」
憩「そんなことあらへんわ。結界の守る人の人選だって照さんやろ?」
照「そうだけど」
憩「あの人ら他の大陸でえらい人気やで」
照「そうなんだ」
憩「けど、竹井さんはあれやな。タラシやな」
照「今何人目?」
憩「両手じゃ数えられへんよ」
照「そろそろ加速するから気をつけて」
憩「そうするわ。ほな、ウチは明日の準備しに行くな」
――――――
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 19:55:12.67 ID:xVupovZL0
魔王の城浴室
淡「ねぇサキー」
咲「どうしたの?」
淡「私と当たったらどうする?」
咲「そうだね、どうしよう。淡ちゃんはどうしてほしい?」
淡「そだね、本気で戦って欲しいかな」
咲「分かってると思うけど、私が本気で戦ったら淡ちゃん消えちゃうよ?」
淡「……それだけ縛って本気で戦ってね」
咲「言われなくてもそのつもりだよ」
淡「楽しみだね。先に髪洗ってあげるよ」
咲「うん。お願い」
――――――
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:00:12.39 ID:xVupovZL0
翌日
咏「それじゃあ大会を始めるよ」
煌「解説は私、魔王様の側近こと花田 煌と魔法の国の王様の三尋木 咏様でお送りします」
咏「すばらちゃん、ほんとに私でいいのかい?」
煌「ええ。大丈夫ですよ。それでは選手入場です」
咏「沢山いるねぃ」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:05:13.77 ID:xVupovZL0
煌「国を挙げての祭りですからね。ざっと200人ほどいるんじゃないですか?」
咏「それはまたすごい数だね。それで、一回戦はこの町中全部を使ってのバトルロワイアルだっけ?」
煌「はい。魔法で作られた映写機で町中のバトルは城の大画面で映し出されます」
咏「私の国より技術あるんじゃない?知らんけどさ」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:10:34.49 ID:xVupovZL0
煌「ウチにはすばらな技術者がいますから。なんて言っている間に始まりましたね」
咏「皆散っていったね。これも技術かい?」
煌「ええ。ちなみに一回戦で残る人数って何人でしたか?」
咏「確か五人じゃなかったけ?知らんけど」
煌「また、狭い道ですね」
咏「そっちの方が面白いけどね」
――――――
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:15:16.31 ID:xVupovZL0
咲
咲(相手を消したらいけないんだっけ?なら、私の気配を0にしよう)
――――――
淡
淡「あはは、皆弱いね。どうせサキーと戦うのは後だし、ウォーミングアップしないと」
――――――
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:20:50.22 ID:xVupovZL0
煌「大星選手、五人抜きすばらです」
咏「始まって数秒しかたってないのに」
煌「素早さは一番高いですからね」
咏「けど、本当にすごいのはこの二人だね」
煌「松実さんと宮永さんですか。確かにあれはすごいですね」
咏「魔法で自動迎激システムを作ってるね。感知魔法と攻撃魔法を同時に展開して。知らんけど」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:25:31.10 ID:xVupovZL0
煌「それってすごいことなのですか?」
咏「一級の魔法使いでも難しいんじゃないかな。お妃ちゃんが近接の天才ならあの二人は魔法の天才だね」
煌「先代の知り合いは超人ばかりですね」
咏「それでもやっぱり最強は元魔王ちゃんだね。何でもかんでも0に出来るのは群を抜いてるよ」
煌「当の本人は座って本を読んでますけどね」
咏「気配を0にしてるんじゃね?」
煌「羨ましい魔法ですね」
咏「でも、あの子はプラマイ0が無くても強い。銃器の扱いにあれだけ長けてりゃ近づけないし」
煌「……勝ち目ないですね」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:30:28.13 ID:xVupovZL0
咏「いや、そうでもないぜ?けど、勝てるとしたらお姉ちゃんとお妃ちゃんだけだと思うけどねぃ。懐まで入れたらの話だけど」
煌「ほんとにもうセコいですね。話してる間にどんどん数が減っていってます」
咏「もう半分かぁ。ほとんど、あの3人が駆逐してるけど」
煌「その半分がお妃様ですけど」
咏「すごいねぃ。けど、私が注目しているのはあの子なんだけどね」
煌「高鴨さんですか」
咏「そそ。あの子の魔法も自動だけど、魔法使いちゃんとは違うんだよな」
煌「と言いますと?」
咏「守るための魔法って言ったらいいのかな?他の選手とは少し違うんだよね。知らんけど」
――――――
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:35:34.68 ID:xVupovZL0
穏乃
穏乃(魔法は無効化出来るけど、物理はしんどいなぁ)
穏乃「また来たよ……よし、頑張ろう!」
――――――
照
照(お菓子……あっ、ポケットに飴入れてたんだ)
――――――
玄
玄(ドラゴン使えたら楽なんだけど、淡ちゃん達以外だと死んじゃうし……)
――――――
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:40:13.88 ID:xVupovZL0
憩「来たでー。私も混ぜてや」
咏「魔王ちゃんも参加したら?」
憩「ウチが参加しても死ぬだけですよ」
煌「魔王としてどうなんですかその発言」
憩「ええねん。ホンマのことやから。それに一応魔王としての実力はあるで?」
咏「そういや、魔王ちゃん世界の裏側を消したんだって?」
憩「そこの場所の時間を0に戻して無かったことにしましたけど。おかけで、恐竜も見れました」
煌「時間を戻しすぎましたから魔王様。すばらくない」
憩「まぁ、ちゃんと戻したんやからええやん」
煌「それはそうですが」
咏「スケールが違うねぃ」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:45:12.64 ID:xVupovZL0
憩「魔王ですから。それはそうと早すぎひん?」
煌「後、20人ほど脱落で一回戦は終わりですね」
憩「残れんのって五人やったっけ?」
咏「なら、決まりじゃね?」
煌「そうですね」
憩「一応この会話実況されてんねんで?決めるの早すぎひん?」
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:50:11.00 ID:xVupovZL0
咏「でも、この話してる間に決まったぜ?」
憩「早すぎですよ。えっと、穏乃ちゃんに玄ちゃん。宮永さんと淡ちゃん。あと、咲ちゃんか……煌さん、咲ちゃんと淡ちゃんの撃破数どうなってんの?」
煌「確かに二人とも目を見張る数字ですね」
咏「元魔王ちゃんが0でお妃ちゃんが脱落者の7割……二人とも化け物だね」
煌「それでは、次へ移行しましょう」
憩「予定より早いけどせやね」
咏「次?本当に知らんけど」
煌「トーナメントですよ。先代が決勝までシードで」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 20:56:07.43 ID:xVupovZL0
宮永 照
お菓子の精
Odds:2.8倍
宮永 咲
元魔王
Odds:1.1倍
大星 淡
剣豪100年目
Odds:9.8倍
松実 玄
大魔導師
Odds:5.9倍
高鴨 穏乃
大穴
Odds:198.9倍
咲「賭けれるんだ。淡ちゃんに賭けよう。皆誰に賭けるんだろう?」
――――――
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:02:24.69 ID:xVupovZL0
憩「ほな、トーナメントの一回戦始めるでー。最初は照さんと穏乃ちゃんや」
照「それじゃあ行ってくるね」
咲「頑張ってねお姉ちゃん」
淡「私と当たるまで負けないでね」
穏乃「……緊張してきた」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:07:16.97 ID:xVupovZL0
咲「穏乃ちゃん、死ぬ気でやらないと勝てないからね。お姉ちゃん、淡ちゃんと園城寺さんと二対一でも勝ったことあるから」
穏乃「あれ?玄さんは?」
玄「お姉ちゃんにやられちゃったんだよ」
穏乃「納得です。それじゃあ、行ってきます」
憩「ルールはどちらかの意識が飛ぶか降参するまでやけど、絶対に殺したらあんで?」
照「分かってる」
穏乃「本気でやっても殺せません」
憩「ほな、始めや」
――――――
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:12:25.73 ID:xVupovZL0
煌「始まりましたね」
咏「面白いカードだね」
煌「と言いますと?」
咏「魔法を無効化する相手にどう立ち向かうか。知らんけど」
煌「ちなみにオッズは誰が決めたんですか?」
咏「知らんし。多分魔王ちゃんじゃね?」
煌「先代が低すぎますよ」
咏「そりゃあれだけ出来るんだ。妥当だと思うけど?」
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:17:36.12 ID:xVupovZL0
煌「そうですか。ちなみに誰に賭けたんですか?」
咏「お姉ちゃんだけど。一番安定してるし」
煌「なるほど。向こうでは始まりましたね」
咏「ほんとだ。わくわくするねぃ」
――――――
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:22:12.75 ID:xVupovZL0
照「よろしく」
穏乃「よろしくお願いします」
社交辞令を交わした刹那、辺りの空気が不自然に動く。
風が照の右手に集まるまで時間はかからなかった。
照「挨拶代わり」
照は確信していた。
見えない刃が穏乃を切り刻むことを。そして、外れる。
穏乃「あっ、終わりですか?なら、次は私からですね」
――――――
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:27:36.60 ID:xVupovZL0
咏「相性がもろに出てる戦いだね。知らんけど」
煌「そうですね。魔法が効かないんですから」
咏「それと、あの振った拳から出る風圧も厄介だね。お姉ちゃんはそれより強い風で消し飛ばしてるみたいだけど」
煌「レベルが高い試合ですね。すばらです。それに見えないものまで解説していただけることもすばらです」
咏「ま、勝負は多分決まってるけど」
――――――
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:32:24.34 ID:xVupovZL0
照(鎌鼬を地面に向けて……)
鎌鼬で地面を切り取り、巨大な塊を風で持ち上げる照。
穏乃(あれはヤバい……)
穏乃めがけて放たれた岩の塊だが、紙一重でバックステップで穏乃は避ける。
だが、着地した所で――照に手を捕まれる。
照「私の勝ち」
穏乃「いやぁ、負けました。次は負けませんよ!」
――穏乃の足元には落とし穴。その底には風の刃で切り取られた岩が無数の針状に敷き詰められていた。
穏乃「でも、ここの穴はどうやったんですか?」
照「私は風を操れる。少し遠くの地面くらい容易い」
――――――
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:37:19.66 ID:xVupovZL0
咏「いい試合だったね」
煌「宮永さんの作戦勝ちですね。すばらです」
咏「真っ正面からやったら負けてたと分かった時点であそこまでするあの機転はすごいよ」
煌「そうですね。さすが元魔王です。次の試合が始まりましたよ」
咏「お妃ちゃんと魔法使いちゃんか。多分、ここも巻き込まれるよ。知らんけど」
煌「それでは我々も避難しておきましょう」
――――――
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:42:20.30 ID:xVupovZL0
淡「クロ、スナイパーは使わないの?」
玄「あれが当たったら淡ちゃん死んじゃうから」
淡「気遣いありがとう。それじゃあいくよ?」
淡が刀を抜き、足に力を入れ、踏み込もうとしたそのとき、玄の魔法が完成した。
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:47:41.66 ID:xVupovZL0
淡「ヤバっ」
急な方向転換、右にずれたおかけで直撃は避けた淡だが左腕に軽い火傷を負う。
淡「……危なかったよ」
一瞬前の淡の背後。背景は山だったが、消えた。正確には溶けた。
玄「やっぱ避けてくれるよね。けど、足元お留守だよ?」
淡「へ?」
淡の足元が裂け、亀裂を起こす。
不自然な足元に淡のバランスが崩れたところに氷の柱が降り注ぐ。
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 21:57:27.69 ID:xVupovZL0
淡「甘いなぁクロ」
氷の柱全てが淡を避けて地面に突き刺さる。遅れて、空に煌めく氷の欠片。
全て斬った淡だが、目の前に炎の帯。玄が一瞬で召喚したドラゴンが放ったものだ。
玄(……死んでないよね?)
淡「……危なかった。絶対安全圏を重ねがけしなかったら焼死体だった」
玄の背後に現れた淡。刀は血を浴びている。
玄「……ドラゴンさん。お疲れさまです」
死にこそしないが重傷なドラゴンを還し、玄は魔法を展開する。
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:02:39.80 ID:xVupovZL0
玄「今度は感知式の魔法とセットだよ。当たるまで消えないからね」
小さな火の玉が5つ、淡に向かって飛んでいった。
淡(これはこれは……楽しいな)
玄の魔法で崩れる足場。突き刺さる氷柱。辺りを溶かし尽くす熱線。それでも、淡は笑った。
突き刺さった氷柱を熱線が溶かす前に足場にし、玄が立つ場所まで走る。限界を越えたスピードは避けることを許さない。
淡「私の勝ちだね」
玄の首元に突きつけられた刀。
玄「また、負けちゃった。淡ちゃんはやっぱ強いね」
――――――
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:07:21.28 ID:xVupovZL0
咏「魔法使いちゃん遠慮ないなぁ」
煌「実況席消し飛びましたね」
咏「元魔王ちゃんの魔法で元通りになったけどね」
憩「いや、ホンマにすごいわ二人とも。勝てる気せぇへんわ」
洋榎「魔王、ちょっと」
憩「ん?どないしたん?少し外すなぁ」
煌「了解しました」
咏「準決、始まったよ」
――――――
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:12:21.59 ID:xVupovZL0
照「強くなったね」
淡「そこそこね。じゃあ、やるよ?」
鞘から抜かれる刀から火花が散り、刃が照に向かう。
照「似たようなことあったよね?」
淡が出せる最速の居合いの刃を阻む風の壁。
淡の脳裏に過去の光景が浮かぶ。
見えない刃。斬れない風の盾。倒れる自分。
淡「負け、ないっ」
少しずつ動く刀。
風の壁を斬った淡は喜ぶことを後回しにし、回避に意識を集中する。
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:18:08.90 ID:xVupovZL0
淡「危なかったぁテルもクロもこぞって私を殺そうとするんだから」
淡のいた場所に深くつけられた地面の傷。当たればスプラッター映画のワンシーンになっていただろう。
照「やっぱり強くなったね。次、いくよ」
淡「っつ、重たっ」
鎌鼬を刀で受け止めた淡は吹き飛ばされる。
住宅街を突き抜け、料理中の奥様のキッチンで止まった。
淡「いててて。あっ、ごめんね」
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:23:11.35 ID:xVupovZL0
立ち上がり、照の場所まで走る淡。その早さは人間のそれを遥かに越えていた。
照「早い。けど、それだけ」
だが、照は淡の走る先々に鎌鼬を放ち、確実に自分の元へ誘導する。
最後に一番威力のある一撃を淡に食わせるために。
淡「これで終わりだよ!」
照「淡、私が全力じゃないの分かってる?」
淡「なら、私が手を抜いてるの分かってる?」
刃を照に向け、笑う淡に照は言い放った。
照「降参する」
淡「へ?」
照「それなら勝てない。淡の勝ち」
照(お菓子残念だけど、いいや)
――――――
66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:27:38.07 ID:xVupovZL0
煌「意外な結末でしたね」
咏「お姉ちゃん勝てたのに気を使ったよ。知らんけど」
煌「どう言うことですか?」
咏「お妃ちゃんが元魔王ちゃんと戦いたいって知ってたからわざと降参したように見えたけど」
煌「そうですか。すばらです」
咏「決勝は盛り上がるだろうね。知らんけど」
――――――
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:32:32.05 ID:xVupovZL0
洋榎「これ、観測されたデータやねんけど」
憩「……これは」
洋榎「行ってくるんか?」
憩「せやな。少しお出掛けしてくるわ」
――――――
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:37:25.09 ID:xVupovZL0
咲「頑張ったね淡ちゃん」
淡「不完全燃焼だけどね」
咲「あはは」
淡「そうだ、私の顔に傷つけたら責任とって結婚してよ?」
咲「安心して。元からそのつもりだから」
淡「うん。安心した」
咲「それじゃあ始めよう」
咲が使ったのはM1911。
放たれた銃弾は咲の魔法で運動エネルギーを残して淡の目の前に現れる。
淡「おっと」
刀の腹で銃弾を弾き返した淡は不敵な笑みを浮かべる。
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:42:21.02 ID:xVupovZL0
淡「早速顔じゃん。どれだけ私と結婚したいの?」
咲「殺してでも一緒にいたいくらいかな」
淡「冗談だよね?」
咲「冗談だよ。じゃあ、今度はこれなんかどうかな?」
咲は背中に担いでいたMK3A1を抜き、淡に向けてトリガーを引く。
けたたましい音と共に打ち出された弾丸の面に淡は絶対安全圏で対応する。
咲「あれ?それって弱い相手の攻撃をむこうじゃなかったかな?」
淡「銃弾は固定ダメージじゃん。だから出来るんだよ」
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:47:24.21 ID:xVupovZL0
咲「そっか。そういえばさっきこんなもの買ったんだよ」
淡「……何それ?」
咲「RPG-7だよ。0の地点を撃つ前にして実質弾数は無限だけどね」
淡「その割りにはいつもリロードするよね」
咲「気分だよ。淡ちゃん、当たっても死なないでね?」
飛ぶRPG。地面に接触し炸裂する。
炸裂する少し前に咲は銃身の時間を0にし、弾を出現させる。
繰り返す。
――――――
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:52:24.30 ID:xVupovZL0
咏「ありゃ化け物だね。知らんけど」
煌「本当は優しい人なんですよ」
咏「知ってるけどさ、あれを見たらねぇ?」
煌「そうですね。ミニガンも使えるって噂もありますし。さすがに言葉を失います」
咏「解説できないよこれは」
――――――
78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 22:57:33.33 ID:xVupovZL0
咲「そろそろかな?」
トリガーから指を離し、砂煙を0にする。
淡「あわわ。服が汚れちゃった」
無傷で立っている淡に咲は戦慄した。
咲「淡ちゃん、やっぱり凄いよ。やっぱり私ならこれだよね」
淡「うん。サキーはMP5が似合うよ」
咲の魔法でリロードすら必要ないMP5。
無限の弾丸が淡に向けて放たれる。
淡「危ないなぁ。さすがに全部は絶対安全圏で避けきれないよ」
絶対安全圏を保険にかけながらも淡は走る。
そして、自分のリーチ内にたどり着く。
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:02:49.44 ID:xVupovZL0
淡「これで、終わりだよ!」
振り下ろされる刀。
淡は寸止めするつもりだったが咲がMP5で刀を受け止めた。
淡「私が刀を離したらどうする?」
咲「私がこれを離したらどうするかな?」
千日手だった。
淡が離せば咲が勝ち、咲が離せば淡が勝つ。
その状況に淡は笑った。
淡「じゃあ、私の勝ちだね」
淡は力を込める。それに応じて咲も同じだけ力を込めた。
82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:07:50.90 ID:xVupovZL0
淡(それでいいんだよ)
淡が両手を離し、刀が飛ぶ。
バランスを崩した咲を淡は受け止め、足払いをかける。
咲「わっ」
咲の視界が一面の空に変わる――はずだったが、寸でのところで淡に受け止められた。
そして、咲は唇を奪われる。
淡「私の勝ちだよ」
咲「うん。私の負けだね」
――――――
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:12:16.14 ID:xVupovZL0
憩「これは酷いなぁ」
憩の頭上には隕石の群れ。
憩「けど、なんとかなるなぁ」
憩は魔法で雷を作り、隕石に降らせた。
憩「ほな、帰ろうか」
粉々に砕け散る隕石が地上に落ちる頃には魔王は自分の城に戻っていた。
――――――
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:17:55.42 ID:xVupovZL0
魔王の城
憩「ほな、優勝した淡ちゃんにはご褒美やな。何が欲しい?」
淡「欲しいもの……お菓子沢山欲しいかな?皆で食べようよ」
憩「そんなんでいいん?」
淡「準決、ほんとは私は負けてたから。優勝したのはテルだと思うよ」
照「淡……淡になら咲を任せられる」
憩「ええ子やなぁ。分かったで。魔王権限でお菓子を集めてくるわ」
淡「ありがとね」
――――――
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:23:32.90 ID:xVupovZL0
煌「すばらな戦いでしたね」
咏「楽しかったよ。教官ちゃんも裏方ありがとねぃ」
怜「ほんまにハードやったんですから。ま、最後にええもの見れたんでいいですよ」
煌「あの二人は人の目を気にしませんね」
咏「いいんじゃね?仲いいんだし。教官ちゃんも私とするかい?」
怜「遠慮しときます」
咏「つれないねぇ。なら、すばらちゃんはどう?」
煌「私も遠慮しておきます」
――――――
86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:27:53.10 ID:xVupovZL0
憩「ほな、またね咲ちゃん」
咲「はい。また遊びに呼んでください」
憩「任せてや。今度はウチも混ざるで」
咲「楽しみにしてますよ」
淡「サキー、行くよ!」
咲「それでは失礼します」
憩「ほなね」
――――――
87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:32:10.35 ID:xVupovZL0
淡「そういやサキー」
咲「どうしたの?」
淡「RPGのとき飛んできた石で頬が切れたんだけど」
咲「うん。責任とるよ」
淡「それとさサキーのもう1つの魔法って何なの?」
咲「嶺上開花?」
淡「それそれ」
咲「生物が生きられないどれだけ高い山でも花を咲かせる魔法だよ」
照「あっ」
咲「お姉ちゃん、どうしたの?」
照「向こうにお菓子忘れた」
――――――
89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:36:33.87 ID:xVupovZL0
憩「これは忘れ物?」
煌「わざとでしょう。皆様優しいですから」
憩「せやね。じゃあ城の皆で二次会しようか」
カン
90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/04/25(木) 23:39:19.37 ID:xVupovZL0
沢山の支援本当にありがとうございます。
これで終わりです
それと、地の文はもう書きたくない
咲「またですか」憩「こんどは大会や」