469: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:05:24 ID:hXDa/yuQ



―――――――――――


西方海域 とある離島の砂浜


     ザザーン… ザザーン…


ブサ督「エンジ~ン~のお~と~」

ブサ督「ごぅお~ごぅおぉぉ~と~」

ブサ督「ハヤブ~サ~は~ゆぅぅ~くぅ~」

ブサ督「くぅ~もぉ~のぉ~はぁ~て~」

桜「…………」

ブサ督「よぉ~くぅに輝く日の丸とぉ~」

ブサ督「むぅ~ねに描き……ふおっ!?」

ブサ督「さ、桜か……いつからそこに?」

桜「ついさっきだ」



470: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:06:34 ID:hXDa/yuQ


桜「で、その妙な言い回しは何だ?」

ブサ督「……歌……というものだ」

桜「何の意味があるのだ?」

ブサ督「意味……というものは余り無いが」

ブサ督「音楽というジャンルの……娯楽の一つ」

ブサ督「かな……」

桜「ふむ……娯楽か」

桜「将棋やオセロ、双六や小説に漫画……」

桜「人間は娯楽が本当に好きだな」

ブサ督「まあ否定はしない」

ブサ督「娯楽はまだまだたくさんあるしな」

桜「そうか」



471: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:08:08 ID:hXDa/yuQ


ブサ督「むしろディルプの娯楽の無さに衝撃を受けるぞ」

桜「私は自我を持って間もない」

桜「ディルプにはディルプの娯楽があるのかもしれないぞ」

ブサ督「どんな娯楽なんだろうな……想像もつかん」

桜「それは私も同様に思う」

桜「それで?」

桜「歌……を言いながら、何を作っているんだ?」

ブサ督「トイレ……んと、排泄施設……とでも言うか」

桜「排泄か……」

桜「人間はやって当たり前の行為をなぜ隠したがるのか」

桜「私には理解できん」

ブサ督「…………」



472: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:09:59 ID:hXDa/yuQ


ブサ督(文化の違い、と言ってしまえばそれまでなんだが)

ブサ督(まさか立ちション覗かれるとは思わなかった……)

ブサ督(ち〇ち〇について根掘り葉掘り聞かれるし)

ブサ督(ディルプは排泄行為なんぞ海上で誰の目の前だろうがやっている)

ブサ督(という衝撃の事実を聞かされるし)

ブサ督(あれ?じゃあ艦娘は?)

ブサ督(などと考えちゃいけない事まで想像しちゃいましたよ……)

ブサ督(…………)

ブサ督(とにかく!)

ブサ督(桜に説明するのは大変だったが……)

ブサ督(これでもう覗かれる心配はない)

ブサ督(……って、普通逆だろ……こういう心配は)



473: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:11:48 ID:hXDa/yuQ


ブサ督「……はあ」

ブサ督「まあ無理に理解しなくていいけど」

ブサ督「俺は見られると嫌なんだから、配慮してくれ」

桜「…………」

ブサ督「…………」

桜「…………」

ブサ督「……桜?」

桜「…………」

ブサ督「桜!」

桜「!」

桜「あ、ああ、すまない」

桜「また意識が飛んだみたいだ」



474: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:12:47 ID:hXDa/yuQ


ブサ督「本当に大丈夫なのか?」

桜「ああ」

桜「気分が悪いとか、体調が思わしくないという事は無い」

桜「理由は……私にも分からないが」

ブサ督「…………」

ブサ督(時々……桜がぼうっとしている時があるのだが)

ブサ督(たまに、会話中でも突然こうなる)

ブサ督(本人に聞いても大丈夫だと言うばかりだし)

ブサ督(深海棲艦の生態に詳しいわけでもない……)

ブサ督(…………)

ブサ督(何事もなく治ってくれればいいのだが……)

ブサ督(…………)



475: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:13:49 ID:hXDa/yuQ


桜「…………」

桜「なあ、ブサイク提督」

ブサ督「ん?」

桜「お前に……触れてもいいか?」

ブサ督「え」

桜「ダメか?」

ブサ督「い、いや……ダメじゃ無いが」

桜「無いが?」

ブサ督「…………」

ブサ督「……そういう事を女の子に初めて言われたな」

ブサ督「って……思って」

桜「そうか。初めてか」



476: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:14:46 ID:hXDa/yuQ


     ギュッ

ブサ督「」

桜「……私も初めてだ」

桜「誰かに触れてみたい、と思ったのは……」

ブサ督「…………」

ブサ督(アカン……俺)

ブサ督(たぶん一生分の運を使ってるわ……)

ブサ督(…………)

ブサ督(……女の子って)

ブサ督(こんなに柔らかいんだなぁ……)

桜「♪」



477: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:15:40 ID:hXDa/yuQ



―――――――――――


翌日の昼頃

大本営 元帥の執務室


     コン コン

元帥「誰かな?」

イケ督「元帥閣下、イケメン提督であります」

イケ督「入室の許可を願います」

元帥「許可する。入ってくれ」

     ガチャ…

イケ督「失礼します」

     キィ パタン



478: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:17:13 ID:hXDa/yuQ


元帥「遠いところ、ご苦労だった」

元帥「そこのソファにでも掛けたまえ」

イケ督「はい」

     ストン

イケ督「…………」

元帥「では……話をする前に紹介をしておこう」

元帥「これは西方鎮守府の司令官をやっている」

元帥「フツメン提督だ」

フツ督「初めまして」

イケ督「初めまして」

元帥「そしてその傍らに居るのは秘書艦の龍田だ」

龍田「初めまして。以後、お見知りおきを」

イケ督「よろしく」



479: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:18:22 ID:hXDa/yuQ


元帥「それでは本題に入ろう」

元帥「イケメン提督」

イケ督「はい」

元帥「貴君の武勇は耳に入っておるし」

元帥「民衆の人気も大したものだ」

イケ督「恐れ入ります」

元帥「だが……いささか戦費の面での折り合いが悪い」

元帥「正直、海軍としても目玉が飛び出るほどだ」

元帥「この点について貴君はどう思っているのかね?」

イケ督「…………」



480: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:19:34 ID:hXDa/yuQ


イケ督「まず……軍人の本分は果たしていると自負しておりますが」

イケ督「深海棲艦との戦いは常に予測困難を極め」

イケ督「対処療法的な戦い方しかできず……」

イケ督「少々犠牲が多かったのは確かです」

フツ督「…………」

イケ督「しかしながら……その様な状況下でも」

イケ督「私の指揮により奪取した海域は確かに存在しており」

イケ督「その点も考慮していただければ……というのが」

イケ督「自分の正直な気持ちであります」

元帥「……そうか」



481: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:21:01 ID:hXDa/yuQ


元帥「では……これは提案だ」

イケ督「提案?」

元帥「現在、貴君は北方鎮守府司令官となっているが」

元帥「大本営直属の指揮官として栄転……という話はどうだろうか?」

イケ督「…………」

イケ督(……なるほど)

イケ督(俺に現場は任せられんから大本営で飼い殺しに)

イケ督(という事か……)

イケ督「……大変良いお話ですね」

元帥「であれば――」

イケ督「しかしながら」

イケ督「指揮官、というのも色々なものが存在します」

イケ督「その点についてのご説明はいただけるのでしょうか?」



482: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:22:18 ID:hXDa/yuQ


元帥「……フツメン提督」

元帥「例のものを」

フツ督「はい」

イケ督「……?」

フツ督「イケメン提督殿」

フツ督「これを見てくれ」

イケ督「海図……日本近海のものだが?」

フツ督「最近は内地付近の海にも深海棲艦は時々顔を見せる」

フツ督「その討伐が主任務の艦娘艦隊の指揮官」

フツ督「それが貴君に示された指揮官だ」

イケ督「…………」



483: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:23:47 ID:hXDa/yuQ


元帥「給料も現在の倍を提示しよう」

元帥「どうかね?」

イケ督「…………」

イケ督「……確かに魅力的な提案でありますな」

イケ督「ですが、それは栄転というよりも左遷ではないのですか?」

イケ督「第一、民衆がこれをどう思うか」

フツ督「その点は問題ない」

イケ督「……というと?」

フツ督「かの大英雄イケメン提督が」

フツ督「民衆の為、日本近海の深海棲艦討伐を行ってくれる」

フツ督「これほどの美談はありますまい」

フツ督「新聞もこぞって記事にする事でしょう」

イケ督「…………」



484: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:24:57 ID:hXDa/yuQ


元帥「どうだろうか?」

元帥「私としては、受け入れてくれる事を望むが」

イケ督「…………」

イケ督「……せっかくのありがたい申し出ですが」

イケ督「自分には受け入れがたい提案ですな」

元帥「…………」

フツ督「では、単刀直入に聞こう」

フツ督「何が足りない?」

イケ督「ふふ……足りないも何も」

イケ督「私が望むのは現在の民衆が望んでいる事ですよ」

フツ督「…………」

フツ督(こいつ……本気で大将職に就きたいと思っているのか)

元帥(周りに煽てられ、自分の実力を完全に見失っている……か)



485: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:27:56 ID:hXDa/yuQ


元帥「……イケメン提督」

元帥「貴君の気持ちと想いは良く分かった」

元帥「だが、すぐに返事は出来ない」

元帥「少々時間をくれ」

イケ督「分かりました」

イケ督「他に話はありますか?」

フツ督「私から少々……いいかな?」

イケ督「どうぞ」

フツ督「海軍としても、今の様な提案はそう何度も出来るものではない」

フツ督「気が変わるのなら……今の内だけだと思う」

フツ督「本当にその選択でいいのか?」



486: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:29:01 ID:hXDa/yuQ


イケ督「……それは脅しかな?」

フツ督「そういう事じゃない」

フツ督「いつまでも美味しいメシが出てくる訳ではない」

フツ督「それを認識しているのか、気になったまでさ」

イケ督「なら……さっきの提案には君が応じればいいのでは?」

イケ督「私は喜んで譲ろう」

フツ督「…………」

イケ督「他に話はありますか?」

龍田「あのう」

龍田「わたくし事なんですけどぉ」

龍田「いいですか?」

イケ督「……何かな?」



487: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:29:59 ID:hXDa/yuQ


龍田「北方鎮守府の天龍ちゃん、どうしてるかなー?」

龍田「と、思いまして」

イケ督「……君は天龍と知り合いなのか?」

龍田「はい」

龍田「姉妹艦ですので」

龍田「とぉ~っても、仲良しだったんです」

イケ督「…………」

龍田「で?天龍ちゃんは元気ですか?」

イケ督「……残念だが」

イケ督「遠征任務中に行方不明になってそれっきりだ」

龍田「えっ」

イケ督「現在、大淀に任せて捜索を……」



488: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:30:49 ID:hXDa/yuQ


     ガバッ

イケ督「ぐっ!?」

龍田「……どういう事かしら?」

イケ督「な、何をする、貴様!」

フツ督「龍田!やめろ!」

龍田「…………」

     スッ…

イケ督「ぐっ……はあっ……ふう」

龍田「…………」

イケ督「……随分と乱暴な艦娘が居たものだ」

イケ督「しっかりと躾けておけ!」

フツ督「……謝罪しよう」



489: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:31:57 ID:hXDa/yuQ


イケ督「ふん……それで?」

イケ督「もう話は無いですかな?」

     …………

イケ督「では、私はこれで失礼させてもらいます」

元帥「ああ……時間を取らせたな」

元帥「下がってくれ」

イケ督「失礼する」

     ガチャ キィ パタン

フツ督「ふうう……」

フツ督「肝を冷やしたぞ……龍田」

龍田「……ごめんなさい」



490: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:32:48 ID:hXDa/yuQ


元帥「しかし……遠征任務で行方不明とな」

元帥「珍しい事もあるものだ」

フツ督「確かに珍しいですが、無い事ではありません」

フツ督「あ……すまない、龍田」

龍田「いいえ」

龍田「よくよく考えれば、まだ沈んだと決まった訳でもないし」

龍田「あの天龍ちゃんが簡単に……」

     ギュッ…

フツ督「…………」

龍田「……やめてよ」

龍田「元帥閣下が見てる」

フツ督「構うもんか」



491: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:33:57 ID:hXDa/yuQ


元帥「…………」

龍田「……うっ」

龍田「う、うあっ……」

龍田「うああああああああああ……」

龍田「うっ……うっ……」

龍田「ああああああああ……」

フツ督「…………」

フツ督(……くそっ)

フツ督(何か……何か手は無いのか?)

フツ督(何か……)

フツ督(…………)



492: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:37:19 ID:hXDa/yuQ



―――――――――――


大本営 廊下付近


     テク テク テク

イケ督(ふん……どうやら海軍は)

イケ督(どうあっても俺を大将にしたくない様だな)

イケ督(…………)

イケ督(……そっちがその気なら)

イケ督(仕方ない)

イケ督(こちらも……奥の手を使わせてもらおう)

イケ督(ククク……)



493: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:38:26 ID:hXDa/yuQ



―――――――――――


北方鎮守府 ブリーフィングルーム



利根「――以上が」

利根「吾輩の提案する作戦じゃ」

利根「現状、内地に連絡する人員も時間もない」

利根「他に何か提案があれば聞こう」

熊野「…………」

熊野「あの……利根さん、でしたっけ?」

利根「うむ。何かな?」

熊野「この作戦は、あなたがお考えになられたので?」



494: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:39:28 ID:hXDa/yuQ


利根「残念ながら吾輩ではない」

利根「ここの前の指揮官であった、ブサイク提督のものを引用した」

     ザワッ…

     エッ アノキモブタノ……?

     ウソッ… ヤダー…

利根「だから聞いておろう」

利根「他に何か提案があれば聞こう、と」

利根「お主らにこれ以上の作戦があるのなら、ぜひ提案して欲しい」

     …………

利根「……不安なのは吾輩も同じじゃ」

利根「だが、数の不利を覆す作戦はこれしかない」

利根「皆の衆、どうか従ってくれ」



495: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:40:10 ID:hXDa/yuQ


熊野「わたくしはむしろ、イケメン提督でない方がありがたいですわ」

鈴谷「鈴谷もそれに一票」

     …………

利根「では、この案で行動するぞ」

利根「解散!」

     バタ バタ バタ…

利根「……金剛」

金剛「ん?何ですカー?」

利根「本来はお主向きの役では無いのじゃが……」

利根「頼むぞ」

金剛「任せてネー!」

金剛「どんな役でも……金剛はキッチリ仕事シマース!」

金剛「増設バルジ、準備完了ネー!」



496: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/03(土) 20:41:23 ID:hXDa/yuQ


利根「大淀の方も頼むぞ」

大淀「お任せを」

大淀「お互い、元気な姿で北方鎮守府に帰りましょう」

利根「必ず」

大淀「…………」

利根「…………」

     タッ タッ タッ…

利根(必ず……か)

利根(敵の数はこちらの倍)

利根(大半が駆逐級のイ級といえど……どの程度の犠牲で済むのか……)

利根(…………)

利根(ええい!弱気になるな!)

利根(ただの一人たりとも犠牲にしてたまるか!)



502: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:44:53 ID:Wwx.GDpY



―――――――――――


西方海域 とある離島の砂浜


     ザザーン… ザザーン…


桜「…………」

桜「…………」

ブサ督「桜」

ブサ督「そろそろ昼飯にしよう」

桜「…………」

桜「…………」

ブサ督「…………」

ブサ督「桜」



503: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:45:47 ID:Wwx.GDpY


桜「!」

桜「あ……ブサイク提督」

桜「何か用か?」

ブサ督「……そろそろ昼飯にしないか?」

桜「ああ、分かった」

桜「今日の献立は何だ?」

ブサ督「カレーライスだ」

ブサ督「旨いぞ」

桜「ほう……わざわざお前が旨いと言うからには」

桜「期待してしまうな」

ブサ督「楽しみにしててくれ」



504: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:46:37 ID:Wwx.GDpY


―――――――――――

夕刻前 テント内

     ピピー ガガッ

ブサ督「こちら、ブサイク提督」

ブサ督「南方鎮守府、応答してくれ」

電『こちら南方鎮守府、執務室』

電『電なのです』

電『ブサイク司令官さん、どうされました?』

ブサ督「電、すまないが」

ブサ督「医局員を呼んできてくれないか?」

電『えっ』

電『ブサイク司令官さん、どこかおケガでもされたのですか?』



505: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:47:18 ID:Wwx.GDpY


ブサ督「そうじゃない。そうじゃないんだが」

ブサ督「ちょっと聞きたい事があってな……」

電『分かりました』

電『少々お待ちください』

ブサ督「頼む」

―――――――――――

ブサ督「……そうか」

ブサ督「手間をかけさせたな、ありがとう」

ブサ督「電に代わってくれ」

ブサ督「…………」

電『電なのです』

電『お役に立ちましたか?』



506: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:48:09 ID:Wwx.GDpY


ブサ督「ああ、ありがとう、電」

電『いえ』

ブサ督「ブサイク提督、通信終了」

電『南方鎮守府、通信終了』

     ブッ…

ブサ督「…………」

ブサ督(桜の例の症状は酷くなる一方……)

ブサ督(艦娘や人間の病気で似た症状や症例は無いか)

ブサ督(聞いてみたが……)

ブサ督(…………)

ブサ督(やはり……桜を医者に見せるべきなのだろうか)



507: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:48:50 ID:Wwx.GDpY


ブサ督(…………)

ブサ督(だが……それは……)

ブサ督(桜を深海棲艦の標本として差し出すのと同義)

ブサ督(…………)

ブサ督(ほぼ……間違いなく)

ブサ督(桜は実験動物にされる……!)

ブサ督(…………)

ブサ督(そんな事……出来るか!)

ブサ督(そんな事……!)

ブサ督(…………)



508: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:49:37 ID:Wwx.GDpY



     ザザーン… ザザーン…


ブサ督「桜」

桜「……ん」

桜「ブサイク提督」

ブサ督「調子はどうだ?」

桜「……前にも言ったが」

桜「気分や体調が悪いという訳じゃないんだ」

ブサ督「…………」

ブサ督「ディルプでは、こういった……」

ブサ督「病気やケガには、どう対処してるんだ?」



509: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:50:47 ID:Wwx.GDpY


桜「……基本的には何もしない」

桜「ある程度休ませて……見た目、平気そうなら、また使う」

桜「そんな感じだ」

ブサ督「……手当てとかいう概念は無いのか」

桜「機械化された部分の修理は行うが」

桜「生体部分は自然任せ……そんな感じだ」

ブサ督「…………」

桜「…………」

桜「……ところでブサイク提督」

ブサ督「……何だ?」

桜「お前は……南方グレッズの指揮官なのか?」

ブサ督「…………」

ブサ督「ああ、そうだ」



510: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:51:40 ID:Wwx.GDpY


桜「ふふっ、そうか……」

ブサ督「……どうして笑うんだ?」

桜「…………」

桜「私にも分からない」

桜「お前には……いろいろして貰ったからだろうか」

ブサ督「…………」

桜「……いや、違うな」

桜「すまない、上手く言えない」

ブサ督「…………」

桜「不思議と……恨みはない」

桜「ついこの前まで殺しあう仲だったというのに……」

ブサ督「……俺も同じだ」



511: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:52:32 ID:Wwx.GDpY


桜「ふふっ……同じか」

桜「それは奇遇だな」

ブサ督「ああ」

桜「…………」

ブサ督「…………」

桜「…………」

桜「…………」

ブサ督「……そろそろ晩飯にしよう」

ブサ督「桜」

桜「…………」

桜「…………」

ブサ督「…………」



512: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:53:27 ID:Wwx.GDpY


―――――――――――

ブサ督「ほら、桜」

桜「ん……これは何だ?」

ブサ督「おでん、というものだ」

桜「また違う献立か……」

桜「グレッ……人間の食への欲求は」

桜「我々のそれとは比べ物にならんな」

ブサ督「ははは。俺もそう思う」

ブサ督「では……いただきます」

桜「……そういえば」

桜「その、いただきます、というのは何の意味があるのだ?」



513: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:54:39 ID:Wwx.GDpY


ブサ督「日本では食べ物になった食材に対して」

ブサ督「感謝して食べる習慣があるんだ」

桜「死骸に感謝?」

ブサ督「生きて行く上で自分の為に殺してしまったわけだからな……」

ブサ督「すまない、という意味も含まれている」

桜「…………」

桜「すまない、か……」

桜「ディルプでは思いもよらない考え方だ」

ブサ督「まあ……自己満足とも言える」

ブサ督「殺された方からしたら……たまったもんじゃないだろうし」

桜「……そうだな」

桜「でも、そんなに悪い事とも思わない」

ブサ督「そうか」



514: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:55:14 ID:Wwx.GDpY


桜「…………」

桜「いただきます」

     モグ

桜「うん……今日の献立も旨い」

ブサ督「…………」 クスッ

桜「……この世界は不思議だ」

ブサ督「ん?」

桜「ディルプに居た時は疑問すら抱かなかったが」

桜「外に出たとたん分からない事だらけになった」

ブサ督「井の中の蛙(かわず)ってやつか……」

桜「井の中の……何?」



515: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:56:17 ID:Wwx.GDpY


ブサ督「そうだな……」

ブサ督「自分の知ってる世界が世界のすべてだと思っているが」

ブサ督「実際はもっと広い世界があって……」

ブサ督「それを知らないのに威張っている奴を指す言葉かな」

桜「…………」

ブサ督「……なんて偉そうなこと言ってるが」

ブサ督「俺もその一人だ」

桜「え……?」

ブサ督「深海棲艦……ディルプにも」

ブサ督「こんなに話せる奴が居る」

ブサ督「桜に出会って初めて知った事だ」

桜「…………」 クスッ



516: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:56:59 ID:Wwx.GDpY


ブサ督「お互い……望んでこうなった訳じゃないが」

ブサ督「自分が小さな世界に居て、知らない事を知ったという意味では」

ブサ督「同じだろう」

桜「……そうだな」

桜「その通りだ」

ブサ督「ははは」

ブサ督「さ、飯を食わなくちゃ……」

     カランッ…

ブサ督「ん?」

ブサ督「どうした桜、スプーンを落として」

ブサ督「手が滑ったのか?」

桜「…………」



517: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:57:51 ID:Wwx.GDpY


ブサ督「桜?」

桜「……違う」

ブサ督「違う?」

桜「…………」

桜「手が……右腕が……」

ブサ督「うん」

桜「まったく……動かせない」

ブサ督「……!?」


     ザザーン… ザザーン…


.



518: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:58:29 ID:Wwx.GDpY



―――――――――――


北方 某海域 


     ザザザザザザザザ…


利根「…………」

利根「む……!」

利根(吾輩の電探に反応あり)

    ピピー ガガッ

利根「利根より全艦娘へ達する」

利根「敵艦隊を補足」



519: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 18:59:21 ID:Wwx.GDpY


利根「予測海域よりやや東に展開しておる」

利根「これより艦隊の進路を変更する」

利根「左(ひだり)舷、20度転進せよ!」

     ヨーソロー!

利根「…………」

利根「利根より筑摩へ」

    ピピー ガガッ

筑摩『こちら筑摩。何でしょうか、利根姉さん?』

利根「吾輩の気のせいか……」

利根「どうも敵艦隊の動きが鈍い様に感じる」

利根「筑摩はどう思う?」

筑摩『…………』

筑摩『……大艦隊ゆえ、動きが悪いのではないでしょうか?』



520: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:00:08 ID:Wwx.GDpY


利根「一理あるが……どうにも気になる」

利根「十分警戒しておいてくれ」

筑摩『了解です、利根姉さん』

利根「利根、通信終了」

筑摩『筑摩、通信終了』

     ブッ…

利根「…………」

     ピピー ガガッ

金剛『こちら金剛ネー!』

金剛『利根サーン!聞こえマスかー?』



521: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:00:44 ID:Wwx.GDpY


利根「こちら利根。感度良好」

利根「どうした?」

金剛『比叡ともども目標の海峡前に到着したネー!』

金剛『いつでも殿(しんがり)を任せてくだサーイ!』

利根「……うむ」

利根「済まぬが……頼む」

金剛『了解!』

金剛『金剛、通信アウト!』

利根「利根、通信終了」

     ブッ…

利根「…………」

利根「…………」

利根(……そろそろか)



522: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:01:38 ID:Wwx.GDpY


     ピピー ガガッ

利根「こちら利根」

利根「全艦娘に達する」

利根「陣形、複縦陣」

     ザザザザザザザザ…

利根「…………」

     陣形 準備ヨシ!

     砲弾、装填ヨシ!

利根「…………」

利根「目標……敵艦隊前衛、イ級!」

利根「一隻でも多くの敵艦を沈めよ!」

利根「全艦娘……攻撃開始!」



523: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:02:34 ID:Wwx.GDpY


     ドォンッ ドォンッ!

     ヒュウウウウウウウ……

     ドォンッ! ドォンッ!

利根「…………」

利根(やはり、敵艦隊の動きが鈍い……)

利根(何の意図があるのじゃ?)

     イ級 轟沈3!

     同ジク イ級轟沈2!

利根(誘っておるのか?)

利根(じゃが、そういう事なら乗ってはやれん)

     12時、敵機確認!

     数、約60!



524: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:03:20 ID:Wwx.GDpY


     ピピー ガガッ

利根「赤城、加賀」

利根「よろしく頼む」

赤城『赤城、了解』

加賀『加賀、了解』

     ピピー ガガッ

利根「全艦娘に達する」

利根「あまり前へ出るな」

利根「なるべく現状海域に留まって攻撃せよ!」

     了解!

利根「…………」

利根(……例の海域、どうなっておるかのう)



525: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:04:14 ID:Wwx.GDpY



―――――――――――


例の海域


     ザザザザザザザザ…


名取「…………」

名取「!」

名取「この反応は……!」

     ブロロロロロロ…

名取「3時に敵機……!」

     ピピー ガガッ

名取「こちら名取! 敵機襲来!」



526: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:05:07 ID:Wwx.GDpY


名取「艦種……不明ながら空母級3!ル級いち!イ級2!」

     ヒュウウウウウウウ……

     ドォンッ ドォンッ!

名取「くっ!」

名取(襲撃があるかもと聞いてたけど……結構きつい!)

名取「対空戦闘!」

     ダダダダダダダ!

名取「名取、現海域から離脱します!」

     ピピー ガガッ!

大淀『了解。後はこちらにお任せください』



527: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:05:54 ID:Wwx.GDpY


     ザザザザザザザザ…

大淀「…………」

大淀「…………」

大淀「あ……追撃をやめましたね」

鳥海「大淀さんが言った通り……この海域は敵にとって重要なのでしょうか」

大淀「その詮索は後にしましょう」

大淀「利根さんに打電」

―――――――――――

筑摩『大淀さんから例の海域で侵攻があったと連絡が来ました』

利根「……予測通り襲撃を受けたか」

利根「では、こちらも作戦を開始する!」

筑摩『はい』

利根「全艦娘に達する」

利根「中破以上の損傷をした艦娘は作戦通り後方の海峡に迎え!」



528: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:06:52 ID:Wwx.GDpY


     了解!

利根(さて……ここからじゃ)

利根(敵はどう出るか……!)

利根「!」

利根「全艦娘に達する!」

利根「敵艦隊急速接近!」

利根(こちらの考えた通り……例の海域と連携しておったか!)

     ザザザザザザザザ…

利根「くっ……!最初の鈍さはやはり誘いか!」

利根「全艦娘!後進一杯!」

利根「魚雷一斉射して敵を牽制せよ!」



529: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:07:54 ID:Wwx.GDpY


     シュボボボボボンッ

     シャアアアアア……

     ドォンッ! ドォンッ!

     ……敵艦隊の足、止まりません!

利根「分かっておったが……!」

利根「こちらも後進の足を止めるな!」

利根「例の海峡まで頑張るのじゃ!」

     敵イ級、肉薄!

利根「うろたえるな!」

利根「こんなに接近しおったら、後方の敵もうかつには攻撃でき……」

     ドォンッ! ドォンッ!

     ドォンッ ドォンッ!

利根「何ッ!?」



530: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:08:37 ID:Wwx.GDpY


     ドガッ! ドガアァァァンッ!

利根「み、味方ごと……撃ちおった!?」

     キャアアアアアッ!

     味方艦娘、被害拡大!

利根「くそっ!イケメン提督でも上に居るのか!こやつら!」

利根「この状況での反転は命とりじゃ!」

利根「後進一杯を続けつつ、迎撃!」

利根「海峡を越えるまでの辛抱じゃぞ!」

     キャアアッ! 機関破損!

     速度が……助けてぇっ!

利根「……っ!」



531: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:09:28 ID:Wwx.GDpY


利根「全艦娘に……達する!」

利根「脱落した艦娘は、艦娘は……!」

利根「構うな!」

     !!?

利根「後進一杯を続けよ!」

     待って! 置いてかないで!

     キャアアアアアッ!!

     ドガァンッ!

利根「……う……ううっ……」

利根「うああああああああっ!!」

     ドォンッ! ドォンッ!

筑摩(利根姉さん……)



532: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:10:17 ID:Wwx.GDpY


金剛「……待ちくたびれマシタ」

金剛「後は、この金剛が敵のヘイトを集めるネ!」

金剛「増設バルジ、展開!」

     ジャキン!

金剛「さあ……深海棲艦サーン」

金剛「ドンドン金剛を狙いなサーイ!」

利根「頼むぞ、金剛、比叡!」

比叡「お任せを」

比叡「早く海峡の向こうへ!」

利根「お主らも必ず来るのじゃぞ!」

     ザザザザザザザザ…



533: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:11:10 ID:Wwx.GDpY


金剛「全砲塔を外してまで増設バルジ付けまくった」

金剛「この防御特化型金剛の殿(しんがり)」

金剛「そう簡単には抜かせないネー!」

比叡「そして金剛お姉さまを狙う敵は……」

比叡「この比叡の主砲で至近砲撃を喰らわせてやります!」

     ピピー ガガッ

利根『何をしておる!』

利根『早う後進せい!』

利根『ル級が10は居るのじゃぞ!?』

金剛「利根サーン!了解ネー!」

金剛「金剛、後進一杯!」

比叡「比叡、後進一杯!」



534: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:11:56 ID:Wwx.GDpY



―――――――――――


例の海域


大淀「…………」

大淀「……では、こちらも攻撃を開始します」

大淀「艦隊、前進!」

     ザザザザザザザザ…

大淀「!」

大淀「敵機襲来!」

大淀「瑞鶴さん、頼みます!」

瑞鶴「了解!」



535: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:12:53 ID:Wwx.GDpY


瑞鶴「まさか格納庫すべてに迎撃戦闘機を載せるなんてね」

瑞鶴「発艦!」

     ブロロロロロロ…

大淀(これで制空権確保、とまではいかなくとも)

大淀(互角くらいには持って行けるはず)

大淀(そして撃ち漏らした敵機は……)

摩耶「ハッハー!」

摩耶「お客さんだぜ、鳥海!」

鳥海「対空戦闘、用意!」

大淀(対空特化型の彼女たちに任せ……)

夕立「敵艦、見ゆっぽーい!」

大淀「目標、単縦陣先頭のル級!」



536: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:13:27 ID:Wwx.GDpY


大淀(私と駆逐艦最強クラスの火力を持つ夕立さんで)

大淀(攻撃、殲滅する!)

大淀「魚雷、斉射ー!」

夕立「ぽーい!」

     シュボボボボボンッ

     シャアアアアア……

     ドォンッ! ドォンッ!

大淀「ル級、轟沈!」

夕立「次、イ級ぽい」

大淀「砲撃、てー!」



537: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:14:07 ID:Wwx.GDpY


     ブロロロロロロ…

     ヒュウウウウウウウ……

     ドォンッ ドォンッ!

摩耶「ちいいっ!」

摩耶「さすがに数が多いぜ!」

鳥海「空母3隻分の攻撃機ですからね」

鳥海「瑞鶴さん、もう少し何とかなりませんか?」

瑞鶴「これでも精一杯やってるわよ!」

大淀「もうしばらく持ちこたえてください!」

大淀「護衛はあと少しで片づきます!」

摩耶「頼むぜ、大淀!」

大淀「お任せを!」

夕立「北方でも悪夢見せたげるっぽーい!」



538: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:14:56 ID:Wwx.GDpY



―――――――――――


北方 某海域 海峡出口付近


利根「筑摩!」

利根「艦隊陣形はどうじゃ!?」

筑摩「はい、利根姉さん」

筑摩「扇状陣形、もう間もなく完成します」

利根「よし……各艦娘へ達する!」

利根「もうすぐ金剛達が海峡を抜けてくる!」

利根「吾輩の合図とともに金剛達を追い、海峡を抜けて来た」

利根「深海棲艦艦隊へ、集中砲火を喰らわせるのじゃ!」



539: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:15:40 ID:Wwx.GDpY


利根(……敵に一杯食わされたふりをして)

利根(後方へ逃げを打ったかのように見せ)

利根(海峡という一種の隘路(あいろ:狭い道の意)へ誘い込み)

利根(海峡先にて扇状に展開した艦娘で出口に現れた敵を叩く!)

利根(……見事な策じゃが、どうしても陣形を整えるために)

利根(少しの時間がいる……!)

利根(金剛、比叡……)

利根(決して……やられるでないぞ!)

筑摩「利根姉さん」

筑摩「陣形準備、整いました」

利根「よし! 吾輩の合図を待て!」

利根「…………」



540: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:16:58 ID:Wwx.GDpY


―――――――――――

     ドォンッ ドォンッ!

     ドガァッ! ドガアァァンッ!

金剛「ぐっ……くうっ!」

比叡「このぉっ!」

     ドォンッ! ドォンッ!

比叡「もう少し……もう少しですよ!」

比叡「金剛お姉さま!」

     バキィィンッ!

金剛「うあああっ!!」

金剛(さ、最後の増設バルジがっ!)



541: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:17:33 ID:Wwx.GDpY


     ドォンッ ドォンッ!

     ドガァッ! ドガアァァンッ!

金剛「ひぎゃあああああっ!!」

比叡「金剛お姉さまぁぁぁっ!!」

比叡「このおぉぉぉぉっ!!」

     ドォンッ! ドォンッ!

金剛「ぐっ……う……」

比叡「金剛お姉さま、しっかりしてください!」

金剛「比叡……」

金剛「私……置いて行くネ……」

比叡「っ!」

比叡「何をバカな……!」



542: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:18:33 ID:Wwx.GDpY


金剛「最後の……効いた……ネ……」

金剛「機関出力…………低下……」

金剛「…………」

比叡「金剛お姉さま!?」

比叡「……いいえ、いいえ!」

比叡「比叡は……比叡は!」

比叡「金剛お姉さまを見捨て……」

     ドォンッ ドォンッ!

     ドガァッ! ドガアァァンッ!

比叡「ぎっ……あああああああああああっ!!」

比叡「…………」

比叡「ま、まだ……動けます」



543: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:19:19 ID:Wwx.GDpY


比叡「さあ、金剛お姉さまも……諦めないで!」

金剛「…………」

比叡「金剛お姉さまあっ!!」

     ブロロロロロロ…

     ヒュウウウウウウウ……

     ドォンッ ドォンッ!

比叡「!?」

     ピピー ガガッ

加賀『こちら加賀』

加賀『最後の航空支援よ、長くはもたない』

加賀『急いで!』

比叡「……了解!!」



544: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:19:59 ID:Wwx.GDpY


筑摩「金剛さん達の予定地点通過を確認!」

利根「――全艦娘に達する」

利根「目標、海峡出口付近に現れる敵深海棲艦・艦隊!」

利根「全砲門……開け!!」

     ドォンッ ドォンッ!

     ドォンッ! ドォンッ!

     シュボボボボボンッ

     シャアアアアア……

     ドガアァァンッ!

利根「次弾装填!」

筑摩「敵艦隊の反撃、来ます!」



545: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:20:45 ID:Wwx.GDpY


利根「回避ー!」

     ドォンッ! ドォンッ!

     ドガアァァンッ!

利根「今度はこちらの番じゃ!」

利根「残った火力をすべて叩き込め!!」

     了解!

熊野「一捻りで黙らせてやりますわ!」

熊野「てー!」

鈴谷「うりゃぁ!」

     ドォンッ ドォンッ!

     ドォンッ! ドォンッ!

利根「まだまだじゃ!撃ちまくれ!」

筑摩「また敵の反撃、来ます!」



546: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:21:34 ID:Wwx.GDpY


     キャアアアアアッ!

     損傷! 大破!

     サガレ!

利根「こちらも反撃の手を緩めるでない!」

利根「撃って撃って撃ち尽くすのじゃ!」

     ドォンッ ドォンッ!

筑摩「!」

筑摩「敵艦隊のイ級が何隻か抜けてきました!」

利根「近寄らせるな!」

     シュボボボボボンッ

     シャアアアアア……

     ドガアァァンッ!

筑摩「イ級殲滅!」



547: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:22:14 ID:Wwx.GDpY


利根「よし、敵艦隊の動きがあからさまに悪くなって来おった!」

利根「皆の衆、もう少しじゃぞ!」

利根「撃てー!」

     ドォンッ ドォンッ!

     ドォンッ! ドォンッ!

     シュボボボボボンッ

     シャアアアアア……

     ドガアァァンッ!



548: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:23:06 ID:Wwx.GDpY


―――――――――――

筑摩「利根姉さん、敵艦隊、撤退を始めました」

筑摩「追撃しますか?」

利根「そんな余力、微塵も無いわ」

筑摩「ですね」

筑摩「警戒監視を敷いておきます」

利根「頼む」

     ピピー ガガッ

筑摩「あ……大淀さんから連絡があったそうです」

利根「何と言ってきた?」

筑摩「…………」

筑摩「侵入してきた敵艦隊を殲滅した、との事です」

利根「そうか」

利根「こちらも何とか勝てたと伝えてくれ」



549: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:23:53 ID:Wwx.GDpY


筑摩「分かりました、利根姉さん」

筑摩「ん?」

利根「どうした?」

筑摩「…………」

筑摩「近くなので、少し長良さんの捜索を行いたいと……」

利根「……大淀の好きにすれば良かろう」

筑摩「では、その様に伝えますね」

利根「ああ、任せる」

利根「鈴谷、熊野、点呼を取ってくれ。被害報告!」



550: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:24:37 ID:Wwx.GDpY


鈴谷「……小破2」

鈴谷「中破……12」

鈴谷「大破18」

鈴谷「轟沈……3」

利根「…………」

熊野「……あの数の劣勢を考えたら」

熊野「記録的な大戦果ですわ」

鈴谷「敵も7割は沈めたし……ほとんどイ級だけど」

利根「そうじゃな……大戦果じゃな」

鈴谷「…………」

利根「じゃが……吾輩はミスをした」

利根「そのミスを無くすため……脱落した仲間を見捨てた」



551: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:25:21 ID:Wwx.GDpY


鈴谷「…………」

熊野「…………」

利根「……結局、吾輩はイケメン提督と似た様な事を」

金剛「利根サーン……それを言い出したら」

金剛「私もイケメン提督と同じネ……」

利根「!」

利根「金剛……大丈夫なのか?」

金剛「疲労がポンッと回復するお菓子を食べてなかったら」

金剛「危なかったネ……」

利根「……あれを使っておったのか」



552: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:26:11 ID:Wwx.GDpY


金剛「それよりも……利根サン」

金剛「先の戦いで……私は第二戦隊を……見捨てマシた」

利根「じゃが、あれは……」

金剛「同じヨ……見捨てたことに代わりないネ……」

利根「…………」

比叡「利根さん……気に病むのは後にしましょう」

比叡「今は傷ついた艦娘を一刻も早く入渠させなければ」

利根「!」

利根「……そうじゃな」

利根「全艦娘に達する」

利根「警戒監視の艦娘を除いて、全艦娘」

利根「北方鎮守府へ帰還せよ!」



553: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/06(火) 19:26:46 ID:Wwx.GDpY



―――――――――――


北方鎮守府 工廠


明石「…………」

明石「ふううっ……」

明石「これで後はテストして……と」

     カチャ カチャ

     ピッ

明石「…………」

明石「……ん?」

明石「…………」

明石「これって……何?」



558: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 19:53:07 ID:2aUzpO4U



―――――――――――




西方海域 とある離島の砂浜


     ザザーン… ザザーン…


ブサ督「…………」

ブサ督「…………」

ブサ督(……もう、迷っている時間は無い)

ブサ督(桜の様態は悪化の一途……)

ブサ督(とうとう首から上しか動かせない様に……)

ブサ督(…………)



559: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 19:54:07 ID:2aUzpO4U


テント内


ブサ督「……桜」

桜「ん……ブサイク提督」

ブサ督「…………」

ブサ督「話がある」

桜「なんだ?」

ブサ督「君を……」

ブサ督「我々の医療……生体部分メンテナンスを」

ブサ督「受けてみないか?」

桜「…………」

桜「…………」



560: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 19:55:04 ID:2aUzpO4U


ブサ督「桜」

桜「聞こえている」

ブサ督「…………」

桜「…………」

桜「一つ聞きたい」

ブサ督「なんだ?」

桜「こんな状況になってから提案するという事は……」

桜「何か……デメリットがあるのか?」

ブサ督「…………」

ブサ督「……感がいいな」

桜「そんな不安そうな顔をしていれば嫌でも分かる」

ブサ督「…………」



561: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 19:56:04 ID:2aUzpO4U


ブサ督「まず……桜の症状が良くなるかどうかは分からない」

桜「…………」

ブサ督「そして……」

ブサ督「君は深海棲艦の貴重なサンプルでもある」

桜「…………」

ブサ督「俺の権限では医療従事者の口まで塞げない」

ブサ督「桜の事を知った大本営は……おそらく君を……」

ブサ督「研究材料として実験動物にする可能性が高い」

桜「…………」

桜「実験動物……か」

桜「それは少し受け入れがたいな」



562: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 19:57:13 ID:2aUzpO4U


ブサ督「だが、生き延びられる可能性もある」

ブサ督「このままじゃ君は……君は……!」

桜「…………」


     ザザーン… ザザーン…


桜「私は……このままでいい」

ブサ督「!」

桜「ブサイク提督は信じられないだろうが」

桜「気分も悪くないし、どこかが痛い訳でもない」

桜「正直……手足を動かせないのに何を言ってるんだと思うだろうが」

桜「死ぬ気がしないんだ」

ブサ督「桜……」

ブサ督「…………」



563: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 19:58:20 ID:2aUzpO4U


桜「……私自身、私の身に何が起きてるのか」

桜「まったくわからない」

桜「不安には思うが……体調としては悪い部分が見当たらない」

ブサ督「…………」

ブサ督「……そうか」

桜「…………」

桜「ブサイク提督は……私が死ぬのが嫌なのか?」

ブサ督「当たり前だろ」

桜「当たり前……か」

桜「私も……ブサイク提督が死ぬのは嫌だな」

ブサ督「…………」



564: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 19:59:18 ID:2aUzpO4U


ブサ督「桜……何かやりたい事は無いか?」

桜「やりたい事……」

ブサ督「何でもいい」

ブサ督「例えば……日本に行って旨い物を食べ歩くとか」

ブサ督「いろんな娯楽を見たり、やったりする、とか」

桜「それは楽しそうだな」

ブサ督「ああ。きっと楽しいぞ」

桜「…………」

桜「私は……自分の名前に使わせてもらった」

桜「桜の花を見たい」

ブサ督「いいな。 いいじゃないか」

桜「……ブサイク提督と二人で」

ブサ督「!」



565: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:00:24 ID:2aUzpO4U


桜「淡いピンクの花を樹木一杯に付けるという桜……」

桜「それを……ブサイク提督と二人で見たい」

ブサ督「…………」

ブサ督「ああ……必ず二人で見よう」

桜「ふふっ、楽しみだ」

ブサ督「ははは」

桜「…………」

ブサ督「…………」

桜「そろそろ……眠くなってきた」

桜「休ませてくれ」

ブサ督「ああ、お休み、桜」

桜「…………」



566: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:01:00 ID:2aUzpO4U



     ザザーン… ザザーン…


桜(…………)

桜(……すまない)

桜(ブサイク提督……)

桜(…………)

桜(たぶん……私は、もう……)

桜(私で居られなくなる……)

桜(…………)

桜(私なりに抗ってみたのだが……)

桜(…………)



567: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:01:50 ID:2aUzpO4U


桜(…………)

桜(本当は……少し前から……)

桜(自分が自分で無くなる様な……)

桜(奇妙な感覚があった……)

桜(…………)

桜(この数日……本当に楽しかったな……)

桜(…………)

桜(自我を持つディルプとして生きて来た数か月より)

桜(何倍も……何十倍も素晴らしい体験をさせてもらった)

桜(…………)



568: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:02:51 ID:2aUzpO4U


桜(…………)

桜(心配ばかりかけて……)

桜(何も返せないのが心苦しいが……)

桜(…………)

桜(だが……身体的に苦しくないのも事実なんだ)

桜(…………)

桜(あなたに礼も言わずに消えてしまう事を)

桜(許してくれ……)

桜(…………)

桜(最後になってしまう事を……あなたが知って)

桜(悲しむ顔を……見たくなかった……)

桜(…………)



569: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:03:37 ID:2aUzpO4U


桜(…………)

桜(そして……願わくば……)

桜(…………)

桜(……誰か………私…の……)

桜(…………)

桜(……代わりに……となり……で……)

桜(…………)

桜(…………)

桜(…………笑顔……………すご…し……)

桜(…………)



570: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:04:22 ID:2aUzpO4U



―――――――――――


     ザザーン… ザザーン…


ブサ督「…………」

ブサ督「…………」

ブサ督「……ん」

ブサ督「…………」

ブサ督「朝……か」

     ムクッ

ブサ督「ふあ~……」

ブサ督「…………」 ムニャムニャ…

ブサ督「……桜、朝だぞ」

ブサ督「っ!?」



571: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:05:07 ID:2aUzpO4U


??「…………」 スー スー

ブサ督「…………」

ブサ督「……艦娘?」

ブサ督(しかもこの服装と艤装……金剛型?)

ブサ督(…………)

ブサ督(いや、それよりも桜だ!)

ブサ督(どこへ行ったんだ……)

―――――――――――

ブサ督(…………)

ブサ督(……どこにも居ない)

ブサ督(…………)



572: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:06:09 ID:2aUzpO4U


ブサ督(だいたい前の晩まで)

ブサ督(首から上しか動かせなかったんだ)

ブサ督(急に歩けるようになるのも不自然……)

ブサ督(となると……)

??「…………」 スー スー

ブサ督(…………)

ブサ督(この眠っている金剛型の艦娘……)

ブサ督(信じられないが……桜が変化して)

ブサ督(!!)

ブサ督(…………)

ブサ督(まさか……これは)

ブサ督(離島艦娘!?)



573: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:07:12 ID:2aUzpO4U


??「…………」 スー スー

ブサ督(……通常、艦娘は)

ブサ督(妖精さんに資材を渡して頼んで)

ブサ督(艤装を作る事から始まる)

??「…………」 スー スー

ブサ督(艤装が完成したら、それは)

ブサ督(日本国内のどこかに適正者が存在するという事で)

ブサ督(適正者の婦女子は、艤装から何らかの感覚があり)

ブサ督(大抵は自ら名乗り出て、艤装を受け取り、めでたく艦娘となる)

ブサ督(……だが)



574: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:08:08 ID:2aUzpO4U


??「…………」 スー スー

ブサ督(たまに例外がある)

ブサ督(それは離島で良く発見される事から)

ブサ督(離島艦娘と呼ばれるようになったが……)

ブサ督(出自の分からない艦娘が艤装ごと突然湧いてくる事がある)

ブサ督(特に深海棲艦の支配地域を奪取した時は)

ブサ督(割と多くあるのだが……)

??「…………」 スー スー

ブサ督(離島艦娘はどれだけ調べても)

ブサ督(通常の艦娘と差異は無く……)

ブサ督(いつしか、原因を探す者すら居なくなった)

ブサ督(……が)



575: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:08:48 ID:2aUzpO4U


??「…………」 スー スー

ブサ督(……今でも信じられないが)

ブサ督(離島艦娘は……離島艦娘は……)

ブサ督(深海棲艦が何らかの理由で変化したもの)

ブサ督(だったのか……!)

??「…………」 スー スー

ブサ督(…………)

ブサ督(桜……)


 「正直……手足を動かせないのに何を言ってるんだと思うだろうが」

 「死ぬ気がしないんだ」


ブサ督(もしかしたら君は……こうなる事が)

ブサ督(分かっていたのか?)



576: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:10:13 ID:2aUzpO4U


ブサ督(…………)

ブサ督(……知ったところで)

ブサ督(どうにかできる事じゃないけど)

ブサ督(こんな……こんな別れ方って……)

??「……ん……んん」

ブサ督「!」

??「…………」

     ムクッ

ブサ督「…………」

??「…………」

??「えと……おはようございます」



577: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:10:56 ID:2aUzpO4U


ブサ督「お、おはよう」

??「あなたは……榛名の提督さん、ですか?」

ブサ督「そうなる……かな?」

ブサ督「君は榛名か」

榛名「えっ、どうして榛名の名前を?」

ブサ督「今しがた自分で言ったよ」

榛名「そうでしたか……では、改めまして」

榛名「榛名は、金剛型3番艦、榛名、と申します」

ブサ督「よろしく」

ブサ督「俺の名前はブサイク提督だ」



578: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:12:06 ID:2aUzpO4U


榛名「はい!」

榛名「榛名、ブサイク提督さんのお名前、覚えました!」

榛名「よろしくお願いします、ブサイク提督さん」

ブサ督「お、おう」

榛名「それで……ここはどこなのでしょう?」

榛名「どうしてブサイク提督さんと二人きりなのでしょう?」

ブサ督「…………」

ブサ督「桜」

榛名「はい?」

ブサ督「……桜、という名前に覚えは無いか?」

榛名「桜?……桜って、お花の桜、ですよね?」

ブサ督「……そうだな」

榛名「榛名……何か間違えました?」

ブサ督「いや、何でもない」



579: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:12:39 ID:2aUzpO4U


ブサ督「今のは忘れてくれ」

榛名「はあ……」

ブサ督「…………」

ブサ督「腹、減ってないか?」

榛名「そう言えば……榛名、お腹が空いてます」

ブサ督「じゃ……朝飯でも食いながら」

ブサ督「分かっている範囲で今の状況を説明しよう」

榛名「はい。ありがとうございます、ブサイク提督さん」

ブサ督「…………」

ブサ督(桜……)

ブサ督(…………)



580: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:13:36 ID:2aUzpO4U



―――――――――――


北方鎮守府 軍港


     ザザザザザザザザ…


大淀「…………」

利根「遅いぞ、大淀」

大淀「……すみません」

利根「その様子じゃと……」

利根「良い結果では無かった様じゃな……」

大淀「……長良さん他」

大淀「幾人かの艦娘の艤装の残骸を岩礁で発見しました」



581: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:14:37 ID:2aUzpO4U


利根「そうか……」

利根「とにかく、今は休む事じゃ」

利根「心身ともに疲れておったら」

利根「ロクな考えが浮かばぬ」

大淀「……利根さんの方こそ」

大淀「酷い顔をしていますよ」

利根「……寝付けなくての」

大淀「私も……気が張って怪しいですね」

利根「じゃがあれだけの大艦隊を退けたのじゃ」

利根「当分、彼奴らも大人しくするであろう」

大淀「朗報ですね」 クスッ…



582: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:15:30 ID:2aUzpO4U


大淀「鳥海さん、摩耶さん、夕立さん、瑞鶴さん」

大淀「お疲れさまでした」

大淀「どうか入渠して、休養してください」

摩耶「……大淀の方こそな」

鳥海「そうですよ、大淀さん」

夕立「休むっぽい!」

瑞鶴「これだけ疲れたのなら」

瑞鶴「ベッドに入って目つむれば嫌でも寝れるわよ」

大淀「ありがとうございます」

大淀「試してみますね」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

大淀「…………」

大淀「ふう……」



583: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:16:14 ID:2aUzpO4U


     タッ タッ タッ…

明石「大淀」

大淀「あら、明石さん」

大淀「広域通信機、直ったのですか?」

明石「それはまだまだ掛かると思う……」

明石「だけど、ちょっと変な物見つけちゃって」

大淀「変な物?」

明石「疲れてるところ悪いんだけど」

明石「工廠まで来てくれないかな?」

大淀「分かりました」



584: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:17:22 ID:2aUzpO4U



―――――――――――


北方鎮守府 工廠


大淀「それで……変な物とは?」

明石「順を追って説明します」

明石「広域通信機の心臓部なんですけど」

明石「わずかに破損してるだけですが、上手く動作するか」

明石「それは分かりませんでした」

大淀「…………」

明石「慎重に修理し、最後の総仕上げで動作確認を行ったところ」

明石「中の記憶回路や実行制御は問題なく起動したんです」

大淀「はあ……」



585: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:18:11 ID:2aUzpO4U


明石「問題はここからです」

明石「実行制御の記録を確認していた時」

明石「艦娘の何人かに緊急規制が掛けられている事に気が付きまして……」

大淀「緊急……規制?」

明石「簡単に言うと……」

明石「任意で艦娘の通信機能をオフにしていた」

明石「という事なんです」

大淀「…………」

大淀「……え?」

大淀「ちょっと待ってください……それは」

大淀「誰かが、艦娘の通信を出来なくしていた」

大淀「という事……ですか?」



586: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:19:24 ID:2aUzpO4U


明石「はい」

大淀「」

大淀「そ、それって……大ごとじゃないですか!?」

明石「いったい誰がこんな事をしたのか……」

明石「これは司令官権限でもないと出来ませんよ」

大淀「…………」

大淀「明石さん」

明石「はい?」

大淀「まず……緊急規制を掛けられた艦娘の名前は分かりますか?」

明石「分かりますよ」

明石「なんなら、いつやったのかも分かりますが?」

大淀「ぜひ、それらを文書にまとめてください!大至急!」



587: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:20:22 ID:2aUzpO4U


明石「わ、分かりました」

明石「1時間ほど時間をください」

大淀「お願いします!」

大淀「私は……出発の準備を整えてきます」

明石「出発?」

明石「どこへ行くんですか?」

大淀「大本営です!」

明石「」

     タッ タッ タッ…

明石「ちょ、今から帝都にですか!?」

明石「……行っちゃった」



588: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:21:09 ID:2aUzpO4U



―――――――――――


北方鎮守府 臨時執務室


利根「…………」

     ドドドドドド

利根「む?」

利根「何事じゃ?」

     バタン!

大淀「利根さん!」

利根「うおっ!?」

利根「お、大淀か……驚かすでないわ」

利根「それで、どうしたのじゃ?」



589: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:22:06 ID:2aUzpO4U


大淀「私、ちょっと大本営まで行ってきますので」

大淀「北方鎮守府の事は、しばらくお願いします!」

利根「はあ!?」

大淀「では!」

     バタン!

利根「ちょ、大よ……!」

利根「……行ってしまいおった」

利根「何なのじゃいったい……」

利根「…………」



590: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:23:03 ID:2aUzpO4U



―――――――――――


飛行場


     ドッドッドッ…

搭乗員「……こういう事はこれっきりにしてくださいよ?」

搭乗員「ただでさえ広域通信不能で管制に支障を……」

大淀「事情があるんです」

搭乗員「……了解」

大淀「…………」

大淀(……この証拠があれば)

大淀(イケメン提督の暴走を止められるかもしれない)

大淀(天龍さんの事もあるし、一刻も早く大本営に伝えなくては……!)

大淀(…………)



591: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:24:42 ID:2aUzpO4U



―――――――――――


翌日の朝

帝都 ホテルの一室


フツ督「ふあ~あ……」

フツ督「朝か……」

フツ督「…………」

フツ督「……あれ?」

フツ督「龍田?」

フツ督「龍田、どこだ?」

フツ督「……居ないのか」



592: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:25:49 ID:2aUzpO4U


     ガチャ

龍田「あ、起きた?」

フツ督「龍田、どこへ行ってたんだ?」

     キィ パタン

龍田「新聞と朝食を取りに行ってたの」

龍田「食べる?」

フツ督「寝起きだからな……ちょっとキツイ」

フツ督「先に新聞を読ませてくれ」

龍田「はぁ~い」

     バサッ

フツ督「まずは4コマ漫画……っと」

フツ督「ぷっ……ククク」



593: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:26:30 ID:2aUzpO4U


フツ督「さて……」

フツ督「……!?」

     南方方面戦線 大打撃か?

フツ督「…………」

フツ督(……イケメン提督により平定間近となっていた)

フツ督(南方戦線に異常発生か……)

フツ督(指揮官交代により戦線維持機能不全の疑い……)

フツ督(交代指揮官名ブサイク提督……)

フツ督(交代直後、異常な補給物資要求で惨状が……)

フツ督「クソッ!」

フツ督「あの野郎……やりやがったな!」

龍田「!?」



594: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/09(金) 20:27:22 ID:2aUzpO4U



―――――――――――


イケ督「くっくっくっ……」

イケ督「元々は大将閣下がやろうとしてた事だがな」

イケ督「これで……ブサイク提督とやらの信用はガタ落ち」

イケ督「民衆はさらに英雄を、俺を求めるって訳だ」

イケ督「ハーハッハッハッ!」

イケ督「笑いが……笑いが止まらん!」

イケ督「ハハハハハハハハハハ!」

イケ督「これで……」

イケ督「俺もいよいよ大将だ」

イケ督「くっくっくっ……!」



598: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:13:52 ID:jGZ2uc2.



―――――――――――


西方海域 とある離島の砂浜


     ザザーン… ザザーン…


ブサ督「…………」

榛名「ブサイク提督さん」

ブサ督「ん?」

榛名「何をなさっているのですか?」

ブサ督「墓……とは、ちょっと違うか」

ブサ督「記念碑みたいなのを作ってる」

榛名「記念碑ですか」

ブサ督「まあ、便宜上【艦娘の墓】と似た様なもんだけどな」

榛名「【艦娘の墓】?」



599: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:14:34 ID:jGZ2uc2.


ブサ督「……艦娘って、まだまだ謎の多い部分があって」

ブサ督「駆逐艦だろうが、戦艦だろうが」

ブサ督「何故か存命中の同じ名前の艦娘は生まれて来ない」

榛名「という事は……榛名は榛名だけって事ですね?」

ブサ督「そう」

ブサ督「……でもそうなると少し困った事が起こる」

榛名「困った事?」

ブサ督「戦争をやっているからどうしても轟沈する……」

ブサ督「つまり、死んでしまう事もあるんだが」

ブサ督「墓にその名前を入れると、後から同じ名前の艦娘が生まれた時」

ブサ督「その艦娘は、自分の墓がすでにある事になる」

榛名「あ……」



600: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:15:36 ID:jGZ2uc2.


ブサ督「そこで出来たのが【艦娘の墓】」

ブサ督「どの艦娘が亡くなっても【艦娘の墓】に入れて」

ブサ督「故人を悼む対象にした、という訳さ」

榛名「…………」

榛名「では……榛名もいずれはそこへ入るんですね」

ブサ督「そうとも限らない」

榛名「え?」

ブサ督「艦娘の行く末は主に3つある」

ブサ督「一つは今、言った通り」

ブサ督「二つ目は艤装の経年劣化や損傷で動かなくなった時」

ブサ督「艦娘任務から解き放たれ、一般の婦女子として暮らしていく」

榛名「…………」



601: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:16:43 ID:jGZ2uc2.


ブサ督「三つ目は理由不明で艤装が艦娘を認識しなくなり」

ブサ督「艦娘として活動できなくなった場合」

ブサ督「これまた艦娘任務から解き放たれ」

ブサ督「一般の婦女子として暮らしていく事になる」

榛名「そんな道もあるんですね」

ブサ督「ああ」

ブサ督「理屈は全く分からんが、艦娘は最長で10年くらいの任務になり」

ブサ督「何故かその間、年は取らないし、人間の病気になる事も極めて稀」

ブサ督「そして解放後は艦娘手当という一時金も付いて来るから」

ブサ督「艦娘になれる事は割と名誉に思われてる」

榛名「そうなんですか」



602: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:17:40 ID:jGZ2uc2.


榛名「でも榛名は……お父さんとお母さんの記憶がありません」

ブサ督「さっきも言ったけど……榛名は離島艦娘だからな」

ブサ督「謎は残るが、普通に婦女子として暮らしている元離島艦娘も居る」

榛名「先輩が居るんですね!」

ブサ督「ああ」

榛名「榛名……安心しました」

ブサ督「良かったな」

榛名「それで……ブサイク提督さん」

榛名「その記念碑は……どなたの為のものなのですか?」

ブサ督「ん~……」

ブサ督「一言では説明できないな」

榛名「恋人さん……とか?」



603: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:18:29 ID:jGZ2uc2.


ブサ督「恋人か……」

ブサ督「そういう気持ちが無いって言えばウソになるけど」

ブサ督「どちらかと言えば、妹とか、娘みたいに思ってたかも」

榛名「妹さんか娘さん、ですか」

ブサ督(……本人が聞たら怒るかな)

榛名「どんな人だったんですか?」

ブサ督「…………」

ブサ督「……とても綺麗な子だった」

榛名「…………」

ブサ督「ちょっと世間知らずで……最初はギクシャクしたけど」

ブサ督「俺もいろいろな事を彼女から学んだ」

榛名「…………」



604: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:19:31 ID:jGZ2uc2.


榛名「亡くなった……という訳ではないんですよね?」

ブサ督「ああ」

ブサ督「でも……もう二度と彼女には会えない」

ブサ督「どこへ行ったのかも分からない」

榛名「…………」

ブサ督「…………」

ブサ督「……よし、出来た」

ブサ督「不格好だけど……許してもらおう」

榛名「……灰色の髪の君?」

ブサ督「何か書いておかないと、普通の岩と間違えられそうだからな」

ブサ督「……まあ、またここへ来るのは俺だけだろうけど」

榛名「…………」



605: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:20:16 ID:jGZ2uc2.


ブサ督(……これは俺なりのけじめだ)

ブサ督(名前にしなかったのは、墓標みたいで嫌だし)

ブサ督(君は死んだわけじゃないと思うからだ)

ブサ督(…………)

ブサ督(桜……)

ブサ督(…………)

ブサ督(君と居た時間は……俺にとって、とても貴重で)

ブサ督(楽しいものだった……)

ブサ督(…………)

ブサ督(ありがとう)

ブサ督(桜……)

榛名「…………」



606: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:21:24 ID:jGZ2uc2.


     ピピピ… ピピピ…

ブサ督「……ん?」

ブサ督「通信か」

     ピピッ ガガッ

ブサ督「こちらブサイク提督」

電『あっブサイク提督さん』

ブサ督「どうした、電?」

電『その……新聞記者の方が何人か』

電『南方鎮守府に押し寄せてまして……』

ブサ督「え?」

電『一応、軍事機密に係るので、電たちでは答えられないし』

電『ブサイク提督さんも離島療養中で答えられないと、押し通してます』

ブサ督(……どういう事だ?)



607: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:22:21 ID:jGZ2uc2.


ブサ督「電、ブンヤは何の取材に来たんだ?」

電『…………』

電『……南方戦線は打撃を受けたのか?とか』

電『元大将との癒着はあったのか?とかです……』

ブサ督「!?」

電『いずれにしても詳しい事は分からないので』

電『このままで通しますが……』

電『ブサイク司令官さんのお耳にも入れておいた方が良いと思いまして』

ブサ督「そうか……ありがとう、電」

ブサ督「その対処でしばらく頼む」

電『分かりました』

電『南方鎮守府、通信終了』

ブサ督「ブサイク提督、通信終了」



608: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:23:14 ID:jGZ2uc2.


     ブッ…

ブサ督「…………」

ブサ督(妙だな……フツメン提督がその辺は任せておけと)

ブサ督(言ってたはずだが……)

ブサ督(…………)

ブサ督(内地で何かあったか?)

ブサ督(…………)

榛名「ブサイク提督さん?」

ブサ督「!」

ブサ督「あ、すまない、榛名」

榛名「何かあったのですか?」



609: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:24:08 ID:jGZ2uc2.


ブサ督「そうみたいだが……」

ブサ督「こっちから動くのは悪手の様な気がする」

榛名「では……どうしますか?」

ブサ督「この件は任せてる奴がいるから」

ブサ督「そいつからの連絡を待つ」

ブサ督「今は、それしかないと思う」

榛名「分かりました」

榛名「榛名はブサイク提督さんに従います!」

ブサ督「…………」

ブサ督(……それにしても)

ブサ督(榛名は……俺の顔について何も言わないな)

ブサ督(ギョッ、としたりも無かったし……)

ブサ督(…………)



610: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:25:04 ID:jGZ2uc2.



―――――――――――


大本営 元帥の執務室


元帥「クソッ!」

元帥「これが奴の答えか!」

フツ督「……完全にやられました」

フツ督「この報道で世論は」

フツ督「一気にブサイク提督の糾弾へ向かう事になるでしょう」

元帥「そんな事は言われなくとも分かっている……」

元帥「そして奴の大将への要望が高くなる事もな……!」

龍田「…………」



611: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:26:17 ID:jGZ2uc2.


フツ督「もはや俺の根回しなんて意味を成しません」

フツ督「軍部もブサイク提督を庇う事は出来ない……」

フツ督「万事休す、ですね……」

元帥「記録の開示をしてしまえば楽なのだが」

元帥「それは海軍全体の信用の失墜を招く」

元帥「何か……何か良い策は無い物か……」

フツ督「…………」

龍田「…………」

龍田「あのぅ……」

元帥「!」

フツ督「!」



612: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:27:08 ID:jGZ2uc2.


元帥「何か……良い策があるのかね?」

龍田「いえ、そうではなくて……」

龍田「少し、休憩をなさってはいかがかなぁ~」

龍田「と」

元帥「…………」

フツ督「…………」

元帥「……それもそうだな」

フツ督「頭を冷やすべき、か……」

龍田「何か、冷たい飲み物でも持って来ましょうか?」

元帥「そうだな」

フツ督「頼めるか?」

龍田「はい♪」

龍田「それでは、ちょっと失礼しまぁす」



613: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:27:52 ID:jGZ2uc2.


     ガチャ キィ パタン

元帥「…………」

フツ督「…………」

フツ督(……もうこうなったら)

フツ督(龍田に【処理】を頼むほか……)

フツ督(…………)

フツ督(いや……)

フツ督(それは出来ればやらせたくない)

フツ督(…………)



614: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:29:28 ID:jGZ2uc2.


大本営 廊下付近


     テク テク テク

龍田「ふふ~ん♪」

龍田「冷たい物と言えば~」

龍田「やっぱりラムネ~」

    ガヤ ガヤ

龍田「……ん?」


大淀「ですから!」

大淀「直接元帥閣下にお話ししたいんです!」

憲兵「何度も言うが、許可を受けてない者は通せない」

憲兵「まずは君の所属する上官に通してからが筋だ」

大淀「それでは意味が無いんです!」

.



615: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:30:15 ID:jGZ2uc2.


龍田(あれは……どこかで見た様な?)

龍田(…………)

龍田(まあいいか)

     テク テク テク…

―――――――――――

龍田「お待たせしました~」

元帥「うむ」

フツ督「ありがとう、龍田」

龍田「いえいえ」

     スッ スッ

     ゴク ゴク

フツ督「……ふう」

フツ督「人心地ついたな」



616: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:30:59 ID:jGZ2uc2.


龍田「うふふ~」

龍田「やっぱりラムネはいいですよねぇ~」

元帥「……そうだな」

元帥「これで現実の方もスッキリできれば良いのだが……」

フツ督「…………」

龍田「…………」

龍田「あ」

龍田「そういえば……」

フツ督「どうした?」



617: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:32:27 ID:jGZ2uc2.


龍田「ラムネを持って来るとき見かけたんだけど」

龍田「元帥閣下に直接話がしたい~とかって」

龍田「憲兵と揉めてる艦娘が居たのよね」

元帥「私と?」

フツ督「どこの所属の艦娘だ?」

龍田「ん~……どこかで見た顔だと思うんだけど」

龍田「思い出せないのよね~」

フツ督「君に面識があるのか……」

元帥「…………」

フツ督「…………」



618: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:33:32 ID:jGZ2uc2.


フツ督「どうでしょう、元帥」

フツ督「行き詰っているところですし」

フツ督「その艦娘に会ってみませんか?」

元帥「ふむ」

元帥「それも一興か……」

元帥「では、その様にしよう」

フツ督「迎えに行ってきます」

元帥「頼む」

―――――――――――

フツ督「あー君君」

憲兵「はい?」

フツ督「私は西方方面艦隊鎮守府・司令官のフツメン提督だ」



619: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:34:22 ID:jGZ2uc2.


憲兵「!」

大淀「!」

フツ督「何でも元帥閣下と直接話がしたい艦娘が居るとか?」

大淀「は、はい!」

憲兵「しかし、本来の規定では」

憲兵「所属する部隊の司令官の許可が……」

フツ督「うん、君の意見は正しい」

フツ督「だが……そこの艦娘は見たところ損傷を直す暇(いとま)すら」

フツ督「押して来たみたいじゃないか」

大淀「…………」

フツ督「責任は私が取る」

フツ督「一つ、私の顔に免じて通してくれないか?」

憲兵「…………」



620: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:35:12 ID:jGZ2uc2.


フツ督「いざとなれば、この護衛の艦娘に相手をさせる」

龍田「…………」

憲兵「…………」

憲兵「……分かりました」

憲兵「この艦娘の身柄はフツメン提督にお願いします」

大淀「!」

大淀「あ、ありがとうございます!」

フツ督「いやいや」

フツ督「では……こっちへ来てくれ」

大淀「はい」

龍田「…………」



621: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:35:54 ID:jGZ2uc2.


―――――――――――

元帥「私が元帥だ」

大淀「は、はい」

大淀「まずは……お会いくださり」

大淀「ありがとうございます」

元帥「うむ」

大淀「それで……私は、北方方面艦隊鎮守府・所属の艦娘で」

大淀「秘書艦をやっております、大淀、と申します」

元帥「!」

フツ督「!」

龍田「あ……思い出した」



622: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:36:49 ID:jGZ2uc2.


龍田「去年の合同観艦式で天龍ちゃんと一緒だった娘ね?」

大淀「はい、そうです」

大淀「ええと……龍田さん、でしたっけ?」

龍田「正解~♪」

大淀「……そういえば」

大淀「天龍さんと意気投合していましたね」

龍田「うん♪」

龍田「……天龍ちゃんの事は聞いたわ」

大淀「…………」

大淀「……これから話す事は」

大淀「もっと辛い事をあなたに知らせる事になるかもしれません」

龍田「……どういう事?」



623: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:37:42 ID:jGZ2uc2.


大淀「…………」

大淀「元帥閣下、並びにフツメン提督」

大淀「まずはこれをご覧ください」

     パサッ…

元帥「……この書類は?」

大淀「これは、広域通信機に記録されている」

大淀「艦娘の通信記録の一部です」

元帥「ふむ?」

大淀「この記録は……主に遠征に出た天龍さんの通信記録なのですが」

龍田「…………」

大淀「最後の通信の後……司令官権限で」

大淀「緊急通信規制処理されていたんです」



624: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:38:43 ID:jGZ2uc2.


元帥「!?」

フツ督「!?」

龍田「…………」

元帥「遠征で緊急規制……!?」

フツ督「……通常ではありえない処置ですね」

フツ督「どういった状況だったんだ?」

大淀「…………」

大淀「この時……イケメン提督の指揮の元」

大淀「二個戦隊をもって敵泊地へ攻撃をしていたのですが」

大淀「大規模な伏兵によって、両戦隊とも撤退を打診して来ました」

フツ督「…………」

フツ督「……まさか」



625: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:39:32 ID:jGZ2uc2.


大淀「……はい」

大淀「その後なんです」

大淀「天龍さんを含めた遠征部隊……全員に」

大淀「緊急規制が掛けられたのは……!」

元帥「…………」

フツ督「…………」

龍田「…………」

龍田「……ねえ」

龍田「それって……さ」

龍田「考えたくないんだけど……」

龍田「天龍ちゃんを」



626: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:40:27 ID:jGZ2uc2.


龍田「囮か何かにした……って事かしら?」

元帥「…………」

フツ督「…………」

大淀「…………」

龍田「……どうしてみんな黙るの?」

龍田「誰か……否定しないの?」

龍田「ねえ!!」

大淀「……まだあるんです」

元帥「!」

フツ督「!」

龍田「!」

龍田「……これ以上」

龍田「何があるのかしら?」



627: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:41:20 ID:jGZ2uc2.


フツ督「少し待ってくれ、大淀」

大淀「……はい」

フツ督「それは……天龍に関する事なのか?」

大淀「……はい」

フツ督「龍田」

フツ督「君は聞かない方が良い」

龍田「いいえ!」

龍田「絶対聞くわ!」

龍田「天龍ちゃんの事なんですもの!」

フツ督「……なら」

フツ督「約束してくれ」

フツ督「暴走しない、と」

龍田「…………」



628: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:41:58 ID:jGZ2uc2.


龍田「……考えておくわ」

フツ督「その答えじゃダメだ」

フツ督「イエスかノーの二択」

フツ督「それ以外認めない」

龍田「…………」

龍田「……意地悪」

フツ督「どっちなんだ?」

龍田「分かったわよ」

龍田「暴走しない」

龍田「これでいい?」

フツ督「……ああ」



629: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:42:55 ID:jGZ2uc2.


フツ督「すまない大淀、続けてくれ」

大淀「分かりました……」

大淀「…………」

大淀「あれは……ちょうど3日くらい前です」

大淀「北方鎮守府は……襲撃を受け」

大淀「広域通信機と電探を破壊されたんです」

元帥「何!?」

フツ督「待て。深海棲艦なら、警報が鳴るハズだろう?」

フツ督「故障でもしていたのか?」

大淀「いいえ」

大淀「正常に機能していました」



630: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:43:51 ID:jGZ2uc2.


フツ督「!」

フツ督「まさか……天龍がやったのか!?」

龍田「!」

大淀「……結論から言えばそうです」

元帥「囮に使われ、生き残ったのならば……分からないではないな」

大淀「ただ……その時の天龍さんは……天龍さんは!」

大淀「深海棲艦のチ級によく似た姿を……していたんです!」

元帥「」

フツ督「」

龍田「」

元帥「な、何だと!?」

フツ督「し……信じられん……」

大淀「ええ……ええ! 私だって信じたくありません!」



631: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:44:45 ID:jGZ2uc2.


大淀「ですが……私はこの目で見ました!」

大淀「そして、私の名前を呼んだんです!」

元帥「…………」

フツ督「…………」

     …ドサッ

龍田「」

フツ督「た、龍田ッ!!」

元帥「こりゃいかん……」

元帥「医務室へ連れて行くんだ」

フツ督「失礼します!」

     ガチャ キィ パタン

大淀「…………」

元帥「…………」



632: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:45:20 ID:jGZ2uc2.


元帥「……それにしても3日か」

元帥「なぜすぐに連絡しなかったのだ?」

大淀「その襲撃の後、すぐに」

大淀「深海棲艦の大艦隊が現れまして」

大淀「その対応に追われてしまったんです……」

元帥「……なんというタイミングの悪さだ」

元帥「イケメン提督は……ちょうどこちらへ向かっててすれ違いになったか」

元帥「あ奴が居ても頼りないが……」

元帥「指揮官不在で、よく対処できたな」

大淀「…………」



633: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:46:17 ID:jGZ2uc2.


大淀(……大本営は)

大淀(イケメン提督の実力を把握していたのね)

大淀(…………)

大淀「……私たちの功績ではありません」

大淀「ほとんどは……ブサイク提督が残してくれた」

大淀「戦術書のおかげなんです……」

元帥「ブサイク提督の?」

大淀「はい」

大淀「あれが無かったら……」

大淀「私たちは大損害を受けていたでしょう」

元帥「…………」



634: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:47:17 ID:jGZ2uc2.


―――――――――――

フツ督「お待たせしました」

元帥「龍田は大丈夫か?」

フツ督「はい」

フツ督「軍医の話では問題ないだろう、と」

フツ督「医務室のベッドで休ませてあります」

元帥「そうか。何よりだな」

フツ督「それで……天龍はその後、どうしたんだ?」

大淀「…………」

大淀「天龍さんは、不在だったイケメン提督の居場所を執拗に聞いてきました」

元帥「……さもありなん、か」

フツ督(悪運の強い奴め……)



635: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:47:55 ID:jGZ2uc2.


大淀「……申し訳ありません」

元帥「?」

元帥「なぜ謝罪するのだ?」

大淀「私は混乱して……うかつにも大本営へ行ったと」

大淀「天龍さんに漏らしてしまったんです……」

フツ督「!」

元帥「!」

大淀「金剛さんと比叡さんが捕まえようとしましたが」

大淀「逃げられてしまい……それっきり動向は知れません」

フツ督「なんてこった……」



636: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:48:48 ID:jGZ2uc2.


元帥「…………」

元帥「警戒態勢を敷くべきか?」

フツ督「…………」

フツ督「今の状況を考えると、難しい判断です……」

フツ督「ただでさえ海軍の信頼が揺らいでいる時期ですから」

元帥「だが、放っておく訳にもいくまい」

フツ督「……天龍の居場所は把握しておきたいですね」

フツ督「移動ルートを予測して、当該地域を探らせてみましょう」

元帥「ふむ……それが妥当か」

元帥「天龍が無辜の民に手を出さぬ内は、それで行こう」

フツ督「ありがとうございます」

大淀「…………」



637: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:49:40 ID:jGZ2uc2.


元帥「イケメン提督の事だけでも手一杯だというのに」

元帥「問題ばかり次々と起こってくれるな……」

大淀「…………」

フツ督「その事なんですが、元帥閣下」

フツ督「ひとつ思いついた事があります」

元帥「イケメン提督の事でか?」

フツ督「はい」

フツ督「ただ……まだ不確定要素がありますので」

フツ督「少し時間をください」

元帥「どれくらいだ?」

フツ督「長くても半日程度です」



638: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:51:25 ID:jGZ2uc2.


元帥「…………」

元帥「……よかろう」

元帥「そのくらいなら待てる。期待してるぞ」

フツ督「がっかりされない様に頑張ります」

フツ督「では……」

フツ督「大淀、君にも手伝って欲しい」

大淀「え?」

大淀「あ、はい。私に出来る事なら手伝います」

フツ督「頼む」



639: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:52:29 ID:jGZ2uc2.


フツ督「じゃあ、ついてきてくれ」

大淀「分かりました」

フツ督「それでは、失礼します」

大淀「失礼します、元帥閣下」

元帥「ああ」

     ガチャ キィ パタン

元帥「…………」

元帥「……やっと分かった気がする」

元帥「フツメン提督が、あれだけブサイク提督に」

元帥「入れ込む理由が……」

元帥「…………」

元帥「一度、酒の席にでも誘ってみるかな?」



640: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:53:05 ID:jGZ2uc2.



―――――――――――


大本営 屋上


フツ督「よし、ここならいいだろう」

大淀「こんなところで、いったい何を?」

フツ督「ブサイク提督と連絡を取る」

大淀「え!?」

大淀「負傷され、離島で療養中と聞きましたが……」

フツ督「それは表向きの話。色々あってな」

大淀「そう……だったんですね」

フツ督「……それと、通信する前に」

フツ督「君に龍田の事を話しておきたいと思って」



641: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:53:55 ID:jGZ2uc2.


大淀「龍田さんの?」

フツ督「ああ……」

大淀「…………」

フツ督「君から見ると……」

フツ督「龍田があれだけ天龍に入れ込むのは変に思うんじゃないか?」

大淀「……少し思いました」

大淀「去年の合同観艦式で仲良くなってたのは見ましたが」

大淀「それ以降、会ってないはずですし……」

フツ督「だよな……」

フツ督「…………」



642: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:54:48 ID:jGZ2uc2.


フツ督「実は……龍田は、前の天龍とかなり仲が良かったんだ」

大淀「前の……今の天龍さんの前、という事ですか?」

フツ督「そう」

フツ督「だが……ある日の戦闘で」

フツ督「前の天龍は龍田を庇い……」

フツ督「轟沈して【艦娘の墓】に居る」

大淀「!」

フツ督「……それ以降」

フツ督「龍田は自分を責め続けてな……」

フツ督「戦闘で自暴自棄になった事も一度や二度じゃなかった」

大淀「…………」



643: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:55:24 ID:jGZ2uc2.


フツ督「そんな時……北方鎮守府で」

フツ督「新たな天龍が着任した事を知った」

大淀「…………」

フツ督「俺はそれを利用した」

フツ督「龍田に天龍は生きていた、と言い」

フツ督「その代りケガの後遺症で記憶を失っている」

フツ督「という事にしたんだ」

大淀「…………」

フツ督「……それを伝えて」

フツ督「合同観艦式を終えた後」

フツ督「龍田は……無謀な行動を取らなくなった」



644: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:56:15 ID:jGZ2uc2.


大淀「……そうだったんですね」

フツ督「我ながら酷い男だと思うよ」

フツ督「何もかも全部……俺の我が儘での行動だ」

大淀「…………」

大淀「いいじゃないですか、それくらい」

フツ督「…………」

大淀「私の我が儘なんて……もっと酷い結果を招きました」

フツ督「…………」

フツ督「……興味はあるが、聞かないでおこう」

大淀「……そうしてくださると助かります」



645: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:56:53 ID:jGZ2uc2.


フツ督「ははは」

フツ督「……じゃ、連絡を取るか」

大淀「そんな小さな通信機で南方まで通信可能なんですか?」

フツ督「こいつは端末にすぎん」

フツ督「詳しい仕組みは俺も知らんが」

フツ督「この端末で広域通信機を経由して通信できるんだ」

大淀「……すごいですね」

フツ督(……たぶん)

フツ督(イケメン提督もこういう物を使ったんだろうな……)



646: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:57:31 ID:jGZ2uc2.



―――――――――――


ブサ督「こちらブサイク提督」

フツ督『……久しぶり』

フツ督『元気にしてたか?』

ブサ督「体調は問題ないが、いろいろとあった……」

ブサ督「それに、そっちでも何かあった様だな?」

フツ督『!』

ブサ督「電から新聞記者が押し寄せてると連絡があったんだ」

フツ督『……すまん』

ブサ督「謝る必要はない」

ブサ督「説明してくれ」



647: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:58:15 ID:jGZ2uc2.


―――――――――――

フツ督『……という訳だ』

ブサ督「…………」

ブサ督「……こりゃ参ったね」

フツ督『だが、まだ諦めるのは早い』

ブサ督「こんな状況で、まだ打てる手があるのか?」

フツ督『その為に』

フツ督『お前にもひと働きしてもらう』

ブサ督「……何をすればいい?」

フツ督『南方鎮守府に戻り』

フツ督『広域通信機の通信記録を調べてもらいたい』

ブサ督「広域通信機の?」



648: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:58:46 ID:jGZ2uc2.


フツ督『ああ』

フツ督『特に行方不明扱いになってる艦娘や』

フツ督『轟沈扱いの艦娘の通信記録を時系列で』

フツ督『俺に知らせて欲しいんだ』

ブサ督「……聞かない方が良い気もするが」

ブサ督「どういう事なんだ?」

フツ督『…………』

ブサ督「おい、フツメン提督」

大淀『ここからは私が説明します、ブサイク提督』

ブサ督「!?」

ブサ督「その声……大淀か?」



649: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 20:59:20 ID:jGZ2uc2.


大淀『……はい』

大淀『お久しぶりです、ブサイク提督』

ブサ督「お、おう……」

大淀『……イケメン提督が着任して以降』

大淀『ブサイク提督の偉大さが……良く分かりました』

ブサ督「…………」

大淀『すみません。謝罪やお礼とか山ほど言いたいのですが』

大淀『時間が無い様なので手短に説明します』

―――――――――――

大淀『……という事でして』

大淀『南方ではどの様だったのか、調べて欲しいんです』

ブサ督「…………」

ブサ督「……分かった」



650: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 21:00:06 ID:jGZ2uc2.


フツ督『俺だ』

フツ督『そういう訳だから急いでくれ』

ブサ督「任せてくれ」

ブサ督「ブサイク提督、通信終了」

フツ督『フツメン提督、通信終了』

     ブッ…

ブサ督(……天龍)

榛名「ブサイク提督さん?」

ブサ督「……ん?」

榛名「大丈夫ですか?」

ブサ督「大丈夫だ……榛名」



651: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 21:01:05 ID:jGZ2uc2.


ブサ督「あ」

榛名「どうしました?」

ブサ督「…………」

ブサ督「……何でもない」

榛名「?」

ブサ督(榛名の事を伝え忘れていた)

ブサ督(ここは西方海域……本来、榛名の所有権は)

ブサ督(フツメン提督にある……)

ブサ督(…………)

ブサ督(後で頼むしかないな……)

ブサ督「よし、南方鎮守府に戻るぞ」

榛名「はい!」



652: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/10/16(金) 21:02:04 ID:jGZ2uc2.


     ピピー ガガッ

ブサ督「こちらブサイク提督」

ブサ督「南方鎮守府、応答してくれ」

電『こちら南方鎮守府・執務室』

電『ブサイク司令官さん、いかがされましたか?』

ブサ督「バカンスは終わった」

ブサ督「やる事が出来てな……至急迎えを寄こして欲しい」

電『分かりました』

電『すぐに高雄さん達を向かわせます』

ブサ督「頼む」

ブサ督「ブサイク提督、通信終了」

電『南方鎮守府、通信終了』

     ブッ…



658: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:17:14 ID:XndiLEMk



―――――――――――


関東沿岸部 某所


フード女「…………」

     ガサゴソ…(ゴミ箱あさり)

フード女「…………」

フード女「……アッた」

     バサッ(新聞広げ)

フード女「…………」

フード女(……イケメン提督、責任を痛感……)

フード女(南方戦線疲弊……大本営完全に否定せず)



659: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:18:03 ID:XndiLEMk


フード女(…………)

フード女(…………)

フード女(……!)

フード女(イケメン提督、帝都ホテルで……)

フード女(よし……)

フード女(クソ野郎……まダ……)

フード女(帝都に居ル……!)

フード女(…………)

フード女(必ず……)

フード女(コロス……!)

フード女(…………)



660: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:18:41 ID:XndiLEMk



―――――――――――


南方鎮守府 軍港


     ザザザザザザザ…


電「ブサイク司令官さん、お帰りなさいなのです」

ブサ督「ただいま」

ブサ督「ブンヤどもは大丈夫か?」

電「監視下に置いて下がらせてます」

ブサ督「助かる」

ブサ督「高雄たちもご苦労だった」

高雄「いえ、お役に立てて光栄です」



661: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:19:31 ID:XndiLEMk


ブサ督「そうだ、良かったら榛名に」

ブサ督「南方鎮守府を案内してやってくれないか?」

榛名「え? 榛名は、ブサイク提督さんと一緒がいいです」

ブサ督「えっ」

電「えっ」

高雄「えっ」

愛宕「えっ」

飛龍「えっ」

鳳翔「えっ」

榛名「……?」

榛名「どうして皆さん、そんなに驚くのですか?」



662: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:20:37 ID:XndiLEMk


ブサ督「……ま、まあ、榛名がそう言うのなら」

榛名「はい♪」

ブサ督(調子狂うな……)

ブサ督「では……高雄たちは、ゆっくりしててくれ」

高雄「は、はい」

ブサ督「それじゃ、執務室に向かおう」

榛名「はい、ブサイク提督さん」

     スタ スタ スタ…

高雄「…………」

愛宕「…………」

飛龍「…………」

鳳翔「…………」



663: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:21:30 ID:XndiLEMk


高雄「……あれ、どう見ます?」

愛宕「う~ん……控えめに言って」

愛宕「ベタ惚れ?」

飛龍「ここへ来る道中でも、やけに仲良さそうでしたけど……」

鳳翔「どちらかと言えば……」

鳳翔「ブサイク提督さんの方が戸惑ってましたよね?」

高雄「…………」

愛宕「…………」

飛龍「…………」

鳳翔「…………」

4人(尊敬はしてるけど……)

4人(恋愛感情は……さすがに……)



664: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:22:24 ID:XndiLEMk


南方鎮守府 執務室


ブサ督「ふう……帰って来たな」

ブサ督「さて、早速だが……技術主任を呼んできてくれ」

電「あの、ブサイク司令官さん」

ブサ督「ん?」

電「その前にですね、お手間は取らせませんので」

電「新たに補充された艦娘の着任を確認して欲しいのですが……」

ブサ督「補充か。それはありがたい」

ブサ督「すぐ呼べるのか?」

電「隣の作戦室に待機させてます」



665: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:23:18 ID:XndiLEMk


ブサ督「分かった、呼んでくれ」

電「了解なのです」

電「許可が下りました」

電「入室してください」

     ガチャ… ゾロ ゾロ

??「……っ」 ギョッ

??「……うわっ」

??「…………」 ギョッ

??「ひっ……」

ブサ督「…………」

榛名「…………」

電「……すみません、事前に話しておいたのですが」

ブサ督「……いいよ、別に」



666: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:24:17 ID:XndiLEMk


ブサ督「これからは写真でも前もって見せておけばいい事だ」

電「……えと」

電「ご挨拶してください」

??「……く、駆逐艦、朝潮です」

朝潮「勝負なら、いつでも受けて立つ覚悟です」

??「……なんでこんな……満潮よ」

満潮「力は尽くすわ」

??「く、駆逐艦、大潮で~す」

大潮「小さな体に大きな魚雷! お任せください」

??「……霞よ」

霞「ガンガン行くわよ、ついてらっしゃい」



667: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:25:24 ID:XndiLEMk


ブサ督「なかなか元気があってよろしい」

ブサ督「着任を確認した」

ブサ督「ようこそ南方鎮守府へ。よろしく頼む」


朝潮型4人「はい」


ブサ督「では、後の処理は電に任せる」

ブサ督「彼女たちに部屋を用意してやってくれ」

電「了解なのです」

電「その帰りに技術主任さんをお連れしますね」

ブサ督「ああ、待ってるよ」

電「失礼します」

     ガチャ キィ

     ゾロ ゾロ… パタン



668: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:26:04 ID:XndiLEMk


ブサ督「ふう……」

榛名「…………」

榛名「……酷い」

ブサ督「ん?」

榛名「何なのですか、あの態度……」

榛名「いくら何でも失礼すぎです!」

ブサ督「…………」

ブサ督「……あれが普通なんだよ」

榛名「え……」

ブサ督「どちらかと言えば、榛名の方がおかしいんだ」

ブサ督「ああ、もちろん普通に接してくれるのは嬉しいんだが……」

榛名「…………」



669: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:29:05 ID:XndiLEMk


ブサ督「……榛名は、俺の顔が気持ち悪くないのか?」

榛名「微塵も思いません」

ブサ督(それはそれで心配になるな……)

ブサ督「そ、そうか」

ブサ督「ええと……」

     ガサゴソ ガサゴソ

ブサ督「あった」

榛名「?」

ブサ督「普通はな、こういう顔がモテ……好まれるんだ」つ(古新聞)

榛名「…………」

榛名「……榛名は、何とも思いません」

ブサ督「マジか……」



670: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:29:50 ID:XndiLEMk


ブサ督「じゃあ榛名」

榛名「はい」

ブサ督「あそこの壁に貼ってるポスターの一番下の文字」

ブサ督「そこから読めるか?」

榛名「ええと……」

榛名「我が皇国の科学力は世界いち……ですか?」

ブサ督「うん、視力も問題ないな」

榛名「…………」

ブサ督(これはやっぱ……)

ブサ督(刷り込み、みたいなアレか?)



671: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:30:51 ID:XndiLEMk


ブサ督「ともかく、だ」

ブサ督「俺がブ男ってのは分かってるし」

ブサ督「初対面では、嫌悪されるのもしょうがな――」

榛名「辛くは無いんですか?」

ブサ督「…………」

ブサ督「……もう慣れた」

ブサ督「物心ついた時から……こんな扱いさ」

榛名「ウソです」

榛名「こんな扱いをずっとされて……辛く無いなんて」

榛名「榛名には信じられません!」

ブサ督「…………」

ブサ督「無駄なんだよ」

榛名「……え?」



672: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:31:40 ID:XndiLEMk


ブサ督「いまさら……辛いとか、嫌だとか言っても」

ブサ督「俺がブ男である事に変わりはない」

ブサ督「いや……変える事は出来ないんだよ」

榛名「でも……」

ブサ督「変わらないと言ってるだろ!」

榛名「っ!」 ビクッ

ブサ督「今までずっとそうだったんだ!」

ブサ督「止めろと言っても嫌だと言っても!」

ブサ督「来る日も来る日も……!」

ブサ督「俺の顔をキモイだのブタ面だの、誰かに言われ続けて来たんだ!!」

榛名「…………」

ブサ督「はあ、はあ……」



673: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:32:31 ID:XndiLEMk


ブサ督「…………」

榛名「…………」

ブサ督「……怒鳴って……悪かった」

榛名「いいえ」

榛名「榛名、嬉しいです」

ブサ督「……何?」

榛名「ブサイク提督さんの正直なお気持ちを聞けました」

ブサ督「…………」 ポカーン

榛名「ブサイク提督さん」

ブサ督「お、おう」

榛名「榛名は、ずっとブサイク提督さんのお傍に居ます」

榛名「これからもどんどん正直なお気持ちを榛名にぶつけてください」



674: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:33:57 ID:XndiLEMk


ブサ督「…………」 ポカーン

榛名「うふふ♪」

ブサ督「…………」

ブサ督「……なあ、榛名」

榛名「はい」

ブサ督「君は……もしかして――」

     コンコン ガチャ

電「お待たせしました、ブサイク司令官さん」

電「技術主任さんをお連れしました」

ブサ督「っ!」 ビクッ!

電「……お取込み中でしたか?」

ブサ督「い、いや、大丈夫だ」



675: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:34:59 ID:XndiLEMk


ブサ督「こほん」

ブサ督「では、技術主任、作戦室へ来てくれ」

技術主任「了解です」

ブサ督「それと……榛名、電」

榛名「はい」

電「はい」

ブサ督「悪いんだが、しばらく執務室と作戦室は立ち入り禁止にする」

ブサ督「これは命令だ」

榛名「えっ……」

電「わかりました」

榛名「待ってください!榛名はブサイク提督さんと一緒に……」

ブサ督「……そういう問題じゃないんだ、榛名」



676: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:36:05 ID:XndiLEMk


電「榛名さん」

電「ブサイク司令官さんは『命令』と言ったのです」

電「どんなに親しい人でも……見せられない事が軍にはあるのです」

榛名「…………」

榛名「……榛名、分かりました」

ブサ督「電、榛名の事、よろしく頼む」

電「お任せください」

電「失礼します」

榛名「……失礼します」

     ガチャ キィ パタン

ブサ督「…………」



677: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:37:11 ID:XndiLEMk



―――――――――――


大本営 元帥の執務室


元帥「…………」

     コンコン

元帥「誰だ?」

フツ督「私です、元帥閣下」

元帥「入ってくれ」

     ガチャ キィ パタン

フツ督「失礼します」

元帥「時間にはまだ早いが、進展があったのか?」

フツ督「はい。それともう一つ」



678: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:38:42 ID:XndiLEMk


元帥「む?」

フツ督「まず……ブサイク提督との話で思い出したのですが」

フツ督「ある事について、元大将と連絡を取り」

フツ督「かなり使えそうなネタを入手しました」

元帥「ほう……」

フツ督「奴を挑発するのに持ってこいのネタです」

フツ督「これは期待していてください」

元帥「うむ」

フツ督「次に天龍の動向ですが……」

元帥「何か掴めたのか?」



679: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:39:34 ID:XndiLEMk


フツ督「北海道から東北にかけての」

フツ督「防衛網に異常が無いか調べましたが」

フツ督「ここ数日、特に変わった事は無いそうです」

元帥「そうか……」

フツ督「そこで沿岸部付近の街や村を調べてみたのですが」

フツ督「数件、ガソリン泥棒が発生していました」

元帥「なるほど……燃料狙いか」

フツ督「ガバガバとは思いたくありませんが」

フツ督「防衛網は天龍にとって大した障害では無かった模様です」

元帥「現在位置は分かるのかね?」

フツ督「おそらく……関東沿岸部付近に到達したくらいかと」

元帥「至急、関東沿岸部に注意喚起をせねばな」



680: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:40:21 ID:XndiLEMk


フツ督「…………」

フツ督「それなんですが、元帥閣下」

元帥「む?」

フツ督「あえて、放っておくのはどうでしょうか?」

元帥「何?」

フツ督「天龍の狙いはイケメン提督一人」

フツ督「このまま泳がせておけば、切り札として使えるかもしれません」

元帥「…………」

元帥「……フツメン提督」

フツ督「はい」

元帥「今のは聞かなかった事にしておこう」

フツ督「分かりました」



681: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:41:20 ID:XndiLEMk


元帥「関東沿岸地域に大本営直属の艦娘部隊を要所で待機」

元帥「連絡を受けたら急行出来るよう手配をしておけ」

フツ督「了解です」

元帥「もし忘れたりしたら」

元帥「今のやり取りを龍田に伝えるからな?」

フツ督「誠心誠意、やらせていただきます!」

元帥「よろしい。では、行ってよし」

ブツ督「失礼します」

     ガチャ キィ パタン

元帥「…………」

元帥「ふう……」

元帥「あやつの冗談は笑えん上に」

元帥「心臓に悪いな……」



682: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:42:12 ID:XndiLEMk



―――――――――――


南方鎮守府 談話室


     ガヤ ガヤ

電「で、ここが談話室になります」

榛名「……はい」

電「…………」

電「少し、休憩しましょうか?」

榛名「……そうですね」

電(……さっきから上の空なのです)

電「な、何か……飲み物でも持ってきますので」

電「そちらに座っててください」

榛名「……はい」



683: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:43:12 ID:XndiLEMk


榛名「…………」

榛名「…………」

川内「ねえ」

榛名「はい?」

川内「あんたかな?」

川内「ブサイク提督と一緒だった離島艦娘って」

榛名「はい。榛名の事です」

川内「ふうん」

川内「…………」

榛名「……あの、何でしょうか?」



684: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:44:24 ID:XndiLEMk


川内「いやね、仕方なかったとはいえ」

川内「あのブサイク提督としばらく一緒だったんでしょ?」

榛名「はい。それが何か?」

川内「何か、さ」

川内「やらしー事でもされなかった?」

榛名「…………」

榛名「どうしてそんな事を聞くんですか?」

川内「だってあの見た目でしょ?」

川内「どう考えたって、女の子に飢えて良からぬ事を……」

     ダンッ!!

川内「わっ!?」

榛名「…………」



712: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:39:20 ID:TTdZ85hY


川内「な、なに机叩いて怒ってんのよ?」

榛名「……本当は」

榛名「あなたの顔を叩きたかったのを我慢したんです」

川内「えっ」

榛名「ブサイク提督さんは……とてもお優しい方です」

榛名「少なくとも榛名は、一緒に居て不愉快だと思った事は」

榛名「一度もありませんでした」

川内「…………」

榛名「……それとも」

榛名「あなたは、ブサイク提督さんに何か嫌な事をされたんですか?」

川内「……そりゃ言われてみれば」

川内「無いけど……」



686: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:46:30 ID:XndiLEMk


榛名「あなたのお名前は?」

川内「……川内」

榛名「川内さん、ですね」

榛名「あなたは人を見た目で判断する嫌な人だと」

榛名「榛名は覚えました」

川内「なっ!?」

榛名「用がお済みなら、もう榛名に構わないでください」

川内「この……!」

電「川内さん?」

川内「!」

電「ど、どうかしたのですか?」



687: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:47:35 ID:XndiLEMk


川内「…………」

川内「……何でもない」

     スタ スタ スタ…

電「……?」

電「榛名さん、何かあったのですか?」

榛名「…………」 ポロポロ

電「あえっ!?」

電「な、何で泣いてるのですか!?」

榛名「……榛名にも分かりません」

榛名「どうして……こんなに悲しいのか……」

電「…………」

電「……良かったら話してください」

榛名「…………」



688: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:48:29 ID:XndiLEMk


榛名「上手く……話せるかどうか……」

電「少しずつでいいのです」

電「少しずつで……」

榛名「…………」

榛名「……ブサイク提督さんは」

榛名「自分がブ男である事実は変わらないと」

榛名「誰からそう言われても仕方ないと、これが普通なんだと」

榛名「言ってました」

電「…………」

榛名「でも榛名は知りました」

榛名「ブサイク提督さんは、心からそう思っている訳じゃないと」

電「…………」



689: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:49:26 ID:XndiLEMk


榛名「榛名は……」

榛名「そんなブサイク提督さんのお気持ちを考えてしまって」

榛名「目の前でそれを言って来る人に……怒りを覚えました」

電「…………」

榛名「……ブサイク提督さんは」

榛名「今までずっと……そしてこれからもずっと」

榛名「誰かに、あんな風に思われ続けるのかと思うと」

榛名「悲しくて……悲しくて……」

電「榛名さん……」

電「…………」

電「ごめんなさい、榛名さん」

榛名「えっ?」



690: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:50:25 ID:XndiLEMk


電「電も……少しそう思っている一人なのです」

榛名「…………」

電「もちろん、ブサイク司令官さんが酷い事をする人とは」

電「今はもう思っていません……でも」

榛名「でも?」

電「心のどこかで……見た目で判断してる部分があるのです」

榛名「…………」

電「ちょっとお聞きしたいのですが」

電「榛名さんは、どうしてそこまでブサイク司令官さんの事を」

電「信用できるのですか?」

榛名「え……」

榛名「…………」



691: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:51:21 ID:XndiLEMk


電「あっ、その……答えにくい質問だと思います」

電「きっと……榛名さんは」

電「電の知らないブサイク司令官さんのお顔を知っているからだと思います」

榛名「電さんの知らないブサイク提督さんのお顔……」

榛名「……そうですね」

榛名「榛名、少し気分が良くなりました」

電「……きっと川内さんも」

電「心の底からブサイク司令官さんの事を」

電「悪く思っている訳ではないと思います」

榛名「……そうだといいですね」

電「電が後で川内さんに榛名さんのお気持ちを話しておきます」

電「誤解は、きっと解けるのです」



692: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:52:10 ID:XndiLEMk


榛名「誤解、ですか……」

電「争いは誤解から始まるものも多いのです」

電「後で、どうしてこうなったのだろう?」

電「と、思う事も多いのです」

榛名「……そういうもの、ですか」

電「もちろん、何もかもがそう、という訳ではありませんが」

榛名「ふふふ」

電「あはは」

榛名「飲み物……もらってもいいですか?」

電「どうぞなのです」

榛名「いただきます」



693: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:53:03 ID:XndiLEMk



―――――――――――


南方鎮守府 作戦室


ブサ督「…………」

ブサ督「……よし」

ブサ督「これらの文書化を頼む」

技術主任「分かりました」

ブサ督「それと、これらの情報は一切口外してはならない」

ブサ督「家族にもだ。漏らした場合、処罰の対象になる」

技術主任「心得てます」

ブサ督「よろしい」

ブサ督「…………」



694: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:54:10 ID:XndiLEMk



―――――――――――


大本営 廊下付近


     ピピー ガガッ

フツ督「!」

フツ督「……こちらフツメン提督」

ブサ督『こちらブサイク提督』

ブサ督『今、大丈夫か?』

フツ督「……ちょっと場所が悪い」

フツ督「移動するから、少し待っててくれ」

ブサ督『了解』



695: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:55:04 ID:XndiLEMk



―――――――――――


大本営 屋上


フツ督「……待たせた」

フツ督「どうだった?」

ブサ督『……ビンゴだ』

フツ督「そうか……」

ブサ督『…………』

フツ督「これほど当たって嬉しくない事も珍しいな……」

ブサ督『同感だ』

フツ督「文書化はどれくらいかかる?」

ブサ督『もうすぐ終わる』



696: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:56:16 ID:XndiLEMk


フツ督「仕事が早くて助かる」

ブサ督『…………』

ブサ督『……これは公表して良い事なのか?』

フツ督「本来は良くない……が」

フツ督「イケメン提督を罪に問えて民衆の目を覚まさせられる」

フツ督「最大のチャンスなんだ」

ブサ督『…………』

ブサ督『……では』

ブサ督『俺からも提案がある』

フツ督「提案?」



697: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:57:08 ID:XndiLEMk


ブサ督『今、南方鎮守府にブンヤどもが来ていてな』

ブサ督『その取材を受けようと思う』

フツ督「……やめておけ」

フツ督「お前に対するイメージが下がるだけだぞ?」

ブサ督『だが……イケメン提督を油断させるのには』

ブサ督『最適だ』

フツ督「!」

フツ督「…………」

ブサ督『…………』

フツ督「……言っておくが」

フツ督「相当辛い事だぞ?」

ブサ督『一時的に土俵際へ追い込まれるだけだ』

ブサ督『堪えて見せる』

フツ督「…………」



698: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:58:20 ID:XndiLEMk


フツ督「……分かった」

フツ督「こっちにはいつ来れる?」

ブサ督『……明日の夕方くらいか』

ブサ督『遅くとも明日中には会えると思う』

フツ督「分かった」

フツ督「決戦は明後日に予定しておこう」

ブサ督『強行スケジュールだな……』

フツ督「仕方ないだろう」

フツ督「余り各方面鎮守府を指揮官不在にしたくないしな」

ブサ督『……それもそうか』

ブサ督『天龍の方はどうなっている?』



699: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 19:59:14 ID:XndiLEMk


フツ督「行方不明のままだ」

フツ督「一応、怪しい出来事は掴めたので」

フツ督「絞り込みをかけている」

ブサ督『……分かった』

ブサ督『詳しい事は直接会った時に』

フツ督「ああ、そうそう」

ブサ督『ん?』

フツ督「頭に包帯くらい巻いとけ」

ブサ督『……了解』

フツ督「それじゃ、大本営で待ってる」

ブサ督『ああ』

ブサ督『通信終了』

フツ督「通信終了」



700: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 20:00:09 ID:XndiLEMk


大本営 元帥の執務室


フツ督「……という感じです」

元帥「ふむ……」

フツ督「いかがでしょうか?」

元帥「…………」

元帥「……正直を言えば」

元帥「海軍が無傷で済む方法が良かったが」

元帥「やむを得まい」

フツ督「では、このまま進めます」

元帥「ああ」



701: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 20:00:56 ID:XndiLEMk


元帥「それにしてもブサイク提督には頭が下がるな」

フツ督「……元帥閣下から言われると恐縮するでしょうね」

元帥「ふん……私はそれほど賢い存在ではない」

元帥「議会工作ばかり上手くなってしまった」

フツ督「得手不得手は誰にでもありますよ」

元帥「…………」

元帥「そうか……」

元帥「では、そろそろ私は休むとしよう」

フツ督「はい。どうか、いい夢を」

元帥「うむ」

     ガチャ キィ パタン

元帥「…………」



702: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 20:02:13 ID:XndiLEMk



―――――――――――


翌日の朝

帝都 ホテル、ロビー付近の売店


     ガヤ ガヤ

イケ督「〇×新聞を」

     ハイ

イケ督「ありがとう」

イケ督「…………」

イケ督「んん?」



703: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 20:03:27 ID:XndiLEMk


     南方司令官 疲弊の事実認める!

イケ督(…………)

イケ督(……担当司令官・ブサイク提督は語る)

イケ督(南方戦線は非常に不安定……)

イケ督(その為の補給を要請)

イケ督(…………)

イケ督(イケメン提督の奪取した海域について語らず)

イケ督(本社記者の追及により、撤退の事実を一部認める……)

イケ督(くくく……)

イケ督(そうりゃそうだろうな……)

イケ督(ご苦労さん、ご苦労さん)

イケ督(すべての罪を被ってくれてありがとうよ)



704: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/02(月) 20:04:05 ID:XndiLEMk


イケ督(…………)

イケ督(これでようやく俺も大将か)

イケ督(結構あっという間だった)

イケ督(…………)

イケ督(大将になったら、何をするかなぁ)

イケ督(くくく……)

イケ督(…………)

イケ督(あーもう……上手く行きすぎて)

イケ督(怖いくらいだぜ……!)



714: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:40:58 ID:TTdZ85hY



―――――――――――


夕方

帝都 軍用空港エントランス付近


     ガヤガヤ

龍田「…………」

龍田「……あ、あの人かしら?」

     テク テク テク

龍田「わ……」

ブサ督「ん?」

榛名「…………」

龍田「……失礼しました」



715: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:41:59 ID:TTdZ85hY


龍田「ブサイク提督……ですね?」

ブサ督「そうだが?」

龍田「私はフツメン提督の秘書艦をやっております」

龍田「龍田、と申します」

龍田「以後、お見知りおきを」

ブサ督「君がフツメン提督の……それで」

ブサ督「肝心のフツメン提督はどこに?」

龍田「大本営で待ってます」

龍田「こちらの裏口に車を用意してますので、どうぞ」

ブサ督「……その車には榛名を頼む」

ブサ督「俺はこのまま空港玄関ロビーから車を拾うから不要だ」



716: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:42:55 ID:TTdZ85hY


榛名「!」

龍田「え……でも」

龍田「新聞記者が待ち構えてますよ?」

ブサ督「それも分かってる」

ブサ督「俺が到着時間を教えたからな」

龍田「なら、なおさら……」

ブサ督「あくまでイケメン提督の目を眩ませる為だ」

ブサ督「俺は囮にすぎん」

龍田「…………」

龍田「分かりました」

龍田「それじゃあ、榛名ちゃん?」

榛名「嫌です」

榛名「榛名は、ブサイク提督さんと一緒に……」



717: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:43:43 ID:TTdZ85hY


ブサ督「榛名」

ブサ督「俺を困らせないでくれ」

榛名「…………」

龍田「…………」

榛名「……分かりました」

ブサ督「うん……大本営でまた会おう」

榛名「はい」

ブサ督「それじゃ、龍田」

ブサ督「よろしく頼む」

龍田「了解です」

     スタ スタ スタ…



718: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:44:21 ID:TTdZ85hY



―――――――――――


帝都 軍用空港玄関ロビー付近


     ガヤ ガヤ

A「…………」

A「……あ!来たぞ!」

     ダダダダダダ…

A「〇×新聞のA記者です!」

A「南方海域の撤退責任はどう取るおつもりですか!?」

ブサ督「ノーコメントです」

B「□〇新聞のB記者です!」

B「犠牲になった艦娘はどのくらい居るのでしょうか!?」

ブサ督「…………」



719: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:45:04 ID:TTdZ85hY


C「△△新聞のC記者です!」

C「皇国国民に対して」

C「何か言わなければならない事があるのではないでしょうか!?」

     ワー ワー

ブサ督「ノーコメント!」

ブサ督「ノーコメント!」


榛名「…………」 ギリッ…

龍田「榛名ちゃん……堪えようね」

榛名「……はい」

龍田「…………」



720: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:46:08 ID:TTdZ85hY


龍田「さ……ここに長居は無用よ」

龍田「大本営でブサイク提督さんと合流できるわ」

榛名「……分かりました」

榛名「…………」

―――――――――――

宵の口

大本営の一室


フツ督「じゃ、正面玄関までブサイク提督を迎えに行ってくる」

龍田「はぁ~い」

     パタン

龍田「それじゃ榛名ちゃん、改めて。私は龍田」

龍田「西方鎮守府の秘書艦をやってるわ」



721: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:47:03 ID:TTdZ85hY


大淀「初めまして」

大淀「北方鎮守府の秘書艦をやっている」

大淀「大淀です」

大淀「以前は、ブサイク提督の下で働いていました」

榛名「初めまして」

榛名「榛名は、南方鎮守府の秘書艦代理として来ました」

龍田「代理?」

榛名「事情がありまして……」

榛名「ブサイク提督さんが仰るには」

榛名「榛名は、フツメン提督さんの許可がないと」

榛名「一緒に居られないとかで……」



722: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:48:04 ID:TTdZ85hY


龍田「……もしかしたら離島艦娘?」

榛名「はい」

大淀「という事は、榛名さんは西方海域で発見された」

大淀「という事ですね?」

榛名「そうなります」

大淀「…………」

龍田「…………」

榛名「?」

龍田「……あのね、榛名ちゃん」

榛名「はい」

龍田「あなたって、ブサイク提督さんと、どのくらいのお付き合いなの?」

榛名「ええと……3日くらい、でしょうか?」



723: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:49:03 ID:TTdZ85hY


大淀「…………」

龍田「…………」

龍田「……そんな短期間なのに」

龍田「随分とブサイク提督さんの事、慕ってるわね?」

榛名「おかしいですか?」

龍田「だって、出会って3日でしょう?」

龍田「それであんなに怒りを見せるほどの仲になったの?」

榛名「……そんなに不思議な事なのでしょうか?」

龍田「そりゃ蓼食う虫も好き好き、とは言うけど……」

大淀「…………」

榛名「……実はブサイク提督さんにも不思議がられてます」



724: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:49:57 ID:TTdZ85hY


龍田「あら」

榛名「榛名は、最初からブサイク提督さんのお顔を見ているだけで」

榛名「何故か安心できるし、心が落ち着きました」

榛名「そして、この人のお傍に居られる事が、何よりも幸せで……」

龍田「榛名ちゃん」

榛名「はい?」

龍田「それちょっと怖い」

榛名「え?」

龍田「だって出会って間もなく好き好き~って言われるのよ?」

龍田「ちょっと引いちゃうわ……」

榛名「そ、そんな事……」

龍田「…………」



725: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:51:05 ID:TTdZ85hY


     ガバッ!

榛名「!?」

龍田「きゃあ~榛名ちゃん!」

龍田「好き好き~」

榛名「えっ?ちょ……何ですか?いきなり!」

     スッ…

龍田「……どう?」

龍田「程度に差はあるけど、榛名ちゃん」

龍田「あなたがブサイク提督さんにやってる事はこれよ」

榛名「!?」

龍田「あなたは嬉しく思った?」

榛名「…………」

榛名「……気持ち悪かったです」



726: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:51:56 ID:TTdZ85hY


龍田「そう正直に言われると少し傷つくけど」

龍田「言いたい事は伝わって嬉しいわ」

榛名「…………」

榛名「榛名は……間違っていたのですか?」

龍田「んー……誰かを好きになるのは間違いではないわ」

龍田「でも……相手の気持ちを考えないのは、よろしくないわね」

榛名「相手の……気持ち」

龍田「そう」

龍田「少しずつでいいの」

龍田「何をやったらダメで、何をやったら喜んでくれるのか」

龍田「好きな人とお話をいっぱいして、学んでいくの」



727: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:53:01 ID:TTdZ85hY


龍田「それが……大事な事なのよ」

榛名「はい!」

榛名「榛名、学びます!」

榛名「榛名はブサイク提督さんとたくさんお話します!」

龍田「す、少しずつ、を忘れないように、ね?」

榛名「はい!」

龍田(……本当に大丈夫かしら、この娘)

大淀(……離島艦娘は変わり種が多い、とは聞いてましたが)

大淀(明石さんとかで慣れてる私の方が異常なのでしょうね)

大淀「ごほん!」

大淀「それでは……本題に入ってよろしいでしょうか?」



728: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:54:10 ID:TTdZ85hY


榛名「あ、はい」

龍田「ごめんなさいね。いいわよ」

大淀「ありがとうございます」

大淀「とは言いましても……確認事項にすぎないんですけどね」

榛名「確認事項?」

大淀「まず……私は事情があって」

大淀「直属の上司である、イケメン提督に会わないようにしています」

大淀「そのため、ホテルではなく、ここ大本営の一室をお借りしているんです」

榛名「そうだったのですか……」

大淀「それから……フツメン提督によりますと」

大淀「私は明日、行われる緊急記者会見での切り札だと言われたんですが」

大淀「詳細は明らかにされませんでした」

龍田「……相変わらず腹黒いんだから」



729: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:55:24 ID:TTdZ85hY


大淀「そして、ブサイク提督なんですが……」

大淀「イケメン提督を油断させるために今はあえて」

大淀「好奇の目に晒される事を選びました」

榛名「…………」

大淀「以上が、現在の状況の確認事項となります」

大淀「榛名さんにとっては、辛い事でしょうが……」

大淀「どうか自重を心がけてください」

大淀「明日までの辛抱です」

榛名「……分かりました」

龍田「…………」

龍田(明日まで、か……)



730: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:56:17 ID:TTdZ85hY


     コン コン

フツ督「龍田、いいか?」

龍田「あら、早かったわね」

龍田「どうぞ」

     ガチャ

フツ督「待たせたな」

龍田「そんな事ないわよ」

     キィ パタン

ブサ督「ふう……」

榛名「お疲れ様です、ブサイク提督さん」

ブサ督「ああ、疲れたよ、榛名」

大淀「ブサイク提督……」

ブサ督「大淀……」



731: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:57:26 ID:TTdZ85hY


大淀「本当に……本当にすみませんでした」

ブサ督「…………」

大淀「あなたが残してくれた戦術書」

大淀「あれが無かったら……私たち北方鎮守府の艦娘は」

大淀「大勢死者が出ていたと思います……」

ブサ督「…………」

大淀「どれだけ謝っても私の無礼は許される事では無いと思います」

大淀「それでも、それでも……どうか謝罪させてください」

ブサ督「…………」

ブサ督「顔を上げてくれ、大淀」

大淀「…………」



732: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:58:09 ID:TTdZ85hY


ブサ督「高雄たちにも似た様なこと言われたけどな」

ブサ督「わだかまりが無い、と言えばウソになるが……」

ブサ督「分かってくれたなら、嬉しく思う」

大淀「ブサイク提督……」

ブサ督「俺の残した戦術書が役に立って良かった」

ブサ督「また大淀の元気な姿が見れて、何よりだよ」

大淀「ありがとう……ございます……!」

榛名「…………」

ブサ督「さて、本題に入る前にフツメン提督」

フツ督「ん?」

ブサ督「榛名の事なんだが……彼女は例の離島で発見したんだ」

フツ督「…………」



733: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:58:53 ID:TTdZ85hY


フツ督「……ああ、そういう事か」

フツ督(所有権……こういうところは筋を通す男だが)

フツ督(自分から特定の艦娘を欲しがるのは珍しいな?)

ブサ督「…………」

フツ督「いいぞ。喜んでお前に所有権を譲ろう」

ブサ督「すまない」

フツ督「別にいいさ」

フツ督「今、南方は極端な戦力不足」

フツ督「戦艦級が喉から手が出るほど欲しいのは分かるさ」

ブサ督「……まあな」

榛名「これで、榛名は名実共にブサイク提督さんのものですね♪」



734: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 13:59:41 ID:TTdZ85hY


フツ督「…………」

フツ督(……なあ龍田)

龍田(何かしら?)

フツ督(榛名は……ブサイク提督に惚れてるのか?)

龍田(見れば分かるでしょ)

フツ督(いや、そうなんだが……まあいい)

フツ督「じゃあ……本題に入ろう」

―――――――――――

フツ督「――という感じだ」

ブサ督「…………」

榛名「…………」

龍田「…………」

大淀「…………」



735: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:00:43 ID:TTdZ85hY


ブサ督「……公開処刑か」

ブサ督「やる事がえげつない」

フツ督「不服か?」

ブサ督「あの情報を知らなければな」

ブサ督「あれを知った以上、異論はない」

フツ督「そう言ってくれるとありがたいよ」

フツ督「後は……」

大淀「天龍さんの事ですね……」

龍田「天龍ちゃんはどうなってるの?」

フツ督「その事なんだが……」

フツ督「茨城沿岸の漁村での燃料泥棒以降、騒ぎが途切れた」



736: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:01:34 ID:TTdZ85hY


龍田「行方不明って事?」

フツ督「そうなる」

フツ督「元帥閣下にも伝えて、関東沿岸部近海を」

フツ督「それとなく見張っている状況だ」

ブサ督「…………」

フツ督「燃料タンクを抱えながら夜間に移動しているのでは?」

フツ督「と推測して、対処を強化している」

龍田「対処、ね……」

フツ督「……願わくば、投降してくれる事を祈ろう」

龍田「…………」

大淀「…………」

榛名「…………」

ブサ督「…………」



737: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:02:07 ID:TTdZ85hY


フツ督「さて……そろそろいい時間だ」

フツ督「ホテルに部屋を用意してある」

フツ督「俺が案内しよう」

ブサ督「分かった」

     ガチャ キィ

榛名「…………」

ブサ督「……何で榛名が付いて来るんだ?」

榛名「えっ?」

榛名「ご迷惑……ですか?」

ブサ督「いや、迷惑とかそういう話じゃ……」

フツ督「別に構わないだろ?」

フツ督「俺も龍田と一緒の部屋だし」



738: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:03:16 ID:TTdZ85hY


ブサ督「えっ……本当か?」

フツ督「ああ」

ブサ督「…………」

ブサ督「じゃあ……二人はそういう関係なのか?」

龍田「ええ。そうだけど?」

ブサ督「…………」

ブサ督「いやいやいや……流されそうになったけど」

ブサ督「俺と榛名はそういう関係じゃ……」

榛名「でも、ブサイク提督さん」

榛名「あの離島で榛名たちは、一つのテントで一緒に寝ましたよね?」

ブサ督「」

大淀「…………」



739: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:04:13 ID:TTdZ85hY


フツ督(ぷっ……くくくっ……!)

フツ督「なんだ……もうそういう仲じゃないか」

ブサ督「い、いや、それはマラリアとかを、だな」

大淀「……よろしいじゃないですか」

ブサ督「大淀!?」

大淀「きっと……榛名さんはブサイク提督の」

大淀「本質を見抜いている、という事なのでしょう」

ブサ督「…………」

大淀「それに」

大淀「女の子が了承しているのにそれを拒むなんて」

大淀「榛名さんに恥をかかせている様なものですよ?」



740: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:04:59 ID:TTdZ85hY


ブサ督「ええぇ……」

龍田「ブサイク提督さん」

龍田「諦めてエスコートしてあげた方がいいわよ?」

榛名「…………」

ブサ督「…………」

ブサ督「……分かった」

ブサ督「行こう、榛名」

榛名「はい!」

フツ督「それじゃ、大淀とはここで」

大淀「はい。お休みなさい、皆さん」

フツ督「ああ、君もな」

     パタン



741: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:05:49 ID:TTdZ85hY



―――――――――――




帝都 ホテルの一室


ブサ督「…………」

榛名「うわぁ、大きなベッドですね!」

榛名「二人でも余裕で寝れます♪」

ブサ督「は、榛名……あのな」

榛名「はい?」

ブサ督「その……男と女が一つの寝床を共にするって」

ブサ督「意味分かってるのか?」



742: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:06:33 ID:TTdZ85hY


榛名「……?」

榛名「一緒に寝る、という事でしょう?」

ブサ督「うん、知らないみたいで安心した」

榛名「教えていただけるのですか?」

ブサ督「いやその……俺の口からは……」

榛名「?」

ブサ督「と、とにかく!」

ブサ督「榛名は、俺と一緒に寝る、という事は」

ブサ督「一緒に睡眠をとる、と理解しているんだな?」

榛名「……違うのですか?」

ブサ督「……今はその認識でいい」

ブサ督(南方に帰ったら誰かに榛名の性教育を頼もう……うん)



743: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:07:28 ID:TTdZ85hY


ブサ督「それじゃ……風呂にでも行って来るか」

榛名「榛名も一緒に……」

ブサ督「だー! 一人で行くから!」

榛名「でも……」

榛名「!」

   「相手の気持ちを考えないのは、よろしくないわね」

榛名「…………」

ブサ督「……榛名?」

榛名「……何でもありません」

榛名「榛名は、ブサイク提督さんがお嫌な事はしません」

ブサ督「……ん」

ブサ督「じゃ……」



744: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:08:21 ID:TTdZ85hY


     スタ スタ スタ…

榛名「…………」

榛名(相手の気持ち……)

榛名(ブサイク提督さんは……榛名の事をどう思っているのでしょうか)

榛名(…………)

榛名(確かに……出会ったばかりだというのに)

榛名(こんな気持ちになるのは変かもしれません)

榛名(……でも)

榛名(榛名のこの気持ちは……ウソ偽りない本当の気持ち)

榛名(それは……真実)

榛名(…………)

榛名(ブサイク提督さん……大好きです)///



745: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:09:11 ID:TTdZ85hY



―――――――――――


翌日の朝


  大本営、本日午前緊急記者会見!


     疑惑釈明か?


釈明会見か?渦中はブサイク提督


   イケメン提督、大将職へ昇進発表?


.



746: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:10:00 ID:TTdZ85hY



―――――――――――


大本営 廊下付近


     テク テク テク

イケ督「ふふん♪ふ~ん♪」

イケ督(急な記者会見には多少驚いたが)

イケ督(世論は俺の味方)

イケ督(例の事を暴露出来ない海軍は)

イケ督(不合理な決断を俺に下す事は不可能)

イケ督(……くくく)

イケ督(いよいよ、俺を大将へ昇進させる気になったか)

イケ督(焦らしてくれるぜ、まったく)

イケ督(…………)

イケ督(……ん?)



747: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:10:49 ID:TTdZ85hY


大淀「…………」

イケ督「大淀?」

大淀「はい?」

大淀「!」

イケ督「どうして大淀がここに居るんだ?」

イケ督「北方鎮守府で何かあったのか?」

大淀「…………」

大淀「……申し訳ありません」

大淀「イケメン提督と話すな、と命令されてまして」

イケ督「!?」

イケ督「……誰にだ?」



748: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:11:33 ID:TTdZ85hY


大淀「それもお答えしかねます」

イケ督「なっ……!?」

大淀「失礼します」

     テク テク テク…

イケ督「…………」

イケ督(どういう事だ?)

イケ督(…………)

―――――――――――

     ピピー ガガッ

イケ督「こちらイケメン提督」

イケ督「北方鎮守府、応答せよ」

     ガガガー ピピー

イケ督「……北方鎮守府、応答せよ」



749: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:12:25 ID:TTdZ85hY


     ガガピー ピピーガガッ

イケ督「クソッ!」

     ブッ…

イケ督(……何だこれは?)

イケ督(何が起こっている?)

イケ督(…………)

イケ督(俺の有利は変わらんが……気になるな)

イケ督(…………)

イケ督(チッ……もう時間が無い)

イケ督(記者会見場に行かないと……)



750: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:13:21 ID:TTdZ85hY



―――――――――――


大本営 記者会見場


     ザワ ザワ

中尉「…………」

中尉「えー各紙、新聞記者の皆さん、お待たせしました」

中尉「時間になりましたので、緊急記者会見を始めたいと思います」

中尉「ご静粛に願います」

     …………

中尉「ありがとうございます」

中尉「それでは、皆様にご紹介いたします」

中尉「皆さんから見まして右側から」

中尉「海軍総司令官であらせられます、元帥閣下でございます」



751: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:14:03 ID:TTdZ85hY


     ザワッ…

元帥「よろしく」

中尉「元帥閣下、ありがとうございます」

中尉「そして、その横からまとめまして順番に」

中尉「西方方面艦隊・鎮守府司令官のフツメン提督」

フツ督「よろしく」

中尉「南方方面艦隊・鎮守府司令官のブサイク提督」

ブサ督「よろしく」

中尉「北方方面艦隊・鎮守府司令官のイケメン提督」

イケ督「よろしく」

中尉「以上になります」



752: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:15:02 ID:TTdZ85hY


中尉「えー司会進行はわたくし、中尉が行います」

     …………

中尉「それでは、まず」

中尉「フツメン提督から、記者会見の概要を述べたい、との事ですので」

中尉「フツメン提督、どうぞ」

フツ督「ありがとう、中尉」

     …………

フツ督「えーご紹介にあずかりました、フツメン提督です」

フツ督「まず、今回の記者会見の概要ですが……」

フツ督「ある指揮官について、非常に重大な事実が判明しましたので」

フツ督「それをお知らせするために急遽、開いたものである」

フツ督「と言っておきましょう」

     ザワッ…



753: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:15:51 ID:TTdZ85hY


フツ督「それでは、焦らす様で申し訳ありませんが」

フツ督「少々前提となるお話をしておきます」

     …………

フツ督「我々各方面艦隊司令官と大本営は、緊密に連携を取っていますが」

フツ督「さすがに緊急事態……急に出て来た敵の対処や」

フツ督「海域の攻略などに関して、現地指揮官に一任されています」

     …………

フツ督「これはいちいち大本営の指示を仰いだりしていては」

フツ督「対処に時間が掛かり、手遅れになる場合もあるためと」

フツ督「ご理解ください」

     …………



754: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:16:55 ID:TTdZ85hY


イケ督「…………」

イケ督(……何故そんな当たり前の事をいまさら?)

ブサ督「…………」

     …………

フツ督「それでは、本題に入りましょう」

フツ督「先日、私と元帥閣下はイケメン提督と面談を行いまして」

フツ督「そこで奇妙な話を彼から聞いたのです」

イケ督「……?」

ブサ督「…………」

フツ督「それは、艦娘の遠征部隊の行方不明、というものでした」

イケ督「!?」

     ザワッ…



755: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:17:29 ID:TTdZ85hY


フツ督「遠征は、ご存じの方も多いと思われますが」

フツ督「比較的安全が確保されたルートを通り」

フツ督「資源確保などの雑任務をこなす作業の為」

フツ督「深海棲艦との遭遇戦は多少あれど、行方不明や全滅などは」

フツ督「ほとんどありません」

イケ督「…………」

     …………

フツ督「ですが……無かった事ではない」

フツ督「それもまた事実です」

イケ督(……さっきから何が言いたいんだ?)



756: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:18:25 ID:TTdZ85hY


フツ督「しかしながら……」

フツ督「少し気になった私は、イケメン提督がかつて指揮を執っていた」

フツ督「南方方面艦隊・鎮守府の記録を、ここに居る」

フツ督「ブサイク提督に調べてもらいました」

イケ督「!!」

イケ督(な、なに!?)

     …………

フツ督「すると……」

フツ督「イケメン提督が着任していた時期だけで」

フツ督「実に2部隊……人数にしますと」

フツ督「12名もの艦娘が遠征任務で行方不明となっていました」

     ザワッ…!

イケ督(くっ……!)

ブサ督「…………」



757: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:19:14 ID:TTdZ85hY


フツ督「しかし、先ほども言いましたが」

フツ督「遠征任務で部隊全員が行方不明になった事例はあります」

フツ督「イケメン提督の指揮の下、不幸な偶然が重なった」

フツ督「とも言えなくもない」

イケ督「おい……さっきから私をどう」

フツ督「だが!」

イケ督「っ!?」 ビクッ

     …………

フツ督「ブサイク提督の調べで分かった事はこれだけでは無かった」

イケ督「…………」



758: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:20:25 ID:TTdZ85hY


フツ督「行方不明になった遠征部隊の艦娘はすべて」

フツ督「緊急規制が掛けられていたのです」

イケ督(!!)

イケ督(バカな!……あれは通常の調べ方では出てこないハズ)

ブサ督「…………」

イケ督(どうしてこのブ男はそこへ行きついた!?)

     …………

フツ督「記者の皆さんには馴染みの無い言葉でしょう」

フツ督「軍事機密に関しますので簡単に説明しますが」

フツ督「司令官権限で艦娘の通信機能をオフにする」

フツ督「という処置だとご理解してください」

     ザワッ…!

イケ督「…………」

ブサ督「…………」



759: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:21:35 ID:TTdZ85hY


フツ督「ここまで言えば、勘の良い記者さんは疑問に思った事でしょう」

フツ督「なぜ、比較的安全な任務で通信を出来なくさせていたのか?」

フツ督「と」

     ザワ ザワ

中尉「皆さん、ご静粛に願います」

     …………

中尉「どうぞ、フツメン提督、お続けください」

フツ督「ありがとう、中尉」

フツ督「えーこの緊急規制という機能ですが」

フツ督「通常は無線封鎖など、隠密作戦などで使うのが一般的です」

フツ督「私が知る限り、遠征任務では必要のない機能と認識しています」

イケ督「…………」



760: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:22:21 ID:TTdZ85hY


フツ督「そこでイケメン提督にお尋ねしますが」

フツ督「どの様な作戦意図があって」

フツ督「緊急規制を遠征部隊に使用したのでしょうか?」

     …………

イケ督「…………ぐ」

イケ督「軍事機密に……関わるので」

イケ督「この場での回答は控えさせていただきます」

     …………

フツ督「分かりました」

フツ督「それでは、それらを踏まえた上で」

フツ督「北方鎮守府の行方不明部隊を調べてみたのですが」

フツ督「そこでも重要な事が判明しました」



761: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:23:13 ID:TTdZ85hY


     ザワッ

イケ督(クソッ!)

イケ督(これ以上何が分かったんだ!)

フツ督「ここでゲストを呼びたいと思います」

フツ督「中尉」

中尉「了解です」

     …………

中尉「それでは、ご紹介します」

大淀「…………」

中尉「彼女は、北方方面艦隊鎮守府で秘書艦をやっている」

中尉「大淀、と呼ばれている艦娘です」

大淀「……よろしくお願いします」

     …………



762: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:24:03 ID:TTdZ85hY


フツ督「紹介ありがとう、中尉」

フツ督「さて、大淀」

フツ督「行方不明になった遠征部隊に」

フツ督「緊急規制が掛けられた当時の状況を教えてくれ」

イケ督「!!」

イケ督「ま、待て!」

イケ督「それは軍事機密に抵触する!」

元帥「……私の権限で発言を許可しよう」

イケ督「っ!!」

元帥「続けたまえ」

フツ督「ありがとうございます、元帥閣下」



763: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:24:52 ID:TTdZ85hY


イケ督「…………」 ギリッ…

     …………

フツ督「では、大淀。 話してくれ」

大淀「はい」

大淀「当時……我が鎮守府の主力艦娘は某敵泊地を攻略中でして」

大淀「想定よりも多い敵艦隊から攻撃を受けている」

大淀「と、連絡がありました」

フツ督「ほう」

大淀「行方不明になった遠征部隊に緊急規制が掛けられた時間は」

大淀「ちょうどその連絡の直後くらいになります」

イケ督「……っ」



764: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:25:46 ID:TTdZ85hY


フツ督「ほう……それで?」

フツ督「主力艦娘の方はどうなったのかな?」

大淀「彼女たちの話では……」

大淀「敵からの激しい攻撃を受けていたものの、突然」

大淀「何の前触れもなく攻撃がやみ、撤退に成功した、との事です」

     ドヨッ…

イケ督「…………」

フツ督「ありがとう、大淀」

フツ督「下がってくれ」

大淀「はい」

     …………

フツ督「さて、イケメン提督殿」

フツ督「何か間違いはあるかな?」



765: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:26:27 ID:TTdZ85hY


イケ督「…………」

フツ督「貴殿の戦術がどんなものか、それは私の知るところでは無いが」

フツ督「これでは遠征部隊を囮にでも使ったのかと疑っ」

イケ督「ち、違う!」

イケ督「断じて違う!」

     …………

元帥「……落ち着きたまえ、イケメン提督」

元帥「軍事機密に関わるという貴君の意見を尊重しよう」

イケ督「はっ……」

元帥「だが、後で文書での回答は求めさせてもらう」

イケ督「…………」



766: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:27:16 ID:TTdZ85hY


元帥「フツメン提督」

元帥「貴君も想像でモノを言うのは慎みたまえ」

フツ督「はっ。申し訳ありません」

元帥「では……続けてくれ」

フツ督「了解です」

     …………

フツ督「えーそれでは最後になりますが」

フツ督「新聞各紙で報じられている」

フツ督「ブサイク提督の指揮に対する疑惑について」

フツ督「ここからは本人に申し開きをしてもらいましょう」

     …………

ブサ督「……どうも。ブサイク提督です」



767: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:28:28 ID:TTdZ85hY


ブサ督「一部、軍事機密に触れますが」

ブサ督「元帥閣下の許可を得たので、話せる部分だけ話します」

ブサ督「まず、私が南方鎮守府に着任した当時」

ブサ督「かの地は極端な戦力・物資不足をおこしており」

ブサ督「支配海域の戦線維持すらままならない状況だったと」

ブサ督「言っておきます」

     ザワッ…!

イケ督「…………」

ブサ督「その為、やむを得ず」

ブサ督「一部支配海域を切り捨てる判断を下しました」

ブサ督「自分からは以上です」

     …………

フツ督「ありがとう、ブサイク提督」



768: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:29:31 ID:TTdZ85hY


フツ督「……これはどういう事なのか?」

フツ督「南方はイケメン提督が平定間近まで押していたはず」

フツ督「私も今現在、記者の皆さんと同様の疑問を抱きました」

     …………

フツ督「そして、内密に調べた結果」

フツ督「何と、イケメン提督の独断で南方鎮守府の主力艦娘を」

フツ督「北方鎮守府へと移動させていた事が判明したのです」

イケ督「っ!」

     ザワッ…!

フツ督(このネタは元大将がイケメン提督を糾弾するために)

フツ督(したためていたものだがな)

フツ督(これだけは元大将に感謝しかない)



769: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:30:21 ID:TTdZ85hY


フツ督「……以上の事から」

フツ督「ブサイク提督に何ら落ち度はなく」

フツ督「むしろ主力艦娘不在でロクな戦力も物資も無い中」

フツ督「よく南方鎮守府を守り抜いたものだと」

フツ督「私としては畏敬の念すら抱いている次第であります」

イケ督「…………」

ブサ督「…………」

     …………

元帥「……イケメン提督」

元帥「何か申し開きたい事はあるかね?」

イケ督「…………」

イケ督「こ、これは……大本営からの指示で」



770: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:31:19 ID:TTdZ85hY


フツ督「残念ながら」

フツ督「この当時、大本営が出した指示は」

フツ督「指揮官の交代だけで、戦力の移動は命令されていない」

イケ督「くっ……」

フツ督「冒頭で言ったが」

フツ督「大本営と各方面艦隊司令官は、連絡を取り合い」

フツ督「ある程度の信頼関係で成り立っている」

フツ督「貴殿のこの行為は、その信頼を裏切る行為に他ならないと」

フツ督「私は思うのだが?」

イケ督「そ、そういう事ではない!」

イケ督「そもそもは大本営の指示が原因で大打撃を受けた……」

     !?



771: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:32:04 ID:TTdZ85hY


イケ督「あっ……」

     ザワ ザワ…

元帥「……イケメン提督」

元帥「大打撃を受けた……とは、どういう事かね?」

元帥「私は何も聞いておらぬが?」

イケ督「!!」

イケ督(しまった……!)

イケ督(疑惑をこれだけ向けられた状態で)

イケ督(元帥にしらを切られたら……!)

イケ督(大打撃を受けた責任を俺のせいにされてしまう!!)

イケ督(ハメられた!)

ブサ督「…………」



772: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:32:56 ID:TTdZ85hY


イケ督「ま、待ってください!」

イケ督「そ、そもそもの問題なんです!」

イケ督「私は、大将閣下からの命令に従っ」

元帥「もう良い!」

元帥「くだらない言い訳は皇国軍人らしからぬぞ!」

イケ督「ぐっ……!」

     ザワ ザワ…

中尉「静粛に、静粛に願います」

     …………

中尉「……それではフツメン提督」

中尉「他に何かありますでしょうか?」



773: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:33:43 ID:TTdZ85hY


フツ督「……私からは以上です」

中尉「ありがとうございました」

中尉「えー続きまして」

中尉「元帥閣下より、総括してのお言葉がございます」

中尉「元帥閣下、どうぞ」

元帥「うむ」

     …………

元帥「まず、新聞各社の皆さんの報道に関する熱意は」

元帥「十分すぎるほど理解している」

     …………

元帥「しかしながら」

元帥「海軍総司令官としては今回、過剰に報道された部分もあり」

元帥「いささか憤りも感じるところであると、言わざるを得ない」



774: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:34:32 ID:TTdZ85hY


     …………

元帥「よって、ここである程度の決定を発表しようと思う」

     !?

元帥「まず、元大将の辞職に伴う大将職人事だが」

元帥「これの候補にイケメン提督は入れない事を伝える」

イケ督「……っ」

     …………

元帥「次に」

元帥「イケメン提督とブサイク提督についてだが」

元帥「懸案についての文書の提出を求め」

元帥「その文書の内容によっては何らかの処分を下す」



775: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:35:28 ID:TTdZ85hY


フツ督「…………」

ブサ督「…………」

イケ督「…………」

元帥「以上が……海軍総司令官として」

元帥「現時点での決定事項であると宣言する」

     …………

元帥「私からは以上だ」

中尉「元帥閣下、ありがとうございました」

中尉「……えーそれでは、これを持ちまして」

中尉「今回の緊急記者会見を終了とさせていただきます」

     !?

中尉「各新聞社の記者の皆さん」

中尉「ご清聴、ありがとうございました」



776: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:38:57 ID:TTdZ85hY


     えっ!?

     ちょっと待ってくださいよ!

     質問が有るのですが!!

中尉「会見は以上です」

中尉「質問は受け付けません」

     ギャー! ギャー!

―――――――――――

     ツカ ツカ ツカ!

イケ督(クソッ!)

イケ督(クソッ!クソッ!クソッ!)

イケ督(どうしてこうなったんだ!?)

イケ督(とにかく、北方鎮守府に戻って――)



789: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 19:12:10 ID:TTdZ85hY


     ガシッ

イケ督「!?」

イケ督「な、何をする!?」

憲兵A「イケメン提督殿」

憲兵A「元帥閣下のご命令で、文書による回答があるまで」

憲兵A「ホテルにて身柄を一時、拘束させていただきます」

イケ督「なっ……」

憲兵B「こちらに車を用意してあります」

憲兵B「どうぞ」

イケ督「は、放せ!」

イケ督「北方鎮守府に……資料、そう」

イケ督「必要な資料があるんだ!」



778: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:40:19 ID:TTdZ85hY


憲兵A「元帥閣下は後で整合性を取れば問題ないと仰せです」

イケ督「くっ……」

憲兵B「書類作成に必要なものはこちらで用意します」

イケ督「…………」

憲兵B「さ、行きましょう」

―――――――――――

大本営 元帥の執務室


元帥「……やれやれ」

元帥「何とか上手く行ったな」

フツ督「彼は、私が思っていたより頭が悪かった様です」

フツ督「しらを切った場合も想定していたんですが」

フツ督「必要ありませんでした」



779: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:41:18 ID:TTdZ85hY


ブサ督「…………」

元帥「しかし……海軍も無傷では済まんな」

フツ督「ええ……まず考えられるのは」

フツ督「艦娘が行方不明となっている事を暴露しましたから」

フツ督「艦娘の家族から安否確認が殺到するでしょう」

元帥「……事実を伝えねばな」

元帥「イケメン提督のせいに出来たが犠牲は変わりない」

元帥「慰労金や一時金の支払いも準備しないと……」

フツ督「大蔵省が青筋立てるのは間違いないでしょうね」

元帥「これで一応の区切りとなるが、やる事は山積みだな」

元帥「あとの問題は……」



780: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:42:16 ID:TTdZ85hY


フツ督「天龍の事ですね」

元帥「その後の動向はどうなっている?」

フツ督「残念ながら掴めていません……」

フツ督「よほど警戒しながら沿岸部沿いを進んでいるのか」

フツ督「それともいったん沖に出て、大回りでもしているのか」

ブサ督「…………」

元帥「ブサイク提督」

ブサ督「はい」

元帥「貴君から何か……意見は無いかね?」

ブサ督「……申し訳ありません」

元帥「そうか……」

ブサ督「…………」



781: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:43:04 ID:TTdZ85hY


元帥「いや、気にしないでくれ」

元帥「君の働きはここに居るフツメン提督や大淀」

元帥「そして今回の機転で十分知る事が出来た」

元帥「ありがとう」

ブサ督「元帥閣下……」

ブサ督「もったいないお言葉です」

元帥「今度、機会があれば酒でも酌み交わそう」

ブサ督「ありがとうございます」

元帥「これからも海軍に対し、尽力してくれたまえ」

ブサ督「はっ」

フツ督「…………」



782: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:43:54 ID:TTdZ85hY



―――――――――――


帝都 大通り付近


男「号外!号がぁい!」

男「イケメン提督の大スキャンダルだよ~!」

     ザワ ザワ

フード女「…………」

     バサッ…

フード女「…………」

     イケメン提督、裏の顔!

フード女「…………」



783: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 14:44:29 ID:TTdZ85hY



遠征任務艦娘の無線封じ!


     フツメン提督は囮作戦を示唆


  イケメン提督の黒い戦術!


       行方不明艦娘、実に12名!


 無許可の戦力移動


    大本営、信頼を裏切る行為と糾弾


フード女「…………」

フード女「…………」

フード女「…………」



791: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/08(日) 19:13:26 ID:TTdZ85hY


フード女「…………」

フード女「……!」


  イケメン提督、ホテルにて拘束か?

  他、2提督も同ホテルにて宿泊


フード女「…………」

フード女「…………」 ニヤリ…



793: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:38:17 ID:ODA80pmQ



―――――――――――


その日の夜

帝都 ホテル イケメン提督の部屋


憲兵A「…………」

憲兵B「…………」

イケ督「…………」

イケ督「……おい」

憲兵A「何でしょうか?」

イケ督「息が詰まる」

イケ督「少し出歩かせてくれ」

憲兵A「文書が完成するまではダメです」

イケ督「少しくらい、いいだろう?」



794: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:38:59 ID:ODA80pmQ


憲兵A「許可できません」

イケ督「そうかよ……」

憲兵A「…………」

憲兵B「…………」

イケ督(……クソッ!)

イケ督(これは本気だな……)

イケ督(…………)

イケ督(どうして俺がこんな目に……)

イケ督(クソッ!クソがッ!)



795: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:40:12 ID:ODA80pmQ



―――――――――――


同ホテル ロビー付近


フツ督「ほら、君の部屋の鍵だ」

大淀「……ありがとうございます」

大淀「ですが、本当によろしいのですか?」

フツ督「今さらだが、大本営のあの部屋は窮屈だっただろう」

フツ督「君への感謝の気持ちも含めての意味もある」

フツ督「今日くらいはゆっくり休んでくれ」

大淀「……分かりました」

大淀「お言葉に甘えさせていただきます」

フツ督「ああ」

     テク テク テク…



796: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:41:43 ID:ODA80pmQ


フツ督「…………」

フツ督「さて、俺たちも行くか」

龍田「ええ」

龍田「と、言いたいところだけど……」

龍田「少し用事が出来たの」

フツ督「ん?用事?」

龍田「女の子の日よ」

フツ督「ああ……分かった」

フツ督「部屋は分かるな?」

龍田「ええ」

フツ督「じゃ、部屋でディナーを用意して待ってる」



797: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:42:27 ID:ODA80pmQ


龍田「あら」

龍田「それは急いで用事を片付けないといけないわね」

フツ督「ま、ご期待に添えればいいけどな」

龍田「うふふ」

龍田「それじゃ後で」

フツ督「ああ」

     スタ スタ スタ…

ブサ督「…………」

榛名「…………」

ブサ督(……なんか次元の違うやり取りしてるなぁ)

ブサ督(あの二人……)

榛名(榛名も……ああいうのやってみたいです)



798: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:43:16 ID:ODA80pmQ


ブサ督「……榛名」

榛名「!」

榛名「は、はい!」

ブサ督「その……部屋でディ、ディナー?」

ブサ督「取るか?」

榛名「は、はい!」

榛名「榛名、ディナー?取ります!」

ブサ督「よ、よし」

フツ督「…………」

フツ督(微笑ましいなぁ)



799: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:44:01 ID:ODA80pmQ



―――――――――――


同ホテル ブサイク提督の部屋


榛名「わあ……」

榛名「ブサイク提督さん、窓の方、見てください」

榛名「夜景が綺麗です!」

ブサ督「うん。確かに」

ブサ督「でも料理が冷めてしまう」

ブサ督「景色を眺めるのは後にしよう」

榛名「はい」

     スタ スタ スタ ストン

ブサ督「いただきます」

榛名「いただきます」



800: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:44:55 ID:ODA80pmQ


     モグ モグ

榛名「ん……美味しいです」

ブサ督「確かに旨いな」

榛名「えと……どのお料理がディナーなのですか?」

ブサ督「え?……あーそのディナーって言うのはな」

ブサ督「英語……フランス語だったか?」

ブサ督「その、外国語で『夕飯』って意味だよ」

榛名「!?」

榛名「そ、そうだったのですか……」

榛名「榛名、知りませんでした……」

ブサ督「このくらい、そんな気にする事じゃない」

榛名「…………」



801: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:45:48 ID:ODA80pmQ


ブサ督「俺だって知らない事なんざ、たくさんある」

ブサ督「いちいち気にしてたら切りがない」

榛名「そうなのですか?」

ブサ督「ああ」

ブサ督「例えば……この食事だって」

ブサ督「テーブルマナーとかいうルールが存在するが」

ブサ督「俺は全く知らん」

榛名「お食事にルールがあるんですか?」

ブサ督「日本で言うとな」

ブサ督「お箸で豆腐をブスッと刺したり」

ブサ督「爪楊枝みたいに使ったりするのは、お行儀の悪い行為とされている」

榛名「そうだったんですか……」



802: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:46:30 ID:ODA80pmQ


ブサ督「でもこう言っちゃなんだけど」

ブサ督「そんなもん全部守ってたら、食った気がしないわ」

榛名「えっ」

ブサ督「……まあ、ある程度は仕方ないが」

ブサ督「知らなかった事はどうしようもない」

ブサ督「けど知ったあと、どうするかは……」

ブサ督「いや、どう生かすかは、自分次第かな」

榛名「はい!」

榛名「榛名、この失敗を生かします!」

ブサ督「そ、そう気張らなくていいから」

ブサ督「要は……楽しんで食事を取ればいいんだ」

榛名「はい!榛名は、もう楽しんでます♪」

ブサ督「ははは、良かった」



803: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:48:18 ID:ODA80pmQ



―――――――――――


同ホテル フツメン提督の部屋


フツ督「…………」

     コン コン ガチャ

龍田「お待たせ」

フツ督「おっ、来たか」

     キィ パタン

龍田「ディナーには間に合ったかしら?」

フツ督「帰りがいつになるか、聞いてなかったから」

フツ督「軽食にしておいた」



804: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:49:05 ID:ODA80pmQ


龍田「あらら」

龍田「豪華ディナーはサンドイッチですか」

フツ督「冷めたスープなんて旨くないしな」

フツ督「その代り……」

     カラン…

フツ督「良く冷えたシャンパンを頼んでおいた」

龍田「うふふ、気が利くじゃない」

フツ督「食後にはコーヒーなんてどうだ?」

龍田「いいかも」

フツ督「じゃ、そうしよう」

フツ督「席についてくれ」

龍田「はぁい」



805: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:49:49 ID:ODA80pmQ


     キュポン

     トクトクトク…

フツ督「どうぞ」

龍田「いただきます」

     ゴク…

龍田「うん……美味しいわ」

     グビッ

フツ督「ふう……確かに旨いな」

龍田「結構するシャンパン?」

フツ督「ちょいとな」

龍田「あら、そこは最高級とか言わないの?」



806: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:50:49 ID:ODA80pmQ


フツ督「確かに飲みたかったけど、持ち合わせがな……」

龍田「ああ……」

龍田「銀行、もう閉まってるものね」

フツ督「そういう事」

フツ督「俺は……君が居てくれればそれでいいさ」

龍田「ふふふ」

龍田「安っぽいセリフね」

フツ督「……結構決めたつもりだったんだけどな」

龍田「冗談よ」

龍田「あなたから言われて嬉しくない訳ないじゃない」

フツ督「それはそれは」



807: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:51:43 ID:ODA80pmQ


フツ督「さて、メインディッシュの方に行きま……」


     ドドーン… ドンッ ドンッ…


フツ督「ん?」

龍田「ん?」

フツ督「何の音だ?」

龍田「遠くで花火大会でもやってるのかしら?」

     スタ スタ スタ…

フツ督「…………」

龍田「…………」

フツ督「……どこも花火なんてやって無さそうだが」

龍田「……!」

龍田「フツメン提督! あそこ!」



808: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:52:26 ID:ODA80pmQ


フツ督「…………」

フツ督「あっ、火の手が上がってるな」

フツ督「事故でもあったのか?」

龍田「何呑気な事を言ってるのよ!」

龍田「あの方角……大本営の方じゃないの!?」

フツ督「…………」

フツ督「あっ!?」

フツ督「天龍か!?」

龍田「すぐ向かいましょう!」

フツ督「よし!」



809: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:53:19 ID:ODA80pmQ


     バタン!

     タッ タッ タッ

フツ督「!」

フツ督「ブサイク提督!」

ブサ督「!」

ブサ督「フツメン提督」

フツ督「騒ぎは知ってるな?」

ブサ督「ああ、たぶん天龍だろう」

     タッ タッ タッ

大淀「あ、ブサイク提督にフツメン提督!」

大淀「この騒ぎは……天龍さんでしょうか?」

ブサ督「タイミングからして、おそらくな」

フツ督「よし、俺は車を拾って来る」

ブサ督「いや、必要ない」



810: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:54:07 ID:ODA80pmQ


フツ督「何?走って行くつもりか?」

ブサ督「違う」

ブサ督「それよりもイケメン提督の部屋はどこか分かるか?」

フツ督「イケメン提督の?」

フツ督「それなら下の階だが……」

ブサ督「よし、俺はそこへ向かう」

フツ督「何故だ?火の手が上がったのは大本営だぞ?」

ブサ督「……天龍が今日の号外を見ているとしたら?」

フツ督「…………」

龍田「!」

大淀「!」

榛名「!」



811: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:54:57 ID:ODA80pmQ


フツ督「……良く分かった」

フツ督「イケメン提督の部屋へ急ごう」

     タッ タッ タッ…

―――――――――――

イケ督「おい、どうなってるんだ?」

イケ督「何が起こっている?」

憲兵A「……ちょっと待っていてください」

     ヒソヒソ…

憲兵B(ダメだ……通信が混線している)

憲兵B(下まで降りて、俺が確認してくる)

憲兵A(頼む)

憲兵B(イケメン提督は任せた)



812: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:55:34 ID:ODA80pmQ


イケ督「…………」

憲兵A「……ちょっとした事故が発生した様だ」

憲兵A「イケメン提督はここに居ろ、との事」

イケ督「ちょっとした事故ねぇ……」

イケ督「本当なのか?」

憲兵B「じゃ、ここは任せたぞ」

憲兵A「ああ」

     ガチャ キィ パタン

イケ督「…………」

     !?

     ナンダ貴様… グアッ!

     ドサッ…



813: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:56:15 ID:ODA80pmQ


憲兵A「!?」

イケ督「!?」

イケ督「お、おい……今の音は」

憲兵A「下がっていろ」

     スチャッ…

憲兵A「…………」つ(拳銃)

イケ督「…………」


     ドガアァァンッ!!


憲兵A「ぐあっ!?」

イケ督「ひ、ひいいいいいいっ!!」

イケ督(と、扉が……爆発した!?)



814: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:57:05 ID:ODA80pmQ


憲兵A「」

イケ督「お、おい、大丈夫か?」

憲兵A「」

イケ督「気絶とか止めろよ、おい!」

イケ督「誰が俺を守るんだよ!?」

     ジャリ…

イケ督「!」

フード女「…………」

イケ督「…………」

フード女「……見ツケタ」

     バサッ!

イケ督「!?」



815: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:57:59 ID:ODA80pmQ


天龍?「…………」

イケ督「し……深海…棲艦……!?」

天龍?「ふフふ……コロス」

イケ督「ひいいいいいっ!!」

大淀「天龍さんっ!!」

天龍?「!」

イケ督「!?」

イケ督(て、天龍……天龍だと!?)

大淀「もう止めてください!」

天龍?「……邪魔ヲするナ……オオよド」

大淀「気持ちは分かるつもりです……」

大淀「ですが」



816: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:58:51 ID:ODA80pmQ


大淀「イケメン提督は、これから社会的制裁を受け」

大淀「死ぬより辛い目に合う予定です!」

イケ督「」

天龍?「…………」

大淀「ですから、殺す必要は無いんです!」

イケ督(……いくら何でも酷くないか、その説得)

天龍?「……どケ……おオヨド」

大淀「!」

大淀「天龍さん!」

     バキッ!

大淀「きゃあっ!」



817: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 21:59:39 ID:ODA80pmQ


フツ督「大淀!」

榛名「大淀さん!」

龍田「…………」

     ザッ…

ブサ督「…………」

天龍?「…!」

天龍?「ブさイク……提督……」

ブサ督「…………」

天龍?「ドけ……俺ノ邪魔をスルナ……」

ブサ督「……もう許してやれ、天龍」

大淀「」

フツ督「」

榛名「」



818: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:00:20 ID:ODA80pmQ


天龍?「……何を言っテイる」

天龍?「このクズヲ許せル訳……無いダロ!」

ブサ督「違う」

ブサ督「イケメン提督の事じゃない」

天龍?「ナに?」

ブサ督「俺が言っているのは……」


ブサ督「お前自身の事だ、天龍」


天龍?「…………」

天龍?「意味が分からんゾ……」

天龍?「……どけ、くダラない話をスルな」



819: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:01:20 ID:ODA80pmQ


ブサ督「お前は……イケメン提督の口車に乗せられてしまった」

ブサ督「自分自身が許せないんだ」

     ピクッ

大淀「…………」

フツ督「…………」

榛名「…………」

天龍?「……何を……言っている」

ブサ督「俺は……お前が文句を言いつつも」

ブサ督「言われた仕事はきっちりこなし」

ブサ督「低練度の艦娘の面倒見が良い事も知っている」

天龍?「…………」

ブサ督「大淀からおおよその話は聞いた」



820: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:02:28 ID:ODA80pmQ


ブサ督「あの状況で、お前がイケメン提督の要請を」

ブサ督「二つ返事で応じたとは思えない」

天龍?「…………」

ブサ督「たぶんだが……最初は断ったか、少なくとも」

ブサ督「低練度の艦娘を実戦投入する事に対し、安全確認をしたはずだ」

天龍?「…………」

ブサ督「だが……最終的に」

ブサ督「お前はイケメン提督の甘い言葉に乗せられる決断を下した」

天龍?「……黙れ」

ブサ督「お前が許せないのは……」

ブサ督「そんな決断を下し、仲間を死なせてしまった」

ブサ督「自分自身なんだろう?」



821: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:03:39 ID:ODA80pmQ


天龍?「黙れト言ってイル!!」

ブサ督「!!」

     バキッ!

榛名「……ブサイク提督さんは」

榛名「この榛名が守ります……!」

天龍?「くっ……!」

ブサ督「天龍!」

天龍?「黙れ!」

天龍?「お前ニ……何が分カる!?」

天龍?「あいつらがどれだけ無念だったか……!」

ブサ督「俺には、お前の気持ちが良く分かる」

天龍?「!?」



822: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:04:42 ID:ODA80pmQ


天龍?「……ウソを付くナ!」

天龍?「こンな事を……簡単に分カラれてタマるか!!」

ブサ督「何故なら……俺は」

ブサ督「自分の命令が原因で何人もの艦娘を死なせているからだ!」

天龍?「っ!!」

フツ督「…………」

大淀「…………」

榛名「…………」

ブサ督「……立場は違えど」

ブサ督「自分の下した判断で仲間を死なせたのは同じ」

ブサ督「だから……お前の気持ちは痛いほど分かるんだ、天龍」

天龍?「…………」



823: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:05:45 ID:ODA80pmQ


フツ督「…………」

大淀「…………」

榛名「…………」

ブサ督「…………」

天龍?「……離れないんだ」

ブサ督「離れない?」

天龍?「アノ時の……あいつらの……最後の言葉が」

ブサ督「…………」

天龍?「俺の……くダラない……見栄のせいで……」

天龍?「みんな……ミンな……ううっ……」

天龍?「うっ……うううっ……う……」

ブサ督「…………」



824: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:06:36 ID:ODA80pmQ


ブサ督「……うらやましい」

天龍?「…!?」

天龍?「なん……だと……?」

ブサ督「俺は……その最後の言葉すら聞けなかった」

天龍?「…………」

ブサ督「きっと……俺に対して恨み言を言っていたに違いない」

榛名「ブサイク提督さん……」

フツ督「…………」

大淀「…………」

天龍?「…………」

天龍?「……俺は……そうは思わない」



825: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:07:24 ID:ODA80pmQ


ブサ督「?」

ブサ督「何故だ?」

     ピシッ…

天龍?「あいつらは……無念を伝えたが……」

天龍?「誰も……恨み言は言い残さなかった」

ブサ督「……そうか」

天龍?「それどころか……」

天龍?「望月は、お前の下で……楽しかったと……言っていた」

ブサ督「!」

ブサ督「……望月が」

天龍?「ああ……」

     ピキ… パキ…



826: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:08:07 ID:ODA80pmQ


天龍?「ブサイク提督……」

天龍?「教えてくれ……」

ブサ督「何をだ?」

天龍?「お前は……どうやって」

天龍?「自分を許したんだ……?」

ブサ督「…………」

ブサ督「……その気持ちを糧に」

ブサ督「一人でも多くの艦娘が死なないよう作戦を立てたり」

ブサ督「犠牲が出そうな場合は躊躇なく撤退する様にした」

フツ督「…………」

大淀(ブサイク提督……)

榛名(ブサイク提督さん……)



827: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:09:13 ID:ODA80pmQ


ブサ督「俺は……そうする事で過去の自分と向き合い」

ブサ督「今に至っている」

天龍?「過去の自分と……向き合う……」

ブサ督「……完全には許していないかもしれないが」

ブサ督「あの時の自分よりは、多少マシになった」

ブサ督「そう……思える様になってきた」

ブサ督「そんなところだ」

天龍?「…………」

天龍?「ふ」

天龍?「ふふ……ふ……」

天龍?「そうだな……それ……」

天龍?「……いい……な……」



828: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:10:03 ID:ODA80pmQ


     ドサッ…

ブサ督「て、天龍!?」

大淀「天龍さん!」

天龍?「…………」

天龍?(過去は変えられない……)

天龍?(それなら、これからを変えて行けばいい)

天龍?(……そいう事……か……)

天龍?「…………」

     ピシッ… パキパキ…

     パアアアアアッンッ

ブサ督「うわっ!?」

榛名「うっ……!」



829: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:10:43 ID:ODA80pmQ


大淀「きゃっ!」

フツ督「眩しっ……!」

     …………

ブサ督「て……天龍?」

榛名「……ブサイク提督さん、大丈夫ですか?」

大淀「天龍さんは……」

フツ督「…………」


天龍「…………」


大淀「!」

大淀「て、天龍さん!」

     ダッ…



830: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:11:34 ID:ODA80pmQ


大淀「…………」

大淀「大丈夫、脈はあります」

大淀「それに艤装も……元に戻ってますね」

ブサ督「深海棲艦……みたいなパーツが」

ブサ督「すべて消えている……」

榛名「何が起こったのでしょう?」

ブサ督「……分からない」

フツ督「…………」

大淀「…………」

ブサ督「…………」

榛名「…………」



831: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:12:14 ID:ODA80pmQ


フツ督「……あ」

フツ督「イケメン提督は?」

ブサ督「!」

大淀「!」

榛名「!」

龍田「……逃げられたみたいよ」

フツ督「龍田!」

龍田「私もハッとして、そこら辺を探してみたのだけど……」

龍田「どこにも居なかった」

フツ督「……なんてこった」

ブサ督「仕方ないと言えば仕方ないが……」

ブサ督「やらかしてしまったな……」



832: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:12:59 ID:ODA80pmQ


フツ督「状況が状況だ」

フツ督「元帥閣下に報告はしておく」

ブサ督「頼む」

ブサ督「天龍は俺が軍病院へ連れて行こう」

龍田「私も付き添っていいかしら?」

フツ督「え……俺は?」

龍田「一人でも大本営へ行けるでしょ?」

フツ督「龍田ぁ……」



833: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:13:44 ID:ODA80pmQ


ブサ督「……役割を逆にしよう」

ブサ督「俺と榛名で大本営へ報告に行く」

ブサ督「フツメン提督、龍田。 天龍の事は任せる」

フツ督「心の友よ!」

ブサ督「……お前そんなキャラだったか?」

フツ督「冗談だ」

ブサ督「…………」

フツ督「それじゃ、大本営で落ち合おう」

ブサ督「……おう」

大淀「あのう……私も天龍さんに付き添ってもよろしいでしょうか?」

ブサ督「もちろんだ」

ブサ督「大淀はフツメン提督を手伝ってやってくれ」

大淀「分かりました」



834: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:16:15 ID:ODA80pmQ



……その後

攻撃された大本営は混乱状態だったが

後に時限式の爆発物で塀と建物の一部が

破壊されただけだけで被害は大した事は無かった。

死傷者も憲兵の二人だけで命に別状は無い。


深海棲艦化?した天龍の仕業なのは

俺を含めた一部の者しか知らないので

ホテルの襲撃含め、大目に見てもらう事が出来た。

表向きは、単体の深海棲艦が迷い込み

警報の不備で対応が遅れた事になっている。

.



835: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:17:12 ID:ODA80pmQ



元に戻った天龍は、後で詳しい検査を行ったが……

通常の艦娘と何ら代わりなく

別命あるまで北方鎮守府で待機する事となった。


イケメン提督は、襲撃後、完全に行方不明になった。

隙を見て逃げられたのは痛いが

公式に逃亡犯扱いとなり、少なくとも

皇国内でおいそれとは外を出歩けない事だろう……

.



836: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:18:18 ID:ODA80pmQ



―――――――――――


????


     ピチョン…

     ピチョン…

イケ督「…………」

イケ督「…………」

イケ督「……ん」

イケ督「…………」

イケ督「……ここは……どこだ?」

イケ督「……!?」



837: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:18:58 ID:ODA80pmQ


イケ督「な、何だ!?」

イケ督「手足を縛られてる!?」

     ガチャ

龍田「あら……」

龍田「目が覚めちゃった?」

     キィ パタン

イケ督「!」

イケ督「お前……確かフツメン提督の……」

龍田「龍田よ」

龍田「覚えてたみたいね」

イケ督「そ、それより……これはどういう事かな?」

イケ督「何故……俺は手足を縛られてるんだ?」



838: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:19:55 ID:ODA80pmQ


龍田「うふふ」

     ザシュ

イケ督「」

イケ督「ぐあああああああああっ!?」

龍田「ああ……心地いい悲鳴……」

イケ督「ひっ、ひいっ……」

イケ督「や、止めろ……止めてくれ、龍田ァ……」

龍田「大丈夫」

龍田「これくらいでは死なないし」

龍田「痛いのは、これだけで済ませてあげるわ」



839: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:20:45 ID:ODA80pmQ


イケ督「な、何を……する気なんだ!?」

イケ督「て、天龍の事は、謝る!」

イケ督「だ、だから、許してくれ!」

龍田「ダ メ ☆」

     スッ…

イケ督「な、なんだそれは!?」

イケ督「何を注射するんだ!?」

龍田「安心して」

龍田「ただの全身麻酔よ」

イケ督「全身……麻酔?」

龍田「分かりやすく言うとぉ、ちょーっと長時間」

龍田「ねんねしててもらうだけだから♡」

イケ督「や、止めろ……止めろォッ!」



840: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:21:52 ID:ODA80pmQ


龍田「うふふ」

     プスッ

イケ督「ひっ、ひいいっ!」

龍田「だってさぁ」

龍田「痛みだけで死んじゃう人も……結構居るのよね」

イケ督「!?」

龍田「そうなったらぁ」

龍田「つまらないのよぉ」

     チュー…

イケ督「ぐっ……!」



841: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:22:29 ID:ODA80pmQ


龍田「あなたにはぁ……」

龍田「天龍ちゃんが受けた苦しみをぉ」

     チュー…

イケ督「あ……が……」

イケ督(い、意識……が……)

龍田「何倍にもして、受けて欲しいのよねぇ」

     チュー…

イケ督「…………」

龍田「うふふ……」

     スルッ

イケ督「…………」

龍田「これで準備良し」

龍田「さあ……イケメン提督さぁん……」



842: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:23:05 ID:ODA80pmQ









龍田「生まれ変わりを体験させてあげる……」








.



843: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:23:51 ID:ODA80pmQ



―――――――――――


????


イケ督「…………」

イケ督「…………」

イケ督「……!」

イケ督「…………」

イケ督「お゛……お゛お゛は……」

イケ督「!?」

イケ督(な、何だ!?)

イケ督(か、顔が……顔が熱い……!)

イケ督(いや、痛い!)

イケ督(それに声もおかしいし……腕も縛られてる)

イケ督(俺はまだ龍田に拘束されてるのか!?)



844: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:24:37 ID:ODA80pmQ


看護師「あ」

イケ督(!?)

イケ督(誰だ!?)

イケ督「う゛ーあ゛ー……」

看護師「クズ山さん、声を出さないで」

イケ督(……?)

イケ督(クズ山?何を言ってるんだ?この女)

看護師「落ち着いて聞いてください、クズ山さん」

看護師「あなたは……全身に酷いケガをされてて」

看護師「包帯でグルグル巻きの状態なんです」

イケ督「!?」

イケ督(包帯?……じゃあここは病院なのか?)



845: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:25:16 ID:ODA80pmQ


看護師「今、先生を呼んできますね」

     スタ スタ スタ

イケ督「…………」

イケ督(……助かった)

イケ督(のか?)

―――――――――――

看護師「お待たせしました、クズ山さん」

看護師「先生……どうぞ」

医師「うむ」

イケ督「…………」

医師「あー……クズ山さん」

医師「落ち着いて聞いて欲しいのですが」



846: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:26:17 ID:ODA80pmQ


医師「あなたは今、全身に酷いケガをしてまして……その」

医師「命に別状はないのでご安心ください」

イケ督「…………」

医師「ですが……そのー……何と言いますか」

医師「お顔の方が、ですね……非常に、その……」

医師「酷い状況でして……」

イケ督(……はっきり言えよ)

医師「元のお顔に戻る事は、非常に困難であると……言えるでしょう」

イケ督「…………」

医師「それと、ですね」

イケ督(まだ何かあるのか?)



847: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:27:02 ID:ODA80pmQ


医師「右手、なの……ですが」

医師「手首から先が……もうありません」

イケ督「…………」

イケ督「……あ゛?」

医師「落ち着いて……それからしゃべらないでください」

イケ督(右手が……無い?)

イケ督(今……そう言ったのか!?)

イケ督「あ゛……があ゛あ゛……あ゛!」

医師「お、落ち着いて!クズ山さん!」

医師「君、鎮静剤を!」

看護師「はい!」



848: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:27:46 ID:ODA80pmQ


―――――――――――

医師「……どうだ?」

看護師「ようやく落ち着いたみたいです」

医師「そうか……」

看護師「やっぱり……事件なんでしょうか?」

医師「詳しい事は分からんが……」

医師「あれだけ執拗に顔を傷つけられ」

医師「右手を切り落とされ、左手も」

医師「指紋が取れなくなるほどの火傷を負わされているんだ……」

看護師「…………」

医師「身分証を持っていなければ」

医師「名前すら分からない状況だったからな」



849: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:28:42 ID:ODA80pmQ


医師「どう見ても……誰かからの恨みとか」

医師「何かの抗争に巻き込まれたとか」

医師「そういう風に見てしまう……」

看護師「厄介ごとは勘弁して欲しいですね……」

医師「……そうは言っても患者は患者だ」

医師「誰かからは分からんが、治療費も支払われてる」

医師「無下にはできんよ……」

看護師「そうですか……」

医師「まあ詳しい事は分かっていない」

医師「警察にも相談したし……」

医師「退院までは様子を見よう」

看護師「分かりました」



850: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:29:27 ID:ODA80pmQ



―――――――――――


天龍の襲撃から数日後の夜

とある旅館の個室


フツ督「……見るからに高そうなダルマだな」

ブサ督「約束だからな。酒屋で一番高いダルマを二本買った」

フツ督「肴(さかな)はナッツにチーズ、クラッカー」

フツ督「残念ながらここじゃ洋酒に合いそうな料理は用意できなかった」

ブサ督「別にいいさ」

     キュポッ トクトクトク…

ブサ督「じゃあ……乾杯」

フツ督「おう、乾杯」



851: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:30:12 ID:ODA80pmQ


     チンッ…

     グビッ

ブサ督「んっ……」

フツ督「ふっ……んん」

ブサ督「これは……来るなぁ」

フツ督「いい酒だ」

ブサ督「よくストレートで飲めるな……」

フツ督「俺からしたら水割りやロックなんて邪道だ」

ブサ督「はいはい、邪道で結構です」

     トクトクトク… グビッ

ブサ督「ふう……」



852: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:30:47 ID:ODA80pmQ


フツ督「これでようやくひと段落か……」

ブサ督「……ああ」

ブサ督「結局イケメン提督は逃亡を図ったとして指名手配」

ブサ督「どこへ雲隠れしたかは分からんが、もう皇国内を出歩けないだろう」

フツ督「だな……」

     グビッ

ブサ督「ふう……」

ブサ督「北方の後任は誰がやるんだ?」

     ムシャ ムシャ

フツ督「元帥閣下は、ショウユ顔提督か、ソース顔提督を」

フツ督「候補に考えてるそうだ」

ブサ督「……無難なところだな」



853: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:32:03 ID:ODA80pmQ


     トクトクトク…

フツ督「俺からしたら問題ない様に思うが」

フツ督「お前は違うのか?」

     ボリ ボリ

ブサ督「……俺が選ぶとしたら」

ブサ督「メガネ提督だな」

フツ督「メガネ提督?」

フツ督「……知らないなぁ。そんな名前の奴居たか?」

     グビッ

ブサ督「ふう……」

ブサ督「新進気鋭の若者だからな」

フツ督「若者? もしかして今年、訓練模擬戦した奴か?」



854: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:33:01 ID:ODA80pmQ


ブサ督「ああ」

ブサ督「なかなか見どころのある戦い方をする奴だった」

フツ督「おいおい……」

フツ督「いくら何でも若すぎるだろ」

     ムシャ ムシャ

ブサ督「たぶん……同戦力で戦ったら」

ブサ督「ショウユ顔提督もソース顔提督も勝てないと思う」

フツ督「……冗談だろ?」

ブサ督「ま……俺の贔屓目もあるかな?」

フツ督「…………」



855: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:33:54 ID:ODA80pmQ


     グビッ

ブサ督「ふう……」

ブサ督「そういや大将職の人事は結局どうなったんだ?」

     ムシャ ムシャ

フツ督「……そっちは大揉めに揉めて大変らしい」

フツ督「派閥争いの板挟みになって、元帥閣下は頭を抱えていたよ」

ブサ督「そりゃ気の毒に……」

フツ督「そういう苦労をするのが元帥閣下のお仕事さ」

ブサ督「……本人に聞かれたら怒られるぞ」

フツ督「ははは」

     トクトクトク… グビッ

フツ督「ふう……」

ブサ督「……俺が元帥閣下の立場なら」

ブサ督「お前が大将にふさわしいと思うが」



856: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:34:35 ID:ODA80pmQ


フツ督「よせよ……あんな派閥争いに巻き込まれたくない」

ブサ督「それはまあ、俺も御免被りたいが」

ブサ督「人脈や人望とか考えたら、お前がいいと思う」

フツ督(実は元帥閣下から要請はあったが)

フツ督(どう考えてもこき使われそうで断ったんだよなぁ)

フツ督「……お褒めにあずかり光栄だが」

フツ督「俺が大将になると、お前に命令できる様になるんだぞ?」

フツ督「いいのか?」

     グビッ

ブサ督「ふう……」

ブサ督「その分、こっちの要求も適正に聞いてもらうから」

ブサ督「構わないさ」



857: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:35:36 ID:ODA80pmQ


フツ督「そうじゃなくて、同期が上になって悔しくないのか?」

ブサ督「んー……」

ブサ督「お前だったら、全然ないな」

フツ督「なんだよそれ……」

     ムシャ ムシャ

ブサ督「……だが、元大将みたいな事するなら」

ブサ督「見限るってだけだ」

フツ督「……それは怖いねぇ」

     トクトクトク… グビッ

フツ督「ふう……」

ブサ督「……なあ」

フツ督「ん?」



858: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:36:24 ID:ODA80pmQ


ブサ督「あの時……天龍の事を元帥閣下へ報告していた時」

ブサ督「やたらと『沿岸部』を強調していたが……」

ブサ督「あれはわざとか?」

     ピクッ

フツ督「…………」

フツ督「……何の事だ?」

ブサ督「責めるつもりはない」

ブサ督「あの時……俺は天龍が陸路を使う可能性を考えたが」

ブサ督「それを黙ってた俺も同罪だ」

フツ督「…………」

ブサ督「俺は……天龍を止められるものなら止めたかった」

ブサ督「そう考えたら、お前の策に乗った方が良いと思ったんだ」

フツ督「…………」



859: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:37:19 ID:ODA80pmQ


フツ督(……見抜かれていたか)

フツ督(という事は……俺の目的も当然分かっている)

フツ督(って事か……?)

ブサ督「…………」

ブサ督(おそらく……暴走した天龍を放置して)

ブサ督(イケメン提督を亡き者に……って算段だろうな)

フツ督「…………」

ブサ督「…………」

フツ督「……俺が間抜けだったって事にしといてくれ」

ブサ督「……分かった」

ブサ督「それでいい」



860: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:37:52 ID:ODA80pmQ


     グビッ

ブサ督「ふう……」

ブサ督「少し酔ってきたかな」

フツ督「おいおい。早いな」

ブサ督「元々そんなに強くないんだ、俺は」

フツ督「そうか」

フツ督「そういやさ」

ブサ督「ん?」

フツ督「榛名、気に入ったのか?」

ブサ督「…………」

フツ督「黙るなよ」

フツ督「男なんだ。女の一人や二人好きになって何が悪い」



861: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:38:45 ID:ODA80pmQ


     サク サク

ブサ督「……そうだな」

ブサ督「お前には話しておくか」

フツ督「ん?」

―――――――――――

ブサ督「――という事があったんだ」

フツ督「」

フツ督「ちょ、ちょっと待ってくれ……」

ブサ督「ああ」

フツ督「ディルプ……グレッズに」

フツ督「離島艦娘が深海棲艦の生まれ変わりとか」

フツ督「情報量多すぎだろ!?」



862: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:39:31 ID:ODA80pmQ


ブサ督「……離島艦娘に関して確信が持てたのは」

ブサ督「天龍があの状態から元に戻ったのを目の当たりにしたからだ」

フツ督「…………」

ブサ督「うかつに公表も出来ないし」

ブサ督「かと言って俺一人が抱え込むには大きすぎる」

フツ督「……で、俺を引き込んだって訳か」

ブサ督「そうとも」

ブサ督「これで一蓮托生だ」

フツ督「はあ……くそっ」

フツ督「酔いが覚めちまった」



863: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:40:15 ID:ODA80pmQ


     トクトクトク… グビッ

フツ督「……で?」

フツ督「お前はそんな榛名の事、どう思ってるんだ?」

     ピクッ

ブサ督「…………」

フツ督「また、だんまりか」

ブサ督「……好意は持ってる」

フツ督「ほう」

     グビッ

ブサ督「ふう……」

ブサ督「けど……なんて言うか」

ブサ督「ずるい気がしてな……」

フツ督「ずるい?」



864: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:40:55 ID:ODA80pmQ


ブサ督「さっきも言ったが……榛名は」

ブサ督「深海棲艦だった頃の記憶は無くとも」

ブサ督「俺に好意的だった人格の生まれ変わり」

ブサ督「でなきゃ……俺の顔を見て普通に接してくれる訳無い」

フツ督「…………」

ブサ督「もし」

ブサ督「普通に艦娘として採用されてたり」

ブサ督「俺と何の関わりもない離島艦娘として生まれていたら」

ブサ督「榛名は……」

フツ督「……だから何だってんだ?」

ブサ督「え?」



865: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:41:51 ID:ODA80pmQ


     ムシャ ムシャ

フツ督「あのなぁ……生まれとか、生い立ちとか」

フツ督「そんなのは後付けだ」

ブサ督「…………」

フツ督「大事なのは今、お前に、好意を持ってるイイ女が」

フツ督「目の前に居るって事」

ブサ督「…………」

フツ督「その女を好きなら好き、嫌なら嫌」

フツ督「極端な話、抱くか抱かないかの二択だろ?」

ブサ督「…………」

フツ督「迷ってんのなら、もう答えは出てるんじゃないのか?」

フツ督「さっさと抱いちまえ」

ブサ督「おま……簡単に言いやがって」



866: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:42:34 ID:ODA80pmQ


フツ督「ふん」

フツ督「言っとくが俺と龍田なんてなぁ……」

     …ドドドドドドドドド

フツ督「ん?」

     ガラッ!

榛名「ブサイク提督さぁん♪」

     抱きっ

ブサ督「うわっぷ!?」

榛名「榛名、寂しかったので」

榛名「会いに来ましたぁ♪」

ブサ督「ちょ、榛名!?酔ってるのか!?」



867: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:43:23 ID:ODA80pmQ


龍田「ごめんなさい……」

龍田「女子会開いて飲ませたら」

龍田「平気そうな顔しててどんどん進めちゃって」

龍田「こうなっちゃったの……」

大淀「……うぷっ」

大淀「龍田さん……何でそんあに平気なんですか」

フツ督「あ~あ……龍田に付き合ったのか」

榛名「んふ~♪ブサイク提督さぁ~ん♪」

ブサ督「分かった、分かったから!」

フツ督「……こりゃもうお開きだな」

フツ督「んじゃ、部屋に戻るか」

龍田「はぁい♪」

ブサ督「おい!? 手伝ってくれよ!?」



868: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:44:07 ID:ODA80pmQ



―――――――――――


同旅館 フツメン提督と龍田の部屋


フツ督「あー疲れた」

フツ督「さて、さっさと寝るか」

龍田「あ、そうそう」

フツ督「ん?」

龍田「これ。忘れない内に渡しておくわね」

     スッ

フツ督「!?」

フツ督「これって……通信機の端末か!?」



869: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:44:52 ID:ODA80pmQ


龍田「ええ」

フツ督「型番は……俺の知らない番号」

フツ督「これをどこで手に入れた?」

龍田「イケメン提督が持ってたものよ」

フツ督「」

フツ督「はあ!?」

龍田「声が大きいわよ」

フツ督「ぐ……イケメン提督はどうしたんだ?」

龍田「安心して」

龍田「生かしてあるわ」

フツ督「……その言い方だと」

フツ督「背乗り(はいのり)処理か」



870: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:45:54 ID:ODA80pmQ


龍田「正解」

フツ督「なんて事を……俺は」

フツ督「君にそんな事をさせたくなかったのに……」

龍田「ふふ……その気持ちは嬉しいんだけどね」

龍田「天龍ちゃんに酷い事をしたのを知ってから」

龍田「ずっと機会を伺ってたの」

フツ督「…………」

フツ督「あの日ってのもウソか……」

龍田「ごめんなさい」

フツ督「……やってしまった事はしょうがない」

フツ督「イケメン提督が名乗り出る事は無いのか?」



871: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:46:34 ID:ODA80pmQ


龍田「たぶん大丈夫でしょ」

フツ督「たぶんじゃ困るんだが……」

龍田「あれをイケメン提督と見破る人ほど」

龍田「手を引くと思うわ」

フツ督「……なるほど」

フツ督「でも、金輪際こういう事は止めてくれ」

龍田「それは約束できない」

フツ督「何?」

龍田「私だって感情があるんだもの」

龍田「自分の愛する人が酷い目にあわされて」

龍田「平気でなんて居られない」

フツ督「…………」



872: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:47:30 ID:ODA80pmQ


フツ督「……対艦娘暗殺組織を前の天龍と一緒にぶっ潰した」

フツ督「君ほどの力は俺には無いが」

フツ督「もう……俺に何も言わずに事を起こすのは止めてくれ」

龍田「……分かった」

フツ督「それならいい」

龍田「ところで……前の天龍って」

龍田「どういう意味?」

フツ督「!!」

フツ督「あ……それは……その……」

龍田「ふふふ」

龍田「……もういいのよ」

龍田「私、気が付いているから」



873: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:48:39 ID:ODA80pmQ


フツ督「え……」

龍田「実は……去年の合同艦監式で会った時に分かっちゃったの」

フツ督「!?」

龍田「本当に……よく似ていたわ」

龍田「前の天龍ちゃんに」

フツ督「…………」

龍田「だけど……同時にあなたに愛されてる事も再確認できた」

龍田「だから……あなたの優しいウソに騙されてあげようと思ったの」

フツ督「……そうだったのか」

龍田「もちろん今の天龍ちゃんへの気持ちも本当よ?」

龍田「だから行動したの」

フツ督「…………」



874: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:49:28 ID:ODA80pmQ


フツ督「……そろそろ寝るか」

龍田「うん。いっぱい愛してね♡」

フツ督「……さっきまでやる気満々だったんだけどな」

フツ督「色々と衝撃すぎて、息子が……ちょっと」

龍田「あら、残念」

龍田「それじゃ、お楽しみは西方に帰ってから」

フツ督「すまん」

龍田「……いいわよ」

龍田「あなたの気持ちも分からないでは無いし……」

龍田「お休みなさい」

フツ督「ああ、お休み」



875: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/11(水) 22:50:11 ID:ODA80pmQ


フツ督「…………」

フツ督(……ったく)

フツ督(…………)

フツ督(…………)

フツ督(普段、俺のこと腹黒だの何だの言ってくれるが)

フツ督(俺の周りの奴も結構腹黒いじゃねーか)

フツ督(…………)

フツ督(やれやれ……)

フツ督(まだまだ修行が足りないって事か……)

フツ督(…………)



878: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:29:05 ID:axPxlTaQ



―――――――――――







     約二ヶ月後








.



879: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:30:02 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


帝都 〇×新聞社・社会部


     ガヤ ガヤ

編集員「部長」

部長「ん?」

編集員「部長にお会いしたい、という人物が居るのですが……」

部長「……今日は誰とも会う予定はないはずだが?」

編集員「はい。分かってます」

編集員「ただ……」

部長「ただ?」

編集員「顔は酷い傷で似ても似つかないんですが」

編集員「イケメン提督と名乗ってまして……」

部長「…………」



880: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:30:34 ID:axPxlTaQ


―――――――――――

応接室


部長「……お待たせしました」

イケ督「!」

イケ督「ああ、待ちくたびれた」

部長(……酷い傷だ。これじゃ元の顔も分からんし)

部長(声も全然違う……)

部長「えー……イケメン提督、とお伺いしましたが?」

イケ督「ああ……軍にこんな姿にされたんだ!」

部長「…………」



881: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:31:42 ID:axPxlTaQ


部長「それで……私に何の御用ですか?」

イケ督「決まっている」

イケ督「この事実を報道してくれ」

部長「…………」

イケ督「足りなければ、俺が知っている軍の隠し事を」

イケ督「洗いざらいぶちまけてやる」

部長「…………」

イケ督「確かに顔も声も変わっているが」

イケ督「前にお前の息子の話をした事を俺は覚えている」

イケ督「確か……小学校へ上がったばかりだとか言っていたな」

部長「…………」

イケ督「さ、今こそ新聞の力を……」

部長「自称イケメン提督さん」



882: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:32:15 ID:axPxlTaQ


イケ督「!?」

イケ督「俺はイケメン提督だと言っているだろ!」

部長「まあまあまあ」

部長「そうですな……まずは」

部長「イケメン提督があの事件以降、どう扱われているか」

部長「お話ししましょう」

イケ督「そんな暇は……」

部長「聞く気が無いのなら、このままお帰りください」

イケ督「な……」

部長「いかがしますか?」

イケ督「…………」

イケ督「……聞こう」

部長「結構」



883: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:33:14 ID:axPxlTaQ


部長「まず……深海棲艦の単独襲撃事件後」

部長「イケメン提督は、そのどさくさに紛れて逃亡した」

部長「という事になってます」

イケ督「違う!」

イケ督「俺はあの時、当て身を喰らわされ、気絶させられたんだ!」

部長「まあまあまあ、落ち着いて」

イケ督「ちっ……」

部長「……その後、軍はですね」

部長「南方海域の大打撃は逃亡を図ったイケメン提督の責任とし」

部長「指名手配を大々的に行っています」



884: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:34:08 ID:axPxlTaQ


イケ督「違うんだ!」

イケ督「あの大打撃は、元は大将閣下の指示に従っていたら」

イケ督「深海棲艦の急襲を受けて……!」

部長「落ち着いてください」

部長「あくまで、軍の発表は、というだけです」

イケ督「…………」

部長「続けますよ?」

部長「その後は、イケメン提督のご家族に取材が殺到しまして」

イケ督「!?」

部長「イケメン提督のご家族は、ですね」

部長「息子の不祥事に申し訳ない、申し訳ないと繰り返すばかりでして」

部長「いくばくか経った後……ご自害なされました」

イケ督「」



885: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:35:00 ID:axPxlTaQ


イケ督「な……な……!?」

部長「大変……痛ましい事件でした」

イケ督「親父……お袋……」

部長「それで、ですね」

イケ督「…………」

部長「もし、今、イケメン提督が現れたとしても……」

部長「味方する世論は皆無だと思います」

イケ督「!!」

部長「まあ……あなたが本当にイケメン提督だとしても」

部長「それを示す証拠が無いのでは、お話にならないと思いますが」

イケ督「…………」



886: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:35:50 ID:axPxlTaQ


―――――――――――

編集員「さっきの人、お帰りになられたんですか?」

部長「ああ、帰ったよ」

編集員「しっかし、寄りにもよってイケメン提督だと名乗り出るなんて」

編集員「新聞を見てないんですかね?」

部長「……あの傷跡だから」

部長「治療に専念してて見る機会が無かったのかもな」

編集員「そういうもんですか」

部長「そういうもんさ」

編集員「何にしてもお疲れさまでした」

部長「ああ。たまにはいいさ」



887: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:36:22 ID:axPxlTaQ


部長「…………」

部長(……たぶんあれは)

部長(軍からの警告だろう)

部長(イケメン提督と繋がりのある報道関係者に対して)

部長(余計な事をしたら、次こうなるのはお前だ)

部長(という……)

部長(…………)

部長(今後は……海軍に目を付けられていると想定して)

部長(報道しないといけないな)

部長(くわばら、くわばら……)



888: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:37:03 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


帝都 郊外

障碍者支援施設


イケ督「…………」

イケ督「……あの」

職員「はい?」

イケ督「病院から……ここを紹介されたんだが」

職員「はい、お名前は?」

イケ督「…………」

イケ督「クズ山……クズ夫……です」



889: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:37:56 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


北方鎮守府 執務室


     コン コン

ショウユ督「誰だ?」

明石「明石です」

ショウユ督「入れ」

     ガチャ

明石「失礼します」

     キィ パタン

ショウユ督「どうした?」



890: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:38:49 ID:axPxlTaQ


明石「新しい広域通信機が届きました」

明石「こちらがその関係書類になります。サインをお願いします」

ショウユ督「分かった」

     サラサラ…

ショウユ督「これでいいか?」

明石「はい」

明石「後ですね。新しい広域通信機の設置なんですが」

明石「丸一日かかりますので、日程の調整をお願いします」

ショウユ督「それはいつでも問題ないだろう」

ショウユ督「今は厳冬期で深海棲艦も大人しい」

ショウユ督「明石の都合の良い日を大淀と決めてくれ」

明石「分かりました」



891: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:39:30 ID:axPxlTaQ


明石「ところで大淀はどこですか?」

ショウユ督「たぶん食堂だと思う」

明石「今頃?」

ショウユ督「少々書類仕事が立て込んでな……」

ショウユ督「遅くなってしまったんだ」

明石「分かりました」

明石「では、食堂に行ってみます」

ショウユ督「すまんな」

ショウユ督「大淀にもう少しゆっくりでもいいと伝えてくれ」

明石「はい」



892: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:40:23 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


北方鎮守府 食堂


利根「む?大淀、今頃昼食か?」

大淀「そう言う利根さんも?」

利根「うむ」

利根「吾輩は演習の後始末に少々手間取ってな」

大淀「そうですか」

大淀「実は私も書類仕事が溜まってて……」

利根「そうか……お互い手際が悪かった様じゃの」

大淀「ははは……」



893: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:41:19 ID:axPxlTaQ


利根「……ブサイク提督は」

利根「こんな小さな事も手際よく用意してくれておったのじゃな」

大淀「そういう事ですね……」

利根「こうなると、南方への転属願いが認められた天龍と」

利根「転属命令があった金剛達がうらやましく思えるのう」

大淀「ふふふ、そうですね」

大淀「日々、ブサイク提督の有難さが分かる事ばかりです」

利根「今頃は……どうしておるのやら」

大淀「大丈夫ですよ」

大淀「きっと……利根さんのアドバイスを生かしてくれてるでしょう」

利根「そうじゃな……」

利根「吾輩らの轍を踏まぬ様、艦娘が育つじゃろう」



894: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:42:31 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


南方鎮守府 談話室


霞「まったく……つまらない任務ばかりで退屈だわ」

霞「顔だけでなく作戦の作りも酷いものね、あいつ」

満潮「ほんと。なんであんなのが指揮官なんだか」

朝潮「……二人とも、言葉が過ぎるわ」

大潮「そ、そうですよ……」

大潮「まあ、気持ちは分からないでもないけど……」

霞「ふん」

     テク テク テク

天龍「……朝潮型、そろってるな」

霞「何よ、天龍。何か用?」



895: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:43:43 ID:axPxlTaQ


天龍「次の任務だがな」

天龍「お前たちに決めさせてやるぞ」

霞「……はあ?」

     バサッ(海図)

天龍「大体の戦況は分かっているな?」

霞「バカにしてるの?」

天龍「ほいほい」

天龍「この海図に書かれてる赤丸がブサイク提督お勧めの海域だ」

天龍「他の海域を選びたいのなら、そこでもいいし」

天龍「俺は確定だがあと一人、戦力も好きなのを連れて行っていいぞ」



896: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:44:38 ID:axPxlTaQ


霞「戦力……戦艦や空母とかでも?」

天龍「ああ」

天龍「どうだ? やってみるか?」

霞「ふん……面白そうね」

霞「やってやろうじゃない」

朝潮「えっ本気?」

朝潮「いくら何でも危ないのでは……」

満潮「あんなブ男に出来る事なのよ?」

満潮「実際の戦場を知らないあいつより私たちの方が」

満潮「よっぽど優秀だって事、見せつけてやるわよ!」

天龍「…………」



897: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:45:34 ID:axPxlTaQ


天龍「……旗艦は誰がやる?」

霞「私がやるわ」

天龍「分かった」

天龍「どこの海域を攻略するのか、敵戦力はどれだけか」

天龍「他にも知りたい情報があれば、俺が答えよう」

霞「ふん……そうねぇ」

―――――――――――

翌日

南方 某海域

     ザザザザザザザ…

満潮「……くっ」

大潮「大丈夫? 満潮?」

満潮「これくらい……平気よ」



898: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:46:35 ID:axPxlTaQ


霞「…………」

天龍「さて、霞」

霞「……何よ」

天龍「敵に潜水艦が居て予想外のダメージを受けた訳だが」

天龍「これからどうする?」

霞「…………」

天龍「……対潜装備が無い以上」

天龍「俺は撤退をお勧めする」

霞「……っ」 ギリッ

朝潮「霞……気持ちは分かるけど」

朝潮「満潮と鳳翔が中破してる……敵の主力まで行けたとしても」

朝潮「相当のダメージを覚悟しないといけない」



899: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:47:28 ID:axPxlTaQ


霞「…………」

霞「……ブサイク提督に……撤退を打電するわ」

朝潮「うん……それでいいと思う」

朝潮「次、また頑張ろう」

満潮「待ってよ!」

満潮「私はまだ戦えるわ!」

霞「旗艦は私よ。従いなさい」

満潮「何でよ霞!」

満潮「あのブ男みたいに安易に撤退を選んで!」

霞「っ!!」

霞「…………」

天龍「…………」



900: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:48:24 ID:axPxlTaQ


天龍「満潮」

満潮「何よ、ブ男の腰巾着」

天龍「なら、お前が今から旗艦をやるか?」

満潮「……は?」

天龍「お前が旗艦をやって、この先、戦闘を続行させ」

天龍「誰かが轟沈した場合」

天龍「その責任はお前になるが……それでいいな?」

満潮「な……」

天龍「旗艦ってのは……指揮官ってのは、な」

天龍「そういった命令を下した全員の命を預かっているんだ」

満潮「…………」

天龍「その覚悟や自覚がお前にあるってんのなら……」

天龍「今からでも旗艦をやらせてやる。やってみろ」



901: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:49:04 ID:axPxlTaQ


満潮「…………」

天龍「……どうした満潮」

天龍「やってみろよ!! ああ!?」

満潮「ひっ……」

霞「天龍……その辺にして」

天龍「ふん……」

霞「満潮……私の命令に従って」

満潮「…………」

満潮「……了解」

朝潮「…………」

大潮「…………」



902: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:50:01 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


南方鎮守府 執務室


ブサ督「よく帰って来てくれた」

霞「…………」

満潮「…………」

朝潮「…………」

大潮「…………」

鳳翔「…………」

天龍「……おうおう、行きしなの勢いはどうしたぁ?」

天龍「さっさと任務報告しろ、霞」



903: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:51:17 ID:axPxlTaQ


ブサ督「…………」

霞「……当該海域の主力部隊撃滅を目指すも」

霞「道中の敵から……予想外である潜水艦から攻撃を受け」

霞「満潮と鳳翔に中破のダメージを負い、目的達成は困難と判断」

霞「撤退の決断を……下したわ」

満潮「…………」

朝潮「…………」

大潮「…………」

鳳翔「…………」

ブサ督「……そうか。大変だったな」

ブサ督「では、損傷した艦娘は入渠、高速修復材の使用を許可」

ブサ督「あとは、ゆっくり休んで、次の戦闘に備えてくれ」



904: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:52:03 ID:axPxlTaQ


霞「!?」

霞「ま、待ちなさいよ!」

ブサ督「ん?」

霞「私は……ミスをしたわ」

霞「その罰を受けさせないの?」

ブサ督「……最終的に霞の作戦行動に許可を出したのは俺だ」

ブサ督「だから、そんな必要はない」

霞「で、でも……」

ブサ督「むしろ……この状況で速やかに撤退を決断したのは」

ブサ督「俺としては好感が持てるくらいだ」

霞「ブサイク提督……」



905: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:53:04 ID:axPxlTaQ


ブサ督「なので、お咎め無し。それでも何か罰を受けたいのなら」

ブサ督「今度、飯でも奢ってくれ」

霞「…………」

霞「ふん……いいわよ」

霞「食堂で一番高いメニューをご馳走してあげるわ」

ブサ督「ああ。楽しみにしておこう」

―――――――――――

南方鎮守府 談話室


天龍「これで分かったか?」

天龍「敵海域の情報、艦隊構成、分析、それに対する艦娘の種類と装備」

天龍「全部、ブサイク提督が1から10まで考え、揃えて」

天龍「お膳立てしてくれてたんだ」



906: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:53:38 ID:axPxlTaQ


霞「…………」

満潮「…………」

朝潮「…………」

大潮「…………」

天龍「お前たちはな、自分の実力で勝ってたんじゃねえ」

天龍「ブサイク提督に『勝たせてもらってた』んだよ」

天龍「それを肝に銘じておけ」

霞「……了解」

満潮「……分かったわよ」

朝潮「……朝潮、肝に銘じます」

大潮「……よく分かりました」



907: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:54:32 ID:axPxlTaQ


天龍「ん」

     ゾロ ゾロ…

天龍「ふう……」

鳳翔「お疲れ様です、天龍さん」

天龍「鳳翔の方こそな……」

天龍「中破までさせちまった」

鳳翔「いえ……お気になさらず」

鳳翔「後方に増援部隊が控えているの知ってましたから」

鳳翔「安心してましたし」

天龍「……あのまま進んでても大丈夫な様にはしてあったが」

天龍「霞が撤退を決断するとは思わなかったよ」

鳳翔「きっと……根はいい娘なんでしょう」

天龍「……そうだな」



908: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:55:17 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


南方鎮守府 執務室


天龍「――って感じで」

天龍「いい経験になったと思う」

ブサ督「そうか……」

ブサ督「でも天龍」

天龍「ん?」

ブサ督「わざわざお前が憎まれ役をやらなくても……」

天龍「……自分で決めた事だ」

天龍「あんな思いはもう……二度としたくねぇしな」

ブサ督「…………」



909: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:56:10 ID:axPxlTaQ


天龍「それにな、利根の言う通り」

天龍「ブサイク提督は優しすぎるんだよ」

ブサ督「そ、そうか?」

天龍「だから……かつての俺たちみたいに」

天龍「艦娘が付け上がっちまうんだ」

ブサ督「…………」

天龍「この利根が考えた方法は俺としても かなりいいと思う」

天龍「ブサイク提督のすごさを分からせるには」

天龍「自分たちで一から準備させて行動させればいい」

天龍「本当に効果的だ」



910: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:56:58 ID:axPxlTaQ


ブサ督「……イケメン提督指揮下での経験から学んだとか」

ブサ督「手紙には書いてあったな」

天龍「実際そうだろうさ」

天龍「この俺も……そうだからな」

ブサ督「…………」

天龍「ところでよ」

ブサ督「ん?」

天龍「前から聞きたかったんだが……ブサイク提督は」

天龍「どうして艦娘部隊の指揮官になろうと思ったんだ?」

ブサ督「……こ」

天龍「こ?」



911: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:57:57 ID:axPxlTaQ


ブサ督「こ、皇国の、海の安全を守るため……」

天龍「……ブサイク提督は嘘がヘタだな」

天龍「正直に言ってくれ」

ブサ督「……察してくれないか?」

天龍「ブサイク提督の口から聞きたいんだ」

ブサ督「…………」

ブサ督「……艦娘となら」

ブサ督「仲良く出来るかな……って……」

天龍「ふうん……」

ブサ督「十代後半の思春期真っただ中だったんだ」

ブサ督「今なら不純な動機だったって思ってるよ」

天龍「いいんじゃねーの?」

ブサ督「……へ?」



912: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:59:13 ID:axPxlTaQ


天龍「ブサイク提督も男なんだし」

天龍「そういう気持ちを抱くのも分からんでもないぜ?」

ブサ督「…………」

天龍「よく俺の胸ばっか見てたしな♪」

ブサ督「す、すまん……」

天龍「別にいいって」

天龍「それだけ俺に魅力があるって事でもあるんだからな」

ブサ督「…………」

天龍「何なら……揉ませてやろうか?」

ブサ督「」

天龍「ははは!」



913: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 20:59:56 ID:axPxlTaQ


ブサ督「……天龍」

天龍「すまん。冗談でも良くないよな」

ブサ督「分かればいい」

天龍「……でもよ」

天龍「本気だったら……どうする?」

ブサ督「…………」

ブサ督「……天龍」

ブサ督「もう、からかうのはそのくらいにしてくれ……」

天龍「……へいへい」

天龍「…………」



914: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:00:43 ID:axPxlTaQ


天龍「……なあ、ブサイク提督」

ブサ督「ん?」

天龍「この後……さ」

天龍「予定が無いのなら……二人で飯でも食わないか?」

ブサ督「ああ、いいぞ」

天龍「うっしゃあ!」

     バタン!

榛名「ブサイク提督さん!」

榛名「この後、榛名と一緒にご飯を食べませんか?」

ブサ督「あ……」



915: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:01:28 ID:axPxlTaQ


天龍「悪いな、榛名」

天龍「ブサイク提督は、この俺と夕飯を食べる約束を、今、したんだよ」

榛名「なっ……」

榛名「ぐぐぐっ……榛名、我慢しますっ」

ブサ督「いや、俺は別にみんなと一緒でも……」

天龍「なんだよ……」

天龍「俺と二人きりは……嫌だってのか?」

ブサ督「」

ブサ督「だ、誰もそんな事は言ってないだろ!?」



916: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:02:12 ID:axPxlTaQ


     ガチャ

電「失礼しま……」

ブサ督「…………」

天龍「…………」

榛名「…………」

電「……した」

     パタン

ブサ督「いや!?ちょっと待ってくれ!電!」

ブサ督「大丈夫だから!?」

     ガシッ

天龍「さ、俺と二人っきりで飯にしようぜ♡」

榛名「ぐぎぎぎぎっ」

ブサ督「」



917: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:03:14 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


大本営 元帥の執務室


フツ督「……報告は以上です」

元帥「うむ」

元帥「後任のソース顔提督は、ちゃんと西方を守っているようだな」

フツ督「ええ……俺の代わりにしっかりと」

元帥「ふふふ……そう浮かない顔をするな」

元帥「私は貴様が大将になってくれて本当に感謝している」

フツ督「その代償で、俺の胃に穴が開きそうですよ……」

元帥「貴様なら大丈夫だ」



918: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:03:56 ID:axPxlTaQ


元帥「それでは明日の予定だが」

元帥「陸軍との合同演習に向けた調整を頼む」

フツ督「…………」

フツ督「……ひと月くらいかかりそうな案件なんですが」

元帥「これが済めば休暇を取らせよう」

元帥「秘書艦の龍田と共にな」

フツ督「…………」

元帥「頑張ってくれたまえ」

フツ督「……了解」

フツ督(うう……どうしてこんな事に)

元帥(…………)



919: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:04:55 ID:axPxlTaQ


元帥(ブサイク提督に彼を大将にする妙案は無いか相談したら)

元帥(一番の近道はフツメン提督に手柄を立てさせる事だと言われ)

元帥(あえて、脛に傷持つ敵対派閥の人物を先に大将職へ就かせた)

元帥(…………)

元帥(その後、フツメン提督にそいつを調べさせ)

元帥(そいつを引きずり降ろさせる事で手柄とし)

元帥(彼を大将へ昇進させる事に議会を納得させ)

元帥(私の派閥の大躍進となった……)

元帥(…………)

元帥(フツメン提督には悪い事をしてしまったが)

元帥(彼の人脈を私の派閥に組み込む事もできたし……)

元帥(ブサイク提督には、今度、何か贈り物でもしておこう)



920: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:05:35 ID:axPxlTaQ


元帥「ああ、そうそう」

元帥「以前、言われてた事だったが……」

フツ督「はい?」

元帥「メガネ提督」

元帥「貴様の指揮下に加える手続きが済んだ」

フツ督「!」

フツ督「あ、ありがとうございます!」

元帥「何でもブサイク提督のお墨付きだとか?」

フツ督「ええ」

フツ督「俺は全く知りませんでしたが」

フツ督「彼が言うには、同じ戦力で戦った場合」

フツ督「ショウユ顔提督もソース顔提督も敵わないだろうと」



921: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:06:53 ID:axPxlTaQ


元帥「……にわかには信じられない話だな」

フツ督「贔屓目もある、とは付け加えてましたけどね」

元帥「だが、その言葉を貴様は信じるのだな?」

フツ督「ええ」

フツ督「ブサイク提督の戦術、戦略は超一流ですから」

元帥「私も大いに期待しよう」

元帥「それと……」

フツ督「まだ何か?」

元帥「例の離島艦娘と深海棲艦についてのレポートだが」

フツ督「……ようやくお読みになられましたか」

元帥「厄介な事実を持ち込んでくれたな……」

元帥「こんなもの公表なんて絶対に出来ないぞ」



922: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:07:52 ID:axPxlTaQ


フツ督「でしょうね」

元帥「ふう……」

元帥「一部、公表したいものもあるが」

元帥「それをやると、どう考えても情報源を追及されてしまう」

元帥「そうなったら芋づる式に公表しなくては」

元帥「海軍の信用の失墜に繋がってしまうだろう」

フツ督「…………」

元帥「公表したらしたで、艦娘を敵視する連中も増えるだろうし」

元帥「対艦娘部隊創設派を勢い付かせてしまう」

フツ督「……全くもってその通りだと思います」



923: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:08:46 ID:axPxlTaQ


元帥「まあ、そういう訳だから」

元帥「海軍への情報提供には感謝するが」

元帥「私が元帥職である限り、この情報は秘匿し続ける事とする」

フツ督「ええ。それで構いません」

フツ督「私としても元帥閣下に知っておいて欲しかっただけですので」

元帥「ふん……」

元帥「抜け抜けと言いおって……」

フツ督「腹黒ですので」

元帥「よろしい。それでこそ私が見込んだ男だ」

フツ督「はっ」

元帥「では、明日からも頼むぞ」

元帥「フツメン大将」

フツ督「了解です」



924: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:09:44 ID:axPxlTaQ



こうして……

イケメン提督による一連の騒動は幕を閉じた。


彼によるとされる大損害での艦娘の犠牲に加え

大将職が短期間に二人も辞任するという

不名誉な出来事に見舞われ

海軍の信用は一時期、大きく失墜する事になった。


が、新たに大将へ就任した若手のフツメン提督は

その手腕をいかんなく発揮し

各方面艦娘艦隊は一部で新たな提督を迎え

戦力の再編と拡充、国民への信用回復を少しずつ進めている。

.



925: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:10:59 ID:axPxlTaQ



北方は厳冬期に入り、深海棲艦の活動が

一時的とはいえ鈍るため、当該主力である金剛と比叡は

南方へ転属。

さらに南方では、金剛型4番艦である霧島が加わり

金剛型4姉妹が勢ぞろいした、という事で

紙面を大いに賑わせ、これも海軍の信用回復に繋がる事となった。


しかし……深海棲艦との戦いは、まだまだ混迷を極め

人々が安心して海を渡るには時間が掛かりそうであった。

.



926: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:11:34 ID:axPxlTaQ



―――――――――――


数日後のある日

西方海域 例の離島の砂浜


     ザザーン… ザザーン…


榛名「久しぶりですね、ここへ来るのも」

ブサ督「ああ……そうだな」

     ザッザッザッ

榛名「灰色の髪の君さん」

榛名「お久しぶりです」

ブサ督「…………」



927: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:12:12 ID:axPxlTaQ


ブサ督「ここも温かいな……」

ブサ督「内地は真冬で雪が降っている頃だというのに」

榛名「不思議ですね」

榛名「緯度とか経度とか、地球の地軸とか」

榛名「そういう理屈は分かってても」

榛名「今、この瞬間、同じ星で、違う気候が存在するんですから」

ブサ督「……そうだな」

ブサ督「この世の中は不思議でいっぱいだ」

榛名「ふふふ」

ブサ督「…………」

ブサ督「榛名」

榛名「はい?」



928: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:12:57 ID:axPxlTaQ


ブサ督「その……こういうのは慣れてなくて」

ブサ督「正しいやり方かどうかも良く分からんのだが……」///

榛名「?」

ブサ督「……俺は」///

ブサ督「榛名の事が……好きだ」///

榛名「!!」

ブサ督「…………」///

榛名「ブサイク提督さん……」///

榛名「榛名……嬉しいです!」///

榛名「榛名もブサイク提督さんの事が、大好きです!」///

ブサ督「あ、ありがとう、榛名」///



929: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:13:54 ID:axPxlTaQ


ブサ督「そ、それで、だな」

ブサ督「これを……受け取って欲しい」

榛名「指輪……ですか?」

ブサ督「うん……海軍艦娘部隊の伝統で」

ブサ督「好意を寄せる艦娘に指輪を送って結ばれると……」

ブサ督「その二人はずっと幸せになれるっていうものなんだ」

榛名「まあ……うふふ」

榛名「とっても素敵な伝統ですね♪」

ブサ督「ははは……喜んでくれて良かった」

     キラン☆

榛名「榛名、大事にします!」

ブサ督「うん」



930: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:14:56 ID:axPxlTaQ



     ザザーン… ザザーン…


ブサ督「……近いうちに」

ブサ督「俺の両親に会って欲しいんだが、いいか?」

榛名「はい、構いません」

榛名「ブサイク提督さんのご両親ですから」

榛名「榛名、今から楽しみです♪」

ブサ督(……俺がこんな美人を連れて帰って来たら)

ブサ督(とーちゃん、かーちゃん、腰抜かすだろうなぁ)

ブサ督「……そうだ」

ブサ督「榛名、内地へ帰ったら、何かやりたい事はあるか?」

榛名「やりたい事、ですか?」

ブサ督「そう」



931: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:15:26 ID:axPxlTaQ


ブサ督「例えば美味しいものを食べたい、とか」

ブサ督「映画を見たい、とか……」

榛名「う~ん……」

ブサ督「…………」

榛名「……そうですね」

榛名「榛名は……桜が見たいです」

榛名「ブサイク提督さんと二人で!」

ブサ督「!」



932: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:16:07 ID:axPxlTaQ



 「私は……自分の名前に使わせてもらった」

 「桜の花を見たい」

 「……ブサイク提督と二人で」


ブサ督「…………」

ブサ督「…………」 ポロポロ

榛名「えっ!?」

榛名「あ、あの、ブサイク提督さん!?」

     グイッ…

ブサ督「……大丈夫」

ブサ督「大丈夫だ、榛名」



933: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:16:41 ID:axPxlTaQ


榛名「でも……」

ブサ督「悲しくて泣いたんじゃない」

ブサ督「嬉しかったんだ」

榛名「そう……なのですか?」

ブサ督「ああ」

榛名「…………」

ブサ督「来年……春になったら」

ブサ督「内地に戻って、桜を見に行こう」

ブサ督「必ず、榛名と二人で」

榛名「はい!」



934: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:17:44 ID:axPxlTaQ



俺は……自分の顔の醜さをずっと呪ってきた。

ガキの頃は、この境遇に何度も泣いて死にたくなった。


周りは俺をバカにする奴ばかりだったが

わずかながら友達も居た。

おかげで俺は道を踏み外さずにいられたが

友人に彼女が出来てからは疎遠になった。

.



935: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:18:20 ID:axPxlTaQ



悔しかった。

俺はかすかな希望にすがって

海軍艦娘部隊の士官学校へ入学した。

……艦娘の反応も同じだった。


でも俺は思い違いをしていた。

そこにある艦娘には命があって

浮ついた気持ちで扱っていいものでは無かったのだ。

.



936: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:19:07 ID:axPxlTaQ



……俺と話をしてくれた艦娘たちの命を

俺の命令で失ってしまった。

恐ろしかった。

悲しかった。

罪悪感が俺の心を苛(さいな)んだ。

この世の中は俺に悪意しかないのかと

絶望した。

.



937: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:19:54 ID:axPxlTaQ



俺は努力をした。

艦娘の命を二度と無駄にしない為に

作戦を考え、地形を調べ上げ

少しでも艦娘が傷つかない方策を

模索し続けた。


……気が付けば

鎮守府の司令官に上り詰めたが

一般の婦女子も艦娘の態度も変わらなかった。

.



938: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:20:32 ID:axPxlTaQ



それでもいいじゃないか

これで良かったんだ。

……そんな言葉で誤魔化していたが

現実は俺の心を

少しずつ蝕んで凍らせて行くのが

ひしひしと感じられて辛かった。

.



939: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:21:14 ID:axPxlTaQ



ただ……温かい話し相手が欲しかった。

安らげる相手が欲しかった。

心を癒してくれる人が

俺の傍に居て欲しかった。


日々、過ぎていくだけの現実の時間が

空しかった。

泣きたかった。

言葉で言い表せないほど

とにかく辛かった。

.



940: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:21:53 ID:axPxlTaQ








……でも






.



941: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:22:39 ID:axPxlTaQ




そんな辛い思い出も

出来事も



この日の幸せの為にあったのかもしれないと

初めて思えたのだった……




     おしまい



944: 以下、名無しが深夜にお送りします 2020/11/13(金) 21:27:17 ID:axPxlTaQ

という事でこれで終了です。
実は昔、途中まで書いてて放置、発掘したものなんですが
久しぶりに読んでみたら、これ続き読みたいなぁ……と思い
続きを書き始めました。
楽しんで頂けたのなら幸いです。
お付き合いありがとうございました!


元スレ
SS深夜VIP:【艦これ】ブサ督「イケメンに限るって……真理だよな」