過去作
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
白菊ほたると不思議体験その2
【モバマス】響子「混ぜる」ほたる「混ざる」
P「ええっ、茄子が遅刻!?」
ちひろ「物珍しげな顔で『私、赤信号で止められたのって初めてです』とか言ってた茄子ちゃんが遅刻!?」
ほたる「駅に着いたら必ずホームに目当ての電車が居るから乗り損なったことのない茄子さんが遅刻!?」
茄子「もう、みんな私の事を何だと思ってるんですか」
P「商店街の福引きから出入り禁止になったアイドル」
茄子「た、確かにそういうこともありましたけど」
ちひろ「一緒に宝くじを買いに行って欲しいアイドルナンバーワン」
茄子「その件は以前はっきりお断りしたはずです」
ほたる「茄子さんは努力家で周りの人を暖かい気持ちにしてくれる、とっても優しいお姉さんです」
茄子「ほたるちゃんは後でハグさせてくださいね」
ほたる「へあっ!?(///)」
2: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:26:02 ID:gPJ
P「しかし、実際遅刻なんて初めてだよな」
茄子「お恥ずかしい」
ちひろ「お寝坊しないように早く寝ないとダメですよ?」
茄子「どうして私が寝坊したことになってるんですかー!」
ちひろ「だって茄子ちゃんがトラブルで遅刻するなんて有り得ないですし」
ほたる「茄子さんはとってもおしごとに真剣だからお寝坊なんてしません(プクー)」
茄子「ほたるちゃん……(ハグ)」
ほたる「あわわわわ(///)」
P「これこれほたるが茹で蛸になる前に解放してあげなさい……とは言え実際、茄子が交通事情で遅刻するとか考えられないしなあ」
茄子「いえその、いつも通りの時間にマンションを出たのに電車が遅れたんです」
ちひろ「えっ」
茄子「恥ずかしながらこういう事態って殆ど経験がなくって。慌てちゃって駅で迷ってしまうしバスはちょうど出たところで。なんとか捕まえたタクシーはすぐパンクして動かなくなっちゃうし」
ちひろ「うわあ、大変だったんですねえ」
P「ほたるの体験談でも聞いてるみたいだなあ」
ほたる「いつもの私なら、ようやく事務所の前まで来たと思ったら植木鉢が降って来るのも追加ですね(フンス)」
P「なんでほたるはちょっと得意げなの」
茄子「とにかく、今日は本当にすみませんでした。あの、お仕事のほうは」
P「大丈夫。まだ十分余裕があるから」
ちひろ「ただ、いくら茄子ちゃんが幸運でもこういう事態はあり得ますからね。意識して少し早めに出るようにした方がいいかもしれませんね」
茄子「はい、任せてください!」
~翌日~
P「とか言ってたのにまた遅刻なの!?」
茄子「わああんちゃんといつもより30分早く家を出たんですよう(ギュウウウ)」
ちひろ「どさくさにまぎれてほたるちゃんをハグするのやめてあげてください。窒息しそうになってますよ」
茄子「ハッ、ご、ごめんなさい。大丈夫ですかほたるちゃん!?」
ほたる「いきが……くるし……あまいにおい……やわらか……(フラフラ)」
茄子「ちょっと刺激が強すぎましたか……」
P「うらやま……ああいやいや。今日もなんかトラブルだったのかい」
茄子「はい。爆破予告があったとかでいつもの駅が立ち入り禁止になってて」
ちひろ「いきなりカッ飛ばしてきましたね」
茄子「それで、駅に入れなかった人がみんな使おうとするからタクシーもバスも満員で。しかたないから歩いたんですけどいつもの道を事故車両がふさいでて。しばらく歩いてようやく拾ったタクシーの運転手さんは勘違いして逆方向に行こうとするし……」
ほたる「た、大変だったんですね……」
茄子「本当、どうなっちゃうんだろうって、おなかがきゅうってなりましたよ」
P「連絡してくれれば車を出したのに」
茄子「それがスマホの充電が切れてしまっていて。昨日確かにケーブル繋いでおいたんですけど」
ちひろ「断線か何かでしょうかねえ」
P「しかしまた災難だったな。こういう時もほたるとは正反対か」
茄子「えっ?」
ちひろ「ほたるちゃん、昨日今日と全然トラブルなしで事務所に到着できたらしいんですよ」
ほたる「電車もバスも遅れなくて……信号も全部青で……トラブルがある前提で早く寮を出ていたから、事務所が開く前に着いてだいぶ待ちました」
P「すごい挙動不審になってて可愛かったぞ」
ほたる「だって、こんなことって初めての経験で……!」
ちひろ「まあ、人間ですもの。運の悪い日もあれば、良い日もあるのが当然かも知れませんね」
ほたる「はい。だから茄子さんも、きっと明日は」
茄子「……そうですね」
ほたる「茄子さん?」
茄子「ああ、いいえ、いいえ。いっそ今夜はほたるちゃんのお部屋に泊まらせてもらったら遅刻しないかな? なんて考えてて。ふふふ」
ほたる「う、うれしいですけれど、その(///)」
P「こらこら、ほたるを困らせるんじゃありません」
茄子「えー、ほたるちゃんは私とお泊まり嫌なんですか?」
ほたる「嫌じゃないけど尊敬する大好きなお姉さんとおとまりなんて、き、緊張します。それに私のお部屋、すぐ電気とか壊れるし……!」
ちひろ「度重なる修理のくりかえしで、ほたるちゃんのお部屋だけ他と構造が変わっちゃってますものね」
ほたる「そ、その節はご迷惑ばかりおかけして……!!」
P「ともかく心配したよ。そういう事情なら『気をつけろ』って訳にも行かないが、今度からなんとかして事務所に連絡を入れてくれ。コンビニとかで電話を借りればいいんだから」
茄子「その手があった……!?」
P「あ、今気が付いたって顔だ」
ちひろ「トラブル慣れしてないから考えた事なかったんですねえ」
ほたる「タクシーさんのトラブルなら連絡に協力してくれることもありますから頼んでみるのもいいかも知れません」
茄子「実体験に基づいた貴重なアドバイスありがとう……!」
ほたる「まあ本当に運が悪い時はそういう努力も空振りに終わるものなんですけどね」
ちひろ「うわあ実感こもってるう」
P「さてと、無駄話はそろそろ終わりだ。2人とも現場まで送っていくから車に乗って」
ちひろ「今日は茄子さんとほたるちゃん、2人一緒の現場なんですね」
ほたる「はい。ミス・フォーチュンのニューシングルお披露目イベントなんですよ!(ピョンピョン)」
ちひろ「ふふ、はしゃいでるはしゃいでる」
茄子「はあ、ほたるちゃん可愛い。お持ち帰りしたい」
P「そこの20歳は欲望を隠す努力をしなさい。はい、急いで急いで。時間押してるんだから」
ミス・フォーチュン「「はーい!!」」
~夕方・イベント会場~
スタッフ「ではミス・フォーチュンのお2人はここまでということで。後はこっちで片づけておきますので先にお帰りになってくださいね」
茄子「はい、今日は進行ありがとうございました」
ほたる「皆さんのおかげで、とってもすてきなイベントになりました。本当に、ほんとうにありがとうございます!(ペコペコ)」
スタッフ(ほほえましいなあって顔)
茄子(どうですほたるちゃんは可愛いでしょうフンスって顔)
スタッフ(なんでこの人が得意そうなんだろうって顔)
ほたる「あのー、茄子さん?」
茄子「あ、すみません……では、帰りましょうかほたるちゃん(トコトコ)」
ほたる「はい!(トコトコ)」
茄子「……」
ほたる「……」
茄子「……」
ほたる(なんだろう……茄子さん、なんだか考え事してるみたい……)
ほたる(遅刻のこと、気にしてるのかな。茄子さんは責任感強いから……)
ほたる「あ、あの、茄子さん」
茄子「はい。なんでしょうほたるちゃん」
ほたる「あの。わ、私喉が乾きました。あの自販機で、2人でジュース買いませんか?」
茄子「あら、あたり付きの自販機ですね」
ほたる「私はえーと、泰葉ちゃんおすすめのレモンティーを……」
茄子「あ、ちょっと待ってください。私に、先に買わせてくださいね」
自販機(ピピピピ……)
自販機(ピコーン。モウイッポンアタリデス)
ほたる「わあ、すごい。本当に当たった……!」
茄子「ふふ、ラッキーでした……ほたるちゃんはレモンティーでしたね。はい」
ほたる「ありがとうございます……あ、あの」
茄子「?」
ほたる「昨日と今日は、たまたま運が悪かったんですよ。明日はきっと今みたいに……」
茄子「……私が気に病んでると思って、励ましてくれたんですか?」
ほたる「え、あ、その……茄子さん真面目ですし、滅多にこんな失敗しませんから。それで考え事してるのかな、あって」
茄子「ほたるちゃんは、優しい子ですね」
ほたる「そ、そんなこと、ありません」
茄子「大丈夫ですよ。以前も『こういうこと』はありましたから」
ほたる「えっ、茄子さんも運が悪かったりすることがあるんですか」
茄子「もう。ほたるちゃんは私を何だと思ってるんですか?」
ほたる「す、すみません」
茄子「……運は結局、運ですから。いつだって、自分の思うままには動かないものなんですよ」
ほたる「……今の、なんだか凄みがありました」
茄子「そうですか? ふふふ」
ほたる「……」
茄子「……あの日」
ほたる「?」
茄子「あの日、私が欲しかったのは、一等のハワイ旅行じゃなくて三等の大きなクマのぬいぐるみでした、なんちゃって」
ほたる「???」
茄子「ふふふ。ほたるちゃんは、そんな経験はありませんか?」
ほたる「私、そもそもクジが当たったことがありませんから……でも、逆ならある、かも」
茄子「逆?」
ほたる「はい。私、第一志望は今の事務所じゃなかったんです」
茄子「……ああ、言われてみればそうですね。第一志望のところには、一番先に行きますものね」
ほたる「はい。だから、第一志望もその次も、オーディション受からなかったりクビになったりで次々追い出されて」
茄子「……大変だったと聞いています」
ほたる「でも、だからこの事務所に巡り会えたんです。最初私はこの事務所に来ようと思わなかったけど、第一志望じゃなくて、ここに拾って貰えて本当によかったって思います」
茄子「……プロデューサーさんもちひろさんも、仲間のみんなも、本当にいい人たちばかりですものね」
ほたる「はい。だから私は、ラッキーな第一志望じゃなくてここに……あれ」
茄子「ほたるちゃん?」
ほたる「考えてみたらこれクジの話と関係ないですね……? ごめんなさい!?」
茄子「ふふ、話が途中でこんがらかっちゃうほたるちゃん可愛い」
ほたる「もう、茄子さんたら」
茄子「まあ、でも、解ります」
ほたる「解るんですか」
茄子「皆いい人で、いい場所で。私もここで良かったって思いますもの。ほたるちゃんにも会えましたし」
ほたる「茄子さん……」
茄子「だからずっと、ここで頑張りたいなって思っているんですけど、ね」
ほたる「……?」
ほたる(それきり黙って考え込む茄子さんのお顔がとてもとても真剣で、私はその後、別れるまで茄子さんに声をかけられませんでした)
ほたる(だけど、後になって、それを悔やみました)
ほたる(もっと話を聞いておけばよかった。『こういうこと』が何を意味するのかを、あの問いの意味を、ちゃんと聞いておけばよかったと、何度も何度も考えたからです……)
~数日後・事務所~
P「えっ、茄子がまた遅刻?」
ちひろ「はい。先ほど『マンション前の道路が陥没してしばらく身動きがとれない』と電話で連絡がありまして」
P「おお。ほたるでもそこまでのトラブルは中々無いな……」
ちひろ「ほたるちゃんは全然遅刻しなくなって、まるで2人の幸運と不運が入れ替わったみたいですね」
ほたる「遅刻しなくなった他は、相変わらずよくないこと続きですけどね」
ちひろ「茄子ちゃんも遅刻以外は別段普段と変わらないんでしたっけ」
ほたる「あ、はい。昨日も出先の喫茶店で来店1万人記念のクーポンをゲットしていました」
P「しかし、どうしたものかな。まだ到着してないって、これは今日の仕事間に合わないぞ。今から迎えに行くとしても……」
ちひろ「それについては茄子ちゃんから伝言が」
P「伝言?」
ちひろ「はい。自宅のマンションから今日の現場に直行するそうです。『たぶんそれなら遅刻しないはずだから』って」
P「なんだそれ」
ちひろ「さあ」
P「まあでも、そういうものかも知れないな。ちょっと巡り合わせが悪いだけで、茄子の幸運は健在なんだし。向こう様にはこっちから連絡入れておこう」
ちひろ「はい、解りました……あら、どうしたのほたるちゃん、浮かない顔で」
ほたる「……あの、いえ、なんでも」
P「そういうの、逆に気になるだろう。はっきり言ってくれたほうがいいぞ」
ちひろ「そうそう」
ほたる「す、すみません……あの、今日は茄子さんに会えるかなって思ってたから、ちょっとだけ、がっかりして」
ちひろ「そういえばニューシングルの告知イベントの時からしばらく顔を合わせていなかったですね?」
ほたる「はい。あの日の最後、ちょっと様子がおかしかったから、心配で」
ちひろ「……今日の茄子さんのお仕事19時には終わりますから。マンションに電話でもしてあげたらどうですか?」
ほたる「は、はい、そうします!」
~20時・女子寮~
ほたる「……(プルルルル)」
ほたる「……(プルルルル)」
ほたる「……(プツッ)あ、茄子さ(オカケニナッタデンワハデンパノ……)また、つながらなかった」
ほたる「電波の届かない場所にいるか……かあ」
ほたる「茄子さん、まだマンションに帰っていないのかな」
ほたる「私の不幸のせいでつながらないだけだったりして……」
ほたる「……会いに行っちゃおう、かな」
ほたる「あっ、でもお仕事で疲れてて、今日は電源を切って休んでいらっしゃるのかも」
ほたる「だとしたら、無理に訪ねていったら茄子さんのご迷惑に」
ほたる「でも茄子さんのご様子が気になるし……(ベッドでごろごろ)」
ほたる「でもでもこの時間から出かけて行ったら門限が……(うだうだ)」
ほたる「……」
ほたる「ああ、もう!(ガバッ)」
ほたる「気になって仕方ないし、会いに行っちゃおう……!(着替えきがえ)」
ほたる「急げば門限だってきっと間に合うよね(支度したく)」
ほたる「マンションの前まで行って灯りがついてなかったら黙って帰ってくる方向で……いってきまーす!!」
~3分後・女子寮前~
(ドッザアアアアアアアアアアアア)
ほたる「女子寮を出たとたんにこの雨……!?」
ほたる「えっ、あれっ、さっきまで全然降ってなかったのに」
(ババババババババババ)
ほたる「うわあ小石でも降ってるみたいな音がする……!!」
ほたる「なんでこんなタイミングで突然……」
(ババババババババババ)
ほたる「……まるで行くなって言われているみたい。これもやっぱり、私の不幸の……」
(ババババババババババ)
ほたる「……こ、こんなの慣れっこだもん。突然の雨とかトラブルなんて、いつものことなんだから」
ほたる「傘じゃ役者不足だけど、こんなこともあろうかと鞄に入れておいた携帯雨合羽があればこんな雨……」
(ドバババババボガガガガ)
ほたる「うわあんいたい痛い! 雨粒が当たったところがじんじんする!!」
ほたる「まっ、負けないもん!(スタスタ)」
(ビュオオオオオオ)
ほたる「あ、あわっ、合羽めくれちゃう」
突如通りかかった車(水たまりをザバーン!!)
ほたる「わぷっ!?」
ずぶぬれほたる「……」
ほたる「つめたい……」
ほたる「うう、靴の中も服の中も水浸し……」
ほたる「……これならもう、雨なんか気にする必要ないよね」
ほたる「ぜったい行くもん……!!」
◇
ほたる(そのあとも、色々なトラブルが次から次へと私に襲いかかりました)
ほたる「えっ、この道通行止め!? ずーっと引き返さなくちゃ……」
ほたる(次から次へ。本当に次から次へ)
ほたる「あ、いえ、すみません確かに不幸なんですけど幸せ祈っていただけるのはうれしいんですけど今は時間がなくて」
ほたる(ひとつひとつはよくあることだったけど、こんなに短い時間に一度に起きるのは経験の無いことで)
ほたる「雨で見えなかったけどマンホールの蓋が開いてた!?(ドボーン)」
ほたる(それはまるで、私が茄子さんのところに近づくのを拒んでるみたいでした)
ほたる「うぷ、けほっ、けほっ……」
ほたる(そして、這々の体でマンホールから這い上がったところで、さすがに私も動けなくなってしまいました)
ほたる(合羽が重たくまとわりついて、身動きができません)
ほたる(時間をかけて合羽を脱いで、近くの公園のベンチにへたり込むと11月の雨が降り注いで、どんどん体温が奪われていきます)
ほたる(誰かが言ってました。寒さは、人の心を後ろ向きにするんだって)
ほたる(今の私が、まさにそれです。体の芯まで冷たくなって、一人で俯いて震えながら、つい考えてしまうのです)
ほたる(私はもしかしたら、このまま茄子さんのところにたどり着けないのではないでしょうか)
ほたる(ううん、それ以前に、私が茄子さんを訪ねることそれ自体が、迷惑なことなのではないでしょうか)
ほたる(茄子さんはここのところ、運が悪いみたいでした。それはもしかして、私のせいではないでしょうか)
ほたる(今の事務所で、私はたくさんのいい人に巡り会いました。たくさん幸せな思いをさせてもらいました。だけど、自分の『不幸』が消えてなんかいないことは、誰より私が一番よく知っています)
ほたる(もしも、もしも私のせいで、茄子さんの幸運が損なわれているのだとしたら、私は……)
???「あれっ、ほたるちゃんじゃないですか?」
ほたる(不意に呼びかけられて、私は顔をあげました)
ほたる「茄子さん……」
茄子「はい、茄子ですよ?」
ほたる(訪ねて行こうとした人が、そこに立っていました)
ほたる(いつの間にか、雨は上がっていました)
◇
茄子「どうしたんですかほたるちゃん、そんなずぶ濡れで」
ほたる「あ、あの、雨に降られて」
茄子「ああ、そう言えばお買い物している間、雨音が聞こえたような……あっ、地面も濡れてますね」
ほたる「お買い物、なさってたんですか」
茄子「はい。これ」
ほたる「お総菜に……ビール。茄子さん、家でビールなんてお呑みになられるんですね」
茄子「ふふ、恥ずかしながら、今日はちょっと気が滅入ってたから、呑んじゃおうかなって」
ほたる「……」
茄子「ほたるちゃん?」
ほたる「やっぱり、私のせいでしょうか」
茄子「ほたるちゃん」
ほたる「遅刻するようになったり、良くないことが起きるようになったり。それは、私の不幸が」
茄子「違いますよ?」
ほたる「……」
茄子「以前言いましたよね。『こういうこと』は、前もあったんです。私の運のせいですよ」
ほたる「運……幸運の?」
茄子「……」
ほたる「茄子さん」
茄子「私、昔ピアノ教室に通っていたんです」
ほたる「はあ」
茄子「お友達もたくさん出来て。毎日、学校が終わったら教室に行くのが待ち遠しかったなあ」
ほたる「……」
茄子「でもね。ある時から、そのピアノ教室に行こうとすると、悪いことが起きるようになったんです」
ほたる「えっ」
茄子「電車が止まったり、通行止めになったり、いつものバスが逆走したり、ね」
ほたる「……」
茄子「私の『幸運』はその頃から知れ渡っていましたから。遅刻する理由を言っても信じてもらえなくてね。私、結局そのピアノ教室を辞めることになってしまったんです」
ほたる「そんな」
茄子「……そして、そのピアノ教室に不審者が入り込んで『事件』を起こしたのは、私が辞めてすぐのことでした」
ほたる「……!!」
茄子「あとで聞いた話ですが、その不審者が教室に進入するために下見を始めたのと、私が教室に行こうとするとトラブルが起きるようになったのは、ほとんど同じタイミングだったみたいです」
ほたる「……それ、じゃあ」
茄子「ああ、いままでのトラブルは、私を『不幸』から引き離すために起きていたのかもしれない。私も、そう気が付くのに時間はかかりませんでした」
ほたる「じゃあ、事務所にたどり着けないのも」
茄子「……」
ほたる「やっぱり、私の。私の不幸のせいでしょうか。私がいるから、よくない事が起きるから。茄子さんは事務所に」
茄子「違いますよ」
ほたる「茄子さん」
茄子「運ってね、自分の思うようには働かないものなんですよね。それは、ほたるちゃんもよく解っていると思います」
ほたる「……はい」
茄子「強い幸運も過ぎた不運も、思うにまかせないのは同じこと。ここで止まりたいって時に、止まらせてくれない。もっと進みたいって時に、進ませてもらえない。居たい場所に、居させてもらえない」
ほたる「三等のくまさんが欲しくても、一等のハワイ旅行が当たっちゃう?」
茄子「贅沢なことですけどね……ねえ、ほたるちゃん」
ほたる「は、はい」
茄子「ほたるちゃんはいつでも、自分の不幸と、不運と、戦ってきましたよね」
ほたる「……誰かを、幸せにしたかったから。アイドルになりたかったから」
茄子「……私もね、考えるんです。望む場所に行きたかったら、私も幸運と戦うべきなんだろうな、って」
ほたる「でも、せっかく幸運なことが起きるのに」
茄子「ほたるちゃんは、幸運と幸せの違いって、何だと思いますか?」
ほたる「え? ……ええと、解りません」
茄子「ふふ、では、それは宿題にしておきましょう。考えてみてくださいね」
ほたる「は、はい」
茄子「これは私の運なんです。私が、対抗しないといけないんです」
ほたる「茄子さん……」
茄子「だから、まずはがんばってみますね。だけど、もし私だけの力じゃ足りなかった時は……ほたるちゃん。私に力を貸してくれますか?」
ほたる(茄子さんが、私をみました)
ほたる(真剣な、真剣なお顔でした)
ほたる「……はい」
茄子「ありがとう、ほたるちゃん。私、がんばりますね!」
ほたる「茄子さんなら、きっと、大丈夫ですよ」
茄子「ふふふ……さて、それじゃ、行きましょうか」
ほたる「えっ、行くって、どこに」
茄子「もちろん私のマンションですよ。そんなにびしょ濡れで、放っておけるわけないじゃないですか。一緒にお風呂入って服乾かして、今夜は泊まって行ってください。寮には連絡しておいてあげますから」
ほたる「えっ、あっ、でもご迷惑では」
茄子「ふふふほたるちゃんとお泊まり、ほたるちゃんとお泊まり。うれしいなあ(ぐいぐい)」
ほたる「あっ待っ力強っ!? 行きますから、行きますからー!!」
ほたる(一緒にお風呂に入って、お夜食を食べて、おしゃべりして)
ほたる(私と茄子さんは、楽しくその夜を過ごしました)
ほたる(翌朝は、茄子さんに学校まで送っていただいて、『また明日』って別れたのです)
ほたる(楽しい、楽しい一夜でした)
ほたる(でも、状況はその後、決して良くはならなかったのです……)
~一ヶ月後・事務所~
ほたる(茄子さんが事務所に来られなくなってから、もう一ヶ月が経過していました)
ほたる(最初は遅刻。そのうち、事務所にたどりつく事すら困難になって、茄子さんはマンションから現場へ、マンションからレッスンスタジオへ……事務所に寄りつかずに行動することを余儀なくされてしまいました)
ほたる(事務所は、ただ仕事のための場所ではありません。プロデューサーさんや仲間のみんなが集まる交流のための場所でもあり、これからの展望について話し合い、意見を交わすサロンでもありました)
ほたる(Pさんたちはもう、テレワーク的なものでしか茄子さんにコンタクトできなくなっていました)
ほたる(事務所のパソコンの、ちいさな画面のその向こう。ぽつんと見えるそれが、私たちが事務所で見られる茄子さんの姿)
ほたる(お仕事では会えるけど、もしこのまま茄子さんの『不運』が続くなら、これもいつまで続くのか。私に、皆に、悲観的な見方が広がります)
ほたる(そして、その見方が正鵠を得ていたことは、じきに明らかになったのです……)
◇
ほたる「茄子さんが移籍を……!?」
ちひろ「いえ、具体的に話が動いているわけではないですよ?」
P「茄子の意志次第の事だしな。『茄子さんを是非ウチに。金ならいくらでも!!』て申し入れが大手のプロダクションから来てるってだけの話さ」
ほたる「大手……」
P「そう、大手。ウチなんか比べものにならないようなとこ」
ちひろ「まあ正直、こういう事態もあるだろうなあ、とは思っていましたけどね」
ほたる「も、もちろんプロデューサーさんたちは反対なんですよね?」
P「……」
ちひろ「……」
ほたる「どうして黙ってしまうんですか」
P「繰り返すけど、当然これは茄子の決定次第だよ。いくら金を積まれようが俺たちが無理強い出来ることじゃない。ただ……」
ほたる「ただ?」
ちひろ「ただ、茄子ちゃんにとっても、悪い話じゃないんですよね。だからもし茄子ちゃんがその気になったら止められないというか、場合によっては移籍するよう助言するまである、というか」
ほたる「そんな、どうして」
P「規模が全然違うんだよ。資本力も設備も人員も圧倒的に向こうが上。茄子がこれからアイドルとしての活動を広げて行くなら、断然条件がいい」
ほたる「こ、この事務所はすてきなところだと思います。私も。茄子さんもそう思っていると思います」
P「ここ一ヶ月、まともにケアできていないのに?」
ほたる「……」
P「俺も、プロダクションの大小だけで勝負が決まるとは思わない。小さいとこには小さいなりの戦い方があるし、アイドルたちが本当に望む仕事をさせるために全力を尽くしたいと思っている」
ちひろ「それは私も同じです」
ほたる「……Pさんたちがいなかったら、ここでなかったら。私はきっと、アイドルになんかなれなかったと思います」
P「ただ、それは俺たちスタッフとアイドルが緊密に協力しあうからこそ出来ることなんだよ」
ほたる「……」
P「これまで出来る限りのケアをして来たけど、現場での連絡、電話やメールでのやりとりだけでは、やはり限界がある。茄子が事務所に来られない状態がこれ以上続くなら、茄子の力を十全に引き出してやる事は難しいよ」
ちひろ「テレワーク的なものでそのあたりを補っては居ますが、わざわざそうしなくては芸能活動ができない、というのは茄子ちゃんにとってはっきりハンデなんですよね」
P「実際、そういう状況が見透かされたから引き抜きの話を持ち出された、というのはあるだろうしな」
ほたる「それは……」
ほたる(そう言われると、私は黙るしかありませんでした)
ほたる(以前のお仕事で、私は茄子さんと話したことがあります。幸せは、探すものなんだ、って)
ほたる(でも、今の茄子さんにとっての幸せって、なんでしょう)
ほたる(アイドルとしての活動に支障がある。ちゃんとした打ち合わせも、難しい。仲間に会うこともなかなかできない)
ほたる(そんな状態が続くなら、茄子さんの幸せはむしろここの外にあるんじゃないか。そう言われたら、返す言葉がないような気がしました)
ほたる(……幸運が、茄子さんがここに来れないようにしている。ここにいると、茄子さんが不幸になってしまうから)
ほたる(私はあの日、茄子さんから聞いた、そんな話を思い出しました)
ほたる(茄子さんが、自分の運と戦うって言っていたことを思い出しました)
ほたる(……私に、力を貸してくれと言ったことを)
ほたる(でも、力を貸すって、どうしたら良いのでしょう)
ほたる(私は、不幸を呼びます)
ほたる(茄子さんは『幸運だから』この事務所から引き離されている。では私が遅刻せずに済むようになったのは、私が不幸だからでしょうか)
(茄子さんが不運で困っているまさにそのとき、私はもっとも近づいてはいけない人間ではないでしょうか)
ほたる(茄子さんの『幸運』は、正しいのではないでしょうか。茄子さんの将来の事を本当に思うなら、ここにいると茄子さんが危ない目に会うのだと言うのなら、離れることも大事なのではないでしょうか)
ほたる(プロデューサーさんたちも、だからこそ。茄子さんの将来を思えばこそ、移籍の可能性を排除できないのではないでしょうか)
ほたる(幸せと幸運の違いは何か。茄子さんの問いを、思い返します)
ほたる(私には、まだその答えが解りませんでした)
ほたる(今の茄子さんの幸せって、なんなのでしょう。茄子さんにとっての幸運は今、どこにあるのでしょう)
ほたる(私はそれが解らなくて、ただ、俯いてしまったのでした……)
~数日後・夜~
茄子『ほたるちゃん、力を貸してください』
ほたる(茄子さんから私に、電話がかかってきたのはそれから数日後のこと)
ほたる(力を貸して、という茄子さんの言葉は、ちっとも困ってるようではなくて。むしろ、力強いように聞こえました)
ほたる(すっきりと迷いなく、聞こえました)
ほたる(ああ、でも、でも)
ほたる「力を貸すって、どうしたらいいんでしょう」
茄子『ほたるちゃん』
ほたる「茄子さんは事務所に来ようとするとよくないことが起こって、困っています。私は、不幸を呼びます。私はこういうとき、一番側にいてはいけない人間ではないでしょうか」
茄子『違います。逆ですよ』
ほたる「逆……」
茄子『私だけだと、事務所にたどり着けません。移籍の申し入れとか、いろいろ、いろいろ起きる『幸運な』流れに逆らうことができません』
ほたる「でも、だからって、どうしたら」
茄子『話は、簡単です。ほたるちゃん、しばらく私と一緒に暮らしてください。一緒に事務所に通ってください』
ほたる「ええっ」
茄子『まず、とにかく事務所に行きます。ほたるちゃんと一緒なら、きっとそれができます』
ほたる「……幸運だから、事務所に行けない」
茄子『ほたるちゃん?』
ほたる「だから、私と一緒なら、不幸になれば、事務所にたどり着けるってことですか?」
茄子『……』
ほたる「茄子さんは、私に、茄子さんの幸運を損なう手伝いをしろって言うんですか? 事務所に来たら悪い事が起きると知ってて、そうなる手伝いをしろって言うんですか?」
茄子『ほたるちゃん』
ほたる「そんなの、あんまりです。茄子さんが不幸になる、その手伝いをしろって、そのために私と一緒に居たいって」
茄子『……』
ほたる「そんなの、残酷じゃないですか……」
茄子『違いますよ、ほたるちゃん』
ほたる「何が、違うんですか」
茄子『私はほたるちゃんに、自分の道を選ぶ手助けをしてください、と言っているんです』
ほたる「……」
茄子『ほたるちゃん。ほたるちゃんは、幸運と幸せの違いって何だと思いますか』
ほたる「……解りません。ずっと考えていたけど、解らないんです」
茄子『幸運は一人ひとりの巡り合わせ。放っておけば消えてしまうもの……幸せは誰かと手を携えて築き上げるもの。そうしないと手に入らないものなんてす』
ほたる「……」
茄子『だから。どんなに幸運な人も、きっと幸運から『運』って字を取る努力をしなければ、幸せにはなれない。どんな不運な人も、誰かと一緒に幸せになる努力をするなら、幸せになれるんです』
茄子『それは、ほたるちゃんが、一番よく知っているはずの事じゃないですか?』
ほたる「……はい」
茄子『私の幸運は、私を幸運なままにしてくれようとしているのかもしれません。私を悪い事から遠ざけようとしてくているのかもしれません……だけど、そんなの、大きなお世話です』
ほたる「茄子さん」
茄子『私は、あの事務所のみんなと、ほたるちゃんと一緒に幸せになりたいんです。他のどこかで幸運のままで居たって、なんの意味もないんです』
ほたる「……」
茄子『事務所が、みんなが不幸になるって言うのなら、一緒に立ち向かいたいんですよ。ほたるちゃんも、そうじゃないんですか』
ほたる「……私も、私もそうです」
茄子『……強い幸運も過ぎた不運も、思うにまかせないのは同じこと。ここで止まりたいって時に、止まらせてくれない。もっと進みたいって時に、進ませてもらえない。居たい場所に、居させてもらえない』
ほたる「……はい」
茄子『私もほたるちゃんも、ずっとそんなものと一緒に生きてきました。一人だとどうしようもないものに振り回されて』
ほたる「……はい」
茄子『だけど、ふたりで一緒に居ればその『運』が弱くなるって言うんなら……それは、不幸になってるんじゃありません。幸運になってるんでもありません。私たちはふたりなら、自分の道を選んで行けるってことなんです』
ほたる「……茄子さん、泣いてるんですか」
茄子『だってそうじゃないですか……私たちはふたり一緒なら、中吉のおみくじを引きあてることだって出来るんですよ』
ほたる「……」
茄子『お願いです、私に力を貸してください。私が自分の道を選ぶために。ほたるちゃんにしか出来ないことなんです。ほたるちゃんにしか、頼めないことなんです。幸運が、私をどこかに連れていってしまう前に』
ほたる「……」
茄子『……』
ほたる「私たちふたりなら、中吉が引ける」
茄子『はい、そうです』
ほたる「私たちふたりなら、道を選んでいける」
茄子『そうです』
ほたる「それなら、力を貸してなんて言わないでください」
茄子『ほたるちゃん』
ほたる「だって、それならこれは、ふたりの困難なんです。一緒に、って言ってください」
茄子『ほたるちゃん』
ほたる「一緒に戦ってって、そう言ってください」
茄子『はい』
ほたる「またふたりでおみくじを引いて。またふたりでがんばるために。私たちが、わたしたちの道を選ぶために……」
茄子『……ほたるちゃん、一緒に戦ってください』
ほたる「……はい!」
茄子『ううう、ほたるちゃん』
ほたる「か、茄子さん、泣かないでください。というか、まだ大変なことが残ってますよ」
茄子『大変なこと?』
ほたる「はい。この間茄子さんのマンションに行こうとしたら大変でしたもの。ふつうに行こうとしたら、また妨害されちゃうかもです」
茄子『それなら、私もほたるちゃんを迎えに出ましょう。真ん中で落ち合いましょう。2人でふたりを探しましょう』
ほたる「解りました。じゃあ、これからすぐこっちを出ますね……ふふ、もう雨が降ってきました」
茄子『こっちも出ます。風が強くなってきましたね』
ほたる「また後で、茄子さん」
茄子『また後で、ほたるちゃん』
~翌朝・某芸能事務所~
P(時計を見つめている)
ちひろ「……今日は、ほたるちゃんも来ませんね。遅刻でしょうか」
P「しばらく無かったんだけどな。また、いろいろトラブルに巻き込まれているのかな」
ちひろ「……心配そうな顔をしていますね」
P「そりゃそうですよ。茄子のことでずいぶん気に病んでたみたいだし。この上またトラブルが増えたら気の毒すぎる」
ちひろ「ほたるちゃんは強い子だけど……そうですね」
P「……茄子の移籍を本格的に進めなくちゃならなくなったら、ほたるも一緒に引き受けてもらえるよう頼んだほうがいいのかもしれないな」
ちひろ「……寂しくなりますね」
P「定時過ぎましたね。遅刻決まりかな……」
(ドアガチャー)
ほたる「おはようございます! 遅刻しました!」
茄子「おはようございます! 遅刻しました!」
ちひろ「まあ、どうしたんですか2人とも、そんなにボロボロで、そんなに嬉しそうな顔で、そんなにしっかり手をつないで……」
(おしまい)
元スレ
P「しかし、実際遅刻なんて初めてだよな」
茄子「お恥ずかしい」
ちひろ「お寝坊しないように早く寝ないとダメですよ?」
茄子「どうして私が寝坊したことになってるんですかー!」
ちひろ「だって茄子ちゃんがトラブルで遅刻するなんて有り得ないですし」
ほたる「茄子さんはとってもおしごとに真剣だからお寝坊なんてしません(プクー)」
茄子「ほたるちゃん……(ハグ)」
ほたる「あわわわわ(///)」
P「これこれほたるが茹で蛸になる前に解放してあげなさい……とは言え実際、茄子が交通事情で遅刻するとか考えられないしなあ」
茄子「いえその、いつも通りの時間にマンションを出たのに電車が遅れたんです」
ちひろ「えっ」
3: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:26:22 ID:gPJ
茄子「恥ずかしながらこういう事態って殆ど経験がなくって。慌てちゃって駅で迷ってしまうしバスはちょうど出たところで。なんとか捕まえたタクシーはすぐパンクして動かなくなっちゃうし」
ちひろ「うわあ、大変だったんですねえ」
P「ほたるの体験談でも聞いてるみたいだなあ」
ほたる「いつもの私なら、ようやく事務所の前まで来たと思ったら植木鉢が降って来るのも追加ですね(フンス)」
P「なんでほたるはちょっと得意げなの」
茄子「とにかく、今日は本当にすみませんでした。あの、お仕事のほうは」
P「大丈夫。まだ十分余裕があるから」
ちひろ「ただ、いくら茄子ちゃんが幸運でもこういう事態はあり得ますからね。意識して少し早めに出るようにした方がいいかもしれませんね」
茄子「はい、任せてください!」
4: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:27:57 ID:gPJ
~翌日~
P「とか言ってたのにまた遅刻なの!?」
茄子「わああんちゃんといつもより30分早く家を出たんですよう(ギュウウウ)」
ちひろ「どさくさにまぎれてほたるちゃんをハグするのやめてあげてください。窒息しそうになってますよ」
茄子「ハッ、ご、ごめんなさい。大丈夫ですかほたるちゃん!?」
ほたる「いきが……くるし……あまいにおい……やわらか……(フラフラ)」
茄子「ちょっと刺激が強すぎましたか……」
P「うらやま……ああいやいや。今日もなんかトラブルだったのかい」
茄子「はい。爆破予告があったとかでいつもの駅が立ち入り禁止になってて」
ちひろ「いきなりカッ飛ばしてきましたね」
茄子「それで、駅に入れなかった人がみんな使おうとするからタクシーもバスも満員で。しかたないから歩いたんですけどいつもの道を事故車両がふさいでて。しばらく歩いてようやく拾ったタクシーの運転手さんは勘違いして逆方向に行こうとするし……」
ほたる「た、大変だったんですね……」
5: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:28:51 ID:gPJ
茄子「本当、どうなっちゃうんだろうって、おなかがきゅうってなりましたよ」
P「連絡してくれれば車を出したのに」
茄子「それがスマホの充電が切れてしまっていて。昨日確かにケーブル繋いでおいたんですけど」
ちひろ「断線か何かでしょうかねえ」
P「しかしまた災難だったな。こういう時もほたるとは正反対か」
茄子「えっ?」
ちひろ「ほたるちゃん、昨日今日と全然トラブルなしで事務所に到着できたらしいんですよ」
ほたる「電車もバスも遅れなくて……信号も全部青で……トラブルがある前提で早く寮を出ていたから、事務所が開く前に着いてだいぶ待ちました」
P「すごい挙動不審になってて可愛かったぞ」
ほたる「だって、こんなことって初めての経験で……!」
ちひろ「まあ、人間ですもの。運の悪い日もあれば、良い日もあるのが当然かも知れませんね」
ほたる「はい。だから茄子さんも、きっと明日は」
茄子「……そうですね」
ほたる「茄子さん?」
6: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:29:25 ID:gPJ
茄子「ああ、いいえ、いいえ。いっそ今夜はほたるちゃんのお部屋に泊まらせてもらったら遅刻しないかな? なんて考えてて。ふふふ」
ほたる「う、うれしいですけれど、その(///)」
P「こらこら、ほたるを困らせるんじゃありません」
茄子「えー、ほたるちゃんは私とお泊まり嫌なんですか?」
ほたる「嫌じゃないけど尊敬する大好きなお姉さんとおとまりなんて、き、緊張します。それに私のお部屋、すぐ電気とか壊れるし……!」
ちひろ「度重なる修理のくりかえしで、ほたるちゃんのお部屋だけ他と構造が変わっちゃってますものね」
ほたる「そ、その節はご迷惑ばかりおかけして……!!」
P「ともかく心配したよ。そういう事情なら『気をつけろ』って訳にも行かないが、今度からなんとかして事務所に連絡を入れてくれ。コンビニとかで電話を借りればいいんだから」
茄子「その手があった……!?」
P「あ、今気が付いたって顔だ」
7: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:29:42 ID:gPJ
ちひろ「トラブル慣れしてないから考えた事なかったんですねえ」
ほたる「タクシーさんのトラブルなら連絡に協力してくれることもありますから頼んでみるのもいいかも知れません」
茄子「実体験に基づいた貴重なアドバイスありがとう……!」
ほたる「まあ本当に運が悪い時はそういう努力も空振りに終わるものなんですけどね」
ちひろ「うわあ実感こもってるう」
P「さてと、無駄話はそろそろ終わりだ。2人とも現場まで送っていくから車に乗って」
ちひろ「今日は茄子さんとほたるちゃん、2人一緒の現場なんですね」
ほたる「はい。ミス・フォーチュンのニューシングルお披露目イベントなんですよ!(ピョンピョン)」
ちひろ「ふふ、はしゃいでるはしゃいでる」
茄子「はあ、ほたるちゃん可愛い。お持ち帰りしたい」
P「そこの20歳は欲望を隠す努力をしなさい。はい、急いで急いで。時間押してるんだから」
ミス・フォーチュン「「はーい!!」」
8: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:31:00 ID:gPJ
~夕方・イベント会場~
スタッフ「ではミス・フォーチュンのお2人はここまでということで。後はこっちで片づけておきますので先にお帰りになってくださいね」
茄子「はい、今日は進行ありがとうございました」
ほたる「皆さんのおかげで、とってもすてきなイベントになりました。本当に、ほんとうにありがとうございます!(ペコペコ)」
スタッフ(ほほえましいなあって顔)
茄子(どうですほたるちゃんは可愛いでしょうフンスって顔)
スタッフ(なんでこの人が得意そうなんだろうって顔)
ほたる「あのー、茄子さん?」
茄子「あ、すみません……では、帰りましょうかほたるちゃん(トコトコ)」
ほたる「はい!(トコトコ)」
茄子「……」
ほたる「……」
茄子「……」
ほたる(なんだろう……茄子さん、なんだか考え事してるみたい……)
ほたる(遅刻のこと、気にしてるのかな。茄子さんは責任感強いから……)
9: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:33:21 ID:gPJ
ほたる「あ、あの、茄子さん」
茄子「はい。なんでしょうほたるちゃん」
ほたる「あの。わ、私喉が乾きました。あの自販機で、2人でジュース買いませんか?」
茄子「あら、あたり付きの自販機ですね」
ほたる「私はえーと、泰葉ちゃんおすすめのレモンティーを……」
茄子「あ、ちょっと待ってください。私に、先に買わせてくださいね」
自販機(ピピピピ……)
自販機(ピコーン。モウイッポンアタリデス)
ほたる「わあ、すごい。本当に当たった……!」
茄子「ふふ、ラッキーでした……ほたるちゃんはレモンティーでしたね。はい」
ほたる「ありがとうございます……あ、あの」
茄子「?」
ほたる「昨日と今日は、たまたま運が悪かったんですよ。明日はきっと今みたいに……」
10: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:33:48 ID:gPJ
茄子「……私が気に病んでると思って、励ましてくれたんですか?」
ほたる「え、あ、その……茄子さん真面目ですし、滅多にこんな失敗しませんから。それで考え事してるのかな、あって」
茄子「ほたるちゃんは、優しい子ですね」
ほたる「そ、そんなこと、ありません」
茄子「大丈夫ですよ。以前も『こういうこと』はありましたから」
ほたる「えっ、茄子さんも運が悪かったりすることがあるんですか」
茄子「もう。ほたるちゃんは私を何だと思ってるんですか?」
ほたる「す、すみません」
茄子「……運は結局、運ですから。いつだって、自分の思うままには動かないものなんですよ」
ほたる「……今の、なんだか凄みがありました」
茄子「そうですか? ふふふ」
ほたる「……」
茄子「……あの日」
ほたる「?」
茄子「あの日、私が欲しかったのは、一等のハワイ旅行じゃなくて三等の大きなクマのぬいぐるみでした、なんちゃって」
ほたる「???」
11: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:35:06 ID:gPJ
茄子「ふふふ。ほたるちゃんは、そんな経験はありませんか?」
ほたる「私、そもそもクジが当たったことがありませんから……でも、逆ならある、かも」
茄子「逆?」
ほたる「はい。私、第一志望は今の事務所じゃなかったんです」
茄子「……ああ、言われてみればそうですね。第一志望のところには、一番先に行きますものね」
ほたる「はい。だから、第一志望もその次も、オーディション受からなかったりクビになったりで次々追い出されて」
茄子「……大変だったと聞いています」
ほたる「でも、だからこの事務所に巡り会えたんです。最初私はこの事務所に来ようと思わなかったけど、第一志望じゃなくて、ここに拾って貰えて本当によかったって思います」
茄子「……プロデューサーさんもちひろさんも、仲間のみんなも、本当にいい人たちばかりですものね」
ほたる「はい。だから私は、ラッキーな第一志望じゃなくてここに……あれ」
茄子「ほたるちゃん?」
ほたる「考えてみたらこれクジの話と関係ないですね……? ごめんなさい!?」
12: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:35:26 ID:gPJ
茄子「ふふ、話が途中でこんがらかっちゃうほたるちゃん可愛い」
ほたる「もう、茄子さんたら」
茄子「まあ、でも、解ります」
ほたる「解るんですか」
茄子「皆いい人で、いい場所で。私もここで良かったって思いますもの。ほたるちゃんにも会えましたし」
ほたる「茄子さん……」
茄子「だからずっと、ここで頑張りたいなって思っているんですけど、ね」
ほたる「……?」
ほたる(それきり黙って考え込む茄子さんのお顔がとてもとても真剣で、私はその後、別れるまで茄子さんに声をかけられませんでした)
ほたる(だけど、後になって、それを悔やみました)
ほたる(もっと話を聞いておけばよかった。『こういうこと』が何を意味するのかを、あの問いの意味を、ちゃんと聞いておけばよかったと、何度も何度も考えたからです……)
13: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:36:42 ID:gPJ
~数日後・事務所~
P「えっ、茄子がまた遅刻?」
ちひろ「はい。先ほど『マンション前の道路が陥没してしばらく身動きがとれない』と電話で連絡がありまして」
P「おお。ほたるでもそこまでのトラブルは中々無いな……」
ちひろ「ほたるちゃんは全然遅刻しなくなって、まるで2人の幸運と不運が入れ替わったみたいですね」
ほたる「遅刻しなくなった他は、相変わらずよくないこと続きですけどね」
ちひろ「茄子ちゃんも遅刻以外は別段普段と変わらないんでしたっけ」
ほたる「あ、はい。昨日も出先の喫茶店で来店1万人記念のクーポンをゲットしていました」
P「しかし、どうしたものかな。まだ到着してないって、これは今日の仕事間に合わないぞ。今から迎えに行くとしても……」
ちひろ「それについては茄子ちゃんから伝言が」
P「伝言?」
14: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:39:09 ID:gPJ
ちひろ「はい。自宅のマンションから今日の現場に直行するそうです。『たぶんそれなら遅刻しないはずだから』って」
P「なんだそれ」
ちひろ「さあ」
P「まあでも、そういうものかも知れないな。ちょっと巡り合わせが悪いだけで、茄子の幸運は健在なんだし。向こう様にはこっちから連絡入れておこう」
ちひろ「はい、解りました……あら、どうしたのほたるちゃん、浮かない顔で」
ほたる「……あの、いえ、なんでも」
P「そういうの、逆に気になるだろう。はっきり言ってくれたほうがいいぞ」
ちひろ「そうそう」
ほたる「す、すみません……あの、今日は茄子さんに会えるかなって思ってたから、ちょっとだけ、がっかりして」
ちひろ「そういえばニューシングルの告知イベントの時からしばらく顔を合わせていなかったですね?」
ほたる「はい。あの日の最後、ちょっと様子がおかしかったから、心配で」
ちひろ「……今日の茄子さんのお仕事19時には終わりますから。マンションに電話でもしてあげたらどうですか?」
ほたる「は、はい、そうします!」
15: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:39:34 ID:gPJ
~20時・女子寮~
ほたる「……(プルルルル)」
ほたる「……(プルルルル)」
ほたる「……(プツッ)あ、茄子さ(オカケニナッタデンワハデンパノ……)また、つながらなかった」
ほたる「電波の届かない場所にいるか……かあ」
ほたる「茄子さん、まだマンションに帰っていないのかな」
ほたる「私の不幸のせいでつながらないだけだったりして……」
ほたる「……会いに行っちゃおう、かな」
ほたる「あっ、でもお仕事で疲れてて、今日は電源を切って休んでいらっしゃるのかも」
ほたる「だとしたら、無理に訪ねていったら茄子さんのご迷惑に」
16: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:39:54 ID:gPJ
ほたる「でも茄子さんのご様子が気になるし……(ベッドでごろごろ)」
ほたる「でもでもこの時間から出かけて行ったら門限が……(うだうだ)」
ほたる「……」
ほたる「ああ、もう!(ガバッ)」
ほたる「気になって仕方ないし、会いに行っちゃおう……!(着替えきがえ)」
ほたる「急げば門限だってきっと間に合うよね(支度したく)」
ほたる「マンションの前まで行って灯りがついてなかったら黙って帰ってくる方向で……いってきまーす!!」
17: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:41:32 ID:gPJ
~3分後・女子寮前~
(ドッザアアアアアアアアアアアア)
ほたる「女子寮を出たとたんにこの雨……!?」
ほたる「えっ、あれっ、さっきまで全然降ってなかったのに」
(ババババババババババ)
ほたる「うわあ小石でも降ってるみたいな音がする……!!」
ほたる「なんでこんなタイミングで突然……」
(ババババババババババ)
ほたる「……まるで行くなって言われているみたい。これもやっぱり、私の不幸の……」
(ババババババババババ)
ほたる「……こ、こんなの慣れっこだもん。突然の雨とかトラブルなんて、いつものことなんだから」
ほたる「傘じゃ役者不足だけど、こんなこともあろうかと鞄に入れておいた携帯雨合羽があればこんな雨……」
18: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:42:06 ID:gPJ
(ドバババババボガガガガ)
ほたる「うわあんいたい痛い! 雨粒が当たったところがじんじんする!!」
ほたる「まっ、負けないもん!(スタスタ)」
(ビュオオオオオオ)
ほたる「あ、あわっ、合羽めくれちゃう」
突如通りかかった車(水たまりをザバーン!!)
ほたる「わぷっ!?」
ずぶぬれほたる「……」
ほたる「つめたい……」
ほたる「うう、靴の中も服の中も水浸し……」
ほたる「……これならもう、雨なんか気にする必要ないよね」
ほたる「ぜったい行くもん……!!」
19: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:42:33 ID:gPJ
◇
ほたる(そのあとも、色々なトラブルが次から次へと私に襲いかかりました)
ほたる「えっ、この道通行止め!? ずーっと引き返さなくちゃ……」
ほたる(次から次へ。本当に次から次へ)
ほたる「あ、いえ、すみません確かに不幸なんですけど幸せ祈っていただけるのはうれしいんですけど今は時間がなくて」
ほたる(ひとつひとつはよくあることだったけど、こんなに短い時間に一度に起きるのは経験の無いことで)
ほたる「雨で見えなかったけどマンホールの蓋が開いてた!?(ドボーン)」
ほたる(それはまるで、私が茄子さんのところに近づくのを拒んでるみたいでした)
ほたる「うぷ、けほっ、けほっ……」
ほたる(そして、這々の体でマンホールから這い上がったところで、さすがに私も動けなくなってしまいました)
ほたる(合羽が重たくまとわりついて、身動きができません)
ほたる(時間をかけて合羽を脱いで、近くの公園のベンチにへたり込むと11月の雨が降り注いで、どんどん体温が奪われていきます)
ほたる(誰かが言ってました。寒さは、人の心を後ろ向きにするんだって)
ほたる(今の私が、まさにそれです。体の芯まで冷たくなって、一人で俯いて震えながら、つい考えてしまうのです)
20: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:42:46 ID:gPJ
ほたる(私はもしかしたら、このまま茄子さんのところにたどり着けないのではないでしょうか)
ほたる(ううん、それ以前に、私が茄子さんを訪ねることそれ自体が、迷惑なことなのではないでしょうか)
ほたる(茄子さんはここのところ、運が悪いみたいでした。それはもしかして、私のせいではないでしょうか)
ほたる(今の事務所で、私はたくさんのいい人に巡り会いました。たくさん幸せな思いをさせてもらいました。だけど、自分の『不幸』が消えてなんかいないことは、誰より私が一番よく知っています)
ほたる(もしも、もしも私のせいで、茄子さんの幸運が損なわれているのだとしたら、私は……)
???「あれっ、ほたるちゃんじゃないですか?」
ほたる(不意に呼びかけられて、私は顔をあげました)
ほたる「茄子さん……」
茄子「はい、茄子ですよ?」
ほたる(訪ねて行こうとした人が、そこに立っていました)
ほたる(いつの間にか、雨は上がっていました)
21: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:44:26 ID:gPJ
◇
茄子「どうしたんですかほたるちゃん、そんなずぶ濡れで」
ほたる「あ、あの、雨に降られて」
茄子「ああ、そう言えばお買い物している間、雨音が聞こえたような……あっ、地面も濡れてますね」
ほたる「お買い物、なさってたんですか」
茄子「はい。これ」
ほたる「お総菜に……ビール。茄子さん、家でビールなんてお呑みになられるんですね」
茄子「ふふ、恥ずかしながら、今日はちょっと気が滅入ってたから、呑んじゃおうかなって」
ほたる「……」
茄子「ほたるちゃん?」
ほたる「やっぱり、私のせいでしょうか」
茄子「ほたるちゃん」
ほたる「遅刻するようになったり、良くないことが起きるようになったり。それは、私の不幸が」
茄子「違いますよ?」
ほたる「……」
22: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:44:53 ID:gPJ
茄子「以前言いましたよね。『こういうこと』は、前もあったんです。私の運のせいですよ」
ほたる「運……幸運の?」
茄子「……」
ほたる「茄子さん」
茄子「私、昔ピアノ教室に通っていたんです」
ほたる「はあ」
茄子「お友達もたくさん出来て。毎日、学校が終わったら教室に行くのが待ち遠しかったなあ」
ほたる「……」
茄子「でもね。ある時から、そのピアノ教室に行こうとすると、悪いことが起きるようになったんです」
ほたる「えっ」
茄子「電車が止まったり、通行止めになったり、いつものバスが逆走したり、ね」
ほたる「……」
茄子「私の『幸運』はその頃から知れ渡っていましたから。遅刻する理由を言っても信じてもらえなくてね。私、結局そのピアノ教室を辞めることになってしまったんです」
ほたる「そんな」
23: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:45:34 ID:gPJ
茄子「……そして、そのピアノ教室に不審者が入り込んで『事件』を起こしたのは、私が辞めてすぐのことでした」
ほたる「……!!」
茄子「あとで聞いた話ですが、その不審者が教室に進入するために下見を始めたのと、私が教室に行こうとするとトラブルが起きるようになったのは、ほとんど同じタイミングだったみたいです」
ほたる「……それ、じゃあ」
茄子「ああ、いままでのトラブルは、私を『不幸』から引き離すために起きていたのかもしれない。私も、そう気が付くのに時間はかかりませんでした」
ほたる「じゃあ、事務所にたどり着けないのも」
茄子「……」
ほたる「やっぱり、私の。私の不幸のせいでしょうか。私がいるから、よくない事が起きるから。茄子さんは事務所に」
茄子「違いますよ」
ほたる「茄子さん」
茄子「運ってね、自分の思うようには働かないものなんですよね。それは、ほたるちゃんもよく解っていると思います」
ほたる「……はい」
24: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:45:57 ID:gPJ
茄子「強い幸運も過ぎた不運も、思うにまかせないのは同じこと。ここで止まりたいって時に、止まらせてくれない。もっと進みたいって時に、進ませてもらえない。居たい場所に、居させてもらえない」
ほたる「三等のくまさんが欲しくても、一等のハワイ旅行が当たっちゃう?」
茄子「贅沢なことですけどね……ねえ、ほたるちゃん」
ほたる「は、はい」
茄子「ほたるちゃんはいつでも、自分の不幸と、不運と、戦ってきましたよね」
ほたる「……誰かを、幸せにしたかったから。アイドルになりたかったから」
茄子「……私もね、考えるんです。望む場所に行きたかったら、私も幸運と戦うべきなんだろうな、って」
ほたる「でも、せっかく幸運なことが起きるのに」
茄子「ほたるちゃんは、幸運と幸せの違いって、何だと思いますか?」
ほたる「え? ……ええと、解りません」
茄子「ふふ、では、それは宿題にしておきましょう。考えてみてくださいね」
ほたる「は、はい」
茄子「これは私の運なんです。私が、対抗しないといけないんです」
ほたる「茄子さん……」
茄子「だから、まずはがんばってみますね。だけど、もし私だけの力じゃ足りなかった時は……ほたるちゃん。私に力を貸してくれますか?」
25: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:46:20 ID:gPJ
ほたる(茄子さんが、私をみました)
ほたる(真剣な、真剣なお顔でした)
ほたる「……はい」
茄子「ありがとう、ほたるちゃん。私、がんばりますね!」
ほたる「茄子さんなら、きっと、大丈夫ですよ」
茄子「ふふふ……さて、それじゃ、行きましょうか」
ほたる「えっ、行くって、どこに」
茄子「もちろん私のマンションですよ。そんなにびしょ濡れで、放っておけるわけないじゃないですか。一緒にお風呂入って服乾かして、今夜は泊まって行ってください。寮には連絡しておいてあげますから」
ほたる「えっ、あっ、でもご迷惑では」
26: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:52:57 ID:gPJ
茄子「ふふふほたるちゃんとお泊まり、ほたるちゃんとお泊まり。うれしいなあ(ぐいぐい)」
ほたる「あっ待っ力強っ!? 行きますから、行きますからー!!」
ほたる(一緒にお風呂に入って、お夜食を食べて、おしゃべりして)
ほたる(私と茄子さんは、楽しくその夜を過ごしました)
ほたる(翌朝は、茄子さんに学校まで送っていただいて、『また明日』って別れたのです)
ほたる(楽しい、楽しい一夜でした)
ほたる(でも、状況はその後、決して良くはならなかったのです……)
27: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:55:30 ID:gPJ
~一ヶ月後・事務所~
ほたる(茄子さんが事務所に来られなくなってから、もう一ヶ月が経過していました)
ほたる(最初は遅刻。そのうち、事務所にたどりつく事すら困難になって、茄子さんはマンションから現場へ、マンションからレッスンスタジオへ……事務所に寄りつかずに行動することを余儀なくされてしまいました)
ほたる(事務所は、ただ仕事のための場所ではありません。プロデューサーさんや仲間のみんなが集まる交流のための場所でもあり、これからの展望について話し合い、意見を交わすサロンでもありました)
ほたる(Pさんたちはもう、テレワーク的なものでしか茄子さんにコンタクトできなくなっていました)
ほたる(事務所のパソコンの、ちいさな画面のその向こう。ぽつんと見えるそれが、私たちが事務所で見られる茄子さんの姿)
ほたる(お仕事では会えるけど、もしこのまま茄子さんの『不運』が続くなら、これもいつまで続くのか。私に、皆に、悲観的な見方が広がります)
ほたる(そして、その見方が正鵠を得ていたことは、じきに明らかになったのです……)
◇
28: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)15:56:16 ID:gPJ
ほたる「茄子さんが移籍を……!?」
ちひろ「いえ、具体的に話が動いているわけではないですよ?」
P「茄子の意志次第の事だしな。『茄子さんを是非ウチに。金ならいくらでも!!』て申し入れが大手のプロダクションから来てるってだけの話さ」
ほたる「大手……」
P「そう、大手。ウチなんか比べものにならないようなとこ」
ちひろ「まあ正直、こういう事態もあるだろうなあ、とは思っていましたけどね」
ほたる「も、もちろんプロデューサーさんたちは反対なんですよね?」
P「……」
ちひろ「……」
ほたる「どうして黙ってしまうんですか」
29: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:02:21 ID:gPJ
P「繰り返すけど、当然これは茄子の決定次第だよ。いくら金を積まれようが俺たちが無理強い出来ることじゃない。ただ……」
ほたる「ただ?」
ちひろ「ただ、茄子ちゃんにとっても、悪い話じゃないんですよね。だからもし茄子ちゃんがその気になったら止められないというか、場合によっては移籍するよう助言するまである、というか」
ほたる「そんな、どうして」
P「規模が全然違うんだよ。資本力も設備も人員も圧倒的に向こうが上。茄子がこれからアイドルとしての活動を広げて行くなら、断然条件がいい」
ほたる「こ、この事務所はすてきなところだと思います。私も。茄子さんもそう思っていると思います」
P「ここ一ヶ月、まともにケアできていないのに?」
ほたる「……」
P「俺も、プロダクションの大小だけで勝負が決まるとは思わない。小さいとこには小さいなりの戦い方があるし、アイドルたちが本当に望む仕事をさせるために全力を尽くしたいと思っている」
ちひろ「それは私も同じです」
ほたる「……Pさんたちがいなかったら、ここでなかったら。私はきっと、アイドルになんかなれなかったと思います」
P「ただ、それは俺たちスタッフとアイドルが緊密に協力しあうからこそ出来ることなんだよ」
ほたる「……」
30: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:02:57 ID:gPJ
P「これまで出来る限りのケアをして来たけど、現場での連絡、電話やメールでのやりとりだけでは、やはり限界がある。茄子が事務所に来られない状態がこれ以上続くなら、茄子の力を十全に引き出してやる事は難しいよ」
ちひろ「テレワーク的なものでそのあたりを補っては居ますが、わざわざそうしなくては芸能活動ができない、というのは茄子ちゃんにとってはっきりハンデなんですよね」
P「実際、そういう状況が見透かされたから引き抜きの話を持ち出された、というのはあるだろうしな」
ほたる「それは……」
ほたる(そう言われると、私は黙るしかありませんでした)
ほたる(以前のお仕事で、私は茄子さんと話したことがあります。幸せは、探すものなんだ、って)
ほたる(でも、今の茄子さんにとっての幸せって、なんでしょう)
ほたる(アイドルとしての活動に支障がある。ちゃんとした打ち合わせも、難しい。仲間に会うこともなかなかできない)
ほたる(そんな状態が続くなら、茄子さんの幸せはむしろここの外にあるんじゃないか。そう言われたら、返す言葉がないような気がしました)
ほたる(……幸運が、茄子さんがここに来れないようにしている。ここにいると、茄子さんが不幸になってしまうから)
ほたる(私はあの日、茄子さんから聞いた、そんな話を思い出しました)
ほたる(茄子さんが、自分の運と戦うって言っていたことを思い出しました)
ほたる(……私に、力を貸してくれと言ったことを)
31: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:07:17 ID:gPJ
ほたる(でも、力を貸すって、どうしたら良いのでしょう)
ほたる(私は、不幸を呼びます)
ほたる(茄子さんは『幸運だから』この事務所から引き離されている。では私が遅刻せずに済むようになったのは、私が不幸だからでしょうか)
(茄子さんが不運で困っているまさにそのとき、私はもっとも近づいてはいけない人間ではないでしょうか)
ほたる(茄子さんの『幸運』は、正しいのではないでしょうか。茄子さんの将来の事を本当に思うなら、ここにいると茄子さんが危ない目に会うのだと言うのなら、離れることも大事なのではないでしょうか)
ほたる(プロデューサーさんたちも、だからこそ。茄子さんの将来を思えばこそ、移籍の可能性を排除できないのではないでしょうか)
ほたる(幸せと幸運の違いは何か。茄子さんの問いを、思い返します)
ほたる(私には、まだその答えが解りませんでした)
ほたる(今の茄子さんの幸せって、なんなのでしょう。茄子さんにとっての幸運は今、どこにあるのでしょう)
ほたる(私はそれが解らなくて、ただ、俯いてしまったのでした……)
32: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:21:43 ID:gPJ
~数日後・夜~
茄子『ほたるちゃん、力を貸してください』
ほたる(茄子さんから私に、電話がかかってきたのはそれから数日後のこと)
ほたる(力を貸して、という茄子さんの言葉は、ちっとも困ってるようではなくて。むしろ、力強いように聞こえました)
ほたる(すっきりと迷いなく、聞こえました)
ほたる(ああ、でも、でも)
ほたる「力を貸すって、どうしたらいいんでしょう」
茄子『ほたるちゃん』
ほたる「茄子さんは事務所に来ようとするとよくないことが起こって、困っています。私は、不幸を呼びます。私はこういうとき、一番側にいてはいけない人間ではないでしょうか」
茄子『違います。逆ですよ』
ほたる「逆……」
茄子『私だけだと、事務所にたどり着けません。移籍の申し入れとか、いろいろ、いろいろ起きる『幸運な』流れに逆らうことができません』
ほたる「でも、だからって、どうしたら」
33: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:23:47 ID:gPJ
茄子『話は、簡単です。ほたるちゃん、しばらく私と一緒に暮らしてください。一緒に事務所に通ってください』
ほたる「ええっ」
茄子『まず、とにかく事務所に行きます。ほたるちゃんと一緒なら、きっとそれができます』
ほたる「……幸運だから、事務所に行けない」
茄子『ほたるちゃん?』
ほたる「だから、私と一緒なら、不幸になれば、事務所にたどり着けるってことですか?」
茄子『……』
ほたる「茄子さんは、私に、茄子さんの幸運を損なう手伝いをしろって言うんですか? 事務所に来たら悪い事が起きると知ってて、そうなる手伝いをしろって言うんですか?」
茄子『ほたるちゃん』
ほたる「そんなの、あんまりです。茄子さんが不幸になる、その手伝いをしろって、そのために私と一緒に居たいって」
茄子『……』
ほたる「そんなの、残酷じゃないですか……」
茄子『違いますよ、ほたるちゃん』
ほたる「何が、違うんですか」
茄子『私はほたるちゃんに、自分の道を選ぶ手助けをしてください、と言っているんです』
ほたる「……」
34: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:24:27 ID:gPJ
茄子『ほたるちゃん。ほたるちゃんは、幸運と幸せの違いって何だと思いますか』
ほたる「……解りません。ずっと考えていたけど、解らないんです」
茄子『幸運は一人ひとりの巡り合わせ。放っておけば消えてしまうもの……幸せは誰かと手を携えて築き上げるもの。そうしないと手に入らないものなんてす』
ほたる「……」
茄子『だから。どんなに幸運な人も、きっと幸運から『運』って字を取る努力をしなければ、幸せにはなれない。どんな不運な人も、誰かと一緒に幸せになる努力をするなら、幸せになれるんです』
茄子『それは、ほたるちゃんが、一番よく知っているはずの事じゃないですか?』
ほたる「……はい」
茄子『私の幸運は、私を幸運なままにしてくれようとしているのかもしれません。私を悪い事から遠ざけようとしてくているのかもしれません……だけど、そんなの、大きなお世話です』
ほたる「茄子さん」
茄子『私は、あの事務所のみんなと、ほたるちゃんと一緒に幸せになりたいんです。他のどこかで幸運のままで居たって、なんの意味もないんです』
ほたる「……」
茄子『事務所が、みんなが不幸になるって言うのなら、一緒に立ち向かいたいんですよ。ほたるちゃんも、そうじゃないんですか』
ほたる「……私も、私もそうです」
35: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:25:01 ID:gPJ
茄子『……強い幸運も過ぎた不運も、思うにまかせないのは同じこと。ここで止まりたいって時に、止まらせてくれない。もっと進みたいって時に、進ませてもらえない。居たい場所に、居させてもらえない』
ほたる「……はい」
茄子『私もほたるちゃんも、ずっとそんなものと一緒に生きてきました。一人だとどうしようもないものに振り回されて』
ほたる「……はい」
茄子『だけど、ふたりで一緒に居ればその『運』が弱くなるって言うんなら……それは、不幸になってるんじゃありません。幸運になってるんでもありません。私たちはふたりなら、自分の道を選んで行けるってことなんです』
ほたる「……茄子さん、泣いてるんですか」
茄子『だってそうじゃないですか……私たちはふたり一緒なら、中吉のおみくじを引きあてることだって出来るんですよ』
ほたる「……」
茄子『お願いです、私に力を貸してください。私が自分の道を選ぶために。ほたるちゃんにしか出来ないことなんです。ほたるちゃんにしか、頼めないことなんです。幸運が、私をどこかに連れていってしまう前に』
ほたる「……」
茄子『……』
36: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:38:57 ID:gPJ
ほたる「私たちふたりなら、中吉が引ける」
茄子『はい、そうです』
ほたる「私たちふたりなら、道を選んでいける」
茄子『そうです』
ほたる「それなら、力を貸してなんて言わないでください」
茄子『ほたるちゃん』
ほたる「だって、それならこれは、ふたりの困難なんです。一緒に、って言ってください」
茄子『ほたるちゃん』
ほたる「一緒に戦ってって、そう言ってください」
茄子『はい』
ほたる「またふたりでおみくじを引いて。またふたりでがんばるために。私たちが、わたしたちの道を選ぶために……」
茄子『……ほたるちゃん、一緒に戦ってください』
ほたる「……はい!」
37: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:39:14 ID:gPJ
茄子『ううう、ほたるちゃん』
ほたる「か、茄子さん、泣かないでください。というか、まだ大変なことが残ってますよ」
茄子『大変なこと?』
ほたる「はい。この間茄子さんのマンションに行こうとしたら大変でしたもの。ふつうに行こうとしたら、また妨害されちゃうかもです」
茄子『それなら、私もほたるちゃんを迎えに出ましょう。真ん中で落ち合いましょう。2人でふたりを探しましょう』
ほたる「解りました。じゃあ、これからすぐこっちを出ますね……ふふ、もう雨が降ってきました」
茄子『こっちも出ます。風が強くなってきましたね』
ほたる「また後で、茄子さん」
茄子『また後で、ほたるちゃん』
38: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:39:37 ID:gPJ
~翌朝・某芸能事務所~
P(時計を見つめている)
ちひろ「……今日は、ほたるちゃんも来ませんね。遅刻でしょうか」
P「しばらく無かったんだけどな。また、いろいろトラブルに巻き込まれているのかな」
ちひろ「……心配そうな顔をしていますね」
P「そりゃそうですよ。茄子のことでずいぶん気に病んでたみたいだし。この上またトラブルが増えたら気の毒すぎる」
ちひろ「ほたるちゃんは強い子だけど……そうですね」
P「……茄子の移籍を本格的に進めなくちゃならなくなったら、ほたるも一緒に引き受けてもらえるよう頼んだほうがいいのかもしれないな」
ちひろ「……寂しくなりますね」
P「定時過ぎましたね。遅刻決まりかな……」
39: ◆cgcCmk1QIM 20/11/22(日)16:39:48 ID:gPJ
(ドアガチャー)
ほたる「おはようございます! 遅刻しました!」
茄子「おはようございます! 遅刻しました!」
ちひろ「まあ、どうしたんですか2人とも、そんなにボロボロで、そんなに嬉しそうな顔で、そんなにしっかり手をつないで……」
(おしまい)
【モバマス】白菊ほたる「茄子さんが遅刻しました」