2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 20:58:03.30 ID:YOgE1MoU0
突然ですが私、田井中律にはとってもかわいい彼女がいる。
彼女の名前は平沢唯。
天然で、かわいくて、ギターがうまくて、いいところをあげたらきりがないんだけど。
とにかく私の自慢の彼女だ。
私が唯を意識し始めたのはいつの頃からだっけ?
少なくとも去年の今頃はもう好きだったような気がするけど、よく覚えていない。
初恋だった。初めての恋で女の子を好きになってしまって当時はかなり動揺したものだ。
まあでも、女子校ではありがちな話だよな?たぶん、きっと。
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:03:07.86 ID:YOgE1MoU0
ただ一つ勘違いしないで欲しいのは、私はレズではない。
私は唯が好きなだけ。好きな人がたまたま女の子だっただけだ。
・・・ホントだぞ?
で、1年以上ずっと片思いをしてたわけだけど、ついに今日、ほんの数時間前、とうとう我慢が出来なくなり私は唯に告白した。
日付は12月12日。もうすぐ受験を控えてるというのに、大胆なことをしたと自分でも思う。
でも、高校最後のクリスマスは、どうしても唯と2人きりで過ごしたかったんだ。
だけど、やっぱり私たちは女同士だし、正直玉砕覚悟で望んだ告白だったけど、結果はまさかのOK。
私も前から好きだったよ、って言ってくれた。
そして今に至る。私は今、自室で妙にハイテンションにになっていた。
律「へへへ」
自然とにやけ顔になってしまう。
律「唯と恋人同士かー・・・。」
キャーヽ(≧▽≦)/
今の私はいつものボーイッシュりっちゃんではない。乙女りっちゃんだ。
律「よし。これで今年のクリスマスは唯と2人きりで過ごせる」
私も女の子だからな。恋人とのクリスマスデートにはやっぱり憧れる。
唯と一緒に見るイルミネーション。どんなに素敵だろうか。
律「それでー、いい雰囲気になって、そのまま自然と・・・って何考えてんだ私///。キスもまだだってのに///」
うん。やっぱりテンションおかしいな私。
でも告白成功直後なんだ。これくらい許してくれ。
律「唯は今何してるんだろ?電話してみようかな?」
さっき別れたばかりなのに電話なんてさすがに迷惑だろうか?
律「いや、恋人なんだしいいよな。忙しそうだったら切ればいいし」
そう思い、私は唯に電話をかける。
prrrr・・・。
数回のコールの後、電話は繋がった。
唯「もしもし、りっちゃん?」
律「おう、唯。私だ」
唯「うん。りっちゃんどうしたの?」
律「いや、別に特に用事があるわけじゃないんだけどさ、唯は今何してるのかな~って思って。というか今大丈夫?迷惑じゃない?」
唯「ううん、全然大丈夫だよ。今はね、憂のご飯が出来るのを待ってるとこ。だからそれまでだったらお話出来るよ」
律「そっか。良かった」
唯「はは~ん。りっちゃんってば、そんなに私と話したくてしかたなかったんだ~」
律「なっ///。そんなんじゃねーよ///」
唯「照れなくてもいいのに~。私はりっちゃんとお話したかったよ」
律「そ、そうなんだ///」
やばい。やっぱ唯かわいすぎ。
唯「うん。私たちは恋人同士なんだもん。当然だよ」
律「だ、だよな。当然だよな」
唯「やっぱりりっちゃんも話したかったんじゃん」
律「うっ///」
きっと私の顔は今真っ赤になっているはずだ。電話でよかった。
唯「ねぇりっちゃん。今日はありがとうね。りっちゃんの告白、すごい嬉しかった」
律「私はすごい恥ずかしかったけどな」
唯「私にはりっちゃんみたいな勇気はないから、りっちゃんが告白してくれなかったらきっと片思いのまま高校を卒業してたと思う」
律「そっか。だったら私も勇気を出した甲斐があるってもんだな」
唯「うん、本当にありがとうね。でね、私たちは晴れて恋人同士になったわけだけど」
律「う、うん///」
唯「このことはさ、みんなには黙っていよ?」
律「え?」
唯「軽音部のみんなにも、クラスのみんなにも、憂にも。私たちだけの秘密にした方がいいと思う」
律「別にいいけど、何でだ?」
唯「だって、私たちは女の子同士だし、やっぱりその、あんまりいい目では見られないと思うんだ」
そっか。唯とつき合えることに浮かれてよく考えてなかったけど、あんまり世間的にみたらいい事ではないもんな。
律「でも、澪達にもか?あいつらなら」
唯「軽音部のみんなを信用してないわけじゃないよ。でも、やっぱり・・・」
律「・・・そっか。分かったよ。じゃあ私達のことは2人だけの秘密な」
唯「ありがとう、りっちゃん」
律「いいのいいの。秘密の恋ってのもスリリングで燃えそうだしな」
唯「もう、りっちゃんったら~///」
あ、そうだ。そういえば唯のクリスマスの予定聞いてなかったな。さっきは唯と2人で過ごせるとかはしゃいでたけど、もし予定とかあったらどうしよう・・・
律「ところでさ、唯ってクリスマスの予定とかって・・・あったりするか?」
唯「クリスマス?ううん。特に予定はないよ」
律「そっか!じゃあさ、デートしよう。デート」
唯「りっちゃん勉強しなくて大丈夫なの?」
律「うっ・・・。」
まさか唯に勉強の心配をされるとは思わなかったな。
律「だ、大丈夫だって1日くらい。せっかくのクリスマスなんだしさ」
唯「うーん。まぁそうだね。せっかくのクリスマスだもんね。私もりっちゃんと過ごしたい」
律「ほんとか!?じゃあクリスマスはデートな。約束だ」
唯「うん。約束ね。」
その後私達は、他愛もない話をして過ごした。
唯「あっ、ごめんりっちゃん。憂が呼んでる。ご飯が出来たみたい。もう切るね」
律「そっか・・・。分かった」
唯「ごめんね。また明日学校でね」
律「あっ!唯!」
唯「ん?なにりっちゃん」
律「その・・・。好きだよ、唯///」
唯「うん///。私も大好きだよ、りっちゃん。またね」
そう言って唯は電話を切った。楽しい時間はあっと言う間にすぎてしまう。
すこし、いや、かなり残念だったけど、まあクリスマスの約束が出来ただけでも良しとしよう。
律「そうだ。クリスマスっていったらやっぱプレゼントが必要だよな」
何をあげたら唯は喜ぶだろうか。
かわいいぬいぐるみとか?もう高3なのにさすがに子供っぽすぎるかな。
じゃあ洋服はどうだろ?まあ無難な感じではあるけどな~。
律「なんかどれもピンとこないなあ」
う~ん。恋人へのプレゼントなんて初めてだからな~。いいのが思いつかない。
律「明日唯にそれとなく聞いてみるかな」
澪「おはよう、律」
律「おう、おはよう澪」
次の日の朝、私はいつも通り澪と一緒に学校へ向かう。
もう12月中旬。だいぶ朝が寒くなってきた。
澪「お、どうしたんだ律?なんかご機嫌だな」
律「え、なんで?」
澪「だって、なんかすごい笑顔じゃないか。なにかいい事でもあったのか?」
そんなに顔にでているだろうか。確かに早く唯に会いたくてウキウキしているのは本当だけど。
律「へへー。実はさ」
途中まで言いかけて思い出す。そうだ。誰にも言わないって唯と決めたんだっけか。
律「あ、いや。ううん。なんでもない」
澪「なんだよそれ。なにか言いかけただろ?」
律「いやいや。ホントなんでもないよ」
澪「・・・ふーん、そ。律がそういうならこれ以上は聞かないよ」
ごめんな澪。正直私は澪になら教えても大丈夫なんじゃないかって思ってたりもする。
私の幼なじみで、一番の親友だからな。きっと私達の事だって理解してくれる。
でもやっぱり唯との約束は破りたくないから。
律「おはよう、唯、ムギ」
澪「おはよう」
唯「あっ、りっちゃんに澪ちゃん。おはよう」
紬「2人ともおはよう」
学校の教室について恋人を見つけた私は、すぐにでも走り寄って抱きつきたい衝動にかられたが、
何とか我慢して唯とムギに朝の挨拶をする。
私達は昨日の電話で、みんなでいる時はいつも通りでいようと決めていた。
だから、私も出来る限りいつも通りを心がける。
唯「いや~。今日は寒いですな~。」
澪「そうだな。もう冬だし」
唯「こんなに寒いと布団から出るのも一苦労だよ」
律「唯は寒くなくてもだろ」
唯「ぶー。そんなことないもん」
紬「まあまあ。それに学校に行くのもつらいわよね~」
唯「だよね。私この前マフラーを電柱に引っ掛けて駄目にしちゃってさ~、余計にそう思うよ」
律「なにやってんだよ唯は」
澪「これからもっと寒くなるし、さすがに買った方がいいんじゃないか?」
唯「う~ん。でも今月はお小遣い、マフラー買うほど余裕がなくてね~。お年玉もらったら買おうかなって」
澪「今からお年玉をあてにするなよ」
ガラガラ
さわ子「みんな席について。出欠とるわよ」
さわちゃんが教室に入ってきたので、みんなそれぞれ自分の席に戻った。
それにしても来るの早すぎるよさわちゃん。もっと唯としゃべりたかったのになー。
でも、さっき思いがけずいい事を聞いた。唯は今、マフラーを持っていないらしい。
マフラー。手編みのマフラー。ベタだけどなかなかいいんじゃないだろうか。
ただ、一つ問題がある。
律「私に作れるかな」
私はあまり細かい作業が得意ではない。
もちろんマフラーなんて作ったことはないし、そもそも私のキャラじゃない。
でも、唯が喜んでくれるところを想像するだけで、どんどんやる気が出てくる。
よし。そうと決まれば善は急げだ。帰りに色々買っていくか。
そんなことを考えているとき、私の携帯にメールが届いた。唯からだ。
唯『学校だとなかなか2人きりになる機会がなくてイチャイチャ出来ないね。寂しいよう』
律「///」
唯はホントにかわいいな~。
でも、言われてみれば確かにそうだよな。
学校だと基本的にみんな一緒だから、なかなか2人になれないんだ。
律「あっ、そうだ」
私は唯にメールを返信する。
律『そうだな。じゃあさ唯。今度の日曜日、一緒に遊ぼうぜ?』
唯『今度の日曜日?クリスマスじゃないの?』
律『もちろんクリスマスもだよ。だけど別にクリスマスまでデートしちゃいけないって事じゃないだろ?』
唯『それもそうだね。うん、分かったよ。じゃあ日曜日はデートだね』
律『よっしゃ。じゃあ日曜日は駅前で待ち合わせな』
唯『うん、分かった。日曜日が待ち遠しいよ』
律「へへ」
唯と初めてのデートだ。楽しみだな。
その日の放課後。部活(私達3年生は勉強だけど)が終わり、私は1人、商店街の本屋に来ていた。
律「手編み・・・。手編み・・・。あった。ここら辺か」
マフラーなんて編んだ事のない私は、まずは指南書を探しているところだ。
律「うーん。どれがいいのかさっぱりわからん」
梓「あれ?律先輩じゃないですか」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには軽音部の後輩、中野梓がいた。
律「おう、梓。何やってんだこんなとこで?」
梓「本屋さんなんですから本を買いに来たんですよ。毎月買ってる音楽の雑誌があるんです。律先輩は何を見てるんですか?」
梓が私の手にしている本に目をやる。
私は慌てて持っていた本を後ろに隠したが、どうやら間に合わなかったらしい。
梓「初めての手編みレッスン・・・」
ヤバい!見られた!
梓「プッ・・・。アハハハ、アハハハハハ」
いきなり梓が笑い出した。爆笑だ。こんなに笑っている梓を見るのは初めてかもしれない。
律「な、何笑ってんだよ」
きっと今、私の顔は真っ赤になっているだろう。
梓「だ、だってww。律先輩が手編みってwww。苦しいwお腹痛いww」
こいつはホントに私の後輩だろうか。先輩に対する敬意ってもんが全く感じられない。
梓「ハァ、ハァ。もう、笑わせないでくださいよ律先輩」
律「別に笑わせてねーよ!」
梓「それで?何で律先輩はそんな本見てるんですか?」
律「なんでもないよ。ただ何となく手に取っただけだ」
梓「別に隠さなくてもいいじゃないですか。律先輩も女の子なんですから。おかしくないと思いますよ」
あんだけ笑っといてどの口が言うのか。
梓「でも知りませんでした。律先輩にそんな相手がいたなんて。女子高なのにどこで知り合ったんですか?」
なんでもないって言ってるのに勝手に話を続ける梓。しかもなんか勘違いしてるし。
律「だからなんでもないってば。それよりお前、雑誌買いに来たんだろ?さっさと買って帰れよ」
梓「そんな邪険にしないでくださいよ。教えてくれたっていいのじゃないですか」
律「だーかーらー」
梓「あーはいはい、分かりましたよ。もう聞きませんってば。
律先輩って以外と恥ずかしがり屋なんですね。では、失礼します」
梓がそう言って去っていこうとするので、私は呼び止めて言った。
律「おい、ホントになんでもないんだからな。他の人に変なこと言ったりするなよ」
梓「分かってますよ」
ホントに大丈夫かな・・・。
律「よし、今日はこれで終了っと」
今日の勉強を終わりにして、私は大きく伸びをする。
疲れた。けど今日からは他にやらなければいけないことがあるので、休んではいられない。
律「早速始めようかな」
あの後、私は指南書一冊と、雑貨屋で毛糸やらなにやら一式を買って帰った。
ピンク色の毛糸。きっと唯によく似合う。
律「えーっと、まずは」時間があまりないので、指南書を読みながら同時進行で進めていく事にする。
律「作り目を作って、次は、えーっと・・・」
律「ふう、今日はこのくらいにとくか」
ただ今の時刻は午前2時。2時間近く編み続けてたみたいだ。
律「思ったよりはなんとかなるな」
正直もっと苦戦すると思っていたので、想像より出来たことに自分で驚く。
もしかしたら私は、細かい作業は好きじゃないだけで得意なのかもしれない。
澪にボタンを付けるのがうまいって言われたこともあるしな。
律「だけどちょっとペース遅いかな」
作りかけのマフラーの長さを測ってみる。だいたい10センチくらい。
これが一般的に遅いのか速いのかは分からないが、クリスマスまであと2週間もない。
このペースだと間に合わない。もっと頑張らないと。
それから私は、毎晩勉強の後にマフラーを編み続けた。
最初に比べてスピードも速くなってきている。
勉強の後にマフラーを編むのは正直大変だけれど、唯の喜んでいる顔が見られると思えば苦にはならなかった
今日は12月18日。日曜日。唯とのデートの日だ。
朝起きた私は、お気に入りの服に着替えて、いつも以上に念入りに髪をセットしてから待ち合わせ場所に向かった。
今の時間は11時30分。待ち合わせは12時だから少し速いけど、唯を待たせたくはないからな。
そんなことを思っていたが、私が待ち合わせ場所についたとき、なんともう唯はそこにいた。
唯「あっ、りっちゃん。ヤッホー」
律「唯!?どうしたんだこんなに早く。待ち合わせ12時だったよな?」
唯「うん。でもりっちゃんとの初デートが待ちきれなくてさ~。ちょっと早く着いちゃった」
律「そっか///。待たせてごめんな、唯」
唯「ううん。早いって言っても私も来たのさっきだから。全然待ってないよ」
唯が私とのデートを楽しみにしてくれていた。
それだけで私はとても嬉しい気持ちになる。
唯「じゃあ早速行こうか、りっちゃん」
律「な、なあ唯?」
唯「なーに?」
律「その・・・。手、繋いでもいいか?」
唯「もちろんいいよ。はい」
そう言って唯は手を差し出してくる。私はその手をそっと、だけど力強くにぎった。
律「よし。では出発だ、唯隊員」
唯「わかりました。りっちゃん隊長」
唯「いやー、今日は楽しかったねりっちゃん」
律「そうだな。買い物してゲーセン行って映画も見て。ホントに楽しかった。」
唯「まさかりっちゃんが感動ものに弱いとは知らなかったよ」
律「うっせー///」
その日の帰り道。私は唯と手を繋いで歩いている。
楽しかった今日の事を唯と振り返りながら。話題がつきる事はない。
唯「あ、着いちゃったね」
しかし無情にも、楽しい時間はあっと言う間にすぎてしまう。私たちは唯の家の前に到着した。
唯「わざわざ家まで送ってくれてありがとね、りっちゃん」
律「いいんだよ。私が唯と少しでも長くいたかっただけなんだから」
唯「うん。それでもありがとう」
律「・・・」
唯ともっと一緒にいたかった。繋いでいる手を離したくなかった。
私達はしばらくの間唯の家の前でボーっと立ち尽くしていた。
唯「ねぇりっちゃん。キスしよっか」
律「は?」
唯の突然の提案に、私はビックリしてマヌケな声を出してしまう。
唯「だからさ。キスだよ。チュウ。駄目かな?」
律「・・・プッ、アハハ」
私は思わず吹き出してしまった。
唯「あー。何で笑うのさ」
律「いやだってさ普通そういうのってもっと雰囲気でっていうか自然にするものだろ。キスしようって言ってからするのは変じゃないか?」
唯「ぶー。仕方ないじゃん。初めてなんだもん。そんなのわかんないよ」
律「ハハハ」
なんだかさっきまでちょっとシリアスな感じだったのがバカらしく思えてくる。
律「そうだな。キスしよっか。唯」
唯「うん。りっちゃん」
その日、私は唯とキスをした。
お互い始めてで下手くそなキスだったけど、それでも確かにお互いの気持ちは通じ合っていた。
次の日の朝、私と澪が教室に入ると、クラスメイト達のおしゃべりの声が止まった。
みんなが私達の方を見ているような気がする。
律(なんだ?)
私は少し疑問に思ったが、それでもあまり気にせず先に来ていたムギに挨拶に向かう。
律「おっす。ムギ」
澪「おはよう」
紬「あ・・・。りっちゃん、澪ちゃん。おはよう」
澪「なあムギ。クラスのみんなどうしたんだ?なんか様子おかしくないか?」
紬「えーっと・・・。ごめんなさい。私には分からないわ」
一瞬、ムギが私のことを見たような気がした。
けれどすぐに視線を戻したので、その時は勘違いだろうと思ったんだ。
その後少しおしゃべりして、私達は自分の席に戻った。
クラスメイト達はコソコソ小声で何かを話している。
時折私の方をチラ見してくる子も何人かいた。
気分が悪い。何か言いたいことでもあるなら直接言えばいいのに。
唯「おはよー」
唯が教室に入ってきた。またクラス中の声が消える。
唯「って、あれ?」
クラスの雰囲気に気づいた唯は、少し戸惑いながらも自分の席についた。
私は唯の席に向かう。
律「おはよう、唯」
唯「あ、りっちゃん。おはよう。ねえ、なんか今日クラスの雰囲気おかしくない?どうしたんだろみんな?」
律「・・・ああ。なんだろうな」
唯と私に対しての様子がおかしいクラスのみんな。
実は私には、もしかしたらと思うことが一つだけある。
だけど私はそれを唯には言わなかった。
唯を嫌な気分にさせるような事はしたくなかった。
それに、私の単なる思い過ごしかもしれないし、思い過ごしであってほしかったから。
だけど、どうやら私の予感は当たっていたみたいだ。
その日の昼休み。その時には、クラスもだいぶいつもの雰囲気に戻ってきていたので、
私達もいつも通り談笑しながらお昼ご飯を食べていた。
そんな時、クラスメイト数人が私達に話しかけてきた。
A「ねえりっちゃん、唯ちゃん。2人に聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
唯「え、な~に?」
紬「ちょっと!」
いきなりムギが立ち上がりクラスメイト達を睨みつけた。
あのムギが怒っている?
こんな顔のムギは見たことがない。
紬「あなた達!何を・・・」
澪「お、おい。どうしたんだムギ!?」
そのムギの様子に、慌てて澪が止めにはいる。
B「そんな怒んないでよ。ただホントなのかな~って聞こうとしただけじゃん」
唯「何のこと?」
これはヤバい。止めないと。だけど私がそれに気づいた時には、もう遅かった。
A「ねえねえ、唯ちゃんとりっちゃんってさ、付き合ってるの?」
唯「え?」
あまりにも予想外の質問に唯が絶句している。
気がつけば、さっきまで騒がしかったクラスが静かになっていた。
みんなが私達の話を聞いているみたいだ。
唯「な・・・なんで?」
C「隣のクラスの子に聞いたんだけどさ、昨日唯ちゃんとりっちゃんが手を繋いでデートしてるところを見たんだって」
律「デートって・・・。そんなのただ2人で遊んでただけだよ」
A「手を繋いで?」
律「そうだよ。私達仲いいんだ」
A「仲がいいとキスもしちゃうの?」
律「なっ!?」
今度は私が言葉を失った。まさかそこまで見られていたとは思っていなかったから。
唯を見てみると、顔を真っ青にして俯いていた。
紬「あなた達!いい加減にして!」
ムギが怒鳴った。ムギの迫力にビビったのか、そのクラスメイト達は逃げるように教室を出ていった。
紬「りっちゃん、唯ちゃん、大丈夫?」
私たちに心配そうに声をかけてくるムギ。
律「あ、ああ。ありがとう」
紬「あんな人たちの言うことなんか気にしちゃ駄目よ」
律「・・・」
ムギはその後、何事もなかったかのように明るく振る舞ってくれた。
だけどそんなムギの気遣いに応えるほどの余裕は私にも唯にもなく、お昼の間、私達はほとんど無言だった。
そして、それはなぜか澪も・・・。
ここは私の部屋。今は午前0時30分。
私は今日もマフラーを編んでいるが、なかなか集中出来ない。
律「はあ・・・」
大きなため息がもれる。今日は最悪だった。
あの後結局唯は最後まで元気にならなかったし、なぜか澪も様子がおかしかったし。
部活ではそんな様子の私達に梓も戸惑っていた。
ムギのフォローのおかげでなんとかごまかすことが出来たけど、きっといつまでも隠し通しておく事は出来ないだろう。
律「唯、大丈夫かな・・・」
家に帰ってから、私は唯に何度も電話したが、唯は出なかった。
律「唯・・・」
私は作業を中断し、もう一度唯に電話をかける。
唯と話がしたかった。私の気持ちを伝えたかった。
唯「もしもし」
30秒程度のコールの後、唯が電話に出た。唯がやっと電話に出てくれて、私は安心する。
律「唯か?私。律」
唯「知ってるよ」
律「その、唯。大丈夫か?」
唯「うん。もう大丈夫だよ。ごめんね、心配かけて」
律「そっか。良かった」
唯「でも、あれだね。クラスのみんなにばれちゃったね」
唯「朝からみんなの視線が気になるな~とは思ってたんだけど、そういう事だったんだね」
唯「クラスにレズがいるなんて知ったら、みんなもそりゃあ見るよね普通」
唯は何でもないようなフリをして話しているが、その声は涙声になっていた。
唯「やっぱりさ、おかしいのかな。私達って」
律「そんな事ない!」
唯「りっちゃん・・・」
律「周りの声なんてどうでもいいよ。私は唯が好きだ。唯は私のことどう思ってるんだ?」
唯「そんなの・・・。好きに決まってるよ・・・」
律「だったらそれでいいじゃん。私は唯が好き。唯は私が好き。その気持ちがおかしいなんて、絶対にないよ」
唯「・・・うん。ありがとう。りっちゃん」
電話の向こうからは、唯の泣き声だけが聞こえていた。
次の日の朝、いつもの澪との待ち合わせ場所に行くと、澪はまだ来ていなかった。
いつもならあいつが先に来ているのに。
私は澪にメールを送る。するとすぐに返信がきた。
澪『ごめん、遅れそうだから先に行ってて』
寝坊か?澪にしては珍しいな。私は携帯をしまい、1人で学校までの道程を歩く。
その道中、何度か桜ヶ丘の生徒が私を見て内緒話をする姿を目撃した。
自分で言うのもなんだが、私達軽音部は桜ヶ丘では結構有名だ。
私の事を知っている人もいるだろう。だから、私の知らない人達の間でも噂は流されているようだ。
私はそんな周りの声を無視する。
言いたいやつには言わせておけばいい。私達は大丈夫。
そう、思っていた。
唯「2人ともおはよー。」
私とムギが喋っているところに、登校してきた唯がやってきた。
唯が教室に入ってきたことでまたざわめきが起こったが、唯は気にしていないように見えた。
律「よー、唯」
紬「おはよう。唯ちゃん」
唯「あれ?澪ちゃんは?」
律「まだ来てない。もしかしたら遅刻かもしれないな」
唯「へ~。珍しいね」
紬「どうしたのかしらね」
その日、澪は遅刻寸前にやってきた。
澪に遅刻の理由を聞いてみたが、何でもないと言って教えてはくれなった。
梓「あの・・・。律先輩、唯先輩」
放課後。部室でのティータイム前、梓が口を開いた。
梓「私・・・。お二人に聞きたいことがあるんです・・・」
紬「梓ちゃん!」
律「ムギ」
それを聞いたムギがなにか言い出しそうになったのを、私は制止した。
どうせいつまでも隠しておける事じゃないんだ。はっきりさせた方がいい。
唯「なに?あずにゃん。」
梓「今、その・・・。変な噂が流れてて。なんか唯先輩と律先輩が付き合ってるみたいって、そんなのが。
もちろん私は、そんなはずないって否定しておきましたよ」
梓「でも、やっぱり直接確かめたくて・・・。唯先輩、律先輩。あんな噂、嘘ですよね?」
唯「本当だよ」
梓「え?」
唯「私たちね、付き合ってるんだ」
梓「嘘・・・。」
唯「でもね、聞いてあずにゃん」
そう言って梓に手を伸ばす唯
梓「いや!」
梓はその手をはらった。
唯「っ!」
律「梓!」
梓「おかしいですよ2人共・・・。女の子同士なのに・・・」
そう言って梓は走って部室を出ていった。
唯「あずにゃん待って!」
その後を、唯も走って追いかけていった。私もその後を追いかけようとしたとき
澪「律」
部活中ずっと口を開かなかった澪が私を呼んだ。
澪「やっぱりホントだったんだな。唯と付き合ってるって」
律「ああ。黙ってて悪かったな」
澪「いつからなんだ?」
律「一週間くらい前からかな」
澪「そうか」
私と澪は親友だ。澪は私のことなら何だって分かってくれるし、理解してくれる。
そう信じていた。だけど
澪「律、お前たち、別れるべきだよ」
律「・・・!?」
だけど、それは私の勘違いだったみたいだ。
紬「そんな!澪ちゃんまでなんでそんなヒドいことを」
澪「ごめん、ムギ。ちょっと黙っててくれ」
澪はムギにそういうと、また私の方を見て続けた。
澪「女同士なんて、絶対にうまくいきっこないよ」
律「なんだよ・・・。それ」
私の中で澪に対する怒りがどんどん大きくなっていった。
親友に裏切られたような気分だった。
澪なら私達の事を応援してくれるって思っていたのに。
律「澪までそんな事言うのかよ・・・。親友だって思ってたのに・・・」
澪「親友だから言ってるんだよ律。私は心配なんだ。律の事も唯の事も」
澪「梓のさっきの反応見ただろ?それに、学校のみんなのお前達を見る目だって・・・」
澪「わかるだろ?律」
わかんないよ。なんなんだよみんな。なんで私達の邪魔ばかりするんだ。
もうほっといてくれよ。
澪「だからさ、もうやめよう?律も唯もさ、普通に戻るべきだよ」
律「っ!」
気づいたら、私は澪の頬を全力で打っていた。
律「最低だよ・・・澪」
私は部室を飛び出した。後ろでムギの呼ぶ声が聞こえたけど、そんなのどうでもいい。
もう誰も信じない。唯がいてくれればそれでいい。
律「唯」
私達のクラスの教室に、1人ぽつんと唯は座っていた。放心しているように見える。
唯「あ、りっちゃん・・・」
私に気づいた唯が力なく笑いかけてくる。
唯「あはは、駄目だったよ。私、あずにゃんに嫌われちゃったみたい」
律「そっか」
唯「もう・・・いやだ。なんでこんな事になっちゃうのかな・・・」
律「唯、大丈夫だよ。私がいる。ずっと一緒にいるから」
私は唯が泣き止むまで、ずっと唯のことを抱きしめていた。
律「よし!出来た!」
12月23日。ようやくマフラーが完成した。
かわいいピンク色のマフラー。
売ってるものと比べるられるとちょっと困る出来ではあるけれど、
それでも私が心を込めて一生懸命編んだマフラーだ。
律「唯、喜んでくれるといいな」
私と唯はあの日以降、学校ではずっと2人でいた。
朝は2人で登校して、昼は2人でご飯を食べて、放課後は部活には行かずに2人で遊んだ。
楽しかった。軽音部なんかで過ごしていた時の何倍も。
他の人間なんてどうでもよかった。
唯と一緒にいるだけで幸せだった。
唯も同じ気持ちだと思っていた。
次の日。クリスマスイブ。
天気予報によると今日は夜から雪が降るらしい。
私は唯との待ち合わせ場所にいた。プレゼントのマフラーを袋に入れて。
今は16時。待ち合わせの時間の17時まであと1時間。
私は唯が来るのを待った。楽しみで心臓がドキドキいっている。
律「早く来ないかな~、唯」
16時55分。ついに唯がやってきた。
唯「お待たせ、りっちゃん。待たせちゃった?」
律「全然。私もさっき来たとこだよ」
唯「そっか。よかったよ」
律「メリークリスマス。唯」
唯「うん・・・。メリークリスマス、りっちゃん」
律「へへーん。クリスマスということで、なんと私から唯にプレゼントが」
唯「りっちゃん」
私の言葉を唯が遮る。唯はいつになく真面目な顔をしていた。
律「ん?どうした唯」
唯「りっちゃん、私ね、今日はデートをするためじゃなくて、りっちゃんに話をするためにきたの」
律「え?話って?」
唯「うん。りっちゃんあのね」
唯「私達、別れよう」
律「え?」
信じられなかった。唯がそんな事を言い出すなんて。
私は手に持っていたプレゼントの袋を地面に落としてしまった。
律「冗談・・・だよな」
唯「ううん。冗談じゃないよ」
律「な・・・なんでだよ」
唯「やっぱりさ、おかしいんだよ。女の子同士なんて」
律「そんな事ないだろ!周りにどう思われたって別にいいじゃんか!」
唯「違うの。私が言ってるのは、周りのことだけじゃないの」
唯「私さ、最近ずっと考えてたんだ。どうして女の子同士は駄目なんだろう。おかしいって思われるんだろうって」
唯「それはさ、きっと、幸せになる事が出来ないからなんだよ」
律「なんだよそれ・・・」
唯「りっちゃんはさ、幸せってなんだと思う?」
律「幸せ?」
そんなの決まっている。好きな人と一緒にいることだ。
だから私は、唯といられればそれだけで幸せなんだ。
でも、唯の答えは少し違った。
唯「きっと幸せっていうのはさ、好きな人と結婚して、子供を産んで、家族を持つ。そういうことを言うんじゃないかな」
律「結婚なんて、そんなのただの形式じゃんか!そうだ。卒業したらさ、私達一緒に暮らそうよ。
子供は・・・無理だけどさ。でも私達ならきっと幸せになれるよ」
唯「駄目だよ。りっちゃん」
唯は駄々をこねる子供を諭すような、優しい口調で言った。
唯「きっとさ、いつかりっちゃんにも、私にも、大好きな男の人が出来る」
唯「そして私達は、その人と恋愛をして、結婚をして、子供を産んで、幸せな家庭を築くんだよ」
唯「だからさ、私達は、お別れしなきゃ駄目なんだ」
きっと、唯の言っていることは間違っている。
結婚する事が幸せなんて前時代的もいいとこだ。
それなのに、まともな反論が出てこない。
代わりに出てくるのは、陳腐な質問。
律「唯は・・・。もう私のこと、好きじゃないのか?」
唯「好きだよ。大好き。世界で一番好き」
律「じゃあ何でそんな事言うんだよ!?」
唯「好きだからだよ」
唯「りっちゃんの事が大好きだから、別れるんだよ」
今日は12月24日。クリスマスイブ。
私は1人、雪の降る道を歩いている。
唯にプレゼントするはずだったマフラーを首に巻いて。
かわいいピンク色で、きっと唯にとっても似合うマフラー。
律「私には似合わないよ・・・唯」
私は独り言をつぶやく。
律「唯が巻いてよ・・・。お願いだよ・・・」
私はその場にしゃがみこみ、声にならない声をあげて泣いた。
別れ際に見た唯の泣き顔が、いつまでも私の頭を離れなかった。
おわり
これで終わりです。こんなSSを読んでくださった方、ありがとうございます
元スレ
ただ一つ勘違いしないで欲しいのは、私はレズではない。
私は唯が好きなだけ。好きな人がたまたま女の子だっただけだ。
・・・ホントだぞ?
で、1年以上ずっと片思いをしてたわけだけど、ついに今日、ほんの数時間前、とうとう我慢が出来なくなり私は唯に告白した。
日付は12月12日。もうすぐ受験を控えてるというのに、大胆なことをしたと自分でも思う。
でも、高校最後のクリスマスは、どうしても唯と2人きりで過ごしたかったんだ。
だけど、やっぱり私たちは女同士だし、正直玉砕覚悟で望んだ告白だったけど、結果はまさかのOK。
私も前から好きだったよ、って言ってくれた。
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:07:43.59 ID:YOgE1MoU0
そして今に至る。私は今、自室で妙にハイテンションにになっていた。
律「へへへ」
自然とにやけ顔になってしまう。
律「唯と恋人同士かー・・・。」
キャーヽ(≧▽≦)/
今の私はいつものボーイッシュりっちゃんではない。乙女りっちゃんだ。
律「よし。これで今年のクリスマスは唯と2人きりで過ごせる」
私も女の子だからな。恋人とのクリスマスデートにはやっぱり憧れる。
唯と一緒に見るイルミネーション。どんなに素敵だろうか。
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:11:37.56 ID:YOgE1MoU0
律「それでー、いい雰囲気になって、そのまま自然と・・・って何考えてんだ私///。キスもまだだってのに///」
うん。やっぱりテンションおかしいな私。
でも告白成功直後なんだ。これくらい許してくれ。
律「唯は今何してるんだろ?電話してみようかな?」
さっき別れたばかりなのに電話なんてさすがに迷惑だろうか?
律「いや、恋人なんだしいいよな。忙しそうだったら切ればいいし」
そう思い、私は唯に電話をかける。
prrrr・・・。
数回のコールの後、電話は繋がった。
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:15:42.45 ID:YOgE1MoU0
唯「もしもし、りっちゃん?」
律「おう、唯。私だ」
唯「うん。りっちゃんどうしたの?」
律「いや、別に特に用事があるわけじゃないんだけどさ、唯は今何してるのかな~って思って。というか今大丈夫?迷惑じゃない?」
唯「ううん、全然大丈夫だよ。今はね、憂のご飯が出来るのを待ってるとこ。だからそれまでだったらお話出来るよ」
律「そっか。良かった」
唯「はは~ん。りっちゃんってば、そんなに私と話したくてしかたなかったんだ~」
律「なっ///。そんなんじゃねーよ///」
唯「照れなくてもいいのに~。私はりっちゃんとお話したかったよ」
律「そ、そうなんだ///」
やばい。やっぱ唯かわいすぎ。
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:19:25.38 ID:YOgE1MoU0
唯「うん。私たちは恋人同士なんだもん。当然だよ」
律「だ、だよな。当然だよな」
唯「やっぱりりっちゃんも話したかったんじゃん」
律「うっ///」
きっと私の顔は今真っ赤になっているはずだ。電話でよかった。
唯「ねぇりっちゃん。今日はありがとうね。りっちゃんの告白、すごい嬉しかった」
律「私はすごい恥ずかしかったけどな」
唯「私にはりっちゃんみたいな勇気はないから、りっちゃんが告白してくれなかったらきっと片思いのまま高校を卒業してたと思う」
律「そっか。だったら私も勇気を出した甲斐があるってもんだな」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:22:37.28 ID:YOgE1MoU0
唯「うん、本当にありがとうね。でね、私たちは晴れて恋人同士になったわけだけど」
律「う、うん///」
唯「このことはさ、みんなには黙っていよ?」
律「え?」
唯「軽音部のみんなにも、クラスのみんなにも、憂にも。私たちだけの秘密にした方がいいと思う」
律「別にいいけど、何でだ?」
唯「だって、私たちは女の子同士だし、やっぱりその、あんまりいい目では見られないと思うんだ」
そっか。唯とつき合えることに浮かれてよく考えてなかったけど、あんまり世間的にみたらいい事ではないもんな。
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:24:47.97 ID:YOgE1MoU0
律「でも、澪達にもか?あいつらなら」
唯「軽音部のみんなを信用してないわけじゃないよ。でも、やっぱり・・・」
律「・・・そっか。分かったよ。じゃあ私達のことは2人だけの秘密な」
唯「ありがとう、りっちゃん」
律「いいのいいの。秘密の恋ってのもスリリングで燃えそうだしな」
唯「もう、りっちゃんったら~///」
あ、そうだ。そういえば唯のクリスマスの予定聞いてなかったな。さっきは唯と2人で過ごせるとかはしゃいでたけど、もし予定とかあったらどうしよう・・・
律「ところでさ、唯ってクリスマスの予定とかって・・・あったりするか?」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:28:05.97 ID:YOgE1MoU0
唯「クリスマス?ううん。特に予定はないよ」
律「そっか!じゃあさ、デートしよう。デート」
唯「りっちゃん勉強しなくて大丈夫なの?」
律「うっ・・・。」
まさか唯に勉強の心配をされるとは思わなかったな。
律「だ、大丈夫だって1日くらい。せっかくのクリスマスなんだしさ」
唯「うーん。まぁそうだね。せっかくのクリスマスだもんね。私もりっちゃんと過ごしたい」
律「ほんとか!?じゃあクリスマスはデートな。約束だ」
唯「うん。約束ね。」
その後私達は、他愛もない話をして過ごした。
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:32:37.08 ID:YOgE1MoU0
唯「あっ、ごめんりっちゃん。憂が呼んでる。ご飯が出来たみたい。もう切るね」
律「そっか・・・。分かった」
唯「ごめんね。また明日学校でね」
律「あっ!唯!」
唯「ん?なにりっちゃん」
律「その・・・。好きだよ、唯///」
唯「うん///。私も大好きだよ、りっちゃん。またね」
そう言って唯は電話を切った。楽しい時間はあっと言う間にすぎてしまう。
すこし、いや、かなり残念だったけど、まあクリスマスの約束が出来ただけでも良しとしよう。
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:35:27.97 ID:YOgE1MoU0
律「そうだ。クリスマスっていったらやっぱプレゼントが必要だよな」
何をあげたら唯は喜ぶだろうか。
かわいいぬいぐるみとか?もう高3なのにさすがに子供っぽすぎるかな。
じゃあ洋服はどうだろ?まあ無難な感じではあるけどな~。
律「なんかどれもピンとこないなあ」
う~ん。恋人へのプレゼントなんて初めてだからな~。いいのが思いつかない。
律「明日唯にそれとなく聞いてみるかな」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:38:51.21 ID:YOgE1MoU0
澪「おはよう、律」
律「おう、おはよう澪」
次の日の朝、私はいつも通り澪と一緒に学校へ向かう。
もう12月中旬。だいぶ朝が寒くなってきた。
澪「お、どうしたんだ律?なんかご機嫌だな」
律「え、なんで?」
澪「だって、なんかすごい笑顔じゃないか。なにかいい事でもあったのか?」
そんなに顔にでているだろうか。確かに早く唯に会いたくてウキウキしているのは本当だけど。
律「へへー。実はさ」
途中まで言いかけて思い出す。そうだ。誰にも言わないって唯と決めたんだっけか。
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:41:25.04 ID:YOgE1MoU0
律「あ、いや。ううん。なんでもない」
澪「なんだよそれ。なにか言いかけただろ?」
律「いやいや。ホントなんでもないよ」
澪「・・・ふーん、そ。律がそういうならこれ以上は聞かないよ」
ごめんな澪。正直私は澪になら教えても大丈夫なんじゃないかって思ってたりもする。
私の幼なじみで、一番の親友だからな。きっと私達の事だって理解してくれる。
でもやっぱり唯との約束は破りたくないから。
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:45:44.49 ID:YOgE1MoU0
律「おはよう、唯、ムギ」
澪「おはよう」
唯「あっ、りっちゃんに澪ちゃん。おはよう」
紬「2人ともおはよう」
学校の教室について恋人を見つけた私は、すぐにでも走り寄って抱きつきたい衝動にかられたが、
何とか我慢して唯とムギに朝の挨拶をする。
私達は昨日の電話で、みんなでいる時はいつも通りでいようと決めていた。
だから、私も出来る限りいつも通りを心がける。
唯「いや~。今日は寒いですな~。」
澪「そうだな。もう冬だし」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:49:27.05 ID:YOgE1MoU0
唯「こんなに寒いと布団から出るのも一苦労だよ」
律「唯は寒くなくてもだろ」
唯「ぶー。そんなことないもん」
紬「まあまあ。それに学校に行くのもつらいわよね~」
唯「だよね。私この前マフラーを電柱に引っ掛けて駄目にしちゃってさ~、余計にそう思うよ」
律「なにやってんだよ唯は」
澪「これからもっと寒くなるし、さすがに買った方がいいんじゃないか?」
唯「う~ん。でも今月はお小遣い、マフラー買うほど余裕がなくてね~。お年玉もらったら買おうかなって」
澪「今からお年玉をあてにするなよ」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:53:36.39 ID:YOgE1MoU0
ガラガラ
さわ子「みんな席について。出欠とるわよ」
さわちゃんが教室に入ってきたので、みんなそれぞれ自分の席に戻った。
それにしても来るの早すぎるよさわちゃん。もっと唯としゃべりたかったのになー。
でも、さっき思いがけずいい事を聞いた。唯は今、マフラーを持っていないらしい。
マフラー。手編みのマフラー。ベタだけどなかなかいいんじゃないだろうか。
ただ、一つ問題がある。
律「私に作れるかな」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 21:57:19.98 ID:YOgE1MoU0
私はあまり細かい作業が得意ではない。
もちろんマフラーなんて作ったことはないし、そもそも私のキャラじゃない。
でも、唯が喜んでくれるところを想像するだけで、どんどんやる気が出てくる。
よし。そうと決まれば善は急げだ。帰りに色々買っていくか。
そんなことを考えているとき、私の携帯にメールが届いた。唯からだ。
唯『学校だとなかなか2人きりになる機会がなくてイチャイチャ出来ないね。寂しいよう』
律「///」
唯はホントにかわいいな~。
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:01:31.09 ID:YOgE1MoU0
でも、言われてみれば確かにそうだよな。
学校だと基本的にみんな一緒だから、なかなか2人になれないんだ。
律「あっ、そうだ」
私は唯にメールを返信する。
律『そうだな。じゃあさ唯。今度の日曜日、一緒に遊ぼうぜ?』
唯『今度の日曜日?クリスマスじゃないの?』
律『もちろんクリスマスもだよ。だけど別にクリスマスまでデートしちゃいけないって事じゃないだろ?』
唯『それもそうだね。うん、分かったよ。じゃあ日曜日はデートだね』
律『よっしゃ。じゃあ日曜日は駅前で待ち合わせな』
唯『うん、分かった。日曜日が待ち遠しいよ』
律「へへ」
唯と初めてのデートだ。楽しみだな。
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:05:15.40 ID:YOgE1MoU0
その日の放課後。部活(私達3年生は勉強だけど)が終わり、私は1人、商店街の本屋に来ていた。
律「手編み・・・。手編み・・・。あった。ここら辺か」
マフラーなんて編んだ事のない私は、まずは指南書を探しているところだ。
律「うーん。どれがいいのかさっぱりわからん」
梓「あれ?律先輩じゃないですか」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには軽音部の後輩、中野梓がいた。
律「おう、梓。何やってんだこんなとこで?」
梓「本屋さんなんですから本を買いに来たんですよ。毎月買ってる音楽の雑誌があるんです。律先輩は何を見てるんですか?」
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:09:17.04 ID:YOgE1MoU0
梓が私の手にしている本に目をやる。
私は慌てて持っていた本を後ろに隠したが、どうやら間に合わなかったらしい。
梓「初めての手編みレッスン・・・」
ヤバい!見られた!
梓「プッ・・・。アハハハ、アハハハハハ」
いきなり梓が笑い出した。爆笑だ。こんなに笑っている梓を見るのは初めてかもしれない。
律「な、何笑ってんだよ」
きっと今、私の顔は真っ赤になっているだろう。
梓「だ、だってww。律先輩が手編みってwww。苦しいwお腹痛いww」
こいつはホントに私の後輩だろうか。先輩に対する敬意ってもんが全く感じられない。
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:13:19.59 ID:YOgE1MoU0
梓「ハァ、ハァ。もう、笑わせないでくださいよ律先輩」
律「別に笑わせてねーよ!」
梓「それで?何で律先輩はそんな本見てるんですか?」
律「なんでもないよ。ただ何となく手に取っただけだ」
梓「別に隠さなくてもいいじゃないですか。律先輩も女の子なんですから。おかしくないと思いますよ」
あんだけ笑っといてどの口が言うのか。
梓「でも知りませんでした。律先輩にそんな相手がいたなんて。女子高なのにどこで知り合ったんですか?」
なんでもないって言ってるのに勝手に話を続ける梓。しかもなんか勘違いしてるし。
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:17:40.07 ID:YOgE1MoU0
律「だからなんでもないってば。それよりお前、雑誌買いに来たんだろ?さっさと買って帰れよ」
梓「そんな邪険にしないでくださいよ。教えてくれたっていいのじゃないですか」
律「だーかーらー」
梓「あーはいはい、分かりましたよ。もう聞きませんってば。
律先輩って以外と恥ずかしがり屋なんですね。では、失礼します」
梓がそう言って去っていこうとするので、私は呼び止めて言った。
律「おい、ホントになんでもないんだからな。他の人に変なこと言ったりするなよ」
梓「分かってますよ」
ホントに大丈夫かな・・・。
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:21:13.69 ID:YOgE1MoU0
律「よし、今日はこれで終了っと」
今日の勉強を終わりにして、私は大きく伸びをする。
疲れた。けど今日からは他にやらなければいけないことがあるので、休んではいられない。
律「早速始めようかな」
あの後、私は指南書一冊と、雑貨屋で毛糸やらなにやら一式を買って帰った。
ピンク色の毛糸。きっと唯によく似合う。
律「えーっと、まずは」時間があまりないので、指南書を読みながら同時進行で進めていく事にする。
律「作り目を作って、次は、えーっと・・・」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:25:32.13 ID:YOgE1MoU0
律「ふう、今日はこのくらいにとくか」
ただ今の時刻は午前2時。2時間近く編み続けてたみたいだ。
律「思ったよりはなんとかなるな」
正直もっと苦戦すると思っていたので、想像より出来たことに自分で驚く。
もしかしたら私は、細かい作業は好きじゃないだけで得意なのかもしれない。
澪にボタンを付けるのがうまいって言われたこともあるしな。
律「だけどちょっとペース遅いかな」
作りかけのマフラーの長さを測ってみる。だいたい10センチくらい。
これが一般的に遅いのか速いのかは分からないが、クリスマスまであと2週間もない。
このペースだと間に合わない。もっと頑張らないと。
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:26:25.05 ID:YOgE1MoU0
それから私は、毎晩勉強の後にマフラーを編み続けた。
最初に比べてスピードも速くなってきている。
勉強の後にマフラーを編むのは正直大変だけれど、唯の喜んでいる顔が見られると思えば苦にはならなかった
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:30:49.71 ID:YOgE1MoU0
今日は12月18日。日曜日。唯とのデートの日だ。
朝起きた私は、お気に入りの服に着替えて、いつも以上に念入りに髪をセットしてから待ち合わせ場所に向かった。
今の時間は11時30分。待ち合わせは12時だから少し速いけど、唯を待たせたくはないからな。
そんなことを思っていたが、私が待ち合わせ場所についたとき、なんともう唯はそこにいた。
唯「あっ、りっちゃん。ヤッホー」
律「唯!?どうしたんだこんなに早く。待ち合わせ12時だったよな?」
唯「うん。でもりっちゃんとの初デートが待ちきれなくてさ~。ちょっと早く着いちゃった」
律「そっか///。待たせてごめんな、唯」
唯「ううん。早いって言っても私も来たのさっきだから。全然待ってないよ」
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:34:32.21 ID:YOgE1MoU0
唯が私とのデートを楽しみにしてくれていた。
それだけで私はとても嬉しい気持ちになる。
唯「じゃあ早速行こうか、りっちゃん」
律「な、なあ唯?」
唯「なーに?」
律「その・・・。手、繋いでもいいか?」
唯「もちろんいいよ。はい」
そう言って唯は手を差し出してくる。私はその手をそっと、だけど力強くにぎった。
律「よし。では出発だ、唯隊員」
唯「わかりました。りっちゃん隊長」
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:38:14.94 ID:YOgE1MoU0
唯「いやー、今日は楽しかったねりっちゃん」
律「そうだな。買い物してゲーセン行って映画も見て。ホントに楽しかった。」
唯「まさかりっちゃんが感動ものに弱いとは知らなかったよ」
律「うっせー///」
その日の帰り道。私は唯と手を繋いで歩いている。
楽しかった今日の事を唯と振り返りながら。話題がつきる事はない。
唯「あ、着いちゃったね」
しかし無情にも、楽しい時間はあっと言う間にすぎてしまう。私たちは唯の家の前に到着した。
唯「わざわざ家まで送ってくれてありがとね、りっちゃん」
律「いいんだよ。私が唯と少しでも長くいたかっただけなんだから」
唯「うん。それでもありがとう」
律「・・・」
唯ともっと一緒にいたかった。繋いでいる手を離したくなかった。
私達はしばらくの間唯の家の前でボーっと立ち尽くしていた。
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:42:47.11 ID:YOgE1MoU0
唯「ねぇりっちゃん。キスしよっか」
律「は?」
唯の突然の提案に、私はビックリしてマヌケな声を出してしまう。
唯「だからさ。キスだよ。チュウ。駄目かな?」
律「・・・プッ、アハハ」
私は思わず吹き出してしまった。
唯「あー。何で笑うのさ」
律「いやだってさ普通そういうのってもっと雰囲気でっていうか自然にするものだろ。キスしようって言ってからするのは変じゃないか?」
唯「ぶー。仕方ないじゃん。初めてなんだもん。そんなのわかんないよ」
律「ハハハ」
なんだかさっきまでちょっとシリアスな感じだったのがバカらしく思えてくる。
律「そうだな。キスしよっか。唯」
唯「うん。りっちゃん」
その日、私は唯とキスをした。
お互い始めてで下手くそなキスだったけど、それでも確かにお互いの気持ちは通じ合っていた。
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:46:46.94 ID:YOgE1MoU0
次の日の朝、私と澪が教室に入ると、クラスメイト達のおしゃべりの声が止まった。
みんなが私達の方を見ているような気がする。
律(なんだ?)
私は少し疑問に思ったが、それでもあまり気にせず先に来ていたムギに挨拶に向かう。
律「おっす。ムギ」
澪「おはよう」
紬「あ・・・。りっちゃん、澪ちゃん。おはよう」
澪「なあムギ。クラスのみんなどうしたんだ?なんか様子おかしくないか?」
紬「えーっと・・・。ごめんなさい。私には分からないわ」
一瞬、ムギが私のことを見たような気がした。
けれどすぐに視線を戻したので、その時は勘違いだろうと思ったんだ。
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:49:18.26 ID:YOgE1MoU0
その後少しおしゃべりして、私達は自分の席に戻った。
クラスメイト達はコソコソ小声で何かを話している。
時折私の方をチラ見してくる子も何人かいた。
気分が悪い。何か言いたいことでもあるなら直接言えばいいのに。
唯「おはよー」
唯が教室に入ってきた。またクラス中の声が消える。
唯「って、あれ?」
クラスの雰囲気に気づいた唯は、少し戸惑いながらも自分の席についた。
私は唯の席に向かう。
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:52:39.12 ID:YOgE1MoU0
律「おはよう、唯」
唯「あ、りっちゃん。おはよう。ねえ、なんか今日クラスの雰囲気おかしくない?どうしたんだろみんな?」
律「・・・ああ。なんだろうな」
唯と私に対しての様子がおかしいクラスのみんな。
実は私には、もしかしたらと思うことが一つだけある。
だけど私はそれを唯には言わなかった。
唯を嫌な気分にさせるような事はしたくなかった。
それに、私の単なる思い過ごしかもしれないし、思い過ごしであってほしかったから。
だけど、どうやら私の予感は当たっていたみたいだ。
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:56:16.06 ID:YOgE1MoU0
その日の昼休み。その時には、クラスもだいぶいつもの雰囲気に戻ってきていたので、
私達もいつも通り談笑しながらお昼ご飯を食べていた。
そんな時、クラスメイト数人が私達に話しかけてきた。
A「ねえりっちゃん、唯ちゃん。2人に聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
唯「え、な~に?」
紬「ちょっと!」
いきなりムギが立ち上がりクラスメイト達を睨みつけた。
あのムギが怒っている?
こんな顔のムギは見たことがない。
紬「あなた達!何を・・・」
澪「お、おい。どうしたんだムギ!?」
そのムギの様子に、慌てて澪が止めにはいる。
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 22:59:35.27 ID:YOgE1MoU0
B「そんな怒んないでよ。ただホントなのかな~って聞こうとしただけじゃん」
唯「何のこと?」
これはヤバい。止めないと。だけど私がそれに気づいた時には、もう遅かった。
A「ねえねえ、唯ちゃんとりっちゃんってさ、付き合ってるの?」
唯「え?」
あまりにも予想外の質問に唯が絶句している。
気がつけば、さっきまで騒がしかったクラスが静かになっていた。
みんなが私達の話を聞いているみたいだ。
唯「な・・・なんで?」
C「隣のクラスの子に聞いたんだけどさ、昨日唯ちゃんとりっちゃんが手を繋いでデートしてるところを見たんだって」
律「デートって・・・。そんなのただ2人で遊んでただけだよ」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:03:06.16 ID:YOgE1MoU0
A「手を繋いで?」
律「そうだよ。私達仲いいんだ」
A「仲がいいとキスもしちゃうの?」
律「なっ!?」
今度は私が言葉を失った。まさかそこまで見られていたとは思っていなかったから。
唯を見てみると、顔を真っ青にして俯いていた。
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:05:34.51 ID:YOgE1MoU0
紬「あなた達!いい加減にして!」
ムギが怒鳴った。ムギの迫力にビビったのか、そのクラスメイト達は逃げるように教室を出ていった。
紬「りっちゃん、唯ちゃん、大丈夫?」
私たちに心配そうに声をかけてくるムギ。
律「あ、ああ。ありがとう」
紬「あんな人たちの言うことなんか気にしちゃ駄目よ」
律「・・・」
ムギはその後、何事もなかったかのように明るく振る舞ってくれた。
だけどそんなムギの気遣いに応えるほどの余裕は私にも唯にもなく、お昼の間、私達はほとんど無言だった。
そして、それはなぜか澪も・・・。
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:09:12.25 ID:YOgE1MoU0
ここは私の部屋。今は午前0時30分。
私は今日もマフラーを編んでいるが、なかなか集中出来ない。
律「はあ・・・」
大きなため息がもれる。今日は最悪だった。
あの後結局唯は最後まで元気にならなかったし、なぜか澪も様子がおかしかったし。
部活ではそんな様子の私達に梓も戸惑っていた。
ムギのフォローのおかげでなんとかごまかすことが出来たけど、きっといつまでも隠し通しておく事は出来ないだろう。
律「唯、大丈夫かな・・・」
家に帰ってから、私は唯に何度も電話したが、唯は出なかった。
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:13:01.00 ID:YOgE1MoU0
律「唯・・・」
私は作業を中断し、もう一度唯に電話をかける。
唯と話がしたかった。私の気持ちを伝えたかった。
唯「もしもし」
30秒程度のコールの後、唯が電話に出た。唯がやっと電話に出てくれて、私は安心する。
律「唯か?私。律」
唯「知ってるよ」
律「その、唯。大丈夫か?」
唯「うん。もう大丈夫だよ。ごめんね、心配かけて」
律「そっか。良かった」
唯「でも、あれだね。クラスのみんなにばれちゃったね」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:17:14.36 ID:YOgE1MoU0
唯「朝からみんなの視線が気になるな~とは思ってたんだけど、そういう事だったんだね」
唯「クラスにレズがいるなんて知ったら、みんなもそりゃあ見るよね普通」
唯は何でもないようなフリをして話しているが、その声は涙声になっていた。
唯「やっぱりさ、おかしいのかな。私達って」
律「そんな事ない!」
唯「りっちゃん・・・」
律「周りの声なんてどうでもいいよ。私は唯が好きだ。唯は私のことどう思ってるんだ?」
唯「そんなの・・・。好きに決まってるよ・・・」
律「だったらそれでいいじゃん。私は唯が好き。唯は私が好き。その気持ちがおかしいなんて、絶対にないよ」
唯「・・・うん。ありがとう。りっちゃん」
電話の向こうからは、唯の泣き声だけが聞こえていた。
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:21:06.31 ID:YOgE1MoU0
次の日の朝、いつもの澪との待ち合わせ場所に行くと、澪はまだ来ていなかった。
いつもならあいつが先に来ているのに。
私は澪にメールを送る。するとすぐに返信がきた。
澪『ごめん、遅れそうだから先に行ってて』
寝坊か?澪にしては珍しいな。私は携帯をしまい、1人で学校までの道程を歩く。
その道中、何度か桜ヶ丘の生徒が私を見て内緒話をする姿を目撃した。
自分で言うのもなんだが、私達軽音部は桜ヶ丘では結構有名だ。
私の事を知っている人もいるだろう。だから、私の知らない人達の間でも噂は流されているようだ。
私はそんな周りの声を無視する。
言いたいやつには言わせておけばいい。私達は大丈夫。
そう、思っていた。
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:24:28.56 ID:YOgE1MoU0
唯「2人ともおはよー。」
私とムギが喋っているところに、登校してきた唯がやってきた。
唯が教室に入ってきたことでまたざわめきが起こったが、唯は気にしていないように見えた。
律「よー、唯」
紬「おはよう。唯ちゃん」
唯「あれ?澪ちゃんは?」
律「まだ来てない。もしかしたら遅刻かもしれないな」
唯「へ~。珍しいね」
紬「どうしたのかしらね」
その日、澪は遅刻寸前にやってきた。
澪に遅刻の理由を聞いてみたが、何でもないと言って教えてはくれなった。
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:28:01.23 ID:YOgE1MoU0
梓「あの・・・。律先輩、唯先輩」
放課後。部室でのティータイム前、梓が口を開いた。
梓「私・・・。お二人に聞きたいことがあるんです・・・」
紬「梓ちゃん!」
律「ムギ」
それを聞いたムギがなにか言い出しそうになったのを、私は制止した。
どうせいつまでも隠しておける事じゃないんだ。はっきりさせた方がいい。
唯「なに?あずにゃん。」
梓「今、その・・・。変な噂が流れてて。なんか唯先輩と律先輩が付き合ってるみたいって、そんなのが。
もちろん私は、そんなはずないって否定しておきましたよ」
梓「でも、やっぱり直接確かめたくて・・・。唯先輩、律先輩。あんな噂、嘘ですよね?」
66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:31:16.10 ID:YOgE1MoU0
唯「本当だよ」
梓「え?」
唯「私たちね、付き合ってるんだ」
梓「嘘・・・。」
唯「でもね、聞いてあずにゃん」
そう言って梓に手を伸ばす唯
梓「いや!」
梓はその手をはらった。
唯「っ!」
律「梓!」
梓「おかしいですよ2人共・・・。女の子同士なのに・・・」
そう言って梓は走って部室を出ていった。
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:34:56.34 ID:YOgE1MoU0
唯「あずにゃん待って!」
その後を、唯も走って追いかけていった。私もその後を追いかけようとしたとき
澪「律」
部活中ずっと口を開かなかった澪が私を呼んだ。
澪「やっぱりホントだったんだな。唯と付き合ってるって」
律「ああ。黙ってて悪かったな」
澪「いつからなんだ?」
律「一週間くらい前からかな」
澪「そうか」
私と澪は親友だ。澪は私のことなら何だって分かってくれるし、理解してくれる。
そう信じていた。だけど
澪「律、お前たち、別れるべきだよ」
律「・・・!?」
だけど、それは私の勘違いだったみたいだ。
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:37:15.14 ID:YOgE1MoU0
紬「そんな!澪ちゃんまでなんでそんなヒドいことを」
澪「ごめん、ムギ。ちょっと黙っててくれ」
澪はムギにそういうと、また私の方を見て続けた。
澪「女同士なんて、絶対にうまくいきっこないよ」
律「なんだよ・・・。それ」
私の中で澪に対する怒りがどんどん大きくなっていった。
親友に裏切られたような気分だった。
澪なら私達の事を応援してくれるって思っていたのに。
律「澪までそんな事言うのかよ・・・。親友だって思ってたのに・・・」
澪「親友だから言ってるんだよ律。私は心配なんだ。律の事も唯の事も」
72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:40:57.44 ID:YOgE1MoU0
澪「梓のさっきの反応見ただろ?それに、学校のみんなのお前達を見る目だって・・・」
澪「わかるだろ?律」
わかんないよ。なんなんだよみんな。なんで私達の邪魔ばかりするんだ。
もうほっといてくれよ。
澪「だからさ、もうやめよう?律も唯もさ、普通に戻るべきだよ」
律「っ!」
気づいたら、私は澪の頬を全力で打っていた。
律「最低だよ・・・澪」
私は部室を飛び出した。後ろでムギの呼ぶ声が聞こえたけど、そんなのどうでもいい。
もう誰も信じない。唯がいてくれればそれでいい。
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:45:19.52 ID:YOgE1MoU0
律「唯」
私達のクラスの教室に、1人ぽつんと唯は座っていた。放心しているように見える。
唯「あ、りっちゃん・・・」
私に気づいた唯が力なく笑いかけてくる。
唯「あはは、駄目だったよ。私、あずにゃんに嫌われちゃったみたい」
律「そっか」
唯「もう・・・いやだ。なんでこんな事になっちゃうのかな・・・」
律「唯、大丈夫だよ。私がいる。ずっと一緒にいるから」
私は唯が泣き止むまで、ずっと唯のことを抱きしめていた。
76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:48:18.55 ID:YOgE1MoU0
律「よし!出来た!」
12月23日。ようやくマフラーが完成した。
かわいいピンク色のマフラー。
売ってるものと比べるられるとちょっと困る出来ではあるけれど、
それでも私が心を込めて一生懸命編んだマフラーだ。
律「唯、喜んでくれるといいな」
78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:51:21.06 ID:YOgE1MoU0
私と唯はあの日以降、学校ではずっと2人でいた。
朝は2人で登校して、昼は2人でご飯を食べて、放課後は部活には行かずに2人で遊んだ。
楽しかった。軽音部なんかで過ごしていた時の何倍も。
他の人間なんてどうでもよかった。
唯と一緒にいるだけで幸せだった。
唯も同じ気持ちだと思っていた。
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:53:55.67 ID:YOgE1MoU0
次の日。クリスマスイブ。
天気予報によると今日は夜から雪が降るらしい。
私は唯との待ち合わせ場所にいた。プレゼントのマフラーを袋に入れて。
今は16時。待ち合わせの時間の17時まであと1時間。
私は唯が来るのを待った。楽しみで心臓がドキドキいっている。
律「早く来ないかな~、唯」
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/18(火) 23:57:01.23 ID:YOgE1MoU0
16時55分。ついに唯がやってきた。
唯「お待たせ、りっちゃん。待たせちゃった?」
律「全然。私もさっき来たとこだよ」
唯「そっか。よかったよ」
律「メリークリスマス。唯」
唯「うん・・・。メリークリスマス、りっちゃん」
律「へへーん。クリスマスということで、なんと私から唯にプレゼントが」
唯「りっちゃん」
私の言葉を唯が遮る。唯はいつになく真面目な顔をしていた。
87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/19(水) 00:00:12.86 ID:22LFlz6r0
律「ん?どうした唯」
唯「りっちゃん、私ね、今日はデートをするためじゃなくて、りっちゃんに話をするためにきたの」
律「え?話って?」
唯「うん。りっちゃんあのね」
唯「私達、別れよう」
89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/19(水) 00:02:51.27 ID:22LFlz6r0
律「え?」
信じられなかった。唯がそんな事を言い出すなんて。
私は手に持っていたプレゼントの袋を地面に落としてしまった。
律「冗談・・・だよな」
唯「ううん。冗談じゃないよ」
律「な・・・なんでだよ」
唯「やっぱりさ、おかしいんだよ。女の子同士なんて」
律「そんな事ないだろ!周りにどう思われたって別にいいじゃんか!」
唯「違うの。私が言ってるのは、周りのことだけじゃないの」
91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/19(水) 00:05:56.48 ID:22LFlz6r0
唯「私さ、最近ずっと考えてたんだ。どうして女の子同士は駄目なんだろう。おかしいって思われるんだろうって」
唯「それはさ、きっと、幸せになる事が出来ないからなんだよ」
律「なんだよそれ・・・」
唯「りっちゃんはさ、幸せってなんだと思う?」
律「幸せ?」
そんなの決まっている。好きな人と一緒にいることだ。
だから私は、唯といられればそれだけで幸せなんだ。
でも、唯の答えは少し違った。
唯「きっと幸せっていうのはさ、好きな人と結婚して、子供を産んで、家族を持つ。そういうことを言うんじゃないかな」
92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/19(水) 00:09:16.13 ID:22LFlz6r0
律「結婚なんて、そんなのただの形式じゃんか!そうだ。卒業したらさ、私達一緒に暮らそうよ。
子供は・・・無理だけどさ。でも私達ならきっと幸せになれるよ」
唯「駄目だよ。りっちゃん」
唯は駄々をこねる子供を諭すような、優しい口調で言った。
唯「きっとさ、いつかりっちゃんにも、私にも、大好きな男の人が出来る」
唯「そして私達は、その人と恋愛をして、結婚をして、子供を産んで、幸せな家庭を築くんだよ」
唯「だからさ、私達は、お別れしなきゃ駄目なんだ」
94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/19(水) 00:11:52.51 ID:22LFlz6r0
きっと、唯の言っていることは間違っている。
結婚する事が幸せなんて前時代的もいいとこだ。
それなのに、まともな反論が出てこない。
代わりに出てくるのは、陳腐な質問。
律「唯は・・・。もう私のこと、好きじゃないのか?」
唯「好きだよ。大好き。世界で一番好き」
律「じゃあ何でそんな事言うんだよ!?」
唯「好きだからだよ」
唯「りっちゃんの事が大好きだから、別れるんだよ」
96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/19(水) 00:14:35.00 ID:22LFlz6r0
今日は12月24日。クリスマスイブ。
私は1人、雪の降る道を歩いている。
唯にプレゼントするはずだったマフラーを首に巻いて。
かわいいピンク色で、きっと唯にとっても似合うマフラー。
律「私には似合わないよ・・・唯」
私は独り言をつぶやく。
律「唯が巻いてよ・・・。お願いだよ・・・」
私はその場にしゃがみこみ、声にならない声をあげて泣いた。
別れ際に見た唯の泣き顔が、いつまでも私の頭を離れなかった。
おわり
97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/19(水) 00:15:32.27 ID:22LFlz6r0
これで終わりです。こんなSSを読んでくださった方、ありがとうございます
唯「幸せってなんだと思う?」