1: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:33:33.378 ID:VUAS8F9w0.net
―飯屋―
男(食べる物決まったし、注文するか)
男「すみません!」
女店員「……」
男「すみませーん!」
女店員「……」
男「すみませーん!!!」
女店員「……」
6: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:36:30.692 ID:VUAS8F9w0.net
女店員「あ……なんでしょうか」
男「注文お願いします」
女店員「え?」
男「注文をお願いします!!!」
女店員「あ、はい、かしこまりました」
男「えーっと……定食のAセットを……」
男(俺の声、そんなに小さいかな……)
客「……」ジロ…
また別の日――
男「すみません!」
女店員「……」
男「すみませーん!」
女店員「……」
男「すみませーん!!!」
女店員「……あ、はい」
男(まただ……この店では毎回こうなるんだ……)
男(もっと声を張り上げるようにしないと!)
―スタジオ―
プロデューサー「じゃあ、聴かせてくれる?」
男「はいっ!」
プロデューサー(コイツは声は人を魅了させるものを持っているし)
プロデューサー(自作してる曲や詩も悪くない……しかし、どうにも声が小さいんだよな)
プロデューサー(声を張り上げる才能がないとでも言うのか……)
プロデューサー(磨けば光ると思ったが、歌手としては致命的だ……)
男「二つの~灯を~、消した~罪を~♪ あがなうために~♪」
プロデューサー(――お!?)
男「いかがでしたか?」
プロデューサー「ブラボー!」パチパチ
男「!」
プロデューサー「とてもよかったよ!」
プロデューサー「いつもはいくら指摘しても声が小さかったのに、今日はよく声が出ていた!」
プロデューサー「いったいどんな訓練をしたんだね?」
男「訓練だなんて……」
男(……あの子のおかげだ!)
男(きっと彼女は俺に大声出させるために、わざと俺を叫ばせてくれてたんだ!)
―飯屋―
男「すみません!!!」
女店員「……はい」
男「長年貧乏暮らしをしてきたけど……君のおかげで俺、ようやく歌手デビューできそうだよ!」
男「本当にありがとう!」
女店員「……あの、よく聞こえなかったのですが」
男「へ?」
店長「あー、すみませんね、お客さん」
男「店長さん」
店長「今まで黙ってましたが、この子、ある事件でご両親を亡くして以来、難聴になってまして……」
店長「可哀想だからうちで雇ってあげてるんです……」
男「そうだったんですか……」
男(今までのは、俺のためにじゃなく、本当に耳が悪かったのか……)
男「治療はしないんですか?」
店長「手は尽くしたらしいんですが、心因性のものらしくてねえ……」
男「心因性……つまり、事件のショックで?」
店長「ええ……だから無理に治療したらかえって悪化する可能性もあるとか……」
女店員「……」
男(そんな辛い過去があったのか……)
男(事情はどうあれ、彼女が俺のデビューのきっかけになったのは事実……なんとか助けてあげたい)
客「……」ジロ…
―スタジオ―
男「プロデューサー」
プロデューサー「ん?」
男「俺の知り合いに、心からくる病気の子がいるんですが……何とか癒やしてあげたいんです」
男「心を癒やすものといったら、なんですかね?」
プロデューサー「心を癒やすもの? そりゃなんといっても歌だろうさ!」
男「!」
プロデューサー「歌は古代からある娯楽であり、リラックスやストレス解消の手段だ」
プロデューサー「悩んでる人が素晴らしい歌を聞いて立ち直ったなんて事例はいくらでもある」
男「素晴らしい歌……」
プロデューサー「たとえば今の君なら……その子の心を癒やすことも可能かもしれんよ」
男「俺が……あの子を……」
プロデューサー「なんなら、今度のデビュー曲、真っ先に聴かせるのはその子にしたらどうだい?」
男「そうですね……やってみます!」
―飯屋―
男「こんにちは!!!」
女店員「……いらっしゃいませ」
男「突然だけど、今日は君の心を癒やすために、歌を歌いたいんだ。聴いてくれるかい?」
女店員「歌……ですか? かまいませんけど……」
店長「おっ、嬉しいねえ!」
男「では、さっそく歌います! 今いるお客さんもよかったら聴いて下さい!」
客「……」
男「二つの~灯を~、消した~罪を~♪ あがなうために~♪」
男「俺は~今日も~♪ 君のために歌うの~さ~♪」
店長「ほう、いい曲じゃないか」
女店員「!」ピクッ
店長「?」
女店員「んっ……ああっ……あああっ……」
店長「どうしたんだ?」
女店員「この歌を……聴いてたら……」
女店員「私の耳が……まるで、バリケードが取り除かれたように……はっきり聞こえる……」
店長「おおっ! まさか本当に治るなんて……」
女店員「全て……思い出した……」
女店員「あの時、私は物陰に隠れて全てを聞いていた……」
女店員「犯人が暴れる音、お父さんが殴られる音、お母さんが刺される音、全部……」
女店員「私の両親を殺したのは――あなたよっ!!!」
客「……!」ガタッ
男「俺……だと……!?」
店長「なにをいってるんだ? この人は君のために――」
女店員「この声……間違いない!」
女店員「犯人の、人を魅了するようなあの声が恐ろしすぎて、私の耳は機能を失ってしまった」
女店員「だけど今、耳が聞こえるようになって、確信できた!」
女店員「家に押し入ってお父さんとお母さんを殺し、お金を奪って逃げたのは、あなたよっ!!!」
男「!!!」
男「あの家、もう一人……いたのか……」
男「あ、あれは……」
男「仕方なかったんだ……当時、本当に食うに困ってて……」
女店員「人殺しっ! 人殺しぃっ! あなたは人殺しよっ!」
男「うっ、うるさいっ!」ガシッ
女店員「きゃっ!」
男「仕方なかった……仕方なかったんだよっ!」ギュゥ…
女店員「がっ……!」
男「歌手になりたくて……でもなかなかなれなくて……仕方なかったんだよっ!」ギュゥ…
女店員「うぁ、ぁ……」
店長「ひいいい……!」ガタガタ
客「やめんかぁ!」ガシッ
ズダンッ!
男「ぐあっ!?」
客「ひとまず暴行の現行犯で逮捕する。彼女の両親の事件についてもじっくり聞かせてもらおうか」
店長「あなたは……!?」
客「私、こういう者です」パカッ
店長「刑事さん……!?」
客「私は彼女のご両親が亡くなった強盗殺人事件を担当していましてね」
客「この男をずっとマークしていたんです」
客「しかし、どうしても尻尾をつかめず、踏み込んだ捜査ができずにいたんです……」
客「ですが、これでようやく、事件解決に向けて動けそうです!」
男「あううう……」
男「やっと……歌手としてデビューできたのにぃ……」
客「さあ、署まで連行させてもらうぞ」
店長「よろしくお願いします」
男「ま、待ってくれ……少しだけ彼女と話をさせてくれ……」
客「ん?」
男「たしかに……君の両親を殺したのは俺だ……。本当に悪かったと思ってる……」
男「だから贖罪のため、俺は自分の罪をテーマに、さっきの詩を書いたんだ……」
男「それに、君の難聴を治そうと思ったのは……本心なんだ!」
男「俺は君のことが好きで……だから、君のことを助けてあげたいと思ったんだ!」
男「それだけは分かってくれ! こっちを振り向いてくれ!」
女店員「……」
男「無視しないで……ちゃんと謝るからぁ……す、すみません……」
男「すみません!」
女店員「……」
男「すみませーん!」
女店員「……」
男「すみませーん!!!」
女店員「……」
― 終 ―
元スレ
女店員「あ……なんでしょうか」
男「注文お願いします」
女店員「え?」
男「注文をお願いします!!!」
女店員「あ、はい、かしこまりました」
男「えーっと……定食のAセットを……」
男(俺の声、そんなに小さいかな……)
客「……」ジロ…
7: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:39:11.183 ID:VUAS8F9w0.net
また別の日――
男「すみません!」
女店員「……」
男「すみませーん!」
女店員「……」
男「すみませーん!!!」
女店員「……あ、はい」
男(まただ……この店では毎回こうなるんだ……)
男(もっと声を張り上げるようにしないと!)
9: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:42:42.004 ID:VUAS8F9w0.net
―スタジオ―
プロデューサー「じゃあ、聴かせてくれる?」
男「はいっ!」
プロデューサー(コイツは声は人を魅了させるものを持っているし)
プロデューサー(自作してる曲や詩も悪くない……しかし、どうにも声が小さいんだよな)
プロデューサー(声を張り上げる才能がないとでも言うのか……)
プロデューサー(磨けば光ると思ったが、歌手としては致命的だ……)
男「二つの~灯を~、消した~罪を~♪ あがなうために~♪」
プロデューサー(――お!?)
10: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:44:24.546 ID:VUAS8F9w0.net
男「いかがでしたか?」
プロデューサー「ブラボー!」パチパチ
男「!」
プロデューサー「とてもよかったよ!」
プロデューサー「いつもはいくら指摘しても声が小さかったのに、今日はよく声が出ていた!」
プロデューサー「いったいどんな訓練をしたんだね?」
男「訓練だなんて……」
男(……あの子のおかげだ!)
男(きっと彼女は俺に大声出させるために、わざと俺を叫ばせてくれてたんだ!)
12: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:47:28.260 ID:VUAS8F9w0.net
―飯屋―
男「すみません!!!」
女店員「……はい」
男「長年貧乏暮らしをしてきたけど……君のおかげで俺、ようやく歌手デビューできそうだよ!」
男「本当にありがとう!」
女店員「……あの、よく聞こえなかったのですが」
男「へ?」
14: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:50:34.251 ID:VUAS8F9w0.net
店長「あー、すみませんね、お客さん」
男「店長さん」
店長「今まで黙ってましたが、この子、ある事件でご両親を亡くして以来、難聴になってまして……」
店長「可哀想だからうちで雇ってあげてるんです……」
男「そうだったんですか……」
男(今までのは、俺のためにじゃなく、本当に耳が悪かったのか……)
16: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:53:02.090 ID:VUAS8F9w0.net
男「治療はしないんですか?」
店長「手は尽くしたらしいんですが、心因性のものらしくてねえ……」
男「心因性……つまり、事件のショックで?」
店長「ええ……だから無理に治療したらかえって悪化する可能性もあるとか……」
女店員「……」
男(そんな辛い過去があったのか……)
男(事情はどうあれ、彼女が俺のデビューのきっかけになったのは事実……なんとか助けてあげたい)
客「……」ジロ…
18: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:55:28.420 ID:VUAS8F9w0.net
―スタジオ―
男「プロデューサー」
プロデューサー「ん?」
男「俺の知り合いに、心からくる病気の子がいるんですが……何とか癒やしてあげたいんです」
男「心を癒やすものといったら、なんですかね?」
プロデューサー「心を癒やすもの? そりゃなんといっても歌だろうさ!」
男「!」
19: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 19:58:44.759 ID:VUAS8F9w0.net
プロデューサー「歌は古代からある娯楽であり、リラックスやストレス解消の手段だ」
プロデューサー「悩んでる人が素晴らしい歌を聞いて立ち直ったなんて事例はいくらでもある」
男「素晴らしい歌……」
プロデューサー「たとえば今の君なら……その子の心を癒やすことも可能かもしれんよ」
男「俺が……あの子を……」
プロデューサー「なんなら、今度のデビュー曲、真っ先に聴かせるのはその子にしたらどうだい?」
男「そうですね……やってみます!」
21: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:01:20.610 ID:VUAS8F9w0.net
―飯屋―
男「こんにちは!!!」
女店員「……いらっしゃいませ」
男「突然だけど、今日は君の心を癒やすために、歌を歌いたいんだ。聴いてくれるかい?」
女店員「歌……ですか? かまいませんけど……」
店長「おっ、嬉しいねえ!」
男「では、さっそく歌います! 今いるお客さんもよかったら聴いて下さい!」
客「……」
24: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:04:45.978 ID:VUAS8F9w0.net
男「二つの~灯を~、消した~罪を~♪ あがなうために~♪」
男「俺は~今日も~♪ 君のために歌うの~さ~♪」
店長「ほう、いい曲じゃないか」
女店員「!」ピクッ
店長「?」
女店員「んっ……ああっ……あああっ……」
店長「どうしたんだ?」
女店員「この歌を……聴いてたら……」
女店員「私の耳が……まるで、バリケードが取り除かれたように……はっきり聞こえる……」
店長「おおっ! まさか本当に治るなんて……」
26: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:08:04.085 ID:VUAS8F9w0.net
女店員「全て……思い出した……」
女店員「あの時、私は物陰に隠れて全てを聞いていた……」
女店員「犯人が暴れる音、お父さんが殴られる音、お母さんが刺される音、全部……」
女店員「私の両親を殺したのは――あなたよっ!!!」
客「……!」ガタッ
28: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:10:42.121 ID:VUAS8F9w0.net
男「俺……だと……!?」
店長「なにをいってるんだ? この人は君のために――」
女店員「この声……間違いない!」
女店員「犯人の、人を魅了するようなあの声が恐ろしすぎて、私の耳は機能を失ってしまった」
女店員「だけど今、耳が聞こえるようになって、確信できた!」
女店員「家に押し入ってお父さんとお母さんを殺し、お金を奪って逃げたのは、あなたよっ!!!」
男「!!!」
男「あの家、もう一人……いたのか……」
男「あ、あれは……」
男「仕方なかったんだ……当時、本当に食うに困ってて……」
31: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:13:43.485 ID:VUAS8F9w0.net
女店員「人殺しっ! 人殺しぃっ! あなたは人殺しよっ!」
男「うっ、うるさいっ!」ガシッ
女店員「きゃっ!」
男「仕方なかった……仕方なかったんだよっ!」ギュゥ…
女店員「がっ……!」
男「歌手になりたくて……でもなかなかなれなくて……仕方なかったんだよっ!」ギュゥ…
女店員「うぁ、ぁ……」
店長「ひいいい……!」ガタガタ
34: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:17:42.209 ID:VUAS8F9w0.net
客「やめんかぁ!」ガシッ
ズダンッ!
男「ぐあっ!?」
客「ひとまず暴行の現行犯で逮捕する。彼女の両親の事件についてもじっくり聞かせてもらおうか」
店長「あなたは……!?」
客「私、こういう者です」パカッ
店長「刑事さん……!?」
36: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:19:35.556 ID:VUAS8F9w0.net
客「私は彼女のご両親が亡くなった強盗殺人事件を担当していましてね」
客「この男をずっとマークしていたんです」
客「しかし、どうしても尻尾をつかめず、踏み込んだ捜査ができずにいたんです……」
客「ですが、これでようやく、事件解決に向けて動けそうです!」
男「あううう……」
男「やっと……歌手としてデビューできたのにぃ……」
38: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:23:32.661 ID:VUAS8F9w0.net
客「さあ、署まで連行させてもらうぞ」
店長「よろしくお願いします」
男「ま、待ってくれ……少しだけ彼女と話をさせてくれ……」
客「ん?」
男「たしかに……君の両親を殺したのは俺だ……。本当に悪かったと思ってる……」
男「だから贖罪のため、俺は自分の罪をテーマに、さっきの詩を書いたんだ……」
男「それに、君の難聴を治そうと思ったのは……本心なんだ!」
男「俺は君のことが好きで……だから、君のことを助けてあげたいと思ったんだ!」
男「それだけは分かってくれ! こっちを振り向いてくれ!」
女店員「……」
男「無視しないで……ちゃんと謝るからぁ……す、すみません……」
39: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/02/08(金) 20:25:08.194 ID:VUAS8F9w0.net
男「すみません!」
女店員「……」
男「すみませーん!」
女店員「……」
男「すみませーん!!!」
女店員「……」
― 終 ―
男「すみません!」女店員「……」男「すみませーん!」女店員「……」男「すみませーん!!!」女店員「……」