1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 16:56:46.41 ID:VFFiKyTkO
芳佳「きのこは……『きのこの山』はないんですか!?」
坂本「安心しろ、きのこは搬入させていない」
芳佳「なにが安心なんですか! たけのこのみとか正気の沙汰じゃありませんよ!」
坂本「おいおい宮藤、お前まさかきのこ派だったのか?」
芳佳「……っ、今から輸送車をストライカーで追いかければ…!」
坂本「おい、宮藤!」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 17:04:49.28 ID:VFFiKyTkO
芳佳「間に合わなかった……」
坂本「はっはっは。まあ、次はきのこも運んでもらうよう注文しておこう。ほら、たけのこでも食べろ」
芳佳「そんなもの食べられるわけないじゃないですか」
坂本「……何をすねているんだ? そんなにきのこが食べたかった――」
芳佳「私に『たけのこの里』なんてゴミを勧める坂本さんに呆れてるんですよ」
坂本「なに?」
芳佳「あーあ、結構憧れてたんだけどなあ、坂本さんに。でも、所詮はたけのこ土人だったんですね」
坂本「……宮藤、貴様、自分が何を言っているのか分かってるのか?」
芳佳「坂本さんだって、さっき『きのこ派なのか』って言いましたよね。つまり、そういう派閥があるってことは知ってるはずです」
坂本「確かに知ってはいるが、何故たかが菓子の好みごときで他人に蔑視されなければならないんだ」
芳佳「たかが……ですか。ま、どうやら坂本さんはまだまだアマチュアのようですし、今回は許してあげますよ」
坂本「…待て、宮藤!」
芳佳「まだ何か?」
坂本「お前がどうしてそこまでこだわるのかは知らんが、これほど言われては黙ってられん! 私は今から『たけのこ』派への転向を宣言する!」
芳佳「へえ……せいぜい手をチョコレートまみれにしながら、生ゴミを貪っていたらいいんじゃないですか」
―その日の夜―
坂本「やはりたけのこの里は美味いな」
ミーナ「なあに、それ? 扶桑のお菓子?」
坂本「ああ。たけのこの里と言って――」
坂本(待てよ……そうか、こうして何も知らない者にたけのこを食べさせ同志を増やしていけば……)
坂本「まあなんだ、とりあえず食べてみろ」
ミーナ「じゃあ、ひとつもらおうかしら」
坂本「…どうだ?」
ミーナ「もぐもぐ……うん、美味しい。ラングドシャみたいだけど、それより食べやすいわね。形もかわいいし」
坂本「もし気に入ったら、私の部屋にたくさんあるから、5箱でも10箱でも持っていってくれ!」
ミーナ「そんなに食べられないわよ」
坂本「そ、そうか」
坂本(みたか、宮藤! きのこの無いお前には仲間を増やすことはできん!)
坂本(私の……勝ちだ!)
ミーナ「でも、この前宮藤さんに貰った『きのこの山』もおいしかったわね」
坂本「!?」
ミーナ「美緒なら知ってるでしょ? これと似た、きのこの形のお菓子。向こうはビスケットみたいな生地だったけど……」
坂本「そんな……」
ミーナ「宮藤さんにたくさん貰っちゃったから、まだ食べ終わっていないの。たまにはクッキーも新鮮ね」
坂本「ミーナ……私は…」
ミーナ「美緒? どこに行くの?」
坂本「バカな……! 私がきのこを仕入れたことなど一度も……」
坂本「――まさか」
坂本「……そうだ、土方曹長に繋いでくれ」
坂本「…土方か? いや、他愛の無い話なんだが」
坂本「宮藤に『きのこの山』という菓子を届けるよう頼まれなかったか?」
坂本「なに、宮藤の家族から頼まれて?」
坂本「……ふむ、ひと月に50箱…」
坂本「……ああ、なるほどな。それで、今朝の輸送車には積まれていなかったのか」
坂本「それだけだ。手間をかけさせたな」
坂本「……くそっ! 家族や土方を経由して個人的に扶桑から届けさせるなど…卑劣な!」
坂本「私がたけのこ派であることを警戒して……いや、見越していたのか?」
坂本「宮藤の実家の『きのこ資金』が切れたおかげで、今回は送られなかったようだが……」
坂本「いや、こうしてはいられない。すぐに動かないと」
「無駄ですよ」
坂本「!」
芳佳「無駄無駄……501のみんな、いえ、既にこの基地の全員がきのこ派に属しています。あなた以外はね」
坂本「宮藤ィ!」
芳佳「まったく、たけのこ厨は野蛮で困りますね。ちょっと落ち着いて下さいよ」
リーネ「芳佳ちゃん、どうしたの?」
ペリーヌ「あなたたちがどうしてもというから、お茶会について来て差し上げてるんですのよ」
芳佳「ごめんね。はやくきのこ食べに戻ろうか」
リーネ「うん!」
芳佳「……わかりましたか? 最初から、きのこに張り合おうなんて考えが間違っていたんです」
芳佳「私の部屋には、きのこがまだ20箱ほどあります。そして坂本さんはこのザマ……もっとも、どれだけ量を稼ごうが『質』が違いますからね。1:100でも、たけのこはきのこの足元にも及ばない」
坂本「う……」ズシャアアア ガクッ
芳佳「あれ? チョコよりも地べたを舐めるのが好きだったんですか? とっても似合ってますよ、坂本さん」
芳佳「じゃあ、私はこれで」
坂本「……くっ、扶桑軍人が、こんなことで…」
坂本「泣くなど……」
坂本「私は…何もできないのか……!」
坂本「邪知暴虐の宮藤に、一矢報いることすら……」
坂本「……無力だ…」
坂本「…ふふ、いっそ、堕ちてしまった方がどれだけ楽だろうか」
坂本「そうだ……きのこに抗う必要なんてない。こんなに辛い思いをして、たけのこが私に何を与えてくれるというんだ?」
坂本「……もういい。もう止めにしよう。私は――」
「立ってクレ、少佐」
「坂本少佐!」
坂本「……誰だ…?」
エイラ「まだ、私たちがいる。宮藤を倒す剣が、ここにあル!」
サーニャ「エイラは、芳佳ちゃんの『きのこ』から逃げ延びた数少ないうちの二人です」
坂本「お前たち……なぜだ…?」
エイラ「あれは、私の口には合わなかっタ。それなのにアイツは、無理やり食べさせようとしてくるんダ」
サーニャ「私は美味しいと思ったけど、エイラがあんまりきのこを嫌がるから……」
坂本「そうか……だが、私はもう戦えない。どんな剣があろうとも、私にはそれを振るう腕が無い」
エイラ「違うナ」
坂本「なに?」
エイラ「少佐は逃げてるんダ。今の少佐は、宮藤の圧倒的きのこの前に、しっぽを巻いて怯える負け犬ダ!」
サーニャ「エイラ!」
エイラ「どうしてたけのこを信じてやらないんダ! まだ何もしていないじゃないカ! 少佐が一番苦手なことは、あきらめることだロ!」
坂本「……!」
エイラ「……少佐なら、絶対に宮藤を止められル。きっと、きのことたけのこが共に暮らせる世界を作れル」
サーニャ(なにこれ……)
坂本「……ふ、負け犬か…。言ってくれるな……!」
エイラ「立て、立つんダ坂本!」
坂本「…お前たちがいる限り、いや、きのこに抗うものが1人でもいる限り、もう私は倒れない……きのこを倒すその時まで!」
エイラ「少佐!」
サーニャ「ねえ……ここじゃうるさいし、部屋に戻ったほうが……」
エイラ「…それもそうだナ。少佐もついてきてくレ」
坂本「――して、エイラ。何か策はあるのか?」
エイラ「策ってほどのもんじゃないけド、ひとつ気がついたことがあル」
坂本「ふむ」
エイラ「宮藤の『たけのこ嫌い』は、まずいから食べられないとか、アレルギーだからとかじゃない、『こたわり』ダ。それも、とびきり強いヤツだナ」
エイラ「こういうのを打ち崩すためにとれる手段はただ一つ、宮藤にたけのこを食べさせてやることダ。たけのこを食べてしまったという『敗北感』を植え付け、あわよくばその美味しさに気付かせル」
坂本「なるほど。で、どうやって宮藤にたけのこを食べさせるんだ?」
エイラ「……えーと、それはこれから考えていこうト…」
坂本「……」
エイラ「…そうだ、遠くからパチンコで狙うとカ!」
坂本「吐き出すだろうな」
エイラ「……じゃあ、きのこにこっそり紛れ込ませるってのはどうダ?」
坂本「宮藤なら気付くだろう」
エイラ「それなら……」
坂本「……やはり、接近戦しかないようだな」
エイラ「接近戦…って、直接宮藤の口に放り込むつもりカ!?」
坂本「これが、今私にできる最も確実な方法だろう」
エイラ「無茶だ、そんなノ!」
坂本「百も承知だ。それに、私を再び焚き付けたのはエイラ、お前じゃないか」
エイラ「しかシ……」
坂本「大丈夫、私は1人ではない。エイラ、そしてサーニャ――」
サーニャ「くー」
エイラ「サーニャ寝てるから、静かにナ」
坂本「……とにかく、やってみなければ分かるまい。いくぞ!」
エイラ「今からかヨ!」
坂本「宮藤は、私が絶望の淵へ追いやられていると思っている。そこを狙うしかない」
エイラ「……やれやれダ」
―芳佳たちの部屋―
コンコン
芳佳「!」
ペリーヌ「こんな時間に、どなたですの?」
リーネ「私が出るよ」
リーネ「はーい」
坂本「宮藤ぃ!」
ペリーヌ「しょ、少佐!?」
芳佳「やっときのこに下る気になりましたか」
坂本「私は気付いた! 確かにお前の『きのこ』は完璧かもしれない。しかし、お前は善ではない! 悪しき者が『きのこ』を統べることはできん!」
芳佳「血迷いましたか、坂本さん! いいでしょう! その貧弱なたけのこで、我がきのこに抗ってみせて下さい!」
坂本「『我が』きのこだと!? よかろう、清めてやるその穢れたる欲望!」
―数分後―
坂本「はあ……はあ…」
芳佳「へえ、たけのこの割にやるじゃないですか。見直しましたよ」
エイラ「少佐ぁ!」
リーネ「芳佳ちゃんの邪魔はさせない…!」
エイラ「くっ……」
芳佳「そろそろ終わりにしましょう。体中の穴という穴にきのこを詰め込んであげます」
坂本「……」
芳佳「……っと、近づいてうっかりたけのこなんか食べた日には、首を吊るしかなくなってしまいますからね。ペリーヌさん」
ペリーヌ「ひっ」
芳佳「坂本さんの体に、このきのこを詰めてあげて下さいよ。今なら抵抗されませんよ?」
坂本「ペ…リ……ヌ…」
ペリーヌ「少佐…」
芳佳「ふふふ……あーっはっはっはぁ! さあ、ペリーヌさん! このきのこを受け取って下さい……!」
ペリーヌ「……ごめんなさい…」
坂本「く……」
ペリーヌ「……宮藤さん!」
芳佳「!? どういうつもりですか!」
ペリーヌ「私は……私は、坂本少佐をお慕いしています。少佐の辛そうな顔を、少しでも笑顔にできるなら……!」
芳佳「は、離せ!」
ペリーヌ「少佐、今です! 宮藤さんに、たけのこを!」
坂本「ペリーヌ……! その想い、確かに受け取ったぞ! そして!」
芳佳「よ、よせ。そうだ、きのこの半分をお前にやろう。それで手を打たないか」
坂本「これが、お前を滅ぼす『私たちの』たけのこだ! 食らえぇ、宮藤ぃぃぃぃぃぃっ!」
芳佳「うわぁぁぁーっ!」
芳佳「もぐ……くそっ、この私がたけのこを口にするなど……」
芳佳「……なんだ、これは?」
芳佳「――涙? どうして私が泣いてるの…!?」
芳佳「……ああ、懐かしいなあ。たけのこの味だ。しっとりさくさくで、チョコもまんべんなくかかってて…」
芳佳「そういえば小さい頃、おばあちゃんが買ってきてくれたたけのこが嫌で、困らせたりしちゃったなあ」
芳佳「おばあちゃん、ちょっと寂しそうな顔してたっけ。こんなに美味しいのに……」
芳佳「…っ、くぅ…」
坂本「宮藤」
芳佳「坂本…さん……」
坂本「お前がきのこに注いだ愛情は、決して間違いなんかじゃない。ただ、何かを称えるために別の何かを貶めるのは、とても悲しいことなんだ」
芳佳「…はい……」
坂本「誰しも好き嫌いというのはある。しかし、自分が嫌いな何かは、他の誰かが好きなものかもしれないんだ。分かるな?」
芳佳「はい……!」
坂本「よし、いい返事だ! それじゃあ、今度は私の部屋で二次会といくぞ!」
芳佳「でも、私は……」
坂本「何を言っている。チョコレートを愛す者同士、そこではいかなる障壁も消え去るのみだ! ありったけのきのこを持って、私について――」
芳佳「……うわぁぁん! 坂本さぁん…!」
エイラ「終わったみたいだナ、もぐもぐ」
リーネ「むぐ……さすがでした、中尉」
エイラ「な、なんだヨ。照れるナ……」
リーネ「…ペリーヌさん、どうかしましたか?」
ペリーヌ「……少佐が笑って下さったのは、喜ばしいことですわ。でも、どうしてあの豆狸がいつまでもくっついているんですの!?
リーネ「えっ」
坂本「おい宮藤、そろそろ離れて――」
ペリーヌ「少佐ぁ! そんな豆狸よりこっちを…!」
坂本「ぐふっ」
エイラ「……んじゃ、私は寝るからナ。後は頼んダ」
リーネ「えっ」
リーネ「えっ」
―後日―
リーネ「絶対にスコーンの方が美味しいです!」
シャーリー「ま、ブリタニアのヤツじゃあビスケットの美味さは分かんねーのも仕方ないな」
坂本「今度は何の騒ぎだ!」
ミーナ「スコーンとビスケットのどちらが美味しいか、ですって。私もそれぞれ2人に作ってもらったんだけど、優劣つけがたくて」
坂本「……ミーナ、太ったな」
ミーナ「えっ」
ミーナ「えっ?」
終わり
元スレ
芳佳「間に合わなかった……」
坂本「はっはっは。まあ、次はきのこも運んでもらうよう注文しておこう。ほら、たけのこでも食べろ」
芳佳「そんなもの食べられるわけないじゃないですか」
坂本「……何をすねているんだ? そんなにきのこが食べたかった――」
芳佳「私に『たけのこの里』なんてゴミを勧める坂本さんに呆れてるんですよ」
坂本「なに?」
芳佳「あーあ、結構憧れてたんだけどなあ、坂本さんに。でも、所詮はたけのこ土人だったんですね」
坂本「……宮藤、貴様、自分が何を言っているのか分かってるのか?」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 17:15:19.44 ID:VFFiKyTkO
芳佳「坂本さんだって、さっき『きのこ派なのか』って言いましたよね。つまり、そういう派閥があるってことは知ってるはずです」
坂本「確かに知ってはいるが、何故たかが菓子の好みごときで他人に蔑視されなければならないんだ」
芳佳「たかが……ですか。ま、どうやら坂本さんはまだまだアマチュアのようですし、今回は許してあげますよ」
坂本「…待て、宮藤!」
芳佳「まだ何か?」
坂本「お前がどうしてそこまでこだわるのかは知らんが、これほど言われては黙ってられん! 私は今から『たけのこ』派への転向を宣言する!」
芳佳「へえ……せいぜい手をチョコレートまみれにしながら、生ゴミを貪っていたらいいんじゃないですか」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 17:24:46.38 ID:VFFiKyTkO
―その日の夜―
坂本「やはりたけのこの里は美味いな」
ミーナ「なあに、それ? 扶桑のお菓子?」
坂本「ああ。たけのこの里と言って――」
坂本(待てよ……そうか、こうして何も知らない者にたけのこを食べさせ同志を増やしていけば……)
坂本「まあなんだ、とりあえず食べてみろ」
ミーナ「じゃあ、ひとつもらおうかしら」
坂本「…どうだ?」
ミーナ「もぐもぐ……うん、美味しい。ラングドシャみたいだけど、それより食べやすいわね。形もかわいいし」
坂本「もし気に入ったら、私の部屋にたくさんあるから、5箱でも10箱でも持っていってくれ!」
ミーナ「そんなに食べられないわよ」
坂本「そ、そうか」
坂本(みたか、宮藤! きのこの無いお前には仲間を増やすことはできん!)
坂本(私の……勝ちだ!)
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 17:32:22.74 ID:VFFiKyTkO
ミーナ「でも、この前宮藤さんに貰った『きのこの山』もおいしかったわね」
坂本「!?」
ミーナ「美緒なら知ってるでしょ? これと似た、きのこの形のお菓子。向こうはビスケットみたいな生地だったけど……」
坂本「そんな……」
ミーナ「宮藤さんにたくさん貰っちゃったから、まだ食べ終わっていないの。たまにはクッキーも新鮮ね」
坂本「ミーナ……私は…」
ミーナ「美緒? どこに行くの?」
坂本「バカな……! 私がきのこを仕入れたことなど一度も……」
坂本「――まさか」
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 17:43:55.30 ID:VFFiKyTkO
坂本「……そうだ、土方曹長に繋いでくれ」
坂本「…土方か? いや、他愛の無い話なんだが」
坂本「宮藤に『きのこの山』という菓子を届けるよう頼まれなかったか?」
坂本「なに、宮藤の家族から頼まれて?」
坂本「……ふむ、ひと月に50箱…」
坂本「……ああ、なるほどな。それで、今朝の輸送車には積まれていなかったのか」
坂本「それだけだ。手間をかけさせたな」
坂本「……くそっ! 家族や土方を経由して個人的に扶桑から届けさせるなど…卑劣な!」
坂本「私がたけのこ派であることを警戒して……いや、見越していたのか?」
坂本「宮藤の実家の『きのこ資金』が切れたおかげで、今回は送られなかったようだが……」
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 18:01:00.92 ID:VFFiKyTkO
坂本「いや、こうしてはいられない。すぐに動かないと」
「無駄ですよ」
坂本「!」
芳佳「無駄無駄……501のみんな、いえ、既にこの基地の全員がきのこ派に属しています。あなた以外はね」
坂本「宮藤ィ!」
芳佳「まったく、たけのこ厨は野蛮で困りますね。ちょっと落ち着いて下さいよ」
リーネ「芳佳ちゃん、どうしたの?」
ペリーヌ「あなたたちがどうしてもというから、お茶会について来て差し上げてるんですのよ」
芳佳「ごめんね。はやくきのこ食べに戻ろうか」
リーネ「うん!」
芳佳「……わかりましたか? 最初から、きのこに張り合おうなんて考えが間違っていたんです」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 18:06:24.80 ID:VFFiKyTkO
芳佳「私の部屋には、きのこがまだ20箱ほどあります。そして坂本さんはこのザマ……もっとも、どれだけ量を稼ごうが『質』が違いますからね。1:100でも、たけのこはきのこの足元にも及ばない」
坂本「う……」ズシャアアア ガクッ
芳佳「あれ? チョコよりも地べたを舐めるのが好きだったんですか? とっても似合ってますよ、坂本さん」
芳佳「じゃあ、私はこれで」
坂本「……くっ、扶桑軍人が、こんなことで…」
坂本「泣くなど……」
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 18:09:24.37 ID:VFFiKyTkO
坂本「私は…何もできないのか……!」
坂本「邪知暴虐の宮藤に、一矢報いることすら……」
坂本「……無力だ…」
坂本「…ふふ、いっそ、堕ちてしまった方がどれだけ楽だろうか」
坂本「そうだ……きのこに抗う必要なんてない。こんなに辛い思いをして、たけのこが私に何を与えてくれるというんだ?」
坂本「……もういい。もう止めにしよう。私は――」
「立ってクレ、少佐」
「坂本少佐!」
66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 18:23:26.83 ID:VFFiKyTkO
坂本「……誰だ…?」
エイラ「まだ、私たちがいる。宮藤を倒す剣が、ここにあル!」
サーニャ「エイラは、芳佳ちゃんの『きのこ』から逃げ延びた数少ないうちの二人です」
坂本「お前たち……なぜだ…?」
エイラ「あれは、私の口には合わなかっタ。それなのにアイツは、無理やり食べさせようとしてくるんダ」
サーニャ「私は美味しいと思ったけど、エイラがあんまりきのこを嫌がるから……」
坂本「そうか……だが、私はもう戦えない。どんな剣があろうとも、私にはそれを振るう腕が無い」
エイラ「違うナ」
坂本「なに?」
エイラ「少佐は逃げてるんダ。今の少佐は、宮藤の圧倒的きのこの前に、しっぽを巻いて怯える負け犬ダ!」
サーニャ「エイラ!」
76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 18:34:07.16 ID:VFFiKyTkO
エイラ「どうしてたけのこを信じてやらないんダ! まだ何もしていないじゃないカ! 少佐が一番苦手なことは、あきらめることだロ!」
坂本「……!」
エイラ「……少佐なら、絶対に宮藤を止められル。きっと、きのことたけのこが共に暮らせる世界を作れル」
サーニャ(なにこれ……)
坂本「……ふ、負け犬か…。言ってくれるな……!」
エイラ「立て、立つんダ坂本!」
坂本「…お前たちがいる限り、いや、きのこに抗うものが1人でもいる限り、もう私は倒れない……きのこを倒すその時まで!」
エイラ「少佐!」
サーニャ「ねえ……ここじゃうるさいし、部屋に戻ったほうが……」
エイラ「…それもそうだナ。少佐もついてきてくレ」
95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 18:55:14.09 ID:VFFiKyTkO
坂本「――して、エイラ。何か策はあるのか?」
エイラ「策ってほどのもんじゃないけド、ひとつ気がついたことがあル」
坂本「ふむ」
エイラ「宮藤の『たけのこ嫌い』は、まずいから食べられないとか、アレルギーだからとかじゃない、『こたわり』ダ。それも、とびきり強いヤツだナ」
エイラ「こういうのを打ち崩すためにとれる手段はただ一つ、宮藤にたけのこを食べさせてやることダ。たけのこを食べてしまったという『敗北感』を植え付け、あわよくばその美味しさに気付かせル」
坂本「なるほど。で、どうやって宮藤にたけのこを食べさせるんだ?」
エイラ「……えーと、それはこれから考えていこうト…」
坂本「……」
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 19:07:15.83 ID:VFFiKyTkO
エイラ「…そうだ、遠くからパチンコで狙うとカ!」
坂本「吐き出すだろうな」
エイラ「……じゃあ、きのこにこっそり紛れ込ませるってのはどうダ?」
坂本「宮藤なら気付くだろう」
エイラ「それなら……」
坂本「……やはり、接近戦しかないようだな」
エイラ「接近戦…って、直接宮藤の口に放り込むつもりカ!?」
坂本「これが、今私にできる最も確実な方法だろう」
エイラ「無茶だ、そんなノ!」
坂本「百も承知だ。それに、私を再び焚き付けたのはエイラ、お前じゃないか」
エイラ「しかシ……」
109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 19:19:54.90 ID:VFFiKyTkO
坂本「大丈夫、私は1人ではない。エイラ、そしてサーニャ――」
サーニャ「くー」
エイラ「サーニャ寝てるから、静かにナ」
坂本「……とにかく、やってみなければ分かるまい。いくぞ!」
エイラ「今からかヨ!」
坂本「宮藤は、私が絶望の淵へ追いやられていると思っている。そこを狙うしかない」
エイラ「……やれやれダ」
112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 19:31:21.01 ID:VFFiKyTkO
―芳佳たちの部屋―
コンコン
芳佳「!」
ペリーヌ「こんな時間に、どなたですの?」
リーネ「私が出るよ」
リーネ「はーい」
坂本「宮藤ぃ!」
ペリーヌ「しょ、少佐!?」
芳佳「やっときのこに下る気になりましたか」
坂本「私は気付いた! 確かにお前の『きのこ』は完璧かもしれない。しかし、お前は善ではない! 悪しき者が『きのこ』を統べることはできん!」
芳佳「血迷いましたか、坂本さん! いいでしょう! その貧弱なたけのこで、我がきのこに抗ってみせて下さい!」
坂本「『我が』きのこだと!? よかろう、清めてやるその穢れたる欲望!」
116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 19:40:49.74 ID:VFFiKyTkO
―数分後―
坂本「はあ……はあ…」
芳佳「へえ、たけのこの割にやるじゃないですか。見直しましたよ」
エイラ「少佐ぁ!」
リーネ「芳佳ちゃんの邪魔はさせない…!」
エイラ「くっ……」
芳佳「そろそろ終わりにしましょう。体中の穴という穴にきのこを詰め込んであげます」
坂本「……」
芳佳「……っと、近づいてうっかりたけのこなんか食べた日には、首を吊るしかなくなってしまいますからね。ペリーヌさん」
ペリーヌ「ひっ」
117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 19:42:25.19 ID:VFFiKyTkO
芳佳「坂本さんの体に、このきのこを詰めてあげて下さいよ。今なら抵抗されませんよ?」
坂本「ペ…リ……ヌ…」
ペリーヌ「少佐…」
芳佳「ふふふ……あーっはっはっはぁ! さあ、ペリーヌさん! このきのこを受け取って下さい……!」
ペリーヌ「……ごめんなさい…」
坂本「く……」
ペリーヌ「……宮藤さん!」
120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 19:51:29.58 ID:VFFiKyTkO
芳佳「!? どういうつもりですか!」
ペリーヌ「私は……私は、坂本少佐をお慕いしています。少佐の辛そうな顔を、少しでも笑顔にできるなら……!」
芳佳「は、離せ!」
ペリーヌ「少佐、今です! 宮藤さんに、たけのこを!」
坂本「ペリーヌ……! その想い、確かに受け取ったぞ! そして!」
芳佳「よ、よせ。そうだ、きのこの半分をお前にやろう。それで手を打たないか」
坂本「これが、お前を滅ぼす『私たちの』たけのこだ! 食らえぇ、宮藤ぃぃぃぃぃぃっ!」
芳佳「うわぁぁぁーっ!」
128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 20:02:56.82 ID:VFFiKyTkO
芳佳「もぐ……くそっ、この私がたけのこを口にするなど……」
芳佳「……なんだ、これは?」
芳佳「――涙? どうして私が泣いてるの…!?」
芳佳「……ああ、懐かしいなあ。たけのこの味だ。しっとりさくさくで、チョコもまんべんなくかかってて…」
芳佳「そういえば小さい頃、おばあちゃんが買ってきてくれたたけのこが嫌で、困らせたりしちゃったなあ」
芳佳「おばあちゃん、ちょっと寂しそうな顔してたっけ。こんなに美味しいのに……」
芳佳「…っ、くぅ…」
坂本「宮藤」
芳佳「坂本…さん……」
135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 20:09:28.15 ID:VFFiKyTkO
坂本「お前がきのこに注いだ愛情は、決して間違いなんかじゃない。ただ、何かを称えるために別の何かを貶めるのは、とても悲しいことなんだ」
芳佳「…はい……」
坂本「誰しも好き嫌いというのはある。しかし、自分が嫌いな何かは、他の誰かが好きなものかもしれないんだ。分かるな?」
芳佳「はい……!」
坂本「よし、いい返事だ! それじゃあ、今度は私の部屋で二次会といくぞ!」
芳佳「でも、私は……」
坂本「何を言っている。チョコレートを愛す者同士、そこではいかなる障壁も消え去るのみだ! ありったけのきのこを持って、私について――」
芳佳「……うわぁぁん! 坂本さぁん…!」
138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 20:16:55.53 ID:VFFiKyTkO
エイラ「終わったみたいだナ、もぐもぐ」
リーネ「むぐ……さすがでした、中尉」
エイラ「な、なんだヨ。照れるナ……」
リーネ「…ペリーヌさん、どうかしましたか?」
ペリーヌ「……少佐が笑って下さったのは、喜ばしいことですわ。でも、どうしてあの豆狸がいつまでもくっついているんですの!?
リーネ「えっ」
坂本「おい宮藤、そろそろ離れて――」
ペリーヌ「少佐ぁ! そんな豆狸よりこっちを…!」
坂本「ぐふっ」
エイラ「……んじゃ、私は寝るからナ。後は頼んダ」
リーネ「えっ」
リーネ「えっ」
139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/08/21(日) 20:24:41.56 ID:VFFiKyTkO
―後日―
リーネ「絶対にスコーンの方が美味しいです!」
シャーリー「ま、ブリタニアのヤツじゃあビスケットの美味さは分かんねーのも仕方ないな」
坂本「今度は何の騒ぎだ!」
ミーナ「スコーンとビスケットのどちらが美味しいか、ですって。私もそれぞれ2人に作ってもらったんだけど、優劣つけがたくて」
坂本「……ミーナ、太ったな」
ミーナ「えっ」
ミーナ「えっ?」
終わり
芳佳「配給物資が『たけのこの里』…!?」坂本「そうだ。不満か?」