1: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:16:29.96 ID:Tzi0RoYe.net
歩夢「ゆーうちゃん」
侑「もう、なあに?」
歩夢「えへへ、侑ちゃんっていい名前だなって」
侑「いつも呼んでるじゃん。どうしたの急に」
歩夢「うーん、なんとなくそう思ったの」
侑「変な歩夢」
歩夢「そんなことないよお」
8: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:20:09.14 ID:Tzi0RoYe.net
侑「歩夢だって良い名前だと思うよ」
歩夢「も、もう!どうしたの急に」
侑「なんとなくそう思ったの」
歩夢「それさっきの私と同じじゃない」
侑「たはは。じゃあ真面目に答えるとですね」
侑「まず『あゆ』って音の響きが、すごく女の子っぽくて可愛い」
侑「そこに『む』が付くことで、そこに柔らかさが出てる」
侑「漢字も歩く夢と書いて『歩夢』」
侑「前向きな言葉でとっても素敵な名前じゃん」
歩夢「うう…。なんか改めて褒められると照れちゃうよ…」
侑「ほんと、歩夢が『あゆむ』で良かった」
侑「おじさんとおばさんに感謝だよ」
歩夢「ふふ、お父さんとお母さんに伝えておくね」
歩夢「じゃあ、今度はわたしの番」
侑「お?」
歩夢「『ゆう』ちゃんの名前呼んでると、なんだか少しほっこりするの」
歩夢「漢字はにんべんに有るって書くでしょ?」
歩夢「この字が持ってる意味はよく知らないんだけど、侑ちゃんの隣には必ず誰かがいるのかなーって思ったの」
歩夢「その誰かが私だったらいいな、なんてこないだ考えてた」
侑「あはは。それ名前を褒めてるんじゃなくて歩夢の願望じゃん」
歩夢「いいの!私はこう思ったの!」
侑「ううん、嬉しいよ」
侑「どんなことがあっても、歩夢は私の隣にいてくれるんだね」
歩夢「うん。侑ちゃんがいやだ、って言っても一緒にいたい」
侑「歩夢のそういうとこは昔から変わらないなあ」
歩夢「え?」
侑「私への気持ちを素直に伝えてくれるとこ」
歩夢「そ、そうかな?」
侑「だってあの時も、私だけの侑ちゃんで居てって言ってきたじゃん」
歩夢「あ、あれは!違うの!」
歩夢「あれはいろんな不安な重なって、つい出ちゃったの!」
侑「今はそういう気持ちは無いの?」
歩夢「無い…ことは無いけど……」
歩夢「でも、わがまま言って侑ちゃんを困らせた自分が恥ずかしいって思ったし」
歩夢「今、こうして隣にいてくれるから大丈夫」
侑「そっかあ。わがままな歩夢も可愛いって言ったのになあ」
歩夢「そういう私のほうが好き?」
侑「どちらが好きとかは無いけど」
侑「こうして歩夢が大人になってくのが、ちょっぴり寂しいなあ」
歩夢「あはは、どっちがわがままなのか分からなくなっちゃったね」
侑「私だって歩夢にわがまま言いたい時あるんだからね?」
歩夢「ふふ、甘えんぼ侑ちゃん可愛い」
侑「違うよ。可愛いのは歩夢」
歩夢「知ってる。良いんだよ?私に甘えても」
侑「こーら。あまり私をからかわないの」
歩夢「強がる侑ちゃんも可愛いよ」
侑「つ、強がってないよ!っていうか、そういう台詞言っていいのは私!」
歩夢「あはははは!」
侑「むぅ…。いつの間にそんなに強くなったの…?」
───
歩夢「静かだね」
侑「そうだねえ」
歩夢「同好会がいつも賑やかだから」
歩夢「こうしてお昼から2人でお部屋でごろごろするの久しぶりだね」
侑「そうだねえ」
歩夢「いつの間にか、こういう時間減っちゃってたね」
侑「そうだねえ」
歩夢「──」
歩夢「侑ちゃんはおばかさんだね」
侑「そうだねえ」
歩夢「ちょっとぉ。さっきから適当に返事してるでしょ」
侑「バレた?」
歩夢「バレバレです」
侑「いやあ、歩夢と居ると落ち着くから意識がぼーっとしてきてね」
歩夢「眠いの?」
侑「うーん、それもちょっとあるかも」
侑「音楽科の勉強や作曲であんまり寝ふぇはいはは…」フワーア
歩夢「そんなに眠いなら、私がひざまくらしてあげよっか?」
侑「歩夢のひざまくら!?むしろ、目が覚めたよ!」
歩夢「ど、どういうこと?」
侑「歩夢が私にひざまくらしてくれるなんて一大ニュースだよ」
歩夢「そんなにおかしかった?」
侑「違うよ。びっくりしただけ」
侑「あれかな?歩夢は母性に目覚めたのかな?」
歩夢「それは分からないけど…」
歩夢「でも侑ちゃんの目が覚めたのなら、ひざまくらは要らないね」
侑「あっ、急に眠気が…」
侑「これは可愛い幼なじみのひざまくらを借りないといけないなあ」
歩夢「もう、侑ちゃんたら調子良いんだから」
───
侑「あ~、幸せ~」
侑「ひざまくらってこんなに気持ちいいんだねえ」
歩夢「侑ちゃんにするの初めてだから、まだ少し緊張しちゃうな」
侑「その割には太ももはぷにぷにだけど?」プニプニ
歩夢「もう!セクハラだよ!」
侑「良いじゃん、幼なじみなんだし」
歩夢「うう、こういうことしていいのは私にだけだからね」
侑「当たり前だよ。歩夢にだからできるんだよ」
歩夢「……///」
侑「おや、どうしましたか歩夢おばあさん?」
歩夢「私まだ高校生だよ?」
侑「いやあ、たとえばだよ?」
侑「おばあさんになったらこの東京を離れて、2人とも田舎に住むとするじゃん」
侑「そうしたら毎日のように歩夢の家に行って──」
侑「緑に囲まれた景色の中、陽の当たる縁側で、歩夢にひざまくらしてもらう余生を過ごしたいな──とか想像しちゃってさ」
歩夢「侑ちゃんは想像力豊かだね」
侑「あはは。そんな絵に書いたような田舎があるのか分からないけどね」
侑「でも、歩夢とはそれくらいながーい付き合いでいたいなあってこと」
歩夢「うん。私も」
───
歩夢「…………」
侑「…………」
歩夢「………」ナデナデ
侑「……歩夢?」
歩夢「なあに?」
侑「どうして私の頭を撫でてるのかな?」
歩夢「侑ちゃん、可愛いなって」
侑「歩夢の方がかわいいよ」
歩夢「もう、それ言えばいいって思ってない?」
侑「そんな事ないよ。本当のことなんだから」
歩夢「む~、侑ちゃんだって可愛いのに」
侑「歩夢には負けるよ」
歩夢「私の言葉、信じられない?」
侑「ううん。自分に自信が無いだけ」
歩夢「自分に自信がない人が、そんなに人に可愛いって言えるかな?」
侑「あはは、なんかやけに食い下がるね」
歩夢「だって、侑ちゃんが可愛いのは本当だもん」
侑「そっか。歩夢がそこまで言ってくれるなら、そうなんだろうね」
歩夢「うん。そういう素直な侑ちゃんのほうが好き」
侑「あー、ほんといつの間にそんなに歩夢は強くなったのかなあ」
歩夢(侑ちゃんにドキドキさせられてばかりじゃ悔しいからね)
歩夢(私だって侑ちゃんを照れさせたいんだよ?)
───
侑「今さらだけど、私の頭おもたくない?」
歩夢「うん。ちょうどいい重さ」
歩夢「なんだか心地いい重さなの」
侑「どういう感じ?」
歩夢「ああ、侑ちゃんが今ここにいるんだーって感じ」
侑「私がここにいるのは当たり前じゃん」
歩夢「そうなんだけど、こう…侑ちゃんの命を感じるの!」
侑「急に重たい話になったね…」
歩夢「うう…侑ちゃんなら分かってくれると思ったのにぃ」
侑「命とか言うなら、もっと分かりやすいものがあるじゃん」
歩夢「なに?」
侑「歩夢、手を貸して」
歩夢「うん」
侑「それっ」グッ
歩夢「え?え!?侑ちゃん…!?」
侑「ほら、こうやって私の左胸に手を当ててると伝わってくるでしょ?」
侑「私の心臓の鼓動が」
歩夢「う、うん…///」
歩夢「侑ちゃんの心臓、動いてる」
侑「音楽科に入ってから音とかビートに興味を持ってさ」
侑「人間って声や手を叩いたりする以外にも、こうやって音を出せる場所を持ってるんだなーって」
歩夢「ふふ、なんか侑ちゃんのほうが私より大きい話してる」
侑「歩夢が最初に命って言い出したんだよ?」
歩夢「そうだね。けど──」
歩夢「この話の重さも心地いい」
侑「小さい頃じゃ、こんな話は絶対してなかっただろうね」
歩夢「私たち、いつの間にか大人になっていってるんだね」
侑「胸も大人になったよ」
歩夢「もう!せっかく意識しないようにしてたのに!台無しだよ!」
侑「ごめんごめん!」
侑「真面目な話もいいけど、やっぱり歩夢とはもっと他愛ない話がしたくてさ」
侑「心臓とか言ったくせに、自分で耐えきれなくなっちゃった」
歩夢「もう…。けど、そういう侑ちゃんも好き」
侑「もっと好きって言ってくれていいんだよ?」
歩夢「調子に乗らないの」メッ
───
侑「…………」
歩夢「…………」ナデナデ
侑「…………」
歩夢「…………侑ちゃん」
侑「……すぅ………すぅ……」
歩夢「……寝ちゃった?」
侑「…………zzz」
歩夢「ふふ、侑ちゃんの寝顔──可愛い」
侑「…………zzz」
歩夢「───ベッドで寝かせてあげようかな」
────
侑「……すぅ……すぅ……」
歩夢「うん、これでよし」
歩夢「ひざまくらをやめても起きないなんて、やっぱりつかれてたのかな?」
歩夢「──今日は一緒にいてくれてありがとう」
侑「…………zzz」
歩夢「もう、本当にぐっすり寝ちゃってる」
歩夢「────」
───本当に可愛いな、侑ちゃん。
いつも私のことを励ましてくれたり──
引っ張ってくれたり、応援してくれたり、
そんな時の侑ちゃんの姿は、とてもかっこいいのに、
寝顔は子供みたいに可愛い。
歩夢「えいっ」
あっ、ほっぺぷにぷにしてる。
幼稚園の頃と変わらない感触に、ちょっとだけ懐かしくなっちゃった。
いたずらしても起きないなんて。
───
侑ちゃんの寝顔、ずっと眺めてられるなあ。
普段は照れちゃって、なかなかこんなに近くで顔を見られないけど、
こうやってよく見てみると──
昔よりまつ毛が長くなってたり、小さかった鼻もちょっとだけ高くなってる。
さっきの話じゃないけど、侑ちゃんも大人になっていってるんだね。
私はそんな侑ちゃんについていけてるかな?
スクールアイドルとして一歩一歩進んでいけてることは、
侑ちゃん、同好会のみんな、ファンのみんなの声で分かる。
けど、上原歩夢としての私は、侑ちゃんに相応しい人間かな?
いつまでも甘えてられないと思ってるけど、成長していく私を侑ちゃんはちょっぴり寂しいとも言った。
それは私が変わっていくから、ということでは無いと思う。
あれかな?反抗期で素っ気なくなる娘を見て、寂しいと感じるお父さんみたいな感じ?
大人に近づいていくことは嬉しいけれど、幼い頃の日々を思うとセンチメンタルになっちゃうような。
私も侑ちゃんとの思い出はとても大切だし、もう一度昔に戻ってみたいと思うことも全く無いわけじゃない。
けど、進んでいく時間は止められないし、戻せない。
もし時間を操れるボタンがあったとしても、それはきっと押しちゃいけないんだよね。
上原歩夢──侑ちゃんが褒めてくれた名前。
私は歩夢って名前のくせして、夢を見た侑ちゃんの足を止めようとしてた。
わがままな私も侑ちゃんは肯定してくれたけど、振り返ればあの頃の私は、やっぱり侑ちゃんの幼なじみ失格だったかも。
今が合格かは分からないけど、少なくともあの時みたいに侑ちゃんの顔を曇らせたりしないと約束できる。
辛いことがあった時は、私が侑ちゃんを笑顔にする。
今までの私は、寄りかかってばかりだったから──
今度は私が侑ちゃんの手を引っ張っていきたいよ。
歩夢「なーんて、言えたらいいな」
心の中でしか、こんなこと言えない。
でも──そうか。
言葉にできないなら、歌に乗せて届ければいい。
この想いを歌詞にして、いつか侑ちゃんに歌ってあげられたらいいな。
侑ちゃんがメロディーを付けてくれたら、きっと素敵な歌になる。
そんな日が来るのが、楽しみだなあ。
夢を見て、そこに向かって進みたいと思えるのって、こんなに素敵なことなんだね。
やっぱり私、上原歩夢なんだ。
お父さんとお母さんが付けてくれた──
侑ちゃんが良い名前と言ってくれた、この名前が好き。
───
歩夢「侑ちゃん、失礼しまーす」
自分の──侑ちゃんが寝ている──ベッドに横になる。
そして、そっと侑ちゃんの左胸に、耳を押し当てる。
自分のとは別の、柔らかな感触に少しだけドキッとするけど、本命はこれじゃなくて──
侑ちゃんの心臓の音。
手だけじゃなくて、耳で直接聴いてみたかった。
とくん、とくん、ってゆっくり脈を打ってるのが分かる。
お母さんのおなかの中の音って言う人もいるけれど、わかる気がする。
侑ちゃんの音は、とっても穏やかな気持ちになれる。
───あっ、さっきよりちょっとだけ早くなったかな?
とくん、とくんがとく、とく、になった。
私の頭が重たいのかな?体重は預けてないつもりだけど。
ああ、ずっと聴いていたいな。
録音して、寝る時に聴いたらぐっすり眠れそう。
───さすがにそれは赤ちゃんかな?
侑ちゃんの笑いのレベルのこと言えないね、私。
ああ、尊いよ。
侑ちゃんがここに居て、私のそばにいて、生きていてくれることが。
心臓の音から、いろんな想いが産まれてくる。
こんな私を知ったら、重たいって思われちゃうかな?
でも、侑ちゃんならきっと受け止めてくれるよね?
……………。
「侑ちゃん、好きだよ」
寝ている時にしか、こんなこと言えなくてごめんね。
いつかちゃんと、侑ちゃんに伝えたいな。
私のたくさんの気持ち。
───なんだか、私も眠たくなってきちゃった。
このまま、一緒にお昼寝しよう。
おやすみなさい、侑ちゃん。
─────
「……………」
「…………すぅ…すぅ…」
「……………」
「……………すぅ…すぅ…」
「……………」
「私もだよ、歩夢」
おわり
侑「歩夢だって良い名前だと思うよ」
歩夢「も、もう!どうしたの急に」
侑「なんとなくそう思ったの」
歩夢「それさっきの私と同じじゃない」
侑「たはは。じゃあ真面目に答えるとですね」
侑「まず『あゆ』って音の響きが、すごく女の子っぽくて可愛い」
侑「そこに『む』が付くことで、そこに柔らかさが出てる」
侑「漢字も歩く夢と書いて『歩夢』」
侑「前向きな言葉でとっても素敵な名前じゃん」
歩夢「うう…。なんか改めて褒められると照れちゃうよ…」
侑「ほんと、歩夢が『あゆむ』で良かった」
侑「おじさんとおばさんに感謝だよ」
歩夢「ふふ、お父さんとお母さんに伝えておくね」
歩夢「じゃあ、今度はわたしの番」
侑「お?」
12: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:22:50.88 ID:Tzi0RoYe.net
歩夢「『ゆう』ちゃんの名前呼んでると、なんだか少しほっこりするの」
歩夢「漢字はにんべんに有るって書くでしょ?」
歩夢「この字が持ってる意味はよく知らないんだけど、侑ちゃんの隣には必ず誰かがいるのかなーって思ったの」
歩夢「その誰かが私だったらいいな、なんてこないだ考えてた」
侑「あはは。それ名前を褒めてるんじゃなくて歩夢の願望じゃん」
歩夢「いいの!私はこう思ったの!」
侑「ううん、嬉しいよ」
侑「どんなことがあっても、歩夢は私の隣にいてくれるんだね」
歩夢「うん。侑ちゃんがいやだ、って言っても一緒にいたい」
侑「歩夢のそういうとこは昔から変わらないなあ」
歩夢「え?」
侑「私への気持ちを素直に伝えてくれるとこ」
歩夢「そ、そうかな?」
14: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:25:24.36 ID:Tzi0RoYe.net
侑「だってあの時も、私だけの侑ちゃんで居てって言ってきたじゃん」
歩夢「あ、あれは!違うの!」
歩夢「あれはいろんな不安な重なって、つい出ちゃったの!」
侑「今はそういう気持ちは無いの?」
歩夢「無い…ことは無いけど……」
歩夢「でも、わがまま言って侑ちゃんを困らせた自分が恥ずかしいって思ったし」
歩夢「今、こうして隣にいてくれるから大丈夫」
侑「そっかあ。わがままな歩夢も可愛いって言ったのになあ」
歩夢「そういう私のほうが好き?」
侑「どちらが好きとかは無いけど」
侑「こうして歩夢が大人になってくのが、ちょっぴり寂しいなあ」
歩夢「あはは、どっちがわがままなのか分からなくなっちゃったね」
16: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:27:14.70 ID:Tzi0RoYe.net
侑「私だって歩夢にわがまま言いたい時あるんだからね?」
歩夢「ふふ、甘えんぼ侑ちゃん可愛い」
侑「違うよ。可愛いのは歩夢」
歩夢「知ってる。良いんだよ?私に甘えても」
侑「こーら。あまり私をからかわないの」
歩夢「強がる侑ちゃんも可愛いよ」
侑「つ、強がってないよ!っていうか、そういう台詞言っていいのは私!」
歩夢「あはははは!」
侑「むぅ…。いつの間にそんなに強くなったの…?」
20: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:29:17.29 ID:Tzi0RoYe.net
───
歩夢「静かだね」
侑「そうだねえ」
歩夢「同好会がいつも賑やかだから」
歩夢「こうしてお昼から2人でお部屋でごろごろするの久しぶりだね」
侑「そうだねえ」
歩夢「いつの間にか、こういう時間減っちゃってたね」
侑「そうだねえ」
歩夢「──」
歩夢「侑ちゃんはおばかさんだね」
侑「そうだねえ」
歩夢「ちょっとぉ。さっきから適当に返事してるでしょ」
21: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:31:27.86 ID:Tzi0RoYe.net
侑「バレた?」
歩夢「バレバレです」
侑「いやあ、歩夢と居ると落ち着くから意識がぼーっとしてきてね」
歩夢「眠いの?」
侑「うーん、それもちょっとあるかも」
侑「音楽科の勉強や作曲であんまり寝ふぇはいはは…」フワーア
歩夢「そんなに眠いなら、私がひざまくらしてあげよっか?」
侑「歩夢のひざまくら!?むしろ、目が覚めたよ!」
歩夢「ど、どういうこと?」
侑「歩夢が私にひざまくらしてくれるなんて一大ニュースだよ」
歩夢「そんなにおかしかった?」
侑「違うよ。びっくりしただけ」
侑「あれかな?歩夢は母性に目覚めたのかな?」
歩夢「それは分からないけど…」
歩夢「でも侑ちゃんの目が覚めたのなら、ひざまくらは要らないね」
侑「あっ、急に眠気が…」
侑「これは可愛い幼なじみのひざまくらを借りないといけないなあ」
歩夢「もう、侑ちゃんたら調子良いんだから」
24: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:33:45.02 ID:Tzi0RoYe.net
───
侑「あ~、幸せ~」
侑「ひざまくらってこんなに気持ちいいんだねえ」
歩夢「侑ちゃんにするの初めてだから、まだ少し緊張しちゃうな」
侑「その割には太ももはぷにぷにだけど?」プニプニ
歩夢「もう!セクハラだよ!」
侑「良いじゃん、幼なじみなんだし」
歩夢「うう、こういうことしていいのは私にだけだからね」
侑「当たり前だよ。歩夢にだからできるんだよ」
歩夢「……///」
侑「おや、どうしましたか歩夢おばあさん?」
歩夢「私まだ高校生だよ?」
侑「いやあ、たとえばだよ?」
25: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:35:49.83 ID:Tzi0RoYe.net
侑「おばあさんになったらこの東京を離れて、2人とも田舎に住むとするじゃん」
侑「そうしたら毎日のように歩夢の家に行って──」
侑「緑に囲まれた景色の中、陽の当たる縁側で、歩夢にひざまくらしてもらう余生を過ごしたいな──とか想像しちゃってさ」
歩夢「侑ちゃんは想像力豊かだね」
侑「あはは。そんな絵に書いたような田舎があるのか分からないけどね」
侑「でも、歩夢とはそれくらいながーい付き合いでいたいなあってこと」
歩夢「うん。私も」
27: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:37:33.92 ID:Tzi0RoYe.net
───
歩夢「…………」
侑「…………」
歩夢「………」ナデナデ
侑「……歩夢?」
歩夢「なあに?」
侑「どうして私の頭を撫でてるのかな?」
歩夢「侑ちゃん、可愛いなって」
侑「歩夢の方がかわいいよ」
歩夢「もう、それ言えばいいって思ってない?」
侑「そんな事ないよ。本当のことなんだから」
歩夢「む~、侑ちゃんだって可愛いのに」
侑「歩夢には負けるよ」
30: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:39:24.80 ID:Tzi0RoYe.net
歩夢「私の言葉、信じられない?」
侑「ううん。自分に自信が無いだけ」
歩夢「自分に自信がない人が、そんなに人に可愛いって言えるかな?」
侑「あはは、なんかやけに食い下がるね」
歩夢「だって、侑ちゃんが可愛いのは本当だもん」
侑「そっか。歩夢がそこまで言ってくれるなら、そうなんだろうね」
歩夢「うん。そういう素直な侑ちゃんのほうが好き」
侑「あー、ほんといつの間にそんなに歩夢は強くなったのかなあ」
歩夢(侑ちゃんにドキドキさせられてばかりじゃ悔しいからね)
歩夢(私だって侑ちゃんを照れさせたいんだよ?)
33: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:41:54.52 ID:Tzi0RoYe.net
───
侑「今さらだけど、私の頭おもたくない?」
歩夢「うん。ちょうどいい重さ」
歩夢「なんだか心地いい重さなの」
侑「どういう感じ?」
歩夢「ああ、侑ちゃんが今ここにいるんだーって感じ」
侑「私がここにいるのは当たり前じゃん」
歩夢「そうなんだけど、こう…侑ちゃんの命を感じるの!」
侑「急に重たい話になったね…」
歩夢「うう…侑ちゃんなら分かってくれると思ったのにぃ」
侑「命とか言うなら、もっと分かりやすいものがあるじゃん」
歩夢「なに?」
侑「歩夢、手を貸して」
歩夢「うん」
侑「それっ」グッ
歩夢「え?え!?侑ちゃん…!?」
34: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:44:27.47 ID:Tzi0RoYe.net
侑「ほら、こうやって私の左胸に手を当ててると伝わってくるでしょ?」
侑「私の心臓の鼓動が」
歩夢「う、うん…///」
歩夢「侑ちゃんの心臓、動いてる」
侑「音楽科に入ってから音とかビートに興味を持ってさ」
侑「人間って声や手を叩いたりする以外にも、こうやって音を出せる場所を持ってるんだなーって」
歩夢「ふふ、なんか侑ちゃんのほうが私より大きい話してる」
侑「歩夢が最初に命って言い出したんだよ?」
歩夢「そうだね。けど──」
歩夢「この話の重さも心地いい」
侑「小さい頃じゃ、こんな話は絶対してなかっただろうね」
歩夢「私たち、いつの間にか大人になっていってるんだね」
侑「胸も大人になったよ」
歩夢「もう!せっかく意識しないようにしてたのに!台無しだよ!」
侑「ごめんごめん!」
35: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:45:32.12 ID:Tzi0RoYe.net
侑「真面目な話もいいけど、やっぱり歩夢とはもっと他愛ない話がしたくてさ」
侑「心臓とか言ったくせに、自分で耐えきれなくなっちゃった」
歩夢「もう…。けど、そういう侑ちゃんも好き」
侑「もっと好きって言ってくれていいんだよ?」
歩夢「調子に乗らないの」メッ
38: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:47:04.28 ID:Tzi0RoYe.net
───
侑「…………」
歩夢「…………」ナデナデ
侑「…………」
歩夢「…………侑ちゃん」
侑「……すぅ………すぅ……」
歩夢「……寝ちゃった?」
侑「…………zzz」
歩夢「ふふ、侑ちゃんの寝顔──可愛い」
侑「…………zzz」
歩夢「───ベッドで寝かせてあげようかな」
39: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:48:36.81 ID:Tzi0RoYe.net
────
侑「……すぅ……すぅ……」
歩夢「うん、これでよし」
歩夢「ひざまくらをやめても起きないなんて、やっぱりつかれてたのかな?」
歩夢「──今日は一緒にいてくれてありがとう」
侑「…………zzz」
歩夢「もう、本当にぐっすり寝ちゃってる」
歩夢「────」
40: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:50:29.51 ID:Tzi0RoYe.net
───本当に可愛いな、侑ちゃん。
いつも私のことを励ましてくれたり──
引っ張ってくれたり、応援してくれたり、
そんな時の侑ちゃんの姿は、とてもかっこいいのに、
寝顔は子供みたいに可愛い。
歩夢「えいっ」
あっ、ほっぺぷにぷにしてる。
幼稚園の頃と変わらない感触に、ちょっとだけ懐かしくなっちゃった。
いたずらしても起きないなんて。
41: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:52:31.42 ID:Tzi0RoYe.net
───
侑ちゃんの寝顔、ずっと眺めてられるなあ。
普段は照れちゃって、なかなかこんなに近くで顔を見られないけど、
こうやってよく見てみると──
昔よりまつ毛が長くなってたり、小さかった鼻もちょっとだけ高くなってる。
さっきの話じゃないけど、侑ちゃんも大人になっていってるんだね。
私はそんな侑ちゃんについていけてるかな?
スクールアイドルとして一歩一歩進んでいけてることは、
侑ちゃん、同好会のみんな、ファンのみんなの声で分かる。
けど、上原歩夢としての私は、侑ちゃんに相応しい人間かな?
42: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:54:27.29 ID:Tzi0RoYe.net
いつまでも甘えてられないと思ってるけど、成長していく私を侑ちゃんはちょっぴり寂しいとも言った。
それは私が変わっていくから、ということでは無いと思う。
あれかな?反抗期で素っ気なくなる娘を見て、寂しいと感じるお父さんみたいな感じ?
大人に近づいていくことは嬉しいけれど、幼い頃の日々を思うとセンチメンタルになっちゃうような。
私も侑ちゃんとの思い出はとても大切だし、もう一度昔に戻ってみたいと思うことも全く無いわけじゃない。
けど、進んでいく時間は止められないし、戻せない。
もし時間を操れるボタンがあったとしても、それはきっと押しちゃいけないんだよね。
43: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:56:31.07 ID:Tzi0RoYe.net
上原歩夢──侑ちゃんが褒めてくれた名前。
私は歩夢って名前のくせして、夢を見た侑ちゃんの足を止めようとしてた。
わがままな私も侑ちゃんは肯定してくれたけど、振り返ればあの頃の私は、やっぱり侑ちゃんの幼なじみ失格だったかも。
今が合格かは分からないけど、少なくともあの時みたいに侑ちゃんの顔を曇らせたりしないと約束できる。
辛いことがあった時は、私が侑ちゃんを笑顔にする。
今までの私は、寄りかかってばかりだったから──
今度は私が侑ちゃんの手を引っ張っていきたいよ。
歩夢「なーんて、言えたらいいな」
44: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:59:15.66 ID:Tzi0RoYe.net
心の中でしか、こんなこと言えない。
でも──そうか。
言葉にできないなら、歌に乗せて届ければいい。
この想いを歌詞にして、いつか侑ちゃんに歌ってあげられたらいいな。
侑ちゃんがメロディーを付けてくれたら、きっと素敵な歌になる。
そんな日が来るのが、楽しみだなあ。
夢を見て、そこに向かって進みたいと思えるのって、こんなに素敵なことなんだね。
やっぱり私、上原歩夢なんだ。
お父さんとお母さんが付けてくれた──
侑ちゃんが良い名前と言ってくれた、この名前が好き。
47: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:01:53.31 ID:Tzi0RoYe.net
───
歩夢「侑ちゃん、失礼しまーす」
自分の──侑ちゃんが寝ている──ベッドに横になる。
そして、そっと侑ちゃんの左胸に、耳を押し当てる。
自分のとは別の、柔らかな感触に少しだけドキッとするけど、本命はこれじゃなくて──
侑ちゃんの心臓の音。
手だけじゃなくて、耳で直接聴いてみたかった。
とくん、とくん、ってゆっくり脈を打ってるのが分かる。
お母さんのおなかの中の音って言う人もいるけれど、わかる気がする。
侑ちゃんの音は、とっても穏やかな気持ちになれる。
───あっ、さっきよりちょっとだけ早くなったかな?
とくん、とくんがとく、とく、になった。
私の頭が重たいのかな?体重は預けてないつもりだけど。
48: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:05:09.83 ID:Tzi0RoYe.net
ああ、ずっと聴いていたいな。
録音して、寝る時に聴いたらぐっすり眠れそう。
───さすがにそれは赤ちゃんかな?
侑ちゃんの笑いのレベルのこと言えないね、私。
ああ、尊いよ。
侑ちゃんがここに居て、私のそばにいて、生きていてくれることが。
心臓の音から、いろんな想いが産まれてくる。
こんな私を知ったら、重たいって思われちゃうかな?
でも、侑ちゃんならきっと受け止めてくれるよね?
……………。
「侑ちゃん、好きだよ」
49: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:06:33.21 ID:Tzi0RoYe.net
寝ている時にしか、こんなこと言えなくてごめんね。
いつかちゃんと、侑ちゃんに伝えたいな。
私のたくさんの気持ち。
───なんだか、私も眠たくなってきちゃった。
このまま、一緒にお昼寝しよう。
おやすみなさい、侑ちゃん。
50: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:07:35.56 ID:Tzi0RoYe.net
─────
「……………」
「…………すぅ…すぅ…」
「……………」
「……………すぅ…すぅ…」
「……………」
「私もだよ、歩夢」
おわり
62: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:16:00.03 ID:Tzi0RoYe.net
元スレ歩夢「侑ちゃん」侑「なに?」