23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:13:38.20 ID:qe4hxDyc0
「うーー!うーーーっ!!うぅーーーっっ!!!!」
深夜、壁一枚隔てた隣の部屋からうめき声が聞こえる。
中学生の妹の声だ。
俺と妹の部屋の壁はテレビの音や通常の電話の会話程度なら聞こえないぐらいの防音は効いている。
深夜とはいえこれだけの声が聞こえるのはそれだけ妹のうめき声の大きさ……
ひいては今感じている苦痛の大きさを物語っていた。
これだけ苦しそうな声を聞かされてはいろんな意味で眠れるわけがない。
俺は布団から起き上がると部屋を出て妹の部屋のドアをノックした。
……何度か叩いても中からの返事は無い。
無視をされているわけではなく、苦痛が大きすぎて聞こえていないか、あるいは返事をする余裕もないのかもしれない。
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:18:43.56 ID:qe4hxDyc0
「……入るぞ」
俺は一言断ってから妹の部屋のドアを開けた」
廊下の明かりが妹の部屋の中を照らし、ベッドの上で布団に包まり震えている妹の姿がぼんやりと浮かんだ。
部屋に明かりが差すと布団から顔だけ出した妹の顔がこちらを向く。
薄暗い中でもはっきりと判るほど妹はびっしょりと汗をかき、髪の毛が額に張り付いていた。
「ば……か……勝手に入って……来ないで……」
搾り出すような声で妹から言葉が飛んでくる。
妹の表情は眉間に皺を寄せ非常に険しいが、それは俺に対する怒りより、身体を襲っている激痛が原因だろう。
妹はとある奇病にかかっている。
原因は不明だが脳が直接全身の痛覚にサインを不定期に送り続け、それにより毎日死ぬほどの激痛に襲われるという病気である。
その痛みは文字通り死に至ることもあるというほど強烈なもので
突如急激に襲ってきた痛みによるショック死。激痛の連続による衰弱死。
あるいは余りの苦痛に精神の方がやられた発狂死や自殺といったケースもある恐るべき難病らしい。
今の所治療法方は見つかっていない……が症状を和らげる方法はある。
それはにわかには信じがたいことだが精液を定期的に摂取することである。
しかし妹はそんなものを飲むのは断固拒否し……今もそれを続けている。
精液に成分を似せた擬似的な薬を代用しているが、精液ほどの効果は得られず妹は毎日激痛に苦しめられている。
しかもその擬似薬では習慣性により徐々に効果は薄れていくとのことで
現に日に日に妹の苦しむ時間は増し、その度合いも強くなっているように感じた。
「水でも持ってくるか……?他に何か欲しいものは?」
もうすでに俺は妹に『大丈夫か?』なんて言葉はかけることはなく
なっていた。
そんな無意味な言葉より簡潔に何を求めているかだけ尋ねる。
今うちの家に両親は不在だ。
母さんは3年前に他界した。親父は妹の治療のために
日本より研究が進んでいるヨーロッパを飛び回っており隔週の週末しか帰ってこない。
妹の世話は出来る限り俺がしなければいけない……もっともこの病気は激痛のサインが送られている時以外は
身体にはなんの影響も出ないのでその間は普通の人間と何も変わらない生活が送れるのだが。
しかし激痛に襲われる頻度と度合いが高まればそれも難しくなるであろうことは間違いない。
「く……す……り……」
妹はそう言った。症状を和らげる薬が欲しいと言っているのだ。
しかし、つい先日病院に言って一週間分を処方して貰ったばかりだ……
俺は妹の部屋の明かりをつけた。
「……っ!!」
すると机の上に空になった一週間分の薬のボトルがあった。
さらにそのボトルはハサミか何かで乱暴に切られている。
おそらく、一滴残さずあまさず飲むために妹がやったのだろう。
一目でまずいとわかった。薬の効き目が殆どなくなっているのだ。
さらにこれでは妹は一種の薬物依存も同然だ。
こんな深夜に薬は用意できないし……できたとしても明らかに過剰摂取している妹にこれ以上飲ませるわけにはいかない。
むしろこれからは薬も自分が管理して妹に毎日適量を飲ませるようにしなければいけないだろう。
「とりあえず水持ってくるからな……」
今の妹は苦しみのあまり喉の渇きすら感じていないのだろうが、あれだけ汗をかいているなら身体は当然水を欲しているはずだろう。
俺が水をコップに汲んでくると妹は案の定、「こんなものより薬が欲しい」という恨みがましい視線を送ってきたが
いざ飲み始めると、一気に水を飲み干した。俺はペットボトルの水をコップにもう半分ほど入れた。
「はぁっ……はぁっ……はぁ……」
水を飲ませてからしばらくすると妹の様子は大分落ち着いてきた。
痛みには感覚の波があるようでしばらく耐えれば和らいでいくらしい。
「あり……がと」
とりあえず俺に礼を言うぐらいの余裕も出てきたようだ。
「落ち着いたみたいだから俺戻るけど、なんかあったら呼べよ……あと、汗凄いからタオル持ってくるよ」
妹の細い身体に薄手のパジャマがぴったりと貼り付いているのを見て俺はそう言う。
お湯に濡らしたタオルと洗面器だけ持っていくと、後は本人に任せて大丈夫だろうと俺は部屋に戻った。
そして再び布団に潜り込み今度こそ寝ようとしたその時……
「あぁあああーーーーーーーっっ!!」
再び妹の部屋から……今度は絶叫が聞こえた。
俺は飛び起きると今度はノックもせずに妹の部屋のドアを開けた。
「……っ!!」
するとベッドの上で妹が四肢を投げ出し、痙攣しながら痛みに泣き叫んでいた。
「あぁああーーっ!!痛いっ!痛いっ!!痛いぃーーーーーー!!」
周囲には脱ぎ捨てられたパジャマと下着があり、妹は全裸だった。
おそらく汗を拭く途中で激痛に襲われたのだろう。
周囲には脱ぎ捨てられたパジャマと下着があり、妹は全裸だった。
おそらく汗を拭いている途中で激痛に襲われたのだろう。
この病気の痛みの襲ってくる間隔は医者にも本人にも、誰にも予期できない。
痛みが治まったと思ったらいきなり再発し、じわじわ痛みが襲ってくることもあれば突然激痛がピークに達することもある。
今回の妹は明らかに突然、最大レベルの激痛に襲われたのだろう。
「あーーーっ!!あぁーーーーーっ!!うぁあああーーーーーっ!!」
痛みに絶叫し続ける妹。
まだ未熟ながらはっきり膨らみを確認できるようになった胸や
細身なのに同時に丸みを帯びている肢体を見て俺は少し戸惑うが……
そんな裸の妹の身体を俺はぎゅっと抱きしめた。
この病気は症状が出ると痛みのあまりのた打ち回り、骨折など他の大きな怪我をすることもおかしくないからだ。
しかしそれとは別に、妹の病気を治してやることも代わりに痛みを引き受けてやることは出来なくとも。
俺は兄としてこれぐらいのことはしてやらねば気がすまなかった。
妹が凄い力で俺の背中に爪を立ててくる、当然痛みは感じるが、こんなものは妹の感じている痛みに比べればなんでもないものだろう。
不意に下半身に暖かい液体が広がっていくのを感じた。
妹が激痛のあまり失禁したようだ。しかしそんなことは今は俺も妹も気にしている余裕はなかった。
「……っっ!!……~~~~~ぁっっ!!」
妹の口から悲鳴が聞こえなくなった。
しかし痛みが治まったわけではなく絶叫する体力がなくなったか、あるいはもはや声すら出せない激痛なのかもしれない。
俺たち兄妹にとって地獄でしかない時間が続く……妹の症状が治まったのはそれからどれぐらいしてからだろう。
時計など見る余裕はなかったが客観的にはそれほど長い時間ではなくほんの数分程度……
だが俺には一時間にも二時間にも感じられた。妹はおそらくそれ以上であろう。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
妹は再び汗に塗れ、裸の肢体をベッドの上に投げ出し息を乱している。
痛みは和らいでも心身の消耗は尋常ではなかったのだろう。
思春期の裸身を隠す余裕もなく、苦しみの余韻に喘いでいる。
このままでは……本当に妹はそのうち死んでしまう。俺はそう思った。
妹の身体にとりあえず布団をかぶせて隠してやると、俺は細心の注意を払いながら言葉を投げかけた。
「なぁ……このままじゃ本当に危険だ……精液飲まないのか?」
その言葉を聞いた直後、妹の目が見開かれ、俺の顔面に枕が叩きつけられた。
目をやると妹は裸の上半身を布団から起き上がらせ、血走った怒りの形相で俺を睨んでいる。
「飲まない……絶対に飲まないっ!!その話は二度としないでって言ったでしょうっ!!」
俺は最初からこの反応は予想していたので驚きはしなかった。
この話題で妹が激怒したのは一度や二度ではないからだ。
しかしそれは承知で俺は妹に精飲を薦めずにはいられなかった。
「だけど、このままじゃ本当にお前死ぬぞ!?……毎日苦しんでる妹の姿なんか耐えられないんだよっ!!」
別に嫌われたって殴られたっていい、俺は思い切ってそう叫んだが。
「……うるさいっ!!出てってよ!!……でてけぇっ!!」
妹は癇癪を起こして部屋の中のものを手当たり次第に投げつけてきそうだった。
思わず俺も感情的に怒鳴り返してしまいそうになるが、それは状況を悪化させるだけと思いなおし、とりあえず部屋を後にした。
精液など飲みたくは無い。その気持ちはもちろん判るが
しかし毎日絶叫して失禁するほどの苦痛を味わい、死の危険すらあるというのに
なぜ妹はここまで精液を飲むことを頑なに拒否するのか俺にはわからなかった。
……しかしもはや手段を選んではいられない……妹に精液を飲ませなければ……
第一話 完
あたしが味わった人生最大の痛みは小学校低学年の頃。
お兄ちゃんと一緒に遊んでいて木から落ちて腕の骨を折った時だった。
その時の痛みは数年経っても忘れられない。あの時痛みに泣き叫んでいた自分と、お兄ちゃんが必死に人を呼んでたのを思い出す。
ただそれは……この病気にかかる以前までだ。
この病気になってから、あんなのちょっと転んですりむいたのと変わらなかったんだと思うようになった。
最初にこの病気で痛みを感じた時はあの時の腕の痛み以上の激痛がそれこそ全身を同時に襲ってきた。
全身の骨が同時に折れたんじゃないかと思った。
人生最大の痛みが一気に記録更新された瞬間だった。
でもさらに恐ろしいのはその人生最大の痛みがさらに何度も更新されていくこと。
あの最初の時の痛みは今の痛みに比べれば腕の骨が折れたのと変わらなかったんだと思うようになった。
それ以来あたしは……おそらく人間の脳が機能として痛みとして感じるように作られている
ありとあらゆる苦痛を味わうことになった。
体中の一ミリ四方に一本ずつ針が少しずつ刺さっていくような発狂しそうな痛みが走ることがあった。
全身火だるまになったんじゃないかと思う灼熱感を味わうこともあった。
五臓六腑に猛毒が染み渡っているんじゃないかと思うような、内側から破壊されるような苦しみを味わったこともあった。
実際にその痛みを同じことが身体に起こったら間違いなく死んでいるんだろうけど
幸か不幸か実際には身体には傷一つついていないのであたしは生きている。
でもあたしと同じ病気になった人には実際に身体が傷ついていなくても
あまりの痛みでショック死したり継続する激痛に衰弱死したりした人も多いらしい。
正直それ自体は驚かなかった。自分だって何度死ぬと思ったかわからない。
むしろ生きてる方が不思議なくらい痛いんだから。
この痛みから逃れる方法はある……それは、男の人の精液を飲むこと。
あたしはそれを聞いた時最初はただ単にそれは絶対に嫌だと拒絶した。
でも今は正直……それでこの激痛が治まるなら安いものだと思っている。
今あたしは生きたゴキブリを食べれば病気が治ると言われれば喜んで食べる。
実際精液を飲んでこの病気が「治る」なら飲んでやる。
だけどあたしは精液は絶対に飲まない。そう決めた。
それはこの病気にかかった人が精液を飲んだ後どうなったか知ったから。
お医者さんは隠していたみたいだけどネットなどで調べて知ってしまった。
この病気は精液を飲んでも治るわけじゃなく、定期的に飲み続けなければいけない。
その結果精液を飲んでこの痛みを和らげた人はいわゆる「中毒状態」になり精液を求め続ける。
そして精液を手に入れるためならあらゆるプライドも倫理感も捨てた存在に成り果てることを知った。
精液を求めて、男の人……体力的に抵抗できないまだ精通直後の男の子を連続でレイプしたり
精液を貰うために風俗の中でも最底辺の変態的な仕事をしたり……
精液のためなら殺人を犯した人までいるらしい。
それはしょうがないのかもしれない。憎むべきは病気でありその人たちは悪くないのかもしれない。
でもあたしは絶対にそんなのになるわけにはいかない。
自分自身の自尊心もそうけどそれ以上にあたしがそんなのになったら
お父さんもお兄ちゃんも世間に後ろ指指されて生きなきゃいけなくなる。
いや、それどころかあたしの飲む精液を集めるために犯罪に手を染めるかもしれない。
そんなの絶対ダメだ。
だからあたしは絶対に精液を飲むことに逃げないと決めた。
その結果……死ぬならそれも仕方ないと思った。
あたしは今学校に通う通学路の途中だ。
この病気は痛みを感じている時以外はなんの問題もないからその間は普通に過ごせる。
だけど痛みはいつ襲ってくるかわからないからあたしは常に怯えている。
痛みは夜に襲ってくることが多いから幸い学校の行きから帰りまでに耐え切れない激痛に襲われたのは数えるほどしかない。
……でもそれも時間の問題な気がする。この頃痛みを感じる頻度が明らかに増えてきた。
日中にも毎日のように激痛を感じるようになったらもう学校に通うことも出来なくなるだろう。
……だからこそ通えるうちは学校に通いたい。
皮肉なもので健康だった時は学校なんてどうやったらサボれるだろうなんてことばっか考えてたのに
今は一日でも長く学校に通いたいのだ。
あたしの病気はすでに学校でも知られているのでみんなから理解と誤解を同時に得ている。
「肉体そのものにはなんの影響もないのに突如行動不能になるほどの激痛が襲ってくる原因、治療方不明の病気」
精液を飲めば症状が和らぐ部分は伏せられている。
だけど今の世の中、あたしがそうだったようにちょっと調べれば中学生だって情報は入ってくる。
結果、大多数の生徒はあたしに好意的で協力的で、むしろ病気の前より親しい友達は増えたぐらいだけど
中にはあたしが精液を求めて夜な夜な俳諧してるとかあらぬ噂を立てたり
俺のザーメンで良ければ飲むかとかふざけたことを言ってくる輩もいる。
……でもそれが噂じゃなくて事実になってしまったらそれこそが恐ろしい。
あたしに改めてその事実を突きつけてくれたという意味ではそういう連中にも感謝している。
そして最近……お兄ちゃんがあたしに精液を飲むように説得をしてくることが多くなった。
わかってる、本気で心配してくれてるってのは。あたしが毎日苦しんで、死ぬかもしれないのが見ていられないんだって。
でもあたしは絶対に精液を飲むわけにはいかない。
ヒステリックに振舞ってごまかすのも限界になってきた。……どうしよう。
それに……そろそろお兄ちゃんはあたしに精液を飲ますためなら手段を選ばなくなってきそうな予感がした。
第二話 完
俺は妹になんとかして精液を飲ませる方法を考えた。
いっそ力づくでも飲ませてやろうかとも思ったがそれは賢くないだろう。
……まずは、何故妹はそこまで精液を飲みたくないのかを真剣に話し合ってみることにした。
理由が判れば解決方法も浮かぶかもしれない。
俺は夕食の後に妹に話を切り出した。
「いいか?ちょっと話がある」
妹がこの病気にかかって以来、俺は最大限妹を気遣い優しく接してきたつもりだ、悪く言えば腫れ物に触るように扱ってきたわけだが
今回は有無を言わせず静かだが強い口調で切り出した。
「先に言っておくけど、怒るのはいいが感情的になって叫んだり暴れたりは無しだ」
「……」
妹は答えないが、その沈黙を同意と俺は見なす。
「俺は真剣にお前の話と言い分を聞くし、俺の方もお前を怒ったりはしない、だから正直に落ち着いて話してくれ」
「……」
俺の口調に妹も思うところがあったのか、神妙な表情でうなづいた。
「単刀直入に聞くぞ。なんでそんなに精液を飲むのが嫌なんだ?
……もちろん出来れば飲みたくない気持ちはわかる。
でもお前の味わってる苦痛はそれの比じゃないはずだし命の危険だってあるんだぞ?
正直ただ気持ち悪いとか恥ずかしいという理由だけで拒否し続けているとは思えない」
俺は一気に話の核心部分を話した。
「……わかってるの?」
しばらく黙っていた妹の口から出た言葉はそれだった。
「……精液飲んでこの病気の症状和らげてる人がどうなったかわかってるの?
みんな麻薬中毒者以下の変態や犯罪者に成り下がってるじゃない!」
妹の言葉に俺は驚いた。
……知らなかったわけではない。
俺だって妹の病気のことはそれこそ、辞書片手に外国の医学書を悪戦苦闘して読んだり
便所の落書きと呼ばれる掲示板でこの病気を揶揄する書き込みに憤慨しながら質問したり
自分なりに調べつくしたのだ。
だから精液を飲んでそのような結果をたどっている人間たちのことも当然俺は知っていた。
だが俺にとっては妹が毎日死ぬほど苦しんでることに比べればそんなのはどうでもよかった。
ただ生きていて欲しかった。精液なんか自分のはもちろん必要とあればいくらでも俺が集めてきてやると思った。
だから思ったそのことをそのまま口にした。
「それがどうした!それでお前が生きていられるなら俺はそれでいい。お前がそんなことしたくないと言うなら……」
「……俺が代わりにやるとでも言うつもり!?」
俺の考えを呼んでいたかのように妹に言葉を遮られ、俺は驚いて言葉に詰まる。
「だからダメなんだよ……絶対にそれだけは……ダメなんだよっ!!」
涙交じりでそう言った妹に、それ以上俺は何も言えなくなる。
俺は妹の考えを理解してしまったから。そしてこれは説得しても無駄だとも……
だがその上で俺の方も妹に精液を飲ませることを諦めるわけにもいかなかった。
これ以上は話し合っても平行線だ。お互いに理屈ではないのだから。
こうなったら仕方ない……なんとか妹に気づかれず、精液を飲ますしかない。
俺は自分の本心とは裏腹にあえて妹が納得するだろう言葉を投げかけた。
「……わかった……とは言えないけれどとりあえず今はお前の意志を尊重する。
でも気が変わったらいつでも俺に言え。俺も親父もお前のためならなんでもするしそれを苦とも恥とも思わない。
お前がそれが嫌だという気持ちは理解できるから、今はこれ以上は何も言わない」
妹に精液を飲ませるためには疑われてはいけない。
精液を飲ませることに固執はしない、でも不自然に思われないよう
あくまで諦めてはいないスタンスを演じることにしたのだ。
その日から俺はプロテインや亜鉛など精液を増やすのに良いと言われているものを
ギリギリまで多く摂取することにした。もちろん妹には気づかれないように。
個人差もあるが普通の男が一日分に出す精液ではこの病気の症状を和らげるには明らかに足りないのだ。
俺の精液を飲ますにはまず自分の精液を増やさなければ話にならない。
その上で妹が食べる食事や飲み物にそれを混ぜる算段を立てた。
万が一にも気づかれてはいけない。気づいたらその瞬間妹は絶対に俺が関わった飲食物を口にしなくなる。
疑われることすら避けなければいけない。
俺はまず自分で自分の精液を料理や飲み物に混ぜ。
2つのうちどちらか片方に精液が入っていることを混ぜた自分でもわからなくなるように工夫したりした……
傍から見ると異常者にしか見えない行為だろうが俺は真剣だった。
妹のためなら自分でも言った通り苦とも恥とも思わなかった。
あの時の言葉はこの部分だけは嘘偽りない本心だった。
しかし、妹は鋭い。
俺が当然飲食物に精液を混ぜてくる可能性は考慮しているだろうし
現に最近明らかに自分の摂取するものを意識しているようだ。
俺が出したものは安易に口にしないだろうから折角の精液を無駄にしないためにも
計画的に行動しなければならないだろう……
第三話 完
お兄ちゃんと話し合ってから数日が過ぎた。
いや、話し合いと呼べるものじゃない、単なるお互いの気持ちを口にしただけなのだけど……
その結果お兄ちゃんはあたしの気持ちと考えを……一応理解してくれたみたいだ。
お兄ちゃんの考えは大体あたしの思ったとおり。
やはりあたしのためなら何でもするつもりだった。
……それが嬉しくもあり悲しくもあった。
今は学校で……今日は体育の授業だ。
病気のことがあってから、教師からは体育は見学するかと聞かれたが
痛みを感じているときは影響がないのでいつも普通に参加した。
本当に健康な時は生理だなんだと嘘をついてサボりたがってたのが嘘みたいだった。
まるで小学校の時に戻ったみたいに体育が楽しい。
身体を動かすことこそ病状がさらに悪化したらもう出来なくなるかもしれない……
だから今は精一杯楽しみたい。
そう思いながら貰ったパスを両手でリングに向って放ろうとした瞬間。
「……っっっっっっ!!!!!!!」
全身をとんでもない激痛が襲った。
「……いぎゃっ……!!」
悲鳴が出せたのはほんの一瞬、それより先はもはや悲鳴が出てこない激痛だった。
一瞬でピークに達してくる痛みかと思ったけど違った。
すでにこれ以上ありえないと思うほどの痛みがさらにどんどん増していくのだ。
「~~~~~~っっ!!」
その場に倒れこんだあたしをみんなが取り囲み、ざわめいている。
教師がかけより何か話しかけて、保険医を呼べなり病院に連絡しろなり言っているが
全てが無駄なのはわかっているからどうでもよかった。
自分が痛みのあまりおしっこを漏らしてるのがわかったけど
それもどうでも良かった。人間極限まで痛いと羞恥心なんか消えるんだ。
だからあたしも……お父さんやお兄ちゃんのことさえなければ
精液を飲んで楽に慣れるなら何にも気にせず飲んでしまっていただろう。
そして恥なんか感じずに精液を求め啜る女になっていただろう。
それにしても何という痛みだろう。
もうとっくに脳が処理できる限界の痛みを味わってきたと思っていたのにそれをさらに超える痛み。
全身の指先一本一本から走る細かい神経に余すところ無く焼け爛れた有刺鉄線を巻きつけてさらに高圧電流を流し続けでもしたら
こういう痛みになるのだろうか?
いや、もはやそれすら控えめな表現に感じる痛み。
形容不能なレベルの痛み。味わったことのない人間には想像すらできない痛み。
マズイ、痛すぎて今度こそ死ぬかもしれない。
ショック死というか脳が働きすぎてオーバーヒートしたり、身体が自己防衛のために死を選ぶんじゃないかとすら思える
これまでも何度も思ったけれどむしろなんでここまで痛い目に逢って死なないのかの方が不思議。
なんでこんなに思考がめぐるかも不思議。
今までは痛すぎて、痛いと感じる意外何もできなかったのに今回は過去最高クラスの痛みなのに考えがヤケに巡る。
脳が激痛のサインを送り続けている一方で痛みが強烈すぎて
他に紛らわすなり、なんとか助かる方法を見つけないと本当に死んでしまうから必死に活動しているんだろうか?
死ぬ間際の走馬灯ってヤツもそういう脳の動きなんだろうか?
ああ、じゃあやっぱりあたし死ぬんじゃない?
うん、これは無理だ、流石に今度こそ死にそう。
……というかもう死にたい。
嫌だ、もう嫌だ。
こんな痛いの嫌だ。
こんな苦しいの嫌だ。
いくらなんでも痛すぎる。いくらなんでも酷すぎる。
この病気になってから今まで普通に過ごしてきた日常がいかに素晴らしいかわかった。
痛みを感じている時以外は、何時来るかわからない激痛に怯えながらもそれでも凄く楽しくて……
生きていて良かった。もっと生きたいと実感するようになった。
でももう限界だ、こんな痛みに毎日耐えてなんか生きられない。
このままじゃいつか逃避として精液だって飲んでしまうかもしれない。
飲んだら絶対に後戻りできないのは自分でわかる。
だからもういい、ここで死ぬ。死んで楽になる。
お父さんごめんなさい、お兄ちゃんごめんなさい。
もうこれ以上は生きられません。
死ぬ……死ぬ……死ぬ……
あたしの意識はそこで途切れた。
第四話 完
親父が海外を駆けずり回った結果。ようやくたった一つ、かなり信憑性の高い治療方を見つけたという。
それはこの病気にかかった患者に毎日精液を一定量ずつ与え、それを長期継続していくことで
少しずつ痛みが和らぎ、完治したケースがあるとのことだった。
ただしその一定量というのはあくまで痛みを「死なない程度に和らげる」だけであり患者はその量を摂取しても
なお死に至るギリギリの激痛と毎日、長年に渡り闘い続けなければならない。
それに対して大量の精液を飲めば痛みを大幅に和らげることは出来る。
しかしその結果は妹の口からも出た精液中毒者になる道しかない。
よって妹には自分が精液を摂取しているということを
俺が最初に危惧したのと別の理由で決して気づかせてはいけない……
もし自分が精液を飲み、それによって痛みを和らげている。もっと精液を飲めばより痛みが和らぐ
そのことに気づいたらその瞬間からズルズルと精液依存症へまっしぐらだ。
おそらく現存するどの麻薬よりその依存性、中毒性は高く、逃れる術はない。
そしてそうなるともう完治の見込みは無い。
険しい道のりだが希望が見えてきた
……そう思った時、携帯電話が鳴った。
妹が倒れたとの知らせを聞いて俺は急いでかけつけた。
意識を失った妹は救急車で搬送されるところで、俺も同乗する。
「妹さんは激痛で意識を失っていますが命に別状はありません。しかし衰弱が酷いので入院が必要かもしれないです」
一緒に乗り合わせた救急隊員の一人が言った。
それに対して俺は
妹はとっくに痛みで気を失えるなんて段階は通り越してるんだよ。
単に激痛を味わいすぎた疲労で痛みが治まってから気を失っただけだ。
アンタらは本職なのにそんなコトも知らないのか?
そう叫びたい欲求にかられた。
いや……この人たちに怒りをぶつけても仕方ないのはわかっている、
それでも自分の妹がなぜここまで苦しまなければいけないのか。
地球上全てを憎んでも足りない気分だった。
気を失っている妹の顔は死人のようでもう目が覚めないんじゃないかと思えた。
待て……目が覚めそうにないくらい……気を失っている今なら……
俺はそう思い立つとおもむろにズボンから性器を取り出した。
そのことに気づいた救急車内がざわつく。
しかし俺はそんなことにはかまわず、むしろ周囲を睨みつけて言った。
「……先に言っておきます。今からすることを妹には絶対に教えないでください。
言ったら殺します。比喩や脅しではなく本当に殺します」
俺の鬼気迫る尋常でない様子が伝わったのか同乗していた人間達は無言で目を反らす。
そして俺は自分の性器を擦り始めた……妹に精液を飲ませるために。
しかし射精どころかなかなか勃起すらしない。
こんな状況で興奮なんて出来ないのは当然だが、それでも妹のためなんだ、しっかりしろよ!
と俺は自分を奮い立たせた。
俺の必死な様子に……一人の救急隊員が何をしようとしているか察したようだった。
そして俺を諭すように言った。
「待ちなさい、気を失ってる人間に無理矢理飲ませるのは危険だ……
病院につけば嚥下障害用の補助具があるからそれを使いなさい」
その言葉で俺は落ち着きを取り戻し、性器を一度ズボンにしまった。
そして、妹が搬送された病院で改めて医者にそのことを話し、許可を得ると
念のため睡眠薬を先に飲ませ、しばらくは目覚める心配のなくなった妹に精液を飲ませた。
この日から俺は、意識を失った妹に精液を飲ませるという方法をとることにした。
一定量の精液を飲ませてもなお激痛は残るというのはある意味好都合であった。
最初にそうした時同様。妹は毎日のように激痛との闘いに疲弊し、気を失い
その時に妹に精液を飲ませることが出来るからだ。
通常の気絶と違い、衰弱に伴う失神であるため、数時間はまず目が覚めない。
そんな妹に本人の意思に反して精液を飲ませるのは罪悪感が沸く事もあったが、もう俺は迷わない。
これからも俺と妹は長く険しい道のりを歩むことになるだろう。
俺は毎日苦しみ続ける妹を見ているのが耐え切れず、大量の精液を与えてしまいたい欲求に幾度となくかられることだろう。
妹の方も苦痛に耐えかねて、死を望む……そんな可能性も否定できない。
だが俺は決してそうはさせない、妹も自分自身も律して……かならず完治させてみせる。
昔妹が怪我をして痛みに泣いていた時……何もできなかったあの時とは違う。
終わり
元スレ
「……入るぞ」
俺は一言断ってから妹の部屋のドアを開けた」
廊下の明かりが妹の部屋の中を照らし、ベッドの上で布団に包まり震えている妹の姿がぼんやりと浮かんだ。
部屋に明かりが差すと布団から顔だけ出した妹の顔がこちらを向く。
薄暗い中でもはっきりと判るほど妹はびっしょりと汗をかき、髪の毛が額に張り付いていた。
「ば……か……勝手に入って……来ないで……」
搾り出すような声で妹から言葉が飛んでくる。
妹の表情は眉間に皺を寄せ非常に険しいが、それは俺に対する怒りより、身体を襲っている激痛が原因だろう。
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:23:36.69 ID:qe4hxDyc0
妹はとある奇病にかかっている。
原因は不明だが脳が直接全身の痛覚にサインを不定期に送り続け、それにより毎日死ぬほどの激痛に襲われるという病気である。
その痛みは文字通り死に至ることもあるというほど強烈なもので
突如急激に襲ってきた痛みによるショック死。激痛の連続による衰弱死。
あるいは余りの苦痛に精神の方がやられた発狂死や自殺といったケースもある恐るべき難病らしい。
今の所治療法方は見つかっていない……が症状を和らげる方法はある。
それはにわかには信じがたいことだが精液を定期的に摂取することである。
しかし妹はそんなものを飲むのは断固拒否し……今もそれを続けている。
精液に成分を似せた擬似的な薬を代用しているが、精液ほどの効果は得られず妹は毎日激痛に苦しめられている。
しかもその擬似薬では習慣性により徐々に効果は薄れていくとのことで
現に日に日に妹の苦しむ時間は増し、その度合いも強くなっているように感じた。
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:29:41.50 ID:qe4hxDyc0
「水でも持ってくるか……?他に何か欲しいものは?」
もうすでに俺は妹に『大丈夫か?』なんて言葉はかけることはなく
なっていた。
そんな無意味な言葉より簡潔に何を求めているかだけ尋ねる。
今うちの家に両親は不在だ。
母さんは3年前に他界した。親父は妹の治療のために
日本より研究が進んでいるヨーロッパを飛び回っており隔週の週末しか帰ってこない。
妹の世話は出来る限り俺がしなければいけない……もっともこの病気は激痛のサインが送られている時以外は
身体にはなんの影響も出ないのでその間は普通の人間と何も変わらない生活が送れるのだが。
しかし激痛に襲われる頻度と度合いが高まればそれも難しくなるであろうことは間違いない。
「く……す……り……」
妹はそう言った。症状を和らげる薬が欲しいと言っているのだ。
しかし、つい先日病院に言って一週間分を処方して貰ったばかりだ……
俺は妹の部屋の明かりをつけた。
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:35:35.52 ID:qe4hxDyc0
「……っ!!」
すると机の上に空になった一週間分の薬のボトルがあった。
さらにそのボトルはハサミか何かで乱暴に切られている。
おそらく、一滴残さずあまさず飲むために妹がやったのだろう。
一目でまずいとわかった。薬の効き目が殆どなくなっているのだ。
さらにこれでは妹は一種の薬物依存も同然だ。
こんな深夜に薬は用意できないし……できたとしても明らかに過剰摂取している妹にこれ以上飲ませるわけにはいかない。
むしろこれからは薬も自分が管理して妹に毎日適量を飲ませるようにしなければいけないだろう。
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:41:28.95 ID:qe4hxDyc0
「とりあえず水持ってくるからな……」
今の妹は苦しみのあまり喉の渇きすら感じていないのだろうが、あれだけ汗をかいているなら身体は当然水を欲しているはずだろう。
俺が水をコップに汲んでくると妹は案の定、「こんなものより薬が欲しい」という恨みがましい視線を送ってきたが
いざ飲み始めると、一気に水を飲み干した。俺はペットボトルの水をコップにもう半分ほど入れた。
「はぁっ……はぁっ……はぁ……」
水を飲ませてからしばらくすると妹の様子は大分落ち着いてきた。
痛みには感覚の波があるようでしばらく耐えれば和らいでいくらしい。
「あり……がと」
とりあえず俺に礼を言うぐらいの余裕も出てきたようだ。
「落ち着いたみたいだから俺戻るけど、なんかあったら呼べよ……あと、汗凄いからタオル持ってくるよ」
妹の細い身体に薄手のパジャマがぴったりと貼り付いているのを見て俺はそう言う。
お湯に濡らしたタオルと洗面器だけ持っていくと、後は本人に任せて大丈夫だろうと俺は部屋に戻った。
そして再び布団に潜り込み今度こそ寝ようとしたその時……
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:45:54.89 ID:qe4hxDyc0
「あぁあああーーーーーーーっっ!!」
再び妹の部屋から……今度は絶叫が聞こえた。
俺は飛び起きると今度はノックもせずに妹の部屋のドアを開けた。
「……っ!!」
するとベッドの上で妹が四肢を投げ出し、痙攣しながら痛みに泣き叫んでいた。
「あぁああーーっ!!痛いっ!痛いっ!!痛いぃーーーーーー!!」
周囲には脱ぎ捨てられたパジャマと下着があり、妹は全裸だった。
おそらく汗を拭く途中で激痛に襲われたのだろう。
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:48:03.64 ID:qe4hxDyc0
周囲には脱ぎ捨てられたパジャマと下着があり、妹は全裸だった。
おそらく汗を拭いている途中で激痛に襲われたのだろう。
この病気の痛みの襲ってくる間隔は医者にも本人にも、誰にも予期できない。
痛みが治まったと思ったらいきなり再発し、じわじわ痛みが襲ってくることもあれば突然激痛がピークに達することもある。
今回の妹は明らかに突然、最大レベルの激痛に襲われたのだろう。
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:51:55.33 ID:qe4hxDyc0
「あーーーっ!!あぁーーーーーっ!!うぁあああーーーーーっ!!」
痛みに絶叫し続ける妹。
まだ未熟ながらはっきり膨らみを確認できるようになった胸や
細身なのに同時に丸みを帯びている肢体を見て俺は少し戸惑うが……
そんな裸の妹の身体を俺はぎゅっと抱きしめた。
この病気は症状が出ると痛みのあまりのた打ち回り、骨折など他の大きな怪我をすることもおかしくないからだ。
しかしそれとは別に、妹の病気を治してやることも代わりに痛みを引き受けてやることは出来なくとも。
俺は兄としてこれぐらいのことはしてやらねば気がすまなかった。
妹が凄い力で俺の背中に爪を立ててくる、当然痛みは感じるが、こんなものは妹の感じている痛みに比べればなんでもないものだろう。
不意に下半身に暖かい液体が広がっていくのを感じた。
妹が激痛のあまり失禁したようだ。しかしそんなことは今は俺も妹も気にしている余裕はなかった。
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 09:58:34.74 ID:qe4hxDyc0
「……っっ!!……~~~~~ぁっっ!!」
妹の口から悲鳴が聞こえなくなった。
しかし痛みが治まったわけではなく絶叫する体力がなくなったか、あるいはもはや声すら出せない激痛なのかもしれない。
俺たち兄妹にとって地獄でしかない時間が続く……妹の症状が治まったのはそれからどれぐらいしてからだろう。
時計など見る余裕はなかったが客観的にはそれほど長い時間ではなくほんの数分程度……
だが俺には一時間にも二時間にも感じられた。妹はおそらくそれ以上であろう。
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 10:02:50.17 ID:qe4hxDyc0
「はぁ……はぁ……はぁ……」
妹は再び汗に塗れ、裸の肢体をベッドの上に投げ出し息を乱している。
痛みは和らいでも心身の消耗は尋常ではなかったのだろう。
思春期の裸身を隠す余裕もなく、苦しみの余韻に喘いでいる。
このままでは……本当に妹はそのうち死んでしまう。俺はそう思った。
妹の身体にとりあえず布団をかぶせて隠してやると、俺は細心の注意を払いながら言葉を投げかけた。
「なぁ……このままじゃ本当に危険だ……精液飲まないのか?」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 10:07:45.12 ID:qe4hxDyc0
その言葉を聞いた直後、妹の目が見開かれ、俺の顔面に枕が叩きつけられた。
目をやると妹は裸の上半身を布団から起き上がらせ、血走った怒りの形相で俺を睨んでいる。
「飲まない……絶対に飲まないっ!!その話は二度としないでって言ったでしょうっ!!」
俺は最初からこの反応は予想していたので驚きはしなかった。
この話題で妹が激怒したのは一度や二度ではないからだ。
しかしそれは承知で俺は妹に精飲を薦めずにはいられなかった。
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 10:10:12.09 ID:qe4hxDyc0
「だけど、このままじゃ本当にお前死ぬぞ!?……毎日苦しんでる妹の姿なんか耐えられないんだよっ!!」
別に嫌われたって殴られたっていい、俺は思い切ってそう叫んだが。
「……うるさいっ!!出てってよ!!……でてけぇっ!!」
妹は癇癪を起こして部屋の中のものを手当たり次第に投げつけてきそうだった。
思わず俺も感情的に怒鳴り返してしまいそうになるが、それは状況を悪化させるだけと思いなおし、とりあえず部屋を後にした。
精液など飲みたくは無い。その気持ちはもちろん判るが
しかし毎日絶叫して失禁するほどの苦痛を味わい、死の危険すらあるというのに
なぜ妹はここまで精液を飲むことを頑なに拒否するのか俺にはわからなかった。
……しかしもはや手段を選んではいられない……妹に精液を飲ませなければ……
第一話 完
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 10:43:58.08 ID:qe4hxDyc0
あたしが味わった人生最大の痛みは小学校低学年の頃。
お兄ちゃんと一緒に遊んでいて木から落ちて腕の骨を折った時だった。
その時の痛みは数年経っても忘れられない。あの時痛みに泣き叫んでいた自分と、お兄ちゃんが必死に人を呼んでたのを思い出す。
ただそれは……この病気にかかる以前までだ。
この病気になってから、あんなのちょっと転んですりむいたのと変わらなかったんだと思うようになった。
最初にこの病気で痛みを感じた時はあの時の腕の痛み以上の激痛がそれこそ全身を同時に襲ってきた。
全身の骨が同時に折れたんじゃないかと思った。
人生最大の痛みが一気に記録更新された瞬間だった。
でもさらに恐ろしいのはその人生最大の痛みがさらに何度も更新されていくこと。
あの最初の時の痛みは今の痛みに比べれば腕の骨が折れたのと変わらなかったんだと思うようになった。
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 10:50:42.34 ID:qe4hxDyc0
それ以来あたしは……おそらく人間の脳が機能として痛みとして感じるように作られている
ありとあらゆる苦痛を味わうことになった。
体中の一ミリ四方に一本ずつ針が少しずつ刺さっていくような発狂しそうな痛みが走ることがあった。
全身火だるまになったんじゃないかと思う灼熱感を味わうこともあった。
五臓六腑に猛毒が染み渡っているんじゃないかと思うような、内側から破壊されるような苦しみを味わったこともあった。
実際にその痛みを同じことが身体に起こったら間違いなく死んでいるんだろうけど
幸か不幸か実際には身体には傷一つついていないのであたしは生きている。
でもあたしと同じ病気になった人には実際に身体が傷ついていなくても
あまりの痛みでショック死したり継続する激痛に衰弱死したりした人も多いらしい。
正直それ自体は驚かなかった。自分だって何度死ぬと思ったかわからない。
むしろ生きてる方が不思議なくらい痛いんだから。
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 10:55:10.87 ID:qe4hxDyc0
この痛みから逃れる方法はある……それは、男の人の精液を飲むこと。
あたしはそれを聞いた時最初はただ単にそれは絶対に嫌だと拒絶した。
でも今は正直……それでこの激痛が治まるなら安いものだと思っている。
今あたしは生きたゴキブリを食べれば病気が治ると言われれば喜んで食べる。
実際精液を飲んでこの病気が「治る」なら飲んでやる。
だけどあたしは精液は絶対に飲まない。そう決めた。
それはこの病気にかかった人が精液を飲んだ後どうなったか知ったから。
お医者さんは隠していたみたいだけどネットなどで調べて知ってしまった。
この病気は精液を飲んでも治るわけじゃなく、定期的に飲み続けなければいけない。
その結果精液を飲んでこの痛みを和らげた人はいわゆる「中毒状態」になり精液を求め続ける。
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:03:08.56 ID:qe4hxDyc0
そして精液を手に入れるためならあらゆるプライドも倫理感も捨てた存在に成り果てることを知った。
精液を求めて、男の人……体力的に抵抗できないまだ精通直後の男の子を連続でレイプしたり
精液を貰うために風俗の中でも最底辺の変態的な仕事をしたり……
精液のためなら殺人を犯した人までいるらしい。
それはしょうがないのかもしれない。憎むべきは病気でありその人たちは悪くないのかもしれない。
でもあたしは絶対にそんなのになるわけにはいかない。
自分自身の自尊心もそうけどそれ以上にあたしがそんなのになったら
お父さんもお兄ちゃんも世間に後ろ指指されて生きなきゃいけなくなる。
いや、それどころかあたしの飲む精液を集めるために犯罪に手を染めるかもしれない。
そんなの絶対ダメだ。
だからあたしは絶対に精液を飲むことに逃げないと決めた。
その結果……死ぬならそれも仕方ないと思った。
72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:08:58.78 ID:qe4hxDyc0
あたしは今学校に通う通学路の途中だ。
この病気は痛みを感じている時以外はなんの問題もないからその間は普通に過ごせる。
だけど痛みはいつ襲ってくるかわからないからあたしは常に怯えている。
痛みは夜に襲ってくることが多いから幸い学校の行きから帰りまでに耐え切れない激痛に襲われたのは数えるほどしかない。
……でもそれも時間の問題な気がする。この頃痛みを感じる頻度が明らかに増えてきた。
日中にも毎日のように激痛を感じるようになったらもう学校に通うことも出来なくなるだろう。
……だからこそ通えるうちは学校に通いたい。
皮肉なもので健康だった時は学校なんてどうやったらサボれるだろうなんてことばっか考えてたのに
今は一日でも長く学校に通いたいのだ。
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:16:14.36 ID:qe4hxDyc0
あたしの病気はすでに学校でも知られているのでみんなから理解と誤解を同時に得ている。
「肉体そのものにはなんの影響もないのに突如行動不能になるほどの激痛が襲ってくる原因、治療方不明の病気」
精液を飲めば症状が和らぐ部分は伏せられている。
だけど今の世の中、あたしがそうだったようにちょっと調べれば中学生だって情報は入ってくる。
結果、大多数の生徒はあたしに好意的で協力的で、むしろ病気の前より親しい友達は増えたぐらいだけど
中にはあたしが精液を求めて夜な夜な俳諧してるとかあらぬ噂を立てたり
俺のザーメンで良ければ飲むかとかふざけたことを言ってくる輩もいる。
……でもそれが噂じゃなくて事実になってしまったらそれこそが恐ろしい。
あたしに改めてその事実を突きつけてくれたという意味ではそういう連中にも感謝している。
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:21:30.64 ID:qe4hxDyc0
そして最近……お兄ちゃんがあたしに精液を飲むように説得をしてくることが多くなった。
わかってる、本気で心配してくれてるってのは。あたしが毎日苦しんで、死ぬかもしれないのが見ていられないんだって。
でもあたしは絶対に精液を飲むわけにはいかない。
ヒステリックに振舞ってごまかすのも限界になってきた。……どうしよう。
それに……そろそろお兄ちゃんはあたしに精液を飲ますためなら手段を選ばなくなってきそうな予感がした。
第二話 完
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:34:20.51 ID:qe4hxDyc0
俺は妹になんとかして精液を飲ませる方法を考えた。
いっそ力づくでも飲ませてやろうかとも思ったがそれは賢くないだろう。
……まずは、何故妹はそこまで精液を飲みたくないのかを真剣に話し合ってみることにした。
理由が判れば解決方法も浮かぶかもしれない。
俺は夕食の後に妹に話を切り出した。
「いいか?ちょっと話がある」
妹がこの病気にかかって以来、俺は最大限妹を気遣い優しく接してきたつもりだ、悪く言えば腫れ物に触るように扱ってきたわけだが
今回は有無を言わせず静かだが強い口調で切り出した。
86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:36:04.65 ID:qe4hxDyc0
「先に言っておくけど、怒るのはいいが感情的になって叫んだり暴れたりは無しだ」
「……」
妹は答えないが、その沈黙を同意と俺は見なす。
「俺は真剣にお前の話と言い分を聞くし、俺の方もお前を怒ったりはしない、だから正直に落ち着いて話してくれ」
「……」
俺の口調に妹も思うところがあったのか、神妙な表情でうなづいた。
「単刀直入に聞くぞ。なんでそんなに精液を飲むのが嫌なんだ?
……もちろん出来れば飲みたくない気持ちはわかる。
でもお前の味わってる苦痛はそれの比じゃないはずだし命の危険だってあるんだぞ?
正直ただ気持ち悪いとか恥ずかしいという理由だけで拒否し続けているとは思えない」
俺は一気に話の核心部分を話した。
89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:42:41.17 ID:qe4hxDyc0
「……わかってるの?」
しばらく黙っていた妹の口から出た言葉はそれだった。
「……精液飲んでこの病気の症状和らげてる人がどうなったかわかってるの?
みんな麻薬中毒者以下の変態や犯罪者に成り下がってるじゃない!」
妹の言葉に俺は驚いた。
……知らなかったわけではない。
俺だって妹の病気のことはそれこそ、辞書片手に外国の医学書を悪戦苦闘して読んだり
便所の落書きと呼ばれる掲示板でこの病気を揶揄する書き込みに憤慨しながら質問したり
自分なりに調べつくしたのだ。
だから精液を飲んでそのような結果をたどっている人間たちのことも当然俺は知っていた。
93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:48:03.52 ID:qe4hxDyc0
だが俺にとっては妹が毎日死ぬほど苦しんでることに比べればそんなのはどうでもよかった。
ただ生きていて欲しかった。精液なんか自分のはもちろん必要とあればいくらでも俺が集めてきてやると思った。
だから思ったそのことをそのまま口にした。
「それがどうした!それでお前が生きていられるなら俺はそれでいい。お前がそんなことしたくないと言うなら……」
「……俺が代わりにやるとでも言うつもり!?」
俺の考えを呼んでいたかのように妹に言葉を遮られ、俺は驚いて言葉に詰まる。
96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:50:40.82 ID:qe4hxDyc0
「だからダメなんだよ……絶対にそれだけは……ダメなんだよっ!!」
涙交じりでそう言った妹に、それ以上俺は何も言えなくなる。
俺は妹の考えを理解してしまったから。そしてこれは説得しても無駄だとも……
だがその上で俺の方も妹に精液を飲ませることを諦めるわけにもいかなかった。
これ以上は話し合っても平行線だ。お互いに理屈ではないのだから。
こうなったら仕方ない……なんとか妹に気づかれず、精液を飲ますしかない。
98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:54:04.19 ID:qe4hxDyc0
俺は自分の本心とは裏腹にあえて妹が納得するだろう言葉を投げかけた。
「……わかった……とは言えないけれどとりあえず今はお前の意志を尊重する。
でも気が変わったらいつでも俺に言え。俺も親父もお前のためならなんでもするしそれを苦とも恥とも思わない。
お前がそれが嫌だという気持ちは理解できるから、今はこれ以上は何も言わない」
妹に精液を飲ませるためには疑われてはいけない。
精液を飲ませることに固執はしない、でも不自然に思われないよう
あくまで諦めてはいないスタンスを演じることにしたのだ。
101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 11:59:34.99 ID:qe4hxDyc0
その日から俺はプロテインや亜鉛など精液を増やすのに良いと言われているものを
ギリギリまで多く摂取することにした。もちろん妹には気づかれないように。
個人差もあるが普通の男が一日分に出す精液ではこの病気の症状を和らげるには明らかに足りないのだ。
俺の精液を飲ますにはまず自分の精液を増やさなければ話にならない。
その上で妹が食べる食事や飲み物にそれを混ぜる算段を立てた。
万が一にも気づかれてはいけない。気づいたらその瞬間妹は絶対に俺が関わった飲食物を口にしなくなる。
疑われることすら避けなければいけない。
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 12:02:58.70 ID:qe4hxDyc0
俺はまず自分で自分の精液を料理や飲み物に混ぜ。
2つのうちどちらか片方に精液が入っていることを混ぜた自分でもわからなくなるように工夫したりした……
傍から見ると異常者にしか見えない行為だろうが俺は真剣だった。
妹のためなら自分でも言った通り苦とも恥とも思わなかった。
あの時の言葉はこの部分だけは嘘偽りない本心だった。
しかし、妹は鋭い。
俺が当然飲食物に精液を混ぜてくる可能性は考慮しているだろうし
現に最近明らかに自分の摂取するものを意識しているようだ。
俺が出したものは安易に口にしないだろうから折角の精液を無駄にしないためにも
計画的に行動しなければならないだろう……
第三話 完
113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 12:25:17.48 ID:qe4hxDyc0
お兄ちゃんと話し合ってから数日が過ぎた。
いや、話し合いと呼べるものじゃない、単なるお互いの気持ちを口にしただけなのだけど……
その結果お兄ちゃんはあたしの気持ちと考えを……一応理解してくれたみたいだ。
お兄ちゃんの考えは大体あたしの思ったとおり。
やはりあたしのためなら何でもするつもりだった。
……それが嬉しくもあり悲しくもあった。
今は学校で……今日は体育の授業だ。
病気のことがあってから、教師からは体育は見学するかと聞かれたが
痛みを感じているときは影響がないのでいつも普通に参加した。
本当に健康な時は生理だなんだと嘘をついてサボりたがってたのが嘘みたいだった。
まるで小学校の時に戻ったみたいに体育が楽しい。
身体を動かすことこそ病状がさらに悪化したらもう出来なくなるかもしれない……
だから今は精一杯楽しみたい。
そう思いながら貰ったパスを両手でリングに向って放ろうとした瞬間。
117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 12:35:07.31 ID:qe4hxDyc0
「……っっっっっっ!!!!!!!」
全身をとんでもない激痛が襲った。
「……いぎゃっ……!!」
悲鳴が出せたのはほんの一瞬、それより先はもはや悲鳴が出てこない激痛だった。
一瞬でピークに達してくる痛みかと思ったけど違った。
すでにこれ以上ありえないと思うほどの痛みがさらにどんどん増していくのだ。
「~~~~~~っっ!!」
その場に倒れこんだあたしをみんなが取り囲み、ざわめいている。
教師がかけより何か話しかけて、保険医を呼べなり病院に連絡しろなり言っているが
全てが無駄なのはわかっているからどうでもよかった。
自分が痛みのあまりおしっこを漏らしてるのがわかったけど
それもどうでも良かった。人間極限まで痛いと羞恥心なんか消えるんだ。
だからあたしも……お父さんやお兄ちゃんのことさえなければ
精液を飲んで楽に慣れるなら何にも気にせず飲んでしまっていただろう。
そして恥なんか感じずに精液を求め啜る女になっていただろう。
118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 12:42:01.15 ID:qe4hxDyc0
それにしても何という痛みだろう。
もうとっくに脳が処理できる限界の痛みを味わってきたと思っていたのにそれをさらに超える痛み。
全身の指先一本一本から走る細かい神経に余すところ無く焼け爛れた有刺鉄線を巻きつけてさらに高圧電流を流し続けでもしたら
こういう痛みになるのだろうか?
いや、もはやそれすら控えめな表現に感じる痛み。
形容不能なレベルの痛み。味わったことのない人間には想像すらできない痛み。
マズイ、痛すぎて今度こそ死ぬかもしれない。
ショック死というか脳が働きすぎてオーバーヒートしたり、身体が自己防衛のために死を選ぶんじゃないかとすら思える
これまでも何度も思ったけれどむしろなんでここまで痛い目に逢って死なないのかの方が不思議。
なんでこんなに思考がめぐるかも不思議。
今までは痛すぎて、痛いと感じる意外何もできなかったのに今回は過去最高クラスの痛みなのに考えがヤケに巡る。
脳が激痛のサインを送り続けている一方で痛みが強烈すぎて
他に紛らわすなり、なんとか助かる方法を見つけないと本当に死んでしまうから必死に活動しているんだろうか?
死ぬ間際の走馬灯ってヤツもそういう脳の動きなんだろうか?
ああ、じゃあやっぱりあたし死ぬんじゃない?
121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 12:50:57.64 ID:qe4hxDyc0
うん、これは無理だ、流石に今度こそ死にそう。
……というかもう死にたい。
嫌だ、もう嫌だ。
こんな痛いの嫌だ。
こんな苦しいの嫌だ。
いくらなんでも痛すぎる。いくらなんでも酷すぎる。
この病気になってから今まで普通に過ごしてきた日常がいかに素晴らしいかわかった。
痛みを感じている時以外は、何時来るかわからない激痛に怯えながらもそれでも凄く楽しくて……
生きていて良かった。もっと生きたいと実感するようになった。
でももう限界だ、こんな痛みに毎日耐えてなんか生きられない。
このままじゃいつか逃避として精液だって飲んでしまうかもしれない。
飲んだら絶対に後戻りできないのは自分でわかる。
だからもういい、ここで死ぬ。死んで楽になる。
お父さんごめんなさい、お兄ちゃんごめんなさい。
もうこれ以上は生きられません。
死ぬ……死ぬ……死ぬ……
あたしの意識はそこで途切れた。
第四話 完
136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 13:29:56.97 ID:qe4hxDyc0
親父が海外を駆けずり回った結果。ようやくたった一つ、かなり信憑性の高い治療方を見つけたという。
それはこの病気にかかった患者に毎日精液を一定量ずつ与え、それを長期継続していくことで
少しずつ痛みが和らぎ、完治したケースがあるとのことだった。
ただしその一定量というのはあくまで痛みを「死なない程度に和らげる」だけであり患者はその量を摂取しても
なお死に至るギリギリの激痛と毎日、長年に渡り闘い続けなければならない。
それに対して大量の精液を飲めば痛みを大幅に和らげることは出来る。
しかしその結果は妹の口からも出た精液中毒者になる道しかない。
よって妹には自分が精液を摂取しているということを
俺が最初に危惧したのと別の理由で決して気づかせてはいけない……
もし自分が精液を飲み、それによって痛みを和らげている。もっと精液を飲めばより痛みが和らぐ
そのことに気づいたらその瞬間からズルズルと精液依存症へまっしぐらだ。
おそらく現存するどの麻薬よりその依存性、中毒性は高く、逃れる術はない。
そしてそうなるともう完治の見込みは無い。
険しい道のりだが希望が見えてきた
……そう思った時、携帯電話が鳴った。
138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 13:39:17.06 ID:qe4hxDyc0
妹が倒れたとの知らせを聞いて俺は急いでかけつけた。
意識を失った妹は救急車で搬送されるところで、俺も同乗する。
「妹さんは激痛で意識を失っていますが命に別状はありません。しかし衰弱が酷いので入院が必要かもしれないです」
一緒に乗り合わせた救急隊員の一人が言った。
それに対して俺は
妹はとっくに痛みで気を失えるなんて段階は通り越してるんだよ。
単に激痛を味わいすぎた疲労で痛みが治まってから気を失っただけだ。
アンタらは本職なのにそんなコトも知らないのか?
そう叫びたい欲求にかられた。
いや……この人たちに怒りをぶつけても仕方ないのはわかっている、
それでも自分の妹がなぜここまで苦しまなければいけないのか。
地球上全てを憎んでも足りない気分だった。
気を失っている妹の顔は死人のようでもう目が覚めないんじゃないかと思えた。
待て……目が覚めそうにないくらい……気を失っている今なら……
俺はそう思い立つとおもむろにズボンから性器を取り出した。
140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 13:42:53.89 ID:qe4hxDyc0
そのことに気づいた救急車内がざわつく。
しかし俺はそんなことにはかまわず、むしろ周囲を睨みつけて言った。
「……先に言っておきます。今からすることを妹には絶対に教えないでください。
言ったら殺します。比喩や脅しではなく本当に殺します」
俺の鬼気迫る尋常でない様子が伝わったのか同乗していた人間達は無言で目を反らす。
そして俺は自分の性器を擦り始めた……妹に精液を飲ませるために。
しかし射精どころかなかなか勃起すらしない。
こんな状況で興奮なんて出来ないのは当然だが、それでも妹のためなんだ、しっかりしろよ!
と俺は自分を奮い立たせた。
141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 13:44:43.64 ID:qe4hxDyc0
俺の必死な様子に……一人の救急隊員が何をしようとしているか察したようだった。
そして俺を諭すように言った。
「待ちなさい、気を失ってる人間に無理矢理飲ませるのは危険だ……
病院につけば嚥下障害用の補助具があるからそれを使いなさい」
その言葉で俺は落ち着きを取り戻し、性器を一度ズボンにしまった。
そして、妹が搬送された病院で改めて医者にそのことを話し、許可を得ると
念のため睡眠薬を先に飲ませ、しばらくは目覚める心配のなくなった妹に精液を飲ませた。
144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/21(木) 13:49:56.26 ID:qe4hxDyc0
この日から俺は、意識を失った妹に精液を飲ませるという方法をとることにした。
一定量の精液を飲ませてもなお激痛は残るというのはある意味好都合であった。
最初にそうした時同様。妹は毎日のように激痛との闘いに疲弊し、気を失い
その時に妹に精液を飲ませることが出来るからだ。
通常の気絶と違い、衰弱に伴う失神であるため、数時間はまず目が覚めない。
そんな妹に本人の意思に反して精液を飲ませるのは罪悪感が沸く事もあったが、もう俺は迷わない。
これからも俺と妹は長く険しい道のりを歩むことになるだろう。
俺は毎日苦しみ続ける妹を見ているのが耐え切れず、大量の精液を与えてしまいたい欲求に幾度となくかられることだろう。
妹の方も苦痛に耐えかねて、死を望む……そんな可能性も否定できない。
だが俺は決してそうはさせない、妹も自分自身も律して……かならず完治させてみせる。
昔妹が怪我をして痛みに泣いていた時……何もできなかったあの時とは違う。
終わり
妹「精液を定期的に飲まなきゃ死ぬほどの激痛が走る奇病?」