1: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:12:29.612 ID:ofFL1v7E0.net
妹「お兄ちゃーん!」
兄「なんだ?」
妹「聞きたいことがあるんだけど」
兄「いいとも」
妹「“憤死”ってなあに?」
兄「……あのなあ、分からないことを聞くのはいいことだけど、もうちょい女の子らしい質問にしてくれ」
妹「だってどうしても聞きたかったんだもん」
5: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:15:29.374 ID:ofFL1v7E0.net
兄「しかし、なんでまた憤死?」
妹「最近、小説を借りたから読んでたら」
妹「『○○は憤死した』『××憤死しちゃいました』みたいな記述がしょっちゅうあるから」
兄「そんな甘栗みたいに憤死するのかよ。どんな小説だよ」
妹「で、憤死ってなんなの?」
兄「うーん、そうだなぁ」
兄「“憤”ってのはようするに、怒ったり悔しがることだろ?」
妹「うん」
兄「だからこんな感じなんじゃないか?」
兄「おのれぇぇぇ! おのれぇぇぇぇぇ! 許さんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
兄「……あ」プツンッ
兄「ガクッ、みたいな」
妹「脳の血管が切れちゃったってこと?」
兄「他には興奮しすぎて心臓がおかしくなったとか」
妹「うーん……」
妹「だけどさ、それって結局病死じゃない?」
兄「なんで?」
妹「だって健康の人がいくら怒ったり興奮したって、血管が切れたり心臓止まったりしないでしょ」
妹「人が怒りすぎて死にました、なんてニュース聞いたことないし」
妹「そういう人って元々体が弱ってて、遅かれ早かれそうなる運命だったんじゃないの?」
妹「それって憤死じゃなくて、病死なんじゃないの?」
兄「だけど、怒ったことがトリガーになったことは確かだろ?」
妹「でもたとえば、怒ったあまり車で無茶な運転して、事故起こして死んじゃった人がいたとして」
妹「そういう人は憤死なんていわれないよね? 多分事故死って扱われるよね?」
兄「そうかもしれないけど……」
兄「だけど俺がいった憤死の場合は、怒ったっていう精神の作用が直接体に作用して死をもたらしてる」
兄「一方、今お前がいった例だと、怒ったことでまず判断力の低下っていうワンクッションを挟んでから」
兄「事故を起こして死んでる」
兄「俺のいった死の方が、怒りと死の距離が近いんだよ。だから憤死でいいんだよ」
妹「だけどそれだって、結局持病が原因だし……」
兄「まあ待て待て。憤死の定義について言い争っててもしょうがない」
兄「ここはスマホに頼ろうじゃないか。ちょっと待ってろ」
妹「出た、グーグル先生!」
兄「……」
妹「どう、分かった?」
兄「憤死ってのはやっぱりそんな厳密に定義されたもんじゃなくて」
兄「たとえば、怒ったことで病状が悪化したり、ぶっ倒れたり、自殺したり」
兄「とにかく、直前に怒りを覚えるような出来事があった人物が死んだら、憤死ってことにされるらしい」
妹「じゃあ本当は怒ったことが原因で死んだわけじゃないけど、憤死扱いにされてる人もいるかもってこと?」
兄「そういうことだな。本人死んでるから確かめようがないわけだけど」
兄「こればっかりはしょうがない。歴史や記録ってそういうもんだもん」
妹「それはそうだね」
兄「せっかく色々調べたし、実際に憤死したとされる歴史上の人物について教えてやるよ」
妹「教えて教えて!」
兄「憤死したというと、この人だな。ボニファティウス8世」
兄「中世のローマ教皇、まあキリスト教のお偉いさんだわな」
妹「略したらボニハチだね!」
兄「なんかヌルハチみたいだな……」
妹「ヌルハチって中国の秦の始皇帝だっけ?」
兄「全然違う。だけど清の最初の皇帝だから……惜しいっちゃ惜しいかも」
兄「とにかくこの人は“アナーニ事件”ってのがあった後死んだから、憤死したっていわれてる」
妹「穴に……」
兄「おい、なに卑猥な想像してんだ」
妹「卑猥? 落とし穴を思い浮かべてただけだけど」
兄「俺が悪かった」
兄「このボニハチとフランスのフィリップ4世ってのがまあ揉めてたわけよ」
妹「どっちが偉いか的な?」
兄「まあ、それでいい。で、フィリップさんが側近に命じてボニハチを捕まえて監禁しちゃうわけだ」
兄「これをアナーニ事件という。1303年に起こった事件だ」
妹「私が産まれるずっと前だ!」
兄「俺もな。で、ボニハチはすぐ助けられるわけだけど、事件後すぐ体調崩して死んでしまう」
兄「これが“憤死”と表現されたわけだな」
妹「よっぽど悔しかったのかねえ」
兄「宗教のトップがそんな目にあわされたんだからな。相当屈辱だったのは間違いないだろ」
兄「屈辱というと“カノッサの屈辱”って事件もある」
妹「あー、聞いたことある!」
兄「こっちはさらに古くて、1077年の事件なんだけど」
兄「この時代でも教皇と皇帝が、叙任権っていう聖職者を任命できる権利について争ってて」
兄「ローマ教皇のグレゴリウス7世が、神聖ローマ帝国の皇帝ハインリヒ4世を破門して」
兄「このハインリヒ4世が許しをこいて、許してもらえるって事件だ」
兄「教皇TUEEEEEE!ってのを世に知らしめたわけだ」
妹「分かった! ハインリヒ4世が憤死しちゃうんだね」
兄「いや、憤死しちゃうのはグレゴリウス7世なんだ」
妹「なんで!?」
兄「結局この人、この後逆襲されちゃったみたいでローマを追われて……それで死んじゃったみたい」
妹「説明が雑ゥ!」
兄「しょうがないだろ、俺は歴史家でもなんでもないんだから」
妹「ハインリヒ4世はどうなったの?」
兄「この人はこの人で、その後自分の子供に王座追放されたり散々だったらしい」
兄「こっちも憤死したっていえるのかもしれないな」
妹「“喧嘩両憤死”ってことだね」
兄「嫌すぎる結末だな」
妹「今でこそローマ法王って、穏やかで、たまに来日したりしてくれる人ってイメージだけど」
妹「昔はバリバリ前線に立って、権力闘争やってたんだねえ」
兄「それこそ憤死しちゃうくらいにな」
妹「他にも憤死した人っているの?」
兄「ざっと調べたら、中国史はメチャクチャ多いな」
兄「有名な三国志でも憤死する連中はしょっちゅう出てくるし」
兄「特に有名なのは周瑜だろうなぁ。孔明にいいようにやられ続けて、最後は血を吐いて死んじまう」
妹「なんで天は私と孔明を生んだのだーってやつだね」
兄「ま、史実の周瑜は全然そんなことないらしいけど」
妹「話は変わるけど、あたし面白いことに気づいちゃったんだけど」
兄「ん?」
妹「憤死って、一文字変えるだけで他の意味になるんだよ」
兄「へえ」
妹「ハ行だけでも、まず“半死”……半死半生っていうよね」
兄「たしかに」
妹「“瀕死”、これももうすぐ死にそうって意味」
妹「“変死”、不自然な死に方って意味」
兄「へぇ~、面白いな」
妹「だけど……“ホン死”って言葉はないんだよね~」
兄「ないんだ。ありそうなもんだけどな」
妹「もしあるとしたら、漢字的にはブックで“本死”かな? 意味は“本で殴られて死亡”とかで」
兄「めっちゃ限定的な死に方だな……まあ、ぶ厚い辞書ならいけそうだけど」
兄「あ、どうせだったら“本当に死んでること”の方がいいんじゃないか?」
妹「ああ、“仮死”に対して“本死”みたいな?」
兄「そうそう!」
刑事『警部! 残念ながらガイ者の本死が確認されました!』
警部『そうか……』
兄「刑事ドラマでこんな感じで使ったらかっこよくね?」
妹「かっこいい!」
兄「これもしかして、新しい日本語としてイケるんじゃないか?」
妹「いけるいける!」
兄「よし、ちょっと文科省に電話して、新日本語として採用してくれるよう頼んでくる!」
兄「……ダメだったよ」
妹「残念……」
兄「日本語の歴史に新たな1ページを刻めると思ったのになぁ」
妹「ドンマイ、お兄ちゃん!」
兄「気を取り直して、憤死というと同じ読みの漢字違いで“刎死”って言葉もあるな」
妹「どういう意味?」
兄「“自分で首をはねて死ぬ”って意味だ」
妹「えぇー、自分で!?」
妹「自分で自分の首を切り落としちゃうわけ!?」
兄「いや、さすがにそりゃ無理だろ。せいぜい頸動脈を切って、失血死じゃないか」
妹「だけど、それも痛そう……」
兄「まぁな。意識がなくなるまで、自分の血がドバドバ流れるのを見るのは想像するだけでキツイ」
妹「頸動脈切ったら、天井まで血が飛ぶなんていうしね。ブシューって」
兄「やめてやめて、俺苦手なんだよそういう話」
兄「刎死というと、“刎頸の交わり”って言葉がある」
妹「なにそれ?」
兄「大昔の中国の廉頗と藺相如がお互いに“あなたのためなら首を切られてもよい”って誓い合ったっていう故事だ」
妹「相手のためなら死んでもいいってこと?」
兄「つまり、それだけ固い友情で結ばれた親友同士ってのをあらわす言葉だな」
妹「かっこいい……!」
妹「今の時代だったらどっちも美男子にされて、濃厚な絡みをやらされてそう」
兄「本当にありそうだな、それ」
妹「……とここで、ちょっと下品な言葉を思いついちゃったんだけど」
兄「なんだ?」
妹「たとえば、動物のフンにまみれて死んだら“フン死”だな……なーんて」
兄「実はいるんだな。そういう死に方した人物が」
妹「いるの!?」
兄「ヘラクレイトスっていう古代ギリシャの哲学者なんだけど、自分の病気を治すために」
兄「牛のフンを自分の体に塗りたくってそれが原因で死んじまったらしい」
妹「民間療法にも程があるよそれ……」
兄「本当かどうかは定かじゃないけどな」
兄「それにしても、世の中には色々な死に方があるもんだなー」
妹「そうだね」
兄「生まれ方はみんなだいたい一緒なのに、死に方は千差万別ってのも不思議なもんだ」
妹「お兄ちゃんは、もし死に方を選べるとしたらどういう死に方がいい?」
兄「俺か? そうだな……」
兄「どんな死に方するにしても、俺はお前のために死ねるなら悔いはないかな」
妹「お兄ちゃん、ありがとー!」ギュッ
兄「ハハ、よせよせ」
兄「ところで、事の発端はお前が小説を借りたからなわけだけど」
妹「うん」
兄「どこで借りたんだ? 図書館か?」
妹「ああ、これ?」
妹「最近彼氏できたから、その彼に貸してもらったの」
兄「お兄ちゃん憤死しちゃうぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
おわり
元スレ
兄「しかし、なんでまた憤死?」
妹「最近、小説を借りたから読んでたら」
妹「『○○は憤死した』『××憤死しちゃいました』みたいな記述がしょっちゅうあるから」
兄「そんな甘栗みたいに憤死するのかよ。どんな小説だよ」
妹「で、憤死ってなんなの?」
兄「うーん、そうだなぁ」
7: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:18:22.759 ID:ofFL1v7E0.net
兄「“憤”ってのはようするに、怒ったり悔しがることだろ?」
妹「うん」
兄「だからこんな感じなんじゃないか?」
兄「おのれぇぇぇ! おのれぇぇぇぇぇ! 許さんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
兄「……あ」プツンッ
兄「ガクッ、みたいな」
妹「脳の血管が切れちゃったってこと?」
兄「他には興奮しすぎて心臓がおかしくなったとか」
妹「うーん……」
9: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:21:37.775 ID:ofFL1v7E0.net
妹「だけどさ、それって結局病死じゃない?」
兄「なんで?」
妹「だって健康の人がいくら怒ったり興奮したって、血管が切れたり心臓止まったりしないでしょ」
妹「人が怒りすぎて死にました、なんてニュース聞いたことないし」
妹「そういう人って元々体が弱ってて、遅かれ早かれそうなる運命だったんじゃないの?」
妹「それって憤死じゃなくて、病死なんじゃないの?」
兄「だけど、怒ったことがトリガーになったことは確かだろ?」
妹「でもたとえば、怒ったあまり車で無茶な運転して、事故起こして死んじゃった人がいたとして」
妹「そういう人は憤死なんていわれないよね? 多分事故死って扱われるよね?」
兄「そうかもしれないけど……」
11: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:24:25.325 ID:ofFL1v7E0.net
兄「だけど俺がいった憤死の場合は、怒ったっていう精神の作用が直接体に作用して死をもたらしてる」
兄「一方、今お前がいった例だと、怒ったことでまず判断力の低下っていうワンクッションを挟んでから」
兄「事故を起こして死んでる」
兄「俺のいった死の方が、怒りと死の距離が近いんだよ。だから憤死でいいんだよ」
妹「だけどそれだって、結局持病が原因だし……」
兄「まあ待て待て。憤死の定義について言い争っててもしょうがない」
兄「ここはスマホに頼ろうじゃないか。ちょっと待ってろ」
妹「出た、グーグル先生!」
14: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:27:12.945 ID:ofFL1v7E0.net
兄「……」
妹「どう、分かった?」
兄「憤死ってのはやっぱりそんな厳密に定義されたもんじゃなくて」
兄「たとえば、怒ったことで病状が悪化したり、ぶっ倒れたり、自殺したり」
兄「とにかく、直前に怒りを覚えるような出来事があった人物が死んだら、憤死ってことにされるらしい」
妹「じゃあ本当は怒ったことが原因で死んだわけじゃないけど、憤死扱いにされてる人もいるかもってこと?」
兄「そういうことだな。本人死んでるから確かめようがないわけだけど」
兄「こればっかりはしょうがない。歴史や記録ってそういうもんだもん」
妹「それはそうだね」
16: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:31:16.409 ID:ofFL1v7E0.net
兄「せっかく色々調べたし、実際に憤死したとされる歴史上の人物について教えてやるよ」
妹「教えて教えて!」
兄「憤死したというと、この人だな。ボニファティウス8世」
兄「中世のローマ教皇、まあキリスト教のお偉いさんだわな」
妹「略したらボニハチだね!」
兄「なんかヌルハチみたいだな……」
妹「ヌルハチって中国の秦の始皇帝だっけ?」
兄「全然違う。だけど清の最初の皇帝だから……惜しいっちゃ惜しいかも」
兄「とにかくこの人は“アナーニ事件”ってのがあった後死んだから、憤死したっていわれてる」
妹「穴に……」
兄「おい、なに卑猥な想像してんだ」
妹「卑猥? 落とし穴を思い浮かべてただけだけど」
兄「俺が悪かった」
19: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:34:22.131 ID:ofFL1v7E0.net
兄「このボニハチとフランスのフィリップ4世ってのがまあ揉めてたわけよ」
妹「どっちが偉いか的な?」
兄「まあ、それでいい。で、フィリップさんが側近に命じてボニハチを捕まえて監禁しちゃうわけだ」
兄「これをアナーニ事件という。1303年に起こった事件だ」
妹「私が産まれるずっと前だ!」
兄「俺もな。で、ボニハチはすぐ助けられるわけだけど、事件後すぐ体調崩して死んでしまう」
兄「これが“憤死”と表現されたわけだな」
妹「よっぽど悔しかったのかねえ」
兄「宗教のトップがそんな目にあわされたんだからな。相当屈辱だったのは間違いないだろ」
20: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:37:24.104 ID:ofFL1v7E0.net
兄「屈辱というと“カノッサの屈辱”って事件もある」
妹「あー、聞いたことある!」
兄「こっちはさらに古くて、1077年の事件なんだけど」
兄「この時代でも教皇と皇帝が、叙任権っていう聖職者を任命できる権利について争ってて」
兄「ローマ教皇のグレゴリウス7世が、神聖ローマ帝国の皇帝ハインリヒ4世を破門して」
兄「このハインリヒ4世が許しをこいて、許してもらえるって事件だ」
兄「教皇TUEEEEEE!ってのを世に知らしめたわけだ」
22: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:40:59.461 ID:ofFL1v7E0.net
妹「分かった! ハインリヒ4世が憤死しちゃうんだね」
兄「いや、憤死しちゃうのはグレゴリウス7世なんだ」
妹「なんで!?」
兄「結局この人、この後逆襲されちゃったみたいでローマを追われて……それで死んじゃったみたい」
妹「説明が雑ゥ!」
兄「しょうがないだろ、俺は歴史家でもなんでもないんだから」
妹「ハインリヒ4世はどうなったの?」
兄「この人はこの人で、その後自分の子供に王座追放されたり散々だったらしい」
兄「こっちも憤死したっていえるのかもしれないな」
妹「“喧嘩両憤死”ってことだね」
兄「嫌すぎる結末だな」
23: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:44:15.009 ID:ofFL1v7E0.net
妹「今でこそローマ法王って、穏やかで、たまに来日したりしてくれる人ってイメージだけど」
妹「昔はバリバリ前線に立って、権力闘争やってたんだねえ」
兄「それこそ憤死しちゃうくらいにな」
妹「他にも憤死した人っているの?」
兄「ざっと調べたら、中国史はメチャクチャ多いな」
兄「有名な三国志でも憤死する連中はしょっちゅう出てくるし」
兄「特に有名なのは周瑜だろうなぁ。孔明にいいようにやられ続けて、最後は血を吐いて死んじまう」
妹「なんで天は私と孔明を生んだのだーってやつだね」
兄「ま、史実の周瑜は全然そんなことないらしいけど」
24: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:46:26.441 ID:ofFL1v7E0.net
妹「話は変わるけど、あたし面白いことに気づいちゃったんだけど」
兄「ん?」
妹「憤死って、一文字変えるだけで他の意味になるんだよ」
兄「へえ」
妹「ハ行だけでも、まず“半死”……半死半生っていうよね」
兄「たしかに」
妹「“瀕死”、これももうすぐ死にそうって意味」
妹「“変死”、不自然な死に方って意味」
兄「へぇ~、面白いな」
25: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:49:36.397 ID:ofFL1v7E0.net
妹「だけど……“ホン死”って言葉はないんだよね~」
兄「ないんだ。ありそうなもんだけどな」
妹「もしあるとしたら、漢字的にはブックで“本死”かな? 意味は“本で殴られて死亡”とかで」
兄「めっちゃ限定的な死に方だな……まあ、ぶ厚い辞書ならいけそうだけど」
兄「あ、どうせだったら“本当に死んでること”の方がいいんじゃないか?」
妹「ああ、“仮死”に対して“本死”みたいな?」
兄「そうそう!」
26: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:52:14.457 ID:ofFL1v7E0.net
刑事『警部! 残念ながらガイ者の本死が確認されました!』
警部『そうか……』
兄「刑事ドラマでこんな感じで使ったらかっこよくね?」
妹「かっこいい!」
兄「これもしかして、新しい日本語としてイケるんじゃないか?」
妹「いけるいける!」
兄「よし、ちょっと文科省に電話して、新日本語として採用してくれるよう頼んでくる!」
27: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:55:19.663 ID:ofFL1v7E0.net
兄「……ダメだったよ」
妹「残念……」
兄「日本語の歴史に新たな1ページを刻めると思ったのになぁ」
妹「ドンマイ、お兄ちゃん!」
兄「気を取り直して、憤死というと同じ読みの漢字違いで“刎死”って言葉もあるな」
妹「どういう意味?」
兄「“自分で首をはねて死ぬ”って意味だ」
妹「えぇー、自分で!?」
28: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 20:57:36.599 ID:ofFL1v7E0.net
妹「自分で自分の首を切り落としちゃうわけ!?」
兄「いや、さすがにそりゃ無理だろ。せいぜい頸動脈を切って、失血死じゃないか」
妹「だけど、それも痛そう……」
兄「まぁな。意識がなくなるまで、自分の血がドバドバ流れるのを見るのは想像するだけでキツイ」
妹「頸動脈切ったら、天井まで血が飛ぶなんていうしね。ブシューって」
兄「やめてやめて、俺苦手なんだよそういう話」
29: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 21:00:46.775 ID:ofFL1v7E0.net
兄「刎死というと、“刎頸の交わり”って言葉がある」
妹「なにそれ?」
兄「大昔の中国の廉頗と藺相如がお互いに“あなたのためなら首を切られてもよい”って誓い合ったっていう故事だ」
妹「相手のためなら死んでもいいってこと?」
兄「つまり、それだけ固い友情で結ばれた親友同士ってのをあらわす言葉だな」
妹「かっこいい……!」
妹「今の時代だったらどっちも美男子にされて、濃厚な絡みをやらされてそう」
兄「本当にありそうだな、それ」
33: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 21:04:01.743 ID:ofFL1v7E0.net
妹「……とここで、ちょっと下品な言葉を思いついちゃったんだけど」
兄「なんだ?」
妹「たとえば、動物のフンにまみれて死んだら“フン死”だな……なーんて」
兄「実はいるんだな。そういう死に方した人物が」
妹「いるの!?」
兄「ヘラクレイトスっていう古代ギリシャの哲学者なんだけど、自分の病気を治すために」
兄「牛のフンを自分の体に塗りたくってそれが原因で死んじまったらしい」
妹「民間療法にも程があるよそれ……」
兄「本当かどうかは定かじゃないけどな」
35: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 21:08:26.489 ID:ofFL1v7E0.net
兄「それにしても、世の中には色々な死に方があるもんだなー」
妹「そうだね」
兄「生まれ方はみんなだいたい一緒なのに、死に方は千差万別ってのも不思議なもんだ」
妹「お兄ちゃんは、もし死に方を選べるとしたらどういう死に方がいい?」
兄「俺か? そうだな……」
兄「どんな死に方するにしても、俺はお前のために死ねるなら悔いはないかな」
妹「お兄ちゃん、ありがとー!」ギュッ
兄「ハハ、よせよせ」
37: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 21:10:38.328 ID:ofFL1v7E0.net
兄「ところで、事の発端はお前が小説を借りたからなわけだけど」
妹「うん」
兄「どこで借りたんだ? 図書館か?」
妹「ああ、これ?」
38: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2019/11/05(火) 21:12:33.422 ID:ofFL1v7E0.net
妹「最近彼氏できたから、その彼に貸してもらったの」
兄「お兄ちゃん憤死しちゃうぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
おわり
妹「お兄ちゃん、“憤死”ってなあに?」兄「もうちょい女の子らしい質問してくれ」