過去作
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
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白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
白菊ほたると不思議体験その2
【モバマス】響子「混ぜる」ほたる「混ざる」
○2月13日(土)15時過ぎ/関東某所・ド田舎無人駅前
ほたる(ポカーン)
裕美(ポカーン)
千鶴(ポカーン)
黒塗りの高級外車(ドドーン)
運転手「松尾千鶴様、関裕美様、白菊ほたる様。お迎えにあがりました(深々)」
泰葉「どうしたのみんな、早く乗りなよ」
千鶴「いやいや。いやいやいやいや」
裕美「どうしたの、このお車」
泰葉「電話できるとこまで歩いてね。幸いお財布にカード入れてたからコンシェルジュさんにいろいろ手配してもらった」
ほたる「こんしぇるじゅ?」
泰葉「いやあ、年会費払っといてよかったなあ……このあと飛行機と向こうの宿も決めてあるから。早く早くカモンカモン」
千鶴「いや、早く早くったって」
ほたる「どうしよう、泰葉ちゃんが凄いテンションです」
裕美「うーん」
2: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:33:57 ID:7rN
○数週間前・夕刻/番組企画会議
番組D「……というわけで、今度の企画では偽企画を用意して、GBNSにドッキリを仕掛けさせていただこうかと」
P「4人とも深刻に捉えすぎるところがあります。ドッキリは罪のない物にして欲しいですね」
番組D「うーん」
P「……そうだ、現場に行く4人のスマホを板チョコとすりかえておくとかどうでしょう」
番組D「ああ、現場に着いてスマホ確認しようとしたら」
P「チョコレートが出てくるんです。で、びっくりした所にスタッフさんが出てきてごめんなさいと」
番組D「いいですねそれ。脅かすお詫びに、チョコは高級なヤツにしておきましょう」
P「くれぐれも、気をつけてくださいよ」
番組D「勿論です。では細かい内容についてですが……(とは言ったものの、それじゃ刺激が足りないんだよなあ……)」
○1週間前/都内某芸能事務所
泰葉「旅番組の企画ですか?」
P「ああ、GBNSの4人でな」
裕美「4人で旅なんて、楽しそう!」
ほたる「わくわくしますね……!」
P(脅かすけど、すぐフォロー入るから。許してくれよ……)
○6時間前(2月13日午前)/千葉方面行き鈍行列車内部
関裕美「……というわけで新番組『ご当地紹介トレイン』。第1回は私たちGBNSの4人でおとどけします!」
白菊ほたる「4人で列車で旅をして、その間の出来事を、目的地のすてきな所を精一杯お伝えする予定です」
松尾千鶴「道中の撮影は、ハンディカムで私たちが担当。今は泰葉ちゃんが担当してくれています」
岡崎泰葉「現在カメラ担当の岡崎泰葉です。声だけで失礼します」
裕美「今度は私がカメラを持つね(フンスフンス)」
千鶴「もう、裕美ちゃん張り切っちゃって」
ほたる「私もカメラ持ちたいです……難しいでしょうか(ワクワク)」
泰葉「このごろのハンディカムはそうそう失敗しないように出来てるから大丈夫だよ」
裕美「じゃあ、4人で順番ね、じゅんばん」
ほたる「はい!」
千鶴「……というわけで『ご当地紹介トレイン』、最後まで観てくださいね!」
泰葉「(ポチッ)はい、カット。乗ってくる人も増えて来たし、いったんカメラ止めよう」
裕美「泰葉ちゃんお疲れさま」
ほたる「緊張しました……」
千鶴「自分らでカメラとかまでやるのって、ちょっと勝手が違うよね」
泰葉「ソウダネ」
裕美「泰葉ちゃん、機嫌わるい?」
ほたる「どこか、調子が悪いとか」
泰葉「ソンナコトナイヨ?」
ほたる「……だったら、いいんですけど」
千鶴「まあまあ。目的地の駅までは長いんだし、リラックスして行こうよ」
裕美「そうだね……でも、窓の外って本当に田圃と山ばっかり」
千鶴「いい景色があったら撮ってって話だったけど、今のところ正直変化に欠けるね」
泰葉「裕美ちゃん、ほたるちゃん、退屈じゃない?」
ほたる「いいえ。4人だけで旅なんて、なんだかわくわくします」
裕美「さっきおばあちゃんからみかんもらったよ!」
ほたる「裕美ちゃんてご年輩の人とすぐ仲良くなれるんですよね」
裕美「いろいろな人と出会えるし、いろんな話が出来て楽しい」
千鶴「頼もしいけど、目的の駅までまだ結構あるからね。あまりテンション高いと疲れちゃうよ」
泰葉「カメラ回っていときは、ちゃんと休んでね」
裕美「うう、確かに(ちょこんとすわる)」
ほたる「目的の駅って、あとどのぐらいでしたっけ」
千鶴「14時過ぎには到着するみたいね。えーと(地図ごそごそ)ここね」
泰葉「本当に山の中の田舎っぽいよね。紹介できるものがどれだけあるんだろ」
千鶴「スタッフさんがくれた資料によると、結構色々あるみたいだよ。まあ、着いてからのお楽しみって事なだろうけど」
泰葉「……」
裕美「泰葉ちゃん、さっきから何か機嫌わるそう」
泰葉「ちょっとだけね。気にしないで。本当にほんのちょっとだから」
ほたる「大丈夫ですか?」
泰葉「大丈夫大丈夫」
千鶴「ほら、ほたるちゃん裕美ちゃん。到着した後で慌てないように、現地の資料を読み込んでおいたほうがいいよ」
ほたる「はーい(読み読み)」
裕美「はーい(読み読み)」
千鶴「泰葉ちゃん、どうしたの(ヒソヒソ)」
泰葉「……この席を観察できる所に、スタッフさんが居る気配が無いんだよね」
千鶴「やっぱりそれか」
泰葉「確かに表書きとしては私たちだけで旅して撮影も、って企画だけどね。安全確保のために何らかの形でスタッフさんが随行するものでしょ」
千鶴「ふつうね」
泰葉「見えないところから確認してるのかもしれないけど……ちょっと気にいらないなあって」
千鶴「……変なことにならなきゃいいけど」
○1時間半前(2月13日・14時)/関東某所・ド田舎無人駅
裕美「ついたー!!」
千鶴「長旅だったねえ」
ほたる「でも、なんのトラブルもなくて、よかったです」
千鶴「むしろ、ちょっと楽しかったよね」
裕美「私、おみかんの他にお大根と白菜も貰っちゃった」
ほたる「裕美ちゃん、道中本当に大人気でしたから」
泰葉「ご高齢の方と子供の食いつきは裕美ちゃんが一番だったねくそう」
ほたる「泰葉ちゃんがライバル意識を燃やしている……!」
千鶴「みかんはともかく、お野菜はどうしようか。かさばるでしょ」
ほたる「というかこんな立派なお大根初めて見ました」
裕美「がんばってね、おいしいよ、食べてねってくれたんだもん。ちゃんと食べたい(大根を抱く)」
泰葉「帰ったららこれでお鍋しようか。撮影中はスタッフさんの車に預かってもらえばいいでしょ。というか……」
(周囲に広がる山と農地と静寂)
千鶴「……スタッフさんはどこだろうね」
裕美「ここで合流って話だったよね?」
ほたる「はい、駅前のこのベンチで集合予定です」
千鶴「なんか凄い色々あるって話だったじゃない? 見てこの分厚い資料(ズシッ)」
ほたる「私、結局カメラ回ってないときはずっとこの資料読んでた気がします」
泰葉「ほたるちゃんは仕事熱心だよね……でも」
(周囲に広がる山と農地と静寂)
泰葉「こう言ったら悪いけど、貰った資料ほど活気がある場所には見えない」
裕美「確かに」
千鶴「降りる駅はここで間違ってないよね?」
泰葉「駅名は間違いないね」
ほたる「……スタッフさん、遅れてるんでしょうか」
裕美「かなり田舎だし、道中でトラブルがあったら困ったことになってるかも」
ほたる「どうしよう、もしかして私の不幸のせいで、何か」
泰葉「落ち着いて。単に遅れてるだけかもしれないし」
千鶴「とはいえ予定の時間に遅れてるのに連絡ないのは気になるし、連絡入れてみようか(ポーチゴソゴソ)……こ、これは!?」
裕美「ど、どうしたの千鶴ちゃん」
千鶴「スマホのかわりに、こんなものが」
裕美「そ、それはベルギーの板チョコ、コートドール タブレット・ノアーデノアー(税別600円)!!」
ほたる「お高くておいしいやつです!!」
千鶴「あれっ、スマホ入ってない、あれっ」
泰葉「(ゴソゴソ)……私のも板チョコになってる」
ほたる「私のもです」
裕美「私のも……えっ、みんな?」
千鶴「いったいいつの間に」
泰葉「朝、ADさんに駅まで車で送ってもらった時かな。あそこからは私たちだけで移動だったし」
千鶴「資料分厚いし自分らで撮影もしなきゃで道中スマホ確認する暇無かったしね。やられたなあ」
裕美「……どうしてこんなことを?」
泰葉「そりゃあドッキリでしょ。スマホだと思ったらチョコでした、わあびっくり」
ほたる「た、確かにびっくりしました」
裕美「じゃあ、スタッフさんがもうすぐ出てくるんだね。なあんだ」
ほたる「だめだよ裕美ちゃん。ドッキリなら、スタッフさんが出てくるまでは気がついてないふりをしないと」
裕美「そ、そうだね。撮影も続けた方がいいかな。ハンディカム、ハンディカム……」
千鶴「……」
泰葉「……」
~30分経過~
裕美「……」
ほたる「……」
裕美「スタッフさん、来ないね」
ほたる「はい……」
裕美「どうしたんだろう」
ほたる「もしかして、本当にトラブルがあったのでは」
裕美「……そうだね。こんなの、おかしいもんね」
ほたる「どうしよう、大丈夫でしょうか」
裕美「プロデューサーさんとかに連絡したほうがいいのかな」
ほたる「でも、スマホは無いし」
裕美「さっき駅を見て回ったけど、電話機もないみたい。次の電車も何時間か先で」
ほたる「そんな……スタッフさんたちに、もしもの事があったら。事故とかだったらどうしたら。知らせられなくて手遅れになったりしたら」
裕美「だ、だいじょぶだよほたるちゃん。もう少しだけ待ってみよう。ね?」
ほたる「は、はい」
裕美「遅れてるだけかもしれないから、その間ちゃんと撮影は続けよう」
ほたる「……じゃあ、駅の周りを撮ってみましょうか。あの、泰葉ちゃん、千鶴ちゃん」
泰葉「……ベンチがここで。光はこっちから欲しいから、居るとしたら向こう?(ヒソヒソ)」
千鶴「だね。あそこに農家あるでしょ。車が隠せそうなのってあそこぐらいしかなくない?(ヒソヒソ)」
ほたる「……なんの話してるんでしょう」
裕美「さあ……」
ほたる「あんまりひそひそ話になってないですね」
裕美「静かだし、私たちしかいないもんねここ……」
千鶴「で、たぶんあの影から撮ってるから……(ヒソヒソ)」
泰葉「あー。じゃ、行ってくる。大回りして向こうから、こう」
千鶴「近付くところ映らないように?」
泰葉「一応ね。万が一移動されたら困っちゃうし」
千鶴「解った。ほたるちゃんと裕美ちゃんは見てるから」
泰葉「お願いね。じゃ、行ってくる(スック)ほたるちゃん、裕美ちゃん!」
ほたる「は、はい!」
裕美「どうしたの」
泰葉「あとは私に任せて! (キラッ☆)」
裕美「えっ」
千鶴「無茶しちゃ駄目だよ?」
ほたる「えっ、えっ?」
泰葉「心配しないで。ここからはこのGBNS最年長、芸歴11年、4人の中で最大のバストを誇るこの私が引き受けたよ」
千鶴「バストのくだり必要だった?」
ほたる「というか突然のことでまず泰葉ちゃんが心配です」
泰葉「うっさい。とにかく行ってくるね(スタスタ)」
千鶴「行ってらっしゃい」
ほたる「行くってどこへ(ポカーン)」
裕美「引き受けたって何を(ポカーン)」
~さらに40分経過~
裕美「泰葉ちゃん、戻って来ないね……」
千鶴「まあまあ、もう少し待っていよう」
ほたる「泰葉ちゃんにまでトラブルがなければいいんですれど……あれっ、なんか車がこっちにきます」
裕美「ほんとだ、大きい。高そう」
ほたる「田舎の景色にものすごく不似合いですね……」
千鶴「えっ本当こっちに来る……って、あれは」
泰葉「みんなー、お待たせー(車の窓から手をぶんぶん)」
○そして再び2月14日15時過ぎ/関東某所・ド田舎無人駅前
千鶴「うわあ本当にめちゃくちゃ高級そうなお車だ……」
泰葉「でしょ? というわけでさあさあ乗って乗ってカモンカモン」
裕美「で、でも、スタッフさんとはここで合流することになってて」
ほたる「連絡もできないのまま勝手に離れたら、迷惑になるのでは」
泰葉「ちっちっちっ。2人とも、解ってないなあ」
裕美「解ってないって、何が」
泰葉「スマホがチョコレートになってたことの意味だよ」
ほたる「ドッキリ、なんですよね?」
泰葉「そうだけどその先がある。私たちに求めるもの、この企画の意図って奴が」
ほたる「ええっ!?」
泰葉「私たちから連絡手段を奪った意味。それは『自分たちに指示を仰がなくていいから好きに動いてみろ』って私たちへの挑戦だよ!」
裕美「そうなの!?」
ほたる「そんな意味が!?」
千鶴「いやいや。いやいやいや(小声)」
泰葉「考えてみてよ。事故とかならPさんに連絡が行って、そこからこっちに対処があるよ。それが無いってことは、この状況もコントロールされた企画の中だってこと」
ほたる「た、確かに」
泰葉「スタッフさんはいいから好きにしてみなよって言ってるんだよ。だったら、思い切り好き勝手やってあげよう。スタッフさんが追っかけるの苦労するぐらい」
裕美「な、なるほど?」
ほたる「い、いいんでしょうか」
泰葉「大丈夫。そのためにハンディカム渡されてるんじゃない、スタッフさんが驚くような場面を撮れば文句ないよ」
千鶴「ちょっと、ちょっと待って泰葉ちゃん」
泰葉「なあに?」
千鶴「いいからちょっと待って。こっち来て、こっち (引っ張り引っ張り)」
ほたる「ち、千鶴ちゃん?」
千鶴「泰葉ちゃんとちょっと打ち合わせしてくるから待ってて(引っ張り引っ張り)」
ほたる「は、はい……」
泰葉「千鶴ちゃん、あんまり引っ張らないでよー」
千鶴「いいからこっちに来て(物陰にひっぱりこむ)」
泰葉「なにさ人が気持ちよくしゃべってるのに(ヒソヒソ)」
千鶴「いいの? (ヒソヒソ)」
泰葉「何が(ヒソヒソ)」
千鶴「隠れてるスタッフさんに、話をつけに行ったはずだったじゃない。あそこに居たんでしょ? どうしてスタッフさんほっといて移動しようって話になってるの(ヒソヒソ)」
泰葉「うん、最初はそのつもりだったし、実際居たんだけど(ヒソヒソ)」
千鶴「居たんだけど?(ヒソヒソ)」
泰葉「その結果、付き合ってカメラの前に居てあげる必要ないと結論しました。あの人たち、車の中で居眠りしてるんだもん」
千鶴「え」
泰葉「腹立ったから、カメラのSDカード引き抜いて来てやった(ジマンゲ)」
千鶴「うわあ本当に持ってきてる」
泰葉「……連絡手段取り上げて置き去りにして、私たちが不安がるのを撮りたかったんだろうけど」
千鶴「……うん」
泰葉「指示を出さなきゃ人間は勝手に動く。その行動を追いきれないのは向こうの怠慢であって、私たちの責任じゃない。それに(ヒソヒソ)」
千鶴「……それに」
泰葉「ほたるちゃんと裕美ちゃんを心配させといて、不安がらせて。定点でカメラ回して居眠りしてるなんて、ちょっと許せない」
千鶴「……うん」
泰葉「いやあ残念だなあ。スマホがあればスタッフさんに事情を確認したかったけど、スマホがチョコになってるんだもん。残念だなあ、仕方ないなあ(スタスタ) 裕美ちゃん、ほたるちゃんお待たせー!!」
千鶴「泰葉ちゃん……」
泰葉「さあ、みんな早く乗って。一番早いコースで空港まで行って、そこから一気に高知まで高飛びするからね」
ほたる「今高飛びって言いませんでしたか?」
泰葉「言ってないよ?」
裕美「どうして高知なの?」
泰葉「ここから移動して一番早く乗れる国内便の飛行機がそれだったから!」
千鶴「うわあ本気で足取り追えなくする気だ」
ほたる「……大丈夫でしょうか」
泰葉「いいの。好きにやれって言ってるのは向こうなんだから、思い切り好きにやってあげればいいんだよ。それを追いかけるのが向こうの仕事じゃない」
裕美「泰葉ちゃん、悪い子だ……!」
泰葉「ふふーん、これがベテランの怖さというものでーす……それに、面白そうだと思わない?」
ほたる「じ、実はちょっと」
裕美「私、高知って行ったことないや」
泰葉「私、子役時代に何度か高知ロケ行ったことあるから色々案内できるよ」
裕美「さすが芸歴11年……!」
ほたる「観光案内も隙なし……!」
泰葉「さ、乗って。運転手さんいつまでも待たせるの、悪いでしょ」
運転手(無言でドアを開けて待機してる運転手)
裕美「そ、そうだね。おじゃまします(ペコリ)」
ほたる「こ、これ、靴を脱いで上がったほうがいいですよね?」
泰葉「いやいやふつうに靴を履いたままで乗ってよ」
千鶴「うわあ、座席がすごい座り心地……!」
裕美「あったかい……! 広い……!!」
(静かにドアを閉める運転手)
ほたる「わあ、ドアの音が重い……!」
泰葉「事務所の車もいい車だけど、さすがにちょっとモノが違うよねえ」
運転手「それでは、出発してよろしいでしょうか」
泰葉「はい。よろしくお願いします(ペコリ)」
ヒュルルルル……
千鶴「うわあ、音、静か……!!」
泰葉「幽霊のように静かって、このことだね」
裕美「どうして突然オバケの話なの」
泰葉「この車、幽霊の名前がついてるんだよ」
裕美「お菊さんとか?」
泰葉「あはは、そういうのじゃないけど」
運転手「暖かい飲み物を用意してございますので、道中よろしければお召し上がりください」
裕美「……そういえば、冷えちゃってたね」
ほたる「わあ、ココア暖かい……!! はい、千鶴ちゃんもどうぞ」
千鶴「ありがと……はー、暖まる……」
裕美「すごい、全然揺れない、早い……」
ほたる「……あれっ?」
千鶴「どうしたの?」
ほたる「……今の農家の納屋に、ロケバスみたいな車があったような」
泰葉「気のせいだよ」
○同日夕刻/高知竜馬空港行き飛行機機内
裕美「ううううう」
千鶴「裕美ちゃんはどうしてお野菜抱きしめてそんな顔してるの?」
裕美「だって私、さっきの高級車の中でも、飛行機の中でも、ずっと大根と白菜抱えてるんだよ!!」
ほたる「とっても場違いでした」
裕美「自覚してる!!」
千鶴「仕方ないじゃない。捨てるのはヤダって言うし、きちっと梱包する暇なくて手荷物カウンターに預けられなかったし」
泰葉「私、飛行機に野菜持って乗っていいなんて初めて知った」
ほたる「私もです(ジー)」
裕美「ほたるちゃんは、さっきからどうして私を撮影してるの」
ほたる「えっ、だっておもしろシーンは撮影しとかなきゃって」
裕美「ひょっとして私、この後宿に着くまでずっと大根抱えてるのかなぁ」
泰葉「今夜の宿も歴史ある老舗ホテルだよ!」
裕美「わあん、大根持って高級ホテルに乗り込むなんてー!!」
ほたる「でも絶対面白いですよ。その場面、録画しておきましょう」
千鶴「ほたるちゃんが楽しそうで何よりだね」
裕美「何よりじゃなーい!」
千鶴「そんなに邪魔だったら、空港で始末してもらえばよかったのに」
裕美「だめ。おばあさんが親切でくれたんだから、捨てるなんて絶対ダメ」
ほたる「裕美ちゃんのそういうところ、私、とっても素敵だなって思います(ジー)」
裕美「カメラを回しながらのセリフでなければとってもうれしかったのにぃ」
泰葉「裕美ちゃんはほんといちいち反応がいいなあ……」
千鶴「1人で撮れ高バンバン稼いでくれそうだね……」
泰葉「これは私もうかうかしていられないな……!」
裕美「ちっともうれしくないぃ」
◇
◇
ほたる(……ん……むにゃ……)
ほたる(……あれ、寝ちゃってたみたい……)
ほたる(今日は寒かったし、緊張したから……)
ほたる(裕美ちゃんは……お隣で寝てる)
ほたる(泰葉ちゃんと千鶴ちゃんは……)
ほたる(ハンディカム見てる? 今日撮影したぶん、確認してるのかな)
ほたる(でも、それにしては、なんだか難しい顔……)
千鶴「……Pさんはこの企画、承知してると思う?」
泰葉「こういう無責任なの許すはずないでしょ」
千鶴「だね。番組側が勝手に……」
泰葉「とはいえ……」
千鶴「……変な色が……」
泰葉「私が今夜……」
ほたる(……なんの、話……)
ほたる(だめ……ねむ……)
ほたる(すや……)
○数時間後/高知県南国市・高知竜馬空港から高知市への道中
高級外車(ブロロロロロロ……)
ほたる「当然のように高級外車で移動……!」
裕美「そしてまだお野菜抱えたままの私……!!」
ほたる「なんだかその姿も見慣れてきました」
裕美「なんだか私、事務所に帰るまでずっとお野菜抱えて旅をするんじゃないかって気がしてきた」
ほたる「ネガティブな予想ほどよく当たるんですよ」
裕美「ほたるちゃんが言うと説得力が半端無いなあ……」
泰葉「2人ともひと眠りして元気になったね」
千鶴「よかったよかった。これで宿に着くまで撮影のリアクション担当は2人に任せて大丈夫だね」
裕美「信頼があまりうれしくないです」
ほたる「……あの、泰葉ちゃん」
泰葉「なあに? (ニコニコ)」
ほたる「……なんでもありません。あ、なんでもなくはなくて」
泰葉「?」
ほたる「あの、私、あまり面白いリアクション取れるかどうか、自信がなくて」
泰葉「大丈夫大丈夫。すぐに面白いものが見えてくるから」
千鶴「本当? もういい加減暗いし、さっきの無人駅のところ程じゃないけど、ここも田舎の国道って感じで目立つものなんて」
泰葉「この道は黒潮ラインって言って空港から高知市までほぼ直通できる道なんだけどね。途中にちょっとした名物があるんだよ」
裕美「へえ」
ほたる「暗いし、見落とさないようにしないといけませんね」
泰葉「大丈夫だと思う」
千鶴「ふーん、そんなに目立つ……えっ」
裕美「えっ」
ほたる「えーっ!?」
泰葉「ふふふ、見つけたね」
裕美「道の脇に飛行機が置いてある!」
ほたる「セスナ機? えっ本物?」
千鶴「台の上に固定してあるみたい。あ、レーダーっぽいものもある。空港近いしなにかそういう関係の施設かな」
泰葉「うなぎ屋さんの看板だよ」
裕美「どうしてうなぎ屋さんの看板が飛行機なの!?」
ほたる「あっでも本当に飛行機にお店の名前が書いてある! うなぎ専門て!!」
千鶴「うわあ本当だ。どうしてまた飛行機を看板になんか」
泰葉「まさに今の3人みたいな反応が欲しいからじゃないかな」
千鶴「まんまと店の人の思惑に乗せられてしまった……?」
裕美「泰葉ちゃんはこのお店、知ってたの?」
泰葉「ロケで食レポしたことあるよ。高知で『東の横綱』って言われてる有名なお店」
裕美「……おいしいの?(グウウ)」
泰葉「サクサクのパリパリだよ」
ほたる「ちゃんとしたうなぎ屋さんで食べたことないんですけど、うなぎってなんだかふわふわとろとろした食べ物ってイメージが」
千鶴「それは関東風だね。関西風は蒸さないから身が締まってて、自分の脂で身が焼けるから表がサクサクで、香ばしい香りがして……」
裕美「へえ……(グウウウ)
ほたる「そうなんですか……(グウウウ)」
泰葉「2人とも、いいはらぺこの表情だよ(撮影中)」
裕美「と、撮らないで恥ずかしい(///)」
泰葉「えーなんで。食べ物屋に対する反応としては完璧だよ?」
ほたる「仕方ないじゃないですか。私たちみんな、朝たべたきりなんですもの」
千鶴「空港について即飛行機に乗ったから、食事の時間無かったしね」
泰葉「じゃあ、お夕食はここにしようか」
ほたる/裕美/千鶴「「「賛成」」」
泰葉「一糸乱れぬ返答ありがとうございます」
○30分後/鰻屋店内
裕美「はふっはふっはふっ」
ほたる「もぐもぐもぐ」
千鶴「ぱくぱく」
泰葉「んぐんぐ……」
裕美「おいしい! ほんとに噛むたびにぱりぱりさくさくって音がする!!」
ほたる「見てください裕美ちゃん、この鰻重、ごはんの中にもう一枚鰻が隠してありますよ!」
裕美「うわあ本当だあ!」
千鶴「もう、2人ともあまりはしゃがないの。はしたないよ(おしとやかにもぐもぐ)」
泰葉「まあ、気持ちは解る」
裕美「だってだって、鰻ってタレの味しかしないと思ってたのにこれは鰻の身に味があってほんとに……あっ、しまった。もう半分食べちゃった」
ほたる「食べる前を撮影しなきゃでしたね」
千鶴「おなか空いてたからね。みんなで撮影忘れて飛びついちゃった」
泰葉「まあ、半分食べたところを撮影しておこうか。おいしさの証明だよ、これも」
千鶴「ええっ、食べかけ撮るなんて恥ずかしい」
泰葉「あ、その恥じらい顔ももーらいっ」
千鶴「いやあああ(まっか)」
裕美「……ねえほたるちゃん(ヒソヒソ)」
ほたる「……うん、解ってる。あとで話そうね(ヒソヒソ)」
千鶴「……」
○夜/高知市内某ホテル
千鶴「はー……」
裕美「はー……」
ほたる「はー……」
千鶴「お風呂、気持ちよかったねえ」
裕美「つい長湯しちゃった」
千鶴「ほたるちゃんと裕美ちゃん、なかなか上がってこなかったもんね」
ほたる「千鶴ちゃんと泰葉ちゃんを待たせちゃって恐縮です」
千鶴「いいよいいよ。みんな疲れてたしね」
裕美「あ、お風呂も素敵だったけど、脱衣所もすごかったよね」
ほたる「そうそう全然湿気がこもらなくて、お風呂上がりでもすぐ身体が乾いてくれるんですよね」
裕美「あれ、どうなってるのかなあ。換気とか除湿とか、そういうのなのかな」
千鶴「かもね。泰葉ちゃんが言ってたけど、すごく歴史のあるホテルらしいし」
裕美「やっぱりそうなんだ。外の壁なんか、時代劇みたいだったもんね」
千鶴「昔は藩主さんの下屋敷が建ってた場所なんだって」
ほたる「道理でお庭も素敵です」
千鶴「ほんとね」
裕美「そんな由緒あるホテルにおやさい担いで乗り込んでいった私……」
ほたる「あのシーンは面白かったけど、ホテルの人はあんまりびっくりしてませんでしたね」
千鶴「すぐ近くに生鮮食品を売る露天市が立つらしいから、野菜抱えてくる人も珍しくないのかもね」
裕美「それも泰葉ちゃん情報?」
千鶴「うん、そう」
ほたる「……」
裕美「……」
千鶴「……」
ほたる「……泰葉ちゃんは、どこに?」
裕美「お宿についてお風呂上がるまでは一緒だったけど」
千鶴「あー」
裕美(じー)
ほたる(じー)
千鶴「……ちょっと出てくるって言ってたよ。明日の撮影のために情報を集めておきたいって(メソラシ)」
◇
◇
ホテルマン「では、こちらのお部屋とお電話をどうぞ」
泰葉「ありがとうございます。しばらく使わせていただきますね」
ホテルマン「ごゆっくり――それでは」
泰葉「……さてと」
(プルルルル……ガチャ)
泰葉「遅くにすみません。岡崎です」
泰葉「いえ、居場所はお教えできません。知りたかったらプロデューサーさんが電話番号から調べてください」
泰葉「はい。はい……あー。やっぱりそういう説明になってるんですね」
泰葉「いえ違います。スマホを抜かれるまではそうですが、そのあとは放置されました。スタッフさん、車で居眠りしてましたよ」
泰葉「編集前の画像データはこっちで押さえてます。ついでだからデータをもらう前に、居眠りしてる顔もしっかり撮らせてもらいました」
泰葉「明日の朝一番でコピーが事務所に届くよう手配をつけてありますから、どちらの発言が正しいかはプロデューサーさんが判断してください」
泰葉「ただし、場合によっては私、明日も3人をそっちに帰すつもりはありません」
泰葉「明日のスケジュールは把握してます。リスケでなんとかなる範囲でしょう? でもその後は知りません」
泰葉「……たった3つ、条件を呑んでください。難しい物では、ないはずです」
◇
◇
裕美「泰葉ちゃん、プロデューサーさんか番組の人に、抗議しに行ってるんだよね?」
千鶴「ばれてたかあ」
ほたる「泰葉ちゃん、ずっと、すごく怒ってましたから」
裕美「笑顔作ってたけど、目が全然違ったもんね。それに……」
千鶴「それに?」
裕美「泰葉ちゃんて、こういうの、普段は嫌がるじゃない。お金に物を言わせて手早く豪華にやっちゃうの」
千鶴「……うん」
ほたる「遊ぶのもなんでも、私たちと一緒が好きで。豪華なもの次々出して喜ばせようなんて、普段絶対しません」
千鶴「そうだね」
裕美「出来ても普段は避けようとしてることを、敢えてやったのは、怒ってたから……私たちを、早くあそこから遠ざけたかったから」
千鶴「……」
ほたる「たぶん、私たちを守りたかったからだよねって、さっきお風呂で話してたんです」
千鶴「……まあね。気付いて黙ってくれてたんだ」
ほたる「泰葉ちゃんが、私たちの気持ちを軽くしよう、喜ばせようって頑張ってくれてるの、解りましたから」
裕美「まあ、黒塗りの高級車が来たときはただただ驚いたけど」
千鶴「あれは私も驚いた」
ほたる「でも、泰葉ちゃんは、突然どうしてあそこまで?」
千鶴「GBNSに。デビューしたばかりのほたるちゃんたちに、変な色がつけられそうになったから、かな」
裕美「……色?」
◇
◇
泰葉「条件はみっつ。まず、今回の問題について番組スタッフ側から正式な謝罪を貰ってください。安全面の体制不備。連絡手段を奪ったのに居眠りをするような『ミス』。スマホを荷物から抜き取る時に同意なしで鞄の中身を撮影していることについて。きちんとした謝罪を求めます」
泰葉「次に、うちの所属アイドルに聞き取り調査を行い、その結果に応じて今回のDさんとの関係を見直すと約束してください」
泰葉「……私はプロデューサーさんを、信頼しています」
泰葉「プロデューサーさんが頷いた企画なら問題ないはずだ、と思っています」
泰葉「プロデューサーさんとあのDさんの間には、信頼関係があるのでしょう。だから、企画が通ったのでしょう」
泰葉「だけど、実際にこういう問題が起きました。ならば、プロデューサーさんの彼に対する信頼は、今も正しいのでしょうか。」
泰葉「そして、うちの事務所の、今まであのDさんの番組に出演していた子たちは、その信頼に足る扱いを受けていたのでしょうか。言えなくて、黙っているだけではないのでしょうか。きちんと確認して、見直してもらいたいのです」
泰葉「……いえ」
泰葉「ごめんなさい。差し出がましいことを言ってますよね」
泰葉「……はい。ありがとうございます。解ってます」
泰葉「……最後のひとつ、ですか」
泰葉「最後の条件は、今回の映像データを完全に抹消し、今回の番組企画をボツにすることです」
◇
◇
ほたる「変な、色」
千鶴「ぶっちゃけた話になるけども」
裕美「うん」
千鶴「たとえばレイジー・レイジーに今回みたいなドッキリ仕掛ける人、居ると思う?」
裕美「絶対に居ないと思う!」
ほたる「目を離した瞬間になにが起きるか解らなくて、目が離せないと思いますよね」
千鶴「幸子ちゃんが凄く高い所からバンジーする企画に出ていたら?」
裕美「頑張ってるなあって思います。でも幸子ちゃんなら平気でこなしそう」
千鶴「つまり、それが『色が付く』ってことなんだよ」
裕美「……色」
千鶴「イメージ、思いこみと言ってもいい。この子たちはこうだ。こういうことをするに違いない。こうするとどうなるかわかんない……GBNSならまじめで努力家な4人組、どんなことでも真剣に取り組んでくれそう、かな」
裕美「なるほど」
千鶴「色がつくって、いい事ばかりじゃなくてね。知ってる? いつも相方に叩かれてるコメディアンが、プライベートでふざけた子供に叩かれたって話」
ほたる「はい」
千鶴「それも色。視聴者に、この人は叩いていい人だって思われちゃう。関係者に、この人はこういう役を回して大丈夫だって思われちゃう」
裕美「……」
千鶴「この人はこういう人。こいう扱いをしていい人。一度そういう色がついちゃったら、それを訂正するのって本当に大変なんだよね」
ほたる「千鶴ちゃん……」
千鶴「まあ、最初はあの場で抗議入れようって話だったんだけどね。泰葉ちゃん、頭来ちゃったんだなあ」
ほたる「……やっぱり、そうなんですね」
千鶴「それでまあ2人の言う通り、泰葉ちゃんは今プロデューサーさんに直談判に」
ほたる「……でも、それ、変じゃないですか?」
千鶴「変じゃないよ。私たちの中では泰葉ちゃんが一番こういうことに慣れてるし、事前に私と泰葉ちゃんで……」
裕美「あの、ううん。そういうことじゃなくて、ねえ?」
ほたる「うん、ええと、なんていうか。2人でお風呂で、話したんですが」
千鶴「……うん」
裕美「……泰葉ちゃんは私たちを守ろうとしてくれて。ずっと……今も、私たちのかわりに怒ってくれてるってことだよね?」
ほたる「うれしいけど……それって、違うと思うんです」
◇
◇
泰葉「……もしあの映像を元にした番組が放送されたら、ほたるちゃんと裕美ちゃんには色がつくでしょう」
泰葉「理不尽な企画を振っても、文句言わず頑張る子だって。そういう仕事振ってもいい子だって」
泰葉「そういう色が、少しずつ乗っていく切っ掛けになる」
泰葉「……ほたるちゃんと裕美ちゃん、すごく不安そうにしてたんですよ」
泰葉「それなのに怒りもせずに、スタッフさんの心配して。自分たちなりに仕事をこなそうとして」
泰葉「そういう姿勢が食い物にされて、理不尽な仕事を振られるようになるの、私は、許せません」
泰葉「この業界で仕事をしていくうちに、2人には色がついていくでしょう。だけど、それは悔いのない仕事の結果としてのものであってほしいんです」
泰葉「……ふたりともアイドルになれたばっかりじゃないですか。こういうことに苦しめられたりせずに、思い切り芸能活動を楽しんで欲しいんです」
泰葉「私や千鶴ちゃんみたく大人の都合で苦しむとか、そんなのない方がいいに決まってるじゃないですか」
泰葉「……これは、私の勝手な思いです。3人はこんなの知りません。だから……」
(ドタドタドタ)
裕美「ちょっと待ったーっ!!
ほたる「まったーっ!!」
泰葉「わあっ、2人ともどうしてここに!?」
ほたる「ホテルの人に泰葉ちゃんを見ませんでしたかって聞いたら教えてくれました!」
泰葉「正攻法!!」
裕美「泰葉ちゃん、ありがとう!」
泰葉「えっ、えっ」
ほたる「それはそれとしてお電話貸してくださいね(サッ)」
泰葉「あっちょっ」
ほたる「もしもしプロデューサーさん。私たちもちゃんとお話がしたいです!」
裕美「私たち4人のことだもん。泰葉ちゃんだけが怒って、泰葉ちゃんだけが怒られるなんて、絶対違うと思うから!」
ほたる「そうです。ちゃんと、私たちだって話を……」
泰葉(ポカーン)
千鶴「ふふ。泰葉ちゃん、口が半開きだよ」
泰葉「……千鶴ちゃん」
千鶴「お疲れさま。プロデューサーさん、解ってくれそうだった?」
泰葉「うん、まあそれは勿論。私たちのプロデューサーさんだし」
千鶴「だよね……お疲れさま」
泰葉「ううん、自分でやった事だから……と。それはそれとして」
千鶴「はい」
泰葉「もー、もー、もー! やってくれたね千鶴ちゃーん!(ポカポカ)」
千鶴「ふふふいたたなんのことやら」
泰葉「電話してる間、2人を引き受けといてねってお願いしたじゃない。なんでこういうことになっちゃってるの」
千鶴「あはは、ギリギリまでごまかそうとしたんだけどね」
泰葉「うそだあ、もう。全部話しちゃったんでしょ」
千鶴「でも、2人とも気が付いてたもん」
泰葉「えっ」
千鶴「泰葉ちゃんが自分たちを守ろうとしてくれてるって。怒ってくれてるって」
泰葉「……」
千鶴「だから、私が話したのは泰葉ちゃんがなにを怒ってるのかってことだけ。どうしたいかは、2人が最初から考えを持ってたんだよ」
泰葉「……だけど、2人には、まだこういうのと無縁で居て欲しかったのに」
千鶴「……」
泰葉「私たち2人みたく、大人の都合やいい加減さで痛い思いをして、暗い気持ちになるなんて。せっかくの活動を楽しめなくなるんなて。無いほうがいいに決まってるじゃない」
千鶴「まあね」
泰葉「だったらなんで。千鶴ちゃんなら、なんとか誤魔化せたでしょ」
千鶴「裕美ちゃんが言ってたよ。泰葉ちゃんは普段、お金に物を言わせて手早く豪華にやっちゃうのを嫌がるって」
泰葉「……」
千鶴「ほたるちゃんもね、泰葉ちゃんはいつも、遊ぶのとかでも自分たちと一緒が好きだって」
泰葉「……」
千鶴「泰葉ちゃんが嫌なことをやらせてまで守ってもらうのはおかしいって、2人は言ってるんだよ」
泰葉「……」
千鶴「こうやって大人とまともにやりあうのって、泰葉ちゃんしか経験がない。だから泰葉ちゃんが前に立ってた。泰葉ちゃんは、そうしなきゃって思ってた」
泰葉「……実際そうじゃない」
千鶴「だけど、そうしたら、泰葉ちゃんは『一緒』をできなくなるじゃない?」
泰葉「……」
千鶴「泰葉ちゃんは凄いと思う」
泰葉「なに、突然」
千鶴「芸歴。実力。いろんなことを乗り越えてきた、力がある」
泰葉「……うん」
千鶴「だけどね。それでも、私たちは4人は対等な友達で、仲間なんだよ」
泰葉「……うん」
千鶴「だから、問題があったらみんなで悩むんだ。今回みたいなことがあったら、4人で考える。4人で怒る。泰葉ちゃんだけが矢面に立つのはおかしいし、それをさせていたら自分たちは対等でも、友達でも、仲間でもいられなくなる。それが、2人の思いなんだ」
泰葉「……もしかして、千鶴ちゃんもそう思ってた?」
千鶴「まあね」
泰葉「だから、2人を誤魔化さなかった?」
千鶴「まるで気付いてなければ、しらんふりしようと思ってたけどね」
泰葉「……でも、気付いてて欲しい。おかしいと思ってほしい、とは思ってたんでしょ」
千鶴「まあね。だから誤魔化さなかったよ。約束破って、ごめん」
泰葉「……はー。私、空回りだ。はずかし」
千鶴「私たちのために必死になってくれたのは、みんなわかってるよ」
泰葉「だけど1人で空回りして、暴走して。なんか私が一番子供みたいじゃない」
千鶴「2人のことが、大事だったからでしょ」
泰葉「……でも、2人ともちゃんと考えてた」
千鶴「うん」
泰葉「子供扱いしてたんだなあ」
千鶴「いや、子供でしょ」
泰葉「ええっ」
千鶴「2人も、私たちも、子供だよ。世間から見たらね……でもさ」
泰葉「……うん」
千鶴「だから、4人対等で、いいじゃない。泰葉ちゃんが大人の役をやらなくたって、いいじゃない」
泰葉「……かなわないなあ」
裕美「泰葉ちゃーん! プロデューサーさんが、お電話替わってってー!!」
泰葉「はーい!!」
千鶴「行ってらっしゃい」
泰葉「千鶴ちゃん」
千鶴「ん?」
泰葉「……ありがと」
千鶴「こちらこそ」
○2月14日(日)正午過ぎ/高知城
泰葉「というわけで、こちらが高知城公園、梅の段でーす」
千鶴「まだ、二分咲きぐらいかなあ」
ほたる「でも、きれい……」
泰葉「三の丸って所には桜がたくさん植わっていてね。花見のシーズンには昼から酔っぱらいがたくさんいてお花見してるんだって」
千鶴「さすが高知、なのかなあ……」
泰葉「加奈ちゃんも、高知はお酒飲む人いっぱいだって言ってたし、そういうことでいいと思う」
ほたる「でも、いいんでしょうか観光とかしてて」
泰葉「仕方ないでしょ夕方の飛行機しか取れなかったんだし」
ほたる「まあ、たしかに」
千鶴「番組Dさんへの対処もリスケもプロデューサーさんが確約してくれたし、急いだって仕方ないよ」
泰葉「そういうこと……向こうもあっさり折れてくれてよかったよ。おかげで最後の手段を使わずにすんだ」
裕美「最後の手段?」
千鶴「こっちで押さえてる動画を無編集で公開して問題を拡散してやろうって」
裕美「うわあ」
ほたる「そうならなくて本当に良かったですね……」
千鶴「まあ、そういうわけだから。時間まではゆっくり観光して楽しめばいいんだよ」
ほたる「現時点ですでに結構満喫してますけどね。ひろめ市場でごはん食べて、おまつりの体験映像を見て……」
裕美「おみやげもいっぱい買ったしね!(フンス)」
千鶴「裕美ちゃんはどうしてそのおみやげを全部1人で抱えちゃうの?」
ほたる「お大根と白菜も」
裕美「ずっと抱えてるわけじゃないよ。順番に持とうねって言ったじゃない」
千鶴「そうだったね」
裕美「重い物も、ほかのいろんなものも、4人で持つんだよ」
泰葉「……そうだね」
裕美「あーあ、でも帰ったら学校かあ。もうすこし遊んでいたい気も」
ほたる「月曜日だから仕方ないですよ。勉強も……あ」
千鶴「どうしたの?」
ほたる「今日は日曜」
泰葉「うん」
ほたる「バレンタインの準備、し損ないましたね……」
裕美「あー、そうだった」
千鶴「4人でプロデューサーさんに手作りをって計画だったのにね」
ほたる「さすがに戻ってからチョコ作りは時間的に難しいですよね」
裕美「なにか、市販のチョコを買って帰る?」
千鶴「そうね。高知らしいチョコとかあったりするかも……」
泰葉「……ああ」
裕美「? 」
泰葉「わざわざ買わなくても、あるじゃない。あれが」
裕美「ああ」
ほたる「そういえば」
泰葉(私たちは鞄から、あのチョコを取り出して、笑い合った)
泰葉(旅のきっかけになったチョコレート。スマホとすり替えられていたた、あのチョコを)
泰葉(昨日は腹が立ったけど、なんとかしなきゃってそればかり考えてたけど)
泰葉(……今は、それを4人で笑うことができた)
泰葉(もし、千鶴ちゃんがごまかし切って、2人が気付かないままだったら、私は今日、こんなふうに笑えただろうか)
泰葉(ううん、きっと、笑えなかった)
泰葉(だけど)
泰葉「じゃあ、今年のプロデューサーさんへのチョコは、これにしよう。ちょっと皮肉っぽいかもしれないけどね」
泰葉(私が提案する。みんなが笑って乗ってくれる)
泰葉(それを見ていると、これで良かったんだ、って思うことができた)
泰葉(こうして、チョコレートが切っ掛けで始まった私たちの短い旅は、チョコレートを囲んで、笑って終わることが出来たのでした……)
(おしまい)
元スレ
○数週間前・夕刻/番組企画会議
番組D「……というわけで、今度の企画では偽企画を用意して、GBNSにドッキリを仕掛けさせていただこうかと」
P「4人とも深刻に捉えすぎるところがあります。ドッキリは罪のない物にして欲しいですね」
番組D「うーん」
P「……そうだ、現場に行く4人のスマホを板チョコとすりかえておくとかどうでしょう」
番組D「ああ、現場に着いてスマホ確認しようとしたら」
P「チョコレートが出てくるんです。で、びっくりした所にスタッフさんが出てきてごめんなさいと」
番組D「いいですねそれ。脅かすお詫びに、チョコは高級なヤツにしておきましょう」
P「くれぐれも、気をつけてくださいよ」
番組D「勿論です。では細かい内容についてですが……(とは言ったものの、それじゃ刺激が足りないんだよなあ……)」
3: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:34:27 ID:7rN
○1週間前/都内某芸能事務所
泰葉「旅番組の企画ですか?」
P「ああ、GBNSの4人でな」
裕美「4人で旅なんて、楽しそう!」
ほたる「わくわくしますね……!」
P(脅かすけど、すぐフォロー入るから。許してくれよ……)
4: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:35:00 ID:7rN
○6時間前(2月13日午前)/千葉方面行き鈍行列車内部
関裕美「……というわけで新番組『ご当地紹介トレイン』。第1回は私たちGBNSの4人でおとどけします!」
白菊ほたる「4人で列車で旅をして、その間の出来事を、目的地のすてきな所を精一杯お伝えする予定です」
松尾千鶴「道中の撮影は、ハンディカムで私たちが担当。今は泰葉ちゃんが担当してくれています」
岡崎泰葉「現在カメラ担当の岡崎泰葉です。声だけで失礼します」
裕美「今度は私がカメラを持つね(フンスフンス)」
千鶴「もう、裕美ちゃん張り切っちゃって」
ほたる「私もカメラ持ちたいです……難しいでしょうか(ワクワク)」
泰葉「このごろのハンディカムはそうそう失敗しないように出来てるから大丈夫だよ」
裕美「じゃあ、4人で順番ね、じゅんばん」
ほたる「はい!」
千鶴「……というわけで『ご当地紹介トレイン』、最後まで観てくださいね!」
5: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:35:35 ID:7rN
泰葉「(ポチッ)はい、カット。乗ってくる人も増えて来たし、いったんカメラ止めよう」
裕美「泰葉ちゃんお疲れさま」
ほたる「緊張しました……」
千鶴「自分らでカメラとかまでやるのって、ちょっと勝手が違うよね」
泰葉「ソウダネ」
裕美「泰葉ちゃん、機嫌わるい?」
ほたる「どこか、調子が悪いとか」
泰葉「ソンナコトナイヨ?」
ほたる「……だったら、いいんですけど」
千鶴「まあまあ。目的地の駅までは長いんだし、リラックスして行こうよ」
裕美「そうだね……でも、窓の外って本当に田圃と山ばっかり」
千鶴「いい景色があったら撮ってって話だったけど、今のところ正直変化に欠けるね」
泰葉「裕美ちゃん、ほたるちゃん、退屈じゃない?」
ほたる「いいえ。4人だけで旅なんて、なんだかわくわくします」
6: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:52:14 ID:7rN
裕美「さっきおばあちゃんからみかんもらったよ!」
ほたる「裕美ちゃんてご年輩の人とすぐ仲良くなれるんですよね」
裕美「いろいろな人と出会えるし、いろんな話が出来て楽しい」
千鶴「頼もしいけど、目的の駅までまだ結構あるからね。あまりテンション高いと疲れちゃうよ」
泰葉「カメラ回っていときは、ちゃんと休んでね」
裕美「うう、確かに(ちょこんとすわる)」
ほたる「目的の駅って、あとどのぐらいでしたっけ」
千鶴「14時過ぎには到着するみたいね。えーと(地図ごそごそ)ここね」
泰葉「本当に山の中の田舎っぽいよね。紹介できるものがどれだけあるんだろ」
千鶴「スタッフさんがくれた資料によると、結構色々あるみたいだよ。まあ、着いてからのお楽しみって事なだろうけど」
泰葉「……」
裕美「泰葉ちゃん、さっきから何か機嫌わるそう」
泰葉「ちょっとだけね。気にしないで。本当にほんのちょっとだから」
ほたる「大丈夫ですか?」
泰葉「大丈夫大丈夫」
千鶴「ほら、ほたるちゃん裕美ちゃん。到着した後で慌てないように、現地の資料を読み込んでおいたほうがいいよ」
ほたる「はーい(読み読み)」
裕美「はーい(読み読み)」
7: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:54:20 ID:7rN
千鶴「泰葉ちゃん、どうしたの(ヒソヒソ)」
泰葉「……この席を観察できる所に、スタッフさんが居る気配が無いんだよね」
千鶴「やっぱりそれか」
泰葉「確かに表書きとしては私たちだけで旅して撮影も、って企画だけどね。安全確保のために何らかの形でスタッフさんが随行するものでしょ」
千鶴「ふつうね」
泰葉「見えないところから確認してるのかもしれないけど……ちょっと気にいらないなあって」
千鶴「……変なことにならなきゃいいけど」
8: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:56:16 ID:7rN
○1時間半前(2月13日・14時)/関東某所・ド田舎無人駅
裕美「ついたー!!」
千鶴「長旅だったねえ」
ほたる「でも、なんのトラブルもなくて、よかったです」
千鶴「むしろ、ちょっと楽しかったよね」
裕美「私、おみかんの他にお大根と白菜も貰っちゃった」
ほたる「裕美ちゃん、道中本当に大人気でしたから」
泰葉「ご高齢の方と子供の食いつきは裕美ちゃんが一番だったねくそう」
ほたる「泰葉ちゃんがライバル意識を燃やしている……!」
千鶴「みかんはともかく、お野菜はどうしようか。かさばるでしょ」
ほたる「というかこんな立派なお大根初めて見ました」
裕美「がんばってね、おいしいよ、食べてねってくれたんだもん。ちゃんと食べたい(大根を抱く)」
泰葉「帰ったららこれでお鍋しようか。撮影中はスタッフさんの車に預かってもらえばいいでしょ。というか……」
(周囲に広がる山と農地と静寂)
千鶴「……スタッフさんはどこだろうね」
9: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:56:44 ID:7rN
裕美「ここで合流って話だったよね?」
ほたる「はい、駅前のこのベンチで集合予定です」
千鶴「なんか凄い色々あるって話だったじゃない? 見てこの分厚い資料(ズシッ)」
ほたる「私、結局カメラ回ってないときはずっとこの資料読んでた気がします」
泰葉「ほたるちゃんは仕事熱心だよね……でも」
(周囲に広がる山と農地と静寂)
泰葉「こう言ったら悪いけど、貰った資料ほど活気がある場所には見えない」
裕美「確かに」
千鶴「降りる駅はここで間違ってないよね?」
泰葉「駅名は間違いないね」
ほたる「……スタッフさん、遅れてるんでしょうか」
裕美「かなり田舎だし、道中でトラブルがあったら困ったことになってるかも」
ほたる「どうしよう、もしかして私の不幸のせいで、何か」
泰葉「落ち着いて。単に遅れてるだけかもしれないし」
千鶴「とはいえ予定の時間に遅れてるのに連絡ないのは気になるし、連絡入れてみようか(ポーチゴソゴソ)……こ、これは!?」
裕美「ど、どうしたの千鶴ちゃん」
千鶴「スマホのかわりに、こんなものが」
裕美「そ、それはベルギーの板チョコ、コートドール タブレット・ノアーデノアー(税別600円)!!」
ほたる「お高くておいしいやつです!!」
10: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)18:58:42 ID:7rN
千鶴「あれっ、スマホ入ってない、あれっ」
泰葉「(ゴソゴソ)……私のも板チョコになってる」
ほたる「私のもです」
裕美「私のも……えっ、みんな?」
千鶴「いったいいつの間に」
泰葉「朝、ADさんに駅まで車で送ってもらった時かな。あそこからは私たちだけで移動だったし」
千鶴「資料分厚いし自分らで撮影もしなきゃで道中スマホ確認する暇無かったしね。やられたなあ」
裕美「……どうしてこんなことを?」
泰葉「そりゃあドッキリでしょ。スマホだと思ったらチョコでした、わあびっくり」
ほたる「た、確かにびっくりしました」
裕美「じゃあ、スタッフさんがもうすぐ出てくるんだね。なあんだ」
ほたる「だめだよ裕美ちゃん。ドッキリなら、スタッフさんが出てくるまでは気がついてないふりをしないと」
裕美「そ、そうだね。撮影も続けた方がいいかな。ハンディカム、ハンディカム……」
千鶴「……」
泰葉「……」
11: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:00:30 ID:7rN
~30分経過~
裕美「……」
ほたる「……」
裕美「スタッフさん、来ないね」
ほたる「はい……」
裕美「どうしたんだろう」
ほたる「もしかして、本当にトラブルがあったのでは」
裕美「……そうだね。こんなの、おかしいもんね」
ほたる「どうしよう、大丈夫でしょうか」
裕美「プロデューサーさんとかに連絡したほうがいいのかな」
ほたる「でも、スマホは無いし」
裕美「さっき駅を見て回ったけど、電話機もないみたい。次の電車も何時間か先で」
ほたる「そんな……スタッフさんたちに、もしもの事があったら。事故とかだったらどうしたら。知らせられなくて手遅れになったりしたら」
裕美「だ、だいじょぶだよほたるちゃん。もう少しだけ待ってみよう。ね?」
ほたる「は、はい」
裕美「遅れてるだけかもしれないから、その間ちゃんと撮影は続けよう」
ほたる「……じゃあ、駅の周りを撮ってみましょうか。あの、泰葉ちゃん、千鶴ちゃん」
12: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:01:04 ID:7rN
泰葉「……ベンチがここで。光はこっちから欲しいから、居るとしたら向こう?(ヒソヒソ)」
千鶴「だね。あそこに農家あるでしょ。車が隠せそうなのってあそこぐらいしかなくない?(ヒソヒソ)」
ほたる「……なんの話してるんでしょう」
裕美「さあ……」
ほたる「あんまりひそひそ話になってないですね」
裕美「静かだし、私たちしかいないもんねここ……」
千鶴「で、たぶんあの影から撮ってるから……(ヒソヒソ)」
泰葉「あー。じゃ、行ってくる。大回りして向こうから、こう」
千鶴「近付くところ映らないように?」
泰葉「一応ね。万が一移動されたら困っちゃうし」
千鶴「解った。ほたるちゃんと裕美ちゃんは見てるから」
泰葉「お願いね。じゃ、行ってくる(スック)ほたるちゃん、裕美ちゃん!」
ほたる「は、はい!」
裕美「どうしたの」
泰葉「あとは私に任せて! (キラッ☆)」
裕美「えっ」
千鶴「無茶しちゃ駄目だよ?」
ほたる「えっ、えっ?」
泰葉「心配しないで。ここからはこのGBNS最年長、芸歴11年、4人の中で最大のバストを誇るこの私が引き受けたよ」
千鶴「バストのくだり必要だった?」
ほたる「というか突然のことでまず泰葉ちゃんが心配です」
泰葉「うっさい。とにかく行ってくるね(スタスタ)」
千鶴「行ってらっしゃい」
ほたる「行くってどこへ(ポカーン)」
裕美「引き受けたって何を(ポカーン)」
13: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:02:56 ID:7rN
~さらに40分経過~
裕美「泰葉ちゃん、戻って来ないね……」
千鶴「まあまあ、もう少し待っていよう」
ほたる「泰葉ちゃんにまでトラブルがなければいいんですれど……あれっ、なんか車がこっちにきます」
裕美「ほんとだ、大きい。高そう」
ほたる「田舎の景色にものすごく不似合いですね……」
千鶴「えっ本当こっちに来る……って、あれは」
泰葉「みんなー、お待たせー(車の窓から手をぶんぶん)」
14: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:05:16 ID:7rN
○そして再び2月14日15時過ぎ/関東某所・ド田舎無人駅前
千鶴「うわあ本当にめちゃくちゃ高級そうなお車だ……」
泰葉「でしょ? というわけでさあさあ乗って乗ってカモンカモン」
裕美「で、でも、スタッフさんとはここで合流することになってて」
ほたる「連絡もできないのまま勝手に離れたら、迷惑になるのでは」
泰葉「ちっちっちっ。2人とも、解ってないなあ」
裕美「解ってないって、何が」
泰葉「スマホがチョコレートになってたことの意味だよ」
ほたる「ドッキリ、なんですよね?」
泰葉「そうだけどその先がある。私たちに求めるもの、この企画の意図って奴が」
ほたる「ええっ!?」
泰葉「私たちから連絡手段を奪った意味。それは『自分たちに指示を仰がなくていいから好きに動いてみろ』って私たちへの挑戦だよ!」
裕美「そうなの!?」
ほたる「そんな意味が!?」
千鶴「いやいや。いやいやいや(小声)」
15: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:06:05 ID:7rN
泰葉「考えてみてよ。事故とかならPさんに連絡が行って、そこからこっちに対処があるよ。それが無いってことは、この状況もコントロールされた企画の中だってこと」
ほたる「た、確かに」
泰葉「スタッフさんはいいから好きにしてみなよって言ってるんだよ。だったら、思い切り好き勝手やってあげよう。スタッフさんが追っかけるの苦労するぐらい」
裕美「な、なるほど?」
ほたる「い、いいんでしょうか」
泰葉「大丈夫。そのためにハンディカム渡されてるんじゃない、スタッフさんが驚くような場面を撮れば文句ないよ」
千鶴「ちょっと、ちょっと待って泰葉ちゃん」
泰葉「なあに?」
千鶴「いいからちょっと待って。こっち来て、こっち (引っ張り引っ張り)」
ほたる「ち、千鶴ちゃん?」
千鶴「泰葉ちゃんとちょっと打ち合わせしてくるから待ってて(引っ張り引っ張り)」
ほたる「は、はい……」
泰葉「千鶴ちゃん、あんまり引っ張らないでよー」
千鶴「いいからこっちに来て(物陰にひっぱりこむ)」
泰葉「なにさ人が気持ちよくしゃべってるのに(ヒソヒソ)」
千鶴「いいの? (ヒソヒソ)」
泰葉「何が(ヒソヒソ)」
16: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:09:17 ID:7rN
千鶴「隠れてるスタッフさんに、話をつけに行ったはずだったじゃない。あそこに居たんでしょ? どうしてスタッフさんほっといて移動しようって話になってるの(ヒソヒソ)」
泰葉「うん、最初はそのつもりだったし、実際居たんだけど(ヒソヒソ)」
千鶴「居たんだけど?(ヒソヒソ)」
泰葉「その結果、付き合ってカメラの前に居てあげる必要ないと結論しました。あの人たち、車の中で居眠りしてるんだもん」
千鶴「え」
泰葉「腹立ったから、カメラのSDカード引き抜いて来てやった(ジマンゲ)」
千鶴「うわあ本当に持ってきてる」
泰葉「……連絡手段取り上げて置き去りにして、私たちが不安がるのを撮りたかったんだろうけど」
千鶴「……うん」
泰葉「指示を出さなきゃ人間は勝手に動く。その行動を追いきれないのは向こうの怠慢であって、私たちの責任じゃない。それに(ヒソヒソ)」
千鶴「……それに」
泰葉「ほたるちゃんと裕美ちゃんを心配させといて、不安がらせて。定点でカメラ回して居眠りしてるなんて、ちょっと許せない」
千鶴「……うん」
泰葉「いやあ残念だなあ。スマホがあればスタッフさんに事情を確認したかったけど、スマホがチョコになってるんだもん。残念だなあ、仕方ないなあ(スタスタ) 裕美ちゃん、ほたるちゃんお待たせー!!」
千鶴「泰葉ちゃん……」
泰葉「さあ、みんな早く乗って。一番早いコースで空港まで行って、そこから一気に高知まで高飛びするからね」
ほたる「今高飛びって言いませんでしたか?」
泰葉「言ってないよ?」
裕美「どうして高知なの?」
泰葉「ここから移動して一番早く乗れる国内便の飛行機がそれだったから!」
千鶴「うわあ本気で足取り追えなくする気だ」
17: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:11:00 ID:7rN
ほたる「……大丈夫でしょうか」
泰葉「いいの。好きにやれって言ってるのは向こうなんだから、思い切り好きにやってあげればいいんだよ。それを追いかけるのが向こうの仕事じゃない」
裕美「泰葉ちゃん、悪い子だ……!」
泰葉「ふふーん、これがベテランの怖さというものでーす……それに、面白そうだと思わない?」
ほたる「じ、実はちょっと」
裕美「私、高知って行ったことないや」
泰葉「私、子役時代に何度か高知ロケ行ったことあるから色々案内できるよ」
裕美「さすが芸歴11年……!」
ほたる「観光案内も隙なし……!」
泰葉「さ、乗って。運転手さんいつまでも待たせるの、悪いでしょ」
運転手(無言でドアを開けて待機してる運転手)
裕美「そ、そうだね。おじゃまします(ペコリ)」
ほたる「こ、これ、靴を脱いで上がったほうがいいですよね?」
泰葉「いやいやふつうに靴を履いたままで乗ってよ」
千鶴「うわあ、座席がすごい座り心地……!」
裕美「あったかい……! 広い……!!」
18: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:13:28 ID:7rN
(静かにドアを閉める運転手)
ほたる「わあ、ドアの音が重い……!」
泰葉「事務所の車もいい車だけど、さすがにちょっとモノが違うよねえ」
運転手「それでは、出発してよろしいでしょうか」
泰葉「はい。よろしくお願いします(ペコリ)」
ヒュルルルル……
千鶴「うわあ、音、静か……!!」
泰葉「幽霊のように静かって、このことだね」
裕美「どうして突然オバケの話なの」
泰葉「この車、幽霊の名前がついてるんだよ」
裕美「お菊さんとか?」
泰葉「あはは、そういうのじゃないけど」
運転手「暖かい飲み物を用意してございますので、道中よろしければお召し上がりください」
裕美「……そういえば、冷えちゃってたね」
ほたる「わあ、ココア暖かい……!! はい、千鶴ちゃんもどうぞ」
千鶴「ありがと……はー、暖まる……」
裕美「すごい、全然揺れない、早い……」
ほたる「……あれっ?」
千鶴「どうしたの?」
ほたる「……今の農家の納屋に、ロケバスみたいな車があったような」
泰葉「気のせいだよ」
19: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:14:43 ID:7rN
○同日夕刻/高知竜馬空港行き飛行機機内
裕美「ううううう」
千鶴「裕美ちゃんはどうしてお野菜抱きしめてそんな顔してるの?」
裕美「だって私、さっきの高級車の中でも、飛行機の中でも、ずっと大根と白菜抱えてるんだよ!!」
ほたる「とっても場違いでした」
裕美「自覚してる!!」
千鶴「仕方ないじゃない。捨てるのはヤダって言うし、きちっと梱包する暇なくて手荷物カウンターに預けられなかったし」
泰葉「私、飛行機に野菜持って乗っていいなんて初めて知った」
ほたる「私もです(ジー)」
裕美「ほたるちゃんは、さっきからどうして私を撮影してるの」
ほたる「えっ、だっておもしろシーンは撮影しとかなきゃって」
裕美「ひょっとして私、この後宿に着くまでずっと大根抱えてるのかなぁ」
泰葉「今夜の宿も歴史ある老舗ホテルだよ!」
裕美「わあん、大根持って高級ホテルに乗り込むなんてー!!」
20: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:15:10 ID:7rN
ほたる「でも絶対面白いですよ。その場面、録画しておきましょう」
千鶴「ほたるちゃんが楽しそうで何よりだね」
裕美「何よりじゃなーい!」
千鶴「そんなに邪魔だったら、空港で始末してもらえばよかったのに」
裕美「だめ。おばあさんが親切でくれたんだから、捨てるなんて絶対ダメ」
ほたる「裕美ちゃんのそういうところ、私、とっても素敵だなって思います(ジー)」
裕美「カメラを回しながらのセリフでなければとってもうれしかったのにぃ」
泰葉「裕美ちゃんはほんといちいち反応がいいなあ……」
千鶴「1人で撮れ高バンバン稼いでくれそうだね……」
泰葉「これは私もうかうかしていられないな……!」
裕美「ちっともうれしくないぃ」
21: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:17:34 ID:7rN
◇
◇
ほたる(……ん……むにゃ……)
ほたる(……あれ、寝ちゃってたみたい……)
ほたる(今日は寒かったし、緊張したから……)
ほたる(裕美ちゃんは……お隣で寝てる)
ほたる(泰葉ちゃんと千鶴ちゃんは……)
ほたる(ハンディカム見てる? 今日撮影したぶん、確認してるのかな)
ほたる(でも、それにしては、なんだか難しい顔……)
千鶴「……Pさんはこの企画、承知してると思う?」
泰葉「こういう無責任なの許すはずないでしょ」
千鶴「だね。番組側が勝手に……」
泰葉「とはいえ……」
千鶴「……変な色が……」
泰葉「私が今夜……」
ほたる(……なんの、話……)
ほたる(だめ……ねむ……)
ほたる(すや……)
22: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:19:50 ID:7rN
○数時間後/高知県南国市・高知竜馬空港から高知市への道中
高級外車(ブロロロロロロ……)
ほたる「当然のように高級外車で移動……!」
裕美「そしてまだお野菜抱えたままの私……!!」
ほたる「なんだかその姿も見慣れてきました」
裕美「なんだか私、事務所に帰るまでずっとお野菜抱えて旅をするんじゃないかって気がしてきた」
ほたる「ネガティブな予想ほどよく当たるんですよ」
裕美「ほたるちゃんが言うと説得力が半端無いなあ……」
泰葉「2人ともひと眠りして元気になったね」
千鶴「よかったよかった。これで宿に着くまで撮影のリアクション担当は2人に任せて大丈夫だね」
裕美「信頼があまりうれしくないです」
ほたる「……あの、泰葉ちゃん」
泰葉「なあに? (ニコニコ)」
ほたる「……なんでもありません。あ、なんでもなくはなくて」
泰葉「?」
23: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:20:19 ID:7rN
ほたる「あの、私、あまり面白いリアクション取れるかどうか、自信がなくて」
泰葉「大丈夫大丈夫。すぐに面白いものが見えてくるから」
千鶴「本当? もういい加減暗いし、さっきの無人駅のところ程じゃないけど、ここも田舎の国道って感じで目立つものなんて」
泰葉「この道は黒潮ラインって言って空港から高知市までほぼ直通できる道なんだけどね。途中にちょっとした名物があるんだよ」
裕美「へえ」
ほたる「暗いし、見落とさないようにしないといけませんね」
泰葉「大丈夫だと思う」
千鶴「ふーん、そんなに目立つ……えっ」
裕美「えっ」
ほたる「えーっ!?」
泰葉「ふふふ、見つけたね」
裕美「道の脇に飛行機が置いてある!」
ほたる「セスナ機? えっ本物?」
千鶴「台の上に固定してあるみたい。あ、レーダーっぽいものもある。空港近いしなにかそういう関係の施設かな」
泰葉「うなぎ屋さんの看板だよ」
裕美「どうしてうなぎ屋さんの看板が飛行機なの!?」
ほたる「あっでも本当に飛行機にお店の名前が書いてある! うなぎ専門て!!」
千鶴「うわあ本当だ。どうしてまた飛行機を看板になんか」
泰葉「まさに今の3人みたいな反応が欲しいからじゃないかな」
千鶴「まんまと店の人の思惑に乗せられてしまった……?」
24: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:22:29 ID:7rN
裕美「泰葉ちゃんはこのお店、知ってたの?」
泰葉「ロケで食レポしたことあるよ。高知で『東の横綱』って言われてる有名なお店」
裕美「……おいしいの?(グウウ)」
泰葉「サクサクのパリパリだよ」
ほたる「ちゃんとしたうなぎ屋さんで食べたことないんですけど、うなぎってなんだかふわふわとろとろした食べ物ってイメージが」
千鶴「それは関東風だね。関西風は蒸さないから身が締まってて、自分の脂で身が焼けるから表がサクサクで、香ばしい香りがして……」
裕美「へえ……(グウウウ)
ほたる「そうなんですか……(グウウウ)」
泰葉「2人とも、いいはらぺこの表情だよ(撮影中)」
裕美「と、撮らないで恥ずかしい(///)」
泰葉「えーなんで。食べ物屋に対する反応としては完璧だよ?」
ほたる「仕方ないじゃないですか。私たちみんな、朝たべたきりなんですもの」
千鶴「空港について即飛行機に乗ったから、食事の時間無かったしね」
泰葉「じゃあ、お夕食はここにしようか」
ほたる/裕美/千鶴「「「賛成」」」
泰葉「一糸乱れぬ返答ありがとうございます」
25: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:24:16 ID:7rN
○30分後/鰻屋店内
裕美「はふっはふっはふっ」
ほたる「もぐもぐもぐ」
千鶴「ぱくぱく」
泰葉「んぐんぐ……」
裕美「おいしい! ほんとに噛むたびにぱりぱりさくさくって音がする!!」
ほたる「見てください裕美ちゃん、この鰻重、ごはんの中にもう一枚鰻が隠してありますよ!」
裕美「うわあ本当だあ!」
千鶴「もう、2人ともあまりはしゃがないの。はしたないよ(おしとやかにもぐもぐ)」
泰葉「まあ、気持ちは解る」
裕美「だってだって、鰻ってタレの味しかしないと思ってたのにこれは鰻の身に味があってほんとに……あっ、しまった。もう半分食べちゃった」
ほたる「食べる前を撮影しなきゃでしたね」
千鶴「おなか空いてたからね。みんなで撮影忘れて飛びついちゃった」
泰葉「まあ、半分食べたところを撮影しておこうか。おいしさの証明だよ、これも」
千鶴「ええっ、食べかけ撮るなんて恥ずかしい」
泰葉「あ、その恥じらい顔ももーらいっ」
千鶴「いやあああ(まっか)」
裕美「……ねえほたるちゃん(ヒソヒソ)」
ほたる「……うん、解ってる。あとで話そうね(ヒソヒソ)」
千鶴「……」
26: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:25:34 ID:7rN
○夜/高知市内某ホテル
千鶴「はー……」
裕美「はー……」
ほたる「はー……」
千鶴「お風呂、気持ちよかったねえ」
裕美「つい長湯しちゃった」
千鶴「ほたるちゃんと裕美ちゃん、なかなか上がってこなかったもんね」
ほたる「千鶴ちゃんと泰葉ちゃんを待たせちゃって恐縮です」
千鶴「いいよいいよ。みんな疲れてたしね」
裕美「あ、お風呂も素敵だったけど、脱衣所もすごかったよね」
ほたる「そうそう全然湿気がこもらなくて、お風呂上がりでもすぐ身体が乾いてくれるんですよね」
裕美「あれ、どうなってるのかなあ。換気とか除湿とか、そういうのなのかな」
千鶴「かもね。泰葉ちゃんが言ってたけど、すごく歴史のあるホテルらしいし」
裕美「やっぱりそうなんだ。外の壁なんか、時代劇みたいだったもんね」
千鶴「昔は藩主さんの下屋敷が建ってた場所なんだって」
ほたる「道理でお庭も素敵です」
千鶴「ほんとね」
27: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:26:16 ID:7rN
裕美「そんな由緒あるホテルにおやさい担いで乗り込んでいった私……」
ほたる「あのシーンは面白かったけど、ホテルの人はあんまりびっくりしてませんでしたね」
千鶴「すぐ近くに生鮮食品を売る露天市が立つらしいから、野菜抱えてくる人も珍しくないのかもね」
裕美「それも泰葉ちゃん情報?」
千鶴「うん、そう」
ほたる「……」
裕美「……」
千鶴「……」
ほたる「……泰葉ちゃんは、どこに?」
裕美「お宿についてお風呂上がるまでは一緒だったけど」
千鶴「あー」
裕美(じー)
ほたる(じー)
千鶴「……ちょっと出てくるって言ってたよ。明日の撮影のために情報を集めておきたいって(メソラシ)」
28: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:27:34 ID:7rN
◇
◇
ホテルマン「では、こちらのお部屋とお電話をどうぞ」
泰葉「ありがとうございます。しばらく使わせていただきますね」
ホテルマン「ごゆっくり――それでは」
泰葉「……さてと」
(プルルルル……ガチャ)
泰葉「遅くにすみません。岡崎です」
泰葉「いえ、居場所はお教えできません。知りたかったらプロデューサーさんが電話番号から調べてください」
泰葉「はい。はい……あー。やっぱりそういう説明になってるんですね」
泰葉「いえ違います。スマホを抜かれるまではそうですが、そのあとは放置されました。スタッフさん、車で居眠りしてましたよ」
泰葉「編集前の画像データはこっちで押さえてます。ついでだからデータをもらう前に、居眠りしてる顔もしっかり撮らせてもらいました」
泰葉「明日の朝一番でコピーが事務所に届くよう手配をつけてありますから、どちらの発言が正しいかはプロデューサーさんが判断してください」
泰葉「ただし、場合によっては私、明日も3人をそっちに帰すつもりはありません」
泰葉「明日のスケジュールは把握してます。リスケでなんとかなる範囲でしょう? でもその後は知りません」
泰葉「……たった3つ、条件を呑んでください。難しい物では、ないはずです」
29: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:29:54 ID:7rN
◇
◇
裕美「泰葉ちゃん、プロデューサーさんか番組の人に、抗議しに行ってるんだよね?」
千鶴「ばれてたかあ」
ほたる「泰葉ちゃん、ずっと、すごく怒ってましたから」
裕美「笑顔作ってたけど、目が全然違ったもんね。それに……」
千鶴「それに?」
裕美「泰葉ちゃんて、こういうの、普段は嫌がるじゃない。お金に物を言わせて手早く豪華にやっちゃうの」
千鶴「……うん」
ほたる「遊ぶのもなんでも、私たちと一緒が好きで。豪華なもの次々出して喜ばせようなんて、普段絶対しません」
千鶴「そうだね」
裕美「出来ても普段は避けようとしてることを、敢えてやったのは、怒ってたから……私たちを、早くあそこから遠ざけたかったから」
千鶴「……」
ほたる「たぶん、私たちを守りたかったからだよねって、さっきお風呂で話してたんです」
千鶴「……まあね。気付いて黙ってくれてたんだ」
ほたる「泰葉ちゃんが、私たちの気持ちを軽くしよう、喜ばせようって頑張ってくれてるの、解りましたから」
裕美「まあ、黒塗りの高級車が来たときはただただ驚いたけど」
千鶴「あれは私も驚いた」
ほたる「でも、泰葉ちゃんは、突然どうしてあそこまで?」
千鶴「GBNSに。デビューしたばかりのほたるちゃんたちに、変な色がつけられそうになったから、かな」
裕美「……色?」
30: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:30:47 ID:7rN
◇
◇
泰葉「条件はみっつ。まず、今回の問題について番組スタッフ側から正式な謝罪を貰ってください。安全面の体制不備。連絡手段を奪ったのに居眠りをするような『ミス』。スマホを荷物から抜き取る時に同意なしで鞄の中身を撮影していることについて。きちんとした謝罪を求めます」
泰葉「次に、うちの所属アイドルに聞き取り調査を行い、その結果に応じて今回のDさんとの関係を見直すと約束してください」
泰葉「……私はプロデューサーさんを、信頼しています」
泰葉「プロデューサーさんが頷いた企画なら問題ないはずだ、と思っています」
泰葉「プロデューサーさんとあのDさんの間には、信頼関係があるのでしょう。だから、企画が通ったのでしょう」
泰葉「だけど、実際にこういう問題が起きました。ならば、プロデューサーさんの彼に対する信頼は、今も正しいのでしょうか。」
泰葉「そして、うちの事務所の、今まであのDさんの番組に出演していた子たちは、その信頼に足る扱いを受けていたのでしょうか。言えなくて、黙っているだけではないのでしょうか。きちんと確認して、見直してもらいたいのです」
泰葉「……いえ」
泰葉「ごめんなさい。差し出がましいことを言ってますよね」
泰葉「……はい。ありがとうございます。解ってます」
泰葉「……最後のひとつ、ですか」
泰葉「最後の条件は、今回の映像データを完全に抹消し、今回の番組企画をボツにすることです」
31: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:32:01 ID:7rN
◇
◇
ほたる「変な、色」
千鶴「ぶっちゃけた話になるけども」
裕美「うん」
千鶴「たとえばレイジー・レイジーに今回みたいなドッキリ仕掛ける人、居ると思う?」
裕美「絶対に居ないと思う!」
ほたる「目を離した瞬間になにが起きるか解らなくて、目が離せないと思いますよね」
千鶴「幸子ちゃんが凄く高い所からバンジーする企画に出ていたら?」
裕美「頑張ってるなあって思います。でも幸子ちゃんなら平気でこなしそう」
千鶴「つまり、それが『色が付く』ってことなんだよ」
裕美「……色」
千鶴「イメージ、思いこみと言ってもいい。この子たちはこうだ。こういうことをするに違いない。こうするとどうなるかわかんない……GBNSならまじめで努力家な4人組、どんなことでも真剣に取り組んでくれそう、かな」
裕美「なるほど」
千鶴「色がつくって、いい事ばかりじゃなくてね。知ってる? いつも相方に叩かれてるコメディアンが、プライベートでふざけた子供に叩かれたって話」
ほたる「はい」
千鶴「それも色。視聴者に、この人は叩いていい人だって思われちゃう。関係者に、この人はこういう役を回して大丈夫だって思われちゃう」
裕美「……」
千鶴「この人はこういう人。こいう扱いをしていい人。一度そういう色がついちゃったら、それを訂正するのって本当に大変なんだよね」
ほたる「千鶴ちゃん……」
32: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:33:44 ID:7rN
千鶴「まあ、最初はあの場で抗議入れようって話だったんだけどね。泰葉ちゃん、頭来ちゃったんだなあ」
ほたる「……やっぱり、そうなんですね」
千鶴「それでまあ2人の言う通り、泰葉ちゃんは今プロデューサーさんに直談判に」
ほたる「……でも、それ、変じゃないですか?」
千鶴「変じゃないよ。私たちの中では泰葉ちゃんが一番こういうことに慣れてるし、事前に私と泰葉ちゃんで……」
裕美「あの、ううん。そういうことじゃなくて、ねえ?」
ほたる「うん、ええと、なんていうか。2人でお風呂で、話したんですが」
千鶴「……うん」
裕美「……泰葉ちゃんは私たちを守ろうとしてくれて。ずっと……今も、私たちのかわりに怒ってくれてるってことだよね?」
ほたる「うれしいけど……それって、違うと思うんです」
33: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:35:39 ID:7rN
◇
◇
泰葉「……もしあの映像を元にした番組が放送されたら、ほたるちゃんと裕美ちゃんには色がつくでしょう」
泰葉「理不尽な企画を振っても、文句言わず頑張る子だって。そういう仕事振ってもいい子だって」
泰葉「そういう色が、少しずつ乗っていく切っ掛けになる」
泰葉「……ほたるちゃんと裕美ちゃん、すごく不安そうにしてたんですよ」
泰葉「それなのに怒りもせずに、スタッフさんの心配して。自分たちなりに仕事をこなそうとして」
泰葉「そういう姿勢が食い物にされて、理不尽な仕事を振られるようになるの、私は、許せません」
泰葉「この業界で仕事をしていくうちに、2人には色がついていくでしょう。だけど、それは悔いのない仕事の結果としてのものであってほしいんです」
泰葉「……ふたりともアイドルになれたばっかりじゃないですか。こういうことに苦しめられたりせずに、思い切り芸能活動を楽しんで欲しいんです」
泰葉「私や千鶴ちゃんみたく大人の都合で苦しむとか、そんなのない方がいいに決まってるじゃないですか」
泰葉「……これは、私の勝手な思いです。3人はこんなの知りません。だから……」
(ドタドタドタ)
裕美「ちょっと待ったーっ!!
ほたる「まったーっ!!」
34: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:38:59 ID:7rN
泰葉「わあっ、2人ともどうしてここに!?」
ほたる「ホテルの人に泰葉ちゃんを見ませんでしたかって聞いたら教えてくれました!」
泰葉「正攻法!!」
裕美「泰葉ちゃん、ありがとう!」
泰葉「えっ、えっ」
ほたる「それはそれとしてお電話貸してくださいね(サッ)」
泰葉「あっちょっ」
ほたる「もしもしプロデューサーさん。私たちもちゃんとお話がしたいです!」
裕美「私たち4人のことだもん。泰葉ちゃんだけが怒って、泰葉ちゃんだけが怒られるなんて、絶対違うと思うから!」
ほたる「そうです。ちゃんと、私たちだって話を……」
泰葉(ポカーン)
千鶴「ふふ。泰葉ちゃん、口が半開きだよ」
泰葉「……千鶴ちゃん」
千鶴「お疲れさま。プロデューサーさん、解ってくれそうだった?」
泰葉「うん、まあそれは勿論。私たちのプロデューサーさんだし」
千鶴「だよね……お疲れさま」
泰葉「ううん、自分でやった事だから……と。それはそれとして」
千鶴「はい」
35: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:39:19 ID:7rN
泰葉「もー、もー、もー! やってくれたね千鶴ちゃーん!(ポカポカ)」
千鶴「ふふふいたたなんのことやら」
泰葉「電話してる間、2人を引き受けといてねってお願いしたじゃない。なんでこういうことになっちゃってるの」
千鶴「あはは、ギリギリまでごまかそうとしたんだけどね」
泰葉「うそだあ、もう。全部話しちゃったんでしょ」
千鶴「でも、2人とも気が付いてたもん」
泰葉「えっ」
千鶴「泰葉ちゃんが自分たちを守ろうとしてくれてるって。怒ってくれてるって」
泰葉「……」
千鶴「だから、私が話したのは泰葉ちゃんがなにを怒ってるのかってことだけ。どうしたいかは、2人が最初から考えを持ってたんだよ」
泰葉「……だけど、2人には、まだこういうのと無縁で居て欲しかったのに」
千鶴「……」
泰葉「私たち2人みたく、大人の都合やいい加減さで痛い思いをして、暗い気持ちになるなんて。せっかくの活動を楽しめなくなるんなて。無いほうがいいに決まってるじゃない」
千鶴「まあね」
泰葉「だったらなんで。千鶴ちゃんなら、なんとか誤魔化せたでしょ」
36: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:41:32 ID:7rN
千鶴「裕美ちゃんが言ってたよ。泰葉ちゃんは普段、お金に物を言わせて手早く豪華にやっちゃうのを嫌がるって」
泰葉「……」
千鶴「ほたるちゃんもね、泰葉ちゃんはいつも、遊ぶのとかでも自分たちと一緒が好きだって」
泰葉「……」
千鶴「泰葉ちゃんが嫌なことをやらせてまで守ってもらうのはおかしいって、2人は言ってるんだよ」
泰葉「……」
千鶴「こうやって大人とまともにやりあうのって、泰葉ちゃんしか経験がない。だから泰葉ちゃんが前に立ってた。泰葉ちゃんは、そうしなきゃって思ってた」
泰葉「……実際そうじゃない」
千鶴「だけど、そうしたら、泰葉ちゃんは『一緒』をできなくなるじゃない?」
泰葉「……」
千鶴「泰葉ちゃんは凄いと思う」
泰葉「なに、突然」
千鶴「芸歴。実力。いろんなことを乗り越えてきた、力がある」
泰葉「……うん」
千鶴「だけどね。それでも、私たちは4人は対等な友達で、仲間なんだよ」
泰葉「……うん」
千鶴「だから、問題があったらみんなで悩むんだ。今回みたいなことがあったら、4人で考える。4人で怒る。泰葉ちゃんだけが矢面に立つのはおかしいし、それをさせていたら自分たちは対等でも、友達でも、仲間でもいられなくなる。それが、2人の思いなんだ」
泰葉「……もしかして、千鶴ちゃんもそう思ってた?」
千鶴「まあね」
泰葉「だから、2人を誤魔化さなかった?」
千鶴「まるで気付いてなければ、しらんふりしようと思ってたけどね」
泰葉「……でも、気付いてて欲しい。おかしいと思ってほしい、とは思ってたんでしょ」
千鶴「まあね。だから誤魔化さなかったよ。約束破って、ごめん」
37: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:43:50 ID:7rN
泰葉「……はー。私、空回りだ。はずかし」
千鶴「私たちのために必死になってくれたのは、みんなわかってるよ」
泰葉「だけど1人で空回りして、暴走して。なんか私が一番子供みたいじゃない」
千鶴「2人のことが、大事だったからでしょ」
泰葉「……でも、2人ともちゃんと考えてた」
千鶴「うん」
泰葉「子供扱いしてたんだなあ」
千鶴「いや、子供でしょ」
泰葉「ええっ」
千鶴「2人も、私たちも、子供だよ。世間から見たらね……でもさ」
泰葉「……うん」
千鶴「だから、4人対等で、いいじゃない。泰葉ちゃんが大人の役をやらなくたって、いいじゃない」
泰葉「……かなわないなあ」
裕美「泰葉ちゃーん! プロデューサーさんが、お電話替わってってー!!」
泰葉「はーい!!」
千鶴「行ってらっしゃい」
泰葉「千鶴ちゃん」
千鶴「ん?」
泰葉「……ありがと」
千鶴「こちらこそ」
38: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:44:19 ID:7rN
○2月14日(日)正午過ぎ/高知城
泰葉「というわけで、こちらが高知城公園、梅の段でーす」
千鶴「まだ、二分咲きぐらいかなあ」
ほたる「でも、きれい……」
泰葉「三の丸って所には桜がたくさん植わっていてね。花見のシーズンには昼から酔っぱらいがたくさんいてお花見してるんだって」
千鶴「さすが高知、なのかなあ……」
泰葉「加奈ちゃんも、高知はお酒飲む人いっぱいだって言ってたし、そういうことでいいと思う」
ほたる「でも、いいんでしょうか観光とかしてて」
泰葉「仕方ないでしょ夕方の飛行機しか取れなかったんだし」
ほたる「まあ、たしかに」
千鶴「番組Dさんへの対処もリスケもプロデューサーさんが確約してくれたし、急いだって仕方ないよ」
泰葉「そういうこと……向こうもあっさり折れてくれてよかったよ。おかげで最後の手段を使わずにすんだ」
裕美「最後の手段?」
千鶴「こっちで押さえてる動画を無編集で公開して問題を拡散してやろうって」
裕美「うわあ」
ほたる「そうならなくて本当に良かったですね……」
千鶴「まあ、そういうわけだから。時間まではゆっくり観光して楽しめばいいんだよ」
ほたる「現時点ですでに結構満喫してますけどね。ひろめ市場でごはん食べて、おまつりの体験映像を見て……」
裕美「おみやげもいっぱい買ったしね!(フンス)」
千鶴「裕美ちゃんはどうしてそのおみやげを全部1人で抱えちゃうの?」
ほたる「お大根と白菜も」
裕美「ずっと抱えてるわけじゃないよ。順番に持とうねって言ったじゃない」
千鶴「そうだったね」
裕美「重い物も、ほかのいろんなものも、4人で持つんだよ」
泰葉「……そうだね」
39: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:44:57 ID:7rN
裕美「あーあ、でも帰ったら学校かあ。もうすこし遊んでいたい気も」
ほたる「月曜日だから仕方ないですよ。勉強も……あ」
千鶴「どうしたの?」
ほたる「今日は日曜」
泰葉「うん」
ほたる「バレンタインの準備、し損ないましたね……」
裕美「あー、そうだった」
千鶴「4人でプロデューサーさんに手作りをって計画だったのにね」
ほたる「さすがに戻ってからチョコ作りは時間的に難しいですよね」
裕美「なにか、市販のチョコを買って帰る?」
千鶴「そうね。高知らしいチョコとかあったりするかも……」
泰葉「……ああ」
裕美「? 」
泰葉「わざわざ買わなくても、あるじゃない。あれが」
裕美「ああ」
ほたる「そういえば」
40: ◆cgcCmk1QIM 21/02/12(金)19:45:12 ID:7rN
泰葉(私たちは鞄から、あのチョコを取り出して、笑い合った)
泰葉(旅のきっかけになったチョコレート。スマホとすり替えられていたた、あのチョコを)
泰葉(昨日は腹が立ったけど、なんとかしなきゃってそればかり考えてたけど)
泰葉(……今は、それを4人で笑うことができた)
泰葉(もし、千鶴ちゃんがごまかし切って、2人が気付かないままだったら、私は今日、こんなふうに笑えただろうか)
泰葉(ううん、きっと、笑えなかった)
泰葉(だけど)
泰葉「じゃあ、今年のプロデューサーさんへのチョコは、これにしよう。ちょっと皮肉っぽいかもしれないけどね」
泰葉(私が提案する。みんなが笑って乗ってくれる)
泰葉(それを見ていると、これで良かったんだ、って思うことができた)
泰葉(こうして、チョコレートが切っ掛けで始まった私たちの短い旅は、チョコレートを囲んで、笑って終わることが出来たのでした……)
(おしまい)
【モバマス】岡崎泰葉「チョコレート・ジャーニー」