1: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 17:53:23.73 ID:qB3WfYj/.net

私の名前は園田海未。ごく普通の高校生である。


海未「ある一点を除けば、ですがね」


海未は半分にやけながらにしてそう呟いた。


ことり「海未ちゃぁ~ん。かえろっ♪」

海未「えぇ」


そう言いながら教室の隅から駆け寄ってくるいかにも女の子した女の子。彼女は南ことり。私の幼馴染だ。おそらく彼女は私に惚れている。


海未「はい。確か今日は寄り道をするのですよね?」


と私はことりに投げかけると


ことり「うん♪帰り道に新しくできたクレープ屋さんにいってみたいんだぁ~」


と、なんとも言い表し難いおっとりポワポワした甘い声でそう返ってきた。



2: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 17:59:05.17 ID:qB3WfYj/.net

海未「本当は穂乃果も誘いたかったのですが……」

ことり「穂乃果ちゃんは店番があるからって早々に帰っちゃったもんね」


穂乃果とは私のもう一人の幼馴染の事で
だらけてばかりでダラシのない女の事である。


海未「また太られても困りますのでかえって好都合かもしれませんね」

ことり「もう、海未ちゃんっ!そんな事言ったら穂乃果ちゃんがかわいそうだよっ!」

海未「冗談ですよ冗談」

ことり「でも海未ちゃんと二人きりはことり嬉しいな♪」


そう言いながらことりが私の腕に抱きついてきた。


海未「ちょっ…ことり!?」

ことり「今日はことりと二人でデートだもん♪絶対離さないからねっ♪」

海未「やれやれ」

これがモテる女の辛いところですね………。


この時、海未はまだ知らない
これから生じる戦乱の現世に身を投じるハメになるということを。



3: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:04:25.38 ID:qB3WfYj/.net

海未「もうそろそろですかね?」

ことり「うん。この先を右に曲がってその2本目の道を左に曲がれば着くはずだよっ」

海未「楽しみですね!」

ことり「うんっ♪美味しいと良いなぁ」

海未「ことりと食べる物ならなんだって美味しくなりますよ」

ことり「えへへ~」



4: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:09:04.77 ID:qB3WfYj/.net

女「けひひ……良い女ハケーン!」


楽しそうに話す二人の背後に怪しい女の影
そして海未はそれを感じ取る。


海未「殺気!?」


海未は謎の女から向けられている殺気に気付いたがその時既に遅し。


ことり「きゃあああっ!」

海未「えっ?」


ことりがそう叫んだ時
既に海未の隣からことりの姿は消えていた。



5: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:15:46.55 ID:qB3WfYj/.net

女「コイツァ良い女だなァ!そっちの貧乳に興味は無ェがコイツは頂いていくぜ」


謎の女が下衆な笑みを浮かべながら海未の方を覗く。


海未(確かに先程までことりは私の隣にいた。なのに何故!?ことりは一瞬にして私の隣から消え去ったというのですか!?)

女「どうしたァ!?固っちまってェ。コイツを助けなくても良いのかい?」

ことり「いやあああああ」


女はジタバタと悲鳴を上げていることりを海未のいる方向へ差し出しながらそう問いかけた。


女「まァ助けられんだろうが」

ことり「海未ちゃぁ~ん!助けてぇぇー!」



6: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:21:03.69 ID:qB3WfYj/.net

しかし海未は答えない。
海未は思考を凝らす。
だが即座に考えるのを辞めた。なぜなら海未は………


海未(いいえ、考えるのはやめです。)

海未「なぜなら。あなたに直接尋ねた方が早いですから」

女「あ!?」


その刹那
目が赤く浮かび上がり
そして海未の身体から蒼白い光が放たれる。


海未「やれやれあまりこの能力”チカラ”には頼りたくなかったのですが」


人間からどんどんかけ離れていってしまう様な
そんな気がして。



7: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:27:09.06 ID:qB3WfYj/.net

女「ランセルノプト放射光の輝きッ!?まさか……!」

女(こいつも私と同じ様に”神からの授かり物”を受け取ったというのかァァ!?)


海未は相手の脳へ思考へと自分の思考を溶け込ませていく。


海未(なるほど。動いていたのはことりじゃなく私の方だったというわけですか)


海未は目を合わせた相手の思考、過去の経験、などなど
その者の全てを瞬時に理解する事が出来るのだ。

そして相手の能力が指定した対象と対象の位置を入れ替える物だと瞬時に理解した。


女「チッめんどくせぇ。ズラかるぜ!」


女はことりを抱え能力を使いこの場を離れようとするが……


海未「そうはいきませんよ」



8: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:32:32.66 ID:qB3WfYj/.net

”ことりの体重は膨れ上がる”

女「なっ!?重いッこいつなんて重さなんだッ」

ことり「なにっ?なにがおこってるの!?」

女「ハッ!あいつは………」

女「いねェ!」


女がことりに気を取られているその一瞬の間に
女の視界から海未の姿は消えていた。


女「どこだァ!?」

海未「ここですよ」

女「なっ!?」



11: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:37:26.78 ID:qB3WfYj/.net

一瞬の隙をついて女の懐に潜り込んだ海未は
その鍛えられたしなやかな身体から洗練された拳打を女へと叩き込む。


海未「はっ!」

女「うげぇあっーー!」


女は後方へと吹き飛び、海未はことりの元へと駆け寄る。

そしてこれは神より授かった異形のチカラではない。

園田海未自身が日々の鍛錬で見出し身に付けてきた人間としての証である。


海未「怪我はありませんか?」


当のことりは

ことり「えっ…えっ?」

呆気にとられていた。



12: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:39:41.37 ID:qB3WfYj/.net

女「貴様も…能力者だったとはな……」


女はそう呟きながら立ち上がる。


海未「能力……?なんの話ですか?」


何故この能力”チカラ”の事がバレているのですか?
今までに他言はしていない。

この闘いでもその素振りは見せていないのに。

単純な疑問が園田海未の頭の中に浮かび上がる。
だがその疑問は女の言葉により解消される事となった。



13: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:43:51.20 ID:qB3WfYj/.net

女「チッとんだズブ野郎が紛れ込んだもんだぜェ。まァ、いい。教えてやるよ」

ことり(能力”チカラ”?ランセル……?二人はないを言っているの!?)

女「能力者はその能力を使用した際に身体から特殊な光。ランセルノプト放射光を放つ」

海未「ランセルノプ……?」

女「その様子だと能力を手にしてからまだ日が経ってねェらしいなァ」

女「予定変更。その女は、そこのヒーロー気取りをぶっ潰してから頂くとするかぁぁーー!」


女がそう叫ぶと彼女の身体は淡い蒼白い光に包まれる。


海未「これがランセルノプト放射光の輝きとやらですか」


なるほど。私が同じ様に能力”チカラ”を使う時
周りからはこう見えているのですね。

海未は落ち着いている。
何故なら海未はこれから相手が取る行動を既に理解しているからだ。



14: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:47:12.86 ID:qB3WfYj/.net

女「つらぁ!」 


女が目の前に石ころを投げたと同時にそれと海未の位置が入れ替わる。

そして懐から手にしたナイフを振りかぶる、が。


海未「全て読めていますよ。あなたの浅はかな考えなんてね」

女「なにッ!?」


引き寄せた海未は既に迎撃の構えを取っていた。


海未「幼少期から日々鍛錬を培ってきたこの園田海未を舐めないでください」


そう言い放った後ナイフが持たれた女の腕を振り払い

渾身の膝蹴りを腹部へと叩き込む。



15: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:51:04.47 ID:qB3WfYj/.net

海未「ハッ」

女「ぐぅあっ!?」

海未「まだまだぁ!」


間髪入れず海未の拳よりも硬い掌底を。上半身の捻りを加えた渾身の付きを女の顔面へと叩き込む。


女「はがあああああっ!」


女は血を吹き出しながら後方にのけ反り
そして倒れ込んだ。


女(なぜだ!なぜこうも私の動きが先読みされるんだッ!クソォッ!………先読み…………?ハッ!)

女「そうか」

そう呟き女はヨロヨロと立ち上がる。



16: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:54:08.86 ID:qB3WfYj/.net

海未「まだ動けるのですか。頑丈ですね」

女「こっちだって数々の修羅場を潜り抜けて来てんだァ。そう簡単にやられやしねェよ」

海未「やれやれ」

女「余裕ぶっこいてられんのも今のウチだッ!てめぇの能力はもう見切った。いくらてめぇが私の行動を先読み出来ようがッ!てめぇに対処の出来ない状況を作り上げれば良いだけの話ッ!」

海未「そうですか」


ふふ。と海未は余裕の笑みを浮かべている。


女「てめぇなぞこの能力を使えばッ!」


だが、女の身体がランセルノプトの輝きに包まれることはなかった。


女「はっ………?なんでッ!なんでッなんでッ!」

”二度とチカラを使う事は出来ない”



17: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 18:58:44.17 ID:qB3WfYj/.net

女「能力が使えない!?なぜだぁァァァァ!」

海未「あなたは一つ勘違いしているようですね?」

女「あァ!?」

海未「私のこの能力″チカラ″がただ相手の考えを読むだけのものだ、と」

ことり(ことりなんか空気だなー。海未ちゃんはイキイキしてるし。謎のポエムを考えてる時みたいに目が輝いてるよ……)


そう考えてることりの横目で海未はこれ以上に無いくらいのキメ顔で言い放った。


海未「私の能力″チカラ″はただ相手の考えを読むだけのものなんかではありません」

女「なん…だと……」

海未「私の能力”チカラ”は目を見た相手の脳へと入り込みそして溶け込む事。私はあなたの脳に”二度と能力を使えない”」

女「はっ………?」

海未「そう命令を書き込みました。そしてもう一つ」



18: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 19:02:09.80 ID:qB3WfYj/.net

女「そんな…私は……私はぁぁぁぁ!」


女はまるで壊れてしまったかの様に叫び項垂れ崩れ落ちる。
そして海未が書き込んだもう一つの命令を遂行する事になる。


海未「あなたはもう終わりですよ」

女「うご…うごごごごごご」

"頭から地面へとめり込んで逝く"

海未「延々と潜り続けなさい。暗く汚い地底の底の底まで。それがことりに手を掛けようとした貴方への罰です」

女「クソォォ!園田海未ィィ!お前はまだ気付いていないッ!この能力をッ!神からの授かりを受けた恐ろしい代償をッ!お前はもう既にこの世の闇に飲み込まれてんだよッ!」

海未「………」

女「ランセルノプトの輝きにッ!その身体が包まれた時点で既になッ!その輝きをッ!世界がッ!お前を見つけたぞぉぉぉーーーーーー!園田海未ィィィィイイイイイイイイ!」



19: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 19:04:34.05 ID:qB3WfYj/.net

海未「耳障りな女ですね」

”もっと早くめりこんで逝く”

海未がそう命令を書き込んだ後
女の叫び声は聞こえなくなっていた。


海未「やれやれ。そんな事はどうでも良いんですよ。私はこの能力”チカラ”で私の目の前にいる、両手で事足りるだけの人を護れればそれで良い」

海未「それ以上を望むのは……」


そう言い残して海未は若干空気気味だったことりの元へと駆け寄る。


海未「無事で良かったですよ、ことり」

ことり「海未ちゃんことり…ことりっ!ずっと怖くてなにも……」


ことりの瞳に涙が浮かび上がる。



20: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 19:06:38.34 ID:qB3WfYj/.net

海未「良いのですよ、ことり。ことりには私という”幼馴染”がついているのですから」


海未はいつもよりもちょっぴりだけ柔らかい笑みをことり

に差し向けそう答える。
 
ことり「うんっありがとう♪」

海未「ふふ。どういたしまして」


だがその”幼馴染”という言葉がズキリとことりの心臓を痛める事になるのだが本人はまだ気付いていない。


ことり「ねぇ海未ちゃん?」

海未「はい?」

ことり「ことりってそんなに重たいのかなぁ」

そう俯きながら呟くことりに海未は

海未「まさか。ことりはただの可愛い女の子ですよ」

と答え抱き抱える。

ことり「海未ちゃん…ありがとう!」

流した涙を嬉し涙へと変えことりは精一杯の力で海未を抱きしめた。



21: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 19:08:27.87 ID:qB3WfYj/.net

海未「やれやれ」


モテる女は辛いですね………ほんとうに

ですが、あなたは私なんかを好きになってはいけない。

人智を超え他人の思考を捻じ曲げるという人の領分をはみ出した

言わば神の領域。そんな禁足の能力”チカラ”
を手にした私を

ことりは好きになんてなってはいけない。

私は人を愛す事も愛される事も許されない
してはいけない女。

なぜなら私は人の道を踏み外した
”神様からの授かり物”を受け取ってしまったのだから。


海未「すみません、ことり。あなたには普通でいて欲しいのです」

私とは違う”普通”で

”今日この場で起こった全ての出来事を忘れる”

”園田海未と普通にクレープ食べて何事もなく家へと帰る”

それだけ……

そうして海未は抱き留めていたことりを離す



22: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 19:10:13.39 ID:qB3WfYj/.net

ことり「今日は楽しかったね~」

海未「えぇ、たまには買い食いというのも悪くないかもしれませんね」

ことり「また行こうねっ♪」

海未「食べ過ぎは禁物ですよ?私達は仮にもアイドルなのですから」

ことり「分かってるよっ♪」

ことりは幸せそうに帰路へと着くのだった。

だが園田海未のこの行為はただの延命措置に過ぎない。

一度ランセルノプト放射光の輝きに魅入られたが最後。

その輝きは人々を魅了する悪魔の輝き。
人智を超えた神の”チカラ”に人々は魅了される。

それがこの現世の運命”さだめ”であるという事を海未はまだ知らない。

そして今日の闘いがただの序章に過ぎないということも。



24: 名無しで叶える物語 2021/01/03(日) 19:11:13.99 ID:qB3WfYj/.net

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海未「くふっ。きひっくきききき。」ニヤニヤ

穂乃果(まーた海未ちゃんが授業中にニヤついてるよ……穂乃果には授業を真面目に聞けーッ!ってうるさいくせにさ)

ことり(ニヤついてるンミチャア可愛い……)

教師「高坂ァ…聴いているのか?」

穂乃果「えぇー!?穂乃果だけーーー!?」

海未ちゃんの闘いはまだまだ続く。



29: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:15:15.70 ID:r5VRtqBW.net

昨日、壮大な闘いを繰り広げた私ですが
現在はいつも通り普通の学生生活を送っているのだった。


海未(それにしても最後あの女が言っていた事が気になりますね……世界が私を見つける……一体どういう意味でしょうか………ただの痛い人と捉えるか、あるいは)

穂乃果「ねぇ海未ちゃん!」

海未(人の道を踏み外し、禁足の能力”チカラ”を手にしてしまったその代償。果たしてその代償とは一体)

穂乃果「ねぇ聞いてるの!?海未ちゃん!」

海未「え?あ、えぇ!はい!聞いていますよ?」


まずい。何も聞いていなかった。
穂乃果に揚げ足を取られると面倒です。
なんとかして誤魔化さなくては!



31: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:22:51.51 ID:r5VRtqBW.net

穂乃果「ほんとにぃ~?なーんか難しい顔して考え込んでたけど」

ことり「まあまあ、穂乃果ちゃん」

海未「すみません…つい考え事を」

穂乃果「ふーん。まぁいいけど」

海未「………」

穂乃果「っていうか海未ちゃん!昨日ことりちゃんとあの店行ったんでしょ!?」

海未「えぇ。まぁ……行きましたが」

ことり「あのお店すっごく美味しかったんだ~。今度は穂乃果ちゃんも行こうねっ♪」

穂乃果「ずるいっ!なんで穂乃果だけ置いてけぼりで二人だけで行っちゃったのさ!?これはめーかくな裏切り行為だよ!」



32: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:27:50.80 ID:r5VRtqBW.net

海未「店番があると先に帰ってしまった穂乃果がいけないのでしょう!?」

ことり(あちゃー……こうなった穂乃果ちゃんは誰にも止められないからなぁ。でも二人の言い合いを見てるのは楽しいからもうちょっと眺めてから助け船を出す事にしよっと♪)

穂乃果「穂乃果がいる日に行けば良かっただけじゃん!なんで穂乃果がいない日に行っちゃうのさ!」

海未「それは……ことりが行きたいって言ったからで………」

穂乃果「海未ちゃんはいっつもそうだよ……穂乃果には厳しい癖にことりちゃんには甘いんだから!」

海未「穂乃果は普段からことりに甘えてばかりなのですからたまにはいいでしょう!?たまには!」

穂乃果「はぁ?別に甘えてないし!」

海未「というか!また行けば良いだけの話しじゃないですか!?」

海未(昨日は変な女に絡まれたせいで私もあの店のクレープを食べれていないのですよ!!ことりも見てないでなんとか言ってやってくださいよ!)



33: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:31:07.13 ID:r5VRtqBW.net

そう心の中で穂乃果とことりに悪態をつきながらことりへと視線を送る。

ことりはそろそろかな?と言わんばかりに穂乃果の静止に入る。

ことり「ねぇ、穂乃果ちゃぁん?」

穂乃果「何さ!ことりちゃんだって海未ちゃんと同罪なんだからね!?ずるいよ自分達ばっかり」

ことり「実はねぇ~あのお店まだ出来たばかりで評判が分からくてぇ~。だから穂乃果ちゃんと行くために下見に行っていたんだよ?」

穂乃果「下見ぃ?」

ことり「うんっ♪穂乃果ちゃんにはことりが美味しい!って自信を持って言えるお店に連れて行ってあげたいんだ~」

穂乃果「そ、そうだったの?」

海未「そ、そうですよ!穂乃果も忙しいですからあまり無駄な事に時間を取らせたくないと思ったのです」


海未はよくもまぁこうも口から出任せが出てくるなぁ、と感心しながらもことりの口車に乗っかる事にした。



34: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:33:42.88 ID:r5VRtqBW.net

ことり「そうそう♪それにもし期待外れの味だった時でもことりの頼みなら海未ちゃんは断れずに全部食べてくれるしねっ♪」

穂乃果「そういう事だっのか~。海未ちゃんはただの毒見役って訳だったんだね?安心安心!」

海未「ん?」


海未は内心ことりの言っている事が冗談にも聞こえない様な気がしてきたが深く考えるのはやめた。

チカラを使ってしまえばことりの真意を計る事は出来るのだが、それをしてしまったら本当にただの外道に成り果ててしまう。
海未は私利私欲の為にはチカラを使わないと心に決めている。


海未(それに私達は幼馴染ですから。そのような事をするのは野暮ってものです)

しなくても心は通じ合っている。
そう海未は信じている。



35: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:35:08.84 ID:r5VRtqBW.net

ことり「でねぇ穂乃果ちゃんっ!」

穂乃果「なぁに?」

ことり「来週のこの日は部活はオフでしょ?だから3人で同じ店に行かないかなぁ?」

穂乃果「おっいいねぇ!行く行くぅ!」

ことり「ことりと海未ちゃんのお墨付きだならねぇ~。ねっ♪海未ちゃん?」

海未「え、えぇ!そうですね!」

まぁ、本当はお墨なんてものは付いていないのですが。



36: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:37:02.20 ID:r5VRtqBW.net

穂乃果「楽しみ~!」

ことり「それに他にも面白い場所を見つけてあるんだ~」

穂乃果「えぇ~!?どこどこー?」

ことり「それは行ってからのお楽しみだよっ♪」

穂乃果「そんな~!でもますます楽しみになってきたー!」

海未「はい!私も楽しみです!」

ことりはすごいですね
私と穂乃果が小競り合いを起こした時
いつも気がついたらことりのペースになってしまっている………でも。



37: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:38:58.82 ID:r5VRtqBW.net

海未(そういう事はもっと早く言い出してほしいものですねぇ!?そのせいで私は穂乃果と余計な言い争いをする事になり!剰え穂乃果に裏切り者のレッテルを貼られかけたのですからね?)

海未はそう心の中でことりへと悪態を付きながら渋い顔付きでことりへと視線をやる。

ことり(わぁ~海未ちゃんがなんでもっと早く言い出さなかったんですか?って顔してる~。ごめんね~二人のやり取りが見てて面白かったんだもんっ♪)

海未の心の内を理解し笑みを返す
表情で空気を読み取れる系女子、ことり

海未(あの顔は絶対に私をからかっていますね!?ことりはいつもそうです!全く……!)

読み取れない系女子、園田

海未「そういえば昼休憩が開けた次の授業は数学ですが」

穂乃果「げっ」

海未「二人はちゃんと宿題はやってありますか?」



38: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:41:37.11 ID:r5VRtqBW.net

ことり「ことりはやってあるよ~」

穂乃果「い、今から…やろうかなぁ……」

海未は険しい表情で穂乃果を睨みつける

穂乃果「なんちって……」

穂乃果(やばいやばい海未ちゃんめちゃくちゃ怒ってるよ……)

読み取れる系女子、穂乃果

海未「ほ・の・かー!?」

穂乃果「ひぃぃぃぃ!昨日はいつもよりお客さんが来て忙しかったんだよーーー!」

海未「言い訳不要です!」

穂乃果「ことりちゃん写させて~~。お願いっ!」

海未「ダメに決まっているでしょう!?」

ことり「あはは。一緒に解こっ?」

穂乃果「お"ね"か"い"し"ま"す"~」

ことり(やっぱり二人は見てて飽きないな~)



39: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:45:01.50 ID:r5VRtqBW.net

海未「どうしてそんな式が出てくるのですか!?」

穂乃果「だってこうにしかならないじゃん!」

海未「なりませんよ!」

いつも通りの喧騒

いつも通りの日常

昨日、非日常を味わった海未にとって
この”いつも通り”は安寧を意味するものであり
そんな日々がいつまでも続けば良いのに、と
そう願っていた。

しかしそう旨い話があるわけもなく
海未のその願いは辛くも崩れ去るのだった。
教室に響き渡る轟音とともに。



40: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:47:42.33 ID:r5VRtqBW.net

海未「なッ!?」

激しい轟音が鳴り響いたと同時に教室のドアが
壁が吹き飛び、そしてそれらを吹き飛ばした衝撃が海未の身体をも包み込む。

海未「ぐあああああああ!」

どこからともなく現れた謎の衝撃と破壊音。
そして海未の絶叫と共に身体は宙へと舞い後方の窓ガラスへと叩きつけられる。

穂乃果「海未ちゃあああーーーんんん!?」

ことり「そんな……”また”?」

静寂から叫喚へ
穂乃果の叫び声を筆頭に平和だった教室は突如として地獄へと変わり果てた。

???「少し距離があったみたいね。窓枠の破壊にまでは至らないか」



41: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:50:06.66 ID:r5VRtqBW.net

ことり(また……?どうしてことりはそう思ったの?それに似たような事がどこかで起こったような……)

ことり「ダメ……思い出せない!」

穂乃果「海未ちゃぁん!海未ちゃぁん!大丈夫なの!?」

絶叫にも似た叫び声を上げながら海未に駆け寄る穂乃果。

海未「う…だ、大丈夫ですよ……何も…心配はいりません」

腹部には謎の衝撃による損傷が
身体の一部には割れたガラスの破片が喰い込んでおり、その制服を赤く滲ませている。

おおよそ大丈夫とは似つかわしくない状態で海未はそう答えた。



42: 名無しで叶える物語 2021/01/04(月) 23:59:23.18 ID:r5VRtqBW.net

穂乃果「でも海未ちゃん血が!」

海未「こんなものはただの擦り傷ですよ。穂乃果は教室の隅へ。巻き込まれたら大変です」

穂乃果「でも海未ちゃんが!」

海未「ことりの事、よろしく頼みますよ穂乃果。あなたが側にいて上げてください」  

ズキズキと乗し掛かる身体の痛みに耐えながら微笑んで見せ穂乃果を諭す。

穂乃果「うん…分かったよ……死なないよね?」

穂乃果はウルウルと涙を浮かべながら海未の袖をつまむ。

海未「ふふ。この私が穂乃果やことりを残して死ぬと思えますか?」

穂乃果「思わない!」

海未「さぁ、ことりの元へ行ってあげて下さい!」 

穂乃果「うん!ことりちゃぁん!」

なんとも儚い幼馴染の絆を見せ付けている穂乃果と海未だったがこの時海未は全く別の事を考えていた。

海未(この破壊の主は一体誰なのか)



48: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 22:57:10.01 ID:mPS/5SBu.net

???「まさかウチのもんを始末した輩があんただったとはねぇ~、偶然にも程があるわよねぇ~海未?」

その小さな少女は不敵な笑みを浮かべながらこちらへと歩みを向ける。

穂乃果「その声は……なんで…」

海未(ウチのもんを始末……?昨日ことりを襲ったあの女の事でしょうか?)

???「そしてその犯人の抹殺の命を受けたのが」

ことり「そんな…」

そこに立たずんでいたのは
穂乃果とことりもよく知る人物。

にこ「このにこだなんてね」

矢澤にこだった。



50: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 23:02:36.45 ID:mPS/5SBu.net

穂乃果「にこちゃんが!」

ことり「なんでこんなひどい事をするの!?」

にこ「あんたらには理解できない事よ。今まで平和ボケして生きてきたあんたらにはね」

穂乃果「どうい」

海未「ウチのもんとは!命を受けたとはどういう意味ですか?あの女とにこはお知り合いだったのですか?」

どういう意味なの?
穂乃果がそう言おうとした言葉を遮り海未はにこへと投げかける。

にこ「知り合い、ねぇ~。まぁ、知り合いと言えば知り合いになるのかもね」

海未「真面目に答えてください!ウチのもんとは!命とは一体なんなのですか!?」

海未(それにあの女が最後に言い放った言葉。知りたい事が多すぎるッ!ただでさえ信じ難い出来事が連続して起こっているいうのに……今度は友人のにこに襲われる事になるなんて)



51: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 23:06:01.14 ID:mPS/5SBu.net

にこ「あんた本当に何も知らないのねぇ」

またそれですか

海未「昨日も似たような事を言われました」

ことり(昨日は一緒にクレープを食べて帰っただけ…何も無かったはず……海未ちゃんは一体なんの話をしてるの?)

にこ「いいわ。あんたを殺る前に少しだけ話をしてあげるわ」

そう前置きをしにこは語りだす。

自信がとある能力者同士を集めた組織に所属している事を。

そして能力者同士が利害の一致により徒党を組みまるでシンジケートを形成するかの様に至る所で自らのテリトリーを広げていっている事を。



52: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 23:09:47.20 ID:mPS/5SBu.net

海未「にこ…貴方はそんなものに……!」

にこ「群れからあぶれた弱い個体から順に淘汰されいく。それが自然の摂理よ。平和ボケしきったあんたには理解の出来ない事かもね」

海未「私は平和ボケをしている訳ではありません。己の信念に従ってこの能力″チカラ″を振るっているだけです!」

にこ「それを平和ボケというよッ!あんたはその組織の人間を始末した!あんたの抹殺の命をこのにこが賜った!」

海未「心までもゲスに成り果てたようですねにこッ!」

にこ「フン。あんたがこの答えに至るのも時間の問題。あんたはにこに感謝しなさい。現実を知る前に。理想を追い求めている間にあの世に送って貰えるんだからね!」

任務をしくじれば待っているのは″死″
絶対にミスは許されない。
にこは生きる為にかつての仲間を自らの手にかけようとしているッ!



53: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 23:14:48.18 ID:mPS/5SBu.net

海未「違います!私は何があっても心まで…魂までもを神に捧げる事など絶対にしません!にこ!貴方が道を踏み外そうとしているのならば正してみせますッ!」

にこ「にこはあんたみたいなくだらない正義吐きが大っ嫌いなのよッ!覚悟しなさい!」

にこがそう叫ぶと同時ににこの身体が蒼白い淡い光に包まれる。

そしてにこの掲げた右手から暴風の如く衝撃の嵐が吹き荒れる。

海未(風……?それがにこの能力。ですが)

海未「一度見た技を二度受ける馬鹿な私ではありませんよ」

確かに、にこの手から放たれたまるで暴風の如く吹き出された衝撃の威力は凄まじい。

しかしそれは海未に向けて一直線に伸びているだけにすぎない。

人二人分の横幅分くらいの範囲はあれども
海未の身体能力ならばその圏内から抜け出せない程のものでは無い。

海未はその圏内から逸れてみせる、が。



54: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 23:19:06.89 ID:mPS/5SBu.net

にこ「んなもん分かってるに決まってんでしょうが!」

にこは横に逸れた海未を追従するかの様に掲げた右腕をスライドさせる。

そしてにこの腕から放たれる風の圧力は可変し再び海未の身体へと向かう。

しかし既に海未の身体は輝きに包まれていた。

海未「その程度の考えは読めていますよ」

海未をめがけて可変した風
なんと海未はそれにめがけて走り出したのだ。

にこ「はぁ!?」

そして風に触れる直前に走り出した勢いを殺さぬままスライディング。
風の下へと潜りこみそのままの勢いで通過した後に地面を蹴り上げにこをめがけて飛び上がる。

にこ「なッ!?」

にこ(なんて化け物染みた反射と身体能力をしてんのよ!?)



55: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 23:24:55.16 ID:mPS/5SBu.net

海未「はぁッ!」

一瞬にしてにこに詰め寄った海未はにこの腹部をその拳で強打する。

にこ「うがぁッ!」

海未「あなたは曲がりなりにもアイドル。顔面は控えておいてあげますよ」

にこ「うぐぅ……」

海未「まだまだこれk」

瞬間海未は驚愕する。
今まで読めていた筈のにこの思考がまるで読めなくなってしまっているのだ。

海未(読めない!?)



56: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 23:28:33.27 ID:mPS/5SBu.net

にこ「あんたにはその力があるって事を忘れてたわ。んでこれを持ってきていたってことも、忘れてたわ」

にこの目にはドス黒いゴーグルの様なものがあてがわれていた。

海未「何ですか?その趣味の悪いアクセサリーは」

にこ「これ?知りたい?」

不敵な笑みを浮かべるにことは対照的に
海未の表情は酷く強張っていた。

にこ「全ての光を遮断するゴーグル。あんたの輝きも、あんたの目も。だからにこの心を読むことも出来ないし、能力を封じる命令を書き込む事も出来ない」

海未「ふふ。確かにそうかしれませんね。しかしそんなものが何になるというのですか?貴方は何も見えないでしょう?」

にこ「そう。でもこの距離なら外しようがないわ」

海未(ハッ!)



57: 名無しで叶える物語 2021/01/05(火) 23:31:38.11 ID:mPS/5SBu.net

海未の戦闘方法はあくまで武術による肉弾戦。
能力はその補助に過ぎない。 
故に攻撃に出る際は相手に接近しなければならないのだ。

にこ「よく近づいて来てくれたわねぇ、海未」

海未(まずいッ!離れなくては……!)

にこ「もう遅い!高い戦闘能力が仇となったわねぇ!」

にこ「『滅尽風』」

海未(ダサいッ!技命が致命的にダサいッ!)

にこの身体がランセルノプト放射光の輝きに包まれると同時に腕から先ほどの暴風圧が放出される。

にこ「終わりよッ!」



64: 名無しで叶える物語 2021/01/07(木) 23:51:06.77 ID:XD8dLNET.net

海未「うおおおおおお!」

しかし海未は諦めない。

にこの技を身体に受けるその直前に地面を思いきり蹴り、にこの放つ暴風よりも早い速度で後方へと飛んで見せたのだ。

海未(やれやれ。喰らったふりをしてわざと手加減をするというのも難しいものですね)

そして一撃目で窓ガラスが割れてくれていて本当に良かった。

ぶつかった衝撃で減速する点にまで気を配らなくて済むのですから。

教室から飛び出し、みなの視界から消えた段階で海未は暴風の圏内から逸れ事なきを得た、が。

海未「ふぅ。危ない危ない…………ん?」

海未は真っ逆さまに上空から地上へと沈んで行く。

海未「うあああああああああ!ここ地上4階でしたあああああああああああ!」



65: 名無しで叶える物語 2021/01/07(木) 23:57:43.52 ID:XD8dLNET.net

その頃にこは

にこ「ハァハァ…やったか?」

そう呟きながら自らの視界を深い闇へと誘うゴーグルを外す。

ことり「酷いよ…にこちゃん……」

穂乃果「サイッテーだよ!にこちゃんのバーカ!」

涙ながらに二人がにこにしがみついてく。

にこ「だーーっ!暑っ苦しいわねぇ!にこは忙しいのよ!離なれなさいよあほのか!」 

にこは雑に穂乃果とことりを振り払う。

海未の亡骸を確認しに行こう。もし息があるのならば復活される前にトドメを刺す。

あるいはそう考えていたかもしれない、だが。



66: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:00:00.57 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「なによ!?これぇ!」

にこは窓の外を見て目を疑った。あるはずの海未の亡骸はなく。異様なまでに成長しきった中庭の木が目に飛び込んできたからだ。

にこ「まさか…海未!」

海未「その通りですよ」

にこ「なっ!?」

にこの目には凄まじい速度でこちらへと走る海未の姿が映り込んだ。成長しきり教室の窓枠まで伸びる木の幹を走る海未の姿が。

にこ「やばいッ!」

だが気付いた時には既に手遅れ。
にこの目前へと海未の拳が迫っていた。

にこ「がああああ!」

海未「油断しましたね、にこ。貴方に残心という武道の心得をお教えしましょう」

にこを殴り付けたその勢いで海未は教室へと舞い戻って来た。



67: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:06:56.60 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「くっ……あったまきたわ」

にこは殴り付けられた顔を押さえながらフラフラと立ち上がる。その顔は普段のにこからはとても想像がつかないほどの赫怒に包まれていた。

にこ「あんたは本気でにこを怒らせたわ。黙って死んだフリでもしてれば良かったものを」

海未「生憎ですがにこ。私はあなたを怒らす為にここに居るのではありません」

海未は真剣な顔付きでにこの目を見据え

そして

海未「あなたを正す為にここに居るのです!」

にこ「ッ!」

ブチィッ、と
にこの何かがキレる音がした。



68: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:11:12.20 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「あんたのッ!そういうところが嫌いなのよッ!」

激昂するにこの身体が淡い輝きに包まれる。

にこ(能力を封じられるよりも早くッ!)

それに応じて海未の身体も輝き始める。

海未(来るッ!)

本気でやらなければこちらが殺される。
海未はにこの思考を読み覚悟を決めた。

にこ「『破曲滅尽風 ″旋″』」

そしてその瞬間海未へと突き出された二本の腕から暴風の如く衝撃が放出される。

海未「読めていますよッ!にこぉぉー!」

開かれた二本の腕から放出される風は私の居る地点で交わりその後交差するように通り過ぎて行く。



69: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:16:27.83 ID:8V7Z6eWk.net

海未「ならば!交わるよりも早くッ!その中央へと潜り込む!」

地を蹴りまるで自分は風よりも疾いと言わんばかりに、にこの方へと駆け出して行く。

にこ(勝ったッ!)

それを見たにこはニヤリと笑う。

にこ「かかったわねぇ~海未ィ!あんたなら先を読んでそう出てくれると信じてたわ!」

海未「なッ!」

にこ「この両腕から放出された風は囮!あんたをここへ誘き寄せるための罠だったのよォ!」

右腕から放出された風の圧力は高速に左回転。そして左腕から放出された風の圧力は高速に右回転。その二つの回転の間に生じるは真空状態の圧倒的破壊空間!

しかしそれを知った所で一度走り出してしまった海未に成す術はない。

にこ「終わりよ!海未ィィーー!」



70: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:20:52.14 ID:8V7Z6eWk.net

しかし海未の表情に絶望の色は一切浮かんでいなかった。

海未「ふふふ。また油断しましたね?」

にこ「なにッ!?」

だがそれは技がしっかりと決まっていればの話。にこの目の前に真空状態の破壊空間が作られることは無くにこはその身を前方へと投げ出された。

海未「私はあなたの脳に″能力を使えない″と命令を書き込んだのではありません。私が書き込んだ命令は″能力を後方に放つ″です」

にこ「そんなのありえないわ!にこは確かに!」

海未「それはそうですよ。そう思うように命令を書き込みましたから」



71: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:24:08.17 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「……は?」

海未「そして貴方は風を放つ際にその衝撃で自分の身体が後方へと吹き飛ばされないよう微量の風をその真後ろへと放出している」

海未「そうですよね?」

にこ「そうよ。それがなn」

にこ(ハッ!)

海未「ようやく気付いたみたいですね。あなたにはそれすらも同じ方向へと放つよう命令を書き込んだんですよ」

故ににこの身体は後方に放った風の衝撃に耐えきれず後方、つまり海未の居る方へと投げ出されたのだ。

海未は向かってくるにこへ鉄槌を下さんと言わんばかりに拳を構える。



72: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:27:25.17 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「うわあああああああ」

仲間が道を踏み外そうとしているのならばそれを正してやるのが友の務め。愛ある拳は心の奥底まで響き渡るのです!

にこ(やばい…やばいやばい!)

その時にこは死刑台に登る死刑囚、否。毎日のように母に叱責されていた幼き日々の事を思い出した。

海未「歯を食いしばりなさい!にこぉぉ!!」

バチン
と鋭い音が教室中に響き渡った直後

にこ「にごおおおおおおおお!」

にこの絶叫が木霊した。

海未「くふっ…ハァ……終わった」

海未(中庭に大きな木が生えていてくれて良かった……それを成長させ足場に出来ていなかったら倒れているのは私の方だったかもしれません)

流石の海未も今回の闘いには堪えた。不意打ちによる痛手を負いその状況でこの運動量。



73: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:31:14.05 ID:8V7Z6eWk.net

海未(取り敢えずにこを保健室にでも連れて行)

ことり「海未ちゃああああん!」

海未「うわぁ!?」

穂乃果「海未ぢゃああああん!」

海未「穂乃果ぁ!?」

一部始終を心配そうに見守っていたことりと穂乃果が海未の元へと駆け寄ってくる。

モブ「海未ちゃん素敵ぃ!」

モブ「抱いて!」

モブ「どうか妻にしてくださいまし///」

教室の至る所から海未へのラブコールが飛んでくる。

海未(やれやれ。それよりも先にやる事がありましたね)

″この昼休みに起こった全ての出来事を忘れる″

海未「本当はあなたにだけはこの感情を忘れてほしくないんですけれどね」

海未はチラリと穂乃果のいる方へと視線をやりながらそう呟いた。



74: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:34:54.16 ID:8V7Z6eWk.net

その放課後の帰り道

海未(昨日は謎の女。そして今日はにこ。私はもう引き返す事の出来ないレールの上を走り始めてしまっているのでしょうか)

海未(にこは退く事が出来ましたが……また別の刺客が送り込まれる可能性だってあります。私が穂乃果やことりと行動を共にすればまた二人を巻き込んでしまう……私の行いは本当に正しいのでしょうか)

海未「私は…どうすればいいのでしょうか……」

にこ「海未ィ!」

走ってきたのだろうか。ゼェゼェと息を荒げながらにこはそう叫ぶ。

海未「にこ!?まさか組織とやらの命でまた私をっ」

海未はとっさに構えを取る。



75: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:38:08.30 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「組織はクビになったわ」

海未「そう…ですか……」

にこ「まだ決まったわけではないけど。いずれそうなる」

海未「なんでそう言い切れるのですか?」

にこ「にこは任務に失敗した。あんたのせいでね」

海未「すみません…」

にこ「なんであんたが謝んのよ」

海未「すみません……ですがまだ本当にそう決まったわでは!」

にこ「弱者は捨てられる。それがこの世界の掟。そして組織内部の情報を持っているにこは」

海未「まさか!?」



76: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:40:42.38 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「邪魔でしかない。だから消されるってわけ」

海未「………」

にこ「どうせこのままいても死を待つだけ。だから…あんたに賭けてみる事にすらわ」

海未「私に…ですか」

にこ「えぇ…今更虫のいい話かもしれない。でも、あんたのその下らないあまっちょろい正義の心に賭ける」

海未(油断させてその隙を突く。なんて事も考えられます。ここは慎重に…)

にこ「あんた己の信念のためにチカラを使うって言ってたわよね?そのチカラってのは少しでも多い方がやれる事の幅も広がるんじゃない?」

海未「確かにそうですが…」

にこ「あの闘いであんたに負けてあんたの喝が心に染みたのよ…あんたの信念はにこの信念にもなった」

海未(嘘は言っていないようですね)



77: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:43:24.06 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「だからもう一度にこの事を仲間と呼んでくれる……?」

にこ(にこをこんな気持ちにさせたんだから…ちゃんとその責任は取りなさいよね!)

海未「にこ、変わりましたね」

にこは先程の闘いとは打って変わってしおらしくなった。

にこ「な…あによ!別にいいでしょうが!いいの?ダメなの!?どっちなのよ!」

海未「ふふ。良いに決まっていますよ。これからまたよろしくお願いしますね」

にこ「あに笑ってんのよ」

にこと海未は固い握手を交わし、その絆は再び紡がれる。



78: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:45:09.06 ID:8V7Z6eWk.net

海未(やれやれ。どれだけ取り繕おうとも私の前では全て筒抜けですよ)

にこ「言っとくけどあんたが不甲斐ないことしたら即リーダーは交代だから!」

海未「分かっていますよ」

海未(もうにこの心の内を読む、なんて無粋なマネをする必要はなさそうですね)

昨日の敵は今日の友。一度道を違えた仲間がもう一度仲間と呼んでくれた。それだけで今進もうとしている道を、自分が正しいと思える道を。これからも歩んで行けると海未はそう確信したのだった。

能力者の輝きに当てられた人々はその輝きに魅了されていく。それは能力者同士においても例外ではない。

同じ輝きを持つ者同士が出会った場合、より強い輝きを持つ者に魅せられてゆく。

しかし昨日の敵が今日の友たり得るのであればその逆もまた然り。昨日の友が今日の敵になり得るという事を。この時海未はまだ知らない。



79: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:47:20.98 ID:8V7Z6eWk.net

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海未(友情とはかくあるべし!素晴らしいですねぇ……なんだかインスピレーションが沸いてきましたよぉぉ!!)カキカキカキ

穂乃果(今日は真面目に受けてる……?)

ことり(海未ちゃん最近楽しそうだなぁ)

海未ちゃんの闘いはまだまだ続く。



80: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:50:41.91 ID:8V7Z6eWk.net

ある日の夜、人気の無い通りでその事件は起こった。

男「ハァ…ハァ……殺されるゥ!」

そう必死の形相で逃げ惑う男が一人。

???「逃げないでよ。追いかけるの面倒なんだから」

そしてそれを追いかける少女が一人。

男「クソォッ!」

男は逃げ続けるが、逃げた先は行き止まり。

???「やっと無駄な鬼ごっこを終わりに出来るね」

そう言うと少女は男の頭を右手で掴む。

男「やべてくれぇ…命だけは……命だけは助けてくれぇーー!」

???「助けるわけないでしょ。あなたみたいな生きる価値もないクズ」

男「金か!?金ならいくらでもくれてやる!だから……!」

???「………」

だが男の決死の命乞いを少女はゴミでも見るの様な目を向ける。



81: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:53:32.07 ID:8V7Z6eWk.net

男「そうか!女だな!女ならその辺でつかまえぺ」

???「あなたみたいなクズがいるからいけないんだ……!」

男「ぐあああああああああ!」

少女は頭を掴む力を強め…そして。

男「たすけ……」

助けてくれ。男がそう言い終えるよりも早く顔が破裂し、死体が地面へと崩れ落ちた。辺り一帯は血の海となった。



82: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 00:55:18.43 ID:8V7Z6eWk.net

???「世直し世直し、っと」

女「はっ……はっ………」

???「大丈夫?ケガはなかった?」

女「ひ、人殺しーーーーー!」

少女は女にそう呼びかけるが、女は脇見も降らず一目散に逃げ去って行った。

???「人殺し、か。殺したのは人じゃないんだけどな」

???「能力者″わたしたち″は人間じゃないらしいし。この世の中にはクズが多すぎる。それを全部消し去る事が出来れば」

???「能力者″わたしたち″に対する見る目も変わるのかな」

???「でも今、私が一番許せないのは……!」

そう言いながら少女は何かを握り潰した。その掌の中に握られていたものは……。

顔の部分が赤く塗り潰され、身体に無数の穴が開けられた園田海未の写真だった。



88: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 20:26:06.06 ID:8V7Z6eWk.net

後日海未はにこに呼び出されていた。

海未「どこへ向かっているのですか?」

にこ「それは着いてからのお楽しみよ」

やれやれ。いきなり呼び出されたと思ったらこれの一点張り。まぁ、変なところではないんでしょうけど。

海未「せめて目的だけでも教えてください」

にこ「そうねぇ~。にこ達に力を貸してくれる″同志″に会いに行くってとこかしらね~」

海未「ほう。同志ですか」

にこ「そ。そいつも一時期にこと同じ組織にいたんだけど」

海未「え……それって大丈夫な人なんですか?」



89: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 20:33:21.52 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「失礼なやつねぇ、大丈夫よ。にこが組織を抜ける手助けもしてくれたし」

海未「どうしても良い印象も持てないんですよね、その組織の人間とやらには」

にこ「心配する事ないわ、あんたも知ってるやつよ」

海未「私の知り合いですか!?それって誰のこ」

にこ「それは着いてからのお楽しみって言ってんでしょ~」

海未「またそれですか」

にこ「ぶつくさ言わないの。ほら着いたわよ」

海未「まさか…行きたいところってここですかぁ~!?」

そこにはいかにも高級そうなタワーマンションが建っていた。



90: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 20:40:19.98 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「あいつの部屋は確か……あった」

そう言いながらにこは部屋の呼び鈴を鳴らす。

海未「い、いきなりですね!?私にはまだ心の準備が……」

にこ「知り合いなんだから準備もクソもないでしょ…」

海未「ですが!」

海未(うぅ~緊張してきました……)

???「鍵はもう空いてる、入って」

にこ「ん、邪魔するわよ~」

海未「お、お邪魔します……」

璃奈「いらっしゃい。にこさん、師匠」

海未「り、璃奈ぁ!?」

ドアを開けたその先に居たのは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の天王寺璃奈だった。



91: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 20:45:28.37 ID:8V7Z6eWk.net

璃奈「うん。嫌だった?」

海未「い、いえ!そういう訳ではないのですが」

にこ「璃奈はこう見えてすごいのよ」

璃奈「そんな褒められると照れる。璃奈ちゃんボード『テレテレ』」

海未「まさか璃奈も能力″チカラ″を手にしていたなんて」

璃奈「驚いた?」

海未「えぇ、まぁ……」

璃奈「それなら作戦成功。璃奈ちゃんボード『ブイ』」

海未「にこも人が悪いですよ。先に教えてくれても良かったじゃないですか!」

にこ「璃奈が驚かせたいって言うもんだからねぇ」



92: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 20:50:22.21 ID:8V7Z6eWk.net

璃奈「あの、海未さん。もしかして嫌だった?」

海未「そ、そういうわけではありませんよ!少し驚いただけで…」

璃奈「そっか、なら良かった」

にこ「はいはい。イチャイチャタイムは終了。本題に入るわよ」

海未「本題?」

にこ「今日は私たち3人は晴れてチームになったという事で」

海未(いつの間にチームになったのでしょうか…)

にこ「結束後最初の重大ミッションを行う」

海未「重大ミッション?」

璃奈(そんなのあったっけ)



93: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 20:57:14.98 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「そう。でもその前ににこ達の能力を共有しあっておきましょう」

海未「確かにお互いの手の内を知っておいた方が連携も取りやすいですしね!私の能」

璃奈「目を合わせた相手の全てを知る」

海未「え?」

にこ「ん?」

璃奈「そして全てを思い通りに出来る能力。知ってるよ」

海未「にこ、既に教えてあったならそうと言ってくださいよ」

にこ「い、いや教えてないわよ!」

海未「じゃあなぜ」

璃奈「それが、私の能力だから」

にこ「?」



94: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:01:25.45 ID:8V7Z6eWk.net

璃奈「私の能力は全知。自分が知りたいと思った事柄を全て知る事が出来る」

にこ「な、なるほど」

璃奈「意地悪をしてごめんなさい。りなちゃんボード『ぺこり』」

海未「いいのですよ。おかげで璃奈の凄さも知れましたから」

璃奈「えへへ」

にこ「だからあんなスムーズに組織から抜け出せたってわけだったのね」

璃奈「にこさん、まさか気づいてなかったの?」

にこ「えっ?いや、気づいてたに決まってるでしょ!?海未をビビらせてやるための演出よ演出」

璃奈(絶対嘘だ)

海未(嘘ですね)



95: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:06:26.20 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「あんたら失礼なこと考えてないでしょうね?」

璃奈「考えてない。りなちゃんボード『白目』」

にこ「まぁいいわ」

海未(良いんですね…)

璃奈「あと、一つ分かった事がある」

にこ「分かったこと?」

璃奈「うん。多分、私達はみんな、望んでこの力を手に入れたんじゃないかな、って」

にこ「………」

海未「どうしてそう思うのですか?」



96: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:13:06.46 ID:8V7Z6eWk.net

璃奈「私は、色々あって感情を顔に出すのが苦手だった」

海未「ですが璃奈の心はしっかりと!」

璃奈「うん、それは分かってる。ありがとう、海未さん」

にこ「で、それと何が関係あんのよ?」

璃奈「そのせいでなかなか私は周りと馴染めなくて。愛さんが声をかけてくれるまではずっと一人だった」

海未「璃奈…」

璃奈「だからね、ずっと誰かと繋がる方法が知りたかったんだと思う」

にこ「だからその力に目覚めたかもって事?」

璃奈「うん。そう思う事にしてる」



97: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:20:20.95 ID:8V7Z6eWk.net

海未「素敵な考察だと思いますよ」

にこ「なーんか沸切らないわねぇ。あんたの能力ならそれが正しいかどうか分かるんじゃないの?」

璃奈「うん、知ろうと思えばその答えは簡単に知れると思う。でもその必要はない」

にこ「なんで?」

璃奈「自力で答えに辿り着く事に意味がある。それにもし違ったら……」

にこ「ふーん」

海未「私は間違っていないと思いますよ」

璃奈「海未さん?」

海未「それにわざわざ能力″チカラ″を使ってまで確認する様な事じゃありません」

璃奈「うん、ありがとう」



98: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:28:09.78 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「最初の…繋がり方を知りたい、だっけ?それもあんたは自力で達成してるわよ」

璃奈「え?」

にこ「その証拠に今にこ達はここにいる。それに虹ヶ咲の子達だっているんでしょ。どんと胸を張りなさい!」

璃奈「うん!りなちゃんボード『よっしゃよっしゃワッショイ』」

海未(という事は私も何かを望んでこの″チカラ″を手に入れた、という事でしょうか?その理由は一体……)

璃奈「二人は、なにか心当たりがあったりする?」

海未「私は…正直よく分かりませんね……」

璃奈「そっか。でもいつか必ず分かる日が来ると思う。りなちゃんボード『ファイト』」

海未「ふふ。そうですね」



99: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:32:48.33 ID:8V7Z6eWk.net

璃奈「にこさんは何かある?」

にこ「え?にこ!?」

璃奈「うん」

にこ「に、にこはぁ~そういうの深く考えるタイプじゃかいからぁ~。分からないにこ~!」

璃奈(あ、これは大した理由じゃないやつ)

海未(あからさまに誤魔化したような反応。まさかにこも心に重大な何かを隠しているという事でしょうか?)

にこ(言えない。自分の胸を揺らしてみたかった事が理由かもしれないなんて口が裂けても言えない)



100: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:35:53.28 ID:8V7Z6eWk.net

海未「にこ。貴方が心にどんな闇を抱えているのかは分かりませんが私達は仲間です。いつでも頼ってくださいね!」

にこ「あ、うん」

璃奈(あ、海未さんなんか勘違いしてる)

にこ「じゃ、そろそろ本題に移りましょうかねぇ~」

璃奈「待って。もう一つ伝えておかなきゃいけない事がある」

にこ「まだあんの!?」

璃奈「こっちの方が重要」

にこ「先に言いなさいよ!」

璃奈「実は最近、とんでもない能力者が現れたって情報を手に入れた」



102: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:39:13.61 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「へぇ~」

海未「どんな能力者なのですか?」

璃奈「それが分からない」

海未「分からない……?」

にこ「それはあんたの能力を使ってもってこと?」

璃奈「うん。能力を使って知ろうとしても分からない。拒絶をされた様な反応が起こる」

海未「拒絶、ですか」

璃奈「その人は噂だと『能力者殺し』って言われてる。その能力が原因なのかもしれない」

海未「ほう」

『能力者殺し』その言葉の響きをえらく気に入ったのか。海未の眉がピクリと上がる。



103: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:43:21.11 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「大層な異名ねぇ」

璃奈「なぜそう呼ばれているか。聞いた情報を元に私なりに推理してみたんだけど」

海未「ほう、推理ですか」

にこ「聞かせてみなさい、その推理とやらを」

璃奈「うん、そのつもり。『能力者殺し』が闘いを終えた現場には必ずあるものが残ってる」

海未「あるもの、とは?」

璃奈「グチャグチャに破壊された人間の死体だよ」

海未「し、死体ぃ!?」

にこ「ぐちゃぐちゃに破壊されたってのが気になる点ね」

海未「なんで二人ともそんなに冷静でいられるのですか!?人が死んでるのですよ!」



104: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:47:05.96 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「まぁ、我々の業界では日常茶飯事というか」

璃奈「うん。それに厳密には人じゃない」

海未「え?」

璃奈「殺されているのは全て能力者。それも悪行を働いてる、私利私欲のために力を使う様な人種」

海未「悪を滅している?」

璃奈「生き延びられた人もいるみたいだけど、その人達はみんな力も身も心も壊されたみたいに廃人になっちゃったんだって」

海未「だから『能力者殺し』と」

璃奈「そうだと思う」



105: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:51:06.11 ID:8V7Z6eWk.net

にこ「そいつは普通の人間には手を出さないの?」

璃奈「うん。むしろ人助けのために動いてる様に感じる。実際助けられたって人も多いみたい」

にこ「とんだヒーロー様もいるもんねぇ」

璃奈「その人はどの組織にも所属せずに一人で行動してる」

海未「一匹狼ってわけですね」

璃奈「それだけ圧倒的な強さがある。組織絡みでもその少女には手を出すなって言われてるほどに」

海未「そんな能力者が存在するのですね」

璃奈「うん。二人は心当たりあったりしない?」

海未「いえ、私は特に…」

にこ「にこもないわねぇ~」

璃奈「そっか。ちょっとだけ海未さんなのかな、って思ってたんだけど」

海未「私ですか!?」



107: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:54:36.19 ID:8V7Z6eWk.net

璃奈「能力が使えなくなった能力者もいたみたいだからもしかしたら、って」

海未「確かに私の能力なら能力″チカラ″を封じる事が可能ですが、それを使ったのはこの前の女との戦いだけなので…」

にこ「当てが外れたみたいね」

璃奈「残念。『能力者殺し』が海未さんだったら良かったんだけど」

海未「なぜ?」

璃奈「もし『能力者殺し』の正体が海未さんだったのなら、私達にその牙が向く事はなくなる」

海未「……なるほど」

にこ「にこ達もそのなんたらなんたらって奴に狙われるかもしれないって事ね」

璃奈「『能力者殺し』」

にこ「そう、それ」



108: 名無しで叶える物語 2021/01/08(金) 21:57:43.83 ID:8V7Z6eWk.net

海未「確か、その方は悪事を働いている能力者を専門に狙っているのですよね?」

璃奈「そう。だから私たちは何も悪さはしてないし、狙われる可能性は低いと思う」

にこ「じゃ、にこ達には関係ないわねぇ~」

璃奈「でも、一応頭の片隅には入れておいて。そういう能力者がいるってことを」

海未「そうですね、意識するとしないでは変わってきますから」

にこ「そうね。それじゃあそろそろ本題に入るわよ」

海未「本題……」

にこがそう言うと、何か重苦しい雰囲気に包まれた様な気がした。そして珍しくにこが真剣な顔をしている様にも見えた。



115: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 20:39:06.71 ID:h+c8OCJV.net

にこ「鍋パーティーよ!」

璃奈「りなちゃんボード『待ってました』」

海未「……はい?」

先程の重苦しい雰囲気とはうって変わりいつも通りのにこがそこにはいた。

海未「……鍋パーティー…ですか?」

にこ「そうよ」

海未「……なぜ?」

にこ「はぁ!?」

海未「ひっ!?」

にこ「あんたそれ本気で言ってんの!?」

璃奈「りなちゃんボード『唖然』」

海未「え、えぇ…私がおかしいのですか……?」



116: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 20:41:52.26 ID:h+c8OCJV.net

にこ「ったり前じゃないのよ!」

璃奈「これはにこさんが正しい」

海未「り、璃奈ぁ!?」

にこ「普通するでしょうが…鍋パーティー……結束祝いといえばパーティーでしょうが…」

璃奈「この世の常識」

海未「てっきり私は能力者絡みの何かだと……」

にこ「んなもんほかっといてもその内勝手に巻き込まれんだから。自ら首突っ込む必要ないでしょうが」

璃奈「そだそだ!」

にこ「ほら買い出し行くわよ」

海未「はい……」

海未は考えるのを辞めた。



117: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 20:44:55.23 ID:h+c8OCJV.net

海未「けど私そんなにお金持ってきていないですよ?」

璃奈「それは気にしないで。りなちゃんボード『シャキーン』」

海未「そ、それはッ!アメックスセンチュリオンカード!?」

璃奈の右手には燦然と輝く日本では僅か8000人ほどしか所持者がいないと言われている最高峰のブラックカードが握られていた。

にこ「まっこんなもんよね」

なぜか璃奈の隣でにこが渾身のドヤ顔を披露していた。



118: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 20:47:30.98 ID:h+c8OCJV.net

海未「しかし全てを璃奈の親御さんに出してもらうというわけには」

璃奈「いいの。せめてお金だけでもって私のために作ってくれたカードだから。りなちゃんボード『存分に使え』」

にこ「さすがに高級食材ばっか買い漁る、なんて非常識な真似は出来ないけど」

海未「当たり前ですよ!」

にこ「常識の許す範囲内で璃奈の親御さんに甘えることにしましょ」

璃奈「チーム結成祝いのパーティーだから。パーっとやろう」

海未(いつの間にか私も一員になっているのですね)



119: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 20:51:16.17 ID:h+c8OCJV.net

にこ「それじゃ、この近くにイオンモールがあるからそこでちゃちゃっと済ませちゃいましょう」

園田海未御一行は来たる鍋パーティーに向けて買い出しへと繰り出すのだった。

にこ「さて、着いたわよ」

璃奈「みんなで手分けして買い物を済ませよう」

海未「好き嫌いせずちゃんとお野菜も買うのですよ?」

にこ「分かってるわよ」

璃奈「御意」



120: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 20:54:36.93 ID:h+c8OCJV.net

海未「それとせっかくですし各々が入れたい物を選ぶってのはどうですか?」

璃奈「それいい」

にこ「チーズケーキだけはやめてよ」

海未「分かってますよ!」

璃奈「なんでチーズケーキ?」

にこ「μ'sで鍋パを開いた時にウチの馬鹿がチーズケーキをぶち込みやがったのよ」

璃奈「えぇ…」

海未「うぷっ…思い出したくないことを……」

璃奈「なんかごめんなさい」

海未「いいのですよ。悪いのは璃奈ではありませんから」

璃奈はそんな愚かな事を誰がしでかしたのか。とても気になったが聞いたら二人が胃の中の物を逆流しそうな勢いだったのでその疑問は投げかけることは辞めた。そして密かに力を使ったのだった。



121: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 20:57:45.63 ID:h+c8OCJV.net

にこ「じゃあにこは野菜見て来るから二人はお肉とお魚をお願いね」

海未「はい」

璃奈「らじゃ」

三人は二手に分かれて具材を調達する事になった。その途中。

海未「一つ気になることがあるのですが」

璃奈「気になる事?」

海未「はい。聞いてもよろしいですか?」

璃奈「うん」

海未「璃奈はなぜ組織に入ろうと思ったのですか?」

璃奈「………」

海未はそう質問を投げかけると少しだけ空気が重くなったような気がした。



122: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 21:01:47.87 ID:h+c8OCJV.net

海未「あ…答えたくないのであれば答えなくても……」

璃奈「私の能力は全知。だって事は言ったよね?」

海未「はい聞きましたが」

璃奈「確かに知りたいと思った事は何でも知れる。けど一つ欠点がある」

海未「欠点?」

璃奈「うん。それは知ろうとしなければ知れないこと」

海未「知ろうとしなければ?」

璃奈「うん。だからね、何も知らない状態で湯水のように知識が湧いて来るってわけではないの」

海未「なるほど。それと何か関係があると言うわけですね?」



123: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 21:04:54.58 ID:h+c8OCJV.net

璃奈「うん。情報を抜き取るだけ抜き取ってとんずら。そのために私は一度組織に入ったの」

海未「璃奈は見かけに寄らずアクティブですね……」

璃奈「そうかな?でもおかげで色々知れたし満足してる。今こうして三人でいられるのもそのおかげかもしれない」

海未「それじゃあ璃奈に感謝しないとですね」

その頃にこは

にこ「た、卵が安いわ!」

にこ「…でもお一人様1パックまでか…」

にこ「あいつらにも協力してもらう?」

にこ「そしたらウチの卵事情は一気に潤う」

にこ「やめとこ」

そして、買い物を終えた三人は帰路に着く。が、そこで事件は起こるのだった。



124: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 21:07:56.62 ID:h+c8OCJV.net

にこ「まさか諭吉さんがいなくなるくらい買い物をする事になるなんて…」

海未「にこが調子に乗って沢山買うからですよ!どうするんですかこんなに沢山!絶対余りますよ!」

にこ「璃奈がノリノリでカゴに入れて来るものだからつい…ていうかあんただって後半調子に乗ってたでしょうか!」

海未「き、気のせいですよ!」

にこ「嘘おっしゃい!」

海未「にこは年配者なのですから止めてくださいよ!」

にこ「にのせいにすんな!」

璃奈「あまり気にしないで。りなちゃんボード『むしろ本望』」



125: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 21:12:12.75 ID:h+c8OCJV.net

璃奈「それに、食材が余ったら、また皆んなでお鍋出来るし」

にこ「それよっ!にこはそこまで計算の内なのよ!シェフにこにーにどんと任せなさい!」

海未「いよっ!オカンの味!」

にこ「誰がオカンよ!」

璃奈(海未さんって結構お茶目なところもあるんだな)

大金を手にすると人は変わってしまうのかもしれない。

なんとも楽しそうな雰囲気に包まれる三人だが、その時間は終わりを告げる事になる。



126: 名無しで叶える物語 2021/01/11(月) 21:18:05.03 ID:h+c8OCJV.net

にこ「うっ……」

にこが突然足を止める。

海未「にこ…?」

にこ「め、目がくらくら……す…」

そしてついに地面へと倒れ伏してしまった。

璃奈「にこさん、どうし…」

にこに続き璃奈も倒れる。

海未「二人とも何が……」

海未(突然意識が朦朧と…な……ぜ)

???「いかんなァ。可愛い女の子がこんな時間にこんなところをほっつき歩いてちゃァ。悪い女に食い申されちゃうぞ~?」

海未(まさか…能力…者……?)

三人の前に現れた謎の女。地に這いつくばった額を上げそれを確認しようとするが身体が言うことを聞かない。そして海未の意識も完全に途切れてしまうのだった。

???「3名様ごあんな~い」

???「ようこそ夢の国へ」



136: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 19:28:53.61 ID:rH+Dl2tV.net

海未「ん…うぅ……」

どれだけ眠っていたのだろうか。それは定かではないが海未が目を開けた先には摩訶不思議な世界が広がっていた。

海未「ここは!?」

にこ「目が覚めたみたいね」

海未「にこ!……璃奈はっ!?」

璃奈「私もいる。ケガとかはないみたい」

海未「良かったです…」

にこ「どうやらにこ達は誰かにまんまとハメられたみたいね」

海未「油断していました……一体誰が」

璃奈「………」

にこ「にしても趣味の悪い場所ねぇ~ガキじゃないんだから」

???「なんだい。人を分からずやみたいに」



137: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 19:35:48.83 ID:rH+Dl2tV.net

海未にこ「!?」

璃奈「………」

声の主へと顔を向ける海未とにこ。二人の目に映ったのは雲が掛かった三日月に腰掛け、宙へと浮かぶ。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の近江彼方の姿だった。

あっけに取られるにこと海未の二人だが。その横で同じ同好会仲間の天王寺璃奈は普段よりもほんの少しだけ険しい表情を浮かべている様に見えた。

彼方「すごいでしょ~彼方ちゃんの能力」

海未(狙いはなんなのか。それを調べる必要がありそうですね)

にこ「フン。くっだらない能力ねぇ~そんなもんにこの能力であんたごと吹っ飛ばしてやるわ!にこ達にはお鍋が待ってんのよ!」

そう言ってにこは能力を使うべく彼方の方向へ自らの腕を差し向ける、が。

にこ「なっ!?」

にこの腕から風の圧力が放出される事はなかった。



138: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 19:41:01.59 ID:rH+Dl2tV.net

海未「にこもでしたか。私もずっと彼方の心の内を読もうと思っていたのですがその意図が全く流れてこないのです」

にこ「チッ。璃奈、あんたはどう?」

にこは璃奈にそう問いかける。

璃奈「私も能力は使えないみたい」

彼方「それはそうだよ。だってそう設定してあるんだもん」

海未「設定?」

にこ「それがあんたの能力ってわけ?」

彼方「どうだろうね~?」

璃奈「そうだと思う。ここは彼方さんが作り上げた夢の中の世界。その世界では全てが彼方さんの想いのまま。この世界から抜け出す方法は現実の世界で眠ってる私達を起こすか、彼方さんがその能力を解くか、しかない」



139: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 19:46:58.98 ID:rH+Dl2tV.net

にこ「んな事言われても出来るわけないでしょ。能力も使えなくされてるんだし」

璃奈「そう、だからここに引き釣り込まれた時点で負けは確定。自然と目が覚める事を願うしかない」

彼方「あちゃー。やっぱり意識を失う前に力を使われちゃってたか」

璃奈「りなちゃんボード『むん』」

海未「それで私達の能力は使えなくされてしまったというわけですか」

彼方「三人は強いからね。能力なんか使われたら彼方ちゃん困っちゃう~」

にこ「鍋に浮かれて気を抜いたにこ達の落ち度ね。やられたわ」

海未「ですが、能力なんて無くとも私には武術とそれにより鍛え上げられたこの肉体と精神があります。女子一人に遅れを取るこの私ではありません!」



141: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 19:52:47.16 ID:rH+Dl2tV.net

そう言い海未は大地を蹴り彼方へと駆け出して行く、が。

海未「なっ!?」

海未の身体はまるで空から足でも摘まれたかの様に逆さに宙を舞い。

海未「ほげぇぇぇぇぇぇ!」

そのまま元いた場所へと投げつけられしまう。

にこ「ダッサ!」

璃奈「直前の決めゼリフ、それがよりダサさを際立ててる」

海未「少しは私を労ってくださいよ!」



142: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 19:58:57.83 ID:rH+Dl2tV.net

彼方「無駄だよ~。この世界では全てが彼方ちゃんの思い通りになるからね~。こんな風にね」

梨子「え、ええっ!?」

彼方がそう言うと何もなかった空間に突如として桜内梨子が現れた。

梨子「な、なななにぃ!?」

海未「梨子!?」

にこ「外からも連れて来れるってわけか」

彼方「寝てる人なら誰でもね」

梨子「い、いきなり何なんですか?」

彼方「気にしないで。ここは夢の中だから」

梨子(ゆ、夢?夢の中なかならなんでも思い通りになるの…かな?願えば彼方さんに壁ドンも…はわわそんな事考えたら)



143: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 20:03:47.91 ID:rH+Dl2tV.net

彼方「なんだって思い通りになっちゃうんだぜ~。なんたってここは夢の中だからね」

そう悪戯っぽく梨子の耳元で囁きながら突然現れた壁と共に彼方は梨子へ壁ドンと顎クイをするのだった。

海未「な、ななな!」

にこ(何やってんのよコイツら)

璃奈「………」

梨子(ほ、本当にされちゃった……///)

彼方「おっ見かけに寄らず大胆な下着をつけてるんだね~。彼方ちゃんでなければ見逃していた……」

そう言い彼方は梨子の履いているスカートをめくり出した。

梨子「きゃあ!?な、なにをs」

彼方「なんでもない…サ!元の世界にお帰り~」

そういうと一瞬にして梨子の姿は消え去った。



144: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 20:09:40.19 ID:rH+Dl2tV.net

海未「は、破廉恥ですぅ~~!」

にこ「あんたなにしてんのよぉ!?」

璃奈「りなちゃんボード『眼福』」

海未「彼方…あなたって人は!」

彼方「おぉっ?どしたん二人ともー。もしやこっちの方が良かったかー?」

真姫「………」

そう言うと今度は真姫が現れ、辺りをキョロキョロと見渡している。

海未「今度は真姫ですか…」

真姫「海未…?にこちゃんと璃奈もいるわね……」

にこ「どんまい」

にこは後輩に哀れむ様な目を向けながらそう呟いた。



145: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 20:14:52.20 ID:rH+Dl2tV.net

真姫「えっ?」

彼方「ほっ!」

今度は先ほどよりも勢いよく、真姫のスカートをおもいきりまくり上げた。

真姫「きゃあああああ!」

彼方「これまた上物ですなァ」

真姫「なにすんのよぉ!」

にこ「………」

海未「………」

赤くなってこそいるが二人のその顔はしっかりと真姫のいる方へと向けられていた。そして無言で鼻血を垂らしていた。



146: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 20:18:38.88 ID:rH+Dl2tV.net

璃奈(彼方さん、やっぱストレス溜まってるのかな)

真姫「あなたねぇ!」

真姫は彼方目掛けて思いっきり掌を振るうが、

彼方「ばいばい」

当たる直前で綺麗さっぱり消え去るのだった。

海未「あなたは最低です!」

にこ「乙女の純情を踏み躙るんじゃないわよ!」

彼方「いかんなァ、二人とも。せっかく面白い力が手に入ったんだからもっと能動的に楽しまないと」

璃奈「彼方さん、ぐっじょぶ」

彼方「璃奈ちゃんは分かってるねぇ~」



147: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 20:22:12.86 ID:rH+Dl2tV.net

彼方「実はこんな事もできちゃうんだよ~」

彼方が得意げにパチンと指を鳴らすと。

にこ「な、ななななな!」

璃奈「にこさん…胸が!」

巨乳になっていた。

にこ「おも~い♪」

海未「ずるいですよ!にこぉ!」

彼方「これこれ、そう悲観するでない」

彼方がそう言うと海未の胸が大きく、

海未「なぜです!」

はならなかった。



148: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 20:26:59.94 ID:rH+Dl2tV.net

海未「元のにこみたいく小さくなってるじゃないですか!」

璃奈「りなちゃんボード『哀れ』」

にこ「ぬぃっこぬぃっこぬぃー。セクシー系アイドル矢澤ぬぃこよ~ん」

海未「71の分際でえらそうに!」

にこ「きこえぬぁ~い!だってぇ~ぬぃこは~巨乳さんなんだから~!」

海未「くっ…」

彼方「おいおい。それでいいのかキミ」

海未「あああああああああ!なぜにこだけなんですか彼方ぁ!」

璃奈(カッコ良かった頃の海未さんは一体どこへ…)

彼方「悔しがり方がダイナミックだな」

そう言い残して彼方はにこと海未の胸を元のサイズに戻した。



149: 名無しで叶える物語 2021/01/15(金) 20:30:53.96 ID:rH+Dl2tV.net

にこ「あっ」

海未「プッ」

にこ「あに笑ってんのよ!てか彼方ァ!にこは74cmよ!」

海未「哀れですね」

璃奈「詐称は良くない」

にこ「あんですってぇー!」

彼方「ダメだなこの子ら、まったく話が進んでいかん」

その後三人はいつまでもギャーギャーと騒ぎ合っていた。



153: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 21:37:13.75 ID:3sFqru4a.net

にこ「ふぅ、おふざけはこの辺にしておいて」

彼方「おっ、やっとやる気出してきたね」

にこ「あんたの狙いはなに?返答次第ではどうなるか分かってんのよね?」

彼方「どうだろうね~?」

にこ「あくまでもしらばっくれるつもりね…」

海未「おかしい、にこは兎も角として。あの彼方が悪事を働くとは思えません。なにか…なにか裏があるはずです」

璃奈「うん、あの彼方さんが悪さをするとは思えない」

にこ「聞こえてんのよぉ!」

海未「え?」

璃奈「え」

にこ「え?」

にこ「じゃないわよ!全部声に出てんのよ!」



154: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 21:43:57.42 ID:3sFqru4a.net

海未「そんな…!にこなら力に飲まれてもおかしくないなんて…そんな事は微塵も思っていませんよ!?」

にこ「コイツ……まぁ、いいわ」

彼方「いいんだ」

璃奈「気にしたら負け」

彼方「そうみたいだね」

にこ「あんたはしらばっくれようとしてるみたいだけどね、それは無駄。もうネタは上がってんのよ彼方ぁ!」

彼方「ん~?なんの事かな」

にこ「こいつ…」

璃奈(ネタってなんの事だろう…だって彼方さんは……)

海未(にこは何かを知っている、と。これは勝機あり、ですね)



155: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 21:50:00.46 ID:3sFqru4a.net

彼方「さっきにこちゃんは返答次第ではただじゃおかないって言ってたけど。この状況で何が出来るっていうのかな~?」

にこ「ハン!現実にいるにこの目が覚めたら覚悟しなさいって言ってんのよ!」

彼方「それは困るな~」

彼方「それじゃあ、目が覚める前に早く終わらせないとだね」

海未(にこ!なぜ彼方を逆撫でする様な事を言うのですか!)

にこ(あの余裕綽綽~って感じが腹立つのよ!)

海未(彼方に闘う意思を持たせたらダメなのですよ!)

璃奈(海未さんの言う通り。彼方さんに勝つためには、時間を稼いで、現実にいる私達を目覚めさせるしかない)

にこ(やっちゃったもんはしかたないでしょうが!あんた全知なんだからなんか良い方法考えなさいよ!)

璃奈(私、今、能力使えない)

にこ(そうだった…)

海未(にこはおつむが足りてなさすぎるんですよ!)

にこ(うっさいわね!腹立ったんだからしかないでしょうが!)

璃奈(りなちゃんボード『やれやれ』)



156: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 21:56:44.96 ID:3sFqru4a.net

彼方「ちょっとちょっと、三人だけでヒソヒソ話しこんじゃってさ。作戦会議でもしてるのかな~?」

にこ「さぁ、どうでしょうね?」

彼方「彼方ちゃん一人置いてけぼりはちょっと寂しいぞ~」

にこ「そのわざとらしい演技も見飽きたわ…!」

彼方「……当ててあげようか?今三人が考えてること」

海未「え?」

彼方「なんとか時間を稼いでこの世界から抜け出そう。って魂胆なんでしょう?」

にこ(ゲッ、バレてる)

彼方「能力、解いてあげよっか?」



157: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:02:44.98 ID:3sFqru4a.net

にこ「え?」

海未「にこ。聞く耳を持ってはいけませんよ!また彼方のペースにもっていかれてしまいます」

にこ「分かってるわ」

璃奈(そろそろかな)

彼方「む、まるで信用されてないな」

にこ「ったりまえでしょうが」

彼方「彼方ちゃんの言う事を聞いてくれたらここから出してあげない事もないんだけどな~」

にこ「にこ達も舐められたもんねぇ~。でも聞くだけ聞いてあげようじゃない」

海未「えぇ。だだし、聞くだけですがね」

璃奈(やっとだ。もうお腹ぺこぺこ)

彼方「ふふふ。それはね~?」

その瞬間にこと海未の顔に緊張が走る。緊張からだろうか、二人はごくりと大きく唾を飲み込



158: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:06:28.69 ID:3sFqru4a.net

彼方「彼方ちゃんと遥ちゃんにお鍋をご馳走したまえ~。それがここから出してあげる条件…サ!」

璃奈(きた!)

彼方「にこちゃんの作るお鍋。食したいですなァ」

海未「にこ!」

にこ「よしきた!彼方!キッチン借りるわよ!」

彼方「どうぞ~調理具は何でも好きに使っていいからね~」

彼方「二人とも、美味しく頼むよ」

海未「任せてください!」

にこ「誰にもの言ってんのよ!」

海未「………」

にこ「………」



159: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:11:03.44 ID:3sFqru4a.net

海未「……ん?」

にこ「な…べ……?」

彼方「うむ」

にこ「……ん?」

海未「………?」

璃奈「彼方さん、ちゃんと説明してあげて」

彼方「ありゃ?」

にこ「そうよ!鍋ってなによ鍋って!」

彼方「お鍋はお鍋だよ」

にこ「そうじゃなくて!」



160: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:18:37.20 ID:3sFqru4a.net

海未「私たちは何か大きな勘違いをしていたのでは……」

璃奈「そうだと思う」

海未「私はてっきり組織絡みのいざこざに巻き込まれたものだと…」

にこ「にこも…」

彼方「なんだい、組織って」

海未「説明してください!」

彼方「彼方ちゃんの疑問は無視かい?」

彼方「まぁ、いいや。彼方ちゃんがバイトから上がる頃にちょうど楽しそうにしてる三人を見つけてね。ちょっとイタズラでもしてみよっかな~って」

海未「えぇ…」



161: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:22:46.59 ID:3sFqru4a.net

彼方「しかも何やら沢山の食材を買いこんでるみたいだったし。これは何か裏がある!彼方ちゃんの直感がそう告げていたのだよ」

にこ「にこ達の命を狙ってたんじゃないの?」

彼方「まさか~。彼方ちゃんがそんな事するわけないじゃ~ん。にこちゃんは発想が物騒だな~」

璃奈「にこさんじゃあるまいし、それはない」

にこ「お前もかっ!」

海未「わ、私は最初からおかしいと気づいていましたけどね!」

にこ「嘘おっしゃい!」

海未「ん?でも先ほどにこはネタが上がってるとかなんとかって言ってませんでしか?」

にこ「言ったわ」

海未「そのネタってなんの事だったのですか?」

にこ「んなもんあるわけないわよ。てきとうにカマかけたら口割るかな、って」

海未「さいですか」

にこ「さいです」



162: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:27:11.53 ID:3sFqru4a.net

璃奈「やっとご飯にありつける。りなちゃんボード『やれやれだぜ』」

海未「璃奈も知っていたのなら教えてくださいよ!」

璃奈「彼方さんが、何か面白い事考えてそうだったから」

璃奈「乗ってみた」

彼方「おっ、璃奈ちゃん分かってる~」

璃奈「うん、QU4RTZの絆」

彼方「そんな璃奈ちゃんにはご褒美のハグをあげよう」

海未「QU4RTZめ…」

にこ「してやられたわ……」

彼方「お姉さんはダテじゃないのだよ」

璃奈「りなちゃんボード『まだまだだね』」



163: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:31:59.62 ID:3sFqru4a.net

海未「しかし!いきなり能力を使って襲われた勘違いもしますよ!」

にこ「そうよ!」

彼方「襲ったつもりはないんだけどね」

彼方「それに事前に璃奈ちゃんから二人は似たような力を持ってるって聞いてたから面白いかなって」

海未「璃奈…いつの間に……」

璃奈「彼方さんは大丈夫な能力者だから大丈夫」

にこ「人のパンツ除いたり一番悪用してそうなんだけど」

璃奈「そこはノーコメントで。でも彼方さんは大丈夫な人」

海未「璃奈が言うのならそうなのでしょうね」

彼方「そういうことさ。でも楽しかったでしょ?」



164: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:37:13.81 ID:3sFqru4a.net

海未「それは…まぁ……」

にこ「もう一回巨乳にしてくれたら許す」

彼方「おいおい、またかキミ」

璃奈「りなちゃんボード『哀れ』」

にこ「なんですってぇ!?」

海未「しかしですね彼方!あなたは能力者がなんたるかを!自分が置かれているその状況を全く理解できていません!」

彼方「なんだい急に」

海未「いいですか?私達能力者とは…!」

その後、海未がにこや璃奈の受け売りである能力者うんちくを長い事語った後に三人は彼方の作りだした夢の国から解放された。

そしてその後、五人で楽しい鍋パーティーを開催するのだった。

食材の方は彼方が夢の中にいた時間を現実では数分しか経っていない、としたので傷む事はなかった。

夢の中ではなんでもあり、それが近江彼方の能力である。

ちなみに、彼方が力を手にしたであろう理由とは「寝てる間も遥ちゃんや他のお友達と話せたら楽しいだろうな~」というものである。



165: 名無しで叶える物語 2021/01/16(土) 22:41:25.43 ID:3sFqru4a.net

──────────

──────

────

──


海未(たまには箸休め回も必要ですよね!その後彼方と親密な関係になった私は夜の抱き枕に……)ゲフンゲフン

海未(いけません…!この様な事を考えては……!しかし筆が止まりませんよぉぉぉ!)カキカキ

海未「むふ…むふふふふ」

穂乃果(うわぁ…海未ちゃん…乙女がしちゃいけない顔してるよ……)

ことり(ハッ!ンミチャーから他の女の匂いがするっ!)

教師「授業に集中しろ高坂ァ」

穂乃果「また私ですかぁーーー!?」

海未ちゃんの闘いはまだまだ続く。



171: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 22:46:17.13 ID:kP7Xrmiq.net

後日の学校にて、海未はセンチメンタルになっていた。

海未「この前の鍋パーティーは楽しかったですねぇ。彼方の妹、遥はとても良い子で可愛らしい方でした。そしてにこと彼方の作るお鍋は絶品でした」

海未「この能力″チカラ″を手に入れて…始めはどうなる事かと思いましたが。新たな絆も芽生え、以前よりも楽しい時間が増えた様に感じます」

海未「まぁ…血みどろな戦いに巻き込まれる事も増えましたが。それでも!今ならこの能力″チカラ″を手にして良かった、と。そう思えます」

海未「こう思える様になったのはすべて…あの日にこが私を引っ張ってくれたから。にこには感謝の言葉しか思い浮かびません」

海未「みんなは、理由はどうあれ。望んでこの能力″チカラ″を手に入れたと言います。私もその理由が分かれば……」

海未「人の道を踏み外してしまった自分の事を少しは好きになってやれるのでしょうか。許してやれるのでしょうか……」

海未「にこも璃奈も彼方も。禁足の力にその手を染め、人を辞めた身。それでも三人はいつも通りの三人で。尊敬出来る先輩達で、可愛い後輩で……」



172: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 22:51:10.97 ID:kP7Xrmiq.net

海未「私もいつかは……」

そう海未が物思いに耽り、廊下の窓際で黄昏ていた、その時。

ことり「海未ちゃん……!」

ことりが普段の彼女からは想像も付かない様な形相で海未の元へとやってきた。

海未「こ、ことり?」

ことり「海未ちゃん…ことりの事騙してたんだね……」

海未「……騙す?一体なんのことで」

ことり「ことり全部聞いちゃったんだから!最近変な力を手にしたって事も……!」

海未「なっ!?」

海未(なぜそれをことりが?)

ことり「海未ちゃんがことりの頭の中を弄って弄んでた事も!」



173: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 22:55:23.10 ID:kP7Xrmiq.net

海未「そんな事は…その様な能力″チカラ″の使い方は断じてしていません!」

ことり「嘘付きっ!消えちゃってた記憶のことも全部思い出してるんだからっ!」

海未「それは……」

ことり「ずっと海未ちゃんの事は信じてたのに…大好きだったのに!」

海未「私は……!」

ことり「ことりのこの気持ちは……全部嘘だったって言うの?」

海未「……ッ」

海未は自らの手でことりの記憶を消してしまった負い目からことりに対して言葉を返す事が出来ないでいる。 

ことり「もう海未ちゃんのこと…何も信じれないよっ……」

そう言いことりはこの場を立ち去ろうとする。



174: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 22:58:54.51 ID:kP7Xrmiq.net

海未「待ってくださいことり!話を…」

ことりを引き止めようとする海未だが…

ことり「またことりに変な力を使うつもりなんでしょ!?」

海未「違っ…」

ことり「海未ちゃんなんか大っ嫌い!もう絶好だよ……!」

そう言ってことりは走り去ってしまった。


私はことりの事を引き止めることが出来ませんでした。いえ…引き止める資格が無かったのです。

人の道を踏み外し、手に入れたその能力″チカラ″でことりの記憶を消してしまったことに変わりはありませんから……



175: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 23:01:08.01 ID:kP7Xrmiq.net

そう思い残して、海未は先程まではことりがいた。現在は自分以外の誰も居ない長い廊下を見つめ、一人ポツンと取り残されるのだった。

この時、海未は世界中に一人だけみたいだな、とか。何かおセンチなポエムを吐き捨てようとしていたのかもしれない。

しかし、そんな事はどうでも良くなる程の疑問が頭の中で木霊した。

海未(私はあの時、確かにことりの脳に″起こった全ての出来事を忘れる″と。そう命令を書き込みました。しかしことりは全てを思い出した、と。そう言っていました)

海未(私が書き込んだ命令は、私自身がそれを辞めさせると書き込むまで解除される事は決してありません。それなのにことりが思い出していると言うことは……)

海未(何者かが何らかの方法でことりに掛けられていた私の能力を解いた、という事……!)

海未(そんな事が出来るのは……私達と同じく禁足の力を。神様からの授かり物を受け取った者のみ……!)



176: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 23:05:29.34 ID:kP7Xrmiq.net

海未(まずい…!ことりは既に何者かの能力者と接触しているということになります!)

海未(ことりのあの状態を見るに、能力が解かれたのはつい先程。つまりその能力″チカラ″の主は音ノ木坂″ここ″にいるッ!)

海未「ことりの身が危ないッ!」

そう叫び海未は学校中を走り回る。

海未達の教室、部室、音楽室、図書室、家庭科室、被服室、中庭のベンチ、屋上。

ことりがいそうであろう全ての場所へと赴き奔走するもその姿はどこにもなかった。

海未「ハァ…ハァ…」

気が付いたら4階の元いた廊下へと戻ってきてしまっていた。

海未「いない……」

海未(あの時すぐに追いかけていれば……!)



177: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 23:08:54.35 ID:kP7Xrmiq.net

海未「……あれは?」

ふと廊下の隅へ目を向ける。そこには中途半端にドアが外れ、半開きになった空き教室が見えた。

海未「……まさか…」

海未は半分諦め気味にその教室のドアを開け覗き込んだ。

海未「なっ!?」

そこには想像を絶する異様な光景が広がっていた。

窓ガラスはぶち破られ、照明は落とされている。壁には大きな穴が空き隣の教室へまで通じてしまっている。

砕け散った机や椅子の破片。あり得ない方向へとひしゃげている机と椅子の足。破壊痕だらけの壁、と。教室内の全てが破壊の限りを尽くされていた。

ふと教室の隅に目をやると、横たわりピクリとも動こうとしない少女の姿がその瞳に飛び込んできた。

海未「あ、あぁ…」

横たわっているその少女は海未もよく知る人物。



178: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 23:11:59.86 ID:kP7Xrmiq.net

海未「にこおおおおおおおおおおお!」

矢澤にこだった。

海未は慌ててにこの元へと駆け寄るがその状況は悲惨なものだった。

海未「どうして…にこが……!」

にこの右腕はまるで骨や関節がハナから備え付けられていなかったみたいにぐにゃぐにゃと変形しており。

左腕はおおよそ普通では有り得ない方向へとひしゃげている。

にこのか細い両腕はその身体から流れ出たであろう緋色の鮮血によって染め上げられていた。

そして何度問いかけてもその小さな身体はピクリとも動こうとはしなかった。

海未「にこぉぉぉぉ!返事をしてくださいよぉぉぉ!にこぉぉぉぉ!」

海未の問い掛けは虚しく、破壊された窓から入り込んでくる風切り音のみが木霊するのだった。

海未「なぜ…こんな事に……!」

その瞬間、海未の脳裏に数日前の璃奈の言葉が蘇った。



180: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 23:17:06.09 ID:kP7Xrmiq.net




璃奈「『能力者殺し』が闘いを終えた現場には必ずあるものが残ってる」

璃奈「グチャグチャに破壊された人間の死体だよ」

璃奈「海未さんが、『能力者殺し』の正体で無いなら、その牙が、私達にも向く事になるかもしれない」






181: 名無しで叶える物語 2021/01/18(月) 23:19:15.87 ID:kP7Xrmiq.net

海未「まさか……『能力者殺し』………?」

そう疑問を抱いた瞬間、海未は背後に何者かの気配を感じた。

海未「………」

???「やっと来てくれたね、海未ちゃん」

海未「その声は……」

海未の背後にいたのは。この破壊を産んだ主は。ことりに掛けられていた能力を解いた能力″チカラ″の主は。

海未「穂乃果……ですか………」

音ノ木坂学院アイドル研究部 ″ μ's ″ のリーダー。そして南ことり同様、園田海未の幼馴染であり親友でもある高坂穂乃果だった。

穂乃果「そうだよ」

今の穂乃果にはいつもの様な人懐っこさも、太陽の様な笑みも輝きもない。

海未に向けられるは明確な敵意、いや殺意。

今の彼女はドス黒い負の感情に支配されていた。



187: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 19:44:19.22 ID:8sNwezrL.net

海未「………」

海未「『能力者殺し』の正体は穂乃果だったのですね……」

穂乃果「『能力者殺し』」

穂乃果「なにそれ?」

海未「巷であなたはそう呼ばれているのですよ」

穂乃果「へぇー。どうでもいいけど」

海未「一つ分からないことがあります」

穂乃果「なに?」

海未「なぜにこを手にかけたのですか!」

穂乃果「………」

海未「『能力者殺し』は悪事を働いた者のみに天誅を下す存在だと、そう聞いていました」



188: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 19:49:48.93 ID:8sNwezrL.net

海未「なのに何故にこをッ!」

穂乃果「……穂乃果もにこちゃんには手を出すつもりはなかったんだけどね。あまりにもしつこいもんだからさ」

海未「……は?あなたはそんなふざけた理由でにこを?」

穂乃果「………」

海未「失望しましたよ『能力者殺し』」

海未「私はあなたを軽蔑します」

穂乃果「言ってくれるね。能力″チカラ″に飲み込まれてる分際で」

海未「私が…?能力”チカラ″に……?」

穂乃果「そう。そんな海未ちゃんと行動を共にしていたんだもの。にこちゃんも同罪みたいなもんだよ」

海未「穂乃果…あなたって人はッ!」

瞬間、穂乃果の何かがキレる音がした。



189: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 19:54:54.07 ID:8sNwezrL.net

穂乃果「さっきから聞いていれば都合のいいことばかりッ!能力を使いことりちゃんを弄んだ″クズ″が何を言ってんのさ!」

穂乃果の顔は普段の彼女からは想像もつかない程憎悪の念に包まれていた。

海未「ことりを弄んだ……?なんの話ですか……私はただ」

穂乃果「言い訳を聞くつもりはないよ」

海未「私は……!」

穂乃果「穂乃果はずっとことりちゃんのことが好きだったんだ」

穂乃果は語り出す。彼女がなぜここまでも海未を憎んでいるのかを。

海未「………」



190: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 19:58:07.51 ID:8sNwezrL.net

穂乃果「不可抗力ながらも能力″チカラ″を手に入れて、能力者と人間を取り巻くその環境を知って」

穂乃果「この世の中にはどうしようも無いクズが多すぎることを知った。そのせいで能力者″わたしたち″が人間扱いをされてないってことも」

海未「………」

穂乃果「けどね、どうしようもないクズは能力者だけじゃない」

穂乃果「能力者を出汁に使い至福を肥やす資本主義の豚共。そこから小金を巻き上げようとする能力者達」

穂乃果「そのしわ寄せを食うのはいつだって今を平和に暮らそうとしている善良な人達だッ!」

海未「………」

穂乃果「こんな世界は間違ってる!だからあの時、穂乃果が″このチカラ″を手にしたのは運命だったんだッ!」

穂乃果「穂乃果がこの腐り切った世の中を変えてみせるッ!」

海未「……あの時…とは…?」



191: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 20:01:26.15 ID:8sNwezrL.net

穂乃果「色々あってね、帰りが遅くなっちゃった日があったんだ。その時見ちゃったんだよ」

穂乃果「能力者の集団に乱暴されている女の子をね」

海未「………」

穂乃果「そしてその男達と目があった。腐り切った下衆な目を見た。その瞬間どうしようもない程の怒りに溢れて」

穂乃果「気が付いたら血まみれの穂乃果とグチャグチャになった男達の死体がそこにはあった」

海未(これが穂乃果が能力″チカラ″を得た理由ってわけですか……思っていたよりも……)

海未「重い…」

穂乃果「それ以降はこの世の癌を駆逐するために奔走した。毎日のように血を浴び、血に染まった」

穂乃果「そんな穂乃果にとって唯一の癒しはことりちゃんと海未ちゃんだった」



192: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 20:04:11.98 ID:8sNwezrL.net

穂乃果「こんな穂乃果にも海未ちゃんはいつもの様に叱って面倒を見てくれた。それが嬉しかったんだ」

海未「穂乃果…」

穂乃果「そしてことりちゃんはいつも変わらない笑顔で穂乃果の心を包んでくれた。その笑顔だけが穂乃果の励みだった」

穂乃果「その笑顔が堪らなく好きで苦しい現状を乗り越えられたんだ」

しかし、穂乃果は知ってしまった。そんな笑顔を向けてくれることりが見ている先にいるのは。

穂乃果「けどことりちゃんは海未ちゃんの事が好きなんだと知った」

園田海未だという事を。

海未「………」



193: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 20:08:19.58 ID:8sNwezrL.net

穂乃果「でも仕方ないと思ったよ。相手は海未ちゃんだもん。穂乃果なんかがかないっこない」

穂乃果「そりゃ悔しかったしショックではあったけど。穂乃果にはことりちゃんの手を握ってあげる資格はないもん」

海未「………」

穂乃果「だからことりちゃんの事を応援しようとそう決めたんだ」

穂乃果「……けど」

しかし穂乃果は知ってしまった。

海未が力を手にしているという事を。

そして見てしまった。

その力をことりに対して使用している瞬間を。

聞いてしまった。

海未がことりに力をかけているという事を。

穂乃果「海未ちゃんは……穂乃果の心を裏切った!」



194: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 20:11:34.27 ID:8sNwezrL.net

穂乃果「穂乃果がこんなにも苦しんでる中……海未ちゃんは自分の欲を満たすためだけに力を使ったッ!ことりちゃんの心を弄んだ!」

海未「待ってください!そのことりの心を弄んだとは一体なんのことなのですか!?」

海未「確かに、記憶を消しはしましたが!ことりの思考をねじ曲げたりなどは決して」

穂乃果「言い訳は聞きたくないよ!穂乃果がことりちゃんの事を守るんだ!」

穂乃果「隣に立って手を握ってあげる資格は穂乃果にはないのかもしれない。それでも!そんな穂乃果でも!ことりちゃんを魔の手から守ってあげることは出来る!」

海未「穂乃果…私の話を……!」

穂乃果「それに海未ちゃんがことりちゃんの前からいなくなればことりちゃんの心は誰の物でもなくなる……へへへへ」

穂乃果「だから、海未ちゃんが抱くその下らない願望をぶち壊すっ!」



196: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 20:14:45.27 ID:8sNwezrL.net

海未(……穂乃果の心はここまでも病んでいたというのですか……?私は…穂乃果がこんなにも思い悩んでいるのにそれを知らなかった…いえ、知ろうとすらしなかった……)

海未「私は…私は………!」

穂乃果「覚悟はいいよね、海未ちゃん」

海未「………」

海未(悔いていても仕方がありません!そんな時間は今の私にはないのですから。このままでは穂乃果の笑顔を永遠に失ってしまう)

海未「心を……心を鬼にするのですよ!園田海未ィィッ!」

海未はそう自分に喝を入れる、その瞬間。海未の身体はランセルノプト放射光の淡い輝きに包まれる。

穂乃果「ふふふふ」

けれど。



197: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 20:20:09.65 ID:8sNwezrL.net

海未「なっ!?」

海未の頭の中に穂乃果の心の内が流れて来る事はなかった。

穂乃果は海未をめがけて掌をかざしている。

穂乃果「甘いよ、海未ちゃん」

海未(にこの時のように視界を遮断しているわけでない……なのに何故……?)

穂乃果「ことりちゃんに掛けられた能力を解いたのは誰だと思ってるの?」

海未「………」

穂乃果「それは穂乃果」

穂乃果「穂乃果の手は破壊を与える。穂乃果の前で海未ちゃんの能力は無意味ッ!その能力ごと海未ちゃんの全てを破壊し尽くしてあげる…!」

そう言い穂乃果は地面へと手をつく。



198: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 20:24:21.81 ID:8sNwezrL.net

海未(まずい…能力″チカラ″が使えなくては……!)

その瞬間、足場が破壊の衝撃で包まれる。

海未「な、ななななな!」

そして海未は床を伝った破壊の衝撃をその一身で受ける事になった。

海未「うがあああああああああああ!」

今まで読心に頼っていた海未にそれを対処出来るはずはなかった。

しかし今の海未には痛みに嘆いている暇はない。

海未「う…ぐぅ………」

穂乃果の掌から産まれた破壊の衝撃は破壊した床を伝い壁を伝い、建物全体へと及び全てを破壊し尽くす。海未の身体は地上4階という高さに放り出されてしまっているのだ。



199: 名無しで叶える物語 2021/01/20(水) 20:27:31.21 ID:8sNwezrL.net

海未「このままでは…倒壊する建物と一緒に地面へと叩きつけられ生き埋めになってしまいます…」

海未「うおおおおおおおおおおおおおお!」

海未は雄叫び声を上げ痛む身体に鞭を打つ。落下の衝撃を相殺すべく自分の身体が地面に触れる瞬間。

海未「はああああっ!」

受け身の要領で思いっきり地面を叩く。

そしてその衝撃で海未の身体は宙へと浮かび上がり、ゆっくりと着地をする、が。

海未「ぐっ……ふ………」

それでも落下の衝撃全てを相殺し切る事は出来ず、地面へと膝をつく。海未の身体にまたしても重い傷が刻まれる事になった。

海未「はぁ…はぁ……」

穂乃果「これでも立ち上がるなんて。相変わらず人間離れした肉体と身体能力をしてるね」

海未「なぜ…そこに……」

穂乃果はまるで物理法則を無視しているかのようにその肉体を宙へと浮かび上がらせていた。



208: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 22:59:08.32 ID:xhaa+4DY.net

穂乃果「なんでか、って顔してるね」

海未「………」

穂乃果は着地による衝撃を免れるためにその能力″チカラ″を使い、今現在自分がいる座標の重力を破壊したのだ。

故に宙へと浮いている。正確には浮いているのではなく穂乃果のいる地点だけ重力が弱まっているのだ。

穂乃果(加減が難しいから常に空を飛んでられるわけではないんだけどね)

しかしそれに海未が気付いているかどうかは定かではない。

穂乃果「お得意の能力を使って読んでみせれば?」

海未の身体が淡い輝きに包まれるも。

海未(やはり読めませんか)

穂乃果の心の内が海未の頭に流れて来る事はなかった。



209: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:02:46.49 ID:xhaa+4DY.net

穂乃果「まぁ、無駄なんだけどね。海未ちゃんの能力は穂乃果には通じない」

そう言いながら穂乃果はヒョイっと地上へと飛び降りた。

海未(璃奈から聞いた情報、先程の攻防。これらから推測するに穂乃果の右手は破壊を産む能力。それも圧倒的な破壊力を)

海未(私の能力もその力で破壊されたと見てまず間違いはないでしょう。問題はどうやって攻略するか。ですね……)

だが、海未に長く考えている時間はなかった。律儀にそれを待ってやる道義が穂乃果にはないのだ。

穂乃果「………」
 
穂乃果が地面へ触れる。

その瞬間地面に亀裂が入る。先程校舎を倒壊させた破壊の衝撃が今度は地面へと向けられているのである。

その衝撃は海未をめがけて一直線に伸びてくる。



210: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:05:29.60 ID:xhaa+4DY.net

海未「二度も同じ手にはかかりませんよ」

海未はその破壊痕から逃れて見せる、が。

穂乃果「まだだよ」

穂乃果が手を付いた先からは止めど無く破壊の衝撃が溢れ出る。それらの全てが地面を伝い海未へと襲いかかる。

海未「これだけの広さがあれば避けられない攻撃じゃありませんよ」

穂乃果の掌から放たれる破壊の衝撃の威力は凄まじい。しかしにこの風程の速さも無ければ範囲もない。

先程の様に狭い教室でないのなら海未にとって避けられないものではない。

海未は駆け回る、風よりも速く飛ばして行く。

止まれば破壊の奔流に飲み込まれるという事を本能で察知しているからだ。

走り、走り、走り。海未は穂乃果の手から放たれた破壊の衝撃から逃れ続ける。



211: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:09:13.56 ID:xhaa+4DY.net

穂乃果「チッ」

海未「ふふふ。建物を倒壊させたのは早計でしたね」

そう言うと海未の身体が蒼白い光に包まれる。

穂乃果「……ッ!」

穂乃果の攻撃の手が止まる。

穂乃果「無駄だって言ってるでしょ!」

しかしやはり海未の脳内に穂乃果の心の内が流れ込む事は無かった。

海未(やはりそうでしたか)

その瞬間穂乃果により破壊された地面の亀裂から無数の木の根が暴れだす。

穂乃果「なっ!?」

海未「ふふふ。私が能力″チカラ″をかけたのはあなたじゃないんですよ!」

″穂乃果をめがけて伸び続ける″



212: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:12:03.00 ID:xhaa+4DY.net

海未「あなたが能力″チカラ″を使い地面を隆起させてくれたおかげで私は地の底で眠る木の根を目視し命令を書き込む事が出来ました」

無数の木の根がまるで鞭でも振るわれているかのよう唸り、しなり、穂乃果の身体へと目がけ打ち振るわれる。

穂乃果「そんな小細工、穂乃果には通用しないよ」

しかし穂乃果はその根が身体に触れる前に右手で触れ木の根を破壊してみせる。

海未「まさか私が一方向からしか攻撃をしないと思っているわけではないですよね?」

穂乃果を襲う地中の根はとどまるところを知らない。

穂乃果を全方向から包み込むかの様に地面から生え出た無数の木の根が襲い掛かる。

穂乃果「……ッ!」

海未「終わりですよ、穂乃果」

そう言った瞬間、海未が操る木の根が穂乃果の身体を貫く。



213: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:16:12.76 ID:xhaa+4DY.net

事は無かった。

穂乃果は一瞬にして海未目前へと現れる。

目の前の空間をその右手で破壊し、破壊された空間が元に戻ろうとする力を利用し瞬間移動したのだ。

穂乃果「終わりだよ、海未ちゃん。力の使えない海未ちゃんなんて敵じゃないみたいだね」

優勢から一転。

穂乃果の破壊の右手が海未の身体へと迫る。

海未「ふふふふ」

だが海未の顔に絶望の色は一切浮かんでいなかった。

海未「穂乃果、攻撃を掻い潜る事に必死になりすぎて」

海未「私にかけられた能力″チカラ″を破壊し忘れていますよ」



214: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:19:26.61 ID:xhaa+4DY.net

穂乃果「……ッ!?」

海未の身体は輝き続けていた。無数の木の根を操るために能力″チカラ″を使い続けていたからだ。

しかしその間海未は穂乃果にも力を使っていた。穂乃果に気づかれないよう、木の根を操り上手くカモフラージュしながら。

故に穂乃果は気づけなかったのだ。

海未「木の根による攻撃はあなたを″ここ″へと誘うための罠です。あなたの行動は全て読めているのですよッ!」

海未の身体へ穂乃果の右手が触れる直前、穂乃果の身体が宙へと浮かび上がる。

穂乃果「なっ……!?」

穂乃果は今、先程自分が安全に着地をするために重力を破壊した座標へと踏み込んでしまったのだ。



215: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:22:14.09 ID:xhaa+4DY.net

海未「はっ!」

左、右。

穂乃果「ぐがぁっ!」

左で顎を上げさせ、そこへ渾身の右ストレート。理想的なワンツーが穂乃果の顔面へと叩き込まれる。

穂乃果はそのまま後方へと吹き飛ばされる。

穂乃果「ぐっ…ふぅ……」

海未「穂乃果、あなたには私の能力が効かないのではありません。ただかけられた能力を自分の力で破壊する事が出来るだけ」

海未「そうですよね?」

穂乃果「………」



216: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:25:23.71 ID:xhaa+4DY.net

海未「その証拠にあなたは、私が木の根を操るために能力″チカラ″を使おうとした時、攻撃の手を辞めてまで自らの身体に能力″チカラ″を使おうとした」

穂乃果「………」

海未「その時に全てを理解しましたよ」

海未「最初、自分にはあたかも能力が効かない。というよう私に見せかけ、私自身に私自身の脳に自分の能力″チカラ″は穂乃果には効かない、と。そう思い込ませていただけという事を」

穂乃果「………」

海未「私はあなたの策略によって無意識の内に自分の脳に命令を書き込まされてしまっていたみたいですね」

″穂乃果に能力″チカラ″は通じない″

と。



217: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:28:16.95 ID:xhaa+4DY.net

穂乃果「………」

海未「あなたの頭のキレ具合には脱帽しましたよ。しかしそれも私の方が上手だった様ですね」

海未は渾身のドヤ顔を披露している。

穂乃果「………」

しかし、穂乃果はそれを見てしても不自然なくらいに黙り込んでいた。

海未「私が能力をかける、あなたが解く。まだこんな無駄なイタチごっこを繰り返すつm」

瞬間、海未の顔が絶望の色に染まる。穂乃果の心を通じて読んでしまったのだ。これから自分の身に降りかかる最悪の未来を。

だが、それを知ったところで今の海未にどうこう出来る術は無かった。

なぜなら、穂乃果の攻撃が既に終了しているからだ。



219: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:32:22.57 ID:xhaa+4DY.net

穂乃果「……ふっ」

穂乃果がそう笑い指をパチンと鳴らすと。

海未「ぐあああああああああああああああ!」

メキメキと音を立て、海未の右腕が破壊される。その腕からは鮮血が吹き出し、海未のブレザーの、その下のワイシャツを鮮やかな緋色が染め上げる。

海未「ガァッ…ハァ…ハァ……」

血に塗れダランと垂れ下がったその腕は。まるで隅で倒れているにこの腕を写し出しているかの様にも見えた。

穂乃果「頭のキレ具合も穂乃果の方が上だったみたいだね」

海未「ぐっ…いつ…の間に……」

穂乃果「あの時、防御をしようと思えばそう出来た。躱そうと思えばそれも出来た」

海未「………」

穂乃果「けど」



220: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:35:32.68 ID:xhaa+4DY.net

穂乃果「そうしなかったのは海未ちゃんの身体に傷を刻み込んでやるため!」

そう熱く意気込み、穂乃果は右腕を構える。

穂乃果「一気にカタをつける!」

瞬間、またも穂乃果は海未の目前へと瞬間移動をする。

穂乃果「ふっ!」

穂乃果は海未めがけて拳を振るう。
穂乃果の破壊の拳が海未へと迫る、が。

海未は右腕の痛みに耐えながらも穂乃果の拳を払い、そして躱し、穂乃果の破壊の魔の手を掻い潜る。

そして

海未「はっ!」

穂乃果の右の拳に合わせ左のクロスカウンターを叩き込む。

穂乃果「ぐっ…!?」



221: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:38:22.64 ID:xhaa+4DY.net

海未(攻撃の最中に身体を触れられるというのならば…!触れられない程に早い速度で攻撃を繰り出せば良いのです!)

海未はその勢いのまま左腕を穂乃果の首の後ろへと回し組み付く。

首相撲の体制から膝、膝、膝!
みぞおち、脇の下といった人体急所を素早く的確に突き、最後は顔面へとその固い膝小僧をぶつける。

穂乃果「ぐがぁぁぁ!」

海未「まだまだぁ!」

駄目押しと言わんばかりによろめいた穂乃果の顔面へ勢いよく額を押し当てる。

穂乃果「ぐぶゥゥゥ!」

上体を仰反らせた穂乃果。これ以上海未からの追撃を喰らわないために後ろの空間を破壊し距離を取るのだった。



222: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:42:08.10 ID:xhaa+4DY.net

海未「私にインファイトを挑んだのは早計でしたね。あなたが武道で一度でも私に勝てたことがありましたか?」

穂乃果「ガフッ……」

海未「その差は右腕一本だけで埋まるものじゃあないですよ」

穂乃果「ガッ……クヒュ………」

穂乃果は海未の攻撃をまともに急所へとくらい呼吸が出来ないでいる。その痛みに耐え、ふらついている穂乃果の身体は今にも倒れ伏せようとしている。

穂乃果「ふおおおおおおおお!」

しかし、タダで転ぶ穂乃果ではない。地面へと倒れ伏せるその勢いを利用し思いっきり地面を殴り付ける。



223: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:45:33.17 ID:xhaa+4DY.net

海未「……ッ!」

穂乃果に殴り付けられた地面はその能力″チカラ″によりまるで抉り取られたかの様に破壊される。

その破壊の衝撃により抉り取られた瓦礫片が海未をめがけて飛来する。

海未「がァッ……!」

勢いよく放たれた瓦礫片は海未の肉体へと食い込むのだった。

またしても海未の身体には痛々しい傷が刻み込まれてしまう。

穂乃果「コヒュ…クヒュ……」

だが未だ呼吸が整わない穂乃果は苦しそうに地面をのたうち回っている。



225: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:48:32.63 ID:xhaa+4DY.net

海未「うっ……」

それを見て海未は心を痛めたのだろうか。

海未「穂乃果…もうこの無意味な闘いを辞めにしませんか……?」

穂乃果「………」

もう辞めにしようと促す。

海未「私は穂乃果の事を痛めつけたい訳ではないのです。それに私はことりの事を」

穂乃果「うるさいなぁ……言い訳は良いってずっと言ってるでしょ!」

しかしそれはかえって穂乃果の怒りを逆撫でするだけに終わった。

海未「言い訳などではありません……!」

海未「私は……!」

穂乃果「もう手加減しないから」

そう言い穂乃果が地面に手を当てがうと、先程とは比べ物にならないくらい大きな破壊を産む。



226: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:51:23.77 ID:xhaa+4DY.net

海未「なっ…なにを!?」

大きな地震による地割れ被害でも起こったかのように地面へと亀裂が入る。

その破壊痕は世界そのものごと海未を破壊しようとしているかの様に見えた。

大地が割れ、その衝撃で大地が揺れる。まるで世界の終焉を見ているかの様な破壊劇。

海未「………」

だが海未の頭にはそんな事を気にも留めなくなるくらいに大きな疑問がぐるぐると駆け回っていた。

海未(私の身体が濡れている……?それに知らぬ間に地べたには水溜りが出来ているようにも見えます)

まるで豪雨にでも遭ったかの様に海未と穂乃果の周りは水気に満ちていた。



227: 名無しで叶える物語 2021/01/24(日) 23:55:57.32 ID:xhaa+4DY.net

海未(雨が降ったという記憶はありません。なのになぜ?)

海未が疑問を浮かべたその瞬間。海未の身体が、バキバキと破壊音を立てている大地が、その破壊の衝撃ごと一瞬にして凍りついたのだ。

海未「こ、これはッ!?」

まるでアイスブルーの瞬間。

その場は一瞬にして何者かの能力″チカラ″により凍てつく氷の大地へと変えられてしまった。

海未「か、身体が…動き…ません……」

海未の身体はピクリとも動かない程にしっかりと凍結させられている。

ふと穂乃果の方に目をやると、例外なく穂乃果の身体も凍りついていた。

穂乃果「やら…れた……!」

その穂乃果の表情は酷く強張っていた。

???「漁夫の利とはまさにこの事ね」

二人の闘いに横からメスを入れたのは。

穂乃果「ぅ絵里ちゃん……」

海未や穂乃果と同じく、スクールアイドルグループμ'sに所属している絢瀬絵里だった。



233: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:01:28.16 ID:LeugVjA6.net

絵里「お婆さまの代からあるこの学校を無闇に壊さないでほしいわね」

絵里「まぁ、どうせ理事長の力で元通りになるんでしょうけど」

穂乃果は海未に対して向ける敵意とはまた違った感情の敵意を絵里に向けていた。

絵里「そんな怖い顔をしちゃあ可愛いお顔が台無しよ、穂乃果?」

穂乃果「………」

海未(なぜ絵里がここに…?)

絵里「ふふふ。それにしても大した事ないのね。『能力者殺し』も『蒼の神話』も」

海未(蒼の神話…?それは私のことなのでしょうか……)



234: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:05:16.29 ID:LeugVjA6.net

絵里「今をときめく期待の新人。『能力者殺し』も『蒼の神話』もこの私を前にしては有象無象の能力者と変わりないわね」

絵里「こうなってしまってはもう打つ手なし、ってとこかしら?」

海未(私も穂乃果も完全に身体を拘束されてしまっています。本当に打つ手無し…ですね)

???「ちょっとちょっと絵里さん!手柄を自分だけのものにするのはずるいであります!」

ただでさえどうしようもない状況であると言うのに、さらにまた新手が一人。

海未「そんな……」

穂乃果「曜ちゃん……」

そこへ現れたのは浦の星女学院、スクールアイドルグループAqoursの一員渡辺曜だった。



235: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:08:51.09 ID:LeugVjA6.net

絵里「あら、曜。遅かったわね?」

曜「遅かったわね?」

曜「じゃないよ!私もずっとここにいたし、二人に気づかれない様にちょっとづつ水で満たしていくのは大変だったんだからー!」

絵里「でも簡単にやってのけちゃうのが曜でしょう。違う?」

曜「そ、そうだけど…自分一人の手柄みたいにするのはずるい!」

絵里「そこは…ごめんなさい。ちょっとはしゃぎすぎちゃったわ」

曜「分かればいいのであります!それと…」

絵里「まだ何かあるの?」

曜「『蒼の神話』ってなぁに?初めて聞いたんだけど」

絵里「私が今名付けたのよ」

曜「えぇ…」



236: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:11:28.48 ID:LeugVjA6.net

絵里「いやぁ…穂乃果の事だけ格好良い異名で読んで海未だけは名前って可哀想じゃない……?ほら、海未ってそういうの気にする子だし…」

曜「なるほど!」

穂乃果「………」

海未(私は絵里にそうなふうに思われていたのですか…)

曜「絵里さんなりの後輩に対する気遣いだったんだね!」

絵里「まぁ、そんなところね」

曜におだてられたせいなのか、絵里はすごく得意げに見えた。



237: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:14:42.96 ID:LeugVjA6.net

穂乃果「………」

絵里「なぜ裏切ったのか。って顔をしているわね」

穂乃果「……別に」

絵里「うふふ。強がっちゃって」

穂乃果「………」

絵里「そもそもはなから私はあなたと組んだつもりはないわよ」

海未(……穂乃果と絵里は既に接触していた……?)

穂乃果「……え?」

絵里「嫉妬に狂う馬鹿な女ほど扱いやすい駒はないわ」

穂乃果「……嫉妬?何言って」



239: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:18:19.00 ID:LeugVjA6.net

絵里「ん~?本当の事でしょう?」

海未(今回の件でことりと私、穂乃果と私。何故かどちらも話が噛み合いませんでした)

穂乃果「穂乃果はただ…」

絵里「まだそんな事を言っているのね」

穂乃果「え?」

海未(能力絡みの問題により産まれた私達3人の間の溝。もしこれが第三者によって仕組まれたものだったとしたら……?)

海未は気付いてしまった。先程までの闘いが仕組まれたものだったという事実に。

そしてそれを企てた者が誰なのか、そしてその狙いがなんなのかを。



240: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:21:35.04 ID:LeugVjA6.net

絵里「裏切りついでに教えておいてあげましょうか」

海未「穂乃果ッ!絵里の話に耳を傾けてはいけm」

それを阻止すべく口を挟もうとする海未だったのだが。

海未「むぐっ!」

曜「ちょっと黙っててね~」

曜の掌から発射された水の塊が海未の頭を包み込みそれを遮断する。

海未「かっ……」

海未(息…が……)

穂乃果「……海未ちゃん?」

絵里「穂乃果、貴方は能力”チカラ″に溺れた海未に正義の鉄槌を下さんとしているつもりなのでしょうけれど」



241: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:24:57.15 ID:LeugVjA6.net

絵里「実はその逆。最後まで己の信念のために能力″チカラ″を振るっていたのは海未の方よ」

穂乃果「……でも海未ちゃんは力を使ってことりちゃんを弄んだって!」

絵里「ん?あぁ~、嘘よ。あんなの」

穂乃果「……え?」

海未(……やはりアレは吹き込まれたものだった……!)

絵里「ふふふ。能力″チカラ″に溺れて狂拳を振るっていたのは貴方のほうだったみたいね、穂乃果?」

穂乃果「う、嘘だ……!だって海未ちゃんは………!」

絵里「それが嘘だと言っているのよ」

穂乃果「はっ…ハハハハハハ……」

穂乃果の声が絶望で震えきっている。もう何を言おうとしているかも分からないほどに。



242: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:28:06.69 ID:LeugVjA6.net

絵里「海未はいつだって己の正義のために能力″チカラ″を振るっていた。自分の周りの人間を守るためにね」

穂乃果「そんな…穂乃果は……」

絵里「にことの戦いの時だってそう。貴方やことりの記憶を消したのは二人を能力者同士の醜い争いに巻き込まないため」

海未(なぜ絵里はあの時の事を知っているのでしょうか……その事は誰にも言っていないはずなのに)

海未(………まさか。いいえ、考えたくはありませんそんな事。それは絶対にありえません)

穂乃果「穂乃果は………」

絵里「貴方はそんな正義の目を啄もうとしていたのよ」

海未(それどころではありませんね…このままでは穂乃果の心が……!)



243: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:31:11.08 ID:LeugVjA6.net

絵里「本当のクズは果たして海未なのか、貴方なのか」

海未(なんとかしなくては……!)

絵里「どっちなのかしらね?」

瞬間、海未は自分の顔を包む水の塊の全て胃へと流し込み叫ぶ。

曜「嘘っ!?」

海未「穂乃果…!気をしっかり保ってください!絵里の言うことに耳を貸してはいけません!」

穂乃果を助けたい一心で。

穂乃果の心を完全に破壊させられてたまるか!という一心で。

絵里「貴方がさっきまでやろうとしていた行為は。貴方が今まで葬ってきた豚共と等しい行為なのよ、穂乃果」

海未「穂乃果……!聞いてはいけません!絵里の言うこt」

絵里「あなたはそこらのクズと何も変わらない」



244: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:35:05.99 ID:LeugVjA6.net

穂乃果「うあああああああああああああああああああああああああああああああ!」

しかし、海未の声が穂乃果の心に届く事は無かった。

穂乃果の瞳から光が落ちる。

自らの勘違いで、ことりと海未を傷つけてしまった。

それだけじゃない。能力を手に入れ今まで擦り減ってきた心の闇がここへ来て一気に決壊してしまったのだ。

海未「穂乃果ぁぁぁぁ!!」

海未「あなたはクズなんかではありません!あなたがことりを思う気持ちは本物だったじゃあないですか!」

海未「そのことりのために精一杯振るった拳はッ!私利私欲のために能力″チカラ″を振るってきたクズ共と同じなんかじゃない!」

海未「あなたはッ!」

穂乃果「穂乃果は…海未ちゃんを……ことりちゃんを………」

しかし、今の穂乃果に海未の言葉は追い討ちでしかなかった。

海未やことりへ対する自責の念から海未の慰めは穂乃果にとって凶器にしかならなかった。



245: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:38:28.81 ID:LeugVjA6.net

絵里「あっはははははははははは!」

絵里「μ'sの太陽もこうなってしまえば脆いものねぇ!」

海未「絵里ぃぃぃいいいい!あなたって人はぁぁぁぁ!」

絵里「そんな動けない状態で吠えてもみっともないだけよ、海未ぃ?」

海未「あああああああああああああ!」

海未は穂乃果の悩みに気付いてあげられなかった。

そして今、絵里の策略にはまり穂乃果の心を救ってやる事も出来なかった。

自分の不甲斐なさと絵里に対する怒り。

この二つの感情に海未の脳は支配されてしまっている。

海未(何が…!何が幼馴染ですか!私は二度も穂乃果の窮地を救う事が出来なかった…!ことりの心まで利用されてしまった……!私は何も出来なかった……!)



246: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:42:20.14 ID:LeugVjA6.net

曜「うわぁ…絵里さん趣味悪っ……」

海未「曜ッ!そう言うのならなぜッ!」

海未「あなたもこんなふざけた計画に首を突っ込んでいるのですか!」

曜「んー……私は別に能力者同士のいざこざとかには興味ないんだけどね。強い相手と面白い戦いがしたい。絵里さんの元にいればそれが叶う」

曜「それが力を貸してる理由だよ」

海未「そんな理由で…あなたは……!」

曜「ごめんねー。でも許されたいとかそんなのはないよ」

曜「私は戦えればなんでもいいからね」

海未「くっ……!」

曜「あははは。分からない…って顔してるね?」

海未「当たり前ですよ!」

曜「世の中には色んな考えの人間がいるって事だよー」



247: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:46:37.11 ID:LeugVjA6.net

絵里「曜の能力″チカラ″は私の能力″チカラ″とっても相性がいいの。だから力を貸してもらってるのよ」

海未「………」

絵里「ふふふ、海未ぃ?戦いに勝つために必要な事を教えてあげようかしら?」

海未「聞きたくありません」

絵里「それは腕っぷしの強さでもなければ、強大な破壊力でもない」

海未「聞きたくありません、と。そう言っているでしょう?」

絵里「″ココ″の使い方よ」

絵里はニヤニヤ笑いながら自分の頭をトントンと叩きそう言い捨てる。

海未「この外道……!」



248: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:51:20.99 ID:LeugVjA6.net

絵里「なんとでも言いなさい」

絵里「私は私の野望を叶えるためなら冷酷にだってなってみせるわ」

海未「その野望とは……!仲間を傷付けてまで成しえなければならない程の物なのですか……!」

絵里「貴方達みたいな正義のヒーロー気取りは邪魔なのよ、私の野望を叶えるためにはね」

その言葉を聞き、海未の怒りはさらにヒートアップする。

海未「そこまで言うのならばあなたの言う野望とやらはとても大層なものなのでしょうね!」

絵里「……….」

海未「しかし、私は絶対に貴方を許しませんよ!何があろうともッ!」

絵里「私の……何も知らないくせに!偉そうなこと言ってくれるわねぇ!」

その瞬間、平静を保っていた絵里の表情が崩れる。

絵里「これは復讐なのよッ!誰よりも優しかったお婆さまを売った下等な人間共に対するねぇ!」



249: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:55:00.67 ID:LeugVjA6.net

海未「………」

絵里「いいわ、消す前に教えておいてあげようじゃない。あなた達が邪魔な理由をね」

絵里は語り出す。

絵里「お婆さまは誰よりも優しい人だった。大きな力を持つ能力者に対しても、そうでない能力者に対しても、人間に対しても」

絵里「当時のロシアは荒みきっていた。それはもう血が流れない日なんてないくらいに。それらの殆どが能力者による仕業だった」

絵里「人間はそれに対抗するべく唯一能力者に勝っている″数″という力を使って武力行使に出た」

絵里「そんな状況でもお婆さまは信じて疑わなかった。いつか能力者と人間が手を取り合い平和な世界が実現するという事を」

絵里「お婆さまはそのために毎日奔走していた。人間に寄り添い、能力者に寄り添い。時に演壇の場に立つこともあった」

絵里「私はそんなお婆さまが憧れだった。お婆さまみたいな人になりたいと」

絵里「私はいつの日かそう思うようになっていたわ」



250: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 20:58:32.86 ID:LeugVjA6.net

海未「それなのに何故!」

絵里「お婆さまの功績も認め始められた頃。事件は起こった」

絵里「お婆さまを認めたがらない能力者達が現れたのよ。それもそこそこ力のある大きな組織の者達から」

絵里「好き勝手やりたい自分らにとって正義を語るお婆さまが邪魔になったんでしょうね」

海未「………」

絵里「その時、お婆さまに尻尾を降ってた人間共が取った行動はなんだったと思う?」

海未「………」

絵里「売りやがったのよ!お婆さまの事をッ!偽りの平和と小金を対価にしてね。そしてお婆さまは組織の者に始末されたわ」

海未「そんな……」



251: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:03:26.68 ID:LeugVjA6.net

絵里「けれどその組織の能力者が約束を守るはずもなく、またロシアの街では血の雨が降り続けた」

絵里「その時、馬鹿な下等種族共は薄情にもこんなつもりはなかった、あいつらは卑怯だ!なんだと抜かし始めた」

絵里「誰よりも優しかったお婆さまはその優しさ故にッ!こんな馬鹿な人間のせいで殺されたのよッ!」

海未「………」

絵里「私は絶対に許さない。力に屈してへーこらするだけの人間を絶対に許しはしないッ!二度とこんな間違いを起こさないためにも私がこの世界の頂点に立つ!」

絵里「二度とくだらない意思を口に出来ないように下等な人間どもを恐怖のどん底に落としめてやるのよ!」

絵里「そして阿保な能力者の豚どもを私が支配してやるッ!」

海未「………」

絵里「そのためには圧倒的な力が必要であり」

絵里「そのためにはあなた達のようなくだらない正義吐きは邪魔でしかない、弊害でしかない!」

海未「あなたはッ!お婆さまの信念を何も理解していません……!そんな事をあなたのお婆さまは………!」

絵里「しているわよ!」



252: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:09:05.62 ID:LeugVjA6.net

絵里「しているからこそよ……」

海未「………」

絵里「義で世界は救えない。それをお婆さまがその身を持って証明してくれたのだから」

海未「だからと言って!」

絵里「壊され燻んでしまった太陽の輝きはいつでも消せる」

海未「………」

絵里「だからまずは海未、あなたからよ」

絵里「曜!」

曜「はいはーい!」

曜がそう返事をすると絵里へ向けて一直線に水圧のレーザーが射出される。

そしてそのレーザーは絵里の身体に触れる直前にその身体から放出された極寒の冷気により凍結させられる。

絵里「『神牙氷(かきごおり)』」



253: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:12:36.87 ID:LeugVjA6.net

絵里の手に握られたそれはまるで全てを貫かんとする凍てつく槍。

絵里「神を貫く聖槍にしては不出来かもしれない。けれどあなたを貫くには十分すぎる代物だわ」

海未「………」

絵里「さようなら海未」

絵里はその凍てつく聖槍を海未に向かって投げつけた。





絵里「来世ではどうか幸せになってね」

そう呟く絵里の瞳にはうっすらと涙が浮かび上がっているようにも見えた。



254: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:16:39.87 ID:LeugVjA6.net

海未「………」

自分の心臓へ、それを貫く氷の槍が迫りくるう、そんな状況にも関わらず。

絵里と曜の一部始終を前にしても海未は黙していた。

しかし、ただ黙していたわけではない。

その心に秘められていた想いは自分の身を案ずるものではなければ、死を悟り自分の人生を悔いるものでもない。

海未がその心の内で考えていたのは最愛の幼馴染、高坂穂乃果についてである。

海未(穂乃果は今、絶望のどん底にいます。それも能力″チカラ″を手にしてからずっと。間接的であるとはいえ私の行動により、穂乃果をその様な状況に貶めてしまった……)

海未(だからこそッ!穂乃果がまた笑っていられる様に心に寄り添ってやらなければならないのです!私にはその使命がある!)



255: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:21:10.18 ID:LeugVjA6.net

海未(天真爛漫で誰に対しても明るい太陽の様な穂乃果の笑顔。それを絶やしてはならないのです!)

海未「………」

海未(しかし、その押し付けが穂乃果の心の重荷になってしまっていたのでしょうか……それを強いていたのは私達のエゴだったのではないのでしょうか……本当は…穂乃果は……)

海未(いいえ。それを私が決めつけてしまう事こそが1番のエゴ)

海未「それを決めるのは私じゃありません」

だから私は穂乃果の心にこう書き込んでやるのです。

″ファイトだよ″

と。



256: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:26:33.15 ID:LeugVjA6.net

穂乃果(ファイトだよっ!)

瞬間穂乃果の心に″ファイトだよ″の言葉が木霊する。

穂乃果「……はっ!」

それは今までの脅迫じみた命令などではなく、海未の誠の心から出た慈愛に溢れる一言。

穂乃果「海未ちゃん……」

それが理解できないほど穂乃果の心は腐りきっていなかった。

振り向いたその先では死が迫っている状況にも関わらず、自分の命を捨ててまで穂乃果へと暖かい笑みを向ける海未の姿があった。

海未(これは今までのあなたに対するほんの少しの贖罪とありったけの感謝を込めたスペシャルサービス。二度目はありませんよ)



257: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:29:52.18 ID:LeugVjA6.net

穂乃果「穂乃果バカだ……こんなにも自分を想ってくれる人がいたのに穂乃果は………」

穂乃果「いや、後悔はあとだっ!今は海未ちゃんを護らないと!」

そうしないと今以上に後悔してしまう。

考えるよりもまず行動する。それが高坂穂乃果という人間の理念である。

穂乃果(違ったんだ…!穂乃果の力はっ……!誰かを破壊するための力なんかじゃない!)

この行動が意味する事。それは今までの高坂穂乃果という人間像が、他人に押し付けられたエゴなどではなく、穂乃果自身の心から出たものであるという証明。

穂乃果「うおおおおおおおお!」

瞬間、穂乃果の身体を縛り付けていた氷の檻が砕け散る。

解放された穂乃果のその身体から放たれる輝きは。

今までの燻み、淀みきっていたそれとは違う。

かつての皆を照らす眩い太陽の様な輝きに包みこまれていた。



258: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:34:47.24 ID:LeugVjA6.net

絵里「なっ……!?」

曜「ありゃりゃ、復活しちゃったね~」

海未「穂乃果……!」

絵里「けど今更遅いわ!もう無駄よ!」

そう。絵里の放った凍てつく槍は海未の身体の寸出のとこまで来ていた。

しかし穂乃果にそんなことは関係ない。

曜「やぁっ!」

曜が穂乃果を目掛けて水圧のレーザーを放つも、そこに穂乃果の姿はなかった。

穂乃果(穂乃果の力は……!)

空間を破壊し瞬間移動。

一瞬にして海未の前へと立ち塞がる。

そして。

穂乃果「護るためにあったんだぁぁぁぁーーーー!」

穂乃果の右手に触れた氷の槍は砕け散る。

神を貫く聖槍を持ってしてもサンサンと煌めく太陽を貫く事は出来なかった。

砕かれた氷が穂乃果の輝きに当てられキラキラと輝いている。

その様はまるで自然が産んだ奇跡。幻想的な細氷、ダイアモンドダスト。



259: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:37:43.79 ID:LeugVjA6.net

穂乃果「海未ちゃん……」

穂乃果「ごめん!」

海未「いえ、謝るのはこちらの方です。理由はどうあれことりに能力″チカラ″を使ったことに変わりはありませんし…」

海未「それに穂乃果の心の闇に気付いてあげられなかった」

穂乃果「そんな事ない…穂乃果だって海未ちゃんやことりちゃんを……!」

海未「ふふふ。これでいいんですよ、穂乃果」

穂乃果「え?」

海未「喧嘩をしたら、ごめんなさい」

海未「今までもそうやって絆を深めてきたじゃないですか。これからも同じですよ」

穂乃果「……そうだねっ!」

穂乃果「この後二人でことりちゃんに謝りに行かないとね…酷いことしちゃったし……」

海未「えぇ。ことりならちゃんと話せば許してくれるはずです」

穂乃果「うん。穂乃果達に隠し事なんて最初から必要なかったんだよ」

神々の悪戯により一度は引き裂かれてしまった3人の絆。

しかしこの絆が完全に途切れる事はない。

これから先、いつまでも、いつまでも。

幼き日から築かれて来た絆は何度でも、何度でも紡がれてゆく。



260: 名無しで叶える物語 2021/01/27(水) 21:41:20.06 ID:LeugVjA6.net

──────────

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──


海未(素晴らしいですねぇ……幼馴染み)

海未(良いものですねぇ………幼馴染み)

海未(穂乃果、ことり。私は二人という幼馴染みを持てたことを光栄に思いますよ……)ニヤニヤ

穂乃果(うわぁ…海未ちゃんがこっち見てる……ほんっと授業中に何考えてんのさ………)

ことり(今日のンミチャアからは大丈夫な匂いがする!)

教室「何をしている高坂ァ」

穂乃果「何もしてませんよォ!?」

海未ちゃんの闘いはまだ続く。



277: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 20:42:57.66 ID:7Nyh0pDj.net

曜「あちゃ~完全に復活しちゃったねー!」

その言葉とは裏腹に曜の様子はどこか嬉しげに見えた。

絵里「ハァー……あなたのそういうところは考えものね……」

曜「なんでぇ?こっちの方が楽しいじゃん!」

絵里「ハァー……」

そんな様子の曜に絵里は頭を抱えていた。

穂乃果「絵里ちゃん達を何とかしなきゃだね」

海未「はい。曜は純粋に戦うのが好きと言った様子。絵里さえ何とか出来れば曜にそこまでの害はないはずです」



278: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 20:46:27.17 ID:7Nyh0pDj.net

海未「しかし今の絵里は……」

穂乃果「うん…まるでμ'sに入る前の頃の絵里ちゃんを見てるみたい……」

海未「あの状態の絵里には骨が折れますね」

穂乃果「穂乃果達が力になってあげられれば良いんだけど……」

絵里「ふふふ。ねぇ、海未」

海未「……はい?」

絵里「穂乃果との問題が解決してどこか吹っ切れた様子だけれど」

海未「………」

絵里「一つ忘れてないかしら?」



279: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 20:48:37.80 ID:7Nyh0pDj.net

曜「あぁ…またうんちくモード入った……」

海未「………」

絵里「忘れよう、忘れよう、と。必死に心の奥底にしまい込んだ疑問があったんじゃあなぁいの?」

今までの、煽りとも取れる絵里の高圧的な態度は心の余裕の現れではない。

それは恐れである。

二人に対する恐怖心の現れである。

海未「………」

絵里「ふふふ。なんで私があなたの正確な情報を″知って″いたんだと思う?」

それは単純に二人の能力者としての強さからくる物だけではない。

その昔、絵里が心の奥底にしまい込んでしまった憧れ、そして彼女本来の優しき心。

二人を見ているとその感情が表に出てきてしまうのではないか、という恐怖だ。



280: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 20:53:10.72 ID:7Nyh0pDj.net

海未「………」

穂乃果「海未ちゃん。今の絵里ちゃんの言葉に耳を貸しちゃだめだよ」

海未「……分かっています」

絵里「海未、一つ言っておくわ。あなたに変えられた″心″なんて一つもないわ」

故に絵里は卑怯者の真似をしてまで二人に襲い掛かったのだ。

しまい込んだ感情を心の奥底から掘り起こされないために。

海未「……言いたい事はそれだけですか?」

絵里「あなたのくだらない正義感だけじゃ何も変えられないし救えないのよ」

海未「今のあなたのくだらない御説なんてどうでも良いのですよ」

絵里「………」



281: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 20:56:48.94 ID:7Nyh0pDj.net

海未「私は私の信じる道を行く。ただそれだけです!」

海未の身体がランセルノプト放射光の淡い輝きに包まれる。

曜「おっ、やっと始まるみたいだね!」

絵里「無駄よ。あなたの能力についてなら全て″知って″いるわ」

海未「くっ…やはり対策済みでしたか……」

穂乃果「そりゃそうだ。海未ちゃんの能力者″チカラ″について教えてくれたのは絵里ちゃんなんだもん」

海未(まるで本当に心が凍りついてしまったかの様に冷たく閉ざされてしまっている……あなたは本当に誰にも寄り添わず孤独の道を歩もうとしているというのですか……?絵里………)



284: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 20:59:42.97 ID:7Nyh0pDj.net

穂乃果「海未ちゃん、考えてる暇はないよ。やるしかないんだ!」

海未「……ええ」

曜「絵里さんに気を取られすぎじゃない?」

そう口にする曜の身体が淡い輝きに包まれる。

輝きに包まれている曜の両腕からは大量の水が滲み出ていた。

海未「ッ!」

曜「はッ!」

曜がブン、ブンと両腕を振るうと滲み出ていた無数の水滴がまるで弾丸の様な速度で二人へと射出される。

そして。



285: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:02:17.62 ID:7Nyh0pDj.net

絵里「氷化 ″飛箆(ピノ)″」

絵里の身体から放たれる冷気により、射出されたその弾丸はより固さ、鋭利さを増していく。

穂乃果「はぁっ!」

穂乃果は自分へと向かってくる氷の弾丸を破壊する、が。

穂乃果「くぅ……」

その全てを破壊しきる事は敵わず無数の弾丸をその身に浴びる事となった。

穂乃果「まずい……」

弾丸が貫いた場所は冷気を帯び、じわじわと凍りついていた。



286: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:05:31.64 ID:7Nyh0pDj.net

絵里「氷の嵐はまだまだ続くわよ?」

曜「そいっ!」

またまた、曜が両腕を振るうと、その両腕から水の弾丸が射出される。

絵里「凍りつきなさい」

絵里がそれを凍結させより鋭利なものへと造り変える。

海未「そのようなもの。当たらない場所へと走り込めばいいだけですよ!」

海未は弾丸を回避すべく地を蹴り走り込もうとするが。

海未「ぐあぁぁぁ!」

先程の穂乃果との戦いで身体へと食い込んだ瓦礫片がより深くへと食い込み、地面へと膝を付く。

穂乃果「海未ちゃん!」

しかし、膝を付き動きを止めてしまった海未を弾丸達は待ってはくれない。

無数の弾丸が海未のその身へと迫る。



287: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:08:12.21 ID:7Nyh0pDj.net

海未「くっ……ここまで…ですか……」

穂乃果「うおおおおお!」

穂乃果がおもいきり地面を殴り付ける。

凄まじい程の破壊が起こり、瓦礫が、大地が巻き上がる。

その破壊の衝撃は海未の目の前まで伸びていき、その破壊によって巻き上げられた瓦礫や砂の塊が迫り来る弾丸から海未の身を護る。

穂乃果「諦めるのはまだ早いよッ!」

海未「穂乃果……」

穂乃果「おおおおおおおおお!」



288: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:11:23.66 ID:7Nyh0pDj.net

曜「いいねぇ!面白くなってきたよー!」

絵里「無駄な足掻きはやめたほうがいいわよ」

意気込む穂乃果に氷の弾丸が飛来する。

穂乃果「痛くも痒くもないよ、こんなもの!」

穂乃果はその身に弾丸を受けているにも関わらず平然と立ち尽くしている。

絵里「はぁ!?」

穂乃果は弾丸を防ぐのを辞めたのだ。

曜「最っ高だよ!」

穂乃果「こんな痛み。海未ちゃんの受けた心の傷に比べれば痛くも痒くもないんだあああああああ!」

穂乃果はその身に弾丸を食らいながらも、空間を破壊し瞬間移動。



289: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:13:00.18 ID:7Nyh0pDj.net

絵里「なっ!?」

穂乃果は一瞬にして絵里の目の前へと現れ、絵里のその身体へと。

触れる。

絵里「ぐああああああああああああああ!」

絵里の絶叫が響き渡る。

穂乃果「ハァ…ハァ…」

穂乃果身体はその身に受けた弾丸の痛みに耐えながら震えている。

海未「やったのですか……?」



291: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:17:00.20 ID:7Nyh0pDj.net

絵里「なーんてね」

穂乃果「なっ!」

穂乃果は焦って絵里のいる方へと目を向ける。

絵里の身体はボロボロと崩れ落ちている。

その身を凍てつく氷の塊へと姿を変えながら。

絵里「それは氷で造った偽物の私。氷の偶像」

絵里「氷像(ヒョウドル)」

氷像は穂乃果の右手によりバラバラと破壊される。

絵里「本物の私はこっちよ」

そう絵里が言い放った瞬間。穂乃果の背後、つまり先程までは何も無かったはずの空間から突如として絵里が出現する。

パキパキと何かを砕く音と共に。



292: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:20:48.91 ID:7Nyh0pDj.net

穂乃果「ッ!?」

突如として現れた、否。

絵里はずっとそこにいたのだ。

透明な氷面鏡の壁にその身を囲まれながら。

その姿が見えなかったのはその氷に降り注ぐ太陽の光が乱反射し、屈折した事によりその身を捻じ曲げていたからである。

絵里「さっきは身体の表面しか凍らせる事が出来なかったけれど」

穂乃果「……!」

穂乃果は身震いする。

絵里の氷の様に、冷たい視線、言葉。そして、まるでこの世の物とは思えない程に冷えきったその身体に恐怖したのだ。



293: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:24:10.39 ID:7Nyh0pDj.net

絵里「今度は身体の芯の底まで凍り付かせてあげるわ」

絵里「氷化 ″大気寒冷(ビエネッタ)″」

絵里の手が穂乃果の身体へと触れ、その身へと極寒の冷気を流し込まんとしたその瞬間。

絵里「ガッ!」

絵里の身体にまるで背後から鈍器のような物で殴られたかの様な衝撃が走る。

海未「″ラブアローシュート″」

穂乃果「海未ちゃん……!」

海未「なんて名付けたりしてみましょうか」

絵里「海未ぃ……!」



294: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:27:08.90 ID:7Nyh0pDj.net

絵里は鈍器で殴られたのではない。

穂乃果の破壊により産まれた瓦礫片を海未が蹴り上げ命中させたのだ。

穂乃果「ほっ!」

絵里がその衝撃でよろめいている隙に穂乃果は空間を破壊して絵里から距離を取る、が。

曜「また私を忘れてるなー?」

穂乃果の身体が後方へと移動した瞬間、その目前へと曜が放った水圧のレーザーが迫っていた。

穂乃果「数がなければ防ぐのは簡単だよ」

穂乃果が右手をレーザーへと当てがい散乱させる、が。



296: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:30:44.90 ID:7Nyh0pDj.net

穂乃果「なっ!?」

全く同じ大きさ、同じ速度の水圧のレーザーが、全く同じ角度から撃ち込まれていた。

穂乃果が散乱させた直前のレーザーに隠れるようにして。

穂乃果「くぁっ……!」

そのレーザーが穂乃果の身体を貫く。

海未「穂乃果ぁ……!」

穂乃果「…大丈夫……なんとか急所は外したよ……」

曜「おお~!これでも倒れないんだ。それでこそ戦いがいがあるってものだよー!」

絵里「チッ」

絵里は穂乃果を仕留め損ねた事、そしてズキズキとくる身体の痛みにより怒りを露わにしていた。

楽観的過ぎる曜に対してもほんのちょっぴりだけイラついていたのかもしれない。

そこへ。



297: 名無しで叶える物語 2021/02/04(木) 21:34:13.69 ID:7Nyh0pDj.net

???「海未さんは、能力は強力だけど。それさえ封じちゃえば、ただのちょっと強い一般人」

穂乃果「……え?」

???「そして、身体に傷さえ負わせてしまえば。得意の武術も意味を成さない」

海未「そんな…なぜ……」

???「穂乃果さんは触れられたら負け。でも、遠距離から数を使って攻撃すれば、それを防ぐ手立てはない」

絵里「やっと来たわね。遅いじゃない」

???「うん、全部通用してる」

絵里「璃奈」

璃奈「私の″思った″通り」

曜「あーあ、もう来ちゃったか。こっちの数が増えちゃったら楽しさ半減だなー」

海未「嘘です……嘘だと言ってくださいよぉぉ!」

璃奈「………」

海未「璃奈ぁぁぁ!」

璃奈「………」

そこへ現れたのは天王寺璃奈だった。

それも既に絵里達へと肩入れをしているかのような風貌で。



315: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 19:39:07.55 ID:tQPkPzRv.net

穂乃果(おかしい……穂乃果は絵里ちゃんに言われて確かに璃奈ちゃんの能力″チカラ″をこの手で破壊した。なのになんで?)

海未「璃奈……」

璃奈「こんにちは。海未さん」

海未「………たのですか?」

璃奈「………?」

海未「あの時ッ!みんなで楽しくパーティーをしたじゃないですか!あの時の璃奈の気持ちは!嘘だったというのですかぁぁーー!」

璃奈「嘘じゃない」

海未「では……なぜ………」



316: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 19:41:41.84 ID:tQPkPzRv.net

璃奈「この前も言ったでしょ?」

海未「………え?」

璃奈「私は知りたい。この能力″チカラ″について。それを取り巻く、環境について」

璃奈「全てを知りたい。だから海未さんに接触した」

海未「そんな……」

璃奈「それだけ」

海未「うぅぅぅ………」

海未は崩れ落ちた。それは信じた者に裏切られたからなのか。それとも、穂乃果とのゴタゴタから続く、自分の無力さを嘆いてのものなのか。その理由は海未のみぞ知る。



317: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 19:45:27.28 ID:tQPkPzRv.net

絵里「ふふふふ。だーから言ったでしょう?あなたに変えられる″心″なんてものは一つもないのよ!」

海未「私は……」

璃奈(悲しそうに身を震わせる海未さんも素敵……)

絵里「そこでくたばっているにこも。内心どう思っていたのか分かったもんじゃないわねぇ!」

穂乃果「違うッ!にこちゃんは……!」

絵里「とんだ道化もいたものね。おめでたいってのはまさにこの事を言うのかしら?」

穂乃果「にこちゃんの海未ちゃんに対する気持ちは本物だったッ!にこちゃんは本気で海未ちゃんを護ろうとしていたんだッ!」

海未「………」

穂乃果「にこちゃんと本気でぶつかり合った穂乃果だからこそ分かるんだッ!」

海未「もう良いのですよほの」

???「騙されちゃダメ!」



318: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 19:48:34.37 ID:tQPkPzRv.net

穂乃果「……え?」

絵里「チッ」

そこに現れたのはまたしても虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の天王寺璃奈だった。

璃奈「はぁ…はぁ……なんとか…間に合った………」

璃奈?「あはっ。もう来ちゃったんですかぁ?」

曜「またまた増員が!?いいよいいよ~!戦いはこうでなくっちゃ!」

海未「り、璃奈……?」

璃奈「うん、そうだよ。遅くなってごめんね?」



319: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 19:50:40.25 ID:tQPkPzRv.net

穂乃果「璃奈ちゃんが二人……?」

絵里「穂乃果。あなた璃奈を始末しそこねていたのね」

穂乃果「ぅえっ!?ちが…私はちゃんと……」

璃奈「………」

当の璃奈がじーっと穂乃果を見つめている。

穂乃果「うっ…その説は大変ご迷惑をおかけしました……」

璃奈「………」

璃奈が今度はチラッと海未の方に目をやる。

海未「……?」



320: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 19:52:55.29 ID:tQPkPzRv.net

穂乃果「ご、ごめんなさい……」

璃奈「海未さんが許すなら、私も許す。その代わりパーティーに付き合って」

穂乃果「ぱ、ぱーてぃー?」

璃奈「うん。それが、私達のルールだから」

穂乃果「それなら…喜んで!」

海未「穂乃果」

穂乃果「ひぃっ!?」

海未「あなたには後で深く話を聞く必要があるようですね」

穂乃果「お、お手柔らかに…お願いします……」



321: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 19:56:53.73 ID:tQPkPzRv.net

絵里「どうして私はいつもこうなのよ……!」

絵里は自分の思い通りに事が運ばない事に対して苛つきを隠せないのか。ギリギリと歯軋りを立てている。

その横で曜はキラキラと目を輝かせていた。

璃奈?「さすがはりな子っ!″本家″は一味違うなぁ!」

璃奈「……ありがとう」

???「でももう少しだけ待ってほしかったなぁ~!」

その瞬間、璃奈の姿をしていた何者かの姿が変容を始める。

かすみ「かすみんのびっくりどっきり大作戦が失敗しちゃったじゃんかぁ!どう責任取ってくれるのりな子ぉ!」

虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の中須かすみへと。



322: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:00:29.25 ID:tQPkPzRv.net

海未「かすみ……?」

穂乃果「ぅぇえ!?」

璃奈「………」

穂乃果「えーっと…璃奈ちゃんが二人いて…でもその璃奈ちゃんは璃奈ちゃんじゃなくて…かすみちゃんで……えぇと…えーっと……」

海未「穂乃果、無い頭を使うのはやめなさい」

穂乃果「さらっと酷いこと言うねっ!?」

先程までしおらしくなってしまっていた海未だが、突如いつものハキハキとした様子に戻っている。それには理由がある。

海未は″本物″の璃奈の心を読み理解したのだ。今自分達が置かれている状況を。

それと、不甲斐ない自分を見せてしまった恥ずかしさからか、自分を少しでも大きく見せようとしているのかもしれない。



323: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:03:14.74 ID:tQPkPzRv.net

かすみ「もうっ!りな子ったらせっかちなんだからぁ!もうちょっと待っててくれても良かったのにぃ~!かすみんぷんぷんだよぉ!」

璃奈「……怒るよ?」

かすみ?「……やっぱり璃奈さんは騙せないね」

かすみだとおぼしき女の姿は再び変容を始める。

しずく「さすがは璃奈さんってところですね」

璃奈やかすみと同じく、スクールアイドル同好会に所属する桜坂しずくへと。

穂乃果「えぇー!?璃奈ちゃんはかすみちゃんで…かすみちゃんはしずくちゃんで……でも璃奈ちゃんはいて………えぇと、あぁと……!」

海未「穂乃果…あなた一度黙りなさい」



324: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:06:01.27 ID:tQPkPzRv.net

璃奈「………」

しずく「ふふふ」

絵里「しずく、あなた何か知っているの?」

しずく「何か、とは…….?」

絵里「璃奈についてよ」

しずく「あぁ。璃奈さんの能力は全知。なので壊された能力″チカラ″を治す術を知っていてもおかしくはないかなぁ、と思ったんです」

絵里「……なるほど。だから今は能力″チカラ″を取り戻してるってわけね」

しずく「そうだと思います。厄介な能力″チカラ″ですね」



325: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:10:05.69 ID:tQPkPzRv.net

絵里(……という事は穂乃果は璃奈自身を破壊しにかかったのではなく、能力″チカラ″だけを破壊した、と)

絵里「チッ。使えないわね」

穂乃果「ひぃ!?」

絵里は自分の思うような働きをしていなかった穂乃果をギロリと睨みつける。

絵里「まぁ、いいわ。どうせ向こうの璃奈は戦闘に関してはただの役立たず。こっちが有利な事に変わりはないもの」

璃奈「しずくちゃん。さっきの、二人の会話を聞いて確信した」

しずく「……?」

璃奈「完全に、成りきれるわけじゃないんだね」

しずく「……はい?」

璃奈「仮に、壊された能力″チカラ″を治す術を知れたとしても。私は、ただそれを知ってるだけ。私自身に、治す術はない」

しずく「………」

そして、璃奈の身体が蒼白く輝く。



326: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:13:42.68 ID:tQPkPzRv.net

璃奈「うん、やっぱり。」

桜坂しずくは自分以外の人間に成りきる事が出来る能力。顔、声、身体。

そしてそれは側だけを取り繕うものではない。

成りきったその対象の学力、運動能力といった全ての要素をトレースする事が出来るのだ。

それは能力者に与えられた特殊能力においても例外はない。

しかし、誰にだってなりきれる訳でもない。桜坂しずく本人が成りきる対象について知っていなければならいのだ。

それに加え、より深く知り尽くしていなければその者の最大の力を引き出す事は出来ない。

しずくはただ知ったかぶりの知識で璃奈にの能力″チカラ″を使っていただけにすぎない。

それを璃奈は自らの能力を使い読み解いて見せた。



327: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:16:40.90 ID:tQPkPzRv.net

しずく「面白い考察だとは思うよ、璃奈さん。でm」

璃奈「考察じゃない、これが答え」

しずく「………」

璃奈「それが私の、能力″チカラ″だから」

しずく「でも璃奈さんは能力″チカラ″を取り戻してるよね?それだとその仮説は通用しないのでは?」

璃奈「確かに、壊された私の能力″チカラ″は、既に治ってる」

璃奈「でも、それは自分の能力″チカラ″で治したわけじゃない」

しずく「……じゃあどうやって」

璃奈「分からない?」



328: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:20:10.25 ID:tQPkPzRv.net

しずく「………」

璃奈「私に姿を変えて、調べてみたら?」

しずく「………」

璃奈「そしたら分かるかもよ?」

しずく「……別に私は璃奈さんが能力″チカラ″を取り戻した方法を知りたいわけじゃない」

璃奈「………」

しずく「私達を煽って何かを引出したいのかも知れないけど。私はさんn」

???「分からないのならその答えは彼方ちゃんが教えてしんぜよう~」

絵里「彼方まで……!?あぁ…もう!」

自分が立てた計画がどんどん狂っていく。そんな状況に絵里は苛立ちを隠せないでいる。

それも途中までは上手く事が運んでいたので尚更である。



329: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:22:46.52 ID:tQPkPzRv.net

海未「彼方!」

彼方「やぁやぁ海未ちゃん」

彼方「海未ちゃんのピンチに彼方ちゃん参上だよ~」

璃奈「彼方さん、遅いよ?」

彼方「ごめんよ~彼方ちゃんこの辺の地理はにっちもさっちもどうにもブルドックなんだ~」

彼方「それに璃奈ちゃんは変な道使って一人だけ先に行っちゃうし」

璃奈「能力″チカラ″を使って、最短ルートを行ったまで」

彼方「も~彼方ちゃんを置いてっちゃダメじゃな~い」

璃奈「ごめんなさい。焦っちゃってて、つい」

彼方「でも璃奈ちゃんならなんでも許しちゃうよ~」

璃奈「彼方さん、ありがとう」



330: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:27:16.02 ID:tQPkPzRv.net

璃奈「ところで、しずくちゃん」

しずく「なに?」

璃奈「自分だけの力じゃ、どうしようもない時」

しずく「………」

璃奈「そんな時は、どうすればいいと思う?」

しずく「……特訓する」

彼方(しずくちゃんらしい返答だな…)

璃奈「違うよ。仲間を頼れ、だよ」

彼方「そういう事さ」

しずく「……眠る事しか脳のない能力″チカラ″に一体何が出来るって言うんですか」

彼方「確かに彼方ちゃんの能力″チカラ″は眠るだけしかできないのかもしれないね~。でもね」

彼方「眠った私は全能なんだよ」



331: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:30:02.27 ID:tQPkPzRv.net

しずく「………」

璃奈「彼方さんの、夢の中で治してもらった」

彼方「彼方ちゃんと璃奈ちゃんは無敵の全知全能コンビなんだぜ」

海未「全知…全能……?」

海未(私はどんでもない二人を味方につけていたのでは……)

彼方「にしても、演じる相手の下調べを怠るなんてしずくちゃんらしくないね」

璃奈「うん。ほんとに、らしくない」

しずく「……何が言いたいんですか?」

絵里(妙ね、璃奈と彼方の。この人を煽っているかの様な態度。何か、引っかかるわ……)



332: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:33:25.95 ID:tQPkPzRv.net

彼方「しずくちゃんの演劇に対する情熱はその程度だったのかな?」

しずく「……….はい?」

璃奈「最初から、演劇に対する情熱なんか、無かったのかも」

しずく「……今なんて言いましたか……?」

絵里(まずい……!)

璃奈「………」

絵里「しずく!落ち着きなさいッ!」

彼方「しずくちゃんの演劇に対する情熱はたいした事なかったんだね、って。そう言ったんだよ」

しずく「……しません」

絵里「しずくッ!」



333: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:37:20.73 ID:tQPkPzRv.net

しずく「例え誰であろうとも。私の演じる事に対する熱意を!情熱を!馬鹿にする事だけは絶対に許しません!」

普段のしずくからは珍しく声をあらげ、そう叫んだその瞬間。しずくの身体がランセルノプト放射光の淡い輝きに包まれる。

絵里「二人の言葉を真に受けてはダメよ!」

しずく「イリュージョン!」

しずくがそう言うと、みるみる内に高坂穂乃果へとその姿を変えていく、その時。

曜「やぁっ!」

水で滲んだ右腕を手刀の動作の様に振るう曜。

その腕からはまるで飛ぶ斬撃かの様に鋭利な水圧が彼方を目掛けて射出される。



334: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:43:53.40 ID:tQPkPzRv.net

絵里「ナイスよ!」

穂乃果「はっ!」

穂乃果が何もない空間を殴り付ける、すると。

海未「空気に…いや大気に……亀裂が!?」

大気に亀裂が入り空間が歪む。その歪みは間接的に曜の放った水の斬撃から彼方の身を護る事になる。

曜の放った水の斬撃はその歪みにより本来飛ぶはずだった位置から横に逸れて着弾した。

穂乃果「邪魔はさせないよ」

曜「やるなー穂乃果ちゃーん!」



335: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:46:34.73 ID:tQPkPzRv.net

穂乃果(しずく)「覚悟してください!璃奈さん、彼方さんっ!」

しずくが姿を変えた穂乃果が空間を破壊し瞬間移動。一瞬にして彼方の目の前へ迫って見せる。

彼方「ふっふっふ」

しかし、既に彼方の身体は輝きに包まれていた。

しずく「あぅ……」

瞬間移動をした先でしずくの足はフラフラと覚束ない。

誘い出されてしまったのだ。彼方が創りだす眠りの、夢の世界へ、と。



336: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:48:12.20 ID:tQPkPzRv.net

彼方「戦いの最中に逆上したらダメじゃな~い。常にどっしり構えてないと」

璃奈「私達が、ほんとにそんな事思うはずない」

しずく「うぅ……」

彼方「でもね、しずくちゃんの本音を聞けたような気がして。彼方ちゃんほんのちょっぴり嬉しかったよ」

地面に倒れ伏せようとしたしずくを彼方が抱きかかえ。

彼方「彼方ちゃんは可愛い後輩を可愛がってくるから……」

璃奈「私も、行くっ!」

璃奈は急いで二人の元へと駆けつける。

彼方「後は…任せた……よ………むにゃむにゃ」

三人は眠りの世界へと誘われていった。



337: 名無しで叶える物語 2021/02/12(金) 20:50:59.12 ID:tQPkPzRv.net

絵里「クソッ!」

海未「さぁ、これで振り出しに戻りましたよ、絵里!」

穂乃果「小細工はもう無しっ!」

曜「結局こうなるのかー」

絵里「………」

曜「でもこれでやっと二人と全力で戦える!」

絵里(腹をくくるしか、ないわね)

海未「お婆さまの死で止まってしまったあなたの時間をッ!」

海未「私達が再び動き出させてあげますよっ!」



355: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 11:56:41.45 ID:Q+NiEQR6.net

絵里「言っておくけど。色々裏で手を回していたのも、策を練ってあなた達を出し抜こうとしたのも」

絵里「どれも全部、あなた達との直接対決から逃げたいからやった事じゃないのよ」

海未「………」

絵里「あなた達を殺ろうと思えばいつでも殺れた。それも苦労をする事なくね。でもそうしなかったのは」

穂乃果「………」

絵里「まだ私の中にあなた達への慈悲の心があったからなのかもしれないわ。でも、もうそれはない」

そう二人に言い捨てた後、絵里は曜に目配せを送る。

そして絵里と曜が何かをしようとした、その瞬間。



356: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 11:59:45.62 ID:Q+NiEQR6.net

海未「な、なななななにが起こっているのですかぁーー!?」

ベキベキと物凄い破壊音を立てながら大地に亀裂が入る。

穂乃果「さっきは二人を同時に相手したからいけなかったんだ」

絵里「………」

穂乃果が触れた地面に亀裂が入り、その亀裂は一直線にどこまでも、どこまでも伸びて行く。

穂乃果「二人の相性が良いって言うんなら。分断しちゃえばいいんだ!」

この破壊は大地に亀裂を入れるなんて生温いものではない。

絵里と曜、海未と穂乃果。その二人の間を境目にして、大地が。世界が真っ二つに分断される。



357: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:04:49.02 ID:Q+NiEQR6.net

曜「なんて破壊力…これが穂乃果ちゃんのチカラ……!」

その間にあるのはまるで断崖。そしてどこまでも続く絶壁。

穂乃果「海未ちゃん」

海未「本当に無茶をしますね、あなたは」

穂乃果「えへへ」

海未「でも穂乃果らしい。絵里の事は任せてください」

穂乃果「やっぱ分かってるね」

海未「何年あなたの幼馴染をやっていると思っているのですか?」

穂乃果「ふふふ。曜ちゃんは任せて」

海未「そのつもりです」

そう会話を終えた二人は合わせていた目を離す。

そして見据えるは絵里と曜。今、二人の最後の戦いが。否、最初の戦いが始まる。



358: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:07:01.89 ID:Q+NiEQR6.net

曜「ほっ!」

先陣を切ったのは曜だった。

穂乃果「くっ!」

先程の絵里との合わせ技で使った水の弾丸。凍りついてこそいないものの無数の水の弾丸が穂乃果の身体へ浴びせられていく。

穂乃果「またそれ?」

穂乃果はそう言いながら急所を護るようにして飛んでくる弾丸を破壊していくが、全てを捌き切れる訳では無い。

穂乃果「うぅ…」

先程までは絵里が冷気で凍結させられる様に、数と威力を調整して放っていた。絵里による凍結があって初めて完成されるように調整していた。



359: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:10:14.85 ID:Q+NiEQR6.net

曜「ほらほらぁ!」

しかし今はその必要はない。

自分の放った弾丸だけで完結させれば良い。

絵里が凍結させた時よりは一発一発の鋭さも、重みも無いかもしれないが、速さと数はその比ではない。

穂乃果「戦いを楽しむと言ってる割には随分つまらない戦い方をするね」

そう強がっている穂乃果だが。多方多量での攻めに弱い穂乃果に為す術はない。

曜「今の穂乃果ちゃんにはこれで十分だよ。既にボロボロの死にかけだしね」

穂乃果(またくらいながら捨て身の特攻をする?これ以上傷が増えない内に決着をつければ!)



360: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:12:55.71 ID:Q+NiEQR6.net

曜「さっきの瞬間移動をするのは辞めたほうがいいよ」

穂乃果「されたらまずいってだけじゃなくて?」

曜「そう思うなら試してみれば?」

余裕な表情の曜。その表情が物語っているように穂乃果は瞬間移動を出来ないでいる。

穂乃果「うぅ…」

無数に穂乃果へと降り注ぐ弾丸は全て同じ大きさというわけではなく、大小様々。

穂乃果の身体の急所へと迫る弾丸は大きな物になっている。少しでも身を護る手を止めれば穂乃果の肉体は一溜りもない。

だが、何もしなくとも穂乃果の身体はじわじわと削られていく。



361: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:15:23.36 ID:Q+NiEQR6.net

穂乃果「ほんっとつまらないね。曜ちゃんにはがっかりだよ」

曜「………」

穂乃果「穂乃果、もっと楽しい戦いが出来ると思ってたのにな~」

曜「………」

穂乃果「あーあ、どうせなら絵里ちゃんと戦う事にすれば良かったな~」

曜「分かりやすい挑発だね~」

穂乃果(流石にこれじゃ苦しいかな……)

曜「いいよ、その挑発乗ってあげる!」

穂乃果へ向けて雨の様に降っていた弾丸が止まる、そして曜が身体の前で穂乃果へ向けて手を構えると。 

穂乃果「なっ!」

曜の身体からおぞましいほどの水の奔流が渦巻く。

まるで山頂から滝壺へと流れて落ちる大滝かのように止めどなく水が溢れ出る。



362: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:18:48.43 ID:Q+NiEQR6.net

曜「はああああああーーーー!」

上下左右、人三人くらいなら優に飲み込んでしまいそうな圧倒的な物量の水の奔流が、すまじい威力、すさまじい速さで穂乃果を襲う。

穂乃果「まさか、こんな簡単に釣れるとは思わなかったよ。曜ちゃんが単純脳細胞で助かった!」

穂乃果の身体がランセルノプト放射光の蒼白い淡い輝きに包まれる。

穂乃果へ向けて放たれる水の奔流、それに穂乃果の右手が触れ。

散乱。

穂乃果「曜ちゃん。あなたの敗因は下らない挑発に乗り、自分のチカラを過信した事だよ!」

穂乃果が曜へ向けて能力″チカラ″を使おうとしたその瞬間。

穂乃果「……ん?」



363: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:20:32.96 ID:Q+NiEQR6.net

弾けた大量の水が穂乃果の身体へと纏わりついて行く。

穂乃果「えっ……!」

曜「ふっふっふ。くだらない挑発に乗って自分の能力″チカラ″を過信しすぎたのは穂乃果ちゃんの方なんじゃなーい?」

穂乃果「あっ…かっ……」

穂乃果の能力により爆ぜた大量の水は穂乃果のいる地点へと集まり始める。

そして球体となりその身体を包み込む。

穂乃果「ごぼぁ……」

穂乃果は何もない地上で溺れてしまったのだ。

曜「一丁上がり、っと。ま…こんなもんかな。途中邪魔が入ったりはしたけど十分楽しめたよ」

曜「心残りがあるとすればもっと万全な状態の穂乃果ちゃんと戦ってみたかったってところかな」



364: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:25:36.59 ID:Q+NiEQR6.net

その時、絵里の目が光る。

絵里「でかしたわ、曜!」

海未との戦いを放り投げ、絵里が両者を分つ断崖絶壁へと滑り込む。

凍らせた床を利用し物凄い速度で。

曜「ん、んん~?」

不思議そうにその絵里へと目を向ける曜だったがあるものに気付く。

穂乃果が作り出した断崖へ氷の橋がかかっている。その橋を渡り絶壁を飛び込え水に囲われた穂乃果を凍り付かせようとしているのだ。

高坂穂乃果に完全なるトドメを。



365: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:28:14.23 ID:Q+NiEQR6.net

しかし、それをみすみす取り逃がす海未では無い。

滑り込む絵里の目前には既に海未の足が迫り来るっていた。

絵里「なっ!」

戦慄の右ハイキック。

海未「せやっ!」

絵里「ごばぁぁぁぁ!」

まるで空間を真っ二つに切り裂いているかのような鋭い上段回し蹴りが絵里の顔面を捉える。

絵里「いったああああ!お婆さまにもぶたれた事ないのに!」

その勢いで絵里の身体は後方へと吹き飛び、硬い氷の床へと身体を打ち付ける。

海未「氷を滑れば私よりも早く動けると思いましたか?」

絵里「………」



366: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:31:35.93 ID:Q+NiEQR6.net

海未「私が幼き日から鍛え上げ得意としてきた究極の移動法、超神速の″縮地″」

海未「並の人間が超えられるほどヤワな代物じゃありませんよ」

曜「あはははは!何やってんの絵里さん!」

一仕事終えた余裕からだろうか、その状況を見て曜はゲラゲラと笑い転げている。

曜「あーおかしい」

海未「絵里、あなたの相手は私ですよ」

海未は振り返らない。信じているからだ。穂乃果ならやり遂げてくれる、と。そう信じている。

その瞬間、穂乃果を覆っている水の球体が破裂する。

そして、曜の目の前へと瞬間移動。

曜「えっ!?」



367: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:34:24.30 ID:Q+NiEQR6.net

穂乃果「穂乃果の右手には壊せないものなんてないんだよ!」

穂乃果の右手が曜の身体へと、触れる。

穂乃果「もう昔みたいに身体と、能力を壊すなんて真似はしないよ。でもちょっとの間」

曜(あちゃー。ちょっと油断したなー)

穂乃果「眠っててね」

そう言いった穂乃果の身体が輝きに包まれる。

曜「はぁ…これだけはやりたくなかったんだけどなぁ」

穂乃果「へっ?」

その瞬間、曜の身体が爆発する。



368: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:36:06.57 ID:Q+NiEQR6.net

否、それは爆発したのでは無い。まるで曜の身体を中心に物凄い爆発が起きた様に見えたその衝撃の正体は。

穂乃果「がはぁっ……」

曜の身体に存在する無数の穴という穴から大量の水が物凄い圧力で放出されたのだ。

その凄まじい威力と物量故に曜の身体が爆発したかの様に見えたのである。

その大放出をゼロ距離で受けた穂乃果は一溜りもない。

穂乃果の身体は思いきり吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられる。

穂乃果「ごめ……海…未ちゃ………」

曜「肉を切らせて骨を断つー、ってね」



369: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:39:13.81 ID:Q+NiEQR6.net

だがこれは曜にとっても最後の奥の手。

そんな無茶な大放出を行った曜の身体も無事であるはずはない。

曜「ははは、これじゃ骨を絶たせて骨を断つ…だね………」

海未「穂乃果ぁぁーーー!!」

曜「後は…頼んだよ……絵里ちゃん………」

絵里「曜…あなたって人は最後の最後まで……」

絵里(でも、よくやってくれたわ。これだけの水があれば)

辺り一帯は曜の身体から放出された大量の水により水気で満ちている。まるで学校全体が水没してしまったかの様に。



370: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:42:18.97 ID:Q+NiEQR6.net

そして、絵里の身体から大量の冷気が溢れ出す。

海未「なっ!?」

絵里の身体から漏れ出る極冬の冷気が曜の放出した水と合わさり、目にも移らぬ速度で世界を凍結していく。

絵里「私以外の動くモノは全て″認められないわ″」

絵里「ここは私が創り出した、私のための、私だけの世界」

絵里「絵里治帝国(えりちキングダム)」

静かだ。

まるで時間でも止められてしまったかのように静かだ。

絵里の冷気に当てられた部分は全てが止まってしまっているかの様に見えた。

白一辺倒。穢れ一つとない白銀の世界。自分以外のものが活動をする事は許さない、と。

そう言わんばかりに全てが静止させられてしまっている。

そんな世界に。



371: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:44:50.23 ID:Q+NiEQR6.net

絵里「名前をつけようか。″Snow halation″」

絵里「ふふふ、なーんてね」

そんな絶望的な状況を見せられているにも関わらず海未が歩みを止める事は決してない。

恐怖に。否、寒さに震える身体に鞭を打つ。

海未「うおおおおおおおお!」

そう雄叫びを上げ、海未は絵里へ向かって一直線に走り出す。

海未(いくら絵里の冷気が凄まじくとも!全てを凍りつかせるまでには時間差″タイムラグ″が生じるはずです!)

海未「絵里ィィィイイイ!」



372: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:48:47.57 ID:Q+NiEQR6.net

絵里「……ッ」ブルッ

絵里(この状況に置かれても尚これほどまでのプレッシャー…なんて強い精神力の持ち主なの!?)

海未の気迫に押されて絵里の身体がブルリと震え上がる。

海未「あなたが全てを凍りつかせる前に倒し切ってみせますよぉぉーーー!」

絵里「寝言は寝てから言いなさい海未ッ!今の私のチカラは一人間が扱えるレベルを遥かに凌駕しているわ!」

絵里「これはもう自然災害。世界が私の冷気に飲み込まれるのは自然の摂理なのよぉぉ!」

絵里の言う通り急速に世界が静止へと近づいている。全てを凍てつかせるのも時間の問題だ。

しかし。

海未「そこです!」

それでも海未はまだ諦めてはいなかった。

海未の狙いは己の肉体へと極冬の冷気が降り注ぐその瞬間に地面を蹴り上げ、飛び上がりその勢いで絵里の元へ辿り着くと言うものだが。



373: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:51:33.86 ID:Q+NiEQR6.net

海未「ぐあああああっ!」

飛び上がるために地面を蹴り付けたその瞬間。

先の穂乃果との戦いで身体に食い込んだ瓦礫がさらに奥へ奥へと食い込んで行く。

海未「くっ……」

海未の足はもつれ、身体は勢いを失う。

極冬の冷気に包まれた凍てつく大地へとその身が失墜しようとしている。

海未自身も氷の大地の一部分へと成り下がろうとしているのだ。

絵里「あっはははは!私の勝ちよ海未ィ!あんたの豪運もこれまでのようねぇ!」

今の海未の身体は走り込んでいた先程とは違い止まってしまっている。

その運動をやめた海未の身体を極冬の冷気が蝕んで行く。



374: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:54:13.85 ID:Q+NiEQR6.net


海未「うあああああああああああああ!」

曜から浴びた海未の身体に付着する大量の水分が徐々に徐々に凍りついて行く。

絵里「穂乃果との戦いで負傷していなければあるいは私に膝を着かせる事が出来たかもしれないわ」

海未「ううううううううう!」

絵里「でも、全て私の計画通りなのよ海未ィィィイイイイ!」

絵里(勝った……!)




375: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 12:57:39.71 ID:Q+NiEQR6.net


しかし、海未の身体が地氷の大地に取り込まれる事も無ければ凍りつく事もない。

突如、背後から吹き荒れる謎の突風により海未の身体は押し上げられた。

絵里「なにィィィイイイ!」

にこ「にこを忘れんじゃないわよ、ポンコツ」

にこはずっと。ただ地面に這いつくばって、くたばっていたのではない。

眠っていたのだ。自分の出番を今か今かと待ちわびながら。

破壊された肉体と能力″チカラ″を修復されながら。

眠っていたのだ。




376: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:00:32.31 ID:Q+NiEQR6.net

海未(あなたは本当に頼りになりますね、にこ)

にこの手から放たれたその突風が海未を絵里へ急接近させる。

そしてその風の圧力が、海未の身体に纏まりつく水気を、冷気を!

全て吹き飛ばしていく。

海未「うおおおおおおおおおお!」

にこ(それで良いのよ、海未。あんたにしみったれたツラなんて似合わないわ)

絵里「そんな…私はッ!私はあああああああああああああああああ!」

バチン。と鋭い音が辺り一体へと響き渡る。

絵里「ぐああああああああああああ!」



377: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:02:28.84 ID:Q+NiEQR6.net

もう何度振るわれたか分からない海未の鉄拳が絵里の顔を捉える。

そして絵里の身体は宙へと舞い吹き飛ばされた。

海未「はぁ…はぁ……やり…ましたね………」

風が収まり海未を宙へと留まらせていたものがなくなる。

海未「ん?」

海未の身体はそのまま地面へと叩きつけられる。

海未「ふんごおおおおおおおおおお!」

思いきり鼻頭を地面へと打ち付けた海未は、意味不明な叫び声を上げながらのたうちまわっていた。

海未「にこッ!あなたはなぜ!いつもいつもこう手荒なのd」

海未「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」



378: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:10:47.04 ID:Q+NiEQR6.net

再び海未の頭上を再び突風が吹き荒れる。

それも先ほどの様な生温い風ではない。初めて海未がにこと相対した時のあの暴風の様な衝撃が吹き荒れる。

絵里「がああああああああああああああ!」

吹き飛ばされた絵里の身体に追い討ちをかける様にしてにこが放った暴風の衝撃が直撃する。

にこ「あんたはいつもいつも余計な事をグチグチと考えすぎなのよ」

にこ「風に吹かれて。全て忘れてきなさい」

にこにより放たれた暴風は曜の放出した大量の水と絵里の冷気が合わさり創り出した極冬の大地を絵里の身体ごと。

全てを吹き飛ばしたのだ。



379: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:15:50.46 ID:Q+NiEQR6.net

そしてしばらく吹き荒れた後に、にこが放った暴風は過ぎ去った。

そこにあるのは絵里が創り出した偽りの静装などではなく、正真正銘の平穏だった。

その場は眩い太陽の日照りと。まるで極寒の冬が凄ぎ去り、春が来たかの様な暖かな陽気に包まれていた。

海未「終わった……」

人はみな夢をみる。

そして神に憧れる。

故に人々は禁足のチカラに手を出してしまうのだ。しかしそれに手を出したが最後。

その者に夢や希望なんて華やかな物は残されていない。

そのチカラは強大すぎるが故に人の扱える範疇を超えている。チカラを手にした者は例外なく深い深い闇へと飲み込まれてしまう。

それが摂理だ。

海未がそれに飲み込まれなかったのは。幼き頃から稽古を積み、鍛え上げてきた黄金の精神力があったからなのかもしれない。



381: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:29:35.99 ID:Q+NiEQR6.net

~ エピローグ ~

絵里「海~未♡」

海未「ひゃっ」

絵里が海未の背後から耳元へと囁く様に吐息混じりの声で呼びかける。

絵里「ひゃっ。ですって」

海未「か、からかわないでください!」

絵里「もう、相変わらず可愛いのね。そんなに可愛いとチュウしちゃうわよ?」

海未「ち、近いですよ絵里!私は良いとは一言も言ってn」

絵里「あだぁぁぁ!」

海未「ひっ!」

その瞬間、何者かの平手が絵里の顔面を捉える。



382: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:31:17.96 ID:Q+NiEQR6.net

絵里「何するのよ!お婆さまにもぶたれた事ないのに!」

にこ「あんたが下らない事やってんのが悪いのよ。海未は今日にこが家でご馳走する事になってんの」

絵里「はぁ!?聞いてないわよ!」

にこ「借りてくわよ」

海未「あ、ちょっ。にこぉ!?」

にこが海未の手を引っ張り強引に連れ去ろうとするも。

海未の身体はピクリとも動かなかった。

にこ「え?」

璃奈「海未さんは今日、私の家に来て一緒に遊ぶの」

海未「り、璃奈ぁ!?」



383: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:33:10.89 ID:Q+NiEQR6.net

にこ「はぁー!?あに阿保な事いってんのよ!?」

璃奈「私、今日は家に誰もいなくて寂しい。だから海未さんが来てくれるって、約束した」

海未(そう言えばそんな約束もした様な……でもそれって今日でしたっけ………)

璃奈「だから、海未さんは私が借りてく。こればっかりはにこさんでも、譲れない」

にこ「良い度胸してんじゃない、璃n」

曜「邪魔だよー!」

にこ「ほげぇぇぇ!」

そこに現れた曜が何かを言いかけたにこを弾き飛ばした。

璃奈「むぅ」



384: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:34:55.45 ID:Q+NiEQR6.net

曜「じゃあ行くよ、海未ちゃん!」

海未「ど、どこへですか……?」

曜「えぇ~!?忘れちゃったのーー!?」

海未「え、えぇと」

曜「も~!この前海未ちゃんの登山に付き合った代わりに私の高飛び込みの練習にも付き合うって約束したでしょ~?」

海未「しかしそれh」

曜「ほらほら!」

曜はそう言いながら海未へと何かを投げ渡す。

海未「わわっ!?」

曜「ちゃーんと水着も用意したんだから!ほら行くであります!」



385: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:36:29.60 ID:Q+NiEQR6.net

曜「全速前進~」

しずく曜「ヨーソローーー!」

曜「へ?」

しずく「ではありません!」

しずく「今日は私が海未先輩に演劇の稽古に付き合ってもらうんです!」

そう言いながらしずくが海未の腕へとしがみつく。

海未「し、しずく…近いですよ!」

しずく「えぇ~?私は近い方がいいですよ~?」

海未「し、しかしですね……」

しずく「次回の舞台で私は『普段は冷静沈着で何でも出来るカッコよくてクールな先輩。でも恋になると途端に無頓着で大の鈍感でウブ。そんな先輩に恋をする無垢な後輩』という役を演じる事になったんです」



386: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:38:21.01 ID:Q+NiEQR6.net

しずく「その練習に付き合ってくれると言ったのは海未先輩じゃないですか!これもその練習の一環ですよ」

海未「私にも…こ、心の準備というものが……」

しずく「そうです!その表情です!モジモジと照れてるその表情がたまらないんです!」

海未「なっ!?私は照れてなどいません!」

しずく(強がって見栄を貼っちゃうところも可愛いなぁ)

しずく「それに海未先輩?」

海未「はい……?」

しずく「その…海未先輩が望むなら……台本以上のこ・と」

海未「へっ?」

しずく「しちゃっても良いんですよ?」

しずく(きゃー///言ってしまいました……///)



387: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:40:10.71 ID:Q+NiEQR6.net

海未「は、破廉恥ですぅぅぅ!」

ことり「はぁ~い、そこまでっ!」

しずく「げっ。ことりさん」

ことり「海未ちゅんはあくまでもぴゅあぴゅあなの!変な事を吹き込んじゃめっ!」

海未(ほっ。助かった)

穂乃果「も~!海未ちゃんばっかずるいよー!」

海未「え?」

穂乃果「ことりちゃ~ん!穂乃果にもかまってよ~~!」

ことり「えへへ~穂乃果ちゃんの事も大好きだよ~」ナデナデ

穂乃果「くぅ~ん、それそれぇ!」

海未(くっ…ことりめぇ。あんなに穂乃果に密着して!ずるいですよ!じゃなくて破廉恥ですよ!)



388: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:42:29.62 ID:Q+NiEQR6.net

彼方「隙有りっ!」

そう言って乱入してきた彼方が海未の背後から抱きつく。

海未「うわぁ!?」

彼方「海未ちゃ~ん?彼方ちゃんが迎えに来てあげたぞ~」

ことり「は?」

彼方「今日″も″いっぱい気持ちいいお昼寝しようね~」

しずく「は?」

彼方「また良いお昼寝スポット見つけてきたんだ~。今日は彼方ちゃんがお膝枕してあげる番だね~」



389: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:44:52.42 ID:Q+NiEQR6.net

絵里「今日は私が海未とお出かけする約束したのよ!亜里沙だって楽しみにしてるんだから!」

にこ「それを言ったらウチのチビ共だって海未が来るのを楽しみにしてんのよ!」

璃奈「今日は、私。絶対渡さない!」

曜「海未ちゃんは私が頂いていくであります!」

しずく「私ですよ!」

ことり「ことり!」

彼方「彼方ちゃん!」

穂乃果「モテモテだねぇ~」

海未(違うんです!私は本当は……!)

絵里にこ璃奈曜しずくことり彼方「海未(ちゃん先輩さん)!」

海未「は、はひぃ!?」



390: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:45:57.29 ID:Q+NiEQR6.net

花陽「た、たたたたたたたたたたた大変ですぅぅぅぅぅ!」

絵里「花陽っ!?」

曜「どうかしたのー?」

花陽「そ、それが……」

にこ「それが?」

花陽「大変が大変で大変に大変なんですぅ!」

ことり「かよちゃん一回落ち着こっ?」

彼方「は~い。しんこきゅ~」

花陽「スー…ハァー……スー…ハァーー」

花陽「………」

全員「………」

花陽「スー…」

にこ「もういいわ!」



391: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:47:25.51 ID:Q+NiEQR6.net

花陽「じ、事件です!」

そう花陽が言った瞬間。全員の目の色が変わった。

絵里「はぁ…物騒な世の中ね」

にこ「あんたが言えた事じゃないけどね」

絵里「うるさいわね」

曜「さっさと終わらせて海未ちゃんとプール行こっと」

璃奈「抜け駆けはさせない」

彼方「一番乗りは彼方ちゃんが頂いていくぜ」

しずく「あ、私海未さんに変身して行こっと」

絵里「私がエスコートするわ」

にこ「オイ」



392: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:49:06.79 ID:Q+NiEQR6.net

穂乃果「穂乃果も行こーっと」

海未「さて、私も向かうとしますか」

ことり「海未ちゃん!」

海未「はい?」

ことり「ことりとかよちゃんは能力?がないから待ってる事しか出来ないけど。ちゃんと無事に帰ってきてね?」

花陽「花陽とも約束…だよ?」

海未「ええ。無事に帰ってきますよ。だから安心して待っていてください」

ことり「うんっ♪」

海未「それにしても…ふふふ」

花陽「……どうしたの?」

海未「物騒な世の中だというのにみんなはいつも通りでなんだが可笑しくなってしまいますね」

ことり「でもそこが頼りになるところだよねっ」

海未「そうですね」

海未(私…やっと分かりましたよ。なぜ自分がこの能力″チカラ″を手にしたのかを)

海未「それは……」



393: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:51:28.55 ID:Q+NiEQR6.net




海未「ババ抜きで勝ちたかったのです!」






394: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:53:40.26 ID:Q+NiEQR6.net

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海未(出来ました……!これは傑作ですよぉぉぉぉぉ!しかしまだまだ拙い部分はあります。なので)

海未(物語の構成やセリフ回りは文学性に富んだ花丸に。バトルシーンの熱はせつ菜に。女の子同士の友情は梨子、そして幼馴染の愛は歩夢に話を聞き改修しましょう)

海未(そしてあかりに持ち込んで絵をつけてもらうのです!)

海未(そうすれば…夢の印税生活!行く行くはTVアニメ化!)

海未(うおおおおお!忙しくなってきましたよぉぉぉぉぉ!)カリカリカリ

穂乃果(今日は一段と酷い……)

ことり(ンミチャーの頭の中を覗いてみたいなぁ……)

海未ちゃんの妄想はまだまだ続く。



395: 名無しで叶える物語 2021/02/19(金) 13:55:18.06 ID:Q+NiEQR6.net

おわり


元スレ
海未「目を合わせた相手の全てを思い通りに出来る力を手に入れた」