1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 20:27:36.76 ID:UJKBAwfz0
杏子「・・・」
妹「・・・」
妹「・・・お姉ちゃん」
杏子「うん?なんだい?」
妹「お腹空いた・・・」
杏子「・・・そっか。それじゃ、家に帰ろうか!」
妹「うん!!」
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 20:30:43.01 ID:UJKBAwfz0
杏子宅
杏子「ただいまー」
妹「ただいま!お母さん!お父さん!」
父「おや、今日もいっぱい遊んできたのかい?」
妹「うん!お姉ちゃんが遊んでくれた!」
母「そう。それはよかったですね」ニコッ
妹「だからね!私お腹すいた!!ご飯食べたい!!!」
母「そう、ですね・・・」
母「そうしましょうか」
妹「わーい!やったー!!」
杏子「・・・」
父「それでは、二人とも目を瞑って。お祈りをするんだよ」
杏子「・・・」
妹「・・・」
父「・・・」
母「・・・」
妹「・・・もういい?」
父「そうだね、もういいよ」
妹「わーい!いただきまーす!!」
杏子「・・・いただきます」
妹「? お母さん、今日もご飯少ないの?」
母「ええ・・・ちょっと、食材がなくて・・・」
妹「ええー何で!?お腹空いてるのにー!」
父「ごめんな。明日はたくさん食べさせてあげるから」
杏子「・・・」
食後
妹「Zzz」スースー
母「遊び疲れて眠ったようですね」
父「そうだな・・・この寝顔を見るだけで、明日も頑張れそうだ」
杏子「・・・ねえ、親父。今日はどうだった?」
父「そうだね・・・やっぱり、ただ単に怪しい人だと思われてしまうようだ」
父「傍から見ればそういう風に見えてしまうのだろう・・・」
父「私は、ただ人々が幸せになることを望んでいるだけなのだが・・・」
杏子「お、親父は悪くないよ!!親父の言ってることは合ってるんだからさ!!」
父「そうかい?そう言ってくれるだけで有り難いものさ」
杏子「周りが聞く耳ないだけだよ。親父はいつも通り頑張って!」
父「ふふ、有難う、杏子」
母「ごめんね杏子、あの子の世話まで任せてしまって・・・」
杏子「そんなことないって!私に任せればその辺はなんとかなるさ!」
母「ふふ、頼もしい限りですね」
夜
杏子「私はもう寝るね。お休みー」
母「ええ、おやすみなさい」ニコッ
杏子「・・・」
杏子(・・・そうさ!みんなが悪いのさ!!)
杏子(親父はみんなのために教えを説いているっていうのに!)
杏子(何で親父が変人扱いされないといけないのさ!)
杏子(絶対間違ってる・・・こんなの・・・)
杏子(でも・・・私には何もできない)
杏子(くっそぉ・・・・!)ドン
杏子「・・・私に、なにかできないのかな・・・」
翌日
母「杏子、今日もお願いしますね」
杏子「分かった!いってきまーす!ほら、行くよ!」タッタッタッ
母「いってらっしゃい」
母「・・・」
母「いつもごめんね、杏子」
公園
杏子「うーん流石にこの時間は誰もいないか」
妹「どうして?」
杏子「みんな学校とかあるからな」
妹「学校?お姉ちゃんも行ってたところだよね?」
杏子「まぁ、そうなんだけど・・・」
杏子「・・・そんなことは気にしないで、あのジャングルジムで遊ぼうか!」
妹「うん!」
杏子「・・・あれ?」
杏子「ちょっと!どこ行ったのさ!!!」
杏子「トイレに行ってくるから待っててねって言ったのに・・・!」
杏子「困った子だなぁ・・・」
杏子(もし、変な人に捕まってたら・・・)
杏子「・・・・探さないとっ!!」ダッ
杏子「はぁ・・・はぁ・・・」タッタッタッ
杏子「畜生!!どこにいるのさ!!」
杏子「そんなに遠くには行ってないはずだろ・・・!」
杏子「・・・・嘘だろ・・・・何処だよおい・・・!」タッタッタッ
杏子「はぁ・・・はぁ・・・まさか、本当に誰かが・・・」
QB「やあ、何かお困りのようだね」
杏子「!!!」
杏子「な・・・!?ア、アンタは・・・?」
杏子(ね、猫?犬?じゃないよな、これ・・・何だ?てか喋ったぞ!?)
QB「突然で驚いたかい?それもそうか」
杏子「アンタ・・・何?へ?何の生き物・・・?」
QB「おやおや、そんなもので一括りしないでほしいな」
杏子「・・・どういう事だい?」
QB「僕はキュゥべえ!!君たちが言う、神様さ!!」
杏子「・・・えっ?」
QB「もう一度言うよ!僕は神様なのさ!!」
杏子「は、はぁ!?神様!?アンタが?!」
QB「そうだと言ってるだろう?」
杏子「・・・」
杏子(な、なんだコイツ・・・神様?イメージと全く違うんだけど・・・)
杏子「・・・・ふんっ!胡散臭いねぇ」
QB「信じてくれないのかい?」
杏子「当たり前だろ!!どー見たって神様に見えるもんか」
QB「ひどい言われようだね」
杏子「それよりさ!!この辺でこれぐらいの女の子見なかったかい?十字架のネックレスをしてて」
QB「今のところ、僕は君以外の人間は見ていない」
杏子「そうかい・・・ったく、どこに行ったんだよ・・・」
QB「人探しかい?」
杏子「ちょっと私の妹をね・・・知らないならいいさ、それじゃあね、神様」
QB「僕の力があれば、その妹さんを見つけ出すことができるよ!」
杏子「な・・・それ、本当かい!?」
QB「ああ、もちろんさ!!ただし、条件があるけどね!」
杏子「条件?」
QB「そう!僕と契約して、魔法少女になることさ!!」
杏子「・・・そうかい、じゃあね」
QB「最後まで聞かなくていいのかい?」
杏子「アンタに付き合ってる時間はないね。何が魔法少女さ!」
QB「魔法少女になってくれたら、何でも願い事を叶えてあげるよ!」
杏子「・・・!!」
杏子「・・・はぁ、またバカなことを」
QB「嘘だと思うかい?僕は神様だ!嘘なんてつかないよ!!」
杏子「証明できるっていうのかい?」
QB「それは君自身が体験することさ」
杏子「・・・願い事って、何でも叶えてくれるのかい?何回分?」
QB「一回だけだけど、君の願いをなんでも叶えてあげられるよ!!!」
杏子「何でも・・・?」
QB「そう!何でも!」
杏子「・・・」
杏子「・・・へぇ、面白そうじゃん」
QB「その代わり、君は魔法少女として魔女と戦わないといけない」
杏子「魔女?・・・どういうことだい?」
QB「そのままの意味さ!君は魔法少女となり、人間に手を出す魔女たちを倒すんだ!」
QB「願い事を叶えてあげる代償、ってところかな!!」
杏子「・・・何だか、現実味のない話だね」
QB「そうかい?当たり前のことじゃないか!」
杏子「じゃあさ、私の妹を見つけて、って願ったら見つかるのかい?」
QB「まあそうだね。そんなつまらないことに使う子なんてまずいないけどね!!」
杏子「」ムッ
杏子(願い事を何でも一つ・・・か)
杏子(それで・・・みんなが親父の話を聞くように願えば・・・)
杏子「・・・」
QB「・・・見たところ君は、何か一つの願いにたどり着いたようだね」
杏子「・・・どうだか」
QB「どうだい?戦う宿命を負う代わりに、自分にはできないこと、不可能なことを可能にしたいとは思わないかい?」
杏子「・・・」
QB「契約したいのなら、僕はいつでも契約できるよ!!」
杏子「・・・少し、考えさせてくれないか?」
杏子「それに、妹を探さないといけない」
QB「そうかい。僕としては、早ければ早いほうがいいんだけど」
杏子「・・・まぁ、面白い話だったよ。また会えたらそのときに答えるさ」
QB「君とはまたすぐに会うことになると思うけどね」
杏子「・・・」
杏子「じゃ、私は妹を探しに行くから。またね」
杏子宅
杏子「全く!!一時はどうなることかと思ったよ!!」
妹「鳥さんが可愛かったから・・・ごめんなさい」グスッ
杏子「まあ大丈夫ならいいさ!でも、今度からは約束守るんだよ?」
妹「うん!分かった!!」
杏子「よしよし、分かったらよろしい!」ナデナデ
父「・・・さぁ、二人とも、食事にするよ」
妹「わーい!!ごはんごはーん!!」
母「・・・」
杏子(今日もダメだったんだ・・・)
杏子(やっぱり、人に自分の話を聞かせるっていうことは難しいことなんだ・・・)
杏子「・・・うん、分かった」
妹「・・・少ないよぉ」
母「ごめんね、今日もちょっと・・・」
杏子「・・・食うかい?」
妹「え、いいの!?」
母「杏子・・・!それだったら私たちの分を」
杏子「いやー今日は食欲が沸かないんだよね!!ほら、食べちゃいな!!」
妹「わーい!ありがとー!!」
母「杏子・・・」
母「・・・私たちの分も食べなさい」ニコッ
妹「うん!分かった!いただきまーす!」
杏子「・・・」
父「杏子・・・悪いね」
杏子「私のことはいいさ。それより親父。ちょっと話があるんだけど」
父「話?なんだい、話してごらん」
杏子「もしさ、この世に奇跡や魔法があったとしてさ」
杏子「願い事を一つ叶えてもらえるとしたら、どうする?」
父「・・・」
父「私なら、お前たちにとびっきりのご馳走を、とお願いするだろうね」
杏子「え・・・?」
父「最近、ちゃんと食べてないだろう?だから、美味しいものをたくさん・・・」
杏子「いやいや、そういうことじゃなくてさ!」
杏子「例えばさ、みんなが親父の話を聞いてくれるとか、色々あるじゃん?」
父「・・・そんな願いで私の話を聞いてもらっても、嬉しくないさ」
杏子「え・・・?どうして・・・?」
父「私の教えは、皆の幸せを願うことによるものだ」
父「私は、私の教えを真摯な気持ちで、清らかな心で受け入れられる人たちにこの話を聞いてほしいんだ」
父「そんなことを言ってたら誰も話なんて聞いてくれないかもしれない」
父「だが、こうやって教えを説き続けることできっとそのような人たちの心にも響いていき」
父「分かってくれるということを、私は信じている」
父「・・・人を、信じるのさ」
父「それを奇跡や魔法なんて訳の分からないもので、人々の心を動かそうなんてしてはいけない」
父「そんなもの、タチの悪い催眠術にすぎないさ」
杏子「・・・そう、なんだ・・・」
杏子「人を信じる・・・」
父「ああ、そうだよ杏子」
父「お前も、人々を信じ、幸福を願いなさい」
父「きっとその想いが、皆にも伝わるはずだから」
杏子「・・・うん、分かった」
翌日
杏子「ごめんね、お母さん。今日はちょっと用事があるから・・・」
母「そうなのですか・・・お友達とですか?」
杏子「そんなところ」
母「それなら仕方ありませんね・・・」
杏子「まあ、でもすぐに済ませて帰ってくるからさ!そしたらあの子の面倒をみるよ!」
母「分かりました。気を付けていってらっしゃい」
杏子「・・・」
杏子(確かこの辺り・・・だったよな・・・)
杏子(キュゥべえだったっけ?)
杏子(どこにいるんだ・・・?)
QB「やあ、また会ったね、佐倉杏子」
杏子「・・・やっと見つけたよ」
杏子「ていうか、どうして私の名前を!?」
QB「言っただろう?僕は神様だって!」
杏子「・・・ま、まあ、そういうことにしといてやるよ」
QB「で、僕に用があるようだね」
杏子「ああ、もちろんさ」
QB「願い事は決まったかい?」
杏子「ううん、そうじゃない」
杏子「悪いけどさ、アンタとは契約しないことにした」
QB「・・・へえ、それはどうしてだい?」
杏子「親父と話してからさ。それだけだよ」
QB「君がどんな話をしたのか分からないが、君は今確実に最大のチャンスを逃そうとしているね」
杏子「どうでもいいことだ」
杏子「私からすれば、アンタは歩いててただすれ違っただけの神様さ」
杏子「神様なんて、思われるかどうかの存在さ」
QB「ふむ、そうかい」
QB「実に残念だ!!君のような素質を持った子はなかなかいないのだけど」
杏子「何のことか分からないけど、とりあえずそういうことだから」
杏子「それじゃ・・・今度こそ、またね」
QB「・・・」
QB「ふむ、仕方ない」
QB「さて、次の候補に会いに行くとしよう」
その後、公園
妹「~♪」
杏子(ほんと、砂場遊びが好きなんだなぁ)
杏子(まだ幼稚園生みたいなもんだし、仕方ないのかな)
杏子(あんなに汚れて・・・)
妹「!!」
杏子「?」
女の子A「この公園であそぼーう!!」
女の子B「寄り道?お母さんに怒られないかな・・・」
女の子C「だいじょうぶだいじょうぶー!滑り台行こうよー!」
杏子(・・・小学一年生、ってところか)
妹「・・・」
杏子(そういえば、この子も本当は・・・)
杏子「・・・もう夕方だし、帰ろうか」
妹「・・・うん」
妹「・・・」
杏子(そうだよね・・・本当なら、学校に行って勉強して)
杏子(友達作っていっぱい遊んで・・・楽しい毎日を送れるんだよね)
杏子(昔の私みたいに・・・さ)
妹「・・・ねえ、お姉ちゃん」
杏子「なんだい?」
妹「どうして私は学校に行けないの?」
杏子「え・・・?そ、それは」
妹「ずーっとお腹も空いてるの。どうして?」
杏子「それはね・・・その、えっとね・・・」
妹「・・・」
杏子「だ、大丈夫さ!お母さんとお父さん、今はちょっと節約中なんだよ!そういえば!!」
杏子「あ、あははは~・・・いやー本当に困るよなー・・・・」
妹「・・・」
杏子「・・・」
杏子宅
父「・・・そうかい、そんなことが・・・」
母「・・・」
杏子「・・・今、通わせてあげてってなんて言えないのはよく分かってる」
杏子「でも、なんとかしてあげられないかなって・・・」
母「やはり、そうですよね・・・学校に行きたいですよね・・・」
母「我慢してくれてたのですね・・・ううっ・・・」
杏子「お母さん・・・」
父「・・・杏子、実はね、教えを説くことも重要だが」
父「少しでも食っていけるようにしないといけないと思い、少しずつ仕事を探し始めてるんだ」
杏子「え、そうなの!?」
母「今はまだ厳しいけれど」
母「私もなんとか仕事を見つけて頑張りたいと思ってるから・・・」
杏子「わ、私にも何かできないかな!?アルバイトとかさ!!」
母「杏子は今まで通り、あの子の傍にいてあげてください」
母「そうすることで、きっと我慢できているはずだから・・・」
杏子「・・・分かったよ」
父「すまないね、杏子。お前だって今頃は学校に・・・」
杏子「だからさ!私のことなんて心配しないで、あの子のことを考えてあげて!」
杏子「毎日お腹空かせてるようだしさ・・・せめて、あの子だけでもお腹いっぱいに・・・」
母「・・・!」ギュッ
杏子「わ、わ!お、お母さん!急にだきつい」
母「ごめんね・・・本当にごめんね・・・杏子・・・」
母「本当に辛いのは貴方自身だって、分かってるの・・・」
母「でも貴方の力を借りないといけないのです・・・頼りっぱなしでごめんね・・・」
杏子「お母さん・・・」
翌日
母「気を付けて、いってらっしゃい」
杏子「いってきまーす!!」
商店街
杏子「いやーたまにはこんなところに来るのもいいもんだね」
妹「うん!賑やかで楽しい!!」
杏子「ふふ、本当だな!」
杏子「ふーん・・・この辺は割と変わらないんだなー・・・」
妹「・・・」ジーッ
杏子「? どうしたんだい?」
妹「あ、いや!なんでもないよ!!」
杏子(今、林檎を見ていたような・・・)
杏子「あの果物屋さんのリンゴがどうかしたのかい?」
妹「う、ううん!なんでもないの!!」グウゥー
杏子「うーん、そうなのか」
杏子(そうだよな・・・毎日あの食事じゃ、全然足りないよな・・・)
杏子(私だって、少しきついし・・・)
杏子(・・・今、店員もいないな)
杏子(それに、あの野ざらし状態・・・)
妹「うぅ・・・」グゥー
杏子(辛そうだ・・・大丈夫なのか?)
杏子(・・・いいよな、リンゴの一つぐらい。バレやしないって!!)
杏子「・・・アンタはここで待ってな」
妹「? なにするの?」
杏子「ちょっとお姉ちゃんが魔法を使ってくるよ!」
杏子(とは言ったものの)
杏子(バレたらかなりヤバいぞこれ・・・)
杏子(この時間帯だし、人通りはそこまで多くないけど)
杏子(でも、正直私も限界だ・・・)
杏子(すごくお腹すいた・・・)
杏子(大丈夫さ!この一回きり!絶対に!!)
杏子「それっ、今だっ!!」ダダッ
杏子「」ササッ
杏子(おっと・・・今になって出てきやがった)
杏子(一つしか取れなかったけど・・・まあいいか)
杏子(バレてなさそうだし、いいよな・・・?)
杏子「おまたせ!!」
妹「へぇ!?り、リンゴだぁー!」
杏子「ふふーん、驚いたかい?今まで隠してたとびっきりの魔法さ!」
妹「すごーい!お姉ちゃん、こんなことができるんだ!!」
杏子「まあね!でも、一つだけ大事な約束をしてくれるかい?」
妹「なぁに?」
杏子「私がこの魔法を使えること、今日林檎食べたことは絶対にお母さんたちに話したらダメだよ?」
妹「うん!分かった!」
杏子「ほら、さっさと食べな」
妹「いただきまーす!!」
妹「うん!甘くてすごく美味しいー!!」
杏子(何だかホッとしてるみたいだな・・・よかった)
杏子(嬉しそうに食べてて・・・何だか嬉しい)
杏子(こうやってこの子の笑顔を見れるなら、私は・・・)
妹「お姉ちゃんも少し食べる?」
杏子「お!じゃあ少しもらおうかなー」
夜、杏子宅
杏子「そっか・・・なかなか見つからないんだね・・・」
父「本当にすまない・・・どこも当てがなくてな・・・」
母「必死に探しているのですが、厳しい限りですね・・・」
杏子「うん、分かった」
父「また明日頑張ろう」
杏子「そうだね、私も頑張ってあの子の世話するよ!!」
母「そういえば、聞きましたか?商店街の果物屋さんで、窃盗があったらしいです」
杏子「」
母「なんでもリンゴが盗まれてしまったとか」
父「それは本当か?なんてことをするヤツなんだ・・・そんな人間には、神も祝福などしてくれないだろう」
杏子「そ、そうだね・・・」
杏子(バレてたのか・・・!私が盗んだってことは分かってないみたいだけど)
杏子(ちょっとまずい・・・このまま時間が解決してくれるといいんだけど・・・)
翌日、公園
杏子「・・・」
妹「~♪」
杏子(はぁ・・・流石に気になる・・・)
杏子(バレてないんだよね・・・本当に・・・)
杏子(ま、それだったら今頃お母さんがここに来てるか)
杏子(人も全然いなかったしさ)
杏子(余計な心配してないで、あの子と遊んであげないと!!)
妹「おねーちゃーん!ブランコ乗るー!」
杏子「はいはい、怪我しないように気をつけるんだぞー!」
妹「はーい!!」
杏子「ふふ、本当に元気だなぁ」
杏子宅
杏子「ただいまー・・・」
父「杏子、ちょっと座りなさい」
杏子「」
父「はやく!!!」
杏子「は、はい・・・」
母「・・・杏子、今日ね、商店街の人から聞いたの」
母「本屋の店主が、あなたがリンゴを持って走り去っていく姿を見たのだそうです」
杏子「」
母「貴方はお金なんて持ってませんよね?どうしてリンゴなんかを・・・」
杏子「・・・」
父「・・・なんとか言ったらどうだ!!」
杏子「」ビクッ
杏子「そ、それは・・・」
母「・・・」
妹「お、お姉ちゃん・・・」
妹「お母さん!お父さん!本当はね」
杏子「お腹空いてたからさ」
妹「!」
杏子「死ぬほどお腹が空いてた。だから、盗んで食べたのさ」
杏子「そこに美味しそうなリンゴがあったんだもん」
妹「お姉ちゃん・・・」
父「・・・その言葉、嘘じゃないんだな・・・?」
杏子「事実さ・・・」
父「」ブンッ バシン
杏子「!?!?」バタン
母「あ、貴方!!やめて!!!!」
父「ふざけるなっ!!」
杏子「・・・!」
父「人様の物を盗んでおいて、なんだその態度は!?」
杏子「・・・」
父「家族が一丸になってこの困難を乗り越えようとしているなか、一人で抜け駆けし」
父「そうやって空腹を満たしていたのだな!!!」
杏子「な、何の話さ!?私は、一回しか・・・」
父「嘘をつくな!!最近商店街で盗難が多発しているというじゃないか!!」
父「これもお前の仕業なんだろう!?」
杏子「!! そ、それと私は関係な」
父「またそうやって白を切るつもりか!!」
杏子「ま、待ってよ!!!私は本当に関係ないんだ!!」
父「私が破門されてから盗難は始まったそうだ!」
父「それはそうだ!こんなので周りの人々が私の声など聞くものか!!」
母「あ、貴方・・・!お願いだから落ち着いて・・・!」
杏子「っ・・・!勝手に決めつけてんじゃねぇ!!」
杏子「満足に食わすことができないお前が悪いんだろう!!」
杏子「この子を見ろよ!毎日お腹を空かせてるのに我慢してるんだぞ!?」
杏子「それなのに・・・」ハッ
母「・・・」
杏子「・・・」
父「・・・!」
父「うるさい!」
父「裏切り者め!!お前なんか出て行ってしまえ!!」
母「!!」
杏子「・・・ああそうするさ!!外の方が美味い飯が食えるからな!」
杏子「二度と帰ってくるかよ!!!!」バタン
杏子「ったく!なんなんだよ!!ふざけるんじゃねーよ!!」
杏子「濡れ衣着せやがって!!」
杏子「こうなったら、腹を満たすためになんでも盗んで食ってやるさ!」
杏子「いつまでもその教えとやらを説いてればいいじゃないか!」
杏子「私には関係あるか!!!」
杏子宅
母「あ、貴方・・・!今のはなんでも言い過ぎなのでは・・・」
父「構うものか!盗っ人など放っておけばいい!!」
母「きっとあの子も反省しています。だから・・・」
父「あれが反省か!?全く、お前は何を見てたんだ・・・」
母「・・・あの子なら、きっと反省してくれます・・・」
妹「・・・お姉ちゃん」グスッ
翌日
杏子「・・・・うぅっ~・・・」
杏子(夜は冷えたなぁ・・・)
杏子(夜はこんなに寒いのか・・・知らなかった)
杏子(それに、流石にベンチだと痛い・・・)
杏子(家に帰れば・・・)
杏子「・・・・っ!そんなこと言ってられるか!」
杏子「さぁーて!お腹すいたし何か食べに行こう、っと!!」
杏子「バレなきゃ食い放題さ!あの商店街には行かなければいい!」
杏子「自由っていいもんだな!」
杏子「・・・よし、っと」
杏子(食パンを外に出してるなんてバカな店だな!)
杏子(味気ないけど、空腹は満たせる・・・)
杏子(久しぶりだなー・・・この満腹感)
杏子(食パンって意外に腹が膨れるのか)
杏子(残りは取っておくとしよう)
杏子「・・・ふぅ」
杏子(・・・すっごくあの子が心配だ)
杏子(何も言わずに飛び出しちゃったけど・・・あの後、どうなったんだろう・・・)
杏子(この余ったパンを分けることができたら・・・)
杏子「・・・そ、それも関係ないっつーの!!」
杏子「さて、他にもいいお店ないかなー」
夕方
杏子「大漁大漁!!!」
杏子(よし、それなりに食料は確保できた!!)
杏子(外に商品を出してるお店はほとんどないけど、しばらくはそのお店にお世話になるか)
杏子「ふぅ・・・いやー腹いっぱい食えるのはいいもんだなー!」
杏子「こんなの家に帰ったら無理だしな!」
杏子「いやー生き返るわー!」
杏子「何にも縛られなくて最高!!」
杏子「一生この生活を続けていきたい!!」
杏子「明日のご飯はどうしようかなー!」
杏子「ま、なんでもいいよなー・・・」
杏子「まだまだたくさんあるし・・・」
杏子「別に・・・」
杏子「・・・」
夜
ヒュウウウ...
杏子(うぅ~・・・土管の中でもダメか・・・)
杏子(むしろ吹き抜けてかなり寒い・・・)
杏子(せめて毛布があれば・・・)
ワンワンワンワン!!!!
杏子()ビクッ
杏子(い、犬!?野良犬か!?)
杏子(遠くにいるようだけど・・・こ、怖い・・・!)
杏子(急に襲われたらどうしよう・・・)ブルブル
杏子「うぅ・・・」
杏子「お母さん・・・」
その頃、杏子宅
父「・・・」
母「帰ってきませんね・・・」
父「・・・もう遅い、二人とも眠るんだ」
父「私が起きてる。気にするな」
母「はい、分かりました・・・」
妹「・・・」
母「元気出して、お姉ちゃんはすぐに帰ってきますよ」
妹「・・・私のせいで」グスッ
母「貴方のせいではありません。おそらく、杏子が優しい子だから少し悪い神様にいじめられたのです」
父「そうだよ、杏子はちょっと意地悪されただけなんだ」
父「一時の誤りさ」
母「貴方・・・」
父「・・・もう眠りなさい」
父「・・・」
父(何処を探してもいなかった・・・杏子、どこに行ったんだ)
父(外は寒い。風邪でも引いてなければいいが・・・)
父(・・・この料理ももう冷めてしまっている)
父(ラップを買う余裕さえないんだ・・・虫が飛び始めている・・・)
父「まったく・・・こりないヤツらだ・・・!お前たちの夕食ではないと言っているのに」
父(仕方ない・・・冷蔵庫にしまうか)
父「・・・」
父(杏子・・・痛かっただろうに)
父(今すぐにでも帰ってきてくれ。一緒にその罪を償おうじゃないか)
父「神父として」
父「そして・・・一人の親として」
翌日、杏子
杏子「んっ・・・ふあぁあぁぁ~・・・」
杏子「うー・・・体中が・・・」
杏子(流石にきついな・・・今日は段ボールでも探してくるか・・・)
杏子「・・・あ、あれ!?」
杏子「飯がない!?」
杏子(ま、まさか!!寝てる隙に野良犬が・・・!)
杏子(畜生・・・!けっこうたくさん盗ったっていうのに・・・!)
杏子「はぁ・・・また盗らないといけないのか・・・」
杏子「・・・」
杏子「・・・ぼぅっとしてても仕方ない。盗りに行かないと・・・」
杏子「はぁ・・・はぁ・・・」
杏子(危なかった・・・!変なタイミングで出てきてんじゃねーよ!!)
杏子(見つかると思った・・・危機一髪・・・)
杏子「ふぅー・・・何とか飯にありつけそうだ・・・」
杏子「とにかく・・・次は少しでも寒さをしのげる様なものを集めてこないと」
杏子「何か毛布みたいなものでもあればな・・・」ボソッ
杏子「段ボールならすぐに手に入るだろうし・・・」
杏子「・・・うん!何とかなるさ!」
杏子「さて!今日も元気に行くかー!!!」
夕方
杏子(あっという間にこんな時間か・・・)
杏子(そろそろ、家に帰ってる頃かな・・・)
杏子(・・・一人で遊んでも、つまらないよね・・・)
杏子(一緒に遊んであげられなくてごめんね・・・)
杏子「・・・」モグモグ
杏子「ん・・・?」
男の子「わぁーい!竹トンボとんらぁ!!」
子母「おお、上手ね!」
子父「よし、もっと遠くに飛ばしてごらん!」
女の子「ウェヒヒヒ 私も遠くに飛ばせるかなー」
子母「まどかさー、タツヤに負けてるよ?」
女の子「わ、わかってるよぅ!今すぐ遠くに飛ばすんだから!!」
杏子「・・・」
杏子(お母さん・・・いつも少ないご飯だけど、美味しく作ってくれてたっけ・・・)
杏子(せめて美味しく、っていつも頑張ってくれて)
杏子(どんな時でも優しく抱きしめてくれる・・・)
杏子(お父さんは、そんなお母さんの料理をいつも美味しいって・・・)
杏子(・・・お父さんって、すごく泣き虫な人なんだ)
杏子(新聞を読んでて、関係のない人が死んじゃったり、悲惨なことがあったりしたら)
杏子(どうしてこの世の中に不幸になってしまう人がいるのだ、って本気で嘆いて涙して・・・)
杏子(すごく清らかな心の人なんだ・・・)
杏子(だから、あの子は寂しくても毎日明るく振る舞うんだ)
杏子(二人が頑張ってるから、毎日元気よくしようとしてるんだよね)
杏子(お姉ちゃん、知ってたよ、そのこと)
杏子(たまに泣いちゃうけど、それでも頑張り屋さんで少しワガママな私の妹・・・)
杏子「・・・」
杏子「帰りたい・・・」
杏子(でも、それは無理)
杏子(あんなにやさしいお父さんが怒ったんだもの)
杏子(きっと許してくれないよ・・・)
杏子(お父さん・・・)
杏子「・・・親父っ・・・」ギュウウウ
その頃、杏子宅
父「・・・ダメだ・・・どこにもいない・・・」
母「もしかして隣町でしょうか?」
父「もうそこしかなさそうだ・・・」
母「まだ少し時間があります。行ってみましょう!」
妹「うん!!!」
杏子「・・・」
QB「・・・昔のような覇気がないじゃないか、杏子」
杏子「ア、アンタは・・・」
QB「久しぶりだね!!覚えているかい?」
杏子「・・・神様だろ?」
QB「覚えていてくれたのか!」
杏子「・・・それで、何の用?」
QB「何か強い祈りを感じたからね」
杏子「祈り?」
QB「ああそうさ。僕にはそう感じたね」
杏子「だったら勘違いさ」
杏子「私は明日の飯を考えてたんだ。私が今後どうするか、っていうさ」
QB「今後どうするか?ほぅ、どうするんだい?」
杏子「・・・」
杏子「・・・私は、家には帰らない。・・・帰れない」
杏子「今日までにたくさんの窃盗を繰り返してきた」
杏子「私みたいなのがさ、今からみんなを幸せにしようと説く神父の娘って、有り得ないじゃん?」
杏子「私は親父のツラをこれ以上汚すつもりはなくてね、一人で生きていこうかなって思ってるのさ」
杏子「それに・・・親父は絶対に許してくれない・・・」ボソッ
杏子「それを考えたら、アンタの言っていることは正解かもしれない」
杏子「一人で生きていくためには、力が必要なのさ!何にでも打ち勝つ力!」
杏子「だからさ、魔法少女になる!自分のために使える力!!!」
QB「ほう、それはいい心がけだ。嬉しい限りだよ!」
QB「さて、君の願いとは一体何なんだい?」
杏子「みんなが、親父の話を聞くようにしてほしいんだよ」
QB「・・・それは、君が否定した願いではなかったのかい?」
QB「その親と話した結果だろう?」
杏子「そうさ。でもね、私が傍にいなきゃいいんだよ!!」
杏子「普通に暮らしてさえいれば、魔女なんて関係ないだろう?」
杏子「出てきてもその時は私がぶっ倒す!!」
杏子「親父はこんなこと願わないかもしれないけどさ、私は願ってるのさ!」
杏子「みんなが親父の言葉に耳を傾けること!」
杏子「そして、少しでも多くの人間が幸せになれば・・・それでいい」
杏子「私が傍にいなきゃバレないバレない!近づいたりしないさ!知らぬが仏!」
QB「ふむ、まあいいのだけど」
QB「それでは契約成立だね!杏子、契約を始めるよ!」
杏子「分かった・・・」
父「はぁ・・・はぁ・・・」
母「・・・この河原ですよね・・・杏子らしい子がいたのは・・・」
妹「・・・お姉ちゃん!!おねえちゃーん!!!」
父「杏子ー!どこにいるんだー!」
父「私はもう怒ってない!謝りたいんだ!出てきてくれー!」
母「杏子ー!どこなのー!」
母「・・・あそこの家族に聞いてみましょう!」
父「すみませーん!」
子母「? どうされましたか?」
母「この辺に、とても長い赤い髪の女の子は見ませんでしたか・・・?」
子母「うーん・・・私は見てませんけど・・・」
女の子「でも、さっきまで原っぱに座ってこっちを見てた、ような・・・」
女の子「本当にさっきなので、まだ近くにいると思います」
父「本当ですか!?ありがとうございます!」
夜
父「杏子ー!杏子ー!!」
妹「おねえちゃーん!!どこー!!」
母「そんな・・・何処にもいないなんて・・・」
父「・・・杏子・・・帰ってきておくれ・・・」
父「殴ったりして悪かった・・・どうか・・・帰ってきてくれぇぇ・・・!!」
妹「・・・うっぐ・・・ひっく・・・」
妹「うええええええええん!!!!おねえぢゃあーん!!!」
母「・・・」
父「どうしてこうなってしまったんだ・・・私が、あのときもっと冷静でいれば・・・!」
父「ううぅぅ・・・・!杏子ぉ・・・!!」
母「・・・まだこの町にいるのは確かです。何があっても、見つけ出しましょう・・・!」
父「・・・もちろんだ・・・!」
少し先のこと
父「・・・神の導きに、今、感謝を」
パチパチパチパチパチパチ...
母「・・・貴方、お疲れ様です」
父「ああ・・・今日も大勢の人が聞きに来てくれた。嬉しい限りだ」
母「そうですね・・・」
父「今日はもう終わりだ、帰ろう・・・」
神父宅
父「ただいま」
母「ただいま。お留守番ご苦労様」ニコッ
妹「・・・」
母「・・・お姉ちゃんからも、警察からも連絡はなかったのね・・・」
妹「・・・」コクッ
父「そうか・・・」
父「・・・そろそろ夕食だ、準備を」
母「ええ」
妹「・・・」
母「オムライス、美味しい?」
妹「・・・」コクッ
母「そう・・・よかったわ」
妹「・・・お姉ちゃんはいつ帰ってくるの?」
父「・・・」
母「そうね・・・一生懸命探してますけど・・・」
妹「お姉ちゃんがいたら、もっと美味しい」
母「そうね・・・」
父「・・・」
母「・・・寝てしまいました」
父「そうか」
母「・・・杏子、本当にどこに行ってしまったの・・・」
父「・・・」
父「私は、本当に人の幸せを説くことなんてできるのか」
母「どういうことですか・・・?」
父「私は・・・いつも傍にいてくれて・・・いつも支えてくれたあの子を・・・」
父「・・・・幸せにしてあげられてたのか・・・・!」
母「・・・!」
父「学校にも拒否され、友達も失い、空腹の毎日を過ごすだけの日々・・・」
父「私は・・・お前たちを不幸にさせていただけじゃないのか・・・!」
母「そ、そんなことありません!貧しくても、私は幸せでした!」
母「今、人々は貴方の教えを聞き、それを心に受け止め日々」
父「それがあの子の幸せだったのか・・・!」
父「今の私は、杏子の幸せの意味にさえ気づけていない!」
父「誰よりも眩しい笑顔で、明るく元気に振る舞っていた彼女を」
父「私は幸せにすることなんてできなかった・・・!」
父「気づくのが遅すぎたのだ・・・本当の意味で、教えを説かなければならない人」
父「そしてその未来を共に歩む人。幸せを共有できる、かけがえのない人」
父「それがお前たちだったというのに・・・!」
母「貴方・・・」
父「・・・・・杏子・・・お前はこんな私の傍にいて幸せだったのか・・・」
母「そうに決まってます!!だからこそ、大好きなあなたを支え続けたのではありませんか!」
母「杏子はいつか、きっと帰ってきます・・・!そのときに、私たちみんなで、杏子に幸せを説いてあげるのです・・・!」
父「・・・そうだな。すまない、人々を導く立場でありながら、このようなことを・・・」
母「構いません。誰だって後悔はするものです・・・」
母「明日に備えて眠りましょう・・・あなたのことを待っている人たちがいます」
父「ああ・・・」
杏子「っあああああああああああああああああああ!!!!」
シャキン
杏子「くたばりな!!!!!!」
魔女「・・・・!」シュオオオオオ...
杏子「・・・終わりだよ・・・!」
杏子「・・・なんとかグリーフシード回収っと・・・」
杏子(ちと強かったな・・・あんな魔女もいるのか)
杏子(でも、この町はもう魔女はいないだろうな・・・)
杏子(そろそろ場所でも変えてしまおうか)
杏子「・・・うっ・・・!」ズキッ
杏子「く、くそぉ・・・流石に痛手だったようだねぇ・・・!」
杏子「はぁ・・・はぁ・・・」
杏子「くっ・・・!」ズキッ
杏子(少し痛む・・・でも、前よりずっとマシさ・・・)
杏子(食べ物も底をついてしまった・・・また盗りに行かないと・・・)
杏子(できればもうあんな風に人に乱暴しないようにしたいけど・・・)
杏子「・・・ははっ・・・」
杏子(最低だ、私)
杏子(・・・これでよかったんだよね、神様・・・)
杏子(私の家族も、他の人も、幸せなんでしょう・・・?)
杏子(それがお父さんの願いなんだもん。後悔なんて・・・してないよ)
杏子(・・・疲れた・・・眠い・・・)
杏子「・・・」
杏子「・・・寒い」
おしまい
杏子と家族の生存エンドを形にしてみたよ!
生きてるからこれでハッピーだね
元スレ
杏子宅
杏子「ただいまー」
妹「ただいま!お母さん!お父さん!」
父「おや、今日もいっぱい遊んできたのかい?」
妹「うん!お姉ちゃんが遊んでくれた!」
母「そう。それはよかったですね」ニコッ
妹「だからね!私お腹すいた!!ご飯食べたい!!!」
母「そう、ですね・・・」
母「そうしましょうか」
妹「わーい!やったー!!」
杏子「・・・」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 20:35:24.43 ID:UJKBAwfz0
父「それでは、二人とも目を瞑って。お祈りをするんだよ」
杏子「・・・」
妹「・・・」
父「・・・」
母「・・・」
妹「・・・もういい?」
父「そうだね、もういいよ」
妹「わーい!いただきまーす!!」
杏子「・・・いただきます」
妹「? お母さん、今日もご飯少ないの?」
母「ええ・・・ちょっと、食材がなくて・・・」
妹「ええー何で!?お腹空いてるのにー!」
父「ごめんな。明日はたくさん食べさせてあげるから」
杏子「・・・」
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 20:40:43.55 ID:UJKBAwfz0
食後
妹「Zzz」スースー
母「遊び疲れて眠ったようですね」
父「そうだな・・・この寝顔を見るだけで、明日も頑張れそうだ」
杏子「・・・ねえ、親父。今日はどうだった?」
父「そうだね・・・やっぱり、ただ単に怪しい人だと思われてしまうようだ」
父「傍から見ればそういう風に見えてしまうのだろう・・・」
父「私は、ただ人々が幸せになることを望んでいるだけなのだが・・・」
杏子「お、親父は悪くないよ!!親父の言ってることは合ってるんだからさ!!」
父「そうかい?そう言ってくれるだけで有り難いものさ」
杏子「周りが聞く耳ないだけだよ。親父はいつも通り頑張って!」
父「ふふ、有難う、杏子」
母「ごめんね杏子、あの子の世話まで任せてしまって・・・」
杏子「そんなことないって!私に任せればその辺はなんとかなるさ!」
母「ふふ、頼もしい限りですね」
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 20:44:13.40 ID:UJKBAwfz0
夜
杏子「私はもう寝るね。お休みー」
母「ええ、おやすみなさい」ニコッ
杏子「・・・」
杏子(・・・そうさ!みんなが悪いのさ!!)
杏子(親父はみんなのために教えを説いているっていうのに!)
杏子(何で親父が変人扱いされないといけないのさ!)
杏子(絶対間違ってる・・・こんなの・・・)
杏子(でも・・・私には何もできない)
杏子(くっそぉ・・・・!)ドン
杏子「・・・私に、なにかできないのかな・・・」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 20:47:50.73 ID:UJKBAwfz0
翌日
母「杏子、今日もお願いしますね」
杏子「分かった!いってきまーす!ほら、行くよ!」タッタッタッ
母「いってらっしゃい」
母「・・・」
母「いつもごめんね、杏子」
公園
杏子「うーん流石にこの時間は誰もいないか」
妹「どうして?」
杏子「みんな学校とかあるからな」
妹「学校?お姉ちゃんも行ってたところだよね?」
杏子「まぁ、そうなんだけど・・・」
杏子「・・・そんなことは気にしないで、あのジャングルジムで遊ぼうか!」
妹「うん!」
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 20:52:38.62 ID:UJKBAwfz0
杏子「・・・あれ?」
杏子「ちょっと!どこ行ったのさ!!!」
杏子「トイレに行ってくるから待っててねって言ったのに・・・!」
杏子「困った子だなぁ・・・」
杏子(もし、変な人に捕まってたら・・・)
杏子「・・・・探さないとっ!!」ダッ
杏子「はぁ・・・はぁ・・・」タッタッタッ
杏子「畜生!!どこにいるのさ!!」
杏子「そんなに遠くには行ってないはずだろ・・・!」
杏子「・・・・嘘だろ・・・・何処だよおい・・・!」タッタッタッ
杏子「はぁ・・・はぁ・・・まさか、本当に誰かが・・・」
QB「やあ、何かお困りのようだね」
杏子「!!!」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 20:57:34.68 ID:UJKBAwfz0
杏子「な・・・!?ア、アンタは・・・?」
杏子(ね、猫?犬?じゃないよな、これ・・・何だ?てか喋ったぞ!?)
QB「突然で驚いたかい?それもそうか」
杏子「アンタ・・・何?へ?何の生き物・・・?」
QB「おやおや、そんなもので一括りしないでほしいな」
杏子「・・・どういう事だい?」
QB「僕はキュゥべえ!!君たちが言う、神様さ!!」
杏子「・・・えっ?」
QB「もう一度言うよ!僕は神様なのさ!!」
杏子「は、はぁ!?神様!?アンタが?!」
QB「そうだと言ってるだろう?」
杏子「・・・」
杏子(な、なんだコイツ・・・神様?イメージと全く違うんだけど・・・)
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:03:58.36 ID:UJKBAwfz0
杏子「・・・・ふんっ!胡散臭いねぇ」
QB「信じてくれないのかい?」
杏子「当たり前だろ!!どー見たって神様に見えるもんか」
QB「ひどい言われようだね」
杏子「それよりさ!!この辺でこれぐらいの女の子見なかったかい?十字架のネックレスをしてて」
QB「今のところ、僕は君以外の人間は見ていない」
杏子「そうかい・・・ったく、どこに行ったんだよ・・・」
QB「人探しかい?」
杏子「ちょっと私の妹をね・・・知らないならいいさ、それじゃあね、神様」
QB「僕の力があれば、その妹さんを見つけ出すことができるよ!」
杏子「な・・・それ、本当かい!?」
QB「ああ、もちろんさ!!ただし、条件があるけどね!」
杏子「条件?」
QB「そう!僕と契約して、魔法少女になることさ!!」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:09:24.65 ID:UJKBAwfz0
杏子「・・・そうかい、じゃあね」
QB「最後まで聞かなくていいのかい?」
杏子「アンタに付き合ってる時間はないね。何が魔法少女さ!」
QB「魔法少女になってくれたら、何でも願い事を叶えてあげるよ!」
杏子「・・・!!」
杏子「・・・はぁ、またバカなことを」
QB「嘘だと思うかい?僕は神様だ!嘘なんてつかないよ!!」
杏子「証明できるっていうのかい?」
QB「それは君自身が体験することさ」
杏子「・・・願い事って、何でも叶えてくれるのかい?何回分?」
QB「一回だけだけど、君の願いをなんでも叶えてあげられるよ!!!」
杏子「何でも・・・?」
QB「そう!何でも!」
杏子「・・・」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:17:08.93 ID:UJKBAwfz0
杏子「・・・へぇ、面白そうじゃん」
QB「その代わり、君は魔法少女として魔女と戦わないといけない」
杏子「魔女?・・・どういうことだい?」
QB「そのままの意味さ!君は魔法少女となり、人間に手を出す魔女たちを倒すんだ!」
QB「願い事を叶えてあげる代償、ってところかな!!」
杏子「・・・何だか、現実味のない話だね」
QB「そうかい?当たり前のことじゃないか!」
杏子「じゃあさ、私の妹を見つけて、って願ったら見つかるのかい?」
QB「まあそうだね。そんなつまらないことに使う子なんてまずいないけどね!!」
杏子「」ムッ
杏子(願い事を何でも一つ・・・か)
杏子(それで・・・みんなが親父の話を聞くように願えば・・・)
杏子「・・・」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:22:22.55 ID:UJKBAwfz0
QB「・・・見たところ君は、何か一つの願いにたどり着いたようだね」
杏子「・・・どうだか」
QB「どうだい?戦う宿命を負う代わりに、自分にはできないこと、不可能なことを可能にしたいとは思わないかい?」
杏子「・・・」
QB「契約したいのなら、僕はいつでも契約できるよ!!」
杏子「・・・少し、考えさせてくれないか?」
杏子「それに、妹を探さないといけない」
QB「そうかい。僕としては、早ければ早いほうがいいんだけど」
杏子「・・・まぁ、面白い話だったよ。また会えたらそのときに答えるさ」
QB「君とはまたすぐに会うことになると思うけどね」
杏子「・・・」
杏子「じゃ、私は妹を探しに行くから。またね」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:25:59.71 ID:UJKBAwfz0
杏子宅
杏子「全く!!一時はどうなることかと思ったよ!!」
妹「鳥さんが可愛かったから・・・ごめんなさい」グスッ
杏子「まあ大丈夫ならいいさ!でも、今度からは約束守るんだよ?」
妹「うん!分かった!!」
杏子「よしよし、分かったらよろしい!」ナデナデ
父「・・・さぁ、二人とも、食事にするよ」
妹「わーい!!ごはんごはーん!!」
母「・・・」
杏子(今日もダメだったんだ・・・)
杏子(やっぱり、人に自分の話を聞かせるっていうことは難しいことなんだ・・・)
杏子「・・・うん、分かった」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:29:21.61 ID:UJKBAwfz0
妹「・・・少ないよぉ」
母「ごめんね、今日もちょっと・・・」
杏子「・・・食うかい?」
妹「え、いいの!?」
母「杏子・・・!それだったら私たちの分を」
杏子「いやー今日は食欲が沸かないんだよね!!ほら、食べちゃいな!!」
妹「わーい!ありがとー!!」
母「杏子・・・」
母「・・・私たちの分も食べなさい」ニコッ
妹「うん!分かった!いただきまーす!」
杏子「・・・」
父「杏子・・・悪いね」
杏子「私のことはいいさ。それより親父。ちょっと話があるんだけど」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:34:00.11 ID:UJKBAwfz0
父「話?なんだい、話してごらん」
杏子「もしさ、この世に奇跡や魔法があったとしてさ」
杏子「願い事を一つ叶えてもらえるとしたら、どうする?」
父「・・・」
父「私なら、お前たちにとびっきりのご馳走を、とお願いするだろうね」
杏子「え・・・?」
父「最近、ちゃんと食べてないだろう?だから、美味しいものをたくさん・・・」
杏子「いやいや、そういうことじゃなくてさ!」
杏子「例えばさ、みんなが親父の話を聞いてくれるとか、色々あるじゃん?」
父「・・・そんな願いで私の話を聞いてもらっても、嬉しくないさ」
杏子「え・・・?どうして・・・?」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:40:59.85 ID:UJKBAwfz0
父「私の教えは、皆の幸せを願うことによるものだ」
父「私は、私の教えを真摯な気持ちで、清らかな心で受け入れられる人たちにこの話を聞いてほしいんだ」
父「そんなことを言ってたら誰も話なんて聞いてくれないかもしれない」
父「だが、こうやって教えを説き続けることできっとそのような人たちの心にも響いていき」
父「分かってくれるということを、私は信じている」
父「・・・人を、信じるのさ」
父「それを奇跡や魔法なんて訳の分からないもので、人々の心を動かそうなんてしてはいけない」
父「そんなもの、タチの悪い催眠術にすぎないさ」
杏子「・・・そう、なんだ・・・」
杏子「人を信じる・・・」
父「ああ、そうだよ杏子」
父「お前も、人々を信じ、幸福を願いなさい」
父「きっとその想いが、皆にも伝わるはずだから」
杏子「・・・うん、分かった」
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:44:27.53 ID:UJKBAwfz0
翌日
杏子「ごめんね、お母さん。今日はちょっと用事があるから・・・」
母「そうなのですか・・・お友達とですか?」
杏子「そんなところ」
母「それなら仕方ありませんね・・・」
杏子「まあ、でもすぐに済ませて帰ってくるからさ!そしたらあの子の面倒をみるよ!」
母「分かりました。気を付けていってらっしゃい」
杏子「・・・」
杏子(確かこの辺り・・・だったよな・・・)
杏子(キュゥべえだったっけ?)
杏子(どこにいるんだ・・・?)
QB「やあ、また会ったね、佐倉杏子」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:48:53.12 ID:UJKBAwfz0
杏子「・・・やっと見つけたよ」
杏子「ていうか、どうして私の名前を!?」
QB「言っただろう?僕は神様だって!」
杏子「・・・ま、まあ、そういうことにしといてやるよ」
QB「で、僕に用があるようだね」
杏子「ああ、もちろんさ」
QB「願い事は決まったかい?」
杏子「ううん、そうじゃない」
杏子「悪いけどさ、アンタとは契約しないことにした」
QB「・・・へえ、それはどうしてだい?」
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:54:37.41 ID:UJKBAwfz0
杏子「親父と話してからさ。それだけだよ」
QB「君がどんな話をしたのか分からないが、君は今確実に最大のチャンスを逃そうとしているね」
杏子「どうでもいいことだ」
杏子「私からすれば、アンタは歩いててただすれ違っただけの神様さ」
杏子「神様なんて、思われるかどうかの存在さ」
QB「ふむ、そうかい」
QB「実に残念だ!!君のような素質を持った子はなかなかいないのだけど」
杏子「何のことか分からないけど、とりあえずそういうことだから」
杏子「それじゃ・・・今度こそ、またね」
QB「・・・」
QB「ふむ、仕方ない」
QB「さて、次の候補に会いに行くとしよう」
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 21:58:47.19 ID:UJKBAwfz0
その後、公園
妹「~♪」
杏子(ほんと、砂場遊びが好きなんだなぁ)
杏子(まだ幼稚園生みたいなもんだし、仕方ないのかな)
杏子(あんなに汚れて・・・)
妹「!!」
杏子「?」
女の子A「この公園であそぼーう!!」
女の子B「寄り道?お母さんに怒られないかな・・・」
女の子C「だいじょうぶだいじょうぶー!滑り台行こうよー!」
杏子(・・・小学一年生、ってところか)
妹「・・・」
杏子(そういえば、この子も本当は・・・)
杏子「・・・もう夕方だし、帰ろうか」
妹「・・・うん」
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:02:43.77 ID:UJKBAwfz0
妹「・・・」
杏子(そうだよね・・・本当なら、学校に行って勉強して)
杏子(友達作っていっぱい遊んで・・・楽しい毎日を送れるんだよね)
杏子(昔の私みたいに・・・さ)
妹「・・・ねえ、お姉ちゃん」
杏子「なんだい?」
妹「どうして私は学校に行けないの?」
杏子「え・・・?そ、それは」
妹「ずーっとお腹も空いてるの。どうして?」
杏子「それはね・・・その、えっとね・・・」
妹「・・・」
杏子「だ、大丈夫さ!お母さんとお父さん、今はちょっと節約中なんだよ!そういえば!!」
杏子「あ、あははは~・・・いやー本当に困るよなー・・・・」
妹「・・・」
杏子「・・・」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:06:21.61 ID:UJKBAwfz0
杏子宅
父「・・・そうかい、そんなことが・・・」
母「・・・」
杏子「・・・今、通わせてあげてってなんて言えないのはよく分かってる」
杏子「でも、なんとかしてあげられないかなって・・・」
母「やはり、そうですよね・・・学校に行きたいですよね・・・」
母「我慢してくれてたのですね・・・ううっ・・・」
杏子「お母さん・・・」
父「・・・杏子、実はね、教えを説くことも重要だが」
父「少しでも食っていけるようにしないといけないと思い、少しずつ仕事を探し始めてるんだ」
杏子「え、そうなの!?」
母「今はまだ厳しいけれど」
母「私もなんとか仕事を見つけて頑張りたいと思ってるから・・・」
杏子「わ、私にも何かできないかな!?アルバイトとかさ!!」
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:10:30.83 ID:UJKBAwfz0
母「杏子は今まで通り、あの子の傍にいてあげてください」
母「そうすることで、きっと我慢できているはずだから・・・」
杏子「・・・分かったよ」
父「すまないね、杏子。お前だって今頃は学校に・・・」
杏子「だからさ!私のことなんて心配しないで、あの子のことを考えてあげて!」
杏子「毎日お腹空かせてるようだしさ・・・せめて、あの子だけでもお腹いっぱいに・・・」
母「・・・!」ギュッ
杏子「わ、わ!お、お母さん!急にだきつい」
母「ごめんね・・・本当にごめんね・・・杏子・・・」
母「本当に辛いのは貴方自身だって、分かってるの・・・」
母「でも貴方の力を借りないといけないのです・・・頼りっぱなしでごめんね・・・」
杏子「お母さん・・・」
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:13:23.15 ID:UJKBAwfz0
翌日
母「気を付けて、いってらっしゃい」
杏子「いってきまーす!!」
商店街
杏子「いやーたまにはこんなところに来るのもいいもんだね」
妹「うん!賑やかで楽しい!!」
杏子「ふふ、本当だな!」
杏子「ふーん・・・この辺は割と変わらないんだなー・・・」
妹「・・・」ジーッ
杏子「? どうしたんだい?」
妹「あ、いや!なんでもないよ!!」
杏子(今、林檎を見ていたような・・・)
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:17:31.83 ID:UJKBAwfz0
杏子「あの果物屋さんのリンゴがどうかしたのかい?」
妹「う、ううん!なんでもないの!!」グウゥー
杏子「うーん、そうなのか」
杏子(そうだよな・・・毎日あの食事じゃ、全然足りないよな・・・)
杏子(私だって、少しきついし・・・)
杏子(・・・今、店員もいないな)
杏子(それに、あの野ざらし状態・・・)
妹「うぅ・・・」グゥー
杏子(辛そうだ・・・大丈夫なのか?)
杏子(・・・いいよな、リンゴの一つぐらい。バレやしないって!!)
杏子「・・・アンタはここで待ってな」
妹「? なにするの?」
杏子「ちょっとお姉ちゃんが魔法を使ってくるよ!」
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:21:47.63 ID:UJKBAwfz0
杏子(とは言ったものの)
杏子(バレたらかなりヤバいぞこれ・・・)
杏子(この時間帯だし、人通りはそこまで多くないけど)
杏子(でも、正直私も限界だ・・・)
杏子(すごくお腹すいた・・・)
杏子(大丈夫さ!この一回きり!絶対に!!)
杏子「それっ、今だっ!!」ダダッ
杏子「」ササッ
杏子(おっと・・・今になって出てきやがった)
杏子(一つしか取れなかったけど・・・まあいいか)
杏子(バレてなさそうだし、いいよな・・・?)
杏子「おまたせ!!」
妹「へぇ!?り、リンゴだぁー!」
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:26:11.32 ID:UJKBAwfz0
杏子「ふふーん、驚いたかい?今まで隠してたとびっきりの魔法さ!」
妹「すごーい!お姉ちゃん、こんなことができるんだ!!」
杏子「まあね!でも、一つだけ大事な約束をしてくれるかい?」
妹「なぁに?」
杏子「私がこの魔法を使えること、今日林檎食べたことは絶対にお母さんたちに話したらダメだよ?」
妹「うん!分かった!」
杏子「ほら、さっさと食べな」
妹「いただきまーす!!」
妹「うん!甘くてすごく美味しいー!!」
杏子(何だかホッとしてるみたいだな・・・よかった)
杏子(嬉しそうに食べてて・・・何だか嬉しい)
杏子(こうやってこの子の笑顔を見れるなら、私は・・・)
妹「お姉ちゃんも少し食べる?」
杏子「お!じゃあ少しもらおうかなー」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:31:50.54 ID:UJKBAwfz0
夜、杏子宅
杏子「そっか・・・なかなか見つからないんだね・・・」
父「本当にすまない・・・どこも当てがなくてな・・・」
母「必死に探しているのですが、厳しい限りですね・・・」
杏子「うん、分かった」
父「また明日頑張ろう」
杏子「そうだね、私も頑張ってあの子の世話するよ!!」
母「そういえば、聞きましたか?商店街の果物屋さんで、窃盗があったらしいです」
杏子「」
母「なんでもリンゴが盗まれてしまったとか」
父「それは本当か?なんてことをするヤツなんだ・・・そんな人間には、神も祝福などしてくれないだろう」
杏子「そ、そうだね・・・」
杏子(バレてたのか・・・!私が盗んだってことは分かってないみたいだけど)
杏子(ちょっとまずい・・・このまま時間が解決してくれるといいんだけど・・・)
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:35:43.61 ID:UJKBAwfz0
翌日、公園
杏子「・・・」
妹「~♪」
杏子(はぁ・・・流石に気になる・・・)
杏子(バレてないんだよね・・・本当に・・・)
杏子(ま、それだったら今頃お母さんがここに来てるか)
杏子(人も全然いなかったしさ)
杏子(余計な心配してないで、あの子と遊んであげないと!!)
妹「おねーちゃーん!ブランコ乗るー!」
杏子「はいはい、怪我しないように気をつけるんだぞー!」
妹「はーい!!」
杏子「ふふ、本当に元気だなぁ」
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:39:38.77 ID:UJKBAwfz0
杏子宅
杏子「ただいまー・・・」
父「杏子、ちょっと座りなさい」
杏子「」
父「はやく!!!」
杏子「は、はい・・・」
母「・・・杏子、今日ね、商店街の人から聞いたの」
母「本屋の店主が、あなたがリンゴを持って走り去っていく姿を見たのだそうです」
杏子「」
母「貴方はお金なんて持ってませんよね?どうしてリンゴなんかを・・・」
杏子「・・・」
父「・・・なんとか言ったらどうだ!!」
杏子「」ビクッ
杏子「そ、それは・・・」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:43:27.23 ID:UJKBAwfz0
母「・・・」
妹「お、お姉ちゃん・・・」
妹「お母さん!お父さん!本当はね」
杏子「お腹空いてたからさ」
妹「!」
杏子「死ぬほどお腹が空いてた。だから、盗んで食べたのさ」
杏子「そこに美味しそうなリンゴがあったんだもん」
妹「お姉ちゃん・・・」
父「・・・その言葉、嘘じゃないんだな・・・?」
杏子「事実さ・・・」
父「」ブンッ バシン
杏子「!?!?」バタン
母「あ、貴方!!やめて!!!!」
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:50:15.80 ID:UJKBAwfz0
父「ふざけるなっ!!」
杏子「・・・!」
父「人様の物を盗んでおいて、なんだその態度は!?」
杏子「・・・」
父「家族が一丸になってこの困難を乗り越えようとしているなか、一人で抜け駆けし」
父「そうやって空腹を満たしていたのだな!!!」
杏子「な、何の話さ!?私は、一回しか・・・」
父「嘘をつくな!!最近商店街で盗難が多発しているというじゃないか!!」
父「これもお前の仕業なんだろう!?」
杏子「!! そ、それと私は関係な」
父「またそうやって白を切るつもりか!!」
杏子「ま、待ってよ!!!私は本当に関係ないんだ!!」
父「私が破門されてから盗難は始まったそうだ!」
父「それはそうだ!こんなので周りの人々が私の声など聞くものか!!」
母「あ、貴方・・・!お願いだから落ち着いて・・・!」
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 22:56:14.26 ID:UJKBAwfz0
杏子「っ・・・!勝手に決めつけてんじゃねぇ!!」
杏子「満足に食わすことができないお前が悪いんだろう!!」
杏子「この子を見ろよ!毎日お腹を空かせてるのに我慢してるんだぞ!?」
杏子「それなのに・・・」ハッ
母「・・・」
杏子「・・・」
父「・・・!」
父「うるさい!」
父「裏切り者め!!お前なんか出て行ってしまえ!!」
母「!!」
杏子「・・・ああそうするさ!!外の方が美味い飯が食えるからな!」
杏子「二度と帰ってくるかよ!!!!」バタン
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:00:32.58 ID:UJKBAwfz0
杏子「ったく!なんなんだよ!!ふざけるんじゃねーよ!!」
杏子「濡れ衣着せやがって!!」
杏子「こうなったら、腹を満たすためになんでも盗んで食ってやるさ!」
杏子「いつまでもその教えとやらを説いてればいいじゃないか!」
杏子「私には関係あるか!!!」
杏子宅
母「あ、貴方・・・!今のはなんでも言い過ぎなのでは・・・」
父「構うものか!盗っ人など放っておけばいい!!」
母「きっとあの子も反省しています。だから・・・」
父「あれが反省か!?全く、お前は何を見てたんだ・・・」
母「・・・あの子なら、きっと反省してくれます・・・」
妹「・・・お姉ちゃん」グスッ
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:03:44.82 ID:UJKBAwfz0
翌日
杏子「・・・・うぅっ~・・・」
杏子(夜は冷えたなぁ・・・)
杏子(夜はこんなに寒いのか・・・知らなかった)
杏子(それに、流石にベンチだと痛い・・・)
杏子(家に帰れば・・・)
杏子「・・・・っ!そんなこと言ってられるか!」
杏子「さぁーて!お腹すいたし何か食べに行こう、っと!!」
杏子「バレなきゃ食い放題さ!あの商店街には行かなければいい!」
杏子「自由っていいもんだな!」
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:08:44.62 ID:UJKBAwfz0
杏子「・・・よし、っと」
杏子(食パンを外に出してるなんてバカな店だな!)
杏子(味気ないけど、空腹は満たせる・・・)
杏子(久しぶりだなー・・・この満腹感)
杏子(食パンって意外に腹が膨れるのか)
杏子(残りは取っておくとしよう)
杏子「・・・ふぅ」
杏子(・・・すっごくあの子が心配だ)
杏子(何も言わずに飛び出しちゃったけど・・・あの後、どうなったんだろう・・・)
杏子(この余ったパンを分けることができたら・・・)
杏子「・・・そ、それも関係ないっつーの!!」
杏子「さて、他にもいいお店ないかなー」
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:13:03.26 ID:UJKBAwfz0
夕方
杏子「大漁大漁!!!」
杏子(よし、それなりに食料は確保できた!!)
杏子(外に商品を出してるお店はほとんどないけど、しばらくはそのお店にお世話になるか)
杏子「ふぅ・・・いやー腹いっぱい食えるのはいいもんだなー!」
杏子「こんなの家に帰ったら無理だしな!」
杏子「いやー生き返るわー!」
杏子「何にも縛られなくて最高!!」
杏子「一生この生活を続けていきたい!!」
杏子「明日のご飯はどうしようかなー!」
杏子「ま、なんでもいいよなー・・・」
杏子「まだまだたくさんあるし・・・」
杏子「別に・・・」
杏子「・・・」
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:16:57.21 ID:UJKBAwfz0
夜
ヒュウウウ...
杏子(うぅ~・・・土管の中でもダメか・・・)
杏子(むしろ吹き抜けてかなり寒い・・・)
杏子(せめて毛布があれば・・・)
ワンワンワンワン!!!!
杏子()ビクッ
杏子(い、犬!?野良犬か!?)
杏子(遠くにいるようだけど・・・こ、怖い・・・!)
杏子(急に襲われたらどうしよう・・・)ブルブル
杏子「うぅ・・・」
杏子「お母さん・・・」
90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:22:46.94 ID:UJKBAwfz0
その頃、杏子宅
父「・・・」
母「帰ってきませんね・・・」
父「・・・もう遅い、二人とも眠るんだ」
父「私が起きてる。気にするな」
母「はい、分かりました・・・」
妹「・・・」
母「元気出して、お姉ちゃんはすぐに帰ってきますよ」
妹「・・・私のせいで」グスッ
母「貴方のせいではありません。おそらく、杏子が優しい子だから少し悪い神様にいじめられたのです」
父「そうだよ、杏子はちょっと意地悪されただけなんだ」
父「一時の誤りさ」
母「貴方・・・」
父「・・・もう眠りなさい」
92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:27:55.13 ID:UJKBAwfz0
父「・・・」
父(何処を探してもいなかった・・・杏子、どこに行ったんだ)
父(外は寒い。風邪でも引いてなければいいが・・・)
父(・・・この料理ももう冷めてしまっている)
父(ラップを買う余裕さえないんだ・・・虫が飛び始めている・・・)
父「まったく・・・こりないヤツらだ・・・!お前たちの夕食ではないと言っているのに」
父(仕方ない・・・冷蔵庫にしまうか)
父「・・・」
父(杏子・・・痛かっただろうに)
父(今すぐにでも帰ってきてくれ。一緒にその罪を償おうじゃないか)
父「神父として」
父「そして・・・一人の親として」
94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:31:29.69 ID:UJKBAwfz0
翌日、杏子
杏子「んっ・・・ふあぁあぁぁ~・・・」
杏子「うー・・・体中が・・・」
杏子(流石にきついな・・・今日は段ボールでも探してくるか・・・)
杏子「・・・あ、あれ!?」
杏子「飯がない!?」
杏子(ま、まさか!!寝てる隙に野良犬が・・・!)
杏子(畜生・・・!けっこうたくさん盗ったっていうのに・・・!)
杏子「はぁ・・・また盗らないといけないのか・・・」
杏子「・・・」
杏子「・・・ぼぅっとしてても仕方ない。盗りに行かないと・・・」
96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:34:42.05 ID:UJKBAwfz0
杏子「はぁ・・・はぁ・・・」
杏子(危なかった・・・!変なタイミングで出てきてんじゃねーよ!!)
杏子(見つかると思った・・・危機一髪・・・)
杏子「ふぅー・・・何とか飯にありつけそうだ・・・」
杏子「とにかく・・・次は少しでも寒さをしのげる様なものを集めてこないと」
杏子「何か毛布みたいなものでもあればな・・・」ボソッ
杏子「段ボールならすぐに手に入るだろうし・・・」
杏子「・・・うん!何とかなるさ!」
杏子「さて!今日も元気に行くかー!!!」
99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:39:25.88 ID:UJKBAwfz0
夕方
杏子(あっという間にこんな時間か・・・)
杏子(そろそろ、家に帰ってる頃かな・・・)
杏子(・・・一人で遊んでも、つまらないよね・・・)
杏子(一緒に遊んであげられなくてごめんね・・・)
杏子「・・・」モグモグ
杏子「ん・・・?」
男の子「わぁーい!竹トンボとんらぁ!!」
子母「おお、上手ね!」
子父「よし、もっと遠くに飛ばしてごらん!」
女の子「ウェヒヒヒ 私も遠くに飛ばせるかなー」
子母「まどかさー、タツヤに負けてるよ?」
女の子「わ、わかってるよぅ!今すぐ遠くに飛ばすんだから!!」
杏子「・・・」
101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:46:48.43 ID:UJKBAwfz0
杏子(お母さん・・・いつも少ないご飯だけど、美味しく作ってくれてたっけ・・・)
杏子(せめて美味しく、っていつも頑張ってくれて)
杏子(どんな時でも優しく抱きしめてくれる・・・)
杏子(お父さんは、そんなお母さんの料理をいつも美味しいって・・・)
杏子(・・・お父さんって、すごく泣き虫な人なんだ)
杏子(新聞を読んでて、関係のない人が死んじゃったり、悲惨なことがあったりしたら)
杏子(どうしてこの世の中に不幸になってしまう人がいるのだ、って本気で嘆いて涙して・・・)
杏子(すごく清らかな心の人なんだ・・・)
杏子(だから、あの子は寂しくても毎日明るく振る舞うんだ)
杏子(二人が頑張ってるから、毎日元気よくしようとしてるんだよね)
杏子(お姉ちゃん、知ってたよ、そのこと)
杏子(たまに泣いちゃうけど、それでも頑張り屋さんで少しワガママな私の妹・・・)
杏子「・・・」
杏子「帰りたい・・・」
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:50:15.84 ID:UJKBAwfz0
杏子(でも、それは無理)
杏子(あんなにやさしいお父さんが怒ったんだもの)
杏子(きっと許してくれないよ・・・)
杏子(お父さん・・・)
杏子「・・・親父っ・・・」ギュウウウ
その頃、杏子宅
父「・・・ダメだ・・・どこにもいない・・・」
母「もしかして隣町でしょうか?」
父「もうそこしかなさそうだ・・・」
母「まだ少し時間があります。行ってみましょう!」
妹「うん!!!」
106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/09(土) 23:55:08.25 ID:UJKBAwfz0
杏子「・・・」
QB「・・・昔のような覇気がないじゃないか、杏子」
杏子「ア、アンタは・・・」
QB「久しぶりだね!!覚えているかい?」
杏子「・・・神様だろ?」
QB「覚えていてくれたのか!」
杏子「・・・それで、何の用?」
QB「何か強い祈りを感じたからね」
杏子「祈り?」
QB「ああそうさ。僕にはそう感じたね」
杏子「だったら勘違いさ」
杏子「私は明日の飯を考えてたんだ。私が今後どうするか、っていうさ」
QB「今後どうするか?ほぅ、どうするんだい?」
109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:01:36.77 ID:K8KxbCnn0
杏子「・・・」
杏子「・・・私は、家には帰らない。・・・帰れない」
杏子「今日までにたくさんの窃盗を繰り返してきた」
杏子「私みたいなのがさ、今からみんなを幸せにしようと説く神父の娘って、有り得ないじゃん?」
杏子「私は親父のツラをこれ以上汚すつもりはなくてね、一人で生きていこうかなって思ってるのさ」
杏子「それに・・・親父は絶対に許してくれない・・・」ボソッ
杏子「それを考えたら、アンタの言っていることは正解かもしれない」
杏子「一人で生きていくためには、力が必要なのさ!何にでも打ち勝つ力!」
杏子「だからさ、魔法少女になる!自分のために使える力!!!」
QB「ほう、それはいい心がけだ。嬉しい限りだよ!」
QB「さて、君の願いとは一体何なんだい?」
杏子「みんなが、親父の話を聞くようにしてほしいんだよ」
114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:08:34.22 ID:K8KxbCnn0
QB「・・・それは、君が否定した願いではなかったのかい?」
QB「その親と話した結果だろう?」
杏子「そうさ。でもね、私が傍にいなきゃいいんだよ!!」
杏子「普通に暮らしてさえいれば、魔女なんて関係ないだろう?」
杏子「出てきてもその時は私がぶっ倒す!!」
杏子「親父はこんなこと願わないかもしれないけどさ、私は願ってるのさ!」
杏子「みんなが親父の言葉に耳を傾けること!」
杏子「そして、少しでも多くの人間が幸せになれば・・・それでいい」
杏子「私が傍にいなきゃバレないバレない!近づいたりしないさ!知らぬが仏!」
QB「ふむ、まあいいのだけど」
QB「それでは契約成立だね!杏子、契約を始めるよ!」
杏子「分かった・・・」
116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:13:58.98 ID:K8KxbCnn0
父「はぁ・・・はぁ・・・」
母「・・・この河原ですよね・・・杏子らしい子がいたのは・・・」
妹「・・・お姉ちゃん!!おねえちゃーん!!!」
父「杏子ー!どこにいるんだー!」
父「私はもう怒ってない!謝りたいんだ!出てきてくれー!」
母「杏子ー!どこなのー!」
母「・・・あそこの家族に聞いてみましょう!」
父「すみませーん!」
子母「? どうされましたか?」
母「この辺に、とても長い赤い髪の女の子は見ませんでしたか・・・?」
子母「うーん・・・私は見てませんけど・・・」
女の子「でも、さっきまで原っぱに座ってこっちを見てた、ような・・・」
女の子「本当にさっきなので、まだ近くにいると思います」
父「本当ですか!?ありがとうございます!」
118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:18:42.26 ID:K8KxbCnn0
夜
父「杏子ー!杏子ー!!」
妹「おねえちゃーん!!どこー!!」
母「そんな・・・何処にもいないなんて・・・」
父「・・・杏子・・・帰ってきておくれ・・・」
父「殴ったりして悪かった・・・どうか・・・帰ってきてくれぇぇ・・・!!」
妹「・・・うっぐ・・・ひっく・・・」
妹「うええええええええん!!!!おねえぢゃあーん!!!」
母「・・・」
父「どうしてこうなってしまったんだ・・・私が、あのときもっと冷静でいれば・・・!」
父「ううぅぅ・・・・!杏子ぉ・・・!!」
母「・・・まだこの町にいるのは確かです。何があっても、見つけ出しましょう・・・!」
父「・・・もちろんだ・・・!」
119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:23:19.94 ID:K8KxbCnn0
少し先のこと
父「・・・神の導きに、今、感謝を」
パチパチパチパチパチパチ...
母「・・・貴方、お疲れ様です」
父「ああ・・・今日も大勢の人が聞きに来てくれた。嬉しい限りだ」
母「そうですね・・・」
父「今日はもう終わりだ、帰ろう・・・」
神父宅
父「ただいま」
母「ただいま。お留守番ご苦労様」ニコッ
妹「・・・」
母「・・・お姉ちゃんからも、警察からも連絡はなかったのね・・・」
妹「・・・」コクッ
122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:27:24.89 ID:K8KxbCnn0
父「そうか・・・」
父「・・・そろそろ夕食だ、準備を」
母「ええ」
妹「・・・」
母「オムライス、美味しい?」
妹「・・・」コクッ
母「そう・・・よかったわ」
妹「・・・お姉ちゃんはいつ帰ってくるの?」
父「・・・」
母「そうね・・・一生懸命探してますけど・・・」
妹「お姉ちゃんがいたら、もっと美味しい」
母「そうね・・・」
父「・・・」
124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:33:44.93 ID:K8KxbCnn0
母「・・・寝てしまいました」
父「そうか」
母「・・・杏子、本当にどこに行ってしまったの・・・」
父「・・・」
父「私は、本当に人の幸せを説くことなんてできるのか」
母「どういうことですか・・・?」
父「私は・・・いつも傍にいてくれて・・・いつも支えてくれたあの子を・・・」
父「・・・・幸せにしてあげられてたのか・・・・!」
母「・・・!」
父「学校にも拒否され、友達も失い、空腹の毎日を過ごすだけの日々・・・」
父「私は・・・お前たちを不幸にさせていただけじゃないのか・・・!」
母「そ、そんなことありません!貧しくても、私は幸せでした!」
母「今、人々は貴方の教えを聞き、それを心に受け止め日々」
父「それがあの子の幸せだったのか・・・!」
128: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:43:01.36 ID:K8KxbCnn0
父「今の私は、杏子の幸せの意味にさえ気づけていない!」
父「誰よりも眩しい笑顔で、明るく元気に振る舞っていた彼女を」
父「私は幸せにすることなんてできなかった・・・!」
父「気づくのが遅すぎたのだ・・・本当の意味で、教えを説かなければならない人」
父「そしてその未来を共に歩む人。幸せを共有できる、かけがえのない人」
父「それがお前たちだったというのに・・・!」
母「貴方・・・」
父「・・・・・杏子・・・お前はこんな私の傍にいて幸せだったのか・・・」
母「そうに決まってます!!だからこそ、大好きなあなたを支え続けたのではありませんか!」
母「杏子はいつか、きっと帰ってきます・・・!そのときに、私たちみんなで、杏子に幸せを説いてあげるのです・・・!」
父「・・・そうだな。すまない、人々を導く立場でありながら、このようなことを・・・」
母「構いません。誰だって後悔はするものです・・・」
母「明日に備えて眠りましょう・・・あなたのことを待っている人たちがいます」
父「ああ・・・」
131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:47:12.77 ID:K8KxbCnn0
杏子「っあああああああああああああああああああ!!!!」
シャキン
杏子「くたばりな!!!!!!」
魔女「・・・・!」シュオオオオオ...
杏子「・・・終わりだよ・・・!」
杏子「・・・なんとかグリーフシード回収っと・・・」
杏子(ちと強かったな・・・あんな魔女もいるのか)
杏子(でも、この町はもう魔女はいないだろうな・・・)
杏子(そろそろ場所でも変えてしまおうか)
杏子「・・・うっ・・・!」ズキッ
杏子「く、くそぉ・・・流石に痛手だったようだねぇ・・・!」
133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:52:08.34 ID:K8KxbCnn0
杏子「はぁ・・・はぁ・・・」
杏子「くっ・・・!」ズキッ
杏子(少し痛む・・・でも、前よりずっとマシさ・・・)
杏子(食べ物も底をついてしまった・・・また盗りに行かないと・・・)
杏子(できればもうあんな風に人に乱暴しないようにしたいけど・・・)
杏子「・・・ははっ・・・」
杏子(最低だ、私)
杏子(・・・これでよかったんだよね、神様・・・)
杏子(私の家族も、他の人も、幸せなんでしょう・・・?)
杏子(それがお父さんの願いなんだもん。後悔なんて・・・してないよ)
杏子(・・・疲れた・・・眠い・・・)
杏子「・・・」
杏子「・・・寒い」
おしまい
135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/07/10(日) 00:54:04.19 ID:K8KxbCnn0
杏子と家族の生存エンドを形にしてみたよ!
生きてるからこれでハッピーだね
QB「僕は神様だよ!」杏子「えっ」