1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:21:41.67 ID:rSZ8hwwH0

「……うーん……」

………眠れない。
瞳を閉じても眠くなるどころか、ますます頭が冴えてくる。
耳をすませば聞こえてくる秒針の嵐。
仕方なく、身体を起こした。

追い込みに受けた模試も終わり、今日は私の家でお泊まり会。
しばらくの慣れない勉強尽くしの生活から解放されたからか、唯と律がやたらとはしゃいでいた。
結局、二人とも早々とトーンダウン。
流れでもう寝よっか、となり、唯はムギと梓と。私は律と寝ている。



2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:23:05.41 ID:rSZ8hwwH0

「………………むう」

それにしても寝つけない。
こういう時、いつもなら律がいろいろ仕掛けてくるから気が紛れるのに。
その律は、と言うと。

(…………)

「ぶもっ!……キャベツぅ……」zzz

鼻を摘まんでもこの有り様。
完全に爆睡中だ。



4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:24:33.23 ID:rSZ8hwwH0

起こしてしまったら律に悪いし、かといってこの心のさざめきが収まる気配もない。
おまけに喉も渇いてきた。

(仕方ないなあ……)

そっと立ち上がり、部屋を出る。
ケータイの明かりを頼りに廊下を進み、台所へ向かう。

「…………んっ」

コップに水を注ぎ一口飲むと、心が洗われていくような気がした。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:26:35.43 ID:rSZ8hwwH0

(もうちょっとだけ……)

「わっ!」

「ぶふっ?!」

突然の背後からの襲撃。振り返る暇もなく、思わず水を噴き出してしまった。

「かはっ……げほごほがほっ……!」

「え、澪ちゃん?!だっ大丈夫?!」

背中に暖かい手の感触を感じたけれど、今はそんな事を気にする余裕はなくて。

(きっ気管に入った………!!)

「もう大丈夫だから、落ち着いて……!」

私は驚く暇もなく、ただ悶え苦しんでいたのだった。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:27:18.39 ID:rSZ8hwwH0

………………………

「けほっ、はぁっ、はぁ……」

しばらく背中を擦られたおかげで、ようやくまともに息ができるようになった。
心臓はまだバクバクしてるけれど。

「ごめんね澪ちゃん……本当に大丈夫?」

「……うん。ちょっと驚いただけだから、気にしないでよ」

そんなすまなそうな声を聞かされて、怒れるわけないだろ?
ふっと肩の力が抜ける。
私は声の主―――ムギに、改めて向き直った。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:28:22.70 ID:rSZ8hwwH0

澪「で、ムギはどうしてここに……?」

紬「なんだかすっきり眠れなくて、お水をもらいに来たの。そしたら誰かいたから、驚かせてみようと思って……本当にごめんね?」

澪「だから、もう気にしてないって。それより、水いいのか?」

紬「もういいの。今ので完璧に目が冴えちゃった」

澪「そっか」

澪(なんということでしょう。昼間かなりはしゃいでたのに、このムギ、ノリノリである)



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:29:41.56 ID:rSZ8hwwH0

紬「ところで、時に澪ちゃん?」

澪「なに?」

紬「澪ちゃんも眠れないの?」

澪「まあね。ムギと一緒」

紬「事後?」

澪「ん……え?」

紬「やっ澪ちゃん……ダメよこんなところで……!」

澪「き、きわどい発言はやめろ!何もしてないからな?!」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:31:01.77 ID:rSZ8hwwH0

紬「なんちゃって☆」

澪「ぶふっ!」

紬「澪ちゃん?!」

澪「ぷ……くく……何でもない……何でもない、から……」

澪(わ、私は何と戦っているんだ……!)



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:31:59.76 ID:rSZ8hwwH0

紬「うーん……せっかく澪ちゃんに叩いてもらえるいいチャンスだと思ったのに」ブツブツ

澪「ゑ?」

紬「なんでもないわ。それより私、澪ちゃんにお願いがあるんだけど」

澪「お願い?」

紬「私、もっと澪ちゃんとおしゃべりがしたいの」

澪「おしゃべり?私は全然かまわないけど」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:33:02.90 ID:rSZ8hwwH0

紬「外で」

澪「外で?!」

紬「家の中だとみんな寝てるし、起こしたらいけないと思って」

澪「確かに……そうだけど」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:33:57.27 ID:rSZ8hwwH0

紬「それに、お散歩にもなるでしょう?私、一度夜の街歩いてみるの、夢だったの」

澪「うーん……私も歌詞作りに行き詰まった時によく行くし、いいよ。
  私でいいなら、ムギの夢、協力する」

紬「本当?!ありがとう、澪ちゃん!」ギュッ

澪「わっ!?もう、大げさだなあ」

澪(大丈夫だよね。今までも危なくなかったし、ムギが一緒だし……)



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:35:15.88 ID:rSZ8hwwH0

澪「それじゃあ、とりあえずコート着て……どこから出ようか?」

紬「それなら心配ないわ。ちゃんと脱出ルートは見つけてあるから」

澪「脱出ルート?」

紬「ほら、あそこに」

澪「……」

澪(なんで?!なんで梓と唯は抱きあって寝てるの?!)



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:35:57.70 ID:rSZ8hwwH0

澪(しかも服めちゃくちゃだし、カーテン開いてて外から丸見えなんだけど?!)

澪「ねえムギ、あれ」

紬「早く出ましょう♪」

澪「……うん」

澪(何も見なかった。うん、何も見なかった)

カラカラ……



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:37:01.68 ID:rSZ8hwwH0

紬「ふわぁ……すごい……」

澪「どうしたの?」

紬「人もいないし、車も全然走ってない……」

澪「だろ?空気も透き通ってるし、なんかすっきりしない?」

紬「本当ね!まるで違う世界にいるみたい……」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:38:05.75 ID:rSZ8hwwH0

澪「うん……私、この雰囲気が好きなんだ。
  この広い世界のなかに、ひとりきり、って感じがして」

紬「澪ちゃん、それは違うわ」

澪「へっ?」

紬「……ふたりきり、でしょ?今は」

澪「!」ドキッ



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:38:54.82 ID:rSZ8hwwH0

紬「……………」

澪「……………」

紬「……なんちゃって☆」

澪「なっ//」

紬「うふふ、澪ちゃん顔真っ赤」

澪「うう……からかうなら置いてくからな!」ダッ

紬「あっ、澪ちゃん待ってー!」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:39:25.88 ID:rSZ8hwwH0

………………

澪「はあ……はあ……つ、疲れた……」

紬「これは……来るわね……」

澪「最近全然運動してないからかな……余計に……」

紬「身体が……重い……」

澪「」

紬「」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:41:06.46 ID:rSZ8hwwH0

澪「と、とりあえずさ、そこに公園あるし、休んでかないか?!」

紬「そ、そうね!結構動き回ったからね!」

澪「ははは……わあ、ブランコ。懐かしいなあ!」

紬「私も乗る~♪」

澪「あははははは♪」

紬「うふふふふふ♪」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:41:55.47 ID:rSZ8hwwH0

澪「…………………」

紬「…………………」

澪「……………ムギ」

紬「……………うん」

澪「………何キロ、増えた?」



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:44:34.59 ID:rSZ8hwwH0

紬「……私は、『全力回避』キロ、かな……」

澪「私なんて、『訴訟不可避』キロ……」

紬「……………」

澪「これが現実か……」

紬「……ずるい」

澪「ゑ?」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:47:06.47 ID:rSZ8hwwH0

紬「ずるいずるいずるい!いくら食べても増えないなんて!」ガシッ

澪「ひぎいいいっ?!」

紬「たいして動くの好きじゃなくて、
  いつもアイス食べながらゴロゴロしてるのに増えないなんてぇっ!!」ギリギリ

澪「ちょっ、ムギキャラ違っあああああっ!腕ぇぇぇぇっ!
  ギブ!ギブギブううう!」バンバン

紬「はっ?!ああっ澪ちゃんごめんなさい!」

澪「ふう……いいよ、ムギの言うことすごくわかるし……。
  確かにずるいよな。あいつ」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:48:12.03 ID:rSZ8hwwH0

紬「やけに投げやりね」

澪「……だって、最近何もしてないのに増えてたし」

紬「……………」

?「青春だねえ、お嬢ちゃんたち」

澪「ひいっ?!?!」

?「ちょっとちょっと、おじさんオバケじゃないよ。
  ほら、ちゃんと足もあるでしょ」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:49:36.09 ID:rSZ8hwwH0

紬「あの、あなたは……?」

?「そこのワゴンで営業中の、しがないドーナツ屋さん。
  新作の研究中で、余っちゃってさ。1つ、食べてみない?」

紬「えっと、お気持ちはありがたいんですけど……」

澪「……いただきます」

紬「」

澪「はむ……んっ、おいしいですね!」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:50:30.16 ID:rSZ8hwwH0

?「でしょ?リングのハートは愛あるしるし!なんてね。グハッ!」

澪「ほんと、こんなおいしいドーナツ食べたことない……ムギも食べなよ?」

紬「ダイエット……」

澪「いいから!ムギも私と同じ末路を辿れ!」グイッ

紬「ひいっ、澪ちゃんが壊れむぐっ?!むーっ!!」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:51:50.28 ID:rSZ8hwwH0

澪「あはは。そんなに騒いだって、顔はすごく悦んでるぞ?全く、ムギは素直じゃないなあ」

紬「むぐ……む、おいしいわ。いろいろな意味で」

?「お嬢ちゃんたち、仲がいいんだねえ」

澪「はい、クラスも部活も同じなんです」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:52:58.31 ID:rSZ8hwwH0

?「へえ、部活は何してるの?」

澪「軽音部です」

紬「放課後ティータイムって、バンドをやってます」

?「バンドか~。名前からして、お茶会とかやってたりして」

澪「はい。この子……ムギがいつもおいしい紅茶とかお菓子とか持ってきてくれて」

紬「でも澪ちゃん、そのわりにもっと練習がしたいって、いつも言うんですよ?」

澪「ちょっと、ムギ!」



37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 12:59:18.99 ID:rSZ8hwwH0

?「あはは……いいねえ、若さって。ちょっと待っててね」

紬「?」

?「やあ、お待たせ。おいしい話聞かせてもらったからね。これ、サービスのドリンク」

澪「いやいや、初対面なのにこんなによくしてもらうなんて」

?「いいのいいの。疲れた時は甘い物が一番でしょ?ダイエットにもいいし、試してみてよ」

紬「そうですか?じゃあ、お言葉に甘えて……」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:02:02.18 ID:rSZ8hwwH0

?「お味はどう?」

紬「んっ……甘くて……なんだか、心の奥まで染み渡る感じ」

澪「本当。しっとりしてて、それでいてべたつかない、すっきりした甘さだな」

?「それはよかった。ダイエットもいいけど、こんなおいしい物まで我慢してたら損だよ?」

紬「!」

?「いろいろ我慢してると、どうしても無理しちゃうからね。それは体にも心にも毒だし」

澪「………」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:03:15.83 ID:rSZ8hwwH0

?「……なんか湿っぽくなっちゃったけどさ。
  今度はもっと楽しい話、いろいろ聞かせに来てよ。ね?」

紬「……はい!ありがとうございます!」

澪「それじゃあ、この辺で失礼します。絶対、また来ますね!」

……………

?「青春だねえ……」

?「おっといけね、ついクサいセリフになっちゃったよ」

?「まあ、おじさんの靴下はもっとクサいけどね。グハッ!
  ……さてと、仕事仕事」

…………………



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:04:51.10 ID:rSZ8hwwH0

紬「なんか、不思議な人だったね」

澪「え?」

紬「だって、とっても人見知りする澪ちゃんがあんな自然に話せてたんだもん」

澪「私はそんなにひどくないぞ?」

紬「え?だってあの人に話しかけられてびっくりしてたじゃない。
  それに、あの人結構強面だったし」

澪「それは……こんな夜中にいきなり話しかけられたら、
  誰だってびっくりするだろ」

紬「そんな澪ちゃんも可愛かったけどね」

澪「……ばか」



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:06:31.55 ID:rSZ8hwwH0

紬「冗談よ。それでも澪ちゃん、ドーナツに真っ先に食いついたでしょ?」

澪「うん」

紬「初対面で、話も聞いてないのに、全然警戒心抱かせなかったって不思議じゃない?」

澪「ああ。絶対に悪い人じゃない、って感じたのは確かなんだけど……」

♪会いたかった 寂しかった でも……

澪「あ、電話。……先生から?」



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:08:09.93 ID:rSZ8hwwH0

紬「こんな時間に何かしらね?」

澪「なんか、やな予感がするけど……もしもし?」

?「たっ助けてくれ!!」

澪「?!(男の声?!)」

紬「?!?!」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:09:07.40 ID:rSZ8hwwH0

澪「どっどうしました?!いったい何が」

?「どうしたもこうしたも、この女がっあああああっ!!」

澪「?!」

?「とっ、突然猫の耳を取り出したと思ったら、俺の服をっうぉぉあああっ!!」

紬(キマシタワー!!!)

澪(先生ぇぇぇぇぇぇ!!)



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:17:46.60 ID:rSZ8hwwH0

?「とっとにかく助けてくれ!!このままじゃあいつの尋問より惨いことにっあっ!!」

さわ「はやとくんってばぁ、なんでにげるのぉ……?夜はまだまだ長いのよ……」

?「ひぃいいいいっ!くっ来るなぁぁぁッ!!」

さわ「……今夜は、寝かさないんだから」

?「うおぁああああっ!!ふっ不幸だっアッー!!!」

………………………



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:19:32.63 ID:rSZ8hwwH0

澪「……先生ぇ……」

紬「……お取り込み中だったみたいね」

澪「うん……相手が私たちでよかったな、これ」

紬「えっ?」

澪「聞かれたのが、ってことだよ」

紬「ああ、唯ちゃんやりっちゃんに聞かれたら、しばらくからかわれそうだもんね」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:21:09.94 ID:rSZ8hwwH0

澪「先生って恋愛沙汰でいい話聞かないからな」

紬「見た目は美人なのにね?」

澪「やっぱり、性格かなあ」

紬「でも、私は先生のこと、すごいと思う」

澪「何が?」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:32:03.05 ID:rSZ8hwwH0

紬「男の人に積極的にアタックできるところ。私にはマネできないもん」

澪「あー……確かに私も無理かな。ちょっと怖い」

紬「えー?でも、澪ちゃんならわりと簡単にできそうだけどね。彼氏さん」

澪「なんでだよ?」

紬「可愛いじゃない」

澪「……」

紬「クールな見た目で中身は乙女チック。そんなギャップが可愛いのにな」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:33:19.48 ID:rSZ8hwwH0

澪「……そういうムギこそ、男がほっとかなさそうだよ」

紬「ふぇっ?!」

澪「ぽわぽわしてて可愛いし世話好きだし、話上手で聞き上手だし」

紬「そ、そんな」アタフタ

澪「いかにも優しいお姉さん、って感じだもん」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:34:43.95 ID:rSZ8hwwH0

紬「澪ちゃんっ!!」

澪「はい?!」

紬「お姉ちゃんって呼んでみてっ!!」

澪「お、お姉ちゃん?」

紬「むぎゅうううううううう!!」グラッ

澪「?!」

紬「……我が生涯に、一片の悔いなし……」ガクッ

澪「お姉ちゃぁあああああん!!」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:36:48.09 ID:rSZ8hwwH0

………………………

紬「ん……?」

澪「あ、ムギ!気分はどう?」

紬「うん……なんとか。運んでくれてありがと、澪ちゃん」

澪「はは、いいって。突然倒れてびっくりしたけどね」

紬「だって、澪ちゃんがあんな事言うから……」

澪「あんな事って、お姉ちゃんって呼んだ事?」

紬「う」



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:40:19.43 ID:rSZ8hwwH0

澪「?」

紬「いきなりは……ずるい……」

澪「え?何?」

紬「なんでもない!」

澪「そ、そう……」

澪(なんだったんだろ?)



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:41:53.11 ID:rSZ8hwwH0

澪「それより、もし疲れたんなら、そろそろ引き返すか?」

紬「うーん、そんなに疲れてはいないし、どこか建物の中に行きたいな」

澪「近くの、まだ開いてる建物……あっ」

紬「?」



60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:44:17.70 ID:rSZ8hwwH0

………………………

某大手チェーンのレンタルビデオショップ

紬「あったか~♪」

澪「こんな時間でも開いてるもんだな」

紬「わたし、真夜中にこういうお店に来てみたかったの~」

澪「そう?それじゃ、いろいろ見てくか!」

紬「いぇす!」



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:45:36.41 ID:rSZ8hwwH0

澪「ムギってどんなのが好きなんだ?曲とか、ドラマとか」

紬「んー、そうねえ……あ、これ!」

澪「これ?」

紬「そう!《茶店部シリーズ》の『消化』ってドラマ♪」

澪「ああ、原作の小説は読んだことあるよ」

紬「私はドラマから。もも姉が主演って聞いて、気になって見始めたらハマっちゃったの」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:51:48.15 ID:rSZ8hwwH0

澪「もも姉って……確か、現役高校生カリスマモデルの?」

紬「好きなの!ファンなの!だからそう呼んでるの!」

澪「い、意外だな」

澪(むしろ予想外だよ)

澪「そ、それでどんなところが好きなの?」

紬「最後の方で黒幕に『私、血になりました!』って叫ぶんだけどね、
  いつも途中で噛んじゃうの!なんか安っぽいグダグダな感じが最高なの!!」

澪「」

澪(私の知ってる話と違う)



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:52:28.60 ID:rSZ8hwwH0

紬「今度、DVD見せてあげるね!」

澪「せ、せやな……」

澪(むしろ唯に勧めた方が間違いなくハマるだろうな)

紬「で、澪ちゃんのオススメは?」

澪「私?えーっと……」



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:54:31.82 ID:rSZ8hwwH0

紬「澪ちゃんの事だから、案外魔法少女もののアニメとか出てきそうね」

澪「はずれ。っていうか、どういうイメージだそれ」

紬「むむむ。あんなに乙女チックな歌詞が浮かぶくらいだもん。
  そういうのに憧れてると思ったのに」

澪「(遠からず当たってるのが憎い……)
   あ、これこれ!『Trinity』の最新ライブDVD!」

紬「へぇ~、澪ちゃんこういうのも見るんだ」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:55:52.12 ID:rSZ8hwwH0

澪「最近ハマったんだけどな。ダンスのキレがすごくて、とても高校生とは思えないよ」

紬「高校生?!」

澪「ああ。メンバー全員同級生なんだ。
  メジャーになった今でも、地元でよくライブしてるんだって」

紬「てっきりもっと年上だと思ったわ」

澪「あー……」

?「あの、すいません!」

澪「?」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 13:59:05.87 ID:rSZ8hwwH0

紬「何かしら?」

?「その『Trinity』のライブDVD、先に借りてもいいですか?!」

??「すみません。私たちダンスやってるんですけど、そのDVDが明日どうしても必要なんです」

?「これ以上待たせたらミキたんに怒られちゃう……」

??「もう。連休だからって宿題全然してないから、こんなドタバタする事になるのよ」

?「だって~……」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:00:28.65 ID:rSZ8hwwH0

紬「まぁまぁ」

澪「私も急ぎじゃないし、これどうぞ?」

?「わはっ、ありがとうございます!!急ご、せつな!」

??「あっ!ちょっと、待ってってばぁ!」

澪「……すごいエネルギーだ……」



71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:01:31.38 ID:rSZ8hwwH0

紬「りっちゃんと澪ちゃんみたいだったね」

澪「そうかなぁ?どっちかって言えば唯と和だと思うんだけど」

紬「どっちも羨ましいわ。……私には、そういう人がいないから」

澪「ムギ……?」



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:02:22.39 ID:rSZ8hwwH0

紬「……なんてね。お金もないし、そろそろ出ましょう」

澪「あ、あぁ」

紬「ところで、このあとどうする?」

澪「うーん……結構歩いたよな……
  距離的にはぼちぼち引き返すべきなんだけど」

紬「?」

澪「最後にちょっと寄りたい所があるんだ。ついてきて?」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:07:12.89 ID:rSZ8hwwH0

…………………

紬「ふわぁぁ……」

澪「最近見つけたんだけど、どうかな?」

紬「素敵……街の明かりがあんなに……」

澪「だろ?ここの丘、ちょうど街を見下ろせる所だから」

紬「本当ね!だって、サイレンの光までくっきり見えるんだもん」

澪「……サイレン?」



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:08:10.86 ID:rSZ8hwwH0

紬「ほらあそこの、赤いの」

澪「まずっ……!!」

紬「まぁまぁ澪ちゃん、落ち着いて」

澪「落ち着くも何も、さすがに警察は――!!」

紬「よく聞いて?……このサイレンの音、救急車のよ」

澪「………………」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:09:18.88 ID:rSZ8hwwH0

紬「もーっ!澪ちゃんってば、慌てんぼさんなんだから~」コノコノ

澪「…………………」

紬「……澪ちゃん?」

澪「……脅かさないでよぉ……」ヘナッ

紬(可愛い――!!)キュンキュン

紬「あ、安心して?もし澪ちゃんが危ない目に遭っても、私が絶対に守るから」



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:12:21.03 ID:rSZ8hwwH0

澪「ほんと?」

紬「ほんとにほんと。何があっても、最後の最後まで守り抜いてみせるわ」

澪「……どうして、そこまでしてくれるんだ?」

紬「それはね……澪ちゃん。
  ……あなたの事が好き。大好き。――ううん、愛してるから」

澪「え……えぇっ?!」



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:13:23.99 ID:rSZ8hwwH0

紬「大好きな人には、いつだって笑っていてほしいもの」

澪「ででででもわっ私女だし、その想いはちょっと重いっていうか困るっていうかっ」

紬「………………」グス

澪「わっ?!泣くなって!もっもちろんムギが嫌いなわけじゃないしっ、
  むしろ好きだし、だからこそもう少し建設的にだな……」

紬「……ぷふっ」

澪「へっ?」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:15:27.73 ID:rSZ8hwwH0

紬「あははっ、ごめんなさい!反応が可愛くて、つい……ふふっ」クスッ

澪「は、図ったな?!」

紬「ううん、違うの!そういうことじゃなくて、純粋でいいなー、って思って」

澪「純粋?」

紬「ほら、澪ちゃんってかなりストレートに物事を受け止めるじゃない」



84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:16:28.96 ID:rSZ8hwwH0

澪「言われてみれば、そうだけど……そのせいでよく貧乏くじ引くし、損な事ばかりだぞ」

紬「そう?どんな事でも真剣になれるって、素敵なことだと思うけど」

澪「逆だよ。馬鹿正直に考えすぎて、先に進めない時だらけでさ」

紬「…………」

澪「変えたいと思ってるんだ。でも、結局変えられなくてさ……時々、こんな自分が嫌になる」

紬「――えいっ」ぎゅーっ

澪「むぎゅっ?!」



85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:17:38.84 ID:rSZ8hwwH0

紬「いいのよ、そのままで。気に病む必要なんて全然ないわ」

澪「……でも」

紬「大丈夫……私がついてるから。言ったでしょ?何があっても、絶対に守るって」

澪「…………」

紬「私が好きなのは、いつもクールで真剣で、時折見せる子供っぽさが可愛い、とてもまっすぐな女の子なの――」

紬「――だからお願い。そんな素敵な子、嫌いにならないであげて」

澪「……ありがと」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:18:50.25 ID:rSZ8hwwH0

紬「どういたしまして。こんな私のアドバイスでも、役に立つなら嬉しいな」

澪「十分すぎだよ!すごく落ち着いたし……やっぱり、ムギはすごいな」

紬「そんな、全然……それを言ったら、りっちゃんの方がずっとすごいよ」

澪「へ?律?」

紬「ほんとに羨ましいの。いつも隣にいるのが当たり前で、
  澪ちゃんの事ならなんでも知ってる――幼馴染みがね」



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:19:28.77 ID:rSZ8hwwH0

澪「……うーん、美化しすぎじゃないか?そんな恋人みたいな奴じゃないってば」

紬「そんなことないよ。私の知らない澪ちゃんをいっぱい知ってて、それを自然に引き出せるんだもん」

澪「……」

紬「澪ちゃんとりっちゃんの仲良しは見てて楽しいんだけど。仲良しすぎるぶん、余計に……ね」

澪「……ごめん」

紬「え?」



88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:20:03.96 ID:rSZ8hwwH0

澪「こんなに私のこと考えてくれてるのに、何も返せなくて」

紬「いいの、気にしないで?私が勝手にお節介焼いてるだけだから」

澪「でも!私のこと大好きだって、守ってくれるって言ってくれて……嬉しかった」

澪「だから私も、ムギに何かしてあげたい」

紬「うーん……」



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:20:43.63 ID:rSZ8hwwH0

澪「お願い!私の気が済まないんだ、何かさせて!何でもするから!」

紬「……ホントに?」

澪「あ、ああ」

紬「じゃあ……して?」

澪「してって、何を――わぁっ!?」

澪(ム、ムギがいつの間に、こんな近くに……!)



94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:21:43.20 ID:rSZ8hwwH0

紬「もう、わかってるくせに……澪ちゃんのいけず」

澪「あ、あのなムギ、こういうことはだな」

紬「んー?さっき何でもするって言ったよね?」

澪「言ったけど……でも……」

澪(うう……ムギの身体、あったかくて、絡み付いてきて……)



95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:24:14.30 ID:rSZ8hwwH0

紬「……おねがい」スル

澪「あ……ああっ……」

紬「ね、澪ちゃん……いいでしょ……」スッ……

澪「っ……そんな、待ってっ、心の準備が――」







紬「……でこぴん、くらい」

澪「―――はい?」



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:25:23.92 ID:rSZ8hwwH0

紬「でこぴん、して?」

澪「……デコ、ピン?」

紬「そ。でこぴん」

澪「………………」

紬「………………」

澪「……………ぷっ」

紬「…………あれ?」

澪「くっ、あははははははっ!」

紬「?!」



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:26:17.20 ID:rSZ8hwwH0

澪「あははははっ……ははは……」

紬「……あの」

澪「………………」

紬「……澪ちゃん?」









澪「……バカぁぁぁぁっ!!」ピシィィィィィッ

紬「あいたーっ!」



98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:26:49.61 ID:rSZ8hwwH0

…………………………

澪「まったく……ムギの冗談は心臓に悪いよ」

紬「ごめんなさい……。でも、結構真剣だったのよ?」

澪「だからって、あんな迫り方はないだろ」

紬「あら?私は何がしたいって言わなかったのに、先走ったのは澪ちゃんじゃない」

澪「それは……だって」



99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:27:40.46 ID:rSZ8hwwH0

紬「『そんな、待ってっ、心の準備が――!』」

澪「なっ!!」

紬「うふふ、可愛かったわ♪」

澪「うう……ムギ、ずるいよ……」

紬「いいじゃない、今夜くらいは……ね?」ツン

澪「……ま、そうだな」



101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:28:49.12 ID:rSZ8hwwH0

紬「………………」

澪「………………」

紬「……そろそろ、着いちゃうね」

澪「……うん」

紬「楽しかった。楽しくて楽しくて……ずっと歩いてたいくらい」

澪「私も――ムギが隣にいたから、こんなに楽しい夜が過ごせたんだと思う」

紬「澪ちゃん……」



102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:29:37.78 ID:rSZ8hwwH0

澪「これから受験で、どうなるかわからないけどさ」

紬「……うん」

澪「私は……離れたくない。この先何があっても、ムギと一緒にいたい」

紬「……私も!ずっと澪ちゃんのそばにいたい!」ぎゅーっ

澪「わっ?!だから、そんなにくっつかなくても!」



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:30:31.44 ID:rSZ8hwwH0

紬「えーっ?恥ずかしがることないじゃない~」

澪「そういうことじゃなくてだな……」

紬「でも、こうしたほうがあったかいでしょ?」

澪「……イエローカード!」ピシッ

紬「あうっ、そんなぁ」

澪「……なんてね。『お姉ちゃん』」

紬「……~~っっ//」



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:32:14.83 ID:rSZ8hwwH0

…………………………

澪「やれやれ、なんとか着いたな」

紬「お疲れ様、澪ちゃん」

澪「ムギこそ、お疲れ様」

紬「また、歩こうね」

澪「もちろん。いつでもいいよ」

紬「えへへ、ありがとっ!」

澪「さて、それじゃ中に……」

ガチャッ

澪「……ん?」



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:32:45.98 ID:rSZ8hwwH0

紬「どうしたの?」

澪「いや……その……」

ガチャガチャ

澪「……………」

紬「…………まさか?」

澪「……その、まさか」

紬「……………」



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:33:32.26 ID:rSZ8hwwH0

澪「………自分ちなのに、なんで……どうして……!」

紬「……まだよ、澪ちゃん」

澪「え?」

紬「まだ残されているはずよ。どんな絶望でも跳ね返す、最後の光が」スッ

澪「……ケータイ、か……!」



107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:34:50.97 ID:rSZ8hwwH0

紬「私たちならできる。今までだって、そうやって乗り越えてきた……そうでしょう?」

澪「ああ……ああ!」

紬「行くわよ、澪ちゃん!」

澪「うん!
  じゃあ、とりあえず私は梓にかけるから――」

紬「チェインジ!プリキュアッ!ビートアァーップッ!」

澪「いや違うでしょ、って、なんで私までえぇーっ?!」

おわる!



112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/29(木) 14:40:43.10 ID:rSZ8hwwH0

ゴールドハートは実りのしるし!
刈りたてフレッシュ!キュアブレッド!

って感じです。読んでくださってありがとうございました。


元スレ
澪「あなたが隣にいる夜」