1: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:34:03.92 ID:K1agPhNS.net
4/17が曜の誕生日であると同時に姫乃の誕生日だということから思いついた話です
前半は姫乃側、後半は曜側
姫乃側と曜側は同じ時間のほぼ別のストーリーです
2: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:36:28.43 ID:K1agPhNS.net
※一部変えてはいますが、マイクなどの設定はヒプノシスマイクからの流用です
※一部キャラディス要素を含みます。キャラディスが苦手な方、キャラ同士のディスが苦手な人にはおすすめできません
※後半(曜側)はオリキャラ(名無し)が出る予定
※ラップ部分は各自いい感じのリズムで読んでもらえると助かります
※作中の時期は4月なので本来ならニジガクもAqoursもできたばかりなのですが、すでにどちらもかなりの期間活動しています。サザエさん時空的なものだと思ってください
※スイス、日本、八丈島は実在する地名とは関係ありません
【HIMENO SIDE】
~4月16日(誕生日前日) 22:00~
~綾小路家~
姫乃「うーん、かかってこないですね…電話」
姫乃「はぁ…」
姫乃(なんでしょうか…この状況)
姫乃(とりあえず、今は待ちましょう)
姫乃(…話は少し前にさかのぼります)
~4月16日 21:00~
~綾小路家~
姫乃(ここ数週間、書いては消してを繰り返したメール…結局送れませんでした)
姫乃(果林さんに『私の誕生日、一緒に過ごしてほしい』とそれを伝えるだけの文章なのに…)
姫乃(前日の夜9時になってしまった)
姫乃(もう、今からメールでは…)
姫乃(こうなったら電話ですかね…)
姫乃(しかし…)
姫乃(いや、電話でも遅い時間ですし、やめに…)
姫乃「って何ですか!その弱気な思考は!」ブンブン
姫乃「私は綾小路姫乃なんですよ!ダイバーフェスに果林さんを誘った時の強キャラ感を思い出すんです!」
姫乃「まずは連絡先画面を出す!」
姫乃「そして、あ、さ、か…果林さんを検索!」
姫乃「あとは…この数字を触れば…触れば…」
姫乃「触れば…触れば…触る触るさわるさわる…」
姫乃「………」
姫乃「………………」
姫乃「…ちょっと一息入れますか」ポチッ
姫乃「あ…」
『朝香果林さん♡ に 発信しています』
姫乃「あああああ!かかって…」
果林『もしもし、姫乃ちゃん?どうかしたの?』
姫乃(こんなときに限ってワンコール取りですか!?)
姫乃「あ、あわわわ」
果林『泡?泡がどうかしたの?』
姫乃「その間違いまし…」
姫乃(だめです!勇気を出すんです!綾小路姫乃!)
姫乃「あの!!!夜分遅くすみませにゅ!」
果林『ど、どうかしたの?姫乃ちゃん…』
姫乃(噛んだぁぁぁぁぁ!いえ、落ち着き、落ち着きましょう!)
姫乃(まずは深呼吸です)スゥゥゥハァァァァ
姫乃「…失礼しました。果林さん、今お電話よろしいでしょうか?」
果林『ふふっ、大丈夫よ』
姫乃「実は私、明日誕生日でして…」
果林『え、明日!?』
姫乃「…どうかされましたか?」
果林『あ、いいえ…そうか明日なのね。おめでとう』
姫乃「それで…ですね…」
姫乃(がんばれ!姫乃!)
姫乃「えっと、ですね…藤黄の方々と出かけるつもりだったのですが、皆さん急用ができてしまいまして!」
姫乃(嘘ですけどね!むしろ、皆さん私の誕生日を覚えていて予定を空けてくれていたのを私が断りました)
姫乃「その…誕生日の予定がすっぽり空いてしまいまして…」
姫乃「果林さんさえよろしければ、明日どこかへ行きませんか!」
果林『明日…ね…』
姫乃「あ、もちろん果林さんのご都合優先ですし!前日に言うことではないのですが!とにかく一緒にいてくれませんか!」
姫乃「………」
姫乃(あああああああ!!私のバカあああ!気持ちが先行しすぎておかしなことになってます)
果林『…えっと、ごめんなさい』
果林『明日はその…』
姫乃「そ、そうですか!すみません!」
果林『あ、待って!もしかしたら時間あるかも…』
果林『ここを出る時間から…えーっと』
姫乃(果林さん…急な申し出にも関わらず時間の調整を…神です…神対応です)
果林『うーん、あ!そうだ!エマ ーーー!』
姫乃(………ん?)
果林『あ、ごめんなさい。かけ直すから少し待ってて』
~4月16日 22:05~
~綾小路家~
姫乃(あれから1時間…)
姫乃(なんでこんな時間に果林さんとスイスが一緒にいるかは気になりますが、とにかく明日のことを考えましょう)
♪タリナイワーボリュムアゲーテ
姫乃(果林さんから!!!!)
姫乃「はい!お待ちしてました!」
果林『えっと…姫乃ちゃん、明日なんだけど夕方からでもオーケーかしら?』
姫乃「はい!もちろんです!」
果林『でね、時間なんだけど…電車とか船の都合とかもあるし、はっきりとは言えないけど、17時くらいってことでいいかしら?』
姫乃「電車はともかく船…ですか?」
果林『ちょっとその…今、静岡にいるのよ』
姫乃「シズオカ?」
果林『そうなの、実は知り合いにもう一人明日が誕生日の子がいて、ニジガクのみんなでその子のお祝いをするために静岡にきてるの』
姫乃「そうなのですか。何だか奇妙な偶然ですね」
果林『知ってるかしら?Aqoursの渡辺曜って子なんだけど』
姫乃「Aqours、聞いたことがあります…確か沼津の浦の星女学院のスクールアイドルですね」
姫乃(ニジガクの交友関係は私が思うより広いということですか)
果林『でね、せっかくだから沼津に前泊しようってことになって、今沼津なのよ』
姫乃「あ、もしかして、先程スイ…エマ・ヴェルデさんがいたのは」
果林『ええ、同じ部屋に泊まってるの』
姫乃(スイス…またしても立場を利用して果林さんの周りをうろちょろと)
果林『でね、エマによると沼津からなら早めに出れば夕方には戻れるらしいし、それで姫乃ちゃんに会おうかなと思うのだけど?いいかしら?』
姫乃「はい、それでお願いします」
果林『じゃあ、明日ね。そっちに着く時間がわかったら連絡するからよろしくね』
姫乃「ありがとうございます。明日楽しみにしてます」
姫乃「ふう…」
姫乃「…………」
姫乃「やりましたたあああ!!」
姫乃(明日は人生最高の誕生日になりそうです)
姫乃(あああ…勇気を出してよかったです…)
姫乃「そういえば、明日はAqoursの渡辺曜さんの誕生日からこちらに来るんですよね」
姫乃「渡辺曜さんの話題になるかもしれないですし、予習しておきましょう」
姫乃「他のスクールアイドルの情報を集めるのは藤黄にとってもプラスになりますからね」
~4月16日 23:00~
~綾小路家~
姫乃「………」
姫乃(軽い気持ちで予習などと言い出したことを私は後悔していた)
姫乃「なんですか…これ」
姫乃「これが、私と同じ日に生まれた人…」
姫乃(一言で言うなら…渡辺曜は"化け物"だった)
姫乃(ライブ映像を見たが、レベルが桁違いだ)
姫乃(ダンスや歌の上手さなら渡辺曜以上の人など何人もいる…だが、これほどまでに人を惹きつけるスクールアイドルを私は知らない)
姫乃(自分が目立つだけじゃない、近くに目立つべきメンバーがいればその人が目立つように動く)
姫乃(MCでは会場をあたため、メンバーのミスにもすかさずフォローを入れる)
姫乃(渡辺曜の存在が、Aqoursのステージを何倍にも魅力的にしていた)
姫乃「それだけじゃないです…」
姫乃「ニジガクの方々が最近はじめたスクールアイドルチャンネル-その1位が…」
姫乃「渡辺曜…」
姫乃「というか…あのせつ菜さんとそのファンが全力でまくったにもかかわらず2位って…」
姫乃「しかも、私と誕生日が同じってことは今週はもう誕生日補正で勝ち確じゃないですか…」
姫乃「渡辺曜に罪はないのですが…これはもはや出来レースとしか言えないです」
姫乃(これほどまでの人物であれば、ニジガクの皆さんがわざわざ沼津まで行って誕生日祝いをするのも納得です)
姫乃(…寝ましょう)
姫乃(これ以上は多分精神的によろしくないです)
~4月17日(誕生日当日) 6:00~
~綾小路家~
姫乃「ん…んん」
姫乃「…朝…ですね」
姫乃(昨日見た渡辺曜のライブ映像が頭から離れない)
姫乃(私もスクールアイドルだからわかる…あれは異質だ)
姫乃("高飛び込みの天才"…何を思ったかその評価を蹴ってまで渡辺曜はスクールアイドルを始めたらしい)
姫乃「こっちはスクールアイドルだけでもいっぱいいっぱいなのに…やはり天才というのはいるものですね」
姫乃「落ち込んでても仕方ないです」
姫乃「果林さんが祝ってくれる初めての誕生日、最高の日にしましょう!」
~4月17日 11:00~
~綾小路家周辺~
姫乃(…と、そんな感じで始まった17歳の誕生日)
姫乃(両親からのプレゼントをもらって、ファンの方々からのお祝いメッセージにお返事を書いて、美咲さんにそれとなく今日は果林さんと会えることを自慢して)
姫乃(…やることが無くなりました)
姫乃(普段なら他のスクールアイドルの情報を集めたりするのですが…)
姫乃(今日は気分がいまいち晴れないので散歩がてら家のまわりをぶらつくことにしました)
姫乃「渡辺曜…」
姫乃(昨日見た渡辺曜の姿が心から離れない)
姫乃(私と同じ日に生まれ、私とは圧倒的にかけ離れた才能をもつ天才スクールアイドル)
姫乃(調べたところ、そんな渡辺曜とグループを組んでいるAqoursのメンバーも私たち庶民とは段違いのスーパーな方々らしい)
姫乃(まずはAqoursのリーダー、高海千歌…彼女は地元の老舗旅館の娘で、あの渡辺曜が最高の友人と言うほどの人物らしい)
姫乃(一説によると、渡辺曜が飛び込みを蹴ってまでスクールアイドルを始めたのは高海千歌の存在が大きかったとか)
姫乃(人生を変えるほどの魅力があるリーダー…やはりただものではないのだろう)
姫乃(桜内梨子…彼女は幼少よりピアノの才能を発揮し、自ら曲を作って披露することもあったらしい)
姫乃(控えめに評価しても天才ピアニストだ)
姫乃(松浦果南…高校生離れした体力とパワーの持ち主である)
姫乃(噂によると素手で鉄パイプをねじ切ることができるとか…彼女の機嫌を損ねると指の爪をすべて剥がされるとか…どこまで本当かは怪しいが)
姫乃(黒澤ダイヤ・ルビィ姉妹…地元の名家、というと聞こえがいいが実質はヤで始まるお家の御令嬢らしい)
姫乃(姉妹ともに熱心なスクールアイドルファンであり、それで自身もスクールアイドルになったらしいですが…そんな家とも結びついているAqours、恐ろしいグループである)
姫乃(津島善子…彼女にはもう一つの顔がある)
姫乃(堕天使ヨハネ、えがお動画にて人気を博す生放送主だ…すでに熱心なファンがいた彼女のキャラ性に目をつけた高海千歌がAqoursに引き入れたらしい)
姫乃(国木田花丸…彼女は寺の娘という一味違うステータスの持ち主だ)
姫乃(『東京にいるとあんまり実感わかないけど、地方のお寺とか神社って結構偉いんだよね』と剣さんが言ってましたから、国木田花丸もまた特別な人間なのでしょう)
姫乃(ちなみに剣さんというのは藤黄学園スクールアイドル部の3年生で実家が神社の方です)
姫乃(そして、小原鞠莉…あのホテルオハラでお馴染みの小原家の一人娘にして、高校生理事長などという型破りな肩書きを持つ才媛である)
姫乃(家はお金持ちで勉強も運動もかなりのハイレベル、社会的地位もある、しかも歌唱力にもかなりの評価がついている…渡辺曜とは別の意味でチートです)
姫乃(そんな人たちが集まったのがAqours…ですか…)
「ちょっ、どいて、どいてくださいデース!」
ドオオオオオオン!
姫乃(ぼーっとしていたからでしょうか…坂の上から私に向かって爆走してきた自転車に気づくことができませんでした)
姫乃「う…」
???「ごめんなさいデス!ケガは無いデスか?」
姫乃「あ、いえ大丈夫なので…」
???「可可(クゥクゥ)ちゃーーん!!」
姫乃「ん?また誰か」
千砂都「や、やっと追いついた…」
千砂都「って、事故!?す、すみません!」
可可「千砂都!日本ではこういう時にはドゲザだとききました!ですが、可可はドゲザとは何なのか知らないデス!可可は何をすれば!?」
千砂都「土下座はしなくていいけど…えっと、救急車!救急車を呼ぶんだよ!」
可可「オー!たしか177…」
千砂都「………」
可可「…………ほう」
可可「千砂都!これから雨が降るらしいデス!しかもオーアメコーズイハローケイホー?とかいうのが出てるデスよ!」
千砂都「それ天気予報だよ!」
姫乃(なんか騒がしい子たちですね)
姫乃「あの、私はケガとかしてませんし、そこまで大ごとでは…」
???「ちーちゃーん!可可ちゃーん!」
かのん「二人とも早すぎだよ…って、事故!?救急車呼ばないと!そうだ117!」
姫乃「その展開はさっき天気予報でやりましたので、時報とかいいです」
かのん「ごめんなさい!私たちの不注意で」
姫乃「まあ、ぼーっとしてました私にも非はありますし…」
姫乃「私がぶつからなかったらもっと危ないことになっていたかもしれないことを考えれば」
かのん「いえ、本当にごめんなさい!ごめんなさ…あれ?」
姫乃「そんなに謝らなくても…ってどうしました?」
かのん「あの…それ…」
姫乃(私は気づいてしまった)
姫乃(目の前で必死に頭を下げていたその子の視線の先には)
姫乃(私が護身用に持ち歩いていたマイクが落ちていた)
かのん「それ…マイクですよね」
姫乃「ええ、一応護身用に持ち歩いてまして」
かのん「私もです!」
姫乃「私…も?」
姫乃「私もできます、ラップ!」
可可「かのん、これはチャンスではないデスか?」
千砂都「かのんちゃん!やろう!」
姫乃「あの…さっきまでの謝罪ムードはどこへ?」
かのん「失礼を承知でお願いします…私とバトルしてくれませんか!」
~4月17日 11:30~
~綾小路家周辺~
姫乃「つまり、マイクを手に入れたもののバトルの相手が見つからず、探し回っていたところ私が見つかったと」
かのん「冷静に考えれば、ぶつかった側がバトルまで申し込むなんて失礼を通り越して非常識ですよね…」
かのん「でも試してみたいんです。私がどこまでやれるか」
姫乃「わからなくもないです。その気持ち」
姫乃「ここで会ったのも何かの縁。受けて立ちますよ、そのバトル」
姫乃「では、私が先攻でよろしいですね?」ヒューン
かのん「ぶつかった上にバトルまで申し込んだんですからね、先攻はそちらでどうぞ」ヒューン
姫乃「では、いかせてもらいます!」
【姫乃】
力の差すぐにわからせます今
当たり屋なんぞに無いです割く暇
作為かあるいは自覚なき悪意か
どちらにせよあなたの未来は爆死だ
ドオオオオン!
かのん「あああああ!!!」
千砂都「かのんちゃん!」
可可「かのん!」
かのん「これが…ラップバトル…でも」
かのん「負けない!私はもうスクールアイドルなんだから!」
>>38
【かのん】
爆死なんて言うのは誰だろ
失敗すらも準備運動、糧だよ
ダメだろうと最後まで立って圧倒
そして描ききるよ勝利のラテアート
ドオオオオオン!
姫乃「くっ!」
かのん「どうですか!?」
姫乃「悪くないです…しかし!」
姫乃「そんなので、この綾小路姫乃に勝てると思わないでくださいね!」
姫乃(そんなこんなでばったり出会った女の子、澁谷かのんさんとのバトルは良い暇つぶしになりました)
~4月17日 14:00~
~綾小路家~
姫乃(澁谷かのんさんとのバトル…スイスほどではないですが心おどりました)
姫乃(って!何考えてるんですか、スイスは邪魔者!排除するべき敵ですよ)
姫乃(…そろそろ頃合いですかね)
姫乃(果林さんからの連絡はまだありませんが、もう家を出てしまいましょうか)
姫乃(いつどこで待ち合わせになってもすぐ向かえるように…そうですね最寄りの駅で待機しておきましょう)
姫乃「いってきます」
ガチャ
姫乃「…え?」
ザアアアアアアアアアアアアア
姫乃(なんですか、この豪雨は)
姫乃(そういえばさっき…雨がどうとか大雨洪水波浪警報がどうとか)
姫乃(果林さん…戻ってこられないんじゃ…)
姫乃「電話、電話です!」
『お客様のおかけになった電話番号は…』
姫乃「圏外…?ですか」
姫乃「ひとまず、メッセージだけでも…『果林さん、こちらは雨強いですが、来られそうですか?ご連絡おねがいします』…と」
姫乃「駅まで…行ってみますか」
~4月17日 15:30~
~綾小路家から最寄りの駅~
姫乃(こっちから何回かけても圏外、念のためスイスや他のニジガクの方々にもかけましたが…通じない)
姫乃(もう一回だけ…果林さんに)
プルルルルルルルルルル
姫乃(つながった!?)
『ただいま電話に出ることができません…」
姫乃(これは拒否…でしたっけ?なんでです?)
姫乃(いや、もう一回かければ)
『お客様のおかけになった電話番号は…』
姫乃(また、ですか…)
~4月17日 16:00~
~綾小路家から最寄りの駅~
姫乃(果林さん…)
ピロリン
姫乃(これは、果林さんから!)
『ごめんなさい、そっちには行けそうにないの。誕生日のお祝いはまた別の日にして。あなたの誕生日は必ず祝うから』
姫乃(まあ…この天気ですし、覚悟はしてました)
姫乃(仕方ないですよね…えっと『ええ、必ずいつか。まずは無事に帰ってきてくださいね。楽しみにしてますよ果林さん』と)
ピロリン
『そうね、必ずいつか。まずはそっちに戻るために全力を尽くすわ』
姫乃(どうしましょうか…これから)
~4月17日 17:00~
~綾小路家から最寄りの駅~
姫乃(…どこかに行きましょうか)
ザアアアアアアアアアアアアア
姫乃「雨強いですし、もう少し待ちますか」
姫乃「それにしても発信履歴がすごいことになってますね」
姫乃「…みなさんどこにいるか知りませんが、沼津ってのはそんなに電波悪いんですかね」
姫乃(いや、おかしいですよ)
姫乃(そうです、圏外とか電源を切ってるならまだありえる…でも)
姫乃(かかってきた着信を拒否してメールで返す?)
姫乃(声を出せない?出したくない?わからないです…)
姫乃「…もう一回だけ…やってみますか」
『朝香果林さん♡ に 発信しています』
姫乃(これで圏外なら…)
姫乃(…長いですね、これは圏外じゃない)
姫乃(もちろんありますよ…単に果林さんのスマホだけが通信可能な状態で、そこは通話できない場所だったからメールで返答したなんて状況は)
姫乃(ええ…電車の中とか、十分あり得る話です)
姫乃(果林さんが乗ってる電車が止まって電車の中で通話ができないとか)
姫乃(…あのメールが無ければ思ってました)
姫乃(いくらなんでも電車が止まったくらいで"行けそうにはない"は無い)
姫乃(スイス…エマ・ヴェルデが果林さんを一人で行かせるわけないですから、果林さんが沼津を出たならスイスくらいには連絡がつくはずですし)
姫乃(果林さんは沼津を出られてはいないと見ていいでしょう)
果林『姫乃ちゃん!』
姫乃(つながった…)
姫乃「あの、果林さん…」
果林『…ありがとう、姫乃ちゃん。おかげでそっちに戻れるかもしれないわ』
果林『だから、さっきのキャンセルは無しにしてあと少しだけ待ってもらってもいいかしら?』
姫乃「はい、いくらでも待ちますけど…一体なにが」
果林『ごめんなさい。また電話するわ』
ブツッ!
姫乃「え、あの…果林さん!」
~4月17日 18:00~
~綾小路家から最寄りの駅~
ザアアアアア…
姫乃(雨は弱まりましたが、まだ強いですね)
姫乃(…結局駅から動けずにいます)
姫乃(何やってるんですかね…私は…)
♪タリナイワーボリュムアーゲーテ
姫乃「果林さんから…電話!」
ポチッ
果林『待たせてごめんなさい!姫乃ちゃん!今どこにいるかしら!?』
姫乃「えっと、〇〇駅です…」
果林『そう…あと2、3時間かかるけど必ずそっちに向かうから!待っててくれる?』
姫乃「あ、はい…それはもちろん…」
エマ『果林ちゃんスマホ貸して!』
エマ『ごめんね!姫乃ちゃん!私たち、絶対にそっちに行くから!』
エマ『絶対に!絶対に行くから!』
果林『約束よ!待っててね!』
プーーーーーーー
姫乃「えっと…」
姫乃「今から、来るってことですよね…果林さんとスイスが」
~4月17日 21:00~
~綾小路家から最寄りの駅~
姫乃(雨も弱まってきましたね)
姫乃(先程の電話から3時間、…さすがに一回家には帰りましたが、また駅に来て)
姫乃(いったい私は誕生日に何をやってるのでしょうか)
姫乃(…渡辺曜は、どんな誕生日を過ごしたんでしょうか?)
姫乃(ニジガクの方々はもちろん、たくさんのファンに祝福されて…きっと幸せな誕生日だったんでしょう)
果林「いたわ!姫乃ちゃんよ!」
姫乃(まあ、私は私のささやかな幸せに感謝しましょう)
果林「待たせちゃったわよね!ずっと、ずっと…」
エマ「ごめんね!あれからまた連絡しづらくなって」
姫乃「あ、いえ…果林さんのためならこれくらいは」
???「ふーん、あなたが綾小路姫乃さんですか」
姫乃「え?…あなたは」
姫乃(私は知ってる…この人を…)
鞠莉「シャイニー!いや、天気的にはレイニーかしらね?クラウディ?うーん…まあ、シャイニーでいいでしょ!」
姫乃「小原鞠莉さん?Aqoursの」
鞠莉「オー!マリーってば、かなりの有名人なのね」
姫乃「あの?なんでここに小原鞠莉さんがいるのでしょうか?」
鞠莉「うーん、話すと長くなるのだけど」
果林「途中まで乗せてきてもらったのよ、鞠莉ちゃんのヘリに」
姫乃「へ…リ?」
鞠莉「マリーご自慢の自家用ヘリよ!最高の機体と最高の操縦でどこにでもひとっ飛びなんだから」
果林「もう、嵐の中ヘリに乗るなんてしたくないわよ…」
エマ「しかも、直接ここまでは来れないから近くにヘリを降ろしてそこから走ってきたからね」
姫乃「………すみません、理解が追いつきません」
果林「そうよね…私もそう思うわ」
鞠莉「まっ、そんなことはどーでもいいでしょ?」
鞠莉「あと、3時間なのよ?誕生日は。やりたいことがあるならじゃんじゃんやらないと」
果林「そうよね。姫乃ちゃん、なにかやりたいこととかある?」
姫乃「やりたいこと…ですか…」
姫乃「あと、3時間…しかもこの時間では空いている店もそんなにないですし…」
「やっと駅についたデエエエエス!」
姫乃「あら?」
千砂都「いやー、かのんちゃんがバタンキューしちゃった時はどうなることかとおもったよ」
かのん「ちーちゃんが元気すぎなんじゃないかな…」
千砂都「かのんちゃんとクゥクゥちゃんが体力ないんだよ。雨宿りしようとか何回も言い出すし」
クゥクゥ「普通はあんな雨の中で自転車なんて漕げないデスよ」
かのん「生きてここまで来れたのか不思議なくらいだよ」
クゥクゥ「あー、見てください!姫乃さんがいますよ!」
千砂都「じゃあ、リベンジだね!」
かのん「…私はもう限界だし、リベンジしたいならちーちゃんかクゥクゥちゃんがやってね…マイクは貸すから」
姫乃「あなたたち…まだやってたのですか?」
かのん「あ、えーっと…お久しぶりです姫乃さん」
果林「知り合い?」
姫乃「昼にちょっとバトルを挑まれまして…あ!」
姫乃(…そうだ…今からでもできることがありました)
姫乃「かのんさん、つかぬことを聞きますが…」
かのん「なんですか?」
姫乃「あなたのマイク、少しの間だけ貸してもらえませんか?」
かのん「それは、構わないですけど…」
姫乃「ありがとうございます…では…」
姫乃「果林さん…あとスイス、やりたいことが決まりました」
エマ「そう来ると思ったよ」
果林「あらあら、エマの誕生日の焼き直しかしら?」
~4月17日 21:15~
~都内の公園~
姫乃「雨があがりましたね…ようやく!」
エマ「本当にいいんだね…姫乃ちゃん…」
姫乃「ええ、私…綾小路姫乃はここでスイスにラップバトルを挑ませてもらいます…果林さんをかけて!」
エマ「果林ちゃんをかけるなら、負けるわけにはいかないよね」
エマ「で、マイクはどこかな?」
かのん「私のを、どうぞ」
エマ「ふーん、これはなかなかいいマイクだね」ヒューン
姫乃「ええ…では…」ヒューン
姫乃「開戦ですよ!スイスぅぅぅぅぅぅ!!!」
エマ「ははっ、今日はどこまで楽しませてくれるのかなあああ?」
姫乃「先攻は私がいただきます!」
【姫乃】
ここが墓場ださらばだ恋敵
今日は私の17thアニバーサリー
レベルアップしたこのラップは神がかり
バースデイのヴァースで切るぞばっさり
シャキーーーン!
エマ「ぐっ!」
姫乃「もう何度目かわかりませんが…」
姫乃「今日こそは本気です!」
姫乃「くたばれや!スイスぅうううう!」
エマ「もー、姫乃ちゃんは血の気が多くて困るな」
エマ「では、私も反撃だよ」
>>66
【エマ】
私の誕生日のひと騒動
忘れたのかな?あの大暴走
誰かの邪魔する子はちと面倒だ
さっさとしましょう発言講座
ドオオオオオオオオオン!
姫乃「くっ、さすがスイス」
姫乃「ですが、今日の私は一味も二味も違います」
>>68
【姫乃】
講座とか余裕げなキャラ作り無意味
上から語るならします首吊りに
帰れないですよ祖国に無事に
突きつける真実をその首筋に
八丈島は日本の領土
スイスなどには渡さぬ今日も
奪うのならば喧嘩だ上等
送ってやります極楽浄土
ドオオオオン!
エマ「なかなか…やるね」
姫乃「ええ…やってやりますよ、今日の私は」
かのん「あの…エマって人と姫乃さんはどういう関係なんですか?」
千砂都「なんというか、互いに妙な熱量で殴りあっているというか」
可可「ライバル、というのとも違う気がするデス」
果林「そうね…とても仲良しよ。あの二人は」
鞠莉「わかるわ。私と果南とダイヤみたいなものね」
かのん「はぁ…」
姫乃「私の気持ちを汲んでそろそろ国に帰ってもらえると助かるのですが」
エマ「うん、姫乃ちゃんの気持ちはよーくわかってるよ」
エマ「私のこと大好きだから、帰ってほしくないんだよね?」
姫乃「…日本語わかってますか?」
エマ「私も姫乃ちゃんのこと大好きだけど、勝ちを譲るつもりはないよ…」
エマ「それに果林ちゃんは、姫乃ちゃんのものじゃない!誰のものでもない!」
エマ「姫乃ちゃんがわかってくれるまで、私は姫乃ちゃんに負ける気はないよ」
>>70
【エマ】
誰のものかなんてヒトの概念
本当は無いんだよ境界線
見ようよどこまでも広がる海面
首吊りよりもしようよ海釣り
ちっぽけな価値観はもうよそう
ハグして触れ合う頬と頬
みんなの心の帆も揃う
ほら、全速前進ヨーソロー!
ドオオオオオン!
姫乃「うぐっ!」
エマ「成長してるのは姫乃ちゃんだけじゃないよ」
エマ「どうかな?これは」
姫乃「全速前進…ヨーソロー…」
姫乃「ああ…あなたもそうなんですか」
エマ「お、やっぱり知ってるんだね!そうだよ、これは…」
姫乃「ええ!よく知ってますよ!渡辺曜、Aqoursのエースで人気一番のスクールアイドルで…私と同じ日に生まれた誰もが認める天才…」
姫乃「その決めゼリフ…ですよね」
エマ「姫乃ちゃん?」
姫乃「わかってるんですよ…自分がちっぽけなことくらい」
姫乃「果林さんは誰のものでもない…わかってますよ…でも、それでも私だけを見ていてほしいんです」
姫乃「こんな私と渡辺曜が同じ日に生まれたなら」
姫乃「そりゃ皆さん、渡辺曜の方を祝いますよね」
エマ「あのね…姫乃ちゃん、これには事情があって、本当ならもっと早くに」
姫乃「…私はずっと待って、わけもわからずそれでも待って」
姫乃「ようやくこの3時間を手に入れたんです」
姫乃「それが私の精一杯なんですよ」
姫乃「だから、この精一杯の時間で私の一番を取りに行きます」
>>74
【姫乃】
勝手に祝ってろヨーソロー
私はそんな世を呪う
ここまでの挙動を徒労にはしない
ちっぽけな鼓動で振り絞る怒号
力で勝てないなら巡らす策謀
策でもダメなら殺意でまくろう
悪党悪評なんでもやろう
ナンバーワンからも奪う野望
姫乃「果林さんの21時間を渡辺曜に奪われても仕方ない」
姫乃「私に与えられるのなんてその残りしかないのも仕方ない…」
姫乃「……そんなくだらないこと、」
姫乃「言ってたまるか!」
姫乃「そうですよ…」
姫乃「同じ日に生まれたってだけで、相手の方が祝われるべきだからって、なんで取られなきゃいけないんですか?待たなきゃいけないんですか?」
エマ「姫乃ちゃん…」
姫乃「私だって選べるなら別の日に生まれたかったですよ!でも、それを変えられないなら、このままじゃ奪われるだけなら、私は戦うだけです!」
エマ「あ、えーと、姫乃ちゃん…多分なにか思い違いをしてるよ?だって…」
果林「エマ、ちょっと私も入っていいかしら?」ヒュゥン
エマ「果林ちゃん?そのマイク…」
鞠莉「いやー、マリーもちょっと手を貸したくなっちゃってね」
鞠莉「お忘れかしら?行方不明になっていたマイクがあったでしょ?」
エマ「あ…そういえば…じゃあ…」
果林「そういうことよ。まあ、鞠莉ちゃんが回収してたとは思わなかったけど」
果林「姫乃ちゃん、エマとのバトルに割り込んで悪いけど」
果林「私があなたに伝えなきゃいけないのよ、ちゃんと聞いててよね」
【果林】
祝われるべきは渡辺曜?
そんなのあなたの中だけよ
いつしたかしら?心なき軽視
する必要もないわよ泣き寝入り
だってずっと今この時まで
私は思ってたあなたをとりわけ
一緒に叶えたの今日の悲願
あなたは立派な今日のwinner
果林「姫乃ちゃん、あなたは曜ちゃんに負けてなんかいないわ」
果林「言っても信じてもらえるかわからないけどね…」
果林「少なくとも私もエマも、昨日電話をもらってから今このときまで、姫乃ちゃんにどうやったら会えるかだけを考えていた」
果林「この場に私たちが来るために他の人も力を貸してくれた…あなたがあーだこーだ言ってた曜ちゃんもね」
果林「力とか才能とかそれとは別に勝ち負けがある…それを実感した今日だから言える」
果林「少なくとも私の中ではあなたは勝っているのよ姫乃ちゃん、誰もが認める天才とやらにね」
果林「だから、そんな情けないこと言わないで」
姫乃「私が…勝っている?」
鞠莉「あらら~いつもは厳しい果林が珍しく優しい事を言ってますね」
エマ「それは違うよ鞠莉ちゃん。果林ちゃんは元々優しいんだから」
果林「…えーっと、あれよ!姫乃ちゃんが情けないこと言ってるのが我慢できなかったの」
果林「情けない人ダメなレズって言うでしょ?」
エマ「それを言うなら情けは人のためならず、だよ~」
姫乃「…ふふっ」
姫乃「なんですかそれ」
姫乃「色々あった…ですか」
果林「ええ…本当に大変だったわよ」
エマ「果林ちゃん、ずっと姫乃ちゃんのこと考えてたんだよ」
姫乃「まあ、藤黄やファンの方々以外でも2人は熱心に祝ってくださる人がいることがわかりましたし、うっぷんも晴らせましたし、これで…」
♪ワビーシタビー
姫乃「…いいところで着信って…誰のですか?」
果林「あら?ごめんなさい、私のね」
姫乃(果林さんの着信音…?なんだかスイスっぽかった気がしますが)
果林「えーっと…璃奈ちゃんから?」
果林「ごめんなさい…出るわね」
果林「はい…」
果林「え?…うん、多分いけるはずよ」
果林「スピーカーにすればオーケーかしら?」
果林「…はい、どうぞ」
璃奈『あーあー、えっと…聞こえてるかな?』
エマ「璃奈ちゃん!そっちはもう大丈夫なの?」
璃奈『うん、一通り片付いたよ』
エマ「よかった…」
璃奈『いつまでつながるかわからないし、いきなり切れるかもしれないけど、許してほしい』
璃奈『では、せーの』
ニジガク一同『姫乃ちゃん!お誕生日おめでとう!』
姫乃「ニジガクのみなさん…」
果林「あらあら、一気に祝ってくれる人が増えたわね」
姫乃(事情はわかりませんが…ありがとうございます)
???『あ、ごめんいいかな?』
曜『えーっと、初めましてだよね?Aqoursの渡辺曜です』
曜『…綾小路姫乃ちゃん、私と同じで今日が誕生日だって聞きました』
曜『ごめんね。ニジガクのみんな、そっちに行こうとしてたんだけど…ちょっと色々あって』
曜『先に果林さんとエマさんだけは何とか出られたんだけど、私のせいでこんなことになって』
曜『……本当にごめんなさい』
姫乃(これが…渡辺曜…)
姫乃「いえ、いいんです」
姫乃「間に合いましたから、今日には」
曜『あのね…姫乃ちゃん、今わたしたちがこうしていられるのは、姫乃ちゃんのおかげなんだよ』
姫乃「えっと?それはどういう」
曜『うーんとね、どこから話したものか…』
曜『璃奈ちゃん、時間は大丈夫そう?』
璃奈『手短にお願いしたいけど、頑張ってみる』
曜『まずは今朝のことから話さないとかな?』
【YOU SIDE】
~4月17日 7:30~
~渡辺家~
曜「んーーーー!」
曜「ヨーソロー!!」
曜「17回目の誕生日…今日の天気は…」
曜「晴れ!…のち雨…」
曜「誕生日パーティーか、私としてはAqoursのみんなだけでワイワイやりたかったんだけど」
曜「あー、うん…1位…だよね」
曜(スクールアイドルチャンネル…Aqoursのみんなと始めたこれが今日のパーティーにつながった)
曜(開設と同時に私のチャンネルの登録人数は膨れ上がっていった)
曜(私が何かするたびに熱心なファンがそれを拡散して、それを見た人がチャンネル登録して…私のチャンネルは急成長を続けた)
曜(さらに今週は今日が私の誕生日ということでいっそう盛り上がりは増している)
曜(そうしてファンのみんなから出てきたのが私の誕生日に何か企画をしようという話だった)
曜(で、それを鞠莉ちゃんに相談したら…ホテルオハラを貸し切りでパーティーをしようということになったんだよね)
曜(さすがにファンまで呼んでってわけにもいかないから、μ'sとAqoursとニジガクのみんなで集まってパーティーをしたのを後日動画公開することでチャンネルのみんなは納得してくれた)
♪オーモーイヨヒトツ
曜「えっと、鞠莉ちゃんから?」
鞠莉『オー、曜はやっぱり早起きさんね』
曜「いや、朝練あったらもっと早いし、そんなに早くはないでしょ」
鞠莉『見事な論破サンキューね。で、本題なんだけど、果林とエマが途中でエスケープできないかって相談してきたのだけど?いいかしら?』
曜「ああ、うん問題ないよ。二人には大丈夫って伝えてもらっていい?」
鞠莉『あ、それは昨日の時点でオールオーケーって言ってあるからノープロブレムよ』
曜「私に聞いた意味は…」
鞠莉『まあ、曜ならオッケーだなというマリーのフューチャービジョンが発動したということで』
曜「ははは…」
曜「…ねえ、鞠莉ちゃん」
鞠莉『何なに?どんな要望でもマリーに言ってちょうだいな?』
曜「私にそんな価値、あるのかな?」
曜「誕生日だからってわざわざ沼津まできてもらうとか、1番とか、そんなの見に余るっていうか」
鞠莉『うーん…』
鞠莉『…とりあえず一発しばいていいかしら?』
曜「え?」
鞠莉『マリーも他のみんなもあなたにそれだけの価値があると思ったから今日集まってるの。あ…曜が人気だからとかそういうことじゃなくてね』
鞠莉『相手の厚意をありがたく受け取るのも礼儀だとマリーからシンゲンさせてもらいます』
鞠莉『あと、曜はどう思ってるか知らないけど、今あなたが弱音を吐いてる相手はあなたと1番を競ってる相手ってこと忘れてもらっちゃ困るわよ?』
曜「あ、ごめん…」
鞠莉『まっ、そういう自己評価が案外低いのも曜の魅力といえば魅力よね』
鞠莉『あ、それで…μ'sの当日入り組との合流なのだけど』
曜「うん、私たちにまかせて。あと、天気だよね…」
鞠莉『雨…今のところはあまり問題なさそうだけど、場合によっては早めに切り上げるのも視野に入れましょう』
曜「そうだね…」
鞠莉『じゃあ、ホテルオハラで待ってるわよ』
曜「うん、了解だよ」
ピッ
曜「さてと…うん!やるからには全力だよね」
曜「では…今日も全速前進ヨーソロー!」
~4月17日 9:00~
~渡辺家前~
曜「ふぅ…風がきもちいい~」
曜「いや、これ本当に雨降るのかな?」
曜「…と、そろそろかな?」
ププーッ!
「曜ちゃーん!」
曜「千歌ちゃん!おはよう!」
曜(今日の参加者は私も入れて28人)
曜(果南ちゃん鞠莉ちゃんはそもそも淡島に住んでるからいいとして、わりと淡島というのは行き来に制限がある)
曜(ということで、これまた鞠莉ちゃんの発案で可能な人は前の日からホテルオハラに泊まってしまおうということになった)
曜(で、Aqoursの何人かと前の日に泊まれない人はこうして千歌ちゃん家の車で当日の朝に船乗り場まで送ってもらうわけだ)
曜「ごめんね。千歌ちゃん、そのまま行った方が早いのに」
千歌「せっかくの曜ちゃんの誕生日なんだし千歌にも何かさせてよ」
志満「あら、運転してるのは私なんだけど?」
曜「志満さんもすみません」
志満「いいのよ、曜ちゃんのためだもの」
志満「それにしても淡島で誕生日パーティーなんて…鞠莉ちゃんも思い切ったことするわよね」
志満「絵里ちゃんと希ちゃんは生徒会で昨日来れなかったんだっけ?かなり朝早かったんじゃない?」
絵里「ええ、でも朝早いのは慣れてますので」
希「とか言いながら危うく電車に遅れかけてたのは誰やったかなー?」
絵里「余計なことは言わないでちょうだい…」
善子「恥じることはないわ、絵里。…間に合ったという結果が大事なのであり、過程など些細な事柄なのだから」
千歌「善子ちゃんはちゃんと反省してねー」
曜(善子ちゃん、また寝坊しかけたんだ…)
~4月17日 10:00~
~沼津側船乗り場~
志満「じゃあ、良い誕生日になるように祈ってるわね」
曜「ありがとうございます」
曜「さてと、次の船は…」
「ちょっと!今日はダメってどういうこと?」
「あの、一回落ち着きましょう?」
曜「ん?」
すみれ「なんでここまで来て淡島行きの船に乗れないの!?」
小原家メイド「すみません。本日は一日貸し切りとなっております」
すみれ「いきなり、ダメだなんて言われて引き下がれるわけないでしょ!この平安名すみれが!」
恋「すみれさん、今調べましたら貸し切りの件は1週間以上前から告知されていたようですし、私たちの調査不足としか…」
すみれ「諦めるの!?それでいいの!?」
恋「まだ時間はたっぷりありますし、今日のところは沼津観光に切り替えましょう。淡島はまた後日ということで」
すみれ「まあ、その方があの3人も来れていいかもね…」
恋「ええ…そうですよ」
すみれ「ああ、でも行きたかったな淡島」
恋「どうやら今日は貸し切りで誕生日パーティーのようですね」
すみれ「誕生日パーティー?」
恋「はい、Aqoursの渡辺曜さんの誕生日を祝うためにμ's、Aqours、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の方々が集まるとか」
すみれ「は?なによ、そんなののせいで行けないの?」
すみれ「μ'sだかAqoursだかニジ…なんとかだか知らないけど、私たちの足元にも及ばないお粗末なグループじゃない」
絵里「ふーん、ずいぶんな言い草ね」
千歌「沼津でAqoursディスって無事に帰れると思わないでほしいね」
恋「あなたは…えっと、μ'sの絢瀬絵里さん?」
希「ちょっと、大人げないよエリチ」
曜「千歌ちゃんもだよ」
善子「まったく、本当に煽り耐性ないんだから…」
すみれ「そっか、絢瀬絵里…」
すみれ「ということはあなたが東條希ね」
希「え?まあ、そうだけど…」
すみれ「やっぱり、μ'sなんてたいしたことなさそうね」
希「えっと、すみれちゃんだっけ?初対面の相手にそれは失礼やないかな?」
希「ん?……あなた、もしかして…」
すみれ「はぁ…こんな人たちのわがままがまかり通るなんて世も末かしら」
恋「すみれさん、ここは大人しく帰りましょう」
すみれ「帰るのは構わないわ。でも、この人たちに屈したくはないわね」
小原家メイド「なるほど!」
すみれ「ちょっ!いきなり出てこないでよ!驚くじゃない」
小原家メイド「では一つゲームをしましょうか?」
すみれ「ゲーム…?」
小原家メイド「はい、あなた…すみれ様にこの場にいるμ's、Aqoursメンバーどなたでもよいので指名をしてラップバトルをしていただきます」
絵里「ラップバトル?マイクも無いのに?」
小原家メイド「いえ、マイクならここに」
絵里「なんで持ってるのよ…しかも、2本」
小原家メイド「小原家のメイドたるもの、常にマイクを携帯しておけとお嬢様から言われてますので」
絵里「鞠莉、ハラショー…」
小原家メイド「すみれ様が勝てたら特例としてお二人の淡島への渡航を許可しますし、パーティーの支障にならない最大限での淡島観光をお約束します」
すみれ「ふーん、面白い提案じゃない」
すみれ「まあ、淡島観光はまた今度でもいいかなって思ってたけど…」
すみれ「この私の力を証明して、VIP待遇を受けれるってのは気に入ったわ」
小原家メイド「では、すみれ様は承諾ということでよろしいですね。μ'sとAqoursの方々はどうなさいます?」
絵里「みんな構わないわね?」
曜(絵里さんの言葉に、5人ともうなづく)
小原家メイド「では、お相手はどなたになさいますか?」
すみれ「ふふ、力を証明するのにおあつらえ向きな人がいるじゃない…私が指名するバトル相手は」
すみれ「東條希、あなたよ!」
希「そうだね…ウチだと思った」
絵里「希、この子と知り合いなの?」
希「ううん、多分初対面だよ」
希「でも、因縁はあるかな?」
小原家メイド「では、両名ともマイクをどうぞ」
すみれ「覚悟はいいかしら?先輩さん」ヒューン
希「先輩後輩ね…たしかにそういう関係ともいえるかな」ヒューン
小原家メイド「先攻はどちらでしょうか?」
希「後輩ちゃんに譲るよ。正直、ウチの後輩の力ってのを見てみたいからね」
すみれ「では、ありがたくもらいうけるわ」
すみれ「Liella!の期待の星、平安名すみれ…いっくわよ!」
【すみれ】
みなさんご存知 時代の寵児
カリスマ巫女が偉大に降臨
才能、サイの目、もち最高値
このギャラクシーは無敗の境地
私にかかれば神すらもフォロワー
本物の言葉にエセ巫女はdrop out
それがすみれ'sラップ・ショウ
もう間髪入れず ラクのショウ
ドオオオオオン!
希「くっ!いきなり8小節」
希「それに、やっぱりね…」
絵里「すみれ…あなた…まさか巫女なの!?」
善子「そんな…希のアイデンティティが…」
すみれ「その通り!私は巫女…それも、そこにいるなんちゃって巫女とは違うわ」
すみれ「神社生まれの神社育ち、しかもカリスマ性まで備えた本物の巫女…それが私、平安名すみれなのよ!」
千歌「メインキャラで、生まれながらの巫女…」
絵里「嘘でしょ…これじゃ希の立場が」
希「いやぁ…本物の巫女ね。ははっ…お笑い草もいいところやん?」
絵里「希?」
希「わかってない、わかってないよすみれちゃん」
希「巫女に必要なのは血筋とかカリスマじゃない。心のありかただよ」
希「みんなの幸せを願い、神様への敬意を持って身を捧げる…その気持ちがあれば」
希「女の子は誰だって巫女になれるんや!」
すみれ「何を言ってるのあなた…?」
曜(ここに来てまさかの…プリキュア理論!!)
希「それに、巫女ってのはウチの武器の一つ
であって全部じゃない…」
希「ウチの最大の武器ぶちこんであげるから…気張ってね後輩ちゃん!」
>>114
【希】
舐めたらあかんよウチはラッキーガール
粋がる巫女とはひと味違う
カンストLUCKで道を切り開く
ウチが導いちゃうスピリチュアル
ギャラクシーくらいじゃまだまだ足りん
ツキも星も巡る規格外な操舵輪
ウチの手で回す神がかりな物語
女神の前髪をわしわしづかみ
ドオオオオオオオオン!
すみれ「っつ…」
すみれ「でも、まだまだ」
バキッ
すみれ「え?ちょっと…これヒールが折れて」
カアーカアー
ポトッ
すみれ「え?カラス?っていうか、やだフンが…」
希「ああ…これは早めにやめたほうがいいかもしれんね」
希「本来ウチの運は自分がラッキーなだけで周りがアンラッキーになるわけじゃないんだけど」
希「巫女対巫女の戦いにスピリチュアル的な何かが動いちゃってるね」
すみれ「なによ、ここでやめるわけないでしょ!」
希「うーん、すみれちゃんもこういう時に無理したらいけないのはわかってるんやないかな?」
小原家メイド「…バトルの最中にすみません」
すみれ「うわ!なによ!」
小原家メイド「申し訳ありませんが"時間切れ"です」
小原家メイド「船が来てしまいました。このバトルは引き分けということになります」
小原家メイド「よって残念ですが、すみれ様を淡島へお連れすることはできません」
すみれ「早すぎるわよ!決着なんてつくわけないじゃないの」
小原家メイド「そう言われましても、時間も迫っていますので」
すみれ「あー、はい。わかったわよ」
すみれ「今日のところはこれで終りね。でも、もし次にどこかであったら、その時は私が勝つわ」
希「うーん、それはないかな」
すみれ「はっきり言うじゃないの」
希「もし、すみれちゃんがサイコロを振ったら何が出ると思う?」
すみれ「6に決まってるわよ!私の運と実力をもってすれば当然のこと」
希「だったらウチには勝てないかな?」
希「すみれちゃんが振ってるのはせいぜい6面ダイス、ウチが振ってるのは100面ダイスなんだから」
希「…そして、その上でありえない100を出すのがウチだよ」
~4月17日 11:00~
~淡島側船乗り場~
曜(と、まあ…なんやかんやあったけど、私たちは無事に淡島にたどりついた)
絵里「思わぬバトルに巻き込まれてしまったわ」
善子「希、あなたの運…ちょっとでも分けてほしいわよ…」
希「うーん、今度一緒に神様にお祈りでもしてみる?」
善子「いえ、それはできないわ。私は堕天使、神とはすでに袂を分かった身なのだから!」
千歌「すみません…こんな子で」
曜「これからも仲良くしてあげてください」
鞠莉「オー!!今日の主役がやってきましたね!」
曜「ははは…そんな大袈裟な」
鞠莉「あ、千歌っち!例のケーキ企画の件で打ち合わせしたいらしいからキッチンに速攻でゴーしてあげて」
千歌「おお!あれだね!」
千歌「では、行ってまいります!」
曜(千歌ちゃん、すごい勢いで走っていった…張り切ってるな…)
曜「あ、先に帰るっていう果林さんたちに挨拶しておきたいんだけど…」
鞠莉「そうね…ってもうこんな時間じゃない!まずはパーティーの開始宣言でいい?」
~4月17日 11:10~
~ホテルオハラ~
鞠莉「…と、いうわけで、渡辺曜生誕祭2021スタートデース」
曜(パーティーが始まって、私はみんなのテーブルを回って挨拶をしていく)
曜(私の誕生日パーティーか…みんな楽しそうに話してるな…)
曜(こういう場を作るきっかけになっただけでも私の誕生日に意味はあったんだよね)
果林「あら、曜ちゃん。主役がそんな暗い顔してちゃダメよ?」
エマ「さすがにお疲れかな?」
曜「果林さん、エマさん」
果林「…今日はごめんなさいね。せっかく誘ってもらったのに」
エマ「しかも、急な話なのに途中で帰れるようにしてもらったし」
曜「ううん!来てもらってだけでもうれしいよ。むしろ、こんなところまで来させちゃって申し訳ないくらい」
果林「知り合いに今日誕生日の子がいてね。しかも曜ちゃんと同い年なのよ」
曜「私とまったく同じ日に生まれた子か…」
果林「しかも、その子もスクールアイドルなの。知ってるかしら?藤黄学園の…」
ルビィ「綾小路姫乃ちゃん!?」
曜「ルビィちゃん、どうしたのいきなり…」
ルビィ「…あの、今日誕生日の藤黄の子って綾小路姫乃ちゃんだよね?果林さん、姫乃ちゃんとお友達なの!?」
ダイヤ「素晴らしいですわ!なかなか…良い交友関係をお持ちで!」
曜「しれっと登場しないでよ…ダイヤさん」
果林「えっと…姫乃ちゃんってそんなに有名なの?」
にこ「有名ってわけでもないけど、スクールアイドルファンならルビィみたいな反応になるかしらね」
花陽「ええ…なるでしょうね!」
果林「にこちゃんと花陽ちゃんまで」
ルビィ「姫乃ちゃんはね、まさに努力の人なんだよ」
ダイヤ「ルビィったら、実は昨晩は姫乃さんの生誕前夜祭とかいう生放送で大はしゃぎだったんですのよ」
ルビィ「ファンが非公式にやってる放送なんだけどね」
ダイヤ「一晩中楽しそうでしたわね。家ではないからか普段以上のテンションでした…」
にこ「綾小路姫乃は初めから評価されてたわけじゃない。どっちかって言うと特に目立たないモブって感じの子だったの」
花陽「そこから努力を重ねてチャンスを掴んで、今や藤黄といえば綾小路姫乃ちゃんってくらいに言われるまでになったんだよ」
果林「…言われてみれば…2年生なのに代表で会議に来てるくらいだし結構すごい子なのかしら?」
エマ「今更気づくなんてお間抜けさんだね…果林ちゃん!」
果林「エマまで…」
エマ「μ'sもAqoursもニジガクも2年生が中心だけど、そんなのはレアなんだよ!大体は3年生が中心だもん」
エマ「それにもかかわらず、藤黄の中心として活躍してる…しかもモブ同然から始めてね!」
果林「エマは本当に姫乃ちゃんのことになると生き生きするわね」
エマ「うん、私は姫乃ちゃんの大ファンだからね!」
鞠莉「曜!ケーキの準備ができたわよ!」
千歌「ほらほら~こっちだよ~」
曜「あ、千歌ちゃんと鞠莉ちゃんが呼んでるから行くね」
~4月17日 11:30~
~ホテルオハラ外~
曜「ふう~、まさか誕生日にケーキ入刀をすることになるとは思わなかったよ」
曜「しかも、Aqoursのリーダーってことで千歌ちゃんと手を取りあって」
曜(一部の人たちが妙な歓声をあげてたな…)
曜(それからあっちこっちに行って記念撮影したり、ホテルオハラ特製のビックバースデーケーキを28人で分けて食べたり、気づいたらお昼すぎになっていた)
~4月17日 13:00~
~ホテルオハラ外~
果林「あーもー、まったくこんな時に…」
エマ「困ったね…」
曜(あれ?果林さんとエマさん?)
エマ「うーん、かからないな。いつからなの?」
果林「えっと…曜ちゃんと千歌ちゃんのケーキ入刀を撮った時にはあって…そこから…使ったかしら?」
曜「どうしたの?果林さん?エマさん?」
果林「無いのよ、私のスマホ…」
曜「どこで失くしたとか、わかりそう?」
果林「まったく心当たりなし!本当…大事な時に限って…」
曜「鞠莉ちゃんには聞いてみた?」
果林「ああ、そういえばここは鞠莉ちゃんの家なのよね」
鞠莉「…ふふ、話は聞かせてもらったわ!」
鞠莉「マリーにお任せでーす!」
果林「鞠莉ちゃん!?」
エマ「いつからいたの?」
千歌「私もいるよ!」
曜「千歌ちゃん!?」
鞠莉「スマホの件、承ったわ。まかせて、ここはマリーにとって庭みたいなものだから」
千歌「ていうか、実際に家だもんね」
鞠莉「まずは少々お待ちくだサーイ」
鞠莉「はい、ピッポッパと発信デース」
鞠莉「………」
鞠莉「………おかしいわね」
曜「どうかしたの?」
鞠莉「いえね、フロントに落とし物とか届いてないか聞こうとしたのだけど、つながらないのよ」
千歌「そういえば、さっきフロント行ったけど誰もいなかったよ」
鞠莉「仕方ない、ここは地道に探しましょうか」
ポツ…ポツ
鞠莉「…おや?」
曜「雨…降ってきちゃった」
曜「まあ、でもこのくらいの雨なら…」
エマ「…そうでもないっぽいよ」
エマ「大雨洪水…波浪警報だって…」
鞠莉「みんなには一旦ホテルの中に入ってもらいましょう。それで各自昨日泊まった部屋に待機、船の準備が出来次第帰ってもらいます」
曜「えっと、私は…」
鞠莉「泊まった部屋って無いわよね。そういう人はテキトーな部屋でオッケーにしちゃいましょう。せっかくだからマリーの部屋にいらっしゃい。豪勢におもてなしちゃうわ」
果林「あら?じゃあ私とエマもお邪魔させてもらってもいいかしら?その方が都合がいいもの」
鞠莉「モチのロンよ。歓迎しちゃうわ」
千歌「じゃあ、千歌は外にいる人見つけてホテルに入るように知らせてくるよ!」
曜「うん、よろしく!細かいことはメールでみんなに送るからそれ見てって言ってくれればいいよ」
曜(私と鞠莉ちゃんでμ'sとAqoursに、果林さんとエマさんでニジガクに手分けしてこれからのことを伝える)
曜(外にいる人は千歌ちゃんが直接ホテル内に誘導してくれた)
千歌『もしもし、梨子ちゃんと花丸ちゃんと真姫ちゃんと凛ちゃんがいたからホテルに入ってもらって、あとはメール見てって言っておいたよ』
曜「ありがとう!千歌ちゃん」
曜「ふぅ~みんなに連絡完了!」
鞠莉「果林、エマ、あなたたちはイの一番で乗りなさい。待ってる人がいるんでしょ?」
果林「ありがとう。そうさせてもらうわ」
曜(私の誕生日パーティーは予定を早めたものの無事終了)
曜(…するはずだった)
~4月17日 14:00~
~ホテルオハラ・鞠莉自室~
曜「ねえ…船の準備、遅くない?」
鞠莉「妙よね、もう2時よ。果南が大急ぎで準備してくれてるはず…」
鞠莉「…ちょっと果南に聞いてみるわ」
曜「鞠莉ちゃん…」
鞠莉「…通じない」
鞠莉「電源が入ってないか、電波の届かない場所にあるって…」
鞠莉「えっと、果南と一緒にいそうなのは…かけてみましょう!」
曜「そうか…ん~と、果南ちゃんと同じ部屋にいるのは…」
曜(スマホのメモ帳にある部屋割表を見る)
曜(あった、ダイヤさんだ!)
鞠莉「だめね…出ない…」
エマ「あ!ねえ…千歌ちゃんにきいてみたら?」
曜「そうか、千歌ちゃんはあちこち駆け回ってたから何か知ってるかも!」
『お客様のおかけになった番号は現在、電波の…』
曜「ダメだ…千歌ちゃんにも通じない」
果林「ねえ、ちょっといいかしら?」
曜「ん?なに?」
果林「今日はμ'sとAqoursとニジガクのみんなが来てるのよね?」
曜「そのはずだよ…」
果林「私たち、泊まっていた部屋からここに来るまで誰とも会って無い気がするのだけど…」
エマ「おかしいよね…私たちと鞠莉ちゃんの他に24人だよ?それで一人も会わないって」
果林「ホラー映画じゃないんだから」
鞠莉「安否確認よ。マリーと曜とエマで手分けして連絡を取りましょう」
鞠莉「マリーはμ's、曜はAqours、エマはニジガク担当ってことでOK?」
果林「私もスマホさえあれば…こんな時に、力になれなくてごめんなさい」
~4月17日 14:20~
~ホテルオハラ鞠莉自室~
曜「みんなダメだった…」
鞠莉「つまり、私たち以外、全滅ね…」
果林「……」
エマ「……」
曜(空気が重い…ここは楽しそうな話題で安心させ
曜「そういえば、今日来る途中に船乗り場で希ちゃんがラップバトルすることになってさ」
エマ「希ちゃんの…ラップバトル…!」
果林「食いつくわね…エマ…」
エマ「ふふ…今日の姫乃ちゃんとのバトルが楽しみだなあ」ヒューン
果林「どさくさにマイクを構えないで!」
曜「にしても、メイドさんにマイクを持たせるなんて鞠莉ちゃんも変わってるね~」
果林「なによ、メイドにマイクって…まあ、鞠莉ちゃんらしいわね」
曜「しかも、2本もだよ」
鞠莉「……何のこと?」
曜「いや、だって船乗り場のメイドさんが」
鞠莉「…私、メイドにマイク持ってろなんて言った覚えないわよ?」
曜「……え?」
小原家メイド「お嬢様、お話が…」
曜「あ、そうそうこの人」
曜(船乗り場で会ったメイドさんが鞠莉さんに近づく)
鞠莉「何かしら?…ん?そもそもあなた…」
ドゴっ…
鞠莉「あ…こふっ…」
曜(鞠莉ちゃんが…崩れ落ちた…)
曜「え?鞠莉ちゃん…?」
小原家メイド?「なるほど…使用人の顔を全部覚えてるってのは本当みたいですね」
曜(鞠莉ちゃんを気絶させたその人は鞠莉ちゃんの体を床に乱雑に投げつける)
小原家メイド?「ここまで予定どおりでしたが…」
小原家メイド?→偽メイド「最後の一部屋は本命だけあって少し骨が折れそうですね」
偽メイド「御令嬢様をそれとなく物陰に誘導して無力化して、それから制圧するつもりでしたけど…まあ大して変わらないですよね」
偽メイド「いやー、ようやく神様とやらが味方してくれたんですかね。さすがに28人を相手にするのは骨が折れますし、どうやって分断するかが課題だったんですが…」
偽メイド「…まさか、そっちから分断されてくれるとは思いませんでしたよ」
曜「まさか、みんなに連絡がつかなかったのは…」
偽メイド「はい、みなさん仲良くおねんねして頂いてますよ」
偽メイド「さてと、では…ここも制圧しちゃいましょう」
曜(メイドさんがそういうとマスクを付けた人が何人か入ってきた)
曜(全員、マイクを持っている)
エマ「ここは私が…」ヒューン
偽メイド「あら?小原家の御令嬢さんがどうなってもいいんですか?」
曜(メイドさんが足元の鞠莉ちゃんを足で小突く)
曜「くっ、こうなったら強行突破で…」
果林「やめなさい。相手はマイクを持ってる上に鞠莉ちゃんが人質になってるのよ」
エマ「抵抗したらどうなるかわからない…」
偽メイド「懸命です。では、まずは荷物の回収と危険物のお預かりをさせていただきますね」
曜(私たちの荷物が奪われ、体のすみずみまでボディチェックされる…危険物…マイクやスマホはもちろん、ヘアピンなんかまで不都合なものは全部取られてしまった)
マスク女「ん?お前…」
曜(果林さんのボディチェックをしていた人が怪訝な顔をしていた)
偽メイド「どうしたの?」
マスク女「いや、こいつ…確かスマホ使ってたのに荷物の中見てもボディチェックしてもスマホの類が見つからないんですよ」
マスク女「おい、スマホはどこだ?」
果林「そんなの、私が教えてほしいわよ…」
果林「失くしちゃったの!探してる途中に雨が降ってきて、ホテルの中に入って、それで今こうなってるの!」
マスク女「どうします?」
偽メイド「まあ、手元に無いならどこにあっても同じだと思いますよ?外にあるならこの雨じゃ無事がどうかも怪しいですし」
曜(メイドさんの言うように、カーテン越しでも外が土砂降りなのがわかるくらい雨の勢いは強くなっていた)
偽メイド「さてと…では、みなさんもおねんねしていただくとしましょう」ヒューン
曜(このままじゃ私たちも…でもどうしたら)
鞠莉「させ…ないわよ!!」ガバッ
偽メイド「なっ!?」
曜(メイドさんの後ろで気絶していたはずの鞠莉ちゃんが、メイドさんに組みつく)
偽メイド「こいつっ、気絶してなかったのか」
鞠莉「しぶとさには自信があってね…それとマリーは意外と手癖が悪いのよ…あった!」
鞠莉「曜!これを…!」
曜(鞠莉ちゃんがメイドさんの隠し持っていたものを私に投げる)
曜「マイク…」
鞠莉「やっぱりもう一本持ってたのね。曜が目撃してくれてて助かったわ」
曜(私たちを取り囲んでいた人たちが怯む)
曜(…こっちもマイクがあって人質がいないなら…)
偽メイド「なんとかなる…とか、考えてます?」
曜「くっ!」
偽メイド「無理だと思いますよ?あなたたちがどれほど優秀だとしても、この人数ですからね」
鞠莉「いえ、何とかなるわよ…」
鞠莉「曜!右斜め後ろ、赤いボタンよ!」
曜「え?」
曜(鞠莉ちゃんの言う通り、右斜め後ろを見ると…壁になんか怪しいボタンがあった)
鞠莉「早く!」
曜「これ…」
曜(迷ってる時間は…無い!)
曜「ああ、もう!どうにでもなれ!」
ポチッ
鞠莉「良くやったわ!曜!」
曜「鞠莉ちゃん…これ…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
エマ「ねえ…果林ちゃん、曜ちゃん…」
曜(エマさんが指差す方を見ると…)
曜「壁が無くなってる?」
曜(鞠莉ちゃんの部屋の、外に面してる側の壁が…無くなっていた)
果林「えっと…」
鞠莉「飛びなさい!この部屋が吹っ飛ぶ前に!」
曜「ふっとぶ?」
エマ「果林ちゃん!曜ちゃん!行くよ!」
曜(エマさんが果林さんと私を抱えて…いや、正確にはタックルに巻き込む形だけど…)
エマ「たあああああああ!」
曜(鞠莉ちゃんの部屋から飛んだ…)
曜(その直後…)
ドオオオオオオオオオオン!!!!
曜「…………」
曜「えええええええええええ!!」
曜(鞠莉ちゃんの部屋が…吹き飛んだ…)
※補足というか訂正ですが、>>148から出ているマスクは覆面のことです
紛らわしいので以降は覆面と書きます
~4月17日 14:40~
~ホテルオハラ外・鞠莉自室真下~
曜「よかった…私…生きてる…」
エマ「あはは、いきなりごめん」
果林「まあ、エマがああして無かったら部屋ごと吹っ飛んでたわけだし、むしろ勲章ものよ」
曜(私たちが飛び降りた下にはエアバッグが展開されていた)
曜(まあ、冷静に考えれば、飛び降りた先の安全が確保されていないとあの装置の意味がないんだから当たり前か)
曜(鞠莉ちゃん…無事…だよね?)
果林「早くここから移動しましょう」
曜「うん、そうだね」
エマ「………」
果林「エマ?」
エマ「…無くなっちゃった」
エマ「…私のマイク…取り上げられて…無くなっちゃった…」
曜「あ、あの!私が今持ってるこれで…」
エマ「…ううん、それは曜ちゃんが持ってて」
エマ「あの子は…私がこの手で取り戻すから!」
曜(この爆発じゃ壊れてるかも、とか言うのは野暮だよね)
果林「…姫乃ちゃん、私たちのこと待ってるわよね」
エマ「うん、姫乃ちゃんはいい子だもん!そのためにもこんなわけのわからない事態は早く解決しないと!」
曜「ねえ、思ったんだけど…船乗り場まで行ってみない?」
曜「この雨だと船は出せないだろうけど、誰かいるかもしれないし、何かわかるかもしれない」
曜「それに船が出せるようになったら果林さんとエマさんだけでも沼津に送れるかも」
果林「みんなを置き去りにして行けっていうの?そんなのみんなにも姫乃ちゃんにも顔向けできないわ」
曜「そうじゃない、助けを呼んでくれないかな」
曜「助けが来るまで私は持ち堪えるから」
果林「そうね…それも一つの手かもしれない」
果林「乗らせてもらうわ。その提案にも船にもね」
~4月17日 15:30~
~淡島側船乗り場~
曜(警戒しながらだからずいぶんかかったけど船乗り場についた…だけど)
ザアアアアアアア…
果林「…どういうこと?」
曜「………」
果林「ねえ、曜…あなたは確かに船に乗ってここまで来たのよね?」
曜「うん…」
エマ「船が一つも無いし、誰もいないなんて…」
♪ワビータビーカナーデ
曜「え?」
果林「この音…もしかして」
曜(音がした茂みに私たち3人の視線が集まる)
千歌「まずっ!」
曜「え…千歌ちゃん!?」
果林「それ…私の…スマホ」
千歌「ああ、やっぱりか」
曜「千歌ちゃん、無事だったの?」
千歌「無事っていうか…えっと、私は昨日泊まった部屋とかなかったじゃん?」
曜「うん」
千歌「でね、曜ちゃんと電話した後に果南ちゃんとダイヤちゃんの部屋に行ったんだけど」
千歌「果南ちゃんとダイヤちゃんは眠ってて、そしたら変な人たちが入ってきて捕まっちゃって、荷物もスマホも取られて…眠らされてさ…」
千歌「しばらく寝てたと思うんだけど、なんか…ドオオオン!って音がしたんだよ」
曜「ああ…うん…あれね」
千歌「それで千歌だけ目が覚めてさ、慌てて窓から外に出たんだけど、何をしたらいいかわからなくて…どうしようって歩いてちょっとした頃かな?果林さんのスマホを見つけて」
千歌「でも、ロックが解除できなくて果林さんを探してたんだけど、いざ見つけたらどう渡したものかと…」
曜「いや、お手柄だよ千歌ちゃん!」
千歌「そっか…うん」
果林「しかし、よくわかったわね」
千歌「いや、無くしたって言ってたし、もしかしたらなって」
果林「でも、これでようやく連絡が…あっ…」
曜(果林さんがロックを解除したスマホの画面、そこには)
『果林さん、こちらは雨強いですが、来られそうですか?ご連絡おねがいします』
果林「姫乃ちゃん…しかも何回もかかってきてたみたい」
果林「じゃあ、さっそく…」
果林「…あれ?」
曜「どうかしたの?」
果林「落ちちゃった…スマホ」
エマ「え?手に持ってるよね?」
果林「そうじゃなくて…電源落ちちゃった」
果林「…電池切れ…だと思う」
エマ「電池切れ?」
果林「……えっと」
果林「昨日ね…私…藤黄の動画ずっと見てたじゃない?」
エマ「うん、そうだったね」
果林「でね、朝気づいたら10%くらいで、そこから慌てて充電したんだけど、間に合わなくて…」
エマ「…これからは気をつけようね」
果林「充電、この辺りでできるかしら?」
曜「コンセントはあるだろうけど、充電器はどうだろ?」
エマ「千歌ちゃんが充電とかできたらよかったんだけど、そんな状況でもなかったんだよね?」
千歌「えっと、まあ…そうだね」
曜「ていうか、千歌ちゃん。ロックが解除できなくても緊急コールとかでなんとかなったんだけどな…」
曜「わざわざ大変な思いしてまで届けなくても拾った時点で解決できたんじゃない?」
曜「そうしたら果林さんたちだってもっと早く帰れたのに」
千歌「…なんだよそれ…」
曜「千歌ちゃん?」
千歌「私は私で何とかしようとしたんだよ。色々やったんだよ。でも、わからなかったんだもん…」
曜「いや、でもそういうのは何となくわかるっていうか」
曜「それに色々やったっていうけどさ…」
曜「充電切れになったら元も子もないんだし、わからないならもう電源切っちゃったほうがよかったんじゃない?」
千歌「ちゃんとやろうとしたよ…その結果こうなったんだよ!」
千歌「そりゃ、曜ちゃんはうまくできるんだろうけど…千歌はできなかったの!だから果林さん探して、怖い思いしながらここまで来たんだよ!」
千歌「なのに、そんな言い方ないじゃん!」
曜「ご、ごめん千歌ちゃん…そんなつもりじゃ」
千歌「じゃあ、どんなつもりだったの?」
千歌「曜ちゃんができるってだけで…みんなができると思わないでよ!」
千歌「…みんながみんな曜ちゃんみたいなわけじゃないんだよ…そういうの、ちゃんとわかってよ!」
曜「…どうしたの?なんか千歌ちゃんおかしいよ」
果林「ちょっと、こんなところで喧嘩なんて…」
「おい、いたぞ!」
「さんざん逃げ回りやがって…」
千歌「…………」
エマ「…見つかっちゃったね」
曜「こうなったらマイクで…」
曜「いくよ!」
曜(まだ、人はそんなに集まってない!鞠莉ちゃんが渡してくれたマイクでなんとか切り抜ける!)
曜「…あれ?何も出てこないし、マイクもそのまま?」
曜(マイクでラップをする時には、その人の特性に合ったデザインのスピーカー…ヒプノシススピーカーが出てきたり、人によってはマイクの形が変わったりするんだ)
曜(だけど、何も起こらない…?)
果林「まさか…」
エマ「キャンセラー?」
曜(ヒプノシスキャンセラー、マイクの動作を外部から強制停止させる装置…だよね確か)
偽メイド「ええ、大正解ですよ」
曜「そんな…何でメイドさんがここに?」
偽メイド「まったく、自分の部屋を吹き飛ばすなんて…小原家の御令嬢にはだいぶ手を焼きましたが、これで王手です」
曜(人がどんどん集まってくる…)
偽メイド「大人しく捕まってくれますよね?」
曜(これはもう、詰みかな)
~4月17日 16:00~
~ホテルオハラ・ロビー~
曜(捕まった私たち4人はホテルオハラのロビーに連れていかれた)
果林「まったく、スマホを見つけてこれからって時に」
偽メイド「さあ、到着ですよ」
曜「え?これ…」
曜(ロビーには簡易的にではあるけどステージが組まれていた)
曜(そして、ステージの上には『渡辺曜ちゃん誕生日記念ラップショー』と赤いペンキで書き殴られた看板があった)
果林「センスのかけらもないわね」
曜(それだけじゃない)
曜(ステージの周りには覆面の人たちが集まっていて…)
曜(床には私たち4人を除くμ's・Aqours・ニジガクメンバーが"置かれていた")
曜(呼吸はしてるみたいだけど、ほとんど身動き一つせずに横たわっている)
偽メイド「これからのイベントには私たちの全員が参加しますので、監視の都合上こちらに集めさせていただきました」
曜「みんなに何をしたの…」
偽メイド「ほんの数時間眠っていただいてるだけです。明日の朝には目が覚めますのでご安心ください」
果林「ちょっと、二つほどいいかしら?」
偽メイド「なんですか?ようやく始められそうなんですから巻きでお願いしますよ?」
果林「…善処するわ。まず一つ目」
果林「あなたたちの目的を教えてもらってもいいかしら?」
果林「こんなことをする意味がわからないの。お金?怨恨?単なる愉快犯?これからのイベントとやらに関係しているのかしら?」
偽メイド「私たちの目的ですか…このステージを見ればわかると思いますが?」
偽メイド「…復讐ですよ。そこにいる…渡辺曜へのね」
曜「私への…復讐?」
偽メイド「はい、ここにいるのは私も含めてみな渡辺曜に恨みを持つ者です」
偽メイド「各々具体的な恨みの内容は違いますが、それはこの後のメインイベントでということになります」
果林「じゃあ、二つ目ね」
果林「私、この後に人と会うことになっててね、お願いしたいことがあるの」
偽メイド「ああ、そういえば早めに船を出すようにという話になってましたね。なるほど、謎が一つ解けました」
偽メイド「で、何です?解放しろとでも?そんな理由で解放するわけないですよね?」
果林「違うわよ。せめてその子に連絡を取りたいの。ようやく見つかった私のスマホから」
果林「もちろん、あなたたちにとって不都合なことは伝えないわ。時間どおりに着けそうにない、できれば別の日にできないか?ってところね」
果林「あとはまあ…話がまとまるまでのやりとりを許可してほしいわね」
偽メイド「…そんな要望が通るとでも?」
果林「あら?いいのかしら?私がいつまでも到着しないことを不審に思ったその子が警察とかに駆け込むかもしれないわよ」
果林「私はその子を無駄に待たせないで済むし、あなたたちはリスクを減らせる。悪い話ではないと思うけど?」
偽メイド「…いいでしょう。ただし、伝えるのはメールで文面は私が確認、送信も私がする…ということでよろしいですか?」
果林「それでいいわ」
果林「あ、そういえば、どうやら私のスマホ…充電切れらしいの。充電させてちょうだい?」
偽メイド「ご自由にどうぞ?まあ、充電器は私物ではなく、ホテルの備品を使ってもらいますが」
果林「そう、ありがとう」
曜(果林さんがメールを打つ、静寂がこの場を支配する)
曜(果林さんは時間をかけて文を書いている。おそらく、充電のための時間稼ぎだ)
果林「できたわ」
偽メイド「どれどれ…ふーん、縦読みですとか暗号とかの類はなさそうですね」
偽メイド「では、送りましょう」
偽メイド「…おやおや。すぐに返事が来ましたね。よほどお待ちかねだったようです」
果林「それへの返答を書かせてもらうわ」
曜(さっきと同じように果林さんが文を書いて、それをメイドさんが送った)
果林「これでいいかしらね…」
偽メイド「もう話は終わったようなので、このスマホは不要ですね…では…」
果林「あ、ごめんなさい!もう一つ追加いいかしら?」
偽メイド「やれやれ…まあいいですよ」
果林「じゃあ…これは私も今気づいたことなんだけど…」
果林「どうも私のスマホに何件か着信通知メール…あ、圏外とかで繋がらない時に後からメールが来るやつね、があって… 」
果林「それによると、2時くらいから私の手元に戻る3時半まで、このスマホに何回か電話がかかってきてていたみたい」
果林「でね、その度にこのスマホは圏外だか電源が入ってなかったかしてたらしいの」
果林「しかも、この着信は私の手元に戻ってくる少し前、まあ5分とかくらい前かしら?にもかかってきてるの…これも圏外だか電源が入ってないかだったらしいけど」
果林「私の手元に戻ってきた時には電源が入ってたのよね…なんか妙じゃない?」
果林「まるで誰かが私たちを見つけてから慌てて電源を入れたみたい…なんてね」
果林「しかも、私たちの近くでこのスマホにかかってきた電話を"誰か"はすぐに着信拒否したみたいなのよ…」
果林「電話に出て助けを求めれば良いし、そっちの方が遥かに簡単なのに」
果林「まあ、これに関しては、その誰かがずっと電源を切ったままで私たちに会う直前に電源を入れたとか、気が動転してたまたま着信拒否したかもしれないとか、そのくらいの話でしかないわ」
果林「でも、それを踏まえて曜ちゃんが何か言いたいことができたかもしれないんだけど、メインイベントとやらの前に聞いてもらってもいいかしら?」
曜「………」
果林「曜ちゃん、あなたの気持ちはわからなくもないわ…でもね、私はここではっきりさせておくべきだと思う」
果林「あなたが友情を信じるなら、なおさら目を背けちゃいけないんじゃない?」
曜「…果林さんの言ってることとは別に私がおかしいなって思ったこともあって、先にそっちからでもいいかな?」
曜「えっと、鞠莉ちゃんの部屋にメイドさんたちが来た時なんだけど…」
曜「メイドさんが言ってたんだ。『ここまで予定どおりでしたが』『最後の一部屋は本命だけあって少し骨が折れそうですね』って」
曜「でね、今日のこの事件が鞠莉ちゃんを狙ったもので、それで鞠莉ちゃんの部屋が最後になってるのならメイドさんがこう言うのもわかるんだ」
曜「あの時、私たち28人はさ…"昨日泊まっていた部屋で待機"ってことになってたんだ…」
曜「誰かがたまたましゃべったのをメイドさん達の誰かがきいたとかで、それが知られちゃったのかもしれない」
曜「そうすれば鞠莉が待機してるのは昨日鞠莉ちゃんが泊まっていた、鞠莉ちゃんの部屋だってわかるから…おかしくない」
曜「でも、そうじゃなかった。狙われてたのは私だった」
曜「だとするとおかしいんだよ」
曜「私は"昨日泊まってた部屋"が無かったんだ」
曜「だから、私がどこにいるかは本来は不確定だし、本命の私が最後になる予定なんて立てようが無いんだよ」
曜「最後に鞠莉ちゃんの部屋に来たのが予定通りってことはさ、私が鞠莉ちゃんの部屋にいるのがわかってたんだよね…メイドさんには」
曜「不確定なはずの私のいる部屋をなぜか知っていたんだ」
曜「でね、メイドさんはこうも言ってたんだ『そちらの方から分断されて好都合だ』って
曜「ということは私たちの分断自体はメイドさん側の思惑ではなかった…ってこと」
曜「さっきのメールを送ったりとか、何度も電話をかけてきたりからすると、綾小路姫乃ちゃんの誕生日で果林さんとエマさんが突然帰らないといけなくなったのも本当っぽい」
曜「鞠莉さんも…果林さんも…エマさんも…多分メイドさんとは無関係」
曜「あの雨の上にカーテンも閉まってたし、鞠莉ちゃんの部屋は最上階だから、外からわかるとは思えない」
曜「そうなるとさ、私があの時、鞠莉ちゃんの部屋にいることがなんでわかったのかな…って」
千歌「………」
曜「それだけじゃない、千歌ちゃんは果南ちゃんとダイヤさんが眠らされてるのを見たって言ってた」
曜「たしかに部屋割りからすると、果南ちゃんとダイヤさんは同じ部屋なんだよ」
曜「でも、思い出したんだ」
曜「あのね、今日のパーティーでね…ダイヤさん言ってたんだよ。『昨日の夜、ルビィちゃんが動画を見て盛り上がってた』って」
果林「まあ、ダイヤちゃんは当然知っているでしょうね…一晩中同じ部屋にいたんだから」
エマ「というより、ダイヤちゃんの方が盛り上がってたよね…まさに一晩中」
曜「やっぱりそうなんだ。ダイヤさんと同じ部屋に泊まったのは、ルビィちゃん」
果林「…よく気づいたわねそんな一言で」
曜「その一言だけじゃない。エマさんの言葉もヒントになったんだ」
エマ「私?」
曜「鞠莉ちゃんの部屋で果南ちゃんに電話が通じなかった時なんだけどさ…」
曜「"果南ちゃんと同じ部屋にいるかもしれない人"に、鞠莉ちゃんがかけて出なかった後にエマさんが言ったんだよ」
曜「『千歌ちゃんに聞いてみたら』って」
曜「多分、本当に果南ちゃんと一緒にいたのは千歌ちゃんがホテルに入るように伝えて回ってたタイミングで会った人、梨子ちゃんか花丸ちゃんのどっちか」
果林「…花丸ちゃんよ」
果林「昨日の夜ね…どうせ同じ放送見るならって果南ちゃんが気をきかせて部屋をルビィちゃんと交換してたの」
果林「部屋割では『花丸・ルビィ』『ダイヤ・果南』だけど、実際は『花丸・果南』『ダイヤ・ルビィ』だったってことね」
エマ「うん、千歌ちゃんなら花丸ちゃんと会ってたなって思い出して、千歌ちゃんに聞いたらわかるんじゃないかなって…」
エマ「昨日泊まった部屋で待機してたんだとしたら…果南ちゃんと一緒にいるのは花丸ちゃんだからね」
果林「まあ、千歌ちゃんから果南ちゃんとダイヤちゃんが一緒だったって聞いた時は、私もエマも実は部屋割り通りに待機してたのかなってくらいで流してたけど」
果林「どうなのかしら?こんな状況ならダイヤちゃんとルビィちゃんが一緒の方が都合いいわよね。」
果林「ま、後で本人に聞いてみたら誰といたかわかるでしょ?」
曜「あとね、鞠莉ちゃんの部屋で果林さんのスマホが無いって話になった時、メイドさんはどういうわけかあんまり問題にしてなかったんだ」
曜「ボディチェックでヘアピンまで警戒していた人が、ただ拾っただけで使える機能でも十分に脅威になる果林さんのスマホを探そうともしなかったんだ」
曜「メイドさんは知ってたんだと思う。果林さんのスマホは心配ないって」
曜「それにね、私がターゲットならまずは私が到着しないと話にならない」
曜「だから、いた方がいいんだよ。私に怪しまれずに私の動きを把握して、私が予定外の行動をしないように、できれば朝からフォローできる人が」
曜「そうやって考えていくとさ、いろんな疑惑が一人に集中していくんだよ」
果林「あー、あと私からも追加でいいかしら?」
果林「千歌ちゃんはスマホが私のだって思った後、なんでホテルじゃなくて外を探していたの?」
果林「普通に考えたら私が外にいるわけないじゃない?この雨だし、ホテル内で待機って話になってたのよ」
曜「ねえ…」
曜「千歌ちゃんはさ…爆発音、多分鞠莉ちゃんの部屋から私たちが出た時のだと思うけど、それを聞いて、外に出て、少しして果林さんのスマホを見つけたんだよね…」
千歌「……」
曜「千歌ちゃん、言ってたよね?それから果林さんのスマホをどうにかしようってしてたって」
曜「果林さんのスマホは14時から何度も圏外だったみたいだけど」
曜「千歌ちゃんが操作してた時もずっと、圏外だったの?」
曜「私たちと会ったあの時だけ、圏外じゃなかったの?」
曜「千歌ちゃんはどこで果林さんのスマホを見つけたの?そこが果林さんの行った場所ならそれだけで私は千歌ちゃんを信じられるよ」
曜「…私は千歌ちゃんを疑うなんてしたくないよ」
千歌「………」
千歌「…ダメだよ…曜ちゃん…」
千歌「曜ちゃんは真実に気づいたんだよ」
曜「千歌ちゃん…」
千歌「だったら誤魔化しちゃだめだよ」
千歌「果林さんのスマホはね…ずっと私が持ってたんだ。バレちゃいけないから電源を切って」
曜「そんな…」
千歌「でも、違うんだよ!」
千歌「こんなの聞いてなかった…私はただ、曜ちゃんをびっくりさせたいって聞いて…そのためにはみんなの場所を教えてほしいとか、果林さんのスマホをしばらく隠しておいてほしいとか言われて」
千歌「おふざけのつもりで協力して、本当はそうじゃないって気づいたときにはもう手遅れで…大人しくいうことを聞けば、みんなには話さないって脅されて…」
果林「私のスマホを隠せっていわれたときにおかしいって思わなかったの?」
千歌「そういうドッキリだって言われた…果林さんたちも仕掛け人だって言われてたし、私は果林さんたちが帰らないといけないなんて知らなかったんだよ?」
果林「…知らなかった?そんなことあるわけ…」
曜「………そうか……」
曜「…ごめん、私もようやく気づいた」
曜「そうなんだ…これは偶然なのか意図してそうされたか知らないけど、千歌ちゃんは知る機会が無かったんだ」
曜「ホテルオハラに前泊したメンバーは果林さんから直接聞くとか、鞠莉ちゃんから聞くとかできたかもしれない」
曜「善子ちゃんと絵里さんと希さんみたいに淡島に着いた後の会話で知ることができるかもしれない」
曜「パーティーのどこかで、果林さんとエマさんと話をした人は本人の口から聞けたかもしれない」
曜「実際、メイドさんは果林さんが早く帰らないといけないことは知ってたみたいだしね」
曜「だけど、千歌ちゃんはそのどれにも当てはまらないんだ」
曜「淡島に来たのは今日の朝で、来てすぐに呼ばれていなくなって、それからも準備で」
曜「雨が降ってきた後に私たちが果林さんが早く帰らないといけないって話をしてたのは千歌ちゃんがみんなに伝えてくるって駆け出した後」
曜「唯一知れたかも知れない機会は雨が降ってきてみんなに伝えて回った時にその誰かから聞くとかだけど」
曜「千歌ちゃんが話したのは梨子ちゃん、花丸ちゃん、真姫ちゃん、凛ちゃん」
エマ「パーティーで姫乃ちゃんの話をしていた時にいた人じゃないってことだよね」
曜「仮にその中に果林さんとエマさんが早くに帰らないといけないことを聞いて知っていた人がいたとしても、そういう話にならなかったんだと思う」
曜「メイドさん達でさえ知っていたことを、千歌ちゃんは知らなかったんだ」
曜「というより、やっぱり知ることができないようにされていたんじゃないかと思う」
曜「だからこそ、姫乃ちゃんから果林さんへのメールを見た時にショックだった…そうだよね?」
曜「普段なら笑い飛ばしていたような私の言葉に怒っちゃうくらいに」
千歌「ごめん……こんなこと言っても手遅れかもしれないけど、せめてスマホを返すくらいはしようと思ったんだよ」
千歌「だけど、いざ果林さんたちを目にしたら…本当のことがバレたらどうしようとか、渡すにしてもどう渡せばいいかとか、わからなくなって」
千歌「拾ったなら電源入れるくらいはしとかないと不自然かなって、電源入れて…電池切れ寸前なのにようやく気づいて、そうしたら電話がかかってきて…」
千歌「…果林さんからスマホに来たメールを見せてもらって、やっと自分がやったことの意味がわかって、自分がみじめに思えた」
曜「それであんなことを…」
千歌「でも、私がそんなことしたせいでみんな見つかって、捕まっちゃったんだよね。本当にごめんなさい」
偽メイド「ふふっ、ふふっ…」
曜「………」
偽メイド「あははははははっ!!思った以上の傑作です!」
偽メイド「今日は本当についてます。タイミングを図って私がバラしてあげようと思ったら、こんな名推理を見せてくれるなんて、さすが渡辺曜ちゃんです!」
偽メイド「そうですよ!あなたの大事な高海千歌ちゃんはね…私の口車に乗せられて、ずっと私の計画に協力していたんです!」
偽メイド「何も知らないでスマホを隠し持ってるのなんか滑稽でしたよ!いつ果林ちゃんとエマちゃんの事情を知って絶望するのかと思ったら…」
偽メイド「遅過ぎですよ!私たちも知られないように手は回しましたが…千歌ちゃん、あなたよっぽど持ってないんですね」
曜「なんで、千歌ちゃんを…」
偽メイド「私の復讐の相手は曜ちゃんなんですけどね…千歌ちゃんも無関係じゃないんです。だから2人であなたたちが壊したものの対価を払ってもらおうと思いまして」
曜「私たちが、壊した?」
偽メイド「知りたいですか?でしたらそろそろメインイベントを始めましょう」
偽メイド「では、もういいですよね?スマホを渡してください。朝香果林さん」
果林「くっ…」
エマ「…させないよ!!!」ダッ
曜(エマさんがメイドさんに向けて駆け出す…そのまま)
エマ「うわあああああ!」
ドゴォオォ!
曜(タックル!恵まれた体格からの…下半身に狙いを絞った危険タックル!まともにくらえばひとたまりもない!!!!)
偽メイド「くああっ!!」
曜(入った…!エマ・ヴェルデ…スイスからの刺客の…渾身のタックルが突き刺さった……!!!)
エマ「今だよ!」
果林「何ぼーっとしてるの!逃げるわよ!曜ちゃん!!」
曜「う、うん!!」
曜「そうだ!千歌ちゃん…!」
千歌「あはは…私は足手まといにしかならないし、やめとくよ」
千歌「ごめんね…曜ちゃん…じゃあね」
曜「そんな…」
果林「走るの!エマの頑張りを無駄にしないで!」
曜(果林さんに引っ張られて、私は走り出す)
曜(千歌ちゃんのことで頭はぐるぐるしてたけど、ひたすら走る)
偽メイド「そいつらを逃がすなあああ!」
曜(覆面をつけた人たちが私と果林さんの前に立ちはだかる…もちろん、全員マイク持ちだ)
曜「っつ!!」
曜(これじゃ、抜けられない…)
ドガッッッッ!
エマ「果林ちゃん!」
千歌「曜ちゃん…」
曜(案の定、私と果林さんは人の壁に激突してしまった)
偽メイド「まったく、どこまでも忌々しい」
偽メイド「これは預かっておきますね」
曜(メイドさんが果林さんのスマホをポケットに入れる)
偽メイド「さてと、随分と手間取りましたが、これで全員制圧です」
偽メイド「あ、それと千歌ちゃん」
千歌「………」
偽メイド「あなたがそこそこ使える無能で助かりました。もう用済み…と言いたいところですが、もう少しご協力くださいね」
~4月17日 16:30~
~ホテルオハラ・ロビー~
偽メイド「さて、ようやくメインイベントに入れます」
偽メイド「覆面の皆様、よろしいですね。では…」
偽メイド&覆面一同「 ハッピーバースデー!渡辺曜ちゃん!」
曜「どういうつもり…」
偽メイド「質問の意図がわかりかねますが?何か気に障ることでもありましたか?」
曜「こんなことをしておいて、おめでとうも何もないよ!」
偽メイド「こんなこと、というのは今も床で寝ているお友達のことですか?それとも」
偽メイド「私たちの上で無様に吊るされてる高海千歌さんのことですか?」
千歌「………」
曜(そう…千歌ちゃんは今、メインイベントとやらのために宙吊りにされている)
果林「ほんと…悪趣味すぎて吐き気がしてくるわ」
偽メイド「あら?でしたら他の方々と同じようにおねんねします?果林さんとエマさんはとても頑張ってくれたので特別に鑑賞の権利をあげたのですが?」
果林「…ありがたく鑑賞させてもらうわよ。この反吐が出るイベントを」
偽メイド「さて、ではようやくメインイベントの開始ですね」
曜「なにをするつもり?」
偽メイド「簡単なゲームですよ。あなたにはこれから私たちのラップを聞いてもらいます」
偽メイド「最後まであなたが気を失わなかったら、あなたの勝ちです。期限は日付が変わるまで、これは復讐は今日限りにしようという私たちの慈悲の心です」
偽メイド「ただし、あなたが気を失ってしまうことがあれば…あなたの大事な千歌ちゃんはこのスイッチで地面へ真っ逆さまです」
曜「それは?」
偽メイド「高海千歌ちゃんの命を繋ぎ止めているロープの、爆破スイッチです」
曜(千歌ちゃんが吊るされてるロープの束、よく見るとそれは天井の滑車を一回通って、地面へ置かれた妙な箱に繋がれていた)
偽メイド「このスイッチを押すと箱が爆発、千歌ちゃんは…ああ!無惨にも地面に叩きつけられてデッドエンド!という仕掛けです」
偽メイド「運が良ければ助かるかも知れませんが、もうスクールアイドルなんてできませんね」
曜「そんな…」
偽メイド「ちなみに…」
偽メイド「ラップで反撃してもいいですが、私がイマイチだな~って思ったらたとえ曜ちゃんが気絶していなくてもこのスイッチを押します」
エマ「ずるいよ!そんなの曜ちゃんがどんなに頑張ってもあなたがダメって言えばいいだけでしょ!」
エマ「ラップバトルを…バカにしないで!」
偽メイド「まったく、うるさいですね…」
偽メイド「あ、そうそう。当然ですが、誰であろうと妙なまねをしたらその時点で千歌ちゃんは落ちますので言動には気をつけてくださいね」
偽メイド「では、開会宣言も兼ねて一番手は私が務めさせてもらいます」ヒューン
【偽メイド】
ご機嫌いかがです?さあメインイベント
暴挙と憎悪のデパートメント
面と向かって言ってみます?延々と
無駄にひねった死神(デス)への遺言(テスタメント)
綺麗事語りな口にぶち込む裁き
大切な高海は死へ踏み込む高み
間もなく昏倒コンクリートのたたき
5に10も無くご臨終で歯噛み
曜「あああっ!」
偽メイド「どうです?私のラップは?」
曜「くっ…こんなの全然耐えられるよ…」
偽メイド「ふふ…そうですか。まあ、なんだかんだ手間取ってしまいましたのであと5時間ですからね。急いで回しましょう」
偽メイド「ではみなさーん!今日は思い切りぶちまけましょう!」
~4月17日 17:00~
~ホテルオハラ・ロビー~
ドオオオオオン!
曜「ぁあ゛あっ!」
覆面男「ふ、ふふ、や…やってやったんだ!ボク…いや、俺のラップが渡辺曜をいたぶってやったんだ!は…ははは」
偽メイド「中々気合の入ったラップありがとうございます。では、次の方」パチパチ
曜(私に恨みがあるっていう覆面を被った人たちが次々にラップを浴びせる)
曜(ラップの内容は色々だ。私と比べられて挫折感を味わったとか、好きなスクールアイドルが私のせいで引退したとか、自分はうまくいっていないのに私が何でもできるのが気に食わないとか)
曜(そんなことを一人一人ラップでぶつけてきては次の人に交代の繰り返し)
曜(一人一人のラップが終わるたびにメイドさんは拍手と賞賛を送っている)
曜「うう…」
偽メイド「苦しいですか?痛いですか?」
曜「はは…それなりにね…でもこんなのへっちゃらだよ」
偽メイド「ふふっ、そうですか…」
ドゴッ!
曜「あふっ!」
曜(メイドさんの蹴りが私の脇腹に突き刺さった)
偽メイド「あ、すみません。つい、手…ではないですね、足が出てしまいました」
曜「ううん、ラップじゃ物足りなかったし、ちょうどいい目覚ましになったよ」
偽メイド「そうですか…」
ガシッ
曜「あっ!!」
曜(メイドさんの手が私の髪を掴んで頭ごと引き寄せる…)
偽メイド「私がなんでこんなことをしたかわかります?他の子みたいにあなたを眠らせないかわかります?」
偽メイド「あなたに安息なんて与えない!あなたには永遠に苦しんでもらいます!」
偽メイド「私たちの復讐は終わっても、今日の記憶があなたを苦め続けるんですよ」
偽メイド「まだ耐えてくださいね。私たちの復讐はこれからなんですから」
曜「オッケー…耐え切るよ」
千歌「曜ちゃん!もういいよ!こんな…私なんかのためにボロボロになっちゃダメだよ!」
曜(千歌ちゃんが吊るされながらも叫ぶ)
曜「…大丈夫だよ。私は倒れない」
曜「それより千歌ちゃん、大人しくしてないと危ないよ」
千歌「やめてよ…こんなの…!」
千歌「ふざけんな!ふざけんな!何で…私は…こんなことのために…」
千歌「どうして私はいつもこうなんだよ!…いつだって私は曜ちゃんに助けてもらうばかりで…」
曜「そんなことない!」
千歌「曜ちゃん?」
曜「自分を信じてよ…千歌ちゃんは…私にできないことができるんだよ」
曜「千歌ちゃんは私よりもずっとすごい…助けられてきたのはむしろ私の方なんだ」
曜「私だけじゃない…Aqoursのみんな、他にもたくさんの人を千歌ちゃんは助けてきたんだ!」
曜「だから、"私なんか"なんて言わないで」
偽メイド「ははっ、こんな状況でもかばうなんて美しい友情ですね」
曜「かばってなんていないよ…私にとって大事な人を守りたいだけ」
偽メイド「うーん、なるほど…」
偽メイド「千歌ちゃんを盾に取れば黙ると思いましたが、あまり効果は無さそうですし、進行の妨げになりますし、落としちゃいますか」
曜「え?」
偽メイド「あ、イベントはこのまま進行しますので、そこはご安心を」
偽メイド「じゃあ、さようならです高海千歌ちゃん」
♪ワビータビーカナーデ
偽メイド「……はい?」
曜(メイドさんの動きが止まった)
♪ツツミーコミマショオオー
曜(そうだ、たった一つだけある…今この場でなんらかの着信をする可能性のあるスマホが)
曜(あの時、メイドさんは慌ててたから、そのまま果林さんのスマホをポケットに入れて…気づかなかったんだ)
偽メイド「しまった!電源を切ってなかったのか」
曜(これはメイドさんにとって予想外の事態。その上、今メイドさんの両手は塞がっている)
曜(この僅かな隙に、私は賭ける!)
曜「うわあああああ!」ダッ
曜(渾身の力をこめてのタックル!)
偽メイド「くっ、離せ!」
曜(体勢を崩したメイドさんが転んだ)
曜「ああああああ!!」
曜(メイドさんの持っていた爆破スイッチを奪って、放り投げる!)
曜(メイドさんは何とか立ち上がるけど)
曜「もう一回だああああ!!!」
曜(再度タックル!こんどはステージ外へ、私もろとも押し出す!)
偽メイド「お前…正気か…」
曜(ステージの、決して小さくはない段差から私たちは落ちる…)
ドンッ!
曜(地面に激突!勢いあまって随分飛んだな…でも、怯んでられない!)
曜「まだまだあああ!」
曜(メイドさんの肩を掴んで体ごと叩きつける!)
偽「ぐほぁっ!」
曜(まだだ!2度!3度!もっと!もっと!もっとおお!)
曜(そして、怯んだところでメイドさんのポケットから)
曜「あった!」
曜「果林さん!これ!」
曜(まだ着信し続けているスマホを果林さんに投げた)
偽メイド「ぐっ、あんた…ずいぶんと乱暴なことするじゃないの…」
曜「はあ…はあ…ヌマヅの健康優良児なら…こんなの当たり前だよ」
偽メイド「これだから田舎のジャリは…」
曜「果林さん!」
曜(果林さんが…こっちに向けてVサインする。無事電話に出られたみたいだった)
果林「…ありがとう、姫乃ちゃん。おかげでそっちに戻れるかもしれないわ」
果林「だから、さっきのキャンセルは無しにしてあと少しだけ待ってもらってもいいかしら?」
偽メイド「ふう…まったく…」
偽メイド「…これで終わりとか思ってないですよね?」
曜「さすがに…これじゃ立ち上がるよね」
果林「…ごめんなさい。また電話するわ」
曜(果林さんが通話を切る。まだ不利なことには変わらないけど、これで少しは状況がよくなったはず)
偽メイド「さて、爆破のスイッチをどうにかできたと達成感に浸っているところ悪いのですが…ルールはルールです」
偽メイド「残念ですが…高海千歌ちゃんはもう終わりですね」
曜(千歌ちゃんの吊るされてるロープの束が天井の滑車を通って箱に結ばれた地点、そこに立った人が枝切り鋏を持っていた)
果林「なによそれ…」
エマ「ずるいよ!そんなの!」
偽メイド「爆破のスイッチなんてなくても、直接ロープを元から切れば同じことですよね?」
曜「そんな…」
偽メイド「妙な真似をしたら高海千歌ちゃんを落とすと言われていたのに手を出したのはあなたですよ?」
偽メイド「さあ、その目に焼き付けてください!千歌ちゃんが落ちる様子を」
ジャキッ…
曜(千歌ちゃんを吊るしていたロープが切られてしまった…)
曜「千歌…ちゃん…!!」
曜(千歌ちゃんは地面に向かって落ちていく…たった一瞬のことがスローモーションで展開していく)
曜(そして千歌ちゃんの体は地面に叩きつけられ…)
ギリリリッ…
曜(ることなく…止まった…)
偽メイド「は?何ですか…これ」
曜(本当にギリギリだっけど、千歌ちゃんは地面とぶつかることなく止まった)
曜「良かった…間に合ったんだ」
「まったく、ウチを頼るのはいいけど、こんな解決はいかがなものかと思うよ?」
希「たまたまロープが絡まって止まりました~なんて、ストーリーとしては落第点やん?」
曜「ありがとう希さん…」
希「まっ、ウチは何もしてないんだけど…」
希「がんばってた子へのささやかなご褒美ってことで加点、ウチを叩き起こしたのも入れて合格点ってところかな」
曜「保険だったってことで許してよ。メイドさんから爆破スイッチを奪って解決…ってのが、もともとの予定だったから」
曜(時間はほんの少しだけ遡る)
曜(…私とメイドさんがステージから落下した先には希さんがいた)
曜(そこからのもみ合い…私はある賭けに出た)
希「にしても…いやー、きっつい目覚め方してしまったよ」
曜(ステージから落下した私はメイドさんを何度も叩きつけた…)
曜(そう…眠っている希さんに!!!)
曜(メイドさんの言ってた眠らせるってのがどのくらい強力なのかわからなかったし、起こせるのかは賭けだった…でも起こせる確信はなんとなくあった)
曜「ありがとう千歌ちゃん」
千歌「え?」
曜「何かあれば起きるのを知ってたから、千歌ちゃんは『爆発の音で目が覚めた』なんて嘘をつけたんじゃないかなって…思ったんだよね」
曜「千歌ちゃんの言葉だから賭けられたんだ」
千歌「そっか…どういたしまして」
希「えーっと、いい話してるところに割り込みしていいかな?」
曜「どうしたの?希さん?」
希「いくらウチでも全部ラッキーってわけじゃないから、そこは誤解しないでね」
ブチッ!
千歌「へ?」
ドオオーン!
曜「千歌ちゃん!?」
希「はは…ロープさんも限界やったみたいね」
希「さてと、まだ把握しきれてないけど…だいたいの事態はわかってきた」
希「あなた、今朝のメイドさんだよね?ウチの前で下手なことしたらどうなるかはもうわかってるかな?」
曜(希さんがメイドさんを牽制している間に千歌ちゃんを縛っていたロープをほどく)
千歌「あいたたた、降りれたのはいいけど…」
千歌「なんだよこれ…千歌はだまされて、脅しに屈して、カッコ悪いところばかりなのに、曜ちゃんばっかりずるいよ」
千歌「…でも、一番ずるいのは私だよね」
千歌「自分には何もないって思い込んで、目を背けてた…」
千歌「曜ちゃんは曜ちゃんで苦しんでたことからも、私が本当に負けちゃいけない相手からも」
千歌「私は私自身に負けない…ずっと戦ってきたんだから」
千歌「だから決めたよ…このままカッコ悪く終わるなんてしない!」
千歌「ってことでさ…曜ちゃん、マイク使っていいかな?千歌の最高にカッコいいところ見せてあげるからさ」
曜「うん、いいよ…」
曜「見せて、千歌ちゃんのカッコいいところを」
千歌「うん!了解したよ曜ちゃん」ヒューン
偽メイド「さっきまで人質だった無能が何をする気なんですかね?」
曜「メイドさん、あなたは一つ勘違いしてる」
曜「千歌ちゃんは無能なんかじゃない!最強で最高な私のパートナーだよ!」
千歌「はは…嬉しいこと言ってくれるじゃんか!」
千歌「よおおおく聞けよ!これが!!私の!!」
千歌「高海千歌の意地とプライドをかけて…あんたらに叩き込む言葉だあああああああ!!!」
【千歌】
果て無しのジェラシー、確かに苦しい
でも突き返すよいつもの軽口
ドブにでも捨てるよ腐った件(クダリ)
だって下らないこんな逆恨み
裸足と裸足で走ったバカ騒ぎ
痛ましい傷口も友情の証
裏切ってたまるか私の魂
失ってたまるか最高な友達(ダチ)
ドオオオオオオオオオオオオオオオオン
覆面一同「ああああああああ!」
偽メイド「くっ!」
偽メイド「…なるほど、あなたはこれからも曜ちゃんと一緒にいて比べたり比べられたりで傷つき続けると…」
千歌「あー、その手の話は何度もありましてね…まあ、ぶっちゃけますよ」
千歌「……うるさいんだよ!外野がいちいち!」
千歌「才能とかそんなの関係ないだろ!曜ちゃんと心の底から笑い合える友達で居続ける、それが私の決めたことなんだよ!傷つくのがこわくて渡辺曜の友達ができるわけないだろ!」
千歌「だいたい何だよ!?私が勝てない?決めつけんな!私だって曜ちゃんに勝てるものくらいあるし!」
千歌「みかん当てとか、みかん積みとか、みかん早食いとか勝てるものいっぱいあるんだから勝手に人を負けにすんな!」
千歌「普通怪獣ちかちーは…お前らとは年期が違うんだよ!これまでもこれからもずっとずっとずーっと私は曜ちゃんの親友だ!文句あるかああああああ!」
偽メイド「やれやれ、まあ…あなたがそうしたいならそうすればいいです」
偽メイド「ですが…ひとまず、今は黙ってくださいね」ヒュ
千歌「それはさせないよ!」
偽メイド「くっ、早い」
千歌「そっちは何連続もやったんだ!だったら、こっちだって連続でさせてもらうよ!」
千歌「次もこっちのターンだ!」
【千歌】
なにが復讐だよただの八つ当たり
負けただけだろ自分の弱さに
超えられないぞ私たちの轍
歳月も優劣も超越したあがき
被害者じゃないあんたらは敗者だ
こっちは己に勝つサバイバーだ
だったらもう恐れなどは無いな
ここで仕舞いだ さあバイバイだ
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!
覆面一同「ぎゃああああ!!!」
偽メイド「…いったいどこにこんな力が」
千歌「復讐とかふざけるな…あんたたちの何倍も私も曜ちゃんも苦しんできてるんだ」
千歌「苦しくてみじめな気持ちにもなることもあるけど、私たちはそんな自分に負けない!」
千歌「ましてや、自分の弱さに屈したあんたらになんて、絶対に負けない!」
曜「千歌ちゃん…」
偽メイド「やれやれ…私以外は全滅ですか」
偽メイド「寄せ集めの方々に期待はしてませんでしたが、これだけの人数を一度に撃破とはそこそこやるようですね」
希「うーん、それだけじゃないと思うよ?」
曜「希さん?」
希「周りをよく見てごらん」
鞠莉「……ん?んん」
穂乃果「ここ…どこ?」
歩夢「たしか、私たち…」
曜「みんな目が覚めた…?そうか!千歌ちゃんのラップで」
偽メイド「……こんなことが」
偽メイド「私以外を全滅させたばかりか、力ずくでμ's・Aqours・ニジガク全員を叩き起こした…」
偽メイド「驚きましたよ…思わぬどんでん返しです」
希「いや、これは当然の結末だと思うよ?」
希「途中からしかウチは知らないけど、千歌ちゃんがここまで力を出す展開を作ったのは他ならぬあなたじゃないかな?」
希「それにね…朝、曜ちゃんの前でウチにバトルさせなかったら、曜ちゃんはウチを叩き起こすなんて思いつかなかったかもしれない」
希「これはあなたの行動が招いた結果」
希「そして、他にもいくつもの偶然と意志が少しずつ積み重なったのが今の状況なんやない?どんでん返しなんかじゃないよ」
偽メイド「くっ…」
曜「希さん、シメは私と千歌ちゃんにやらせてよ」
希「そうだね。どうぞ」
曜「ありがとう。じゃあいくよ、千歌ちゃん!」
千歌「おうよ!」
曜「つまり、あなたたちは…」
千歌「最初から…」
曜・千歌「「私たちに負けていたんだ!!」」
偽メイド「言ってくれますね。ですが…たしかに28対1は無謀すぎる」
果林「あら?あなたが相手するのは28人じゃないわよ?」
果林「ダメじゃない?連絡手段を持った人から目を離したら」
エマ「うん、すっかり私たちのこと忘れてたよね」
偽メイド「まさか…」
果林「ええ、かけさせてもらったわ…警察に」
エマ「すぐ来てくれるって。日本の警察は優秀らしいね」
偽メイド「はぁ……わかりましたよ。降参です」
偽メイド「計画は破綻、警察に通報済み、これで抵抗するほど私もバカではない。あなたたちの勝ちですよ」
偽メイド「ですが…」
偽メイド「最後に悪あがきはさせてもらいます」ヒューン
曜「しまった!」
千歌「くっ!間に合わない!」
偽メイド「油断しましたね!」
【偽メイド】
雲の上はいつだって晴れ
飛べるフクロウには無い"夢"の果て
袋叩き前に去ればあっぱれ
未来はまんまる"まどろむ"あのカフェ
曜「くっ!」
曜(いきなり眠気が…こんな時に)
偽メイド「では、さようなら」
曜「このまま…逃げる…つもり?」
偽メイド「はい、私はつかまるわけにはいかないので」
偽メイド「ただ、そうですね…今日は疲れたのでもう荒事はやめておきますし、宣言通り私の復讐は終わりにします」
偽メイド「では、残り時間はわずかですが幸せな誕生日をお過ごし下さい」
偽メイド「おやすみなさい。ハッピーバースデー、渡辺曜ちゃん」
曜「そん…な…」
曜(それからすぐに私たちは目を覚ました)
曜(28人同時ってことで効果が弱かったんだと思う)
曜(慌ててメイドさんの後を追うけど、そこには誰もいなかった)
~4月17日 18:00~
~ホテルオハラ・外~
千歌「んー!なんか久しぶりにスッキリしたな」
千歌「正直言うとさ、最近モヤモヤしてたんだよね。曜ちゃんはこんなに評価されて、みんなが集まってくれるのに私は…って」
曜「そうだったんだ」
千歌「はは…私らしくもないよね」
千歌「でもね、もう平気!天才渡辺曜にだって負けないのが普通怪獣ちかちーなのだ!」
曜「そっか…ありがとう千歌ちゃん」
千歌「ふふ、どういたしまして」
曜「あ、警察の人たちが来たみたいだよ」
鞠莉「迅速な出動ありがとうございます」
警官「いえ、こちらこそ、ご協力ありがとうございます。それで、犯人グループのリーダーですが…」
鞠莉「…ええ…犯人グループのリーダーについては私たちも探していますが、どこにも」
曜(警察の人が言うには、まだ雨が降ってたけど弱まってきたし、事態が事態ということで至急来ることになったらしい)
曜(果南ちゃんの家族とか他に島にいたはずの人は沼津側の船乗り場で見つかった。犯人グループには船の操縦ができる人がいて、眠さられたまま船で沼津側に運ばれてたみたい)
曜(犯人グループの人はリーダー…あのメイドさん以外は島にいる人も沼津にいる人もみんな逮捕された)
曜(大活躍だった果林さんのスマホ以外の荷物とかスマホはまだ見つかってないし、事件はまだ解決したとは言い難い)
曜「………」
果林「曜ちゃん」
曜「あ、えっと…何?」
果林「今日はありがとう。あなたがいなかったらどうなっていたことか」
曜「はは…そもそも私がこの事件の原因でもあるんだけどね」
エマ「千歌ちゃん、パッション溢れるラップだったよ」
千歌「へへっ、Aqoursのリーダーの面目躍如ってところかな!」
曜「…これから姫乃ちゃんのところに行くんでしよ?間に合うといいね」
果林「ええ…何としても今日中に行くわ。だって、あの子は今日のMVPなんだから」
エマ「って言っても、あるのは果林ちゃんのスマホだけだし、どうやって行けばいいんだろ」
鞠莉「ふふふ…またマリーの力が必要かしら?」
果林「鞠莉ちゃん?」
鞠莉「もー、水臭いですよ。そんなのマリーにかかればひとっ飛びなんだから」
曜「ひとっ飛び…あ!」
果林「ヘリ……いいの?」
鞠莉「操縦士も戻ってきたし、オーライよ」
鞠莉「でね、マリーも一緒に行っていいかしら?綾小路姫乃ちゃんに会いたいの」
エマ「もちろんだよ!鞠莉ちゃんも姫乃ちゃんのファンになっちゃったんだね。うんうん!」
曜「えーっと、ちなみに警察の方々への対応は?」
鞠莉「そんなのはダイヤあたりがなんとかするわよ」
千歌「あー、うん…やっぱりか」
鞠莉「では、マリーのヘリでレッツゴーね」
鞠莉「あ、そういえば果林のスマホって電池ヤバヤバよね?これ、ホテルの備品だけど使う?」
果林「携帯のバッテリー…ありがとう鞠莉ちゃん」
鞠莉「いえいえ、礼を言うのはこっちよ」
鞠莉「あ、そういえばまだ渡したいものが…」
鞠莉「…いや、向こうに着いてからでいいかしらね」
鞠莉「待たせてるんでしょ?早く電話なりメールなりして安心させてあげなさい」
果林「そうね…」
果林「………つながった!」
果林「待たせてごめんなさい!姫乃ちゃん!今どこにいるかしら!?」
果林「そう…あと2、3時間かかるけど必ずそっちに向かうから!待っててくれる?」
エマ「果林ちゃんスマホ貸して!」
エマ「ごめんね!姫乃ちゃん!私たち、絶対にそっちに行くから!」
エマ「絶対に!絶対に行くから!」
果林「約束よ!待っててね!」
果林「…よし!」
果林「じゃあ…行くわよ、エマ!」
エマ「うん!」
鞠莉「2名様ご案内、マリーのヘリはこちらでーす!」
曜(それから少しして、鞠莉ちゃんのヘリが淡島を飛び立っていった)
千歌「…ちゃんと会えるといいね」
曜「絶対会える…大丈夫だよ」
【HIMENO SIDE】
~4月17日 22:00~
~都内の公園~
曜『ってな感じで、姫乃ちゃんの大手柄なんだよ』
姫乃「……そんなことになっていたのですか」
果林「いやー、改めて聞くとものすごい話よね」
エマ「自分の身に起こったとは思えないくらい」
エマ「あ、ということは今、果林ちゃんが持ってるマイクは」
鞠莉「そうよ、エマっちのマイク!…なのかしら?何しろあの場にはいくつもマイクがあったはずだし、見つかったのはこれ一つだけだし」
エマ「あの爆発でも壊れなかった強い子だよ。私のマイクに間違いないよ」
エマ「おかえり…私のマイク」
かのん「…あの」
姫乃「あ、そういえばあなたたちのマイクを借りたままでしたね」
かのん「それもありますし、今の話の初めの方で知り合いがいた気もするのですが…」
かのん「その…もしかしたら私、その犯人グループのリーダーの人と知り合いかもしれないです」
曜『え…』
姫乃「どういうことです?」
かのん「…違うかもしれない、私の知ってるその人はそんなことをする人じゃないから」
かのん「でも、もし私の知ってる人だったら…その人はただの恨みでこんなことをしたんじゃないはずです!」
曜『なんで知り合いかもしれないと思ったの?』
かのん「あの…私の家、カフェなんです。あと、マンマルって名前のフクロウがいて」
かのん「よく来てくれてたけど、最近まったく来なくなっちゃったお客さんがいるんです」
可可「かのん…」
千砂都「私からもお願いします。話してください」
かのん「いきなり横からこんなこと言ってごめんなさい!でも、もしかしたら力になれるかもしれません」
かのん「今日の夕方なんですけど、そのお客さんからうちに電話があったみたいなんです」
かのん「『あたしは多分あの子ともう会えないから、何かあったら助けてあげて』って」
かのん「それで私たち、行ってきたんです」
かのん「……病院に」
姫乃「ああ、それでこんな時間に」
曜『…あるんだね、こんなこと』
曜『話すかどうか迷ったけど…この話には続きがあるんだ』
曜『話すよ。今度こそ全部』
【YOU SIDE】
〜4月17日 18:15〜
〜ホテルオハラ・外〜
曜(鞠莉ちゃんのヘリが空の向こうに消えていった、もう肉眼では確認できない)
曜「ふー!これで任務完了かな」
曜「じゃあ最後に決着をつけないとね…千歌ちゃん」
千歌「そうだね…って、どういうこと!?」
曜「行きたいところがあってね。千歌ちゃんには一緒に来てほしいんだ」
千歌「よくわからないけど、まあ…いいよ」
曜「そういえば千歌ちゃん?さっき使ってたマイクは?」
千歌「えーっと、実は持ってきてしまってまして…扱いに困ってます」
曜「それ、そのまま持っててもらってもいい?」
曜「さて、答え合わせだね」
〜4月17日 18:30〜
〜ホテルオハラ・プール〜
曜「ねえ、教えてほしいことがあるんだ」
曜(ホテルオハラにあるプール、季節柄まだ使われることはないだろう場所でじっと一点を見ていたその人に私は話しかけた)
偽メイド「何だい?」
偽メイド「まっ、ここにあたしがいることを何で気づいたのとか言いたいことはあるんだけどさ…」
偽メイド「答えてあげるよ?名探偵の渡辺曜ちゃん」
曜「何があなたをここまでさせたの?結局あなたは何も語らなかった」
曜「私たちが壊したって言ってたけど、どういうこと?」
偽メイド「そんなの聞いてどうするんだか」
曜「あなたに何があったか、私が知りたいだけだよ」
曜「私はさっき何人もの人から恨みの言葉を浴びせられた…」
曜「それはどれも痛かったけど、それだけだった。何十回、何百回やられようと耐えられると思った」
曜「でもね…たった一つ、そうじゃないのがあったんだ」
曜「最初にあなたが私に聞かせたラップ…あれはなんだったの?」
曜「あなたは開会宣言だって言ってた。でもそんな事務的なものじゃない…あのラップは他のどのラップよりも私の心に残った」
曜「あれは、何としても聞いてもらいたいあなた自身の言葉だったんじゃない?」
偽メイド「…いんや、そうでもないよ。確かにあたしが一番手をするつもりだったけど、あのラップはあの時どういうわけか即興で出てきちゃったのさ」
偽メイド「予想以上に千歌ちゃんが見事に騙されて舞い上がっちゃってたんかね」
千歌「言っとくけど、私…まだあなたのこと許してないよ」
千歌「…てか、たまに出てきてたけど本当の口調はそっちなんだね」
偽メイド「いえいえ、私は本来はおしとやかな淑女でございますよ…なんてね」
偽メイド「あたしがメイドの真似事なんてする日が来るとはね、似合わないことしちゃったもんだ」
曜「話を戻してもいいかな…」
曜「あれが即興なんだとしたら余計に私はあなたを知りたい。即興で出てくるくらいなんだからよっぽどなんでしょ?」
偽メイド「あー、やっぱり気づくんだね…はは」
偽メイド「なんであんな言葉使っちゃったんだろうね…」
千歌「えっと、ごめん…私、よくわからないので説明してもらっていい?」
曜「そうだね。千歌ちゃん、あの最初のラップ覚えてる?」
千歌「えーと、確か」
【偽メイド】
ご機嫌いかがです?さあメインイベント
暴挙と憎悪のデパートメント
面と向かって言ってみます?延々と
無駄にひねった死神(デス)への遺言(テスタメント)
綺麗事語りな口にぶち込む裁き
大切な高海は死へ踏み込む高み
間もなく昏倒コンクリートのたたき
5に10も無くご臨終で歯噛み
千歌「だっけ?」
曜「そう、このラップ…そのまま読むと、これからイベント始まるぞ、千歌ちゃんは落ちて死んじゃうぞ、ってことなんだけど」
曜「あの状況じゃ千歌ちゃんが落ちる前に"踏み込む"こともないし、あの場に"コンクリートのたたき"なんてない」
曜「落ちる前に踏み込んで、昏倒してる時にコンクリートのたたきが見える…普通なら飛び降り自殺とかそんなのなんだろうけど」
曜「私には別のものが見えたんだ」
曜「高みから落ちて死んじゃうかもしれない恐怖にたたきコンクリートの飛び込み台から踏み込んでいく…高飛び込みの景色が」
曜「飛び込み台については場所によってはコンクリートのたたきじゃないこともあるけどね」
千歌「んー、たしかにその時の状況と合ってなかったとは思うけど、それは曜ちゃんが高飛び込みやってるから高飛び込みが見えたんじゃない?」
曜「それだけじゃないんだ」
曜「えっと、"綺麗"事語りな"口"に"ぶち込む"ってのはさ…」
曜「lip clean entry……飛び込むときに飛沫が少なくなる技術…高飛び込みの用語、だよね?」
曜「それだけじゃないよ。ひねりとか、飛び込み台の高さの5mと10mとか、ところどころに高飛び込みの要素が入ってる」
曜「私の勘が間違ってないなら…あなたは少なくとも高飛び込みを知っているし、それなりに思い入れがある」
曜「だから、今こうしてプールに来て、高飛び込みの台を見ていた…もう二度と見られるかわからないから」
偽メイド「ははっ、鋭いね」
偽メイド「その通りだよ。私は高飛び込みを知ってる…やったことはないけど」
曜「話してください…」
偽メイド「私にはね、歳の離れた妹がいるんだ。あんたと同い年の…って言っても、親が死んでからは仕事仕事であんまり構ってやれなかったけど」
曜「構って…やれなかっ"た"?」
偽メイド「練習中の事故でね、ここ1年意識不明なんだ」
曜「練習中の事故…まさか」
偽メイド「うん、妹は高飛び込みの選手なんだ。曜ちゃんを見て高飛び込みをはじめた、よくある一般人の憧れってやつだよ」
偽メイド「曜ちゃんみたいな才能はないけど、それなりに努力して結果も出してた。1回だけど同じ大会に出たこともあるんだ」
曜「同じ大会に出てた…」
偽メイド「もし、妹の名前を言ったら思い出してもらえる?」
曜「……多分無理です」
偽メイド「だろうね。曜ちゃんみたいにみんなから注目されるような輝きはあの子には無いから」
偽メイド「だから人一倍努力してた毎日毎日」
偽メイド「でも、頑張りすぎたんだ。度を超えたトレーニングからの一種の気の緩みで、あの子は10mの高みにあるコンクリートの地面"から"落ちた」
偽メイド「私が珍しくあの子の練習を見に行っていたその日に、私の目の前でね」
偽メイド「あの子は文字通り命をかけて飛び込んでいたんだ…片手間で飛び込んでいたあんたと違って」
曜「違う…」
曜「片手間なんかじゃないよ!私は真剣に高飛び込みをしていたし、今だって真剣にやってる!ちゃんと結果だって出してる!」
偽メイド「真剣…?そんな言葉使ってほしくないね。アイドルごっこなんてやってる奴に」
偽メイド「いや、ごっこだろうとアイドル一本で全身全霊かけてやってるならそれでもいい」
偽メイド「あの子が命がけで追いつこうとしたあんたがスクールアイドルに手を出してるのを目にした時の私の気持ちがわかるか?」
偽メイド「結果だって出してる?それはつまりさ…」
偽メイド「あの子が目指したものはあんたにとって片手間で叶えられるんだって、そういうことだろ?」
偽メイド「なんでもかんでも少し努力すれば上手くいって、一度にたくさんのものに手を出してもそれ一つに全力を出している人に勝てる」
偽メイド「そんな人を目にして全力でがんばるけど、どうやっても追いつけない」
偽メイド「やるせないよね…」
曜「それは…」
千歌「曜ちゃん、わかったよ…なんでここに私を連れてきたのか」
千歌「この人と妹さんは私と同じものを見たんだ。太陽の強い輝きに目を焼かれて周りが見えなくなったんだ」
千歌「だから、救うためにはマイクが必要で、それを私に見てほしい…ってことだね?」
曜「メイドさん、私とバトルしてください…まだ私はあなたに言葉を伝えてない」ヒューン
偽メイド「はぁ…それは元々私のマイクなんだけど、いいよ」
偽メイド「どうなるにしろ、私が曜ちゃんに言葉をぶつけられる機会なんてもう無いんだろうからね」
偽メイド「じゃあ、いかせてもらうよ!」ヒューン
【偽メイド】
心変わりでコロコロ改装
あんたの気まぐれが生んだ愛憎
見捨てた夢のその代償
払う甲斐性あるかとあんたに問う
ドオオオン
曜「くっ!!」
偽メイド「言わずともわかってるだろうけど、眠らせるなんて無粋な真似はしないよ」
偽メイド「あんたの全力を見せな、曜ちゃん」
曜「言われなくてもそのつもりだよ」
曜「私の覚悟をぶつけるまで!」
>>282
【曜】
見捨ててないし変えてないコロコロ
叶えたい夢が増えただけのこと
飛び込んだ以上は戻らない
怨まれようと払うものはない
ドオオオオン
偽メイド「くっ!」
偽メイド「そんな程度で、あたしを止められると思ったら大間違いだよ」
偽メイド「あたしはあの子のためにも止まれないんだ」
>>284
【偽メイド】
考えろ自覚しろ選択の重さ
軽く動くメンタルは愚か
追いかけ届かず転落する者たち
その顛末なんて無視かクソガキ
あんたの才能をおもちゃにするな
周りの待望などゴミかクズか
背負った夢を見て見ぬ振り
無責任すぎだろその身の振り
ドオオオン
曜「くっ!」
偽メイド「あんたの新しい夢とやらがどれだけの人間の運命を狂わせたか…わかってないわけじゃないでしょ?」
偽メイド「あの子が目を覚まして、高飛び込みもスクールアイドルもやるなんて言ってるあんたを見たら…どうなる?」
偽メイド「あんたは、あんたちAqoursは壊したんだ!あの子が追っていた夢も、帰ってくる目的も!」
千歌「勝手なこと言うな!」
曜「千歌ちゃん」
千歌「そんなの、曜ちゃんのせいじゃないだろ!」
偽メイド「だったらあなたのせいかな?千歌ちゃん」
千歌「…私?」
偽メイド「聞いたよ。スクールアイドルをはじめたのは千歌ちゃんがきっかけなんだって?」
偽メイド「ねえ、千歌ちゃんはさ…申し訳なく思わないの?曜ちゃんがAqoursにいることで運命が狂っちゃった人がいることを」
千歌「……」
千歌「まあ…思わないこともないよ。でも、それ以上に私は曜ちゃんとスクールアイドルをできることが嬉しい」
千歌「それに私の言いたいことはさっき存分に聞かせたはずだよ?」
偽メイド「そうだったね。無粋だった」
偽メイド「よかったね曜ちゃん。ここまで言ってくれる千歌ちゃんと一緒にスクールアイドルができて」
偽メイド「で、それで?スクールアイドルも飛び込みも頑張ってますと…」
偽メイド「…ねえ?あの子はそんな奴に追いつくために命をかけたの?」
曜「…あなたは私にどうしてほしいの?」
偽メイド「無いよ」
曜「無い?」
偽メイド「どうしてほしいとか、そんなのは無い」
偽メイド「そうだよ。これはただの行き場のない気持ちの八つ当たりだ」
偽メイド「だけどね。この行き場のない気持ちが今日まであたしを突き動かしてきたんだ」
曜「……言いたいことはわかったよ」
曜「でも、私は飛び込んだんだ。こういうことを言われるのを覚悟でスクールアイドルっていう新しい海へ」
曜「だから、貫き通すよ」
>>286
【曜】
あなたたちの苦悩は計り知れない
あなたたちを愚弄したかもしれない
でも私にもある引けない都合
私にだってある譲れない渇望
待望されて求められた理想像
はいそうですか聞けませんと応答
17になった私の衝動
自由な波を縛るなと豪語
ドオオオオン!!
偽メイド「くあっ!」
偽メイド「このっ!子供の分際で」
曜「私は子供で無責任なのかもしれないけど、誰かに生き方を指図なんてされたくない」
偽メイド「その認識が甘いんだよ」
>>291
【偽メイド】
あんたの自由を縛るなとかまったく
そんな言葉でするかよ納得
ガキの論理は身勝手だ結局
おねーさんがこれだけは言っとく
無計画な勝者が生むのはカオス
無自覚に敗者をこき下ろす
高みから笑顔で何人も落とす
その手で悲劇を巻き起こす
ドオオオオオオン
曜「ぐぁっ!」
偽メイド「………私だってどうしたらいいかわからないよ。でも、確かなのはこの気持ちは自然に無くなったりはしない」
偽メイド「そして、あんたが苦しみの元凶なんだ」
曜「…そうだね、私のせいであなたや妹さんや何人もの人が傷ついた」
曜「私がスクールアイドルをやらなければ、何もしなければ、傷つかなかった人もいるんだろうね」
曜「だけど、私はスクールアイドルになったことを後悔していないよ。スクールアイドルになったからわかったことやできることがあるんだ」
偽メイド「後悔してないときたか…」
曜「…あのね」
曜「スクールアイドルはね、みんなが誰かの一番になれるかもしれないんだ。」
曜「まあ、順位がついちゃうこともあるけどさ…勝ち負けとか優劣とか超えて同じものを感じて、同じ景色を見られるかもしれない。それに気づいたんだ」
曜「私がこれに気づくために傷ついたり運命が狂っちゃった人がいるのはわかってる」
曜「だから、私はその人たちを救える人になりたいんだ」
曜「スクールアイドルとなって一回り成長した渡辺曜としてね」
曜「見せてあげる…これが、スクールアイドル渡辺曜だよ!」
>>293
【曜】
なってやる幸せ作るスクールアイドル
落ちゆく手すらも救うために取る
踏み出した足で証明してみせる
飛び込んだ心が目にもの見せる
やっぱりやっかみあるよね複雑
だったら笑ってリアルとぶつかる
痛み待つ水面に進路を取ろう
さあ、全速前進ヨーソロー
ドオオオオオオン!!!
偽メイド「ああっ!」
曜「許してなんていう気はないよ。私がいなかったら少なくともあなたの妹さんは無事だった」
曜「私は多分、これからもだれかの人生をねじ曲げて、不幸にして、恨まれてを繰り返す」
曜「だったら、それ以上に幸せにしてみせる」
曜「私にできること全部やって、起こす不幸よりも幸せを増やす」
曜「もし、妹さんがスクールアイドルをやっている私を見ても絶望なんかさせない」
曜「勝ち負けとか挫折なんてどうでも良くなるくらい楽しませて幸せにしてみせる。それがAqoursの渡辺曜のステージだからね」
曜「これがあなたの八つ当たりに対する私の回答だよ」
偽メイド「…………」
偽メイド「そうか、じゃあ…せいぜい全力を尽くしなよ」
曜「メイドさん…」
偽メイド「いや、私はメイドじゃないんだからその呼ばれ方もどうかと思うけど」
偽メイド「ただの八つ当たりにそこまで答えてもらえたなら、私としては満足だよ」
偽メイド「…千歌ちゃんと曜ちゃんのラップを聞いて、ようやく気づいたよ」
偽メイド「私はね、今日あんたらに負けるずっと前に自分に負けてたんだ」
偽メイド「ごめんね…ひどいことして」
偽メイド「本当のこと言うとね、どっかで気づいてた…こんなことしても何にもならないし、誰かを恨むのは筋違いだって」
偽メイド「曜ちゃんに復讐するって集めたやつらのラップ聞いた時、はらわたが煮えくり返った」
偽メイド「私が言えたことじゃないんだけど、あんなの逆恨みですらない。赤ん坊の方がよっぽどうまく自分と向き合ってるよ」
偽メイド「あんな胸糞悪い言葉に無理やり拍手して、心にも無い賞賛して…私はなにやってたんだろうね」
偽メイド「あいつらの何倍も努力してたあの子の姿をあいつらに見せてやりたかったよ」
偽メイド「辛いとか苦しいとかあの子は一言も言わなかったんだ」
千歌「ねえ、これは不謹慎かもしれないんだけどさ…」
千歌「妹さんもあなたも曜ちゃんからもらったのは不幸だけじゃないんじゃない?」
偽メイド「…うん、そうだね」
偽メイド「あの子は輝いてたよ。努力して、いつか曜ちゃんと競える飛び込み選手になるんだって毎日必死に練習してた。飛び込みのことを語るあの子はキラキラしてた。とっても幸せそうだった」
偽メイド「私も幸せだった。それなのに忘れてたんだ。何のことはない、幸せを壊したのは私自身だったんだ」
偽メイド「ねえ、曜ちゃん…もしあの子が目を覚まして、また飛び込みを始めたら、私の代わりに見守ってやってくれないかな?」
曜「うん、いいよ」
偽メイド「そっか、ありがと…私の妹の名前はね…」
警官「おい、いたぞ!」
警官「犯人グループのリーダーを発見!至急確保!」
曜「そんな…」
偽メイド「ごめん…時間切れみたいだ」
曜(警官がメイドさんを取り囲み、犯人グループのリーダーは確保された。抵抗も全くしなかった)
警官「…ご協力、ありがとうございます」
曜「なんでここが…?」
警官「犯人の居場所に心当たりがありそうだったので後をつけさせてもらいました。マイク所持だと聞いていましたので、しばらく様子を見させてもらいましたが」
警官「もう、マイク使用の危険性も無さそうでしたので、確保に踏み切りました」
千歌「私たちを利用したってこと?」
曜「だったら聞いてたよね?あの人は…」
警官「身内の不幸からの怨恨で罪を犯した犯罪者、それ以上でも以下でもありませんよ」
警官「あなた方の荷物は見つかりましたので係員より受け取りください。詳しい事情の聴取は後日にします。ホテルへの宿泊も可能なようですので、本日はゆっくりお休みください」
【HIMENO SIDE】
〜4月17日 22:15〜
〜都内の公園〜
曜『これが、今日の事件のすべてだよ』
姫乃「そうでしたか…」
果林「なんか、こうきくと…やるせないわね」
エマ「あの人にはあの人の事情があったってことだもんね」
鞠莉「…そうですよね」
かのん「あの、今の話ではっきりわかりました」
かのん「間違いないです。私、その人も妹さんも知ってます」
璃奈『えっと…話してるとこ、ごめん』
璃奈『だましだましやってきたけど、そろそろ私のスマホが限界っぽい』
曜『ごめん…璃奈ちゃん』
姫乃(それから私と曜さんとかのんさんは互いの連絡先を交換して通話を終わらせた)
姫乃「果林さん、今日はありがとうございました」
果林「ずいぶんと遅れてしまったけどね」
エマ「姫乃ちゃんに会えてよかったよ」
姫乃「スイスは呼んでませんよ?」
エマ「んー、姫乃ちゃんのいじわる」
果林「あ…」
姫乃「どうかしました?」
果林「私とエマの荷物、まだ向こうじゃない?」
エマ「あー、そうだね」
果林「それに、こんな時間じゃ寮の門限が」
鞠莉「ふふふ…」
果林「あ…もしかして」
鞠莉「これはまたマリーのヘリが大活躍かしらね」
鞠莉「では、さっそく戻るわよ。寮の方にはマリーの方からなんやかんや言っておくわ」
果林「ちょっと!また乗るの!?」
鞠莉「天気も安定したしさっきほどじゃないわよ」
エマ「姫乃ちゃーん!またねー!」
姫乃(こうして、私の何もないようで以外と色々あった誕生日は幕を閉じました)
姫乃(そして…)
【epilogue】
〜5月4日 14:30〜
〜藤黄学園〜
姫乃「今日は私たちのライブに来てくださり、ありがとうございました!」
ワアアアアアアアア
………
………………
姫乃「今日のライブ、いつも以上のパフォーマンスができた気がします。これは…果林さんをも超えたかもしれません!」
曜「良いライブだったね。姫乃ちゃん」
姫乃「曜さん、沼津からありがとうございます」
かのん「えっと、お久しぶりです」
姫乃「かのんさんも、今日はありがとうございます」
曜「藤黄か…これはまた強敵を見つけちゃったかな」
姫乃「ナンバーワンアイドルさんからのお墨付きとは光栄です…って…あ」
曜「あー、まあ私の一強ってわけでもなかったってだけだよ」
曜「それに、今なんか燃えてるんだ。なんだかんだ私も一番がほしかったみたいだね」
姫乃「そのメンタルがスーパーアイドルの資質なんですかね」
曜「だったら姫乃ちゃんもだよ。エマさんから色々聞いてるよ」
姫乃「はは…スイ…エマさんにも困ったものです」
姫乃「で、行くんですよね今日」
姫乃「…しかし、曜さんとかのんさんはともかく私までご一緒して良いのでしょうか?」
曜「当たり前だよ。姫乃ちゃんが私たちをつないだんだよ。だったら一緒に来ないと」
かのん「では、行きましょうか」
姫乃「ええ、そうですね」
〜5月4日 16:00〜
〜都内病院〜
曜「あの日からずいぶんかかっちゃったな」
姫乃「事件の後も色々あったみたいですし、三人ともなれば意外と予定が合わないものです」
かのん「ここです」
姫乃(病室には陽の光を浴びて眠り続ける女の子、私と同い年でしたっけ)
姫乃(…とあと一人)
「ようやくご対面かね。っと、その子が綾小路姫乃ちゃんか」
姫乃「えと、もしかしてですがこの人は」
曜「あ、うん…あの事件の犯人グループのリーダーの」
小原家メイド「この度、正式に小原家のメイドとなりました。よろしくお願いします…なんてね」
小原家メイド「あ、そっかメイド服着てくればよかったか。これは失敗したなー」
姫乃「あの…この人、一応は犯罪者では?良いのですか?」
小原家メイド「あたしもさ…まあ、あの日に色々と決意を固めてたんだけどね」
小原家メイド「いやー、小原家の御令嬢…おっと、鞠莉様だった!鞠莉様も物好きだね。『ホテルオハラであれだけの事件を起こすとはただものじゃないでーす』とかでスカウトされたんだよ」
小原家メイド「でもって、全員に口裏合わさせてあの日の事件は鞠莉様の壮大なドッキリってことになりました」
小原家メイド「…というのが、あたしの聞いた話なんだけど、28人もその他諸々も揃いにも揃ってお人好しだね」
小原家メイド「しかも、それを言い出したのは曜ちゃんと千歌ちゃんらしいじゃんか?被害者筆頭がどういう風の吹き回しさ」
曜「私にできることを全部やるって言ったはずだけど?」
曜「私はあなたを助けたいと思ったから助けた。あなたの言う軽い気持ちのガキの身勝手だよ」
小原家メイド「まっ、おかげで淡島なんて辺鄙なところに住むことになったけど、私はこうして無事でいられるわけだ。いつもじゃないけど、こうして見舞いにも来れるしね」
小原家メイド「あたしのやったことが帳消しになるとは思わない、どんな形でもいいから返していくよ。この子に顔向けできるようにね」
姫乃「なるほど、まるく収まって良かった…のですよねきっと」
姫乃「それにしても曜さん、かのんさん…私はこのことを今初めてきいたのですが?」
曜「あはは…なんのことやら」
かのん「まあ、細かいことは気にせずに」
小原家メイド「さて、あたしの計画を阻んだ姫乃ちゃんの顔も見られたことだし、そろそろ帰るよ」
小原家メイド「あ、かのんちゃん。気が向いたらまたカフェ行くね。マンマルにも会いたいし」
かのん「うん、お待ちしております」
姫乃「…行ってしまいましたね」
曜「うん」
曜「じゃあ…」
姫乃(曜さんが女の子の名前を呼んで手を取る)
曜「あなたのお姉さんは、やり方は悪かったかもしれないけどあなたのことを思って戦える強い人だよ」
曜「お姉さんも私も姫乃ちゃんもかのんちゃんも、みんなあなたが目覚めるのを待ってるから、だから帰ってきて」
曜「それでまた飛び込みで競って、私たちのライブにも来てほしい。あなたの知らないスクールアイドルとしての私も見て、そして好きになってほしい」
姫乃「大切な人を待つのは苦ではないですが、やはり待ち続けるのは疲れます。早く帰ってきてお姉さんを安心させて下さいね」
かのん「また姉妹でお店に来てください。とっておきのラテアート見せてあげます」
姫乃(彼女に言葉が届いたのか、それはわかりません)
姫乃(でも、今届かなくてもきっとその言葉に意味はあるのでしょう…言葉を伝えようとすることで起きる奇跡もあるのですから)
姫乃(私と曜さんの誕生日にはじまった騒動の話はこれで終わりです)
姫乃(これから何回誕生日を迎えることになるかはわからないけれど、そのたびにきっと私はこのことを思い出すのでしょう)
姫乃(願わくばその時に、この姉妹がまた幸せに笑い合えていてほしいとそう思います)
〜完〜
当初の予定とは随分と変わりましたが完結です
作り直しついでにいろいろいじった結果思わぬ長編になりましたが書ききれて良かったです
メイドさんについては当初はただの悪役だったのですが、書いてるうちに愛着が湧いてきてこんな結末になりました
元スレ
※一部変えてはいますが、マイクなどの設定はヒプノシスマイクからの流用です
※一部キャラディス要素を含みます。キャラディスが苦手な方、キャラ同士のディスが苦手な人にはおすすめできません
※後半(曜側)はオリキャラ(名無し)が出る予定
※ラップ部分は各自いい感じのリズムで読んでもらえると助かります
※作中の時期は4月なので本来ならニジガクもAqoursもできたばかりなのですが、すでにどちらもかなりの期間活動しています。サザエさん時空的なものだと思ってください
※スイス、日本、八丈島は実在する地名とは関係ありません
4: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:38:06.94 ID:K1agPhNS.net
【HIMENO SIDE】
~4月16日(誕生日前日) 22:00~
~綾小路家~
姫乃「うーん、かかってこないですね…電話」
姫乃「はぁ…」
姫乃(なんでしょうか…この状況)
姫乃(とりあえず、今は待ちましょう)
姫乃(…話は少し前にさかのぼります)
5: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:40:58.80 ID:K1agPhNS.net
~4月16日 21:00~
~綾小路家~
姫乃(ここ数週間、書いては消してを繰り返したメール…結局送れませんでした)
姫乃(果林さんに『私の誕生日、一緒に過ごしてほしい』とそれを伝えるだけの文章なのに…)
姫乃(前日の夜9時になってしまった)
姫乃(もう、今からメールでは…)
姫乃(こうなったら電話ですかね…)
姫乃(しかし…)
姫乃(いや、電話でも遅い時間ですし、やめに…)
姫乃「って何ですか!その弱気な思考は!」ブンブン
6: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:43:05.19 ID:K1agPhNS.net
姫乃「私は綾小路姫乃なんですよ!ダイバーフェスに果林さんを誘った時の強キャラ感を思い出すんです!」
姫乃「まずは連絡先画面を出す!」
姫乃「そして、あ、さ、か…果林さんを検索!」
姫乃「あとは…この数字を触れば…触れば…」
姫乃「触れば…触れば…触る触るさわるさわる…」
姫乃「………」
姫乃「………………」
姫乃「…ちょっと一息入れますか」ポチッ
7: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:45:06.16 ID:K1agPhNS.net
姫乃「あ…」
『朝香果林さん♡ に 発信しています』
姫乃「あああああ!かかって…」
果林『もしもし、姫乃ちゃん?どうかしたの?』
姫乃(こんなときに限ってワンコール取りですか!?)
姫乃「あ、あわわわ」
果林『泡?泡がどうかしたの?』
姫乃「その間違いまし…」
8: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:46:47.86 ID:K1agPhNS.net
姫乃(だめです!勇気を出すんです!綾小路姫乃!)
姫乃「あの!!!夜分遅くすみませにゅ!」
果林『ど、どうかしたの?姫乃ちゃん…』
姫乃(噛んだぁぁぁぁぁ!いえ、落ち着き、落ち着きましょう!)
姫乃(まずは深呼吸です)スゥゥゥハァァァァ
姫乃「…失礼しました。果林さん、今お電話よろしいでしょうか?」
果林『ふふっ、大丈夫よ』
9: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:48:12.98 ID:K1agPhNS.net
姫乃「実は私、明日誕生日でして…」
果林『え、明日!?』
姫乃「…どうかされましたか?」
果林『あ、いいえ…そうか明日なのね。おめでとう』
姫乃「それで…ですね…」
姫乃(がんばれ!姫乃!)
姫乃「えっと、ですね…藤黄の方々と出かけるつもりだったのですが、皆さん急用ができてしまいまして!」
10: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:51:01.92 ID:K1agPhNS.net
姫乃(嘘ですけどね!むしろ、皆さん私の誕生日を覚えていて予定を空けてくれていたのを私が断りました)
姫乃「その…誕生日の予定がすっぽり空いてしまいまして…」
姫乃「果林さんさえよろしければ、明日どこかへ行きませんか!」
果林『明日…ね…』
姫乃「あ、もちろん果林さんのご都合優先ですし!前日に言うことではないのですが!とにかく一緒にいてくれませんか!」
姫乃「………」
11: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:53:34.94 ID:K1agPhNS.net
姫乃(あああああああ!!私のバカあああ!気持ちが先行しすぎておかしなことになってます)
果林『…えっと、ごめんなさい』
果林『明日はその…』
姫乃「そ、そうですか!すみません!」
果林『あ、待って!もしかしたら時間あるかも…』
12: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:54:29.89 ID:K1agPhNS.net
果林『ここを出る時間から…えーっと』
姫乃(果林さん…急な申し出にも関わらず時間の調整を…神です…神対応です)
果林『うーん、あ!そうだ!エマ ーーー!』
姫乃(………ん?)
果林『あ、ごめんなさい。かけ直すから少し待ってて』
14: 名無しで叶える物語 2021/04/17(土) 23:58:35.44 ID:K1agPhNS.net
~4月16日 22:05~
~綾小路家~
姫乃(あれから1時間…)
姫乃(なんでこんな時間に果林さんとスイスが一緒にいるかは気になりますが、とにかく明日のことを考えましょう)
♪タリナイワーボリュムアゲーテ
姫乃(果林さんから!!!!)
姫乃「はい!お待ちしてました!」
果林『えっと…姫乃ちゃん、明日なんだけど夕方からでもオーケーかしら?』
姫乃「はい!もちろんです!」
15: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:02:59.91 ID:wWvEvKYE.net
果林『でね、時間なんだけど…電車とか船の都合とかもあるし、はっきりとは言えないけど、17時くらいってことでいいかしら?』
姫乃「電車はともかく船…ですか?」
果林『ちょっとその…今、静岡にいるのよ』
姫乃「シズオカ?」
果林『そうなの、実は知り合いにもう一人明日が誕生日の子がいて、ニジガクのみんなでその子のお祝いをするために静岡にきてるの』
姫乃「そうなのですか。何だか奇妙な偶然ですね」
果林『知ってるかしら?Aqoursの渡辺曜って子なんだけど』
16: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:10:11.70 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「Aqours、聞いたことがあります…確か沼津の浦の星女学院のスクールアイドルですね」
姫乃(ニジガクの交友関係は私が思うより広いということですか)
果林『でね、せっかくだから沼津に前泊しようってことになって、今沼津なのよ』
姫乃「あ、もしかして、先程スイ…エマ・ヴェルデさんがいたのは」
果林『ええ、同じ部屋に泊まってるの』
姫乃(スイス…またしても立場を利用して果林さんの周りをうろちょろと)
果林『でね、エマによると沼津からなら早めに出れば夕方には戻れるらしいし、それで姫乃ちゃんに会おうかなと思うのだけど?いいかしら?』
姫乃「はい、それでお願いします」
果林『じゃあ、明日ね。そっちに着く時間がわかったら連絡するからよろしくね』
17: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:11:16.96 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「ありがとうございます。明日楽しみにしてます」
姫乃「ふう…」
姫乃「…………」
姫乃「やりましたたあああ!!」
姫乃(明日は人生最高の誕生日になりそうです)
姫乃(あああ…勇気を出してよかったです…)
18: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:15:56.49 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「そういえば、明日はAqoursの渡辺曜さんの誕生日からこちらに来るんですよね」
姫乃「渡辺曜さんの話題になるかもしれないですし、予習しておきましょう」
姫乃「他のスクールアイドルの情報を集めるのは藤黄にとってもプラスになりますからね」
19: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:17:30.64 ID:wWvEvKYE.net
~4月16日 23:00~
~綾小路家~
姫乃「………」
姫乃(軽い気持ちで予習などと言い出したことを私は後悔していた)
姫乃「なんですか…これ」
姫乃「これが、私と同じ日に生まれた人…」
20: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:19:34.33 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(一言で言うなら…渡辺曜は"化け物"だった)
姫乃(ライブ映像を見たが、レベルが桁違いだ)
姫乃(ダンスや歌の上手さなら渡辺曜以上の人など何人もいる…だが、これほどまでに人を惹きつけるスクールアイドルを私は知らない)
姫乃(自分が目立つだけじゃない、近くに目立つべきメンバーがいればその人が目立つように動く)
姫乃(MCでは会場をあたため、メンバーのミスにもすかさずフォローを入れる)
姫乃(渡辺曜の存在が、Aqoursのステージを何倍にも魅力的にしていた)
21: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:26:41.99 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「それだけじゃないです…」
姫乃「ニジガクの方々が最近はじめたスクールアイドルチャンネル-その1位が…」
姫乃「渡辺曜…」
姫乃「というか…あのせつ菜さんとそのファンが全力でまくったにもかかわらず2位って…」
姫乃「しかも、私と誕生日が同じってことは今週はもう誕生日補正で勝ち確じゃないですか…」
姫乃「渡辺曜に罪はないのですが…これはもはや出来レースとしか言えないです」
姫乃(これほどまでの人物であれば、ニジガクの皆さんがわざわざ沼津まで行って誕生日祝いをするのも納得です)
姫乃(…寝ましょう)
姫乃(これ以上は多分精神的によろしくないです)
22: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:31:21.57 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日(誕生日当日) 6:00~
~綾小路家~
姫乃「ん…んん」
姫乃「…朝…ですね」
姫乃(昨日見た渡辺曜のライブ映像が頭から離れない)
姫乃(私もスクールアイドルだからわかる…あれは異質だ)
姫乃("高飛び込みの天才"…何を思ったかその評価を蹴ってまで渡辺曜はスクールアイドルを始めたらしい)
23: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:33:29.64 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「こっちはスクールアイドルだけでもいっぱいいっぱいなのに…やはり天才というのはいるものですね」
姫乃「落ち込んでても仕方ないです」
姫乃「果林さんが祝ってくれる初めての誕生日、最高の日にしましょう!」
24: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:35:34.84 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 11:00~
~綾小路家周辺~
姫乃(…と、そんな感じで始まった17歳の誕生日)
姫乃(両親からのプレゼントをもらって、ファンの方々からのお祝いメッセージにお返事を書いて、美咲さんにそれとなく今日は果林さんと会えることを自慢して)
姫乃(…やることが無くなりました)
姫乃(普段なら他のスクールアイドルの情報を集めたりするのですが…)
姫乃(今日は気分がいまいち晴れないので散歩がてら家のまわりをぶらつくことにしました)
25: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:40:30.41 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「渡辺曜…」
姫乃(昨日見た渡辺曜の姿が心から離れない)
姫乃(私と同じ日に生まれ、私とは圧倒的にかけ離れた才能をもつ天才スクールアイドル)
姫乃(調べたところ、そんな渡辺曜とグループを組んでいるAqoursのメンバーも私たち庶民とは段違いのスーパーな方々らしい)
26: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:42:05.92 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(まずはAqoursのリーダー、高海千歌…彼女は地元の老舗旅館の娘で、あの渡辺曜が最高の友人と言うほどの人物らしい)
姫乃(一説によると、渡辺曜が飛び込みを蹴ってまでスクールアイドルを始めたのは高海千歌の存在が大きかったとか)
姫乃(人生を変えるほどの魅力があるリーダー…やはりただものではないのだろう)
27: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:44:34.43 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(桜内梨子…彼女は幼少よりピアノの才能を発揮し、自ら曲を作って披露することもあったらしい)
姫乃(控えめに評価しても天才ピアニストだ)
姫乃(松浦果南…高校生離れした体力とパワーの持ち主である)
姫乃(噂によると素手で鉄パイプをねじ切ることができるとか…彼女の機嫌を損ねると指の爪をすべて剥がされるとか…どこまで本当かは怪しいが)
29: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 00:53:25.73 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(黒澤ダイヤ・ルビィ姉妹…地元の名家、というと聞こえがいいが実質はヤで始まるお家の御令嬢らしい)
姫乃(姉妹ともに熱心なスクールアイドルファンであり、それで自身もスクールアイドルになったらしいですが…そんな家とも結びついているAqours、恐ろしいグループである)
姫乃(津島善子…彼女にはもう一つの顔がある)
姫乃(堕天使ヨハネ、えがお動画にて人気を博す生放送主だ…すでに熱心なファンがいた彼女のキャラ性に目をつけた高海千歌がAqoursに引き入れたらしい)
30: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:00:57.39 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(国木田花丸…彼女は寺の娘という一味違うステータスの持ち主だ)
姫乃(『東京にいるとあんまり実感わかないけど、地方のお寺とか神社って結構偉いんだよね』と剣さんが言ってましたから、国木田花丸もまた特別な人間なのでしょう)
姫乃(ちなみに剣さんというのは藤黄学園スクールアイドル部の3年生で実家が神社の方です)
姫乃(そして、小原鞠莉…あのホテルオハラでお馴染みの小原家の一人娘にして、高校生理事長などという型破りな肩書きを持つ才媛である)
姫乃(家はお金持ちで勉強も運動もかなりのハイレベル、社会的地位もある、しかも歌唱力にもかなりの評価がついている…渡辺曜とは別の意味でチートです)
31: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:22:48.67 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(そんな人たちが集まったのがAqours…ですか…)
「ちょっ、どいて、どいてくださいデース!」
ドオオオオオオン!
姫乃(ぼーっとしていたからでしょうか…坂の上から私に向かって爆走してきた自転車に気づくことができませんでした)
姫乃「う…」
???「ごめんなさいデス!ケガは無いデスか?」
32: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:25:02.76 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「あ、いえ大丈夫なので…」
???「可可(クゥクゥ)ちゃーーん!!」
姫乃「ん?また誰か」
千砂都「や、やっと追いついた…」
千砂都「って、事故!?す、すみません!」
可可「千砂都!日本ではこういう時にはドゲザだとききました!ですが、可可はドゲザとは何なのか知らないデス!可可は何をすれば!?」
33: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:27:06.17 ID:wWvEvKYE.net
千砂都「土下座はしなくていいけど…えっと、救急車!救急車を呼ぶんだよ!」
可可「オー!たしか177…」
千砂都「………」
可可「…………ほう」
可可「千砂都!これから雨が降るらしいデス!しかもオーアメコーズイハローケイホー?とかいうのが出てるデスよ!」
千砂都「それ天気予報だよ!」
姫乃(なんか騒がしい子たちですね)
34: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:31:00.77 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「あの、私はケガとかしてませんし、そこまで大ごとでは…」
???「ちーちゃーん!可可ちゃーん!」
かのん「二人とも早すぎだよ…って、事故!?救急車呼ばないと!そうだ117!」
姫乃「その展開はさっき天気予報でやりましたので、時報とかいいです」
かのん「ごめんなさい!私たちの不注意で」
姫乃「まあ、ぼーっとしてました私にも非はありますし…」
35: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:38:35.01 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「私がぶつからなかったらもっと危ないことになっていたかもしれないことを考えれば」
かのん「いえ、本当にごめんなさい!ごめんなさ…あれ?」
姫乃「そんなに謝らなくても…ってどうしました?」
かのん「あの…それ…」
姫乃(私は気づいてしまった)
姫乃(目の前で必死に頭を下げていたその子の視線の先には)
姫乃(私が護身用に持ち歩いていたマイクが落ちていた)
36: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:47:52.27 ID:wWvEvKYE.net
かのん「それ…マイクですよね」
姫乃「ええ、一応護身用に持ち歩いてまして」
かのん「私もです!」
姫乃「私…も?」
姫乃「私もできます、ラップ!」
可可「かのん、これはチャンスではないデスか?」
千砂都「かのんちゃん!やろう!」
姫乃「あの…さっきまでの謝罪ムードはどこへ?」
かのん「失礼を承知でお願いします…私とバトルしてくれませんか!」
37: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:52:23.94 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 11:30~
~綾小路家周辺~
姫乃「つまり、マイクを手に入れたもののバトルの相手が見つからず、探し回っていたところ私が見つかったと」
かのん「冷静に考えれば、ぶつかった側がバトルまで申し込むなんて失礼を通り越して非常識ですよね…」
かのん「でも試してみたいんです。私がどこまでやれるか」
姫乃「わからなくもないです。その気持ち」
姫乃「ここで会ったのも何かの縁。受けて立ちますよ、そのバトル」
姫乃「では、私が先攻でよろしいですね?」ヒューン
かのん「ぶつかった上にバトルまで申し込んだんですからね、先攻はそちらでどうぞ」ヒューン
姫乃「では、いかせてもらいます!」
38: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:55:08.55 ID:wWvEvKYE.net
【姫乃】
力の差すぐにわからせます今
当たり屋なんぞに無いです割く暇
作為かあるいは自覚なき悪意か
どちらにせよあなたの未来は爆死だ
39: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:56:46.85 ID:wWvEvKYE.net
ドオオオオン!
かのん「あああああ!!!」
千砂都「かのんちゃん!」
可可「かのん!」
かのん「これが…ラップバトル…でも」
かのん「負けない!私はもうスクールアイドルなんだから!」
40: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 01:58:17.59 ID:wWvEvKYE.net
>>38
【かのん】
爆死なんて言うのは誰だろ
失敗すらも準備運動、糧だよ
ダメだろうと最後まで立って圧倒
そして描ききるよ勝利のラテアート
41: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 02:00:26.87 ID:wWvEvKYE.net
ドオオオオオン!
姫乃「くっ!」
かのん「どうですか!?」
姫乃「悪くないです…しかし!」
姫乃「そんなので、この綾小路姫乃に勝てると思わないでくださいね!」
姫乃(そんなこんなでばったり出会った女の子、澁谷かのんさんとのバトルは良い暇つぶしになりました)
42: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 02:10:21.92 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 14:00~
~綾小路家~
姫乃(澁谷かのんさんとのバトル…スイスほどではないですが心おどりました)
姫乃(って!何考えてるんですか、スイスは邪魔者!排除するべき敵ですよ)
姫乃(…そろそろ頃合いですかね)
姫乃(果林さんからの連絡はまだありませんが、もう家を出てしまいましょうか)
姫乃(いつどこで待ち合わせになってもすぐ向かえるように…そうですね最寄りの駅で待機しておきましょう)
43: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 02:19:08.76 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「いってきます」
ガチャ
姫乃「…え?」
ザアアアアアアアアアアアアア
姫乃(なんですか、この豪雨は)
姫乃(そういえばさっき…雨がどうとか大雨洪水波浪警報がどうとか)
44: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 02:20:24.02 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(果林さん…戻ってこられないんじゃ…)
姫乃「電話、電話です!」
『お客様のおかけになった電話番号は…』
姫乃「圏外…?ですか」
姫乃「ひとまず、メッセージだけでも…『果林さん、こちらは雨強いですが、来られそうですか?ご連絡おねがいします』…と」
姫乃「駅まで…行ってみますか」
47: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 10:41:09.67 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 15:30~
~綾小路家から最寄りの駅~
姫乃(こっちから何回かけても圏外、念のためスイスや他のニジガクの方々にもかけましたが…通じない)
姫乃(もう一回だけ…果林さんに)
プルルルルルルルルルル
姫乃(つながった!?)
『ただいま電話に出ることができません…」
姫乃(これは拒否…でしたっけ?なんでです?)
姫乃(いや、もう一回かければ)
『お客様のおかけになった電話番号は…』
姫乃(また、ですか…)
48: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 11:05:22.55 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 16:00~
~綾小路家から最寄りの駅~
姫乃(果林さん…)
ピロリン
姫乃(これは、果林さんから!)
『ごめんなさい、そっちには行けそうにないの。誕生日のお祝いはまた別の日にして。あなたの誕生日は必ず祝うから』
姫乃(まあ…この天気ですし、覚悟はしてました)
姫乃(仕方ないですよね…えっと『ええ、必ずいつか。まずは無事に帰ってきてくださいね。楽しみにしてますよ果林さん』と)
ピロリン
『そうね、必ずいつか。まずはそっちに戻るために全力を尽くすわ』
姫乃(どうしましょうか…これから)
49: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 11:48:15.69 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 17:00~
~綾小路家から最寄りの駅~
姫乃(…どこかに行きましょうか)
ザアアアアアアアアアアアアア
姫乃「雨強いですし、もう少し待ちますか」
姫乃「それにしても発信履歴がすごいことになってますね」
姫乃「…みなさんどこにいるか知りませんが、沼津ってのはそんなに電波悪いんですかね」
姫乃(いや、おかしいですよ)
50: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 12:07:46.31 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(そうです、圏外とか電源を切ってるならまだありえる…でも)
姫乃(かかってきた着信を拒否してメールで返す?)
姫乃(声を出せない?出したくない?わからないです…)
姫乃「…もう一回だけ…やってみますか」
『朝香果林さん♡ に 発信しています』
姫乃(これで圏外なら…)
姫乃(…長いですね、これは圏外じゃない)
51: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 12:38:18.33 ID:wWvEvKYE.net
姫乃(もちろんありますよ…単に果林さんのスマホだけが通信可能な状態で、そこは通話できない場所だったからメールで返答したなんて状況は)
姫乃(ええ…電車の中とか、十分あり得る話です)
姫乃(果林さんが乗ってる電車が止まって電車の中で通話ができないとか)
姫乃(…あのメールが無ければ思ってました)
姫乃(いくらなんでも電車が止まったくらいで"行けそうにはない"は無い)
姫乃(スイス…エマ・ヴェルデが果林さんを一人で行かせるわけないですから、果林さんが沼津を出たならスイスくらいには連絡がつくはずですし)
姫乃(果林さんは沼津を出られてはいないと見ていいでしょう)
52: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 12:57:17.35 ID:wWvEvKYE.net
果林『姫乃ちゃん!』
姫乃(つながった…)
姫乃「あの、果林さん…」
果林『…ありがとう、姫乃ちゃん。おかげでそっちに戻れるかもしれないわ』
果林『だから、さっきのキャンセルは無しにしてあと少しだけ待ってもらってもいいかしら?』
姫乃「はい、いくらでも待ちますけど…一体なにが」
果林『ごめんなさい。また電話するわ』
ブツッ!
姫乃「え、あの…果林さん!」
53: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:06:37.29 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 18:00~
~綾小路家から最寄りの駅~
ザアアアアア…
姫乃(雨は弱まりましたが、まだ強いですね)
姫乃(…結局駅から動けずにいます)
姫乃(何やってるんですかね…私は…)
♪タリナイワーボリュムアーゲーテ
姫乃「果林さんから…電話!」
ポチッ
果林『待たせてごめんなさい!姫乃ちゃん!今どこにいるかしら!?』
54: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:12:45.68 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「えっと、〇〇駅です…」
果林『そう…あと2、3時間かかるけど必ずそっちに向かうから!待っててくれる?』
姫乃「あ、はい…それはもちろん…」
エマ『果林ちゃんスマホ貸して!』
エマ『ごめんね!姫乃ちゃん!私たち、絶対にそっちに行くから!』
55: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:19:01.85 ID:wWvEvKYE.net
エマ『絶対に!絶対に行くから!』
果林『約束よ!待っててね!』
プーーーーーーー
姫乃「えっと…」
姫乃「今から、来るってことですよね…果林さんとスイスが」
56: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:24:39.25 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 21:00~
~綾小路家から最寄りの駅~
姫乃(雨も弱まってきましたね)
姫乃(先程の電話から3時間、…さすがに一回家には帰りましたが、また駅に来て)
姫乃(いったい私は誕生日に何をやってるのでしょうか)
姫乃(…渡辺曜は、どんな誕生日を過ごしたんでしょうか?)
姫乃(ニジガクの方々はもちろん、たくさんのファンに祝福されて…きっと幸せな誕生日だったんでしょう)
果林「いたわ!姫乃ちゃんよ!」
姫乃(まあ、私は私のささやかな幸せに感謝しましょう)
57: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:28:21.51 ID:wWvEvKYE.net
果林「待たせちゃったわよね!ずっと、ずっと…」
エマ「ごめんね!あれからまた連絡しづらくなって」
姫乃「あ、いえ…果林さんのためならこれくらいは」
???「ふーん、あなたが綾小路姫乃さんですか」
姫乃「え?…あなたは」
姫乃(私は知ってる…この人を…)
鞠莉「シャイニー!いや、天気的にはレイニーかしらね?クラウディ?うーん…まあ、シャイニーでいいでしょ!」
58: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:30:27.13 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「小原鞠莉さん?Aqoursの」
鞠莉「オー!マリーってば、かなりの有名人なのね」
姫乃「あの?なんでここに小原鞠莉さんがいるのでしょうか?」
鞠莉「うーん、話すと長くなるのだけど」
果林「途中まで乗せてきてもらったのよ、鞠莉ちゃんのヘリに」
姫乃「へ…リ?」
鞠莉「マリーご自慢の自家用ヘリよ!最高の機体と最高の操縦でどこにでもひとっ飛びなんだから」
59: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:34:30.79 ID:wWvEvKYE.net
果林「もう、嵐の中ヘリに乗るなんてしたくないわよ…」
エマ「しかも、直接ここまでは来れないから近くにヘリを降ろしてそこから走ってきたからね」
姫乃「………すみません、理解が追いつきません」
果林「そうよね…私もそう思うわ」
鞠莉「まっ、そんなことはどーでもいいでしょ?」
鞠莉「あと、3時間なのよ?誕生日は。やりたいことがあるならじゃんじゃんやらないと」
果林「そうよね。姫乃ちゃん、なにかやりたいこととかある?」
60: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:40:53.99 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「やりたいこと…ですか…」
姫乃「あと、3時間…しかもこの時間では空いている店もそんなにないですし…」
「やっと駅についたデエエエエス!」
姫乃「あら?」
千砂都「いやー、かのんちゃんがバタンキューしちゃった時はどうなることかとおもったよ」
かのん「ちーちゃんが元気すぎなんじゃないかな…」
千砂都「かのんちゃんとクゥクゥちゃんが体力ないんだよ。雨宿りしようとか何回も言い出すし」
61: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:44:06.76 ID:wWvEvKYE.net
クゥクゥ「普通はあんな雨の中で自転車なんて漕げないデスよ」
かのん「生きてここまで来れたのか不思議なくらいだよ」
クゥクゥ「あー、見てください!姫乃さんがいますよ!」
千砂都「じゃあ、リベンジだね!」
かのん「…私はもう限界だし、リベンジしたいならちーちゃんかクゥクゥちゃんがやってね…マイクは貸すから」
62: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:47:28.93 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「あなたたち…まだやってたのですか?」
かのん「あ、えーっと…お久しぶりです姫乃さん」
果林「知り合い?」
姫乃「昼にちょっとバトルを挑まれまして…あ!」
姫乃(…そうだ…今からでもできることがありました)
姫乃「かのんさん、つかぬことを聞きますが…」
かのん「なんですか?」
姫乃「あなたのマイク、少しの間だけ貸してもらえませんか?」
63: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:49:19.11 ID:wWvEvKYE.net
かのん「それは、構わないですけど…」
姫乃「ありがとうございます…では…」
姫乃「果林さん…あとスイス、やりたいことが決まりました」
エマ「そう来ると思ったよ」
果林「あらあら、エマの誕生日の焼き直しかしら?」
64: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:54:48.75 ID:wWvEvKYE.net
~4月17日 21:15~
~都内の公園~
姫乃「雨があがりましたね…ようやく!」
エマ「本当にいいんだね…姫乃ちゃん…」
姫乃「ええ、私…綾小路姫乃はここでスイスにラップバトルを挑ませてもらいます…果林さんをかけて!」
エマ「果林ちゃんをかけるなら、負けるわけにはいかないよね」
エマ「で、マイクはどこかな?」
かのん「私のを、どうぞ」
65: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 14:56:44.91 ID:wWvEvKYE.net
エマ「ふーん、これはなかなかいいマイクだね」ヒューン
姫乃「ええ…では…」ヒューン
姫乃「開戦ですよ!スイスぅぅぅぅぅぅ!!!」
エマ「ははっ、今日はどこまで楽しませてくれるのかなあああ?」
姫乃「先攻は私がいただきます!」
66: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 15:16:14.30 ID:wWvEvKYE.net
【姫乃】
ここが墓場ださらばだ恋敵
今日は私の17thアニバーサリー
レベルアップしたこのラップは神がかり
バースデイのヴァースで切るぞばっさり
67: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 15:18:19.49 ID:wWvEvKYE.net
シャキーーーン!
エマ「ぐっ!」
姫乃「もう何度目かわかりませんが…」
姫乃「今日こそは本気です!」
姫乃「くたばれや!スイスぅうううう!」
エマ「もー、姫乃ちゃんは血の気が多くて困るな」
エマ「では、私も反撃だよ」
68: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 15:20:52.11 ID:wWvEvKYE.net
>>66
【エマ】
私の誕生日のひと騒動
忘れたのかな?あの大暴走
誰かの邪魔する子はちと面倒だ
さっさとしましょう発言講座
69: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 15:23:12.16 ID:wWvEvKYE.net
ドオオオオオオオオオン!
姫乃「くっ、さすがスイス」
姫乃「ですが、今日の私は一味も二味も違います」
70: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 16:25:23.88 ID:wWvEvKYE.net
>>68
【姫乃】
講座とか余裕げなキャラ作り無意味
上から語るならします首吊りに
帰れないですよ祖国に無事に
突きつける真実をその首筋に
八丈島は日本の領土
スイスなどには渡さぬ今日も
奪うのならば喧嘩だ上等
送ってやります極楽浄土
71: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 16:45:55.85 ID:wWvEvKYE.net
ドオオオオン!
エマ「なかなか…やるね」
姫乃「ええ…やってやりますよ、今日の私は」
72: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 16:46:59.93 ID:wWvEvKYE.net
かのん「あの…エマって人と姫乃さんはどういう関係なんですか?」
千砂都「なんというか、互いに妙な熱量で殴りあっているというか」
可可「ライバル、というのとも違う気がするデス」
果林「そうね…とても仲良しよ。あの二人は」
鞠莉「わかるわ。私と果南とダイヤみたいなものね」
かのん「はぁ…」
73: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 17:05:58.40 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「私の気持ちを汲んでそろそろ国に帰ってもらえると助かるのですが」
エマ「うん、姫乃ちゃんの気持ちはよーくわかってるよ」
エマ「私のこと大好きだから、帰ってほしくないんだよね?」
姫乃「…日本語わかってますか?」
エマ「私も姫乃ちゃんのこと大好きだけど、勝ちを譲るつもりはないよ…」
エマ「それに果林ちゃんは、姫乃ちゃんのものじゃない!誰のものでもない!」
エマ「姫乃ちゃんがわかってくれるまで、私は姫乃ちゃんに負ける気はないよ」
74: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 17:11:07.65 ID:wWvEvKYE.net
>>70
【エマ】
誰のものかなんてヒトの概念
本当は無いんだよ境界線
見ようよどこまでも広がる海面
首吊りよりもしようよ海釣り
ちっぽけな価値観はもうよそう
ハグして触れ合う頬と頬
みんなの心の帆も揃う
ほら、全速前進ヨーソロー!
75: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 17:16:04.57 ID:wWvEvKYE.net
ドオオオオオン!
姫乃「うぐっ!」
エマ「成長してるのは姫乃ちゃんだけじゃないよ」
エマ「どうかな?これは」
姫乃「全速前進…ヨーソロー…」
姫乃「ああ…あなたもそうなんですか」
エマ「お、やっぱり知ってるんだね!そうだよ、これは…」
姫乃「ええ!よく知ってますよ!渡辺曜、Aqoursのエースで人気一番のスクールアイドルで…私と同じ日に生まれた誰もが認める天才…」
76: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 19:31:47.58 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「その決めゼリフ…ですよね」
エマ「姫乃ちゃん?」
姫乃「わかってるんですよ…自分がちっぽけなことくらい」
姫乃「果林さんは誰のものでもない…わかってますよ…でも、それでも私だけを見ていてほしいんです」
姫乃「こんな私と渡辺曜が同じ日に生まれたなら」
姫乃「そりゃ皆さん、渡辺曜の方を祝いますよね」
77: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 19:33:32.37 ID:wWvEvKYE.net
エマ「あのね…姫乃ちゃん、これには事情があって、本当ならもっと早くに」
姫乃「…私はずっと待って、わけもわからずそれでも待って」
姫乃「ようやくこの3時間を手に入れたんです」
姫乃「それが私の精一杯なんですよ」
姫乃「だから、この精一杯の時間で私の一番を取りに行きます」
78: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 19:37:20.85 ID:wWvEvKYE.net
>>74
【姫乃】
勝手に祝ってろヨーソロー
私はそんな世を呪う
ここまでの挙動を徒労にはしない
ちっぽけな鼓動で振り絞る怒号
力で勝てないなら巡らす策謀
策でもダメなら殺意でまくろう
悪党悪評なんでもやろう
ナンバーワンからも奪う野望
79: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 19:40:54.75 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「果林さんの21時間を渡辺曜に奪われても仕方ない」
姫乃「私に与えられるのなんてその残りしかないのも仕方ない…」
姫乃「……そんなくだらないこと、」
姫乃「言ってたまるか!」
姫乃「そうですよ…」
姫乃「同じ日に生まれたってだけで、相手の方が祝われるべきだからって、なんで取られなきゃいけないんですか?待たなきゃいけないんですか?」
80: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 19:42:36.30 ID:wWvEvKYE.net
エマ「姫乃ちゃん…」
姫乃「私だって選べるなら別の日に生まれたかったですよ!でも、それを変えられないなら、このままじゃ奪われるだけなら、私は戦うだけです!」
エマ「あ、えーと、姫乃ちゃん…多分なにか思い違いをしてるよ?だって…」
果林「エマ、ちょっと私も入っていいかしら?」ヒュゥン
エマ「果林ちゃん?そのマイク…」
81: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 19:47:53.99 ID:wWvEvKYE.net
鞠莉「いやー、マリーもちょっと手を貸したくなっちゃってね」
鞠莉「お忘れかしら?行方不明になっていたマイクがあったでしょ?」
エマ「あ…そういえば…じゃあ…」
果林「そういうことよ。まあ、鞠莉ちゃんが回収してたとは思わなかったけど」
果林「姫乃ちゃん、エマとのバトルに割り込んで悪いけど」
果林「私があなたに伝えなきゃいけないのよ、ちゃんと聞いててよね」
82: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 20:29:53.13 ID:wWvEvKYE.net
【果林】
祝われるべきは渡辺曜?
そんなのあなたの中だけよ
いつしたかしら?心なき軽視
する必要もないわよ泣き寝入り
だってずっと今この時まで
私は思ってたあなたをとりわけ
一緒に叶えたの今日の悲願
あなたは立派な今日のwinner
83: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 20:33:03.04 ID:wWvEvKYE.net
果林「姫乃ちゃん、あなたは曜ちゃんに負けてなんかいないわ」
果林「言っても信じてもらえるかわからないけどね…」
果林「少なくとも私もエマも、昨日電話をもらってから今このときまで、姫乃ちゃんにどうやったら会えるかだけを考えていた」
果林「この場に私たちが来るために他の人も力を貸してくれた…あなたがあーだこーだ言ってた曜ちゃんもね」
果林「力とか才能とかそれとは別に勝ち負けがある…それを実感した今日だから言える」
果林「少なくとも私の中ではあなたは勝っているのよ姫乃ちゃん、誰もが認める天才とやらにね」
84: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 20:35:18.93 ID:wWvEvKYE.net
果林「だから、そんな情けないこと言わないで」
姫乃「私が…勝っている?」
鞠莉「あらら~いつもは厳しい果林が珍しく優しい事を言ってますね」
エマ「それは違うよ鞠莉ちゃん。果林ちゃんは元々優しいんだから」
果林「…えーっと、あれよ!姫乃ちゃんが情けないこと言ってるのが我慢できなかったの」
果林「情けない人ダメなレズって言うでしょ?」
エマ「それを言うなら情けは人のためならず、だよ~」
85: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 20:37:17.17 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「…ふふっ」
姫乃「なんですかそれ」
姫乃「色々あった…ですか」
果林「ええ…本当に大変だったわよ」
エマ「果林ちゃん、ずっと姫乃ちゃんのこと考えてたんだよ」
姫乃「まあ、藤黄やファンの方々以外でも2人は熱心に祝ってくださる人がいることがわかりましたし、うっぷんも晴らせましたし、これで…」
86: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 20:54:48.09 ID:wWvEvKYE.net
♪ワビーシタビー
姫乃「…いいところで着信って…誰のですか?」
果林「あら?ごめんなさい、私のね」
姫乃(果林さんの着信音…?なんだかスイスっぽかった気がしますが)
果林「えーっと…璃奈ちゃんから?」
果林「ごめんなさい…出るわね」
87: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 21:05:40.21 ID:wWvEvKYE.net
果林「はい…」
果林「え?…うん、多分いけるはずよ」
果林「スピーカーにすればオーケーかしら?」
果林「…はい、どうぞ」
璃奈『あーあー、えっと…聞こえてるかな?』
エマ「璃奈ちゃん!そっちはもう大丈夫なの?」
88: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 21:10:44.44 ID:wWvEvKYE.net
璃奈『うん、一通り片付いたよ』
エマ「よかった…」
璃奈『いつまでつながるかわからないし、いきなり切れるかもしれないけど、許してほしい』
璃奈『では、せーの』
ニジガク一同『姫乃ちゃん!お誕生日おめでとう!』
姫乃「ニジガクのみなさん…」
果林「あらあら、一気に祝ってくれる人が増えたわね」
姫乃(事情はわかりませんが…ありがとうございます)
89: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 21:12:16.60 ID:wWvEvKYE.net
???『あ、ごめんいいかな?』
曜『えーっと、初めましてだよね?Aqoursの渡辺曜です』
曜『…綾小路姫乃ちゃん、私と同じで今日が誕生日だって聞きました』
曜『ごめんね。ニジガクのみんな、そっちに行こうとしてたんだけど…ちょっと色々あって』
曜『先に果林さんとエマさんだけは何とか出られたんだけど、私のせいでこんなことになって』
曜『……本当にごめんなさい』
姫乃(これが…渡辺曜…)
90: 名無しで叶える物語 2021/04/18(日) 21:13:36.95 ID:wWvEvKYE.net
姫乃「いえ、いいんです」
姫乃「間に合いましたから、今日には」
曜『あのね…姫乃ちゃん、今わたしたちがこうしていられるのは、姫乃ちゃんのおかげなんだよ』
姫乃「えっと?それはどういう」
曜『うーんとね、どこから話したものか…』
曜『璃奈ちゃん、時間は大丈夫そう?』
璃奈『手短にお願いしたいけど、頑張ってみる』
曜『まずは今朝のことから話さないとかな?』
91: 名無しで叶える物語 2021/04/19(月) 18:53:03.27 ID:Blbvkot8.net
【YOU SIDE】
~4月17日 7:30~
~渡辺家~
曜「んーーーー!」
曜「ヨーソロー!!」
曜「17回目の誕生日…今日の天気は…」
曜「晴れ!…のち雨…」
曜「誕生日パーティーか、私としてはAqoursのみんなだけでワイワイやりたかったんだけど」
曜「あー、うん…1位…だよね」
96: 名無しで叶える物語 2021/04/21(水) 08:34:10.68 ID:2h7CrQsy.net
曜(スクールアイドルチャンネル…Aqoursのみんなと始めたこれが今日のパーティーにつながった)
曜(開設と同時に私のチャンネルの登録人数は膨れ上がっていった)
曜(私が何かするたびに熱心なファンがそれを拡散して、それを見た人がチャンネル登録して…私のチャンネルは急成長を続けた)
曜(さらに今週は今日が私の誕生日ということでいっそう盛り上がりは増している)
曜(そうしてファンのみんなから出てきたのが私の誕生日に何か企画をしようという話だった)
曜(で、それを鞠莉ちゃんに相談したら…ホテルオハラを貸し切りでパーティーをしようということになったんだよね)
97: 名無しで叶える物語 2021/04/21(水) 08:35:35.87 ID:2h7CrQsy.net
曜(さすがにファンまで呼んでってわけにもいかないから、μ'sとAqoursとニジガクのみんなで集まってパーティーをしたのを後日動画公開することでチャンネルのみんなは納得してくれた)
♪オーモーイヨヒトツ
曜「えっと、鞠莉ちゃんから?」
鞠莉『オー、曜はやっぱり早起きさんね』
曜「いや、朝練あったらもっと早いし、そんなに早くはないでしょ」
鞠莉『見事な論破サンキューね。で、本題なんだけど、果林とエマが途中でエスケープできないかって相談してきたのだけど?いいかしら?』
曜「ああ、うん問題ないよ。二人には大丈夫って伝えてもらっていい?」
鞠莉『あ、それは昨日の時点でオールオーケーって言ってあるからノープロブレムよ』
曜「私に聞いた意味は…」
98: 名無しで叶える物語 2021/04/22(木) 01:23:39.39 ID:pCSgDDwl.net
鞠莉『まあ、曜ならオッケーだなというマリーのフューチャービジョンが発動したということで』
曜「ははは…」
曜「…ねえ、鞠莉ちゃん」
鞠莉『何なに?どんな要望でもマリーに言ってちょうだいな?』
曜「私にそんな価値、あるのかな?」
曜「誕生日だからってわざわざ沼津まできてもらうとか、1番とか、そんなの見に余るっていうか」
鞠莉『うーん…』
鞠莉『…とりあえず一発しばいていいかしら?』
99: 名無しで叶える物語 2021/04/22(木) 01:30:53.55 ID:pCSgDDwl.net
曜「え?」
鞠莉『マリーも他のみんなもあなたにそれだけの価値があると思ったから今日集まってるの。あ…曜が人気だからとかそういうことじゃなくてね』
鞠莉『相手の厚意をありがたく受け取るのも礼儀だとマリーからシンゲンさせてもらいます』
鞠莉『あと、曜はどう思ってるか知らないけど、今あなたが弱音を吐いてる相手はあなたと1番を競ってる相手ってこと忘れてもらっちゃ困るわよ?』
曜「あ、ごめん…」
鞠莉『まっ、そういう自己評価が案外低いのも曜の魅力といえば魅力よね』
鞠莉『あ、それで…μ'sの当日入り組との合流なのだけど』
曜「うん、私たちにまかせて。あと、天気だよね…」
100: 名無しで叶える物語 2021/04/22(木) 01:31:52.05 ID:pCSgDDwl.net
鞠莉『雨…今のところはあまり問題なさそうだけど、場合によっては早めに切り上げるのも視野に入れましょう』
曜「そうだね…」
鞠莉『じゃあ、ホテルオハラで待ってるわよ』
曜「うん、了解だよ」
ピッ
曜「さてと…うん!やるからには全力だよね」
曜「では…今日も全速前進ヨーソロー!」
101: 名無しで叶える物語 2021/04/22(木) 09:00:09.58 ID:n+CAn5Pv.net
~4月17日 9:00~
~渡辺家前~
曜「ふぅ…風がきもちいい~」
曜「いや、これ本当に雨降るのかな?」
曜「…と、そろそろかな?」
ププーッ!
「曜ちゃーん!」
曜「千歌ちゃん!おはよう!」
曜(今日の参加者は私も入れて28人)
曜(果南ちゃん鞠莉ちゃんはそもそも淡島に住んでるからいいとして、わりと淡島というのは行き来に制限がある)
曜(ということで、これまた鞠莉ちゃんの発案で可能な人は前の日からホテルオハラに泊まってしまおうということになった)
曜(で、Aqoursの何人かと前の日に泊まれない人はこうして千歌ちゃん家の車で当日の朝に船乗り場まで送ってもらうわけだ)
102: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:02:39.07 ID:9ZjDPQM2.net
曜「ごめんね。千歌ちゃん、そのまま行った方が早いのに」
千歌「せっかくの曜ちゃんの誕生日なんだし千歌にも何かさせてよ」
志満「あら、運転してるのは私なんだけど?」
曜「志満さんもすみません」
志満「いいのよ、曜ちゃんのためだもの」
志満「それにしても淡島で誕生日パーティーなんて…鞠莉ちゃんも思い切ったことするわよね」
103: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:04:11.53 ID:9ZjDPQM2.net
志満「絵里ちゃんと希ちゃんは生徒会で昨日来れなかったんだっけ?かなり朝早かったんじゃない?」
絵里「ええ、でも朝早いのは慣れてますので」
希「とか言いながら危うく電車に遅れかけてたのは誰やったかなー?」
絵里「余計なことは言わないでちょうだい…」
善子「恥じることはないわ、絵里。…間に合ったという結果が大事なのであり、過程など些細な事柄なのだから」
千歌「善子ちゃんはちゃんと反省してねー」
曜(善子ちゃん、また寝坊しかけたんだ…)
104: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:05:52.40 ID:9ZjDPQM2.net
~4月17日 10:00~
~沼津側船乗り場~
志満「じゃあ、良い誕生日になるように祈ってるわね」
曜「ありがとうございます」
曜「さてと、次の船は…」
「ちょっと!今日はダメってどういうこと?」
「あの、一回落ち着きましょう?」
曜「ん?」
105: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:07:45.58 ID:9ZjDPQM2.net
すみれ「なんでここまで来て淡島行きの船に乗れないの!?」
小原家メイド「すみません。本日は一日貸し切りとなっております」
すみれ「いきなり、ダメだなんて言われて引き下がれるわけないでしょ!この平安名すみれが!」
恋「すみれさん、今調べましたら貸し切りの件は1週間以上前から告知されていたようですし、私たちの調査不足としか…」
すみれ「諦めるの!?それでいいの!?」
恋「まだ時間はたっぷりありますし、今日のところは沼津観光に切り替えましょう。淡島はまた後日ということで」
106: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:09:43.10 ID:9ZjDPQM2.net
すみれ「まあ、その方があの3人も来れていいかもね…」
恋「ええ…そうですよ」
すみれ「ああ、でも行きたかったな淡島」
恋「どうやら今日は貸し切りで誕生日パーティーのようですね」
すみれ「誕生日パーティー?」
恋「はい、Aqoursの渡辺曜さんの誕生日を祝うためにμ's、Aqours、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の方々が集まるとか」
107: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:13:55.78 ID:9ZjDPQM2.net
すみれ「は?なによ、そんなののせいで行けないの?」
すみれ「μ'sだかAqoursだかニジ…なんとかだか知らないけど、私たちの足元にも及ばないお粗末なグループじゃない」
絵里「ふーん、ずいぶんな言い草ね」
千歌「沼津でAqoursディスって無事に帰れると思わないでほしいね」
恋「あなたは…えっと、μ'sの絢瀬絵里さん?」
希「ちょっと、大人げないよエリチ」
曜「千歌ちゃんもだよ」
善子「まったく、本当に煽り耐性ないんだから…」
108: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:15:37.60 ID:9ZjDPQM2.net
すみれ「そっか、絢瀬絵里…」
すみれ「ということはあなたが東條希ね」
希「え?まあ、そうだけど…」
すみれ「やっぱり、μ'sなんてたいしたことなさそうね」
希「えっと、すみれちゃんだっけ?初対面の相手にそれは失礼やないかな?」
希「ん?……あなた、もしかして…」
109: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:22:04.13 ID:9ZjDPQM2.net
すみれ「はぁ…こんな人たちのわがままがまかり通るなんて世も末かしら」
恋「すみれさん、ここは大人しく帰りましょう」
すみれ「帰るのは構わないわ。でも、この人たちに屈したくはないわね」
小原家メイド「なるほど!」
すみれ「ちょっ!いきなり出てこないでよ!驚くじゃない」
小原家メイド「では一つゲームをしましょうか?」
すみれ「ゲーム…?」
110: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 05:23:32.60 ID:9ZjDPQM2.net
小原家メイド「はい、あなた…すみれ様にこの場にいるμ's、Aqoursメンバーどなたでもよいので指名をしてラップバトルをしていただきます」
絵里「ラップバトル?マイクも無いのに?」
小原家メイド「いえ、マイクならここに」
絵里「なんで持ってるのよ…しかも、2本」
小原家メイド「小原家のメイドたるもの、常にマイクを携帯しておけとお嬢様から言われてますので」
絵里「鞠莉、ハラショー…」
小原家メイド「すみれ様が勝てたら特例としてお二人の淡島への渡航を許可しますし、パーティーの支障にならない最大限での淡島観光をお約束します」
111: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:00:38.92 ID:9ZjDPQM2.net
すみれ「ふーん、面白い提案じゃない」
すみれ「まあ、淡島観光はまた今度でもいいかなって思ってたけど…」
すみれ「この私の力を証明して、VIP待遇を受けれるってのは気に入ったわ」
小原家メイド「では、すみれ様は承諾ということでよろしいですね。μ'sとAqoursの方々はどうなさいます?」
絵里「みんな構わないわね?」
曜(絵里さんの言葉に、5人ともうなづく)
112: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:02:01.23 ID:9ZjDPQM2.net
小原家メイド「では、お相手はどなたになさいますか?」
すみれ「ふふ、力を証明するのにおあつらえ向きな人がいるじゃない…私が指名するバトル相手は」
すみれ「東條希、あなたよ!」
希「そうだね…ウチだと思った」
絵里「希、この子と知り合いなの?」
希「ううん、多分初対面だよ」
希「でも、因縁はあるかな?」
113: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:04:22.98 ID:9ZjDPQM2.net
小原家メイド「では、両名ともマイクをどうぞ」
すみれ「覚悟はいいかしら?先輩さん」ヒューン
希「先輩後輩ね…たしかにそういう関係ともいえるかな」ヒューン
小原家メイド「先攻はどちらでしょうか?」
希「後輩ちゃんに譲るよ。正直、ウチの後輩の力ってのを見てみたいからね」
すみれ「では、ありがたくもらいうけるわ」
すみれ「Liella!の期待の星、平安名すみれ…いっくわよ!」
114: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:06:36.38 ID:9ZjDPQM2.net
【すみれ】
みなさんご存知 時代の寵児
カリスマ巫女が偉大に降臨
才能、サイの目、もち最高値
このギャラクシーは無敗の境地
私にかかれば神すらもフォロワー
本物の言葉にエセ巫女はdrop out
それがすみれ'sラップ・ショウ
もう間髪入れず ラクのショウ
115: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:09:10.98 ID:9ZjDPQM2.net
ドオオオオオン!
希「くっ!いきなり8小節」
希「それに、やっぱりね…」
絵里「すみれ…あなた…まさか巫女なの!?」
善子「そんな…希のアイデンティティが…」
すみれ「その通り!私は巫女…それも、そこにいるなんちゃって巫女とは違うわ」
116: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:14:54.21 ID:9ZjDPQM2.net
すみれ「神社生まれの神社育ち、しかもカリスマ性まで備えた本物の巫女…それが私、平安名すみれなのよ!」
千歌「メインキャラで、生まれながらの巫女…」
絵里「嘘でしょ…これじゃ希の立場が」
希「いやぁ…本物の巫女ね。ははっ…お笑い草もいいところやん?」
絵里「希?」
希「わかってない、わかってないよすみれちゃん」
希「巫女に必要なのは血筋とかカリスマじゃない。心のありかただよ」
117: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:15:54.19 ID:9ZjDPQM2.net
希「みんなの幸せを願い、神様への敬意を持って身を捧げる…その気持ちがあれば」
希「女の子は誰だって巫女になれるんや!」
すみれ「何を言ってるのあなた…?」
曜(ここに来てまさかの…プリキュア理論!!)
希「それに、巫女ってのはウチの武器の一つ
であって全部じゃない…」
希「ウチの最大の武器ぶちこんであげるから…気張ってね後輩ちゃん!」
118: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:17:26.72 ID:9ZjDPQM2.net
>>114
【希】
舐めたらあかんよウチはラッキーガール
粋がる巫女とはひと味違う
カンストLUCKで道を切り開く
ウチが導いちゃうスピリチュアル
ギャラクシーくらいじゃまだまだ足りん
ツキも星も巡る規格外な操舵輪
ウチの手で回す神がかりな物語
女神の前髪をわしわしづかみ
119: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:21:09.54 ID:9ZjDPQM2.net
ドオオオオオオオオン!
すみれ「っつ…」
すみれ「でも、まだまだ」
バキッ
すみれ「え?ちょっと…これヒールが折れて」
カアーカアー
ポトッ
すみれ「え?カラス?っていうか、やだフンが…」
120: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:22:11.13 ID:9ZjDPQM2.net
希「ああ…これは早めにやめたほうがいいかもしれんね」
希「本来ウチの運は自分がラッキーなだけで周りがアンラッキーになるわけじゃないんだけど」
希「巫女対巫女の戦いにスピリチュアル的な何かが動いちゃってるね」
すみれ「なによ、ここでやめるわけないでしょ!」
希「うーん、すみれちゃんもこういう時に無理したらいけないのはわかってるんやないかな?」
121: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:25:15.30 ID:9ZjDPQM2.net
小原家メイド「…バトルの最中にすみません」
すみれ「うわ!なによ!」
小原家メイド「申し訳ありませんが"時間切れ"です」
小原家メイド「船が来てしまいました。このバトルは引き分けということになります」
小原家メイド「よって残念ですが、すみれ様を淡島へお連れすることはできません」
すみれ「早すぎるわよ!決着なんてつくわけないじゃないの」
小原家メイド「そう言われましても、時間も迫っていますので」
122: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:28:21.67 ID:9ZjDPQM2.net
すみれ「あー、はい。わかったわよ」
すみれ「今日のところはこれで終りね。でも、もし次にどこかであったら、その時は私が勝つわ」
希「うーん、それはないかな」
すみれ「はっきり言うじゃないの」
希「もし、すみれちゃんがサイコロを振ったら何が出ると思う?」
すみれ「6に決まってるわよ!私の運と実力をもってすれば当然のこと」
希「だったらウチには勝てないかな?」
希「すみれちゃんが振ってるのはせいぜい6面ダイス、ウチが振ってるのは100面ダイスなんだから」
希「…そして、その上でありえない100を出すのがウチだよ」
123: 名無しで叶える物語 2021/04/23(金) 12:31:07.83 ID:9ZjDPQM2.net
~4月17日 11:00~
~淡島側船乗り場~
曜(と、まあ…なんやかんやあったけど、私たちは無事に淡島にたどりついた)
絵里「思わぬバトルに巻き込まれてしまったわ」
善子「希、あなたの運…ちょっとでも分けてほしいわよ…」
希「うーん、今度一緒に神様にお祈りでもしてみる?」
善子「いえ、それはできないわ。私は堕天使、神とはすでに袂を分かった身なのだから!」
千歌「すみません…こんな子で」
曜「これからも仲良くしてあげてください」
鞠莉「オー!!今日の主役がやってきましたね!」
124: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 10:29:12.91 ID:c3rLpx+b.net
曜「ははは…そんな大袈裟な」
鞠莉「あ、千歌っち!例のケーキ企画の件で打ち合わせしたいらしいからキッチンに速攻でゴーしてあげて」
千歌「おお!あれだね!」
千歌「では、行ってまいります!」
曜(千歌ちゃん、すごい勢いで走っていった…張り切ってるな…)
曜「あ、先に帰るっていう果林さんたちに挨拶しておきたいんだけど…」
鞠莉「そうね…ってもうこんな時間じゃない!まずはパーティーの開始宣言でいい?」
125: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 19:45:35.64 ID:c3rLpx+b.net
~4月17日 11:10~
~ホテルオハラ~
鞠莉「…と、いうわけで、渡辺曜生誕祭2021スタートデース」
曜(パーティーが始まって、私はみんなのテーブルを回って挨拶をしていく)
曜(私の誕生日パーティーか…みんな楽しそうに話してるな…)
曜(こういう場を作るきっかけになっただけでも私の誕生日に意味はあったんだよね)
果林「あら、曜ちゃん。主役がそんな暗い顔してちゃダメよ?」
エマ「さすがにお疲れかな?」
126: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 19:47:33.56 ID:c3rLpx+b.net
曜「果林さん、エマさん」
果林「…今日はごめんなさいね。せっかく誘ってもらったのに」
エマ「しかも、急な話なのに途中で帰れるようにしてもらったし」
曜「ううん!来てもらってだけでもうれしいよ。むしろ、こんなところまで来させちゃって申し訳ないくらい」
果林「知り合いに今日誕生日の子がいてね。しかも曜ちゃんと同い年なのよ」
曜「私とまったく同じ日に生まれた子か…」
果林「しかも、その子もスクールアイドルなの。知ってるかしら?藤黄学園の…」
127: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 19:49:39.33 ID:c3rLpx+b.net
ルビィ「綾小路姫乃ちゃん!?」
曜「ルビィちゃん、どうしたのいきなり…」
ルビィ「…あの、今日誕生日の藤黄の子って綾小路姫乃ちゃんだよね?果林さん、姫乃ちゃんとお友達なの!?」
ダイヤ「素晴らしいですわ!なかなか…良い交友関係をお持ちで!」
曜「しれっと登場しないでよ…ダイヤさん」
果林「えっと…姫乃ちゃんってそんなに有名なの?」
128: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 19:52:50.17 ID:c3rLpx+b.net
にこ「有名ってわけでもないけど、スクールアイドルファンならルビィみたいな反応になるかしらね」
花陽「ええ…なるでしょうね!」
果林「にこちゃんと花陽ちゃんまで」
ルビィ「姫乃ちゃんはね、まさに努力の人なんだよ」
ダイヤ「ルビィったら、実は昨晩は姫乃さんの生誕前夜祭とかいう生放送で大はしゃぎだったんですのよ」
ルビィ「ファンが非公式にやってる放送なんだけどね」
129: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 19:57:46.55 ID:c3rLpx+b.net
ダイヤ「一晩中楽しそうでしたわね。家ではないからか普段以上のテンションでした…」
にこ「綾小路姫乃は初めから評価されてたわけじゃない。どっちかって言うと特に目立たないモブって感じの子だったの」
花陽「そこから努力を重ねてチャンスを掴んで、今や藤黄といえば綾小路姫乃ちゃんってくらいに言われるまでになったんだよ」
果林「…言われてみれば…2年生なのに代表で会議に来てるくらいだし結構すごい子なのかしら?」
エマ「今更気づくなんてお間抜けさんだね…果林ちゃん!」
果林「エマまで…」
130: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 19:59:21.84 ID:c3rLpx+b.net
エマ「μ'sもAqoursもニジガクも2年生が中心だけど、そんなのはレアなんだよ!大体は3年生が中心だもん」
エマ「それにもかかわらず、藤黄の中心として活躍してる…しかもモブ同然から始めてね!」
果林「エマは本当に姫乃ちゃんのことになると生き生きするわね」
エマ「うん、私は姫乃ちゃんの大ファンだからね!」
鞠莉「曜!ケーキの準備ができたわよ!」
千歌「ほらほら~こっちだよ~」
曜「あ、千歌ちゃんと鞠莉ちゃんが呼んでるから行くね」
131: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 20:01:44.53 ID:c3rLpx+b.net
~4月17日 11:30~
~ホテルオハラ外~
曜「ふう~、まさか誕生日にケーキ入刀をすることになるとは思わなかったよ」
曜「しかも、Aqoursのリーダーってことで千歌ちゃんと手を取りあって」
曜(一部の人たちが妙な歓声をあげてたな…)
曜(それからあっちこっちに行って記念撮影したり、ホテルオハラ特製のビックバースデーケーキを28人で分けて食べたり、気づいたらお昼すぎになっていた)
132: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 20:03:13.30 ID:c3rLpx+b.net
~4月17日 13:00~
~ホテルオハラ外~
果林「あーもー、まったくこんな時に…」
エマ「困ったね…」
曜(あれ?果林さんとエマさん?)
エマ「うーん、かからないな。いつからなの?」
果林「えっと…曜ちゃんと千歌ちゃんのケーキ入刀を撮った時にはあって…そこから…使ったかしら?」
曜「どうしたの?果林さん?エマさん?」
果林「無いのよ、私のスマホ…」
133: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:23:22.45 ID:c3rLpx+b.net
曜「どこで失くしたとか、わかりそう?」
果林「まったく心当たりなし!本当…大事な時に限って…」
曜「鞠莉ちゃんには聞いてみた?」
果林「ああ、そういえばここは鞠莉ちゃんの家なのよね」
鞠莉「…ふふ、話は聞かせてもらったわ!」
鞠莉「マリーにお任せでーす!」
果林「鞠莉ちゃん!?」
エマ「いつからいたの?」
134: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:24:23.03 ID:c3rLpx+b.net
千歌「私もいるよ!」
曜「千歌ちゃん!?」
鞠莉「スマホの件、承ったわ。まかせて、ここはマリーにとって庭みたいなものだから」
千歌「ていうか、実際に家だもんね」
鞠莉「まずは少々お待ちくだサーイ」
鞠莉「はい、ピッポッパと発信デース」
鞠莉「………」
鞠莉「………おかしいわね」
135: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:25:48.22 ID:c3rLpx+b.net
曜「どうかしたの?」
鞠莉「いえね、フロントに落とし物とか届いてないか聞こうとしたのだけど、つながらないのよ」
千歌「そういえば、さっきフロント行ったけど誰もいなかったよ」
鞠莉「仕方ない、ここは地道に探しましょうか」
ポツ…ポツ
鞠莉「…おや?」
曜「雨…降ってきちゃった」
136: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:29:30.17 ID:c3rLpx+b.net
曜「まあ、でもこのくらいの雨なら…」
エマ「…そうでもないっぽいよ」
エマ「大雨洪水…波浪警報だって…」
鞠莉「みんなには一旦ホテルの中に入ってもらいましょう。それで各自昨日泊まった部屋に待機、船の準備が出来次第帰ってもらいます」
曜「えっと、私は…」
鞠莉「泊まった部屋って無いわよね。そういう人はテキトーな部屋でオッケーにしちゃいましょう。せっかくだからマリーの部屋にいらっしゃい。豪勢におもてなしちゃうわ」
137: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:35:26.14 ID:c3rLpx+b.net
果林「あら?じゃあ私とエマもお邪魔させてもらってもいいかしら?その方が都合がいいもの」
鞠莉「モチのロンよ。歓迎しちゃうわ」
千歌「じゃあ、千歌は外にいる人見つけてホテルに入るように知らせてくるよ!」
曜「うん、よろしく!細かいことはメールでみんなに送るからそれ見てって言ってくれればいいよ」
曜(私と鞠莉ちゃんでμ'sとAqoursに、果林さんとエマさんでニジガクに手分けしてこれからのことを伝える)
曜(外にいる人は千歌ちゃんが直接ホテル内に誘導してくれた)
138: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:38:16.75 ID:c3rLpx+b.net
千歌『もしもし、梨子ちゃんと花丸ちゃんと真姫ちゃんと凛ちゃんがいたからホテルに入ってもらって、あとはメール見てって言っておいたよ』
曜「ありがとう!千歌ちゃん」
曜「ふぅ~みんなに連絡完了!」
鞠莉「果林、エマ、あなたたちはイの一番で乗りなさい。待ってる人がいるんでしょ?」
果林「ありがとう。そうさせてもらうわ」
曜(私の誕生日パーティーは予定を早めたものの無事終了)
曜(…するはずだった)
139: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:51:49.96 ID:c3rLpx+b.net
~4月17日 14:00~
~ホテルオハラ・鞠莉自室~
曜「ねえ…船の準備、遅くない?」
鞠莉「妙よね、もう2時よ。果南が大急ぎで準備してくれてるはず…」
鞠莉「…ちょっと果南に聞いてみるわ」
曜「鞠莉ちゃん…」
鞠莉「…通じない」
鞠莉「電源が入ってないか、電波の届かない場所にあるって…」
140: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:55:17.76 ID:c3rLpx+b.net
鞠莉「えっと、果南と一緒にいそうなのは…かけてみましょう!」
曜「そうか…ん~と、果南ちゃんと同じ部屋にいるのは…」
曜(スマホのメモ帳にある部屋割表を見る)
曜(あった、ダイヤさんだ!)
鞠莉「だめね…出ない…」
エマ「あ!ねえ…千歌ちゃんにきいてみたら?」
141: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:56:41.53 ID:c3rLpx+b.net
曜「そうか、千歌ちゃんはあちこち駆け回ってたから何か知ってるかも!」
『お客様のおかけになった番号は現在、電波の…』
曜「ダメだ…千歌ちゃんにも通じない」
果林「ねえ、ちょっといいかしら?」
曜「ん?なに?」
果林「今日はμ'sとAqoursとニジガクのみんなが来てるのよね?」
曜「そのはずだよ…」
142: 名無しで叶える物語 2021/04/24(土) 21:58:47.63 ID:c3rLpx+b.net
果林「私たち、泊まっていた部屋からここに来るまで誰とも会って無い気がするのだけど…」
エマ「おかしいよね…私たちと鞠莉ちゃんの他に24人だよ?それで一人も会わないって」
果林「ホラー映画じゃないんだから」
鞠莉「安否確認よ。マリーと曜とエマで手分けして連絡を取りましょう」
鞠莉「マリーはμ's、曜はAqours、エマはニジガク担当ってことでOK?」
果林「私もスマホさえあれば…こんな時に、力になれなくてごめんなさい」
143: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 17:31:50.21 ID:zT1f+2VE.net
~4月17日 14:20~
~ホテルオハラ鞠莉自室~
曜「みんなダメだった…」
鞠莉「つまり、私たち以外、全滅ね…」
果林「……」
エマ「……」
曜(空気が重い…ここは楽しそうな話題で安心させ
曜「そういえば、今日来る途中に船乗り場で希ちゃんがラップバトルすることになってさ」
エマ「希ちゃんの…ラップバトル…!」
144: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 21:38:46.67 ID:jrAQ7LvF.net
果林「食いつくわね…エマ…」
エマ「ふふ…今日の姫乃ちゃんとのバトルが楽しみだなあ」ヒューン
果林「どさくさにマイクを構えないで!」
曜「にしても、メイドさんにマイクを持たせるなんて鞠莉ちゃんも変わってるね~」
果林「なによ、メイドにマイクって…まあ、鞠莉ちゃんらしいわね」
曜「しかも、2本もだよ」
鞠莉「……何のこと?」
145: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 21:41:37.01 ID:jrAQ7LvF.net
曜「いや、だって船乗り場のメイドさんが」
鞠莉「…私、メイドにマイク持ってろなんて言った覚えないわよ?」
曜「……え?」
小原家メイド「お嬢様、お話が…」
曜「あ、そうそうこの人」
曜(船乗り場で会ったメイドさんが鞠莉さんに近づく)
146: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 21:44:11.56 ID:jrAQ7LvF.net
鞠莉「何かしら?…ん?そもそもあなた…」
ドゴっ…
鞠莉「あ…こふっ…」
曜(鞠莉ちゃんが…崩れ落ちた…)
曜「え?鞠莉ちゃん…?」
小原家メイド?「なるほど…使用人の顔を全部覚えてるってのは本当みたいですね」
147: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 22:53:52.15 ID:jrAQ7LvF.net
曜(鞠莉ちゃんを気絶させたその人は鞠莉ちゃんの体を床に乱雑に投げつける)
小原家メイド?「ここまで予定どおりでしたが…」
小原家メイド?→偽メイド「最後の一部屋は本命だけあって少し骨が折れそうですね」
偽メイド「御令嬢様をそれとなく物陰に誘導して無力化して、それから制圧するつもりでしたけど…まあ大して変わらないですよね」
偽メイド「いやー、ようやく神様とやらが味方してくれたんですかね。さすがに28人を相手にするのは骨が折れますし、どうやって分断するかが課題だったんですが…」
偽メイド「…まさか、そっちから分断されてくれるとは思いませんでしたよ」
148: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 22:55:12.49 ID:jrAQ7LvF.net
曜「まさか、みんなに連絡がつかなかったのは…」
偽メイド「はい、みなさん仲良くおねんねして頂いてますよ」
偽メイド「さてと、では…ここも制圧しちゃいましょう」
曜(メイドさんがそういうとマスクを付けた人が何人か入ってきた)
曜(全員、マイクを持っている)
エマ「ここは私が…」ヒューン
149: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 22:56:38.09 ID:jrAQ7LvF.net
偽メイド「あら?小原家の御令嬢さんがどうなってもいいんですか?」
曜(メイドさんが足元の鞠莉ちゃんを足で小突く)
曜「くっ、こうなったら強行突破で…」
果林「やめなさい。相手はマイクを持ってる上に鞠莉ちゃんが人質になってるのよ」
エマ「抵抗したらどうなるかわからない…」
偽メイド「懸命です。では、まずは荷物の回収と危険物のお預かりをさせていただきますね」
150: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 23:02:53.32 ID:jrAQ7LvF.net
曜(私たちの荷物が奪われ、体のすみずみまでボディチェックされる…危険物…マイクやスマホはもちろん、ヘアピンなんかまで不都合なものは全部取られてしまった)
マスク女「ん?お前…」
曜(果林さんのボディチェックをしていた人が怪訝な顔をしていた)
偽メイド「どうしたの?」
マスク女「いや、こいつ…確かスマホ使ってたのに荷物の中見てもボディチェックしてもスマホの類が見つからないんですよ」
マスク女「おい、スマホはどこだ?」
151: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 23:06:51.74 ID:jrAQ7LvF.net
果林「そんなの、私が教えてほしいわよ…」
果林「失くしちゃったの!探してる途中に雨が降ってきて、ホテルの中に入って、それで今こうなってるの!」
マスク女「どうします?」
偽メイド「まあ、手元に無いならどこにあっても同じだと思いますよ?外にあるならこの雨じゃ無事がどうかも怪しいですし」
曜(メイドさんの言うように、カーテン越しでも外が土砂降りなのがわかるくらい雨の勢いは強くなっていた)
152: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 23:26:48.99 ID:jrAQ7LvF.net
偽メイド「さてと…では、みなさんもおねんねしていただくとしましょう」ヒューン
曜(このままじゃ私たちも…でもどうしたら)
鞠莉「させ…ないわよ!!」ガバッ
偽メイド「なっ!?」
曜(メイドさんの後ろで気絶していたはずの鞠莉ちゃんが、メイドさんに組みつく)
偽メイド「こいつっ、気絶してなかったのか」
鞠莉「しぶとさには自信があってね…それとマリーは意外と手癖が悪いのよ…あった!」
153: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 23:29:00.71 ID:jrAQ7LvF.net
鞠莉「曜!これを…!」
曜(鞠莉ちゃんがメイドさんの隠し持っていたものを私に投げる)
曜「マイク…」
鞠莉「やっぱりもう一本持ってたのね。曜が目撃してくれてて助かったわ」
曜(私たちを取り囲んでいた人たちが怯む)
曜(…こっちもマイクがあって人質がいないなら…)
偽メイド「なんとかなる…とか、考えてます?」
曜「くっ!」
154: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 23:31:02.34 ID:jrAQ7LvF.net
偽メイド「無理だと思いますよ?あなたたちがどれほど優秀だとしても、この人数ですからね」
鞠莉「いえ、何とかなるわよ…」
鞠莉「曜!右斜め後ろ、赤いボタンよ!」
曜「え?」
曜(鞠莉ちゃんの言う通り、右斜め後ろを見ると…壁になんか怪しいボタンがあった)
鞠莉「早く!」
曜「これ…」
曜(迷ってる時間は…無い!)
155: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 23:33:12.32 ID:jrAQ7LvF.net
曜「ああ、もう!どうにでもなれ!」
ポチッ
鞠莉「良くやったわ!曜!」
曜「鞠莉ちゃん…これ…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
エマ「ねえ…果林ちゃん、曜ちゃん…」
曜(エマさんが指差す方を見ると…)
156: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 23:35:20.19 ID:jrAQ7LvF.net
曜「壁が無くなってる?」
曜(鞠莉ちゃんの部屋の、外に面してる側の壁が…無くなっていた)
果林「えっと…」
鞠莉「飛びなさい!この部屋が吹っ飛ぶ前に!」
曜「ふっとぶ?」
エマ「果林ちゃん!曜ちゃん!行くよ!」
曜(エマさんが果林さんと私を抱えて…いや、正確にはタックルに巻き込む形だけど…)
157: 名無しで叶える物語 2021/04/25(日) 23:36:17.64 ID:jrAQ7LvF.net
エマ「たあああああああ!」
曜(鞠莉ちゃんの部屋から飛んだ…)
曜(その直後…)
ドオオオオオオオオオオン!!!!
曜「…………」
曜「えええええええええええ!!」
曜(鞠莉ちゃんの部屋が…吹き飛んだ…)
158: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 00:43:52.84 ID:LmnP3WzJ.net
※補足というか訂正ですが、>>148から出ているマスクは覆面のことです
紛らわしいので以降は覆面と書きます
159: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 19:14:58.29 ID:LmnP3WzJ.net
~4月17日 14:40~
~ホテルオハラ外・鞠莉自室真下~
曜「よかった…私…生きてる…」
エマ「あはは、いきなりごめん」
果林「まあ、エマがああして無かったら部屋ごと吹っ飛んでたわけだし、むしろ勲章ものよ」
曜(私たちが飛び降りた下にはエアバッグが展開されていた)
曜(まあ、冷静に考えれば、飛び降りた先の安全が確保されていないとあの装置の意味がないんだから当たり前か)
曜(鞠莉ちゃん…無事…だよね?)
160: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 21:31:15.43 ID:LmnP3WzJ.net
果林「早くここから移動しましょう」
曜「うん、そうだね」
エマ「………」
果林「エマ?」
エマ「…無くなっちゃった」
エマ「…私のマイク…取り上げられて…無くなっちゃった…」
161: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 22:33:35.67 ID:LmnP3WzJ.net
曜「あ、あの!私が今持ってるこれで…」
エマ「…ううん、それは曜ちゃんが持ってて」
エマ「あの子は…私がこの手で取り戻すから!」
曜(この爆発じゃ壊れてるかも、とか言うのは野暮だよね)
果林「…姫乃ちゃん、私たちのこと待ってるわよね」
エマ「うん、姫乃ちゃんはいい子だもん!そのためにもこんなわけのわからない事態は早く解決しないと!」
162: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 22:35:38.80 ID:LmnP3WzJ.net
曜「ねえ、思ったんだけど…船乗り場まで行ってみない?」
曜「この雨だと船は出せないだろうけど、誰かいるかもしれないし、何かわかるかもしれない」
曜「それに船が出せるようになったら果林さんとエマさんだけでも沼津に送れるかも」
果林「みんなを置き去りにして行けっていうの?そんなのみんなにも姫乃ちゃんにも顔向けできないわ」
曜「そうじゃない、助けを呼んでくれないかな」
曜「助けが来るまで私は持ち堪えるから」
果林「そうね…それも一つの手かもしれない」
果林「乗らせてもらうわ。その提案にも船にもね」
163: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 23:09:17.66 ID:LmnP3WzJ.net
~4月17日 15:30~
~淡島側船乗り場~
曜(警戒しながらだからずいぶんかかったけど船乗り場についた…だけど)
ザアアアアアアア…
果林「…どういうこと?」
曜「………」
果林「ねえ、曜…あなたは確かに船に乗ってここまで来たのよね?」
曜「うん…」
164: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 23:10:19.18 ID:LmnP3WzJ.net
エマ「船が一つも無いし、誰もいないなんて…」
♪ワビータビーカナーデ
曜「え?」
果林「この音…もしかして」
曜(音がした茂みに私たち3人の視線が集まる)
千歌「まずっ!」
曜「え…千歌ちゃん!?」
165: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 23:11:49.29 ID:LmnP3WzJ.net
果林「それ…私の…スマホ」
千歌「ああ、やっぱりか」
曜「千歌ちゃん、無事だったの?」
千歌「無事っていうか…えっと、私は昨日泊まった部屋とかなかったじゃん?」
曜「うん」
千歌「でね、曜ちゃんと電話した後に果南ちゃんとダイヤちゃんの部屋に行ったんだけど」
166: 名無しで叶える物語 2021/04/26(月) 23:15:48.53 ID:LmnP3WzJ.net
千歌「果南ちゃんとダイヤちゃんは眠ってて、そしたら変な人たちが入ってきて捕まっちゃって、荷物もスマホも取られて…眠らされてさ…」
千歌「しばらく寝てたと思うんだけど、なんか…ドオオオン!って音がしたんだよ」
曜「ああ…うん…あれね」
千歌「それで千歌だけ目が覚めてさ、慌てて窓から外に出たんだけど、何をしたらいいかわからなくて…どうしようって歩いてちょっとした頃かな?果林さんのスマホを見つけて」
千歌「でも、ロックが解除できなくて果林さんを探してたんだけど、いざ見つけたらどう渡したものかと…」
曜「いや、お手柄だよ千歌ちゃん!」
167: 名無しで叶える物語 2021/04/27(火) 18:44:26.23 ID:rDcEwUwM.net
千歌「そっか…うん」
果林「しかし、よくわかったわね」
千歌「いや、無くしたって言ってたし、もしかしたらなって」
果林「でも、これでようやく連絡が…あっ…」
曜(果林さんがロックを解除したスマホの画面、そこには)
『果林さん、こちらは雨強いですが、来られそうですか?ご連絡おねがいします』
果林「姫乃ちゃん…しかも何回もかかってきてたみたい」
168: 名無しで叶える物語 2021/04/27(火) 21:45:20.04 ID:rDcEwUwM.net
果林「じゃあ、さっそく…」
果林「…あれ?」
曜「どうかしたの?」
果林「落ちちゃった…スマホ」
エマ「え?手に持ってるよね?」
果林「そうじゃなくて…電源落ちちゃった」
果林「…電池切れ…だと思う」
169: 名無しで叶える物語 2021/04/27(火) 21:46:55.82 ID:rDcEwUwM.net
エマ「電池切れ?」
果林「……えっと」
果林「昨日ね…私…藤黄の動画ずっと見てたじゃない?」
エマ「うん、そうだったね」
果林「でね、朝気づいたら10%くらいで、そこから慌てて充電したんだけど、間に合わなくて…」
エマ「…これからは気をつけようね」
170: 名無しで叶える物語 2021/04/28(水) 19:25:03.07 ID:O24JXekd.net
果林「充電、この辺りでできるかしら?」
曜「コンセントはあるだろうけど、充電器はどうだろ?」
エマ「千歌ちゃんが充電とかできたらよかったんだけど、そんな状況でもなかったんだよね?」
千歌「えっと、まあ…そうだね」
曜「ていうか、千歌ちゃん。ロックが解除できなくても緊急コールとかでなんとかなったんだけどな…」
曜「わざわざ大変な思いしてまで届けなくても拾った時点で解決できたんじゃない?」
曜「そうしたら果林さんたちだってもっと早く帰れたのに」
千歌「…なんだよそれ…」
171: 名無しで叶える物語 2021/04/28(水) 19:30:10.97 ID:O24JXekd.net
曜「千歌ちゃん?」
千歌「私は私で何とかしようとしたんだよ。色々やったんだよ。でも、わからなかったんだもん…」
曜「いや、でもそういうのは何となくわかるっていうか」
曜「それに色々やったっていうけどさ…」
曜「充電切れになったら元も子もないんだし、わからないならもう電源切っちゃったほうがよかったんじゃない?」
千歌「ちゃんとやろうとしたよ…その結果こうなったんだよ!」
千歌「そりゃ、曜ちゃんはうまくできるんだろうけど…千歌はできなかったの!だから果林さん探して、怖い思いしながらここまで来たんだよ!」
千歌「なのに、そんな言い方ないじゃん!」
172: 名無しで叶える物語 2021/04/28(水) 19:33:13.04 ID:O24JXekd.net
曜「ご、ごめん千歌ちゃん…そんなつもりじゃ」
千歌「じゃあ、どんなつもりだったの?」
千歌「曜ちゃんができるってだけで…みんなができると思わないでよ!」
千歌「…みんながみんな曜ちゃんみたいなわけじゃないんだよ…そういうの、ちゃんとわかってよ!」
曜「…どうしたの?なんか千歌ちゃんおかしいよ」
果林「ちょっと、こんなところで喧嘩なんて…」
「おい、いたぞ!」
「さんざん逃げ回りやがって…」
174: 名無しで叶える物語 2021/04/29(木) 21:57:09.93 ID:7osdL35N.net
千歌「…………」
エマ「…見つかっちゃったね」
曜「こうなったらマイクで…」
曜「いくよ!」
曜(まだ、人はそんなに集まってない!鞠莉ちゃんが渡してくれたマイクでなんとか切り抜ける!)
曜「…あれ?何も出てこないし、マイクもそのまま?」
曜(マイクでラップをする時には、その人の特性に合ったデザインのスピーカー…ヒプノシススピーカーが出てきたり、人によってはマイクの形が変わったりするんだ)
曜(だけど、何も起こらない…?)
175: 名無しで叶える物語 2021/04/29(木) 21:59:38.53 ID:7osdL35N.net
果林「まさか…」
エマ「キャンセラー?」
曜(ヒプノシスキャンセラー、マイクの動作を外部から強制停止させる装置…だよね確か)
偽メイド「ええ、大正解ですよ」
曜「そんな…何でメイドさんがここに?」
偽メイド「まったく、自分の部屋を吹き飛ばすなんて…小原家の御令嬢にはだいぶ手を焼きましたが、これで王手です」
曜(人がどんどん集まってくる…)
偽メイド「大人しく捕まってくれますよね?」
曜(これはもう、詰みかな)
177: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 00:43:05.74 ID:i9G2vyCa.net
~4月17日 16:00~
~ホテルオハラ・ロビー~
曜(捕まった私たち4人はホテルオハラのロビーに連れていかれた)
果林「まったく、スマホを見つけてこれからって時に」
偽メイド「さあ、到着ですよ」
曜「え?これ…」
曜(ロビーには簡易的にではあるけどステージが組まれていた)
曜(そして、ステージの上には『渡辺曜ちゃん誕生日記念ラップショー』と赤いペンキで書き殴られた看板があった)
178: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 00:44:31.10 ID:i9G2vyCa.net
果林「センスのかけらもないわね」
曜(それだけじゃない)
曜(ステージの周りには覆面の人たちが集まっていて…)
曜(床には私たち4人を除くμ's・Aqours・ニジガクメンバーが"置かれていた")
曜(呼吸はしてるみたいだけど、ほとんど身動き一つせずに横たわっている)
偽メイド「これからのイベントには私たちの全員が参加しますので、監視の都合上こちらに集めさせていただきました」
179: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 00:45:45.10 ID:i9G2vyCa.net
曜「みんなに何をしたの…」
偽メイド「ほんの数時間眠っていただいてるだけです。明日の朝には目が覚めますのでご安心ください」
果林「ちょっと、二つほどいいかしら?」
偽メイド「なんですか?ようやく始められそうなんですから巻きでお願いしますよ?」
果林「…善処するわ。まず一つ目」
果林「あなたたちの目的を教えてもらってもいいかしら?」
果林「こんなことをする意味がわからないの。お金?怨恨?単なる愉快犯?これからのイベントとやらに関係しているのかしら?」
180: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 00:48:17.65 ID:i9G2vyCa.net
偽メイド「私たちの目的ですか…このステージを見ればわかると思いますが?」
偽メイド「…復讐ですよ。そこにいる…渡辺曜へのね」
曜「私への…復讐?」
偽メイド「はい、ここにいるのは私も含めてみな渡辺曜に恨みを持つ者です」
偽メイド「各々具体的な恨みの内容は違いますが、それはこの後のメインイベントでということになります」
181: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 06:38:24.60 ID:i9G2vyCa.net
果林「じゃあ、二つ目ね」
果林「私、この後に人と会うことになっててね、お願いしたいことがあるの」
偽メイド「ああ、そういえば早めに船を出すようにという話になってましたね。なるほど、謎が一つ解けました」
偽メイド「で、何です?解放しろとでも?そんな理由で解放するわけないですよね?」
果林「違うわよ。せめてその子に連絡を取りたいの。ようやく見つかった私のスマホから」
果林「もちろん、あなたたちにとって不都合なことは伝えないわ。時間どおりに着けそうにない、できれば別の日にできないか?ってところね」
果林「あとはまあ…話がまとまるまでのやりとりを許可してほしいわね」
偽メイド「…そんな要望が通るとでも?」
182: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:15:52.07 ID:i9G2vyCa.net
果林「あら?いいのかしら?私がいつまでも到着しないことを不審に思ったその子が警察とかに駆け込むかもしれないわよ」
果林「私はその子を無駄に待たせないで済むし、あなたたちはリスクを減らせる。悪い話ではないと思うけど?」
偽メイド「…いいでしょう。ただし、伝えるのはメールで文面は私が確認、送信も私がする…ということでよろしいですか?」
果林「それでいいわ」
果林「あ、そういえば、どうやら私のスマホ…充電切れらしいの。充電させてちょうだい?」
偽メイド「ご自由にどうぞ?まあ、充電器は私物ではなく、ホテルの備品を使ってもらいますが」
果林「そう、ありがとう」
183: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:26:13.31 ID:i9G2vyCa.net
曜(果林さんがメールを打つ、静寂がこの場を支配する)
曜(果林さんは時間をかけて文を書いている。おそらく、充電のための時間稼ぎだ)
果林「できたわ」
偽メイド「どれどれ…ふーん、縦読みですとか暗号とかの類はなさそうですね」
偽メイド「では、送りましょう」
偽メイド「…おやおや。すぐに返事が来ましたね。よほどお待ちかねだったようです」
果林「それへの返答を書かせてもらうわ」
曜(さっきと同じように果林さんが文を書いて、それをメイドさんが送った)
184: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:27:51.15 ID:i9G2vyCa.net
果林「これでいいかしらね…」
偽メイド「もう話は終わったようなので、このスマホは不要ですね…では…」
果林「あ、ごめんなさい!もう一つ追加いいかしら?」
偽メイド「やれやれ…まあいいですよ」
果林「じゃあ…これは私も今気づいたことなんだけど…」
果林「どうも私のスマホに何件か着信通知メール…あ、圏外とかで繋がらない時に後からメールが来るやつね、があって… 」
185: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:31:06.33 ID:i9G2vyCa.net
果林「それによると、2時くらいから私の手元に戻る3時半まで、このスマホに何回か電話がかかってきてていたみたい」
果林「でね、その度にこのスマホは圏外だか電源が入ってなかったかしてたらしいの」
果林「しかも、この着信は私の手元に戻ってくる少し前、まあ5分とかくらい前かしら?にもかかってきてるの…これも圏外だか電源が入ってないかだったらしいけど」
果林「私の手元に戻ってきた時には電源が入ってたのよね…なんか妙じゃない?」
果林「まるで誰かが私たちを見つけてから慌てて電源を入れたみたい…なんてね」
186: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:34:51.35 ID:i9G2vyCa.net
果林「しかも、私たちの近くでこのスマホにかかってきた電話を"誰か"はすぐに着信拒否したみたいなのよ…」
果林「電話に出て助けを求めれば良いし、そっちの方が遥かに簡単なのに」
果林「まあ、これに関しては、その誰かがずっと電源を切ったままで私たちに会う直前に電源を入れたとか、気が動転してたまたま着信拒否したかもしれないとか、そのくらいの話でしかないわ」
果林「でも、それを踏まえて曜ちゃんが何か言いたいことができたかもしれないんだけど、メインイベントとやらの前に聞いてもらってもいいかしら?」
曜「………」
果林「曜ちゃん、あなたの気持ちはわからなくもないわ…でもね、私はここではっきりさせておくべきだと思う」
果林「あなたが友情を信じるなら、なおさら目を背けちゃいけないんじゃない?」
187: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:48:18.32 ID:i9G2vyCa.net
曜「…果林さんの言ってることとは別に私がおかしいなって思ったこともあって、先にそっちからでもいいかな?」
曜「えっと、鞠莉ちゃんの部屋にメイドさんたちが来た時なんだけど…」
曜「メイドさんが言ってたんだ。『ここまで予定どおりでしたが』『最後の一部屋は本命だけあって少し骨が折れそうですね』って」
曜「でね、今日のこの事件が鞠莉ちゃんを狙ったもので、それで鞠莉ちゃんの部屋が最後になってるのならメイドさんがこう言うのもわかるんだ」
曜「あの時、私たち28人はさ…"昨日泊まっていた部屋で待機"ってことになってたんだ…」
曜「誰かがたまたましゃべったのをメイドさん達の誰かがきいたとかで、それが知られちゃったのかもしれない」
曜「そうすれば鞠莉が待機してるのは昨日鞠莉ちゃんが泊まっていた、鞠莉ちゃんの部屋だってわかるから…おかしくない」
188: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:49:32.13 ID:i9G2vyCa.net
曜「でも、そうじゃなかった。狙われてたのは私だった」
曜「だとするとおかしいんだよ」
曜「私は"昨日泊まってた部屋"が無かったんだ」
曜「だから、私がどこにいるかは本来は不確定だし、本命の私が最後になる予定なんて立てようが無いんだよ」
曜「最後に鞠莉ちゃんの部屋に来たのが予定通りってことはさ、私が鞠莉ちゃんの部屋にいるのがわかってたんだよね…メイドさんには」
曜「不確定なはずの私のいる部屋をなぜか知っていたんだ」
189: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:51:50.84 ID:i9G2vyCa.net
曜「でね、メイドさんはこうも言ってたんだ『そちらの方から分断されて好都合だ』って
曜「ということは私たちの分断自体はメイドさん側の思惑ではなかった…ってこと」
曜「さっきのメールを送ったりとか、何度も電話をかけてきたりからすると、綾小路姫乃ちゃんの誕生日で果林さんとエマさんが突然帰らないといけなくなったのも本当っぽい」
曜「鞠莉さんも…果林さんも…エマさんも…多分メイドさんとは無関係」
曜「あの雨の上にカーテンも閉まってたし、鞠莉ちゃんの部屋は最上階だから、外からわかるとは思えない」
曜「そうなるとさ、私があの時、鞠莉ちゃんの部屋にいることがなんでわかったのかな…って」
千歌「………」
190: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:55:18.21 ID:i9G2vyCa.net
曜「それだけじゃない、千歌ちゃんは果南ちゃんとダイヤさんが眠らされてるのを見たって言ってた」
曜「たしかに部屋割りからすると、果南ちゃんとダイヤさんは同じ部屋なんだよ」
曜「でも、思い出したんだ」
曜「あのね、今日のパーティーでね…ダイヤさん言ってたんだよ。『昨日の夜、ルビィちゃんが動画を見て盛り上がってた』って」
果林「まあ、ダイヤちゃんは当然知っているでしょうね…一晩中同じ部屋にいたんだから」
エマ「というより、ダイヤちゃんの方が盛り上がってたよね…まさに一晩中」
曜「やっぱりそうなんだ。ダイヤさんと同じ部屋に泊まったのは、ルビィちゃん」
191: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 21:59:06.78 ID:i9G2vyCa.net
果林「…よく気づいたわねそんな一言で」
曜「その一言だけじゃない。エマさんの言葉もヒントになったんだ」
エマ「私?」
曜「鞠莉ちゃんの部屋で果南ちゃんに電話が通じなかった時なんだけどさ…」
曜「"果南ちゃんと同じ部屋にいるかもしれない人"に、鞠莉ちゃんがかけて出なかった後にエマさんが言ったんだよ」
曜「『千歌ちゃんに聞いてみたら』って」
192: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:05:04.66 ID:i9G2vyCa.net
曜「多分、本当に果南ちゃんと一緒にいたのは千歌ちゃんがホテルに入るように伝えて回ってたタイミングで会った人、梨子ちゃんか花丸ちゃんのどっちか」
果林「…花丸ちゃんよ」
果林「昨日の夜ね…どうせ同じ放送見るならって果南ちゃんが気をきかせて部屋をルビィちゃんと交換してたの」
果林「部屋割では『花丸・ルビィ』『ダイヤ・果南』だけど、実際は『花丸・果南』『ダイヤ・ルビィ』だったってことね」
エマ「うん、千歌ちゃんなら花丸ちゃんと会ってたなって思い出して、千歌ちゃんに聞いたらわかるんじゃないかなって…」
エマ「昨日泊まった部屋で待機してたんだとしたら…果南ちゃんと一緒にいるのは花丸ちゃんだからね」
193: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:07:26.17 ID:i9G2vyCa.net
果林「まあ、千歌ちゃんから果南ちゃんとダイヤちゃんが一緒だったって聞いた時は、私もエマも実は部屋割り通りに待機してたのかなってくらいで流してたけど」
果林「どうなのかしら?こんな状況ならダイヤちゃんとルビィちゃんが一緒の方が都合いいわよね。」
果林「ま、後で本人に聞いてみたら誰といたかわかるでしょ?」
曜「あとね、鞠莉ちゃんの部屋で果林さんのスマホが無いって話になった時、メイドさんはどういうわけかあんまり問題にしてなかったんだ」
曜「ボディチェックでヘアピンまで警戒していた人が、ただ拾っただけで使える機能でも十分に脅威になる果林さんのスマホを探そうともしなかったんだ」
曜「メイドさんは知ってたんだと思う。果林さんのスマホは心配ないって」
194: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:15:45.72 ID:i9G2vyCa.net
曜「それにね、私がターゲットならまずは私が到着しないと話にならない」
曜「だから、いた方がいいんだよ。私に怪しまれずに私の動きを把握して、私が予定外の行動をしないように、できれば朝からフォローできる人が」
曜「そうやって考えていくとさ、いろんな疑惑が一人に集中していくんだよ」
果林「あー、あと私からも追加でいいかしら?」
果林「千歌ちゃんはスマホが私のだって思った後、なんでホテルじゃなくて外を探していたの?」
果林「普通に考えたら私が外にいるわけないじゃない?この雨だし、ホテル内で待機って話になってたのよ」
195: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:17:23.91 ID:i9G2vyCa.net
曜「ねえ…」
曜「千歌ちゃんはさ…爆発音、多分鞠莉ちゃんの部屋から私たちが出た時のだと思うけど、それを聞いて、外に出て、少しして果林さんのスマホを見つけたんだよね…」
千歌「……」
曜「千歌ちゃん、言ってたよね?それから果林さんのスマホをどうにかしようってしてたって」
曜「果林さんのスマホは14時から何度も圏外だったみたいだけど」
曜「千歌ちゃんが操作してた時もずっと、圏外だったの?」
196: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:18:41.72 ID:i9G2vyCa.net
曜「私たちと会ったあの時だけ、圏外じゃなかったの?」
曜「千歌ちゃんはどこで果林さんのスマホを見つけたの?そこが果林さんの行った場所ならそれだけで私は千歌ちゃんを信じられるよ」
曜「…私は千歌ちゃんを疑うなんてしたくないよ」
千歌「………」
千歌「…ダメだよ…曜ちゃん…」
千歌「曜ちゃんは真実に気づいたんだよ」
曜「千歌ちゃん…」
千歌「だったら誤魔化しちゃだめだよ」
197: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:20:22.55 ID:i9G2vyCa.net
千歌「果林さんのスマホはね…ずっと私が持ってたんだ。バレちゃいけないから電源を切って」
曜「そんな…」
千歌「でも、違うんだよ!」
千歌「こんなの聞いてなかった…私はただ、曜ちゃんをびっくりさせたいって聞いて…そのためにはみんなの場所を教えてほしいとか、果林さんのスマホをしばらく隠しておいてほしいとか言われて」
千歌「おふざけのつもりで協力して、本当はそうじゃないって気づいたときにはもう手遅れで…大人しくいうことを聞けば、みんなには話さないって脅されて…」
果林「私のスマホを隠せっていわれたときにおかしいって思わなかったの?」
198: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:40:42.83 ID:i9G2vyCa.net
千歌「そういうドッキリだって言われた…果林さんたちも仕掛け人だって言われてたし、私は果林さんたちが帰らないといけないなんて知らなかったんだよ?」
果林「…知らなかった?そんなことあるわけ…」
曜「………そうか……」
曜「…ごめん、私もようやく気づいた」
曜「そうなんだ…これは偶然なのか意図してそうされたか知らないけど、千歌ちゃんは知る機会が無かったんだ」
199: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:43:13.10 ID:i9G2vyCa.net
曜「ホテルオハラに前泊したメンバーは果林さんから直接聞くとか、鞠莉ちゃんから聞くとかできたかもしれない」
曜「善子ちゃんと絵里さんと希さんみたいに淡島に着いた後の会話で知ることができるかもしれない」
曜「パーティーのどこかで、果林さんとエマさんと話をした人は本人の口から聞けたかもしれない」
曜「実際、メイドさんは果林さんが早く帰らないといけないことは知ってたみたいだしね」
曜「だけど、千歌ちゃんはそのどれにも当てはまらないんだ」
200: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:44:57.30 ID:i9G2vyCa.net
曜「淡島に来たのは今日の朝で、来てすぐに呼ばれていなくなって、それからも準備で」
曜「雨が降ってきた後に私たちが果林さんが早く帰らないといけないって話をしてたのは千歌ちゃんがみんなに伝えてくるって駆け出した後」
曜「唯一知れたかも知れない機会は雨が降ってきてみんなに伝えて回った時にその誰かから聞くとかだけど」
曜「千歌ちゃんが話したのは梨子ちゃん、花丸ちゃん、真姫ちゃん、凛ちゃん」
エマ「パーティーで姫乃ちゃんの話をしていた時にいた人じゃないってことだよね」
曜「仮にその中に果林さんとエマさんが早くに帰らないといけないことを聞いて知っていた人がいたとしても、そういう話にならなかったんだと思う」
201: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:49:03.95 ID:i9G2vyCa.net
曜「メイドさん達でさえ知っていたことを、千歌ちゃんは知らなかったんだ」
曜「というより、やっぱり知ることができないようにされていたんじゃないかと思う」
曜「だからこそ、姫乃ちゃんから果林さんへのメールを見た時にショックだった…そうだよね?」
曜「普段なら笑い飛ばしていたような私の言葉に怒っちゃうくらいに」
千歌「ごめん……こんなこと言っても手遅れかもしれないけど、せめてスマホを返すくらいはしようと思ったんだよ」
千歌「だけど、いざ果林さんたちを目にしたら…本当のことがバレたらどうしようとか、渡すにしてもどう渡せばいいかとか、わからなくなって」
202: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:52:13.01 ID:i9G2vyCa.net
千歌「拾ったなら電源入れるくらいはしとかないと不自然かなって、電源入れて…電池切れ寸前なのにようやく気づいて、そうしたら電話がかかってきて…」
千歌「…果林さんからスマホに来たメールを見せてもらって、やっと自分がやったことの意味がわかって、自分がみじめに思えた」
曜「それであんなことを…」
千歌「でも、私がそんなことしたせいでみんな見つかって、捕まっちゃったんだよね。本当にごめんなさい」
偽メイド「ふふっ、ふふっ…」
曜「………」
偽メイド「あははははははっ!!思った以上の傑作です!」
203: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 22:59:45.82 ID:i9G2vyCa.net
偽メイド「今日は本当についてます。タイミングを図って私がバラしてあげようと思ったら、こんな名推理を見せてくれるなんて、さすが渡辺曜ちゃんです!」
偽メイド「そうですよ!あなたの大事な高海千歌ちゃんはね…私の口車に乗せられて、ずっと私の計画に協力していたんです!」
偽メイド「何も知らないでスマホを隠し持ってるのなんか滑稽でしたよ!いつ果林ちゃんとエマちゃんの事情を知って絶望するのかと思ったら…」
偽メイド「遅過ぎですよ!私たちも知られないように手は回しましたが…千歌ちゃん、あなたよっぽど持ってないんですね」
曜「なんで、千歌ちゃんを…」
偽メイド「私の復讐の相手は曜ちゃんなんですけどね…千歌ちゃんも無関係じゃないんです。だから2人であなたたちが壊したものの対価を払ってもらおうと思いまして」
曜「私たちが、壊した?」
204: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 23:11:27.65 ID:i9G2vyCa.net
偽メイド「知りたいですか?でしたらそろそろメインイベントを始めましょう」
偽メイド「では、もういいですよね?スマホを渡してください。朝香果林さん」
果林「くっ…」
エマ「…させないよ!!!」ダッ
曜(エマさんがメイドさんに向けて駆け出す…そのまま)
エマ「うわあああああ!」
ドゴォオォ!
205: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 23:12:45.99 ID:i9G2vyCa.net
曜(タックル!恵まれた体格からの…下半身に狙いを絞った危険タックル!まともにくらえばひとたまりもない!!!!)
偽メイド「くああっ!!」
曜(入った…!エマ・ヴェルデ…スイスからの刺客の…渾身のタックルが突き刺さった……!!!)
エマ「今だよ!」
果林「何ぼーっとしてるの!逃げるわよ!曜ちゃん!!」
曜「う、うん!!」
曜「そうだ!千歌ちゃん…!」
206: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 23:20:52.05 ID:i9G2vyCa.net
千歌「あはは…私は足手まといにしかならないし、やめとくよ」
千歌「ごめんね…曜ちゃん…じゃあね」
曜「そんな…」
果林「走るの!エマの頑張りを無駄にしないで!」
曜(果林さんに引っ張られて、私は走り出す)
曜(千歌ちゃんのことで頭はぐるぐるしてたけど、ひたすら走る)
偽メイド「そいつらを逃がすなあああ!」
曜(覆面をつけた人たちが私と果林さんの前に立ちはだかる…もちろん、全員マイク持ちだ)
207: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 23:22:16.18 ID:i9G2vyCa.net
曜「っつ!!」
曜(これじゃ、抜けられない…)
ドガッッッッ!
エマ「果林ちゃん!」
千歌「曜ちゃん…」
曜(案の定、私と果林さんは人の壁に激突してしまった)
208: 名無しで叶える物語 2021/04/30(金) 23:23:19.80 ID:i9G2vyCa.net
偽メイド「まったく、どこまでも忌々しい」
偽メイド「これは預かっておきますね」
曜(メイドさんが果林さんのスマホをポケットに入れる)
偽メイド「さてと、随分と手間取りましたが、これで全員制圧です」
偽メイド「あ、それと千歌ちゃん」
千歌「………」
偽メイド「あなたがそこそこ使える無能で助かりました。もう用済み…と言いたいところですが、もう少しご協力くださいね」
209: 名無しで叶える物語 2021/05/01(土) 21:34:13.50 ID:V3l1D92a.net
~4月17日 16:30~
~ホテルオハラ・ロビー~
偽メイド「さて、ようやくメインイベントに入れます」
偽メイド「覆面の皆様、よろしいですね。では…」
偽メイド&覆面一同「 ハッピーバースデー!渡辺曜ちゃん!」
曜「どういうつもり…」
偽メイド「質問の意図がわかりかねますが?何か気に障ることでもありましたか?」
曜「こんなことをしておいて、おめでとうも何もないよ!」
210: 名無しで叶える物語 2021/05/01(土) 21:38:51.17 ID:V3l1D92a.net
偽メイド「こんなこと、というのは今も床で寝ているお友達のことですか?それとも」
偽メイド「私たちの上で無様に吊るされてる高海千歌さんのことですか?」
千歌「………」
曜(そう…千歌ちゃんは今、メインイベントとやらのために宙吊りにされている)
果林「ほんと…悪趣味すぎて吐き気がしてくるわ」
偽メイド「あら?でしたら他の方々と同じようにおねんねします?果林さんとエマさんはとても頑張ってくれたので特別に鑑賞の権利をあげたのですが?」
果林「…ありがたく鑑賞させてもらうわよ。この反吐が出るイベントを」
211: 名無しで叶える物語 2021/05/01(土) 21:41:29.37 ID:V3l1D92a.net
偽メイド「さて、ではようやくメインイベントの開始ですね」
曜「なにをするつもり?」
偽メイド「簡単なゲームですよ。あなたにはこれから私たちのラップを聞いてもらいます」
偽メイド「最後まであなたが気を失わなかったら、あなたの勝ちです。期限は日付が変わるまで、これは復讐は今日限りにしようという私たちの慈悲の心です」
偽メイド「ただし、あなたが気を失ってしまうことがあれば…あなたの大事な千歌ちゃんはこのスイッチで地面へ真っ逆さまです」
曜「それは?」
偽メイド「高海千歌ちゃんの命を繋ぎ止めているロープの、爆破スイッチです」
212: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 00:23:40.20 ID:gQWZ5y2Y.net
曜(千歌ちゃんが吊るされてるロープの束、よく見るとそれは天井の滑車を一回通って、地面へ置かれた妙な箱に繋がれていた)
偽メイド「このスイッチを押すと箱が爆発、千歌ちゃんは…ああ!無惨にも地面に叩きつけられてデッドエンド!という仕掛けです」
偽メイド「運が良ければ助かるかも知れませんが、もうスクールアイドルなんてできませんね」
曜「そんな…」
偽メイド「ちなみに…」
偽メイド「ラップで反撃してもいいですが、私がイマイチだな~って思ったらたとえ曜ちゃんが気絶していなくてもこのスイッチを押します」
213: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 00:30:45.97 ID:gQWZ5y2Y.net
エマ「ずるいよ!そんなの曜ちゃんがどんなに頑張ってもあなたがダメって言えばいいだけでしょ!」
エマ「ラップバトルを…バカにしないで!」
偽メイド「まったく、うるさいですね…」
偽メイド「あ、そうそう。当然ですが、誰であろうと妙なまねをしたらその時点で千歌ちゃんは落ちますので言動には気をつけてくださいね」
偽メイド「では、開会宣言も兼ねて一番手は私が務めさせてもらいます」ヒューン
214: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 00:41:48.19 ID:gQWZ5y2Y.net
【偽メイド】
ご機嫌いかがです?さあメインイベント
暴挙と憎悪のデパートメント
面と向かって言ってみます?延々と
無駄にひねった死神(デス)への遺言(テスタメント)
綺麗事語りな口にぶち込む裁き
大切な高海は死へ踏み込む高み
間もなく昏倒コンクリートのたたき
5に10も無くご臨終で歯噛み
215: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 00:43:21.44 ID:gQWZ5y2Y.net
曜「あああっ!」
偽メイド「どうです?私のラップは?」
曜「くっ…こんなの全然耐えられるよ…」
偽メイド「ふふ…そうですか。まあ、なんだかんだ手間取ってしまいましたのであと5時間ですからね。急いで回しましょう」
偽メイド「ではみなさーん!今日は思い切りぶちまけましょう!」
216: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 00:52:11.56 ID:gQWZ5y2Y.net
~4月17日 17:00~
~ホテルオハラ・ロビー~
ドオオオオオン!
曜「ぁあ゛あっ!」
覆面男「ふ、ふふ、や…やってやったんだ!ボク…いや、俺のラップが渡辺曜をいたぶってやったんだ!は…ははは」
偽メイド「中々気合の入ったラップありがとうございます。では、次の方」パチパチ
曜(私に恨みがあるっていう覆面を被った人たちが次々にラップを浴びせる)
曜(ラップの内容は色々だ。私と比べられて挫折感を味わったとか、好きなスクールアイドルが私のせいで引退したとか、自分はうまくいっていないのに私が何でもできるのが気に食わないとか)
曜(そんなことを一人一人ラップでぶつけてきては次の人に交代の繰り返し)
217: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 00:53:50.01 ID:gQWZ5y2Y.net
曜(一人一人のラップが終わるたびにメイドさんは拍手と賞賛を送っている)
曜「うう…」
偽メイド「苦しいですか?痛いですか?」
曜「はは…それなりにね…でもこんなのへっちゃらだよ」
偽メイド「ふふっ、そうですか…」
ドゴッ!
曜「あふっ!」
曜(メイドさんの蹴りが私の脇腹に突き刺さった)
218: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 00:57:45.15 ID:gQWZ5y2Y.net
偽メイド「あ、すみません。つい、手…ではないですね、足が出てしまいました」
曜「ううん、ラップじゃ物足りなかったし、ちょうどいい目覚ましになったよ」
偽メイド「そうですか…」
ガシッ
曜「あっ!!」
曜(メイドさんの手が私の髪を掴んで頭ごと引き寄せる…)
偽メイド「私がなんでこんなことをしたかわかります?他の子みたいにあなたを眠らせないかわかります?」
219: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 00:59:50.08 ID:gQWZ5y2Y.net
偽メイド「あなたに安息なんて与えない!あなたには永遠に苦しんでもらいます!」
偽メイド「私たちの復讐は終わっても、今日の記憶があなたを苦め続けるんですよ」
偽メイド「まだ耐えてくださいね。私たちの復讐はこれからなんですから」
曜「オッケー…耐え切るよ」
千歌「曜ちゃん!もういいよ!こんな…私なんかのためにボロボロになっちゃダメだよ!」
曜(千歌ちゃんが吊るされながらも叫ぶ)
曜「…大丈夫だよ。私は倒れない」
220: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:02:18.36 ID:gQWZ5y2Y.net
曜「それより千歌ちゃん、大人しくしてないと危ないよ」
千歌「やめてよ…こんなの…!」
千歌「ふざけんな!ふざけんな!何で…私は…こんなことのために…」
千歌「どうして私はいつもこうなんだよ!…いつだって私は曜ちゃんに助けてもらうばかりで…」
曜「そんなことない!」
千歌「曜ちゃん?」
221: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:08:49.90 ID:gQWZ5y2Y.net
曜「自分を信じてよ…千歌ちゃんは…私にできないことができるんだよ」
曜「千歌ちゃんは私よりもずっとすごい…助けられてきたのはむしろ私の方なんだ」
曜「私だけじゃない…Aqoursのみんな、他にもたくさんの人を千歌ちゃんは助けてきたんだ!」
曜「だから、"私なんか"なんて言わないで」
偽メイド「ははっ、こんな状況でもかばうなんて美しい友情ですね」
222: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:16:02.88 ID:gQWZ5y2Y.net
曜「かばってなんていないよ…私にとって大事な人を守りたいだけ」
偽メイド「うーん、なるほど…」
偽メイド「千歌ちゃんを盾に取れば黙ると思いましたが、あまり効果は無さそうですし、進行の妨げになりますし、落としちゃいますか」
曜「え?」
偽メイド「あ、イベントはこのまま進行しますので、そこはご安心を」
偽メイド「じゃあ、さようならです高海千歌ちゃん」
♪ワビータビーカナーデ
偽メイド「……はい?」
223: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:19:08.74 ID:gQWZ5y2Y.net
曜(メイドさんの動きが止まった)
♪ツツミーコミマショオオー
曜(そうだ、たった一つだけある…今この場でなんらかの着信をする可能性のあるスマホが)
曜(あの時、メイドさんは慌ててたから、そのまま果林さんのスマホをポケットに入れて…気づかなかったんだ)
偽メイド「しまった!電源を切ってなかったのか」
曜(これはメイドさんにとって予想外の事態。その上、今メイドさんの両手は塞がっている)
曜(この僅かな隙に、私は賭ける!)
224: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:21:23.09 ID:gQWZ5y2Y.net
曜「うわあああああ!」ダッ
曜(渾身の力をこめてのタックル!)
偽メイド「くっ、離せ!」
曜(体勢を崩したメイドさんが転んだ)
曜「ああああああ!!」
曜(メイドさんの持っていた爆破スイッチを奪って、放り投げる!)
曜(メイドさんは何とか立ち上がるけど)
225: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:24:49.76 ID:gQWZ5y2Y.net
曜「もう一回だああああ!!!」
曜(再度タックル!こんどはステージ外へ、私もろとも押し出す!)
偽メイド「お前…正気か…」
曜(ステージの、決して小さくはない段差から私たちは落ちる…)
ドンッ!
曜(地面に激突!勢いあまって随分飛んだな…でも、怯んでられない!)
曜「まだまだあああ!」
曜(メイドさんの肩を掴んで体ごと叩きつける!)
226: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:26:49.91 ID:gQWZ5y2Y.net
偽「ぐほぁっ!」
曜(まだだ!2度!3度!もっと!もっと!もっとおお!)
曜(そして、怯んだところでメイドさんのポケットから)
曜「あった!」
曜「果林さん!これ!」
曜(まだ着信し続けているスマホを果林さんに投げた)
227: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:29:32.91 ID:gQWZ5y2Y.net
偽メイド「ぐっ、あんた…ずいぶんと乱暴なことするじゃないの…」
曜「はあ…はあ…ヌマヅの健康優良児なら…こんなの当たり前だよ」
偽メイド「これだから田舎のジャリは…」
曜「果林さん!」
曜(果林さんが…こっちに向けてVサインする。無事電話に出られたみたいだった)
228: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:31:03.06 ID:gQWZ5y2Y.net
果林「…ありがとう、姫乃ちゃん。おかげでそっちに戻れるかもしれないわ」
果林「だから、さっきのキャンセルは無しにしてあと少しだけ待ってもらってもいいかしら?」
偽メイド「ふう…まったく…」
偽メイド「…これで終わりとか思ってないですよね?」
曜「さすがに…これじゃ立ち上がるよね」
果林「…ごめんなさい。また電話するわ」
229: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:49:17.98 ID:gQWZ5y2Y.net
曜(果林さんが通話を切る。まだ不利なことには変わらないけど、これで少しは状況がよくなったはず)
偽メイド「さて、爆破のスイッチをどうにかできたと達成感に浸っているところ悪いのですが…ルールはルールです」
偽メイド「残念ですが…高海千歌ちゃんはもう終わりですね」
曜(千歌ちゃんの吊るされてるロープの束が天井の滑車を通って箱に結ばれた地点、そこに立った人が枝切り鋏を持っていた)
果林「なによそれ…」
エマ「ずるいよ!そんなの!」
230: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 01:52:15.12 ID:gQWZ5y2Y.net
偽メイド「爆破のスイッチなんてなくても、直接ロープを元から切れば同じことですよね?」
曜「そんな…」
偽メイド「妙な真似をしたら高海千歌ちゃんを落とすと言われていたのに手を出したのはあなたですよ?」
偽メイド「さあ、その目に焼き付けてください!千歌ちゃんが落ちる様子を」
ジャキッ…
曜(千歌ちゃんを吊るしていたロープが切られてしまった…)
曜「千歌…ちゃん…!!」
231: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 02:11:31.43 ID:gQWZ5y2Y.net
曜(千歌ちゃんは地面に向かって落ちていく…たった一瞬のことがスローモーションで展開していく)
曜(そして千歌ちゃんの体は地面に叩きつけられ…)
ギリリリッ…
曜(ることなく…止まった…)
偽メイド「は?何ですか…これ」
曜(本当にギリギリだっけど、千歌ちゃんは地面とぶつかることなく止まった)
曜「良かった…間に合ったんだ」
「まったく、ウチを頼るのはいいけど、こんな解決はいかがなものかと思うよ?」
232: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 02:19:43.36 ID:gQWZ5y2Y.net
希「たまたまロープが絡まって止まりました~なんて、ストーリーとしては落第点やん?」
曜「ありがとう希さん…」
希「まっ、ウチは何もしてないんだけど…」
希「がんばってた子へのささやかなご褒美ってことで加点、ウチを叩き起こしたのも入れて合格点ってところかな」
曜「保険だったってことで許してよ。メイドさんから爆破スイッチを奪って解決…ってのが、もともとの予定だったから」
曜(時間はほんの少しだけ遡る)
233: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 02:23:42.03 ID:gQWZ5y2Y.net
曜(…私とメイドさんがステージから落下した先には希さんがいた)
曜(そこからのもみ合い…私はある賭けに出た)
希「にしても…いやー、きっつい目覚め方してしまったよ」
曜(ステージから落下した私はメイドさんを何度も叩きつけた…)
曜(そう…眠っている希さんに!!!)
曜(メイドさんの言ってた眠らせるってのがどのくらい強力なのかわからなかったし、起こせるのかは賭けだった…でも起こせる確信はなんとなくあった)
235: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:34:04.20 ID:gQWZ5y2Y.net
曜「ありがとう千歌ちゃん」
千歌「え?」
曜「何かあれば起きるのを知ってたから、千歌ちゃんは『爆発の音で目が覚めた』なんて嘘をつけたんじゃないかなって…思ったんだよね」
曜「千歌ちゃんの言葉だから賭けられたんだ」
千歌「そっか…どういたしまして」
希「えーっと、いい話してるところに割り込みしていいかな?」
曜「どうしたの?希さん?」
236: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:37:16.87 ID:gQWZ5y2Y.net
希「いくらウチでも全部ラッキーってわけじゃないから、そこは誤解しないでね」
ブチッ!
千歌「へ?」
ドオオーン!
曜「千歌ちゃん!?」
希「はは…ロープさんも限界やったみたいね」
237: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:38:37.99 ID:gQWZ5y2Y.net
希「さてと、まだ把握しきれてないけど…だいたいの事態はわかってきた」
希「あなた、今朝のメイドさんだよね?ウチの前で下手なことしたらどうなるかはもうわかってるかな?」
曜(希さんがメイドさんを牽制している間に千歌ちゃんを縛っていたロープをほどく)
千歌「あいたたた、降りれたのはいいけど…」
千歌「なんだよこれ…千歌はだまされて、脅しに屈して、カッコ悪いところばかりなのに、曜ちゃんばっかりずるいよ」
238: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:45:36.87 ID:gQWZ5y2Y.net
千歌「…でも、一番ずるいのは私だよね」
千歌「自分には何もないって思い込んで、目を背けてた…」
千歌「曜ちゃんは曜ちゃんで苦しんでたことからも、私が本当に負けちゃいけない相手からも」
千歌「私は私自身に負けない…ずっと戦ってきたんだから」
千歌「だから決めたよ…このままカッコ悪く終わるなんてしない!」
千歌「ってことでさ…曜ちゃん、マイク使っていいかな?千歌の最高にカッコいいところ見せてあげるからさ」
曜「うん、いいよ…」
曜「見せて、千歌ちゃんのカッコいいところを」
239: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:48:12.31 ID:gQWZ5y2Y.net
千歌「うん!了解したよ曜ちゃん」ヒューン
偽メイド「さっきまで人質だった無能が何をする気なんですかね?」
曜「メイドさん、あなたは一つ勘違いしてる」
曜「千歌ちゃんは無能なんかじゃない!最強で最高な私のパートナーだよ!」
千歌「はは…嬉しいこと言ってくれるじゃんか!」
千歌「よおおおく聞けよ!これが!!私の!!」
千歌「高海千歌の意地とプライドをかけて…あんたらに叩き込む言葉だあああああああ!!!」
240: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:49:04.87 ID:gQWZ5y2Y.net
【千歌】
果て無しのジェラシー、確かに苦しい
でも突き返すよいつもの軽口
ドブにでも捨てるよ腐った件(クダリ)
だって下らないこんな逆恨み
裸足と裸足で走ったバカ騒ぎ
痛ましい傷口も友情の証
裏切ってたまるか私の魂
失ってたまるか最高な友達(ダチ)
241: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:51:00.14 ID:gQWZ5y2Y.net
ドオオオオオオオオオオオオオオオオン
覆面一同「ああああああああ!」
偽メイド「くっ!」
偽メイド「…なるほど、あなたはこれからも曜ちゃんと一緒にいて比べたり比べられたりで傷つき続けると…」
千歌「あー、その手の話は何度もありましてね…まあ、ぶっちゃけますよ」
242: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:53:09.70 ID:gQWZ5y2Y.net
千歌「……うるさいんだよ!外野がいちいち!」
千歌「才能とかそんなの関係ないだろ!曜ちゃんと心の底から笑い合える友達で居続ける、それが私の決めたことなんだよ!傷つくのがこわくて渡辺曜の友達ができるわけないだろ!」
千歌「だいたい何だよ!?私が勝てない?決めつけんな!私だって曜ちゃんに勝てるものくらいあるし!」
千歌「みかん当てとか、みかん積みとか、みかん早食いとか勝てるものいっぱいあるんだから勝手に人を負けにすんな!」
千歌「普通怪獣ちかちーは…お前らとは年期が違うんだよ!これまでもこれからもずっとずっとずーっと私は曜ちゃんの親友だ!文句あるかああああああ!」
243: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:56:15.99 ID:gQWZ5y2Y.net
偽メイド「やれやれ、まあ…あなたがそうしたいならそうすればいいです」
偽メイド「ですが…ひとまず、今は黙ってくださいね」ヒュ
千歌「それはさせないよ!」
偽メイド「くっ、早い」
千歌「そっちは何連続もやったんだ!だったら、こっちだって連続でさせてもらうよ!」
千歌「次もこっちのターンだ!」
244: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 22:57:33.48 ID:gQWZ5y2Y.net
【千歌】
なにが復讐だよただの八つ当たり
負けただけだろ自分の弱さに
超えられないぞ私たちの轍
歳月も優劣も超越したあがき
被害者じゃないあんたらは敗者だ
こっちは己に勝つサバイバーだ
だったらもう恐れなどは無いな
ここで仕舞いだ さあバイバイだ
245: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 23:06:05.36 ID:gQWZ5y2Y.net
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!
覆面一同「ぎゃああああ!!!」
偽メイド「…いったいどこにこんな力が」
千歌「復讐とかふざけるな…あんたたちの何倍も私も曜ちゃんも苦しんできてるんだ」
千歌「苦しくてみじめな気持ちにもなることもあるけど、私たちはそんな自分に負けない!」
千歌「ましてや、自分の弱さに屈したあんたらになんて、絶対に負けない!」
曜「千歌ちゃん…」
246: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 23:07:59.81 ID:gQWZ5y2Y.net
偽メイド「やれやれ…私以外は全滅ですか」
偽メイド「寄せ集めの方々に期待はしてませんでしたが、これだけの人数を一度に撃破とはそこそこやるようですね」
希「うーん、それだけじゃないと思うよ?」
曜「希さん?」
希「周りをよく見てごらん」
鞠莉「……ん?んん」
穂乃果「ここ…どこ?」
歩夢「たしか、私たち…」
247: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 23:16:35.96 ID:gQWZ5y2Y.net
曜「みんな目が覚めた…?そうか!千歌ちゃんのラップで」
偽メイド「……こんなことが」
偽メイド「私以外を全滅させたばかりか、力ずくでμ's・Aqours・ニジガク全員を叩き起こした…」
偽メイド「驚きましたよ…思わぬどんでん返しです」
希「いや、これは当然の結末だと思うよ?」
希「途中からしかウチは知らないけど、千歌ちゃんがここまで力を出す展開を作ったのは他ならぬあなたじゃないかな?」
248: 名無しで叶える物語 2021/05/02(日) 23:20:21.25 ID:gQWZ5y2Y.net
希「それにね…朝、曜ちゃんの前でウチにバトルさせなかったら、曜ちゃんはウチを叩き起こすなんて思いつかなかったかもしれない」
希「これはあなたの行動が招いた結果」
希「そして、他にもいくつもの偶然と意志が少しずつ積み重なったのが今の状況なんやない?どんでん返しなんかじゃないよ」
偽メイド「くっ…」
曜「希さん、シメは私と千歌ちゃんにやらせてよ」
希「そうだね。どうぞ」
249: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 00:06:55.69 ID:1ume51sd.net
曜「ありがとう。じゃあいくよ、千歌ちゃん!」
千歌「おうよ!」
曜「つまり、あなたたちは…」
千歌「最初から…」
曜・千歌「「私たちに負けていたんだ!!」」
偽メイド「言ってくれますね。ですが…たしかに28対1は無謀すぎる」
果林「あら?あなたが相手するのは28人じゃないわよ?」
250: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 00:22:24.58 ID:1ume51sd.net
果林「ダメじゃない?連絡手段を持った人から目を離したら」
エマ「うん、すっかり私たちのこと忘れてたよね」
偽メイド「まさか…」
果林「ええ、かけさせてもらったわ…警察に」
エマ「すぐ来てくれるって。日本の警察は優秀らしいね」
偽メイド「はぁ……わかりましたよ。降参です」
251: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 00:23:28.37 ID:1ume51sd.net
偽メイド「計画は破綻、警察に通報済み、これで抵抗するほど私もバカではない。あなたたちの勝ちですよ」
偽メイド「ですが…」
偽メイド「最後に悪あがきはさせてもらいます」ヒューン
曜「しまった!」
千歌「くっ!間に合わない!」
偽メイド「油断しましたね!」
252: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 00:27:01.57 ID:1ume51sd.net
【偽メイド】
雲の上はいつだって晴れ
飛べるフクロウには無い"夢"の果て
袋叩き前に去ればあっぱれ
未来はまんまる"まどろむ"あのカフェ
253: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 00:29:06.54 ID:1ume51sd.net
曜「くっ!」
曜(いきなり眠気が…こんな時に)
偽メイド「では、さようなら」
曜「このまま…逃げる…つもり?」
偽メイド「はい、私はつかまるわけにはいかないので」
偽メイド「ただ、そうですね…今日は疲れたのでもう荒事はやめておきますし、宣言通り私の復讐は終わりにします」
254: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 00:30:32.31 ID:1ume51sd.net
偽メイド「では、残り時間はわずかですが幸せな誕生日をお過ごし下さい」
偽メイド「おやすみなさい。ハッピーバースデー、渡辺曜ちゃん」
曜「そん…な…」
曜(それからすぐに私たちは目を覚ました)
曜(28人同時ってことで効果が弱かったんだと思う)
曜(慌ててメイドさんの後を追うけど、そこには誰もいなかった)
255: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 01:37:23.81 ID:1ume51sd.net
~4月17日 18:00~
~ホテルオハラ・外~
千歌「んー!なんか久しぶりにスッキリしたな」
千歌「正直言うとさ、最近モヤモヤしてたんだよね。曜ちゃんはこんなに評価されて、みんなが集まってくれるのに私は…って」
曜「そうだったんだ」
千歌「はは…私らしくもないよね」
千歌「でもね、もう平気!天才渡辺曜にだって負けないのが普通怪獣ちかちーなのだ!」
曜「そっか…ありがとう千歌ちゃん」
千歌「ふふ、どういたしまして」
曜「あ、警察の人たちが来たみたいだよ」
256: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 02:34:29.70 ID:1ume51sd.net
鞠莉「迅速な出動ありがとうございます」
警官「いえ、こちらこそ、ご協力ありがとうございます。それで、犯人グループのリーダーですが…」
鞠莉「…ええ…犯人グループのリーダーについては私たちも探していますが、どこにも」
曜(警察の人が言うには、まだ雨が降ってたけど弱まってきたし、事態が事態ということで至急来ることになったらしい)
曜(果南ちゃんの家族とか他に島にいたはずの人は沼津側の船乗り場で見つかった。犯人グループには船の操縦ができる人がいて、眠さられたまま船で沼津側に運ばれてたみたい)
曜(犯人グループの人はリーダー…あのメイドさん以外は島にいる人も沼津にいる人もみんな逮捕された)
曜(大活躍だった果林さんのスマホ以外の荷物とかスマホはまだ見つかってないし、事件はまだ解決したとは言い難い)
257: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 08:59:30.43 ID:1ume51sd.net
曜「………」
果林「曜ちゃん」
曜「あ、えっと…何?」
果林「今日はありがとう。あなたがいなかったらどうなっていたことか」
曜「はは…そもそも私がこの事件の原因でもあるんだけどね」
エマ「千歌ちゃん、パッション溢れるラップだったよ」
千歌「へへっ、Aqoursのリーダーの面目躍如ってところかな!」
258: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 09:05:17.39 ID:1ume51sd.net
曜「…これから姫乃ちゃんのところに行くんでしよ?間に合うといいね」
果林「ええ…何としても今日中に行くわ。だって、あの子は今日のMVPなんだから」
エマ「って言っても、あるのは果林ちゃんのスマホだけだし、どうやって行けばいいんだろ」
鞠莉「ふふふ…またマリーの力が必要かしら?」
果林「鞠莉ちゃん?」
鞠莉「もー、水臭いですよ。そんなのマリーにかかればひとっ飛びなんだから」
曜「ひとっ飛び…あ!」
259: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 09:18:01.36 ID:1ume51sd.net
果林「ヘリ……いいの?」
鞠莉「操縦士も戻ってきたし、オーライよ」
鞠莉「でね、マリーも一緒に行っていいかしら?綾小路姫乃ちゃんに会いたいの」
エマ「もちろんだよ!鞠莉ちゃんも姫乃ちゃんのファンになっちゃったんだね。うんうん!」
曜「えーっと、ちなみに警察の方々への対応は?」
鞠莉「そんなのはダイヤあたりがなんとかするわよ」
千歌「あー、うん…やっぱりか」
260: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 09:19:41.31 ID:1ume51sd.net
鞠莉「では、マリーのヘリでレッツゴーね」
鞠莉「あ、そういえば果林のスマホって電池ヤバヤバよね?これ、ホテルの備品だけど使う?」
果林「携帯のバッテリー…ありがとう鞠莉ちゃん」
鞠莉「いえいえ、礼を言うのはこっちよ」
鞠莉「あ、そういえばまだ渡したいものが…」
鞠莉「…いや、向こうに着いてからでいいかしらね」
鞠莉「待たせてるんでしょ?早く電話なりメールなりして安心させてあげなさい」
261: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 09:24:23.05 ID:1ume51sd.net
果林「そうね…」
果林「………つながった!」
果林「待たせてごめんなさい!姫乃ちゃん!今どこにいるかしら!?」
果林「そう…あと2、3時間かかるけど必ずそっちに向かうから!待っててくれる?」
エマ「果林ちゃんスマホ貸して!」
エマ「ごめんね!姫乃ちゃん!私たち、絶対にそっちに行くから!」
エマ「絶対に!絶対に行くから!」
果林「約束よ!待っててね!」
262: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 09:36:04.39 ID:1ume51sd.net
果林「…よし!」
果林「じゃあ…行くわよ、エマ!」
エマ「うん!」
鞠莉「2名様ご案内、マリーのヘリはこちらでーす!」
曜(それから少しして、鞠莉ちゃんのヘリが淡島を飛び立っていった)
千歌「…ちゃんと会えるといいね」
曜「絶対会える…大丈夫だよ」
263: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 09:42:49.12 ID:1ume51sd.net
【HIMENO SIDE】
~4月17日 22:00~
~都内の公園~
曜『ってな感じで、姫乃ちゃんの大手柄なんだよ』
姫乃「……そんなことになっていたのですか」
果林「いやー、改めて聞くとものすごい話よね」
エマ「自分の身に起こったとは思えないくらい」
エマ「あ、ということは今、果林ちゃんが持ってるマイクは」
鞠莉「そうよ、エマっちのマイク!…なのかしら?何しろあの場にはいくつもマイクがあったはずだし、見つかったのはこれ一つだけだし」
264: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 09:45:01.84 ID:1ume51sd.net
エマ「あの爆発でも壊れなかった強い子だよ。私のマイクに間違いないよ」
エマ「おかえり…私のマイク」
かのん「…あの」
姫乃「あ、そういえばあなたたちのマイクを借りたままでしたね」
かのん「それもありますし、今の話の初めの方で知り合いがいた気もするのですが…」
かのん「その…もしかしたら私、その犯人グループのリーダーの人と知り合いかもしれないです」
265: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 09:46:35.52 ID:1ume51sd.net
曜『え…』
姫乃「どういうことです?」
かのん「…違うかもしれない、私の知ってるその人はそんなことをする人じゃないから」
かのん「でも、もし私の知ってる人だったら…その人はただの恨みでこんなことをしたんじゃないはずです!」
曜『なんで知り合いかもしれないと思ったの?』
266: 名無しで叶える物語 2021/05/03(月) 16:38:23.01 ID:1ume51sd.net
かのん「あの…私の家、カフェなんです。あと、マンマルって名前のフクロウがいて」
かのん「よく来てくれてたけど、最近まったく来なくなっちゃったお客さんがいるんです」
可可「かのん…」
千砂都「私からもお願いします。話してください」
かのん「いきなり横からこんなこと言ってごめんなさい!でも、もしかしたら力になれるかもしれません」
267: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 12:25:34.28 ID:mPk/zQwq.net
かのん「今日の夕方なんですけど、そのお客さんからうちに電話があったみたいなんです」
かのん「『あたしは多分あの子ともう会えないから、何かあったら助けてあげて』って」
かのん「それで私たち、行ってきたんです」
かのん「……病院に」
姫乃「ああ、それでこんな時間に」
曜『…あるんだね、こんなこと』
曜『話すかどうか迷ったけど…この話には続きがあるんだ』
曜『話すよ。今度こそ全部』
268: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 12:33:03.13 ID:mPk/zQwq.net
【YOU SIDE】
〜4月17日 18:15〜
〜ホテルオハラ・外〜
曜(鞠莉ちゃんのヘリが空の向こうに消えていった、もう肉眼では確認できない)
曜「ふー!これで任務完了かな」
曜「じゃあ最後に決着をつけないとね…千歌ちゃん」
千歌「そうだね…って、どういうこと!?」
269: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 12:33:46.89 ID:mPk/zQwq.net
曜「行きたいところがあってね。千歌ちゃんには一緒に来てほしいんだ」
千歌「よくわからないけど、まあ…いいよ」
曜「そういえば千歌ちゃん?さっき使ってたマイクは?」
千歌「えーっと、実は持ってきてしまってまして…扱いに困ってます」
曜「それ、そのまま持っててもらってもいい?」
曜「さて、答え合わせだね」
270: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 12:35:13.76 ID:mPk/zQwq.net
〜4月17日 18:30〜
〜ホテルオハラ・プール〜
曜「ねえ、教えてほしいことがあるんだ」
曜(ホテルオハラにあるプール、季節柄まだ使われることはないだろう場所でじっと一点を見ていたその人に私は話しかけた)
偽メイド「何だい?」
偽メイド「まっ、ここにあたしがいることを何で気づいたのとか言いたいことはあるんだけどさ…」
偽メイド「答えてあげるよ?名探偵の渡辺曜ちゃん」
曜「何があなたをここまでさせたの?結局あなたは何も語らなかった」
曜「私たちが壊したって言ってたけど、どういうこと?」
271: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 12:41:20.20 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「そんなの聞いてどうするんだか」
曜「あなたに何があったか、私が知りたいだけだよ」
曜「私はさっき何人もの人から恨みの言葉を浴びせられた…」
曜「それはどれも痛かったけど、それだけだった。何十回、何百回やられようと耐えられると思った」
曜「でもね…たった一つ、そうじゃないのがあったんだ」
曜「最初にあなたが私に聞かせたラップ…あれはなんだったの?」
曜「あなたは開会宣言だって言ってた。でもそんな事務的なものじゃない…あのラップは他のどのラップよりも私の心に残った」
272: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 12:43:20.69 ID:mPk/zQwq.net
曜「あれは、何としても聞いてもらいたいあなた自身の言葉だったんじゃない?」
偽メイド「…いんや、そうでもないよ。確かにあたしが一番手をするつもりだったけど、あのラップはあの時どういうわけか即興で出てきちゃったのさ」
偽メイド「予想以上に千歌ちゃんが見事に騙されて舞い上がっちゃってたんかね」
千歌「言っとくけど、私…まだあなたのこと許してないよ」
千歌「…てか、たまに出てきてたけど本当の口調はそっちなんだね」
偽メイド「いえいえ、私は本来はおしとやかな淑女でございますよ…なんてね」
偽メイド「あたしがメイドの真似事なんてする日が来るとはね、似合わないことしちゃったもんだ」
273: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 12:47:49.80 ID:mPk/zQwq.net
曜「話を戻してもいいかな…」
曜「あれが即興なんだとしたら余計に私はあなたを知りたい。即興で出てくるくらいなんだからよっぽどなんでしょ?」
偽メイド「あー、やっぱり気づくんだね…はは」
偽メイド「なんであんな言葉使っちゃったんだろうね…」
千歌「えっと、ごめん…私、よくわからないので説明してもらっていい?」
曜「そうだね。千歌ちゃん、あの最初のラップ覚えてる?」
274: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 12:49:02.45 ID:mPk/zQwq.net
千歌「えーと、確か」
【偽メイド】
ご機嫌いかがです?さあメインイベント
暴挙と憎悪のデパートメント
面と向かって言ってみます?延々と
無駄にひねった死神(デス)への遺言(テスタメント)
綺麗事語りな口にぶち込む裁き
大切な高海は死へ踏み込む高み
間もなく昏倒コンクリートのたたき
5に10も無くご臨終で歯噛み
千歌「だっけ?」
275: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:08:23.12 ID:mPk/zQwq.net
曜「そう、このラップ…そのまま読むと、これからイベント始まるぞ、千歌ちゃんは落ちて死んじゃうぞ、ってことなんだけど」
曜「あの状況じゃ千歌ちゃんが落ちる前に"踏み込む"こともないし、あの場に"コンクリートのたたき"なんてない」
曜「落ちる前に踏み込んで、昏倒してる時にコンクリートのたたきが見える…普通なら飛び降り自殺とかそんなのなんだろうけど」
曜「私には別のものが見えたんだ」
曜「高みから落ちて死んじゃうかもしれない恐怖にたたきコンクリートの飛び込み台から踏み込んでいく…高飛び込みの景色が」
曜「飛び込み台については場所によってはコンクリートのたたきじゃないこともあるけどね」
千歌「んー、たしかにその時の状況と合ってなかったとは思うけど、それは曜ちゃんが高飛び込みやってるから高飛び込みが見えたんじゃない?」
276: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:10:10.26 ID:mPk/zQwq.net
曜「それだけじゃないんだ」
曜「えっと、"綺麗"事語りな"口"に"ぶち込む"ってのはさ…」
曜「lip clean entry……飛び込むときに飛沫が少なくなる技術…高飛び込みの用語、だよね?」
曜「それだけじゃないよ。ひねりとか、飛び込み台の高さの5mと10mとか、ところどころに高飛び込みの要素が入ってる」
曜「私の勘が間違ってないなら…あなたは少なくとも高飛び込みを知っているし、それなりに思い入れがある」
曜「だから、今こうしてプールに来て、高飛び込みの台を見ていた…もう二度と見られるかわからないから」
277: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:12:12.41 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「ははっ、鋭いね」
偽メイド「その通りだよ。私は高飛び込みを知ってる…やったことはないけど」
曜「話してください…」
偽メイド「私にはね、歳の離れた妹がいるんだ。あんたと同い年の…って言っても、親が死んでからは仕事仕事であんまり構ってやれなかったけど」
曜「構って…やれなかっ"た"?」
偽メイド「練習中の事故でね、ここ1年意識不明なんだ」
曜「練習中の事故…まさか」
278: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:14:09.14 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「うん、妹は高飛び込みの選手なんだ。曜ちゃんを見て高飛び込みをはじめた、よくある一般人の憧れってやつだよ」
偽メイド「曜ちゃんみたいな才能はないけど、それなりに努力して結果も出してた。1回だけど同じ大会に出たこともあるんだ」
曜「同じ大会に出てた…」
偽メイド「もし、妹の名前を言ったら思い出してもらえる?」
曜「……多分無理です」
偽メイド「だろうね。曜ちゃんみたいにみんなから注目されるような輝きはあの子には無いから」
偽メイド「だから人一倍努力してた毎日毎日」
279: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:17:59.35 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「でも、頑張りすぎたんだ。度を超えたトレーニングからの一種の気の緩みで、あの子は10mの高みにあるコンクリートの地面"から"落ちた」
偽メイド「私が珍しくあの子の練習を見に行っていたその日に、私の目の前でね」
偽メイド「あの子は文字通り命をかけて飛び込んでいたんだ…片手間で飛び込んでいたあんたと違って」
曜「違う…」
曜「片手間なんかじゃないよ!私は真剣に高飛び込みをしていたし、今だって真剣にやってる!ちゃんと結果だって出してる!」
偽メイド「真剣…?そんな言葉使ってほしくないね。アイドルごっこなんてやってる奴に」
偽メイド「いや、ごっこだろうとアイドル一本で全身全霊かけてやってるならそれでもいい」
280: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:20:58.88 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「あの子が命がけで追いつこうとしたあんたがスクールアイドルに手を出してるのを目にした時の私の気持ちがわかるか?」
偽メイド「結果だって出してる?それはつまりさ…」
偽メイド「あの子が目指したものはあんたにとって片手間で叶えられるんだって、そういうことだろ?」
偽メイド「なんでもかんでも少し努力すれば上手くいって、一度にたくさんのものに手を出してもそれ一つに全力を出している人に勝てる」
偽メイド「そんな人を目にして全力でがんばるけど、どうやっても追いつけない」
偽メイド「やるせないよね…」
281: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:27:10.12 ID:mPk/zQwq.net
曜「それは…」
千歌「曜ちゃん、わかったよ…なんでここに私を連れてきたのか」
千歌「この人と妹さんは私と同じものを見たんだ。太陽の強い輝きに目を焼かれて周りが見えなくなったんだ」
千歌「だから、救うためにはマイクが必要で、それを私に見てほしい…ってことだね?」
曜「メイドさん、私とバトルしてください…まだ私はあなたに言葉を伝えてない」ヒューン
偽メイド「はぁ…それは元々私のマイクなんだけど、いいよ」
偽メイド「どうなるにしろ、私が曜ちゃんに言葉をぶつけられる機会なんてもう無いんだろうからね」
偽メイド「じゃあ、いかせてもらうよ!」ヒューン
282: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:30:00.07 ID:mPk/zQwq.net
【偽メイド】
心変わりでコロコロ改装
あんたの気まぐれが生んだ愛憎
見捨てた夢のその代償
払う甲斐性あるかとあんたに問う
283: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:31:03.25 ID:mPk/zQwq.net
ドオオオン
曜「くっ!!」
偽メイド「言わずともわかってるだろうけど、眠らせるなんて無粋な真似はしないよ」
偽メイド「あんたの全力を見せな、曜ちゃん」
曜「言われなくてもそのつもりだよ」
曜「私の覚悟をぶつけるまで!」
284: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:33:05.89 ID:mPk/zQwq.net
>>282
【曜】
見捨ててないし変えてないコロコロ
叶えたい夢が増えただけのこと
飛び込んだ以上は戻らない
怨まれようと払うものはない
285: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:34:01.32 ID:mPk/zQwq.net
ドオオオオン
偽メイド「くっ!」
偽メイド「そんな程度で、あたしを止められると思ったら大間違いだよ」
偽メイド「あたしはあの子のためにも止まれないんだ」
286: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:42:06.08 ID:mPk/zQwq.net
>>284
【偽メイド】
考えろ自覚しろ選択の重さ
軽く動くメンタルは愚か
追いかけ届かず転落する者たち
その顛末なんて無視かクソガキ
あんたの才能をおもちゃにするな
周りの待望などゴミかクズか
背負った夢を見て見ぬ振り
無責任すぎだろその身の振り
287: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 13:58:45.99 ID:mPk/zQwq.net
ドオオオン
曜「くっ!」
偽メイド「あんたの新しい夢とやらがどれだけの人間の運命を狂わせたか…わかってないわけじゃないでしょ?」
偽メイド「あの子が目を覚まして、高飛び込みもスクールアイドルもやるなんて言ってるあんたを見たら…どうなる?」
偽メイド「あんたは、あんたちAqoursは壊したんだ!あの子が追っていた夢も、帰ってくる目的も!」
千歌「勝手なこと言うな!」
曜「千歌ちゃん」
288: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:00:12.88 ID:mPk/zQwq.net
千歌「そんなの、曜ちゃんのせいじゃないだろ!」
偽メイド「だったらあなたのせいかな?千歌ちゃん」
千歌「…私?」
偽メイド「聞いたよ。スクールアイドルをはじめたのは千歌ちゃんがきっかけなんだって?」
偽メイド「ねえ、千歌ちゃんはさ…申し訳なく思わないの?曜ちゃんがAqoursにいることで運命が狂っちゃった人がいることを」
千歌「……」
千歌「まあ…思わないこともないよ。でも、それ以上に私は曜ちゃんとスクールアイドルをできることが嬉しい」
千歌「それに私の言いたいことはさっき存分に聞かせたはずだよ?」
289: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:07:17.26 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「そうだったね。無粋だった」
偽メイド「よかったね曜ちゃん。ここまで言ってくれる千歌ちゃんと一緒にスクールアイドルができて」
偽メイド「で、それで?スクールアイドルも飛び込みも頑張ってますと…」
偽メイド「…ねえ?あの子はそんな奴に追いつくために命をかけたの?」
曜「…あなたは私にどうしてほしいの?」
偽メイド「無いよ」
曜「無い?」
290: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:11:35.48 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「どうしてほしいとか、そんなのは無い」
偽メイド「そうだよ。これはただの行き場のない気持ちの八つ当たりだ」
偽メイド「だけどね。この行き場のない気持ちが今日まであたしを突き動かしてきたんだ」
曜「……言いたいことはわかったよ」
曜「でも、私は飛び込んだんだ。こういうことを言われるのを覚悟でスクールアイドルっていう新しい海へ」
曜「だから、貫き通すよ」
291: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:13:35.78 ID:mPk/zQwq.net
>>286
【曜】
あなたたちの苦悩は計り知れない
あなたたちを愚弄したかもしれない
でも私にもある引けない都合
私にだってある譲れない渇望
待望されて求められた理想像
はいそうですか聞けませんと応答
17になった私の衝動
自由な波を縛るなと豪語
292: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:15:02.08 ID:mPk/zQwq.net
ドオオオオン!!
偽メイド「くあっ!」
偽メイド「このっ!子供の分際で」
曜「私は子供で無責任なのかもしれないけど、誰かに生き方を指図なんてされたくない」
偽メイド「その認識が甘いんだよ」
293: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:16:55.59 ID:mPk/zQwq.net
>>291
【偽メイド】
あんたの自由を縛るなとかまったく
そんな言葉でするかよ納得
ガキの論理は身勝手だ結局
おねーさんがこれだけは言っとく
無計画な勝者が生むのはカオス
無自覚に敗者をこき下ろす
高みから笑顔で何人も落とす
その手で悲劇を巻き起こす
294: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:55:21.13 ID:mPk/zQwq.net
ドオオオオオオン
曜「ぐぁっ!」
偽メイド「………私だってどうしたらいいかわからないよ。でも、確かなのはこの気持ちは自然に無くなったりはしない」
偽メイド「そして、あんたが苦しみの元凶なんだ」
曜「…そうだね、私のせいであなたや妹さんや何人もの人が傷ついた」
曜「私がスクールアイドルをやらなければ、何もしなければ、傷つかなかった人もいるんだろうね」
曜「だけど、私はスクールアイドルになったことを後悔していないよ。スクールアイドルになったからわかったことやできることがあるんだ」
295: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:56:14.50 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「後悔してないときたか…」
曜「…あのね」
曜「スクールアイドルはね、みんなが誰かの一番になれるかもしれないんだ。」
曜「まあ、順位がついちゃうこともあるけどさ…勝ち負けとか優劣とか超えて同じものを感じて、同じ景色を見られるかもしれない。それに気づいたんだ」
曜「私がこれに気づくために傷ついたり運命が狂っちゃった人がいるのはわかってる」
曜「だから、私はその人たちを救える人になりたいんだ」
曜「スクールアイドルとなって一回り成長した渡辺曜としてね」
曜「見せてあげる…これが、スクールアイドル渡辺曜だよ!」
296: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 14:57:57.34 ID:mPk/zQwq.net
>>293
【曜】
なってやる幸せ作るスクールアイドル
落ちゆく手すらも救うために取る
踏み出した足で証明してみせる
飛び込んだ心が目にもの見せる
やっぱりやっかみあるよね複雑
だったら笑ってリアルとぶつかる
痛み待つ水面に進路を取ろう
さあ、全速前進ヨーソロー
297: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:01:29.91 ID:mPk/zQwq.net
ドオオオオオオン!!!
偽メイド「ああっ!」
曜「許してなんていう気はないよ。私がいなかったら少なくともあなたの妹さんは無事だった」
曜「私は多分、これからもだれかの人生をねじ曲げて、不幸にして、恨まれてを繰り返す」
曜「だったら、それ以上に幸せにしてみせる」
曜「私にできること全部やって、起こす不幸よりも幸せを増やす」
曜「もし、妹さんがスクールアイドルをやっている私を見ても絶望なんかさせない」
298: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:02:59.73 ID:mPk/zQwq.net
曜「勝ち負けとか挫折なんてどうでも良くなるくらい楽しませて幸せにしてみせる。それがAqoursの渡辺曜のステージだからね」
曜「これがあなたの八つ当たりに対する私の回答だよ」
偽メイド「…………」
偽メイド「そうか、じゃあ…せいぜい全力を尽くしなよ」
曜「メイドさん…」
偽メイド「いや、私はメイドじゃないんだからその呼ばれ方もどうかと思うけど」
偽メイド「ただの八つ当たりにそこまで答えてもらえたなら、私としては満足だよ」
299: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:06:44.11 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「…千歌ちゃんと曜ちゃんのラップを聞いて、ようやく気づいたよ」
偽メイド「私はね、今日あんたらに負けるずっと前に自分に負けてたんだ」
偽メイド「ごめんね…ひどいことして」
偽メイド「本当のこと言うとね、どっかで気づいてた…こんなことしても何にもならないし、誰かを恨むのは筋違いだって」
偽メイド「曜ちゃんに復讐するって集めたやつらのラップ聞いた時、はらわたが煮えくり返った」
偽メイド「私が言えたことじゃないんだけど、あんなの逆恨みですらない。赤ん坊の方がよっぽどうまく自分と向き合ってるよ」
偽メイド「あんな胸糞悪い言葉に無理やり拍手して、心にも無い賞賛して…私はなにやってたんだろうね」
300: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:08:35.15 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「あいつらの何倍も努力してたあの子の姿をあいつらに見せてやりたかったよ」
偽メイド「辛いとか苦しいとかあの子は一言も言わなかったんだ」
千歌「ねえ、これは不謹慎かもしれないんだけどさ…」
千歌「妹さんもあなたも曜ちゃんからもらったのは不幸だけじゃないんじゃない?」
偽メイド「…うん、そうだね」
偽メイド「あの子は輝いてたよ。努力して、いつか曜ちゃんと競える飛び込み選手になるんだって毎日必死に練習してた。飛び込みのことを語るあの子はキラキラしてた。とっても幸せそうだった」
偽メイド「私も幸せだった。それなのに忘れてたんだ。何のことはない、幸せを壊したのは私自身だったんだ」
301: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:09:52.40 ID:mPk/zQwq.net
偽メイド「ねえ、曜ちゃん…もしあの子が目を覚まして、また飛び込みを始めたら、私の代わりに見守ってやってくれないかな?」
曜「うん、いいよ」
偽メイド「そっか、ありがと…私の妹の名前はね…」
警官「おい、いたぞ!」
警官「犯人グループのリーダーを発見!至急確保!」
曜「そんな…」
偽メイド「ごめん…時間切れみたいだ」
302: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:15:00.96 ID:mPk/zQwq.net
曜(警官がメイドさんを取り囲み、犯人グループのリーダーは確保された。抵抗も全くしなかった)
警官「…ご協力、ありがとうございます」
曜「なんでここが…?」
警官「犯人の居場所に心当たりがありそうだったので後をつけさせてもらいました。マイク所持だと聞いていましたので、しばらく様子を見させてもらいましたが」
警官「もう、マイク使用の危険性も無さそうでしたので、確保に踏み切りました」
千歌「私たちを利用したってこと?」
曜「だったら聞いてたよね?あの人は…」
警官「身内の不幸からの怨恨で罪を犯した犯罪者、それ以上でも以下でもありませんよ」
警官「あなた方の荷物は見つかりましたので係員より受け取りください。詳しい事情の聴取は後日にします。ホテルへの宿泊も可能なようですので、本日はゆっくりお休みください」
303: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:20:23.35 ID:mPk/zQwq.net
【HIMENO SIDE】
〜4月17日 22:15〜
〜都内の公園〜
曜『これが、今日の事件のすべてだよ』
姫乃「そうでしたか…」
果林「なんか、こうきくと…やるせないわね」
エマ「あの人にはあの人の事情があったってことだもんね」
鞠莉「…そうですよね」
304: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:35:14.20 ID:mPk/zQwq.net
かのん「あの、今の話ではっきりわかりました」
かのん「間違いないです。私、その人も妹さんも知ってます」
璃奈『えっと…話してるとこ、ごめん』
璃奈『だましだましやってきたけど、そろそろ私のスマホが限界っぽい』
曜『ごめん…璃奈ちゃん』
姫乃(それから私と曜さんとかのんさんは互いの連絡先を交換して通話を終わらせた)
305: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:36:24.55 ID:mPk/zQwq.net
姫乃「果林さん、今日はありがとうございました」
果林「ずいぶんと遅れてしまったけどね」
エマ「姫乃ちゃんに会えてよかったよ」
姫乃「スイスは呼んでませんよ?」
エマ「んー、姫乃ちゃんのいじわる」
果林「あ…」
姫乃「どうかしました?」
306: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:37:55.02 ID:mPk/zQwq.net
果林「私とエマの荷物、まだ向こうじゃない?」
エマ「あー、そうだね」
果林「それに、こんな時間じゃ寮の門限が」
鞠莉「ふふふ…」
果林「あ…もしかして」
鞠莉「これはまたマリーのヘリが大活躍かしらね」
307: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:38:36.33 ID:mPk/zQwq.net
鞠莉「では、さっそく戻るわよ。寮の方にはマリーの方からなんやかんや言っておくわ」
果林「ちょっと!また乗るの!?」
鞠莉「天気も安定したしさっきほどじゃないわよ」
エマ「姫乃ちゃーん!またねー!」
姫乃(こうして、私の何もないようで以外と色々あった誕生日は幕を閉じました)
姫乃(そして…)
308: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:41:54.38 ID:mPk/zQwq.net
【epilogue】
〜5月4日 14:30〜
〜藤黄学園〜
姫乃「今日は私たちのライブに来てくださり、ありがとうございました!」
ワアアアアアアアア
………
………………
姫乃「今日のライブ、いつも以上のパフォーマンスができた気がします。これは…果林さんをも超えたかもしれません!」
曜「良いライブだったね。姫乃ちゃん」
309: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:44:31.81 ID:mPk/zQwq.net
姫乃「曜さん、沼津からありがとうございます」
かのん「えっと、お久しぶりです」
姫乃「かのんさんも、今日はありがとうございます」
曜「藤黄か…これはまた強敵を見つけちゃったかな」
姫乃「ナンバーワンアイドルさんからのお墨付きとは光栄です…って…あ」
曜「あー、まあ私の一強ってわけでもなかったってだけだよ」
曜「それに、今なんか燃えてるんだ。なんだかんだ私も一番がほしかったみたいだね」
310: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 15:46:25.62 ID:mPk/zQwq.net
姫乃「そのメンタルがスーパーアイドルの資質なんですかね」
曜「だったら姫乃ちゃんもだよ。エマさんから色々聞いてるよ」
姫乃「はは…スイ…エマさんにも困ったものです」
姫乃「で、行くんですよね今日」
姫乃「…しかし、曜さんとかのんさんはともかく私までご一緒して良いのでしょうか?」
曜「当たり前だよ。姫乃ちゃんが私たちをつないだんだよ。だったら一緒に来ないと」
かのん「では、行きましょうか」
姫乃「ええ、そうですね」
311: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 16:00:03.48 ID:mPk/zQwq.net
〜5月4日 16:00〜
〜都内病院〜
曜「あの日からずいぶんかかっちゃったな」
姫乃「事件の後も色々あったみたいですし、三人ともなれば意外と予定が合わないものです」
かのん「ここです」
姫乃(病室には陽の光を浴びて眠り続ける女の子、私と同い年でしたっけ)
姫乃(…とあと一人)
「ようやくご対面かね。っと、その子が綾小路姫乃ちゃんか」
312: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 16:05:29.46 ID:mPk/zQwq.net
姫乃「えと、もしかしてですがこの人は」
曜「あ、うん…あの事件の犯人グループのリーダーの」
小原家メイド「この度、正式に小原家のメイドとなりました。よろしくお願いします…なんてね」
小原家メイド「あ、そっかメイド服着てくればよかったか。これは失敗したなー」
姫乃「あの…この人、一応は犯罪者では?良いのですか?」
小原家メイド「あたしもさ…まあ、あの日に色々と決意を固めてたんだけどね」
小原家メイド「いやー、小原家の御令嬢…おっと、鞠莉様だった!鞠莉様も物好きだね。『ホテルオハラであれだけの事件を起こすとはただものじゃないでーす』とかでスカウトされたんだよ」
313: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 16:11:52.80 ID:mPk/zQwq.net
小原家メイド「でもって、全員に口裏合わさせてあの日の事件は鞠莉様の壮大なドッキリってことになりました」
小原家メイド「…というのが、あたしの聞いた話なんだけど、28人もその他諸々も揃いにも揃ってお人好しだね」
小原家メイド「しかも、それを言い出したのは曜ちゃんと千歌ちゃんらしいじゃんか?被害者筆頭がどういう風の吹き回しさ」
曜「私にできることを全部やるって言ったはずだけど?」
曜「私はあなたを助けたいと思ったから助けた。あなたの言う軽い気持ちのガキの身勝手だよ」
小原家メイド「まっ、おかげで淡島なんて辺鄙なところに住むことになったけど、私はこうして無事でいられるわけだ。いつもじゃないけど、こうして見舞いにも来れるしね」
314: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 16:13:42.59 ID:mPk/zQwq.net
小原家メイド「あたしのやったことが帳消しになるとは思わない、どんな形でもいいから返していくよ。この子に顔向けできるようにね」
姫乃「なるほど、まるく収まって良かった…のですよねきっと」
姫乃「それにしても曜さん、かのんさん…私はこのことを今初めてきいたのですが?」
曜「あはは…なんのことやら」
かのん「まあ、細かいことは気にせずに」
小原家メイド「さて、あたしの計画を阻んだ姫乃ちゃんの顔も見られたことだし、そろそろ帰るよ」
小原家メイド「あ、かのんちゃん。気が向いたらまたカフェ行くね。マンマルにも会いたいし」
かのん「うん、お待ちしております」
315: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 16:15:36.47 ID:mPk/zQwq.net
姫乃「…行ってしまいましたね」
曜「うん」
曜「じゃあ…」
姫乃(曜さんが女の子の名前を呼んで手を取る)
曜「あなたのお姉さんは、やり方は悪かったかもしれないけどあなたのことを思って戦える強い人だよ」
曜「お姉さんも私も姫乃ちゃんもかのんちゃんも、みんなあなたが目覚めるのを待ってるから、だから帰ってきて」
曜「それでまた飛び込みで競って、私たちのライブにも来てほしい。あなたの知らないスクールアイドルとしての私も見て、そして好きになってほしい」
316: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 16:20:33.05 ID:mPk/zQwq.net
姫乃「大切な人を待つのは苦ではないですが、やはり待ち続けるのは疲れます。早く帰ってきてお姉さんを安心させて下さいね」
かのん「また姉妹でお店に来てください。とっておきのラテアート見せてあげます」
姫乃(彼女に言葉が届いたのか、それはわかりません)
姫乃(でも、今届かなくてもきっとその言葉に意味はあるのでしょう…言葉を伝えようとすることで起きる奇跡もあるのですから)
姫乃(私と曜さんの誕生日にはじまった騒動の話はこれで終わりです)
姫乃(これから何回誕生日を迎えることになるかはわからないけれど、そのたびにきっと私はこのことを思い出すのでしょう)
姫乃(願わくばその時に、この姉妹がまた幸せに笑い合えていてほしいとそう思います)
〜完〜
317: 名無しで叶える物語 2021/05/04(火) 16:25:42.43 ID:mPk/zQwq.net
当初の予定とは随分と変わりましたが完結です
作り直しついでにいろいろいじった結果思わぬ長編になりましたが書ききれて良かったです
メイドさんについては当初はただの悪役だったのですが、書いてるうちに愛着が湧いてきてこんな結末になりました
【SS】姫乃「今日4月17日は私たちの」曜「誕生日だね」エマ「二人ともおめでとう」【ラップ注意】