1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:39:54.393 ID:FZTv0GtG0.net

澪「唯…」

秋山澪は親友であった田井中律の身体を抱き締めながら唯を睨んだ。

平沢唯は笑っていた。



5: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:40:55.242 ID:FZTv0GtG0.net

2時間前、軽音部の部室には、秋山澪、平沢唯、田井中律、琴吹紬の四人がいた。



6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:41:24.201 ID:FZTv0GtG0.net

この四人は廃部していた軽音部を復活させ、学園祭でのライブを成功させた、学校でも注目される生徒である。

紬「お茶が入りました~」

律「おっ、待ってました!」

だが、そんな活躍とは裏腹に、普段は練習よりも紬の持ってくるお菓子を食べながら、ガールズトークに華を咲かせている。



9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:43:14.201 ID:FZTv0GtG0.net

秋山澪は元来真面目な性格だ。
ルールの順守を尊び、それが破られることを嫌う。

部活とは練習にひたすら打ち込むものだが、こんな軽音部の怠惰な日常に不満を抱きはしなかった。
不思議なものだ。



10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:43:46.688 ID:FZTv0GtG0.net

紬「ごめんなさい、今日は私、ちょっと用事があるので先に帰るわね」

唯「そっか、また明日、ムギちゃん」

その明日は来なかった。
これが平穏な日常の最後の1日だった。



12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:45:48.117 ID:FZTv0GtG0.net

澪「和に用事があるから、ちょっと生徒会室に行ってくるよ」

唯「行ってらっしゃい」

律「お土産よろしく~」

澪「あるわけないだろ…」

それが澪と律が最後に交わした言葉となった。



13: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:47:09.159 ID:FZTv0GtG0.net

和「苦労しているみたいね澪」

澪「そうなんだよ…本当にあいつらと来たら」

和「唯のマイペースは昔からだけど、あれであの子、いいところもたくさんあるのよ」

澪「わかってるよ、唯はなんだかんだ言って、みんなを大事にしてるからな」

澪「あとは練習さえ真面目にしてくれれば言うことないんだけど」

和「まぁあの子は追い詰められないとやらないタイプだからね。そうだ、私も唯に用事があるし、部室に行っていいかしら?」

澪「もちろん!ビシッと言ってやってくれ」



14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:48:34.638 ID:FZTv0GtG0.net

澪と和は、階段を登り、部員の扉の前に来た。やけに静かだ。

いつもなら唯と律の馬鹿騒ぎのような声が聞こえてくるのに…

澪は嫌な予感がした。



15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:49:57.208 ID:FZTv0GtG0.net

恐る恐るドアノブに手を掛け、開ける。

キィーっと、嫌な音が響いた。

澪「!」

澪は絶句する。
その目に飛び込んできたのは、床に横になっている律だ。
だが、その床一面は真っ赤な液体で染められている。



16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:50:53.037 ID:FZTv0GtG0.net

澪は最初に、律が悪ふざけをしていると思った。

律を抱き起こし揺さぶる。

澪「悪ふざけはよせ律!私はこんなことじゃ怖がらないぞ!」

律は答えない。



18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:51:46.405 ID:FZTv0GtG0.net

和も状況を確認し、律の手首を触った。
和はすべて理解した。

和「脈がないわ…」

澪が和を見た。和は震えている。



19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:52:41.497 ID:FZTv0GtG0.net

和「私!先生を呼んでくるから!」

和は走って部室を出て行った。

澪は呆然とする。

澪「ハハッ、嘘だろ?律…」

澪「嘘だと言えよ!」



20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:53:14.732 ID:FZTv0GtG0.net

澪は現実を認めたくなかった。
幼い頃からの親友
いつも守ってくれた大切な親友

その律が、もういない。



21: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:54:07.519 ID:FZTv0GtG0.net

澪は涙を流した。
そして、部屋の片隅に立っている唯に気付いた。
そうだ、唯なら何が起こったのかわかるはずだ。

澪「唯!いったいこれは…何があったんだ!」



24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:55:13.736 ID:FZTv0GtG0.net

唯の手には、べったりと赤い液体のついた刃物が握られていた。

澪「まさか…お前が律を殺したのか?」

唯は黙って、頷いた。



26: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:55:48.159 ID:FZTv0GtG0.net

澪は恐怖や驚きよりも先に、怒りが込み上げた。

澪「本当にお前がやったのか?」

澪「唯…」

唯は笑っている。だが、その二つの眼からは、涙が流れていた。



27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:57:45.241 ID:FZTv0GtG0.net

澪「なんで!なんで律を…!」

澪は優しく律だったものを寝かせると、唯に詰め寄った。
凶器をもった唯に臆することもなく。

唯はただ、「ごめんね」とうわ言のように繰り返すばかりだ。



29: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 09:59:38.593 ID:FZTv0GtG0.net

和に呼ばれ、教師や救急車、警察が矢継ぎ早にやって来た。

そして病院で、律の命が終わったことがせいしきに宣告された。

澪は病院の霊安室で、一晩ずっと律のそばにいた。



32: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:02:40.368 ID:FZTv0GtG0.net

律の死因は、腹部の急所への鋭利な刃物による刺傷、失血死であった。

司法解剖の結果薬物も検出され、おそらく睡眠薬で眠っている間にていこうできず刺されたものと思われる。

状況から、平沢唯は逮捕された。
彼女は否認をしなかった。



34: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:05:30.896 ID:FZTv0GtG0.net

同級生を学校内で殺害したというニュースは、瞬く間に全国に拡がった。

翌日の全校集会で動揺しないようにとの話をされたが、それは無理であった。

澪だけではない。

和もまた親友の凶行にショックを受け、紬も私が残っていれば…と後悔に苛まれた。



35: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:07:55.239 ID:4oEkq3t2d.net

澪は律の葬式までの間、家に引きこもった。

優しかった律
守ってくれた律

守ってやれなくて、ごめん

澪はずっと律との思い出を辿っていた。
そしてそのうち、なぜ律は命を奪われなくてはならなかったのかと疑問を抱いた。



36: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:10:03.356 ID:4oEkq3t2d.net

田井中律は、少しデリカシーに欠けるところはあったものの、明朗活発、少女らしい元気な人気者であった。

誰とでもすぐに打ち解けることができ、澪のように奥手なクラスメートにも分け隔てなく接し、友人となった。

恨みを買うことなど、あるはずがない。



37: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:12:23.571 ID:4oEkq3t2d.net

テレビのワイドショーは、連日律の事件を取り上げていた。犯人となる平沢唯は少女Aと紹介され、心の闇、律とのトラブルがあったなどと、好き勝手な推測が流れた。

だが、澪にはどれも納得がいかない。

澪「唯…なんでこんなことを…」

秋山澪の携帯電話が鳴った。



38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:15:37.641 ID:4oEkq3t2d.net

紬「急に呼び出してごめんなさい」

紬からの急な呼び出しを澪は快諾した。

紬「りっちゃんのこと、澪ちゃんが一番ショックを受けてると思って」

澪「そうだな…でもなんか、まだ律がいなくなったって感じがしないんだ。ポッカリと心に穴が空いたとか、そんな感じかな」

紬「私でよければ、いつでも頼ってくれていいから」

紬の優しさを澪は嬉しく思う。



39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:17:37.077 ID:4oEkq3t2d.net

澪「でもまだ引っかかるんだ。唯がなんであんなことをしたのか。動機なんて、まったく思いつきもしない」

紬「それは唯ちゃん自身にしかわからないでしょうね」

澪「なぁ、ムギ」

澪「憂ちゃんなら、なにか知っているかな」



40: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:20:41.513 ID:4oEkq3t2d.net

紬「あまり得策とは思わないわ」

澪の思惑とは裏腹に、紬は冷たく返答した。

紬「ただでさえ家族が犯人として注目を浴びてるのに、そんな大変な時期に訪れても門前払いを受けるだけよ」

澪は冷静さを欠いていたのかもしれない。
そんなことは少し考えればわかることだった。

澪「そうだな…ごめん、私律がいなくなって、それしか見えなくなってた」

紬「いいのよ…誰だって大切な人を失えば、そうなるわ」



41: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:27:58.663 ID:FZTv0GtG0.net

澪は紬としばし話し込んだ。

だがそれは律のいなくなったことへの悲しみについてではない。
なぜ律はいなくならなければなかったのかである。

澪は現時点で、唯は犯人ではないという可能性を感じていた。

あの、刃物を持って笑っていた唯を見ているにも関わらず…



42: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:30:50.312 ID:FZTv0GtG0.net

澪「状況から見ると完璧に唯が犯人なんだ…でも、私はなにか引っかかる」

紬「あとは警察に任せましょう、澪ちゃん」

紬は澪の思考に、律への執念を感じていた。



44: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:33:52.987 ID:FZTv0GtG0.net

澪は紬と別れてからも、ずっと考えていた。

律との交流があり、なおかつ唯が自らを犯人となってまで守らなければならない人物

そうなると、極めて限られた人間になるはずだ。

澪が今思いつくのは、自分を含めて、同じ部員である琴吹紬、唯の幼馴染である真鍋和、そして唯の妹の平沢憂…



45: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:36:43.967 ID:FZTv0GtG0.net

琴吹紬はどこか謎めいていた。

家から大量の食器類や、高価な菓子類を持ってくる。
家が裕福なのであろう。

彼女なら律を殺害し、唯を犯人に仕立て上げられるかもしれない。唯を買収したのかもしれない。



46: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:38:53.075 ID:FZTv0GtG0.net

真鍋和は平沢唯と幼馴染であり、生徒会では次期生徒会長と目される人物だ。

だが、彼女は自分と共に凶行の現場を目撃している。

彼女が本当の犯人である可能性はあり得ないように思える。



47: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:40:24.355 ID:FZTv0GtG0.net

残るは平沢憂であるが、彼女はそもそも律との関わりがほとんどない。

精々自分と同じように唯の家へ行った際に会った程度だ。



48: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:41:54.586 ID:FZTv0GtG0.net

澪は混乱していた。

考えれば考えるほど、唯以外の犯人が思いつかない。

その足は知らず知らずの内に田井中律の家に向かっていた。



49: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:43:43.257 ID:FZTv0GtG0.net

律の両親は疲れ切っていたが、澪の突然の来訪に何も言わず、澪を律の部屋に通した。

澪が律の部屋に来たのは感傷に浸るためではない。

律を奪った者への糸口を見つけるためだ。


澪はそこで、いくつかの物を見つけた。



50: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:46:33.562 ID:FZTv0GtG0.net

澪「なんでこんなものが…」

澪はまず、封筒に入った10万円近い現金を見つけた。

澪の知る限り、律はアルバイトなどしていないし、大金を持っているという話を聞いたこともない。

女子高生が持っているのには不相応な大金だ。



51: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:49:24.698 ID:FZTv0GtG0.net

それから澪は、書きかけのラブレターを見つけた。

宛名が書かれていないため、誰に宛てたものかはわからないし、そもそも途中で止まっていた。

澪「あいつ、好きな男子はいないって言ってたのに」

今となっては律の可愛い嘘であったと澪は思った。
想いを伝えられなくて無念だったろう

澪「絶対に犯人を見つけてやるからな…」

澪「律…」



52: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 10:55:44.971 ID:4oEkq3t2d.net

律の葬式は静かに終わった。

澪は未だに律がいなくなった実感が湧かず、泣くことが出来なかった。

部員の死にショックを受けた紬は、しばらくロンドンで療養するらしい。

和「澪、なんだか寂しくなってしまうわね」

澪「あぁ…」

葬式には唯の家族も来ていた。

律の両親に土下座で謝罪する様は、見ていて痛々しいものに他ならない。



54: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:05:30.427 ID:FZTv0GtG0.net

第2部
紬「知りたいのならロンドンへいらっしゃい」



55: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:07:41.157 ID:FZTv0GtG0.net

紬がロンドンへ行き、軽音部は活動を休止した。

澪は最近は放課後になると和のいる生徒会へ入り浸っている。

生徒会長は澪のファンクラブを作るほどなので、澪の来訪を嬉しく思っているようだ。

澪はまだ、和に律の家で見つけたもののことを言っていない。



58: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:12:25.222 ID:4oEkq3t2d.net

テレビはもはや律のことをほとんど報じなくなっていた。

だが、報道で少し気になる情報があった。

「平沢唯は心身喪失状態にあった」というものだ。

唯は実は以前から精神科に通院しており、処方された薬を大量に服用してしまい、田井中律を刺してしまったということだった。

事件はそれにて本格的な捜査が終わり、あとは裁判となる。



59: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:18:15.383 ID:FZTv0GtG0.net

澪「和、今日も一緒に帰る?」

和「そうね、お願いできるかしら」

澪「駅前においしいスイーツのお店があるから、よかったら寄って行こうよ」

和「楽しみね、じゃあ生徒会室の鍵を閉めてから行くから、先に靴箱まで行っておいて」



60: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:23:18.628 ID:FZTv0GtG0.net

澪は元来寄り道をあまりしない。だが、律がいなくなってから、極力1人時間をつくらないようにしている。

1人になれば、律のことをずっと考えてしまう。

こうして和と寄り道をすることが、彼女の慰めであったのだ。

澪「和…遅いな」



61: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:25:03.471 ID:FZTv0GtG0.net

澪は和を探しに戻る。生徒会室にはまだ明かりがついていた。

澪「おーい和…」

澪はドアを開けようとして、手を掛けたところで止まる。

中から話し声、いや、怒声が聞こえていた。



62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:27:31.384 ID:FZTv0GtG0.net

??「どういうつもりなの!秋山さんを独占しようとしてるじゃない!」

和「心外です。澪は自分の意思で私と一緒にいるんです」

??「気安く澪なんてよびすてにしないでよ!」

和「友達を名前で呼んで何が悪いんですか。悔しいのなら友達になればいいじゃないですか」



63: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:30:31.583 ID:FZTv0GtG0.net

和「私、澪と約束があるので帰ります」

??「ちょっと待ちなさいよ!まだ話は…」

澪の目の前のドアが開いた。

和「あら澪、いたの」

澪「和…今のは…」

和「なんでもないわ、生徒会長と少しお話をしていたの」

ドアの隙間から見えたのは、生徒会長…いつも澪に優しい曽我部恵だった。



64: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:34:39.005 ID:4oEkq3t2d.net

澪「なぁ和…」

帰り道、澪は和に先ほどの話を聞いた。

和「恥ずかしいわね、身内の恥を晒してしまって」

和「あの人は知ってのとおり、澪にご執心なの。澪と仲良くする私が気に入らないのね」

澪「そんな…」



65: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:37:25.522 ID:4oEkq3t2d.net

和「ところで澪…」

澪「どうしたんだ?」

和「憂が、あなたと会いたいと言っていたわ。よかったらこの番号に掛けてあげて」

そう言うと和は、澪に小さなメモを手渡した。

澪はこれで何かわかるかも知れないと思った。



66: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:40:00.368 ID:4oEkq3t2d.net

秋山澪が平沢憂に電話を掛けたのは、その日の晩であった。
そして、翌土曜日に2人で会う約束をする。

澪は憂を警戒している。

殺人犯の唯の家族だからではない。
唯を犯人ではないと思っているからこそ、真犯人である可能性を持つ憂に細心の注意を払わなくてはならないのだ。

会うのは街中のファーストフード店となった。



67: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:43:08.601 ID:4oEkq3t2d.net

澪は約束の日、わざと遅れてやって来た。

憂の動向を見極めてから会いたいと思ったからだ。

だが澪のそんな思惑とは裏腹に、憂は怪しい素振りなどまったく見せていなかった。

澪「憂ちゃん、お久しぶり」

憂は会釈をした。

憂「律さんのこと、本当にすいませんでした」

澪「憂ちゃんが謝らなくてもいいよ」

澪「それで…何か話したいことがあったのかな?」



68: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:50:03.601 ID:4oEkq3t2d.net

憂「実は、姉は律さんに、お金を貸していたんです」

澪「!」

憂「それも、かなり強引にお願いされたみたいで、断れないんだって…」

憂「姉は警察でもその話をしてないみたいだし、澪さんたちにも話していいのか悩んだんです」

澪「ありがとう憂ちゃん、話してくれて」

律が唯からお金を借りていた?
あの日律の部屋で見つけた大金は唯から借りていたお金だったのか?
じゃあ唯は、律をそのことで恨んで?



70: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 11:54:32.056 ID:4oEkq3t2d.net

憂「それと…」

憂「すみません、身内の私が言うのもおかしいんですが、姉は人殺しなんて出来るはずがないんです。何かの間違いであって欲しい」

憂「そう思っています」

澪は、黙って憂の頭を撫でた。
彼女だってまだ子どもだ。それなのに感情を押し殺し、姉の心配までしている。

唯のやつ、戻ってきたら説教してやる。
澪はそう思った。



71: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:08:01.818 ID:4oEkq3t2d.net

澪は憂から気になるものを預かった。

ビニールの小袋に入った錠剤で、袋には「KOTOBUKI」と書いてある。

唯が隠し持っていたというそれは、紬が関わっているのは明白であった。



74: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:13:14.241 ID:FZTv0GtG0.net

澪は紬とは葬式以来会っていない。

だが、彼女に会って話を聞かなくてはならないと澪は感じていた。

紬がこの事件に関わっている。

澪は紬にメールで、「会いたい」とだけ送った。

紬からの返信は、3日後にあった。



75: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:15:12.327 ID:FZTv0GtG0.net

「すべて話す」
それだけの返事だったが、澪には充分だった。
紬は間違いなくすべてを知っている。

澪は和にしばらく海外へ旅行に行くと伝え、単身ロンドンへと向かった。



76: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:20:46.793 ID:FZTv0GtG0.net

ロンドンの冬は冷たい。

澪は初めての海外に心踊ることもなく、ただ紬に会うことだけを考えた。

そして紬がいるというロンドン郊外の屋敷へと辿り着いた。



77: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:25:06.552 ID:FZTv0GtG0.net

澪「久しぶりだな…ムギ」

紬「よく来たわね、澪ちゃん」

澪「あの薬…ムギは知ってるんだろ」

紬「…」

紬は目を背けた。上がって、と小さくささやく



78: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:28:34.547 ID:FZTv0GtG0.net

紬「あの薬はね…」

澪「…」

紬「私が父のツテで手に入れた強力な睡眠薬よ」

紬「唯ちゃんはずっと眠れないって悩んでいてね」

紬「だからあげたの。もちろん処方箋以外で渡すのは違法よ」

澪「お前…」



79: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:31:54.555 ID:FZTv0GtG0.net

澪「あの薬と律の事件、関係はあるのか」

紬「ない…と言ったら嘘になるかしら」

澪「!」

紬「私はあの日、薬をみんなのお茶の中に入れたの。澪ちゃんは飲まなかったから気付かなかったけどね」

澪「なんでそんなことを…」

紬「ただのイタズラよ」



80: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:35:17.479 ID:FZTv0GtG0.net

紬「私は先に帰ったフリをして、眠った2人にイタズラをするはずだったの!それが!あんなことに!」

澪「じゃあお前がやったんじゃないのか?!」

澪「律を…」

紬「出来るわけないじゃない!りっちゃんは私たちの大切な友達だもの!」

紬「私が…私があんなことさえしなければ…」

澪「ムギ…」

澪は何も言葉をかけることができなかった。

紬が自ら命を絶ったのは、澪が帰国した翌日だった。



84: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:39:51.743 ID:FZTv0GtG0.net

澪「唯…お前はいったい何を見たんだ…」

澪「教えてくれ…大切な仲間が、みんないなくなっちゃう」

恵「秋山さん」

澪「曽我部先輩…?」

恵「よかったら今日、一緒に帰らない?私、前からあなたと仲良くなりたいと思っていたの」

澪「あ…ありがとうございます」



85: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:44:10.652 ID:FZTv0GtG0.net

澪は曽我部恵が真鍋和に詰め寄っていたのを思い出す。彼女は自分に好意を抱いている。それも、友情ではなく恋愛感情だということは、鈍感な澪にもハッキリとわかっていた。

恵「秋山さん、今まで辛いことがたくさんあっただろうけど、これからは大丈夫よ」

恵「私、秋山さんの1番の友達になれるよう頑張るわ」

澪は曽我部恵に対し、これと言って好意は抱いていない。だが、大切な親友、田井中律を失った今では、彼女は誰かに寄り添いたいという気持ちがあった。



86: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:46:31.436 ID:FZTv0GtG0.net

澪「先輩…」

澪は恵に突然抱き着いた。

恵「どうしたの突然?」

曽我部恵は動揺している。ずっとこうしたかったのはあなたの方でしょ、澪は性の悪い自分に嫌気が刺した。

澪「私…もう嫌なんです」

澪「大切な人がいなくなるのが」



87: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:48:05.212 ID:FZTv0GtG0.net

恵「大丈夫よ、私はいなくなったりはしないわ」

澪「…ありがとうございます」

澪は恵から離れた。

澪「ところで…」



澪「そ の 制 服 の 血 は ど う し た ん で す か ?」



88: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:51:20.724 ID:FZTv0GtG0.net

曽我部恵が動揺したのを澪は見逃さなかった。

澪「お怪我でもされたんですか?」

恵「そ、そうよ、私不器用で…」

澪「そうなんですか。大事に至らなくてよかったです」

澪は確信した。

律を殺したのはこの女だと。



89: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:54:10.876 ID:FZTv0GtG0.net

澪「どうして…」

恵「?」

澪「どうして殺さなきゃいけなかったんですか?」

恵「な…なにを言って」

澪「律を殺したのは…」

澪「あなたなんでしょう?」



92: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:55:49.723 ID:FZTv0GtG0.net

恵「そっか…」

恵「こんな小さなシミを見つけられるなんて思ってもみなかった」

恵「あやしまれると思って、そのままにしといたのが運の尽きか…」

澪「そんなことはどうでもいいんです」

澪「なんで律を殺したんですか」



93: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 12:58:25.277 ID:FZTv0GtG0.net

恵「あの日、私はあなたに会おうと思って軽音部の部室へ行ったの」

恵「2人は快く私を入れてくれたわ」

恵「そこでこんな話になったの」


律「私、澪のことが好きで…告白しようと思ってるんです!」


恵「もう目の前が真っ暗になったわ。私はあなたを誰にも奪われたくなかった」

恵「たとえそれが親友の田井中さんであろうともね」



94: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:01:34.757 ID:4oEkq3t2d.net

恵「そしたら2人はいつの間にか眠ってしまったの」

恵「私は神様が奇跡を起こしてくれたんだと思ったわ」

恵「置いてあった包丁で田井中さんを刺して、その凶器を、平沢さんに持たせたの」

恵「本当に奇跡だと思ったのにな…ほんの一瞬だけでも、夢を見れてよかった」

澪「言いたいことはそれだけか?」



96: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:03:37.860 ID:4oEkq3t2d.net

澪「お前がっ!律を!!ムギを!唯を奪ったのか!なんで!なんで私の大事なものを奪ったんだ!」

澪は恵に掴みかかり、そのまま押し倒した。

恵の胸は、澪の涙で濡れた。

曽我部恵はそのあと、警察へ自首した。

平沢唯の解放はそれからほんの少し後のこととなった。



97: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:05:23.746 ID:FZTv0GtG0.net

澪は恵が逮捕されてから、まるで抜け殻のようになってしまった。

誰が話しかけても反応もせず、うわ言のように軽音部の部員たちの名前を呼び続けている。

いま彼女はとある病院に入院している。

和「澪…」



98: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:07:38.443 ID:FZTv0GtG0.net

和「澪、久しぶりね。面会謝絶と書いてあったけど、お母さんに無理を言って通してもらったの。今日はあなたに会って欲しい人を連れてきたのよ」

澪は反応しなかった。

和「いいわよ、入ってきなさい」

澪「…!」



100: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:11:02.850 ID:FZTv0GtG0.net

病室に入って来たのは、平沢唯であった。

澪「唯!唯じゃないか!よかった…出てこれたんだな!」

唯「澪ちゃん…心配かけてごめんね」

唯「澪ちゃんのおかげで、私戻ってこれたよ」

澪「よかった!本当によかった!」

澪「そうだ!新しい詩をたくさん考えてあるんだ!早く曲を付けよう!な?」

唯「うん、とっても楽しみだね」



101: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:16:03.227 ID:FZTv0GtG0.net

和「悪いわね憂、無理を言って」

憂「ううん、これはせめてもの罪滅ぼし、真犯人を見つけてくれた澪さんへの感謝の気持ちだよ」

憂「私髪を下ろしたらお姉ちゃんそっくりだから」

和「唯はどこに行ったかわからないの?」

憂「うん…みんなを助けたいって言って出て行ったきり」

澪は、何もかも失ってしまったのだろうか。律を殺した犯人を見つけ出した彼女の心は限界に達していた。

唯は、そんな彼女を救うことが出来るのか。





104: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:19:36.636 ID:FZTv0GtG0.net

第3部
唯「澪ちゃんは、私の大好きな友達」



105: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:22:16.588 ID:FZTv0GtG0.net

秋山澪が入院してから3ヶ月後

平沢唯は田井中律の墓前に立っていた。

唯「やっとここまで戻ってこれたよ、りっちゃん」

唯「澪ちゃんに会いに行かなきゃ」



107: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:26:42.779 ID:FZTv0GtG0.net

平沢唯はこの3ヶ月の間にあることを考え旅に出ていた。

それは、なぜ自分が律を殺してしまったと錯覚したのかということだ。

逮捕された曽我部恵は、琴吹紬がお茶に混入させた睡眠薬(この部分は自殺した琴吹紬の遺書により発覚した)により平沢唯と田井中律が意識を失ったあと、部室に置かれていた包丁で田井中律を刺殺した。

そして凶器を平沢唯に持たせたのである。



108: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:28:12.178 ID:FZTv0GtG0.net

唯は目覚めた瞬間、状況がまったく把握できなかった。

血塗れで倒れる田井中律、手に握られた刃物

自分が彼女を刺したのは明白であった。

唯は混乱する

なぜ、
なぜこんなことになったのか



109: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:33:38.266 ID:FZTv0GtG0.net

平沢唯が目覚めて思い出した感情

それは田井中律への嫉妬であった

律「私、澪のことが好きで…告白しようと思ってるんです!」

初めて聞いた律の気持ち

唯は胸が締め付けられた。



112: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:38:35.925 ID:FZTv0GtG0.net

唯がいつから秋山澪に好意を抱いていたかは唯自身覚えていない。

ただいつからか、唯は澪のことばかりを見ていたのだ。

私から澪ちゃんを奪わないで

唯の負の感情は暴発しそうになっていた。

そして気がつけば田井中律はいなくなっていた。

やってしまったのだ自分は

澪「本当にお前がやったのか?」

澪「唯…」

笑うしか、できなかった。
こんなに悲しいことってないよ。
もう私は、澪ちゃんに愛されない。



113: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:42:03.052 ID:FZTv0GtG0.net

唯「りっちゃん、正々堂々勝負できなくてごめんね」

唯「ドラムを買うために貸したお金でチャラ…はちょっとダメか」

唯「私いまから澪ちゃんに会って」

唯「今までのこと全部、それに澪ちゃんを好きって気持ち、伝えるよ」

唯の髪は随分伸びていた。いま澪が唯に会ったところで、それを唯と認識できるかはわからない。



114: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:44:39.774 ID:FZTv0GtG0.net

面会謝絶

唯は病室の入口にぶらさがっていた札を無視して入った。

澪は、窓の外を見ている。

唯「澪ちゃん」

澪が振り向き、唯の頭の上から爪先まで何度も見返した。



115: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:46:10.191 ID:FZTv0GtG0.net

澪「唯…なのか?」

唯「そうだよ、澪ちゃん」

唯「遅くなってごめんね」

澪はポカンとしている。唯は構わず続けた。

唯「私、澪ちゃんが好き」



116: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:49:10.664 ID:FZTv0GtG0.net

澪「は?唯…なにを言って…」

唯「私ね、りっちゃんがいなくなったとき、気づいたらそうなってて、自分がやったんだって思った」

唯「りっちゃんは澪ちゃんのことが好きだったの」

唯「でも私も、りっちゃんに負けないぐらい澪ちゃんが好き!」

唯「だから…それを伝えたくて…」

唯はボロボロ泣きだした。
なんでこうなるまで言えなかったんだろう。

律はもういない。

どんなに頑張ったって、律にはもう追いつけないのだ。



117: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 13:58:17.546 ID:FZTv0GtG0.net

澪「唯…ありがとう…嬉しい」

澪はほんの少しだけ笑った。

澪「私はもう、大切な人を失いたくないんだ」

澪「唯は…いなくならないよな?」

唯「当たり前だよ」

唯「澪ちゃんが許してくれるなら」

唯「私はおばあちゃんになるまで一緒にいる」

澪はベッドの上から両手を唯に差し出した。



120: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 14:02:31.443 ID:FZTv0GtG0.net

唯「澪ちゃんありがとう…こんな私を受け入れてくれて…本当にありがとう」

唯は澪の手を取ると、顔に押し付けて泣いた。

澪「おいおい、泣くなよ」

唯「ずっと怖かったの…澪ちゃんに会うのが…ずっと逃げて…」

唯「でもりっちゃんがね、行けよ、って言ってくれた気がして」

澪「律はもういない。けど、ずっと心の中にいる。寂しくないよ」

澪「いまは、唯がいるから」

唯「ありがとう澪ちゃん」

唯「澪ちゃんは、私の大好きな友達」

唯「大好きだよ」







122: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2015/07/12(日) 14:11:17.536 ID:FZTv0GtG0.net

見てくれた人ありがとうございました


元スレ
澪「本当にお前がやったのか?」