1: むい~ん 2014/05/25(日) 20:36:00 ID:VGMy39WY

昔々あるところに、三人のかわいらしい姉妹がいました。
一番上は、クルミという背の小さな女の子、
二番目は、エイスリンという青い眼の女の子、
そして末っ子の三番目は、トヨネという背のとても高い女の子でした。

なぜ末っ子が一番背が高いのかというと、
クルミとエイスリンは、お母さんのサエから生まれた子どもなのですが、
トヨネは、サエの何番目かのお嫁さんの連れ子だからです。
そのお嫁さんは、結婚したあとすぐに謎の失踪を遂げてしまい、
あとにはトヨネだけが残されたのでした。

夜の生活もろくにしないままトヨネを押しつけられてしまったサエは、
とても悔しがり、しばらくはトヨネに八つ当たりしていました。
クルミとエイスリンも、サエの真似をしてトヨネをいじめていました。

でも、いじめは長くは続きませんでした。
トヨネは、家事や汚れ仕事を押しつけても、末っ子だからと特に逆らいもしませんし、
それに、物理的に殴ったり蹴ったりすると、眼に涙をいっぱいに浮かべて、

トヨネ「おねえちゃんたち、なんでこんなことするの…?」

と、今にも泣きそうになりながら見つめてくるのです。
この視線を受けて何の罪悪感も芽生えない人はいません。

サエもクルミもエイスリンも、いつの間にかトヨネをいじめることはなくなり、
家事なども皆で分担するようになりました。
そうして、四人は仲良く暮らしていました。



2: むい~ん 2014/05/25(日) 20:36:30 ID:VGMy39WY

あるとき、お城で麻雀パーティが行われるとのお触れが出されました。
これは、シロミ王子様(通称シロ様)のお嫁さんを選ぶためのイベントのようなもので、
国に住んでいて結婚していない女の子は誰でも参加できるそうです。
また、シロ様はとてもとてもとてもめんどくさがりやなので、
強くアプローチすれば結婚まで押し切ることもたやすいのではないかとの、もっぱらの噂でした。

シロ様は、そんなめんどくさがりやでありながら、容姿も性格も良く、
また、政治的手腕もかなりのものだといいます。もちろん麻雀も相当な腕前です。
当然、国の女の子たちからの人気は高く、
クルミもエイスリンもサエも、ぜひシロ様と結婚したいと思っていました。


クルミ「…えっ、お母さんもシロ様と結婚したいの? あり得なくない?」

エイスリン「ソレオカシイ! ネンレイ、ハナレスギ!」

サエ「…………」


サエはクルミたちの疑問に答えませんでしたが、
眼に明確な殺意が浮かんだのを見た二人は、それ以上何も訊くことができませんでした。



3: むい~ん 2014/05/25(日) 20:37:00 ID:VGMy39WY

二人を黙らせたサエは、ぱっと何事もなかったような顔に戻り、話題を変えました。


サエ「そうだ、トヨネの服どうしよっか? あんたドレスとか持ってないから買わないと…
 っていうか、そのサイズのドレスって売ってるの?」

トヨネ「…ううん、お母さん、私はドレス要らないよー?」

サエ「えっ、なんで? お金とかは気にしなくていいよ?
 最終的に私がシロ様と結婚すれば、ドレス代なんてはした金みたいなもんだし」

トヨネ「…麻雀パーティ行かないから、ドレスは要らないんだよー」

サエ「えっ? あんたシロ様と結婚したくないの? まあどうせ私がするんだけど」

クルミ(お母さんのこの自信は一体何…?)

トヨネ「えーっとー…、ほら、私末っ子だから、まだ結婚とかそういうのは早いかなーって…」

サエ「んー、それもそっか。じゃあ当日はお留守番でいい?」

トヨネ「うん。みんな楽しんできてねー」



4: むい~ん 2014/05/25(日) 20:37:31 ID:VGMy39WY

というわけで、麻雀パーティ当日。
サエたち三人はそれぞれに着飾ってお城へ出かけ、トヨネは一人でお留守番です。


トヨネ「あー、お母さんたち行っちゃった…」

トヨネ「私もお城行きたかったなあ…」

トヨネ「シロ様と打ちたかったなあ…」

トヨネ「あーあ、私がこんなに大きくなかったらなあ…」


ちなみに、トヨネの身長は197cmあります。
シロ様の身長は166cmですから、だいたい頭ひとつ分くらいの差ですね。
確かにトヨネのほうがかなり大きいですが、しかし麻雀は座って卓上で行う競技なので、
卓についてしまえば、それほど気になるような差でもありません。

そもそも、ふだん身長130cm(トヨネとは67cm差)のクルミと
普通に喋ったり打ったりしているのですから、
シロ様と接することにも物理的な問題は無いといって良いでしょう。

でも、毎日のように家の梁や鴨居に顔をぶつけているトヨネは、
自分の背の高さがコンプレックスになってしまっていたのです。

トヨネ「あのときのシロ様、ちょーかっこよかったよー…」

一人で留守番していて暇を持て余したトヨネは、回想モードに入ってしまいました。



5: むい~ん 2014/05/25(日) 20:38:00 ID:VGMy39WY

シロ様はとてもめんどくさがりやですが、それでも一応は王子様なので、
たまには城下に出てくることがあります。
シロ様専用の馬車にはコタツが搭載されていて、
コタツから一歩も出ないまま城下を視察できるようになっているのです。

時には、シロ様は近くにいた国民を適当に招き、一緒のコタツに入らせて、
そこで直接国民と対話や対局をすることもあります。
実際には、いつもみかんの皮を剥かせていた従者の指が黄色くなってしまい、
しばらく剥きたくないと言われてしまったため、
代わりに誰かに剥いてもらおうとしたのが始まりだったのですが、
今では、皮を剥いて筋も取ったみかんをシロ様の口にお運びするのは、
国民の間では最高の栄誉の一つとして捉えられています。

トヨネも、たまたま一人でお使いに出かけた折り、
馬車の中からシロ様に呼び止められ、一緒にコタツに入ったことがありました。
東一局だけというほんの僅かな時間、麻雀をしながら、
みかんを剥いたり世間話をしたりしただけしたが、
トヨネは、シロ様と過ごしたその時間を、とても幸福なものとして感じていました。

その幸福とは、単に格好よくて身分の高い方とお話しできたというだけではありません。
シロ様は、トヨネの身長について一言も触れなかったのです。



6: むい~ん 2014/05/25(日) 20:38:31 ID:VGMy39WY

髪の毛の無い人に「ハゲ」と言ったり、体重や容積の大きい人に「デブ」と言ったりするのは、
誰がどう考えても失礼なことなので、本人に面と向かって言うことは普通ありません。
でも、背が高い人に「背が高いね」と言うことを失礼と思うかどうかは、人によって違います。

トヨネは、今までたくさんの人に「背が高い」とか「大きい」と言われてきました。
言ったほうにしてみれば、「かわいいね」とか「今日はいい天気ですね」などと同じで、
単なる話のきっかけでしかない場合がほとんどなのですが、
会う人会う人に自分のコンプレックスを指摘されるのでは、
いくら温厚なトヨネといえども、たまったものではありません。

でも、シロ様は、初対面なのに身長のことを何も言わなかった。

そのことが、トヨネに強い印象を残したのです。


トヨネ「シロ様とまたお話ししたいよー…」

トヨネ「ちょーさびしいよー……」



8: むい~ん 2014/05/25(日) 20:45:32 ID:VGMy39WY

 トントン

トヨネが回想モードから鬱モードへ緩やかに移行しようとしていると、
誰かが家の扉をノックする音がしました。

トヨネ「はーい。いま行くよー」

トヨネが扉を開けると、そこには、見知らぬおばあさんが立っていました。

??「おや、お嬢ちゃん一人かい?」

トヨネ「うん。今日はお留守番なんだよー」

??「お家の人はいないのかい。お湯を分けてもらおうと思ったんだけど…」

トヨネ「お湯? お湯くらいなら私が沸かしてくるよー。どれくらい要るの?」

??「たくさんじゃない。ほんの600mlほどでいいのさ。済まないねえ」

心優しいトヨネは、知らないおばあさんの頼みにもイヤな顔ひとつせず、
井戸から水を汲んできて、かまどに火を入れ、お湯を沸かし始めました。



9: むい~ん 2014/05/25(日) 20:46:00 ID:VGMy39WY

トヨネ「おばあさん、お湯は何に使うのー?」

??「いやね、この新発売のカップ麺を一刻も早く食べてみたくてねえ」

トヨネ「カップ麺を一刻も早く…? おばあさんのお家は遠いの?」

??「遠いさ。馬車で20分もかかるんだよ」

この国はとっても田舎なので、馬車で20分というのは「遠い」のうちに入らないのですが、
優しいトヨネはもちろんそれ以上突っ込みません。

??「あと、私はトシっていうんだ。名前で呼んでおくれ。
 まだ「おばあさん」なんて呼ばれる年じゃないからさ」

トシは誰がどう見てもおばあさんでしたが、優しいトヨネはもちろんそれ以上突っ込みません。
ただ、「トシさんだね。私はトヨネだよ」と、名乗り返すだけにとどめておきました。



10: むい~ん 2014/05/25(日) 20:46:31 ID:VGMy39WY

しばらくして、沸いたお湯でカップ麺を作ったトシは、
トヨネにもそれを半分分け、二人で仲良く食べることにしました。

食べながら、二人は色んな話をしました。
といっても、主にトヨネが喋って、トシはそれに時々相槌を打つだけでしたが。

今日はお城で麻雀パーティがあること、トヨネがそれに行かなかった理由、シロ様との思い出…。
トシが来る直前まで鬱モードに入りかかっていたトヨネは、
とにかく誰かに話を聞いてほしかったのです。


トシ「ごちそうさま。お湯ありがとうね。おかげで助かったわ」

トヨネ「こちらこそ、ごちそうさまでしたー。ちょー美味しかったよー」

トシ「トヨネは優しいねえ。いつか、きっと良いことがあるよ」

トヨネ「ありがとー! えっと、トシさんにも良いことがありますようにっ!」



11: むい~ん 2014/05/25(日) 20:47:00 ID:VGMy39WY

トシは、本当にカップ麺を食べただけで帰ってゆきました。

トヨネ「不思議な人だったなー。そんなにカップ麺食べたかったんだー」


再び一人になったトヨネは、食事をしたからか、少し眠くなってきました。
今日はもう他の家事は全て済んでおり、あとは湯浴みをして寝るだけです。

普段なら、寝る前にクルミやエイスリンと少し三麻を打ったり、
二人が先に眠ってしまったときでも、一人で本を読んだりするのですが、
今日は何だか、一人でいるとまた寂しくなってしまいそうな気がしました。


トヨネ「おやすみなさーい…」


誰もいない部屋で一人、トヨネは頭から布団をかぶ……ろうとすると足が出てしまい寒いので、
枕を抱いて、うずくまるようにして眠りにつきました。



12: むい~ん 2014/05/25(日) 20:47:33 ID:VGMy39WY

 
「――――ヨネ、トヨネ、起きなさい」


誰かがトヨネを揺り起こしています。


トヨネ「んー……もう朝ー? ……あれー? さっきの…」

トシ「まだ朝じゃあないよ。あんたは、これから麻雀パーティに行くんだから」

トヨネを起こしたのはトシでした。

トヨネ「えー、だから麻雀パーティはいいんだってば…。
 っていうか、トシさん、その格好は…?」

先ほど二人でカップ麺を食べたとき、トシはごく普通の普段着でした。
が、今は、何だか古めかしい紫色のローブを着ています。
頭には、これも同じ紫色の、カラーコーンのように尖った帽子。

トシ「さっき言わなかったけどね、私は実は魔法使いなんだ」

トシ「それで、あんたに良いものを持ってきたんだよ」



13: むい~ん 2014/05/25(日) 20:48:30 ID:VGMy39WY

トシが右手に持った杖を一振りすると、その杖からたくさんの光の粒が湧き出てきました。

トヨネ「うわあ……きれい……」

トヨネが思わず光の粒の流れに見とれていると、やがてその粒たちは服の形をとり、
真っ白い大きなパーティドレスになりました。もちろんトヨネでも着られそうなサイズです。
街の服屋さんに頼んだら、きっと特別誂えで、とても高価くついてしまいそうな…。

トシ「さあ、これを着て麻雀パーティにお行き」

トヨネ「えっ、こんな高価いもの、いいの…?」

トシ「なあに、魔法だから元手はタダみたいなもんさ。気にしなくていいよ」

トシ「それに、これはただのドレスじゃないんだ。名付けて、“着ると背が縮むドレス”」

トヨネ「着ると背が縮む…? そんな都合のいいことって…」

トシ「あるんだよ。いいからほら、早く着替えて」ギュッ

トヨネ「わっ、服くらい自分で脱げるよー。引っ張んないで…」



14: むい~ん 2014/05/25(日) 20:49:01 ID:VGMy39WY

着替えてみたトヨネは驚きました。確かに、はっきりとわかるくらい背が縮んだのです。

トヨネ「うわー、天井ちょー遠いよー」

20~30cmくらいは縮んだでしょうか。
それでもトシと比べると大きいですが、目立つほどの大きさではありません。
166cmのシロ様と並んでも、不自然ではなさそうに思えます。


トシ「成功だね。これで打つときも卓が近くて楽だろう。
 ドレスに合う靴もあるから、これを履いてお行き」

トヨネ「うん! またシロ様と打てるんだ…」

トシ「あっと、でも一つ注意。
 この魔法は夜の12時で切れるから、なるべくそれまでにはお城から出るんだよ」

トヨネ「12時だね。わかったよー」

トシ「じゃあ、外に馬車も呼んであるから、それで行っておいで。
 帰りも12時少し前に迎えに行くよう頼んであるからね」

トヨネ「うわ、馬車まで? トシさん、何から何までありがとう。ちょー嬉しいよー…」グスッ

トシ「あらあら嬉し泣きかい? それはシロ様と会えてからに取っておきな」

トヨネ「うん…。じゃあ、行ってきまーす!」



15: むい~ん 2014/05/25(日) 20:49:30 ID:VGMy39WY

トヨネを乗せた馬車は、まるで法定速度のことなど忘れたかのような勢いで、
瞬く間にお城に到着しました。
もちろんお城の大広間では、麻雀パーティの真っ最中です。
うら若い何十人もの乙女たちが、シロ様との対局を目指して
いくつもの雀卓を囲み、競い合っています。

クルミ(あれ? 何かトヨネに似てる人来た…?)

今回のパーティは入退場自由で、受付で参加を申し込むと、
ランダムに、かつ、それまでの戦績などによってできるだけ公平となるよう、
参加者4名での対局が組まれます。
1回の対戦は東風戦1回(トビ終了あり)で、対戦1回ごとに対局の組み合わせは変更されます。
そして、3回(3対戦)連続で1位になった人が3名出る度に、
その3名はシロ様と一緒に卓を囲むことができるのです。

エイスリン(トヨネ、セガチヂンダ…?)



16: むい~ん 2014/05/25(日) 20:50:16 ID:VGMy39WY

つまり、シロ様と直接対局するためには、まずは国じゅうから集まった麻雀自慢を相手に、
東風戦で3連勝しなければなりません。1度でも2位以下になると連勝回数はリセットです。
また、シロ様に勝っても、賞金と栄誉は与えられますが、結婚できるとは限りません。
結婚相手は、あくまでも麻雀での戦績とは別に、
シロ様ご本人の意思によって選ばれることになっています。

サエ(どうみてもあのドレス魔術的に怪しいけど……
 まあ本当にトヨネだったら悪いし、塞がないでおいてあげるか)

しかし、直接卓を囲んでの対局は、シロ様に自分をアピールする絶好のチャンス。
壁に掲げられている戦績表などを見ると、まだ3連勝した人は1人しかいないようです。
広間の奥の玉座に眼をやると、巫女服姿の従者を傍に従えて、
シロ様がコタツに突っ伏して眠っていらっしゃるのが見えます。

トヨネ「よーし、あのコタツ目指して頑張るよー!」



17: むい~ん 2014/05/25(日) 20:50:46 ID:VGMy39WY

 ─2時間後─

今まで誰にも内緒にしていた六曜の能力をフルに発揮したトヨネ。
3戦全てで相手を誰かしらトバし、超高速で3連勝。
ちょうどトヨネが3連勝3人目で、今日最初のシロ様との直接対局に臨むことになりました。


コマキ(従者)「シロ様、起きて下さい。対局者が3人集まりましたよ」

シロ「んー……眠い。コマキ、代わりに打っといて……」zzz

コマキ「今日ばかりはダメです。ご結婚のお相手も私が決めてしまいますよ?」

シロ「…それもダルいか……」

シロが顔を上げると、席決めは既に済んでいたようで、3人の対戦者がコタツに入っています。
このコタツは全自動麻雀卓にもなっており、シロ様はこのまま動かずに打てる、というわけです。

シロ「じゃあ、えっと、よろしく…」

トヨネ・スコヤ・ハヤリ「「「よろしくお願いします!」」」


トヨネ(うわー! シロ様とまたお会いできたー! ちょー感激だよー)

スコヤ(嫁き遅れと言われ続けてはや数年…。この逆転手はもう逃せない…!)

ハヤリ(王子様と結婚してー、牌のお姉さんから牌のお姫様にクラスチェンジっ!)

シロ(あれ? 対面の赤目の子、前に城下で一度打ったような…)



18: むい~ん 2014/05/25(日) 20:51:15 ID:VGMy39WY

麻雀プロとして既に何年も生活し、国内外問わず多くの大会で入賞しているスコヤ。
“牌のお姉さん”として冠番組をもち、麻雀教本などの著作も多いハヤリ。
王子としての本業は政務であり、麻雀はあくまでも趣味と教養と外交手段の一つでしかないシロ様。
六曜など様々な能力をもち、血筋にも恵まれているが、今はまだ普通の女の子であるトヨネ。

どう考えても、スコヤやハヤリに、シロ様やトヨネが勝てるわけがありません。
対局は終始、スコヤとハヤリによる激烈な削り合いとなり、
シロ様とトヨネは、余波を受けてトバされないようにするだけで精一杯でした。

結果は、1位スコヤ、2位ハヤリ、3位シロ様、4位トヨネ。

対局を終えたシロ様は、対局前と同じように、再びコタツに突っ伏しています。
が、対局前とは異なり、傍目にも疲労しているのが明らかです。
ここに来るまでに3局終えていたトヨネもまた、かなり疲れていました。


シロ(……し、死ぬかと思った…。ダル……)

トヨネ(打つのが大変で、シロ様とあんまりお話しできなかったなー…)ショボン

コマキ「では、シロ様にお勝ちになったお二方には金一封と盾、トヨネさんには賞状です」

トヨネ・スコヤ・ハヤリ「「「ありがとうございます」」」

コマキ「それで、シロ様、この後はどうされますか?」

シロ「どう、って…?」



19: むい~ん 2014/05/25(日) 20:51:45 ID:VGMy39WY

コマキ「シロ様がお気に召した方がいらっしゃれば、ご自室や寝室のほうにお連れすることもできますし、」

コマキ「あるいは、このまま南入したり、もう1対戦というのも可能かと思いますが」

シロ「…む、無理。1人で仮眠したいから解散してもらって……」

コマキ「…ということですので、皆さん広間のほうにお戻り下さい」

スコヤ・ハヤリ((ちょっとやりすぎちゃったか…))

トヨネ(また3連勝したらもう1回シロ様と打てるのかな…。でも、今夜はもう無理そうだよー…)


…と、それぞれにがっかりしたトヨネたちが玉座から立ち去ろうとすると、


シロ「……ちょいタンマ」



20: むい~ん 2014/05/25(日) 20:52:18 ID:VGMy39WY

コマキ「どうなさいましたか?」

シロ「…コタツじゃなくて部屋の布団で寝たい」

コマキ「そうですか。でしたらお部屋のほうに…」

シロ「動けない。おんぶして」

コマキ「え。……もう、シロ様は仕方ありませんね。いま誰か他の者を呼んできますから…」



トヨネ「――――あっ! あのっ! 私でよければ、おぶらせて頂きたくっ!!」



スコヤ・ハヤリ((!))

コマキ「ええと、一応、許可のない者が王族の方のお身体に直接触れるのは…」

シロ「その子でいい。……トヨネさんだっけ。おぶって」

コマキ「はあ……。では、トヨネさん、済みませんがお願いできますか?」

トヨネ「はいっ!」



21: むい~ん 2014/05/25(日) 20:52:50 ID:VGMy39WY

トヨネ「よいしょっ、と」

今夜のトヨネは魔法で背が縮んでいますが、それでもシロ様よりは少し大きいようです。
トヨネは難なくシロ様を背負うことができました。
さっきまで対局直後でとても疲れていたのに、シロ様と身近に接することができて嬉しくて、
今はもう、疲れていたことすら忘れてしまっています。


シロ「すごい…本当におぶってくれた…。王子でよかった……」

トヨネ(きゃー! シロ様の体温ちょー感じるよー! ちょー嬉しいよー!!!)

シロ「……大丈夫? 重くない?」

トヨネ「だっ、大丈夫ですっ! そ、それで、どちらにお運びすればいいんですか?」

コマキ「ご案内致しますので、私についてきて下さい」



22: むい~ん 2014/05/25(日) 20:53:21 ID:VGMy39WY

広いお城の中を歩くこと数分、一つの扉の前で三人は止まりました。

コマキ「ここがシロ様のご寝室です。ええと……シロ様?」

シロ「……まだ寝てないよ」

コマキ(口からよだれが垂れていますが…それを申し上げるのは不敬ですね)

コマキ「トヨネさんにこのまま布団まで運んで頂きますか? それともここからはご自分で…?」

シロ「…運んでもらっていい?」

トヨネ「も、もちろんですっ!」

コマキ「……お忘れのようですが、トヨネさんと一緒にご寝室に入られるということは、」

シロ「あ、そっか……。ちょいタンマ」

トヨネ「?」

シロ「…………うん、決めた。変だけどここで」



シロ「トヨネ、結婚して?」

 



23: むい~ん 2014/05/25(日) 20:54:02 ID:VGMy39WY

寝室の中は畳敷きの和室で、布団が既に1組敷かれていました。
トヨネはシロ様を布団に横たえると、その傍に座ります。

シロ「トヨネって、城下で一度私と直接会ったことあるよね」

トヨネ「は、はいっ。憶えてて下さったんですか…?」

シロ「うん。珍しかったから、とても印象に残った」

トヨネ(あ、やっぱり言わなかっただけで、背が高いって思ってたのかな…。ちょっと残念)


シロ「私を実際に見て、髪の話を全然しない人って、ほとんどいないから」


トヨネ「……えっ?」

シロ「髪が銀色で綺麗とか、まさにシロミという名前に相応しいだとか、
 褒めるつもりで言ってくれる人が多いんだけど」

シロ「私は、この髪、あんまり好きじゃない…」

シロ「こんな変な色の髪、国じゅう探してもなかなかいないし、目立つし」

シロ「それに、父王も母君も親戚もみんな、髪は黒か茶系だから、ありもしないことを言う人もいて…」

シロ「だから、初対面なのに、髪に一言も触れなかったトヨネのことが、ずっと気になってた」

トヨネ「シロ様…」



24: むい~ん 2014/05/25(日) 20:54:31 ID:VGMy39WY

実のところ、トヨネは、シロ様の銀白色の髪がそんなに珍しいものだとは、
今の今まで全く知りませんでした。
サエは赤髪、エイスリンは金髪、クルミは茶髪…と、髪の色が全員違う家庭で育ったため、
髪の色が一人一人違うことは当たり前だと思っていたからです。


トヨネ「私も、その、シロ様のことがずっと気になってました」

トヨネ「背が高いとか、大きいとか、シロ様はそういうことを一言も言わなかったから…」

シロ「背? ……私と同じくらいだったら、そんなに高くはないんじゃ…」

トヨネ「……あっ! そっか、私、シロ様に謝んなきゃいけないんだ……。ごめんなさい」

シロ「……? 謝るって、何を…?」

トヨネ「私、いまは魔法で背を低くしてるんですけど、本当はもっと高いんです! 197cmあるんですっ!」

シロ「……そんな魔法あるの?」

トヨネ「えっと、この魔法は12時で解けるから……」

2人は傍に置かれている目覚まし時計を見ます。11時40分。
この流れで魔法が解けるのを待つには、20分はちょっと長すぎます。

トヨネ「あっ、えっと、この魔法はドレスに掛かってるから、ドレスを脱げば…っ!」



25: むい~ん 2014/05/25(日) 20:55:00 ID:VGMy39WY

混乱のあまり、顔を真っ赤にしながら服を脱ごうとするトヨネ。
しかし、シロ様は寝そべったままトヨネににじり寄ると、服の袖を掴んで押し留めます。

シロ「…初めて会ったときも、その魔法は使ってたの?」

トヨネ「いえっ、そのときは使ってないです。今日、親切な魔法使いの人がかけてくれて…」

シロ「だったら、気にすることない…」

シロ「あの馬車のなかで座ってるときは気にならなかったし、」

シロ「それに、馬車の天井には引っ掛からなかったよね…?」

トヨネ「えっと、そういえば確かにぶつけたりはしなかったと…」

シロ「あれでそのまま外国に行ったこともあるけど、」

シロ「外国には、あれが小さすぎて入れない人とかもいる…」

トヨネ「…ほ、ほんとに?」

シロ「うん」



26: むい~ん 2014/05/25(日) 20:55:30 ID:VGMy39WY

 

シロ「……だから、トヨネは大丈夫」


トヨネ「私は……大丈夫……」


シロ「うん」



二人はそのまましばらく黙り、お互いを見つめていました。

 



27: むい~ん 2014/05/25(日) 20:56:01 ID:VGMy39WY

 
シロ「…それで、」

トヨネ「?」

シロ「いつ結婚してくれるの?」

トヨネ「え……」


トヨネ「わ、私なんかがシロ様のお相手にとか……」

トヨネ「ありえないかなー…とかとか」


シロ「……こっちはいつでも」

トヨネ「…………」


トヨネ「………ちょ」

シロ「?」

トヨネ「ちょー嬉しいよー……」


トヨネの眼からは、涙が滝のようにあふれ出していました。

 



28: むい~ん 2014/05/25(日) 20:56:30 ID:VGMy39WY

 
それからのことは、語るまでもないでしょう。
シロ様とトヨネはめでたく結婚。国じゅうが二人の門出をお祝いしました。

祝賀パーティでの麻雀大会でアラサー二人が暴れ回り、国が次元崩壊の危機に瀕したところを、
サエやクルミやエイスリンや、コマキたち巫女集団の力を借りて、
皆で何とか食い止めたりするのは、また別のお話。



シロ「……ダル……もう歩けない…。トヨネ、おぶって…」

トヨネ「もー、シロってばしょうがないんだからー」



二人は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。





 〔おしまい〕

 



29: むい~ん 2014/05/25(日) 20:58:35 ID:VGMy39WY

おしまいです。
お読み頂きまして有難うございました。

小蒔ちゃんがもうちょっと活躍するはずだったんだけどな…。どうしてこうなった…。


元スレ
SS深夜VIP:豊音「シンデレラ」