SS速報VIP:結衣「きょうこ…………」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337001009/



1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:10:10.11 ID:onw/yLCH0



 2月初旬。学校からの帰宅時。


 結衣「京子」

 京子「ん?何、結衣?」くる

 結衣「うん。その……話があるんだ……」

 京子「話しって…どうしたんだよそんな怖い顔しちゃってさ」

 結衣「…………」

 京子「だ、大事な話なのか?」むむ

 結衣「うん……」こくり


 




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1337001009(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)




2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:13:34.28 ID:onw/yLCH0



 京子「それだったら。むしろ一旦家に帰って荷物置いたら、またすぐに結衣の家に行くんだし。その時の方がいいと思うんだけど、それじゃあ駄目なのか?」

 結衣「うん。今じゃなきゃ駄目なんだ……」こくり

 結衣<今じゃないと、此処じゃないと、『色んな意味』で私の部屋じゃ出来ないんだよ……>

 京子「分ったよ。そこまで言うのならこの京子さまが聞いてやろうじゃなイカ」ふふん

 結衣「ありがとう京子……あの…………」

 京子「ふむ。何だい。結衣君?」



 結衣「……私は……私はお前の事が…京子の事が好きだっ!!」



 京子「そうかそうか私の事が好きか…って……ああ、そうだな。わたしもどちらかと言えばお前の事は好きだよ」てれてれ


 


 
 






3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:15:40.34 ID:onw/yLCH0



 結衣「………………」

 京子「……って。も、もしかして『Like』じゃなくて?」

 結衣「『Love』の方」こくり

 京子<え゛ー??>

 京子「マヂで?」

 結衣「うん……マヂで」こくり

 京子「そ、そうか…そうなのか……」Oh……

 結衣「ごめん。いきなりこんな告白されても困るよね」

 京子「……うん。正直ちょっちびっくりした。それで……あの…その……」

 結衣「いや、今すぐじゃなくていいんだ。でも、もしOKだったら今日中にウチに来て欲しい」

 京子<それでも充分に待ったナシなんだけど……でも……>

 京子「……うん。判ったよ。ウチに帰って考えてみる」

 結衣「ありがとう京子」


 
 





4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:16:58.80 ID:onw/yLCH0




 ―――――――――



 結衣邸。


 結衣「もう20(はち)時か……」

 結衣「やっぱり…来ないのかな……」








 
 









6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:19:29.93 ID:onw/yLCH0




 インターホン「ピンポーン」



 結衣「――――――!!!」ダッ



 ドアの前



 結衣「う、海……」


 ?「!?……や、山……?」



 ドア「がちゃっ」


 結衣「京子……き、来てくれたんだ……」

 京子「えへへ…来ちゃった」

 結衣「と、とにかく入って。寒かったろ?」

 京子「うん。ありがと。結衣」



 






7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:21:18.52 ID:onw/yLCH0




 玄関。


 結衣「気、来てくれたって事は……その……」

 結衣「……OKと言う事で良い…のか……?」

 京子「……うん。いいよ…って言わせんなよ。恥ずかしい……/////」かぁぁ

 結衣「よ、よかったぁ……」へなへな ぺたん

 結衣「だ、駄目だったらどうしようかと思った……」こしくだけ

 京子「大袈裟すぎるって……」ふーやれやれだぜ

 京子「とりあえず炬燵にでも入りながら落ち着こうか?結衣君」にこ

 結衣「……ああ。そうだな」にこ



 

 




8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:23:41.56 ID:onw/yLCH0


 
 京子「炬燵に入って」

 結衣「あったかご飯を食べて」

 京子「ラムレーズンもね♪」

 結衣「お風呂にも入って」

 京子「パジャマに着替えて」

 結衣「そろそろ寝よっか?」

 京子「うん」


  
 






9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:26:25.23 ID:onw/yLCH0




 ベッドシーツ「がさごそ」
 

 京子「ねぇ結衣。ぎゅっとしてぴたっとしてもいい?」

 結衣「うん。いいよ。こっちにおいで」

 京子「うん……」ぴと ぎゅっ

 京子「結衣。あったかい……」

 結衣「うん」



 京子「結衣。一つ訊いてもいい?」

 結衣「うん」こく

 京子「何時から結衣は私の事を好きになったの?」

 結衣「…………ずっと……ずっと前からだと思う」

 京子「小学校位から?」

 結衣「そうかもしれない。でもはっきりと恋してるって判ったのは、少し前にお前が頭ぶつけて性格が変わっちゃった時」

 結衣「あの時。判っちゃったんだ。私は今の京子がその時その時の在りのままの京子の事が好きなんだって」

 結衣「失ってみて友達としてだけじゃなくて、こ、恋人として好きなんだって気付かされた……って何言わせるんだよ///まったく///そう言うお前はどうなんだよ」


 
 






10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:28:16.75 ID:onw/yLCH0



 京子「私はよく判らないな。今までそんな事を考えた事も無かった」

 京子「でも、今日。結衣に好きって言われて。妄想してみたんだ……」

 京子「友達としてじゃなく恋人として、結衣とデートする事。ずっと一緒に居る事」

 京子「……そ…それとキ…キスとかする事……///」

 結衣「―――っキ……///」ぼっ


 
 





11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:30:29.75 ID:onw/yLCH0

 


 京子「嫌じゃ無かった……ううん。むしろデートしたい。一緒に居たい。キ、キスとかしたいって思った。すっごくあったかい気持ちになった……」

 京子「この時思ったんだ。私は結衣の事が好きなんだって。気付かされた……」

 結衣「……京子…………」

 京子「結衣……」
 


 ………………スッ。




 ちゅっ




 







12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:32:57.88 ID:onw/yLCH0




 結衣「!!?」


 京子「へっへー今日は、ほっぺ(ここ)までだよ」

 京子<こ、これ以上行ったら、何処までもイッちゃいそうだし……///////>

 結衣「――――判ったよ京子……でも」


 がばっ だきっ
 

 京子「きゃっ――ゆ、結衣さん?」どきどき
 

 結衣「もうちょっと抱き締め(あっため)させてくれよな」

 京子「もう。結衣ってば小さい子どもみたい///」
 


 結衣「おやすみ京子……」

 京子「おやすみ結衣……」



 



 







13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/14(月) 22:35:19.19 ID:onw/yLCH0





 ――――あと一つ。私が京子に告白する事を決意させたのは。あの時、京子がこのままどこか遠い処に行ってしまうんじゃないかと言う不安に駆られたから。

 ――――そう思ったとたん、京子を失いたくないという想いが、彼女を私のモノにしたいという欲望が爆発して、ついに抑え切れない所までキテしまった。

 ――――その想いが、私を突き動かした……ってこれは流石に京子には言えないな……




 そして、この時から私と京子の関係は幼馴染から恋人同士に変わった。




 







16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:25:28.27 ID:Kr91SZkI0




 2月14日。


 結衣宅にて夕食後。


 結衣「はい京子。チョコレート」すっ

 京子「あ、ありがと結衣。私からもはい。京子さまのチョコレート。有り難く受け取るがよいぞ」はぁと

 結衣「うん。ありがとう京子」

 京子「あーやっと渡せたぁ。早く結衣に渡したくて、うずうずしっぱなしだったよ」

 結衣「何言ってるんだよ京子。ウチで渡し合いっこしようって言ったのはお前だろ?」

 京子「だ、だってぇ……ほ、ホントの本当の本命チョコを渡すのは二人っきりの時にしたかったんだもん///」かぁぁ



 






17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:26:45.01 ID:Kr91SZkI0



 結衣「そんなに真っ赤になる位だったら言わなきゃいいのに。でも、私達の事は秘密ってわけじゃないけど、あかりやちなつちゃんにも言ってないしな……」

 京子「うん。ナンか今更って感じで、カミングアウトするタイミングを失っちゃたと言うか……」

 結衣「そうなんだよな……」

 京子「ごらく部で二人と渡し合った時に、結衣の分はもう渡しちゃったって言っちゃたし……」

 結衣「でも、あかりは気付いていると思う。多分ちなつちゃんもそれとなく気付いてるんじゃないかな……」


 






18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:28:58.13 ID:Kr91SZkI0



 結衣「それに綾乃にも……」

 京子「……うん。千歳には貰ったけど、綾乃からは貰わなかったし……渡した時もちょっと無理して笑ってるって感じだった……」

 結衣「やっぱり綾乃は……」

 結衣・京子「「………………」」

 京子「あーそんな湿っぽいのはもうやめやめ。早速だけど結衣コレ開けちゃっていい?」

 結衣「うん。じゃあ京子のも開けちゃうね」



 包装紙「がさごそ」」



 
 






19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:30:47.72 ID:Kr91SZkI0



 結衣「こ、これは……?

 京子「へっへーん。京子さま特製ハート型ラムレーズンチョコだよ」ドヤ

 結衣「いや。ドヤ顔になってるのはいいんだけど、ラムレーズンがチョコから浮き上がってぼこぼこになってるぞ」

 京子「うぐっ」

 結衣「お前。刻まずにそのまま入れちゃっただろ」はぁ

 京子「ひ、ひどいっ。せっかくこの京子ちゃんが結衣にゃんの為に愛情てんこ盛りで作ったのに。そんな事言うんだ……」うるうる

 結衣「……うそだよ。京子の心のこもったモノならなんだって嬉しいよ」くすくす

 京子「……結衣のいぢわる…………」

 結衣「ふふ」

 京子「でも、これからもっと上手になって何時か結衣をあっと言わせてやるからな」

 結衣「――――えっ!?ど、どうしたんだよ一体?お前がそんな事を言うなんて、熱でもあるのか?」デコにてをぺた



 






20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:32:29.19 ID:Kr91SZkI0



 京子「/////ち、ちがうもんっ。わ、私はその……ゆ、結衣の嫁だからさ。家事位は少しでも出来ないとって思ってさ……///」

 結衣「―――!?―――――!!!」がばっ 

 京子「―――!?ちょっちょっと結衣!ど、どうしたんだよ!!!?」

 結衣「きょ、京子――――」デコにデコぺた

 京子「―――――!!!!?<か、顔近い……>ふわわわわーーーな、なんだよぅ/////」ぷしゅー



 






21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:34:15.59 ID:Kr91SZkI0



 結衣「ふむ。やっぱり熱は無いかな。いや急にちょっと熱っぽくなったかな?」

 京子「わ、私だってそれ位はやるよ。ばか結衣……」しゅん

 結衣「ふふ冗談だよ。でも嬉しいよ京子。お前がそんな事言ってくれるなんてさ」

 京子「えへへ……嫁となるからにはそれ位はやらないとね」ふんす

 結衣「そうか……お前にしては殊勝だな…………でも」

 京子「でも?」




 結衣「『私が』京子のお嫁さんだからな」




 



 






22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:36:25.71 ID:Kr91SZkI0



 京子「えっ!?」きょとん

 結衣「えっ?」

 京子「お前はTケメンキャラなんだから、必然的に旦那さんだろ?クイズ公式さんとかに聞きましたとかやっても100%そうなるよ」

 結衣「てぃTケメン……ってなんだよ……と言うか、そ、そうなのか?」

 京子「うむ、そうなのだよ。結衣君。いや、むしろTケメンの旦那さま」

 結衣<さ、さも当然の様に……>がくぜん

 結衣「Tケメン……私はTケメンの旦那さま…………」がくっ

 京子「そんなことより……」がさごそ

 結衣「……Tケメン…………はは」ぶつぶつ

 京子「おっ。ハート型のホワイトチョコだ。えへへ食べても良い?」

 結衣「Tケメ……ん?ああ、いいよ」われにかえり



 
 
 




23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:41:27.44 ID:Kr91SZkI0

 
 
 京子「へへ。じゃあ」ぱく

 京子「ん~~~ん美味ひい……ん?結衣。これってもしかして?」もぐもぐ

 結衣「うん。ラムレーズンを刻んだのを練り込んだトリュフチョコをホワイトチョコに挟んだんだけど。ど、どうかな?」

 京子「おいひい。とぉってもおいひいよ結衣。くそぅくそぅ。もう悔しい位に」かんどーのぷるぷる

 結衣「よかった……じゃあ、京子のをいただくよ」ぱく

 京子「ど、どう……?」どきどき

 結衣「うん。おいしいよ。何よりも京子の愛情がいっぱい感じられて……って何言わすんだよ/////」ぽかり

 京子「あいたっ」

 京子<自分で勝手に宣(のたま)ったくせに……でも>すりすり



 






24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:45:42.23 ID:Kr91SZkI0




 京子<……よしっ>ぐっ

 京子「へへ、ありがと結衣。じゃあ結衣のチョコ美味しいから御裾分けしてあげる」ぱく す……

 結衣「えっいいの?……って、おい。お、おま…口に咥えて……」

 京子「…………………」す……ふるふる

 結衣「……………………い、いいのか……?」ごくり

 京子「…………//////」こくり

 結衣「じゃ、じゃあ…い、いただきます……///」ぱく ぱくぱくぱく

 京子「~~~~~」ずっ むちゃ

 結衣「――――!!?――――――」くっ はむ くちゃくちゃぁ

 京子「ぷはぁっ。はふぅ……はぷ」くちゃ じゅる れろ



 
 





25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 00:47:39.08 ID:Kr91SZkI0

 

 結衣「ぷはぁ―――おいしい。美味し過ぎるよ京子。わ、わたしのも―――」す…

 京子「ゆ、ゆひ……/////」はむ れろれろ

 結衣「ぷは……きょ京子ぉ……京子ぉ――――」がば だきたおし

 京子「ゆ…ゆい……すき…大好きぃ…ゆひぃ…………」

 結衣「京子ぉ…きょうこぉ…………」


 ―――――――――――――――――――

 ――――――――――――――

 ――――――――――

 ―――――――

 ―――――

 ――――

 ―――


 







27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 09:55:58.79 ID:Kr91SZkI0



 朝チュン。
 

 結衣「…………ん……あのまま寝ちゃったのか……」

 結衣「あのまま……――――!!?//////」

 結衣<わ、私…雰囲気に流されて京子とあ、あんなコトしちゃったんだ……>かぁぁ

 京子「ん……ン……ン…あ、結衣おはよー……ぶっ結衣の口の周りべちょべちょになってるぞ」くすくす


 






28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:09:41.43 ID:Kr91SZkI0



 結衣「――――!?そ、それは京子だって同じだろ!」ごしごし

 京子「……」さわ ぺちょ

 京子「あっ……あはは結衣とおんなじだ……えへへ結衣と一緒だ」にへら

 京子<いっしょ……ん?いっしょって……あっ////////>かぁぁぁ

 京子「ゆ、ゆ、ゆ、結衣にゃん。お、お顔が真っ赤だぞ//////」

 結衣「そ、それもお前も一緒だよ。か、顔を洗って来る。お前も後で洗ってこいよ」

 京子「う、うん……///」
 

 ――――――――

 ――――――

 ――――

 ―――


 






29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:11:05.50 ID:Kr91SZkI0



 結衣「それはそうと京子。こんな処で寝ちゃって風邪とか大丈夫か?」

 京子「えっ?」

 結衣「小さい頃に大風邪やって大変だった時もあったし、お前は元気だけど身体はそんなに丈夫じゃないとこもあるから心配だよ」

 京子「うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがと結衣。あっそうだ。朝ご飯食べたらデザート代りにみんなに貰ったチョコを食べなイカ?」

 結衣「そうだな。じゃあちょっと朝ごはんの準備して来るよ」

 京子「わ、私も手伝う」

 結衣「うん。ありがとう。じゃあお願いしようかな」にこ


 ―――――

 ――――

 ―――


 







30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:12:46.29 ID:Kr91SZkI0




 結衣「あかりはトリュフチョコかぁ……うん。普通に美味しい」もぐもぐ

 京子「普通に美味しいね」もぐもぐ

 結衣「千歳のはメダルみたいだな」ぱく ぽり

 結衣「ぽり?ん?これって……」

 京子「な、中に干した沢庵が入ってる……でもナンかそんなに嫌じゃない感じが……」ぽりぽり

 結衣「柿ピーチョコとかって感じかな?」


 
 





31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:14:37.32 ID:Kr91SZkI0

 

 京子「おっこれは、ちなっちゃんからだ―――!!」がさごそ

 京子「おっハート形のチョコにほっかむりを被ったネコの絵が描いてある……」

 京子「も、もしかして……」きゅぴーん

 京子「ち、ちなっちゃん。も、もしかして私の事を!?もう。ちなちゅはツンデレだなぁ」ちなちゅっちゅー

 結衣<…………あのちなつちゃんが、ちゃんとした絵を描いてる……>

 結衣<っていうか、ほっかむり被った猫って……>

 京子「あれ、チョコが割れてる……はは、ちなちゅはドジっ子だなぁ」にへらにへら



 
 





32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:16:00.39 ID:Kr91SZkI0

 

 結衣<明らかにわざとやってるよ……>サー

 結衣<と、なると……>

 京子「結衣のも開けてみてよ。箱の形からして案外チョコバットとかだったりして」にしし

 結衣「わ、わかったよぅ……ごくり」がさごそ

 京子「ナニかなナニかな~♪」

 結衣「ん?なんだコレは……?」

 京子「あっ!ちなつちゃんのチョコフィギュアだ!!すげーよく出来てる」ほぉ~

 結衣「…………ん?紙が入ってる。ナンか書いてあるな……」
 


 





33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:18:54.67 ID:Kr91SZkI0

 

 ―――親愛なる結衣センパイヘ

    冬の寒空の下。あかりちゃんにほんの少しだけ手伝って貰って

    仏師になったつもりで何日もかけて造りました。

    このチョコを私だと思ってじっくりねっとりと

    嘗める様に食べて下さいね。                


                  あなたのチーナより はぁと  ――――


 






34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:20:50.17 ID:Kr91SZkI0



 結衣<…………そ、そう言えばここのところ、ちなつちゃんとあかり、二人とも風邪気味だった様な……>

 結衣<それにしても京子へのチョコといい、ちなつちゃん。恐ろしい子……>

 京子「いいなーちなっちゃんチョコ。ねぇ結衣。私にも少しちょーだい?」

 結衣「駄目だよ京子。これはちなつちゃんが(異様な)愛情(?)を込めて作ってくれたチョコなんだ。責任(と覚悟)を以って私が食べ……ないとな……」ゴクリ…

 京子「むむ。もしかしておまっ、ちなちゅの事――――!?」

 結衣「ナニ言ってんだよ違うよ。お前も貰ったんだからいいだろ?」

 結衣「それより京子。お前こそちなつちゃんの事……ほ、本当に私でよかったのか?」

 京子「今更何を言ってるんだよ結衣。き、昨日あんなコトまでしたくせに/////」もじもじ

 結衣「――――――!!!//////」かぁぁ



 






35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:22:43.75 ID:Kr91SZkI0



 京子「それに私にとってちなつちゃんは、すぐ近くにいるアイドルってかんじかなぁ」

 京子「勿論。大好きなんだけど、その恋愛感情とかじゃなくて……わ、私がそういう風に想ってるのは結衣。お前だけだから……//////」かぁ もじもじ

 結衣「京子――――」だきよせ

 結衣「ありがとう。私もお前だけだよ……」ぎゅ

 京子「うん……」


 ―――――――

 ―――――

 ―――


 







36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:24:04.03 ID:Kr91SZkI0




 京子「ねぇ結衣。私、将来漫画家になりたいと思ってるんだ」

 結衣「ん?何?……ああ、ミラクるんの同人誌(まんが)も描いてるし、画も上手いからいいんじゃないか?」

 京子「うん。私もこれからもっとたくさんの画を描いてもっと上手くなるから。だからさ結衣……」

 結衣「ん?」

 京子「私と一緒に漫画家を目指そうぜ。私が画を描いて結衣がお話を考えるんだ」

 結衣「私も?」



 






37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:26:32.41 ID:Kr91SZkI0



 京子「そうだよ。この前さテレビで友達同士で漫画家になるアニメを視たんだよ」

 結衣「あっそれ視た事ある」

 京子「そしたら視ている内にすっごく羨ましくなってさ。もし結衣とそうなれたら、結衣とずっと一緒に居られるなって。それはとっても嬉しいなって思ったんだ」

 結衣「うーん。確かにそうだけど私に漫画の原作なんて出来るかなぁ」

 京子「結衣なら出来るよ…多分」

 結衣「多分て……でも、判ったよ。考えとく」

 京子「うん」にこ


 






38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/15(火) 10:30:13.78 ID:Kr91SZkI0



 それから私と京子は赦される限り一緒に居た。来年受験で塾に通うという事で携帯も買って貰った。

 二人で漫画家になるという事で次に出す同人誌を私も手伝う事になった。

 二人で食べて、寝て、遊んで、将来の事とか想像したりして。

 ただそれだけでとても楽しくて、あったかくて幸せな時間。





 でも―――――。


 『それ』は一通のメールから始まった。


 


 









41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 08:43:37.63 ID:EGJGRr6J0



 ここから地の文ぽくなりますがご了承下さい。


 





42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 08:46:26.50 ID:EGJGRr6J0




――――結衣にゃんごめん。ちょっちインフルエンザに罹っちゃったみたい
   
    少しの間会えなくなるけど、すぐに戻って来るから

    私と会えなくて寂しいだろうけど。ちょっとだけ待っててくれよな。――――


 







43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 08:48:42.48 ID:EGJGRr6J0



 そう言えばこの数日前から京子はマスクをして時折咳き込んでいたのを思い出す。

 本人はちょっと風邪ひいちゃったなどと言っていたけど、インフルエンザだったんだ。

 私は幼い頃に彼女が大風邪を引いて大変だった時の事を思い出し、嫌な予感とイメージが浮かんでしまうが顔を左右に振ってどうにか振り払う。
 

 それから、京子の身体の事もあって余り頻繁ではないけれど、携帯で通話したりメールのやり取りをした。内容は他愛の無いものだったけど、通話するごとに彼女の声がどこか弱々しくなっていく様な気がして、気のせいかも知れないけどそれが私の心を更に不安にさせる。


 


 
 





44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 08:50:52.84 ID:EGJGRr6J0




 そして数日後のメール。
 



――――ごめん。ちょっち入院する事になったみたい。
    七森記念病院だけど、感染し(うつっ)ちゃう
    かもしれないから、お見舞いはダメなんだってさ。
    つまんないけど、まあしょうがないかな。
    でも、早ければ一週間くらいで退院できるみたいだから
    悪いけどもうちょっとだけ待っててくれよな     ――――

 


 私の言い様の無い不安が、暗い靄(もや)がより濃く拡がっていく。


 






45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 08:52:52.09 ID:EGJGRr6J0



 その日の夜。



――――やった。うるさくしなかったら携帯使ってもいいって

    今は夜だからメールしか出来ないけど


    結衣。これでお前に寂しい思いはさせないからな   ――――


 







46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 08:57:13.54 ID:EGJGRr6J0




 翌日の夕方。


 結衣『もうすぐ学年末テストがあるから、早く戻って来てテストを受けないと、留年しちゃってあかりやちなつちゃんと一緒の学年になっちゃうぞ』

 京子『ちなっちゃんと同級生になれるのは嬉しいけど、やっぱり結衣の事を『先輩』ナンて呼びたくはないなー。それに学年違ったら結衣にゃん寂しがるしね』ごほごほ

 結衣『言ってろ』
 


 と言った京子との他愛の無い会話。彼女の声が聞ける嬉しさもあったけど、電話越しに聞く彼女の声は小声で話す以上にどこか弱々しく、そして時折咳き込むのが私の胸を締め付ける。
 

 その後も回数は多くないけど京子と話し、メールを送る度に私は励ましの言葉を綴り続ける。でも私にはそれしか出来なかった。それが堪らなく悔しかった。


 


 







47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 09:00:06.57 ID:EGJGRr6J0





――――食欲がないって言ったら点滴を打ってくれた。

    なんかホントに入院したみたいでカッコいい感じもするけど

    やっぱ早く結衣の家でラムレーズンとオムライスが食べたいな……――――




 






48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 09:07:15.05 ID:EGJGRr6J0




 日に日に少なく短くなる通話とメール。そして増えていく咳き込み。京子は気丈にも努めて明るく楽しげに振る舞っていたけど、無理をしているのは明らかで、それがとても痛々しくて切なくさせる。




 そして一週間経っても彼女は帰って来なかった。



 その代わりに届いたメール。



 


 







49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 09:11:55.53 ID:EGJGRr6J0




――――あちゃー咳ばっかしてたら呼吸器付けられちゃった。

    暫く話せなくなって結衣に寂しい想いをさせちゃうけど

    ゆるしてくれよな                 ――――



 結衣「――――――――!!」

 私は彼女の為に何もしてやれない自身の無力さに打ちのめされる。

 京子の状態は日に日に悪く…なっている……。

 そしてこんな大変な時にですら自分の事よりも私の事を想ってくれている事に、私はより強く心を掻き毟られる。



 
 





50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 09:18:32.90 ID:EGJGRr6J0

 


 私は堪らず京子の家を訪ねておばさんに京子の事を訊く。おばさんは努めて普段と変わらない表情と声で、ちょっと長引いちゃっているけど大丈夫だから。と、頻りに大丈夫を繰り返してしていた。だけどその表情と声に見え隠れする微かな震えと翳りに、流石の私でも無理して振る舞っている事位は理解出来た。

 後になってとても残酷な事をしてしまったと後悔したけれど、この時の私はこうでもしないととてもいられなかった。

 そしてこの時改めて彼女の病状が決して良くなっていない事を確信してしまう。



 そして。



 






51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 09:22:35.71 ID:EGJGRr6J0




――――はやくみんなにあいたい――――



 京子から届くメールはもうこんなにも短く簡単なものになっていた。

 携帯を打つ手が震える。

 嫌でも今の京子の様子を想像してしまい、もう彼女のメールを見る事すら怖くなっていた。



 
 






52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/16(水) 09:24:17.96 ID:EGJGRr6J0

 


そして―――――





――――ゆいにあいたあ――――





 このメールを見た瞬間。私は半ば無意識に家を飛び出していた。

 そして辿り着いた場所。


 そこは。



 『七森記念病院』



 京子の入院している病院だった。



 






56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:00:26.47 ID:pR1OCBos0



 病院に入った私は一目散に受付に駆け寄る。

 結衣「京子っ!京子はっどこですか!!?」

 受付「お見舞いの方ですか?失礼ですがどちらの『きょうこ』様でしょうか?」

 結衣「京子は京子だよっ!!歳納 京子!!!」

 受付<…………としのう…………やっぱり……>

 受付「失礼ですが、ご家族の方ですか?」

 結衣「そんな事はどうだっていいっ!京子は大切なっ。一番何よりも大切な奴なんだ!!」

 結衣「その京子が私に逢いたがってるんだ!!それ以上の理由なんてないよ!!!」



 






57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:02:16.01 ID:pR1OCBos0



 受付<こんなに必死になって……この子にとって歳納さんは掛け替えの無い、まるで恋人の様な存在なのね……でも――――>

 受付「……誠に申し訳ありませんが、歳納様は現在面会謝絶状態です。御家族では無い方、いえ例えご家族の方であっても御面会できる状態ではありません」

 結衣「あいつは……京子は………」ぽろ

 結衣「私に逢いたがってる……あいつは私が傍に居ないとダメなんだ……」ぽろぽろ ひぐ えぐ

 受付「………………」くっ…


 






58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:03:57.28 ID:pR1OCBos0





 ?「結衣ちゃん?」

 結衣「えっ!?……お、おばさん……?」くる はっ

 京子母「京子、京子って随分と騒がしい声が聞こえたと思ったら、結衣ちゃんだったのね」

 結衣「おばさんっ京子は京子はどうして――――」

 京子母「取り敢えず少し落ち着きなさい結衣ちゃん。ここは病院よ」

 結衣「そんなこ―――――……はい……」

 京子母「そうね。まずはそこに座りましょうか」


 






59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:09:07.62 ID:pR1OCBos0




 京子母「結衣ちゃん。心して聞いてね」

 結衣「……………」こく

 京子母「此処まで来て隠してもしょうがないから正直に言うわ。あの子はインフルエンザから併発して肺炎に罹っているの。それも末期症状の……」

 結衣「……肺炎……末期……」

 京子母「こんな事言うのは酷だけど。覚悟はしていて」

 結衣「………かく……ご…………」

 京子母「病気が病気なだけに今までお見舞いに行かせられなくてごめんなさいね」

 結衣「………………」

 京子母「……あの子は病室で何時もあなたの事ばかり話すの。あなたとどこに行った、何をしたって。それはもう私やあの子の父親が嫉妬してしまうくらいね……」

 京子母「それで何時も決まって私達にこう話すの」



 
 





60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:10:57.55 ID:pR1OCBos0

 

 京子母「早く退院して結衣に逢いたい。あいつともっともっと沢山の事をしたいって」

 京子母「その為に早く治したい。今まで以上に元気になりたいって。目をキラキラさせて本当に楽しそうに嬉しそうに言うのよ」

 結衣「京子……」



 京子母<…………うん>こく

 京子母「……ちょっと待っててね。結衣ちゃん」すっ

 結衣「えっ?あ、はい……」




 







61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:17:49.22 ID:pR1OCBos0




 半刻後。


 携帯『♪~♪~♪~』

 結衣<携帯?こんな時に……きょ、京子!?>ばっ

 結衣<京子からの電話……おばさんが繋いでくれたんだ>

 結衣『も、もしもしっ!!』

 京子『……ゆ…ゆい……ごめんね……』ひゅー ひゅう

 結衣『な、何だよ。ごめんねって何を謝る――――』




 京子『あり…が……と……だい……す…き…………』




 医師『!!!これ以上は無理――――』プツン ツーツー……




 



 



 







62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:20:29.81 ID:pR1OCBos0




 結衣「京子……京子ぉ――――」ぽろぽろ
 

 ぽろぽろと泪が零れ落ちる。この時私は解ってしまった。

 京子があの京子がこんなに素直に私に謝り、感謝と好意の言葉を発した事は無かった。

 あったけどどこかテレがあった。



 






63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:23:24.68 ID:pR1OCBos0





 そんな彼女が必死に紡ぎだした、私に伝えたかった事――――。



 そんな京子がこんなにも素直に…………。
 


 恐らくこれが私が聴く京子の『最後の言葉』――――。





 京子はもう――――。





 私の心は崩れ落ち、ただただ泣く事しか出来なかった――――。




 







64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:24:31.85 ID:pR1OCBos0




 そしてその次の朝。








 京子は息を引き取った…………。







 







65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:28:32.11 ID:pR1OCBos0





 この時。私の時も止まる。




 それと同時に私は泣く事を『ナミダ』を忘れてしまった。




 お通夜の時も。お葬式の時も。『泪』を思い出す事は出来なかった……。




 







66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:33:32.61 ID:pR1OCBos0




 あかりはわんわん泣いていた。ちなつちゃんもぼろぼろ泪を流していた。

 綾乃は気丈に振る舞っていたけど、堪え切れずに千歳の胸の中で泣いていた。

 その千歳も。そして京子の事を避けていた筈の千鶴さんも京子の為に泣いてくれていた。



 おばさんが最後にあなたとお話しできたお陰で、息を引き取った時はとても穏やかな顔をしていた。と、泪を拭いながら私にそう言ってくれた。

 あの時、京子の最後の声を私に聴かせる為に、あの状況下で京子と私の為におばさんはどれだけ無理を言ってくれたのだろうか。想像するだけで本当に頭の下がる思いだった。



 






67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:38:26.80 ID:pR1OCBos0



 だけどそれでも私だけは泣かなかった。いや、泣く事すら出来なかった。

 余りの喪失感に泪さえも失ってしまったのだろうか?。

 恐らく私は私の心にぽっかりと空いた大きな穴は、京子の死を受け入れない限り決して閉じる事は無いのだろうと思う。

 京子がインフルエンザに罹って学校を休む様になってから、病院で息を引き取るまで、ただの一度も逢えなかった。顔を見る事すら出来なかった。という事もあるのだろうか。

 私の中の京子は今も私を茶化したり、突拍子もない事を言ったりやったりする元気な姿の京子のままだった。

 だから未だ私は彼女の『死』をそして『別れ』受け入れる事も実感する事すら出来なかった。



 






68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:40:38.97 ID:pR1OCBos0





――――ずっと一緒にいようって言ったじゃないか!!。

    私が物語を考えて京子が画を描いて、二人で漫画家になろう。

    そう誓ったじゃないか!!!。              ――――




 そんな想いの叫びが私の心の空洞に反芻し響き渡る。


 その想いが響き続ける限り私の空洞は決して塞がる事は無く、そして泪を思い出す事も無いのだと思う。




 
 






69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:44:46.52 ID:pR1OCBos0

 



 それから私は3年生になり暫く経ったころ。ちなつちゃんから告白を受けた。

 ちなつちゃんは「結衣センパイの受験の邪魔はしない。いえ支えになります」

 ちなつ「京子センパイの代わりには為れないかもしれないけど、でも、それでも結衣センパイの支えになりたいんです」

 とまで言ってくれた。

 でも私はその想いを受け入れる事は出来なかった。

 ちなつちゃんがダメなんじゃない。京子以外に京子を失って出来た空洞を埋める事など出来ない。と頑なに思い込んでいたからだ。



 



 
 





70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 20:49:58.40 ID:pR1OCBos0

 

 結衣「ちなつちゃんには私よりもあかりの様な娘が合っていると思う。お互いに足りないものを補い合える様な……そんな娘が良いと思うよ」

 私はそんな偉そうな事を言ってしまってから、それが自身と京子の事を言っている事に気付く。

 ちなつ「あーあ。やっぱりダメだったかー。判りました。センパイの事は諦めて、センパイの言う通り、仕方ないですからあかりちゃんで手を打っておきます」

 ちなつ「でも結衣センパイを支えたいという気持ちは全然ありますから。いつでも私とあかりちゃんを頼って下さいね」

 ちなつちゃんは健気にも少し震えながらも、無理して笑顔で返してくれた。



 多分。別れた後に泣いたんじゃないかと思う。その時、彼女の側にあかりがいてくれればいいな。と心から思った。



 







71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/17(木) 21:00:11.32 ID:pR1OCBos0




 私もこの時泣きそうになっていた。でも泣けなかった。どうしても泣く事だけは出来なかった。


 ちなつちゃんの想いを無下にし、京子への想いに自らを縛り付け、こんなにも苦しくて哀しくて切ないのに。それでも泪を流す事は無かった。
 





 そしてそんな私を置き去りにするかの様に、それでも年月は流れ行く………………。




 












74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 07:51:59.26 ID:GP8dN7oI0









 10年後。






 その間に私は。

 中学を卒業し、高校に入学し、高校を卒業し、大学に入学し、大学を卒業し。

 そして今現在。













75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 07:54:21.88 ID:GP8dN7oI0




 私は京子との『最後』の約束を果たし、漫画の原作者としてデビューしていた。

 高校進学に際しては、文芸部と漫画研究会がある高校を選んでその両方に所属した。

 お陰で綾乃や千歳とは別の高校になってしまったけど、この時の私にとってそんな事はどうでも良かった。

 ただただ、出来るだけ早く京子と約束した夢を叶えたいという想いに囚われていた。

 そして一心不乱に漫画と物語の基礎を勉強して、ストーリーやネームと言った原作部門が有る漫画賞に可能な限り応募して、それが功を奏してか高校在学中に賞を獲る事が出来た。

 そしてその雑誌の編集の人が担当に付いてくれて、東京の大学に入学して三年目に入った頃に、原作者『東結 れいずん』(ひがしむすぶ れいずん)としてデビューする事が出来た。




 




76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 07:55:46.35 ID:GP8dN7oI0




 夢を叶えた。約束を果たす事が出来た――――。



 あれだけ努力して苦悩してその成果が実って、



 跳び上がる程に嬉しかったのに、感激に打ち震えたのに。



 それでも――――。











77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 07:57:35.21 ID:GP8dN7oI0




 涙は出なかった。心にぽっかり空いた穴の様な喪失感は埋まる事は無かった。


 ――――やっぱり『きょうこ』<と>じゃないと私の心は満たされる事は無いのだろう。


 私にとって『きょうこ』というフレーズは、大きく深く私の心を支配していた。


 最早、自分の力ではどうにもならない位に……。


 私は生前の京子に『お前は私が付いていないとな』とよく言っていたのだが、実際は<京子がいないと私は何も出来ない>と言う事を痛感させられていた。










78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 07:59:24.25 ID:GP8dN7oI0




 それでもデビュー作はそこそこヒットしてくれて、2年以上続けることが出来た。その後は人気漫画のノベルズ版の執筆等の仕事を手掛けたりしている。

 そして現在。そろそろ新作の構想を練って欲しいという、担当との打ち合わせを始め出した頃。

 突如、急で申し訳ないけどこれから私の部屋で打ち合わせをしたい。との担当からの連絡が入る。










79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:00:59.22 ID:GP8dN7oI0



 新作の構想は既に出来上がっていた。原作者を目指し始めたあの頃から考えていた。


 天真爛漫で元気な女の子と、ちょっとボーイッシュでゲーム好きだけど家庭的な処もあるの女の子との百合恋愛モノ(ユリコメ)。


 でも私はこの構想を発表する気にはなれなかった。出すとすれば私が『きょうこ』の事を受け入れる事が出来た時だと思う。










80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:03:10.46 ID:GP8dN7oI0



 京子の事を未だ受け入れず、理性(あたま)では判っていても感情(こころ)が拒否している私にとって、この作品を世に出す事は現状考えられなかった。

 そんな思いに耽っていると、不意に玄関のチャイムが鳴るのが聞こえて来た。

 結衣「はーい」

 インターホンのモニター越しに担当編集さんの顔が見えたので、ドアのロックだけ解除して私はキッチンに向かいコーヒーを淹れる。

 カップを二つ乗せたトレイを持ってリビングに入ると、いつも既にソファに座ってくつろいでいる筈の担当さんが、珍しく玄関側のリビングの入り口付近で立ったまま、私が来るのを待っていた様だった。

 私はカップをテーブルに置くと、担当さんに話しかける。



 







81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:04:51.66 ID:GP8dN7oI0



 結衣「あれ、どうしたんですか?いつもならソファにどかって座り込んで寛いでいるのに?」

 担当「どかって……まぁいいわ。ええ今日はね打ち合わせと言うよりも、ちょっと東結先生に紹介したい新人(こ)を連れて来たの」

 結衣「えっ?そうなんですか?」

 担当「ええ。早速紹介するわね。斎藤さん。いいわよ。入って来て」

 斎藤「はい」

 ドア「ガチャ」





 結衣「―――――え……………………………?」





 その子を見た瞬間。私の心が体が全て時が止まったかの様に呆然となる。




 







82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:07:24.48 ID:GP8dN7oI0












 斎藤「東放学園映画専門学校 小説・マンガ創作科卒の『斎藤 鏡子』(さいとう きょうこ)です!」










 鏡子「先生のデビュー作『いんびじぶる×ぶらっく』からファンになって先生の作品は欠かさずに拝見させて頂いています!今日はどうかよろしくお願いします!!」ふかぶかとおじぎ








 
 






83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:09:28.32 ID:GP8dN7oI0

 




 結衣「きょ、きょうこ…………」



 鏡子「はい?」きょとん

 担当「?」
 



 結衣「きょうこ――――――――――!!!!!」がばっ

 鏡子「きゃっ―――!!?」あたふた

 担当「!?」ざわ…ざわ…

 結衣「きょうこ……きょうこ………やっと、やっとみつけた………」

 鏡子「ちょっちょっと東結センセイ?」

 担当<ナンか知らんがキターーー>フォー!




 






84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:13:27.81 ID:GP8dN7oI0



 結衣「逢いたかった。逢いたかったよ……きょうこ………」

 鏡子「あ、あの…東結先生……少し苦し……」

 結衣「きょうこ…きょうこぉ…………はっ…ご、ごめん」ばっ

 鏡子「あ、いえ。いいんです。ちょっと吃驚しましただけで……」どきどき

 鏡子「むしろ大好きな作品の原作者の上に、こんなTケメンな先生に抱き付かれるなんて嬉しいです/////」ぽっ

 結衣「……お、おう」

 結衣<Tケメン?この語彙ホントに存在してたの?>



 結衣<でも……くりっとした目も、さらさらの髪も、白くきめの細かい肌質も、何から何まで『アイツ』そのもの……>




 






85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:16:36.30 ID:GP8dN7oI0



 結衣<まるで鏡に映したと言っても良い位に……>

 結衣<あいつがあのまま成長した姿の様にしか見えない……>

 結衣<いや。似ていると言うだけじゃない。この子を見た瞬間。心が暖かくなった。まるで京子をぎゅっと抱きしめた時の様に……急速に無くしたモノが充足していく。そんな感覚……>

 結衣<ダメだ……もう我慢できない!>

 結衣「……あの…も、もう一度ぎゅってしても良いかな?//////」

 鏡子「はい。いいですよ」にこ



 担当<キマシタワ――――――!!!>ほくほく つやつや




 






86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:18:17.12 ID:GP8dN7oI0



 結衣「ごめんね。何度も何度も」ぺこぺこ

 鏡子「いいえ。いいんです。でもどうして?」

 結衣「……うん。昔ちょっとあってね。キミを見た瞬間。その事を急に思い出しちゃって……」

 鏡子「そうですか……でも東結先生」

 結衣「?」

 鏡子「あ、あのその涙が……」おろおろ

 結衣「え……?」さわっ



 結衣<ほんとだ……私、泣いてる……やっと……やっと京子の事を受け入れる事が出来たんだ……>ぽろぽろ



 






87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:20:37.39 ID:GP8dN7oI0



 結衣<この娘のお陰で……>ぽろぽろ

 結衣<私のぽっかり空いた穴が、止まってた時間が……やっと閉じて、動き出した……>ぽろぽろぽろ

 鏡子「あ、あの?東結先生?」おろおろ

 結衣「ありがとう斎藤さん。キミのお陰だよ。本当にありがとう」にこ ぽろぽろぽろぽろ


 私はそう言って、今出来る精一杯の感謝と笑顔を彼女に贈った。


 ―――――

 ――――

 ―――



 







88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:22:18.46 ID:GP8dN7oI0




 鏡子「あの……これ、私が前に書いた同人誌なんですけど……見て頂けますか」

 結衣「うん。勿論だよ。どれどれ……」

 結衣「…………………」ふむふむ

 鏡子「…………………」どきどき




 結衣<『まっ直ぐスミレ!』……とある女子高に通う『東西 スミレ子』(とうざい すみれこ)とその同級生の『前田 直枝』(まえだ なおえ)との、ほのぼの百合コメディか……>

 結衣<話はうーんて感じだけど、画はやっぱり京子のミラクるんの画に似てるな……京子の画がそのまま上手くなった感じかな……でもホントに何から何までそっくりだ……>



 






89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:24:10.04 ID:GP8dN7oI0





 鏡子「あ、あの…どうですか?」

 結衣「うん。キャラクターはよく描けていると思うし画も上手いと思うけど、それに比べるとちょっとストーリーが弱いかな?」

 鏡子「そうですか…やっぱり……私、前に持ち込みをした時もその時の編集さんに「絵『は』プロレベルだけど話が絵に付いて行っていないって」言われて……」しゅん

 結衣<……あとタイトルももう少しどうにかならなかったの?とか言いたいけど流石に言わない方が良いかな……私も人の事は言えないし……>ふーむ

 鏡子「それでもう駄目かなって思った時に、この担当さんに目を掛けて貰ったんです」



 






90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:25:39.27 ID:GP8dN7oI0



 結衣「……そうなんだ。そんなことがあったんだね……」

 担当「私もそう思ってさっきも言ったけど、だから彼女をセンセイに紹介したの」

 結衣「?」

 担当「ほら、前に呑んだ時に酔った勢いで私に少しだけ話してくれた、元気な女の子とイケメンの女の子のやつ。あれなんかこの子の画にぴったりだと思うのだけど……」

 担当「それに彼女。『いん×ぶら』からの貴女の大ファンだって言うし。貴女に会わせるって言ったら私が吃驚する位に喜んでたのよ。そんな子なんだけどどうかしら?」




 






91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:27:59.27 ID:GP8dN7oI0




 結衣「…………………」


 結衣<……あの物話はもう書かない。いや……書けないと思っていた……>


 結衣<でも>す…


 鏡子「?」



 結衣<でも…今なら……『この子』となら!!>こくん ぐっ



 






92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:31:07.02 ID:GP8dN7oI0



 結衣「ねぇ斎藤さん」


 鏡子「はっはいっ!」


 結衣「私がこの仕事を志した時に最初に考えた物語があって、それを今度漫画化したいと思っていて。その作画を斎藤さんにお願いしたいと思っているのだけど。どうかな?」



 
 





93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/19(土) 08:36:08.88 ID:GP8dN7oI0

 

 鏡子「………………え??」

 鏡子「……わ、私なんかで良いんですか?」

 結衣「うん」

 鏡子「本当に良いんですか?」

 結衣「うん。むしろ君じゃなきゃこの話はダメなんだ。だから――――」

 鏡子「私ヤリますっ!!やらせて下さいっ!!!お願いしますっ!!!!」

 結衣「有り難う。これからヨロシク。斎藤センセイ」にこ

 鏡子「は、はいっ!こちらこそよろしくお願いしますっ!!」ふかぶかとおじぎ




 担当<ふふ。計画通り――――>ニヤリ





 こうして私は思い掛けず、再び掛け替えの無いパートナーに廻り逢う事が出来たのだった。



 







97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:40:43.08 ID:QZJMbgLX0




 私達はこうしてコンビを組む事になり、鏡子は私から京子の事を聴いて、何を思ったのだろうか自ら『新鏡極 子らむ』(しんきょうごく こらむ)という作家名に決めてしまった。そして私達のコンビ名を『らむ れいずん』と名乗る事になった。

 『らむ れいずん』は京子と一緒に漫画家を目指すと決めた時に、私が密かに考えていた作家名で、これは何十年もコンビでマンガを描き続けられている、とある先生にあやかったものだった。

 そう私が説明すると鏡子は喜んでこの作家名にする事に賛成してくれた。



 


 






98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:42:45.74 ID:QZJMbgLX0




 そして数ヵ月後。私達『らむ れいずん』は無事に連載デビューを果たす事が出来た。
 

 そしてその数カ月の間に、私達は仕事の上でも私生活の上でも公私共に、半ば自然にパートナーになっていた。


 仕事場が基本的に私のマンションの一室と言う事もあって、半同棲と言った感じになっていた。


 






99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:45:01.53 ID:QZJMbgLX0



 彼女が『その道?』に目覚めたのは、彼女が私に見せてくれた同人誌の登場人物のモデルとなった人の影響であるらしい。

 実は彼女の同人誌である『まっ直ぐスミレ!』の主人公の一人である『東西 スミレ子』のモデルは彼女の二つ上の従姉であり、その従姉からもう一人の主人公である『前田 直枝』のモデルになった人との話し(のろけ)を聴いて最初は憧れ、そして目覚めてしまったらしい。

 まあ、そのお陰で私は『きょうこ』と再び出会う事が出来、そしてこうして一緒にいられるのだから、その人には感謝してもしきれない程に有り難い事だと思う。


 






100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:47:10.87 ID:QZJMbgLX0



 仕事に於いては私も漫研時代に一応、背景や集中線等の基礎的な技術を習得している事もあって、あまりアシスタントを入れない様にしていた。

 まあ締め切りに間に合わない。落ちそうな時は臨時のアシさんに入って貰って。それでも間に合わない時は、大学入学の時に偶然に私と同じく上京した綾乃と千歳に無理言って手伝って貰ったりして(主にベタ塗り等をやってもらって)いるけど、基本的には二人で制作する様にしている。


 


 
 





101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:49:01.88 ID:QZJMbgLX0

 


 鏡子「結衣さん。お茶淹れましたよ」

 そう言って鏡子はティーカップを私の前に置く。

 結衣「うん。ありがとう」

 私は彼女にお礼を言うとカップを口の前まで持っていく。

 紅茶特有の香りが私の鼻腔を心地よく擽(くすぐ)る

 彼女の淹れてくれたお茶はお世辞抜きにとても美味しい。もしかしたらちなつちゃんよりも淹れるのが上手かもしれない。これも彼女の従姉の女性に教えて貰ったのだそうだ。


 おかげで元々コーヒー党であった私は彼女が来てからというもの、すっかり紅茶党に党替えをしてしまった。



 






102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:51:08.64 ID:QZJMbgLX0



 ついでに言えば炊事洗濯等の家事仕事は、私も出来ない方ではないとは思っていたけど、彼女に比べるとレベルの違いをまざまざと見せ付けられてしまう。

 言うなればプロと素人と言った感じだろうか。

 これら家事や身の回りの世話の事も殆んど、従姉の女性に習ったのだそうだ。
 


 どんな人なのか一度御会いしたいと思っている。



 
 





103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:52:23.81 ID:QZJMbgLX0

 


 そして香りを楽しんだ後に口を付ける。
 

 うん。やっぱり美味しい。


 腕前は勿論の事。彼女の私に対する愛情が為せる業であると私は思っている。


 ちょっと惚気て仕舞った。


 でも彼女は私の事を未だ『さん』づけで呼ぶ。



 






104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:54:57.21 ID:QZJMbgLX0




 同い年とはいえ彼女は一新人作家であり、一応、商業誌における実績のある私に対して、プライベートでも最初は『東結先生』と呼び、それから『船見先生』となり、やがて『結衣先生』とやっと名前で呼んでくれるようになり、最近になってようやく『結衣さん』と呼んでくれる所まで来たのだった。



 この奥床しさと言うか、控え目な処は京子とは違うところだ。


 ちなみに仕事場では一貫して『東結先生』と呼ばれ続けている。



 






105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:57:20.70 ID:QZJMbgLX0



 彼女は元々漫画を描くのが趣味で、大学在学中にも同人誌を発行していたりしていたのだが、就職先も決まり卒業を前にして突然、頭の中に直接『びびっと』天啓の様なものを受けて漫画家になる事に決め、専門学校に通う事にしたらしい。


 彼女は「『びびっと』なんて何か電波っ娘みたいで少し恥ずかしいです」。


 なんて事をはにかみながら言うのを、可愛いと思いながら聞いていたのだけど。

 彼女がどんな天啓を受けたのかはよく分らないけど、もしかしたら天国にいる京子が私達を導いてくれたのかもしれない。と思うのは流石に考え過ぎなのだろうか。



 そんな彼女にいつの日か『結衣』と呼ばせてみせると、私は心に密かな野望を持っているのだった。



 






106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 10:59:02.06 ID:QZJMbgLX0




 私は彼女と組む事が決まった時に京子との事を話した。彼女と、鏡子とこれからの道を共に歩んで行くにあたって、京子の事は絶対に話さなければいけない事だと思ったからだ。

 彼女は私と京子との事を泪を流しながら最後まで聴いてくれた。自分の事の様に私達の顛末を悲しんでくれた。そしてそんな私の事を受け入れてくれた。



 彼女が私に対してどこか控え目なのは、仕事のキャリアもそうだけど、もしかすれば京子に対する遠慮みたいなものもあるのかもしれない。



 






107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 11:01:02.64 ID:QZJMbgLX0



 彼女の性格は幼い頃の気の弱かった京子と、中学生の頃の天真爛漫な京子を足して2で割った様な感じだった。今考えると気の弱い京子も天真爛漫な京子も、変わらずに好きだったのだと思う。やっぱり私はその時その時の自然な『ありのままの京子』が好きだったのだと改めて思う。だからあの時、頭を打って強制的に性格が変わってしまった京子を受け入れられずに、その反動もあって京子の事が好きなんだ。と自覚したのだと思う。

 そして今。私の前にいてくれる『鏡子』。京子と容姿や雰囲気はそっくりだけど、やっぱりどこか違う『きょうこ』。私はそんな彼女にどんどん惹かれていっている。

 それと同時に京子の時みたいに突然どこかに『いって』しまう気がして、時折その時の事が発作の様に脳裏に浮かんでくると、胸がとても苦しくなり掻き毟られる想いに襲われる。



 私は何も変わらないなと思うが、此処まで来たらもうしょうがない。と思うしかないと半ば諦観している。



 






108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 11:02:38.95 ID:QZJMbgLX0



 鏡子「結衣さん」

 そんな事を想っていると、彼女が私に声を掛けて来た。

 結衣「ん?どうしたの鏡子?」

 鏡子「私は京子さんの代わりにはならないのかもしれないですけど、それでも私は私として貴女の側にいて貴女を支え続けます。いえ、支え続けたいと思っています」

 鏡子「京子さんには悪いですけど。私は決して貴女の前から居なくなりませんから。安心と……あと覚悟もしておいて下さいね」

 そう言って彼女は柔らかい表情でにこっと微笑む。彼女に私の心を見透かされている様な気がして、私の顔が熱くなってしまう。



 
 
 




109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 11:04:01.54 ID:QZJMbgLX0

 

 彼女の優しさが心遣いが素直に嬉しかった。そして愛おしかった。

 そうだっ。彼女は京子とは違う。幾ら似ていると言っても生き写しだったとしても、彼女は『斎藤 鏡子』は『歳納 京子』とは違う。

 でも私はそんな『斎藤 鏡子』を心から愛しているし、ずっとずっと一緒に居たいと思う。
 

 鏡子は私と京子の事を受け入れてくれた。そして京子の事を乗り越えさせてくれた。

 私の止まっていた時間を動かしてくれた。


 






110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 11:05:03.62 ID:QZJMbgLX0




 私は未だ心のどこかで彼女を『歳納 京子』と重ねているのかもしれない。そして彼女もそれに気付いているのだと思う。それでもその事を受け入れた上で、私を慕ってくれているのだと思う。
 



 でも――――



 







111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 11:06:47.84 ID:QZJMbgLX0




 それじゃあ駄目なんだ。


 彼女は記憶の暗い底に堕ちていた私を引き上げてくれた。


 私もそんな彼女を『斎藤 鏡子』の支えになりたい。一緒に居たい。共に歩んでいきたいと思う。


 勿論、『歳納 京子』の存在(こと)は私の心に、ずっと大きな存在として残って往くだろう。


 忘れる事なんて出来る訳がない。





 でも――――。




 







112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 11:09:02.38 ID:QZJMbgLX0














 ――――これからの人生(みち)をこの子と共に歩んでいこう――――












 私は改めてそう決意する。





 






113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 11:12:54.20 ID:QZJMbgLX0





 結衣「鏡子……」


 京子「はい結衣さん」


 結衣「これまでありがとう。そしてこれからも宜しく」


 私は彼女に対する精一杯の感謝と想いを込めて――――


 彼女に向かって微笑みを浮かべた。






 おしまい。




 






114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/21(月) 11:25:50.59 ID:QZJMbgLX0




 とりあえず、これでお終いです。

 読んで下さった方、そして更にレスをして下さった方、

 ありがとうございました。


 



 あと、余り安易に病気ネタは使いたくは無くて、

 トラックにでも轢かせようかと思っていたのですが、

 運転手のその後の人生を考えると余りに不憫なので、

 つい、安易な道に走ってしまいました。



 それでは。



 




 



117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 09:55:12.74 ID:YsC1ECGc0




 おまけ。 




 鏡子「お疲れさまでした。お茶を淹れましたからどうぞ」

 綾乃「あ、どうも」

 千歳「ありがとうな」

 結衣「ありがとう鏡子。ささ、そんなとこに立っていないで鏡子も座りなよ」

 鏡子「はい」す

 結衣「綾乃も千歳もありがとう。アシさんも都合付かなかったし、二人が手伝ってくれなかったら危なかったよ」

 綾乃「ううん。私たちなんてほんのちょっと手伝っただけだから」

 千歳「そうやで、斎藤さんの頑張りに比べたらなあ。でも追い込まれた時のあの集中力。まるでテスト前の一夜漬けで学年一位を取ってまう歳納さんみたいやったで」

 千歳「初めて船見さんに紹介された時も、ほんまに歳納さんが生き返ったかと見間違う程やったし……」



 






118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 09:57:04.94 ID:YsC1ECGc0



 綾乃「千歳」じっ

 千歳「あっ…あのそのごめんなヘンな事言って……」しゅん

 鏡子「あ、そんな御気を使わずに。鏡子さんの事は結衣さんから聞いていますから。私に似ているという事も」

 千歳「そっか…ありがとうな斎藤さん」ほっ

 結衣「それはそうと、二人とも仕事で忙しいのに。手伝って貰ってこんな事言うのもなんだけど大丈夫なの?」



 






119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 09:58:52.93 ID:YsC1ECGc0



 綾乃「ふふん。私も千歳もそんなにヤワじゃないから、心配ナイナイナイアガラよ」

 結衣「ぶふぉ」ぷるぷる

 綾乃「だから遠慮は、ノンノンノートルダムよ」

 結衣「ぶふぉ」ぷるぷる

 鏡子<結衣さん……杉浦さんのダジャレにあんなにウケて……>

 千歳「そうやで、ホンマにダメな時はダメって言うから遠慮せず何時でも言ってな」

 鏡子<よしっそれなら私もっ!結衣さんの為にっ!!>ぐっ

 鏡子「杉浦さん。池田さん。これからも宜しくヨーロッパです」ぺこり ちら





 結衣「……………」ぴた



 鏡子<えっ!?>


 






120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 09:59:58.04 ID:YsC1ECGc0




 結衣「どうしたの鏡子?ナンか固まってるけど」

 鏡子「あ……いえ。だいだいダイバーシティです」どやっ




 結衣「……………え?」

 鏡子<えっ!?>


 綾乃・千歳<あんなに必死になって……>いたたまれないしせん×2



 






121: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:01:09.89 ID:YsC1ECGc0




 鏡子「ぅぅ……」うるうる じわ

 綾乃「斎藤さん大丈夫だから……」す

 鏡子「す、杉浦さん……だ、大丈夫です。有り難う御座います」にこ

 綾乃<うっ!?>

 綾乃<――――/////この表情(かお)まるで健気でお淑やかになった、としのーきょーこそのもの。す、すっごくかわいいっ!!> どきどき はぁはぁ


 






122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:05:09.44 ID:YsC1ECGc0



 千歳「あ・や・のちゃん」ゴゴゴゴゴゴ…

 綾乃「!?」びくっ

 千歳「お・い・た。はいかんで?」ニコッ

 綾乃「は、はい」びくびく

 結衣「綾乃…」

 綾乃「!?」びく

 結衣「鏡子は『私』の大事なパートナーだから、手を出したら『殺っT』だよ」にこぉ

 綾乃「や、殺っT……??」

 綾乃<言葉の意味はよく分らないけど、とにかく凄く怖い……>がくがく ぶるぶる



 鏡子「結衣さん……」ぱぁ



 
 





123: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:08:49.88 ID:YsC1ECGc0

 


 ………………



 千歳「あっそうや。これ綾乃ちゃんとうちで作ったんやけどちょっと食べて見て」

 結衣「おっこれは」

 鏡子「おいしそうです」

 綾乃「私と千歳で作ったラムレーズンのプリンタルトよ。これなら斎藤さんの紅茶にだって見合う筈よ」ふんす

 結衣「そうか……二人ともパティシエだもんな」

 千歳「そうやで。未だタマゴやけどな。でもいずれうちがフルーツ漬けを極めて、綾乃ちゃんがプリン作りを極めたら、これを看板商品にして二人でお店を出す心算なんやで」ふんすっ

 綾乃「ふふ。だから船見さんと斎藤さんの手伝いをする事は、私達にとってもケーキの盛り付けやデザインの勉強になるから良い事なのよ」


 










124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:09:57.44 ID:YsC1ECGc0



 千歳「そう言う訳やからとりあえず食べてみてな」

 結衣「それならお言葉に甘えて」

 結衣・鏡子「「いただきます」」ぱく×2

 結衣「うん。おいしー。やっTおいしいよ」ぱぁ

 千歳・綾乃<<やっTおいしい??>>

 鏡子「とっても美味しいです。プリンとラムレーズンが絶妙なバランスで、単体同士よりも組合わさる事によって更に美味しくなっているって感じです」ほぅ///

 綾乃・千歳「「ほんと?よかったぁ」」ほっ


 
 





125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:12:21.29 ID:YsC1ECGc0

 

 結衣「でも二人とも大学を卒業してパティシエになるって聞いた時は吃驚したよ」

 結衣「国立の女子大に入った位だから、てっきり有名企業とか公務員にでもなるのかと思っていたから」

 綾乃「私も千歳も高校の時くらいから考えていたのよ。好きな事を二人でやろうって」

 綾乃「それに一応。管理栄養士とか製菓衛生士とかの資格も持ってるんだからねっ」ふふん ドヤ

 千歳「でもそれを言うなら船見さんの方が凄いわぁ。まさか漫画の原作者先生をやってるなんて。初めて聞いた時はほんまに驚いたんやで」

 結衣「私はただ、京子との約束を果たす事しか考えられなかったから、とにかく無我夢中でがむしゃらに頑張って訳が判らない内になれたって感じだったよ……」

 綾乃「そうね。私達もとしのーきょーこみたいに、とにかくやりたい事をやれるだけやろうって感じで……ふふ。私も千歳も船見さんも、結局としのーきょーこに振り回されたって事かしら?」

 結衣「はは。そうだね。でも振り回されるのも今となっては悪くなかったと思うよ」しみじみ

 綾乃「そうね……」しみじみ


 
 
 




126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:13:32.74 ID:YsC1ECGc0

 
 
 結衣「でも吃驚したって言うなら、あかりとちなつちゃんが北海道の農場で働いているって知った時が一番だったけど」

 綾乃「まさかあの二人が酪農家になっているなんて想定の範囲外だったわ」

 結衣「少し前にあかりから電話があって『あかりもーもーのお世話するのだ~いすき』なんて聞かされた時はホントたまげたよ」

 綾乃「吉川さんなんかは確か、最高のブランド牛を育ててみせるって息巻いてたのよね……」

 結衣「うん。あの声は本気そのものだったよ。でも何であれ自分の道を定めたんだからあの二人には頑張って欲しいと思う」しみじみ



 
 





127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:16:35.80 ID:YsC1ECGc0

 

 千歳「そうやねぇ。でもそんな事を言う船見さん。ほんまTケメンやわぁ」ひっく///

 結衣・綾乃「「ち、千歳まさか……」」ちら

 結衣・綾乃<<ら、ラムレーズン喰ってるーーーー!!!>>サー||||

 鏡子「………………」

 千歳「Tケメンは綾乃ちゃんの次くらいに好っきやでぇ~。だからちゅっちゅしよな~」チュ~

 綾乃「ちょっと千とs――――」

 結衣「千歳やめ――――」

 千歳「ちゅ~」



 






128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:18:16.73 ID:YsC1ECGc0




 鏡子【【 イケダサン 】】がし


 千歳「――――――!!?」ゾクゥッッッッッ――――

 鏡子「それ以上オ・イ・タが過ぎると『殺っT』しますよ」ニコ



 千歳「……はい………」

 千歳<余りの威圧感に一気に醒めてしもた……>がたがた

 綾乃<あの酔ってキス魔状態だった千歳を一瞬で正気に戻すなんて…斎藤さん……>



 綾乃・結衣<<恐ろしい子……>>




 
 






129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:19:29.57 ID:YsC1ECGc0

 


 鏡子「あと、私は結衣さんのモノですけど、結衣さんも『私のモノ』ですから――――」

 結衣「え?」



 鏡子と結衣の唇「「ちゅっ」」



 結衣「――――――!?」/////

 綾乃・千歳「―――――――――!!?」///////

 鏡子「『そう言う事』で以後よろしくお願いします」どやっ



 
 





130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:21:28.94 ID:YsC1ECGc0

 

 千歳「うぅ……あ、綾乃ちゃん。見せ付けられてもたぁ」うるうる

 綾乃「もう。しょうがないわね……じゃあ私達も――――」ふう すっ



 綾乃と千歳の唇「「ちゅっ」」



 結衣・鏡子「「―――――!!?」」


 綾乃「魅せ付けてやるんだからねっ」どや///////

 千歳「綾乃ちゃん――――やっぱ世界一大好きやでぇ!!」/////ひしっ



 










131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:22:27.50 ID:YsC1ECGc0



 鏡子「中々やりますね」ふふん


 結衣<??も、もしかして私だけ置いてけぼり……??>ぽつん



 ――――――――
 ――――――
 ――――
 ―――


 








132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:24:31.71 ID:YsC1ECGc0





 結衣「と、取り敢えず気を取り直して。えー今回の脱稿達成と、私達とここにはいないけどあかり達の前途洋洋を願って――――」


 結衣・鏡子・綾乃・千歳「「「「かんぱーーーい」」」」


 



 今度こそ本当におしまい。



 



133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/25(金) 10:27:36.96 ID:YsC1ECGc0


  
 かなり蛇足感は有りますが、

 消えてしまう前にやっつけですが、

 おまけを書かせて頂きました。


 これで本当に終わりになります。

 

 有り難う御座いました。


 それでは。


 
 


元スレ
SS速報VIP:結衣「きょうこ…………」