SS速報VIP:まどか「魔法少女の卒業式」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1334071700/2: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:31:20.86 ID:WIF0E7mp0
杏子「なんだかんだ言って、もうあたしたちがこうして手を組むようになって結構経つよな」
マミ「そうね……」
ほむら「あなたたちの協力があったおかげで、誰ひとり欠けることなくこうして生きていられるのよね」
ほむら「改めて、ありがとう」
さやか「何?らしくないじゃんほむら」
ほむら「わたしだってたまにはこうして素直になることくらいあるわよ」
杏子「何度でも言うけどな、あたしたちはあたしたちなりに守りたいものを守ったってだけだ」
マミ「………」
まどか「……?マミさん、どうかしたんですか?」
マミ「え?」
まどか「なんだが元気がないような気がしたんですけど……」
3: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:32:43.30 ID:WIF0E7mp0
マミ「そんなことはないわ、いつも通りよ?」
まどか「そう、ですか……?」
マミ「え、えぇ。紅茶のおかわり、淹れて来るわね?」トコトコトコ
まどか「やっぱり、マミさん元気ないよね?」
ほむら「確かに……いつもはこうしてお茶会を開いている時はとてもうれしそうにしているのに」
さやか「なんか、悩みでもあるのかな?」
杏子「そりゃ、あとひと月でこの町から離れるんだもん、元気もなくなるだろうよ」
まどか「え?」
ほむら「ちょっと杏子、どういうことっ?」
杏子「どういうも何も……マミは3月にゃ見滝原中学、卒業するんだぞ?」
さやか「う、うん。マミさんは三年生だし、そりゃ当然だけど……」
杏子「高校にあがるとなったら、一人暮らしのマミは寮のある高校にあがるだろうよ」
まどか「………」
杏子「見滝原に、寮ありの高校なんてねぇだろ?」
さやか「そ……そう、だね」
杏子「あたしたちともそれで離ればなれだろうし、またマミは一人ぼっちに逆戻りさ」
ほむら「っ……」
杏子「マミもあたしたちに相談しないとこを見ると、それを受け入れてるんだろうけどな」
ほむら「杏子、あなたはマミがどこの高校に進学するか、知っているの?」
杏子「いや、聞いてねぇな。でも、一人暮らしの学生なんて、世間体がよろしくねぇだろ?だから多分、学校の先生の勧めで寮ありの高校にあがると思うぜ」
さやか「そっか……マミさん、見滝原を離れちゃうんだ」
マミ「お待たせ、淹れてきたわ」トコトコ
まどか「……」
ほむら「……」
さやか「……」
マミ「ど、どうかしたのかしら?なんだかみんな暗くない?」
まどか「ねぇ、マミさん……」
ほむら「!」
さやか(まどか?)
マミ「何かしら?」
まどか「マミさんは、その……中学を卒業したら、どうしようとか……考えてるんですか?」
マミ「!」
まどか「見滝原を……離れちゃうんですか?」
マミ「ええと……そう、ね。高校は、寮制のところへ行くから……見滝原を離れることに、なるわね」
まどか「寂しくないんですか?」
マミ「寂しいけれど……こればかりはしょうがないわよ。わたしが一人になった時から、こうなることは決まっていたんですもの」
杏子「………」
夜―――
マミ「それじゃ、みんな、気をつけて帰るのよ?」
まどか「はい……」
さやか「ごちそうさまでした、マミさん」
ほむら「……またね、マミ」
バタン
マミ「はぁ……」
QB「どうしたんだい、マミ?ずいぶんと元気がないみたいだけれど?」
マミ「あら、キュゥべえ」
QB「?」
マミ「キュゥべえは……わたしが見滝原を離れても、ついてきてくれるわよね?」
QB「え?マミは見滝原を離れるつもりなのかい?」
マミ「ええ。高校に進学する時に、離れるのよ」
QB「それじゃあ、ほむらたちとは離ればなれになるんだね」
マミ「そう、なるわね」
QB「心配しなくても、僕は魔法少女の近くにはいつもいるさ」
QB「グリーフシードを処理するのは、僕の役目だからね」
マミ「キュゥべえがいてくれるんなら……一人でも、少しは寂しさは紛れるかな」
QB「この家……というか、マンションだね。ここはどうするつもりなんだい?」
マミ「高校を卒業したら、またこの町に戻ってくるつもりだから……それまでは、もぬけの殻になっちゃうわね」
帰り道―――
まどか「マミさん……」トボトボ
杏子「なんでまどかがそんなに落ち込んでるんだよ?」
まどか「だって、マミさん、また一人っきりで魔女と戦うことになるんだよ?」
ほむら「新しい町で、またインキュベーターが魔法少女の契約をするかもしれないわよ?」
さやか「うーん……マミさんの性格を考えると、それはないと思うな。魔法少女の真実、知っちゃってるし」
ほむら「………」
杏子「そんなにマミのことが心配かよ?」
まどか「そうに決まってるよ!」
杏子「心配すること、ねぇと思うけどな」
まどか「え?」
杏子「マミは、お前らが思ってるほど弱い奴じゃねぇよ。現にお前らと会うまでは、一人で戦いぬいて来たんだぞ?」
まどか「それ、は……」
さやか「ならさ!」
まどか「!」
さやか「マミさんの卒業式に、ワーッとお祝いしてあげようよ!」
杏子「マミの卒業式、か……」
さやか「そう!ここにいるみんな、少なからずマミさんの影響を受けてるでしょ?」
さやか「あたしはマミさんの志を受け継いで、この町で魔法少女を続けていく!」
杏子「あたしも、マミとは昔コンビを組んでた仲だな」
ほむら「一人っきりの孤独な戦いというのは、確かに共感できるところがあるわね」
まどか「わ、わたしは……」
ほむら「引け目を感じることはないわよ、まどか?」
まどか「……うん」
さやか「期間はあとひと月もあるんだし!いいんじゃないのかな?」
杏子「そうだな、賛成だ」
ほむら「わたしもその案に乗らせてもらおうかしら」
まどか「……わたしも、賛成!」
さやか「よしっ、決定だね!」
ほむら「詳しい話は、わたしの家ですることにしましょうか」
さやか「マミさん、喜んでくれるといいなぁ」
杏子「ついでに、あたしたちもマミからの卒業ってことになりそうだな」
さやか「おっ、杏子詩人だね!」
杏子「はん、マミの影響を受けてるからな」
ほむら「詳しい話は、また明日ね」
杏子「だな。もう今日は遅いし」
ほむら「明日の放課後、わたしの家に集まってくれるかしら?」
さやか「了解っ!」
杏子「ああ、わかった」
まどか「ウェヒヒ、サプライズパーティだね!」
さやか「どんなのにするか、悩みどころだねぇ」
まどか「わたし、お父さんに教わってケーキでも作ってみようかな?」
さやか「ん、いいねぇそれ!普段はいつもマミさんが作ってくれるし、たまにはアリだね!」
第一部「マミの卒業式」
翌日、放課後―――
まどか「わたしだけ掃除で遅くなっちゃった……ほむらちゃんの家に急がないと」タッタッタ
マミ「あら?鹿目さん?」
まどか「っ!」ピタッ
マミ「そんなに急いで、どうかしたの?」
まどか「い、いえ、別に急いでるわけじゃ……」(どうしよう、マミさんにばれるわけにはいかないんだけどな……)
まどか「そ、そういうマミさんは何をしてたんですか?」
マミ「わたしは、いつも通り魔女退治の為のパトロールよ」
まどか「パトロール中だったんですか」
マミ「ええ。こればかりはサボるわけにもいかないもの。それじゃ、わたしは行くわね?」
まどか「は、はいっ!気をつけてください!」
マミ「ありがとう、鹿目さん」ニコッ
ほむらの家―――
ピンポーン ガチャ
ほむら「待っていたわ、まどか」
まどか「お邪魔します!」
杏子「おせぇぞ、まどか!」
まどか「ごめんごめん、杏子ちゃん」
さやか「マミさんに見つからなかった?」
まどか「ここに来る途中、パトロール中のマミさんに会ったけど、ばれてはいない、と思うな」
ほむら「わたしたちも、後でパトロール行きましょうか。マミ一人に負担をかけるわけにはいかないものね」
さやか「それじゃ!第一回、マミさんからの卒業式会議、始めるよ!」
ほむら「テンション高いわね……」
さやか「こういうのはしんみりしたら負け!元気よく行こー!」
杏子「そうだな、あたしもそれがいいと思うぜ!」
ほむら「とりあえず、会場はわたしの家にしましょう。飾り付けとかは、わたしがやるわ」
杏子「あたしもほむらの手伝いだな。一人じゃ大変だろうし」
まどか「わたしはね、ケーキを作ろうかなって思うの」
杏子「ケーキ!」
さやか「あたしはまどかの手伝いかな。ケーキの他にもお菓子とか用意してさ!」
杏子「おお……今から楽しみだ……」
ほむら「杏子、よだれ出てるわよ」
杏子「おっと、やべぇやべぇ」フキフキ
さやか「パーティグッズとかも用意しよう!クラッカーとかヒゲメガネとか!」
杏子「もちろん、付けるのはさやかだな!」
さやか「えっ!?」
ほむら「いいわね、似合いそうだわ」
さやか「それを似合いそうと言われて、あたしは喜べばいいんでしょうか!?」
まどか「うーん……ヒゲメガネをつけてるさやかちゃん、かぁ……」←想像中
まどか「………プッ……あははは!」
さやか「ひどっ!?まどかひどっ!?」
まどか「ご、ごめんごめん……でも、ぷふっ……だ、ダメだ、笑っちゃうよ!」
アハハハ……
町外れ―――
マミ「っ……はぁ、はぁ……」
使い魔「」シュウウウウウゥゥゥゥ……
マミ「使い魔なのに、こんなに強いなんて……」
マミ「この使い魔の本体、相当強力な魔女ね……」
マミ「この町には本体はいないみたいだけれど……」
マミ「これからはわたし一人になるんだから、もっと強くならなくっちゃ……」
マミ「そうよね……今までも、一人だったんだもの……頑張らなくっちゃ」
二週間後―――
使い魔「」シュウウウウウゥゥゥゥ……
杏子「……なぁ、ほむら」
ほむら「ええ、わかっているわ」
杏子「なんだろうな……ワルプルギスの夜とは言わねぇけど、それを彷彿とさせるような不安感があるぜ」
ほむら「………大丈夫よ。わたしたちは、そのワルプルギスの夜を乗り越えたんですもの。どんな魔女だって、わたしたちが協力すれば、倒せるわ」
杏子「嫌な時期に来るなよな、魔女の野郎……」グッ
ほむら「愚痴っていても仕方ないわ。とりあえず倒すことは出来たのだし、帰りましょう。パーティの準備をしないと」
杏子「ああ、わかってるよ」
商店街―――
さやか「どうだっ!?」バッ
まどか「うんっ、似合う似合う!やっぱりほむらちゃんの言った通りだね!」
さやか「うーん……やっぱり複雑な気分だね。果たしてこれを似合うと言われてあたしは喜べばいいのか否か……」
まどか「似合うって言われて、悪い気はしないでしょ?」
さやか「まぁそりゃそうなんだけどさぁ……。……っ!」
まどか「さ、さやかちゃん?どうかしたの?」
さやか(魔女の気配……?いや、それにしては弱い……使い魔、かな……?)
まどか「ま、まさか……魔女?」
さやか「ううん、多分使い魔だと思う。ごめんまどか、これ、買っておいて!」
まどか「あ、さやかちゃん!」
さやか「心配しなくっても、不覚は取らないって!」タッ
裏通り・廃工場―――
さやか「この辺り……!いた!」
使い魔「アハハハハハハ!」
さやか「例え使い魔だろうと、手加減しないよ!」パァァァ
さやか「てぇいっ!」ブンッ!
使い魔「アハハハ!」ヒョイッ
さやか「あ、このっ!」タンッ
使い魔「アハハハハハハ!」ゴッ
さやか「うくっ!?」グラリ
使い魔「アハハハハハハハハハ!」シュルルル
さやか「しまっ……!」
ドドドン!!
使い魔「アハハハ!?」バスバスバス!
さやか「っ!?」パラリ
マミ「大丈夫、美樹さんっ!?」タンッ
さやか「マミさん!?」
マミ「またあの使い魔なのね……」
さやか「またって……?」
マミ「最近、この町に頻繁に姿を現しているのよ。使い魔なのに、結構手ごわいの。油断しているとやられるわ!」
さやか「っ、はい!」
使い魔「アハ……アハハハ……」シュウウウウウ……
さやか「た、倒した……」
マミ「嫌な予感がするわね……」
さやか「くそっ、なんでこんな時に限って……!」
まどか「さやかちゃん!」タッタッタ
さやか「まどか!」
まどか「あっ、マミさん!?」サッ
マミ「鹿目さんも一緒だったのね。二人でお買いものしてたの?」
まどか「あ、えっと……」
さやか「使い魔だったけど、マミさんが来てくれなきゃまずかったまずかった!あはは、不覚は取らないって言ったのに恥ずかしいね、こりゃ!」
マミ「あまり心配させないでよ?わたしがいなくなったらと思うと不安になるわね……」
住宅街―――
マミ「それじゃ、ここでお別れね」
さやか「はい、また明日!」
マミ「ええ、気をつけて」スタスタ
まどか「ちょっと焦ったよ……」
さやか「でも、勘付かれてないっぽいし、よかったよ」
まどか「あと二週間、なんとか気付かれずにやれるといいんだけどね……」
さやか「大丈夫大丈夫!ほむらと杏子の方も準備進んでるみたいだし、隠し通せるって!」
まどか「卒業式まで、あと二週間だね……」
さやか「……ん、そうだね。まどか、卒業式当日に泣くなよ?」
まどか「ちょっと自信ないかな……あはは」
さやか「まどかは泣き虫だからねぇ」
卒業式前日―――
ほむら「いらっしゃい、上がって」
まどか「お邪魔しまーす、と……」
杏子「おっ、来たか、さやか、まどか」
さやか「おおおおぉぉぉ……だいぶ進んでるね!」
ほむら「後は、メイン看板を作ろうと思うの。真ん中に大きく『マミの送別会』って書いて、周りにはわたしたちの寄せ書きを書いて」
さやか「そんなことしたら、マミさん感動して泣いちゃうよ!?」
ほむら「ふふ、いいじゃないの。泣かせるのが目的だもの」
まどか「ほむらちゃん、ちょっと笑顔が黒いよ!?」
ほむら「マミが泣いたら、このデジカメに収めて茶化してあげようと思うの」
杏子「おっ、いいなそれ!」
さやか「それじゃ!第5回にして最終会議、始めますか!」
まどか「今回は、段取りの最終確認だよね?」
ほむら「ええ。わたしと杏子は、先に家に帰ってきてスタンバイ。マミの迎えには、さやかにお願いしようと思うわ」
さやか「おぉう、主賓の送迎か……責任重大だなぁ」
杏子「まどかは、家に帰ってケーキを焼いて来るんだよな?」
まどか「うん。生地作りから全部やらなきゃだから、ちょっと時間かかっちゃいそうだけど」
さやか「あたしも一応他のお菓子を作りながら、まどかの手伝いをするつもりだよ」
ほむら「そうなの。さやかと二人で、おいしいケーキを作りなさい、まどか」
まどか「うん!」
杏子「んで、マミがここに来た時に、最初に全員でクラッカーを鳴らしてお出迎えだ」
さやか「クラッカーはたくさん用意してあるからね!もうドンドン鳴らしちゃってくださいな!」
ほむら「鳴らす時に『ティロ・フィナーレ』とでも言ってあげたら喜ぶかしら?」
杏子「その案、いただきだな!」
まどか「い、嫌がらせにならないかな?」
ほむら「ふふふ、マミは嬉々として撃つもの、喜んでくれると思うわ」
さやか「んじゃ、その方向でいこっか!」
アハハハ……
マミ「………暁美さんの家、ずいぶんと賑やかね……」
マミ「……っ!また、あの使い魔……?」
マミ「行かなきゃ……」タッ
卒業式当日―――
『卒業証書、授与』
まどか「マミさん、ホントに卒業しちゃうんだ……」
さやか「ん……魔法少女としても、学生としても、先輩だったもんなぁ、あたしから見たら」
まどか「新しい町に行っても、マミさん、元気でやってくれるよね?」
さやか「そりゃ当然っしょ。魔法少女としての、あたしの憧れだし」
『巴マミ』
マミ「はい」
『あなたは本校の過程を終了し―――』
まどか「マミさん……っ」ウルウル
さやか「まだ、泣くのは早いよ、まどか?」
まどか「わかってる、けど……っ」
校門前―――
女性徒「巴さん、新しい町に行っても元気でね……?」ポロポロ
マミ「ええ、あなたたちも、元気でね?」
女生徒「メールとか、するから」
マミ「ありがとう」ニコッ
さやか「同じクラスの子、かな?」
まどか「そう、みたいだね……」
さやか「ちょっと、声掛けづらいね……」
ほむら「………」
女生徒「じゃあね、巴さん……」
マミ「ええ……卒業、おめでとう」
女生徒「巴さんも、卒業、おめでとう……」タッ
マミ「………」
さやか「あ、あの、マミさん……?」
マミ「? あら……鹿目さんに美樹さん、暁美さんまで……」
ほむら「卒業、おめでとう」
マミ「ありがとう」ニコッ
さやか「これで、ホントにマミさんとはお別れになっちゃいますね」
マミ「そうなるわね。わたしがいなくなった後の見滝原を、お願いね?」
ほむら「あなたがいなくったって、守って見せるわ」
マミ「うふふ、それだけの大口を叩けるなら安心ね?」
ほむら「ええ。安心して、新しい町へ行きなさい」
マミ「そうね……あなた達なら、安心して任せることが出来るわ」
マミ「この校門からの光景も今日で見納めだと思うと、少しだけ寂しいわね……」ウルウル
ほむら「泣きたいなら泣いてもいいのよ?」
マミ「っ……後輩の前で涙を見せる先輩がどこにいるのよ」ゴシゴシ
さやか「マミさんもなかなか素直じゃないねぇ」
マミ「こう言う時くらい、先輩らしいカッコいいところ、見せなくっちゃ……」
まどか「っ……マミさぁんっ!」ダキッ
マミ「!」
まどか「寂しいよ、マミさんっ……」ギュッ
マミ「ふふ、ありがとうね、鹿目さん。わたしの為に泣いてくれて……」ナデナデ
まどか「グスッ……」
マミ「暁美さんや美樹さん、佐倉さんをお願いね?」
まどか「……はい」ポロポロ
杏子「卒業式、終わったんだな」
マミ「佐倉さん。来てくれたのね」ニコッ
杏子「そりゃ、仮にもあたしの師匠の卒業だもんな、来ねぇわけにはいかねーよ」
マミ「ありがとう。あなたたちみたいな後輩に囲まれて、わたしは幸せ者ね」
ほむら「あなたの人柄に惹かれたのよ、みんな」
マミ「そうだと嬉しいわね……」
マミ「そうだ!あなたたち、今日は暇かしら?よければわたしの家で、お祝いしない?」
まどか・さやか・ほむら・杏子「!」
マミ「何か、用事あるかしら?」
ほむら「ごめんなさい、わたしはパスね」
さやか「あ、あたしもちょっと、用事あるからパス!」
杏子「悪いな、あたしもパスだ」
まどか「えと、わたしは……」
ほむら(気にすることないわよ、まどか。ここは断っておきなさい。じゃないと、予定が狂うわよ?)
まどか「……ご、ごめんなさい…わたしも、ちょっと大事な用事があるので……」
マミ「あら、そうだったの……残念ね」ショボン
まどか(心が痛むよっ!)ズキズキ
ほむら(も、問題ないわ)ズキズキ
杏子(ごめんな、マミ……)ズキズキ
さやか(後でお出迎えしますんで、待っててくださいマミさんっ!)ズキズキ
まどか「ただいまーっ!」バタン
さやか「お邪魔しまーす」
知久「おや、お帰りまどか。それに、いらっしゃいさやかちゃん。これから、前に言っていたケーキ作りかい?」
まどか「うんっ、そうだよ!」
知久「やっぱり、僕も手伝ってあげたほうが……」
まどか「ダメって言ってるでしょ、パパ?わたしの先輩へのお祝いなんだから、わたしとさやかちゃんの二人で作るの!」
さやか「そうそう、まどかの言うとおりですよおじさん!心配しないでも、さやかちゃんがいるから大丈夫です!」
知久「あはは、そうかい?」
まどか「パパは、タツヤの面倒見ててあげて?」
知久「うん、わかったよ。頑張れ、まどか、さやかちゃん」
まどか「うんっ!」
さやか「おーし、いっちょ張り切って作りますかー!」
ほむらの家―――
ほむら「これで、準備完了ね」
杏子「後は、まどかがケーキを持ってくるのを待つだけだな?」
ほむら「ええ。さやかはまどかの手伝いをして、ここに来る時に別れてマミの家に迎えに行くことになっているわ」
杏子「楽しみだな!」
ほむら「わたしたちは待ってる間に、飲み物でも用意しましょうか?」
杏子「マミなら、やっぱ紅茶が喜ぶんじゃねえのかな?」
ほむら「紅茶ね……わたし、淹れたことないのだけれど」
杏子「あたしは昔からマミが紅茶淹れるとこ見てるし、見よう見真似でならなんとか出来ると思うけど……」
ほむら「うーん……やっぱり、普通の飲み物を買いに行きましょうか」
杏子「ん、そうだな」
マミの家―――
マミ「はぁ……」ショボン
QB「元気ないね、マミ?」
マミ「今日はお祝いする気満々だっただけに、誰も来てくれなかった時の事は考えていなかったわ……」
QB「卒業式後に一人って言うのも、寂しいものだね」
マミ「言わないで、言わないでキュゥべえ……」ブワワッ
マミ「………っ!」パァァァァァ
マミ「魔女の気配……!?」
QB「かなり大きな反応だね」
マミ「今まで出没していた使い魔の本体かしら?とにかく、行きましょう!」スクッ
QB「他のみんなに連絡はしないのかい?」
マミ「みんな、用事があるらしいの!」タッタッタ
QB「一人で勝てるのかい、マミ?」
マミ「一人でもやらなくちゃいけないでしょう?」タッタッタ
マミ(それに……今後はまた一人きりの戦いが、待っているのだし)タッタッタ
マミ(一人でも……いえ、一人でやらなければならないのよ、巴マミ!)タッタッタ
町外れ―――
マミ「………ここ、ね」パァァ
ズアアアァァァァァ………
結界内―――
マミ「ティロ・フィナーレ!」バシュウウ!
ドォォォォン!!
使い魔「アハハ!?」シュウウゥゥゥ
マミ「はぁ、はぁ……くっ、使い魔一体一体が強いわ……!」
QB「これは、本体はかなり強力な魔女だね。やはり、一人では厳しいんじゃないのかい?」
マミ「でも、ここで逃したら被害者が出てしまうわ……!ここで、一人で仕留めるっ!」タンッ
ドドドン!!
スーパー―――
ほむら「……!」パァァァ
杏子「おいほむら!」
ほむら「魔女の気配……!?くっ、なぜこんな日に限ってっ!」
杏子「マミが一人で向かってるかもしんねぇ!あたしたちも行くぞ!」
ほむら「ええ、わかっているわ!」
まどかの家―――
さやか「っ!」 パァァァ
まどか「さやかちゃん、どうかしたの?」
さやか「魔女の気配が……!」
まどか「えっ!?」
さやか「ごめんまどか、後ここお願い!あたし、行かなくっちゃ!」タッ
まどか「う、うんっ!気をつけてね!」
結界中枢―――
魔女「オオオオオオオヲヲヲヲヲヲヲヲヲ………」ゴォォォォッ!!
マミ「ぐぅっ!!?」ビュオオオオ!!
マミ「くはっ……!」ズザザァァァ!!
魔女「オオオオオ!!!」ブゥン!!
マミ「くっ!?」タンッ
ドガガガガガガ!!
マミ「はぁ、はぁ……く、強い……!」
マミ(わたしのマスケット銃じゃ、クリティカルヒットでも本体にダメージは与えられない……せいぜい、使い魔を仕留める程度……!)
魔女「オオオオオオ……!!」ゴゥッ!!
マミ「くぅっ!」タンッ
マミ(接近戦でダメージを?いえ、ティロ・フィナーレならダメージを与えられるかも……!)シュルルルル ボンッ
魔女「オオオオオオオ!!」
マミ「食らいなさいっ!!ティロ・フィナーレ!!」バシュウウウ!!
ドガァァァァン!!
マミ「はぁ、はぁ……ど真ん中に命中……!これで……っ!?」
魔女「オオオオオォォォォォ!!」ブワアアアアアァァァァァ!!
マミ「そ、そんな……少しだけ傷をつけただけなんて……っ!」
マミ「くっ……」
使い魔×2「アハハハ!!」スタスタッ
マミ「後から後から使い魔が出て来る……キリがないわっ……!」
QB『やはりここは一時撤退した方がいいよ、マミ!』
マミ「いえ、でも……っ」
マミ(迷いは行動を遅らせるわ!引いちゃダメよ、わたし!)グッ
使い魔×10「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」スタスタスタスタスタスタスタスタスタスタッ!!
マミ「……くそっ!!使い魔の相手はしていられない!魔女本体を拘束してしまえば……!!」シュルルルルル
グルグルグル!!ギュッ!!
魔女「……!?」グググッ…
マミ「これで身動きは……!?」
魔女「ヲヲヲヲヲヲ!!!」ブチブチブチ!!
マミ「こ、拘束魔法を力づくで引きちぎるなんて……!」
使い魔×2「アハハハハハ!!」ヒュヒュン!
マミ「つ、使い魔が……っ!」ドドンッ!
バスバス
使い魔×2「アハハ……ハハハハハハ……」シュウウゥゥゥ
マミ「まだ、わたしは戦え……っ!?」
使い魔「キャハハハハハハハハ!!」ゴッ
マミ「うぐっ……!?」グラリ
使い魔×2「アヒャヒャヒャハハハハッハハハ!!!」ヒュヒュッ!
ガシガシッ!
マミ「しまっ……!?」
魔女「ヲヲヲヲ!!!」グワッ!!
マミ「――――――!!!」
まどかの家―――
まどか「うーん……みんな、大丈夫かなぁ」←ケーキの焼き上がり待ち
チーン
まどか「あ、焼き上がった!」ガチャ
ホクホク……
まどか「いい匂いだよ!えへへ、マミさん喜んでくれるといいなぁ♪」
結界外部―――
ほむら「はっ、はっ……!」タッタッタッ
杏子「ほむら!この魔力……!」タッタッタッ
ほむら「っ……間違いないわ!マミがすでにここへ来て、戦っている!急ぎましょう、杏子!」
杏子「ああっ!」
杏子(マミ、あたしたちが着くまで無事でいろよ……!!)
ポタッ……ポタッ……
マミ「うぐっ……ごふっ…!」ビチャビチャッ
魔女「オオオオオオオオオ……オオオオオオオオオオン……」
マミ「お、なかが……っ!」ポタッ…ポタッ…
マミ(幸い、貫通することはなかったけれど……身動きが……)フラフラ
マミ「血、を……流し過ぎた……かしら、ね……ふふっ……」フラフラ
マミ(一応、リボンで止血はしたけれど……これが、この魔法の本来の使い方、なのかもしれないわね……っ)
使い魔「キャハハハ……アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」ヒュンヒュンヒュン!!
マミ「ま、けるわけに、は……!!」ジャコッ
マミ(……っ……手、が……震えて、照準が定まらない……っ!)ブルブル
マミ(わたし……ここで死ぬのかしら……?)ドサッ
使い魔×4「キャハハハハハハハ!!」スタスタスタスタッ!! バキ グシャ
マミ「ぐぅっ、あうっ……ごは……っ」
ズザザッ
ほむら「ここが中枢ね!?マミはどこに……!?」
杏子「いたっ!!あそこ!!」
使い魔×4「アハハハハハハハハハハハハ!!」バキ ドガッ グシャ
ほむら「っ……!!マミっ!!!」
杏子「てめぇら、そこをどきやがれっ!!!」ブゥンッ
使い魔×4「キャハハ!?」バキバキィィ!!
ほむら「大丈夫、マミ!?」
マミ「げほっ、がはっ……あ、あけ、み、さん……?」ボタボタッ
杏子「なんだよ……マミ、死ぬんじゃねぇよ!おい!」
マミ「ふふ……なに、を、言っているのかしら、佐倉さん……?わたしは、死んでないわよ……げほっ」ビチャッ
ほむら「いいわ、しゃべらないで!さやかもここへ向かっているはず!彼女なら、この傷を癒すことも出来るわ!」
マミ「傷……?あぁ、このお腹の……けほっ、だいじょ、うぶ……痛みは、かなり遮断しているから……」フラフラ
杏子「お、おいマミ!?じっとしてろ!!」
マミ「わたしのことより、魔女、を……」
魔女「オオオオオオオオオオオ……」ユラユラ
ほむら「……よくも、わたしたちの計画を邪魔してくれたわね、魔女」
魔女「オオオオオオオオ!!」 ビュッ!!
ほむら「今、わたしはかなり頭に来ているの」キィン ポイッ
ドォォォォォン!!
使い魔×2「アハハハ!?」ドガァァァン!!
杏子「ちょっと、手加減出来そうにねぇな!!」ブゥゥゥゥン!! ドガガガガガ!!
使い魔×5「アハハハハハハ!!?」ズググググッ
杏子「くたばれぇぇ!!」ズバァァン!!
マミ「そ、そんなことより、どうしてあなたたち、ここに……?二人とも、用事があったんじゃ……?」
杏子「話は後だ!いいからマミは安静にしてろっての!!」
ほむら「さっさと片付けて、準備の続きをしなければならないものね」
マミ「準……備……?わたしの、お葬式のことかしら……ふふ……」
杏子「縁起でもねぇこと言うな!マミは死なない!!絶対にだっ!!」
マミ「佐倉、さん……」
タッタッタ―――
さやか「はぁ、はぁ……杏子、ほむら!大丈夫!?」
杏子「さやか、おせぇ!!」
さやか「ご、ごめんごめんって!それより、マミさんは!?」
ほむら「彼女なら、そこの壁で休んでいるわ!あなた、治癒の魔法使えるでしょう!?」
さやか「え……っ!?」
マミ「………美樹、さん……あなたも来てくれたのね……」
さやか「マミさんっ!!大丈夫ですかっ!?」
杏子「バカ野郎!その傷で大丈夫なわけあるか!!いいから早くマミの傷を治してやれ!こっちは、あたしとほむらでなんとかする!!」
さやか「う、うん!マミさん、じっとしててください!!」
パァァァァァァァ……
マミ「………」(なんだか良い気持ち……)
さやか「……っ……」
パァァァァァ…
魔女「オオオオオオオオ!!」ビュビュンッ!
ほむら「ちっ!」タッ
杏子「んなもん効くかっ!!」ヒュヒュ スパスパッ!
魔女「オオヲヲヲヲヲ……」
使い魔「キャハハハハ!!」ヒュンッ
ほむら「うっとおしい使い魔ね!!仕方ないわ……!!」ジャコンッ
ほむら「杏子!離れて!!」
杏子「ああっ!?って、ロケットランチャー!?」タタンッ
ほむら「一気に使い魔を片付ける!!」カチッ ピタッ
杏子「 」
使い魔×6「 」
ほむら「……」バシュバシュバシュバシュバシュバシュ
カチッ
ドドドドドドオオオオオオオオオオォォォォォォン!!!!!
使い魔「キャハハハ……」シュゥゥゥゥゥ……
魔女「オオオオオ……ヲヲヲヲヲ……」ユラユラ
さやか「……よしっ!とりあえず、傷は塞ぎました、マミさん!」
マミ「ええ……ありがとう、美樹さん」
さやか「まだ安静にしてた方がいいです。それじゃ、あたしも行きますんで!」
マミ「……いえ、わたしも一緒に行くわ」
さやか「いいんですってば!あたしたち、『仲間』ですもんね!」
マミ「………」
さやか「あたしたちに甘えてくださいよ、マミさん!」タッ
さやか「杏子、ほむら!あたしも加勢するよ!!」ジャキッ
ほむら「マミの傷は!?」
さやか「大丈夫、もうなんともないよ!」
ドガガガガガガガガ!!
マミ(……わたし……バカだったわ……)
杏子「おらぁ!!」ザシュッ
さやか「ていっ!!」ズバズバッ!!
マミ(一人になるからと言って、今から一人で戦うことなんてなかったわ……そうよ。美樹さんも、暁美さんも、佐倉さんも)
マミ(みんな、大切なわたしの仲間だわ。わたしはもう、一人じゃない)
ほむら「はっ!!」ドドン
マミ(例えみんなとは離れても……わたし達は、ずっと仲間……そうでしょ、わたし?)
魔女「オオオオオヲヲヲヲ……」
マミ「みんな下がって!トドメを差すわ!」
ほむら・さやか・杏子「!」タタタンッ
マミ「ティロ・フィナーレッ!!」 バシュウウウウウウ!!!
ドガァァァァァァァン!!
魔女「オオオオオオオオオヲヲヲヲヲヲヲヲ……」シュウウウウウウ……
ズアアアアアァァァァァ……
コンコンコン……コロコロコロ……
さやか「あー、しんどい……」
杏子「一番後に来たのに何がしんどいだ!根性見せろ!」
さやか「全力疾走後に全力の戦いだよっ!?しんどくないわけないじゃん!!」
ほむら「それはわたしたちも一緒よ」
さやか「先輩方はきついっすねぇ……」
マミ「……ありがとう。あなたたちが来てくれなければ、やられていたところだったわ」
杏子「ったく、ビビらせんじゃねぇよ。あたしたちがここに来たら、血まみれで手下にぼこられてやがって」
さやか「ほ、ホントに!?」
マミ「ええ……危ないところだったわ」
杏子「あたしたちに甘えられるときは遠慮しねぇで甘えろっての」
ほむら「そういうことね。なんでも一人で背負い込もうとするのは、あなたの悪い癖よ、マミ」
マミ「反省するわ……」
杏子「マミは一人にしちゃ心配だな……あたしも、マミについてった方がいいか?」
マミ「え?」
ほむら「そうね、それもアリかもしれないわ。杏子がいなくなっても、わたしとさやかが残るし」
マミ「い、いいの?佐倉さん?」
杏子「気にすんな。あたしは、基本的にゃ根無し草だからな」
マミ「………ありがとう、佐倉さん……」ポロポロ
杏子「お、おいおい泣くなよマミ!?」
マミ「じゃあ……わたしと、一緒に来てくれる?佐倉さん」ゴシゴシ
杏子「ああ、いいぜ。一人ぼっちは、寂しいからな!」ニカッ
マミ「……あら?何かしら、これ」ガサッ
ほむら「!?」
マミ「飲み物……ね。誰かが買ったのかしら?」
杏子「あ、あー……それは、な」(おいほむら!どうすんだ!?)
ほむら(目のつくところに置いておいたのは失敗だったわね……)
ほむら「そ、それはわたしがここに来る前に買ったものよ」
マミ「ずいぶんと大量に買っているけれど……」
ほむら「それは、その……」
さやか「もう言っちゃっていいんじゃない?」
ほむら「……そうね。これ以上隠しても、あまり意味はないでしょうし」
マミ「?」
ほむら「とりあえず、わたしの家に行きましょう」
マミ「え?でもあなたたち、用事があったんじゃ……」
さやか「いいからいいからマミさん!」
杏子「ほむらの家にいきゃわかるって!」
マミ「……?」
ほむらの家―――
ほむら「上がって、みんな」
さやか「お邪魔しまーっす!」
ほむら「あ、マミはちょっと玄関で待っていてくれるかしら?」
マミ「え、ええ……?」
杏子(ほれ、ほむら、さやか!クラッカー!)ポイポイッ
ほむら(ええ)パシッ
さやか(ほいきたっ!)パシッ グイッ
さやか(あ)
パァァァン!
マミ「!?」
杏子(バッ、何やってんだよさやかっ!?)ヒソヒソ
ほむら(どこまで愚かなの、美樹さやか!?)ヒソヒソ
さやか(だ、だってだって!紐の部分で受け取っちゃったんだもん、しょうがないじゃんっ!!)ヒソヒソ
ドタドタドタッ
マミ「な、何の音!?」ガチャッ
杏子「あ」
ほむら「あ」
さやか「あ」
マミ「……あら?」
マミ「……これ、は……?」
杏子「あーもうっ!!さやかの馬鹿野郎!!」
ほむら「あなたのせいで何もかも台無しよ、美樹さやか!!」
さやか「全部あたしのせい!?大体、杏子がクラッカーを投げて渡すから……!」
ワーワー ギャーギャー
マミ「え、ええと……?」
看板『マミの送別会』
マミ「わたしの、送別会……?」
杏子「ばれちゃしょうがねぇな!そうだよ!今日のみんなの用事ってのは、これだよ!」
さやか「あたしって、ホントバカ」
ほむら「反省しなさい、美樹さやか」
ほむら「まどかがまだ来ていないから、来るまで待とうかと思っていたのだけれど……」
杏子「このバカがクラッカーを誤爆させたのが一番の失敗だな」
さやか「うう、ごめんなさい……」
マミ「あなたたちは、本当にもう……」ポロポロ
ほむら「っ!杏子、デジカメ用意!」
杏子「おうよ!」
マミ「なによ、わたしの泣き顔撮影まで予定していたの……?」ポロポロ
ほむら「これは予定のウチよ。さ、マミ。顔をよく見せなさい」
マミ「っ……ええ、ありがとう」ニコッ
パシャッ
10分後―――
ピンポーン
まどか「デコレーションに凝ってたらだいぶ遅くなっちゃった。みんな、待ってるだろうなぁ」
ガチャ
ほむら「来たわね、まどか」
まどか「うん!ほら、ケーキ!うまく行ったんだよ!」
ほむら「……非常に残念なお知らせがあるわ、まどか」
まどか「……え?」
マミ「こんばんは、鹿目さん」ニコッ
まどか「お、遅すぎた……?」
杏子「心配すんな、責任は全部こいつにあるから」
さやか「もう許してよ……」
さやか「さて、それじゃ改めまして……」コホン
さやか「マミさん、卒業おめでとーっ!!」パァァァン!
ほむら「卒業おめでとう、マミ」パァァァン!
杏子「おめでとう!」パァァァン!
まどか「おめでとう、マミさん!」パァァァン
マミ「ありがとう、みんな。こうしてわたしがお祝いしてもらえるなんて、夢にも思わなかったわ」ハラハラ
杏子「ははは、紙まみれだぞ、マミ?」
ほむら「ここでも記念に一枚撮っておきましょうか」パシャッ
まどか「ほら、マミさんのお祝いに、ケーキ焼いて来たんだよ!」
さやか「おおおっ、おいしそうだね!」
まどか「チョコにメッセージを入れるのに苦労したんだぁ。ほら、これ!」
マミ(わたしは、本当に幸せ者ね。ありがとう、みんな……)
QB「なんだ、みんなここにいたのか。僕がみんなを探してる間に魔女は倒しちゃうし、僕は何をしていたんだろうね」
マミ「あ、キュゥべえ!途中でいなくなったと思ったら、みんなを探してくれていたのね」
QB「結局無駄足だったけれどね。それよりも、何やら楽しそうな雰囲気だね」
ほむら「今日くらいは、あなたも同席してもいいわよ?」
QB「おや、今日はほむらも優しいね」
まどか「はい、キュゥべえの分のケーキ!」
QB「ん、これはまどかが焼いたのかい?」
まどか「うん、そうだよ!」
QB「ありがたくもらうことにするよ」
ほむら「……今回はまどかに契約を迫らないのね?」
QB「さすがにこう言う席でそういうことをするほど、僕も無粋じゃないさ」
杏子「ところで、さやか」ヒソヒソ
さやか「ん、何?」ヒソヒソ
杏子「なんか大切な事忘れてねぇか?」ヒソヒソ
さやか「大切なこと?」ヒソヒソ
杏子「ほれ、これだよ」ヒソヒソ
さやか「えー……ホントに付けなきゃだめ?」ヒソヒソ
杏子「せっかく買ったんだし、付けなきゃもったいないだろ?」ヒソヒソ
さやか「もう、しょうがないなー……」イソイソ
マミ「おいしいわ、鹿目さん」モグモグ
まどか「えへへ、ありがとうマミさん!」
杏子「マミ、マミ」チョイチョイ
マミ「?」モグモグ
杏子「さやかの方、見てみろ」クイックイッ
マミ「美樹さんを?」モグモグ
ほむら「……?」モグモグ
まどか「?」
さやか「ほいっ!ヒゲメガネさやかちゃんだよっ!」バッ
マミ・ほむら「ぶほっ!!?」
まどか・杏子・さやか「!?」
マミ「っ、げほっ、げほっ……!」トントン
ほむら「ざや、がっ……げほ、げほっ!」
さやか「うははは、大成功!ってか、ほむらは知ってたはずじゃん!?」
杏子「大丈夫かマミ!?ほら、お茶!」
まどか「ほむらちゃん、お茶お茶!」
マミ「あ、ありがとう佐倉さんっ……」ゴクゴク
ほむら「っ……」ゴクゴク
ほむら「不意打ちとはいい度胸ね、美樹さやか」
さやか「いや、だからマミさんはともかくあんたは知ってるはずじゃ……」
マミ「うふふ、似合っているわよ、美樹さん」
さやか「も、もうヤケだ!似合ってるは褒め言葉だっ!!」
QB「やれやれ、なぜあの程度で吹き出すのか、やはり僕には理解できないね」
まどか「ティヒヒ、こう言う時は、楽しくやればいいんだよ?」
QB「まぁ、それは知識としてはわかっているけれどね」
まどか「もうひと月もしないうちに、マミさんはこの町を離れちゃうんだもん。こうやって騒げるのも、あとちょっとなんだなぁ……」
マミ「長期の休みには、わたしもこの町に戻ってくるわ。その時は、またこうしてお茶会を開きたいわね」
さやか「ホントですか!?いやー、早くも夏休みが楽しみになったねぇ!」
ほむら「あなたはいつも楽しみじゃないのかしら?」
さやか「むっ、どういう意味さ!?」
ほむら「言ったままの意味よ?」
さやか「ぐぬぬ……ほれほれ、もっとあたしの顔をよく見てみろほむらっ!」ズイッ
ほむら「や、やめなさいっ……」プルプル
三月の終わり―――
杏子「ん、あらかた荷物は片し終わったな!」
マミ「そうね。この家とも、お別れね……」
杏子「名残り惜しい、か?」
マミ「それはそうよ。わたしが魔法少女となって、長い間お世話になった家ですもの」
杏子「ま、それも高校三年間の辛抱だな」
マミ「ええ……。暁美さんも、美樹さんも、頑張ってほしいわ」
杏子「さて、それじゃ行くかマミ!」
マミ「………少しだけの、お別れね」
駅―――
さやか「あっ、来た来た!」
マミ「みんな……」
ほむら「あなたがこの町を離れるとなると、寂しくなるわね」
まどか「新しい学校でも、頑張ってくださいね、マミさん」
さやか「元気があればなんでも出来る、ってね!」
マミ「………見送り、ありがとう。三年後には、わたしも見滝原に帰ってくるから。それまで、この町の平和をお願いね?」
ほむら「わたしはあなたの方が心配よ。いくら杏子がいると言っても、無茶はしないでね?」
ほむら「また見滝原で会える日を、待っているわ」
マミ「ええ。わたしも、楽しみにしているわ」
杏子「……汽車、来たぞ」
マミ「ええ、わかっているわ……」
さやか「ファイトだ、マミさん!」
ほむら「杏子と二人、手を取り合って頑張りなさい」
まどか「うぅ、寂しいよっ……」ポロポロ
マミ「泣かないで、鹿目さん?」
まどか「っ……」
マミ「お別れは、笑顔で。ね?」
杏子「あたしがついてるからな。新しい街だろうとなんだろうと、うまくやっていけるさ」
まどか「………」コクッ
杏子「あたしも、しばらくはお別れかな。と言っても、あたしは別に学校に通うわけじゃねえから、その気になりゃいつでも帰ってこれるんだけどな」
さやか「杏子……マミさん、守ってあげてね?」
ほむら「あなたともお別れね。元気でやりなさい、杏子」
杏子「ああ、わかってるよ」
マミ「それじゃ、行きましょっか?」
杏子「ん!それじゃ、さやか、ほむら、まどか!元気でな!」タッ
マミ「また会いましょう」タッ
まどか「あっ……」
ピィィィーーーーーッ ガシャン、ガシャン……
まどか「……行っちゃったね、マミさんと杏子ちゃん」
ほむら「彼女達とも色々とあったけれど……やっぱり、お別れは寂しいものね」
さやか「マミさーーーん!杏子ーーーー!!元気でやれよーーーーっ!!」ブンブン!
ほむら「またいつか、会いましょう……マミ、杏子」
さやか「……ふぅっ!それじゃ、ほむら!魔女退治のパトロールにでもいこっか!」
ほむら「早速ね、さやか」
さやか「マミさんに託されちゃったからね!頑張るしかないっしょ!」
まどか「あ、わたしも……ついていっていいかな?」
ほむら「え?でも、それは……」
さやか「まぁまぁ、たまにはいいじゃん!大丈夫、まどかはあたしとほむらが守るから!ね、ほむら?」
ほむら「……ええ、そうね」
まどか「……!ありがとう、二人とも!」
第一部「マミの卒業式」 完
一旦投下終了して、修正作業に入ります
第一部に出て来た魔女の超個人的設定も作ってあるので乗せておきます。
慟哭の魔女。その性質は悲哀。
常に嘆きの叫びを放つ、竜のような姿をした魔女。何に悲しんでいるのか、何故嘆いているのか、彼女にはわからない。
或いは、嘆く為に悲しみ、悲しむ為に嘆いているだけなのかもしれない。
他の魔女に対する仲間意識が異常な程強い。彼女が見滝原に訪れた理由は、数多くの魔女が見滝原にて消息を絶った為である。
使い魔を数多く召喚する彼女を倒す為には、こちらも一人ではなく複数人で挑む他は無い。
慟哭の魔女の手下。その役割は滑稽。
悲哀の叫びを放ち続ける魔女の悲しみを癒す為に、いつも笑い声を放っている。
多くの手下が見滝原へ訪れた理由は、消滅した魔女の魂を悼む為である。
見滝原から五駅離れた町・雪咲(せつざき)町―――
マミ「この町は見滝原と違って、魔女の出現頻度が少ないわね」
杏子「おかげでグリーフシードは手にはいんねぇけどな」
マミ「あら、でも未使用のグリーフシードが2つあればしばらくは持つんじゃないの?」
杏子「そりゃそうだけどな……なんか、物足りねぇなぁ。マミの卒業式の時に出現したような魔女とか、でねぇかな?」
マミ「わたしはもう二度とごめんよ。あの時、一度本当に死ぬ思いをしたのよ?佐倉さんも知っているでしょう?」
杏子「まぁ、そりゃあ、な。血まみれで使い魔にボコボコにやられてたな」
マミ「使い魔に両腕を封じられて、触手で腹を貫かれそうにもなったし」
杏子「あー……あの腹の傷は、それでか……」
マミ「貫通することだけは避けることが出来たけれど……もう、あんな強力な魔女とは戦いたくないわ」
杏子「おぉう……そしたら、あたしたちが駆け付けなきゃマジでヤバかったんだな」
マミ「魔女相手に一時退却はわたしのプライドが許さないけれど、あの時はホントにそれを考えたわね」
杏子「マミは文字通りの正義の味方だからなぁ。それが原因で一度あたしとも袂を分かつことになったんだし」
マミ「まぁ、そんな昔のことはいいわ。つまり、平穏なのはいいことってことよ」
杏子「あー……でもやっぱり物足りねぇ!」ウズウズ
マミ「わたしが学校に通っている間にも、あなたはパトロールしているのでしょう?」
杏子「まぁ、あたしももう見た目高校生と同じくらいだし、今はバイトしながらだけどな」
マミ「え?」
杏子「え?」
マミ「あなた、バイトしていたの!?」
杏子「あれ、言ってなかったっけか?」
マミ「聞いていないわ!どこでバイトしているの?」
杏子「工事現場で、ひたすら穴を掘るバイトだな」
マミ「こ、工事現場……?」
杏子「ああ。最初はどっかスーパーとかがいいかなって思ったんだけど、それだと履歴書だとかなんだとかでめんどくせぇんだよ」
杏子「でも、工事現場だと言ったらその場で採用してくれてな。それに金も、日払いだし。これが結構割がいいんだよ!」
マミ「そ、そうなの……でも、女の子がそういう仕事って、大変じゃないかしら?」
杏子「魔法少女なんだから、んなことは関係ねぇよ。力だって人一倍だしな!」
マミ「頼もしいのね、あなた……」
杏子「ん、そろそろ時間だな」
マミ「今日も、これからバイト?」
杏子「ああ、そうだ。っと、サイフサイフ……」ゴソゴソ
マミ「あら、いいのよお金は。喫茶店くらいなら、わたしがおごるわよ?」
杏子「たまにはあたしにもカッコつけさせてくれって!おっ、あったあった!」ヒョイ
マミ「!?」
杏子「んー……2000円あれば足りるか?」
マミ「ちょちょちょちょっと待ってっ!?なんでそんなにサイフ分厚いの!?」
杏子「いや、働いてるウチにこんなになっただけだけど……?ほい、2000円」トン
マミ「え、ええっと……」アングリ
杏子「んじゃ、あたしは行ってくるからな!マミはゆっくりしてろって!今日、学校休みなんだろ?」タッタッタッ
マミ「そ、そうねっ!わたしはゆっくりさせてもらおうかしら……」
マミ「………工事現場……すごいのね」ゴクリ
夜・杏子のアパート―――
杏子「ふいー、疲れた疲れた……」バタン
杏子「さて、飯食って寝るかな……あ、その前に風呂か」
杏子「………めんどくせぇな……」ボフッ
杏子「腹は減ったけど……明日は休みだし、このまま寝ても……」
杏子「………クカー………」
翌日―――
杏子「……ん」パチッ
杏子「ふあー……朝か……」ムクッ ポリポリ
杏子「……ん?」カミゴワゴワ
杏子「う、うわあああああああああたしの自慢の髪があああああああっ!!?」
昼間―――
杏子「よ、よしっ……なんとか元のさらさらヘアに戻ったぞっ……」ファサッ
杏子「んー……っと」キュッ
杏子「さて、どうすっかな……仕事休みだし、魔女退治のパトロールでもいんだけど……」
杏子「マミは今日、学校だったな……」
杏子「たまにゃ、見滝原に帰ってみるかな……」
見滝原―――
杏子「見滝原よ、あたしは帰って来たあああっ!!」スタッ
通行人「ヒソヒソ…」
杏子「あん?何見てんだよ?」
通行人「いえ、なんでも……」
杏子「……とりあえず帰ってきたはいいけど、考えてみりゃまどか達も学校なんだよな……」
杏子「あれ?んじゃあたし帰って来た意味ない?」
杏子「………どうしよう」
杏子「!」パァァァ
杏子「魔女の気配!来た来た、やっぱこうでなくっちゃな!」
町外れ―――
杏子「この辺か……ふっと!」スパンッ
ズアアアァァァァ……
魔女「グオオオオオオギャアアアアアア………」ボロボロ
ズアアアアアァァァァァァ……
ヒューーー………コンコン……コロコロ
杏子「うしっ!グリーフシードゲット!」ヒョイッ
杏子「」グゥゥゥゥ……
杏子「腹、減ったな……」
杏子「なんか飯でも食いに行くか!金はあるんだしな!」
杏子「食い逃げじゃねぇぞ?今、あたしはリッチなんだ!」キリッ
杏子「金があるって、こんなにも嬉しいことだったんだなぁ……」ジ~ン
夕方―――
杏子「んー……んめぇ」モグモグ スタスタ
さやか「あれ?杏子……?」
杏子「?」クルッ
さやか「やっぱり杏子だ!」
杏子「さやか?さやかが普通に外にいるってことは……」
さやか「? そいやマミさんは?」キョロキョロ
杏子「やっべぇ!マミに断りなく来たんだった!もう帰んなきゃ!」
さやか「あ、ちょっと杏子~!?」
杏子「わりぃ、さやか!あたし、ゆっくりしてる暇ねぇんだ!んじゃな!」タッタッタ
さやか「……行っちゃった。なにさ、久しぶりの再会なんだし、もっとしんみりしてくれたっていいじゃん」ムスッ
夜、雪咲・郊外―――
マミ「………佐倉さん……」グスッ トボトボ
タッタッタ―――
マミ「?」
杏子「はぁ、はぁ……悪い、マミ!」
マミ「佐倉さん!?今までどこに行ってたのよもうっ!一人で寂しかったんだから!」
杏子「わりぃわりぃ!休みで暇だったから、ちっと見滝原に帰ってたんだ!」
マミ「見滝原に!?ずるいじゃない!」
杏子「だから、悪かったって!」
マミ「もう……わたし一人で手に負えない魔女が現れていたらどうするつもりだったのよ」
杏子「あん時みてぇな強力な魔女なんて、そうそう現れねぇだろ?今日だって一体出たけど、あたし一人で倒しちまったし」
マミ「あなた、自由よねぇ……わたしも、あなたみたいな生活にあこがれるわ……」
杏子「んじゃ、一緒にホームレスでもするか?」
マミ「それは遠慮したいわ。第一、あなたももうホームレスじゃないでしょう?」
杏子「え?……あー……言われてみりゃそっか」
杏子「帰る場所があるのも、嬉しいもんだな」ニカッ
マミ「ええ、そうね。そしてそれは、わたしたちで言うところの見滝原もそれに当たるのよね」
杏子「そうだな。見滝原にゃマミのマンションがあるしな」
マミ「……わたしが高校を卒業して、見滝原に帰ったら……佐倉さん、一緒に暮さない?」
杏子「え?」
マミ「わたしも、今は寮生と一緒に暮らしているようなものだけれど、また一人暮らしに戻ったら寂しくなると思うの」
マミ「でも、誰かが一緒に暮らしてくれたら楽しくなると思わない?」
杏子「んー……そうだなぁ……」
マミ「嫌かしら?」
杏子「それも悪かねぇかもな」
マミ「本当っ?」
杏子「ああ。マミがいいってんなら、一緒に暮させてもらおうかな」
マミ「ありがとう、佐倉さんっ!これで、もう何も恐くないわ!」
杏子「大げさだな……んで、これからどうすんだ?」
マミ「そうね、今日のパトロールもそろそろ引き上げようかと思っていたのよ」
杏子「そんじゃ、どっか飯でも食いに行くか!」
マミ「今度はわたしにおごらせてね?」
杏子「別に気ぃ遣わなくってもいいってのに……ま、たまにはいっか!」ニカッ
第二部「まどか達の卒業式」
数ヵ月後、杏子のアパート―――
マミ「夏休みよ、佐倉さんっ!」バンッ!
杏子「長かったなぁ」
マミ「さぁ、見滝原に帰るわよっ!」
杏子「気ぃ早っ!?」
マミ「あなたは鹿目さん達と会いたくないの!?」
杏子「いや、あたしは普段暇を見つけて……」
マミ「何かしら?」ギロッ
杏子「ナンデモナイデス……」
杏子「んなわけで……うん、うん……今から見滝原、帰るから……ん、そんじゃな」ガチャッ
マミ「鹿目さん、なんだって言ってた?」
杏子「お祝いの準備して待ってるってさ」
マミ「鹿目さんは優しいわね……今から会えると思うと、涙が出て来るわ」ホロリ
杏子「だから大げさなんだってマミは……」
さやか「今から帰ってくるって!?」
まどか「うん!さっき電話あったの!」
ほむら「夏休み初日から帰ってくるなんて……よっぽど寂しかったのかしら」
さやか「よし、クラッカーとお菓子を買いに行こう!」
ほむら「今度は誤爆させないでよ、さやか?」
さやか「いつまで根に持ってんのさっ!?」
夕方、駅―――
マミ「帰ってきたわよ、佐倉さんっ!」スタッ
杏子「あーそうだな、久しぶりに帰ってきたな」ボウヨミ
マミ「懐かしい空気だわ……わたし、帰って来たのね……」ホロリ
杏子「確か、ほむらの家で待ってるって言ってたな」
マミ「それじゃ、早速行きましょうか!」
杏子「え、でも荷物とかマミのマンションに置いてからの方が」
マミ「もう待ち遠しいのよっ!」
杏子(なんか寂しがり病が悪化してね?)
ほむらの家前―――
さやか「くそぅ、ほむらめ……」ブツブツ
ほむら『あなたはクラッカーを誤爆してしまうから、外でマミと杏子を誘導してちょうだい』
さやか「投げ渡されなけりゃ、あたしだって誤爆はさせないっての……」ブツブツ
杏子「おっ、あれさやかじゃねえ?」
マミ「あら、ホントだわ!美樹さーん!」ブンブン
さやか「おっ、来たね!マミさん、杏子。見滝原へおかえりっ!」
マミ「久しぶりね、美樹さんっ!」
さやか「そうだねぇ、3月の終わりからだから、3か月ぶりくらい?」
マミ「もうホントに寂しかったのよっ!佐倉さんはたまに帰ってるって言ってたけど、わたしは帰る暇無いしで!」
杏子「悪かったって言ってるのに……」
さやか「ほむらとまどかは家の中で待ってるよ。あたしは誘導係」
マミ「二人にも会いたいわ!」
さやか「それじゃ……」ガチャッ
ほむら(来たみたいね)ヒソヒソ
まどか(えへへ、驚いてくれるかなぁ?)ヒソヒソ
ほむら(きっと驚いてくれるわ)ヒソヒソ
QB「何をやっているんだい、二人とも?」
まどか(きゅ、キュゥべえ!?)
QB「ん、これはなんだい?」グイッ
ほむら(ちょっ)
パァァァン!
さやか・マミ・杏子「!?」
まどか(キュゥべえのばかああああああああっ!!)
QB「ま、まどがっ……く、苦しっ……キュップイ」ガクッ
ほむら(この淫獣がっ!!)
マミ「……え、ええっと……」
杏子「今の音は……?」
さやか「あ、あははははは!ちょ、ちょっと待っててっ!」ダッ
さやか(何やってんのさ、二人とも!?)ヒソヒソ
QB「」
ほむら(暴発させた愚か者を処分したところよ)ヒソヒソ
まどか(あ、改めて二人を連れて来てくれるかな?)ヒソヒソ
さやか(が、合点っ!)
さやか「ご、ごめんごめん!なんか、ごたごたがあったみたいで!もう大丈夫だよっ!」
QB「全く、あれくらいで殺されちゃたまらないね」
マミ「キュゥべえ!?あれ、でもわたしの住んでる町にいるのとは別個体よね?」
QB「そうだよ。今僕がここに来たのは、この家にいた個体がやられちゃったから来たんだ」
杏子(さやかの次はキュゥべえか……全く、計画通りにはいかねぇんだな)
さやか「と、とにかく!中入ろう、中!」
スタスタ ガチャ
パァァァン! パァァァン!
まどか「お、お帰り、マミさん!杏子ちゃん!」
ほむら「こうしてまた会えてうれしいわ」
マミ「あ、ありがとう……あはは……」
杏子「く、クラッカーまで用意してくれるなんて、優しいな、あ、あはは……」
さやか(微妙な空気……くっ)ブワワッ
QB「なるほどね、この紐を引っ張るとこうして大きな音と一緒に紙吹雪が出る仕組みになっているんだね」グイッ パァァァン!
QB「しかし、これに一体なんの意味があるんだい?」
ほむら「感情のないあんたには永久にわからないでしょうね。とにかく、今後はこれに触れないで頂戴」
QB「手厳しい意見だね」
マミ「ああ、こうしてみんなでお茶していると、本当に帰って来たって気がしてくるわ」
まどか「高校生活はどうですか、マミさん?」
マミ「ええ、高校でも新しい友達は出来たし、これからもうまくやっていけそうだわ」
さやか「雪咲には、魔法少女はいないんですか?」
マミ「そう言えば、どうなのかしら?見掛けたことはないわね」
QB「今マミがいる雪咲町には、魔法少女はいないはずだね」
QB「と言うよりも、魔法少女の素質を持っている人がいないと言えばいいのかな?」
QB「まぁ、雪咲町自体魔女の出没頻度が低いから、別にいなくても問題はないんだけどね」
まどか「うーん……見滝原が異常に頻度が高いのって、何か理由あるのかなぁ?」
ほむら「ワルプルギスの夜が来るくらいだもの、何かありそうよね」
QB「それは僕たちインキュベーターにもよくわかっていないんだよね。ただ、この町にはなんらかの因果が絡んでいるのは間違いなさそうなんだ」
QB「それを突きとめるのも、僕たちの仕事のひとつかな」
ほむら「あなたたちインキュベーターの仕事なんて興味ないわ」
QB「ならなんで聞いたのさ?」
ほむら「話のタネ程度ね」
QB「酷い話だ」
さやか「!」
ほむら「魔女の気配……ね」
マミ「久しぶりね、この感覚も」
まどか「向こうで魔女いなくって、ソウルジェムは大丈夫なんですか?」
杏子「ん、魔女が現れねぇからな。そもそも魔力自体つかわねぇんだよ」
マミ「それに、わたしが言っているのはそういうことではないわ」
まどか「え?」
マミ「こうして、四人揃って魔女退治が、ね。懐かしいのよ」
さやか「あー、そうだね。あたしもほむらと二人でってのが最近の日常だったし」
ほむら「背中から撃たないだけ感謝して欲しいものだわ」
さやか「あたしたち仲間じゃなかったっけ?」
ほむら「さぁ、行きましょうか」スクッ
さやか「スルー!?」
結界内―――
さやか「てやっ!」ズバッ
杏子「そらっ!」ズグンッ
魔女「ケタケタ……」ボロボロ……
マミ「これでトドメよ!ティロ・フィナーレ!」バシュウウウ!
ドォォォン!!
魔女「ケタケタケタ………」シュゥゥゥゥ……
ズァァァァァ…… コンッ…コロコロ……
さやか「いやぁ、久しぶりに聞いたね、マミさんのティロ・フィナーレ!」
マミ「見世物じゃないのよ?」ヒョイッ
ほむら「そのグリーフシードはあなたたちが持って行くといいわ」
マミ「あら、いいの?」
ほむら「わたしなりの、お祝い、ってことにしておいてちょうだい」
まどか「ほむらちゃんも、素直に言えばいいのに。会えて嬉しいって」
ほむら「そ、それなら最初に言ったじゃない。何度も言うと、言葉の重みが薄れるのよ?」
マミ「わたしは何回言われても嬉しいけれど?」
杏子「ほれ、マミもこう言ってることだし、もう一回くらい言ってやれって」
ほむら「あ、あまりわたしをいじめないでくれるかしら?」
さやか「恥ずかしがりだねぇほむらは」
ほむら「あなたにだけは言われたくなかったわ」
さやか「なんかあたしにだけ当たり強くない?」
マミ「さて、それじゃそろそろ帰りましょうか?」
杏子「だな。久々にマミの家がどうなってるかも見てみてぇし」
ほむら「あら、残念ね。『せっかく久しぶりに会えて嬉しい』っていうのに」
まどか「なんか言葉に違和感が……」
さやか「無理矢理言った感がバリバリだね」
ほむら「くっ……」
マミ「いいのよ、暁美さん?無理に言わなくても」
ほむら「そ、そう?そう言ってもらえるとわたしも助かるわ」ホッ
マミ「それじゃ、みんな。また会いましょう!」
さやか「じゃあね、マミさん、杏子!」
まどか「ばいばーい!」
―――――
―――
―
マミ「あっという間に夏休みが終わってしまった気がするわ……」
杏子「まぁまぁ、学校が始まればまた学校の友達と会えるんだろ?いいことじゃねぇか」
マミ「そういうあなたはどうなのかしら?」
杏子「あたしはまた工事現場に戻るさ。ひと月近く休み貰っちまってるからな」
杏子「明日からはまた穴を掘る仕事が待ってるのさ……」フッ
マミ「あなたもなんだかんだで苦労しているのね……」
七ヶ月後―――
マミ「今度は、わたしが鹿目さんたちの卒業式を見送る番なのね……」
杏子「準備は終わってるか、マミ?」
マミ「ええ、終わっているわ」
杏子「よし、んじゃあいつらの泣き顔でも見に行くか!」ニカッ
見滝原中学―――
マミ「ああ、この校舎を眺めるのも久々だわ……」ウルウル
杏子「お前が泣いてどうすんだよ!?」
マミ「ごめんなさい、なんだか感慨に耽ってしまって……」ゴシゴシ
杏子「ああもう、ほら行くぞ!もうすぐ式始まっちまう!」
マミ「っ……ええ、そうね」
『卒業証書、授与』
杏子「えーと、さやか……は、『美樹』だからまどか達んなかだったら一番最後だな」
杏子「最初はほむらか」
『暁美ほむら』
ほむら「はい」
杏子「おっ、さすがほむら。キリリッとしてるな」
マミ「暁美さん……卒業、おめでとう」グスグス
杏子(っておいマミ!?泣くの早すぎだろ!?)
マミ「ううっ、後輩の卒業姿なんて……眩し過ぎるじゃないのっ……」グスグス
杏子(ああもう……ほら、ハンカチ)
マミ(ありがとう、佐倉さん……)グシグシ
『鹿目まどか』
まどか「はいっ……」
杏子「まどかはちっとだけ緊張してるけど、問題なさそうだな。やっぱこういう場ではさやかが一番期待できそうだな」ニヤニヤ
マミ「鹿目さん、卒業おめでとう……」グスグス
杏子「お前、涙腺弱すぎるぞ……」
マミ「感傷に浸りすぎるのね、わたし……」グシグシ
『上条恭介』
恭介「はい」
杏子「ん……あいつは確か、さやかの幼馴染の……」
マミ「上条恭介くん、ね。そう言えば、名前は聞いていたけれどこうして姿を見るの初めてね」
杏子「ふーん……悪かねぇけど、あんな男のどこに惚れたんだかねぇさやかは」
マミ「恋と言うのは、そういう物差しでは測れないものなのよ?」
杏子「あたしにはわかんねぇな」
『志筑仁美』
仁美「はい」
杏子「あいつは……さやかの幼馴染を寝取ったって言う……」
マミ「ちょっと佐倉さん、それは失礼よ」ヒソヒソ
杏子「はん、別にいいじゃねえか。間違ってねぇだろ?」ヒソヒソ
『美樹さやか』
さやか「は、はいっ!」
杏子(うははは!見てみろマミ!あいつ、ガッチガチに緊張してるぜ!)
マミ「卒業おめでとう、美樹さん……」グスグス
杏子(ダメだ聞いてねぇ)
教室―――
和子「みんな、卒業おめでとう!高校にあがる人、働き始める人、色々いるでしょうけど!」
和子「ここから巣立っても、元気でやんなさい!」
中沢「ぜんぜぇぇ!!」ボロボロ
和子「こら、中沢君!男の子なんだから泣かない!」
中沢「ううっ……」ゴシゴシ
和子「それじゃ、最後のホームルームもこれにて終了!元気でね、みんな!」
校門前―――
ほむら「うぅっ……まどかぁ……」エグエグ ギュッ
まどか「卒業、おめでとうだね、ほむらちゃん」
ほむら「まどかも……卒業、おめでとう……」グスグス
さやか「全く、ほむらはこういう時には弱いんだねぇ」
ほむら「っ……うるさいわねっ!いいじゃないの、泣いたって!」ゴシゴシ
仁美「わたくしとは進学する高校が違いますから、これでお別れですわね」
さやか「そうだね。せいぜい、恭介とよろしくやんな!」
恭介「あっはは、さやかは手厳しいなぁ」
さやか「うっさい!あんたなんかもう知らないっての!」
恭介「それじゃ……暁美さん、鹿目さん、さやか。卒業、おめでとう!」
さやか「ん!恭介も仁美も、卒業おめでとう!」
仁美「これからも、メールとか送りますわ」
さやか「オッケーオッケー!」
恭介「行こうか、仁美さん?」
仁美「ええ……」
さやか「はぁ……恭介と仁美も、幸せでやんなさいや……」
杏子「おつかれさん、さやか」ポンッ
さやか「! 杏子、マミさん……」
マミ「晴れ姿、しっかりと見させてもらったわ……」
さやか「うん、ありがと……って!マミさん、目真っ赤ですよ!?」
杏子「マミの奴、式の最中ずっと泣いてたんだぜ?」
マミ「卒業式は、涙と別れの式ですもの……」
まどか「わたしたちの為に、泣いてくれたんですね、マミさん」
マミ「ううっ……わたし、どうしてこんなに涙脆いのかしら……」
ほむら「マドカァ……」
杏子「んで、ほむらはいつまでまどかにひっついてるんだよ?」
まどか「今、顔を見られたくないんだって」
ほむら「うう……」グスグス
杏子「せっかくデジカメ持って来たのになぁ……」
さやか「あんた、それ……まさか、万引き……」
杏子「んなわけねぇだろ!?ちゃんと働いて稼いで買ったんだよっ!」
さやか「そっかそっか!それなら、一枚撮ってもらおうかな!ね、まどか、ほむら?」
まどか「うん、そうだね!」
ほむら「マドカァ……」
杏子「おら、ほむら!記念に一枚撮るんだから、まどかから離れろ!」
ほむら「っ……」パッ
杏子「うし、それで……」
ほむら「……な、何よ……?」
杏子「………プフッ!あっはははははははははははは!!ほ、ほむら、顔っ……ひ、ひはははっ……く、苦しっ……!!」ダンダンッ
ほむら「わ、笑わないでよっ!!だから顔見られたくなかったのに……っ!」カァァァ
杏子「ひぃ、ひぃ……!」
マミ「ええと……佐倉さんが再起不能になったみたいだから、わたしが撮るわ」
さやか「あ、あははは……お願いします、マミさん」
まどか「これで、わたしたちもこの校舎での生活最後だね」
ほむら「そうね………ホント、この学校では色んな事があったわ」
マミ「暁美さん、もうちょっと鹿目さんの方に寄ってもらえるかしら?」
ほむら「え、えぇ……」
マミ「それじゃ、撮るわよ。はい、チーズ!」
パシャ
杏子「あ~笑った……もう腹筋痛くてこれ以上笑えねぇってくらい笑ったぜ……」
ほむら「杏子……覚えておきなさい」
杏子「おおこわっ!でも、泣き虫ほむらちゃんも可愛かったぜ?」
ほむら「ちゃ、茶化さないでよっ!」
杏子「なんならまた泣いてくれたっていいんだぜ?そしたら、今度こそデジカメにほむらのメモリアルが増えるからな!」
ほむら「今後、意地でもあなたの前では泣かないわ」
杏子「ちっ、つれねぇな」
マミ「あなたたち、今後の進路は決まっているの?」
まどか「わたしとさやかちゃんは、地元の高校にあがるんです」
さやか「ん、もう二人とも合格通知もらってるしね」
杏子「ん?まどかとさやかはってことは、ほむらはどうすんだ?」
ほむら「わたしは、一度両親の所へ帰ろうと思うの」
マミ「え?」
ほむら「元々、わたしは心臓が弱かったから病院に入院していたのだけれど、もう今ではすっかり元気になったから」
ほむら「一度両親の元に帰って、それから改めてこの町に戻ってくるつもり」
まどか「だから、ほむらちゃんは高校は受験してないんだよね?」
さやか「途中編入は難易度高いぞぉ~?」
ほむら「心配しなくても、わたしはあなたと違って成績は優秀だもの。難なく突破してみせるわ」ファサッ
さやか「嫌み入りましたー!」
まどか「さやかちゃんは合格ラインギリギリだったもんね?」
さやか「よく受験戦争を生き残れたなぁあたし。自分で自分を褒めてやりたいよ」
マミ「わたしの通っている高校には来ないのね……」ショボン
まどか「マミさんの行ってる高校はレベルが高すぎて、その……」
マミ「?」
まどか「わたしは狙えなくもない感じだったんですけど……」
さやか「ピュ~ピュ~♪」
杏子「なるほどな。さやかがちょっとあれだった、と」
さやか「うっ」グサリ
ほむら「ちなみにわたしも狙えたわ」
さやか「ううっ」グサグサ
マミ「ま、まぁ無理して見滝原を離れることはないわよね、ええ」
さやか「そ、そうそうその通り!いやぁマミさんはわかってるなぁ!」
さやか「そんなマミさんに朗報です!」ビシッ
マミ「?」
さやか「あたしやまどか、ほむらはこの町の高校に進学するけど、あたしたちの知り合いで二人、マミさんと同じ高校にあがる人がいます!」
杏子「ほう?」
さやか「仁美と恭介の二人ですよ!」
マミ「ああ、あの二人が……」
まどか「もし学校内で見掛けたら、よろしくお願いします、マミさん」
マミ「そうね……あなたたちの友達なら、わたしも仲良くしたいわね」
杏子「あたしはよろしくしたくねぇな……」
さやか「そんなこと言わないで、仲良くしてやってよ!二人とも、いい奴だからさ!」
杏子「まぁ、さやかがそう言うんなら……」
マミ「それじゃ、わたしたちもそろそろ帰りましょうか、佐倉さん?」
杏子「ん、そうだな」
まどか「マミさんが卒業するまで、あと二年かぁ」
マミ「ふふ、一年があっという間だったんですもの、二年なんてすぐよ。ね?」
さやか「ほむらも一時期帰るみたいだし、その間はあたし一人かぁ……ちょっと不安だな」
QB「呼ばれた気がしたから参上したよ」ヒョコッ
ほむら「呼んでいないわ、消えなさいインキュベーター」
QB「さやかがお困りのようだね。さあまどか、今こそキミの願いでエントロピーを」
ほむら「聞こえなかったのかしら?」ジャコッ
QB「こんな町中でそんな物騒なものを構えないでくれよ」
ひと月後、雪咲町・夕方―――
魔女「」シュゥゥゥゥ……
マミ「ふぅ、魔女退治、完了ね」
杏子「んじゃ、帰るか」
マミ「そうね」
杏子「……ん?あれは……」
マミ「志筑さんと上条くんだったわね」
仁美「……あら?あなたたちは確か、さやかさんとお友達の……」
マミ「ええ。巴マミよ。こうして話すのは初めてね?」ニコッ
第二部「まどか達の卒業式」 完
時は少々遡り、三月の終わり―――
ほむら「それじゃね、まどか、さやか」
さやか「うう……魔法少女はあたし一人になるのか……不安だなぁ」
ほむら「心配しなくても、四月の中ごろには戻ってくるわ。それまでの約二週間、頑張りなさい」
さやか「お?ほむらが激励してくれるなんて珍しいじゃん」
ほむら「わたしがいないときにあなたに力尽きられたら後味悪いじゃないの」
さやか「なんやかんやであたし自身はどうでもいいってことですかい」
ほむら「ふふ、そんなことはないわよ?あーあなたことも心配だわー」
まどか「あはは、棒読みで心が込もってないよほむらちゃん」
ほむら「込めていないもの」
さやか「ぐぬぬ……」
ほむら「……来たわね、汽車」
まどか「元気でね、ほむらちゃん」
ほむら「……マミの時みたいには泣かないのね?」
まどか「え、それはその……」
ほむら「冗談よ。わたしはすぐに帰ってくるからね、まどか」ニコッ
まどか「う、うん!」
さやか「あたしには何か言うことないの、ほむら?」
ほむら「せいぜい死なないように頑張るのね」ファサッ
さやか「くぁーっ!嫌みったらし―!」
ほむら「これも冗談。大丈夫よ、あなたもわたしたちと一緒に戦うことで、腕をあげたもの」
ほむら「頑張ってね、さやか」
さやか「おぉう……ストレートに言われると、それはそれで気恥ずかしいね」
ほむら「さて!それじゃ、帰るわ!」タッ
さやか「少しでも早く帰って来いよーほむらーっ!」ブンブン
まどか「ほんの少しだけのお別れだからねーっ!」ブンブン
ピィィィーーーーーッ ガシャン、ガシャン……
さやか「……ふぅっ!マミさんと杏子は違う町に行っちゃったし、ほむらは実家に帰っちゃったし!」
さやか「恭介と仁美はマミさんと同じ学校にあがったから、これで見滝原に残ったのはあたしとまどかだけになっちゃったね」
まどか「うん……そうだね」
さやか「ほむらはすぐ帰ってくるって言ってたけど……やっぱ、寂しいもんだね」
まどか「さやかちゃんも、頑張らないとね?」
さやか「言われなくっても!そんじゃ、帰ろっか、まどか!」
まどか「うん!」
汽車内―――
ほむら「さようなら、見滝原……ホント、色々あったわ」
ほむら「ワルプルギスの夜もそうだし、わたしの、最高の友達とも会えたし……」
ほむら「インキュベーターと会って魔法少女になったのも、この町だったわね……」
QB「呼んだかい?」ヒョコッ
ほむら「っ!?」ビクッ!!
QB「何を驚いてるのさ、ほむら?」
ほむら「そ、それは驚くでしょう!?いきなり出てこないでよ!」
QB「僕は魔法少女と一緒に行動しなきゃ意味がないからね。それはほむらも例外ではないよ」
QB「あと、あまり僕とは話さない方がいいんじゃないかな?」
ほむら「え?」
QB「わかっているとは思うけど、僕の姿は一般人には見えないんだよ?」
ほむら「……あ」
乗客「ヒソヒソ……」
ほむら「……っ」カァァァ
QB「気付いたかい?君は周囲には独り言を言ってるようにしか見えないのさ」
ほむら「くっ……この淫獣がっ……!」ガシッ ギュウウウ
QB「や、やめてくれよほむら……くるしっ……」ギュウウウ
ほむら「……はぁ」パッ
QB「おや、今日はすんなり離してくれたね。キミもセンチメンタルに浸っている、と言うことかな?」
ほむら『当然じゃないの……わたしが長い間時間旅行をしていた理由との別れだもの』
QB「おや、テレパシーかい?考えたねほむら」
ほむら『見滝原……わたしの運命を大きく変えた町。そこから離れるんだもの、誰だって感傷に浸るわよ』
QB「それも二週間だけだろう?」
ほむら『ええ、そうよ。でも、わたしの運命を大きく変えた少女との別れは、少しの間だけでも寂しいものなの』
QB「その辺は、感情の無い僕には理解できない話だね」
ほむら『……あなたに話すだけ無駄だったようね』
QB「手厳しい意見だね」
ほむら『わたしがまどかと離れている間に、まどかに付け入らないでよ?キュゥべえ』
QB「多分、無駄だろうね」
ほむら『え?』
QB「キミが長い旅をしてきた理由をまどかが知った以上、キミのいないところでまどかが魔法少女の契約を決意するとは思えない」
QB「でもまぁ、隙あらば勧誘は続けるつもりだけどね」
ほむら『ここであなたを始末してもいいのよ?』
QB「それは勘弁して欲しいところだ」
ほむら『なら、いい加減諦めなさいよ……』
QB「まぁ、無駄だろうけど少しでも可能性があるウチは諦めないよ」
ほむら『あなた、ホントにブレないわね……』
QB「それは褒められているのかな?」
ほむら『そう受け取ってもらって構わないわ』
QB「それはありがたいね」
QB「それにしても、驚いたよ」
ほむら『何がかしら?』
QB「以前、キミが言っていた事さ。確か、キミが繰り返していた一ヶ月と言う期間を過ぎたら、時間停止の魔法は使えなくなるんじゃなかったのかい?」
ほむら『……ああ、その事。誰から聞いたのかしら?』
QB「マミが言っていたよ。竜型の魔女と戦った時に、キミがその魔法を使っていた、と」
ほむら『……いつかの世界で、あなたが言っていたわ』
QB「?」
ほむら『キミ達魔法少女は、条理を覆す存在だ、キミ達がどれほどの不条理を成し遂げようと、それは驚くに値しないことだ、って』
QB「……」
ほむら『あなたのその言葉を思い出して、わたしも魔法の修練に勤しんだの』
ほむら『ここで変身して見せるわけにもいかないけれど……今は砂時計ではなく、懐中時計の形に変化しているわ』
QB「昔、マミが魔法少女として契約した時も同じだったね」
ほむら『マミも?』
QB「うん。自身の力が及ばず、魔女を前にして撤退を余儀なくされてしまって、彼女は酷く落ち込んでいた」
QB「そして、必死に修練を重ねて……それで彼女は、あそこまで強くなることが出来たのさ」
ほむら『なるほどね……彼女の強さの秘密、なんとなく分かった気がするわ』
QB「でも、不思議なこともあるものだね。一度会得した魔法の性質が、変質するなんて」
ほむら『以前のように砂時計を操作するのと違って、今は魔力消費も激しいの。だから普段はあまり使わないようにしているのだけれど……』
ほむら『あの魔女の強さは、本当に規格外だった。ワルプルギスの夜以外にも、あれだけの強力な魔女が存在するのね』
QB「魔女の強さは、生前の魔法少女の強さに比例するからね」
ほむら『………』
ガタンガタン……
ほむら「………」
QB「大人しくなったね、ほむら?」
ほむら「……スー……」コテン
QB「なんだ、寝てしまっただけか」
ほむら「スー……スー……」
QB「やれやれ、ほむらもこうして寝ていれば、可愛げがあるのに」
ほむら「スー……スー……」
QB「こんな少女が数人だけで、あのワルプルギスの夜を倒したと言うのだから驚きだ」
第三部「ほむらの帰省」
―――――
―――
―
「……さん、起きてください」
ほむら「……ん…?」
運転手「終点ですよ、お客さん」
ほむら「あ……すみません、寝てしまっていたんですね。今、降ります」
ほむら「……帰ってきたわ」
ほむら「お父さんとお母さん、来てくれているはずね」スタスタ
ほむらの故郷・焔設町 駅、ホーム―――
ほむら「……」スタスタ
ほむ父「出てこないな、ほむら……」
ほむ母「ええ……乗り遅れたのかしら……」
ほむら「! お父さん、お母さん!」タッ
ほむ父母「?」
ほむら「ただいま!」
ほむ母「ええと……ほむら?」
ほむら「え?うん、わたしだよ」
ほむ父母「!?」
ほむ父「ほ、ほむら!?眼鏡は……?」
ほむら(あ、そうだった……お父さんとお母さんは、眼鏡をかけたわたししか知らないのよね……)ガサゴソ
ほむら(ああ、あったあった。まさか、またこの眼鏡をかける日が来るとは思いもしなかったわ)スチャ
ほむら「これで、わかる?」
ほむ母「あ……ほむら……」ウルウル
ほむら「ただいま、お父さん、お母さん!」
ほむ父「すっかり元気になったんだな、ほむら……」ウルウル
ほむら「うん!」
ほむ母「よかった、ほむら……っ!」ギュッ
ほむら「お、お母さん……」
ほむ父「さあ、帰ろうほむら」
ほむ母「お料理たっくさん作ってあるのよ、ほむら」
ほむら「お母さんのお料理、久しぶりだね」
ほむらの実家―――
ほむら「わたしの家……ずいぶんと久しぶりな気がする」
ほむ父「ほむらが中学二年の頃からだから、二年近くか」
ほむ母「ほむらの部屋も、そのまま残してあるのよ?」
ほむら「そっか……二年、だよね……」
ほむら(実際にはもっと長い間だったんだけど……これは、言うわけにはいかないよね)
夕方―――
ほむ母「それで、ほむら?高校は地元の学校にあがるのよね?」
ほむら「それなんだけど……」
ほむ父母「?」
ほむら「わたしね、見滝原に戻りたいの」
ほむ父「見滝原に?」
ほむら「うん。見滝原に友達が出来てね、その友達と一緒の学校に通いたいな……って」
ほむら「ダメ……かな?」
ほむ母「それじゃ、一人暮らしを続けるって言うの?」
ほむら「う、うん」
ほむ父「ほむら、お前は心臓が弱いんだろう?大丈夫なのか?」
ほむら「もう大丈夫!お医者様にも太鼓判を押されたもん!」
ほむ母(どうします?あなた)
ほむ父(……今まで、この子がワガママを言ったことがあったか?)
ほむ母(なかったわね……心臓の弱い自分に引け目を感じてか、元々の性格故なのか……)
ほむ父(この子のワガママなら……僕は、聞き入れてあげたい)
ほむ母(………ええ、そうね。それが、この子の望んでいることなら)
ほむ父「本当に、体の方は大丈夫なんだな?」
ほむら「うん、もう普通に走ったりも出来るし!」
ほむ父「なら、お前のしたいようにしなさい。僕は、反対しないよ」
ほむら「!」
ほむ母「大事なお友達が出来たのね、ほむら?」
ほむら「うん……わたしの、最高の友達が出来たの」
ほむ母「よかった……本当に……っ」ポロポロ
ほむら「お、お母さん!?」
ほむ母「本当に、ほむらが元気になってくれてっ……!」
ほむ母「それに、一緒の学校に通いたいって言えるようなお友達まで……」
ほむ父「ああ……安心したよ」
ほむら「ありがとう、お父さん、お母さん!」
ほむ母「それじゃ、途中編入ってことになるのかしらね?」
ほむら「うん。でも大丈夫!わたしの成績なら、十分に狙えるところだから!」
ほむ父「そうか。頑張れ、ほむら」
夜、ほむらの部屋―――
ほむら(よかった、反対されたらどうしようって思ってたけど、杞憂で済んで)
ほむら(あとは、途中編入を無事に終わらせるだけだね)
ほむら(……なんだろう、お父さんとお母さんに会ってから、昔のわたしに戻ったみたい)
ほむら(こうして、眼鏡もまたかけるようになって……)
ほむら(そう言えば、昔はみつあみにしてたんだったっけ……)
ほむら(………)イソイソ ギュッ
ほむら(うん!これで完璧に昔のわたしだね!)
ほむら「!」
ほむら(魔女……いや、この反応は使い魔……かな?)
ほむら(やっぱりこの町にも出るんだ……魔法少女は、いるのかな?)
ほむら(とにかく、行ってみよう!)
ほむら(と言っても、まさか玄関から出るわけにはいかないよね……)
ほむら(窓から行こう)ガララ タンッ
町の外れ―――
使い魔「キャハハハ!」モヤモヤ
ほむら「いた……結界も不安定。やっぱり使い魔ね」
ほむら「でも、使い魔でも油断するわけにはいかないわ……以前の魔女の使い魔のように、強い場合もある」
ほむら「悪く思わないでね、使い魔!」ジャコッ ドドン!
バスバス
使い魔「キャハハ!?」グラリ
ほむら「これでトドメ……!?」
ヒュンッ ズバァァ!!
使い魔「キャ……ハハハ……」シュウウゥゥゥ
ほむら「だ、誰!?」
キリカ「これは驚いた。まさか、この町に他にも魔法少女がいたなんてね」スタッ
ゆま「あたらしい魔法少女?」
織莉子「あなた、どこから来たのかしら?」
ほむら「キリカに……織莉子……!?それに、ゆままで……」
キリカ「ん、わたしたちを知っているのかい?」
織莉子「どこかで会ったことあったかしら……?」
ゆま「うーん……ゆまは知らないな、この人」
織莉子「いえ……ああ、そうだ、思い出したわ」
織莉子「あの時、世界の終末に居合わせた人にそっくりね、貴女」
ほむら「っ……!」バッ
織莉子「ああ、警戒しなくても大丈夫よ。わたしたちは貴女の敵じゃない」
ほむら「……え……?」
織莉子「落ち着いて話をする必要があるわね」
キリカ「なら、とりあえずわたしたちのねぐらに帰ろうか。そこでなら、話出来るだろう?」
ゆま「うん、かえろー!」
ほむら(どういうこと……?)
織莉子たちの家―――
織莉子「何も出せないけれど、座って。わたしたちの話、聞きたいんでしょう?」
ほむら「え、ええ……」
織莉子「まずひとつ。世界の終末を見たと言うのは、わたしの未来予知の魔法でよ」
ほむら「世界の終末……救済の魔女の姿を、見たのね」
織莉子「ええ、そうなるわね」
ほむら「わたしの知っているあなたは……それを回避する為に、ある人物の殺害を目論んでいたはず」
織莉子「………」
ほむら「それなのに、なぜこの町に?」
織莉子「何度も見たわ……あの町、見滝原が崩壊する光景を」
織莉子「でもね、ある日を境にしてその光景がおぼろげになっていったの」
織莉子「何故だかわかる?」
ほむら「……」フルフル
織莉子「救済の魔女の側に、寄り添うひとつの影があったの。まるで、救済の魔女を助けようとしているようだった」
織莉子「それが、貴女ね。……暁美ほむら」
織莉子「わたしは、貴女なら彼女を……鹿目まどかを任せることが出来ると思ったの」
ほむら「………」
ほむら「その口ぶり……どうやら、全てを知っているようね」
織莉子「そうね。貴女達の姿は、いつだって見滝原と共に見て来たわ」
織莉子「……ワルプルギスの夜に対峙する、四人の魔法少女も、ね」
織莉子「見事、の一言に尽きるわ。あの弩級の魔女を倒すなんて」
織莉子「……わたしは……怖気づいてしまった。それで、あの町から逃げるようにして焔設町に来たの」
キリカ「わたしは織莉子を守る為に一緒に来たまでだ。悪かったね、暁美。ワルプルギスの夜との戦いに加勢する事が出来なくて」
キリカ「でも、織莉子はお前達の勝利も見通していたらしいよ」
織莉子「……世界には、無数の可能性がある。今も、あの町が崩壊する光景が完全に消えたわけじゃない」
織莉子「貴女達が居る限りは、その未来は訪れないと信じているけれどね」
ほむら「……それと、もうひとつ。なぜ、千歳ゆままで一緒に行動しているの?」
ゆま「織莉子たちはね、ゆまを助けてくれたの!」
ほむら「え?」
キリカ「あの町を離れる時にね、それを阻止するかのようなタイミングで魔女が現れたんだ」
キリカ「ゆまの両親は……その魔女に、殺された」
ゆま「……うん。でもね、ゆまは寂しくないよ」
ゆま「織莉子とキリカが、一緒にいてくれるんだもん!」ニコッ
織莉子「こんな小さな子まで魔法少女の運命を背負わせるのは酷な話かもしれないけれど……」
ゆま「織莉子たちと一緒に並んで戦えるんだもん!ゆまは怖くないよ!」
ほむら「………」
織莉子「それよりも、貴女。なぜこの町に?鹿目まどかを守らなくていいの?」
ほむら「焔設町は、わたしの地元なの。でも、心配しないで。すぐに見滝原へ戻るつもりだから」
織莉子「そうだったの……不思議な縁ね」
キリカ「キミ達の情報も、わたしの中に大切に保管しておくことにするよ」
ほむら「………あなたたちは、このままこの町に?」
織莉子「ええ、そのつもり。鹿目まどかの近くにいたら……気が触れてしまいそうだから。………ごめんなさいね」
ほむら「いえ、それはいいの。なら、あなたたちにこの町を任せても問題なさそうね?」
織莉子「それについては安心していいわ。わたしにキリカ、ゆまもいるんですもの」
ゆま「この町は、ゆまたちが守るから!」
ほむら「……ありがとう」
ほむら「あの時間軸でもあなたたちとこうして話し合うことが出来ていれば……」
織莉子「世界の終末を、避けることが出来た?」
ほむら「……いえ、そんなもしもの話をしてもどうにもならないわね」
キリカ「あの時間軸、ねぇ。わたしには実感はないけれど……」
織莉子「あら、気になるの?キリカ」
キリカ「そうだね、少しだけ興味があるかな。わたしと織莉子が暁美たちと敵対していた、と言う話」
ゆま「ゆまも気になるー!」
ほむら「わたしは……あまり思い出したくないわね」
織莉子「………そう、だったわね。あの世界では、わたし、貴女の大切な人を……」
ほむら「……過ぎたことよ。今はもう、気にしていない」
織莉子「でも、わたしは気にかかっていたわ。ずっと、ずっと……」
織莉子「守りたいものを失う痛み……わかっているつもりだから」
ほむら「………」
織莉子「今、この場を借りて謝っておくわ。……ごめんなさい」
キリカ「わたしからも、謝罪する。悪かったね、暁美」
ほむら「暁美、だなんて他人行儀ね」
キリカ「!」
ほむら「ほむら、って呼んでくれないかしら?キリカ、織莉子」
織莉子「ほむらさん……」
キリカ「参ったね。そう言われたら断れない」
ほむら「ふふっ……」
キリカ「……はははっ」
織莉子「ふふふ……」
ゆま「あははは!」
ほむら「こうしてあなたたちと笑いあえる日が来るなんて、思いもしなかったわ」
織莉子「ええ、そうね……。今後も、鹿目まどかをお願いね、ほむらさん」
ほむら「言われなくても、そのつもりよ」
キリカ「織莉子、話してくれないか?あったかもしれない、可能性の話」
織莉子「そうね……ほむらさんは、どうする?」
ほむら「わたしは悪いけれど、そろそろ帰らせてもらうわ。両親に黙って出てきているから。心配をかけるわけにはいかない」
織莉子「あら、そう。それじゃ、気をつけてね?」
キリカ「キミとは、またこうして話がしたい。気が向いたら、いつでも来てくれ。わたしたちは、キミを歓迎するよ」
ほむら「ありがとう。少しの間だけれど……あなたたちと共闘出来るのを、嬉しく思うわ」
ゆま「きょーとー、だね!うん、ゆまも仲間が増えたみたいで嬉しい!」
ほむら「ゆまも、元気でね?」ナデナデ
ゆま「うんっ!」
二週間後、ほむらが見滝原へ帰る前日―――
ほむら「……とうとう、明日に迫ったのね。見滝原へ帰る日が……」
ほむら「……!」パァァァ
ほむら「魔女の気配……!あの時の使い魔の本体?」
ほむら「行かなきゃ。……これが、この町で戦う最後になるわね」ガララ タンッ
町外れの廃屋―――
ほむら「……ここね」パァァァ
ズズズズッ……
魔女「グオオオオオオ……」ユラユラ
ほむら「はっ!」キィン ポイポイ!
ドガガガガ!!
魔女「グオオオオアアアアア!!」ヒュンッ
ほむら「くっ!」タン ズダダダ!!
使い魔「キャハハ!」シュッ
ほむら「また、強い魔女……!使い魔も!」ダダンッ
バスバスッ!
使い魔「キャハ…ハハ……」ボロボロ
キリカ「やってるかい、救世主?」スタッ
ほむら「っ! キリカ!来てくれたのね!」
キリカ「この町を守るのはわたしたちの役目だからね!」ジャキンッ ヒュンッ!
ズバババ!!
ゆま「ゆまもかせいするよ!」タァンッ ズドォォォン!!
織莉子「ほむらさんの邪魔はさせないわ……」ヒュンヒュン ドガガガガ!!
魔女「グオオ……グゴオオオオオオオオ………」ボロボロ
キリカ「ふん、他愛ないね」スタンッ
ヒュンッ
ほむら「キリカっ!危ないっ!!」
キリカ「えっ……?」
ほむら「くっ!」カチッ ピタッ
ほむら「……イタチの最後っ屁、と言うことかしら?」
魔女「 」
ほむら「時間停止の魔法……使えるようになっていて、本当によかったわ」ジャコッ
ドドドン!
ほむら「……」
カチッ
ギギギィンッ!!!
キリカ「っ……?」
ほむら「大丈夫、キリカ?」
キリカ「……参ったな。助けに来たつもりが、逆に助けられるなんて」
織莉子「油断、したわね、キリカ」
ゆま「けがしても、ゆまがいるからだいじょーぶだよ!」
ズアアアァァァァァ……コンコンコン……コロコロ
ほむら「このグリーフシードは……」ヒョイ
キリカ「あんたにあげるよ、救世主。助けられた上にグリーフシードも受け取りましたじゃ、カッコつかないだろ?」
ほむら「……わたしが、救世主?」
キリカ「ん? なにか疑問でもあるのかい?」
ほむら「なぜ救世主?」
キリカ「あんたは……いや、あんたたちはこの世界を救った救世主だろ?」
織莉子「わたしの話を聞いて、キリカ、すごい感動したみたいなのよ」
キリカ「まさか、自分を守ってくれた子を守りたいなんてね……いい話じゃないか」
ほむら「……」
キリカ「それに、わたしの愛を守ってくれた恩人だってそうだ」
キリカ「あんたたちには、ホントに感謝してもし足りないよ」
ゆま「ゆまも、話聞いたよ!ゆま、キョーコに会いたい!」
織莉子「わたしも……未来予知で少しだけ見えた、わたしに手を差し伸べてくれた人に会いたいわね」
ほむら「……それじゃ、少しだけ見滝原に来る?」
織莉子「……いえ、遠慮しておくわ」
キリカ「そうだな、それはやめておこう」
ほむら「あら、別に遠慮なんてしなくてもいいのよ?」
織莉子「こうしてこの町に来た意味がなくなってしまうもの」
キリカ「わたしはあくまで織莉子に付き従うだけだよ」
ゆま「うん!ゆまもね、織莉子たちと一緒にいたいなって思うんだ!」
ほむら「そう……なら、あなたたちとの出会いの話を、まどか達への土産話にすることにしましょう」
織莉子「ええ。……美樹さんに、よろしくね」
キリカ「わたしの恩人、巴マミにもな」
ゆま「キョーコにも、よろしく!」
ほむら「確かに受け取ったわ」
織莉子「あと……鹿目まどかにも、ね」
ほむら「……ええ。彼女の事は、わたしに任せてちょうだい」
ほむら「わたしは明日、見滝原へ帰る。……出来れば、あなたたちに見送りに来てほしいわ」
キリカ「ああ、それはお安い御用。なんたってこの世界の救世主だ。わたしたちだけじゃ、足りないくらいだね」
織莉子「それじゃ、明日、駅でね?」
ほむら「ありがとう、三人とも」
キリカ「お礼を言われるようなことじゃないよ。んじゃ、行こうか、織莉子、ゆま」
ゆま「うん!また明日ね、ほむら!」スタスタスタ…
ほむら「………。さて、わたしも家に帰らないと」
翌日―――
ほむ父「見滝原でも、元気でやるんだぞ、ほむら」
ほむ母「駅まで見送りに行けなくて、ごめんね、ほむら」
ほむら「ううん、いいの。お父さんもお母さんも、お仕事で大変だってわかってるから」
ほむ父「見滝原の友人と、仲良くやるんだぞ」
ほむら「うん!」
ほむ母「それじゃ、わたしたちは仕事だから。気をつけて行くのよ、ほむら?」
ほむら「行ってらっしゃい、お父さん、お母さん!」
駅―――
織莉子「来たわね、ほむらさん」
キリカ「あっという間だな、二週間ってのは」
ほむら「来てくれたのね」
織莉子「当然でしょう?約束、したもの」
ゆま「この町はわたしたちが守るから!ほむらは、キョーコ達と一緒に頑張ってね!」
キリカ「短い間だったけど、楽しかったよ、救世主」
ほむら「ええ、わたしも楽しかったわ」
ほむら「………」
キキーッ
キリカ「どうした、救世主?汽車、来たぞ」
ほむら「ええ、わかっているわ」
織莉子「ふふ、この町との別れが寂しいの?」
ほむら「そうね……わたしが、普通の女の子として生まれ育った町だもの」
織莉子「眼鏡……かけたまま帰るのかしら?」
ほむら「!」
キリカ「話は聞いてるんだ、わたしたちの前では眼鏡をかけている必要はないぞ?」
キリカ「なんだ、大切な思い出でもあるのかい?」
ほむら「……そう、ね。これは、わたしのこの町への信頼、ということになるのかしらね」
織莉子「とっても似合っているわ」
ほむら「ありがとう……それじゃ、もう行くわね」
キリカ「元気でやれよ、救世主!」
ほむら「その呼び方も、気恥かしいものがあるわね」
キリカ「いいじゃないか。救世主なんて、カッコいいだろ?」
ほむら「ええ、カッコいいわ」ニコッ
ほむら「それじゃね。あなたたちの平穏を、祈っているわ」タッ
ピィィィーーーーーッ ガシャン、ガシャン……
キリカ「……行ったね、ほむら」
織莉子「彼女が大切に思う町を、守らないとね」
ゆま「ゆまも頑張る!」
キリカ「それじゃ、いつも通り、パトロールに行こうか」
織莉子「ええ、そうね」
ゆま「いこー!」
ほむら「………織莉子、キリカ、ゆま……」
ほむら「彼女たちとも色々あったけれど……時間旅行の心残りが、ひとつ解消出来てよかったわ」
ほむら「そういう意味でも、こうして帰って来た意味があったというものね……」
QB「意外だったよ。まさか、彼女達のことを知っているなんてね」
ほむら「っ!!?」ビクッ!!
QB「また驚いて……どうしたのさ?」
ほむら「だっ、だから……っ」
ほむら『いきなり現れないでちょうだい、インキュベーター!』
QB「成長したね、ほむら。何も言わなくても、テレパシーで会話をしてくるなんて」
ほむら『あなた、わたしをからかっているのかしら?』
QB「そんなことはないよ?僕が神出鬼没なのは今に始まったことじゃないじゃないか」
ほむら『……それよりも、なぜ織莉子たちと一緒に居る時には姿を現さなかったのかしら?』
QB「彼女達は特に僕のことを嫌っていてね。姿を現すと、即座に殺しにかかってくるのさ」
ほむら『………。それじゃ、彼女達が使用したグリーフシードの処理はどうしているのかしら?』
QB「使用したグリーフシードはいつも決まった場所に捨てているみたいでね。僕はそこにいって、それを処理しているんだよ」
ほむら『あなたも苦労しているのね……』
QB「仕方ないさ。それだけのことをしているんだから」
ほむら『自覚、あったのね……それが一番意外だわ』
QB「失礼だね、ほむら」
見滝原、駅―――
ほむら「二週間離れていただけだけれど、懐かしいわね……」スタッ
ほむら「まどかとさやかはいるのかしら?」
さやか「ねぇまどか、この汽車でほむらが帰ってくる予定だったんじゃないの?」
まどか「うん、そのはずなんだけど……」
ほむら「! まどか、さやかー!」ブンブン
まどか・さやか「?」
ほむら「ただいま!」
まどか「え、あの……」
さやか「誰?」
ほむら「!?」
まどか「人違い……ですか?」
さやか「いや、でもあたしたちの名前知ってるみたいだし……」
ほむら「わ、わたしよっ?暁美ほむら!」
さやか「え」
ほむら「め、眼鏡を外せばわかるでしょうっ?」スッ
まどか「………あ、ほむらちゃんだ……」
さやか「髪もみつあみになって……イメチェンか何か?」
ほむら「言っていなかったかしら?わたし、昔は眼鏡をかけていたのよ」
さやか「へぇ……差し詰め、めがほむってところかねぇ」ニヤニヤ
ほむら「そのニヤニヤ笑いをやめなさい!」
まどか「高校の編入試験はいつなの?」
ほむら「来週にあるのよ。それまでは、一人暮らしを満喫するのよ」
さやか「ほほう、これはいいことを聞いたね」
ほむら「え?」
さやか「それなら、ほむらの家を溜まり場に出来るね!」
まどか「さやかちゃん、ナイスアイデアだよ!」
ほむら「全くもう、あなたたちは……」
ほむら(でも、本当に帰って来たって気がするわ)
ほむら(この町……見滝原が、何よりもわたしのいるべき町よね)
ほむら「そうそう、わたしの地元にも、魔法少女がいたのよ」
さやか「へぇ!あたしたち以外の魔法少女もやっぱりいるんだね!」
まどか「話、聞きたいな!」
ほむら「ええ、もちろんよ。わたしが繰り返してきた時間のひとつで、深くかかわってきた人たちなのだけれど……」
さやか「考えてみると、ほむらの繰り返してきた世界の話ってあんまり聞いたことなかったね」
まどか「そうだね。ほむらちゃんさえよければ、そういう話も聞いてみたいかも」
ほむら「あまり気分のいい話にはならないと思うけれど……」
さやか「まぁまぁ!今となっては笑い話で済むことだってあるでしょ?」
ほむら「……そう、ね。聞きたいと言うのなら、話してあげるわ」
第三部「ほむらの帰省」 完
これで今日の分の投下は終了です
最後に、第三部で出て来た魔女の詳細も乗せておきます。
故郷の魔女。その性質は懐古。
懐かしさを感じている者の元へ現れる、鳥のような姿をした魔女。
自身も生まれた故郷へ戻りたいと言う願望を持つ為、ひとつの場所に留まり続けることは稀である。
しかし記憶がない為、自身と同じような気持ちを抱いている者に引き寄せられてしまう。その結果、自身の生まれ故郷へ戻ることは永遠に叶わない。
故郷の魔女の手下。その役割は遺恨。
常に移動を続ける魔女とは相反し、生み出された手下はその場所に留まり続ける。
魔女はなぜ手下がその場に留まり続けるのかは知らない。そしてその場に留まり続ける意味などないと言うことを、手下は理解していない。
酉付け忘れてたので、ここで酉も付けて本人証明とします。
三年後―――
杏子「高校も卒業、だな」
マミ「ええ………名残り惜しいわ………」
杏子「さすがに泣きはしないんだな?」
マミ「そりゃあ、ね。わたしももう大人ですもの」
杏子「やっぱ、見滝原に帰んのか?」
マミ「そうね。わたしの帰るべき場所だもの」
杏子「そんじゃ、荷造り始めなきゃなぁ……」
マミ「今回は、サプライズで連絡を入れずに帰りましょうか?」
杏子「お?マミも捻くれた考えをするようになったな」ニッ
マミ「ふふ、いつも仕掛けられてばかりじゃ格好つかないものね」
一週間後―――
マミ「ありがとう、この町ともお別れね……」
杏子「三年も住んでりゃ、愛着も湧くよな」
マミ「ええ………さようなら、ね」
杏子「これからは、マミはOLしながら魔女退治ってことになんのか」
マミ「さすがにもう少女とは呼べないわよね……」
杏子「おいおい、そんな複雑な心境になること言うなよ!」
マミ「わかってるけれど……」
QB「心配することはないよ、マミ」ヒョコッ
マミ「キュゥべえ?」
QB「ここまで長生きした魔法少女は初めてだからね、僕もちょっと心配になって本星に連絡を入れてみたんだ」
マミ「初めて……って……喜べばいいのか複雑ね……」
QB「そしたらね。どうやら僕たちの魔法少女システムというのは、人間で言うところの成人を越えた時点で壊れてしまうみたいなんだ」
杏子「ど、どういうことだ?」
QB「簡単に言うとね、マミは今十八歳だろう?」
マミ「え、ええ」
QB「二十歳を越えると、ソウルジェムがその形を保てなくなるらしいんだ」
QB「つまりどうなるかと言うと……元の人間に戻る、ってことらしいね」
マミ・杏子「!?」
QB「もちろんそうなった場合、キミ達人間は喜ぶだろう?」
マミ「と、当然じゃないの!」
QB「その際に生まれるエネルギーも、ソウルジェムがグリーフシードに変換される時に採取できるエネルギーにはわずかに劣るけれど
それなりのエネルギーが採取出来るらしい」
杏子「そんな設定があったのか……」
QB「僕自身、驚いているよ。本星にどうしてその事を教えてくれなかったのか、って聞いたんだ。そしたら、なんて答えが帰って来たと思う?」
マミ「どんな答えだったの?」
QB「『何故って、聞かなかったのはキミじゃないか。わけがわからないよ』だってさ」
杏子「……ぷっ」
QB「いやいや、笑い事じゃないよ杏子。まさか僕が、キミ達と同じような気持ちを味わうとは思っていなかった」
マミ「そ、そうね……」
QB「まぁ、そんなわけだ。だから、マミはあと二年、さやか達はあと三年頑張れば無事魔法少女としてのノルマ達成ってことになるね」
マミ「希望が見えて来たじゃないの……!」
QB「そうだね。僕自身も、マミ達には頑張ってもらいたいかな」
QB「これだけ長い間付き添って来た魔法少女は僕自身初めてだからね」
QB「さすがに魔女化するのは見たくないかな」
マミ「こうしてはいられないわ!早く帰ってこの事を報告しなくっちゃ!」
QB「僕としても残念だ。この事をもっと早く知っていれば、まどかとの契約も出来たかも知れないのに」
杏子「いや、それでもほむらが許さねぇだろ?」
QB「この売り文句は使えるよ。今後新しい魔法少女を勧誘する際には、これも付け足すべきだね」
マミ「何をしているの、佐倉さん!早く荷造りをするのよ!」
杏子「そんな慌てなくったって、見滝原は逃げねぇよ……」
マミ「見滝原は逃げなくても、早いに越したことはないのよ!」
杏子「ああわかった、わかったよ……」
QB「よかったね、マミ、杏子。あと二年だよ」
杏子「……ああ、そうだな。キュゥべえとも色々あったけど、今となっちゃ感謝の気持ちのがでかいかもな」
QB「感謝されても僕が出来ることは何もないよ?」
見滝原―――
マミ「お帰りなさい見滝原!ただいまわたし!」バッ
杏子「テンションたけぇなオイ……」
マミ「今は何もかもが輝いて見えるわ!」
杏子「ははは、大げさだな……」
マミ「さあ、早くわたしのマンションに帰ってお祝いの準備をしなくっちゃ!」
杏子「その前に、スーパーとかで買いものしなきゃなんもねぇんじゃねぇか?」
マミ「そうね!それもしなくっちゃ!」ウキウキ
杏子(ホントにテンション高い……ま、嬉しい気持ちはわかるけどな)
翌日―――
マミ「出来たわ!今世紀最大のお祝いケーキよっ!」ジャンッ
杏子「でけぇっ!?」
マミ「さぁ、鹿目さん達を呼びましょう!」ピ ポ パ
プルルルル プルルルル ガチャ
まどか『はい、鹿目です』
マミ「あ、鹿目さん!わたしよ、巴マミ!」
まどか『マミさんですか!?電話して来たってことは、もうすぐ見滝原に帰ってくるんですか!?』
マミ「うふふ、実はもう帰ってきてるのよね」
まどか『えぇっ!?』
マミ「今から美樹さん、暁美さんを連れてわたしの家に来れるかしら?」
まどか『わ、わかりました!すぐに向かいます!』 ガチャ
マミ「これで準備完了ね!」
杏子「今度こそ、暴発させずにクラッカーを鳴らしてぇな」ニカッ
さやか「えっ!マミさん、もう帰ってきてるの!?」
ほむら「行動が早いのね……」
まどか「すぐにマミさんの家に来てほしいって電話があったんだ!行こう、さやかちゃん、ほむらちゃん!」
さやか「おっし、行こう!」
ほむら「ふふ、元気でやっていたみたいね、マミと杏子も。安心したわ」
マミの家前―――
杏子「ふんふ~ん……っと。おっ、来たな!」
さやか「杏子~!久しぶり~」ダキッ
杏子「おう、さやか達も無事でなによr……!?」
ほむら「? どうかした、杏子?わたしの顔に何かついている?」
杏子「だ、誰だよお前っ?」
ほむら「え?わたしよ、暁美ほむら」
杏子「ほむらぁっ!?え、なんでお前眼鏡なんか……」
ほむら「ああ……そう言えば、眼鏡を掛けているところは初めてだったかしら?」スッ
ほむら「これで、わたしに見えるかしら?」
杏子「あ、あ……ほむらだ……」
ほむら「わたし、元々目が悪かったのよ。魔法で視力は回復させたのだけれど、訳あって今はまた眼鏡を掛けているの」
まどか「ティヒヒ、赤い縁の眼鏡を掛けたほむらちゃんも可愛いよね?」
杏子「なんてーか、眼鏡を掛けただけでそこまで印象が変わる奴もすげぇな……」
ほむら「似合っているかしら?」
杏子「もはや別人だな、うん」
まどか「ほむらちゃんが見滝原に帰って来た時は、この眼鏡に更にみつあみだったんだよ」
杏子「みつあみ……」
ほむら「ちょうどいいわ。後で、その姿も見せてあげる」
杏子「想像つかねぇ……」
マミ「まだかしら、みんな……」ソワソワ
QB「僕もこうしてクラッカーを持っていいのかな?」
マミ「え?いいじゃないの別に」
QB「でも、今後は触れるなってほむらに言われているんだけれど?」
マミ「暴発させなければ大丈夫よ」
QB「うーん……まぁ、いいか」
杏子「んじゃ、中入るか。中でマミが今か今かと待ってるはずだぜ?」ガチャ
まどか「お邪魔しまーす!」
さやか「うーん、マミさんの家も久しぶりだねぇ」
ほむら「お邪魔するわ」
マミ(来たわ!来たわよキュゥべえ!)ヒソヒソ
QB「言われなくてもわかっているよ」
ガチャ
マミ(今よ、キュゥべえ!)
QB「え?」
パァァン!
ほむら「?」
まどか「?」
さやか「?」
杏子(なんでひとつしか音しねぇんだ……?)
QB「わけがわからないよ。ここで鳴らせばよかったのかい?」
マミ「………」
マミ「ひ、久しぶりね、みんな!」(もうヤケよっ!!)パァァァン!パァァァン!パァァァン!
杏子(マミ……やっぱりキュゥべえに任せたのが失敗だったな……)
まどか「あ、ま、マミさん!ま、またクラッカーを用意してくれてたんですね!」
さやか「いやぁ、気が効くなぁ、あ、あはは、あははははは!」
ほむら(正視に堪えないわ……)ブワッ
QB「僕は毎日のようにみんなと顔を合わせているけれど……」
マミ「いいから鳴らしてよ!わたし一人で恥ずかしいじゃないの!」パァァァン!パァァァン!
QB「やれやれ、仕方ないな」パァァァン!
マミ「ところで、そっちの女性は誰かしら?」
ほむら「わたしよ、マミ」スッ
マミ「……!?暁美さん!?」
まどか「杏子ちゃんと同じ反応するんだね」
さやか「まぁ、普通はそうなるよね~。あたしたちも最初見た時は誰だあんた状態だったし」
ほむら「仕方ないじゃないの……両親が眼鏡をかけていないわたしを見て、戸惑っていたんだもの……」
杏子「それはそれで辛いな……」
さやか「っつーか、あたしとしてはマミさんが誰だあんたって感じですよ!」
マミ「え?」バイーン
さやか「特に胸!どんだけ成長してんですか!?」
まどか「すごい……大きいですね、マミさん……」
ほむら「…………………」ペターン
マミ「そ、そうかしら?別に普通じゃないかしら?」
ほむら「それを普通と呼ぶのは、世の中の全女性を敵に回すに等しい愚かな発言よ、マミ」キッ
マミ「え?え?」
まどか(ほむらちゃん、やっぱり胸のサイズ気にしてたんだ……)ヒソヒソ
さやか(そりゃそうだろうね……下手したら、ちょっと鍛えてる男の人の方がバストサイズありそうだし)ヒソヒソ
ほむら「今、ものすごく失礼な発言をされたような気がするわ。特にあなたから」ギロリ
さやか「あ、あははははは!な、なんのことかな~?」
杏子「さやか達は、ほむらの眼鏡以外には特に変わりないみたいだな」
まどか「そんなことないよ!わたしたちだって、背ぇ伸びてるんだから!」
さやか「いや~、さやかちゃんもね、最近バストサイズがちょっときつくなってきたかな~なんて」
ほむら「わたしに喧嘩を売っているのかしら?」
さやか「なんでもないですすみません」
マミ「さぁ、立ち話もなんだし、座ってみんな!特大ケーキも用意してあるんだから!」
さやか「うわ、でかっ!?」
ほむら「切り分けが楽しくなりそうなサイズね」ホムッ
まどか「すごいです、マミさん!」
QB「僕の分もちゃんと切ってくれよ、マミ」
マミ「ええ、もちろん!さあ、お祝いしましょう!」
カンパーイ
マミ「それでね、今日はみんなに嬉しいお知らせがあるの!」
さやか「? なんふぇふか、マミふぁん?」モグモグ
ほむら「口の中のモノを飲み込んでから喋りなさいよ……」
マミ「うふふ、実はね……」
~~~状況説明中~~~
さやか「それ、本当ですか!?」ダンッ
QB「嘘はないよ。僕が本星に確認を取ったことだからね」
ほむら「……意外ね。そんなことがあるものなのね……」
QB「僕は嘘はつかないよ。嘘をついたって、僕には何のメリットもないからね」
まどか「なら、今からでもわたし、契約しようかな……」
ほむら「万が一と言うことがあるわ、やめておきなさいまどか」
QB「そうだね、それに今となってはまどかの素質もそれほど魅力的じゃなくなっているよ」
まどか「え?そうなの?」
QB「言っただろう?第二次性徴期にある少女が一番望ましい、と」
QB「もうまどかは第二次性徴期は終わってしまっているからね。今となっては契約してもそれほどエネルギー採取にはならないのさ」
まどか「なぁんだ……」シュン
QB「ローリスクハイリターンは何事にも成立しないってことさ」
QB「魔法少女として契約する時に叶えてあげられる願いだって、タダじゃないんだ」
QB「残念だけれど、まどかはもう諦めてもらうしかないね」
ほむら「ということは、わたしとさやか、杏子もあと3年ってことね……」
杏子「さすがに二十歳越えてまで魔法少女ってのも勘弁して欲しいからな、ちょうどいいと思うぜ」
さやか「うー……もっと早くに知れていれば……」
ほむら「今となっては後の祭りね」
さやか「ま、もういいんだけどね、あんな奴のことなんて」
杏子「言うようになったな、さやか」
さやか「さすがにもう何年も前だからねぇ、あたしもそこまで引きずるほど執念深くないって」
ほむら「さて、と……マミ、洗面所を借りてもいいかしら?」
マミ「? いいけれど……何かするの?」
ほむら「ちょっとした余興よ。まどか、手伝ってくれる?」
まどか「うん!」
十分後―――
ほむら「おまたせしました」ガララ
マミ・杏子「!?」
さやか「お、めがほむだね!」
ほむら「美樹さん、わたしはめがほむなんて名前じゃないですよ」
さやか「うーん……トゲのないほむらに違和感しか感じないあたしはもうダメかもわからんねぇ」
マミ「え、ええと……暁美さん?」
ほむら「なんですか、巴さん?」
マミ「おぉう……」
杏子「性格まで変わるのかよ……ホントに別人じゃねぇか……」
まどか「ほむらちゃんかわいいよ!」
ほむら「ありがとう、鹿目さん」
杏子「眼鏡にみつあみ、そして控えめな性格……」
マミ「ほ、ホントに暁美さんなの?」
ほむら「ええ、わたしですよ」
杏子「そいや、ほむらは時間遡行を繰り返してたって話だったな。昔は、その性格だったってことか?」
ほむら「はい、そうなんです。わたしの中でも色々と心境の変化があって、眼鏡を外してみつあみを解いて……」スッ シュル
ほむら「これが、わたしの決意の姿。まどかを守る為……わたしは、生まれ変わったのよ」
マミ「あ、いつもの暁美さんに戻った……」
杏子「ほむらもずいぶんと苦労してきたんだなぁ……」
ほむら「昔の話よ……もう、今はどちらの格好にも抵抗はないわ。あなたたちが昔のわたしの方がいいと言うのなら、そちらでもいいのだけれど?」
さやか・マミ・杏子「違和感しかないのでやめてください」
まどか「わたしは眼鏡のほむらちゃんもいいと思うんだけどなぁ……」
ほむら「ふふ、でもそうね。わたしも、もうこっちの振舞いの方が違和感ないわね」
マミ「人って変われるのね……すごいわ」
夜―――
まどか「それじゃマミさん、ごちそうさまでした!」
さやか「いやぁ、マミさんのケーキおいしかったですよっ!」
ほむら「わたしにも作り方、教えて欲しいわね」
マミ「あら、言ってくれればいつでも教えてあげるわよ?」
ほむら「本当っ?」
マミ「ええ。ただし、わたしは厳しいわよ?」
ほむら「望むところよっ!」ホムッ
杏子「んじゃな、三人とも!気ぃ付けて帰れよ!」ブンブン
さやか「はいはい~!」ブンブン
マミ「本当に帰って来たって気がするわね……」コト
杏子「またこうして賑やかに過ごせるのも、嬉しいもんだな」ニカッ
マミ「そうね、本当に嬉しいわ……もう、随分前からわたしは一人じゃなくなっているものね」
マミ「わたしも、来月からは社会人か……」
杏子「あたしはもうとっくに社会人ってことになるけどな」
マミ「いつまでもバイトじゃダメよ、佐倉さん?」
杏子「わかってるわかってるって!マミも小うるさくなっちまったなぁ……」
マミ「わたしはあなたのことを心配して言っているの!」
杏子「ん~……ま、あたしはあたしで頑張るさ!」ニカッ
QB「………」
最終部「魔法少女の卒業」
二年後―――
マミ「ティロ・フィナーレ!」バシュウウウ!
ドォォォォォン!!
魔女「」シュゥゥゥゥ……
コンコンコン……コロコロコロ……
マミ「ふぅ!今日も魔女退治、完了ね!」シュンッ
杏子「おつかれさん、マミ」
マミ「……あら?ソウルジェムが……?」パァァァ
QB「どうやら、お別れみたいだね、マミ」
マミ「キュゥ、べえ?」
QB「明日は確か、キミの誕生日だろう?」
マミ「え、えぇ……そうだけれど……」
QB「二十歳となることで、ソウルジェムもその形が保てなくなるって話は前にしたよね?」
マミ「ま、まさか……?」
QB「そう……キミの魔法少女としての人生も、今終わりを迎えるところだ」
マミ「………」
QB「僕の姿を見ることが出来るのは魔法少女と、魔法少女としての素質を持った少女だけだ」スゥ…
マミ「キュゥべえ!?あなた、体が……!」
QB「透け始めているんだろう?ソウルジェムが、肉体に戻り始めている証拠だ」スゥゥゥ……
QB「おめでとう、マミ!キミは見事、魔法少女としての責務を果たしてくれた」
マミ「そんな……それじゃ、もうキュゥべえとは会えなくなるの……?」
QB「悲しむことはないよ、マミ。例えキミが僕の姿を見ることが出来なくなっても、僕は確かにこの世界にいるからね」
QB「ただ、もうキミと話すことは、出来なくなるね」
マミ「………っ」ポロポロ
QB「どうして泣いているんだい?」
マミ「だってっ……ずっと一緒だったじゃないの、キュゥべえ!」ポロポロ
QB「……僕には、感情はないからね。キミがどうして泣いているのかも、わからないよ」
杏子「マミ………」
QB「それに、マミが僕の姿を見ることが出来なくなっても、あと一年はほむらやさやか、杏子には僕の姿が見えるんだ」
QB「彼女たちを通して、僕とも意思の疎通は出来るよ、マミ?」
マミ「キュゥべえ……」ポロポロ
QB「――で、一緒―――かったよ、マ―」フッ
マミ「……」パキンッ……キラキラ……
杏子「マミのソウルジェムが……砕けた、のか……?」
マミ「………」サラサラサラ……
杏子「でも、マミは死んだわけじゃない……ってことは、やっぱりキュゥべえの言ってたことは、ホントだったんだな……」
マミ「今も、キュゥべえは、ここにいるのかしら……?」ポロポロ
杏子「……ああ、いるよ、そこに」
マミ「なら、聞いて、キュゥべえ。あなたに出会えて、本当によかった」ポロポロ
マミ「あなたがいなければ……わたしは、とっくの昔に死んでいた身だものね」ポロポロ
マミ「ありがとう、キュゥべえ……」ポロポロ
マミ「……っ」ポロポロ
杏子「……帰ろうか、マミ。今まで、ホントにおつかれさん」ポンッ
マミ「っ……ええ」スック
マミの家―――
マミ「スゥ……スゥ……」
杏子「泣き疲れて、寝ちまったか……」
QB「僕との別れが、そんなに悲しかったのかな?」
杏子「そりゃ、そうだろうなぁ。マミはホントにキュゥべえの事が好きみたいだったから」
QB「……悪い気は、しないね」
杏子「感謝されるのも、悪かねぇだろ?」
QB「そうだね……今までこの星で、ここまで感謝してくれた子はいなかった」
QB「キミ達も、あと一年だ。……どうか、魔女化せずに頑張ってくれ」
杏子「……そうだな。マミはもう、魔法少女じゃなくなっちまったからな」
QB「ああ、そうだ。ひとつだけ、言い忘れてたことがあったね」
QB「誕生日、おめでとう、マミ……」
巴マミ
いつもの様に魔女を華麗に倒した彼女は、公園の中心でその変身を解く。
手の中にあるソウルジェムの異変に、彼女はすぐさま気がついた。
魔女の気配がするでもないのに、彼女の魂は淡い光を放っていたのだ。その異変の正体を語るべく、キュゥべえは彼女の元へ姿を現した。
それは、彼女の戦いの運命に終わりを告げるものだった。そしてそれが意味するところは、長年連れ添った友達とのお別れをも示唆していた。
少しの邂逅の後、彼女のソウルジェムは崩れ去り、その欠片も少しずつこの世から消え去るのだった。
ソウルジェムがその役目を終えた後、彼女は今はもう見えなくなったキュゥべえに感謝の気持ちを告げた。
一年後、暁美ほむらの誕生日前日―――
ほむら「……今日で、わたしの戦いも、終わり……か」
さやか「実質、魔法少女としてはほむらが一番長いんだったっけ?」
ほむら「ええ。あまりにも長い一ヶ月を過ごしたおかげでね。期間で言えばマミが長いけれど、経験で言えばわたしの方が長かったことになるわ」
杏子「時間遡行……だったか?なんか、あたしにゃ難しい話はよくわかんねぇけどさ。でも、ほむらも不憫といや不憫だよなぁ」
ほむら「何がかしら?」
杏子「あたしやさやか、マミには最初から戦う為の武器があったけど、ほむらにはそれがないんだろ?」
さやか「あたしは剣、杏子は槍、マミさんはマスケット銃だね」
ほむら「ちなみに、まどかが魔法少女となっていた場合、その武器は弓だったわ」
まどか「あ、やっぱり弓だったんだ。うーん、一度構えてみたかったかなぁ」
ほむら「ま、まどか、あまりそう言うことは言わないで欲しいわ」
まどか「ご、ごめんほむらちゃん……他意はないんだよ」
マミ「話の腰を折るようで悪いけれど、わたしは最初からマスケット銃を使えたわけではないのよ?」
ほむら「あら、そうなの?」
マミ「わたしの魔法少女としての元々の武器はリボンなの」
さやか「え、リボンってあの拘束リボンですか!?」
マミ「ええ、そうよ」
杏子「あんなんで一体どうやって戦うんだよ……?」
マミ「リボンを垂直に伸ばして、それを硬くして切りつけたりとか、螺旋状に伸ばして魔女を貫いたり……」
マミ「あれはあれで使い勝手はよかったのだけれど……やっぱり、火力が足りなかったわね」
深夜―――
ほむら「………」
さやか「今日は、魔女も現れないのかな」
杏子「さぁ、どうだろうな。でも、平穏に魔法少女としての人生を終えられるんなら、それでいいんじゃねえの?」
ほむら「……複雑な気分、ね」
マミ「やっぱり、暁美さんもそう?」
ほむら「ええ……。わたしは、魔法少女の真実を知ってからは自身の幸せなんて諦めていた。ソウルジェムがグリーフシードに変わりそうになったら、自分でこのソウルジェムを破壊しようと思っていたから」
マミ「………」
ほむら「いざ普通の人間に戻れるとなると……どういう反応をしたらいいのかわからないわ」
まどか「そういう時はさ、ほむらちゃん」
ほむら「……?」
まどか「笑えばいいんだよ」
ほむら「……笑えば、いい……?」
まどか「ほむらちゃんは、嬉しくないの?普通の人間に戻れるチャンスがあって」
ほむら「………どうなのかしら。よくわからないわ」
マミ「キュゥべえ、どこに行っているのかしら……?」
さやか「今日でほむらともお別れなのに、冷たいねぇキュゥべえは」
ほむら「………」
マミ「わたしがキュゥべえを見ることが出来なくなってからは、どこで過ごしているのかしら?」
さやか「あたしんとこにたまに来るよ、キュゥべえ」
マミ「美樹さんのところに?」
さやか「うん。なんだかんだでいつもマミさんの家に入り浸ってたのが、もう居られなくなっちゃったからって。キュゥべえも、一人でいるのがなんとなく寂しいんじゃないのかな?」
ほむら「あのインキュベーターに感情なんてないわよ」
杏子「相変わらずほむらはキュゥべえに辛辣だな……」
ほむら「あいつにはホントに苦労させられたもの」
ほむら「……!」パァァァ
さやか「やっぱり、最後まで平穏には無理だったか」
ほむら「そのようね。行きましょう、杏子、さやか」スック
杏子「おう。ほむらの最後の戦いだ、派手にやってやろうぜ!」スック
さやか「よっし、行こう!」スック
マミ「一年前には、わたしもその中にいたのだけれどね……」
杏子「マミとまどかはゆっくりしてろ。もう、魔女と関わることもねぇだろ?」
まどか「う、うん……気をつけてね、三人とも?」
マミ「無事に帰ってくるのよ?」
ほむら「心配いらないわ、まどか、マミ。すぐに倒して、帰ってくる」
公園―――
ほむら「……ここね」パァァァ
さやか「ほむらの魔法少女姿も、あと一時間もしないうちに見納めかぁ」
杏子「気ぃ引き締めろ、さやか。……結構、手ごわそうな相手だ」
ズズズズッ……
結界内―――
ほむら「……」スタッ
ほむら「杏子、さやか。……あちこちから使い魔の気配がするわ。油断しないで行きましょう」
シーン
ほむら「……?」クルッ
ほむら「杏子……?さやか……?」
別の場所―――
杏子「よっと!」スタッ
杏子「……おーおー、物陰にこれでもかってくらい使い魔が隠れてやがる」
杏子「さやか、ほむら!油断すんなよ!」
さやか「きょ、杏子?」
杏子「あん?なんだよさやか?」
さやか「ほむらは?」
杏子「え?」クルッ
さやか「結界に入ったら、ほむらの姿がいきなりなくなっちゃったよ……?」
杏子「……ちっ!よりにもよってほむらを別の場所にやったってのか!?ここの魔女、ずいぶんと狡いマネしてくれるな……」
さやか「ど、どうする?」
杏子「オロオロしてたって仕方ねぇ!とりあえず中枢を目指すぞ!ほむらも一人でそこを目指すはずだ!」
さやか「ん、了解!」
使い魔「……」タタンッ
杏子「行くぜ、さやか!」ヒュン
さやか「合点っ!」タッ
ほむらのいる場所―――
ほむら「………やられた、わね。ここの魔女の仕業、かしら?」
ほむら「結界に入った者を孤立させるなんて……」
ほむら「まぁ、杏子もさやかも一人で問題ないでしょう。とにかく、中枢を目指さないと」
使い魔「……」シュタシュタッ
ほむら「どきなさい、使い魔!」ジャコッ ドドン!!
数十分後―――
ほむら「はぁ、はぁ……」
ほむら「どれだけ広いのよ、この結界っ……!」
ほむら「武器も……もう数が少ないわ……」
使い魔「……」スタスタスタッ
ほむら「容赦ないわね……使い魔共!」キィン ポイッ
ドガァァァン!!
使い魔「―――」シュゥゥゥ
ほむら「……この扉の先が、中枢ね」ガチャ ギィィィ…
結界中枢―――
魔女「………」ユラユラユラ
使い魔×4「……」
ほむら「不気味なほど静かな魔女……でも、ものすごい強さを秘めているようね」ジャコンッ
ほむら(大砲……最後の一発)
ほむら(あとは手榴弾が3つと、拳銃が二丁……これで仕留め切れるかしら)
使い魔「……」ヒュヒュッ
ほむら「っ!くぅっ!?」タンッ ドドン!
バスバス!
使い魔×2「――」シュゥゥゥ
ほむら「くらいなさい!」バシュウウウウ!!
ドォォォン!!
使い魔×4「―――」シュゥゥゥゥゥゥゥ……
魔女「……」ユラユラ
ほむら(壁……!?あれで攻撃を……!)
ほむら「ならば……!これで一気にケリをつける!!」キキキインッ! ポイポイポイッ!
ドガガガガガガガガガガガアアアアアァァァァァァァ!!!!
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……
ほむら(これでどう……!?)スタンッ
魔女「………ガアァァッ……」ユラ…ユラ…
ほむら「深手は負わせた……けれど、まだ力尽きていない……!?」
魔女「……グオオ!!」バサッ
ほむら「!! 飛んだ!?」
魔女「オオオオ……グオアア!!」ビュンッ ズバズバッ!!
ほむら「うっくっ……!?」ズザザァァ!!
魔女「………」バサッ バサッ
使い魔×3「………」スタスタスタっ
ほむら「……勝て、ない……っ?」ヨロヨロ
ほむら(もう武器は……ない……。でも、わたしは、まだ……まだ戦わなければならないっ……!!)ググッ…
ほむら(武器がないのなら……徒手空拳で……っ!)
パァァァ……
ほむら「戦う力を……最後まで、戦い抜く力をわたしに……!!」
ググググ………バサァァァ!!
ほむら「わたしは、あなたを倒す!!!」バサァァ!!
ジワ……ジワ……
魔女「……!?」ジワジワ…
使い魔×3「……」ジワジワ…
ほむら「終わりよ……!」フッ
魔女「………」ヒュウウウウ……ドサァァァァァ!!
使い魔×3「……」ボロボロボロ……
ほむら「はぁ、はぁ……」
バタンッ!!
杏子「ほむら!大丈夫か!?」
さやか「すごい傷っ…!」
ほむら「……遅かった、わね。魔女なら、既に仕留めた後よ……」
杏子「こ、これが魔女……か……?」
魔女「……」ボロボロ……
さやか「なんか、黒い何かに侵蝕されてるみたい……。……? ほむら、背中のそれ……」
ほむら「ああ、これ……。なんだか、わたしにもよくわかっていないの。わたしが持っていた武器が底をついてしまって、それで徒手空拳で戦おうと思ったら……」
杏子「………それが、ほむらの魔法少女としての武器……だったのかもな」
ほむら「………。皮肉なものね、一番歴が長かったわたしが、最後の最後で魔法少女として戦う術を手に入れるなんて」
さやか「とりあえず、傷治さなきゃ」パァァァ
ズアアアァァァァァ……
杏子「結界が晴れて行く……おいさやか、今何時だ?」
さやか「ちょっと待って、ほむらの傷治してあげなきゃ」
ほむら「……」シュンッ
ほむら「もう、終わり、ね」パァァァ……
杏子「マミの時と同じような反応……てことは、もうすぐ日付が変わるくらいの時間ってところか」
さやか「あはは、手ごわい魔女だったんだねぇ。ごめんね、ほむら。なんか、すごい迷路みたいな結界だったんだよ」
ほむら「謝ることはないわ。結果的に、わたし一人で倒すことが出来たんだもの」
さやか「ん、完治!もういいよ、ほむら」ポンッ
ほむら「ありがとう、さやか」スック
コロコロ……
杏子「……ほれ、ほむら。グリーフシードだ。最後に、浄化しとけ」ヒョイ
ほむら「ええ、ありがとう。………」パァァァ シュウウ……ン
パキンッ……キラキラ……
ほむら「………終わった、わね」
さやか「ん、お疲れ様ほむら」
杏子「後は、あたしとさやかに任せてくれ」
ほむら「ええ……そうさせてもらうわ。わたしも……ゆっくり休ませてもらうとしましょう」
スタスタスタ……
QB「…………………。お疲れ様、暁美ほむら」トコトコ
暁美ほむら
まどか達の歳では最初に魔法少女の使命に終わりを告げた。
魔法少女としての最期の魔女戦。大量に所有していた武器も底を尽き、それでも戦う力を求めた彼女に、最後の奇跡が舞い降りた。
彼女の背中に、黒い翼が姿を現したのだ。その翼は彼女に攻撃を繰り出していた魔女やその使い魔をまるで侵蝕するかのように包み込み、その命を奪い去った。
戦いが終わり、魔法少女の変身を解くと共に暁美ほむらのソウルジェムはその役目を終え、静かに砕けた。
数ヵ月後。美樹さやかの誕生日前日―――
さやか「んー………」
杏子「どした、さやか。ソウルジェムを掲げて?」
さやか「いや、今日でこれともお別れかぁ、って思ってね」
杏子「……そっか、明日さやかの誕生日だもんな」
マミ「美樹さんも、無事に終わりを迎えられそうね」
さやか「なんか、振り返ってみると、長かったような短かったような感じですねぇ」
まどか「お疲れ様、さやかちゃん」
さやか「まどか~、それはまだちょっと早いかな。どうせ、また深夜になったら魔女が現れるんだろうし」
ほむら「何か根拠でもあるのかしら?」
さやか「今までの統計?」
ほむら「……」
さやか「……」
ほむら「……まぁ、否定はしないけれど」
さやか「何さ今の間は」
QB「やあ、みんな」
さやか「あ、キュゥべえ!」
マミ「キュゥべえ、来たの?」
杏子「ああ、来てるよマミ。ったく、ほむらん時は来なかった癖に、さやかん時は来るんだな?」
ほむら「……別に、わたしは気にしていないけれど?」
まどか「……いつの間にか、わたしにも見えなくなっちゃったね、キュゥべえ」
QB「何回も言うようだけれど、僕の姿を見ることが出来るのは魔法少女か、その素質を持った子だけだよ」
QB「僕の姿が見えなくなったと言うことは、まどかの膨大な素質も完全に消え失せたということだろうね」
さやか「へぇ……まどかの素質も完全に消え失せたってさ、ほむら」
ほむら「………本当に、これでひと安心ね……まどか」
まどか「そう、だね……でも、お別れくらいは言いたかったよ、キュゥべえ」
QB「無神経で悪かったね、まどか」
QB「あと一応弁解しておくけれど、ほむらの時に姿を現さなかったのは、最後の時に僕が側にいるのをほむらは嫌がるんじゃないかって思ったからなんだよ」
さやか「うわ、キュゥべえがそんなことに気を遣うなんて……」
ほむら「なんて言ったのかしら、キュゥべえは?」
杏子「最後ん時にキュゥべえが側にいるのを、ほむらが嫌がると思ったらしいぜ、こいつ」
ほむら「どう思われているのよ、わたしは……」
QB「僕のスペアを大量に始末した、インキュベーターハンターだね」
さやか「インキュベーターハンター……」
ほむら「わ、悪かったわよ……でも、節操無いキュゥべえも悪いのよ?」
QB「僕はまどかと契約さえ出来ればよかったのに。最後の最後までほむらに邪魔されてしまったよ」
さやか「はぁ……相変わらずだね、キュゥべえ」
さやか「さて、と……杏子、気付いてる?」
杏子「ん、あぁ。行くか。さやかの最後の戦いに、な」
さやか「そんじゃ、行って来るね、マミさん、まどか、ほむら」
杏子「ほむらん時とおんなじで、お前らは家でゆっくりしてろ。さやかの最後はあたしが見届けてくっから」
まどか「気をつけてね、さやかちゃん、杏子ちゃん」
ほむら「無事に帰ってくるのを待っているわ」
マミ「わたしは、おいしい紅茶を淹れて待っているわね?」
さやか「あはは、楽しみにしてます!」
QB「僕も、一緒に行っていいかい?」
さやか「もちろん!行こう、キュゥべえ!」
町外れ―――
さやか「んー……ここらに来ると、初めての魔女退治を思い出すなぁ」
杏子「へぇ、さやかが契約して最初の魔女退治はこの辺だったのか」
さやか「うん。まどかが魔女の口づけに操られてるクラスメートを見つけてさ。それを助ける為に、あたしが駆けつけたんだよね」
杏子「そん時、マミはどうしてたんだ?」
さやか「あたしは病院の屋上から駆けつけたんだけど、マミさんは自宅からだったみたいでさ。こっからだと、病院のが近いじゃん?」
QB「さやかの契約直後だったね、確か」
杏子「はぁ……病院、か。そいや、あの男の腕を治してくれって祈りだったもんな」
さやか「ん。………恭介は、今も元気にヴァイオリンを演奏してるよ」
杏子「よかったな、さやか」
さやか「ありがと、杏子……っと、ここだね」ズァァァァ……
結界内―――
さやか「杏子、いる?」
杏子「心配すんな、ここにいるよ」
さやか「よかった、ほむらの時みたいに離ればなれになるかと思ってたけど」
杏子「あんなこと、そうそうあってたまるかよ。………ここの魔女も、強そうだな」
さやか「なぁに、あたしと杏子がいれば瞬殺瞬殺♪」
杏子「油断すんなよさやか」
さやか「わかってるって!そんじゃ、中枢目指して行きますかー!」
使い魔「クキャキャキャキャキャ!」ヒュン
杏子「はぁっ!」ブゥン!
使い魔「ヒャヒャヒャッヒャヒャ!」ヒュン
さやか「とうっ!」ズバッ!
QB「調子いいね、二人とも」
さやか「最後まで気は抜かないようにしなきゃいけないからね!」
結界中枢―――
杏子「……ここが中枢だな」
魔女「――――」ウヨウヨウヨ
杏子「……随分手数の多そうな魔女だな」
さやか「接近戦主体のあたしたちじゃ、ちょっと不利かもしれないね」
杏子「ま、あたしにゃ関係ねぇけどな!」ザクッ
ズダダダダダン!!
魔女「―――!」ズグググッ
さやか「おおっ!?なにそれ!?」
杏子「あたしの攻撃を見てる暇があったらさやかも戦えよ!」
さやか「わかってるってば!はっ!」カチッ ビュンッ
杏子「!?」
ズバァンッ
魔女「―――…グオオオ……」
杏子「さ、さやかの剣って刀身飛ばせるのか!?」
さやか「あれ、知らなかった、っけ!」ズバッ
使い魔「ヒャハッ!?」ボロボロ
杏子「なんだよ、さやかもあたしの知らない攻撃方法持ってんじゃねぇか!」ブゥン バキバキッ!
使い魔「クケッ…」ボロボロ
さやか「あんまり使わないからね、これ!また新しく剣作り出すのだって、楽じゃないんだから!」ズバズバッ
魔女「……オオ………ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
杏子「周辺の使い魔はあらかた倒したな」
さやか「さて……最後は、あたしのとっておきで片しちゃいますかー!」
杏子「とっておき?」
さやか「むむ……むむむむ……」ブゥン……ズララララララララララララララ
杏子「お?おおおおおおおおおっ?」
さやか「名づけて『スプラッシュスティンガー』!行け、無数の剣よ!!」バッ
ズダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!
魔女「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアギャアアアアアアアアアアアアアアア………―――」ズバズバズバズバズバァァァァァァ!!
魔女「――――――………」ボロボロボロ
ズアアアアアァァァァァ……コンコン……コロコロ……
さやか「ふぅ……遠距離攻撃って便利だねぇ」
杏子「ありゃ危険だな。あたしだけだったからまだしも、ほむらとマミがいる時に使わなくってよかったな」
さやか「……ん」パァァァ……
QB「キミも、おわりだね、さやか」
さやか「まだ、日付変わるまでに時間あるよね?」
杏子「あと20分くらいだな」
さやか「そんだけあれば十分!川に行こう、杏子」
杏子「川……?」
さやか「………」
杏子「おい、さやか?何するつもりだ?」
さやか「はい、杏子。その時計、秒針まで正確に合わせてあるから」
杏子「……?」
QB「何をするんだい、さやか?」
さやか「まぁまぁ見てなさいって!杏子、日付変わるまでのカウントダウンよろしく!」
杏子「………あと10秒」
さやか「……」
杏子「9、8、7、6、5、4」
さやか「それっ!」ブンッ
杏子「3、2、1……」
QB「……――かれ―――か……」フッ
パキンッ……キラキラ……
さやか「ありがと、魔法少女!ありがと、ソウルジェム!ありがと……」クルッ
さやか「……キュゥべえ」
杏子「………おつかれさん、さやか。やりたかったことってのは、これか」
さやか「……うん。あたしのソウルジェムの色、青かったでしょ?だから、まぁ、川とか海も青いし。最後はそこに向けて投げよう、って決めてたんだ」
杏子「なかなかロマンのあることするじゃねぇか」ニカッ
さやか「後は、杏子だけだね」
杏子「ああ、そうだな……あとひと月、頑張るか」
さやか「んじゃ、みんなのところに帰ろっか!」
スタスタスタ……
QB「………さて。僕は邪魔にしかならないだろうし。行くとしよう」トコトコ……
美樹さやか
ほむらの次に魔法少女としての人生に終止符を打った。
彼女の最後の戦い。接近戦を望めない相手と知ったさやかは、自身の魔力を練り上げる。
そして気が付くと、彼女の周囲には多数の剣が出現していた。地面、空中、あらゆるところに。
その多数の剣を飛び道具にし、相対していた魔女と使い魔を一掃するのだった。
魔女を葬り去った彼女は、その自身の魂、ソウルジェムを川へ向けて投げ出した。
宙を舞う彼女のソウルジェムは、川へ着水する前にその形を崩壊させ、その魂は彼女の体へと還った。
更に数ヵ月後、佐倉杏子の誕生日前日―――
QB「ほむら、さやかも魔法少女としてのノルマを達成してくれて僕としてもありがたい限りだ」
杏子「あいつらん中ではあたしが一番誕生日遅いからな……お前との付き合いも、あたしが最後になるんだな」
QB「そうだね。僕の中ではマミが一番付き合いが長かったけれど、キミとはその次になるのか」
杏子「それも今日で終いだな」
QB「キミ達と契約してからもう6年か……早いものだよ」
さやか「ねぇ、杏子。キュゥべえ、なんて言ってる?」
杏子「ん?ああ、お前らとの付き合いももう6年になるなーって言ってるよ」
ほむら「わたしの体感的にはそれ以上よ……ホント、困らされたものだわ、キュゥべえには」
杏子「最後くらい、ゆっくりとしてぇけど……」パァァァ
杏子「やっぱ、無理か」スック
マミ「魔女の気配、かしら?」
杏子「ああ。もうあたし一人しかいないから、ちょっと行ってくる」
QB「僕も付き合うよ、杏子」ピョン スタッ
杏子「!」
QB「今日で本当にお別れだからね、これくらいはいいだろう?」
杏子「……はん、馴れ馴れしい奴だな」
まどか「杏子ちゃん、一人で大丈夫?」
杏子「心配すんな、まどか。あたしはマミに次いでベテランだからな。一人でも軽くねじ伏せてやるっての」
さやか「あたしたちも一緒に行く?」
マミ「出来ればそうしたいけれど……いいかしら、佐倉さん?」
杏子「あーもう、仕方ねぇな。わかったよ、何人でもついてこい。あたしが守ってやっから!」
さやか「さっすが杏子!ベテラン魔法少女は違いますなぁ」
町外れの公園―――
杏子「よっと」スパン ズァァァァ…… タッ
さやか「うーん、なんか複雑な気分だねぇ。こうして見てるしか出来ないなんて」
ほむら「でも、あなたもマミも……そしてわたしも、もうノルマを達成した、とキュゥべえは言っていたはずでしょう?」
まどか「いつの間にかわたしにも見えなくなっちゃってるし……」
ほむら「いいのよ、それで。人間として、日常に戻れるのは幸せなことよ?」
まどか「……うん、そうだね」
ズァァァァァァァァ……コンコンコン……コロコロ……
杏子「よっと!」スタンッ
さやか「って、はやっ!?」
杏子「他愛もねぇ魔女だったな」ヒョイ パァァァ
マミ「……もうすぐ、日付が変わるわね」
杏子「ん、もうそんな時間か」
QB「やれやれ、キミは軽いね、杏子」スゥ
杏子「……」
QB「だけど、安心したよ。キミ達とこうして無事にお別れを済ませることが出来そうで」
杏子「もうあたしにしか見えてねぇんだから、その言い方はおかしいんじゃねえのか?」
QB「そうかな?僕の声はまどか達には届かないけれど、まどか達の声は僕に届いているから、おかしくはないと思うけれどね」
杏子「やれやれ、お前ホントに感情ねぇのか?」
QB「そのはずだけれどね。どうなんだろう?僕にも正直わからないよ」
マミ「……どう、佐倉さん?まだ、キュゥべえは見えている?」
杏子「ああ、見えてるよ。少しずつ透け始めてるけどな」
マミ「なら……最後に、お別れの言葉を言ってもいいかしら?」
杏子「だとさ、キュゥべえ」
QB「構わないよ」
マミ「……困ったわね……いざとなったら、なんて言えばいいのかわからないわ……」ポロポロ
ほむら「………」
さやか「そうだよね……なんだかんだ言っても、キュゥべえはあたしたちの願いをかなえてくれた恩人には違いないもんね」
マミ「さようなら、キュゥべえ。あなたはあなたの目的を、達成させてね?」
QB「ありがとう、マミ。キミの激励、忘れないよ」
杏子「マミの激励、忘れないってさ」
マミ「っ……」グシグシ
杏子「ほむらは?なんか言うことねぇのか?」
ほむら「………そうね。なら、ひと言だけ」
ほむら「こんな時だからこそ言えることだけれど………」
ほむら「わたしに力を与えてくれて、ありがとう。あなたのおかげで、わたしは自分に自信を持つことが出来るようになったわ」
QB「……!」
ほむら「杏子……キュゥべえは、何か言っている?」
杏子「いや……キュゥべえ?」
QB「あ、ああうん。まさかほむらから感謝の言葉が出て来るなんて夢にも思わなかったからね。驚いたよ」
杏子「ほむらの口から感謝の言葉を聞くとは思わなかった、ってさ」
ほむら「……ふん、貴重なひと言よ。心に刻んでおきなさい」
QB「うん、そうさせてもらうよ」
杏子「さやかは?」
さやか「うーん……そうだなぁ……」
さやか「ちょっと、複雑な気分だけど……やっぱり、これかな」
さやか「いたいけな少女を騙すのはやめろ!……ってね」
QB「魔女化せずともエネルギー回収を出来るとわかったからね、今後はなるべくならその方法は取らないようにするつもりだけれど」
杏子「今後はそういうことはしないようにするつもりだってさ」
さやか「曖昧な言葉だねぇ。ま、それでもいっか」
さやか「あ、あともうひとつ」
さやか「あたしの幼馴染を救ってくれて、ありがと」
QB「それは僕が直接手を下したことじゃないよ。キミの祈りの結果だ、誇りに思ってもいいと思うよ」
杏子「それはさやかの祈りの結果だし、誇りに思えってさ」
さやか「……ん、そっか」
杏子「まどかはどうだ?ホントに、これで最後だぞ?」
まどか「うーん……わたしは魔法少女だったわけじゃないし……」
QB「それなら、僕から言わせてもらってもいいかな?」
杏子「キュゥべえから言いたいことがあるってさ」
まどか「? 何?」
QB「キミと契約出来なかったのが僕一番の心残りだ。その運命を選んだのはキミなのだから、選択をミスするようなことだけはしないでほしい」
杏子「お前と契約出来なかったのが一番の心残りだ、今後もいい人生を歩めってさ」
QB「はしょりすぎだよ、杏子」
杏子「うっせ!んなくせぇこと言えるか!」
まどか「キュゥべえ……。うん、わたし、頑張るよ。だからキュゥべえも、頑張ってね?」
QB「それはもちろんさ」
QB「……時間、だね。杏子、ソウルジェムを」
杏子「ああ」パァァァァァァァ……ピシピシッ……
QB「さようなら、奇跡を掴んだ少女達。キミ達の事は、忘れないよ」
杏子「あたしたちはすぐに忘れるかもしんねぇぞ?」
QB「それならそれでありがたいかな。あまり僕のことは公言しないで欲しいからね」
杏子「心配しなくったって、言いやしねぇよ。一般人にんな話したら、頭湧いてんじゃねえかって思われんだろ」
QB「それもそうか。なら、出来れば覚えておいてほしいかな」
杏子「……そうだな」
QB「それ――あ、僕――くよ。バイ――、まど―――むら、――か、マミ、杏―」フッ
杏子「……」パキンッ……キラキラ……
さやか「おつかれさん、杏子」
杏子「ああ……」
マミ「キュゥべえ……」グスグス
ほむら「やっぱり、一番つらいのはマミよね」
マミ「これで、本当にお別れなのね……キュゥべえ……」
まどか「……それじゃ、帰ろう、みんな?」
マミ「……わたしの家で、お茶会、していく?」
さやか「魔法少女の卒業パーティ、だね」
ほむら「悪くないわね」
杏子「んじゃ、今夜はマミの家で徹夜でパーティだな!」
マミ「ええ……ちゃんと、六人分用意しなくっちゃ」
まどか「……キュゥべえの分も、ですね」
マミ「もちろんじゃない。キュゥべえ……元気でね」
最終部「魔法少女の卒業」 完
これにて投下終了です。
色々と都合のいい設定を盛り込んだりしましたが、大目に見てくれるとありがたいです。
では、またどこかのSSスレッドで会いましょう。
元スレ
マミ「そんなことはないわ、いつも通りよ?」
まどか「そう、ですか……?」
マミ「え、えぇ。紅茶のおかわり、淹れて来るわね?」トコトコトコ
まどか「やっぱり、マミさん元気ないよね?」
ほむら「確かに……いつもはこうしてお茶会を開いている時はとてもうれしそうにしているのに」
さやか「なんか、悩みでもあるのかな?」
杏子「そりゃ、あとひと月でこの町から離れるんだもん、元気もなくなるだろうよ」
まどか「え?」
ほむら「ちょっと杏子、どういうことっ?」
4: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:33:19.17 ID:WIF0E7mp0
杏子「どういうも何も……マミは3月にゃ見滝原中学、卒業するんだぞ?」
さやか「う、うん。マミさんは三年生だし、そりゃ当然だけど……」
杏子「高校にあがるとなったら、一人暮らしのマミは寮のある高校にあがるだろうよ」
まどか「………」
杏子「見滝原に、寮ありの高校なんてねぇだろ?」
さやか「そ……そう、だね」
杏子「あたしたちともそれで離ればなれだろうし、またマミは一人ぼっちに逆戻りさ」
ほむら「っ……」
杏子「マミもあたしたちに相談しないとこを見ると、それを受け入れてるんだろうけどな」
5: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:35:28.88 ID:WIF0E7mp0
ほむら「杏子、あなたはマミがどこの高校に進学するか、知っているの?」
杏子「いや、聞いてねぇな。でも、一人暮らしの学生なんて、世間体がよろしくねぇだろ?だから多分、学校の先生の勧めで寮ありの高校にあがると思うぜ」
さやか「そっか……マミさん、見滝原を離れちゃうんだ」
マミ「お待たせ、淹れてきたわ」トコトコ
まどか「……」
ほむら「……」
さやか「……」
マミ「ど、どうかしたのかしら?なんだかみんな暗くない?」
6: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:40:43.34 ID:WIF0E7mp0
まどか「ねぇ、マミさん……」
ほむら「!」
さやか(まどか?)
マミ「何かしら?」
まどか「マミさんは、その……中学を卒業したら、どうしようとか……考えてるんですか?」
マミ「!」
まどか「見滝原を……離れちゃうんですか?」
マミ「ええと……そう、ね。高校は、寮制のところへ行くから……見滝原を離れることに、なるわね」
まどか「寂しくないんですか?」
マミ「寂しいけれど……こればかりはしょうがないわよ。わたしが一人になった時から、こうなることは決まっていたんですもの」
杏子「………」
7: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:41:41.34 ID:WIF0E7mp0
夜―――
マミ「それじゃ、みんな、気をつけて帰るのよ?」
まどか「はい……」
さやか「ごちそうさまでした、マミさん」
ほむら「……またね、マミ」
バタン
マミ「はぁ……」
QB「どうしたんだい、マミ?ずいぶんと元気がないみたいだけれど?」
マミ「あら、キュゥべえ」
QB「?」
マミ「キュゥべえは……わたしが見滝原を離れても、ついてきてくれるわよね?」
8: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:42:23.41 ID:WIF0E7mp0
QB「え?マミは見滝原を離れるつもりなのかい?」
マミ「ええ。高校に進学する時に、離れるのよ」
QB「それじゃあ、ほむらたちとは離ればなれになるんだね」
マミ「そう、なるわね」
QB「心配しなくても、僕は魔法少女の近くにはいつもいるさ」
QB「グリーフシードを処理するのは、僕の役目だからね」
マミ「キュゥべえがいてくれるんなら……一人でも、少しは寂しさは紛れるかな」
QB「この家……というか、マンションだね。ここはどうするつもりなんだい?」
マミ「高校を卒業したら、またこの町に戻ってくるつもりだから……それまでは、もぬけの殻になっちゃうわね」
9: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:43:12.32 ID:WIF0E7mp0
帰り道―――
まどか「マミさん……」トボトボ
杏子「なんでまどかがそんなに落ち込んでるんだよ?」
まどか「だって、マミさん、また一人っきりで魔女と戦うことになるんだよ?」
ほむら「新しい町で、またインキュベーターが魔法少女の契約をするかもしれないわよ?」
さやか「うーん……マミさんの性格を考えると、それはないと思うな。魔法少女の真実、知っちゃってるし」
ほむら「………」
杏子「そんなにマミのことが心配かよ?」
まどか「そうに決まってるよ!」
杏子「心配すること、ねぇと思うけどな」
まどか「え?」
杏子「マミは、お前らが思ってるほど弱い奴じゃねぇよ。現にお前らと会うまでは、一人で戦いぬいて来たんだぞ?」
10: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:44:01.15 ID:WIF0E7mp0
まどか「それ、は……」
さやか「ならさ!」
まどか「!」
さやか「マミさんの卒業式に、ワーッとお祝いしてあげようよ!」
杏子「マミの卒業式、か……」
さやか「そう!ここにいるみんな、少なからずマミさんの影響を受けてるでしょ?」
さやか「あたしはマミさんの志を受け継いで、この町で魔法少女を続けていく!」
杏子「あたしも、マミとは昔コンビを組んでた仲だな」
ほむら「一人っきりの孤独な戦いというのは、確かに共感できるところがあるわね」
まどか「わ、わたしは……」
ほむら「引け目を感じることはないわよ、まどか?」
まどか「……うん」
11: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:44:53.36 ID:WIF0E7mp0
さやか「期間はあとひと月もあるんだし!いいんじゃないのかな?」
杏子「そうだな、賛成だ」
ほむら「わたしもその案に乗らせてもらおうかしら」
まどか「……わたしも、賛成!」
さやか「よしっ、決定だね!」
ほむら「詳しい話は、わたしの家ですることにしましょうか」
さやか「マミさん、喜んでくれるといいなぁ」
杏子「ついでに、あたしたちもマミからの卒業ってことになりそうだな」
さやか「おっ、杏子詩人だね!」
杏子「はん、マミの影響を受けてるからな」
12: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:45:46.68 ID:WIF0E7mp0
ほむら「詳しい話は、また明日ね」
杏子「だな。もう今日は遅いし」
ほむら「明日の放課後、わたしの家に集まってくれるかしら?」
さやか「了解っ!」
杏子「ああ、わかった」
まどか「ウェヒヒ、サプライズパーティだね!」
さやか「どんなのにするか、悩みどころだねぇ」
まどか「わたし、お父さんに教わってケーキでも作ってみようかな?」
さやか「ん、いいねぇそれ!普段はいつもマミさんが作ってくれるし、たまにはアリだね!」
13: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:46:53.83 ID:WIF0E7mp0
第一部「マミの卒業式」
14: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:49:25.28 ID:WIF0E7mp0
翌日、放課後―――
まどか「わたしだけ掃除で遅くなっちゃった……ほむらちゃんの家に急がないと」タッタッタ
マミ「あら?鹿目さん?」
まどか「っ!」ピタッ
マミ「そんなに急いで、どうかしたの?」
まどか「い、いえ、別に急いでるわけじゃ……」(どうしよう、マミさんにばれるわけにはいかないんだけどな……)
まどか「そ、そういうマミさんは何をしてたんですか?」
マミ「わたしは、いつも通り魔女退治の為のパトロールよ」
まどか「パトロール中だったんですか」
マミ「ええ。こればかりはサボるわけにもいかないもの。それじゃ、わたしは行くわね?」
まどか「は、はいっ!気をつけてください!」
マミ「ありがとう、鹿目さん」ニコッ
15: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:50:08.58 ID:WIF0E7mp0
ほむらの家―――
ピンポーン ガチャ
ほむら「待っていたわ、まどか」
まどか「お邪魔します!」
杏子「おせぇぞ、まどか!」
まどか「ごめんごめん、杏子ちゃん」
さやか「マミさんに見つからなかった?」
まどか「ここに来る途中、パトロール中のマミさんに会ったけど、ばれてはいない、と思うな」
ほむら「わたしたちも、後でパトロール行きましょうか。マミ一人に負担をかけるわけにはいかないものね」
16: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:51:04.50 ID:WIF0E7mp0
さやか「それじゃ!第一回、マミさんからの卒業式会議、始めるよ!」
ほむら「テンション高いわね……」
さやか「こういうのはしんみりしたら負け!元気よく行こー!」
杏子「そうだな、あたしもそれがいいと思うぜ!」
ほむら「とりあえず、会場はわたしの家にしましょう。飾り付けとかは、わたしがやるわ」
杏子「あたしもほむらの手伝いだな。一人じゃ大変だろうし」
まどか「わたしはね、ケーキを作ろうかなって思うの」
杏子「ケーキ!」
さやか「あたしはまどかの手伝いかな。ケーキの他にもお菓子とか用意してさ!」
杏子「おお……今から楽しみだ……」
ほむら「杏子、よだれ出てるわよ」
杏子「おっと、やべぇやべぇ」フキフキ
17: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:52:05.49 ID:WIF0E7mp0
さやか「パーティグッズとかも用意しよう!クラッカーとかヒゲメガネとか!」
杏子「もちろん、付けるのはさやかだな!」
さやか「えっ!?」
ほむら「いいわね、似合いそうだわ」
さやか「それを似合いそうと言われて、あたしは喜べばいいんでしょうか!?」
まどか「うーん……ヒゲメガネをつけてるさやかちゃん、かぁ……」←想像中
まどか「………プッ……あははは!」
さやか「ひどっ!?まどかひどっ!?」
まどか「ご、ごめんごめん……でも、ぷふっ……だ、ダメだ、笑っちゃうよ!」
アハハハ……
18: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:52:49.50 ID:WIF0E7mp0
町外れ―――
マミ「っ……はぁ、はぁ……」
使い魔「」シュウウウウウゥゥゥゥ……
マミ「使い魔なのに、こんなに強いなんて……」
マミ「この使い魔の本体、相当強力な魔女ね……」
マミ「この町には本体はいないみたいだけれど……」
マミ「これからはわたし一人になるんだから、もっと強くならなくっちゃ……」
マミ「そうよね……今までも、一人だったんだもの……頑張らなくっちゃ」
19: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:53:46.52 ID:WIF0E7mp0
二週間後―――
使い魔「」シュウウウウウゥゥゥゥ……
杏子「……なぁ、ほむら」
ほむら「ええ、わかっているわ」
杏子「なんだろうな……ワルプルギスの夜とは言わねぇけど、それを彷彿とさせるような不安感があるぜ」
ほむら「………大丈夫よ。わたしたちは、そのワルプルギスの夜を乗り越えたんですもの。どんな魔女だって、わたしたちが協力すれば、倒せるわ」
杏子「嫌な時期に来るなよな、魔女の野郎……」グッ
ほむら「愚痴っていても仕方ないわ。とりあえず倒すことは出来たのだし、帰りましょう。パーティの準備をしないと」
杏子「ああ、わかってるよ」
20: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:55:00.66 ID:WIF0E7mp0
商店街―――
さやか「どうだっ!?」バッ
まどか「うんっ、似合う似合う!やっぱりほむらちゃんの言った通りだね!」
さやか「うーん……やっぱり複雑な気分だね。果たしてこれを似合うと言われてあたしは喜べばいいのか否か……」
まどか「似合うって言われて、悪い気はしないでしょ?」
さやか「まぁそりゃそうなんだけどさぁ……。……っ!」
まどか「さ、さやかちゃん?どうかしたの?」
さやか(魔女の気配……?いや、それにしては弱い……使い魔、かな……?)
まどか「ま、まさか……魔女?」
さやか「ううん、多分使い魔だと思う。ごめんまどか、これ、買っておいて!」
まどか「あ、さやかちゃん!」
さやか「心配しなくっても、不覚は取らないって!」タッ
21: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:56:09.98 ID:WIF0E7mp0
裏通り・廃工場―――
さやか「この辺り……!いた!」
使い魔「アハハハハハハ!」
さやか「例え使い魔だろうと、手加減しないよ!」パァァァ
さやか「てぇいっ!」ブンッ!
使い魔「アハハハ!」ヒョイッ
さやか「あ、このっ!」タンッ
使い魔「アハハハハハハ!」ゴッ
さやか「うくっ!?」グラリ
使い魔「アハハハハハハハハハ!」シュルルル
さやか「しまっ……!」
22: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:56:54.80 ID:WIF0E7mp0
ドドドン!!
使い魔「アハハハ!?」バスバスバス!
さやか「っ!?」パラリ
マミ「大丈夫、美樹さんっ!?」タンッ
さやか「マミさん!?」
マミ「またあの使い魔なのね……」
さやか「またって……?」
マミ「最近、この町に頻繁に姿を現しているのよ。使い魔なのに、結構手ごわいの。油断しているとやられるわ!」
さやか「っ、はい!」
23: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:57:57.07 ID:WIF0E7mp0
使い魔「アハ……アハハハ……」シュウウウウウ……
さやか「た、倒した……」
マミ「嫌な予感がするわね……」
さやか「くそっ、なんでこんな時に限って……!」
まどか「さやかちゃん!」タッタッタ
さやか「まどか!」
まどか「あっ、マミさん!?」サッ
マミ「鹿目さんも一緒だったのね。二人でお買いものしてたの?」
まどか「あ、えっと……」
さやか「使い魔だったけど、マミさんが来てくれなきゃまずかったまずかった!あはは、不覚は取らないって言ったのに恥ずかしいね、こりゃ!」
マミ「あまり心配させないでよ?わたしがいなくなったらと思うと不安になるわね……」
24: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 00:59:24.81 ID:WIF0E7mp0
住宅街―――
マミ「それじゃ、ここでお別れね」
さやか「はい、また明日!」
マミ「ええ、気をつけて」スタスタ
まどか「ちょっと焦ったよ……」
さやか「でも、勘付かれてないっぽいし、よかったよ」
まどか「あと二週間、なんとか気付かれずにやれるといいんだけどね……」
さやか「大丈夫大丈夫!ほむらと杏子の方も準備進んでるみたいだし、隠し通せるって!」
まどか「卒業式まで、あと二週間だね……」
さやか「……ん、そうだね。まどか、卒業式当日に泣くなよ?」
まどか「ちょっと自信ないかな……あはは」
さやか「まどかは泣き虫だからねぇ」
25: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:00:26.57 ID:WIF0E7mp0
卒業式前日―――
ほむら「いらっしゃい、上がって」
まどか「お邪魔しまーす、と……」
杏子「おっ、来たか、さやか、まどか」
さやか「おおおおぉぉぉ……だいぶ進んでるね!」
ほむら「後は、メイン看板を作ろうと思うの。真ん中に大きく『マミの送別会』って書いて、周りにはわたしたちの寄せ書きを書いて」
さやか「そんなことしたら、マミさん感動して泣いちゃうよ!?」
ほむら「ふふ、いいじゃないの。泣かせるのが目的だもの」
まどか「ほむらちゃん、ちょっと笑顔が黒いよ!?」
ほむら「マミが泣いたら、このデジカメに収めて茶化してあげようと思うの」
杏子「おっ、いいなそれ!」
26: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:02:25.72 ID:WIF0E7mp0
さやか「それじゃ!第5回にして最終会議、始めますか!」
まどか「今回は、段取りの最終確認だよね?」
ほむら「ええ。わたしと杏子は、先に家に帰ってきてスタンバイ。マミの迎えには、さやかにお願いしようと思うわ」
さやか「おぉう、主賓の送迎か……責任重大だなぁ」
杏子「まどかは、家に帰ってケーキを焼いて来るんだよな?」
まどか「うん。生地作りから全部やらなきゃだから、ちょっと時間かかっちゃいそうだけど」
さやか「あたしも一応他のお菓子を作りながら、まどかの手伝いをするつもりだよ」
ほむら「そうなの。さやかと二人で、おいしいケーキを作りなさい、まどか」
まどか「うん!」
27: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:03:26.46 ID:WIF0E7mp0
杏子「んで、マミがここに来た時に、最初に全員でクラッカーを鳴らしてお出迎えだ」
さやか「クラッカーはたくさん用意してあるからね!もうドンドン鳴らしちゃってくださいな!」
ほむら「鳴らす時に『ティロ・フィナーレ』とでも言ってあげたら喜ぶかしら?」
杏子「その案、いただきだな!」
まどか「い、嫌がらせにならないかな?」
ほむら「ふふふ、マミは嬉々として撃つもの、喜んでくれると思うわ」
さやか「んじゃ、その方向でいこっか!」
アハハハ……
マミ「………暁美さんの家、ずいぶんと賑やかね……」
マミ「……っ!また、あの使い魔……?」
マミ「行かなきゃ……」タッ
28: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:04:21.17 ID:WIF0E7mp0
卒業式当日―――
『卒業証書、授与』
まどか「マミさん、ホントに卒業しちゃうんだ……」
さやか「ん……魔法少女としても、学生としても、先輩だったもんなぁ、あたしから見たら」
まどか「新しい町に行っても、マミさん、元気でやってくれるよね?」
さやか「そりゃ当然っしょ。魔法少女としての、あたしの憧れだし」
『巴マミ』
マミ「はい」
『あなたは本校の過程を終了し―――』
まどか「マミさん……っ」ウルウル
さやか「まだ、泣くのは早いよ、まどか?」
まどか「わかってる、けど……っ」
29: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:05:23.50 ID:WIF0E7mp0
校門前―――
女性徒「巴さん、新しい町に行っても元気でね……?」ポロポロ
マミ「ええ、あなたたちも、元気でね?」
女生徒「メールとか、するから」
マミ「ありがとう」ニコッ
さやか「同じクラスの子、かな?」
まどか「そう、みたいだね……」
さやか「ちょっと、声掛けづらいね……」
ほむら「………」
女生徒「じゃあね、巴さん……」
マミ「ええ……卒業、おめでとう」
女生徒「巴さんも、卒業、おめでとう……」タッ
30: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:06:27.34 ID:WIF0E7mp0
マミ「………」
さやか「あ、あの、マミさん……?」
マミ「? あら……鹿目さんに美樹さん、暁美さんまで……」
ほむら「卒業、おめでとう」
マミ「ありがとう」ニコッ
さやか「これで、ホントにマミさんとはお別れになっちゃいますね」
マミ「そうなるわね。わたしがいなくなった後の見滝原を、お願いね?」
ほむら「あなたがいなくったって、守って見せるわ」
マミ「うふふ、それだけの大口を叩けるなら安心ね?」
ほむら「ええ。安心して、新しい町へ行きなさい」
マミ「そうね……あなた達なら、安心して任せることが出来るわ」
31: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:07:26.38 ID:WIF0E7mp0
マミ「この校門からの光景も今日で見納めだと思うと、少しだけ寂しいわね……」ウルウル
ほむら「泣きたいなら泣いてもいいのよ?」
マミ「っ……後輩の前で涙を見せる先輩がどこにいるのよ」ゴシゴシ
さやか「マミさんもなかなか素直じゃないねぇ」
マミ「こう言う時くらい、先輩らしいカッコいいところ、見せなくっちゃ……」
まどか「っ……マミさぁんっ!」ダキッ
マミ「!」
まどか「寂しいよ、マミさんっ……」ギュッ
マミ「ふふ、ありがとうね、鹿目さん。わたしの為に泣いてくれて……」ナデナデ
まどか「グスッ……」
マミ「暁美さんや美樹さん、佐倉さんをお願いね?」
まどか「……はい」ポロポロ
32: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:09:07.47 ID:WIF0E7mp0
杏子「卒業式、終わったんだな」
マミ「佐倉さん。来てくれたのね」ニコッ
杏子「そりゃ、仮にもあたしの師匠の卒業だもんな、来ねぇわけにはいかねーよ」
マミ「ありがとう。あなたたちみたいな後輩に囲まれて、わたしは幸せ者ね」
ほむら「あなたの人柄に惹かれたのよ、みんな」
マミ「そうだと嬉しいわね……」
マミ「そうだ!あなたたち、今日は暇かしら?よければわたしの家で、お祝いしない?」
まどか・さやか・ほむら・杏子「!」
マミ「何か、用事あるかしら?」
33: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:10:03.83 ID:WIF0E7mp0
ほむら「ごめんなさい、わたしはパスね」
さやか「あ、あたしもちょっと、用事あるからパス!」
杏子「悪いな、あたしもパスだ」
まどか「えと、わたしは……」
ほむら(気にすることないわよ、まどか。ここは断っておきなさい。じゃないと、予定が狂うわよ?)
まどか「……ご、ごめんなさい…わたしも、ちょっと大事な用事があるので……」
マミ「あら、そうだったの……残念ね」ショボン
まどか(心が痛むよっ!)ズキズキ
ほむら(も、問題ないわ)ズキズキ
杏子(ごめんな、マミ……)ズキズキ
さやか(後でお出迎えしますんで、待っててくださいマミさんっ!)ズキズキ
34: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:12:20.49 ID:WIF0E7mp0
まどか「ただいまーっ!」バタン
さやか「お邪魔しまーす」
知久「おや、お帰りまどか。それに、いらっしゃいさやかちゃん。これから、前に言っていたケーキ作りかい?」
まどか「うんっ、そうだよ!」
知久「やっぱり、僕も手伝ってあげたほうが……」
まどか「ダメって言ってるでしょ、パパ?わたしの先輩へのお祝いなんだから、わたしとさやかちゃんの二人で作るの!」
さやか「そうそう、まどかの言うとおりですよおじさん!心配しないでも、さやかちゃんがいるから大丈夫です!」
知久「あはは、そうかい?」
まどか「パパは、タツヤの面倒見ててあげて?」
知久「うん、わかったよ。頑張れ、まどか、さやかちゃん」
まどか「うんっ!」
さやか「おーし、いっちょ張り切って作りますかー!」
35: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:13:09.71 ID:WIF0E7mp0
ほむらの家―――
ほむら「これで、準備完了ね」
杏子「後は、まどかがケーキを持ってくるのを待つだけだな?」
ほむら「ええ。さやかはまどかの手伝いをして、ここに来る時に別れてマミの家に迎えに行くことになっているわ」
杏子「楽しみだな!」
ほむら「わたしたちは待ってる間に、飲み物でも用意しましょうか?」
杏子「マミなら、やっぱ紅茶が喜ぶんじゃねえのかな?」
ほむら「紅茶ね……わたし、淹れたことないのだけれど」
杏子「あたしは昔からマミが紅茶淹れるとこ見てるし、見よう見真似でならなんとか出来ると思うけど……」
ほむら「うーん……やっぱり、普通の飲み物を買いに行きましょうか」
杏子「ん、そうだな」
36: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:14:13.55 ID:WIF0E7mp0
マミの家―――
マミ「はぁ……」ショボン
QB「元気ないね、マミ?」
マミ「今日はお祝いする気満々だっただけに、誰も来てくれなかった時の事は考えていなかったわ……」
QB「卒業式後に一人って言うのも、寂しいものだね」
マミ「言わないで、言わないでキュゥべえ……」ブワワッ
マミ「………っ!」パァァァァァ
マミ「魔女の気配……!?」
QB「かなり大きな反応だね」
マミ「今まで出没していた使い魔の本体かしら?とにかく、行きましょう!」スクッ
37: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:15:00.31 ID:WIF0E7mp0
QB「他のみんなに連絡はしないのかい?」
マミ「みんな、用事があるらしいの!」タッタッタ
QB「一人で勝てるのかい、マミ?」
マミ「一人でもやらなくちゃいけないでしょう?」タッタッタ
マミ(それに……今後はまた一人きりの戦いが、待っているのだし)タッタッタ
マミ(一人でも……いえ、一人でやらなければならないのよ、巴マミ!)タッタッタ
町外れ―――
マミ「………ここ、ね」パァァ
ズアアアァァァァァ………
38: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:15:43.74 ID:WIF0E7mp0
結界内―――
マミ「ティロ・フィナーレ!」バシュウウ!
ドォォォォン!!
使い魔「アハハ!?」シュウウゥゥゥ
マミ「はぁ、はぁ……くっ、使い魔一体一体が強いわ……!」
QB「これは、本体はかなり強力な魔女だね。やはり、一人では厳しいんじゃないのかい?」
マミ「でも、ここで逃したら被害者が出てしまうわ……!ここで、一人で仕留めるっ!」タンッ
ドドドン!!
39: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:16:47.31 ID:WIF0E7mp0
スーパー―――
ほむら「……!」パァァァ
杏子「おいほむら!」
ほむら「魔女の気配……!?くっ、なぜこんな日に限ってっ!」
杏子「マミが一人で向かってるかもしんねぇ!あたしたちも行くぞ!」
ほむら「ええ、わかっているわ!」
まどかの家―――
さやか「っ!」 パァァァ
まどか「さやかちゃん、どうかしたの?」
さやか「魔女の気配が……!」
まどか「えっ!?」
さやか「ごめんまどか、後ここお願い!あたし、行かなくっちゃ!」タッ
まどか「う、うんっ!気をつけてね!」
40: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:19:18.83 ID:WIF0E7mp0
結界中枢―――
魔女「オオオオオオオヲヲヲヲヲヲヲヲヲ………」ゴォォォォッ!!
マミ「ぐぅっ!!?」ビュオオオオ!!
マミ「くはっ……!」ズザザァァァ!!
魔女「オオオオオ!!!」ブゥン!!
マミ「くっ!?」タンッ
ドガガガガガガ!!
マミ「はぁ、はぁ……く、強い……!」
マミ(わたしのマスケット銃じゃ、クリティカルヒットでも本体にダメージは与えられない……せいぜい、使い魔を仕留める程度……!)
魔女「オオオオオオ……!!」ゴゥッ!!
マミ「くぅっ!」タンッ
マミ(接近戦でダメージを?いえ、ティロ・フィナーレならダメージを与えられるかも……!)シュルルルル ボンッ
魔女「オオオオオオオ!!」
マミ「食らいなさいっ!!ティロ・フィナーレ!!」バシュウウウ!!
ドガァァァァン!!
41: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:22:18.42 ID:WIF0E7mp0
マミ「はぁ、はぁ……ど真ん中に命中……!これで……っ!?」
魔女「オオオオオォォォォォ!!」ブワアアアアアァァァァァ!!
マミ「そ、そんな……少しだけ傷をつけただけなんて……っ!」
マミ「くっ……」
使い魔×2「アハハハ!!」スタスタッ
マミ「後から後から使い魔が出て来る……キリがないわっ……!」
QB『やはりここは一時撤退した方がいいよ、マミ!』
マミ「いえ、でも……っ」
マミ(迷いは行動を遅らせるわ!引いちゃダメよ、わたし!)グッ
使い魔×10「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」スタスタスタスタスタスタスタスタスタスタッ!!
マミ「……くそっ!!使い魔の相手はしていられない!魔女本体を拘束してしまえば……!!」シュルルルルル
グルグルグル!!ギュッ!!
魔女「……!?」グググッ…
マミ「これで身動きは……!?」
魔女「ヲヲヲヲヲヲ!!!」ブチブチブチ!!
マミ「こ、拘束魔法を力づくで引きちぎるなんて……!」
42: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:26:15.90 ID:WIF0E7mp0
使い魔×2「アハハハハハ!!」ヒュヒュン!
マミ「つ、使い魔が……っ!」ドドンッ!
バスバス
使い魔×2「アハハ……ハハハハハハ……」シュウウゥゥゥ
マミ「まだ、わたしは戦え……っ!?」
使い魔「キャハハハハハハハハ!!」ゴッ
マミ「うぐっ……!?」グラリ
使い魔×2「アヒャヒャヒャハハハハッハハハ!!!」ヒュヒュッ!
ガシガシッ!
マミ「しまっ……!?」
魔女「ヲヲヲヲ!!!」グワッ!!
マミ「――――――!!!」
43: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:27:44.12 ID:WIF0E7mp0
まどかの家―――
まどか「うーん……みんな、大丈夫かなぁ」←ケーキの焼き上がり待ち
チーン
まどか「あ、焼き上がった!」ガチャ
ホクホク……
まどか「いい匂いだよ!えへへ、マミさん喜んでくれるといいなぁ♪」
44: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 01:30:26.38 ID:WIF0E7mp0
結界外部―――
ほむら「はっ、はっ……!」タッタッタッ
杏子「ほむら!この魔力……!」タッタッタッ
ほむら「っ……間違いないわ!マミがすでにここへ来て、戦っている!急ぎましょう、杏子!」
杏子「ああっ!」
杏子(マミ、あたしたちが着くまで無事でいろよ……!!)
50: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:08:32.95 ID:WIF0E7mp0
ポタッ……ポタッ……
マミ「うぐっ……ごふっ…!」ビチャビチャッ
魔女「オオオオオオオオオ……オオオオオオオオオオン……」
マミ「お、なかが……っ!」ポタッ…ポタッ…
マミ(幸い、貫通することはなかったけれど……身動きが……)フラフラ
マミ「血、を……流し過ぎた……かしら、ね……ふふっ……」フラフラ
マミ(一応、リボンで止血はしたけれど……これが、この魔法の本来の使い方、なのかもしれないわね……っ)
使い魔「キャハハハ……アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」ヒュンヒュンヒュン!!
マミ「ま、けるわけに、は……!!」ジャコッ
マミ(……っ……手、が……震えて、照準が定まらない……っ!)ブルブル
マミ(わたし……ここで死ぬのかしら……?)ドサッ
使い魔×4「キャハハハハハハハ!!」スタスタスタスタッ!! バキ グシャ
マミ「ぐぅっ、あうっ……ごは……っ」
51: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:09:58.40 ID:WIF0E7mp0
ズザザッ
ほむら「ここが中枢ね!?マミはどこに……!?」
杏子「いたっ!!あそこ!!」
使い魔×4「アハハハハハハハハハハハハ!!」バキ ドガッ グシャ
ほむら「っ……!!マミっ!!!」
杏子「てめぇら、そこをどきやがれっ!!!」ブゥンッ
使い魔×4「キャハハ!?」バキバキィィ!!
ほむら「大丈夫、マミ!?」
マミ「げほっ、がはっ……あ、あけ、み、さん……?」ボタボタッ
杏子「なんだよ……マミ、死ぬんじゃねぇよ!おい!」
マミ「ふふ……なに、を、言っているのかしら、佐倉さん……?わたしは、死んでないわよ……げほっ」ビチャッ
ほむら「いいわ、しゃべらないで!さやかもここへ向かっているはず!彼女なら、この傷を癒すことも出来るわ!」
52: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:11:15.14 ID:WIF0E7mp0
マミ「傷……?あぁ、このお腹の……けほっ、だいじょ、うぶ……痛みは、かなり遮断しているから……」フラフラ
杏子「お、おいマミ!?じっとしてろ!!」
マミ「わたしのことより、魔女、を……」
魔女「オオオオオオオオオオオ……」ユラユラ
ほむら「……よくも、わたしたちの計画を邪魔してくれたわね、魔女」
魔女「オオオオオオオオ!!」 ビュッ!!
ほむら「今、わたしはかなり頭に来ているの」キィン ポイッ
ドォォォォォン!!
使い魔×2「アハハハ!?」ドガァァァン!!
杏子「ちょっと、手加減出来そうにねぇな!!」ブゥゥゥゥン!! ドガガガガガ!!
使い魔×5「アハハハハハハ!!?」ズググググッ
杏子「くたばれぇぇ!!」ズバァァン!!
53: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:12:11.81 ID:WIF0E7mp0
マミ「そ、そんなことより、どうしてあなたたち、ここに……?二人とも、用事があったんじゃ……?」
杏子「話は後だ!いいからマミは安静にしてろっての!!」
ほむら「さっさと片付けて、準備の続きをしなければならないものね」
マミ「準……備……?わたしの、お葬式のことかしら……ふふ……」
杏子「縁起でもねぇこと言うな!マミは死なない!!絶対にだっ!!」
マミ「佐倉、さん……」
タッタッタ―――
さやか「はぁ、はぁ……杏子、ほむら!大丈夫!?」
杏子「さやか、おせぇ!!」
さやか「ご、ごめんごめんって!それより、マミさんは!?」
ほむら「彼女なら、そこの壁で休んでいるわ!あなた、治癒の魔法使えるでしょう!?」
さやか「え……っ!?」
マミ「………美樹、さん……あなたも来てくれたのね……」
54: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:13:06.06 ID:WIF0E7mp0
さやか「マミさんっ!!大丈夫ですかっ!?」
杏子「バカ野郎!その傷で大丈夫なわけあるか!!いいから早くマミの傷を治してやれ!こっちは、あたしとほむらでなんとかする!!」
さやか「う、うん!マミさん、じっとしててください!!」
パァァァァァァァ……
マミ「………」(なんだか良い気持ち……)
さやか「……っ……」
パァァァァァ…
55: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:13:48.65 ID:WIF0E7mp0
魔女「オオオオオオオオ!!」ビュビュンッ!
ほむら「ちっ!」タッ
杏子「んなもん効くかっ!!」ヒュヒュ スパスパッ!
魔女「オオヲヲヲヲヲ……」
使い魔「キャハハハハ!!」ヒュンッ
ほむら「うっとおしい使い魔ね!!仕方ないわ……!!」ジャコンッ
ほむら「杏子!離れて!!」
杏子「ああっ!?って、ロケットランチャー!?」タタンッ
ほむら「一気に使い魔を片付ける!!」カチッ ピタッ
杏子「 」
使い魔×6「 」
ほむら「……」バシュバシュバシュバシュバシュバシュ
カチッ
ドドドドドドオオオオオオオオオオォォォォォォン!!!!!
使い魔「キャハハハ……」シュゥゥゥゥゥ……
魔女「オオオオオ……ヲヲヲヲヲ……」ユラユラ
56: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:15:30.96 ID:WIF0E7mp0
さやか「……よしっ!とりあえず、傷は塞ぎました、マミさん!」
マミ「ええ……ありがとう、美樹さん」
さやか「まだ安静にしてた方がいいです。それじゃ、あたしも行きますんで!」
マミ「……いえ、わたしも一緒に行くわ」
さやか「いいんですってば!あたしたち、『仲間』ですもんね!」
マミ「………」
さやか「あたしたちに甘えてくださいよ、マミさん!」タッ
さやか「杏子、ほむら!あたしも加勢するよ!!」ジャキッ
ほむら「マミの傷は!?」
さやか「大丈夫、もうなんともないよ!」
ドガガガガガガガガ!!
57: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:17:58.69 ID:WIF0E7mp0
マミ(……わたし……バカだったわ……)
杏子「おらぁ!!」ザシュッ
さやか「ていっ!!」ズバズバッ!!
マミ(一人になるからと言って、今から一人で戦うことなんてなかったわ……そうよ。美樹さんも、暁美さんも、佐倉さんも)
マミ(みんな、大切なわたしの仲間だわ。わたしはもう、一人じゃない)
ほむら「はっ!!」ドドン
マミ(例えみんなとは離れても……わたし達は、ずっと仲間……そうでしょ、わたし?)
魔女「オオオオオヲヲヲヲ……」
マミ「みんな下がって!トドメを差すわ!」
ほむら・さやか・杏子「!」タタタンッ
マミ「ティロ・フィナーレッ!!」 バシュウウウウウウ!!!
ドガァァァァァァァン!!
58: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:20:37.35 ID:WIF0E7mp0
魔女「オオオオオオオオオヲヲヲヲヲヲヲヲ……」シュウウウウウウ……
ズアアアアアァァァァァ……
コンコンコン……コロコロコロ……
さやか「あー、しんどい……」
杏子「一番後に来たのに何がしんどいだ!根性見せろ!」
さやか「全力疾走後に全力の戦いだよっ!?しんどくないわけないじゃん!!」
ほむら「それはわたしたちも一緒よ」
さやか「先輩方はきついっすねぇ……」
マミ「……ありがとう。あなたたちが来てくれなければ、やられていたところだったわ」
杏子「ったく、ビビらせんじゃねぇよ。あたしたちがここに来たら、血まみれで手下にぼこられてやがって」
さやか「ほ、ホントに!?」
マミ「ええ……危ないところだったわ」
杏子「あたしたちに甘えられるときは遠慮しねぇで甘えろっての」
ほむら「そういうことね。なんでも一人で背負い込もうとするのは、あなたの悪い癖よ、マミ」
マミ「反省するわ……」
59: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:23:14.15 ID:WIF0E7mp0
杏子「マミは一人にしちゃ心配だな……あたしも、マミについてった方がいいか?」
マミ「え?」
ほむら「そうね、それもアリかもしれないわ。杏子がいなくなっても、わたしとさやかが残るし」
マミ「い、いいの?佐倉さん?」
杏子「気にすんな。あたしは、基本的にゃ根無し草だからな」
マミ「………ありがとう、佐倉さん……」ポロポロ
杏子「お、おいおい泣くなよマミ!?」
マミ「じゃあ……わたしと、一緒に来てくれる?佐倉さん」ゴシゴシ
杏子「ああ、いいぜ。一人ぼっちは、寂しいからな!」ニカッ
60: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:24:40.92 ID:WIF0E7mp0
マミ「……あら?何かしら、これ」ガサッ
ほむら「!?」
マミ「飲み物……ね。誰かが買ったのかしら?」
杏子「あ、あー……それは、な」(おいほむら!どうすんだ!?)
ほむら(目のつくところに置いておいたのは失敗だったわね……)
ほむら「そ、それはわたしがここに来る前に買ったものよ」
マミ「ずいぶんと大量に買っているけれど……」
ほむら「それは、その……」
さやか「もう言っちゃっていいんじゃない?」
ほむら「……そうね。これ以上隠しても、あまり意味はないでしょうし」
マミ「?」
61: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:26:48.75 ID:WIF0E7mp0
ほむら「とりあえず、わたしの家に行きましょう」
マミ「え?でもあなたたち、用事があったんじゃ……」
さやか「いいからいいからマミさん!」
杏子「ほむらの家にいきゃわかるって!」
マミ「……?」
ほむらの家―――
ほむら「上がって、みんな」
さやか「お邪魔しまーっす!」
ほむら「あ、マミはちょっと玄関で待っていてくれるかしら?」
マミ「え、ええ……?」
杏子(ほれ、ほむら、さやか!クラッカー!)ポイポイッ
ほむら(ええ)パシッ
さやか(ほいきたっ!)パシッ グイッ
さやか(あ)
パァァァン!
マミ「!?」
62: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:27:44.48 ID:WIF0E7mp0
杏子(バッ、何やってんだよさやかっ!?)ヒソヒソ
ほむら(どこまで愚かなの、美樹さやか!?)ヒソヒソ
さやか(だ、だってだって!紐の部分で受け取っちゃったんだもん、しょうがないじゃんっ!!)ヒソヒソ
ドタドタドタッ
マミ「な、何の音!?」ガチャッ
杏子「あ」
ほむら「あ」
さやか「あ」
マミ「……あら?」
63: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:28:42.31 ID:WIF0E7mp0
マミ「……これ、は……?」
杏子「あーもうっ!!さやかの馬鹿野郎!!」
ほむら「あなたのせいで何もかも台無しよ、美樹さやか!!」
さやか「全部あたしのせい!?大体、杏子がクラッカーを投げて渡すから……!」
ワーワー ギャーギャー
マミ「え、ええと……?」
看板『マミの送別会』
マミ「わたしの、送別会……?」
杏子「ばれちゃしょうがねぇな!そうだよ!今日のみんなの用事ってのは、これだよ!」
さやか「あたしって、ホントバカ」
ほむら「反省しなさい、美樹さやか」
64: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:29:40.42 ID:WIF0E7mp0
ほむら「まどかがまだ来ていないから、来るまで待とうかと思っていたのだけれど……」
杏子「このバカがクラッカーを誤爆させたのが一番の失敗だな」
さやか「うう、ごめんなさい……」
マミ「あなたたちは、本当にもう……」ポロポロ
ほむら「っ!杏子、デジカメ用意!」
杏子「おうよ!」
マミ「なによ、わたしの泣き顔撮影まで予定していたの……?」ポロポロ
ほむら「これは予定のウチよ。さ、マミ。顔をよく見せなさい」
マミ「っ……ええ、ありがとう」ニコッ
パシャッ
65: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:31:21.56 ID:WIF0E7mp0
10分後―――
ピンポーン
まどか「デコレーションに凝ってたらだいぶ遅くなっちゃった。みんな、待ってるだろうなぁ」
ガチャ
ほむら「来たわね、まどか」
まどか「うん!ほら、ケーキ!うまく行ったんだよ!」
ほむら「……非常に残念なお知らせがあるわ、まどか」
まどか「……え?」
マミ「こんばんは、鹿目さん」ニコッ
まどか「お、遅すぎた……?」
杏子「心配すんな、責任は全部こいつにあるから」
さやか「もう許してよ……」
66: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:32:57.51 ID:WIF0E7mp0
さやか「さて、それじゃ改めまして……」コホン
さやか「マミさん、卒業おめでとーっ!!」パァァァン!
ほむら「卒業おめでとう、マミ」パァァァン!
杏子「おめでとう!」パァァァン!
まどか「おめでとう、マミさん!」パァァァン
マミ「ありがとう、みんな。こうしてわたしがお祝いしてもらえるなんて、夢にも思わなかったわ」ハラハラ
杏子「ははは、紙まみれだぞ、マミ?」
ほむら「ここでも記念に一枚撮っておきましょうか」パシャッ
まどか「ほら、マミさんのお祝いに、ケーキ焼いて来たんだよ!」
さやか「おおおっ、おいしそうだね!」
まどか「チョコにメッセージを入れるのに苦労したんだぁ。ほら、これ!」
マミ(わたしは、本当に幸せ者ね。ありがとう、みんな……)
67: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:35:24.77 ID:WIF0E7mp0
QB「なんだ、みんなここにいたのか。僕がみんなを探してる間に魔女は倒しちゃうし、僕は何をしていたんだろうね」
マミ「あ、キュゥべえ!途中でいなくなったと思ったら、みんなを探してくれていたのね」
QB「結局無駄足だったけれどね。それよりも、何やら楽しそうな雰囲気だね」
ほむら「今日くらいは、あなたも同席してもいいわよ?」
QB「おや、今日はほむらも優しいね」
まどか「はい、キュゥべえの分のケーキ!」
QB「ん、これはまどかが焼いたのかい?」
まどか「うん、そうだよ!」
QB「ありがたくもらうことにするよ」
ほむら「……今回はまどかに契約を迫らないのね?」
QB「さすがにこう言う席でそういうことをするほど、僕も無粋じゃないさ」
68: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:36:27.62 ID:WIF0E7mp0
杏子「ところで、さやか」ヒソヒソ
さやか「ん、何?」ヒソヒソ
杏子「なんか大切な事忘れてねぇか?」ヒソヒソ
さやか「大切なこと?」ヒソヒソ
杏子「ほれ、これだよ」ヒソヒソ
さやか「えー……ホントに付けなきゃだめ?」ヒソヒソ
杏子「せっかく買ったんだし、付けなきゃもったいないだろ?」ヒソヒソ
さやか「もう、しょうがないなー……」イソイソ
69: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:38:20.79 ID:WIF0E7mp0
マミ「おいしいわ、鹿目さん」モグモグ
まどか「えへへ、ありがとうマミさん!」
杏子「マミ、マミ」チョイチョイ
マミ「?」モグモグ
杏子「さやかの方、見てみろ」クイックイッ
マミ「美樹さんを?」モグモグ
ほむら「……?」モグモグ
まどか「?」
さやか「ほいっ!ヒゲメガネさやかちゃんだよっ!」バッ
マミ・ほむら「ぶほっ!!?」
まどか・杏子・さやか「!?」
70: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:39:23.57 ID:WIF0E7mp0
マミ「っ、げほっ、げほっ……!」トントン
ほむら「ざや、がっ……げほ、げほっ!」
さやか「うははは、大成功!ってか、ほむらは知ってたはずじゃん!?」
杏子「大丈夫かマミ!?ほら、お茶!」
まどか「ほむらちゃん、お茶お茶!」
マミ「あ、ありがとう佐倉さんっ……」ゴクゴク
ほむら「っ……」ゴクゴク
ほむら「不意打ちとはいい度胸ね、美樹さやか」
さやか「いや、だからマミさんはともかくあんたは知ってるはずじゃ……」
マミ「うふふ、似合っているわよ、美樹さん」
さやか「も、もうヤケだ!似合ってるは褒め言葉だっ!!」
71: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:40:11.88 ID:WIF0E7mp0
QB「やれやれ、なぜあの程度で吹き出すのか、やはり僕には理解できないね」
まどか「ティヒヒ、こう言う時は、楽しくやればいいんだよ?」
QB「まぁ、それは知識としてはわかっているけれどね」
まどか「もうひと月もしないうちに、マミさんはこの町を離れちゃうんだもん。こうやって騒げるのも、あとちょっとなんだなぁ……」
マミ「長期の休みには、わたしもこの町に戻ってくるわ。その時は、またこうしてお茶会を開きたいわね」
さやか「ホントですか!?いやー、早くも夏休みが楽しみになったねぇ!」
ほむら「あなたはいつも楽しみじゃないのかしら?」
さやか「むっ、どういう意味さ!?」
ほむら「言ったままの意味よ?」
さやか「ぐぬぬ……ほれほれ、もっとあたしの顔をよく見てみろほむらっ!」ズイッ
ほむら「や、やめなさいっ……」プルプル
72: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:41:52.64 ID:WIF0E7mp0
三月の終わり―――
杏子「ん、あらかた荷物は片し終わったな!」
マミ「そうね。この家とも、お別れね……」
杏子「名残り惜しい、か?」
マミ「それはそうよ。わたしが魔法少女となって、長い間お世話になった家ですもの」
杏子「ま、それも高校三年間の辛抱だな」
マミ「ええ……。暁美さんも、美樹さんも、頑張ってほしいわ」
杏子「さて、それじゃ行くかマミ!」
マミ「………少しだけの、お別れね」
73: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:43:25.88 ID:WIF0E7mp0
駅―――
さやか「あっ、来た来た!」
マミ「みんな……」
ほむら「あなたがこの町を離れるとなると、寂しくなるわね」
まどか「新しい学校でも、頑張ってくださいね、マミさん」
さやか「元気があればなんでも出来る、ってね!」
マミ「………見送り、ありがとう。三年後には、わたしも見滝原に帰ってくるから。それまで、この町の平和をお願いね?」
ほむら「わたしはあなたの方が心配よ。いくら杏子がいると言っても、無茶はしないでね?」
ほむら「また見滝原で会える日を、待っているわ」
マミ「ええ。わたしも、楽しみにしているわ」
74: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:44:23.20 ID:WIF0E7mp0
杏子「……汽車、来たぞ」
マミ「ええ、わかっているわ……」
さやか「ファイトだ、マミさん!」
ほむら「杏子と二人、手を取り合って頑張りなさい」
まどか「うぅ、寂しいよっ……」ポロポロ
マミ「泣かないで、鹿目さん?」
まどか「っ……」
マミ「お別れは、笑顔で。ね?」
杏子「あたしがついてるからな。新しい街だろうとなんだろうと、うまくやっていけるさ」
まどか「………」コクッ
75: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:45:32.84 ID:WIF0E7mp0
杏子「あたしも、しばらくはお別れかな。と言っても、あたしは別に学校に通うわけじゃねえから、その気になりゃいつでも帰ってこれるんだけどな」
さやか「杏子……マミさん、守ってあげてね?」
ほむら「あなたともお別れね。元気でやりなさい、杏子」
杏子「ああ、わかってるよ」
マミ「それじゃ、行きましょっか?」
杏子「ん!それじゃ、さやか、ほむら、まどか!元気でな!」タッ
マミ「また会いましょう」タッ
まどか「あっ……」
ピィィィーーーーーッ ガシャン、ガシャン……
76: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:46:17.55 ID:WIF0E7mp0
まどか「……行っちゃったね、マミさんと杏子ちゃん」
ほむら「彼女達とも色々とあったけれど……やっぱり、お別れは寂しいものね」
さやか「マミさーーーん!杏子ーーーー!!元気でやれよーーーーっ!!」ブンブン!
ほむら「またいつか、会いましょう……マミ、杏子」
さやか「……ふぅっ!それじゃ、ほむら!魔女退治のパトロールにでもいこっか!」
ほむら「早速ね、さやか」
さやか「マミさんに託されちゃったからね!頑張るしかないっしょ!」
まどか「あ、わたしも……ついていっていいかな?」
ほむら「え?でも、それは……」
さやか「まぁまぁ、たまにはいいじゃん!大丈夫、まどかはあたしとほむらが守るから!ね、ほむら?」
ほむら「……ええ、そうね」
まどか「……!ありがとう、二人とも!」
第一部「マミの卒業式」 完
77: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 19:49:19.96 ID:WIF0E7mp0
一旦投下終了して、修正作業に入ります
第一部に出て来た魔女の超個人的設定も作ってあるので乗せておきます。
慟哭の魔女。その性質は悲哀。
常に嘆きの叫びを放つ、竜のような姿をした魔女。何に悲しんでいるのか、何故嘆いているのか、彼女にはわからない。
或いは、嘆く為に悲しみ、悲しむ為に嘆いているだけなのかもしれない。
他の魔女に対する仲間意識が異常な程強い。彼女が見滝原に訪れた理由は、数多くの魔女が見滝原にて消息を絶った為である。
使い魔を数多く召喚する彼女を倒す為には、こちらも一人ではなく複数人で挑む他は無い。
慟哭の魔女の手下。その役割は滑稽。
悲哀の叫びを放ち続ける魔女の悲しみを癒す為に、いつも笑い声を放っている。
多くの手下が見滝原へ訪れた理由は、消滅した魔女の魂を悼む為である。
79: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:12:31.04 ID:WIF0E7mp0
見滝原から五駅離れた町・雪咲(せつざき)町―――
マミ「この町は見滝原と違って、魔女の出現頻度が少ないわね」
杏子「おかげでグリーフシードは手にはいんねぇけどな」
マミ「あら、でも未使用のグリーフシードが2つあればしばらくは持つんじゃないの?」
杏子「そりゃそうだけどな……なんか、物足りねぇなぁ。マミの卒業式の時に出現したような魔女とか、でねぇかな?」
マミ「わたしはもう二度とごめんよ。あの時、一度本当に死ぬ思いをしたのよ?佐倉さんも知っているでしょう?」
杏子「まぁ、そりゃあ、な。血まみれで使い魔にボコボコにやられてたな」
マミ「使い魔に両腕を封じられて、触手で腹を貫かれそうにもなったし」
杏子「あー……あの腹の傷は、それでか……」
マミ「貫通することだけは避けることが出来たけれど……もう、あんな強力な魔女とは戦いたくないわ」
80: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:13:10.86 ID:WIF0E7mp0
杏子「おぉう……そしたら、あたしたちが駆け付けなきゃマジでヤバかったんだな」
マミ「魔女相手に一時退却はわたしのプライドが許さないけれど、あの時はホントにそれを考えたわね」
杏子「マミは文字通りの正義の味方だからなぁ。それが原因で一度あたしとも袂を分かつことになったんだし」
マミ「まぁ、そんな昔のことはいいわ。つまり、平穏なのはいいことってことよ」
杏子「あー……でもやっぱり物足りねぇ!」ウズウズ
マミ「わたしが学校に通っている間にも、あなたはパトロールしているのでしょう?」
杏子「まぁ、あたしももう見た目高校生と同じくらいだし、今はバイトしながらだけどな」
マミ「え?」
杏子「え?」
81: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:13:54.08 ID:WIF0E7mp0
マミ「あなた、バイトしていたの!?」
杏子「あれ、言ってなかったっけか?」
マミ「聞いていないわ!どこでバイトしているの?」
杏子「工事現場で、ひたすら穴を掘るバイトだな」
マミ「こ、工事現場……?」
杏子「ああ。最初はどっかスーパーとかがいいかなって思ったんだけど、それだと履歴書だとかなんだとかでめんどくせぇんだよ」
杏子「でも、工事現場だと言ったらその場で採用してくれてな。それに金も、日払いだし。これが結構割がいいんだよ!」
マミ「そ、そうなの……でも、女の子がそういう仕事って、大変じゃないかしら?」
杏子「魔法少女なんだから、んなことは関係ねぇよ。力だって人一倍だしな!」
マミ「頼もしいのね、あなた……」
82: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:15:03.56 ID:WIF0E7mp0
杏子「ん、そろそろ時間だな」
マミ「今日も、これからバイト?」
杏子「ああ、そうだ。っと、サイフサイフ……」ゴソゴソ
マミ「あら、いいのよお金は。喫茶店くらいなら、わたしがおごるわよ?」
杏子「たまにはあたしにもカッコつけさせてくれって!おっ、あったあった!」ヒョイ
マミ「!?」
杏子「んー……2000円あれば足りるか?」
マミ「ちょちょちょちょっと待ってっ!?なんでそんなにサイフ分厚いの!?」
杏子「いや、働いてるウチにこんなになっただけだけど……?ほい、2000円」トン
マミ「え、ええっと……」アングリ
杏子「んじゃ、あたしは行ってくるからな!マミはゆっくりしてろって!今日、学校休みなんだろ?」タッタッタッ
マミ「そ、そうねっ!わたしはゆっくりさせてもらおうかしら……」
マミ「………工事現場……すごいのね」ゴクリ
83: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:15:57.51 ID:WIF0E7mp0
夜・杏子のアパート―――
杏子「ふいー、疲れた疲れた……」バタン
杏子「さて、飯食って寝るかな……あ、その前に風呂か」
杏子「………めんどくせぇな……」ボフッ
杏子「腹は減ったけど……明日は休みだし、このまま寝ても……」
杏子「………クカー………」
翌日―――
杏子「……ん」パチッ
杏子「ふあー……朝か……」ムクッ ポリポリ
杏子「……ん?」カミゴワゴワ
杏子「う、うわあああああああああたしの自慢の髪があああああああっ!!?」
84: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:20:47.53 ID:WIF0E7mp0
昼間―――
杏子「よ、よしっ……なんとか元のさらさらヘアに戻ったぞっ……」ファサッ
杏子「んー……っと」キュッ
杏子「さて、どうすっかな……仕事休みだし、魔女退治のパトロールでもいんだけど……」
杏子「マミは今日、学校だったな……」
杏子「たまにゃ、見滝原に帰ってみるかな……」
見滝原―――
杏子「見滝原よ、あたしは帰って来たあああっ!!」スタッ
通行人「ヒソヒソ…」
杏子「あん?何見てんだよ?」
通行人「いえ、なんでも……」
85: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:21:25.34 ID:WIF0E7mp0
杏子「……とりあえず帰ってきたはいいけど、考えてみりゃまどか達も学校なんだよな……」
杏子「あれ?んじゃあたし帰って来た意味ない?」
杏子「………どうしよう」
杏子「!」パァァァ
杏子「魔女の気配!来た来た、やっぱこうでなくっちゃな!」
町外れ―――
杏子「この辺か……ふっと!」スパンッ
ズアアアァァァァ……
86: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:23:41.71 ID:WIF0E7mp0
魔女「グオオオオオオギャアアアアアア………」ボロボロ
ズアアアアアァァァァァァ……
ヒューーー………コンコン……コロコロ
杏子「うしっ!グリーフシードゲット!」ヒョイッ
杏子「」グゥゥゥゥ……
杏子「腹、減ったな……」
杏子「なんか飯でも食いに行くか!金はあるんだしな!」
杏子「食い逃げじゃねぇぞ?今、あたしはリッチなんだ!」キリッ
杏子「金があるって、こんなにも嬉しいことだったんだなぁ……」ジ~ン
87: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:24:25.47 ID:WIF0E7mp0
夕方―――
杏子「んー……んめぇ」モグモグ スタスタ
さやか「あれ?杏子……?」
杏子「?」クルッ
さやか「やっぱり杏子だ!」
杏子「さやか?さやかが普通に外にいるってことは……」
さやか「? そいやマミさんは?」キョロキョロ
杏子「やっべぇ!マミに断りなく来たんだった!もう帰んなきゃ!」
さやか「あ、ちょっと杏子~!?」
杏子「わりぃ、さやか!あたし、ゆっくりしてる暇ねぇんだ!んじゃな!」タッタッタ
さやか「……行っちゃった。なにさ、久しぶりの再会なんだし、もっとしんみりしてくれたっていいじゃん」ムスッ
88: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:25:06.64 ID:WIF0E7mp0
夜、雪咲・郊外―――
マミ「………佐倉さん……」グスッ トボトボ
タッタッタ―――
マミ「?」
杏子「はぁ、はぁ……悪い、マミ!」
マミ「佐倉さん!?今までどこに行ってたのよもうっ!一人で寂しかったんだから!」
杏子「わりぃわりぃ!休みで暇だったから、ちっと見滝原に帰ってたんだ!」
マミ「見滝原に!?ずるいじゃない!」
杏子「だから、悪かったって!」
マミ「もう……わたし一人で手に負えない魔女が現れていたらどうするつもりだったのよ」
杏子「あん時みてぇな強力な魔女なんて、そうそう現れねぇだろ?今日だって一体出たけど、あたし一人で倒しちまったし」
89: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:25:57.71 ID:WIF0E7mp0
マミ「あなた、自由よねぇ……わたしも、あなたみたいな生活にあこがれるわ……」
杏子「んじゃ、一緒にホームレスでもするか?」
マミ「それは遠慮したいわ。第一、あなたももうホームレスじゃないでしょう?」
杏子「え?……あー……言われてみりゃそっか」
杏子「帰る場所があるのも、嬉しいもんだな」ニカッ
マミ「ええ、そうね。そしてそれは、わたしたちで言うところの見滝原もそれに当たるのよね」
杏子「そうだな。見滝原にゃマミのマンションがあるしな」
マミ「……わたしが高校を卒業して、見滝原に帰ったら……佐倉さん、一緒に暮さない?」
杏子「え?」
マミ「わたしも、今は寮生と一緒に暮らしているようなものだけれど、また一人暮らしに戻ったら寂しくなると思うの」
マミ「でも、誰かが一緒に暮らしてくれたら楽しくなると思わない?」
90: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:26:33.27 ID:WIF0E7mp0
杏子「んー……そうだなぁ……」
マミ「嫌かしら?」
杏子「それも悪かねぇかもな」
マミ「本当っ?」
杏子「ああ。マミがいいってんなら、一緒に暮させてもらおうかな」
マミ「ありがとう、佐倉さんっ!これで、もう何も恐くないわ!」
杏子「大げさだな……んで、これからどうすんだ?」
マミ「そうね、今日のパトロールもそろそろ引き上げようかと思っていたのよ」
杏子「そんじゃ、どっか飯でも食いに行くか!」
マミ「今度はわたしにおごらせてね?」
杏子「別に気ぃ遣わなくってもいいってのに……ま、たまにはいっか!」ニカッ
91: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:27:28.06 ID:WIF0E7mp0
第二部「まどか達の卒業式」
92: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:28:48.04 ID:WIF0E7mp0
数ヵ月後、杏子のアパート―――
マミ「夏休みよ、佐倉さんっ!」バンッ!
杏子「長かったなぁ」
マミ「さぁ、見滝原に帰るわよっ!」
杏子「気ぃ早っ!?」
マミ「あなたは鹿目さん達と会いたくないの!?」
杏子「いや、あたしは普段暇を見つけて……」
マミ「何かしら?」ギロッ
杏子「ナンデモナイデス……」
93: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:29:51.56 ID:WIF0E7mp0
杏子「んなわけで……うん、うん……今から見滝原、帰るから……ん、そんじゃな」ガチャッ
マミ「鹿目さん、なんだって言ってた?」
杏子「お祝いの準備して待ってるってさ」
マミ「鹿目さんは優しいわね……今から会えると思うと、涙が出て来るわ」ホロリ
杏子「だから大げさなんだってマミは……」
さやか「今から帰ってくるって!?」
まどか「うん!さっき電話あったの!」
ほむら「夏休み初日から帰ってくるなんて……よっぽど寂しかったのかしら」
さやか「よし、クラッカーとお菓子を買いに行こう!」
ほむら「今度は誤爆させないでよ、さやか?」
さやか「いつまで根に持ってんのさっ!?」
94: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:30:19.95 ID:WIF0E7mp0
夕方、駅―――
マミ「帰ってきたわよ、佐倉さんっ!」スタッ
杏子「あーそうだな、久しぶりに帰ってきたな」ボウヨミ
マミ「懐かしい空気だわ……わたし、帰って来たのね……」ホロリ
杏子「確か、ほむらの家で待ってるって言ってたな」
マミ「それじゃ、早速行きましょうか!」
杏子「え、でも荷物とかマミのマンションに置いてからの方が」
マミ「もう待ち遠しいのよっ!」
杏子(なんか寂しがり病が悪化してね?)
95: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:31:09.29 ID:WIF0E7mp0
ほむらの家前―――
さやか「くそぅ、ほむらめ……」ブツブツ
ほむら『あなたはクラッカーを誤爆してしまうから、外でマミと杏子を誘導してちょうだい』
さやか「投げ渡されなけりゃ、あたしだって誤爆はさせないっての……」ブツブツ
杏子「おっ、あれさやかじゃねえ?」
マミ「あら、ホントだわ!美樹さーん!」ブンブン
さやか「おっ、来たね!マミさん、杏子。見滝原へおかえりっ!」
マミ「久しぶりね、美樹さんっ!」
さやか「そうだねぇ、3月の終わりからだから、3か月ぶりくらい?」
マミ「もうホントに寂しかったのよっ!佐倉さんはたまに帰ってるって言ってたけど、わたしは帰る暇無いしで!」
杏子「悪かったって言ってるのに……」
96: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:32:14.31 ID:WIF0E7mp0
さやか「ほむらとまどかは家の中で待ってるよ。あたしは誘導係」
マミ「二人にも会いたいわ!」
さやか「それじゃ……」ガチャッ
ほむら(来たみたいね)ヒソヒソ
まどか(えへへ、驚いてくれるかなぁ?)ヒソヒソ
ほむら(きっと驚いてくれるわ)ヒソヒソ
QB「何をやっているんだい、二人とも?」
まどか(きゅ、キュゥべえ!?)
QB「ん、これはなんだい?」グイッ
ほむら(ちょっ)
パァァァン!
97: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:33:09.21 ID:WIF0E7mp0
さやか・マミ・杏子「!?」
まどか(キュゥべえのばかああああああああっ!!)
QB「ま、まどがっ……く、苦しっ……キュップイ」ガクッ
ほむら(この淫獣がっ!!)
マミ「……え、ええっと……」
杏子「今の音は……?」
さやか「あ、あははははは!ちょ、ちょっと待っててっ!」ダッ
さやか(何やってんのさ、二人とも!?)ヒソヒソ
QB「」
ほむら(暴発させた愚か者を処分したところよ)ヒソヒソ
まどか(あ、改めて二人を連れて来てくれるかな?)ヒソヒソ
さやか(が、合点っ!)
98: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:33:47.54 ID:WIF0E7mp0
さやか「ご、ごめんごめん!なんか、ごたごたがあったみたいで!もう大丈夫だよっ!」
QB「全く、あれくらいで殺されちゃたまらないね」
マミ「キュゥべえ!?あれ、でもわたしの住んでる町にいるのとは別個体よね?」
QB「そうだよ。今僕がここに来たのは、この家にいた個体がやられちゃったから来たんだ」
杏子(さやかの次はキュゥべえか……全く、計画通りにはいかねぇんだな)
さやか「と、とにかく!中入ろう、中!」
スタスタ ガチャ
パァァァン! パァァァン!
まどか「お、お帰り、マミさん!杏子ちゃん!」
ほむら「こうしてまた会えてうれしいわ」
マミ「あ、ありがとう……あはは……」
杏子「く、クラッカーまで用意してくれるなんて、優しいな、あ、あはは……」
さやか(微妙な空気……くっ)ブワワッ
99: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:34:52.44 ID:WIF0E7mp0
QB「なるほどね、この紐を引っ張るとこうして大きな音と一緒に紙吹雪が出る仕組みになっているんだね」グイッ パァァァン!
QB「しかし、これに一体なんの意味があるんだい?」
ほむら「感情のないあんたには永久にわからないでしょうね。とにかく、今後はこれに触れないで頂戴」
QB「手厳しい意見だね」
マミ「ああ、こうしてみんなでお茶していると、本当に帰って来たって気がしてくるわ」
まどか「高校生活はどうですか、マミさん?」
マミ「ええ、高校でも新しい友達は出来たし、これからもうまくやっていけそうだわ」
さやか「雪咲には、魔法少女はいないんですか?」
マミ「そう言えば、どうなのかしら?見掛けたことはないわね」
QB「今マミがいる雪咲町には、魔法少女はいないはずだね」
100: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:35:33.50 ID:WIF0E7mp0
QB「と言うよりも、魔法少女の素質を持っている人がいないと言えばいいのかな?」
QB「まぁ、雪咲町自体魔女の出没頻度が低いから、別にいなくても問題はないんだけどね」
まどか「うーん……見滝原が異常に頻度が高いのって、何か理由あるのかなぁ?」
ほむら「ワルプルギスの夜が来るくらいだもの、何かありそうよね」
QB「それは僕たちインキュベーターにもよくわかっていないんだよね。ただ、この町にはなんらかの因果が絡んでいるのは間違いなさそうなんだ」
QB「それを突きとめるのも、僕たちの仕事のひとつかな」
ほむら「あなたたちインキュベーターの仕事なんて興味ないわ」
QB「ならなんで聞いたのさ?」
ほむら「話のタネ程度ね」
QB「酷い話だ」
101: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:36:20.60 ID:WIF0E7mp0
さやか「!」
ほむら「魔女の気配……ね」
マミ「久しぶりね、この感覚も」
まどか「向こうで魔女いなくって、ソウルジェムは大丈夫なんですか?」
杏子「ん、魔女が現れねぇからな。そもそも魔力自体つかわねぇんだよ」
マミ「それに、わたしが言っているのはそういうことではないわ」
まどか「え?」
マミ「こうして、四人揃って魔女退治が、ね。懐かしいのよ」
さやか「あー、そうだね。あたしもほむらと二人でってのが最近の日常だったし」
ほむら「背中から撃たないだけ感謝して欲しいものだわ」
さやか「あたしたち仲間じゃなかったっけ?」
ほむら「さぁ、行きましょうか」スクッ
さやか「スルー!?」
102: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:36:53.45 ID:WIF0E7mp0
結界内―――
さやか「てやっ!」ズバッ
杏子「そらっ!」ズグンッ
魔女「ケタケタ……」ボロボロ……
マミ「これでトドメよ!ティロ・フィナーレ!」バシュウウウ!
ドォォォン!!
魔女「ケタケタケタ………」シュゥゥゥゥ……
ズァァァァァ…… コンッ…コロコロ……
さやか「いやぁ、久しぶりに聞いたね、マミさんのティロ・フィナーレ!」
マミ「見世物じゃないのよ?」ヒョイッ
103: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:37:48.63 ID:WIF0E7mp0
ほむら「そのグリーフシードはあなたたちが持って行くといいわ」
マミ「あら、いいの?」
ほむら「わたしなりの、お祝い、ってことにしておいてちょうだい」
まどか「ほむらちゃんも、素直に言えばいいのに。会えて嬉しいって」
ほむら「そ、それなら最初に言ったじゃない。何度も言うと、言葉の重みが薄れるのよ?」
マミ「わたしは何回言われても嬉しいけれど?」
杏子「ほれ、マミもこう言ってることだし、もう一回くらい言ってやれって」
ほむら「あ、あまりわたしをいじめないでくれるかしら?」
さやか「恥ずかしがりだねぇほむらは」
ほむら「あなたにだけは言われたくなかったわ」
さやか「なんかあたしにだけ当たり強くない?」
104: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:38:22.14 ID:WIF0E7mp0
マミ「さて、それじゃそろそろ帰りましょうか?」
杏子「だな。久々にマミの家がどうなってるかも見てみてぇし」
ほむら「あら、残念ね。『せっかく久しぶりに会えて嬉しい』っていうのに」
まどか「なんか言葉に違和感が……」
さやか「無理矢理言った感がバリバリだね」
ほむら「くっ……」
マミ「いいのよ、暁美さん?無理に言わなくても」
ほむら「そ、そう?そう言ってもらえるとわたしも助かるわ」ホッ
マミ「それじゃ、みんな。また会いましょう!」
さやか「じゃあね、マミさん、杏子!」
まどか「ばいばーい!」
105: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:39:21.12 ID:WIF0E7mp0
―――――
―――
―
マミ「あっという間に夏休みが終わってしまった気がするわ……」
杏子「まぁまぁ、学校が始まればまた学校の友達と会えるんだろ?いいことじゃねぇか」
マミ「そういうあなたはどうなのかしら?」
杏子「あたしはまた工事現場に戻るさ。ひと月近く休み貰っちまってるからな」
杏子「明日からはまた穴を掘る仕事が待ってるのさ……」フッ
マミ「あなたもなんだかんだで苦労しているのね……」
106: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:39:56.09 ID:WIF0E7mp0
七ヶ月後―――
マミ「今度は、わたしが鹿目さんたちの卒業式を見送る番なのね……」
杏子「準備は終わってるか、マミ?」
マミ「ええ、終わっているわ」
杏子「よし、んじゃあいつらの泣き顔でも見に行くか!」ニカッ
見滝原中学―――
マミ「ああ、この校舎を眺めるのも久々だわ……」ウルウル
杏子「お前が泣いてどうすんだよ!?」
マミ「ごめんなさい、なんだか感慨に耽ってしまって……」ゴシゴシ
杏子「ああもう、ほら行くぞ!もうすぐ式始まっちまう!」
マミ「っ……ええ、そうね」
107: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:40:50.70 ID:WIF0E7mp0
『卒業証書、授与』
杏子「えーと、さやか……は、『美樹』だからまどか達んなかだったら一番最後だな」
杏子「最初はほむらか」
『暁美ほむら』
ほむら「はい」
杏子「おっ、さすがほむら。キリリッとしてるな」
マミ「暁美さん……卒業、おめでとう」グスグス
杏子(っておいマミ!?泣くの早すぎだろ!?)
マミ「ううっ、後輩の卒業姿なんて……眩し過ぎるじゃないのっ……」グスグス
杏子(ああもう……ほら、ハンカチ)
マミ(ありがとう、佐倉さん……)グシグシ
108: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:42:05.13 ID:WIF0E7mp0
『鹿目まどか』
まどか「はいっ……」
杏子「まどかはちっとだけ緊張してるけど、問題なさそうだな。やっぱこういう場ではさやかが一番期待できそうだな」ニヤニヤ
マミ「鹿目さん、卒業おめでとう……」グスグス
杏子「お前、涙腺弱すぎるぞ……」
マミ「感傷に浸りすぎるのね、わたし……」グシグシ
『上条恭介』
恭介「はい」
杏子「ん……あいつは確か、さやかの幼馴染の……」
マミ「上条恭介くん、ね。そう言えば、名前は聞いていたけれどこうして姿を見るの初めてね」
杏子「ふーん……悪かねぇけど、あんな男のどこに惚れたんだかねぇさやかは」
マミ「恋と言うのは、そういう物差しでは測れないものなのよ?」
杏子「あたしにはわかんねぇな」
109: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:43:43.93 ID:WIF0E7mp0
『志筑仁美』
仁美「はい」
杏子「あいつは……さやかの幼馴染を寝取ったって言う……」
マミ「ちょっと佐倉さん、それは失礼よ」ヒソヒソ
杏子「はん、別にいいじゃねえか。間違ってねぇだろ?」ヒソヒソ
『美樹さやか』
さやか「は、はいっ!」
杏子(うははは!見てみろマミ!あいつ、ガッチガチに緊張してるぜ!)
マミ「卒業おめでとう、美樹さん……」グスグス
杏子(ダメだ聞いてねぇ)
110: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:45:00.29 ID:WIF0E7mp0
教室―――
和子「みんな、卒業おめでとう!高校にあがる人、働き始める人、色々いるでしょうけど!」
和子「ここから巣立っても、元気でやんなさい!」
中沢「ぜんぜぇぇ!!」ボロボロ
和子「こら、中沢君!男の子なんだから泣かない!」
中沢「ううっ……」ゴシゴシ
和子「それじゃ、最後のホームルームもこれにて終了!元気でね、みんな!」
校門前―――
ほむら「うぅっ……まどかぁ……」エグエグ ギュッ
まどか「卒業、おめでとうだね、ほむらちゃん」
ほむら「まどかも……卒業、おめでとう……」グスグス
さやか「全く、ほむらはこういう時には弱いんだねぇ」
ほむら「っ……うるさいわねっ!いいじゃないの、泣いたって!」ゴシゴシ
111: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:45:50.23 ID:WIF0E7mp0
仁美「わたくしとは進学する高校が違いますから、これでお別れですわね」
さやか「そうだね。せいぜい、恭介とよろしくやんな!」
恭介「あっはは、さやかは手厳しいなぁ」
さやか「うっさい!あんたなんかもう知らないっての!」
恭介「それじゃ……暁美さん、鹿目さん、さやか。卒業、おめでとう!」
さやか「ん!恭介も仁美も、卒業おめでとう!」
仁美「これからも、メールとか送りますわ」
さやか「オッケーオッケー!」
恭介「行こうか、仁美さん?」
仁美「ええ……」
さやか「はぁ……恭介と仁美も、幸せでやんなさいや……」
112: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:46:56.15 ID:WIF0E7mp0
杏子「おつかれさん、さやか」ポンッ
さやか「! 杏子、マミさん……」
マミ「晴れ姿、しっかりと見させてもらったわ……」
さやか「うん、ありがと……って!マミさん、目真っ赤ですよ!?」
杏子「マミの奴、式の最中ずっと泣いてたんだぜ?」
マミ「卒業式は、涙と別れの式ですもの……」
まどか「わたしたちの為に、泣いてくれたんですね、マミさん」
マミ「ううっ……わたし、どうしてこんなに涙脆いのかしら……」
ほむら「マドカァ……」
杏子「んで、ほむらはいつまでまどかにひっついてるんだよ?」
まどか「今、顔を見られたくないんだって」
ほむら「うう……」グスグス
杏子「せっかくデジカメ持って来たのになぁ……」
113: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:47:43.63 ID:WIF0E7mp0
さやか「あんた、それ……まさか、万引き……」
杏子「んなわけねぇだろ!?ちゃんと働いて稼いで買ったんだよっ!」
さやか「そっかそっか!それなら、一枚撮ってもらおうかな!ね、まどか、ほむら?」
まどか「うん、そうだね!」
ほむら「マドカァ……」
杏子「おら、ほむら!記念に一枚撮るんだから、まどかから離れろ!」
ほむら「っ……」パッ
杏子「うし、それで……」
ほむら「……な、何よ……?」
杏子「………プフッ!あっはははははははははははは!!ほ、ほむら、顔っ……ひ、ひはははっ……く、苦しっ……!!」ダンダンッ
ほむら「わ、笑わないでよっ!!だから顔見られたくなかったのに……っ!」カァァァ
114: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:48:25.66 ID:WIF0E7mp0
杏子「ひぃ、ひぃ……!」
マミ「ええと……佐倉さんが再起不能になったみたいだから、わたしが撮るわ」
さやか「あ、あははは……お願いします、マミさん」
まどか「これで、わたしたちもこの校舎での生活最後だね」
ほむら「そうね………ホント、この学校では色んな事があったわ」
マミ「暁美さん、もうちょっと鹿目さんの方に寄ってもらえるかしら?」
ほむら「え、えぇ……」
マミ「それじゃ、撮るわよ。はい、チーズ!」
パシャ
115: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:49:56.50 ID:WIF0E7mp0
杏子「あ~笑った……もう腹筋痛くてこれ以上笑えねぇってくらい笑ったぜ……」
ほむら「杏子……覚えておきなさい」
杏子「おおこわっ!でも、泣き虫ほむらちゃんも可愛かったぜ?」
ほむら「ちゃ、茶化さないでよっ!」
杏子「なんならまた泣いてくれたっていいんだぜ?そしたら、今度こそデジカメにほむらのメモリアルが増えるからな!」
ほむら「今後、意地でもあなたの前では泣かないわ」
杏子「ちっ、つれねぇな」
マミ「あなたたち、今後の進路は決まっているの?」
まどか「わたしとさやかちゃんは、地元の高校にあがるんです」
さやか「ん、もう二人とも合格通知もらってるしね」
116: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:50:41.59 ID:WIF0E7mp0
杏子「ん?まどかとさやかはってことは、ほむらはどうすんだ?」
ほむら「わたしは、一度両親の所へ帰ろうと思うの」
マミ「え?」
ほむら「元々、わたしは心臓が弱かったから病院に入院していたのだけれど、もう今ではすっかり元気になったから」
ほむら「一度両親の元に帰って、それから改めてこの町に戻ってくるつもり」
まどか「だから、ほむらちゃんは高校は受験してないんだよね?」
さやか「途中編入は難易度高いぞぉ~?」
ほむら「心配しなくても、わたしはあなたと違って成績は優秀だもの。難なく突破してみせるわ」ファサッ
さやか「嫌み入りましたー!」
117: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:51:17.04 ID:WIF0E7mp0
まどか「さやかちゃんは合格ラインギリギリだったもんね?」
さやか「よく受験戦争を生き残れたなぁあたし。自分で自分を褒めてやりたいよ」
マミ「わたしの通っている高校には来ないのね……」ショボン
まどか「マミさんの行ってる高校はレベルが高すぎて、その……」
マミ「?」
まどか「わたしは狙えなくもない感じだったんですけど……」
さやか「ピュ~ピュ~♪」
杏子「なるほどな。さやかがちょっとあれだった、と」
さやか「うっ」グサリ
ほむら「ちなみにわたしも狙えたわ」
さやか「ううっ」グサグサ
マミ「ま、まぁ無理して見滝原を離れることはないわよね、ええ」
さやか「そ、そうそうその通り!いやぁマミさんはわかってるなぁ!」
118: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:52:24.93 ID:WIF0E7mp0
さやか「そんなマミさんに朗報です!」ビシッ
マミ「?」
さやか「あたしやまどか、ほむらはこの町の高校に進学するけど、あたしたちの知り合いで二人、マミさんと同じ高校にあがる人がいます!」
杏子「ほう?」
さやか「仁美と恭介の二人ですよ!」
マミ「ああ、あの二人が……」
まどか「もし学校内で見掛けたら、よろしくお願いします、マミさん」
マミ「そうね……あなたたちの友達なら、わたしも仲良くしたいわね」
杏子「あたしはよろしくしたくねぇな……」
さやか「そんなこと言わないで、仲良くしてやってよ!二人とも、いい奴だからさ!」
杏子「まぁ、さやかがそう言うんなら……」
119: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:52:59.55 ID:WIF0E7mp0
マミ「それじゃ、わたしたちもそろそろ帰りましょうか、佐倉さん?」
杏子「ん、そうだな」
まどか「マミさんが卒業するまで、あと二年かぁ」
マミ「ふふ、一年があっという間だったんですもの、二年なんてすぐよ。ね?」
さやか「ほむらも一時期帰るみたいだし、その間はあたし一人かぁ……ちょっと不安だな」
QB「呼ばれた気がしたから参上したよ」ヒョコッ
ほむら「呼んでいないわ、消えなさいインキュベーター」
QB「さやかがお困りのようだね。さあまどか、今こそキミの願いでエントロピーを」
ほむら「聞こえなかったのかしら?」ジャコッ
QB「こんな町中でそんな物騒なものを構えないでくれよ」
120: ◆uOSHePfhFc 2012/04/11(水) 22:53:59.11 ID:WIF0E7mp0
ひと月後、雪咲町・夕方―――
魔女「」シュゥゥゥゥ……
マミ「ふぅ、魔女退治、完了ね」
杏子「んじゃ、帰るか」
マミ「そうね」
杏子「……ん?あれは……」
マミ「志筑さんと上条くんだったわね」
仁美「……あら?あなたたちは確か、さやかさんとお友達の……」
マミ「ええ。巴マミよ。こうして話すのは初めてね?」ニコッ
第二部「まどか達の卒業式」 完
126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:46:42.46 ID:bEw5r4BA0
時は少々遡り、三月の終わり―――
ほむら「それじゃね、まどか、さやか」
さやか「うう……魔法少女はあたし一人になるのか……不安だなぁ」
ほむら「心配しなくても、四月の中ごろには戻ってくるわ。それまでの約二週間、頑張りなさい」
さやか「お?ほむらが激励してくれるなんて珍しいじゃん」
ほむら「わたしがいないときにあなたに力尽きられたら後味悪いじゃないの」
さやか「なんやかんやであたし自身はどうでもいいってことですかい」
ほむら「ふふ、そんなことはないわよ?あーあなたことも心配だわー」
まどか「あはは、棒読みで心が込もってないよほむらちゃん」
ほむら「込めていないもの」
さやか「ぐぬぬ……」
127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:47:38.89 ID:bEw5r4BA0
ほむら「……来たわね、汽車」
まどか「元気でね、ほむらちゃん」
ほむら「……マミの時みたいには泣かないのね?」
まどか「え、それはその……」
ほむら「冗談よ。わたしはすぐに帰ってくるからね、まどか」ニコッ
まどか「う、うん!」
さやか「あたしには何か言うことないの、ほむら?」
ほむら「せいぜい死なないように頑張るのね」ファサッ
さやか「くぁーっ!嫌みったらし―!」
ほむら「これも冗談。大丈夫よ、あなたもわたしたちと一緒に戦うことで、腕をあげたもの」
ほむら「頑張ってね、さやか」
さやか「おぉう……ストレートに言われると、それはそれで気恥ずかしいね」
128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:49:12.87 ID:bEw5r4BA0
ほむら「さて!それじゃ、帰るわ!」タッ
さやか「少しでも早く帰って来いよーほむらーっ!」ブンブン
まどか「ほんの少しだけのお別れだからねーっ!」ブンブン
ピィィィーーーーーッ ガシャン、ガシャン……
さやか「……ふぅっ!マミさんと杏子は違う町に行っちゃったし、ほむらは実家に帰っちゃったし!」
さやか「恭介と仁美はマミさんと同じ学校にあがったから、これで見滝原に残ったのはあたしとまどかだけになっちゃったね」
まどか「うん……そうだね」
さやか「ほむらはすぐ帰ってくるって言ってたけど……やっぱ、寂しいもんだね」
まどか「さやかちゃんも、頑張らないとね?」
さやか「言われなくっても!そんじゃ、帰ろっか、まどか!」
まどか「うん!」
129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:51:20.27 ID:bEw5r4BA0
汽車内―――
ほむら「さようなら、見滝原……ホント、色々あったわ」
ほむら「ワルプルギスの夜もそうだし、わたしの、最高の友達とも会えたし……」
ほむら「インキュベーターと会って魔法少女になったのも、この町だったわね……」
QB「呼んだかい?」ヒョコッ
ほむら「っ!?」ビクッ!!
QB「何を驚いてるのさ、ほむら?」
ほむら「そ、それは驚くでしょう!?いきなり出てこないでよ!」
QB「僕は魔法少女と一緒に行動しなきゃ意味がないからね。それはほむらも例外ではないよ」
QB「あと、あまり僕とは話さない方がいいんじゃないかな?」
ほむら「え?」
130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:54:12.40 ID:bEw5r4BA0
QB「わかっているとは思うけど、僕の姿は一般人には見えないんだよ?」
ほむら「……あ」
乗客「ヒソヒソ……」
ほむら「……っ」カァァァ
QB「気付いたかい?君は周囲には独り言を言ってるようにしか見えないのさ」
ほむら「くっ……この淫獣がっ……!」ガシッ ギュウウウ
QB「や、やめてくれよほむら……くるしっ……」ギュウウウ
ほむら「……はぁ」パッ
QB「おや、今日はすんなり離してくれたね。キミもセンチメンタルに浸っている、と言うことかな?」
ほむら『当然じゃないの……わたしが長い間時間旅行をしていた理由との別れだもの』
QB「おや、テレパシーかい?考えたねほむら」
131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:55:18.70 ID:bEw5r4BA0
ほむら『見滝原……わたしの運命を大きく変えた町。そこから離れるんだもの、誰だって感傷に浸るわよ』
QB「それも二週間だけだろう?」
ほむら『ええ、そうよ。でも、わたしの運命を大きく変えた少女との別れは、少しの間だけでも寂しいものなの』
QB「その辺は、感情の無い僕には理解できない話だね」
ほむら『……あなたに話すだけ無駄だったようね』
QB「手厳しい意見だね」
ほむら『わたしがまどかと離れている間に、まどかに付け入らないでよ?キュゥべえ』
QB「多分、無駄だろうね」
ほむら『え?』
QB「キミが長い旅をしてきた理由をまどかが知った以上、キミのいないところでまどかが魔法少女の契約を決意するとは思えない」
132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:56:15.77 ID:bEw5r4BA0
QB「でもまぁ、隙あらば勧誘は続けるつもりだけどね」
ほむら『ここであなたを始末してもいいのよ?』
QB「それは勘弁して欲しいところだ」
ほむら『なら、いい加減諦めなさいよ……』
QB「まぁ、無駄だろうけど少しでも可能性があるウチは諦めないよ」
ほむら『あなた、ホントにブレないわね……』
QB「それは褒められているのかな?」
ほむら『そう受け取ってもらって構わないわ』
QB「それはありがたいね」
133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:57:25.89 ID:bEw5r4BA0
QB「それにしても、驚いたよ」
ほむら『何がかしら?』
QB「以前、キミが言っていた事さ。確か、キミが繰り返していた一ヶ月と言う期間を過ぎたら、時間停止の魔法は使えなくなるんじゃなかったのかい?」
ほむら『……ああ、その事。誰から聞いたのかしら?』
QB「マミが言っていたよ。竜型の魔女と戦った時に、キミがその魔法を使っていた、と」
ほむら『……いつかの世界で、あなたが言っていたわ』
QB「?」
ほむら『キミ達魔法少女は、条理を覆す存在だ、キミ達がどれほどの不条理を成し遂げようと、それは驚くに値しないことだ、って』
QB「……」
ほむら『あなたのその言葉を思い出して、わたしも魔法の修練に勤しんだの』
134: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:58:47.38 ID:bEw5r4BA0
ほむら『ここで変身して見せるわけにもいかないけれど……今は砂時計ではなく、懐中時計の形に変化しているわ』
QB「昔、マミが魔法少女として契約した時も同じだったね」
ほむら『マミも?』
QB「うん。自身の力が及ばず、魔女を前にして撤退を余儀なくされてしまって、彼女は酷く落ち込んでいた」
QB「そして、必死に修練を重ねて……それで彼女は、あそこまで強くなることが出来たのさ」
ほむら『なるほどね……彼女の強さの秘密、なんとなく分かった気がするわ』
QB「でも、不思議なこともあるものだね。一度会得した魔法の性質が、変質するなんて」
ほむら『以前のように砂時計を操作するのと違って、今は魔力消費も激しいの。だから普段はあまり使わないようにしているのだけれど……』
ほむら『あの魔女の強さは、本当に規格外だった。ワルプルギスの夜以外にも、あれだけの強力な魔女が存在するのね』
QB「魔女の強さは、生前の魔法少女の強さに比例するからね」
ほむら『………』
135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 19:59:55.72 ID:bEw5r4BA0
ガタンガタン……
ほむら「………」
QB「大人しくなったね、ほむら?」
ほむら「……スー……」コテン
QB「なんだ、寝てしまっただけか」
ほむら「スー……スー……」
QB「やれやれ、ほむらもこうして寝ていれば、可愛げがあるのに」
ほむら「スー……スー……」
QB「こんな少女が数人だけで、あのワルプルギスの夜を倒したと言うのだから驚きだ」
136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:00:42.29 ID:bEw5r4BA0
第三部「ほむらの帰省」
137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:02:22.32 ID:bEw5r4BA0
―――――
―――
―
「……さん、起きてください」
ほむら「……ん…?」
運転手「終点ですよ、お客さん」
ほむら「あ……すみません、寝てしまっていたんですね。今、降ります」
ほむら「……帰ってきたわ」
ほむら「お父さんとお母さん、来てくれているはずね」スタスタ
138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:03:02.99 ID:bEw5r4BA0
ほむらの故郷・焔設町 駅、ホーム―――
ほむら「……」スタスタ
ほむ父「出てこないな、ほむら……」
ほむ母「ええ……乗り遅れたのかしら……」
ほむら「! お父さん、お母さん!」タッ
ほむ父母「?」
ほむら「ただいま!」
ほむ母「ええと……ほむら?」
ほむら「え?うん、わたしだよ」
ほむ父母「!?」
139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:03:56.09 ID:bEw5r4BA0
ほむ父「ほ、ほむら!?眼鏡は……?」
ほむら(あ、そうだった……お父さんとお母さんは、眼鏡をかけたわたししか知らないのよね……)ガサゴソ
ほむら(ああ、あったあった。まさか、またこの眼鏡をかける日が来るとは思いもしなかったわ)スチャ
ほむら「これで、わかる?」
ほむ母「あ……ほむら……」ウルウル
ほむら「ただいま、お父さん、お母さん!」
ほむ父「すっかり元気になったんだな、ほむら……」ウルウル
ほむら「うん!」
ほむ母「よかった、ほむら……っ!」ギュッ
ほむら「お、お母さん……」
140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:05:48.39 ID:bEw5r4BA0
ほむ父「さあ、帰ろうほむら」
ほむ母「お料理たっくさん作ってあるのよ、ほむら」
ほむら「お母さんのお料理、久しぶりだね」
ほむらの実家―――
ほむら「わたしの家……ずいぶんと久しぶりな気がする」
ほむ父「ほむらが中学二年の頃からだから、二年近くか」
ほむ母「ほむらの部屋も、そのまま残してあるのよ?」
ほむら「そっか……二年、だよね……」
ほむら(実際にはもっと長い間だったんだけど……これは、言うわけにはいかないよね)
141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:06:36.39 ID:bEw5r4BA0
夕方―――
ほむ母「それで、ほむら?高校は地元の学校にあがるのよね?」
ほむら「それなんだけど……」
ほむ父母「?」
ほむら「わたしね、見滝原に戻りたいの」
ほむ父「見滝原に?」
ほむら「うん。見滝原に友達が出来てね、その友達と一緒の学校に通いたいな……って」
ほむら「ダメ……かな?」
142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:07:29.26 ID:bEw5r4BA0
ほむ母「それじゃ、一人暮らしを続けるって言うの?」
ほむら「う、うん」
ほむ父「ほむら、お前は心臓が弱いんだろう?大丈夫なのか?」
ほむら「もう大丈夫!お医者様にも太鼓判を押されたもん!」
ほむ母(どうします?あなた)
ほむ父(……今まで、この子がワガママを言ったことがあったか?)
ほむ母(なかったわね……心臓の弱い自分に引け目を感じてか、元々の性格故なのか……)
ほむ父(この子のワガママなら……僕は、聞き入れてあげたい)
ほむ母(………ええ、そうね。それが、この子の望んでいることなら)
143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:08:11.91 ID:bEw5r4BA0
ほむ父「本当に、体の方は大丈夫なんだな?」
ほむら「うん、もう普通に走ったりも出来るし!」
ほむ父「なら、お前のしたいようにしなさい。僕は、反対しないよ」
ほむら「!」
ほむ母「大事なお友達が出来たのね、ほむら?」
ほむら「うん……わたしの、最高の友達が出来たの」
ほむ母「よかった……本当に……っ」ポロポロ
ほむら「お、お母さん!?」
144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:08:53.66 ID:bEw5r4BA0
ほむ母「本当に、ほむらが元気になってくれてっ……!」
ほむ母「それに、一緒の学校に通いたいって言えるようなお友達まで……」
ほむ父「ああ……安心したよ」
ほむら「ありがとう、お父さん、お母さん!」
ほむ母「それじゃ、途中編入ってことになるのかしらね?」
ほむら「うん。でも大丈夫!わたしの成績なら、十分に狙えるところだから!」
ほむ父「そうか。頑張れ、ほむら」
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:09:29.04 ID:bEw5r4BA0
夜、ほむらの部屋―――
ほむら(よかった、反対されたらどうしようって思ってたけど、杞憂で済んで)
ほむら(あとは、途中編入を無事に終わらせるだけだね)
ほむら(……なんだろう、お父さんとお母さんに会ってから、昔のわたしに戻ったみたい)
ほむら(こうして、眼鏡もまたかけるようになって……)
ほむら(そう言えば、昔はみつあみにしてたんだったっけ……)
ほむら(………)イソイソ ギュッ
ほむら(うん!これで完璧に昔のわたしだね!)
146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:10:32.15 ID:bEw5r4BA0
ほむら「!」
ほむら(魔女……いや、この反応は使い魔……かな?)
ほむら(やっぱりこの町にも出るんだ……魔法少女は、いるのかな?)
ほむら(とにかく、行ってみよう!)
ほむら(と言っても、まさか玄関から出るわけにはいかないよね……)
ほむら(窓から行こう)ガララ タンッ
町の外れ―――
使い魔「キャハハハ!」モヤモヤ
ほむら「いた……結界も不安定。やっぱり使い魔ね」
147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:11:27.09 ID:bEw5r4BA0
ほむら「でも、使い魔でも油断するわけにはいかないわ……以前の魔女の使い魔のように、強い場合もある」
ほむら「悪く思わないでね、使い魔!」ジャコッ ドドン!
バスバス
使い魔「キャハハ!?」グラリ
ほむら「これでトドメ……!?」
ヒュンッ ズバァァ!!
使い魔「キャ……ハハハ……」シュウウゥゥゥ
ほむら「だ、誰!?」
148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:12:41.97 ID:bEw5r4BA0
キリカ「これは驚いた。まさか、この町に他にも魔法少女がいたなんてね」スタッ
ゆま「あたらしい魔法少女?」
織莉子「あなた、どこから来たのかしら?」
ほむら「キリカに……織莉子……!?それに、ゆままで……」
キリカ「ん、わたしたちを知っているのかい?」
織莉子「どこかで会ったことあったかしら……?」
ゆま「うーん……ゆまは知らないな、この人」
織莉子「いえ……ああ、そうだ、思い出したわ」
149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:13:53.78 ID:bEw5r4BA0
織莉子「あの時、世界の終末に居合わせた人にそっくりね、貴女」
ほむら「っ……!」バッ
織莉子「ああ、警戒しなくても大丈夫よ。わたしたちは貴女の敵じゃない」
ほむら「……え……?」
織莉子「落ち着いて話をする必要があるわね」
キリカ「なら、とりあえずわたしたちのねぐらに帰ろうか。そこでなら、話出来るだろう?」
ゆま「うん、かえろー!」
ほむら(どういうこと……?)
150: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:15:22.33 ID:bEw5r4BA0
織莉子たちの家―――
織莉子「何も出せないけれど、座って。わたしたちの話、聞きたいんでしょう?」
ほむら「え、ええ……」
織莉子「まずひとつ。世界の終末を見たと言うのは、わたしの未来予知の魔法でよ」
ほむら「世界の終末……救済の魔女の姿を、見たのね」
織莉子「ええ、そうなるわね」
ほむら「わたしの知っているあなたは……それを回避する為に、ある人物の殺害を目論んでいたはず」
織莉子「………」
ほむら「それなのに、なぜこの町に?」
151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:16:08.97 ID:bEw5r4BA0
織莉子「何度も見たわ……あの町、見滝原が崩壊する光景を」
織莉子「でもね、ある日を境にしてその光景がおぼろげになっていったの」
織莉子「何故だかわかる?」
ほむら「……」フルフル
織莉子「救済の魔女の側に、寄り添うひとつの影があったの。まるで、救済の魔女を助けようとしているようだった」
織莉子「それが、貴女ね。……暁美ほむら」
織莉子「わたしは、貴女なら彼女を……鹿目まどかを任せることが出来ると思ったの」
ほむら「………」
152: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:17:22.18 ID:bEw5r4BA0
ほむら「その口ぶり……どうやら、全てを知っているようね」
織莉子「そうね。貴女達の姿は、いつだって見滝原と共に見て来たわ」
織莉子「……ワルプルギスの夜に対峙する、四人の魔法少女も、ね」
織莉子「見事、の一言に尽きるわ。あの弩級の魔女を倒すなんて」
織莉子「……わたしは……怖気づいてしまった。それで、あの町から逃げるようにして焔設町に来たの」
キリカ「わたしは織莉子を守る為に一緒に来たまでだ。悪かったね、暁美。ワルプルギスの夜との戦いに加勢する事が出来なくて」
キリカ「でも、織莉子はお前達の勝利も見通していたらしいよ」
織莉子「……世界には、無数の可能性がある。今も、あの町が崩壊する光景が完全に消えたわけじゃない」
織莉子「貴女達が居る限りは、その未来は訪れないと信じているけれどね」
153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:18:48.80 ID:bEw5r4BA0
ほむら「……それと、もうひとつ。なぜ、千歳ゆままで一緒に行動しているの?」
ゆま「織莉子たちはね、ゆまを助けてくれたの!」
ほむら「え?」
キリカ「あの町を離れる時にね、それを阻止するかのようなタイミングで魔女が現れたんだ」
キリカ「ゆまの両親は……その魔女に、殺された」
ゆま「……うん。でもね、ゆまは寂しくないよ」
ゆま「織莉子とキリカが、一緒にいてくれるんだもん!」ニコッ
織莉子「こんな小さな子まで魔法少女の運命を背負わせるのは酷な話かもしれないけれど……」
ゆま「織莉子たちと一緒に並んで戦えるんだもん!ゆまは怖くないよ!」
ほむら「………」
154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:19:52.31 ID:bEw5r4BA0
織莉子「それよりも、貴女。なぜこの町に?鹿目まどかを守らなくていいの?」
ほむら「焔設町は、わたしの地元なの。でも、心配しないで。すぐに見滝原へ戻るつもりだから」
織莉子「そうだったの……不思議な縁ね」
キリカ「キミ達の情報も、わたしの中に大切に保管しておくことにするよ」
ほむら「………あなたたちは、このままこの町に?」
織莉子「ええ、そのつもり。鹿目まどかの近くにいたら……気が触れてしまいそうだから。………ごめんなさいね」
ほむら「いえ、それはいいの。なら、あなたたちにこの町を任せても問題なさそうね?」
織莉子「それについては安心していいわ。わたしにキリカ、ゆまもいるんですもの」
ゆま「この町は、ゆまたちが守るから!」
ほむら「……ありがとう」
155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:21:10.40 ID:bEw5r4BA0
ほむら「あの時間軸でもあなたたちとこうして話し合うことが出来ていれば……」
織莉子「世界の終末を、避けることが出来た?」
ほむら「……いえ、そんなもしもの話をしてもどうにもならないわね」
キリカ「あの時間軸、ねぇ。わたしには実感はないけれど……」
織莉子「あら、気になるの?キリカ」
キリカ「そうだね、少しだけ興味があるかな。わたしと織莉子が暁美たちと敵対していた、と言う話」
ゆま「ゆまも気になるー!」
ほむら「わたしは……あまり思い出したくないわね」
織莉子「………そう、だったわね。あの世界では、わたし、貴女の大切な人を……」
ほむら「……過ぎたことよ。今はもう、気にしていない」
156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:22:22.85 ID:bEw5r4BA0
織莉子「でも、わたしは気にかかっていたわ。ずっと、ずっと……」
織莉子「守りたいものを失う痛み……わかっているつもりだから」
ほむら「………」
織莉子「今、この場を借りて謝っておくわ。……ごめんなさい」
キリカ「わたしからも、謝罪する。悪かったね、暁美」
ほむら「暁美、だなんて他人行儀ね」
キリカ「!」
ほむら「ほむら、って呼んでくれないかしら?キリカ、織莉子」
織莉子「ほむらさん……」
キリカ「参ったね。そう言われたら断れない」
ほむら「ふふっ……」
キリカ「……はははっ」
織莉子「ふふふ……」
ゆま「あははは!」
157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:23:34.73 ID:bEw5r4BA0
ほむら「こうしてあなたたちと笑いあえる日が来るなんて、思いもしなかったわ」
織莉子「ええ、そうね……。今後も、鹿目まどかをお願いね、ほむらさん」
ほむら「言われなくても、そのつもりよ」
キリカ「織莉子、話してくれないか?あったかもしれない、可能性の話」
織莉子「そうね……ほむらさんは、どうする?」
ほむら「わたしは悪いけれど、そろそろ帰らせてもらうわ。両親に黙って出てきているから。心配をかけるわけにはいかない」
織莉子「あら、そう。それじゃ、気をつけてね?」
キリカ「キミとは、またこうして話がしたい。気が向いたら、いつでも来てくれ。わたしたちは、キミを歓迎するよ」
ほむら「ありがとう。少しの間だけれど……あなたたちと共闘出来るのを、嬉しく思うわ」
ゆま「きょーとー、だね!うん、ゆまも仲間が増えたみたいで嬉しい!」
ほむら「ゆまも、元気でね?」ナデナデ
ゆま「うんっ!」
158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:24:30.05 ID:bEw5r4BA0
二週間後、ほむらが見滝原へ帰る前日―――
ほむら「……とうとう、明日に迫ったのね。見滝原へ帰る日が……」
ほむら「……!」パァァァ
ほむら「魔女の気配……!あの時の使い魔の本体?」
ほむら「行かなきゃ。……これが、この町で戦う最後になるわね」ガララ タンッ
町外れの廃屋―――
ほむら「……ここね」パァァァ
ズズズズッ……
159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:26:54.97 ID:bEw5r4BA0
魔女「グオオオオオオ……」ユラユラ
ほむら「はっ!」キィン ポイポイ!
ドガガガガ!!
魔女「グオオオオアアアアア!!」ヒュンッ
ほむら「くっ!」タン ズダダダ!!
使い魔「キャハハ!」シュッ
ほむら「また、強い魔女……!使い魔も!」ダダンッ
バスバスッ!
使い魔「キャハ…ハハ……」ボロボロ
160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:28:27.23 ID:bEw5r4BA0
キリカ「やってるかい、救世主?」スタッ
ほむら「っ! キリカ!来てくれたのね!」
キリカ「この町を守るのはわたしたちの役目だからね!」ジャキンッ ヒュンッ!
ズバババ!!
ゆま「ゆまもかせいするよ!」タァンッ ズドォォォン!!
織莉子「ほむらさんの邪魔はさせないわ……」ヒュンヒュン ドガガガガ!!
魔女「グオオ……グゴオオオオオオオオ………」ボロボロ
キリカ「ふん、他愛ないね」スタンッ
ヒュンッ
ほむら「キリカっ!危ないっ!!」
キリカ「えっ……?」
ほむら「くっ!」カチッ ピタッ
161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:31:19.43 ID:bEw5r4BA0
ほむら「……イタチの最後っ屁、と言うことかしら?」
魔女「 」
ほむら「時間停止の魔法……使えるようになっていて、本当によかったわ」ジャコッ
ドドドン!
ほむら「……」
カチッ
ギギギィンッ!!!
キリカ「っ……?」
ほむら「大丈夫、キリカ?」
キリカ「……参ったな。助けに来たつもりが、逆に助けられるなんて」
織莉子「油断、したわね、キリカ」
ゆま「けがしても、ゆまがいるからだいじょーぶだよ!」
162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:33:57.07 ID:bEw5r4BA0
ズアアアァァァァァ……コンコンコン……コロコロ
ほむら「このグリーフシードは……」ヒョイ
キリカ「あんたにあげるよ、救世主。助けられた上にグリーフシードも受け取りましたじゃ、カッコつかないだろ?」
ほむら「……わたしが、救世主?」
キリカ「ん? なにか疑問でもあるのかい?」
ほむら「なぜ救世主?」
キリカ「あんたは……いや、あんたたちはこの世界を救った救世主だろ?」
織莉子「わたしの話を聞いて、キリカ、すごい感動したみたいなのよ」
キリカ「まさか、自分を守ってくれた子を守りたいなんてね……いい話じゃないか」
ほむら「……」
163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:35:25.91 ID:bEw5r4BA0
キリカ「それに、わたしの愛を守ってくれた恩人だってそうだ」
キリカ「あんたたちには、ホントに感謝してもし足りないよ」
ゆま「ゆまも、話聞いたよ!ゆま、キョーコに会いたい!」
織莉子「わたしも……未来予知で少しだけ見えた、わたしに手を差し伸べてくれた人に会いたいわね」
ほむら「……それじゃ、少しだけ見滝原に来る?」
織莉子「……いえ、遠慮しておくわ」
キリカ「そうだな、それはやめておこう」
ほむら「あら、別に遠慮なんてしなくてもいいのよ?」
164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:36:25.70 ID:bEw5r4BA0
織莉子「こうしてこの町に来た意味がなくなってしまうもの」
キリカ「わたしはあくまで織莉子に付き従うだけだよ」
ゆま「うん!ゆまもね、織莉子たちと一緒にいたいなって思うんだ!」
ほむら「そう……なら、あなたたちとの出会いの話を、まどか達への土産話にすることにしましょう」
織莉子「ええ。……美樹さんに、よろしくね」
キリカ「わたしの恩人、巴マミにもな」
ゆま「キョーコにも、よろしく!」
ほむら「確かに受け取ったわ」
織莉子「あと……鹿目まどかにも、ね」
ほむら「……ええ。彼女の事は、わたしに任せてちょうだい」
165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:37:34.25 ID:bEw5r4BA0
ほむら「わたしは明日、見滝原へ帰る。……出来れば、あなたたちに見送りに来てほしいわ」
キリカ「ああ、それはお安い御用。なんたってこの世界の救世主だ。わたしたちだけじゃ、足りないくらいだね」
織莉子「それじゃ、明日、駅でね?」
ほむら「ありがとう、三人とも」
キリカ「お礼を言われるようなことじゃないよ。んじゃ、行こうか、織莉子、ゆま」
ゆま「うん!また明日ね、ほむら!」スタスタスタ…
ほむら「………。さて、わたしも家に帰らないと」
166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:38:04.79 ID:bEw5r4BA0
翌日―――
ほむ父「見滝原でも、元気でやるんだぞ、ほむら」
ほむ母「駅まで見送りに行けなくて、ごめんね、ほむら」
ほむら「ううん、いいの。お父さんもお母さんも、お仕事で大変だってわかってるから」
ほむ父「見滝原の友人と、仲良くやるんだぞ」
ほむら「うん!」
ほむ母「それじゃ、わたしたちは仕事だから。気をつけて行くのよ、ほむら?」
ほむら「行ってらっしゃい、お父さん、お母さん!」
167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:38:54.97 ID:bEw5r4BA0
駅―――
織莉子「来たわね、ほむらさん」
キリカ「あっという間だな、二週間ってのは」
ほむら「来てくれたのね」
織莉子「当然でしょう?約束、したもの」
ゆま「この町はわたしたちが守るから!ほむらは、キョーコ達と一緒に頑張ってね!」
キリカ「短い間だったけど、楽しかったよ、救世主」
ほむら「ええ、わたしも楽しかったわ」
168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:39:37.56 ID:bEw5r4BA0
ほむら「………」
キキーッ
キリカ「どうした、救世主?汽車、来たぞ」
ほむら「ええ、わかっているわ」
織莉子「ふふ、この町との別れが寂しいの?」
ほむら「そうね……わたしが、普通の女の子として生まれ育った町だもの」
織莉子「眼鏡……かけたまま帰るのかしら?」
ほむら「!」
キリカ「話は聞いてるんだ、わたしたちの前では眼鏡をかけている必要はないぞ?」
169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:40:25.20 ID:bEw5r4BA0
キリカ「なんだ、大切な思い出でもあるのかい?」
ほむら「……そう、ね。これは、わたしのこの町への信頼、ということになるのかしらね」
織莉子「とっても似合っているわ」
ほむら「ありがとう……それじゃ、もう行くわね」
キリカ「元気でやれよ、救世主!」
ほむら「その呼び方も、気恥かしいものがあるわね」
キリカ「いいじゃないか。救世主なんて、カッコいいだろ?」
ほむら「ええ、カッコいいわ」ニコッ
ほむら「それじゃね。あなたたちの平穏を、祈っているわ」タッ
ピィィィーーーーーッ ガシャン、ガシャン……
170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:40:56.28 ID:bEw5r4BA0
キリカ「……行ったね、ほむら」
織莉子「彼女が大切に思う町を、守らないとね」
ゆま「ゆまも頑張る!」
キリカ「それじゃ、いつも通り、パトロールに行こうか」
織莉子「ええ、そうね」
ゆま「いこー!」
171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:42:01.75 ID:bEw5r4BA0
ほむら「………織莉子、キリカ、ゆま……」
ほむら「彼女たちとも色々あったけれど……時間旅行の心残りが、ひとつ解消出来てよかったわ」
ほむら「そういう意味でも、こうして帰って来た意味があったというものね……」
QB「意外だったよ。まさか、彼女達のことを知っているなんてね」
ほむら「っ!!?」ビクッ!!
QB「また驚いて……どうしたのさ?」
ほむら「だっ、だから……っ」
ほむら『いきなり現れないでちょうだい、インキュベーター!』
QB「成長したね、ほむら。何も言わなくても、テレパシーで会話をしてくるなんて」
172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:43:05.89 ID:bEw5r4BA0
ほむら『あなた、わたしをからかっているのかしら?』
QB「そんなことはないよ?僕が神出鬼没なのは今に始まったことじゃないじゃないか」
ほむら『……それよりも、なぜ織莉子たちと一緒に居る時には姿を現さなかったのかしら?』
QB「彼女達は特に僕のことを嫌っていてね。姿を現すと、即座に殺しにかかってくるのさ」
ほむら『………。それじゃ、彼女達が使用したグリーフシードの処理はどうしているのかしら?』
QB「使用したグリーフシードはいつも決まった場所に捨てているみたいでね。僕はそこにいって、それを処理しているんだよ」
ほむら『あなたも苦労しているのね……』
QB「仕方ないさ。それだけのことをしているんだから」
ほむら『自覚、あったのね……それが一番意外だわ』
QB「失礼だね、ほむら」
173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:43:47.33 ID:bEw5r4BA0
見滝原、駅―――
ほむら「二週間離れていただけだけれど、懐かしいわね……」スタッ
ほむら「まどかとさやかはいるのかしら?」
さやか「ねぇまどか、この汽車でほむらが帰ってくる予定だったんじゃないの?」
まどか「うん、そのはずなんだけど……」
ほむら「! まどか、さやかー!」ブンブン
まどか・さやか「?」
ほむら「ただいま!」
まどか「え、あの……」
さやか「誰?」
ほむら「!?」
174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:44:52.65 ID:bEw5r4BA0
まどか「人違い……ですか?」
さやか「いや、でもあたしたちの名前知ってるみたいだし……」
ほむら「わ、わたしよっ?暁美ほむら!」
さやか「え」
ほむら「め、眼鏡を外せばわかるでしょうっ?」スッ
まどか「………あ、ほむらちゃんだ……」
さやか「髪もみつあみになって……イメチェンか何か?」
ほむら「言っていなかったかしら?わたし、昔は眼鏡をかけていたのよ」
さやか「へぇ……差し詰め、めがほむってところかねぇ」ニヤニヤ
ほむら「そのニヤニヤ笑いをやめなさい!」
175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:45:43.28 ID:bEw5r4BA0
まどか「高校の編入試験はいつなの?」
ほむら「来週にあるのよ。それまでは、一人暮らしを満喫するのよ」
さやか「ほほう、これはいいことを聞いたね」
ほむら「え?」
さやか「それなら、ほむらの家を溜まり場に出来るね!」
まどか「さやかちゃん、ナイスアイデアだよ!」
ほむら「全くもう、あなたたちは……」
ほむら(でも、本当に帰って来たって気がするわ)
ほむら(この町……見滝原が、何よりもわたしのいるべき町よね)
176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/04/14(土) 20:46:27.17 ID:bEw5r4BA0
ほむら「そうそう、わたしの地元にも、魔法少女がいたのよ」
さやか「へぇ!あたしたち以外の魔法少女もやっぱりいるんだね!」
まどか「話、聞きたいな!」
ほむら「ええ、もちろんよ。わたしが繰り返してきた時間のひとつで、深くかかわってきた人たちなのだけれど……」
さやか「考えてみると、ほむらの繰り返してきた世界の話ってあんまり聞いたことなかったね」
まどか「そうだね。ほむらちゃんさえよければ、そういう話も聞いてみたいかも」
ほむら「あまり気分のいい話にはならないと思うけれど……」
さやか「まぁまぁ!今となっては笑い話で済むことだってあるでしょ?」
ほむら「……そう、ね。聞きたいと言うのなら、話してあげるわ」
第三部「ほむらの帰省」 完
177: ◆uOSHePfhFc 2012/04/14(土) 20:49:35.23 ID:bEw5r4BA0
これで今日の分の投下は終了です
最後に、第三部で出て来た魔女の詳細も乗せておきます。
故郷の魔女。その性質は懐古。
懐かしさを感じている者の元へ現れる、鳥のような姿をした魔女。
自身も生まれた故郷へ戻りたいと言う願望を持つ為、ひとつの場所に留まり続けることは稀である。
しかし記憶がない為、自身と同じような気持ちを抱いている者に引き寄せられてしまう。その結果、自身の生まれ故郷へ戻ることは永遠に叶わない。
故郷の魔女の手下。その役割は遺恨。
常に移動を続ける魔女とは相反し、生み出された手下はその場所に留まり続ける。
魔女はなぜ手下がその場に留まり続けるのかは知らない。そしてその場に留まり続ける意味などないと言うことを、手下は理解していない。
酉付け忘れてたので、ここで酉も付けて本人証明とします。
182: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:39:36.19 ID:S90Hkqln0
三年後―――
杏子「高校も卒業、だな」
マミ「ええ………名残り惜しいわ………」
杏子「さすがに泣きはしないんだな?」
マミ「そりゃあ、ね。わたしももう大人ですもの」
杏子「やっぱ、見滝原に帰んのか?」
マミ「そうね。わたしの帰るべき場所だもの」
杏子「そんじゃ、荷造り始めなきゃなぁ……」
マミ「今回は、サプライズで連絡を入れずに帰りましょうか?」
杏子「お?マミも捻くれた考えをするようになったな」ニッ
マミ「ふふ、いつも仕掛けられてばかりじゃ格好つかないものね」
183: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:40:26.12 ID:S90Hkqln0
一週間後―――
マミ「ありがとう、この町ともお別れね……」
杏子「三年も住んでりゃ、愛着も湧くよな」
マミ「ええ………さようなら、ね」
杏子「これからは、マミはOLしながら魔女退治ってことになんのか」
マミ「さすがにもう少女とは呼べないわよね……」
杏子「おいおい、そんな複雑な心境になること言うなよ!」
マミ「わかってるけれど……」
QB「心配することはないよ、マミ」ヒョコッ
マミ「キュゥべえ?」
184: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:40:59.83 ID:S90Hkqln0
QB「ここまで長生きした魔法少女は初めてだからね、僕もちょっと心配になって本星に連絡を入れてみたんだ」
マミ「初めて……って……喜べばいいのか複雑ね……」
QB「そしたらね。どうやら僕たちの魔法少女システムというのは、人間で言うところの成人を越えた時点で壊れてしまうみたいなんだ」
杏子「ど、どういうことだ?」
QB「簡単に言うとね、マミは今十八歳だろう?」
マミ「え、ええ」
QB「二十歳を越えると、ソウルジェムがその形を保てなくなるらしいんだ」
QB「つまりどうなるかと言うと……元の人間に戻る、ってことらしいね」
マミ・杏子「!?」
185: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:41:58.52 ID:S90Hkqln0
QB「もちろんそうなった場合、キミ達人間は喜ぶだろう?」
マミ「と、当然じゃないの!」
QB「その際に生まれるエネルギーも、ソウルジェムがグリーフシードに変換される時に採取できるエネルギーにはわずかに劣るけれど
それなりのエネルギーが採取出来るらしい」
杏子「そんな設定があったのか……」
QB「僕自身、驚いているよ。本星にどうしてその事を教えてくれなかったのか、って聞いたんだ。そしたら、なんて答えが帰って来たと思う?」
マミ「どんな答えだったの?」
QB「『何故って、聞かなかったのはキミじゃないか。わけがわからないよ』だってさ」
杏子「……ぷっ」
QB「いやいや、笑い事じゃないよ杏子。まさか僕が、キミ達と同じような気持ちを味わうとは思っていなかった」
マミ「そ、そうね……」
QB「まぁ、そんなわけだ。だから、マミはあと二年、さやか達はあと三年頑張れば無事魔法少女としてのノルマ達成ってことになるね」
186: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:44:16.59 ID:S90Hkqln0
マミ「希望が見えて来たじゃないの……!」
QB「そうだね。僕自身も、マミ達には頑張ってもらいたいかな」
QB「これだけ長い間付き添って来た魔法少女は僕自身初めてだからね」
QB「さすがに魔女化するのは見たくないかな」
マミ「こうしてはいられないわ!早く帰ってこの事を報告しなくっちゃ!」
QB「僕としても残念だ。この事をもっと早く知っていれば、まどかとの契約も出来たかも知れないのに」
杏子「いや、それでもほむらが許さねぇだろ?」
QB「この売り文句は使えるよ。今後新しい魔法少女を勧誘する際には、これも付け足すべきだね」
マミ「何をしているの、佐倉さん!早く荷造りをするのよ!」
杏子「そんな慌てなくったって、見滝原は逃げねぇよ……」
マミ「見滝原は逃げなくても、早いに越したことはないのよ!」
杏子「ああわかった、わかったよ……」
QB「よかったね、マミ、杏子。あと二年だよ」
杏子「……ああ、そうだな。キュゥべえとも色々あったけど、今となっちゃ感謝の気持ちのがでかいかもな」
QB「感謝されても僕が出来ることは何もないよ?」
187: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:44:43.36 ID:S90Hkqln0
見滝原―――
マミ「お帰りなさい見滝原!ただいまわたし!」バッ
杏子「テンションたけぇなオイ……」
マミ「今は何もかもが輝いて見えるわ!」
杏子「ははは、大げさだな……」
マミ「さあ、早くわたしのマンションに帰ってお祝いの準備をしなくっちゃ!」
杏子「その前に、スーパーとかで買いものしなきゃなんもねぇんじゃねぇか?」
マミ「そうね!それもしなくっちゃ!」ウキウキ
杏子(ホントにテンション高い……ま、嬉しい気持ちはわかるけどな)
188: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:46:19.69 ID:S90Hkqln0
翌日―――
マミ「出来たわ!今世紀最大のお祝いケーキよっ!」ジャンッ
杏子「でけぇっ!?」
マミ「さぁ、鹿目さん達を呼びましょう!」ピ ポ パ
プルルルル プルルルル ガチャ
まどか『はい、鹿目です』
マミ「あ、鹿目さん!わたしよ、巴マミ!」
まどか『マミさんですか!?電話して来たってことは、もうすぐ見滝原に帰ってくるんですか!?』
マミ「うふふ、実はもう帰ってきてるのよね」
まどか『えぇっ!?』
マミ「今から美樹さん、暁美さんを連れてわたしの家に来れるかしら?」
まどか『わ、わかりました!すぐに向かいます!』 ガチャ
マミ「これで準備完了ね!」
杏子「今度こそ、暴発させずにクラッカーを鳴らしてぇな」ニカッ
189: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:48:21.19 ID:S90Hkqln0
さやか「えっ!マミさん、もう帰ってきてるの!?」
ほむら「行動が早いのね……」
まどか「すぐにマミさんの家に来てほしいって電話があったんだ!行こう、さやかちゃん、ほむらちゃん!」
さやか「おっし、行こう!」
ほむら「ふふ、元気でやっていたみたいね、マミと杏子も。安心したわ」
マミの家前―――
杏子「ふんふ~ん……っと。おっ、来たな!」
さやか「杏子~!久しぶり~」ダキッ
杏子「おう、さやか達も無事でなによr……!?」
ほむら「? どうかした、杏子?わたしの顔に何かついている?」
杏子「だ、誰だよお前っ?」
191: >>190投下ミス ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:52:57.82 ID:S90Hkqln0
ほむら「え?わたしよ、暁美ほむら」
杏子「ほむらぁっ!?え、なんでお前眼鏡なんか……」
ほむら「ああ……そう言えば、眼鏡を掛けているところは初めてだったかしら?」スッ
ほむら「これで、わたしに見えるかしら?」
杏子「あ、あ……ほむらだ……」
ほむら「わたし、元々目が悪かったのよ。魔法で視力は回復させたのだけれど、訳あって今はまた眼鏡を掛けているの」
まどか「ティヒヒ、赤い縁の眼鏡を掛けたほむらちゃんも可愛いよね?」
杏子「なんてーか、眼鏡を掛けただけでそこまで印象が変わる奴もすげぇな……」
ほむら「似合っているかしら?」
杏子「もはや別人だな、うん」
まどか「ほむらちゃんが見滝原に帰って来た時は、この眼鏡に更にみつあみだったんだよ」
杏子「みつあみ……」
ほむら「ちょうどいいわ。後で、その姿も見せてあげる」
杏子「想像つかねぇ……」
192: >>190投下ミス ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:53:55.35 ID:S90Hkqln0
マミ「まだかしら、みんな……」ソワソワ
QB「僕もこうしてクラッカーを持っていいのかな?」
マミ「え?いいじゃないの別に」
QB「でも、今後は触れるなってほむらに言われているんだけれど?」
マミ「暴発させなければ大丈夫よ」
QB「うーん……まぁ、いいか」
杏子「んじゃ、中入るか。中でマミが今か今かと待ってるはずだぜ?」ガチャ
まどか「お邪魔しまーす!」
さやか「うーん、マミさんの家も久しぶりだねぇ」
ほむら「お邪魔するわ」
193: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:54:47.57 ID:S90Hkqln0
マミ(来たわ!来たわよキュゥべえ!)ヒソヒソ
QB「言われなくてもわかっているよ」
ガチャ
マミ(今よ、キュゥべえ!)
QB「え?」
パァァン!
ほむら「?」
まどか「?」
さやか「?」
杏子(なんでひとつしか音しねぇんだ……?)
QB「わけがわからないよ。ここで鳴らせばよかったのかい?」
マミ「………」
194: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:56:18.25 ID:S90Hkqln0
マミ「ひ、久しぶりね、みんな!」(もうヤケよっ!!)パァァァン!パァァァン!パァァァン!
杏子(マミ……やっぱりキュゥべえに任せたのが失敗だったな……)
まどか「あ、ま、マミさん!ま、またクラッカーを用意してくれてたんですね!」
さやか「いやぁ、気が効くなぁ、あ、あはは、あははははは!」
ほむら(正視に堪えないわ……)ブワッ
QB「僕は毎日のようにみんなと顔を合わせているけれど……」
マミ「いいから鳴らしてよ!わたし一人で恥ずかしいじゃないの!」パァァァン!パァァァン!
QB「やれやれ、仕方ないな」パァァァン!
195: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:58:07.46 ID:S90Hkqln0
マミ「ところで、そっちの女性は誰かしら?」
ほむら「わたしよ、マミ」スッ
マミ「……!?暁美さん!?」
まどか「杏子ちゃんと同じ反応するんだね」
さやか「まぁ、普通はそうなるよね~。あたしたちも最初見た時は誰だあんた状態だったし」
ほむら「仕方ないじゃないの……両親が眼鏡をかけていないわたしを見て、戸惑っていたんだもの……」
杏子「それはそれで辛いな……」
さやか「っつーか、あたしとしてはマミさんが誰だあんたって感じですよ!」
マミ「え?」バイーン
さやか「特に胸!どんだけ成長してんですか!?」
まどか「すごい……大きいですね、マミさん……」
ほむら「…………………」ペターン
マミ「そ、そうかしら?別に普通じゃないかしら?」
196: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 14:59:30.16 ID:S90Hkqln0
ほむら「それを普通と呼ぶのは、世の中の全女性を敵に回すに等しい愚かな発言よ、マミ」キッ
マミ「え?え?」
まどか(ほむらちゃん、やっぱり胸のサイズ気にしてたんだ……)ヒソヒソ
さやか(そりゃそうだろうね……下手したら、ちょっと鍛えてる男の人の方がバストサイズありそうだし)ヒソヒソ
ほむら「今、ものすごく失礼な発言をされたような気がするわ。特にあなたから」ギロリ
さやか「あ、あははははは!な、なんのことかな~?」
杏子「さやか達は、ほむらの眼鏡以外には特に変わりないみたいだな」
まどか「そんなことないよ!わたしたちだって、背ぇ伸びてるんだから!」
さやか「いや~、さやかちゃんもね、最近バストサイズがちょっときつくなってきたかな~なんて」
ほむら「わたしに喧嘩を売っているのかしら?」
さやか「なんでもないですすみません」
197: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:01:06.53 ID:S90Hkqln0
マミ「さぁ、立ち話もなんだし、座ってみんな!特大ケーキも用意してあるんだから!」
さやか「うわ、でかっ!?」
ほむら「切り分けが楽しくなりそうなサイズね」ホムッ
まどか「すごいです、マミさん!」
QB「僕の分もちゃんと切ってくれよ、マミ」
マミ「ええ、もちろん!さあ、お祝いしましょう!」
カンパーイ
マミ「それでね、今日はみんなに嬉しいお知らせがあるの!」
さやか「? なんふぇふか、マミふぁん?」モグモグ
ほむら「口の中のモノを飲み込んでから喋りなさいよ……」
198: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:02:29.74 ID:S90Hkqln0
マミ「うふふ、実はね……」
~~~状況説明中~~~
さやか「それ、本当ですか!?」ダンッ
QB「嘘はないよ。僕が本星に確認を取ったことだからね」
ほむら「……意外ね。そんなことがあるものなのね……」
QB「僕は嘘はつかないよ。嘘をついたって、僕には何のメリットもないからね」
まどか「なら、今からでもわたし、契約しようかな……」
ほむら「万が一と言うことがあるわ、やめておきなさいまどか」
QB「そうだね、それに今となってはまどかの素質もそれほど魅力的じゃなくなっているよ」
まどか「え?そうなの?」
QB「言っただろう?第二次性徴期にある少女が一番望ましい、と」
QB「もうまどかは第二次性徴期は終わってしまっているからね。今となっては契約してもそれほどエネルギー採取にはならないのさ」
199: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:04:27.22 ID:S90Hkqln0
まどか「なぁんだ……」シュン
QB「ローリスクハイリターンは何事にも成立しないってことさ」
QB「魔法少女として契約する時に叶えてあげられる願いだって、タダじゃないんだ」
QB「残念だけれど、まどかはもう諦めてもらうしかないね」
ほむら「ということは、わたしとさやか、杏子もあと3年ってことね……」
杏子「さすがに二十歳越えてまで魔法少女ってのも勘弁して欲しいからな、ちょうどいいと思うぜ」
さやか「うー……もっと早くに知れていれば……」
ほむら「今となっては後の祭りね」
さやか「ま、もういいんだけどね、あんな奴のことなんて」
杏子「言うようになったな、さやか」
さやか「さすがにもう何年も前だからねぇ、あたしもそこまで引きずるほど執念深くないって」
200: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:09:29.74 ID:S90Hkqln0
ほむら「さて、と……マミ、洗面所を借りてもいいかしら?」
マミ「? いいけれど……何かするの?」
ほむら「ちょっとした余興よ。まどか、手伝ってくれる?」
まどか「うん!」
十分後―――
ほむら「おまたせしました」ガララ
マミ・杏子「!?」
さやか「お、めがほむだね!」
ほむら「美樹さん、わたしはめがほむなんて名前じゃないですよ」
さやか「うーん……トゲのないほむらに違和感しか感じないあたしはもうダメかもわからんねぇ」
マミ「え、ええと……暁美さん?」
ほむら「なんですか、巴さん?」
マミ「おぉう……」
杏子「性格まで変わるのかよ……ホントに別人じゃねぇか……」
まどか「ほむらちゃんかわいいよ!」
ほむら「ありがとう、鹿目さん」
201: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:17:13.79 ID:S90Hkqln0
杏子「眼鏡にみつあみ、そして控えめな性格……」
マミ「ほ、ホントに暁美さんなの?」
ほむら「ええ、わたしですよ」
杏子「そいや、ほむらは時間遡行を繰り返してたって話だったな。昔は、その性格だったってことか?」
ほむら「はい、そうなんです。わたしの中でも色々と心境の変化があって、眼鏡を外してみつあみを解いて……」スッ シュル
ほむら「これが、わたしの決意の姿。まどかを守る為……わたしは、生まれ変わったのよ」
マミ「あ、いつもの暁美さんに戻った……」
杏子「ほむらもずいぶんと苦労してきたんだなぁ……」
ほむら「昔の話よ……もう、今はどちらの格好にも抵抗はないわ。あなたたちが昔のわたしの方がいいと言うのなら、そちらでもいいのだけれど?」
さやか・マミ・杏子「違和感しかないのでやめてください」
まどか「わたしは眼鏡のほむらちゃんもいいと思うんだけどなぁ……」
ほむら「ふふ、でもそうね。わたしも、もうこっちの振舞いの方が違和感ないわね」
マミ「人って変われるのね……すごいわ」
202: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:18:28.44 ID:S90Hkqln0
夜―――
まどか「それじゃマミさん、ごちそうさまでした!」
さやか「いやぁ、マミさんのケーキおいしかったですよっ!」
ほむら「わたしにも作り方、教えて欲しいわね」
マミ「あら、言ってくれればいつでも教えてあげるわよ?」
ほむら「本当っ?」
マミ「ええ。ただし、わたしは厳しいわよ?」
ほむら「望むところよっ!」ホムッ
杏子「んじゃな、三人とも!気ぃ付けて帰れよ!」ブンブン
さやか「はいはい~!」ブンブン
203: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:19:38.41 ID:S90Hkqln0
マミ「本当に帰って来たって気がするわね……」コト
杏子「またこうして賑やかに過ごせるのも、嬉しいもんだな」ニカッ
マミ「そうね、本当に嬉しいわ……もう、随分前からわたしは一人じゃなくなっているものね」
マミ「わたしも、来月からは社会人か……」
杏子「あたしはもうとっくに社会人ってことになるけどな」
マミ「いつまでもバイトじゃダメよ、佐倉さん?」
杏子「わかってるわかってるって!マミも小うるさくなっちまったなぁ……」
マミ「わたしはあなたのことを心配して言っているの!」
杏子「ん~……ま、あたしはあたしで頑張るさ!」ニカッ
QB「………」
204: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:20:48.01 ID:S90Hkqln0
最終部「魔法少女の卒業」
205: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:21:50.59 ID:S90Hkqln0
二年後―――
マミ「ティロ・フィナーレ!」バシュウウウ!
ドォォォォォン!!
魔女「」シュゥゥゥゥ……
コンコンコン……コロコロコロ……
マミ「ふぅ!今日も魔女退治、完了ね!」シュンッ
杏子「おつかれさん、マミ」
マミ「……あら?ソウルジェムが……?」パァァァ
QB「どうやら、お別れみたいだね、マミ」
マミ「キュゥ、べえ?」
206: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:24:28.02 ID:S90Hkqln0
QB「明日は確か、キミの誕生日だろう?」
マミ「え、えぇ……そうだけれど……」
QB「二十歳となることで、ソウルジェムもその形が保てなくなるって話は前にしたよね?」
マミ「ま、まさか……?」
QB「そう……キミの魔法少女としての人生も、今終わりを迎えるところだ」
マミ「………」
QB「僕の姿を見ることが出来るのは魔法少女と、魔法少女としての素質を持った少女だけだ」スゥ…
マミ「キュゥべえ!?あなた、体が……!」
QB「透け始めているんだろう?ソウルジェムが、肉体に戻り始めている証拠だ」スゥゥゥ……
QB「おめでとう、マミ!キミは見事、魔法少女としての責務を果たしてくれた」
207: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:26:22.76 ID:S90Hkqln0
マミ「そんな……それじゃ、もうキュゥべえとは会えなくなるの……?」
QB「悲しむことはないよ、マミ。例えキミが僕の姿を見ることが出来なくなっても、僕は確かにこの世界にいるからね」
QB「ただ、もうキミと話すことは、出来なくなるね」
マミ「………っ」ポロポロ
QB「どうして泣いているんだい?」
マミ「だってっ……ずっと一緒だったじゃないの、キュゥべえ!」ポロポロ
QB「……僕には、感情はないからね。キミがどうして泣いているのかも、わからないよ」
杏子「マミ………」
QB「それに、マミが僕の姿を見ることが出来なくなっても、あと一年はほむらやさやか、杏子には僕の姿が見えるんだ」
QB「彼女たちを通して、僕とも意思の疎通は出来るよ、マミ?」
マミ「キュゥべえ……」ポロポロ
QB「――で、一緒―――かったよ、マ―」フッ
マミ「……」パキンッ……キラキラ……
208: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:27:23.06 ID:S90Hkqln0
杏子「マミのソウルジェムが……砕けた、のか……?」
マミ「………」サラサラサラ……
杏子「でも、マミは死んだわけじゃない……ってことは、やっぱりキュゥべえの言ってたことは、ホントだったんだな……」
マミ「今も、キュゥべえは、ここにいるのかしら……?」ポロポロ
杏子「……ああ、いるよ、そこに」
マミ「なら、聞いて、キュゥべえ。あなたに出会えて、本当によかった」ポロポロ
マミ「あなたがいなければ……わたしは、とっくの昔に死んでいた身だものね」ポロポロ
マミ「ありがとう、キュゥべえ……」ポロポロ
マミ「……っ」ポロポロ
杏子「……帰ろうか、マミ。今まで、ホントにおつかれさん」ポンッ
マミ「っ……ええ」スック
209: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:29:45.15 ID:S90Hkqln0
マミの家―――
マミ「スゥ……スゥ……」
杏子「泣き疲れて、寝ちまったか……」
QB「僕との別れが、そんなに悲しかったのかな?」
杏子「そりゃ、そうだろうなぁ。マミはホントにキュゥべえの事が好きみたいだったから」
QB「……悪い気は、しないね」
杏子「感謝されるのも、悪かねぇだろ?」
QB「そうだね……今までこの星で、ここまで感謝してくれた子はいなかった」
QB「キミ達も、あと一年だ。……どうか、魔女化せずに頑張ってくれ」
杏子「……そうだな。マミはもう、魔法少女じゃなくなっちまったからな」
QB「ああ、そうだ。ひとつだけ、言い忘れてたことがあったね」
QB「誕生日、おめでとう、マミ……」
210: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:31:17.10 ID:S90Hkqln0
巴マミ
いつもの様に魔女を華麗に倒した彼女は、公園の中心でその変身を解く。
手の中にあるソウルジェムの異変に、彼女はすぐさま気がついた。
魔女の気配がするでもないのに、彼女の魂は淡い光を放っていたのだ。その異変の正体を語るべく、キュゥべえは彼女の元へ姿を現した。
それは、彼女の戦いの運命に終わりを告げるものだった。そしてそれが意味するところは、長年連れ添った友達とのお別れをも示唆していた。
少しの邂逅の後、彼女のソウルジェムは崩れ去り、その欠片も少しずつこの世から消え去るのだった。
ソウルジェムがその役目を終えた後、彼女は今はもう見えなくなったキュゥべえに感謝の気持ちを告げた。
211: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:32:08.88 ID:S90Hkqln0
一年後、暁美ほむらの誕生日前日―――
ほむら「……今日で、わたしの戦いも、終わり……か」
さやか「実質、魔法少女としてはほむらが一番長いんだったっけ?」
ほむら「ええ。あまりにも長い一ヶ月を過ごしたおかげでね。期間で言えばマミが長いけれど、経験で言えばわたしの方が長かったことになるわ」
杏子「時間遡行……だったか?なんか、あたしにゃ難しい話はよくわかんねぇけどさ。でも、ほむらも不憫といや不憫だよなぁ」
ほむら「何がかしら?」
杏子「あたしやさやか、マミには最初から戦う為の武器があったけど、ほむらにはそれがないんだろ?」
さやか「あたしは剣、杏子は槍、マミさんはマスケット銃だね」
ほむら「ちなみに、まどかが魔法少女となっていた場合、その武器は弓だったわ」
まどか「あ、やっぱり弓だったんだ。うーん、一度構えてみたかったかなぁ」
ほむら「ま、まどか、あまりそう言うことは言わないで欲しいわ」
まどか「ご、ごめんほむらちゃん……他意はないんだよ」
212: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:33:43.28 ID:S90Hkqln0
マミ「話の腰を折るようで悪いけれど、わたしは最初からマスケット銃を使えたわけではないのよ?」
ほむら「あら、そうなの?」
マミ「わたしの魔法少女としての元々の武器はリボンなの」
さやか「え、リボンってあの拘束リボンですか!?」
マミ「ええ、そうよ」
杏子「あんなんで一体どうやって戦うんだよ……?」
マミ「リボンを垂直に伸ばして、それを硬くして切りつけたりとか、螺旋状に伸ばして魔女を貫いたり……」
マミ「あれはあれで使い勝手はよかったのだけれど……やっぱり、火力が足りなかったわね」
213: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:34:32.24 ID:S90Hkqln0
深夜―――
ほむら「………」
さやか「今日は、魔女も現れないのかな」
杏子「さぁ、どうだろうな。でも、平穏に魔法少女としての人生を終えられるんなら、それでいいんじゃねえの?」
ほむら「……複雑な気分、ね」
マミ「やっぱり、暁美さんもそう?」
ほむら「ええ……。わたしは、魔法少女の真実を知ってからは自身の幸せなんて諦めていた。ソウルジェムがグリーフシードに変わりそうになったら、自分でこのソウルジェムを破壊しようと思っていたから」
マミ「………」
ほむら「いざ普通の人間に戻れるとなると……どういう反応をしたらいいのかわからないわ」
まどか「そういう時はさ、ほむらちゃん」
ほむら「……?」
まどか「笑えばいいんだよ」
ほむら「……笑えば、いい……?」
まどか「ほむらちゃんは、嬉しくないの?普通の人間に戻れるチャンスがあって」
ほむら「………どうなのかしら。よくわからないわ」
214: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:36:09.07 ID:S90Hkqln0
マミ「キュゥべえ、どこに行っているのかしら……?」
さやか「今日でほむらともお別れなのに、冷たいねぇキュゥべえは」
ほむら「………」
マミ「わたしがキュゥべえを見ることが出来なくなってからは、どこで過ごしているのかしら?」
さやか「あたしんとこにたまに来るよ、キュゥべえ」
マミ「美樹さんのところに?」
さやか「うん。なんだかんだでいつもマミさんの家に入り浸ってたのが、もう居られなくなっちゃったからって。キュゥべえも、一人でいるのがなんとなく寂しいんじゃないのかな?」
ほむら「あのインキュベーターに感情なんてないわよ」
杏子「相変わらずほむらはキュゥべえに辛辣だな……」
ほむら「あいつにはホントに苦労させられたもの」
215: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:37:04.02 ID:S90Hkqln0
ほむら「……!」パァァァ
さやか「やっぱり、最後まで平穏には無理だったか」
ほむら「そのようね。行きましょう、杏子、さやか」スック
杏子「おう。ほむらの最後の戦いだ、派手にやってやろうぜ!」スック
さやか「よっし、行こう!」スック
マミ「一年前には、わたしもその中にいたのだけれどね……」
杏子「マミとまどかはゆっくりしてろ。もう、魔女と関わることもねぇだろ?」
まどか「う、うん……気をつけてね、三人とも?」
マミ「無事に帰ってくるのよ?」
ほむら「心配いらないわ、まどか、マミ。すぐに倒して、帰ってくる」
216: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:38:40.28 ID:S90Hkqln0
公園―――
ほむら「……ここね」パァァァ
さやか「ほむらの魔法少女姿も、あと一時間もしないうちに見納めかぁ」
杏子「気ぃ引き締めろ、さやか。……結構、手ごわそうな相手だ」
ズズズズッ……
結界内―――
ほむら「……」スタッ
ほむら「杏子、さやか。……あちこちから使い魔の気配がするわ。油断しないで行きましょう」
シーン
ほむら「……?」クルッ
ほむら「杏子……?さやか……?」
217: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:39:36.24 ID:S90Hkqln0
別の場所―――
杏子「よっと!」スタッ
杏子「……おーおー、物陰にこれでもかってくらい使い魔が隠れてやがる」
杏子「さやか、ほむら!油断すんなよ!」
さやか「きょ、杏子?」
杏子「あん?なんだよさやか?」
さやか「ほむらは?」
杏子「え?」クルッ
さやか「結界に入ったら、ほむらの姿がいきなりなくなっちゃったよ……?」
杏子「……ちっ!よりにもよってほむらを別の場所にやったってのか!?ここの魔女、ずいぶんと狡いマネしてくれるな……」
さやか「ど、どうする?」
杏子「オロオロしてたって仕方ねぇ!とりあえず中枢を目指すぞ!ほむらも一人でそこを目指すはずだ!」
さやか「ん、了解!」
使い魔「……」タタンッ
杏子「行くぜ、さやか!」ヒュン
さやか「合点っ!」タッ
218: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:40:20.50 ID:S90Hkqln0
ほむらのいる場所―――
ほむら「………やられた、わね。ここの魔女の仕業、かしら?」
ほむら「結界に入った者を孤立させるなんて……」
ほむら「まぁ、杏子もさやかも一人で問題ないでしょう。とにかく、中枢を目指さないと」
使い魔「……」シュタシュタッ
ほむら「どきなさい、使い魔!」ジャコッ ドドン!!
数十分後―――
ほむら「はぁ、はぁ……」
ほむら「どれだけ広いのよ、この結界っ……!」
ほむら「武器も……もう数が少ないわ……」
使い魔「……」スタスタスタッ
ほむら「容赦ないわね……使い魔共!」キィン ポイッ
ドガァァァン!!
使い魔「―――」シュゥゥゥ
ほむら「……この扉の先が、中枢ね」ガチャ ギィィィ…
219: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:41:09.57 ID:S90Hkqln0
結界中枢―――
魔女「………」ユラユラユラ
使い魔×4「……」
ほむら「不気味なほど静かな魔女……でも、ものすごい強さを秘めているようね」ジャコンッ
ほむら(大砲……最後の一発)
ほむら(あとは手榴弾が3つと、拳銃が二丁……これで仕留め切れるかしら)
使い魔「……」ヒュヒュッ
ほむら「っ!くぅっ!?」タンッ ドドン!
バスバス!
使い魔×2「――」シュゥゥゥ
ほむら「くらいなさい!」バシュウウウウ!!
ドォォォン!!
220: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:42:04.94 ID:S90Hkqln0
使い魔×4「―――」シュゥゥゥゥゥゥゥ……
魔女「……」ユラユラ
ほむら(壁……!?あれで攻撃を……!)
ほむら「ならば……!これで一気にケリをつける!!」キキキインッ! ポイポイポイッ!
ドガガガガガガガガガガガアアアアアァァァァァァァ!!!!
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……
ほむら(これでどう……!?)スタンッ
魔女「………ガアァァッ……」ユラ…ユラ…
ほむら「深手は負わせた……けれど、まだ力尽きていない……!?」
221: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:42:50.67 ID:S90Hkqln0
魔女「……グオオ!!」バサッ
ほむら「!! 飛んだ!?」
魔女「オオオオ……グオアア!!」ビュンッ ズバズバッ!!
ほむら「うっくっ……!?」ズザザァァ!!
魔女「………」バサッ バサッ
使い魔×3「………」スタスタスタっ
ほむら「……勝て、ない……っ?」ヨロヨロ
ほむら(もう武器は……ない……。でも、わたしは、まだ……まだ戦わなければならないっ……!!)ググッ…
222: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:43:29.82 ID:S90Hkqln0
ほむら(武器がないのなら……徒手空拳で……っ!)
パァァァ……
ほむら「戦う力を……最後まで、戦い抜く力をわたしに……!!」
ググググ………バサァァァ!!
ほむら「わたしは、あなたを倒す!!!」バサァァ!!
ジワ……ジワ……
魔女「……!?」ジワジワ…
使い魔×3「……」ジワジワ…
ほむら「終わりよ……!」フッ
魔女「………」ヒュウウウウ……ドサァァァァァ!!
使い魔×3「……」ボロボロボロ……
ほむら「はぁ、はぁ……」
223: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:45:41.73 ID:S90Hkqln0
バタンッ!!
杏子「ほむら!大丈夫か!?」
さやか「すごい傷っ…!」
ほむら「……遅かった、わね。魔女なら、既に仕留めた後よ……」
杏子「こ、これが魔女……か……?」
魔女「……」ボロボロ……
さやか「なんか、黒い何かに侵蝕されてるみたい……。……? ほむら、背中のそれ……」
ほむら「ああ、これ……。なんだか、わたしにもよくわかっていないの。わたしが持っていた武器が底をついてしまって、それで徒手空拳で戦おうと思ったら……」
杏子「………それが、ほむらの魔法少女としての武器……だったのかもな」
ほむら「………。皮肉なものね、一番歴が長かったわたしが、最後の最後で魔法少女として戦う術を手に入れるなんて」
224: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:46:28.66 ID:S90Hkqln0
さやか「とりあえず、傷治さなきゃ」パァァァ
ズアアアァァァァァ……
杏子「結界が晴れて行く……おいさやか、今何時だ?」
さやか「ちょっと待って、ほむらの傷治してあげなきゃ」
ほむら「……」シュンッ
ほむら「もう、終わり、ね」パァァァ……
杏子「マミの時と同じような反応……てことは、もうすぐ日付が変わるくらいの時間ってところか」
さやか「あはは、手ごわい魔女だったんだねぇ。ごめんね、ほむら。なんか、すごい迷路みたいな結界だったんだよ」
ほむら「謝ることはないわ。結果的に、わたし一人で倒すことが出来たんだもの」
さやか「ん、完治!もういいよ、ほむら」ポンッ
ほむら「ありがとう、さやか」スック
225: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:47:06.93 ID:S90Hkqln0
コロコロ……
杏子「……ほれ、ほむら。グリーフシードだ。最後に、浄化しとけ」ヒョイ
ほむら「ええ、ありがとう。………」パァァァ シュウウ……ン
パキンッ……キラキラ……
ほむら「………終わった、わね」
さやか「ん、お疲れ様ほむら」
杏子「後は、あたしとさやかに任せてくれ」
ほむら「ええ……そうさせてもらうわ。わたしも……ゆっくり休ませてもらうとしましょう」
スタスタスタ……
QB「…………………。お疲れ様、暁美ほむら」トコトコ
226: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:48:01.02 ID:S90Hkqln0
暁美ほむら
まどか達の歳では最初に魔法少女の使命に終わりを告げた。
魔法少女としての最期の魔女戦。大量に所有していた武器も底を尽き、それでも戦う力を求めた彼女に、最後の奇跡が舞い降りた。
彼女の背中に、黒い翼が姿を現したのだ。その翼は彼女に攻撃を繰り出していた魔女やその使い魔をまるで侵蝕するかのように包み込み、その命を奪い去った。
戦いが終わり、魔法少女の変身を解くと共に暁美ほむらのソウルジェムはその役目を終え、静かに砕けた。
227: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:49:28.32 ID:S90Hkqln0
数ヵ月後。美樹さやかの誕生日前日―――
さやか「んー………」
杏子「どした、さやか。ソウルジェムを掲げて?」
さやか「いや、今日でこれともお別れかぁ、って思ってね」
杏子「……そっか、明日さやかの誕生日だもんな」
マミ「美樹さんも、無事に終わりを迎えられそうね」
さやか「なんか、振り返ってみると、長かったような短かったような感じですねぇ」
まどか「お疲れ様、さやかちゃん」
さやか「まどか~、それはまだちょっと早いかな。どうせ、また深夜になったら魔女が現れるんだろうし」
ほむら「何か根拠でもあるのかしら?」
さやか「今までの統計?」
ほむら「……」
さやか「……」
ほむら「……まぁ、否定はしないけれど」
さやか「何さ今の間は」
228: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:50:57.18 ID:S90Hkqln0
QB「やあ、みんな」
さやか「あ、キュゥべえ!」
マミ「キュゥべえ、来たの?」
杏子「ああ、来てるよマミ。ったく、ほむらん時は来なかった癖に、さやかん時は来るんだな?」
ほむら「……別に、わたしは気にしていないけれど?」
まどか「……いつの間にか、わたしにも見えなくなっちゃったね、キュゥべえ」
QB「何回も言うようだけれど、僕の姿を見ることが出来るのは魔法少女か、その素質を持った子だけだよ」
QB「僕の姿が見えなくなったと言うことは、まどかの膨大な素質も完全に消え失せたということだろうね」
さやか「へぇ……まどかの素質も完全に消え失せたってさ、ほむら」
ほむら「………本当に、これでひと安心ね……まどか」
まどか「そう、だね……でも、お別れくらいは言いたかったよ、キュゥべえ」
QB「無神経で悪かったね、まどか」
229: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:52:15.31 ID:S90Hkqln0
QB「あと一応弁解しておくけれど、ほむらの時に姿を現さなかったのは、最後の時に僕が側にいるのをほむらは嫌がるんじゃないかって思ったからなんだよ」
さやか「うわ、キュゥべえがそんなことに気を遣うなんて……」
ほむら「なんて言ったのかしら、キュゥべえは?」
杏子「最後ん時にキュゥべえが側にいるのを、ほむらが嫌がると思ったらしいぜ、こいつ」
ほむら「どう思われているのよ、わたしは……」
QB「僕のスペアを大量に始末した、インキュベーターハンターだね」
さやか「インキュベーターハンター……」
ほむら「わ、悪かったわよ……でも、節操無いキュゥべえも悪いのよ?」
QB「僕はまどかと契約さえ出来ればよかったのに。最後の最後までほむらに邪魔されてしまったよ」
さやか「はぁ……相変わらずだね、キュゥべえ」
230: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:53:16.60 ID:S90Hkqln0
さやか「さて、と……杏子、気付いてる?」
杏子「ん、あぁ。行くか。さやかの最後の戦いに、な」
さやか「そんじゃ、行って来るね、マミさん、まどか、ほむら」
杏子「ほむらん時とおんなじで、お前らは家でゆっくりしてろ。さやかの最後はあたしが見届けてくっから」
まどか「気をつけてね、さやかちゃん、杏子ちゃん」
ほむら「無事に帰ってくるのを待っているわ」
マミ「わたしは、おいしい紅茶を淹れて待っているわね?」
さやか「あはは、楽しみにしてます!」
QB「僕も、一緒に行っていいかい?」
さやか「もちろん!行こう、キュゥべえ!」
231: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:54:37.55 ID:S90Hkqln0
町外れ―――
さやか「んー……ここらに来ると、初めての魔女退治を思い出すなぁ」
杏子「へぇ、さやかが契約して最初の魔女退治はこの辺だったのか」
さやか「うん。まどかが魔女の口づけに操られてるクラスメートを見つけてさ。それを助ける為に、あたしが駆けつけたんだよね」
杏子「そん時、マミはどうしてたんだ?」
さやか「あたしは病院の屋上から駆けつけたんだけど、マミさんは自宅からだったみたいでさ。こっからだと、病院のが近いじゃん?」
QB「さやかの契約直後だったね、確か」
杏子「はぁ……病院、か。そいや、あの男の腕を治してくれって祈りだったもんな」
さやか「ん。………恭介は、今も元気にヴァイオリンを演奏してるよ」
杏子「よかったな、さやか」
さやか「ありがと、杏子……っと、ここだね」ズァァァァ……
232: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:55:38.13 ID:S90Hkqln0
結界内―――
さやか「杏子、いる?」
杏子「心配すんな、ここにいるよ」
さやか「よかった、ほむらの時みたいに離ればなれになるかと思ってたけど」
杏子「あんなこと、そうそうあってたまるかよ。………ここの魔女も、強そうだな」
さやか「なぁに、あたしと杏子がいれば瞬殺瞬殺♪」
杏子「油断すんなよさやか」
さやか「わかってるって!そんじゃ、中枢目指して行きますかー!」
使い魔「クキャキャキャキャキャ!」ヒュン
杏子「はぁっ!」ブゥン!
使い魔「ヒャヒャヒャッヒャヒャ!」ヒュン
さやか「とうっ!」ズバッ!
QB「調子いいね、二人とも」
さやか「最後まで気は抜かないようにしなきゃいけないからね!」
233: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:56:19.99 ID:S90Hkqln0
結界中枢―――
杏子「……ここが中枢だな」
魔女「――――」ウヨウヨウヨ
杏子「……随分手数の多そうな魔女だな」
さやか「接近戦主体のあたしたちじゃ、ちょっと不利かもしれないね」
杏子「ま、あたしにゃ関係ねぇけどな!」ザクッ
ズダダダダダン!!
魔女「―――!」ズグググッ
さやか「おおっ!?なにそれ!?」
杏子「あたしの攻撃を見てる暇があったらさやかも戦えよ!」
234: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:57:10.60 ID:S90Hkqln0
さやか「わかってるってば!はっ!」カチッ ビュンッ
杏子「!?」
ズバァンッ
魔女「―――…グオオオ……」
杏子「さ、さやかの剣って刀身飛ばせるのか!?」
さやか「あれ、知らなかった、っけ!」ズバッ
使い魔「ヒャハッ!?」ボロボロ
杏子「なんだよ、さやかもあたしの知らない攻撃方法持ってんじゃねぇか!」ブゥン バキバキッ!
使い魔「クケッ…」ボロボロ
さやか「あんまり使わないからね、これ!また新しく剣作り出すのだって、楽じゃないんだから!」ズバズバッ
235: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:58:42.20 ID:S90Hkqln0
魔女「……オオ………ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
杏子「周辺の使い魔はあらかた倒したな」
さやか「さて……最後は、あたしのとっておきで片しちゃいますかー!」
杏子「とっておき?」
さやか「むむ……むむむむ……」ブゥン……ズララララララララララララララ
杏子「お?おおおおおおおおおっ?」
さやか「名づけて『スプラッシュスティンガー』!行け、無数の剣よ!!」バッ
ズダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!
魔女「グガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアギャアアアアアアアアアアアアアアア………―――」ズバズバズバズバズバァァァァァァ!!
魔女「――――――………」ボロボロボロ
236: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 15:59:21.36 ID:S90Hkqln0
ズアアアアアァァァァァ……コンコン……コロコロ……
さやか「ふぅ……遠距離攻撃って便利だねぇ」
杏子「ありゃ危険だな。あたしだけだったからまだしも、ほむらとマミがいる時に使わなくってよかったな」
さやか「……ん」パァァァ……
QB「キミも、おわりだね、さやか」
さやか「まだ、日付変わるまでに時間あるよね?」
杏子「あと20分くらいだな」
さやか「そんだけあれば十分!川に行こう、杏子」
杏子「川……?」
237: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:01:01.35 ID:S90Hkqln0
さやか「………」
杏子「おい、さやか?何するつもりだ?」
さやか「はい、杏子。その時計、秒針まで正確に合わせてあるから」
杏子「……?」
QB「何をするんだい、さやか?」
さやか「まぁまぁ見てなさいって!杏子、日付変わるまでのカウントダウンよろしく!」
杏子「………あと10秒」
さやか「……」
杏子「9、8、7、6、5、4」
さやか「それっ!」ブンッ
杏子「3、2、1……」
QB「……――かれ―――か……」フッ
パキンッ……キラキラ……
238: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:01:51.42 ID:S90Hkqln0
さやか「ありがと、魔法少女!ありがと、ソウルジェム!ありがと……」クルッ
さやか「……キュゥべえ」
杏子「………おつかれさん、さやか。やりたかったことってのは、これか」
さやか「……うん。あたしのソウルジェムの色、青かったでしょ?だから、まぁ、川とか海も青いし。最後はそこに向けて投げよう、って決めてたんだ」
杏子「なかなかロマンのあることするじゃねぇか」ニカッ
さやか「後は、杏子だけだね」
杏子「ああ、そうだな……あとひと月、頑張るか」
さやか「んじゃ、みんなのところに帰ろっか!」
スタスタスタ……
QB「………さて。僕は邪魔にしかならないだろうし。行くとしよう」トコトコ……
239: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:02:27.39 ID:S90Hkqln0
美樹さやか
ほむらの次に魔法少女としての人生に終止符を打った。
彼女の最後の戦い。接近戦を望めない相手と知ったさやかは、自身の魔力を練り上げる。
そして気が付くと、彼女の周囲には多数の剣が出現していた。地面、空中、あらゆるところに。
その多数の剣を飛び道具にし、相対していた魔女と使い魔を一掃するのだった。
魔女を葬り去った彼女は、その自身の魂、ソウルジェムを川へ向けて投げ出した。
宙を舞う彼女のソウルジェムは、川へ着水する前にその形を崩壊させ、その魂は彼女の体へと還った。
240: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:04:25.43 ID:S90Hkqln0
更に数ヵ月後、佐倉杏子の誕生日前日―――
QB「ほむら、さやかも魔法少女としてのノルマを達成してくれて僕としてもありがたい限りだ」
杏子「あいつらん中ではあたしが一番誕生日遅いからな……お前との付き合いも、あたしが最後になるんだな」
QB「そうだね。僕の中ではマミが一番付き合いが長かったけれど、キミとはその次になるのか」
杏子「それも今日で終いだな」
QB「キミ達と契約してからもう6年か……早いものだよ」
さやか「ねぇ、杏子。キュゥべえ、なんて言ってる?」
杏子「ん?ああ、お前らとの付き合いももう6年になるなーって言ってるよ」
ほむら「わたしの体感的にはそれ以上よ……ホント、困らされたものだわ、キュゥべえには」
241: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:06:19.78 ID:S90Hkqln0
杏子「最後くらい、ゆっくりとしてぇけど……」パァァァ
杏子「やっぱ、無理か」スック
マミ「魔女の気配、かしら?」
杏子「ああ。もうあたし一人しかいないから、ちょっと行ってくる」
QB「僕も付き合うよ、杏子」ピョン スタッ
杏子「!」
QB「今日で本当にお別れだからね、これくらいはいいだろう?」
杏子「……はん、馴れ馴れしい奴だな」
まどか「杏子ちゃん、一人で大丈夫?」
杏子「心配すんな、まどか。あたしはマミに次いでベテランだからな。一人でも軽くねじ伏せてやるっての」
さやか「あたしたちも一緒に行く?」
マミ「出来ればそうしたいけれど……いいかしら、佐倉さん?」
杏子「あーもう、仕方ねぇな。わかったよ、何人でもついてこい。あたしが守ってやっから!」
さやか「さっすが杏子!ベテラン魔法少女は違いますなぁ」
242: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:07:08.68 ID:S90Hkqln0
町外れの公園―――
杏子「よっと」スパン ズァァァァ…… タッ
さやか「うーん、なんか複雑な気分だねぇ。こうして見てるしか出来ないなんて」
ほむら「でも、あなたもマミも……そしてわたしも、もうノルマを達成した、とキュゥべえは言っていたはずでしょう?」
まどか「いつの間にかわたしにも見えなくなっちゃってるし……」
ほむら「いいのよ、それで。人間として、日常に戻れるのは幸せなことよ?」
まどか「……うん、そうだね」
ズァァァァァァァァ……コンコンコン……コロコロ……
杏子「よっと!」スタンッ
さやか「って、はやっ!?」
杏子「他愛もねぇ魔女だったな」ヒョイ パァァァ
243: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:07:38.87 ID:S90Hkqln0
マミ「……もうすぐ、日付が変わるわね」
杏子「ん、もうそんな時間か」
QB「やれやれ、キミは軽いね、杏子」スゥ
杏子「……」
QB「だけど、安心したよ。キミ達とこうして無事にお別れを済ませることが出来そうで」
杏子「もうあたしにしか見えてねぇんだから、その言い方はおかしいんじゃねえのか?」
QB「そうかな?僕の声はまどか達には届かないけれど、まどか達の声は僕に届いているから、おかしくはないと思うけれどね」
杏子「やれやれ、お前ホントに感情ねぇのか?」
QB「そのはずだけれどね。どうなんだろう?僕にも正直わからないよ」
244: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:08:17.52 ID:S90Hkqln0
マミ「……どう、佐倉さん?まだ、キュゥべえは見えている?」
杏子「ああ、見えてるよ。少しずつ透け始めてるけどな」
マミ「なら……最後に、お別れの言葉を言ってもいいかしら?」
杏子「だとさ、キュゥべえ」
QB「構わないよ」
マミ「……困ったわね……いざとなったら、なんて言えばいいのかわからないわ……」ポロポロ
ほむら「………」
さやか「そうだよね……なんだかんだ言っても、キュゥべえはあたしたちの願いをかなえてくれた恩人には違いないもんね」
245: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:08:58.81 ID:S90Hkqln0
マミ「さようなら、キュゥべえ。あなたはあなたの目的を、達成させてね?」
QB「ありがとう、マミ。キミの激励、忘れないよ」
杏子「マミの激励、忘れないってさ」
マミ「っ……」グシグシ
杏子「ほむらは?なんか言うことねぇのか?」
ほむら「………そうね。なら、ひと言だけ」
ほむら「こんな時だからこそ言えることだけれど………」
ほむら「わたしに力を与えてくれて、ありがとう。あなたのおかげで、わたしは自分に自信を持つことが出来るようになったわ」
QB「……!」
246: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:09:58.64 ID:S90Hkqln0
ほむら「杏子……キュゥべえは、何か言っている?」
杏子「いや……キュゥべえ?」
QB「あ、ああうん。まさかほむらから感謝の言葉が出て来るなんて夢にも思わなかったからね。驚いたよ」
杏子「ほむらの口から感謝の言葉を聞くとは思わなかった、ってさ」
ほむら「……ふん、貴重なひと言よ。心に刻んでおきなさい」
QB「うん、そうさせてもらうよ」
杏子「さやかは?」
さやか「うーん……そうだなぁ……」
さやか「ちょっと、複雑な気分だけど……やっぱり、これかな」
さやか「いたいけな少女を騙すのはやめろ!……ってね」
QB「魔女化せずともエネルギー回収を出来るとわかったからね、今後はなるべくならその方法は取らないようにするつもりだけれど」
杏子「今後はそういうことはしないようにするつもりだってさ」
さやか「曖昧な言葉だねぇ。ま、それでもいっか」
247: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:11:01.73 ID:S90Hkqln0
さやか「あ、あともうひとつ」
さやか「あたしの幼馴染を救ってくれて、ありがと」
QB「それは僕が直接手を下したことじゃないよ。キミの祈りの結果だ、誇りに思ってもいいと思うよ」
杏子「それはさやかの祈りの結果だし、誇りに思えってさ」
さやか「……ん、そっか」
杏子「まどかはどうだ?ホントに、これで最後だぞ?」
まどか「うーん……わたしは魔法少女だったわけじゃないし……」
QB「それなら、僕から言わせてもらってもいいかな?」
杏子「キュゥべえから言いたいことがあるってさ」
まどか「? 何?」
QB「キミと契約出来なかったのが僕一番の心残りだ。その運命を選んだのはキミなのだから、選択をミスするようなことだけはしないでほしい」
杏子「お前と契約出来なかったのが一番の心残りだ、今後もいい人生を歩めってさ」
QB「はしょりすぎだよ、杏子」
杏子「うっせ!んなくせぇこと言えるか!」
まどか「キュゥべえ……。うん、わたし、頑張るよ。だからキュゥべえも、頑張ってね?」
QB「それはもちろんさ」
248: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:12:00.60 ID:S90Hkqln0
QB「……時間、だね。杏子、ソウルジェムを」
杏子「ああ」パァァァァァァァ……ピシピシッ……
QB「さようなら、奇跡を掴んだ少女達。キミ達の事は、忘れないよ」
杏子「あたしたちはすぐに忘れるかもしんねぇぞ?」
QB「それならそれでありがたいかな。あまり僕のことは公言しないで欲しいからね」
杏子「心配しなくったって、言いやしねぇよ。一般人にんな話したら、頭湧いてんじゃねえかって思われんだろ」
QB「それもそうか。なら、出来れば覚えておいてほしいかな」
杏子「……そうだな」
QB「それ――あ、僕――くよ。バイ――、まど―――むら、――か、マミ、杏―」フッ
杏子「……」パキンッ……キラキラ……
249: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:12:52.99 ID:S90Hkqln0
さやか「おつかれさん、杏子」
杏子「ああ……」
マミ「キュゥべえ……」グスグス
ほむら「やっぱり、一番つらいのはマミよね」
マミ「これで、本当にお別れなのね……キュゥべえ……」
まどか「……それじゃ、帰ろう、みんな?」
マミ「……わたしの家で、お茶会、していく?」
さやか「魔法少女の卒業パーティ、だね」
ほむら「悪くないわね」
杏子「んじゃ、今夜はマミの家で徹夜でパーティだな!」
マミ「ええ……ちゃんと、六人分用意しなくっちゃ」
まどか「……キュゥべえの分も、ですね」
マミ「もちろんじゃない。キュゥべえ……元気でね」
最終部「魔法少女の卒業」 完
250: ◆uOSHePfhFc 2012/04/23(月) 16:14:30.33 ID:S90Hkqln0
これにて投下終了です。
色々と都合のいい設定を盛り込んだりしましたが、大目に見てくれるとありがたいです。
では、またどこかのSSスレッドで会いましょう。
SS速報VIP:まどか「魔法少女の卒業式」