7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:10:45.61 ID:Dkj0a2F50
さやか「あたしって、本当、バカ」
まどか(さやかちゃんが悲しんでるのに、何もしてあげられない……)
まどか(魔法少女じゃないと、同じ立場になれないってわかってるのに、なのに)
まどか(私、怖い……)
まどか「さやかちゃん……」
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:14:20.69 ID:Dkj0a2F50
さやか「何さまどか……もうあたし、どうでもよくなってきちゃったよ」
まどか「そんなの駄目だよ、さやかちゃんらしくないよ……」
さやか「……そうだね。もう美樹さやかなんて、どこにもいないんだよ」
さやか「ここにいるのは美樹さやかの皮を被ったゾンビ」
さやか「あんただって、そう思ってるんでしょ? 化け物だって……同じ立場になんてなれない、なりたくない……そうでしょ?」
まどか「そんなこと、言わないでよ……!」ギュッ
さやか「……」
さやか「……まどか、寒いよ」
さやか「抱きしめてもらってるのにね、あたしたちの体、まどかの体温、こんなに遠い」
さやか「きっと恭介に抱きしめてもらったって、そうなんだろうね」
さやか「……」
さやか「恭介ぇ……」ピシッ
まどか「……駄目! 駄目ぇ!!」ガシッ
さやか「あっ……?」
まどか「どう!? さやかちゃん、今のさやかちゃんの本体って、こっちなんでしょ!?」
まどか「じゃあ、これならわかるよね!? 私が触れてるの、わかるよね……!?」グスッ…
まどか「私、魔法少女じゃないし、上条君じゃないけど! でも!」
まどか「ここにいるんだよ? さやかちゃんの隣に、いるんだよ……?」ポロポロ
さやか「……」
さやか(まどかが、何か言ってる……)
さやか(でも、なんだろ、よく聞こえないや)
さやか(なんか、暗くなってきたし……)
さやか(うん、どうでもいいよね、もう全部……)
さやか(……)
さやか(体が、熱い……)
タタタタッ
ほむら「鹿目まどか! 美樹さやかから離れなさい!」
まどか「……ほむらちゃん?」
ほむら「もう手遅れよ……美樹さやかは助からない」
ほむら「すぐにでも魔女化するわ! 巻き込まれる前に、早く!」
まどか「そんな……!」ギュウッ
さやか(……)
さやか(そっか。あたし、魔女になるのか)
さやか(ひどい最後)
さやか(でもいいよね、どうせ最初から化け物なんだし)
さやか(いまさら見た目が変わったって、何も考えらんなくなったって)
さやか(どうせ、何も変わらない、もの)
ほむら「見なさい、もう亀裂が走ってる。ここまで穢れを溜め込んだら、グリーフシードも意味を成さない」
ほむら「わかるでしょう、鹿目まどか。それを置いて、早くここから離れて!」
まどか「……っ」ギュウウ
ほむら「まどかっ!」
まどか「……じゃないもん。それじゃないもん!」
まどか「さやかちゃんだもん!」
まどか「さやかちゃん、寒いって言ってたの」
まどか「だから、私が抱きしめてあげなきゃいけないんだよ!」
まどか「だって……さやかちゃんのソウルジェムね、あったかいんだよ?」
まどか「ゾンビなんかじゃない! さやかちゃん生きてるもん!」
まどか「ここで逃げたら、私また……さやかちゃんを死なせちゃう……殺しちゃう!」
ほむら「……っ」
ほむら「……そう、言いたいことはそれだけ」ジャコッ
まどか「……うん」
ほむら「あなた、自分が生身の人間だってわかってるの? このまま美樹さやかの魔女化に巻き込まれても、私の銃で撃たれても、間違いなく死ぬ体なのよ?」
まどか「わかってるよ」グスッ
まどか「私、怖いけど……魔法少女になるのも、死ぬのも怖くて嫌で、できないけど……だけど」
まどか「それでも、さやかちゃんの友達でいたいもん……!」
さやか(……)
さやか(ア……アア……)
さやか(……このあったかいのって)
さやか(ギャ……ギギ)
さやか(……)
さやか「ま、どか」
まどか「さやかちゃんっ!?」
さやか「ア……」
ほむら「まどか! 駄目えッ!!」
パキイイイイン
オクタヴィア「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ゴオオオオオオオオオオッ
ほむら「クッ……いや、そんな……! まどか……!」
オクタヴィア「オオオオオ、ギャアアアアアアアアアアアア!!!」
ほむら「あ、ああ……」ガクンッ
「……まったく、無茶してくれちゃってさ」
「本当、すごい友達持っちゃったもんだよね……あたしってばさ」
まどか「さ、さやかちゃん……?」
さやか「おう! 魔法少女さやかちゃんですよー!」
ほむら「え……」
オクダヴィア「ウウウウウウ、ギャアアアアアアア!!!」ブンッ
さやか「おっとお!」ギィンッ
ほむら「何が、起こっているというの……!?」
QB「へえ、これは興味深いケースだね」
ほむら「インキュベーター!? あなた、どこから……」
QB「ご覧よ、暁美ほむら。まどかが手に持ってる、美樹さやかのソウルジェムを」
ほむら「何、あれ……」
ほむら(ソウルジェムとグリーフシードが、半分ずつくっついてる……?)
QB「魔法少女の本体がソウルジェムであることは変わらない。あの魔女も、今戦っている美樹さやかも、同じ美樹さやかなのさ」
QB「魂は一つなのに、存在を分割してみせるなんて本当に興味深い現象だよ」
まどか「さやかちゃん! 本当にさやかちゃんだ……!」ダキッ
さやか「おっとと! まどか、嬉しいけど危ないよ!」
さやか「……あたしも、またこうやってまどかと話せるなんて夢みたいだよ」
まどか「さやかちゃん、ごめんね、私、私……!」
さやか「ううん、謝らなきゃいけないのはあたしの方」
さやか「それに、ありがとう。まどかの声、まどかのあったかさ、ちゃんとあたしに届いたよ」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「本当にさ、こんなあたしにここまで付き合ってくれちゃって……お人よしなんだからさ」
まどか「ん、うん……」グスッ
さやか「……じゃあ、まどか。あたしのソウルジェム置いて、逃げてくれないかな?」
まどか「……えっ?」
まどか「さやかちゃん、何言って……」
さやか「ずっと抱きしめてくれてたまどかならわかるでしょ? ほら、あたしのソウルジェム、半分グリーフシードになっちゃってる」
さやか「こうやってしゃべってるあたしも、あの魔女も、どっちもあたしなんだよ」
オクタヴィア「ギャアアアアアアアアアアア」ブンッブオンッ
さやか「んっ! ほら、もう見境なく攻撃してくる……あたし、もう半分魔女なんだよ」
まどか「そんな……大丈夫だよ、ねえ、一緒に逃げよう?」
さやか「駄目だよ。あたしもあいつも、本体は同じソウルジェム。あたしたち、離れられないんだ」
まどか「そんなぁ……」
さやか「そんな顔しないで!大丈夫、あんなヤツぶっ飛ばして、魔法少女さやかちゃん完全復活!って帰ってくるからさ」
まどか「……」
ほむら「美樹さやか」タタッ
さやか「転校生……まどかのこと、頼んだよ」
ほむら「ええ、言われなくても」
まどか「ほむらちゃん、さやかちゃん!? 駄目だよ、そんなの!」
さやか「……あんたの忠告、聞いておくんだったね。こんな姿になってからわかるなんてさ」
ほむら「……その言葉が聞けただけ、今回はマシだったと思っておくわ」
さやか「あはっ……ありがと」
さやか「まどか、あたしが今ここにいられるの、あんたのおかげだよ」
さやか「今のあたしは、ちゃんと前を向ける。頑張れる……!」
さやか「だからさ、信じててよ。あたしが自分に勝って、帰ってくるって」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「お願い、まどか……!」
まどか「……わかった」
まどか「早く帰ってきてくれなきゃ嫌だからね……待ってるから!」
さやか「ありがとう、まどか……こんな時なのにあたし、最高に幸せだよ」ギュッ
QB「幸いこの結界もできたばかりだからか、さほど広くないみたいだね。案外すぐに出られると思うよ」
ほむら「……」
ほむら「まどか、先に行っててくれるかしら。すぐに追いつくから」
さやか「ちょっ……転校生!」
ほむら「生まれて間もないからか、使い魔も多くない。魔女本体から離れれば安全よ」
まどか「……」
まどか「うん、わかった。ほむらちゃん、さやかちゃんのこと、お願いね」
タタタタッ
さやか「どうしたのさ、転校生。最期を看取ってくれるわけ?」
ほむら「やっぱりあなた、死ぬ気なのね」
さやか「そりゃ、ね。なんとなくわかるのよ。同じ片割れでも、あたしよりあいつの方が強い」
さやか「それに、あいつに勝ててもソウルジェムはたぶん……」
ほむら「……」
さやか「だからさ、確実にあいつを倒すためには、自分でこうするしかっ」ブンッ
ガキンッ!
ほむら「くっ……」
さやか「ちょっ、転校生!? 何してるのさ!」
ほむら「……させないわ」
ほむら「あなた、まどかと約束したじゃない……!」
さやか「……あんたらしくないじゃん」
さやか「むしろ、まどかがいなくなったらソウルジェム壊しにくるんじゃないかと思ってたのに」
ほむら「ええ、最初はそのつもりだったわ」
ほむら「でも、まどかにとって、あなたの代わりはいないのよ……私だって、本当は信じたい」
ほむら「見返りのない奇跡も、魔法も、少しくらいあったっていいじゃない……!」
さやか「へえ……あんたにも、そういうとこあったんだね」
さやか「もうちょっと前に見せてくれてたら、印象も違ったかもしれなかったのになあ」
さやか「……」
さやか「駄目だった時は、あたしの残りの始末、任せてもいい?」
ほむら「……ええ、引き受けるわ」
さやか「それじゃ、あんたも行きな、転校生」
ほむら「……ええ」
さやか「もし」
さやか「もしちゃんと帰ってこれたら」
さやか「その時は、ほむらって呼んであげる」
ほむら「……」タタッ
オクタヴィア「……」
さやか「さ、待たせたわね、あたし」
さやか「もう、妄想の中のコンサートはやめにしましょう……!」
オクタヴィア「グ…ギャアアアアアアアアアア!!!」
ほむら「インキュベーター」
QB「なんだい?」
ほむら「仮に美樹さやかが勝ったとして、魔法少女に戻れる可能性は?」
QB「ゼロとは言わないけれど、限りなくゼロに近いね」
QB「魔女を倒した時点でソウルジェムが砕けて相打ちになるかもしれないし、逆にソウルジェムが穢れを溜める限り魔女側は不死身かもしれない」
QB「あるいは、互いに希望と絶望を供給しあって、永遠に戦い続けるかもしれない」
QB「まあ、何しろ初めてのケースだからね。どんな結果になったとしても、興味は尽きないよ」
ほむら「……」
QB「戦いが続いている限りは魔女の影響は広がらないだろうからね、気楽に待つといい」
QB「何か進展があれば、情報は提供してあげるよ」
ほむら「……そう」
それから1時間が過ぎ、
1日が過ぎ、
1週間が過ぎた。
美樹さやかは行方不明者として捜索が行われているが、
街も、学校も、彼女のいない日常に慣れ始めている。
まどかもクラスメートと談笑する程度には、日常に戻り始めた。
それでも人から離れると、
教室で、屋上で、街で、病院で、CDショップで、
美樹さやかの姿を探し、祈り続けている。
まどか「キュゥべえ、さやかちゃん、まだ戦ってるのかな」
QB「さあね、僕にもわからないよ。反応はだんだん小さくなって、今じゃ感知できないくらいになってしまったからね」
まどか「そっか」
ほむら「……」
QB「どうしても美樹さやかの無事を確かめたいなら、僕は協力を惜しまないよ?」
QB「いや、まどかさえ契約してくれるのなら、魔法少女のさやかでも、人間のさやかでも、すぐに復活させられるだろうね」
ほむら「……」ジャコッ
QB「物騒な物を向けないでくれるかい? これでも最大限の協力を示したつもりなんだからさ」
まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん。私、契約したりしない」
まどか「さやかちゃんのこと、信じて待ってるから」
ほむら「まどか……」
まどか「だって、約束したもん。さやかちゃんのお願いだもん」
ほむら「……」ギュッ
まどか「……1週間、経ったよ」
まどか「本当に、あれでよかったのかな」
まどか「さやかちゃん、寂しくなかったかな」
まどか「私何の役にも立たないし、臆病だし、足手まといだって、わかってるけど」
まどか「でも、最後まで残ってたら……! こんな思い、しなくてすんだのかなあ……!」グスッ
ほむら「……っ」
まどか「寂しいよ、さやかちゃぁん……早くっ、帰ってきてよぅ……」
「ちょっと、まどかに転こ……ほむら! いつの間にそんな仲になったわけ?」
まどか「えっ」
ほむら「……!」
QB「へえ……おめでとう。君の戦いはエントロピーを凌駕した」
さやか「へへ……奇跡も、魔法も、あるんだよ?」
≪おしまい≫
元スレ
さやか「何さまどか……もうあたし、どうでもよくなってきちゃったよ」
まどか「そんなの駄目だよ、さやかちゃんらしくないよ……」
さやか「……そうだね。もう美樹さやかなんて、どこにもいないんだよ」
さやか「ここにいるのは美樹さやかの皮を被ったゾンビ」
さやか「あんただって、そう思ってるんでしょ? 化け物だって……同じ立場になんてなれない、なりたくない……そうでしょ?」
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:18:09.12 ID:Dkj0a2F50
まどか「そんなこと、言わないでよ……!」ギュッ
さやか「……」
さやか「……まどか、寒いよ」
さやか「抱きしめてもらってるのにね、あたしたちの体、まどかの体温、こんなに遠い」
さやか「きっと恭介に抱きしめてもらったって、そうなんだろうね」
さやか「……」
さやか「恭介ぇ……」ピシッ
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:23:18.81 ID:Dkj0a2F50
まどか「……駄目! 駄目ぇ!!」ガシッ
さやか「あっ……?」
まどか「どう!? さやかちゃん、今のさやかちゃんの本体って、こっちなんでしょ!?」
まどか「じゃあ、これならわかるよね!? 私が触れてるの、わかるよね……!?」グスッ…
まどか「私、魔法少女じゃないし、上条君じゃないけど! でも!」
まどか「ここにいるんだよ? さやかちゃんの隣に、いるんだよ……?」ポロポロ
さやか「……」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:26:59.97 ID:Dkj0a2F50
さやか(まどかが、何か言ってる……)
さやか(でも、なんだろ、よく聞こえないや)
さやか(なんか、暗くなってきたし……)
さやか(うん、どうでもいいよね、もう全部……)
さやか(……)
さやか(体が、熱い……)
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:30:04.36 ID:Dkj0a2F50
タタタタッ
ほむら「鹿目まどか! 美樹さやかから離れなさい!」
まどか「……ほむらちゃん?」
ほむら「もう手遅れよ……美樹さやかは助からない」
ほむら「すぐにでも魔女化するわ! 巻き込まれる前に、早く!」
まどか「そんな……!」ギュウッ
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:34:01.55 ID:Dkj0a2F50
さやか(……)
さやか(そっか。あたし、魔女になるのか)
さやか(ひどい最後)
さやか(でもいいよね、どうせ最初から化け物なんだし)
さやか(いまさら見た目が変わったって、何も考えらんなくなったって)
さやか(どうせ、何も変わらない、もの)
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:38:16.29 ID:Dkj0a2F50
ほむら「見なさい、もう亀裂が走ってる。ここまで穢れを溜め込んだら、グリーフシードも意味を成さない」
ほむら「わかるでしょう、鹿目まどか。それを置いて、早くここから離れて!」
まどか「……っ」ギュウウ
ほむら「まどかっ!」
まどか「……じゃないもん。それじゃないもん!」
まどか「さやかちゃんだもん!」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:43:30.25 ID:Dkj0a2F50
まどか「さやかちゃん、寒いって言ってたの」
まどか「だから、私が抱きしめてあげなきゃいけないんだよ!」
まどか「だって……さやかちゃんのソウルジェムね、あったかいんだよ?」
まどか「ゾンビなんかじゃない! さやかちゃん生きてるもん!」
まどか「ここで逃げたら、私また……さやかちゃんを死なせちゃう……殺しちゃう!」
ほむら「……っ」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:49:46.64 ID:Dkj0a2F50
ほむら「……そう、言いたいことはそれだけ」ジャコッ
まどか「……うん」
ほむら「あなた、自分が生身の人間だってわかってるの? このまま美樹さやかの魔女化に巻き込まれても、私の銃で撃たれても、間違いなく死ぬ体なのよ?」
まどか「わかってるよ」グスッ
まどか「私、怖いけど……魔法少女になるのも、死ぬのも怖くて嫌で、できないけど……だけど」
まどか「それでも、さやかちゃんの友達でいたいもん……!」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:53:31.99 ID:Dkj0a2F50
さやか(……)
さやか(ア……アア……)
さやか(……このあったかいのって)
さやか(ギャ……ギギ)
さやか(……)
さやか「ま、どか」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:55:33.23 ID:Dkj0a2F50
まどか「さやかちゃんっ!?」
さやか「ア……」
ほむら「まどか! 駄目えッ!!」
パキイイイイン
オクタヴィア「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/12(木) 23:59:20.17 ID:Dkj0a2F50
ゴオオオオオオオオオオッ
ほむら「クッ……いや、そんな……! まどか……!」
オクタヴィア「オオオオオ、ギャアアアアアアアアアアアア!!!」
ほむら「あ、ああ……」ガクンッ
「……まったく、無茶してくれちゃってさ」
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:03:22.64 ID:RXHJi8ne0
「本当、すごい友達持っちゃったもんだよね……あたしってばさ」
まどか「さ、さやかちゃん……?」
さやか「おう! 魔法少女さやかちゃんですよー!」
ほむら「え……」
オクダヴィア「ウウウウウウ、ギャアアアアアアア!!!」ブンッ
さやか「おっとお!」ギィンッ
ほむら「何が、起こっているというの……!?」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:11:47.99 ID:RXHJi8ne0
QB「へえ、これは興味深いケースだね」
ほむら「インキュベーター!? あなた、どこから……」
QB「ご覧よ、暁美ほむら。まどかが手に持ってる、美樹さやかのソウルジェムを」
ほむら「何、あれ……」
ほむら(ソウルジェムとグリーフシードが、半分ずつくっついてる……?)
QB「魔法少女の本体がソウルジェムであることは変わらない。あの魔女も、今戦っている美樹さやかも、同じ美樹さやかなのさ」
QB「魂は一つなのに、存在を分割してみせるなんて本当に興味深い現象だよ」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:16:28.38 ID:RXHJi8ne0
まどか「さやかちゃん! 本当にさやかちゃんだ……!」ダキッ
さやか「おっとと! まどか、嬉しいけど危ないよ!」
さやか「……あたしも、またこうやってまどかと話せるなんて夢みたいだよ」
まどか「さやかちゃん、ごめんね、私、私……!」
さやか「ううん、謝らなきゃいけないのはあたしの方」
さやか「それに、ありがとう。まどかの声、まどかのあったかさ、ちゃんとあたしに届いたよ」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:19:57.77 ID:RXHJi8ne0
まどか「さやかちゃん……」
さやか「本当にさ、こんなあたしにここまで付き合ってくれちゃって……お人よしなんだからさ」
まどか「ん、うん……」グスッ
さやか「……じゃあ、まどか。あたしのソウルジェム置いて、逃げてくれないかな?」
まどか「……えっ?」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:23:49.76 ID:RXHJi8ne0
まどか「さやかちゃん、何言って……」
さやか「ずっと抱きしめてくれてたまどかならわかるでしょ? ほら、あたしのソウルジェム、半分グリーフシードになっちゃってる」
さやか「こうやってしゃべってるあたしも、あの魔女も、どっちもあたしなんだよ」
オクタヴィア「ギャアアアアアアアアアアア」ブンッブオンッ
さやか「んっ! ほら、もう見境なく攻撃してくる……あたし、もう半分魔女なんだよ」
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:27:50.75 ID:RXHJi8ne0
まどか「そんな……大丈夫だよ、ねえ、一緒に逃げよう?」
さやか「駄目だよ。あたしもあいつも、本体は同じソウルジェム。あたしたち、離れられないんだ」
まどか「そんなぁ……」
さやか「そんな顔しないで!大丈夫、あんなヤツぶっ飛ばして、魔法少女さやかちゃん完全復活!って帰ってくるからさ」
まどか「……」
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:31:52.53 ID:RXHJi8ne0
ほむら「美樹さやか」タタッ
さやか「転校生……まどかのこと、頼んだよ」
ほむら「ええ、言われなくても」
まどか「ほむらちゃん、さやかちゃん!? 駄目だよ、そんなの!」
さやか「……あんたの忠告、聞いておくんだったね。こんな姿になってからわかるなんてさ」
ほむら「……その言葉が聞けただけ、今回はマシだったと思っておくわ」
さやか「あはっ……ありがと」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:38:51.35 ID:RXHJi8ne0
さやか「まどか、あたしが今ここにいられるの、あんたのおかげだよ」
さやか「今のあたしは、ちゃんと前を向ける。頑張れる……!」
さやか「だからさ、信じててよ。あたしが自分に勝って、帰ってくるって」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「お願い、まどか……!」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:43:47.05 ID:RXHJi8ne0
まどか「……わかった」
まどか「早く帰ってきてくれなきゃ嫌だからね……待ってるから!」
さやか「ありがとう、まどか……こんな時なのにあたし、最高に幸せだよ」ギュッ
QB「幸いこの結界もできたばかりだからか、さほど広くないみたいだね。案外すぐに出られると思うよ」
ほむら「……」
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:46:38.89 ID:RXHJi8ne0
ほむら「まどか、先に行っててくれるかしら。すぐに追いつくから」
さやか「ちょっ……転校生!」
ほむら「生まれて間もないからか、使い魔も多くない。魔女本体から離れれば安全よ」
まどか「……」
まどか「うん、わかった。ほむらちゃん、さやかちゃんのこと、お願いね」
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:50:55.27 ID:RXHJi8ne0
タタタタッ
さやか「どうしたのさ、転校生。最期を看取ってくれるわけ?」
ほむら「やっぱりあなた、死ぬ気なのね」
さやか「そりゃ、ね。なんとなくわかるのよ。同じ片割れでも、あたしよりあいつの方が強い」
さやか「それに、あいつに勝ててもソウルジェムはたぶん……」
ほむら「……」
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 00:54:36.53 ID:RXHJi8ne0
さやか「だからさ、確実にあいつを倒すためには、自分でこうするしかっ」ブンッ
ガキンッ!
ほむら「くっ……」
さやか「ちょっ、転校生!? 何してるのさ!」
ほむら「……させないわ」
ほむら「あなた、まどかと約束したじゃない……!」
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:04:02.29 ID:RXHJi8ne0
さやか「……あんたらしくないじゃん」
さやか「むしろ、まどかがいなくなったらソウルジェム壊しにくるんじゃないかと思ってたのに」
ほむら「ええ、最初はそのつもりだったわ」
ほむら「でも、まどかにとって、あなたの代わりはいないのよ……私だって、本当は信じたい」
ほむら「見返りのない奇跡も、魔法も、少しくらいあったっていいじゃない……!」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:07:10.48 ID:RXHJi8ne0
さやか「へえ……あんたにも、そういうとこあったんだね」
さやか「もうちょっと前に見せてくれてたら、印象も違ったかもしれなかったのになあ」
さやか「……」
さやか「駄目だった時は、あたしの残りの始末、任せてもいい?」
ほむら「……ええ、引き受けるわ」
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:09:12.38 ID:RXHJi8ne0
さやか「それじゃ、あんたも行きな、転校生」
ほむら「……ええ」
さやか「もし」
さやか「もしちゃんと帰ってこれたら」
さやか「その時は、ほむらって呼んであげる」
ほむら「……」タタッ
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:11:25.55 ID:RXHJi8ne0
オクタヴィア「……」
さやか「さ、待たせたわね、あたし」
さやか「もう、妄想の中のコンサートはやめにしましょう……!」
オクタヴィア「グ…ギャアアアアアアアアアア!!!」
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:19:39.77 ID:RXHJi8ne0
ほむら「インキュベーター」
QB「なんだい?」
ほむら「仮に美樹さやかが勝ったとして、魔法少女に戻れる可能性は?」
QB「ゼロとは言わないけれど、限りなくゼロに近いね」
QB「魔女を倒した時点でソウルジェムが砕けて相打ちになるかもしれないし、逆にソウルジェムが穢れを溜める限り魔女側は不死身かもしれない」
QB「あるいは、互いに希望と絶望を供給しあって、永遠に戦い続けるかもしれない」
QB「まあ、何しろ初めてのケースだからね。どんな結果になったとしても、興味は尽きないよ」
ほむら「……」
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:23:15.93 ID:RXHJi8ne0
QB「戦いが続いている限りは魔女の影響は広がらないだろうからね、気楽に待つといい」
QB「何か進展があれば、情報は提供してあげるよ」
ほむら「……そう」
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:29:36.77 ID:RXHJi8ne0
それから1時間が過ぎ、
1日が過ぎ、
1週間が過ぎた。
美樹さやかは行方不明者として捜索が行われているが、
街も、学校も、彼女のいない日常に慣れ始めている。
まどかもクラスメートと談笑する程度には、日常に戻り始めた。
それでも人から離れると、
教室で、屋上で、街で、病院で、CDショップで、
美樹さやかの姿を探し、祈り続けている。
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:32:41.60 ID:RXHJi8ne0
まどか「キュゥべえ、さやかちゃん、まだ戦ってるのかな」
QB「さあね、僕にもわからないよ。反応はだんだん小さくなって、今じゃ感知できないくらいになってしまったからね」
まどか「そっか」
ほむら「……」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:36:05.00 ID:RXHJi8ne0
QB「どうしても美樹さやかの無事を確かめたいなら、僕は協力を惜しまないよ?」
QB「いや、まどかさえ契約してくれるのなら、魔法少女のさやかでも、人間のさやかでも、すぐに復活させられるだろうね」
ほむら「……」ジャコッ
QB「物騒な物を向けないでくれるかい? これでも最大限の協力を示したつもりなんだからさ」
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:40:37.96 ID:RXHJi8ne0
まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん。私、契約したりしない」
まどか「さやかちゃんのこと、信じて待ってるから」
ほむら「まどか……」
まどか「だって、約束したもん。さやかちゃんのお願いだもん」
ほむら「……」ギュッ
まどか「……1週間、経ったよ」
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:46:19.79 ID:RXHJi8ne0
まどか「本当に、あれでよかったのかな」
まどか「さやかちゃん、寂しくなかったかな」
まどか「私何の役にも立たないし、臆病だし、足手まといだって、わかってるけど」
まどか「でも、最後まで残ってたら……! こんな思い、しなくてすんだのかなあ……!」グスッ
ほむら「……っ」
まどか「寂しいよ、さやかちゃぁん……早くっ、帰ってきてよぅ……」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:48:28.88 ID:RXHJi8ne0
「ちょっと、まどかに転こ……ほむら! いつの間にそんな仲になったわけ?」
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:50:20.43 ID:RXHJi8ne0
まどか「えっ」
ほむら「……!」
QB「へえ……おめでとう。君の戦いはエントロピーを凌駕した」
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/05/13(金) 01:51:43.71 ID:RXHJi8ne0
さやか「へへ……奇跡も、魔法も、あるんだよ?」
≪おしまい≫
まどか「上條くんのことなんか私が忘れさせてあげる……」