SS速報VIP:美琴「スノボー旅行2泊3日の旅 温泉付き、かあ…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1353566270/1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 15:37:50.56 ID:C+n43d6v0
~一週間前~
御坂「ちょっとアンタ!!」
上条「んあ…ゲ!!ビリビリ!!」
御坂「ゲッて言うな!!ビリビリいうな!!はぁ、今日はアンタに用事があって待ってたの」
御坂はいつもの自動販売機の前で上条を待ちぶせていた。
しかしいつもと様子が違う。いつもならすぐに勝負しなさいとまくし立てるのに。
上条「はあそうですか。…で、用事とは上条さんになんの用ですか?まさか用っていつものごとく勝負じゃ」
御坂はいつもの自動販売機の前で上条を待ちぶせていた。
しかしいつもと様子が違う。いつもならすぐに勝負しなさいとまくし立てるのに。
上条「はあそうですか。…で、用事とは上条さんになんの用ですか?まさか用っていつものごとく勝負じゃ」
御坂「違うわよ!!アンタは毎度あたしにケンカふっかけられなきゃ気がすまないわけ!?」バチバチ
上条「あわわわわ違う違う!!そんなことないですではこの上条さんに何ようでしょうかとりあえずその電気をお納め下さい!?」
御坂が頭から放電し始めると上条はすぐに右手を出して電流を止める準備をし、御坂はとりあえず放電をおさめた。
御坂「ったく。今日の用事ってのはね、アンタと、かかか買い物にでも行こうと思ったのよ!どうせ暇でしょう!?」
御坂は言っている途中から顔が真っ赤になり、俯向きながら赤くなっているのがバレないように話した。
上条「買い物~?別に構わないけど、なにも俺とじゃなく白井とかと行けば…」
御坂が頭から放電し始めると上条はすぐに右手を出して電流を止める準備をし、御坂はとりあえず放電をおさめた。
御坂「ったく。今日の用事ってのはね、アンタと、かかか買い物にでも行こうと思ったのよ!どうせ暇でしょう!?」
御坂は言っている途中から顔が真っ赤になり、俯向きながら赤くなっているのがバレないように話した。
上条「買い物~?別に構わないけど、なにも俺とじゃなく白井とかと行けば…」
御坂「黒子は今日ジャッジメントで放課後からずっといないの!!いいい良いからアンタはあたしに黙ってついてきなさい!!」ビリビリ
上条「あわわわわわかったから行くからその頭の電気は止めて!!」
御坂「ほらじゃあさっさと歩く。早く行くわよ。(やった誘えた!!あたしがんばった!!偉いあたし偉い!)」
上条「…不幸だ…」
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3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 16:02:05.99 ID:C+n43d6v0
セブンスミスト
上条「んで、買い物ってなにを買うんだ?」
福引店「こ!?この黄金色に輝く玉は!…。おめでとうございまーす!!こちらのカップル様、見事一等のペア旅行券を獲得致しましたーー!!」
御坂・上条「…ええええええええええ!!!!!!?????」
御坂「ちょっ!え!?カカカカップル!?」ボン
上条「そこじゃねーだろ!!1等だぞ1等!!…あ、でもあれか、お前は3等狙いだから、御坂的にはハズレなのか」
御坂「そそそそんなことない!!旅行券よ!?ペアチケットよ!?アアアアンタと旅行だなんてそんな…」
上条「え?俺と行くの?」
御坂「え?」
ザワザワザワ
「ねえあれ常盤台のレールガンじゃない?」
「え?あっ!!本当だ!!よく見たら御坂さんだ!」
「えっ、じゃああのウニ頭が彼氏?」
「キャー学生カップルで二人きりの旅行だって!キャー!!」
御坂「…」ダッ
御坂は上条の言葉や周りの彼氏発言に顔を真赤にし、そこには居たたまれず走ってどこかえ行ってしまった。
上条「え?ちょ!おい御坂!?」
ザワザワザワ
「なになにケンカ?」
「ちょっとなにあの彼氏、最低じゃない?」
「お姉様と旅行に行くのはこの私ですわ。クフフフフフ」
上条「…ふ!!不幸だー!!」
上条は福引店からペアチケットをもらうと、急いで御坂を追いかけた。
上条はすぐに御坂を追いかけたつもりだったが、さすがはレベル5、あっさり見失ってしまった。
上条「ハアハア。あ~どうすっかな。あいつどこにいんだよ。ったく。」
とりあえず、まずはいつもの自販機に行ってみた。
上条「あっ。いた」
御坂は自販機の隣にあるベンチに腰掛けていた。
御坂「はあ。せっかく当たったペア旅行券も忘れてきちゃったし、ゲコ太は当たんないし、あいつ置いてきちゃったし、どうしよ…。あいつにこのまま旅行券あげちゃおうかな。でもそしたらあいつは誰と行くんだろう。…まさかあのシスターと!?嫌!それは嫌!でも…」
上条「なに一人でぼそぼそ話してるんですか?」
御坂「ふあ!!あんた!!いつからいたの!?」
上条「いつからって、今きたとこですよ。で、ペア旅行券がどうしたって?」
上条が二枚の旅行券をピライラさせていると、御坂がそれを強引に奪い取った。
御坂「なんでもないわよ!!これは私のなんだから返してもらうわよ!!」ビリビリ
上条「なんでそこで放電するんですか!?上条さんがせっかく全力で追いかけてきたのに!!」
御坂「え…そんな急いで来てくれたの?」バリ…
上条「そりゃあ、いきなりどっか行ったら心配するだろ」
御坂「そっか…心配してくれたんだ…フフ♪」バリバリ
上条「だからなんで放電、いや漏電するんですか!!」
上条が御坂の頭にそっと右手をおき漏電を消した。頭に手を置かれた御坂は顔を真っ赤にしているが俯いているため上条はそのまま話し続けた。
上条「で。その旅行券にはなんて書いてあるんだ?」
御坂「ふえ??ああ、りょりょ旅行券がなんだって?」
上条「だから、なんて書いてあるんだ?行き先だってさっき聞かずにきちまったんだから。」
御坂「えええーと、スノボー旅行2泊3日の旅 温泉付き かあ…」
上条「へー楽しそうだな。まあ白井とでも行って楽しんでこいよ」
御坂「(またこいつは…私がアンタと行きたいなんて気づかないんだから…)…言われなくたって楽しんでくるわよ…」
上条「おう!!今度土産話し聞かせてくれよ!!…ん?裏になにか書いてあるぞ?」
御坂「え?なになに、『なお、この旅行券は男女でのみの使用となっています』って…ててててててて!!」
上条「なんだ男女のみなのか。まあ常盤台のお嬢様なら一緒に行く男くらいいくらでも…」
御坂「い…わよ…」
上条「え?」
御坂「一緒に旅行する男なんていないわよ!!バカ!!」
少し沈黙が流れた。時刻は19:00を回ろうとしており、11月のこの季節のこの時刻は少し寒く感じていた。
上条「…えーと御坂さん?」
御坂「…なによ?」
御坂は低い声で、でもどこか寂しげな声で俯きながら返事をした。
上条「(まああの福引きで、俺が御坂に触らなければゲコ太グッズを手に入れられたからな…ズルだけど。1等を当てちゃったのは俺の責任でもあるし…)」
上条「えっと、もしよかったら上条さんがお伴しますよ?いや御坂さんが俺じゃ嫌ってんならもちろん強制は致しませんしですね」
御坂「…一緒に行ってくれるの?」
御坂がフッと顔を上条の方に向けたその眼には、うっすら涙がたまっていたように見えた。
上条「(え!?なんだこの反応は!?なんですかその眼は!?…こいつ…こんなに可愛かったっけ?)」ドキドキ
御坂「…ねえ、ホントに一緒に行ってくれるの?」
上条「(だーーー!!落ち着け俺!!相手はあのビリビリだぞ!?中学生だぞ!?)」
上条「おおお俺でいいならだぞ!?別に無理しなくてもお前が嫌じゃなければだから」
御坂「嫌な訳、ないじゃん」ボソッ
上条「えっ?」
御坂「しょーがないわね!!アンタがそんなに行きたいって言うのなら連れて行ってあげるわ!でも変なことしたらぶっ飛ばすからね!」
上条「(あれ?なんだよ。いつもの御坂じゃねーか。でもさっきなんて…?)」
御坂「返事は!?」
上条「おっ、おう。」
御坂「じゃあ日程についてはまた追って連絡するわ。じゃ、私帰るね」
上条「え?おい御坂~…?」
上条「ったく。…不幸…なのか?」
御坂はまた走って行ってしまった。
御坂「」タッタッタッタッタ
御坂「あいつと旅行あいつと旅行あいつと旅行」タッタッタッタ
御坂「ふにゃ~~~~~~!!!」バリバリバリ
この放電により学園都市が一時的な停電となり、上条宅だけ電気の逆流により電化製品が壊れたのは言うまでもない。
「不幸だーーーーーーーーーーー!!!!!!」フコウダーフコウダーフコウダー……
~常盤台 寮 朝~
黒子「(一昨日の夜からお姉様の様子がおかしいですわ。ベッドで横たわってぼーっとしているかと思えば)
御坂「…」ニヤ
黒子「(ニヤニヤしだしたと思ったら)」
御坂「…キャーーー♪」
黒子「(ベッドでごろんごろんと動き)」
黒子「(あげくの果てには私がお姉様のお風呂場に盗さtもとい監視していると)」
御坂「黒子なに見てんのよ。一緒にお風呂入る?♪」
黒子「(などどいつものお姉様なら絶対言わないようなことまで!!まあ結局入ってスキンシップしていたら放電されましたけれども)」
黒子「やはり福引きでの旅行券はあの類人猿と一緒に…!!」 ※福引きをしている現場に黒子はストーキンgもとい護衛をしていました
黒子「これは…旅行直前にあの類人猿を襲撃して入院させるしかありませんわね!!」
御坂「そんなことしたらアンタを冥土送りにしてあげるわよ」
黒子「ピッ!?お姉様!!いつの間にこちらの世界に帰還を!?…そんなことより、お姉様!!やはりあの旅行券はあの殿方と行くのですの!?」
御坂「はあ?アンタなんの話しを…って!!なんでアンタが旅行券のことを!?しかもなんであいつと行くと知って!?」
黒子「ってことはやはりあの殿方と行くのですね!?」
御坂「!!!?しまっt」
黒子「いけませんわお姉様!!あんな類人猿なんかと旅行なんて…お姉様の貞操が!!かくなるうえは今この黒子めが先にお姉様の貞操をミャーー!!」バリバリバリ
御坂「そんなことするわけないでしょ!!たったまたま当てたときにあいつが一緒にいたからあいつと行くだけよ!!それ以上もそれ以下もないからね!!」ビリビリ
御坂「じゃあ、私でかけるから、じゃあね」
バタンとドアが閉まると同時に黒子は携帯を取り出し。
ピっ
黒子「緊急会議ですの」
~とあるファミレス~
佐天「え~!!あの御坂さんが男の人と旅行!?」
ガタッと席をたち大声を出したため周りがざわざわしている。
初春「佐天さん、声が大きいです」
佐天「へ?ああごめん。でもなんで旅行なんて?」
黒子「なんでも福引きで当ててしまわれたらしいですの。はあ、なぜなのですお姉様…」
黒子がテーブルに顔を突っ伏していると、店員がパフェを持って初春の前へ置いた。
初春「♪いただきまー…」
黒子「…私たちも行きますわよ」
佐天初春「へ?」
黒子「私たちも行って、陰から邪魔をするのですの!!それで二度とあの類人猿と仲良くできないくらいの思い出にしますのよ!!」
初春「えっ、それはいくら何でも…」
佐天「おもしろそうですね!!あたし行きます!!」
初春「佐天さん!?」
黒子「では決まりですの。ただし今回はお姉様にバレないように行きますので、くれぐれも慎重に」
初春「私はまだなにも…」
黒子「では作戦をたてましょう」
ー旅行当日ー
上条「ハッハッハッハッ」タッタッタッタ
上条「クソ!!なんで今日に限って携帯のアラームが作動しなかったんだよ!!不幸だ…」
ただいまの時刻 朝の6:50。待ち合わせ時刻は6:30ですでに20分も遅刻が確定している。
御坂はいつもの自動販売機の前で頭をビリビリさせていた。
御坂「…遅い!!なにやってんのよあいつはーーー!!」
とそこに11月の早朝だというのに汗だくで走って来たツンツン頭の男が走って来た。
上条「悪い御坂!!遅れちまったってウオ…!!」パキン
いきなり目の前に青白い光が向かって来たので上条は咄嗟に右手を出し難を逃れた。
上条「みっ御坂!?朝っぱらから撃つなよ!!」
御坂「うるさい!!遅れてきたアンタがいけないんでしょ!!」ビリビリ
上条「だから悪かったって!!だからその頭のビリビリはしまえ。な?」
上条は汗だくの顔でニコッと笑いなんのことなく御坂の頭に手を置いた。
御坂「(…!!?もうこいつは!!なんでこういうこと無意識でするかな!)」カアー
怒っていた筈なのにいつの間にかドキドキさせられている。こいつのこういうとこがムカつく。
御坂は上条と逆の方を向いて真っ赤になった顔を見られないようにした。
御坂「バスの途中に寄るサービスエリアで、地域限定ゲコ太ストラップで許してあげるわ」
上条「へえへえ。かしこまりましたよっと。全く、不幸だ…」
御坂「!!!アンタが遅刻したのがいけないんでしょ!!」
上条「だから悪かったって。ほら、早くしないとバスでちゃうぞ」
御坂「アンタは毎度毎度………」ギャーギャー
ガサガサ
「行きましたわね?」
「こういうの、緊張しますねー!!」
「二人とも、私たちが乗るバスは後ろのやつですよ!!なんで私がバスの予約なんか…」
それぞれの想いを胸に、いざ、雪山へ!!
ーバス1号車内ー
上条「はあーこっからバスで6時間かー。ま、補習を受けないだけマシか。御坂はスノボーしたことあるのか?」
御坂「…」
上条「おーい」
御坂「ふえ!?」
上条「なんだよずっと俯いて。もう酔ったのか?」
御坂「べべべ別になんでもないわよ!!」
上条「?」
御坂「(そっかー忘れてたー!!バスの中でずっとこいつの隣に座るんだった!!ここここんな近くに!ちょっとでも動いたら肩と肩が当たりそ…)
上条「? おい御坂?」肩チョコン
御坂「ひゃう!?あああアンタ肩と肩が当たってるわよここここの変態!!」
上条「はあ?しょうがないだろこの狭さなんだから。そんなに上条さんが嫌ですかったく」
御坂「え?いいいいやそんな嫌とかじゃなくてそのなんかその……ゴニョゴニョ」
上条「? まあいいや、それで、ビリビリはスノボーしたことあるのか?」
御坂「ビリビリいうな!!スノボーなんかしたことないわよ悪い!?そーゆーアンタはどーなのよ!!」
上条「何もそこまでいってないだろ!?俺はある…らしいぞ?」
御坂「らしい?」
上条「ああいやあるある!!上条さんはこう見えてスノボーは得意なんだ!!じゃあお前に滑り方教えてやるよ」
上条「(って家に聞いたら言ってたけど、本当に滑れるのか?)
御坂「あーらそう。なら、アンタのご教授楽しみにしてるわよ!」
御坂「(あいつが滑り方を教えてくれる!?ってことはもしかして手を繋いでしまったり抱きついてしまったりしちゃうの!?はわわわわ!!)」ビリビリ
上条「!?おい御坂!!漏電してる!!」
御坂「ふえ!?」ビリビリ
上条「ったくしょうがねえな」パキン
御坂「あっ、ありがと…」
上条「バスが動かなくなったら困るから、到着するまでお前は俺の手握っとけ」
御坂「ふえ!?手を握る!?もう!?待って思ってたより早くて心の準備が!!」
上条「いいから、ほら」ニギ
御坂「ふにゅ!?あわわわわ…」プシュー
ーバス2号車内ー
黒子「あ!の!腐れ類人猿ーーーーーーーー!!!!!!!」
初春「白井さん落ち着いてください!!」
佐天「しっかしすごいわねー向こうのバスに隠しカメラつけて初春がその映像をこっちで常にキャッチするなんて」
初春「昨日の夜白井さんがテレポートで侵入してつけただけですよ」
佐天「…ジャッジメントがこれでいいのか?」
黒子「キーーーーーーーーー!!!!!!!」
初春「あーーーー白井さん私のパソコン叩かないでーーーー!!!」
佐天「まっ、楽しいしいっか♪」
御坂はそれから到着するまでずっとショートしていました。
ーとあるスキー場近くの旅館前ー
上条「ふあーやっとついた。上条さんはもう腰がカチカチですよ」
御坂「…」
上条「ん?どうしたビリビリ?」
御坂「ビリビリ言うな!!そそそそれよりも…手」
上条「へ?あ~わり!!もうバスは降りたから大丈夫か!!!」パッ
御坂「(あ~あ、なんで言っちゃうんだろ私。このまま黙っててればまだ繋げていれたかもしれないのに…)」
御坂「ハア」
上条「どうした?バスで疲れたのか?」
御坂「うるさい!!さっさとチェックインして滑りに行くわよ!!」ビリビリ
上条「手を離した瞬間にビリビリですか!?」
御坂「ビリビリ言うなっていってんでしょ!!」
上条「はあ。ほら、もっかい手をだせ」
そういうと上条は御坂の手をとった。
御坂「うっ!」カア
上条「じゃあ、チェックインしますか」
ー旅館内ー
旅館に入ると、少し古い感じがしたがそれを気にさせないほど人がごった返しており、二人が立ち往生していると
女将「あら、もしかして上条様と御坂様でございますか?」
これだけたくさんの人がいるのに、なぜ自分たちの名前がわかったのか不思議に思っていると
女将「旅行代理店の方からお話は伺っています。お若いカップルでの予約と聞いていましたもので」
女将は二人の繋いでいる手を見てフフと笑い、それに気づいた御坂はまた赤面してしまった。
女将「ではお部屋へ案内させていただきます」
女将と談笑(上条が)しながら廊下を歩いていると途中の部屋の中から聞き慣れた声がした。
黒子「なぜ私たちのお部屋がこんなところなのですの!?お姉様たちのお部屋はもっとあっtンゴ!?」
初春「シー!!白井さん!!そんな騒いだら御坂さんたちにバレますよ!?」ヒソヒソ
佐天「まあそれはそれでおもしろそうだけどね♪」
初春「佐天さん!!」ヒソヒソ
御坂「あれ?さっき黒子の声が聞こえた気がしたんだけど…まさか…ね…」
上条「どうした?」
御坂「へ?いやなんでもない」
そうこうしているうちに部屋の前に到着した。が、なぜか周りにはこの部屋以外なく不思議に思っていると
女将「では、上条様たちのお部屋はこちらの当館最高級の部屋でございます」
上条御坂「へ?」
ー最高級部屋内ー
御坂「ふわー中はかなり広いわね。うわ!!窓の外には川も流れてる!!良い部屋ね~」
上条「…」パクパクパク
御坂「ちょっと何口をパクパクしてるのよ」
上条「…お嬢様にはわからないかもしれないけどな、上条さんみたいな一般人にはこんな部屋一生縁がないと思ってたんですよ」
御坂「私だって、こんな部屋は今までないわよ。あ!見て!こっちベランダに出れるみたい!!」
上条「…ったく。上条さんの一般人力なめんなっつーの…って、おーい御坂?どうしたー?」
御坂「…ちょっと…なにこれ…」
上条「!?どうした!?」
上条が御坂のもとへ駆け寄ると、思いもかけないものが目に飛び込んできた
上条「露天…風呂?」
御坂「ななななんでこんなもんが部屋についているのよ!!」
上条「知るか!!ちょっと女将さんに聞いてみる!!」
部屋に備え付けてある電話でフロントに電話をかけて話しを聞いてみると
女将「あら~お話を伺ってなかったのですか?当館の最高級部屋には備え付きの露天風呂があって、カップルの方々にとても人気なんですよ」
上条「ちょちょちょっと待ってください俺たちは別に付き合っているわけでは!!あっ、ほかの部屋は空いてないんですか!?」
女将「申し訳ございません本日はお部屋がいっぱいでお部屋の移動はできません。あっ、あと何故かさっき大浴場のボイラーが故障してしまいましたので、お風呂はそちらをご利用ください。申し訳ございません」
上条「え!?ちょそれはどういう!?」
女将「あっまた団体様がご到着を!!では上条様、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
プッツーツーツー
上条「もしもし?もしもし!?…不幸だーーーー!!」
御坂「…どうだった?」
上条「…他の部屋も空きがなく、ついでに大浴場のボイラーも故障して、この部屋の風呂を使うしかないようだ…」
御坂「じゃじゃじゃじゃあ私とあんたで一緒にお風呂に入るの!?」カア
上条「アホですかアナタは!順番に入ってお互い見ないようにするってことです!!」
御坂「ででででも!!」
上条「あ~…。うん。とりあえず考えても始まらないからまずは本来の目的であるスノボーをしに行こう。話しはそれからだ」
御坂「…そうね。まずはスノボーしてからにしましょ」
上条「よし。じゃあ行くぞ!」
御坂「うん!」
そのころ黒子たちは
黒子「良いですわね。この後のスノボーでは…ゴニョゴニョ」
初春「もう帰りたいです…」
佐天「さー滑るぞー!!」
いっこうはスノボーへ!!
ーとあるスキー場ー
上条「うわー結構混んでるんだなー」
目の前には銀色の絨毯がひかれたかの様な真っ白な雪がつもり、雲ひとつない空から太陽の光が雪に反射して眩しさを覚える。
正面のリフトにはたくさんの人達が並び、係の人がせわしなく動き、時折止まるリフトにふと不思議な懐かしさを感じた。
上条「それにしても御坂のやつ、遅いな。着替えにどんだけ時間かかってるんだよ」
御坂「あっ、やっと見つけた!!」
上条「ん?やっときたか! 上条さんは待ちくたびれて……ウ!?」
そこには薄ピンク色のウェアにピンクのラインが入った黒のパンツ、、そして小さな猫耳をつけた真っ白いニット帽を被った御坂が立っていた。
どうやら今回は多少少女趣味な部分を抑えたようだが、ニット帽にその趣味が滲み出ている。
しかし、ゲレンデマジックとはよく言ったものだ。普段の空間とは非現実的なこの白銀の世界、そしていつも制服姿しか見ていなかった上条にとって、違和感のあるそのウェア姿にたまらない感情がわいた。
御坂「なによ、遅れたこと怒ってんの?」
上条「……なんかいつもと違う感じがして」
御坂「?」
上条「いや、なんでもない。それより、早速リフトに乗ろうか」
御坂「え!? もうリフト乗るの!? 」
御坂「当たり前だろ、ここに何しにきたんだお前? 心配すんな、最初は一番ゆるいそこの坂だから」
そう言いながら上条は左手でボードを持ち、右手で御坂の左手を掴み歩き出した。
リフトまでの道ですでに何回か他の客に轢かれそうになっている上条を見て、あいつは今日一日無事でいられるのかと内心心配しつつ、やっぱり手を繋ぐのは恥ずかしいなと思い、御坂は顔を真赤にして俯いたままリフトに乗り込んだ。
ー一番傾斜がゆるい坂ー
上条「さてと、リフトを降りてここまでは歩いてきたけど、ここからはついにボードをつけるからな」
御坂「なんだめちゃめちゃなだらかな斜面じゃない。ここなら余裕だわ」
リフトから降り立ったのは初心者がまず始めに来るであろう緩やかな傾斜の山。周りには子どもや女性が多く、みんな緩やかな坂をゆっくりと滑っている。
その一方、他カップルも彼氏が彼女に手取り足取りで教えている光景が見える。これからこの他カップルと同じ様なことをすると考えると御坂の頭からバチバチと音を立てる青白い光が出始めた。
上条「おおおい御坂さん!? 漏電していますよ!? どうしたんでせう!?」パキン
御坂「……ななななんでもないわよ! それより早く滑るわよ!」
御坂はその場にトスンと座り、ボードを足に付けようとするが付け方がわからず戸惑っている。
先にボードを足に付け終わっていた上条が御坂の前までズリズリとはいよってきた。
上条「ほら、こうやって付けるんだよ。」 パチン
得意げに教える上条に少しムッとし、返事をしないでいると「立てるか?」と上条が手を差し伸べてきたので、黙ってその手を掴み立ち上がろうとすると予想以上にバランスが取りづらいのか、体勢が崩れそのまま上条に抱きつく形で支えられた。
御坂「あっ」
上条「おっと大丈夫か御坂?」
御坂「ごごごごめん。ちょっと思ってたよりバランスが取りづらくて」
上条「まあ初めはな。でもお前なら少し練習すればすぐうまくなるから大丈夫だ」
上条はそのまま御坂の両手をとり、後ろへ下がっていった。
御坂はその両手を掴み必死にバランスを保とうとしていた。
御坂「ちょ、ちょっと! どうすればいいのよ!」
上条「そのままボードを水平にして重心を後ろに少しずらせ!そうすればそのまま少しづつ進むから」
御坂「……!」
御坂は掴んでいる上条の両手をギュッと握り、言われた通り後ろに重心をずらす。するとボードがズズズといいながら少しづつ下へ動いていった。
御坂「あっ! できた!」
上条「お~さすがだな。この調子なら今日中にはもうって、ん? 御坂! 危ねえ!」
御坂「え?」
二人のいる10メートルほど先から全身黒づくめのボーダーがこちらに向かって真っ直ぐ突っ込んできている。このままいると衝突してしまうと感じた上条は御坂が後ろを振り向く間も与えず、咄嗟に御坂を抱きそのまま90度体を回転させ倒れた。
間一髪のところでそのボーダーは過ぎて行き、取り敢えずの何は逃れた。
上条「ふう、危ないところだったな」
御坂「ア……タ、どこさ……のよ」
上条「へ?」
御坂の声に怒気がこもっている。助けたのになんでだと不思議に聞き返したとき、右手に柔らかな感触が伝わる。もちろん、抱きかかえて倒れたのだから胸に手が当たっているというラッキーイベントではない。ではどこに?
恐る恐る上条は顔を上げ右手に視線を流すと、どんな「異能の力」も打ち消せるその右手は中学生の未発達なお尻をわしづかみにしていた。
上条「ア、アレーーーーーーーーー!?」
御坂「アンタ、どこ触ってんのって言ってんのよこのヘンタイー!!」バリバリバリ
上条「ふ、不幸だーーーー!!」パキン
________
「チッ 失敗したのですの」
____________
一時間後
御坂「キャッホー!!」
スノーボードを開始して一時間、この一時間で御坂はスノボーのコツを掴み急激な成長を遂げていた。
上条「ちょ、御坂、ちょっと待ってくれよ」
御坂「もーなにちんたら滑ってんのよ。置いてくわよ」
そう、御坂は学園に7人しかいないレベル5。成績優秀、体術はジャッジメント以上。そんな彼女がスノーボードなどという娯楽スポーツをマスターするなど朝飯前なのであった。
上条「クソ、あいつがレベル5だったことをすっかり忘れてた。さっきまで得意げに教えてた俺がバカみたいじゃないか……」
御坂「なにぶつぶつ言ってんのよ。早くしないとホントに置いてくわよ」
そういうと御坂はボードを斜面に対し直角に向けて猛スピードで滑って行った
上条「急に得意げになりやがって……。クソ、上条さんにだってなあ意地ってもんがあんだよ!!」
上条は御坂と同じようにボードの向きを変え、猛スピードで滑り御坂の近くまで追いついた
御坂「へー私と勝負するつもり? 言っておくけど能力勝負じゃなかったらアンタには負けないわよ」
上条「うるせえビリビリ! さっきまで俺の手を離さなかったのはどこのどなたのどいつの手ですか!?」
御坂「ささささっきは始めたばかりだったんだからしょうがないでしょ! アンタになんか絶対負けないんだからね!」
御坂は言い終わると同時に体の重心を低くしスピードをさらに上げ上条より前に躍り出た
上条「あんのビリビリ~!! 恩を仇で返すとはなんてふとどきな奴なんだ。 絶対負けてたまるk」
黒尽くめ「こめんあそばせですの」シュン
上条「へ?」
さっきまでこの傾斜は俺と御坂だけだったのに、いつの間にこいつ来たんだ? むしろなんか急に現れたような。
そんなことを考えていると黒尽くめは上条の背中をトンと押し、バランスの崩れた上条は進路が右にそれた。
そして、その行き着く先は……
上条「……この周りの傾斜とは明らかに違う異質な雪の段差はまさか……ジャンプ台でせうか?」
瞬間、上条は宙を舞った
上条「……。ふふふふふ不幸だーーーーー!!!!」
御坂「? なんであいつが空にいるの?」
ー旅館ー
上条「はあ。死ぬかと思った……」
御坂「さすがの私もアンタ死ぬんじゃないかと思ったわ」
上条は奇跡的にも猛スピードでジャンプしたため、普通の着地スペースを飛び越え新雪の雪にダイブしていた。
ー黒子たちの部屋ー
黒子「あんの忌々しい類人猿め~あれで病院送りにしてこの旅行をつぶす筈でしたのに~キーー!!」
初春「それもうほとんど犯罪です……」
初春のパソコンを叩く音に合わせて壁に頭を叩き付ける黒子に、初春はあきれたようにため息をつく。
隣の部屋からうるせーぞと言われ始めるころ、佐天が帰ってきた。
佐天「いやー楽しかった!初春も滑ればよかったのに~♪」
佐天の言葉に、また少しため息をついた初春。カバンからゴソゴソといちごおでんを取り出しカパっと開けた。
初春「スキー場の監視カメラにハッキングしてずっと御坂さんたちを探してたんです。そんな余裕ありませんでしたよ……」
黒子「初春! 明日は今日より一分一秒でも早くお姉様たちを見つけるんですのよ!」
初春「これですもん……」
佐天「ハハ。明日はあたしも手伝うからさ~」
黒子「それより、お姉様たちのお部屋はいったいどこですのーー!?」
ー最高級の部屋ー
17:00
朝の長距離バスと午後のスノボーで、さすがの上条と御坂にも疲れが出たのか、上条は畳の上で大の字になり、御坂は窓際のいすに座りお茶をすすっていた。
御坂「(かかか、会話がない!)」
もうかれこれ30分は終止無言でいた。
いつも街で偶然出会うと、なんだかんだ言って会話をする二人。しかし密室の空間、しかも二人きりになると急に何を話せば良いかわからなくなり、御坂は7杯目のお茶をすすった。
御坂「(なんであいつはなにも話しかけてこないの!?そんなに私といるのがつまらない!?)」
御坂がどーしよどーしよと内心ではテンヤワンヤとしている中、上条は依然として無言にいる。
御坂「(……やっぱり私と旅行なんかしても、つまらないのかな……)」
悲しい気持ちと寂しい気持ちが入り乱れ始めたころ、上条は重い口を開けた。
上条「……なあ御坂」
御坂「!? ひゃ、ひゃい!?」
突然の上条の声に、心の中でアタフタしていた御坂は声がうわずってしまった。
上条「?」
急に変な声を出す御坂に「なんだ?」という表情を上条は浮かべた。
御坂「ウッゴホン。で、なに?」
御坂は一つ咳払いをして平静さを取り戻すと、いつもの強気な語気で言い直した。
上条「ん? いや、あのよう、さっきからずっとお前に言おうと思ってたことがあんだ」
上条が起き上がり御坂の前の椅子に座った。
御坂がさりげなくすぐに上条の分のお茶を入れてあげたが、上条は気づかず、なにやら真剣な顔でこちらを見ている。
心が揺れ動く。上条のその目の瞳には御坂が映っているのがわかるのではないかと思うほどに真っ直ぐこちらを見ている。
御坂は、自分の心臓の音が盛大に音をあげていることに気づき、それを隠すように両手を胸の前に置いた。
生唾をゴクッと飲み込み、覚悟を決めて御坂も真っ直ぐ上条の目を見る。
御坂「……うん。なに?」
上条「……風呂、どうしよっか?」
御坂「……へ?」
上条「だから、風呂だよ風呂。スノボーで汗かいたのに入らない訳にはいかないだろ?」
御坂「はわ……」
上条「はわ?」
御坂「はわわわわわ」
忘れてたー!! と御坂は心の中で盛大に声をあげると、同時に尋常じゃない恥ずかしさが押し寄せてきた。
御坂「(そうだ忘れてた風呂よ風呂!! この部屋の最大の問題点がこんな近くにあったのになんで忘れてたのよ私はー! どーすんのよこいつがすぐ近くにいるのに薄壁一枚挟んで露天風呂なんててゆーかこいつは私が一人で会話ないと気にしている間ずっと風呂のこと考えてたわけ私の苦悩と落ち込みはなんだったの今の今までのドキドキとせっかくの覚悟を返せってことは同時にこいつの脳内では私は生まれたままの姿でそこの露天風呂に入っている想像もしてたってことなによそれこのヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイ)」
上条「? おーい御坂?」
御坂「こんのヘンタイがーーー!!」バリバリバリ
上条「なにがでせう!?」パキン
10分後
上条「で、落ち着きましたでしょうか?」
上条は少しぶるぶる手を震えさせながら御坂の頭に手を置いていた。
一方の御坂は今だムスッとしているが、確かに風呂問題はなんとかしないといけないと納得し、渋々怒りを納めた。
御坂「で、結局のところどうするのよ」
今だ口調に怒気が混じっている気が、気にしてもしょうがないので上条は答える。
上条「どーするって、入るしかねーだろ。こんな汗だくの体で寝るなんてお嬢様のお前には耐えられないだろ?」
御坂「その『入る』をどうするのよって言ってんの」
御坂の指図する口調にやっぱり俺嫌われてるのかなと思いつつ、思考をもう一度風呂に戻す。
上条「まあ、飯前には入り終わっていたいよな。だから入るなら今このタイミングだ。幸い外はもう暗いし、丁度いいだろ。……入る順番は、まあ御坂からでいいぞ。俺の入った後のお湯なんて嫌だろうし」
こいつはどこの思春期の娘を抱えた親父だ? と少しおかしくなり、たまらずフフっと笑い気持ちが少し落ち着いた。
御坂「へー、レディーファーストなんてどこで覚えたの? まっ、ならお言葉に甘えて先に入るわ。……絶対覗かないでよ?」
覗くか!っと一喝すると、御坂の顔が赤くなっているのに気づいた。なんだかんだでこいつもまだ中学生。そりゃあ恥ずかしいに決まってるよな。
御坂の……裸か。
上条「(っていかんいかんいかん! あいては中学生だぞ! 理性を保て上条当麻!)」
御坂は部屋のタンスからバスタオルと普通のタオルを取り出し、自分のカバンから洗顔クリームを取り出す。上条にあっち向いてて!と怒鳴るとカバンの中から急いで下着を取り出しベランダへ向かった。
ここにはカーテンもなく、上条が明後日の方向を向かなければ何もかもが見えてしまう。
御坂「こっち向いたらタダじゃおかないからね」
上条「見ねえからさっさと入れ!」
御坂「ホントのホントに?」
御坂がジトーっとこちらを見てくる。そこまで信用されていないのか上条は少し落ち込みつつもしょうがないと踏ん切りをつけた。
上条「ったり。じゃあお前が風呂入ってる間、旅館の中散策してくるからその間に入れよ」
御坂「え?」
上条はため息を漏らしつつ、財布と携帯を持って立ち上がろうとしたとき、「待って」と呼ばれた。
御坂「べべべ別にアンタが覗かなかったら問題ないんだし、そそそんなわざわざ出て行くこともないわよ!」
このまま上条を一人で部屋の外に出せば必ずなにかのトラブルに巻き込まれ2~3時間は帰ってこないだろう。
今上条がいるこの部屋の露天風呂に入るか、せっかく二人で旅行に来たのに2~3時間一人で部屋で待つのを天秤にかけたとき、御坂にとって2~3時間上条と離れる方が嫌だと悟った。
上条「まあ、お前が良いっていうんなら行かないけど」
御坂「じじゃあ、ちょっとこっちきて」
上条は「?」と思ったが言われた通りベランダ近くにいる御坂の前まできた。すると御坂が上条の両肩を掴みクルッと180度回転させて座らせると、私がお風呂に入っている間話し相手になりなさい、とまた指図された。
上条は露天風呂のあるベランダからは逆方向に向き、腕を組んでどっしりとあぐらを組んだ。
今、まさにこの瞬間、常盤台のお嬢様、レベル5の御坂美琴は裸になろうとしているにも関わらず、上条当麻はさながら座禅を組んでいるかのような程無心……に見えていてほしかった。
上条「(無心無心無心無心!!)」
しかし男とは悲しい生物、いくら無心になろうとしても自分の後ろで女の子が服を脱いでいる状況で無心になれる筈もなく、耳には全神経を集中させて物音一つ聞き漏らさない態勢に入っていた。
上条「(無心無心無心無心ムムムムムムム……!?)」
そして、その時は始まった。
ファサ
自分の真後ろに何かの布が落ちた音がした。その音を皮切りに続けてもう一回、その数秒たってまた一回。今までは布が落ちる音だけが聞こえてきた。しかしその音とは全く異質な、金属の金具を外す音がした。
プチ
上条「!?!?!? いいい今のはままままさかブブ、ブラのホックを外す音!?)」
上条の先ほどまで心の中でずっと唱えていた無心の叫びはどこえやら。頭の中は音に合わせて想像が自由自在にかわって行く。この演算処理スピードならミサカネットワークも敵ではないのでは? とアホなことも考えつつ、つい思っていたことを口走ってしまった。
上条「御坂さん。今、どんな状況なんでせう?」
御坂の顔が真っ赤に染まる。いや、顔だけでなく体全体が今は真っ赤なのではないだろうかと感じながら、御坂は咄嗟に両手で胸を隠した。
御坂「アアアアンタ!! そそんなこと聞いてどうすんのよこのドヘンタイ!!」
心臓の動きが加速する。それもそのハズ、今隠れている部分は下半身の下着のみ。御坂美琴は意中の人の真後ろでその未発達な体を披露しているのだ。当然、親や女の子の友達にしか見せたことのない体。そんな状態で平然としていられるハズもない。
上条「アアアいや! すまん! 気にしないでくれ! ただの好奇心だから!」
御坂「どどどどんな好奇心してんのよ!? だいたいアンタは……え? ふにゃーーーー!!」
突然の叫び声に上条は御坂の方を振り向くと、御坂が抱きついてきた。
上条「!? え? その……え? 御坂……さん?」
困惑しつつ聞くと、御坂は震えた声で言った。
御坂「そこ……服のすぐそこに……虫が……」
見ると鳥肌がたちそうになるほど気持ちの悪いその生物「ム○デ」がウネウネと歩いていた。
なぜこの季節に? と思ったが、きっと自分の不幸体質で呼び寄せてしまったんだろうと一人で納得し、部屋にある観光用チラシですくって窓の外へ放り投げた。
上条「もう大丈夫だぞ! 御坂!」
先ほどまで震えていた御坂の方へ振り向くと、御坂はホッとした顔をして立ち上がった。
御坂「ホント? 良かった~だいたいなんでこんな季節にム○デなんか……あ」
が、すぐに今自分の置かれている状況に気がついた。
御坂「」
上条「」
そこにはまだ成長していない小さな山が二つ並んでいる。
一瞬の沈黙のあと、御坂は両手で自分の胸を隠し、その場に座り込んだ。
上条「(見た! 見てしまった! 御坂の! 御坂の!)」
脳内で興奮していると、御坂の様子がおかしいことに気付く。よく見ると御坂からグスッグスッと声にならない声が聞こえ、俯いた顔から雫がたれていた。
上条はそっと、壊れ物を扱うように、優しく御坂を抱きしめた。
御坂「グスッ……ヒッ……グスッ……見た?」
恥ずかしい。見られた。恥ずかしい。こんな小さい胸見られたら、こいつはどう思うだろう……。
上条「……見てねえって言ったら、嘘になる。ごめんな、御坂」
上条はそっと立ち上がり、部屋を出た。
ちゃぽん
上条が部屋を出て行き、一応は落ち着いた御坂はとりあえず風呂に入ることにした。
ここは露天風呂、外は寒い筈なのに体が熱い。それは裸を見られたからなのか風呂のせいなのかわからないが、あいつのことを考えると一気に汗が吹き出てくる。
御坂「はあ。……見られちゃったな、この胸。それに、謝って来た。私が泣いたから。ただの事故なのに、悪いことしたな」
露天風呂から発する湯気が夜空へ上って行く。まるで私の気持ちと同じように、暗く広大な空へ溶けていく。
御坂「……。こんな気持ちでいたらあいつはまた責任感じちゃうよね」
見上げると、真っ暗な空に星が出始めた。沈んだ気持ちに光がさすように、御坂も気持ちを楽にした。
御坂「よし! 帰って来たらいつもの御坂美琴に戻るのよ! たかが裸を見られたくらいなんだから……そーよ! もう裸を見せた関係なんだから、すすす少しくらいあいつに触れてもなにもおかしくないわよね! よよよしあいつが帰って来たらちょっとくらい甘えてみても……ふにゃー」
御坂はのぼせた。
2時間後
……遅い! と一人で部屋で御坂はイライラしていた。もう部屋のテーブルには料理は並んでいる。上条は御坂の予想通り、ホントに2時間程帰ってこなかった。
御坂「んっとになにしてんのよあいつは! 電話にもでないそメールの返事も返さない! 夕飯もきちゃったしどうすんのよ!」
頭に電気が出始めたころ、部屋のドアが開いた音がした。
御坂「!? 遅い! 今の今までどこに行ってたのよ! せっかくの夕飯が冷めちゃうでしょ! って、なんでアンタそんなぼろぼろなの?」
上条「……不幸だ」
御坂「はあ。またなんかのトラブルに巻き込まれたのね。まっ良いわ。とりあえず着替えてきたら?」
上条「そーする。でもその前に、御坂、これ」
そう言うと上条はポケットから手のひらサイズの紙袋を取り出し、御坂に渡した。
御坂「? なによこれ。お土産屋さんでなにか買ったの?」
上条「ああ、まあ、そのなんだ、さっきは悪いことしたからそのお詫びにって、思ってな」
上条のその心遣いだけで頭から湯気がでるんじゃないかと思うほどうれしくなった御坂だが、とりあえすは何の気なしなしに開けるねと良いながら丁寧に紙袋を開けた。
御坂「これは、ゲコ太?」
そこには地域限定のゲコ太ストラップが入っていた。ゲコ太の頭には猫耳のついた白いニット帽、体には浴衣とアンバランスな組み合わせになっている。
上条「そのニット帽にゲコ太。お前絶対好きだろうなと思ってさ」
御坂はゲコ太をぎゅっと抱いて、「ありがと」と一言だけつぶやいた。
アンタの方がずっと好きだけどね。っと頭で思ったが、そんなこと言える筈もなく真っ赤な顔は床に向けるしかなかった。
上条「じゃあ着替えるから、少し待っててくれ。はあ腹減ったな~」
このゲコ太ストラップを手に入れるために、黒尽くめの女の子三人と卓球勝負をしたのはまた別のお話。
上条「はー食った食った上条さんはもうお腹いっぱいですよ」
こんな料理はいつぶりだと腹をさすりながら満足そうな上条を見て、普段の食生活の心配を少ししてみる御坂。聞くとそうめんだけの日々もあったと辛い過去を話すそんな会話に、御坂は今度料理作りに行こうかと言おうとしたがやっぱり言えず、今度おいしいお店連れて行ってあげると少しレベルを下げて次のデートもこぎつけた。
上条の風呂は御坂がずっとトイレに籠り、その間に入ってもらった。最初からこうしとけば良かったのにと上条はボソっというと、うるさいと言い放ちトイレに御坂は入って行った。トイレの中で御坂はゲコ太ストラップを見てずっとニヤニヤしていたのは秘密だ。
上条「ふーすっきりした」
御坂「あっ、お茶飲む?」
上条「おっワリーなサンキュー」
スッと立ち上がりお茶をいれる御坂の後ろ姿。浴衣だからか妙に体のラインが出ている気もする。御坂の裸が頭をよぎり頭をぶんぶんとふっていると、なにしてるの? とツッコミが入り焦る。
するとドアからコンコンとノックが聞こえた。どうぞというと女将さんが入って来た。
女将「当館の最高級お部屋はおくつろぎいただけていますでしょうか? これからお布団をしこうと思っておりますので、もしよろしければ当館のバーへ行かれてはいかがでしょう?」
女将が部屋の入り口付近で正座をし、手を床の畳に綺麗に添えてお辞儀をした。
御坂「バーですか? でも私たちまだ未成年なんで」
女将「ご心配には及びません。当館のバーはノンアルコールのカクテルも多数取り揃えております。また、お客様情報により年齢詐称できないようセキュリチィしておりますので、未成年の方だけでもご利用することが可能です。また、こちらのお部屋をご利用のお客様にはバーのご利用を無料のサービスも実施しておりますので。」
御坂「あっ、そうなんですか。どうする?」
上条「まあ、無料なら良いんじゃね?」
お財布が常に厳しい上条も、無料という言葉を聞けば断る理由も特にない。二つ返事で了承した。
御坂「じゃあ私たちバーに行ってくるんで、お部屋よろしくお願いします。あっ、あとお茶がなくなってしまったんで補充してもらっても良いですか?」
女将「かしこまりました。では行ってらっしゃいませ」
女将に頭を下げ、バーへと二人は向かった。
バーに入ると、中は薄暗く、各テーブルとカウンター席に置いてあるアロマキャンドルだけが光を灯していた。
お客さんはチラホラと入っていたが、どこを見てもカップルしか見えず、雰囲気からか周りに関係なく唇を交わす者たちもいた。
御坂「……」ボン
なにこの雰囲気は! と頭の中でツッコミをいれるがそんなことはいざ知らず、上条は何食わぬ顔で店員に2名ですとファミレスに来たかのように話していた。
席に案内されると、横長の席に対し、二人で座るソファーがあった。当然ソファーにしきりはなく、座ったら密着必須だ。
上条「……なんか席が狭いですが、御坂さんどうします?」
さすがの上条も密着してしまうとわかると、一応確認をとって来た___でも、これで断ったらまた気まずい雰囲気になるのではないかと思い、御坂は勢い良く席の右側に座り込んだ。
御坂が座ったので、とりあえず上条も座り、一つだけのメニュー表を二人で眺めた。
御坂「(ちちち近い! 方が当たってる! あああ足も!)」
上条「(浴衣って生地薄いんだな。御坂の体温が当たってるところからわかる。ってかこいつ熱くね?)」
恐る恐る御坂の方を向くと、案の定頭からバチバチと電気を垂れ流していた。
上条「おおおおい御坂!」パキン
それで我に返ったのか、御坂はまた慌ててメニュー表を見て音読し始めた。
そうこうしていると店員が注文をとりにきた。
店員「お客様、メニューはお決まりでしょうか?」
御坂「ふえ!? あ、ああメニューね! じゃじゃあ私はノンアルコールのカシスオレンジで」
上条「俺はコーラで」
店員「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
メニューをとり終えた店員はカウンターの方へ戻り、ドリンクを作り始めた。
御坂「ってかアンタコーラって! ムードもへったくれもありはしないわね!」
上条「うるせい! お前だってまだ中学生なんだから背伸びしてカシスオレンジなんか頼むな!」
御坂「ノンアルコールなんだからいいでしょ!」
いつもの様なこの場には似合わない会話で、御坂も幾分か落ち着いた。
店員「お客様、失礼します」
店員がドリンクを持って来た。二人の間からノンアルコールカシスオレンジを先に置き、その後コーラを置いた。
店員「それでは、ごゆっくりどうぞ」
店員が軽くお辞儀をしてカウンターの方へ戻ると、とりあえず二人はグラスを持ち乾杯した。
上条「にしても、なんでお前中学生のくせにカシスオレンジなんて知ってんだ?」
上条は自分で質問しといてすぐにその答えがわかった。
御坂「え? それは、お母さんの飲みに付き合わされてたから」
やっぱり、と納得していると、浴衣の腕の部分からゲコ太ストラップが見えた。
上条「お前、こんなところまでそのストラップ持って来てるのか。そんなに気に入ったのか?」
上条のツッコミにハッとストラップを隠して顔を真っ赤にした。上条からもらったこのストラップがうれしすぎて、ひと時も体から離したくないなどと言えず、ただ俯いた。
上条「え? いいいいいや気に入ってくれてるんなら良いんだよ! 良かったー気に入ってもらって! そりゃ好きなものっていつも持ち歩きたいもんなー!」
と上条の変な方向へのフォローが仇となり、尚のこと顔が赤くなる。そのうちまた頭から電気が漏電し始め、上条はまた頭に手を置く。しかし御坂の顔は以前赤いままだったので次いつ漏電するかわからない。しょうがないので上条は御坂の左手を掴み、手を握った。
御坂「ふえ!?」
この旅行で手を繋ぐのは何回目だろう。もういい加減慣れてもいいハズなのに、やっぱりドキドキしてしまう。それはお互いの関係がまだハッキリしていないからだろうか、それともハッキリしても、こいつには一生ドキドキしてしまう体質なのか、今の御坂にはわからなかった。
とりあえず、目の前の飲み物をグイッと飲んだ。
上条「こんなところで漏電するなよ。ただでさえここの明かりはこのキャンドルだけなんだか……へ?」
コテン___と上条の肩に御坂の頭が乗って来た。いや頭だけじゃない、体全体をこちらに預けてくる。
チラリと御坂の脚を見ると、浴衣がはだけてる。いつもスカート姿を見てるから脚なんて見てるのに、なぜ浴衣のはだけ具合から覗く脚はこんなにも男心をくすぐるのだろう。
いやしかしこの場合問題なのはそこじゃない。この状況だ。なぜ御坂は上条に寄りかかって来た?この雰囲気か?この雰囲気がそうさせたのか?ちょっとまってください上条さんで良いんですか?良いんですね?
と考えて御坂の方を向く
上条「み、御坂?」
御坂「にゃーに? とうま♪」
御坂の目がトロンとしている。
上条「へ?」
なんだこの違和感わ。いや、違和感どころの騒ぎじゃない。いつもの御坂じゃない!
そう思った矢先、いつの間にか店員が後ろに立っていた。
店員「お客様、申し訳ございません。お連れの方のご注文だったノンアルコールカシスオレンジ、どうやら普通のカシスオレンジを提供してしまったみたいで……」
御坂「えへへへ♪ とうま~♪」
御坂が腕にくっついてゴロゴロしている。
普通のお客だったらこんなミス大変なことになっている。しかしこれは上条当麻こんなミスは慣れッ子。いつものようにいいですいいですと笑ってすませ、バーを後にした。
ー最高級の部屋ー
部屋までの道のりで御坂は腕から離れず、そのまま部屋まで来てしまった。しかし、ここで最大の難問にぶつかる。
上条「布団が……一つ?」
そこには普通の布団の1.5倍の大きさの布団が一つひいてあり、タンスの中にも他の布団がないことを確認すると、これで寝るのかと上条の理性は飛びかけた。
ただでさえこんなに甘えてくる御坂、それと一緒の布団で寝るとなるとようやく繋いでいる理性の薄皮も剥がれてしまう自信が今の上条にはあった。
そんな上条をなんか知ったこっちゃなく、御坂は上条の腕を引っ張って電気を消し、布団の中まで連れて行った。
御坂「えへへ~とうまあったか~い」
布団の中で御坂が上条の胸に顔を埋める。上条は心を無にしようとされるがままだ。
御坂の頭から良い匂いがする。露天風呂に備え付けのシャンプーを使った筈だから俺と同じ筈なのに、女の子がつけるとこんなにも匂いがかわるものなのか?
上条の頭の中はもはや無心とはかけ離れていた。上条の嗅覚や視覚、聴覚や全身の触覚は御坂の一挙一動すべてを感じようとしていた。
しかしそれでも何もしようとしない上条。理性が崩れる一歩手前で、なんとかブレーキを踏んでいた。
御坂「……ム~、えい!」
上条がなにもしてこない御坂は誘っているのか、浴衣がはだけた生脚と上条の生脚に絡めてきた。
その絡めた脚をゆっくり上へ下へ、奥へ手前へと動かし肌の触れ合いを楽しみだした。
上条「(ムグ! うう~! き、気持ちいい……。御坂の脚、スベスベだ……このままじゃ、俺……!)」
御坂の呼吸が荒くなるなっているのを胸で感じる。
その感覚に上条は耐えきれず、体をくの字に曲げた。
それが何を意味しているのか御坂はわかっているのか無意識なのか、上条の胸に埋めてた顔をゆっくり上げ上条の方へ向いた。
御坂「ねえ、……とうま」
必死に目をつむって耐えて来た上条も御坂の方を向くと限界へのカウントダウンが始まった。
恥ずかしいからなのか酔っているからなのか、顔を真っ赤にし上目遣いでこっちを見ている。
御坂「無理しないで、……しても……いいんだよ?」
プチッ
上条の中で、何かが外れた音がした。
上条「み、御坂! 俺、もう!」
上条は勢いよく御坂に覆いかぶさり、思い切り抱きしめた。返事はない。抵抗もない。ただ御坂の体温を全身で感じてる。
御坂の腕が上条の後ろへまわされる。そのまま数秒、いや数分かわからないが抱きしめ合った。
上条は意を決し顔を上げ、御坂へ唇を交わす……ハズだった
御坂「スースー」
上条「……へ?」
御坂「スースー」
上条「も、もしもーし、御坂さん?」
返事が返ってこない。御坂は安らかな顔をして寝息をたてている。
上条「え、……え~!! ここで~!? そそそんな殺生なー!!」
返事はない。御坂は上条の首にまわした腕でグイっと上条を引っぱり、抱き枕のようにして落ち着いた。
上条「ふふふ、不幸だー!!」
_______
朝 7:30
チュンチュンチュン
目を覚ますとあいつが目の前にいた。昨日の夜、バーに行って途中から記憶がない。
なぜあいつは私の目の前にいるの? なぜ目の下にクマを作って不幸だ不幸だぶつぶつ言ってるの?
なぜ、私はあいつを抱いて布団の中にいるの?
御坂「……!?」
きゃー!と朝一番に大声をだされ飛び上がる上条。視線を御坂に向けた瞬間青白い雷撃が押し寄せてきた。
上条「うわ!? なにすんだ御坂!」パキン
御坂は座ったまま、浴衣がはだけた脚や胸を腕で隠すようにして上条を睨んだ
御坂「なにすんだはこっちの台詞よ! このドヘンタイ!」
上条「えっ、御坂、お前なにも覚えてないのか?」
御坂は睨みながら昨日の夜のことを思い出そうとしたが、思い出せなかった
御坂「なにも覚えていないわよ! アンタ、私になにかしたんでしょ!!」
上条「俺からしたもなにも、先に誘ったのはお前だろ!!」
上条の言ったことに動揺と恥ずかしさが押し寄せて来た。
私が誘った!?そんな……そんなことありえない!いつも素直になれないこの私が自分から誘うなんて。
上条「? おーい、御坂さん?」
御坂「ここここの私から誘う訳ないでしょこのドヘンタイ! いい加減にしろゴルア!!」バリバリバリ
上条「ヒッ!? ふふ不幸だー!!」パキン
ーとあるスキー場ー
12:00
御坂「キャー!」
ここは中級者コース。昨日のうちにスノボーをマスターした御坂は朝からリフトとゴンドラを乗り継ぎ上級者コースからスタートしていた。一番下まで下るとまた登り、下るとまた登りを繰り返し気付けば午前が終わっていた。
朝の事で朝食の時間まで不機嫌であったが、上条の必死の弁明により、昼食をおごる(上条が)ということによりなんとか許してもらえることになった。
上条「あの御坂さん、そろそろお昼にしません? 上条さんはもうお腹がすいて大変です」
御坂の少し後に上条が続いて来た。御坂はすでに上条よりスノボーがうまくなってしまい、ついて行くのがやっとの状態になってしまった。
御坂「あらもうそんな時間? ん~、じゃああそこのデッキで良い?」
中級者コースの隅にある休憩兼飯処へ二人は滑って行った。入り口の近くにはすでに何個かボードが立てかけているが、まだピーク時は来ていないことを確認すると中へ入って行った。
黒子「初春! お姉様はどこですの!?」
初春「御坂さんは現在中級者コースの途中にある休憩所に入ったみたいです!」
旅館の部屋の中で初春が携帯電話を片手に黒子に情報を伝えた。前日からこの作業ばかりのためか、少し疲れが見え始めたが、今日は部屋に佐天も残り、初春の相手をしていたので幾分かマシだった。
佐天「初春~この近くに温泉は入れるところあるって! 後で行こ~いや絶対行こう! そこじゃなきゃ嫌だ!」
佐天が部屋で寝転がりながら観光マップと携帯を交互に見て初春に温泉を誘った。
初春「はい! 絶対行きましょう! でもなんでそこじゃなきゃ嫌なんですか?」
佐天「そこの温泉にはね……死して尚通う幽霊が現れるんだって!」
初春「……」
佐天が興奮して携帯のサイトを見せてきたであろうとこまで聞いて黒子は電話を切った。
黒子「はあ。お気楽なものですわね。まっこっちはこっちでまた邪魔をさせて頂きますわよお姉様」
ー休憩所ー
上条「やっぱゲレンデの昼食と言ったらカレーだよねー」
御坂「そうなの?」
上条「いや知らないけど」
御坂「適当ね。ん? アンタ鼻にカレーついてるわよ? あ~もう動かないで、今拭いてあげるから。全く食べ方まで適当なのね」
へーへーすいませんという上条に優しく鼻についたカレーを拭いてあげる御坂。見ようによってはカップルのいちゃつきにしか見えないその光景に、一人ドス黒いオーラを放つ者がいた。
黒子「(あんの類人猿ー! お姉様に拭いてもらってそれだけですの!? いやそもそも拭いてなにちゃっかり拭いてもらっているのですの!?)」
御坂「にしてもアンタ、ホントに昨日の夜なにもしてないでしょうね?」
黒子「」ピク
上条「だからなにもしてねーって! むしろしたのはお前からだって! ……まあ確かに一瞬危なかったけど」
黒子「」ピクピク
御坂「信用なんないのよねーアンタみたいなドヘンタイが一緒に寝てたと思うと」
黒子「(一緒に寝た!?)」
御坂の言葉が癪に触り、上条も少し語気を強くする。
上条「心配しなくたってお前みたいな貧相な体に上条さんは欲情したりしませんよ」
その言葉に御坂もイラつきを覚える
御坂「はん、じゃあ旅行に来るのはもっと発育のいい子の方が良かったかしら?」
上条「あ~そうだな。お前はすぐ怒るし電撃飛ばすし、こっちだって疲れるわ。どうせくるんだったらもっと優しい____」
このままじゃマズい。また喧嘩をしてしまう。御坂は心の中ではすでにそれがわかっていた、すぐに「話しを掘り返してごめん」と謝るべきだ。でも口からでる言葉はそれと逆、売り言葉に買い言葉。このままではせっかくの楽しい旅行がつぶれてしまう。でも、それが言えない。
御坂「じゃあ、私なんかと、こんなとこ来ても楽しくないじゃない……」
上条「……は? お前なに___」
御坂「アンタなんかと……」
ダメ、その先を言ってはダメ……けど思いとは裏腹に口から違う言葉がでてしまう。
御坂「アンタなんかと来たって、私だって楽しくないわよ!!」
御坂の大声に室内が静まり帰る。
よく見ると、御坂の目には涙がたまっているのがわかるが、声をかける前に御坂は休憩場を出て行ってしまった。
上条「……言い過ぎちまったな」
「はあ」と大きくため息をつき御坂を追いかけるため席を立ち上がる。
上条「ちゃんと謝らなきゃな。……なんか俺この旅行謝ってばかりな気が……」
バシャン
上条の頭の上に突然水の入ったピッチャーが現れた。
黒尽くめ(黒子)「アーシマッターテガスベッターゴメンアソバセデスノー(お姉様を泣かせやがって腐れ類人猿めー!)」
上条「……不幸だ」
上条「すいません、乾燥室ってありますか?」
上条が頭から水滴をこぼしながらウェアを脱いで休憩所の店員に尋ねた。
先ほどのケンカも見ていた店員は、さすがに気の毒に思ったのか、職員専用の乾燥室に招いてくれ、タオルを貸す。
上条は乾燥室で御坂になんて謝ろうかなと考えながら、隣に置いてあるラジオを聞いていた。
上条「御坂のやつ、泣いてたか? あいつ、やっぱ涙腺弱いのかな?」
「ピー……ガー……この後の天気をお伝えします。ピー……とあるスキー……は夕……より……きとなりますのでご……意くださ……ガー」
上条「……早く乾かねーかなー」
_________________________
ー上級者向け林道ー
ズシャ
……盛大にコケてしまった。雪がウェアの隙間から中に入ってきて冷たい。
今はお昼時だからか、元々このコースが不人気なのか、周りには人っ子一人見当たらない。あるのは雪や木々たち、そしてこの細い林道の右側には高さ約20メートルの崖と呼べるほどの傾斜。その崖の寸前に御坂はいる。危うく落ちる所だった。
物音がなにもしない。それは今の御坂にとって少し心地良ものだった。
そのまま仰向けになり雪のベッドで空を仰いだ。
こんな状態で、楽しくスノボーなんてできるはずない。
御坂「また、怒らせちゃったかな」
なんで自分はこんなに素直じゃないんだろう。ホントは一緒に来れて楽しいし、うれしい。あいつになら、別になにされたって構わないのに……いややっぱ記憶がないときにされるのは嫌だけど。
ウェアのポケットから昨日上条からもらったゲコ太のストラップを取り出し、紐の先っぽを持ってブランブランさせて眺める。
御坂「私、いつかちゃんと言えるのかな……アンタはどう思う? ゲコ太」
何も答えないゲコ太ストラップに、自分のしていることがおかしいことに気付き、少し笑みが溢れる。
御坂「フフ……でもせめて追ってくるとは思ったんだけどな~結構怒ってるのかもね、あいつ」
帰ったらしょうがないから謝ってやるか。あとはまあ、あいつ単純だからなんかおいしいの食べさせたら機嫌直すでしょ。
ゲコ太ストラップを再びポケットにしまい 「さてと」 と立ち上がると、先程ちゃんとしまえてなかったのか、ゲコ太ストラップがポケットから転がり落ちた。崖の淵にいたせいか、ストラップは崖の様な傾斜の1メートルのとこへ落ちてしまった。
御坂「うわ! あぶないゲコ太なくすところだった。……でもちょっと取りづらいとこに落ちたわね」
しょうがないと一つため息を吐きボードを外すと、御坂は恐る恐るストラップを取りに行った。
たった1メートルだと言うのに、この傾斜ではきつい。
一歩、もう一歩と踏み出し、手を伸ばせばもう届く距離まできた。
その時
ズボッ
新雪地帯で雪が固まっておらず、足が一気に下へ落ちていく。突然の出来事にバランスを崩し、そのまま御坂は下まで一気に転がり落ちてしまった。
一気に転がった勢いのまま木に体がぶつかり頭を強く打ちつける。
その衝撃で木の上に溜まっていた雪も御坂に降りかかり、体の半分は雪で覆われてしまった。
御坂は脳震盪を起こし、頭にケガもしたのか猫耳のついた白いニット帽に真っ赤な血が染まっていく。
御坂は薄れゆく意識の中で上条をひたすら呼んだ。
御坂「……とう……ま……________。」
_________________
上条「やっと乾きましたよ上条さんのウェア! ってなんでこんな所に穴が空いてるんですか!? あっ! この火の粉かちきしょー!」
「ピー……ガー……繰り……しこの後の天気を……え……す。ピー……とあるスキー……は夕方……り吹雪……りますので……注意くださ……ガー」
_________________
ウェアが乾いた上条は店員に御礼を言い休憩所を後にした。
これからどうするか考えたが、御坂はどこにいったかわからないし、このまま1人で滑っててもつまらないので一旦旅館に帰ることにした。
上条「まっ、部屋で待ってたらいつか御坂も帰ってくるだろ。それにあいつがいない今なら部屋の露天風呂も1人でゆっくり浸かれるってもんだ」
上条は意気揚々と帰り途中5回ほど人に突っ込まれながら旅館へと帰った。
ー旅館ー
旅館につくとなにやらロビーで騒いでる人たちがいる。
黒子「ちょっと初春! どこに行こうとしているんですの!?」
どーにも聞き覚えのある声、口調、そしてあのツインテール。あれはもしや?
初春「放して下さい白井さん! 私は、私は温泉に入りに行くんですー!」
初春が珍しく黒子に反抗しているその横で、佐天は苦笑いをしていた。
佐天「まぁまぁ良いじゃないですか白井さん。なんだったら白井さんも一緒に温泉に行きましょうよ」
初春を捕まえている黒子の手を握り、説得をし始めた。
黒子「ですがお姉様と類人猿を!!」
佐天「でもケンカしてたんですよね? それなら今は目的が達成してるんだし、あたしたちも旅行を楽しみましょうよ」
うぐっ、と言葉が詰まる黒子。ふと初春を見たら絶対温泉に行く! と言われてるかの様な目をしていたので、これ以上やったらホントに初春が怒ってしまうと感じたのか、渋々了承した。
黒子「わかりましたわ。一旦は温泉に行って身を清めましょう。 ただし帰ってきたらまたしますわよ」
黒子の承諾に初春は元気よく返事をする。
とその後ろに、今回の目的(ターゲット)である忌々しい類人猿が立っていた。
上条「よ~白井。お前も来てたのか」
ビクッっとした黒子は、ごまかすため瞬間的に上条の真後ろへテレポートし黒尽くめへ変装した。
しかし、そのテレポートこそが黒子の確固たる証拠であるため、もうごまかしきれないと佐天と初春は悟った。
上条「? あ! その黒尽くめ! お前だったのかよ……で、何が狙いだったんだ?」
だいたいの理由はもうわかっているが、一応聞いてみることにした。
黒子「ももももちろん、愛するお姉様の露払いにですわ! お姉様がゲレンデに立たれたらまるで雪の化身の如くお美しい限りは予想されましたので」
その露払いには俺も入ってるんだろ、と大きなため息を一つもらす。
ところで、じゃあなんでこいつらはここにいるんだ? 御坂を追いかけてるんじゃないのか?
上条「……なあ、御坂が今どこにいるか知らないか?」
黒子「お姉様? さあ、私も見失ってしまいまして」
初春「私も、途中から見失って追跡できなくなってしまったんですよ」
上条「おいおい追跡って……ん?」
あれ、なんでずっと俺らを捕捉してたこいつらが急に見失うんだ? そりゃ一秒も目を離さないなんてのはできないにしても……。
上条「……ま、考えてても始まらないし、風呂にでも入ってくるか。そのうち帰ってくるだろ」
19:00
上条「……ん? 寝てたか、まあ今日はあんまり寝れてなかったからな……ってもうこんな時間じゃねーか! おい御坂!」
黒子たちと別れ、部屋で一人露天風呂を満喫した上条はいつの間にか眠っていた。
こんな時間ならもう部屋にいるハズと思い込んで御坂の名前を呼んでみたが返事は返ってこなかった。
上条「? あいつ、まだ帰ってなかったのか。さすがの上条さんも心配しますよ?」
胸の辺りで変な感じがするのを少々自覚し、携帯を取り出す。
が、メールも着信も入っていない。
さっきの喧嘩で連絡しづらいのかと思いつつ、御坂に電話をかけてみる。
1コール、2コール、3コール……でない。
おかしい。もう夕食が運ばれてくる時間、どんなに怒っててもせめて一言くらい連絡をいれるだろ。
外を見るといつの間にか吹雪きが舞っている。これはいくらなんでもまだ滑っているとは考えにくい。まさか……。不安を押しのけつつ、フロントにも確認してみる。
プルル ガチャ
女将「はいフロントです」
上条「あ、女将さん! 俺です、上条です!」
女将「あ~上条様、ご夕食のことですか? それでしたら只今ご用意しておりま」
上条「御坂から、御坂美琴からなにか連絡はきていませんか!?」
のんびりと応対をしていた女将さんも、上条の声色からなにかただ事じゃないことがあったことを感じる。
女将「御坂様ですか? いえ、こちらにはなにもご連絡は入っておりません……なにかおありになられたんですか?」
上条は御坂がまだ帰って来ていないことを説明し、女将さんに警察の要請のお願いした。
しかし吹雪で交通機関が全てストップ、車も走るのが困難な状況で到着にはかなりの時間がかかると告げられた。
女将が外に出てはいけないと言っているみたいだが、上条の耳には入らずそこで内線を切った。
上条は急いでウェアを着込み、部屋を出る。
旅館入り口まで走って行く途中に、黒子たちと遭遇した。
黒子「あら、そんな急いでどうなさいましたの? ままままさかわたくしの事がお姉様にバレたんですの!?」
黒子が自分の心配をしてガタガタ震えていると、佐天が上条の尋常じゃない表情からなにかを感じた。
佐天「あの、なにかあったんですか? 私たちで良ければ手伝いますよ」
上条は黒子たちに心配かけないよう黙っていようとしたが、先ほどのフロントでの会話を黙って聞いていた佐天にはある程度の察しがついた。
佐天「御坂さん、まだ帰って来ていないんですね。この吹雪の中で」
黒子の動きが止まり、ギョッとした目で恐る恐る上条を見て、ホントにまだ帰って来ていないことを確信した。
初春は両手で口を覆い、今にも泣き出しそうな顔をしている。
上条「……ああ。なあ、なにか情報はないか!? ほんの少しで良い! なにか知らないか!?」
上条が認めると、黒子はその場に崩れ落ち、お姉様……お姉様……とかすれた声で呟いている。
しかしそこで初春がなにかを思い出しかのように呟いた。
初春「上級者コースの林道……」
上条が驚いた表情で初春を凝視し、咄嗟に両肩を掴んで問いただした。
上条「上級者コースの林道が、なんだって!?」
__________
寒い、冷たい。なんでこんなに寒いの? 私は今どこにいるの?
顔が痛い。手足が動かない。声も……でない。
何が起きてるの? 怖い、怖いよ。
暗い、真っ暗。でも音だけが聞こえる。なんの音? あ、私の携帯だ。携帯が鳴ってる。誰から? でも今はとれないんだ、ごめんね。まさかあいつからかな? そんなことはないか、さっきあんなひどい事言ったもんね。
あいつ、まだ怒ってるかな? 帰ったら、またいつも通り話してくれるかな? また、いつもの自販機の前であいつがお金のまれて、不幸だって言ってさ。フフ、あいつは何回あの自販機にお金のまれれば気が済むのかしらね。
……帰ったら謝らなきゃ。あと、もう少し素直にならなきゃ。わかってる、私が素直じゃないってのは私が一番自覚してる。
わかってる。わかってるもん。だって、私はあいつが……好きだから。
やらなきゃいけないこと、たくさんあるなあ。
……私、このままどうなるの?
一人でいるの?
怖い、怖いよ
あの時みたく、助けてよ。
助けてよ……当麻……_________________
___________
上条「それで、その上級者コースの林道がなんだって!?」
初春の肩を乱暴にふるわせ、急かすように問いつめる。
佐天「ちょちょっと待ってください!落ち着いて!」
佐天が間に入って上条を止める。それで少し冷静になったのか、今度は声のトーンを少し下げて聞いた。
上条「それで、その上級者コースの林道がどうしたんですか?」
初春「ははい! あの昼間御坂さんを追跡してて、最後に見たのがその林道だったんです。一瞬しか目を離さなかったから、おかしいなとは思ったんです」
初春の言葉を聞いて、黒子が立ち上がり旅館の出口の方へ歩き出した。
上条「お、おい白井! お前どこに行くつもりだ!?」
上条が声をかけると、悪党を睨めつける様な目付きで上条の方へ向いた。
黒子「決まっていますわ。お姉様を救出しに行きますの」
それなら俺がと言いかけても、黒子の口は止まらない。
黒子「だいたい、こうなってしまわれたのは誰のせいだと思っていますの? あなたがあの休憩所でお姉様を傷つけるから、お姉様を見失い、この様な事態になってしまわれたのよ?」
黒子の言葉が上条に刺さる。
なにも言えない。その通りだ。これは俺の責任だ。だから!!
上条「それでも、俺が行かなきゃいけないんだ。俺が御坂を傷つけて、泣かせてしまったから……俺が助けに行かなきゃいけないんだ!!」
上条の気迫にたじろぐ黒子、「でも」と言おうとしたが、言葉が詰まる。
上条「それに、もし白井が御坂を助けに行って、帰って来れなかったらどうする? 御坂はとっても悲しむんじゃないか? お前は、御坂のパートナーなんだろ? だったら、御坂が帰ってきたとき笑顔で迎えてやれよ! おかえりって、最高の笑顔で言ってやりやがれ!」
黒子「でも、それではあなたが!」
上条「俺は大丈夫だ。なんたってこの上条当麻は生まれもっての不幸体質。こんぐらいでへこたれる程、やわな不幸を味わってねーからな!」
言い終わると同時に上条は走り出した。初春にサポートを頼み、その場をあとにする。
黒子の眼に涙が溜まる。自分が行けなくて悲しいからではない。この状況を、全て上条当麻のせいにしてしまった自分が情けないからだ。
佐天が黒子を抱きしめ、三人はフロントロビーで二人の帰りを待つ事にした。
ー上級者コース林道ー
上条「クソっ! なんだよこの吹雪! 前が全然見えねえじゃなねえか! 初春さん! 御坂を見失ったポイントまで、あとどのくらいだ!?」
この吹雪の中、当然リフトは全てストップされており、なんとか自力で上って来た上条。しかし上級者コースの高さまで登ると吹雪は強くなる一方で、前が全く見えない状況だった。
初春「上条さん! その林道を道なりに進んで後100メートルちょっとです!」
初春の適切な指示が飛ぶ。そのサポートがあって本当に良かったと心から上条は思った。
上条「わかった! また連絡する!」ピッ
クソ、どこにいるんだよ御坂! お前がいなくなったら俺はどうしたら良いんだよ! 俺は……俺は……!!
上条「御坂ーーーー!!」
_____________
……あいつの声がした。この暗闇の中で、ずっと聞きたかったあいつの声が。
あいつが助けに来てくれた。私を、救いに来てくれた。
あいつが呼んでる。行かなきゃ、当麻のもとに、行かなきゃ!
御坂「当麻ーーーー!!」
バリバリバリ
御坂は今出せる全力の声と共に、今の状態で撃てる最大の電撃を出した。
と言っても、その威力は高さ1メートルにも満たない小さい電撃。
しかし、上条に伝わるには十分だった。
_____________
バリバリバリ
少し先の方で青白い光が見えた。あれは、あの電気をだせるやつは一人しかいない。
上条「御坂!!」
やっと見つけた。急いで駆けつける。
しかし御坂がいるのは崖の様な傾斜の斜面。
それでもやっと御坂を見つけた上条はかまう事なく下って行き、そして転がった。
上条「ぐえ!」
途中生えている木に体がぶつかり、勢いが殺されなんとか御坂のもとへとたどり着いた。
上条「おい御坂! 大丈夫か御坂!」
御坂の体を覆っていた雪を払いのけ御坂を抱くと、体がとても冷えていた。
いったい何時間ここにいたんだと絶句するほどに。
上条「御坂! 俺がわかるか!? 御坂!」
御坂の耳元で叫びに近い声で呼ぶ。
御坂は震えた声で、でも、まるで母親に抱かれた赤子の様な表情で上条に返事をした。
御坂「来るのが遅い……のよ……バカ。」
上条「ああ、悪かった。ごめんな、遅れちまって」
上条は御坂を思い切り抱きしめ、泣き出しそうな声で答えていた。
すぐに御坂を運ぼうとしたが、御坂がなにか言っている。
御坂「私……アンタに謝らないといけない……ことがあるの……」
上条「ああ、聞いてやる。後でたっぷりと聞いてやる! だから今は早く!」
御坂「さっき、……ごめんね……、あんなこと言って……私……素直じゃ……ないから……」
ああ、ああと頷くしかことしかできない。
知ってる。そんなことくらい上条さんにはお見通しだ。と冗談まじりに返事をすることしかできない。
御坂「私、この旅行……すごい楽しかったよ……フフ、なんでアンタが……泣きそうになってんのよ……」
御坂の声がどんどん小さくなっていく。どんどん細く、どんどんか細くなっていく。
上条「俺も、この旅行は楽しかった。怒ったり泣いたり照れたり、笑ったりうれしそうにしたりする御坂を見て、俺はいつの間にかお前に惹かれていった。お前のことしか考えれなくなった! 俺は……俺はお前が……!」
御坂が幸せそうに微笑むと、「そこまで聞けて十分、私も幸せ」と囁くと、その眼を閉じた。
上条「……お、おい、おい御坂!? 冗談だろ!? ……またいつもみたいにビリビリだして俺に怒鳴るんだろ!? なあ、御坂! 眼を覚ませよ!」
いくら叫んでも、御坂から返事はない。
上条「……そーかよ。神様は俺から御坂まで奪おうってのか。やっと気付いたこの気持ちも、全部無駄にさせようってんのか……」
上条は御坂を抱きしめ、空を仰いだ。この吹雪も、神様も、全部を視線に入れるように。
上条「……そんなことはさせねえ。御坂は渡さねえ」
上条「お前が俺から御坂を奪おうってんなら、俺が……その幻想をぶち壊す!!」
上条はその場ですぐに自分のウェアを脱ぎ、上条は中に着てた長袖のTシャツとジャージだけになり、ウェアを御坂に着せて背中へ担いだ。
肌に寒さからの激痛が走る。しかし、上条は歩く脚を止めない。
上条「さっきまで御坂が耐えてた痛みに比べれば、こんくらい!!」
吹雪が舞う中、上条は背中の人を守るため、ひたすらに歩き続けた。
______________
眼を覚ますと、私は病院にいた。
隣にはオンオン泣いてる黒子と、うれしそうに笑っている初春さんと佐天さんがいた。
その奥にはカエル顔のあの医者がいた。
冥土帰し「おや、眼をさましたのかね?」
なぜ学園都市の病院に私はいるんだろうと少し考え、飛び跳ねる様に記憶を思い出した。
御坂「あいつは!? 当麻はどこ!?」
ガバっと起き上がると、体に痛みが……ない。
冥土帰し「彼ならいつもの病室にいるね。いやしかし驚いたよ、キミが遭難したって聞いてたのに、彼の方が重傷なんだものね」
あいつの方が重傷? なんで? と思っていると冥土帰しが聞いてもいないのに説明してきた。
冥土帰し「どうやら、キミは無意識のうちに微弱な電磁波で体表面を覆って、急激な体温の低下を抑えてたみたいだね、ってキミどこへ行く!?」
御坂は全力でいつもの病室まで走っていった。
自分が無事だった理由なんてどうでも良い。あいつのもとへ行かないと!
御坂は上条のいつもの病室までたどり着くと、勢い良く中へ入っていった。
上条はどうやら寝ているらしく。御坂が入って来たのに気付いていない。
上条は両手足に包帯が巻いてあるが、顔色を見る限り平気そうだったので安心した。
ベッドの隣にある椅子に座り、上条の無事に胸を撫で下ろした。
御坂「ったく。こんなぼろぼろになるまで無理して。アンタが倒れたら……どうする気だったのよ……」
眼から涙が溢れる。無事で良かった。こいつが無事で、ホントに良かった。
涙が枯れると、あまりにもこの病室になじんでいる上条に急におかしくなり、一人でくすくす笑ってしまった。
御坂「でもま、ありがとね、当麻……あの時の言葉の続き、また聞かせてね」
そっと立ち上がり、上条の頬に軽くキスをする。
こいつが起きない様に、優しく、ゆっくりと。
御坂「……~~~~!!!!」
途端に恥ずかしくなり御坂の頬は紅潮する。
その場にはいれなくなり勢い良く部屋を出て行った。
バタバタ バン
……パチ
上条「……これ、寝たふりだったって知ったら、あいつ怒るよな」
上条の体の毛穴という毛穴から大量の汗が出て来た。
上条「しかも、今度続き聞かせてって言ってたよな。続きって、あの続きだよな?」
上条「……言える訳ねーだろー! 上条さんにどんなキャラ期待してんですかあのビリビリ中学生はー!」
御坂は部屋に戻ると、顔が赤くなってる御坂に黒子が問いつめてきたが、全部耳に入ってこない。
御坂「(ったく。この私が寝たふりなんか気付かないと思ってんのかしら。……ま、さっきのことはあいつ寝たふりがうまくいってると思ってるだろうから、なかったことにされるんだろうけど。……はあ」
上条「ま、しゃーないか」
____________
上条・御坂「「あ~あ、不幸だ♪」」
fin
おおおおお終わったーーー…………!!!!!
なんとか完結させることができました…。
読んで下さった皆様! 本当にありがとうございました!
こんな拙い文章と、へたくそな展開構想に、いら立ちを覚えた方もいらっしゃると思いますが、そんな皆様ひっくるめてありがとうございました!
初めてss書いたのでわからいことがたくさんあったんですが、なんとか出来てよかったです。
今度、このスノボー事件があったことを踏まえてのクリスマスssも書こうと思っているので、良かったらまたお付き合いください。
では皆様、本当にありがとうございました。
またよろしくお願いします!!
『美琴「スノボー旅行2泊3日の旅 温泉付き、かあ……」』【クリスマス編】
あのスノボー事件から2週間。日付にして12月9日。
学園都市ではクリスマスに備え、独自に開発された新型イルミネーションを街に試験的に配置し、一目見ただけでは外の街となんら代わり映えのないクリスマスムードを演出していた。
街にはサンタのコスプレを早くもしているお店があったりと、クリスマスまでもう少しなんだと実感し、彼女や彼氏に渡すプレゼントを買う学生が多く見られる今日この頃。
そんな中、御坂美琴はイライラしていた。
美琴「……遅い」
美琴はこの寒空の中、いつもの自販機の前で誰かを待っていた。
制服のミニスカートからのびる足は、風が吹くと冷たさから鳥肌がたっていた。
美琴「なんであいつはいつも時間通りに来れないのよ」
さすがに寒くなったのか、冷えきった手を温めるため、美琴は自販機からホットコーヒーを買う。
美琴「はあ、温かい……。ったく、早くきなさいよ、あのバカ」
体が温まり元気が出てきた。が体力に余裕が出てきたら尚の事イライラしてきてしまった。
すると、公園の入口からツンツン頭の少年が気だるそうに歩いてきたのが見えた。
上条「いや~悪い悪い。また補習させられちまってさ……ってうわ!?」パキン
ものすごい勢いで電撃の槍が飛んできたが、危うく直撃してしまう寸前で右手を差し出しなんとか命を取り留めた。
上条「いきなり電撃飛ばす奴がどこにいる!! 死ぬとこだったじゃねーか!」
美琴「うるさい! 遅れたアンタが悪いんでしょ!」
毎度毎度、会って最初は必ずこのくだりから始まる。まるでそれがお決まりのように、まるでそれが今の自分達の関係性なんだと確認するように。
上条「んで、今日はどこに行くんですか? 上条さんは今日疲れてるからゆっくり休みたいんですが」
2週間前の旅行、二人は「スノボー事件」と呼んでいる事件から二人の距離は一気に縮まり、頻繁に会うようになった。
スノボー事件の翌日に退院した美琴は、上条が退院する1週間のうちに4日お見舞いに行ったり、退院してからも2日に一回のペースで会っている。基本的には美琴が無理やり誘っている形だが。
美琴「良いからアンタは黙ってついて来なさい」
上条「わかった目的地に着くまで黙ってる…………。」
美琴「ホントに黙ってんじゃないわよ! このバカ!」バリバリ
上条「んぎゃー!!」
ーセブンスミストー
美琴「さ、着いたわよ!」
上条「なんだよ、買い物がしたいならしたいってそう言えよ。んで、なに買うつもりなんだ?」
美琴「べべべ別になんだっていいでしょ! 外が寒かったから行くだけよ! 」
美琴の顔が赤くなり押し黙る。
それはそうだ。クリスマス前のデパートはツリーが置いてあったり、男性客がレディースのフロアをウロウロしてクリスマスに向けて物色する光景が多く見られる。その状況ならスムーズにクリスマスの話題を出して、一緒にクリスマスを過ごそうと誘える。
なんて考えていることなんて絶対言えない。
上条「? ならとっとと入りませんか? 寒いんだろ?」
でもほんとに誘えるのか? この私が、クリスマスデートを? ここここいつと、クリスマスデートして、それで、それで……。
ニヘ……エヘヘと不気味に笑う美琴の頭からプシューと煙が上がり、その煙はすぐに電気へとなりバチバチと鳴り出す。
上条「!? みみみ御坂さん!?」パキン
美琴「ふぇ!?」
美琴の頭に手を置き、取り敢えずの漏電は抑えた。
上条「なんで漏電なんか……そんなに寒かったのか?」
美琴「あ、あ~まあそんな所ね。さささっさと中に入りましょ///」バチバチ
上条「また!?」パキン
ーセブンスミスト フロア内ー
上条「で、中は温かいけど、中に入ってからなにをするんだ?」
上条が手をポケットに入れながら気だるそうに歩く。
美琴も中に入ってからの計画は特に立ててなく、クリスマスの話題をふることしか考えていなかった。
美琴「ふえ? そうねえ、じゃあ服でも見にいくか」
え~っと上条が不満を漏らしていたが計画のため気にしない。
レディースフロアにつくと、そこには案の定彼女へのプレゼント探しだと思われる男子学生が多く見られた。
上条「……あれ? なんかレディースフロアなのに男ばっかじゃね?」
美琴「(よっしゃ気付いたーーー!!!)」
美琴は心の中でガッツポーズをする。
話の下ごしらえは出来た。後は話題を調理するだけだ。
美琴「あっ、あれーなんででしょうねー男がいっぱい、なにか今月の20何日かにイベントでもあるのかしらねー」
上条「なんでお前棒読みなんだ?」
美琴「うううるさい! でも、ななんででしょうねー」
緊張して話を調理できない。セリフも棒読みになってしまう。
言え! 言うんだ! クリスマス前だからだよって、言うんだ私!!
美琴「もももしかしてクク、クククククリ……」
上条「ん~わからん。それより上条さんはやっぱ疲れたから、お茶でもしに行きません?」
美琴「(全く気付いてない上に別の提案されたーーー!!)」
美琴「えっ、え~でも……」
上条「まあまあ、ほら行くぞ」
上条は半ば強引に美琴の手を引き、そのまま歩きだしてしまった。
美琴「(あっ、手……)」
上条「たしか下の入口近くにカフェがあった気が」
美琴「……」
美琴「ふにゃ~……///」
ー常盤台 学生寮ー
22:00
美琴「(結局あの後お茶しただけで帰ってしまった……)」
寮に着くやいなや、ベッドに倒れ込みこのままではクリスマスが……と美琴は落ち込んでいた。
黒子「(お姉様、帰ってきてからずっとこの調子……なにかあったに違いないですわ)」
黒子「お姉様? お姉様は今年のクリスマスはいかがお過ごしになられますの? もしよろしければこの黒子、お姉様のためにホテルのスイート・ルームをとってお姉様と甘美な夜を……ってあら?」
ツッコミが来ない。いつもならここで電撃かげんこつらへんがくるハズなのに。
なにやら美琴は必死に携帯のメールを打っているようだ。でも打っては消して、打っては消しての繰り返しをしているらしい。
美琴「はあ……」
大きなため息を漏らす。そのため息はクリスマスに誘えなかったからなのか、メールの文章が決まらなかったからなのか。
もう一度大きなため息をつき、またメールを打ち直す。
____________
ー上条宅ー
22:00
上条「はあ、年明けまでインデックスはイギリスに帰ってるから食費が浮くな~この浮いた食費でなにしよ」
久々の1人生活(猫は除く)に多少の寂しさとくつろぎを感じる上条。
ベッドに横たわり、暇そうに携帯をいじりながら今日の出来事を思い出す。
上条「今日は寒かったな~御坂も寒そうにしてたし。ってか女子って冬でもあんな足出してて平気なんでしょうか?」
上条「……」
スノボー事件以来、気がつくと御坂のことばかり考えてしまう。
御坂が倒れた時、初めて俺は御坂のことが好きだという事を自覚し、失いたくないと感じた。
でも、御坂は俺のことどう思っているんだ?
いつもすぐ攻撃してくるし、最近は前より会う回数が多くなったけど、俺に助けられたことを気にしての事かもしれない。
……俺、いつの間にあいつにこんな惚れちまってたんだ?
上条「メールでも送ってみっかな。 ん?」
ふと何気なくテレビに目をやると、ニュース番組で何かショッピングモールの特集をしていた。
「こんにちわーお兄さん。今日はこちらに何をしに来たんですか?」
「あっ。えっと彼女へのクリスマスプレゼントを探しに」
「あら~そうですか。それでこちらのレディースコーナーにいるんですね。なにか目星はつけましたか」
上条「クリスマスか、すっかり忘れてたな。……そうですかクリスマスですかへーへーそうですか。良いですね彼女のいる野郎共は楽しそうにプレゼントなんて選んじゃって。どうせ上条さんにはそんな楽しいイベント起きませんよ」
少し卑屈になりながら何か引っかかる。
クリスマス……24日。男がプレゼントを選びに……レディースコーナー。
あれ? 今日セブンスミストでも似たような会話をしたな。
……もしかして御坂、クリスマス空いてるのか? もしかして、俺のこと誘おうとしてたのか?
……いや御坂に限ってそれはないな。でももしまだフリーなら……でもあんなお嬢様がクリスマスだってのに俺を相手するのか? しかもあいつはまだ中学生だぞ? 中学生をクリスマスに誘うって……
上条「だ~! 考えてもわかるわけねーだろ! とにかくまずは予定が空いてるかどうかが先だ!」
上条はツンツン頭をガシガシと掻きむしりながら携帯の電話帳から御坂美琴を押した。
___________
ー常盤台 学生寮ー
22:20
美琴「はあ……どうやって誘おう……」
黒子「(!? 誘う!? 誘うとは誰を誘う話ですの!? まさかあの類人猿!? )
美琴「……よし! もう1回メール作ってみるか!」
隣で黒子がなにか悶えているが、そんなの最近じゃあ毎日のことだから気にしない美琴。
ベッドでうつ伏せになり携帯にまた向かい出すと、フイに携帯が鳴り響く。驚いた拍子に携帯をベッドの上に落としてしまった。
美琴「ふえ!? びっくりした~。もう、こんな時間に誰よ人がせっかくまたヤル気出してきたのに」
1人でブツブツ言いながら携帯を拾い上げ着信画面を見ると、ついさっきまでメール画面の送信先に載っていた名前が浮かんでいた。
美琴「うえ!? あいつから!? なななんのようかしらおおお落ち着いて私別にあんたのこと考えてたなんて言う必要なんてないんだしししし」
ピ
上条「おう御坂か? 今へい」
美琴「別にあんたのことなんか考えてないんだからね!!」ブチッ
________
ツーツーツー
上条「きれた……やっぱ俺御坂に嫌われてるのかな? もういいや、寝よ。 うわ!? 」
携帯を床に置き、布団に潜り込もうとするとすでに先約のスフィンクスがいた。スフィンクスと眼が合うこと約2秒、突如襲いかかって来た。
上条「いて! いててて! おいやめろスフィンクス! なんなんだいきなり!」
スフィンクス「にゃーご!(わいの飯忘れてるさかいに引っ掻いとるんやアホンダラ!)」
上条「いててて! おいやめろ! やめ」バキ
上条「……」
足下に嫌な感触がした。恐る恐る見てみると、そこには無惨な携帯が転がっていた。
上条「ふふふ不幸だー!!」
スフィンクス「うーにゃ(ワイを労らなかった罰や)」
___________
美琴「ハアハア……。……あーーーきっちゃったどうしよー!! 早くかけ直さないと!」
「おかけになった番号は現在電波の……_____」
美琴「で、出ない……」
一週間後
12月16日
ー自販機前ー
美琴「はあ……あれから一週間も会ってない……もうクリスマスまで時間がないし、どうしよ」
美琴は自販機の隣にあるベンチに腰掛け、缶コーヒーをすすっていた。
美琴「連絡もつかないし、なにしてんのよあいつは……」
あれから一週間、上条と連絡がとれなくなった美琴は、毎日の様にこの公園に来ていた。
ここならあいつと会える気がする。そんな些細な偶然を期待して今日も彼を待つ。
美琴「ここにいてもあいつと会えないし、私のこと避けてんのかな?」
そんなことばかり考え始めると止まらなくなる。次第に涙が出てきそうになる。
下を向き、一人の世界に入り始めると誰かが声をかけて来た。
顔を上げると、さんざん探してたあいつがいた。
上条「ビリビリ、こんなところでなにやってんだ?」
なに食わぬ顔で話しかけてくる。今までどんだけ連絡しても無視してきたくせに、ひょうひょうと。
美琴「……あんたを待ってたのよ」
上条「へ?」
美琴「あんたが連絡返さないから! この私からあんたが来るのをずっと待ってたのよ!」
美琴が怒鳴りつける様に言い放つ。上条は一瞬なんのことかわからなかったが、携帯が壊れていることを思い出し、なんとか弁明した。
なんとか理解してもらえたが、美琴の怒りは収まらずそのまま小1時間説教をされ、ようやく落ち着いて来た。
上条「ところで、なんでずっと待ってたんだよ。そんな急用でもあんのか?」
美琴はうぐっとなったが、本題のクリスマスのことについて少しずつ話しを切り出した。
美琴「別に、急用って訳じゃないけど、アンタが今年のクリスマス、どどどーしてるのかなって世間話をしたかっただけよ」
上条「はあ? それだけ?」
美琴「それだけで悪い!? だいたいアンタがメールもなにも返さないから」
ギャーギャーと携帯の話しを掘り返してきた。
スノボーではこれでケンカになったのに学習しないのかと心の中で上条は思ったが、口に出すとまた面倒なのでやめた。
上条「別に、上条さんにクリスマスなんてありませんよ。家で一人であか○やサンタを見る予定で……!!」
上条「(待てよ。クリスマスの予定を聞いてこいつはどうするんだ? 俺を小馬鹿にする気か? 哀れんだ眼で俺を罵倒する気か? ククク、甘いぜビリビリ中学生、上条さんにはそんなことお見通しよ!!)」
上条「うーあ~。クリスマスなら予定ぎっしりだぜ? いやー今から楽しみだ」
上条は棒読みで台詞を吐くかの様に言った。
どうよと美琴の眼を見ると、なにやら悲しそうな、寂しそうな、泣きそうな眼をしていた。
上条「え? 御坂さん? どうしたんでせう?」
声をかけても反応しない。
沈黙が流れる。
なんでそんな泣きそうな顔をしてるんですか? 冗談だよと言おうとしたが、美琴が少し早く話しだした。
美琴「へ、へ~そうなんだ。そりゃあ良かったわね。……あ~あ、アンタがクリスマス何の予定もなかったら大笑いしようと思ったのに。ま、私には常盤台で行われるダンスパーティーっていうすばらしいイベントが待ってるから、アンタの予定なんか関係ないけど。あ~良い男いたら良いな~」
美琴の言葉に力がない。なにかを紛らわすようにべらべらと話し続ける。
美琴「まっ、それだけの世間話をしたかっただけなのよ。じゃあね。クリスマス、せいぜい凡人なりに楽しみなさい」
言い放つと美琴は全力で走っていってしまった。
開いた口が塞がらない。
なんだったんだ? あいつは。
しかし、今の会話で美琴のクリスマスの予定が入っていることがわかった。
寂しいが、所詮俺が恋を叶えようなんて無理な話しだったんだ。と少し自嘲ぎみに笑う。
上条「……でもなんであいつ、あんな悲しそうな顔してたんだろ」
少し考えるが、答えが見つからない。
冬の風が体に刺さる。あの吹雪に比べればなんてことのない寒さだが、なぜか体に響く。
街ではクリスマスの音楽が流れ、これから恋人たちの聖なる夜が来る事を予兆させた。
12月24日
クリスマス当日
ー上条宅ー
上条「わはははー。さすがあか○やサンタ、面白れー!」
あの日、御坂と会って以来、連絡をとっていない。いや、正確にはとらなかった。あいつがダンスパーティーで男を捕まえるなんてことは聞きたくなかったからだ。
逆に御坂からも連絡はこない。せっかく携帯が復活したのに、音沙汰がまったくなかった。
あまりにも寂しかったので、土御門や青ピにクリスマスの予定をさりげなく聞いても、義妹がどーたら運命の出会いがどーたら言ってはぐらかされてしまった。まさか本当にあか○やサンタなんて見るとは思わず、CMに入るたびに不幸だと口にだしてしまいそうだった。
御坂は今頃、どこぞのイケメン貴族でも捕まえて楽しく踊っているのだろうか。俺のことなんか最初から知らなかったかの様に忘れて……。
そんなことを考えると当てようのない怒りや悲しみが押し寄せてくる。あのスノボー事件で俺はあいつが好きだと気付いた。守りたいと、この先も一緒にいたいと思えた。でも今はそう思ったことを後悔している。こんな気持ちになるなら最初から気付かなければ良かった。あいつのことなんて、好きにならなければ良かった!!
俺はテレビを消し、そのままベッドに入った。
______________
ー常盤台 寮ー
美琴はボーットしたまま、ベッドに横たわっている。
せっかくのクリスマスだと言うのに、なんの予定もいれず、普段の生活の方が充実しているくらいなにもしていなかった。
その部屋には、黒子も一緒にいた。まさか本当に美琴が予定を入れないと思っていなかったのでホテルのスイートルームを予約していなかったのだ。ジャッジメントは一応非番にさせてもらっているが、美琴と一緒にいることが彼女の幸せであるから、当然の選択とも言える。
黒子「お姉様! せっかくのクリスマス! 黒子はお姉様と一緒にケーキを食べにいきたいですわ~……なんて」
黒子がいくら呼びかけても美琴は聞いていない。いや、耳に入っていないという表現の方が適切かもしれない。
一週間前、お姉様が泣きながら帰ってこられてからずっとこの調子。どうしたのか聞いても何も言ってくれない。あの殿方のことかと聞いても、私が悪いだけとしか言わない。
なら今から類人猿を潰しに行くと言うと、「あいつの幸せを邪魔しないで」としか言わない。そしてまたこの状態になる。
私に出来る事はただ一緒にいるだけ、少しでもお姉様が元気になるよういつも笑ってお姉様を迎えるだけ。それがお姉様の、いえ、あの類人猿に言われた、パートナーとしての努めですもの。
黒子「雪が、降ってまいりましたわね」
___________
ー上条宅ー
眼を開けると、部屋の電気がとてもまぶしく感じる。どうやら寝てしまっていたようだ。
時計に目をやると午後8時を迎えていた。
体中から気だるさが押し寄せてくるが、とりあえず体を起こし、テレビをつける。テレビではクリスマスのイルミネーションスポットの中継をやっていた。
上条「今日、クリスマスなんだったな」
テレビの中の人々は、イルミネーションの明かりに照らされ、幸せそうな顔をしていた。手を繋ぎ歩くカップル、子供がはしゃいで走るのを止めるお母さん、様々な人たちが今日という日を楽しんでいるのに、俺はなにをやっているのだろう。
上条「コンビにでも行くか」
コートを羽織り、部屋の電気を消したことを確かめて、ドアを閉じた。
外はさすが12月末ということもあり、雪が少し積もっていた。つい最近雪を見たばかりだが、雪山で見る雪と、この科学の結晶とも言える学園都市で見る雪はまったくの別物の様に見えた。
まだ誰にも踏まれていない新雪の雪道を一人歩く。かじかんだ手を押し込めるようにポケットに突っ込み、背中を丸くして歩く。知らない人が見れば、その背中からは今フラれましたと書いてあるかのようだが、この雪が背中に積もればそんな字も消えるかなと詩人きどりなことを考える。
背中が寂しく震える。
____________
ー常盤台 学生寮ー
黒子「お、お姉様、そろそろお腹減りませんこと? 黒子はもうお腹が減りすぎてお姉様を食べてしまいそうですわ。オホ、オホホホ~……」
美琴は依然黙ったままだ。美琴の現状に、さすがの黒子も限界を感じ、ため息が漏れる。
当然、怒りは上条当麻に向けられるが、美琴にも多少の憤りを感じる。以前の美琴であったならこんなことすぐに笑い飛ばし、次の日には何事もなかったかの様に振る舞うハズ。ましてや、自分の憧れの人のこんな姿、見ていられなかった。
黒子「……はあ。お姉様、申し訳ございません。私ジャッジメントの要請がかかったので、少し出てきます」
黒子はジャッジメントの腕章を取り出し、腕にするすると付けた。
美琴は依然返事をせず、ただ枕に顔を突っ伏していた。
黒子「帰りは何時になるかわかりませんので、先に寝ててくださいまし」
黒子はそれだけ言い残し、部屋を出た。
黒子「全く、世話がやけるのですの」ボソッ
黒子が出て行き、部屋に沈黙が流れる。
なにもする気が起きない。今頃あいつは楽しく誰かと遊んでるのかな?
相手は……女の子かな? あいつ、いつも女の子にフラグたたせるものね。まっ私もその一人なんだけど。
スノボー事件の時、あいつ、私を助ける時言ってたよね。
『俺も、この旅行は楽しかった。怒ったり泣いたり照れたり、笑ったりうれしそうにしたりする御坂を見て、俺はいつの間にかお前に惹かれていった。お前のことしか考えれなくなった! 俺は……俺はお前が……!』
あの言葉はなんだったんだろう。結局、その続きを聞けなかったな。
でも、この結果もまた私が素直になれていなかったから。素直に今日を誘えていたら、今頃おいしいご飯を食べて、きれいなイルミネーションを見て、あいつがなにかしらの不幸に巻き込まれて、楽しく笑って、あいつの隣にいれたのかな。
……
美琴「少しでも、ほんのちょっとでも良いから、あいつに……当麻に会いたい」
美琴は立ち上がると、ふらふらと部屋を出た。
部屋を出ると、外では雪が降っていた。
足元には少し積もり始め、歩くと雪特有の音を鳴らし始める。
当麻はどこにいるのだろう。遊ぶって言ってたから繁華街かな? 一緒にいる人が女の人だったらどうしよう。
ううん、関係ない。私はただ当麻に会いたくて来てるんだから。 偶然会ったようにして、少し話して、それでさよなら。それで充分。
街では様々なカップルが暖をとるためか体をくっつけて歩いてる。
カップルによっては腕を組み、またカップルによっては照れくさそうに手をつないでいたり、いたる所から楽しそうな会話が聞こえる。
通行人Y.A「次はどこ行くじゃんよ~」
通行人Y.K「そうね、まずは予約してたケーキを取りに行かないとね」
通行人R「早く早く~早くしないとケーキがなくなっちゃうよ~とミサカはミサカはケーキの安否を気にしてみたり!」
私は、1人で何をやってるんだろ。みんなそれぞれ楽しいクリスマスを過ごしているのに。
寒い。思いつきですぐ部屋を出てきたからコート来てくるの忘れちゃった。みんな、綺麗な格好して笑ってるのに、私はコートも着ずに制服で1人暗い顔して歩いてる。
ハハ、とても学園都市に7人しかいないレベル5には見えないわね。
通行人A「うッせエぞクソガキ! 心配しなくてもちゃんとデラックススペシャルショートケーキクリスマス仕様1ホールは予約してあるッつッてんだろうがア! あッ? おい走んじャねエ! 滑ッてケガしたらどうすんだア!」
あいつ、どこにもいない。
……あの公園なら会えるかな? こんな日にまで来るわけないだろうけど、一応……
___________
ガー
「あっしたー」
こんな日の、こんな学生寮の住宅街近くのコンビニには当然人はほとんど入っていなかった。店員もいつもは3人もいるのに、今日はやる気のない店員が1人。
店内には有線でクリスマスの名曲特集をやっていたが、こんな所でそれを流すのは場違いだろと思い、せっかくの立ち読みもいたたまれなくなったので、缶コーヒーを一本買い店を出た。
コンビニの外で缶コーヒーをすすり、通行人に寂しいやつと思われたくないので、時折待ち合わせをしているんですよとアピールするみたいに着信もない携帯を耳に当ててみたりする。
缶コーヒーを飲み終わり、いよいよどうするかと思った矢先に、突然目の前に女の子が現れた。
髪型はツインテール、結び目には可愛らしりぼんをつけ、腕にはジャッジメントの腕章をつけた、白井黒子だった。
黒子「探しましたのよ。上条さん」
上条「え? 探した?」
____________
いつもの公園に着くと、やっぱりあいつはいなかった。
わかってた。こんな日にもここに来るわけがない。
結局あいつの行きそうなところもわからないし、もうお手上げ。
美琴はいつもの自販機で何か暖まるものを買おうとしたが、財布を忘れてきてしまっていた。
「はあ」とため息を一つ漏らすと、近くのベンチに座ろうとする。ベンチに雪が少し積もっていたので、手で雪を払い、余計かじかんでしまったことに少々後悔しつつ、ベンチに座り、一週間前のケンカを思い出していた。
美琴「ダンスパーティー……か。そんなの、ある訳ないじゃない。……仮にあったとしても、私はアンタと一緒にいたかった」
空を見上げると、雪が目に入る。正確にはまつ毛にくっついて瞬きの時に入る。
公園の電灯だけが美琴を静かに照らす。
携帯についているスノボー旅行で貰ったゲコ太ストラップを固く握る。
会いたい会いたい会いたい……
そんな想いだけがどんどん強くなる。しかし彼はここにはいない。今、となりには他の誰かがいる。
考えれば考えるほどに、涙が出てくる。
足元の積もった雪に、ポタポタと涙が落ちて、自分の流した涙の数がわかる。
すると隣で誰かが私を呼んでいたのに気がついた。
私は泣き腫らした目を、ゆっくりと、声のする方へと向けた。
_____________
上条「探したって、なんのことだよ。白井。だいたいお前らは今ダンスパー」
黒子「……お姉様のことですわ」
上条は言いかけた言葉を最後まで発することなく、ビクッと体を震わせた。
なんでこいつはわざわざ御坂の話をするためにここにきたんだ? ダンスパーティーで良い男と出会えたから、俺にはもう御坂に近づくなとか言い出すためにきたのか?
いや、こいつはそんなことするやつじゃねえ。御坂に男が寄り付くこと事体こいつは不快なハズなのに……。
上条が何か考えているようだったが、黒子は構わず話し続けた。
黒子「お姉様は、今あなたを探しています」
上条「……は? なんでだよ、だって今日は常盤台でダンスパーティーなんだろ?」
黒子「ダンスパーティー?」
どうやら黒子も、詳しくは話を聞いていないようで、ダンスパーティーなるものに首をかしげていた。
上条「え? だってあいつそう言って……?」
話が噛み合わない。どこかおかしい。どこでおかしくなった?
上条が必死に考えてると、黒子もかしげた首を元に戻し、また質問した。
黒子「一週間前、その話しをしたとき、あなた変なこと言いませんでしたの? お姉様がダンスパーティーなる虚言を吐く前に」
俺がなんか変なこと?
……そういえば、俺あん時あいつがクリスマスの予定を聞いてきたのを、冗談で返したな。それでその後あいつは寂しそうに走って行って。その前にも、わざわざレディースフロアに俺を連れて行ったりして……
上条「まさか……まさかあいつ……」
上条がなにかに気付いたことを黒子は確認すると大きなため息を一つ漏らし、携帯を取り出した。
prrrrrrr……ガチャ
黒子「初春? お姉様は見つけられました?」
初春「あ! 白井さ~ん! ひどいですよ今日は非番だったのに、急に呼び出して御坂さんを探せなんて!」
電話越しの初春が叫びに近い声で話してくる。どうやら今回もまた白井黒子に巻き込まれているみたいだ。
黒子「そんなことより、お姉様は?」
初春「ぶー。御坂さんは現在第七学区の公園自販機前にいます」
黒子「そう。ありがとうですの初春。あとでケーキを買っていきますわ。では」
ブチッ
要件が終わるとすぐに電話を切り、黒子は上条を見た。
黒子「話しは聞こえていて?」
上条は黒子をまっすぐ見つめる。
なんでこいつが俺にそんなことするのか全くわからないが、「御坂が俺を探している」とい事だけはわかった。
だったら、俺のできること、することは一つじゃねえか!
上条は足を前へ進め、黒子とすれ違いざまに「ありがとう」と一言だけ言って走りだした。
黒子「世話が焼けるお二人だこと。……これでスノボーの借りは返しましたわよ。類人猿」
独り言をつぶやき、黒子は上条の遠のいて行く後ろ姿が消えるまでずっと見届けた。
__________
顔を上げると、そこには5名程の見知らぬ男たちがいた。
「あれ~お嬢ちゃん、こんなところでなにしてるのかな~? なになに彼氏にでもフラれたのかな~
?」
「ギャハハハ、まさか本当に話しかけるやつがあるかよ!」
声をかけた男以外の4人が腹を抱えて笑っている。
美琴は腫れた目をもう一回下に戻し、聞いてなかったことにした。
「え~無視ですか~? こんな日にそんな格好してたら風邪引いちゃうよ? お兄さん暖かいところ知ってるから一緒に行かない? 楽しいこともいっぱいしてあげるからさ~」
「ちょ! お前ロリコンかよ! ギャハハハ」
美琴が無視を続けていると、男は腕を掴み、強引に連れて行こうとした。
面倒だったので、電撃を出して気絶させようかと思ったその時
「その手を離せ!」
さっきまで5人いた男たちのハズなのに、今は6人いる。
一番後ろで声を発したその少年を見て、美琴は目を疑った。
「……は?」
上条「その手を離せって言ってんだよ! バカヤロウ!」
会いたくてしょうがなかった人、上条当麻がそこに立っていた。
男は舌打ちをして美琴から手を離し、ぞろぞろとその場から離れた。
何やら帰り際になにか捨て台詞を吐いていたが、そんなのはどうでも良かったので覚えていない。
それより、今は目の前にいる御坂美琴のことで頭がいっぱいだった。
あれだけ会いたいと思っていても、いざ会うと何を話していいのかわからない。
二人の間に重い沈黙が流れる。
上条「……なあ、御坂」
最初に口火を切ったのは上条からだった。美琴は俯いたまま返事をしない。
上条「俺、今日はあることをお前に言いにきたんだ」
上条「俺な、スノボー事件の時、思ったんだ。あのままお前が死んじまうんじゃないかって。俺の前からいなくなってしまうんじゃないかって。俺、怖くてしょうがなくなってさ」
美琴は依然下を向き、返事をしない。でも微かにうなずいている様にも見えた。
上条「でも、その時初めて気付いたことがあるんだ。お前を失うのがなんで怖いか、お前をなんで離したくなかったのか」
美琴は下を向きながらも、でも確かにうなずいていた。
上条「そしてそれは、あの時の言葉の続きだ」
美琴がゆっくり顔を上げる。そしてその目は、上条をしっかりと見ている。
上条は空を見上げ、まるであの時の様に視線になにか入れていた。
そして、深く深く、ゆっくりと深呼吸をする。
覚悟を決めると、上条は美琴の目を見て、言った。
上条「怒ったり泣いたり照れたり、笑ったりうれしそうにしたりする御坂を見て、俺はいつの間にかお前に惹かれていった。お前のことしか考えれなくなった! 俺は……俺はお前が……!」
上条「俺はお前が、大好きだ!!」
美琴は優しく微笑むと、両目の端から溢れんばかりの雫がこぼれ落ちた。
美琴「私も大好きだよ、当麻」
美琴「ねえ」
自販機の隣のベンチに二人で座り、世間話をしていた。
想いの通じた二人の手は、しっかりと繋がっている。
美琴「今日、予定入ってたんじゃないの? ……なんでここにいるの?」
美琴はまだこのクリスマスの全貌を知らない。なので当然、上条は今日誰かとデートしているもんだと思っていた。
美琴「この前言ってたじゃない。 今日は予定がある、楽しみだーって。それは、どうしたの?」
それは、本当に知りたかった質問だ。さっきまでも、今もそれは変わらない。
上条は頭をボリボリ掻きながら、罰の悪そうな顔をしてゆっくり言った。
上条「ありゃあ、ウソだ」
美琴の目がキョトンとなる。
ウソ? ウソってなに? え? じゃあこいつは今日一日なにしてたの? もしかしてずっと暇してたの? え? え? ええええええええ!? 私の苦悩は!? 苦悩はーーーー!?
上条「いやあの時はお前が俺をからかうのかとてっきり思って……って、美琴さん!?」
美琴「ウソってどういうことだコラーーー!!!」
上条「ももも申し訳ございませんでしたーーー!!!」
素早くその場で土下座をする上条。
自分の彼氏の土下座を見るのはいかんせん変な気分だ。
上条「でででも! 美琴さんもダンスパーティーなんてウソをついたではありませんか!?」
美琴「そそそそれはしょうがないでしょ!! アンタを取られたと思って、ほんとにショックだったんだから……」
美琴は俯き、顔を真赤にさせながら目だけでをこちらに向けた。
上条「え?」
美琴「……///」
上条「(かかか可愛い……)」
美琴「ね、ねえ」
上条「……んあ!?」
美琴「明日、暇?」
ー翌日ー
12月25日
美琴「だーかーらー! 早く選びなさいよ!」
上条「そんなこと言ったって、これはすごく大事なもんで!」
店の中でギャーギャーケンカする二人。店員も、お客もみんなこちらを見ている。
美琴「もーいいわ! 店員さん、これ下さい!」
上条「みみみ美琴! なにもそんな値段の!?」
美琴「なによ? そんな大した金額じゃないじゃない」
上条「……はあ。俺の彼女になるんだったら、まずはその狂った金銭感覚を直さないとな」
美琴「かかか彼女!? そそそそうよね私はアアアンタのかか彼女なんだから、ちょっとくらい……」
店員「こちらでよろしいでしょうか?」
美琴「はい!!」
上条「おい」
これで今月の浮いた食費分が全部パアだ。全く……あ~あ
美琴「にへ~///」
上条「……そんなにうれしいのか?」
美琴「!? あああ当たり前でしょ!! ほら! アンタもつける!!」
上条「わわわわかったからそんなグイグイ押すな!」
美琴「にへへ~/// ねえ当麻」
上条「ん? あ~ほらよ」
二人はしっかりと手を結ぶ。簡単に剥がれない様に、しっかり指を絡めて。
上条「なあ美琴」
美琴「なあに、当麻」
二人の気持ちが、繋がっているのを確かめるように。
上条「大好きだ」
美琴「私も大好きだよ、当麻♪」
不幸とは程遠い、幸せを確かめるように_____。
fin
元スレ
セブンスミスト
上条「んで、買い物ってなにを買うんだ?」
御坂「(これはデートこれはデートこれはデート…キャーーーー!!!!)」
上条「おーい、御坂さーん」
御坂「…ふえ?あ~、ごめんごめん。今日は特定のお店で買い物すると福引券がもらえるのよ」
上条「福引券?」
御坂「そう、その福引でどうしてもほしいやつがあるのよ」
上条「ほしいもの?なにがほしいんだ?」
御坂「ななななんでもいいでしょ!!アンタはここの地下で今日の夕飯の材料でも買ってなさい!」
上条「はあ?ここの地下の食料品はそんなに安くないからあまり買いたくn」
御坂「良いから買いなさい!」ビリビリ
上条「…不幸だ」
上条「で、買い物して福引券もらったけど、どこで福引はやってるんだ?」
御坂「えーと、お店の入り口ら辺って書いてあったんだけど…あっあの混雑しているところじゃない?」
福引店の周りには学園都市の様々な学生でごった返していた。
上条「で、お前はなにを狙ってるんだ?」
福引店の周りには学園都市の様々な学生でごった返していた。
上条「で、お前はなにを狙ってるんだ?」
御坂「そそそそれは…」
福引店「さ~~~いらっしゃい!!本日はまだ1等賞も2等賞も3等賞も出てないよ!1等賞にはペアでの旅行券!2等賞は液晶テレビ、3等賞にはゲコ太オリジナルヘアピンセットがあるよ!!」
上条「…」
御坂「…」
上条「まさかお前3等狙い?」
御坂「…まままままっさかー!!2等のテレビがほしいだけよ!!」
上条「えっ、でもお嬢様のお前ならあれくらいすぐに買えるだr」
御坂「ううううっさいわね!!良いからあたしはあの2等をあてるの!!」
そう言って御坂は福引店の店員に券を渡す。
そう言って御坂は福引店の店員に券を渡す。
福引店「はい1枚ね、じゃあここを回して玉を出してください」
そこにはとてもビンゴ大会でも使われるような、回して玉を出す道具が置いてあった。
御坂「はーい(フフフあたしの能力を持ってすれば中の玉を電流で操って出すことなんて造作もないこt)
そう企みながら道具に手をかけ回し出すと
上条「がんばれよ!御坂!」
上条の右手が御坂の肩に触れ、能力を打ち消された。
御坂「ふにゃ!あっ!?」
コロコロと道具から玉が出てきた。その玉の色はなんと…
そこにはとてもビンゴ大会でも使われるような、回して玉を出す道具が置いてあった。
御坂「はーい(フフフあたしの能力を持ってすれば中の玉を電流で操って出すことなんて造作もないこt)
そう企みながら道具に手をかけ回し出すと
上条「がんばれよ!御坂!」
上条の右手が御坂の肩に触れ、能力を打ち消された。
御坂「ふにゃ!あっ!?」
コロコロと道具から玉が出てきた。その玉の色はなんと…
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 16:27:12.95 ID:C+n43d6v0
福引店「こ!?この黄金色に輝く玉は!…。おめでとうございまーす!!こちらのカップル様、見事一等のペア旅行券を獲得致しましたーー!!」
御坂・上条「…ええええええええええ!!!!!!?????」
御坂「ちょっ!え!?カカカカップル!?」ボン
上条「そこじゃねーだろ!!1等だぞ1等!!…あ、でもあれか、お前は3等狙いだから、御坂的にはハズレなのか」
御坂「そそそそんなことない!!旅行券よ!?ペアチケットよ!?アアアアンタと旅行だなんてそんな…」
上条「え?俺と行くの?」
御坂「え?」
ザワザワザワ
「ねえあれ常盤台のレールガンじゃない?」
「え?あっ!!本当だ!!よく見たら御坂さんだ!」
「えっ、じゃああのウニ頭が彼氏?」
「キャー学生カップルで二人きりの旅行だって!キャー!!」
御坂「…」ダッ
御坂は上条の言葉や周りの彼氏発言に顔を真赤にし、そこには居たたまれず走ってどこかえ行ってしまった。
上条「え?ちょ!おい御坂!?」
ザワザワザワ
「なになにケンカ?」
「ちょっとなにあの彼氏、最低じゃない?」
「お姉様と旅行に行くのはこの私ですわ。クフフフフフ」
上条「…ふ!!不幸だー!!」
上条は福引店からペアチケットをもらうと、急いで御坂を追いかけた。
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 19:08:35.90 ID:AKxADlwP0
上条はすぐに御坂を追いかけたつもりだったが、さすがはレベル5、あっさり見失ってしまった。
上条「ハアハア。あ~どうすっかな。あいつどこにいんだよ。ったく。」
とりあえず、まずはいつもの自販機に行ってみた。
上条「あっ。いた」
御坂は自販機の隣にあるベンチに腰掛けていた。
御坂「はあ。せっかく当たったペア旅行券も忘れてきちゃったし、ゲコ太は当たんないし、あいつ置いてきちゃったし、どうしよ…。あいつにこのまま旅行券あげちゃおうかな。でもそしたらあいつは誰と行くんだろう。…まさかあのシスターと!?嫌!それは嫌!でも…」
上条「なに一人でぼそぼそ話してるんですか?」
御坂「ふあ!!あんた!!いつからいたの!?」
上条「いつからって、今きたとこですよ。で、ペア旅行券がどうしたって?」
上条が二枚の旅行券をピライラさせていると、御坂がそれを強引に奪い取った。
御坂「なんでもないわよ!!これは私のなんだから返してもらうわよ!!」ビリビリ
上条「なんでそこで放電するんですか!?上条さんがせっかく全力で追いかけてきたのに!!」
御坂「え…そんな急いで来てくれたの?」バリ…
上条「そりゃあ、いきなりどっか行ったら心配するだろ」
御坂「そっか…心配してくれたんだ…フフ♪」バリバリ
上条「だからなんで放電、いや漏電するんですか!!」
上条が御坂の頭にそっと右手をおき漏電を消した。頭に手を置かれた御坂は顔を真っ赤にしているが俯いているため上条はそのまま話し続けた。
上条「で。その旅行券にはなんて書いてあるんだ?」
御坂「ふえ??ああ、りょりょ旅行券がなんだって?」
上条「だから、なんて書いてあるんだ?行き先だってさっき聞かずにきちまったんだから。」
御坂「えええーと、スノボー旅行2泊3日の旅 温泉付き かあ…」
上条「へー楽しそうだな。まあ白井とでも行って楽しんでこいよ」
御坂「(またこいつは…私がアンタと行きたいなんて気づかないんだから…)…言われなくたって楽しんでくるわよ…」
上条「おう!!今度土産話し聞かせてくれよ!!…ん?裏になにか書いてあるぞ?」
御坂「え?なになに、『なお、この旅行券は男女でのみの使用となっています』って…ててててててて!!」
上条「なんだ男女のみなのか。まあ常盤台のお嬢様なら一緒に行く男くらいいくらでも…」
御坂「い…わよ…」
上条「え?」
御坂「一緒に旅行する男なんていないわよ!!バカ!!」
少し沈黙が流れた。時刻は19:00を回ろうとしており、11月のこの季節のこの時刻は少し寒く感じていた。
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 19:38:44.11 ID:AKxADlwP0
上条「…えーと御坂さん?」
御坂「…なによ?」
御坂は低い声で、でもどこか寂しげな声で俯きながら返事をした。
上条「(まああの福引きで、俺が御坂に触らなければゲコ太グッズを手に入れられたからな…ズルだけど。1等を当てちゃったのは俺の責任でもあるし…)」
上条「えっと、もしよかったら上条さんがお伴しますよ?いや御坂さんが俺じゃ嫌ってんならもちろん強制は致しませんしですね」
御坂「…一緒に行ってくれるの?」
御坂がフッと顔を上条の方に向けたその眼には、うっすら涙がたまっていたように見えた。
上条「(え!?なんだこの反応は!?なんですかその眼は!?…こいつ…こんなに可愛かったっけ?)」ドキドキ
御坂「…ねえ、ホントに一緒に行ってくれるの?」
上条「(だーーー!!落ち着け俺!!相手はあのビリビリだぞ!?中学生だぞ!?)」
上条「おおお俺でいいならだぞ!?別に無理しなくてもお前が嫌じゃなければだから」
御坂「嫌な訳、ないじゃん」ボソッ
上条「えっ?」
御坂「しょーがないわね!!アンタがそんなに行きたいって言うのなら連れて行ってあげるわ!でも変なことしたらぶっ飛ばすからね!」
上条「(あれ?なんだよ。いつもの御坂じゃねーか。でもさっきなんて…?)」
御坂「返事は!?」
上条「おっ、おう。」
御坂「じゃあ日程についてはまた追って連絡するわ。じゃ、私帰るね」
上条「え?おい御坂~…?」
上条「ったく。…不幸…なのか?」
御坂はまた走って行ってしまった。
御坂「」タッタッタッタッタ
御坂「あいつと旅行あいつと旅行あいつと旅行」タッタッタッタ
御坂「ふにゃ~~~~~~!!!」バリバリバリ
この放電により学園都市が一時的な停電となり、上条宅だけ電気の逆流により電化製品が壊れたのは言うまでもない。
「不幸だーーーーーーーーーーー!!!!!!」フコウダーフコウダーフコウダー……
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 20:11:19.45 ID:AKxADlwP0
~常盤台 寮 朝~
黒子「(一昨日の夜からお姉様の様子がおかしいですわ。ベッドで横たわってぼーっとしているかと思えば)
御坂「…」ニヤ
黒子「(ニヤニヤしだしたと思ったら)」
御坂「…キャーーー♪」
黒子「(ベッドでごろんごろんと動き)」
黒子「(あげくの果てには私がお姉様のお風呂場に盗さtもとい監視していると)」
御坂「黒子なに見てんのよ。一緒にお風呂入る?♪」
黒子「(などどいつものお姉様なら絶対言わないようなことまで!!まあ結局入ってスキンシップしていたら放電されましたけれども)」
黒子「やはり福引きでの旅行券はあの類人猿と一緒に…!!」 ※福引きをしている現場に黒子はストーキンgもとい護衛をしていました
黒子「これは…旅行直前にあの類人猿を襲撃して入院させるしかありませんわね!!」
御坂「そんなことしたらアンタを冥土送りにしてあげるわよ」
黒子「ピッ!?お姉様!!いつの間にこちらの世界に帰還を!?…そんなことより、お姉様!!やはりあの旅行券はあの殿方と行くのですの!?」
御坂「はあ?アンタなんの話しを…って!!なんでアンタが旅行券のことを!?しかもなんであいつと行くと知って!?」
黒子「ってことはやはりあの殿方と行くのですね!?」
御坂「!!!?しまっt」
黒子「いけませんわお姉様!!あんな類人猿なんかと旅行なんて…お姉様の貞操が!!かくなるうえは今この黒子めが先にお姉様の貞操をミャーー!!」バリバリバリ
御坂「そんなことするわけないでしょ!!たったまたま当てたときにあいつが一緒にいたからあいつと行くだけよ!!それ以上もそれ以下もないからね!!」ビリビリ
御坂「じゃあ、私でかけるから、じゃあね」
バタンとドアが閉まると同時に黒子は携帯を取り出し。
ピっ
黒子「緊急会議ですの」
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 20:50:55.44 ID:AKxADlwP0
~とあるファミレス~
佐天「え~!!あの御坂さんが男の人と旅行!?」
ガタッと席をたち大声を出したため周りがざわざわしている。
初春「佐天さん、声が大きいです」
佐天「へ?ああごめん。でもなんで旅行なんて?」
黒子「なんでも福引きで当ててしまわれたらしいですの。はあ、なぜなのですお姉様…」
黒子がテーブルに顔を突っ伏していると、店員がパフェを持って初春の前へ置いた。
初春「♪いただきまー…」
黒子「…私たちも行きますわよ」
佐天初春「へ?」
黒子「私たちも行って、陰から邪魔をするのですの!!それで二度とあの類人猿と仲良くできないくらいの思い出にしますのよ!!」
初春「えっ、それはいくら何でも…」
佐天「おもしろそうですね!!あたし行きます!!」
初春「佐天さん!?」
黒子「では決まりですの。ただし今回はお姉様にバレないように行きますので、くれぐれも慎重に」
初春「私はまだなにも…」
黒子「では作戦をたてましょう」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 21:25:43.45 ID:AKxADlwP0
ー旅行当日ー
上条「ハッハッハッハッ」タッタッタッタ
上条「クソ!!なんで今日に限って携帯のアラームが作動しなかったんだよ!!不幸だ…」
ただいまの時刻 朝の6:50。待ち合わせ時刻は6:30ですでに20分も遅刻が確定している。
御坂はいつもの自動販売機の前で頭をビリビリさせていた。
御坂「…遅い!!なにやってんのよあいつはーーー!!」
とそこに11月の早朝だというのに汗だくで走って来たツンツン頭の男が走って来た。
上条「悪い御坂!!遅れちまったってウオ…!!」パキン
いきなり目の前に青白い光が向かって来たので上条は咄嗟に右手を出し難を逃れた。
上条「みっ御坂!?朝っぱらから撃つなよ!!」
御坂「うるさい!!遅れてきたアンタがいけないんでしょ!!」ビリビリ
上条「だから悪かったって!!だからその頭のビリビリはしまえ。な?」
上条は汗だくの顔でニコッと笑いなんのことなく御坂の頭に手を置いた。
御坂「(…!!?もうこいつは!!なんでこういうこと無意識でするかな!)」カアー
怒っていた筈なのにいつの間にかドキドキさせられている。こいつのこういうとこがムカつく。
御坂は上条と逆の方を向いて真っ赤になった顔を見られないようにした。
御坂「バスの途中に寄るサービスエリアで、地域限定ゲコ太ストラップで許してあげるわ」
上条「へえへえ。かしこまりましたよっと。全く、不幸だ…」
御坂「!!!アンタが遅刻したのがいけないんでしょ!!」
上条「だから悪かったって。ほら、早くしないとバスでちゃうぞ」
御坂「アンタは毎度毎度………」ギャーギャー
ガサガサ
「行きましたわね?」
「こういうの、緊張しますねー!!」
「二人とも、私たちが乗るバスは後ろのやつですよ!!なんで私がバスの予約なんか…」
それぞれの想いを胸に、いざ、雪山へ!!
28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 21:59:45.45 ID:AKxADlwP0
ーバス1号車内ー
上条「はあーこっからバスで6時間かー。ま、補習を受けないだけマシか。御坂はスノボーしたことあるのか?」
御坂「…」
上条「おーい」
御坂「ふえ!?」
上条「なんだよずっと俯いて。もう酔ったのか?」
御坂「べべべ別になんでもないわよ!!」
上条「?」
御坂「(そっかー忘れてたー!!バスの中でずっとこいつの隣に座るんだった!!ここここんな近くに!ちょっとでも動いたら肩と肩が当たりそ…)
上条「? おい御坂?」肩チョコン
御坂「ひゃう!?あああアンタ肩と肩が当たってるわよここここの変態!!」
上条「はあ?しょうがないだろこの狭さなんだから。そんなに上条さんが嫌ですかったく」
御坂「え?いいいいやそんな嫌とかじゃなくてそのなんかその……ゴニョゴニョ」
上条「? まあいいや、それで、ビリビリはスノボーしたことあるのか?」
御坂「ビリビリいうな!!スノボーなんかしたことないわよ悪い!?そーゆーアンタはどーなのよ!!」
上条「何もそこまでいってないだろ!?俺はある…らしいぞ?」
御坂「らしい?」
上条「ああいやあるある!!上条さんはこう見えてスノボーは得意なんだ!!じゃあお前に滑り方教えてやるよ」
上条「(って家に聞いたら言ってたけど、本当に滑れるのか?)
御坂「あーらそう。なら、アンタのご教授楽しみにしてるわよ!」
御坂「(あいつが滑り方を教えてくれる!?ってことはもしかして手を繋いでしまったり抱きついてしまったりしちゃうの!?はわわわわ!!)」ビリビリ
上条「!?おい御坂!!漏電してる!!」
御坂「ふえ!?」ビリビリ
上条「ったくしょうがねえな」パキン
御坂「あっ、ありがと…」
上条「バスが動かなくなったら困るから、到着するまでお前は俺の手握っとけ」
御坂「ふえ!?手を握る!?もう!?待って思ってたより早くて心の準備が!!」
上条「いいから、ほら」ニギ
御坂「ふにゅ!?あわわわわ…」プシュー
ーバス2号車内ー
黒子「あ!の!腐れ類人猿ーーーーーーーー!!!!!!!」
初春「白井さん落ち着いてください!!」
佐天「しっかしすごいわねー向こうのバスに隠しカメラつけて初春がその映像をこっちで常にキャッチするなんて」
初春「昨日の夜白井さんがテレポートで侵入してつけただけですよ」
佐天「…ジャッジメントがこれでいいのか?」
黒子「キーーーーーーーーー!!!!!!!」
初春「あーーーー白井さん私のパソコン叩かないでーーーー!!!」
佐天「まっ、楽しいしいっか♪」
御坂はそれから到着するまでずっとショートしていました。
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/22(木) 23:24:59.73 ID:AKxADlwP0
ーとあるスキー場近くの旅館前ー
上条「ふあーやっとついた。上条さんはもう腰がカチカチですよ」
御坂「…」
上条「ん?どうしたビリビリ?」
御坂「ビリビリ言うな!!そそそそれよりも…手」
上条「へ?あ~わり!!もうバスは降りたから大丈夫か!!!」パッ
御坂「(あ~あ、なんで言っちゃうんだろ私。このまま黙っててればまだ繋げていれたかもしれないのに…)」
御坂「ハア」
上条「どうした?バスで疲れたのか?」
御坂「うるさい!!さっさとチェックインして滑りに行くわよ!!」ビリビリ
上条「手を離した瞬間にビリビリですか!?」
御坂「ビリビリ言うなっていってんでしょ!!」
上条「はあ。ほら、もっかい手をだせ」
そういうと上条は御坂の手をとった。
御坂「うっ!」カア
上条「じゃあ、チェックインしますか」
ー旅館内ー
旅館に入ると、少し古い感じがしたがそれを気にさせないほど人がごった返しており、二人が立ち往生していると
女将「あら、もしかして上条様と御坂様でございますか?」
これだけたくさんの人がいるのに、なぜ自分たちの名前がわかったのか不思議に思っていると
女将「旅行代理店の方からお話は伺っています。お若いカップルでの予約と聞いていましたもので」
女将は二人の繋いでいる手を見てフフと笑い、それに気づいた御坂はまた赤面してしまった。
女将「ではお部屋へ案内させていただきます」
女将と談笑(上条が)しながら廊下を歩いていると途中の部屋の中から聞き慣れた声がした。
黒子「なぜ私たちのお部屋がこんなところなのですの!?お姉様たちのお部屋はもっとあっtンゴ!?」
初春「シー!!白井さん!!そんな騒いだら御坂さんたちにバレますよ!?」ヒソヒソ
佐天「まあそれはそれでおもしろそうだけどね♪」
初春「佐天さん!!」ヒソヒソ
御坂「あれ?さっき黒子の声が聞こえた気がしたんだけど…まさか…ね…」
上条「どうした?」
御坂「へ?いやなんでもない」
そうこうしているうちに部屋の前に到着した。が、なぜか周りにはこの部屋以外なく不思議に思っていると
女将「では、上条様たちのお部屋はこちらの当館最高級の部屋でございます」
上条御坂「へ?」
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/23(金) 00:00:47.34 ID:NV53TwZT0
ー最高級部屋内ー
御坂「ふわー中はかなり広いわね。うわ!!窓の外には川も流れてる!!良い部屋ね~」
上条「…」パクパクパク
御坂「ちょっと何口をパクパクしてるのよ」
上条「…お嬢様にはわからないかもしれないけどな、上条さんみたいな一般人にはこんな部屋一生縁がないと思ってたんですよ」
御坂「私だって、こんな部屋は今までないわよ。あ!見て!こっちベランダに出れるみたい!!」
上条「…ったく。上条さんの一般人力なめんなっつーの…って、おーい御坂?どうしたー?」
御坂「…ちょっと…なにこれ…」
上条「!?どうした!?」
上条が御坂のもとへ駆け寄ると、思いもかけないものが目に飛び込んできた
上条「露天…風呂?」
御坂「ななななんでこんなもんが部屋についているのよ!!」
上条「知るか!!ちょっと女将さんに聞いてみる!!」
部屋に備え付けてある電話でフロントに電話をかけて話しを聞いてみると
女将「あら~お話を伺ってなかったのですか?当館の最高級部屋には備え付きの露天風呂があって、カップルの方々にとても人気なんですよ」
上条「ちょちょちょっと待ってください俺たちは別に付き合っているわけでは!!あっ、ほかの部屋は空いてないんですか!?」
女将「申し訳ございません本日はお部屋がいっぱいでお部屋の移動はできません。あっ、あと何故かさっき大浴場のボイラーが故障してしまいましたので、お風呂はそちらをご利用ください。申し訳ございません」
上条「え!?ちょそれはどういう!?」
女将「あっまた団体様がご到着を!!では上条様、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
プッツーツーツー
上条「もしもし?もしもし!?…不幸だーーーー!!」
御坂「…どうだった?」
上条「…他の部屋も空きがなく、ついでに大浴場のボイラーも故障して、この部屋の風呂を使うしかないようだ…」
御坂「じゃじゃじゃじゃあ私とあんたで一緒にお風呂に入るの!?」カア
上条「アホですかアナタは!順番に入ってお互い見ないようにするってことです!!」
御坂「ででででも!!」
上条「あ~…。うん。とりあえず考えても始まらないからまずは本来の目的であるスノボーをしに行こう。話しはそれからだ」
御坂「…そうね。まずはスノボーしてからにしましょ」
上条「よし。じゃあ行くぞ!」
御坂「うん!」
そのころ黒子たちは
黒子「良いですわね。この後のスノボーでは…ゴニョゴニョ」
初春「もう帰りたいです…」
佐天「さー滑るぞー!!」
いっこうはスノボーへ!!
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/23(金) 21:44:25.38 ID:NV53TwZT0
ーとあるスキー場ー
上条「うわー結構混んでるんだなー」
目の前には銀色の絨毯がひかれたかの様な真っ白な雪がつもり、雲ひとつない空から太陽の光が雪に反射して眩しさを覚える。
正面のリフトにはたくさんの人達が並び、係の人がせわしなく動き、時折止まるリフトにふと不思議な懐かしさを感じた。
上条「それにしても御坂のやつ、遅いな。着替えにどんだけ時間かかってるんだよ」
御坂「あっ、やっと見つけた!!」
上条「ん?やっときたか! 上条さんは待ちくたびれて……ウ!?」
そこには薄ピンク色のウェアにピンクのラインが入った黒のパンツ、、そして小さな猫耳をつけた真っ白いニット帽を被った御坂が立っていた。
どうやら今回は多少少女趣味な部分を抑えたようだが、ニット帽にその趣味が滲み出ている。
しかし、ゲレンデマジックとはよく言ったものだ。普段の空間とは非現実的なこの白銀の世界、そしていつも制服姿しか見ていなかった上条にとって、違和感のあるそのウェア姿にたまらない感情がわいた。
御坂「なによ、遅れたこと怒ってんの?」
上条「……なんかいつもと違う感じがして」
御坂「?」
上条「いや、なんでもない。それより、早速リフトに乗ろうか」
御坂「え!? もうリフト乗るの!? 」
御坂「当たり前だろ、ここに何しにきたんだお前? 心配すんな、最初は一番ゆるいそこの坂だから」
そう言いながら上条は左手でボードを持ち、右手で御坂の左手を掴み歩き出した。
リフトまでの道ですでに何回か他の客に轢かれそうになっている上条を見て、あいつは今日一日無事でいられるのかと内心心配しつつ、やっぱり手を繋ぐのは恥ずかしいなと思い、御坂は顔を真赤にして俯いたままリフトに乗り込んだ。
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/23(金) 22:01:05.85 ID:NV53TwZT0
ー一番傾斜がゆるい坂ー
上条「さてと、リフトを降りてここまでは歩いてきたけど、ここからはついにボードをつけるからな」
御坂「なんだめちゃめちゃなだらかな斜面じゃない。ここなら余裕だわ」
リフトから降り立ったのは初心者がまず始めに来るであろう緩やかな傾斜の山。周りには子どもや女性が多く、みんな緩やかな坂をゆっくりと滑っている。
その一方、他カップルも彼氏が彼女に手取り足取りで教えている光景が見える。これからこの他カップルと同じ様なことをすると考えると御坂の頭からバチバチと音を立てる青白い光が出始めた。
上条「おおおい御坂さん!? 漏電していますよ!? どうしたんでせう!?」パキン
御坂「……ななななんでもないわよ! それより早く滑るわよ!」
御坂はその場にトスンと座り、ボードを足に付けようとするが付け方がわからず戸惑っている。
先にボードを足に付け終わっていた上条が御坂の前までズリズリとはいよってきた。
上条「ほら、こうやって付けるんだよ。」 パチン
得意げに教える上条に少しムッとし、返事をしないでいると「立てるか?」と上条が手を差し伸べてきたので、黙ってその手を掴み立ち上がろうとすると予想以上にバランスが取りづらいのか、体勢が崩れそのまま上条に抱きつく形で支えられた。
御坂「あっ」
上条「おっと大丈夫か御坂?」
御坂「ごごごごめん。ちょっと思ってたよりバランスが取りづらくて」
上条「まあ初めはな。でもお前なら少し練習すればすぐうまくなるから大丈夫だ」
上条はそのまま御坂の両手をとり、後ろへ下がっていった。
御坂はその両手を掴み必死にバランスを保とうとしていた。
御坂「ちょ、ちょっと! どうすればいいのよ!」
上条「そのままボードを水平にして重心を後ろに少しずらせ!そうすればそのまま少しづつ進むから」
御坂「……!」
御坂は掴んでいる上条の両手をギュッと握り、言われた通り後ろに重心をずらす。するとボードがズズズといいながら少しづつ下へ動いていった。
御坂「あっ! できた!」
上条「お~さすがだな。この調子なら今日中にはもうって、ん? 御坂! 危ねえ!」
御坂「え?」
二人のいる10メートルほど先から全身黒づくめのボーダーがこちらに向かって真っ直ぐ突っ込んできている。このままいると衝突してしまうと感じた上条は御坂が後ろを振り向く間も与えず、咄嗟に御坂を抱きそのまま90度体を回転させ倒れた。
間一髪のところでそのボーダーは過ぎて行き、取り敢えずの何は逃れた。
上条「ふう、危ないところだったな」
御坂「ア……タ、どこさ……のよ」
上条「へ?」
御坂の声に怒気がこもっている。助けたのになんでだと不思議に聞き返したとき、右手に柔らかな感触が伝わる。もちろん、抱きかかえて倒れたのだから胸に手が当たっているというラッキーイベントではない。ではどこに?
恐る恐る上条は顔を上げ右手に視線を流すと、どんな「異能の力」も打ち消せるその右手は中学生の未発達なお尻をわしづかみにしていた。
上条「ア、アレーーーーーーーーー!?」
御坂「アンタ、どこ触ってんのって言ってんのよこのヘンタイー!!」バリバリバリ
上条「ふ、不幸だーーーー!!」パキン
________
「チッ 失敗したのですの」
62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/24(土) 22:35:50.59 ID:a6oRCKVg0
____________
一時間後
御坂「キャッホー!!」
スノーボードを開始して一時間、この一時間で御坂はスノボーのコツを掴み急激な成長を遂げていた。
上条「ちょ、御坂、ちょっと待ってくれよ」
御坂「もーなにちんたら滑ってんのよ。置いてくわよ」
そう、御坂は学園に7人しかいないレベル5。成績優秀、体術はジャッジメント以上。そんな彼女がスノーボードなどという娯楽スポーツをマスターするなど朝飯前なのであった。
上条「クソ、あいつがレベル5だったことをすっかり忘れてた。さっきまで得意げに教えてた俺がバカみたいじゃないか……」
御坂「なにぶつぶつ言ってんのよ。早くしないとホントに置いてくわよ」
そういうと御坂はボードを斜面に対し直角に向けて猛スピードで滑って行った
上条「急に得意げになりやがって……。クソ、上条さんにだってなあ意地ってもんがあんだよ!!」
上条は御坂と同じようにボードの向きを変え、猛スピードで滑り御坂の近くまで追いついた
御坂「へー私と勝負するつもり? 言っておくけど能力勝負じゃなかったらアンタには負けないわよ」
上条「うるせえビリビリ! さっきまで俺の手を離さなかったのはどこのどなたのどいつの手ですか!?」
御坂「ささささっきは始めたばかりだったんだからしょうがないでしょ! アンタになんか絶対負けないんだからね!」
御坂は言い終わると同時に体の重心を低くしスピードをさらに上げ上条より前に躍り出た
上条「あんのビリビリ~!! 恩を仇で返すとはなんてふとどきな奴なんだ。 絶対負けてたまるk」
黒尽くめ「こめんあそばせですの」シュン
上条「へ?」
さっきまでこの傾斜は俺と御坂だけだったのに、いつの間にこいつ来たんだ? むしろなんか急に現れたような。
そんなことを考えていると黒尽くめは上条の背中をトンと押し、バランスの崩れた上条は進路が右にそれた。
そして、その行き着く先は……
上条「……この周りの傾斜とは明らかに違う異質な雪の段差はまさか……ジャンプ台でせうか?」
瞬間、上条は宙を舞った
上条「……。ふふふふふ不幸だーーーーー!!!!」
御坂「? なんであいつが空にいるの?」
63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/24(土) 22:58:26.17 ID:a6oRCKVg0
ー旅館ー
上条「はあ。死ぬかと思った……」
御坂「さすがの私もアンタ死ぬんじゃないかと思ったわ」
上条は奇跡的にも猛スピードでジャンプしたため、普通の着地スペースを飛び越え新雪の雪にダイブしていた。
ー黒子たちの部屋ー
黒子「あんの忌々しい類人猿め~あれで病院送りにしてこの旅行をつぶす筈でしたのに~キーー!!」
初春「それもうほとんど犯罪です……」
初春のパソコンを叩く音に合わせて壁に頭を叩き付ける黒子に、初春はあきれたようにため息をつく。
隣の部屋からうるせーぞと言われ始めるころ、佐天が帰ってきた。
佐天「いやー楽しかった!初春も滑ればよかったのに~♪」
佐天の言葉に、また少しため息をついた初春。カバンからゴソゴソといちごおでんを取り出しカパっと開けた。
初春「スキー場の監視カメラにハッキングしてずっと御坂さんたちを探してたんです。そんな余裕ありませんでしたよ……」
黒子「初春! 明日は今日より一分一秒でも早くお姉様たちを見つけるんですのよ!」
初春「これですもん……」
佐天「ハハ。明日はあたしも手伝うからさ~」
黒子「それより、お姉様たちのお部屋はいったいどこですのーー!?」
64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/24(土) 23:28:14.90 ID:a6oRCKVg0
ー最高級の部屋ー
17:00
朝の長距離バスと午後のスノボーで、さすがの上条と御坂にも疲れが出たのか、上条は畳の上で大の字になり、御坂は窓際のいすに座りお茶をすすっていた。
御坂「(かかか、会話がない!)」
もうかれこれ30分は終止無言でいた。
いつも街で偶然出会うと、なんだかんだ言って会話をする二人。しかし密室の空間、しかも二人きりになると急に何を話せば良いかわからなくなり、御坂は7杯目のお茶をすすった。
御坂「(なんであいつはなにも話しかけてこないの!?そんなに私といるのがつまらない!?)」
御坂がどーしよどーしよと内心ではテンヤワンヤとしている中、上条は依然として無言にいる。
御坂「(……やっぱり私と旅行なんかしても、つまらないのかな……)」
悲しい気持ちと寂しい気持ちが入り乱れ始めたころ、上条は重い口を開けた。
上条「……なあ御坂」
御坂「!? ひゃ、ひゃい!?」
突然の上条の声に、心の中でアタフタしていた御坂は声がうわずってしまった。
上条「?」
急に変な声を出す御坂に「なんだ?」という表情を上条は浮かべた。
御坂「ウッゴホン。で、なに?」
御坂は一つ咳払いをして平静さを取り戻すと、いつもの強気な語気で言い直した。
上条「ん? いや、あのよう、さっきからずっとお前に言おうと思ってたことがあんだ」
上条が起き上がり御坂の前の椅子に座った。
御坂がさりげなくすぐに上条の分のお茶を入れてあげたが、上条は気づかず、なにやら真剣な顔でこちらを見ている。
心が揺れ動く。上条のその目の瞳には御坂が映っているのがわかるのではないかと思うほどに真っ直ぐこちらを見ている。
御坂は、自分の心臓の音が盛大に音をあげていることに気づき、それを隠すように両手を胸の前に置いた。
生唾をゴクッと飲み込み、覚悟を決めて御坂も真っ直ぐ上条の目を見る。
御坂「……うん。なに?」
上条「……風呂、どうしよっか?」
御坂「……へ?」
65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/24(土) 23:43:10.58 ID:a6oRCKVg0
上条「だから、風呂だよ風呂。スノボーで汗かいたのに入らない訳にはいかないだろ?」
御坂「はわ……」
上条「はわ?」
御坂「はわわわわわ」
忘れてたー!! と御坂は心の中で盛大に声をあげると、同時に尋常じゃない恥ずかしさが押し寄せてきた。
御坂「(そうだ忘れてた風呂よ風呂!! この部屋の最大の問題点がこんな近くにあったのになんで忘れてたのよ私はー! どーすんのよこいつがすぐ近くにいるのに薄壁一枚挟んで露天風呂なんててゆーかこいつは私が一人で会話ないと気にしている間ずっと風呂のこと考えてたわけ私の苦悩と落ち込みはなんだったの今の今までのドキドキとせっかくの覚悟を返せってことは同時にこいつの脳内では私は生まれたままの姿でそこの露天風呂に入っている想像もしてたってことなによそれこのヘンタイヘンタイヘンタイヘンタイ)」
上条「? おーい御坂?」
御坂「こんのヘンタイがーーー!!」バリバリバリ
上条「なにがでせう!?」パキン
66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 00:12:15.23 ID:P5rurOuJ0
10分後
上条「で、落ち着きましたでしょうか?」
上条は少しぶるぶる手を震えさせながら御坂の頭に手を置いていた。
一方の御坂は今だムスッとしているが、確かに風呂問題はなんとかしないといけないと納得し、渋々怒りを納めた。
御坂「で、結局のところどうするのよ」
今だ口調に怒気が混じっている気が、気にしてもしょうがないので上条は答える。
上条「どーするって、入るしかねーだろ。こんな汗だくの体で寝るなんてお嬢様のお前には耐えられないだろ?」
御坂「その『入る』をどうするのよって言ってんの」
御坂の指図する口調にやっぱり俺嫌われてるのかなと思いつつ、思考をもう一度風呂に戻す。
上条「まあ、飯前には入り終わっていたいよな。だから入るなら今このタイミングだ。幸い外はもう暗いし、丁度いいだろ。……入る順番は、まあ御坂からでいいぞ。俺の入った後のお湯なんて嫌だろうし」
こいつはどこの思春期の娘を抱えた親父だ? と少しおかしくなり、たまらずフフっと笑い気持ちが少し落ち着いた。
御坂「へー、レディーファーストなんてどこで覚えたの? まっ、ならお言葉に甘えて先に入るわ。……絶対覗かないでよ?」
覗くか!っと一喝すると、御坂の顔が赤くなっているのに気づいた。なんだかんだでこいつもまだ中学生。そりゃあ恥ずかしいに決まってるよな。
御坂の……裸か。
上条「(っていかんいかんいかん! あいては中学生だぞ! 理性を保て上条当麻!)」
御坂は部屋のタンスからバスタオルと普通のタオルを取り出し、自分のカバンから洗顔クリームを取り出す。上条にあっち向いてて!と怒鳴るとカバンの中から急いで下着を取り出しベランダへ向かった。
ここにはカーテンもなく、上条が明後日の方向を向かなければ何もかもが見えてしまう。
御坂「こっち向いたらタダじゃおかないからね」
上条「見ねえからさっさと入れ!」
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 00:55:53.04 ID:P5rurOuJ0
御坂「ホントのホントに?」
御坂がジトーっとこちらを見てくる。そこまで信用されていないのか上条は少し落ち込みつつもしょうがないと踏ん切りをつけた。
上条「ったり。じゃあお前が風呂入ってる間、旅館の中散策してくるからその間に入れよ」
御坂「え?」
上条はため息を漏らしつつ、財布と携帯を持って立ち上がろうとしたとき、「待って」と呼ばれた。
御坂「べべべ別にアンタが覗かなかったら問題ないんだし、そそそんなわざわざ出て行くこともないわよ!」
このまま上条を一人で部屋の外に出せば必ずなにかのトラブルに巻き込まれ2~3時間は帰ってこないだろう。
今上条がいるこの部屋の露天風呂に入るか、せっかく二人で旅行に来たのに2~3時間一人で部屋で待つのを天秤にかけたとき、御坂にとって2~3時間上条と離れる方が嫌だと悟った。
上条「まあ、お前が良いっていうんなら行かないけど」
御坂「じじゃあ、ちょっとこっちきて」
上条は「?」と思ったが言われた通りベランダ近くにいる御坂の前まできた。すると御坂が上条の両肩を掴みクルッと180度回転させて座らせると、私がお風呂に入っている間話し相手になりなさい、とまた指図された。
上条は露天風呂のあるベランダからは逆方向に向き、腕を組んでどっしりとあぐらを組んだ。
今、まさにこの瞬間、常盤台のお嬢様、レベル5の御坂美琴は裸になろうとしているにも関わらず、上条当麻はさながら座禅を組んでいるかのような程無心……に見えていてほしかった。
上条「(無心無心無心無心!!)」
しかし男とは悲しい生物、いくら無心になろうとしても自分の後ろで女の子が服を脱いでいる状況で無心になれる筈もなく、耳には全神経を集中させて物音一つ聞き漏らさない態勢に入っていた。
上条「(無心無心無心無心ムムムムムムム……!?)」
そして、その時は始まった。
71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 02:00:04.85 ID:P5rurOuJ0
ファサ
自分の真後ろに何かの布が落ちた音がした。その音を皮切りに続けてもう一回、その数秒たってまた一回。今までは布が落ちる音だけが聞こえてきた。しかしその音とは全く異質な、金属の金具を外す音がした。
プチ
上条「!?!?!? いいい今のはままままさかブブ、ブラのホックを外す音!?)」
上条の先ほどまで心の中でずっと唱えていた無心の叫びはどこえやら。頭の中は音に合わせて想像が自由自在にかわって行く。この演算処理スピードならミサカネットワークも敵ではないのでは? とアホなことも考えつつ、つい思っていたことを口走ってしまった。
上条「御坂さん。今、どんな状況なんでせう?」
御坂の顔が真っ赤に染まる。いや、顔だけでなく体全体が今は真っ赤なのではないだろうかと感じながら、御坂は咄嗟に両手で胸を隠した。
御坂「アアアアンタ!! そそんなこと聞いてどうすんのよこのドヘンタイ!!」
心臓の動きが加速する。それもそのハズ、今隠れている部分は下半身の下着のみ。御坂美琴は意中の人の真後ろでその未発達な体を披露しているのだ。当然、親や女の子の友達にしか見せたことのない体。そんな状態で平然としていられるハズもない。
上条「アアアいや! すまん! 気にしないでくれ! ただの好奇心だから!」
御坂「どどどどんな好奇心してんのよ!? だいたいアンタは……え? ふにゃーーーー!!」
突然の叫び声に上条は御坂の方を振り向くと、御坂が抱きついてきた。
上条「!? え? その……え? 御坂……さん?」
困惑しつつ聞くと、御坂は震えた声で言った。
御坂「そこ……服のすぐそこに……虫が……」
見ると鳥肌がたちそうになるほど気持ちの悪いその生物「ム○デ」がウネウネと歩いていた。
なぜこの季節に? と思ったが、きっと自分の不幸体質で呼び寄せてしまったんだろうと一人で納得し、部屋にある観光用チラシですくって窓の外へ放り投げた。
上条「もう大丈夫だぞ! 御坂!」
先ほどまで震えていた御坂の方へ振り向くと、御坂はホッとした顔をして立ち上がった。
御坂「ホント? 良かった~だいたいなんでこんな季節にム○デなんか……あ」
が、すぐに今自分の置かれている状況に気がついた。
御坂「」
上条「」
そこにはまだ成長していない小さな山が二つ並んでいる。
一瞬の沈黙のあと、御坂は両手で自分の胸を隠し、その場に座り込んだ。
上条「(見た! 見てしまった! 御坂の! 御坂の!)」
脳内で興奮していると、御坂の様子がおかしいことに気付く。よく見ると御坂からグスッグスッと声にならない声が聞こえ、俯いた顔から雫がたれていた。
上条はそっと、壊れ物を扱うように、優しく御坂を抱きしめた。
御坂「グスッ……ヒッ……グスッ……見た?」
恥ずかしい。見られた。恥ずかしい。こんな小さい胸見られたら、こいつはどう思うだろう……。
上条「……見てねえって言ったら、嘘になる。ごめんな、御坂」
上条はそっと立ち上がり、部屋を出た。
80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 14:08:58.57 ID:P5rurOuJ0
ちゃぽん
上条が部屋を出て行き、一応は落ち着いた御坂はとりあえず風呂に入ることにした。
ここは露天風呂、外は寒い筈なのに体が熱い。それは裸を見られたからなのか風呂のせいなのかわからないが、あいつのことを考えると一気に汗が吹き出てくる。
御坂「はあ。……見られちゃったな、この胸。それに、謝って来た。私が泣いたから。ただの事故なのに、悪いことしたな」
露天風呂から発する湯気が夜空へ上って行く。まるで私の気持ちと同じように、暗く広大な空へ溶けていく。
御坂「……。こんな気持ちでいたらあいつはまた責任感じちゃうよね」
見上げると、真っ暗な空に星が出始めた。沈んだ気持ちに光がさすように、御坂も気持ちを楽にした。
御坂「よし! 帰って来たらいつもの御坂美琴に戻るのよ! たかが裸を見られたくらいなんだから……そーよ! もう裸を見せた関係なんだから、すすす少しくらいあいつに触れてもなにもおかしくないわよね! よよよしあいつが帰って来たらちょっとくらい甘えてみても……ふにゃー」
御坂はのぼせた。
2時間後
……遅い! と一人で部屋で御坂はイライラしていた。もう部屋のテーブルには料理は並んでいる。上条は御坂の予想通り、ホントに2時間程帰ってこなかった。
御坂「んっとになにしてんのよあいつは! 電話にもでないそメールの返事も返さない! 夕飯もきちゃったしどうすんのよ!」
頭に電気が出始めたころ、部屋のドアが開いた音がした。
御坂「!? 遅い! 今の今までどこに行ってたのよ! せっかくの夕飯が冷めちゃうでしょ! って、なんでアンタそんなぼろぼろなの?」
上条「……不幸だ」
御坂「はあ。またなんかのトラブルに巻き込まれたのね。まっ良いわ。とりあえず着替えてきたら?」
上条「そーする。でもその前に、御坂、これ」
そう言うと上条はポケットから手のひらサイズの紙袋を取り出し、御坂に渡した。
御坂「? なによこれ。お土産屋さんでなにか買ったの?」
上条「ああ、まあ、そのなんだ、さっきは悪いことしたからそのお詫びにって、思ってな」
上条のその心遣いだけで頭から湯気がでるんじゃないかと思うほどうれしくなった御坂だが、とりあえすは何の気なしなしに開けるねと良いながら丁寧に紙袋を開けた。
御坂「これは、ゲコ太?」
そこには地域限定のゲコ太ストラップが入っていた。ゲコ太の頭には猫耳のついた白いニット帽、体には浴衣とアンバランスな組み合わせになっている。
上条「そのニット帽にゲコ太。お前絶対好きだろうなと思ってさ」
御坂はゲコ太をぎゅっと抱いて、「ありがと」と一言だけつぶやいた。
アンタの方がずっと好きだけどね。っと頭で思ったが、そんなこと言える筈もなく真っ赤な顔は床に向けるしかなかった。
上条「じゃあ着替えるから、少し待っててくれ。はあ腹減ったな~」
このゲコ太ストラップを手に入れるために、黒尽くめの女の子三人と卓球勝負をしたのはまた別のお話。
82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 14:56:37.15 ID:P5rurOuJ0
上条「はー食った食った上条さんはもうお腹いっぱいですよ」
こんな料理はいつぶりだと腹をさすりながら満足そうな上条を見て、普段の食生活の心配を少ししてみる御坂。聞くとそうめんだけの日々もあったと辛い過去を話すそんな会話に、御坂は今度料理作りに行こうかと言おうとしたがやっぱり言えず、今度おいしいお店連れて行ってあげると少しレベルを下げて次のデートもこぎつけた。
上条の風呂は御坂がずっとトイレに籠り、その間に入ってもらった。最初からこうしとけば良かったのにと上条はボソっというと、うるさいと言い放ちトイレに御坂は入って行った。トイレの中で御坂はゲコ太ストラップを見てずっとニヤニヤしていたのは秘密だ。
上条「ふーすっきりした」
御坂「あっ、お茶飲む?」
上条「おっワリーなサンキュー」
スッと立ち上がりお茶をいれる御坂の後ろ姿。浴衣だからか妙に体のラインが出ている気もする。御坂の裸が頭をよぎり頭をぶんぶんとふっていると、なにしてるの? とツッコミが入り焦る。
するとドアからコンコンとノックが聞こえた。どうぞというと女将さんが入って来た。
女将「当館の最高級お部屋はおくつろぎいただけていますでしょうか? これからお布団をしこうと思っておりますので、もしよろしければ当館のバーへ行かれてはいかがでしょう?」
女将が部屋の入り口付近で正座をし、手を床の畳に綺麗に添えてお辞儀をした。
御坂「バーですか? でも私たちまだ未成年なんで」
女将「ご心配には及びません。当館のバーはノンアルコールのカクテルも多数取り揃えております。また、お客様情報により年齢詐称できないようセキュリチィしておりますので、未成年の方だけでもご利用することが可能です。また、こちらのお部屋をご利用のお客様にはバーのご利用を無料のサービスも実施しておりますので。」
御坂「あっ、そうなんですか。どうする?」
上条「まあ、無料なら良いんじゃね?」
お財布が常に厳しい上条も、無料という言葉を聞けば断る理由も特にない。二つ返事で了承した。
御坂「じゃあ私たちバーに行ってくるんで、お部屋よろしくお願いします。あっ、あとお茶がなくなってしまったんで補充してもらっても良いですか?」
女将「かしこまりました。では行ってらっしゃいませ」
女将に頭を下げ、バーへと二人は向かった。
83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 15:30:14.99 ID:P5rurOuJ0
バーに入ると、中は薄暗く、各テーブルとカウンター席に置いてあるアロマキャンドルだけが光を灯していた。
お客さんはチラホラと入っていたが、どこを見てもカップルしか見えず、雰囲気からか周りに関係なく唇を交わす者たちもいた。
御坂「……」ボン
なにこの雰囲気は! と頭の中でツッコミをいれるがそんなことはいざ知らず、上条は何食わぬ顔で店員に2名ですとファミレスに来たかのように話していた。
席に案内されると、横長の席に対し、二人で座るソファーがあった。当然ソファーにしきりはなく、座ったら密着必須だ。
上条「……なんか席が狭いですが、御坂さんどうします?」
さすがの上条も密着してしまうとわかると、一応確認をとって来た___でも、これで断ったらまた気まずい雰囲気になるのではないかと思い、御坂は勢い良く席の右側に座り込んだ。
御坂が座ったので、とりあえず上条も座り、一つだけのメニュー表を二人で眺めた。
御坂「(ちちち近い! 方が当たってる! あああ足も!)」
上条「(浴衣って生地薄いんだな。御坂の体温が当たってるところからわかる。ってかこいつ熱くね?)」
恐る恐る御坂の方を向くと、案の定頭からバチバチと電気を垂れ流していた。
上条「おおおおい御坂!」パキン
それで我に返ったのか、御坂はまた慌ててメニュー表を見て音読し始めた。
そうこうしていると店員が注文をとりにきた。
店員「お客様、メニューはお決まりでしょうか?」
御坂「ふえ!? あ、ああメニューね! じゃじゃあ私はノンアルコールのカシスオレンジで」
上条「俺はコーラで」
店員「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
メニューをとり終えた店員はカウンターの方へ戻り、ドリンクを作り始めた。
御坂「ってかアンタコーラって! ムードもへったくれもありはしないわね!」
上条「うるせい! お前だってまだ中学生なんだから背伸びしてカシスオレンジなんか頼むな!」
御坂「ノンアルコールなんだからいいでしょ!」
いつもの様なこの場には似合わない会話で、御坂も幾分か落ち着いた。
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 16:00:18.92 ID:P5rurOuJ0
店員「お客様、失礼します」
店員がドリンクを持って来た。二人の間からノンアルコールカシスオレンジを先に置き、その後コーラを置いた。
店員「それでは、ごゆっくりどうぞ」
店員が軽くお辞儀をしてカウンターの方へ戻ると、とりあえず二人はグラスを持ち乾杯した。
上条「にしても、なんでお前中学生のくせにカシスオレンジなんて知ってんだ?」
上条は自分で質問しといてすぐにその答えがわかった。
御坂「え? それは、お母さんの飲みに付き合わされてたから」
やっぱり、と納得していると、浴衣の腕の部分からゲコ太ストラップが見えた。
上条「お前、こんなところまでそのストラップ持って来てるのか。そんなに気に入ったのか?」
上条のツッコミにハッとストラップを隠して顔を真っ赤にした。上条からもらったこのストラップがうれしすぎて、ひと時も体から離したくないなどと言えず、ただ俯いた。
上条「え? いいいいいや気に入ってくれてるんなら良いんだよ! 良かったー気に入ってもらって! そりゃ好きなものっていつも持ち歩きたいもんなー!」
と上条の変な方向へのフォローが仇となり、尚のこと顔が赤くなる。そのうちまた頭から電気が漏電し始め、上条はまた頭に手を置く。しかし御坂の顔は以前赤いままだったので次いつ漏電するかわからない。しょうがないので上条は御坂の左手を掴み、手を握った。
御坂「ふえ!?」
この旅行で手を繋ぐのは何回目だろう。もういい加減慣れてもいいハズなのに、やっぱりドキドキしてしまう。それはお互いの関係がまだハッキリしていないからだろうか、それともハッキリしても、こいつには一生ドキドキしてしまう体質なのか、今の御坂にはわからなかった。
とりあえず、目の前の飲み物をグイッと飲んだ。
上条「こんなところで漏電するなよ。ただでさえここの明かりはこのキャンドルだけなんだか……へ?」
コテン___と上条の肩に御坂の頭が乗って来た。いや頭だけじゃない、体全体をこちらに預けてくる。
チラリと御坂の脚を見ると、浴衣がはだけてる。いつもスカート姿を見てるから脚なんて見てるのに、なぜ浴衣のはだけ具合から覗く脚はこんなにも男心をくすぐるのだろう。
いやしかしこの場合問題なのはそこじゃない。この状況だ。なぜ御坂は上条に寄りかかって来た?この雰囲気か?この雰囲気がそうさせたのか?ちょっとまってください上条さんで良いんですか?良いんですね?
と考えて御坂の方を向く
上条「み、御坂?」
御坂「にゃーに? とうま♪」
御坂の目がトロンとしている。
87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 16:28:20.69 ID:P5rurOuJ0
上条「へ?」
なんだこの違和感わ。いや、違和感どころの騒ぎじゃない。いつもの御坂じゃない!
そう思った矢先、いつの間にか店員が後ろに立っていた。
店員「お客様、申し訳ございません。お連れの方のご注文だったノンアルコールカシスオレンジ、どうやら普通のカシスオレンジを提供してしまったみたいで……」
御坂「えへへへ♪ とうま~♪」
御坂が腕にくっついてゴロゴロしている。
普通のお客だったらこんなミス大変なことになっている。しかしこれは上条当麻こんなミスは慣れッ子。いつものようにいいですいいですと笑ってすませ、バーを後にした。
ー最高級の部屋ー
部屋までの道のりで御坂は腕から離れず、そのまま部屋まで来てしまった。しかし、ここで最大の難問にぶつかる。
上条「布団が……一つ?」
そこには普通の布団の1.5倍の大きさの布団が一つひいてあり、タンスの中にも他の布団がないことを確認すると、これで寝るのかと上条の理性は飛びかけた。
ただでさえこんなに甘えてくる御坂、それと一緒の布団で寝るとなるとようやく繋いでいる理性の薄皮も剥がれてしまう自信が今の上条にはあった。
そんな上条をなんか知ったこっちゃなく、御坂は上条の腕を引っ張って電気を消し、布団の中まで連れて行った。
御坂「えへへ~とうまあったか~い」
布団の中で御坂が上条の胸に顔を埋める。上条は心を無にしようとされるがままだ。
89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 17:00:54.71 ID:P5rurOuJ0
御坂の頭から良い匂いがする。露天風呂に備え付けのシャンプーを使った筈だから俺と同じ筈なのに、女の子がつけるとこんなにも匂いがかわるものなのか?
上条の頭の中はもはや無心とはかけ離れていた。上条の嗅覚や視覚、聴覚や全身の触覚は御坂の一挙一動すべてを感じようとしていた。
しかしそれでも何もしようとしない上条。理性が崩れる一歩手前で、なんとかブレーキを踏んでいた。
御坂「……ム~、えい!」
上条がなにもしてこない御坂は誘っているのか、浴衣がはだけた生脚と上条の生脚に絡めてきた。
その絡めた脚をゆっくり上へ下へ、奥へ手前へと動かし肌の触れ合いを楽しみだした。
上条「(ムグ! うう~! き、気持ちいい……。御坂の脚、スベスベだ……このままじゃ、俺……!)」
御坂の呼吸が荒くなるなっているのを胸で感じる。
その感覚に上条は耐えきれず、体をくの字に曲げた。
それが何を意味しているのか御坂はわかっているのか無意識なのか、上条の胸に埋めてた顔をゆっくり上げ上条の方へ向いた。
御坂「ねえ、……とうま」
必死に目をつむって耐えて来た上条も御坂の方を向くと限界へのカウントダウンが始まった。
恥ずかしいからなのか酔っているからなのか、顔を真っ赤にし上目遣いでこっちを見ている。
御坂「無理しないで、……しても……いいんだよ?」
プチッ
上条の中で、何かが外れた音がした。
90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 17:36:38.74 ID:P5rurOuJ0
上条「み、御坂! 俺、もう!」
上条は勢いよく御坂に覆いかぶさり、思い切り抱きしめた。返事はない。抵抗もない。ただ御坂の体温を全身で感じてる。
御坂の腕が上条の後ろへまわされる。そのまま数秒、いや数分かわからないが抱きしめ合った。
上条は意を決し顔を上げ、御坂へ唇を交わす……ハズだった
御坂「スースー」
上条「……へ?」
御坂「スースー」
上条「も、もしもーし、御坂さん?」
返事が返ってこない。御坂は安らかな顔をして寝息をたてている。
上条「え、……え~!! ここで~!? そそそんな殺生なー!!」
返事はない。御坂は上条の首にまわした腕でグイっと上条を引っぱり、抱き枕のようにして落ち着いた。
上条「ふふふ、不幸だー!!」
_______
朝 7:30
チュンチュンチュン
目を覚ますとあいつが目の前にいた。昨日の夜、バーに行って途中から記憶がない。
なぜあいつは私の目の前にいるの? なぜ目の下にクマを作って不幸だ不幸だぶつぶつ言ってるの?
なぜ、私はあいつを抱いて布団の中にいるの?
御坂「……!?」
きゃー!と朝一番に大声をだされ飛び上がる上条。視線を御坂に向けた瞬間青白い雷撃が押し寄せてきた。
上条「うわ!? なにすんだ御坂!」パキン
御坂は座ったまま、浴衣がはだけた脚や胸を腕で隠すようにして上条を睨んだ
御坂「なにすんだはこっちの台詞よ! このドヘンタイ!」
上条「えっ、御坂、お前なにも覚えてないのか?」
御坂は睨みながら昨日の夜のことを思い出そうとしたが、思い出せなかった
御坂「なにも覚えていないわよ! アンタ、私になにかしたんでしょ!!」
上条「俺からしたもなにも、先に誘ったのはお前だろ!!」
上条の言ったことに動揺と恥ずかしさが押し寄せて来た。
私が誘った!?そんな……そんなことありえない!いつも素直になれないこの私が自分から誘うなんて。
上条「? おーい、御坂さん?」
御坂「ここここの私から誘う訳ないでしょこのドヘンタイ! いい加減にしろゴルア!!」バリバリバリ
上条「ヒッ!? ふふ不幸だー!!」パキン
94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/25(日) 23:53:40.38 ID:P5rurOuJ0
ーとあるスキー場ー
12:00
御坂「キャー!」
ここは中級者コース。昨日のうちにスノボーをマスターした御坂は朝からリフトとゴンドラを乗り継ぎ上級者コースからスタートしていた。一番下まで下るとまた登り、下るとまた登りを繰り返し気付けば午前が終わっていた。
朝の事で朝食の時間まで不機嫌であったが、上条の必死の弁明により、昼食をおごる(上条が)ということによりなんとか許してもらえることになった。
上条「あの御坂さん、そろそろお昼にしません? 上条さんはもうお腹がすいて大変です」
御坂の少し後に上条が続いて来た。御坂はすでに上条よりスノボーがうまくなってしまい、ついて行くのがやっとの状態になってしまった。
御坂「あらもうそんな時間? ん~、じゃああそこのデッキで良い?」
中級者コースの隅にある休憩兼飯処へ二人は滑って行った。入り口の近くにはすでに何個かボードが立てかけているが、まだピーク時は来ていないことを確認すると中へ入って行った。
黒子「初春! お姉様はどこですの!?」
初春「御坂さんは現在中級者コースの途中にある休憩所に入ったみたいです!」
旅館の部屋の中で初春が携帯電話を片手に黒子に情報を伝えた。前日からこの作業ばかりのためか、少し疲れが見え始めたが、今日は部屋に佐天も残り、初春の相手をしていたので幾分かマシだった。
佐天「初春~この近くに温泉は入れるところあるって! 後で行こ~いや絶対行こう! そこじゃなきゃ嫌だ!」
佐天が部屋で寝転がりながら観光マップと携帯を交互に見て初春に温泉を誘った。
初春「はい! 絶対行きましょう! でもなんでそこじゃなきゃ嫌なんですか?」
佐天「そこの温泉にはね……死して尚通う幽霊が現れるんだって!」
初春「……」
佐天が興奮して携帯のサイトを見せてきたであろうとこまで聞いて黒子は電話を切った。
黒子「はあ。お気楽なものですわね。まっこっちはこっちでまた邪魔をさせて頂きますわよお姉様」
95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 00:41:48.09 ID:QJBPG9Gc0
ー休憩所ー
上条「やっぱゲレンデの昼食と言ったらカレーだよねー」
御坂「そうなの?」
上条「いや知らないけど」
御坂「適当ね。ん? アンタ鼻にカレーついてるわよ? あ~もう動かないで、今拭いてあげるから。全く食べ方まで適当なのね」
へーへーすいませんという上条に優しく鼻についたカレーを拭いてあげる御坂。見ようによってはカップルのいちゃつきにしか見えないその光景に、一人ドス黒いオーラを放つ者がいた。
黒子「(あんの類人猿ー! お姉様に拭いてもらってそれだけですの!? いやそもそも拭いてなにちゃっかり拭いてもらっているのですの!?)」
御坂「にしてもアンタ、ホントに昨日の夜なにもしてないでしょうね?」
黒子「」ピク
上条「だからなにもしてねーって! むしろしたのはお前からだって! ……まあ確かに一瞬危なかったけど」
黒子「」ピクピク
御坂「信用なんないのよねーアンタみたいなドヘンタイが一緒に寝てたと思うと」
黒子「(一緒に寝た!?)」
御坂の言葉が癪に触り、上条も少し語気を強くする。
上条「心配しなくたってお前みたいな貧相な体に上条さんは欲情したりしませんよ」
その言葉に御坂もイラつきを覚える
御坂「はん、じゃあ旅行に来るのはもっと発育のいい子の方が良かったかしら?」
上条「あ~そうだな。お前はすぐ怒るし電撃飛ばすし、こっちだって疲れるわ。どうせくるんだったらもっと優しい____」
このままじゃマズい。また喧嘩をしてしまう。御坂は心の中ではすでにそれがわかっていた、すぐに「話しを掘り返してごめん」と謝るべきだ。でも口からでる言葉はそれと逆、売り言葉に買い言葉。このままではせっかくの楽しい旅行がつぶれてしまう。でも、それが言えない。
御坂「じゃあ、私なんかと、こんなとこ来ても楽しくないじゃない……」
上条「……は? お前なに___」
御坂「アンタなんかと……」
ダメ、その先を言ってはダメ……けど思いとは裏腹に口から違う言葉がでてしまう。
御坂「アンタなんかと来たって、私だって楽しくないわよ!!」
御坂の大声に室内が静まり帰る。
よく見ると、御坂の目には涙がたまっているのがわかるが、声をかける前に御坂は休憩場を出て行ってしまった。
上条「……言い過ぎちまったな」
「はあ」と大きくため息をつき御坂を追いかけるため席を立ち上がる。
上条「ちゃんと謝らなきゃな。……なんか俺この旅行謝ってばかりな気が……」
バシャン
上条の頭の上に突然水の入ったピッチャーが現れた。
黒尽くめ(黒子)「アーシマッターテガスベッターゴメンアソバセデスノー(お姉様を泣かせやがって腐れ類人猿めー!)」
上条「……不幸だ」
99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 11:48:02.78 ID:4kZm8KnI0
上条「すいません、乾燥室ってありますか?」
上条が頭から水滴をこぼしながらウェアを脱いで休憩所の店員に尋ねた。
先ほどのケンカも見ていた店員は、さすがに気の毒に思ったのか、職員専用の乾燥室に招いてくれ、タオルを貸す。
上条は乾燥室で御坂になんて謝ろうかなと考えながら、隣に置いてあるラジオを聞いていた。
上条「御坂のやつ、泣いてたか? あいつ、やっぱ涙腺弱いのかな?」
「ピー……ガー……この後の天気をお伝えします。ピー……とあるスキー……は夕……より……きとなりますのでご……意くださ……ガー」
上条「……早く乾かねーかなー」
_________________________
ー上級者向け林道ー
ズシャ
……盛大にコケてしまった。雪がウェアの隙間から中に入ってきて冷たい。
今はお昼時だからか、元々このコースが不人気なのか、周りには人っ子一人見当たらない。あるのは雪や木々たち、そしてこの細い林道の右側には高さ約20メートルの崖と呼べるほどの傾斜。その崖の寸前に御坂はいる。危うく落ちる所だった。
物音がなにもしない。それは今の御坂にとって少し心地良ものだった。
そのまま仰向けになり雪のベッドで空を仰いだ。
こんな状態で、楽しくスノボーなんてできるはずない。
御坂「また、怒らせちゃったかな」
なんで自分はこんなに素直じゃないんだろう。ホントは一緒に来れて楽しいし、うれしい。あいつになら、別になにされたって構わないのに……いややっぱ記憶がないときにされるのは嫌だけど。
ウェアのポケットから昨日上条からもらったゲコ太のストラップを取り出し、紐の先っぽを持ってブランブランさせて眺める。
御坂「私、いつかちゃんと言えるのかな……アンタはどう思う? ゲコ太」
何も答えないゲコ太ストラップに、自分のしていることがおかしいことに気付き、少し笑みが溢れる。
御坂「フフ……でもせめて追ってくるとは思ったんだけどな~結構怒ってるのかもね、あいつ」
帰ったらしょうがないから謝ってやるか。あとはまあ、あいつ単純だからなんかおいしいの食べさせたら機嫌直すでしょ。
ゲコ太ストラップを再びポケットにしまい 「さてと」 と立ち上がると、先程ちゃんとしまえてなかったのか、ゲコ太ストラップがポケットから転がり落ちた。崖の淵にいたせいか、ストラップは崖の様な傾斜の1メートルのとこへ落ちてしまった。
御坂「うわ! あぶないゲコ太なくすところだった。……でもちょっと取りづらいとこに落ちたわね」
しょうがないと一つため息を吐きボードを外すと、御坂は恐る恐るストラップを取りに行った。
たった1メートルだと言うのに、この傾斜ではきつい。
一歩、もう一歩と踏み出し、手を伸ばせばもう届く距離まできた。
その時
ズボッ
新雪地帯で雪が固まっておらず、足が一気に下へ落ちていく。突然の出来事にバランスを崩し、そのまま御坂は下まで一気に転がり落ちてしまった。
一気に転がった勢いのまま木に体がぶつかり頭を強く打ちつける。
その衝撃で木の上に溜まっていた雪も御坂に降りかかり、体の半分は雪で覆われてしまった。
御坂は脳震盪を起こし、頭にケガもしたのか猫耳のついた白いニット帽に真っ赤な血が染まっていく。
御坂は薄れゆく意識の中で上条をひたすら呼んだ。
御坂「……とう……ま……________。」
_________________
上条「やっと乾きましたよ上条さんのウェア! ってなんでこんな所に穴が空いてるんですか!? あっ! この火の粉かちきしょー!」
「ピー……ガー……繰り……しこの後の天気を……え……す。ピー……とあるスキー……は夕方……り吹雪……りますので……注意くださ……ガー」
_________________
105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 17:47:46.52 ID:4kZm8KnI0
ウェアが乾いた上条は店員に御礼を言い休憩所を後にした。
これからどうするか考えたが、御坂はどこにいったかわからないし、このまま1人で滑っててもつまらないので一旦旅館に帰ることにした。
上条「まっ、部屋で待ってたらいつか御坂も帰ってくるだろ。それにあいつがいない今なら部屋の露天風呂も1人でゆっくり浸かれるってもんだ」
上条は意気揚々と帰り途中5回ほど人に突っ込まれながら旅館へと帰った。
ー旅館ー
旅館につくとなにやらロビーで騒いでる人たちがいる。
黒子「ちょっと初春! どこに行こうとしているんですの!?」
どーにも聞き覚えのある声、口調、そしてあのツインテール。あれはもしや?
初春「放して下さい白井さん! 私は、私は温泉に入りに行くんですー!」
初春が珍しく黒子に反抗しているその横で、佐天は苦笑いをしていた。
佐天「まぁまぁ良いじゃないですか白井さん。なんだったら白井さんも一緒に温泉に行きましょうよ」
初春を捕まえている黒子の手を握り、説得をし始めた。
黒子「ですがお姉様と類人猿を!!」
佐天「でもケンカしてたんですよね? それなら今は目的が達成してるんだし、あたしたちも旅行を楽しみましょうよ」
うぐっ、と言葉が詰まる黒子。ふと初春を見たら絶対温泉に行く! と言われてるかの様な目をしていたので、これ以上やったらホントに初春が怒ってしまうと感じたのか、渋々了承した。
黒子「わかりましたわ。一旦は温泉に行って身を清めましょう。 ただし帰ってきたらまたしますわよ」
黒子の承諾に初春は元気よく返事をする。
とその後ろに、今回の目的(ターゲット)である忌々しい類人猿が立っていた。
上条「よ~白井。お前も来てたのか」
ビクッっとした黒子は、ごまかすため瞬間的に上条の真後ろへテレポートし黒尽くめへ変装した。
しかし、そのテレポートこそが黒子の確固たる証拠であるため、もうごまかしきれないと佐天と初春は悟った。
上条「? あ! その黒尽くめ! お前だったのかよ……で、何が狙いだったんだ?」
だいたいの理由はもうわかっているが、一応聞いてみることにした。
黒子「ももももちろん、愛するお姉様の露払いにですわ! お姉様がゲレンデに立たれたらまるで雪の化身の如くお美しい限りは予想されましたので」
その露払いには俺も入ってるんだろ、と大きなため息を一つもらす。
ところで、じゃあなんでこいつらはここにいるんだ? 御坂を追いかけてるんじゃないのか?
上条「……なあ、御坂が今どこにいるか知らないか?」
黒子「お姉様? さあ、私も見失ってしまいまして」
初春「私も、途中から見失って追跡できなくなってしまったんですよ」
上条「おいおい追跡って……ん?」
あれ、なんでずっと俺らを捕捉してたこいつらが急に見失うんだ? そりゃ一秒も目を離さないなんてのはできないにしても……。
上条「……ま、考えてても始まらないし、風呂にでも入ってくるか。そのうち帰ってくるだろ」
106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 20:45:44.16 ID:3rrHFqXa0
19:00
上条「……ん? 寝てたか、まあ今日はあんまり寝れてなかったからな……ってもうこんな時間じゃねーか! おい御坂!」
黒子たちと別れ、部屋で一人露天風呂を満喫した上条はいつの間にか眠っていた。
こんな時間ならもう部屋にいるハズと思い込んで御坂の名前を呼んでみたが返事は返ってこなかった。
上条「? あいつ、まだ帰ってなかったのか。さすがの上条さんも心配しますよ?」
胸の辺りで変な感じがするのを少々自覚し、携帯を取り出す。
が、メールも着信も入っていない。
さっきの喧嘩で連絡しづらいのかと思いつつ、御坂に電話をかけてみる。
1コール、2コール、3コール……でない。
おかしい。もう夕食が運ばれてくる時間、どんなに怒っててもせめて一言くらい連絡をいれるだろ。
外を見るといつの間にか吹雪きが舞っている。これはいくらなんでもまだ滑っているとは考えにくい。まさか……。不安を押しのけつつ、フロントにも確認してみる。
プルル ガチャ
女将「はいフロントです」
上条「あ、女将さん! 俺です、上条です!」
女将「あ~上条様、ご夕食のことですか? それでしたら只今ご用意しておりま」
上条「御坂から、御坂美琴からなにか連絡はきていませんか!?」
のんびりと応対をしていた女将さんも、上条の声色からなにかただ事じゃないことがあったことを感じる。
女将「御坂様ですか? いえ、こちらにはなにもご連絡は入っておりません……なにかおありになられたんですか?」
上条は御坂がまだ帰って来ていないことを説明し、女将さんに警察の要請のお願いした。
しかし吹雪で交通機関が全てストップ、車も走るのが困難な状況で到着にはかなりの時間がかかると告げられた。
女将が外に出てはいけないと言っているみたいだが、上条の耳には入らずそこで内線を切った。
上条は急いでウェアを着込み、部屋を出る。
旅館入り口まで走って行く途中に、黒子たちと遭遇した。
黒子「あら、そんな急いでどうなさいましたの? ままままさかわたくしの事がお姉様にバレたんですの!?」
黒子が自分の心配をしてガタガタ震えていると、佐天が上条の尋常じゃない表情からなにかを感じた。
佐天「あの、なにかあったんですか? 私たちで良ければ手伝いますよ」
上条は黒子たちに心配かけないよう黙っていようとしたが、先ほどのフロントでの会話を黙って聞いていた佐天にはある程度の察しがついた。
佐天「御坂さん、まだ帰って来ていないんですね。この吹雪の中で」
黒子の動きが止まり、ギョッとした目で恐る恐る上条を見て、ホントにまだ帰って来ていないことを確信した。
初春は両手で口を覆い、今にも泣き出しそうな顔をしている。
上条「……ああ。なあ、なにか情報はないか!? ほんの少しで良い! なにか知らないか!?」
上条が認めると、黒子はその場に崩れ落ち、お姉様……お姉様……とかすれた声で呟いている。
しかしそこで初春がなにかを思い出しかのように呟いた。
初春「上級者コースの林道……」
上条が驚いた表情で初春を凝視し、咄嗟に両肩を掴んで問いただした。
上条「上級者コースの林道が、なんだって!?」
108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 21:05:08.35 ID:3rrHFqXa0
__________
寒い、冷たい。なんでこんなに寒いの? 私は今どこにいるの?
顔が痛い。手足が動かない。声も……でない。
何が起きてるの? 怖い、怖いよ。
暗い、真っ暗。でも音だけが聞こえる。なんの音? あ、私の携帯だ。携帯が鳴ってる。誰から? でも今はとれないんだ、ごめんね。まさかあいつからかな? そんなことはないか、さっきあんなひどい事言ったもんね。
あいつ、まだ怒ってるかな? 帰ったら、またいつも通り話してくれるかな? また、いつもの自販機の前であいつがお金のまれて、不幸だって言ってさ。フフ、あいつは何回あの自販機にお金のまれれば気が済むのかしらね。
……帰ったら謝らなきゃ。あと、もう少し素直にならなきゃ。わかってる、私が素直じゃないってのは私が一番自覚してる。
わかってる。わかってるもん。だって、私はあいつが……好きだから。
やらなきゃいけないこと、たくさんあるなあ。
……私、このままどうなるの?
一人でいるの?
怖い、怖いよ
あの時みたく、助けてよ。
助けてよ……当麻……_________________
___________
109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 21:40:40.00 ID:3rrHFqXa0
上条「それで、その上級者コースの林道がなんだって!?」
初春の肩を乱暴にふるわせ、急かすように問いつめる。
佐天「ちょちょっと待ってください!落ち着いて!」
佐天が間に入って上条を止める。それで少し冷静になったのか、今度は声のトーンを少し下げて聞いた。
上条「それで、その上級者コースの林道がどうしたんですか?」
初春「ははい! あの昼間御坂さんを追跡してて、最後に見たのがその林道だったんです。一瞬しか目を離さなかったから、おかしいなとは思ったんです」
初春の言葉を聞いて、黒子が立ち上がり旅館の出口の方へ歩き出した。
上条「お、おい白井! お前どこに行くつもりだ!?」
上条が声をかけると、悪党を睨めつける様な目付きで上条の方へ向いた。
黒子「決まっていますわ。お姉様を救出しに行きますの」
それなら俺がと言いかけても、黒子の口は止まらない。
黒子「だいたい、こうなってしまわれたのは誰のせいだと思っていますの? あなたがあの休憩所でお姉様を傷つけるから、お姉様を見失い、この様な事態になってしまわれたのよ?」
黒子の言葉が上条に刺さる。
なにも言えない。その通りだ。これは俺の責任だ。だから!!
上条「それでも、俺が行かなきゃいけないんだ。俺が御坂を傷つけて、泣かせてしまったから……俺が助けに行かなきゃいけないんだ!!」
上条の気迫にたじろぐ黒子、「でも」と言おうとしたが、言葉が詰まる。
上条「それに、もし白井が御坂を助けに行って、帰って来れなかったらどうする? 御坂はとっても悲しむんじゃないか? お前は、御坂のパートナーなんだろ? だったら、御坂が帰ってきたとき笑顔で迎えてやれよ! おかえりって、最高の笑顔で言ってやりやがれ!」
黒子「でも、それではあなたが!」
上条「俺は大丈夫だ。なんたってこの上条当麻は生まれもっての不幸体質。こんぐらいでへこたれる程、やわな不幸を味わってねーからな!」
言い終わると同時に上条は走り出した。初春にサポートを頼み、その場をあとにする。
黒子の眼に涙が溜まる。自分が行けなくて悲しいからではない。この状況を、全て上条当麻のせいにしてしまった自分が情けないからだ。
佐天が黒子を抱きしめ、三人はフロントロビーで二人の帰りを待つ事にした。
111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 22:15:27.37 ID:3rrHFqXa0
ー上級者コース林道ー
上条「クソっ! なんだよこの吹雪! 前が全然見えねえじゃなねえか! 初春さん! 御坂を見失ったポイントまで、あとどのくらいだ!?」
この吹雪の中、当然リフトは全てストップされており、なんとか自力で上って来た上条。しかし上級者コースの高さまで登ると吹雪は強くなる一方で、前が全く見えない状況だった。
初春「上条さん! その林道を道なりに進んで後100メートルちょっとです!」
初春の適切な指示が飛ぶ。そのサポートがあって本当に良かったと心から上条は思った。
上条「わかった! また連絡する!」ピッ
クソ、どこにいるんだよ御坂! お前がいなくなったら俺はどうしたら良いんだよ! 俺は……俺は……!!
上条「御坂ーーーー!!」
_____________
……あいつの声がした。この暗闇の中で、ずっと聞きたかったあいつの声が。
あいつが助けに来てくれた。私を、救いに来てくれた。
あいつが呼んでる。行かなきゃ、当麻のもとに、行かなきゃ!
御坂「当麻ーーーー!!」
バリバリバリ
御坂は今出せる全力の声と共に、今の状態で撃てる最大の電撃を出した。
と言っても、その威力は高さ1メートルにも満たない小さい電撃。
しかし、上条に伝わるには十分だった。
_____________
バリバリバリ
少し先の方で青白い光が見えた。あれは、あの電気をだせるやつは一人しかいない。
上条「御坂!!」
やっと見つけた。急いで駆けつける。
しかし御坂がいるのは崖の様な傾斜の斜面。
それでもやっと御坂を見つけた上条はかまう事なく下って行き、そして転がった。
上条「ぐえ!」
途中生えている木に体がぶつかり、勢いが殺されなんとか御坂のもとへとたどり着いた。
112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 22:51:12.68 ID:3rrHFqXa0
上条「おい御坂! 大丈夫か御坂!」
御坂の体を覆っていた雪を払いのけ御坂を抱くと、体がとても冷えていた。
いったい何時間ここにいたんだと絶句するほどに。
上条「御坂! 俺がわかるか!? 御坂!」
御坂の耳元で叫びに近い声で呼ぶ。
御坂は震えた声で、でも、まるで母親に抱かれた赤子の様な表情で上条に返事をした。
御坂「来るのが遅い……のよ……バカ。」
上条「ああ、悪かった。ごめんな、遅れちまって」
上条は御坂を思い切り抱きしめ、泣き出しそうな声で答えていた。
すぐに御坂を運ぼうとしたが、御坂がなにか言っている。
御坂「私……アンタに謝らないといけない……ことがあるの……」
上条「ああ、聞いてやる。後でたっぷりと聞いてやる! だから今は早く!」
御坂「さっき、……ごめんね……、あんなこと言って……私……素直じゃ……ないから……」
ああ、ああと頷くしかことしかできない。
知ってる。そんなことくらい上条さんにはお見通しだ。と冗談まじりに返事をすることしかできない。
御坂「私、この旅行……すごい楽しかったよ……フフ、なんでアンタが……泣きそうになってんのよ……」
御坂の声がどんどん小さくなっていく。どんどん細く、どんどんか細くなっていく。
上条「俺も、この旅行は楽しかった。怒ったり泣いたり照れたり、笑ったりうれしそうにしたりする御坂を見て、俺はいつの間にかお前に惹かれていった。お前のことしか考えれなくなった! 俺は……俺はお前が……!」
御坂が幸せそうに微笑むと、「そこまで聞けて十分、私も幸せ」と囁くと、その眼を閉じた。
上条「……お、おい、おい御坂!? 冗談だろ!? ……またいつもみたいにビリビリだして俺に怒鳴るんだろ!? なあ、御坂! 眼を覚ませよ!」
いくら叫んでも、御坂から返事はない。
上条「……そーかよ。神様は俺から御坂まで奪おうってのか。やっと気付いたこの気持ちも、全部無駄にさせようってんのか……」
上条は御坂を抱きしめ、空を仰いだ。この吹雪も、神様も、全部を視線に入れるように。
上条「……そんなことはさせねえ。御坂は渡さねえ」
上条「お前が俺から御坂を奪おうってんなら、俺が……その幻想をぶち壊す!!」
上条はその場ですぐに自分のウェアを脱ぎ、上条は中に着てた長袖のTシャツとジャージだけになり、ウェアを御坂に着せて背中へ担いだ。
肌に寒さからの激痛が走る。しかし、上条は歩く脚を止めない。
上条「さっきまで御坂が耐えてた痛みに比べれば、こんくらい!!」
吹雪が舞う中、上条は背中の人を守るため、ひたすらに歩き続けた。
______________
114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 23:30:38.92 ID:3rrHFqXa0
眼を覚ますと、私は病院にいた。
隣にはオンオン泣いてる黒子と、うれしそうに笑っている初春さんと佐天さんがいた。
その奥にはカエル顔のあの医者がいた。
冥土帰し「おや、眼をさましたのかね?」
なぜ学園都市の病院に私はいるんだろうと少し考え、飛び跳ねる様に記憶を思い出した。
御坂「あいつは!? 当麻はどこ!?」
ガバっと起き上がると、体に痛みが……ない。
冥土帰し「彼ならいつもの病室にいるね。いやしかし驚いたよ、キミが遭難したって聞いてたのに、彼の方が重傷なんだものね」
あいつの方が重傷? なんで? と思っていると冥土帰しが聞いてもいないのに説明してきた。
冥土帰し「どうやら、キミは無意識のうちに微弱な電磁波で体表面を覆って、急激な体温の低下を抑えてたみたいだね、ってキミどこへ行く!?」
御坂は全力でいつもの病室まで走っていった。
自分が無事だった理由なんてどうでも良い。あいつのもとへ行かないと!
御坂は上条のいつもの病室までたどり着くと、勢い良く中へ入っていった。
上条はどうやら寝ているらしく。御坂が入って来たのに気付いていない。
上条は両手足に包帯が巻いてあるが、顔色を見る限り平気そうだったので安心した。
ベッドの隣にある椅子に座り、上条の無事に胸を撫で下ろした。
御坂「ったく。こんなぼろぼろになるまで無理して。アンタが倒れたら……どうする気だったのよ……」
眼から涙が溢れる。無事で良かった。こいつが無事で、ホントに良かった。
涙が枯れると、あまりにもこの病室になじんでいる上条に急におかしくなり、一人でくすくす笑ってしまった。
御坂「でもま、ありがとね、当麻……あの時の言葉の続き、また聞かせてね」
そっと立ち上がり、上条の頬に軽くキスをする。
こいつが起きない様に、優しく、ゆっくりと。
御坂「……~~~~!!!!」
途端に恥ずかしくなり御坂の頬は紅潮する。
その場にはいれなくなり勢い良く部屋を出て行った。
バタバタ バン
……パチ
上条「……これ、寝たふりだったって知ったら、あいつ怒るよな」
上条の体の毛穴という毛穴から大量の汗が出て来た。
上条「しかも、今度続き聞かせてって言ってたよな。続きって、あの続きだよな?」
上条「……言える訳ねーだろー! 上条さんにどんなキャラ期待してんですかあのビリビリ中学生はー!」
御坂は部屋に戻ると、顔が赤くなってる御坂に黒子が問いつめてきたが、全部耳に入ってこない。
御坂「(ったく。この私が寝たふりなんか気付かないと思ってんのかしら。……ま、さっきのことはあいつ寝たふりがうまくいってると思ってるだろうから、なかったことにされるんだろうけど。……はあ」
上条「ま、しゃーないか」
____________
上条・御坂「「あ~あ、不幸だ♪」」
fin
115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/26(月) 23:36:20.83 ID:3rrHFqXa0
おおおおお終わったーーー…………!!!!!
なんとか完結させることができました…。
読んで下さった皆様! 本当にありがとうございました!
こんな拙い文章と、へたくそな展開構想に、いら立ちを覚えた方もいらっしゃると思いますが、そんな皆様ひっくるめてありがとうございました!
初めてss書いたのでわからいことがたくさんあったんですが、なんとか出来てよかったです。
今度、このスノボー事件があったことを踏まえてのクリスマスssも書こうと思っているので、良かったらまたお付き合いください。
では皆様、本当にありがとうございました。
またよろしくお願いします!!
131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 12:57:18.56 ID:AewtC1w70
『美琴「スノボー旅行2泊3日の旅 温泉付き、かあ……」』【クリスマス編】
あのスノボー事件から2週間。日付にして12月9日。
学園都市ではクリスマスに備え、独自に開発された新型イルミネーションを街に試験的に配置し、一目見ただけでは外の街となんら代わり映えのないクリスマスムードを演出していた。
街にはサンタのコスプレを早くもしているお店があったりと、クリスマスまでもう少しなんだと実感し、彼女や彼氏に渡すプレゼントを買う学生が多く見られる今日この頃。
そんな中、御坂美琴はイライラしていた。
美琴「……遅い」
美琴はこの寒空の中、いつもの自販機の前で誰かを待っていた。
制服のミニスカートからのびる足は、風が吹くと冷たさから鳥肌がたっていた。
美琴「なんであいつはいつも時間通りに来れないのよ」
さすがに寒くなったのか、冷えきった手を温めるため、美琴は自販機からホットコーヒーを買う。
美琴「はあ、温かい……。ったく、早くきなさいよ、あのバカ」
体が温まり元気が出てきた。が体力に余裕が出てきたら尚の事イライラしてきてしまった。
すると、公園の入口からツンツン頭の少年が気だるそうに歩いてきたのが見えた。
上条「いや~悪い悪い。また補習させられちまってさ……ってうわ!?」パキン
ものすごい勢いで電撃の槍が飛んできたが、危うく直撃してしまう寸前で右手を差し出しなんとか命を取り留めた。
上条「いきなり電撃飛ばす奴がどこにいる!! 死ぬとこだったじゃねーか!」
美琴「うるさい! 遅れたアンタが悪いんでしょ!」
毎度毎度、会って最初は必ずこのくだりから始まる。まるでそれがお決まりのように、まるでそれが今の自分達の関係性なんだと確認するように。
上条「んで、今日はどこに行くんですか? 上条さんは今日疲れてるからゆっくり休みたいんですが」
2週間前の旅行、二人は「スノボー事件」と呼んでいる事件から二人の距離は一気に縮まり、頻繁に会うようになった。
スノボー事件の翌日に退院した美琴は、上条が退院する1週間のうちに4日お見舞いに行ったり、退院してからも2日に一回のペースで会っている。基本的には美琴が無理やり誘っている形だが。
美琴「良いからアンタは黙ってついて来なさい」
上条「わかった目的地に着くまで黙ってる…………。」
美琴「ホントに黙ってんじゃないわよ! このバカ!」バリバリ
上条「んぎゃー!!」
132: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 12:59:11.78 ID:AewtC1w70
ーセブンスミストー
美琴「さ、着いたわよ!」
上条「なんだよ、買い物がしたいならしたいってそう言えよ。んで、なに買うつもりなんだ?」
美琴「べべべ別になんだっていいでしょ! 外が寒かったから行くだけよ! 」
美琴の顔が赤くなり押し黙る。
それはそうだ。クリスマス前のデパートはツリーが置いてあったり、男性客がレディースのフロアをウロウロしてクリスマスに向けて物色する光景が多く見られる。その状況ならスムーズにクリスマスの話題を出して、一緒にクリスマスを過ごそうと誘える。
なんて考えていることなんて絶対言えない。
上条「? ならとっとと入りませんか? 寒いんだろ?」
でもほんとに誘えるのか? この私が、クリスマスデートを? ここここいつと、クリスマスデートして、それで、それで……。
ニヘ……エヘヘと不気味に笑う美琴の頭からプシューと煙が上がり、その煙はすぐに電気へとなりバチバチと鳴り出す。
上条「!? みみみ御坂さん!?」パキン
美琴「ふぇ!?」
美琴の頭に手を置き、取り敢えずの漏電は抑えた。
上条「なんで漏電なんか……そんなに寒かったのか?」
美琴「あ、あ~まあそんな所ね。さささっさと中に入りましょ///」バチバチ
上条「また!?」パキン
133: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 13:00:48.67 ID:AewtC1w70
ーセブンスミスト フロア内ー
上条「で、中は温かいけど、中に入ってからなにをするんだ?」
上条が手をポケットに入れながら気だるそうに歩く。
美琴も中に入ってからの計画は特に立ててなく、クリスマスの話題をふることしか考えていなかった。
美琴「ふえ? そうねえ、じゃあ服でも見にいくか」
え~っと上条が不満を漏らしていたが計画のため気にしない。
レディースフロアにつくと、そこには案の定彼女へのプレゼント探しだと思われる男子学生が多く見られた。
上条「……あれ? なんかレディースフロアなのに男ばっかじゃね?」
美琴「(よっしゃ気付いたーーー!!!)」
美琴は心の中でガッツポーズをする。
話の下ごしらえは出来た。後は話題を調理するだけだ。
美琴「あっ、あれーなんででしょうねー男がいっぱい、なにか今月の20何日かにイベントでもあるのかしらねー」
上条「なんでお前棒読みなんだ?」
美琴「うううるさい! でも、ななんででしょうねー」
緊張して話を調理できない。セリフも棒読みになってしまう。
言え! 言うんだ! クリスマス前だからだよって、言うんだ私!!
美琴「もももしかしてクク、クククククリ……」
上条「ん~わからん。それより上条さんはやっぱ疲れたから、お茶でもしに行きません?」
美琴「(全く気付いてない上に別の提案されたーーー!!)」
美琴「えっ、え~でも……」
上条「まあまあ、ほら行くぞ」
上条は半ば強引に美琴の手を引き、そのまま歩きだしてしまった。
美琴「(あっ、手……)」
上条「たしか下の入口近くにカフェがあった気が」
美琴「……」
美琴「ふにゃ~……///」
ー常盤台 学生寮ー
22:00
美琴「(結局あの後お茶しただけで帰ってしまった……)」
寮に着くやいなや、ベッドに倒れ込みこのままではクリスマスが……と美琴は落ち込んでいた。
黒子「(お姉様、帰ってきてからずっとこの調子……なにかあったに違いないですわ)」
黒子「お姉様? お姉様は今年のクリスマスはいかがお過ごしになられますの? もしよろしければこの黒子、お姉様のためにホテルのスイート・ルームをとってお姉様と甘美な夜を……ってあら?」
ツッコミが来ない。いつもならここで電撃かげんこつらへんがくるハズなのに。
なにやら美琴は必死に携帯のメールを打っているようだ。でも打っては消して、打っては消しての繰り返しをしているらしい。
美琴「はあ……」
大きなため息を漏らす。そのため息はクリスマスに誘えなかったからなのか、メールの文章が決まらなかったからなのか。
もう一度大きなため息をつき、またメールを打ち直す。
141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 21:25:45.84 ID:vKcSp+3H0
____________
ー上条宅ー
22:00
上条「はあ、年明けまでインデックスはイギリスに帰ってるから食費が浮くな~この浮いた食費でなにしよ」
久々の1人生活(猫は除く)に多少の寂しさとくつろぎを感じる上条。
ベッドに横たわり、暇そうに携帯をいじりながら今日の出来事を思い出す。
上条「今日は寒かったな~御坂も寒そうにしてたし。ってか女子って冬でもあんな足出してて平気なんでしょうか?」
上条「……」
スノボー事件以来、気がつくと御坂のことばかり考えてしまう。
御坂が倒れた時、初めて俺は御坂のことが好きだという事を自覚し、失いたくないと感じた。
でも、御坂は俺のことどう思っているんだ?
いつもすぐ攻撃してくるし、最近は前より会う回数が多くなったけど、俺に助けられたことを気にしての事かもしれない。
……俺、いつの間にあいつにこんな惚れちまってたんだ?
上条「メールでも送ってみっかな。 ん?」
ふと何気なくテレビに目をやると、ニュース番組で何かショッピングモールの特集をしていた。
「こんにちわーお兄さん。今日はこちらに何をしに来たんですか?」
「あっ。えっと彼女へのクリスマスプレゼントを探しに」
「あら~そうですか。それでこちらのレディースコーナーにいるんですね。なにか目星はつけましたか」
上条「クリスマスか、すっかり忘れてたな。……そうですかクリスマスですかへーへーそうですか。良いですね彼女のいる野郎共は楽しそうにプレゼントなんて選んじゃって。どうせ上条さんにはそんな楽しいイベント起きませんよ」
少し卑屈になりながら何か引っかかる。
クリスマス……24日。男がプレゼントを選びに……レディースコーナー。
あれ? 今日セブンスミストでも似たような会話をしたな。
……もしかして御坂、クリスマス空いてるのか? もしかして、俺のこと誘おうとしてたのか?
……いや御坂に限ってそれはないな。でももしまだフリーなら……でもあんなお嬢様がクリスマスだってのに俺を相手するのか? しかもあいつはまだ中学生だぞ? 中学生をクリスマスに誘うって……
上条「だ~! 考えてもわかるわけねーだろ! とにかくまずは予定が空いてるかどうかが先だ!」
上条はツンツン頭をガシガシと掻きむしりながら携帯の電話帳から御坂美琴を押した。
143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 21:29:21.19 ID:vKcSp+3H0
___________
ー常盤台 学生寮ー
22:20
美琴「はあ……どうやって誘おう……」
黒子「(!? 誘う!? 誘うとは誰を誘う話ですの!? まさかあの類人猿!? )
美琴「……よし! もう1回メール作ってみるか!」
隣で黒子がなにか悶えているが、そんなの最近じゃあ毎日のことだから気にしない美琴。
ベッドでうつ伏せになり携帯にまた向かい出すと、フイに携帯が鳴り響く。驚いた拍子に携帯をベッドの上に落としてしまった。
美琴「ふえ!? びっくりした~。もう、こんな時間に誰よ人がせっかくまたヤル気出してきたのに」
1人でブツブツ言いながら携帯を拾い上げ着信画面を見ると、ついさっきまでメール画面の送信先に載っていた名前が浮かんでいた。
美琴「うえ!? あいつから!? なななんのようかしらおおお落ち着いて私別にあんたのこと考えてたなんて言う必要なんてないんだしししし」
ピ
上条「おう御坂か? 今へい」
美琴「別にあんたのことなんか考えてないんだからね!!」ブチッ
________
ツーツーツー
上条「きれた……やっぱ俺御坂に嫌われてるのかな? もういいや、寝よ。 うわ!? 」
携帯を床に置き、布団に潜り込もうとするとすでに先約のスフィンクスがいた。スフィンクスと眼が合うこと約2秒、突如襲いかかって来た。
上条「いて! いててて! おいやめろスフィンクス! なんなんだいきなり!」
スフィンクス「にゃーご!(わいの飯忘れてるさかいに引っ掻いとるんやアホンダラ!)」
上条「いててて! おいやめろ! やめ」バキ
上条「……」
足下に嫌な感触がした。恐る恐る見てみると、そこには無惨な携帯が転がっていた。
上条「ふふふ不幸だー!!」
スフィンクス「うーにゃ(ワイを労らなかった罰や)」
___________
美琴「ハアハア……。……あーーーきっちゃったどうしよー!! 早くかけ直さないと!」
「おかけになった番号は現在電波の……_____」
美琴「で、出ない……」
144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 21:32:16.67 ID:vKcSp+3H0
一週間後
12月16日
ー自販機前ー
美琴「はあ……あれから一週間も会ってない……もうクリスマスまで時間がないし、どうしよ」
美琴は自販機の隣にあるベンチに腰掛け、缶コーヒーをすすっていた。
美琴「連絡もつかないし、なにしてんのよあいつは……」
あれから一週間、上条と連絡がとれなくなった美琴は、毎日の様にこの公園に来ていた。
ここならあいつと会える気がする。そんな些細な偶然を期待して今日も彼を待つ。
美琴「ここにいてもあいつと会えないし、私のこと避けてんのかな?」
そんなことばかり考え始めると止まらなくなる。次第に涙が出てきそうになる。
下を向き、一人の世界に入り始めると誰かが声をかけて来た。
顔を上げると、さんざん探してたあいつがいた。
上条「ビリビリ、こんなところでなにやってんだ?」
なに食わぬ顔で話しかけてくる。今までどんだけ連絡しても無視してきたくせに、ひょうひょうと。
美琴「……あんたを待ってたのよ」
上条「へ?」
美琴「あんたが連絡返さないから! この私からあんたが来るのをずっと待ってたのよ!」
美琴が怒鳴りつける様に言い放つ。上条は一瞬なんのことかわからなかったが、携帯が壊れていることを思い出し、なんとか弁明した。
なんとか理解してもらえたが、美琴の怒りは収まらずそのまま小1時間説教をされ、ようやく落ち着いて来た。
145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 21:35:05.66 ID:vKcSp+3H0
上条「ところで、なんでずっと待ってたんだよ。そんな急用でもあんのか?」
美琴はうぐっとなったが、本題のクリスマスのことについて少しずつ話しを切り出した。
美琴「別に、急用って訳じゃないけど、アンタが今年のクリスマス、どどどーしてるのかなって世間話をしたかっただけよ」
上条「はあ? それだけ?」
美琴「それだけで悪い!? だいたいアンタがメールもなにも返さないから」
ギャーギャーと携帯の話しを掘り返してきた。
スノボーではこれでケンカになったのに学習しないのかと心の中で上条は思ったが、口に出すとまた面倒なのでやめた。
上条「別に、上条さんにクリスマスなんてありませんよ。家で一人であか○やサンタを見る予定で……!!」
上条「(待てよ。クリスマスの予定を聞いてこいつはどうするんだ? 俺を小馬鹿にする気か? 哀れんだ眼で俺を罵倒する気か? ククク、甘いぜビリビリ中学生、上条さんにはそんなことお見通しよ!!)」
上条「うーあ~。クリスマスなら予定ぎっしりだぜ? いやー今から楽しみだ」
上条は棒読みで台詞を吐くかの様に言った。
どうよと美琴の眼を見ると、なにやら悲しそうな、寂しそうな、泣きそうな眼をしていた。
上条「え? 御坂さん? どうしたんでせう?」
声をかけても反応しない。
沈黙が流れる。
なんでそんな泣きそうな顔をしてるんですか? 冗談だよと言おうとしたが、美琴が少し早く話しだした。
美琴「へ、へ~そうなんだ。そりゃあ良かったわね。……あ~あ、アンタがクリスマス何の予定もなかったら大笑いしようと思ったのに。ま、私には常盤台で行われるダンスパーティーっていうすばらしいイベントが待ってるから、アンタの予定なんか関係ないけど。あ~良い男いたら良いな~」
美琴の言葉に力がない。なにかを紛らわすようにべらべらと話し続ける。
美琴「まっ、それだけの世間話をしたかっただけなのよ。じゃあね。クリスマス、せいぜい凡人なりに楽しみなさい」
言い放つと美琴は全力で走っていってしまった。
開いた口が塞がらない。
なんだったんだ? あいつは。
しかし、今の会話で美琴のクリスマスの予定が入っていることがわかった。
寂しいが、所詮俺が恋を叶えようなんて無理な話しだったんだ。と少し自嘲ぎみに笑う。
上条「……でもなんであいつ、あんな悲しそうな顔してたんだろ」
少し考えるが、答えが見つからない。
冬の風が体に刺さる。あの吹雪に比べればなんてことのない寒さだが、なぜか体に響く。
街ではクリスマスの音楽が流れ、これから恋人たちの聖なる夜が来る事を予兆させた。
149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 23:07:58.69 ID:vKcSp+3H0
12月24日
クリスマス当日
ー上条宅ー
上条「わはははー。さすがあか○やサンタ、面白れー!」
あの日、御坂と会って以来、連絡をとっていない。いや、正確にはとらなかった。あいつがダンスパーティーで男を捕まえるなんてことは聞きたくなかったからだ。
逆に御坂からも連絡はこない。せっかく携帯が復活したのに、音沙汰がまったくなかった。
あまりにも寂しかったので、土御門や青ピにクリスマスの予定をさりげなく聞いても、義妹がどーたら運命の出会いがどーたら言ってはぐらかされてしまった。まさか本当にあか○やサンタなんて見るとは思わず、CMに入るたびに不幸だと口にだしてしまいそうだった。
御坂は今頃、どこぞのイケメン貴族でも捕まえて楽しく踊っているのだろうか。俺のことなんか最初から知らなかったかの様に忘れて……。
そんなことを考えると当てようのない怒りや悲しみが押し寄せてくる。あのスノボー事件で俺はあいつが好きだと気付いた。守りたいと、この先も一緒にいたいと思えた。でも今はそう思ったことを後悔している。こんな気持ちになるなら最初から気付かなければ良かった。あいつのことなんて、好きにならなければ良かった!!
俺はテレビを消し、そのままベッドに入った。
______________
151: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 23:09:37.27 ID:vKcSp+3H0
ー常盤台 寮ー
美琴はボーットしたまま、ベッドに横たわっている。
せっかくのクリスマスだと言うのに、なんの予定もいれず、普段の生活の方が充実しているくらいなにもしていなかった。
その部屋には、黒子も一緒にいた。まさか本当に美琴が予定を入れないと思っていなかったのでホテルのスイートルームを予約していなかったのだ。ジャッジメントは一応非番にさせてもらっているが、美琴と一緒にいることが彼女の幸せであるから、当然の選択とも言える。
黒子「お姉様! せっかくのクリスマス! 黒子はお姉様と一緒にケーキを食べにいきたいですわ~……なんて」
黒子がいくら呼びかけても美琴は聞いていない。いや、耳に入っていないという表現の方が適切かもしれない。
一週間前、お姉様が泣きながら帰ってこられてからずっとこの調子。どうしたのか聞いても何も言ってくれない。あの殿方のことかと聞いても、私が悪いだけとしか言わない。
なら今から類人猿を潰しに行くと言うと、「あいつの幸せを邪魔しないで」としか言わない。そしてまたこの状態になる。
私に出来る事はただ一緒にいるだけ、少しでもお姉様が元気になるよういつも笑ってお姉様を迎えるだけ。それがお姉様の、いえ、あの類人猿に言われた、パートナーとしての努めですもの。
黒子「雪が、降ってまいりましたわね」
___________
153: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 23:12:34.74 ID:vKcSp+3H0
ー上条宅ー
眼を開けると、部屋の電気がとてもまぶしく感じる。どうやら寝てしまっていたようだ。
時計に目をやると午後8時を迎えていた。
体中から気だるさが押し寄せてくるが、とりあえず体を起こし、テレビをつける。テレビではクリスマスのイルミネーションスポットの中継をやっていた。
上条「今日、クリスマスなんだったな」
テレビの中の人々は、イルミネーションの明かりに照らされ、幸せそうな顔をしていた。手を繋ぎ歩くカップル、子供がはしゃいで走るのを止めるお母さん、様々な人たちが今日という日を楽しんでいるのに、俺はなにをやっているのだろう。
上条「コンビにでも行くか」
コートを羽織り、部屋の電気を消したことを確かめて、ドアを閉じた。
外はさすが12月末ということもあり、雪が少し積もっていた。つい最近雪を見たばかりだが、雪山で見る雪と、この科学の結晶とも言える学園都市で見る雪はまったくの別物の様に見えた。
まだ誰にも踏まれていない新雪の雪道を一人歩く。かじかんだ手を押し込めるようにポケットに突っ込み、背中を丸くして歩く。知らない人が見れば、その背中からは今フラれましたと書いてあるかのようだが、この雪が背中に積もればそんな字も消えるかなと詩人きどりなことを考える。
背中が寂しく震える。
____________
154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/28(水) 23:15:05.45 ID:vKcSp+3H0
ー常盤台 学生寮ー
黒子「お、お姉様、そろそろお腹減りませんこと? 黒子はもうお腹が減りすぎてお姉様を食べてしまいそうですわ。オホ、オホホホ~……」
美琴は依然黙ったままだ。美琴の現状に、さすがの黒子も限界を感じ、ため息が漏れる。
当然、怒りは上条当麻に向けられるが、美琴にも多少の憤りを感じる。以前の美琴であったならこんなことすぐに笑い飛ばし、次の日には何事もなかったかの様に振る舞うハズ。ましてや、自分の憧れの人のこんな姿、見ていられなかった。
黒子「……はあ。お姉様、申し訳ございません。私ジャッジメントの要請がかかったので、少し出てきます」
黒子はジャッジメントの腕章を取り出し、腕にするすると付けた。
美琴は依然返事をせず、ただ枕に顔を突っ伏していた。
黒子「帰りは何時になるかわかりませんので、先に寝ててくださいまし」
黒子はそれだけ言い残し、部屋を出た。
黒子「全く、世話がやけるのですの」ボソッ
黒子が出て行き、部屋に沈黙が流れる。
なにもする気が起きない。今頃あいつは楽しく誰かと遊んでるのかな?
相手は……女の子かな? あいつ、いつも女の子にフラグたたせるものね。まっ私もその一人なんだけど。
スノボー事件の時、あいつ、私を助ける時言ってたよね。
『俺も、この旅行は楽しかった。怒ったり泣いたり照れたり、笑ったりうれしそうにしたりする御坂を見て、俺はいつの間にかお前に惹かれていった。お前のことしか考えれなくなった! 俺は……俺はお前が……!』
あの言葉はなんだったんだろう。結局、その続きを聞けなかったな。
でも、この結果もまた私が素直になれていなかったから。素直に今日を誘えていたら、今頃おいしいご飯を食べて、きれいなイルミネーションを見て、あいつがなにかしらの不幸に巻き込まれて、楽しく笑って、あいつの隣にいれたのかな。
……
美琴「少しでも、ほんのちょっとでも良いから、あいつに……当麻に会いたい」
美琴は立ち上がると、ふらふらと部屋を出た。
161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 15:07:48.24 ID:HiroME2T0
部屋を出ると、外では雪が降っていた。
足元には少し積もり始め、歩くと雪特有の音を鳴らし始める。
当麻はどこにいるのだろう。遊ぶって言ってたから繁華街かな? 一緒にいる人が女の人だったらどうしよう。
ううん、関係ない。私はただ当麻に会いたくて来てるんだから。 偶然会ったようにして、少し話して、それでさよなら。それで充分。
街では様々なカップルが暖をとるためか体をくっつけて歩いてる。
カップルによっては腕を組み、またカップルによっては照れくさそうに手をつないでいたり、いたる所から楽しそうな会話が聞こえる。
通行人Y.A「次はどこ行くじゃんよ~」
通行人Y.K「そうね、まずは予約してたケーキを取りに行かないとね」
通行人R「早く早く~早くしないとケーキがなくなっちゃうよ~とミサカはミサカはケーキの安否を気にしてみたり!」
私は、1人で何をやってるんだろ。みんなそれぞれ楽しいクリスマスを過ごしているのに。
寒い。思いつきですぐ部屋を出てきたからコート来てくるの忘れちゃった。みんな、綺麗な格好して笑ってるのに、私はコートも着ずに制服で1人暗い顔して歩いてる。
ハハ、とても学園都市に7人しかいないレベル5には見えないわね。
通行人A「うッせエぞクソガキ! 心配しなくてもちゃんとデラックススペシャルショートケーキクリスマス仕様1ホールは予約してあるッつッてんだろうがア! あッ? おい走んじャねエ! 滑ッてケガしたらどうすんだア!」
あいつ、どこにもいない。
……あの公園なら会えるかな? こんな日にまで来るわけないだろうけど、一応……
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162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 15:08:37.90 ID:HiroME2T0
ガー
「あっしたー」
こんな日の、こんな学生寮の住宅街近くのコンビニには当然人はほとんど入っていなかった。店員もいつもは3人もいるのに、今日はやる気のない店員が1人。
店内には有線でクリスマスの名曲特集をやっていたが、こんな所でそれを流すのは場違いだろと思い、せっかくの立ち読みもいたたまれなくなったので、缶コーヒーを一本買い店を出た。
コンビニの外で缶コーヒーをすすり、通行人に寂しいやつと思われたくないので、時折待ち合わせをしているんですよとアピールするみたいに着信もない携帯を耳に当ててみたりする。
缶コーヒーを飲み終わり、いよいよどうするかと思った矢先に、突然目の前に女の子が現れた。
髪型はツインテール、結び目には可愛らしりぼんをつけ、腕にはジャッジメントの腕章をつけた、白井黒子だった。
黒子「探しましたのよ。上条さん」
上条「え? 探した?」
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163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 15:09:33.57 ID:HiroME2T0
いつもの公園に着くと、やっぱりあいつはいなかった。
わかってた。こんな日にもここに来るわけがない。
結局あいつの行きそうなところもわからないし、もうお手上げ。
美琴はいつもの自販機で何か暖まるものを買おうとしたが、財布を忘れてきてしまっていた。
「はあ」とため息を一つ漏らすと、近くのベンチに座ろうとする。ベンチに雪が少し積もっていたので、手で雪を払い、余計かじかんでしまったことに少々後悔しつつ、ベンチに座り、一週間前のケンカを思い出していた。
美琴「ダンスパーティー……か。そんなの、ある訳ないじゃない。……仮にあったとしても、私はアンタと一緒にいたかった」
空を見上げると、雪が目に入る。正確にはまつ毛にくっついて瞬きの時に入る。
公園の電灯だけが美琴を静かに照らす。
携帯についているスノボー旅行で貰ったゲコ太ストラップを固く握る。
会いたい会いたい会いたい……
そんな想いだけがどんどん強くなる。しかし彼はここにはいない。今、となりには他の誰かがいる。
考えれば考えるほどに、涙が出てくる。
足元の積もった雪に、ポタポタと涙が落ちて、自分の流した涙の数がわかる。
すると隣で誰かが私を呼んでいたのに気がついた。
私は泣き腫らした目を、ゆっくりと、声のする方へと向けた。
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164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 15:10:35.74 ID:HiroME2T0
上条「探したって、なんのことだよ。白井。だいたいお前らは今ダンスパー」
黒子「……お姉様のことですわ」
上条は言いかけた言葉を最後まで発することなく、ビクッと体を震わせた。
なんでこいつはわざわざ御坂の話をするためにここにきたんだ? ダンスパーティーで良い男と出会えたから、俺にはもう御坂に近づくなとか言い出すためにきたのか?
いや、こいつはそんなことするやつじゃねえ。御坂に男が寄り付くこと事体こいつは不快なハズなのに……。
上条が何か考えているようだったが、黒子は構わず話し続けた。
黒子「お姉様は、今あなたを探しています」
上条「……は? なんでだよ、だって今日は常盤台でダンスパーティーなんだろ?」
黒子「ダンスパーティー?」
どうやら黒子も、詳しくは話を聞いていないようで、ダンスパーティーなるものに首をかしげていた。
上条「え? だってあいつそう言って……?」
話が噛み合わない。どこかおかしい。どこでおかしくなった?
上条が必死に考えてると、黒子もかしげた首を元に戻し、また質問した。
黒子「一週間前、その話しをしたとき、あなた変なこと言いませんでしたの? お姉様がダンスパーティーなる虚言を吐く前に」
俺がなんか変なこと?
……そういえば、俺あん時あいつがクリスマスの予定を聞いてきたのを、冗談で返したな。それでその後あいつは寂しそうに走って行って。その前にも、わざわざレディースフロアに俺を連れて行ったりして……
上条「まさか……まさかあいつ……」
上条がなにかに気付いたことを黒子は確認すると大きなため息を一つ漏らし、携帯を取り出した。
prrrrrrr……ガチャ
黒子「初春? お姉様は見つけられました?」
初春「あ! 白井さ~ん! ひどいですよ今日は非番だったのに、急に呼び出して御坂さんを探せなんて!」
電話越しの初春が叫びに近い声で話してくる。どうやら今回もまた白井黒子に巻き込まれているみたいだ。
黒子「そんなことより、お姉様は?」
初春「ぶー。御坂さんは現在第七学区の公園自販機前にいます」
黒子「そう。ありがとうですの初春。あとでケーキを買っていきますわ。では」
ブチッ
要件が終わるとすぐに電話を切り、黒子は上条を見た。
黒子「話しは聞こえていて?」
上条は黒子をまっすぐ見つめる。
なんでこいつが俺にそんなことするのか全くわからないが、「御坂が俺を探している」とい事だけはわかった。
だったら、俺のできること、することは一つじゃねえか!
上条は足を前へ進め、黒子とすれ違いざまに「ありがとう」と一言だけ言って走りだした。
黒子「世話が焼けるお二人だこと。……これでスノボーの借りは返しましたわよ。類人猿」
独り言をつぶやき、黒子は上条の遠のいて行く後ろ姿が消えるまでずっと見届けた。
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165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 15:11:57.86 ID:HiroME2T0
顔を上げると、そこには5名程の見知らぬ男たちがいた。
「あれ~お嬢ちゃん、こんなところでなにしてるのかな~? なになに彼氏にでもフラれたのかな~
?」
「ギャハハハ、まさか本当に話しかけるやつがあるかよ!」
声をかけた男以外の4人が腹を抱えて笑っている。
美琴は腫れた目をもう一回下に戻し、聞いてなかったことにした。
「え~無視ですか~? こんな日にそんな格好してたら風邪引いちゃうよ? お兄さん暖かいところ知ってるから一緒に行かない? 楽しいこともいっぱいしてあげるからさ~」
「ちょ! お前ロリコンかよ! ギャハハハ」
美琴が無視を続けていると、男は腕を掴み、強引に連れて行こうとした。
面倒だったので、電撃を出して気絶させようかと思ったその時
「その手を離せ!」
さっきまで5人いた男たちのハズなのに、今は6人いる。
一番後ろで声を発したその少年を見て、美琴は目を疑った。
「……は?」
上条「その手を離せって言ってんだよ! バカヤロウ!」
会いたくてしょうがなかった人、上条当麻がそこに立っていた。
男は舌打ちをして美琴から手を離し、ぞろぞろとその場から離れた。
何やら帰り際になにか捨て台詞を吐いていたが、そんなのはどうでも良かったので覚えていない。
それより、今は目の前にいる御坂美琴のことで頭がいっぱいだった。
166: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 15:13:24.75 ID:HiroME2T0
あれだけ会いたいと思っていても、いざ会うと何を話していいのかわからない。
二人の間に重い沈黙が流れる。
上条「……なあ、御坂」
最初に口火を切ったのは上条からだった。美琴は俯いたまま返事をしない。
上条「俺、今日はあることをお前に言いにきたんだ」
上条「俺な、スノボー事件の時、思ったんだ。あのままお前が死んじまうんじゃないかって。俺の前からいなくなってしまうんじゃないかって。俺、怖くてしょうがなくなってさ」
美琴は依然下を向き、返事をしない。でも微かにうなずいている様にも見えた。
上条「でも、その時初めて気付いたことがあるんだ。お前を失うのがなんで怖いか、お前をなんで離したくなかったのか」
美琴は下を向きながらも、でも確かにうなずいていた。
上条「そしてそれは、あの時の言葉の続きだ」
美琴がゆっくり顔を上げる。そしてその目は、上条をしっかりと見ている。
上条は空を見上げ、まるであの時の様に視線になにか入れていた。
そして、深く深く、ゆっくりと深呼吸をする。
覚悟を決めると、上条は美琴の目を見て、言った。
上条「怒ったり泣いたり照れたり、笑ったりうれしそうにしたりする御坂を見て、俺はいつの間にかお前に惹かれていった。お前のことしか考えれなくなった! 俺は……俺はお前が……!」
上条「俺はお前が、大好きだ!!」
美琴は優しく微笑むと、両目の端から溢れんばかりの雫がこぼれ落ちた。
美琴「私も大好きだよ、当麻」
167: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 15:14:42.94 ID:HiroME2T0
美琴「ねえ」
自販機の隣のベンチに二人で座り、世間話をしていた。
想いの通じた二人の手は、しっかりと繋がっている。
美琴「今日、予定入ってたんじゃないの? ……なんでここにいるの?」
美琴はまだこのクリスマスの全貌を知らない。なので当然、上条は今日誰かとデートしているもんだと思っていた。
美琴「この前言ってたじゃない。 今日は予定がある、楽しみだーって。それは、どうしたの?」
それは、本当に知りたかった質問だ。さっきまでも、今もそれは変わらない。
上条は頭をボリボリ掻きながら、罰の悪そうな顔をしてゆっくり言った。
上条「ありゃあ、ウソだ」
美琴の目がキョトンとなる。
ウソ? ウソってなに? え? じゃあこいつは今日一日なにしてたの? もしかしてずっと暇してたの? え? え? ええええええええ!? 私の苦悩は!? 苦悩はーーーー!?
上条「いやあの時はお前が俺をからかうのかとてっきり思って……って、美琴さん!?」
美琴「ウソってどういうことだコラーーー!!!」
上条「ももも申し訳ございませんでしたーーー!!!」
素早くその場で土下座をする上条。
自分の彼氏の土下座を見るのはいかんせん変な気分だ。
上条「でででも! 美琴さんもダンスパーティーなんてウソをついたではありませんか!?」
美琴「そそそそれはしょうがないでしょ!! アンタを取られたと思って、ほんとにショックだったんだから……」
美琴は俯き、顔を真赤にさせながら目だけでをこちらに向けた。
上条「え?」
美琴「……///」
上条「(かかか可愛い……)」
美琴「ね、ねえ」
上条「……んあ!?」
美琴「明日、暇?」
168: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/11/29(木) 15:16:05.70 ID:HiroME2T0
ー翌日ー
12月25日
美琴「だーかーらー! 早く選びなさいよ!」
上条「そんなこと言ったって、これはすごく大事なもんで!」
店の中でギャーギャーケンカする二人。店員も、お客もみんなこちらを見ている。
美琴「もーいいわ! 店員さん、これ下さい!」
上条「みみみ美琴! なにもそんな値段の!?」
美琴「なによ? そんな大した金額じゃないじゃない」
上条「……はあ。俺の彼女になるんだったら、まずはその狂った金銭感覚を直さないとな」
美琴「かかか彼女!? そそそそうよね私はアアアンタのかか彼女なんだから、ちょっとくらい……」
店員「こちらでよろしいでしょうか?」
美琴「はい!!」
上条「おい」
これで今月の浮いた食費分が全部パアだ。全く……あ~あ
美琴「にへ~///」
上条「……そんなにうれしいのか?」
美琴「!? あああ当たり前でしょ!! ほら! アンタもつける!!」
上条「わわわわかったからそんなグイグイ押すな!」
美琴「にへへ~/// ねえ当麻」
上条「ん? あ~ほらよ」
二人はしっかりと手を結ぶ。簡単に剥がれない様に、しっかり指を絡めて。
上条「なあ美琴」
美琴「なあに、当麻」
二人の気持ちが、繋がっているのを確かめるように。
上条「大好きだ」
美琴「私も大好きだよ、当麻♪」
不幸とは程遠い、幸せを確かめるように_____。
fin
SS速報VIP:美琴「スノボー旅行2泊3日の旅 温泉付き、かあ…」