SS速報VIP:長女「は? 婿養子?」母「そうよ」
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1: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:01:27.93 ID:0GuuE6fI0

長女「いや、どういうこと?」

母「男君って知らない? 一回くらいは会ってると思うんだけど」

次女「あー、いたっけ?」

母「最近、事故でご両親を亡くしてね。親戚もいないから、天涯孤独の身になっちゃったの」

長女「それで、なんで婿養子なのよ!」

母「あんたたちもいい年じゃない? 養子ってのもどうかと思ってね」

三女「私、まだ学生……」

長女「そうよ。私だって勤めて数年も経ってないし」

次女「知らない人といきなり結婚とかないわー」


どん。


母「……実家暮らしのくせに、偉そうに言うわね」

長女「お金入れてるからいいじゃない」

次女「横暴だよねー、家事だって三人でやってるのに」

三女「……大学だって国立大で、学費も奨学金」

母「……」

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2: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:02:41.31 ID:0GuuE6fI0

母「あのね、そのご両親というのが、お父さんがお世話になった方なの」

三女「……死人に口無し」

母「遺言を交わしていたみたいね」

三女「死人が口出し……」

長女「だからって、私達がそのなにがしの相手をする理由にはならないと思うんだけど?」

次女「おとんも亡くなっとるしー」

母「……」

母「まあ、もうこっちに来てるし、誰がどうとまでは決めていないから」

母「どうしても嫌なら、それはそれでいいわ」

母「ただし、彼は天涯孤独の身なのよ?」

長女「だからなんだっての」

母「じゃあ、男君! 入ってきてもいいわよ!」



3: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:03:20.79 ID:0GuuE6fI0

たたたっ


男「は、はーい」

長女「うっ」

次女「へぇ」

三女「おお」

男「男です。短い間とは思いますが、よろしくお願いします」

三人(イケメンじゃん!)

長女「集合!」

ささっ

長女「……どうする?」

次女「ちょっと髪と肌が荒れてるけど、めっちゃランク高いよ」

三女「……きゅんきゅんする」

長女「年はいくつなんだっけ?」

母「三女の一つ下よ」

長女「私と、四つか」

次女「ちょっとおねえ、マジで狙う気?」

長女「そりゃ、結婚するなら、経済力がないとね」

三女「……それはおかしい」



4: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:03:59.52 ID:0GuuE6fI0

三女「四つも離れていたら、ババァだと」

長女「おい、おい、ふざけんなよ」

次女「おー、こわこわ」

長女「あんたはどうなのよ」

次女「私? イケメンは愛でるだけでいいから、どっちかが結婚して、つまみ食いするってのがベストかな~」

長女「無責任な。馬鹿にしてるの!?」

三女「……最悪」

次女「でも実際、二人だって同じようなこと考えてるでしょ?」

長女「そりゃ、彼次第ってこともあるし」

次女「言い訳言い訳」

母「あんたたち」

三人『ちょっと黙ってて!』

母「いや、男君、寝てないみたいだから、客室に寝かせることにしたけど」

長女「ちょ、ちょっと待ってよ」

次女「ちゃんと挨拶してないじゃん?」

母「見るなり、会議始めるからでしょ」



5: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:04:31.78 ID:0GuuE6fI0

スパーン。

長女「男くん、いる!?」

男「は、はい!?」

次女「え、寝袋?」

男「あ、あああ、すみません、眠くって、ですね」

次女「いやいや、お布団あるしさ。使えばいいのに」

男「あ、あ、だ、大丈夫です」

長女「まあ、それより、ちゃんと自己紹介してなかったよね」

三女「……三女だよ。よろしく」ギュッ

男「あ、よろしくお願いします。男です」

長女(このガキ……!)

次女「男くん、かっこいいね。私、次女って言うんだ」

男「次女さん、よろしくお願いします」

長女「……そして、私が長女よ。この家のことなら何でも聞いてね」

男「……ありがとうございます。長女さん」

三人(照れ顔もいけるな……)



6: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:05:16.24 ID:0GuuE6fI0

男「あの、皆さんも、おきれい、ですよ?」

次女「あー、無理にほめなくてもいいの」

男「す、すみません」

長女「それにしても、こんだけイケメンなんだし、彼女の一人や二人くらいいるんじゃないの?」

男「か、彼女? とても、今は付き合えるような……」

三女「……得意なものとか、ある?」

男「か、家事全般は……」

次女「ふーん、洗濯物とかもやってもらおうかしら」

長女「あんたら、いい加減にしなさいよ」

三女「……あんたが言うな」

男「あ、あの、ケンカしないで」

長女「いいのいいの、このくらいはコミュニケーションの範疇よ」

男「そうなんですか……?」

次女「そうそう。これから男くんをめぐって血みどろの争いをね」

長女「やめなさいっての」

男「は、はあ」



7: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:06:11.83 ID:0GuuE6fI0

男「ふぁ」

三女「眠いの?」

男「す、すみません」

長女「まあ、今日はゆっくり休んでさ。明日お話しようよ」

次女「ああ、そういや、私は明日早かったわ」

三女「……ふっ」

長女「抜け駆けすんなよ、お前」

男「あの……?」

長女「私も、明日は仕事だからさ、夜、歓迎会しようよ」

男「そ、そうですか」

次女「三女についてかないようにね」

男「は、はぁ」

三女「……あの」

長女「あーっと、疲れてるみたいだし、ここらで引き上げね」

三女「ちっ」

次女「おやすみなさーい」

男「はい、おやすみなさい」



8: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:06:43.57 ID:0GuuE6fI0

翌朝。

長女「……ふぁふ」

母「おはよう」

次女「あれ、男くんは?」

母「もう出かけたわよ?」

長・次『は?』

母「あんたたちより先に、朝食を作って」

三女「……おはよう」

長女「あの、このなんかきっちりしたブレックファーストは」

母「男くん作」

次女「ふぉー、洋風だ。なんか水差しみたいのに牛乳入ってる~」

三女「つぶしたまご……」

長女「スクランブルエッグでしょ」

母「まあ、そういうわけだから、私も行くわよ」

三人『……はっ』



9: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:07:21.15 ID:0GuuE6fI0

長女「えーっと、ちょっと待って。男くんが、料理も得意、それはいい」

次女「いただきまーす」

長女「ちょっと待ちなさい! 男くんはどこへ行ったわけ?」

三女「……お母さんに聞いて」

次女「もう行っちゃったわよ」

長女「なんかおかしいわよ。婿養子って言ってたのに、勝手にいなくなるし」

次女「んー、焼け具合がたまんない」

長女「あんたは食ってる場合か!」

次女「早勤だから食ってる場合だし、おねえも食べちゃってよ。仕事なんでしょー?」

長女「そ、そうだけど」

三女「……夜に聞いたらいいじゃない」

長女「しょうがないわね」

次女「うはぁ、サラダのマヨネーズになんか振りかけてある。料理みたい」

長女「料理スキルの高い男ってちょっと引くわよね」

次女「えー、私はポイント高いなぁ」



10: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:08:00.08 ID:0GuuE6fI0

夜。

長女「ただいまー」

三女「……お帰り」

次女「お帰りなさーい」

長女「お母さんは? あと男くんは?」

次女「両方帰ってきてないわ。どうしたのかしらね」

長女「……」

次女「そういえば、三女のいっこ下ってことは、男くんって未成年?」

長女「そうなるわね」

次女「アルコールじゃない方が良かったかしら」

三女「……ノンアルコールもあるし」

次女「あー、細かいところに気がつくじゃない」

長女「歓迎会って言ったわよね」

次女「言ったわね」



11: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:08:42.14 ID:0GuuE6fI0

数時間後。

長女「……歓迎会って言ったわよね」

次女「言ったわね」

三女「……」 ファルコンパーンチ!

長女「……」イライラ

次女「逃げたんじゃないの?」

長女「ああ?」

次女「おねえが必死な形相で迫るからさ~」

長女「なによそれ!?」

三女「……まともに話してもいないのに、地雷臭」

長女「よーし、並べ、あんたたち」

ピンポーン

三人『!』

長女「は、はい!」

男「あ、男です」



12: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:09:12.90 ID:0GuuE6fI0

長女「かぎ、開いてるわよ!」

男「す、すみません」

長女「……」

男「すみません、遅くなりました」

次女「手、洗ってきなよ~」

男「は、はい」

長女「待ちなさい」

男「……はい」

長女「何してたの? こんな時間まで」

男「バイトを、探してました……」

三人『バイト?』

男「は、はい。早速、今日から働かせていただけることになって……試用期間ですが」

長女「なんでバイト?」

男「ええ、久しぶりに住所が出来ましたから」

長女「……」



13: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:10:11.84 ID:0GuuE6fI0

長女「集合!」

ささっ

長女「……あのさ」

次女「おねえが言いたいことはよく分かる」

三女「……男くんに直接聞いたほうがいい」

長女「分かってるけど」

次女「おねえが代表でしょ? ここんちの」

長女「あんた、こういう時だけ」

男「あの……」

長女「……」

長女「えーっとね、男くん」

男「は、はい」

長女「来て二日目から、いきなり稼ごうってのは感心だけどさ、歓迎会って言ったよね?」

男「あ、あああ、忘れてました」

長女「ああ、そう」



14: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:10:58.79 ID:0GuuE6fI0

男「すみません! そんなつもりじゃなくて……」

長女「いやそもそもさ、久しぶりに住所とか……どういうこと?」

男「……あの、お母様から聞いていないんですか?」

三人『なんにも』

男「僕、借金があるんです」

長女「はぁ」

男「それで、皆さんに借金が回るような方向になりそうだったので……」

長女「は?」

男「以前、その、皆さんのお母様の事業が失敗なさったのを、うちの両親が助けたそうで」

男「その時の借金が莫大だったものですから……払える見込みはあったんですが、きちんとうまく行く前に、両親が、亡くなったもので……」

長女「えーっと……」

男「払えるだけは払ったのですが、残った部分を僕が引き継いでですね……」

男「ちょっと、いろいろと追われていたのを、つかまってしまって」

長女「ちょーっと待って!」

男「は、はい」



15: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:11:56.06 ID:0GuuE6fI0

長女「婿養子は?」

男「はい?」

長女「だから、婿養子の話よ! 私達のうちの誰かと結婚しに来たんじゃないの?」

男「え、そんな、ご迷惑は……」

次女「知らないみたいね~」

男「あの、借金取りの方が、元を正せばと言って、皆さんのお母様を脅してらっしゃったので」

男「一人じゃ無理だろうけど、娘もいるしとかなんとか……おっしゃってたような……」

三女「……あのババァ」

次女「終わってんな~、あのばぁさんは」

長女「待って、母さんと連絡を取ってみる」

プルルル プルルル

ゲンザイ、デンパノ……

長女「ちっ、ふざけやがって!」

三女「……そういえば」

次女「なんかあった?」

三女「確か、封書で置手紙っぽいのをしていたような」

長女「それ、どこ!?」



16: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:12:41.06 ID:0GuuE6fI0

娘達へ。

 とりあえず、ごめんねっ。お父さんが世話になったのもそうだけど、
 私の事務所でやっちまった時に、フォローしてくれた人の息子なのよ、男くん。

 で、いまだにかなりの借金の額があるから、結婚した人が責任を持って返してほしいのよね。
 要するに、私の責任もあるから、じゃあ、娘と結婚して負担を軽減させる的な感じにすればいいんじゃないってことで。
 いろいろと経理の人や相手方と相談して、そういう方向で返すようにしたから。
 私の貯金からも出すけど、それじゃ間に合わないし、よろしく。

 イケメンだから、別にいいっしょ?
 あと、しばらく私は出張に行っちゃうから、よろしくね。

 母より』



17: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:13:18.33 ID:0GuuE6fI0

長女「……くそババァ」

次女「ないわ~。自分がとっ捕まりそうになったから、こっちに回したと」

男「あ、あの……」

長女「ああ、うん。まあ、しょうがないわよね」

男「あの! お願いします!」バッ

次女「え、土下座?」

男「もうしばらくでいいんです! このうちに置かせてください!」

男「家を追い出されてからは、生活費を稼ぐだけで精一杯で、借金なんか、とても……!」

長女「……」

男「み、皆さんに借金が回るようなことはしません!」

男「僕、家事もやります! 生活費も、最低限、自分でなんとかします!」

男「だから……」

三女「……なでなで」

男「え、あ」

長女「そこまで言われて、追い出すわけにもいかないじゃない」

男「ご、ごめんなさい」

次女「そうじゃないってー」



18: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:14:34.06 ID:0GuuE6fI0

長女「だからさ、今日だって、歓迎会よ? 新しい人だから、歓迎しているの」

男「……」

次女「どのくらい協力できるか分からないけど、一緒に住むんだしー」

男「あ、う」

三女「……がんばって来たんだよね。えらいえらい」

男「う、ふっ」

長女「よろしくって言ったでしょうに。ね?」

男「ありがどおございまじゅ……」

次女「何言ってるかわかんねー」

長女「よし、とりあえず、明日の仕事は忘れて、今日はちょっと飲みましょう」

三女「男くんはノンアルコール……」

男「はひ、えへへ……」

長女「はいはい、グラス」


四人『かんぱーい!』



19: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:20:59.80 ID:0GuuE6fI0

深夜。男は就寝。


長女「……とは言ったけど、実際どうする?」

次女「私のやり方がベストだよね~、おねえか三女が結婚して、つまみ食いする」

長女「借金背負えって言うんだからさ、イケメンとお金のどっち取るかってことだよね」

三女「……いらないならもらう」

次女「お、がんばっちゃう?」

三女「私の奨学金の返済もあるし、借金夫婦も悪くない」

長女「あんたは、社会をなめすぎ」

三女「……責任回避したいだけでしょ」

長女「何ですって?」

次女「いま、深夜だよー」

三女「子どもが出来たら子どもの負担もあるし……長期で見れば、あまり苦しさでは変わらない」

長女「最初からハンデ負うようなものでしょ、まして私なんか」

次女「じゃあ、結局三女が結婚するってんでいいの?」



20: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:21:48.62 ID:0GuuE6fI0

長女「でも、男くんの意思はどうなるのよ」

次女「別に良くない? 本人にその気はないけど、それが返済の条件だって言うんだから、誰かがするわけだし」

長女「つまみ食いとか言ってるバカがいるから、男くんの考えが重要だと思うわけよ」

次女「なんで?」

三女「……私が結婚したら、下姉さんは出てってもらう」

次女「はぁ? 関係ないでしょー」

長女「関係あるわよ。それこそ、彼の良い部分だけ盗ろうだなんて虫が良すぎるわよ」

次女「いやいや、そうは言うけどね」

長女「だから、そこでケンカしないために、男くんと話し合って」

次女「反対、別に男くんとは関係ないじゃん、私たちの話なんだし」

三女「……」

長女「じゃあ、せめて、誰が結婚しても、三人でちょっとずつフォローするってのは? もちろんババァに大責任は取らせるけど」

次女「なにー? そうしたら、お触りアリになるわけ?」

三女「……えっちなことはしないでよ」

次女「当たり前じゃん。つーか、三女がやる気満々すぎるし、私はしたくないって言ってるけど」



21: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:22:59.06 ID:0GuuE6fI0

長女「だから、男くんがあんたと結婚したいっつったら、それを尊重するわ」

次女「ありえないでしょー」

長女「その代わり、誰が結婚しても、三人ともリスクを負う。そういうことにすると」

次女「いや、家族の借金を家族が負うってのもねー」

三女「……それなら、下姉さんも本気になるわよね」

次女「いや、あの……」

長女「あんたが安全策ばっかり言うからでしょ?」

次女「だからってさー」

長女「あんたもいつまでもふらふらしてないでさ」

次女「ふらふらなんかしてないわよ!」

ばん!

三女「……いま、深夜」

次女「ごめん」

長女「ごめんなさい」



22: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:23:34.58 ID:0GuuE6fI0

長女「とにかく、男くんと話し合って、どうするのか決めてもらいましょ」

次女「本人が誰も選ばなかったら?」

長女「……三人で管理する?」

三女「……ハーレム」

次女「女の質が良くないわよねー」

長女「おい」

次女「まあ、いいわ。そしたら、無理くりバイト入れさせないようにしないとね」

長女「あー……初日からしてああだと、結構バカな真似してるのかも」

三女「……前までホームレスだったんだし」

長女「じゃあ、明日の朝こそ、ちょっと話し合うようにしましょう」

次女「ふぁ」

三女「……眠い」

長女「そうね、もう休みましょ」

次女「お休み~」

三女「おやすみなさい」



23: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:24:15.04 ID:0GuuE6fI0

翌朝。

男「……」ゴソゴソ

三女「……おはよう」

男「お、はようございます」

三女「もう出ちゃうの」

男「あ、はい。あ、朝食、用意しておきましたから!」

三女「……バイト早いの」

男「バイトは昼からですけど……深夜にも入れられないかなって」

三女「……家族に相談ナシとか」

男「か、家族、ですか」

三女「午前中は相談。今日は上姉さんも、お休みだし」

男「で、でも」

三女「……郷に入りては郷に従え」ギュッ

男「わ、わ、分かりました!」

三女「起こしてくるね」

男「……あったかい」



24: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:25:14.19 ID:0GuuE6fI0

長女「まーた逃げようとしたわね」

次女「ふぁーあ、朝早いよ」

男「す、すみません」

長女「ま、とにかく、いただきまーす」

次・三『いただきます』

三女「……料理長、本日の朝食のご紹介を」

男「えっと、和食です。ご飯と味噌汁と焼き鮭と……あの、たいしたものじゃないんですが」

次女「この漬物は? うちに漬物なんかあったっけ」

男「あ、キャベツの塩もみです。少しだけお酢は入れてますけど」

長女「ふーん」

男「味付けが難しいんですが、カレー粉を混ぜたりとかでも」

次女「へぇぇ」

男「あの、牛乳が嫌でしたら、お茶を淹れます」

三女「……男くんは食べないの?」

男「もう食べちゃいました」

長女「うちはなるべくみんなで食べることにしてんの」

男「す、すみません」

長女「生活時間がめちゃくちゃな子が多いからね」

次女「あー、ご飯おいしー」

三女「……ムシャムシャ」



25: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:25:46.62 ID:0GuuE6fI0

一服後。

長女「それで、これからのことなんだけど」

男「は、はい」

長女「男くんは、別に私たちと結婚したいわけじゃないのよね」

男「はい、あの、どうしてそういう話になったのか……」

次女「まー、元々、うちの母さんが問題なわけで」

長女「そもそも、男くんが負うはずのないものなんだけど」

男「遺産放棄というか、そういうの、知らなくて、ですね。お母さんに会ったときはもうどうしようもなくて……」

長女「三女、一応、経理の人と連絡を取っておいてよ」

三女「……うん」

次女「それはそれとして、借金を負担する代わりに、結婚するってことになってんじゃん」

男「そ、それなら、なおさら、できない、です」

長女「じゃあ、どうやって返済するつもり」

男「だ、だから、バイトを増やして……」

長女「お客さんに死にそうな顔してうろつかれちゃ、寝覚めが悪いわよ」

男「うっ」



26: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/22(木) 15:26:31.17 ID:0GuuE6fI0

長女「別にすぐって訳じゃないし、私たちとしばらく暮らして考えてみなさい」

男「……はい」

長女「それだけじゃなくて、無理しない生活をしなさい。今日だって何時起き?」

男「四時、です」

三人『四時!?』

長女「き、昨日、午前に入ってたけど」

男「すみません……ちょっと、眠りが浅くて」

次女「朝からバイトを探しに行って、昼からバイトするつもりだったんでしょ? バイトくらいで無理しすぎだよ」

三女「……寝てないアピールは、うざいだけ」

男「すみません、すみません」

長女「午前中は寝てなさい。昼のバイトは私が送るから」

男「で、でも」

長女「いいから寝ろ」

男「はい……」



33: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:48:14.98 ID:WG8845Pro

昼。車内。

長女「こっちの方?」

男「はい、海側の方で」

長女「海まで出てきたの? 足は?」

男「歩き、ですけど」

長女「おかしい! あんた、おかしいよ!」

男「え、そんなに、距離はないですよね。一時間くらいですし……」

長女「自転車使いなさい。ていうか、免許ある?」

男「持ってないです……」

長女「母さんからふんだくるから、免許取りなさい」

男「ええ!?」

長女「こっちの県じゃ、車必須よ? 首都圏とはいえ」

男「そんな、迷惑じゃ……」

長女「車は四人乗りだし、私が調子が良くなければ、あんたが運転する。合理的でしょ」

男「そ、そうですかね……」



34: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:48:43.54 ID:WG8845Pro

バイト先。

長女「コンビニか……」

男「は、はい。いろいろ回ったんですが、海沿いで賃金も高くて」

長女「まあ、いいわ。終わったら連絡して」

男「あ、携帯……」

長女「お店の電話を使わせてもらいなさい。明日、契約するから」

男「あ、あの、あの」

長女「何よ。はっきり言って、無駄に遠慮されてる方が困るの」

男「ありがとう、ございます」ニコッ

長女「……」(かわいい~!)


店内。

女店員「店長、昨日のイケメンが車で来てますよ!」

店長「マジでっ? あー、女持ちだったかー」

女店員「店長、その年で十代狙いはちょっと……」

店長「うっさいわね!」

女店員「いらっしゃいませ~」

男「あ、店長、先輩、おはようございます」

店長「おはよう」



35: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:49:10.15 ID:WG8845Pro

女店員「おはよう、男くん」

男「はい」

女店員「ちょっとチルドの配送が遅れてるの~、私、もう少し残るから待ってて?」

男「はい!」

店長「悪いわね」

長女「……」

長女(ちっ、顔に誘われて群がってきたか)

長女「男くん!」

男「は、はい?」

長女「また、夜に話しましょうね」

男「分かりました」

女店員「……!」

店長「ちっ」

長女「あ、レジいいですか」

女店員「は、はいはーい!」



36: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:50:43.03 ID:WG8845Pro

自宅。

長女「というわけで、男くんの担当を決めようと思う」

次女「は?」

三女「……今日は上姉さんが担当、みたいな」

長女「そう。次女がおぐしと顔をちょっと整えただけで、女の寄り具合がひどいわ」

次女「いや、そんなことも言われてもさ。なに、男くんは私らの所有物なわけ?」

長女「それは違うけど、ぼやぼやしてる内に横からかっさらわれるのも嫌じゃない」

三女「……そんなに?」

長女「バイトの店員はもとより、年の多少行った女性店長まで」

次女「おおう」

長女「……職場に連れて行こうかしら」

次女「あんた、いくらなんでも」

長女「正規職に就かせるチャンスかもしれないし」

三女「……男くん、大学行ってないんでしょ。そっちの方が先だと思う」

次女「無理についていかせる必要ないでしょ~?」

長・三『ノー!』キッ

次女「……」



37: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:51:33.60 ID:WG8845Pro

次女「あのさ、前にも言ったけど、私、そこまで興味ないんだよね」

次女「だから、何をそこまで興奮しているのかよく分からないんだけど」

長女「何言ってるのよ、なんかこう、育て甲斐がありそうな感じじゃない」

三女「……中身は変えられるし」

次女「まあ、いいけどさ。そういうごり押しすると、追い詰めちゃうんじゃないの」

長女「うっ」

三女「……そんなこと」

次女「あるある」

長女「じゃあ、黙って誰かに食われるのを見てろっての?」

次女「そうじゃなくて、自分はこう思うっていうのをちゃんと言えばってことよ」

長女「はあ?」

次女「んー、だから、私達は結婚したいのー、男くんが好きなのー、他の女に取られたくないからーって言って、行動しなさいよってこと」

次女「それなら、我慢しなくちゃとは思わないでしょ?」

長女「我慢ってなによ」

三女「……確かに、無理してるかも」

次女「でしょ。ただでさえ、迷惑かけてるって思ってるんだから」



38: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:52:07.42 ID:WG8845Pro

長女「じゃあ、う~ん、お買い物に付き合ってもらう、とか?」

三女「……大学に遊びに行くくらいはいいと思う」

次女「まあ、なんでもいいけど、あちこち振り回しちゃダメよってこと」

長女「なるほど」

次女「でさ、炊事は彼に任せちゃうわけ?」

長女「まあ、なんか、好きみたいだしね」

三女「……それこそ、相談したほうがいいと思う」

次女「下着を洗わせてみたいよね~」

長女「おい」

次女「おねえも気を抜くと下着になるし」

長女「しないわよ……絶対」

三女「……脱ぐか」

長女「やめなさいよ、あんたも!」



39: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:52:45.42 ID:WG8845Pro

翌日。

長女「というわけで、お買い物よ!」

男「え、え」

長女「男くん、服も持ってないのよね?」

男「は、はあ……あの、できれば、バイト……」

長女「ダメ。今日はお姉さんに付き合いなさい」

男「に、荷物もちってやつでしょうか」

長女「そうよ。居候なんだから、そのくらい……あー、えっと」

男「分かりました……」

長女「そ、それだけじゃなくて、私も、男くんのこと、知りたいし、いいでしょ?」

男「へ? は、はあ」

長女「あー、もう! イケメンで気になってるから、ちょっと来いやってことよ!」

男「え、え、え?」

長女「……ごめん、テンパってる」

男「はぁ……」

長女「嫌なら、今からでも帰るけど、どうする?」

男「いえ、お付き合いします」

長女「……じゃあ、行こう。男くんの服も買わなくちゃだし」



40: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:53:22.44 ID:WG8845Pro

男「あの……僕、すっごく安いところでもいいんです、けど」

長女「なんで?」

男「も、元々、そんなに持ち合わせてないですから、服を増やすとなると」

長女「お金のこと? まあ、気にしなくてもいいわよ」

男「それはうれしい、ですけど」

長女「この際だから言っておくけど、私は好きでやっているの。妹たちは知らないけど」

長女「お金を出して、もちろん、見返りがあればうれしいわ。ま、先にくるのは借金だけどね」

男「す、すみません」

長女「でも、それだけじゃなくて、男くんに見込みがあると思ってやってんの」

男「見込み、ですか?」

長女「そう。一番は顔だけど、思いやりがあるし」

男「そ、そうですか」

長女「そうよ」

男「ぼ、僕、も……長女さんは素敵だと思います」

長女「無理して言わなくていいのよ」

男「無理は、してないですよ」ニコッ

長女(いやああ、マジでかわいー!)



41: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:53:57.63 ID:WG8845Pro

服屋。

男「あ、これとか」

長女(龍の柄が入ってるシャツを選んじゃったよ)

男「この辺とかですかね……」

長女(ジャケットもだせぇ……)

男「ど、どうですか?」

長女「うん、ださい」

男「え、かっこいいですよ」

長女「どこがよ! 『昇竜』ってなんじゃい、格ゲーかよ!」

男「……かっこよくないですか?」

長女「春先なんだから、ごてごてしたのより、明るいイメージのにすればいいじゃない」

男「そ、そうですね……」

長女(蛍光イエローを手に取った)

男「あ!」

長女「ウ〇トラマンのじゃないのよ、それはー!」



42: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:54:34.35 ID:WG8845Pro

長女「あれなの? 男くんはこういうのを卒業してないの?」

男「い、いえ、昔はこういうの着たことなかったですから」

長女「えっと」

男「母が認めてくれないで。父は何にも言わない人でしたし」

長女「そうなんだ。まあ、キャラシャツだろうと、着る人が着ればだから、いいのかなぁ」

男「じゃあ、あと、下着も、その……」

長女「ああ、はいはい」

長女(顔赤らめるなし)

男「すみません。借りたお金はチェックしてますから」

長女「別に気にしなくていいのに」

男「だ、ダメです!」

長女「いいけど。そしたら、フードコートで待ってるよ?」

男「は、はい」タタッ

長女(……うーん。素直って難しいわね)



43: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:55:03.55 ID:WG8845Pro

フードコート。

長女(遅いなー)

長女(あ、なんか女に絡まれてる!)


男「あ、あの」

女A「お兄さん、今日お買い物?」

女B「何買ったの、何買ったの」

男「つ、連れがいるから……」

長女「男くん」

男「あ、長女さん」

女A「ちっ、女連れかよ」

女B「母親じゃね?」

女A「マザコンか、あはははっ」

長女「うるさいクソガキは放っておきましょ」

男「は、はい! すみません、クソガキさん」

女B(はいって言われたわよ)

女A(クソガキって言われたわよ……)



44: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:55:32.70 ID:WG8845Pro

長女「案の定だったわね」

男「すみません、絡まれやすくて……」

長女「絡まれやすいっていうか、食べかけられてるじゃない」

男「食べかけ?」

長女「……で、何が食べたい?」

男「あ、えっと、クレープとか」

長女「それはデザートでしょ?」

男「じゃあ、ハンバーグカレーで」

長女「あのさ。それはツッコミ待ちなのかな」

男「ハンバーグもカレーも一度に作らないと勿体ないやつじゃないですか。あまり食べたことがなくて」

長女「あ、ああ、そう、なの?」

男「結構、作るのは簡単なはずなんですけど、いかんせん……」

長女(目が本気だ。子どもっぽいって言ったら怒るかしら)

男「……子どもっぽいですかね」

長女「うん」

男「……」

長女「あー、あの、まあ、でもいいんじゃない? 人それぞれ!」



45: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:56:35.16 ID:WG8845Pro

食後。

男「ごちそうさまでした」

長女「……」

男「なんですか?」

長女「ひょっとして、あれなの? 男くんの家ってちょっと厳しかった?」

男「そういうわけでは……ただ、あまり子どもらしいことはしませんでしたけど」

長女「子どもらしいことって?」

男「遊びに出たりとかしませんでした……いつも家事の手伝いに追われてましたから」

長女「お母さんとかは?」

男「二人とも、働いていたので……」

男「ある程度育ったら、後は一人前になるようにって、いろいろ」

長女「そうなの。でも、私は遊ぶのも大事だと思うけどなー」

男「あはは、そしたら、今でも現実逃避して遊んでたかもしれないですし」

長女「えーっ、そんな風に思っちゃう?」

男「長女さんは、違うんですか?」

長女「私はほら、妹が年近いじゃない。だから、面倒見ろって感じでさ」

男「ああ」



46: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:57:11.07 ID:WG8845Pro

長女「おまけに、あの母親でしょ? 必然的にいろいろ諦めざるを得ないよね」

男「そうでしたか」

長女「うん。だから、大学もストレート、落ちたら働くつもりだったし」

男「大学では、遊べなかったんですか?」

長女「それ聞いちゃう?」

男「え、えと」

長女「なんつーか、割とバイトに明け暮れる日々でさ。もちろん、今の男くんほどじゃないけど」

男「は、はあ」

長女「妹の入学金も、あのババァ、じゃなくて母さんが出せないって言うから、私の奨学金から出してさ」

長女「ふざけんじゃねーっつの!」

ばん!

男「ひうっ」

長女「あ、ごめん」

男「そ、その、お母さんにも、いろいろと考えが……」

長女「ないのよ」

男「え」

長女「ないのよ、あのババァは……その場しのぎなのよ……」



47: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:57:42.66 ID:WG8845Pro

男「そ、それを言ったら、僕もその場しのぎですし」

長女「それは絶対見習わないで」

男「は、はい」

長女「いい、男くんはまだ将来があるの」

男「借金返済しか見えません……」

長女「だから、それは一緒に考えようよ! 一人じゃ無理なんだし」

男「そ、そうですね」

長女「あのババァは、そういうことを全然言わないで、ばれてからも言い訳しかしねーのよ!」

長女「言えっつーのよ! 家族でも報告、連絡、相談は当たり前じゃろがー!」

ばんばん!

男「ひ、ひいっ」

長女「あ、ごめん」

男「すみません、すみません、必ず相談しますぅ」

男「もう何も隠しませんー!」

長女「なんか隠してるの?」

男「えっ」



48: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:58:35.57 ID:WG8845Pro

長女「……」

男「あ、あの、多分、何も隠してないとは思うんですけど」

長女「実は、他に女がいる!」

男「い、いませんよ」

長女「結婚詐欺師だった!」

男「あの、あの、結婚するって話は、その、本当なんですか、そもそもっ」

長女「……実は、男がいる?」

男「えーっと……」

長女「じゃあ……」


社員A「あれ? 長女さんじゃん」

長女「!」

社員A「男連れてどうしたの、もしかして、彼氏?」さわっ

長女「……」

男「あの」

社員A「デートの邪魔しちゃったかなぁ」

長女(うっぜぇ……)



49: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 21:59:03.21 ID:WG8845Pro

社員A「女子社員が言ってたよー、長女さんってよく定時に帰っちゃいますって」

長女「……」

社員A「それってこういうことだったのかな~」

長女(お前らと一緒にいたくないだけじゃい)

社員A「それとも……」


男「あのー、もしかして、姉の会社の方ですか?」ガタッ

社員A「ん?」

男「初めまして! 僕、姉さんの弟で、男って言います!」

社員A「あ、ああ、初めまして」

社員A(身長高いな、こいつ)

男「姉さんがいつもお世話になってまして……」サッ

社員A「あ、ああ……握手ね」グッ

男「実は、しばらく離れていたんですが、今度こっちに越してきたんです」

社員A「そ、そうなの」

男「今日はいろいろと見てもらってるところで」

社員A「あ、ああ、そう」



50: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 22:00:22.94 ID:WG8845Pro

社員A「お、弟さんがいるなんて知らなかったなぁ」

男「いろいろありまして。これから、家具も見るところなんですが」

長女「……このモールにはないでしょう? また移動しなくちゃならないんです」

社員A「そ、そうなの。まあ、それなら、邪魔しちゃ悪いね」

長女「男、行くわよ」ガタッ

男「はい、姉さん」

長女「すみませんね、それじゃあ」

社員A「ああ、それじゃあ」

男「失礼します」ペコ

社員A「あ、どうも」


長女「……」スタスタ

男「姉さん、速いよ」

長女「あんたが遅いだけでしょー」


社員A「……ちっ」



51: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 22:00:56.89 ID:WG8845Pro

車内。

長女「あー! あの野郎、ほんっとに最悪!」

男「やっぱり嫌な方でしたか」

長女「そうよ! 色目使ってんのよ!」

男「あ、あの、それと、ちょっとスピードが出すぎなような……」

長女「私が女子からちょっと外されてるからって、誘ってきてさ!」

男「ひぃ!? いま、あかしんごう……」

長女「断ったら、ああだよ!? こっちだって選ぶ権利があるっつーの! 主に顔!」

男「わわわ、わかりましたから、もっとゆっくり!」

長女「知ってるわよ!」

男「知ってないですー!」

長女「こうなったら、ガチで家具屋行くわよ!」

男「ひいぃ、家具屋は消えませんからー!」



52: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 22:01:30.60 ID:WG8845Pro

コンビニ。

長女「やっぱり、思いつきで行くもんじゃないわね」

男「ひ、冷やかしてきただけでしたね」

長女「まあ、冷静に考えれば、ストーキングされたんでもなければ、あいつがあそこを使うくらい近辺に住んでいることが分かった、ということにしよう」

男「は、はあ」

長女「それと、ごめん、嫌な思いさせちゃったわね」

男「いえ、ああいう人は結構見ましたから……」

長女「え、なんで?」

男「あの、お客さんの接待とか、やらされまして……」

長女「……お家でってこと?」

男「はい。結構、その、まあ、いろいろと」

長女「ふーん。ああいうことが出来るなら、私達も、もっとうまく付き合えそうだけど」

男「じ、自分のお客さんじゃないですから。自分のことになるとからっきしで」

長女「そういうものなの? でもま、助かったわ」

男「で、でしゃばりました」

長女「そんなことないけど」



53: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/23(金) 22:02:04.03 ID:WG8845Pro

長女(ん? あ、素直に、素直にね)

男「でも、会社で」

長女「いいのよ。それより、かばってくれて、すごく嬉しかった!」

男「そ、そうですか」

長女「ありがとう」

男「あの、その……」

長女「どうしたの?」

男「て、照れます」

長女「ふーん」ニヤ

男「め、面と向かって喜ばれたこと、ないですから」

長女「ふふーん」ニヤニヤ

男「は、恥ずかしい」

長女「あ、じゃあ、お姉さんが、なにかコンビニでおごってあげよう」

男「え、悪いですよ」

長女「遠慮禁止」

男「うっ」



57: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:10:54.93 ID:Dz4uCZwvo

帰宅。

長女「ごちそうさまでした」

次女「ごちそーさん」

三女「……ごちそうさま」

男「お粗末さまでした」カチャカチャ

長女「野菜を多めに買っちゃったからね」

次女「鍋もありだけど、温野菜の料理もいいね~」

男「今日は目先を変えてみました」

次女「そんなに飛ばさなくてもいいんだけどねー」

男「そうですねぇ、味付けというか、同じものでもソースを変えるとかはどうでしょう」

次女「いいかもねー」

長女「……」

三女「……どうしたの?」

長女「いや、やっぱりこのままでいいのかなって」

三女「……何が?」



58: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:11:31.67 ID:Dz4uCZwvo

長女「集合!」

次女「なにー?」

三女「……はいはい」

男「は、はい」

長女「男くんはお皿を洗ってて」

男「わ、分かりました」

次女「なんなのよ」

長女「……私ら、家事を男くんに任せすぎじゃないですか?」

次女「いま、皿洗い」

三女「……まだ、来て数日」

長女「このままじゃ良くないとは思わない?」

次女「いや、あんた、皿洗い頼んだよね」

三女「すでに、我が家になくてはならない存在に……」

長女「でしょう!?」

次女「おい、あんた」



59: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:11:59.71 ID:Dz4uCZwvo

次女「そもそも、普段おねえはゴミ出しくらいじゃん」

長女「だって、私は仕事に行ってるもん」

三女「……定時で帰ってきてるくせに」

長女「基本、買い物も私がやってるし」

次女「お菓子ばっかり買ってくるくせに」

ばん!

長女「何が悪いのよ! 私イコール主要稼ぎ手!」

次女「だからね? 基本、料理とお掃除と洗濯も、私がやってたじゃん」

三女「……掃除は、私も」

次女「だから、おねえがやってないところは私の判断でよいよね」

長女「そ、それじゃあ、あれでしょ? 押し付けてる感じじゃない?」

次女「おねえ、何か変な勘違いしてない?」

長女「なによ」

次女「昨日、私が炊事任せてるけどっつったら、好きみたいだからいいんじゃない、とか言ってたよね」

長女「うっ……」



60: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:12:30.17 ID:Dz4uCZwvo

次女「おねえはすぐ言ってることがころころ変わる」

長女「そ、それはあんたもでしょ」

次女「私は振り回すのはかわいそうだって言ってるだけ」

次女「本人が自然に無理なく生活できるように。そうね、料理も続けたそうだから、ちゃんと話してやってもらってるし」

三女「……上姉さんは、思いつきで行動する。母さんに似てる」

長女「そ、それは、今日いろいろ助けてもらったりもして……」

次女「なに、今日なにかあったから、お礼にってこと?」

長女「だから、その」

次女「はぁ……先頭切って動いてくれるのはありがたいけどさ~」

長女「悪いの?」

次女「結局、今日だって無理やり男くんを連れ出したんでしょ?」

長女「そうよ。仲良くなるためには、デートが一番でしょ」

次・三『……』

次女「行動力あるのは認めるけどさ~」

三女「……引く」

長女「ええい、解散!」



61: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:13:19.38 ID:Dz4uCZwvo

夜。

スーッ。

長女「男くん、起きてる?」

男「……はい?」

長女「ちょっと、入っていいかな?」

男「え、え、あの、も、もう寝るところなんですが」

長女「だから、添い寝」

男「あの、困ります……」

長女「……」

長女「じゃあ、布団をもう一枚。隣で寝る」 ぼふっ

男「こ、困りますよ」

長女「……」

長女「いろいろとごめんね」

男「い、いいえ」

長女「私ももう少し、考えて行動するわ」

男「ん、でも、その、今日はありがとうございました」

長女「ん?」

男「僕、気を張り詰めすぎていたのかも、しれないです」



62: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:14:36.03 ID:Dz4uCZwvo

男「なんというか、皆さんによく思われたいと思って行動していたのかも」

長女「そっか」

男「だから、僕ももう少し素直になろうかと」

長女「……」

長女(……つまり、心底、添い寝したくないと)

男「ブ○ックサンダーモナカ、おいしかったですし……」

長女「栗最中アイスの方がおいしいじゃん」

男「最近はアイスもいろいろあるんですねー」

長女「あまり食べ過ぎちゃダメだからね」

男「はい」

長女「ま、まあ、とにかく、妹達も、男くんと遊びたがってるから、たまには相手してあげて……」

男「は、はい」

長女「じゃあ、その、無理言って悪かったわ」

男「あ……」

長女「おやすみ」

男「あ、えっと、あの」



63: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:15:42.13 ID:Dz4uCZwvo

長女「な、なに」

男「そ、添い寝は、恥ずかしいですから……」

長女「はい?」

男「長女さんが嫌いだとか、そういうことじゃないですから」

長女「……」

男「その、す、好きというほどではないんですが」

長女(そこで落とさないで)

男「ま、まだ、よく、知りませんし」

長女「うん、別にいいわよ」

男「すみません」

長女「ま、好きじゃなくても結婚はできるし、妹達と付き合うってんでも、私は構わないし」

男「えっと、その……」

長女「あー、でも、一人でなんとかしようってのはもう無しね。それだけは」

男「……はい」

長女「んじゃ、おやすみ」

男「はい、ありがとうございます」



64: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:36:06.24 ID:Dz4uCZwvo

大学。

三女「……ここがわが母校です」

男「あのー……僕、勝手に入っていいんでしょうか」

三女「大学ってそういうものだから」

男「は、はあ」

三女「……男くんは、大学って行きたくなかった?」

男「それは、その、行ければ行きたいですけど」

三女「うちの大学、夜間というか、別時間のやつがあるし……」

男「そ、そうですね」

三女「一通り見て回ったら、事務局に行きましょう」

男「ほ、本当にいいんですか?」

三女「……私、学生結婚っていいと思う」

男「あの、それは」

三女「上姉さんのごり押しで嫌になってる?」

男「そ、そういうわけでは」



65: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:36:33.91 ID:Dz4uCZwvo

三女「……まあ、無理もないわ。それに男くんは、選べる立場だしね」

男「え、選べる立場って……」

三女「……下姉さんに言われたから、正直に言うけど、私達は、借金とはかりにかけても、男くんがいいなって思ってる」

男「そ、そうですか」

三女「だけど、男くんはそれを蹴って、一人で頑張る選択もできる。もっといい女の人にめぐり合えるかもしれないし」

男「……」

三女「……怒った? 私、打算的だから」

男「ま、まあ、その、あ、構内を見て回りましょうよ! ね」

三女「うん。じゃあ、風車みにいこ」

男「風車、ですか?」

三女「うん、ほら、自然エネルギーがーって話、最近流行じゃない? だから、うちの大学でも風車つくっていろいろやってんの」

男「えーっと、工学系の?」

三女「いや。社会経済学」

男「どうして、風車なんか……」

三女「……ネタ?」

男「大学って謎ですね……」



66: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:37:04.65 ID:Dz4uCZwvo

風車前。

三女「こちらが風車です」

男「なんだか、小さいし変な形をしてますね」

三女「なんか、どの方向からでも風を受けることができると」

男「へぇー」

三女「……うちの大学、別に風強くないんだけど」

男「意味あるんですか、それ」

三女「大学の名物にして、学生を集める宣伝効果を、計算してはじき出し……実際の成果などを調査」

男「へ、へぇー」

三女「……あまり、学生は増えてないと思う」

男「そ、そうですか」

三女「……一応、発電できるから、無意味ではない?」

男「あ、でも、実際にやってみると、いろいろ考えられそうですよね」

三女「うん。多分」

男「もしかして、三女さんがやっているんですか?」

三女「いや、友達」



67: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:37:54.75 ID:Dz4uCZwvo

三女「次、図書館」

男「大きいですねー」

三女「最近、外部にも開放しているらしいよ」

男「へぇー」

三女「……男くんも、許可証書けば入れるよ」

男「でも、大学で大事な本は、教授の研究室においてあるんじゃ?」

三女「……そうだね」

男「なんか意味あるんですか?」

三女「大学の図書館にしかおいてない本が、あるかも」

男「……どんなやつですかね?」

三女「……本、というより、雑誌とか?」

男「雑誌?」

三女「学術系ってやつ……」

男「あー、なるほど」

三女「最近は、ネットで出すのが流行りだけど……」

男「じゃあ、図書館に行く必要はないんじゃ……?」

三女「……? そう、かな?」



68: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:39:11.84 ID:Dz4uCZwvo

三女「……サークル棟はいいよね。学食」

男「へぇー、高校には学食なかったんで、初めてです!」

三女「大したことないよ。カレーの肉は、ゴムみたいだし……」

男「食券とか必要なんですか?」

三女「……変なところに食いつくね」

男「あ、券売機!」

三女(何が面白いんだろう……)

男「へぇー、ソフトクリームも売ってるんですか」

三女「……食べる? 別においしくないけど」

男「わ、悪いですよ」

三女「……餌付けしてやる」チャリン

男「あ!」

三女「くっくっく……」ピッ

男「ああっ!」

三女「二個買おう」チャリン ピッ

男「あああっ!」



69: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:40:18.59 ID:Dz4uCZwvo

男「あ、ありがとうございます」ペロ

三女「……やっぱり、大しておいしくない」シャブ

男「割と固いですね」

三女「でしょ? 大体、学食ってそんなもん」

男「……厨房の人が睨んでますが」

三女「よく利用しているから、文句言ってもいいと思う……時々、アンケート出してる」

男「そ、そうなんですか?」

三女「……でも、ここには伝説の」

男「伝説?」

三女「で!」

学女A「あれー、地味子?」

学女B「え、地味子、男連れてる!?」

三女「……」

学女A「え、え、格好よくね?」

学女B「マジで!? 彼氏!?」

学女A「彼氏はないっしょ~」

学女B「声かけよ、声」



70: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:40:45.69 ID:Dz4uCZwvo

学女A「あの~、初めまして~」

学女B「三女さんの、弟さんですか?」

三女「……」

男「あ、あの」

学女A「大学を見に来たとか?」

学女B「もし、良かったら、うちらが案内しましょっか」

三女「……寄るな」

学女A「あ?」

学女B「何言ってんの地味子」

三女「……盛るなよ、鬱陶しい」

学女A「あはは、どうしたの?」

学女B「マジになって、この子」

男「あのう!」



71: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:41:26.44 ID:Dz4uCZwvo

男「僕、おれ、あー、僕、三女さんの友達なんですけどー」

三女「……え?」

学女A「あ、そうなんですかぁ」

学女B「学校見に来たんでしょ?」

男「いんや? 僕の弟が、こっちの学校来たいつってたんすけど、なんかお前、学校近いんだし要綱取りに行って来いよみてーな」

学女A「そ、そう?」

男「この後、バイトあるっつーのに、勘弁しろって話っすよね」

学女B「あ、バイトなの……」

男「三女さんに無理言ってもらって来てっから、誘って欲しいのは山々なんすけどー」

三女「……時間」

学女A「え?」

三女「時間、大丈夫?」

男「ああ、ちょっとマズいっすねー」

三女「……じゃあ、早いところ行こうよ」

男「すんませーん、お姉さん方」ガタッ

学女B「あ、ええ」



72: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:41:49.01 ID:Dz4uCZwvo

学女A「あの~、もしよかったら、メアドとか~」

男「あ? なんで?」

学女B「なんでって……」

三女「……早くしてよ」

男「うっせーな、分かってんよ」

三女「……!」

男「あ、待て、食べきってから行く」パリパリ

三女「早くしなさいよ!」


学女A「なにあれ」

学女B「うざー」

学女A「……顔はいいけど、性格最悪」

学女B「だよね、地味子の趣味悪っ」

学女A「あー、サークル棟行く?」

学女B「だね。なんかイラッときたわ」



73: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:42:15.50 ID:Dz4uCZwvo

三女「……」スタスタ

男「……」テクテク

三女「……」スタスタ

男「……要綱、取りに行きましょっか」

三女「……うん」

男「あの、すみません」

三女「……う、うん。びっくりした」

男「ごめんなさい! すみません!」

三女「い、いいよ。別に、その」

男「僕、あの、あんなことを言うつもりじゃ……」

三女「……あの」

男「本当に、本当なんです!」

三女「わ、分かってる」

男「う、うう……」

三女「大丈夫だよ! でも……その、男くん、我慢しなくて、いいから」

男「が、我慢とかじゃないです!」



74: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:42:43.46 ID:Dz4uCZwvo

男「僕、人に迷惑しかかけてこれなかったから」

男「や、役に立ちたいんです。その、あの」

三女「……」

男「でも、どうすればいいのか、分からなくて……」

三女(なんか良心的なものが痛む)

男「さ、さっきのは振りですから」

三女「……あのさ」

男「は、はい」

三女「くっくっく……私はお前を利用しているに過ぎん……なんか違うな」

男「は、はい?」

三女「……私、さっきみたいに、地味子って蔑まれているんだけど、男くんみたいなイケメンを連れて校内を回れて優越感」

男「は、はあ」

三女「ほら、役に立ってる」

男「でも」

三女「男くんは真面目すぎるだけ」

男「う、はい」



75: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:43:11.13 ID:Dz4uCZwvo

ケーキ屋。

三女「……学食のソフトクリームなどという、ミスチョイスで締めるのは嫌なので」

男「かわいい雰囲気ですね」

三女「学生向けだけど、安っぽくない」

男「ちょっと一味違う感じがしますね」

三女「……実はうちの大学の農学部も噛んでいる」

男「え、どういうことですか?」

三女「果樹の研究室で、実際に研究で栽培した果物を、プロに味を見てもらう……産学連携?」

男「そ、そんなこともできるんですか、大学ってすごい」

三女「いや、単に教授とオーナーが友達……」

男「それは……」

三女「まあ、その分、学生価格とかあるから」

カランカラン

店員「いらっしゃいませ~」

三女「……ベリータルト四つ」

店員「はいはい、いつものね」



76: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:43:39.18 ID:Dz4uCZwvo

店員「ん、四つ?」

三女「……彼の分も」

店員「なになに~、三女ちゃんにもついに春が?」

三女「バイトしてください」

店員「いいじゃん、学科のよしみでさー……って、え、イケメン!?」

三女「バイトしろと言わざるを得ない」

店員「ど、どこからさらってきたの!?」

三女「姉妹で取り合えと母が」

店員「どこのアマゾネスだよ」

三女「……勝者は男くんと彼の両親が残した借金を得る」

店員「うひゃー、なんか漫画チック」

男「あ、あのー」

三女「……学科の友達」

店員「あ、どうも、初めましてぇ」

男「おいしそうですねぇ」

店員「うんうん、店長はそれなりに腕が立つからねー」



77: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:44:05.38 ID:Dz4uCZwvo

三女「……バイトしろよ」

店員「なに~? 取るつもりないから、安心してよ」

三女「ふん」

店員「大体、あんたのお姉さんめっちゃ怖いじゃん」

三女「……こちらが主張しないと一方的にやられる」

店員「ははぁ」

男「オススメはベリーのタルトなんですね」

店員「あ、そうだよ! なに、ひょっとしてお菓子に興味ある?」

男「あまり、食べたことがないので……」

店員「そうそう、バイト募集してるから、どう?」

男「ひょっとして、社員割りとかも……」

店員「あるよ」

男「いいなぁ」

三女「おい」

店員「……あ、ごめん、こないだ新しい子来たばっかりだったわ」

男「それは残念です」

三女「……ふん」

店員「怖い怖い」



78: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:44:40.02 ID:Dz4uCZwvo

夜。

三女「……男くんは、お菓子好き」パク

次女「っつーかぁ、あまり食べさせてもらえなかったからなんじゃない?」ムグ

長女「うーん、一度に上げすぎるのもどうかと思うわ」

次女「今も皿洗いしてるし」

三女「……また今度、大学の周辺を回ろうって。次のデートの約束もゲット」

長女「へぇ、良かったわね」

三女「……かばってもらったりしたし、私、リード」

長女「わ、私だってかばってもらったし」

次女「……」

三女「大学、行きたいかもって。男くんの将来も考えられている」

長女「はぁ? お金の問題を検討してからしゃべりなさいよ」

三女「……夢とか、目標がないとダメ。借金返済が生きる目的じゃ……」

長女「だから、彼には安心が必要なの!」

次女「いや、それよりさ」

長・三『なに!?』

次女「一緒に家事を手伝ってやんなさいよ~」



79: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:45:07.30 ID:Dz4uCZwvo

長女「な、なんでよ」

三女「……キッチン狭いし」

次女「はぁー」

長女「何か文句があるわけ?」

三女「……失礼」

次女「別にいいんだけどさ、ぐだぐだせいかいを探り合うより、一緒にいてあげるほうがマシでしょー?」

長女「あんたに言われないでも!」

三女「……添い寝」

長女「あ?」

三女「添い寝してもらう。今日、振り回したお詫び」

長女「それは無理ね。私も断られたし」

次女(試したのかよ)

三女「……上姉さんのがっつき具合は、引く」

長女「あんた、物理されたいの?」

三女「男くん!」

男「は、は~い、ちょっと待ってください」



80: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:45:33.72 ID:Dz4uCZwvo

男「なんでしょう」

三女「……私、初めてを男くんに、んー、じゃなくて」

男「は、はぁ?」

三女「今日、疲れたでしょ。夜、マッサージしてあげる」

男「む、む、無理ですよ! そんなの!」

三女「……そんなの?」

男「じゃなくて、その」キョロ

長女「……絶対にノー」

次女「あ、ノーコメントって意味ね」

長女「違うわよ!」

男「は、恥ずかしい、じゃないですか……」

三女「……じゃあ、マッサージしに来る?」

男「そ、それはもっと、恥ずかしいですよ!」

三女「私も恥ずかしい、お互い恥ずかしいからオッケー」

男「ど、どういう理屈なんですか!」

次女「まあまあ、男くんは興味なくてもさ、いずれ床を同じくするわけじゃん?」

男「し、しませんよ」

次女「すると思うけど。だから、提案ってことで―――」



81: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/26(月) 21:46:00.14 ID:Dz4uCZwvo

長女「川の字ね」

男「うう……」

三女「……こっち、向いて」

男「む、無理です、無理無理」

長女「寒いから、くっつこ」ギュッ

男「ひ、ひう……!」

三女「……ムードない。上姉さんは出て行って」

長女「出て行くのはあんたでしょ?」

三女「……」

男「あ、あのー」

長女「どうしたの? まだ寒い?」

三女「……むしろ暑いわ。上姉さんは出て行くべき」

男「み、みんなで寝るなら、次女さんは……?」

長女「いきなり4Pとかないわー」

男「ち、違いますよ!?」

三女「どんとこい」

男「違いますって!」



87: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:11:18.62 ID:tFm1WniV0

自宅。

次女「んー……」

男「あ、次女さん、おはようございます」

次女「おっはよー……」

男「長女さんはお仕事に行きましたよ」

次女「そー……」

男「三女さんは、実習がどうとかで、早く」

次女「あー……」

男「次女さんは今日はどのようなご予定ですか?」

次女「今日は休みー……」

男「でしたら、顔を洗って」

次女「ふぁい」

男「僕も今日はお休みをとることにしました」

次女「そー……」

男「スープ、温めなおしておきますね」

次女「……休み?」

男「はい」

次女「休みって、マジ?」

男「は、はい」



88: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:11:48.71 ID:tFm1WniV0

次女「おねえか三女は?」

男「だから、お仕事と実習で」

次女「男くんが休みの日に、仕事? 実習?」

男「そ、そうですが」

次女「何考えてるのよ、あいつらはー!」

男「ひっ」ビク

次女「男くんも引き止めないと!」

男「ど、どうしてですか?」

次女「だって、あの二人は男くんを狙ってるわけじゃない。お休みの日があれば、そりゃもうがっつりと!」

男「確かに、その、こないだのお休みは三女さんと出かけましたが……」

次女「でしょ!? ホテルにも泊まらなかったけど!」

男「と、泊まるわけないじゃないですか」

次女「なんでよ! 20歳前後の同棲している男女が遊びに出かけて一発もやらずに帰ってくるとかおかしいでしょうが!」

男「そ、そんなことできませんって」

次女「はぁ~……お姉さんがっかり」

男「がっかりって言われましても……」



89: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:12:22.38 ID:tFm1WniV0

男「でも、次女さんとはあまり話したことがなかったので、ちょうど良かったです」

次女「……」

男「えーっと、良かった、です」

次女「なに?」

男「え?」

次女「男くんは私狙いだったの。それは知らんかったわー」

男「ち、違いますよ!?」

次女「うーん、おねえにも三女にも悪いけど、本人がその気なら、私も受けざるを得んよねー」

男「そ、そうじゃなくて、きちんとお話する機会というか、えーと」

次女「なるほど。やっぱりきちんとプロポーズしてもらわないとねー」

男「ぼ、僕は次女さんと結婚するつもりは!」

次女「え、ないの?」

男「え、は」

次女「そっかー、まあ、私は魅力ないしねー」

男「え、ちが」

次女「おねえとか三女に比べると、顔から下のプロポーションも残念だしー」

男「どう言えばいいんですか……」ガク

次女「とりあえず、朝食べてきまー」テッテ



90: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:13:09.47 ID:tFm1WniV0

一服後。

次女「だってさー、買い物はおねえといってるし、遊びには三女といってるでしょ」

男「そ、そうですが」

次女「私と何をする気なの? 家事?」

男「そうですね」

次女「それって普段からやってるじゃん。それで、何? 私の何か聞きたいわけ?」

男「それは、その……」

次女「人のことを探ろうとする子は、お姉さん嫌いだなー」

男「そういうつもりじゃ……」

次女「……」

男「うう……」

次女「ごめんって、冗談、じょーだん」

男「あの、その、次女さんを問い質すつもりは……」

次女「分かってるって。ちょっと悪乗りしただけ」

男「ほっ」

次女「私が男くんの過去を聞かないとだもんね」

男「そ、そっちですか!?」



91: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:13:53.22 ID:tFm1WniV0

次女「だってー、まだ話してないこととか、いっぱいあるでしょ? ホントは」

男「そ、そんなこと……」

次女「ほれほれ、恥ずかしいこと言って見」

男「う、うう……」

次女「いやなら言わなくてもいいけど」

男「……前は、居候させていただいたところで」

次女「うん?」

男「居候させていただいたところで、ごろごろしてました」

次女「う、うん」

男「ごろごろしてたせいで、役立たず、と叱られてしまい……」グスッ

次女「そ、そう」

男「おまけに、借金があることも後から知られてしまい……」

次女「そ、そうなんだ。大変だったね」

男「ショックも、あったんですけど、し、叱られてから、ようやく自分が……役立たずだって……」

次女「ストップ!」

男「は、はい」



92: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:14:49.00 ID:tFm1WniV0

次女「まあ、その、ご両親が健在だった頃のこととか、思い出せば良いじゃん。辛い思い出じゃなくて」

男「父さん、母さんが……」

次女「ほら、どこかに遊びに行った思い出とかさー」

男「迷子になって……手厳しく叱られてしまい……」

次女「あーっと、やめやめ!」

男「おまけに知らない人に連れてきてもらい、迷惑をかけたと……」

次女「もー! 昔のことはいいから!」

男「すみません……生きててすみません……」グスッ

次女「もっと未来のこと、考えよ、ね?」

男「未来……」

次女「そうよー、美女ー、ではないけど、三人も嫁候補がいるしー」

男「借金返済……」

次女「えーっと」

男「そういえば、大体、20~30年くらいかかる計算でしたね」

次女「あー、ま、だから、それは私らも手伝うし」

男「全部返し終わったら、40歳か50歳か。あはは、もう何も出来そうにないですね」

次女「……」



93: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:15:30.97 ID:tFm1WniV0

次女「ええい、もっと、その、やりたいこととか、夢とか目標とか言いなさい」

男「目標……」

次女「そうよー、子どもは何人ほしいとかー」

男「お墓が……」

次女「……」

男「お墓が欲しいですね、両親の。きちんと、入れられなかったから」

次女「暗いよ!」

男「あ、それだったら、返し終わってからでも……」

次女「やめなさい!」

男「な、なんですか」

次女「もっと建設的なことを考えようよ」

男「……」

次女「なんかこう、ね、あるじゃない?」

男「じゃあ、次女さんはどうなんですか」

次女(そう来るか……)



94: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:16:33.11 ID:tFm1WniV0

男「次女さんが明るいことを言ってくれれば、僕も明るいこと考えられるかも」

次女「あー、そう」

男「どうなんですか、次女さん。ほら、夢を追いかけてる的な」

次女「なにワクワクしてるのよー」

男「知りたいですー」

次女「うざっ」

男「すみません……」

次女「ああ、もう」

男「で、でも、その、元気、出ましたし」

次女「……そんなに言うことでもないんだけどね。私、今バイトしてんだけど」

男「は、はぁ」

次女「塾講師よ。本当は、嘱託でもなんでも、潜り込みたかったんだけど」

男「先生、ですか?」

次女「そ。教師になりたかったの。でも、なんていうの? 向いてないのかなーって」

男「……」



95: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:17:04.15 ID:tFm1WniV0

次女「なんかさー、忍耐が足りないっていうのかな。私、途中で飽きちゃうんだよね」

次女「教師って、受け持ってる当時はどうしようもないアホの子でも、我慢して、大事なことを教えてさー」

次女「あるいは当時出来る子でも、十数年後に花開いたり、足りてないところを思い出してもらったりするわけじゃん」

男「そう、ですかね」

次女「そういうもんだよ。気が長~い仕事なわけよ」

次女「でも、どっちかってーと、私、ほら、見ての通り飽きやすそうな感じじゃん?」

男「そうですかね?」

次女「そうなのよー。だから、教師には向いてないのかなーって」

次女「おねえみたいにくるくる意見が変わっても、結局はやりたい仕事についてたり、三女みたいに院まで行く! とかは絶対無理だし」

次女「次の試験も、受けるつもりだったけど、この際、やめて、塾講師として就職しちゃおうかなーって」

男「……」

次女「ちょうど、男くんが来たのはいいタイミングだったのよ。塾からはもっと長く入ってくれとは言われてたし」

次女「数年臨時講師やっても、正式に教員になれない先輩とかの話を聞いちゃうとね」

男「……」



96: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:17:37.13 ID:tFm1WniV0

次女「んー、ま、だらだら難しくなく生きるのが目標といえば目標?」

男「夢を諦めるのが、目標なんですか……?」

次女「失礼だぞ」ツン

男「す、すみません」

次女「大体、そんなこと言ったら、男くんこそ何も無いじゃない?」

男「……」

次女「うん、そうね。空っぽ同士、おねえや三女よりお似合いだったりして」

男「そ、そんなこと」

次女「否定しちゃう? なんかもっともらしい夢でもある?」

男「……」

次女「……」

男「ないですけど……」

次女「……もー、冗談に任せて言ってるだけなんだから、そんなマジにならんでよ」

男「次女さんは、ずるいです」

次女「ごめんって」


ピンポーン



97: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:18:26.07 ID:tFm1WniV0

男「はーい! ……あ、見てきます」

次女「はいはーい」

次女「……」

次女(別に、いじめたいわけじゃないんだけどね……)

次女(夢がありゃ、いいってもんでもないけど……)


男「や、やめてください!」


次女「あ?」


男「……そ、それは、こちらのお家に話してみないと」


次女「何してんのよ?」

スーツの女「だから、一緒に来いって言ってるのよ」ぐいっ

男「だから、も、もう、僕は」

次女「……」ジーッ

男「じ、次女さん!? 見てないで助けてください!」

スーツの女「誰!?」

次女「あんたが誰よ」



98: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:18:49.48 ID:tFm1WniV0

スーツ「私は、彼の婚約者よ!」

男「借金取りでしょ!?」

次女「ふーん」

借金取り「よく分からない女が、私たちの間に口を挟まないで!」

男「助けてください!」

次女「警察を呼ぼか」

借金取り「ちょっと!?」

次女「あのね。まず、ここは私たちの家、彼は私たちの家族(みたいなもの)。あなたがしていることは犯罪。OK?」

借金取り「こいつが払わねーのが悪いんでしょ!」

次女「彼は払う意思があるけど」

借金取り「だから、私が結婚して、きちんと清算してやるって」

男「ぼ、僕、借金取りさんとは結婚しません!」

次女「だってさ」

借金取り「何を、この」

男「僕、僕、この、次女さんと結婚しますから!」

借金取り「」



99: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:19:39.39 ID:tFm1WniV0

次女「あらうれしい」

男「は、話を合わせてくださいよ」ヒソ

借金取り「そ、そんな平日の昼間っからごろごろしている女に、支払能力があるっていうの」

次女「今日は休みなだけですー」

借金取り「わ、私のほうが料理も得意だし、美人だし!」

次女「それを帳消しにする性格よね」

借金取り「なんなのよ! あんたに彼を支えられるっていうの!?」

次女「うち、三姉妹だから」

借金取り「はぁ?」

次女「三人で分担して返済をするって計画立ててるし、問題ないわよ」

借金取り「……」

次女「その代わり、誰かが彼と結婚したら、三人平等にやれる権利が」

男「ななな、なに言ってるんですか」ヒソヒソ

次女「話は膨らませたほうが面白いでしょ」ヒソヒソ



100: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:20:06.88 ID:tFm1WniV0

借金取り「そ、そんなむちゃくちゃで、彼が幸せに……」

次女「男くんは承諾済みよ。三人でも話し合ったし。ね?」

男「そ……!」

次女「……ね?」

男「そ、その通りです! 僕はこの家の長女さん、三女さんとも親しくつき合わせていただいて……」

借金取り「そそそそんなこと」

男「こないだも三人で寝ましたから」

借金取り「ぐふっ」ガクッ

次女(大ダメージだ)

次女「今日は私が当番の日だから」スッ

男「ち、近いです……よ?」

次女「して?」

男「な、なにを」

次女「いつもの」

男「……えーっと」

ちゅ

借金取り「!」



101: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:21:01.04 ID:tFm1WniV0

男「ひ、人前で、恥ずかしいですよ」

次女「分かってもらうにはこれが一番手っ取り早いかなーって」

借金取り「ぐぬ、ぐぬ、ぐぬぬぬ……」

男「……」

次女「そういうわけで、返済計画についてでしたら、またアポイントを取ってきてください」

次女「それ以外のことだったら、もうあきらめてほしいな~って」

借金取り「み、認めないわ……」

男「次女さん」

次女「ん?」

ちゅっ、ちゅー

借金「ふぁあああああああ!」

男「……ん」

次女(舌入れられた)

借金取り「ちくしょおおおおおお!」だだっ



102: ◆WPwc2pN1N6 2012/03/31(土) 13:21:34.17 ID:tFm1WniV0

男「はぁ」

次女「ふう」

男「……あ、あの」

次女「待って。いろいろとまとめるのは、おねえと三女が帰ってきてからでもいい?」

男「は、はい」

次女「……でも、一個だけ聞いとくかー」

男「な、なんでしょう」

次女「私と結婚するんでいい?」

男「……」

次女「やっぱり、その場のノリ?」

男「僕は、正直言って、まだ、皆さんと……」

次女「あー、ちっすまでされて舌まで入れられたのに」

男「す、すみません!」

次女「謝られると余計に傷つくわー」

男「ご、ごごご」

次女「んん?」

男「……結婚します」

次女「そ、そう」

男「み、皆さんそろってからに、しましょう、ね」



106: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:01:05.73 ID:793qqsuxo

夜。

長女「借金取りが来たぁ?」

次女「そうよ。しかも、男くんに求婚してきた」

三女「……破廉恥な」

男「す、すみません」

次女「ま、破廉恥かどうかは知らないけど、なんていうの、本格的に腹を決めないとまずいかなってねー」

長女「その借金取りってのは女だったの?」

次女「あ、そこから? うん、女だったわよ」

三女「……でも、組織があるはずだから」

男「あの……」

次女「あ、そうよ。男くん、面識がありそうだったわよね」

男「そ、そうなんです。父の旧友の娘さんだそうで、以前にも申し出をいただいていたんですが」

長女「申し出って何?」

男「……結婚する代わりに、借金を整理すると」

三人『……』



107: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:01:26.81 ID:793qqsuxo

長女「それって、私たちと同じよね」

次女「そうすると厄介よねー、相手は前から狙ってたのを、横からさらわれた感じだし」

三女「……信頼関係が築けなかった、相手の負け」

次女「まあ、男くんは私と結婚するんで、決着ついたんだけど」

長・三『なに!?』

男「え、えっと」

次女「そいつの目の前でちゅーもしたし、べろちゅーもしたし」

長・三『ふざけんな!』

長女「おっまえ、私は興味ありません、みたいなこと言ってたじゃろうがー!」

三女「……ありえない許せない」

次女「愛されてしまったから、仕方ないわー」

男「あ、あのですね」

次女「『僕は、次女さんと結婚しますから!』」

長女「むきゃああ!」

三女「……おかしい、絶対おかしい!」

次女「はっはっは、発狂っぷりを眺めるのは楽しいわねー」



108: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:02:11.03 ID:793qqsuxo

男「あの、あれは、その、演技というか、フリというか」

次女「あー、傷ついたわー、すっごく嬉しかったのになかったことにされて傷ついたわー」

長女「あんたね、男くんを弄ぶのも大概にしなさい」

次女「ごめんごめん」

三女「……嘘なのよね?」

次女「傷ついたってのは、ちょっと本当」

男「え、えう……」

長女「どう突っ込んでほしいわけ?」

次女「あはは、いやなに、私も男くんと結婚できたら嬉しいし、出来なくても、ちゃんと責任を負うわよ」

長女「……?」

男「あの、昼間に、こう話したんです」

三女「……なにを?」

男「み、皆さんと結婚して、平等に、その、負担してもらうし、その、よ、夜も平等に、一緒になるって……」

長女「え」

三女「マジで」



109: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:02:38.35 ID:793qqsuxo

男「その、マジです。具体的にどなたと結婚するかは、その、相談しようかと……」

長女「本当に、家に婿入りするってことよね?」

三女「……重婚的な感じになるけど」

男「ふ、ふつつかものですが」

次女「うん。ま、そういうわけよー」

長女「ええー!? マジで、マジマジ!?」

三女「……夢的な、嘘的な感じじゃなくて?」

男「その、本当によろしいんですか。三人まとめて、なんて……」

長女「そりゃもう、歓迎よ! 今だって普通に家族やってもらってるし」

三女「……夜さえ平等なら、文句ない」

次女「ふふふ、浅ましい連中じゃのー」

長女「うっさいわね! ま、旦那を共有するなんて、あまり考えられないかもだけど」

三女「……嫁ぐより楽だし、男くんがかっこいいから」

男「……ありがとうございます」グスッ



110: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:03:21.41 ID:793qqsuxo

長女「でもさ、そうすると、そのー、借金取り? そいつじゃなくて、何で私たちを選んだの?」

男「そ、そうですね」

三女「それは聞きたい」

次女「そうねー、私も聞きたいかも」

男「……」

長女「こういっちゃなんだけど、私たちとそいつの違いなんて、あまり、ないでしょ」

男「あの、僕、の話からになってしまうんですけど、いいですか?」

長女「う、うん」

男「……次女さんには話したんですが、僕、両親が亡くなった後の居候先では、ごろごろして、働いてませんでした」

三女「……」

男「それで、何べんも叱られて、これじゃダメなんだーって、思って」

長女「でも、ご両親が亡くなられたら、元気なんか……」

男「……そうかもしれません。でも、借金もあるのに、これじゃダメだって思いまして」



111: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:03:53.42 ID:793qqsuxo

男「借金取りさんが結婚の話を持ち出してきたのは、働かないなら、名前くらいよこせって……」

男「あの、父の権利関係ですね、買い取ったようなんですが、人間関係でごたごたしていたようでして」

三女「……金は取ったが、実にならなかったと」

男「そ、そんな感じです。それで、息子の名前を使えばってことだと思ったんですけど」

男「僕は、最初から、それは無茶な話だってお断りしてました」

長女「どうして?」

男「……会社に居た人たちは、僕が何をしないのを見て、がっかりしていくんです」

男「父は厄介を貰ってきても、ちゃんと処理していく人でした。僕は……」

男「そんな人間の名前を使っても、うまくいかないと思いました」

次女「そりゃ、まあ、親父と息子は別物だもんねー」

男「そうなんですよ! それは」

男「そうなんです……」

男「とにかく、このままじゃダメだと思って、整理し切れてない分は、自分で払いますって決めました」

男「でも、やっぱり、体壊したり、住所がなくなったりで……」

男「皆さんのお母さんに見つけてもらうまでは、ちょっと、ホームレスでした」



112: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:04:23.95 ID:793qqsuxo

男「だから、本当は、皆さんにご厄介になってるけど、いつかは出ようって、最初から決めてました」

長女「うん……そうだった」

男「でも、皆さんは、口では利用するだけだとか、利益がどうのって言うけど」

男「みんな、僕のこと気遣ってくれて……」

三人(イケメンだから……)

男「長女さんは、率先して僕を励ましてくれて。三女さんは、僕を楽しませてくれて」

男「次女さんは、えへへ、話を聞いてくれて」ニコッ

男「だから、皆さんになら……恩返しがしたいと」

長女「そう」(めっちゃ欲望ぎらぎらさせてたはずだけど)

次女「ふぅん」(むしろ彼の方が話を聞いてたような)

三女「……うん」(楽しませ……た?)

男「そ、そ、その、夜……については、分かりませんが」

男「が、がんばりますから」



113: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:05:19.46 ID:793qqsuxo

長女「そういえばさぁ、男くん」

男「は、はい」

長女「もう、隠してることないって聞いたら、ないって言ってたわよね」

男「あっ」

長女「めちゃくちゃ隠してるじゃないのよー!」

男「うわあ、ごめんなさいー!」

長女「結婚を迫る女もいたし、そこまで激しくお仕事で困ってるとは知らなかったし!」

次女「おねえの迫り方がひどかったからでしょー」

長女「うるさい!」

三女「……引くわー」

長女「なんで私が責められる流れなのよ!?」

男「あの、あの、こ、怖かったのも、あります」

男「き、嫌われたく、なくて……」

長女「そういう気遣いは、いらないの。今でも十分、家族なんだから」

男「はい……」ウルッ

次女「えらそうなー」

三女「……ないわー」

長女「うるさいわね!」



114: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:06:00.60 ID:793qqsuxo

長女「ま、とにかく。今後の方針を立てましょ」

次女「そうだよねー、実際、名目でも何でも誰と結婚するのかとかさー」

男「そ、そうですね」

三女「……上姉さん、とりあえず」

長女「ん? ああ、そうね。三女、経理の人との話、教えて」

三女「……お母さんの会社の経理の人と話しました。男くんの借金の残額、コレ自体を減らすのは、すでに整理されていたこともあって、ちょっと難しい」

男「……」

三女「ただし、その半分は、お母さんの資産を利用して、返済することとする」

次女「ほぉう、さすがにあのババァも改心したかー」

長女「いや、元はと言えば、あいつの借金だからね?」

男「い、いえ、そういうわけでも……」

三女「……いい? 私たちが引き取るのは残りの半分。結婚した夫婦に一括して負の遺産が下りるような形式を取る」

三女「ここからは内部の話でいいんだけど、四人で少しずつ払うことにして」

三女「……私は学生だし、下姉さんはパートタイムだから、全員同額は無理」

長女「妥当な線ね。男くんも、それでいいわよね」

男「そ、そうですね」



115: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:06:32.33 ID:793qqsuxo

三女「支払い方法ややり取りは、経理の人の知人に中心にやってもらうことにしました」

次女「その人は信頼できんのー?」

三女「……うちに来たことあるけど、弁護士の」

長女「あー、あの人ね。良い人」

男「す、すみません、そこまでしていただいて」

長女「うん。で、そこまではいいとしてさ、私からは提案ね」

次女「うん」

長女「男くんと結婚するのは、法律で一番有利なやつがしたらいいのかなーって思ってたんだけど」

長女「どうもそこまで差がないようなのよね」

三女「……つまり」

男「つ、つまり?」

長女「一番、床上手な人が貰い受ける!」

次・三『いえぇぇえい!』

男「ええええええええ!?」



116: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:06:54.23 ID:793qqsuxo

長女「とりあえず、今日は三人全員でやってー、明日から一人ずつ」

男「むむむ無理です無理無理!」

次女「そっかー、ちょうど三人いるし、週二日で、一日は休日っていう手で」

三女「……私は、火金で」

長女「じゃあ、私、会議が入らない水土」

次女「あ、ちょーどいいわ。私は月木ねー」

男「あの、あの」

長女「大丈夫よ、別に毎日するわけじゃなくて、体調が悪い日は休んでもいいし」

次女「そうよねー、担当日は添い寝だけにするんでもいいわけだし」

男「そ、そういう問題じゃないと思うんですが……」

三女「……天井のしみを数えていたら、終わる」

男「そのう、無理やりはちょっと……」

長女「男くんは嫌なの?」

男「そ、その、人並みには、興味がないわけじゃないですけど」

次女「いやあ、私は久しぶりだなー」

三女「……私、初めて」

長女「ま、経験者もいるから、任せておきなさい」

男「うぐぅ」



117: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:08:10.68 ID:793qqsuxo

翌朝。

長女「……くー」

次女「すぴー」

三女「……」むくり

三女「……男くん?」

三女「……」

三女「昨日は激しかったね……って」

三女「……いない」

三女「料理もない……」

三女「……強引にはしなかったし、せいぜい十数回で収まったし」

三女「お互い、気持ちよくなったし……」

三女「……」

三女「……避妊もしたはず」

三女「上姉さん、下姉さん。起きて」

長女「んー」

次女「ふぁぁー」



118: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:08:32.99 ID:793qqsuxo

三女「……男くんがいません」

次女「逃げたか」

長女「そ、そんなわけないでしょ。半泣きだったけど、ちゃんとやったし」

次女「荷物はあるわねー、ちょっと散歩にでも出たのかしら?」

長女「……」

三女「……大体、朝は室内仕事のみのはず」

次女「男くーん」

長女「ちょっと、外も見てくるわね」

次女「あいー」

三女「……ご飯もなしに」

次女「本当に頼りっぱなしよねー、私たち」

三女「下姉さんの口技が下手だったから」

次女「うるさいわねー、あんただって、おっぱいの使い方なってないしー」

三女「……巨乳はあるだけで人を喜ばす」

次女「やかましいわ、奇形」ぎゅー

三女「いたい!」



119: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/02(月) 21:09:01.90 ID:793qqsuxo

長女「ちょっとあんたたち!」バン

次女「なに?」

長女「男くん、くつもあるわ」

三女「……ということは」

長女「出て行ったんじゃなくて、誘拐されたんじゃないの!?」

次女「はぁ?」

三女「……ケータイ、かける?」

長女「いや、その前に、追跡機能使っておきましょう」

次女「そんな、昨日の今日で……」

三女「……アプリで見られるから、ちょい待ち」

長女「どう?」

三女「……」

次女「ん。あ、出たわね」

三女「……移動してる」

長女「……ちっ、洒落んならないわ。車準備してくる!」

次女「えーっと、マジなの、これ」

三女「……上姉さん、移動の前に作戦練らないと」



128: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:49:51.87 ID:/SnZ6bbHo

長女「作戦ったって、どうすりゃいいのよ!」

三女「……誰が誘拐したのか。一人で男くんを誘拐できるとは思えない」

次女「まあ、複数人いる家に、一人で突入するなんてちょっと考えにくいわ」

長女「だから?」

次女「おねえ、相手も複数いるし、下手すれば返り討ちにあうかもしれないってこと」

長女「そうかもしれないけど」

三女「……相手が分かれば、行き先も想像がつく」

長女「でも、いつケータイを捨てられるか分からないのよ!」

次女「気づいてないんじゃない」

三女「……罠の可能性もあるけど」

次女「だから、ケータイは見るけど、先に誰が誘拐したか考えようよってことでしょ」

長女「……あんた、昨日、借金取りが来たって言ってたわね」

次女「それはちょっと短絡的過ぎない?」

長女「でも、彼の線で他に何かあるの?」



129: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:50:21.91 ID:/SnZ6bbHo

三女「まだ、隠してることがあるのかな……」

次女「信頼されてるわけじゃないもんねー」

長女「な、なんでそんなこと言うのよ」

次女「彼だって、全面的に信頼してくれて、昨日もやったわけじゃないでしょ?」

長女「そうかもしれないけど……」

三女「……」

次女「ま、私が昨日、色々言い過ぎたせいで、自発的に出ちゃったって可能性もあるかも」

長女「おい!」

次女「べっつにー、頼まれたからあれこれ言っちゃっただけだしー」

三女「……下姉さん」

次女「なに?」

三女「えい」ぺち

次女「……なに?」

三女「……下姉さんは男くんと同じで、ごまかす癖がある」

次女「ないわよ、そんなの」



130: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:50:46.47 ID:/SnZ6bbHo

三女「男くんは、大げさに嘆いて、あれは演技だーって見せかけようとするけど」

長女(ああ、演技ね)

三女「下姉さんも、ふざけた感じで、よく感情をごまかそうとする」

次女「……」

三女「……男くんは、確かに私たちのことを、一歩引いて見てる」

三女「迷惑って気持ちもあるけど、助けてもらってるからガマンしてる、みたいな」

長女「うー……そういうの、ショックだわー」

次女「おねえはそういうの気づかなすぎ」

長女「うるさいわね!」

三女「……でも、男くんは、捻じ曲がっていても、本音を言おうとしてがんばってた」

三女「下姉さんはどうなの? もう男くんに関わるのは面倒だから、いや?」

次女「いや、そういうんじゃなくてね。大体さらわれたかもわからんって」

長女「次女。この際だから聞くけど、あんた、男くんをどう思うの?」

次女「いや、あのさ」

長女「昨日の今日で、何も言わずに出て行くような人じゃないことくらい分かるでしょ? 厄介ごとに巻き込まれたに決まってるわ」

次女「……」



131: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:51:13.32 ID:/SnZ6bbHo

長女「私たちは、まあ、あんたに結婚は譲っても別にいーわよ。なんか一番仲良さそうだし」

三女「……いや、私は」

長女「でもね、もう家族なんだから、最後まで彼に付き合うわよ」

次女「……」

長女「どうするの!? 今もどんどん動いてるのよ!」

次女「……イケメンだから」

長女「はあ!?」

次女「せっかくのイケメンだし、逃す手はないわよねー」

長女「あんたね!」

次女「私、ぶらぶらしてるし」

長女「あっ、あんた、そのっ……」

次女「二人はさ、やりたいことやってるけど、私だけ第一志望も落ちて、教員採用も落ちて……」

次女「だから、二人が男くん助けたいって言うんなら、従うまでよ」

長女「はぁー、あんたはー」

三女「……めんどくさ」



132: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:51:44.17 ID:/SnZ6bbHo

次女「だって、男くんが私を好きじゃないのは知ってるし」

長女「あんたはどうなのってことよ」

次女「私はそこまででもないかなー」

長女「好きか嫌いか!」

次女「……」

三女「……嫌い?」

次女「ううん、好き。でも……」

長女「じゃあ、探すわよね?」

次女「……うん」

長女「はぁー。好きなら、それでいいの。嫌われてるとかはいいの!」

三女「そうそう」

長女「大体、私たちが押しても引いても動かなかったのに、ちゅーとかしちゃってるしさ」

三女「そうそう」

長女「どう考えても、一番好感度高そうなの、あんたなのに」

三女「……そうそう」

次女「……うん」

長女「じゃ、いい? とにかく、男くんを探さないと!」



133: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:52:31.32 ID:/SnZ6bbHo

次女「そしたらさ、まずは経理さんに連絡取ってみない?」

長女「な、なんでよ」

次女「だって、一番可能性がありそうなのって、例の借金取りでしょう。事務所の住所、分かるんじゃないの」

三女「連絡、取ってみる」

長女「そ、そうね。お願い」

プルルル プルルル

三女「……でないわ」

長女「会社に連絡してないでしょうね。ケータイにかけないと」

三女「まだ、朝の時間帯だけど」

次女「一刻を争うって言えば」

三女「……勝手な」

プルルル プルルル

三女「……」

三女「あ、おはようございます~、三女です~」

長女「三女もこういう声色が出来るんだから、積極的に使えばいいのに」

次女「しっ」



134: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:53:10.43 ID:/SnZ6bbHo

三女「朝の時間にすみません、母がご迷惑をおかけしておりまして」

三女「あ、そういうわけじゃ、あの、実は急ぎでお聞きしたいことが……」

三女「そーです! 例の男くんの件で。ちょっとですね、返済先の事務所の住所と電話番号を知りたいんです」

三女「……え? いやいや、そういうことじゃ。あのー、まあ、そこの名前も知りませんし」

三女「……」

三女「え? 来る? あ、あの……」

三女「……どうする? 仕事半休にして、来るって行ってるんだけど」

長女「さすがに巻き込むわけにはいかないでしょ。とにかく、住所だけ聞いてよ」

三女「あのー、ごめんなさい、急用で、とにかく住所だけでも……」

三女「は? だから、あのですね……」

三女「それは……いや……でも……」

三女「……だから、男くんが」

三女「!」

次女「何を話してるのかしら……」



135: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:53:47.64 ID:/SnZ6bbHo

三女「……わ、分かりました。じゃあ、姉が」

ピッ ツーツー

三女「……」

長女「な、なに?」

三女「……あのさ、経理さん、事務所に行くから、どちらか一緒に行って」

長・次『は?』

三女「……なんかその、どの道、そこの連中とやりあうんだって」

長女「いやあの、私たちは、男くんを」

三女「だから、男くんが誘拐されたかもっての、知られてるっぽくて」

次女「マジで? なにか情報をつかんでるのかしら?」

長女「うそでしょ?」

三女「……その、どうせやらなくちゃいけないから、お姉さんを連れてきなさいって」

次女「……どうする?」



136: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:54:29.35 ID:/SnZ6bbHo

長女「そりゃ、行くしかないでしょ。でも、行くなら三人で行きましょう」

次女「それって、大丈夫なの?」

三女「……男くん、事務所に行くとは限らない」

長女「んー、それじゃあ、二手! 私が経理さんと行くから、あんたたちは男くんのケータイを追って」

次女「おねえ、大丈夫?」

長女「大丈夫でしょ。私には度胸しかないから」

三女「……がんばって」

長女「ん。あ、そーだ、まだ何も食べてないじゃん!」

次女「ここでそーいうこと言う?」

三女「とりあえず牛乳」

長女「これ飲んだら行くわよ!」

次・三『おー!』



137: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:54:52.37 ID:/SnZ6bbHo

車内。

男「……」

借金取り「大丈夫? 男」

男「うっ……」

運転手「大丈夫ですよ、お嬢。大して強くは殴ってませんから」

借金取り「何言ってるのよ! いきなり殴りつけて!」

男(まったくです……)

運転手「大体、お嬢がわがまま言うからでしょう? そんな子ども捕まえて」

借金取り「バカ言わないでよ。一目ぼれして、せっかく借金をネタに……や、男に近づけると思っていたのに、どっかに行っちゃって」

借金取り「ようやく見つけたと思ったら、どこぞの知らない女どもに囲われているなんて」

運転手「金で恩を売っても、どうせ仇で返されますよ」

借金取り「そんなことないわよ! ねー?」

男「……」

借金取り「ないでしょ」

男「……そうですね。姉妹の母さんも、一部は返してくれましたし」

借金取り「あ? ああ、あのババァか。ホント、男もひどい目にあったわよね」

男「現在進行形であってますがね」

運転手「おい、クソガキ。立場わきまえろや」

男「……」



138: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:55:33.87 ID:/SnZ6bbHo

運転手「お嬢はお前ん家の借金をまとめてくれたんだぞ。分かってんのか」

男「……」

運転手「お前んところの親父は経営に無能だったくせに、気風だけは大人物のつもりであっちこっちから借金引き受けてたからな、分かるか?」

運転手「馬鹿の尻拭いは家族がきっちりやらないといけないんだわ」

男「……」

借金取り「もう、そんなことどうでもいいでしょ?」

運転手「こいつ、ちょっと顔が良くてちやほやされるからって、世の中甘く見てんのですよ」

借金取り「それを言ったら、私もそうでしょ?」

運転手「お嬢はちゃんと務めを果たしてるじゃないですか」

男「ははっ」

運転手「あ?」

男「そうですね、顔が良いから仕方ありませんね」

借金取り「お、男?」

男「別にこっちがこうしてくれああしてくれと言わなくてもしてくれるんだから、それに乗っかってなんか悪いんですか?」

運転手「……」

男「ましてこちらがお願いしているわけでもなし、それを蹴ろうとこちらの勝手ですよね?」



139: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:56:02.56 ID:/SnZ6bbHo

運転手「マジでいってんのか?」

男「もちろん。差し伸べられた手を振り払うのも権利ですよ」

運転手「お前、お嬢がな」

男「あー、勝手の最たるものでしょ。誰が好き好んで自分より優位に立つしか考えてない人と付き合うもんですか」

運転手「ちっ」


きぃっ    ばんっ


借金取り「ちょっと!? 何するのよ!」


ぐいっ


運転手「おい、クソガキ!」

男「う、うぐ……」

運転手「何が優位だ! お嬢がどのくらいお前を心配したか分かってんのか!」

男「し、心配、ひゃひゃっ」

運転手「何笑ってんだオラ!」ガンッ

借金取り「やめてよっ!」



140: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:56:32.68 ID:/SnZ6bbHo

男「……うっ、はあっ」

借金取り「お、男、血が出てる!」

男「……」

運転手「てめぇ、ふざけんなよ」

男「……ぼろぼろになったら、商品価値がなくなりますもんね。そら、心配しますわ」

運転手「オラッ!」 げしっ

男「がっ!」

借金取り「あんたー! いい加減にしなさいよ!」

運転手「お嬢、本当にこんなやつを連れて行くですか!?」

借金取り「悪いの!? 男だって、いきなり殴られて連れてこられたら、混乱するでしょ!」

男「……」

借金取り「とにかく、もう事務所近いんだから、そこで休憩しないと……」

運転手「……ちっ」

男(……事務所か)

男(……本拠地じゃあダメですね。殴られ損だなぁ)

借金取り「男、大丈夫?」

男「……」



141: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:57:07.99 ID:/SnZ6bbHo

男「……心配してくださるなら、帰していただけませんか」

借金取り「どこに? 実家はもう売れちゃったでしょ」

男「あの三姉妹の家ですよ」

借金取り「なんで? あんなブスどものところへどうして帰るのよ」

男「……朝食、作ってませんでしたから」

借金取り「そんなのどうだっていいじゃない」

男「……」

借金取り「なんだったら、松屋の朝定食でも届けさせるわ」

男「……そういう問題じゃない」ボソ

借金取り「ごめんねー、ホントに。うちのは気性が荒くって」

男「……」

運転手「お嬢、そろそろ行きますよ」

借金取り「ちょっと待ってよー」

運転手「ほら、早く立つ。おい、クソガキ、てめぇもだ」



142: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:57:32.67 ID:/SnZ6bbHo

事務所。

男(……ケータイ、ある)

借金取り「大丈夫?」

男「……いいえ」

借金取り「もう! でも、傷の手当てしたら、やっちゃう?」

男「……」

借金取り「ほら、二人きりだし~」

男「運転手さんは?」

借金取り「ああ、あいつ? 悪気はないんだけど、ごめんね」

借金取り「外を回らせてるから、気にしないで」

男「……」

男「……あの、すごく調子が悪いので、一人でゆっくりさせてもらえませんか」

借金取り「大丈夫? なんか持ってくる?」

男「いえ……吐きそう、トイレも、できれば……」

借金取り「つ、ついていこうか」

男「いえ……」



143: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:58:00.66 ID:/SnZ6bbHo

トイレ。

男「……」

男(事務所を出るのは無理そうですね、人がいっぱいいて)

男(あ、ケータイ)

男(……でも、ここで連絡したら)

男(……)

男(僕、役立たずなんだなぁ)

男(人に迷惑ばっかりかけて……)

男(ごめんなさい、長女さん。せっかく会社に誘ってくれたのに……)

男(ごめんなさい、三女さん。大学、面白そうだったのに……)

男(ごめんなさい、次女さん。嫌なことばかり聞いて……)

男「うっ」

男「うう~……」グスッ


ブーッ ブーッ


男「うわっ」



144: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/07(土) 20:58:37.02 ID:/SnZ6bbHo

男「め、メール? こんな時に……」カチャ


『↓』


男「え……?」

男「外!?」タタッ

男(あ、下に……)

男(三女さん!?)


三女「……」ブンブン


男(ど、どーしてこの場所が)


三女「……」サッ


男(あ、ご、ゴミ袋を広げて……)

男(あれに飛び降りろと!?)


女「男~、大丈夫~?」

男「!」

男(迷ってる暇はない)

男(逃げよう!)



154: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/25(水) 20:25:17.00 ID:m/gR/3rao

外。

どさっ

三女「……落ちた」

次女「お、落ちたじゃないでしょ! 死んだらどーすんの!」ヒソヒソ

三女「ゴミ袋じゃ耐久力が……」

次女「そもそもめがけて飛べるわけないでしょー!」ヒソヒソ

男「……」

次女「男くん、大丈夫!?」

男「……けほっ」

三女「……あ、血が」

次女「あー、もう、ばかばか」

男「次女さん、三女さん……どうして、ここに?」

三女「実は男くんの体内に発信機が」

次女「バカ言ってないで、早く逃げるわよ!」



155: ◆WPwc2pN1N6 2012/04/25(水) 20:25:44.91 ID:m/gR/3rao

次女「……男くん、ほら、肩を貸してあげるから」

男「……すみません」

次女「本物でよかった」

三女「……今、事務所に上姉さんがカチコミかけてるから」

男「え、え!?」

次女「引き付けてる間に、逃げるわよ」

三女「……私たちは逃げる人」

男「で、でも……」

次女「どの道、借金の話でさらわれたんでしょ?」

男「えっと……そう、なんですかね……」

次女「ほら、早く!」

ぬっ

次女「ひゃっ」

運転手「うおっ」

男「あ、まずい」



161: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/25(金) 23:57:55.10 ID:nIroJ1Euo

運転手「てめぇ、こんなところで何してやがる」

男「……」

次女「この人、怪我してるんです!」

三女「……私たちは救急隊員」

運転手「嘘つけ!」

次女「ノリが悪いね」

三女「……やれやれ」

運転手「お前ら、ここから黙って逃げられると思ってるのか」

男「ううっ……」

三女「……実際に怪我をしているんです」

次女「それとも、あんたは見殺しにする気?」



162: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/26(土) 00:03:36.23 ID:+shlE46po

運転手「そ……! こ……!」

次女「さあ、どいたどいたー」

運転手「あほか! 誰が行かすか!」

三女「……面倒くさい」

運転手「おい、お前! お前だよ、男」

運転手「お前、恥ずかしくないのか、女に守られて」

男「……」

運転手「男のくせに、女にばっか頼って、おいっ」

次女「はぁ?」

三女「……性差別」

運転手「恥ずかしくねぇのかって聞いてるんだよ!」

男「恥ずかしくないです」



163: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/26(土) 00:09:41.86 ID:+shlE46po

男「うれしいです」

男「こんなに迷惑かけたのに……助けてもらえて」

運転手「お、お前」

男「……あ、借金取りさん」

運転手「お、お嬢!?」くるっ


三女のモップ攻撃!


運転手「うげぇ」 がすっ

三女「……古典的」

次女「早く行くわよ! あっちに車停めてあるから!」

男「は、はい」


たたたっ



164: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/26(土) 00:20:51.58 ID:+shlE46po

男「うぐっ、はぁっ」

次女「痛む!? もうちょっと我慢してね!」

三女「……下姉さん、見つかってる」


イタゾー アイツラダ


次女「乗り込んじゃえば、そう簡単には降ろせないでしょ」

三女「……下姉さん、囲まれそう」


ニガスナー オエー


次女「あ~、ひき逃げって生まれて初めてするわ~」バタン

男「や、やめてください!?」

三女「……男くん、ツッコミはいいから乗って」

男「す、すみません」

次女「免停食らったら三女が運転やる?」

三女「……免停の前に実刑がつきそう」

次女「……よし、出発進行!」 ブルルル


ギキィーッ バオン!                  ドンッ


男「……今」

次女「気のせいじゃないかな~」



169: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:39:49.83 ID:cWbXPpAao

事務所。

借金取り「男~? まだお腹痛いの~」

職員「あ、お嬢さん!」

借金取り「何よう」

職員「なんだか、お嬢さんに来客です」

借金取り「追い返して」

職員「勘弁して下さいよ~、お嬢さんご指名なんですし」

借金取り「だったら余計分かるでしょ。指名なんてするやつにろくなやつはいないじゃない」

職員「例の男の借金の関係だそうで」

借金取り「はあ?」

職員「ほら、もともと、かなりの金額を占めてた例のババアの会社の」

借金取り「あれは、だって、最大でも半分くらいだって泣きついてたじゃない」

職員「嗅ぎつけたんじゃないんすか。あの、男の……」

借金取り「だったらなおさら追い返してよ!」



170: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:40:41.00 ID:cWbXPpAao

職員「そう言われましても……来ないなら帰らないの一点張りで」

借金取り「……」

職員「なんとかお嬢さんの剣幕で帰してやれないですかね」

借金取り「ほんっと情けない」

職員「すいません、堂々乗り込まれると、どうしていいもんだか……」

借金取り「じゃあ、トイレ見張ってて」

職員「は?」

借金取り「男くんがいるから、ちゃんと見張っててよ」

借金取り「あ、でも、無理やり入っちゃダメだからね。なんか具合悪いみたいだし」

職員「はあ、まあ、別にいいですけど」

借金取り「ったく、じゃあ、私行くから」

職員「へーい」


タッタッタ


職員「……」キィ

職員「おーい、大丈夫かぁー」



171: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:41:19.13 ID:cWbXPpAao

商談室。

長女「うう……」

経理「どうしたの?」

長女「どうしたもこうしたもないですよ! なんでこんなところに乗り込まないと行けないんですか!?」ヒソヒソ

経理「なんでって、必要だからよ」

長女「訳がわからないんですけど!」ヒソヒソ

経理「ああ、お茶よりコーヒーのがいいわね」ズー

職員「すいませんね、置いてなくて」

経理「あなたご存知? お茶って葉っぱを使うから、放射能汚染が落ちにくいんですって」

職員「はあ?」

長女「こ、怖い人にそんなに話しかけないでくださいよ」

経理「別に怖くないわよー、見境がない人達じゃないんだし」

長女「余計たちが悪いでしょ」

職員「あのよぉ」

長女「ひいっ、話しかけてきた!」

職員「……」



172: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:42:01.09 ID:cWbXPpAao

経理「落ち着いて、長女ちゃん。あなたが一番不審者よ?」

長女「だ、だって……海に沈められたりとか」

経理「そりゃあ、相手にとって都合が悪い場合でしょ。私たちは金を回収する相手なのよ」

長女「そうですけど」

経理「お母様より度胸がないのね」

長女「あんな無責任な人と一緒にしないでくださいよ」

経理「うふふ」

職員「あんたらな、そういう話は聞こえないようにしてくんねぇか」

職員「お嬢さんを呼ぶのにもう少し時間かかんだから、頼むよ」

経理「いろいろごめんなさいね」

職員「いや、まあ……」

経理「こちらも、まあ、寝耳に水な話が多くって」

職員「はあ、そうですか」



173: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:42:42.46 ID:cWbXPpAao

ばたばた。

借金取り「……」

長女「……あれがそう?」

経理「指ささないの」

借金取り「……悪いんだけど、今忙しいからさぁ」ガタッ

経理「お久しぶりです、借金取りさん」

借金取り「記憶にないわね。どこの婆さん? 私に用って」

経理「母さんって知ってるでしょう、男くんの借金の関係で」

借金取り「……」

経理「いろいろお話して、決着したと思ってたんですけど、その件でもうちょっと」

借金取り「決着したんならいいでしょ、別に」

経理「それがねぇ、ちょっとこの子が、男くんと結婚するっていうもんだから」

借金取り「あ?」ピクッ

長女「へひっ」



174: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:43:24.28 ID:cWbXPpAao

長女(変な声出た)

借金取り「その、何、あんた、昨日男くんと一緒にいたのと、違う気がするんだけど」

経理「違う?」

借金取り「いや、あの、なんていうか」

長女「……やっぱり、あんたが誘拐したのね」

借金取り「なにいってんだこいつ」

長女「あんたが昨日、家に来たんでしょ。で、今朝、男くんがいない、怪しいのはあんたじゃない!」

借金取り「知らないわよ!」

長女「急にムキになるってことはますますそうよね!」ドン

借金取り「ちがわあああああ!」ガタン


職員「お嬢さん! 大声出さねぇでくださいよ」バン

経理「長女ちゃん! 何しにきたの私達」ガタッ


二人『すみません』



175: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:44:02.33 ID:cWbXPpAao

経理「……とにかくね、家族関係になったら、負債も共有するわけでしょう」

経理「それでちゃんと確認したいってことで、今日は来たんです」

経理「そうよね? 長女ちゃん」

長女「……そうですよ」

借金取り「はん、何が家族関係だか。大方、男くんの顔につられたんでしょう」

長女「……」

借金取り「それでぼたもちだと思って手にとったら、借金のおまけつきってことでビビってるんだ」

長女「あんたはイケメンだと思わないの?」

借金取り「そりゃイケメンよ! だけど、私は性格も好きだし」

借金取り「私と結婚した方が男くんのためになるし」

長女「あの性格は私は好きじゃないわー」

借金取り「は?」



176: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:44:33.24 ID:cWbXPpAao

長女「だってさ、男くんってやたらと自己評価低いじゃない」

借金取り「そりゃ、奥ゆかしいのよ」

長女「あんた、奥ゆかしいって言葉の意味を知ってるの?」

借金取り「だって、そりゃ甘やかされてきたところはあるかもだけど、私だったら支えになってあげられるしー」

長女「ひもにさせるってこと? バカじゃないの?」

借金取り「だから! 男くんは傷ついてるのよ、辛いことがいっぱいあって」

長女「……」

借金取り「悪いんだけどさ、あんたみたいな落ちてきたから拾いました、的な人に、男くんのなにが分かるわけ?」

経理「長女ちゃん……」

長女「……」

借金取り「泥棒猫とまでは言わないけど、半分は男くんが自力で支払うって言ってたんだし、そういう風にするのが筋でしょ」

借金取り「いなくなった? 私なら見つけ出せるから大丈夫よ。あんたたちと違って」

借金取り「男くんの良さも分かんないやつがさぁ」

長女「あのね」



177: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:45:20.66 ID:cWbXPpAao

長女「現実見てほしいのよ。彼、結構ダメな人でしょ」

長女「コミュ障っぽいし、人の話はちゃんと聞かないし、隠すなって言っても隠してるし」

借金取り「あ、そ……!」

長女「イケメンだからかわいいし、媚びみたいなのは変にうまいけど、常にその場しのぎでしょ」

借金取り「どこがよ!」

長女「見れば分かるじゃない。現に、あんたの存在を隠していたのがすでにアウトでしょ」

借金取り「はあー!?」

長女「辛いことがあったって言ったってさ、居候先を追い出されて、会社からも見限られてってちょっと異常でしょ」

借金取り「なんなの!? あんた!」

借金取り「男くんに文句があるくせに、結婚がどうのって言ってるの!?」

長女「本気で考えてるから言うんでしょうが!」バン



178: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:45:52.54 ID:cWbXPpAao

長女「私は、男くんは将来性があるから、結婚してもいいと思ってるわけ」

長女「完璧超人になれって言うんじゃないわよ。家事は得意だし、さっきも言ったけど、媚びるのはなんかうまいし」

長女「そういうのひっくるめて、もっと成長できると思うわけ。男くんは」

借金取り「はっ、どんだけ上から目線……」

長女「あんたも同じでしょ。何が支えるよ。男くんが最終的にどういう風に生きたいのか知ってるの?」

長女「甘やかしてくれるなら、きっといつまでもごろごろしてるタイプよ」

借金取り「……」

長女「幸い、男くんは自分からやり直そうって考えてたわ」

長女「だったら、それをやってもらう」

長女「結婚するんならお互いに負担しあうのは当然だから、こっちも一部は引き受ける」

借金取り「……な、何よ」

長女「あんたとは違うってことよ」

借金取り「そんなの、そんなの、男くんだって嫌に決まってる」



179: ◆WPwc2pN1N6 2012/05/27(日) 20:47:05.97 ID:cWbXPpAao

長女「嫌になったら、その時はその時だわ」

長女「そうね、私達だって、ダメなところはいっぱいあるし」

長女「それでもね、男くんから結婚しようって言ってくれたんだから、私もそうしたいわけ」

借金取り「うぐぐ……」

長女「あんたはどうなの? 男くんが結婚したいって言ってたわけ?」

借金取り「うるさーい!」バシャッ

長女「うわっ」

借金取り「なんなのよ! だからどうだって言うのよ!」

長女「心当たりがあるなら、男くんを返しなさい。あと借金のことをちゃんと話してほしいわけ」

借金取り「はあ!? 返す!? はあ!?」

職員「お嬢さん、血管が……」

借金取り「やかましいわー!」

職員「勘弁して下さいよ」



180: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:54:03.98 ID:FVWHZxnoo

長女「逆切れしてないで、ちゃんと話して貰える?」

借金取り「あんたが人を怒らせてるんじゃない!」

借金取り「この、ここにわざわざ乗り込んできて、なんもなしに帰れると思ってんの?」

職員(帰さないつもりかよ……)

長女「……」

長女「で、男くんはどこにいるわけ?」

借金取り「あぁたしが知るわけないでしょう!?」

経理「……長女ちゃん、埒があかないから、ちょっといいかしら」

長女「ん、え、まあ」

経理「で、まあ、それは置いておいて」

借金取り「なによ!?」



181: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:54:33.34 ID:FVWHZxnoo

経理「借金の件ですけどね」

借金取り「ふ、ふん。悪いけど、借金はね、きっちり返してもらうわよ」

経理「それなんですがね、当初はうちの社長が半額払いますと」

借金取り「そうね。もともと、あんたのとこのが悪いんだからね!」

借金取り「ホントなら、あんたのその、社長が全額払ってもいいんじゃないかしら!?」

経理「払えるなら?」

借金取り「そうよ! 払えるものなら、払ってみなさいよ!」

経理「……ま、そういう話でやってましたしね」

借金取り「ただし、その、結婚とかで分散させるのには、最初から反対してたわよね!」

経理「ふむ」



182: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:55:10.14 ID:FVWHZxnoo

借金取り「あんた、そういえば、そうね、あのおばさんの娘なのよね!」

長女「そうね」

借金取り「最低よね、あんな、人に押し付けて平然としている女」

長女「……」

借金取り「恥ずかしいと思わないの? ほんとに」

長女「恥ずかしいわ。それと男くんは別でしょ」

借金取り「別じゃないわよ! 巡り巡って、男くんに回ってきているんだから!」

長女「……なら、私が責任を取るわよ」

借金取り「は? 払えるわけ? あんたが?」

長女「もともと、男くんは一人で払うつもりだったわ。それが二人に増えたほうがあんたにとってはマシでしょ」

借金取り「誰が、認めるかっ!」

経理「うーん」



183: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:55:38.35 ID:FVWHZxnoo

借金取り「はぁ、はぁ」

借金取り「そういうわけだから、こちらが被害者なわけだから……」

経理「確認しますけど、男くんの借金部分を、うちの社長が全額を払うのもありなんですね」

借金取り「……はぁ、はぁ」

経理「どうなんです」

借金取り「……本当に払えるなら、別に構わないわよ」

借金取り「男くんとのつながりも認識してるけど」

借金取り「……あんたのとこの会社は、そんなに余裕がある状態じゃなかったはずよ。家族の間の資産も調査したはずだし」

借金取り「そういうハッタリは良くないと思うわよ」

経理「可能ならオッケーだと」

長女「経理さん?」

経理「んー、言質は取ったし、そろそろなんだけどねぇ」

ピルルルル

経理「ああ、来たか」




184: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:56:14.65 ID:FVWHZxnoo

経理「ちょっと失礼」

経理「はい、経理です。はい、社長。ええ、ちょうど事務所に来ていまして」

経理「はい、はい」

経理「おめでとうございます~! 大成功ですね!」

借金取り「……」

長女「……」

経理「はい、じゃあ、こちらもお伝えして……」

経理「細かい交渉は後ほどで、なるほど。男くんの居場所は……」

経理「ああ、そうですか。見つかりましたか」

借金取り「!」

長女「ほ、ホントですか」

経理「はい、分かりましたー。では」



185: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:57:28.16 ID:FVWHZxnoo

借金取り「……」

経理「というわけで、この間進めてきたプロジェクトが見事に落札されたので」

経理「少しお時間はいりますが、お支払い出来るようになりました」

経理「社長の方から、残りの半分の支払いをこちら側に完全に移すように伝言がありました」

経理「ボイレコで言質も取りましたし」

経理「細かいお話は後ほど、書面にてお伝えしますので」

経理「長女ちゃん、男くん、見つかったそうよ」

長女「そ、そうですか」

経理「良かったわね~」

借金取り「み、見つかるわけないでしょ」

経理「どうして?」

借金取り「……わ、私が」

経理「あなたが誘拐したの?」

借金取り「そ、そう、じゃなくて、男くんの居場所なら、知ってるし」



186: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:58:21.40 ID:FVWHZxnoo

経理「ボイレコ、まだ回ってるわよ」

経理「……えーっと、男くんは監禁場所から脱出したそうよ」

借金取り「……おい!」

職員「いやあの、お嬢さん」

借金取り「早く見に行きなさいよ!」

経理「だから、脱出したんですよ」

長女(……あ。メールきてた)

借金取り「こ、こんな、こんな話、認められない」

経理「書面でご連絡しますので」ガタッ

借金取り「おい!」

経理「長女ちゃん、もう行きますよ」

長女「は、はい」



187: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:58:49.25 ID:FVWHZxnoo

シーン。

借金取り「……男くんは」

職員「逃げられたようです」

借金取り「……」

職員「どうも、あっちが囮になってたみたいでして……」

借金取り「……」

職員「運転手のやつがふっ飛ばされたみたいで」

借金取り「そ、それをネタに」

職員「お嬢さん、勘弁して下さいよ……」

職員「いくらなんでも、ワガママであそこまでやってやられたら、後処理の方が高く付きますよ」

借金取り「……」

借金取り「なんなのよ、もう……」

職員「別にいいじゃないですか、男の一人や二人」

借金取り「……ううう」



188: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 22:59:19.40 ID:FVWHZxnoo

自宅。

長女「……つまり、ババア、母さんはそのプロジェクトが成功する見込みがわからなかったから、私達を保険替わりに使ったわけ」

経理「そういうことね」

次女「ええと……」

三女「それで高飛びしてたんですか……」

経理「まあ、そうねぇ。どのみち、男くんを家族として迎え入れれば、相続の権利が発生するわけだし」

経理「最初から長い目でフォローしていくつもりだったみたいだけれど」

長女「なんで、そういうことを最初から言わないのかしらねぇ……」

次女「男くんは、怪我して入院したんですけど」

経理「だから、こんな手段に出るとは思ってなかったんだってば」

三女「……謝罪を要求しますよ」

経理「本人が来たら言って頂戴」



189: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:00:00.67 ID:FVWHZxnoo

経理「大体、三人とも、最初からこうなると分かってたら、誰も動かなかったでしょう」

長女「そんなことはない……ですよ」

次女「あー、まぁ」

三女「そんなことないです」

経理「嘘ばっかり。ああいう男って、私はちょっと嫌いなのよねー。みんなもそうだったんじゃない?」

三人『……』

長女「でも、まさかそうなることを見越して、母さんが言わなかったわけじゃないでしょう」

経理「もちろん。ただ社長が、いろいろ考えた挙句、ああいう手を取ったのは事実よ」

経理「十全に説明したら、ますます見捨てたでしょ、あなた達」

次女「釈然としないなー」

経理「で、で、結局、誰が男くんと結婚することになるわけ?」

長女「うぐっ」



190: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:01:07.39 ID:FVWHZxnoo

経理「やっぱり長女ちゃん? それとも三女ちゃん? 大穴で次女ちゃんかしら?」

長女(やばいわー、まさか一夫多妻で行きますとは言えないし)

次女(床上手が貰い手になるとか、マジで言えないわ)

三女(……経理さんはキレると怖いから……)

長女「ど、どうする?」

次女「……えーっとね」

三女「私です」

長女「おい! ふざけんなよ!」

経理「えー? なにー? まだ決まってないの?」

次女「えーとですね、経理さん。これは男くんに決めてもらうというですね」

経理「そんなつまらない決め方なのー?」



191: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:02:00.62 ID:FVWHZxnoo

母「ただいまー」


長女「あー、もう、こんなときにっ」

母「なによう、いいお土産も持ってきたのに」

三女「……良かった試しが無いんだけど」

次女「こっちに帰ってきてたの、母さん」

母「そうよう。向こうの食事が全然口にあわなくて」

母「それより、男くんに聞いたわよ?」

長女「な、なにが?」

母「あんたたち、セックスの上手さで結婚相手を決めることにしたんだって?」

経理「は?」

三人『おい、ババアーッ!』

母「あ、経理、さん。ウチ来てたんですか……」

経理「……」



192: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:03:03.23 ID:FVWHZxnoo

経理「社長……市内に入ってるなら連絡するって言ったでしょ」

母「まだ忙しいかなーって……」

経理「いい加減にしろ」

母「は、はい」

経理「えーっと、それからお嬢さん方」

三人『は、はひ』

経理「……」

経理「いや、いいわ。もう」

三人「ほっ」

経理「社長、後で手続きしないといけないんだから、夕方でもいいから会社来てくださいね」

母「帰国したばっかりだし……」

経理「来・て・く・だ・さ・い・ね!」

母「……はい」



193: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:04:00.47 ID:FVWHZxnoo

長女「……帰った?」

次女「帰った、帰った」

母「はぁー。経理ちゃん、怖いよねー」

三女「……お母さんが不真面目すぎるのがいけない」

母「そんなこともないと思うけどなぁ」

長女「それよりさ。いろいろと言いたいことあるんだけど」

次女「まあ、あの手紙は何だったのかとか、いろいろ」

母「母は娘たちを試したかったのだ……」

三女「……本音は?」

母「面白そうだったから」

長女「そんなだからお父さんがぶっ倒れたんでしょうが……」

母「……」



194: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:04:38.52 ID:FVWHZxnoo

母「まあ、そうねぇ。お父さんはちょっと優しすぎたかもね」

長女「だったら、少しはしっかりしなさいよ」

母「失礼な。だからこそ、経理ちゃんを見つけてきたんじゃないの!」

三女「……ご愁傷様です」

次女「つまり、次の生贄なわけねー」

母「叱ってくるからどっこいだと思うわ」

三人(明らかに経理さんが損してるだろ)

母「あ、それと、男くん、具合良くなってきたから退院させちゃったわよ」

長女「ちゃっ……!?」

次女「だ、大丈夫なの!?」

男「……あの、みなさん」

三女「男くん」

男「ごめい……いえ、ご心配をおかけしました」



195: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:05:19.21 ID:FVWHZxnoo

男「あの、それで、ですね」

長女「怪我は大丈夫なの」

男「え、ええ……お陰様で」

次女「無理しちゃだめだよー、こんな人に引きづられて」

男「は、はい」

三女「……ん、無事でよかった」

男「はい……」

母「ほら、言った通りじゃない」

男「はい……」

男「……あの、皆さん」

長女「はい」



196: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:05:46.13 ID:FVWHZxnoo

男「みなさんが、その、僕と結婚する理由、なくなったと、思うんですけど……」

長女「……そ」

次女「しっ」

男「あの、もし……よろしければ」

男「結婚して下さい……」

三女「……はい」

長女「……うん」

次女「いいよ」

母(タメが少ないわね)

長女「何よ! あんた偉そうな!」

次女「で、実際、誰が床上手だったと思う?」

男「ええっ!?」



197: ◆WPwc2pN1N6 2012/06/18(月) 23:06:53.92 ID:FVWHZxnoo

母「ん? ああ、私は気にしなくていいわよ」

母「気が済むまで話し合ってて」

長女「うるせー、ババァ!」

母「ババァババァうっさいわね」

次女「女はおっぱいだけじゃないと思うわー」

男「そ、そうですね」

三女「……大事だと思う」

男「そ、そうですね」

長女「男くん、私よね」

男「そ、そうですね」

三人『で、誰?』

男「あ、あう、おー……」

男(夢中すぎて記憶に残ってないです……)

おしまい


元スレ
SS速報VIP:長女「は? 婿養子?」母「そうよ」