1: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 19:51:37.04 ID:h3WEcGkO.net
カランカラン
ありあ「いらっしゃいませ」
雪穂「……」キョロキョロ
ありあ「お一人様ですか?」
雪穂「えっ!?あっ、はい!そうですっ!」
ありあ「お好きな席へどうぞ」
雪穂「……」ジーッ
ガタッ
雪穂「ふぅ……」
雪穂(うっわぁ~!ついについにオシャレなカフェに一人で入っちゃったぁ~!)ソワソワ
2: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 19:53:18.27 ID:h3WEcGkO.net
雪穂「……」キョロキョロ
雪穂(内装、キレイ……写真とか撮ってもいいのかなぁ……?)
スッスッ
雪穂「……あ、亜里沙がインスタ更新してる」
≪えへへ!お姉ちゃんと二人で遊園地デート!≫
雪穂(うっわ、自慢かよ……ってゆーかキスまでしちゃってんじゃん。こんなのもはや恋人でしょ)
雪穂(はぁ、全く。リア充は羨まし……)スッスッ
ありあ「あのっ」
雪穂「うぇっ!?は、はいっ!///」ビクッ
ありあ「お水お持ちいたしました」
雪穂「あ、そうですか。あ、あり、ありがとう、ございます……///」モゴモゴ
ありあ「ご注文の方はお決まりでしょうか?」
雪穂「いえ、その、まだ……」
ありあ「そうですか。お決まりになりましたらお呼びください」ペコリ
雪穂「はい……」モジモジ
雪穂(やっば!私オシャレな喫茶店にいるんだったぁ!ちゃんと浮かないように心がけなくちゃっ!///)
雪穂(浮かないように、浮かないように、大人っぽく、大人っぽく……)
雪穂「……んっ、こほん」
雪穂「メニュー、メニュー……」
ペラッ
【ブレンド:430円】
雪穂「たかっ!」
雪穂「うっそ!?喫茶店ってこんなに高いの!?」
雪穂(うぅぅ、私さっき調子乗って新しい服買いまくったばっかなのに……)
雪穂(けど、入っちゃった以上何も頼まないってわけにはいかないよね……)
雪穂「むむむ……」
ジロジロ
雪穂「……すみません、あのっ!」
ありあ「はい。ただいまお伺いいたします」
雪穂「えっと……ブレンド、ブレンドコーヒーを一つ、一つだけお願いします」
ありあ「ブレンドですね。お砂糖とミルクはどうされますか?」
雪穂「えっ?じゃあ、さ……やっぱブラック!ブラックで!」
ありあ「かしこまりました」
~間~
ありあ「お待たせいたしました。ブレンドコーヒーになります」
雪穂「おぉ~!」
ありあ「それではごゆっくりどうぞ」ペコリ
雪穂「むふふん♪」
雪穂(本場のコーヒー!これで私もついに大人の仲間入り~)
雪穂「えへへ、後で亜里沙にも自慢しちゃおーっと」パシャリ
雪穂「それでは~、いただきます!」
ゴクリ!
雪穂「うえっ!?にっがぁ!!」
雪穂「うっ、えぇぇ……」
雪穂(コーヒー、にっがぁ……全然美味しくないじゃんコレ!)
雪穂(もしかして世の中のブラック派はこんな苦いのを平気で飲んでるの?そりゃお姉ちゃんが一生コーヒー飲めるようにならないわけだ……)
雪穂「……」
チビッ
雪穂「うへぇ」
雪穂(亜里沙によれば絵里さんはコーヒーは何も入れないで飲んでるらしいけど……やっぱり絵里さんってすごいんだなぁ。ウチのお姉ちゃんとは何もかもが大違いで……)
雪穂「……」
雪穂(……いや、けど私もコーヒーブラックで飲める派だし。お姉ちゃんなんかとは違うし)
チビッ
雪穂「……うっ」
雪穂(うぅぅ、やっぱり苦いなぁ……)
ありあ(……)
雪穂「……」
雪穂(はぁ……やっぱりコーヒー残しちゃおっかなぁ。けど、400円以上するものを残すのって、なんかちょっと罪悪感……)
雪穂「はぁ……」
ありあ「あのっ」
雪穂「は、はいっ!!///」ピクッ!
ありあ「これ……よかったら」
雪穂「えっ?」
ありあ「ウチで作っているケーキです。作り置きのものになってはしまうんですけど……」
雪穂「ケーキ……」ゴクリ
雪穂「あっ、けど」
ありあ「いえ!お代はいただかなくて結構です!」
雪穂「えっ!?でもっ!そんなのもらえな
ありあ「大丈夫です。試作品みたいなものですし。その分、味は少し劣ってしまうかもしれませんが……」
雪穂「……」
パクッ!
雪穂(うぅ~、うまぁ~♡♡)
雪穂(あぁ~、こんな高カロリーのもの食べてたらまたまたお肉ついちゃうかもなぁ~♡)
チビチビ
雪穂「ん~、コーヒーも美味しいなぁ~♪」
ありあ「そうですか。お気に召されたのなら良かったです」
雪穂「なっ……///」
雪穂(も、もしかして、全部声に出てた……///)
雪穂「……///」カァァッ
ありあ「……?」
雪穂「あ、いえ、その……っ///あ、ありがとうございます……///」モジモジ
ゴクリ
雪穂「ふぅ……ごちそうさまでした!」
ありあ「食器の方お下げしますね」
雪穂「あっ、はい。ありがとうございます」
ありあ「……」カチャカチャ
雪穂「……」
雪穂(この子、すっごく大人だなぁ……ちっちゃいのに)
雪穂「……」ジーッ
雪穂(もしかして私とおんなじくらい?背は多分私の方が少しおっきくて……うん、胸は私が勝っているな。髪型はボブショートの、クリっとしたタイプ
ありあ「あの……」
雪穂「えっ?なんですか?」
ありあ「いえ、さっきから私の顔をちらちらと……もしかして顔に何かついてますか?」
雪穂「へっ!?///」
雪穂(バレてた……///)
ありあ「……?」
雪穂「あ、えっと、その……年齢とか、何歳くらいなのかな~って……///」
ありあ「私ですか?私はまだ中学生です」
雪穂「中学生!?」
雪穂(ということは、私と同い年、あるいは後輩……)
雪穂「中学生なのにすごいね。すっごく大人びてて」
ありあ「いえ、そんなことはないと思いますけど……」
雪穂「ううん、そんなことあるよ。アルバイトしてる子なんてめったいにいないもん」
ありあ「あ、いや、アルバイトじゃなくて……それに、私も大人びているわけじゃ……」
かのん「ありあ~!ありあ~!」ドタドタ
ありあ「お姉ちゃん!?」
かのん「ありあ~!ねーねー!こないだ話したシンガーソングライターのニューシングルなんだけどさー」
ありあ「いや、知らないし」
かのん「この前言ったじゃん!暇な時に渋谷行って探しといてって!」
ありあ「えぇ……渋谷くらい自分で行ってきなよ。すぐそこじゃん」
かのん「ヤだよ。あそこパリピの巣窟だし。私なんかが行ったら絶対浮くじゃん」
ありあ「誰もお姉ちゃんなんか気にしてないって……」
かのん「とにかく!来週までに探してきて!来週までに!」テテッ!
ありあ「あっ!ちょっとお姉ちゃん!?」
ありあ「はぁ、全く。お姉ちゃんってばすーぐ私のこといいように使う……」
雪穂「……」ジーッ
ありあ「あっ……///」
ありあ「……///」
雪穂「……」
ありあ「……すっ、すみません!///お見苦しいところをお見せしてしまって!!///」ペコリ!
雪穂「えっと……今のはお姉さん?」
ありあ「はい、私の姉で、かのんって言います……」
ありあ「そもそもこのお店は、私の母がやってる喫茶店で、私たちはたまにお手伝いというか、少しお手伝いしてるだけというか……お姉ちゃんは全然手伝ってくれないけど……」
雪穂「……」
ありあ「……だいたいお姉ちゃんってばいつもそう。私がお店にいる時はすぐちょっかいかけてくるクセに、自分は全然、接客すらやってくれようとしないし」
雪穂(わかる)
ありあ「お母さんがお姉ちゃんに甘すぎるのが良くないんだもん。音楽科に落ちた時だって、食卓が一週間ずーっとハンバーグだらけで……そんなんだからお姉ちゃんが万年引きニートなんだよ」
雪穂(わかるわかる!)
ありあ「そのクセ人付き合いだけは微妙にいいせいで、なぜか人望だけは持ってるし……」
雪穂「ちょーわかるっ!」ガタッ!
ありあ「えっ?」
雪穂「あっ、す、すみません……///」
ありあ「い、いえ……」
ありあ(あちゃー、もしかして今の独り言って声に出てた……?///)
雪穂「……」
ありあ「……」
雪穂「……あのっ、実は私にもお姉ちゃんがいて」
ありあ「へぇ……」
雪穂「最近は部活の方が忙しいみたいなんだけど……」
ありあ「……」
雪穂「……けど、家にいる時はずーっとごろごろしっぱなしで。ゆきほー!おちゃー!とか、う~!とかあ~!とかしか喋んないし」
ありあ(わかる)
雪穂「お姉ちゃんはワガママすぎるんだよ。私になんでも命令したり、妹のことなんだと思ってるんだって話だよね」
ありあ(それもわかる)
雪穂「それでいて海未ちゃんとか絵里さんとか、周りの人がみーんなお姉ちゃんのこと甘やかすから、一向に成長しないんだよねー」
ありあ(なんかすっごくわかるかも)
雪穂「はぁ……」
ありあ(はぁ……)
雪穂「でもすごいなぁ~」
ありあ「えっ?」
雪穂「お姉ちゃんに代わって家を継ごうとしてるんでしょ?」
ありあ「えっ?家を……?」
雪穂「うん。だからお手伝いしてるんじゃないの?」
ありあ「あ、いえ、そういうわけじゃ……」
ありあ(……そっか。そんなこと全然考えたこともなかった)
雪穂「大変だよねー、お姉ちゃんが遊んでばっかりだと。家のことは必然的に妹がやらなくちゃだもんね。はぁ……」
ありあ「……」
雪穂「あーあ、私も穂むら継がなきゃいけないのかなぁ……」
ありあ「あの……雪穂、さんのお家もお店をやってるんですか?」
雪穂「そうだよ。穂むらって言って、代々続いている老舗の和菓子屋さんだから、きっとお姉ちゃんか私のどっちかが家を継がなくちゃいけないと思うんだけど」
ありあ「老舗……」
雪穂「うん。けど、まあお姉ちゃんには無理だよね……」
ありあ(お姉ちゃんか私のどっちかが、このお店を継ぐことになる……)
ありあ「……」
かのん『ありあ!もう接客なんて無理だよぉ~!お客さん怖い~っ!』
ありあ「……」
ありあ(うっわ。お姉ちゃんには無理そうだな……)
雪穂「お店を継ぎたいって思ってるんじゃないの?」
ありあ「い、いえっ!将来だとか全然考えたこともないですし!!」
雪穂「そうなの?」
ありあ「はい。家のことなんて、全然……それにこの喫茶店だって、母が勝手に始めたもので、私がどうしたいとか、そういうのは全く……」
雪穂「ふーん……」
ありあ「すごいなぁ……雪穂さんはお家のこともしっかり考えられていて」
雪穂「えっ!?あ。いやっ!!///私だってちょっとたまにお店に立ったりするくらいで!!///本格的な和菓子作りとかは、まだまだ、全然、これから……///」
雪穂(うぅぅ、つい大見得切っちゃったけど、私だってお姉ちゃんよりちょっとはマシってレベルだし、それにお姉ちゃんが将来とびっきり有能な旦那さんとか捕まえてきちゃう可能性だってある……)
ありあ「すごいなぁ。さすがは先輩だなぁ」
雪穂「えっ!?」
ありあ「三年生って受験とかもあって、やっぱり色々考えてるんですね」
雪穂「えっと……」
ありあ「私、まだ二年生ですし」
雪穂「うそ!?もしかして後輩
バーン!!!
穂乃果「あっ!雪穂こんなところにいた!!」
雪穂「お姉ちゃん!?」
穂乃果「もうっ!東京中探し回ったんだからね!」
雪穂「やめてよ。せっかくお姉ちゃんに内緒でお出かけしようと思って来たのに」
穂乃果「そんなことより大変!大変なんだよ!」
雪穂「大変?」
穂乃果「うん!お母さんにこの前の数学のテストの結果バレてた!」
雪穂「うげっ!?」
穂乃果「もうお母さんがカンカンで!スクールアイドルばっかやってるからこんなひどいことになるんだって!」
雪穂「スク……ってそれ、私じゃなくてお姉ちゃんじゃん」
穂乃果「雪穂お願い!一緒に謝りに来てっ!」パチン!
雪穂「えぇ~?」
穂乃果「一生のお願い!穂乃果の明日のおやつ全部あげるから!!」
雪穂「はぁ、しょうがないなぁ……」
穂乃果「雪穂ありがとっ!そうと決まれば、善は急げだよっ!」グイッ!
雪穂「あっ!?私まだお会計が!」
穂乃果「お金はここに置いておきます!ウチの雪穂がお世話になりました!じゃーねー!」
雪穂「あっ!」
ピューッ!
ありあ「え、えっと、またのお越しを……」
ありあ「……」
ありあ(いいなぁ、姉妹仲が良さそうで。羨ましいなぁ……)
ありあ「はぁ、それに比べてウチは……今日もお姉ちゃんは引きこもってばっかだし」
ありあ(あーあ、私もあんな明るくてハキハキしたお姉ちゃんが欲しかったなぁ……)
ありあ「……」
ありあ(はぁ……)
テクテク
ありあ「お母さん?」
かのんママ「はーい?」
ありあ「私ちょっと渋谷の方に行ってくる。夜ご飯までには帰るね」
◇———◇
コンコン
ありあ「お姉ちゃん?」
かのん「ん?」
ありあ「部屋、入るよ」
かのん「んー……」
ガチャッ
かのん「……」
ありあ「何してんの?」
かのん「ん」
ありあ「ん、だけじゃなくてちゃんと人間の言葉をしゃべってよ」
かのん「うっさいなぁ。今アイデアが降ってきそうなところなの」
ありあ「遊んでないでいい加減お店の方も手伝いなよ」
かのん「私そんな暇じゃないし。何してようが私の勝手じゃん」
ありあ「はぁ……」
かのん「今本気出してるんだからあっち行っててよね」カリカリ
ありあ「……」
かのん「ん~……」
ありあ「あのさ、お姉ちゃん」
かのん「なに?お説教なら聞かないよ」カリカリ
ありあ「いや、そうじゃなくて……はい」
かのん「?」
ありあ「さっきお姉ちゃんが言ってたCD。渋谷行って探してきたんだけど」
かのん「マジ!?」ガタッ!
ありあ「わっ!」
かのん「ありがとっ!ありあ!ひゃっほー!」
ありあ「ちょっ、お姉ちゃん!?せっかく買ってきたんだからもっと大切にしてよ!」
かのん「してるしてる~!ありがとね~!」ガサガサ
ありあ「はぁ……たまにはお店も手伝いなよ。じゃないと……」
かのん「~♪」グイッ
ありあ「ってお姉ちゃん!?わあっ!!」
かのん「じゃ~ねー!」
バタン!
ありあ(締め出された……)
ありあ「……」
かのんママ「かのん~!ありあ~!ご飯出来たわよ~!」
ありあ「はーい。今行く」
ありあ「はぁ……」
かのんママ「あら?お姉ちゃんは?」
ありあ「お姉ちゃんなら作曲で今忙しいって。先食べといていいんじゃない?」
かのんママ「そう?」
ありあ「うん」
ありあ(はぁ、お姉ちゃんってばほんと自分勝手……絶対社会で生きてくのに苦労するタイプだね。めんどくさいし)
ありあ(感謝してよね。私たちみたいな妹がいてあげてるから、お姉ちゃんは自由に暮らせてるってこと、もっと……)
かのんママ「ありあ?今日なんか良い事でもあったの?」
ありあ「えっ?」
かのんママ「すっごく楽しそうな顔してるわよ」
ありあ「そうかな……?」
ありあ(……ま、どーでもいっか。この先だってお姉ちゃんはお姉ちゃんなわけだもんね。しょーがないなぁ、ふふっ)
終わりです。お読み下さりありがとうございました
元スレ
雪穂「……」キョロキョロ
雪穂(内装、キレイ……写真とか撮ってもいいのかなぁ……?)
スッスッ
雪穂「……あ、亜里沙がインスタ更新してる」
≪えへへ!お姉ちゃんと二人で遊園地デート!≫
雪穂(うっわ、自慢かよ……ってゆーかキスまでしちゃってんじゃん。こんなのもはや恋人でしょ)
雪穂(はぁ、全く。リア充は羨まし……)スッスッ
ありあ「あのっ」
雪穂「うぇっ!?は、はいっ!///」ビクッ
6: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 19:55:47.98 ID:h3WEcGkO.net
ありあ「お水お持ちいたしました」
雪穂「あ、そうですか。あ、あり、ありがとう、ございます……///」モゴモゴ
ありあ「ご注文の方はお決まりでしょうか?」
雪穂「いえ、その、まだ……」
ありあ「そうですか。お決まりになりましたらお呼びください」ペコリ
雪穂「はい……」モジモジ
雪穂(やっば!私オシャレな喫茶店にいるんだったぁ!ちゃんと浮かないように心がけなくちゃっ!///)
7: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 19:57:07.42 ID:h3WEcGkO.net
雪穂(浮かないように、浮かないように、大人っぽく、大人っぽく……)
雪穂「……んっ、こほん」
雪穂「メニュー、メニュー……」
ペラッ
【ブレンド:430円】
雪穂「たかっ!」
雪穂「うっそ!?喫茶店ってこんなに高いの!?」
雪穂(うぅぅ、私さっき調子乗って新しい服買いまくったばっかなのに……)
9: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 19:59:16.21 ID:h3WEcGkO.net
雪穂(けど、入っちゃった以上何も頼まないってわけにはいかないよね……)
雪穂「むむむ……」
ジロジロ
雪穂「……すみません、あのっ!」
ありあ「はい。ただいまお伺いいたします」
雪穂「えっと……ブレンド、ブレンドコーヒーを一つ、一つだけお願いします」
ありあ「ブレンドですね。お砂糖とミルクはどうされますか?」
雪穂「えっ?じゃあ、さ……やっぱブラック!ブラックで!」
ありあ「かしこまりました」
12: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:01:58.66 ID:h3WEcGkO.net
~間~
ありあ「お待たせいたしました。ブレンドコーヒーになります」
雪穂「おぉ~!」
ありあ「それではごゆっくりどうぞ」ペコリ
雪穂「むふふん♪」
雪穂(本場のコーヒー!これで私もついに大人の仲間入り~)
雪穂「えへへ、後で亜里沙にも自慢しちゃおーっと」パシャリ
雪穂「それでは~、いただきます!」
ゴクリ!
雪穂「うえっ!?にっがぁ!!」
15: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:04:31.94 ID:h3WEcGkO.net
雪穂「うっ、えぇぇ……」
雪穂(コーヒー、にっがぁ……全然美味しくないじゃんコレ!)
雪穂(もしかして世の中のブラック派はこんな苦いのを平気で飲んでるの?そりゃお姉ちゃんが一生コーヒー飲めるようにならないわけだ……)
雪穂「……」
チビッ
雪穂「うへぇ」
雪穂(亜里沙によれば絵里さんはコーヒーは何も入れないで飲んでるらしいけど……やっぱり絵里さんってすごいんだなぁ。ウチのお姉ちゃんとは何もかもが大違いで……)
雪穂「……」
雪穂(……いや、けど私もコーヒーブラックで飲める派だし。お姉ちゃんなんかとは違うし)
チビッ
雪穂「……うっ」
雪穂(うぅぅ、やっぱり苦いなぁ……)
ありあ(……)
16: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:06:30.92 ID:h3WEcGkO.net
雪穂「……」
雪穂(はぁ……やっぱりコーヒー残しちゃおっかなぁ。けど、400円以上するものを残すのって、なんかちょっと罪悪感……)
雪穂「はぁ……」
ありあ「あのっ」
雪穂「は、はいっ!!///」ピクッ!
ありあ「これ……よかったら」
雪穂「えっ?」
ありあ「ウチで作っているケーキです。作り置きのものになってはしまうんですけど……」
雪穂「ケーキ……」ゴクリ
17: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:08:44.57 ID:h3WEcGkO.net
雪穂「あっ、けど」
ありあ「いえ!お代はいただかなくて結構です!」
雪穂「えっ!?でもっ!そんなのもらえな
ありあ「大丈夫です。試作品みたいなものですし。その分、味は少し劣ってしまうかもしれませんが……」
雪穂「……」
18: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:10:26.67 ID:h3WEcGkO.net
パクッ!
雪穂(うぅ~、うまぁ~♡♡)
雪穂(あぁ~、こんな高カロリーのもの食べてたらまたまたお肉ついちゃうかもなぁ~♡)
チビチビ
雪穂「ん~、コーヒーも美味しいなぁ~♪」
ありあ「そうですか。お気に召されたのなら良かったです」
雪穂「なっ……///」
雪穂(も、もしかして、全部声に出てた……///)
雪穂「……///」カァァッ
ありあ「……?」
雪穂「あ、いえ、その……っ///あ、ありがとうございます……///」モジモジ
19: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:12:04.93 ID:h3WEcGkO.net
ゴクリ
雪穂「ふぅ……ごちそうさまでした!」
ありあ「食器の方お下げしますね」
雪穂「あっ、はい。ありがとうございます」
ありあ「……」カチャカチャ
雪穂「……」
雪穂(この子、すっごく大人だなぁ……ちっちゃいのに)
雪穂「……」ジーッ
雪穂(もしかして私とおんなじくらい?背は多分私の方が少しおっきくて……うん、胸は私が勝っているな。髪型はボブショートの、クリっとしたタイプ
ありあ「あの……」
雪穂「えっ?なんですか?」
ありあ「いえ、さっきから私の顔をちらちらと……もしかして顔に何かついてますか?」
雪穂「へっ!?///」
雪穂(バレてた……///)
ありあ「……?」
雪穂「あ、えっと、その……年齢とか、何歳くらいなのかな~って……///」
21: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:13:47.54 ID:h3WEcGkO.net
ありあ「私ですか?私はまだ中学生です」
雪穂「中学生!?」
雪穂(ということは、私と同い年、あるいは後輩……)
雪穂「中学生なのにすごいね。すっごく大人びてて」
ありあ「いえ、そんなことはないと思いますけど……」
雪穂「ううん、そんなことあるよ。アルバイトしてる子なんてめったいにいないもん」
ありあ「あ、いや、アルバイトじゃなくて……それに、私も大人びているわけじゃ……」
かのん「ありあ~!ありあ~!」ドタドタ
ありあ「お姉ちゃん!?」
23: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:15:31.01 ID:h3WEcGkO.net
かのん「ありあ~!ねーねー!こないだ話したシンガーソングライターのニューシングルなんだけどさー」
ありあ「いや、知らないし」
かのん「この前言ったじゃん!暇な時に渋谷行って探しといてって!」
ありあ「えぇ……渋谷くらい自分で行ってきなよ。すぐそこじゃん」
かのん「ヤだよ。あそこパリピの巣窟だし。私なんかが行ったら絶対浮くじゃん」
ありあ「誰もお姉ちゃんなんか気にしてないって……」
かのん「とにかく!来週までに探してきて!来週までに!」テテッ!
ありあ「あっ!ちょっとお姉ちゃん!?」
ありあ「はぁ、全く。お姉ちゃんってばすーぐ私のこといいように使う……」
雪穂「……」ジーッ
ありあ「あっ……///」
24: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:17:26.37 ID:h3WEcGkO.net
ありあ「……///」
雪穂「……」
ありあ「……すっ、すみません!///お見苦しいところをお見せしてしまって!!///」ペコリ!
雪穂「えっと……今のはお姉さん?」
ありあ「はい、私の姉で、かのんって言います……」
ありあ「そもそもこのお店は、私の母がやってる喫茶店で、私たちはたまにお手伝いというか、少しお手伝いしてるだけというか……お姉ちゃんは全然手伝ってくれないけど……」
雪穂「……」
25: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:19:51.24 ID:h3WEcGkO.net
ありあ「……だいたいお姉ちゃんってばいつもそう。私がお店にいる時はすぐちょっかいかけてくるクセに、自分は全然、接客すらやってくれようとしないし」
雪穂(わかる)
ありあ「お母さんがお姉ちゃんに甘すぎるのが良くないんだもん。音楽科に落ちた時だって、食卓が一週間ずーっとハンバーグだらけで……そんなんだからお姉ちゃんが万年引きニートなんだよ」
雪穂(わかるわかる!)
ありあ「そのクセ人付き合いだけは微妙にいいせいで、なぜか人望だけは持ってるし……」
雪穂「ちょーわかるっ!」ガタッ!
ありあ「えっ?」
雪穂「あっ、す、すみません……///」
ありあ「い、いえ……」
ありあ(あちゃー、もしかして今の独り言って声に出てた……?///)
27: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:21:51.33 ID:h3WEcGkO.net
雪穂「……」
ありあ「……」
雪穂「……あのっ、実は私にもお姉ちゃんがいて」
ありあ「へぇ……」
雪穂「最近は部活の方が忙しいみたいなんだけど……」
ありあ「……」
雪穂「……けど、家にいる時はずーっとごろごろしっぱなしで。ゆきほー!おちゃー!とか、う~!とかあ~!とかしか喋んないし」
ありあ(わかる)
雪穂「お姉ちゃんはワガママすぎるんだよ。私になんでも命令したり、妹のことなんだと思ってるんだって話だよね」
ありあ(それもわかる)
雪穂「それでいて海未ちゃんとか絵里さんとか、周りの人がみーんなお姉ちゃんのこと甘やかすから、一向に成長しないんだよねー」
ありあ(なんかすっごくわかるかも)
雪穂「はぁ……」
ありあ(はぁ……)
30: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:25:33.23 ID:h3WEcGkO.net
雪穂「でもすごいなぁ~」
ありあ「えっ?」
雪穂「お姉ちゃんに代わって家を継ごうとしてるんでしょ?」
ありあ「えっ?家を……?」
雪穂「うん。だからお手伝いしてるんじゃないの?」
ありあ「あ、いえ、そういうわけじゃ……」
ありあ(……そっか。そんなこと全然考えたこともなかった)
雪穂「大変だよねー、お姉ちゃんが遊んでばっかりだと。家のことは必然的に妹がやらなくちゃだもんね。はぁ……」
ありあ「……」
31: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:29:05.60 ID:h3WEcGkO.net
雪穂「あーあ、私も穂むら継がなきゃいけないのかなぁ……」
ありあ「あの……雪穂、さんのお家もお店をやってるんですか?」
雪穂「そうだよ。穂むらって言って、代々続いている老舗の和菓子屋さんだから、きっとお姉ちゃんか私のどっちかが家を継がなくちゃいけないと思うんだけど」
ありあ「老舗……」
雪穂「うん。けど、まあお姉ちゃんには無理だよね……」
ありあ(お姉ちゃんか私のどっちかが、このお店を継ぐことになる……)
ありあ「……」
かのん『ありあ!もう接客なんて無理だよぉ~!お客さん怖い~っ!』
ありあ「……」
ありあ(うっわ。お姉ちゃんには無理そうだな……)
32: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:32:12.18 ID:h3WEcGkO.net
雪穂「お店を継ぎたいって思ってるんじゃないの?」
ありあ「い、いえっ!将来だとか全然考えたこともないですし!!」
雪穂「そうなの?」
ありあ「はい。家のことなんて、全然……それにこの喫茶店だって、母が勝手に始めたもので、私がどうしたいとか、そういうのは全く……」
雪穂「ふーん……」
ありあ「すごいなぁ……雪穂さんはお家のこともしっかり考えられていて」
雪穂「えっ!?あ。いやっ!!///私だってちょっとたまにお店に立ったりするくらいで!!///本格的な和菓子作りとかは、まだまだ、全然、これから……///」
雪穂(うぅぅ、つい大見得切っちゃったけど、私だってお姉ちゃんよりちょっとはマシってレベルだし、それにお姉ちゃんが将来とびっきり有能な旦那さんとか捕まえてきちゃう可能性だってある……)
ありあ「すごいなぁ。さすがは先輩だなぁ」
雪穂「えっ!?」
33: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:34:26.70 ID:h3WEcGkO.net
ありあ「三年生って受験とかもあって、やっぱり色々考えてるんですね」
雪穂「えっと……」
ありあ「私、まだ二年生ですし」
雪穂「うそ!?もしかして後輩
バーン!!!
穂乃果「あっ!雪穂こんなところにいた!!」
雪穂「お姉ちゃん!?」
35: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:36:30.96 ID:h3WEcGkO.net
穂乃果「もうっ!東京中探し回ったんだからね!」
雪穂「やめてよ。せっかくお姉ちゃんに内緒でお出かけしようと思って来たのに」
穂乃果「そんなことより大変!大変なんだよ!」
雪穂「大変?」
穂乃果「うん!お母さんにこの前の数学のテストの結果バレてた!」
雪穂「うげっ!?」
穂乃果「もうお母さんがカンカンで!スクールアイドルばっかやってるからこんなひどいことになるんだって!」
雪穂「スク……ってそれ、私じゃなくてお姉ちゃんじゃん」
36: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:38:31.31 ID:h3WEcGkO.net
穂乃果「雪穂お願い!一緒に謝りに来てっ!」パチン!
雪穂「えぇ~?」
穂乃果「一生のお願い!穂乃果の明日のおやつ全部あげるから!!」
雪穂「はぁ、しょうがないなぁ……」
穂乃果「雪穂ありがとっ!そうと決まれば、善は急げだよっ!」グイッ!
雪穂「あっ!?私まだお会計が!」
穂乃果「お金はここに置いておきます!ウチの雪穂がお世話になりました!じゃーねー!」
雪穂「あっ!」
ピューッ!
ありあ「え、えっと、またのお越しを……」
37: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:41:07.59 ID:h3WEcGkO.net
ありあ「……」
ありあ(いいなぁ、姉妹仲が良さそうで。羨ましいなぁ……)
ありあ「はぁ、それに比べてウチは……今日もお姉ちゃんは引きこもってばっかだし」
ありあ(あーあ、私もあんな明るくてハキハキしたお姉ちゃんが欲しかったなぁ……)
ありあ「……」
ありあ(はぁ……)
テクテク
ありあ「お母さん?」
かのんママ「はーい?」
ありあ「私ちょっと渋谷の方に行ってくる。夜ご飯までには帰るね」
38: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:44:39.91 ID:h3WEcGkO.net
◇———◇
コンコン
ありあ「お姉ちゃん?」
かのん「ん?」
ありあ「部屋、入るよ」
かのん「んー……」
ガチャッ
かのん「……」
ありあ「何してんの?」
かのん「ん」
ありあ「ん、だけじゃなくてちゃんと人間の言葉をしゃべってよ」
かのん「うっさいなぁ。今アイデアが降ってきそうなところなの」
ありあ「遊んでないでいい加減お店の方も手伝いなよ」
かのん「私そんな暇じゃないし。何してようが私の勝手じゃん」
ありあ「はぁ……」
かのん「今本気出してるんだからあっち行っててよね」カリカリ
ありあ「……」
39: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:46:41.79 ID:h3WEcGkO.net
かのん「ん~……」
ありあ「あのさ、お姉ちゃん」
かのん「なに?お説教なら聞かないよ」カリカリ
ありあ「いや、そうじゃなくて……はい」
かのん「?」
ありあ「さっきお姉ちゃんが言ってたCD。渋谷行って探してきたんだけど」
かのん「マジ!?」ガタッ!
ありあ「わっ!」
かのん「ありがとっ!ありあ!ひゃっほー!」
ありあ「ちょっ、お姉ちゃん!?せっかく買ってきたんだからもっと大切にしてよ!」
かのん「してるしてる~!ありがとね~!」ガサガサ
40: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:48:50.19 ID:h3WEcGkO.net
ありあ「はぁ……たまにはお店も手伝いなよ。じゃないと……」
かのん「~♪」グイッ
ありあ「ってお姉ちゃん!?わあっ!!」
かのん「じゃ~ねー!」
バタン!
ありあ(締め出された……)
ありあ「……」
かのんママ「かのん~!ありあ~!ご飯出来たわよ~!」
ありあ「はーい。今行く」
41: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:51:03.74 ID:h3WEcGkO.net
ありあ「はぁ……」
かのんママ「あら?お姉ちゃんは?」
ありあ「お姉ちゃんなら作曲で今忙しいって。先食べといていいんじゃない?」
かのんママ「そう?」
ありあ「うん」
ありあ(はぁ、お姉ちゃんってばほんと自分勝手……絶対社会で生きてくのに苦労するタイプだね。めんどくさいし)
ありあ(感謝してよね。私たちみたいな妹がいてあげてるから、お姉ちゃんは自由に暮らせてるってこと、もっと……)
かのんママ「ありあ?今日なんか良い事でもあったの?」
ありあ「えっ?」
かのんママ「すっごく楽しそうな顔してるわよ」
ありあ「そうかな……?」
ありあ(……ま、どーでもいっか。この先だってお姉ちゃんはお姉ちゃんなわけだもんね。しょーがないなぁ、ふふっ)
42: 名無しで叶える物語 2021/10/15(金) 20:53:02.38 ID:h3WEcGkO.net
終わりです。お読み下さりありがとうございました
雪穂「せっかく原宿に来たし喫茶店でも寄って行こーっと」
せつ菜「家出しましょう!すぐしましょう!今しましょう!」