堀裕子「年齢を変えるさいきっくですか」【モバマス】
ほたる「白菊ほたるは男の子」【モバマス】2: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)15:53:53 ID:XDwU
ほたる(私、白菊ほたるは大手芸能プロダクションに所属するアイドルです)
ほたる(本日もありがたいことにお仕事があり、その報告をしにプロデューサーさんのところへと向かっています)
ほたる(一緒にいるのは茄子さんに泰葉ちゃんに愛海ちゃん。今日共にお仕事をしたメンバーです)
ほたる「うわあっ!」
ほたる(途中、私は目の前に飛び出してきた黒猫にびっくりして転んでしまいました)
茄子「大丈夫ですか!?」
ほたる「だ、大丈夫です……もうびっくりしたなぁ……」
泰葉「あっ、カラス……」
ほたる「え? ……あっ」
ほたる(頭上ではカラスがうるさい声で鳴きながら飛んでおり、そのフンが靴に落ちてきました)
愛海「ま、まあ頭の上に落ちてこなかっただけラッキーなんじゃないかな……?」
ほたる「うぅ……靴紐まで切れてる……」
茄子「ほたる君泣かないで。ティッシュ使ってください」
泰葉「ツイてないね」
愛海「ついてるのにね」
ほたる(ただ道を歩いていただけなのに。どうしてこうも不幸が続いて……)
ほたる(それでも私は挫けません。こんな不幸で泣いたりなんかしません)
ほたる(私、いえ僕、白菊ほたるは男なんですから)
ほたる(僕、白菊ほたるは男であることを隠し、女装してアイドルをやっています)
ほたる(僕は前の事務所が倒産したところをプロデューサーさんに拾われたのですが、なんと彼は僕のことを女の子と勘違いしていたのです。失礼しちゃいますね)
ほたる(誤解は解きましたがプロデューサーさんは改めて僕を女装アイドルとしてスカウトし、僕はそのスカウトを受けて今に至ります)
愛海「よし、報告終わり! ほたるちゃん一緒に帰ろっ」
ほたる「あっ、私このあとプロデューサーさんと話すことがあるので残りますね」
愛海「そうなんだ」
ほたる「だから先に帰っていてください」
愛海「おっけー、じゃあまた明日」
茄子「おつかれさまです~」
泰葉「ばいばい」
~
茄子「……」
泰葉「茄子さんどうしたんですか?」
茄子「ほたる君とプロデューサーさん……一体何の話をしているんでしょう?」
愛海「次のお仕事のことじゃない? 別に気にするほどのことでもないような……」
茄子「そうなんですけど……何か嫌な予感がしまして……」
泰葉「茄子さんがそう感じるなら何かあるのかもしれませんね」
茄子「ちょっと様子を見に行きましょうか」
ほたる「移籍ですか?」
ほたる(茄子さん達が出たあとプロデューサーさんから告げられたのは、僕の移籍に関する話でした)
ほたる(渡された資料には移籍候補の事務所に関することが書かれていました)
ほたる(ひとつは大手のアイドルプロダクションで、規模、歴史、知名度、どれをとっても遜色なく、倒産する心配もないところです)
ほたる(もうひとつは新しくできたばかりのプロダクションで、現役女装アイドルもいれば前歴女装アイドルの方も所属しており、ここでなら僕も安心してアイドルをすることができるでしょう)
ほたる(他にも色々と移籍候補の事務所があります。プロデューサーさんは何もしてくれないと思っていましたが、きちんと男アイドルとして再デビューをするという約束を守るために準備してくれていたみたいです)
ほたる「プロデューサーさん……ありがとうございます」
ほたる(それからプロデューサーさんと話し合い、どの事務所に移籍するのかを今月中に決めることとなりました)
~
茄子「ほたる君が移籍……?」
泰葉「いつか来るとは思ってたけど、まさかこんなすぐにだなんて……」
愛海「そんな……止めることはできないの?」
茄子「それは難しいと思います」
愛海「えっ?」
茄子「どんなに可愛い見た目でも、ほたる君は男の子。ほたる君だって女の子より男の子としてアイドルをやりたいと思ってるんじゃないでしょうか?」
愛海「それは……」
泰葉「それにいつか男の子として活動するなら早いに越したことはないよ」
愛海「そうかもだけど……泰葉ちゃん達はそれでいいの?」
泰葉「もちろん悲しいけど……ほたる君が笑顔になれない方がもっと悲しい」
茄子「ほたる君の気持ちが一番大事です」
愛海「……」
泰葉「……とりあえずほたる君がどうするのか見守ろう? ほたる君がどうしたいのか、知りたくない?」
愛海「……うん。わかった」
茄子「ミス・フォーチュンの~」
ほたる「ドキドキ☆お料理コーナー!」
ほたる(今日は茄子さんとお仕事。一緒にお料理をするという番組です)
茄子「今日は親子丼を作っていきますよ~。ほたるちゃんは作ったことありますか?」
ほたる「ないですね。でも親子丼は好きです」
茄子「それではマスターして、寮でひとりでも作れるようにしましょう!」
ほたる「はい!」
~~~
ほたる「最後にかいわれ大根を飾り付けて……とっ」
茄子「完成で~す♪」
ほたる(毎回この番組の収録では食材が逃げ出したり電子レンジが故障したりといったアクシデントが起こるのですが、今日は何も起こりませんでした)
茄子「それでは早速いただきましょう」
ほたる(この番組は作るだけでなく食べるまでがセット。食レポの技術が必要となります)
ほたる「いただきます」
茄子「美味しそうですね~。ほたるちゃん七味唐辛子かけますか?」
ほたる「かけます」
茄子「了解です。はい、どうぞ」
ほたる「ありがとうございます…………あっ!?」
ほたる(茄子さんからもらった七味を一振りすると、七味の蓋が外れて一気に中身が出てしまいました)
茄子「あちゃー、やっちゃいましたね……」
ほたる「とほほ……」
ほたる(せっかく作った親子丼は大量の七味で隠されてしまいました。これでは流石に食べられそうにありません)
茄子「ほたるちゃん」
ほたる「はい?」
茄子「あ~ん」
ほたる「え!?」
ほたる(落ち込む僕を見て、茄子さんが自分の親子丼を一口差し出してくれました)
茄子「せっかく作ったのに食べられないなんてあんまりじゃないですか。私の分も少しあげますよ~」
ほたる「あ、ありがとうございます…………あ~ん」
茄子「どうですか?」
ほたる「……おいしい!」
茄子「毎日食べたいくらいですか?」
ほたる「はい!」
ほたる(卵はふわふわ、出汁も僕好みの少し甘めのもので本当においしいです。自分で一から作ったことや茄子さんから食べさせてもらったこともあり、よりおいしく感じます)
ほたる「もったいないですし、こっちも食べますか……」
茄子「本気ですか? 無理しなくても……」
ほたる(僕は七味まみれの親子丼に手をつけます。茄子さんは止めようとしますが、せっかく作ったのに一口も食べないのはバチが当たると思いました。おそるおそる口に運ぶと……)
ほたる「あれ、おいしい……」
茄子「本当ですか?」
ほたる「はい。柑橘系の爽やかな香りとピリリとくる優しい辛さが親子丼に染み渡って良いアクセントとなっています」
茄子「もう親子丼じゃなくて七味の食レポじゃないですか~」
ほたる「でも本当においしいんです。茄子さんも食べてみてください」
茄子「私は遠慮して……」
ほたる「茄子さん、あ~ん」
茄子「あ~ん」
ほたる(おいしさを共有したくて僕があ~んをすると、茄子さんはすんなりと食べてくれました)
ほたる「どうですか?」
茄子「もぐもぐ…………えほっ!」
ほたる(親子丼を口に入れた茄子さんはしばらく静かに頬張っていましたが、結局むせてしまいました)
茄子「お、お水……」
ほたる(苦しそうにお水を飲む茄子さん。なんだか申し訳ないです)
ほたる「おいしいのになあ……」
ほたる(そんなアクシデントはありましたが無事に完食し、この日の収録を終えることができました)
ほたる「お疲れ様です」
ほたる(収録を終え、控室で茄子さんと話しながらプロデューサーさんを待っていました)
茄子「お疲れ様でした。今日は大きなトラブルがなくてよかったですね~」
ほたる「はい。七味の蓋が外れたくらいでしたが、おいしかったのでむしろラッキーでした」
茄子「ラッキーでしたか……」
ほたる「味濃いのが好きなんです。男ですから」
茄子「そういうレベルの問題ではなかったような……」
ほたる(むせたときのことを思い出したのか茄子さんは苦い顔で口元に手を当てていました)
茄子「来週はなんのお仕事が入っていましたっけ?」
ほたる「確か雑誌の撮影ですね。あとダンスレッスンも一緒です」
茄子「じゃあ来週はずっとほたる君と一緒ですね。最近はほたる君と一緒のお仕事が多くて嬉しいです♪」
ほたる「嬉しい、ですか……」
茄子「どうしたんですか?」
ほたる「いえ、その、そんな風に言ってもらえるなんて思ってなくて……」
ほたる(僕は前の事務所でトラブルの原因、疫病神扱いされており、共演する方やスタッフさん達からあまり良くない顔をされていました)
ほたる(ですので、そんな僕と一緒にお仕事ができて嬉しいという茄子さんの言葉はとても新鮮で嬉しく思えました)
茄子「もう何言ってるんですか」
茄子「私じゃなくても泰葉ちゃんに愛海ちゃん、事務所のアイドル全員がそう思ってるんですからね」
ほたる「あ、ありがとうございます……」
ほたる(少し怒ったような顔をする茄子さんを見て)
ほたる「昔とは違うんだな……」
ほたる(そう思いました)
ほたる(次の日。今日は泰葉ちゃんとダンスレッスンです)
泰葉「じゃあさっさと着替えちゃおうか」
ほたる「は、はい!」
ほたる(更衣室にほかの人がいないことを確認して僕と泰葉ちゃんは着替え始めました。泰葉ちゃんは横に男の僕がいても気にせず着替えます。僕が着替えを盗み見ないという信頼あってこそです。もちろん僕は泰葉ちゃんの方を見ません)
みりあ「こんにちはー!」
ほたる「!」
泰葉「!」
ほたる(ちょうど服を脱いだタイミングでみりあちゃんが更衣室に入ってきました)
みりあ「あ、ほたるちゃんに泰葉ちゃん! 今日のレッスン頑張ろうね!」
泰葉「うん、よろしくね」
ほたる(赤城みりあちゃん。とっても元気な女の子で、今日は一緒にレッスンをする予定でした)
みりあ「わぁ、泰葉ちゃんすっごくかわいいブラしてるんだね!」
泰葉「えっ」
みりあ「ほたるちゃんも見て! すっごい大人って感じ!」
ほたる「え? ……わ、わぁ~」
ほたる(みりあちゃんに言われて仕方なく、本当に仕方なく泰葉さんのほうをちらりと見ました。……大人っぽいです)
泰葉「……」
ほたる(うぅ……。泰葉ちゃん、そんな怖い目で睨まないでください......)
みりあ「みりあも可愛いのにしたいんだけど、あまり可愛いのがなくて......」
泰葉「みりあちゃんはまだジュニア用のブラだもんね」
ほたる(ジュニア用なんてあるんだ......)
みりあ「みりあももう大人用でもいいと思うんだ。クラスでも結構大きいほうなんだよ」
泰葉「うーん、でも大人用のブラってかたいワイヤーを使ってるから、成長途中のみりあちゃんにはまだ早いかな?」
みりあ「ええ~、でもみりあもかわいいのにしたい~!」
ほたる(不満そうなみりあちゃん。僕は一体どんな顔をして聞けば良いのでしょうか)
みりあ「ほたるちゃんはどう思う?」
ほたる「えっ?」
ほたる(そんなことを考えていると、みりあちゃんに話を振られてしまいました)
みりあ「あれ、そういえばほたるちゃんってブラしてないの?」
ほたる「私は小さいからつけなくていいかな……」
泰葉「ブラは胸の成長に合わせてつけるか決めるからね。ほたるちゃんくらいの年でつけない子もいれば、みりあちゃんより下の子でもつける子はいるよ」
みりあ「そうなんだー!」
ほたる(泰葉ちゃん、フォローありがとうございます……)
泰葉「今日レッスン終わったら一緒にランジェリーショップ見に行こうか? 可愛いのがいっぱいある良いお店があるんだ」
みりあ「本当? いくいく! 泰葉ちゃんありがとう!」
ほたる(みりあちゃんは嬉しそうに泰葉ちゃんに飛びつきました。その様子に思わずほっこりとしてしまいます)
みりあ「じゃあ私、先にレッスン室に行ってるね!」
ほたる(そして着替えが終わり、みりあちゃんは駆け足で更衣室を飛び出ていきました)
ほたる「ふぅ……」
泰葉「嵐みたいだったね」
ほたる「はい......着替え中にやってきたのでびっくりしちゃいました」
泰葉「その割には結構落ち着いてたよね。みりあちゃんぐいぐい距離縮めるし、もう少し焦るかと思った」
ほたる「えへへ……それは泰葉ちゃんが隣にいたから」
泰葉「え?」
ほたる「いつもだったら男とバレないか不安になってたかもしれないけど、今日は隣に泰葉ちゃんがいたから。何かあっても絶対助けてくれると思ったから安心できたんだ」
泰葉「そう……なんだ」
ほたる「いつもありがとうね」
泰葉「もう......」
ほたる(自分でいうのもなんですが、僕は少しおっちょこちょいなところがあります)
ほたる(そんな僕が今までバレずに女装を続けられているのは泰葉ちゃんによるものが大きいです)
ほたる(言葉にしても足りないくらい、泰葉ちゃんには感謝しています)
泰葉「それはそれとしてレッスン終わったらみりあちゃんとランジェリーショップに行こうか」
ほたる「えっ」
泰葉「行くよね?」
ほたる「いや、僕は……」
泰葉「大丈夫。何かあっても私が助けるから。ほたるちゃんにぴったりなブラを紹介するね」
ほたる「や、泰葉ちゃん!? もしかして怒ってる? 着替え見ちゃったから? あれは仕方なく……」
泰葉「ほたるちゃんには大人なブラを買ってあげるからね」
ほたる「ぶ、ブラだけは嫌だ~!」
愛海「おじゃましまーす」
ほたる「どうぞー」
ほたる(その日の夜の女子寮。愛海ちゃんが僕の部屋に遊びにきました)
愛海「おー、ここがほたる君の部屋……なんていうかシンプルだね」
ほたる「あまりもの置かないようにしてるんです」
愛海「ふーん……」
ほたる(僕の部屋はベッドやテーブルといった必要最低限のものしか置いてなく、シンプルというよりも殺風景といった方が正しいかもしれません)
ほたる(理由は以前少し大きめな地震が起きたときに部屋が大変なことになったから。小物類は収納袋に入れてベッドの下に入れています)
ほたる(これまで僕は部屋に人をあげたことがありませんでした。なぜならクローゼットの中など至る所に男とバレる要素があるからです)
ほたる(今日は愛海ちゃんの部屋でLIVEのMCで話す内容を考える予定でした。しかし愛海ちゃんの部屋が荒れているということで、僕の部屋で考えようということとなりました)
愛海「まずはほたる君が一人で話して、後から私が登場と同時に襲うから……」
ほたる「襲わないでください」
愛海「やっぱり登るなら最後の方?」
ほたる「お山から離れてください」
愛海「えー、でもほたるちゃんのお山を登ってほしいってファンからのメールたくさん来てるよ?」
ほたる「知りたくなかった……」
ほたる「……こんな感じですかね」
愛海「あとはプロデューサーにチェックしてもらうだけだね」
ほたる(時間はあっという間に過ぎ、ときどき脱線しながらもなんとかMCで話す内容を形にすることができました)
ほたる「それじゃあもう遅いですし寝ますか……」
愛海「……ねえ、ほたる君」
ほたる「なんですか?」
愛海「今日一緒に寝てもいい?」
ほたる(愛海ちゃんはクッションに顔をうずめてそう聞いてきました)
ほたる「いいですよ」
ほたる(愛海ちゃんとは何回か一緒に寝たことはありますが、そのときはたいてい愛海ちゃんが寂しがりモードのときです。今日もおそらくそうなんでしょう)
ほたる(布団を並べた僕たちは電気を消し、横になりました)
愛海「……」
ほたる「……」
愛海「ねえほたる君?」
ほたる「はい」
愛海「ずっと気になってたんだけど、あそこの紙袋……ランジェリーショップのやつだよね?」
ほたる「ぎくっ」
愛海「誰かにプレゼントするの?」
ほたる「……自分用です」
愛海「えっ? あ、ほたる君とうとう……」
ほたる「違います。目覚めてません」
ほたる(誤魔化すのも申し訳ないので素直に答えました。表情は分かりませんが愛海ちゃんはおそらく誤解しています。誤解を解くため、僕は下着を買うに至った経緯を説明しました)
ほたる「……という訳でして、みりあちゃんと泰葉ちゃんと一緒にランジェリーショップに行ったんです」
愛海「なるほど」
ほたる「僕は何度も断ったんですけど泰葉ちゃんが買ってくれて……。僕には必要ないのに……」
愛海「必要ないってどういうこと?」
ほたる「え?」
ほたる(急な愛海ちゃんの冷たい声に、少し驚いてしまいました。怒ってる?)
愛海「女装を続けるのなら必要ないってことはないんじゃない?」
ほたる「いやでも……」
愛海「ほたる君の部屋って、全然もの置いてないよね。ものを置かないのは……ここを、女子寮を出て行くから?」
ほたる(愛海ちゃんは続けて心配そうに聞いてきました。愛海ちゃん、一体どうしたのでしょうか……?)
ほたる「……もしかして、移籍の話知ってるんですか?」
愛海「……うん。茄子さん達と盗み聞きしちゃったんだ」
ほたる(ふと思いついた僕の考えは見事的中していました。まさかみんなに知られていたなんて……)
愛海「ごめんね」
ほたる「こちらこそごめんなさい、黙ってて。色々決まってから話そうと思ってんです」
愛海「うん……それでほたる君は決めたの? どこに移籍するか」
ほたる「それはまだ考え中です」
愛海「そう……」
ほたる「……」
愛海「……あたしね、実は結構寂しがり屋なんだ」
ほたる「知ってます」
愛海「だからもしほたる君がいなくなったら、あたし……」
ほたる「……愛海ちゃん?」
愛海「……ううん。なんでもない」
ほたる(愛海ちゃんは途中で言葉をやめ、僕に背を向けて布団に潜りこんでしまいました)
愛海「ほたる君には感謝してるんだ。ホームシックだったあたしと一緒にいてくれて、本当に嬉しかった」
ほたる「僕も愛海ちゃんには感謝してます。愛海ちゃんのおかげで、前よりも寮でゆったりと過ごせるようになりました」
愛海「うん……。だからほたる君がどんな選択をしたって、あたしは応援するよ」
ほたる(愛海ちゃんは背を向けながらそう小さな声で言ってくれました)
愛海「じゃあおやすみ、ほたる君」
ほたる「おやすみなさい」
ほたる(電気を消してしばらく経ちましたが、僕は眠れないでいました。隣の愛海ちゃんからは静かな寝息が聞こえてきます)
ほたる(僕は目を瞑り、これまでのことを思い返しました)
ほたる(事務所がいきなり倒産したと思ったらプロデューサーさんにスカウトされて、なぜか女装することになって……)
ほたる(女装に慣れてきたところで茄子さんにバレたっけ……)
茄子『このまま秘密にしちゃえばいいんですよ~』
茄子『アルコール消毒ですよ~』
ほたる(茄子さんとはユニットを組んでおり、よく一緒にお仕事をしていました)
ほたる(女装がバレたときはこの世の終わりかと思いましたが、茄子さんは男の僕を受け入れてくれました)
ほたる(それまでひとりで不安だった僕にとって茄子さんの存在はとても大きく、安心できるものでした)
ほたる(そのあとは泰葉ちゃんにもバレて……)
泰葉『昔から変わってなくて安心したな、ほたる君』
泰葉『ほたる君はね……お尻に古傷があるの』
ほたる(泰葉ちゃんは小さい頃男の子として活動してたときに共演したことのある女の子で、いつ僕が男の子であると思い出されないか不安でした)
ほたる(だけど泰葉ちゃんは再会したときから僕のことを覚えていて、ずっと陰で支えてくれていました)
ほたる(泰葉ちゃんがいなかったら僕の女装アイドル生活はすぐに終わっていたかと思います)
ほたる(次にバレたのが愛海ちゃん……)
愛海『そんなほたるちゃんをあたしは絶対嫌いにならない』
愛海『ほたる君! 大浴場にいこう!』
ほたる(愛海ちゃんはお山が大好きで、女装している僕にとっては危険人物でした)
ほたる(そんな愛海ちゃんが寮でひとり泣いているところに遭遇して、一緒に過ごしているうちに仲良くなりました)
ほたる(女装がバレてからは事務所だけじゃなく寮内でも協力してくれて、前よりも寮でゆったりと過ごすことができました)
ほたる(続いて晴ちゃん、同時に乃々さんに正体を知られてしまいました)
晴『オレも男だとバレないよう付き合ってやるよ』
乃々『これも全部、ほたるくんのおかげです』
ほたる(晴ちゃんとは少しトラブルがありましたが二人とも女装がバレないよう協力してくれるようになり、晴ちゃんとサッカーをしたり、乃々さんと机の下でのんびりしたりするようになりました)
ほたる(本当に毎日が楽しかったです)
ほたる(これまでのアイドル人生の中で、今が間違いなく1番充実していると言えます)
ほたる(それは支えてくれるみんなのおかげで……)
ほたる(僕はこれから……)
ほたる(そして移籍先を決める約束の日となりました)
ほたる(僕はプロデューサーさんの部屋に行き、自分の希望をプロデューサーさんに伝えました)
ほたる(プロデューサーさんは僕の希望を尊重してくれ、今後のことを二人で話し合いました)
ほたる「失礼しました。ふぅ……」
茄子「ほたる君」
ほたる(プロデューサーさんの部屋を出たところで茄子さん達に声を掛けられました)
泰葉「移籍先決めたんだよね」
愛海「どこの事務所?」
晴「本当に出ていっちゃうのか?」
乃々「あう……何も聞いてないんですけど……」
ほたる(部屋の前でずっと待っていたようで、矢継ぎ早に移籍先のことを聞かれました)
ほたる「みなさん、落ち着いてください……」
ほたる「僕は……この事務所でアイドルを続けることにしました」
茄子「え?」
泰葉「それって……」
愛海「出て行かないってこと?」
ほたる「はい」
ほたる(僕が決めたのはどこにも移籍せず、この事務所に残るというものでした)
ほたる「移籍の話を聞いてからよく考えたんです。これまで色々な事務所を転々とした僕ですけど今が一番楽しくて……それはみなさんがいるからだと思ったんです」
ほたる「だからもちろん男としてアイドルをやりたいですけど、それ以上にみんなと一緒にアイドルをやりたいって思ったんです。……なんて、ただのわがままですけど」
晴「ってことは女装を続けるのか?」
ほたる「そのことなんですけど、いずれは男のアイドルとして再デビューする予定なんです。この事務所で」
乃々「この事務所で……? ここ男性アイドルっていましたっけ……?」
茄子「確かいませんよね?」
泰葉「そうですね。シンデレラがモチーフですし」
ほたる「はい。つまり事務所初の男アイドルとしてデビューするんです! 男でもシンデレラ!」
晴「おー」
愛海「いつデビューするか決まってるの?」
ほたる「それはまだです。プロデューサーさんが言うには上の人を説得するのが手間らしくて……」
泰葉「一番大事なとこじゃない? 大丈夫?」
ほたる「ですので、トップアイドルになって上を黙らせようってことになりました」
乃々「力技なんですけど……」
ほたる「他にも問題が山積みでして……」
茄子「ほたる君が男の子ってわかったらファンの人たちすごく混乱するでしょうね」
愛海「女子寮……というより事務所のアイドルみんな驚くだろうね」
ほたる(そう。男としてデビューするには問題がたくさんあるのです)
ほたる(でもきちんと考えはあります。これから男の子っぽい売り方をすれば、スムーズに男の子として受け入れられるというものです)
ほたる「そのためにちょっとずつ男の子向けのお仕事をこなしていく予定なんです。そこで皆さんに相談なんですけど、どんな仕事をしたらいいと思いますか?」
茄子「ASMR」
泰葉「下着モデル」
愛海「バニー」
晴「ウエディングドレス」
乃々「お姫さま」
ほたる「……」
ほたる(みんなから出てきたのはとても男の子がこなすとは思えないお仕事ばかり……)
ほたる(それなのに、その仕事をこなす自分の姿が想像できてしまいます)
ほたる(それは何があってもみんなが助けて協力してくれるから)
ほたる(茄子さん、泰葉ちゃん、愛海ちゃん、晴ちゃん、乃々さん……)
ほたる(本当の本当に、ありがとうございます)
ほたる「もう! 真面目に考えてください!」
ほたる「白菊ほたるは男の子なんですから!」
終わりです。ありがとうございました
ほたるちゃんはツイてないけど男の子だったらついてるという発想から生まれたお話でした。
元スレ
ほたる(私、白菊ほたるは大手芸能プロダクションに所属するアイドルです)
ほたる(本日もありがたいことにお仕事があり、その報告をしにプロデューサーさんのところへと向かっています)
ほたる(一緒にいるのは茄子さんに泰葉ちゃんに愛海ちゃん。今日共にお仕事をしたメンバーです)
ほたる「うわあっ!」
ほたる(途中、私は目の前に飛び出してきた黒猫にびっくりして転んでしまいました)
茄子「大丈夫ですか!?」
ほたる「だ、大丈夫です……もうびっくりしたなぁ……」
泰葉「あっ、カラス……」
ほたる「え? ……あっ」
ほたる(頭上ではカラスがうるさい声で鳴きながら飛んでおり、そのフンが靴に落ちてきました)
愛海「ま、まあ頭の上に落ちてこなかっただけラッキーなんじゃないかな……?」
ほたる「うぅ……靴紐まで切れてる……」
茄子「ほたる君泣かないで。ティッシュ使ってください」
泰葉「ツイてないね」
愛海「ついてるのにね」
ほたる(ただ道を歩いていただけなのに。どうしてこうも不幸が続いて……)
ほたる(それでも私は挫けません。こんな不幸で泣いたりなんかしません)
ほたる(私、いえ僕、白菊ほたるは男なんですから)
3: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)15:56:01 ID:XDwU
ほたる(僕、白菊ほたるは男であることを隠し、女装してアイドルをやっています)
ほたる(僕は前の事務所が倒産したところをプロデューサーさんに拾われたのですが、なんと彼は僕のことを女の子と勘違いしていたのです。失礼しちゃいますね)
ほたる(誤解は解きましたがプロデューサーさんは改めて僕を女装アイドルとしてスカウトし、僕はそのスカウトを受けて今に至ります)
愛海「よし、報告終わり! ほたるちゃん一緒に帰ろっ」
ほたる「あっ、私このあとプロデューサーさんと話すことがあるので残りますね」
愛海「そうなんだ」
ほたる「だから先に帰っていてください」
愛海「おっけー、じゃあまた明日」
茄子「おつかれさまです~」
泰葉「ばいばい」
~
茄子「……」
泰葉「茄子さんどうしたんですか?」
茄子「ほたる君とプロデューサーさん……一体何の話をしているんでしょう?」
愛海「次のお仕事のことじゃない? 別に気にするほどのことでもないような……」
茄子「そうなんですけど……何か嫌な予感がしまして……」
泰葉「茄子さんがそう感じるなら何かあるのかもしれませんね」
茄子「ちょっと様子を見に行きましょうか」
4: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)15:59:20 ID:XDwU
ほたる「移籍ですか?」
ほたる(茄子さん達が出たあとプロデューサーさんから告げられたのは、僕の移籍に関する話でした)
ほたる(渡された資料には移籍候補の事務所に関することが書かれていました)
ほたる(ひとつは大手のアイドルプロダクションで、規模、歴史、知名度、どれをとっても遜色なく、倒産する心配もないところです)
ほたる(もうひとつは新しくできたばかりのプロダクションで、現役女装アイドルもいれば前歴女装アイドルの方も所属しており、ここでなら僕も安心してアイドルをすることができるでしょう)
ほたる(他にも色々と移籍候補の事務所があります。プロデューサーさんは何もしてくれないと思っていましたが、きちんと男アイドルとして再デビューをするという約束を守るために準備してくれていたみたいです)
ほたる「プロデューサーさん……ありがとうございます」
ほたる(それからプロデューサーさんと話し合い、どの事務所に移籍するのかを今月中に決めることとなりました)
~
茄子「ほたる君が移籍……?」
泰葉「いつか来るとは思ってたけど、まさかこんなすぐにだなんて……」
愛海「そんな……止めることはできないの?」
茄子「それは難しいと思います」
愛海「えっ?」
茄子「どんなに可愛い見た目でも、ほたる君は男の子。ほたる君だって女の子より男の子としてアイドルをやりたいと思ってるんじゃないでしょうか?」
愛海「それは……」
泰葉「それにいつか男の子として活動するなら早いに越したことはないよ」
愛海「そうかもだけど……泰葉ちゃん達はそれでいいの?」
泰葉「もちろん悲しいけど……ほたる君が笑顔になれない方がもっと悲しい」
茄子「ほたる君の気持ちが一番大事です」
愛海「……」
泰葉「……とりあえずほたる君がどうするのか見守ろう? ほたる君がどうしたいのか、知りたくない?」
愛海「……うん。わかった」
5: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:03:28 ID:XDwU
茄子「ミス・フォーチュンの~」
ほたる「ドキドキ☆お料理コーナー!」
ほたる(今日は茄子さんとお仕事。一緒にお料理をするという番組です)
茄子「今日は親子丼を作っていきますよ~。ほたるちゃんは作ったことありますか?」
ほたる「ないですね。でも親子丼は好きです」
茄子「それではマスターして、寮でひとりでも作れるようにしましょう!」
ほたる「はい!」
~~~
ほたる「最後にかいわれ大根を飾り付けて……とっ」
茄子「完成で~す♪」
ほたる(毎回この番組の収録では食材が逃げ出したり電子レンジが故障したりといったアクシデントが起こるのですが、今日は何も起こりませんでした)
茄子「それでは早速いただきましょう」
ほたる(この番組は作るだけでなく食べるまでがセット。食レポの技術が必要となります)
ほたる「いただきます」
茄子「美味しそうですね~。ほたるちゃん七味唐辛子かけますか?」
ほたる「かけます」
茄子「了解です。はい、どうぞ」
ほたる「ありがとうございます…………あっ!?」
ほたる(茄子さんからもらった七味を一振りすると、七味の蓋が外れて一気に中身が出てしまいました)
茄子「あちゃー、やっちゃいましたね……」
ほたる「とほほ……」
ほたる(せっかく作った親子丼は大量の七味で隠されてしまいました。これでは流石に食べられそうにありません)
6: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:07:17 ID:XDwU
茄子「ほたるちゃん」
ほたる「はい?」
茄子「あ~ん」
ほたる「え!?」
ほたる(落ち込む僕を見て、茄子さんが自分の親子丼を一口差し出してくれました)
茄子「せっかく作ったのに食べられないなんてあんまりじゃないですか。私の分も少しあげますよ~」
ほたる「あ、ありがとうございます…………あ~ん」
茄子「どうですか?」
ほたる「……おいしい!」
茄子「毎日食べたいくらいですか?」
ほたる「はい!」
ほたる(卵はふわふわ、出汁も僕好みの少し甘めのもので本当においしいです。自分で一から作ったことや茄子さんから食べさせてもらったこともあり、よりおいしく感じます)
ほたる「もったいないですし、こっちも食べますか……」
茄子「本気ですか? 無理しなくても……」
ほたる(僕は七味まみれの親子丼に手をつけます。茄子さんは止めようとしますが、せっかく作ったのに一口も食べないのはバチが当たると思いました。おそるおそる口に運ぶと……)
ほたる「あれ、おいしい……」
茄子「本当ですか?」
ほたる「はい。柑橘系の爽やかな香りとピリリとくる優しい辛さが親子丼に染み渡って良いアクセントとなっています」
茄子「もう親子丼じゃなくて七味の食レポじゃないですか~」
ほたる「でも本当においしいんです。茄子さんも食べてみてください」
茄子「私は遠慮して……」
ほたる「茄子さん、あ~ん」
茄子「あ~ん」
ほたる(おいしさを共有したくて僕があ~んをすると、茄子さんはすんなりと食べてくれました)
ほたる「どうですか?」
茄子「もぐもぐ…………えほっ!」
ほたる(親子丼を口に入れた茄子さんはしばらく静かに頬張っていましたが、結局むせてしまいました)
茄子「お、お水……」
ほたる(苦しそうにお水を飲む茄子さん。なんだか申し訳ないです)
ほたる「おいしいのになあ……」
ほたる(そんなアクシデントはありましたが無事に完食し、この日の収録を終えることができました)
7: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:13:24 ID:XDwU
ほたる「お疲れ様です」
ほたる(収録を終え、控室で茄子さんと話しながらプロデューサーさんを待っていました)
茄子「お疲れ様でした。今日は大きなトラブルがなくてよかったですね~」
ほたる「はい。七味の蓋が外れたくらいでしたが、おいしかったのでむしろラッキーでした」
茄子「ラッキーでしたか……」
ほたる「味濃いのが好きなんです。男ですから」
茄子「そういうレベルの問題ではなかったような……」
ほたる(むせたときのことを思い出したのか茄子さんは苦い顔で口元に手を当てていました)
茄子「来週はなんのお仕事が入っていましたっけ?」
ほたる「確か雑誌の撮影ですね。あとダンスレッスンも一緒です」
茄子「じゃあ来週はずっとほたる君と一緒ですね。最近はほたる君と一緒のお仕事が多くて嬉しいです♪」
ほたる「嬉しい、ですか……」
茄子「どうしたんですか?」
ほたる「いえ、その、そんな風に言ってもらえるなんて思ってなくて……」
ほたる(僕は前の事務所でトラブルの原因、疫病神扱いされており、共演する方やスタッフさん達からあまり良くない顔をされていました)
ほたる(ですので、そんな僕と一緒にお仕事ができて嬉しいという茄子さんの言葉はとても新鮮で嬉しく思えました)
茄子「もう何言ってるんですか」
茄子「私じゃなくても泰葉ちゃんに愛海ちゃん、事務所のアイドル全員がそう思ってるんですからね」
ほたる「あ、ありがとうございます……」
ほたる(少し怒ったような顔をする茄子さんを見て)
ほたる「昔とは違うんだな……」
ほたる(そう思いました)
8: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:16:46 ID:XDwU
ほたる(次の日。今日は泰葉ちゃんとダンスレッスンです)
泰葉「じゃあさっさと着替えちゃおうか」
ほたる「は、はい!」
ほたる(更衣室にほかの人がいないことを確認して僕と泰葉ちゃんは着替え始めました。泰葉ちゃんは横に男の僕がいても気にせず着替えます。僕が着替えを盗み見ないという信頼あってこそです。もちろん僕は泰葉ちゃんの方を見ません)
みりあ「こんにちはー!」
ほたる「!」
泰葉「!」
ほたる(ちょうど服を脱いだタイミングでみりあちゃんが更衣室に入ってきました)
みりあ「あ、ほたるちゃんに泰葉ちゃん! 今日のレッスン頑張ろうね!」
泰葉「うん、よろしくね」
ほたる(赤城みりあちゃん。とっても元気な女の子で、今日は一緒にレッスンをする予定でした)
みりあ「わぁ、泰葉ちゃんすっごくかわいいブラしてるんだね!」
泰葉「えっ」
みりあ「ほたるちゃんも見て! すっごい大人って感じ!」
ほたる「え? ……わ、わぁ~」
ほたる(みりあちゃんに言われて仕方なく、本当に仕方なく泰葉さんのほうをちらりと見ました。……大人っぽいです)
泰葉「……」
ほたる(うぅ……。泰葉ちゃん、そんな怖い目で睨まないでください......)
みりあ「みりあも可愛いのにしたいんだけど、あまり可愛いのがなくて......」
泰葉「みりあちゃんはまだジュニア用のブラだもんね」
ほたる(ジュニア用なんてあるんだ......)
みりあ「みりあももう大人用でもいいと思うんだ。クラスでも結構大きいほうなんだよ」
泰葉「うーん、でも大人用のブラってかたいワイヤーを使ってるから、成長途中のみりあちゃんにはまだ早いかな?」
みりあ「ええ~、でもみりあもかわいいのにしたい~!」
ほたる(不満そうなみりあちゃん。僕は一体どんな顔をして聞けば良いのでしょうか)
みりあ「ほたるちゃんはどう思う?」
ほたる「えっ?」
ほたる(そんなことを考えていると、みりあちゃんに話を振られてしまいました)
みりあ「あれ、そういえばほたるちゃんってブラしてないの?」
ほたる「私は小さいからつけなくていいかな……」
泰葉「ブラは胸の成長に合わせてつけるか決めるからね。ほたるちゃんくらいの年でつけない子もいれば、みりあちゃんより下の子でもつける子はいるよ」
みりあ「そうなんだー!」
ほたる(泰葉ちゃん、フォローありがとうございます……)
泰葉「今日レッスン終わったら一緒にランジェリーショップ見に行こうか? 可愛いのがいっぱいある良いお店があるんだ」
みりあ「本当? いくいく! 泰葉ちゃんありがとう!」
ほたる(みりあちゃんは嬉しそうに泰葉ちゃんに飛びつきました。その様子に思わずほっこりとしてしまいます)
みりあ「じゃあ私、先にレッスン室に行ってるね!」
ほたる(そして着替えが終わり、みりあちゃんは駆け足で更衣室を飛び出ていきました)
9: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:18:21 ID:XDwU
ほたる「ふぅ……」
泰葉「嵐みたいだったね」
ほたる「はい......着替え中にやってきたのでびっくりしちゃいました」
泰葉「その割には結構落ち着いてたよね。みりあちゃんぐいぐい距離縮めるし、もう少し焦るかと思った」
ほたる「えへへ……それは泰葉ちゃんが隣にいたから」
泰葉「え?」
ほたる「いつもだったら男とバレないか不安になってたかもしれないけど、今日は隣に泰葉ちゃんがいたから。何かあっても絶対助けてくれると思ったから安心できたんだ」
泰葉「そう……なんだ」
ほたる「いつもありがとうね」
泰葉「もう......」
ほたる(自分でいうのもなんですが、僕は少しおっちょこちょいなところがあります)
ほたる(そんな僕が今までバレずに女装を続けられているのは泰葉ちゃんによるものが大きいです)
ほたる(言葉にしても足りないくらい、泰葉ちゃんには感謝しています)
泰葉「それはそれとしてレッスン終わったらみりあちゃんとランジェリーショップに行こうか」
ほたる「えっ」
泰葉「行くよね?」
ほたる「いや、僕は……」
泰葉「大丈夫。何かあっても私が助けるから。ほたるちゃんにぴったりなブラを紹介するね」
ほたる「や、泰葉ちゃん!? もしかして怒ってる? 着替え見ちゃったから? あれは仕方なく……」
泰葉「ほたるちゃんには大人なブラを買ってあげるからね」
ほたる「ぶ、ブラだけは嫌だ~!」
10: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:22:48 ID:XDwU
愛海「おじゃましまーす」
ほたる「どうぞー」
ほたる(その日の夜の女子寮。愛海ちゃんが僕の部屋に遊びにきました)
愛海「おー、ここがほたる君の部屋……なんていうかシンプルだね」
ほたる「あまりもの置かないようにしてるんです」
愛海「ふーん……」
ほたる(僕の部屋はベッドやテーブルといった必要最低限のものしか置いてなく、シンプルというよりも殺風景といった方が正しいかもしれません)
ほたる(理由は以前少し大きめな地震が起きたときに部屋が大変なことになったから。小物類は収納袋に入れてベッドの下に入れています)
ほたる(これまで僕は部屋に人をあげたことがありませんでした。なぜならクローゼットの中など至る所に男とバレる要素があるからです)
ほたる(今日は愛海ちゃんの部屋でLIVEのMCで話す内容を考える予定でした。しかし愛海ちゃんの部屋が荒れているということで、僕の部屋で考えようということとなりました)
愛海「まずはほたる君が一人で話して、後から私が登場と同時に襲うから……」
ほたる「襲わないでください」
愛海「やっぱり登るなら最後の方?」
ほたる「お山から離れてください」
愛海「えー、でもほたるちゃんのお山を登ってほしいってファンからのメールたくさん来てるよ?」
ほたる「知りたくなかった……」
11: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:24:14 ID:XDwU
ほたる「……こんな感じですかね」
愛海「あとはプロデューサーにチェックしてもらうだけだね」
ほたる(時間はあっという間に過ぎ、ときどき脱線しながらもなんとかMCで話す内容を形にすることができました)
ほたる「それじゃあもう遅いですし寝ますか……」
愛海「……ねえ、ほたる君」
ほたる「なんですか?」
愛海「今日一緒に寝てもいい?」
ほたる(愛海ちゃんはクッションに顔をうずめてそう聞いてきました)
ほたる「いいですよ」
ほたる(愛海ちゃんとは何回か一緒に寝たことはありますが、そのときはたいてい愛海ちゃんが寂しがりモードのときです。今日もおそらくそうなんでしょう)
12: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:29:34 ID:XDwU
ほたる(布団を並べた僕たちは電気を消し、横になりました)
愛海「……」
ほたる「……」
愛海「ねえほたる君?」
ほたる「はい」
愛海「ずっと気になってたんだけど、あそこの紙袋……ランジェリーショップのやつだよね?」
ほたる「ぎくっ」
愛海「誰かにプレゼントするの?」
ほたる「……自分用です」
愛海「えっ? あ、ほたる君とうとう……」
ほたる「違います。目覚めてません」
ほたる(誤魔化すのも申し訳ないので素直に答えました。表情は分かりませんが愛海ちゃんはおそらく誤解しています。誤解を解くため、僕は下着を買うに至った経緯を説明しました)
ほたる「……という訳でして、みりあちゃんと泰葉ちゃんと一緒にランジェリーショップに行ったんです」
愛海「なるほど」
ほたる「僕は何度も断ったんですけど泰葉ちゃんが買ってくれて……。僕には必要ないのに……」
愛海「必要ないってどういうこと?」
ほたる「え?」
ほたる(急な愛海ちゃんの冷たい声に、少し驚いてしまいました。怒ってる?)
愛海「女装を続けるのなら必要ないってことはないんじゃない?」
ほたる「いやでも……」
愛海「ほたる君の部屋って、全然もの置いてないよね。ものを置かないのは……ここを、女子寮を出て行くから?」
ほたる(愛海ちゃんは続けて心配そうに聞いてきました。愛海ちゃん、一体どうしたのでしょうか……?)
ほたる「……もしかして、移籍の話知ってるんですか?」
愛海「……うん。茄子さん達と盗み聞きしちゃったんだ」
ほたる(ふと思いついた僕の考えは見事的中していました。まさかみんなに知られていたなんて……)
愛海「ごめんね」
ほたる「こちらこそごめんなさい、黙ってて。色々決まってから話そうと思ってんです」
愛海「うん……それでほたる君は決めたの? どこに移籍するか」
ほたる「それはまだ考え中です」
愛海「そう……」
ほたる「……」
愛海「……あたしね、実は結構寂しがり屋なんだ」
ほたる「知ってます」
愛海「だからもしほたる君がいなくなったら、あたし……」
ほたる「……愛海ちゃん?」
愛海「……ううん。なんでもない」
ほたる(愛海ちゃんは途中で言葉をやめ、僕に背を向けて布団に潜りこんでしまいました)
愛海「ほたる君には感謝してるんだ。ホームシックだったあたしと一緒にいてくれて、本当に嬉しかった」
ほたる「僕も愛海ちゃんには感謝してます。愛海ちゃんのおかげで、前よりも寮でゆったりと過ごせるようになりました」
愛海「うん……。だからほたる君がどんな選択をしたって、あたしは応援するよ」
ほたる(愛海ちゃんは背を向けながらそう小さな声で言ってくれました)
愛海「じゃあおやすみ、ほたる君」
ほたる「おやすみなさい」
13: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:32:37 ID:XDwU
ほたる(電気を消してしばらく経ちましたが、僕は眠れないでいました。隣の愛海ちゃんからは静かな寝息が聞こえてきます)
ほたる(僕は目を瞑り、これまでのことを思い返しました)
ほたる(事務所がいきなり倒産したと思ったらプロデューサーさんにスカウトされて、なぜか女装することになって……)
ほたる(女装に慣れてきたところで茄子さんにバレたっけ……)
茄子『このまま秘密にしちゃえばいいんですよ~』
茄子『アルコール消毒ですよ~』
ほたる(茄子さんとはユニットを組んでおり、よく一緒にお仕事をしていました)
ほたる(女装がバレたときはこの世の終わりかと思いましたが、茄子さんは男の僕を受け入れてくれました)
ほたる(それまでひとりで不安だった僕にとって茄子さんの存在はとても大きく、安心できるものでした)
14: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:33:28 ID:XDwU
ほたる(そのあとは泰葉ちゃんにもバレて……)
泰葉『昔から変わってなくて安心したな、ほたる君』
泰葉『ほたる君はね……お尻に古傷があるの』
ほたる(泰葉ちゃんは小さい頃男の子として活動してたときに共演したことのある女の子で、いつ僕が男の子であると思い出されないか不安でした)
ほたる(だけど泰葉ちゃんは再会したときから僕のことを覚えていて、ずっと陰で支えてくれていました)
ほたる(泰葉ちゃんがいなかったら僕の女装アイドル生活はすぐに終わっていたかと思います)
15: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:35:56 ID:XDwU
ほたる(次にバレたのが愛海ちゃん……)
愛海『そんなほたるちゃんをあたしは絶対嫌いにならない』
愛海『ほたる君! 大浴場にいこう!』
ほたる(愛海ちゃんはお山が大好きで、女装している僕にとっては危険人物でした)
ほたる(そんな愛海ちゃんが寮でひとり泣いているところに遭遇して、一緒に過ごしているうちに仲良くなりました)
ほたる(女装がバレてからは事務所だけじゃなく寮内でも協力してくれて、前よりも寮でゆったりと過ごすことができました)
16: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:36:45 ID:XDwU
ほたる(続いて晴ちゃん、同時に乃々さんに正体を知られてしまいました)
晴『オレも男だとバレないよう付き合ってやるよ』
乃々『これも全部、ほたるくんのおかげです』
ほたる(晴ちゃんとは少しトラブルがありましたが二人とも女装がバレないよう協力してくれるようになり、晴ちゃんとサッカーをしたり、乃々さんと机の下でのんびりしたりするようになりました)
17: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:37:13 ID:XDwU
ほたる(本当に毎日が楽しかったです)
ほたる(これまでのアイドル人生の中で、今が間違いなく1番充実していると言えます)
ほたる(それは支えてくれるみんなのおかげで……)
ほたる(僕はこれから……)
18: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:38:32 ID:XDwU
ほたる(そして移籍先を決める約束の日となりました)
ほたる(僕はプロデューサーさんの部屋に行き、自分の希望をプロデューサーさんに伝えました)
ほたる(プロデューサーさんは僕の希望を尊重してくれ、今後のことを二人で話し合いました)
ほたる「失礼しました。ふぅ……」
茄子「ほたる君」
ほたる(プロデューサーさんの部屋を出たところで茄子さん達に声を掛けられました)
泰葉「移籍先決めたんだよね」
愛海「どこの事務所?」
晴「本当に出ていっちゃうのか?」
乃々「あう……何も聞いてないんですけど……」
ほたる(部屋の前でずっと待っていたようで、矢継ぎ早に移籍先のことを聞かれました)
19: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:39:31 ID:XDwU
ほたる「みなさん、落ち着いてください……」
ほたる「僕は……この事務所でアイドルを続けることにしました」
茄子「え?」
泰葉「それって……」
愛海「出て行かないってこと?」
ほたる「はい」
ほたる(僕が決めたのはどこにも移籍せず、この事務所に残るというものでした)
ほたる「移籍の話を聞いてからよく考えたんです。これまで色々な事務所を転々とした僕ですけど今が一番楽しくて……それはみなさんがいるからだと思ったんです」
ほたる「だからもちろん男としてアイドルをやりたいですけど、それ以上にみんなと一緒にアイドルをやりたいって思ったんです。……なんて、ただのわがままですけど」
20: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:42:56 ID:XDwU
晴「ってことは女装を続けるのか?」
ほたる「そのことなんですけど、いずれは男のアイドルとして再デビューする予定なんです。この事務所で」
乃々「この事務所で……? ここ男性アイドルっていましたっけ……?」
茄子「確かいませんよね?」
泰葉「そうですね。シンデレラがモチーフですし」
ほたる「はい。つまり事務所初の男アイドルとしてデビューするんです! 男でもシンデレラ!」
晴「おー」
愛海「いつデビューするか決まってるの?」
ほたる「それはまだです。プロデューサーさんが言うには上の人を説得するのが手間らしくて……」
泰葉「一番大事なとこじゃない? 大丈夫?」
ほたる「ですので、トップアイドルになって上を黙らせようってことになりました」
乃々「力技なんですけど……」
ほたる「他にも問題が山積みでして……」
茄子「ほたる君が男の子ってわかったらファンの人たちすごく混乱するでしょうね」
愛海「女子寮……というより事務所のアイドルみんな驚くだろうね」
21: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:44:15 ID:XDwU
ほたる(そう。男としてデビューするには問題がたくさんあるのです)
ほたる(でもきちんと考えはあります。これから男の子っぽい売り方をすれば、スムーズに男の子として受け入れられるというものです)
ほたる「そのためにちょっとずつ男の子向けのお仕事をこなしていく予定なんです。そこで皆さんに相談なんですけど、どんな仕事をしたらいいと思いますか?」
茄子「ASMR」
泰葉「下着モデル」
愛海「バニー」
晴「ウエディングドレス」
乃々「お姫さま」
ほたる「……」
22: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:45:33 ID:XDwU
ほたる(みんなから出てきたのはとても男の子がこなすとは思えないお仕事ばかり……)
ほたる(それなのに、その仕事をこなす自分の姿が想像できてしまいます)
ほたる(それは何があってもみんなが助けて協力してくれるから)
ほたる(茄子さん、泰葉ちゃん、愛海ちゃん、晴ちゃん、乃々さん……)
ほたる(本当の本当に、ありがとうございます)
ほたる「もう! 真面目に考えてください!」
ほたる「白菊ほたるは男の子なんですから!」
23: ◆r5XXOuQGNQ 21/10/26(火)16:53:52 ID:XDwU
終わりです。ありがとうございました
ほたるちゃんはツイてないけど男の子だったらついてるという発想から生まれたお話でした。
白菊ほたる「白菊ほたるは男の子なんですから!」