79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 09:20:22.74 ID:UZXO7xnk0
「……え?」
私は耳を疑った。
……なに? セックスするか、死ぬか……?
なぜ、先輩はそんなことを言うのだろう。
「先輩」
「ん?」
「先輩は、わたしの気持ち、信じてくれてないんですか?」
こんなにも、好きなのに。
なぜ、こんな脅迫するようにして聞いてくるのだろう。
私は、先輩の柔らかい頬に右手を添える。
「好き、なんですよ」
「うん」
「信じてくれないんですか」
「ううん」
「じゃあ、なんで」
そんな聞き方するんですか。
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 09:31:31.82 ID:UZXO7xnk0
「私もあずにゃんのこと、好きだよ」
いつもの、柔らかい笑顔、なのに。
「でもね」
私の右手に、先輩の左手が添えられる。
その手は小さく震えていた。何かに脅えるように。
「せん、……ぱい?」
「ねぇあずにゃん、しようよ」
先輩の顔が近づいてくる。私は、そっと瞼を伏せた。
唇が触れ合う。熱い。柔らかい。気持ちいい。
「……ん、せんぱ……」
離して、また触れ合わせる。
触れるだけだったキスは、次第に深く、長くなっていく。
頭がじんとする。とろけていくような感覚。
「……ちゅ、んっ……っは」
「せ、んぱ……いっ、……どうし、……んぅっ」
もう、何も考えられなくなってくる。
先輩のこと以外。
「……は……っ……」
やっと唇を離してもらえた。
舌と舌とを細い唾液の橋がつなぐ。それは細く細くなっていき、名残惜しそうに、ぷつりと切れた。
唇の周りの唾液が外気に触れて冷たい。
もっと、もっと、先輩の熱が欲しいよ。
「……いいですよ、先輩。セックス、しましょうか」
肩で息をしている唯先輩。どことなく不安げだった表情が、少しだけ明るくなった気がした。
先輩は、甘い声で私の名前を呼びながら、嬉しそうにすり寄ってくる。
「あずにゃあん……」
「はい、唯先輩……」
唯先輩を、やさしくベッドに押し倒していく。
赤らんだ顔がいつもより余計に可愛く思える。
「なんで、死ぬか、セックスするかなんですか」
私は唯先輩の顔のすぐ脇に両手をついて、覆いかぶさる。
私から、そして質問から逃がさないように。
「だって」
それが、当り前だといわんばかりに。
「そう言わないと、あずにゃん何もしてくれないでしょ?」
……え?
がつんと、頭を殴られたような気がした。
それだけの衝撃が私のなかを駆け巡っていった。
「どういう、ことですか……」
やっとそれだけ、声を絞り出せた。
「だって」
悲しげな、表情で。
「いつも、私からじゃん」
抱きつくときはもちろん、「好きだ」って気持ちを伝えた時も、初めて手をつないだときも、初めてキスをしたときも。
いつも、全部、唯先輩から。
「あずにゃん、ホントに私のこと好き?」
そうか。そうだったんだ。
「好き……ですよ」
先輩は、にっこりと微笑んで。
「嘘だぁ」
先輩は、私の首に両手を回しながら言う。
「あずにゃんはいつもそう言ってくれるよね。私が『好き』って言ったら、『好き』ってちゃんと返してくれる」
それに、偽りはないんですよ……?
好きで、好きで、好きで、もうこれ以上ないってくらいに、あなたのことが好きです。
「でもね」
気がつけば、先輩の目は涙であふれていた。
「同情なんか、しなくていいんだよ? あずにゃん」
私、は――――。
「ごめんね、さっき、嘘ついた」
――――私の気持ち、信じてくれてないんですか?
「信じて、なかったよ」
信じれなかったよ、と。先輩は、嗚咽まじりの声で、悲しそうにつぶやいた。
「唯……せんぱ……」
私は、なんてことをしていたのだろう。なにをしているんだろう。
先輩は、不安だったんだ。
「……あずにゃん、ごめんね。『死ぬかセックスするか』っていうのはちょっと言い過ぎたね」
いつも、先輩はどんな気持ちで接してくれていたのだろう。
先輩は私を好きでいてくれて、それを少しでも行動で伝えようとしてくれていたのに。
「私たち、もう終わりにしよっか」
その言葉は、私に重く、重くのしかかって。
「……やです」
「え? だって、あずにゃん私のこと好きじゃないでしょ? もう無理しないでいいんだよ」
きっと、さびしい思いをいっぱいさせてしまった。
私は、自分のことしか考えてなかったんだ。
すごく、くやしくなる。
「あ、でもね、さっきはちょっと嬉しかったよ」
まだ…………、まだ、やり直しはききますか。
今からでも遅くはないですか。
「あずにゃんから押し倒してくれたとき。えへへ、決心がちょっとにぶっちゃったよ」
最初から、これで最後にするつもりだったんですか。
「でも、もういいやぁ……」
そう言って、ふっと笑う。
そんな、こと、言わないで、ください。そんな、ふうに、笑わないで、ください。
「あずにゃん?」
苦しくて、でも唯先輩はもっともっと苦しかったんだ。
「なんで、泣いてるの?」
「……え」
真下にある唯先輩の顔に、ぽたりぽたりと、私の涙が落ちていく。
唯先輩のと私の。ふたりの涙が混ざりあって、悲しみの色をさらに濃くしていく。
「すみませ……っ、わた、しっ……」
「ううん……」
先輩は、ぐいと私の顔を引き寄せて、目元に口づけてくれた。
「しょっぱい」
至近距離で、先輩の甘いにおいがひろがって、目には唯先輩以外映らなくて。
「でも、あったかいね」
そう言って、先輩の唇が私のそれに軽く触れた。
先輩のほうが、あったかいです。
「ごめんね」
先輩は、今にもこぼれ落ちそうなくらい、目に涙をためていて。
「キス、しちゃって」
ぐっと肩を押されて、唯先輩の上からどけられる。
先輩は座りなおして、私の目を真っ直見て言った。
「……ぃ、え……」
私は先輩の目を見れなかった。
自分が、嫌になる。
否定の言葉でも、叫べばいいのに。言葉だけじゃ解決しないとわかりながらも。
「……もう、帰るよ」
バイバイ、あずにゃん、と。
昼飯。純愛ハッピーエンドにはしたいと思ってるよ!
真っ暗な、闇の底へと突き落とされた気がした。
――瞬間、私は。
「……あずにゃん?」
「……ゃだ…………っ」
部屋を出て行こうとする先輩を、ぎゅっと抱きしめていた。
私より、ちょっとだけ背の高い先輩。
あったかくて、やさしくて。
「いかないで、くださぃ……っ」
涙が、あふれてくる。
私は、こんなに幸せなぬくもりを失いたくない。
すごく、すごく愛しくて、抱きしめる両腕に力を込めた。
私はやっぱり、こんなにも唯先輩が好きなんだ。
「すき、です。せんぱい」
今までも、これからも。
「離れたくないです……っ」
ずっと。
「バイバイなんて、や……です……」
さよならをしたら、もう、きっとあなたに会えない気がした。
「…………」
唯先輩は、何も返してくれない。
「先、輩……」
でも、いい。
私は、もっともっとたくさん、先輩に返さなくちゃ。
「ごめんなさいっ……、わたし……っ」
「……ごめんね、あずにゃん」
言葉をさえぎるように、唯先輩は言った。
先輩の手が、彼女に回している私の両手に触れた気がした。
「ほんとは、わかってたんだ」
ぽつりと、小さな声で先輩は続ける。
「……ぇ?」
「あずにゃんが、ちゃんと私を好きでいてくれたこと」
気持ちは、ちゃんと伝わっていた。
なら、どうして。
「ずっと、私を大切にしてくれてたんだよね」
部屋には、唯先輩の声だけが響く。
この部屋だけ、外の世界から切り離されたような感覚だった。
ふたりだけの、世界。
「わかってたよ」
唯先輩となら、永遠に、この世界の中でもいいと思えた。
相変わらずこの世界は、風の音も、鳥のさえずりも、時計の秒針の音さえも聞こえない。
その中で、唯先輩の声だけが私の鼓膜を震わせる。
「あずにゃんが照れ屋さんなことも」
部活中に抱きつくのは、私との仲の良さをみんなにも見せつけたかったから。
私は恥ずかしくていつも、やめてください、と突き放していた。
「あずにゃんが、私のためを思ってくれてたことも」
ふたりで遊びに行こうと誘われた時も。
先輩は、今年受験なのに。私を気づかってくれている。すごく、うれしいかったけど。
邪魔はしたくない。きっと私がいたら、先輩は私に構ってくれる。重荷になってしまう。
先輩は、やさしすぎるから。
だったら、私が、初めから距離を置いておこう、と。
「でもね、つらかった」
そう、思ってた。
先輩の意見を聞かずに、自分で、勝手に。自分のことしか、考えてなくて。
「ホントは、私のこと好きじゃないんじゃないかなって」
だいすきだから。
大切にしたくて、彼女を一番に考えて、最善だと思ってとった行動が、逆に彼女を傷つけていた。
「ちっちゃな不安だったんだけどね、それがだんだん大きくなって、胸が押しつぶされそうだった」
そんなことも知らないで、私は、なんて自分勝手なことを。
先輩は、それ以上、なにも言わなかった。
「っ……、わたし、……ごめ、んなさ……っ。せっ、先輩の気持ちもっ……かんがえ、ないでっ……」
私より、先輩のほうがつらかった。
わかってるけど、あふれる涙を止められない。
「あずにゃん、泣かないで」
こんな時でも、なんでこんなに優しいんですか、唯先輩。
あなたのほうがつらかったでしょう。
「せっ、せんぱ、い……っぅ、すき……ですっ、すきです……っ」
「ありがとう、あずにゃん」
私は、先輩の背中を涙で濡らし続けた。
部屋には、しばらく私の嗚咽だけが響いていた。
……どれくらい、時間がたったのだろうか。私は落ち着きを取り戻していた。
「唯先輩」
やっぱり、私は先輩と終わりになんてしたくないです。
「キス、していいですか」
先輩が、その言葉にびくりとする。
少しの間沈黙が流れて、やがて先輩は小さく、こくりと頷いた。
「…………」
私が抱きしめていた力を緩めると、先輩は何も言わずにこちらに向き直ってくれた。
――先輩も泣いてたんですね……。
さっきされたように、今度は私が先輩の目元にキスを落とす。
「しょっぱいですね」
「……涙だもん」
「でも、すごくあったかいです」
「…………ん、ぅ」
言って、唇を重ねる。
さっきキスしたときよりも、そこは熱く感じられた。
軽く押しつけて、ゆっくりと離していく。
「……もう一度しても、いいですか」
「……う、ん………」
先輩の顔が真っ赤だったのは、窓から西日が差しこんでいるから、だけではないと思う。
きっと私も、真っ赤だ。
「先輩」
「……ん?」
「だいすきです」
その言葉に、小さく微笑んでくれる。
さらに赤く染まる先輩のやさしい顔に、からだの芯が、じんと熱くなった。
先輩を正面から抱きしめて、唇を合わせる。
舌で、さらりと先輩の唇をなでると、遠慮がちに小さく隙間を空けてくれる。それを押し広げて先輩の口内へ入っていく。
「……ん……、ちゅ……っ、ふっぁ」
ふたりの息が重なる。どちらのものかわからない唾液が、口の端からこぼれおちる。
もう、わからない。このままとけて、ひとつになってしまいたい。そんな幸福感が私を支配する。
もっと、先輩が欲しい。
「っ、……は、ぁ……」
先輩も、同じ気持ちでいてくれたら嬉しいんだけどな。
「……ぅ、……ひっ……く」
「え……!? ……ぁ、唯……先輩?」
突然、唯先輩の嗚咽が響く。
どうしよう、何かマズイことをしてしまったのだろうか。
原因はさっぱりわからない。
「……っ」
先輩が、私の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「……あ、の……」
先輩の抱きしめる力が更にきつくなる。
だけど私は、力を込めて抱き返すことができなかった。
力を込めたら、先輩が壊れてしまいそうで。
「うっ……、ぇ、……っ」
嗚咽に混じって、ごめんね、と聞こえた気がした。
「あずにゃん、……っ」
「…………はい」
「っ、ぁ、……あずにゃんがっ、すきっ……だよぉ……っ」
先輩は、私を抱きしめたまま、泣きじゃくったまま、それでもはっきりと、言ってくれた。
「唯……先輩」
きゅっと、先輩が抱きしめる腕に力を込めてくれる。
私に、もう離さないよ、って。全身で伝えてくれているように思えた。
あったかくて、うれしくて。
苦しいとか、きついとか、そんなのどうでもよくて。
「……せんぱい……」
何よりも。
私をすきだと言ってくれたことが嬉しくて。
「あずにゃん……っ、ごめんねっ……わたし、が、」
先輩は泣きながら。
「ひっ、ひどぃ……ことっ……!!」
……もう、いいですよ先輩。
「やっぱり、ね……っ、だめ……だよぉ……、っ……あずにゃんと、じゃなきゃっ……ぁ」
あずにゃん、ごめんね、と。
あずにゃん、だいすき、と。
「……先輩」
先輩は、泣きながら、泣きながら。
泣かないでください、そう言っても、涙は止まらずに。
言葉と想いも、一緒にあふれてくる。
全身で、「ごめんね」と「だいすき」と一緒に。
私はただ、唯先輩をだきとめる。
今度こそ、先輩を、ぎゅっと抱きしめる。
壊れてしまうんじゃないかと怖かったけれど。
きっと先輩も、そうしてほしいって思ってる、はず、だから。
今度こそは、しっかりと。
「先輩」
もう離さないよ、と。
「だいすきです」
なんだこれ^^
一応終わりでいいかなぁ。なんか最後うまくまとまんねぇなぁ、くそお。
ほんとはセクロスさせてもよかったんだけどなぁ、ボキャブラリがたりん・・・
保守、支援、みんなありがとう!!!!
元スレ
「私もあずにゃんのこと、好きだよ」
いつもの、柔らかい笑顔、なのに。
「でもね」
私の右手に、先輩の左手が添えられる。
その手は小さく震えていた。何かに脅えるように。
「せん、……ぱい?」
「ねぇあずにゃん、しようよ」
先輩の顔が近づいてくる。私は、そっと瞼を伏せた。
唇が触れ合う。熱い。柔らかい。気持ちいい。
「……ん、せんぱ……」
離して、また触れ合わせる。
触れるだけだったキスは、次第に深く、長くなっていく。
頭がじんとする。とろけていくような感覚。
82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 09:59:47.61 ID:UZXO7xnk0
「……ちゅ、んっ……っは」
「せ、んぱ……いっ、……どうし、……んぅっ」
もう、何も考えられなくなってくる。
先輩のこと以外。
「……は……っ……」
やっと唇を離してもらえた。
舌と舌とを細い唾液の橋がつなぐ。それは細く細くなっていき、名残惜しそうに、ぷつりと切れた。
唇の周りの唾液が外気に触れて冷たい。
もっと、もっと、先輩の熱が欲しいよ。
「……いいですよ、先輩。セックス、しましょうか」
肩で息をしている唯先輩。どことなく不安げだった表情が、少しだけ明るくなった気がした。
先輩は、甘い声で私の名前を呼びながら、嬉しそうにすり寄ってくる。
「あずにゃあん……」
「はい、唯先輩……」
唯先輩を、やさしくベッドに押し倒していく。
赤らんだ顔がいつもより余計に可愛く思える。
「なんで、死ぬか、セックスするかなんですか」
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 10:15:33.45 ID:UZXO7xnk0
私は唯先輩の顔のすぐ脇に両手をついて、覆いかぶさる。
私から、そして質問から逃がさないように。
「だって」
それが、当り前だといわんばかりに。
「そう言わないと、あずにゃん何もしてくれないでしょ?」
……え?
がつんと、頭を殴られたような気がした。
それだけの衝撃が私のなかを駆け巡っていった。
「どういう、ことですか……」
やっとそれだけ、声を絞り出せた。
「だって」
悲しげな、表情で。
「いつも、私からじゃん」
抱きつくときはもちろん、「好きだ」って気持ちを伝えた時も、初めて手をつないだときも、初めてキスをしたときも。
いつも、全部、唯先輩から。
「あずにゃん、ホントに私のこと好き?」
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 10:28:02.28 ID:UZXO7xnk0
そうか。そうだったんだ。
「好き……ですよ」
先輩は、にっこりと微笑んで。
「嘘だぁ」
先輩は、私の首に両手を回しながら言う。
「あずにゃんはいつもそう言ってくれるよね。私が『好き』って言ったら、『好き』ってちゃんと返してくれる」
それに、偽りはないんですよ……?
好きで、好きで、好きで、もうこれ以上ないってくらいに、あなたのことが好きです。
「でもね」
気がつけば、先輩の目は涙であふれていた。
「同情なんか、しなくていいんだよ? あずにゃん」
私、は――――。
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 10:43:33.68 ID:UZXO7xnk0
「ごめんね、さっき、嘘ついた」
――――私の気持ち、信じてくれてないんですか?
「信じて、なかったよ」
信じれなかったよ、と。先輩は、嗚咽まじりの声で、悲しそうにつぶやいた。
「唯……せんぱ……」
私は、なんてことをしていたのだろう。なにをしているんだろう。
先輩は、不安だったんだ。
「……あずにゃん、ごめんね。『死ぬかセックスするか』っていうのはちょっと言い過ぎたね」
いつも、先輩はどんな気持ちで接してくれていたのだろう。
先輩は私を好きでいてくれて、それを少しでも行動で伝えようとしてくれていたのに。
「私たち、もう終わりにしよっか」
87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 11:02:13.19 ID:UZXO7xnk0
その言葉は、私に重く、重くのしかかって。
「……やです」
「え? だって、あずにゃん私のこと好きじゃないでしょ? もう無理しないでいいんだよ」
きっと、さびしい思いをいっぱいさせてしまった。
私は、自分のことしか考えてなかったんだ。
すごく、くやしくなる。
「あ、でもね、さっきはちょっと嬉しかったよ」
まだ…………、まだ、やり直しはききますか。
今からでも遅くはないですか。
「あずにゃんから押し倒してくれたとき。えへへ、決心がちょっとにぶっちゃったよ」
最初から、これで最後にするつもりだったんですか。
「でも、もういいやぁ……」
そう言って、ふっと笑う。
そんな、こと、言わないで、ください。そんな、ふうに、笑わないで、ください。
90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 11:15:28.60 ID:UZXO7xnk0
「あずにゃん?」
苦しくて、でも唯先輩はもっともっと苦しかったんだ。
「なんで、泣いてるの?」
「……え」
真下にある唯先輩の顔に、ぽたりぽたりと、私の涙が落ちていく。
唯先輩のと私の。ふたりの涙が混ざりあって、悲しみの色をさらに濃くしていく。
「すみませ……っ、わた、しっ……」
「ううん……」
先輩は、ぐいと私の顔を引き寄せて、目元に口づけてくれた。
「しょっぱい」
至近距離で、先輩の甘いにおいがひろがって、目には唯先輩以外映らなくて。
「でも、あったかいね」
そう言って、先輩の唇が私のそれに軽く触れた。
先輩のほうが、あったかいです。
92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 11:34:51.38 ID:UZXO7xnk0
「ごめんね」
先輩は、今にもこぼれ落ちそうなくらい、目に涙をためていて。
「キス、しちゃって」
ぐっと肩を押されて、唯先輩の上からどけられる。
先輩は座りなおして、私の目を真っ直見て言った。
「……ぃ、え……」
私は先輩の目を見れなかった。
自分が、嫌になる。
否定の言葉でも、叫べばいいのに。言葉だけじゃ解決しないとわかりながらも。
「……もう、帰るよ」
バイバイ、あずにゃん、と。
昼飯。純愛ハッピーエンドにはしたいと思ってるよ!
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 13:55:00.45 ID:UZXO7xnk0
真っ暗な、闇の底へと突き落とされた気がした。
――瞬間、私は。
「……あずにゃん?」
「……ゃだ…………っ」
部屋を出て行こうとする先輩を、ぎゅっと抱きしめていた。
私より、ちょっとだけ背の高い先輩。
あったかくて、やさしくて。
「いかないで、くださぃ……っ」
涙が、あふれてくる。
私は、こんなに幸せなぬくもりを失いたくない。
すごく、すごく愛しくて、抱きしめる両腕に力を込めた。
私はやっぱり、こんなにも唯先輩が好きなんだ。
101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 14:01:46.29 ID:UZXO7xnk0
「すき、です。せんぱい」
今までも、これからも。
「離れたくないです……っ」
ずっと。
「バイバイなんて、や……です……」
さよならをしたら、もう、きっとあなたに会えない気がした。
「…………」
唯先輩は、何も返してくれない。
「先、輩……」
でも、いい。
私は、もっともっとたくさん、先輩に返さなくちゃ。
「ごめんなさいっ……、わたし……っ」
「……ごめんね、あずにゃん」
言葉をさえぎるように、唯先輩は言った。
先輩の手が、彼女に回している私の両手に触れた気がした。
102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 14:45:23.09 ID:UZXO7xnk0
「ほんとは、わかってたんだ」
ぽつりと、小さな声で先輩は続ける。
「……ぇ?」
「あずにゃんが、ちゃんと私を好きでいてくれたこと」
気持ちは、ちゃんと伝わっていた。
なら、どうして。
「ずっと、私を大切にしてくれてたんだよね」
部屋には、唯先輩の声だけが響く。
この部屋だけ、外の世界から切り離されたような感覚だった。
ふたりだけの、世界。
「わかってたよ」
唯先輩となら、永遠に、この世界の中でもいいと思えた。
相変わらずこの世界は、風の音も、鳥のさえずりも、時計の秒針の音さえも聞こえない。
その中で、唯先輩の声だけが私の鼓膜を震わせる。
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 15:00:52.31 ID:UZXO7xnk0
「あずにゃんが照れ屋さんなことも」
部活中に抱きつくのは、私との仲の良さをみんなにも見せつけたかったから。
私は恥ずかしくていつも、やめてください、と突き放していた。
「あずにゃんが、私のためを思ってくれてたことも」
ふたりで遊びに行こうと誘われた時も。
先輩は、今年受験なのに。私を気づかってくれている。すごく、うれしいかったけど。
邪魔はしたくない。きっと私がいたら、先輩は私に構ってくれる。重荷になってしまう。
先輩は、やさしすぎるから。
だったら、私が、初めから距離を置いておこう、と。
「でもね、つらかった」
そう、思ってた。
先輩の意見を聞かずに、自分で、勝手に。自分のことしか、考えてなくて。
「ホントは、私のこと好きじゃないんじゃないかなって」
だいすきだから。
大切にしたくて、彼女を一番に考えて、最善だと思ってとった行動が、逆に彼女を傷つけていた。
「ちっちゃな不安だったんだけどね、それがだんだん大きくなって、胸が押しつぶされそうだった」
そんなことも知らないで、私は、なんて自分勝手なことを。
先輩は、それ以上、なにも言わなかった。
106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 15:23:32.25 ID:UZXO7xnk0
「っ……、わたし、……ごめ、んなさ……っ。せっ、先輩の気持ちもっ……かんがえ、ないでっ……」
私より、先輩のほうがつらかった。
わかってるけど、あふれる涙を止められない。
「あずにゃん、泣かないで」
こんな時でも、なんでこんなに優しいんですか、唯先輩。
あなたのほうがつらかったでしょう。
「せっ、せんぱ、い……っぅ、すき……ですっ、すきです……っ」
「ありがとう、あずにゃん」
107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 15:35:11.53 ID:UZXO7xnk0
私は、先輩の背中を涙で濡らし続けた。
部屋には、しばらく私の嗚咽だけが響いていた。
……どれくらい、時間がたったのだろうか。私は落ち着きを取り戻していた。
「唯先輩」
やっぱり、私は先輩と終わりになんてしたくないです。
「キス、していいですか」
先輩が、その言葉にびくりとする。
少しの間沈黙が流れて、やがて先輩は小さく、こくりと頷いた。
「…………」
私が抱きしめていた力を緩めると、先輩は何も言わずにこちらに向き直ってくれた。
――先輩も泣いてたんですね……。
さっきされたように、今度は私が先輩の目元にキスを落とす。
「しょっぱいですね」
「……涙だもん」
108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 15:48:50.32 ID:UZXO7xnk0
「でも、すごくあったかいです」
「…………ん、ぅ」
言って、唇を重ねる。
さっきキスしたときよりも、そこは熱く感じられた。
軽く押しつけて、ゆっくりと離していく。
「……もう一度しても、いいですか」
「……う、ん………」
先輩の顔が真っ赤だったのは、窓から西日が差しこんでいるから、だけではないと思う。
きっと私も、真っ赤だ。
「先輩」
「……ん?」
「だいすきです」
その言葉に、小さく微笑んでくれる。
さらに赤く染まる先輩のやさしい顔に、からだの芯が、じんと熱くなった。
110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 16:15:04.84 ID:UZXO7xnk0
先輩を正面から抱きしめて、唇を合わせる。
舌で、さらりと先輩の唇をなでると、遠慮がちに小さく隙間を空けてくれる。それを押し広げて先輩の口内へ入っていく。
「……ん……、ちゅ……っ、ふっぁ」
ふたりの息が重なる。どちらのものかわからない唾液が、口の端からこぼれおちる。
もう、わからない。このままとけて、ひとつになってしまいたい。そんな幸福感が私を支配する。
もっと、先輩が欲しい。
「っ、……は、ぁ……」
先輩も、同じ気持ちでいてくれたら嬉しいんだけどな。
「……ぅ、……ひっ……く」
「え……!? ……ぁ、唯……先輩?」
突然、唯先輩の嗚咽が響く。
どうしよう、何かマズイことをしてしまったのだろうか。
原因はさっぱりわからない。
「……っ」
先輩が、私の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめてくれた。
111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/06(木) 16:29:37.86 ID:UZXO7xnk0
「……あ、の……」
先輩の抱きしめる力が更にきつくなる。
だけど私は、力を込めて抱き返すことができなかった。
力を込めたら、先輩が壊れてしまいそうで。
「うっ……、ぇ、……っ」
嗚咽に混じって、ごめんね、と聞こえた気がした。
「あずにゃん、……っ」
「…………はい」
「っ、ぁ、……あずにゃんがっ、すきっ……だよぉ……っ」
先輩は、私を抱きしめたまま、泣きじゃくったまま、それでもはっきりと、言ってくれた。
127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 00:10:47.02 ID:JGfXmOMy0
「唯……先輩」
きゅっと、先輩が抱きしめる腕に力を込めてくれる。
私に、もう離さないよ、って。全身で伝えてくれているように思えた。
あったかくて、うれしくて。
苦しいとか、きついとか、そんなのどうでもよくて。
「……せんぱい……」
何よりも。
私をすきだと言ってくれたことが嬉しくて。
「あずにゃん……っ、ごめんねっ……わたし、が、」
先輩は泣きながら。
「ひっ、ひどぃ……ことっ……!!」
……もう、いいですよ先輩。
129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 00:48:06.72 ID:JGfXmOMy0
「やっぱり、ね……っ、だめ……だよぉ……、っ……あずにゃんと、じゃなきゃっ……ぁ」
あずにゃん、ごめんね、と。
あずにゃん、だいすき、と。
「……先輩」
先輩は、泣きながら、泣きながら。
泣かないでください、そう言っても、涙は止まらずに。
言葉と想いも、一緒にあふれてくる。
全身で、「ごめんね」と「だいすき」と一緒に。
私はただ、唯先輩をだきとめる。
今度こそ、先輩を、ぎゅっと抱きしめる。
壊れてしまうんじゃないかと怖かったけれど。
きっと先輩も、そうしてほしいって思ってる、はず、だから。
今度こそは、しっかりと。
「先輩」
もう離さないよ、と。
「だいすきです」
130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/01/07(金) 00:51:27.25 ID:JGfXmOMy0
なんだこれ^^
一応終わりでいいかなぁ。なんか最後うまくまとまんねぇなぁ、くそお。
ほんとはセクロスさせてもよかったんだけどなぁ、ボキャブラリがたりん・・・
保守、支援、みんなありがとう!!!!
唯「死ぬのと私とセックスするのとどっちがいい?」