関連
絢瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」ver2.0【前編】
SS速報VIP:絢瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」ver2.0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427824056/1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 02:47:36.28 ID:FV/EMCk60
絢瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」シリーズを書いた者です。
綺羅ツバサ「本当の犯人は・・・誰なの!?」http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427645652/
or
絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」ver2.0http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427639622/
の続きになります。
結末が気に入らなかったんで三万字程修正しました。
前回読んでくれた方も、読んでくれるとうれしいです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427824056
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 03:00:37.90 ID:FV/EMCk60
前回のラブライブ!!
なんやかんやあって無事にラブライブを優勝した私たち!!
ラブライブ優勝を祝してお祝い旅行をを企画した!!
旅行先は真姫ちゃんの別荘である無人島!!なんでもこの島は色々いわくつきなんだとか!
それでも関係ないよ!私たちは楽しむんだ!
船では新しい出会いが!
穂乃果「雪穂!?どうしてここに!?」
絵里「亜里沙!?あなたもどうして!?」
雪穂「お姉ちゃんだけずるいんだよ!!私も行くもん!」
亜里沙「本当に、帰ってきたんだ・・・。
疑っていた訳では無いけど、この目で見るとやっぱりすごい・・・。」
ことり「穂乃果ちゃん、後で大事な話があるんだけど・・・。」
穂乃果「・・・えっ何?ことりちゃん・・・?」
真姫「にこちゃんそれテニスボール?珍しい色しているわね?」
にこ「へっへーんにこ色にしたのよ!アイドルたるもの身の回りの物も揃えないとね。
後でやるわよ!にこちゃん!」
こうしてお祝い旅行は11人で始まった!
○月×日 ~音野木坂スクールアイドル連続殺人事件から10年後~
沖縄 真姫家別荘
その島は、無人な島にしては少しおかしかった。
沖縄から船で数十キロの所にあるその島は、
無人なはずなのに森も無く、雑草もなく、かと言って整備された道も無く、建物もない。
この島はそれなりに広いはずなのだが遮蔽物が全く無い。
なので端から見たら反対側の端まで見える気がした。
ただ、そんな何も無い島に一つだけ、この日本ではめったに見る事の出来ないものがあった。
巨大なクレーターである。
十年前の爆発により、このクレーターが出来てからこの島は日本中の関心を集めた。
当時はこのクレーターの原因を求めて様々な学者が無人島に訪れていたものだ。
あれから十年。
今ではその感心もすっかり薄れ、ここは無人の島に戻ってしまった。
そんな無人の島に、クレーターの中心部に、一人の女性がいた。
真姫母「・・・真姫、10年も過ぎちゃったけど・・・やっとここに来れたわ。
ごめんね、遅くなっちゃって。」
真姫母である。
十年前の美貌は見る影も無く、顔はしわ塗れで、髪がボサボサだった。
実年齢よりさらに十年老けて見えるその顔は、苦労した証なのだろうか。
あの日、西木野家が所有する無人島が爆発してから。
あの日、自分の娘を失った日から。
真姫母はあの日の事を鮮明に思い出せる。
真姫たちが合宿に入ってから3日目の朝だろうか。
金策を考えていて、ろくな考えも出ないまま、いつの間にか寝てしまった真姫母に、突然警察から電話がかかってきた。
警察と聞いて真姫母に思い浮かんだのは例の訴訟事件についてだったが用件は違う事だった。
真姫母「えっ・・・?」
その言葉を聞いて、真姫母は思わず受話器を二度見してしまった。
この警察の人は今なんて言ったのか。
だからもう一度聞いた。
すると同じ答えが返ってきた。
西木野家が沖縄に所有している無人島が爆発したと。
最初は何かの悪質なイタズラかと思った。
誰がそんな事を信じられるだろうか。
しかし、テレビをつけても、その日の新聞を見ても、
ニュースはその事でいっぱいだった。
真姫母は当然その無人島には何回も行った事がある。
その島は屋敷と森しかない。
しかし、テレビに映っている島の様子は、屋敷はおろか、森はおろか、文字通り何も無かった。
ホール状のケーキの上の飾りを取ったらこんな感じなのかもしれない。
それくらい、真っ白だった。
そして、行方不明者の中に自分の娘の名前があったのを見つけた時、ようやく真姫母は自分の娘が死んだ事を理解し、涙を流したのだった。
真姫母「ホント、正直今でも信じられないわ、真姫。
あなたが死んだなんて。」
真姫母はクレーターの中心に花束を置いた。
真姫母「・・・ほんとに何もかも吹き飛んでしまったのね。」
真姫母がこの島に来たのはこれが初めてだ。
爆発してからの十年は早かった。
他のメンバーの保護者からは何回も問い詰められ、記者からは毎日のように追いかけられた。
泣きたいのは娘を亡くした真姫母も同じなのに、まるで真姫母がメンバーを殺したかのような扱いを受けた。
それもこれもあの流出がわるいのだ。
最初は不発弾による不幸な事故として処理される予定で、真姫母は一人娘を亡くした不幸な母だと世間から認識されるはずだった。
しかし、事件から数年して、掲示板に流出したある手記のおかげで事件は一変する。
その手記の書き手は絢瀬亜里沙
真姫の友達の妹だと言う事しか知らないが、内容は、自分は碑文を解き、その結果命を狙われている事を訴えている悲痛な文書だった。
この流出により、
マスコミは真姫母の身内に強引な取材に行い、碑文が西木野家の祖父が隠した財産の隠し場所を示している事を明らかにすると、 あの島では財産を巡る連続殺人が行われていたのではないか?と、世間を騒がせる事になる。
真相は爆発事故により全て有耶無耶になってしまった事もあって、ネットや週刊誌には、様々な根拠の無い憶測を面白おかしく書かれる事になった。
これによりこの『事故』は音野木坂スクールアイドル殺人『事件』と世間で言われるようになる。
その後、メンバー全員の家庭の事情をすっぱぬかれ、全員の家庭に何かしらの金銭の、火急を要するトラブルに巻き込まれている事が判明してしまった。
その結果、推理ゲームの様にメンバーの誰々が犯人、と根拠のない考えがネット、週刊誌で書かれるようになった。
それによりメンバーの親族は心を病むようになる。
真姫母の場合は例の病院の訴訟の件もある。
西木野総合病院を救うにはお金が沢山必要だったがそのお金は用意できなかった。
結局裁判では敗訴し、手術を行った真姫母は業務上過失致死で職を失ってしまった。
その後も今度はメンバーの遺族に危機管理の問題で訴えられてしまった。
もちろん親族も、真姫母を訴えたところでどうにもならないのは分かっている。
真姫母も自分の娘を亡くしているのだ。
しかし、親族もこの悲しみと怒りを誰にぶつけていいのか分からない。
結局無罪で済むことができたが、その後のゴタゴタもあって、つい先日やっと真姫母は十年ぶりに落ち着く事ができた。
真姫母「まぁ有罪でも良かったんだけどね・・・、もう今更何も残っていないんだし・・・。」
職と娘を失って西木野家はぐちゃぐちゃになった。
夫は酒びたりになり、お金を湯水のように使ってしまい、借金を残してどこぞの女の所に行ってしまった。
真姫母もこの十年の無茶がたたり、余命半年を宣告されてしまっていた。
医者の不養生とはこの事だ。
真姫母「ねぇ・・・真姫、あの日、何があったの?なんであなた達はいなくなってしまったの?」
警察によるならば、爆発の原因は戦前に残っていた不発弾による暴発だ。
しかし小さい島とはいえ、それを全壊させるような爆発・・・一体地下にどれほどの爆弾が眠っていたのか。そして何故この島にあったのか。
この島を買い、別荘を建てた真姫の祖父からそんな事は聞いた事がない。
警察による捜査でも何も分からずに終わってしまった。
所謂、迷宮入りという訳だ。
まさかそんな言葉を小説以外で聞くとは思わなかった。
真姫母「でも、そんな事はもういいのよね。どうだっていいわ。真姫、ゴメンね。私もう疲れたの。
真姫の所に行っても・・・いいわよね。」
真姫母がこの島にきたのは墓参りに来ただけでは無かった。
真姫母はポケットからケースを出す。
そして、ケースからカプセルを手のひらに出した。
・・・そのカプセルがどの用途で使われるのか、それは医者だった真姫母が一番わかっていた。
この島に行けば何か分かると思ったけど、行くのが遅かったみたい・・・。
ううん、例え速く来たとしても、警察でも分からなかった事を、私が分かるとは思えない。
真姫母「・・・真姫、今から行くわね。・・・ングッ!」
真姫母はカプセルを飲んで水を飲むと、静かに目を閉じた。
その顔は安らかだった。
船は順調に島に向けて進んでいく。
太陽はこれでもかといわんばかりに照らしている。
このピーカンな天気が次の日には土砂崩れの様に崩れるとは誰が想像できるのだろうか?
完全に、○月×日だった。
亜里沙(ピンクの女に行ってこいと言われて目の前が眩しくなり、気づいたら船の上にいて、お姉ちゃんに説教されていた。 )
これからあの島で私達はこのメンバーの誰かに殺されるのだ。
私の目的はこれから起きる殺人を止める事、また止められなくても犯人を見つける事だ。
その為に亜里沙は再び『ここ』に戻ってきた。
今度は絶対に犯人を見つけてやる。
証拠を突きつけて!
絵里「もう、本当に解ったの!?亜里沙!??」
亜里沙「分かったてば!悪かったよ、お姉ちゃん。」
希「もうその辺でええやん絵里ち。亜里沙ちゃんも反省しているんやから。」
絵里「希ぃ・・・、まぁ真姫も良いって言ってるからこの辺にしましょうか。」
真姫「そうよエリー、いいじゃない二人くらい。それに今から東京まで帰れって言うのはさすがに酷よぉ。」
にこ「真姫ちゃん先輩ぶってカワイイ!」
真姫「もう!にこちゃん!」
穂乃果「雪穂も反省しなさいよ!」
雪穂「はーいわかりましたよ~~~~。」
海未「・・・ようこそμ’sの合宿へ。歓迎しますよ。
お二人とも。」
ことり「全くの部外者って訳でもないしね!良いんじゃないかな!」
亜里沙「ありがとうございます!」
この和気藹々している中に私達を皆殺しにした犯人がいる。
誰かは思い出せないが、それは確かだ。
亜里沙が一周目から引き継いでいる記憶は事件と関係の無い合宿の一日目と自分が殺された時の記憶だけ。
それ以降は魔女によってきれいさっぱり忘れさせられていた。
亜里沙「そういえば、あの島には碑文っていう物があるってお姉ちゃんから聞いたんですけど本当なんですか?」
絵里「え?そんな事話したかしら・・・?」
真姫「あら、よく知っているわね。そうね、確かにあるわよ。おじい様が残した遺言みたいな物なのかしら。
その暗号を解いた人には黄金が見つかると言われているわね。」
ことり「何それ?興味あるよ!」
海未「黄金・・・それは具体的にはなんでしょうか?まさか、本当に黄金なんでしょうか?」
真姫「さぁ・・・?でもこの時代に黄金って言われてもいまいちピンと来ないわね。
おじい様は戦前は貧乏だったけれど、戦後沖縄から帰ってきた時にはすでに大量のお金を持っていたとおばあ様から聞いたわ。
一体どこから持ってきたのかしら。」
希「なぁ?それって沖縄で黄金を見つけたって事じゃないん?」
真姫「沖縄で?でも沖縄は戦地だったのよ?空爆とかで何もかも壊れちゃったんじゃない?」
希「被害が無い所ならどうや?例えば土の中とか。」
花陽「土の中?埋められていたって言うこと?」
凛「埋蔵金を想像するにゃ~。」
穂乃果「ははは!そうだね!」
希「実はその通りなんやよ。聞いたことない?沖縄って地下鉄がない事。」
ことり「え!?そうなの!?」
真姫「聞いたことあるわね。
確か地下に不発弾が眠っている可能性があるからおいそれと掘れないんだっけ?」
沖縄は太平洋戦争末期の激戦地である事で有名だ。
1972年から不発弾の処理が開始されているが2008年までで百三十七万発分が発見され、処理されている。
これに加え、まだ二千五百万トンもの不発弾が沖縄の地下に残っていると言われている。
穂乃果「へぇ~。でもそれと埋蔵金ってどう関係があるの?」
希「いやね?表向きは不発弾があるからって理由で地下鉄は作れないってなっているけど、
本当は琉球王朝の財宝が埋まっていて、それを政府が発見されないようにって言われているのよ。」
凛「えぇ!?」
真姫「ただの都市伝説でしょ・・・?」
花陽「それってどんな都市伝説なんですか?」
希「沖縄には地下鉄が一個も無いんや。
理由はさっき話した通り、不発弾が埋まっているからって言うのが表向きの理由なんだけど、 本当は琉球王朝の財宝が那覇市に埋められているから政府がそれを発見されるのを防ぐのが理由らしいで。」
海未「私も聞いた事があります。
王家の末裔の人たちが財宝の隠されている地図を発見したそうですが自分たちでは掘れないために、 県に依頼して財宝を見つけてもらう代わりに利益のいくつかを県に譲るって密約を結んだという話ですよね?」
絵里「へぇ~。それっぽい話よね。」
亜里沙「沖縄って何もない所に地下駐車場がとても多いらしいんですが、それもこの都市伝説の信憑性を補強していますよね。」
雪穂「何で?」
亜里沙「雪穂は何もない所に駐車場を作る?作るならデパートの地下とか、駅の近くに作らない?」
雪穂「確かにそうだね・・・。別の目的で掘られたって事なのかな。」
穂乃果「つまり、企業や県が財宝を探して掘ったはいいけれど、何も見つからないから仕方なく地下駐車場にしたって事だね?」
海未「その通りです。ま、都市伝説なんですけどね。」
凛「つまり、希ちゃんはこの財宝の一部を真姫ちゃんのお爺ちゃんが発見したって言いたい訳にゃ?」
希「そや。沖縄のお宝って言えばそれが思い浮かぶなぁ。」
雪穂「それってどれくらいのお宝が眠っているんだろうね!」
亜里沙「琉球王国はアジア各国から様々な品物が入ってきたと言われているんだって。
繁栄ぶりを記した万国津梁の鐘という書物があるんだけど、そこには珍しい宝が那覇市のあちこちにある事が書かれていたそうだよ。」
ことり「へぇ~、それならおじい様がその一部を発見してもおかしくはなさそうだね。」
例えば、首里城では中国の陶磁器の他に世界で四つしか確認されていない水差しや杯が発見されている。
他にも絵画も発見され、それは十二億円で落札されたそうだ。
そのお宝がまだ沖縄の那覇市にそこかしこに埋まっていると言われている。
凛「じゃあその中に黄金もあるってことなのかにゃ?」
絵里「戦後は普通貧乏になるものだけど、真姫ちゃんのお爺さんはお金持ちになって帰ってきたんでしょ?ならその可能性もあるわよね。」
真姫「確かにそうかも。
屋敷に着いたら碑文もあるから生で見たらいいと思うわ。
あっ、そう言っている間に見えてきたわよ。」
ことり「うわぁ、すっごいねえ~。」
にこ「すごい大きさね・・・。羨ましい。」
船からは真姫の別荘が見えていた。
『最初』に見たときと全く同じ・・・。
穂乃果「楽しみだねぇ~亜里沙ちゃん!・・・亜里沙ちゃん?」
穂乃果が亜里沙を見ると、笑みを浮かべていた。
笑みは笑みでも、まるで待ち構えていた獲物が目の前に現れた時の笑み。
亜里沙「はい・・・。とっっっても楽しみですよ。穂乃果さん。」
船はもうじき島に着く。
今、たった一人の孤独な戦いが始まろうとしていた。
西木野家別荘 22:00
雪穂「にこさんごはん美味しかったです!」
穂乃果「前も思ったけどにこちゃん本当に料理うまいね!! 」
真姫「そうね!どこかで習ったの?」
にこ「別にこれくらい毎日作っていればできるわよ。
あんた達もアイドルである前に女なんだからこれくらい・・・。」
ことり「えぇ!?にこちゃん毎日作ってるの!?すごい!!」
海未「それはすごいですね。私も料理は苦手で。」
雪穂「私もあれほど上手に作れたらなぁ~。
あ、そういえば、お姉ちゃん!さっきことりさんと二人で何を話していたの?」
ことり「っえ、ええっとぉ・・・。」
穂乃果「その・・・ね、いや、なんでもないんだよなんでも!」
ことり「まだ秘密!明日発表するね!」
絵里「なんで顔赤いの二人とも。」
海未「・・・?」
にこ「ま、まぁまぁ、この話はいいじゃないの。
ほら、でかい肖像画ね!」
メンバーの目の前に肖像画と例の碑文が彫ってある石碑が現れる。
碑文の内容も一周目と同じだ。
真姫「あれは船の上で話したおじい様の肖像画ね、んで、下に書いてあるのはおじい様の碑文よ。」
希「これがあの碑文かぁ~この石だけでも高そうやなぁ。」
花陽「すごいです・・・。」
凛「ひんやりしてるにゃ。」
亜里沙「・・・。」
亜里沙にとっては二度目となる碑文。
前回もここで碑文について話し合ったが結局解く事は出来なかった。
亜里沙(今回は必ず解いてみせる・・・!)
凛「これってさ、解いたらもらえるって書いてあるけど部外者の私達でももらえるのかにゃ?」
にこ「っ!?」
希「・・・。」
凛のふとした発言に場は一瞬騒然となる。
絵里「ど、どうかしらねー?でも元は真姫の家の財産な訳だから無理じゃないかしら?」
真姫「ま、まあね、でもそうね。
見つけた人には一割くらいはあげてもバチは当たらないんじゃないかしら?ハハハッ。」
希「いや、うちはそのまんまの意味やと思うで。
見つけた人に全部あげるんやと思う。」
真姫「!?っ・・・何故そう思うの?希?」
希「簡単な話や。
碑文にそう書いてあるからやで。」
確かに碑文には見つけたものに授けると書いてある。
希「そもそも真姫ちゃん家のおじい様は何で遺産を隠したんやろうな?しかも莫大な遺産やで?普通なら家族に何も無く与えるのが普通と違う?」
亜里沙「確かにそうですね・・・。
遺産なんて本人の死後、一番デリケートな問題です。
家族同士ですらいざこざが多いと聞きますし・・・。」
希「そうやろ?こんな見つけた者に・・・なんて文章を残したらそれこそ西木野家が遺産を相続するのにノイズにならへんか?」
碑文の一部に書いてある、『解いた者に授ける』は西木野家が遺産を受け取るのを危ぶむ意味しか持たないという事だ。
海未「そうですね・・・。遺産とは家族に遺す物です。
それを隠したという事は考えられるのは・・・。」
花陽「・・・。」
ことり「・・・。」
真姫のおじい様と西木野家は仲が良くなかった。
それは今この場にいる全員が想像できた。
真姫「ちょ、ちょっと待ってよ!別にそれだけで仲が悪いって考えるのは総計よ!もしかしたら面白半分で・・・。」
希「面白半分で隠すような額やないと思うで?何がどれほどあるのかは知らんけどな?」
パキンっ!世界が割れるような音と共に、亜里沙を除いたメンバーが止まった。
いや、静止したと言った方が良いかもしれない。
黒い女「何故隠した・・・か。
どうやら新たな謎が出てきたけど大丈夫なのかしら?亜里沙。」
黒い女が碑石に座りながら紅茶を飲んでいた。
亜里沙「何の様よ?黒い神様。」
黒い女「正直待ちくたびれたのよ。この後続くのは前回もあった碑文に関する考察よ。
内容も全く同じだから早送りさせてもらうわ。」
亜里沙「勝手な事をしないでくれませんか?時間を勝手に飛ばされちゃ考える時間も無いですよ。」
黒い女「だから、その分あなたに知識を与えるわ。」
亜里沙「知識?何ですか?それは。」
黒い女「そう、さすがに前回のあなたの記憶だけじゃ同じ結果になると思ったのよ。
だから、碑文を解くヒントを与えようと思ってね。」
亜里沙「それはありがとうございます。
でもヒントをくれるっていうからにはもう解いたんですか?」
黒い女「ほぼ、ね。最後がちょいと怪しいけれど、それも現地に行けば解ると思うわ。」
亜里沙「・・・。」
黒い女「ま、そう落ち込む事も無いわよ。
今思えばこれはここにいるメンバーの中では真姫しか解けないかもしれないわ。
真姫は偶然碑文のヒントになるきっかけを思い出したからこそ解く事が出来た。
つまり亜里沙にもそのきっかけを見せてあげようと思ってね。」
亜里沙「・・・。」
現状、亜里沙はこの碑文はまだ何も解けていない。
これから事件が起きると魔女から予告されている。
その事件を解くためにも今解ける謎は出来る限り早く解いておきたい。
亜里沙の反応を見てか、ベルンは機嫌をよくしたようで、
黒い女「さすがに碑文を解いた時の所は見せられないけどね。じゃ、始めましょうか、ん。」
黒い女は手を出す。
亜里沙「・・・?なんですかその手は。」
黒い女「この手に触りなさい、それで記憶は継承される。」
亜里沙「は、はぁ・・・。」
亜里沙は恐る恐る手を握る。すると・・・・、
亜里沙「あっ!?あああああああああああああ!!!!!」
亜里沙の頭に真姫を主観とした映像が流れてくる。
見たことも無い映像、知識、思い出。
それらが無理やり詰め込まれていくような、そんな感覚。
亜里沙は初めて知識を無理やり詰め込まれる感覚を知った。
黒い女「気分はどうよ?」
亜里沙「はぁ・・・はあ・・・、頭がシェイクされているようよ・・・。」
黒い女「それはよかった、で、どう?頭の方は。」
亜里沙「確かに・・・私が見たことの無い記憶があります。
すごい違和感ですよ、私の頭じゃないみたい。」
黒い女「まぁその辺は慣れるしか無いわね、じゃあいくわよ。」
そういうと、黒い女は指を鳴らす。
すると目の前に空間ができた。
そこに映っているのはメンバーと碑文。
どうやら碑文について話し合っている所らしい。
黒い女「まずは前回真姫が黄金へとたどり着いた事柄をまとめるわね。」
※ここからは絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」ver2と見比べながらやると分かりやすいかもです。
>真姫「火払いの印・・・を志す・・・王・・・火・・・そういえば昔おじいちゃんに・・・。」
それは真姫がまだ子供の頃、祖父に祭りに連れて行ってもらった時の事・・・。
ある演目をやっていて、それでその時に私は指を指して聞いたんだ・・・『あの形はなんだって・・・』
あの頃は幸せだったなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの形・・・形・・・え・・・?」
真姫は眠気がぶっ飛ぶほど覚醒する。火払いの印ってもしかして・・・。
亜里沙の前に空間が裂け、そこに映像が映る。
亜里沙「これは確か碑文を解く寸前に真姫さんが思い出していた事ですよね?」
黒い女「そうね。真姫はここから答えに至った。
つまりこの『形』から連想できるのが火払いの印につながるって事なのよ。」
亜里沙「そしてそれは・・・祭りに関係しているって事ですか・・・?」
黒い女「そうね。そしてその印は祭りの中のある演目の最中にあった。」
亜里沙「でも結局その祭りの『演目』が解らないと話にならないですね。」
黒い女「あら、そこで思考停止?祭りの演目は確かに地域によって色々あるけれど、それが形ならば話は別よ。
そして、その形とは、火払いの印。つまり火を払う、防火の印って事じゃないかしら?」
亜里沙「防火・・・!まさか!!!」
黒い女「あら、もう分かったのかしら?なら、もう助言はいらないわよね?」
亜里沙「ちょっと待ってください!最初の文が解ったとしても・・・『川』の所も・・・。」
そういうと、黒い女はめんどくさそうに、指を鳴らした。すると、また空間に真姫が現れた。
>真姫「にこちゃんが言っていた・・・船が旅をするって・・・下る・・・上がる・・・あっ・・・。」
あった!!!
真姫「国・・・あった!村も!これも!これも!!これなんだ!!!」
真姫の頭の中でピースが組みあがっていく。黄金の扉を開けるためのピースが。
真姫「鍵も解った!欠片も分かった!!これをこうして・・・できた・・・五文字!!」
>海未「いいえ、何かヒントになるかもしれません。川から連想できる物、それくらいの抽象的なイメージの方が発想が柔軟になっていいと思います。」
黒い女「真姫はこれらをヒントにして川にたどり着いたわ。」
亜里沙「つまり、実際の川じゃないって事ですよね?」
黒い女「そうよ。そして、この『川』の意味が解れば真姫は欠片までをあっという間に解いている。
つまり、『火払いの印を志す王』と『川』の意味が解れば碑文にあった五文字まで簡単に解けるってわけよ。」
亜里沙「・・・。」
黒い女「・・・もう少しだけヒントを上げましょうか。にこは実にいい事を真姫に言ったわ。
にこがいなければ真姫は黄金にたどり着かなかったでしょうね。
>にこ「ほら、碑文?だっけ?を見てみると使いが王から命令を受けて何かを届けているように見えない?
それで川を下っている。ってことは下る乗り物が必要じゃないの?」
絵里「下る乗り物・・・」
真姫「下る・・・下り・・・下り・・・?乗り物・・・上がり・・・っ上がったり下りたりするもの・・・川・・・。」
亜里沙「・・・。」
黒い女「あら、もう何かをつかんだ感じかしら?」
亜里沙「そうですね・・・何となくつかんだような気がします。」
黒い女「さ、ヒントはこれくらいでいいかしらね。」
亜里沙「えぇ・・・後は書庫か何かがあれば・・・多分。」
黒い女「そう。書庫はこの別荘にあるわ。頑張ってね。」
亜里沙「ありがとうございます。頑張ります。」
黒い女「助けるのはここまでよ。あなたが真実にたどり着ける事を、祈っているわ。」
バキンッ!!!
その瞬間、再び世界が割れる音を発し、空気が動き始める。
真姫「大分話し込んじゃったわね、今日はもう終わりにしましょ。」
海未「そうですね。明日もありますし、その時にでもこの話をしましょうか。」
雪穂「そうですね。もう休みましょう。」
ことり「じゃ、お休み~。」
「「「お休み~。」」」
ことり「海未ちゃん、ちょっと話があるんだけど~。」
海未「ことり・・・?わかりました、私の部屋で話しましょうか。」
凛「もし黄金が見つかったら~凛は~。」
花陽「凛ちゃん気が早いよ!」
希「えりち、行こっか!」
絵里「そうね。お休み。」
メンバーは自分の部屋に帰って行った。
穂乃果「うーん!うーん!」
・・・穂乃果以外は。
亜里沙「・・・穂乃果さん、戻らないんですか?」
穂乃果「うん!何だか寝付けなくてさ!」
亜里沙「穂乃果さん、これから碑文を解こうと思うんですが、一緒にどうですか?」
書庫
穂乃果「でもビックリしたよ~。亜里沙ちゃんの頭が良いことはさっき知ったけれど、まさか碑文の一部分が解った、だなんて~。」
亜里沙「解ったかもしれない、ですよ穂乃果さん。」
穂乃果「それでもすごいよ!じゃあ聞かせてくれないかな?」
亜里沙はうなずくとある本を取った。
穂乃果「その本は何?」
亜里沙「これは、」
亜里沙「沖縄の歴史書、です。」
亜里沙「じゃあ説明していきますね、まずは最初の文。」
『火払いの印を志す王より命を承りし使い、川を三つ下ったその先に、二つの国有り。』
亜里沙「まず火払いの印から。
これは言い直すと防火、つまり防火の印、ということなんです。」
穂乃果「防火の印?火の用心とか?」
亜里沙「その通りです。穂乃果さん、このマーク、見覚えありません?」
亜里沙はある形を書いた。
※参考画像http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Tomoe.jpg
穂乃果「うーん、あっ!あるある。祭りとかであるよ!太鼓とか、はっぴとかについているやつだよね!」
亜里沙「その通りです。
この様な模様を『巴』と言います。」
『巴』とは勾玉のような形をした日本の伝統的な模様の一つだ。
この模様の由来は様々あり、弓の鞆絵である説、勾玉を図案化した説などがある。
陰陽道や風水などにも使われている所を見たことがあるだろう。
これは勾玉には霊的パワーが宿っているので それにあやかろうと、この模様に影響を受けた国も沢山あり、日本では家紋としても使われている。
そして、この巴という模様は平安時代に防災、火災避けとしても使われていたと記録に残っている。
穂乃香「へぇ~!じゃあ火払いの印ってこれの事なんだ!」
亜里沙「・・・多分ですけどね。
この『巴』という字に後は海未さんが言っていたように、『志す』を足すと・・・。」
穂乃果「巴志・・・?どういう意味?」
亜里沙は沖縄の歴史書を広げ始めた。
亜里沙「人物名ですよ穂乃果さん、ここを見てください。『尚巴志王』(しょうはしおう)とあります」
穂乃果「・・・!!すごいよ亜里沙ちゃん!よく見ると志すの後の『王』って字もついてるし!よく知っているね!でもこの人って何をした人なの?」
亜里沙「簡単に言うと、琉球王国の王だった人です。
『火払いの印を志す王』は多分これの事ですよ。」
穂乃果「すごいね!さっきから同じ言葉しか言えていないけど!よく解ったね!」
亜里沙(本当は真姫さんと黒い魔女さんのおかげなんですけどね・・・。)
亜里沙はこうして簡単に解いている。
しかし、ここにたどり着くには真姫が諦めずに必死に解いたからなのだ。
諦めないという絶対の意志は奇跡を与える。
その真姫を覗いたからこそ、同じ所に立てている。
穂乃果「じゃあこの川っていうのは?亜里沙ちゃんは解いたの?」
亜里沙「・・・多分ですけどね。」
穂乃果「教えてよ!もったいぶらずに!」
亜里沙「まず言うことは川ではないということです。」
穂乃果「さっき海未ちゃんが言っていたね!川からイメージできる事をって!」
亜里沙「そうです。
それは、上がったり、下りたりできるものです。
川じゃなくて、流れるものを考えてください。」
穂乃果「水以外が流れる何か・・・?流れる物・・・。物・・・?たとえば・・・電流とか・・・。」
亜里沙「そうです。発想はあっています。」
穂乃果「物流とか・・・?鉄道とかかな?上がったり下がったりできるし。」
亜里沙「大変惜しいです。さっき物流と言いましたが、物じゃないんです。」
穂乃果「物じゃない・・・?じゃあ人って事かな・・・?人が上がったり下がったり・・・。」
亜里沙「人であっています。
ですが、そのまんまの意味ではありませんよ。」
穂乃果「人であってるけど、物体として上下するものじゃないんだよね・・・?
でも上がったり下ったり・・・。っ!!あっ!!」
亜里沙「分かりましたか?」
穂乃果「わかった!!!位!!階級だね!?」
亜里沙「正解です、穂乃香さん。」
穂乃果「じゃあこの川を三つ下った・・・ていうのは、階級を三つ下げたって事なんだね!」
亜里沙「イエス。
私も事前に解いたのはここまでです。
ここから本を見ながらと行きましょう。
・・・あった。これかな?」
亜里沙は沖縄の歴史書物を開いた。
穂乃果「これは・・・?」
亜里沙「これは琉球王府行政機構図。つまり役職ですよ。」
※参考HPhttp://ryukyux.files.wordpress.com/2012/11/e79089e79083e78e8be5ba9ce6a99fe6a78be59bb3.jpg?w=645
穂乃果「いっぱいあるね!えっとまずは尚巴志王の位である『王』から階級を三つさげると・・・表十五人っていう役職にたどりつくね!」
亜里沙「川を下った先には二つの国・・・。『物奉行所』と『申口方』かな?」
これで最初の『火払いの印を志す王より命を承りし使い、川を三つ下ったその先に、二つの国有り。』は全て解いた事になる。
次は『一の国に三の村、二の国に四の村有り。三の村に二十四の鍵、四の村に二十六の鍵有り。』
亜里沙「これも簡単です、一の国、恐らく物奉行所の数を言っているんでしょう。」
物奉行所は用意宝物奉行所、給地方物奉行所、書体方物奉行所の三種類。
穂乃果「二の国の四の村ありは申口方の種類だとすると・・・確かに数は同じだね!」
申口方は平等方、泊地頭、双紙庫理、鎖之川、と四種類。
穂乃果「順調だね!次は『三の村に二十四の鍵、四の村に二十六の鍵有り』か・・・。」
亜里沙「役所の数ですね、物奉行所の下に二十四個の役所があって、申口方には二十六個の役所があります。」
穂乃果「次は・・・。」
『使い、黄金に至る鍵を得る。
宮殿より古来から作られし鍵、
納殿の鍵、
庫理の鍵、
田の鍵。
これらを砕いて一つの鍵を作り、使い、黄金に至った。
鍵を一つにして二十の破片に砕き、三十七の欠片に分けよ。』
亜里沙「鍵とはこの合計五十個の中から選ぶのでしょう。そしてこれらはそのヒント。」
穂乃果「『宮殿より古来から作られし鍵』は『古』って字があるから『宮古蔵』かな?」
亜里沙「『納殿』はその名の通りですね。納殿という役職があります。庫理も・・・『下庫理』がありますね。」
穂乃果「『田の鍵』・・・。漢字で『田』が使われているのは『田地方』だけです。」
亜里沙「後はこれらの鍵を砕いて一つにする・・・。」
穂乃果「希ちゃんが言っていたね!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>凛「アナグラム?」
希「文字遊びの事や。国とか村とか出ているけどこれは別に地形の事を差しているんじゃなくて、一種のなぞなぞって事や。」
>真姫「なるほどね。つまり最後の欠片がうんぬんってあるけど、欠片は文字の事で、上の暗号から出した言葉三十七文字の中から特定の文字を引き抜けって訳ね。」
穂乃果「そう考えると面白いね!ということはこの暗号の答えは五文字になる訳だ!」
亜里沙「言語が解りませんが、抜き出した答えを日本語にしてくっつけてみますか。」
日本語にするとこうなる。
みやこぐらおさめどのしちゃぐいたかどころ
穂乃果「ビンゴだね!!!ちょうど二十文字!次は三十七文字!」
亜里沙「とりあえずローマ字にしてみますか。」
miyakoguraosamedonosichaguitakadokoro
亜里沙「あたりですね。三十七文字!」
穂乃果「さらにビンゴだね!!」
亜里沙「はい。黄金は近いです。」
亜里沙たちの顔にも笑みが見える。
『六の欠片、九の欠片、十六の欠片、十八の欠片、三十六の欠片を引き抜いて鍵に合わせた者だけが黄金に至る。』
穂乃果「ラスト!六つ目、九つ目、十六個目、十八個目。三十六個目の文字を引き抜く!
引き抜いた文字は
o r d n r
これで・・・五文字!
亜里沙「でも・・・。」
穂乃果「これが何だっていうのだろうね・・・?」
亜里沙は頭の中で字を回転させる。すると、ある事に気が付いた。
亜里沙「穂乃果さん、こうじゃないですか!?」
rord n
穂乃果「こんな単語あったっけ?どういう意味なの?」
亜里沙「正確にはこうです。」
l o r d n
穂乃果「!!・・・そうか・・・Lでもラ行は言えるよね。」
亜里沙「そうです。lord n !!西木野卿!!!これが黄金に至る鍵です!!」
穂乃果「そうだね!!!間違いない!!・・・んで・・・この先どうするの?」
亜里沙「それなんですよね・・・。」
穂乃果達は鍵を探し手に入れた。
・・・しかし、肝心の扉は何処にあるのか解らない。
碑文にもこれ以上は書いていない・・・。
亜里沙「後は名前しか書いてありませんね。
うーんこの推理が間違っていたのでしょうか・・・。」
穂乃果「そんな~。ここまできたのに~。あってると思うんだけどなぁ~。」
穂乃果は碑文のメモを逆さにしたり、横にしたりする。どうにも分からなかった。
亜里沙「今日はここまでですかね・・・、穂乃果さん、無駄骨でスイマセン・・・。」
穂乃果「ううん、私は楽しかったよ!ありがとう!」
亜里沙「いえいえ、あ、穂乃果さん、最後の英語の綴り間違ってますよ?」
亜里沙が指を指したのはこの碑
文に書いてある最後の行。真姫の祖父の名前だった。
穂乃果の書いたメモにはRとあるが本当はLだ。
穂乃果「あ!いけないいけない!人の名前を間違えるのはいけないね!年下に言われるなんて反省反省!」
亜里沙「フフフ、紛らわしいですよね。
ローマ字の綴りって。」
穂乃果「本当だよ!他は日本語で書いてあるのになんで名前だけローマ字なんだろ!読みにくいよね!」
亜里沙「確かにそうですね。ここだけなん・・・で・・・ローマ字・・・。」
亜里沙「・・・・・・。」
そんな事考えても無かった・・・。
言われてみれば、確かにそうだ。
あえて、この名前だけをローマ字にした理由・・・。
真姫の爺様は洋裁かぶれとかそんな事だろうと思って気にしなかったが・・・。
名前だけがローマ字な理由を考えたとき、
亜里沙「あっ・・・・あっ・・・・!」
全てのピースがつながった。
亜里沙の心臓がバクバクとなり始める。それは確信めいた考えだった。
穂乃果「亜里沙ちゃん・・・?どうかしたの・・・?」
穂乃果は何かまずい事を言ったのかと亜里沙を見る。亜里沙は目をカッと開けて、
亜里沙「穂乃果さん!あなたは天才です!!」
穂乃果「えぇ!?」
亜里沙「謎が解けました!!行きましょう!!!」
穂乃果「どこに!?」
亜里沙はドアを開けて振り向きざまに元気よく言った。
亜里沙「黄金の待つ扉へですよ!」
ホール
亜里沙「はぁはぁ・・・。」
穂乃果「亜里沙ちゃん、はぁ・・・はぁ・・・、扉って、石碑の事なの?」
亜里沙「はい。おそらく・・・ここにくぼみとか・・・。」
穂乃果「あ、亜里沙ちゃん!?」
亜里沙は碑文が書いてある石碑に向かって爪を使い、でっぱりが無いかを探しているようだ。
亜里沙「たぶん・・・あっ!!」
亜里沙は祖父の名前の書いてある『L』の字を押したり引っこ抜いたりしようとした。
そして、Lと書いてあるマス? と言えばいいのだろうか?それが取れた。
その下には何かスイッチのようなボタンがあった。
穂乃果「なるほどね・・・その碑文の名前がローマ字なのはそういう事なんだね。」
亜里沙「スイッチになっていたんですね・・・。ビンゴです。」
その後、 O R D Nの文字を同じ様にいじっているとマスが取れて下からスイッチを現れた。
穂乃果「これは・・・もしかして。」
亜里沙「いきますよ?穂乃果さん・・・。」
亜里沙と穂乃果は顔を合わせてうなずく。
亜里沙はL O R D Nの順にスイッチを押す。
ガコン!!!
最後のNを押した時、何か起動したような音がした。
その後、
ゴゴゴゴ!!!
近くにあるライオンの像の手が動く。
手の指す方向を見ると、さらにライオンの像があり、指だけが違う方向に向いていた。
亜里沙「指の指す方向に行け、という事でしょうか・・・?」
穂乃果「そうみたいだね・・・。」
亜里沙「行きましょう穂乃香さん。
黄金の正体をこの目で見てやろうじゃないですか?」
穂乃果「うん!行こう。」
二人はライオン像の指す方向を歩き始めた。
碑文を解いた所を上位の空間から二人の魔女は見ていた。
一人は紅茶を飲みながら優雅に、もう一人はポップコーンを食べながらキュートに。
黒い女「ふぅ・・・なんとか碑文は解いたわね。」
ピンク女「ちょっとズルイんじゃない?あれじゃあ猿でも解けるわよ?」
黒い女「私は真姫が解いた材料を亜里沙に見せただけよ。
そこからどう見るかは亜里沙次第だわ。」
ピンクの女「まぁ、答えは教えなかったしね。
でも今回だけよ?こんな事は。」
黒い女「安心して。もうこんな事はしないわよ。
これから起こるであろう事件に関しては私はノータッチよ。」
ピンクの女「当たり前よォ。
じゃ、見ていきましょうか。碑文が解かれて何が起こるのか、楽しみね!」
黒い女「もう全て知っているのに何を言っているんだか・・・。」
ライオンの指す方を歩いてもう1分くらい歩いた気がする。
亜里沙はそう思った。
屋敷は3階だが何せライオンの像が至る所にあるのだ。
何回も同じ所を歩かせられる。
しかし、歩いた先には違うライオンの像があり、亜里沙はこの仕掛けに芸術めいた物を感じた。
そうして歩いた先、それは書庫だった。
穂乃果「ここは書庫室だよね・・・?どこに・・・あっ!」
亜里沙「・・・っさっきはこんな穴無かったですよね」
書個室の奥の暖炉の底が外れていた。
奥を覗きこんでみると、階段が出来ていた。
穂乃果「行こう!黄金を見たい!」
階段はらせん状になっていた。
少し暗かったが、目を凝らすと明かりをつけるスイッチがあったので亜里沙はそれを点ける。
そして何度か折り返すとそこには一つのドアがあり、文字が書いてあった。
『六の欠片、九の欠片、十六の欠片、十八の欠片、三十六の欠片を引き抜いて鍵に合わせた者だけが黄金に至る。』
穂乃果「正解・・・だね。」
亜里沙「はい。じゃあ・・・ドアを開けますよ。」
穂乃果「うん・・・っお願い。」
亜里沙はドアを開けた。
ギイイイイイイイイイイイイ
亜里沙「こ、これは・・・。」
その部屋は見るだけで豪華そうな部屋だった。
絵画やツボ、ベッド、ソファ、など、まるで高級ホテルの一室と言った方が良いだろうか。
そして、奥の方に、ここまで来た賢者を迎える様に、 それはあった。
穂乃果「あった・・・!本当に・・・黄金だ!!!!」
亜里沙「これは・・・すごいですね・・・!!それしか言葉が出てきません!」
黄金が、インゴットというべきだろうか?が、それはそれは高く、深く積みあがっていた。部屋の明かりが少し弱くてよかった。
これで少し強かったら黄金に光が反射して眩しくてこの目でよく見れなかったかもしれない。
これはまさに百万ドルの景色だ・・・と亜里沙は思った。
これを見るなら1万円くらいは払ってもいい・・・真剣にそう思った。
それほどに・・・この光景は美しかった。
穂乃果「これ全部でいくらあるんだろうね・・・!亜里沙ちゃん!」
亜里沙「解りませんが・・・余裕で10億はあるんじゃないでしょうか・・・。
何せこれだけあるんですから・・・!」
亜里沙「じゃあ、さっそくこれを報告しに行きましょうか?もう夜も遅いですがこれ程の事です。皆許してくれますよ。」
穂乃果「そうだね!じゃあさっそく・・・っ」
亜里沙「・・・っ!?ちょっと待ってください!穂乃果さん、こっちの机に何かありますよ!」
亜里沙が見つけたのは黄金が見える位置からは完全に死角になる場所にある机だった。
机の上には様々な古い本が置いてある。
その上には昔作られたのだろうか、年期の入った古時計がある。
穂乃香「・・・?どうしたの?亜里沙ちゃん。うわ、豪華そうな時計だね!」
亜里沙「上じゃありません!下ですよ下!」
亜里沙が指したのは机に置いてある封筒だった。
そこには『碑文を解いたものへ』と書いてある。
穂乃果「なんだろう・・・。真姫ちゃんのお爺さんが書いたのかな?」
亜里沙「かなり古いですね。年期が入っていそうです・・・。」
封筒には手紙が入っている大きさだったが何やら厚い。
他にも何か入っているみたいだ。
亜里沙「開けてみますか?」
穂乃果「うーん本当なら真姫ちゃんに見せるべきだろうけど・・・。」
笑いながら悩むふりをして、
穂乃果「あけちゃおっか?私達が碑文を解いたんだし!」
亜里沙「そうですね!」
亜里沙は封筒を開けて中身を取り出した。
中には一枚の手紙と通帳、そして印鑑が入っていた。
穂乃果「・・・?手紙と・・・これは・・・?」
亜里沙「通帳、印鑑・・・ですね。手紙はっと・・・。」
亜里沙は通帳を机に置いて手紙を流し目で読む。
真姫の祖父の字は達筆だったのか、読みにくかった。
亜里沙「うわぁ・・・夜中にこの字はきついですね・・・。」
穂乃果「見るだけで目がしょぼしょぼしてきたよ・・・。」
亜里沙「書いてあるのは遺産の分配についてと・・・えっ・・・!!!!」
亜里沙は自分の眠気が一気に引いていくのを感じた。
黄金の謎を解いた時とはまた別の興奮とでもいえばいいのだろうか、心臓がドキドキしている。
亜里沙は自分の胸を握りしめ、手紙から目を離した。
震えている。その感情の招待がわかった。
・・・それは人の原初の感情。
亜里沙「そうか・・・怖いんだ。私。」
穂乃果「!?どうしたの!?亜里沙ちゃん!!」
穂乃果は亜里沙の顔を見る。その顔は真っ青だった。
亜里沙「なんて、恐ろしいものを・・・!」
黄金を見つけてから1時間後 隠し部屋 24:10
その後、穂乃果と亜里沙はメンバー全員に碑文を解き、黄金を発見した事を公表した。
亜里沙「・・・以下の経緯からこの部屋で黄金を発見した訳です。」
絵里「スゴイ!すごすぎるわ!まさか本当にあったなんて・・・。」
希「はぇ~すっごいきれいやわぁ~。
何年も前のがこうして傷一つつかずに残っているなんて、スピリチュアルやなぁ・・・。」
雪穂「よく碑文を解いたね・・・、スゴイよ亜里沙、お姉ちゃん・・・。」
真姫「・・・これで病院も救われるのね・・・、やったわ!ママ!」
にこ「・・・。」
海未「本当に・・・、あったんですね・・・・。」
ことり「穂乃果ちゃんと亜里沙ちゃんがこれを解いたの?すっご~い!」
凛「これっていくらになるのにゃ?」
花陽「想像もつかないよ・・・。
でも宝クジの1等賞をもらうよりはもらえるんじゃないかな・・・。
本当に信じられない・・・。」
メンバーは驚愕の表情を隠せない様子だった。
無理もないのかもしれない。
目の前に自分の身長よりも高い金塊を積まれたら誰だってこうなる・・・。
人の世が金で決まるならば、この黄金はまさに魔法・・・!これを溶かす事で世を思うがままにできる・・・。
穂乃果「私は何もしていないよ。
全て亜里沙ちゃんが解いたんだんだし。」
亜里沙「いえ、最後の穂乃果さんのひらめきが無ければ解りませんでした。」
希「二人とも、羨ましいわぁ・・・。
この黄金は全部二人のものや。
もう働かなくてもいいんと違うか?」
にこ「・・・!」
真姫「ちょ、ちょっとまってよ・・・!何で二人だけのものなの!?」
希の言葉に真姫が反応する。
真姫には家庭の事情でどうしても金がいるのだ。
そしてその金はこの黄金を金に換えれば十分返せる額だ。
希「さっき話したやろ?西木野家のおじい様が何であの碑文を作ったのかを考えれば一目瞭然や。碑文を解いた人にあの黄金を授けるってことやろ?」
真姫「明確に授けるとは書いていないわ!それにここは西木野家の土地よ?そこにあったんだから西木野家に所有権はあるはずよ!」
希「穂乃果ちゃん、何かおじい様が残した手紙とかは無いの?碑文を遺したおじい様や。
それを見つけた後の事もどこかに文書で残してあるんじゃない?」
亜里沙「それは・・・その・・・。」
穂乃果「・・・亜里沙ちゃん・・・。」
亜里沙は考える。確かにあった。真姫の祖父が残した手紙。
そこにはこの遺産の所有権についても書いてあった。が・・・。
亜里沙「・・・。」
亜里沙「・・・はい、確かにありました。ここに、」
そう言って亜里沙は手紙を出す。
真姫「貸して!」
真姫は亜里沙から奪い取るとようにして手紙を読む。
希「なんて書いてあるん?」
真姫「ええっとねぇ・・・昔の言葉だから何て読むのかは解らないけど・・・、
この碑文を解いた時にこの別荘にいた 人たち全員に黄金を分配するようにと・・・書いてあるわ。」
希「!?・・・ほぉ~ふとっぱらなおじい様や。全員って事はうちらにも入るよな?」
絵里「その手紙に書いてある通りに従うならば・・・そういう事になるわね・・・。」
にこ「私達にも・・・もらえるのね・・・。」
真姫「全員・・・全員か・・・。」
真姫からしても全員に分配とは思わなかったが、もらえないよりは何倍もマシだ。
分配しても真姫の取り分は病院を救うには十分な額だった。
真姫「わかったわ、正確な手順はまだちゃんと出来ないけど、その手紙に従ってこの場にいる全員で分配する事にしましょう。」
凛「ホントかにゃ!?凛たち一夜にして大金持ちにゃ~!」
花陽「本当にいいんですか!?うわぁ・・・億って・・・ご飯何杯食べられるんでしょうか・・・。」
にこ「本当にいいの・・・?真姫ちゃん、ありがとう!ありがとう!」
絵里「私と亜里沙で一人分の分け前でいいわ。それだけでも十分すぎるもの。ありがとう真姫。」
亜里沙「そうですね、それだけでも十分すぎます。
ありがとうございました。」
穂乃果「私と雪穂もそれでいいよ!いやぁ~どうしよっか?雪穂?」
雪穂「UTX学園に入る資金にしようかな。」
穂乃果「こら!雪穂!」
ドッアハハハハハハ
海未「・・・。」
凛「海未ちゃんどうしたにゃ~?」
海未は部屋の隅っこに行き、壁を軽く叩いたり、考え事をしている。
海未「上が書庫室・・・この部屋・・・書庫室の形からして・・・。もしかして・・・。」
凛「海未ちゃん・・・?」
海未「いえ、何でもないのですよ。何でも。」
亜里沙「それから、渡すのが遅くなってしまいました。
別にネコババする気はなかったんですが、話の流れで返すのが忘れてしまいました。」
真姫「・・・?これは?」
亜里沙「通帳と印鑑です。
手紙と一緒に封筒の中にありましたよ。
通帳には5千万入ってましたよ。」
凛「ご、5千万!?」
にこ「貸して!いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、・・・すごい・・・本当だ・・・。」
希「通帳にこないな沢山の0が書いてあるのをうちは初めてみたわぁ・・・。」
真姫「穂乃果と亜里沙には感謝しかないわ。
ありがとう。あなた達は恩人よ。」
亜里沙「偶然ですよ、奇跡のようなものです。」
亜里沙(真姫さん、あなたの記憶を見させてもらったおかげです。)
海未「亜里沙、よく碑文を解きましたね。さすがです。」
亜里沙「っ海未さん!ありがとうございます!」
ことり「あっ亜里沙ちゃん顔真っ赤~!」
亜里沙「っ!?からかわないでください!」
穂乃果「眠気もぶっとんできたよ!よーし飲むぞ!~!」
海未「お酒はありませんよ、穂乃果。」
凛「祭りにゃ祭りにゃ~!」
絵里「さすがに眠いわよ、続きは明日にしましょ。」
雪穂「眠れないんですけどー!これからの人生がバラ色なんてさぁ!」
穂乃果「雪穂ってこんな性格だったっけ?」
海未「大金を一度に持つと人の性格は変わるって言いますけど本当なのかもしれませんね・・・・。」
ことり「じゃあ私は自分の部屋に戻るね・・・。穂乃果ちゃん、話があるんだ。」
穂乃果「え?話?何?」
ことり「うん。海未ちゃんも、いいよね?」
海未「はい。かまいません。」
ことりと海未の顔は二人と付き合いの長い穂乃果が見たことのない程深刻な顔をしていた。
何か、覚悟を秘めているような・・・。
穂乃果「わ、分かったよ。でも私は後少しだけこの黄金を見ていくよ。」
ことり「わかった。私の部屋で待っているね。」
海未「ゆっくり来てもいいですよ。私にも心の準備がありますから。」
海未が心の準備をする程の話がある・・・。
一体どんな話なのか。
絵里「亜里沙も行くわよ~。」
亜里沙「分かったよ。穂乃果さん、おやすみなさい。」
穂乃果「うん。亜里沙ちゃん。おやすみなさい。」
亜里沙達は2階に上がる。
亜里沙たちの部屋は2階と3階に分かれているのでここで別れる事になる。3年は2階。他は3階だ。
絵里「じゃ、ここでお別れね。あ、明日は12時に1階のリビングに集合よ~。最後に来た人3人が朝食当番だからね~。」
「「「はーい」」」
希「ほな、おやすみ~。」
にこ「おや~。」
ガチャン。
三年はそう言って部屋に入る。
花陽「じゃ、私達も上に行こうか。」
凛「そうだね。さっきは興奮していたけど、もう眠いよ~。」
雪穂「そうですね。もう遅い時間ですし・・・。亜里沙、どうしたの?」
亜里沙「ごめんなさい、私書庫室に忘れ物をしてしまったみたいです。
皆さん先に行っていてもらえませんか?」
真姫「あら、そうなの?じゃあ先に行っているわね。」
凛「亜里沙ちゃんもおっちょこちょいなのにゃ。」
亜里沙「あはは・・・。」
凛たちはそう言って階段を上がる。
亜里沙「フフフ・・・。」
亜里沙はにやりと笑う。
無論、亜里沙は忘れ物なんてしていない。
しかし、今から行う作業は人に見られてはまずい。
それに二階から行えば、三階から人が降りてくるかどうかも見張る事ができる。
亜里沙「この屋敷の階段は一つしかない。
つまり、下に降りるにはこの階段を使うしかない・・・。」
黒い女「どうするの?一日目が終わった訳だけど。」
何もない所から黒い渦が出る。
それはどんどん広がっていき、女性の形を作った。
黒い魔女だ。
亜里沙「どう、とは?」
黒い女「明日には誰かが殺される、それはもう運命で決まっている事だわ。
あなたは真犯人を見つけたいのでしょ?」
亜里沙「そうですね。だからこんな所で油を売っていないで、今から行動しろと?」
黒い女「そうよ。ま、いつどうやって、何人殺されるかはわからないけれど、それでも見張るくらいは出来るはずよ。」
推理小説では、殺人事件が発生してから警察なり探偵が行うのはアリバイ調査と決まっている。
それは地盤を固めるのに必要な行為だからだ。
が、それを調べる警察はここには来ない。
亜里沙は前回の一日目で見た天気予報の記憶から、二日目は雨と激しい風が来る事を覚えている。
ここはクローズドサークルの環境下で起きる殺人事件。
そういう魔女の『シナリオ』なのだ。
警察の代わりに亜里沙がアリバイを十人全員を調べなければいけない。
黒い女(思えばこのアリバイをちゃんと調べなかったから前回は殺されたっていう事もあるのよね・・・。)
記憶を失った亜里沙には知る由も無い事だが、前回亜里沙はメンバーのアリバイを殆ど把握出来ていなかった。
最初の犯行はメンバー全員がアリバイの無い深夜に行われ、次の犯行は全員がアリバイを証明できない空白の時間がある時に犯行が起こった。
なので亜里沙は犯人はおろか、『誰が犯人でないか』それすらも推理する事が出来なかったのだ。
結果、その者が死んで初めてシロ!と容疑者を絞り込むのに後手に回ってしまい、最後は何者かに殺されてしまった。
真姫の発言と証拠から希を殺した事だけは認めさせたが、他の者の殺人やトリックは解らず仕舞い。
せめてあの時アリバイを意識した行動をしていればもう少しどうにかなったはずである。
前回の結末を知っている黒い女としては、遠回しに助言を与えに来たのだが・・・。
亜里沙「大丈夫ですよ、ちゃんと考えてあります。どうやら前回の私は犯人に完敗したみたいですね。
あなたの言葉を聞くに、容疑者を絞り込めなかった、って所でしょうか?」
黒い女(相変わらず理解が早いわね。)
黒い女「さぁ・・・。どうかしらね。」
亜里沙「心配しないでください。ちゃんと考えてありますよ。
少なくとも、今から朝の12時までのメンバー全員のアリバイは把握できます。」
黒い女「・・・?そんな事できるのかしら?」
今現在メンバーは誰もがアリバイがない状態だ。
メンバー十人のアリバイは把握しておきたい・・・。
が、亜里沙の体は当たり前だが一つしかない上に十人の部屋は二つの階に分断されている・・・。
亜里沙「前回の私と違う所は、予め殺人事件が起きる事が分かっている、という事です。
船で沢山考えましたよ。」
亜里沙はポッケからあるものを出した。
亜里沙「書庫室からくすねておきました。
これが、これから朝まで全員のアリバイを把握できる、方法です。」
黒い女「・・・?何よそれは?」
亜里沙はそれを投げ、手のひらでキャッチする。
亜里沙「ガムテープ、です。」
隠し部屋にて 24:45
穂乃果「・・・誰!?」
亜里沙「私ですよ穂乃果さん。
忘れ物をしてしまって、取りに戻ってきたんです。
・・・メールですか?」
穂乃果「あっ・・・そう!そうなんだ!
お母さんに一応メールしておかないと、と思ってね!
アハハ・・・。」
穂乃果はイソイソと携帯をしまう。
誰かと通話でもしていたのだろうか?
亜里沙「穂乃果さんは、まだこれを見ているんですか?」
穂乃果は山の様に積まれた黄金の前でじっとそれを見ていた。
穂乃果「うん、でもこの目で見ても信じられないよ。」
亜里沙「そうですね、この黄金もしかして私達を騙すためのドッキリじゃないですよね?」
穂乃香「ハハハッ、それはそれでおもしろいかも!」
亜里沙「はははは・・・。」
穂乃果「・・・。」
場が静まりかえる。
穂乃果「亜里沙ちゃん、結局あれ、見せなかったんだね。」
亜里沙「見せる必要もないでしょう、切っておいて正解でした。」
テーブルには真姫に見せた遺産の分配の仕方が記してある手紙が置いてある。
亜里沙は自分の懐からもう1枚手紙をだした。
もともと手紙は1枚だったが、亜里沙は皆を呼ぶ前に手紙を二枚に切ったのだ。
亜里沙「これは、これから幸せになる私達には必要の無い事ですよ。」
亜里沙はその手紙をビリビリに破いてしまった。
穂乃果「うん。確かにそうだね、私達には、こんな物はいらない・・・。」
亜里沙「穂乃果さん、ことりさんから呼ばれているんでしょう?
行ってあげたらどうですか?」
穂乃果「え・・・う、うん。
な、何か恥ずかしいなぁ・・・。」
亜里沙「その顔を見ると、何の用で呼ばれたのか分かっているようですね!教えてくれませんか?」
穂乃果「えーっ!そ、そんなぁ!」
亜里沙はイタズラを思いついた笑顔で、
亜里沙「教えてくださいよう!碑文を一緒に解いた仲間じゃないですかぁ!」
そう言って、穂乃果の脇腹をつつく。
穂乃果は観念したようで
穂乃果「もー、しょうがないなぁ・・・!」
まだ誰にも言わないでね?と前置きをして
穂乃果「穂乃果ね、ことりちゃんと付き合う事にしたんだ。」
そう発言した。
亜里沙は一瞬何を言われたのか分からなかったが、
亜里沙「っえぇぇぇぇえ!!」
穂乃果「亜里沙ちゃん、しィ!」
亜里沙「っっと!スイマセン、いやでも、二人ってあれ・・・女性・・・。」
それを聞いて、穂乃果の顔が曇る。
穂乃果「やっぱり、亜里沙ちゃんもそういうの気にするタイプ?」
亜里沙「いえいえいえいえ!私は恋愛の価値観は人それぞれだと思っていますから!
それにほら、最近はIPS細胞とかあるといいますし!」
穂乃果はこんなにわたわたとする亜里沙は初めて見た。
それはこの島で始めて見る年相応の顔だった。
穂乃果「呼ばれたのは多分海未ちゃんにまだ言っていないからその事を言いに行くんじゃないかな?」
亜里沙「だったら今ここで皆に話しても・・・。」
穂乃果「海未ちゃんには、一番最初に言っておきたいんだ。
メンバーの中でも一番最初に・・・。」
亜里沙「・・・そうですか、よく分かりませんが、頑張ってください。」
穂乃果「じゃあ、行ってくるね。亜里沙ちゃんも、頑張りなよ~、知っているよ~。
海未ちゃんの事チラチラ見てたでしょ!」
亜里沙「え!?いや、そんな事・・・な、ないですよ!」
穂乃果「ハイハイ、じゃっあね~。」
穂乃果はそう言って、上がっていった。
ああいう所、やっぱ憧れるなぁ・・・。
亜里沙「私の気持ち、ばれていたのか・・・。」
プシュー。
亜里沙は自分の顔が熱くなっている事を感じた。
亜里沙「・・・。」
亜里沙「よし!じゃあ、始めますか!」
亜里沙は気持ちを切り替えて『作業』をすることにした。
25:10 廊下にて
穂乃果は書庫室からことりの部屋に向かった。
穂乃果「海未ちゃんに言うの、ドキドキするなぁ・・・。」
船の上でことりから話があると言われて心のどこかでそんな気はしていた。
いや、そうだったらいいなぁ・・・という願望だった。
昔から穂乃果の女性らしいかわいさにずっと憧れてきた。
その憧れが恋愛感情に変わったのはつい最近だったと思う。
でも、穂乃果たちは同姓。それはイケナイ事なんだ、と自分の気持ちを封じ込めてきた。
ことりが穂乃果を慕っていた事は気づいていたが、それはあくまで友達としてなのだと。
そして今日、(正確にはもう昨日だが)ことりから告白された時は何かのイタズラかと思った。
1日目 時間未定
ことり「あのね・・・私は、穂乃果ちゃんの事が、好きです。」
穂乃果「っ・・・え?」
ことり「恋愛対象として・・・好きです。」
穂乃果「っえっえええ!?」
ことりの顔は真っ赤だった。
そしてそれは穂乃果の顔もだった。
聞いた瞬間、顔が真っ赤になり、心臓がこれ以上ないほどバクバクした。
ことり「穂乃果ちゃんは・・・どうなの・・・かな?私の事・・・どう思っているの・・・かな?」
俯きながら、顔を真っ赤にして、目を潤ませて聞くことりに、
穂乃果は倫理観とか同姓だからとか、そんな物は吹っ飛んでしまった。
ことり「ご、ごめんね!やっぱり気持ち悪いよね!
私と穂乃果ちゃんは女の子どうしなのに・・・そんなっ・・・きゃっ!」
穂乃果はことりを力いっぱい抱きしめる。
ことり「え・・・?」
穂乃果「ことりちゃん、聞いてくれないかな。」
ことり「うん。」
穂乃果「私ね、好きな人がいるんだ。」
ことり「っ!うん・・・。そっか・・・。」
穂乃果「その子は女の子なんだよ。
だから、女の子同士だからダメなんだって穂乃果はその気持ちを我慢していたんだ。」
ことり「うっうん・・・。」
穂乃果「でも、ね。その子が必死に告白してくれた姿を見ていて、そんなものどうでもいいやって思ったんだ。」
ことり「そ、それって・・・!」
穂乃果「うん。ことりちゃん、私もね。ことりちゃんの事が好き。
友達としてじゃなくてね?
大好き。
私と付き合ってくれないかな?」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん・・・。」
穂乃果「そしてゴメンね。先に言わせちゃって。」
ことり「穂乃果ちゃああああああああああああん!」
穂乃果「いや~あの時の事は今でもあんまり覚えていないなぁ・・・。くう~。」
そうして物思いにふけりながら、穂乃果はことりの部屋の前に着く。
穂乃果「緊張してきたな・・・。よしっ!」
穂乃果は覚悟を決めて部屋をノックした。
コンコン
穂乃果「・・・あれ?」
コンコン
穂乃果は聞こえなかったのかと思い、もう一度部屋をノックするが返事は返ってこなかった。
穂乃果「あれー・・・?あっ開いている。」
穂乃果は思わずドアノブを捻ると部屋は開いていた。
部屋は暗い。同じベッドにことりと海未は入っていた。
穂乃果「寝ちゃったのかな?うーん。まぁいいや、今日は穂乃果もここで寝よーっと。」
穂乃果はベッドの中央に入る。
ツインベッドに三人はいささかせまい。だが穂乃果はこの窮屈な感覚も懐かしく思えた。
穂乃果「小さい頃はこうしてよく三人で寝たよね・・・。
ふわ~あ。」
穂乃果はあくびをして、
穂乃果「お休みなさ~い。」
静かに夢の中へと落ちて行った。
2日目 11:30 ことりの部屋
ピピピピピピピピピピピピ!
穂乃果「もう・・・うるさいなぁ・・・。」
穂乃果は目覚まし時計の音で目を覚ました。
寝不足な穂乃果は目をつぶり、毛布を頭まで被りながら、誰かが止めてくれるのを待つ。
ピピピピピピピピピ
・・・しかし音は鳴りやまない。
仕方なしと、穂乃果は目覚まし時計を手さぐりで止めて時間を確認する。
穂乃果「・・・まだ時間あ・・・ないね!」
時刻は十一時三十分。
約束の時間までは三十分あるが、乙女には朝から準備しなければいけない事が山ほどある。
あまりモタモタはしていられない様だ。
穂乃果は時計を置き、目をこする。
カーテンを閉めていたのと天気の影響、で殆ど明かりは入ってこなくて薄暗かった。
穂乃果「天気予報は大当たりかぁ・・・、ハズレて欲しかったなぁ・・・。」
にしても、と穂乃果は疑問に思う。
寝坊助の自分はともかくとして、こんなにうるさい目覚まし時計が鳴っていたら誰か起きるはずなんだけどな・・・。
いまだに二人は起きる気配も無いまま布団を頭までかぶっている。
身じろぎ一つしないその姿を見て、穂乃果はしっかり者の二人でもこんな時もあるんだと
微笑んだ。
穂乃果「あー起きるのメンドイ。」
まぁ昨夜は色々あったしね、と自分を納得させた。
穂乃果「も~しょうがないな~、よーし。」
穂乃果は布団から起き上がると、しずかに閉まっているカーテンをつかむ。
そのまま勢いよくカーテンを引いて引いて、ビックリさせるつもりなのだ。
穂乃果「よーし、起きろぉぉぉ!!!!」
びしゃあああああああああ!
穂乃果は勢いよくカーテンを開ける。するとそこには・・・
「きゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
11:45 ことりの部屋
花陽「これは・・・ひどい。」
花陽は青ざめながら顔をそむけた。
絵里「花陽、もうよしましょう。
二人ともこんな無体な姿をメンバーに見られたいはずがないわ。」
絵里が花陽を抱きしめる。
凛「どうして・・・な、何がどうしてこんな事に・・・。」
凛は茫然としていた。
無理もない。
目の前にある光景はとても目を背けたくなる光景だった。
穂乃果「ことりちゃああああああああああああああん!!!!海未ちゃんまで!なんで!?どうしてええええええええ!!!!!うわああああ!」
穂乃果は泣きじゃくりながらことりと海未に縋り付く。
その体はピクリとも反応しなかった。
何故なら・・・二人の首はきれいに鋭利な刃物で掻っ捌かれているのだから・・・。
あまりに深く、広く裂けているせいか、第二の口とも形容できた・・・。
絵里「誰がこんな事を・・・。」
穂乃果「っっ・・・うわあああああああああ!!!っ!そうだ!救急車!医者を呼んでよ!ほら!早く!」
絵里「穂乃果・・・、もう・・・手遅れなのよ。」
穂乃果「・・・そんな・・・。」
穂乃果はその場で崩れ落ちる。
絵里は花陽に目で合図をすると、花陽は毛布でことりと海未の遺体を覆った。
毛布を血が吸い、赤黒く染める。
毛布で隠しても・・・余りにも無残な惨劇の跡は残るのだった。
だから花陽はさらに毛布で覆った。
ことりと海未。
この部屋には、二人の人間の首がばっさりと切り裂かれていた。
多分、それは昨夜からなのだ。
穂乃果はそうとは知らずに布団をかぶって寝てしまった。
状況から判断すると、そういう事なのだろう。
三人とも、二人の喉の切り傷を奥まで見てしまった。
下手をすれば骨まで至っているかもしれない。
しかし、他に傷跡は無い。
・・・だから首の傷さけ見なければ、きれいな遺体だったのかもしれない。
しかし・・・、この傷は無残すぎた。
どんな殺しもきれいも汚いもない。
どれも無残だ。
しかし、これはあまりに無残としか・・・。
亜里沙「皆さん、その・・・こんな時になんて言ったらいいのか分かりませんが・・・おはようございます。」
亜里沙が部屋の前で声を掛ける。
どうやら今来たようだ。
絵里「亜里沙・・・。
事情は分かったわね?あなたは外で待っていなさい。
もうすぐ真姫たちが来るから・・・。」
亜里沙はそこまで取り乱している様子ではない。
むしろ、来るべき時が来たと言わんばかりな表情をしていた。
亜里沙は彼女らの傷口は見ていない。
しかし、返り血を浴びたこの部屋を見て大体の事は察したようだった。
亜里沙は絵里の言葉を無視して部屋に入り、改めて現場を確認する。
亜里沙「この感覚・・・初めてですが、懐かしい気持ちがしますね。」
亜里沙は『前回』殺人現場に何回も立ち会っている。
記憶はないがこの血生臭い、死の匂いと良いのだろうか?は体が覚えていた。
それを嗅いでか、亜里沙の表情が本人も知らず知らずのうちに変わる。
それはまるで、子供が自分の出番が来たと浮かべる笑みのようだった
亜里沙「話は廊下でお聞きしました。
亡くなったのは、二人ですか・・・。」
絵里「亜里沙!?入っちゃダメってわからないの!?」
花陽「亜里沙ちゃん!見ない方がいいよ!部屋で待っていて!」
亜里沙「本当にスイマセン。
ですが私は『これ』のために来たのです。・・・邪魔をしないで下さい。」
凛「な、何を言っているんだにゃ・・・。」
亜里沙「むしろ皆さんこそ、部屋を出て行ってください。分かっているんですか?ここは殺人現場ですよ?
証拠が隠れているのかもしれないんですよ?」
メンバーどころか、実の家族である絵里も亜里沙の発言に茫然とするしかない。
絵里「亜里沙・・・?」
穂乃果「ことりちゃん、海未ちゃん・・・。」
亜里沙「どいてくれませんか?現場を調査しないと。」
亜里沙はうずくまっている穂乃果にそう伝える。
亜里沙の目は冷え切っていて、邪魔だと言わんばかりだった。
絵里「亜里沙!いい加減にしなさい!必要なら私達がするし、警察の仕事よ!」
亜里沙「・・・やっぱり使った方がいいですね。」
前回の亜里沙も現場検証をメンバーに邪魔されて海未の遺体や部屋の中を詳しく調べる事が出来なかった。
もちろんそれは殺人現場を素人が荒らしてはいけないという意味では当たり前の事・・・。
だが、亜里沙はこの合宿中に事件を解かなければいけない。
しかしそれを説明しても分かってくれる訳もない。
亜里沙「しょうがないか・・・。」
亜里沙は深呼吸をして、
亜里沙「探偵権限を使わせてもらいます。
黒い神様、お願いします。」
パキン!!!
空気が割れる音がしたかと思うと、亜里沙を止める声はピタリと止まる。
亜里沙の静かな迫力により、何故か誰も亜里沙の調査を拒めない不思議な空気が充満した・・・。
亜里沙「もう何でもありですね・・・。
これって手助けにならないんですか?」
その声を聞いて黒い女が現れる。
どうやら亜里沙にしか見えていないようだ。
黒い女「別に、今のあなたは調査をしても誰にも妨害されない。
ただそれだけよ?」
亜里沙「・・・記憶無いですけど、前回もこの力があればなんとかなったんじゃないですかね・・・?」
黒い女「前回はあなたが素のポテンシャルでどこまでいけるか知りたかったのよ。
まぁ、引き分けに持ち込んだだけでも評価できるけど。」
亜里沙「過大評価ですよ。」
黒い女「あなたには探偵権限を授け、自らのレートを上げた。
賭け金が高いという事は負けた時のリスクも高いという事。・・・意味は解るわよね?」
亜里沙「・・・負けた時はただじゃおかないって事ですよね。」
黒い女は何も慈善で亜里沙をサポートしている訳ではない。
あくまで賭けに勝つためにやっているだけだ。
当然・・・負けたら一切の容赦もないだろう。
それは死ぬよりもキツイ目に合うのは・・・間違いない。
何しろ彼女は、人間の上位にいる魔女なのだから。
亜里沙「ご心配なく。
死体を荒らす事が目的ではありません。
喉の切り口なんて怖いもの見たくはありませんし。」
花陽「・・・じゃあ何を・・・?」
亜里沙「私はただ、この事件を誰が起こしたのかを知りたいだけです。
これから皆さんに色々お尋ねしますので、ご協力をお願いします。」
メンバーの中でも一番年下で、部外者のはずの亜里沙・・・。
しかし拒めない・・・。
当たり前だ・・・。
プレイヤーに逆らえる駒など、ありはしないのだから。
亜里沙「では、まず現場の状況からお聞きしましょうか?」
11:45
一方、その頃、雪穂はまだ起きてこないメンバーを起こしに行っていた。
元々12:00にリビングで待ち合わせだったのだが亜里沙から連絡を受けて雪穂は他のメンバーを迎えに行き、 絵里たちは穂乃果の部屋に来るように言われたのだ。
時間よりはまだ少し早いのだが・・・。
今は希の部屋に向かっている最中だ。
雪穂「それにしてもこんなに寝坊するなんて珍しい・・・。」
雪穂は首をかしげる。
雪穂「それにこのガムテープ・・・。」
朝、雪穂が準備をして部屋をでると、ドアの上部にガムテープが貼られているのを発見したのだ。
それは扉の枠と跨ぐように貼られていて、中央にはハサミか何かで切れ込みがあった。
どうやら少しでも扉を開けたらこのガムテープは破れる仕組みになっているらしい。
そして切れ目の上にはマジックペンで複雑なサインらしきものが書いてある。
これをマネしようと書くのは骨が折れそうだ。
絵里たちに話したら同じものが扉に貼ってあったと言う。
どうやらメンバーの部屋の扉と、 屋敷を出入りできるドアに貼ってあるようだった。
雪穂「一体だれがこんな事を・・・。」
雪穂は不思議に思いながらも希の部屋にたどり着く。
案の定、希の部屋にもガムテープは貼りつけてあったが切り取られていた。
雪穂はガムテープを引きはがすと、ドアノブを捻る。
雪穂「あ、開くみたい。
希さーん!開けますよー!」
雪穂はドアを開ける。
カーテンが閉まっているので部屋は薄暗い。
しかし、ベッドに毛布の膨らみがあるのが見えた。
雪穂「おはようございます!希さん!」
雪穂はベッドをゆすってみる。
ゆさゆさ
雪穂「起きない・・・ん?」
雪穂の手に何か、液体の様な物が付いた。
それなんというか・・・粘り気があるというか・・・。
雪穂「っ・・・!」
その手はとても赤く、そして黒く染まっている。
雪穂「えっえっ何これぇ!?」
雪穂は怖くなったからか、カーテンを開ける。
雪穂「えっ・・・いやああああああああああああああ!!!!」
毛布に赤いシミがついている。
いや、それはシミというほど小さいものではない。
雪穂「なにこれぇ!?何これぇ!!!」
シミと言うよりは模様と言った方が正しいだろう。
雪穂の手を染めた様に、布団を赤く、黒いハスの葉の模様が希の毛布を彩っている。
雪穂「・・・っ!」
雪穂は希の毛布を指でつまみながら剥ぐ。
布団は水滴を吸っているからか、重く感じた。
雪穂「はぁはぁ・・・んっ!」
雪穂は勢いよく、何かを振り払うように掛布団をはぐ。
雪穂「いやああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
この模様は何を塗料に描かれたのか・・・その答えは、希の首から溢れんばかりに出ていた 。
希の首を中心にそれは飛び散っていて喉の中はそれでいっぱい!
中は筆で泡立てた様に気泡が沢山あって、その液体が首から、口から、目からでていた。
雪穂「いやああああああああああああああああああああ!!!!」
希の首は見下ろしたら喉の奥まで見えるのではないか、
それほど深く切られていた。
ここまですっぱり切るならば相当鋭利な刃物でなければここまでの切り口はできないだろう。
雪穂「これは、し、し、し、死んでる!」
雪穂は足をばたつかせながら、一刻も早く希の部屋から出る。
それは、これ以上この部屋を荒らしてはいけないと思ったのと、
この呪われた血なま臭い部屋にこれ以上いたら自分もその仲間入りしてしまいそうで・・・。
雪穂は急いで絵里達の所に向かうのであった。
黒い女「今回は静かにやってるのね。前回が派手すぎたからかしら?」
ピンクの女「そうねー、前回は顔をグシャグシャにしたり、色々したからねー。
今回はその逆をイってみたわ。」
黒い女「一応の確認だけど、警察に電話は出来るのかしら?」
ピンクの女「電話は出来るわよ?部屋についている電話を使ってもいいし、携帯電話を使ってもいい。
でも雨と風で外側から干渉する事は出来ないわ。
これがクローズドサークルの完成ってやつね!」
警察の介入は、この合宿中はクローズドサークルの完成によって完全に否定された。
これで、亜里沙は自由に調査が出来る。
黒い女「さぁ・・・もうお膳立ては十分にしてあげたわ。
亜里沙、あなたがどこまでヤれるのか・・・見せてもらうわよ!」
ピンクの女「楽しくなってきたわぁ・・・。
碑文なんて所詮は前座も前座。これからが本番よねぇ・・・!」
黒い女「クスクスクスクスクスクスクスクス!!」
ピンクの女「ぷっあっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!」
黒い女「やっぱり一番の退屈しのぎは」
ピンクの女「魔女とのゲームに限るわよねぇ・・・?」
「「くすくすくすくすくすあっはっはっはっはっ!!!!」」
2階リビング 11:50
絵里「希!?希まで殺されたって言うの!?」
絵里は戻ってきた雪穂から事情を聞いていた。
穂乃果「そんな・・・。希ちゃんまで・・・。」
花陽「さ、3人も殺されたっていうんですかっ・・・!」
雪穂「はい、でも海未さんとことりさんまで・・・そんなっ!」
絵里「思い出したくはないだろうけど・・・希も首を?」
雪穂「・・・はい。首を横に思いっきり切られていました。」
凛「海身ちゃん達と同じ殺し方にゃ・・・。」
雪穂「海未ちゃん達も・・・その首を・・・?」
花陽「うん、首を左からななめに切り裂かれていたよ・・・。」
絵里「凛、警察には電話したのよね?何て?」
凛「・・・今日はこの天気でヘリも船も無理みたい。
戸締りをしっかりしてはぐれないようにって・・・。」
穂乃果「そんなっ!?今日は来れないって・・・!嘘でしょ!」
凛「嘘だと信じたいよ・・・。でもこれじゃあね・・・。」
凛はそう言って窓を見る。
朝から降っている雨と風は、時間が経つにつれてどんどん激しくなっている。
今日一日はヘリも船も無理だろう。
凛「でもそうなると犯人はまだこの島・・・いや、この屋敷にいるのかもしれないわよね・・・?」
雪穂「ひっひいいいい!でもそうですよね!私達がこの島から出られないように、犯人も出られないんですから・・・。」
花陽「大丈夫ですよ!皆で一緒にいれば大丈夫!」
穂乃果「私達は殺されなんてしないよ!海未ちゃんとことりちゃんの敵を討ってやる!」
亜里沙「皆さん、静粛に。
泣いて事件が解決するならば、推理物は流行りません。
落ち着きましょう。
クールに、ね。
そういえば今日はまだにこさんと真姫さんを見ていませんが・・・?」
雪穂「そういえばそうですね・・・。元々の待ち合わせ時間も過ぎているし・・・、
っまさか真姫さんとにこさんも!?」
凛「そんなっ!?」
亜里沙「まだそうと決まった訳ではありません。
・・・そうですね、とりあえずにこさんの部屋に行きましょうか。」
真姫「おはよー皆。
何かあったの?何かすごく騒がしいけど・・・。」
凛「真姫ちゃん!?生きていたのにゃ!?良かったにゃ!」
真姫「はっ!?どういう事!?」
絵里「真姫こっちに来なさい。
事情を話すわ。」
絵里は真姫を呼んで耳打ちする。
真姫「・・・えっ!?冗談でしょ!!」
真姫の顔が青くなる。
絵里「・・・。」
絵里は頷くしか無かった。
真姫「・・・そんな、三人が首を縦にって・・・。
それに海未も・・・って事は海未じゃないの・・・?」
花陽「真姫ちゃん・・・?何を・・・?」
亜里沙「じゃ、真姫さん来た事ですし皆で一緒に行きましょうか。
はぐれた者から死ぬというのが推理物のテンプレですし・・・。」
回想 真姫の部屋
11:00
ジリリリリリリリリリ
真姫は目覚ましの音で目が覚めた。
12時に集合なのだが乙女には色々準備する時間があるのだ。
真姫は久しぶりに熟睡することはできた。
合宿に行くまでの真姫の心労の不安と言ったら計り知れない。
何せ、いつ西木野総合病院が潰れてもおかしくは無いのだ。
金策も尽き、残りは真姫の祖父が残した隠し遺産だったのだが・・・。
昨日穂乃果と亜里沙はそれを見つけてくれた。
碑文に従い全員に分ける事になったが、真姫の取り分どころか、通帳の中のお金で病院を救う事ができる。
たぬきの皮算用をあてにしていた身としては十分すぎる結果だろう。
真姫「っん~っ!と!」
真姫はベッドに座りながら背筋を伸ばす。
と、そこへ・・・
プルルルルルルルルルル・・・
プルルルルルルルルルルルルルルルル・・・・。
真姫「・・・誰よこんな朝早くに・・・。」
それは電話の鳴る音だった。
この別荘は部屋の一つ一つに電話がついていて、各部屋に内線で繋ぐ事が出来る。
もちろん普通の電話も出来る。
真姫は布団から起きると瞼を擦りながら受話器を取った。
取った時に画面を見ると非通知、と表示されていた。
真姫「(非通知・・・?)はい、もしもし。」
??「よぉ・・・俺が誰だかわかるか?」
電話の声はよくテレビのプライバシー保護とかで音声にノイズがかかっているような、そんな機械音?だった。
真姫「??誰よ?こんなイタズラをするのは。少々悪趣味よ?」
真姫はどうせ、いつもの三馬鹿がドッキリか何かを仕掛けたのかと思っていた。
??「よくそんなエラそうな口を聞けるなぁ・・・。
俺の機嫌が少しでも傾けばお前ら西木野家はあっと言う間に、
お終いだって、い、う、の、に、よ!」
真姫(誰よこれ・・・?凛やにこちゃんじゃない・・・!?)
真姫「誰よ?誰よあんた。私に何の用なの?どうしてこの番号を知っているのよ!?」
??「ひゃはははははは!言いたい事、聞きたい事はあるだろうが、それに答える権利も義務もない。
俺から言いたいのはただ一つ。お前にお願いがあって来たんだ。」
真姫「お願い?」
??「そう。お願い。1つ目。昨夜碑文が解かれたな?
その黄金が置いてある部屋には、今日一日、はメンバー全員の立ち入りを遠慮願いたい。」
真姫「!?」
??「2つ目。今日の15時に1階の管理室にホウキとかを入れるロッカーがあるよな?
そこで30分間隠れている事。」
真姫(何で管理室と碑文が解かれたことをを知っているのよ・・・。)
この別荘は真姫の祖父が建てた物で、もう何十年と経過している。
当然この別荘にはかつての祖父の知り合い、母の客なども尋ねた事もあるだろう。
管理室の事を知っている者がいてもおかしくはない。
しかし碑文は昨日偶然解かれた物だ。それを知っているという事は・・・。
真姫「あなた!碑文を知っているの!?いや、それ以前にどうして碑文が解かれたのを知っているの!?」
??「簡単だよ。俺もこの島にいるからだよ。」
真姫「!?」
真姫はとっさにカーテンを閉める。手は震えていた。
真姫「嘘よ!今この島には行きたくても雨と風で行けないはずよ!」
??「天候が変わるまでに行けばいいだろ?簡単な話だ。」
真姫「それでもどうやって来たのよ!?この島は私有地だから自分の船でもないとたどりつけないのよ!?」
??「それくらい自分で考えろよ、めんどくさい。
俺が聞いているのはさっきのお願いを聞いてくれるのかどうか、だ。」
真姫「誰があんたのお願いなんて聞くと思う訳?」
??「ほほぉ・・・、それはこういう事か?お前の病院の院長、お前の母親が、
医療ミスを犯したと世間にぶちまけても良い。と言うことだな?」
真姫「・・・!なんで・・・その事を・・・!!!!」
??「オイオイオイオイオイ!口のきき方が違うんじゃねえか!?
お前が今まずしなければいけないのは、俺に無礼な口を働いた事に対する謝罪じゃねえのかよ!?」
男?の口調が変わる。
この男の声は誰なのか、何故碑文を解いた事を知っているのか、この島にいるのか、
いくつもの謎が恐怖となって真姫を襲う。
真姫「・・・。スイマセンでした。許してください。」
男は機嫌をよくしたようで、
??「ようし。謝ればいいんだよ謝れば。
じゃあさっきのお願いは聞いてくれるって事で・・・いいな?」
真姫はもはや従うしかなかった。
この男(機械音?を使っているから性別すらわからない。)
の正体はおろか、目的も解らないのだから。
真姫「はい・・・。わかりました・・・。」
??「あ、それっとぉ・・・、俺は常にお前を監視出来る場所にいる。
お願いを破ったらすぐにわかる。
その時はぁ・・・。」
真姫「・・・!?」
受話器の向こうでガサゴソと音が聞こえる。
そして受話器が誰かにあてられる音がした。
にこ「・・・むぐう!!むぐぐ!!!むぐ!」
真姫「にこちゃん!?そんな・・・どうしてにこちゃんが・・・!」
にこ「ちょ・・・あんた卑怯よ!!むっぐうう!!!」
真姫「にこちゃん!?にこちゃん!」
そしてまた受話器をあてる音がした。
??「あーもしもし?聞こえる?聞こえてくれたかなぁ!?この子がどうなっても・・・知らないから。」
真姫「どうしてあんたがにこちゃんをどうにかできるのよ!?どうして!っ・・・あんたもう・・・。」
にこは昨日まで確かに同じ別荘にいた。
今の声はどう考えてもにこだ。
ということは・・・。
真姫「あんた今、この別荘にいるっての!?」
??「当たり前だろ?こんな雨の中外で電話なんて出来るかっての。
そんなに驚く事か? 今回の旅行だって、来るはずの無かったのが二人も来たじゃないか。
そこにもう一人入り込んだだけさ。」
真姫(来るはずのって、亜里沙と雪穂・・・!)
二人は今回の旅行には元々来るはずの無い人間・・・。
にも関わらず、来たことを知っているという事は・・・。
??「なんだかだんまりしちまったみたいだが・・・、このカワイイ子を俺が預かっているって教えるんも当然アウト。
まぁ頭のいい君ならわかるよね?じゃあヨロシク頼むわ。」
真姫「ちょっと待って!最後ににこちゃんの声を・・・」
??「あんたが今頼んだお願いを叶えてくれたら明日の朝には解放するよ。
それと、俺が電話した履歴等をちゃーんと消しておけよ?」
ガチャン!
電話はそこで切れてしまった。
真姫「・・・どうしましょう。」
せっかく病院を救えると思ったのに・・・!
今度は変なやつからの電話・・・!
トントン
真姫「!?」
その音は扉からだった。
トントン
どうやらノックのようだった。
トントン
真姫(誰かしら・・・?)
トントン
メンバーなら名前を言いながらノックする。
じゃあこれは・・・
真姫「ま、まさか電話のやつが・・・。」
トントントン
ノックは続いている。
出るまで叩くつもりなのか・・・。
真姫「・・・。」
真姫はテニスラケットを持って扉に近づく。
ダンッ!
真姫はドアを勢いよく開ける。しかし・・・
真姫「なんなのよ!!もう!!」
廊下には誰もいなかった。
真姫にとって最悪の目覚めだった。
ピンクの女「その後、皆はにこの部屋に向かうわ。ガムテープは切れていて、鍵は開いていた。
中に入るとにこの死体は無いものの、沢山の血痕が残されていた。」
黒い女「あら、死体は無いの?」
ピンクの女「ないわねぇ・・・。」
黒い女「・・・ふーん、なら生きているかもしれないわね。」
ピンクの女「かもしれないわねぇ・・・あっはっはっはっはっはっ!!!」
黒い女「・・・。クスクスクスクスクス!!」
にこの部屋 12:15
絵里「にこは一体どこに行ったのよ!?」
穂乃果「にこちゃんまでそんな・・・!?もういやだよぉぉ!!」
雪穂「この血塗れの部屋じゃ・・・。」
絵里「・・・そうね。
考えたくないけれどすでに・・・と考えるのが妥当よね・・・。」
花陽「うん・・・、この量じゃ・・・うん。」
亜里沙「しかし変ですよね・・・?
何故にこさんだけ死体を持って行ったんでしょう・・・?
それにこの血の跡は・・・?」
血はベッドにひどくぶちまけられる様に撒かれていた。
恐らく寝ている所を襲われたと考えるのが妥当だろう。
しかし血はベッドだけで床、窓には少ししか垂れていなかった。
絵里「にこの死体を持って行ったのならもう少し垂れていてもおかしくは無いわよね・・・。」
亜里沙「そうだね。どういう事なんだろ・・・?」
真姫「・・・。」
・・・もちろん真姫は知っている。
電話のにこの声からは身動きは出来ないようだが怪我をしている様子は無かった。
つまりこの血痕の跡は見せかけということ。
ペンキか何かだろう。
真姫(でもあの人・・・誰なの・・・?うちに恨みを持つ人・・・?)
真姫(今回の事件を起こしたのは電話をかけてきた者と見て間違いはない。
一体何のマネなのかしら・・・。)
亜里沙「次は希さんの部屋に行きますか・・・まだ部屋を見ていないんで。」
メンバーは希の部屋に向かう。
雪穂「またあの部屋に行くの・・・?嫌だよ・・・。」
凛「・・・。」
穂乃果「・・・。」
亜里沙「私もですよ・・・でも、しょうがないんです・・・。」
希の部屋の扉を開ける。まず入ると嫌でも目につくのが血まみれのベッドだ。
雪穂以外は初めて見るので絶句した。
亜里沙「・・・あれ・・・?」
雪穂「・・・え!?」
凛「どうしたの・・・?これは!?」
絵里「希の死体は・・・どこにあるの・・・?」
雪穂「そんな・・・ない!!希さんのが・・・そんな・・・!!」
花陽「これはどういう事・・・!?」
見るのも悍ましい首がすっぱり切られている死体・・・。
希の死体が消えていた。
きれいさっぱりと・・・。
亜里沙「一体誰が・・・。希さんの死体はここにあったのよね?雪穂。」
雪穂「え、ええ。ええ。間違いないよ!そんな馬鹿な!」
絵里「私達はずっと一緒に行動していたわ!つまり私達以外の誰かよ!」
花陽「それってこの島に私達以外の人がいるっていう事ですか!?そんな馬鹿な!?」
凛「でもそれしか考えられないにゃ・・・。」
亜里沙「・・・。」
ピンクの女「その後、もしかしたらことりと海未の死体も消えているかもと思ったメンバーは、 ことりの部屋に行くわけなんだけど、ことり達の死体も消えていたわ。」
黒い女「今回はよく死体が消えるわねぇ・・・。
前回も海未の死体が消えていたけど何か訳でもあるのかしら?」
ピンクの女「生き残っているメンバーはずっと一緒にいた。
にも関わらず死体は消えた。おっかしいわねぇ!?」
黒い女「例えば全員死んだフリだったならどうかしら?亜里沙たちが出て行った後に身を潜めた。」
ピンクの女「ほほぉ・・・。あの傷口で死んだフリ・・・ねぇ・・・。」
黒い女「他にもにこが死体を隠したっていうのも面白そうね。
にこは正体不明のやつに拉致されたように見えるけど、実際はにこが犯人の一人で、
電話は自演、自由に動けるのかもしれない。」
ピンクの女「ほぉほぉ。」
ピンクの女は薄ら笑いを浮かべながら話を聞いている。・・・ぶん殴りたい・・・。
ピンクの女「なるほどね!真姫への電話は全部ウソだったと・・・!」
黒い女「あっているかしら?」
ピンクの女「言う訳ないでしょぉ~。
まぁ死んだフリなどの可能性は当然亜里沙も意識しているはずだし・・・見ものよね。」
14:50 2階リビング
凛「うん、そうにゃ。
二人の首は・・・真っ直ぐに横に切り裂かれていて・・・。」
亜里沙は犯人を捜すために関係者に聞き込みをしては確かめていた。
アリバイを聞き、事件現場を検証するなど、もはや亜里沙が探偵気取りな事に誰も疑問を抱かなくなっていた。
真姫「ちょ・・・っそれはどういう意味!?私が疑わしいって事?」
亜里沙「そうは言っていません。
あなたが自室に戻り、待ち合わせの12時まで部屋から出なかったお話は聞きました。
しかし、それを証明しないとアリバイには・・・その・・・。」
真姫「証明!?どうやってよ!?」
亜里沙「どうやってでもです。
客観的に真姫さんには犯行は不可能だったと証明してくれればいいんです。」
真姫「何よそれは!?そんな事言ったら穂乃果だって怪しいじゃない!?
何せ海未達と一晩中一緒にいたのよ!むしろ一番に疑う所でしょうが!?」
真姫は穂乃果に指を指す。
穂乃果「真姫ちゃんそんな!?私がことりちゃん達の首を何度も刺したって言うの!?ひどいよ!!」
亜里沙「穂乃果さんが犯人で無い事は私が証明できます。理由は後でご説明しますが・・・。
他の方も出来るんです。
しかし犯人でない事を証明できていないのあなただけなんです。」
真姫「馬鹿な事を言わないで!何で私が自分の別荘で人を殺さなきゃいけないの!?」
花陽「落ち着いて真姫ちゃん!私達は全員疑われているよ!」
絵里「そうよ真姫、悲しいけれど、身の潔白を証明しなければいけないのよ・・・。」
凛「そうにゃ、私だって昨夜のアリバイを証明しようと必死に頭働かせているんだよ?」
雪穂「そうですよ・・・キツイ言い方かもですが、真姫さん、自分の潔白を証明する何かを探した方がいいんじゃ・・・。」
穂乃果「・・・そうだよ真姫ちゃん・・・。私達は等しく容疑者。
だから亜里沙ちゃんに協力しよ?」
皆、何故か亜里沙だけは犯人ではないと思っているのか、誰も亜里沙のアリバイについては聞いてこない。
・・・当たり前だ。
探偵が犯人ではいけないと・・・ノックスでもヴァンダインでも決まっているのだから・・・。
黒の女「あ、当然だけど亜里沙は犯人ではないわよね?」
ピンクの女「当たり前じゃない。」
ピンクの女『亜里沙は犯人ではないわ。』
黒い女「この世界には赤字は無いからねぇ・・・やり辛いわぁ・・・。」
メンバーは疑われているのは全員同じ、と言わんばかりだが、場の空気はそうではなかった。
何故なら亜里沙は真姫以外のアリバイを証明できるというのだ・・・。
それが本当ならば真姫だけが容疑者になる。
時間が進むたびに真姫の立場は危うくなっていく・・・。
真姫にとっては自分の別荘なのにも関わらず、針の莚に座っている気分だった。
バンッ!
真姫は机を叩くと立ち上がった。
真姫「ばかばかしいわ!私だけアリバイがないからって犯人に仕立て上げるなんて・・・・。こんな屈辱初めてよ!!」
穂乃果「じゃあどうするの?無いんだよね?でも私達にはあるよ?無いなら真姫ちゃんが犯人だよ?真姫ちゃんが人を殺した事になっちゃうんだよ?真姫ちゃんが海未ちゃんとことりちゃんと希ちゃんを殺した事になるんだよ?そうじゃなかったら早く証明してよ!!アリバイを!!できないの!?じゃあ真姫ちゃんが犯人だよね!?」
絵里「穂乃果!!落ち着きなさい!!真姫もよ!皆少し疲れているのよ・・・。
思えば朝食も食べてないわ。少し休みましょう・・・。」
花陽「そうですね・・・、少し疲れているんですよ。」
雪穂「あっ!真姫さんどこにいくんですか!?」
真姫「アリバイ捜しも犯人捜しもくだらない。
私達がする事じゃないわ! 明日になれば警察が来て、全てが解るのよ。
私達が探偵ごっこをする必要なんてないの。
私は自分の部屋で引きこもっているわ!いいわね!」
花陽「そんな!今一人でだなんて危険すぎます!」
真姫「うるさい!!私を疑うのならご勝手に。
全ては警察が解決してくれる。
それじゃあね。」
亜里沙「真姫さん!待ってください!今離れるのは危険です!」
真姫「うっさい!あんたが言った癖に何を言っているのよ!!」
ばんっ!!
全員に見送られながら真姫はリビングを退室する。
・・・真姫だってミステリー小説くらい読んだ事はある。
最初に不和を持ち出して一人になる者が次の犠牲者になる、
というミステリーのテンプレな行為を自分がしていると当然わかっていた。
が・・・真姫には部屋を抜け出さなければいけない理由があった。
真姫はにこをさらわれて脅迫されているのだ。
もうじき約束の15時。
これから30分の間は、管理室のロッカーに隠れなければいけない。
海未達が殺された後のこの命令は、自分を次のターゲットに選ぶと疑うには十分だった。
相談する事も考えたが、人質を取られて、身近で監視していると思われる犯人の前では出来なかった。
真姫はその命令に従う事で、にこの安全を守っている被害者である事を主張するしかない・・・。
約束の時間が近いので真姫はどう客間を抜けようかと思っていたがいい口実が出来て良かった。
・・・今はどんな卑劣な罠でも逆らえない。
にこはメンバーの中でも大事な親友。
守らなければいけない・・・。
真姫「・・・。」
真姫は管理室のドアを開ける。
管理室のドアに鍵がかかっていたら・・・と危惧したがそんな事は無かった。
この部屋に先ほど電話をかけてきた者がいる。
真姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
今真姫は自室にいる事になっている。
その真姫が今この場で殺されたら、おかしな事になってしまうのではないか?
そんな事を考えながら、覚悟を決める。
いつまでもここにいると部屋から出てきたメンバーに鉢合わせしてしまうかもしれない。
真姫「いいわよ・・・犯人の顔を見てやるわ・・・。」
真姫はゆっくりとドアを開ける。
真姫「・・・。」
管理室の空気は冷え切っていて、誰かがいたような、そんな温かい空気と言えばいいのだろうか?は無かった。
ただ窓を叩く雨の音が聞こえるだけだった。
真姫は周囲を見渡した。
どうやら管理室には誰もいないらしい。
奥の方にポツンとロッカーがある。
ロッカーを開けるとそこには箒が3本と塵取りが1個入っていた。
箒と塵取りを覗けば入れそうだ。
真姫はそれらを取り除く。
・・・中には特に何も無かった。
この中に犯人がいるとは思わないが、指示の書かれた紙はあるかと思っていたのだが・・・。
真姫「この中に30分・・・結構きついわね・・・。」
真姫は悪態をつけながら中に入る。
ロッカーの隙間から光が少しだけ射したがそれでも中は真っ暗だった。
真姫「あ、時計するの忘れちゃった・・・。」
これでは何時真姫がロッカーから出ればいいのか分からない。
真姫「どうしよう・・・。」
真姫は途方にくれる。
しかしやるしかない。
真姫「それにしても一体だれなのよ本当に・・・。」
悪態の一つでもつかないと、もしこの部屋に犯人が入ってきて、このロッカーを開けてきたら・・・そんな悪い妄想ばかりしてしまう。
犯人は昨日碑文を解かれていて、亜里沙と雪穂が飛び入りで来ていたにも関わらずそれを知っていた人物・・・。
真姫「考えたくはないけど・・・やはりメンバーの誰かなのかしら・・・。」
碑文を解いたことは親にもまだ言っていない。
真姫「でもメンバーは私の家庭の事情は知らないはず・・・。
じゃあ誰が・・・。」
電話の者に全てを覗かれているようで鳥肌が立つ。
真姫「っ!そういえば一度海未にこの事を相談した気がする・・・!」
家庭の事情が原因で練習に集中できない事があった。
それを海未はいち早く気づいて相談に乗ってくれた事があったっけ・・・。
あの時はうれしかったなぁ・・・。
真姫「って事は海未が・・・?でも海未は殺されたはず・・・。」
どういう事なのだろうか・・・?
もしかしたら海未はメンバーにこの事を話していたり・・・?
しかしこの事はかなりのヒントになるかもしれない。
警察に話すとしよう。
真姫「でも・・・どういう事なのかしら・・・。」
謎が次々と生まれる。
もう沢山だった。
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
その時、扉が静かに開く音がして真姫は思わず声を出しそうになる。
真姫「っ・・・!!」
花陽「開いていたんですね・・・。」
その声は花陽だった。
どうやら施錠されていると思っていたらしい。
真姫(花陽が・・・どうしてこの部屋に・・・!?)
足音が入ってきて、扉を閉めて、チェーンをかける音が聞こえる。
真姫(まさか花陽が・・・犯人!?)
真姫の頭がオーバーフローを起こしている。
この場で真姫に危害を加えるつもりなのか・・・?
花陽がロッカーを開けて何をするのか・・・真姫は怖くて想像もできなかった。
真姫(ひっひィィィィィィ!)
花陽はロッカーに近づいてくる。
真姫の心臓はこれ以上ないほど音を発していた。
真姫からはロッカーの隙間から辛うじて花陽の姿が見える。
花陽「ここなら・・・大丈夫ですね・・・。」
花陽は真ん中でしゃがみこむと・・・手を目にあてた。
・・・何をしているんだろう?
電話の者は花陽じゃないのか・・・?
いや、もし花陽が電話の者じゃないとすれば・・・。
真姫(!っもしかして・・・!)
真姫(電話の者が来る前に花陽が来てしまって、花陽が施錠をしたから電話の者は入りたくても入れないんじゃ・・・!)
電話の者は花陽が管理室に来ることを計算に入れていなかったのだ・・・。
そう考えると・・・チャンスは今しかないのかもしれない。
花陽は話が分かる人だ。
もし穂乃果だったら気が動転しているからうまくいかないだろう。
花陽には全部を打ち明けて助けを求めるか・・・?
いや!それが何かの拍子でばれて、にこが殺されてしまうかもしれない・・・。
花陽に相談しても事態が改善するとは思えない。
それに花陽も仲間かもしれない。
やっぱり余計な事はしない方がいい・・・。
打ち明けるのは危険すぎる・・・。
花陽「っ・・・うぇっ・・・。」
その時何か花陽が鼻をすするような音が聞こえてきた。
真姫(これは・・・。)
真姫はなんだろうと思い耳を傾ける。
花陽「っうぇ・・・うええええええええん!」
・・・それは花陽が泣いている所で、真姫は茫然とした。
真姫(そうか・・・花陽は・・・メンバーが亡くなった事を一人になる事でようやく泣けるようになったんだ・・・。)
花陽と初めて会った時は何をするのもおずおずとしていて、泣き虫な印象だった気がする。
それが、今では仲間を気遣って、泣くのを我慢するように・・・。
真姫「・・・・・・・・・・・。」
真姫は花陽が泣き終わるまで、俯いていた。
真姫(こんな優しい花陽が犯人の訳ない・・・。
そうと決まれば・・・っ!?)
真姫がロッカーを開けようとしたその時、
花陽「だ、誰ですか!?」
真姫(!!?)
花陽が急に立ち上がった。
真姫(気づかれた・・・!?)
しかし花陽はロッカーの方を向いてはいない。
ロッカーの隙間からだから少ししか見えないが・・・花陽の肘を見る事ができた。
この事から花陽はロッカーとは反対方向を向いているのだとわかる。
花陽「な、どこから入って・・・っ何ですかそのナイフは!?やめてください!」
ガタンガタン!!
花陽が視界から消える。
音から誰かと争っているのは確かだった。
でもチェーンが掛かっているのにどうやって・・・?
真姫(いや!誰がとかどうやってとか、そんな事は考える時間はない!)
恐らく犯人が花陽の命を奪おうとしているのだ。
ここを飛び出して、加勢した方がいいのでは・・・?
それとも人を呼びにいくとか・・・。
しかしそれをしたら何故ここに隠れていたのかを問い詰められるし、いやでも仲間の命には・・・。
こんな事を考えている場合ではない。
今すぐ助けないと・・・でも助けたら・・・にこの命を見捨てる事になるかも・・・。
でも、犯人が一人とも限らないんじゃ・・・?
ここでもし犯人の一人を捕まえたとしても、もし二人以上いたら・・・。
花陽の命と、にこの命。
二人とも親友なのに真姫はそれを天秤に掛けている。
なんて罪深いのだろうか・・・!
ガチャン!!
その時扉が開き、チェーンを引っ張る音がした。
誰かが扉を開けようとしたのだ。
凛「かよちん、そろそろ部屋に戻った方が・・・かよちん!?」
花陽「凛ちゃん!た、たすけ・・・グホオ!」
凛「かよちん!?かよちん!!どうしたの!!かよちん!!!開けて!!ここ開けて!」
花陽「ぐっ・・・あっ・・・・・・・・・・・・。」
凛「かよちん!!!誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!誰かきてえええええ!!」
凛が大声を上げながら廊下を走る。
部屋は静まり返った。
真姫(これは・・・もしかして・・・。)
真姫は恐ろしい想像をする。
今、真姫は花陽を殺した電話の者と同じ部屋にいるんじゃないのか!?
ならば何故犯人は逃げずにこの部屋にいるのか。
ロッカーの隙間からは何も見えない。
何も聞こえない・・・。
真姫(!っもしかして・・・。)
犯人が息を殺してこのロッカーの隙間から見えない所で自分が飛び出してくるのを待っているんじゃ・・・!
花陽が死んだ今、この部屋にいつまでも残っているのはマズイ気がする・・・。
でもどうすれば・・・。そもそもこのロッカーをでていいのかすらわからない・・・。
すると、大勢の足音が聞こえてくる。
真姫は再び息を殺して気配を断った。
凛は全員を連れて駆け戻ってきた。
絵里の手にはコンパクトな斧が握られていた。
凛は扉を開けようとしてチェーンが掛かっているのを確認して絵里に合図する。
絵里はチェーンに斧を振り下ろした。
ガンガンッ!!ガツンッ!!
絵里は斧を振り下ろし、三回目でやっとチェーンが切れた。
凛「かよちん!!!」
絵里を押しのけて凛が中に飛びこむ。
そしてその後に残りのメンバーも続く・・・。
凛「かよちん!!しっかりして!!!かよちいいいいいいいいいいいいいんん!!!」
真姫は凛の叫び声を聞くことで、もはや花陽は手遅れだと理解した。
雪穂「こんな・・・ひどい・・・。」
凛「かよちん!!かよちいいいいいいん!!誰か医者を!医者を!!」
絵里「こんな事って・・・。花陽が休むと言って出て10分くらいよ!?なのに・・・。」
穂乃果「ひどい・・・!また首を切られている・・・!ひどい!!」
雪穂は近くの部屋から毛布を持っていき、花陽の遺体にそれをかける。
毛布が血を吸って赤く染まった。
雪穂「くっ・・・。見ていられないわ・・・。」
穂乃果「・・・ことりちゃん達と・・・同じだ・・・。首が縦にぱっくり・・・いやあああああ!」
凛「だから一人じゃダメって言ったのに・・・うわあああああああああああああ!!!」
絵里「多分犯人は油断してバラバラになるのを待っていたのね・・・。」
凛「くっそおおおおおおおお!!!!!どこにいるの!!?」
雪穂「・・・っ待ってください!!おかしくないですか!?
窓も閉まっていて、この部屋にはチェーンがかかっていたんですよ!?
犯人はどこから脱出したんですか!?」
絵里「そもそもどうやって部屋に入ったのかしら・・・。
この部屋は施錠されていたのに・・・。」
穂乃果「もしかして・・・密室殺人って訳なの・・・!?」
凛「そ、そんな・・・。あ、でもドラマとかで見たけど窓ごと外せるようになっているとか・・・」
亜里沙「それはありません、確認しましたから。」
絵里「亜里沙・・・!」
穂乃果「今までどこに・・・。」
亜里沙は廊下に立っていた。
亜里沙はこの部屋で何かあったかを知るや凛たちとは逆に走って行った。
どうやら外に行き、外からこの部屋に入る事が出来るかを調べていたらしい。
亜里沙「死体は首から縦にぱっくり、から居ました。
室内はどんな感じですか?」
絵里が廊下まで行き、説明する。
絵里「扉にはチェーンがかかっていて、私達は切断して入ったわ。
窓も施錠されているわよ。」
亜里沙「奥は何をもめているんですか?」
亜里沙が管理室の中を軽く覗き込むと、凛と穂乃果と雪穂が言い争っているのが見えた。
凛は花陽の遺体をリビングに運びたいと主張しているようだった。
しかし穂乃果と雪穂がそれを止めている・・・。
凛「海未チャン達の死体はそうしたらどうなっていたのよ!?消えちゃったんだよ!?
かよちんも消えたらどうするのよ!?犯人は殺すだけじゃなくて遺体に残酷な事をするつもりなのかもしれないんだよ!?」
雪穂「でも・・・警察が来たときに・・・その・・・。」
凛の言い分も分かる。
海未達の遺体は犯人によって運び去られた。
絵里「亜里沙・・・その、今回は遺体を運ばせてもらうわよ?」
亜里沙「・・・いいでしょう、どうぞ。」
絵里は近くの部屋から持ってきたもう一枚の毛布でタンカを作り、凛と協力してその上に乗せる。
毛布から血が垂れていて、この大量の血の出所を考えるだけで嗚咽がでた。
亜里沙「あ、すいません。どきますね。」
亜里沙は廊下の今いる位置は邪魔だと思い、位置を変える。
凛「かよちん・・・かよちいいいいいん!」
絵里「花陽は・・・2階のリビングに寝かせるわ。」
雪穂「でもどうやって中へ・・・。こんなの不可能だよ!!!」
亜里沙「・・・。」
亜里沙は部屋を観察する。
その目に焼き付ける様に、繊細に。
亜里沙の記憶力は探偵権限によって写真並になっている。
ならばこの数秒間びっちりと見るだけで十分なのだ・・・。
後は頭の中で思い出しながら推理すれば良い。
亜里沙「今日ほど血を見る日も無いでしょうね・・・。」
亜里沙「・・・ん?」
亜里沙はロッカーを見つける。
箒などをしまう、変哲もないロッカー。
しかし・・・ロッカーのまわりには箒やちりとりがある・・・。
まるで誰かが箒や塵取りを出して何か大きい物を入れたかの様に・・・。
亜里沙「・・・。」
亜里沙はロッカーに近づく。この大きさなら、もしかしたら・・・。
亜里沙はロッカーに手をのば
ガシン!
絵里「こーらいい加減にしなさい!行くわよ!」
すのを絵里が肩に手を置いて止め、亜里沙を引きずった。
亜里沙「・・・まぁいいでしょう。」
凛「ほら早くするにゃ!!」
凛が急かす。
亜里沙はロッカーをにらみながらリビングに戻るのだった。
真姫(・・・、行ったかしら・・・。)
真姫は汗を伝うのを感じながら亜里沙たちの足音が聞こえなくなるのを聞いた。
真姫は慎重にロッカーを開けてゆっくりと部屋に飛び出す。
・・・大丈夫だ。誰もいない。
真姫(鍵をかけられなくて良かった。)
もし施錠されていたら部屋をでた後に施錠が出来なくておかしなことになる。
真姫(とにかくここから早くでないと・・・。)
真姫は自室にいる事になっている。
そこで寝ていたとでも言おう。
真姫はそう思い扉を開ける。
廊下には誰もいない。真姫は急ぎながら駆け足で自分の部屋へ移動する。
真姫の部屋は3階だ。
真姫は階段を上がって2階に上がる。
皆はおそらく2階のリビングにいるのでここを上がれば・・・!
亜里沙「あれ、真姫さん。」
真姫「ヴェエエ!?あ、亜里沙!?」
階段を上がり切ろうとしたその時、リビングからひょいと顔を出した亜里沙と出くわす。
亜里沙「・・・ちょうど今真姫さんにも知らせようと思っていたんですけど。」
真姫「・・・何?何かあったの?なんか外で騒いでいたけど。」
真姫は寝ていたという言い訳を捨てて『聞こえていたから感心を持って外に出ようとした』という話の流れに持っていこうと考える。
亜里沙「・・・今真姫さん、階段を上がっていく所でしたよね・・・?どうしたんですか?」
真姫(クソッ!階段を上がっている所を見られていたか・・・!)
真姫は心の中で舌打ちをした。
真姫「外がしばらく騒がしかったから様子を見ようと1階まで下りてみようと思ったのよ。
そしたらもうあなた達が上がった後だったから一人で行くのは怖くなって途中で帰ってきたの。」
亜里沙「・・・そうですか。
私は探し物を・・・と思って。
ほら、大変な事になったじゃないですか・・・?」
亜里沙が深海を覗き込むような目で真姫を見る。
亜里沙はもう真姫を不審がっているのだ。
だからその場にいなかった真姫が知らないはずの事を話させようとしてきている。
殺人が起こった事を知らないふりをすれば・・・大丈夫だ。
真姫「・・・管理室で何かあったの?」
亜里沙「・・・・・・・。」
真姫「・・・ど、どうしたの?」
亜里沙「・・・私は今探し物をすると言いましたが何処でとは言っていません。
何故管理室だと思ったんですか?」
真姫(しまった・・・!)
真姫「あそこはゴミとかゴチャゴチャしていて足元が見えないからね。
私もよくあそこでイヤリングをなくしたから、もしかしてと思って。」
亜里沙「・・・。」
真姫「・・・・・・・・・・・・。」
亜里沙「・・・そうですか、 実は真姫さんにお伝えしたと思いまして、花陽さんが殺されました。」
真姫「・・・えぇ!?それは本当なの!?」
いかにも今知ったかのように振る舞う真姫。
亜里沙「・・・はい。それも含めてちょうど皆さんに今から大事な話がありまして・・・。
真姫さんには不愉快だと思いますが一度、来ていただけませんか?」
真姫「・・・。わかったわ。」
亜里沙が真姫を疑っている以上、下手な事は出来ない。
しかも階段を上がってくる所を目撃されてしまった。
真姫は亜里沙とリビングに向かうのだった。
リビングに行くと、凛がオイオイと泣いていて、穂乃果と雪穂がそれを慰めている。
絵里は部屋を意味も無く歩き回っていた。
亜里沙「皆さん、真姫さんが見つかりましたので、重要なお話ししたいと思います。」
真姫「・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
真姫が入室した瞬間、部屋の温度が下がった気がした。
真姫(大丈夫よ!大丈夫!)
真姫は不審がられているがロッカーに隠れていただけだ。
殺人は犯していない。
警察に話そう。
それまでの辛抱・・・。
にこが人質な今、この状況を今打ち明ければ犯人の耳に入り、にこが殺されてしまうかもしれない。
絵里「重要な話?」
亜里沙「うん。最初の事件から全てを整理したいと思います。」
真姫「そういう事なら私は・・・。」
亜里沙「まぁそうおっしゃらず。お聞きくださいな。」
真姫「・・・。」
真姫はしぶしぶソファに座る。
凛が気を効かせて扉を閉めた。
さらに、防犯のために鍵を閉める。
カチャン
真姫にとってその音は自らを閉じ込める牢獄の錠前に鍵をする様に感じた。
・・・真姫は気づいていない。
探し物があって外に出たはずなのに、真姫に会った途端それをせずに部屋に戻った亜里沙の真意に・・・。
亜里沙「犯人が・・・わかりました。」
凛「・・・っ!?嘘でしょ!?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
黒い女「あら、少し早いわね。もう解けたの?」
ピンクの女「あらら・・・ふふふふふふ。お手並み拝見・・・、フフフフフフフフ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
15:40 二階リビング
亜里沙「海未さん、ことりさん、希さん、花陽さんを殺した犯人は・・・。」
亜里沙「真姫さん、あなたですよね?」
亜里沙はゆっくりと真姫に指をさす。
真姫「・・・何を言うかと思えば私が犯人・・・?もしかして話し合いってその事?」
亜里沙「はい、そうです。
あなたが4人を殺したんですよね?」
真姫「冗談じゃないわ!私は何もやっていないわよ!」
絵里「・・・真姫をかばう訳では無いけど、証拠も無しに言う物じゃないと思うわ。」
凛「そうだよ!そこまで言うからには証拠はあるんだよね?」
亜里沙「もちろんです。
これから説明させて頂きます。」
亜里沙「まず花陽さん殺し、これはとてもシンプルです。
真姫さん以外は常に私達は一緒にいたのですから。」
それはこれ以上もない単純な答えだった。
一人以外全員のアリバイが解る時間に殺人が起きた。
つまりアリバイが無い人物が犯人・・・。
穂乃果「これ以上もない、というかどう考えてもそれしか考えられないよ・・・。
真姫ちゃん以外に花陽ちゃんは殺せない・・・。」
真姫「知らないわよそんなの!アリバイがないからって犯人な訳!?」
亜里沙「じゃあお聞きしますが、あなたは花陽さんが殺された時間、どこにいたんですか?」
真姫「・・・亜里沙には言ったけど、部屋で寝ていたわよ。」
亜里沙「それを証明できる物は・・・?」
真姫「ないわよ!!」
絵里「でも待って、おかしいわ。
あの部屋は密室だったはずよ。
真姫が犯人だったとしてもどうやって・・・。」
亜里沙「簡単ですよ、あの部屋にずっと隠れていたんです。」
凛「えっ!?」
亜里沙「真姫さんは部屋にいたと言っていますが、私は1階の階段から上がる所を目撃しています。
例えばですが、花陽さんを指定の時間にメールか内線で管理室に呼び出すんです。
後は予め隠れていた真姫さんが花陽さんを殺して扉にチェーンを掛けて自分は隠れる。
例えばロッカーとかどうでしょうか?
これで密室殺人の完了です。」
絵里「そう言われてみれば、確かにそうかもだけど・・・。」
真姫「ふざけないでよ!私が隠れていたって証拠でもあるの!?それに最初の事件はどうなるのよ!?」
亜里沙「それもお話しします。
昨日の24時ごろ、インゴットが見つかった後です。
その場で解散となりました。」
真姫「そうよ!つまりその時点で全員のアリバイは解らなくなるじゃない!」
亜里沙「そうですね・・・普通なら、その通りです。
なので、私はその時にちょいと仕掛けをしておいたんですよ。」
雪穂「仕掛け・・・?」
亜里沙「そう、全員のアリバイを追える仕掛けをね。」
亜里沙はそう言ってある物を出した。
絵里「ガムテープ・・・?」
亜里沙「うん。順番に説明していくね。
解散になって二階に上がった後、私は忘れ物があると言って3階に上がらなかったでしょ? あの時皆が3階に上がった後、私はこのガムテープをことりさんの部屋以外のメンバーの扉に貼りました。」
凛「えっ!?じゃあ、あれは亜里沙ちゃんが・・・。」
亜里沙「その後黄金の置いてあった部屋に行き、穂乃果さんとお話しをしました。
まぁ内容はここでは割愛しますけど・・・。
そして穂乃果さんはことりさんに話があると呼ばれていたのでことりさんの部屋に向かいます。 それからごめんなさい、私は穂乃果さんの後を着いていきました。」
穂乃果「えっ!?」
亜里沙「そして穂乃果さんが部屋に入ったのを見届けてから、私はこのガムテープをことりさんの部屋に貼りました。」
凛「どういう事にゃ・・・?」
亜里沙「何しろ黄金が発見されて何が起こってもおかしくは無いと思っていたので。
私は何かの事件が起こると思って予めアリバイを確認できる細工をしておいたんです。」
雪穂「そのガムテープでどうやって全員のアリバイを追えるって言うの・・・?」
亜里沙「このガムテープはドアがほんの少しでも開けられたら破れる様に細工して貼りました。
ロシア語でサインもしましたので複製も不可能です。
つまり、事件発覚時にこのガムテープが破られていない部屋にいた者は部屋から出ていないという事です。
皆さんから死体の証言を聞いた所、毒殺やトラップなどの遠距離から殺せる物ではなかったので、 発覚時まで別の部屋にいた者のアリバイは最初の事件においては保障されます。」
凛「確かに・・・そういう事になるにゃ・・・。」
亜里沙「はい。10人分とは言え、中々手間でしたけどね。」
雪穂「なんてことを・・・。」
傍から見たら不審者極まり無い行動だ。
しかし彼女は普通の人間ではない・・・。
同じ世界をループしてきた魔女の駒・・・!
亜里沙「事件の発覚時、私の部屋はことりさんの部屋のとなりという事もあり、穂乃果さんの悲鳴にはすぐに気づきました。
私はガムテープの有無を確認した後メンバーに連絡。
お姉ちゃん達が集まった所で穂乃果さんの部屋に行ってもらい、私は外にある事を確認しに行きました。」
亜里沙「事件発覚時の各部屋のガムテープはこんな風になってました。」
事件発覚時のガムテープの有無
絵里 有
希 無
にこ 無
花陽 有
真姫 無
凛 有
海未 ことり 穂乃果 有
亜里沙「この事からも、穂乃果さん、花陽さん、凛さん、お姉ちゃん、雪穂はアリバイがあるという事になります。
にこさんと希さんは襲われた時に犯人が開けたという事で説明出来ますが・・・真姫さん、あなたはどういう事なんですかねぇ・・・?」
真姫「・・・くっ!」
絵里「あのガムテープからそんな事が分かるなんて・・・いやでもちょっと待って?
部屋からでていない事が証明されたからって穂乃果は違うんじゃない?同じ部屋なんだから。」
亜里沙「ことりさん達は刺殺だったんですよね?私はお姉ちゃん達にことりさんの部屋に向かわせました。
あの時、穂乃果さんは部屋から出ましたか?」
凛「ううん。」
亜里沙「私は最初にことりさんの部屋に入った時、徹底的に部屋中を調べつくしましたが、凶器は出てきませんでした。
これが何を意味しているかは分かりますよね?」
雪穂「なるほどね・・・刺殺なら必ず凶器があるはずだけど、
お姉ちゃんが部屋に入ってから絵里さん達が開けるまで扉が一度も開いていない事はガムテープが証明している・・・。」
凛「もし穂乃果ちゃんが殺したなら部屋に必ず凶器があるっていう訳にゃ?」
亜里沙「その通りです。
先ほども言いましたがことりさんの部屋は事件発覚時はガムテープは付いていました。
ことりさんの部屋は徹底的に調べましたが凶器はでませんでした。
ことりさんの部屋から出る前に皆さんの身体検査も行いましたが凶器は出ませんでした。
これがどういう事か分かりますか?」
雪穂「・・・お姉ちゃんが殺人を起こす事は共犯者がいても不可能って事だね・・・?亜里沙。」
亜里沙「その通り!これによりガムテープを貼ってから殺人が発覚するまでの間にことりさんの部屋で殺人を犯す事は出来ない、 という事が証明されました。」
絵里「じゃあ真・・・犯人はいつ海未達を殺したのよ?」
亜里沙「私が隠し部屋で穂乃果さんと話している時にだよ、お姉ちゃん。
ことりさんの部屋にガムテープを貼ったのは、穂乃果さんが部屋に入ってからだから、ガムテープは破れていなくても殺せるって訳。」
真姫「ちょっと待って!扉から入れなくても窓から入る事は出来るんじゃないの?
いくら三階とはいえ、梯子等を使えば上るのは不可能じゃないんじゃない?」
亜里沙「先ほどは言うのを忘れていましたが、私はこの屋敷を出入りできる扉にもガムテープを付けていました。
このガムテープを付けたのは私たちが海で遊び終わり、全員が屋敷に入った事を確認した時です。
この屋敷の出入り扉は一つしかなく、ガムテープの有無を確認した時は破れていませんでした。 つまりガムテープを貼ってから事件が発覚するまで扉は一切使用されていませんよ。」
真姫「・・・じゃ、じゃあ外部犯かもしれないじゃない!例えば窓から入ったとか、私達が海で遊んでいる時に屋敷に侵入したとか!」
亜里沙「そうですね。しかしもちろん予想していました。
もちろん貼らせて頂きましたよ?
窓にもガムテープを、今度はこの屋敷の全ての部屋にね。」
真姫「!?なんてことを・・・。」
絵里「あの雨が降って風が吹いている中、全部の部屋を・・・。」
穂乃果「信じられない・・・。」
それはどんな風に想像できるだろうか・・・。
雨の中、夜中にまだ何も起きていないにも関わらず、一階から三階までの全ての部屋の窓にガムテープを貼り続ける。
それは遠くから見たら毒蜘蛛が這いずる様に見えたかもしれない・・・。
皆、亜里沙の行動に狂気を感じるしか無かった。
殺人事件が起こるなんて誰にも分からないのに何故そこまで・・・。
亜里沙以外の、メンバー全員の疑問に答えられる人間はいない・・・。
時をかけた事のある人間か、時をかける事の出来る魔女にしか答えられない・・・。
真姫「あなたって人は・・・せっかく招いてあげた人の屋敷にペタペタと勝手に・・・。」
亜里沙「真姫さん、あなたには私を責める権利があります。
しかしそれはあなたが殺人をしていないという証明をしてからです。
・・・話を戻しましょう。
第一の事件で私がことりさんの部屋に行くのが遅かったのは、窓にガムテープが付いているかどうかをチェックしに行ったからです。
結果、ガムテープは全ての窓についていました。
窓から侵入するのは不可能です。」
真姫「・・・。」
亜里沙「それに、海で遊んだ時の話を言い出すならば、私は全部屋を確認し、窓の戸締りを確認しました。
その時に扉の施錠をしたのは真姫さんでしたし、鍵を持っていたのも真姫さんですよね?
扉の鍵穴も確認しましたが、無理やり開けられた後はありませんでした。
この状況でガムテープが扉につけられる前に外部犯が入ったならば、あなたが中に招き入れたと考えてしまいますが・・・?」
亜里沙はにやりと笑いながらあざとく聞き返す。
真姫「・・・いや、それは・・・。」
真姫の言った事が次々と論破されていく・・・。
もう真姫の頭はこんがらがっていた。
真姫は殺人を犯した覚えは無い。
無いのだが、状況を客観的に見てみると真姫にしか犯行は無理かもしれないと思えてきたのだ。
自分以外、全ての者が解散してから部屋を一歩も出ていない事が証明され、外部犯の可能性も無くなってしまった。
正直第三者が自分と同じ状況だったら間違いなく自分も疑っていただろう。
・・・しかしやっていない物はやっていないのだ。
真姫は何か、他にことり達を殺す事の出来るトリックを苦し紛れに考えて亜里沙に訴えるが、
ガムテープの存在によって論破されていた。
黒い女「さすがじゃない。
前回の失敗を活かしているわね。」
ピンクの女「そうねぇ。記憶がないのによくぞここまでやれる物だわ。」
黒い女「亜里沙は言っていなかったけど、窓と扉に貼ってあったガムテープが生きている事で、 中から外部犯を招き入れる事も出来なくなったわね。」
ピンクの女「あら本当ねぇ、つまりこれで完璧に外部犯の事は否定されたのかしら?」
黒い女「さぁね。でもこれでことりの部屋にガムテープが付けられてから、
事件が発覚するまでに殺人を起こすのは無理だと証明されたわね。」
ピンクの女「もちろんこれは、ことりと海未の殺人に関してだけどね。」
黒い女「窓と扉が封じられた訳だけど、まだ誰にも見つからない秘密の扉から入ったとか言い訳が残っているけれど・・・?」
ピンクの女「そんなせこい事しないわよ・・・、これはミステリーなのにそれがオチなら萎えるでしょ? 少しヒントと補足でもしておこうかしら。」
ピンクの女『ことりの部屋にガムテープが貼られてから事件が発覚するまでの間にことりと海未は殺されていないわ。
ついでにもう一つ、ガムテープが破られた事、貼られた事を偽装するのは不可能よ。
例えば扉を開けて破った後に真似たガムテープを張り直したりとか、
扉を開けていないのにカッターか何かでガムテープを切って扉を開けた様に偽装した、とかね。
あくまで扉を開けないとガムテープは破れない、と思う様にしておいて。』
黒い女「そうしないと色々崩れそうだしね。」
ピンクの女「事件もいよいよ終盤ね!そろそろあれを起動しときましょうか。」
黒い女「そうね、今度は探偵権限を持たせてるから大丈夫だと思うけど。」
亜里沙が吸いこまれた球体型のジオラマ、その横にもう一つ、それと全く同じジオラマがあった。
ピンクの女「一周目の世界を亜里沙に探偵権限を持たせてもう一度・・・。よくやるわよ全く。」
黒い女「謎が一つでも残ると納得いかないタチなのよ。」
ピンク「そのせいで亜里沙はもう一度仲間の死を味わう事になるけど、それでこそベルンね・・・。」
亜里沙「・・・だからそれは窓にガムテープが貼ってあるので無理ですよ。」
真姫「っ・・・!」
真姫が苦し紛れのトリックを発言し、それを亜里沙によって論破されるごとに、絵里達の真姫に対する不信感は強くなる。
真姫がそれに気づいたのは、もう思いつくトリックが無くなり、周りを見た時だった。
絵里「・・・。」
穂乃果「・・・・・・。」
雪穂「まさか・・・本当に・・・?」
凛「・・・・。」
亜里沙「・・・真姫さん、質問します。
事件発覚時にあなたの扉のガムテープは切られています。
つまり開けた形跡があるんです。
どういう用で開けたのか説明して頂いてもよろしいですか?」
真姫「・・・。」
もはや電話の事を話さなければ自分が疑われてしまう・・・いや、もう疑われている。
真姫「ノックをされたのよ・・・。」
亜里沙「ノック・・・?誰にですか?」
真姫「知らないわよ!今日の朝、電話をしていて切った後にノックされて、出たら誰もいなかったのよ!」
亜里沙「・・・それを証明できる物は・・・?」
真姫「出来る訳ないでしょぉ!?」
亜里沙「さっき電話をしていた、と言っていましたね?それは、誰と、どの様な話をしていたんですか?」
真姫「っ・・・!!」
どうすればいいのだろうか・・・。
ここで話せば、にこの身は・・・。
真姫「・・・プライベートな話よ。ここで言う話じゃないわ。」
穂乃果「はぁ!?あんた今自分がどういう状況に置かれているのか分かっているの!?
プライベート!?そんな事を言える権利があると思っているの!?
さっさと白状しなさいよ!私が殺しましたって!」
穂乃果が真姫の方を掴み襲いかかる。
メンバーは急いで穂乃果を止めた。
穂乃果「離してよ!真姫ちゃんが殺したんだよ!今亜里沙ちゃんが話した事を聞いたら分かるでしょ!? 真姫ちゃんしかいないんだよ!」
亜里沙「・・・ちょっと待ってください。実はまだ解決していない事があります。
こればっかりは真姫さんには出来ない事です。」
絵里「・・・!?そんな大事な事早く言いなさいよ!?それは本当なの!?誰よ!?」
亜里沙「私達が希さんの死体を確認しに行ったとき、死体が消えましたよね?
希さんの死体は真姫さんがやったとしても辻褄が合いますが、ことりさんと海未さんの死体は一緒にいた真姫さんでは無理です。
犯人が単独犯ならば、真姫さんではありません。」
絵里「そういえば・・・そうね、それだけは・・・真姫には無理ね。」
凛「じゃあ、誰が・・・?」
亜里沙「にこさんです、にこさんでも、全ての筋は通りますよ。」
真姫「に、にこちゃ・・・そんな・・・。」
にこはいまだに行方不明。
ガムテープも破られていたので部屋を出て海未とことりを殺し、遺体を隠す事も出来るし、
花陽が予め花陽が管理室に来ると解っていればどこかに隠れていて花陽を殺し、また隠れれば密室の完成となり、筋も通る。
・・・しかし真姫は知っている。
にこは何者かに捉えられていて軟禁ないし監禁されているのだ。
いや、でもあれが自演ならば・・・。
いや、違う!
にこちゃんは被害者だ!
犯人は私とにこちゃんに罪を押し付けるのが目的なのだ!
・・・誰もが疑うならば、自分だけは信じてあげなければいけない。
にこちゃんは親友なのだ。
親友を疑うなんて、ありえない・・・。
亜里沙「どうでしょう真姫さん?真姫さんが犯人でなければ今からにこさんを探しに行きませんか?」
真姫「えっ!?」
亜里沙「にこさんがもし犯人でないのなら、・・・言いにくいですが、にこさんは無事ではないと思います。
先ほど確認しましたが、ドアも玄関の扉もガムテープはまだ付いていました。」
絵里「つまりにこは・・・この屋敷にいるって事ね。」
亜里沙「うん、ついでに希さんやことりさん達の死体を探しに行きましょう。
希さんの死体を私はまだ見ていませんので。」
こうして一同は各部屋を順番に探していくことにした。
外部犯がいる事も考えメンバーはそれぞれ武器を持って移動した。
三階の部屋からメンバーの部屋も含めてしらみつぶしに探していく。
三階の、『ある一部屋』以外を探したが何も見つからなかった。
そしてその『ある一部屋』にたどり着く。
・・・真姫の部屋だった。
真姫「・・・私の部屋なんて探しても何も見つからないと思うけどね・・・。」
亜里沙「それならそれで良いじゃないですか?疑いが少しは晴れるんですから。」
真姫「・・・。」
真姫は釈然としながらも扉を開ける。
そこには・・・
凛「きゃあああああああああああああああ!!!」
絵里「え?え?こ、これは・・・。」
真姫「何を叫んで・・・きゃああああああああああああああ!!!!」
真姫の部屋には・・・希の死体、にこの死体が床に無造作に置いてあった。
凛「お、おぇぇぇぇぇ・・・ひ、ひどい・・・。
・・・あ、あれぇ?どういうこ・・・。」
穂乃果「え、ちょっとこれって・・・え?え?し、死んでる!
そ、そんな!!」
真姫「そんな・・・なんで・・・どうして・・・。」
亜里沙「え・・・?どういう・・・。もしかして・・・。」
絵里「ひどい・・・。」
亜里沙は死体を触って確かめる。
希の死体は首を右上から左下に斜めにからくっぱりと切られていて、第二の口と形容してもいいほどだった。
他に外傷がない事から寝ている間に襲われたのが妥当だろう。
そしてにこ。
にこの口の周りと手首には赤い痕があった。
恐らくロープか何かで縛られていたのだろう。
そんなにこは、腹を同じく右上から斜めに切られていて、少し服を開けたら中が見えそうだ。
二人とも誰が見てもはっきり死んでいると解る。
そんな死体だった。
亜里沙「あれ・・・。これは・・・。」
亜里沙は改めて死体を見て、
亜里沙「どういうこと・・・?」
今の時刻は十七時だ。
希が殺されたとする時間は・・・。
亜里沙は希とにこの死体に触れる。
少し、体温が下がっただけの様に感じた。
亜里沙「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
穂乃果「真姫ちゃん、これ、どういう事?」
穂乃果がぼそっと、それでいてはっきり聞こえる声色で言う。
メンバーはその声から殺気を感じた。
真姫「知らないわよ!こんなんどう考えてもおかしいでしょ!私をハメる為の罠よ!
何で私の部屋に死体があるのよ!こんなん私が犯人ですって言っている様な物じゃない!
私が犯人なら違う部屋に隠すわよ!」
穂乃果「うるさああああああああい!!!じゃあ何でここに遺体があるの!?誰がいつ置いたのよ!?」
凛「確かにそうにゃ!真姫ちゃんの話を信じるなら、真姫ちゃんはずっと自分の部屋にいて、 その後私達と合流したって事だよね?
私達はずっと一緒にいたから遺体を置くことはできないし、真姫ちゃんが自分の部屋にずっといて、それから私達と合流したならば、
犯人は一体誰がいつどうやって真姫ちゃんの部屋に置いたの!?」
真姫以外のメンバーはずっと一緒にいたから遺体を置く事は出来ない。
真姫がずっと部屋にいて、メンバーと合流したならば遺体を置く事は出来ない。
両方が本当ならば遺体を置く事は出来ないのだ。
亜里沙「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・しかし実際は遺体がここにある。
つまり片方は嘘をついている事になる。
もちろんこれは外部犯が存在しない場合の話だが・・・。
ピンクの女「そうなのよねぇ・・・。
真姫が自分の部屋にいたと言っているけど本当は管理室で犯人に脅されて隠れていたのよね。
多分その時に遺体を置かれたんでしょう。」
上界から覗いている魔女からは全てが見えている。
もちろん肝心な所はピンクの女が隠しているので犯人が誰かは見えない。
真姫がロッカーに隠れていた所はピンクの女が特別に見せてくれた物だ。
黒い女にも見えているがそれを亜里沙に教える事は出来ないし、するつもりもない。
亜里沙が一人で推理してこそ価値があるのだ。
ピンクの女「それと、もう終盤だから言っちゃうけど、」
ピンクの女『この事件の犯人はμ’sと雪穂の中の誰かだから。』
黒い女「・・・いいの?一応まだ第三者が介入する余地は残っているけど。」
ピンクの女「これでもノックスを『ある程度は』沿って作ったつもりよ。
こんだけ疑心暗鬼にさせといて全く関係の無い第三者が犯人とか一番白けるでしょ。」
黒い「まぁ・・・そうね。」
ピンクの女「亜里沙、真姫が犯人って事にしちゃいなさいよ。
一応全ての筋が通るわ。
もう悩む必要もない。
疑わしきは黒よ。
甘い蜜がそこにあるのよ。」
黒い女「目の前の宝箱に目を奪われずに、その奥の宝にたどり着く事が亜里沙は出来るのかしらね・・・?」
ピンクの女「ところで、ベルンはこの事件、どこまで解ったのかしら?」
黒い女「・・・大体解ったわよ。
でもそれは上界から真姫が犯人でない事を知っているから解った事よ。
真姫が犯人じゃないと信じる事、そしてそこから明らかになる残酷で悲しい真実を受け入れなければ難しいかもしれないわ。」
ピンクの女「さっすがベルン!まぁ結構ヒントを与えたしね。
これで解けなければ・・・ねえ・・・?」
黒い女「亜里沙の視点からでも十分に解けるわ。
そうじゃなきゃ、意味がないし。
ただ、その真実を信じられるかどうか、亜里沙だからこそ、この事件は難しいのかも知れないわね。」
17:30 3階リビング
その後、メンバーはことりと海未の遺体もどこかにあると思ったのだが・・・しかし見つからない。
あれから手がかりはゼロだった。
凛「ねぇ・・・いい加減白状してよ!真姫ちゃん!あなたが犯人かどうかは知らないけど!
あなたは何かを知っているんでしょ!?どうして黙っているの!?」
絵里「そうよ、真姫、あなたが殺したと疑っている訳では無いのよ・・・?
でもあなたが何かを隠していると私は思っているわ。
教えてよ、私達仲間でしょ?」
真姫「・・・。」
真姫は目から涙を流しながら黙ってメンバーの尋問に耐える。
内心、真姫だって叫びたかった。
にこが殺されて、約束が違う!どういうことだ!そう叫びたかった。
しかし・・・にこの事が無くなっても真姫はまだ家の事を人質に取られていた。
真姫が知っている事を話してそれが犯人に伝わったら、犯人はただちにマスコミに病院の事情を話されて西木野家はオシマイだ。
恐らく電話をした者とことり達を殺した犯人は同じなのだろう。
もう時間は過ぎているが真姫は黄金のあった部屋に指定の時間までは誰も入室を禁じる様に言われていた。
そこに遺体を隠しておいたんだろう。
ことりと海未の遺体もそこにあるのだ。
しかしそれは言えない。
真姫は拳を握りながら目をぎゅっとつむった。
悔しかった。
だが今は、家の為に我慢しなければいけない。
真姫「・・・。」
亜里沙「・・・真姫さん。これ以上黙るつもりなら、私もあなたを犯人と認める事になっていまいます。
何かしゃべってくれませんか?」
真姫「・・・さっきも言ったでしょ?あなたの探偵ごっこに付き合うつもりはないわ。警察が来たら全てを話すわよ。」
穂乃果「・・・!このっ!!」
亜里沙「穂乃果さん!・・・わかりました、真姫さん、あなたを一室に軟禁させてもらいます。いいですね?」
真姫「・・・勝手にしなさいよ、好きにしなさい。」
真姫は希の部屋で軟禁する事になった。
亜里沙「真姫さんは私が連れて行きます。」
凛「一人で!?大丈夫なの!?」
絵里「危険よ!せめて一緒に・・・。」
もはや周囲は完璧に真姫を犯人だと疑わない空気だった。
真姫はそれを他人事のように感じながら、友情なんて、こんな物か・・・と思った。
亜里沙「大丈夫ですよ、皆さんは2階のリビングで待っていてください。
ほら、行きますよ。」
亜里沙と真姫は希の部屋に入った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
希の部屋
真姫「ここにいればいいんでしょ・・・。」
亜里沙「真姫さん、お話ししたい事があります。」
真姫「・・・え?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
17:45 2階リビング
亜里沙「ただ今戻りました。」
絵里「亜里沙!どうだった?大人しくしてた?」
亜里沙「うん、大人しく従っていたよ。
食糧も残していたから明日までは大丈夫だよ。」
穂乃果「でもどうやって閉じ込めたの?中からなら鍵も無く開ける事が出来るけど・・・。」
亜里沙はポケットからボンドを出した。
亜里沙「書個室にありました。
これを真姫さんのいる部屋の扉の鍵穴に塗りました。
これで、真姫さんは扉を開ける事ができません。」
絵里「なるほどね、とりあえずこれで安心か・・・。」
穂乃果「うん。これでもう安心だね!」
凛「でも何で真姫ちゃんが・・・。」
亜里沙「解りません・・・、しかし真姫さんにしか、犯行は不可能なんです。」
穂乃果「そうだよ!海未ちゃん達の時は、真姫ちゃん以外のアリバイはガムテープから証明された訳でしょ?花陽ちゃんの時だって、真姫ちゃんにしか無理だよ!」
凛「確かにそうだけど・・・、っじゃあ海未ちゃん達を隠したのは結局だれなの!?
さっきはうやむやになっちゃったけど・・・。」
亜里沙「恐らくにこさんでしょう。
にこさんの死体は誰も発見していませんからね。
私達が希さんの部屋に行っている間に、どこかに隠れていたにこさんが遺体を隠したんです。
その後に真姫さんはリビングを抜け出した後、待ち合わせていたにこさんを殺害し、管理室に行って花陽さんを殺害したって所ですかね。」
絵里「確かにそれなら筋が通るわね・・・。
でもそれなら何で真姫の部屋に死体を置いたの?
疑いを逸らしたいなら違う人の部屋にするんじゃ・・・。」
亜里沙は自分の推理に茶々を入れられたのが悔しかったのか、少し不機嫌になり、
亜里沙「・・・わーかりました!そこまで言うならある実験をしようじゃありませんか!」
凛「実験・・・?」
絵里「どういう事・・・?」
亜里沙「いいですか・・・?皆さん、耳を貸して下さい。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
亜里沙「・・・という訳です。」
穂乃果「・・・いやでもそれは危険すぎるんじゃ・・・!?」
亜里沙「それは、皆さん次第です。」
凛「でも・・・。」
亜里沙「大丈夫ですよ、任せて下さい。」
絵里「・・・分かったわ、合図を見逃さない様にするわ。」
雪穂「亜里沙・・・。」
亜里沙「大丈夫だよ、雪穂。
くれぐれも、さっき言った事は忘れないでね!」
雪穂「・・・分かった。」
穂乃果「絵里ちゃん、本当にいいの?」
絵里「・・・亜里沙の決めた事よ・・・、それに、まぁ大丈夫でしょう。」
亜里沙「じゃあ解散しましょう、後は指示通りに。」
絵里「分かったわ。」
亜里沙「はい。じゃ、また。」
亜里沙以外の皆が部屋を出る。
亜里沙はそれを見届けた後、部屋の明かりを落としてケイタイをいじり、ソファに向かった。
そこには毛布をかけられている花陽の死体があった。
亜里沙「・・・失礼します。花陽さん。」
亜里沙は無礼の無いように毛布をどける。
あれから時間の経っているせいか、血が服にこびりつき、黒ずんでいた。
亜里沙は死因を確認する。
亜里沙「嘘だよね・・・。」
花陽の首は刺突による穴が開いていて、そこから血が垂れだした後があった。
ランダムに刺されてはいるが、首の中心から左側を多く刺されているようだ。
亜里沙「・・・・・・・・・。」
手を震わせながら、花陽に触る。
亜里沙「あっ・・・。」
亜里沙「・・・っ!」
手に伝わる温もりを感じる。
亜里沙は震える手で花陽に毛布をかけると、拳を握る。
亜里沙「っ・・・くそ!」
その拳をテーブルに静かに押し付けた。
亜里沙「・・・、これが真実ですか、どうして・・・!!!」
誰もいない部屋で嘆きが上がる。
それに応える者は誰もいなかった。
18:00 2階リビング
??「・・・。」
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
体を血に染めた者が、扉を細心の注意を払って開ける。
ボタ・・・ボタ・・・。
その者の足音は無音だったが、体から、ナイフから垂れる血の音によって完璧に無音では無かった。
??「・・・・・・・・。」
その者は寝ている亜里沙のソファの前に立ち、亜里沙を見下ろす。
亜里沙は毛布を頭までかぶっていた。
??「・・・フフフ。」
ポケットに入っていた二本のナイフを両手で静かに持ち、片方を逆手に持ち変える。
その姿は完璧な殺人鬼だった。
両手が凶器でふさがった今の『彼女』は扉を開ける事も、弓を射る事も、ダンスをする事も出来ない。
そういった意味で、彼女は完璧な殺人鬼だった。
??「・・・っ・・・ハァ!!!!」
両手に持ったナイフを一気に毛布を突き刺す。
その後もメチャクチャに何度もめった刺しにする。
ドスドスドスドスザシュザシュグシャソシュソシュグシャアアアアア!!!!!!
ナイフを刺すごとに音が聞こえる。
それはまるで、ナイフが獲物にありつけて狂喜している様だった。
??「っ!!っ!!あぁ!!っ!!」
ドスドスドスドスドスドスドスドシドスドスザシュグシャ!
??「シャアアアアアアアアア・・・えっ・・・?」
何かがおかしい。
その者は思った。
毛布はナイフでめった刺しにしたせいで穴だらけだ。
当然その下にある亜里沙も穴だらけで、血が飛び散るはず。
しかしなんというか・・・人を刺した時の感じるぬちゃっとした音と感触が無いと言うか・・・。
??「・・・っ!?」
その者が刺すのを止めて、毛布を取る。
??「バカな!!」
そこには亜里沙の姿は無く、デカイ人形が置いてあり、ナイフで刺されたからか、
中からは綿は沢山出てきていた。
亜里沙「やっぱり、あなたが犯人だったんですね・・・。」
??「・・・亜里沙!?・・・ちょっ!」
その者が振り向く前に何人かがその者の体の自由を奪い、凶器を弾かれ、毛布やロープで拘束された。
??「・・・くっ・・・。」
カチッ
亜里沙は部屋の明かりを点けると、その者は眩しそうに目を瞑る。
絵里「どういう事よ・・・。」
凛「そんな・・・。」
穂乃果「まさか・・・。」
雪穂「どういう事・・・?」
絵里、凛、穂乃果、雪穂がその者の体を拘束していた。
しかし、四人は拘束した相手を見て、茫然としている。
絵里「これはどういう・・・。
私達は真姫が襲いかかってくるからってメールを・・・亜里沙!?」
亜里沙はそんな絵里の問いには答えずポケットに入っている携帯に手を伸ばす。
亜里沙「真姫さん、もう大丈夫ですよ、入ってきてください。」
??「・・・!?」
メンバー「!??」
その者がやっと目を開けるとドアから真姫が入ってくる所だった。
真姫「・・・あなたが犯人だったのね。」
真姫は憐れんだ目でその者を見る。
亜里沙は残念そうに、しかしはっきりとした意志を持って、指をさす。
亜里沙「犯人は・・・あなただ。」
黒い女「チェックメイト・・・!」
黒い女は興奮ぎみに言いながら席を座り直す。
ピンクの女「あらあら・・・、事件解かれちゃったかー。
やるわねー亜里沙、おめでとベルン。」
黒い女「あら、一週目の方も、ちょうどシメの所らしいわよ?」
亜里沙が吸いこまれたジオラマの隣に、もう一つのジオラマがあった。
ジオラマの空にはホールで対峙している二人の姿があった。
ピンクの女「二つとも解かれちゃったかー。
やっぱ探偵権限はすごいわね。
持たせるべきじゃなかったかなー。」
黒い女「今更変更は受け付けないわよ。」
黒い女「さぁ、ここから探偵にとって一番おいしい所よ。
バッチリ決めなさい、亜里沙。」
一周目の世界(Re)
ことりは刺殺、希は撲殺、海未は毒殺で死亡した。
凛は刺殺、花陽は撲殺、にこは刺殺で死亡した。
穂乃果、雪穂、絵里は全員刺殺で死亡した。
ここはそんな世界。
そんな死者の怨念が渦巻く血塗られた別荘のホールで二人は対峙していた。
一人は西木野真姫。
真姫は服を血で濡らしながらもう一人と対峙する。
その一人は絢瀬亜里沙。
しかし亜里沙は今まで真姫に向けていた身体を後ろに向けた。
??「・・・。」
いつからそこにいたのか、そこには血まみれのシャツを着て、血まみれのナイフを持った者がいた。
その者は笑っていた。
まるで、亜里沙の推理が合っていた事を賛美する様に。
まるで、やっと解放されると言わんばかりに。
亜里沙「残念です、・・・本当に、残念です。」
亜里沙「見ていましたよね?私達を殺す為に。」
亜里沙「そして今までの話を聞いていましたね? 以上の事から、希さん以外のメンバーを殺したのは・・・。」
亜里沙は静かに、その者に指をさす。
亜里沙「犯人は・・・あなたですよね?」
亜里沙「「海未さん。」」
二週目の世界
海未「・・・。」
全身をロープで縛られた海未は抵抗もせず静かに寝転がっていた。
亜里沙「あなたですよね・・・?海未さん。」
その姿は血まみれで、綺麗だった髪は血に染まり、凛々しかった顔は殺人鬼たるに相応しい顔だった。
凛「あ、亜里沙ちゃん、これはどういう事!?
話と違うじゃない!?
自分を囮にして真姫ちゃんが犯人の証拠を掴むから自分がメールしたらすぐに来て拘束してくれって・・・。」
穂乃果「海未ちゃんもだよ!確かに計画ではそういう風にしてたけど・・・。」
絵里「穂乃果!!!!」
真姫「・・・っ!絵里、穂乃果。
今のどういう事なの・・・?計画っていうのは・・・?」
絵里「・・・。」
穂乃果「・・・。」
亜里沙「真姫さん、とその他の皆さん。
各々方が今頭に抱えている疑問は違うと思います。
私が今からそれらを全て説明します。
が、説明する前に言わせて下さい。」
亜里沙は怒っていた。
普段冷静で大人しく優しい亜里沙からは考えられなかった。
亜里沙「もしこれから説明する事が全てあっているならば、
私は今日でμ’sのファンを辞めさせてもらいます。皆さんは最低です、クズです。
よくもまぁここまで・・・。ここま・・・で。」
絵里「亜里沙・・・。」
亜里沙は涙ぐむ。
それだけこれから話す事が辛い事なのだろうか・・・。
亜里沙「・・・、話します、では最初の事件から・・・。」
最初の事件。
海未、ことり、希が殺され、にこが失踪した事件。
しかし、見ての通り海未は生きている。
亜里沙「最初に・・・というかこの別荘で起こった事件ですが・・・。
全て、真姫さんを除いたメンバー全員の狂言ですよね?」
真姫「・・・はっ!?どういう事よ!?私を除いた狂言って・・・にこちゃんや希は実際に死んでいるじゃない!」
亜里沙「正確には狂言のはずだった・・・ですよね?」
真姫「・・・どういう事なの!?凛!あんたも知っているんでしょ!!言いなさいよ!」
凛「・・・。」
亜里沙「さすがに自分達のした事を自分で説明できるほど、開き直ってはいないようですね。
説明に戻ります。
黄金が発見されて、解散した時から皆さんの計画は始まっていました。
目的は真姫さんの持っている、5000万円の入った通帳です。」
絵里「・・・!」
真姫「通帳って・・・黄金が見つかった時に亜里沙からもらったあの通帳の事!?」
亜里沙「そうです、あの通帳です。
ことりさん達は、その通帳を奪う為に今回の事件を起こしたんですよ。」
真姫「どういう事・・・?」
亜里沙「第一の事件の被害者であることりさんと海未さん、にこさんと希さんは死んだふりをして第一の事件を起こしたんですよ。」
真姫「そんな・・・でもさっきも言ったけどにこちゃんと希は死んでいたじゃない。
あれが偽物とは思えないわ・・・。」
亜里沙「はい。真姫さんの部屋で発見した二人は私も検死しましたし、確かに死亡していました。
しかし、最初の時点では生きていたんだと思います。
そもそも真姫さん、思い出して下さい。
私達は真姫さんの部屋で発見した、希さんとにこさん以外の死体を見ましたか・・・?」
真姫「え・・・?そういえば・・・見てないわ!見ていない!」
絵里「・・・。」
亜里沙「最初の事件で死体を発見したのは私と真姫さん以外の全員です。
私が来た時には海未さんとことりさんは毛布でくるまっていたので直接死体は見ていません。
花陽さんの時もそうです。
希さんに至っては、死体すら見ていません。」
真姫「・・・確かにそうよね。
直接死体を見たのは希の部屋でのにこちゃん達が最初だわ・・・。 」
亜里沙「そう考えると馬鹿な話です。
私は皆さんの狂言に踊らされて、必死こいて推理していた訳ですから。
最初は全然解りませんでしたよ。
まさか私と真姫さん以外の全員がグルになっているなんて、思いもしませんでしたから。」
海未「・・・どこで気づいたのですか?」
亜里沙「初めて狂言の可能性に気付いたのは、希さんの死体を見た時です。
希さんの首は縦にばっくり切り裂かれていました。
でも・・・。」
亜里沙は雪穂の方を向く。
雪穂「亜里沙・・・。」
亜里沙「・・・、雪穂、あなたはこう言っていたよね・・・?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>絵里「思い出したくはないだろうけど・・・希も首を?」
雪穂「・・・っオエっ。はい。首を横に思いっきり切られていました。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
雪穂「・・・!」
亜里沙「雪穂は首を切られていたとか、曖昧な表現では無く、はっきりと『横に切られていた』と言っていました。
おかしいですよね?
証言と遺体の状態が違うだなんて。
おかしいと思った点はまだあります。
それは希さんとにこさんの死後硬直時間が矛盾していたからです。」
真姫「矛盾って・・・?」
亜里沙「死後硬直は八時間程で四肢の関節が硬直します。
もし希さん達が今日の朝に殺されているのなら、四肢は硬直しているはず。
しかし、希さんたちはまるでそれが無かった。
希さん達はつい最近、一時間くらい前に殺したんですよね?海未さん。」
海未はにやりと笑って亜里沙を見る。
その顔は血にまみれていて、恐ろしく、美しかった。
亜里沙「・・・恥ずかしながら、希さん達が朝に殺されたのでは無いと確信して、
初めて私は今回の事件が元々は狂言だったのではないか、と考える事が出来ました。
そう考えて思い出してみると、皆さんの発言は矛盾だらけでしたよ。
例えばことりさん達の事もそうです。 」
>雪穂「海未ちゃん達も・・・その首を・・・?」
花陽「うん・・・。首を左からななめに切り裂かれていたよ・・・。」
>絵里は真姫を呼んで耳打ちする。
真姫「・・・えっ!?冗談でしょ!!」
真姫の顔が青くなる。
絵里「・・・。」
絵里は頷くしか無かった。
真姫「・・・そんな、二人が首を縦にって・・・。
>凛「うん、そうにゃ。二人の首は・・・真っ直ぐに横に切り裂かれていて・・・。」
>真姫「何よそれは!?そんな事言ったら穂乃果だって怪しいじゃない!?
何せ海未達と一晩中一緒にいたのよ!むしろ一番に疑う所でしょうが!?」
真姫は穂乃果に指を指す。
穂乃果「真姫ちゃんそんな!?私がことりちゃん達の首を何度も刺したって言うの!?ひどいよ!!」
絵里「・・・!」
亜里沙「同じ死体を見たにも関わらず、どうやって切られたかは、三人共、バラバラです。」
真姫「・・・!」
亜里沙「恐らく急に決まった計画だったので、そこまで綿密な打ち合わせは出来なかったのでしょう。
それでもすごいですよ、チームワークで完璧に騙し通したのですから。
花陽さんを死んだ様に見せかけた時のケンカとか、迫真の演技でしたよ。
あれは、私が死体を検死させない雰囲気を作るためだったんですよね?
今思うとお姉ちゃんが死体の状況をスラスラ教えてくれたのもおかしな話ですよ。」
凛「・・・。」
亜里沙「腐ってもラブライブ優勝チームって所ですか?反吐が出ますわ。
最初の事件はことりさんと海未さんは死んだふりをしていて、希さんとにこさんはどこか開いている部屋に隠れていたんですよね?
それを他のメンバーが協力して死んだ様に見せかけた。
次の事件も同じです、メンバー全員で狂言の密室殺人を構築した。
どちらも、真姫さんにしか犯行が出来ない様な状況を作って!」
真姫「・・・嘘よ。」
穂乃果「真姫ちゃん・・・。違うの、これは!」
真姫「嘘よね!あなた達がそんなひどい事をグルでやっていたなんて!冗談なんでしょ!亜里沙の思い込みよね!?
冗談って言ってよ!」
真姫は穂乃果に掴みかかる。
真姫は信じられなかったのだ。
凛「・・・。」
真姫「凛!!何とか言ったらどうなの!?」
真姫は凛にも掴みかかる。
凛「うっさいなぁ!!真姫ちゃんが悪いんだよ!!
一人でお金を持ち逃げなんてするから!!」
真姫「はぁ!?遺産の事を言っているの?それなら私達で平等に分配しようって決めたじゃない!
あなたもその場にいたでしょ!!それともまだ足りないって言うの!?」
亜里沙「真姫さん、違うんです。そのお金はまだ手に入れていないんです。」
真姫「はぁ・・・!?何を言って・・・。」
亜里沙「正直分けてもらった身としてこんな事を言いづらいのですが、
正確には・・・『数十億物円もの価値があるインゴットを手に入れた』、です。
お金はまだ手に入れていないんですよ。
もっと言うと、お金を手に入れたのは、五千万円の通帳を持っている真姫さんだけです。」
真姫「いや・・・それはそうだけど・・・そんな事対して関係ない・・・。」
亜里沙「あるんです、それが。真姫さん、あなたが手に入れたと言っている
数十億もの価値がある黄金ですが・・・どうやってお金に換えるんですか・・・?
また、それはいつ頃お金に変わるんですか・・・?」
真姫「・・・え?それは・・・。」
亜里沙「真姫さん、地下にあったインゴットを思い出してください。
あのインゴットは、正式な刻印は打たれてありませんでした。
刻印の打たれていないインゴットをどうやって換金するっていうんですか?」
真姫「え、そ、それは・・・。」
インゴットには打たれていなくてはいけない4つの事柄がある。
1つは精錬業者登録マーク。
いわゆる国のマークだとかライオンのマークだとか、インゴットの画像を調べて見れば、大抵何かしらマークが打たれているそれだ。
2つ目は品位だ。
金の中に何割不純物が入っているかが打ってある。(純金の場合は999.9)
3つ目は重量。
4つ目は企業のシリアル番号だ。
別に刻印は法律で必ず打つ様に言われている訳ではない。
が、これが付いていないのは偽物か、古物だけだ。
何故なら、刻印はインゴットが本物か偽物かを分かりやすくする為に出来たシステムだからだ。
インゴットが本物か偽物かを見分けるのはプロでも難しいという。
そこで、もっとてっとり早く判断をしやすくする為に、業者はインゴットを作る際に刻印を打つことにしたのだ。
刻印ならば番号や品質はそれを打った企業に問い合わせれば本物かどうか分かるし、
打たれた刻印を見るだけで本物かどうかを判断する事も、プロならばそう難しくは無い。
しかし、逆に言えば刻印の打たれていないインゴットは本物か偽物かは簡単には解らず、信用できないという事。
インゴットは買う者がいなければ金にはならず、本物か偽物か分からない物を買う馬鹿はいない。
西木野家の地下で見つかったインゴットは琉球王朝の時代にできた物だ。
そんな古い物に刻印なんて打たれている訳が無い。
・・・つまり、あのインゴットが本物であるという客観的な証明が出来ないのだ。
亜里沙「理解できましたか?確かにあのインゴットの山は数十億円以上の価値があるでしょう。
ですが、それは世間にこのインゴットは本物だと認められ、換金を経ればの話なんです。
地下に眠っているあのインゴット、黄金の山は、世間から認められていない以上、ただの鉄くずの山なんですよ。」
もちろんこのインゴットをしかるべき所に調査を依頼すれば本物かどうかは『いずれ』分かるだろう。
刻印が打たれていないとはいえ、純金である事は確かなのだ。
調査は難しいが時間を掛ければできない事ではない。
・・・が、メンバーにはそれぞれどうしても今すぐ大金が必要な事情があるのだ。
インゴットが本物と認められ、買い取ってくれる者が現れるのを待つ時間は無い。
それに県との問題もある。
こうしてインゴットが見つかった以上、沖縄の都市伝説は本物だと思った方が良い。
正式に公開すれば奪われる事は無いと思うが、色々とクリアすべき課題はあるだろう。
それらを全部解決するのに、どれだけ月日を待てばいいのか・・・?
つまり、今この場にある大金は、真姫の持っている5千万円しかないのだ・・・。
絵里「私達の家は全員火急で大金を用意しなければいけない事情があった。
でもそれはその通帳の5千万円があれば真姫以外は全員が救われる金額だった。」
絵里が淡々と言う。
自分がどれだけ恥知らずで勝手な事を言っているのかは理解している様だった。
絵里「でも真姫、あなたの家の事情を解決するにはその通帳のお金を全部使う必要があった。
だから、・・・インゴットが発見された後、グループ電話で相談したのよ。
どうやって、その通帳を奪うのかを・・・。」
絵里「そしたら海未が提案してくれたの。
狂言をして、脅迫してお金を誰かの講座に送ってもらおうって!
真姫達には死体を見せないようにして、外部から来た人に見せた仕掛けにしようって!」
真姫「・・・。」
開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。
真姫は今日にこを助けるためにメンバーからの誹謗中傷に耐え、
犯人からの要求に恐怖と不安を感じながらも実行したのだ。
それが、この仕打ち・・・!
事件は狂言で、にこは人質どころかお金を奪う為に真姫を騙していて・・・。
真姫の平衡感覚がぐらついてきた。
漫画やドラマで金のために友達を裏切るシーンがある。
その時は共感したが、まさか自分が裏切られる立場になるとは思いもしなかった。
苦しい。
とても苦しかった。
なんで?どうして?
お金のために自分を・・・。
汚れていく・・・。
メンバーと過ごしたキラキラした日々が・・・。
全て、お金と、黄金で、汚く・・・。
もう、誰も信じられない・・・。
真姫「そんな・・・あっあっあぁぁ・・・」
真姫「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
真姫は胸に手を当てながら絶叫する。
亜里沙「真姫さん・・・。」
真姫はどこにもケガをしていない。
しかし、亜里沙には真姫がボロボロのズタボロで、深い傷を負っている様に見えた。
亜里沙「もう一度聞くけど・・・お姉ちゃん、雪穂、あなた達もこの狂言に加わっていたのよね?」
雪穂「・・・。」
絵里「・・・えぇそうよ。亜里沙と真姫以外、全員関わっていたわ。」
亜里沙「・・・そう、ですか。」
亜里沙は浅くため息をつく。
真姫程ではないが、亜里沙も大きいショックを受けていた。
自分の尊敬している姉と、親友が、こんな事件に関わっているなんて・・・。
亜里沙はやってもいないのに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
犯罪者の身内とはこんな感じなのだろうか。
いや、事実その通りだ。
亜里沙「最低ですね。もう口も利きたくないです。」
穂乃果「・・・でも、しょうがなか・・・。」
亜里沙「恥を知りましょうよ!いくら自分の家の事情でも!よそ様に迷惑をかけるのだけは違うでしょ!!」
凛「・・・そうも言っていられない事もあるんだよ。」
亜里沙「っ・・・!」
凛の言葉に亜里沙はカっとなり手を振り上げる。
凛「っ・・・・!」
海未「フフフフフフフフ・・・クッフフフフフフフフ!!!」
今まで黙っていた海未が突然笑い始める。
亜里沙「・・・。」
海未「アッハハハハハハハハハハハハハ!!!見ましたか!?亜里沙。あなたが憧れていたμ’sの本性ですよ!
家の事情とはいえ、お金のためならメンバーすらも切り捨てる!フッハハハハハハハハハハハハハ!!!」
穂乃果「っ・・・!あなたが言わないでよ!!っそうよ!海未ちゃん、これはどういう事なの!?
なんでにこちゃんと希ちゃんが本当に死んでいるの!?何があったの!?」
亜里沙「・・・やっぱりそうですか、殺したのは海未さんの独断だったんですね。」
穂乃果「当たり前でしょ!っ・・・どういう事なの!海未ちゃん!話が違うじゃん!」
亜里沙「海未さん、あなたはお金が理由でこの狂言に参加したのではないですよね?
海未さんの狙いは最初から私達を皆殺しにするつもりだった。違いますか?」
絵里「・・・!?私達の・・・」
凛「皆殺しって・・・。」
雪穂「どういう事なの・・・?」
メンバーは唖然とする。
今回の狂言を主導したはずの海未がメンバーを皆殺しにしようとしていたなんて・・・。
亜里沙「私は希さん達の遺体を見てこれが狂言だと思った時、それと同時に狂言とは違う目的で動いている者がいると思いました。
狂言で済ますつもりなら殺すなんてもっての他ですし、
私達の目の前に遺体を出したら遺体の状況から直前まで生きていた事がばれてしまい、
雪穂のついた嘘がばれてしまいます。」
亜里沙「希さんが生きていたと分かったならばもう真姫さんだけが容疑者ではありません。
それに、私が死体を見ていないのは事実なので、きっと疑ったでしょう。
もしかしたら、他にも死んだと言って嘘をついている人がいるんじゃないか?ってね。」
まぁ実際には違う事が原因で狂言である事が分かったのですが・・・と亜里沙は付け加え、
亜里沙「そうなれば穂乃果さん、おねえちゃん、凛さん、花陽さん、死んだふりをしているかもしれないことりさん、海未さん。
更に攫われたフリをしているかもしれないにこさん、つまり全員のアリバイが白紙に戻ります。
狂言をしている者たちにとっていい事はありません。」
海未「なるほど・・・、狂言を行っている人たちには遺体を置くメリットは無い。
だから狂言とは別に目的を持った人物が動いていると・・・。」
亜里沙「ええ。
問題は、その人物を誰か、という事。
死体の状況から、希さん達が最低でも昼を過ぎてから殺された事は分かりましたので、
その時間アリバイの無かった人物は、自分の部屋に籠っていたと証言している真姫さんと、
死体のフリをしていたことりさん、海未さん、花陽さんです。」
海未「・・・それで?」
亜里沙「まずは花陽さんについてですが、これはあなたが一番よく知っているでしょう・・・。」
絵里「そ、そういえば花陽はどうしたのよ!確か計画では万が一の事も考えて死んだ振りを・・・。」
亜里沙「花陽さんの遺体はこのリビングに運ばれましたが・・・。」
凛「そ、そうだったにゃ。
かよちん、もう起きるにゃ、終わったんだニャ!かーよちーん!!」
凛が殺された事になっている花陽の元に駆け込み、毛布を取る。
凛「かよち・・・っ!!かよちん!?かよちいいいいん!!!うわあああああああ!!!!!どうしてぇ!!!
いやあああああああああ!!」
凛の叫び声が木霊する。
花陽の首はナイフで刺された箇所が沢山あり、水風船から水が漏れ出る様に、止めどなく血があふれ出ていた。
目はぎゅるっと突き出すように上を向いていて、揺すると黒目が昔遊んだ人形の様に上下に動く。
・・・それだけで、花陽は死んでいるんだと、誰もが確認できた。
凛「かよち、かよちいいいんん!!!誰かぁ!!誰か救急車を!!誰かぁ!」
凛の叫び声が木霊する。
亜里沙はそれを流し目で見ていた。
亜里沙「真姫さんを閉じ込めてからリビングで解散した時に確かめた時にはもう・・・。
私達はにこさん達を探しにこの部屋を一度空にしました。
恐らくその時に殺されたのでしょう・・・。」
絵里「・・・そんな。」
雪穂「こんな事って・・・。」
海未「フフフ・・・。正解ですよ、亜里沙。」
亜里沙「ちなみにですが、私が穂乃果さんから聞いたのと殺し方が違うと言う点、
花陽さんが管理室に入室した時鍵をかけていた事を姉が知っていた事も
狂言の手がかりになります。
チェーンがかかっていて部屋から退室する事は難しいですがお姉ちゃんは入室をするのが難しいと言っていました。
どうして花陽さんが鍵をかけていたのを知っていたのか?それは狂言の計画でそうなっていたからでしょう。」
>穂乃果「ひどい・・・!また首を切られている・・・!ひどい!!」
穂乃果「・・・ことりちゃん達と・・・同じだ・・・。首が縦にぱっくり・・・いやあああああ!」
>雪穂「・・・っ待ってください!!おかしくないですか!?
窓も閉まっていて、この部屋にはチェーンがかかっていたんですよ!?
犯人はどこから脱出したんですか!?」
絵里「そもそもどうやって部屋に入ったのかしら・・・。
この部屋は施錠されていたのに・・・。」
亜里沙「真姫さんについては・・・、希さん達の死体を調べ、この事件が狂言だと分かった時点で疑いはほぼ晴れていました、」
真姫「・・・。」
真姫はやっとの思いで顔を上げる。
亜里沙「何故ならば、この殺人を行った犯人は、狂言をしたメンバーの中にいるからです。
失踪したにこさん達の居場所を知っていて、花陽さんが死んでいない事を知っていた人物。
花陽さんの死体の状況から、私達が部屋を出てから殺されただろうという事は分かっていましたので それからずっと一緒にいた真姫さんには不可能です。
ただ、真姫さんには管理室で花陽さんが狂言を行った時にアリバイがなかったのでその事について、真姫さんを部屋に閉じ込めた時にお聞きしましたけどね。」
真姫「・・・。」
亜里沙「真姫さんは自分がにこさんと家の事で脅されている事を言いませんでした。
しかし、今回の事件が全て狂言である事の可能性を説明し、これから犯人を誘い出すから協力してほしい。
そう話したら、全てお話しして下さいました。
もちろんまだ不確定な事は伏せて話しましたけどね。」
=========================
真姫を閉じ込めた時の話。
真姫「ここにいればいいんでしょ・・・?」
亜里沙「真姫さん、お話しがあります。」
真姫「えっ・・・?」
亜里沙「真姫さん、あなたは犯人なんですか?」
真姫「・・・もういいわよ。どうせ信じられないんでしょ・・・?」
亜里沙「もういちど、真姫さんの口から聞きたいんです。
私の目を見て言ってください。」
亜里沙は真姫をじっと見つめる。
真姫は亜里沙の真剣な顔を見る。
そこには緊張したような、真実を見極めようとする、そんな複雑な顔だった。
真姫「・・・私は誰も殺していないわ、本当よ。」
亜里沙「・・・真姫さん、私は希さんの死体を発見するまであなたが犯人だと思っていました。
でも、今はあなたは犯人では無いと思っています。」
真姫「・・・え?」
亜里沙「これから、私は犯人を捕まえるために囮となります。」
真姫「っ!?危険よそれは!!」
亜里沙「一応手は打っておくつもりです。
もちろん殺される可能性もあります!真姫さん、私はなんとしてもこの事件の真相を暴きたいんです! もしあなたが犯人でないのなら・・・何か知っている事があるならば、どうか教えてくださいませんか!?」
亜里沙は土下座をする。
真姫は頭を上げる様に言うが、亜里沙は頭を上げなかった。
真姫「・・・分かったわ、あなたは犯人じゃない
。なんでか知らないけど、そんな気がする。
私の知っている事を、全て話すわ。」
・・
・・・
・・・・
・・・・・
真姫「・・・という事があったのよ・・・。亜里沙?」
亜里沙「・・・。」
亜里沙は理解する。
この事件の真実に。
それは、
亜里沙にとって信じられない、筆舌しがたい真実。
========================
亜里沙「全てを聞いて、この事件の裏側が見えてきましたよ。
よくぞかつてのメンバーに、ここまでえげつない事が出来た物です。
これを思いついたのは海未さんですか?」
海未「・・・ええ、真姫の事情は知っていましたからね。
おかげで都合通りに動いてくれましたよ。」
亜里沙「っ・・・!最後にことりさんと海未さんですが・・・。
私はこの二人に絞れた時点で、十中八九、海未さんが犯人だと思っていました。」
絵里「・・・!!」
穂乃果「ど、どうして!?」
海未「ほぉ・・・。何故ですか?」
亜里沙「あなたが殺したにこさんと、希さん、花陽さんの死体ですよ。
希さんは首を右上から斜め下に、にこさんは腹を同じく、花陽さんは首を刺されていましたが、 この三つの死体には、共通点があったんです。
それは、よいしょ。」
亜里沙は身代わりとなった人形を持ち上げてみせる。
亜里沙「それは、左利きの人が刺した、と言う事です。
この人形も滅多刺しにされていますが、人形の中心から左に多く刺し傷がありますよね?
そして、海未さんは左利き、ことりさんは右利きです。
この事から犯人は海未さんだろうと思っていました。
・・・信じたくは無かったですけどね。」
海未「フフ・・・私が左利きな事はプロフィールにも書いていなかったのに・・・さすがμ`sのファンですね。」
※海未が左利き、ことりが右利きな事は漫画から参考にしました。もしかしたら間違えているかもしれません。
亜里沙「伊達にファンやってないんですよ、・・・もう辞めましたけどね。」
亜里沙「後は海未さんを拘束する為にワザとスキを作って罠を張りました。
姉たちにはこう話しました。
『真姫さんが犯人だという証拠を見つけるために自分が囮となる。 自分がメールを送ったらすぐにリビングに来て襲っている真姫さんを拘束してほしい』とね。
メンバーの中にも共犯者がいて、海未さんを捕まえると知ったら邪魔をするかもしれないと思ったんで、 真姫さんと言い、海未さんだと分からない様に部屋を真っ暗にしておきました。」
海未「なるほど・・・まんまと引っかかった訳ですか・・・。」
亜里沙「後はこの通りです。
自分のダミーを用意して、私は隠れていました。
そしたらまんまと海未さんが来てくれたので、則メールをして取り押さえてもらった訳です。」
・・・こうして聞くと淡々と犯人を捕まえた様に聞こえる。
しかし、ここまで来るのに葛藤はあったのだ。
まず真姫に今回の事件が狂言だといい、自分に協力してほしいと言った所。
少ない可能性だが、真姫が本当に殺人を起こしている可能性もあった。
もし真姫が犯人だったらいい様に誘導されていたのかもしれない。
もう一つは今生き残っているメンバーと海未が犯人である可能性もあった。
雪穂、穂乃果、凛、絵里はまだ死んでいない訳だから、海未と手を組んでいたのかもわからない、
もし手を組んでいたら亜里沙は生きていなかっただろう。
亜里沙「海未さん、ことりさんは・・・もう生きていないのですか?」
穂乃果「っ・・・!そうだよことりちゃんは・・・。」
海未「えぇ・・・ことりは、一番最初に殺しました。
今はインゴットのおいてある部屋の『奥の』部屋に置いてありますよ。」
穂乃果「あぅ・・・ああああああああああああああああ!!!そんな・・・・。あぁ・・・。」
穂乃果はその場で蹲り、泣き叫ぶ。
自分の無二の親友の一人が殺人を犯し、もう一人はその一人によって殺されたのだ。
真姫にした事を思い出すと、とてもではないが同情なんて甚だ出来はしない。
だが、・・・。
亜里沙「最後に・・・改めてお聞きします。
にこさん、希さん、花陽さん、ことりさんを殺したのは・・・あなたですよね?」
海未は付き物の落ちた様な、やり遂げたような顔で、
海未「・・・はい、私が犯人です。」
そう、答えた。
パキン!!!
その瞬間、亜里沙の目の前の空間にヒビが入る。
空間だけではない。
さっきまでそこにいた、穂乃果も、海未も、凛も、屋敷さえ割れる。
まるでガラスが割れる様に、割れて、割れて、割れて、そして最後には自分すら割れた。
亜里沙はそんな割れた自分を茫然と見ながら、目の前にある黒い渦に吸い込まれていく。
その先に、また、大きな渦があった。
今度は亜里沙を吸い込まず、その代わりに映像が映る。
それは、亜里沙たちが映っていて、石碑の前に集まって会話をしている。
亜里沙「これ・・・真姫さんの別荘だ!・・・て事は・・・。」
亜里沙にとっては数時間前の事・・・。
これは○月×日の映像だった。
亜里沙「あれ・・・でも。」
映像ではちょうど一通り議論が出尽くした様だ。
確かこの後は亜里沙と穂乃果が残り、碑文を解いていくのだが・・・。
亜里沙「石碑の前で残っているのは・・・真姫さんだけだ。」
映像の亜里沙は欠伸をしながら自分の部屋に帰っていく。
真姫は何かを呟きながら書庫室に向かった。
このパターン・・・これは・・・。
亜里沙「・・・そうだ!この映像は、私が殺された一周目の世界なんだ!」
映像には真姫が映っていて、熱心に碑文を解いている。
亜里沙「てことは・・・あの日の事が・・・分かるかもしれない。」
亜里沙はその映像を食い入る様に見る。
まもなく、真姫が碑文を解いてインゴットの置いてある部屋に行く所だった。
前回のラブライブ!!
なんやかんやあって無事にラブライブを優勝した私たち!!
ラブライブ優勝を祝してお祝い旅行をを企画した!!
旅行先は真姫ちゃんの別荘である無人島!!なんでもこの島は色々いわくつきなんだとか!
それでも関係ないよ!私たちは楽しむんだ!
船では新しい出会いが!
穂乃果「雪穂!?どうしてここに!?」
絵里「亜里沙!?あなたもどうして!?」
雪穂「お姉ちゃんだけずるいんだよ!!私も行くもん!」
亜里沙「本当に、帰ってきたんだ・・・。
疑っていた訳では無いけど、この目で見るとやっぱりすごい・・・。」
ことり「穂乃果ちゃん、後で大事な話があるんだけど・・・。」
穂乃果「・・・えっ何?ことりちゃん・・・?」
真姫「にこちゃんそれテニスボール?珍しい色しているわね?」
にこ「へっへーんにこ色にしたのよ!アイドルたるもの身の回りの物も揃えないとね。
後でやるわよ!にこちゃん!」
こうしてお祝い旅行は11人で始まった!
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 03:01:16.99 ID:FV/EMCk60
○月×日 ~音野木坂スクールアイドル連続殺人事件から10年後~
沖縄 真姫家別荘
その島は、無人な島にしては少しおかしかった。
沖縄から船で数十キロの所にあるその島は、
無人なはずなのに森も無く、雑草もなく、かと言って整備された道も無く、建物もない。
この島はそれなりに広いはずなのだが遮蔽物が全く無い。
なので端から見たら反対側の端まで見える気がした。
ただ、そんな何も無い島に一つだけ、この日本ではめったに見る事の出来ないものがあった。
巨大なクレーターである。
十年前の爆発により、このクレーターが出来てからこの島は日本中の関心を集めた。
当時はこのクレーターの原因を求めて様々な学者が無人島に訪れていたものだ。
あれから十年。
今ではその感心もすっかり薄れ、ここは無人の島に戻ってしまった。
そんな無人の島に、クレーターの中心部に、一人の女性がいた。
真姫母「・・・真姫、10年も過ぎちゃったけど・・・やっとここに来れたわ。
ごめんね、遅くなっちゃって。」
真姫母である。
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 03:01:44.83 ID:FV/EMCk60
十年前の美貌は見る影も無く、顔はしわ塗れで、髪がボサボサだった。
実年齢よりさらに十年老けて見えるその顔は、苦労した証なのだろうか。
あの日、西木野家が所有する無人島が爆発してから。
あの日、自分の娘を失った日から。
真姫母はあの日の事を鮮明に思い出せる。
真姫たちが合宿に入ってから3日目の朝だろうか。
金策を考えていて、ろくな考えも出ないまま、いつの間にか寝てしまった真姫母に、突然警察から電話がかかってきた。
警察と聞いて真姫母に思い浮かんだのは例の訴訟事件についてだったが用件は違う事だった。
真姫母「えっ・・・?」
その言葉を聞いて、真姫母は思わず受話器を二度見してしまった。
この警察の人は今なんて言ったのか。
だからもう一度聞いた。
すると同じ答えが返ってきた。
西木野家が沖縄に所有している無人島が爆発したと。
最初は何かの悪質なイタズラかと思った。
誰がそんな事を信じられるだろうか。
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 03:02:12.13 ID:FV/EMCk60
しかし、テレビをつけても、その日の新聞を見ても、
ニュースはその事でいっぱいだった。
真姫母は当然その無人島には何回も行った事がある。
その島は屋敷と森しかない。
しかし、テレビに映っている島の様子は、屋敷はおろか、森はおろか、文字通り何も無かった。
ホール状のケーキの上の飾りを取ったらこんな感じなのかもしれない。
それくらい、真っ白だった。
そして、行方不明者の中に自分の娘の名前があったのを見つけた時、ようやく真姫母は自分の娘が死んだ事を理解し、涙を流したのだった。
真姫母「ホント、正直今でも信じられないわ、真姫。
あなたが死んだなんて。」
真姫母はクレーターの中心に花束を置いた。
真姫母「・・・ほんとに何もかも吹き飛んでしまったのね。」
真姫母がこの島に来たのはこれが初めてだ。
爆発してからの十年は早かった。
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 03:05:35.33 ID:FV/EMCk60
他のメンバーの保護者からは何回も問い詰められ、記者からは毎日のように追いかけられた。
泣きたいのは娘を亡くした真姫母も同じなのに、まるで真姫母がメンバーを殺したかのような扱いを受けた。
それもこれもあの流出がわるいのだ。
最初は不発弾による不幸な事故として処理される予定で、真姫母は一人娘を亡くした不幸な母だと世間から認識されるはずだった。
しかし、事件から数年して、掲示板に流出したある手記のおかげで事件は一変する。
その手記の書き手は絢瀬亜里沙
真姫の友達の妹だと言う事しか知らないが、内容は、自分は碑文を解き、その結果命を狙われている事を訴えている悲痛な文書だった。
この流出により、
マスコミは真姫母の身内に強引な取材に行い、碑文が西木野家の祖父が隠した財産の隠し場所を示している事を明らかにすると、 あの島では財産を巡る連続殺人が行われていたのではないか?と、世間を騒がせる事になる。
真相は爆発事故により全て有耶無耶になってしまった事もあって、ネットや週刊誌には、様々な根拠の無い憶測を面白おかしく書かれる事になった。
これによりこの『事故』は音野木坂スクールアイドル殺人『事件』と世間で言われるようになる。
その後、メンバー全員の家庭の事情をすっぱぬかれ、全員の家庭に何かしらの金銭の、火急を要するトラブルに巻き込まれている事が判明してしまった。
その結果、推理ゲームの様にメンバーの誰々が犯人、と根拠のない考えがネット、週刊誌で書かれるようになった。
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 03:06:21.79 ID:FV/EMCk60
それによりメンバーの親族は心を病むようになる。
真姫母の場合は例の病院の訴訟の件もある。
西木野総合病院を救うにはお金が沢山必要だったがそのお金は用意できなかった。
結局裁判では敗訴し、手術を行った真姫母は業務上過失致死で職を失ってしまった。
その後も今度はメンバーの遺族に危機管理の問題で訴えられてしまった。
もちろん親族も、真姫母を訴えたところでどうにもならないのは分かっている。
真姫母も自分の娘を亡くしているのだ。
しかし、親族もこの悲しみと怒りを誰にぶつけていいのか分からない。
結局無罪で済むことができたが、その後のゴタゴタもあって、つい先日やっと真姫母は十年ぶりに落ち着く事ができた。
真姫母「まぁ有罪でも良かったんだけどね・・・、もう今更何も残っていないんだし・・・。」
職と娘を失って西木野家はぐちゃぐちゃになった。
夫は酒びたりになり、お金を湯水のように使ってしまい、借金を残してどこぞの女の所に行ってしまった。
真姫母もこの十年の無茶がたたり、余命半年を宣告されてしまっていた。
医者の不養生とはこの事だ。
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 03:06:57.06 ID:FV/EMCk60
真姫母「ねぇ・・・真姫、あの日、何があったの?なんであなた達はいなくなってしまったの?」
警察によるならば、爆発の原因は戦前に残っていた不発弾による暴発だ。
しかし小さい島とはいえ、それを全壊させるような爆発・・・一体地下にどれほどの爆弾が眠っていたのか。そして何故この島にあったのか。
この島を買い、別荘を建てた真姫の祖父からそんな事は聞いた事がない。
警察による捜査でも何も分からずに終わってしまった。
所謂、迷宮入りという訳だ。
まさかそんな言葉を小説以外で聞くとは思わなかった。
真姫母「でも、そんな事はもういいのよね。どうだっていいわ。真姫、ゴメンね。私もう疲れたの。
真姫の所に行っても・・・いいわよね。」
真姫母がこの島にきたのは墓参りに来ただけでは無かった。
真姫母はポケットからケースを出す。
そして、ケースからカプセルを手のひらに出した。
・・・そのカプセルがどの用途で使われるのか、それは医者だった真姫母が一番わかっていた。
この島に行けば何か分かると思ったけど、行くのが遅かったみたい・・・。
ううん、例え速く来たとしても、警察でも分からなかった事を、私が分かるとは思えない。
真姫母「・・・真姫、今から行くわね。・・・ングッ!」
真姫母はカプセルを飲んで水を飲むと、静かに目を閉じた。
その顔は安らかだった。
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:40:07.24 ID:FV/EMCk60
船は順調に島に向けて進んでいく。
太陽はこれでもかといわんばかりに照らしている。
このピーカンな天気が次の日には土砂崩れの様に崩れるとは誰が想像できるのだろうか?
完全に、○月×日だった。
亜里沙(ピンクの女に行ってこいと言われて目の前が眩しくなり、気づいたら船の上にいて、お姉ちゃんに説教されていた。 )
これからあの島で私達はこのメンバーの誰かに殺されるのだ。
私の目的はこれから起きる殺人を止める事、また止められなくても犯人を見つける事だ。
その為に亜里沙は再び『ここ』に戻ってきた。
今度は絶対に犯人を見つけてやる。
証拠を突きつけて!
絵里「もう、本当に解ったの!?亜里沙!??」
亜里沙「分かったてば!悪かったよ、お姉ちゃん。」
希「もうその辺でええやん絵里ち。亜里沙ちゃんも反省しているんやから。」
絵里「希ぃ・・・、まぁ真姫も良いって言ってるからこの辺にしましょうか。」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:40:34.52 ID:FV/EMCk60
真姫「そうよエリー、いいじゃない二人くらい。それに今から東京まで帰れって言うのはさすがに酷よぉ。」
にこ「真姫ちゃん先輩ぶってカワイイ!」
真姫「もう!にこちゃん!」
穂乃果「雪穂も反省しなさいよ!」
雪穂「はーいわかりましたよ~~~~。」
海未「・・・ようこそμ’sの合宿へ。歓迎しますよ。
お二人とも。」
ことり「全くの部外者って訳でもないしね!良いんじゃないかな!」
亜里沙「ありがとうございます!」
この和気藹々している中に私達を皆殺しにした犯人がいる。
誰かは思い出せないが、それは確かだ。
亜里沙が一周目から引き継いでいる記憶は事件と関係の無い合宿の一日目と自分が殺された時の記憶だけ。
それ以降は魔女によってきれいさっぱり忘れさせられていた。
亜里沙「そういえば、あの島には碑文っていう物があるってお姉ちゃんから聞いたんですけど本当なんですか?」
絵里「え?そんな事話したかしら・・・?」
真姫「あら、よく知っているわね。そうね、確かにあるわよ。おじい様が残した遺言みたいな物なのかしら。
その暗号を解いた人には黄金が見つかると言われているわね。」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:41:24.01 ID:FV/EMCk60
ことり「何それ?興味あるよ!」
海未「黄金・・・それは具体的にはなんでしょうか?まさか、本当に黄金なんでしょうか?」
真姫「さぁ・・・?でもこの時代に黄金って言われてもいまいちピンと来ないわね。
おじい様は戦前は貧乏だったけれど、戦後沖縄から帰ってきた時にはすでに大量のお金を持っていたとおばあ様から聞いたわ。
一体どこから持ってきたのかしら。」
希「なぁ?それって沖縄で黄金を見つけたって事じゃないん?」
真姫「沖縄で?でも沖縄は戦地だったのよ?空爆とかで何もかも壊れちゃったんじゃない?」
希「被害が無い所ならどうや?例えば土の中とか。」
花陽「土の中?埋められていたって言うこと?」
凛「埋蔵金を想像するにゃ~。」
穂乃果「ははは!そうだね!」
希「実はその通りなんやよ。聞いたことない?沖縄って地下鉄がない事。」
ことり「え!?そうなの!?」
真姫「聞いたことあるわね。
確か地下に不発弾が眠っている可能性があるからおいそれと掘れないんだっけ?」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:41:51.32 ID:FV/EMCk60
沖縄は太平洋戦争末期の激戦地である事で有名だ。
1972年から不発弾の処理が開始されているが2008年までで百三十七万発分が発見され、処理されている。
これに加え、まだ二千五百万トンもの不発弾が沖縄の地下に残っていると言われている。
穂乃果「へぇ~。でもそれと埋蔵金ってどう関係があるの?」
希「いやね?表向きは不発弾があるからって理由で地下鉄は作れないってなっているけど、
本当は琉球王朝の財宝が埋まっていて、それを政府が発見されないようにって言われているのよ。」
凛「えぇ!?」
真姫「ただの都市伝説でしょ・・・?」
花陽「それってどんな都市伝説なんですか?」
希「沖縄には地下鉄が一個も無いんや。
理由はさっき話した通り、不発弾が埋まっているからって言うのが表向きの理由なんだけど、 本当は琉球王朝の財宝が那覇市に埋められているから政府がそれを発見されるのを防ぐのが理由らしいで。」
海未「私も聞いた事があります。
王家の末裔の人たちが財宝の隠されている地図を発見したそうですが自分たちでは掘れないために、 県に依頼して財宝を見つけてもらう代わりに利益のいくつかを県に譲るって密約を結んだという話ですよね?」
絵里「へぇ~。それっぽい話よね。」
亜里沙「沖縄って何もない所に地下駐車場がとても多いらしいんですが、それもこの都市伝説の信憑性を補強していますよね。」
雪穂「何で?」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:42:23.66 ID:FV/EMCk60
亜里沙「雪穂は何もない所に駐車場を作る?作るならデパートの地下とか、駅の近くに作らない?」
雪穂「確かにそうだね・・・。別の目的で掘られたって事なのかな。」
穂乃果「つまり、企業や県が財宝を探して掘ったはいいけれど、何も見つからないから仕方なく地下駐車場にしたって事だね?」
海未「その通りです。ま、都市伝説なんですけどね。」
凛「つまり、希ちゃんはこの財宝の一部を真姫ちゃんのお爺ちゃんが発見したって言いたい訳にゃ?」
希「そや。沖縄のお宝って言えばそれが思い浮かぶなぁ。」
雪穂「それってどれくらいのお宝が眠っているんだろうね!」
亜里沙「琉球王国はアジア各国から様々な品物が入ってきたと言われているんだって。
繁栄ぶりを記した万国津梁の鐘という書物があるんだけど、そこには珍しい宝が那覇市のあちこちにある事が書かれていたそうだよ。」
ことり「へぇ~、それならおじい様がその一部を発見してもおかしくはなさそうだね。」
例えば、首里城では中国の陶磁器の他に世界で四つしか確認されていない水差しや杯が発見されている。
他にも絵画も発見され、それは十二億円で落札されたそうだ。
そのお宝がまだ沖縄の那覇市にそこかしこに埋まっていると言われている。
凛「じゃあその中に黄金もあるってことなのかにゃ?」
絵里「戦後は普通貧乏になるものだけど、真姫ちゃんのお爺さんはお金持ちになって帰ってきたんでしょ?ならその可能性もあるわよね。」
真姫「確かにそうかも。
屋敷に着いたら碑文もあるから生で見たらいいと思うわ。
あっ、そう言っている間に見えてきたわよ。」
ことり「うわぁ、すっごいねえ~。」
にこ「すごい大きさね・・・。羨ましい。」
船からは真姫の別荘が見えていた。
『最初』に見たときと全く同じ・・・。
穂乃果「楽しみだねぇ~亜里沙ちゃん!・・・亜里沙ちゃん?」
穂乃果が亜里沙を見ると、笑みを浮かべていた。
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:42:49.27 ID:FV/EMCk60
笑みは笑みでも、まるで待ち構えていた獲物が目の前に現れた時の笑み。
亜里沙「はい・・・。とっっっても楽しみですよ。穂乃果さん。」
船はもうじき島に着く。
今、たった一人の孤独な戦いが始まろうとしていた。
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:43:17.05 ID:FV/EMCk60
西木野家別荘 22:00
雪穂「にこさんごはん美味しかったです!」
穂乃果「前も思ったけどにこちゃん本当に料理うまいね!! 」
真姫「そうね!どこかで習ったの?」
にこ「別にこれくらい毎日作っていればできるわよ。
あんた達もアイドルである前に女なんだからこれくらい・・・。」
ことり「えぇ!?にこちゃん毎日作ってるの!?すごい!!」
海未「それはすごいですね。私も料理は苦手で。」
雪穂「私もあれほど上手に作れたらなぁ~。
あ、そういえば、お姉ちゃん!さっきことりさんと二人で何を話していたの?」
ことり「っえ、ええっとぉ・・・。」
穂乃果「その・・・ね、いや、なんでもないんだよなんでも!」
ことり「まだ秘密!明日発表するね!」
絵里「なんで顔赤いの二人とも。」
海未「・・・?」
にこ「ま、まぁまぁ、この話はいいじゃないの。
ほら、でかい肖像画ね!」
メンバーの目の前に肖像画と例の碑文が彫ってある石碑が現れる。
碑文の内容も一周目と同じだ。
真姫「あれは船の上で話したおじい様の肖像画ね、んで、下に書いてあるのはおじい様の碑文よ。」
希「これがあの碑文かぁ~この石だけでも高そうやなぁ。」
花陽「すごいです・・・。」
凛「ひんやりしてるにゃ。」
亜里沙「・・・。」
亜里沙にとっては二度目となる碑文。
前回もここで碑文について話し合ったが結局解く事は出来なかった。
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:46:00.12 ID:FV/EMCk60
亜里沙(今回は必ず解いてみせる・・・!)
凛「これってさ、解いたらもらえるって書いてあるけど部外者の私達でももらえるのかにゃ?」
にこ「っ!?」
希「・・・。」
凛のふとした発言に場は一瞬騒然となる。
絵里「ど、どうかしらねー?でも元は真姫の家の財産な訳だから無理じゃないかしら?」
真姫「ま、まあね、でもそうね。
見つけた人には一割くらいはあげてもバチは当たらないんじゃないかしら?ハハハッ。」
希「いや、うちはそのまんまの意味やと思うで。
見つけた人に全部あげるんやと思う。」
真姫「!?っ・・・何故そう思うの?希?」
希「簡単な話や。
碑文にそう書いてあるからやで。」
確かに碑文には見つけたものに授けると書いてある。
希「そもそも真姫ちゃん家のおじい様は何で遺産を隠したんやろうな?しかも莫大な遺産やで?普通なら家族に何も無く与えるのが普通と違う?」
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:46:34.42 ID:FV/EMCk60
亜里沙「確かにそうですね・・・。
遺産なんて本人の死後、一番デリケートな問題です。
家族同士ですらいざこざが多いと聞きますし・・・。」
希「そうやろ?こんな見つけた者に・・・なんて文章を残したらそれこそ西木野家が遺産を相続するのにノイズにならへんか?」
碑文の一部に書いてある、『解いた者に授ける』は西木野家が遺産を受け取るのを危ぶむ意味しか持たないという事だ。
海未「そうですね・・・。遺産とは家族に遺す物です。
それを隠したという事は考えられるのは・・・。」
花陽「・・・。」
ことり「・・・。」
真姫のおじい様と西木野家は仲が良くなかった。
それは今この場にいる全員が想像できた。
真姫「ちょ、ちょっと待ってよ!別にそれだけで仲が悪いって考えるのは総計よ!もしかしたら面白半分で・・・。」
希「面白半分で隠すような額やないと思うで?何がどれほどあるのかは知らんけどな?」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:47:07.29 ID:FV/EMCk60
パキンっ!世界が割れるような音と共に、亜里沙を除いたメンバーが止まった。
いや、静止したと言った方が良いかもしれない。
黒い女「何故隠した・・・か。
どうやら新たな謎が出てきたけど大丈夫なのかしら?亜里沙。」
黒い女が碑石に座りながら紅茶を飲んでいた。
亜里沙「何の様よ?黒い神様。」
黒い女「正直待ちくたびれたのよ。この後続くのは前回もあった碑文に関する考察よ。
内容も全く同じだから早送りさせてもらうわ。」
亜里沙「勝手な事をしないでくれませんか?時間を勝手に飛ばされちゃ考える時間も無いですよ。」
黒い女「だから、その分あなたに知識を与えるわ。」
亜里沙「知識?何ですか?それは。」
黒い女「そう、さすがに前回のあなたの記憶だけじゃ同じ結果になると思ったのよ。
だから、碑文を解くヒントを与えようと思ってね。」
亜里沙「それはありがとうございます。
でもヒントをくれるっていうからにはもう解いたんですか?」
黒い女「ほぼ、ね。最後がちょいと怪しいけれど、それも現地に行けば解ると思うわ。」
亜里沙「・・・。」
黒い女「ま、そう落ち込む事も無いわよ。
今思えばこれはここにいるメンバーの中では真姫しか解けないかもしれないわ。
真姫は偶然碑文のヒントになるきっかけを思い出したからこそ解く事が出来た。
つまり亜里沙にもそのきっかけを見せてあげようと思ってね。」
亜里沙「・・・。」
現状、亜里沙はこの碑文はまだ何も解けていない。
これから事件が起きると魔女から予告されている。
その事件を解くためにも今解ける謎は出来る限り早く解いておきたい。
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:48:23.46 ID:FV/EMCk60
亜里沙の反応を見てか、ベルンは機嫌をよくしたようで、
黒い女「さすがに碑文を解いた時の所は見せられないけどね。じゃ、始めましょうか、ん。」
黒い女は手を出す。
亜里沙「・・・?なんですかその手は。」
黒い女「この手に触りなさい、それで記憶は継承される。」
亜里沙「は、はぁ・・・。」
亜里沙は恐る恐る手を握る。すると・・・・、
亜里沙「あっ!?あああああああああああああ!!!!!」
亜里沙の頭に真姫を主観とした映像が流れてくる。
見たことも無い映像、知識、思い出。
それらが無理やり詰め込まれていくような、そんな感覚。
亜里沙は初めて知識を無理やり詰め込まれる感覚を知った。
黒い女「気分はどうよ?」
亜里沙「はぁ・・・はあ・・・、頭がシェイクされているようよ・・・。」
黒い女「それはよかった、で、どう?頭の方は。」
亜里沙「確かに・・・私が見たことの無い記憶があります。
すごい違和感ですよ、私の頭じゃないみたい。」
黒い女「まぁその辺は慣れるしか無いわね、じゃあいくわよ。」
そういうと、黒い女は指を鳴らす。
すると目の前に空間ができた。
そこに映っているのはメンバーと碑文。
どうやら碑文について話し合っている所らしい。
黒い女「まずは前回真姫が黄金へとたどり着いた事柄をまとめるわね。」
※ここからは絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」ver2と見比べながらやると分かりやすいかもです。
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:48:50.84 ID:FV/EMCk60
>真姫「火払いの印・・・を志す・・・王・・・火・・・そういえば昔おじいちゃんに・・・。」
それは真姫がまだ子供の頃、祖父に祭りに連れて行ってもらった時の事・・・。
ある演目をやっていて、それでその時に私は指を指して聞いたんだ・・・『あの形はなんだって・・・』
あの頃は幸せだったなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの形・・・形・・・え・・・?」
真姫は眠気がぶっ飛ぶほど覚醒する。火払いの印ってもしかして・・・。
亜里沙の前に空間が裂け、そこに映像が映る。
亜里沙「これは確か碑文を解く寸前に真姫さんが思い出していた事ですよね?」
黒い女「そうね。真姫はここから答えに至った。
つまりこの『形』から連想できるのが火払いの印につながるって事なのよ。」
亜里沙「そしてそれは・・・祭りに関係しているって事ですか・・・?」
黒い女「そうね。そしてその印は祭りの中のある演目の最中にあった。」
亜里沙「でも結局その祭りの『演目』が解らないと話にならないですね。」
黒い女「あら、そこで思考停止?祭りの演目は確かに地域によって色々あるけれど、それが形ならば話は別よ。
そして、その形とは、火払いの印。つまり火を払う、防火の印って事じゃないかしら?」
亜里沙「防火・・・!まさか!!!」
黒い女「あら、もう分かったのかしら?なら、もう助言はいらないわよね?」
亜里沙「ちょっと待ってください!最初の文が解ったとしても・・・『川』の所も・・・。」
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:49:30.24 ID:FV/EMCk60
そういうと、黒い女はめんどくさそうに、指を鳴らした。すると、また空間に真姫が現れた。
>真姫「にこちゃんが言っていた・・・船が旅をするって・・・下る・・・上がる・・・あっ・・・。」
あった!!!
真姫「国・・・あった!村も!これも!これも!!これなんだ!!!」
真姫の頭の中でピースが組みあがっていく。黄金の扉を開けるためのピースが。
真姫「鍵も解った!欠片も分かった!!これをこうして・・・できた・・・五文字!!」
>海未「いいえ、何かヒントになるかもしれません。川から連想できる物、それくらいの抽象的なイメージの方が発想が柔軟になっていいと思います。」
黒い女「真姫はこれらをヒントにして川にたどり着いたわ。」
亜里沙「つまり、実際の川じゃないって事ですよね?」
黒い女「そうよ。そして、この『川』の意味が解れば真姫は欠片までをあっという間に解いている。
つまり、『火払いの印を志す王』と『川』の意味が解れば碑文にあった五文字まで簡単に解けるってわけよ。」
亜里沙「・・・。」
黒い女「・・・もう少しだけヒントを上げましょうか。にこは実にいい事を真姫に言ったわ。
にこがいなければ真姫は黄金にたどり着かなかったでしょうね。
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:50:08.20 ID:FV/EMCk60
>にこ「ほら、碑文?だっけ?を見てみると使いが王から命令を受けて何かを届けているように見えない?
それで川を下っている。ってことは下る乗り物が必要じゃないの?」
絵里「下る乗り物・・・」
真姫「下る・・・下り・・・下り・・・?乗り物・・・上がり・・・っ上がったり下りたりするもの・・・川・・・。」
亜里沙「・・・。」
黒い女「あら、もう何かをつかんだ感じかしら?」
亜里沙「そうですね・・・何となくつかんだような気がします。」
黒い女「さ、ヒントはこれくらいでいいかしらね。」
亜里沙「えぇ・・・後は書庫か何かがあれば・・・多分。」
黒い女「そう。書庫はこの別荘にあるわ。頑張ってね。」
亜里沙「ありがとうございます。頑張ります。」
黒い女「助けるのはここまでよ。あなたが真実にたどり着ける事を、祈っているわ。」
バキンッ!!!
その瞬間、再び世界が割れる音を発し、空気が動き始める。
真姫「大分話し込んじゃったわね、今日はもう終わりにしましょ。」
海未「そうですね。明日もありますし、その時にでもこの話をしましょうか。」
雪穂「そうですね。もう休みましょう。」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:50:45.33 ID:FV/EMCk60
ことり「じゃ、お休み~。」
「「「お休み~。」」」
ことり「海未ちゃん、ちょっと話があるんだけど~。」
海未「ことり・・・?わかりました、私の部屋で話しましょうか。」
凛「もし黄金が見つかったら~凛は~。」
花陽「凛ちゃん気が早いよ!」
希「えりち、行こっか!」
絵里「そうね。お休み。」
メンバーは自分の部屋に帰って行った。
穂乃果「うーん!うーん!」
・・・穂乃果以外は。
亜里沙「・・・穂乃果さん、戻らないんですか?」
穂乃果「うん!何だか寝付けなくてさ!」
亜里沙「穂乃果さん、これから碑文を解こうと思うんですが、一緒にどうですか?」
27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:51:25.69 ID:FV/EMCk60
書庫
穂乃果「でもビックリしたよ~。亜里沙ちゃんの頭が良いことはさっき知ったけれど、まさか碑文の一部分が解った、だなんて~。」
亜里沙「解ったかもしれない、ですよ穂乃果さん。」
穂乃果「それでもすごいよ!じゃあ聞かせてくれないかな?」
亜里沙はうなずくとある本を取った。
穂乃果「その本は何?」
亜里沙「これは、」
亜里沙「沖縄の歴史書、です。」
亜里沙「じゃあ説明していきますね、まずは最初の文。」
『火払いの印を志す王より命を承りし使い、川を三つ下ったその先に、二つの国有り。』
亜里沙「まず火払いの印から。
これは言い直すと防火、つまり防火の印、ということなんです。」
穂乃果「防火の印?火の用心とか?」
亜里沙「その通りです。穂乃果さん、このマーク、見覚えありません?」
亜里沙はある形を書いた。
※参考画像http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Tomoe.jpg
28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:51:57.48 ID:FV/EMCk60
穂乃果「うーん、あっ!あるある。祭りとかであるよ!太鼓とか、はっぴとかについているやつだよね!」
亜里沙「その通りです。
この様な模様を『巴』と言います。」
『巴』とは勾玉のような形をした日本の伝統的な模様の一つだ。
この模様の由来は様々あり、弓の鞆絵である説、勾玉を図案化した説などがある。
陰陽道や風水などにも使われている所を見たことがあるだろう。
これは勾玉には霊的パワーが宿っているので それにあやかろうと、この模様に影響を受けた国も沢山あり、日本では家紋としても使われている。
そして、この巴という模様は平安時代に防災、火災避けとしても使われていたと記録に残っている。
穂乃香「へぇ~!じゃあ火払いの印ってこれの事なんだ!」
亜里沙「・・・多分ですけどね。
この『巴』という字に後は海未さんが言っていたように、『志す』を足すと・・・。」
穂乃果「巴志・・・?どういう意味?」
亜里沙は沖縄の歴史書を広げ始めた。
亜里沙「人物名ですよ穂乃果さん、ここを見てください。『尚巴志王』(しょうはしおう)とあります」
穂乃果「・・・!!すごいよ亜里沙ちゃん!よく見ると志すの後の『王』って字もついてるし!よく知っているね!でもこの人って何をした人なの?」
亜里沙「簡単に言うと、琉球王国の王だった人です。
『火払いの印を志す王』は多分これの事ですよ。」
穂乃果「すごいね!さっきから同じ言葉しか言えていないけど!よく解ったね!」
亜里沙(本当は真姫さんと黒い魔女さんのおかげなんですけどね・・・。)
亜里沙はこうして簡単に解いている。
しかし、ここにたどり着くには真姫が諦めずに必死に解いたからなのだ。
諦めないという絶対の意志は奇跡を与える。
その真姫を覗いたからこそ、同じ所に立てている。
穂乃果「じゃあこの川っていうのは?亜里沙ちゃんは解いたの?」
亜里沙「・・・多分ですけどね。」
穂乃果「教えてよ!もったいぶらずに!」
亜里沙「まず言うことは川ではないということです。」
穂乃果「さっき海未ちゃんが言っていたね!川からイメージできる事をって!」
亜里沙「そうです。
それは、上がったり、下りたりできるものです。
川じゃなくて、流れるものを考えてください。」
穂乃果「水以外が流れる何か・・・?流れる物・・・。物・・・?たとえば・・・電流とか・・・。」
29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:52:47.77 ID:FV/EMCk60
亜里沙「そうです。発想はあっています。」
穂乃果「物流とか・・・?鉄道とかかな?上がったり下がったりできるし。」
亜里沙「大変惜しいです。さっき物流と言いましたが、物じゃないんです。」
穂乃果「物じゃない・・・?じゃあ人って事かな・・・?人が上がったり下がったり・・・。」
亜里沙「人であっています。
ですが、そのまんまの意味ではありませんよ。」
穂乃果「人であってるけど、物体として上下するものじゃないんだよね・・・?
でも上がったり下ったり・・・。っ!!あっ!!」
亜里沙「分かりましたか?」
穂乃果「わかった!!!位!!階級だね!?」
亜里沙「正解です、穂乃香さん。」
穂乃果「じゃあこの川を三つ下った・・・ていうのは、階級を三つ下げたって事なんだね!」
亜里沙「イエス。
私も事前に解いたのはここまでです。
ここから本を見ながらと行きましょう。
・・・あった。これかな?」
亜里沙は沖縄の歴史書物を開いた。
穂乃果「これは・・・?」
亜里沙「これは琉球王府行政機構図。つまり役職ですよ。」
※参考HPhttp://ryukyux.files.wordpress.com/2012/11/e79089e79083e78e8be5ba9ce6a99fe6a78be59bb3.jpg?w=645
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:53:18.38 ID:FV/EMCk60
穂乃果「いっぱいあるね!えっとまずは尚巴志王の位である『王』から階級を三つさげると・・・表十五人っていう役職にたどりつくね!」
亜里沙「川を下った先には二つの国・・・。『物奉行所』と『申口方』かな?」
これで最初の『火払いの印を志す王より命を承りし使い、川を三つ下ったその先に、二つの国有り。』は全て解いた事になる。
次は『一の国に三の村、二の国に四の村有り。三の村に二十四の鍵、四の村に二十六の鍵有り。』
亜里沙「これも簡単です、一の国、恐らく物奉行所の数を言っているんでしょう。」
物奉行所は用意宝物奉行所、給地方物奉行所、書体方物奉行所の三種類。
穂乃果「二の国の四の村ありは申口方の種類だとすると・・・確かに数は同じだね!」
申口方は平等方、泊地頭、双紙庫理、鎖之川、と四種類。
穂乃果「順調だね!次は『三の村に二十四の鍵、四の村に二十六の鍵有り』か・・・。」
亜里沙「役所の数ですね、物奉行所の下に二十四個の役所があって、申口方には二十六個の役所があります。」
穂乃果「次は・・・。」
『使い、黄金に至る鍵を得る。
宮殿より古来から作られし鍵、
納殿の鍵、
庫理の鍵、
田の鍵。
これらを砕いて一つの鍵を作り、使い、黄金に至った。
鍵を一つにして二十の破片に砕き、三十七の欠片に分けよ。』
亜里沙「鍵とはこの合計五十個の中から選ぶのでしょう。そしてこれらはそのヒント。」
穂乃果「『宮殿より古来から作られし鍵』は『古』って字があるから『宮古蔵』かな?」
亜里沙「『納殿』はその名の通りですね。納殿という役職があります。庫理も・・・『下庫理』がありますね。」
穂乃果「『田の鍵』・・・。漢字で『田』が使われているのは『田地方』だけです。」
亜里沙「後はこれらの鍵を砕いて一つにする・・・。」
穂乃果「希ちゃんが言っていたね!」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:53:44.79 ID:FV/EMCk60
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>凛「アナグラム?」
希「文字遊びの事や。国とか村とか出ているけどこれは別に地形の事を差しているんじゃなくて、一種のなぞなぞって事や。」
>真姫「なるほどね。つまり最後の欠片がうんぬんってあるけど、欠片は文字の事で、上の暗号から出した言葉三十七文字の中から特定の文字を引き抜けって訳ね。」
穂乃果「そう考えると面白いね!ということはこの暗号の答えは五文字になる訳だ!」
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:54:12.77 ID:FV/EMCk60
亜里沙「言語が解りませんが、抜き出した答えを日本語にしてくっつけてみますか。」
日本語にするとこうなる。
みやこぐらおさめどのしちゃぐいたかどころ
穂乃果「ビンゴだね!!!ちょうど二十文字!次は三十七文字!」
亜里沙「とりあえずローマ字にしてみますか。」
miyakoguraosamedonosichaguitakadokoro
亜里沙「あたりですね。三十七文字!」
穂乃果「さらにビンゴだね!!」
亜里沙「はい。黄金は近いです。」
亜里沙たちの顔にも笑みが見える。
『六の欠片、九の欠片、十六の欠片、十八の欠片、三十六の欠片を引き抜いて鍵に合わせた者だけが黄金に至る。』
穂乃果「ラスト!六つ目、九つ目、十六個目、十八個目。三十六個目の文字を引き抜く!
引き抜いた文字は
o r d n r
これで・・・五文字!
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:55:13.49 ID:FV/EMCk60
亜里沙「でも・・・。」
穂乃果「これが何だっていうのだろうね・・・?」
亜里沙は頭の中で字を回転させる。すると、ある事に気が付いた。
亜里沙「穂乃果さん、こうじゃないですか!?」
rord n
穂乃果「こんな単語あったっけ?どういう意味なの?」
亜里沙「正確にはこうです。」
l o r d n
穂乃果「!!・・・そうか・・・Lでもラ行は言えるよね。」
亜里沙「そうです。lord n !!西木野卿!!!これが黄金に至る鍵です!!」
穂乃果「そうだね!!!間違いない!!・・・んで・・・この先どうするの?」
亜里沙「それなんですよね・・・。」
穂乃果達は鍵を探し手に入れた。
・・・しかし、肝心の扉は何処にあるのか解らない。
碑文にもこれ以上は書いていない・・・。
亜里沙「後は名前しか書いてありませんね。
うーんこの推理が間違っていたのでしょうか・・・。」
穂乃果「そんな~。ここまできたのに~。あってると思うんだけどなぁ~。」
穂乃果は碑文のメモを逆さにしたり、横にしたりする。どうにも分からなかった。
亜里沙「今日はここまでですかね・・・、穂乃果さん、無駄骨でスイマセン・・・。」
穂乃果「ううん、私は楽しかったよ!ありがとう!」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:56:04.58 ID:FV/EMCk60
亜里沙「いえいえ、あ、穂乃果さん、最後の英語の綴り間違ってますよ?」
亜里沙が指を指したのはこの碑
文に書いてある最後の行。真姫の祖父の名前だった。
穂乃果の書いたメモにはRとあるが本当はLだ。
穂乃果「あ!いけないいけない!人の名前を間違えるのはいけないね!年下に言われるなんて反省反省!」
亜里沙「フフフ、紛らわしいですよね。
ローマ字の綴りって。」
穂乃果「本当だよ!他は日本語で書いてあるのになんで名前だけローマ字なんだろ!読みにくいよね!」
亜里沙「確かにそうですね。ここだけなん・・・で・・・ローマ字・・・。」
亜里沙「・・・・・・。」
そんな事考えても無かった・・・。
言われてみれば、確かにそうだ。
あえて、この名前だけをローマ字にした理由・・・。
真姫の爺様は洋裁かぶれとかそんな事だろうと思って気にしなかったが・・・。
名前だけがローマ字な理由を考えたとき、
亜里沙「あっ・・・・あっ・・・・!」
全てのピースがつながった。
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:56:30.56 ID:FV/EMCk60
亜里沙の心臓がバクバクとなり始める。それは確信めいた考えだった。
穂乃果「亜里沙ちゃん・・・?どうかしたの・・・?」
穂乃果は何かまずい事を言ったのかと亜里沙を見る。亜里沙は目をカッと開けて、
亜里沙「穂乃果さん!あなたは天才です!!」
穂乃果「えぇ!?」
亜里沙「謎が解けました!!行きましょう!!!」
穂乃果「どこに!?」
亜里沙はドアを開けて振り向きざまに元気よく言った。
亜里沙「黄金の待つ扉へですよ!」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:56:58.21 ID:FV/EMCk60
ホール
亜里沙「はぁはぁ・・・。」
穂乃果「亜里沙ちゃん、はぁ・・・はぁ・・・、扉って、石碑の事なの?」
亜里沙「はい。おそらく・・・ここにくぼみとか・・・。」
穂乃果「あ、亜里沙ちゃん!?」
亜里沙は碑文が書いてある石碑に向かって爪を使い、でっぱりが無いかを探しているようだ。
亜里沙「たぶん・・・あっ!!」
亜里沙は祖父の名前の書いてある『L』の字を押したり引っこ抜いたりしようとした。
そして、Lと書いてあるマス? と言えばいいのだろうか?それが取れた。
その下には何かスイッチのようなボタンがあった。
穂乃果「なるほどね・・・その碑文の名前がローマ字なのはそういう事なんだね。」
亜里沙「スイッチになっていたんですね・・・。ビンゴです。」
その後、 O R D Nの文字を同じ様にいじっているとマスが取れて下からスイッチを現れた。
穂乃果「これは・・・もしかして。」
亜里沙「いきますよ?穂乃果さん・・・。」
亜里沙と穂乃果は顔を合わせてうなずく。
亜里沙はL O R D Nの順にスイッチを押す。
ガコン!!!
最後のNを押した時、何か起動したような音がした。
その後、
ゴゴゴゴ!!!
近くにあるライオンの像の手が動く。
手の指す方向を見ると、さらにライオンの像があり、指だけが違う方向に向いていた。
亜里沙「指の指す方向に行け、という事でしょうか・・・?」
穂乃果「そうみたいだね・・・。」
亜里沙「行きましょう穂乃香さん。
黄金の正体をこの目で見てやろうじゃないですか?」
穂乃果「うん!行こう。」
二人はライオン像の指す方向を歩き始めた。
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:57:50.04 ID:FV/EMCk60
碑文を解いた所を上位の空間から二人の魔女は見ていた。
一人は紅茶を飲みながら優雅に、もう一人はポップコーンを食べながらキュートに。
黒い女「ふぅ・・・なんとか碑文は解いたわね。」
ピンク女「ちょっとズルイんじゃない?あれじゃあ猿でも解けるわよ?」
黒い女「私は真姫が解いた材料を亜里沙に見せただけよ。
そこからどう見るかは亜里沙次第だわ。」
ピンクの女「まぁ、答えは教えなかったしね。
でも今回だけよ?こんな事は。」
黒い女「安心して。もうこんな事はしないわよ。
これから起こるであろう事件に関しては私はノータッチよ。」
ピンクの女「当たり前よォ。
じゃ、見ていきましょうか。碑文が解かれて何が起こるのか、楽しみね!」
黒い女「もう全て知っているのに何を言っているんだか・・・。」
ライオンの指す方を歩いてもう1分くらい歩いた気がする。
亜里沙はそう思った。
屋敷は3階だが何せライオンの像が至る所にあるのだ。
何回も同じ所を歩かせられる。
しかし、歩いた先には違うライオンの像があり、亜里沙はこの仕掛けに芸術めいた物を感じた。
そうして歩いた先、それは書庫だった。
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/01(水) 20:58:41.08 ID:FV/EMCk60
穂乃果「ここは書庫室だよね・・・?どこに・・・あっ!」
亜里沙「・・・っさっきはこんな穴無かったですよね」
書個室の奥の暖炉の底が外れていた。
奥を覗きこんでみると、階段が出来ていた。
穂乃果「行こう!黄金を見たい!」
階段はらせん状になっていた。
少し暗かったが、目を凝らすと明かりをつけるスイッチがあったので亜里沙はそれを点ける。
そして何度か折り返すとそこには一つのドアがあり、文字が書いてあった。
『六の欠片、九の欠片、十六の欠片、十八の欠片、三十六の欠片を引き抜いて鍵に合わせた者だけが黄金に至る。』
穂乃果「正解・・・だね。」
亜里沙「はい。じゃあ・・・ドアを開けますよ。」
穂乃果「うん・・・っお願い。」
亜里沙はドアを開けた。
ギイイイイイイイイイイイイ
亜里沙「こ、これは・・・。」
その部屋は見るだけで豪華そうな部屋だった。
絵画やツボ、ベッド、ソファ、など、まるで高級ホテルの一室と言った方が良いだろうか。
そして、奥の方に、ここまで来た賢者を迎える様に、 それはあった。
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:01:04.16 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「あった・・・!本当に・・・黄金だ!!!!」
亜里沙「これは・・・すごいですね・・・!!それしか言葉が出てきません!」
黄金が、インゴットというべきだろうか?が、それはそれは高く、深く積みあがっていた。部屋の明かりが少し弱くてよかった。
これで少し強かったら黄金に光が反射して眩しくてこの目でよく見れなかったかもしれない。
これはまさに百万ドルの景色だ・・・と亜里沙は思った。
これを見るなら1万円くらいは払ってもいい・・・真剣にそう思った。
それほどに・・・この光景は美しかった。
穂乃果「これ全部でいくらあるんだろうね・・・!亜里沙ちゃん!」
亜里沙「解りませんが・・・余裕で10億はあるんじゃないでしょうか・・・。
何せこれだけあるんですから・・・!」
亜里沙「じゃあ、さっそくこれを報告しに行きましょうか?もう夜も遅いですがこれ程の事です。皆許してくれますよ。」
穂乃果「そうだね!じゃあさっそく・・・っ」
亜里沙「・・・っ!?ちょっと待ってください!穂乃果さん、こっちの机に何かありますよ!」
亜里沙が見つけたのは黄金が見える位置からは完全に死角になる場所にある机だった。
机の上には様々な古い本が置いてある。
その上には昔作られたのだろうか、年期の入った古時計がある。
穂乃香「・・・?どうしたの?亜里沙ちゃん。うわ、豪華そうな時計だね!」
亜里沙「上じゃありません!下ですよ下!」
亜里沙が指したのは机に置いてある封筒だった。
そこには『碑文を解いたものへ』と書いてある。
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:01:34.87 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「なんだろう・・・。真姫ちゃんのお爺さんが書いたのかな?」
亜里沙「かなり古いですね。年期が入っていそうです・・・。」
封筒には手紙が入っている大きさだったが何やら厚い。
他にも何か入っているみたいだ。
亜里沙「開けてみますか?」
穂乃果「うーん本当なら真姫ちゃんに見せるべきだろうけど・・・。」
笑いながら悩むふりをして、
穂乃果「あけちゃおっか?私達が碑文を解いたんだし!」
亜里沙「そうですね!」
亜里沙は封筒を開けて中身を取り出した。
中には一枚の手紙と通帳、そして印鑑が入っていた。
穂乃果「・・・?手紙と・・・これは・・・?」
亜里沙「通帳、印鑑・・・ですね。手紙はっと・・・。」
亜里沙は通帳を机に置いて手紙を流し目で読む。
真姫の祖父の字は達筆だったのか、読みにくかった。
亜里沙「うわぁ・・・夜中にこの字はきついですね・・・。」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:02:15.42 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「見るだけで目がしょぼしょぼしてきたよ・・・。」
亜里沙「書いてあるのは遺産の分配についてと・・・えっ・・・!!!!」
亜里沙は自分の眠気が一気に引いていくのを感じた。
黄金の謎を解いた時とはまた別の興奮とでもいえばいいのだろうか、心臓がドキドキしている。
亜里沙は自分の胸を握りしめ、手紙から目を離した。
震えている。その感情の招待がわかった。
・・・それは人の原初の感情。
亜里沙「そうか・・・怖いんだ。私。」
穂乃果「!?どうしたの!?亜里沙ちゃん!!」
穂乃果は亜里沙の顔を見る。その顔は真っ青だった。
亜里沙「なんて、恐ろしいものを・・・!」
黄金を見つけてから1時間後 隠し部屋 24:10
その後、穂乃果と亜里沙はメンバー全員に碑文を解き、黄金を発見した事を公表した。
亜里沙「・・・以下の経緯からこの部屋で黄金を発見した訳です。」
絵里「スゴイ!すごすぎるわ!まさか本当にあったなんて・・・。」
希「はぇ~すっごいきれいやわぁ~。
何年も前のがこうして傷一つつかずに残っているなんて、スピリチュアルやなぁ・・・。」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:02:45.03 ID:tmg9xEjI0
雪穂「よく碑文を解いたね・・・、スゴイよ亜里沙、お姉ちゃん・・・。」
真姫「・・・これで病院も救われるのね・・・、やったわ!ママ!」
にこ「・・・。」
海未「本当に・・・、あったんですね・・・・。」
ことり「穂乃果ちゃんと亜里沙ちゃんがこれを解いたの?すっご~い!」
凛「これっていくらになるのにゃ?」
花陽「想像もつかないよ・・・。
でも宝クジの1等賞をもらうよりはもらえるんじゃないかな・・・。
本当に信じられない・・・。」
メンバーは驚愕の表情を隠せない様子だった。
無理もないのかもしれない。
目の前に自分の身長よりも高い金塊を積まれたら誰だってこうなる・・・。
人の世が金で決まるならば、この黄金はまさに魔法・・・!これを溶かす事で世を思うがままにできる・・・。
穂乃果「私は何もしていないよ。
全て亜里沙ちゃんが解いたんだんだし。」
亜里沙「いえ、最後の穂乃果さんのひらめきが無ければ解りませんでした。」
希「二人とも、羨ましいわぁ・・・。
この黄金は全部二人のものや。
もう働かなくてもいいんと違うか?」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:03:16.52 ID:tmg9xEjI0
にこ「・・・!」
真姫「ちょ、ちょっとまってよ・・・!何で二人だけのものなの!?」
希の言葉に真姫が反応する。
真姫には家庭の事情でどうしても金がいるのだ。
そしてその金はこの黄金を金に換えれば十分返せる額だ。
希「さっき話したやろ?西木野家のおじい様が何であの碑文を作ったのかを考えれば一目瞭然や。碑文を解いた人にあの黄金を授けるってことやろ?」
真姫「明確に授けるとは書いていないわ!それにここは西木野家の土地よ?そこにあったんだから西木野家に所有権はあるはずよ!」
希「穂乃果ちゃん、何かおじい様が残した手紙とかは無いの?碑文を遺したおじい様や。
それを見つけた後の事もどこかに文書で残してあるんじゃない?」
亜里沙「それは・・・その・・・。」
穂乃果「・・・亜里沙ちゃん・・・。」
亜里沙は考える。確かにあった。真姫の祖父が残した手紙。
そこにはこの遺産の所有権についても書いてあった。が・・・。
亜里沙「・・・。」
亜里沙「・・・はい、確かにありました。ここに、」
そう言って亜里沙は手紙を出す。
真姫「貸して!」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:03:46.66 ID:tmg9xEjI0
真姫は亜里沙から奪い取るとようにして手紙を読む。
希「なんて書いてあるん?」
真姫「ええっとねぇ・・・昔の言葉だから何て読むのかは解らないけど・・・、
この碑文を解いた時にこの別荘にいた 人たち全員に黄金を分配するようにと・・・書いてあるわ。」
希「!?・・・ほぉ~ふとっぱらなおじい様や。全員って事はうちらにも入るよな?」
絵里「その手紙に書いてある通りに従うならば・・・そういう事になるわね・・・。」
にこ「私達にも・・・もらえるのね・・・。」
真姫「全員・・・全員か・・・。」
真姫からしても全員に分配とは思わなかったが、もらえないよりは何倍もマシだ。
分配しても真姫の取り分は病院を救うには十分な額だった。
真姫「わかったわ、正確な手順はまだちゃんと出来ないけど、その手紙に従ってこの場にいる全員で分配する事にしましょう。」
凛「ホントかにゃ!?凛たち一夜にして大金持ちにゃ~!」
花陽「本当にいいんですか!?うわぁ・・・億って・・・ご飯何杯食べられるんでしょうか・・・。」
にこ「本当にいいの・・・?真姫ちゃん、ありがとう!ありがとう!」
絵里「私と亜里沙で一人分の分け前でいいわ。それだけでも十分すぎるもの。ありがとう真姫。」
亜里沙「そうですね、それだけでも十分すぎます。
ありがとうございました。」
穂乃果「私と雪穂もそれでいいよ!いやぁ~どうしよっか?雪穂?」
雪穂「UTX学園に入る資金にしようかな。」
穂乃果「こら!雪穂!」
ドッアハハハハハハ
45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:06:09.50 ID:tmg9xEjI0
海未「・・・。」
凛「海未ちゃんどうしたにゃ~?」
海未は部屋の隅っこに行き、壁を軽く叩いたり、考え事をしている。
海未「上が書庫室・・・この部屋・・・書庫室の形からして・・・。もしかして・・・。」
凛「海未ちゃん・・・?」
海未「いえ、何でもないのですよ。何でも。」
亜里沙「それから、渡すのが遅くなってしまいました。
別にネコババする気はなかったんですが、話の流れで返すのが忘れてしまいました。」
真姫「・・・?これは?」
亜里沙「通帳と印鑑です。
手紙と一緒に封筒の中にありましたよ。
通帳には5千万入ってましたよ。」
凛「ご、5千万!?」
にこ「貸して!いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、・・・すごい・・・本当だ・・・。」
希「通帳にこないな沢山の0が書いてあるのをうちは初めてみたわぁ・・・。」
真姫「穂乃果と亜里沙には感謝しかないわ。
ありがとう。あなた達は恩人よ。」
亜里沙「偶然ですよ、奇跡のようなものです。」
亜里沙(真姫さん、あなたの記憶を見させてもらったおかげです。)
海未「亜里沙、よく碑文を解きましたね。さすがです。」
亜里沙「っ海未さん!ありがとうございます!」
ことり「あっ亜里沙ちゃん顔真っ赤~!」
亜里沙「っ!?からかわないでください!」
穂乃果「眠気もぶっとんできたよ!よーし飲むぞ!~!」
海未「お酒はありませんよ、穂乃果。」
凛「祭りにゃ祭りにゃ~!」
絵里「さすがに眠いわよ、続きは明日にしましょ。」
雪穂「眠れないんですけどー!これからの人生がバラ色なんてさぁ!」
穂乃果「雪穂ってこんな性格だったっけ?」
海未「大金を一度に持つと人の性格は変わるって言いますけど本当なのかもしれませんね・・・・。」
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:06:36.51 ID:tmg9xEjI0
ことり「じゃあ私は自分の部屋に戻るね・・・。穂乃果ちゃん、話があるんだ。」
穂乃果「え?話?何?」
ことり「うん。海未ちゃんも、いいよね?」
海未「はい。かまいません。」
ことりと海未の顔は二人と付き合いの長い穂乃果が見たことのない程深刻な顔をしていた。
何か、覚悟を秘めているような・・・。
穂乃果「わ、分かったよ。でも私は後少しだけこの黄金を見ていくよ。」
ことり「わかった。私の部屋で待っているね。」
海未「ゆっくり来てもいいですよ。私にも心の準備がありますから。」
海未が心の準備をする程の話がある・・・。
一体どんな話なのか。
絵里「亜里沙も行くわよ~。」
亜里沙「分かったよ。穂乃果さん、おやすみなさい。」
穂乃果「うん。亜里沙ちゃん。おやすみなさい。」
亜里沙達は2階に上がる。
亜里沙たちの部屋は2階と3階に分かれているのでここで別れる事になる。3年は2階。他は3階だ。
絵里「じゃ、ここでお別れね。あ、明日は12時に1階のリビングに集合よ~。最後に来た人3人が朝食当番だからね~。」
「「「はーい」」」
希「ほな、おやすみ~。」
にこ「おや~。」
ガチャン。
三年はそう言って部屋に入る。
花陽「じゃ、私達も上に行こうか。」
凛「そうだね。さっきは興奮していたけど、もう眠いよ~。」
雪穂「そうですね。もう遅い時間ですし・・・。亜里沙、どうしたの?」
亜里沙「ごめんなさい、私書庫室に忘れ物をしてしまったみたいです。
皆さん先に行っていてもらえませんか?」
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:07:07.28 ID:tmg9xEjI0
真姫「あら、そうなの?じゃあ先に行っているわね。」
凛「亜里沙ちゃんもおっちょこちょいなのにゃ。」
亜里沙「あはは・・・。」
凛たちはそう言って階段を上がる。
亜里沙「フフフ・・・。」
亜里沙はにやりと笑う。
無論、亜里沙は忘れ物なんてしていない。
しかし、今から行う作業は人に見られてはまずい。
それに二階から行えば、三階から人が降りてくるかどうかも見張る事ができる。
亜里沙「この屋敷の階段は一つしかない。
つまり、下に降りるにはこの階段を使うしかない・・・。」
黒い女「どうするの?一日目が終わった訳だけど。」
何もない所から黒い渦が出る。
それはどんどん広がっていき、女性の形を作った。
黒い魔女だ。
亜里沙「どう、とは?」
黒い女「明日には誰かが殺される、それはもう運命で決まっている事だわ。
あなたは真犯人を見つけたいのでしょ?」
亜里沙「そうですね。だからこんな所で油を売っていないで、今から行動しろと?」
黒い女「そうよ。ま、いつどうやって、何人殺されるかはわからないけれど、それでも見張るくらいは出来るはずよ。」
推理小説では、殺人事件が発生してから警察なり探偵が行うのはアリバイ調査と決まっている。
それは地盤を固めるのに必要な行為だからだ。
が、それを調べる警察はここには来ない。
亜里沙は前回の一日目で見た天気予報の記憶から、二日目は雨と激しい風が来る事を覚えている。
ここはクローズドサークルの環境下で起きる殺人事件。
そういう魔女の『シナリオ』なのだ。
警察の代わりに亜里沙がアリバイを十人全員を調べなければいけない。
黒い女(思えばこのアリバイをちゃんと調べなかったから前回は殺されたっていう事もあるのよね・・・。)
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:12:19.00 ID:tmg9xEjI0
記憶を失った亜里沙には知る由も無い事だが、前回亜里沙はメンバーのアリバイを殆ど把握出来ていなかった。
最初の犯行はメンバー全員がアリバイの無い深夜に行われ、次の犯行は全員がアリバイを証明できない空白の時間がある時に犯行が起こった。
なので亜里沙は犯人はおろか、『誰が犯人でないか』それすらも推理する事が出来なかったのだ。
結果、その者が死んで初めてシロ!と容疑者を絞り込むのに後手に回ってしまい、最後は何者かに殺されてしまった。
真姫の発言と証拠から希を殺した事だけは認めさせたが、他の者の殺人やトリックは解らず仕舞い。
せめてあの時アリバイを意識した行動をしていればもう少しどうにかなったはずである。
前回の結末を知っている黒い女としては、遠回しに助言を与えに来たのだが・・・。
亜里沙「大丈夫ですよ、ちゃんと考えてあります。どうやら前回の私は犯人に完敗したみたいですね。
あなたの言葉を聞くに、容疑者を絞り込めなかった、って所でしょうか?」
黒い女(相変わらず理解が早いわね。)
黒い女「さぁ・・・。どうかしらね。」
亜里沙「心配しないでください。ちゃんと考えてありますよ。
少なくとも、今から朝の12時までのメンバー全員のアリバイは把握できます。」
黒い女「・・・?そんな事できるのかしら?」
今現在メンバーは誰もがアリバイがない状態だ。
メンバー十人のアリバイは把握しておきたい・・・。
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:14:06.48 ID:tmg9xEjI0
が、亜里沙の体は当たり前だが一つしかない上に十人の部屋は二つの階に分断されている・・・。
亜里沙「前回の私と違う所は、予め殺人事件が起きる事が分かっている、という事です。
船で沢山考えましたよ。」
亜里沙はポッケからあるものを出した。
亜里沙「書庫室からくすねておきました。
これが、これから朝まで全員のアリバイを把握できる、方法です。」
黒い女「・・・?何よそれは?」
亜里沙はそれを投げ、手のひらでキャッチする。
亜里沙「ガムテープ、です。」
隠し部屋にて 24:45
穂乃果「・・・誰!?」
亜里沙「私ですよ穂乃果さん。
忘れ物をしてしまって、取りに戻ってきたんです。
・・・メールですか?」
穂乃果「あっ・・・そう!そうなんだ!
お母さんに一応メールしておかないと、と思ってね!
アハハ・・・。」
穂乃果はイソイソと携帯をしまう。
誰かと通話でもしていたのだろうか?
亜里沙「穂乃果さんは、まだこれを見ているんですか?」
穂乃果は山の様に積まれた黄金の前でじっとそれを見ていた。
穂乃果「うん、でもこの目で見ても信じられないよ。」
亜里沙「そうですね、この黄金もしかして私達を騙すためのドッキリじゃないですよね?」
穂乃香「ハハハッ、それはそれでおもしろいかも!」
亜里沙「はははは・・・。」
穂乃果「・・・。」
場が静まりかえる。
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:49:07.28 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「亜里沙ちゃん、結局あれ、見せなかったんだね。」
亜里沙「見せる必要もないでしょう、切っておいて正解でした。」
テーブルには真姫に見せた遺産の分配の仕方が記してある手紙が置いてある。
亜里沙は自分の懐からもう1枚手紙をだした。
もともと手紙は1枚だったが、亜里沙は皆を呼ぶ前に手紙を二枚に切ったのだ。
亜里沙「これは、これから幸せになる私達には必要の無い事ですよ。」
亜里沙はその手紙をビリビリに破いてしまった。
穂乃果「うん。確かにそうだね、私達には、こんな物はいらない・・・。」
亜里沙「穂乃果さん、ことりさんから呼ばれているんでしょう?
行ってあげたらどうですか?」
穂乃果「え・・・う、うん。
な、何か恥ずかしいなぁ・・・。」
亜里沙「その顔を見ると、何の用で呼ばれたのか分かっているようですね!教えてくれませんか?」
穂乃果「えーっ!そ、そんなぁ!」
亜里沙はイタズラを思いついた笑顔で、
亜里沙「教えてくださいよう!碑文を一緒に解いた仲間じゃないですかぁ!」
そう言って、穂乃果の脇腹をつつく。
穂乃果は観念したようで
穂乃果「もー、しょうがないなぁ・・・!」
まだ誰にも言わないでね?と前置きをして
穂乃果「穂乃果ね、ことりちゃんと付き合う事にしたんだ。」
そう発言した。
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:49:34.82 ID:tmg9xEjI0
亜里沙は一瞬何を言われたのか分からなかったが、
亜里沙「っえぇぇぇぇえ!!」
穂乃果「亜里沙ちゃん、しィ!」
亜里沙「っっと!スイマセン、いやでも、二人ってあれ・・・女性・・・。」
それを聞いて、穂乃果の顔が曇る。
穂乃果「やっぱり、亜里沙ちゃんもそういうの気にするタイプ?」
亜里沙「いえいえいえいえ!私は恋愛の価値観は人それぞれだと思っていますから!
それにほら、最近はIPS細胞とかあるといいますし!」
穂乃果はこんなにわたわたとする亜里沙は初めて見た。
それはこの島で始めて見る年相応の顔だった。
穂乃果「呼ばれたのは多分海未ちゃんにまだ言っていないからその事を言いに行くんじゃないかな?」
亜里沙「だったら今ここで皆に話しても・・・。」
穂乃果「海未ちゃんには、一番最初に言っておきたいんだ。
メンバーの中でも一番最初に・・・。」
亜里沙「・・・そうですか、よく分かりませんが、頑張ってください。」
穂乃果「じゃあ、行ってくるね。亜里沙ちゃんも、頑張りなよ~、知っているよ~。
海未ちゃんの事チラチラ見てたでしょ!」
亜里沙「え!?いや、そんな事・・・な、ないですよ!」
穂乃果「ハイハイ、じゃっあね~。」
穂乃果はそう言って、上がっていった。
ああいう所、やっぱ憧れるなぁ・・・。
52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:50:07.30 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「私の気持ち、ばれていたのか・・・。」
プシュー。
亜里沙は自分の顔が熱くなっている事を感じた。
亜里沙「・・・。」
亜里沙「よし!じゃあ、始めますか!」
亜里沙は気持ちを切り替えて『作業』をすることにした。
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:50:37.80 ID:tmg9xEjI0
25:10 廊下にて
穂乃果は書庫室からことりの部屋に向かった。
穂乃果「海未ちゃんに言うの、ドキドキするなぁ・・・。」
船の上でことりから話があると言われて心のどこかでそんな気はしていた。
いや、そうだったらいいなぁ・・・という願望だった。
昔から穂乃果の女性らしいかわいさにずっと憧れてきた。
その憧れが恋愛感情に変わったのはつい最近だったと思う。
でも、穂乃果たちは同姓。それはイケナイ事なんだ、と自分の気持ちを封じ込めてきた。
ことりが穂乃果を慕っていた事は気づいていたが、それはあくまで友達としてなのだと。
そして今日、(正確にはもう昨日だが)ことりから告白された時は何かのイタズラかと思った。
54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:52:09.52 ID:tmg9xEjI0
1日目 時間未定
ことり「あのね・・・私は、穂乃果ちゃんの事が、好きです。」
穂乃果「っ・・・え?」
ことり「恋愛対象として・・・好きです。」
穂乃果「っえっえええ!?」
ことりの顔は真っ赤だった。
そしてそれは穂乃果の顔もだった。
聞いた瞬間、顔が真っ赤になり、心臓がこれ以上ないほどバクバクした。
ことり「穂乃果ちゃんは・・・どうなの・・・かな?私の事・・・どう思っているの・・・かな?」
俯きながら、顔を真っ赤にして、目を潤ませて聞くことりに、
穂乃果は倫理観とか同姓だからとか、そんな物は吹っ飛んでしまった。
ことり「ご、ごめんね!やっぱり気持ち悪いよね!
私と穂乃果ちゃんは女の子どうしなのに・・・そんなっ・・・きゃっ!」
穂乃果はことりを力いっぱい抱きしめる。
ことり「え・・・?」
穂乃果「ことりちゃん、聞いてくれないかな。」
ことり「うん。」
穂乃果「私ね、好きな人がいるんだ。」
ことり「っ!うん・・・。そっか・・・。」
55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:52:37.64 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「その子は女の子なんだよ。
だから、女の子同士だからダメなんだって穂乃果はその気持ちを我慢していたんだ。」
ことり「うっうん・・・。」
穂乃果「でも、ね。その子が必死に告白してくれた姿を見ていて、そんなものどうでもいいやって思ったんだ。」
ことり「そ、それって・・・!」
穂乃果「うん。ことりちゃん、私もね。ことりちゃんの事が好き。
友達としてじゃなくてね?
大好き。
私と付き合ってくれないかな?」
ことり「ほ、穂乃果ちゃん・・・。」
穂乃果「そしてゴメンね。先に言わせちゃって。」
ことり「穂乃果ちゃああああああああああああん!」
穂乃果「いや~あの時の事は今でもあんまり覚えていないなぁ・・・。くう~。」
そうして物思いにふけりながら、穂乃果はことりの部屋の前に着く。
穂乃果「緊張してきたな・・・。よしっ!」
穂乃果は覚悟を決めて部屋をノックした。
56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:53:13.33 ID:tmg9xEjI0
コンコン
穂乃果「・・・あれ?」
コンコン
穂乃果は聞こえなかったのかと思い、もう一度部屋をノックするが返事は返ってこなかった。
穂乃果「あれー・・・?あっ開いている。」
穂乃果は思わずドアノブを捻ると部屋は開いていた。
部屋は暗い。同じベッドにことりと海未は入っていた。
穂乃果「寝ちゃったのかな?うーん。まぁいいや、今日は穂乃果もここで寝よーっと。」
穂乃果はベッドの中央に入る。
ツインベッドに三人はいささかせまい。だが穂乃果はこの窮屈な感覚も懐かしく思えた。
穂乃果「小さい頃はこうしてよく三人で寝たよね・・・。
ふわ~あ。」
穂乃果はあくびをして、
穂乃果「お休みなさ~い。」
静かに夢の中へと落ちて行った。
57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:54:31.92 ID:tmg9xEjI0
2日目 11:30 ことりの部屋
ピピピピピピピピピピピピ!
穂乃果「もう・・・うるさいなぁ・・・。」
穂乃果は目覚まし時計の音で目を覚ました。
寝不足な穂乃果は目をつぶり、毛布を頭まで被りながら、誰かが止めてくれるのを待つ。
ピピピピピピピピピ
・・・しかし音は鳴りやまない。
仕方なしと、穂乃果は目覚まし時計を手さぐりで止めて時間を確認する。
穂乃果「・・・まだ時間あ・・・ないね!」
時刻は十一時三十分。
約束の時間までは三十分あるが、乙女には朝から準備しなければいけない事が山ほどある。
あまりモタモタはしていられない様だ。
穂乃果は時計を置き、目をこする。
カーテンを閉めていたのと天気の影響、で殆ど明かりは入ってこなくて薄暗かった。
穂乃果「天気予報は大当たりかぁ・・・、ハズレて欲しかったなぁ・・・。」
にしても、と穂乃果は疑問に思う。
58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:55:01.47 ID:tmg9xEjI0
寝坊助の自分はともかくとして、こんなにうるさい目覚まし時計が鳴っていたら誰か起きるはずなんだけどな・・・。
いまだに二人は起きる気配も無いまま布団を頭までかぶっている。
身じろぎ一つしないその姿を見て、穂乃果はしっかり者の二人でもこんな時もあるんだと
微笑んだ。
穂乃果「あー起きるのメンドイ。」
まぁ昨夜は色々あったしね、と自分を納得させた。
穂乃果「も~しょうがないな~、よーし。」
穂乃果は布団から起き上がると、しずかに閉まっているカーテンをつかむ。
そのまま勢いよくカーテンを引いて引いて、ビックリさせるつもりなのだ。
穂乃果「よーし、起きろぉぉぉ!!!!」
びしゃあああああああああ!
穂乃果は勢いよくカーテンを開ける。するとそこには・・・
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:55:27.44 ID:tmg9xEjI0
「きゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:55:56.52 ID:tmg9xEjI0
11:45 ことりの部屋
花陽「これは・・・ひどい。」
花陽は青ざめながら顔をそむけた。
絵里「花陽、もうよしましょう。
二人ともこんな無体な姿をメンバーに見られたいはずがないわ。」
絵里が花陽を抱きしめる。
凛「どうして・・・な、何がどうしてこんな事に・・・。」
凛は茫然としていた。
無理もない。
目の前にある光景はとても目を背けたくなる光景だった。
穂乃果「ことりちゃああああああああああああああん!!!!海未ちゃんまで!なんで!?どうしてええええええええ!!!!!うわああああ!」
穂乃果は泣きじゃくりながらことりと海未に縋り付く。
その体はピクリとも反応しなかった。
何故なら・・・二人の首はきれいに鋭利な刃物で掻っ捌かれているのだから・・・。
あまりに深く、広く裂けているせいか、第二の口とも形容できた・・・。
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:56:23.83 ID:tmg9xEjI0
絵里「誰がこんな事を・・・。」
穂乃果「っっ・・・うわあああああああああ!!!っ!そうだ!救急車!医者を呼んでよ!ほら!早く!」
絵里「穂乃果・・・、もう・・・手遅れなのよ。」
穂乃果「・・・そんな・・・。」
穂乃果はその場で崩れ落ちる。
絵里は花陽に目で合図をすると、花陽は毛布でことりと海未の遺体を覆った。
毛布を血が吸い、赤黒く染める。
毛布で隠しても・・・余りにも無残な惨劇の跡は残るのだった。
だから花陽はさらに毛布で覆った。
ことりと海未。
この部屋には、二人の人間の首がばっさりと切り裂かれていた。
多分、それは昨夜からなのだ。
穂乃果はそうとは知らずに布団をかぶって寝てしまった。
状況から判断すると、そういう事なのだろう。
三人とも、二人の喉の切り傷を奥まで見てしまった。
下手をすれば骨まで至っているかもしれない。
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:57:17.40 ID:tmg9xEjI0
しかし、他に傷跡は無い。
・・・だから首の傷さけ見なければ、きれいな遺体だったのかもしれない。
しかし・・・、この傷は無残すぎた。
どんな殺しもきれいも汚いもない。
どれも無残だ。
しかし、これはあまりに無残としか・・・。
亜里沙「皆さん、その・・・こんな時になんて言ったらいいのか分かりませんが・・・おはようございます。」
亜里沙が部屋の前で声を掛ける。
どうやら今来たようだ。
絵里「亜里沙・・・。
事情は分かったわね?あなたは外で待っていなさい。
もうすぐ真姫たちが来るから・・・。」
亜里沙はそこまで取り乱している様子ではない。
むしろ、来るべき時が来たと言わんばかりな表情をしていた。
亜里沙は彼女らの傷口は見ていない。
しかし、返り血を浴びたこの部屋を見て大体の事は察したようだった。
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:57:53.07 ID:tmg9xEjI0
亜里沙は絵里の言葉を無視して部屋に入り、改めて現場を確認する。
亜里沙「この感覚・・・初めてですが、懐かしい気持ちがしますね。」
亜里沙は『前回』殺人現場に何回も立ち会っている。
記憶はないがこの血生臭い、死の匂いと良いのだろうか?は体が覚えていた。
それを嗅いでか、亜里沙の表情が本人も知らず知らずのうちに変わる。
それはまるで、子供が自分の出番が来たと浮かべる笑みのようだった
亜里沙「話は廊下でお聞きしました。
亡くなったのは、二人ですか・・・。」
絵里「亜里沙!?入っちゃダメってわからないの!?」
花陽「亜里沙ちゃん!見ない方がいいよ!部屋で待っていて!」
亜里沙「本当にスイマセン。
ですが私は『これ』のために来たのです。・・・邪魔をしないで下さい。」
凛「な、何を言っているんだにゃ・・・。」
亜里沙「むしろ皆さんこそ、部屋を出て行ってください。分かっているんですか?ここは殺人現場ですよ?
証拠が隠れているのかもしれないんですよ?」
メンバーどころか、実の家族である絵里も亜里沙の発言に茫然とするしかない。
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 00:58:20.09 ID:tmg9xEjI0
絵里「亜里沙・・・?」
穂乃果「ことりちゃん、海未ちゃん・・・。」
亜里沙「どいてくれませんか?現場を調査しないと。」
亜里沙はうずくまっている穂乃果にそう伝える。
亜里沙の目は冷え切っていて、邪魔だと言わんばかりだった。
絵里「亜里沙!いい加減にしなさい!必要なら私達がするし、警察の仕事よ!」
亜里沙「・・・やっぱり使った方がいいですね。」
前回の亜里沙も現場検証をメンバーに邪魔されて海未の遺体や部屋の中を詳しく調べる事が出来なかった。
もちろんそれは殺人現場を素人が荒らしてはいけないという意味では当たり前の事・・・。
だが、亜里沙はこの合宿中に事件を解かなければいけない。
しかしそれを説明しても分かってくれる訳もない。
亜里沙「しょうがないか・・・。」
亜里沙は深呼吸をして、
亜里沙「探偵権限を使わせてもらいます。
黒い神様、お願いします。」
パキン!!!
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 01:01:51.74 ID:tmg9xEjI0
空気が割れる音がしたかと思うと、亜里沙を止める声はピタリと止まる。
亜里沙の静かな迫力により、何故か誰も亜里沙の調査を拒めない不思議な空気が充満した・・・。
亜里沙「もう何でもありですね・・・。
これって手助けにならないんですか?」
その声を聞いて黒い女が現れる。
どうやら亜里沙にしか見えていないようだ。
黒い女「別に、今のあなたは調査をしても誰にも妨害されない。
ただそれだけよ?」
亜里沙「・・・記憶無いですけど、前回もこの力があればなんとかなったんじゃないですかね・・・?」
黒い女「前回はあなたが素のポテンシャルでどこまでいけるか知りたかったのよ。
まぁ、引き分けに持ち込んだだけでも評価できるけど。」
亜里沙「過大評価ですよ。」
黒い女「あなたには探偵権限を授け、自らのレートを上げた。
賭け金が高いという事は負けた時のリスクも高いという事。・・・意味は解るわよね?」
亜里沙「・・・負けた時はただじゃおかないって事ですよね。」
黒い女は何も慈善で亜里沙をサポートしている訳ではない。
あくまで賭けに勝つためにやっているだけだ。
当然・・・負けたら一切の容赦もないだろう。
それは死ぬよりもキツイ目に合うのは・・・間違いない。
何しろ彼女は、人間の上位にいる魔女なのだから。
66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 01:02:18.82 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「ご心配なく。
死体を荒らす事が目的ではありません。
喉の切り口なんて怖いもの見たくはありませんし。」
花陽「・・・じゃあ何を・・・?」
亜里沙「私はただ、この事件を誰が起こしたのかを知りたいだけです。
これから皆さんに色々お尋ねしますので、ご協力をお願いします。」
メンバーの中でも一番年下で、部外者のはずの亜里沙・・・。
しかし拒めない・・・。
当たり前だ・・・。
プレイヤーに逆らえる駒など、ありはしないのだから。
亜里沙「では、まず現場の状況からお聞きしましょうか?」
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 01:02:53.83 ID:tmg9xEjI0
11:45
一方、その頃、雪穂はまだ起きてこないメンバーを起こしに行っていた。
元々12:00にリビングで待ち合わせだったのだが亜里沙から連絡を受けて雪穂は他のメンバーを迎えに行き、 絵里たちは穂乃果の部屋に来るように言われたのだ。
時間よりはまだ少し早いのだが・・・。
今は希の部屋に向かっている最中だ。
雪穂「それにしてもこんなに寝坊するなんて珍しい・・・。」
雪穂は首をかしげる。
雪穂「それにこのガムテープ・・・。」
朝、雪穂が準備をして部屋をでると、ドアの上部にガムテープが貼られているのを発見したのだ。
それは扉の枠と跨ぐように貼られていて、中央にはハサミか何かで切れ込みがあった。
どうやら少しでも扉を開けたらこのガムテープは破れる仕組みになっているらしい。
そして切れ目の上にはマジックペンで複雑なサインらしきものが書いてある。
これをマネしようと書くのは骨が折れそうだ。
絵里たちに話したら同じものが扉に貼ってあったと言う。
どうやらメンバーの部屋の扉と、 屋敷を出入りできるドアに貼ってあるようだった。
雪穂「一体だれがこんな事を・・・。」
雪穂は不思議に思いながらも希の部屋にたどり着く。
案の定、希の部屋にもガムテープは貼りつけてあったが切り取られていた。
68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 01:03:22.80 ID:tmg9xEjI0
雪穂はガムテープを引きはがすと、ドアノブを捻る。
雪穂「あ、開くみたい。
希さーん!開けますよー!」
雪穂はドアを開ける。
カーテンが閉まっているので部屋は薄暗い。
しかし、ベッドに毛布の膨らみがあるのが見えた。
雪穂「おはようございます!希さん!」
雪穂はベッドをゆすってみる。
ゆさゆさ
雪穂「起きない・・・ん?」
雪穂の手に何か、液体の様な物が付いた。
それなんというか・・・粘り気があるというか・・・。
雪穂「っ・・・!」
その手はとても赤く、そして黒く染まっている。
雪穂「えっえっ何これぇ!?」
雪穂は怖くなったからか、カーテンを開ける。
雪穂「えっ・・・いやああああああああああああああ!!!!」
毛布に赤いシミがついている。
いや、それはシミというほど小さいものではない。
雪穂「なにこれぇ!?何これぇ!!!」
シミと言うよりは模様と言った方が正しいだろう。
雪穂の手を染めた様に、布団を赤く、黒いハスの葉の模様が希の毛布を彩っている。
雪穂「・・・っ!」
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 01:04:02.42 ID:tmg9xEjI0
雪穂は希の毛布を指でつまみながら剥ぐ。
布団は水滴を吸っているからか、重く感じた。
雪穂「はぁはぁ・・・んっ!」
雪穂は勢いよく、何かを振り払うように掛布団をはぐ。
雪穂「いやああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
この模様は何を塗料に描かれたのか・・・その答えは、希の首から溢れんばかりに出ていた 。
希の首を中心にそれは飛び散っていて喉の中はそれでいっぱい!
中は筆で泡立てた様に気泡が沢山あって、その液体が首から、口から、目からでていた。
雪穂「いやああああああああああああああああああああ!!!!」
希の首は見下ろしたら喉の奥まで見えるのではないか、
それほど深く切られていた。
ここまですっぱり切るならば相当鋭利な刃物でなければここまでの切り口はできないだろう。
雪穂「これは、し、し、し、死んでる!」
雪穂は足をばたつかせながら、一刻も早く希の部屋から出る。
それは、これ以上この部屋を荒らしてはいけないと思ったのと、
この呪われた血なま臭い部屋にこれ以上いたら自分もその仲間入りしてしまいそうで・・・。
雪穂は急いで絵里達の所に向かうのであった。
黒い女「今回は静かにやってるのね。前回が派手すぎたからかしら?」
ピンクの女「そうねー、前回は顔をグシャグシャにしたり、色々したからねー。
今回はその逆をイってみたわ。」
黒い女「一応の確認だけど、警察に電話は出来るのかしら?」
ピンクの女「電話は出来るわよ?部屋についている電話を使ってもいいし、携帯電話を使ってもいい。
でも雨と風で外側から干渉する事は出来ないわ。
これがクローズドサークルの完成ってやつね!」
警察の介入は、この合宿中はクローズドサークルの完成によって完全に否定された。
これで、亜里沙は自由に調査が出来る。
黒い女「さぁ・・・もうお膳立ては十分にしてあげたわ。
亜里沙、あなたがどこまでヤれるのか・・・見せてもらうわよ!」
ピンクの女「楽しくなってきたわぁ・・・。
碑文なんて所詮は前座も前座。これからが本番よねぇ・・・!」
黒い女「クスクスクスクスクスクスクスクス!!」
ピンクの女「ぷっあっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!」
黒い女「やっぱり一番の退屈しのぎは」
ピンクの女「魔女とのゲームに限るわよねぇ・・・?」
「「くすくすくすくすくすあっはっはっはっはっ!!!!」」
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:11:30.05 ID:tmg9xEjI0
2階リビング 11:50
絵里「希!?希まで殺されたって言うの!?」
絵里は戻ってきた雪穂から事情を聞いていた。
穂乃果「そんな・・・。希ちゃんまで・・・。」
花陽「さ、3人も殺されたっていうんですかっ・・・!」
雪穂「はい、でも海未さんとことりさんまで・・・そんなっ!」
絵里「思い出したくはないだろうけど・・・希も首を?」
雪穂「・・・はい。首を横に思いっきり切られていました。」
凛「海身ちゃん達と同じ殺し方にゃ・・・。」
雪穂「海未ちゃん達も・・・その首を・・・?」
花陽「うん、首を左からななめに切り裂かれていたよ・・・。」
絵里「凛、警察には電話したのよね?何て?」
凛「・・・今日はこの天気でヘリも船も無理みたい。
戸締りをしっかりしてはぐれないようにって・・・。」
穂乃果「そんなっ!?今日は来れないって・・・!嘘でしょ!」
凛「嘘だと信じたいよ・・・。でもこれじゃあね・・・。」
凛はそう言って窓を見る。
朝から降っている雨と風は、時間が経つにつれてどんどん激しくなっている。
今日一日はヘリも船も無理だろう。
凛「でもそうなると犯人はまだこの島・・・いや、この屋敷にいるのかもしれないわよね・・・?」
雪穂「ひっひいいいい!でもそうですよね!私達がこの島から出られないように、犯人も出られないんですから・・・。」
花陽「大丈夫ですよ!皆で一緒にいれば大丈夫!」
穂乃果「私達は殺されなんてしないよ!海未ちゃんとことりちゃんの敵を討ってやる!」
亜里沙「皆さん、静粛に。
泣いて事件が解決するならば、推理物は流行りません。
落ち着きましょう。
クールに、ね。
そういえば今日はまだにこさんと真姫さんを見ていませんが・・・?」
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:11:56.71 ID:tmg9xEjI0
雪穂「そういえばそうですね・・・。元々の待ち合わせ時間も過ぎているし・・・、
っまさか真姫さんとにこさんも!?」
凛「そんなっ!?」
亜里沙「まだそうと決まった訳ではありません。
・・・そうですね、とりあえずにこさんの部屋に行きましょうか。」
真姫「おはよー皆。
何かあったの?何かすごく騒がしいけど・・・。」
凛「真姫ちゃん!?生きていたのにゃ!?良かったにゃ!」
真姫「はっ!?どういう事!?」
絵里「真姫こっちに来なさい。
事情を話すわ。」
絵里は真姫を呼んで耳打ちする。
真姫「・・・えっ!?冗談でしょ!!」
真姫の顔が青くなる。
絵里「・・・。」
絵里は頷くしか無かった。
真姫「・・・そんな、三人が首を縦にって・・・。
それに海未も・・・って事は海未じゃないの・・・?」
花陽「真姫ちゃん・・・?何を・・・?」
亜里沙「じゃ、真姫さん来た事ですし皆で一緒に行きましょうか。
はぐれた者から死ぬというのが推理物のテンプレですし・・・。」
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:12:26.03 ID:tmg9xEjI0
回想 真姫の部屋
11:00
ジリリリリリリリリリ
真姫は目覚ましの音で目が覚めた。
12時に集合なのだが乙女には色々準備する時間があるのだ。
真姫は久しぶりに熟睡することはできた。
合宿に行くまでの真姫の心労の不安と言ったら計り知れない。
何せ、いつ西木野総合病院が潰れてもおかしくは無いのだ。
金策も尽き、残りは真姫の祖父が残した隠し遺産だったのだが・・・。
昨日穂乃果と亜里沙はそれを見つけてくれた。
碑文に従い全員に分ける事になったが、真姫の取り分どころか、通帳の中のお金で病院を救う事ができる。
たぬきの皮算用をあてにしていた身としては十分すぎる結果だろう。
真姫「っん~っ!と!」
真姫はベッドに座りながら背筋を伸ばす。
と、そこへ・・・
プルルルルルルルルルル・・・
プルルルルルルルルルルルルルルルル・・・・。
真姫「・・・誰よこんな朝早くに・・・。」
それは電話の鳴る音だった。
この別荘は部屋の一つ一つに電話がついていて、各部屋に内線で繋ぐ事が出来る。
もちろん普通の電話も出来る。
真姫は布団から起きると瞼を擦りながら受話器を取った。
取った時に画面を見ると非通知、と表示されていた。
真姫「(非通知・・・?)はい、もしもし。」
75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:13:14.58 ID:tmg9xEjI0
??「よぉ・・・俺が誰だかわかるか?」
電話の声はよくテレビのプライバシー保護とかで音声にノイズがかかっているような、そんな機械音?だった。
真姫「??誰よ?こんなイタズラをするのは。少々悪趣味よ?」
真姫はどうせ、いつもの三馬鹿がドッキリか何かを仕掛けたのかと思っていた。
??「よくそんなエラそうな口を聞けるなぁ・・・。
俺の機嫌が少しでも傾けばお前ら西木野家はあっと言う間に、
お終いだって、い、う、の、に、よ!」
真姫(誰よこれ・・・?凛やにこちゃんじゃない・・・!?)
真姫「誰よ?誰よあんた。私に何の用なの?どうしてこの番号を知っているのよ!?」
??「ひゃはははははは!言いたい事、聞きたい事はあるだろうが、それに答える権利も義務もない。
俺から言いたいのはただ一つ。お前にお願いがあって来たんだ。」
真姫「お願い?」
??「そう。お願い。1つ目。昨夜碑文が解かれたな?
その黄金が置いてある部屋には、今日一日、はメンバー全員の立ち入りを遠慮願いたい。」
真姫「!?」
??「2つ目。今日の15時に1階の管理室にホウキとかを入れるロッカーがあるよな?
そこで30分間隠れている事。」
真姫(何で管理室と碑文が解かれたことをを知っているのよ・・・。)
この別荘は真姫の祖父が建てた物で、もう何十年と経過している。
当然この別荘にはかつての祖父の知り合い、母の客なども尋ねた事もあるだろう。
管理室の事を知っている者がいてもおかしくはない。
しかし碑文は昨日偶然解かれた物だ。それを知っているという事は・・・。
真姫「あなた!碑文を知っているの!?いや、それ以前にどうして碑文が解かれたのを知っているの!?」
??「簡単だよ。俺もこの島にいるからだよ。」
真姫「!?」
真姫はとっさにカーテンを閉める。手は震えていた。
76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:13:48.38 ID:tmg9xEjI0
真姫「嘘よ!今この島には行きたくても雨と風で行けないはずよ!」
??「天候が変わるまでに行けばいいだろ?簡単な話だ。」
真姫「それでもどうやって来たのよ!?この島は私有地だから自分の船でもないとたどりつけないのよ!?」
??「それくらい自分で考えろよ、めんどくさい。
俺が聞いているのはさっきのお願いを聞いてくれるのかどうか、だ。」
真姫「誰があんたのお願いなんて聞くと思う訳?」
??「ほほぉ・・・、それはこういう事か?お前の病院の院長、お前の母親が、
医療ミスを犯したと世間にぶちまけても良い。と言うことだな?」
真姫「・・・!なんで・・・その事を・・・!!!!」
??「オイオイオイオイオイ!口のきき方が違うんじゃねえか!?
お前が今まずしなければいけないのは、俺に無礼な口を働いた事に対する謝罪じゃねえのかよ!?」
男?の口調が変わる。
この男の声は誰なのか、何故碑文を解いた事を知っているのか、この島にいるのか、
いくつもの謎が恐怖となって真姫を襲う。
真姫「・・・。スイマセンでした。許してください。」
男は機嫌をよくしたようで、
??「ようし。謝ればいいんだよ謝れば。
じゃあさっきのお願いは聞いてくれるって事で・・・いいな?」
真姫はもはや従うしかなかった。
この男(機械音?を使っているから性別すらわからない。)
の正体はおろか、目的も解らないのだから。
真姫「はい・・・。わかりました・・・。」
??「あ、それっとぉ・・・、俺は常にお前を監視出来る場所にいる。
お願いを破ったらすぐにわかる。
その時はぁ・・・。」
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:14:19.79 ID:tmg9xEjI0
真姫「・・・!?」
受話器の向こうでガサゴソと音が聞こえる。
そして受話器が誰かにあてられる音がした。
にこ「・・・むぐう!!むぐぐ!!!むぐ!」
真姫「にこちゃん!?そんな・・・どうしてにこちゃんが・・・!」
にこ「ちょ・・・あんた卑怯よ!!むっぐうう!!!」
真姫「にこちゃん!?にこちゃん!」
そしてまた受話器をあてる音がした。
??「あーもしもし?聞こえる?聞こえてくれたかなぁ!?この子がどうなっても・・・知らないから。」
真姫「どうしてあんたがにこちゃんをどうにかできるのよ!?どうして!っ・・・あんたもう・・・。」
にこは昨日まで確かに同じ別荘にいた。
今の声はどう考えてもにこだ。
ということは・・・。
真姫「あんた今、この別荘にいるっての!?」
??「当たり前だろ?こんな雨の中外で電話なんて出来るかっての。
そんなに驚く事か? 今回の旅行だって、来るはずの無かったのが二人も来たじゃないか。
そこにもう一人入り込んだだけさ。」
真姫(来るはずのって、亜里沙と雪穂・・・!)
二人は今回の旅行には元々来るはずの無い人間・・・。
にも関わらず、来たことを知っているという事は・・・。
??「なんだかだんまりしちまったみたいだが・・・、このカワイイ子を俺が預かっているって教えるんも当然アウト。
まぁ頭のいい君ならわかるよね?じゃあヨロシク頼むわ。」
真姫「ちょっと待って!最後ににこちゃんの声を・・・」
??「あんたが今頼んだお願いを叶えてくれたら明日の朝には解放するよ。
それと、俺が電話した履歴等をちゃーんと消しておけよ?」
78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:14:49.74 ID:tmg9xEjI0
ガチャン!
電話はそこで切れてしまった。
真姫「・・・どうしましょう。」
せっかく病院を救えると思ったのに・・・!
今度は変なやつからの電話・・・!
トントン
真姫「!?」
その音は扉からだった。
トントン
どうやらノックのようだった。
トントン
真姫(誰かしら・・・?)
トントン
メンバーなら名前を言いながらノックする。
じゃあこれは・・・
真姫「ま、まさか電話のやつが・・・。」
トントントン
ノックは続いている。
出るまで叩くつもりなのか・・・。
真姫「・・・。」
真姫はテニスラケットを持って扉に近づく。
ダンッ!
真姫はドアを勢いよく開ける。しかし・・・
真姫「なんなのよ!!もう!!」
廊下には誰もいなかった。
真姫にとって最悪の目覚めだった。
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:15:15.28 ID:tmg9xEjI0
ピンクの女「その後、皆はにこの部屋に向かうわ。ガムテープは切れていて、鍵は開いていた。
中に入るとにこの死体は無いものの、沢山の血痕が残されていた。」
黒い女「あら、死体は無いの?」
ピンクの女「ないわねぇ・・・。」
黒い女「・・・ふーん、なら生きているかもしれないわね。」
ピンクの女「かもしれないわねぇ・・・あっはっはっはっはっはっ!!!」
黒い女「・・・。クスクスクスクスクス!!」
にこの部屋 12:15
絵里「にこは一体どこに行ったのよ!?」
穂乃果「にこちゃんまでそんな・・・!?もういやだよぉぉ!!」
雪穂「この血塗れの部屋じゃ・・・。」
絵里「・・・そうね。
考えたくないけれどすでに・・・と考えるのが妥当よね・・・。」
花陽「うん・・・、この量じゃ・・・うん。」
亜里沙「しかし変ですよね・・・?
何故にこさんだけ死体を持って行ったんでしょう・・・?
それにこの血の跡は・・・?」
血はベッドにひどくぶちまけられる様に撒かれていた。
恐らく寝ている所を襲われたと考えるのが妥当だろう。
しかし血はベッドだけで床、窓には少ししか垂れていなかった。
絵里「にこの死体を持って行ったのならもう少し垂れていてもおかしくは無いわよね・・・。」
亜里沙「そうだね。どういう事なんだろ・・・?」
真姫「・・・。」
・・・もちろん真姫は知っている。
電話のにこの声からは身動きは出来ないようだが怪我をしている様子は無かった。
つまりこの血痕の跡は見せかけということ。
ペンキか何かだろう。
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:15:52.76 ID:tmg9xEjI0
真姫(でもあの人・・・誰なの・・・?うちに恨みを持つ人・・・?)
真姫(今回の事件を起こしたのは電話をかけてきた者と見て間違いはない。
一体何のマネなのかしら・・・。)
亜里沙「次は希さんの部屋に行きますか・・・まだ部屋を見ていないんで。」
メンバーは希の部屋に向かう。
雪穂「またあの部屋に行くの・・・?嫌だよ・・・。」
凛「・・・。」
穂乃果「・・・。」
亜里沙「私もですよ・・・でも、しょうがないんです・・・。」
希の部屋の扉を開ける。まず入ると嫌でも目につくのが血まみれのベッドだ。
雪穂以外は初めて見るので絶句した。
亜里沙「・・・あれ・・・?」
雪穂「・・・え!?」
凛「どうしたの・・・?これは!?」
絵里「希の死体は・・・どこにあるの・・・?」
雪穂「そんな・・・ない!!希さんのが・・・そんな・・・!!」
花陽「これはどういう事・・・!?」
見るのも悍ましい首がすっぱり切られている死体・・・。
希の死体が消えていた。
きれいさっぱりと・・・。
亜里沙「一体誰が・・・。希さんの死体はここにあったのよね?雪穂。」
雪穂「え、ええ。ええ。間違いないよ!そんな馬鹿な!」
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:16:19.56 ID:tmg9xEjI0
絵里「私達はずっと一緒に行動していたわ!つまり私達以外の誰かよ!」
花陽「それってこの島に私達以外の人がいるっていう事ですか!?そんな馬鹿な!?」
凛「でもそれしか考えられないにゃ・・・。」
亜里沙「・・・。」
ピンクの女「その後、もしかしたらことりと海未の死体も消えているかもと思ったメンバーは、 ことりの部屋に行くわけなんだけど、ことり達の死体も消えていたわ。」
黒い女「今回はよく死体が消えるわねぇ・・・。
前回も海未の死体が消えていたけど何か訳でもあるのかしら?」
ピンクの女「生き残っているメンバーはずっと一緒にいた。
にも関わらず死体は消えた。おっかしいわねぇ!?」
黒い女「例えば全員死んだフリだったならどうかしら?亜里沙たちが出て行った後に身を潜めた。」
ピンクの女「ほほぉ・・・。あの傷口で死んだフリ・・・ねぇ・・・。」
黒い女「他にもにこが死体を隠したっていうのも面白そうね。
にこは正体不明のやつに拉致されたように見えるけど、実際はにこが犯人の一人で、
電話は自演、自由に動けるのかもしれない。」
ピンクの女「ほぉほぉ。」
ピンクの女は薄ら笑いを浮かべながら話を聞いている。・・・ぶん殴りたい・・・。
ピンクの女「なるほどね!真姫への電話は全部ウソだったと・・・!」
黒い女「あっているかしら?」
ピンクの女「言う訳ないでしょぉ~。
まぁ死んだフリなどの可能性は当然亜里沙も意識しているはずだし・・・見ものよね。」
82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:16:46.55 ID:tmg9xEjI0
14:50 2階リビング
凛「うん、そうにゃ。
二人の首は・・・真っ直ぐに横に切り裂かれていて・・・。」
亜里沙は犯人を捜すために関係者に聞き込みをしては確かめていた。
アリバイを聞き、事件現場を検証するなど、もはや亜里沙が探偵気取りな事に誰も疑問を抱かなくなっていた。
真姫「ちょ・・・っそれはどういう意味!?私が疑わしいって事?」
亜里沙「そうは言っていません。
あなたが自室に戻り、待ち合わせの12時まで部屋から出なかったお話は聞きました。
しかし、それを証明しないとアリバイには・・・その・・・。」
真姫「証明!?どうやってよ!?」
亜里沙「どうやってでもです。
客観的に真姫さんには犯行は不可能だったと証明してくれればいいんです。」
真姫「何よそれは!?そんな事言ったら穂乃果だって怪しいじゃない!?
何せ海未達と一晩中一緒にいたのよ!むしろ一番に疑う所でしょうが!?」
真姫は穂乃果に指を指す。
穂乃果「真姫ちゃんそんな!?私がことりちゃん達の首を何度も刺したって言うの!?ひどいよ!!」
亜里沙「穂乃果さんが犯人で無い事は私が証明できます。理由は後でご説明しますが・・・。
他の方も出来るんです。
しかし犯人でない事を証明できていないのあなただけなんです。」
真姫「馬鹿な事を言わないで!何で私が自分の別荘で人を殺さなきゃいけないの!?」
花陽「落ち着いて真姫ちゃん!私達は全員疑われているよ!」
絵里「そうよ真姫、悲しいけれど、身の潔白を証明しなければいけないのよ・・・。」
凛「そうにゃ、私だって昨夜のアリバイを証明しようと必死に頭働かせているんだよ?」
雪穂「そうですよ・・・キツイ言い方かもですが、真姫さん、自分の潔白を証明する何かを探した方がいいんじゃ・・・。」
穂乃果「・・・そうだよ真姫ちゃん・・・。私達は等しく容疑者。
だから亜里沙ちゃんに協力しよ?」
83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:17:23.38 ID:tmg9xEjI0
皆、何故か亜里沙だけは犯人ではないと思っているのか、誰も亜里沙のアリバイについては聞いてこない。
・・・当たり前だ。
探偵が犯人ではいけないと・・・ノックスでもヴァンダインでも決まっているのだから・・・。
黒の女「あ、当然だけど亜里沙は犯人ではないわよね?」
ピンクの女「当たり前じゃない。」
ピンクの女『亜里沙は犯人ではないわ。』
黒い女「この世界には赤字は無いからねぇ・・・やり辛いわぁ・・・。」
メンバーは疑われているのは全員同じ、と言わんばかりだが、場の空気はそうではなかった。
何故なら亜里沙は真姫以外のアリバイを証明できるというのだ・・・。
それが本当ならば真姫だけが容疑者になる。
時間が進むたびに真姫の立場は危うくなっていく・・・。
真姫にとっては自分の別荘なのにも関わらず、針の莚に座っている気分だった。
バンッ!
真姫は机を叩くと立ち上がった。
真姫「ばかばかしいわ!私だけアリバイがないからって犯人に仕立て上げるなんて・・・・。こんな屈辱初めてよ!!」
84: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:18:34.72 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「じゃあどうするの?無いんだよね?でも私達にはあるよ?無いなら真姫ちゃんが犯人だよ?真姫ちゃんが人を殺した事になっちゃうんだよ?真姫ちゃんが海未ちゃんとことりちゃんと希ちゃんを殺した事になるんだよ?そうじゃなかったら早く証明してよ!!アリバイを!!できないの!?じゃあ真姫ちゃんが犯人だよね!?」
絵里「穂乃果!!落ち着きなさい!!真姫もよ!皆少し疲れているのよ・・・。
思えば朝食も食べてないわ。少し休みましょう・・・。」
花陽「そうですね・・・、少し疲れているんですよ。」
雪穂「あっ!真姫さんどこにいくんですか!?」
真姫「アリバイ捜しも犯人捜しもくだらない。
私達がする事じゃないわ! 明日になれば警察が来て、全てが解るのよ。
私達が探偵ごっこをする必要なんてないの。
私は自分の部屋で引きこもっているわ!いいわね!」
花陽「そんな!今一人でだなんて危険すぎます!」
真姫「うるさい!!私を疑うのならご勝手に。
全ては警察が解決してくれる。
それじゃあね。」
亜里沙「真姫さん!待ってください!今離れるのは危険です!」
真姫「うっさい!あんたが言った癖に何を言っているのよ!!」
ばんっ!!
全員に見送られながら真姫はリビングを退室する。
・・・真姫だってミステリー小説くらい読んだ事はある。
最初に不和を持ち出して一人になる者が次の犠牲者になる、
というミステリーのテンプレな行為を自分がしていると当然わかっていた。
が・・・真姫には部屋を抜け出さなければいけない理由があった。
真姫はにこをさらわれて脅迫されているのだ。
もうじき約束の15時。
これから30分の間は、管理室のロッカーに隠れなければいけない。
海未達が殺された後のこの命令は、自分を次のターゲットに選ぶと疑うには十分だった。
相談する事も考えたが、人質を取られて、身近で監視していると思われる犯人の前では出来なかった。
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:19:17.97 ID:tmg9xEjI0
真姫はその命令に従う事で、にこの安全を守っている被害者である事を主張するしかない・・・。
約束の時間が近いので真姫はどう客間を抜けようかと思っていたがいい口実が出来て良かった。
・・・今はどんな卑劣な罠でも逆らえない。
にこはメンバーの中でも大事な親友。
守らなければいけない・・・。
真姫「・・・。」
真姫は管理室のドアを開ける。
管理室のドアに鍵がかかっていたら・・・と危惧したがそんな事は無かった。
この部屋に先ほど電話をかけてきた者がいる。
真姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
今真姫は自室にいる事になっている。
その真姫が今この場で殺されたら、おかしな事になってしまうのではないか?
そんな事を考えながら、覚悟を決める。
いつまでもここにいると部屋から出てきたメンバーに鉢合わせしてしまうかもしれない。
真姫「いいわよ・・・犯人の顔を見てやるわ・・・。」
真姫はゆっくりとドアを開ける。
86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:19:49.46 ID:tmg9xEjI0
真姫「・・・。」
管理室の空気は冷え切っていて、誰かがいたような、そんな温かい空気と言えばいいのだろうか?は無かった。
ただ窓を叩く雨の音が聞こえるだけだった。
真姫は周囲を見渡した。
どうやら管理室には誰もいないらしい。
奥の方にポツンとロッカーがある。
ロッカーを開けるとそこには箒が3本と塵取りが1個入っていた。
箒と塵取りを覗けば入れそうだ。
真姫はそれらを取り除く。
・・・中には特に何も無かった。
この中に犯人がいるとは思わないが、指示の書かれた紙はあるかと思っていたのだが・・・。
真姫「この中に30分・・・結構きついわね・・・。」
真姫は悪態をつけながら中に入る。
ロッカーの隙間から光が少しだけ射したがそれでも中は真っ暗だった。
真姫「あ、時計するの忘れちゃった・・・。」
これでは何時真姫がロッカーから出ればいいのか分からない。
真姫「どうしよう・・・。」
真姫は途方にくれる。
しかしやるしかない。
真姫「それにしても一体だれなのよ本当に・・・。」
悪態の一つでもつかないと、もしこの部屋に犯人が入ってきて、このロッカーを開けてきたら・・・そんな悪い妄想ばかりしてしまう。
犯人は昨日碑文を解かれていて、亜里沙と雪穂が飛び入りで来ていたにも関わらずそれを知っていた人物・・・。
真姫「考えたくはないけど・・・やはりメンバーの誰かなのかしら・・・。」
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:20:18.65 ID:tmg9xEjI0
碑文を解いたことは親にもまだ言っていない。
真姫「でもメンバーは私の家庭の事情は知らないはず・・・。
じゃあ誰が・・・。」
電話の者に全てを覗かれているようで鳥肌が立つ。
真姫「っ!そういえば一度海未にこの事を相談した気がする・・・!」
家庭の事情が原因で練習に集中できない事があった。
それを海未はいち早く気づいて相談に乗ってくれた事があったっけ・・・。
あの時はうれしかったなぁ・・・。
真姫「って事は海未が・・・?でも海未は殺されたはず・・・。」
どういう事なのだろうか・・・?
もしかしたら海未はメンバーにこの事を話していたり・・・?
しかしこの事はかなりのヒントになるかもしれない。
警察に話すとしよう。
真姫「でも・・・どういう事なのかしら・・・。」
謎が次々と生まれる。
もう沢山だった。
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
その時、扉が静かに開く音がして真姫は思わず声を出しそうになる。
真姫「っ・・・!!」
花陽「開いていたんですね・・・。」
その声は花陽だった。
どうやら施錠されていると思っていたらしい。
真姫(花陽が・・・どうしてこの部屋に・・・!?)
足音が入ってきて、扉を閉めて、チェーンをかける音が聞こえる。
真姫(まさか花陽が・・・犯人!?)
真姫の頭がオーバーフローを起こしている。
この場で真姫に危害を加えるつもりなのか・・・?
花陽がロッカーを開けて何をするのか・・・真姫は怖くて想像もできなかった。
真姫(ひっひィィィィィィ!)
花陽はロッカーに近づいてくる。
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:20:55.88 ID:tmg9xEjI0
真姫の心臓はこれ以上ないほど音を発していた。
真姫からはロッカーの隙間から辛うじて花陽の姿が見える。
花陽「ここなら・・・大丈夫ですね・・・。」
花陽は真ん中でしゃがみこむと・・・手を目にあてた。
・・・何をしているんだろう?
電話の者は花陽じゃないのか・・・?
いや、もし花陽が電話の者じゃないとすれば・・・。
真姫(!っもしかして・・・!)
真姫(電話の者が来る前に花陽が来てしまって、花陽が施錠をしたから電話の者は入りたくても入れないんじゃ・・・!)
電話の者は花陽が管理室に来ることを計算に入れていなかったのだ・・・。
そう考えると・・・チャンスは今しかないのかもしれない。
花陽は話が分かる人だ。
もし穂乃果だったら気が動転しているからうまくいかないだろう。
花陽には全部を打ち明けて助けを求めるか・・・?
いや!それが何かの拍子でばれて、にこが殺されてしまうかもしれない・・・。
花陽に相談しても事態が改善するとは思えない。
それに花陽も仲間かもしれない。
やっぱり余計な事はしない方がいい・・・。
打ち明けるのは危険すぎる・・・。
花陽「っ・・・うぇっ・・・。」
その時何か花陽が鼻をすするような音が聞こえてきた。
真姫(これは・・・。)
真姫はなんだろうと思い耳を傾ける。
花陽「っうぇ・・・うええええええええん!」
・・・それは花陽が泣いている所で、真姫は茫然とした。
真姫(そうか・・・花陽は・・・メンバーが亡くなった事を一人になる事でようやく泣けるようになったんだ・・・。)
花陽と初めて会った時は何をするのもおずおずとしていて、泣き虫な印象だった気がする。
それが、今では仲間を気遣って、泣くのを我慢するように・・・。
真姫「・・・・・・・・・・・。」
真姫は花陽が泣き終わるまで、俯いていた。
真姫(こんな優しい花陽が犯人の訳ない・・・。
そうと決まれば・・・っ!?)
真姫がロッカーを開けようとしたその時、
花陽「だ、誰ですか!?」
真姫(!!?)
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:21:27.59 ID:tmg9xEjI0
花陽が急に立ち上がった。
真姫(気づかれた・・・!?)
しかし花陽はロッカーの方を向いてはいない。
ロッカーの隙間からだから少ししか見えないが・・・花陽の肘を見る事ができた。
この事から花陽はロッカーとは反対方向を向いているのだとわかる。
花陽「な、どこから入って・・・っ何ですかそのナイフは!?やめてください!」
ガタンガタン!!
花陽が視界から消える。
音から誰かと争っているのは確かだった。
でもチェーンが掛かっているのにどうやって・・・?
真姫(いや!誰がとかどうやってとか、そんな事は考える時間はない!)
恐らく犯人が花陽の命を奪おうとしているのだ。
ここを飛び出して、加勢した方がいいのでは・・・?
それとも人を呼びにいくとか・・・。
しかしそれをしたら何故ここに隠れていたのかを問い詰められるし、いやでも仲間の命には・・・。
こんな事を考えている場合ではない。
今すぐ助けないと・・・でも助けたら・・・にこの命を見捨てる事になるかも・・・。
でも、犯人が一人とも限らないんじゃ・・・?
ここでもし犯人の一人を捕まえたとしても、もし二人以上いたら・・・。
花陽の命と、にこの命。
二人とも親友なのに真姫はそれを天秤に掛けている。
なんて罪深いのだろうか・・・!
ガチャン!!
その時扉が開き、チェーンを引っ張る音がした。
誰かが扉を開けようとしたのだ。
凛「かよちん、そろそろ部屋に戻った方が・・・かよちん!?」
花陽「凛ちゃん!た、たすけ・・・グホオ!」
凛「かよちん!?かよちん!!どうしたの!!かよちん!!!開けて!!ここ開けて!」
花陽「ぐっ・・・あっ・・・・・・・・・・・・。」
凛「かよちん!!!誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!誰かきてえええええ!!」
凛が大声を上げながら廊下を走る。
部屋は静まり返った。
真姫(これは・・・もしかして・・・。)
真姫は恐ろしい想像をする。
今、真姫は花陽を殺した電話の者と同じ部屋にいるんじゃないのか!?
ならば何故犯人は逃げずにこの部屋にいるのか。
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:22:01.68 ID:tmg9xEjI0
ロッカーの隙間からは何も見えない。
何も聞こえない・・・。
真姫(!っもしかして・・・。)
犯人が息を殺してこのロッカーの隙間から見えない所で自分が飛び出してくるのを待っているんじゃ・・・!
花陽が死んだ今、この部屋にいつまでも残っているのはマズイ気がする・・・。
でもどうすれば・・・。そもそもこのロッカーをでていいのかすらわからない・・・。
すると、大勢の足音が聞こえてくる。
真姫は再び息を殺して気配を断った。
凛は全員を連れて駆け戻ってきた。
絵里の手にはコンパクトな斧が握られていた。
凛は扉を開けようとしてチェーンが掛かっているのを確認して絵里に合図する。
絵里はチェーンに斧を振り下ろした。
ガンガンッ!!ガツンッ!!
絵里は斧を振り下ろし、三回目でやっとチェーンが切れた。
凛「かよちん!!!」
絵里を押しのけて凛が中に飛びこむ。
そしてその後に残りのメンバーも続く・・・。
凛「かよちん!!しっかりして!!!かよちいいいいいいいいいいいいいんん!!!」
真姫は凛の叫び声を聞くことで、もはや花陽は手遅れだと理解した。
雪穂「こんな・・・ひどい・・・。」
凛「かよちん!!かよちいいいいいいん!!誰か医者を!医者を!!」
絵里「こんな事って・・・。花陽が休むと言って出て10分くらいよ!?なのに・・・。」
穂乃果「ひどい・・・!また首を切られている・・・!ひどい!!」
雪穂は近くの部屋から毛布を持っていき、花陽の遺体にそれをかける。
毛布が血を吸って赤く染まった。
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:22:36.83 ID:tmg9xEjI0
雪穂「くっ・・・。見ていられないわ・・・。」
穂乃果「・・・ことりちゃん達と・・・同じだ・・・。首が縦にぱっくり・・・いやあああああ!」
凛「だから一人じゃダメって言ったのに・・・うわあああああああああああああ!!!」
絵里「多分犯人は油断してバラバラになるのを待っていたのね・・・。」
凛「くっそおおおおおおおお!!!!!どこにいるの!!?」
雪穂「・・・っ待ってください!!おかしくないですか!?
窓も閉まっていて、この部屋にはチェーンがかかっていたんですよ!?
犯人はどこから脱出したんですか!?」
絵里「そもそもどうやって部屋に入ったのかしら・・・。
この部屋は施錠されていたのに・・・。」
穂乃果「もしかして・・・密室殺人って訳なの・・・!?」
凛「そ、そんな・・・。あ、でもドラマとかで見たけど窓ごと外せるようになっているとか・・・」
亜里沙「それはありません、確認しましたから。」
絵里「亜里沙・・・!」
穂乃果「今までどこに・・・。」
亜里沙は廊下に立っていた。
亜里沙はこの部屋で何かあったかを知るや凛たちとは逆に走って行った。
どうやら外に行き、外からこの部屋に入る事が出来るかを調べていたらしい。
亜里沙「死体は首から縦にぱっくり、から居ました。
室内はどんな感じですか?」
絵里が廊下まで行き、説明する。
絵里「扉にはチェーンがかかっていて、私達は切断して入ったわ。
窓も施錠されているわよ。」
亜里沙「奥は何をもめているんですか?」
亜里沙が管理室の中を軽く覗き込むと、凛と穂乃果と雪穂が言い争っているのが見えた。
凛は花陽の遺体をリビングに運びたいと主張しているようだった。
しかし穂乃果と雪穂がそれを止めている・・・。
凛「海未チャン達の死体はそうしたらどうなっていたのよ!?消えちゃったんだよ!?
かよちんも消えたらどうするのよ!?犯人は殺すだけじゃなくて遺体に残酷な事をするつもりなのかもしれないんだよ!?」
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:23:16.77 ID:tmg9xEjI0
雪穂「でも・・・警察が来たときに・・・その・・・。」
凛の言い分も分かる。
海未達の遺体は犯人によって運び去られた。
絵里「亜里沙・・・その、今回は遺体を運ばせてもらうわよ?」
亜里沙「・・・いいでしょう、どうぞ。」
絵里は近くの部屋から持ってきたもう一枚の毛布でタンカを作り、凛と協力してその上に乗せる。
毛布から血が垂れていて、この大量の血の出所を考えるだけで嗚咽がでた。
亜里沙「あ、すいません。どきますね。」
亜里沙は廊下の今いる位置は邪魔だと思い、位置を変える。
凛「かよちん・・・かよちいいいいいん!」
絵里「花陽は・・・2階のリビングに寝かせるわ。」
雪穂「でもどうやって中へ・・・。こんなの不可能だよ!!!」
亜里沙「・・・。」
亜里沙は部屋を観察する。
その目に焼き付ける様に、繊細に。
亜里沙の記憶力は探偵権限によって写真並になっている。
ならばこの数秒間びっちりと見るだけで十分なのだ・・・。
後は頭の中で思い出しながら推理すれば良い。
亜里沙「今日ほど血を見る日も無いでしょうね・・・。」
亜里沙「・・・ん?」
亜里沙はロッカーを見つける。
箒などをしまう、変哲もないロッカー。
しかし・・・ロッカーのまわりには箒やちりとりがある・・・。
まるで誰かが箒や塵取りを出して何か大きい物を入れたかの様に・・・。
亜里沙「・・・。」
亜里沙はロッカーに近づく。この大きさなら、もしかしたら・・・。
亜里沙はロッカーに手をのば
93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:25:36.79 ID:tmg9xEjI0
ガシン!
絵里「こーらいい加減にしなさい!行くわよ!」
すのを絵里が肩に手を置いて止め、亜里沙を引きずった。
亜里沙「・・・まぁいいでしょう。」
凛「ほら早くするにゃ!!」
凛が急かす。
亜里沙はロッカーをにらみながらリビングに戻るのだった。
真姫(・・・、行ったかしら・・・。)
真姫は汗を伝うのを感じながら亜里沙たちの足音が聞こえなくなるのを聞いた。
真姫は慎重にロッカーを開けてゆっくりと部屋に飛び出す。
・・・大丈夫だ。誰もいない。
真姫(鍵をかけられなくて良かった。)
もし施錠されていたら部屋をでた後に施錠が出来なくておかしなことになる。
真姫(とにかくここから早くでないと・・・。)
真姫は自室にいる事になっている。
そこで寝ていたとでも言おう。
真姫はそう思い扉を開ける。
廊下には誰もいない。真姫は急ぎながら駆け足で自分の部屋へ移動する。
真姫の部屋は3階だ。
真姫は階段を上がって2階に上がる。
皆はおそらく2階のリビングにいるのでここを上がれば・・・!
亜里沙「あれ、真姫さん。」
真姫「ヴェエエ!?あ、亜里沙!?」
階段を上がり切ろうとしたその時、リビングからひょいと顔を出した亜里沙と出くわす。
亜里沙「・・・ちょうど今真姫さんにも知らせようと思っていたんですけど。」
94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:26:05.88 ID:tmg9xEjI0
真姫「・・・何?何かあったの?なんか外で騒いでいたけど。」
真姫は寝ていたという言い訳を捨てて『聞こえていたから感心を持って外に出ようとした』という話の流れに持っていこうと考える。
亜里沙「・・・今真姫さん、階段を上がっていく所でしたよね・・・?どうしたんですか?」
真姫(クソッ!階段を上がっている所を見られていたか・・・!)
真姫は心の中で舌打ちをした。
真姫「外がしばらく騒がしかったから様子を見ようと1階まで下りてみようと思ったのよ。
そしたらもうあなた達が上がった後だったから一人で行くのは怖くなって途中で帰ってきたの。」
亜里沙「・・・そうですか。
私は探し物を・・・と思って。
ほら、大変な事になったじゃないですか・・・?」
亜里沙が深海を覗き込むような目で真姫を見る。
亜里沙はもう真姫を不審がっているのだ。
だからその場にいなかった真姫が知らないはずの事を話させようとしてきている。
殺人が起こった事を知らないふりをすれば・・・大丈夫だ。
真姫「・・・管理室で何かあったの?」
亜里沙「・・・・・・・。」
真姫「・・・ど、どうしたの?」
亜里沙「・・・私は今探し物をすると言いましたが何処でとは言っていません。
何故管理室だと思ったんですか?」
真姫(しまった・・・!)
真姫「あそこはゴミとかゴチャゴチャしていて足元が見えないからね。
私もよくあそこでイヤリングをなくしたから、もしかしてと思って。」
亜里沙「・・・。」
真姫「・・・・・・・・・・・・。」
亜里沙「・・・そうですか、 実は真姫さんにお伝えしたと思いまして、花陽さんが殺されました。」
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:27:33.83 ID:tmg9xEjI0
真姫「・・・えぇ!?それは本当なの!?」
いかにも今知ったかのように振る舞う真姫。
亜里沙「・・・はい。それも含めてちょうど皆さんに今から大事な話がありまして・・・。
真姫さんには不愉快だと思いますが一度、来ていただけませんか?」
真姫「・・・。わかったわ。」
亜里沙が真姫を疑っている以上、下手な事は出来ない。
しかも階段を上がってくる所を目撃されてしまった。
真姫は亜里沙とリビングに向かうのだった。
リビングに行くと、凛がオイオイと泣いていて、穂乃果と雪穂がそれを慰めている。
絵里は部屋を意味も無く歩き回っていた。
亜里沙「皆さん、真姫さんが見つかりましたので、重要なお話ししたいと思います。」
真姫「・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
真姫が入室した瞬間、部屋の温度が下がった気がした。
真姫(大丈夫よ!大丈夫!)
真姫は不審がられているがロッカーに隠れていただけだ。
殺人は犯していない。
警察に話そう。
それまでの辛抱・・・。
にこが人質な今、この状況を今打ち明ければ犯人の耳に入り、にこが殺されてしまうかもしれない。
絵里「重要な話?」
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:29:16.58 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「うん。最初の事件から全てを整理したいと思います。」
真姫「そういう事なら私は・・・。」
亜里沙「まぁそうおっしゃらず。お聞きくださいな。」
真姫「・・・。」
真姫はしぶしぶソファに座る。
凛が気を効かせて扉を閉めた。
さらに、防犯のために鍵を閉める。
カチャン
真姫にとってその音は自らを閉じ込める牢獄の錠前に鍵をする様に感じた。
・・・真姫は気づいていない。
探し物があって外に出たはずなのに、真姫に会った途端それをせずに部屋に戻った亜里沙の真意に・・・。
亜里沙「犯人が・・・わかりました。」
凛「・・・っ!?嘘でしょ!?」
97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:30:07.89 ID:tmg9xEjI0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
黒い女「あら、少し早いわね。もう解けたの?」
ピンクの女「あらら・・・ふふふふふふ。お手並み拝見・・・、フフフフフフフフ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:30:45.06 ID:tmg9xEjI0
15:40 二階リビング
亜里沙「海未さん、ことりさん、希さん、花陽さんを殺した犯人は・・・。」
亜里沙「真姫さん、あなたですよね?」
亜里沙はゆっくりと真姫に指をさす。
真姫「・・・何を言うかと思えば私が犯人・・・?もしかして話し合いってその事?」
亜里沙「はい、そうです。
あなたが4人を殺したんですよね?」
真姫「冗談じゃないわ!私は何もやっていないわよ!」
絵里「・・・真姫をかばう訳では無いけど、証拠も無しに言う物じゃないと思うわ。」
凛「そうだよ!そこまで言うからには証拠はあるんだよね?」
亜里沙「もちろんです。
これから説明させて頂きます。」
亜里沙「まず花陽さん殺し、これはとてもシンプルです。
真姫さん以外は常に私達は一緒にいたのですから。」
それはこれ以上もない単純な答えだった。
一人以外全員のアリバイが解る時間に殺人が起きた。
つまりアリバイが無い人物が犯人・・・。
穂乃果「これ以上もない、というかどう考えてもそれしか考えられないよ・・・。
真姫ちゃん以外に花陽ちゃんは殺せない・・・。」
真姫「知らないわよそんなの!アリバイがないからって犯人な訳!?」
亜里沙「じゃあお聞きしますが、あなたは花陽さんが殺された時間、どこにいたんですか?」
真姫「・・・亜里沙には言ったけど、部屋で寝ていたわよ。」
亜里沙「それを証明できる物は・・・?」
真姫「ないわよ!!」
絵里「でも待って、おかしいわ。
あの部屋は密室だったはずよ。
真姫が犯人だったとしてもどうやって・・・。」
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:31:29.00 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「簡単ですよ、あの部屋にずっと隠れていたんです。」
凛「えっ!?」
亜里沙「真姫さんは部屋にいたと言っていますが、私は1階の階段から上がる所を目撃しています。
例えばですが、花陽さんを指定の時間にメールか内線で管理室に呼び出すんです。
後は予め隠れていた真姫さんが花陽さんを殺して扉にチェーンを掛けて自分は隠れる。
例えばロッカーとかどうでしょうか?
これで密室殺人の完了です。」
絵里「そう言われてみれば、確かにそうかもだけど・・・。」
真姫「ふざけないでよ!私が隠れていたって証拠でもあるの!?それに最初の事件はどうなるのよ!?」
亜里沙「それもお話しします。
昨日の24時ごろ、インゴットが見つかった後です。
その場で解散となりました。」
真姫「そうよ!つまりその時点で全員のアリバイは解らなくなるじゃない!」
亜里沙「そうですね・・・普通なら、その通りです。
なので、私はその時にちょいと仕掛けをしておいたんですよ。」
雪穂「仕掛け・・・?」
亜里沙「そう、全員のアリバイを追える仕掛けをね。」
亜里沙はそう言ってある物を出した。
絵里「ガムテープ・・・?」
亜里沙「うん。順番に説明していくね。
解散になって二階に上がった後、私は忘れ物があると言って3階に上がらなかったでしょ? あの時皆が3階に上がった後、私はこのガムテープをことりさんの部屋以外のメンバーの扉に貼りました。」
凛「えっ!?じゃあ、あれは亜里沙ちゃんが・・・。」
亜里沙「その後黄金の置いてあった部屋に行き、穂乃果さんとお話しをしました。
まぁ内容はここでは割愛しますけど・・・。
そして穂乃果さんはことりさんに話があると呼ばれていたのでことりさんの部屋に向かいます。 それからごめんなさい、私は穂乃果さんの後を着いていきました。」
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:33:08.38 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「えっ!?」
亜里沙「そして穂乃果さんが部屋に入ったのを見届けてから、私はこのガムテープをことりさんの部屋に貼りました。」
凛「どういう事にゃ・・・?」
亜里沙「何しろ黄金が発見されて何が起こってもおかしくは無いと思っていたので。
私は何かの事件が起こると思って予めアリバイを確認できる細工をしておいたんです。」
雪穂「そのガムテープでどうやって全員のアリバイを追えるって言うの・・・?」
亜里沙「このガムテープはドアがほんの少しでも開けられたら破れる様に細工して貼りました。
ロシア語でサインもしましたので複製も不可能です。
つまり、事件発覚時にこのガムテープが破られていない部屋にいた者は部屋から出ていないという事です。
皆さんから死体の証言を聞いた所、毒殺やトラップなどの遠距離から殺せる物ではなかったので、 発覚時まで別の部屋にいた者のアリバイは最初の事件においては保障されます。」
凛「確かに・・・そういう事になるにゃ・・・。」
亜里沙「はい。10人分とは言え、中々手間でしたけどね。」
雪穂「なんてことを・・・。」
傍から見たら不審者極まり無い行動だ。
しかし彼女は普通の人間ではない・・・。
同じ世界をループしてきた魔女の駒・・・!
101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:33:52.36 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「事件の発覚時、私の部屋はことりさんの部屋のとなりという事もあり、穂乃果さんの悲鳴にはすぐに気づきました。
私はガムテープの有無を確認した後メンバーに連絡。
お姉ちゃん達が集まった所で穂乃果さんの部屋に行ってもらい、私は外にある事を確認しに行きました。」
亜里沙「事件発覚時の各部屋のガムテープはこんな風になってました。」
102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:34:26.86 ID:tmg9xEjI0
事件発覚時のガムテープの有無
絵里 有
希 無
にこ 無
花陽 有
真姫 無
凛 有
海未 ことり 穂乃果 有
103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:34:54.14 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「この事からも、穂乃果さん、花陽さん、凛さん、お姉ちゃん、雪穂はアリバイがあるという事になります。
にこさんと希さんは襲われた時に犯人が開けたという事で説明出来ますが・・・真姫さん、あなたはどういう事なんですかねぇ・・・?」
真姫「・・・くっ!」
絵里「あのガムテープからそんな事が分かるなんて・・・いやでもちょっと待って?
部屋からでていない事が証明されたからって穂乃果は違うんじゃない?同じ部屋なんだから。」
亜里沙「ことりさん達は刺殺だったんですよね?私はお姉ちゃん達にことりさんの部屋に向かわせました。
あの時、穂乃果さんは部屋から出ましたか?」
凛「ううん。」
亜里沙「私は最初にことりさんの部屋に入った時、徹底的に部屋中を調べつくしましたが、凶器は出てきませんでした。
これが何を意味しているかは分かりますよね?」
雪穂「なるほどね・・・刺殺なら必ず凶器があるはずだけど、
お姉ちゃんが部屋に入ってから絵里さん達が開けるまで扉が一度も開いていない事はガムテープが証明している・・・。」
凛「もし穂乃果ちゃんが殺したなら部屋に必ず凶器があるっていう訳にゃ?」
亜里沙「その通りです。
先ほども言いましたがことりさんの部屋は事件発覚時はガムテープは付いていました。
ことりさんの部屋は徹底的に調べましたが凶器はでませんでした。
ことりさんの部屋から出る前に皆さんの身体検査も行いましたが凶器は出ませんでした。
これがどういう事か分かりますか?」
雪穂「・・・お姉ちゃんが殺人を起こす事は共犯者がいても不可能って事だね・・・?亜里沙。」
亜里沙「その通り!これによりガムテープを貼ってから殺人が発覚するまでの間にことりさんの部屋で殺人を犯す事は出来ない、 という事が証明されました。」
絵里「じゃあ真・・・犯人はいつ海未達を殺したのよ?」
亜里沙「私が隠し部屋で穂乃果さんと話している時にだよ、お姉ちゃん。
ことりさんの部屋にガムテープを貼ったのは、穂乃果さんが部屋に入ってからだから、ガムテープは破れていなくても殺せるって訳。」
104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:35:21.51 ID:tmg9xEjI0
真姫「ちょっと待って!扉から入れなくても窓から入る事は出来るんじゃないの?
いくら三階とはいえ、梯子等を使えば上るのは不可能じゃないんじゃない?」
亜里沙「先ほどは言うのを忘れていましたが、私はこの屋敷を出入りできる扉にもガムテープを付けていました。
このガムテープを付けたのは私たちが海で遊び終わり、全員が屋敷に入った事を確認した時です。
この屋敷の出入り扉は一つしかなく、ガムテープの有無を確認した時は破れていませんでした。 つまりガムテープを貼ってから事件が発覚するまで扉は一切使用されていませんよ。」
真姫「・・・じゃ、じゃあ外部犯かもしれないじゃない!例えば窓から入ったとか、私達が海で遊んでいる時に屋敷に侵入したとか!」
亜里沙「そうですね。しかしもちろん予想していました。
もちろん貼らせて頂きましたよ?
窓にもガムテープを、今度はこの屋敷の全ての部屋にね。」
真姫「!?なんてことを・・・。」
絵里「あの雨が降って風が吹いている中、全部の部屋を・・・。」
穂乃果「信じられない・・・。」
それはどんな風に想像できるだろうか・・・。
雨の中、夜中にまだ何も起きていないにも関わらず、一階から三階までの全ての部屋の窓にガムテープを貼り続ける。
それは遠くから見たら毒蜘蛛が這いずる様に見えたかもしれない・・・。
皆、亜里沙の行動に狂気を感じるしか無かった。
殺人事件が起こるなんて誰にも分からないのに何故そこまで・・・。
亜里沙以外の、メンバー全員の疑問に答えられる人間はいない・・・。
時をかけた事のある人間か、時をかける事の出来る魔女にしか答えられない・・・。
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:37:14.86 ID:tmg9xEjI0
真姫「あなたって人は・・・せっかく招いてあげた人の屋敷にペタペタと勝手に・・・。」
亜里沙「真姫さん、あなたには私を責める権利があります。
しかしそれはあなたが殺人をしていないという証明をしてからです。
・・・話を戻しましょう。
第一の事件で私がことりさんの部屋に行くのが遅かったのは、窓にガムテープが付いているかどうかをチェックしに行ったからです。
結果、ガムテープは全ての窓についていました。
窓から侵入するのは不可能です。」
真姫「・・・。」
亜里沙「それに、海で遊んだ時の話を言い出すならば、私は全部屋を確認し、窓の戸締りを確認しました。
その時に扉の施錠をしたのは真姫さんでしたし、鍵を持っていたのも真姫さんですよね?
扉の鍵穴も確認しましたが、無理やり開けられた後はありませんでした。
この状況でガムテープが扉につけられる前に外部犯が入ったならば、あなたが中に招き入れたと考えてしまいますが・・・?」
亜里沙はにやりと笑いながらあざとく聞き返す。
真姫「・・・いや、それは・・・。」
真姫の言った事が次々と論破されていく・・・。
もう真姫の頭はこんがらがっていた。
真姫は殺人を犯した覚えは無い。
無いのだが、状況を客観的に見てみると真姫にしか犯行は無理かもしれないと思えてきたのだ。
自分以外、全ての者が解散してから部屋を一歩も出ていない事が証明され、外部犯の可能性も無くなってしまった。
正直第三者が自分と同じ状況だったら間違いなく自分も疑っていただろう。
・・・しかしやっていない物はやっていないのだ。
106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:37:49.08 ID:tmg9xEjI0
真姫は何か、他にことり達を殺す事の出来るトリックを苦し紛れに考えて亜里沙に訴えるが、
ガムテープの存在によって論破されていた。
黒い女「さすがじゃない。
前回の失敗を活かしているわね。」
ピンクの女「そうねぇ。記憶がないのによくぞここまでやれる物だわ。」
黒い女「亜里沙は言っていなかったけど、窓と扉に貼ってあったガムテープが生きている事で、 中から外部犯を招き入れる事も出来なくなったわね。」
ピンクの女「あら本当ねぇ、つまりこれで完璧に外部犯の事は否定されたのかしら?」
黒い女「さぁね。でもこれでことりの部屋にガムテープが付けられてから、
事件が発覚するまでに殺人を起こすのは無理だと証明されたわね。」
ピンクの女「もちろんこれは、ことりと海未の殺人に関してだけどね。」
黒い女「窓と扉が封じられた訳だけど、まだ誰にも見つからない秘密の扉から入ったとか言い訳が残っているけれど・・・?」
ピンクの女「そんなせこい事しないわよ・・・、これはミステリーなのにそれがオチなら萎えるでしょ? 少しヒントと補足でもしておこうかしら。」
ピンクの女『ことりの部屋にガムテープが貼られてから事件が発覚するまでの間にことりと海未は殺されていないわ。
ついでにもう一つ、ガムテープが破られた事、貼られた事を偽装するのは不可能よ。
例えば扉を開けて破った後に真似たガムテープを張り直したりとか、
扉を開けていないのにカッターか何かでガムテープを切って扉を開けた様に偽装した、とかね。
あくまで扉を開けないとガムテープは破れない、と思う様にしておいて。』
黒い女「そうしないと色々崩れそうだしね。」
ピンクの女「事件もいよいよ終盤ね!そろそろあれを起動しときましょうか。」
黒い女「そうね、今度は探偵権限を持たせてるから大丈夫だと思うけど。」
亜里沙が吸いこまれた球体型のジオラマ、その横にもう一つ、それと全く同じジオラマがあった。
ピンクの女「一周目の世界を亜里沙に探偵権限を持たせてもう一度・・・。よくやるわよ全く。」
黒い女「謎が一つでも残ると納得いかないタチなのよ。」
ピンク「そのせいで亜里沙はもう一度仲間の死を味わう事になるけど、それでこそベルンね・・・。」
亜里沙「・・・だからそれは窓にガムテープが貼ってあるので無理ですよ。」
107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:39:02.47 ID:tmg9xEjI0
真姫「っ・・・!」
真姫が苦し紛れのトリックを発言し、それを亜里沙によって論破されるごとに、絵里達の真姫に対する不信感は強くなる。
真姫がそれに気づいたのは、もう思いつくトリックが無くなり、周りを見た時だった。
絵里「・・・。」
穂乃果「・・・・・・。」
雪穂「まさか・・・本当に・・・?」
凛「・・・・。」
亜里沙「・・・真姫さん、質問します。
事件発覚時にあなたの扉のガムテープは切られています。
つまり開けた形跡があるんです。
どういう用で開けたのか説明して頂いてもよろしいですか?」
真姫「・・・。」
もはや電話の事を話さなければ自分が疑われてしまう・・・いや、もう疑われている。
真姫「ノックをされたのよ・・・。」
亜里沙「ノック・・・?誰にですか?」
真姫「知らないわよ!今日の朝、電話をしていて切った後にノックされて、出たら誰もいなかったのよ!」
亜里沙「・・・それを証明できる物は・・・?」
真姫「出来る訳ないでしょぉ!?」
亜里沙「さっき電話をしていた、と言っていましたね?それは、誰と、どの様な話をしていたんですか?」
真姫「っ・・・!!」
どうすればいいのだろうか・・・。
ここで話せば、にこの身は・・・。
真姫「・・・プライベートな話よ。ここで言う話じゃないわ。」
108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:39:29.32 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「はぁ!?あんた今自分がどういう状況に置かれているのか分かっているの!?
プライベート!?そんな事を言える権利があると思っているの!?
さっさと白状しなさいよ!私が殺しましたって!」
穂乃果が真姫の方を掴み襲いかかる。
メンバーは急いで穂乃果を止めた。
穂乃果「離してよ!真姫ちゃんが殺したんだよ!今亜里沙ちゃんが話した事を聞いたら分かるでしょ!? 真姫ちゃんしかいないんだよ!」
亜里沙「・・・ちょっと待ってください。実はまだ解決していない事があります。
こればっかりは真姫さんには出来ない事です。」
絵里「・・・!?そんな大事な事早く言いなさいよ!?それは本当なの!?誰よ!?」
亜里沙「私達が希さんの死体を確認しに行ったとき、死体が消えましたよね?
希さんの死体は真姫さんがやったとしても辻褄が合いますが、ことりさんと海未さんの死体は一緒にいた真姫さんでは無理です。
犯人が単独犯ならば、真姫さんではありません。」
絵里「そういえば・・・そうね、それだけは・・・真姫には無理ね。」
凛「じゃあ、誰が・・・?」
亜里沙「にこさんです、にこさんでも、全ての筋は通りますよ。」
真姫「に、にこちゃ・・・そんな・・・。」
にこはいまだに行方不明。
ガムテープも破られていたので部屋を出て海未とことりを殺し、遺体を隠す事も出来るし、
花陽が予め花陽が管理室に来ると解っていればどこかに隠れていて花陽を殺し、また隠れれば密室の完成となり、筋も通る。
・・・しかし真姫は知っている。
にこは何者かに捉えられていて軟禁ないし監禁されているのだ。
いや、でもあれが自演ならば・・・。
いや、違う!
にこちゃんは被害者だ!
犯人は私とにこちゃんに罪を押し付けるのが目的なのだ!
・・・誰もが疑うならば、自分だけは信じてあげなければいけない。
にこちゃんは親友なのだ。
親友を疑うなんて、ありえない・・・。
109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:41:26.76 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「どうでしょう真姫さん?真姫さんが犯人でなければ今からにこさんを探しに行きませんか?」
真姫「えっ!?」
亜里沙「にこさんがもし犯人でないのなら、・・・言いにくいですが、にこさんは無事ではないと思います。
先ほど確認しましたが、ドアも玄関の扉もガムテープはまだ付いていました。」
絵里「つまりにこは・・・この屋敷にいるって事ね。」
亜里沙「うん、ついでに希さんやことりさん達の死体を探しに行きましょう。
希さんの死体を私はまだ見ていませんので。」
こうして一同は各部屋を順番に探していくことにした。
外部犯がいる事も考えメンバーはそれぞれ武器を持って移動した。
三階の部屋からメンバーの部屋も含めてしらみつぶしに探していく。
三階の、『ある一部屋』以外を探したが何も見つからなかった。
そしてその『ある一部屋』にたどり着く。
・・・真姫の部屋だった。
真姫「・・・私の部屋なんて探しても何も見つからないと思うけどね・・・。」
亜里沙「それならそれで良いじゃないですか?疑いが少しは晴れるんですから。」
真姫「・・・。」
真姫は釈然としながらも扉を開ける。
そこには・・・
110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:42:37.31 ID:tmg9xEjI0
凛「きゃあああああああああああああああ!!!」
絵里「え?え?こ、これは・・・。」
真姫「何を叫んで・・・きゃああああああああああああああ!!!!」
真姫の部屋には・・・希の死体、にこの死体が床に無造作に置いてあった。
凛「お、おぇぇぇぇぇ・・・ひ、ひどい・・・。
・・・あ、あれぇ?どういうこ・・・。」
穂乃果「え、ちょっとこれって・・・え?え?し、死んでる!
そ、そんな!!」
真姫「そんな・・・なんで・・・どうして・・・。」
亜里沙「え・・・?どういう・・・。もしかして・・・。」
絵里「ひどい・・・。」
亜里沙は死体を触って確かめる。
希の死体は首を右上から左下に斜めにからくっぱりと切られていて、第二の口と形容してもいいほどだった。
他に外傷がない事から寝ている間に襲われたのが妥当だろう。
そしてにこ。
にこの口の周りと手首には赤い痕があった。
恐らくロープか何かで縛られていたのだろう。
そんなにこは、腹を同じく右上から斜めに切られていて、少し服を開けたら中が見えそうだ。
二人とも誰が見てもはっきり死んでいると解る。
そんな死体だった。
亜里沙「あれ・・・。これは・・・。」
亜里沙は改めて死体を見て、
亜里沙「どういうこと・・・?」
今の時刻は十七時だ。
希が殺されたとする時間は・・・。
亜里沙は希とにこの死体に触れる。
少し、体温が下がっただけの様に感じた。
111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:43:18.26 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
穂乃果「真姫ちゃん、これ、どういう事?」
穂乃果がぼそっと、それでいてはっきり聞こえる声色で言う。
メンバーはその声から殺気を感じた。
真姫「知らないわよ!こんなんどう考えてもおかしいでしょ!私をハメる為の罠よ!
何で私の部屋に死体があるのよ!こんなん私が犯人ですって言っている様な物じゃない!
私が犯人なら違う部屋に隠すわよ!」
穂乃果「うるさああああああああい!!!じゃあ何でここに遺体があるの!?誰がいつ置いたのよ!?」
凛「確かにそうにゃ!真姫ちゃんの話を信じるなら、真姫ちゃんはずっと自分の部屋にいて、 その後私達と合流したって事だよね?
私達はずっと一緒にいたから遺体を置くことはできないし、真姫ちゃんが自分の部屋にずっといて、それから私達と合流したならば、
犯人は一体誰がいつどうやって真姫ちゃんの部屋に置いたの!?」
真姫以外のメンバーはずっと一緒にいたから遺体を置く事は出来ない。
真姫がずっと部屋にいて、メンバーと合流したならば遺体を置く事は出来ない。
両方が本当ならば遺体を置く事は出来ないのだ。
亜里沙「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・しかし実際は遺体がここにある。
つまり片方は嘘をついている事になる。
もちろんこれは外部犯が存在しない場合の話だが・・・。
112: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:44:09.29 ID:tmg9xEjI0
ピンクの女「そうなのよねぇ・・・。
真姫が自分の部屋にいたと言っているけど本当は管理室で犯人に脅されて隠れていたのよね。
多分その時に遺体を置かれたんでしょう。」
上界から覗いている魔女からは全てが見えている。
もちろん肝心な所はピンクの女が隠しているので犯人が誰かは見えない。
真姫がロッカーに隠れていた所はピンクの女が特別に見せてくれた物だ。
黒い女にも見えているがそれを亜里沙に教える事は出来ないし、するつもりもない。
亜里沙が一人で推理してこそ価値があるのだ。
ピンクの女「それと、もう終盤だから言っちゃうけど、」
ピンクの女『この事件の犯人はμ’sと雪穂の中の誰かだから。』
黒い女「・・・いいの?一応まだ第三者が介入する余地は残っているけど。」
ピンクの女「これでもノックスを『ある程度は』沿って作ったつもりよ。
こんだけ疑心暗鬼にさせといて全く関係の無い第三者が犯人とか一番白けるでしょ。」
黒い「まぁ・・・そうね。」
ピンクの女「亜里沙、真姫が犯人って事にしちゃいなさいよ。
一応全ての筋が通るわ。
もう悩む必要もない。
疑わしきは黒よ。
甘い蜜がそこにあるのよ。」
黒い女「目の前の宝箱に目を奪われずに、その奥の宝にたどり着く事が亜里沙は出来るのかしらね・・・?」
ピンクの女「ところで、ベルンはこの事件、どこまで解ったのかしら?」
黒い女「・・・大体解ったわよ。
でもそれは上界から真姫が犯人でない事を知っているから解った事よ。
真姫が犯人じゃないと信じる事、そしてそこから明らかになる残酷で悲しい真実を受け入れなければ難しいかもしれないわ。」
ピンクの女「さっすがベルン!まぁ結構ヒントを与えたしね。
これで解けなければ・・・ねえ・・・?」
黒い女「亜里沙の視点からでも十分に解けるわ。
そうじゃなきゃ、意味がないし。
ただ、その真実を信じられるかどうか、亜里沙だからこそ、この事件は難しいのかも知れないわね。」
113: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:44:53.03 ID:tmg9xEjI0
17:30 3階リビング
その後、メンバーはことりと海未の遺体もどこかにあると思ったのだが・・・しかし見つからない。
あれから手がかりはゼロだった。
凛「ねぇ・・・いい加減白状してよ!真姫ちゃん!あなたが犯人かどうかは知らないけど!
あなたは何かを知っているんでしょ!?どうして黙っているの!?」
絵里「そうよ、真姫、あなたが殺したと疑っている訳では無いのよ・・・?
でもあなたが何かを隠していると私は思っているわ。
教えてよ、私達仲間でしょ?」
真姫「・・・。」
真姫は目から涙を流しながら黙ってメンバーの尋問に耐える。
内心、真姫だって叫びたかった。
にこが殺されて、約束が違う!どういうことだ!そう叫びたかった。
しかし・・・にこの事が無くなっても真姫はまだ家の事を人質に取られていた。
真姫が知っている事を話してそれが犯人に伝わったら、犯人はただちにマスコミに病院の事情を話されて西木野家はオシマイだ。
恐らく電話をした者とことり達を殺した犯人は同じなのだろう。
もう時間は過ぎているが真姫は黄金のあった部屋に指定の時間までは誰も入室を禁じる様に言われていた。
そこに遺体を隠しておいたんだろう。
ことりと海未の遺体もそこにあるのだ。
しかしそれは言えない。
真姫は拳を握りながら目をぎゅっとつむった。
悔しかった。
だが今は、家の為に我慢しなければいけない。
真姫「・・・。」
亜里沙「・・・真姫さん。これ以上黙るつもりなら、私もあなたを犯人と認める事になっていまいます。
何かしゃべってくれませんか?」
114: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:45:45.38 ID:tmg9xEjI0
真姫「・・・さっきも言ったでしょ?あなたの探偵ごっこに付き合うつもりはないわ。警察が来たら全てを話すわよ。」
穂乃果「・・・!このっ!!」
亜里沙「穂乃果さん!・・・わかりました、真姫さん、あなたを一室に軟禁させてもらいます。いいですね?」
真姫「・・・勝手にしなさいよ、好きにしなさい。」
真姫は希の部屋で軟禁する事になった。
亜里沙「真姫さんは私が連れて行きます。」
凛「一人で!?大丈夫なの!?」
絵里「危険よ!せめて一緒に・・・。」
もはや周囲は完璧に真姫を犯人だと疑わない空気だった。
真姫はそれを他人事のように感じながら、友情なんて、こんな物か・・・と思った。
亜里沙「大丈夫ですよ、皆さんは2階のリビングで待っていてください。
ほら、行きますよ。」
亜里沙と真姫は希の部屋に入った。
115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:46:13.94 ID:tmg9xEjI0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
希の部屋
真姫「ここにいればいいんでしょ・・・。」
亜里沙「真姫さん、お話ししたい事があります。」
真姫「・・・え?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:46:43.38 ID:tmg9xEjI0
17:45 2階リビング
亜里沙「ただ今戻りました。」
絵里「亜里沙!どうだった?大人しくしてた?」
亜里沙「うん、大人しく従っていたよ。
食糧も残していたから明日までは大丈夫だよ。」
穂乃果「でもどうやって閉じ込めたの?中からなら鍵も無く開ける事が出来るけど・・・。」
亜里沙はポケットからボンドを出した。
亜里沙「書個室にありました。
これを真姫さんのいる部屋の扉の鍵穴に塗りました。
これで、真姫さんは扉を開ける事ができません。」
絵里「なるほどね、とりあえずこれで安心か・・・。」
穂乃果「うん。これでもう安心だね!」
凛「でも何で真姫ちゃんが・・・。」
亜里沙「解りません・・・、しかし真姫さんにしか、犯行は不可能なんです。」
穂乃果「そうだよ!海未ちゃん達の時は、真姫ちゃん以外のアリバイはガムテープから証明された訳でしょ?花陽ちゃんの時だって、真姫ちゃんにしか無理だよ!」
凛「確かにそうだけど・・・、っじゃあ海未ちゃん達を隠したのは結局だれなの!?
さっきはうやむやになっちゃったけど・・・。」
亜里沙「恐らくにこさんでしょう。
にこさんの死体は誰も発見していませんからね。
私達が希さんの部屋に行っている間に、どこかに隠れていたにこさんが遺体を隠したんです。
その後に真姫さんはリビングを抜け出した後、待ち合わせていたにこさんを殺害し、管理室に行って花陽さんを殺害したって所ですかね。」
絵里「確かにそれなら筋が通るわね・・・。
でもそれなら何で真姫の部屋に死体を置いたの?
疑いを逸らしたいなら違う人の部屋にするんじゃ・・・。」
117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:47:35.25 ID:tmg9xEjI0
亜里沙は自分の推理に茶々を入れられたのが悔しかったのか、少し不機嫌になり、
亜里沙「・・・わーかりました!そこまで言うならある実験をしようじゃありませんか!」
凛「実験・・・?」
絵里「どういう事・・・?」
亜里沙「いいですか・・・?皆さん、耳を貸して下さい。」
118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:48:15.24 ID:tmg9xEjI0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
亜里沙「・・・という訳です。」
穂乃果「・・・いやでもそれは危険すぎるんじゃ・・・!?」
亜里沙「それは、皆さん次第です。」
凛「でも・・・。」
亜里沙「大丈夫ですよ、任せて下さい。」
絵里「・・・分かったわ、合図を見逃さない様にするわ。」
雪穂「亜里沙・・・。」
亜里沙「大丈夫だよ、雪穂。
くれぐれも、さっき言った事は忘れないでね!」
雪穂「・・・分かった。」
穂乃果「絵里ちゃん、本当にいいの?」
絵里「・・・亜里沙の決めた事よ・・・、それに、まぁ大丈夫でしょう。」
亜里沙「じゃあ解散しましょう、後は指示通りに。」
絵里「分かったわ。」
亜里沙「はい。じゃ、また。」
亜里沙以外の皆が部屋を出る。
亜里沙はそれを見届けた後、部屋の明かりを落としてケイタイをいじり、ソファに向かった。
そこには毛布をかけられている花陽の死体があった。
亜里沙「・・・失礼します。花陽さん。」
亜里沙は無礼の無いように毛布をどける。
あれから時間の経っているせいか、血が服にこびりつき、黒ずんでいた。
亜里沙は死因を確認する。
亜里沙「嘘だよね・・・。」
花陽の首は刺突による穴が開いていて、そこから血が垂れだした後があった。
ランダムに刺されてはいるが、首の中心から左側を多く刺されているようだ。
亜里沙「・・・・・・・・・。」
手を震わせながら、花陽に触る。
亜里沙「あっ・・・。」
亜里沙「・・・っ!」
手に伝わる温もりを感じる。
亜里沙は震える手で花陽に毛布をかけると、拳を握る。
亜里沙「っ・・・くそ!」
その拳をテーブルに静かに押し付けた。
亜里沙「・・・、これが真実ですか、どうして・・・!!!」
誰もいない部屋で嘆きが上がる。
それに応える者は誰もいなかった。
119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:48:47.65 ID:tmg9xEjI0
18:00 2階リビング
??「・・・。」
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
体を血に染めた者が、扉を細心の注意を払って開ける。
ボタ・・・ボタ・・・。
その者の足音は無音だったが、体から、ナイフから垂れる血の音によって完璧に無音では無かった。
??「・・・・・・・・。」
その者は寝ている亜里沙のソファの前に立ち、亜里沙を見下ろす。
亜里沙は毛布を頭までかぶっていた。
??「・・・フフフ。」
ポケットに入っていた二本のナイフを両手で静かに持ち、片方を逆手に持ち変える。
その姿は完璧な殺人鬼だった。
両手が凶器でふさがった今の『彼女』は扉を開ける事も、弓を射る事も、ダンスをする事も出来ない。
そういった意味で、彼女は完璧な殺人鬼だった。
??「・・・っ・・・ハァ!!!!」
両手に持ったナイフを一気に毛布を突き刺す。
その後もメチャクチャに何度もめった刺しにする。
ドスドスドスドスザシュザシュグシャソシュソシュグシャアアアアア!!!!!!
ナイフを刺すごとに音が聞こえる。
それはまるで、ナイフが獲物にありつけて狂喜している様だった。
??「っ!!っ!!あぁ!!っ!!」
ドスドスドスドスドスドスドスドシドスドスザシュグシャ!
??「シャアアアアアアアアア・・・えっ・・・?」
何かがおかしい。
その者は思った。
毛布はナイフでめった刺しにしたせいで穴だらけだ。
当然その下にある亜里沙も穴だらけで、血が飛び散るはず。
しかしなんというか・・・人を刺した時の感じるぬちゃっとした音と感触が無いと言うか・・・。
120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:49:23.55 ID:tmg9xEjI0
??「・・・っ!?」
その者が刺すのを止めて、毛布を取る。
??「バカな!!」
そこには亜里沙の姿は無く、デカイ人形が置いてあり、ナイフで刺されたからか、
中からは綿は沢山出てきていた。
亜里沙「やっぱり、あなたが犯人だったんですね・・・。」
??「・・・亜里沙!?・・・ちょっ!」
その者が振り向く前に何人かがその者の体の自由を奪い、凶器を弾かれ、毛布やロープで拘束された。
??「・・・くっ・・・。」
カチッ
亜里沙は部屋の明かりを点けると、その者は眩しそうに目を瞑る。
絵里「どういう事よ・・・。」
凛「そんな・・・。」
穂乃果「まさか・・・。」
雪穂「どういう事・・・?」
絵里、凛、穂乃果、雪穂がその者の体を拘束していた。
しかし、四人は拘束した相手を見て、茫然としている。
絵里「これはどういう・・・。
私達は真姫が襲いかかってくるからってメールを・・・亜里沙!?」
亜里沙はそんな絵里の問いには答えずポケットに入っている携帯に手を伸ばす。
亜里沙「真姫さん、もう大丈夫ですよ、入ってきてください。」
??「・・・!?」
メンバー「!??」
その者がやっと目を開けるとドアから真姫が入ってくる所だった。
真姫「・・・あなたが犯人だったのね。」
真姫は憐れんだ目でその者を見る。
亜里沙は残念そうに、しかしはっきりとした意志を持って、指をさす。
亜里沙「犯人は・・・あなただ。」
121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:49:59.30 ID:tmg9xEjI0
黒い女「チェックメイト・・・!」
黒い女は興奮ぎみに言いながら席を座り直す。
ピンクの女「あらあら・・・、事件解かれちゃったかー。
やるわねー亜里沙、おめでとベルン。」
黒い女「あら、一週目の方も、ちょうどシメの所らしいわよ?」
亜里沙が吸いこまれたジオラマの隣に、もう一つのジオラマがあった。
ジオラマの空にはホールで対峙している二人の姿があった。
ピンクの女「二つとも解かれちゃったかー。
やっぱ探偵権限はすごいわね。
持たせるべきじゃなかったかなー。」
黒い女「今更変更は受け付けないわよ。」
黒い女「さぁ、ここから探偵にとって一番おいしい所よ。
バッチリ決めなさい、亜里沙。」
122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:50:29.63 ID:tmg9xEjI0
一周目の世界(Re)
ことりは刺殺、希は撲殺、海未は毒殺で死亡した。
凛は刺殺、花陽は撲殺、にこは刺殺で死亡した。
穂乃果、雪穂、絵里は全員刺殺で死亡した。
ここはそんな世界。
そんな死者の怨念が渦巻く血塗られた別荘のホールで二人は対峙していた。
一人は西木野真姫。
真姫は服を血で濡らしながらもう一人と対峙する。
その一人は絢瀬亜里沙。
しかし亜里沙は今まで真姫に向けていた身体を後ろに向けた。
??「・・・。」
いつからそこにいたのか、そこには血まみれのシャツを着て、血まみれのナイフを持った者がいた。
その者は笑っていた。
まるで、亜里沙の推理が合っていた事を賛美する様に。
まるで、やっと解放されると言わんばかりに。
亜里沙「残念です、・・・本当に、残念です。」
亜里沙「見ていましたよね?私達を殺す為に。」
亜里沙「そして今までの話を聞いていましたね? 以上の事から、希さん以外のメンバーを殺したのは・・・。」
亜里沙は静かに、その者に指をさす。
亜里沙「犯人は・・・あなたですよね?」
123: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:51:08.70 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「「海未さん。」」
124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:51:41.82 ID:tmg9xEjI0
二週目の世界
海未「・・・。」
全身をロープで縛られた海未は抵抗もせず静かに寝転がっていた。
亜里沙「あなたですよね・・・?海未さん。」
その姿は血まみれで、綺麗だった髪は血に染まり、凛々しかった顔は殺人鬼たるに相応しい顔だった。
凛「あ、亜里沙ちゃん、これはどういう事!?
話と違うじゃない!?
自分を囮にして真姫ちゃんが犯人の証拠を掴むから自分がメールしたらすぐに来て拘束してくれって・・・。」
穂乃果「海未ちゃんもだよ!確かに計画ではそういう風にしてたけど・・・。」
絵里「穂乃果!!!!」
真姫「・・・っ!絵里、穂乃果。
今のどういう事なの・・・?計画っていうのは・・・?」
絵里「・・・。」
穂乃果「・・・。」
亜里沙「真姫さん、とその他の皆さん。
各々方が今頭に抱えている疑問は違うと思います。
私が今からそれらを全て説明します。
が、説明する前に言わせて下さい。」
亜里沙は怒っていた。
普段冷静で大人しく優しい亜里沙からは考えられなかった。
亜里沙「もしこれから説明する事が全てあっているならば、
私は今日でμ’sのファンを辞めさせてもらいます。皆さんは最低です、クズです。
よくもまぁここまで・・・。ここま・・・で。」
絵里「亜里沙・・・。」
亜里沙は涙ぐむ。
それだけこれから話す事が辛い事なのだろうか・・・。
亜里沙「・・・、話します、では最初の事件から・・・。」
最初の事件。
海未、ことり、希が殺され、にこが失踪した事件。
しかし、見ての通り海未は生きている。
125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:52:12.97 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「最初に・・・というかこの別荘で起こった事件ですが・・・。
全て、真姫さんを除いたメンバー全員の狂言ですよね?」
真姫「・・・はっ!?どういう事よ!?私を除いた狂言って・・・にこちゃんや希は実際に死んでいるじゃない!」
亜里沙「正確には狂言のはずだった・・・ですよね?」
真姫「・・・どういう事なの!?凛!あんたも知っているんでしょ!!言いなさいよ!」
凛「・・・。」
亜里沙「さすがに自分達のした事を自分で説明できるほど、開き直ってはいないようですね。
説明に戻ります。
黄金が発見されて、解散した時から皆さんの計画は始まっていました。
目的は真姫さんの持っている、5000万円の入った通帳です。」
絵里「・・・!」
真姫「通帳って・・・黄金が見つかった時に亜里沙からもらったあの通帳の事!?」
亜里沙「そうです、あの通帳です。
ことりさん達は、その通帳を奪う為に今回の事件を起こしたんですよ。」
真姫「どういう事・・・?」
亜里沙「第一の事件の被害者であることりさんと海未さん、にこさんと希さんは死んだふりをして第一の事件を起こしたんですよ。」
真姫「そんな・・・でもさっきも言ったけどにこちゃんと希は死んでいたじゃない。
あれが偽物とは思えないわ・・・。」
126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:53:03.47 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「はい。真姫さんの部屋で発見した二人は私も検死しましたし、確かに死亡していました。
しかし、最初の時点では生きていたんだと思います。
そもそも真姫さん、思い出して下さい。
私達は真姫さんの部屋で発見した、希さんとにこさん以外の死体を見ましたか・・・?」
真姫「え・・・?そういえば・・・見てないわ!見ていない!」
絵里「・・・。」
亜里沙「最初の事件で死体を発見したのは私と真姫さん以外の全員です。
私が来た時には海未さんとことりさんは毛布でくるまっていたので直接死体は見ていません。
花陽さんの時もそうです。
希さんに至っては、死体すら見ていません。」
真姫「・・・確かにそうよね。
直接死体を見たのは希の部屋でのにこちゃん達が最初だわ・・・。 」
亜里沙「そう考えると馬鹿な話です。
私は皆さんの狂言に踊らされて、必死こいて推理していた訳ですから。
最初は全然解りませんでしたよ。
まさか私と真姫さん以外の全員がグルになっているなんて、思いもしませんでしたから。」
海未「・・・どこで気づいたのですか?」
亜里沙「初めて狂言の可能性に気付いたのは、希さんの死体を見た時です。
希さんの首は縦にばっくり切り裂かれていました。
でも・・・。」
亜里沙は雪穂の方を向く。
雪穂「亜里沙・・・。」
亜里沙「・・・、雪穂、あなたはこう言っていたよね・・・?」
127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:54:20.92 ID:tmg9xEjI0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
>絵里「思い出したくはないだろうけど・・・希も首を?」
雪穂「・・・っオエっ。はい。首を横に思いっきり切られていました。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
128: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:54:49.90 ID:tmg9xEjI0
雪穂「・・・!」
亜里沙「雪穂は首を切られていたとか、曖昧な表現では無く、はっきりと『横に切られていた』と言っていました。
おかしいですよね?
証言と遺体の状態が違うだなんて。
おかしいと思った点はまだあります。
それは希さんとにこさんの死後硬直時間が矛盾していたからです。」
真姫「矛盾って・・・?」
亜里沙「死後硬直は八時間程で四肢の関節が硬直します。
もし希さん達が今日の朝に殺されているのなら、四肢は硬直しているはず。
しかし、希さんたちはまるでそれが無かった。
希さん達はつい最近、一時間くらい前に殺したんですよね?海未さん。」
海未はにやりと笑って亜里沙を見る。
その顔は血にまみれていて、恐ろしく、美しかった。
亜里沙「・・・恥ずかしながら、希さん達が朝に殺されたのでは無いと確信して、
初めて私は今回の事件が元々は狂言だったのではないか、と考える事が出来ました。
そう考えて思い出してみると、皆さんの発言は矛盾だらけでしたよ。
例えばことりさん達の事もそうです。 」
129: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:55:37.98 ID:tmg9xEjI0
>雪穂「海未ちゃん達も・・・その首を・・・?」
花陽「うん・・・。首を左からななめに切り裂かれていたよ・・・。」
>絵里は真姫を呼んで耳打ちする。
真姫「・・・えっ!?冗談でしょ!!」
真姫の顔が青くなる。
絵里「・・・。」
絵里は頷くしか無かった。
真姫「・・・そんな、二人が首を縦にって・・・。
>凛「うん、そうにゃ。二人の首は・・・真っ直ぐに横に切り裂かれていて・・・。」
>真姫「何よそれは!?そんな事言ったら穂乃果だって怪しいじゃない!?
何せ海未達と一晩中一緒にいたのよ!むしろ一番に疑う所でしょうが!?」
真姫は穂乃果に指を指す。
穂乃果「真姫ちゃんそんな!?私がことりちゃん達の首を何度も刺したって言うの!?ひどいよ!!」
絵里「・・・!」
亜里沙「同じ死体を見たにも関わらず、どうやって切られたかは、三人共、バラバラです。」
130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:56:12.47 ID:tmg9xEjI0
真姫「・・・!」
亜里沙「恐らく急に決まった計画だったので、そこまで綿密な打ち合わせは出来なかったのでしょう。
それでもすごいですよ、チームワークで完璧に騙し通したのですから。
花陽さんを死んだ様に見せかけた時のケンカとか、迫真の演技でしたよ。
あれは、私が死体を検死させない雰囲気を作るためだったんですよね?
今思うとお姉ちゃんが死体の状況をスラスラ教えてくれたのもおかしな話ですよ。」
凛「・・・。」
亜里沙「腐ってもラブライブ優勝チームって所ですか?反吐が出ますわ。
最初の事件はことりさんと海未さんは死んだふりをしていて、希さんとにこさんはどこか開いている部屋に隠れていたんですよね?
それを他のメンバーが協力して死んだ様に見せかけた。
次の事件も同じです、メンバー全員で狂言の密室殺人を構築した。
どちらも、真姫さんにしか犯行が出来ない様な状況を作って!」
真姫「・・・嘘よ。」
穂乃果「真姫ちゃん・・・。違うの、これは!」
真姫「嘘よね!あなた達がそんなひどい事をグルでやっていたなんて!冗談なんでしょ!亜里沙の思い込みよね!?
冗談って言ってよ!」
真姫は穂乃果に掴みかかる。
真姫は信じられなかったのだ。
凛「・・・。」
真姫「凛!!何とか言ったらどうなの!?」
真姫は凛にも掴みかかる。
凛「うっさいなぁ!!真姫ちゃんが悪いんだよ!!
一人でお金を持ち逃げなんてするから!!」
真姫「はぁ!?遺産の事を言っているの?それなら私達で平等に分配しようって決めたじゃない!
あなたもその場にいたでしょ!!それともまだ足りないって言うの!?」
131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:56:46.00 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「真姫さん、違うんです。そのお金はまだ手に入れていないんです。」
真姫「はぁ・・・!?何を言って・・・。」
亜里沙「正直分けてもらった身としてこんな事を言いづらいのですが、
正確には・・・『数十億物円もの価値があるインゴットを手に入れた』、です。
お金はまだ手に入れていないんですよ。
もっと言うと、お金を手に入れたのは、五千万円の通帳を持っている真姫さんだけです。」
真姫「いや・・・それはそうだけど・・・そんな事対して関係ない・・・。」
亜里沙「あるんです、それが。真姫さん、あなたが手に入れたと言っている
数十億もの価値がある黄金ですが・・・どうやってお金に換えるんですか・・・?
また、それはいつ頃お金に変わるんですか・・・?」
132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:57:57.69 ID:tmg9xEjI0
真姫「・・・え?それは・・・。」
亜里沙「真姫さん、地下にあったインゴットを思い出してください。
あのインゴットは、正式な刻印は打たれてありませんでした。
刻印の打たれていないインゴットをどうやって換金するっていうんですか?」
真姫「え、そ、それは・・・。」
インゴットには打たれていなくてはいけない4つの事柄がある。
1つは精錬業者登録マーク。
いわゆる国のマークだとかライオンのマークだとか、インゴットの画像を調べて見れば、大抵何かしらマークが打たれているそれだ。
2つ目は品位だ。
金の中に何割不純物が入っているかが打ってある。(純金の場合は999.9)
3つ目は重量。
4つ目は企業のシリアル番号だ。
別に刻印は法律で必ず打つ様に言われている訳ではない。
が、これが付いていないのは偽物か、古物だけだ。
何故なら、刻印はインゴットが本物か偽物かを分かりやすくする為に出来たシステムだからだ。
インゴットが本物か偽物かを見分けるのはプロでも難しいという。
そこで、もっとてっとり早く判断をしやすくする為に、業者はインゴットを作る際に刻印を打つことにしたのだ。
刻印ならば番号や品質はそれを打った企業に問い合わせれば本物かどうか分かるし、
打たれた刻印を見るだけで本物かどうかを判断する事も、プロならばそう難しくは無い。
しかし、逆に言えば刻印の打たれていないインゴットは本物か偽物かは簡単には解らず、信用できないという事。
インゴットは買う者がいなければ金にはならず、本物か偽物か分からない物を買う馬鹿はいない。
西木野家の地下で見つかったインゴットは琉球王朝の時代にできた物だ。
そんな古い物に刻印なんて打たれている訳が無い。
・・・つまり、あのインゴットが本物であるという客観的な証明が出来ないのだ。
133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:58:43.27 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「理解できましたか?確かにあのインゴットの山は数十億円以上の価値があるでしょう。
ですが、それは世間にこのインゴットは本物だと認められ、換金を経ればの話なんです。
地下に眠っているあのインゴット、黄金の山は、世間から認められていない以上、ただの鉄くずの山なんですよ。」
もちろんこのインゴットをしかるべき所に調査を依頼すれば本物かどうかは『いずれ』分かるだろう。
刻印が打たれていないとはいえ、純金である事は確かなのだ。
調査は難しいが時間を掛ければできない事ではない。
・・・が、メンバーにはそれぞれどうしても今すぐ大金が必要な事情があるのだ。
インゴットが本物と認められ、買い取ってくれる者が現れるのを待つ時間は無い。
それに県との問題もある。
こうしてインゴットが見つかった以上、沖縄の都市伝説は本物だと思った方が良い。
正式に公開すれば奪われる事は無いと思うが、色々とクリアすべき課題はあるだろう。
それらを全部解決するのに、どれだけ月日を待てばいいのか・・・?
つまり、今この場にある大金は、真姫の持っている5千万円しかないのだ・・・。
絵里「私達の家は全員火急で大金を用意しなければいけない事情があった。
でもそれはその通帳の5千万円があれば真姫以外は全員が救われる金額だった。」
絵里が淡々と言う。
自分がどれだけ恥知らずで勝手な事を言っているのかは理解している様だった。
絵里「でも真姫、あなたの家の事情を解決するにはその通帳のお金を全部使う必要があった。
だから、・・・インゴットが発見された後、グループ電話で相談したのよ。
どうやって、その通帳を奪うのかを・・・。」
絵里「そしたら海未が提案してくれたの。
狂言をして、脅迫してお金を誰かの講座に送ってもらおうって!
真姫達には死体を見せないようにして、外部から来た人に見せた仕掛けにしようって!」
真姫「・・・。」
開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。
真姫は今日にこを助けるためにメンバーからの誹謗中傷に耐え、
犯人からの要求に恐怖と不安を感じながらも実行したのだ。
それが、この仕打ち・・・!
134: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:59:20.51 ID:tmg9xEjI0
事件は狂言で、にこは人質どころかお金を奪う為に真姫を騙していて・・・。
真姫の平衡感覚がぐらついてきた。
漫画やドラマで金のために友達を裏切るシーンがある。
その時は共感したが、まさか自分が裏切られる立場になるとは思いもしなかった。
苦しい。
とても苦しかった。
なんで?どうして?
お金のために自分を・・・。
汚れていく・・・。
メンバーと過ごしたキラキラした日々が・・・。
全て、お金と、黄金で、汚く・・・。
もう、誰も信じられない・・・。
真姫「そんな・・・あっあっあぁぁ・・・」
真姫「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
真姫は胸に手を当てながら絶叫する。
亜里沙「真姫さん・・・。」
真姫はどこにもケガをしていない。
しかし、亜里沙には真姫がボロボロのズタボロで、深い傷を負っている様に見えた。
亜里沙「もう一度聞くけど・・・お姉ちゃん、雪穂、あなた達もこの狂言に加わっていたのよね?」
雪穂「・・・。」
絵里「・・・えぇそうよ。亜里沙と真姫以外、全員関わっていたわ。」
亜里沙「・・・そう、ですか。」
亜里沙は浅くため息をつく。
真姫程ではないが、亜里沙も大きいショックを受けていた。
自分の尊敬している姉と、親友が、こんな事件に関わっているなんて・・・。
亜里沙はやってもいないのに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
犯罪者の身内とはこんな感じなのだろうか。
いや、事実その通りだ。
亜里沙「最低ですね。もう口も利きたくないです。」
穂乃果「・・・でも、しょうがなか・・・。」
亜里沙「恥を知りましょうよ!いくら自分の家の事情でも!よそ様に迷惑をかけるのだけは違うでしょ!!」
凛「・・・そうも言っていられない事もあるんだよ。」
亜里沙「っ・・・!」
凛の言葉に亜里沙はカっとなり手を振り上げる。
凛「っ・・・・!」
海未「フフフフフフフフ・・・クッフフフフフフフフ!!!」
今まで黙っていた海未が突然笑い始める。
亜里沙「・・・。」
海未「アッハハハハハハハハハハハハハ!!!見ましたか!?亜里沙。あなたが憧れていたμ’sの本性ですよ!
家の事情とはいえ、お金のためならメンバーすらも切り捨てる!フッハハハハハハハハハハハハハ!!!」
135: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 22:59:55.16 ID:tmg9xEjI0
穂乃果「っ・・・!あなたが言わないでよ!!っそうよ!海未ちゃん、これはどういう事なの!?
なんでにこちゃんと希ちゃんが本当に死んでいるの!?何があったの!?」
亜里沙「・・・やっぱりそうですか、殺したのは海未さんの独断だったんですね。」
穂乃果「当たり前でしょ!っ・・・どういう事なの!海未ちゃん!話が違うじゃん!」
亜里沙「海未さん、あなたはお金が理由でこの狂言に参加したのではないですよね?
海未さんの狙いは最初から私達を皆殺しにするつもりだった。違いますか?」
絵里「・・・!?私達の・・・」
凛「皆殺しって・・・。」
雪穂「どういう事なの・・・?」
メンバーは唖然とする。
今回の狂言を主導したはずの海未がメンバーを皆殺しにしようとしていたなんて・・・。
亜里沙「私は希さん達の遺体を見てこれが狂言だと思った時、それと同時に狂言とは違う目的で動いている者がいると思いました。
狂言で済ますつもりなら殺すなんてもっての他ですし、
私達の目の前に遺体を出したら遺体の状況から直前まで生きていた事がばれてしまい、
雪穂のついた嘘がばれてしまいます。」
亜里沙「希さんが生きていたと分かったならばもう真姫さんだけが容疑者ではありません。
それに、私が死体を見ていないのは事実なので、きっと疑ったでしょう。
もしかしたら、他にも死んだと言って嘘をついている人がいるんじゃないか?ってね。」
まぁ実際には違う事が原因で狂言である事が分かったのですが・・・と亜里沙は付け加え、
亜里沙「そうなれば穂乃果さん、おねえちゃん、凛さん、花陽さん、死んだふりをしているかもしれないことりさん、海未さん。
更に攫われたフリをしているかもしれないにこさん、つまり全員のアリバイが白紙に戻ります。
狂言をしている者たちにとっていい事はありません。」
海未「なるほど・・・、狂言を行っている人たちには遺体を置くメリットは無い。
だから狂言とは別に目的を持った人物が動いていると・・・。」
亜里沙「ええ。
問題は、その人物を誰か、という事。
死体の状況から、希さん達が最低でも昼を過ぎてから殺された事は分かりましたので、
その時間アリバイの無かった人物は、自分の部屋に籠っていたと証言している真姫さんと、
死体のフリをしていたことりさん、海未さん、花陽さんです。」
海未「・・・それで?」
亜里沙「まずは花陽さんについてですが、これはあなたが一番よく知っているでしょう・・・。」
136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:00:36.05 ID:tmg9xEjI0
絵里「そ、そういえば花陽はどうしたのよ!確か計画では万が一の事も考えて死んだ振りを・・・。」
亜里沙「花陽さんの遺体はこのリビングに運ばれましたが・・・。」
凛「そ、そうだったにゃ。
かよちん、もう起きるにゃ、終わったんだニャ!かーよちーん!!」
凛が殺された事になっている花陽の元に駆け込み、毛布を取る。
凛「かよち・・・っ!!かよちん!?かよちいいいいん!!!うわあああああああ!!!!!どうしてぇ!!!
いやあああああああああ!!」
凛の叫び声が木霊する。
花陽の首はナイフで刺された箇所が沢山あり、水風船から水が漏れ出る様に、止めどなく血があふれ出ていた。
目はぎゅるっと突き出すように上を向いていて、揺すると黒目が昔遊んだ人形の様に上下に動く。
・・・それだけで、花陽は死んでいるんだと、誰もが確認できた。
凛「かよち、かよちいいいんん!!!誰かぁ!!誰か救急車を!!誰かぁ!」
凛の叫び声が木霊する。
亜里沙はそれを流し目で見ていた。
亜里沙「真姫さんを閉じ込めてからリビングで解散した時に確かめた時にはもう・・・。
私達はにこさん達を探しにこの部屋を一度空にしました。
恐らくその時に殺されたのでしょう・・・。」
絵里「・・・そんな。」
雪穂「こんな事って・・・。」
海未「フフフ・・・。正解ですよ、亜里沙。」
亜里沙「ちなみにですが、私が穂乃果さんから聞いたのと殺し方が違うと言う点、
花陽さんが管理室に入室した時鍵をかけていた事を姉が知っていた事も
狂言の手がかりになります。
チェーンがかかっていて部屋から退室する事は難しいですがお姉ちゃんは入室をするのが難しいと言っていました。
どうして花陽さんが鍵をかけていたのを知っていたのか?それは狂言の計画でそうなっていたからでしょう。」
137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:01:04.06 ID:tmg9xEjI0
>穂乃果「ひどい・・・!また首を切られている・・・!ひどい!!」
穂乃果「・・・ことりちゃん達と・・・同じだ・・・。首が縦にぱっくり・・・いやあああああ!」
>雪穂「・・・っ待ってください!!おかしくないですか!?
窓も閉まっていて、この部屋にはチェーンがかかっていたんですよ!?
犯人はどこから脱出したんですか!?」
絵里「そもそもどうやって部屋に入ったのかしら・・・。
この部屋は施錠されていたのに・・・。」
138: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:01:40.50 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「真姫さんについては・・・、希さん達の死体を調べ、この事件が狂言だと分かった時点で疑いはほぼ晴れていました、」
真姫「・・・。」
真姫はやっとの思いで顔を上げる。
亜里沙「何故ならば、この殺人を行った犯人は、狂言をしたメンバーの中にいるからです。
失踪したにこさん達の居場所を知っていて、花陽さんが死んでいない事を知っていた人物。
花陽さんの死体の状況から、私達が部屋を出てから殺されただろうという事は分かっていましたので それからずっと一緒にいた真姫さんには不可能です。
ただ、真姫さんには管理室で花陽さんが狂言を行った時にアリバイがなかったのでその事について、真姫さんを部屋に閉じ込めた時にお聞きしましたけどね。」
真姫「・・・。」
亜里沙「真姫さんは自分がにこさんと家の事で脅されている事を言いませんでした。
しかし、今回の事件が全て狂言である事の可能性を説明し、これから犯人を誘い出すから協力してほしい。
そう話したら、全てお話しして下さいました。
もちろんまだ不確定な事は伏せて話しましたけどね。」
139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:02:08.64 ID:tmg9xEjI0
=========================
真姫を閉じ込めた時の話。
真姫「ここにいればいいんでしょ・・・?」
亜里沙「真姫さん、お話しがあります。」
真姫「えっ・・・?」
亜里沙「真姫さん、あなたは犯人なんですか?」
真姫「・・・もういいわよ。どうせ信じられないんでしょ・・・?」
亜里沙「もういちど、真姫さんの口から聞きたいんです。
私の目を見て言ってください。」
亜里沙は真姫をじっと見つめる。
真姫は亜里沙の真剣な顔を見る。
そこには緊張したような、真実を見極めようとする、そんな複雑な顔だった。
真姫「・・・私は誰も殺していないわ、本当よ。」
亜里沙「・・・真姫さん、私は希さんの死体を発見するまであなたが犯人だと思っていました。
でも、今はあなたは犯人では無いと思っています。」
真姫「・・・え?」
亜里沙「これから、私は犯人を捕まえるために囮となります。」
真姫「っ!?危険よそれは!!」
亜里沙「一応手は打っておくつもりです。
もちろん殺される可能性もあります!真姫さん、私はなんとしてもこの事件の真相を暴きたいんです! もしあなたが犯人でないのなら・・・何か知っている事があるならば、どうか教えてくださいませんか!?」
亜里沙は土下座をする。
真姫は頭を上げる様に言うが、亜里沙は頭を上げなかった。
真姫「・・・分かったわ、あなたは犯人じゃない
。なんでか知らないけど、そんな気がする。
私の知っている事を、全て話すわ。」
・・
・・・
・・・・
・・・・・
140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:05:04.45 ID:tmg9xEjI0
真姫「・・・という事があったのよ・・・。亜里沙?」
亜里沙「・・・。」
亜里沙は理解する。
この事件の真実に。
それは、
亜里沙にとって信じられない、筆舌しがたい真実。
141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:05:31.48 ID:tmg9xEjI0
========================
亜里沙「全てを聞いて、この事件の裏側が見えてきましたよ。
よくぞかつてのメンバーに、ここまでえげつない事が出来た物です。
これを思いついたのは海未さんですか?」
海未「・・・ええ、真姫の事情は知っていましたからね。
おかげで都合通りに動いてくれましたよ。」
亜里沙「っ・・・!最後にことりさんと海未さんですが・・・。
私はこの二人に絞れた時点で、十中八九、海未さんが犯人だと思っていました。」
絵里「・・・!!」
穂乃果「ど、どうして!?」
海未「ほぉ・・・。何故ですか?」
亜里沙「あなたが殺したにこさんと、希さん、花陽さんの死体ですよ。
希さんは首を右上から斜め下に、にこさんは腹を同じく、花陽さんは首を刺されていましたが、 この三つの死体には、共通点があったんです。
それは、よいしょ。」
亜里沙は身代わりとなった人形を持ち上げてみせる。
亜里沙「それは、左利きの人が刺した、と言う事です。
この人形も滅多刺しにされていますが、人形の中心から左に多く刺し傷がありますよね?
そして、海未さんは左利き、ことりさんは右利きです。
この事から犯人は海未さんだろうと思っていました。
・・・信じたくは無かったですけどね。」
海未「フフ・・・私が左利きな事はプロフィールにも書いていなかったのに・・・さすがμ`sのファンですね。」
※海未が左利き、ことりが右利きな事は漫画から参考にしました。もしかしたら間違えているかもしれません。
亜里沙「伊達にファンやってないんですよ、・・・もう辞めましたけどね。」
142: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:06:46.25 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「後は海未さんを拘束する為にワザとスキを作って罠を張りました。
姉たちにはこう話しました。
『真姫さんが犯人だという証拠を見つけるために自分が囮となる。 自分がメールを送ったらすぐにリビングに来て襲っている真姫さんを拘束してほしい』とね。
メンバーの中にも共犯者がいて、海未さんを捕まえると知ったら邪魔をするかもしれないと思ったんで、 真姫さんと言い、海未さんだと分からない様に部屋を真っ暗にしておきました。」
海未「なるほど・・・まんまと引っかかった訳ですか・・・。」
亜里沙「後はこの通りです。
自分のダミーを用意して、私は隠れていました。
そしたらまんまと海未さんが来てくれたので、則メールをして取り押さえてもらった訳です。」
・・・こうして聞くと淡々と犯人を捕まえた様に聞こえる。
しかし、ここまで来るのに葛藤はあったのだ。
まず真姫に今回の事件が狂言だといい、自分に協力してほしいと言った所。
少ない可能性だが、真姫が本当に殺人を起こしている可能性もあった。
もし真姫が犯人だったらいい様に誘導されていたのかもしれない。
もう一つは今生き残っているメンバーと海未が犯人である可能性もあった。
雪穂、穂乃果、凛、絵里はまだ死んでいない訳だから、海未と手を組んでいたのかもわからない、
もし手を組んでいたら亜里沙は生きていなかっただろう。
143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:07:21.96 ID:tmg9xEjI0
亜里沙「海未さん、ことりさんは・・・もう生きていないのですか?」
穂乃果「っ・・・!そうだよことりちゃんは・・・。」
海未「えぇ・・・ことりは、一番最初に殺しました。
今はインゴットのおいてある部屋の『奥の』部屋に置いてありますよ。」
穂乃果「あぅ・・・ああああああああああああああああ!!!そんな・・・・。あぁ・・・。」
穂乃果はその場で蹲り、泣き叫ぶ。
自分の無二の親友の一人が殺人を犯し、もう一人はその一人によって殺されたのだ。
真姫にした事を思い出すと、とてもではないが同情なんて甚だ出来はしない。
だが、・・・。
亜里沙「最後に・・・改めてお聞きします。
にこさん、希さん、花陽さん、ことりさんを殺したのは・・・あなたですよね?」
海未は付き物の落ちた様な、やり遂げたような顔で、
海未「・・・はい、私が犯人です。」
そう、答えた。
パキン!!!
144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/04/02(木) 23:07:59.03 ID:tmg9xEjI0
その瞬間、亜里沙の目の前の空間にヒビが入る。
空間だけではない。
さっきまでそこにいた、穂乃果も、海未も、凛も、屋敷さえ割れる。
まるでガラスが割れる様に、割れて、割れて、割れて、そして最後には自分すら割れた。
亜里沙はそんな割れた自分を茫然と見ながら、目の前にある黒い渦に吸い込まれていく。
その先に、また、大きな渦があった。
今度は亜里沙を吸い込まず、その代わりに映像が映る。
それは、亜里沙たちが映っていて、石碑の前に集まって会話をしている。
亜里沙「これ・・・真姫さんの別荘だ!・・・て事は・・・。」
亜里沙にとっては数時間前の事・・・。
これは○月×日の映像だった。
亜里沙「あれ・・・でも。」
映像ではちょうど一通り議論が出尽くした様だ。
確かこの後は亜里沙と穂乃果が残り、碑文を解いていくのだが・・・。
亜里沙「石碑の前で残っているのは・・・真姫さんだけだ。」
映像の亜里沙は欠伸をしながら自分の部屋に帰っていく。
真姫は何かを呟きながら書庫室に向かった。
このパターン・・・これは・・・。
亜里沙「・・・そうだ!この映像は、私が殺された一周目の世界なんだ!」
映像には真姫が映っていて、熱心に碑文を解いている。
亜里沙「てことは・・・あの日の事が・・・分かるかもしれない。」
亜里沙はその映像を食い入る様に見る。
まもなく、真姫が碑文を解いてインゴットの置いてある部屋に行く所だった。
元スレ
SS速報VIP:絢瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」ver2.0