SS速報VIP:理樹「今年もよろしくお願いします」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451657946/1: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/01(金) 23:19:06.65 ID:YGo7uizY0
真人「おいおい、新年早々いきなり敬語なんか使うなよ理樹。なんか他人定規っぽいぜ?」
理樹「でもなんかこういうのってそうなっちゃわない?」
鈴「今年もよろしく」
鈴「これじゃ偉そうだ」
謙吾「なら、もっと恥じらいを見せてみてはどうだろう」
鈴「こ…今年もよろしくな…」
鈴「…こうか?」
恭介「そこへ『実はそいつのことが好きなんだけど素直になれない』属性も付けてみよう」
鈴「別にお前に今年もよろしくしたい訳じゃないんだからな」
理樹「僕ら一体なんの話をしてたんだっけ」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451657946
2: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/01(金) 23:51:54.41 ID:YGo7uizY0
理樹(遂に新年を迎えた。色々とあった去年だったが けど、こうして全員と年を重ねることが出来て嬉しく思う)
理樹(今はその夜。当然、今日は休みだから実家で家族と過ごしている人がほとんどだろうけど、元旦に学校へ集結した僕らはこのままこれから初詣に向かうところだ)
ゴソゴソ
理樹「………?」
恭介「よっしゃ、そろそろ外に出る支度をするか」
ゴソゴソゴソ
真人「なあ謙吾、今からジャンケンして勝った方がお年玉を負けた奴にやるってのはどうだ?」
謙吾「それはお年玉と言えるのか…?」
ゴソゴソゴソゴソ
理樹「……ね、ねえ鈴、さっきからなんか物音しない?」
鈴「ん、そーか?」
恭介「おっと、そういえば言うのを忘れてたな。今日は理樹の部屋の前に集合だったんだ」
理樹「集合って?」
恭介「ああ!」
理樹(恭介は答えになってない返事をしつつドアを開けた)
ガチャッ
理樹「なっ!」
理樹(その向こうにいたのは…)
「「あけましておめでとう(ございます)ーー!!」」
理樹(それはいつものメンバーだった。来ヶ谷さん、小毬さん、葉留佳さん、西園さん、クド。リトルバスターズが全員集結したのだ)
理樹「どうしたのみんな!家に帰っていたんじゃ…」
恭介「能美はともかく一旦帰ってからここに戻るくらいならみんな訳はない」
葉留佳「そーゆーことですヨ!さあさあ神社に行きやしょう!」
来ヶ谷「うむ。理樹君が寂しがるといけないからな。普段の礼も込めてこうして飛んできた次第だ」
理樹「あ……」
理樹(そうか。みんなは僕の家庭環境を気遣ってくれたんだ。本当なら家族と行きたいだろうに…)
美魚「直枝さん。皆さんは……少なくとも私は皆さんと行きたいからここに来たんですが。勝手な思い込みは恥ずかしいですよ?」
理樹「え」
理樹(心を読み透かされたような事を言われてしまった。気にするな、ということだろうか)
恭介「よし、全員揃ってるな!?それじゃ出発だっ!」
「「おおーーっっ」」
理樹(ドタバタしているようで事態は単純に収まっていた。みんな恭介の車の中で神社での予定を話している)
理樹「それにしても恭介が免許取ってくれたお陰で移動が凄く楽になったよね」
理樹(助手席から恭介に言う)
恭介「ああ。維持費もそれなりにかかるがいずれは理樹も乗り回せるようにならなきゃな」
理樹「ぼ、僕が?」
理樹(と、そこへ鈴が後ろから顔だけをぴょこっとだした)
鈴「なーなー」
理樹「どうしたの鈴?」
鈴「そういえば馬鹿2人が車に乗ってないぞ」
理樹「えっ!?」
理樹(そ、そういえば後部座席があんまり騒がしくないと思ったら…そんな心配も恭介の一言で片付いた)
恭介「外をよく見てみろ。隣で俺たちの車と張り合う紫ジャンパーの男と筋肉モリモリの男が見えないか?」
鈴「なるほど見てなかった」
神社
恭介「よし、着いたぞ」
葉留佳「いやっほーう!」
クド「いやっほー!なのですーっ!」
理樹(駐車場からはもう屋台から発せられる独特のいい匂いがした)
真人「はぁ…はぁ……!」
謙吾「ぜぇ…ぜぇ……!」
理樹「二人とも速かったね」
真人「くそっ、引き分けか…っ!」
理樹(後から聞くところによると二人は負けた方が屋台でのご飯を奢る約束をしていたらしい)
来ヶ谷「とりあえず最初は神社にお参りだな」
……………………………………
…………………
…
ガヤガヤ
理樹「うわ、やっぱり並んでるね」
理樹(おびただしい数の人達が最後尾から賽銭箱まで並んでいた)
謙吾「まあとりあえずは並ぶしかあるまい」
小毬「うう、甘い匂いをずっと我慢しなくちゃいけない~…」
理樹(悔しそうな目で隣を歩く子供の綿菓子を見つめる小毬さん)
恭介「それまでは今年…いや、去年の思い出を語るっていうのはどうだ?」
理樹(と、恭介)
来ヶ谷「ああ。それならあっという間に時間を忘れられそうだな」
理樹「去年の思い出ねえ」
理樹(確かに全てを語ろうとすると列があと3倍長くても言い切れなさそうだ。旅に出たり手錠が外れなくなったりパンの袋を止めるアレだったり…)
理樹(それでもやはり一番の想い出はあの事しかない。ないのはないけど話が話だけに少し言いづらい)
理樹(みんな同じことを思っていたのか、かたや密かに胸に閉まっておこうと満足気に想いに耽け、一方はその時の出来事を思い浮かべたのか照れ臭そうに笑った)
真人「思い出……ああ、そういやぁ、バスの事故の時は凄かったよなー!」
「「「言うのかい!!」」」
真人「えっ、えっ!?なんか変なこと言ったか俺!?」
理樹(総ツッコミを受けた真人は凄く狼狽していた)
理樹(それから少し経って、やっと最前列に並ぶことが出来た。お財布から小銭を投げ入れる)
真人「どれどれって5円…5円……って…」
真人「………う、うおぉおおお!!俺の500円がぁああああ!!!」
鈴「隣で叫ぶな!うっさい!」
理樹(振り向かずとも状況が分かった。新年早々哀れだ……)
恭介「理樹は何を願うんだ?」
理樹(と、恭介が聞いた)
理樹「そうだね。これからもみんなと一緒にいれますように……かな?」
恭介「フッ…相変わらずだな」
理樹(笑われてしまった。少しムッとして恭介に言い返す)
理樹「恭介は?」
恭介「俺か?俺はお前らがすくすく成長してくれますようにと祈った」
理樹「もう充分成長してるよっ」
恭介「フッ…」
理樹(また笑った。そしてそのあと小さな声でそうだな、と付け加えた)
クド「わふー…やっと出れたのです……」
理樹(みんな行列に並んでいるうちに疲れてしまったようだった。それでも、ずらっと並んでいる屋台を見てあっという間に元気を取り戻した)
真人「ヒャッホォーッ!最初は何を食おうか…やっぱフランクフルトか!?」
謙吾「おお!ナイスアイディアだ真人!どっちが先に着くか競争といこう!!」
理樹(相変わらずの2人はいつの間にか人ごみの中に姿を消した。お金が尽きるまで食べるつもりだろうか)
恭介「じゃ、俺たちも楽しむとしよう」
理樹「そうだね」
理樹(何を買おうかと迷っていると他のみんなは続々と満喫していた)
小毬「鈴ちゃん、りんご飴美味しいねっ」
鈴「うん…」
理樹(2人は我慢していた分、思い切り甘いものを買っていた。鈴も目の前のりんご飴を一心不乱に食べている)
小毬「あっ、わたがしだ!ごめんくださーいっ」
理樹(よく見ると手には既に今川焼きやベビーカステラがあった。いつの間に……)
葉留佳「やった!2個目も成功っ!!」
理樹(後ろを振り向くと葉留佳さんと西園さんが座っている。何かに没頭しているようだ)
美魚「流石ですね。私はまだ1個目が終わったところです」
理樹(どうやら型抜きに挑戦しているようだ)
葉留佳「ふっふっふっ。こう見えても細かい作業は得意なのだー!どれこの傘型のもこうやって…」
理樹(慎重に安定して終わらせる西園さんに対して葉留佳さんは勢いでどんどん成功させるタイプらしい)
西園「………へくちっ」
葉留佳「なっ」
理樹(西園さんのクシャミに葉留佳さんが驚いて少し飛び上がった)
葉留佳「あ、あああーっ!!か、傘が割れて戦闘機みたいになった……っ!!」
理樹(ショックで手が震える葉留佳さんに西園さんがフォロー(?)を入れる)
西園「すいません。……でも、これも美味しいですよ?ほら…」
理樹(戦闘機を葉留佳さんの口に運ぶ)
葉留佳「ハム……美味しい……」
理樹(泣きながら味わっていた)
理樹(残るあの2人の姿が見えない。そう思っていると恭介が肩を叩いて教えてくれた)
恭介「おっ、見ろ理樹、能美と来ヶ谷がくじ引きしてるぞ」
理樹(視線の先を追うと、確かに後ろ姿が見てとれた。どうやらちょうどクドがクジを引いたところだった)
クド「かもんひっとみー!なのですっ」
ペラッ
クド「わっ!100番です!100番ですよ来ヶ谷さん!」
来ヶ谷「うむ……」
理樹(はしゃぐクドに対し、少し考え込んだような来ヶ谷さん)
クド「お兄さんっ、100番はどれですかっ。そこの望遠鏡だと嬉しいです!」
店番「ごめんねキミ、100番以降は全部ハズレなんだよ。はいこれ残念賞のピロピロ」
クド「が、がーん…」
理樹(キリが良くて大きな数字だから期待したんだろう。確かに当たりは1や10の少ない数字だった)
クド「望遠鏡…欲しかったです…」
理樹(落ち込みムードのクドを見た来ヶ谷さん。一瞬、その目が怪しく光ったような気がした)
来ヶ谷「貴様、もう一度今のクジを見せてみろ」
店番「えっ」
理樹(男の人がいきなり貴様呼ばわりされてたじろいだ)
来ヶ谷「ふむ…100番以降が当たりだったな?」
店番「そ、そうだが」
来ヶ谷「数えてみたがどう考えてもクジが100枚も入っていないな?賞品の並びからしてこれまでに当たった形跡も見あたらないが」
店番「なんだ、もしかして俺がサマをしてるって言いたいのか!」
クド「く、来ヶ谷さん!?」
来ヶ谷「なんだ、してないのか…」
店番「もちろんだ!ふざけんな!」
理樹(えらくあっさり引くんだなと恭介が言ったと思ったら来ヶ谷さんがおもむろに自分の財布を取り出した)
来ヶ谷「では、そのクジを全部買おう。そうすれば全部当たるはずだな」
店番「なっ!!」
来ヶ谷「ま、数学的にありえないがね」
理樹(そう言って財布からお札を引き抜こうとすると店番は慌ててその手を止め、絞るように声を出した)
店番「すいません…やめて……」
来ヶ谷「…ふむ。まあここで騒ぎを起こしていたずらに周りの興を冷めさせるのは得策ではないな」
理樹(そして男の耳にボソッと呟いた。なんと言ったんだろう)
来ヶ谷「では今すぐ店を畳んで、そこにある……」
恭介「……理樹、あっち行くか…」
理樹(冷や汗を浮かべた恭介が僕の手を引っ張る。怖くてもうもう見ていられないんだろう)
店番「…………」
来ヶ谷「~~~」
クド「~~~!?」
理樹(移動中、怖いもの見たさで後ろを振り向くと、落ち込んで店をたたむ顔と、不敵な笑みで驚く友人を愛でる顔と、いきなり大きな望遠鏡を手渡され戸惑っている顔があった)
…………………………………
…………………
…
理樹(みんなから少し離れてしまった。ともあれ、ここも変わらず魅力的な屋台が客を賑わせている)
理樹「僕らはどうする?」
恭介「そうだな、理樹はどこに行きたい?」
理樹「もう夜ご飯は食べた後だし何か楽しめるものがいいな」
恭介「よし、それならあそこなんかどうだ?」
理樹(そう言って恭介が指差したのは射的屋だった)
射的屋
恭介「2人分頼む」
店番「はいらっしゃい!600円ね!」
理樹「射的なんて久しぶりだなあ」
恭介「そうか?ちょっと前まで似たようなことしてたじゃねーか」
理樹「似たようなこと?」
理樹(僕の疑問を尻目に恭介はさっそくコルクを銃に込めていた)
恭介「それっ」
ポンッ
パタッ
理樹「あっ!」
理樹(当たった!店番の人に貰ったキャラメルをしたり顔で見せびらかす)
恭介「ざっとこんなもんよ」
理樹「よし僕も!確か銃の先にある棒と手前のへこみを合わせたら狙いが……」
理樹(そういえばこの狙い方はなんで知っていたんだろう?映画で見たんだっけ?)
理樹「…まあ、今はそんなことどうでもいいか…っと」
理樹(引き金を引くと気持ちいい音を立てた……と、同時に狙ったラムネのお菓子が軽快な音を出しながら後ろへ飛んだ)
理樹「やった!」
恭介「おお!なかなかやるじゃないかっ」
理樹(もしかすると才能があるかもしれない。さあ次はどんな的を当てようか…)
恭介「理樹、アレ狙ってみようぜ」
理樹「アレって…」
理樹(恭介の言う「アレ」とは多分、あの大当たりと書かれた他の的より一回り大きな箱のことだろう)
理樹「あれを倒したらなにが貰えるのかな…ってええ!」
理樹(後ろの看板を見ると『大当たりは当店自慢のパンを1年分!!!(味は保証しません)』と書いてあった)
理樹「こ、これ当たったら凄いね…」
理樹(と、そこへタバコを咥えた店番の人がやってきた)
店番「ハッハッハッ!そうだろ?こいつは店の売り残…可愛い店員が作ったユニークなパンをどんと揃えたんだ!何故か数ヶ月経ってもカビ一つ生えないからせっかくだしと思ってな」
理樹(どうしよう、魅力がどんどんガタ落ちしていく…)
恭介「そうと決まれば…よっしゃいけえっ!」
パンッ
カキンッ!
恭介「カキンッ!?」
理樹(恭介の発射した弾は確かに目標に命中したが、「大当たり」は微動だにせず、逆に弾の方が吹っ飛んでいった)
恭介「おいおいこりゃどういうことだよ!」
店番「ふっ…大当たりがすぐに当たっちゃつまらないだろ?中に重りを入れておいたからそう簡単にゃ落ちねえぜ!」
恭介「なるほど…なら理樹、一緒にヤツを落とすぞ!」
理樹「同じタイミングで!?無理だって!」
恭介「いいや、俺たちならやれる!」
………………………………………
………………
…
パンッパンッ
恭介「今度は俺が早かったか…」
理樹「ねえもうお互い弾が一つずつしかないよ…おとなしく他の小物を落とそうよ」
恭介「うるせえ!ここまで弾を使ってきて今更引き下がれるかっ!取れるまでならもうひとコインさえ辞さない」
理樹(恭介にギャンブルをさせてはいけないなと思った)
理樹「いやいやいや、そろそろ集合時間だしこれでもう帰るよ?」
???「……………よいしょっと…」
恭介「くそっ、頼むぞ…俺は…俺は……生き残る!」
理樹(何を言っているのか分からなかったけどとりあえず銃を構えた)
???「的はアレね…」
恭介「いくぞ理樹!3…2…1……っ!」
???「BANG!」
パシュッ
真人「おーやっと2人が帰ってきたぜ!」
理樹「いやーごめんごめん…」
恭介「ふぅー重てえなぁ…!」
鈴「ん?なんだそれは」
恭介「ああ、こいつは射的の賞品だ」
葉留佳「デカっ!っていうかこれ全部パン!?」
西園「嫌な予感がします…」
恭介「心配するな。ちゃんと全員に分けてやるよ」
来ヶ谷「ふむ……私は要らないな」
謙吾「待て、なんで匂い嗅いだ後に言ったんだ…」
来ヶ谷「いや、別に気にしなくていい」
恭介「ま、とりあえず…」
恭介「帰るか」
ブロロロロロ…
理樹「…………………」
恭介「…………………」
理樹(帰りの車内は静かだった。みんなお祭りで疲れ果てて眠ってしまっている)
理樹(僕と運転中の恭介以外に起きているのは来ヶ谷さんだけだったけど当の本人も窓の外を眺めているだけだった)
理樹「ね、恭介」
恭介「ん?」
理樹「結局最後、なんで吹っ飛んだんだろうねアレ」
恭介「ああ…結局2人ともかすりもしてなかったしな。おっちゃんが言うには何故か的に穴が空いていたらしい」
理樹「あはは…」
理樹「…………………」
恭介「…………………」
理樹「………ね、恭介」
理樹「今度はなんだ?」
理樹「また一緒に初詣したいね。このメンバーで」
恭介「きっと出来るさ」
理樹(もし、時間が永遠に止まってしまうなら今がいい。もし余命があと3時間ほどしかないなら今死にたい)
理樹(幸せそうに寝ているみんな。振り向くと何も言わず微笑みかけてくれる来ヶ谷さん。しゃべりかけると小粋な返事をくれる恭介)
理樹(何も心配することがなく、これ以上やる事がないであろう今が多分、僕の中で一番幸福なのかもしれない)
理樹(人は無くしてからその価値を知ると言う。僕は色々なことが起こって、この当たり前のような日常を失いかけたお陰で今が一番幸福だと気付けた)
理樹(つまり、僕はそういう意味では数少ない幸運に恵まれているんじゃないだろうか)
恭介「さて…そろそろ学校に着くぞ。理樹、来ヶ谷、みんなを起こしてくれ」
来ヶ谷「了解した」
理樹「うんっ」
理樹(しかし、これからどんどん起こっていくであろう騒がしい毎日もまた捨てがたい。ともあれ、これからまた新しい一年の始まりだ)
終わり
元スレ
理樹(遂に新年を迎えた。色々とあった去年だったが けど、こうして全員と年を重ねることが出来て嬉しく思う)
理樹(今はその夜。当然、今日は休みだから実家で家族と過ごしている人がほとんどだろうけど、元旦に学校へ集結した僕らはこのままこれから初詣に向かうところだ)
ゴソゴソ
理樹「………?」
恭介「よっしゃ、そろそろ外に出る支度をするか」
ゴソゴソゴソ
真人「なあ謙吾、今からジャンケンして勝った方がお年玉を負けた奴にやるってのはどうだ?」
謙吾「それはお年玉と言えるのか…?」
ゴソゴソゴソゴソ
理樹「……ね、ねえ鈴、さっきからなんか物音しない?」
鈴「ん、そーか?」
恭介「おっと、そういえば言うのを忘れてたな。今日は理樹の部屋の前に集合だったんだ」
理樹「集合って?」
恭介「ああ!」
理樹(恭介は答えになってない返事をしつつドアを開けた)
ガチャッ
理樹「なっ!」
理樹(その向こうにいたのは…)
5: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/02(土) 00:19:46.97 ID:Q56UIxf00
「「あけましておめでとう(ございます)ーー!!」」
理樹(それはいつものメンバーだった。来ヶ谷さん、小毬さん、葉留佳さん、西園さん、クド。リトルバスターズが全員集結したのだ)
理樹「どうしたのみんな!家に帰っていたんじゃ…」
恭介「能美はともかく一旦帰ってからここに戻るくらいならみんな訳はない」
葉留佳「そーゆーことですヨ!さあさあ神社に行きやしょう!」
来ヶ谷「うむ。理樹君が寂しがるといけないからな。普段の礼も込めてこうして飛んできた次第だ」
理樹「あ……」
理樹(そうか。みんなは僕の家庭環境を気遣ってくれたんだ。本当なら家族と行きたいだろうに…)
美魚「直枝さん。皆さんは……少なくとも私は皆さんと行きたいからここに来たんですが。勝手な思い込みは恥ずかしいですよ?」
理樹「え」
理樹(心を読み透かされたような事を言われてしまった。気にするな、ということだろうか)
恭介「よし、全員揃ってるな!?それじゃ出発だっ!」
「「おおーーっっ」」
6: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/02(土) 00:34:36.21 ID:Q56UIxf00
理樹(ドタバタしているようで事態は単純に収まっていた。みんな恭介の車の中で神社での予定を話している)
理樹「それにしても恭介が免許取ってくれたお陰で移動が凄く楽になったよね」
理樹(助手席から恭介に言う)
恭介「ああ。維持費もそれなりにかかるがいずれは理樹も乗り回せるようにならなきゃな」
理樹「ぼ、僕が?」
理樹(と、そこへ鈴が後ろから顔だけをぴょこっとだした)
鈴「なーなー」
理樹「どうしたの鈴?」
鈴「そういえば馬鹿2人が車に乗ってないぞ」
理樹「えっ!?」
理樹(そ、そういえば後部座席があんまり騒がしくないと思ったら…そんな心配も恭介の一言で片付いた)
恭介「外をよく見てみろ。隣で俺たちの車と張り合う紫ジャンパーの男と筋肉モリモリの男が見えないか?」
鈴「なるほど見てなかった」
7: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/02(土) 01:19:50.56 ID:Q56UIxf00
神社
恭介「よし、着いたぞ」
葉留佳「いやっほーう!」
クド「いやっほー!なのですーっ!」
理樹(駐車場からはもう屋台から発せられる独特のいい匂いがした)
真人「はぁ…はぁ……!」
謙吾「ぜぇ…ぜぇ……!」
理樹「二人とも速かったね」
真人「くそっ、引き分けか…っ!」
理樹(後から聞くところによると二人は負けた方が屋台でのご飯を奢る約束をしていたらしい)
来ヶ谷「とりあえず最初は神社にお参りだな」
8: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/02(土) 02:28:23.17 ID:Q56UIxf00
……………………………………
…………………
…
ガヤガヤ
理樹「うわ、やっぱり並んでるね」
理樹(おびただしい数の人達が最後尾から賽銭箱まで並んでいた)
謙吾「まあとりあえずは並ぶしかあるまい」
小毬「うう、甘い匂いをずっと我慢しなくちゃいけない~…」
理樹(悔しそうな目で隣を歩く子供の綿菓子を見つめる小毬さん)
恭介「それまでは今年…いや、去年の思い出を語るっていうのはどうだ?」
理樹(と、恭介)
来ヶ谷「ああ。それならあっという間に時間を忘れられそうだな」
理樹「去年の思い出ねえ」
理樹(確かに全てを語ろうとすると列があと3倍長くても言い切れなさそうだ。旅に出たり手錠が外れなくなったりパンの袋を止めるアレだったり…)
理樹(それでもやはり一番の想い出はあの事しかない。ないのはないけど話が話だけに少し言いづらい)
理樹(みんな同じことを思っていたのか、かたや密かに胸に閉まっておこうと満足気に想いに耽け、一方はその時の出来事を思い浮かべたのか照れ臭そうに笑った)
真人「思い出……ああ、そういやぁ、バスの事故の時は凄かったよなー!」
「「「言うのかい!!」」」
真人「えっ、えっ!?なんか変なこと言ったか俺!?」
理樹(総ツッコミを受けた真人は凄く狼狽していた)
10: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/03(日) 21:59:22.14 ID:rsmmadN+0
理樹(それから少し経って、やっと最前列に並ぶことが出来た。お財布から小銭を投げ入れる)
真人「どれどれって5円…5円……って…」
真人「………う、うおぉおおお!!俺の500円がぁああああ!!!」
鈴「隣で叫ぶな!うっさい!」
理樹(振り向かずとも状況が分かった。新年早々哀れだ……)
恭介「理樹は何を願うんだ?」
理樹(と、恭介が聞いた)
理樹「そうだね。これからもみんなと一緒にいれますように……かな?」
恭介「フッ…相変わらずだな」
理樹(笑われてしまった。少しムッとして恭介に言い返す)
理樹「恭介は?」
恭介「俺か?俺はお前らがすくすく成長してくれますようにと祈った」
理樹「もう充分成長してるよっ」
恭介「フッ…」
理樹(また笑った。そしてそのあと小さな声でそうだな、と付け加えた)
11: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/03(日) 22:06:32.57 ID:rsmmadN+0
クド「わふー…やっと出れたのです……」
理樹(みんな行列に並んでいるうちに疲れてしまったようだった。それでも、ずらっと並んでいる屋台を見てあっという間に元気を取り戻した)
真人「ヒャッホォーッ!最初は何を食おうか…やっぱフランクフルトか!?」
謙吾「おお!ナイスアイディアだ真人!どっちが先に着くか競争といこう!!」
理樹(相変わらずの2人はいつの間にか人ごみの中に姿を消した。お金が尽きるまで食べるつもりだろうか)
恭介「じゃ、俺たちも楽しむとしよう」
理樹「そうだね」
12: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/03(日) 22:25:14.90 ID:rsmmadN+0
理樹(何を買おうかと迷っていると他のみんなは続々と満喫していた)
小毬「鈴ちゃん、りんご飴美味しいねっ」
鈴「うん…」
理樹(2人は我慢していた分、思い切り甘いものを買っていた。鈴も目の前のりんご飴を一心不乱に食べている)
小毬「あっ、わたがしだ!ごめんくださーいっ」
理樹(よく見ると手には既に今川焼きやベビーカステラがあった。いつの間に……)
葉留佳「やった!2個目も成功っ!!」
理樹(後ろを振り向くと葉留佳さんと西園さんが座っている。何かに没頭しているようだ)
美魚「流石ですね。私はまだ1個目が終わったところです」
理樹(どうやら型抜きに挑戦しているようだ)
葉留佳「ふっふっふっ。こう見えても細かい作業は得意なのだー!どれこの傘型のもこうやって…」
理樹(慎重に安定して終わらせる西園さんに対して葉留佳さんは勢いでどんどん成功させるタイプらしい)
西園「………へくちっ」
葉留佳「なっ」
理樹(西園さんのクシャミに葉留佳さんが驚いて少し飛び上がった)
葉留佳「あ、あああーっ!!か、傘が割れて戦闘機みたいになった……っ!!」
理樹(ショックで手が震える葉留佳さんに西園さんがフォロー(?)を入れる)
西園「すいません。……でも、これも美味しいですよ?ほら…」
理樹(戦闘機を葉留佳さんの口に運ぶ)
葉留佳「ハム……美味しい……」
理樹(泣きながら味わっていた)
13: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/03(日) 23:18:23.81 ID:rsmmadN+0
理樹(残るあの2人の姿が見えない。そう思っていると恭介が肩を叩いて教えてくれた)
恭介「おっ、見ろ理樹、能美と来ヶ谷がくじ引きしてるぞ」
理樹(視線の先を追うと、確かに後ろ姿が見てとれた。どうやらちょうどクドがクジを引いたところだった)
クド「かもんひっとみー!なのですっ」
ペラッ
クド「わっ!100番です!100番ですよ来ヶ谷さん!」
来ヶ谷「うむ……」
理樹(はしゃぐクドに対し、少し考え込んだような来ヶ谷さん)
クド「お兄さんっ、100番はどれですかっ。そこの望遠鏡だと嬉しいです!」
店番「ごめんねキミ、100番以降は全部ハズレなんだよ。はいこれ残念賞のピロピロ」
クド「が、がーん…」
理樹(キリが良くて大きな数字だから期待したんだろう。確かに当たりは1や10の少ない数字だった)
クド「望遠鏡…欲しかったです…」
理樹(落ち込みムードのクドを見た来ヶ谷さん。一瞬、その目が怪しく光ったような気がした)
来ヶ谷「貴様、もう一度今のクジを見せてみろ」
店番「えっ」
理樹(男の人がいきなり貴様呼ばわりされてたじろいだ)
来ヶ谷「ふむ…100番以降が当たりだったな?」
店番「そ、そうだが」
来ヶ谷「数えてみたがどう考えてもクジが100枚も入っていないな?賞品の並びからしてこれまでに当たった形跡も見あたらないが」
店番「なんだ、もしかして俺がサマをしてるって言いたいのか!」
クド「く、来ヶ谷さん!?」
来ヶ谷「なんだ、してないのか…」
店番「もちろんだ!ふざけんな!」
理樹(えらくあっさり引くんだなと恭介が言ったと思ったら来ヶ谷さんがおもむろに自分の財布を取り出した)
来ヶ谷「では、そのクジを全部買おう。そうすれば全部当たるはずだな」
店番「なっ!!」
来ヶ谷「ま、数学的にありえないがね」
理樹(そう言って財布からお札を引き抜こうとすると店番は慌ててその手を止め、絞るように声を出した)
店番「すいません…やめて……」
来ヶ谷「…ふむ。まあここで騒ぎを起こしていたずらに周りの興を冷めさせるのは得策ではないな」
理樹(そして男の耳にボソッと呟いた。なんと言ったんだろう)
来ヶ谷「では今すぐ店を畳んで、そこにある……」
恭介「……理樹、あっち行くか…」
理樹(冷や汗を浮かべた恭介が僕の手を引っ張る。怖くてもうもう見ていられないんだろう)
店番「…………」
来ヶ谷「~~~」
クド「~~~!?」
理樹(移動中、怖いもの見たさで後ろを振り向くと、落ち込んで店をたたむ顔と、不敵な笑みで驚く友人を愛でる顔と、いきなり大きな望遠鏡を手渡され戸惑っている顔があった)
14: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/03(日) 23:34:58.20 ID:rsmmadN+0
…………………………………
…………………
…
理樹(みんなから少し離れてしまった。ともあれ、ここも変わらず魅力的な屋台が客を賑わせている)
理樹「僕らはどうする?」
恭介「そうだな、理樹はどこに行きたい?」
理樹「もう夜ご飯は食べた後だし何か楽しめるものがいいな」
恭介「よし、それならあそこなんかどうだ?」
理樹(そう言って恭介が指差したのは射的屋だった)
15: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/03(日) 23:57:49.72 ID:rsmmadN+0
射的屋
恭介「2人分頼む」
店番「はいらっしゃい!600円ね!」
理樹「射的なんて久しぶりだなあ」
恭介「そうか?ちょっと前まで似たようなことしてたじゃねーか」
理樹「似たようなこと?」
理樹(僕の疑問を尻目に恭介はさっそくコルクを銃に込めていた)
恭介「それっ」
ポンッ
パタッ
理樹「あっ!」
理樹(当たった!店番の人に貰ったキャラメルをしたり顔で見せびらかす)
恭介「ざっとこんなもんよ」
理樹「よし僕も!確か銃の先にある棒と手前のへこみを合わせたら狙いが……」
理樹(そういえばこの狙い方はなんで知っていたんだろう?映画で見たんだっけ?)
理樹「…まあ、今はそんなことどうでもいいか…っと」
理樹(引き金を引くと気持ちいい音を立てた……と、同時に狙ったラムネのお菓子が軽快な音を出しながら後ろへ飛んだ)
理樹「やった!」
恭介「おお!なかなかやるじゃないかっ」
17: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/06(水) 21:31:33.97 ID:HRS58ANG0
理樹(もしかすると才能があるかもしれない。さあ次はどんな的を当てようか…)
恭介「理樹、アレ狙ってみようぜ」
理樹「アレって…」
理樹(恭介の言う「アレ」とは多分、あの大当たりと書かれた他の的より一回り大きな箱のことだろう)
理樹「あれを倒したらなにが貰えるのかな…ってええ!」
理樹(後ろの看板を見ると『大当たりは当店自慢のパンを1年分!!!(味は保証しません)』と書いてあった)
理樹「こ、これ当たったら凄いね…」
理樹(と、そこへタバコを咥えた店番の人がやってきた)
店番「ハッハッハッ!そうだろ?こいつは店の売り残…可愛い店員が作ったユニークなパンをどんと揃えたんだ!何故か数ヶ月経ってもカビ一つ生えないからせっかくだしと思ってな」
理樹(どうしよう、魅力がどんどんガタ落ちしていく…)
恭介「そうと決まれば…よっしゃいけえっ!」
パンッ
カキンッ!
恭介「カキンッ!?」
理樹(恭介の発射した弾は確かに目標に命中したが、「大当たり」は微動だにせず、逆に弾の方が吹っ飛んでいった)
恭介「おいおいこりゃどういうことだよ!」
店番「ふっ…大当たりがすぐに当たっちゃつまらないだろ?中に重りを入れておいたからそう簡単にゃ落ちねえぜ!」
恭介「なるほど…なら理樹、一緒にヤツを落とすぞ!」
理樹「同じタイミングで!?無理だって!」
恭介「いいや、俺たちならやれる!」
………………………………………
………………
…
18: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/06(水) 22:05:44.58 ID:HRS58ANG0
パンッパンッ
恭介「今度は俺が早かったか…」
理樹「ねえもうお互い弾が一つずつしかないよ…おとなしく他の小物を落とそうよ」
恭介「うるせえ!ここまで弾を使ってきて今更引き下がれるかっ!取れるまでならもうひとコインさえ辞さない」
理樹(恭介にギャンブルをさせてはいけないなと思った)
理樹「いやいやいや、そろそろ集合時間だしこれでもう帰るよ?」
???「……………よいしょっと…」
恭介「くそっ、頼むぞ…俺は…俺は……生き残る!」
理樹(何を言っているのか分からなかったけどとりあえず銃を構えた)
???「的はアレね…」
恭介「いくぞ理樹!3…2…1……っ!」
???「BANG!」
パシュッ
19: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/06(水) 22:15:15.08 ID:HRS58ANG0
真人「おーやっと2人が帰ってきたぜ!」
理樹「いやーごめんごめん…」
恭介「ふぅー重てえなぁ…!」
鈴「ん?なんだそれは」
恭介「ああ、こいつは射的の賞品だ」
葉留佳「デカっ!っていうかこれ全部パン!?」
西園「嫌な予感がします…」
恭介「心配するな。ちゃんと全員に分けてやるよ」
来ヶ谷「ふむ……私は要らないな」
謙吾「待て、なんで匂い嗅いだ後に言ったんだ…」
来ヶ谷「いや、別に気にしなくていい」
恭介「ま、とりあえず…」
恭介「帰るか」
20: 以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします 2016/01/07(木) 00:38:14.90 ID:+eVwPbx10
ブロロロロロ…
理樹「…………………」
恭介「…………………」
理樹(帰りの車内は静かだった。みんなお祭りで疲れ果てて眠ってしまっている)
理樹(僕と運転中の恭介以外に起きているのは来ヶ谷さんだけだったけど当の本人も窓の外を眺めているだけだった)
理樹「ね、恭介」
恭介「ん?」
理樹「結局最後、なんで吹っ飛んだんだろうねアレ」
恭介「ああ…結局2人ともかすりもしてなかったしな。おっちゃんが言うには何故か的に穴が空いていたらしい」
理樹「あはは…」
理樹「…………………」
恭介「…………………」
理樹「………ね、恭介」
理樹「今度はなんだ?」
理樹「また一緒に初詣したいね。このメンバーで」
恭介「きっと出来るさ」
理樹(もし、時間が永遠に止まってしまうなら今がいい。もし余命があと3時間ほどしかないなら今死にたい)
理樹(幸せそうに寝ているみんな。振り向くと何も言わず微笑みかけてくれる来ヶ谷さん。しゃべりかけると小粋な返事をくれる恭介)
理樹(何も心配することがなく、これ以上やる事がないであろう今が多分、僕の中で一番幸福なのかもしれない)
理樹(人は無くしてからその価値を知ると言う。僕は色々なことが起こって、この当たり前のような日常を失いかけたお陰で今が一番幸福だと気付けた)
理樹(つまり、僕はそういう意味では数少ない幸運に恵まれているんじゃないだろうか)
恭介「さて…そろそろ学校に着くぞ。理樹、来ヶ谷、みんなを起こしてくれ」
来ヶ谷「了解した」
理樹「うんっ」
理樹(しかし、これからどんどん起こっていくであろう騒がしい毎日もまた捨てがたい。ともあれ、これからまた新しい一年の始まりだ)
終わり
SS速報VIP:理樹「今年もよろしくお願いします」