1: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:01:11.16 ID:S.cgSIAO

いつもと変わらない朝

紬「今日のお菓子は何にしようかしら。何かお勧めとかあります?」

パティシエ「はっはっは。お嬢様の作るものなら何でもこの私が保証致します。パティシエもビックリな腕ですからなぁお嬢様は」

紬「そんな…私なんてまだまだです」

パティシエ「はっはっはっ! またご謙遜を。まあそこがお嬢様の良いところでもあるんですがね。え~お勧めのお菓子でしたね。今日いいイチゴが入ったのでイチゴのタルトなどいかがですか?」

紬「イチゴのタルト…いいですね!」

パティシエ「では、早速取り掛かりましょう。僅ながらお手伝いさせて頂きます」

紬「ありがとうございます♪」



2: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:02:44.05 ID:S.cgSIAO

紬父「やっと仕事が片付いたな…どれ、夜明けのホットミルクでも飲んで床につくとしよう」

紬父「ん? キッチンに明かりが…」



パティシエ「お嬢様は筋がよろしいですな! そのままパティシエになればよろしいものを!」

紬「ふふ、お上手ですこと」

パティシエ「世辞などではございませぬ! いや、しかしお嬢様はこの琴吹家を継ぎなさる大事な跡取り…パティシエなどにした暁にはお父様にどやされてしまいますな! ハッハッハ」

紬「そんなことないですわ。お父様は私のやりたいことにはちゃんと理解を示してくれますもの」



3: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:04:31.80 ID:S.cgSIAO

パティシエ「そう言えばそうでしたな。軽音楽をやりたいといい出した時にはこの私、どのようにしてお嬢様に助け船を出そうかと思っていましたが……あっさりお認めになられましたなぁ琴吹様は。」

紬「ふふっ、ありがとうございます。お父様は常に見解を広げなさいと言われてましたから。私が自分からやりたいと言うことを頭ごなしに否定したりはしないと思います」

パティシエ「ハッハッハ違いませんな。だからこそこうやって下で働いていけるわけで。」

紬「これからも私ともどもよろしくお願いします」ペコリ

パティシエ「いやいやこちらこそ使ってやってください」ペコリ



4: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:05:17.49 ID:S.cgSIAO

紬父「……こんな朝早くから何をしてるんだ? ……斎藤」

斎藤「はっ、ここに」シュタッ

紬父「紬は何をしているんだ?」

斎藤「パティシエの方とお菓子作りかと思われます」

紬父「お菓子作り? 今日は学校だろう?」

斎藤「はい。軽音楽部のご友学に作って処味してもらうのでしょう」

紬父「……斎藤、いつからだ?」

斎藤「はっ……一学年の頃からでございます」

紬父「……、ならば紬はもう三年近くああやって朝早く起き、お菓子などを用意し、持って行ってると言うのか?」ギロッ



5: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:06:32.42 ID:S.cgSIAO

斎藤「毎日作っているわけでは……。他の店で買ったり、作ってもらったり、色々でございます。ああやって早起きして作るのは月に数回程度で…」

紬父「斎藤、そういうことではない。いらぬことを申すな」

斎藤「失礼致しました」

紬父「斎藤、もしやなのだが。紬は…い、い、い、」

斎藤「いじめ…でございますか?」

紬父「あってはならんそんなこと!!!!!!!!!!! 今すぐ紬をドイツの大学に留学させる!」

斎藤「落ち着いてくださいませ主人。」

紬父「これが落ち着いていられるか! だから軽音楽など反対だったのだ! それをお前が良いと申すから!」



6: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:07:55.94 ID:S.cgSIAO

斎藤「主人、お言葉ですが主人は紬様の学校生活を直接ご覧なったことがあるのですか?」

紬父「それは…ないが」

斎藤「私は主人の代わりに何回か参観しております。が、そのようなことは一切…」

紬父「わからんだろう!? 今流行りの影でやる方式をとってるやもしれん! それに軽音楽という部活に毎日お菓子を持ち込ませるなど聞いたことがない! 紬は軽音楽部のきゃつらにい、い、い、」

斎藤「いじめ…でございますか」

紬父「あああ紬ぃぃぃ! 父がお前をほったらかしたばっかりに…! だがもう大丈夫だ。私が守って(ry」

斎藤「落ち着いてください、主人」



7: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:10:39.68 ID:S.cgSIAO

斎藤「主人。あの紬様の顔をご覧ください」

紬父「む?」



紬「(美味しそう。唯ちゃん達喜んでくれるかしら)」ニコニコ

斎藤「あんな嬉しそうな顔をしているのです。いじめなどと云う辛い目にあってるとは思えません」

紬父「だ、だが紬がそう思っていないだけかもしれんだろう!? 紬は何にでも興味を持つ純粋な子だ…こういうのが友達付き合い、と思わされてるのではないか!?」

斎藤「それは…一概に否定は出来ませんが…」

紬父「だろう!? 私は今日確信したよ。紬は今までいいように使われて来たのだ…。毎日毎日お菓子を持って来いと脅されてるのだ…!」

斎藤「(随分可愛らしい脅し…と言っても今の主人には通じないか)」



8: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:11:55.55 ID:S.cgSIAO

紬父「紬の為に良かれ良かれと別荘なども貸し与えたが…やはりそれにつけこんでいいように使われてしまっているのだ…。毎日毎日お菓子を作って持って行く紬……ううっ…健気過ぎるじゃあないか」

斎藤「いえ、毎日では…」

紬父「斎藤よ…」

斎藤「はっ」

紬父「紬を転校させる。もっと紬に合った由緒正しい高校にな」

斎藤「お待ちください主人! もう三学年の半ば、そんな時に転校など…! 思い出と言うものを汲み取って頂きたい!」

紬父「嫌な思い出など紬にはいらん! 転校だ! これは決定事項だ!!!」



9: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:15:38.94 ID:S.cgSIAO

斎藤「っ……。……! 主人は紬様とご友学との関係が気になるのですね?」

紬父「そうだ。もっとも毎日お菓子を持って越させるような輩が紬を大切にしてるとは思えんがな!」

斎藤「なれば紬様とご友学の絆を見られれば…主人は納得すると言うのですね?」

紬父「ふんっ、そのようなものが存在するのであればな!」

斎藤「では一つ名案があります。ただこれは紬様には少し厳しい事柄かと…」

紬父「…よい、話してみろ」

斎藤「カクカクシカジカ」

紬父「紬を一週間家に入れないだとぉぉぉぉぉぉ!?」



10: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:18:34.39 ID:S.cgSIAO

斎藤「はい。一週間紬様を閉め出すのです」

紬父「そのようなこと出来るものか! もし危険な目にあったら…」

斎藤「私が常に監視していましょう。本当に危険が迫ったら躊躇いなく…」

紬父「だが…」

斎藤「もし紬様に何かあれば私がこの首切り落としましょう」

紬父「……何故そこまでする、斎藤」

斎藤「私は紬様を、紬の選ばれたご友学を信じているからです」

紬父「……、ふん、好きにしろ。だが私が認めない限り転校だからな!」

斎藤「はっ、心得ております。ではこの事柄は、琴吹家代々伝わる試練、とでも致しましょうか」

紬父「ぬしもタチが悪いのぅ…」



11: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:19:33.85 ID:S.cgSIAO

紬「出来たわ!」

パティシエ「お見事ですな! では少し味見を…」

紬「駄目ですよ~ちょうど人数分しかないんですからぁ」

パティシエ「怒られてしまいましたなぁ! ハッハッハ! 本当軽音楽部の友人は幸せものですな! お嬢様がこんなに尽くしてくれるのですから!」

紬「そんなことないですよ///」

紬父「紬、おはよう」

紬「あっ、お父様。おはようございます」

パティシエ「琴吹様、おはようございます」

紬父「うむ。紬、少し話がある。学校へ行く前に書斎に来なさい」

紬「は、はい」



12: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:20:45.76 ID:S.cgSIAO

紬「お話って…何かしら?」

パティシエ「さあ…なんでしょうな?」

斎藤「……」

紬父の書斎─────

コンコンッ

紬父「入れ」

紬「お父様、お話とはなんでしょう?」

紬父「紬…お前ももう18だ。そろそろと思ってな」

紬「?」

紬父「斎藤、説明を」

斎藤「はっ!」シュタッ

斎藤「琴吹家では代々18になるとその家訓を受け継ぐに相応しいかテストが行われます」

紬「テスト?」

斎藤「はい。簡単なことです。誰にも『頼らずに』一週間、過ごしてもらいます。」

紬「誰にも頼らずに…? 一週間過ごす?」



13: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:21:54.11 ID:S.cgSIAO

斎藤「勿論家には一週間入れません。食事、寝場所、などは自分で何とかしてください。人を頼ってもいけません。いいですね?」

紬「えっと…つまり私は一週間どこかで野宿か何かをして暮らしなさいってことかしら?」

斎藤「どのように受けとるかはお嬢様に任せます。ただ、人を頼ってはいけません。自分から懇願などしては琴吹家の誇り無きものとし、お嬢様にはこの家を本当の意味で出ていってもらいます。」

紬父「(おい斎藤!!! 誰がそこまでしろと(ry)」

斎藤「(任せると言ったのは主人でしょう。大丈夫です、紬様は強いお方ですから)」



14: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:23:25.70 ID:S.cgSIAO

紬「そんな過酷な試練が琴吹家にはあったのですね…! お父様もご体験なさったのですか!?」キラキラ

紬父「ま、まあな(娘の輝かしい目がいたーい!!!)」

斎藤「主人のご配慮で今日からになりました。明日から夏休みですし、学校に行かないで良いのですから楽な方かと。主人の時は学校に行きながらにして…」

紬「ありがとうお父様! 私はお父様みたいに立派ではないかもしれないけれど…それでも琴吹家の娘としてこの試練、乗り越えてみせますわ!!」

紬父「(お父さんを許せ紬いいいいいいいいいいいい)」

こうして、紬と友達の絆を試す試練が始まった。



15: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:24:12.20 ID:S.cgSIAO

学校───

律「うふふ~」
唯「えへへ~」

澪「二人で何ニヤけてるんだ?」

律「だって~ねぇ?」
唯「ねー?」

律「明日から夏休みですものねぇ~」
唯「ね~」

澪「はあ…夏休みだからって遊んでばっかりじゃ駄目だぞ? 受験生なんだからちゃんと勉強もしないと…」

律「聞こえない聞こえない!」
唯「遊びたいもんっ」ブー

澪「はあ…ムギも何か言ってやって…」

紬「」キョロキョロ

澪「ムギ…?」

紬「あ…、ごめんなさい。澪ちゃんなあに?」

澪「どうしたんだ? ムギまで夏休みに目移りか?」



16: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:26:11.37 ID:S.cgSIAO

斎藤『私はいつもお嬢様を監視しています。寝場所の確保、食料の確保にご友学を頼りになさらぬよう』

紬「ちょっとね…(一週間…どうやって過ごしたら…)」

どこか遠くを眺める紬に、澪は一抹の不安を感じた。

澪「ムギ…?」

律「?」
唯「?」

放課後────

律「こことも今日でしばらくお別れか~」

唯「だね~」

律「じゃあお茶するか!」

律「」ササッ(頭防御

律「あれ? いつもなら練習するぞ拳! が飛んでくる筈なのに」

唯「何の必殺技!」

澪「……」

唯「澪ちゃんどうしたの? ぼ~として」

澪「あ、うん…。ムギが…ちょっと心配で」

唯「ムギちゃんが?」
律「またどうして?」



17: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:27:27.06 ID:S.cgSIAO

澪「今日のムギ、何かちょっと変じゃなかったか?」

唯「そうかなぁ? 別に普通だと思ったけど」
律「どの辺りが変だと思ったんだ~?」

澪「何て言うか…悩み事があるって感じだった。ムギがそうやって私達に悩んだ顔を見せたことがあるか?」

律「そう言えばないな~」

唯「いつもニコニコぽわぽわしてるからねムギちゃん!」

澪「あんな寂しそうなムギ見たことなかった…。だから心配で」

律「じゃあムギが来たら聞いてみようぜ」

唯「直接聞くのが一番だよね!」

澪「うん……。」



20: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:57:01.62 ID:S.cgSIAO

紬「ごめんね~、掃除当番で遅くなっちゃって。今お茶入れるね」

唯「ムギちゃん!」くわっ

ムギの手を両手ですくい上げる唯。

紬「どうしたの? 急に手なんか握ったりして…(唯ちゃんの手暖かい…)」

唯「何か悩んでるなら話してよ! 私達軽音部で友達でしょ!?」

律「そうだぞムギ。水くさいぞ!」

紬「唯ちゃん…りっちゃん…」

澪「今日のムギ、何だかいつもと違ってたからさ。悩み事とかあるのかなって…。違ってたらごめん。でもそうだとしたら、話してほしい。ムギの悩みは私達の悩みでもあると思うんだ。」



22: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 00:59:03.12 ID:S.cgSIAO

紬「澪ちゃん…(家のことでみんなに心配かけちゃうなんて、友達失格だわ! みんなに頼るわけにはいかないもの…何でもないフリしないと)」

紬「ありがとうみんな。でもそんな大したことじゃないの。ちょっと作って来たお菓子の出来が悪くて…(ほんとはよく出来たと思ってたんだけど…ごめんね私のお菓子)」

澪「そんなこと気にしなくていいのに…。毎日持って来てもらってるだけで悪いと思ってるのに出来ぐらい、なぁ?」

唯「お菓子いぃ…」ぐすん

律「仕方ないさ…! ムギにだって失敗することはある! だって人間だもの!! だから泣くな唯!!」



23: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:00:07.33 ID:S.cgSIAO

澪「おい!」

唯「冗談だよぉ」
律「そうでございますわよぉ」

ゴンッ

律「何故私だけ…」シュン…

澪「というわけだから気にしなくていいぞムギ。梓だって気にしないさ」

紬「みんな…ありがとう(これからは心配かけないようにしないと…!)」フィショッ


斎藤「『喋った形跡なし、今のところは順調…ではないか。お嬢様が強くあればあるほど周りは気づかず接する…その分お嬢様は孤独になる。その隠した心を見つけてあげてください…軽音楽部の皆さん。そして気づいてくださいお嬢様…友達の意味を』」



24: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:04:18.01 ID:S.cgSIAO

梓も揃い全員でティータイム。

紬「今日はイチゴのタルトとそれに合うアップルティーにしたの」

律「これが…失敗したって?」

唯「ぱーふぇくつ…! 見事な造型だよムギちゃん!」

紬「ありがとう唯ちゃん」

梓「凄く美味しいです。イチゴが甘酸っぱくて…でも周りのクリームとタルトがそれを包んで…」

澪「これを失敗した、なんてムギはパティシエにでもなるつもりか?」

紬「いくらなんでも誉めすぎよ~澪ちゃん。」

唯「今なら私がムギちゃんを軽音部専属パティシエールに認定するよ!」

紬「ふふ、そういうことなら。認定されました♪」



26: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:10:49.60 ID:S.cgSIAO

いつも通りの部活が終わり、みんないつも通り帰路につく

ただ、私だけはそれは許されない。
私の場所は一週間どこにもない、ずっと一人。

紬「試練だから…頑張らないとっ」ムンッ

軽くこぶしを握りしめると紬は制服のままあてもなく歩き始めた。



斎藤「さすがに一日目からはないか…。ただお嬢様の感覚で一週間を普通に過ごすのは無理だろうな…。最悪本当に自分が首を落とすことになるかもしれんな」

斎藤は静かにその後を追った。



27: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:19:08.84 ID:S.cgSIAO

夕日が自分の体に辺り、影が伸びる。

紬「わぁ~」

振り返って、その綺麗に伸びた影で遊ぶ。

紬「そうだ!」

近くに公園を見つけた紬はそそくさと中に入り、お目当ての滑り台を見つけると登り始めた。

紬「うんしょ、うんしょ」

一番上まで登ると立ち上がり、下を見る。

紬「高いとこに登ると影もずっとずっと遠くまで伸びるじゃないかと思ったけど変わらないのね~影って面白いわぁ」

紬「そう言えばこうやって滑り台に登ったりするの初めてじゃないかしら? 昔から見たことはあったんだけどね」

紬「いい風……でもとても寂しいのは何でだろう。一人だからかな…」



28: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:25:19.58 ID:S.cgSIAO

紬「みんなは今何してるんだろう。唯ちゃんは憂ちゃんとご飯の準備かな? 澪ちゃんは音楽聞きながら勉強してそう」

紬「りっちゃんは弟の聡くんとゲームとか。梓ちゃんは真面目だからギターの練習。」

紬「私は…一人で滑り台の上。」

紬「ううん! 駄目だめ! まだ初日なのにこんなことじゃお父様に申し訳が立たないわ! 琴吹家の者としてやりきらないと! まずは寝床からね! ホテルに泊まれば一週間なんてすぐだわ!」

滑り台を降り、意気揚々とホテルを目指す紬。

斎藤「早速ホテルか…所持金1万でホテルに駆け込むとはさすがですお嬢様…。いよいよ自分の首が危なくなってきた」



29: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:32:55.93 ID:S.cgSIAO

従業員「いらっしゃいま…」

紬「あ、あの! 大人一枚!」

従業員「えっ…あの」

紬「一週間お願いします!」フシュンッ

鼻息荒く言いおうせる紬だったが、従業員は紬の格好を見て困った表情で話始めた。

従業員「未成年の方は保護者同伴じゃないと…」

紬「(未成年は泊まれないなんて知らなかった…。けど何としても寝床を確保しないとっ)」

紬「私は未成年じゃ(ry」

従業員「それ桜ヶ丘高の制服ですよね?」

紬「し、しまったぁ!」


斎藤「(お嬢様ァァァァァァ)」



31: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:38:35.60 ID:S.cgSIAO

──────

紬「ホテルは未成年だけじゃ泊まれないものなのね…また一つ勉強になったわ! お父様達は偉大ね…」


斎藤「(さて、どうするんですかお嬢様)」



紬「着替えは持って来てるからどこかで着替えてもう一回チャレンジよ!」フシュンッ



斎藤「(嗚呼、お嬢様がどんどんズル賢(ry じゃない賢く…!)」




32: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:48:10.87 ID:S.cgSIAO

別のホテル───

紬「(なるべく大人っぽいの選んだからバレないはず…!)」

「おい…あれどこの令嬢だ?」

「美しい…」

支配人「こんな薄汚いホテルに一輪の花が!」


斎藤「(さすが琴吹財閥のお嬢様…まるで今からパーティーに向かうような…ってなんでそんなドレス持って来たんですかお嬢様!!)」


紬「よろしくて?」

従業員「は、はいっ!」

紬「一週間、泊まりたいのだけど」

従業員「一週間、しゅ、宿泊ですね! ここにお、お名前と住所と年齢と電話番号を…」

紬「ええ。(歳はごまかして二十歳にしとこっと)」サラサラサラ

従業員「え~と、一週間になると35000円になります。先払いでお願いします!」

紬「えっ…?」


斎藤「(泊まるのは意外と高いんですよお嬢様)」



33: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 01:56:06.97 ID:S.cgSIAO

従業員「あ、あの…」

紬「(今手持ちが一万円しかないから…二日しか泊まれない…。)」

紬「あの、やっぱり二日…」

従業員「二日…に致しますか?」

紬「(待って! そうするとこの先無一文で過ごすことになるわ! ご飯とかも頼れないから買わないと…)」

紬「い、一泊でお願いするわ」

従業員「? 一泊でいいんですか? わかりました。5000円になります。こちらが鍵になりますので。333号室です」

紬「はい…」



斎藤「(初日はこれで何とかなったか…。でも明日以降どうしますか、お嬢様?)」



34: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 02:06:08.26 ID:S.cgSIAO

ホテル──────

紬「333号室…333号室…あった! ここだわ!」

鍵を入れガチャリと回し開ける。中の広さは約6畳半といったところだろうか。
部屋にはテレビ、ベッド、ポット、ドライヤーなどがあるだけで閑散としている。

紬「うんしょ…と」

担いでいる荷物を床に下ろし、ベッドに俯せなる紬。

紬「クンクン……知らない匂い。」

紬「後6日も大丈夫かしら…私…」

紬「唯ちゃん…澪ちゃん…りっちゃん…梓ちゃん…」

紬「私負けないからっ!」

紬「だから…むにゃむにゃ……」

紬「くぅ……」

対面のビル 屋上───


斎藤「お嬢様!寝る前に歯を見かがないと! お嬢様ーっ!」



35: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 02:17:51.97 ID:S.cgSIAO

────

prrr prrr

紬「ん…何かしら…」

部屋についている電話で覚醒を促された紬。虚ろながらそれを取ると、眠そうな声で「もしもし」と答えた。

従業員『おはようございます。下の食堂で朝御飯が用意されてますので、よろしかったらどうぞ』

紬「あ、ありがとうございます」

従業員『では』

ガチャリ

ぐぅ~…

紬「そう言えば昨日のお昼から何も食べてなかったわ…お腹減った」

手早く準備を整え部屋を出る。

隣の人「ふぁ~…」

紬「あっ、おはようございます! あなたも今から朝御飯ですか?」

隣の人「えっ、そうだけど」

紬「良かったら一緒に行きませんか!」

隣の人「べ、別にいいけど…」

紬「じゃあ行きましょう!(お隣さんとは仲良くしなきゃいけないんだよね! 後から何か持ってった方がいいかしら?)」



36: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 02:23:40.21 ID:S.cgSIAO

隣の人「……」

紬「」じ~

隣の人「えっと…」

紬「」じ~

隣の人「あの~」

紬「あっ、はい! 何ですか?」

隣の人「バイキングだから、ほら、そこにあるお皿で好きなやつを取ればいいんだよ」

紬「好きなやつをとっていいんですか!?」キラキラ

隣の人「そ、そりゃバイキングですから…」

紬「一人何個までですか?」

隣の人「何個でも。食べ放題のバイキングだから」

紬「食べ放題!!? そんなことしたらお店潰れちゃいませんか!?」

隣の人「みんなそんなに食べれないから…」

紬「あっ、それもですね」

隣の人「(変わった子だな…)」



37: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 02:30:29.53 ID:S.cgSIAO

紬「これが食べ放題なんて信じられないわ! 今度唯ちゃん達も連れて来ないと!」

隣の人「え~とこれ泊まった人は無料だけど普通に食べるなら結構高いんだ」

紬「そうなんですか?」

隣の人「うん。だからこのバイキング目当てのついでに泊まるって人もいるよ。ホテル側もそれが狙いだろうね」

紬「じゃあ今度唯ちゃん達と泊まりに来なきゃっ!」

隣の人「えっと、君この辺りの人なの?」

紬「はい! 桜ヶ丘町です!」

隣の人「それなら泊まらなくても直接バイキングに行った方がさすがに安いよ。というか…なんで泊まってるの?」

紬「試練です!(ここでいっぱい食べてお昼代を浮かさなきゃ!)」モグモグ

隣の人「(変わった子だな~)」



38: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 02:39:11.74 ID:S.cgSIAO

食後────

紬「隣の人もいい人だしここに泊まって良かったわぁ。夜になったらもっと安いホテル探さなきゃ! 一泊1000円ぐらいでご飯つきのホテルないかしら…」

prrr prrr

紬「またホテルの人からお電話かしら。次はデザートかな? …さっきちょっと食べ過ぎたからデザートは…。勿体無いけど断らなきゃ」

紬「もしもし。すいませんデザートは遠慮(ry」

従業員『12時にチェックアウトなのでよろしくお願いしますね』

紬「チェックアウト?」

従業員『はい。うちは12時には出てもらうような形にしてますので。よろしくお願いしますね』

ガチャリ

紬「……一泊って泊まった時間から24時間じゃないのね…」



39: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 02:47:32.64 ID:S.cgSIAO

コンコンッ

隣の人「ん? シーツの回収かな?」

隣の人「開いてますよ~」

ガチャリ

紬「あのっ…」

隣の人「えっ、あ、さっきの。どうしたの?(男の一人部屋に来るか普通…)」

紬「私…もうチェックアウトしなくちゃいけなくて…」

隣の人「そうなんだ…」

紬「だからっ! 私…!!」

隣の人「(まさかこのシチュエーションは告白とか!? いやいやまてあり得ない…こんな可愛い子が俺なんかに)」

紬「最後にどうしても渡したいものがあって…!」

隣の人「う、うん(アドレスか電話番号クルー!?)」

紬「これっ!」

隣の人「……鶴?」

紬「そう! 鶴です! 一生懸命折りました!」



40: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 02:56:02.52 ID:S.cgSIAO

隣の人「…またなんで鶴?」

紬「お隣さんには贈り物とかしなくちゃいけないって知ってるんですけど…その…渡すものがなくて」

隣の人「へ?」

紬「だからせめて気持ちを込めて折った鶴だけでも!」ググイッ

真剣な表情で鶴を押し出す紬。

隣の人「(隣の人にもの配るってそれマンションとかの話じゃ…。でもここでもらわないわけにもなぁ…)」

隣の人「わかったよ、ありがとう」

紬「喜んでもらって良かった♪」

隣の人「(暖かい子だな…)」



斎藤「しまった、寝ていた。あれ? いないっ! お嬢様!? お嬢様!!! お嬢様ァァァァァァ!」



45: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 03:11:04.33 ID:S.cgSIAO

二日目───

紬「お金は後5000円…さっきホテルを回ってみたけど…どこも5000円ぐらいするのね~。カプセルホテル?ってところが唯一安かったけど…」

紬「カプセルホテルって何のカプセルかしら?タイムカプセル?」


斎藤「(お嬢様ご無事で何よりです! カプセルホテルというの小さい筒状の部屋のことですよ!初体験の人がカプセルホテルに泊まると大体鬱になるそうですからやめておいた方がいいです!)」

紬「ご飯のことも考えないといけないし…ホテルはもう無理かしら。どこで寝よう…」ウロウロ

紬「暑いわぁ…涼めるところ…」

ピーポーン

ありがとうございました~

紬「!」キュピーン



46: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 03:18:59.60 ID:S.cgSIAO

コンビニ───

紬「りっちゃんがコンビニは避暑地だ! って言ってたのがわかるわ~。まさしくオアシスね! ここに住めればいいのに~」

紬「本でも立ち読みしましょ」

紬「(立ち読みなんて悪い子だわ私! でも生きるためだもんね!)」

コンビニ店員「(あの子可愛いな~)」


数時間後───

紬「腕が…。立ち読みって体力いるのね…」

紬「そろそろ日も落ちて涼しくなったことだし出て寝場所を…」

コンビニ店員「じ~」

紬「……」

コンビニ店員「じ~」

紬「(見られてる!? そ、そうよね…あれだけ本を読んで無断で立ち去ろうなんていけないことだわ…。何か買わなきゃ…!)」

紬「あっ、駄菓子売ってる! これにしよう」

コンビニ店員「(可愛いなぁ~和むわぁ)」



47: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 03:27:18.48 ID:S.cgSIAO

紬「美味しい♪」はむはむ


斎藤「(コンビニで三時間立ち読みとは……やりますねお嬢様)」


紬「あっ…50円も使っちゃった」

紬「後4950円で6日だから…一日825円かぁ。一食だと300円も使えないわね…」

紬「今日の夜ご飯何にしよう…。今日は朝御飯とお昼ご飯代は浮いたから夜ご飯に825円そのまま使えるけど…ううん。今日300円にして明日からの分に回しましょう。節約しなきゃ!」



斎藤「(すっかり立派になられて…ですが夜…どうなさるつもりですかお嬢様…)」



48: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 03:37:29.06 ID:S.cgSIAO

スーパー────

紬「凄いわ! パンが59円!おにぎり88円! 飲み物78円! ここは天国!?」


斎藤「(スーパーに目覚めましたねお嬢様。普段高い買い物ばかりしているとスーパーなどで安過ぎて目移りしてしまうものです)」


紬「澪ちゃんの好きな焼きそばパンもある~。30%引きで95円、これにしましょ! 後はパックの午後の紅茶250ml! 78円! しめて173円! 安過ぎてバチが当たりそう!」

憂「あれ? 紬さん?」

紬「あ、憂ちゃん。お買い物かしら?」

憂「はい。夕御飯の買い物で」

紬「そう、今日のご飯はなぁに?」

憂「お姉ちゃんが好きなハンバーグです」

紬「唯ちゃんハンバーグ大好きだもんね! 憂ちゃんのハンバーグ食べてみたいわぁ~」



49: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 03:46:51.99 ID:S.cgSIAO

斎藤「(平沢憂、危険度★★★★★ まず間違いなくお嬢様を誘うはず…不味いな)」


憂「良かったら紬さんも一緒にどうですか? お姉ちゃんも喜びます」



斎藤「(この場合聞かれてる為、うんと言った瞬間ミッション失敗…。お嬢様…っ!)」



紬「……気持ちはありがとう、憂ちゃん。でも私にはご飯あるから」

憂「ご飯って…」

憂は紬が手に持っている焼きそばパンを見て、言いづらそうに目をしばたかせてる。

紬「ごめんね憂ちゃん。でも私にはどうしてもやらなきゃ駄目なことがあるから…行けないの」

憂「紬さん…」



斎藤「(……)」ツゥ───

斎藤「(はっ! お嬢様のあまりの志しの高さに涙が……。この人なら大丈夫だろう……この先の琴吹家を担っていける。そう確信した…。任務完…じゃない。それはダミー任務だったな。本当の任務はお嬢様が軽音楽部のご友学とどのような関係であるかを主人に見せるためだった!)」



50: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 03:52:59.72 ID:S.cgSIAO

憂「わかりました。けど…ちゃんと野菜もとってくださいね」

紬「うん、わかったわ。」よしよし

憂「…///」


────

憂「じゃあ私こっちなので」

紬「えぇ。このことは唯ちゃんには内緒にしててね」

憂「はい…。」

心配しながらも言ったことは守ります、といったニュアンスのはい、だった。

憂は紬に手を振りながらゆっくり、ゆっくり帰って行った。

紬「ほんとに憂ちゃんはいい妹ね。唯ちゃんが羨ましい…。」


紬「どこに泊まろうかな…」トボトボ




斎藤「(お嬢様…)」



51: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 04:00:26.88 ID:S.cgSIAO

公園───


気づけばあの公園に来ていた。
あの時と同じ夕日で、けれどあの時とは違って私の中には色々変化があった。

紬「影は伸びないし、ホテルは一泊5000円前後、未成年だけじゃ泊まれなくて…隣の人はいい人で、バイキングは食べ放題」

紬「コンビニはオアシスで、でもちゃんとものを買わないと睨まれちゃう。スーパーに入るとわくわくして…憂ちゃんはとっても優しい」

紬「いっぱいいっぱいいろんなことを知れた……これが試練…何だかわかった気がする」

紬「寝床探さなきゃ…。学校…は入ったら怒られそう…。コンビニは寝れないし…あら?」

紬の目に飛び込んで来たのはドーム型の遊具。
小さい子供が中に入って遊んだりする遊具だ



52: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 04:08:31.31 ID:S.cgSIAO

紬「あれだわ!」

ゆっくり近づくと、腰を屈めおずおずと入って行く。

紬「中はちょっと狭いけど…寝るスペースはありそう! 今日はここにしましょう」

荷物を詰めている鞄を枕代わりにして寝てみる。

紬「足がちょっと外に出ちゃうけど寝れそう。鞄が枕にちょうどいいわぁ」

紬「風もいい具合で入って来て暑くないし。公園ってステキね~…」

紬「水道もあるから歯を磨いたり顔を洗ったりも出来るわね。お風呂は近くに銭湯があった筈だから…ご飯を切り詰めて行こう。明後日は唯ちゃん達と遊ぶ約束してるから臭いと怪しまれちゃうしね~女の子ですものね~」

もぞもぞ

紬「」モグモグ

紬「焼きそばパン…冷たい」モグモグ



53: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 04:17:01.65 ID:S.cgSIAO

夜────

紬「夜だと夏でも寒いのね…」

紬「…こうして制服をお布団代わりにしてっと…ちょっとは暖かくなったわ!」


紬「……」


ヒュ~ゥ~


紬「寂しい……」


紬「ううん…駄目駄目! こんなことでめげてちゃ! まだ二日目、まだまだ先は長いわ!」


紬「……冷たい風の中、ともえは公園のベンチで死体を見つけた」

紬「犯人はきっとあの人に違いない。そう思ったのも束の間! 後ろから来る影に気づかずともえは…!」


紬「……澪ちゃんがいたらなぁ」

ヒュ~ゥ~


紬「寝よう…」



57: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 17:45:42.93 ID:S.cgSIAO

ミーンミンミンミーン……

暑い…ここはどこだろう。

蝉の声がサウンドしてる…。
それに子供の声もする…。
まるで公園に来てるみたい。
公園? 公園……。

紬「」ガバッ

子供「うわっ生きてる!!!」
子供「沢庵ゾンビだーッ! 逃げろー!!!」
子供「きゃあ~」

紬「た、沢庵ゾンビ……」ガーン

ミーンミンミンミーン……

紬「それにしても暑いわぁ…」

ミーンミンミンミーン……

紬「そうだった…昨日は公園で寝たんだった…。」

紬「汗かいて気持ち悪い…何とかしなきゃ」



58: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 17:48:29.86 ID:S.cgSIAO

─────

紬「冷たくて気持ちいい~」

タオルを水に濡らし、それで顔などを拭く。

紬「(基地に戻って体も拭こっと!)」

餌をもらった野良猫のようにそそくさとドーム型の遊具に戻り、、、

紬「誰もいないよね…?」キョロキョロ



斎藤「(お嬢様……、……大きくなられて)」


─────

体も拭き終わり着替えも済み、さあどうしようかと思案する。

紬「またコンビニかしら…う~んでもあそこだと立ち読みしか出来ないし…。夏休みの勉強をそろそろ手をつけなきゃ。涼しくて勉強が出来てお金がいらない夢の様な場所…」


斎藤「(このままでは普通に一週間乗り切ってしまいそうだ…。お嬢様の適応能力を甘く見ていた。ここはちょっと助け船&本当のミッション内容に気づいてもらう為に…)」ピポパ

prrr prrr

紬「あら、斎藤からだわ」



59: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 17:53:29.77 ID:S.cgSIAO

紬「もしもし」

斎藤『お嬢様、お久しぶりでございます』

紬「前置きはいいわ。どうせどこかで監視してるのでしょう? 用件はなに? まだ規約は破ってないと思うのだけれど」

斎藤『はい。お嬢様は立派に『頼らずに』お過ごしになられてますね』

紬「言い方が嫌みね。何か言いたいことでもあるの?」

斎藤『お嬢様、ホテルにお泊まりになった時、あなたは泊まる対価に何をしましたか?』

紬「何を? お金を払って…それから…」

斎藤『そうです。対価にお金を払いました。それは頼る、とは違います。だから試練は継続中なわけです』

紬「何が言いたいのかしら?」



60: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:02:58.33 ID:S.cgSIAO

斎藤『お嬢様は今まで皆さんに払い続けたのではありませんか? その対価はいつ帰って来るんでしょうか?』

紬「軽音部のことを言っているなら怒るわよ?」

斎藤『お嬢様。この試練をただの一人で強く生き抜く為のものと思わないでください』

紬「どういうこと?」

斎藤『これ以上は自分で考えてください。くれぐれも誰も『頼らない』ようお願い致します。』

紬「ちょっと! 斎藤!」

斎藤『お嬢様にとって友達言うものはなんなのか、考えてみてください。後勉強をなさるなら図書館へ行ってはどうですか?』

ガチャリ、プーップー

紬「あぁもうっ! 斎藤ったらしっかり見てるし聞いてるし…。」

紬「私にとってみんなは…」

ミーンミンミンミーン……

紬「図書館行こう…」



61: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:04:27.60 ID:S.cgSIAO

図書館───

紬「涼しくて勉強が出来てお金がかからない……図書館って最高な所ね!」

紬「よいしょ、よいしょ」

紬「今日はここが閉まるまで勉強しよう!」フシュンッ

紬「」カキカキ
紬「」カキカキ
紬「」カキカキ
紬「」ぐぅ~…

紬「そう言えば朝御飯もお昼ご飯も食べてなかったわ…。となればスーパーで何か買って来なくっちゃ!」

スーパー───

紬「…おかしいわ! 昨日はこれ88円だったのに! 今日は128円…。……。……。株価かしら?」


斎藤「(そんな急に変動しませんよお嬢様!!!)」



62: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:06:40.34 ID:S.cgSIAO

図書館────

紬「夕方からじゃないと割引されないのね…知らなかったわ。お昼はおにぎりだけにして夕方安くなってからいっぱい買おっと」

紬「ご飯ご飯♪」

係員「すみません…こちらの方で飲食は禁止となってますので…。あちらの方に専用の場所があるのでそこでお願いします」

紬「ご、ごめんなさいっ」

紬「(ご飯食べるのだけでも一苦労ね…。今まで私がどれだけ恵まれていたかわかって来た気がするわ…。)」

食事コーナー───

紬「気をとり直していただきます♪」

和「あ、ムギ、お茶入る?」

紬「あ、お願いしていいかしら」

和「はいどうぞ」



63: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:10:56.09 ID:S.cgSIAO

紬「」ゴクゴク…
紬「ぷはぁっ! 生き返るー」

和「何かムギ変わった?」

紬「そ、そんなことないわ! 私はいつも通りぇえぇぇ和ちゃん!?」

和「今気付いたんだ…」

────

和「で、私も朝からここで勉強してて今お昼ご飯食べるとこなのよ。家でクーラーつけっぱなしでやるよりはいいかなって思って」

紬「そうだったの~。奇遇ね」

和「あれ? ムギ、お昼それだけ?」

紬「そ、そうなの! ダイエット中なの!」

和「ダイエットねぇ。ムギはそんなことしなくても十分痩せてると思うけど」

紬「そんなことないわっ! 見えないとこにお肉が……!」



64: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:11:47.55 ID:S.cgSIAO

和「そ、そうなんだ…。まあ無理し過ぎない程度に頑張って」

紬「頑張る! 和ちゃんは凄くスラッとしてて羨ましいわぁ」

和「そんなことないわよ。私も最近ちょっと太っちゃったかなって思ってたり…」

紬「」じ~

和「な、なに?」

紬「う~ん…いつもと変わらないような…」

和「ムギと一緒で見えないところが…ってやつよ」

紬「見えないのに太っている…恐怖よね!」

和「見えないからこそどう対処していいか…乙女の悩みよね」

紬「ふふ、和ちゃんが乙女って台詞」

和「似合わないのはわかってるわよ!」



65: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:13:40.10 ID:S.cgSIAO

それから和ちゃんと勉強することになりました。

和「ムギ、ここちょっと教えてくれない?」

紬「どこどこ? あっ、そこはね! こうやって…」

和「あっ、そっか…。ありがとう、ムギ」

紬「どういたしまて♪」

和「ムギはほんと頭いいよね」

紬「和ちゃん程じゃないわよ~」

和「私文系だからどうしても理数系がね…。ムギは得意よね。」

紬「どっちかと言えばね」

和「こうやって自分が苦手なところを教え合える友達がいると捗っていいわね」

紬「友達…。」

和「…ごめん、嫌だった?」



66: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:16:59.79 ID:S.cgSIAO

紬「えっ?」

和「ムギとあんまり話したこともないのに勝手に友達だなんて言っちゃって。唯が仲がいいからつい…ね」

紬「ううん、そんなことないわ。和ちゃんは私にとっても大切な友達よ」

和「…ありがとう。何か改めて言われると照れるわね」

紬「そうだね///」

和「さて、勉強に戻ろっか」

紬「うん」

────

和「」カキカキ

紬「」カキカキ

和「」カキカキ

紬「」チラッ

和「」カキカキ

紬「」カキカキ

和「」カキカキ

紬「」チラッ

和「……(何か見られてるわね)」

紬「(友達…。私は和ちゃんのわからないところを、和ちゃんは私のわからないところを教えあってる…対価を払い合ってるから友達…。でもそれは何か違う気がする…)」



67: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:18:14.92 ID:S.cgSIAO

───

和「うーーん、もう5時ね。私はそろそろ帰るけど…」

紬「じゃあ一緒に帰りましょうか」

和「そ。じゃあ帰りましょう」

───

紬「和ちゃんの家って唯ちゃん家に近いの?」

和「まあまあね。歩いて5分ってところかしら」

紬「へぇ~!」

紬「やっぱり幼なじみだからよく遊びに行ったり来たりしたの?!」

和「それはもうね。憂と二人で来たり私が行ったり、小学校の時は毎日どちらかの家で遊んでたわ」

紬「そうなんだぁ~いいなぁ~」

和「まあ最近じゃそれもほとんどなくなったけどね」



68: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:19:42.03 ID:S.cgSIAO

紬「やっぱり私達が唯ちゃんを独占してるから…?」オソルオソル

和「う~んそれもあるけど」

紬「あるんだ……」

和「冗談よ。やっぱり私が生徒会で忙しいし、唯は唯で軽音部に入ってるんだからそうなるのは当たり前なのよ」

紬「でも…和ちゃんは寂しくない?」

和「ちょっとだけ寂しいけどね。でも唯にあなた達みたいないい友達が出来て嬉しいって気持ちの方が強いわね。唯を通して私も仲良くなれたし。」

紬「そうね。……今でも唯ちゃんが一番の友達?」

和「友達に一番とかってつけるつもりはないけど、やっぱり唯は特別かしら」



69: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:21:31.42 ID:S.cgSIAO

紬「やっぱり!?」

和「心配って意味で特別ね」

紬「ふふ、な~んだ」

紬「……。ねぇ和ちゃん。友達って何かしら?」

和「どうしたの? 急に」

紬「ここ二、三日一人でいて…ずっと考えてたの」

和「夏休み入ってから唯達と会ってないんだ? それでもう寂しくなってそんなこと考えてるの?」

紬「うぅ…」

和「そうね~…私と唯の場合支え合い、かな」

紬「支え合い…?」

和「そう。私が唯を支えて、唯も私を支えてくれる。そんな関係じゃないかな、友達って。」

紬「唯ちゃんが和ちゃんを支えて……る?」



70: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/15(日) 18:25:05.87 ID:S.cgSIAO

和「やっぱりそう思うわよね。確かに唯は見た目ああだけれど…内面とかで凄く支えられたりすることはたくさんあったわ。」

和「唯の何気ない言葉や仕草で私の心がね、凄く暖かくなるの。一緒にいて楽しくて、幸せで…唯を見てるとそんな気持ちにならない?」

紬「なるなる! 唯ちゃん空間よね!」

和「だから昔から世話焼きながらも一緒にいたのは…やっぱり私も唯に支えられてたからだと思うの」

紬「そうなんだ…」

支え合い…。

私…みんなをちゃんと支えられてるかしら…。



81: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 03:32:19.53 ID:BDzjDIAO

───

和ちゃんと別れてからずっと…これまでみんなと過ごして来た思い出を振り返っている。

紬「私は…お菓子を持って来て…」

それから何かした?

紬「何かした…? みんなを支えるようなこと…した?」

唯ちゃんは明るい雰囲気で、居るだけで場を暖かく出来る。
あの笑顔を見ただけで救われる気がして、辛い日だって勝手に慰められちゃう。
りっちゃんもそう。普段はお調子者だけど、みんなのことを誰よりも気を遣ってくれてて。
澪ちゃんや梓ちゃんは軽音部が脇にブレない為に、上手くブレーキになってる。
澪ちゃんは怖がりで恥ずかしがりだけど、軽音部の誰かが困ったりしてたら練習より優先して解決しようとしてくれる。
私のちょっとした態度にも気づいてくれてた。

なのに私は…なに?

お菓子を持って来て…
心配されて…
外から見守ってるつもりだけど…唯ちゃんみたいな明るさもなく、りっちゃんみたいな積極性もない。
澪ちゃんみたいに気づけない、梓ちゃんみたいにブレーキ役にもなれない。

私は…軽音部を、みんなを、全く支えてなんていなかったんじゃないだろうか



82: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 03:38:43.46 ID:BDzjDIAO

頭がぐらぐらするのは暑いせいだけじゃない。私は一人になって初めて気づかされたのだから。

紬「」トボトボ

友達というものは、外貨何かじゃ埋まらない。
私は何もないから、無意識に自分が、いえ、家柄が持っているそれで一生懸命埋めようとしていたんだわ。

でも、今じゃそんな家柄もない。

私はただの紬。

紬「私は…一人だったんだわ…」

みんなに囲まれて、それで勘違いして。

紬「うぅっ」

くしゃりと目の前が歪む。本当に軽音部のみんながどう思ってるかなんてわかりもしないのに。
嫌なことばかり考えて涙が止まらない。

紬「私なんて! 私なんて…!」

何もない、何も知らない自分が憎かった。



83: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 03:50:48.00 ID:BDzjDIAO

公園───

気づけば公園に来ていた。ドーム型の遊具の中で佇む。

紬「……」

今日が終われば後4日、誰も頼れない。
孤独が続く。

紬「孤独…」

この試練を乗り越えたら、何か変わるだろうか。

紬「琴吹家代々伝わると言われる試練…。」

琴吹家は昔から結構な財閥だったとお祖父様から聞かされたことがある。
お金持ちであると言うことには、世間と価値観がズレていると言うことでもある。
そんなことも聞かされた覚えがある。

紬「この試練はそれを克服する為…?」

こうして家に帰らず最低限で過ごせば、周りのことが見えてくるだろうと云うことなのだろうか。

紬「もっと周りを……」

紬「……」

紬「汗臭い…。お風呂入りたい」



84: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 03:59:32.44 ID:BDzjDIAO

カポーン

紬「ふしゅう~……」

だだっ広い風呂の真ん中で、クリーム色の髪を纏めあげた女の子が一人浸かっている。

紬「これが銭湯なのね~。私の家のお風呂よりは小さいけど、それでも大きいわぁ」

紬「それに後ろの富士山の絵が何だか心を清めてくれると言うか…」

紬「絵心よね~」

紬「こんな広いお風呂で一人貸し切りなんて贅沢だわぁ」

紬「! 私って毎日贅沢してたのね…。当たり前だと思ってた。これがズレてるってことなのかしら」

ガラガラガラ

女の子「……」

小さい女の子が入って来るのを紬は目を輝かせながら見ている。

紬「一人かしら? お母さんは一緒じゃないのかしら」

女の子「」タッタッタッタ

湯船に向かって爆走してくる女の子

紬「あ、駄目よ。湯船にはちゃんと体を洗ってから入らないと」



85: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 04:12:36.84 ID:BDzjDIAO

────

ゴシゴシ

紬「お名前は?」

リカ「リカ…」

紬「可愛いお名前ね。リカちゃんお母さんとは一緒じゃないの?」

リカ「…お母さん番台の人と話してる」

紬「番台?」

リカ「…立ってた人のとこ」

紬「あそこって番台って言うのね! 物知りね~リカちゃん」

リカ「えへへ」

紬「うふふ」

────

ガラガラガラ

リカの母親「リカ~ちゃんと入る前に体…」

ゴシゴシ

リカ「お姉ちゃんくすぐったい」

紬「ちゃんと洗わなきゃ駄目よ~」


リカの母親「すみませんわざわざ。リカ、お姉ちゃんの背中も流してあげなさい」

紬「えっ、そんな」

リカ「お姉ちゃんこっち。座って」

紬「…ん。じゃあお願いするわ」

────

斎藤「……」
番台「男湯あっちだけど……」

斎藤「……。女湯が覗ける場所を教えて(ry」
番台「あ~もしもし警察ですか?」
斎藤「ちょ、警察は! 違うんです私にはお嬢様を見守る役目が……!」



86: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 04:20:40.59 ID:BDzjDIAO

────

リカの母親「ふい~」
リカ「ふあ~」
紬「とぅい~」

リカの母親「銭湯だけよね~こうやって浸かる時変な声が出るのって」

紬「わかります~。何と言うか体の中に染み渡るというか」

リカ「」バシャバシャ

リカの母親「リカ~泳いじゃ駄目よ~。泳ぐとしても平泳ぎにしなさい。バシャバシャ言ったら紬お姉ちゃんうるさいでしょ?」

リカ「うん。」スイ~スイ~

リカの母親「それにしても珍しいわね。高校生? 肌綺麗ね~。髪も綺麗だし。ハーフ? 羨ましいわ」

紬「そんなことないですよ~」



87: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 04:26:50.02 ID:BDzjDIAO

リカの母親「あなたみたいにいい子で可愛くて綺麗な子にリカもなればいいんだけどね~なかなかのじゃじゃ馬Way To Goで」

紬「リカちゃんなら私なんかより立派な人になれますわ」

リカの母親「そのおおらかな雰囲気……そして銭湯に一人で来る心意気、完璧じゃないあなた。あ~リカのお姉ちゃんになってみない? イコール私の娘的な」

紬「ふふ、凄くなりたいけどお気持ちだけ頂いときます」

リカの母親「よ~し紬ちゃんにはお世話になったからお姉さんコーヒー牛乳奢っちゃおう!」

紬「お風呂あがりにコーヒー牛乳! 夢がまた一つ叶えられるんですね!」ぽわぽわ~



88: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 04:33:45.98 ID:BDzjDIAO

───

ゴクッゴクッゴクッ
リカの母親「」
リカ「」
紬「」

リカの母親「ぷはっ!」
リカ「ぷはー」
紬「ぷふぁー!」

リカの母親「この為に生きているって言葉が正に当てはまるわ! 一瞬ほど儚いわよね……」

紬「でもいっぱい飲みすぎるとこの気持ちは味わえませんよね!」

リカの母親「そう! よくわかってるよ紬ちゃん! 女もコーヒー牛乳も輝く時間が短いから美しいんだ!」

紬「なるほど!」

リカ「」ゴクゴク

リカの母親「あ~もうこれを味わうのも後少しなんてね~」

紬「?」

リカの母親「ああ、ここ潰して健康ランドにするんだって。風情があるから残したいらしいんだけどここの番台、私の同級生の親が倒れちゃったらしくてさ。前々から持ち上がってた健康ランドにして、お金に余裕を持たせたいんだって」

紬「そうなんですか…」

リカの母親「健康ランドと銭湯じゃあやっぱ違うよね~」

紬「……」



89: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 04:39:46.53 ID:BDzjDIAO

───

リカの母親「はい、紬お姉ちゃんにバイバイ言って」

リカ「バイバイお姉ちゃん」

紬「うん。またね、リカちゃん」

リカの母親「潰れるまでまだ1ヶ月ぐらいはあるからさ。また来なよ。今度は友達連れてさ」

紬「友達……」

リカの母親「な~にいない子みたいにしてんのさ。あんたみたいないい子にいい友達がいないわけないでしょ? あんたがそう思ってないだけでそう思ってる子はいっぱいいるんじゃない? ちゃんと周り見なよ。じゃ、またね」

リカ「」フリフリ


紬「友達……」フリフリ

夕日の中、リカとリカの母親にいつまでも手を振りながら。
自分の在り方を考えていた。


斎藤「(ご無事でしたかお嬢様! この斎藤お嬢様がのぼせたりしないか(ry)」

警官「いたぞ! こっちだ!」


斎藤



90: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 04:47:32.16 ID:BDzjDIAO

────

紬「スーパーでご飯を買って…寝やすくする為に段ボールをもらおう」

スーパーで手早く買い物を済ませ、裏の段ボールをまとめている場所に行く。

紬「すみません、この段ボールちょっとわけてもらえますか?」

店員「ん? 別にいいが。夏休みの工作かい? 偉いね~嬢ちゃん」

紬「ありがとうございます! 敷いて寝るんですよ~。段ボールって暖かいから」

店員「えっ」

紬「~♪」

店員「……没落貴族ってやつかねぇ……だから不況は嫌だ嫌だ……」

────

紬「お昼少なめにした分ちょっと買いすぎちゃったかしら。でもお腹ぺこぺこだし安い夕日に買い物しとかなきゃ勿体無いわよね」

紬「段ボールも手に入ったし。これで今日はぐっすりだわ!」



澪「あれ……ムギ? 段ボール持ってどこ行くんだろう…」



91: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 04:54:55.32 ID:BDzjDIAO

公園────

澪「何で私つけてるんだろう……でも気になるし…。公園に入ってった」


紬「──いま~♪」



澪「今ただいまって……」



紬「~♪」



澪「段ボール敷いてる……。まさかムギ……ここに住んでるのか? あれ……でもムギってお金持ちじゃなかったっけ…。あんな大きな別荘いくつも持ってたのに…」

澪「……」

澪「まさか私達がお菓子を食べ過ぎて破産!!?」ガビーン


澪「なわけないだろ! 律みたいなこと言うなよ私! ……じゃあ、家出か」

澪「でも何でこんなところで……お金持って来るの忘れたのかな…。じゃあ何で私達に頼ってくれないんだよ…ムギ」

澪「友達じゃないか…」

澪「話しかけて家に泊めてあげよう…、でもムギから話せないってことは他にも理由があるかもしれないし…そもそもムギが家出なんてしそうもないし…」

澪「こんなとこ見られてたってわかったらムギも嫌がるかもしれないしな…。明日会うからその時泊まらないか? って聞いてみよう。ムギ……」



紬「段ボールって高級ベッドに通じるものがあるのね!」



92: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:01:25.97 ID:BDzjDIAO

夜───

紬「……」

夜は嫌だわ。一人になるから嫌なことばかり考えちゃう。

紬「私はみんなのことを友達と思ってる……けど、みんなはそうじゃないのかもしれない」

でもあんなに遠くにいた和ちゃんが私を友達だって行ってくれた。
リカちゃんのお母さんも友達がいないわけないって。

紬「通じてるのかしら……この気持ちは」

今まではお菓子を持って来ることでしか表せなかった気持ち。
私は家がお金持ちだから、そうやってお金を使うことでしかみんなを喜ばせられなかった。

けど、もう違う。
私はもっともっと高いところに行くんだ。
この試練を乗り越えれば、きっと……。

紬「紬~ふぁいっお~ぉ!」



【斎藤】「(お嬢様……)」
 ↑迷彩中



93: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:06:52.74 ID:BDzjDIAO

────

紬「くぅ……くぅ……」

子供「おい、まだ寝てるぞ」
子供「倒すなら今のうちだね! がっちゃん!」
子供「バカ! 油断大敵って言葉を知らないのか! まずは奴の補給物資を断つ! 兵法の基本だ」

子供「さすががっちゃん!」

子供「よ~しあの鞄を奪うぞ!」

子供「ラジャッ」
子供「ラジャッ」

子供「慎重に慎重に……」

紬「……」

子供「へっ! 眉毛に沢庵なんてつけやがって!」

紬「がおおおおおおおお」

子供「ひいいいいいぃっ」
子供「うわっ」
子供「きゃあっ」

紬「沢庵ゾンビだぞ~食べちゃうぞ~早く立ち去りなさ~い」

子供「に、逃げろ~!」
子供「ゾンビだ~! 沢庵ゾンビだ~!」
子供「あっ! 待ってよがっちゃ~ん!」

紬「ふふ、可愛い」



94: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:16:56.07 ID:BDzjDIAO

────

紬「生き返る~。外はこんなに暑いのにどうして水道のお水は冷たいのかしら」

紬「歯も磨かないと。後は体を拭いて」


prrr prrr

紬「携帯が鳴ってる。また斎藤かしら」トテトテ

紬「もしも~し」

唯『あっムギちゃん?』

紬「唯ちゃん!」

久しぶりに聞く唯ちゃんの声……涙が出そうになっちゃう。

唯『どうしたの? もうみんなついてるよ?』

紬「ついてる…? あっ!」

そうだった…。今日はみんなでプールに行く約束してたんだった!

紬「ごめんなさい! 今からすぐに行くから!」

唯『ムギちゃんが寝坊なんて珍しいね~。近くに美味しそうなアイス屋さんがあったから、それ食べながら待ってるからゆっくりおいで』

律『早く来ないとアイス食べれないぞ~!』

澪『それぐらい待ってやれよ!』

紬「い、今すぐ行くからね!」

唯『りっちゃんのは気にしなくていいからね。じゃあまたね~』

ガチャリ…

紬「遅刻だなんて…私最低だわ。友達失格ね…」



95: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:22:33.39 ID:BDzjDIAO

駅前───

律「よぅし今日は焼くぞぉっ~!」

唯「りっちゃんやる気だねぇ!」

律「ここで焼いといて夏休みが終わった頃に…「あらん田井中さんステキー。」「田井中さん綺麗だわ~」って言われるのさっ」

唯「ハイハイ! 私も言われたいです!」

憂「お姉ちゃんは駄目!」

唯「そんなぁ…」


澪「純ちゃんも来たんだ」

純「はいっ!」

梓「誘ったら来たいって言うから仕方なくです」

澪「そんな言い方したら駄目だぞ梓?」

梓「でも……」

純「澪さんの水着を見に来ました!」はあはあ

梓「ほら、危ないですし」

澪「あぁ……うん。何となくわかった」



96: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:28:50.83 ID:BDzjDIAO

────

梓「ムギ先輩遅いですね」ペロペロ

律「だな~珍しいこともあるもんだ」ペロペロ

唯「アイスうまぁ」ペロペロ

純「澪先輩ミント味いります!?」

澪「あ、うん。じゃあちょっともらおうかな」

純「(私の唾液のついたアイスを澪先輩が……ああああっ)」

梓「不純」

純「なにさっ!」

憂「……(紬さん…何かあったのかな)」

律「早くこの身を業火で焼きたいと言うのにっ! ムギはまだ…」



紬「ごめんなさ~い、待った~?」

律「遅いぞムギぃっ! 早く行かないと日焼けする時間が…」

紬「ごめんねりっちゃん」クログロ

律「って黒っ! 既に日焼けしているだとっ!」

澪「(ムギ~……)」ウルウル

紬「じゃあ行きましょうか」



97: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:34:46.92 ID:BDzjDIAO

電車内───

梓「ムギ先輩が日焼けだなんて珍しいですね。海外に行って日焼け止め塗り忘れたとか?」

紬「日焼け止め買うお金が勿体なかったの」

梓「?」

純「でもちょうど綺麗に焼けてて大人っぽいですよ」

紬「ありがとう純ちゃん」

純「あのっ、前々からお願いしたいことがありまして…いいですか?」

紬「ん? なぁに?」

純「そのブロンドウェ~な髪を触らせていただけないかなと」

紬「いいわよ。はい」

純「やったー! 前からどんなにふわふわタイムなのか触ってみた」

ガシガシ

純「かたっ!」

紬「うふふ」

純「おかしい! あんなウェーブうってる髪がそんなわけ…」

ゴワゴワ

純「ゴワゴワッ?!」

梓「純、失礼だよ」

紬「いいのよ~本当のことだから」

澪「(ムギぃぃぃ)」



98: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:41:35.22 ID:BDzjDIAO

プール───

唯「それ~りっちゃん」バシャバシャ

律「やったなぁ!? くらえっ!」バシャバシャバシャ

唯「わぁっ! 側面攻撃とは卑怯な!」

律「ごめんあそばせっ~」



梓「憂~日焼け止め塗ってくれない?」

憂「うんいいよ」

梓「日焼け体質な自分が憎いよ」

憂「うふふ」



純「澪先輩! ウォータースライダー乗りましょう!」

澪「えっ、でも怖いし…」

純「私と一緒なら大丈夫ですよ! さあっ!」

澪「う、うん……」



紬「みんな楽しそう」

一人パラソルの下でみんなを眺める紬。

紬「自然よね…。みんながお互いわかり合えてるからこそああやって……」

斎藤「ちょっと難しく考え過ぎじゃないですか? お嬢様」

紬「斎藤…」



99: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:50:05.01 ID:BDzjDIAO

斎藤「お飲みものどうぞ。今で約半分が過ぎた記念です」

紬「ありがとう。あなたってもっと真面目な人だと思ってたわ」

斎藤「真面目なつもりですけどね」

紬「プールで海パン一丁で女のコに近づく執事なんて聞いたことがないわ」

斎藤「必要とあればそうするだけですよ。私はお嬢様を監視するのが仕事ですから」

紬「そうだったわね」

紬「それでさっきの続きだけれど…」

斎藤「はい。お嬢様は物事に興味があるあまりそれを難しく考え過ぎじゃないか、と思うわけです。特に人付き合いなど」

紬「……」

斎藤「人にはいろんな人がいます。自分の有利益の為に他人に付き合う人や、何となく気付いたら付き合ってた人、中には自分より相手が大切だと云う人もいるでしょう」



100: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 05:56:48.03 ID:BDzjDIAO

紬「私は……」

斎藤「理由は人それぞれですから。それに相手と自分の思いが合致している付き合いなんてそうそうありません」

紬「そうなの…?」

斎藤「私の価値観ですからわかりかねますがね。ただ…そういうのもひっくるめて、友達って奴じゃないですかね」

紬「……」

斎藤「なろうと思うものじゃないんですよ。友達なんてものは。見てください。皆さん楽しそうにしてるじゃないですか」

斎藤「それでいいんです。楽しいのに理由なんていらないんですから」

紬「理由なんて……いらない」

斎藤「では、私はプールの監視員の仕事があるのでこの辺で」

紬「斎藤…!」

斎藤「はい」

紬「ありがとう。何だかわかった気がするわ。ここ数日で、色々と」

斎藤「さようで。ですがまだ試練は終わっていません。くれぐれも頼らないようお願いしますよ」

紬「えぇ。」



101: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 06:07:12.13 ID:BDzjDIAO

それからいっぱいいっぱい遊んだ。
みんなが笑うたび、私も嬉しくて、みんなもそうだといいなって思った。
みんなの考えてることはわからないけど、私が思ってることはわかる。
だから……。

電車内─────

くぅ……くぅ……

紬「みんな疲れたのね。憂ちゃんまで寝ちゃうなんて」

澪「だな」

対面の席には澪と律、紬の横には唯が座っているが唯と律は既に夢の中に旅立っており、律は澪に、唯は紬の肩に身を預けている状態だ。
通路を挟んで向こうの席では梓、憂、純が似たような光景を作っている。

紬「よしよし……」

唯「ん……」

澪「そうやってるとまるでママ…じゃないお母さんみたいだな」

紬「澪ちゃんもね」

律「ぐがぁ…ごぉ…」

澪「手がかかりそうな子だけどね」

紬「うふふ」



102: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 06:20:15.05 ID:BDzjDIAO

澪「……なぁ、ムギ。」

紬「なぁに澪ちゃん?」

澪「困ってることあったらさ…何でも話してよ。私、いや、私達…ずっとムギに甘えてたからさ」

紬「そんなことないわ。私なんて…」

澪「ううん。色々なことでムギにはお世話になったし、実際ムギがいなかったら今ある楽しい思い出がいくつ減ってたことか。だからさ…ちょっとでも恩返ししたいんだ」

紬「澪ちゃん…。ありがとう。その気持ちだけで嬉しいわ」

澪「ムギ……話して、くれないんだな」

紬「?」

次は~桜ヶ丘~桜ヶ丘~。
お降りの際は走らずにGO GO MANIACじゃなくてGO GO yukkuriを心掛けてください

唯「ふぇ?」

紬「ほら唯ちゃん。起きて、ついたわよ。みんなも起きて~」

澪「ムギ……」



103: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 06:31:34.34 ID:BDzjDIAO

駅前───

純「ふあ~よく寝た」

憂「楽しかったねお姉ちゃん」

唯「うん! でもお腹空いた~」

憂「帰ってすぐご飯作るから待っててね(紬さんも元気出たみたいだし、良かったぁ)」

梓「日焼けしなくてよかった…」

律「日焼けしなかった…。よーし明日は海なーっ!」

澪「ちょっとは勉、強、しろ」

ゴンッ

律「あいたぁっ」

紬「うふふ」

澪「……」

律「さ~て解散するか。私と澪とムギはこっちだから」

唯「私と憂とあずにゃんはこっちだね~」

純「私だけ一人なんて~! 死んじゃうううう」

梓「はいはい」

紬「私も今日はこっちなの。だから純ちゃん一緒に帰りましょう」

純「本当ですか!? やった!」

梓「良かったね、純」

律「今日は? ん?」

澪「(あの公園の方…今日もやっぱり…)」

紬「じゃあね、みんな」
唯「バイバイムギちゃん純ちゃん!」

純「唯先輩澪先輩律先輩に憂さよ~なら~」
梓「わ、私は!?」

純「全く梓ったら寂しがりなんだから。」

梓「ち、ちがう! そういう意味で言ったわけじゃ…」



104: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 06:43:12.80 ID:BDzjDIAO

純「じゃあね梓」ニコッ

梓「ふんっだ」

純「じゃあ行きましょうムギ先輩!」

紬「ええ」


澪「……の?」

律「ん? ど~した~澪」

澪「私達はそんなに頼りないの? ムギッ!」



紬「えっ…」

少し遠くに離れた紬にもはっきり聞こえるような大声が響いた。

律「澪?」

唯「ふぇ?」

事態がわかっていない他のメンバーはただ不思議がるしかなかった。

紬「澪ちゃん?」

澪「どうして頼ってくれないんだよ…。あんなところで寝泊まりする方がいいって言うのか…?」

紬「!? 知ってたんだ…」

澪「うん…。昨日たまたま見ちゃって…。家の人と何かあったのかなって……。本当は昨日声かけて泊めてあげようとしたけどムギから話してくれの待った方がいいかなって。ムギもあんなところ見られたって思ったら素直に応じてくれないかもだし…」

紬「澪ちゃん…」

律「澪、ムギ、説明してくれよ」

律が先程とは打って変わって真剣な表情になったことで、どれだけ心配してるかと言うことがわかる。

紬「(ここで話さなかったら余計心配かけちゃうわよね…。試練は頼っちゃ駄目だけど内容を話すなとは言われてないし…それにりっちゃんのこんな顔みたら話さないわけにいかないわよね)」

紬は「うん…」と小さく頷いた後、話始めた。



105: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 06:49:43.91 ID:BDzjDIAO

────

澪「そんなことが…」

律「金持ちってやつは何考えてんだか…」

唯「ムギちゃん大変だったんだねぇ……」うぅっ

憂「だからあの時焼きそばパンだけだったんですね……」

梓「それでこの日焼け……」

純「通りで髪がゴワゴワなわけだ……」

全てに合点がいった一同だが、だからと言って状況は変わらない。

紬「そういうことだから…後4日はあそこで寝泊まりしないといけないの」

唯「ダメダメッ! そんなことしてたらムギちゃんが野犬に襲われちゃう!」

律「それに変質者とかが嗅ぎ付けて…」

澪「そうだぞムギ! 私は許さないからなそんなこと!」

梓「そうです! 先輩が公園で寝泊まりしてるなんて知っててほっとけないですよ!」

憂「是非家に泊まってください!」

純「あずにゃん二号お貸しします!」



106: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 06:57:32.21 ID:BDzjDIAO

紬「みんな……ありがとう。でもね……誰も頼っちゃ駄目なの。だから……ね?」

唯「そんなぁ…」

律「頼るなってことは差し入れとかも駄目なのか?」

紬「多分…」

律「たぁ~! 今からムギの家に乗り込んで頭の堅い親父を退治しに」

澪「やめろ律。ムギに迷惑がかかるだろ」

律「けどぉ…。後4日も公園でムギが一人で寝てるなんて…私には耐えられない…!」

澪「その気持ちはみんな一緒だと思う。けど…もし約束を破ったらムギは勘当されちゃうんだ。もしそうなったらその先のこと…律は責任取れるのか?」

律「~ッ! でも! …納得いかないよ…」


純「落としたふりをして渡すっていう作戦はどうかな!?」

憂「それいいかも!」

梓「ムギ先輩にはちょっと失礼だけど…それなら落としたって言い訳も出来るしね」



107: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 07:06:15.59 ID:BDzjDIAO

紬「みんな気持ちは嬉しいけど…。」

律「駄目なのか?」

紬「これは私の家の問題だから……みんなを巻き込みたくないの。わかって」

澪「ムギ……」

紬「じゃあ、帰りましょう。純ちゃん」

純「えぇっ。でも……」

紬「ね?」

純「はい……。あずにゃん二号持って行きますから…寂しくないように」

紬「ありがとう純ちゃん」

二人が徐々に遠ざかって行く。

それをただ見送ることしか出来ない。

律「クソッ…なんでだよ…」

澪「律…。」

律「ムギにはいっぱいいっぱいもらってるものあるのに…こんな時に返せないなんて……何の為の友達だよ…!」

澪「……」

梓「律先輩…」

全員が意気消沈な中、たった一人だけは諦めきれずにいた。


唯「…やだよ。こんなの、駄目だよ…!」タッタッタッ

憂「お姉ちゃん!?」



108: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 07:16:49.79 ID:BDzjDIAO

唯「ムギちゃん!!」

紬「唯ちゃ」

唯「」ぎゅっ

純「わあ~ぉ」

紬「どうしたの?」

唯「家の問題だから巻き込みたくないなんて…言わないで」

紬「えっ」

唯「一人で大丈夫みたいな顔しないでよ……グスッ」

紬「唯ちゃん……」

唯「ムギちゃんが……ずっと一人で寂しく寝てるなんて考えたら私……わたしぃ……」

紬の胸に顔を押し付けて泣く唯。紬はそれを優しく撫でることしか出来なかった。

唯「だからね……私の家に泊まって?」

紬「唯ちゃん…それは…」

唯「ううん…。4日だけじゃなくて…ずっと……ずっと一緒に暮らそう」

紬「……」

唯「もし本当に追い出されちゃっても……私と憂と…たまに帰って来るお父さんとお母さんと暮らすの」ニコッ

紬「ゆ…いちゃん…」

唯が、本当にそうなったとしても。
紬を家族として受け入れる覚悟で言っている。そして、それほど紬を後4日も一人で公園に寝泊まりさせたくないことがわかった瞬間。

紬「うぅ…うぁ…ゆいちゃ…ん……ゆいちゃん……」ぎゅっ

紬は泣きながら唯を抱き締めた。



109: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 07:25:31.80 ID:BDzjDIAO

律「唯だけにいい格好させないからな!」

澪「そうだぞ、唯。私達だって同じぐらいの気持ちなんだから」

紬「りっちゃん…澪ちゃん…」

梓「私もです。ムギ先輩」

憂「ムギお姉ちゃん♪」

紬「梓ちゃん…憂ちゃん…」

純「えっ、えと! あずにゃん二号を…」

梓「それさっきも言ったじゃない。というか本当にあずにゃん二号ってつけたの?」

純「梓がつけたんでしょーが!」

梓「そうだけどさ…」

紬「うふふ…ありがとう純ちゃん」

唯「だから今日は私の家にお泊まりだよ! ムギちゃん!」

紬「本当にいいの?」

唯「いいよぉ~ねっ憂!」

憂「うん、お姉ちゃん♪」

紬「……じゃあお願いして」

唯「おっと待ったぁ!」

紬「?」

唯「これはね、ムギちゃん。私からの『お願い』だから。ね?」

紬「……ふふ。お願いなら仕方ないわよね」

律「お願いなら仕方ない!」
澪「うんうん」



斎藤「……」



110: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 07:28:13.97 ID:BDzjDIAO

斎藤「もしもし、俺だ。あぁ……琴吹様に伝言を頼む」

















斎藤「お嬢様はいいご友学を持たれた、とな」



111: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 07:34:33.93 ID:BDzjDIAO

唯「じゃあ早速スーパーで今日の献立を決めないとね!」

憂「紬さん何か食べたいものとかありますか?」

紬「憂ちゃんに任せるわ。今私お願い出来ないし」

律「楽しそうでいいな~! いいな~!」

唯「じゃありっちゃんも来なよぉ」

律「いいの!? じゃあ今日はみんなで唯の家でお泊まりだな!」

澪「そんな大勢で押し掛けたら憂ちゃんに迷惑かかるだろ?」

憂「大丈夫ですよ。家事はなれてますし寝るところもお父さん達の部屋使えば」

梓「私も手伝うね、憂」

憂「ありがとう梓ちゃん」

澪「明日は私の家に泊まってね、ムギ」

紬「ありがとう澪ちゃん」

梓「じゃあ明後日は私の家に」

律「最後は私の家か~!? 聡も喜ぶよきっと!」


紬「みんなありがとう…ほんとに…ありがとう!」



112: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 07:42:23.63 ID:BDzjDIAO

それから日が立つのは早かった。

唯ちゃん家に泊まって、みんなで図書館に行って勉強したり。その時和ちゃんにも会って泊まりの話をしたら今度は呼んでねって言ってたから近いうちにまたお泊まり会かしら。
その次の日は澪ちゃん家に泊まって朝までベースや好きな歌手の話なんかをしたり、一緒にお風呂入ったり、りっちゃんの話したり。

その次の日は梓ちゃん家。純ちゃんが約束通りあずにゃん二号ちゃんを連れて来てくれて三人で和んだりしたの。

最後はりっちゃん家。弟の聡君は最初は気まずそうにしてたけど、三人でゲームする内に仲良くなれて良かった。
りっちゃんの胸がおっきくなってるのを再確認出来たり、笑い話で凄く盛り上がったり、昔の澪ちゃんの話とか出来て楽しかったわ。
やっぱり澪ちゃんとりっちゃんは仲良しさんね。

そして……一週間が経ちました。



113: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 07:50:54.69 ID:BDzjDIAO

紬父「久しぶりだな紬よ。(斎藤から聞いてはいたが無事で良かったあああああああパパ心配したんだぞっ!)」

紬「はい。お久しぶりですお父様」

紬父「それで? 琴吹家の試練、お前にはどう映った?(こんなことどうでもいいんだよぉぉぉぉぉぉぉ)」

紬「はい……。この一週間、色々なことがありました。自分の知識の無さを痛感し、苦しんだこともありました。また普通の人々に触れ合うことでわかることもありました。自分がどれだけ裕福で、恵まれているか……痛感しました。」

紬父「うむ。して、己のなすべき道が見つかったか?」

紬「それはまだ…わかりません。まだまだ未熟な私がお父様の事業を継いでいけるのかと不安になります。けど……」

紬父「けど?」

紬「大切なものは、見つかりました」

紬父「……大切なもの?」



114: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 07:58:34.51 ID:BDzjDIAO

紬「はい」

紬父「それは途中でお前が頼った友のことか?」

紬「お父様には…そう映ったのかもしれません」

紬父「たわけが。琴吹が他人に頼るなどあってはならん。」

紬「お父様はそうかもしれません。でも私は違います。」

紬父「この父に歯向かうのか? 紬(反抗期だめぇぇぇぇ)」

紬「そんなつもりはありません、ただ…頼ると言うことは、頼られることでもあるんです。私はそれを知りました」

紬父「ほう」

紬「友達というものは支えあってるんです! 貸したり、返したり、心配したり…されたり…頼ったり、頼られたり」

紬父「もうよい。試練の内容がどうであれお前を勘当する気などない。頼ったという事実をもっと深く受け止め、琴吹家の人間として…」

「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!」

紬父「!?」



115: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 08:06:52.23 ID:BDzjDIAO

律「ムギの友達1号見参っ!」

唯「同じく1号見参!」

澪「同じく1号…」

梓「同じく1号見参ですっ!」

斎藤「(みんな1号譲りたくなかったんですね…)」

紬父「斎藤、どういうつもりだ?」

斎藤「報告書は出したと思うのですが? それでもまだ琴吹様が納得しないようなので」

紬父「余計な真似を…」

律「バカ親父! あんたらが考えた変な試練やらなんやらでムギがどれだけ辛かったかわかってるのか!」

唯「そうだー!」

澪「頼ることがそんなにいけないことなんでしょうか…? 友達として悩んでいるなら頼ってほしいって思うこっちの気持ちは無視するのが琴吹家の考えなんですか?」

唯「そうだー!」

梓「ムギ先輩にはたくさん色々なものをもらいました。大切な合宿の思い出、美味しいお菓子…だからいっぱいいっぱいお返ししないと駄目なんです! それを頼れないからってなし崩しなんかにさせませんっ!」

唯「そうだー!」

梓「唯先輩も言ってやってくださいっ」

唯「う、うんっ」



116: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 08:12:06.13 ID:BDzjDIAO

唯「ムギちゃんが悲しいと、私も悲しい。ムギちゃんが嬉しいと、私も嬉しいんです。だからもっとムギちゃんには私達を頼って欲しい。もっともっと甘えていいんだよ、ムギちゃん。自分だけはそんなことしちゃいけないなんて思わないで!」

紬「唯ちゃん……」

唯「そうやってみんなで手を取り合えるのが友達だと思います!ムギちゃんパパ!」

紬父「……」

斎藤「答えは…もう出ているんじゃないんですか?」

紬父「……」

紬「お父様、これが私の……」

紬「私の友達」

紬「そして私が出した試練の答えでもあります。認めてくださいませんか…?」

紬父「……紬よ」

紬「はい…」





紬父「良い…友を持ったな」



117: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 08:18:43.77 ID:BDzjDIAO

紬「はいっ…! ありがとう…お父さん…!」

唯「やったねぇ!! ムギちゃん!!」

律「やったな! ムギ」

澪「良かったな、ムギ」

梓「やりましたね! ムギ先輩!」

紬「うんっ!」



斎藤「だから言ったでしょう? いいご友学だと」

紬父「ふんっ。あれでは毎日お菓子を持って行くわけだ。並の返しじゃ足りんよ…あんないい友達には」

斎藤「そんな物々的に考える必要なんてなかったんですよ。あの5人はそんなことしなくても…友達なんですから。お菓子はただ持って行くとみんなが喜ぶから、それだけに過ぎないんです」

紬父「ふん…。まあ…紬がいいならそれでいい」

斎藤「親バカですね」

紬父「うるさいわっ」



118: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 2010/08/16(月) 08:24:02.28 ID:BDzjDIAO

難しく考える必要なんてない。

友達が友達でいるのに、理由も物もいらない。

ただ友達が喜ぶ為に…何かをしたい

それだけでいいの


唯「ムギちゃん! 美味しいな匂いがするよ!」

紬「多分パティシエの人がお菓子を作ってるんだと思うわぁ。ちょっとわけてもらいに行きましょう」

律「イエッスパティシエール!」

澪「律~あんまりがっつくなよ~?」

梓「そうですよ、はしたない」

律「なんだとぉっ」


紬「こっちよ~」


そしてこれが、

大切な大切な

私の友達



お し ま い


元スレ
SS速報VIP:紬「私の友達」