3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:03:34.43 ID:DhM4up220
むかしむかし。
と言ってもそこまで昔でもない、江戸時代くらいの話。
日本のどこか。
季節は冬。
あるところに女の子2人で経営しているうどん屋がありました。
でもそのうどん屋はまったく繁盛しなく、今にも潰れてしまいそうでした。
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:06:17.98 ID:DhM4up220
~第一篇~
――――
律「はあ……今日はお客さん一人も来なかったな……」
澪「ここ一月はまともにお客さん来てないからな……」
律「私と澪がこのうどん屋をはじめてからもう結構経つけど、流行ったことなんて一度もなかった……」
澪「そうだな……」
律「そろそろ生活も限界になってきた……」
律「お金がないと新しいダシの研究すらできないよ……」
澪「……」
律「もう店を閉めて別の仕事を探すしかないのかな……」
澪「律……」
律「ごめんな……澪」
澪「え?」
律「こんな私についてきてくれて」
澪「何言ってんだよ」
澪「私達、幼馴染だろ」
律「うん……」
澪「それにうどん屋で成功するのは律の夢なんだろ?」
澪「こんな所であきらめちゃだめだぞ」
律「澪……」
律「ありがとう……」
ドンドン!ドンドン!
さわ子「開けんかい!ゴルァ!」
澪「ひいっ!?」
律「まずい!お役人が来た!」
さわ子「居るのは分かってんじゃい!税滞納してんだよ!」ドンドン
さわ子「早く払え!」ドンドン
律「音立てちゃだめだぞ」ヒソヒソ
澪「……」ブルブル
さわ子「ちっ、また来るからな!」
さわ子「税を払えなかったらSATSUGAIするぞ!」
律「……」
澪「……」ブルブル
律「澪、もう行ったみたいだぞ」
澪「……うん」
律「はあ……税か……」
律「もう税を払う余裕なんてないよ……」
澪「……」
律「私達はこれからどうすればいいんだ……」
――翌朝
律「ふぁぁ……よく寝た」
澪「zzz」
律「今朝は冷えるな」
律「雨戸を開けよう」
ガッ、ガッ
律「ん?開かないぞ」
律「お役人が叩きまくるから建てつけが悪くなったんだな……」
律「よし」
律「ふんっ!」ガラガラ
律「よし、開いた」
律「うお、雪積もってんじゃん」
律「……」
律「はあ……」
律「今日もお客さんは来ないのかな……」
律「……」
律「……ん?」
律「あれは……」
律「!」
律「女の人が道に倒れてる!」
律「大変だ!」タタタ
律「おい!大丈夫か!?」ユサユサ
女「うぅ……」
律「よかった、生きてる」
律「家の中へ運ぼう!」
――うどん屋
律「澪!おい澪!」
澪「ん……」
律「起きろ!」
澪「なんだよ、朝っぱらから……」ウトウト
律「道に人が倒れてて、ここまで運んで来たんだ!」
澪「え?人が!?」ガバッ
律「体が冷たいんだ!とにかく暖めよう!」
澪「わ、分かった!」
――――
律「よし、これで大丈夫……なはず」
澪「そうだな……」
律「それにしても驚いたなー」
律「雨戸開けたら向こうに人が倒れてるんだもんな」
澪「でもなんでこんなところに?」
律「う~ん……」
律「本人に聞くしかないな」
澪「そうだな」
澪「目を覚ますといいけど……」
律「うん……」
女「うぅ……」
澪「あ!」
律「お!目を覚ましたか!?」
女「ここは……?」
澪「うどん屋……まあ私達の家だ」
女「私はどうして……」
律「道に倒れてたんだ」
律「慌てて運んだよ」
女「そうだったんだ……ありがとう」
律「いいってことよ!」
澪「私は澪だよ」
律「私は律」
女「じゃありっちゃんと澪ちゃんだね」
律(いきなりりっちゃんかよ)
澪「名前は?」
唯「唯だよー」
律「唯か」
律「唯はどこから来たんだ?」
唯「えっとねえ」
澪「うん」
唯「……」
澪「……」
律「ん?どうした?」
唯「あれ?」
律「?」
唯「お、思い出せない……」
澪「え……思い出せないって……」
唯「ここに来る前のことが思い出せない……」
律「え!?」
唯は雪が降る中、行き倒れになり衰弱していた。
律達に助けられたが、後遺症で記憶の一部を失っていた。
律「唯……記憶が……」
唯「私……」
律「……」
澪「……」
律「と、とりあえず今はゆっくり休め」
澪「そうだな」
澪「まだ完全に回復したわけじゃないだろう」
唯「うん……」
――夜
律「今日もお客さん来なかったな……」
澪「……」
律「……」
澪「なあ律」
律「ん?」
澪「その……唯はどうするんだ?」
律「どうするって?」
澪「唯は私達に会う以前の記憶がないだろ?」
律「うん」
澪「だから帰るべき場所も分からないんだと思う」
澪「それが分かるまで面倒をみる人が必要だと思うんだ」
律「まあ……当然のことだな」
律「でも私達の家では面倒を見れるだけの余裕なんてないよ……」
澪「2人ですら限界に近いからな……」
律「……」
澪「……」
律「とりあえず数日様子を見てみよう」
律「もしかしたら何か思い出すかもしれない」
澪「そうだな」
――――
唯「りっちゃん」
律「んー?」
唯「私お腹空いちゃった」テヘヘ
律「そっかー」
律「よし、まってろ」
律「うどんを作ってやる」
唯「わーい!」
澪「昨日もい言ったけど、家はうどん屋なんだ」
澪「全く繁盛しないけど……」
律「うどんおまち!」ドンッ
唯「はやっ!?」
律「うちは速いだけがとりえだからな」
唯「いただきまーす!」
唯「……」ズルズル
唯(微妙かも……)
唯(味も薄い……)
律(うわっ……微妙そうな顔……)
澪「ところで唯はこれからどうするんだ?」
律「どこか行くあてとかはあるのか?」
唯「それがね……やっぱり何も思い出せないんだ……」
澪「そうか……」
唯「あのっ……ここに置いてもらうのはだめかな……?」
唯「お店の手伝いとかもするから……」
律「唯……私達もここに置いてやりたいのはやまやまなんだが……」
澪「私達2人だけでも生活は限界なんだ……」
唯「そうだよね……」
澪「ごめん……」
律「まあ、まだ元気になってないんだから今は休め」
唯「うん……」
律「よし!」
律「今日は久々に風呂でも沸かすか!」
――風呂場
律「風呂沸かすのなんて何カ月ぶりだろう」
律「いつも垢すって水浴びるだけだもんな」
律「薪代だってばかにならないからなー」
律「ふー!ふー!」
律「よし、こんなもんだろ」
律「おーい、唯ー」
唯「なあにー?」
律「先風呂入っていいぞー」
唯「え?いいの?」
律「大事な客人だからな」
唯「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」
律「ごゆくっり~」
――唯入浴中
唯「はあ……」
唯「私はこれからどうすればいいんだろう……」
唯「……」
唯「て言うかお湯がすっごい熱い……」
唯「グツグツいってるし……」
唯「もう上がろうかな……」
唯「……」
唯「でもせっかく沸かしてくれたんだからもう少し入ろう……」
――――
唯「も、もう限界……」ザバア
唯「ふう……」
唯「りっちゃ~ん、上がったよー」
律「お、そうか」
唯「いいお湯だったよ~」
唯(すっごい熱かったことは言わないでおこう……)
律「じゃあ私もはいってこよーっと」
唯「う、うん」
律「お風呂ーお風呂ーっと」
唯「ふう……」
――――
律「よし、入るか」
律「よいしょ」ピチャ
律「あつ!?」
律「うおお……」
律「すげえ熱いじゃん……」
律「唯よくこんなのに入れたな……」
律「……」
律「……ん?」
律「この臭いは……?」クンクン
律「……まさか」
律「……」スッ
律「……」ゴクゴク
律は唯が入った後の熱湯を飲んでみた
律「なん……だと……?」
――――
律「おい!澪!」
澪「どうした?そんなに慌てて」
澪「風呂はもう入ったのか?」
律「そんなことよりこれを食べてみてくれ!」
澪「食べろって……これうどんだろ?」
澪「うどんなんて毎日飽きる位食べてるだろ」
律「いいから食ってみろ!」
澪「わかったわかった」
澪「……」ズルズル
澪「……!」
律「ど、どうだ?」
澪「すごくおいしい……」
律「だろ!?」
澪「どうしたんだ?これ」
律「ダ、ダシを変えてみたんだ」
澪「へえ」
澪「何でダシをとったんだ?」
律「あ、あの……」
澪「ん?」
律「その……ゆ……」
澪「え?」
律「ゆ、唯で……」
澪「……え?」
律「だから唯で……」
澪「……ん?」
律「唯の入った後のお湯をそのまま使って……」
澪「へ、へえ~……」
律「で、でもおいしかっただろ?」
澪「まあ……そうだな」
律「そこでな……これを店に出してみようと思うんだ」
澪「ええ!?」
律「こんなに美味しいんだぞ?」
律「絶対繁盛する!」
澪「……そうだな」
澪「期待はできそうだ」
律「よし!」
――翌日
律「……」
律「客こねー……」
律「もともと客来ないから味を広めようがない……」
律「……あ!」
律「おーい!そこのお譲ちゃーん!」
純「え?私?」
律「そうそう!」
律「ちょっとこっち来て!」
純(げっ、あんまり美味しくないうどん屋じゃん……)
律「ちょっとこれ食べてみて!」
純「でもお金もってないですよ」
律「お金はいらないから!」
純「タ、タダならいただきます」
純(前にここのうどん食べた時は微妙だったからなあ……)ズルズル
純「……!」
律「どうだ!?」
純「すごく……おいしいです……」
律「ほんとか!?」
純「は、はい!」
律「そっかー!よかったあー」
純(ほんとに美味しい……)
律「そこでタダの代わりに頼みがあるんだけど」
純「頼み?」
律「このうどんのことを町の人達に宣伝してきて欲しいんだ」
純「……分かりました!」
律「ほんとか!?」
純「はい!」
律「じゃあよろしく!」
――――
律「ふふっ」
律「後は客を待つだけだ」ニヤニヤ
唯「りっちゃん、なんでニヤニヤしてるの~?」
律「これからいいことがあるかもしれないんだ」
唯「ふーん」
澪(ほんとに大丈夫かな……)
律「早く来ないかな~」
客A「ごめんよ~」
律「お!来たか!?」
律「らっしゃい!」
澪「いらっしゃいませ」
客A「なんかここのうどんが美味しいって聞いたからきてみたんだけど」
律(よし!あの子ちゃんと宣伝してくれたんだな)
律「そりゃあもう!」
客A「じゃあうどんを一杯もらおうか」
律「はいよ!」
澪(久々のお客さんだなあ)
律「へいおまち!」ドン
客A「はやっ!?」
律「速さがうちの売りだからな!」
客A「そ、それじゃあいただきます」
律「……」ワクワク
澪「……」ドキドキ
客A「……」ズルズル
客A「……!」
客A「うまい!」
律「ほんとか!?」
澪「おお!」
客A「ああ、こりゃたまげた」
律「よっしゃあ!」
客A「これはみんなに教えてやらないと!」
――――
その後、律達のうどん屋の噂は広った。
客足も少しずつ増えていった。
律「うどんおまち!」
客B「ほんとにおいしいなあ」ズルズル
純「こんにちはー」
律「おお!あの時の!」
純「お客さんいっぱいですね~」
律「へへ!君のおかげだ」
律「えーと……」
純「私は純です」
律「純ちゃんか!」
律「よろしくな!」
純「はい!」
純「と言うことでうどんください!」
律「はいよ!」
唯「お客さんいっぱいだねー」
澪「そうだな」
――夜
律「見ろ!今日の売り上げだ!」
澪「すごい……」
律「これも唯のおかげだな!」
澪「うん、それもいいけど……」
律「ん?」
澪「唯はこれからどうするんだ?」
律「ここに居てもらおう」
律「行くあてもないようだし」
澪「そう……だな」
澪「……」
澪「でも唯にはほんとのこと話しておいた方がいいんじゃないか?」
律「う~ん……」
律「やっぱりそうか……?」
澪「うん」
律「……わかった」
律「話してみよう」
――――
唯「りっちゃん!」
唯「最近お客さん多いね!」
律「そうだな」
澪「あのな……唯」
唯「なにー?」
律「ちょっと話があるんだ」
唯「え?私に?」
澪「そうだ」
律「実はな……」
律と澪は真実を唯に話した
――――
律「……ということなんだ」
唯「……」
律「すまん……」
澪(唯、怒ってるな……)
澪(まあ本当の意味で自分をダシにされたんだから当然か……)
唯「りっちゃん……」プルプル
律「はい……」
澪「唯……」
唯「すごいね!」
律「え?」
澪「え?」
唯「すごい!すごいよ私!」キラキラ
澪(お、怒ってない……?)
澪(むしろ輝いてる……)
唯「そうかあ、私にそんな能力があったのかあ」
律「唯、怒らないのか?」
唯「え?なんで?」
律「ま、まあ気にしないでくれ」
唯「?」
律「それでだな……唯にはこのうどん屋に居て欲しいんだ」
唯「え!?」
澪「なんか利用するみたいで悪いんだけど……」
唯「ここにいていいの!?」
律「ああ!」
唯「ありがとう!」
――――
こうして律、澪、唯の3人での新生活とも言うべきものが始まった。
最初唯がうどん屋にいる理由はダシのためであったが、共に暮らしていくうちに家族のような絆が生まれていった。
店も噂が広まり客も増え、繁盛していた。
律もうどん屋としての腕をあげていったのである。
しかしその一方で唯の記憶は戻っていないのであった……
――――
客C「うどんくれ」
律「へいお待ち!」
客C「はやっ!?」
客E「うまいな~」ズルズル
さわ子「私にもうどんちょうだい」
律「げっ……お役人……」
さわ子「なによ」ギロ
律「な、なんでもないです」フルフル
さわ子「まったく……さっさと税払いなさいよ」
律「すみません……」
客E「ぐへへ、澪ちゃ~ん」サワ
澪「ひゃう!?」
客Eの妻「なにやってんだよ!」バキッ
客E「いってえ!?殴るこたあねえだろ!」
客Eの妻「黙って食ってな!」
唯「ひゃう!?だって~」
唯「澪ちゃん可愛い!」
澪「うう……」
唯「ねえ、もう一回言って!」
澪「ば、ばか……!」
唯「ちぇ~」
客F「唯ちゃん……ハアハア……」
純「うまい!」テッテレー
律「大盛況だー!」
――閉店後
律「いや~、今日も大盛況だったな!」
唯「もうクタクタ~」
澪「唯も頑張って手伝ったからな」
唯「うん!」
律「はあ~、私も疲れた」
澪「じゃあご飯にするか」
律「そうだな」
唯「わーい!」
――食事中
唯「そういえばさぁ」
澪「どうした?」
唯「私、この辺の土地のこと全然知らないな~って」
律「そうだな……よし!私が教えてやる!」
唯「教えて!りっちゃん先生!」
律「この辺の土地はな、琴吹氏って言う一族が治めてるんだ」
唯「へ~」
律「町の向こうにお城があるだろ?」
唯「うん」
律「あれが琴吹城だ」
唯「そうなんだ~」
律「琴吹氏はな、代々琴の名手が多い家系なんだ」
律「それが名字の由来にもなってるらしい」
澪「琴吹氏の当主の娘も琴の演奏はかなりの腕らしい」
澪「しかも私達と同年代らしいんだ」
唯「へえ~、りっちゃんって物知りなんだね!」
律「そうだぞ~」
唯「楽器が上手いなんて素敵だね~」
澪「実は私達も楽器をやっていたんだ」
唯「そうなの!?」
律「ああ、前な……」
律「生活苦しくなって最近遠ざかってたけど」
唯「どんな楽器をやってたの?」
澪「私は琵琶を」
律「私は太鼓だ」
唯「すごい!私も楽器やってみたい!」
澪「そうだな~」
澪「唯は三味線なんかいいんじゃないか?」
唯「え?三味線?」
律「お~、唯なら似合いそうだな~」
唯「三味線……」
律「ん?どうした?」
唯「う、ううん」
唯「何でもないよ」
律「ん?そうか」
唯(三味線かあ……なんかひっかかるなあ……)
律「しっかし家の中なのに寒いな~」
澪「そうだな、隙間風のせいだな」
唯「そういえば、この家結構古そうだね」
澪「空き家だったのを私達が買い取ったんだ」
律「ボロいから激安だったぜ」
唯「へ~」
律「隙間風は多いし、水を汲む井戸は遠いし……」
澪「修理してもすぐ別のとこが壊れてたよ」
唯「りっちゃん……結構苦労してきたんだね……」
律「そうだぞ~」
律「よし!うどん屋がもっと繁盛してきたら大きい家を建てて、店も大きくしよう!」
唯「おー!」
律「なっ、澪!」
澪「え……」
澪「私は……今のままでいいかな……」
律「えー、なんで?」
澪「私は……この家が好きだから……」
律「いや!夢は大きく持たないと!」
唯「そうだよ!澪ちゃん!」
澪「そうかな……?」
律「そうなの!」
――ある日の道
女の子「はあ……お腹空いた……」テクテク
女の子「お城まではまだ結構距離あるなー」テクテク
女の子「……」テクテク
女の子「あ、うどん屋さんがある」
女の子「……」
女の子「この町に美味しいうどん屋があるって聞いたけど、ここの事かなあ」
女の子「……」グウ~
女の子「食べてこ……」
女の子「……」ガラガラ
律「らっしゃい!」
女の子「うどんください」
律「はいよ!」
客G「おい、あれって……」ヒソヒソ
客H「ああ、そうだよな……」ヒソヒソ
女の子「……」
律(なんか客がヒソヒソしてんな)
律(よーし)
律「なにヒソヒソしてんのー?」
客G「おわ!?」
客H「驚かすなよ!」
律「ごめんごめん」
律「で?何?」
客G「ああ、それがな……」
客H「あそこに三味線背負ってる女の子いるだろ?」
律「ん?ああ、さっき入ってきた子か」
客G「あいつは多分、中野梓だぜ」
律「中野梓?」
客H「知らないのか?」
客H「三味線中野流の当主の娘だよ」
律「ええ!?中野流当主の娘!?」
律「どうしてうちの店に……」
律「……」
梓(うどんまだかな)グウ~
律「あ、そうだ」
律「いい機会だから唯に三味線見せてやろう」
律「お~い、唯」
唯「なあに~?」
律「いや、この前話した三味線を見せてやろうと思ってな」
唯「え、三味線……!?」
律「ああ」
律「あそこに座ってる女の子がいるだろ?」
唯「う、うん」
律「あの子が背負ってるのが三味線だ」
唯「……」
澪「どうしたんだ?」
律「ん、ああ」
律「あの女の子、三味線中野流の当主の娘なんだって」
澪「ええ!?」
澪「有名人じゃないか!」
唯「……」スタスタ
律「あ、唯」
唯「ねえねえ」
梓「え、あ……私ですか?」
唯「うん」
梓「何ですか?」
唯「ちょっと外に行こう」
梓「え?」
梓「でもまだうどん食べてない……」
唯「いいからいいから」
梓「あ……」
律「あ、なんか唯が外に連れていったぞ」
澪「私達も行ってみよう」
――店の外
梓(私なんかしたかなあ……)
律「唯~、どうしたんだ?」
唯「ねえ、ちょっとそれ貸してくれない?」
梓「三味線ですか?」
梓「いいですけど……」スッ
唯「ありがとう」
唯「……」
律「お、似合ってる」
澪「結構様になってるな」
梓「あの……」
唯「ちょっと弾いてみていい?」
梓「あ、はい……」
梓(なんか真剣な表情になった)
律「弾き方分かるのか~?」
唯「……」
ベンベンベン、ベンベンベン
梓「!?」
律「唯……お前三味線弾けるのか!?」
澪「しかも相当うまいぞ……!」
唯「……やっぱり」
律「え?」
澪「やっぱり?」
唯「りっちゃん、澪ちゃん」
唯「私、三味線弾いたことある」
律「なにか思いだしたのか!?」
唯「思い出してはいないけど……」
唯「私、ここに来る前は毎日のように三味線を弾いていたような気がする」
律「そうか……」
梓「どうしたんですか?」
澪「ああ、実はな……」
――――
梓「そうだったんですか……記憶が……」
唯「……」
澪「そういうことで唯は私達で面倒みてるんだ」
律「まあ、今となっちゃあ家族みたいなもんだけどな~」
梓「そうですか……」グウ~
梓「あ……」
律「あー、ごめんごめん!」
律「うどんまだ出してなかったな」
梓「あ、はい……」
梓(恥ずかし~!)
律「さあさあ中へ」
――店の中
律「ごめんな~」
律「今から作るから」
梓「あ、はい」
梓(今から作るのか)
梓(じゃあまだ待つな……)グウ~
律「へいお待ち!」ドン
梓「はやっ!?」
――道
梓(うどん美味しかったなあ)
梓(それにしても、あの唯っていう人凄い三味線上手かったなあ)
梓(う~ん……)
梓(なんか今思うとあの人とどっかで会ったことがあるような……)
梓(……)
梓(気のせいかなあ)
梓(……)
梓(あ、お城もうちょっとだ)
――琴吹城
梓「やっと着いた……」
紬「梓ちゃ~ん!」
梓「あ!紬さん!」
紬「梓ちゃんが来るの待ってたわ♪」
梓「そんなに楽しみだったんですか?」
紬「ええ、すっごく!」
紬「友達と呼べる人は梓ちゃんしかいないから……」
梓「そうですか……」
梓(可哀そうな人だな……)
紬「お城にはしばらく泊まっていけるの?」
梓「はい!お世話になります」
紬は琴吹家の規則で城を自由に出入りできないため、同年代の友達が梓しかいないのである。
琴吹氏は中野氏とは楽器の名手の一族同士として互いに交流がある。
そのため中野氏は琴吹城への出入りを許されていたのである。
紬「早く一緒に楽器を演奏しましょう!」
梓「はい!」
――――
紬「少し休憩しましょう」
梓「そうですね」
紬「お茶淹れるわね」
梓「ありがとうございます」
紬「ねえ、梓ちゃん」
梓「なんですか?」
紬「また、町の様子を聞かせて?」
梓「いいですよ」
紬「ありがとう!」
梓「そう言えば、今日ここに来る途中に町のうどん屋さんに寄ったんですよ」
梓「そこのうどんがすっごい美味しかったんです」
紬「私も食べてみたいわあ」
梓「そのうどん屋は女の子3人でやってるみたいなんです」
梓「多分私達と同じくらいの歳だと思います」
紬「そうなの~」
梓「しかも3人の中に唯って人が居たんですけど、三味線の腕がかなりの物だったんです」
梓「あれは三味線奏者として活動できる程ですよ」
紬「梓ちゃんがそこまで言うなら相当上手なのね」
梓「でもその唯って言う人は、過去の記憶の一部を失ってしまっているみたいなんです」
紬「え、記憶が……?」
梓「はい」
紬「そうなの……大変ね……」
梓「そうですね……」
紬「でもなんだか私もそのうどん屋さんに行ってみたくなったわ~」
梓「是非行きましょう!」
紬「でもお父様が許してくれるか……」
梓「お城の出入りをそこまで制限するのはおかしい話です!」
梓「説得すれば許可してくれるはずです!」
紬「そうね……!」
紬「私、お父様に頼んでみるわ!」
梓「はい!」
――殿の間
紬「し、失礼します」
紬父「おお、紬か」
紬父「どうしたんじゃ?」
紬「実は……お父様にお願いがあるんです」
紬父「おお、何か欲しいものでもあるのか?」
紬「いえ……あの……」
紬父「なんじゃ?」
紬「町にあるうどん屋さんに行ってはだめかしら……?」
紬父「町のうどん屋じゃと?」
紬「は、はい」
紬父「それは……だめじゃ」
紬「え……」
紬父「うどんが食べたいなら、うちの料理人に作らせよう」
紬「違うの!そのうどん屋に行きたいの!」
紬父「町は紬にとって危険じゃ」
紬「そんな……」
紬父「城の中でおとなしくしていなさい」
紬「もうお父様なんか知らない……!」ダッ
紬父「あ!紬!」
紬父「……」
紬父「むう……」
紬父「年頃の娘は難しいのう……」
紬母「あなた」
紬父「おお、おまえか」
紬母「あの子の気持ちも分かってあげたら?」
紬父「どういうことじゃ?」
紬母「あの子だって年頃の女の子」
紬母「友達も沢山欲しいだろうし、もっと遊びたいはずよ」
紬母「ずっとお城の中なんて可哀そうじゃない?」
紬父「むう……そうかのう……」
紬母「ええ、私はそう思うわ」
紬父「……」
――――
紬「……」スッ
梓「どうでした!?」
紬「許してもらえなかったわ……」
梓「そうですか……」
紬「どうして……」
梓「え?」
紬「どうしてお父様は分かってくれないの……!」
梓「紬さん……」
梓「でも、それほど紬さんを大事に思ってるって事なのかもしれませんよ」
紬「……そうかな?」
梓「そうですよ」
紬「……そうね」
紬「さっきはお父様の前で取り乱してしまったわ……」
紬「私、お父様に謝ってくる」
紬「そしてもう一度落ち着いてお願いしてみるわ」
梓「はい!」
――殿の間
紬「失礼します」
紬父「紬……」
紬「さっきはごめんなさい……」
紬「つい取り乱してしまって……」
紬父「いや、わしも悪かったようじゃ」
紬「え?」
紬父「お前の気持ちを分かってやれてなかったようじゃ」
紬「お父様……」
紬父「これからは町に行ってもよいことにする」
紬「あ、ありがとうございます!」パアア
紬父「でも無断の外出はだめじゃぞ?」
紬父「ちゃんと断りをいれるように」
紬「はい!」
紬「じゃあ、早速そのうどん屋に……」
紬父「まあ、そう急ぐでない」
紬父「町に行ってもよいと言っても、わしの知らないとこにホイホイ行かせるのもちと心配でな」
紬父「まずは家来の斎藤に様子を見てきてもらうことにする」
紬「わかりました」
紬父「うむ、では早速向かわせよう」
――うどん屋
律「うどんお待ち!」ドン
客E「澪ちゃん今日も可愛いね~」
客F「唯ちゃん……ハアハア……」
斎藤「失礼します」
律(なんかどっかのお偉いさんみたいなのが来たな)
斎藤「店主はどちらに?」
律「あ、私でーす」
斎藤「これはこれは」
斎藤「私、琴吹家の家来の斎藤と申します」
律「え、琴吹家!?」
律(ホントにお偉いさんだった!)
斎藤「実は本日は、琴吹家当主の命令でこちらにきました」
律「当主の命令!?」
斎藤「はい」
斎藤「当主の娘であります紬お譲様が、こちらのうどん屋に来たいとおっしゃってるのです」
律「ええ!?」
律「本当ですか!?」
斎藤「はい、ですので私が下見に来た次第でございます」
律「そうですか!」
律「じゃ、じゃあせっかくなんでうどん食べて行ってください!」
斎藤「はい、頂くとします」
律「へいおまち!」ドン
斎藤(速い……)
斎藤「いただきます」
斎藤「……」ズルズル
斎藤「……!」
律「どうですか?」
斎藤「うまい……!」
律「ありがとうございます!」
斎藤「これなら大丈夫そうですな」
斎藤「明日、お譲様をお連れすることにします」
律「はい!」
――夜
澪「じゃあその殿様の娘が明日来るのか!?」
律「そうだぞ~」
唯「その人ってこの前話した琴の演奏が凄い人?」
律「ああ」
唯「へ~、私も会ってみたい!」
澪「と、殿様の娘が……来る……」プシュー
律「私達と同年代みたいだから話もしやすいんじゃないか?」
澪「で、でも……殿様の娘だぞ?」
律「大丈夫だって」
澪「う、うん……」
唯「明日が楽しみ~」
――琴吹城
紬父「うむ」
紬父「それなら大丈夫そうじゃな」
斎藤「私も問題ないかと」
紬父「ではその旨を紬に伝えてきてくれ」
斎藤「はっ」
――――
紬「じゃあ明日行ってもいいのね!?」
斎藤「はい」
斎藤「私も付き添います」
梓「よかったですね!」
紬「楽しみだわ~!」
紬「そのうどん屋の人達とお友達になれるかしら?」
梓「きっとなれますよ」
紬「うん!」
紬「梓ちゃんも一緒にいくでしょう?」
梓「はい!」
――翌日
律「そろそろ来るんじゃないか?」
澪「そ、そうだな」ドキドキ
唯「楽しみー」
律「あっ、あれじゃないか!?」
澪「すごい……馬に乗ってる……」
唯「すごーい!」
斎藤「紬お譲様、到着しました」
紬「ええ」
律「……」ドキドキ
澪「……」ドキドキ
紬「こんにちは♪」
律「こんにちは~」
澪「こ、こんにひは!」
澪(声裏返った……)カアア
梓「こんにちは」
澪「あ、昨日の……」
律「どうぞこちらへ!」
紬「おじゃましま~す」
――店の中
紬「すごくおいしい!」
律「ありがとうございます!」
紬「すごいわ!」
唯「よかったね~、澪ちゃん!」
澪「う、うん」
紬「あの……一つお願いがあるんだけど……」
律「なんなりと!」
紬「私とお友達になってくれない……?」
律「え!?」
澪「え!?」
紬「だめかしら……?」
律「と、とんでない!」
律「こちらこそ宜しくお願いします!」
紬「ありがとう!」パアア
唯「わ~い!お友達!」
梓「よかったですね!」
律「私は律です」
澪「み、澪です」
唯「唯だよ~」
紬「私は紬よ」
梓「梓です」
唯「そう言えばキミは何でいるの?」
律(今さらっと酷いこと言ったぞ!?)
梓「私は紬さんの友達です」
梓「琴吹家と中野家は互いに交流があるんです」
澪「そうなのか」
律「……」ジー
梓「な、なんですか」
律「梓ってさー」
梓「はい」
律「猫みたいだな」
梓「え!?」
唯「あだ名はあずにゃんで決まりだね!」
梓「あ、あずにゃん……!?」
紬「あの……出来れば敬語もやめてもらえると……」
律「ええ!?そ、それは……」
澪「それは気が引けるというか……何というか……」
紬「せっかくお友達になれたのに敬語だとなんだか……」
律「わ。わかりました!」
紬「むっ」
律「わ、わかった!」
唯「じゃあムギちゃんって呼ぶね!」
律「いやあ、いくらなんでもそれは……」
紬「ええ、唯ちゃん♪」
律(いいんかい)
紬「そう言えば、唯ちゃんは三味線が凄いって聞いたわ」
紬「聴かせてくれない?」
唯「いいよ~」
梓「私の三味線使ってください」
唯「それでは……」
ベンベン、ベンベン
紬「す、すごいわ……」
唯「えへへ~」
律「なんか唯の演奏を聴いてたらもう一度楽器やりたくなってきたな~」
澪「そうだな」
梓「律さんと澪さんも楽器が弾けるんですか?」
律「……」
律「なあ、梓」
梓「なんですか?」
律「なんかその律さんって呼び方に違和感を感じる」
梓「そ、そうですか?」
澪(そうかな……)
律「聞くとこによると梓は私達より歳下みたいだな」
梓「そうですけど……」
律「だったら先輩って呼べ!」
梓「先輩!?なんの先輩!?」
律「人生の先輩……かな」キリッ
澪(あ、ちょっとかっこいいかも……)
唯「あずにゃん!私も私も!」
紬「ず、ずるいわ!」
紬「私も!」
梓「わかりましたっ!」
梓「わかりましたから、そんなに迫らないでください!」
唯「ムギちゃん先輩!」
紬「かっこいい!」
梓「で、律さ……ゴホンゴホン」
梓「り、律先輩と澪先輩は何の楽器が出来るんですか?」
律「太鼓だな」
澪「私は琵琶を」
梓「そうだったんですか!」
律「なあ澪~、私達もまたやろうぜ~」
澪「いいな」
唯「私もやる!」
梓「じゃあ今度みんなで演奏しましょう!」
紬「私もやりたいわ!」
唯「ムギちゃんは琴が弾けるんだよね?」
紬「そうよ」
唯「ムギちゃんにピッタリだね!」
紬「ありがとう♪」
その後も5人の会話は弾んだ
――――
梓「そういえば、ここのうどん凄いおいしいですよね」
梓「どうやって作ってるんですか?」
律「実はな……」ヒソヒソ
澪(教えるのかよ)
梓「ええ!?唯先輩でダシを!?」
紬「あらあら!」
梓「そんなのをお客さんに出してたんですか!?」
律「そんなのって何だよー」ブー
唯「あずにゃん、私ちょっと悲しいよ」
梓「いや、話としておかしいです!」
梓「新手の洒落ですか?」
律「洒落じゃねーよ」
梓「だいたい人間からダシとれるはずないです!」
律「実際とれてんじゃん」
唯「うんうん」
梓「それは……澪先輩はおかしいと思わないんですか!?」
澪「え……別に……」
唯「まあまあ、あずにゃん落ち着いて」
梓(私が変なのかなあ……)
紬(なんか話についていけなくなったわ)
斎藤「お譲様、そろそろお帰りにならないと」
紬「楽しい時間はあっと言う間ね……」
律「またすぐ会えるだろ?」
唯「友達だからね!」
紬「みんな……ありがとう!」
紬「そうだ!今度はみんながお城に遊びにこない?」
澪「ええ!?お城に!?」
唯「行きた~い!」
紬「いいかしら、斎藤?」
斎藤「当主様に許可をもらわねばなりません」
紬「お父様なら許してくれるわ」
斎藤「では許可が降りましたらお友達はお迎えに上がりましょう」
――琴吹城
紬「只今帰りました」
紬父「うむ、どうじゃったかな?」
紬は今日の出来事を話した
紬父「そうか……友達ができたか」
紬「はい!とっても楽しい人たちです」
紬父(紬がこんなに楽しそうにしてるのは初めてみるのう)
紬「お父様……またお願いがあるのですが……」
紬父「なんじゃ?」
紬「そのお友達を、お城に呼んではだめかしら……?」
紬父「……」
紬「……」ドキドキ
紬父「よいぞ」
紬「ありがとうございます!」パアア
紬父「わしもその唯と言う者の三味線を聴いてみたいのう」
紬「はい!」
――後日
律「そろそろ迎えが来る頃だな」
唯「はやく行きたい!」
澪「なんか緊張してきた……」
律「あ!来た!」
律「て、馬が沢山!?」
唯「あれに乗って行くの!?」
澪「私が……馬に……」
澪「すごい目立つじゃないか……」
律「うおー!すっげー!」
唯「ヒヒーンって言ったよ!りっちゃん!」
――城への道
律「おおー、たけー」パカパカ
唯「すご~い!」パカパカ
澪「み、みんな見てる……恥ずかしい……」パカパカ
律「なんか偉くなったみたいだな~」パカパカ
唯「どうどう」ペシペシ
澪「うう……」パカパカ
律「お、ついた」
唯「おお~」
澪「目の前で見るとすごい大きいな……」
紬「みんな~」
唯「あ!ムギちゃん!」
律「おーす!」
紬「待ってたわ!」
澪「やっと降りれる……」
唯「池があるよ!りっちゃん!」
律「うお!鯉がいる!」
唯「鯉って美味しいのかなあ」
律「ははっ、食うな食うな」
唯「冗談だよ~」
澪「おーい、行くぞ~」
紬「こっちよ~」
唯「はーい」
律「今行くー」
――城内
律「広いなー」
澪「天井が高い……」
梓「あ、みなさんこんにちは」
唯「あ!あずにゃん!」
梓「唯先輩、こんにち……」
唯「とう!」ガバッ
梓「ちょ……急に抱きつかないで下さい!」
唯「あずにゃん分補給~」
紬「あらあら」
梓「離れてください!」
唯「ああん、いけず~」
紬「みんな、ちょっといいかしら」
律「ん?どうした?」
紬「お父様がみんなに会いたいって言ってるんだけど……」
律「お父様って……殿様が!?」
紬「ええ」
澪「と、殿様に……会う……」プシュー
律「澪、落ち着け」
澪「はっ」
澪「ははっ、私はいつだって落ち着いてるぞ」ガタガタ
律「震えてる震えてる」
唯「ほえ~」
――殿の間
律「……」ドキドキ
澪「……」ドキドキ
唯「……」ワクワク
紬「お父様、お友達を連れてきました」
紬父「おお、そなた達が紬の友達か」
律「そうです!」
紬父「話は聞いておるよ」
澪(聞いてるってどういう風に聞いてるんだろう……)
紬父「これからも紬と仲良くしてやってくれ」
律「はい!」
紬父「ところで唯殿とはどちらかな?」
唯「あ、私です!」
紬父「うむ」
紬父「実は紬から唯殿は三味線の腕が相当なものだと聞いておってな」
唯「いやあ、それほどでも」デヘヘ
紬父「一つ演奏を聴かせてくれないかのう」
唯「はい!喜んで!」
紬父「斎藤、三味線を」
斎藤「はっ」
紬父「これでひとつ」
唯「では……」
ベンベン、ベンベン
紬父「おお……」
紬父「まさかこれほどの腕だったとは……褒めてつかわすぞ」
唯「ありがとうございます!」
紬父「ところで唯殿」
唯「はい?」
紬父「そなた……以前わしと会ったことはなかったかのう」
唯「え……」
唯「ごめんなさい、分からないです……」
紬父「ふむ、わしの思い違いかのう」
唯「……」
その後、唯達は楽器を演奏したりお茶をしたりと楽しい時間を過ごした。
――夜 うどん屋
律「いや~、今日は楽しかったな~」
澪「そうだな」
澪「久しぶりに琵琶も弾けたし」
律「色んな楽器があったもんな~」
唯「……」
唯(ムギちゃんのお父さんは私に会ったことがある気がするって言ってた……)
唯「……」
律「おーい、唯」
唯「え、あ、何?」
澪「どうしたんだ?」
澪「ボーっとしてたぞ?」
律「はしゃぎすぎて疲れたんじゃないのか~?」
唯「あはは、そうだね……」
澪「?」
律「今日は早めに寝とけー」
唯「うん」
――――
その後も唯たちは度々城を訪れては5人で楽器を演奏したり、お茶を飲んだりして楽しい時間を過ごし、
絆を深めていった。
そんな生活が続いたある日……
律「……」ズズ
律「……できた」
律「できたぞー!」
澪「!」ビクッ
澪「きゅ、急に大きい声出すなよ……」
律「できたんだよ!」
澪「なにができたんだ?」
律「新しいダシだよ」
澪「え?新しいダシ?」
律「このダシで作ったうどんだ」
律「食べてみてくれ」
澪「う、うん」
澪「……」ズルズル
律「……」ジー
澪「……!」
律「どうだ!?」
澪「すごいおいしい……」
律「だろ!?」
澪「ああ」
澪「でもどうしたんだ?急に」
律「いや~、いつまでも唯に頼ってばっかりじゃだめだからな」
律「お金にも少し余裕が出てきたし、新しいを味研究して完成させたって訳だ」
澪「そうだったのか」
律「梓もなんかダシ変えろって騒いでたからな~」
澪「おかしいです!って言ってたな」
律「あ、今の似てる」
澪「そ、そう?」
律「うんうん」
コンコン
律「こんこん」
澪「え?」
律「ん?」
澪「誰かきた?」
律「お客さんかー?」
澪「今日は定休日だぞ」
律「はいは~い」
ガラガラ
女A「こんにちは」
律「えーと……どちらさんで?」
澪(女の人が二人……)
女A「私は平沢憂と言う者です」
女B「私は真鍋和よ」
律「はあ……」
律(ん?平沢?)
憂「東の平沢城から来ました」
律「平沢城!?」
澪「え、じゃあ……」
憂「私は平沢家当主の次女です」
律「な、なんでうちに?」
澪「あの……今日は定休日……」
憂「お姉ちゃんらしき人がこちらに居ると聞いたので」
律「お姉ちゃん?」
和「唯のことよ」
澪「え?唯?」
律「じゃあ君は唯の妹さん?」
憂「はい」
澪「ん?待てよ……」
澪「と言うことは……唯は平沢家当主の娘ってことか!?」
律「ええ!?」
律(平沢家って言ったら東の土地を治めてる一族じゃないか……!)
律(唯はそんな身分の奴だったのか!?」
和「あなた達知らなかったの?」
律「あ、ああ」
律「なんせ唯は記憶が……」
唯「りっちゃん、どうしたの~?」
憂「お姉ちゃん!?」
和「唯!」
憂「お姉ちゃん!」ダッ
唯「え?お姉ちゃん?」
憂「……!」ギュッ
唯「え?何!?」
憂「お姉ちゃん……会いたかったよ……」
唯「あの……どちら様……?」
憂「え……私だよ、憂だよ……?」
唯「え?え?」
和「どうしたの?唯」
律「私から説明しよう……」
律は憂と和に道に倒れていた唯を助けたこと、そして唯は記憶を失ってることやこれまでの事を説明した
憂「そんな……」
和「まさか唯が記憶を失ってるなんて……」
唯「……」
律「あの~……」
律「そちらの状況も教えてもらえないかな?」
憂「そうですね……私が説明します」
憂「先ほども言いましたが、お姉ちゃんは平沢家当主の娘で私はその妹です」
和「私は唯の幼馴染で、今は平沢家専属の用心棒みたいなことをしてるわ」
澪「はあ」
憂「ちょっと事情があって、お姉ちゃんがお城を飛び出して行っちゃったんです」
和「最初はお腹空かしてすぐ帰ってくるだろうなんて思ってたのよ」
憂「でも夜になっても次の日になってもお姉ちゃんは帰ってこなかった……」
和「何かあったんじゃないかと思って、みんなで唯を探したわ」
和「でもそんなに遠くに行くはずもないと思って平沢家の領地内しか探さなかったの」
憂「そしてお姉ちゃんを見付けられないまま時が過ぎていった……」
憂「そしてある時、三味線の上手い短髪の女の子が琴吹家の領地のうどん屋さんに居るって噂を聞いたんです」
和「すぐにそれが唯だって思ったわ」
和「唯はもともと三味線が上手かったのよ」
律「そうだったのか……」
澪「しかし、唯が殿様の娘だったなんて……」
律「ああ、驚いた」
唯「……」
憂「ねえ、お姉ちゃん……何も憶えて無いの?」
唯「……うん」
憂「そうなんだ……」ジワッ
和「憂……」
憂「お姉ちゃん……せっかく会えたのに……」ポロポロ
律「……」
澪「……」
唯「……」
唯(なんだろう……)
唯(思い出せないんだけど……なんか懐かしい感じがする……)
憂「うう……」ポロポロ
唯「……!?」キーン
唯「うう……え……あ……」キーン
律「唯!どうした!?」
唯(あれ……なんか……!)キーン
憂「お姉ちゃん!?」
唯「……」
澪「大丈夫か……?」
和「もしかして何か思い出したの!?」
唯「ううん……思い出しそうだったけどだめだった……」
和「そう……」
唯「でもね……なんか懐かしい感じがする」
憂「お姉ちゃん……」
――――
和「じゃあ私達は帰るわ」
和「今、唯を連れて行っても混乱するだけだろうから」
律「そうだな……」
和「憂、帰るわよ」
憂「はい……」
和「じゃあとりあえず唯のこと、よろしくお願いします」
律「ああ」
和「それじゃあ」
律「うん」
憂「お姉ちゃん……」
――夜
澪「あれ?唯は?」
律「さっき散歩に行ったよ」
澪「散歩?こんな時間にか?」
律「まあ今日は色々あったからな……」
律「一人で考える時間も必要なんだろ」
澪「ああ、そうだな……」
律「しっかし……」
律「唯が平沢家当主の娘とはなあ……」
――夜道
唯(私が殿様の娘……?)
唯(信じられないよ……)
唯(これから私はどうすれば……)
唯(りっちゃんや澪ちゃんとの生活も楽しいし……)
唯(あずにゃんやムギちゃんと遊ぶのも楽しいから……)
唯(私……記憶が戻らなくてもいいと思ってた……)
唯「……」
――――
ごろつきA「おい、あれ見てみろよ」
ごろつきB「んあ?」
ごろつきA「あれだよ、あそこの一人で歩いてる女」
ごろつきB「ああ、あれか」
ごろつきA「ありゃうどん屋の奴だぜ」
ごろつきB「うどん屋って女だけのあのうどん屋か?」
ごろつきA「そうそう」
ごろつきA「なんでもそのうどん屋は最近儲かってるらしい」
ごろつきB「ほう」
ごろつきA「そのうどん屋の女が夜一人で歩いてる……」
ごろつきA「あとはわかるな?」
ごろつきB「まさか……」
ごろつきA「あの女を誘拐して身代金を要求すれば、たんまり金が手に入る」
ごろつきB「お前天才」
ごろつきA「ぐはは!そうと決まれば早速」
ごろつきB「よっしゃ」
唯「……」
ごろつきA「よう、嬢ちゃん」
唯「え?」
唯(何この人たち……!?)
ごろつきB「ちょっと俺達と来てもらおうか」グイ
唯「え……あ……」
唯(え!?何!?)
ごろつきA「うへへ」
――うどん屋
律「唯遅いなー」
律「まあそれだけ考えることがあるってことか……」
律「唯も大変だな……」
律「ふああ……」
律「寝むい」
律「先に寝ちゃおうかなー」
律「……」
律「……ZZZ」
――翌朝
律「まだ唯が帰ってない……!?」
律「どうしたんだ……?」
律「……」
律「捜しに行こう」
ガラガラ
律「ん?」
律「扉に何か挟まってるぞ」
律「これは……手紙?」
律「……」ガサガサ
「女は預かった。金を用意して西の廃村に来られたし」
律「!?」
律「こ、これって……」
律「唯が誘拐された!?」
律「た、大変だ!」
律「澪!起きろ!」
澪「う~ん……どうしたんだ?」
律「唯が……唯が誘拐された!」
澪「え?」
律「唯が何者かに誘拐されたんだよ!」
澪「なんだってー!?」
律「はやくいくぞ!」
澪「いくってどこに!?」
律「唯を助けにだよ!」
――西の廃村
ごろつきA「そろそろ来るんじゃないか?」
ごろつきB「そうだな」
唯(りっちゃん……澪ちゃん……)
ごろつきA「それにしても可愛い女だな」
ごろつきB「うへへ、このまま食っちまおうか?」ジリジリ
唯「いや!?」
律「唯!」
澪(うわ……怖そうな人達……)
ごろつきA「お、きたな」
律「唯を返してもらう!」
ごろつきB「金は持って来たんだろうな?」
律「持ってきた!」
ごろつきA「こっちによこせ」
律「ほら!」
ごろつきA「どれどれ」ジャラジャラ
ごろつきB「へへ、上等上等」
律「金は渡したんだ!唯は返してもらうぞ!」
ごろつきA「あ?何言ってんだ?」
律「え?」
ごろつきB「誰も金を渡せば女を返すとは言ってないぜ?」
律「そんな……!」
澪「ひどい……」
ごろつきA「最近人を斬りたくてウズウズしてたんだ」
ごろつきB「ちょっくらお前ら斬られてくれや」シャキーン
澪「ひいい!?」
唯「そんな……」
律「なんで……」
?「そこまでよ!」ババーン
一同「!?」
ごろつきA「誰だ!?」
和「その人達に手を出したら許さないわ!」
憂「お姉ちゃん!」
唯「!」
律「昨日の2人!」
ごろつきA「驚かせやがって!女が増えただけじゃねえか!」
和「それはどうかしら?」スチャ
憂「お姉ちゃんにこんなことして……絶対に許さない!」シャキーン
ごろつきB「おい、刀抜いたぞ」
ごろつきA「どうやらやる気のようだな」
ごろつきA「まとめて斬ってやる!」
カキーン カキーン
ごろつきA「な……!?」
ごろつきB「つ、強い……!」
律「すごい……!」
唯(あの人達……私を助けてくれようとしてる……)
唯(なんだろう……この感じ……)
唯(なんか……)
唯「……!」キーン
唯「あ……」
唯「わ、私……」
和「ふん!」バキーン
ごろつきA「なふ!?」
ごろつきB「お、おい!」
和「安心して、峰打ちよ」
ごろつきB「くっ!」
ごろつきB「憶えてろー!」ダッ
律「あ、逃げた」
憂「ふう……危なかった……」
唯「憂ぃ!」ギュッ
憂「お姉ちゃん!?」
和「唯、今憂って……」
唯「私、全部思い出したよ!」ブイッ
憂「お姉ちゃん!」パアア
澪「唯の記憶が戻った!?」
和「唯……お帰り……」
憂「お姉ちゃん……よかった……」
律「よかったな」
澪「ああ」
――うどん屋
憂「お姉ちゃんを助けにいってくれてありがとうございます」
澪「いや、私達じゃ何もできなかったよ」
律「でもどうして唯が誘拐されたことや、あの場所が分かったんだ?」
和「あら?そこは問題かしら?」
律「あ、いや……」
律(そういうもんなのか……?)
律「あ」
律「そう言えば、唯はどうしてお城を出て行っちゃったんだ?」
憂「私がお姉ちゃんの氷菓子を食べてしまったら、怒って飛び出して行っちゃったんです……」
唯「まったくひどいよ!憂は!」プンプン
律「そ、そうなんだー……」
律(たったそれだけ!?)
澪(唯らしいと言えば唯らしいか……)
和「唯はこれからどうするつもり?」
唯「え?」
和「あなた自身、どういう行動をするかってことよ」
唯「私は……」チラッ
律「……」
律「唯、お前はお城に帰らなきゃだめだぞ」
唯「……」
澪「そうだな」
澪「お城の人達に迷惑かけたんだ」
澪「ちゃんと謝ってこい」
唯「うん……分かった!」
――――
律「唯、元気でやれよ!」
澪「風邪引かないようにな」
唯「りっちゃん……澪ちゃん……」
律「ん?」
唯「うわあ~ん!」ギュッ
澪「唯……」
唯「やっぱり離れたくないよう……」グスッ
律「だあー!泣くな泣くな!」
澪「またいつでも会えるだろ?」
唯「うん……そうだね……」グスッ
律「いつでも遊びにこい!」
唯「うん!」
憂「お姉ちゃん……」
和「唯……いい人達に出会ったわね……」
――後日
紬「ええ!?じゃあ唯ちゃんは平沢家の当主様の娘だったの!?」
梓「私も実は見覚えがあると思ったんです……」
梓「平沢唯と言えば、三味線の世界では結構有名ですから」
律「じゃあどうして気付かなかったんだ?」
梓「名字まで分かればわかってましたよ」
梓「姿は以前遠巻きに見ただけだったんです」
紬「お父様も見覚えがあるって言ってたわ」
紬「以前演奏会で見たかもって」
澪「じゃあムギも会ったことがあったんじゃないのか?」
紬「私は外出を禁止されていたから……」
澪「あ、そっか……」
律「それでな~、唯から手紙が来てるんだ」
紬「なんて書いてるの?」ワクワク
澪「お城に遊びに来てくれって」
紬「是非行きたいわ!」
梓「私もです!」
律「うし!みんなで行くか!」
――後日 平沢城
唯「……」チラチラ
憂「お姉ちゃん、中に入ってなよ」
唯「だって~、待ちきれないんだもん」
憂「お姉ちゃん昨日から楽しそうだったもんね!」
唯「うん!」
憂「あ、あれじゃない?」
唯「ほんとだ!」
唯「お~い!」
律「おーす!唯!」
澪「久しぶりだな」
紬「お菓子沢山持ってきたわ!」
唯「わーい!」
梓「こんにちは」
唯「あ~ずにゃん!」ギュッ
梓「わ、また急に……」
憂「みなさんこんにちは」
憂「中へどうぞ」
律「よっしゃあ!」
憂「あ、あなたが梓ちゃん?」
梓「え、うん」
憂「お姉ちゃん、いっつも梓ちゃんのこと話してるんだよ」
梓「え!?なんて?」
憂「あずにゃんは可愛いんだよ~とか、猫みたいなんだよ~とか」
梓「うう……」
憂「あ、私は平沢憂です」
憂「よろしくね!」
梓「うん!よろしく!」
――――
梓「ところで律先輩」
律「んー?」
梓「ずーっと疑問に思ってることがあるんですけど」
律「なんだー?」
律「お姉さんに聞いてみなさい」
梓「どうして唯先輩からあんなに美味しいダシがとれたんでしょう?」
律「……」
梓「……」
律「……」
梓(あれ?)
律「……梓」
梓「はい」
律「世の中にはな……触れて良い事柄と触れてはいけない事柄があるんだ」
梓「はあ」
律「私達がそれを知るにはまだ幼すぎるんだよ」
梓「律先輩も分からないんですね」
律「さーて、明日の仕込みしなきゃ」
梓「あ、誤魔化した」
第一篇 完
~第二篇~
――うどん屋
律「へいおまち!」ドン
梓「ありがとうございます」
律「今回の新作は自信があるんだ」
律「食べてみてくれ」
梓「はい!」
梓「……」ズルズル
律「どうだ?」
梓「美味しいです!」
律「だろ?」
澪「よかったな」
律「よーし、これなら店に出しても大丈夫だな」
梓「律先輩って普通のダシでもうどん作れたんですね」モグモグ
律「過去のことは忘れなさい」
律「それと、口に物をいれて喋るんじゃありません」
梓「すみません」モグモグ
律「しっかし唯がお城に戻ってから急に静かになったなー」
澪「そうだな」
澪「ちょっと寂しいかも
コンコン
律「ん?誰か来た」
律「はいはーい」
ガラガラ
純「こんにちはー」
律「おー、純ちゃん」
律「今日は定休日だぞー?」
純「えへへー、どうしても食べたくって」
律「仕方ないなー」
梓「誰ですか?」
澪「うちの常連さんだよ」
澪「色々あって仲がいいんだ」
梓「そうなんですか」
律「まあ座って座って」
純「はーい」
純「あれ?」
梓「あ、こんにちは」
純「……」ジー
梓「?」
純「むむ……」ジー
梓「あの……」
純「もしかして三味線の人?」
梓「しゃ、三味線の人……?」
純「中野梓?」
梓「あ、はい」
純「へー!」
純「噂には聞いてたけど初めて見た!」
梓「え、噂?」
純「うん、この辺じゃ有名だよ」
純「中野流当主の娘がこのうどん屋によく来るって」
梓「そんなに有名なの……?」
律「あー、私が有名にしといた」
梓「え?」
澪「律が梓がよく来ることを、この辺の人に言いふらしてるんだ……」
梓「ちょ!?」
梓「なんでそんなことを!?」
律「きゃー!怒ったー」
梓「そりゃ怒りますよ!」
梓「勝手に自分のこと言いふらされりゃ誰でも!」
律「ははっ、宣伝宣伝」
純「ねえ、梓はどうしてこの店に来るようになったの?」
梓(いきなり呼び捨て!?)
純「ねえねえ梓ー」
梓「知らない!」
純「あ、怒った」
梓「うるさい!」
純「ご、ごめん……」
梓「え?」
純「ごめん……いきなり慣れ慣れしかったよね……」シュン
梓「あれ……?」
純「私帰るね……」トボトボ
梓「あ、あの……」
純「……」チラッ
梓「べ、別にそんなに怒ってない……よ?」
純「本当……?」
梓「う、うん」
純「ですよねー」ケロッ
梓(あ、演技だ)
律「おーい、うどんのびちゃうぞ」
純「あ、もう出来てたんですか」
律「純ちゃんが梓とにらめっこしてた時にはもう出来てたよ」
純「はやっ!?」
唯「りっちゃんおいっす」ガラガラ
律「うお!?唯!?」
澪「急に来た!?」
唯「あ!」
梓「唯先輩こんにち……」
唯「あーずにゃん!」ギュッ
梓「むぎゅっ」
唯「あずにゃんも来てたんだ~」スリスリ
梓「ちょっ、スリスリしないでください!」
唯「あ~ん、いけず~」
律「どうしたんだ~、急に」
唯「えへへ~、遊びにきちゃった~」
澪「今日は定休日なのに人が集まるな」
律「そうだな」
唯「りっちゃん、私にもうどーん」
律「はいはい」
純「ねえ、梓」
梓「何?」
純「あの人、前うどん屋手伝ってたりしてたけど誰なの?」
梓「平沢家当主の娘」
純「ええ!?本当!?」
梓「うん」
純「このうどん屋ってなんかすごいね……」
梓「そうかな?」
純「うん、すごい」
純「殿様の娘が店を手伝ったり、急に来たりするうどん屋なんてないよ」
梓「あー、たしかに」
純「たしかにって……」
律「はいよ」
唯「ありがとー!」
唯「……」ズルズル
唯「むむ!?」
唯「りっちゃん」
律「ん?」
唯「ダシ変えたね」
律「お、わかる?」
唯「わかるよ~」
純「なんかみんなため口だけど……」
梓「そんなもんだよ」ズルズル
純「よーし……」
純「あ、あの!」
唯「あ、純ちゃん久しぶり~」
純「はい!お久しぶりです!」
純「憶えててくれたんですね」
唯「憶えてるよ~、常連さんだもん」
純「ありがとうございます!」
純「私のこと憶えてたよ!」ユサユサ
梓「よかったね」グラグラ
律「そう言えば憂ちゃんは元気かー?」
澪「憂ちゃんとは最後に唯のお城にいったきりだな」
唯「元気だよ~」
純「憂ちゃん?」
梓「唯先輩の妹だよ」
純「へー、妹がいるんですか」
唯「そうだよ~」
唯「憂はすごいんだよ~」
律「あー、たしかに憂ちゃんはすごいな」
純「私も会ってみたいです」
唯「じゃあ今度憂も連れてくるねー」
純「はい!」
コンコン
律「おお……また誰か来た」
澪「今度は誰だ?」
律「はいはーい」
ガラガラ
紬「こんにちはー」
律「おおー、ムギかー」
唯「あ!ムギちゃん!」
紬「まあ!」
紬「唯ちゃんと梓ちゃんも来てたのね!」
梓「こんにちは」
澪「今日は勢ぞろいだな」
純「今度は誰?」
梓「琴吹家当主の娘」
純「ほんとに凄いうどん屋だー!?」
律「どうしたんだー?」
紬「うん……ちょっと……」
律「?」
律「まあ座った座った」
紬「うん、ありがとう♪」
紬「あら?」
純「は、はじめまして!」
純「私純です!ここの常連やってます!」
梓「また手当たり次第に……」
紬「私は紬よ♪」
紬「よろしくね!」
純「よろしくお願いします!」
紬「りっちゃん!またお友達ができたわ!」キラキラ
律「よかったな」
唯「あずにゃん、あ~ん」
梓「やめてください!」
梓「恥ずかしいです!」
唯「いけず~」
梓「それにうどんはあ~んするものじゃないです!」
唯「いいじゃんいいじゃん」
梓「だめです!」ガオー
唯「ちぇー」
梓「まったく……」
――――
純「そういえばさー、梓」
梓「何?」
純「なんでみなさんのこと先輩って呼んでるの?」
梓「……そう呼べって言われてるから」
純「えー、なんで?」
梓「人生の先輩……だから」
純「人生の先輩!?」
梓「うん」
純「か、かっこい~……」
梓「そうかな?」
純「うん!すっごく!」
梓「まあ、そう言われれば」
純「私も先輩って呼ぶ!」
純「いいですか?」バッ
律「お、おう」
純「やったあ!」
律「なんかそう言われると恥ずかしいな~」
澪「お前が言い出したんだろ」
律「そうだったけ?」
澪「忘れてたのかよ……」
紬「……」
紬「あ、あの!」
律「ん?どうした?」
紬「突然で悪いんだけど……」
紬「今日、ここに泊めてもらえないかしら……?」
律「え?別にいいぞー」
紬「ありがとう!」パアア
唯「え?ムギちゃんお泊り!?」
澪「そうみたいだな」
唯「私も泊まりたい!」
律「いいぞー、何人でもいいぞー」
唯「わーい!」
唯「あずにゃんは!?」
梓「私は……今日は無理ですね」
唯「えー、どうして?」
梓「無断で外泊は禁止されてるので」
唯「そっかあ……」
梓「こんどちゃんと許可をとってきます」
梓「律先輩、いいですか?」
律「おう!」
唯「純ちゃんは?」
純「私も……ちょっと無理ですね」
唯「うう……」
唯「じゃあ今日は4人で楽しもう!」
和「ちょっと唯!」ピシャーン
澪「うわあああ!?」ビクッ
律「また人きたー!?」
唯「和ちゃん!?」
和「また無断で外出して!」
唯「ご、ごめ~ん、和ちゃん!」
和「まったく……憂も心配してたわよ」
唯「ほんと申し訳ないです……」
澪「びっくりした~……」ドキドキ
律「どうし唯がここにいるって分かったんだ?」
和「勘よ」
律「ああ、そう……」
和「ほら、帰るわよ」グイ
唯「あの……和ちゃん?」
和「なに?」
唯「今日ここにお泊りしてはいけないでしょうか……?」モジモジ
和「だめよ」
唯「ですよね~……」
和「無断外出の上、無断外泊なんてだめよ」
唯「りっちゃ~ん……」チラッ
律「唯、ちゃんと許可もらったらまた来な」
澪「そうだな、私達はいつでもいいぞ」
唯「うう……じゃあ明日泊まりに来る!」
律「はやっ」
唯「いい!?和ちゃん」
和「お城の人に許可をもらいなさい」
唯「うん!」
唯「あずにゃんも明日来てね!」
梓「明日ですか」
唯「けって~い」
梓「また強引に……わかりました」
梓「私も家の人に許可もらってきます」
唯「わーい!」
和「じゃあ帰るわよ」
唯「はーい」
唯「ばいばーい、みんなー」
律「ああ」
澪「じゃあな」
紬「またね~」
梓「私もそろそろ帰ります」
純「あ、わたしも帰らなきゃ」
律「おう」
純「御馳走様でしたー」
律「唯、ちゃんと許可もらったらまた来な」
澪「そうだな、私達はいつでもいいぞ」
唯「うう……じゃあ明日泊まりに来る!」
律「はやっ」
唯「いい!?和ちゃん」
和「お城の人に許可をもらいなさい」
唯「うん!」
唯「あずにゃんも明日来てね!」
梓「明日ですか」
唯「けって~い」
梓「また強引に……わかりました」
梓「私も家の人に許可もらってきます」
唯「うん!」
和「じゃあ帰るわよ」
唯「はーい」
唯「ばいばーい、みんなー」
律「ああ」
澪「じゃあな」
紬「またね~」
梓「私もそろそろ帰ります」
純「あ、わたしも帰らなきゃ」
律「おう」
純「御馳走様でしたー」
――外
純「ねえ、梓」
梓「なに?」
純「唯先輩ってほんとに平沢家当主の娘?」
梓「え、そうだけど……なんで?」
純「いや、なんか全然偉い人って感じしないなーって」
梓「ああー、たしかに」
純「なんていうか……天然って言うの?」
梓「うんうん」
純「さっき妹の方は凄いって言ってたけど」
梓「ああー、憂は凄いよ」
純「そうか……唯先輩よりすごいのか……」
純(ということは……すごい天然ってことか……)
純「いやー、はやく会ってみたいね!」
梓「そんなに会いたいの?」
純「うん!」
梓「ふーん」
純「あ、私こっちだから」
梓「あ、うん」
純「ばいばーい」
梓「うん、またね」
――うどん屋
律「みんな帰ったらすごい静かになったな」
澪「そうだな」
律「そういえばムギ」
紬「な、なあに?」
律「今日はどうしたんだ?急に」
紬「うん……ちょっと……」
律「?」
紬「あの……お願いがあるんだけど……」
澪「なんだ?」
紬「今日だけでなく、しばらく泊めてもらえないかしら……」
律「え?」
紬「やっぱり迷惑よね……」
律「いや、泊まるのはいいんだけど……」
澪「ムギ、どうしたんだ?」
律「なにかあったのか?」
紬「実は……」
律「……」
澪「……」
紬「私、家出したの!」
律「ええ!?」
澪「家出!?」
紬「うん……」
律「どうしてだ?」
紬「……」
律「……」
澪「……」
紬「その……」
律「わかった」
紬「え?」
律「理由は聞かないでおくよ」
紬「ごめんなさい……」
律「まあ、遠慮するなって!」
澪「そうだぞ」
紬「ありがとう……」
律「この話は終わり!」
律「夜ごはんにしよう!」
紬「うん!」
――平沢城
唯「ほえ~」プシュー
憂「どうしたの?お姉ちゃん」
唯「お母さんに凄い叱られた……」グデー
憂「ああ……」
唯「もう勝手に外出はしないよ……」
憂「そうだね」
唯「はあ~……」
唯「ねえうい~」
憂「なあに?」
唯「氷菓子~」
憂「ご飯食べてからっ」
唯「けち~」
憂「めっ」グッ
唯「あとねー、明日りっちゃんち泊まりたいんだけど、お母さんとか許してくれるかな?」
憂「うーん……聞いてみたら?」
唯「そうだね~」
唯「そう言えばりっちゃんのうどん屋さんの常連さんで、憂に会いたいって言う人がいたよ」
憂「え?私に?」
唯「うん」
憂「どんな人?」
唯「純ちゃんって女の子」
唯「多分憂と同じ年だよ~」
憂「へえ~」
唯「だから今度憂も一緒にいこうよ」
憂「うん!」
唯「やったー!」
――うどん屋
律「ある男の人が夜道を一人で歩いてたんだ」
紬「……」ワクワク
澪「……」ドキドキ
律「それでな……真っ暗な道に女の人が立っているのをみつけるんだ……」
律「男の人は後ろから声をかけた……『こんな夜中にどうしたんですか?』って……」
紬「……」ゴクリ
澪「な、なあ律……やっぱり怪談なんて……」ドキドキ
紬「静かに!」
澪「うう……」
律「女の人は答えない……男の人は回りこんで女の人の顔を覗きこんだんだ」
紬「……」ドキドキ
律「そしたらな……その女の人は……」
澪「ひいっ……」
紬「……」ドキドキ
律「のっぺらぼうだったのだー!」クワッ
紬「きゃー!」
澪「わあああああ!」ドカン
律「男の人は悲鳴を上げて逃げる!」
紬「そ、それでそれで!?」ワクワク
澪「もうやめてよう……」ブルブル
律「逃げながら後ろを振り返ってみると……なんと顔のない頭だけが追いかけてくるではないかー!」
澪「きゃああああ!」
律「その女はのっぺらぼうのろくろ首だったのだ!」
紬「男の人はどうなったの!?」
律「男のどうなってしまったかは……誰にもわからない……」
紬「す、すごいわ~……」
律「おーい、みおー」ユサユサ
澪「お星様いっぱい……はは……」グラグラ
律「ああ……当分帰ってこないな」
紬「もっと聴きたいわ!」
律「あー、でも澪がこんな調子だからなー……」
律「みおー」
澪「……」
律「澪?」
澪「zzz……」
律「あ、寝ちゃってる」
紬「澪ちゃん寝ちゃったの?」
律「うん」
律「はあ~、私達も寝るか」
紬「もう寝ちゃうの?」
律「明日はうどん屋休みじゃないからな」
紬「そうね……もっとお話ししたかったわ」
律「よいしょっと」バサ
紬「ねえ、りっちゃん」
律「んー?」
紬「明日、私もうどん屋さん手伝っていいかしら?」
律「お、手伝ってくれるのか?」
紬「うん!是非やりたいわ!」
律「じゃあ明日に備えて寝よう!」
紬「はーい!」
――翌日
律「う……」
律「……」
律「朝か……」
紬「おはよう、りっちゃん」
律「お、もう起きてたのか」
紬「うん」
澪「zzz」
律「みおー、朝だぞー」ユサユサ
澪「うーん……はっ!?」ガバッ
律「うお!?」
澪「……」
律「お、おはよう」
澪「私……いつの間に寝てたんだ……?」
律「どこか遠くに行ったと思ったら寝てたよ」
澪「え?」
律「なんでもないよ」
澪「そうか」
紬「ところで今日はどんな手伝いをすればいいのかしら?」
律「そうだなー、やっぱり注文取ったり運んだりかな?」
紬「わかったわ」
澪「どうしたんだ?」
律「今日はムギも手伝ってくれるんだ」
澪「へー」
紬「でもちゃんとできるか心配だわ……」
律「大丈夫だよ」
律「唯でも出来てたからな」
澪「ははっ」
紬「私頑張る!」
――――
客1「ごめんよ~」
澪「お、お客さんきた」
律「ムギ行け!」
律「練習の通りやれば大丈夫だ」
紬「う、うん」ドキドキ
紬「い、いらっしゃいませ~」
客1「おや、新人さん?」
紬「今日はお手伝いなんです~」
客1「そうかそうか」
紬「御注文は?」
客1「えーと……じゃあこの特製りっちゃんうどんを一つ」
紬「かしこまりました~」
客1「よろしく」
紬「りっちゃん、私ちゃんとできてた?」
律「ああ、完璧だ!」
紬「本当!?」
澪「本当だよ」
紬「よーし!」
――――
紬「おまたせしましたー」
客2「お、ありがとう」
律「ムギだいぶ慣れてきたな」
澪「うん、なんか楽しそう」
客3「お水ちょうだーい」
紬「はいはーい」
律「でもみんなムギの正体には気づかないもんなんだな」
澪「う~ん」
澪「今まで露出が無かったから、名前は知っていても姿は知られてないんじゃないのか?」
律「それもそっかー」
澪「でも接客してるのが殿様の娘だなんて分かったらみんな驚くだろうな」
客4「うどんまだー?」
律「あー、もう少しです!」
紬「いらっしゃいませ~」
――夕方
律「よし!今日はこれで閉店だ!」
紬「楽しかったわ~」
澪「ご苦労さま」
紬「またお手伝いしたい!」
律「おう!」
唯「りっちゃん、泊まりに来たよー」ガラガラ
律「うお!?唯!?」
澪「ほんとに来たのか」
律「扉くらい叩けよ!」
唯「ムギちゃんおいーす」
紬「おいーす!」
律「唯はいっつも急にくるなー」
唯「えへへ~」
澪「ちゃんと許可とってきたのか?」
唯「うん!ばっちり!」
律「じゃあ、大丈夫だな」
唯「あずにゃんは~?」
律「あー、来てないな」
唯「はやく来ないかな~」
澪「来れるかもまだ分からないんだぞ?」
唯「あずにゃんはきっと来る!」
唯「ね、ムギちゃん!」
紬「うん!来るわ!」
コンコン
唯「来た!?」
律「はいはーい」
ガラガラ
梓「あ、こんにちはー」
唯「あ~ずにゃん!」ギュ
梓「むぎゅっ」
唯「来てくれたんだね!」スリスリ
梓「唯先輩も来れたんですね」
律「許可とれたのか?」
梓「はい」
梓「ところでみなさん」
律「んー?」
梓「突然ですが、今日は一つ提案を持ってきました」
澪「提案?」
梓「はい」
梓「実は今度、中野家主催の演奏会があるんです」
梓「みなさんも良ければ出演してみませんか?」
律「ええ!?私達が演奏会に!?」
唯「面白そう!」
紬「私も出たいわ!」キラキラ
澪「それって……お客さんの前で演奏するってことか?」
梓「そうですね」
澪「む、無理だよ!そんなの……」
梓「え、どうしてですか?」
澪「だって、大勢の前で失敗なんかしたら……」
澪「うわあああ!」ドカーン
律「どこでやるんだ?」
梓「私の家です」
梓「結構歴史のある由緒正しい演奏会なんですよ」
梓「近隣の殿様とかも観客としてくるぐらいですから」
梓「毎年この時期にやるんです」
唯「へ~」
紬「でもそんな演奏会に私達が出演して大丈夫なの?」
律「いや、少なくともムギは大丈夫だろ」
梓「大丈夫です、既に許可はおりてます」
澪「大勢の前で……演奏……はは……」
唯「一人一人演奏するの?」
梓「一人一人でもいいですし、みんなで合わせても大丈夫です」
澪「みんなでやろう!」
澪「ひ、一人でなんて……」
紬「でも琴と琵琶はともかく、琴と三味線を合わせるなんてあんまり聞かないけど……」
律「あー、たしかに」
梓「いいじゃないですか、前衛的で」
律「前衛的ってお前……」
梓「何事も挑戦です!」
唯「そうだよ~、やってみようよ!」
律「う~ん、まあそこまで言うなら」
紬「そうね、やってみましょう」
唯「いつやるの?」
梓「1週間後です」
澪「1週間後!?」
律「結構はやいな」
紬「みんなで合わせるとなると……練習しなくちゃいけないわね」
梓「そうですね」
律「じゃあ、ムギのとこで練習させてもらうか」
紬「あ……私のとこはちょっと……」
律「!」
律「あー、そっか……家出中か……」
梓「え!?家出!?」
唯「ムギちゃん家出したの!?」
律「あ、やべ……」
紬「う、うん……」
唯「どうして?」
律「ムギ、ごめん……」
梓「ムギ先輩が家出……」
紬「……」
紬「わかったわ……」
律「え?」
紬「みんなもいるし……ちゃんと理由を話すわ……」
澪「ムギ……」
律「……」
梓「……」
紬「私……結婚するかもしれないの……」
澪「ええ!?」
律「結婚!?」
唯「ムギちゃんが……結婚!?」
梓「だ、誰とですか!?」
紬「隣の国の殿様の息子さんなの……」
律「な、なんだ~……おめでたい話じゃないか!」
澪「そ、そうだな」
唯「ムギちゃんおめでとう!」
紬「でも……ほんとは結婚なんてしたくない……」
梓「え?」
紬「実は相手の人はお父様が選んだ相手なの」
紬「他の国の殿様のとこにお嫁に行けば、政治的に有利になるって……」
律「政略結婚ってやつか……」
唯「政略結婚?」
澪「政略結婚ってのは、政治目的の結婚のことだ」
澪「相手方の子供と自分の子供が結婚すれば、政治の場でも仲間になれるだろ?」
唯「へ~」
梓「へ~って……唯先輩も殿様の娘なんですから、今後そういうことがあるかも知れないんですよ?」
唯「え、私が?」
梓「はい」
唯「結婚を?」
梓「はい」
唯「ないよ~」
梓「お気楽ですね……」
律「どうして嫌なんだ?」
紬「だって……結婚なんてしたらみんなといれる時間が減っちゃうわ……」
紬「それに勝手に決められた相手だなんて……」
澪「ムギ……」
紬「だから今は結婚なんて嫌……」
律「お父さんとは話しあったのか?」
紬「一方的に言われたから……あまり話もできなかったわ」
紬「そして思わず家出を……」
律「そうだったのか……」
澪「……」
紬「……」
律「なあ、ムギ」
紬「なあに……?」
律「だったら、その気持ちをお父さんに伝えなきゃ駄目なんじゃないのか?」
紬「え……」
梓「そうです!」
澪「そうだな」
澪「ちゃんと伝えればわかってくれるはずだ」
紬「でも……」
律「大丈夫!私もついてくから」
紬「本当!?」
律「ああ!」
紬「ありがとう!」
律「澪もな!」
澪「私も!?」
唯「私もいく!」
律「唯は待ってなさい」
唯「え~、なんで~」
律「お前が来ると話がややこしくなる」
唯「ちぇ~」
律「梓、唯と待っててくれ」
梓「わかりました」
紬「みんなありがとう……」
紬「私、お父様とちゃんと話あってみるわ!」
律「よし!そうと決まれば明日お城の乗り込むぞ!」
澪「乗り込むって……」
梓「あ、そう言えば」
梓「ちょっといいですか?」
律「ん?どうした?」
梓「さっきの演奏の練習の場所のことなんですけど」
澪「そういえばまだ決まってなかったな」
梓「私の家はどうでしょう?」
梓「大体の楽器は揃ってますし、本番と同じ場所で練習できた方がいいと思うのですが」
律「おー、そうだな!」
唯「あずにゃんの家行ってみたい!」
澪「ここからどのくらいなんだ?」
梓「歩いて行ける距離です」
紬「そういえば梓ちゃん、いつも歩いて来てるわね」
梓「はい」
律「唯はいつもどうやって来てるんだ?」
律「ムギは近いから歩いたりしてるけど」
唯「私は商人さんの馬に一緒に乗せてもらったりしてるよ~」
澪「ええ!?」
律「おいおい……危ないな」
唯「みんないい人なんだよ~」
梓「何度も言いますが、唯先輩は殿様の娘なんですよ!?」
梓「そんな知らない人にホイホイついていったらだめです!」
梓「少しは自覚してください!」
唯「あずにゃん怒った~」
梓「怒ってないです!心配してるんです!」
澪「唯は愛されてるな……」
律「でもこうなってくると明日から忙しくなるな~」
澪「お店はどうするんだ?」
律「こうなったら臨時休業だ!」
澪「大丈夫なのか?」
律「大丈夫大丈夫!」
澪「うーん……」
律「ちょっとの間だろ」
澪「まあ……そっか」
律「よし!頑張るぞ!」
紬「おー!」
唯「おー!」
――夜
律「大嘘つき大会ー!」ダアー
唯「おー!」パラリラパラリラ
紬「いえーい!」ドンドンパフパフ
澪「夜なんだから静かにしろ!」
律「まずはムギから!」
紬「女同士なんて……汚らわしいわ!」
律「大嘘つきだー!」
唯「嘘つきー!」
律「行け!唯!」
唯「世の中腐ってるよ!」キリッ
梓「ぶふっ!?」
澪「梓まで!?」
紬「大嘘つきー!」
律「そんなこと考えたことも無いくせに!」
唯「えへへ~」
唯「さありっちゃん!」
律「私……実はかつらなんだ……」
紬「大嘘つきー!」
唯「嘘つきー!」
律「……」
唯「あれ?」
紬「りっちゃん?」
唯「え……もしかして……」
律「……」
唯「本当にかつら……」
律「うん……」
唯「……」
紬「……」
唯「……なんかごめんね」
紬「……りっちゃんはりっちゃんよ」
律「うん……ありがとう……」
唯「……」
紬「……」
律「うそぴょーん!」
唯「あー!」
紬「凄い嘘つき!」
律「よし!澪いけ!」
澪「え、わ、私!?」
唯「さあ!」
澪「あの……じ、実は……私男なんだ!」
律「……」
梓「……」
紬「お、大嘘つき~……」チラッ
唯「澪ちゃん……」
澪(はずした~!)カアア
律「ま、枕投げ大会ー!」
梓(うやむやにした!?)
唯「お、おー!」
紬「よしきたー!」
律「とう!」
梓「むぎゅっ!?」
律「ふっふっふ」
律「ここはすでに戦場なのだよ、お譲ちゃん!」
梓「やりましたね!?」
唯「とう!」
紬「唯ちゃん強~い」
澪「消えて無くなってしまいたい……」ブツブツ
――――
律「ぐごー」
紬「zzz」
唯「おかわり……えへへ……」ムニャムニャ
澪「スー…スー…」
梓(みんな寝ちゃった)
梓(……)
梓(私も嘘考えてたのになー)
梓(……)
梓「私、髪の毛ほどくと巨大化するんです~」ボソッ
梓「……」
梓「大嘘つき~」
梓「……」
梓「寝よ……」
――翌日
律「よし、扉に臨時休業の張り紙をしてっと……」ペタペタ
律「よし!完璧!」
澪「臨時休業なんて初めてだな」
律「そうだな」
唯「私もお城の入り口までついてく~」
梓「私もいきます」
律「行くぞ!ムギ!」
紬「うん!」
――城への道
唯「ムギちゃん!」
唯「いー」グイー
紬「いー」グイー
唯「変な顔~」キャッキャ
紬「唯ちゃんも~」キャッキャ
梓「緊張感ないですね……」
澪「なあ、律」
律「どうした?」
澪「あそこに立ってる人って……」
律「どこ?」
澪「ほらあそこ」
律「あー」
律「あの人がどうした……ってお役人さんじゃないか」
唯「りっちゃんどうしたのー?」
律「ほら、あそこに立ってる人」
唯「あー、あの人知ってる」
唯「前お店に来てた人だよね?」
律「そうそう」
紬「あ、あの人……」
律「ムギ知ってるのか?」
澪「そっか、琴吹家の所属の人か」
紬「ええ」
紬「でもね……あの人は仕事のやり方が手荒くて有名なの」
澪「あー、たしかに……」
律「話かけてみるか」
澪「え、なんで?」
律「一応お客さんだしなー、挨拶くらいは」
澪「まあ……そうか」
――――
律「こんにちはー」
さわ子「あら、あなたたち」
さわ子「たしかうどん屋の」
澪「はい」
さわ子「あら、あなたも一緒なのね」
紬「はい♪」
律「こんなとこに立って何してるんですか?」
さわ子「待ち合わせよ」
唯「誰とですか~?」
さわ子「男の人よ」
唯「もしかして彼氏!?」
さわ子「これから彼氏になるかも知れない人よ」
唯「へー!」
さわ子「でもね……もう待ち合わせの時間過ぎてるのにこないの……」
さわ子「恋文も沢山書いて送ったのに……」
梓「沢山ってどのくらいですか?」
さわ子「墨汁で満たした風呂釜が空っぽになったわ」
律(うわあ……)
梓(こわっ!)
律「あのー……」
さわ子「なに?」
律「誠に申し上げにくいんですが……」
さわ子「?」
律「その男の人はもう来ないんじゃないかと……」
さわ子「なんですって!!」クワッ
澪「ひいっ!?」
さわ子「あなた達に何が分かるのよ!」
唯「怒った!?」
さわ子「SATSUGAIするわよ!」シャー
律「に、逃げろー!」
さわ子「二度と来るんじゃねえ!」
――――
唯「はあ……はあ……」
澪「はあ……はあ……」
律「どうやら触れてはいけない人だったみたいだな……」
梓「そうですね……」
律「ふう」
律「気を取り直していくか」
紬「そうね」
律「何も無かった……何も無かったんだ……」
――城の前
律「ついたー」
澪「なんか既に疲れた……」
律「いいか?ムギ」
紬「はい」
律「私達はついては行くけど、ちゃんと自分の口から伝えなきゃだめだぞ?」
紬「うん、大丈夫よ!」
律「よし」
澪「じゃあ行ってくるよ」
唯「ムギちゃん頑張って!」
梓「頑張ってください!」
律「突入ー!」ダダダ
紬「あ、待って~」タタタ
澪「全く……遊びじゃないんだぞ」スタスタ
唯「……」
梓「……」
唯「あずにゃんや」
梓「なんですか?」
唯「私達、暇だね」
梓「暇ですね」
唯「散歩でもしようか~」
梓「そうですね」
――琴吹城
紬「斎藤!斎藤はどこ!?」
家来「お、お譲様!?」
紬「斎藤を呼んで!」
家来「た、只今!」
律「ムギ気合い入ってんなー」
斎藤「お譲様ー!」ドタドタ
斎藤「お譲様!心配しておりましたぞ」
紬「それより、お父様はいるかしら?」
斎藤「は、はい」
紬「今すぐお父様に会うわ」
斎藤「はっ!」
澪「なんか性格変わってるような……」
――町
唯「もう春だねー」
梓「そうですね」
梓「桜も咲いてきましたし」
唯「ねえ、今度みんなでお花見しようよ!」
梓「いいですね!」
梓「私の家の近くに桜が沢山あるところがあるんです」
梓「演奏会が終わったらそこでしましょう」
唯「やったー!」
唯「楽しみがまた増えたね~」
梓「はい!」
「あー!梓ー!」
梓「え?」キョロキョロ
唯「いまあずにゃん呼ばれたよ」
梓「そうみたいですね」
純「おーい!」タタタ
梓「あ、純だ」
純「今日も来てたんだー」
梓「うん」
純「唯先輩こんにちはー」
唯「こんにちは!」
純「なにしてるんですか?」
唯「ちょっと暇だったからあずにゃんと散歩してたんだー」
純「へえ、私も一緒にいいですか?」
唯「いいよー」
梓「純はこの町に住んでるんでしょ?」
純「そうだよ」
唯「じゃあ、純ちゃんがいれば安心だね」
純「任せてください!」
梓「どこかいい場所とかあるの?」
純「うーん、場所より歩き回ってた方がいいことあるよ」
梓「いいこと?」
純「そ、いいこと」
唯「楽しみ~」
――殿の間
紬「失礼します」
律(家来沢山いる……)
澪「……」ドキドキ
紬父「紬よ」
紬「はい」
紬父「勝手に城を飛び出していくとは何事じゃ」
紬「ごめんなさい」
紬父「まあ行き先は大方検討がついておったが」
紬「……」
紬父「うどん屋の者よ」
律「は、はい!」
紬父「紬が迷惑をかけたようじゃな」
律「い、いえ!そんなことないです!」
紬父「そうか、そう言ってもらえると助かるのう」
紬「今日はお父様に結婚の件でお話があります」
紬父「おお、やっとその気になってくれたか?」
紬「いえ、私は結婚をする気はありません」
律(お、言った)
紬父「なんじゃと?」
紬「私はまだ結婚なんてしたくありません!」
紬父「……じゃがな紬」
紬父「お前が相手方の息子と結婚すればお前の将来だって……」
紬「政治の道具にされるなんて私は嫌です!」
澪(ムギ……)
紬父「せ、政治の道具じゃと……!?」
紬「私は今を大切にしたいんです!」
紬「将来も大切だけど……今このみんなといる時間を大切にしたいんです!」
紬「他の人に決められた相手と結婚させられてまた縛られたくはないの!」
紬父「……」
紬「……」
紬父「……それがお前の考えだというのか?」
紬「はい」
紬「お父様が分かってくれるまでお城に戻る気はありません」
紬父「……よろしい」
紬「え?」
紬父「ならば出て行くがよい」
紬「っ!?」
律「……」
澪「……」
紬「……はい
紬「失礼しました」
紬「行きましょう」
律「お、おう」
澪「いいのか?」
紬「ええ」
紬父「……」
――町
唯「ねえ純ちゃん、いいことってなあに?」テクテク
純「そのうち分かりますよ」テクテク
梓「どこに向かってるの?」
純「てきとーだよ」
梓「適当って……」
純「あ、あそこ寄っていこう」
唯「お店?」
梓「そうみたいですね」
純「こんにちはー」
店主「おお、純ちゃん」
店主「そちらはお友達かい?」
純「はい!」
店主「ほれ、これ持って行きな!」
純「ありがとうございます!」
店主「ほれ、お友達も」
梓「あ、ありがとうございます」
唯「草もちだー!」
唯「私大好き!」
店主「そりゃあよかった」
店主「また来な!」
純「はーい!」
唯「いいことって、このことだったんだね~」モグモグ
純「私って意外と顔広いんですよ~」
純「お腹が空いたときはこうやって適当にその辺を散歩するんです」
純「そうするとさっきみたいに」
唯「おお~」
唯「純ちゃんお主も悪よのう」
純「唯先輩こそ」
唯「わっはっはっは!」
梓「でもそれってただずるいだけじゃあ……」
純「え?何?」
梓「なんでもないです」パクパク
町人「おお、純ちゃん!」
純「あ、こんにちはー」
町人「丁度よかった!」
町人「これみんなで食べな!」
純「わ、カステラだ!」
唯「わあ!」
純「ありがとうございます!」
町人「いいってことよ!」
唯「純ちゃんすごいね!」
純「えっへん!」
梓(まあいいか……)
――城の外
律「ムギ、良かったのか?」
紬「うん……」
紬「でもごめんなさい……ちゃんと話を終わらせることができなくって……」
澪「いや、ムギは頑張ったよ」
律「そうだな、よくやったよ」
律「私達は何もできなかったし」
澪「ほんとだな」
紬「ありがとう……りっちゃん、澪ちゃん」
律「そういえば唯と梓はどこいったんだ?」
澪「先に帰ったとか?」
律「じゃあ私達も帰るか」
紬「うん!」
――琴吹城
紬父「……」
紬父「『また』縛られたくはない……か」
紬父「……」
紬父「斎藤」
斎藤「はっ」
紬父「さっきの紬を見て……お主はどう思ったかのう?」
斎藤「紬お譲様は成長なさいました」
斎藤「とてもお友達を大切にしていらっしゃるようで」
紬父「……そうじゃのう」
――町
唯「お腹いっぱ~い」
梓「そうですね」
純「あー、私そろそろ帰らなくちゃいけないです」
唯「え、もう帰っちゃうの?」
純「はい、家の手伝いほったらかしだったので」
梓「ほったらかしでうろうろしてたの……」
純「ということで、怒られちゃうんで私はこれで」
唯「うん、またね~」
梓「ばいばい」
純「あ!今度妹さん連れてきてくださいよ!」
唯「わかったよ~」
純「楽しみにしてます!」
梓(なんでこんなに会いたがってるんだろう……)
――うどん屋
律「ただいまーっと」
澪「あれ?唯たちはまだか」
紬「そうみたいね」
律「この後どうするー?」
紬「演奏会に向けての話し合いとかは?」
澪「そうだな」
律「今日梓のに行くのは無理かな―?」
律「はやく練習もしたいし」
紬「聞いてみましょう」
唯「ただいまー」
梓「あ、みなさん戻ってたんですね」
唯「ムギちゃんどうだった?」
紬「うん、実は……」
紬は結果を唯と梓に報告した
梓「そうですか……」
唯「でも自分の気持ちは伝えられたんでしょ?」
紬「うん!」
唯「じゃあ大丈夫だね!」
梓「大丈夫って、まだ問題は解決してないんじゃ……」
紬「梓ちゃん」
梓「は、はい」
紬「私はお父様に気持ちを伝えたわ」
梓「はい」
紬「だからとってもすっきりしたの」
紬「だから、その問題はちょっとの間忘れて、今は今度の演奏会を成功させたいの」
紬「協力してくれる?」
梓「わかりました!そういうことでしたら」
紬「ありがとう!」
律「それでなー、梓」
梓「はい?」
律「今から梓の家に行ってもいいか?」
律「はやく練習もしたいし」
澪「無理にとは言わないよ」
梓「うちはいつでも大丈夫です」
梓「もちろん今からでも!」
律「本当か!?」
梓「はい!」
唯「え、今からあずにゃんの家にいくの?」
紬「そうよ」
唯「わーい!」
律「よし!早速いくぞ!」
――琴吹城
斎藤「お手紙が届いております」
紬父「わし宛てか?」
斎藤「はい」
紬父「なんじゃろうか」ガサガサ
紬父「これは……おお!」
紬父「中野氏の演奏会の招待状か!」
紬父「またこの時期が巡ってきたか」
紬父「……」
紬父「今年からは紬も出させてやりたかったが……こんな状況だからのう……」
紬父「ぬう……」
――中野氏の屋敷
律「おー、でかいなー」
梓「演奏会などで使う大きい部屋と一体化してますからね」
唯「りっちゃん!池があるよ!」
律「お前池好きだな」
唯「ふんすっ」
紬「素敵なお屋敷ね」
梓「ありがとうございます」
梓「みなさん、中へどうぞ」
――屋敷の中
律「おおー、三味線が沢山ある!」
紬「すごいわ」
澪「色々な種類の三味線があるな」
梓「そうですね」
梓「津軽三味線に新内三味線、義太夫三味線に長唄三味線……」
梓「地域や伴奏によって種類がちがいますね」
唯「へー、そうなんだ」
梓「いや、唯先輩は知っておきましょうよ……」
――――
梓「ここが演奏会の会場です」
唯「ひろーい!」
澪「こ、こんな広いところで演奏するの……」ドキドキ
律「今から緊張してどうする」
紬「澪ちゃん、大丈夫よ」
澪「う、うん」
梓「じゃあ、早速練習……」
律「唯!探検にいくぞ!」
唯「おー!」
紬「あーん、私も~」
梓「ええ!?」
梓「練習したいって言ったの律先輩じゃないですか!」
律「いくぞー!」
梓「ええー……」
澪「まったく……」
――屋敷のまわり
唯「りっちゃん!水車があるよ!」
律「おほー!かっけー!」
紬「あっちになんか変な建物があるわ!」
律「お?どれどれ?」
梓「勝手に人の家を……」
猫「にゃ~」
澪「あ、猫だ」
梓「この辺は野良猫が多くて集まってくるんです」
澪「へえ~、そうなのか」
梓「よしよし」ナデナデ
猫「にゃ~」
梓「……」ナデナデ
梓「澪先輩」
澪「ん?なんだ?」
梓「猫又の話って知ってます?」
澪「猫又?」
梓「飼猫が老いると猫又という妖怪になって悪さをしたり……」
澪「!?」
梓「山奥に潜む猫又は人を食べちゃうとか……」
澪「いやああああああ!」ダダダ
梓「!?」ビクッ
梓「……あれ?」
梓「逃げちゃった……?」
律「梓」
梓「あ、律先輩」
律「その調子だ」グッ
梓「え?」
――――
なんやかんやで演奏会当日……
唯「わー、人いっぱいだ!」
梓「今までで一番客が多いそうです」
澪「もう私帰る……」フラフラ
律「待ちなさい」グイ
澪「だって……無理だよう……」
律「いいか?客をかぼちゃだと思うんだ」
律「そうすればどうってことない」
澪「かぼちゃ……」
律「そうだ、かぼちゃだ」
澪「……」ホワワ~ン
澪「えへへ……おいしそう……」
律「だめだこりゃ……」
紬「楽しみだわ~」
唯「見て見て!」
唯「忍者!」ドロン
梓「唯先輩も少しは緊張しましょうよ……」
紬「梓ちゃんは緊張しないの?」
梓「慣れてますから」
紬「凄いわ~」
――――
斎藤「到着しました」
紬父「うむ」
斎藤「こちらです」
紬父「今年はいつになく人が多いのう」
斎藤「過去最高のようで」
紬父「そうか」
紬父「紬を連れてこれなくて本当に残念じゃ……」
――演奏会中
律「みんな完成度高いなー」
梓「有名な演奏家も沢山参加してますから」
澪「かぼちゃ……かぼちゃ……」
紬「かぼちゃ?」
唯「澪ちゃんどうしたの?」
澪「かぼちゃが沢山あるんだ……えへへ……」
唯「いつもの澪ちゃんじゃない!?」
紬「これは……何かの前触れ!?」
律「お前らも落ち着け」
梓「この次の人が終わったら私達ですよ」
澪「うう……」
律「みーお」
澪「りつう……」
律「一回深呼吸だ」
澪「うん……」
澪「すー……はー……」
律「少しは落ち着いたか?」
澪「うん……」
律「よし」
梓「そろそろですよ」
律「よし!気合いいれてくぞ!」
唯「おー!」
紬「おー!」
――客席
紬父「皆すごい演奏をするのう」
紬父「次はどんな演奏が聴けるのじゃろうか」
紬父「……」
紬父「ほう、次は女の子たちか」
紬父「……ん?」
紬「あれは……」ジー
紬父「!?」
紬父「紬!?」
紬父「な、なぜ紬が……!?」
紬父「……」
紬父「そうか……友達と……」
紬父「……」
――舞台
律「よーし、配置はばっちりだ」
澪「みんな見てる……」ドキドキ
紬「澪ちゃん、大丈……」
紬「!?」
紬(お、お父様!?)
律「ん?ムギどうした?」
紬「……」
律「あ!」
唯「どうしたの?」
律「あれ」
唯「あ、ムギちゃんのお父さん!」
澪「見にきてんだ」
紬「さあ、はじめましょう」ニコッ
律「……わかった」
律「いくぞ!」
――演奏中
紬父「……」
紬父(紬の演奏は何度も聴いたことがあるが……)
紬父(あんなに伸び伸びとした演奏は初めてじゃ……)
紬父(今まで聴いたどんな演奏よりも美しい……)
紬父(……)
紬父(紬のやつ、演奏中なのに微笑んでおるわ)
紬父「……」
――終了後
唯「大成功だよね!?」
律「大成功だ!」
梓「みなさん凄かったです!」
澪「ちゃんとできたぁ……」プシュー
紬「……」
紬「み、みんな!」
紬「私……」
律「……」
律「ムギ」
律「行っておいで」
紬「……うん!」
紬「ありがとう!」タタタ
唯「りっちゃん、かっこいいですな」ツンツン
律「よせやい」
――――
紬「お父様……」
紬父「紬、素晴らしい演奏じゃったぞ」
紬「ありがとうございます……!」パアア
紬父「今までで最高の演奏だったのう」
紬「はい!」
紬「それで……その……」
紬父「斎藤」
斎藤「はっ」
紬父「今すぐ、隣国の相手方に使いを向かわせるのじゃ」
斎藤「早急に手配いたします」
紬父「うむ」
紬「え、それって……」
紬父「結婚は取りやめじゃ」
紬「お父様……!」
紬父「すまぬのう、紬」
紬父「わしは『また』同じ過ちを犯してしまうところだった」
紬父「お前は……お前の意思で生きるのじゃ」
紬父「わかったな?」
紬「はい!」
――――
律「ありがちやなー」
唯「だがそれでいいんだよ!」
澪「でもよかったな」
澪「お父さんも分かってくれて」
梓「そうですね」
律「これにて一件落着!」
澪「私達は何もしてないだろ」
唯「あずにゃ~ん」
唯「次はお花見だよ!」
律「お花見!?」
梓「はい、唯先輩と演奏会が終わったら、みんなでお花見しましょうって話してたんです」
律「そうだったのか!」
律「こうしちゃいられない!」
――お花見
律「じゃあ、演奏会の成功をお祝いして……」
律「乾杯!」
一同「乾杯!」
唯「見て見て!」
唯「桜吹雪!」ブオー
紬「唯ちゃんすごい!」
澪「あ、これおいしい」モグモグ
律「というか梓」
梓「なんでしょう」
律「ムギのお父さんが来ること梓は知ってたんじゃないのか?」
梓「すみません、忘れてました」パクパク
律「おいおい……すごい大事なことだぞ……」
梓「結果がよかったんだからいいじゃないですか」モグモグ
律「まあ……そうだな」
梓「そんなことより今はお花見を楽しみましょう」モグモグ
律「そうだな!」
梓「そうです」モグモグ
律「それとな、梓」
梓「はい」モグモグ
律「口に物をいれて喋るんじゃありません」
梓「すみません」モグモグ
律「わかってないだろ!」ビシッ
第二篇 完
地理関係をちょっと
・律と澪のうどん屋は琴吹城の城下町にある
・純ちゃんも琴吹城の城下町に住んでいる
・琴吹城の東の方角に平沢城があり、平沢城の城下町も存在する
・梓の家は琴吹城の南の方角にあるが、琴吹城城下町の中ではない
・平沢城からうどん屋に行くのと、梓の家からうどん屋にいくのでは前者の方が遠い
~第三篇~
――うどん屋
律「また新作ができたんだ」
純「新作?」
紬「どんなの?」
律「その名は……」
律「夏限定冷やしうどん!」ババーン
純「た、食べたいです!」
紬「私も!」
律「うむ、しばし待たれよ」
澪「誰だよ」
律「これだ!」ドン
紬「まあ!」
純「おおー!」
律「食べてみてくれ」
純「いただきます!」
紬「いただきまーす!」
純「……」ズルズル
紬「……」ズルズル
純「んまい!」テッテレー
紬「おいしいわ!」
律「当たり前だ!」
飛脚「ごめんよー」
澪「あ、はい」
飛脚「手紙届けにきたよー」
澪「ありがとうございます」
律「手紙?」
澪「うん」
澪「誰だろう?」ガサガサ
澪「えーっと」
澪「唯だ!」
律「お、唯からか」
紬「なんて書いてあるの?」
澪「はい」
『りっちゃん、澪ちゃんへ――
私がこの手紙を書いた3日後にうどん屋さんにいきます!
今回は憂も一緒だよ!
なんだか純ちゃんが前から憂に会いたがってたみたいだから、純ちゃんもよんでね!
あずにゃんにも手紙を送ったんだけどこれるかな~?
それでは!
―― ○月×日 唯より』
律「おお、唯にしては珍しく来ることを予告したな」
澪「憂ちゃんもくるのか」
純「もしかして唯先輩の妹さんですか!?」
律「そうだよ」
律「純ちゃんも来てって書いてるぞ」
純「来ます!絶対来ます!」
律「お、おう」
純「いつですか?」
律「この手紙の日付の3日後だから……明後日だな」
純「わかりました!」
紬「私も来るわ!」
――唯が来る日
律「そろそろ唯と憂ちゃん来るかなー」
澪「梓も来れるのかな?」
律「梓なら来るだろー」
コンコン
律「ほら、梓が来た」
澪「え、どうして分かるんだ?」
律「扉を叩く音でわかるよ」
澪「へえ、すごいな」
律「梓かー?」
梓「はい、そうです」
ガラガラ
律「ほらな?」
澪「うん」
梓「どうして私だって分かったんですか?」
律「実は私、超能力が使えるんだ」
梓「へえ、すごいですね」
律「えっへん」
律「あ、扉開けっぱなしでいいよ」
梓「あ、はい」
梓「唯先輩と憂はまだですか?」
律「まだだな」
梓「憂と会うのは久しぶりなので楽しみです」
澪「梓は憂ちゃんと仲いいからな」
梓「はい」
律「今日は純ちゃんとムギもくるんだ」
梓「あー、純は憂に会いたがってましたからね」
律「すっごい楽しみにしてたけど、どうしてかな?」
梓「私にもわからないです」
律「ふーん」
――――
唯「暑いね~うい~」テクテク
憂「もう夏だね~」テクテク
唯「こんな暑い日は氷菓子が食べたいね!」
憂「お姉ちゃん、それ一年中言ってるよ?」
唯「えへへ~」
憂(お姉ちゃん可愛い!)
唯「あずにゃんは来れるのかな~」
憂「私も梓ちゃんに会いたいな」
唯「憂はあずにゃんと仲良しだからね!」
憂「うん!」
――――
紬「こんにちはー♪」
純「こんにちはー」
律「お、ムギに純ちゃん」
澪「一緒に来たのか」
紬「そこで一緒になったの~」
純「あ、梓も来てたの」
梓「来てたよ」
梓「憂もくるしね」
純「そうだね!」ワクワク
――――
憂「私に会いたがってる純ちゃんってどういう人?」
唯「いい子だよ~」
唯「純ちゃんと一緒にいると沢山美味しいものたべれるんだよ」
憂「へえ~?」
唯「あ、うどん屋さん見えてきた」
――――
純「近くの村で猫またが出たって噂ですよ」
律「へー」
純「なんでも飼猫が化けたって話です」
澪「ひっ……猫また……」ビクッ
律「じゃあ梓もそのうち猫またに……」
純「可哀想に……」
梓「なりませんよ!?」
梓「私人間です!」
澪「梓が……猫またに……」ビクビク
梓「なりませんって!」
梓「澪先輩も本気で怖がらないでください!」
澪「う、うん……」
紬「でも梓ちゃんが化けた猫またなら怖くないわね」
梓「だからなりません!」ガオー
唯「りっちゃんおいーす」
律「お、来たか」
憂「みなさん、こんにちわ」ペコッ
澪「いらっしゃい」
紬「こんにちは、憂ちゃん」
憂「こんにちは」
唯「あずにゃんも来てくれたんだねー!」ギュッ
梓「だから抱きつかないでください!」
唯「あずにゃ~ん」スリスリ
憂「梓ちゃん、久しぶりだね」
梓「うん、久しぶり」グニグニ
梓「……唯先輩」グニグニ
唯「なあに?」スリスリ
梓「暑いです……」グニグニ
唯「そうだね……」スリスリ
梓「やめましょう……」
唯「うん……」
純「……」ジー
憂「あ、もしかしてあなたが純ちゃん?」
純「そうです」ジー
憂「?」
憂「私は平沢憂です、よろしくね」
純(この子が……凄い天然の……)
純「うん、よろしく!」
梓「……?」
純(よし)
憂「なんだか私に会いたがってたって聞いたんだけど……」
純「うん、会いたかった」
梓(はっきり言っちゃった)
純「そこでいくつか質問があるんだけど」
憂「え、何?」
純「好きな食べ物は?」
憂「う~ん、お魚かな?」
純「ふむ」
純「趣味は?」
憂「お料理かな?」
純「へえ~……」
純(なんか普通だなー……)
純(そんなに凄い人でもないのかな)
梓「憂って剣術も凄いよね」
梓「あれも趣味とかなの?」
憂「あれは趣味とかじゃないよー」
梓「じゃあ誰かに習ってるの?」
憂「ううん、習ったことはないよ」
憂「和さんを見てちょっと学んだくらいかな」
梓「ああー、あの人もすごいよね」
梓「あの人に訓練してもらったの?」
憂「訓練とかはほとんどしたことないよ?」
梓「え、じゃあどうしてあんなに……」
憂「なんだかね、お姉ちゃんを守らなきゃ!って思うと、勝手に剣が動くんだ」
梓「へえ~……」
梓(憂……それは危ないよ……)
純「唯先輩の護衛でもしてるの?」
憂「そんな大げさなものじゃないよ~」
憂「でもお姉ちゃんに危害を加える人は私が天誅を下すんだ♪」
梓「そ、そうなんだ」
梓(あ、ちょっと寒気が)
純(違う意味で凄い人だった……)
純「憂はこの町に来たことあったの?」
憂「う~ん、あんまり無かったなあ」
憂「だから今日、少し見て回ろうかな~なんて思ってたんだ」
純「じゃあ、私が案内する!」ビシッ
憂「え、いいの?」
梓「あ、じゃあ私もついていこうかな……」
純「梓も?」
梓「うん」
梓「あっちはあっちで盛り上がってるみたいだし……」
律「右大臣!」ババーン
唯「りっちゃんずるーい!」
唯「じゃあ私左大臣!」ババーン
紬「か、かっこいい~……」ウットリ
澪「なにやってんだ……」
純「ああ……」
憂「じゃあ3人でいこう♪」
梓「うん」
憂「お姉ちゃん」
唯「なにー?ういー」
憂「ちょっと純ちゃんと梓ちゃんと出掛けてくるね?」
唯「遅くならない内に帰ってくるのよ」キリッ
憂「はーい」
純「また食べ歩きしよう!」
梓「もらい歩きの間違いじゃないの」
純「細かい事は気にしない!」
――――
唯「あ、そう言えばりっちゃん」
律「なんだ?」
唯「私のお父さんがねー、りっちゃんのとこのうどん食べてみたいって言ってたよ」
律「お父さんって……殿様が!?」
唯「うん」
澪「唯のお父さんか……そう言えばお城には行っても、会ったことなかったな」
律「ムギは会ったことあるのか?」
紬「私も会ったことはないわね」
唯「じゃあ今度来た時にでもどう?」」
律「そうだなー、次の定休日にでもいくか」
紬「次の定休日っていつ?」
律「えーと、三日後かな」
紬「三日後……」
紬「ごめんなさい……その日は行けないわ……」
唯「え、ムギちゃん来れないの?」
紬「うん、お父様とお母様とお茶会に出席しないといけないの……」
律「そっかー」
律「じゃあ私と澪で行くか」
唯「あずにゃんはどうかな?」
律「あー、帰ってきたら聞いてみよう」
澪「殿様に……また会う……」
律「また緊張してんのかよ……」
唯「澪ちゃん大丈夫だよ!」
唯「私のお父さんなんだから!」
澪「うん……」
律「でもどこで調理すればいいんだ?」
唯「あ、それならうちの台所使えるとおもうよ~」
律「そうか、じゃあ材料だけ持ってけばいいな」
唯「うちのお父さんは凄い食通なんだ~」
唯「色んな国の食材を取り寄せて、料理人に色んな料理を作らせてるんだよ」
律「へえ~」
唯「だから台所もすっごい大きいんだよ~」
律「すごい大きい台所か……腕がなるな!」
唯「私の分も作ってね!」
律「はいはい」
――町
純「でさー」
憂「あはは、何それー」
ドン!
梓「あいた!?」
野武士「いてえ!」
梓「あ、ごめんなさい!」
野武士「ああん!?ごめんで済むと思ってるのかあ!」
純「そっちがぶつかって来たんでしょ!」
憂「じゅ、純ちゃん……!」
野武士「なんだとお!?」
野武士「切り捨てる!」シャキーン
梓「ひいっ!?」
純「梓!」
憂「待って!」
野武士「ああん!?」
憂「……」スッ
純「短剣……」
野武士「へっ!そんな短剣でやり合おうってか!?」
野武士「上等じゃねえか……って、ん?」
憂「……」
野武士「短剣に刻印が……」
野武士「あれは……平沢家の家紋!?」
野武士(や、やばい!)
野武士「あはは……いやー、俺もちゃんと前見てなかったかなー……なんて」
憂「……どこか行ってください」
野武士「し、失礼しましたー!」ピュー
梓「あはは……あはははは……」ガクガク
憂「大丈夫?梓ちゃん」
梓「うん……」
梓「怖かったよ……」ジワッ
憂「もう大丈夫だよ」ナデナデ
梓「うん……ありがとう……」グスッ
純(う~ん、やっぱり凄い人だった)
憂「もう帰ろっか?」
梓「うん……」
――うどん屋
律「ええ!?」
澪「切り捨てられそうになった!?」
梓「はい……」
純「でも憂が助けてくれました!」
唯「すごいよ憂!」
紬「でも無事でよかったわ……」ホッ
梓「ほんとに怖かったんですよ……」
澪「でも流石憂ちゃんだな」
澪「そういう時でも冷静に行動できるんだから」
律「澪はその場で腰抜かしそうだけどな」
澪「そんな状況だったら誰だってそうだろ!」
律「あははー、そうだなー」
澪「私だって……いざって時はだな……」モンモン
澪「し、しっかり落ち着いてだな……」モンモン
澪「そう、冷静に行動するもん!」バッ
律「そういば梓ー」
梓「なんですか?」
澪(聞いてなかった……)シュン
律「三日後に唯のお城に行くんだけど梓もくるか?」
憂「律さん達うちにいらっしゃるんですか?」
唯「うん!お父さんにうどん食べさせてくれるんだよ!」
憂「へ~」
憂「前から食べてみたいっていってたもんね」
梓「三日後ですか……ちょっと都合悪いですね」
唯「え~……」
律「そっかー」
律「じゃあ、やっぱり私と澪だけだなー」
澪「うん」
律「唯、そういうことだ」
唯「わかりました!」
紬「今度都合いい時、私も行きたいわ」
唯「うん!」
純(あれ、私誘われてないや)
――3日後
律「ついたー」
澪「こっちの町も賑やかだな」
律「人はこっちの方が多いかもなー」スタスタ
律「いくぞー」
澪「ちょっ……勝手に入っていいのか?」
律「う~ん、でも出迎えもないみたいだし」
澪「でもお城に勝手に入るのはちょっと……」
律「じゃあ、誰かに声かけてみるか」
澪「うん」
律「あ、丁度誰かいる」
律「……」
澪「……」
律「声かけろよ」
澪「り、律が声かけてよ……」モジモジ
律「仕方ないなあ」
律「すみませーん」
家来「む、何奴」
律「あのー、私達唯の友達なんですけど」
家来「おお、話は聞いていますぞ」
家来「案内しましょう」
律「ありがとうございます」
――城内
唯「いらっしゃい!」
律「おい、唯」
律「出迎えにでも来てくれればよかったのに」
澪「入りずらかったんだぞ」
唯「ごめ~ん」
憂「こんにちは」
澪「こんにちは、憂ちゃん」
唯「ささ、そんなことより」
唯「殿がお待ちかねですぞ」
律「あー、はいはい」
澪「はは、殿様なんてもう慣れっこさ」ガクガク
律「足が波打ってるぞ」
澪「まるで骨を抜かれたようだよ」ガクガク
律「別に緊張することもないだろー」
唯「私と話す時みたいにしてれば大丈夫だよ~」
律「いや、それはまずいだろ」
唯「まあまあこちらへ」
――殿の間
唯「連れて来たよー」
唯父「おお、そうか」
律「こんにちはー」
澪「こ、こんにちは……」
唯「こっちがりっちゃんで、こっちが澪ちゃんだよー」
唯父「初めまして、唯の父親です」
律「は、初めまして!」
律(唯のお父さんってこんなに若い人だったのか……)
澪「……」ドキドキ
唯父「いや~、唯がいつもお世話になってるようで」
律「いえ、こちらこそ!」
唯父「以前唯を助けてくれたお礼を言ってなかったね」
唯父「本当にありがとう」ペコッ
澪(殿様に頭下げられた……)
律「いや、私達も唯に色々と助けてもらいました」
律「こちらこそありがとうございます」
唯「そうだよ~、私だって人助けしてるんだよ~」
唯父「そうなのかい?」
澪「はい……!」
澪「私も……唯には色々と教えてもらったって言うか……」モジモジ
唯父「唯も人に感謝されるぐらい成長したんだね」
唯「えへへ~」
唯父「ああ、そうそう」
律「はい?」
唯父「今日はすごく美味しいうどんが食べれるって聞いたんだけど……」
律「あ、はい!」
律「今日はそのために来ました!」
唯父「わざわざすまないね」
唯父「調理はうちの台所を使っていいよ」
律「はい!」
――――
律「できました!」
澪(台所広かったなあ)
唯父「おお、随分はやかったね」
唯「りっちゃん!私のは!?」
律「ちゃんと作ったよ」
澪「どうぞ」
唯父「ありがとう」
唯父「いただきます」
唯父「……」ズルズル
律「……」ドキドキ
澪「……」ドキドキ
唯「♪」ズルズル
唯父「おお!」
唯父「これはうまい!」
律「本当ですか!?」
唯父「うん、今まで食べたうどんの中で一番おいしいよ」
律「ありがとうございます!」
唯父「うん、それでね」
唯父「ちょっと君たちに話があるんだ」
澪「え?話?」
唯父「今は琴吹氏の城下町でうどん屋をやってるんだよね?」
律「そうです」
唯父「前に唯から、大きい家を建てて店もっと大きくするのが夢だって聞いたんだけど」
律「え、あ、はい!」
澪「!」
律「まあ、もっとお金が溜まったらの話ですけど」
唯父「じゃあその夢を私が叶えてあげるってのはどうかな?」
澪「え!?」
律「ど、どういうことですか?」
唯父「大きい家と大きいお店を作ってあげるってことだよ」
律「ほんとですか!?」
唯父「唯を助けてくれたお礼だよ」
唯父「琴吹氏の領地に勝手に建てることはできないから、こっちの町だけどね」
澪「こっちの町ってことは……引っ越さないといけないってことですよね?」
唯父「そうなるね」
律「う~ん」
澪「律、それは……」
律「少し考えてもいいですか?」
唯父「急に言われても困るだろうしね」
唯父「ゆっくり考えるといいよ」
律「はい!」
――唯の部屋
唯「ねえ、見て見て!」
律「これは……三味線の撥?」
唯「そうだよ!」
律「なんでこんなに沢山あるんだ?」
唯「可愛いから集めてるんだ!」フンスッ
律「可愛いか……?」
澪「なあ、律」
律「ん?」
澪「さっきの話だけど……」
律「ああ」
澪「律はどうしようと思ってるんだ?」
律「私は……お願いしようと思ってる」
澪「……」
律「だってこんな機会もう2度とないかもしれないんだぞ?」
律「こっちの町の方が大きいし、店も大きくすればもっと人があつまる」
律「いいことじゃないのか?」
澪「そうだけど……」
澪「でも引っ越すことになるんだよ?」
律「もっと大きい家に住めるんだからいいじゃないか」
唯(二人とも真剣に話してる……)
澪「……律はそれでいいの?」
律「どういうこと?」
澪「……いいよ」
律「?」
律「とにかく、今回の話は受け入れようと思ってる」
律「唯のお父さんの好意も無駄にできないしな」
律「いいか?」
澪「……律がそういうなら」
律「そうと決まれば、早速唯のお父さんに伝えておこう」
律「唯、帰る時にでももう一度お父さんに会えるか?」
唯「うん、大丈夫だよ」
律「よし」
――殿の間
唯父「じゃあ、そういうことでいいんだね?」
律「はい!お願いします!」
唯父「じゃあ大急ぎで新しい家とお店を作らせよう」
唯父「完成次第、引っ越しの業者をそちらにむかわせる」
唯父「詳しい日程とかは後で手紙を送るよ」
律「ありがとうございます!」
澪「……」
澪(律……)
――翌日
紬「ええ!?」
梓「じゃあ引っ越すことになったんですか!?」
律「ああ」
紬「いつなの?」
律「家と店が完成してからだからまだ未定かな」
梓「そうですか……」
紬「この家はどうなるの?」
律「空き家になると思う」
律「買い手もいないだろうし」
梓「そういえば澪先輩はどうしたんですか?」
律「澪ならどっかにでかけたよ」
梓「どっかって……」
律「澪、最近変なんだよなー」
紬「変?」
律「なんか元気ないっていうか」
梓「どうしたんでしょう?」
紬「心配ね」
――後日
律「これはこうしてっと」
飛脚「ごめんよー」
律「あ、はい」
飛脚「手紙きてるよー」
律「あー」
律「みおー」
澪「なに?」
律「ちょと今手が離せないから手紙受け取ってー」
澪「ああ、うん」
飛脚「はいよ」
澪「ありがとうございます」
律「誰からだー?」
澪「えーと……」ガサガサ
澪「!」
澪「……」
律「みおー?」
澪「……唯からだよ」
澪「家……できたって」
律「ほんとか!?」
澪「……」
――引っ越し当日
律「あ、それこっちでーす」
業者「この棚はどうします?」
律「あー、それは処分しちゃって下さい」
業者「わかりました」
澪「捨てちゃうの?」
律「もうボロイからなー」
律「この際家具とか全部買いかえちゃおうか?」
澪「……」
律「……」
律「なあ、澪」
律「最近どうしたんだ?」
澪「……なんでもないよ」
律「なんでもないっていっても、なんか元気が……」
澪「なんでもないよ!」
律「!?」ビクッ
澪「……ばか律」
澪「……」スタスタ
律「……」
律「なんだよ……」
業者「終わったんで運搬開始しまーす」
律「あ、はーい」
――平沢城城下町 入口
唯「りっちゃ~ん!澪ちゃ~ん!」
澪「あ、唯」
律「おー、出迎えに来てくれたのか」
唯「さあさあ、ここからは私が案内するよ!」
律「ちゃんと案内できるのか~?」
唯「できるもん!」
律「はは、悪い悪い」
唯「こっちだよ!」
――――
律「おお!すごい!」
澪「大きい……」
唯「すごいでしょ!」
律「これが私達の新しい家か……!」
澪「……」
律「隣の建物が店か?」
唯「そうだよ~」
律「早く中をみよう!」タタッ
唯「あ、まって~」
澪「……」
唯「澪ちゃんどうしたの」
澪「あ、え?」
唯「早く行こう?」
澪「うん……」
――――
律「うっひょー!」
澪(広い……)
律「中もすごいなー」
唯「えっへん!」
律「なんで唯が威張ってんだよ」
唯「いいの!」
澪(ここが新しい家……)
澪「……」
唯「新しいお店も2人だけでやるの?」
律「いや、新しい人も雇おうと思ってるんだ」
唯「新しい人?」
律「ああ、店が大きくなったら二人だけじゃやっていけないだろうからな」
唯「そっかー」
澪(新しい人雇うんだ……)
澪(なんか勝手に事が進んでる……)
澪「……」
唯「お店はいつ開店するの?」
律「一週間後の予定だ」
律「その時はみんなを招待するよ!」
唯「やったー!」
律「あー、一週間後が待ち遠しいな!」
澪「……」
――――
純「ふんふ~ん」テクテク
純「うどんっ、うどんっ」テクテク
純「あれ?うどん屋の前に人だかりができてる」
純「なんだろ?」
男1「おい、どうなってんだ」
男2「聞いてねえぞ!」
純「すみませーん」
男3「おお、純ちゃん」
純「どうしたんですか?」
男3「この張り紙を見てみなよ」
純「どれどれ……」
純「平沢城城下町に移転!?」
純「どうして急に……」
――開店当日
梓「初日からお客さん沢山ですね」
律「まあな!」
紬「すご~い!」
唯「大繁盛だね!澪ちゃん!」
澪「う、うん」
澪「そうだね……」
澪「……」
こうして平沢城城下町で律たちの新しいうどん屋が開店した。
新たに従業員を雇い、店は以前よりもさらに繁盛していた。
そして開店からしばらく時が経った。
――――
和「あら、おいしわね」
律「だろー?」
和「うん、すごいわ」
唯「和ちゃんのもおいしそ~」
唯「一口交換しない?」
和「いいわよ」
唯「はい!私のはきつねうどんだよ!」
和「じゃあ、一口もらうわね」ヒョイ
和「……」モグモグ
唯「……」
唯「和……ちゃん……」
和「え?」
唯「和ちゃん!」
和「な、なによ」
唯「なんでお揚げ食べちゃうの!?」
和「一番上にあって取りやすかったからよ」
唯「お揚げはきつねうどんの命だよ!?」
唯「お揚げがなかったらただのうどんになっちゃうんだよ!?」
律「ただのうどんって」
和「ごめんごめん、じゃあわたしのてんぷらあげるわ」
唯「そういうことじゃないんだってばあー!」
澪「あれ?梓は?」
紬「憂ちゃんと出掛けたみたいよ」
和「そういえば、こっちの生活にはもう慣れたの?」
律「いやー、慣れたも何も最初からこっちに住んでたような感じでさー」
澪「……!」
律「やっぱり新しい家いいなー」
律「あんなボロイ家に住んでたんて嘘みたいだ」
澪「!?」
澪「律!」ガタッ
律「!?」ビクッ
紬「み、澪ちゃん?」
律「ど、どうした?」
澪「あ……ご、ごめん」
唯「びっくりした……」ドキドキ
和「どうしたの?」
澪「な、なんでもないよ」タタッ
律「あ、澪!」
唯「いっちゃった」
紬「……」
――――
澪「はあ……」
澪「……」
紬「澪ちゃん」
澪「ムギ……」
紬「どうしたの?」
澪「うん……」
紬「りっちゃんと何かあったの?」
澪「……」
澪「実は……」
澪はこれまでのことを紬に話した
紬「そうだったの……」
澪「わがままなのは自分でも分かってるんだ……」
紬「澪ちゃん……」
澪「私は……あの家で律とうどん屋をやっていきたかった……」
紬「……」
澪「なにか……大切なものを置いてきてしまった気がするんだ……」
紬「大切なもの……」
澪「ごめんな、変な話してさ」
紬「ううん、そんなことない」
紬「話してくれてありがとう」
澪「うん……」
澪「でも……なんかもう律と顔合わせづらいよ……」
澪「今は……ちょっと一人でいたいかな……」
紬「うん、わかったわ」
――――
律「なあ、ムギ」
紬「なあに?」
律「ちょっと相談があるんだけど……」
紬「相談?」
律「うん、澪のことなんだけど……」
紬「!」
律「なんか最近澪とうまくいってなくて……」
律「さっきのも見ただろ?」
紬「……」
紬「りっちゃんはどうしてだと思うの?」
律「それが知りたいんだよ……」
紬(りっちゃん……)
律「どうしたらいいんだ……」
紬「りっちゃん、私思うの」
律「え?」
紬「澪ちゃんは、りっちゃんに気付いて欲しいんだと思う」
律「気付くって……何を?」
紬「それはりっちゃん自信が考えなくちゃだめよ」
律「私自身で……」
紬「そうよ、何か大切な事を忘れてない?」
律「大切な事……」
紬「うん、私から話すことはこれ以上ないわ」
律「うん……相談にのってくれてありがとう」
律「でもなんでムギはそう思うんだ?」
紬「ふふっ、秘密♪」
――夜
律「みおー?」
律「……」シーン
律「みお?」
律「……」
律「いない……」
律「……なんだよ」
律「……」
律「いーや、もう寝よ」
律「そのうち帰ってくるだろ」
――朝
律「まだ帰ってきてない……」
律「……」
律「唯の時と同じだ……」
律「やっぱり何かあったんじゃ……」
律「……」
律「捜しにいこう」
――平沢城
律「あの、すみません」
家来「何奴」
律「あ、うどん屋の者なんですが……」
家来「おお、存じ上げておりますぞ」
家来「どうされた?」
律「唯は居ますか?」
家来「城内におられます」
家来「どうぞお入りください」
律「ありがとうございます」
――城内
律「唯!」
唯「あ、りっちゃん!」
唯「どうしたの?」
律「澪ここに来てないか?」
唯「澪ちゃん?」
唯「きてないよ~」
律「そうか……」
律(ここだと思ったんだけどな……)
唯「どうしたの~?」
律「いや、なんでもないよ」
唯「?」
律「ごめん、ありがとな」
――――
律「どこにいるんだ……」
律「……」
律「考えられるのは……梓の家……琴吹城……」
律「!」
律「もしかして……!」
律「絶対あそこだ!」
――――
澪「……」
澪(飛び出してきちゃった……)
ガラガラッ
澪「!?」
律「はあ……はあ……」
澪(律……!)
律「澪……」
律「やっぱりここにいたのか」スタスタ
澪「……何しにきたんだよ」
律「何しにきたって……急にいなくなったりするから……」
律「心配したんだぞ……?」
澪「……」
律「なあ、み……」
澪「律は……」ボソッ
律「え?」
澪「律は……今の生活をどう思ってるの?」
律「どうって……充実してるとは思ってるよ」
律「店だって繁盛してるし」
澪「……私はあんまり楽しくないよ」
律「え?」
澪「うどん屋で成功するっていう律の夢についていくって決めてたけど……」
澪「でもなんか違うよ……こんなの」
律「……」
澪「新しい人を雇ったりしなくても……」
澪「律と2人だけでやっていければよかった……」ジワッ
律「澪……」
澪「私、律が家具を処分したり家を簡単に手放そうとした時……寂しかった」ポロポロ
澪「隙間風が多くても井戸が遠くても、この家が好きだったから……」ポロポロ
澪「辛い時も楽しい時も居たこの家が好きだったから……」ポロポロ
律「……」
律(そういうことだったのか……)
澪「私わがままだね……」グスッ
律「澪……私……」
澪「ごめんね……」
律「……私こそ……ごめん」
澪「律……」
律「今後のこと、もう一度話し合おう」
律「2人だけで……」
澪「……」
澪「……うん!」グスッ
第三篇 完
~結び~
――後日 平沢城
家来「お手紙が届いております」
唯父「ああ、ありがとう」
唯父「誰かな?」ガサガサ
唯父「お、あの子たちからか」
唯父「えーと……」
唯父「え!?」
唯父「……」
唯父「ふむ……」
唯父「まあ、あの子たちがそう決めたのなら仕方ないか」
――――
純「ねえ、梓ー」
梓「何?」
純「うどん屋だったとこの周辺、なんか静かになったと思わない?」
梓「そうだね」
梓「なんか……寂しくなったかな」
純「うん、いつも賑わってたからね」
梓「うん」
純「はあー」
純「日々の楽しみが減っちゃたなあ」
梓「そんな大げさな」
純「大げさじゃないもん」
梓「ふーん」
――――
紬「りっちゃん」
律「お、ムギ」
紬「戻ることにしたのね?」
律「うん、なんか私……一人で急ぎ過ぎてたみたいでさ」
律「ムギの言ってた通り、大切な事を忘れていたよ」
律「ありがとう、ムギ」
紬「ううん、これはりっちゃんが自分でやったことよ」
紬「私はなにもしてないわ」
律「ムギ……」
唯「なに話してるの~?」
紬「あら、唯ちゃん」
紬「あのね」
律「待って、ムギ」
紬「え?」
律「私が話すよ」
唯「なに~?」
律「あのな、実は――」
その後、律と澪は2人だけでうどん屋をやり直し、みんな幸せに暮らしましたとさ
めでたしめでたし
これで終わりです
第三篇は急いで必要な部分を復元したのですごい駆け足で荒削りになってしまいました……
何度もストップして申し訳なかったです
オリジナルのスレの最後で調子乗って続き書くって言って、誰も気にしてないだろうし
憶えてもいないだろうと思いつつも勝手に気にしていたので、完全に蛇足だけどいつか
やろうと思っていました。
それではありがとうございました
元スレ
~第一篇~
――――
律「はあ……今日はお客さん一人も来なかったな……」
澪「ここ一月はまともにお客さん来てないからな……」
律「私と澪がこのうどん屋をはじめてからもう結構経つけど、流行ったことなんて一度もなかった……」
澪「そうだな……」
律「そろそろ生活も限界になってきた……」
律「お金がないと新しいダシの研究すらできないよ……」
澪「……」
律「もう店を閉めて別の仕事を探すしかないのかな……」
澪「律……」
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:09:25.54 ID:DhM4up220
律「ごめんな……澪」
澪「え?」
律「こんな私についてきてくれて」
澪「何言ってんだよ」
澪「私達、幼馴染だろ」
律「うん……」
澪「それにうどん屋で成功するのは律の夢なんだろ?」
澪「こんな所であきらめちゃだめだぞ」
律「澪……」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:12:23.49 ID:DhM4up220
律「ありがとう……」
ドンドン!ドンドン!
さわ子「開けんかい!ゴルァ!」
澪「ひいっ!?」
律「まずい!お役人が来た!」
さわ子「居るのは分かってんじゃい!税滞納してんだよ!」ドンドン
さわ子「早く払え!」ドンドン
律「音立てちゃだめだぞ」ヒソヒソ
澪「……」ブルブル
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:14:48.16 ID:DhM4up220
さわ子「ちっ、また来るからな!」
さわ子「税を払えなかったらSATSUGAIするぞ!」
律「……」
澪「……」ブルブル
律「澪、もう行ったみたいだぞ」
澪「……うん」
律「はあ……税か……」
律「もう税を払う余裕なんてないよ……」
澪「……」
律「私達はこれからどうすればいいんだ……」
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:17:10.00 ID:DhM4up220
――翌朝
律「ふぁぁ……よく寝た」
澪「zzz」
律「今朝は冷えるな」
律「雨戸を開けよう」
ガッ、ガッ
律「ん?開かないぞ」
律「お役人が叩きまくるから建てつけが悪くなったんだな……」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:20:11.88 ID:DhM4up220
律「よし」
律「ふんっ!」ガラガラ
律「よし、開いた」
律「うお、雪積もってんじゃん」
律「……」
律「はあ……」
律「今日もお客さんは来ないのかな……」
律「……」
律「……ん?」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:22:49.93 ID:DhM4up220
律「あれは……」
律「!」
律「女の人が道に倒れてる!」
律「大変だ!」タタタ
律「おい!大丈夫か!?」ユサユサ
女「うぅ……」
律「よかった、生きてる」
律「家の中へ運ぼう!」
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:26:56.08 ID:DhM4up220
――うどん屋
律「澪!おい澪!」
澪「ん……」
律「起きろ!」
澪「なんだよ、朝っぱらから……」ウトウト
律「道に人が倒れてて、ここまで運んで来たんだ!」
澪「え?人が!?」ガバッ
律「体が冷たいんだ!とにかく暖めよう!」
澪「わ、分かった!」
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:29:43.09 ID:DhM4up220
――――
律「よし、これで大丈夫……なはず」
澪「そうだな……」
律「それにしても驚いたなー」
律「雨戸開けたら向こうに人が倒れてるんだもんな」
澪「でもなんでこんなところに?」
律「う~ん……」
律「本人に聞くしかないな」
澪「そうだな」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:32:37.32 ID:DhM4up220
澪「目を覚ますといいけど……」
律「うん……」
女「うぅ……」
澪「あ!」
律「お!目を覚ましたか!?」
女「ここは……?」
澪「うどん屋……まあ私達の家だ」
女「私はどうして……」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:36:09.96 ID:DhM4up220
律「道に倒れてたんだ」
律「慌てて運んだよ」
女「そうだったんだ……ありがとう」
律「いいってことよ!」
澪「私は澪だよ」
律「私は律」
女「じゃありっちゃんと澪ちゃんだね」
律(いきなりりっちゃんかよ)
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:38:45.05 ID:DhM4up220
澪「名前は?」
唯「唯だよー」
律「唯か」
律「唯はどこから来たんだ?」
唯「えっとねえ」
澪「うん」
唯「……」
澪「……」
律「ん?どうした?」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:41:52.84 ID:DhM4up220
唯「あれ?」
律「?」
唯「お、思い出せない……」
澪「え……思い出せないって……」
唯「ここに来る前のことが思い出せない……」
律「え!?」
唯は雪が降る中、行き倒れになり衰弱していた。
律達に助けられたが、後遺症で記憶の一部を失っていた。
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:44:17.40 ID:DhM4up220
律「唯……記憶が……」
唯「私……」
律「……」
澪「……」
律「と、とりあえず今はゆっくり休め」
澪「そうだな」
澪「まだ完全に回復したわけじゃないだろう」
唯「うん……」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:45:05.74 ID:DhM4up220
――夜
律「今日もお客さん来なかったな……」
澪「……」
律「……」
澪「なあ律」
律「ん?」
澪「その……唯はどうするんだ?」
律「どうするって?」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:46:12.53 ID:DhM4up220
澪「唯は私達に会う以前の記憶がないだろ?」
律「うん」
澪「だから帰るべき場所も分からないんだと思う」
澪「それが分かるまで面倒をみる人が必要だと思うんだ」
律「まあ……当然のことだな」
律「でも私達の家では面倒を見れるだけの余裕なんてないよ……」
澪「2人ですら限界に近いからな……」
律「……」
澪「……」
律「とりあえず数日様子を見てみよう」
律「もしかしたら何か思い出すかもしれない」
澪「そうだな」
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:46:58.25 ID:DhM4up220
――――
唯「りっちゃん」
律「んー?」
唯「私お腹空いちゃった」テヘヘ
律「そっかー」
律「よし、まってろ」
律「うどんを作ってやる」
唯「わーい!」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:47:49.61 ID:DhM4up220
澪「昨日もい言ったけど、家はうどん屋なんだ」
澪「全く繁盛しないけど……」
律「うどんおまち!」ドンッ
唯「はやっ!?」
律「うちは速いだけがとりえだからな」
唯「いただきまーす!」
唯「……」ズルズル
唯(微妙かも……)
唯(味も薄い……)
律(うわっ……微妙そうな顔……)
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:48:40.86 ID:DhM4up220
澪「ところで唯はこれからどうするんだ?」
律「どこか行くあてとかはあるのか?」
唯「それがね……やっぱり何も思い出せないんだ……」
澪「そうか……」
唯「あのっ……ここに置いてもらうのはだめかな……?」
唯「お店の手伝いとかもするから……」
律「唯……私達もここに置いてやりたいのはやまやまなんだが……」
澪「私達2人だけでも生活は限界なんだ……」
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:50:30.42 ID:DhM4up220
唯「そうだよね……」
澪「ごめん……」
律「まあ、まだ元気になってないんだから今は休め」
唯「うん……」
律「よし!」
律「今日は久々に風呂でも沸かすか!」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:51:15.22 ID:DhM4up220
――風呂場
律「風呂沸かすのなんて何カ月ぶりだろう」
律「いつも垢すって水浴びるだけだもんな」
律「薪代だってばかにならないからなー」
律「ふー!ふー!」
律「よし、こんなもんだろ」
律「おーい、唯ー」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:52:24.13 ID:DhM4up220
唯「なあにー?」
律「先風呂入っていいぞー」
唯「え?いいの?」
律「大事な客人だからな」
唯「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」
律「ごゆくっり~」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:53:42.41 ID:DhM4up220
――唯入浴中
唯「はあ……」
唯「私はこれからどうすればいいんだろう……」
唯「……」
唯「て言うかお湯がすっごい熱い……」
唯「グツグツいってるし……」
唯「もう上がろうかな……」
唯「……」
唯「でもせっかく沸かしてくれたんだからもう少し入ろう……」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:54:48.42 ID:DhM4up220
――――
唯「も、もう限界……」ザバア
唯「ふう……」
唯「りっちゃ~ん、上がったよー」
律「お、そうか」
唯「いいお湯だったよ~」
唯(すっごい熱かったことは言わないでおこう……)
律「じゃあ私もはいってこよーっと」
唯「う、うん」
律「お風呂ーお風呂ーっと」
唯「ふう……」
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:55:31.28 ID:DhM4up220
――――
律「よし、入るか」
律「よいしょ」ピチャ
律「あつ!?」
律「うおお……」
律「すげえ熱いじゃん……」
律「唯よくこんなのに入れたな……」
律「……」
律「……ん?」
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:56:23.80 ID:DhM4up220
律「この臭いは……?」クンクン
律「……まさか」
律「……」スッ
律「……」ゴクゴク
律は唯が入った後の熱湯を飲んでみた
律「なん……だと……?」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:57:05.62 ID:DhM4up220
――――
律「おい!澪!」
澪「どうした?そんなに慌てて」
澪「風呂はもう入ったのか?」
律「そんなことよりこれを食べてみてくれ!」
澪「食べろって……これうどんだろ?」
澪「うどんなんて毎日飽きる位食べてるだろ」
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:57:47.21 ID:DhM4up220
律「いいから食ってみろ!」
澪「わかったわかった」
澪「……」ズルズル
澪「……!」
律「ど、どうだ?」
澪「すごくおいしい……」
律「だろ!?」
澪「どうしたんだ?これ」
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:58:28.98 ID:DhM4up220
律「ダ、ダシを変えてみたんだ」
澪「へえ」
澪「何でダシをとったんだ?」
律「あ、あの……」
澪「ん?」
律「その……ゆ……」
澪「え?」
律「ゆ、唯で……」
澪「……え?」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 09:59:11.96 ID:DhM4up220
律「だから唯で……」
澪「……ん?」
律「唯の入った後のお湯をそのまま使って……」
澪「へ、へえ~……」
律「で、でもおいしかっただろ?」
澪「まあ……そうだな」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:00:12.78 ID:DhM4up220
律「そこでな……これを店に出してみようと思うんだ」
澪「ええ!?」
律「こんなに美味しいんだぞ?」
律「絶対繁盛する!」
澪「……そうだな」
澪「期待はできそうだ」
律「よし!」
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:01:06.64 ID:DhM4up220
――翌日
律「……」
律「客こねー……」
律「もともと客来ないから味を広めようがない……」
律「……あ!」
律「おーい!そこのお譲ちゃーん!」
純「え?私?」
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:02:06.10 ID:DhM4up220
律「そうそう!」
律「ちょっとこっち来て!」
純(げっ、あんまり美味しくないうどん屋じゃん……)
律「ちょっとこれ食べてみて!」
純「でもお金もってないですよ」
律「お金はいらないから!」
純「タ、タダならいただきます」
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:02:47.18 ID:DhM4up220
純(前にここのうどん食べた時は微妙だったからなあ……)ズルズル
純「……!」
律「どうだ!?」
純「すごく……おいしいです……」
律「ほんとか!?」
純「は、はい!」
律「そっかー!よかったあー」
純(ほんとに美味しい……)
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:03:43.02 ID:DhM4up220
律「そこでタダの代わりに頼みがあるんだけど」
純「頼み?」
律「このうどんのことを町の人達に宣伝してきて欲しいんだ」
純「……分かりました!」
律「ほんとか!?」
純「はい!」
律「じゃあよろしく!」
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:04:28.67 ID:DhM4up220
――――
律「ふふっ」
律「後は客を待つだけだ」ニヤニヤ
唯「りっちゃん、なんでニヤニヤしてるの~?」
律「これからいいことがあるかもしれないんだ」
唯「ふーん」
澪(ほんとに大丈夫かな……)
律「早く来ないかな~」
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:05:22.74 ID:DhM4up220
客A「ごめんよ~」
律「お!来たか!?」
律「らっしゃい!」
澪「いらっしゃいませ」
客A「なんかここのうどんが美味しいって聞いたからきてみたんだけど」
律(よし!あの子ちゃんと宣伝してくれたんだな)
律「そりゃあもう!」
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:07:17.57 ID:DhM4up220
客A「じゃあうどんを一杯もらおうか」
律「はいよ!」
澪(久々のお客さんだなあ)
律「へいおまち!」ドン
客A「はやっ!?」
律「速さがうちの売りだからな!」
客A「そ、それじゃあいただきます」
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:09:32.41 ID:DhM4up220
律「……」ワクワク
澪「……」ドキドキ
客A「……」ズルズル
客A「……!」
客A「うまい!」
律「ほんとか!?」
澪「おお!」
客A「ああ、こりゃたまげた」
律「よっしゃあ!」
客A「これはみんなに教えてやらないと!」
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:11:00.22 ID:DhM4up220
――――
その後、律達のうどん屋の噂は広った。
客足も少しずつ増えていった。
律「うどんおまち!」
客B「ほんとにおいしいなあ」ズルズル
純「こんにちはー」
律「おお!あの時の!」
純「お客さんいっぱいですね~」
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:13:12.77 ID:DhM4up220
律「へへ!君のおかげだ」
律「えーと……」
純「私は純です」
律「純ちゃんか!」
律「よろしくな!」
純「はい!」
純「と言うことでうどんください!」
律「はいよ!」
唯「お客さんいっぱいだねー」
澪「そうだな」
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:14:18.04 ID:DhM4up220
――夜
律「見ろ!今日の売り上げだ!」
澪「すごい……」
律「これも唯のおかげだな!」
澪「うん、それもいいけど……」
律「ん?」
澪「唯はこれからどうするんだ?」
律「ここに居てもらおう」
律「行くあてもないようだし」
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:16:14.49 ID:DhM4up220
澪「そう……だな」
澪「……」
澪「でも唯にはほんとのこと話しておいた方がいいんじゃないか?」
律「う~ん……」
律「やっぱりそうか……?」
澪「うん」
律「……わかった」
律「話してみよう」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:17:44.85 ID:DhM4up220
――――
唯「りっちゃん!」
唯「最近お客さん多いね!」
律「そうだな」
澪「あのな……唯」
唯「なにー?」
律「ちょっと話があるんだ」
唯「え?私に?」
澪「そうだ」
律「実はな……」
律と澪は真実を唯に話した
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:18:31.89 ID:DhM4up220
――――
律「……ということなんだ」
唯「……」
律「すまん……」
澪(唯、怒ってるな……)
澪(まあ本当の意味で自分をダシにされたんだから当然か……)
唯「りっちゃん……」プルプル
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:20:36.66 ID:DhM4up220
律「はい……」
澪「唯……」
唯「すごいね!」
律「え?」
澪「え?」
唯「すごい!すごいよ私!」キラキラ
澪(お、怒ってない……?)
澪(むしろ輝いてる……)
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:23:32.43 ID:DhM4up220
唯「そうかあ、私にそんな能力があったのかあ」
律「唯、怒らないのか?」
唯「え?なんで?」
律「ま、まあ気にしないでくれ」
唯「?」
律「それでだな……唯にはこのうどん屋に居て欲しいんだ」
唯「え!?」
澪「なんか利用するみたいで悪いんだけど……」
唯「ここにいていいの!?」
律「ああ!」
唯「ありがとう!」
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:26:31.15 ID:DhM4up220
――――
こうして律、澪、唯の3人での新生活とも言うべきものが始まった。
最初唯がうどん屋にいる理由はダシのためであったが、共に暮らしていくうちに家族のような絆が生まれていった。
店も噂が広まり客も増え、繁盛していた。
律もうどん屋としての腕をあげていったのである。
しかしその一方で唯の記憶は戻っていないのであった……
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:29:12.39 ID:DhM4up220
――――
客C「うどんくれ」
律「へいお待ち!」
客C「はやっ!?」
客E「うまいな~」ズルズル
さわ子「私にもうどんちょうだい」
律「げっ……お役人……」
さわ子「なによ」ギロ
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:31:16.58 ID:DhM4up220
律「な、なんでもないです」フルフル
さわ子「まったく……さっさと税払いなさいよ」
律「すみません……」
客E「ぐへへ、澪ちゃ~ん」サワ
澪「ひゃう!?」
客Eの妻「なにやってんだよ!」バキッ
客E「いってえ!?殴るこたあねえだろ!」
客Eの妻「黙って食ってな!」
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:33:49.26 ID:DhM4up220
唯「ひゃう!?だって~」
唯「澪ちゃん可愛い!」
澪「うう……」
唯「ねえ、もう一回言って!」
澪「ば、ばか……!」
唯「ちぇ~」
客F「唯ちゃん……ハアハア……」
純「うまい!」テッテレー
律「大盛況だー!」
66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:36:46.46 ID:DhM4up220
――閉店後
律「いや~、今日も大盛況だったな!」
唯「もうクタクタ~」
澪「唯も頑張って手伝ったからな」
唯「うん!」
律「はあ~、私も疲れた」
澪「じゃあご飯にするか」
律「そうだな」
唯「わーい!」
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:40:12.64 ID:DhM4up220
――食事中
唯「そういえばさぁ」
澪「どうした?」
唯「私、この辺の土地のこと全然知らないな~って」
律「そうだな……よし!私が教えてやる!」
唯「教えて!りっちゃん先生!」
律「この辺の土地はな、琴吹氏って言う一族が治めてるんだ」
唯「へ~」
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:43:03.76 ID:DhM4up220
律「町の向こうにお城があるだろ?」
唯「うん」
律「あれが琴吹城だ」
唯「そうなんだ~」
律「琴吹氏はな、代々琴の名手が多い家系なんだ」
律「それが名字の由来にもなってるらしい」
澪「琴吹氏の当主の娘も琴の演奏はかなりの腕らしい」
澪「しかも私達と同年代らしいんだ」
69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:45:02.52 ID:DhM4up220
唯「へえ~、りっちゃんって物知りなんだね!」
律「そうだぞ~」
唯「楽器が上手いなんて素敵だね~」
澪「実は私達も楽器をやっていたんだ」
唯「そうなの!?」
律「ああ、前な……」
律「生活苦しくなって最近遠ざかってたけど」
唯「どんな楽器をやってたの?」
澪「私は琵琶を」
律「私は太鼓だ」
70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:46:02.64 ID:DhM4up220
唯「すごい!私も楽器やってみたい!」
澪「そうだな~」
澪「唯は三味線なんかいいんじゃないか?」
唯「え?三味線?」
律「お~、唯なら似合いそうだな~」
唯「三味線……」
律「ん?どうした?」
唯「う、ううん」
唯「何でもないよ」
律「ん?そうか」
72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:48:00.92 ID:DhM4up220
唯(三味線かあ……なんかひっかかるなあ……)
律「しっかし家の中なのに寒いな~」
澪「そうだな、隙間風のせいだな」
唯「そういえば、この家結構古そうだね」
澪「空き家だったのを私達が買い取ったんだ」
律「ボロいから激安だったぜ」
唯「へ~」
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:49:06.68 ID:DhM4up220
律「隙間風は多いし、水を汲む井戸は遠いし……」
澪「修理してもすぐ別のとこが壊れてたよ」
唯「りっちゃん……結構苦労してきたんだね……」
律「そうだぞ~」
律「よし!うどん屋がもっと繁盛してきたら大きい家を建てて、店も大きくしよう!」
唯「おー!」
律「なっ、澪!」
澪「え……」
澪「私は……今のままでいいかな……」
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 10:50:15.06 ID:DhM4up220
律「えー、なんで?」
澪「私は……この家が好きだから……」
律「いや!夢は大きく持たないと!」
唯「そうだよ!澪ちゃん!」
澪「そうかな……?」
律「そうなの!」
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:12:17.98 ID:DhM4up220
――ある日の道
女の子「はあ……お腹空いた……」テクテク
女の子「お城まではまだ結構距離あるなー」テクテク
女の子「……」テクテク
女の子「あ、うどん屋さんがある」
女の子「……」
女の子「この町に美味しいうどん屋があるって聞いたけど、ここの事かなあ」
女の子「……」グウ~
女の子「食べてこ……」
女の子「……」ガラガラ
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:14:59.98 ID:DhM4up220
律「らっしゃい!」
女の子「うどんください」
律「はいよ!」
客G「おい、あれって……」ヒソヒソ
客H「ああ、そうだよな……」ヒソヒソ
女の子「……」
律(なんか客がヒソヒソしてんな)
律(よーし)
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:17:21.58 ID:DhM4up220
律「なにヒソヒソしてんのー?」
客G「おわ!?」
客H「驚かすなよ!」
律「ごめんごめん」
律「で?何?」
客G「ああ、それがな……」
客H「あそこに三味線背負ってる女の子いるだろ?」
律「ん?ああ、さっき入ってきた子か」
82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:20:13.43 ID:DhM4up220
客G「あいつは多分、中野梓だぜ」
律「中野梓?」
客H「知らないのか?」
客H「三味線中野流の当主の娘だよ」
律「ええ!?中野流当主の娘!?」
律「どうしてうちの店に……」
律「……」
梓(うどんまだかな)グウ~
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:24:11.43 ID:DhM4up220
律「あ、そうだ」
律「いい機会だから唯に三味線見せてやろう」
律「お~い、唯」
唯「なあに~?」
律「いや、この前話した三味線を見せてやろうと思ってな」
唯「え、三味線……!?」
律「ああ」
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:26:30.63 ID:DhM4up220
律「あそこに座ってる女の子がいるだろ?」
唯「う、うん」
律「あの子が背負ってるのが三味線だ」
唯「……」
澪「どうしたんだ?」
律「ん、ああ」
律「あの女の子、三味線中野流の当主の娘なんだって」
澪「ええ!?」
澪「有名人じゃないか!」
86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:29:30.27 ID:DhM4up220
唯「……」スタスタ
律「あ、唯」
唯「ねえねえ」
梓「え、あ……私ですか?」
唯「うん」
梓「何ですか?」
唯「ちょっと外に行こう」
梓「え?」
梓「でもまだうどん食べてない……」
唯「いいからいいから」
梓「あ……」
律「あ、なんか唯が外に連れていったぞ」
澪「私達も行ってみよう」
87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:33:20.98 ID:DhM4up220
――店の外
梓(私なんかしたかなあ……)
律「唯~、どうしたんだ?」
唯「ねえ、ちょっとそれ貸してくれない?」
梓「三味線ですか?」
梓「いいですけど……」スッ
唯「ありがとう」
唯「……」
律「お、似合ってる」
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:35:03.91 ID:DhM4up220
澪「結構様になってるな」
梓「あの……」
唯「ちょっと弾いてみていい?」
梓「あ、はい……」
梓(なんか真剣な表情になった)
律「弾き方分かるのか~?」
唯「……」
ベンベンベン、ベンベンベン
梓「!?」
90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:40:39.08 ID:DhM4up220
律「唯……お前三味線弾けるのか!?」
澪「しかも相当うまいぞ……!」
唯「……やっぱり」
律「え?」
澪「やっぱり?」
唯「りっちゃん、澪ちゃん」
唯「私、三味線弾いたことある」
律「なにか思いだしたのか!?」
91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:43:34.20 ID:DhM4up220
唯「思い出してはいないけど……」
唯「私、ここに来る前は毎日のように三味線を弾いていたような気がする」
律「そうか……」
梓「どうしたんですか?」
澪「ああ、実はな……」
93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:49:54.44 ID:DhM4up220
――――
梓「そうだったんですか……記憶が……」
唯「……」
澪「そういうことで唯は私達で面倒みてるんだ」
律「まあ、今となっちゃあ家族みたいなもんだけどな~」
梓「そうですか……」グウ~
梓「あ……」
律「あー、ごめんごめん!」
律「うどんまだ出してなかったな」
梓「あ、はい……」
梓(恥ずかし~!)
律「さあさあ中へ」
95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:53:04.32 ID:DhM4up220
――店の中
律「ごめんな~」
律「今から作るから」
梓「あ、はい」
梓(今から作るのか)
梓(じゃあまだ待つな……)グウ~
律「へいお待ち!」ドン
梓「はやっ!?」
96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:56:40.74 ID:DhM4up220
――道
梓(うどん美味しかったなあ)
梓(それにしても、あの唯っていう人凄い三味線上手かったなあ)
梓(う~ん……)
梓(なんか今思うとあの人とどっかで会ったことがあるような……)
梓(……)
梓(気のせいかなあ)
梓(……)
梓(あ、お城もうちょっとだ)
97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 11:59:34.30 ID:DhM4up220
――琴吹城
梓「やっと着いた……」
紬「梓ちゃ~ん!」
梓「あ!紬さん!」
紬「梓ちゃんが来るの待ってたわ♪」
梓「そんなに楽しみだったんですか?」
紬「ええ、すっごく!」
紬「友達と呼べる人は梓ちゃんしかいないから……」
梓「そうですか……」
梓(可哀そうな人だな……)
98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:01:42.30 ID:DhM4up220
紬「お城にはしばらく泊まっていけるの?」
梓「はい!お世話になります」
紬は琴吹家の規則で城を自由に出入りできないため、同年代の友達が梓しかいないのである。
琴吹氏は中野氏とは楽器の名手の一族同士として互いに交流がある。
そのため中野氏は琴吹城への出入りを許されていたのである。
紬「早く一緒に楽器を演奏しましょう!」
梓「はい!」
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:04:11.47 ID:DhM4up220
――――
紬「少し休憩しましょう」
梓「そうですね」
紬「お茶淹れるわね」
梓「ありがとうございます」
紬「ねえ、梓ちゃん」
梓「なんですか?」
紬「また、町の様子を聞かせて?」
梓「いいですよ」
紬「ありがとう!」
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:13:21.29 ID:DhM4up220
梓「そう言えば、今日ここに来る途中に町のうどん屋さんに寄ったんですよ」
梓「そこのうどんがすっごい美味しかったんです」
紬「私も食べてみたいわあ」
梓「そのうどん屋は女の子3人でやってるみたいなんです」
梓「多分私達と同じくらいの歳だと思います」
紬「そうなの~」
梓「しかも3人の中に唯って人が居たんですけど、三味線の腕がかなりの物だったんです」
梓「あれは三味線奏者として活動できる程ですよ」
紬「梓ちゃんがそこまで言うなら相当上手なのね」
104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:15:16.04 ID:DhM4up220
梓「でもその唯って言う人は、過去の記憶の一部を失ってしまっているみたいなんです」
紬「え、記憶が……?」
梓「はい」
紬「そうなの……大変ね……」
梓「そうですね……」
紬「でもなんだか私もそのうどん屋さんに行ってみたくなったわ~」
梓「是非行きましょう!」
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:18:52.08 ID:DhM4up220
紬「でもお父様が許してくれるか……」
梓「お城の出入りをそこまで制限するのはおかしい話です!」
梓「説得すれば許可してくれるはずです!」
紬「そうね……!」
紬「私、お父様に頼んでみるわ!」
梓「はい!」
106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:20:00.31 ID:DhM4up220
――殿の間
紬「し、失礼します」
紬父「おお、紬か」
紬父「どうしたんじゃ?」
紬「実は……お父様にお願いがあるんです」
紬父「おお、何か欲しいものでもあるのか?」
紬「いえ……あの……」
紬父「なんじゃ?」
107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:21:06.57 ID:DhM4up220
紬「町にあるうどん屋さんに行ってはだめかしら……?」
紬父「町のうどん屋じゃと?」
紬「は、はい」
紬父「それは……だめじゃ」
紬「え……」
紬父「うどんが食べたいなら、うちの料理人に作らせよう」
紬「違うの!そのうどん屋に行きたいの!」
108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:26:28.51 ID:DhM4up220
紬父「町は紬にとって危険じゃ」
紬「そんな……」
紬父「城の中でおとなしくしていなさい」
紬「もうお父様なんか知らない……!」ダッ
紬父「あ!紬!」
紬父「……」
紬父「むう……」
109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:27:12.41 ID:DhM4up220
紬父「年頃の娘は難しいのう……」
紬母「あなた」
紬父「おお、おまえか」
紬母「あの子の気持ちも分かってあげたら?」
紬父「どういうことじゃ?」
紬母「あの子だって年頃の女の子」
紬母「友達も沢山欲しいだろうし、もっと遊びたいはずよ」
紬母「ずっとお城の中なんて可哀そうじゃない?」
紬父「むう……そうかのう……」
紬母「ええ、私はそう思うわ」
紬父「……」
110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:28:31.57 ID:DhM4up220
――――
紬「……」スッ
梓「どうでした!?」
紬「許してもらえなかったわ……」
梓「そうですか……」
紬「どうして……」
梓「え?」
紬「どうしてお父様は分かってくれないの……!」
梓「紬さん……」
112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:30:03.15 ID:DhM4up220
梓「でも、それほど紬さんを大事に思ってるって事なのかもしれませんよ」
紬「……そうかな?」
梓「そうですよ」
紬「……そうね」
紬「さっきはお父様の前で取り乱してしまったわ……」
紬「私、お父様に謝ってくる」
紬「そしてもう一度落ち着いてお願いしてみるわ」
梓「はい!」
113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:33:55.52 ID:DhM4up220
――殿の間
紬「失礼します」
紬父「紬……」
紬「さっきはごめんなさい……」
紬「つい取り乱してしまって……」
紬父「いや、わしも悪かったようじゃ」
紬「え?」
紬父「お前の気持ちを分かってやれてなかったようじゃ」
114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:36:47.51 ID:DhM4up220
紬「お父様……」
紬父「これからは町に行ってもよいことにする」
紬「あ、ありがとうございます!」パアア
紬父「でも無断の外出はだめじゃぞ?」
紬父「ちゃんと断りをいれるように」
紬「はい!」
115: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:39:05.48 ID:DhM4up220
紬「じゃあ、早速そのうどん屋に……」
紬父「まあ、そう急ぐでない」
紬父「町に行ってもよいと言っても、わしの知らないとこにホイホイ行かせるのもちと心配でな」
紬父「まずは家来の斎藤に様子を見てきてもらうことにする」
紬「わかりました」
紬父「うむ、では早速向かわせよう」
117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:41:41.39 ID:DhM4up220
――うどん屋
律「うどんお待ち!」ドン
客E「澪ちゃん今日も可愛いね~」
客F「唯ちゃん……ハアハア……」
斎藤「失礼します」
律(なんかどっかのお偉いさんみたいなのが来たな)
斎藤「店主はどちらに?」
律「あ、私でーす」
118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:45:03.92 ID:DhM4up220
斎藤「これはこれは」
斎藤「私、琴吹家の家来の斎藤と申します」
律「え、琴吹家!?」
律(ホントにお偉いさんだった!)
斎藤「実は本日は、琴吹家当主の命令でこちらにきました」
律「当主の命令!?」
斎藤「はい」
120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:46:17.15 ID:DhM4up220
斎藤「当主の娘であります紬お譲様が、こちらのうどん屋に来たいとおっしゃってるのです」
律「ええ!?」
律「本当ですか!?」
斎藤「はい、ですので私が下見に来た次第でございます」
律「そうですか!」
律「じゃ、じゃあせっかくなんでうどん食べて行ってください!」
斎藤「はい、頂くとします」
律「へいおまち!」ドン
斎藤(速い……)
121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:47:20.51 ID:DhM4up220
斎藤「いただきます」
斎藤「……」ズルズル
斎藤「……!」
律「どうですか?」
斎藤「うまい……!」
律「ありがとうございます!」
斎藤「これなら大丈夫そうですな」
斎藤「明日、お譲様をお連れすることにします」
律「はい!」
122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:48:39.55 ID:DhM4up220
――夜
澪「じゃあその殿様の娘が明日来るのか!?」
律「そうだぞ~」
唯「その人ってこの前話した琴の演奏が凄い人?」
律「ああ」
唯「へ~、私も会ってみたい!」
澪「と、殿様の娘が……来る……」プシュー
律「私達と同年代みたいだから話もしやすいんじゃないか?」
澪「で、でも……殿様の娘だぞ?」
律「大丈夫だって」
澪「う、うん……」
唯「明日が楽しみ~」
123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:50:14.14 ID:DhM4up220
――琴吹城
紬父「うむ」
紬父「それなら大丈夫そうじゃな」
斎藤「私も問題ないかと」
紬父「ではその旨を紬に伝えてきてくれ」
斎藤「はっ」
124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:51:13.04 ID:DhM4up220
――――
紬「じゃあ明日行ってもいいのね!?」
斎藤「はい」
斎藤「私も付き添います」
梓「よかったですね!」
紬「楽しみだわ~!」
紬「そのうどん屋の人達とお友達になれるかしら?」
梓「きっとなれますよ」
紬「うん!」
紬「梓ちゃんも一緒にいくでしょう?」
梓「はい!」
125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:52:39.46 ID:DhM4up220
――翌日
律「そろそろ来るんじゃないか?」
澪「そ、そうだな」ドキドキ
唯「楽しみー」
律「あっ、あれじゃないか!?」
澪「すごい……馬に乗ってる……」
唯「すごーい!」
斎藤「紬お譲様、到着しました」
紬「ええ」
127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 12:57:25.05 ID:DhM4up220
律「……」ドキドキ
澪「……」ドキドキ
紬「こんにちは♪」
律「こんにちは~」
澪「こ、こんにひは!」
澪(声裏返った……)カアア
梓「こんにちは」
澪「あ、昨日の……」
律「どうぞこちらへ!」
紬「おじゃましま~す」
129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:00:11.35 ID:DhM4up220
――店の中
紬「すごくおいしい!」
律「ありがとうございます!」
紬「すごいわ!」
唯「よかったね~、澪ちゃん!」
澪「う、うん」
紬「あの……一つお願いがあるんだけど……」
律「なんなりと!」
130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:02:39.93 ID:DhM4up220
紬「私とお友達になってくれない……?」
律「え!?」
澪「え!?」
紬「だめかしら……?」
律「と、とんでない!」
律「こちらこそ宜しくお願いします!」
紬「ありがとう!」パアア
唯「わ~い!お友達!」
131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:05:46.74 ID:DhM4up220
梓「よかったですね!」
律「私は律です」
澪「み、澪です」
唯「唯だよ~」
紬「私は紬よ」
梓「梓です」
唯「そう言えばキミは何でいるの?」
律(今さらっと酷いこと言ったぞ!?)
132: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:08:40.66 ID:DhM4up220
梓「私は紬さんの友達です」
梓「琴吹家と中野家は互いに交流があるんです」
澪「そうなのか」
律「……」ジー
梓「な、なんですか」
律「梓ってさー」
梓「はい」
律「猫みたいだな」
梓「え!?」
133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:10:39.50 ID:DhM4up220
唯「あだ名はあずにゃんで決まりだね!」
梓「あ、あずにゃん……!?」
紬「あの……出来れば敬語もやめてもらえると……」
律「ええ!?そ、それは……」
澪「それは気が引けるというか……何というか……」
紬「せっかくお友達になれたのに敬語だとなんだか……」
律「わ。わかりました!」
紬「むっ」
律「わ、わかった!」
135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:16:47.44 ID:DhM4up220
唯「じゃあムギちゃんって呼ぶね!」
律「いやあ、いくらなんでもそれは……」
紬「ええ、唯ちゃん♪」
律(いいんかい)
紬「そう言えば、唯ちゃんは三味線が凄いって聞いたわ」
紬「聴かせてくれない?」
唯「いいよ~」
梓「私の三味線使ってください」
137: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:18:41.83 ID:DhM4up220
唯「それでは……」
ベンベン、ベンベン
紬「す、すごいわ……」
唯「えへへ~」
律「なんか唯の演奏を聴いてたらもう一度楽器やりたくなってきたな~」
澪「そうだな」
梓「律さんと澪さんも楽器が弾けるんですか?」
律「……」
律「なあ、梓」
梓「なんですか?」
138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:19:49.90 ID:DhM4up220
律「なんかその律さんって呼び方に違和感を感じる」
梓「そ、そうですか?」
澪(そうかな……)
律「聞くとこによると梓は私達より歳下みたいだな」
梓「そうですけど……」
律「だったら先輩って呼べ!」
梓「先輩!?なんの先輩!?」
律「人生の先輩……かな」キリッ
澪(あ、ちょっとかっこいいかも……)
139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:21:06.02 ID:DhM4up220
唯「あずにゃん!私も私も!」
紬「ず、ずるいわ!」
紬「私も!」
梓「わかりましたっ!」
梓「わかりましたから、そんなに迫らないでください!」
唯「ムギちゃん先輩!」
紬「かっこいい!」
梓「で、律さ……ゴホンゴホン」
梓「り、律先輩と澪先輩は何の楽器が出来るんですか?」
140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 13:22:57.56 ID:DhM4up220
律「太鼓だな」
澪「私は琵琶を」
梓「そうだったんですか!」
律「なあ澪~、私達もまたやろうぜ~」
澪「いいな」
唯「私もやる!」
145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:00:59.49 ID:DhM4up220
梓「じゃあ今度みんなで演奏しましょう!」
紬「私もやりたいわ!」
唯「ムギちゃんは琴が弾けるんだよね?」
紬「そうよ」
唯「ムギちゃんにピッタリだね!」
紬「ありがとう♪」
その後も5人の会話は弾んだ
146: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:04:00.90 ID:DhM4up220
――――
梓「そういえば、ここのうどん凄いおいしいですよね」
梓「どうやって作ってるんですか?」
律「実はな……」ヒソヒソ
澪(教えるのかよ)
梓「ええ!?唯先輩でダシを!?」
紬「あらあら!」
梓「そんなのをお客さんに出してたんですか!?」
律「そんなのって何だよー」ブー
唯「あずにゃん、私ちょっと悲しいよ」
147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:05:10.00 ID:DhM4up220
梓「いや、話としておかしいです!」
梓「新手の洒落ですか?」
律「洒落じゃねーよ」
梓「だいたい人間からダシとれるはずないです!」
律「実際とれてんじゃん」
唯「うんうん」
梓「それは……澪先輩はおかしいと思わないんですか!?」
澪「え……別に……」
唯「まあまあ、あずにゃん落ち着いて」
149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:06:41.43 ID:DhM4up220
梓(私が変なのかなあ……)
紬(なんか話についていけなくなったわ)
斎藤「お譲様、そろそろお帰りにならないと」
紬「楽しい時間はあっと言う間ね……」
律「またすぐ会えるだろ?」
唯「友達だからね!」
紬「みんな……ありがとう!」
150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:08:02.99 ID:DhM4up220
紬「そうだ!今度はみんながお城に遊びにこない?」
澪「ええ!?お城に!?」
唯「行きた~い!」
紬「いいかしら、斎藤?」
斎藤「当主様に許可をもらわねばなりません」
紬「お父様なら許してくれるわ」
斎藤「では許可が降りましたらお友達はお迎えに上がりましょう」
151: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:09:11.98 ID:DhM4up220
――琴吹城
紬「只今帰りました」
紬父「うむ、どうじゃったかな?」
紬は今日の出来事を話した
紬父「そうか……友達ができたか」
紬「はい!とっても楽しい人たちです」
紬父(紬がこんなに楽しそうにしてるのは初めてみるのう)
紬「お父様……またお願いがあるのですが……」
紬父「なんじゃ?」
152: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:10:18.00 ID:DhM4up220
紬「そのお友達を、お城に呼んではだめかしら……?」
紬父「……」
紬「……」ドキドキ
紬父「よいぞ」
紬「ありがとうございます!」パアア
紬父「わしもその唯と言う者の三味線を聴いてみたいのう」
紬「はい!」
153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:11:19.12 ID:DhM4up220
――後日
律「そろそろ迎えが来る頃だな」
唯「はやく行きたい!」
澪「なんか緊張してきた……」
律「あ!来た!」
律「て、馬が沢山!?」
唯「あれに乗って行くの!?」
澪「私が……馬に……」
澪「すごい目立つじゃないか……」
律「うおー!すっげー!」
唯「ヒヒーンって言ったよ!りっちゃん!」
154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 14:12:01.33 ID:DhM4up220
――城への道
律「おおー、たけー」パカパカ
唯「すご~い!」パカパカ
澪「み、みんな見てる……恥ずかしい……」パカパカ
律「なんか偉くなったみたいだな~」パカパカ
唯「どうどう」ペシペシ
澪「うう……」パカパカ
律「お、ついた」
唯「おお~」
澪「目の前で見るとすごい大きいな……」
紬「みんな~」
唯「あ!ムギちゃん!」
159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 15:03:00.15 ID:DhM4up220
律「おーす!」
紬「待ってたわ!」
澪「やっと降りれる……」
唯「池があるよ!りっちゃん!」
律「うお!鯉がいる!」
唯「鯉って美味しいのかなあ」
律「ははっ、食うな食うな」
唯「冗談だよ~」
澪「おーい、行くぞ~」
紬「こっちよ~」
唯「はーい」
律「今行くー」
160: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 15:06:35.21 ID:DhM4up220
――城内
律「広いなー」
澪「天井が高い……」
梓「あ、みなさんこんにちは」
唯「あ!あずにゃん!」
梓「唯先輩、こんにち……」
唯「とう!」ガバッ
梓「ちょ……急に抱きつかないで下さい!」
161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 15:11:06.65 ID:DhM4up220
唯「あずにゃん分補給~」
紬「あらあら」
梓「離れてください!」
唯「ああん、いけず~」
紬「みんな、ちょっといいかしら」
律「ん?どうした?」
紬「お父様がみんなに会いたいって言ってるんだけど……」
律「お父様って……殿様が!?」
紬「ええ」
162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 15:14:34.98 ID:DhM4up220
澪「と、殿様に……会う……」プシュー
律「澪、落ち着け」
澪「はっ」
澪「ははっ、私はいつだって落ち着いてるぞ」ガタガタ
律「震えてる震えてる」
唯「ほえ~」
163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 15:16:26.18 ID:DhM4up220
――殿の間
律「……」ドキドキ
澪「……」ドキドキ
唯「……」ワクワク
紬「お父様、お友達を連れてきました」
紬父「おお、そなた達が紬の友達か」
律「そうです!」
紬父「話は聞いておるよ」
澪(聞いてるってどういう風に聞いてるんだろう……)
165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 15:19:35.67 ID:DhM4up220
紬父「これからも紬と仲良くしてやってくれ」
律「はい!」
紬父「ところで唯殿とはどちらかな?」
唯「あ、私です!」
紬父「うむ」
紬父「実は紬から唯殿は三味線の腕が相当なものだと聞いておってな」
唯「いやあ、それほどでも」デヘヘ
171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 15:29:26.02 ID:DhM4up220
紬父「一つ演奏を聴かせてくれないかのう」
唯「はい!喜んで!」
紬父「斎藤、三味線を」
斎藤「はっ」
紬父「これでひとつ」
唯「では……」
ベンベン、ベンベン
紬父「おお……」
紬父「まさかこれほどの腕だったとは……褒めてつかわすぞ」
唯「ありがとうございます!」
172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 15:30:59.62 ID:DhM4up220
紬父「ところで唯殿」
唯「はい?」
紬父「そなた……以前わしと会ったことはなかったかのう」
唯「え……」
唯「ごめんなさい、分からないです……」
紬父「ふむ、わしの思い違いかのう」
唯「……」
その後、唯達は楽器を演奏したりお茶をしたりと楽しい時間を過ごした。
176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:00:24.55 ID:DhM4up220
――夜 うどん屋
律「いや~、今日は楽しかったな~」
澪「そうだな」
澪「久しぶりに琵琶も弾けたし」
律「色んな楽器があったもんな~」
唯「……」
唯(ムギちゃんのお父さんは私に会ったことがある気がするって言ってた……)
唯「……」
177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:06:38.63 ID:DhM4up220
律「おーい、唯」
唯「え、あ、何?」
澪「どうしたんだ?」
澪「ボーっとしてたぞ?」
律「はしゃぎすぎて疲れたんじゃないのか~?」
唯「あはは、そうだね……」
澪「?」
律「今日は早めに寝とけー」
唯「うん」
178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:09:55.57 ID:DhM4up220
――――
その後も唯たちは度々城を訪れては5人で楽器を演奏したり、お茶を飲んだりして楽しい時間を過ごし、
絆を深めていった。
そんな生活が続いたある日……
律「……」ズズ
律「……できた」
律「できたぞー!」
澪「!」ビクッ
澪「きゅ、急に大きい声出すなよ……」
179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:14:37.48 ID:DhM4up220
律「できたんだよ!」
澪「なにができたんだ?」
律「新しいダシだよ」
澪「え?新しいダシ?」
律「このダシで作ったうどんだ」
律「食べてみてくれ」
澪「う、うん」
澪「……」ズルズル
律「……」ジー
澪「……!」
律「どうだ!?」
181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:17:29.83 ID:DhM4up220
澪「すごいおいしい……」
律「だろ!?」
澪「ああ」
澪「でもどうしたんだ?急に」
律「いや~、いつまでも唯に頼ってばっかりじゃだめだからな」
律「お金にも少し余裕が出てきたし、新しいを味研究して完成させたって訳だ」
澪「そうだったのか」
律「梓もなんかダシ変えろって騒いでたからな~」
182: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:21:20.19 ID:DhM4up220
澪「おかしいです!って言ってたな」
律「あ、今の似てる」
澪「そ、そう?」
律「うんうん」
コンコン
律「こんこん」
澪「え?」
律「ん?」
澪「誰かきた?」
184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:26:03.96 ID:DhM4up220
律「お客さんかー?」
澪「今日は定休日だぞ」
律「はいは~い」
ガラガラ
女A「こんにちは」
律「えーと……どちらさんで?」
澪(女の人が二人……)
女A「私は平沢憂と言う者です」
女B「私は真鍋和よ」
律「はあ……」
188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:30:29.32 ID:DhM4up220
律(ん?平沢?)
憂「東の平沢城から来ました」
律「平沢城!?」
澪「え、じゃあ……」
憂「私は平沢家当主の次女です」
律「な、なんでうちに?」
澪「あの……今日は定休日……」
憂「お姉ちゃんらしき人がこちらに居ると聞いたので」
191: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:35:02.91 ID:DhM4up220
律「お姉ちゃん?」
和「唯のことよ」
澪「え?唯?」
律「じゃあ君は唯の妹さん?」
憂「はい」
澪「ん?待てよ……」
澪「と言うことは……唯は平沢家当主の娘ってことか!?」
律「ええ!?」
律(平沢家って言ったら東の土地を治めてる一族じゃないか……!)
律(唯はそんな身分の奴だったのか!?」
192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/04(月) 16:40:18.64 ID:DhM4up220
和「あなた達知らなかったの?」
律「あ、ああ」
律「なんせ唯は記憶が……」
唯「りっちゃん、どうしたの~?」
憂「お姉ちゃん!?」
和「唯!」
憂「お姉ちゃん!」ダッ
唯「え?お姉ちゃん?」
憂「……!」ギュッ
唯「え?何!?」
219: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:25:01.69 ID:gy6Zy7ZM0
憂「お姉ちゃん……会いたかったよ……」
唯「あの……どちら様……?」
憂「え……私だよ、憂だよ……?」
唯「え?え?」
和「どうしたの?唯」
律「私から説明しよう……」
律は憂と和に道に倒れていた唯を助けたこと、そして唯は記憶を失ってることやこれまでの事を説明した
220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:29:30.32 ID:gy6Zy7ZM0
憂「そんな……」
和「まさか唯が記憶を失ってるなんて……」
唯「……」
律「あの~……」
律「そちらの状況も教えてもらえないかな?」
憂「そうですね……私が説明します」
憂「先ほども言いましたが、お姉ちゃんは平沢家当主の娘で私はその妹です」
和「私は唯の幼馴染で、今は平沢家専属の用心棒みたいなことをしてるわ」
澪「はあ」
221: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:33:35.04 ID:gy6Zy7ZM0
憂「ちょっと事情があって、お姉ちゃんがお城を飛び出して行っちゃったんです」
和「最初はお腹空かしてすぐ帰ってくるだろうなんて思ってたのよ」
憂「でも夜になっても次の日になってもお姉ちゃんは帰ってこなかった……」
和「何かあったんじゃないかと思って、みんなで唯を探したわ」
和「でもそんなに遠くに行くはずもないと思って平沢家の領地内しか探さなかったの」
憂「そしてお姉ちゃんを見付けられないまま時が過ぎていった……」
憂「そしてある時、三味線の上手い短髪の女の子が琴吹家の領地のうどん屋さんに居るって噂を聞いたんです」
和「すぐにそれが唯だって思ったわ」
和「唯はもともと三味線が上手かったのよ」
律「そうだったのか……」
222: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:36:26.95 ID:gy6Zy7ZM0
澪「しかし、唯が殿様の娘だったなんて……」
律「ああ、驚いた」
唯「……」
憂「ねえ、お姉ちゃん……何も憶えて無いの?」
唯「……うん」
憂「そうなんだ……」ジワッ
和「憂……」
憂「お姉ちゃん……せっかく会えたのに……」ポロポロ
律「……」
澪「……」
唯「……」
225: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:41:34.40 ID:gy6Zy7ZM0
唯(なんだろう……)
唯(思い出せないんだけど……なんか懐かしい感じがする……)
憂「うう……」ポロポロ
唯「……!?」キーン
唯「うう……え……あ……」キーン
律「唯!どうした!?」
唯(あれ……なんか……!)キーン
憂「お姉ちゃん!?」
226: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:43:29.37 ID:gy6Zy7ZM0
唯「……」
澪「大丈夫か……?」
和「もしかして何か思い出したの!?」
唯「ううん……思い出しそうだったけどだめだった……」
和「そう……」
唯「でもね……なんか懐かしい感じがする」
憂「お姉ちゃん……」
228: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:49:00.30 ID:gy6Zy7ZM0
――――
和「じゃあ私達は帰るわ」
和「今、唯を連れて行っても混乱するだけだろうから」
律「そうだな……」
和「憂、帰るわよ」
憂「はい……」
和「じゃあとりあえず唯のこと、よろしくお願いします」
律「ああ」
和「それじゃあ」
律「うん」
憂「お姉ちゃん……」
229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:51:31.47 ID:gy6Zy7ZM0
――夜
澪「あれ?唯は?」
律「さっき散歩に行ったよ」
澪「散歩?こんな時間にか?」
律「まあ今日は色々あったからな……」
律「一人で考える時間も必要なんだろ」
澪「ああ、そうだな……」
律「しっかし……」
律「唯が平沢家当主の娘とはなあ……」
231: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 00:53:52.54 ID:gy6Zy7ZM0
――夜道
唯(私が殿様の娘……?)
唯(信じられないよ……)
唯(これから私はどうすれば……)
唯(りっちゃんや澪ちゃんとの生活も楽しいし……)
唯(あずにゃんやムギちゃんと遊ぶのも楽しいから……)
唯(私……記憶が戻らなくてもいいと思ってた……)
唯「……」
232: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:02:23.31 ID:gy6Zy7ZM0
――――
ごろつきA「おい、あれ見てみろよ」
ごろつきB「んあ?」
ごろつきA「あれだよ、あそこの一人で歩いてる女」
ごろつきB「ああ、あれか」
ごろつきA「ありゃうどん屋の奴だぜ」
ごろつきB「うどん屋って女だけのあのうどん屋か?」
ごろつきA「そうそう」
235: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:08:35.42 ID:gy6Zy7ZM0
ごろつきA「なんでもそのうどん屋は最近儲かってるらしい」
ごろつきB「ほう」
ごろつきA「そのうどん屋の女が夜一人で歩いてる……」
ごろつきA「あとはわかるな?」
ごろつきB「まさか……」
ごろつきA「あの女を誘拐して身代金を要求すれば、たんまり金が手に入る」
ごろつきB「お前天才」
237: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:13:28.47 ID:gy6Zy7ZM0
ごろつきA「ぐはは!そうと決まれば早速」
ごろつきB「よっしゃ」
唯「……」
ごろつきA「よう、嬢ちゃん」
唯「え?」
唯(何この人たち……!?)
ごろつきB「ちょっと俺達と来てもらおうか」グイ
唯「え……あ……」
唯(え!?何!?)
ごろつきA「うへへ」
239: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:18:00.57 ID:gy6Zy7ZM0
――うどん屋
律「唯遅いなー」
律「まあそれだけ考えることがあるってことか……」
律「唯も大変だな……」
律「ふああ……」
律「寝むい」
律「先に寝ちゃおうかなー」
律「……」
律「……ZZZ」
240: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:21:11.59 ID:gy6Zy7ZM0
――翌朝
律「まだ唯が帰ってない……!?」
律「どうしたんだ……?」
律「……」
律「捜しに行こう」
ガラガラ
律「ん?」
律「扉に何か挟まってるぞ」
律「これは……手紙?」
律「……」ガサガサ
「女は預かった。金を用意して西の廃村に来られたし」
律「!?」
242: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:28:37.30 ID:gy6Zy7ZM0
律「こ、これって……」
律「唯が誘拐された!?」
律「た、大変だ!」
律「澪!起きろ!」
澪「う~ん……どうしたんだ?」
律「唯が……唯が誘拐された!」
澪「え?」
律「唯が何者かに誘拐されたんだよ!」
澪「なんだってー!?」
律「はやくいくぞ!」
澪「いくってどこに!?」
律「唯を助けにだよ!」
245: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:30:48.09 ID:gy6Zy7ZM0
――西の廃村
ごろつきA「そろそろ来るんじゃないか?」
ごろつきB「そうだな」
唯(りっちゃん……澪ちゃん……)
ごろつきA「それにしても可愛い女だな」
ごろつきB「うへへ、このまま食っちまおうか?」ジリジリ
唯「いや!?」
律「唯!」
澪(うわ……怖そうな人達……)
ごろつきA「お、きたな」
246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:33:28.10 ID:gy6Zy7ZM0
律「唯を返してもらう!」
ごろつきB「金は持って来たんだろうな?」
律「持ってきた!」
ごろつきA「こっちによこせ」
律「ほら!」
ごろつきA「どれどれ」ジャラジャラ
ごろつきB「へへ、上等上等」
律「金は渡したんだ!唯は返してもらうぞ!」
ごろつきA「あ?何言ってんだ?」
律「え?」
248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:40:35.61 ID:gy6Zy7ZM0
ごろつきB「誰も金を渡せば女を返すとは言ってないぜ?」
律「そんな……!」
澪「ひどい……」
ごろつきA「最近人を斬りたくてウズウズしてたんだ」
ごろつきB「ちょっくらお前ら斬られてくれや」シャキーン
澪「ひいい!?」
唯「そんな……」
律「なんで……」
?「そこまでよ!」ババーン
一同「!?」
249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 01:43:36.92 ID:gy6Zy7ZM0
ごろつきA「誰だ!?」
和「その人達に手を出したら許さないわ!」
憂「お姉ちゃん!」
唯「!」
律「昨日の2人!」
ごろつきA「驚かせやがって!女が増えただけじゃねえか!」
和「それはどうかしら?」スチャ
憂「お姉ちゃんにこんなことして……絶対に許さない!」シャキーン
ごろつきB「おい、刀抜いたぞ」
253: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:00:21.56 ID:gy6Zy7ZM0
ごろつきA「どうやらやる気のようだな」
ごろつきA「まとめて斬ってやる!」
カキーン カキーン
ごろつきA「な……!?」
ごろつきB「つ、強い……!」
律「すごい……!」
唯(あの人達……私を助けてくれようとしてる……)
唯(なんだろう……この感じ……)
254: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:05:07.22 ID:gy6Zy7ZM0
唯(なんか……)
唯「……!」キーン
唯「あ……」
唯「わ、私……」
和「ふん!」バキーン
ごろつきA「なふ!?」
ごろつきB「お、おい!」
和「安心して、峰打ちよ」
ごろつきB「くっ!」
ごろつきB「憶えてろー!」ダッ
律「あ、逃げた」
257: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:06:39.45 ID:gy6Zy7ZM0
憂「ふう……危なかった……」
唯「憂ぃ!」ギュッ
憂「お姉ちゃん!?」
和「唯、今憂って……」
唯「私、全部思い出したよ!」ブイッ
憂「お姉ちゃん!」パアア
澪「唯の記憶が戻った!?」
和「唯……お帰り……」
憂「お姉ちゃん……よかった……」
律「よかったな」
澪「ああ」
258: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:10:41.96 ID:gy6Zy7ZM0
――うどん屋
憂「お姉ちゃんを助けにいってくれてありがとうございます」
澪「いや、私達じゃ何もできなかったよ」
律「でもどうして唯が誘拐されたことや、あの場所が分かったんだ?」
和「あら?そこは問題かしら?」
律「あ、いや……」
律(そういうもんなのか……?)
律「あ」
律「そう言えば、唯はどうしてお城を出て行っちゃったんだ?」
259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:15:53.25 ID:gy6Zy7ZM0
憂「私がお姉ちゃんの氷菓子を食べてしまったら、怒って飛び出して行っちゃったんです……」
唯「まったくひどいよ!憂は!」プンプン
律「そ、そうなんだー……」
律(たったそれだけ!?)
澪(唯らしいと言えば唯らしいか……)
和「唯はこれからどうするつもり?」
唯「え?」
和「あなた自身、どういう行動をするかってことよ」
260: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:19:11.22 ID:gy6Zy7ZM0
唯「私は……」チラッ
律「……」
律「唯、お前はお城に帰らなきゃだめだぞ」
唯「……」
澪「そうだな」
澪「お城の人達に迷惑かけたんだ」
澪「ちゃんと謝ってこい」
唯「うん……分かった!」
262: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:22:48.56 ID:gy6Zy7ZM0
――――
律「唯、元気でやれよ!」
澪「風邪引かないようにな」
唯「りっちゃん……澪ちゃん……」
律「ん?」
唯「うわあ~ん!」ギュッ
澪「唯……」
唯「やっぱり離れたくないよう……」グスッ
律「だあー!泣くな泣くな!」
263: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:26:30.38 ID:gy6Zy7ZM0
澪「またいつでも会えるだろ?」
唯「うん……そうだね……」グスッ
律「いつでも遊びにこい!」
唯「うん!」
憂「お姉ちゃん……」
和「唯……いい人達に出会ったわね……」
264: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:30:51.88 ID:gy6Zy7ZM0
――後日
紬「ええ!?じゃあ唯ちゃんは平沢家の当主様の娘だったの!?」
梓「私も実は見覚えがあると思ったんです……」
梓「平沢唯と言えば、三味線の世界では結構有名ですから」
律「じゃあどうして気付かなかったんだ?」
梓「名字まで分かればわかってましたよ」
梓「姿は以前遠巻きに見ただけだったんです」
紬「お父様も見覚えがあるって言ってたわ」
紬「以前演奏会で見たかもって」
266: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 02:35:24.60 ID:gy6Zy7ZM0
澪「じゃあムギも会ったことがあったんじゃないのか?」
紬「私は外出を禁止されていたから……」
澪「あ、そっか……」
律「それでな~、唯から手紙が来てるんだ」
紬「なんて書いてるの?」ワクワク
澪「お城に遊びに来てくれって」
紬「是非行きたいわ!」
梓「私もです!」
律「うし!みんなで行くか!」
269: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:04:46.49 ID:gy6Zy7ZM0
――後日 平沢城
唯「……」チラチラ
憂「お姉ちゃん、中に入ってなよ」
唯「だって~、待ちきれないんだもん」
憂「お姉ちゃん昨日から楽しそうだったもんね!」
唯「うん!」
憂「あ、あれじゃない?」
唯「ほんとだ!」
唯「お~い!」
律「おーす!唯!」
澪「久しぶりだな」
紬「お菓子沢山持ってきたわ!」
唯「わーい!」
270: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:07:46.95 ID:gy6Zy7ZM0
梓「こんにちは」
唯「あ~ずにゃん!」ギュッ
梓「わ、また急に……」
憂「みなさんこんにちは」
憂「中へどうぞ」
律「よっしゃあ!」
憂「あ、あなたが梓ちゃん?」
梓「え、うん」
憂「お姉ちゃん、いっつも梓ちゃんのこと話してるんだよ」
梓「え!?なんて?」
憂「あずにゃんは可愛いんだよ~とか、猫みたいなんだよ~とか」
梓「うう……」
憂「あ、私は平沢憂です」
憂「よろしくね!」
梓「うん!よろしく!」
271: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:11:48.45 ID:gy6Zy7ZM0
――――
梓「ところで律先輩」
律「んー?」
梓「ずーっと疑問に思ってることがあるんですけど」
律「なんだー?」
律「お姉さんに聞いてみなさい」
梓「どうして唯先輩からあんなに美味しいダシがとれたんでしょう?」
律「……」
梓「……」
律「……」
梓(あれ?)
272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:13:45.57 ID:gy6Zy7ZM0
律「……梓」
梓「はい」
律「世の中にはな……触れて良い事柄と触れてはいけない事柄があるんだ」
梓「はあ」
律「私達がそれを知るにはまだ幼すぎるんだよ」
梓「律先輩も分からないんですね」
律「さーて、明日の仕込みしなきゃ」
梓「あ、誤魔化した」
第一篇 完
276: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:20:46.94 ID:gy6Zy7ZM0
~第二篇~
――うどん屋
律「へいおまち!」ドン
梓「ありがとうございます」
律「今回の新作は自信があるんだ」
律「食べてみてくれ」
梓「はい!」
梓「……」ズルズル
律「どうだ?」
梓「美味しいです!」
律「だろ?」
澪「よかったな」
279: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:26:50.80 ID:gy6Zy7ZM0
律「よーし、これなら店に出しても大丈夫だな」
梓「律先輩って普通のダシでもうどん作れたんですね」モグモグ
律「過去のことは忘れなさい」
律「それと、口に物をいれて喋るんじゃありません」
梓「すみません」モグモグ
律「しっかし唯がお城に戻ってから急に静かになったなー」
澪「そうだな」
澪「ちょっと寂しいかも
コンコン
律「ん?誰か来た」
律「はいはーい」
ガラガラ
純「こんにちはー」
律「おー、純ちゃん」
281: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:31:19.64 ID:gy6Zy7ZM0
律「今日は定休日だぞー?」
純「えへへー、どうしても食べたくって」
律「仕方ないなー」
梓「誰ですか?」
澪「うちの常連さんだよ」
澪「色々あって仲がいいんだ」
梓「そうなんですか」
律「まあ座って座って」
純「はーい」
純「あれ?」
梓「あ、こんにちは」
283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:36:10.18 ID:gy6Zy7ZM0
純「……」ジー
梓「?」
純「むむ……」ジー
梓「あの……」
純「もしかして三味線の人?」
梓「しゃ、三味線の人……?」
純「中野梓?」
梓「あ、はい」
純「へー!」
純「噂には聞いてたけど初めて見た!」
梓「え、噂?」
純「うん、この辺じゃ有名だよ」
純「中野流当主の娘がこのうどん屋によく来るって」
284: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 03:43:15.51 ID:gy6Zy7ZM0
梓「そんなに有名なの……?」
律「あー、私が有名にしといた」
梓「え?」
澪「律が梓がよく来ることを、この辺の人に言いふらしてるんだ……」
梓「ちょ!?」
梓「なんでそんなことを!?」
律「きゃー!怒ったー」
梓「そりゃ怒りますよ!」
梓「勝手に自分のこと言いふらされりゃ誰でも!」
律「ははっ、宣伝宣伝」
286: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:00:18.35 ID:gy6Zy7ZM0
純「ねえ、梓はどうしてこの店に来るようになったの?」
梓(いきなり呼び捨て!?)
純「ねえねえ梓ー」
梓「知らない!」
純「あ、怒った」
梓「うるさい!」
純「ご、ごめん……」
梓「え?」
純「ごめん……いきなり慣れ慣れしかったよね……」シュン
梓「あれ……?」
純「私帰るね……」トボトボ
梓「あ、あの……」
287: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:04:20.32 ID:gy6Zy7ZM0
純「……」チラッ
梓「べ、別にそんなに怒ってない……よ?」
純「本当……?」
梓「う、うん」
純「ですよねー」ケロッ
梓(あ、演技だ)
律「おーい、うどんのびちゃうぞ」
純「あ、もう出来てたんですか」
律「純ちゃんが梓とにらめっこしてた時にはもう出来てたよ」
純「はやっ!?」
唯「りっちゃんおいっす」ガラガラ
律「うお!?唯!?」
澪「急に来た!?」
288: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:08:45.04 ID:gy6Zy7ZM0
唯「あ!」
梓「唯先輩こんにち……」
唯「あーずにゃん!」ギュッ
梓「むぎゅっ」
唯「あずにゃんも来てたんだ~」スリスリ
梓「ちょっ、スリスリしないでください!」
唯「あ~ん、いけず~」
律「どうしたんだ~、急に」
唯「えへへ~、遊びにきちゃった~」
澪「今日は定休日なのに人が集まるな」
律「そうだな」
289: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:14:01.49 ID:gy6Zy7ZM0
唯「りっちゃん、私にもうどーん」
律「はいはい」
純「ねえ、梓」
梓「何?」
純「あの人、前うどん屋手伝ってたりしてたけど誰なの?」
梓「平沢家当主の娘」
純「ええ!?本当!?」
梓「うん」
純「このうどん屋ってなんかすごいね……」
梓「そうかな?」
純「うん、すごい」
純「殿様の娘が店を手伝ったり、急に来たりするうどん屋なんてないよ」
梓「あー、たしかに」
純「たしかにって……」
290: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:18:27.91 ID:gy6Zy7ZM0
律「はいよ」
唯「ありがとー!」
唯「……」ズルズル
唯「むむ!?」
唯「りっちゃん」
律「ん?」
唯「ダシ変えたね」
律「お、わかる?」
唯「わかるよ~」
純「なんかみんなため口だけど……」
梓「そんなもんだよ」ズルズル
純「よーし……」
291: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:23:34.84 ID:gy6Zy7ZM0
純「あ、あの!」
唯「あ、純ちゃん久しぶり~」
純「はい!お久しぶりです!」
純「憶えててくれたんですね」
唯「憶えてるよ~、常連さんだもん」
純「ありがとうございます!」
純「私のこと憶えてたよ!」ユサユサ
梓「よかったね」グラグラ
律「そう言えば憂ちゃんは元気かー?」
澪「憂ちゃんとは最後に唯のお城にいったきりだな」
唯「元気だよ~」
純「憂ちゃん?」
梓「唯先輩の妹だよ」
292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:29:16.45 ID:gy6Zy7ZM0
純「へー、妹がいるんですか」
唯「そうだよ~」
唯「憂はすごいんだよ~」
律「あー、たしかに憂ちゃんはすごいな」
純「私も会ってみたいです」
唯「じゃあ今度憂も連れてくるねー」
純「はい!」
コンコン
律「おお……また誰か来た」
澪「今度は誰だ?」
律「はいはーい」
ガラガラ
紬「こんにちはー」
294: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:34:42.62 ID:gy6Zy7ZM0
律「おおー、ムギかー」
唯「あ!ムギちゃん!」
紬「まあ!」
紬「唯ちゃんと梓ちゃんも来てたのね!」
梓「こんにちは」
澪「今日は勢ぞろいだな」
純「今度は誰?」
梓「琴吹家当主の娘」
純「ほんとに凄いうどん屋だー!?」
律「どうしたんだー?」
紬「うん……ちょっと……」
295: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:38:18.63 ID:gy6Zy7ZM0
律「?」
律「まあ座った座った」
紬「うん、ありがとう♪」
紬「あら?」
純「は、はじめまして!」
純「私純です!ここの常連やってます!」
梓「また手当たり次第に……」
紬「私は紬よ♪」
紬「よろしくね!」
純「よろしくお願いします!」
紬「りっちゃん!またお友達ができたわ!」キラキラ
律「よかったな」
296: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 04:41:24.58 ID:gy6Zy7ZM0
唯「あずにゃん、あ~ん」
梓「やめてください!」
梓「恥ずかしいです!」
唯「いけず~」
梓「それにうどんはあ~んするものじゃないです!」
唯「いいじゃんいいじゃん」
梓「だめです!」ガオー
唯「ちぇー」
梓「まったく……」
307: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:12:09.87 ID:gy6Zy7ZM0
――――
純「そういえばさー、梓」
梓「何?」
純「なんでみなさんのこと先輩って呼んでるの?」
梓「……そう呼べって言われてるから」
純「えー、なんで?」
梓「人生の先輩……だから」
純「人生の先輩!?」
梓「うん」
純「か、かっこい~……」
梓「そうかな?」
純「うん!すっごく!」
梓「まあ、そう言われれば」
308: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:17:39.31 ID:gy6Zy7ZM0
純「私も先輩って呼ぶ!」
純「いいですか?」バッ
律「お、おう」
純「やったあ!」
律「なんかそう言われると恥ずかしいな~」
澪「お前が言い出したんだろ」
律「そうだったけ?」
澪「忘れてたのかよ……」
紬「……」
紬「あ、あの!」
律「ん?どうした?」
309: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:23:00.21 ID:gy6Zy7ZM0
紬「突然で悪いんだけど……」
紬「今日、ここに泊めてもらえないかしら……?」
律「え?別にいいぞー」
紬「ありがとう!」パアア
唯「え?ムギちゃんお泊り!?」
澪「そうみたいだな」
唯「私も泊まりたい!」
律「いいぞー、何人でもいいぞー」
唯「わーい!」
唯「あずにゃんは!?」
梓「私は……今日は無理ですね」
唯「えー、どうして?」
梓「無断で外泊は禁止されてるので」
唯「そっかあ……」
310: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:28:07.44 ID:gy6Zy7ZM0
梓「こんどちゃんと許可をとってきます」
梓「律先輩、いいですか?」
律「おう!」
唯「純ちゃんは?」
純「私も……ちょっと無理ですね」
唯「うう……」
唯「じゃあ今日は4人で楽しもう!」
和「ちょっと唯!」ピシャーン
澪「うわあああ!?」ビクッ
律「また人きたー!?」
唯「和ちゃん!?」
和「また無断で外出して!」
唯「ご、ごめ~ん、和ちゃん!」
311: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:32:35.00 ID:gy6Zy7ZM0
和「まったく……憂も心配してたわよ」
唯「ほんと申し訳ないです……」
澪「びっくりした~……」ドキドキ
律「どうし唯がここにいるって分かったんだ?」
和「勘よ」
律「ああ、そう……」
和「ほら、帰るわよ」グイ
唯「あの……和ちゃん?」
和「なに?」
唯「今日ここにお泊りしてはいけないでしょうか……?」モジモジ
和「だめよ」
唯「ですよね~……」
和「無断外出の上、無断外泊なんてだめよ」
唯「りっちゃ~ん……」チラッ
319: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 12:32:16.76 ID:gy6Zy7ZM0
律「唯、ちゃんと許可もらったらまた来な」
澪「そうだな、私達はいつでもいいぞ」
唯「うう……じゃあ明日泊まりに来る!」
律「はやっ」
唯「いい!?和ちゃん」
和「お城の人に許可をもらいなさい」
唯「うん!」
唯「あずにゃんも明日来てね!」
梓「明日ですか」
唯「けって~い」
梓「また強引に……わかりました」
梓「私も家の人に許可もらってきます」
唯「わーい!」
320: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 12:32:58.01 ID:gy6Zy7ZM0
和「じゃあ帰るわよ」
唯「はーい」
唯「ばいばーい、みんなー」
律「ああ」
澪「じゃあな」
紬「またね~」
梓「私もそろそろ帰ります」
純「あ、わたしも帰らなきゃ」
律「おう」
純「御馳走様でしたー」
326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:29:21.58 ID:gy6Zy7ZM0
律「唯、ちゃんと許可もらったらまた来な」
澪「そうだな、私達はいつでもいいぞ」
唯「うう……じゃあ明日泊まりに来る!」
律「はやっ」
唯「いい!?和ちゃん」
和「お城の人に許可をもらいなさい」
唯「うん!」
唯「あずにゃんも明日来てね!」
梓「明日ですか」
唯「けって~い」
梓「また強引に……わかりました」
梓「私も家の人に許可もらってきます」
唯「うん!」
328: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:33:18.10 ID:gy6Zy7ZM0
和「じゃあ帰るわよ」
唯「はーい」
唯「ばいばーい、みんなー」
律「ああ」
澪「じゃあな」
紬「またね~」
梓「私もそろそろ帰ります」
純「あ、わたしも帰らなきゃ」
律「おう」
純「御馳走様でしたー」
329: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:37:40.62 ID:gy6Zy7ZM0
――外
純「ねえ、梓」
梓「なに?」
純「唯先輩ってほんとに平沢家当主の娘?」
梓「え、そうだけど……なんで?」
純「いや、なんか全然偉い人って感じしないなーって」
梓「ああー、たしかに」
純「なんていうか……天然って言うの?」
梓「うんうん」
純「さっき妹の方は凄いって言ってたけど」
梓「ああー、憂は凄いよ」
330: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:42:34.52 ID:gy6Zy7ZM0
純「そうか……唯先輩よりすごいのか……」
純(ということは……すごい天然ってことか……)
純「いやー、はやく会ってみたいね!」
梓「そんなに会いたいの?」
純「うん!」
梓「ふーん」
純「あ、私こっちだから」
梓「あ、うん」
純「ばいばーい」
梓「うん、またね」
331: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:44:57.50 ID:gy6Zy7ZM0
――うどん屋
律「みんな帰ったらすごい静かになったな」
澪「そうだな」
律「そういえばムギ」
紬「な、なあに?」
律「今日はどうしたんだ?急に」
紬「うん……ちょっと……」
律「?」
紬「あの……お願いがあるんだけど……」
澪「なんだ?」
紬「今日だけでなく、しばらく泊めてもらえないかしら……」
律「え?」
332: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:48:04.45 ID:gy6Zy7ZM0
紬「やっぱり迷惑よね……」
律「いや、泊まるのはいいんだけど……」
澪「ムギ、どうしたんだ?」
律「なにかあったのか?」
紬「実は……」
律「……」
澪「……」
紬「私、家出したの!」
律「ええ!?」
澪「家出!?」
紬「うん……」
律「どうしてだ?」
333: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:52:51.73 ID:gy6Zy7ZM0
紬「……」
律「……」
澪「……」
紬「その……」
律「わかった」
紬「え?」
律「理由は聞かないでおくよ」
紬「ごめんなさい……」
律「まあ、遠慮するなって!」
澪「そうだぞ」
紬「ありがとう……」
律「この話は終わり!」
律「夜ごはんにしよう!」
紬「うん!」
334: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:55:16.90 ID:gy6Zy7ZM0
――平沢城
唯「ほえ~」プシュー
憂「どうしたの?お姉ちゃん」
唯「お母さんに凄い叱られた……」グデー
憂「ああ……」
唯「もう勝手に外出はしないよ……」
憂「そうだね」
唯「はあ~……」
唯「ねえうい~」
憂「なあに?」
唯「氷菓子~」
憂「ご飯食べてからっ」
唯「けち~」
憂「めっ」グッ
335: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 13:57:25.97 ID:gy6Zy7ZM0
唯「あとねー、明日りっちゃんち泊まりたいんだけど、お母さんとか許してくれるかな?」
憂「うーん……聞いてみたら?」
唯「そうだね~」
唯「そう言えばりっちゃんのうどん屋さんの常連さんで、憂に会いたいって言う人がいたよ」
憂「え?私に?」
唯「うん」
憂「どんな人?」
唯「純ちゃんって女の子」
唯「多分憂と同じ年だよ~」
憂「へえ~」
唯「だから今度憂も一緒にいこうよ」
憂「うん!」
唯「やったー!」
336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:00:24.32 ID:gy6Zy7ZM0
――うどん屋
律「ある男の人が夜道を一人で歩いてたんだ」
紬「……」ワクワク
澪「……」ドキドキ
律「それでな……真っ暗な道に女の人が立っているのをみつけるんだ……」
律「男の人は後ろから声をかけた……『こんな夜中にどうしたんですか?』って……」
紬「……」ゴクリ
澪「な、なあ律……やっぱり怪談なんて……」ドキドキ
紬「静かに!」
澪「うう……」
律「女の人は答えない……男の人は回りこんで女の人の顔を覗きこんだんだ」
紬「……」ドキドキ
律「そしたらな……その女の人は……」
澪「ひいっ……」
紬「……」ドキドキ
337: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:04:43.95 ID:gy6Zy7ZM0
律「のっぺらぼうだったのだー!」クワッ
紬「きゃー!」
澪「わあああああ!」ドカン
律「男の人は悲鳴を上げて逃げる!」
紬「そ、それでそれで!?」ワクワク
澪「もうやめてよう……」ブルブル
律「逃げながら後ろを振り返ってみると……なんと顔のない頭だけが追いかけてくるではないかー!」
澪「きゃああああ!」
律「その女はのっぺらぼうのろくろ首だったのだ!」
紬「男の人はどうなったの!?」
律「男のどうなってしまったかは……誰にもわからない……」
紬「す、すごいわ~……」
338: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:06:41.68 ID:gy6Zy7ZM0
律「おーい、みおー」ユサユサ
澪「お星様いっぱい……はは……」グラグラ
律「ああ……当分帰ってこないな」
紬「もっと聴きたいわ!」
律「あー、でも澪がこんな調子だからなー……」
律「みおー」
澪「……」
律「澪?」
澪「zzz……」
律「あ、寝ちゃってる」
紬「澪ちゃん寝ちゃったの?」
律「うん」
339: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:09:29.87 ID:gy6Zy7ZM0
律「はあ~、私達も寝るか」
紬「もう寝ちゃうの?」
律「明日はうどん屋休みじゃないからな」
紬「そうね……もっとお話ししたかったわ」
律「よいしょっと」バサ
紬「ねえ、りっちゃん」
律「んー?」
紬「明日、私もうどん屋さん手伝っていいかしら?」
律「お、手伝ってくれるのか?」
紬「うん!是非やりたいわ!」
律「じゃあ明日に備えて寝よう!」
紬「はーい!」
340: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:16:35.59 ID:gy6Zy7ZM0
――翌日
律「う……」
律「……」
律「朝か……」
紬「おはよう、りっちゃん」
律「お、もう起きてたのか」
紬「うん」
澪「zzz」
律「みおー、朝だぞー」ユサユサ
澪「うーん……はっ!?」ガバッ
律「うお!?」
澪「……」
律「お、おはよう」
澪「私……いつの間に寝てたんだ……?」
341: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:18:04.09 ID:gy6Zy7ZM0
律「どこか遠くに行ったと思ったら寝てたよ」
澪「え?」
律「なんでもないよ」
澪「そうか」
紬「ところで今日はどんな手伝いをすればいいのかしら?」
律「そうだなー、やっぱり注文取ったり運んだりかな?」
紬「わかったわ」
澪「どうしたんだ?」
律「今日はムギも手伝ってくれるんだ」
澪「へー」
紬「でもちゃんとできるか心配だわ……」
律「大丈夫だよ」
律「唯でも出来てたからな」
澪「ははっ」
紬「私頑張る!」
342: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:22:09.42 ID:gy6Zy7ZM0
――――
客1「ごめんよ~」
澪「お、お客さんきた」
律「ムギ行け!」
律「練習の通りやれば大丈夫だ」
紬「う、うん」ドキドキ
紬「い、いらっしゃいませ~」
客1「おや、新人さん?」
紬「今日はお手伝いなんです~」
客1「そうかそうか」
紬「御注文は?」
客1「えーと……じゃあこの特製りっちゃんうどんを一つ」
344: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:26:57.25 ID:gy6Zy7ZM0
紬「かしこまりました~」
客1「よろしく」
紬「りっちゃん、私ちゃんとできてた?」
律「ああ、完璧だ!」
紬「本当!?」
澪「本当だよ」
紬「よーし!」
345: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:29:40.20 ID:gy6Zy7ZM0
――――
紬「おまたせしましたー」
客2「お、ありがとう」
律「ムギだいぶ慣れてきたな」
澪「うん、なんか楽しそう」
客3「お水ちょうだーい」
紬「はいはーい」
律「でもみんなムギの正体には気づかないもんなんだな」
澪「う~ん」
澪「今まで露出が無かったから、名前は知っていても姿は知られてないんじゃないのか?」
律「それもそっかー」
澪「でも接客してるのが殿様の娘だなんて分かったらみんな驚くだろうな」
客4「うどんまだー?」
律「あー、もう少しです!」
紬「いらっしゃいませ~」
346: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 14:32:46.96 ID:gy6Zy7ZM0
――夕方
律「よし!今日はこれで閉店だ!」
紬「楽しかったわ~」
澪「ご苦労さま」
紬「またお手伝いしたい!」
律「おう!」
唯「りっちゃん、泊まりに来たよー」ガラガラ
律「うお!?唯!?」
澪「ほんとに来たのか」
律「扉くらい叩けよ!」
唯「ムギちゃんおいーす」
紬「おいーす!」
348: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:00:23.91 ID:gy6Zy7ZM0
律「唯はいっつも急にくるなー」
唯「えへへ~」
澪「ちゃんと許可とってきたのか?」
唯「うん!ばっちり!」
律「じゃあ、大丈夫だな」
唯「あずにゃんは~?」
律「あー、来てないな」
唯「はやく来ないかな~」
澪「来れるかもまだ分からないんだぞ?」
唯「あずにゃんはきっと来る!」
唯「ね、ムギちゃん!」
紬「うん!来るわ!」
コンコン
唯「来た!?」
349: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:04:51.21 ID:gy6Zy7ZM0
律「はいはーい」
ガラガラ
梓「あ、こんにちはー」
唯「あ~ずにゃん!」ギュ
梓「むぎゅっ」
唯「来てくれたんだね!」スリスリ
梓「唯先輩も来れたんですね」
律「許可とれたのか?」
梓「はい」
梓「ところでみなさん」
律「んー?」
梓「突然ですが、今日は一つ提案を持ってきました」
澪「提案?」
梓「はい」
350: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:10:42.43 ID:gy6Zy7ZM0
梓「実は今度、中野家主催の演奏会があるんです」
梓「みなさんも良ければ出演してみませんか?」
律「ええ!?私達が演奏会に!?」
唯「面白そう!」
紬「私も出たいわ!」キラキラ
澪「それって……お客さんの前で演奏するってことか?」
梓「そうですね」
澪「む、無理だよ!そんなの……」
梓「え、どうしてですか?」
澪「だって、大勢の前で失敗なんかしたら……」
澪「うわあああ!」ドカーン
351: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:16:19.54 ID:gy6Zy7ZM0
律「どこでやるんだ?」
梓「私の家です」
梓「結構歴史のある由緒正しい演奏会なんですよ」
梓「近隣の殿様とかも観客としてくるぐらいですから」
梓「毎年この時期にやるんです」
唯「へ~」
紬「でもそんな演奏会に私達が出演して大丈夫なの?」
律「いや、少なくともムギは大丈夫だろ」
梓「大丈夫です、既に許可はおりてます」
澪「大勢の前で……演奏……はは……」
唯「一人一人演奏するの?」
梓「一人一人でもいいですし、みんなで合わせても大丈夫です」
澪「みんなでやろう!」
澪「ひ、一人でなんて……」
353: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:21:01.86 ID:gy6Zy7ZM0
紬「でも琴と琵琶はともかく、琴と三味線を合わせるなんてあんまり聞かないけど……」
律「あー、たしかに」
梓「いいじゃないですか、前衛的で」
律「前衛的ってお前……」
梓「何事も挑戦です!」
唯「そうだよ~、やってみようよ!」
律「う~ん、まあそこまで言うなら」
紬「そうね、やってみましょう」
唯「いつやるの?」
梓「1週間後です」
澪「1週間後!?」
律「結構はやいな」
354: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:24:11.19 ID:gy6Zy7ZM0
紬「みんなで合わせるとなると……練習しなくちゃいけないわね」
梓「そうですね」
律「じゃあ、ムギのとこで練習させてもらうか」
紬「あ……私のとこはちょっと……」
律「!」
律「あー、そっか……家出中か……」
梓「え!?家出!?」
唯「ムギちゃん家出したの!?」
律「あ、やべ……」
紬「う、うん……」
唯「どうして?」
律「ムギ、ごめん……」
梓「ムギ先輩が家出……」
356: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:26:37.01 ID:gy6Zy7ZM0
紬「……」
紬「わかったわ……」
律「え?」
紬「みんなもいるし……ちゃんと理由を話すわ……」
澪「ムギ……」
律「……」
梓「……」
紬「私……結婚するかもしれないの……」
澪「ええ!?」
律「結婚!?」
唯「ムギちゃんが……結婚!?」
梓「だ、誰とですか!?」
357: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:29:47.67 ID:gy6Zy7ZM0
紬「隣の国の殿様の息子さんなの……」
律「な、なんだ~……おめでたい話じゃないか!」
澪「そ、そうだな」
唯「ムギちゃんおめでとう!」
紬「でも……ほんとは結婚なんてしたくない……」
梓「え?」
紬「実は相手の人はお父様が選んだ相手なの」
紬「他の国の殿様のとこにお嫁に行けば、政治的に有利になるって……」
律「政略結婚ってやつか……」
唯「政略結婚?」
澪「政略結婚ってのは、政治目的の結婚のことだ」
澪「相手方の子供と自分の子供が結婚すれば、政治の場でも仲間になれるだろ?」
唯「へ~」
358: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:34:32.02 ID:gy6Zy7ZM0
梓「へ~って……唯先輩も殿様の娘なんですから、今後そういうことがあるかも知れないんですよ?」
唯「え、私が?」
梓「はい」
唯「結婚を?」
梓「はい」
唯「ないよ~」
梓「お気楽ですね……」
律「どうして嫌なんだ?」
紬「だって……結婚なんてしたらみんなといれる時間が減っちゃうわ……」
紬「それに勝手に決められた相手だなんて……」
澪「ムギ……」
紬「だから今は結婚なんて嫌……」
359: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 15:38:23.94 ID:gy6Zy7ZM0
律「お父さんとは話しあったのか?」
紬「一方的に言われたから……あまり話もできなかったわ」
紬「そして思わず家出を……」
律「そうだったのか……」
澪「……」
紬「……」
律「なあ、ムギ」
紬「なあに……?」
律「だったら、その気持ちをお父さんに伝えなきゃ駄目なんじゃないのか?」
紬「え……」
梓「そうです!」
澪「そうだな」
澪「ちゃんと伝えればわかってくれるはずだ」
360: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:00:53.44 ID:gy6Zy7ZM0
紬「でも……」
律「大丈夫!私もついてくから」
紬「本当!?」
律「ああ!」
紬「ありがとう!」
律「澪もな!」
澪「私も!?」
唯「私もいく!」
律「唯は待ってなさい」
唯「え~、なんで~」
律「お前が来ると話がややこしくなる」
唯「ちぇ~」
律「梓、唯と待っててくれ」
梓「わかりました」
361: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:09:54.39 ID:gy6Zy7ZM0
紬「みんなありがとう……」
紬「私、お父様とちゃんと話あってみるわ!」
律「よし!そうと決まれば明日お城の乗り込むぞ!」
澪「乗り込むって……」
梓「あ、そう言えば」
梓「ちょっといいですか?」
律「ん?どうした?」
梓「さっきの演奏の練習の場所のことなんですけど」
澪「そういえばまだ決まってなかったな」
梓「私の家はどうでしょう?」
梓「大体の楽器は揃ってますし、本番と同じ場所で練習できた方がいいと思うのですが」
律「おー、そうだな!」
唯「あずにゃんの家行ってみたい!」
澪「ここからどのくらいなんだ?」
梓「歩いて行ける距離です」
363: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:13:13.09 ID:gy6Zy7ZM0
紬「そういえば梓ちゃん、いつも歩いて来てるわね」
梓「はい」
律「唯はいつもどうやって来てるんだ?」
律「ムギは近いから歩いたりしてるけど」
唯「私は商人さんの馬に一緒に乗せてもらったりしてるよ~」
澪「ええ!?」
律「おいおい……危ないな」
唯「みんないい人なんだよ~」
梓「何度も言いますが、唯先輩は殿様の娘なんですよ!?」
梓「そんな知らない人にホイホイついていったらだめです!」
梓「少しは自覚してください!」
唯「あずにゃん怒った~」
梓「怒ってないです!心配してるんです!」
澪「唯は愛されてるな……」
364: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:17:56.30 ID:gy6Zy7ZM0
律「でもこうなってくると明日から忙しくなるな~」
澪「お店はどうするんだ?」
律「こうなったら臨時休業だ!」
澪「大丈夫なのか?」
律「大丈夫大丈夫!」
澪「うーん……」
律「ちょっとの間だろ」
澪「まあ……そっか」
律「よし!頑張るぞ!」
紬「おー!」
唯「おー!」
366: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:22:53.77 ID:gy6Zy7ZM0
――夜
律「大嘘つき大会ー!」ダアー
唯「おー!」パラリラパラリラ
紬「いえーい!」ドンドンパフパフ
澪「夜なんだから静かにしろ!」
律「まずはムギから!」
紬「女同士なんて……汚らわしいわ!」
律「大嘘つきだー!」
唯「嘘つきー!」
律「行け!唯!」
唯「世の中腐ってるよ!」キリッ
梓「ぶふっ!?」
澪「梓まで!?」
紬「大嘘つきー!」
律「そんなこと考えたことも無いくせに!」
369: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:31:33.00 ID:gy6Zy7ZM0
唯「えへへ~」
唯「さありっちゃん!」
律「私……実はかつらなんだ……」
紬「大嘘つきー!」
唯「嘘つきー!」
律「……」
唯「あれ?」
紬「りっちゃん?」
唯「え……もしかして……」
律「……」
唯「本当にかつら……」
律「うん……」
唯「……」
紬「……」
370: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:32:45.83 ID:gy6Zy7ZM0
唯「……なんかごめんね」
紬「……りっちゃんはりっちゃんよ」
律「うん……ありがとう……」
唯「……」
紬「……」
律「うそぴょーん!」
唯「あー!」
紬「凄い嘘つき!」
律「よし!澪いけ!」
澪「え、わ、私!?」
371: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:33:26.73 ID:gy6Zy7ZM0
唯「さあ!」
澪「あの……じ、実は……私男なんだ!」
律「……」
梓「……」
紬「お、大嘘つき~……」チラッ
唯「澪ちゃん……」
澪(はずした~!)カアア
律「ま、枕投げ大会ー!」
梓(うやむやにした!?)
唯「お、おー!」
紬「よしきたー!」
374: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:37:39.79 ID:gy6Zy7ZM0
律「とう!」
梓「むぎゅっ!?」
律「ふっふっふ」
律「ここはすでに戦場なのだよ、お譲ちゃん!」
梓「やりましたね!?」
唯「とう!」
紬「唯ちゃん強~い」
澪「消えて無くなってしまいたい……」ブツブツ
375: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 16:41:05.69 ID:gy6Zy7ZM0
――――
律「ぐごー」
紬「zzz」
唯「おかわり……えへへ……」ムニャムニャ
澪「スー…スー…」
梓(みんな寝ちゃった)
梓(……)
梓(私も嘘考えてたのになー)
梓(……)
梓「私、髪の毛ほどくと巨大化するんです~」ボソッ
梓「……」
梓「大嘘つき~」
梓「……」
梓「寝よ……」
401: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 23:45:32.83 ID:gy6Zy7ZM0
――翌日
律「よし、扉に臨時休業の張り紙をしてっと……」ペタペタ
律「よし!完璧!」
澪「臨時休業なんて初めてだな」
律「そうだな」
唯「私もお城の入り口までついてく~」
梓「私もいきます」
律「行くぞ!ムギ!」
紬「うん!」
403: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 23:49:55.88 ID:gy6Zy7ZM0
――城への道
唯「ムギちゃん!」
唯「いー」グイー
紬「いー」グイー
唯「変な顔~」キャッキャ
紬「唯ちゃんも~」キャッキャ
梓「緊張感ないですね……」
澪「なあ、律」
律「どうした?」
澪「あそこに立ってる人って……」
律「どこ?」
澪「ほらあそこ」
404: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 23:54:38.94 ID:gy6Zy7ZM0
律「あー」
律「あの人がどうした……ってお役人さんじゃないか」
唯「りっちゃんどうしたのー?」
律「ほら、あそこに立ってる人」
唯「あー、あの人知ってる」
唯「前お店に来てた人だよね?」
律「そうそう」
紬「あ、あの人……」
律「ムギ知ってるのか?」
405: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 23:59:07.98 ID:gy6Zy7ZM0
澪「そっか、琴吹家の所属の人か」
紬「ええ」
紬「でもね……あの人は仕事のやり方が手荒くて有名なの」
澪「あー、たしかに……」
律「話かけてみるか」
澪「え、なんで?」
律「一応お客さんだしなー、挨拶くらいは」
澪「まあ……そうか」
407: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:04:58.00 ID:AyzoOKGm0
――――
律「こんにちはー」
さわ子「あら、あなたたち」
さわ子「たしかうどん屋の」
澪「はい」
さわ子「あら、あなたも一緒なのね」
紬「はい♪」
律「こんなとこに立って何してるんですか?」
さわ子「待ち合わせよ」
唯「誰とですか~?」
さわ子「男の人よ」
唯「もしかして彼氏!?」
409: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:14:46.46 ID:AyzoOKGm0
さわ子「これから彼氏になるかも知れない人よ」
唯「へー!」
さわ子「でもね……もう待ち合わせの時間過ぎてるのにこないの……」
さわ子「恋文も沢山書いて送ったのに……」
梓「沢山ってどのくらいですか?」
さわ子「墨汁で満たした風呂釜が空っぽになったわ」
律(うわあ……)
梓(こわっ!)
律「あのー……」
さわ子「なに?」
律「誠に申し上げにくいんですが……」
さわ子「?」
410: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:20:50.96 ID:AyzoOKGm0
律「その男の人はもう来ないんじゃないかと……」
さわ子「なんですって!!」クワッ
澪「ひいっ!?」
さわ子「あなた達に何が分かるのよ!」
唯「怒った!?」
さわ子「SATSUGAIするわよ!」シャー
律「に、逃げろー!」
さわ子「二度と来るんじゃねえ!」
411: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:25:54.56 ID:AyzoOKGm0
――――
唯「はあ……はあ……」
澪「はあ……はあ……」
律「どうやら触れてはいけない人だったみたいだな……」
梓「そうですね……」
律「ふう」
律「気を取り直していくか」
紬「そうね」
律「何も無かった……何も無かったんだ……」
412: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:31:50.75 ID:AyzoOKGm0
――城の前
律「ついたー」
澪「なんか既に疲れた……」
律「いいか?ムギ」
紬「はい」
律「私達はついては行くけど、ちゃんと自分の口から伝えなきゃだめだぞ?」
紬「うん、大丈夫よ!」
律「よし」
澪「じゃあ行ってくるよ」
唯「ムギちゃん頑張って!」
梓「頑張ってください!」
413: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:35:30.21 ID:AyzoOKGm0
律「突入ー!」ダダダ
紬「あ、待って~」タタタ
澪「全く……遊びじゃないんだぞ」スタスタ
唯「……」
梓「……」
唯「あずにゃんや」
梓「なんですか?」
唯「私達、暇だね」
梓「暇ですね」
唯「散歩でもしようか~」
梓「そうですね」
414: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:39:56.71 ID:AyzoOKGm0
――琴吹城
紬「斎藤!斎藤はどこ!?」
家来「お、お譲様!?」
紬「斎藤を呼んで!」
家来「た、只今!」
律「ムギ気合い入ってんなー」
斎藤「お譲様ー!」ドタドタ
斎藤「お譲様!心配しておりましたぞ」
紬「それより、お父様はいるかしら?」
斎藤「は、はい」
紬「今すぐお父様に会うわ」
斎藤「はっ!」
澪「なんか性格変わってるような……」
415: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:46:19.18 ID:AyzoOKGm0
――町
唯「もう春だねー」
梓「そうですね」
梓「桜も咲いてきましたし」
唯「ねえ、今度みんなでお花見しようよ!」
梓「いいですね!」
梓「私の家の近くに桜が沢山あるところがあるんです」
梓「演奏会が終わったらそこでしましょう」
唯「やったー!」
唯「楽しみがまた増えたね~」
梓「はい!」
「あー!梓ー!」
梓「え?」キョロキョロ
416: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:51:02.72 ID:AyzoOKGm0
唯「いまあずにゃん呼ばれたよ」
梓「そうみたいですね」
純「おーい!」タタタ
梓「あ、純だ」
純「今日も来てたんだー」
梓「うん」
純「唯先輩こんにちはー」
唯「こんにちは!」
純「なにしてるんですか?」
唯「ちょっと暇だったからあずにゃんと散歩してたんだー」
純「へえ、私も一緒にいいですか?」
唯「いいよー」
417: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 00:57:10.96 ID:AyzoOKGm0
梓「純はこの町に住んでるんでしょ?」
純「そうだよ」
唯「じゃあ、純ちゃんがいれば安心だね」
純「任せてください!」
梓「どこかいい場所とかあるの?」
純「うーん、場所より歩き回ってた方がいいことあるよ」
梓「いいこと?」
純「そ、いいこと」
唯「楽しみ~」
418: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:00:32.32 ID:AyzoOKGm0
――殿の間
紬「失礼します」
律(家来沢山いる……)
澪「……」ドキドキ
紬父「紬よ」
紬「はい」
紬父「勝手に城を飛び出していくとは何事じゃ」
紬「ごめんなさい」
紬父「まあ行き先は大方検討がついておったが」
紬「……」
紬父「うどん屋の者よ」
律「は、はい!」
419: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:05:41.90 ID:AyzoOKGm0
紬父「紬が迷惑をかけたようじゃな」
律「い、いえ!そんなことないです!」
紬父「そうか、そう言ってもらえると助かるのう」
紬「今日はお父様に結婚の件でお話があります」
紬父「おお、やっとその気になってくれたか?」
紬「いえ、私は結婚をする気はありません」
律(お、言った)
紬父「なんじゃと?」
紬「私はまだ結婚なんてしたくありません!」
紬父「……じゃがな紬」
紬父「お前が相手方の息子と結婚すればお前の将来だって……」
紬「政治の道具にされるなんて私は嫌です!」
澪(ムギ……)
紬父「せ、政治の道具じゃと……!?」
420: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:08:08.01 ID:AyzoOKGm0
紬「私は今を大切にしたいんです!」
紬「将来も大切だけど……今このみんなといる時間を大切にしたいんです!」
紬「他の人に決められた相手と結婚させられてまた縛られたくはないの!」
紬父「……」
紬「……」
紬父「……それがお前の考えだというのか?」
紬「はい」
紬「お父様が分かってくれるまでお城に戻る気はありません」
紬父「……よろしい」
紬「え?」
421: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:08:50.02 ID:AyzoOKGm0
紬父「ならば出て行くがよい」
紬「っ!?」
律「……」
澪「……」
紬「……はい
紬「失礼しました」
紬「行きましょう」
律「お、おう」
澪「いいのか?」
紬「ええ」
紬父「……」
422: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:09:33.72 ID:AyzoOKGm0
――町
唯「ねえ純ちゃん、いいことってなあに?」テクテク
純「そのうち分かりますよ」テクテク
梓「どこに向かってるの?」
純「てきとーだよ」
梓「適当って……」
純「あ、あそこ寄っていこう」
唯「お店?」
梓「そうみたいですね」
純「こんにちはー」
店主「おお、純ちゃん」
店主「そちらはお友達かい?」
純「はい!」
店主「ほれ、これ持って行きな!」
純「ありがとうございます!」
423: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:10:33.10 ID:AyzoOKGm0
店主「ほれ、お友達も」
梓「あ、ありがとうございます」
唯「草もちだー!」
唯「私大好き!」
店主「そりゃあよかった」
店主「また来な!」
純「はーい!」
唯「いいことって、このことだったんだね~」モグモグ
純「私って意外と顔広いんですよ~」
純「お腹が空いたときはこうやって適当にその辺を散歩するんです」
純「そうするとさっきみたいに」
唯「おお~」
唯「純ちゃんお主も悪よのう」
純「唯先輩こそ」
唯「わっはっはっは!」
424: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:11:15.80 ID:AyzoOKGm0
梓「でもそれってただずるいだけじゃあ……」
純「え?何?」
梓「なんでもないです」パクパク
町人「おお、純ちゃん!」
純「あ、こんにちはー」
町人「丁度よかった!」
町人「これみんなで食べな!」
純「わ、カステラだ!」
唯「わあ!」
純「ありがとうございます!」
町人「いいってことよ!」
唯「純ちゃんすごいね!」
純「えっへん!」
梓(まあいいか……)
425: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:11:59.13 ID:AyzoOKGm0
――城の外
律「ムギ、良かったのか?」
紬「うん……」
紬「でもごめんなさい……ちゃんと話を終わらせることができなくって……」
澪「いや、ムギは頑張ったよ」
律「そうだな、よくやったよ」
律「私達は何もできなかったし」
澪「ほんとだな」
紬「ありがとう……りっちゃん、澪ちゃん」
律「そういえば唯と梓はどこいったんだ?」
澪「先に帰ったとか?」
律「じゃあ私達も帰るか」
紬「うん!」
426: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:12:48.23 ID:AyzoOKGm0
――琴吹城
紬父「……」
紬父「『また』縛られたくはない……か」
紬父「……」
紬父「斎藤」
斎藤「はっ」
紬父「さっきの紬を見て……お主はどう思ったかのう?」
斎藤「紬お譲様は成長なさいました」
斎藤「とてもお友達を大切にしていらっしゃるようで」
紬父「……そうじゃのう」
428: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 01:13:42.35 ID:AyzoOKGm0
――町
唯「お腹いっぱ~い」
梓「そうですね」
純「あー、私そろそろ帰らなくちゃいけないです」
唯「え、もう帰っちゃうの?」
純「はい、家の手伝いほったらかしだったので」
梓「ほったらかしでうろうろしてたの……」
純「ということで、怒られちゃうんで私はこれで」
唯「うん、またね~」
梓「ばいばい」
純「あ!今度妹さん連れてきてくださいよ!」
唯「わかったよ~」
純「楽しみにしてます!」
梓(なんでこんなに会いたがってるんだろう……)
431: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:00:25.55 ID:AyzoOKGm0
――うどん屋
律「ただいまーっと」
澪「あれ?唯たちはまだか」
紬「そうみたいね」
律「この後どうするー?」
紬「演奏会に向けての話し合いとかは?」
澪「そうだな」
律「今日梓のに行くのは無理かな―?」
律「はやく練習もしたいし」
紬「聞いてみましょう」
唯「ただいまー」
梓「あ、みなさん戻ってたんですね」
唯「ムギちゃんどうだった?」
紬「うん、実は……」
紬は結果を唯と梓に報告した
432: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:05:35.93 ID:AyzoOKGm0
梓「そうですか……」
唯「でも自分の気持ちは伝えられたんでしょ?」
紬「うん!」
唯「じゃあ大丈夫だね!」
梓「大丈夫って、まだ問題は解決してないんじゃ……」
紬「梓ちゃん」
梓「は、はい」
紬「私はお父様に気持ちを伝えたわ」
梓「はい」
紬「だからとってもすっきりしたの」
紬「だから、その問題はちょっとの間忘れて、今は今度の演奏会を成功させたいの」
紬「協力してくれる?」
梓「わかりました!そういうことでしたら」
紬「ありがとう!」
433: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:12:58.23 ID:AyzoOKGm0
律「それでなー、梓」
梓「はい?」
律「今から梓の家に行ってもいいか?」
律「はやく練習もしたいし」
澪「無理にとは言わないよ」
梓「うちはいつでも大丈夫です」
梓「もちろん今からでも!」
律「本当か!?」
梓「はい!」
唯「え、今からあずにゃんの家にいくの?」
紬「そうよ」
唯「わーい!」
律「よし!早速いくぞ!」
435: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:17:36.66 ID:AyzoOKGm0
――琴吹城
斎藤「お手紙が届いております」
紬父「わし宛てか?」
斎藤「はい」
紬父「なんじゃろうか」ガサガサ
紬父「これは……おお!」
紬父「中野氏の演奏会の招待状か!」
紬父「またこの時期が巡ってきたか」
紬父「……」
紬父「今年からは紬も出させてやりたかったが……こんな状況だからのう……」
紬父「ぬう……」
436: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:21:36.00 ID:AyzoOKGm0
――中野氏の屋敷
律「おー、でかいなー」
梓「演奏会などで使う大きい部屋と一体化してますからね」
唯「りっちゃん!池があるよ!」
律「お前池好きだな」
唯「ふんすっ」
紬「素敵なお屋敷ね」
梓「ありがとうございます」
梓「みなさん、中へどうぞ」
437: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:30:10.86 ID:AyzoOKGm0
――屋敷の中
律「おおー、三味線が沢山ある!」
紬「すごいわ」
澪「色々な種類の三味線があるな」
梓「そうですね」
梓「津軽三味線に新内三味線、義太夫三味線に長唄三味線……」
梓「地域や伴奏によって種類がちがいますね」
唯「へー、そうなんだ」
梓「いや、唯先輩は知っておきましょうよ……」
439: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:38:07.26 ID:AyzoOKGm0
――――
梓「ここが演奏会の会場です」
唯「ひろーい!」
澪「こ、こんな広いところで演奏するの……」ドキドキ
律「今から緊張してどうする」
紬「澪ちゃん、大丈夫よ」
澪「う、うん」
梓「じゃあ、早速練習……」
律「唯!探検にいくぞ!」
唯「おー!」
紬「あーん、私も~」
梓「ええ!?」
梓「練習したいって言ったの律先輩じゃないですか!」
律「いくぞー!」
梓「ええー……」
澪「まったく……」
440: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:42:37.72 ID:AyzoOKGm0
――屋敷のまわり
唯「りっちゃん!水車があるよ!」
律「おほー!かっけー!」
紬「あっちになんか変な建物があるわ!」
律「お?どれどれ?」
梓「勝手に人の家を……」
猫「にゃ~」
澪「あ、猫だ」
梓「この辺は野良猫が多くて集まってくるんです」
澪「へえ~、そうなのか」
梓「よしよし」ナデナデ
猫「にゃ~」
梓「……」ナデナデ
梓「澪先輩」
澪「ん?なんだ?」
442: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:46:17.36 ID:AyzoOKGm0
梓「猫又の話って知ってます?」
澪「猫又?」
梓「飼猫が老いると猫又という妖怪になって悪さをしたり……」
澪「!?」
梓「山奥に潜む猫又は人を食べちゃうとか……」
澪「いやああああああ!」ダダダ
梓「!?」ビクッ
梓「……あれ?」
梓「逃げちゃった……?」
律「梓」
梓「あ、律先輩」
律「その調子だ」グッ
梓「え?」
443: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 02:54:47.62 ID:AyzoOKGm0
――――
なんやかんやで演奏会当日……
唯「わー、人いっぱいだ!」
梓「今までで一番客が多いそうです」
澪「もう私帰る……」フラフラ
律「待ちなさい」グイ
澪「だって……無理だよう……」
律「いいか?客をかぼちゃだと思うんだ」
律「そうすればどうってことない」
澪「かぼちゃ……」
律「そうだ、かぼちゃだ」
445: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:00:14.69 ID:AyzoOKGm0
澪「……」ホワワ~ン
澪「えへへ……おいしそう……」
律「だめだこりゃ……」
紬「楽しみだわ~」
唯「見て見て!」
唯「忍者!」ドロン
梓「唯先輩も少しは緊張しましょうよ……」
紬「梓ちゃんは緊張しないの?」
梓「慣れてますから」
紬「凄いわ~」
446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:05:26.57 ID:AyzoOKGm0
――――
斎藤「到着しました」
紬父「うむ」
斎藤「こちらです」
紬父「今年はいつになく人が多いのう」
斎藤「過去最高のようで」
紬父「そうか」
紬父「紬を連れてこれなくて本当に残念じゃ……」
447: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:13:56.72 ID:AyzoOKGm0
――演奏会中
律「みんな完成度高いなー」
梓「有名な演奏家も沢山参加してますから」
澪「かぼちゃ……かぼちゃ……」
紬「かぼちゃ?」
唯「澪ちゃんどうしたの?」
澪「かぼちゃが沢山あるんだ……えへへ……」
唯「いつもの澪ちゃんじゃない!?」
紬「これは……何かの前触れ!?」
律「お前らも落ち着け」
梓「この次の人が終わったら私達ですよ」
澪「うう……」
448: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:19:32.38 ID:AyzoOKGm0
律「みーお」
澪「りつう……」
律「一回深呼吸だ」
澪「うん……」
澪「すー……はー……」
律「少しは落ち着いたか?」
澪「うん……」
律「よし」
梓「そろそろですよ」
律「よし!気合いいれてくぞ!」
唯「おー!」
紬「おー!」
449: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:24:18.04 ID:AyzoOKGm0
――客席
紬父「皆すごい演奏をするのう」
紬父「次はどんな演奏が聴けるのじゃろうか」
紬父「……」
紬父「ほう、次は女の子たちか」
紬父「……ん?」
紬「あれは……」ジー
紬父「!?」
紬父「紬!?」
紬父「な、なぜ紬が……!?」
紬父「……」
紬父「そうか……友達と……」
紬父「……」
450: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:30:09.09 ID:AyzoOKGm0
――舞台
律「よーし、配置はばっちりだ」
澪「みんな見てる……」ドキドキ
紬「澪ちゃん、大丈……」
紬「!?」
紬(お、お父様!?)
律「ん?ムギどうした?」
紬「……」
律「あ!」
唯「どうしたの?」
律「あれ」
唯「あ、ムギちゃんのお父さん!」
澪「見にきてんだ」
紬「さあ、はじめましょう」ニコッ
律「……わかった」
律「いくぞ!」
451: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:33:22.70 ID:AyzoOKGm0
――演奏中
紬父「……」
紬父(紬の演奏は何度も聴いたことがあるが……)
紬父(あんなに伸び伸びとした演奏は初めてじゃ……)
紬父(今まで聴いたどんな演奏よりも美しい……)
紬父(……)
紬父(紬のやつ、演奏中なのに微笑んでおるわ)
紬父「……」
452: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:37:58.57 ID:AyzoOKGm0
――終了後
唯「大成功だよね!?」
律「大成功だ!」
梓「みなさん凄かったです!」
澪「ちゃんとできたぁ……」プシュー
紬「……」
紬「み、みんな!」
紬「私……」
律「……」
律「ムギ」
律「行っておいで」
紬「……うん!」
紬「ありがとう!」タタタ
唯「りっちゃん、かっこいいですな」ツンツン
律「よせやい」
453: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:43:53.46 ID:AyzoOKGm0
――――
紬「お父様……」
紬父「紬、素晴らしい演奏じゃったぞ」
紬「ありがとうございます……!」パアア
紬父「今までで最高の演奏だったのう」
紬「はい!」
紬「それで……その……」
紬父「斎藤」
斎藤「はっ」
紬父「今すぐ、隣国の相手方に使いを向かわせるのじゃ」
454: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 03:48:38.62 ID:AyzoOKGm0
斎藤「早急に手配いたします」
紬父「うむ」
紬「え、それって……」
紬父「結婚は取りやめじゃ」
紬「お父様……!」
紬父「すまぬのう、紬」
紬父「わしは『また』同じ過ちを犯してしまうところだった」
紬父「お前は……お前の意思で生きるのじゃ」
紬父「わかったな?」
紬「はい!」
455: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:00:24.47 ID:AyzoOKGm0
――――
律「ありがちやなー」
唯「だがそれでいいんだよ!」
澪「でもよかったな」
澪「お父さんも分かってくれて」
梓「そうですね」
律「これにて一件落着!」
澪「私達は何もしてないだろ」
唯「あずにゃ~ん」
唯「次はお花見だよ!」
律「お花見!?」
梓「はい、唯先輩と演奏会が終わったら、みんなでお花見しましょうって話してたんです」
律「そうだったのか!」
律「こうしちゃいられない!」
456: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:03:15.50 ID:AyzoOKGm0
――お花見
律「じゃあ、演奏会の成功をお祝いして……」
律「乾杯!」
一同「乾杯!」
唯「見て見て!」
唯「桜吹雪!」ブオー
紬「唯ちゃんすごい!」
澪「あ、これおいしい」モグモグ
律「というか梓」
梓「なんでしょう」
律「ムギのお父さんが来ること梓は知ってたんじゃないのか?」
梓「すみません、忘れてました」パクパク
律「おいおい……すごい大事なことだぞ……」
457: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:09:36.27 ID:AyzoOKGm0
梓「結果がよかったんだからいいじゃないですか」モグモグ
律「まあ……そうだな」
梓「そんなことより今はお花見を楽しみましょう」モグモグ
律「そうだな!」
梓「そうです」モグモグ
律「それとな、梓」
梓「はい」モグモグ
律「口に物をいれて喋るんじゃありません」
梓「すみません」モグモグ
律「わかってないだろ!」ビシッ
第二篇 完
459: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:14:33.74 ID:AyzoOKGm0
地理関係をちょっと
・律と澪のうどん屋は琴吹城の城下町にある
・純ちゃんも琴吹城の城下町に住んでいる
・琴吹城の東の方角に平沢城があり、平沢城の城下町も存在する
・梓の家は琴吹城の南の方角にあるが、琴吹城城下町の中ではない
・平沢城からうどん屋に行くのと、梓の家からうどん屋にいくのでは前者の方が遠い
460: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:20:52.48 ID:AyzoOKGm0
~第三篇~
――うどん屋
律「また新作ができたんだ」
純「新作?」
紬「どんなの?」
律「その名は……」
律「夏限定冷やしうどん!」ババーン
純「た、食べたいです!」
紬「私も!」
律「うむ、しばし待たれよ」
澪「誰だよ」
律「これだ!」ドン
紬「まあ!」
純「おおー!」
律「食べてみてくれ」
461: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:26:29.49 ID:AyzoOKGm0
純「いただきます!」
紬「いただきまーす!」
純「……」ズルズル
紬「……」ズルズル
純「んまい!」テッテレー
紬「おいしいわ!」
律「当たり前だ!」
飛脚「ごめんよー」
澪「あ、はい」
飛脚「手紙届けにきたよー」
澪「ありがとうございます」
462: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:33:17.72 ID:AyzoOKGm0
律「手紙?」
澪「うん」
澪「誰だろう?」ガサガサ
澪「えーっと」
澪「唯だ!」
律「お、唯からか」
紬「なんて書いてあるの?」
澪「はい」
『りっちゃん、澪ちゃんへ――
私がこの手紙を書いた3日後にうどん屋さんにいきます!
今回は憂も一緒だよ!
なんだか純ちゃんが前から憂に会いたがってたみたいだから、純ちゃんもよんでね!
あずにゃんにも手紙を送ったんだけどこれるかな~?
それでは!
―― ○月×日 唯より』
463: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:38:08.15 ID:AyzoOKGm0
律「おお、唯にしては珍しく来ることを予告したな」
澪「憂ちゃんもくるのか」
純「もしかして唯先輩の妹さんですか!?」
律「そうだよ」
律「純ちゃんも来てって書いてるぞ」
純「来ます!絶対来ます!」
律「お、おう」
純「いつですか?」
律「この手紙の日付の3日後だから……明後日だな」
純「わかりました!」
紬「私も来るわ!」
464: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:40:41.71 ID:AyzoOKGm0
――唯が来る日
律「そろそろ唯と憂ちゃん来るかなー」
澪「梓も来れるのかな?」
律「梓なら来るだろー」
コンコン
律「ほら、梓が来た」
澪「え、どうして分かるんだ?」
律「扉を叩く音でわかるよ」
澪「へえ、すごいな」
465: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 04:43:54.30 ID:AyzoOKGm0
律「梓かー?」
梓「はい、そうです」
ガラガラ
律「ほらな?」
澪「うん」
梓「どうして私だって分かったんですか?」
律「実は私、超能力が使えるんだ」
梓「へえ、すごいですね」
律「えっへん」
律「あ、扉開けっぱなしでいいよ」
梓「あ、はい」
466: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:03:04.23 ID:AyzoOKGm0
梓「唯先輩と憂はまだですか?」
律「まだだな」
梓「憂と会うのは久しぶりなので楽しみです」
澪「梓は憂ちゃんと仲いいからな」
梓「はい」
律「今日は純ちゃんとムギもくるんだ」
梓「あー、純は憂に会いたがってましたからね」
律「すっごい楽しみにしてたけど、どうしてかな?」
梓「私にもわからないです」
律「ふーん」
467: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:08:10.40 ID:AyzoOKGm0
――――
唯「暑いね~うい~」テクテク
憂「もう夏だね~」テクテク
唯「こんな暑い日は氷菓子が食べたいね!」
憂「お姉ちゃん、それ一年中言ってるよ?」
唯「えへへ~」
憂(お姉ちゃん可愛い!)
唯「あずにゃんは来れるのかな~」
憂「私も梓ちゃんに会いたいな」
唯「憂はあずにゃんと仲良しだからね!」
憂「うん!」
468: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:11:09.48 ID:AyzoOKGm0
――――
紬「こんにちはー♪」
純「こんにちはー」
律「お、ムギに純ちゃん」
澪「一緒に来たのか」
紬「そこで一緒になったの~」
純「あ、梓も来てたの」
梓「来てたよ」
梓「憂もくるしね」
純「そうだね!」ワクワク
469: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:11:53.71 ID:AyzoOKGm0
――――
憂「私に会いたがってる純ちゃんってどういう人?」
唯「いい子だよ~」
唯「純ちゃんと一緒にいると沢山美味しいものたべれるんだよ」
憂「へえ~?」
唯「あ、うどん屋さん見えてきた」
470: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:12:42.28 ID:AyzoOKGm0
――――
純「近くの村で猫またが出たって噂ですよ」
律「へー」
純「なんでも飼猫が化けたって話です」
澪「ひっ……猫また……」ビクッ
律「じゃあ梓もそのうち猫またに……」
純「可哀想に……」
梓「なりませんよ!?」
梓「私人間です!」
澪「梓が……猫またに……」ビクビク
梓「なりませんって!」
梓「澪先輩も本気で怖がらないでください!」
澪「う、うん……」
471: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:13:46.67 ID:AyzoOKGm0
紬「でも梓ちゃんが化けた猫またなら怖くないわね」
梓「だからなりません!」ガオー
唯「りっちゃんおいーす」
律「お、来たか」
憂「みなさん、こんにちわ」ペコッ
澪「いらっしゃい」
紬「こんにちは、憂ちゃん」
憂「こんにちは」
唯「あずにゃんも来てくれたんだねー!」ギュッ
梓「だから抱きつかないでください!」
唯「あずにゃ~ん」スリスリ
憂「梓ちゃん、久しぶりだね」
梓「うん、久しぶり」グニグニ
472: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:19:06.62 ID:AyzoOKGm0
梓「……唯先輩」グニグニ
唯「なあに?」スリスリ
梓「暑いです……」グニグニ
唯「そうだね……」スリスリ
梓「やめましょう……」
唯「うん……」
純「……」ジー
憂「あ、もしかしてあなたが純ちゃん?」
純「そうです」ジー
憂「?」
憂「私は平沢憂です、よろしくね」
純(この子が……凄い天然の……)
473: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:23:41.10 ID:AyzoOKGm0
純「うん、よろしく!」
梓「……?」
純(よし)
憂「なんだか私に会いたがってたって聞いたんだけど……」
純「うん、会いたかった」
梓(はっきり言っちゃった)
純「そこでいくつか質問があるんだけど」
憂「え、何?」
純「好きな食べ物は?」
憂「う~ん、お魚かな?」
純「ふむ」
474: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:28:35.03 ID:AyzoOKGm0
純「趣味は?」
憂「お料理かな?」
純「へえ~……」
純(なんか普通だなー……)
純(そんなに凄い人でもないのかな)
梓「憂って剣術も凄いよね」
梓「あれも趣味とかなの?」
憂「あれは趣味とかじゃないよー」
梓「じゃあ誰かに習ってるの?」
憂「ううん、習ったことはないよ」
憂「和さんを見てちょっと学んだくらいかな」
476: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 05:33:58.03 ID:AyzoOKGm0
梓「ああー、あの人もすごいよね」
梓「あの人に訓練してもらったの?」
憂「訓練とかはほとんどしたことないよ?」
梓「え、じゃあどうしてあんなに……」
憂「なんだかね、お姉ちゃんを守らなきゃ!って思うと、勝手に剣が動くんだ」
梓「へえ~……」
梓(憂……それは危ないよ……)
純「唯先輩の護衛でもしてるの?」
憂「そんな大げさなものじゃないよ~」
憂「でもお姉ちゃんに危害を加える人は私が天誅を下すんだ♪」
梓「そ、そうなんだ」
梓(あ、ちょっと寒気が)
純(違う意味で凄い人だった……)
478: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:00:31.49 ID:AyzoOKGm0
純「憂はこの町に来たことあったの?」
憂「う~ん、あんまり無かったなあ」
憂「だから今日、少し見て回ろうかな~なんて思ってたんだ」
純「じゃあ、私が案内する!」ビシッ
憂「え、いいの?」
梓「あ、じゃあ私もついていこうかな……」
純「梓も?」
梓「うん」
梓「あっちはあっちで盛り上がってるみたいだし……」
律「右大臣!」ババーン
唯「りっちゃんずるーい!」
唯「じゃあ私左大臣!」ババーン
紬「か、かっこいい~……」ウットリ
澪「なにやってんだ……」
479: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:05:53.58 ID:AyzoOKGm0
純「ああ……」
憂「じゃあ3人でいこう♪」
梓「うん」
憂「お姉ちゃん」
唯「なにー?ういー」
憂「ちょっと純ちゃんと梓ちゃんと出掛けてくるね?」
唯「遅くならない内に帰ってくるのよ」キリッ
憂「はーい」
純「また食べ歩きしよう!」
梓「もらい歩きの間違いじゃないの」
純「細かい事は気にしない!」
480: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:12:16.48 ID:AyzoOKGm0
――――
唯「あ、そう言えばりっちゃん」
律「なんだ?」
唯「私のお父さんがねー、りっちゃんのとこのうどん食べてみたいって言ってたよ」
律「お父さんって……殿様が!?」
唯「うん」
澪「唯のお父さんか……そう言えばお城には行っても、会ったことなかったな」
律「ムギは会ったことあるのか?」
紬「私も会ったことはないわね」
唯「じゃあ今度来た時にでもどう?」」
律「そうだなー、次の定休日にでもいくか」
紬「次の定休日っていつ?」
律「えーと、三日後かな」
紬「三日後……」
481: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:17:51.18 ID:AyzoOKGm0
紬「ごめんなさい……その日は行けないわ……」
唯「え、ムギちゃん来れないの?」
紬「うん、お父様とお母様とお茶会に出席しないといけないの……」
律「そっかー」
律「じゃあ私と澪で行くか」
唯「あずにゃんはどうかな?」
律「あー、帰ってきたら聞いてみよう」
澪「殿様に……また会う……」
律「また緊張してんのかよ……」
唯「澪ちゃん大丈夫だよ!」
唯「私のお父さんなんだから!」
澪「うん……」
482: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:24:09.58 ID:AyzoOKGm0
律「でもどこで調理すればいいんだ?」
唯「あ、それならうちの台所使えるとおもうよ~」
律「そうか、じゃあ材料だけ持ってけばいいな」
唯「うちのお父さんは凄い食通なんだ~」
唯「色んな国の食材を取り寄せて、料理人に色んな料理を作らせてるんだよ」
律「へえ~」
唯「だから台所もすっごい大きいんだよ~」
律「すごい大きい台所か……腕がなるな!」
唯「私の分も作ってね!」
律「はいはい」
483: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:30:15.45 ID:AyzoOKGm0
――町
純「でさー」
憂「あはは、何それー」
ドン!
梓「あいた!?」
野武士「いてえ!」
梓「あ、ごめんなさい!」
野武士「ああん!?ごめんで済むと思ってるのかあ!」
純「そっちがぶつかって来たんでしょ!」
憂「じゅ、純ちゃん……!」
野武士「なんだとお!?」
野武士「切り捨てる!」シャキーン
梓「ひいっ!?」
484: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:35:56.78 ID:AyzoOKGm0
純「梓!」
憂「待って!」
野武士「ああん!?」
憂「……」スッ
純「短剣……」
野武士「へっ!そんな短剣でやり合おうってか!?」
野武士「上等じゃねえか……って、ん?」
憂「……」
野武士「短剣に刻印が……」
野武士「あれは……平沢家の家紋!?」
485: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:41:13.44 ID:AyzoOKGm0
野武士(や、やばい!)
野武士「あはは……いやー、俺もちゃんと前見てなかったかなー……なんて」
憂「……どこか行ってください」
野武士「し、失礼しましたー!」ピュー
梓「あはは……あはははは……」ガクガク
憂「大丈夫?梓ちゃん」
梓「うん……」
梓「怖かったよ……」ジワッ
憂「もう大丈夫だよ」ナデナデ
梓「うん……ありがとう……」グスッ
純(う~ん、やっぱり凄い人だった)
憂「もう帰ろっか?」
梓「うん……」
487: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:46:55.34 ID:AyzoOKGm0
――うどん屋
律「ええ!?」
澪「切り捨てられそうになった!?」
梓「はい……」
純「でも憂が助けてくれました!」
唯「すごいよ憂!」
紬「でも無事でよかったわ……」ホッ
梓「ほんとに怖かったんですよ……」
澪「でも流石憂ちゃんだな」
澪「そういう時でも冷静に行動できるんだから」
律「澪はその場で腰抜かしそうだけどな」
488: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:47:36.43 ID:AyzoOKGm0
澪「そんな状況だったら誰だってそうだろ!」
律「あははー、そうだなー」
澪「私だって……いざって時はだな……」モンモン
澪「し、しっかり落ち着いてだな……」モンモン
澪「そう、冷静に行動するもん!」バッ
律「そういば梓ー」
梓「なんですか?」
澪(聞いてなかった……)シュン
律「三日後に唯のお城に行くんだけど梓もくるか?」
憂「律さん達うちにいらっしゃるんですか?」
490: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:00:24.22 ID:AyzoOKGm0
唯「うん!お父さんにうどん食べさせてくれるんだよ!」
憂「へ~」
憂「前から食べてみたいっていってたもんね」
梓「三日後ですか……ちょっと都合悪いですね」
唯「え~……」
律「そっかー」
律「じゃあ、やっぱり私と澪だけだなー」
澪「うん」
律「唯、そういうことだ」
唯「わかりました!」
紬「今度都合いい時、私も行きたいわ」
唯「うん!」
純(あれ、私誘われてないや)
491: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:05:20.78 ID:AyzoOKGm0
――3日後
律「ついたー」
澪「こっちの町も賑やかだな」
律「人はこっちの方が多いかもなー」スタスタ
律「いくぞー」
澪「ちょっ……勝手に入っていいのか?」
律「う~ん、でも出迎えもないみたいだし」
澪「でもお城に勝手に入るのはちょっと……」
律「じゃあ、誰かに声かけてみるか」
澪「うん」
493: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:11:34.99 ID:AyzoOKGm0
律「あ、丁度誰かいる」
律「……」
澪「……」
律「声かけろよ」
澪「り、律が声かけてよ……」モジモジ
律「仕方ないなあ」
律「すみませーん」
家来「む、何奴」
律「あのー、私達唯の友達なんですけど」
家来「おお、話は聞いていますぞ」
家来「案内しましょう」
律「ありがとうございます」
494: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:18:06.01 ID:AyzoOKGm0
――城内
唯「いらっしゃい!」
律「おい、唯」
律「出迎えにでも来てくれればよかったのに」
澪「入りずらかったんだぞ」
唯「ごめ~ん」
憂「こんにちは」
澪「こんにちは、憂ちゃん」
唯「ささ、そんなことより」
唯「殿がお待ちかねですぞ」
495: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:55:52.52 ID:AyzoOKGm0
律「あー、はいはい」
澪「はは、殿様なんてもう慣れっこさ」ガクガク
律「足が波打ってるぞ」
澪「まるで骨を抜かれたようだよ」ガクガク
律「別に緊張することもないだろー」
唯「私と話す時みたいにしてれば大丈夫だよ~」
律「いや、それはまずいだろ」
唯「まあまあこちらへ」
496: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:56:36.90 ID:AyzoOKGm0
――殿の間
唯「連れて来たよー」
唯父「おお、そうか」
律「こんにちはー」
澪「こ、こんにちは……」
唯「こっちがりっちゃんで、こっちが澪ちゃんだよー」
唯父「初めまして、唯の父親です」
律「は、初めまして!」
律(唯のお父さんってこんなに若い人だったのか……)
澪「……」ドキドキ
497: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:57:20.49 ID:AyzoOKGm0
唯父「いや~、唯がいつもお世話になってるようで」
律「いえ、こちらこそ!」
唯父「以前唯を助けてくれたお礼を言ってなかったね」
唯父「本当にありがとう」ペコッ
澪(殿様に頭下げられた……)
律「いや、私達も唯に色々と助けてもらいました」
律「こちらこそありがとうございます」
唯「そうだよ~、私だって人助けしてるんだよ~」
唯父「そうなのかい?」
澪「はい……!」
澪「私も……唯には色々と教えてもらったって言うか……」モジモジ
唯父「唯も人に感謝されるぐらい成長したんだね」
唯「えへへ~」
498: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:58:03.32 ID:AyzoOKGm0
唯父「ああ、そうそう」
律「はい?」
唯父「今日はすごく美味しいうどんが食べれるって聞いたんだけど……」
律「あ、はい!」
律「今日はそのために来ました!」
唯父「わざわざすまないね」
唯父「調理はうちの台所を使っていいよ」
律「はい!」
499: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:58:50.51 ID:AyzoOKGm0
――――
律「できました!」
澪(台所広かったなあ)
唯父「おお、随分はやかったね」
唯「りっちゃん!私のは!?」
律「ちゃんと作ったよ」
澪「どうぞ」
唯父「ありがとう」
唯父「いただきます」
唯父「……」ズルズル
律「……」ドキドキ
澪「……」ドキドキ
唯「♪」ズルズル
唯父「おお!」
唯父「これはうまい!」
500: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:59:32.84 ID:AyzoOKGm0
律「本当ですか!?」
唯父「うん、今まで食べたうどんの中で一番おいしいよ」
律「ありがとうございます!」
唯父「うん、それでね」
唯父「ちょっと君たちに話があるんだ」
澪「え?話?」
唯父「今は琴吹氏の城下町でうどん屋をやってるんだよね?」
律「そうです」
唯父「前に唯から、大きい家を建てて店もっと大きくするのが夢だって聞いたんだけど」
律「え、あ、はい!」
澪「!」
律「まあ、もっとお金が溜まったらの話ですけど」
唯父「じゃあその夢を私が叶えてあげるってのはどうかな?」
澪「え!?」
503: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:32:30.12 ID:AyzoOKGm0
律「ど、どういうことですか?」
唯父「大きい家と大きいお店を作ってあげるってことだよ」
律「ほんとですか!?」
唯父「唯を助けてくれたお礼だよ」
唯父「琴吹氏の領地に勝手に建てることはできないから、こっちの町だけどね」
澪「こっちの町ってことは……引っ越さないといけないってことですよね?」
唯父「そうなるね」
律「う~ん」
澪「律、それは……」
律「少し考えてもいいですか?」
唯父「急に言われても困るだろうしね」
唯父「ゆっくり考えるといいよ」
律「はい!」
504: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:41:07.95 ID:AyzoOKGm0
――唯の部屋
唯「ねえ、見て見て!」
律「これは……三味線の撥?」
唯「そうだよ!」
律「なんでこんなに沢山あるんだ?」
唯「可愛いから集めてるんだ!」フンスッ
律「可愛いか……?」
澪「なあ、律」
律「ん?」
澪「さっきの話だけど……」
律「ああ」
澪「律はどうしようと思ってるんだ?」
律「私は……お願いしようと思ってる」
澪「……」
505: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 10:16:34.95 ID:AyzoOKGm0
律「だってこんな機会もう2度とないかもしれないんだぞ?」
律「こっちの町の方が大きいし、店も大きくすればもっと人があつまる」
律「いいことじゃないのか?」
澪「そうだけど……」
澪「でも引っ越すことになるんだよ?」
律「もっと大きい家に住めるんだからいいじゃないか」
唯(二人とも真剣に話してる……)
澪「……律はそれでいいの?」
律「どういうこと?」
澪「……いいよ」
律「?」
508: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 10:58:14.71 ID:AyzoOKGm0
律「とにかく、今回の話は受け入れようと思ってる」
律「唯のお父さんの好意も無駄にできないしな」
律「いいか?」
澪「……律がそういうなら」
律「そうと決まれば、早速唯のお父さんに伝えておこう」
律「唯、帰る時にでももう一度お父さんに会えるか?」
唯「うん、大丈夫だよ」
律「よし」
510: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 10:58:55.40 ID:AyzoOKGm0
――殿の間
唯父「じゃあ、そういうことでいいんだね?」
律「はい!お願いします!」
唯父「じゃあ大急ぎで新しい家とお店を作らせよう」
唯父「完成次第、引っ越しの業者をそちらにむかわせる」
唯父「詳しい日程とかは後で手紙を送るよ」
律「ありがとうございます!」
澪「……」
澪(律……)
511: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 10:59:52.21 ID:AyzoOKGm0
――翌日
紬「ええ!?」
梓「じゃあ引っ越すことになったんですか!?」
律「ああ」
紬「いつなの?」
律「家と店が完成してからだからまだ未定かな」
梓「そうですか……」
紬「この家はどうなるの?」
律「空き家になると思う」
律「買い手もいないだろうし」
512: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:01:43.30 ID:AyzoOKGm0
梓「そういえば澪先輩はどうしたんですか?」
律「澪ならどっかにでかけたよ」
梓「どっかって……」
律「澪、最近変なんだよなー」
紬「変?」
律「なんか元気ないっていうか」
梓「どうしたんでしょう?」
紬「心配ね」
513: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:07:48.50 ID:AyzoOKGm0
――後日
律「これはこうしてっと」
飛脚「ごめんよー」
律「あ、はい」
飛脚「手紙きてるよー」
律「あー」
律「みおー」
澪「なに?」
律「ちょと今手が離せないから手紙受け取ってー」
澪「ああ、うん」
飛脚「はいよ」
澪「ありがとうございます」
514: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:12:26.27 ID:AyzoOKGm0
律「誰からだー?」
澪「えーと……」ガサガサ
澪「!」
澪「……」
律「みおー?」
澪「……唯からだよ」
澪「家……できたって」
律「ほんとか!?」
澪「……」
515: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:18:49.54 ID:AyzoOKGm0
――引っ越し当日
律「あ、それこっちでーす」
業者「この棚はどうします?」
律「あー、それは処分しちゃって下さい」
業者「わかりました」
澪「捨てちゃうの?」
律「もうボロイからなー」
律「この際家具とか全部買いかえちゃおうか?」
澪「……」
律「……」
律「なあ、澪」
律「最近どうしたんだ?」
澪「……なんでもないよ」
516: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:24:14.36 ID:AyzoOKGm0
律「なんでもないっていっても、なんか元気が……」
澪「なんでもないよ!」
律「!?」ビクッ
澪「……ばか律」
澪「……」スタスタ
律「……」
律「なんだよ……」
業者「終わったんで運搬開始しまーす」
律「あ、はーい」
517: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:29:38.15 ID:AyzoOKGm0
――平沢城城下町 入口
唯「りっちゃ~ん!澪ちゃ~ん!」
澪「あ、唯」
律「おー、出迎えに来てくれたのか」
唯「さあさあ、ここからは私が案内するよ!」
律「ちゃんと案内できるのか~?」
唯「できるもん!」
律「はは、悪い悪い」
唯「こっちだよ!」
518: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:35:03.19 ID:AyzoOKGm0
――――
律「おお!すごい!」
澪「大きい……」
唯「すごいでしょ!」
律「これが私達の新しい家か……!」
澪「……」
律「隣の建物が店か?」
唯「そうだよ~」
律「早く中をみよう!」タタッ
唯「あ、まって~」
澪「……」
唯「澪ちゃんどうしたの」
澪「あ、え?」
唯「早く行こう?」
澪「うん……」
519: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:40:37.26 ID:AyzoOKGm0
――――
律「うっひょー!」
澪(広い……)
律「中もすごいなー」
唯「えっへん!」
律「なんで唯が威張ってんだよ」
唯「いいの!」
澪(ここが新しい家……)
澪「……」
唯「新しいお店も2人だけでやるの?」
律「いや、新しい人も雇おうと思ってるんだ」
唯「新しい人?」
521: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:45:59.97 ID:AyzoOKGm0
律「ああ、店が大きくなったら二人だけじゃやっていけないだろうからな」
唯「そっかー」
澪(新しい人雇うんだ……)
澪(なんか勝手に事が進んでる……)
澪「……」
唯「お店はいつ開店するの?」
律「一週間後の予定だ」
律「その時はみんなを招待するよ!」
唯「やったー!」
律「あー、一週間後が待ち遠しいな!」
澪「……」
522: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 11:53:02.95 ID:AyzoOKGm0
――――
純「ふんふ~ん」テクテク
純「うどんっ、うどんっ」テクテク
純「あれ?うどん屋の前に人だかりができてる」
純「なんだろ?」
男1「おい、どうなってんだ」
男2「聞いてねえぞ!」
純「すみませーん」
男3「おお、純ちゃん」
純「どうしたんですか?」
男3「この張り紙を見てみなよ」
純「どれどれ……」
純「平沢城城下町に移転!?」
純「どうして急に……」
523: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:02:33.51 ID:AyzoOKGm0
――開店当日
梓「初日からお客さん沢山ですね」
律「まあな!」
紬「すご~い!」
唯「大繁盛だね!澪ちゃん!」
澪「う、うん」
澪「そうだね……」
澪「……」
こうして平沢城城下町で律たちの新しいうどん屋が開店した。
新たに従業員を雇い、店は以前よりもさらに繁盛していた。
そして開店からしばらく時が経った。
525: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:08:10.17 ID:AyzoOKGm0
――――
和「あら、おいしわね」
律「だろー?」
和「うん、すごいわ」
唯「和ちゃんのもおいしそ~」
唯「一口交換しない?」
和「いいわよ」
唯「はい!私のはきつねうどんだよ!」
和「じゃあ、一口もらうわね」ヒョイ
和「……」モグモグ
唯「……」
唯「和……ちゃん……」
和「え?」
527: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:14:48.45 ID:AyzoOKGm0
唯「和ちゃん!」
和「な、なによ」
唯「なんでお揚げ食べちゃうの!?」
和「一番上にあって取りやすかったからよ」
唯「お揚げはきつねうどんの命だよ!?」
唯「お揚げがなかったらただのうどんになっちゃうんだよ!?」
律「ただのうどんって」
和「ごめんごめん、じゃあわたしのてんぷらあげるわ」
唯「そういうことじゃないんだってばあー!」
澪「あれ?梓は?」
紬「憂ちゃんと出掛けたみたいよ」
529: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:21:47.40 ID:AyzoOKGm0
和「そういえば、こっちの生活にはもう慣れたの?」
律「いやー、慣れたも何も最初からこっちに住んでたような感じでさー」
澪「……!」
律「やっぱり新しい家いいなー」
律「あんなボロイ家に住んでたんて嘘みたいだ」
澪「!?」
澪「律!」ガタッ
律「!?」ビクッ
紬「み、澪ちゃん?」
律「ど、どうした?」
澪「あ……ご、ごめん」
530: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:27:09.07 ID:AyzoOKGm0
唯「びっくりした……」ドキドキ
和「どうしたの?」
澪「な、なんでもないよ」タタッ
律「あ、澪!」
唯「いっちゃった」
紬「……」
531: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:33:51.76 ID:AyzoOKGm0
――――
澪「はあ……」
澪「……」
紬「澪ちゃん」
澪「ムギ……」
紬「どうしたの?」
澪「うん……」
紬「りっちゃんと何かあったの?」
澪「……」
澪「実は……」
澪はこれまでのことを紬に話した
532: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:39:45.32 ID:AyzoOKGm0
紬「そうだったの……」
澪「わがままなのは自分でも分かってるんだ……」
紬「澪ちゃん……」
澪「私は……あの家で律とうどん屋をやっていきたかった……」
紬「……」
澪「なにか……大切なものを置いてきてしまった気がするんだ……」
紬「大切なもの……」
澪「ごめんな、変な話してさ」
紬「ううん、そんなことない」
紬「話してくれてありがとう」
澪「うん……」
澪「でも……なんかもう律と顔合わせづらいよ……」
澪「今は……ちょっと一人でいたいかな……」
紬「うん、わかったわ」
534: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:45:21.92 ID:AyzoOKGm0
――――
律「なあ、ムギ」
紬「なあに?」
律「ちょっと相談があるんだけど……」
紬「相談?」
律「うん、澪のことなんだけど……」
紬「!」
律「なんか最近澪とうまくいってなくて……」
律「さっきのも見ただろ?」
紬「……」
紬「りっちゃんはどうしてだと思うの?」
535: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:53:39.36 ID:AyzoOKGm0
律「それが知りたいんだよ……」
紬(りっちゃん……)
律「どうしたらいいんだ……」
紬「りっちゃん、私思うの」
律「え?」
紬「澪ちゃんは、りっちゃんに気付いて欲しいんだと思う」
律「気付くって……何を?」
紬「それはりっちゃん自信が考えなくちゃだめよ」
律「私自身で……」
紬「そうよ、何か大切な事を忘れてない?」
律「大切な事……」
紬「うん、私から話すことはこれ以上ないわ」
律「うん……相談にのってくれてありがとう」
律「でもなんでムギはそう思うんだ?」
紬「ふふっ、秘密♪」
536: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 12:58:41.00 ID:AyzoOKGm0
――夜
律「みおー?」
律「……」シーン
律「みお?」
律「……」
律「いない……」
律「……なんだよ」
律「……」
律「いーや、もう寝よ」
律「そのうち帰ってくるだろ」
537: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 13:05:08.85 ID:AyzoOKGm0
――朝
律「まだ帰ってきてない……」
律「……」
律「唯の時と同じだ……」
律「やっぱり何かあったんじゃ……」
律「……」
律「捜しにいこう」
538: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 13:15:57.41 ID:AyzoOKGm0
――平沢城
律「あの、すみません」
家来「何奴」
律「あ、うどん屋の者なんですが……」
家来「おお、存じ上げておりますぞ」
家来「どうされた?」
律「唯は居ますか?」
家来「城内におられます」
家来「どうぞお入りください」
律「ありがとうございます」
539: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 13:21:24.91 ID:AyzoOKGm0
――城内
律「唯!」
唯「あ、りっちゃん!」
唯「どうしたの?」
律「澪ここに来てないか?」
唯「澪ちゃん?」
唯「きてないよ~」
律「そうか……」
律(ここだと思ったんだけどな……)
唯「どうしたの~?」
律「いや、なんでもないよ」
唯「?」
律「ごめん、ありがとな」
540: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 13:29:20.89 ID:AyzoOKGm0
――――
律「どこにいるんだ……」
律「……」
律「考えられるのは……梓の家……琴吹城……」
律「!」
律「もしかして……!」
律「絶対あそこだ!」
541: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 13:38:05.76 ID:AyzoOKGm0
――――
澪「……」
澪(飛び出してきちゃった……)
ガラガラッ
澪「!?」
律「はあ……はあ……」
澪(律……!)
律「澪……」
律「やっぱりここにいたのか」スタスタ
澪「……何しにきたんだよ」
律「何しにきたって……急にいなくなったりするから……」
律「心配したんだぞ……?」
543: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 13:45:24.49 ID:AyzoOKGm0
澪「……」
律「なあ、み……」
澪「律は……」ボソッ
律「え?」
澪「律は……今の生活をどう思ってるの?」
律「どうって……充実してるとは思ってるよ」
律「店だって繁盛してるし」
澪「……私はあんまり楽しくないよ」
律「え?」
544: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 13:52:49.74 ID:AyzoOKGm0
澪「うどん屋で成功するっていう律の夢についていくって決めてたけど……」
澪「でもなんか違うよ……こんなの」
律「……」
澪「新しい人を雇ったりしなくても……」
澪「律と2人だけでやっていければよかった……」ジワッ
律「澪……」
澪「私、律が家具を処分したり家を簡単に手放そうとした時……寂しかった」ポロポロ
澪「隙間風が多くても井戸が遠くても、この家が好きだったから……」ポロポロ
澪「辛い時も楽しい時も居たこの家が好きだったから……」ポロポロ
律「……」
律(そういうことだったのか……)
546: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 13:58:18.47 ID:AyzoOKGm0
澪「私わがままだね……」グスッ
律「澪……私……」
澪「ごめんね……」
律「……私こそ……ごめん」
澪「律……」
律「今後のこと、もう一度話し合おう」
律「2人だけで……」
澪「……」
澪「……うん!」グスッ
第三篇 完
547: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 14:03:37.73 ID:AyzoOKGm0
~結び~
――後日 平沢城
家来「お手紙が届いております」
唯父「ああ、ありがとう」
唯父「誰かな?」ガサガサ
唯父「お、あの子たちからか」
唯父「えーと……」
唯父「え!?」
唯父「……」
唯父「ふむ……」
唯父「まあ、あの子たちがそう決めたのなら仕方ないか」
548: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 14:07:59.74 ID:AyzoOKGm0
――――
純「ねえ、梓ー」
梓「何?」
純「うどん屋だったとこの周辺、なんか静かになったと思わない?」
梓「そうだね」
梓「なんか……寂しくなったかな」
純「うん、いつも賑わってたからね」
梓「うん」
純「はあー」
純「日々の楽しみが減っちゃたなあ」
梓「そんな大げさな」
純「大げさじゃないもん」
梓「ふーん」
549: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 14:10:46.91 ID:AyzoOKGm0
――――
紬「りっちゃん」
律「お、ムギ」
紬「戻ることにしたのね?」
律「うん、なんか私……一人で急ぎ過ぎてたみたいでさ」
律「ムギの言ってた通り、大切な事を忘れていたよ」
律「ありがとう、ムギ」
紬「ううん、これはりっちゃんが自分でやったことよ」
紬「私はなにもしてないわ」
550: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 14:16:52.25 ID:AyzoOKGm0
律「ムギ……」
唯「なに話してるの~?」
紬「あら、唯ちゃん」
紬「あのね」
律「待って、ムギ」
紬「え?」
律「私が話すよ」
唯「なに~?」
律「あのな、実は――」
その後、律と澪は2人だけでうどん屋をやり直し、みんな幸せに暮らしましたとさ
めでたしめでたし
553: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 14:21:32.61 ID:AyzoOKGm0
これで終わりです
第三篇は急いで必要な部分を復元したのですごい駆け足で荒削りになってしまいました……
何度もストップして申し訳なかったです
オリジナルのスレの最後で調子乗って続き書くって言って、誰も気にしてないだろうし
憶えてもいないだろうと思いつつも勝手に気にしていたので、完全に蛇足だけどいつか
やろうと思っていました。
それではありがとうございました
唯「昔ばなし!」