SS速報VIP:律「澪のツリ目をタレ目にする方法」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1310625205/1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 15:33:25.21 ID:oCaAc2Wf0
純「でね、その時のカッコよさっていったら……」
憂「へぇ~ それはすごいね」
純「またツリ目がよりギラギラ感を醸し出していてそれがまたカッコいいんだ」
梓「二人ともおはよ~」
憂「梓ちゃん、おはよう」
純「梓、やっと来た!! ちょっと話聞いてよ」
梓「何? もしかして深夜にやっているアニメのツリ目主人公の話?」
純「そう、そう!! 彼のカッコよさっていったら!!」
梓「パス」
純「ひ、ひどい」
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 15:38:18.46 ID:oCaAc2Wf0
梓「その話聞き飽きたよ」
純「おもしろいのに……」
梓「なんかさ、もっと違う話ないの?」
憂「そういえば、駅の方に焼き芋屋さんが出来たみたいだよ」
梓「そうなんだ!! この季節柄それはいいね!!」
憂「食欲の秋だもんね~」
梓(軽音部のみんなと行ってみたいなぁ……)
純「放課後誘ってみたら?」
梓「それも悪くないね……」
梓「って、人の心勝手に読まないでよ!!」
純「だってそういう顔してたんだもん」
梓「もう、やめてよ」
梓を冷やかしながら、ちょっかいをかける
純「事前練習しておこうよ、事前練習」
梓「なんでわざわざ」
純「お誘いもスムーズに出来た方がいいでしょ?」
梓「からかいたいだけでしょ」
純「ほらほら、先輩達のあの… 私と一緒に焼き芋… 食べに行きませんか?って」
純「恥ずかしながら、モジモジさせたらよりgoodだよ」
梓「そんなことわざわざする必要ないでしょ」
純「純なとこ見せてあげなよ」
梓「はぁ……」
~~~~~~~~~~~~~~
梓「先輩達のあの… この後私と一緒に焼き芋… 食べに行きませんか?」モジモジ
律「いいなぁ、行こうか!!」
澪「でもこの辺に焼き芋屋さんなんてあったっけ?」
梓「新しくオープンしたみたいなんです」
紬「へぇ~」
唯「モジモジしながら話すあずにゃんもかわいいよ~」
そう言って梓に頬をすり寄せる
梓「ちょっと、苦しいです。唯先輩!! わかりましたから早く行きましょう」
5人は駅の方へと歩く――
木々は少しずつ色付きはじめ、街の景色をより綺麗に飾っている
澪「だいぶ紅葉し始めたな」
律「そうだな」
澪「こういう綺麗なものに触れたら、良い詩が浮かびやすいかも」
律「そりゃいいや、どんどん浮かべてくれ。学祭も近いしな」
唯「あれ、なんか良い匂いしてきたよ」
紬「ホント甘くて良い香り。きっと焼き芋ね」
梓「みなさん着きましたよ。ここです!!」
店内に入る5人
店の中は暖かく、食欲のそそる甘い匂いがお店の隅々まで漂わせていた。
店員「いらっしゃいませ」
律「一本144円か」
唯「でも大きくて、中身が綺麗な黄色だよ」
梓「香りが良すぎて、買う気がなくても買っちゃいそうですね」
店内はさほど大きくないので
5人は一列になり、一人ずつ店員にお金を支払い、購入していく
そして最後に澪が支払う際にある出来事が起きる
店員「144円になります」
澪「えっと……」
財布から小銭を探す――
澪「うんと……」
店員を待たせては悪いと慌て始める
澪「あ、ちょうどあった」
澪が店員に支払おうとした時――
律「みおー、店員待たせるなよ」ドン
肘で澪の腰あたりをつき、冷やかしを入れる
澪「うわっ」
そのせいで体のバランスを崩し、小銭を床一面に散ばしてしまった
澪「律っ!!」
律「悪い、悪い。拾うの手伝うからさ」
二人はしゃがみ込み、小銭を拾う
一通り拾い集め、店員の方を見ながら澪が立ちあがろうとすると――
店員「ひっ!!」
澪「えっ?」
店員「ごめんなさい、ごめんなさい」
澪(なんか怖がられている……)
律「どうしたんですか店員さん?」
店員「ごめんなさい、あなたがこっちを見ながら立ちあがる顔が怖くて……」
店員「その、あなたってツリ目だから余計見上げる表情が怖かったんです」
律(あちゃー……)
澪「……」
店員「ツリ目自体怖い印象なのにこのグワッて来られるような感じだったので」
店員「さらにその早くお金を渡そうという必死さが怖さに拍車を……」
律「あ~、すいません。じゃあ焼き芋貰ったので私たちはこれで」
5人は店を後にする
唯「色づく木々を見ながら焼き芋はおいしいねぇ」
紬「本当、甘いし、ホクホクね」
梓「来てみて正解でしたね」
澪「……」
一人会話に入らず、トボトボと下を見ながら歩く澪
唯「澪ちゃん、食べないの?」
紬「せっかくの焼き芋が冷めちゃうわ」
律「澪、まだ気にしてるのか?」
澪「だって……」
唯「そんな、たまたまだよ~ 怖いとか気にする必要ないよ」
澪「たまたまじゃないんだ」
梓「? どういうことですか?」
律「澪は昔、何回かツリ目のせいで怖いって言われたことがあるんだ」
唯「そうだったんだ」
紬「でも私たちは普段一緒にいるけど怖いなんて思わないわ」
澪「でも、初対面の人からは結構言われるんだよ……」
澪「はぁ……」
澪「ごめん、私先に帰るね。私の分の焼き芋食べていいから」
唯に焼き芋を手渡し、逃げるように走って帰宅していった
唯「今にも泣きそうな顔してたね……」
律「澪……」
~~~~~~~~~~~~
澪「ただいま」
澪母「おかえりなさい。もうすぐ夕御飯よ」
澪「なんで……」
澪母「ん? どうしたの?」
澪「なんで私はママに似なかったんだ!!」
澪母「えぇ!? 急にそんなこと言われても……」
澪「私がツリ目のせいでどんなに苦しんでいるか……」
澪母「み、澪ちゃん!?」
澪「もういいよ!!」
母親を押しのけて自分の部屋へと戻る
澪「うっ、うっ、ぐずっ……」
部屋にはすすり泣く音が響く
澪「あぁ、皆から愛されやすいタレ目になりたいよぉ」
澪「どうやったらツリ目じゃなく出来るだろうか」
澪「……あの方法を使ってみようかな」
次の日!
唯「澪ちゃん、おはよ~」
澪「唯、おはよう」
唯「朝はやっぱり寒いね……ってあれ!?」
唯「澪ちゃんがタレ目になっている!?」
澪「どうだ唯? タレ目の私は?」
唯「なんでタレ目になれたのさ?」
律「よく見てみろよ唯」
唯「あっ、りっちゃん」
澪の顔にグッと近づく唯
澪「近い、近いって」
唯「あっ、セロテープ!!」
律「そういうこと」
唯「セロテープで目を下に引っ張ってタレ目にしていたんだね」
律「ったく、よくやるよ」
澪「いいじゃないか、タレ目になりたいんだよ」
律「顔にセロテープなんか貼っていたら恥ずかしいだろ」
澪「タレ目のためなら我慢するよ」
律「澪は我慢できても、私たちが恥ずかしいわ」
律「なぁ、唯?」
唯「見て見て、ツリ目!!」
律「ってお前もかい!!」
セロテープで目をつり上げる唯
紬「私もツリ目~♪」
律「ムギ、いつの間に!?」
紬「今、来たところよ」
澪「二人のツリ目って新鮮だな」
紬「澪ちゃんのタレ目もね」
律「あのなぁ、みんなもうやめようぜ」
澪「何言ってるんだよ、少なくても今日一日はこの姿でいる」
唯「私たちもそうしようか?」
紬「そうね~」
律「……マジかよ。もう知らないからな」
ガラッ――
さわ子「みんな、おはよう。出席を取るから、席についてね」
さわ子「秋山澪さん」
澪「はい」
さわ子「……」
さわ子「秋山澪さん」
澪「はい?」
さわ子「なにその顔は?」
澪「タレ目になりたくて」
さわ子「どういう経緯かは知らないけどあなたずっとセロテープ貼ったままのつもり?」
澪「……ダメですか?」
さわ子「ちょっといただけないわ。授業受ける姿勢として感じられないし」
澪「……」シュン
さわ子「剥がしなさいね。三人とも」
唯・紬「ばれてるっ!?」
~~~~~~~~~~~~~
律「だからやめとけっていったろ?」
澪「だってもうツリ目はいやなんだよ~」
梓「でも、そんなことがあったんですか」
梓「澪先輩のタレ目ちょっと見たかったな」
唯「新鮮だったよ!!」
律「まぁ、確かにそうだけどさ」
澪「何か別な方法は……」
唯「じゃあ、今日のテーマは澪ちゃんのツリ目をタレ目にする方法だね」
律「お茶飲みながら作戦会議ってことか」
唯「そういうこと」
紬「お茶入ったわよ~」
5人が席に着く
今日のお菓子は梨のようで真ん中にたくさんの梨が入ったお皿が置かれた
唯「なんか良い方法はないかな」シャクシャク
澪「できればすぐタレ目になれる方法で」
梓「よくあるのはメイクでタレ目に出来るっていいますよね」
澪「なるほど。でもうちの学校化粧禁止だからな」
梓「そうでしたね」
紬「だったら整形っていう手もあるけど……」
澪「いやぁあ!!!!」
澪が耳を塞ぎ、その場にしゃがみ込む
澪「痛い話はやめてくれ!!」
唯「う~ん、中々良い方法ないね」シャクシャク
律「実際そんな簡単に自分の顔を変えられたら苦労しないよな」
梓「唯先輩、梨ばっかり食べていますけど何か案は無いのですか?」
唯「何も無し!!」フンス
梓(もしかして梨だけにとか……)
唯「とにかく、今は思いつかないから明日まで考えておくよ」
唯「澪ちゃん、頑張って成し遂げようね!!」フンス
梓(あっ、また……)
澪「そ、そうだな」
律「じゃあ、そろそろ練習するか!!」
~~~~~~~~~~
唯「ただいま~ あぁ寒かった」
憂「お姉ちゃん、お帰り。ご飯出来てるから一緒に食べよう」
唯「やったぁ、お腹ぺこぺこだよ」
憂「ちゃんと手洗いうがい済ましてからね」
唯「了解しました」ビシッ
敬礼した後、洗面所へと向かう
唯「ガラガラッ ペッ」
唯「これで良しと」
唯「さてご飯、ご飯!!」
リビングに向かうと美味しそうなご飯がテーブルを彩っていた
また平沢姉妹はテレビを見ながらご飯を食べる習慣があることから
テレビがついており、そこではニュースが流れていた
「こんばんは7時のニュースをお伝えします。今日の午前2時ごろ
桜が丘神社の賽銭箱のお金が盗まれるという事件が発生し、警察は――」
唯「憂~ ニュースつまんないからチャンネル変えていい?」
憂「いいよ」
箸を咥えながら、リモコンのチャンネルを変える
「みなさんこんばんは!! テレビショッピング『買っちゃおうタイム』のお時間です。今日紹介する商品はこちら!!
商品番号一番『オメメサガール』です!! ツリ目で印象が悪く、困っているという人がいたら是非使ってみてください。この塗り薬『オメメサガール』を使うとあら不思議、ツリ目がみるみるタレ目になる品物です。今、欲しいと思ったあなた!! いまから受け付け開始します。もちろん電話、インターネットどちらも24時間受け付けております。ではさらに商品の魅力をお伝えするためにビフォー、アフターの比較写真を見ていきましょう……」
憂「こんな時間にテレビショッピングって珍しいね」
唯「こ、これだ!!!」
憂「?」
次の日!!
放課後
澪「な、何だってー!?」
唯「そうなんだよ、これを買えばタレ目になれるよ!!」
澪「ちょっと、調べてみる」
おもむろに携帯を取り出し、ネットを使い調べる
紬「でもそんな夢みたいな商品があるなんてね」
律「なんかちょっと怪しくないか?」
梓「律先輩、通販の力を甘く見てはいけませんよ」
澪「あった!! これだ!!」
律「どれどれちょっと見せてみろよ」
澪「ちょ、ちょっと律!!」
律「えっとなになに……」
「『オメメサガール』をご使用になると、ツリ目をタレ目にすることができます。
使い方は簡単。寝る前に目のクマが出来るあたりに
この塗り薬『オメメサガール』を塗るだけ。
塗った次の日にはタレ目になっています。
なぜタレ目に出来るかというとまず本来ツリ目は重力に逆らっています。
これは自然の摂理に逆らった反逆者です。
しかし『オメメサガール』に含まれる成分には重力をより援助する働きを持ちます。
それによって重力に逆らえなくなり、タレ目になるという寸法です。
現在、注文を受付中ですが人気商品なので受け付けはお早めにお願いします」
律「……だって」
澪「説得力あるな」
律「どこがだよ!!」
律「胡散臭くてしょうがないんですが」
紬「そういえば値段はいくらなの?」
澪「そういえばそうだな」
商品説明の続きを読んでみる
澪「!!!」
紬「どうしたの?」
澪「お、おひとつ、きゅ、9万8000円だって……」
律「高っ!!」
梓「ほぼ10万じゃないですか」
澪「どうしよう、欲しいけどこんなに高いと買えないよ」
律「ぼったくりじゃないのか?」
唯「でもでも、ビフォー、アフターの写真はちゃんと効果出てたよ」
律(写真加工とかでなんとかなりそうだけどな)
澪「うぅ……」
紬「澪ちゃん……」
律「あきらめなよ」
澪「……」シュン
落ち込む澪のツリ上がった目には涙がたまり始めた
律「か、帰りに喫茶店でも寄って気分転換しようぜ?」
梓「そういえばよく行く喫茶店、秋の限定メニュー出てるかも」
唯「わたし、柿のパフェがいい!!」
梓「そんなのありますかね」
紬「それじゃ、行きましょう」
律「ほら、澪も」
澪「う、うん」
紬(そういえば、練習してないけど……)
澪の方を見る紬
紬(今日はいいよね)
~~~~~~~~~~~~
店員「ご注文はお決まりですか?」
唯「柿のパフェひとつ!!」
梓「モンブランお願いします」
律「リンゴのタルトを」
澪「それじゃあ、チーズケーキで」
紬「私はミートソーススパゲッティをください」
店員「かしこまりました」
唯「あったね、柿パフェ」
梓「意外と守備範囲が広いんですね」
律「まるで梓みたいだな」
梓「どういうことです?」
律「いや、べつに~」
梓「はぐらかさないでください」
紬「あらあら」
ワイワイガヤガヤ――
泥棒1「ったくなんだよ、向こうの席。ガキどもがうるさくてしょーがねーな」
泥棒2「全くで」
泥棒2「焼きでも入れてきましょうか?」
泥棒1「よせ、よせ。あんな青臭いの、焼いても食えねぇよ」
泥棒1「それよりも、だ」
泥棒1「今回の報酬を折半しようぜ」
泥棒2「しかしさすが兄貴ですね。コンビニやスーパーではなく神社の賽銭を狙うとは」
泥棒1「まあな。コンビニやスーパーで脅して金を得れば、必ず顔が見られる」
泥棒1「おまけに監視カメラと防犯カラーボールなどの対策付きだ」
泥棒1「それだと高確率で足がついてしまう」
泥棒1「だが、神社の賽銭箱には監視カメラもなければ深夜だから人もいない」
泥棒1「まさにこれを盗まずして何盗むという感じよ」
足を組み、優雅にコーヒーを啜る
泥棒2「しかし、なんかバチ当たりな気が……」
泥棒1「あのなぁ、これはバチあたりどころか感謝してほしいくらいなんだぜ」
泥棒2「?」
泥棒1「店などで金を得れば、そこの主人や店長が困るだろ?」
泥棒2「はい」
泥棒1「だが、賽銭というのは神様にあげた金だ」
泥棒1「神様は金を使うか?」
泥棒2「いや、聞いたことねぇ」
泥棒1「だろ? 神様は金なんかなくても困らないんだよ」
泥棒1「そういった意味では今回のこれは神様にしか迷惑をかけてねぇ」
泥棒1「しかし、神様は金を使わない。だったら必要としている俺たちが代わりに使っても文句はねえだろ?」
泥棒2「た、確かに」
泥棒1「少なくても人には迷惑をかけてねぇんだから問題ねぇ」
泥棒1「さぁ、早く折半しようぜ。両替するのも一苦労だったしよ」
泥棒2「そうっすね」
そういって泥棒達が手に持っている茶色い封筒を開けようとした時――
カランカラン――
店員「いらっしゃいませー」
警察「こんにちは。仕事中悪いのだが、聞き込み捜査に協力してほしい」
泥棒1「げっ、警察!?」
泥棒2「ど、どうします兄貴!?」
警察「近くの銀行で男の二人組が大量の小銭を両替に来たという連絡が入ってな」
警察「最近起こった賽銭泥棒と関連があると見ているんだが……」
店員「はぁ……」
泥棒1「気付かれないうちに逃げるぞ」
泥棒2「えっ、会計はどうするんです?」
泥棒1「馬鹿野郎、それどころじゃねぇよ」
泥棒1「姿勢を低くして、こっそり店からでるぞ」
泥棒2「わ、わかりやした」
店員「あ、あれ」
警察「どうしました?」
店員「あそこのテーブルにいた二人組のお客様がいなくなっている」
警察「何!? おそらくそいつだ!!」
警察「二人組の特徴を教えてくれ、今から追う」
店員「は、はい」
外――
泥棒1「はぁ、はぁ、ここまで逃げれば大丈夫だろ」
泥棒2「そ、そうっすね」
泥棒1「折半はどっか違うところで仕切り直しだな」
泥棒2「あっーー!!!」
泥棒1「ど、どうしたでかい声出しやがって!?」
泥棒2「忘れてきた……」
泥棒1「おい、まさか……」
泥棒2「今回の全報酬が入った茶封筒を喫茶店に……」
泥棒1「ば、ばか、馬鹿野郎おぉぉぉぉおぉ!!!!」
泥棒1「冗談は顔だけにしろよっ!! 干し柿みたいな顔しやがって!!!」
泥棒2「顔は関係ないでしょーが!! あんただって顔面エラーじゃないかよ!!!」
遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる
泥棒1「この音…… やべぇ、近くまで来てる!! 逃げんぞ!!」
泥棒2「待ってくれぇ、もう走れない……」
泥棒1「走れよ、足には自信あるんだろ?」
泥棒2「あぁ、男の割には美脚だとは思わないか?」
泥棒1「……」
泥棒2「あっ、ちょっ、ちょっと、待って、待って下せぇ!!!」
喫茶店に戻り――
梓「さっきの警察は何だったんでしょうね?」
唯「さぁ?」
律「きっとパトロールかなんかだろ」
紬「もうお外真っ暗ね」
唯「最近はすぐに暗くなるからねー」
律「そろそろ帰るかぁ」
5人が店を出ようと会計をする
澪(あれ? あの席誰もいないのに茶封筒がある……)
澪(忘れものかな)
封筒を拾い、中を確かめる
澪(えっ!?)
律「おい澪、何やってるんだよ。置いてくぞ」
澪「ちょ、ちょっと待って」
会計を済まし、一人遅れて店を出る
唯「澪ちゃん、遅いよどうしたの?」
澪「いや、忘れ物を拾ってさ」
梓「何ですか? その茶封筒?」
澪「あの喫茶店のテーブルに置いてあったんだ」
紬「中には何が入ってるの?」
澪「お、お金」
律「マジかよ!? いくらだ?」
澪「……」チラッ
律「……?」
澪「9000円だった」
梓「微妙な額ですね」
律「よし、割る5はいくらだ?」
紬「りっちゃん」
律「冗談だって」
唯「やっぱりお店の人か交番に届けるのがいいんじゃないかな?」
律「でも、今日は遅いし、明日近くの交番に届ければいいんじゃないか?」
律「金額もそこまで大きくないし」
梓「そうですね」
律「じゃあ、澪明日まで保管よろしくな。ついでに朝交番に届けておいてくれ」
澪「えっ、私が全部管理するのか?」
律「あたりまえだろー 拾った張本人なんだから」
澪「確かに、そうだけどさ」
梓「澪先輩なら、どこぞの先輩より安心ですね」
律「それは誰の事かな? あ~ずさちゃぁん!?」
梓「律先輩とは一言も言ってませんよ」
紬「うふふ、二人とも喧嘩はダメよ」
こうして皆それぞれ帰宅していった
その日の深夜
鈴虫などの虫たちも眠る真夜中
聞こえる音はカチカチと時計の針が刻む音だけ
その音と同時に心臓が高鳴っている女の子が一人……
澪「眠れない」ドキドキ
澪「気になるんだ……」
彼女の頭にはある商品が常によぎる
澪「やっぱり『オメメサガール』が欲しい……」
澪「けどあんな高価なもの買えない。買えないよ」
布団を被り、邪念を払おうとする澪
しかし、本当は買えないわけではない
澪「……」
ベットから這い上がり
テーブルの上にある喫茶店で拾った茶封筒を開ける
澪「1、2、3……」
改めて封筒のお金を数える
なんとその金額9万8000円にのぼる
澪「やっぱり9万8000円ちょうどだ」
澪「『オメメサガール』と同じ金額……」
澪「あの時は9000円なんて言っていたけど」
澪「本当は買える」
澪「あの時、本当の値段を言ってしまったら
なぜか自分の手元に封筒が来ない気がしてつい嘘をついてしまった……」
澪「私って悪い子だよね」
澪「でもこのお金を使えば、買えるんだよな……」
封筒を見つめる澪
澪「……やっぱりダメだ。人のお金を勝手に使うなんて犯罪だよ」
澪「あぁ、もう色々考えたら余計寝むれなくなってきた。テレビでも見て気を間際らそう」
テレビの電源を入れる
そこには深夜アニメが流れており
ツリ目の主人公と中年のおじさんの会話が描かれていた
澪「こんな時間にアニメなんてやっているんだ」
物珍しさからまじまじと見つめる
「おっちゃん!! どうしたんだよこの大金は!?」
「金庫から盗んできた」
「おい、それって犯罪じゃ……」
「目を覚ませ!! そんな綺麗事をいっている場合か!?」
「えっ!?」
「いいか!? 俺たちは勝たなきゃいけないんだ!! そんな時に金が足りないなんて
事になってみろ? 軍資金は多いことに越したことはないだろうが!!」
「……確かにおっちゃんの言う通りだ。金があるんだったらそりゃ使うよな」
「だろ!? いいか経緯はどうであれ、今この現実に俺たちは大金を持っている
これは運命なんだよ」
「運命?」
「そうさ。これは使ってくれという神が示してくれた暗示さ」
「なるほど」
「さぁ、勝負の時だ。行くぞ」
「あぁ」
澪「……」
澪「運命、なのかな……」
澪「今この時にお金が足りているっていうのは」
澪「神様が使えっていう暗示」
澪「神様が使えって言うなら、従わないとね……」
彼女の感情を揺さぶるアニメーション
そして揺さぶられた先は携帯を握り――
澪「もしもし、注文をしたいんですけど」
「お電話ありがとうございます。ではお名前と住所、振込先の方の確認を……」
~~~~~~~~~~
紬「お茶入ったわよ~」
律「待ってました!!」
唯「ティータイム、ティータイム♪」
梓「ちょっと先輩方、いつものごとく練習はしないんですか?」
律「お茶の後にするから心配するなって」
梓「約束ですよ」
今日も皆、定位置に座り
お菓子とお茶を囲む
唯「はぁ~ やっぱりムギちゃんのお茶は最高だね」
紬「ありがと。おかわりもあるわよ」
澪「……」
律「どうした澪? 元気ないな」
澪「えっ、いや、そんなことはないぞ」
律「そうかぁ?」
梓「そういえば」
澪「……ビクッ」
梓「今朝の新聞見ました?」
唯「なんかあったの? あずにゃん」
梓「なんでも学校の近くの桜が丘神社の賽銭泥棒の犯人が捕まったそうですよ」
唯「へー、そんな事件あったんだ」
紬「そういえばニュースにもなってたわね」
梓「犯人は男の二人組で約9万8000円分のお賽銭を盗んだそうです」
澪「……!!」
梓「だけど面白いことに彼らはお金を茶封筒に入れておいて
それを喫茶店に置いてきたと供述してるらしいです」
律「苦しい言い訳だな」
梓「そうですよね」
梓「実際に警察が置いてきた喫茶店を調べても、茶封筒は出てきてないらしいんですよ」
梓「おそらく、本当の隠し場所をはぐらかしているという狙いだと思います」
唯「なるほど」
紬「澪ちゃん? やけに大人しいけど大丈夫?」
澪「まっ、まあな。だ、大丈夫だ」
澪(……間違いない。あのお金はその二人が盗んできたお金だ)
澪(もしかして私、とんでもないことしちゃってる!?)
唯「そういえば澪ちゃん、昨日茶封筒拾ったよね?」
澪「……!! そう、そうだったな」
唯「もしかしたらその泥棒さんの封筒だったりして」
澪(や、やばいっ……)
梓「それはないですよ唯先輩。澪先輩が拾った茶封筒は9000円しかなかったんですから」
唯「そっかー」
紬「そういえば澪ちゃん、あの封筒交番に届けてくれた?」
澪「えっ!?」
澪「……」チラッ
律「……!」
澪「も、もちろんだよ。朝一で届けたよ!!」
澪「いやー、交番の人が面白い人でね。
『俺だったらこっそり使っちゃうな』なんて冗談を言っててさっ!!」
律「それは冗談のわかるおまわりだな」
澪「だろ!? めずらしいよなぁ~」
そう言って紅茶を口に運ぶ澪
澪「お、美味しい紅茶だな。ムギおかわり欲しいな」
紬「えっ、ええ、いいわよ。今持ってくるわ」
~~~~~~~~~~~
お茶会と練習が終わり、家に帰る澪
澪(まさか盗まれたお金だったなんて……)
澪(あのお金はもう振り込んでしまったし、取り返しがつかないよう)
澪(家に着いたら、警察が来ているなんてことないね……)
ガチャ――
澪「ただいま」
澪母「おかえり、来ているわよ」
澪「えっ!?」ドキッ
澪母「荷物。はいこれ」
澪「あっ、ありがとう」
澪「わ、私部屋に戻るね」
澪母「もうすぐ、夕飯だから少ししたら降りてくるのよ」
澪「わかった」
階段を急いでかけ上り、自分の部屋に戻る
澪「びっくりしたぁ、警察が来たのかと思ったよ」
澪「でももう届いたのか。早いな」
封を開けるとそこにはチューブ型の塗り薬が入っていた。
澪「写真でも見たけど本当に軟膏みたいだな」
澪「でもこの『オメメサガール』でタレ目になれるんだよね」
澪「さっそく、寝る前に使ってみようかな……」
夕飯も終わり、お風呂にも入り、明日の宿題も終えた頃
澪「さて、そろそろ寝ようかな」
オメメサガールを手に持ち、蓋を開けようとする
澪「でも、盗んだお金。本当に使っていいのかな……」
澪「使ったら最後…… もう戻れない」
澪「でも、やっぱりタレ目になりたいし……」
薬を持ちながら、部屋の中をうろうろする
澪「いや、決めたんだ!! これは運命なんだ!!」
澪「使う!! もう怖がれないみんなから愛されるタレ目になるんだ!!」
そう言ってチューブを押し出す
澪「初めてだから、どれくらいつければいいのかよくわからないな」
澪「これくらいかな?」
少量を取り出し、鏡を見ながら目のクマが出来る部分に擦り込む
澪「これで明日になれば」
澪「よし、早く寝よう」
澪(……どきどきして眠れないな)
澪(明日が楽しみだ)
次の日!!!
朝、顔も洗わず真っ先に鏡に飛びつく
澪「や、やった!! 下がっている!! 下がっているよ!!」
澪「早く学校に行って皆に新しい私を早く見せたい!!」
学校!!!
澪「ムギ、おはよう」
紬「おはよう澪ちゃん。ってえぇ!?」
紬「澪ちゃんの目が下がっている……」
澪「そうなんだよ」
律「二人とも、おーす!!」
紬「りっちゃんおはよう」
澪「おはよう」
律「!?」
律「どうしたんだよ? その目」
澪「良くなっただろ?」
律「ツリ目じゃない……」
紬「でもどうやったの?」
澪「これさ」
オメメサガールを二人に見せる
律「あっ」
紬「これってお金が足りなくて買えなかったんじゃないの?」
澪「いやー、それがさ」チラッ
律「……」
澪「昨日、おばあちゃんが遊びに来ててさ、お小遣いをたくさんくれたんだ」
澪「それと、貯金を崩したら何とか買えたってわけ」
紬「へぇ~ よかったわね」
澪「いやー、まさに神様が私にこれを授けてくれたかのようだよ」
唯「何なに? 何の話?」ヒョコ
澪「唯、おはよう。実はね……」
~~~~~~~~~
梓「それはラッキーでしたね」
唯「本当だよね~」
紬「新しい澪ちゃんも素敵ね」
澪「ありがとう、ムギ」
澪「これでもう怖がられずにすむよ」
唯「でもさ、まだタレ目とは言えなくない?」
梓「確かにそうですね。ツリ目ではありませんが、タレ目ともいいづらいですね」
梓「いうなれば普通の目って所でしょうか」
澪「確かにそうかもな」
澪「下がったことに嬉しすぎて麻痺していたけど」
澪「もう少し下げてもいいかも」
律「ツリ目じゃなければもう良いんじゃないのか?」
澪「いや、私の目標は愛されるタレ目だから」
澪「今晩、もう少し『オメメサガール』を塗ってみるよ」
梓「明日会うのが楽しみですね」
律「じゃあ、練習するか」
梓「律先輩からその言葉が出るとは」
律「いやー、本当はずっとお茶がいいけど学祭も近いからさ」
澪「そうだな。学祭で恥はかきたくないよな」
唯「澪ちゃんが言うと説得力あるね」
律「澪と唯はボーカルだからな。より頑張ってもらわないと」
唯「はーい」
澪「そうだな」
夜、今宵も虫たちの演奏を聴きながら彼女は鏡に向かう
澪「よし、これくらいでいいかな」
澪「ふふ、明日が楽しみだ!!」
次の日!!!!
律「ついに」
唯「念願の」
紬「タレ目ね。澪ちゃん」
澪「……///」
唯「タレ目の澪ちゃんもかわいいね」
澪「あ、ありがとう」
紬「より優しそうな顔になったわね」
澪「そうかな」
律「よかったな、澪」
澪「うん、もう言うことなし。幸せだよ」
さわ子「みんなおはよう。席について出席をとるわよ」
さわ子「秋山澪さん」
澪「はい」
さわ子「秋山さん。またセロテープなんか貼って……」
澪「ないです」
さわ子「あら、ホントね」
さわ子「どんな手品を使ったのかしら?」
澪「えへへ」
さわ子「まぁ、いいわ。良く似合っていて可愛いしね」
さわ子「じゃあ次……」
~~~~~~~~~~
唯「澪ちゃん大人気だったね」
澪「なんか恥ずかしいな」
紬「クラスのみんなも可愛いって持ちきりだったしね」
梓「そういえばファンクラブの人たちも大ニュースで大騒ぎしてましたよ」
律「また、会員が増えるかもな」
澪「やめてくれよ」
律「本心じゃないくせに。顔がにやけてるよ」
澪「もう、律はからかいすぎだ!! さっさと練習するぞ!!」
律「はいはい」
律「どうせなら性格も突っ張った感じから下げてくれればいいのに」
ガンッ!!
澪「なんか言ったか?」
律「しっかりきこえてるじゃん」ヒリヒリ
澪の家
澪「やっぱりタレ目にしてよかったよ」
澪「みんな可愛いって言ってくれたし」
澪「ママも驚いていたけど、今日の事を話したら良かったねって言ってくれたし」
澪「ホントに買ってよかった~」
鏡の前でニヤニヤする澪
澪「そうだ!! もっとタレ目にすればさらに愛される人になれるかも」
澪「そうすれば怖がられるどころか何もしなくても人が寄ってきてくれるような」
澪「そんな温かみのある人間に……!!」
澪「まだいっぱい残ってるし、もう少し使ってみよ」
クリームを取り出し、鼻歌を歌いながら擦り込ませていく
澪「これでよしっと」
澪「きっとみんなびっくりするよ」
澪「そうだまた焼き芋屋さんに皆で行きたいな」
澪「私、焼き芋食べそこなったし」
澪「次は絶対に怖がられることなんてないからな」
澪「みんなに明日誘ってみようと」
次の日!!!!!
澪「さて、どんな風になったかな?」
鏡をのぞく澪
「きゃああぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!」
澪母「どうしたの? 澪ちゃん!?」
澪母「ちょっと澪ちゃん、澪!? 開けなさい!!」ドンドン
部屋のドアを壊れるかのような勢いでノックする
澪「ダメ!! 来ないで!!」
澪母「何があったの? 大丈夫!?」
澪「今日は私学校休む!!」
澪母「えっ!? いったい何が起こったの? 澪ちゃん!?」
澪「いいから!! 風邪で休むってことにしておいて!!」
~~~~~~~~~~~~
さわ子「今日、秋山さんは風邪でお休みです」
ざわつく教室
唯(澪ちゃん?)
紬(どうしたのかしら?)
律(澪……)
時間は流れ、放課後部室
梓「どうです? 律先輩」
律「だめだ。でねー」
あきらめて携帯をしまう律
唯「朝から連絡取ろうとしても全然出てくれない……」
紬「嫌われたのかしら」
律「まさか」
梓「昨日はあんなに念願のタレ目になれて幸せそうだったのに……」
唯「何かあったのかな?」
律「そんなことないと思うけどな。さわちゃんも風邪で休みって言ってたし」
律「きっと明日になったらひょっこり出てくるさ」
紬「そうだといいけど……」
それから3日後
唯「……」
梓「……来ませんね」
紬「……澪ちゃん」
律「あれから、毎日連絡してるのにな」
唯「インフルエンザかな……」
梓「でも安否くらい教えてくれてもいいはずですよね」
律「う~ん」
紬「何かきっと澪ちゃんの身に起こっているのよ!!」
律「かもな」
唯「だったら!!」
律「そうだな。これから皆で澪ん家行ってみるか」
律「澪がいないと練習にならないしな」
梓「学祭ももう、すぐそこですし早く戻ってこないと……」
唯「そうと決まったなら、急いで支度しよう」
~~~~~~~~~~~~
唯「ここが澪ちゃんの家かぁ」
律「入るぞ」
ピンポーン
澪母「はい、どちら様?」
律「こんにちは」
澪母「あら、りっちゃん!! それと……」
唯「愉快な仲間たちだよ」
梓「じゃなくて部員達です」
律「澪、元気ですか?」
澪母「心配して来てくれたの? ありがとう」
澪母「あのね私も澪に4日前から会ってないの」
律「えっ!?」
紬「どういうことですか?」
澪母「あの子、ずっと部屋にこもりっぱなしで私も部屋に入れてくれないの」
律「そんな……」
紬「そしたら風邪ではないということですか?」
澪母「おそらくね」
唯「ご、ご飯はどうするんですか!?」
澪母「ご飯の時間になったら私が部屋の前に持っていくの」
澪母「そしていなくなったら空の容器を部屋の前に置いておいて交換するのよ」
澪母「トイレやお風呂も私の目を盗んでしてるみたい」
澪母「とにかく人に会いたくないような素振りなの」
梓「ひどい話ですね」
律「おばさん。私たち、澪に会ってきていいですか?」
澪母「いいわ。多分嫌がると思うけどむしろ会ってあげて頂戴」
澪母「もう私の力ではどうにも……」
律「おばさん……」
澪の母からは涙があふれる――
律「大丈夫です。私たちが何とかしますから」
唯「それじゃあ、おじゃまします」
4人は家の中に入り、澪の部屋の前に立った
コンコン――
律「澪? 大丈夫かぁ」
紬「澪ちゃん。みんな心配して様子を見に来たの」
梓「こんばんは、澪先輩。中野梓です」
唯「みおちゃん~ 遊びに来たよ」
ドア越しにか弱い声で声が聞こえてくる
澪「みんな、いいから帰ってくれ」
律「……」
律「なんでだよ。せめて理由を話してくれよ」
澪「いいたくない。とにかく顔を合わせたくないんだ」
唯「どうしちゃったの? 澪ちゃん。4日前はタレ目になれてあんなに喜んでいたのに……」
澪「目の話はよせ!!!」
唯「」ビクッ
紬「この言動からすると澪ちゃんはタレ目に関して何か問題があるんじゃないかしら?」
紬が手を唇にあて、ポーズをしながら推理する
律「なるほど」
律「そうなのか? 澪」
澪「……」
律「否定しないということは多分そうだな」
律「何があったかは知らないけどせめて部屋のカギを開けてくれよ」
澪「それは無理!!」
梓「澪先輩が学校に来てくれないと練習にならないんですよ」
澪「もう学校なんか行かないからそんなこと知らない」
唯「澪ちゃん……」
紬「今日はいったん引き上げる?」
律「いや、引き上げたところで解決にならないよ」
律「なぁ、澪何があったか話してくれよ」
澪「いや!!」
律「今、こうして外に出れないということはこの現状じゃダメってことだろ?」
律「そのままずっと部屋にいて解決できることなのか?」
澪「……」
律「解決できるなら私たちはこれ以上干渉しない」
律「だけど何も変われないなら私たちに相談してみろよ」
律「4人もいるんだ。なんかいい案の一つや二つ……」
律「澪の力になれると思うんだ」
澪「……」
唯「そうだよ澪ちゃん」
紬「私たち澪ちゃんに元気なってもらいたいだけなの」
澪「……みんな」
澪「……笑わない?」
律「笑う? よくわからないけど笑わないさ」
梓「もちろんです」
澪「……」
カチャ――
ドアのカギが開く音がした
律「……ありがとう澪」
律「じゃあ入るからな」
4人はゆっくりと澪の部屋へと入る
そこには毛布に包まり、後ろ姿の澪がいた
律「だ、大丈夫か?」
律が後ろを向いている澪の顔を覗き込む
律「えっ!?」
律「ど、どうしたんだよ澪!? その顔!?」
唯「何なの?」
紬「りっちゃん!?」
澪「ほら、笑った!!」
梓「澪先輩落ち着いてください。誰も笑ってなんかいませんよ」
律「と、とりあえずみんなに見せろ。なっ?」
澪を振り向かせるとそこにはもはや愛されるとは言えない変貌をとげた
澪の顔があった
唯「み、みおちゃん……」
紬「垂れ落ちそう……」
梓「……うっ」
あのあと調子に乗ってオメメサガールを使いすぎた結果
澪の眼はタレ目というよりは目が今にも垂れ落ちてきそうな目となってしまった
もはやその姿は人前に出れるようなものではなくひどく醜い妖怪のような姿である
澪「ちょ、調子に乗り過ぎんたんだよぉ」
澪「あの後もっとタレ目になりたくてオメメサガールを使ったらこんなに下がっちゃって」
澪「うああぁぁ……」
律「もう泣くなよ。十分泣いただろ?」
律「涙の跡がくっきりだ。おまけに声まで枯れてるし」
紬「まさかこんなになるとはね……」
唯「可愛そう……」
梓「なんか残念な美人って言葉が似合いますね」
澪「うぅ……」
律「中野おぉぉぉ!!!!」
梓「ご、ごめんなさい。じょ、冗談です!!」
梓「は、早く皆で治す方法を考えましょう!!」
唯「でもどうやるの? あずにゃん」
梓「えーと… そうだ澪先輩『オメメサガール』の説明書に」
梓「治し方は書かれていませんでしたか?」
澪「見たけど何も書かれていなかった」
梓「そうですか……」
紬「前の逆みたいにセロハンテープで目をつり上げてみるのは?」
律「そんなんじゃ、無理だろ」
澪「一応やったけどダメだった……」
律「やったのかよ」
唯「タレ目の専門家なんて人がいればいいのにね」
律「!!」
律「そ、それだよ!! 唯」
唯「?」
そう言っておもむろに携帯を取り出す
梓「なにをするんですか?」
律「電話だ」
梓「誰に?」
律「『オメメサガール』の専門家。つまり製造した会社だよ」
律「澪、その商品のどこかにお問い合わせ番号ないか?」
紬「なるほど、製造した会社なら対処法が分かるかも」
澪「あった。この番号だよ」
律「よし、これでよしっと」
プルルル――
「お電話ありがとうございます。こちら『オメメサガール』のサービスコールです」
律「あ、あのこの商品を買った者なんですけど」
律「この商品って一度タレ目にしたら戻す方法はないんですか?」
「そうですね。ありません」
律「そんな、なんで治す方法がないんですか!!」
「飲むと風邪が治る薬はあっても、飲むと風邪をひく薬はありませんよね?」
「それと同じことです」
律「なるほど」
梓「律先輩何を納得しているんですか?」
律「じゃあ、ツリ目にする薬とかはないんですか?」
「はい。現段階ではそのような商品開発は行っていません」
律「うぅ、なんとか手はありませんか? タレ目過ぎて困っているんです」
「申し訳ありませんが私たちに出来ることはありません」
律「あっ、そうすっか。わかりました。失礼します」
ピッ――
紬「どう、りっちゃん? なにかいい解決法はわかった?」
律「これほど頼りにならないサービスコールは初めてだ」
梓「良い手がなかったんですか……」
澪「どうしよう… 私……」
唯「大丈夫皆で考えればいい案出るよ」
だが、それから2時間が経過――
梓「中々良い策が思いつきませんね」
唯「やっぱりそのままの澪ちゃんで生きていくしか……」
澪「その案だけは嫌だぁ~」
梓「確かにその顔で学祭には厳しいですね」
澪「!! そういえば学祭あるんだった!! ど、どうしよう……」
律「……」
『オメメサガール』の説明書を寝そべりながら眺める律をよそに
紬が口を開く
紬「だいぶ遅くなっちゃったわね」
澪「ごめん… もう帰っていいよ。だけど……!!」
唯「わかってるって。誰にも言わないよ」
梓「じゃ、とりあえず今日はここまでにしましょうか」
紬「明日また皆で解決案を練り直しましょう」
梓「律先輩行きますよ」
律「あ、あぁ、そうだな」
唯「じゃあね澪ちゃん」
4人が澪の家を後にする
梓「まさか、こんなことになっているとは」
唯「澪ちゃん可愛そう」
紬「私もあの立場だったら学校には行けないわ」
律「……」
唯「明日も澪ちゃんのために頑張ろうね。りっちゃん」
律「へっ? あぁ、そうだな」
梓「律先輩?」
律「悪い。私、澪の家に忘れ物しちゃった。みんな先帰っていてくれ」
律「じゃあ」
梓「ちょっと律先輩!?」
唯「行っちゃった」
紬「……」
唯「どうせすぐ戻るだろうからりっちゃん帰ってくるの待ってようか」
梓「そうですね。夜道一人は危ないと思うし」
紬「いえ、みんな帰りましょう」
唯「え~ せっかくだから待とうよ」
紬「ダメ、帰るの」
梓「ムギ先輩?」
紬「帰った方がきっといいわ。そう感じるの」
唯・梓「?」
唯「まぁ、そういうなら……」
梓「帰りましょうか」
紬(お願いね、りっちゃん……)
~~~~~~~~~~~
コンコン――
澪「ママ、入ってこないでって言ったでしょ!!」
律「私だよ、澪」
澪「律?」
ドアを開け、律を部屋に通す
澪「どうしたんだよ? 帰ったんじゃないのか?」
律「いや、ちょっと忘れ物をね」
澪「そんなものなかったと思うけど……」
律「澪の目を元に戻し忘れてるから来たのさ」
澪「それは今のところ無理じゃないか」
律「いや、私に一つだけ案がある」
律「説明書を見る限り、私の案は多分成功する…と思う」
澪「本当か!? どんな案なんだ!?」
律「まぁ待て、オメメサガールはあとどれくらい残ってる?」
澪「あと半分くらいかな」
律「セーフだな。全部使えば何とか」
澪「なんだよ、もったいぶらないでよ」
律「まぁ、慌てるな」
そう言いながらベットに腰掛ける
カチッ、カチッと時計の音だけが聞こえる
澪「? どうした改まって。早く教え……」
律「償うか?」
澪「えっ!?」
律「今までしてきた罪。償うなら教えてあげるよ」
澪「罪? 何のこと?」
律「……私たちに嘘ついてきただろ?」
澪「!!」
一瞬体中の血液が失ったような感覚に陥る
澪「ど、どういうことだよ」
律「このオメメサガール、喫茶店の茶封筒のお金で買っただろ?」
澪「!!」ビクッ
律「それなのに金額の捏造や交番に届けた。おばあちゃんから小遣い貰ったなどと」
律「嘘をつき通してきたな?」
澪「な、なんでわかった?」
手足が震える、動揺を隠しきれない澪
律「気づいてないかもしれないけど澪はみんなの前で嘘をつく時」
律「必ず一度私の顔を覗ってから嘘をつく癖があるんだよ」
澪「そんな……」
律「やっぱ無意識だったか」
律「友達だから黙ってたけどこの状況になって反省もしないで」
律「また元に戻り、のうのうと元の生活に戻るのは道徳的に良くないと思うからな」
律「だから反省し、償うというなら教えてあげるよ」
澪「うっ……」ポロポロ
律「みお?」
澪「うぅ、うわぁぁぁぁん」
泣きながら律に抱きつく
澪「ご、ごめんなさぁい。ホントは怖かったんだ。嘘をついてまで他人のお金を使うのが」
澪「でも、でも欲に負けちゃってぇぇ」
澪「もう怖がられるのは嫌だったんだよぉ」
律「澪……」
澪「反省する。反省するから助けてぇ」ポロポロ
大粒の涙を流しながら、必死に律にしがみつく
律「いたた… 苦しいって」
律「わかったよ。100%元に戻るかはわからないけど教えてやるよ」
澪「うっ、うっ、あ、ありがとう」
律「じゃあ、教えるぞ。おそらく……」
澪に策を教えてしばらく時間が立ち、夜も更け、さらに少しずつ空も明るくなってきた頃
澪「く、苦しいよ。律~」
律「ふはぁぁ、頑張れ、もうあと3時間くらいで学校だ。それまでの辛抱」
大きなあくびをしながら眠たそうな声で励ましをいれる律
澪「死ぬぅ、もう嫌~」
律「これまでの罪の重さだと思って我慢だ」
澪「うぅ~」
朝、学校
唯「み、澪ちゃん!?」
紬「それにりっちゃんも!?」
律「こういう真っ黒なクマが出来た澪も新鮮だよな」
澪「律こそ」
紬「二人とも寝てないの?」
唯「でも、澪ちゃんの目が元に戻っている!! いったい何があったの?」
澪「へへっ、それはね……」
さわ子「みんな、おはよう。あら、秋山さん久しぶりね。風邪は良くなった?」
澪「はい。心配かけてすみませんでした」
さわ子「いいのよ。それより手品はもういいの?」
澪「はい、もうこりごりです」
さわ子「ふふ、今のあなたクマだらけだけどその顔が一番素敵に感じるわ」
澪「? はぁ……」
さわ子「じゃあ、出席とるわ。皆席について」
唯「せっかく澪ちゃんから聞こうと思ったのに……」
澪「放課後まとめて話すよ」
放課後――
紬「お茶どうぞ~」
唯「じゃあ」
梓「聞きましょうか、治ったわけを」
澪「皆も知ってると思うけどあの後、律が戻ってきてね……」
~~~~~~~~~
律「100%元に戻るかはわからないけど教えてやるよ」
澪「ありがとう」
律「じゃあ、教えるぞ。おそらく……」
律「この説明書を見るとオメメサガールには重力をより援助する成分が含まれていて」
律「それで重力に耐えられなくなってタレ目になると書いてある」
澪「そうだな」
律「ってことは重力を逆にすればタレ目がツリ目になるような働きになるということだ」
澪「た、確かにそうだけど重力を逆にするなんて無理だろ」
律「そうだな。そんなの神にしかできない」
律「けど、澪一人だけなら重力を逆に出来るだろ?」
澪「えっ? どういうこと?」
律「逆立ちだよ。そうすれば一人逆になるだろ?」
律「つまり、目の上の部分にオメメサガールを残り半分全部塗り」
律「逆立ちして、重力を逆にすれば目は重力に伴って今度はつり上げてくれるってことだ」
澪「なるほどー それには気付かなかったな」
律「へへーん、どうだい」
澪「でもそれって……」
律「そうだな一晩中、逆立ちで過ごさなければならないということだ」
澪「そ、そんなの無理だー!! 寝れないじゃないか」
律「文句言うなってそれしか方法はないんだから」
律「ほら、オメメサガール塗ってやるからさ」
澪「はぁ……」
それからしばらく経って
澪「律、辛いよ。頭に血が上る~」
律「我慢、我慢」
澪「もうギブ~」
律「まだ初めて一時間だろ」
澪「律っ~!!!」
~~~~~~~~~~
澪「ってな感じで戻れたってわけ」
梓「なるほど律先輩の読みが当たったというわけですね」
律「どうだ、すごいだろ!?」
唯「でも戻ってよかったね」
澪「本当に良かったよ。でも眠たくて授業中寝てしまった……」
紬「梓ちゃんにも見せてあげたかったわ」
紬「澪ちゃん、りっちゃん、唯ちゃん三人そろって寝てる姿」
紬「すごくおもしろかったわ」
梓「唯先輩は関係ないのに」
唯「私にはこれが日常なのです!!」
梓「偉そうに言わないでください」
律「でもこれで一件落着して良かったよ」
梓「そうですね」
梓「でも、どうせなら全部使わないで少し残しておけば、ちょうど良いタレ目のまま」
梓「キープできたんじゃないですか?」
澪「あっ……」
律「いいじゃないか、ツリ目でも」
律「ツリ目だからダメなんていうやつはこっちからお断りしとけ」
紬「そうよ。今のままで澪ちゃんは良いのよ」
澪「そうかな……」
律・紬・唯・梓「そう(さ、よ、だよ、です)!!」
澪「みんな… ありがとう」
練習後――
律「みんなお疲れー」
唯「ねぇねぇ、今日はどこに行く?」
梓「そうですねー」
ガヤガヤ――
澪「なぁ、ムギお願いがあるんだけど」ひそひそ
紬「んっ? なあに?」
澪「実は……」
数日後
紬・澪「いらっしゃいませー!!」
紬「でも、澪ちゃんがまさかアルバイトをしたいなんて」
紬「なんでまた?」
澪「お金を返… じゃなくて人見知りを治したくてさ」
紬「偉いわ澪ちゃん!! ようし先輩としていっぱい教えてあげるね!!」
澪「そ、それはどうも……」
その3ヶ月後に桜が丘神社に9万8000円が何者かの手によって戻ってきたという
不可思議がニュースになるのはもう少し先のお話……
終わり
以上で終わりです
一気に投下したから疲れた……
見てくれた人いたらありがとう!!
元スレ
梓「その話聞き飽きたよ」
純「おもしろいのに……」
梓「なんかさ、もっと違う話ないの?」
憂「そういえば、駅の方に焼き芋屋さんが出来たみたいだよ」
梓「そうなんだ!! この季節柄それはいいね!!」
憂「食欲の秋だもんね~」
梓(軽音部のみんなと行ってみたいなぁ……)
純「放課後誘ってみたら?」
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 15:42:48.51 ID:oCaAc2Wf0
梓「それも悪くないね……」
梓「って、人の心勝手に読まないでよ!!」
純「だってそういう顔してたんだもん」
梓「もう、やめてよ」
梓を冷やかしながら、ちょっかいをかける
純「事前練習しておこうよ、事前練習」
梓「なんでわざわざ」
純「お誘いもスムーズに出来た方がいいでしょ?」
梓「からかいたいだけでしょ」
純「ほらほら、先輩達のあの… 私と一緒に焼き芋… 食べに行きませんか?って」
純「恥ずかしながら、モジモジさせたらよりgoodだよ」
梓「そんなことわざわざする必要ないでしょ」
純「純なとこ見せてあげなよ」
梓「はぁ……」
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 15:46:06.49 ID:oCaAc2Wf0
~~~~~~~~~~~~~~
梓「先輩達のあの… この後私と一緒に焼き芋… 食べに行きませんか?」モジモジ
律「いいなぁ、行こうか!!」
澪「でもこの辺に焼き芋屋さんなんてあったっけ?」
梓「新しくオープンしたみたいなんです」
紬「へぇ~」
唯「モジモジしながら話すあずにゃんもかわいいよ~」
そう言って梓に頬をすり寄せる
梓「ちょっと、苦しいです。唯先輩!! わかりましたから早く行きましょう」
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 15:50:10.24 ID:oCaAc2Wf0
5人は駅の方へと歩く――
木々は少しずつ色付きはじめ、街の景色をより綺麗に飾っている
澪「だいぶ紅葉し始めたな」
律「そうだな」
澪「こういう綺麗なものに触れたら、良い詩が浮かびやすいかも」
律「そりゃいいや、どんどん浮かべてくれ。学祭も近いしな」
唯「あれ、なんか良い匂いしてきたよ」
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 15:53:38.77 ID:oCaAc2Wf0
紬「ホント甘くて良い香り。きっと焼き芋ね」
梓「みなさん着きましたよ。ここです!!」
店内に入る5人
店の中は暖かく、食欲のそそる甘い匂いがお店の隅々まで漂わせていた。
店員「いらっしゃいませ」
律「一本144円か」
唯「でも大きくて、中身が綺麗な黄色だよ」
梓「香りが良すぎて、買う気がなくても買っちゃいそうですね」
店内はさほど大きくないので
5人は一列になり、一人ずつ店員にお金を支払い、購入していく
そして最後に澪が支払う際にある出来事が起きる
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 15:55:42.93 ID:oCaAc2Wf0
店員「144円になります」
澪「えっと……」
財布から小銭を探す――
澪「うんと……」
店員を待たせては悪いと慌て始める
澪「あ、ちょうどあった」
澪が店員に支払おうとした時――
律「みおー、店員待たせるなよ」ドン
肘で澪の腰あたりをつき、冷やかしを入れる
澪「うわっ」
そのせいで体のバランスを崩し、小銭を床一面に散ばしてしまった
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 16:01:29.26 ID:oCaAc2Wf0
澪「律っ!!」
律「悪い、悪い。拾うの手伝うからさ」
二人はしゃがみ込み、小銭を拾う
一通り拾い集め、店員の方を見ながら澪が立ちあがろうとすると――
店員「ひっ!!」
澪「えっ?」
店員「ごめんなさい、ごめんなさい」
澪(なんか怖がられている……)
律「どうしたんですか店員さん?」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/14(木) 16:07:56.64 ID:oCaAc2Wf0
店員「ごめんなさい、あなたがこっちを見ながら立ちあがる顔が怖くて……」
店員「その、あなたってツリ目だから余計見上げる表情が怖かったんです」
律(あちゃー……)
澪「……」
店員「ツリ目自体怖い印象なのにこのグワッて来られるような感じだったので」
店員「さらにその早くお金を渡そうという必死さが怖さに拍車を……」
律「あ~、すいません。じゃあ焼き芋貰ったので私たちはこれで」
5人は店を後にする
唯「色づく木々を見ながら焼き芋はおいしいねぇ」
紬「本当、甘いし、ホクホクね」
梓「来てみて正解でしたね」
澪「……」
一人会話に入らず、トボトボと下を見ながら歩く澪
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/15(金) 23:29:12.29 ID:zVMerWfr0
唯「澪ちゃん、食べないの?」
紬「せっかくの焼き芋が冷めちゃうわ」
律「澪、まだ気にしてるのか?」
澪「だって……」
唯「そんな、たまたまだよ~ 怖いとか気にする必要ないよ」
澪「たまたまじゃないんだ」
梓「? どういうことですか?」
律「澪は昔、何回かツリ目のせいで怖いって言われたことがあるんだ」
唯「そうだったんだ」
紬「でも私たちは普段一緒にいるけど怖いなんて思わないわ」
澪「でも、初対面の人からは結構言われるんだよ……」
澪「はぁ……」
澪「ごめん、私先に帰るね。私の分の焼き芋食べていいから」
唯に焼き芋を手渡し、逃げるように走って帰宅していった
唯「今にも泣きそうな顔してたね……」
律「澪……」
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/15(金) 23:31:36.36 ID:zVMerWfr0
~~~~~~~~~~~~
澪「ただいま」
澪母「おかえりなさい。もうすぐ夕御飯よ」
澪「なんで……」
澪母「ん? どうしたの?」
澪「なんで私はママに似なかったんだ!!」
澪母「えぇ!? 急にそんなこと言われても……」
澪「私がツリ目のせいでどんなに苦しんでいるか……」
澪母「み、澪ちゃん!?」
澪「もういいよ!!」
母親を押しのけて自分の部屋へと戻る
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/15(金) 23:33:05.16 ID:zVMerWfr0
澪「うっ、うっ、ぐずっ……」
部屋にはすすり泣く音が響く
澪「あぁ、皆から愛されやすいタレ目になりたいよぉ」
澪「どうやったらツリ目じゃなく出来るだろうか」
澪「……あの方法を使ってみようかな」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/15(金) 23:38:25.88 ID:zVMerWfr0
次の日!
唯「澪ちゃん、おはよ~」
澪「唯、おはよう」
唯「朝はやっぱり寒いね……ってあれ!?」
唯「澪ちゃんがタレ目になっている!?」
澪「どうだ唯? タレ目の私は?」
唯「なんでタレ目になれたのさ?」
律「よく見てみろよ唯」
唯「あっ、りっちゃん」
澪の顔にグッと近づく唯
澪「近い、近いって」
唯「あっ、セロテープ!!」
律「そういうこと」
唯「セロテープで目を下に引っ張ってタレ目にしていたんだね」
律「ったく、よくやるよ」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/15(金) 23:41:36.04 ID:zVMerWfr0
澪「いいじゃないか、タレ目になりたいんだよ」
律「顔にセロテープなんか貼っていたら恥ずかしいだろ」
澪「タレ目のためなら我慢するよ」
律「澪は我慢できても、私たちが恥ずかしいわ」
律「なぁ、唯?」
唯「見て見て、ツリ目!!」
律「ってお前もかい!!」
セロテープで目をつり上げる唯
紬「私もツリ目~♪」
律「ムギ、いつの間に!?」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/15(金) 23:49:02.54 ID:zVMerWfr0
紬「今、来たところよ」
澪「二人のツリ目って新鮮だな」
紬「澪ちゃんのタレ目もね」
律「あのなぁ、みんなもうやめようぜ」
澪「何言ってるんだよ、少なくても今日一日はこの姿でいる」
唯「私たちもそうしようか?」
紬「そうね~」
律「……マジかよ。もう知らないからな」
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/15(金) 23:54:05.26 ID:zVMerWfr0
ガラッ――
さわ子「みんな、おはよう。出席を取るから、席についてね」
さわ子「秋山澪さん」
澪「はい」
さわ子「……」
さわ子「秋山澪さん」
澪「はい?」
さわ子「なにその顔は?」
澪「タレ目になりたくて」
さわ子「どういう経緯かは知らないけどあなたずっとセロテープ貼ったままのつもり?」
澪「……ダメですか?」
さわ子「ちょっといただけないわ。授業受ける姿勢として感じられないし」
澪「……」シュン
さわ子「剥がしなさいね。三人とも」
唯・紬「ばれてるっ!?」
20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/15(金) 23:57:54.02 ID:zVMerWfr0
~~~~~~~~~~~~~
律「だからやめとけっていったろ?」
澪「だってもうツリ目はいやなんだよ~」
梓「でも、そんなことがあったんですか」
梓「澪先輩のタレ目ちょっと見たかったな」
唯「新鮮だったよ!!」
律「まぁ、確かにそうだけどさ」
澪「何か別な方法は……」
21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/16(土) 00:00:30.85 ID:citpx3aE0
唯「じゃあ、今日のテーマは澪ちゃんのツリ目をタレ目にする方法だね」
律「お茶飲みながら作戦会議ってことか」
唯「そういうこと」
紬「お茶入ったわよ~」
5人が席に着く
今日のお菓子は梨のようで真ん中にたくさんの梨が入ったお皿が置かれた
唯「なんか良い方法はないかな」シャクシャク
澪「できればすぐタレ目になれる方法で」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/16(土) 00:02:42.31 ID:citpx3aE0
梓「よくあるのはメイクでタレ目に出来るっていいますよね」
澪「なるほど。でもうちの学校化粧禁止だからな」
梓「そうでしたね」
紬「だったら整形っていう手もあるけど……」
澪「いやぁあ!!!!」
澪が耳を塞ぎ、その場にしゃがみ込む
澪「痛い話はやめてくれ!!」
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/07/16(土) 00:05:32.47 ID:citpx3aE0
唯「う~ん、中々良い方法ないね」シャクシャク
律「実際そんな簡単に自分の顔を変えられたら苦労しないよな」
梓「唯先輩、梨ばっかり食べていますけど何か案は無いのですか?」
唯「何も無し!!」フンス
梓(もしかして梨だけにとか……)
唯「とにかく、今は思いつかないから明日まで考えておくよ」
唯「澪ちゃん、頑張って成し遂げようね!!」フンス
梓(あっ、また……)
澪「そ、そうだな」
律「じゃあ、そろそろ練習するか!!」
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 22:47:47.00 ID:n19eQK9j0
~~~~~~~~~~
唯「ただいま~ あぁ寒かった」
憂「お姉ちゃん、お帰り。ご飯出来てるから一緒に食べよう」
唯「やったぁ、お腹ぺこぺこだよ」
憂「ちゃんと手洗いうがい済ましてからね」
唯「了解しました」ビシッ
敬礼した後、洗面所へと向かう
唯「ガラガラッ ペッ」
唯「これで良しと」
唯「さてご飯、ご飯!!」
リビングに向かうと美味しそうなご飯がテーブルを彩っていた
また平沢姉妹はテレビを見ながらご飯を食べる習慣があることから
テレビがついており、そこではニュースが流れていた
「こんばんは7時のニュースをお伝えします。今日の午前2時ごろ
桜が丘神社の賽銭箱のお金が盗まれるという事件が発生し、警察は――」
唯「憂~ ニュースつまんないからチャンネル変えていい?」
憂「いいよ」
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 22:50:01.65 ID:n19eQK9j0
箸を咥えながら、リモコンのチャンネルを変える
「みなさんこんばんは!! テレビショッピング『買っちゃおうタイム』のお時間です。今日紹介する商品はこちら!!
商品番号一番『オメメサガール』です!! ツリ目で印象が悪く、困っているという人がいたら是非使ってみてください。この塗り薬『オメメサガール』を使うとあら不思議、ツリ目がみるみるタレ目になる品物です。今、欲しいと思ったあなた!! いまから受け付け開始します。もちろん電話、インターネットどちらも24時間受け付けております。ではさらに商品の魅力をお伝えするためにビフォー、アフターの比較写真を見ていきましょう……」
憂「こんな時間にテレビショッピングって珍しいね」
唯「こ、これだ!!!」
憂「?」
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 22:52:59.19 ID:n19eQK9j0
次の日!!
放課後
澪「な、何だってー!?」
唯「そうなんだよ、これを買えばタレ目になれるよ!!」
澪「ちょっと、調べてみる」
おもむろに携帯を取り出し、ネットを使い調べる
紬「でもそんな夢みたいな商品があるなんてね」
律「なんかちょっと怪しくないか?」
梓「律先輩、通販の力を甘く見てはいけませんよ」
澪「あった!! これだ!!」
律「どれどれちょっと見せてみろよ」
33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 22:55:20.55 ID:n19eQK9j0
澪「ちょ、ちょっと律!!」
律「えっとなになに……」
「『オメメサガール』をご使用になると、ツリ目をタレ目にすることができます。
使い方は簡単。寝る前に目のクマが出来るあたりに
この塗り薬『オメメサガール』を塗るだけ。
塗った次の日にはタレ目になっています。
なぜタレ目に出来るかというとまず本来ツリ目は重力に逆らっています。
これは自然の摂理に逆らった反逆者です。
しかし『オメメサガール』に含まれる成分には重力をより援助する働きを持ちます。
それによって重力に逆らえなくなり、タレ目になるという寸法です。
現在、注文を受付中ですが人気商品なので受け付けはお早めにお願いします」
律「……だって」
澪「説得力あるな」
律「どこがだよ!!」
律「胡散臭くてしょうがないんですが」
紬「そういえば値段はいくらなの?」
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 22:57:21.90 ID:n19eQK9j0
澪「そういえばそうだな」
商品説明の続きを読んでみる
澪「!!!」
紬「どうしたの?」
澪「お、おひとつ、きゅ、9万8000円だって……」
律「高っ!!」
梓「ほぼ10万じゃないですか」
澪「どうしよう、欲しいけどこんなに高いと買えないよ」
律「ぼったくりじゃないのか?」
唯「でもでも、ビフォー、アフターの写真はちゃんと効果出てたよ」
律(写真加工とかでなんとかなりそうだけどな)
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 22:59:07.90 ID:n19eQK9j0
澪「うぅ……」
紬「澪ちゃん……」
律「あきらめなよ」
澪「……」シュン
落ち込む澪のツリ上がった目には涙がたまり始めた
律「か、帰りに喫茶店でも寄って気分転換しようぜ?」
梓「そういえばよく行く喫茶店、秋の限定メニュー出てるかも」
唯「わたし、柿のパフェがいい!!」
梓「そんなのありますかね」
紬「それじゃ、行きましょう」
律「ほら、澪も」
澪「う、うん」
紬(そういえば、練習してないけど……)
澪の方を見る紬
紬(今日はいいよね)
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:01:48.64 ID:n19eQK9j0
~~~~~~~~~~~~
店員「ご注文はお決まりですか?」
唯「柿のパフェひとつ!!」
梓「モンブランお願いします」
律「リンゴのタルトを」
澪「それじゃあ、チーズケーキで」
紬「私はミートソーススパゲッティをください」
店員「かしこまりました」
唯「あったね、柿パフェ」
梓「意外と守備範囲が広いんですね」
律「まるで梓みたいだな」
梓「どういうことです?」
律「いや、べつに~」
梓「はぐらかさないでください」
紬「あらあら」
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:04:42.02 ID:n19eQK9j0
ワイワイガヤガヤ――
泥棒1「ったくなんだよ、向こうの席。ガキどもがうるさくてしょーがねーな」
泥棒2「全くで」
泥棒2「焼きでも入れてきましょうか?」
泥棒1「よせ、よせ。あんな青臭いの、焼いても食えねぇよ」
泥棒1「それよりも、だ」
泥棒1「今回の報酬を折半しようぜ」
泥棒2「しかしさすが兄貴ですね。コンビニやスーパーではなく神社の賽銭を狙うとは」
泥棒1「まあな。コンビニやスーパーで脅して金を得れば、必ず顔が見られる」
泥棒1「おまけに監視カメラと防犯カラーボールなどの対策付きだ」
泥棒1「それだと高確率で足がついてしまう」
泥棒1「だが、神社の賽銭箱には監視カメラもなければ深夜だから人もいない」
泥棒1「まさにこれを盗まずして何盗むという感じよ」
足を組み、優雅にコーヒーを啜る
39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:06:25.56 ID:n19eQK9j0
泥棒2「しかし、なんかバチ当たりな気が……」
泥棒1「あのなぁ、これはバチあたりどころか感謝してほしいくらいなんだぜ」
泥棒2「?」
泥棒1「店などで金を得れば、そこの主人や店長が困るだろ?」
泥棒2「はい」
泥棒1「だが、賽銭というのは神様にあげた金だ」
泥棒1「神様は金を使うか?」
泥棒2「いや、聞いたことねぇ」
42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:13:57.41 ID:n19eQK9j0
泥棒1「だろ? 神様は金なんかなくても困らないんだよ」
泥棒1「そういった意味では今回のこれは神様にしか迷惑をかけてねぇ」
泥棒1「しかし、神様は金を使わない。だったら必要としている俺たちが代わりに使っても文句はねえだろ?」
泥棒2「た、確かに」
泥棒1「少なくても人には迷惑をかけてねぇんだから問題ねぇ」
泥棒1「さぁ、早く折半しようぜ。両替するのも一苦労だったしよ」
泥棒2「そうっすね」
そういって泥棒達が手に持っている茶色い封筒を開けようとした時――
カランカラン――
店員「いらっしゃいませー」
警察「こんにちは。仕事中悪いのだが、聞き込み捜査に協力してほしい」
43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:16:19.60 ID:n19eQK9j0
泥棒1「げっ、警察!?」
泥棒2「ど、どうします兄貴!?」
警察「近くの銀行で男の二人組が大量の小銭を両替に来たという連絡が入ってな」
警察「最近起こった賽銭泥棒と関連があると見ているんだが……」
店員「はぁ……」
泥棒1「気付かれないうちに逃げるぞ」
泥棒2「えっ、会計はどうするんです?」
泥棒1「馬鹿野郎、それどころじゃねぇよ」
泥棒1「姿勢を低くして、こっそり店からでるぞ」
泥棒2「わ、わかりやした」
44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:18:49.65 ID:n19eQK9j0
店員「あ、あれ」
警察「どうしました?」
店員「あそこのテーブルにいた二人組のお客様がいなくなっている」
警察「何!? おそらくそいつだ!!」
警察「二人組の特徴を教えてくれ、今から追う」
店員「は、はい」
外――
泥棒1「はぁ、はぁ、ここまで逃げれば大丈夫だろ」
泥棒2「そ、そうっすね」
泥棒1「折半はどっか違うところで仕切り直しだな」
45: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:21:23.62 ID:n19eQK9j0
泥棒2「あっーー!!!」
泥棒1「ど、どうしたでかい声出しやがって!?」
泥棒2「忘れてきた……」
泥棒1「おい、まさか……」
泥棒2「今回の全報酬が入った茶封筒を喫茶店に……」
泥棒1「ば、ばか、馬鹿野郎おぉぉぉぉおぉ!!!!」
泥棒1「冗談は顔だけにしろよっ!! 干し柿みたいな顔しやがって!!!」
泥棒2「顔は関係ないでしょーが!! あんただって顔面エラーじゃないかよ!!!」
遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる
泥棒1「この音…… やべぇ、近くまで来てる!! 逃げんぞ!!」
泥棒2「待ってくれぇ、もう走れない……」
泥棒1「走れよ、足には自信あるんだろ?」
泥棒2「あぁ、男の割には美脚だとは思わないか?」
泥棒1「……」
泥棒2「あっ、ちょっ、ちょっと、待って、待って下せぇ!!!」
46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:24:29.20 ID:n19eQK9j0
喫茶店に戻り――
梓「さっきの警察は何だったんでしょうね?」
唯「さぁ?」
律「きっとパトロールかなんかだろ」
紬「もうお外真っ暗ね」
唯「最近はすぐに暗くなるからねー」
律「そろそろ帰るかぁ」
5人が店を出ようと会計をする
47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:25:32.69 ID:n19eQK9j0
澪(あれ? あの席誰もいないのに茶封筒がある……)
澪(忘れものかな)
封筒を拾い、中を確かめる
澪(えっ!?)
律「おい澪、何やってるんだよ。置いてくぞ」
澪「ちょ、ちょっと待って」
会計を済まし、一人遅れて店を出る
48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:27:34.95 ID:n19eQK9j0
唯「澪ちゃん、遅いよどうしたの?」
澪「いや、忘れ物を拾ってさ」
梓「何ですか? その茶封筒?」
澪「あの喫茶店のテーブルに置いてあったんだ」
紬「中には何が入ってるの?」
澪「お、お金」
律「マジかよ!? いくらだ?」
澪「……」チラッ
律「……?」
澪「9000円だった」
梓「微妙な額ですね」
49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:30:01.56 ID:n19eQK9j0
律「よし、割る5はいくらだ?」
紬「りっちゃん」
律「冗談だって」
唯「やっぱりお店の人か交番に届けるのがいいんじゃないかな?」
律「でも、今日は遅いし、明日近くの交番に届ければいいんじゃないか?」
律「金額もそこまで大きくないし」
梓「そうですね」
律「じゃあ、澪明日まで保管よろしくな。ついでに朝交番に届けておいてくれ」
澪「えっ、私が全部管理するのか?」
律「あたりまえだろー 拾った張本人なんだから」
澪「確かに、そうだけどさ」
梓「澪先輩なら、どこぞの先輩より安心ですね」
律「それは誰の事かな? あ~ずさちゃぁん!?」
梓「律先輩とは一言も言ってませんよ」
紬「うふふ、二人とも喧嘩はダメよ」
50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:33:10.01 ID:n19eQK9j0
こうして皆それぞれ帰宅していった
その日の深夜
鈴虫などの虫たちも眠る真夜中
聞こえる音はカチカチと時計の針が刻む音だけ
その音と同時に心臓が高鳴っている女の子が一人……
澪「眠れない」ドキドキ
澪「気になるんだ……」
51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:34:52.89 ID:n19eQK9j0
彼女の頭にはある商品が常によぎる
澪「やっぱり『オメメサガール』が欲しい……」
澪「けどあんな高価なもの買えない。買えないよ」
布団を被り、邪念を払おうとする澪
しかし、本当は買えないわけではない
澪「……」
52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:36:33.07 ID:n19eQK9j0
ベットから這い上がり
テーブルの上にある喫茶店で拾った茶封筒を開ける
澪「1、2、3……」
改めて封筒のお金を数える
なんとその金額9万8000円にのぼる
澪「やっぱり9万8000円ちょうどだ」
澪「『オメメサガール』と同じ金額……」
澪「あの時は9000円なんて言っていたけど」
澪「本当は買える」
53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:39:39.33 ID:n19eQK9j0
澪「あの時、本当の値段を言ってしまったら
なぜか自分の手元に封筒が来ない気がしてつい嘘をついてしまった……」
澪「私って悪い子だよね」
澪「でもこのお金を使えば、買えるんだよな……」
封筒を見つめる澪
澪「……やっぱりダメだ。人のお金を勝手に使うなんて犯罪だよ」
澪「あぁ、もう色々考えたら余計寝むれなくなってきた。テレビでも見て気を間際らそう」
テレビの電源を入れる
そこには深夜アニメが流れており
ツリ目の主人公と中年のおじさんの会話が描かれていた
澪「こんな時間にアニメなんてやっているんだ」
物珍しさからまじまじと見つめる
54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:41:30.14 ID:n19eQK9j0
「おっちゃん!! どうしたんだよこの大金は!?」
「金庫から盗んできた」
「おい、それって犯罪じゃ……」
「目を覚ませ!! そんな綺麗事をいっている場合か!?」
「えっ!?」
「いいか!? 俺たちは勝たなきゃいけないんだ!! そんな時に金が足りないなんて
事になってみろ? 軍資金は多いことに越したことはないだろうが!!」
「……確かにおっちゃんの言う通りだ。金があるんだったらそりゃ使うよな」
「だろ!? いいか経緯はどうであれ、今この現実に俺たちは大金を持っている
これは運命なんだよ」
「運命?」
「そうさ。これは使ってくれという神が示してくれた暗示さ」
「なるほど」
「さぁ、勝負の時だ。行くぞ」
「あぁ」
55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:43:19.42 ID:n19eQK9j0
澪「……」
澪「運命、なのかな……」
澪「今この時にお金が足りているっていうのは」
澪「神様が使えっていう暗示」
澪「神様が使えって言うなら、従わないとね……」
彼女の感情を揺さぶるアニメーション
そして揺さぶられた先は携帯を握り――
澪「もしもし、注文をしたいんですけど」
「お電話ありがとうございます。ではお名前と住所、振込先の方の確認を……」
56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:44:59.27 ID:n19eQK9j0
~~~~~~~~~~
紬「お茶入ったわよ~」
律「待ってました!!」
唯「ティータイム、ティータイム♪」
梓「ちょっと先輩方、いつものごとく練習はしないんですか?」
律「お茶の後にするから心配するなって」
梓「約束ですよ」
今日も皆、定位置に座り
お菓子とお茶を囲む
唯「はぁ~ やっぱりムギちゃんのお茶は最高だね」
紬「ありがと。おかわりもあるわよ」
澪「……」
律「どうした澪? 元気ないな」
澪「えっ、いや、そんなことはないぞ」
律「そうかぁ?」
57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:46:20.76 ID:n19eQK9j0
梓「そういえば」
澪「……ビクッ」
梓「今朝の新聞見ました?」
唯「なんかあったの? あずにゃん」
梓「なんでも学校の近くの桜が丘神社の賽銭泥棒の犯人が捕まったそうですよ」
唯「へー、そんな事件あったんだ」
紬「そういえばニュースにもなってたわね」
梓「犯人は男の二人組で約9万8000円分のお賽銭を盗んだそうです」
澪「……!!」
58: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:47:46.37 ID:n19eQK9j0
梓「だけど面白いことに彼らはお金を茶封筒に入れておいて
それを喫茶店に置いてきたと供述してるらしいです」
律「苦しい言い訳だな」
梓「そうですよね」
梓「実際に警察が置いてきた喫茶店を調べても、茶封筒は出てきてないらしいんですよ」
梓「おそらく、本当の隠し場所をはぐらかしているという狙いだと思います」
唯「なるほど」
紬「澪ちゃん? やけに大人しいけど大丈夫?」
澪「まっ、まあな。だ、大丈夫だ」
59: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:49:28.51 ID:n19eQK9j0
澪(……間違いない。あのお金はその二人が盗んできたお金だ)
澪(もしかして私、とんでもないことしちゃってる!?)
唯「そういえば澪ちゃん、昨日茶封筒拾ったよね?」
澪「……!! そう、そうだったな」
唯「もしかしたらその泥棒さんの封筒だったりして」
澪(や、やばいっ……)
梓「それはないですよ唯先輩。澪先輩が拾った茶封筒は9000円しかなかったんですから」
唯「そっかー」
紬「そういえば澪ちゃん、あの封筒交番に届けてくれた?」
60: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:51:16.85 ID:n19eQK9j0
澪「えっ!?」
澪「……」チラッ
律「……!」
澪「も、もちろんだよ。朝一で届けたよ!!」
澪「いやー、交番の人が面白い人でね。
『俺だったらこっそり使っちゃうな』なんて冗談を言っててさっ!!」
律「それは冗談のわかるおまわりだな」
澪「だろ!? めずらしいよなぁ~」
そう言って紅茶を口に運ぶ澪
澪「お、美味しい紅茶だな。ムギおかわり欲しいな」
紬「えっ、ええ、いいわよ。今持ってくるわ」
61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:52:58.79 ID:n19eQK9j0
~~~~~~~~~~~
お茶会と練習が終わり、家に帰る澪
澪(まさか盗まれたお金だったなんて……)
澪(あのお金はもう振り込んでしまったし、取り返しがつかないよう)
澪(家に着いたら、警察が来ているなんてことないね……)
ガチャ――
澪「ただいま」
澪母「おかえり、来ているわよ」
澪「えっ!?」ドキッ
澪母「荷物。はいこれ」
澪「あっ、ありがとう」
澪「わ、私部屋に戻るね」
澪母「もうすぐ、夕飯だから少ししたら降りてくるのよ」
澪「わかった」
62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:54:25.15 ID:n19eQK9j0
階段を急いでかけ上り、自分の部屋に戻る
澪「びっくりしたぁ、警察が来たのかと思ったよ」
澪「でももう届いたのか。早いな」
封を開けるとそこにはチューブ型の塗り薬が入っていた。
澪「写真でも見たけど本当に軟膏みたいだな」
澪「でもこの『オメメサガール』でタレ目になれるんだよね」
澪「さっそく、寝る前に使ってみようかな……」
63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:55:46.70 ID:n19eQK9j0
夕飯も終わり、お風呂にも入り、明日の宿題も終えた頃
澪「さて、そろそろ寝ようかな」
オメメサガールを手に持ち、蓋を開けようとする
澪「でも、盗んだお金。本当に使っていいのかな……」
澪「使ったら最後…… もう戻れない」
澪「でも、やっぱりタレ目になりたいし……」
64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:57:24.69 ID:n19eQK9j0
薬を持ちながら、部屋の中をうろうろする
澪「いや、決めたんだ!! これは運命なんだ!!」
澪「使う!! もう怖がれないみんなから愛されるタレ目になるんだ!!」
そう言ってチューブを押し出す
澪「初めてだから、どれくらいつければいいのかよくわからないな」
澪「これくらいかな?」
少量を取り出し、鏡を見ながら目のクマが出来る部分に擦り込む
澪「これで明日になれば」
澪「よし、早く寝よう」
澪(……どきどきして眠れないな)
澪(明日が楽しみだ)
65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/04(木) 23:59:14.71 ID:n19eQK9j0
次の日!!!
朝、顔も洗わず真っ先に鏡に飛びつく
澪「や、やった!! 下がっている!! 下がっているよ!!」
澪「早く学校に行って皆に新しい私を早く見せたい!!」
学校!!!
澪「ムギ、おはよう」
紬「おはよう澪ちゃん。ってえぇ!?」
紬「澪ちゃんの目が下がっている……」
澪「そうなんだよ」
66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:02:18.87 ID:uP18oMbL0
律「二人とも、おーす!!」
紬「りっちゃんおはよう」
澪「おはよう」
律「!?」
律「どうしたんだよ? その目」
澪「良くなっただろ?」
律「ツリ目じゃない……」
紬「でもどうやったの?」
澪「これさ」
67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:06:26.38 ID:uP18oMbL0
オメメサガールを二人に見せる
律「あっ」
紬「これってお金が足りなくて買えなかったんじゃないの?」
澪「いやー、それがさ」チラッ
律「……」
澪「昨日、おばあちゃんが遊びに来ててさ、お小遣いをたくさんくれたんだ」
澪「それと、貯金を崩したら何とか買えたってわけ」
紬「へぇ~ よかったわね」
澪「いやー、まさに神様が私にこれを授けてくれたかのようだよ」
唯「何なに? 何の話?」ヒョコ
澪「唯、おはよう。実はね……」
68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:10:36.99 ID:uP18oMbL0
~~~~~~~~~
梓「それはラッキーでしたね」
唯「本当だよね~」
紬「新しい澪ちゃんも素敵ね」
澪「ありがとう、ムギ」
澪「これでもう怖がられずにすむよ」
唯「でもさ、まだタレ目とは言えなくない?」
梓「確かにそうですね。ツリ目ではありませんが、タレ目ともいいづらいですね」
梓「いうなれば普通の目って所でしょうか」
澪「確かにそうかもな」
澪「下がったことに嬉しすぎて麻痺していたけど」
澪「もう少し下げてもいいかも」
69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:12:30.83 ID:uP18oMbL0
律「ツリ目じゃなければもう良いんじゃないのか?」
澪「いや、私の目標は愛されるタレ目だから」
澪「今晩、もう少し『オメメサガール』を塗ってみるよ」
梓「明日会うのが楽しみですね」
律「じゃあ、練習するか」
梓「律先輩からその言葉が出るとは」
律「いやー、本当はずっとお茶がいいけど学祭も近いからさ」
澪「そうだな。学祭で恥はかきたくないよな」
唯「澪ちゃんが言うと説得力あるね」
律「澪と唯はボーカルだからな。より頑張ってもらわないと」
唯「はーい」
澪「そうだな」
70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:14:38.41 ID:uP18oMbL0
夜、今宵も虫たちの演奏を聴きながら彼女は鏡に向かう
澪「よし、これくらいでいいかな」
澪「ふふ、明日が楽しみだ!!」
次の日!!!!
律「ついに」
唯「念願の」
紬「タレ目ね。澪ちゃん」
澪「……///」
唯「タレ目の澪ちゃんもかわいいね」
澪「あ、ありがとう」
紬「より優しそうな顔になったわね」
澪「そうかな」
律「よかったな、澪」
71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:16:11.77 ID:uP18oMbL0
澪「うん、もう言うことなし。幸せだよ」
さわ子「みんなおはよう。席について出席をとるわよ」
さわ子「秋山澪さん」
澪「はい」
さわ子「秋山さん。またセロテープなんか貼って……」
澪「ないです」
さわ子「あら、ホントね」
さわ子「どんな手品を使ったのかしら?」
澪「えへへ」
さわ子「まぁ、いいわ。良く似合っていて可愛いしね」
さわ子「じゃあ次……」
72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:18:58.78 ID:uP18oMbL0
~~~~~~~~~~
唯「澪ちゃん大人気だったね」
澪「なんか恥ずかしいな」
紬「クラスのみんなも可愛いって持ちきりだったしね」
梓「そういえばファンクラブの人たちも大ニュースで大騒ぎしてましたよ」
律「また、会員が増えるかもな」
澪「やめてくれよ」
律「本心じゃないくせに。顔がにやけてるよ」
澪「もう、律はからかいすぎだ!! さっさと練習するぞ!!」
律「はいはい」
律「どうせなら性格も突っ張った感じから下げてくれればいいのに」
ガンッ!!
澪「なんか言ったか?」
律「しっかりきこえてるじゃん」ヒリヒリ
73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:20:54.13 ID:uP18oMbL0
澪の家
澪「やっぱりタレ目にしてよかったよ」
澪「みんな可愛いって言ってくれたし」
澪「ママも驚いていたけど、今日の事を話したら良かったねって言ってくれたし」
澪「ホントに買ってよかった~」
鏡の前でニヤニヤする澪
74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:23:03.97 ID:uP18oMbL0
澪「そうだ!! もっとタレ目にすればさらに愛される人になれるかも」
澪「そうすれば怖がられるどころか何もしなくても人が寄ってきてくれるような」
澪「そんな温かみのある人間に……!!」
澪「まだいっぱい残ってるし、もう少し使ってみよ」
クリームを取り出し、鼻歌を歌いながら擦り込ませていく
澪「これでよしっと」
澪「きっとみんなびっくりするよ」
澪「そうだまた焼き芋屋さんに皆で行きたいな」
澪「私、焼き芋食べそこなったし」
澪「次は絶対に怖がられることなんてないからな」
澪「みんなに明日誘ってみようと」
75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:24:24.52 ID:uP18oMbL0
次の日!!!!!
澪「さて、どんな風になったかな?」
鏡をのぞく澪
「きゃああぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!」
澪母「どうしたの? 澪ちゃん!?」
澪母「ちょっと澪ちゃん、澪!? 開けなさい!!」ドンドン
部屋のドアを壊れるかのような勢いでノックする
澪「ダメ!! 来ないで!!」
澪母「何があったの? 大丈夫!?」
澪「今日は私学校休む!!」
澪母「えっ!? いったい何が起こったの? 澪ちゃん!?」
澪「いいから!! 風邪で休むってことにしておいて!!」
76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:28:53.31 ID:uP18oMbL0
~~~~~~~~~~~~
さわ子「今日、秋山さんは風邪でお休みです」
ざわつく教室
唯(澪ちゃん?)
紬(どうしたのかしら?)
律(澪……)
時間は流れ、放課後部室
梓「どうです? 律先輩」
律「だめだ。でねー」
あきらめて携帯をしまう律
唯「朝から連絡取ろうとしても全然出てくれない……」
紬「嫌われたのかしら」
律「まさか」
梓「昨日はあんなに念願のタレ目になれて幸せそうだったのに……」
唯「何かあったのかな?」
律「そんなことないと思うけどな。さわちゃんも風邪で休みって言ってたし」
律「きっと明日になったらひょっこり出てくるさ」
紬「そうだといいけど……」
77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:30:47.45 ID:uP18oMbL0
それから3日後
唯「……」
梓「……来ませんね」
紬「……澪ちゃん」
律「あれから、毎日連絡してるのにな」
唯「インフルエンザかな……」
梓「でも安否くらい教えてくれてもいいはずですよね」
律「う~ん」
紬「何かきっと澪ちゃんの身に起こっているのよ!!」
律「かもな」
唯「だったら!!」
律「そうだな。これから皆で澪ん家行ってみるか」
律「澪がいないと練習にならないしな」
梓「学祭ももう、すぐそこですし早く戻ってこないと……」
唯「そうと決まったなら、急いで支度しよう」
78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:32:12.02 ID:uP18oMbL0
~~~~~~~~~~~~
唯「ここが澪ちゃんの家かぁ」
律「入るぞ」
ピンポーン
澪母「はい、どちら様?」
律「こんにちは」
澪母「あら、りっちゃん!! それと……」
唯「愉快な仲間たちだよ」
梓「じゃなくて部員達です」
律「澪、元気ですか?」
79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:34:16.08 ID:uP18oMbL0
澪母「心配して来てくれたの? ありがとう」
澪母「あのね私も澪に4日前から会ってないの」
律「えっ!?」
紬「どういうことですか?」
澪母「あの子、ずっと部屋にこもりっぱなしで私も部屋に入れてくれないの」
律「そんな……」
紬「そしたら風邪ではないということですか?」
澪母「おそらくね」
唯「ご、ご飯はどうするんですか!?」
澪母「ご飯の時間になったら私が部屋の前に持っていくの」
澪母「そしていなくなったら空の容器を部屋の前に置いておいて交換するのよ」
80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:35:53.67 ID:uP18oMbL0
澪母「トイレやお風呂も私の目を盗んでしてるみたい」
澪母「とにかく人に会いたくないような素振りなの」
梓「ひどい話ですね」
律「おばさん。私たち、澪に会ってきていいですか?」
澪母「いいわ。多分嫌がると思うけどむしろ会ってあげて頂戴」
澪母「もう私の力ではどうにも……」
律「おばさん……」
澪の母からは涙があふれる――
81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:37:50.82 ID:uP18oMbL0
律「大丈夫です。私たちが何とかしますから」
唯「それじゃあ、おじゃまします」
4人は家の中に入り、澪の部屋の前に立った
コンコン――
律「澪? 大丈夫かぁ」
紬「澪ちゃん。みんな心配して様子を見に来たの」
梓「こんばんは、澪先輩。中野梓です」
唯「みおちゃん~ 遊びに来たよ」
82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:39:23.48 ID:uP18oMbL0
ドア越しにか弱い声で声が聞こえてくる
澪「みんな、いいから帰ってくれ」
律「……」
律「なんでだよ。せめて理由を話してくれよ」
澪「いいたくない。とにかく顔を合わせたくないんだ」
唯「どうしちゃったの? 澪ちゃん。4日前はタレ目になれてあんなに喜んでいたのに……」
澪「目の話はよせ!!!」
唯「」ビクッ
83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:40:09.98 ID:uP18oMbL0
紬「この言動からすると澪ちゃんはタレ目に関して何か問題があるんじゃないかしら?」
紬が手を唇にあて、ポーズをしながら推理する
律「なるほど」
律「そうなのか? 澪」
澪「……」
律「否定しないということは多分そうだな」
律「何があったかは知らないけどせめて部屋のカギを開けてくれよ」
84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:55:09.87 ID:uP18oMbL0
澪「それは無理!!」
梓「澪先輩が学校に来てくれないと練習にならないんですよ」
澪「もう学校なんか行かないからそんなこと知らない」
唯「澪ちゃん……」
紬「今日はいったん引き上げる?」
律「いや、引き上げたところで解決にならないよ」
律「なぁ、澪何があったか話してくれよ」
澪「いや!!」
律「今、こうして外に出れないということはこの現状じゃダメってことだろ?」
85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:56:58.23 ID:uP18oMbL0
律「そのままずっと部屋にいて解決できることなのか?」
澪「……」
律「解決できるなら私たちはこれ以上干渉しない」
律「だけど何も変われないなら私たちに相談してみろよ」
律「4人もいるんだ。なんかいい案の一つや二つ……」
律「澪の力になれると思うんだ」
澪「……」
唯「そうだよ澪ちゃん」
紬「私たち澪ちゃんに元気なってもらいたいだけなの」
86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:57:49.93 ID:uP18oMbL0
澪「……みんな」
澪「……笑わない?」
律「笑う? よくわからないけど笑わないさ」
梓「もちろんです」
澪「……」
カチャ――
ドアのカギが開く音がした
87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:58:31.65 ID:uP18oMbL0
律「……ありがとう澪」
律「じゃあ入るからな」
4人はゆっくりと澪の部屋へと入る
そこには毛布に包まり、後ろ姿の澪がいた
律「だ、大丈夫か?」
律が後ろを向いている澪の顔を覗き込む
律「えっ!?」
律「ど、どうしたんだよ澪!? その顔!?」
88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 00:59:44.37 ID:uP18oMbL0
唯「何なの?」
紬「りっちゃん!?」
澪「ほら、笑った!!」
梓「澪先輩落ち着いてください。誰も笑ってなんかいませんよ」
律「と、とりあえずみんなに見せろ。なっ?」
澪を振り向かせるとそこにはもはや愛されるとは言えない変貌をとげた
澪の顔があった
89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:01:01.47 ID:uP18oMbL0
唯「み、みおちゃん……」
紬「垂れ落ちそう……」
梓「……うっ」
あのあと調子に乗ってオメメサガールを使いすぎた結果
澪の眼はタレ目というよりは目が今にも垂れ落ちてきそうな目となってしまった
もはやその姿は人前に出れるようなものではなくひどく醜い妖怪のような姿である
澪「ちょ、調子に乗り過ぎんたんだよぉ」
澪「あの後もっとタレ目になりたくてオメメサガールを使ったらこんなに下がっちゃって」
澪「うああぁぁ……」
律「もう泣くなよ。十分泣いただろ?」
90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:02:50.08 ID:uP18oMbL0
律「涙の跡がくっきりだ。おまけに声まで枯れてるし」
紬「まさかこんなになるとはね……」
唯「可愛そう……」
梓「なんか残念な美人って言葉が似合いますね」
澪「うぅ……」
律「中野おぉぉぉ!!!!」
梓「ご、ごめんなさい。じょ、冗談です!!」
梓「は、早く皆で治す方法を考えましょう!!」
唯「でもどうやるの? あずにゃん」
梓「えーと… そうだ澪先輩『オメメサガール』の説明書に」
梓「治し方は書かれていませんでしたか?」
91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:04:02.25 ID:uP18oMbL0
澪「見たけど何も書かれていなかった」
梓「そうですか……」
紬「前の逆みたいにセロハンテープで目をつり上げてみるのは?」
律「そんなんじゃ、無理だろ」
澪「一応やったけどダメだった……」
律「やったのかよ」
唯「タレ目の専門家なんて人がいればいいのにね」
92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:04:56.15 ID:uP18oMbL0
律「!!」
律「そ、それだよ!! 唯」
唯「?」
そう言っておもむろに携帯を取り出す
梓「なにをするんですか?」
律「電話だ」
梓「誰に?」
律「『オメメサガール』の専門家。つまり製造した会社だよ」
93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:06:00.85 ID:uP18oMbL0
律「澪、その商品のどこかにお問い合わせ番号ないか?」
紬「なるほど、製造した会社なら対処法が分かるかも」
澪「あった。この番号だよ」
律「よし、これでよしっと」
プルルル――
「お電話ありがとうございます。こちら『オメメサガール』のサービスコールです」
律「あ、あのこの商品を買った者なんですけど」
律「この商品って一度タレ目にしたら戻す方法はないんですか?」
94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:07:54.52 ID:uP18oMbL0
「そうですね。ありません」
律「そんな、なんで治す方法がないんですか!!」
「飲むと風邪が治る薬はあっても、飲むと風邪をひく薬はありませんよね?」
「それと同じことです」
律「なるほど」
梓「律先輩何を納得しているんですか?」
律「じゃあ、ツリ目にする薬とかはないんですか?」
「はい。現段階ではそのような商品開発は行っていません」
律「うぅ、なんとか手はありませんか? タレ目過ぎて困っているんです」
「申し訳ありませんが私たちに出来ることはありません」
律「あっ、そうすっか。わかりました。失礼します」
95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:08:41.72 ID:uP18oMbL0
ピッ――
紬「どう、りっちゃん? なにかいい解決法はわかった?」
律「これほど頼りにならないサービスコールは初めてだ」
梓「良い手がなかったんですか……」
澪「どうしよう… 私……」
唯「大丈夫皆で考えればいい案出るよ」
96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:09:53.44 ID:uP18oMbL0
だが、それから2時間が経過――
梓「中々良い策が思いつきませんね」
唯「やっぱりそのままの澪ちゃんで生きていくしか……」
澪「その案だけは嫌だぁ~」
梓「確かにその顔で学祭には厳しいですね」
澪「!! そういえば学祭あるんだった!! ど、どうしよう……」
律「……」
『オメメサガール』の説明書を寝そべりながら眺める律をよそに
紬が口を開く
97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:11:18.11 ID:uP18oMbL0
紬「だいぶ遅くなっちゃったわね」
澪「ごめん… もう帰っていいよ。だけど……!!」
唯「わかってるって。誰にも言わないよ」
梓「じゃ、とりあえず今日はここまでにしましょうか」
紬「明日また皆で解決案を練り直しましょう」
梓「律先輩行きますよ」
律「あ、あぁ、そうだな」
唯「じゃあね澪ちゃん」
98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:13:07.46 ID:uP18oMbL0
4人が澪の家を後にする
梓「まさか、こんなことになっているとは」
唯「澪ちゃん可愛そう」
紬「私もあの立場だったら学校には行けないわ」
律「……」
唯「明日も澪ちゃんのために頑張ろうね。りっちゃん」
律「へっ? あぁ、そうだな」
梓「律先輩?」
律「悪い。私、澪の家に忘れ物しちゃった。みんな先帰っていてくれ」
律「じゃあ」
梓「ちょっと律先輩!?」
99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:14:39.54 ID:uP18oMbL0
唯「行っちゃった」
紬「……」
唯「どうせすぐ戻るだろうからりっちゃん帰ってくるの待ってようか」
梓「そうですね。夜道一人は危ないと思うし」
紬「いえ、みんな帰りましょう」
唯「え~ せっかくだから待とうよ」
紬「ダメ、帰るの」
梓「ムギ先輩?」
紬「帰った方がきっといいわ。そう感じるの」
唯・梓「?」
唯「まぁ、そういうなら……」
梓「帰りましょうか」
紬(お願いね、りっちゃん……)
100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:17:52.09 ID:uP18oMbL0
~~~~~~~~~~~
コンコン――
澪「ママ、入ってこないでって言ったでしょ!!」
律「私だよ、澪」
澪「律?」
ドアを開け、律を部屋に通す
澪「どうしたんだよ? 帰ったんじゃないのか?」
律「いや、ちょっと忘れ物をね」
101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:21:09.05 ID:uP18oMbL0
澪「そんなものなかったと思うけど……」
律「澪の目を元に戻し忘れてるから来たのさ」
澪「それは今のところ無理じゃないか」
律「いや、私に一つだけ案がある」
律「説明書を見る限り、私の案は多分成功する…と思う」
澪「本当か!? どんな案なんだ!?」
律「まぁ待て、オメメサガールはあとどれくらい残ってる?」
澪「あと半分くらいかな」
律「セーフだな。全部使えば何とか」
102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:22:03.76 ID:uP18oMbL0
澪「なんだよ、もったいぶらないでよ」
律「まぁ、慌てるな」
そう言いながらベットに腰掛ける
カチッ、カチッと時計の音だけが聞こえる
澪「? どうした改まって。早く教え……」
律「償うか?」
澪「えっ!?」
律「今までしてきた罪。償うなら教えてあげるよ」
澪「罪? 何のこと?」
103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:23:56.43 ID:uP18oMbL0
律「……私たちに嘘ついてきただろ?」
澪「!!」
一瞬体中の血液が失ったような感覚に陥る
澪「ど、どういうことだよ」
律「このオメメサガール、喫茶店の茶封筒のお金で買っただろ?」
澪「!!」ビクッ
律「それなのに金額の捏造や交番に届けた。おばあちゃんから小遣い貰ったなどと」
律「嘘をつき通してきたな?」
澪「な、なんでわかった?」
手足が震える、動揺を隠しきれない澪
104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:25:53.26 ID:uP18oMbL0
律「気づいてないかもしれないけど澪はみんなの前で嘘をつく時」
律「必ず一度私の顔を覗ってから嘘をつく癖があるんだよ」
澪「そんな……」
律「やっぱ無意識だったか」
律「友達だから黙ってたけどこの状況になって反省もしないで」
律「また元に戻り、のうのうと元の生活に戻るのは道徳的に良くないと思うからな」
律「だから反省し、償うというなら教えてあげるよ」
澪「うっ……」ポロポロ
律「みお?」
105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:32:27.22 ID:uP18oMbL0
澪「うぅ、うわぁぁぁぁん」
泣きながら律に抱きつく
澪「ご、ごめんなさぁい。ホントは怖かったんだ。嘘をついてまで他人のお金を使うのが」
澪「でも、でも欲に負けちゃってぇぇ」
澪「もう怖がられるのは嫌だったんだよぉ」
律「澪……」
澪「反省する。反省するから助けてぇ」ポロポロ
大粒の涙を流しながら、必死に律にしがみつく
律「いたた… 苦しいって」
律「わかったよ。100%元に戻るかはわからないけど教えてやるよ」
澪「うっ、うっ、あ、ありがとう」
律「じゃあ、教えるぞ。おそらく……」
106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:34:35.62 ID:uP18oMbL0
澪に策を教えてしばらく時間が立ち、夜も更け、さらに少しずつ空も明るくなってきた頃
澪「く、苦しいよ。律~」
律「ふはぁぁ、頑張れ、もうあと3時間くらいで学校だ。それまでの辛抱」
大きなあくびをしながら眠たそうな声で励ましをいれる律
澪「死ぬぅ、もう嫌~」
律「これまでの罪の重さだと思って我慢だ」
澪「うぅ~」
107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:35:52.46 ID:uP18oMbL0
朝、学校
唯「み、澪ちゃん!?」
紬「それにりっちゃんも!?」
律「こういう真っ黒なクマが出来た澪も新鮮だよな」
澪「律こそ」
紬「二人とも寝てないの?」
唯「でも、澪ちゃんの目が元に戻っている!! いったい何があったの?」
澪「へへっ、それはね……」
さわ子「みんな、おはよう。あら、秋山さん久しぶりね。風邪は良くなった?」
澪「はい。心配かけてすみませんでした」
108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:38:12.33 ID:uP18oMbL0
さわ子「いいのよ。それより手品はもういいの?」
澪「はい、もうこりごりです」
さわ子「ふふ、今のあなたクマだらけだけどその顔が一番素敵に感じるわ」
澪「? はぁ……」
さわ子「じゃあ、出席とるわ。皆席について」
唯「せっかく澪ちゃんから聞こうと思ったのに……」
澪「放課後まとめて話すよ」
放課後――
紬「お茶どうぞ~」
唯「じゃあ」
梓「聞きましょうか、治ったわけを」
澪「皆も知ってると思うけどあの後、律が戻ってきてね……」
109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:40:17.86 ID:uP18oMbL0
~~~~~~~~~
律「100%元に戻るかはわからないけど教えてやるよ」
澪「ありがとう」
律「じゃあ、教えるぞ。おそらく……」
律「この説明書を見るとオメメサガールには重力をより援助する成分が含まれていて」
律「それで重力に耐えられなくなってタレ目になると書いてある」
澪「そうだな」
律「ってことは重力を逆にすればタレ目がツリ目になるような働きになるということだ」
澪「た、確かにそうだけど重力を逆にするなんて無理だろ」
律「そうだな。そんなの神にしかできない」
律「けど、澪一人だけなら重力を逆に出来るだろ?」
澪「えっ? どういうこと?」
110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:41:49.23 ID:uP18oMbL0
律「逆立ちだよ。そうすれば一人逆になるだろ?」
律「つまり、目の上の部分にオメメサガールを残り半分全部塗り」
律「逆立ちして、重力を逆にすれば目は重力に伴って今度はつり上げてくれるってことだ」
澪「なるほどー それには気付かなかったな」
律「へへーん、どうだい」
澪「でもそれって……」
律「そうだな一晩中、逆立ちで過ごさなければならないということだ」
澪「そ、そんなの無理だー!! 寝れないじゃないか」
111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:43:29.84 ID:uP18oMbL0
律「文句言うなってそれしか方法はないんだから」
律「ほら、オメメサガール塗ってやるからさ」
澪「はぁ……」
それからしばらく経って
澪「律、辛いよ。頭に血が上る~」
律「我慢、我慢」
澪「もうギブ~」
律「まだ初めて一時間だろ」
澪「律っ~!!!」
112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:45:12.61 ID:uP18oMbL0
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澪「ってな感じで戻れたってわけ」
梓「なるほど律先輩の読みが当たったというわけですね」
律「どうだ、すごいだろ!?」
唯「でも戻ってよかったね」
澪「本当に良かったよ。でも眠たくて授業中寝てしまった……」
紬「梓ちゃんにも見せてあげたかったわ」
紬「澪ちゃん、りっちゃん、唯ちゃん三人そろって寝てる姿」
紬「すごくおもしろかったわ」
梓「唯先輩は関係ないのに」
唯「私にはこれが日常なのです!!」
梓「偉そうに言わないでください」
113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:46:52.68 ID:uP18oMbL0
律「でもこれで一件落着して良かったよ」
梓「そうですね」
梓「でも、どうせなら全部使わないで少し残しておけば、ちょうど良いタレ目のまま」
梓「キープできたんじゃないですか?」
澪「あっ……」
律「いいじゃないか、ツリ目でも」
律「ツリ目だからダメなんていうやつはこっちからお断りしとけ」
紬「そうよ。今のままで澪ちゃんは良いのよ」
澪「そうかな……」
律・紬・唯・梓「そう(さ、よ、だよ、です)!!」
澪「みんな… ありがとう」
114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:48:07.46 ID:uP18oMbL0
練習後――
律「みんなお疲れー」
唯「ねぇねぇ、今日はどこに行く?」
梓「そうですねー」
ガヤガヤ――
澪「なぁ、ムギお願いがあるんだけど」ひそひそ
紬「んっ? なあに?」
澪「実は……」
115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:50:11.10 ID:uP18oMbL0
数日後
紬・澪「いらっしゃいませー!!」
紬「でも、澪ちゃんがまさかアルバイトをしたいなんて」
紬「なんでまた?」
澪「お金を返… じゃなくて人見知りを治したくてさ」
紬「偉いわ澪ちゃん!! ようし先輩としていっぱい教えてあげるね!!」
澪「そ、それはどうも……」
その3ヶ月後に桜が丘神社に9万8000円が何者かの手によって戻ってきたという
不可思議がニュースになるのはもう少し先のお話……
終わり
116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/08/05(金) 01:52:30.48 ID:uP18oMbL0
以上で終わりです
一気に投下したから疲れた……
見てくれた人いたらありがとう!!
SS速報VIP:律「澪のツリ目をタレ目にする方法」