1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 17:54:59.31 ID:LVMe/GvD0

――平沢宅――

唯「まだかなー」

憂「もう少しで帰ってくるから、お姉ちゃんはお皿出してくれない?」

唯「わかったー」

憂(時計ばかり見てて危なっかしいな)

唯「まだかなー」

時計「7時だよ! 7時だよ!」

唯「!?」

ドア「ニコ」

和「ただいまー」

唯「和ちゃ~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!」

和「うわっ!」

憂「おかえりなさい。和ちゃん」

和「た、ただいま……」

憂(そうです。見ての通り、お姉ちゃんと和ちゃんは、結婚しているのです!)



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 17:58:05.16 ID:LVMe/GvD0

憂(詳しい経緯は省きますが、お姉ちゃんと和ちゃんは25歳の春に結婚。
今はまさに新婚ほやほやなのです!)

憂(もちろん。同性での結婚は認められていないので、事実婚ですが)

唯「でへへ~」

和「……まったくもう」なでなで

唯「!?」

和「どうしたの?」

唯「おかえりのチュー!」

和「憂もいるのよ?」

唯「構いません!」

憂「はい」

和「はいじゃないわよ」

唯「ちゅー!」

和「なんか、キスが軽いものになってない?」

唯「う……。そう言われると弱い」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 18:08:00.06 ID:LVMe/GvD0

和「ま、それでもいいわ。唯とキスするの、好きだし」

唯「ふぇ……」

唯「うう……あう……」

和「唯、顔真っ赤じゃない。ホント、お子様なんだから」

唯「違うもん」

和「お子様よ」

唯「私だって、大人のオンナだもん」

和「料理もできないのに?」

唯「うぅ~」

憂(私が入るのは無粋だよね。この二人のやりとり、可愛いなぁ)

和「憂、お風呂沸いてる?」

憂「は、はい! 沸いてます!」

和「敬語使わなくってもいいのよ? 義理とはいえ、お姉さんなんだから。
っていうか、憂って私に敬語使ってたっけ?」

憂「スーツ着てる和ちゃん、かっこいいから……」

唯「あ! 憂、だめだよ。和ちゃんは私の旦那さんなんだから!」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 18:40:24.29 ID:LVMe/GvD0

――浴室――

ドア「ニコ」

和「ふぅ……。今日も疲れた……」

和(私なんかで、唯は楽しいのかしら)

和(冗談を言うのも苦手で、真面目が服着て歩いているような私と一緒に
なって、唯は本当に幸せなの?)

和「考えても仕方ない。それは分かっているけど」

和「でも、それでも、私も唯のことが――」

ドア「ニコ」

唯「お背中お流しします!」

和「あら。それじゃあお願いしようかしら」

和(聞こえてなかったわよね?)

唯(和ちゃんの疲れは私がとってあげなきゃ! お嫁さんとして!)



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 18:44:28.56 ID:LVMe/GvD0

唯「きもちいーい?」ゴシゴシ

和「ん。気持ちいいわよ。もうちょっと強くしていいわ」

唯「わかりましたー」ゴシッゴシッ

和「うんうん。ちょうどいいわ」

唯「……和ちゃんの背中、おっきいね」

和「そんなことないわよ。それはお義父さんにでも言ってあげなさい」

唯「ぶー。一度言ってみたかったのに」

和「……ねえ、唯」

唯「?」

和「私なんかと一緒で、幸せ?」

唯「え?」

和「こんな女と一緒にいても、全然面白くないでしょ?」

唯「そんなことないよ。和ちゃんとこうして一緒にいるの。私はすごく好きだ
よ!」

和「……唯」

唯「……うん。いいよ。シャツ脱いじゃうから、ちょっと待ってね」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 18:50:11.49 ID:LVMe/GvD0

和「唯……。すごい、綺麗……」

唯「ありがと。でもね、和ちゃんの身体も、すごいすごい綺麗だよ」

和「そんなこと――」

唯「あるよ。だって、私の旦那さんだもん」

和「――!」

唯「和ちゃんって、こういうことするときは甘えん坊さんで、お子様だよね。私
のこと言えないじゃん」

和「ん……! 憂に、聞こえ、ちゃうからぁ!」

唯「聞かせちゃえばいいよ。和ちゃんの声、憂も大好きだしね」

和「――あ」

省                                略

シャワー「ザー」

唯「和ちゃん、汗びっしょりー」

和「うう……」

唯「そんな顔しないでよ。また、したくなっちゃうでしょ?」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 19:01:47.50 ID:LVMe/GvD0

――居間――

憂「あ、お姉ちゃん。和ちゃん」

和「少し長風呂しちゃったわね」

唯「のぼせちった~」

憂「フフ。冷凍庫にアイスあるけど、どうする? ご飯のあとにする?」

唯「今!」

和「あと!」

唯「今でしょ!」

和「ご飯食べられなくなるでしょ?」

憂「あははー」

唯「ムム」

和「ムムム」

憂(こうして見ると、似たもの夫婦なのかも)



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 19:07:53.38 ID:LVMe/GvD0

唯「結局、ご飯のあとのデザートということにしました!」

和「誰に言ってるのよ」

唯「わかんない! いただきます!」

憂「はーい」

和「……やっぱり、憂のご飯は美味しいわね」

憂「和ちゃんが教えてくれたお陰だよっ」

和「そりゃあそうだけど。こんなに差がつくなんて思わなかったわよ。さす
が、中学生のときから主婦やってるだけあるわ」

唯「……あれ?」

和「中2のころから、お義母さんもお義父さんも家にいなかったから、もう
主婦歴10年ね。24歳とは思えないベテランっぷりだわ」

唯(あら? 和ちゃんのお嫁さんは)

憂「えへへー」

唯「私だよッッ!」

和「!?」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 19:17:08.77 ID:LVMe/GvD0

――夫婦の寝室(元・唯の部屋)――

和「レスが少ないわね」

唯「?」

和「モチベーションが下がるわ」

唯「お仕事の?」

和「まあ、そんなものよ」

唯「それは困ったね」

和「そうね。夫婦の生活にも、支障が出るわ」

唯「へー。和ちゃんは、私とえっちしたくないんだ」

和「そ、それは別の問題よ!」

唯「和ちゃん、えっち大好きだもんねー」

和「ちがうわよ! まったく!」

唯「そんなこと言ってー。顔が色っぽいよー」

和「もとからこういう顔なの!」

唯「へー」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 19:26:11.64 ID:LVMe/GvD0

和「……もう寝る」

唯「和ちゃん、可愛いー」

和「もう、唯も寝なさい」

唯「まだ眠くない」

和「昼寝したの?」

唯「うん」

和「うんじゃないの」

唯「……もうひと汗かいたら、眠れるかもー」

和「シャワー浴びるの面倒だし、眠いの。おやすみ」

唯「和ちゃんのくせにー」

和「はいはい」

唯(……)

和「すー」

唯(寝付きいいなー。やっぽど疲れてるんだね)

唯(おやすみ。和……ちゃん)ちゅっ



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 19:31:17.70 ID:LVMe/GvD0

――翌朝――

和「むにゃ……」

唯「くかー」

和「まったく、新婚生活とは思えない朝よね」

唯「和ちゃん……好きぃ」

和「フフ。ありがと」

ドア「ニコ」

憂「おはよー。あ、お姉ちゃんったらまだ寝てる。和ちゃんのお弁当作るって
言ってたのに」

和「いいのよ。唯のご飯も美味し……あれ?」

憂「ですよね。お姉ちゃんのご飯美味し……え?」

和憂「唯(お姉ちゃん)のご飯、食べたことない!」

唯「おっぱい……」



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 19:37:48.11 ID:LVMe/GvD0

唯「朝ごはん……昼ごはん……」

和(ホントに、結婚してもまったく変わらないのも一種の才能よね)

唯「食パンに……ファブリーズ……」

憂「やめて! お姉ちゃん、起きてー!」

和「憂が淹れた珈琲はやっぱりいいわね。優雅な気持ちになれる」

唯「このジャムを作ったのは……誰だぁ……」

憂「……」

和(もしかして私、結婚する相手を間違えた?)



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 19:41:56.89 ID:LVMe/GvD0

和「それじゃあ、いってきます。今日も七時くらいには帰ってくるからね」

憂「うん。いってらっしゃい! お義姉ちゃん!」

和「!?」

憂「……と。いってらっしゃい」

唯「ぼけー」

和(もっとも新婚生活を感じる朝がこんな調子だから、憂と結婚したような
気がしてならないわ)

ドア「ニコン」

憂「さて、今日も頑張ろう!」

唯「もう一眠り……」

憂(お姉ちゃんにも、少しはお嫁さんらしくしてもらわないと。和ちゃんが可哀
想に思えてきたよ)

唯「くかー」

憂「床で寝てるし」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/26(水) 19:47:55.34 ID:LVMe/GvD0

憂「お姉ちゃんお姉ちゃん」

唯「ふぇ?」

憂「今日の晩御飯、お姉ちゃんが作ってくれないかな?」

唯「憂、お出かけするの?」

憂「ううん。お姉ちゃんと和ちゃんは新婚さんなんだから。和ちゃんも、たま
にはお嫁さんのご飯が食べたいと思うの」

唯「……そうだね。憂」

憂「でしょう? だから、今日のご飯はお姉ちゃんが作ってね。わからない
ところは、私が手助けするから」

唯「わかった! 和ちゃんの頬が落ちてブラジルまで突き抜けるくらいに
美味しいご飯を作るよ!」

憂「さっすがお姉ちゃん!」

唯「ということで、今からスーパーに行ってきます!」

憂「え? まだ9時前……」

唯「いってきまーす!」

地面「ぴゅー」

憂「あ、あれ?」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 18:05:43.35 ID:31p4WpC30

――スーパー――

唯「……開いてないや」

唯「困ったなぁ……。これじゃあ和ちゃんのためにご飯作れないよ」

唯「うーん。どうしよ」

梓「あれ?」

唯「え?」

梓「もしかして、唯先輩? ですか?」

唯「?」

梓「この緩み切った表情。間違いない。平沢唯先輩ですね?」

唯「も、もしかして――」

梓「はい。アメリカから帰ってきました。中野梓です」

唯「あ、ああ、あ、ああ――」

唯「あずにゃああああああああん!!!」

梓「ひょわ!」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 18:12:54.59 ID:31p4WpC30

――喫茶店――

梓「――それで、仕事の関係で帰ってこれたんです」

唯「へ~。でも、すごいよね。外交官だなんて」

梓「英語は昔から得意だったんですけど、まさかここまで役に立つ仕事に
就くなんて思いもしませんでしたよ」

唯「あずにゃん、洋楽好きだったもんね」

梓「はい。……それで、唯先輩は今は――」

唯「お嫁さん!」

梓「結婚したんですか!? 誰と!?」

唯「えへへー」

梓「ま、まさか唯先輩に彼氏ができて、結婚までできるなんて……」

唯「和ちゃんと!」

梓「はい?」

唯「だから、和ちゃん。あずにゃんも知ってるでしょ?」

梓「それはもちろん知ってますけど……。私がアメリカに行ってる間になに
が……」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 18:24:00.13 ID:31p4WpC30

唯「今では私も奥さんなのだよ!」

梓「和先輩は旦那さんなんですか?」

唯「うん! 和ちゃんは一流企業のエリートさんなんだから!」

梓(この人、なんだかんだで金に困らない人生なんだなぁ)

梓「それで、今は二人で住んでるんですか?」

唯「ううん。憂も一緒に、平沢家に住んでるよ」

梓「憂もですか。ってことは家事全般は……」

唯「憂がやってくれます」

梓「いいんですか!? お嫁さん!!」

唯「えへへー。それで、今日は私がご飯作ることになっちゃったんだー」

梓(流石の憂もそこはわかってるんだ。よかった。憂に常識があって)

唯「でもね。まだスーパー開いてなかったんだよ。ひどいもんだよ」

梓「朝ですね。それに、先輩が作るのが晩御飯なら、買い物はあとでいい
じゃないですか」

唯「あ」

梓「変わってませんね。そういうところ」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 18:32:01.15 ID:31p4WpC30

梓(そっか。唯先輩、幸せなんだ)

唯「でね、和ちゃんったら――」

梓(和先輩の話を、こんなに楽しそうにしてる)

梓(もう、私にはチャンスないのかな)

梓(アメリカに行って、唯先輩に会えなかった時間。チャンスを奪われたんだ)

梓(悔しいよ……。フェアじゃないよ……)

唯「笑っちゃうでしょ!?」

梓「あ、あ、あ、あの!」

唯「ふぇ?」

梓「……コ、コーヒー一杯で粘るのもアレなんで、うちに来ませんか?」

唯「……そうだね。あずにゃんのおうち、行ってみたいよ」

梓(和先輩には悪いけど、私だって!)



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 18:40:01.71 ID:31p4WpC30

――そのころ、和は――

上司「あーだこーだ」

和「それがこーであれがあーで」

OL「お茶が――」

和「ありがとう」

上司「これはこう?」

和「それはそう」

平社員「はい。よろしくお願いします」

和(忙しいわね。でも、これも唯と憂のためだもの。がんばらなきゃ)

上司「真鍋さーん」

和「は、はい!」

和(唯は今頃、ゴロゴロしてるのかしらね)



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 18:49:42.57 ID:31p4WpC30

――中野宅――

梓「両親はコンサートでいないんで、遠慮しないでいいですよ」

唯「あずにゃんは一人暮らししないの?」

梓「私は基本的にアメリカにいるので、日本で一人暮らしすることは……」

唯「あ。そうか」

梓「オレンジジュースでいいですか?」

唯「お気遣いなく~」

梓「クッキーもありますよ。ムギ先輩のお菓子と比べられるものじゃ
ないですけど」

唯「ムギちゃんのお菓子、美味しかったもんね~」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 18:53:05.30 ID:31p4WpC30

梓「そういえば、ムギ先輩は大学卒業してどうしたんですか?」

唯「ムギちゃんはお父さんのお仕事を手伝ってるんだってさ。すごいよね。
20代で何個も会社持ってるんだもん」

梓「ムギ先輩の人柄なら、敵も多くないでしょうしね」

唯「頭もいいもん。私とは違って」

梓「そうですね」

唯「ぶー」



73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 18:57:14.00 ID:31p4WpC30

唯「……」

梓「……」

唯「…………」

梓(は、話が続かない!)

唯「……」

梓(……よく見ると、唯先輩。ちょっと大人っぽくなったかな?)

唯「どうしたの? あずにゃん」

梓(どこかが変わったわけではないけど、雰囲気に余裕が出たというか、
飼い犬と野良犬の違いというか)

唯「ねえ?」

梓「あ! す、すいません!」

唯「あずにゃんは、向こうで彼氏とかできた?」

梓「!?」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 19:03:20.79 ID:31p4WpC30

梓「えと、あの、あの……!」

唯「アメリカって進んでるんだよね。聞いた話だと、中学生でも普通にえっち
するらしいよね」

梓「そういう人もいるらしいですけど、私だって大人なんですから、落ち着
いて――」

唯「そうだよね。あずにゃんは大人だもんね」

梓「身長とか見て言いました?」ぶー

唯「えへへ。可愛い可愛い」なでなで

梓「うー」

梓(学生時代はちょっと煩わしかったけど、久しぶりに抱きつかれたり撫で
られたりすると、気持ちいいなあ)

梓(でも、やっぱり私なんてただの後輩でしかないのかな)

唯「うりうりー」なでなで

梓「そんなの……やだ……」

唯「?」

梓「唯先輩――私、唯先輩をとられたくない――!」



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 19:10:22.60 ID:31p4WpC30

ベッド「ぼすん」

唯「あず、にゃん?」

梓「いやなんです……」

唯「え?」

梓「私が知らない間に、遠くに行かないで……」

唯「……」

梓「一人でアメリカにいて、さびしかった……。いつだって会いたかった」

梓「それなのに! 唯先輩は知らないうちに、私の知らないところに行って
しまった! いやなんです! 唯先輩を、誰にもとられたくないんです!」

唯「あずにゃん……」さわ

梓「!?」



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 19:11:46.74 ID:31p4WpC30

唯「あずにゃん、ごめんね? 私、あずにゃんの気持ちを知らなかった」

梓「告白しても、無駄だと思ったから……」

唯「そっか。あずにゃんはそういう子だもんね」

唯「いつも強気で、ちょっと生意気だけど憎めない。そんな、可愛い可愛い
後輩だもん」

梓「後輩……。ただの、後輩なんですか?」

唯「――ごめんね」

梓「――そう、ですか」

梓「でも、唯先輩に刻み込みたい。私が、唯先輩のことを好きだってことを」

唯「――」

梓「この体勢、どういう意味かわかりますよね?」

唯「――」

梓「抵抗、しないんですか?」

唯「――いいよ。それで、あずにゃんの気が済むんなら」

梓「――!」



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 19:23:09.95 ID:31p4WpC30

梓「いいんですね?」

唯「うん。きっと、私もしたいんだと思う」

梓「……脱がしますよ?」

唯「いちいち訊かないでいいよ。あずにゃんの好きなようにしていいよ」

梓「唯先輩……」

唯「あずにゃん」

梓(すごい綺麗……。胸も柔らかそう)

梓「唯先輩、大好きです」

唯「うん。ありがと」

梓(好き、とは言ってくれないんですね)

唯「……ん」

梓(唯先輩、感じてるのかな? 嬉しい)



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 19:29:33.27 ID:31p4WpC30

――和の会社――

上司「あれよこれと」

和「それもこれよと」

OL「お茶ですー」

和「ありがと」

平社員「いそがしー」

社長「やっとるかねー」

和「こんにちは。いい調子ですよ」

上司「本当です。真鍋さんは本当に素晴らしい社員ですよ!」

社長「ほっほっほ。それはいいことだ。がんばってくれたまえよ」

和「はい!」

和(唯のためだもの!)

和(昨日、ベッドで素っ気なくしちゃったなあ)

和(そうだ。帰りにケーキでも買って帰ろう。唯はショートケーキで、憂には
モンブランね)

和(そうと決まれば、残業なんてしてられないわね!)きびきび!



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 19:39:05.15 ID:31p4WpC30

唯「……あっ」

梓「気持ちいいですか?」

唯「うん。あずにゃん、上手だよ」

梓「……私のも、してくれませんか?」

唯「そ。じゃあ、横になって」

梓「――」

唯「あずにゃんの身体、初めて会ったときから変わらないね。子供っぽい」

梓「ごめんなさい……」

唯「いいよ。可愛いから」

梓「!」

唯「あれ? あずにゃんったら、私の触ってただけで自分のもこんなにしちゃ
ってるんだ。変態さんだね」

梓「う……」

唯「じゃあ、するね」

省                            略



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 19:46:59.59 ID:31p4WpC30

唯「……」

梓「唯先輩。大好きですよ」

唯「うん」

梓「すごく、気持ちよかったです」

唯「そっか」

梓「……これで、おしまいなんですよね」

唯「……」

梓「どうして……」

唯「……」

梓「どうして、私のこと、好きになってくれないんですか」

唯「わかんない。でも、私はあずにゃんよりも和ちゃんが好き」

梓「……う……うう……!」

唯(不倫、しちゃったなあ)

梓「ゆい、せんぱ、いぃ!」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 20:00:24.87 ID:31p4WpC30

――スーパーの前――

唯「もうこんな時間か~」

唯「晩御飯の材料買わなきゃ。憂に怒られる!」

唯(あずにゃん、大丈夫かな?)

澪「あれ? よく見る顔で、ここじゃあ見たことない顔」

唯「澪ちゃん」

澪「どうしたんだ? お菓子でも買いに来たのか?」

唯「違うよー。私だってお嫁さんなんだから、ご飯くらい作るよ」

澪「本当か! ついに唯にも主婦の自覚が芽生えたのか!」

唯「えへへー」

澪「私は大変だよ。仕事終わって買い物して、うちのが帰ってくる前に
ご飯、お風呂、その他の家事しないといけないんだからさ」

唯「でも、それが幸せって言ってたよね?」

澪「う、うるさい! 恥ずかしいこと言うな!」

唯「うふふー」にやにや

澪「もう!」



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 20:06:45.62 ID:31p4WpC30

唯「澪ちゃんちの晩御飯は?」

澪「シチュー。あいつ、シチュー大好きなんだ」

唯「私の、が抜けてるよー」

澪「ば、馬鹿っ!」

唯「和ちゃん、どんな料理が好きなんだろ」

澪「親友として20年。恋人として5年。夫婦として1ヵ月とは思えないな」

唯「憂が作ってくれる料理は、いつも美味しいって言ってるから……」

澪「とりあえず、カレーとか簡単なものにすれば? 当たりはずれもないし」

唯「うーん。マシュマロカレーとかはどうかな?」

澪「ないな。可愛いけど」

唯「じゃあ、普通のカレーにする」

澪「賢明だな。それじゃあ、そろそろ行かなきゃ。また今度お茶しような」

唯「うん。りっちゃんにもよろしく言っといて! 田井中さん!」

澪「そっちもな。真鍋さん」

唯「……ふぅ」



89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 20:14:39.33 ID:31p4WpC30

唯「とりあえずカレーの材料は手に入れた」

唯「しかーし!」

唯「これでは和ちゃんへの愛が表現しきれない!」

唯「人参? ジャガイモ? 豚肉? 否!!」

唯「オリジナル要素あってこその手料理でしょ!」

唯「と、いうことで!」

唯「お菓子コーナー行ってこよーっと」

唯(和ちゃんへの愛、か)

唯「不倫したくせに、なに言ってんだか」



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 20:23:39.55 ID:31p4WpC30

――和、帰り道――

和「ケーキも買って、あとは帰るだけね」

和「このケーキを見たら、あの子、どんな顔するんだろう」

和「笑って、抱きしめて、キスしてくれるかしら」

和「……そうしたら、私も少しは唯に付き合ってあげよう」

和「そうよね。思えば、私のペースに、唯を付き合わせてばかりだもの」

和「休みの日もろくに出かけずに」

和「憂だって、私たち夫婦のために個人の幸せを二の次に考えてる」

和「本当だったら、あの子だって恋人作って結婚したいでしょうに」

和「――ああ。なんだ」

和「あの姉妹に救われているのは、私のほうじゃない」

和「これは、ほんの少しばかりの感謝」

和「唯、憂。待っててね」



92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 20:27:23.25 ID:31p4WpC30

――平沢宅――

憂「おかえりなさい。大丈夫だった?」

唯「んー。まあ、平気だったよ。澪ちゃんに会ったしね」

憂「そうなんだ。澪さん、元気してた?」

唯「元気そうだったよ! りっちゃんともうまくいってるみたいだし」

憂「そうなんだ! それで、今日のご飯はなににするの?」

唯「カレー! 澪ちゃんに教えてもらったんだ!」

憂「カレーかぁ。わからないところがあったら、私に聞いてね」

唯「了解!」

唯(あずにゃんと会ったことは言わないでおこう)

唯(ごめんね。憂。親友のあずにゃんが帰国してること教えてあげられな
いで)

唯「……あれ?」

唯「ういー!」

憂「はーい」



95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 20:32:15.12 ID:31p4WpC30

結局

唯「憂、ここにいて」

憂「わかったよ。お姉ちゃん」

唯「ごめんね。カレーも自分で作れないお姉ちゃんで」

憂「大丈夫だよ。これから覚えていけばいいんだよ」

唯「和ちゃんが帰ってきちゃうよ~」あたふたブシュッ

唯「ふぇええええええ!!」

憂「はい。絆創膏」

唯「憂。慣れてるね」

憂「そりゃあ、何年妹やってると思ってるの?」

唯「それもそうだね」

憂「和ちゃんも、お姉ちゃんがお料理してるの見たら、待ってくれるよ」

唯「……うん!」



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 22:42:13.92 ID:31p4WpC30

和「ただいまー」

憂「おかえりなさい。ほらほら、お姉ちゃんっ」

唯「うん! だ、旦那さま。上着を頂戴いたしまする」

和「フフっ。なによそれ。そんなことより、ほら、おみやげ」

憂「わあ! このケーキってもしかして!」

和「そう。隣町の甘味処仏陀のショートケーキとモンブラン、それとフルーツ
タルトよ」

唯「私、ショートケーキ!」

憂「私、モンブラン!」

和「あらあら、まさに予想どおりってやつかしら?」

唯「ありがと~」スリスリ

憂「和ちゃ~ん」だきっ

和「ちょ! 憂まで!」

唯(……あれ?)



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 22:50:56.88 ID:31p4WpC30

唯(なんだろ。違和感)

和「ほらほら。二人とも大好きだから離れなさい」

憂「えへへー」

和「ホントに、よくできた子っていっても、可愛いところあるんだから」

憂「和ちゃ~ん」

唯「は! そうだ! 和ちゃん和ちゃん! 今日のご飯はなんでしょう!?」

和「……この匂いはカレーね。ちょうど食べたかったのよ。憂のカレー」

唯「チッチッチ。今日は違うんだなコレが」

和「?」

唯「今日は真鍋唯作のカレーライスです!」

和「すごいじゃない! 憂、ありがとう!」

憂「え? あ、うん!」

唯「ヽ(・ω・)/ズコー」



106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 22:58:21.58 ID:31p4WpC30

唯「ひどいよ和ちゃんー」

和「冗談よ。でも、憂が殆ど作ったんでしょ?」

憂「いえいえ。今日はお姉ちゃんが殆どやったんだよ」

唯「でへへー」

和「……」

和「あ」

和(唯の手。絆創膏だらけじゃない。きっと、一生懸命馴れない包丁使っ
たのね)

和「唯。ありがとう」

唯「お嫁さんのお仕事だもん! 平気平気!」

和「それでも嬉しいわよ。……ねえ、憂。5秒だけ後ろ向いててくれる?」

憂「はいっ」くるっ

和「ただいま」ちゅっ

唯「んっ」



107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 23:04:06.25 ID:31p4WpC30

唯「――」ぼー

和「憂。いいわよ」

憂「はーい」くるっ

唯(和ちゃんのキス。やっぱり気持ちいい……)

憂「あ、お姉ちゃんお姉ちゃん」ひそひそ

憂「あのセリフ。言ってみれば?」

唯「……う、うん!」

和「?」

唯「和ちゃん!」

和「だからなによ?」

唯「お風呂にする!? ご飯にする!? それとも――わ・た・し?」

和「……」ちらっ

憂「……」ニコニコ

和「お風呂」

唯「ぶー」



109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 23:10:09.63 ID:31p4WpC30

――浴室――

和「唯の、カレー」

和「ゆいの、カレー」

和「唯ちゃんの、カレー」

和「唯にゃんの、カレー」

和「真鍋唯さんの、カレー」

和「旧姓平沢唯さんの、カレー」

和「ゆいっぺの、カレー」

和「ゆいっちの、カレー」

和「ゆいゆいの、カレー」

和「ゆいとらとぷすの、カレー」

和「……よし。100通りの唯のカレーを唱えたところであがろうかな」

和「今日は、唯は来ないのね。ちょっと残念」

和「カレー食べて、ケーキ食べよう。うん」



111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 23:16:39.96 ID:31p4WpC30

――居間――

唯憂和「いただきます!」

和「……あむっ」

唯「どきどき」

憂「わくわく」

和「!?」

唯「どう?」

和「これ、もしかして……」

唯「うん。イチゴ入れたんだぁ。お菓子にしようかと思ったんだけど、いいの
が売ってなくてさ」

憂「イチゴ……」

和「お、美味しいかも。甘酸っぱさと辛みがアンバランスで美味?」

唯「やった! たくさん作ったからどんどん食べてね!」

憂「よかったね! お姉ちゃん!」

唯「やっぱり3人で食べるご飯は美味しいね!」



113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 23:29:39.21 ID:31p4WpC30

唯「ケーキうまー」

憂「美味しいねー」

和「あら、ホント。買ってきてよかったわ」

憂「純ちゃんにも教えてあげよーっと」

唯「純ちゃんって、今なにしてるの?」

憂「うーん。なんか旅してるみたい」

和「旅?」

憂「うん。本当に自分を見つけるって言って出ていったんだよ」

唯「前から思ってたけど、純ちゃんって結構飛んでるよね」

和「律に似たテンションだと思ってたけど、まさかそこまでなんてね」

憂「この間来た手紙によると、今はイギリスのブラックリーにいるんだって」

唯「どこ!?」

和「なんてわかりにくいところに……」



114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/27(木) 23:36:41.00 ID:31p4WpC30

――浴室――

唯「……」

唯「和ちゃんが浸かったお湯」こくん

唯「えへへ。ちょっと甘いかも」

唯「……和ちゃん」

唯「ごめんね……」

唯「ひっく……うう……」

唯「私、本当に馬鹿だよ」

唯「和ちゃんは、私のこと真剣に愛してくれているのに」

唯「私なんかで、和ちゃんのお嫁さんが務まるのかな……」

唯「でも、私は和ちゃんが好き。誰よりも大好きなの」

唯「――よし」

唯「決めた」



119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 00:33:09.86 ID:x0ApGtiC0

――夫婦の寝室――

和「……明日、お休みなんだけど。どこか行く?」

唯「……」

和「いきなり訊かれても困るわよね。明日にでも言ってくれれば――」

唯「和ちゃん」

和「なに? 動物園? それとも水族館?」

唯「私、和ちゃんに話しておかなきゃいけないことがあるの」

和「?」

唯「聞いて、くれる?」

和「……ええ。話してみなさい」

唯「今日、あずにゃんに会ったの」

和「梓ちゃん。久しぶりね。よかったじゃない」

唯「うん。会ったときまではよかったんだけど――」



121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 00:40:53.43 ID:x0ApGtiC0

唯「一緒に喫茶店入って、今、あずにゃんがなにしてるのかって話してね」

和「うん」

唯「そのあと、コーヒー一杯で粘るのも何だからってことであずにゃんの
おうちにお邪魔したの」

唯「……」

和「落ち着いて。ゆっくりでいいからね」

唯「……それで、あずにゃんとお話してると、あずにゃんが私のこと――」

和「……」

唯「好きって言ってくれて。和先輩に渡したくないって――」

和「……」

唯「駄目だよ。その一言が言えなくって……」

和「うん……」

唯「あずにゃんと……えっち、しました……」

和「……そっか」

唯「……ひっぐ。ぐっ、あ……はぁ……和、ちゃん……ごめんなさい、ごめん
なさい……………」



122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 00:47:43.43 ID:x0ApGtiC0

和「――唯!」

唯「和、ちゃぁん……!」

ベッド「ぎしっ」

和「唯は、なんにも悪くない」

唯「違うよ。私が、嫌って言わなかったからだよ」

和「それこそ違う。梓ちゃんを受け入れたのは、唯、アンタの優しさなのよ」

唯「でも、そのために私は和ちゃんを裏切った! もう、汚れちゃったんだ
よ。私」

和「裏切ったのなら! 裏切って汚れたのなら、私が綺麗にしてあげる」



123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 00:49:53.46 ID:x0ApGtiC0

唯「ん……! あっ。駄目ぇ……」

和「唯……」

唯「和ちゃんに、和に触ってもらえる資格なんて、ないもぉん……!」

和「資格なんて必要ない。理由も動機も、全部後付け。今は、唯を綺麗に
してあげるために、するの」

唯「……のど、かぁ!」

和「呼び捨て。できるようになったのね」

唯「だって……いつまでも子供みたいで、厭なんだもん! 子供だったか
ら! あずにゃんを、受け入れちゃった」

和「関係、ないわよ」

唯「だって、こんなに気持ちいいんだもん。したくなんて、ないのに――」

和「それが真鍋唯の身体なんだから、仕方ないでしょう?」

唯「真鍋……そうだ。私は、和ちゃんのお嫁さんになったんだ……」

和「呼び方、戻ってる。そうよ。アンタは私のお嫁さんなの。幼稚園のころの
約束を、きちんと守ったのよ。私たち」



124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 00:57:06.00 ID:x0ApGtiC0

和「だから――私たちの絆は、絶対に切れないの」

唯「和ちゃんって、男の子みたい」

和「ここをこんなにしてるアンタに比べたら、ね。でも、私だって色々あるの
よ?」

唯「うっさい。いつもは和ちゃんが私の下にいるくせに」

和「少し機嫌治ってきた? いや、これは悪くなっているのかな?」

唯「むー」

和「唯ちゃーん」

唯「可愛く言っても、手、動いてる……」

和「気持ちいい?」

唯「……うん」

和「どこが?」

唯「やー」

和「可愛い。――今日は、全部私が綺麗にしてあげるからね」



127: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 01:06:23.54 ID:x0ApGtiC0

唯「おぼえてろー」

和「覚えてるわよ。びしょびしょわんこさん」

唯「わんこさんじゃないもん」

和「今の唯、犬にしか見えないわ」

唯「うう……」

和「あのさ。もう一回、呼び捨てしてくれない?」

唯「……和」

和「……唯」

省                     略

憂「隣から変な音がする……」

憂「これは行くべきか」

憂「行かざるべきか」

憂「なにかが軋む音が、ずっとする」

憂「行くべきか」

憂「行かざるべきか」



165: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 19:33:49.26 ID:x0ApGtiC0

――翌朝――

スズメ「チュンチュン」

唯「ん……。朝か」

和「すー」

唯「えへへ。今日は私のほうが先だもんね」

唯「じー」

和「んん……」

唯「可愛い。和ちゃん」ちゅっ

和「むにゃ……」

唯「そんな可愛い寝顔してたら、朝から襲っちゃうよ」

唯「……こんな私を、許してくれてありがとうね」

唯「和……」

唯「……まだ、照れくさいや」

ドア「ニコ」

憂「お姉ちゃん。朝ごはん一緒に作ろー」



167: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 19:38:20.40 ID:x0ApGtiC0

唯「ふぇ! う、憂!」

憂「ういだよー」

唯「夫婦の寝室にノックもしないで入るとはなにごとかー!」

憂「はいはい」

唯「むー」

憂「ほら、朝ごはん作って和ちゃん驚かせようよ」

唯「そうだね! 目玉焼き作る!」

憂「いいね。じゃあ、私はお味噌汁!」

唯「それじゃあ、キッチンに急ごう!」

憂「あ、お姉ちゃん。あんまり騒ぐと和ちゃん起きちゃうよ」

唯「あっと。いけね」

和「すー」

憂(和ちゃん、かわかっこいい!)



168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 19:52:53.61 ID:x0ApGtiC0

――キッチン――

唯「フライパンに油ひいてー」

憂「うんうん」

唯「あっためてー」

憂「そうそう」

唯「玉子割ってー」

憂「いいねいいね」

唯「じゅー」

フライパン「ジュワー」

憂「頑張ってね。お姉ちゃん」

唯「うん! 憂も美味しいお味噌汁作ってね!」

憂「オーケー!」

和「……いい匂い」

唯「和ちゃ~ん!!!」がば!



170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 19:58:34.69 ID:x0ApGtiC0

和「ふぇ?」

憂「目玉焼きお皿に移して、火を消して――」

憂「和ちゃ~ん!!」がば!

和「ええー」

唯「和ちゃんの朝おっぱい!」

和「や・め・な・さ・い!」

憂「めがねー」

和「よ・し・な・さ・い!」

唯憂「ぶー」

和「憂まで朝からなにやってるのよ」

憂「な、なんとなく?」

和「ホントに、いきなり小さい妹を二人も持った気分よ」

唯「お嫁さんだもーん」



173: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 20:07:11.51 ID:x0ApGtiC0

和「あ。目玉焼き」

唯「私が作りました!」フンス

憂「お姉ちゃん、手際がよくなったよね」

唯「憂には負けるよ~」

憂「まあね!」フンス

和(気取らない憂はやっぱり可愛いわよね。この子ったら、人前だといい子
でい続けようとするから)

唯「和ちゃん。食べよ?」

和「ええ。いただきます」

和「はむっ」

唯「ドキドキ。昨日と同じ」

和「おいしい。このお味噌汁」

唯「ずこー」

憂「ありがとう! 和ちゃん!」



175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 20:11:13.76 ID:x0ApGtiC0

和「あ。唯は目玉焼き担当?」

唯「うん」

和「美味しいわよ。普通に」

唯「やっぱりこうだ! アレンジが必要なんだ! 私に料理は!」

憂「落ち着いて。美味しいんだからいいじゃない」

唯「うわああああああああん!!!」

和「……」

唯「ちらっ」

和「……」もぐもぐ

唯「ちらちらっ」

和「様子見ても何も言わないわよ」

唯「うわあああああああああん!!!」

憂「お姉ちゃん。早く食べて」

唯「はーい」



176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 20:18:21.97 ID:x0ApGtiC0

和「ところで唯」

唯「ん?」

和「どこか行きたいところある?」

唯「うーん」

憂「お出かけするの?」

和「折角の休みだから、家族サービスよ。憂はどこかある?」

憂「――」

憂(これは……そうだね)

憂「私はいいよ。二人で行ってきて」

和「いいの?」

憂「うん」

唯「それじゃあ、水族館行きたい。和ちゃんと初めて恋人としてデートした
ところ」

和「あそこね。いいわよ。それじゃあ、準備出来たら出発よ」



177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 20:28:52.03 ID:x0ApGtiC0

唯「それじゃあ、いってくるね」

憂「うん。いってらっしゃい」

和「唯。忘れ物はない?」

唯「大丈夫! クルマのカギ。お財布。なにもかもがある!」

和「それは重畳。憂、家のことはお願いね」

憂「和ちゃんたちも楽しんできてね」

唯「運転は任せて!」

和「やめて。ていうか、なんでアンタがキー持ってるのよ」

唯「あうー」

和「アンタの運転。殆どミハエル・シューマッハじゃない」

唯「駄目?」

和「駄目よ。ドライブも込みでデートなんだから。環七攻めてどうするのよ」

唯「ちぇー」

ドア「ニコ」

和「じゃあ、行くわよ」



179: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 20:39:21.58 ID:x0ApGtiC0

唯「ねえ、和ちゃん」

和「なあに?」

唯「運転してる時の和ちゃん見てると、なんだかきゅんきゅんする」

和「それは嬉しいこと?」

唯「わりと。だって、和ちゃんのカッコいい姿を、一番近くで見られる瞬間だもん」

和「じゃあ、ありがとう」

唯「うん。缶コーヒー開けてあげる」

唯「……はい」

和「……唯」

唯「ふぇ?」

和「憂がいるときは言えなかったこと。言うわね」

唯「なぁに?」

和「目玉焼き。今まで食べたどんな目玉焼きよりもおいしかったわ」

唯「……えへへ。私も、和のお嫁さんっぽくなれたかな」

和「呼び捨てが似合ってないうちは、大人の女性じゃないけど。今の唯は立派なお嫁さんよ」



180: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 20:47:52.99 ID:x0ApGtiC0

――PA――

和「ちょっとお腹減ったわね」

唯「パーキングのラーメン食べたいね」

和「そうね。安っぽさがなんともいえないわ」

唯「そのまえに……おしっこ!」

和「25にもなって……まったく」

唯「でへへー。すいやせんねー」

和「まあ、私も行くんだけどね」

唯「つれしょん!!」

和「二期のタイトルみたいに言わないの。一期があるみたいじゃない」

唯「和ちゃん、今日は大丈夫?」

和「問題ないわよ。昨日、見たじゃない」

唯「あ。そっか」



181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 20:57:07.70 ID:x0ApGtiC0

――食堂――

唯「私ラーメン!」

和「それじゃあ、私は何にしようかな」

唯「ラーメンにしないの?」

和「夫婦で同じもの食べてどうするのよ。お互い違うものにして、分けたり
すればいいじゃない」

唯「それもそうだね」

和「……うん。コロッケ定食にしよう」

食券機「ういーん」

おばちゃん「ラーメン一丁!」

唯(そういえば、高校のときにあずにゃんと行ったラーメン屋さん。変な
ところだったなあ)

唯(あずにゃん。どうしてるんだろ)



184: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 21:11:48.61 ID:x0ApGtiC0

――そのころ、梓は――

店主「ニンニク入れますか?」

梓「全増しで」

店主「はーい」

梓「……」

梓(唯先輩……)

店主「大豚W全増しー」

梓「……」もぐもぐ

男(この子がネットで話題の美女ジロリーヌ。ジロにゃんか)

男(暗い顔してるな。悩みでもあるのか?)

梓(美味しくない……)

梓(久しぶりの二郎なのに、ノれない)

梓(……唯、先輩)

梓「ござっす」ゴト

梓「……また、したいな」



185: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 21:21:27.03 ID:x0ApGtiC0

梓「ばっかじゃないの」

梓「結局、性欲じゃない」

梓「唯先輩とのえっちが気持ちよかったから」

梓「唯先輩の手が、本当に暖かかったから」

梓「それに甘えて」

梓「それを欲しがって」

梓「それが手に入らないから」

梓「身体の『関係』だけを求めて」

梓「結果」

梓「残ったのは後悔と――こびりついたような要求」

梓「もう一度、したい」

梓「なんだそれ」

梓「唯先輩のこと、何だと思ってるんだ。私は」

梓「……」



188: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 21:34:34.01 ID:x0ApGtiC0

――公園――

梓「日本の土」

梓「故郷の空気」

梓「いいものだと思った」

梓「でも、今となっては悲しいことを思い出す」

梓「つまんないよ」

紬「あれ?」

梓「え?」

紬「そのツインテール。小さな体。もしかして、中野梓さん?」

梓「その柔らかい物腰。ふわふわの金髪。もしかして、琴吹紬さん?」

紬「やっぱり!」

梓「ムギ先輩!」



189: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 21:43:15.49 ID:x0ApGtiC0

紬「梓ちゃん。日本に帰ってきてたんだね」

梓「はい。一昨日に帰ってきて、昨日はぶらぶらしてました」

紬「そうなんだ」

梓「ムギ先輩も、どうですか? 最近」

紬「んー。たまーに大変だけど、大丈夫。世間知らずの箱入り娘なんかじゃ
ないんだから」

梓「強いんですね。本当に」

紬「そんなことないわよ。家に帰って、一人で考え事すると、涙が出てくる
こともあるわ」

梓「そうなんですか?」

紬「忙しい時は平気だけど、時間が空くと楽しかった学生時代が思い出さ
れるの。HTTのキーボード担当として過ごした7年。本当に充実してて、
楽しくて、あのころに戻りたいって思うことも一度や二度じゃない」

梓「……」

紬「喉、渇いちゃった。ジュース買ってくるね」

梓(ムギ先輩も、あんなに寂しそうな顔するんだ……)



192: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 21:53:48.96 ID:x0ApGtiC0

紬「はい。オレンジジュースよかった?」

梓「ごちそうさまです」

紬「……そうね。高校生になるまで、私は自動販売機でジュースを買う方法
も、缶ジュースの開け方も知らなかった」

梓「……」

紬「嘘だと思うでしょう? でも、ホントの話よ。私は、絵に描いたような箱入
り娘だったの」

梓「でも――」

紬「そう。でも、りっちゃんや澪ちゃん、唯ちゃんや梓ちゃん。それにさわ子
先生に出会ってからは毎日が新鮮で、知らないことがいっぱいで。明日は
きっと、今日よりもいい日になるだろうって考えて眠っていたわ」

紬「私が生きている今日は、昨日死んだ人がどうしても生きたかった今日
なんだって」

紬「それを、実感してた。だから、毎日が楽しかったんだと思う」



193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 21:56:17.43 ID:x0ApGtiC0

梓「……はい」

紬「でも、最近になって思うの」

紬「かなりサイテーなことよ。世間知らずの私が、社会の波に揉まれたとき、
あることを考えたの」

紬「私が生きている今日は、昨日自殺した人が死んででも避けたかった
今日なんだって」

梓「!」

紬「ちょっと色々あってね。父の助けなしで頑張ろうとしたの」

梓「知らなかったです」

紬「誰にも言わなかったの。だって、HTTの皆だったら、きっと私を心配
すると思ったから」

梓「当然です」

紬「特に、先輩思いの梓ちゃんは人一倍。だから、誰にも言わなかったの」

紬「――甘かったのよ。なにも知らなかった小娘が、学生時代の小さな
コミュ二ティを知って、いい気になっていたということだった」



194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 22:02:01.39 ID:x0ApGtiC0

紬「かなり危ない橋を渡ったわ。汗をかく間も、涙を流す時間もなかった」

紬「恋人なんて、作ってる余裕もなかったの」

梓(ムギ先輩、まだ独身なんだ)

紬「今となっては、こうやって空を見ながら話せることだけど、あの頃は、いつだって二つのことを考えてた」

梓「ふたつのこと?」

紬「私が死ぬか。それとも、誰かの人生を終わらせて金を得るか」

紬「お金を儲けるってことが、どういうことなのか」

紬「裕福な暮らしをするということが、何を意味するのか」

紬「どうして、何も疑問に持たなかったのか」

紬「今思えば不思議ね」

梓「大人に、なったんですよ……」

紬「そうかしら? ただ単に、汚れちゃっただけかもしれないけど」

梓「そんな……」

紬「ああ、もうこんな時間。ごめんね梓ちゃん。今度はきちんと時間をとって
話しましょう。梓ちゃんの話も聞きたいから」

梓「はい。それじゃあ、また」



204: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 23:16:06.94 ID:x0ApGtiC0

――そのころ真鍋夫婦は――

唯「とーちゃーく!!」

和「よかった。いい天気で」

唯「うぇーい!!」

和「ほら、唯!」

唯「さあさ! 行こうよ!」

和「わかったから。少し落ち着きなさい」

唯「むー」

唯「プイっ」

和「ほら」

唯「?」

和「手、繋いで行きましょ」

唯「うん!」ぎゅっ

和「唯の手、あったかいわよね」

唯「和ちゃんの手はひんやりしてて気持ちいい!」



205: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 23:20:43.53 ID:x0ApGtiC0

――館内――

唯「ふおおおおおおおおおお!!!」

和「……」

唯「和ちゃん和ちゃん! この魚透明だよ!!」

和「聞こえてるわよ。そんなに大声出さなくても」

唯「……あ」

和「どうしたの?」

唯「そうだよね。私、大人の女性になるんだもん。しっかりお淑やかにな
る!」

和「はいはい」

唯「あら、このお魚。透明でいらっしゃることですわよ」

和「馬鹿丸出しだからやめなさい」

唯「ちぇー」

和「まったく、可愛いんだから」

唯「あ! アシカのショーだって! 行こう行こう!」

和「ちょっと、ひっぱらないで!」



206: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 23:33:34.41 ID:x0ApGtiC0

お姉さん「アシカのあーくん! このフラフープを――」

和「……」

唯「ほわあ……」

和(あの頃とちっとも変わってない。子供みたいな目をしてる)

和(初めてデートしたときも、こんな目をしてショーを見てたわね)

和(色気もなくて、要領悪くて、頭も悪い)

和(そんなこの子を、一生面倒見てあげられるのは自分だって思った)

和(小学生のころに、そう思ってから、唯のことをずっと見てたのよね)

和(その気持ちが、恋愛感情になるのに時間はいらなかった)

和(恋愛感情になって、それからが長かったけど)

和(同性愛がノーマルではないことは、小学生の私だってわかってた)

和(だから、私が唯のことを好いているって事実を誰かに伝えることも
できないで高校生になって、大学生になった)

和(違う学校に通ってから、離れてから、ようやく気がついた)

和(唯に私が必要なんじゃない。私が唯を必要としてるんだって)



208: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 23:47:31.86 ID:x0ApGtiC0

――そして――

唯「あーっ! 楽しかったー!」

和「憂へのお土産も買ったし、そろそろ帰ろうか」

唯「うん。このイルカのぬいぐるみ、なんて名前にしよっかなー」

和「イルカ、ドルフィン。ドル子ってのはどう?」

唯「!?」

和「……気に入らなかった?」

唯「いい! 和ちゃん! ありがとう!!」

和「喜んでもらえてうれしいわ」

唯「嬉しいよー。ところで、帰りも和ちゃんの運転?」

和「当然そうよ。私が旦那さんなんだから、少しはそれっぽいことしなきゃ」

唯「旦那さん……。いい響きだよねえ」

和「そうね。じゃあ、出発するわよ」

唯「うん!」



209: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/28(金) 23:57:25.72 ID:x0ApGtiC0

和「もう寝てる……」

唯「すぴー」

和「よっぽど楽しかったのね。嬉しいことよ」

和「……」

和「でも、起きてほしいな」

和「唯と話したいもの」

唯「くー」

和「唯の声、聞いてると落ち着く」

和「それがたとえ、寝言でも。寝息でも」

唯「和……ちゃん」

和「……」

和(昨日のことは、もう思い出さないようにしよう)

和(唯が他の人と関係を持った。これは事実だけれど、私は受け止めたく
なんて、ない)

和(私は、弱い人間ね。受け入れず、拒絶して)

和(それで救われるのは、自分だけだというのに)



210: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:04:40.79 ID:CpTzNWKv0

唯「ふぇ?」

和「あ。起きたのね。まだ半分くらいよ。高速道路」

唯「そっか。……ねえ、和ちゃん」

和「なあに?」

唯「ちょっぴり眠いけど、お話ししようよ」

和「もちろん。いいわよ」

唯「……えへへー」

和「唯は、子供欲しくないの?」

唯「子供は好きだよ。でも、欲しくない」

和「……気、使ってる?」

唯「違うよ。ホントのホントに要らない。和ちゃんのこと、独り占めしたい」

和「憂がいるわよ?」

唯「憂は別なのー」

和「……ありがと」



212: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:11:09.46 ID:CpTzNWKv0

唯「普通の道に降りたってことは、もうすぐだね」

和「そうね」

唯「いっぱいお話しできて、本当に楽しかったー!」ニコニコ

和「うっ!」

和(か、可愛い!)

唯「……あれぇ?」

和「……」

唯「今、和ちゃんってばあそこのホテルに入りそうになったでしょ?」

和「な!?」

唯「昨日もしたのに、和ちゃんのえっち!」

和「なに言ってるのよ! もう!」

唯「でもね……いいよ。和ちゃんがしたいときは、私もしたいときだから」

和「……」

和「駄目。我慢するの」

和(唯はお嫁さんなの。性欲の捌け口なんかじゃない!)



213: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:23:38.26 ID:CpTzNWKv0

唯「ただいまー」

和「ただいま」

憂「おかえりなさい! お姉ちゃん二人!」

和「変わった出迎え方ね」

憂「どちらもお姉ちゃんなので!」

唯「さっすが憂!」

憂「今日一日、このことを考えてたんだよー」

和「すごい時間の浪費の仕方ね」

憂「そうかな?」



214: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:24:22.12 ID:CpTzNWKv0

唯「憂、今日のご飯はー?」

憂「今日はお姉ちゃんたちが大好きなハンバーグだよっ」

和「いいわね。あ、今日は久しぶりに呑む?」

唯「わーい! お酒ー!」

憂「それじゃあ、お姉ちゃんたちはお風呂入っちゃってね」

和「憂も一緒に入りましょう」

憂「はい!」



216: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:29:38.64 ID:CpTzNWKv0

――浴室――

唯「平沢家のお風呂は大きいのです」

和「三人でも楽々足が伸ばせるものね」

憂「お父さんが、いつまでも家族でお風呂に入れるようにって、お風呂を
大きくしたみたいだよ」

和「……色々と残念な結果に終わってるわね。お義父さんの目論見」

唯「でも、今はこうして家族三人でお風呂だもんねー」

憂「ねー」ぴとっ

和「どうしてそこで胸を触るのか」

憂「急に胸が来たので」

和「わけがわからないわよ」

唯「憂め! 妹のくせにズルイぞ! えい!」ぴとっ

和「やめなさいって」



217: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:35:08.74 ID:CpTzNWKv0

唯憂「やわらかー」

和「……もう、好きにしなさい」

唯「はい!」

憂「うん!」

和「どうすればいいの……」

唯「でも、和ちゃんって胸大きいよね」

和「そうかしら?」

憂「それに柔らかくって、お母さんみたい!」

和「これでもDくらいよ?」

唯「憂は?」

憂「同じだよ」

唯「ふんだ」パシャパシャ

和「唯が離れたわね」

憂「和ちゃ~ん」

和「……」



218: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:41:49.94 ID:CpTzNWKv0

唯(……私だって、ちっちゃいわけじゃないもん)

唯(澪ちゃんやムギちゃん。和ちゃんに憂が大きいだけだもん)

唯「和ちゃんは、おっきい胸の子のほうが好き?」

憂「当然だよね」

唯「ういー」

憂「ういだよー」

和「ほら、憂は挑発しないの。私は、唯が好きなのであって、特に大きさの
好みなんてないわよ。繰り返すけど、私が唯が好きなの」

唯「わーい」

憂「むー」

唯「安心したよ。これで、思う存分抱きつけるー」

和「話がつながらない」

憂「のぼせてきたから、『先に』上がるね」

和「あ」



219: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:47:15.98 ID:CpTzNWKv0

ドア「ニコ」

和「あわわ」

唯「和ちゃーん」

和「ゆ、唯?」

唯「んー」ちゅっ

和「んっ」

唯「あまぁい」

和「味なんてないでしょ?」

唯「あるよー。和ちゃんの唇。イチゴみたい」

和「その笑顔で見られると、なんにも言えないしできないわよ」

唯「憂がいると、流石にキスはできないもん」

和「あら、唯にもそういう恥じらいがあるのね」

唯「まあ、最小限は」

和「今日は、しないって言ったでしょう?」

唯「……私がえっち好きな女だと思ってる?」



221: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 00:56:12.80 ID:CpTzNWKv0

和「思ってないわよ」

唯「うそつき」

和「アンタ、ちょっとおかしいわよ?」

唯「おかしくないもん。えっち、嫌いだもん」

和「……どうしたの? 話してみてくれない?」

唯「和ちゃん以外の人としても、気持ちよくなんてないもん」

和「……」

唯「和ちゃん以外の人となんて、絶対にしたいって気持ちも起きないもん」

和「そう、ね」

唯「私が不倫したこと、気にしてる?」

和「蒸し返すってことは、唯が一番気にしてるってことじゃない」

唯「気にするよ。だって、裏切っちゃったんだよ?」

和「許すって言ったでしょう?」

唯「私、馬鹿だからうまく言葉にできないけど……和ちゃん、気にしてるでしょ?」



222: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 01:03:39.04 ID:CpTzNWKv0

和「困った子ね」

唯「うん……」

和「でもね。唯と結婚して、よかった」

唯「私も……」

和「親友って関係じゃあ見えない唯の部分、たくさん見てる」

和「嫉妬する唯。悩んでる唯。幸せそうな唯」

唯「和ちゃんの前なら、本当の私を見せられるから」

和「唯は律たちの前だと、とことんとぼけたキャラでいるからね。そうする
ことで、自分の居場所を作った」

和「でも、私の前ではそんなことはしない。本物の唯でいてくれる」

和「えっちなことに興味もあるし、寂しくって泣いちゃうときもある。そんな、皆
が知らない唯を、私は愛してるんだから」

唯「歯が浮くようなセリフ、だね」

和「ええ。でも、伝わったでしょう?」

唯「うん……。大好きだよ。和」



223: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 01:09:04.75 ID:CpTzNWKv0

――居間――

唯「うえー」

和「うー」

憂「かんっぜんにのぼせてるね」

唯「扇風機-」

和「ううー」

憂「タオル姿で扇風機に固まるお姉ちゃんズ。可愛いっ」

唯「あーいーすー」

和「ご飯、食べてからー」

憂「お酒とおつまみの準備するね」

唯「おねがーい」

和「……ふふっ」

唯「のぼせたフリ。大成功だね」

和「まあ、ちょっとのぼせ気味ではあるけど」



226: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 01:27:50.94 ID:CpTzNWKv0

憂「準備できたよー」

唯「うーい」

和「ほら、唯。立ちなさいって」

唯「ういー」

憂「?」

唯「いや、憂じゃなくって」

憂「紛らわしいね」

唯「そうだね!」

和「さあ、明日も休みだし。今日は呑むわよ!」

憂「うん!」

唯「かんぱーい!!」

和「……おい――っしい!」

唯「いろんなものが吹き飛ぶよー」

憂「……そういえば、今日律さんに会ったんだー」

和「珍しいわね」



227: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 01:34:05.31 ID:CpTzNWKv0

――憂の回想・スーパー――

憂「今日のご飯はハンバーグー」

憂「どっちもお姉ちゃんだけど、どっちも好きなハンバーグー」

律「ありゃ。憂ちゃんじゃん」

憂「あ。律さん。こんばんは」

律「こんばんは。唯たちは?」

憂「お姉ちゃんたちは今日、水族館です。それで、私はお留守番です」

律「相変わらずラブラブだねー。真鍋さんところは」

憂「ちょっぴり嫉妬しちゃいますよ。律さんはどうしたんですか?」

律「いやあねえ。澪のやつがハンバーグを作るのに肉を忘れたってんで、
買いに来たのよ」

憂「澪さん……」

律「たまーに在り得ないミスを犯すのが、うちの家内のクセでして」

憂「でも、澪さんのハンバーグって美味しそうですよね」

律「うまいぞー。澪の愛が合びき肉に込められてるからな」

憂「平沢家も、今日はハンバーグです」



229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 01:38:59.01 ID:CpTzNWKv0

律「お。偶然だなぁ!」

憂「ですね。律さん、お仕事順調ですか?」

律「問題なし。今のところは、二人が食ってくには心配はないよ」

憂「大変ですよね。雑誌の編集って」

律「まあね。人気漫画家のくせに1年休みたいとか言い出す奴もいるんだ」

憂「その漫画家に心当たりが」

律「憂ちゃんの心当たりは殆ど、っていうか間違いなく正解だな」

憂「大変でも、今の律さん。すごいかっこいいですよ」

律「さんきゅっ。じゃあ、そろそろ行くね」

憂「はい。澪さんにもよろしくです。……あ。それと」

律「?」

憂「カチューシャ。もう付けないんですか?」

律「仕事の時以外は、ね。家内たってのご要望なので」

憂「ウフフ……」



259: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 20:09:41.82 ID:CpTzNWKv0

――回想終わり――

憂「こんな感じで!」

唯「カチューシャのないりっちゃんって、たまに誰だかわからないんだよね」

和「ただ、律って前髪下ろすとイケメンなのよね」

唯「うん。りっちゃんはおかしいって言ってなかなか前髪下ろしてくれなか
ったけどさ」

憂「もともとカッコいいのに、もっとかっこよくなるんだよ。律さんって」

和「今頃は恋女房と食事でもしてるのかしらね」

唯「まるで私と和ちゃんみたいだねー」

和「ねー」

憂(和ちゃんが酔いだしている……。これはチャンス?)

憂「でも、澪さんと律さんってどんな夫婦生活送ってるのかな。気になるよ」

唯「仲良しだよ。きっと。うん」



260: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 20:15:48.26 ID:CpTzNWKv0

――田井中家・マンション――

澪「ハンバーグできたぞー」

律「ひゃっほう! 待ってました!」

澪「ただのハンバーグで、よくそんなにはしゃげるな」

律「当然だろー。だって、澪の手料理じゃん」

澪「――!」

律「帰ってこれない日が多いからさ。たまーにある団欒を大切にしたいんだ」

澪「……馬鹿律」

律「馬鹿で結構。それより、酒はまだか!」

澪「ご飯と一緒にビール呑むの?」

律「ん? 駄目?」

澪「駄目じゃないけど……」

律「ふむ」

律「わかった。ビールはあとだ。まずは澪の飯をたらふく食べる!」

澪「……うん! 召しあがれ!」



261: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 20:27:28.98 ID:CpTzNWKv0

律「――それでさー。さっき憂ちゃんに会ったんだよ」

澪「私は昨日唯に会ったぞ」

律「いいなー! ここんところ会ってないなー」

澪「あいつ、すごい成長してたぞ。和のためにご飯作るって」

律「あいつが!? 嘘だろ?」

澪「私も嘘だと思ったよ。あの唯が、料理なんて。でも、唯は本気だった。
カレー、うまく作れたかな」

律「あの唯がねー」

澪「……あ。そうだ。明日、聡が来るってさ」

律「なんでさ」

澪「プロ入りがほぼ内定したから、挨拶に来るんだと」

律「そっか。聡のやつ、プロになるのか」

澪「だから、明日はごちそう作らなきゃな!」

律「ハンバーグ以上のごちそうか。じゃあ、明日は私も絶対に帰ってこない
とな!」



262: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/29(土) 20:32:51.27 ID:CpTzNWKv0

――そのころ、平沢宅は――

唯「ういー」

憂「うーいーだーよー」

和「あははははー」

憂「きゃはははー」

唯「おさけ、おーいしー!」

和「ほら唯。唐揚げ食べな唐揚げ」

唯「あーん!」

和「可愛いー!」なでなで

唯「和ー!」

和「唯ー」

憂「ういー!」

唯「たのしー!!」



313: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 15:58:37.40 ID:x9gyVQd10

――それからしばらく――

唯「くかー」

憂「すぴー」

和「……」

和「あ、暑い……」

和「いつの間に二人とも私に抱きついて寝てるのよ。昔とまったく変わらな
いわね。こういうところ」

唯「和ちゃーん……」

和「とはいえ、私が寝てたのがいけないんだけど」

憂「えへへー」

和「この二人、本当に体温高いわね。ストーブ抱えてるみたいよ」

和「離れないし」

唯「うぇー」

和「お酒臭いし」

和「……いいか。幸せだし」



315: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:03:42.58 ID:x9gyVQd10

――翌日――

唯「あったまいったい……」

憂「ガンガンする……」

和「ほら、お水持ってきたわよ」

唯「ありがとー」

和「憂も、ほら」

憂「和ちゃんって、どうして二日酔いにならないの? あんなに呑んでた
のに」

和「そういう体質なのかしらね。今日は仕事休みだから、ご飯もなにも、全部
私がやってあげるわ」

唯「なんか、和ちゃんかっこいい」

和「ありがと。それはそうと、なにか食べたいものある? もうお昼よ」

憂「和ちゃんが作ってもらったものならなんでもいいよ」

和「それは困るわ。……じゃあ、アレにしようかな」

唯「アレ……?」



316: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:09:59.10 ID:x9gyVQd10

和「――おまちどうさま」

唯「!」

和「?」

唯「和ちゃんのオムライスだー!! 憂ー!」

憂「ホントだ! やったぁ!」

和「二人とも、昔からオムライス好きだったものね」

唯「あまーい卵で包んだチキンライスー」

憂「ケチャップたくさんかけて、いただきます!」

和「落ち着いて食べなさいよ」

唯「はふっはふっ!」

和「……可愛い」

唯「和ちゃんはいい旦那さんだよ!」

和「オムライスくらいでおおげさな」

憂「ううん。このオムライス、すっごく美味しいもん!」



317: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:13:35.97 ID:x9gyVQd10

和「この姉妹。一緒にいてまったく飽きないわよね」

唯「そうかな?」

和「そうよ。いつも元気で子供っぽい唯に」

和「普段はいい子なのに、スイッチが入ると唯以上に子供な憂」

憂「ふぇ?」

和「一生離したくない幸せの象徴よ」

唯「えへへー。どうしよう、象徴だなんて照れちゃうよー」

和「誇張でもなんでもない。私、アンタたち二人を一生かけて守るわ」

憂「――」

和「憂の顔、真っ赤じゃない。そんなに恥ずかしかった?」

憂「うん。かなり恥ずかしいよ。和ちゃん」

和「自分でも、相当くさいこと言ったと思うわ。でも、本音なのでご容赦を」

唯「私も、和ちゃんと憂を離さないもん!」ぎゅー

憂「えへへー」

和「うふふ」



319: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:18:55.89 ID:x9gyVQd10

――そのころ、梓は――

梓「日本に帰ってきたのはいいけれど、ここまで暇だなんて」

梓「お母さんたちは帰ってこないし、純はイギリスだし」

梓「そのうえ、澪先輩と律先輩の居所は知らない」

梓「ムギ先輩は日曜も忙しいだろうから、会えない」

梓「そうなると、唯先輩……」

梓「いや、やめておこう」

梓「辛い思いをするだけだもん。お互いに」

梓「散歩でもしよう。もしかしたら、知ってる人に会えるかもしれない」

梓「お腹も減ったから、二郎でもしようかな」

梓「……でも、たまには他のお店にも行ってみようかな」

梓「おしゃれなお店。大人っぽいレストランでも探そう」

ドア「ニコ」



321: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:24:57.38 ID:x9gyVQd10

梓「考えてみれば、私ってそういうお店を一つも知らないんだよね」

梓「好きな食べ物がラーメンだとかたいやきみたいな、子供丸出しのもの
だし」

梓「そうだ! たいやきを買おう! アメリカにはないもんね」

梓「そうと決まれば甘味処仏陀に急ごう!」

梓「……いやいや、結局そうなるのは駄目だ」

梓「今日の目標はおしゃレストランを見つけることなんだから」

澪「……あれ、梓だよな。なんか一人で面白いからもうしばらく見ていよう」

梓「レストランっていうからには、イタリアンだよね!」

梓「イタリアンはあっちでも食べられるけどね」

澪「じゃあ、私と一緒に食事でも行かない?」

梓「ひっこんでて! 今、私は高尚な考えに――って、澪先輩!」

澪「相変わらず梓は面白いな」



323: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:32:14.37 ID:x9gyVQd10

梓「あ、あの。お久しぶりです!」

澪「うん。元気なようでなによりだよ」

梓「澪先輩はなにを?」

澪「ああ。今日の晩御飯の買い出し。今日は律の弟が来るからさ」

梓「……もしかして」

澪「そういえば言ってなかったっけ。私、律と結婚したんだ」

梓「マジですか!」

澪「うん。梓はアメリカで忙しかっただろうから、報告できなかったんだ」

梓「驚きです。そうなんですかー」

澪「……それでなんだけど、一緒にご飯でも食べない? 久しぶりに話
もしたいしさ」

梓「はい! ご一緒させてください!」

澪「うん。じゃあ行こうか」



324: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:38:23.27 ID:x9gyVQd10

――イタリアンレストラン・ツェペリ――

梓「わぁ~……」

澪「梓、ここは初めて?」

梓「はい。なんか、おしゃれなところですね」

澪「私の趣味は食べ歩きだからな。雰囲気がいい店はけっこう詳しいんだ」

梓「ここって、なにが美味しんですか?」

澪「やっぱりパスタだな。イカスミがイケるんだ」

梓「じゃあ私はそれにします」

澪「……」

梓「澪先輩、変わってないですね」

澪「そうかな。それなりに変わった気がするんだけどなー」

梓「いいえ。あの時と変わらない、素敵な澪先輩です」

澪「褒めたって何もでないぞー。……梓も変わらないよ」

梓「それ、唯先輩にも言われました」

澪「へえ、唯に会ったんだ。いつ?」



326: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:43:44.12 ID:x9gyVQd10

梓(しまった)

梓「えと、一昨日です」

澪「私も一昨日、唯に会ったんだよ。スーパーでさ」

梓「そう、なんですか……」

澪「?」

梓「唯先輩も、結婚したんですよね。和先輩と」

澪「うん。……梓、大丈夫か?」

梓「ちょっと辛かったですけど、大丈夫です……」

澪(梓が唯を好きってことを知ってるのは、私だけなんだよな。私がフォロー
してあげないと)

澪「梓にだって、きっといい出会いがあるよ。うん」

梓「ありますかね……」

澪「あるよ! アメリカのイケメン捕まえて国際結婚したりさ! 梓、可愛い
からすぐ見つかるよ」

梓「はは。……と、スパゲッティ来ましたよ」

澪「ん。じゃあ、いただきます」



327: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:47:50.55 ID:x9gyVQd10

梓(澪先輩には、言わないでおこう)

澪(唯の話題は出さないであげよう。好きだった人が結婚して幸せに暮らし
てる話なんて、聞きたくないだろうし)

梓「澪先輩、結婚しても仕事続けてるんですか?」

澪「もちろん。やりがいがあるぞー」

梓「まさか澪先輩が小学校の先生になるなんて、思いもしませんでした」

澪「人見知りだった私、さようならってやつだよ」

店員「お水、おかわりどうぞ」

澪「ふぇ!? お、お、お、おおおおお願いします!」

梓(悪化してる!?)

澪「……」

梓「……」

澪「ちょっと盛りました」

梓「はい」



329: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 16:54:13.95 ID:x9gyVQd10

澪「でも、すごいんだぞ。子供って」

梓「そうなんですか?」

澪「ああ。いつまで遊んでも疲れないんだ。身体的な能力では、間違いなく
私のほうが上だというのに、さ」

梓「確かに、昔は疲れなんて知りませんでしたよ」

澪「それを見てると、未来を感じるんだ。この子たちが大人になった姿を、
見てみたいと思うんだよ」

梓「……」

澪「だから、私は仕事を辞めない。律がなんて言っても辞めてやるもんか」

梓「律先輩と、幸せなんですね」

澪「ま、まあね。……なんだかんだで、アイツが一番私を分かってくれるんだ」

梓「なんだか、妬けちゃいます」

澪「ハハハ。いいだろ」

梓「未来……か」

澪「?」

梓「色んな国を見てきて、私は未来というものがなんなのかがわかりません」



330: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:01:55.48 ID:x9gyVQd10

澪「梓は、外交官なんだっけ」

梓「はい。アメリカだけじゃない。色んな国を見てきました」

澪「……話、聞かせてくれる?」

梓「貧しい国と裕福な国は、未来の定義が違います」

梓「裕福な国。日本やアメリカ、先進国の『未来』とはそのまま科学の発展
を意味します」

梓「ドラえもんの道具を現実にしたり、治せなかった病気を治せるようにした
り、ということです」

梓「それに関して、文句はありません。科学の発展で救われる命、幸せに
なる人がいるのですから」

梓「ただ、その対象ですら裕福な人に限られるのですが」

澪「そうだな。心臓病を手術で治せるようになったとしても、莫大なお金が
かかる。お金のない人は、その恩恵を受けられぬままに死ぬ」

梓「はい。病院に行くと、そういう人を何人も見かけます」

梓「つまるところ、先進国にとっての未来は科学の発展であり、その裏返し
のように、金の必要性がより濃くなる。ということです」



331: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:08:40.91 ID:x9gyVQd10

梓「その逆に、貧しい国での『未来』というのは『生』ということになります」

梓「私たち日本人は、放っておいても、人は大きくなるものだと考えます。そ
れは、命の危険を感じるような飢餓が身近にないからです」

梓「事実、私はこうしてイカスミスパゲッティを満腹だから、という理由で残し
ています。これこそ、飢餓を本当の意味では知らない私たちならではの行動
です」

梓「でも、貧しい人にしてみれば、こんな行動は考えられないわけです」

梓「食べなければ死ぬ。こんな当たり前のことを、私たち日本人は骨身に
染みてなどいないのです」

梓「だから残す。だから捨てる。だから、無駄にする」

梓「パンを一つ手に入れるのには金がいる。下手をすると、金があっても
手に入らないかもしれない」

梓「食べるために生きる」

梓「明日生きて眠ること」

梓「それが、貧しい国の人たちに於ける未来なのです」

澪「……」

梓「少し、疲れてしまいました。日本語で、こんなに長く話したのは久しぶり
でしたから」



334: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:14:49.04 ID:x9gyVQd10

澪「うん。梓は、色んなものを見てきたんだな」

梓「……」

澪「辛いことや悲しいこと。律と過ごして、楽しいことばかりを見てきた私と
は違う」

梓「そんなこと……」

澪「いいんだよ。無理しなくても。休んでいいよ」

梓「でも、私は――」

澪「――梓が擦り切れたら意味がない。がんばってる梓を見てると、昔
からあんなに飛ばして生きて大丈夫かなって思うんだ」

梓「――」

澪「人生は長いんだ。少しくらい走るのをやめたっていいだろ?」

梓「……じゃあ、ぎゅってしてください」

澪「……わかった。横に座るな」

梓「……」ぎゅ

澪「思えば、こんな風に梓を抱きしめたことなんてなかったな。こんなに暖かい
なんて。唯が夢中になるわけだよ」



336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:20:23.69 ID:x9gyVQd10

――夕方――

梓「それじゃあ、私はこれで。今度は、律先輩もいっしょに」

澪「そのときはうちに来なよ。ごちそう作るから」

梓「……はい!」

澪(その笑顔なら、梓は理想と現実に擦り切れることはないな。がんばれ
よ。私たちの大切な後輩!)

聡「あー! いたいた!」

澪「聡か。どうした?」

聡「姉ちゃんが怒り狂ってるんだけど……どうして?」

澪「……あ」

聡「腹減ったーって40回ほど叫んで、俺を殴りつけましてからに」

澪「しまった。律のお昼ご飯、すっかり忘れてた」

聡「あらら」



337: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:24:35.52 ID:x9gyVQd10

――田井中家・マンション――

ドア「ニコ」

律「聡ー! パン買ってきたかー!!」

澪「弟になにやらせてるんだ。まったく」

律「みおー! もとはといえばお前がー!」

澪「それは謝るけど、聡に暴力振るうなって」

律「ぶー」

聡「いいって澪姉。姉ちゃんが乱暴なのは昔からだし」

澪「……そっか。じゃあ、今日は晩御飯はごちそうだから。律も期待しろよ」

律「わーい! みおー!!」がば!

澪「うわ! や、やめろ!」

聡(すげえいい匂いする。これが女二人の愛の巣ってやつか……!)



338: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:35:03.79 ID:x9gyVQd10

澪「りつー。手伝ってー」

律「えー」

澪「りつー」

律「しょうがないなー」

聡(あの二人、本当にうまくいってるのだろうか)

律「ふぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

聡「!?」

澪「うるさい! 近所迷惑だろ!」

聡「澪姉もかなりだけどね!」

律「だって、このガーリックソースがうますぎるんだもん!」

澪「ソースだけでそんなに騒ぐな!」

聡「……あー。なるほどね」

聡(騒がしいけど、姉ちゃんはああやって澪姉を褒めてるんだ。澪姉もまん
ざらじゃなさそうだし)

聡(女心ってわかんねぇな。ま、だから彼女いないんだけどね)



339: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:42:18.74 ID:x9gyVQd10

澪「律、このお皿持っていって」

律「ほいほーい」

聡「あ。俺も手伝うよ」

澪「聡は座ってて、お客さんなんだから」

律「そーだぞー。ここは我が女房のメシをたらふく食いなはれ!」

聡「じゃあ、そうさせてもらおうかな」

律「うんうん。……聡、やっぱりでかくなったなぁ」

聡「プロスポーツ選手になるにはこれくらいないと。大学の部活じゃあ、も
っとでかい人いるよ」

律「もう、いっつも私の後ろで、お姉ちゃんお姉ちゃん言ってくっついてきた
ちび助じゃないんだな」

聡「いつの話だよ。それ」

律「昨日のような気もするけど。もうあれからかなりの時間が経ったんだよ
な」

澪「私たちも、大人になるわけだよ。さあ、聡。どんどん食べな」

聡「うん。いただきます」



342: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:48:12.99 ID:x9gyVQd10

律「うめー!」モグモグ

聡「澪姉の料理、最高だよ!」

澪「フフ。ありがと。そう言ってもらえると、作った甲斐があったよ」

律「今日何も食わなかったからな。誰かの所為で!」

澪「根に持つな」

律「ふーんだ」

聡「姉ちゃん、子供みたいだぞ」

律「なにお! 私は大人だ!」

聡「はい」

律「流すなー!」

澪「律はさておき、聡はプロでもやっていけそうか?」

聡「もちろん。自信がなきゃあ大学まで続けないしプロにもならないよ」

律「子供の頃の約束だと、契約金は姉と弟で7:3だよな」

聡「捏造すんな」

澪「プロかぁ。私たちはプロにはなれなかったから、聡に頑張ってほしいな」



345: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:54:47.29 ID:x9gyVQd10

――夕食終わって――

聡「……姉ちゃん」

律「ん?」

聡「親父、寂しそうにしてたよ」

律「……」

聡「おふくろだってそうだ。姉ちゃん。そろそろ帰っても――」

律「うるせえ……」

澪「――」

皿「カチャカチャ」

聡「澪姉との結婚、認めてもらえなかったこと。まだ――」

律「私は澪が好きなんだ。父さんも母さんも、女同士だからって理由で、澪
まで馬鹿にした! 許せるか、そんなの!」

聡「だから駆け落ちした。……でも、姉ちゃんたちは町を離れずにここに
いる。それはどうしてなんだ?」



346: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 17:57:40.68 ID:x9gyVQd10

律「私の私情じみた理由で、澪の大事な思い出があるこの桜ケ丘から、
離れたくないってだけだ」

聡「……そう、か」

律「でも、聡。お前だけは私たちに味方してくれた。だから、お前にだけは
ここを教えたんだぞ」

聡「……ありがとう。姉ちゃん」

律「なあ、聡」

聡「なに?」

律「もし、私に何かあったら、澪をよろしくな。アイツ、さびしさで死ぬような、
ウサギみたいなやつだから」

聡「可能性が0じゃないことだから了解。でも、澪姉を幸せにできるのは
姉ちゃんしかいないよ」

律「さんきゅ」

聡「ああ。そろそろ帰るけど、親父たちには、元気してたって伝えておくから」

律「ん。……あ。そうだ」

聡「?」

律「彼女、出来たら連れて来いよな」



348: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 18:04:05.56 ID:x9gyVQd10

――そのころ、平沢宅では――

唯「ういー」

憂「ういだよー」

唯「頭痛いのなくなってきたー」

憂「私もー」

唯「和ちゃんに構ってほしー」

憂「ミートゥー」

唯憂「和ちゃーん!」

和「なによ」

憂「だっこ」

唯「おんぶ」

和「無理よ」

唯「頭痛ーい」

和「さっきの会話を聞いてないと思う?」

憂「そりゃあそうだよね。お姉ちゃん、そろそろお風呂入ろうか」



350: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 18:11:18.29 ID:x9gyVQd10

――浴室――

唯「お酒はもうこりごりだよー」

憂「そんなこと言って、明日には飲むんでしょ?」

唯「私の意志は石より硬い。医師にも負けないそんな気持ち」

憂「ラップ?」

唯「DISってんのかメーン?」

憂「足広げてそんなこと言っても仕方ないよ」

唯「きゃ!」

憂「……」

唯「み、見たなー!」

憂「……」

唯「……申し訳ない」

憂「はい」

唯「和ちゃんの晩御飯、楽しみだね」

憂「そうだね」



351: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 18:17:22.14 ID:x9gyVQd10

唯「そういえば、憂は私たちと一緒にいて大丈夫?」

憂「なんで?」

唯「お姉ちゃんたちの幸せだけじゃなくてさ。憂の幸せも――」

憂「今のこの場所が、私の幸せなんだよ」

唯「……いいの? それで」

憂「いいの。というか、それを望んでるの。お姉ちゃんと和ちゃんの側で、
ご飯を作ってあげたい」

唯「……ごめんね」

憂「謝ることなんて、なにもないよ」

唯「……でもね。憂」

憂「?」

唯「もし、憂に大切な人が見つかったら、私たちに構わないでいいからね。私
も、頑張って和ちゃんのお嫁さんらしくするから」

憂「……うん」

唯「大好きだよ。憂」

憂「私もだよ。お姉ちゃん」



353: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 18:22:58.53 ID:x9gyVQd10

唯「和ちゃん。出たよー」

和「はい。着替え」

憂「今日のご飯は?」

和「今日はエビフライとメンチカツよ」

憂「おいしそー」

唯「わーい! 早く食べよう食べよう!」

和「じゃあ、準備手伝ってくれる?」

憂「はーい」

唯「わ、私もやるー!」

和「唯はお皿出しておいてちょうだい。憂は大皿ね」

憂「和ちゃんのお料理ー」

唯(和ちゃんの中では私よりも憂なのー?)しくしく

和「大丈夫よ。安心しなさい」

唯「心を読んだ!」



354: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 18:28:21.53 ID:x9gyVQd10

――夫婦の寝室――

唯「今日はありがとね。和ちゃん」

和「いいのよ。これくらい」

唯「ううん。それでも、ありがとう」

和「じゃあ、どういたしまして」

唯「昔から、私たちは和ちゃんに甘えっぱなしだね」

和「まったくよ。……でも、悪い気はしないからいいわ」

唯「えへへ。愛されてるなー」

和「愛してるわよ」

唯「……なーんか、ムラムラしてこない?」

和「サルじゃないんだから、これくらいじゃあしないわよ」

唯「私お猿さん!?」

和「明日はお仕事だから、寝るわ。おやすみ」

照明「パチン」

唯「ぶー。おやすみ」



369: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 20:14:34.27 ID:x9gyVQd10

――翌日――

和「いってきます」

憂「いってらっしゃーい」

唯「くかー」

憂「お姉ちゃん。和ちゃんが行っちゃうよ」

唯「うう~」

憂「まったくもう。でも、可愛いからいいかな」

唯「おやすみなさい」

憂「おやすみ。お姉ちゃん」

ドア「ニコ」

憂「さて、今日は天気もいいからお散歩でもしようかなー」

憂「……ふわぁ」

憂「私も一眠りしよう。それから、お散歩に出かけることにしよう」



370: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 20:19:29.01 ID:x9gyVQd10

――そのころ、梓は――

梓「ふわぁ~」

梓「結局、昨日は澪先輩と別れてからはパソコンして寝ちゃったんだっけ」

梓「……」

梓「ひどい、顔」

梓「昨晩観た映画の所為だよね」

梓「……そうだよ。映画の所為だ」

カーテン「ザァァ」

梓「今日もいい天気だなぁ」

梓「よし、散歩しよう」

梓「シャワー浴びて、着替えてから散歩しよう」

梓「明日にはアメリカに戻らなきゃいけないし、故郷巡りも悪くないよね」



371: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 20:25:40.08 ID:x9gyVQd10

ドア「ニコ」

梓「それじゃあ、行こうかな」

梓「まずはどこに行こう」

梓「まだ昼間の11時だし、お店に入るのは散歩とは違うしね」

梓「桜高まで、行ってみようかな」

梓「うちから遠くもないし、行ってみよう」

梓「後輩たちが頑張ってる姿を見てこよう。うん」

梓「後輩、か」

梓「軽音部。なくなっちゃったんだよね」

梓「仕方ないか。だって、部員がいないんだもん」

梓「しょうがないよね」



372: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 20:31:41.39 ID:x9gyVQd10

梓「――着いた」

梓「授業中なのかな? ずいぶん静か」

梓「……ここを卒業して、もう6年か」

梓「楽しかったなぁ」

梓「朝学校に来ると、憂がいて、純がいて、部活に行けばムギ先輩のおい
しいお菓子とお茶を食べさせてもらって、唯先輩が私に抱きついてきて、
うっとおしいけど、気持ちよくって。律先輩と澪先輩がふざけあって――和
先輩が書類を取りに来て、さわ子先生が服持ってきて――」

梓「さわ子先生……」

梓「今も、いるのかな?」

憂「いるよ」

梓「え?」

憂「お姉ちゃんから聞いたんだ。さわ子先生は、まだこの学校の先生だって」

梓「う、うい?」

憂「えへへ。ういだよー」

梓「ひさ、しぶり――」

憂「うん。久しぶりだね。梓ちゃんっ」



376: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 20:40:24.50 ID:x9gyVQd10

梓「どうして、ここに?」

憂「んー。天気がいいから、お散歩かな。梓ちゃんも奇遇だよね。帰ってき
てたんだ」

梓(唯先輩、憂に話してないんだ……)

梓「うん。ちょっと前に、ね」

憂「連絡してくれればよかったのにー。お姉ちゃんも喜ぶよっ」

梓「ごめんね。私、あっちにいることが殆どだから、ケータイ持ってないんだ
よ。憂は元気してた?」

憂「もちろん。梓ちゃんは、ちょっと元気なさそうだね」

梓「そう見える? ――まあ、見えても仕方ないか」

憂「?」

梓「ねえ、憂」

憂「なぁに?」

梓「学校、忍びこんじゃおうか」

憂「……うん。いいよ」



377: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 20:44:19.36 ID:x9gyVQd10

――桜高校内――

憂「バレたりしないかな?」

梓「どうだろ。でもまあ、卒業生って言えば平気でしょ」

憂「それもそうだね。さわ子先生もいるし」

梓「さわ子先生かぁ。会ってみたいかも」

憂「私もー。お姉ちゃんは会ったみたいだけど、私は会ってないんだよ」

梓「うーん。どこにいるんだろ」

憂「やっぱり職員室かな?」

梓「いや……。憂、今の時刻は?」

憂「11時45分だよ」

梓「じゃあ、多分あそこだろうね」

憂「?」

梓「ついてきて。憂」

憂「う、うん」



378: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 20:51:50.87 ID:x9gyVQd10

憂「ここ?」

梓「多分ね。自身はないけど」

ドア「ニコ」

梓「――!」

唯『あ、あずにゃん! ぎゅー!!』

律『遅いぞー!』

澪『今日は練習するぞ。梓』

紬『今日はブルーベリータルトよ』

梓(――あれ?)

さわ子「あ、あなたたち――?」

憂「さわ子先生、ですよね?」

さわ子「……憂ちゃん。梓ちゃん。どうしてここに?」

梓「そりゃあ、恩師に会いに。ですよ」



380: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:01:30.13 ID:x9gyVQd10

さわ子「恩師、ねえ。そんなガラじゃないと思うけど?」

梓「そんなことないです。さわ子先生がいなかったら、楽しくなかったと思う
んです」

さわ子「唯ちゃんたちがいたじゃない。それじゃあ足りなかった?」

梓「全然足りませんよ。先生が持ってきた猫耳があったから、唯先輩
は私をあずにゃんって呼んだんですから」

さわ子「それもそうね。……もう、8年前になるのね」

梓「はい。先生は、なんだか落ち着きましたね」

さわ子「そりゃあそうよ。私だって、もう三十路越えよ?」

梓「そうは見えませんよ。あの時と全く変わってません」

さわ子「おせじ? 梓ちゃんも大人になったわね」

梓「いえいえ。そんな気がきく人間に見えます?」

さわ子「ハハ。見えないわね。正直」



383: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:06:48.93 ID:x9gyVQd10

憂「でも、先生がまだこの学校にいてくれてよかったです」

さわ子「なんか、居心地いいのよ。出身もここだしね。特に、この音楽準備室
は特に、ね」

梓「……机と椅子の配置。変わってませんね」

さわ子「片付けるのが面倒なだけよ」

梓「そういうことにしておきます。憂も座れば?」

憂「うん。じゃあ、私はお姉ちゃんの席に」

さわ子「……唯ちゃんは、元気?」

憂「はい! 毎日ごろごろしてます!」

さわ子「でしょうね。まったく。あの子ったら、私よりも先に結婚するなんて」

梓「先生は?」

さわ子「……ただいま絶賛婚活中よ。私のなにがいけないのかしら」

梓(ホントに、昔から不思議だよ。先生、美人なのに)

憂「澪さんも律さんも元気みたいですよ」

梓「ムギ先輩も、色々あったけど元気にしてるみたいです」

さわ子「そう。……そう」



384: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:16:19.60 ID:x9gyVQd10

梓「あの、先輩たちは来ないんですか?」

さわ子「来るわけないでしょ。あの子たちは、それでいいの」

憂「でも、お姉ちゃんも和さんも先生に会いたいって――」

さわ子「なら伝えておきなさい。あなたたちにとって、私という存在は通過点
なのって。本来なら、憂ちゃんたちにとってもそうなのよ?」

梓「そんな……。悲しすぎます」

さわ子「教師っていうのは得てしてそうなのよ。自分という存在は、振りか
えるものじゃあない。たまーに思い出して、ベッドの中で笑う。それくらいの
存在でちょうどいいのよ」

憂「先生……」

さわ子「あなたたちは大人になってくる。でも、私はどんどんおばさんに
なってくる。自慢じゃないけど、校内一の美人教師だった山中さわ子は、
今となっては中堅の音楽教師になりつつあるの。思い出は、思い起こす
ので十分。壊したり、カタチを変えたりするものではないわ」

梓「今も、先生は綺麗ですよ」

さわ子「……梓ちゃんは優しいのね」



387: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:22:20.00 ID:x9gyVQd10

梓「いいえ」

さわ子「でも、まあ。私もこうして此処にいるってコトは、『そういうこと』なの
かもね。一番パワーがあって、一番楽しい子たちに囲まれたアノ時間に、
想いを寄せているだけなのかもしれないそれだって、決して悪いことではな
いんだから、ね」

憂「……大人になるって、そういうことなんですか?」

さわ子「?」

憂「昔にあったことを、まるで映画のように思い出す。それが、大人なんですか?」

さわ子「もちろん、それだけじゃあないわよ。30過ぎたって、新しいものは
新鮮よ。ただ、そういうものが少ないだけ」



388: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:24:37.90 ID:x9gyVQd10

憂「……」

さわ子「つまらない大人。きっと、私はあなたたちにはそう映るのかもしれな
い。でもね、私があなたたちと同じ年の時――そう、唯ちゃんやりっちゃん。
澪ちゃんにムギちゃん。軽音部の子たちに出会ったときは、それはもう、
新鮮だったわ」

梓「――」

さわ子「この子たちは新しいことをしている。その一端を、私は担っている。
そう思うと、胸がドキドキして、毎日のようにベッドの中で笑ってたわ」

憂「私たちと、同じ年のとき……」

さわ子「だから、人生はつまらないものじゃない。二人も、毎日ベッドの中で
思い出して、笑っちゃうくらいに楽しいことを見つけなさい」

梓憂「――はい」

さわ子「説教くさくなっちゃったけど、私の、あなたたちに対する最後の授業
よ。つまらない大人になってもいい。でも、新しいものを見つける心を忘れ
ないで」

梓「失礼、します」

ドア「ニコ」

梓(ありがとうございます。きっと、私の中であなたは、いつまでも恩師で
い続けるでしょう。また、会えたら)



389: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:30:07.22 ID:x9gyVQd10

――夕方――

憂「日、落ちてきたね」

梓「うん」

憂「……私、先生みたいな大人になりたい」

梓「私も……」

憂「――」

梓(そうだよね。きっと、私は憂に隠し事をしたくないんだ)

梓(先生のような大人になるために、過去の決算をしなくちゃ――)

梓「あのさ、憂」

憂「なぁに? 梓ちゃん」

梓「話したいことが、あるの」

憂「……」

梓「だから、今からうちに来てほしい。いい?」

憂「――」

憂「うん。梓ちゃんの話。聞かせて」



392: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:40:40.36 ID:x9gyVQd10

――中野宅・梓の部屋――

梓「……」

憂「……」

梓「憂」

憂「?」

梓「一昨日、唯先輩に会ったの」

憂「!?」

梓「スーパーの前に、唯先輩がいて、一緒に喫茶店に入ってお話しした」

梓「私、そこで初めて唯先輩が和先輩と結婚してることを知ったの」

梓「笑っちゃうよね。それを聞いて、私はどうしようもないくらい嫉妬したの」

梓「頭の中、ぐちゃぐちゃになっちゃってね。ここに誘ったの」

梓「ゆっくりお話ししましょうって言ってさ」

梓「ここで少し話して、唯先輩を見ると――悔しくて、悔しくて」

梓「どうして、私の隣にこの人はいないんだろうって。どうして私はこの人の
側にいられないのだろうって」

梓「気がついたら、ベッドに押し倒してた」



394: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:43:54.21 ID:x9gyVQd10

憂「――それって」

梓「そうだよ。憂の思ってる通り。私、唯先輩と――」

憂「馬鹿……」

梓「馬鹿だよ。私」

憂「どうして……」

梓「唯先輩が、欲しかったから……」

憂「どうして……どうして」

梓「ごめんね。憂」

憂「!」パンッ

梓「……叩かれても文句言えないよ。私は、それでも足りないことをしたんだ
から」

憂「馬鹿……梓ちゃんの、馬鹿っ……」ぎゅ

梓「……え?」



396: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:48:39.80 ID:x9gyVQd10

憂「私を……選んでよ」

梓「え?」

憂「私を、平沢憂を選んでよ!」

梓「う、うい?」

憂「お姉ちゃんはもう平沢唯じゃないの! 真鍋唯なの! 私を――平沢憂
を選んでよ!」

梓「――」

憂「ずっと、ずっとずっと好きだった。大学卒業して、アメリカに行っちゃって、
寂しくって悲しくって。どうすればいいのかわからなかった!」

憂「お姉ちゃんや和さん……和ちゃんと一緒にいても、梓ちゃんと一緒にい
たほうが楽しかったの。それがどういう意味だか、わかる?」

梓「……あ」

憂「どうしても梓ちゃんが、欲しかったからだよ」

梓「でも……私は……」

憂「それでも、梓ちゃんが唯を選ぶんなら――」

ベッド「ぼすっ」



397: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 21:51:43.68 ID:x9gyVQd10

梓「――憂?」

憂「……」ハラリ

梓「あ」

憂「似てるでしょ? 唯に。お姉ちゃんに」

梓「――うん」

憂「必要だったら、私なんていらない。私がお姉ちゃんの代わりに唯に
なって、梓ちゃんの側にいる」

憂「だから、そんなに悲しい顔をしないでよ」

梓「……」

憂「脱がすよ。あずにゃん」

梓「……」

憂「――」

省                  略



401: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 22:28:32.21 ID:x9gyVQd10

憂「――あずにゃ~ん」

梓「……私ね」

憂「?」

梓「明日、アメリカに帰るんだ」

憂「……うん」

梓「それでなんだけど……」

憂「――」

梓「一緒に、来てほしいんだ」

憂「え?」

梓「旅費もなにもいらない。パスポートと着替えだけでいい。あとは、私が
なんとかするから」

憂「……あず、にゃん?」

梓「その呼び方もいらない。私は、平沢憂が欲しいの」

憂「……駆け落ち、だね。……うん。連れていって。私を、梓ちゃんと一緒
に、遠いところまで」

梓「それじゃあ、明日の朝6時に私の家の前に……ね」ちゅっ



413: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 23:35:23.41 ID:x9gyVQd10

――憂、帰り道――

憂(梓ちゃんと、駆け落ち……)

憂(嬉しいのかな。私)

憂(お姉ちゃんと和ちゃんを、おいて……)

憂(それでいいの? それで、私は幸せなの?)

憂「わかんないよ……」

憂「でも、あんな梓ちゃんの顔見たら……考えることもできない」

憂(そうだよね。お姉ちゃんも和ちゃんも許してくれるよ)

憂「そうだよね」

憂「うん」



414: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 23:39:00.33 ID:x9gyVQd10

ドア「ニコ」

憂「ただいまー」

唯「ういいいいいいいいいいい!!!」がばっ

憂「うわっ!」

唯「和ちゃんがいじめるー!」

憂「!?」

和「なに言ってるのよ。あ、気にしないでいいわよ。憂」

憂「なにかあったの?」

和「あー。ちょっと、ね」

唯「うわーん」

憂(なんてわかりやすい嘘泣き……)

唯「和ちゃんがピーマン食べなさいって言うのー」

唯「憂は私の味方だよね!」

憂「……ごめんね。私、ちょっと疲れてるの」

唯「え? う、憂?」



415: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 23:42:25.09 ID:x9gyVQd10

――憂の部屋――

ベッド「ぼすん」

憂「……お姉ちゃんたちは、今が一番幸せなんだ」

憂「私は、どうなんだろ」

憂「ご飯作ってる時よりも、お姉ちゃんとお風呂入るよりも、和ちゃんに抱き
つくよりも――」

憂「梓ちゃんを抱きしめてる時が、一番気持ちよかった」

憂「なら、今の私はなんなの?」

憂「自分を犠牲にしてきたつもりなんて、ない。お姉ちゃんのためになにか
することが、実際に幸せだったから」

憂「――それ以上の幸せを、見つけてしまった」

憂「新しいことは新鮮。先生は言ってくれた」

憂「……苦しいよ」

憂「明日までに、結論を出さなきゃいけないなんて」

憂「……そんなの、無理だよ」



416: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 23:45:46.51 ID:x9gyVQd10

――居間――

唯「あうー」

和「憂ったら、どうしたのかしら」

唯「ぴーまんー」

和「食べなさい。……まあ、あの子だって女の子なんだから、そういう日も
あるわよね」

唯「ピーマン嫌いー」

和「私は?」

唯「好きー」

ケータイ「ふわふわターイム! ふわふわターイム!」

唯「あれ? 電話だ」

唯「もしもーし! ……え?」

唯「和ちゃん。ちょっとごめんね。ピーマンは必ず食べるからね」

ドア「ニコ」



418: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 23:50:07.48 ID:x9gyVQd10

――憂の部屋――

憂「……」

憂「駄目だ。わかんないよ」

憂「幸せってなんだろ」

憂「お姉ちゃんの新婚生活を間近で見ていれば、それがわかると思った」

憂「ううん。わかったつもりでいた」

憂「でも、こうして今。私は悩んでいる」

憂「それは、結局幸せというものを理解できなかった結果だよね」

憂「……」

憂「梓ちゃん」

憂「……ごめんね」



419: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/30(日) 23:56:27.10 ID:x9gyVQd10

――夫婦の寝室――

唯「……」

和「唯?」

唯「……ねえ、和」

和「なに?」

唯「えっち、したい」

和「……いいわよ」

唯「うん。愛してるよ」

和「私もよ。唯」

唯「……」

和「……」

唯「和ぁ……」

和「今日は、私がしてあげるわね」

唯「うん……」



420: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:00:46.22 ID:LaNtxblu0

和「ほら、服くらい自分で脱ぎなさい」

唯「えぇ~。脱がせてよぉ~」

和「赤ちゃんじゃないんだから」

唯「ん~」

和「……まったく、可愛いんだから」

唯「可愛くないもん」

和「可愛いわよ。もう濡れてるし」

唯「濡れて、ないもぉん!」

和「じゃあ、これはなぁに?」

唯「やぁ……!」

和「自分のなんだから、自分で綺麗にしなさい」

唯「う、うん……」ぺロ

和「しょっぱいでしょ?」

唯「変な味……」

省             略



422: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:07:50.41 ID:LaNtxblu0

唯「くーくー」

和「可愛い寝顔ね」

和「……」

和「アンタは、いいえ。アンタと憂は絶対に守るわ」

和「約束したものね」

和「だったら、することなんて決まってるわよね」

和「……バレてないと思ったら、大間違いなんだから」

唯「むにゃむにゃ」

和「私が男だったら、なんて思うこともあるわよ」

和「それなら世間からも正常な目で見られる」

和「律と澪は、その目に耐えられずに駆け落ちした」

和「私たちは、これから大変よ」

和「でも、絶対に守ってみせるから」

和「……」

ドア「ニコ」



425: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:12:07.86 ID:LaNtxblu0

――次の日――

憂「……朝、か」

憂「もう、6時か」

憂「ごめんね。梓ちゃん」

憂「私には、あなたを背負えない」

憂「……着替えよう」

タンス「がさごそ」

憂「あれ?」

憂「着替え、なくなってる?」

ドア「ニコ!」

唯「憂!」

憂「今日は早いね。おはよう」

唯「違うの! 来なさい!」

憂「え!?」



426: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:14:50.24 ID:LaNtxblu0

クルマ「ボボボボボボボ」

憂「え?え?」

唯「乗って!」

律「そうだぞ! 憂ちゃん!」

憂「え?」

ドア「ニコン」

憂「あれ?」

唯「出発! いってくるぜ! 和!」

和「はいはい。……憂、後悔しない行動をしなさい」

憂「……はい?」

澪「唯、急げ! このままだと――」

唯「ぶっとばして行くぜー!!」

紬「行きなさい! フェラーリエンジンを積んだ最強のワゴン!」

クルマ「ギュアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



428: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:18:57.58 ID:LaNtxblu0

憂「どういうことなの!? お姉ちゃん!」

唯「あずにゃんから電話があったの! 駆け落ちのこと。来ないでってこと
を伝えてほしいって」

憂「え?」

唯「憂のケータイは電源切れてるから、私に教えてくれたの。憂の人生を
狂わせることはできないって」

憂「それじゃあ、みなさんは?」

澪「夜中に和から電話があったんだ。唯がなにかやらかしそうだから、朝
一番に来てくれって」

律「憂ちゃんが抵抗するなら、私が腕づくでクルマに乗せるつもりだったん
だよ」

紬「それで、唯ちゃんの家のクルマじゃあ成田まで最速で行けない。だから、
私がクルマを手配したの」

唯「そういうことだよ! 舌噛まないように気をつけて!」

憂「ひゃああああああ!!!」

唯「憂! 絶対に憂の幸せを逃がさないからね!」



430: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:23:21.65 ID:LaNtxblu0

ケータイ「うーいー! あーいーすー」

憂「……もしもし?」

和「ざまあみなさい。お姉さんたちが、アンタを全力で幸せにするわよ。それ
が、たとえ押し付けでもね」

憂「どうして……」

和「簡単な話よ。もう、アンタは自分を犠牲にする必要なんて、ないのよ」

憂「……」

和「じゃあね。お幸せに」ブツッ

唯「ムギちゃん! ETC突っ切っていい!?」

紬「駄目なわけないでしょう!」

唯「わかった!」

ETCバー「バーン!」

律「ヒュー!」

澪「派手にやるなぁー」



433: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:27:32.11 ID:LaNtxblu0

唯「もう高速道路だよ! 逃げられないよー」

憂「……」

澪「ほら、憂ちゃん。おにぎり、食べておきな」

律「澪のおにぎり、美味しいんだぜー」

紬「私、友達と暴走行為するの、夢だったの!」

唯「みんな! これで色々やっばいね!」

澪「これで私は危険教師のレッテル貼られるぞー!」

律「私だって! 出版社クビ間違いないぜ!」

紬「さーて、契約何個吹き飛ぶかなー」

憂「……皆さん。それなのに、どうして……」

律「なんでって……なあ」

紬「決まってるじゃない」

澪「憂ちゃんを幸せにしたいから、だよ」



435: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:30:25.83 ID:LaNtxblu0

パトカー「そこのワゴン、止まりなさい!」

唯「ありゃりゃー。どうするー?」

澪「訊く必要あるのか?」

唯「なーい」

律「だったら、一つしかないだろ」

紬「そうよそうよ! ぶっちぎっちゃいなさい!」

唯「だよねー」

パトカー「……―――! ――!」

憂「もう、パトカーの音も聞こえないや」

澪「君を見てると、いつもハートどきどき」

律「揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわってか!」

紬「ここ何年かで、一番楽しー!」



437: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:34:30.36 ID:LaNtxblu0

――桜高・職員室――

キャスター「ごらんください! 押しも押されぬ法治国家の我が国に於いて、
カーチェイスが行われています!」

キャスター「乗っているのは5人の女性ということです!」

さわ子「……あら」

さわ子「あの子たち、いくらなんでもやりすぎよー」

さわ子「でーもっ」

さわ子「もしもしりっちゃん? ええ。どうせ運転してるのは唯ちゃんでしょ?
……やっぱり、じゃあ伝えておきなさい!」

さわ子「つまんない大人たちを、ひっくりかえしちゃいなさい!!」

さわ子「……うん。それじゃあ、頑張りなさい」

さわ子「……あはは。これで私も犯罪者になっちゃうのかなー」

さわ子「ま。いっか」

キャスター「パトカーはまったく追いつけずに――」ブツッ

さわ子「さーて、つまらない大人は仕事仕事ーっと」

ドア「ニコ」



438: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:37:49.61 ID:LaNtxblu0

律「おーい! 唯ー!!」

唯「なにー!?」

律「さわちゃんが、ぶっとばせー! だってさ」

唯「言われなくても! ぶっとばすよ!」

澪「あははー!!」

紬「もう、止まれないわよー」

憂「……あはは」

澪「?」

憂「あははー!! お姉ちゃん、私を連れて行って!」

唯「それも言われなくても!」

律「ぶっとばせー!!」



441: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 00:51:26.82 ID:LaNtxblu0

唯「あとどれくらい!?」

紬「あと40キロよ! もう少し!」

ケータイ「りつー! でんわだぞー! りーつー!」

律「なんだよー。澪ー」

澪「何度も言うが、お前が吹き込ませたんだろ」

律「もしもしー」

律「!?」

律「……聡か」

律「うん。わかってるよ」

律「父さんと母さんに伝えておいてな」

律「もうちっと、迷惑掛けちまうって」

律「これ終わったら、絶対澪連れて帰るから」

律「ごめんな。聡。……でも、私はこれで後悔しないから」

律「ああ。じゃあな」ピッ

律「――さあ! あと40キロいっくぜー!」



443: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 01:11:49.39 ID:LaNtxblu0

唯「到着! 憂、ゴー!」

憂「お姉ちゃんは!?」

唯「気にしないの!」

律「ほら、荷物だ!」

澪「おにぎり。持っていきな」

紬「梓ちゃんに伝えて、私は、大丈夫だって!」

憂「澪さん、律さん、紬さん……」

警官「見つけたぞ! 暴走車だ!」

唯「!?」

唯「憂!」

憂「……」ダッ

律「行っちまったな」

澪「新しい就職場所探さなきゃなー」

紬「いっそみんな一緒のところに勤めて、HTT再結成?」

唯「いいね! それ!」



445: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 01:20:55.95 ID:LaNtxblu0

――空港内――

梓(憂……来てくれなかったな)

梓「でも、まあ仕方ないか」

梓「来るなって言ったのは私だもんね」

「――!」

梓「ん?」

「――ん!」

梓「……?」

「あず――ん」

梓「唯、先輩?」

「梓ちゃああああああああん!!」

梓「いや、違う……。憂!」

憂「梓ちゃあああああああああん!!!!!」ガバァ!



446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 01:24:29.71 ID:LaNtxblu0

梓「うい……?」

憂「ういっ! だよー!」

梓「……どうして、来たの?」

憂「梓ちゃんが、来てほしいって言ったから」

梓「来ないでって伝えられなかった?」

憂「さっき、お姉ちゃんに聞いた」

梓「じゃ、じゃあ!」

唯「ういー!」

警官「こら! 静かにしろ!」

梓「……うい」

憂「行こう。梓ちゃん」

澪「幸せになー!」

梓「――はいっ!」



448: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 01:32:11.47 ID:LaNtxblu0

――それから、3年――

唯「和ー」

和「どうしたの?」

唯「憂は、元気かなー」

和「あの子は大丈夫よ。アンタとは違うんだから」

澪「そうだぞー。憂ちゃんと梓なら、きっと平気だよ」

律「今日は聡の日本代表おめでとう会だろー」

紬「ふふっ。そうね。聡くん、おめでとう」

聡「は、はい! 恐縮です!」

純「数年ぶりに日本に帰って来たと思ったら、すごいことがあったんですね」

さわ子「本当よ。どうして混ぜてくれなかったのー?」ぶすー

純「いや、そうじゃなくって……」

唯「和ー」ぎゅー

和「はいはい」



450: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 01:38:45.88 ID:LaNtxblu0

律「和ー! おかわりー!!」

唯「チッチッチ! 今日もご飯は私が作ったんだよ!」

澪「もう、きちんとした主婦じゃないか」

唯「うん! もう、憂がいなくても――」

ドア「ニコ」

「憂がどうかしたんですか?」

唯「?」

「もう、梓ったら。いきなり喧嘩腰じゃあ駄目だよー」

梓「ご、ごめんね。大事な報告のために帰ってきたのに」

律「!?」



451: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 01:39:32.05 ID:LaNtxblu0

澪「大事な報告って?」

梓「ごほん。私たち! 結婚することになりました!」

紬「え?」

さわ子「横にいる人と?」

純「もしかして、その人って……」

和「まさ、う――」

唯「憂?」



憂「ういだよー。私たちの新婚生活、応援してね!」





                                     おしまい



494: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 20:41:48.01 ID:LaNtxblu0

――憂をアメリカに送って、一カ月――

唯「暇だなー」ゴロゴロ

和「澪たちは再就職したっていうのに、ずいぶん呑気ね」

唯「だってー」

和「専業主婦って言いたいんだろうけど、家事も殆どが私担当じゃない」

唯「ゴミ捨ては行ってるじゃん」

和「……はぁ」

唯「ドライブでも、行こうかなー」

和「アンタ、あの一件で免許取り消し食らってるじゃない」

唯「そうだったー。ねえ、和ちゃん」

和「?」

唯「ちゅー、しよ」

和「今はそういう雰囲気じゃないでしょ。空気読みなさいよまったく」

唯「あうー」



495: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 20:46:22.61 ID:LaNtxblu0

和「あうーじゃないの。ほら、ご飯できたから起きなさいって」

唯「はーい。あ、でもトイレ!」

ドア「ニコ」

和「……」

和「憂がいなくなっても、全然変わらないわね。これから先の夫婦生活に
不安を覚えるわ」

和「せめて、料理くらいしてくれないかな」

和「仕事はクビにならなかったけど、私も色々大変なんだから」

和「……」

和「でも、私が唯を守るって決めたんだから」

和「辛い、なんていうのは甘えよね」

和「――!」ズキッ

和「最近、頭痛がする。疲れてるのかしら……」



496: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 20:53:00.13 ID:LaNtxblu0

唯「――おーいしーい!」

和「そう。ありがとね」

唯「和ちゃんはお料理の天才だね!」

和「憂には負けるわよ。……ほら、あーん」

唯「あむっ。モグモグ」

和(美味しそうに食べてもらえるのは、ホントに嬉しいわよ)

唯「この餃子美味しすぎ!」

和(……ただ、やっぱり唯のご飯も食べたいな)

唯「和ちゃんー! あーん!」

和「ん」モグモグ

唯「……ねえ」

和「どうしたの?」

唯「和ちゃんは、私に家事してほしい?」



497: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 20:59:56.90 ID:LaNtxblu0

和「え?」

唯「そりゃあそうだよね。こんなニートが嫁なんて嫌だよね」

唯「澪ちゃんみたいに、ちゃんとしたお嫁さんになれなくってごめんね」

唯「せっかく一緒になってくれたのに、私みたいな女で……」うるうる

和「!?」

唯「ごめんね……ごめんねぇ……」

和「ど、どうしたのよ?」

唯「ふぇえええええええええん!!!」ボロボロ

和(……この子ったら、二日目になるといつもこうなのよね。腹痛とかは軽いく
せに、ちょっと気持ちが弱くなるのよね)

唯「和ちゃ~ん!!」

和「はいはい。唯は私のお嫁さんだから、捨てたりなんてしないから安心
しなさい。ね?」

唯「ぐすっ。本当?」

和「本当よ。ささ、ご飯食べてお風呂入って、お腹温めて寝なさい」

唯「うん……。ありがとう。和ちゃん」



498: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 21:07:20.41 ID:LaNtxblu0

――夫婦の寝室――

唯「んー……」

和「この寝顔見てると、色んな疲れなんてどうでもよくなるわね」

和「……」じー

和「ああ、可愛い」

和「今年で25なのに、まるで小学生みたい」

和「……でも、身体のほうはきっちり大人で」

和「たまらないわよね」

和「――ああ。いけない。唯に毒されてるのかしら」

和「私、こんなに性欲あったっけ?」

和「いやいや」ブンブン

和「この子が可愛すぎるのがいけないのよ」

和「……もう、寝よう」

和「……でも、少しくらい触っても――」

和「――いやいや、私はそういうキャラじゃないでしょ。おやすみ」



499: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 21:14:45.72 ID:LaNtxblu0

――そのころ、田井中夫妻は――

律「――なあ澪ぉ……」

澪「い・や・だ!」

律「痛くしないからー」

澪「断る!」

律「奥まで入れないから、ね? いいだろ?」

澪「律は絶対痛くするから、嫌だ」

律「うう~。気持ちいいのにさー」

澪「……本当に、痛くしない?」

律「ああ。約束する」

澪「……じゃあ、いいよ」

律「ほら、横になれよ」

澪「だってぇ。りっちゃんのそれ……」

律「まったく。耳掃除くらいでそんなに騒ぐなよなー」



500: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 21:20:50.23 ID:LaNtxblu0

澪「ひゃわぁ!」

律「ふっ! よし、これでOK! ほら、交代!」

澪「……律って、独りよがりだよね」

律「そうかな?」

澪「そうだよ。いっつも勝手だし……」

律「亭主関白なんだよ。私は」

澪「むー。こうなったら――」

澪「……よいしょっと」ひょい

律「お姫様だっこ!?」

澪「じゃあ、たまには旦那さまに、私の気持ちを味わってもらおうかな」

律「え?」

澪「――」

律「うわ! なにすんだ! いきなりパンツ下すな!」

澪「黙りなさい」ちゅ

律「――!」



501: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 21:29:29.62 ID:LaNtxblu0

律「な、なんか変だぞ! 今日のお前!」

澪「変なんかじゃない。まな板りっちゃんのくせに」

律「ま、まな板だとー!?」

澪「……ねえ、うるさいんだけど」

律「――!」びくっ

澪「どーせ、律のまな板なんか誰も相手しないんだよ。私だけなんだよ。
こうして、触ってあげるのは」

律「――ん!」

澪「感じてる? 悔しくないの? がさつでまな板で女の子らしさの欠片も
ないくせに、生意気だよ」

律「ちが……!」

澪「だからうるさいって」

律「!?」

澪「次、無駄口叩いたら引っ叩くからね」

律「……」

律(あれ? なんか、気持ちいい?)



502: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 21:53:46.34 ID:LaNtxblu0

澪「なんだ? なにか言いたそうだな。言ってみな」

律「……えと、しゃべっていいの?」

澪「……」ギュウウウウウ

律「痛い痛い! つねらないで!」

澪「ああ、ごめんごめん。あんまり小さいんで、揉んでるつもりがつねってた」

律「うう……。澪、怖いよぉ」

澪(かーわいい)

澪「あのさ、律。私、もっと律をいじめたい」

律「!?」

澪「いっつもいじめられてるんだもん。たまには、私が律にしてやるからな」

律「や……」

澪「嫌?」

律「ううん……。私も、澪にしてもらいたい」

澪「そっか。じゃあ、するな。馬鹿律」

省                        略



504: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 22:25:28.70 ID:LaNtxblu0

澪「……」

律「……あのさ」

澪「なぁに?」

律「唯たち、大丈夫かな」

澪「なんとかやってるだろ。私たちも新しい仕事見つかったんだし、そのう
ち会いに行こうよ」

律「だよな。……和が心配だよ」

澪「律が心配するなんて珍しいな」

律「そうか?」

澪「そうだよ。唯も和も、憂ちゃんのこと大好きだったから、そこは少し大変
かもな」

律「ああ。――そういえば、家事とかはどうなんだろ?」

澪「あ」

澪「あっちゃー」

澪「唯のやつ、そういえばあれ以来料理してないんじゃないか……?」



505: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 22:31:37.50 ID:LaNtxblu0

――翌日――

澪「本当にやばいな」

澪「憂ちゃんがいなくなって、和がずっと家事やってたら……」

澪「和が、倒れてしまうじゃないか」

澪「おーい、律ー! 出かけてくるなー」

律「浮気するなよー」

澪「ばーか。いってきます」

律「ほいほーい」

ドア「ニコ」

澪「和は仕事だよな。……そうすると、家でゴロゴロしてるだろうな。唯」

澪「私がお嫁さんとは何かを教えてあげよう。うん」

澪「和のためにも、唯のためにも、な」



506: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 22:40:16.19 ID:LaNtxblu0

澪「よし、平沢家に到着!」

澪「しっかし。唯の両親はいつもどこにいるんだろうな」

澪「思えば、私は唯の両親をどっちも見たことがないぞ」

澪「憂ちゃんが大変なことになっても、電話一つ寄こさなかったし」

澪「どういう両親なんだろう。放任主義も過ぎてないか?」

澪「……それに、今ここに住んでるのは真鍋和と真鍋唯だろ? まあ、戸籍
上では平沢唯だけど」

澪「もはや、ここは平沢家というよりも真鍋家じゃないか」

澪「真鍋家が植民地にしたのか?」

澪「……さて、くだらないこと言ってないでインターホン押そう」

呼び鈴「ピンポーン」

澪「……」

澪「……」

澪「……あれ?」



507: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 22:49:52.27 ID:LaNtxblu0

澪「いないのかな?」

澪「電話してみよう」

ケータイ「ピッポッパ」

家「ドドン! どかん! ゴロゴロー!!」

澪「あ、唯か。家にいるよね。うん、知ってる」

澪「寝てたんだ。じゃあ、開けてくれない?」

澪「はーい」

ケータイ「カチッ」

ドア「ニコ」

唯「澪ちゃん! いらっしゃい! どうしたの?」

澪「うん。唯のこれからについての話と、練習だよ」

唯「ふぇ?」



508: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 22:55:40.20 ID:LaNtxblu0

――居間――

澪「相変わらず綺麗だな」

唯「うん。お掃除は私の仕事だからねー」

澪「そうなのか?」

唯「そうだよー。私だって、少しくらいは家事するんだから」

澪「そっかー。それは意外だった」

唯「ぶー」

澪「でも、家事のメインは炊事じゃないか?」

唯「う。それを言われると……」

澪「和が作ってくれてるんだな?」

唯「うん……」

澪「お仕事から帰ってきて、ご飯が出来てなかったら、和悲しいだろーなー」

唯「う!」

澪「でも、逆にご飯ができてたら、それはもうキスとか色々が待ってるだろうなー」

唯「やる! 炊事やるから教えて! 澪ちゃん!」



509: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 23:06:14.27 ID:LaNtxblu0

澪「よし! 美味しい料理を作って、和を虜にするぞ! 男は胃袋を掴め!
だ!」

唯「和ちゃんは女の子だよ~」

澪「と。そうだそうだ。早速始めようか」

唯「うん! おねげえします! 澪先生!」

澪「先生って呼ばれるのも久しぶりだな。よぉし、その気になってきたぞ」

唯「キッチンへゴー!」

澪「待て待て、まずは何を作るかを決めないと」

唯「てへへー」

澪「テキトーに食材を切ったり焼いたりしても、料理はできないぞ。まずは
なにを作るのかを決めて、それで食材を買いに行くんだ。もしくは、今ある
食材で、何を作れるのかを決めるんだ」

唯「そうだよね。私、間違ってたよ」

澪「まあ、今回は最初だから前者を選ぶ。唯、食べたいものあるか?」

唯「レバーとホウレンソウ!」

澪「そのこころは?」

唯「……生理で、血が足りないから」



510: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 23:12:28.15 ID:LaNtxblu0

澪「生理だったのか。ごめんな、突然押し掛けて」

唯「大丈夫だよー。私、二日目だけが辛いだけで、何故か三日目以降は
かなり楽チンなんだよ」

澪「唯の体質って、たまーに変わってるよな」

唯「そうかな? ……ま、まあ私はレバーとホウレンソウをたくさん食べた
い!」

澪「うん。じゃあ、レバニラとホウレンソウのおひたしでいいんじゃないか?」

唯「澪ちゃんったら流石!」

澪「なにが?」

唯「二つしか食材言ってないのに、もうメニューが出来ちゃったよ!」

澪「これくらい普通だぞ。どっちもその食材に於ける代表的料理だから」

唯「そーなんだー」

澪「……まあ、私も生理のとき律に作ってもらってるしな」

唯「えへへー」ニヤニヤ

澪「な、にやけるなぁ!」

唯「おノロケですなぁー」



512: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 23:19:57.28 ID:LaNtxblu0

澪「それじゃあ、一緒にスーパー行こうか」

唯「今4時くらいだからちょうどいいね」

澪「そうだな。律には……あ、律も呼ぼうか?」

唯「うん! りっちゃんには、和ちゃんが帰ってくる時間に来てもらおうよ!」

澪「それ、いいかもな。私たちの晩御飯も済ませられるしな」

澪「そうと決まれば電話だ!」

ケータイ「ピッポッパ」

澪「律? 晩御飯は唯の家で食べることになったから、7時くらいにお前
も来い。今は駄目だ。お嫁さんコンビで美味しいご飯を作るからな。うん。
それじゃあ、また」

ケータイ「ピッ」

澪「よし、これでよし」

唯「りっちゃんも来るなら、さらに頑張らなきゃ!」

澪「その意気だぞ。唯」

唯「じゃあ、スーパーまでクルマで――」

澪「免許取り消されるだろ」



513: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/05/31(月) 23:26:20.03 ID:LaNtxblu0

唯「もうされてます!」

澪「だったな。口が滑った」

唯「なにはともあれ、スーパーへゴーですよ!」

ドア「ニコ」

澪「……唯はさ、和のどのあたりが好きなんだ?」

唯「いきなり言われるとびっくりしちゃう質問だね。でも、答えられる質問
だよ」

澪「どうなの?」

唯「優しいし、カッコいいし可愛いし、お母さんみたいであったかいところかな」

澪「――やっぱりお子様だな。唯は」

唯「そうかなー」

澪「まあ、それだからこそ、和と合ってるのかもな」

唯「澪ちゃんだって、りっちゃんとお似合いだよ」

澪「そ、そうか。ありがとうございます」

唯「照れてる澪ちゃんは、相変わらず可愛いねー」

澪「むむむ……」



555: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 20:22:51.25 ID:29TQLCvs0

――スーパー――

唯「そういえば、澪ちゃんと二人っきりで買い物なんて初めてかも」

澪「言われてみればそうかもな。いつも律かムギ、梓がいたもんな」

唯「一度、澪ちゃんとデートしてみたかったんだよねー」

澪「スーパーでそんな大げさな」

唯「大げさでもなんでもないよっ。澪ちゃん可愛いしカッコいいから、私の
ような美女にはお似合いだよ」

澪「ちょっと意味がわからない」

唯「しどい!」

澪「いや、唯は美女っていうか美少女だろ。永遠に」

唯「それは褒めてるの?」

澪「まあ、一応ね」

唯「ならいいよー」ぎゅっ

澪「こらこら。和が見たら傷つくだろ」コチ

唯「えへへー。……よし、これで食材は全て揃ったよ!」キリッ



557: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 20:29:31.39 ID:29TQLCvs0

澪「うん。確かにあるな」

唯「褒めてー」

澪(買い物しただけで褒めを要求!?)

唯「頭なでなでしてー」

澪「25歳児だな」

唯「やー」

澪「仕方ないなぁ……」なでなで

唯「澪ちゃんのおっきい手で撫でられるの、気持ちいいんだもん」

澪「……」

唯「あ! 今のはそういう意味じゃないからね。魅力的だよ! その手!」

澪「あははー」スタスタ

唯「お、おいてかないでぇ!」

澪「うふふー」スタスター

唯「澪ちゃーん! ごめんねー!」



560: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 20:37:03.06 ID:29TQLCvs0

――平沢宅――

唯「澪ちゃん、足速いよー」

澪「ふーんだ」

唯「拗ねる澪ちゃん、かーわいいー」

澪「!」

唯「りっちゃんが羨ましー」

澪「な――」

唯「おっぱい分けてよー」

澪「……むむ」

唯「聡くんも、こんな綺麗なお義姉さんが出来て鼻高々だろうなー!」

澪「しょ――」

唯「よっ! ミス桜ケ丘!」

澪「しょうがないなぁ! ほら、ご飯作るぞ! 和が帰ってきちゃうぞ!」

唯(私と違って単純だなぁ。澪ちゃんは)



562: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 20:43:34.03 ID:29TQLCvs0

澪「ふんふーん」トントン

唯「あ、ホッチキス。懐かしいね」

澪「歌詞忘れて、唯とダブルボーカルしたよな」

唯「あの時はホント、ご迷惑を」

澪「迷惑なんかじゃないよ。唯と歌うと元気になるんだ。不思議だよな」

唯「きっと、私たちは相性がいいんだよ。私もすごく楽しかったもん」

澪「唯もそう思ってたんだ。……なら、私もすごくすごくうれしいな」

唯「私も」

澪「――唯」

唯「?」

澪「ギー太。どうしてる?」

唯「部屋に飾ってある。私たちHTTの思い出で、友情の証だもん。今も
お手入れしてるよ。エリザベスは――?」

澪「エリザベスは、実家なんだ」



563: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 20:50:42.25 ID:29TQLCvs0

唯「実家って、澪ちゃんち?」

澪「うん。唯も知ってるだろ? 私たちが駆け落ちしたこと」

唯「……りっちゃんちのお父さんが、結婚に猛反対したんだよね」

澪「それで、律は私を連れて家出したんだ。突然で、荷造りも充分できな
かったし、なにより軽装にしないといけなかったから、エリザベスはお留守
番になったんだ」

唯「そうだったんだ」

澪「ママは……お母さんがエリザベスを保管してくれてればいいんだけど、
もうあれから二年も会ってないからさ」

唯「澪ちゃんたちが結婚したのって、去年だもんね」

澪「うん。……とはいっても、同性婚はできないから婚約指輪買っただけ
なんだけどな」

唯「それでも結婚だよ。私たちも、そうやって結婚ってことにしたんだもん」

澪「……ありがとう」

唯「いえいえ」トントン



564: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 20:58:39.41 ID:29TQLCvs0

澪「――よし、これであとは旦那さんの帰りを待つだけだな」

唯「楽しみだよ~。やっぱり、自分が作ったご飯を誰かに食べてもらうって、
なんだか緊張するね!」

澪「でも、美味しいって言ってもらえると、気持ちいいんだよなー」

唯「うん! 和ちゃん、喜んでくれるかなー」

澪「喜んでくれるよ。なにせ、唯が、生理中なのに一生懸命作ったご飯
なんだから」

唯「えへへー。りっちゃんも喜んでくれるよ!」

澪「当然だ! 律は私の旦那さんなんだからな!」

唯「おノロケだー」

ドア「ニコ」

和「ただいまー」

唯「和ちゃあああああああああああああん!!!!!」だきっ

和「わっ!」

唯「おかえりいいいいいいいい!!!」ウリウリ



565: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 21:05:19.43 ID:29TQLCvs0

和「はいはい、ただいまただいま。今からご飯作るからね」

唯「和ちゃんの可愛いお鼻は飾り?」

和「ん? ……あ、澪」

澪「こんばんは、おかえりなさい」

和「久しぶりじゃない。どうしたの?」

唯「お鼻きかせなよ~」

和「――ああ。なるほどね。ごめんね、澪。ご飯作ってもらっちゃって」

澪「いやー。私だけじゃないんだけど……」

和「じゃあ律もいるの? もしかしてムギ?」

澪「その、お猿の赤ちゃんみたいになってる和のお嫁さんが……」

和「え?」

唯「えへへー」キラキラ

和「……唯が、作ってくれたの?」

唯「うん! もうすぐりっちゃんも来るんだよ!」

和「そう。ありがと。唯」ちゅっ



566: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 21:15:15.52 ID:29TQLCvs0

ドア「ニコ」

律「おーっす! 約束通り、7時に来たぞー」

唯「りっちゃん! いらっしゃい!」

和「いらっしゃい」

律「おお唯、和! 久しぶりな気がするなー!」

和「一カ月ぶりね。憂の時以来だもの」

律「もう一カ月経ってたのかー。時間の流れは早いもんだ」

唯「このままあっという間にお婆さんになっちゃうのかなー」

和「そんなことないわよ。時間の流れは一定で平等なんだから、何をしたっ
て、どんな過ごし方をしたって同じなの」

唯「でも、なんだか高校生の時に比べて時間が短く感じるよ」

澪「それだけ私たちが大人になったんだよ。ほら、冷めちゃう前に食べよう」

律「わーい! レバー大好きー!」

唯「そ、そのまえにトイレ!」



567: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 21:21:39.81 ID:29TQLCvs0

――食事――

唯「ドキドキ」

和「……あーん」

唯「わくわく」

和「もぐもぐ……」

唯「じろじろ」

和「ごっくん」

唯「……どう?」

和「……」

唯「……」

澪(なんだ、この緊張感)

律(この味噌汁、澪の味がするー。幸せだなー)

澪(唯と和が見つめ合ったまま動かないぞ)

律(それにしても、澪のやつ綺麗だなー。どこ見てんだろ)



568: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 21:26:41.73 ID:29TQLCvs0

和「……」

唯「……」ごくり

澪(見つめ合いだして5分経ったなー)

律(澪が喋ってくれない……。もしかして、私のこと嫌いになっちゃったの?)

澪(まさか、先月のカレーもこんな雰囲気だったのか?)

律(そうだ! 私が亭主関白とか気取ってたから、愛想を切らしたんだ!)

澪(唯のやつ、目が充血してる)

律(ああ……。こんなことなら、もっとラブラブしとけばよかった)

澪(和も汗かいてないか?)

律(澪、私のほう一度も見てくれないし……。決定的だ。別れの晩餐だ! こ
うなったら――)

和「お……」

唯「!?」

和「おいし――」

律「みおおおおおおおおおおお!!! 好きだああああああああ!!!」

澪唯和「!?」



570: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 21:37:12.21 ID:29TQLCvs0

澪「なななな、なにすんだ! 馬鹿!」ゴチン!

律「いってええええええ!! でも、気持ちイイイイイイイイイ!!」

和「え? は? はい?」

唯「りっちゃんが今まで聞いたことない言葉を!」

律「うおおおおおおおおおおお!!! 澪おおおおおおおおお!!!」

澪「待て! 殴っても止まらないのは初めてだ! って、きゃああああ!!」

唯「澪ちゃんが床に!」

律「はぁ……ハァ……ふぅ」

和「やりきった顔だー!」

澪「なにするんだ! 馬鹿律!」

律「いや、なんか澪が私のほう向いてくれなかったから」

澪「それだけで押し倒したのか?」

律「いや、私にとっては大きな問題」

唯「嫉妬だね!」

律「そうだ、やきもちだ。ということで許せ。澪」



571: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 21:42:44.08 ID:29TQLCvs0

澪「……もう!」

唯「それで、和ちゃん。どうだった? 私のレバニラ!」

和「美味しいわよ。美味しいに決まってるじゃない」

唯「ヤタ━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ ━━━━━━!!!!」

律「うわ! びっくりした!」

澪「私はお前にびっくりしたんだ!」

唯「澪ちゃん! やったよ!」ガシッ

澪「う、うん。よかったな、唯」

和「ホントに美味しいわよ。うん、やっぱり唯のご飯は一番おいしいわ」

唯「えへへー」

和「よく頑張ったわねー」なでなで

唯「ぐえへへー」

澪「私が撫でたときの100倍顔が緩んでる……」

律「私も撫でろ。馬鹿澪」



572: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 21:54:05.18 ID:29TQLCvs0

和「――ふう、美味しかったわ。ごちそうさま」

唯「お粗末さまでした。えへへ、このセリフ言ってみたかったんだー」

律「ごっそさん!」

澪「はいはい。それじゃあ唯、すぐに洗っちゃうぞー」

唯「お皿洗いー」スタター

和「……律」

律「ん?」

和「先月は、本当にありがとう」

律「なんのこと?」

和「憂のことに決まってるでしょう? 私の妹と家内が迷惑かけて」

律「あ~」

和「あの事件の所為で、仕事もクビになって、その上、マンションも追い
出されそうになったんでしょう?」

律「いいっていいって。出ていくことにはならなかったし、再就職も案外
さらっと出来たしな。集○社で編集してると、結構つぶしがきくんだよ」

和「それでも、ごめんなさい」



574: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 22:02:50.47 ID:29TQLCvs0

律「いいって言ってるだろー? 私は。いいや、私たちは自分たちがそうし
たいから、憂ちゃんを送っていったんだ。後悔なんてまったくないよ」

律「……それにさ」

和「それに?」

律「すげー、楽しかったんだよ。唯が運転して、カーチェイスしたの。久しぶ
りだった。学生時代以来だったんだ。あんなに楽しかったのは」

和「……そう」

律「私も澪もムギも、腹抱えて次の日筋肉痛になるくらいに笑ったんだ。不
思議だよな。もしかしたら、巻き込んだ人が死んでしまうかもしれない。そ
れくらい、大変なことをしているのにさ」

律「でもそれは――簡単なことだったんだ」

律「私たちを縛り付けたオトナ。私たちが抜け出せなかった常識。それを、
その瞬間、その時間だけはぶち破ってたんだからさ」

和「うん……」

律「またあんな馬鹿したいけど、常識に捉われちまった、責任を負わなきゃ
いけなくなった私たちじゃあ、もうできないんだからな。……ホント、私が男
だったらって思うよ」

和「私もよ……。そうすれば、子供を作ってその子供に、たくさん楽しいこと
を教えてあげられるのに」



575: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 22:07:29.02 ID:29TQLCvs0

律「だよな。……私が男だったら、澪も大切なベースを家に置いてくること
もなかったのに」

和「……そうね」

律「私たちは子供なんて、できないんだぜ? それなのに、毎月毎月、子供
を作れと血が出る、痛みが走る、イライラするんだ!」

和「……」

律「いい加減にしてくれよ! もう受け入れたんだ! 子供なんて、できない
ことくらいさぁ!」

和「……私だって、同じ気持ち。いいえ、私たち同性愛者はそう思ってる筈
よ。子供がいなくってもいい。そんなものは綺麗事なの」

律「そうだよ。私たちだって、二人の遺伝子を残した子供が欲しいんだよ」

和「でも、女同士(わたしたち)には、それは叶わないのよ」

律「ちくしょう……。ちっくしょう……!」

和「……律」

律「……ごめん。澪には、こんな話できないから。つい――」

和「いいのよ。私も、唯に出来ない話だから、すっきりしたわ」

律「ありがと、な」ぐしぐし



576: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 22:23:58.13 ID:29TQLCvs0

――台所――

唯「澪ちゃんは、りっちゃんのどこが好きなの?」

澪「な、ななななななななんだよ! いきなり!」

唯「だって、さっき私に和ちゃんのこと聞いたじゃん。そのお返し」

澪「恥ずかしいから言わない」

唯「あー、ずるいんだー」

澪「ずるくて結構。恥ずかしいのはなんとしても避けたいのです」

唯「フーンだ。じゃあ、帰り際にりっちゃんにちゅーしちゃおうっと」

澪「やめろぉ!」

唯「なんでー?」

澪「そ、それは……和が嫌がるぞ」

唯「じゃありっちゃん盗っちゃおうかなー」

澪「うう……。わかった! わかったよ!」

唯「にやにやー」

澪「律は、昔から私のこと守ってくれたんだ。まるで、王子様みたいだった」



577: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 22:28:02.39 ID:29TQLCvs0

唯「高校時代は澪ちゃんがロミオだったけどね」

澪「律のジュリエット、すごい可愛かった……」

唯「それでそれで? 王子様りっちゃんの武勇伝聞かせて?」

澪「小学生のころ、かけっこでビリだった私を馬鹿にした男の子がいたんだ。
それで、その男の子に、私が突き飛ばされたのを見て律が……」

唯「やっつけてくれたんだー」

澪「うん。他にも、私が初めてブラジャー着けて学校来て、みんなに馬鹿
にされたときにもかばってくれたし、律は私にとって、王子様でヒーロー
なんだ!」

唯「うんうん。りっちゃんらしねえ。澪ちゃんらしいねえ」

澪「そうかな?」

唯「そうだよ! 澪ちゃん、私から見たらお姫様みたいだったもん!」

澪「お姫様っていうと、ムギのほうがそれに近いけどな」

唯「ムギちゃんはクラリス的なお姫様。澪ちゃんは白雪姫的なお姫様かな」

澪「あはは。その喩え、いいな」

唯「でしょう? 伊達に大卒じゃあありませんよ!」フンス



578: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 22:40:54.65 ID:29TQLCvs0

――それから暫くして――

律「それじゃあ唯、ごちそうさま」

唯「またごちそうするよ!」

律「和もありがとうな」

和「私こそありがとうね」

澪「それじゃあ、そろそろ帰るよ。また今度遊びに来るな」

唯「じゃあね、おやすみ」

澪「ああ。唯もがんばって主婦するんだぞ」

ドア「ニコ」

和「……ふぅ。今日は、楽しかったわね」

唯「うん。やっぱり、澪ちゃんとりっちゃんは楽しいよ」

和「もうこんな時間。お風呂、一緒に入っちゃう?」

唯「いいの!? もっちろん! お背中お流しするよ!」

和「お願いね。私もしてあげるから」



584: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 23:36:14.83 ID:29TQLCvs0

――浴室――

唯「ごしごしー」

和「フフ、気持ちいい」

唯「和ちゃーん」

和「なあに?」

唯「好きー」

和「私もよ。唯」

唯「これでおっけー!」

和「はい。ありがとう」

唯「……あのさ、私はお湯に浸かれないからそろそろ上がるね」

和「うん。わかった」

唯「ごめんね」

和「謝ることないわよ。女の身体でいる以上仕方のないことなんだから」

唯「うん。ありがとう。じゃあ、ベッドで待ってるね」



585: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 23:43:44.46 ID:29TQLCvs0

――夫婦の寝室――

和「お待たせ」

唯「和ー」

和「どうしたのよ。呼び捨てなんて」

唯「あのね。澪ちゃんとお話しして思ったんだ。私って、本当に子供だなって」

和「そうね」

唯「ぶー。……と。これはちょっぴり真面目な話なんだ」

和「……わかったわ。それじゃあ、聞くわ」

唯「澪ちゃんって、すごい大人でしょ。それが羨ましいの。私は憂の幸せに
直前まで気がついてあげられなかったし、強引に押し付けがましくアメリカ
に送った。それが正しいのかはわからない。ただ、私がしたかったからで、
憂の気持ちを全く考えなかったんだ」

和「でも、正しかったわよ。憂も、きっとそう思ってる」

唯「ホントは、もっとちゃんとした方法で憂とあずにゃんを一緒にしてあげ
たかったんだ。暴走行為で免許取り消しで済んだけど、もしかしたら、誰か
を巻き込んで、殺しちゃったかもしれないことを、私たちはしたんだ」

和「律も、そう言っていたわ。大変なことをしていたって」



586: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 23:48:56.06 ID:29TQLCvs0

唯「和も、そう思う?」

和「私には、なにも言えないわ。でも、唯たちがそう言うのであれば、それは
そうなのだと思う」

唯「ようするに、私は子供だったんだ。私の所為でりっちゃんたちは職を
失って、ムギちゃんも今はすごく大変で、私たちも会えないくらいに忙しい
んだよ。……それもこれも、私の所為なんだよ」

和「……」

唯「だから、私は大人になりたい。25歳になって、こんなことを思うのは変
だけど、私は――もう、間違えたくないんだよ」

和「唯……」

唯「その第一歩が、ご飯を作ること。家事も、主婦らしく全部頑張る」

和「……」

唯「憂は、すごい大変だったんだなぁ。こんな駄目駄目なお姉ちゃんのお世
話してきたんだから」

唯「憂のほうが、100倍大人だったよ。うん」

唯「ねえ、和。これからも、よろしくね?」

和「ええ。こちらこそ、よろしくね」



588: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/06/01(火) 23:57:00.04 ID:29TQLCvs0

和「……すー」

唯「和ー」

和「くー」

唯「だーいすき」

唯「……寝ちゃった」

椅子「ギシ」

ノート「ぺら」

唯「澪ちゃんに教えてもらった。真鍋唯の主婦日記。今日から書かないと」

唯「6月9日。今日は、澪ちゃんとレバニラを作りました」

唯「生理でちょっぴりお腹が痛かったけど、和とりっちゃんが美味しいって
言ってくれたので、嬉しかったです」

唯「……大好きだよ。和」

ノート「パタン」

唯「うん。これからも、頑張ろう」


                                おしまい


元スレ
唯「しんこん!」