3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/04/15(金) 21:31:42.65 ID:HrMeI5ec0

律「なぁ、屋上行ってみようぜ!」

一番はじめに提案したのはりっちゃんだった。
それはある日のお昼休み。

唯「あっ、それいいかも!」

澪「屋上は立ち入り禁止だろ?そもそも行ってどうするんだ」

律「知らないのか澪?昼休みに屋上で飯を食べるのは我々高校生のステータスだ!
  これ無くして青春は語れないぞ!」

澪「いやだから、立ち入り禁止…」

唯「はい!じゃあ多数決で決めよう!屋上に行ってみたい人!」

すかさず唯ちゃんとりっちゃんが手を挙げる。
なんだか楽しそう。

紬「私も行ってみたいで~す」

澪ちゃんの視線を感じつつ、私はりっちゃんに賛成した。

律「どうだ澪!3対1だ!」

澪ちゃんは呆れたように笑った。
しょうがないな…という言葉とは裏腹に、嫌な素振りは見せない。
私たちはお弁当を持って、教室を出た。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/04/15(金) 21:36:19.19 ID:HrMeI5ec0

昼休みの喧騒が徐々に遠のき、人気のない埃っぽい階段を上っていく。
途中に使われていない椅子や机が無造作に置かれていた。

唯「なんだかひんやりしてるね」

見上げると、階段を登り切った所に屋上への扉があった。
その小窓からはまぶしい光が漏れている。

律「お、開いてるじゃん」

軋んだ音を鳴らせて扉が開く。
その先には無機質なコンクリートの床が広がっていた。

唯「おお~!屋上だよりっちゃん!」

律「うひゃぁ、結構高いぞここ」

澪「お、おい、あんまり大声だすなよ…先生に見つかるぞ」

律「澪も来てみろよ。絶景だぞー」

澪「そ そうか…?」

澪ちゃんは屋上の端へ行くと、小さく悲鳴をあげてしゃがみこんでしまった。

澪「わ、私高いところは苦手なんだよ…」

怖がりだな~澪は、とりっちゃんは言う。
唯ちゃんは遠くまで見える街並みに、ただ感嘆の声をあげていた。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/04/15(金) 21:40:37.98 ID:HrMeI5ec0

紬「…気持ちいい」

穏やかな春風が心地よく、見上げれば視界の全てが澄み渡った青空だ。

私は深呼吸した。

暖かい日の光を浴び、春の空気を肌で感じる。

澪「…あったかくて気持ちいいな。たまにはこういうのも、いいかも」

律「だろー?さ、飯にしようぜー」

りっちゃんはそう言うと地べたに座った。

唯「そこに座っちゃうの~?汚くないかな?」

律「んん?全然平気だって!」

りっちゃんがみんなに座るように促す。
私はその隣に腰を下ろした。

紬「なんだか新鮮ね。学校なのに、遠足に来たみたい」

唯ちゃんと澪ちゃんも私に続いて横に座る。

唯「じゃあさっそくお昼食べよ!お腹すいちゃった」

いつの間にか唯ちゃんはお弁当のふたを開け、食べる準備をしていた。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/04/15(金) 21:44:27.96 ID:HrMeI5ec0

律「全く、唯は相変わらずだな」

唯ちゃんが食べ始めるのを見て、私たちもお弁当を取り出し
膝の上にちょこんと乗せる。

紬「いただきます」





いつもと変わらない、お昼休みのおしゃべり。
りっちゃんがふざけて、唯ちゃんがそれに乗っかる。
二人の面白可笑しいやり取りに、私も澪ちゃんも笑う。
時々、澪ちゃんがりっちゃんにつっこむ。
それを見て、唯ちゃんも笑う。

ひらけた屋上の世界は、私たち4人だけのものだった。

どこまでも続くように見えるこの景色…

この4人ならどこへだって行ける。

そんな全能感を、心の奥底で感じていた。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/04/15(金) 21:49:09.73 ID:HrMeI5ec0

唯ちゃんたちの会話を聞きながら、私は青く透明な空を仰いだ。

気ままに漂う雲、包み込むような太陽の温もり…

過去も未来もなく、ただここに居る私たちを静かに祝福している、

そんな昼下がりの午後




――この幸せが、いつまでも続けばいいのに。








14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/04/15(金) 21:57:15.96 ID:HrMeI5ec0

唯ちゃんたちの会話が途切れた。

見ると、みんな同じように空を見上げていた。

律「…いい天気だな」

澪「ああ…」

唯「……」



永遠に感じていたいこの瞬間も、ゆるやかに流れる時の前には儚く消える。


どんなに記憶に刻んでも、いつかは色褪せる想い出になってしまうなら


私は何よりも大切にしたい。


この日、この時、この場所を…わたしの大切な人たちとともに。


今にも落ちてきそうな空の下で


私たちは幸せと寄り添っていた





15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/04/15(金) 22:00:48.19 ID:HrMeI5ec0

                       
                  お
                       
                  わ

                  り


元スレ
紬「今にも落ちてきそうな空の下で」